文化審議会著作権分科会(第37回)議事録・配布資料

  • 日時:平成25年2月18日(月)
  • 10:00~12:00
  • 場所:グランドアーク半蔵門 華の間

【議事】

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)平成24年度使用教科書等掲載補償金について
    2. (2)平成24年度使用教科用拡大図書複製補償金について
    3. (3)法制問題小委員会の審議の経過について
    4. (4)国際小委員会の審議の経過について
    5. (5)その他
  3. 3 閉会

【配布資料】

資料1
「平成24年度使用教科書等掲載補償金について」関係資料(340KB)
資料2
「平成24年度使用教科用拡大図書複製補償金について」関係資料(392KB)
資料3
平成24年度法制問題小委員会の審議の経過等について(380KB)
資料4
平成24年度国際小委員会の審議の経過等について(272KB)
参考資料
第12期文化審議会著作権分科会委員名簿(80KB)
参考配布資料1
意思表示システムの在り方に関する調査研究 報告書(2MB)
参考配布資料2
学術用途における権利制限の在り方に関する調査研究 報告書(3MB)

【議事内容】

  • ○ 平成24年度使用教科書等掲載補償金について使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。
  • ○ 平成24年度使用教科用拡大図書複製補償金について使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。以上の議事については,文化審議会著作権分科会の議事の公開について(平成22年2月15日文化審議会著作権分科会分科会決定)その1(2)に基づいて非公開とし,同決定の6及び7に基づき議事要旨を作成し,公開することとする。
【土肥分科会長】
  それでは,次の議題に移りたいと存じます。
 昨年3月以降,各小委員会におかれましては,それぞれの分野において精力的に御検討を頂いておりますけれども,本日は今期最後の分科会となりますので,各小委員会の審議の経過につきまして,それぞれの主査より御報告いただきたいと存じます。
 まず,法制問題小委員会の審議の経過につきまして,主査である私より概要を報告させていただきます。
 申し上げます。
 今期の法制問題小委員会における審議の経過について,資料3を御覧いただきたいと存じます。
 今期の法制問題小委員会では,「間接侵害」等に係る課題について,平成24年1月12日に司法救済ワーキングチームにおいて取りまとめられた「『間接侵害』等に関する考え方の整理」を踏まえ,検討を深めてまいりました。
 また,これに加え,著作物のパロディとしての利用に係る課題については,昨年3月にパロディワーキングチームを設置し,検討を進めてきたところでございます。これらについて,簡単に御報告をいたします。
 まず,いわゆる「間接侵害」に係る課題については,司法救済ワーキングチームにおいて取りまとめられた「考え方の整理」を受け,関係団体からヒアリングを実施し,改めて立法措置の必要性等について検討を行ってまいりました。
 法制問題小委員会では,「間接侵害」に係る立法の必要性について,ヒアリングを実施した関係団体のみならず,委員からも賛否双方の意見が示され,また,もう少し時間をかけて議論すべきである,このような意見も示されたところでございます。
 こうした意見に鑑(かんが)み,今後の裁判例の蓄積や社会状況の変化,こうしたものを踏まえた関係者の立法措置の必要性に係る意見等を見極めつつ,時宜に応じ,引き続き望ましい制度設計の在り方等について検討を行う必要がある,このようにしたところでございます。
 また,法制問題小委員会においては,いわゆるリーチサイトについても検討を行ってまいりましたが,リーチサイトの示す対象の実態を整理した上で検討することが必要であるとしたところでございます。
 法制問題小委員会における検討の具体的な経過につきましては,別紙2にまとめており,後ほど詳細については事務局より説明をしていただければと思っております。
 次に,著作物のパロディとしての利用に係る課題につきまして,検討の経過を御報告いたします。
 著作物のパロディとしての利用に係る課題については,平成23年の著作権分科会報告書や知的財産推進計画2012において指摘がなされていたところでございましたので,今期の法制問題小委員会において,パロディワーキングチームを設置し,検討を進めてまいりました。
 具体的には,平成23年度に文化庁が行った委託研究を参考としつつ,有識者よりヒアリングを行い,諸外国の法制度やパロディに係る議論状況等を整理いたしました。また,関係団体からヒアリングを行い,我が国におけるパロディの実態等の把握を行ってまいりました。これらのヒアリングの結果を整理分析し,我が国におけるパロディとしての著作物の利用について議論を行ってきたところでございます。
 検討経過の詳細につきましては,別紙の3にまとめておりますので,後ほど御覧いただければと存じます。
 今後,諸外国の法制度や,我が国におけるパロディの実態等について必要な分析,検討を行い,その結果を取りまとめることとしております。
 以上,簡単ではございますけれども,報告とさせていただきます。
 なお,法制問題小委員会の委員の皆様方には,今期を通じ精力的に御議論いただきました。この場をかりて,お礼を申し上げたいと存じます。
 私からは,以上でございます。
【菊地著作権課課長補佐】
  それでは,引き続き,事務局より資料3の別紙2に基づきまして,「間接侵害」等についての課題についての検討経過の詳細について,御説明させていただきたいと思います。
 資料3の別紙2を御覧ください。
 別紙2は,今期の法制問題小委員会における検討を中心に,「間接侵害」等に係る課題について,司法救済ワーキングチームでの検討結果や法制問題小委員会において行った関係団体ヒアリングの結果,そして,これらを踏まえて,小委員会の委員の皆様方に御議論いただきました結果を整理したものでございます。
 まず,第1節として,問題の所在をまとめております。この検討経過では,著作物等を自ら直接に利用する者を「直接行為者」と呼び,この直接行為者以外の関与者を「間接行為者」と呼んでおりますが,この「間接侵害」に係る課題とは,直接行為者以外の関与者,すなわち間接行為者に対して,どのような場合に差止請求を行うことができるのか,そして,その範囲をどのようにとらえるべきかという問題でございました。
 第2節では,検討の経過を書かせていただいておりますが,説明は省かせていただきます。
 それでは,2ページ目を御覧ください。
 第3節では,「間接侵害」に係る課題についての検討の状況を整理させていただいております。
 まず,この検討経過では,平成24年1月に司法救済ワーキングチームにおいて取りまとめられました「『間接侵害』等に関する考え方の整理」を単に「考え方の整理」と呼んでおりまして,1.として,その「考え方の整理」の概要を記載しております。
 「考え方の整理」について簡単に申しますと,立法論として,差止請求の対象は直接行為者に限定されるものではなく,一定の間接行為者も差止請求の対象とすべきとしており,また,間接行為者が差止請求の対象とされるためには,直接侵害の成立が前提となるという,いわゆる「従属説」が適当であるとしております。
 その上で,差止請求の対象と位置づけるべき間接行為者の範囲について,(i)から(iii)で記載しておりますような3つの類型を提示していたところでございます。
 3ページ目を御覧ください。3ページ目以降では,法制問題小委員会における検討,議論を整理させていただいております。
 まず(1)立法措置の必要性についてでございます。
 (イ)関係団体のヒアリングについてでございますが,これまでは権利者及び利用者側の双方の立場から差止請求が可能な範囲を法律上明確化すべきとの要請がなされていたところでございますが,今期,法制問題小委員会で実施した関係団体からのヒアリングでは,立法措置の必要性について賛否が分かれ,特に権利者側の立場から,立法措置に慎重な意見が多く示されたところでございます。
 具体的な関係団体ヒアリングの意見の概要を4ページ目に記載しております。4ページ目をお開きいただければと思います。
 立法措置に積極的な立場又は条件つき賛成の立場からは,事業者の予測可能性を高めるという観点から,間接侵害に関する規定を設けるべきとの御意見などが示された一方,立法措置に消極的な立場からは,112条の解釈論によって対処できるのではないかとの御意見や,これまでの裁判例と間接侵害についての規定の要件とに齟齬が生じ,著作権法が複雑になってしまうという御意見などが示されたところでございます。
 (ウ)に移りまして,法制問題小委員会における検討でも,立法措置の必要性につき賛否両論が示されたところでございます。
 立法措置に積極的な立場からは,現状では間接行為者に差止めができるかはっきりせず,明文の規定があることは意味があるといった御意見や,実効性の観点から,損害賠償だけではなく,差止請求が重要であるという御意見などが示された一方,立法に消極的な立場からは,従前の最高裁で示された解釈と間接侵害についての立法が併存することによる混乱を懸念する御意見や,デジタル・ネットワーク環境下における権利侵害等とは何か,司法判断に委(ゆだ)ねるべきという御意見が示されております。
 5ページ目になりますけれども,立法措置に積極,消極の立場のほかに,デジタル時代,クラウド時代に適応したものとするため,また裁判規範として明確なものとするため,もう少し時間をかけて議論してはどうかといった御意見もございました。
 続きまして,(2)これまでの裁判例との関係についての議論を御説明させていただきます。
 関係団体からのヒアリングでは,直接侵害として解決すべき領域の広さについては,最近の最高裁判決をはじめとする裁判例の蓄積により予測可能であり,また,裁判所の採用してきた判断枠組みは普遍性の高いものであるといった御意見が示されていたところでございます。
 法制問題小委員会における検討では,これまでの裁判例について,112条により差止請求が認められる対象は直接行為者に限定されているとする考え方を前提として,間接行為者の差止めが難しい場合には,直接行為者を広めに認定しているのではないかといった御意見が示され,このような直接行為者の認定は,明確性の観点から望ましくないといった御意見がございました。
 これに対しては,先ほど御紹介いたしました最高裁の解釈と間接侵害の立法が併存することによる混乱を懸念する御意見のほか,立法措置について賛否両論の立場が,立法を求めるものを統一することは難しい旨,御指摘する御意見もございました。
 6ページ目をお開きください。
 続きまして,(3)として,「考え方の整理」に記載されております内容についての議論を整理してございます。
 まず,(ア)として,いわゆる従属説についての議論を整理しております。
 先ほど申しましたように,司法救済ワーキングチームでは,従属説の考え方に立ってございました。法制問題小委員会における検討では,従属説に賛成する御意見が示された一方,あらかじめ従属説や独立説のいずれかに決めるべきものではないといった御意見や,直接行為者が特定できなくても,また侵害が未遂であっても差止めができることから,従属説といっても従属性が弱いのではないかといった御意見が示されていたところでございます。
 7ページ目をお開きください。
 次に,(イ)として,差止請求の対象と位置づけるべき間接行為者の範囲に係る試案,いわゆる3類型についての議論を整理してございます。
 関係団体からのヒアリングでは,各類型における文言の不明確さを指摘する意見が多く示されたところでございますが,特に3類型のうち,類型2について,「知るべきでありながら」や「侵害発生防止のための合理的措置」といった要件について懸念が示されていたところでございます。
 法制問題小委員会における検討におきましても,3類型をもう少し明確にして限定すべきといった御意見等が示されていたところでございますが,一方で,考え方の整理における立法措置は,間接侵害に係る一般条項を設けようとするものであって,ある程度抽象的な書き方となることはやむを得ないといったような御意見もございました。
 以上が間接侵害についての検討の経過でございます。
 次に,第4節といたしまして,リーチサイトについての検討経過をまとめさせていただいております。
 ここでは,著作権侵害コンテンツを掲載した別のサイトへのリンクを集めたサイトを,いわゆるリーチサイトと呼んでおりますけれども,1.では問題の所在を書かせていただいております。
 8ページ目をお開きください。
 8ページの2.では,知財戦略本部からの検討の経緯を書かせていただいておりますが,これらについての説明は省略させていただきます。
 3.では,検討の状況を整理させていただいております。
 まず,(1)では,司法救済ワーキングチームの検討結果を記載しております。
 司法救済ワーキングチームでは,差止めの対象について,リーチサイト全体ではなく,個々のリンクについての差止請求の可否を検討せざるを得ないのではないかといった御意見が多く出され,この場合には,先ほどの3類型との関係が問題となりまして,結局,個別の事案ごとに判断せざるを得ないといった御意見がございました。
 また,仮にサイト全体を差止請求の対象とするのであれば,みなし侵害規定の創設が適当ではないかとの御意見がございましたが,リーチサイトの態様も多様であり,これに特化した規定を創設することは現実的ではないといった御意見もございました。
 9ページ目をお開きください。
 法制問題小委員会で実施した関係団体からのヒアリングでは,リーチサイトについて,差止対象とすべきとする御意見が多く示されていたところでございます。
 一方で,インターネット利用への影響を懸念する御意見も多く示されたところでございます。
 これを受けまして,法制問題小委員会において御議論いただいたところですが,(ア)の対応措置の必要性については,権利者がリーチサイトに対して何らかの対策がとれるようにすべきといったことについて,必要性は共有された一方で,インターネット利用が過度に阻害されないよう留意すべきとする御意見や,諸外国を含め「リーチサイト」の実態をもう少し整理した方がよいといった御意見がございました。
 また,(イ)のいわゆる3類型との関係につきまして,一部のリーチサイトが3類型のうちの類型の(ii)や類型の(iii)の「場」の一例として取り込むことができるのではないかといった御意見も示されております。
 その一方で,リーチサイト全体を対象とするのであれば,間接侵害とは別の立法措置が必要ではないかといった御意見も示されていたところでございます。
 以上が,いわゆるリーチサイトについての検討の結果でございます。
 最後に,10ページをお開きください。
 以上の検討について,第5節に「まとめ」として整理をしてございます。
 先ほど,土肥分科会長からも御説明がございましたが,「間接侵害」に係る課題については,立法の必要性につき賛否両論あり,また,もう少し時間をかけて議論すべきであるといった御意見も示されていたところでございまして,このような意見に鑑(かんが)み,本課題については,今後の裁判例の蓄積や社会状況の変化,それらを踏まえた関係者の立法措置の必要性に係る意見等を見極めつつ,時宜に応じ,引き続き望ましい制度設計の在り方等について検討を行う必要があるとしてございます。
 また,リーチサイトにつきましては,関係団体ヒアリングを受け,法制問題小委員会としても,リーチサイトを差止請求の対象とするべきとの意見が強く示されたものの,リーチサイトとして,どのようなサイトやリンクを対象とするべきか,リーチサイトの指す対象の実態を整理した上で検討することが必要であることに加えまして,間接侵害についての議論とも密接に関係することから,その議論の進捗(しんちょく)も踏まえつつ検討することが適当であるとしてございます。
 なお,リーチサイトについての検討に当たっては,インターネットの利用が過度に阻害されないように留意する必要があるという旨も記載させていただいてございます。
 長くなりまして申し訳ございませんでしたが,説明は以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの報告につきまして,御意見等があれば,お願いいたします。
 福井委員,どうぞ。
【福井委員】
  新聞協会の福井です。
 別紙2の7ページ,関係団体からのヒアリングについての中で,「知るべきでありながら」という要件が事業者に対して監視義務を課すようになってしまうのではないかとの懸念が示されたとありました。実は新聞記事は,日々,おびただしい量がネットの世界で違法に転載されています。そうした転載されたブログを束ねて運営しているサイト管理者への抗議を繰り返しているというのが現状です。1度は改善されても,またすぐに戻ってしまうという状態です。モグラたたきのように,こういった作業を続けざるを得ないという状態になっております。
 ここから先は個人的な意見ですが,ネットの世界では,やはりどうしてもコンプライアンス意識が薄いと思わざるを得ません。したがって,サイト管理者らに,今以上の監視義務を求めるのは,これはやむを得ないのではないかと考えます。現実の被害対策を急ぐという視点に,より留意していただいて,議論していただけたらと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにございますか。特段ございませんか。
【広崎委員】
  ちょっとよろしいですか。
【土肥分科会長】
  はい。広崎委員,お願いいたします。
【広崎委員】
  質問というより,確認させていただきたいんですけれども,まとめのところで,間接侵害やリーチサイトの件については,両方慎重に,今後時間をかけてとございますが,この過程で,今の新聞協会の方からの御指摘にもあったインターネットの利用形態の変化、複雑化をどのように考慮していくのか確認したいということです。こういった産業構造変化,ネットワーク環境の急変の中で,国際的にはインターネット・インターミディアリーというか,中間ビジネス業者の定義をどうするのか,また,そういったインターミディアリーに対する規制を国際的にどういうフレームワークで行っていくのか、といったホットな議論がなされているというふうに私は理解してございますけれども,今後の議論において,こういったグローバルな動きとのコンフォーマンス,これをどう考えているかということを,ちょっとお聞きしたいと思います。
【土肥分科会長】
  これは,じゃあ。
【菊地著作権課課長補佐】
  法制問題小委員会における議論の過程においても,諸外国の法制度等を参考にしつつ議論を進めてきたところではございますが,今後,議論を進める,また,検討を改めて始めるに当たっては,今,広崎委員からおっしゃっていただいたような国際的な状況もしっかりと注視しながら検討させていただきたいと思います。
【土肥分科会長】
  はい。ワーキンググループの中で,そういう国際的な状況についての検討,分析は十分されているわけですけれども,この分野については非常にスピード感がありますので,また検討する際には,直近の状況等を十分検討して,精査して,議論を進めていく必要があろうかと思っております。
 はい,どうぞ。
【広崎委員】
  追加でコメントさせていただきたいんですが。もう少し踏み込んでコメントさせていただくと,国際的には,今のインターミディアリーの話も含めて,知識社会に向けて世界が大きく動いている中で,ナレッジ・ネットワーク・アンド・マーケティングであるとか,ナレッジ・キャピタルであるとか,そういうもっと大きな枠組みでの議論が急務になっていて,我々産業界が非常に心配しているのは,こういった新しい産業動向に対する,特にインタンジブル・アセットが主役を果たす産業構造変化に対する世界の議論の中で,日本がややもするとビハインドになりつつあるんじゃないかと,そこを非常に心配しているわけでございますので,是非事務局並びに関係省庁横断的にこのあたりの議論をしていただけると有り難いと思います。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにいかがでございましょうか。この点,特にございませんか。
 それでは,法制問題小委員会の報告につきましては,このくらいにしたいと存じます。
 次に,国際小委員会の審議の経過につきまして,大楽主査代理より御報告をお願いいたします。
【大楽委員】
  それでは,国際小委員会における平成24年度の審議経過について,資料4に基づいて御報告いたします。
 今期の国際小委員会では,(1)インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,(2)著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,(3)知財と開発問題,フォークロア問題への対応の在り方,(4)主要諸外国の著作権法及び制度に関する,課題や論点の整理について検討を行いました。
 まず,(1)のインターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方ですが,今年度の小委員会においては,主に2点について検討を行っております。
 まず1点目として,マル1のところですが,政府間協議の対象国の拡大についてです。
 アジア地域における主な課題として,近年では著作権分野における能力開発及び人材育成,集中管理の強化,著作権普及啓発などについても,アジア域内の各国において重要課題として位置づけられております。今後は,こうした課題などを踏まえて,既存の海賊版対策事業などを活用しつつ,重点とする当該国地域との関係強化に努め,政府間協議の対象国拡大への環境を整えるべきであると記述しております。
 次に,2点目として,海外における著作権普及啓発についての検討を行いました。
 普及啓発の実施に当たっては,普及啓発の対象国,地域の優先順位,効果的な手法,政府の果たすべき役割などの十分な検討が必要であるとされております。また,海外における日本語教育や外務省による海外広報との連携にも留意すべきとの指摘がなされております。
 第2に,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方でございますが,そのマル1,視聴覚的実演に関する北京条約,これは仮称でございますが,それが採択されました。
 北京条約は,視聴覚的な実演家に著作隣接権を設定し,それを保護しようとするものでありまして,2012年6月に北京において条約採択のための外交会議が開催され,北京条約として採択されております。
 本小委員会においては,外交会議において,我が国の著作権法第91条等と権利の行使・移転等に関する第12条を含む本条約とは整合性がとれているものと理解している旨の発言を行い,最終的に外交会議の議事録へ記録したことが報告されております。今後は,我が国の視聴覚的実演家の権利が国際的に保護されるよう,我が国の早期の条約締結が望まれると記述しております。
 そのマル2のところですが,WIPOの著作権等常設委員会(SCCR)ですが,等における議論。
 著作権及び著作隣接権に関するWIPOのSCCRでの議論の進捗(しんちょく)状況が報告されました。
 その1として,放送機関の保護ですが,放送の不正使用等の防止を目的として,WIPOにて放送機関の権利の保護に関する新たなルールづくりの検討が行われているところです。昨年来,再び放送条約の成立へ向けた動きを見せつつあります。我が国は昨年5月に,我が国から放送条約に関する提案をWIPO事務局に提出し,放送条約の早期採択を目指して,積極的に議論に参画しているところです。
 放送条約の議題については,2014年の外交会議の開催を目指して活発な議論を行っていくこととされているところでして,今後も引き続き,我が国としての対応の在り方を検討していく必要があると記述しております。
 マル2-2ですが,視覚障害者等のための権利制限及び例外というところです。
 現在,WIPOにおいて,5ページ目ですね。視覚障害者等のための権利制限及び例外について,急速に議論が加速化している状況でありまして,昨年のWIPOで行われた各会合について,議論の状況や各会合におけるテキストの主な論点について,本小委員会において,逐次,報告がなされました。また,昨年12月に開催されたWIPO臨時総会において,本年6月に条約採択のための外交会議がモロッコにおいて開催されることが決定されました。我が国としては,本条約の内容として,既存の国際約束などと整合的な内容とすることを前提としつつ,我が国の視覚障害者等の著作物へのアクセス性の向上に資するものであることなどに鑑(かんが)み,今後も積極的に対応の在り方を検討していくことが必要であると記述しております。
 6ページの下の方で,マル2-3ですが,その他の権利制限及び例外。
 視覚障害者等以外の図書館,アーカイブ,教育機関などですが,そのための権利制限及び例外についても議論が始められているところですが,先進国側と途上国側との間に,議論の進め方や議論の範囲等について意見の相違があるところです。我が国としては,引き続きスリー・ステップ・テストや各加盟国のそれぞれの国内事情を踏まえ,対応の在り方を検討する必要があるとされています。
 次に7ページ,(3)の知財と開発問題,フォークロア,伝統的な文化表現ですが,それら問題への対応の在り方。
 WIPOの遺伝資源・伝統的知識及びフォークロアに関する政府間委員会(IGC)で議論がなされているところですが,先進国・途上国間で根本的な論点において意見に隔たりが見られる状況でありまして,第22回IGCにおいて,フォークロアに焦点を当てて議論されたものの,会合当初よりも複雑な状態となった,条文テキストとなったことが,国際小委員会において報告されました。
 最後に(4)として,主要諸外国の著作権法及び制度に関する,課題や論点の整理でございますが,近年,マルチのフレームワークのみならず,FTA・EPAの枠組みにおいて,知的財産保護を推進しようという取組や,著作権法制度をめぐる様々な動きが諸外国において見られるところでして,今期の国際小委員会では,韓国,米国,EU等の諸外国の著作権法制と我が国の著作権法制との比較を中心に有識者からヒアリングを行い,議論しております。
 今後,FTA・EPA交渉を進めていくに当たっては,議論の中で指摘された論点について留意するとともに,権利保護と利用のバランスや国際的な潮流,国益の保護といった観点からも検討を深めていく必要があると記述しております。
 最後に,本年度の国際小委の開催状況と議題,そして委員の皆様の名簿を記載しております。
 私からの報告は,以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの報告につきまして,御意見等があれば,お願いをいたします。
【新山委員】
  NHKの新山と申します。
 近々,行われる中間会議に向けて,積極的な立場を示すというお話がありましたけれども,今,世界が同時再送信に進んでいる中で,日本としてどこまで踏み込んで,中間会議では積極的な立場を表明されるというふうにおとりになっているんでしょうか。
【土肥分科会長】
  今の点,事務局,いかがでしょうか。
 御質問の趣旨はよろしいですね。
【新山委員】
  放送の現場は今,アクセルとブレーキのジレンマの中にあります。世界では放送という概念、同時再送信を含めて放送という概念についても,様々な検討が行われておりますけれども,日本の文化を外に出していく上では,やはりネットについての保護もされなければいけない。
 先日,私,台湾に行きましたけれども,台湾の夜店の海賊版も一斉に取り締まるんですけれども,取締るやいなや,すぐにまた海賊版が日本の場合に出てきます。ほかの国はネットでも非常にに速やかに正規のコンテンツが保護されながら世界に出ていくというふうになっています。日本の場合は正規はなかなか,ネット上,保護されていないということもあって,出にくい状況だという現実があります。先ほどお話がありました,グローバルな知識社会に向けて,世界が大きく仕組みを変動している中で,やはり放送とネット,それから伝送路にかかわらずコンテンツを守っていくということが非常に重要な局面になっていっていると思います。そういう意味で,この4月の中間会議で,日本として,どのような趣旨で御発言なさるのかを,ちょっと聞きたいということです。
【星野国際課専門官】
  実は今週に放送条約に関する中間会合をWIPOの方で開催をしてございまして,今,担当者,行っているんですけれども,今後とも関係者の方々の御意見を伺いつつ,検討を進めさせていただきたいというふうに,こちらとしては考えてございます。
【土肥分科会長】
  どうぞ。
【大寺委員】
  新山委員から,放送コンテンツについて,特に海外に対してどのように展開していくかが大きな課題になっているというご発言がありましたが,例えば,今,国会で審議されています補正予算の中でも,総務省や経済産業省が,それに対する意欲的な取組をされています。そうした中で,コインの表裏の関係でいかにコンテンツを保護するかということが非常に重要でございます。
 放送条約について言うと,もう十何年の議論がありまして,その中で,伝統的な放送と,それからマルチキャスト,いわゆるインターネット放送というものとの間で,どういう形でプライオリティーをつけるか。両方合わせてやるかどうか。関係国でいろいろ議論がなされてきており,そこら辺の中で,日本はどういう立ち位置になるかが非常に重要だと思います。実演家条約が成立をみましたので、そこはやはり,日本として,強力に放送条約を成立させるために関係者の方たちが議論して,国際の場で,ある意味でいうと多数派工作のようなことをやっていかなくてはいけない状況ではないかと思っております。
 以上です。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 事務局の提案のインターネット放送等に関する,その姿勢等については,何か,この時点では,まだまとまっていないということですか。それとも何か御説明があれば。
【作花文化庁長官官房審議官】
  
 この放送条約の話は,先ほど委員の方からございましたように,もう長い歴史がございます。我が国のスタンスというのは,いわゆるWebキャスティングについては,とりあえず2段階目で処理すべきではないかということで,これまで国際会議に臨んでいました。つまり伝統的な放送事業者に着目したところの国際的な枠組みを,まずは成立させて,その後,Webキャスティングの議論をしようというような形で,これまで臨んできていると思います。ただ,国際社会においては,必ずしもそうではなくて,やはりこの際,Webキャスティングのところもにらんで,一気に条約をという声もあるのも事実であります。したがいまして,我が国が,この春に向けて,どういうスタンスで臨むかというのは,これまでの長い歴史がございますから,一気にそれを変更するということはなかなか難しい。NHKの立場もあれば民放連の立場もあり,国内自体が,放送事業者が必ずしも1つの意見にまとまっているわけではないわけで,一応,それぞれの関係者がそれぞれに納得する形でないと,政府としても,今,対応できないという状況であろうと思います。
 コンテンツの保護ということにつきましては,放送番組が著作物である限りにおいては,そのコンテンツは著作権により十分に保護されるわけでございまして,問題は著作権でない信号ですね。いわゆる隣接権でないと保護されないものも確かにあり得るであろうと。そういったものの保護をどこまで強化するのかという議論だろうと思います。
 伝統的な放送事業者に関しましては,我が国では世界に先駆けて,送信可能化権というものを国内法上は整備されているというところがございます。それから,また世界に先駆けて,20年以上前には有線放送事業者を隣接権者として位置づけているということもやっているわけでございます。
 ただ,先ほど御指摘のとおり,インターネット放送というものにつきましては,これはまだ世界の動向も定かでございませんけれども,ただ言えるのは,我が国がWIPOインターネット条約に加入したときに,我が国ではインターネット放送は放送の枠組みではないという整理をしており,そこがやや国際社会におけるトレンドとは異なっているところはございます。ただ,それはその当時,いわゆるオンデマンド送信と,それから放送との仕分をする際に,関係者の間の利益調整というところから,そういう整理せざるを得なかったという状況がございますが,ここまで,いわゆるWebキャスティングが発達した世の中で,いつまで我が国が,いわゆるデマンド行為が介在すればブロードキャストではないという枠組みを維持するのが妥当かどうかということは,もう一度,そこは考え直す必要があってもよいかと思います。ただ単に理屈の上でこうした整理の方がいいというだけではいかないのも現実でございますので,やはり権利者の方々の御意見を十分踏まえながら,一番いい落ちつきどころというものはあわせて考えていきたいと,このように考えております。
【土肥分科会長】
  新山委員,いかがでございましょうか。
【新山委員】
  どうもありがとうございました。整理整頓(せいとん)させていただきました。
 ただ,放送の世界では,御承知のように,リアルタイム視聴とタイムシフト視聴がまとまって,トータルとして放送ということが一気に動いておりますので,放送という概念が,今,大きく変わりつつあるという認識を日本も全体として持って,これは民放連もNHKもそうですけれども,これからどういう形でコンテンツを見せていくかというのは,やはり大きな課題だと思いますので,そこの視点を,是非忘れないようにお願いいたします。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますでしょうか。
 じゃあ,福王寺委員,お願いします。
【福王寺委員】
  日本美術家連盟の福王寺と申します。
 国際小委員会の,9月7日の会議で,追及権について議論されたということで,早稲田の小川明子先生をお招きして,国際小委員会で,話し合われたということですけれども,この報告書の中に,追及権,リセールライトということの,協議の開始等が規定されたというふうに載っております。これにつきましては,今後,文化審議会著作権分科会で追及権,リセールライトについて話し合う,あるいはその導入に向けてそれぞれの関係者を集めて話し合うことをしていただけるという意味合いでしょうか。
【土肥分科会長】
  この9月7日における国際小委における検討テーマとして,これが挙がっているということの意味ですか。
【福王寺委員】
  はい。
【土肥分科会長】
  大楽委員,これを取り上げられた経緯について,何か説明ができれば,お願いしたいと存じますが。
【大楽委員】
  これは,各国の法制度についての比較という視点から,国際小委員会として検討していくべき課題を探ろうという流れの中で,追及権もやはり重要な課題ですので,それについて世界の最新動向をエキスパートから伺おうということでございました。そしてこれも,やがて機が熟せば,この分科会の中でもお取り上げいただくようになるとは考えられますが,各国法制度の比較の上から出てきた,関心を寄せるべきテーマの中から,直ちにどれかを著作権分科会にお出ししようという流れでは,残念ながら,ございませんでした。ただ委員の方々も,こういうものについては,また,この分科会の中での検討に取り上げようという機運につながっていくことを願っておられたと思います。
【土肥分科会長】
  福王寺委員,よろしゅうございますか。
【福王寺委員】
  ありがとうございます。
 日本美術家連盟でも,追及権につきまして研究会を小川明子先生をお招きして開催しております。国際標準として,追及権は世界中の多くの国でも導入されていますし,韓国においても,中国においても追及権を導入する動きがございます。そういった中で,著作権というものを国際標準として考えていくということが大事かと思います。
 追及権,リセールライトだけではなく,もちろん保護期間の問題もそうですし,戦時加算の問題についても国際標準としての著作権のあり方を,この文化審議会著作権分科会とそれぞれの小委員会の中で考えていただき,検討していただきたいと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 村上委員,どうぞ。
【村上委員】
  それでは,私は答えは要らないので,単純な要望になります。
 それで,きょう,国際小委員会から報告があったわけですが,この分科会で,主要諸外国の著作権法及び制度に対して,一般的な枠組みについて,課題や論点について説明するというのは,分科会の議論としては初めて聞いたような気がします。
 それで,今,先ほど放送の法制の話が出ましたけれども,経済規制全体の枠組みについては国際的なハーモナイゼーションというか,調整の動きは非常に進んでいるので,各主要国の法制及び慣行を分析しながら世界で標準的なルールをつくろうというのは,避けられない,全(すべ)ての経済法制なりビジネス関係の法律の動きになります。
 ただ,私の意識では,著作権法に関しては,今までは各国文化の保護・発展というのが命題にあるんで,むしろ比較法的には,各国における差異とか多様性がむしろ認められてきたような法律であるという形の認識をしていました。ただ,とはいいながら,今後は,ハーモナイゼーションの観点から著作権法制を見直していくというか,検討していくことは避け難いと思うので,主要国における法制なり制度の分析・研究というのは,是非,これから積極的に行っていただきたいと思います。
 それで実際には,,別の法律分野でも同じですけれども,法制とか制度が全(すべ)てを決めるということはないので,結局,その国で行っている取引慣行とか法律以外の契約慣行が大きな意味を持って動いていることになるので,そのようなことも十分に調査研究して,是非著作権法制のハーモナイゼーションというか,直ちに完全なハーモナイゼーションに行く法律ではないと思いますけれども,そちらの方向に向けて十分に検討してもらえればと思います。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 それでは,国際小委員会の御報告につきましては,このくらいにしたいと存じます。
 それから,(5)その他ということでございますけれども,この(5)その他の議題で本日予定しているものは全(すべ)てでございますけれども,著作権分科会全般の事項について,何か御意見等ございましたら,御発言いただければと存じます。どうぞ。
 椎名委員,どうぞ。
【椎名(和)委員】
  かつて著作権分科会の下に,私的録音録画小委員会というのが設けられまして,そこでずっと検討してまいりました補償金の問題,これにつきましては,我々権利者も,制度と実際の録音録画実態との乖離(かいり)について指摘をしてまいりまして,その実効性について見直していただきたいという方向でお話をしてまいったわけでございますが,先般,メーカーさんと権利者の間で裁判になりまして,この問題が裁判上で争われている限りは話が進まないということで,いささか停滞してしまった感があるんですが,裁判におきまして,特定の機器が制度の対象にならないという判断が示されたということで,この司法の判断が,制度の妥当性とか,そういったものを判断したものではない。むしろ,我々がかねて申し上げていたように,制度と録音録画の実態が乖離(かいり)をした結果,制度の実効性に問題があるのではないかというような部分が,司法の判断によっても裏づけられたのではないかというふうに思っております。この件については,利便性と権利の保護の調整という意味で,著作権のど真ん中に位置する問題でもあるというふうに思います。また知財本部等でも,この10年間,見直し,見直しということが言われておりながら,全く進んでいないということもありますので,著作権分科会におかれましては,是非この問題を,今後の検討課題の中心に据えていただくようにお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 河村委員,どうぞ。
【河村委員】
  検討の場をつくってほしいということに関しましては,椎名委員のおっしゃることに全面的に賛成でございまして,かつてあった議論の場がなくなって,いろいろな利用者側からの意見というものも公式には言う場がなくなっておりましたので,利便性と権利の保護ということに関して,きちんと,利便性も重視した中で,どうやって権利者さんたちのことも守っていくかということを真剣に話し合わなければいけないと考えております。
 先ほどの放送のところでも,実は私,申し上げようかと思ったんですが,国際的な会議のお話だったので控えていたんですが,例えば,放送に関しましても,ハーモナイゼーションという意味からいえば,日本は世界で唯一,普通の地上波の放送に著作権保護技術をかけておりまして,そのことについては長いバトルが総務省とかの場でもあったわけですが,結局,そういったことがどういうことを引き起こしているかというと,非常に悪質な権利侵害があって,権利者さんたちを苦しめているということは,また一方の事実であるかもしれませんけれども,ごく普通の人たちも,非常に,こんなふうに使えたらいいなという魅力的な使い方がことごとく否定されているんです。例えば,自分が私的に録画した番組を,もっと軽快に,自分の持っているタブレットや,いろいろなところで自由に楽しめたらいいじゃないかと単純に思うんですが,そんなことすら,今の国内のルールでは許されていません。ものすごく複雑なことをすれば可能なんですが,同じメーカーで全部そろえなきゃいけないとか,様々な縛りがあります。ビジネスの観点から見ても,もっと魅力的なものを提案した方がずっと,放送も含めて,メーカーも含めて盛り上がると思うところ,どんどんどんどん,そういうのを閉ざすことによって権利者さんを守るという,私から見ると非常に矛盾した方向に行っています。ですから,魅力的な,私的な範囲で自由で軽やかな利用が認められて,なおかつ,どうしたら権利者さんたちが守られていくかということをきちんと話し合わないと,ただただあきらめろと。魅力的な利用方法は,これはルール的にグレーですと。ネットでいろいろ売ってますけど,これはグレーです。これは黒ですと。そうなると特に私みたいな立場では使えませんですね。それではユーザーはどんどん離れていくんです。ですから,その辺を考えた話合いを,是非進めていただきたいと思っています。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
【久保田委員】
  昨年の10月1日の違法ダウンロードの刑事罰化につきまして,附則がついていますが,関連各機関は教育を徹底しろというお達しが出ていたんですけれども,この辺の実態について,どのぐらい学校で,こういう教育の普及啓発ということで講演会がされたり,先生たちが介在して,子どもたちに著作権を伝えるというようなことが行われたかとうい実態とか,そういうものを把握していたら,報告してほしいんですけれども。よろしくお願いします。
【土肥分科会長】
  それじゃ,これは事務局からお願いします。
【田口著作権課長】
  事務局の方から報告させていただきたいと思います。
 まず,違法ダウンロードに関する実態等につきましては,附則等におきまして,法施行後1年をめどに,きちんと調査するようにと言われております。
 また,10月1日をにらんで,それ以前,それ以降どういうことをやってきたかということでございますが,本日,北川委員が御欠席でございますけれども,レコード協会等を中心にしまして,広報,啓発するとともに,私どもといたしましても,学校における指導主事に対しに今回の法改正の趣旨を周知するため,説明資料を配布し,学校現場においても指導を進めていただきたいとお願いしております。
 もちろん,各都道府県の教育委員会に対しても,今回の法改正の趣旨等の徹底も行っているところでございます。
 そのほか,各種の著作権課が主催しておりますセミナー等においても,今回の違法ダウンロードに係る法改正の趣旨の徹底等を行っているところでございます。
【土肥分科会長】
  久保田委員,よろしゅうございますか。
【久保田委員】
  本当に学校の現場で,きちん,また親としても,家庭内でもきちんとやっていかないと,デュープロセスに基づいて,刑事罰が本当に執行できるのかどうか別にして,非常に重要な課題だと思うんです。河村さんがおっしゃったように,ユーザーの方も著作権法のことをちゃんと知らないために,これはNHKの『視点・論点』でも話させていただいたんですけれども,著作権法の構造がわかっていないために,非常に著作権法の解釈を間違えて,読む,聞く,見るといったことは自由だということすら知らなく,いつも権利者の主張が,自分たちの情報にアクセスすることや,著作物を利用することに対して不利に働いているというふうに,何となく心理的なそういう影響を及ぼしていると。こういったことについても,著作権法の本質が許諾を取ればいいんだというところからスタートして,そのためにどういう制度を持ったらいいのか,技術的にはどういうものがあって,それを利用するとみんながハッピーになるのかという具体的な議論をするようにならなきゃいけない。その前提として,やはり教育の現場で著作権のことをもう少しきちんとした,著作権法を教えるというよりは,著作権の本質を教えていくような,そういう教育が非常に重要かと思っています。
 当協会は,積極的に現場に行って話をすることが多いんですけれども,まだまだ学校の先生たちも,そういう意味では,著作権というと,「あ,許諾を取るの面倒くさいな」と,「制限規定で広げてくれると授業ができるのに」というようなことがよく言われるんですけれども,じゃあ,許諾取ってみたことありますかと。これは実演家の方なんかのお話を聞くと,許諾を取ることで,きちんと学校現場に,どうやったら著作物が使えるかということや,場合によっては,その著作物を流通させている人たちを教えてくれると。学校に行って,例えば,劇団等の人たちが,子どもたちの情操教育に役立つようなアプローチをしてくれたりということでメリットもたくさんあるんです。そういう意味では,最初から,もう使えないんだというような観点だったり,著作権を知らないために,やっていいことまでやっちゃいけないんだと思うことで,何か心理的に著作権法を重たく感じるというところを是非払拭できるように,著作権教育というところが,重要な子どもたちのクリエイティブなものを,これから醸成していくという意味でも非常に重要な法律ですので,そのあたりをもっと積極的に,次の世代を担う子どもたちに,是非正しいところの理解が進むように,特に文部科学省の方は,初等教育,中等教育レベルにおいて,アプローチをする一番近いところにいますので,文化庁さんの方からもアプローチをしていただきたいと思いますし,我々関連団体,著作権関連団体も積極的に現場に行って,子どもたちにそういう話をしたいと思っておりますので,是非使っていただきたいと思います。
 以上です。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 はい。どうぞ。
【大寺委員】
  2点あります。
 先ほどの放送条約の関係については,放送番組がきちんと守られるためのアプローチの仕方が,今,世界の中で2つあると思うので,どのアプローチをすれば,放送番組がきちんと国際的に守られるかということが重要だということでございます。先ほど私どもとNHKが対立しているようなニュアンスをおっしゃいましたが,そういうわけではないということでございます。
 それから,2点目ですが,私的録画補償金制度について,最高裁で残念な結果になりましたが,東京地裁レベルと知財高裁レベルにおいて,その論ずるところが異なっております。最高裁においては,そこら辺の判断はなされておりません。やはり補償金制度というものは非常に重要だと思いますが,忘れてはならないのは,そのうちの2割を上限として,いわゆる共通目的のために使うということで,例えば,海外での海賊版の撲滅でありますとか,あるいは児童・生徒へのパンフレットの作成,配布だとか,それから著作権教育への振興など,いろんなところに補償金が充当されております。こう言うと申し訳ないんですが,文化庁さんの予算が大きくない中で,非常に貴重な財源として,著作権の普及啓蒙や教育などに充当されてきました。私どもで計算しましたところ,約33億円ほどがそれに充当され,この数年は毎年4億円ほどの規模になっている状況でございますので,そこら辺も,考えていただければと思っております。
 以上です。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにございませんか。
 龍村委員,どうぞ。
【龍村委員】
  先ほどの国際小委員会のご報告の中で,主要諸外国の著作権法制に関する検討が議題に上がって,進められているということをお伺いしました。大変いいことだと思います。
 主要諸外国ということでは,どうしても先進諸国がメインになってくることが多いのだろうと思いますが,昨今の我が国における我が国の放送コンテンツ等の海外への流通促進などの対象として,アジア諸国がメインターゲットに置かれているというようなことも伺っておりますので,例えば,アジア諸国の著作権法制がどのようになっているのか、例えば,中国,台湾、香港あるいはシンガポールなどの新興諸国の著作権法制も,是非視野に入れてご研究いただくことが有益なのではないかと感じた次第です。
 先ほど「放送」の定義というような話もございましたが,総務省では,国際放送も視野に入れた,いろいろなお考えをお進めのようですが,放送こそ世界的なハーモナイゼーションが必要な分野かと思います。「放送」の定義については,意外と日本の著作権法の法制と新興国等の考え方にギャップがあったりもしますので,そのあたりも関係者に,やや混乱を招いているやにも感ずるところがございます。その意味で,アジア諸国の法制度についても,ご研究いただくことが有益かと思います。
 以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますか。
 もう一度,じゃあ,福王寺委員,どうぞ。
【福王寺委員】
  この著作権分科会は,昨年の3月に開催されて,今年2月ということで,年に2回ということになってしまいました。私は平成18年から委員をさせていただいておりますが,最初の18年頃(ごろ)は年に4回か5回ぐらい開催されていたと思います。そういうことを考えますと,年に2回というのは余りにも少ないと思います。最低でも,夏と秋にも開催して,中間報告として,それぞれの小委員会から報告を上げていただいた方がいいと思います。
 この件については,昨年の3月にも同じことを申し上げました。それぞれの委員の先生方もお忙しいと思います。文化庁著作権課の方もお忙しいと思いますが,これにつきましては,是非とも,次年度からは,年に4回以上の開催の形にしていただきたいと思います。
 あと1つは,著作隣接権につきまして,書籍業界,あるいは大手出版者の方々が議員立法する動きがあるということなんですね。これについては,私は美術家ですけれども,出版美術の団体がございまして,日本美術著作権連合といいます。出版・美術の団体が7団体集まっておりますけれども,ほとんどの方が著作隣接権についても,議員立法の動きについてもみんな反対しております。そういった中で,議員立法だけで,こういった法制化をしていくというものはいかがなものかと思います。この文化審議会著作権分科会というものが,ここで議論されて国会に上げていくというのが筋じゃないかと思うんですね。非常に,これについては重大な問題であると感じております。この件につきまして,それぞれの委員の先生方の意見を,是非お聞きしたいと思います。
【松田委員】
  私,意見言いましょうか。
【土肥分科会長】
  はい。じゃあ,松田委員,お願いします。
【松田委員】
  
 議員立法が立法の方法として亜流であって,審議会が本流であるというのは,法律的な決め方としてはありません。ですから,議員さんの立場,ないしは政党の立場で,これは立法すべきというものを把握して,それを進めるということを,それ自体問題はありません。だけど,立法の段階で,研究者が集まって,全体の法制の中で,どういう問題が起こるだろうかということを考えることというのは,重要であります。1つの法制だけを考えるのではなくて,裁判になったらどうなのか,刑事手続になったらどうなるのか,を考えることになります。契約レベルでは,どのようなことが起こるのかも重要です。権利者団体と,利用者団体が,どのような話合いが行われて,スムーズに協定等が形成されるかということも考えるわけです。
 政党の議員の先生方が,そういうことを考えないというわけではありませんが,この分科会や法制小委員会が,思考の深化をするということは極めて重要な場面があると思います。権利者団体等の要請と,政党の考えが一致して議員立法が進められるということと,憲法秩序の中で,全法制を検討した上で,方向性を出すという方法の大きな違いは何かというになりましょう。結局政治的な判断と,法というのは,どういうふうに立法し,運営したらいいのだろうかという対峙ということになります。法が本来あるべきはどうであるかという視点から考えることになり、立法段階における法の支配ということになります。法の支配と政治的判断とのせめぎ合いの問題です。どちらがその力を国民に信じてもらうか,これは,その2つの力関係が微妙にいつも揺れているんだと思います。その揺れているところで,最近はむしろ議員立法の方がいいという意見を聞くことがあります。法を全体的に見て,法の妥当性というようなものを考えることよりも,政党の力によって国民の意見を立法化していくということの方が,社会経済的には効率がいいんだということのようです。民主的手続によることを大きく評価しすぎると、権利者の要請による議員立法と利用者の要請による議員立法が生じることになりかねません。著作権法の統一性が失われることにもなりかねないと思います。審議会の場で議論をし,意見を公表してなおかつ,民主的な意見をまとめる議員、政党にもこの意見を検討してもらうということが望ましいと考えるのです。法的考察と政治的判断のせめぎ合いをしていかなければいけないんじゃないかと思います。このことから、審議会の意見が社会的に信用を得ているという状況をつくらなければなりません。なかなか難しい問題であると思っています。分科会の重要な役割の1つだろうと思っています。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 たくさん挙手が同時にあったのですけれども,私から拝見すると,山本委員,どうぞ。
【山本委員】
  先ほど広崎委員の方からも,日本の法制が世界の中でおくれているんじゃないかという御指摘あって,その点について,原因をどこにあるのかというのを考えておりました。今,福王寺委員の方から御意見があったところに対する答えとして,その点,ちょっと考えたところを申し上げたいと思います。
 この著作権法制でも,法律案をつくる段階というのはワーキングチームで検討して,そこでほぼ多数決で通ったものが,法制問題小委員会で多数を占めるようなスクリーニング受けて,更に,この分科会でスクリーニング受けて,省庁の中で意見がまとまって,省庁間会議を通って,その後,閣議を経て,国会の中で,また多数決で通ったものが法律になるというスクリーニングを多重にかけて,やっと法律になるというのが通常のルートです。そうすると,もうどんな人でもそうだねと思えるような,要は国民みんなのコンセンサスをとれるようなものしか法律にならない。ということは,先進的な政策から最低限の政策までのなかで,最低限の政策ぐらいしか法律にならないというのが現実なんじゃないのかな。
 もちろん,だからって,そのシステムを否定するわけではありません。最低限の施策はやらないといけないんで,それを達成するという意味はあると思います。しかし,そうじゃなしに,もっと,今の標準的な人の意見よりも先進的な意見を更に採り上げて,それを立法化していくという,そのイニシアチブも,政治の世界としては必要なんだと思います。
 ですから,例えば,最近,フェアユースの提案がなされていても,なかなか省庁間会議であるとか,いろいろなところでひっかかっちゃって法律にならない。でも,恐らく産業の振興のためには必要な場面というのは多々あると思うんです。そうすると,そういうものが,つまり世界の中で最後の地位じゃなしに,上の方に行くためには,もっと政治家のリーダーシップが必要だ。ということは,まさに求められているのは,議員立法なんだろうな。その辺がないとですね。要は,この通常の審議会を経たというルート以外のところに,ちゃんと立法化の意味を認めないと,日本の著作権法だけじゃなしに,法律全部かもしれませんけれども,先進国の仲間入りはなかなかできない法律制度になってしまうんじゃないか、というふうに私は懸念しております。
 以上です。
【土肥分科会長】
  ありがとうございます。
 里中委員も,挙手なさったので,どうぞ。
【里中委員】
  すいません。2点ほど。  先ほどありました著作隣接権を議員立法でという話につきまして,少しかかわっておりますので,考えを述べたいと思います。
 もともと,この話が出てきたときから,私個人の意見としましては,著作隣接権を認めるよりも,すべて契約できちんとやっていけるのではないかと思っておりましたので,著作隣接権を,諸外国にそういう例がないにもかかわらず,日本国内だけで認めたとしても海賊版対策にはなり得ないのではないかということで反対しておりました。
 ところが,そのうち,議員立法という話が聞こえてきまして,一般庶民の私の感覚からいたしますと,とても大変なことのように思えたんです。しかも,著作者たちのほとんどが知らないところで議員立法の動きが出てきたということで大変驚きまして,一体何をする気かというと,すごくけんか腰なんですけれども,大変気になりまして,どうして著作者たちの知らないところでそれをやるのか。しかし,著作者といっても,数名の方は御存じだったようなんですけれども,そういうことが出てくるという動きに驚きました。非常に狭いところで事が進んでいるんじゃないかなと思いましたので,その勉強会なるものに説明を求めに行きました。そこでいろいろ話しました。話しまして,私自身の危機感としましては,ちゃんとチェックしなければ,今後どうなるかわからないと。もし,議員立法が成立した場合に,かやの外で,あ,こんなことになってしまったというよりも,ガイドライン作成ということがあるのであれば,そこに加わって意見を申し述べたいと覚悟いたしまして,その勉強会の最終回あたりに勉強会に参加いたしました。
 ところが,勉強会に参加するまでは,著作隣接権という言葉は出さないと。それを求めているのではなくて,新しい権利を求めているというような動きでしたので,私はそれを信じておりました。ところが世間に出てくる文言には「著作隣接権」とはっきり書かれているんですね。
 もし仮に,かかわる人間,つまり私たちの世界でいいますと著作者たちですね。多くの意見が置いてきぼりにされて,議員立法を目指す議員の方が,それを目指す人たちの意見を聞いて,よかれと思って,正義のためにと立ち上がるという,そういう構図があると思うんですね。ちょっと怖いなと感じました。
 私はいまだに,あの問題が全(すべ)て契約で解決できる問題だというふうに確信をしておりますけれども,まだまだ危機感は持っております。どうなるかわからないと。
 ただ,勉強会に名前を連ねたことによって,すごく単純に著作隣接権の付与に賛成という立場のように思われて,個人的にはいたたまれない部分がありますが,自分たちの著作者としての信念のために,多少の人身御供(ひとみごくう)は必要かなと,もう開き直っておりますが,いい形で落としどころを見つけられればいいなとは願っております。ただ,実態としまして,様々な著作者が様々なことを考えて,はらはらしながら見ているということですので,議員立法というのはいかがなものかと思いました。
 ただ,先ほど来,お話が出ておりますように,そうでなければ前に進まないということも多々あるかと思います。これからも,これからでもなく,もうとっくにグローバル社会なんですが,著作権に関しまして,アジアの中で,昔は日本の著作権を参考に,文化を支えていこうという動きがアジア各国にあったんですが,ここ15年ぐらい,日本の動きを待っていたら何もできないということで,アジア各地域の国々が独自に,もう日本を無視して法整備を進めている実態があります。韓国が著作権の保護期間を50年から70年に延長というのも,さんざん日本はまだかまだかと言われて,何も早けりゃいいというもんじゃないですけれども,余り慎重になり過ぎると何も決められない。時間がたってしまう。で,置いていかれてですね。おくれてでもいいと思うんです。信念を持って,我が国はこれで行くと思って,いろんなことがおくれるのは,それはそれでいいと思うんです。ただ,決め手がないまま,どうしようか,どうしようかと言っている間に時間がたってしまうと,結局,文化的な面で尊敬の対象から外れていくと思います。やはり多少のリスクも,どんなことを,何をやっても,やはり不都合は出てくるものなんですね。法というのは万能ではありません。昔から何千年も人類は,こうすればいいだろうと思いながらやってみたら,こんな穴があったと,その繰り返しなんですが,日本は慎重であり過ぎるが故に,1度決めたことをなかなか変えられない。あれだけ時間をかけてまとめてきたんだから,おいそれとは変えられないという呪縛(じゅばく)にとらわれているような気がいたします。
 世界の中での文化国家としての日本という立場を考えて,リスクはあって当然なのだが,しかし,やはり大局から見て,こうすべきであろうという信念と気力のようなものを感じる著作権の守り方と生かし方ということにシフトしていった方が,ひいては我が国の発言権も増すのだろうと思います。
 今や著作権というのは,狭い世界の話ではなくて,ありとあらゆる分野にかかわるんですね。それは我が国の特許とか,様々な技術を守るということ。それは我が国が我が国自身の中で守るのがおくれるうちに,ほかが押さえてしまうということが,多々見受けられます。そういうことともつながっているのだということを考えた上で,この分科会の役割というのは非常に大きいと思いますので,もう少しスピーディーに。
 先ほど来,話が出ましたように,大事なことですので,やはりもう少し委員会の開催といいますか,回数を増やしていけたらなと思っております。みんな忙しいのは当たり前で,暇な方は,出てきて意見を述べるような立場でないわけですから,仕方がないんですね。忙しいのは仕方がないです。ということで,よろしくお願いいたします。
 長くなって失礼しました。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 それでは。
【中山副分科会長】
  今,問題になっている出版者の隣接権について,私なりの考えありますけど,それはきょうは述べる場でないので述べません。
 先ほどから問題になっている議員立法の話ですけれども,松田委員のおっしゃるとおり,現在の憲法体制のもとにおいては,議員立法は本筋ではないとは口が裂けても言えないわけであります。しかし,やはり問題はありまして,特に前回の違法ダウンロードの刑罰化に見られるとおり,議員立法はロビーイングに対して極めて弱いということがあるわけです。恐らく,その反省でしょうけれども,今度の隣接権に関しては,先ほどの刑罰化に比べれば,かなり慎重にやっているようでして,いろんなところでシンポジウムがあったり,いろんな団体がいろんな意見を発表しておりますけれども,しかし,それでもやはりロビーイングに対して弱いということは間違いないだろうと思います。しかし,それでは審議会のほうが本当にいいかというと,先ほどから議論出ていますとおり,議員側に言わせれば,余りにも議論が遅いし,かつ決まらないと。これでは議員が出ていくしかないんじゃないかというのが,恐らく議員側の方の話だろうと思います。
 この審議会では,私もう長い間,委員やっておりますけれども,確かに他(ほか)の官庁等の審議会と比べても遅いし,かつ決められない。こんなこと言うと問題が大きいかもしれませんけれども,文化庁側に,もっと強力なリーダーシップを持ってやっていただきたいと思います。これに対して反対する人いるかもしれませんけれども,それでないと,恐らく決まらないという状態は変わらないのではないかと思っております。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。どうぞ。
【井村委員】
  書籍協会の井村です。
 先ほど来から私どもが求めています隣接権に関して,いろいろな話が出ておりますけれども,立法に至る方法論についてはさておきまして,私どもずっと隣接権を求めていく中で,利用者団体,それから権利者団体への説明を繰り返し,かなり回数を重ねてやってきたというふうに思っておりますが,それでも本当に理解していただいて賛同していただけているのだろうかということに関しましては,かなり,我々出版界の中でも反省がございます。
 実は先週あたりから,もう一度,ちょっと立ちどまって,本当に我々がやっている方法でいいのだろうかというのを,見直しも必要なのではないだろうかという意見が出てきておりまして,これから先,一,二週間をかけて,早急にその辺のところを話し合っていくように考えております。そういう意味で,隣接権という方向では,今,今日現在では変わっておりませんけれども,これから先,ちょっと軌道修正等も含めて考えていきたいなというふうに思っております。
 ただ,それだけちょっと申し上げたくて,挙手させていただきました。すいません。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 村上委員。
【村上委員】
  私も基本的に中山先生の意見には賛成で,議員立法は,否定されるべきではないものですが,ただ,幅広く調査なり研究ができて分析ができるのは,やっぱりこういう席の方ではないかと思っています。
 それで今,隣接権の問題出ましたけれども,専門家でないんですが,意見聞かれることがあります。そういうときに困るのは,日本だけに認めるかという点です。、ほかの先進国は必ずしも書籍についての隣接権等は認めていないというふうに伺っているんで,そこだけ困っています。
 ただ,実際にこれだけ電子書籍とか電子出版が進んでいる中で,欧米のアメリカとか出版社にそれなりの権利保護がされていないということは,想定し難いのです。したがって,どこかの取引慣行とか契約で,当然,何かの手当ができて,それなりに出版者に権利を与えるということは,ビジネスとしては,もうできているはずなんです。結論どうこうというわけじゃなくて,そういうことをしっかりと,とにかく先進国の実態なり何なりを調査研究して,それで結論をどうするかなという意味で,できるだけ幅広く議論して決めるべきテーマではないかというふうに考えております。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 はい,どうぞ。河村委員,どうぞ。
【河村委員】
  お時間迫っているので手短に。福王寺委員から,皆さん,どう思われますかというお呼びかけがあったので,消費者というか,利用者の立場から一言申し上げます。
 何度かこの件で意見を求められる機会もありましたし,私のところに説明に来ていただくようなこともしていただいているんですが,私だけでなく、いろいろなヒアリングの機会があって,利用者の立場から出ている人で、隣接権の付与に賛成する人は,今までお目にかかったことがありません。議員立法が国民の声を拾うということであるならば,その辺はどうなのかなというふうには感じております。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 ほかにございますか。よろしいですか。
 大体予定しております時間も尽きてきておりますので,よろしければ,本日はこのくらいにしたいと存じます。
 本日は今期最後の著作権分科会となりますので,近藤文化庁長官から一言御挨拶(あいさつ)を頂戴(ちょうだい)したいと存じます。
【近藤文化庁長官】
  2時間にわたり,御議論ありがとうございました。今期の最後の分科会ということで,一言御挨拶(あいさつ)と御礼(おんれい)を申し上げます。
 まずは1年間,御多忙の中を,委員として,貴重な御意見を頂きまして,誠にありがとうございます。私も文化庁に来て2年半になりますが,この著作権分科会は最も面白い議論で,しかし,最も前に進まない委員会だという印象を持っております。それはそれぞれ理由があるわけでございまして,特定の誰(だれ)かを非難するわけではございませんけれども,それだけ問題が複雑であるということ。しかも,国際的な流れと,日本の中の産業という大きな国の中での動きのずれ,それからそれぞれの文化というか,商慣行といいましょうか,それのずれといったものが反映しているんだろうと思います。
 国際的なルールづくりに,どう関与していくかということにつきましては,私も3年前までは外務省におりまして,主として経済交渉をやっておりましたんで,日本という国が,ある意味でコンセンサスを重んじるが故に,なかなか日本としての立場をほかよりも早くとって,必要な根回しをし,環境づくりをして,その方向に世界のルールを引っ張っていくということが極めて不得手でございます。能力がないわけではないと思いますが,余りにも国内の意見のコンセンサスを重視する余り,常に出おくれてしまう。そして,国際的なルールが決まると,国内で反対する人も,それならしようがない。そこで初めて納得をするということで,常に日本全体の利益が十分に反映されないままに来た,そういう傾向が強い。常にそういう意味では悔しい思いをしてまいりました。そして,その経済交渉と同じように,この著作権問題は全く同じことの繰り返しのような気もいたします。
 そういう中で,先ほど来,議論が出ていますように,十分に議論を尽くす,各関係者の意見をしっかり聞くというのが民主主義の根幹ですが,最後は,やはり多数決で決めるということがあって初めて民主主義が成り立つわけです。したがって,そこの決定が十分ないと,先ほど来出ているような,いろいろな別の動きが出てきて,何らかの法律をつくろう,改正しようということになっていくんだろうと思います。したがいまして,この分科会の在り方としては,幅広く,委員の方々の,あらゆる権利関係を持っておられる方々の意見を聞きつつ,適切なタイミングで方向づけをし,その方向に日本全体を誘導し,そして,そういう日本の国益となるものを実現すべく,国際的に働きかけをしていくということだろうと思います。どうしても,そのコンセンサスを得ることの難しさゆえに,なかなかそこができない。そこを文化庁としても,これからもう少し努力をしたいと思いますが,一定の方法をとれば,反対の方から御批判を受ける。それを恐れて何もしないと,業者から御批判を受けるということですから,やはりもう少し踏み込んで,全体の流れと世界の流れを見極めながら,ある方向性を出して,その方向に行くと,どういう問題があり,どういうメリットがあるか,どちらが大きいかというようなことで,少し前に進むような運営ができないかと,この2時間,お話を伺いながら考えた次第でございます。
 口で言うのは易しくて,行動は簡単ではないと思いますけれども,先ほどスピード感というお話もありましたように,技術の進歩もあり,かつ各欧米のそれぞれの国の国益をメインに立てた議論と途上国の反発と,いろいろな複雑な中で,やはり日本は常に待ちではいけないということは,もう明らかですので,どうしたらこういった状況を前に進めていけるか考えながら,いろいろなことを,今後,実験的にと言うと軽く聞こえるかもしれませんが,どういうイニシアチブがとれるか考えていきたいと思いますし,その意味で,御批判もあれば,どうぞ頂きたいと思いますが,なるべく前に進む方向で,この分科会も運営していきたいというのが,私の現在の印象でございます。
 予定していなかったことを申し上げましたけれども,これからもまた,来期,多くの先生方には引き続き委員をお願いすると思いますけれども,今申し上げたようなことで,文化庁としても,少しイニシアチブらしきものをとるような努力をしたいと思います。是非広い心で,それをサポートしていただければと思います。この1年間,ありがとうございました。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。
 時間が過ぎておりますので,本来は最後に私からも一言話すようにというふうに事務局から言われておるんですけれども,簡単に一言だけ申しますと,知財法の中で,この法律以外の知財法,例えば特許とかの世界ですと,創作者の利益と,企業の利益というのは,そんなに対立しないですね。それから一般消費者といいますか,一般の方々の利益とおおますと,も業としてという要件がありますので,これも関係がない。他(ほか)の知的財産法でありますと,割合簡単に利害というのが乖離(かいり)しないんですけれども,著作権法に関しては,メーカーの方と創作者の方と利用者の方が三つどもえになるというところで,なかなか難しい面がございます。来期において,まだこれから来期の委員は決まっていくんだと思うんですけれども,私を含めて。もし来期においても,この場においてお会いすることになるとすると,是非とも,それぞれの立場はもちろんあるわけですけれども,いわゆる1つの成果を出す方向で力を結集して,詰めるところは詰めていくということで,先ほどから出てきておりましたスピード感というものを実現していただければというふうに思っております。
 本来であれば,もっと厚く皆様方にお礼を申し上げなければならないかもしれませんけれども,何分,今回の法制小委,それから国際小委,格別これだというものがお示しできないこともございまして,私からの挨拶(あいさつ)としては,以上をもってかえさせていただきたいと思います。
 それでは,今期の文化審議会著作権分科会は終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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