文化審議会著作権分科会(第39回)議事録・配布資料

  • 日時:平成26年3月5日(水)
  • 17:00~19:00
  • 場所:東海大学校友会館 望星の間

【議事】

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)平成25年度使用教科書等掲載補償金について
    2. (2)平成25年度使用教科用拡大図書複製補償金について
    3. (3)出版関連小委員会報告書について
    4. (4)法制・基本問題小委員会の審議の経過について
    5. (5)国際小委員会の審議の経過について
    6. (6)その他
  3. 3 閉会

【配布資料】

資料1
「平成25年度使用教科書等掲載補償金について」関係資料(288KB)
資料2
「平成25年度使用教科用拡大図書複製補償金について」関係資料(220KB)
資料3-1
文化審議会著作権分科会出版関連小委員会報告書【概要】(平成25年12月)(212KB)
資料3-2
文化審議会著作権分科会出版関連小委員会報告書(平成25年12月)(956KB)
資料4
平成25年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(232KB)
資料5
平成25年度国際小委員会の審議の経過等について(316KB)
資料6-1
改正著作権法の施行状況等に関する調査研究報告書の概要(604KB)
資料6-2
改正著作権法の施行状況等に関する調査研究報告書(平成25年12月)(5MB)
参考資料
文化審議会著作権分科会委員名簿(72KB)
 
出席者名簿(57KB)

【議事内容】

  • ○ 平成25年度使用教科書等掲載補償金について使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。
  • ○ 平成25年度使用教科用拡大図書複製補償金について使用料部会長及び事務局より説明があり,諮問案のとおり議決された。
  •   以上の議事については,文化審議会著作権分科会の議事の公開について(平成22年2月15日文化審議会著作権分科会分科会決定) その1(2)に基づいて非公開とし,同決定の6及び7に基づき議事要旨を作成し,公開することとする。
【土肥分科会長】
  それでは,次の議題でございますけれども,(3)の「出版関連小委員会報告書について」に移りたいと思います。昨年の5月以降,各小委員会におかれましてはそれぞれの分野において精力的に御検討をいただいてまいりましたけれども,本日は今期最後の分科会となりますので,各小委員会でのまとめや審議の経過について,それぞれの主査より報告をいただきたいと思います。
 まず出版関連小委員会報告書につきまして,主査の私から概要を報告させていただきます。資料は2点ありますけれども,資料3-1に基づいて簡単に御報告をいたします。まず,表紙をめくっていただいて1ページでございます。近年デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い電子書籍が増加する一方,出版物が違法に複製され,インターネット上にアップロードされるという海賊版被害が増加しておりました。しかしながら,現行の出版権制度は紙媒体による出版のみを対象といたしまして,電子書籍は対象となっておりません。こうしたことを背景とし,平成25年5月以降,出版関連小委員会において出版者への権利付与等について集中的に検討を進めてまいりまして,関係団体からのヒアリングや中間まとめに関する意見募集,こういったものも実施いたしました。その結果を踏まえて更に議論を行った上で,12月に電子書籍に対応した出版権を整備することを内容とする報告書を取りまとめたわけでございます。電子書籍に対応した出版権を設定した場合,出版者が権利者として独占的に電子配信することができ,また出版者自らインターネット上の海賊版に差止請求できることになるわけでございます。このことによって我が国の健全な電子書籍市場の発展や出版文化の更なる進展が期待される,このように示されております。
 更に1枚めくっていただいて,ページ2ページ目を御覧ください。出版関連小委員会において整備することが適当とされました電子書籍に対応した出版権の概要について記載がされております。まず(1)ですけれども,電子書籍に対応した出版権の設定につきましては,現行の出版権と同様に契約により設定されるものでございまして,著作権者は電子出版することを引き受ける者に対し,電子書籍に対応した出版権を設定することができることとしております。
 次に(2)でありますけれども,権利の内容等です。電子書籍に対応した出版権の設定を受けた出版者は,電子出版を行うために必要な権利を専有し,電子書籍に対応した出版権の設定を受けた出版者は,自ら電子書籍することに加えて著作権者の承諾を得て第三者に電子出版することを許諾することができることとしております。
 (3)でありますが,義務と消滅請求についてでございます。〔1〕として電子出版の義務としては,出版者は原稿等の引渡しを受けてから一定期間内に電子出版する義務や,権利の存続期間中,慣行に従い継続して電子出版する義務を負うことが適当である,このようにしております。右側の〔2〕でありますが,消滅請求については義務違反の場合等に著作権者から消滅請求を認めることが適当であるとしております。このほか著作物の修正増減,権利の存続期間,制限規定の在り方,登録制度について整備することが適当であるともしております。
 それから,めくっていただいて3ページ,4ページでございますけれども,小委員会における主な検討事項を整理しております。3ページでは紙媒体での出版と電子出版に係る権利の一体化の是非について,4ページ目は出版物,特に雑誌ですけれども,これをデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策についての議論を記載しております。これらの議論の詳細については事務局から補足説明をお願いしたいと存じます。
【菊地著作権課課長補佐】
  それでは,事務局から補足の説明をさせていただきます。私の方からは資料3-2に基づきまして,出版関連小委員会の報告書について,先ほど土肥分科会長より御説明のございました事柄以外の内容でございますとか,出版関連小委員会で特に議論になった点,これらについて簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず,資料3-2の13ページ目をお開きいただければと思います。13ページ目,第3章「出版者への権利付与等についての方策」について議論した内容を記述してございます。14ページ目を御覧いただきたいのですけれども,出版者への権利付与等として考えられる方策につきましては,この点線の枠囲みの中にございますようなA~D,4つの方策について小委員会において検討を行ったところでございます。それから,飛び飛びになりますが15ページ目お開きいただきまして,出版関連小委員会では計15の関係団体にヒアリングを実施をいたしまして,そのヒアリングの内容を書かせてもいただいております。それから,また飛びますが17ページの第4節「小委員会における検討」ということで,関係団体ヒアリングの結果,A~Dの4つの方策のうちBの電子書籍に対応した出版権の整備の方法について,方策について検討を求める意見が多かったということ,これに加えまして小委員会における検討におきましても,同様に電子書籍に対応した出版権の整備の方策について議論を進めるべきとの意見が多数示されておりましたことから,電子書籍に対応した出版権の整備の方策を軸に,小委員会では検討を進めていくこととされたところでございます。
 それで18ページ以降の第4章におきまして「電子書籍に対応した出版権の整備について」,出版関連小委員会における議論の結果を整理させていただいているところでございます。先ほど土肥分科会会長からの御説明の補足といたしまして,特に小委員会において議論になりました点についてのみ御説明をさせていただければと思います。19ページ目をお開きください。第2節「権利の主体・客体」でございます。現行法の説明は省略をさせていただきまして,20ページの(2)「紙媒体での出版と電子出版に係る権利の一体化の是非」というところを御覧ください。この(2)につきましては小委員会において時間をかけて御議論いただいたところでございますので,少し詳しく御説明させていただければと思います。
 まず,〔2〕,アのところでございますが,紙と電子を一体とすることに積極的な意見を整理しております。もともと〔1〕の問題の所在に書いてございますが,紙媒体での出版と電子出版についての権利を一体化した制度が適当かどうかということが問題になってございますけれども,このアのところではその点について積極的な意見を整理してございまして,日本書籍出版協会からは(ⅰ)紙媒体・電子媒体の出版物の流通を最大となるようにする観点や,海賊版対策を十分に行う観点からは紙媒体での出版と電子出版を一体化した権利であることが望ましいということ,それから,(ⅱ)企画から編集,制作,宣伝,販売という一連のプロセスを引き受ける出版者の社会的役割は紙と電子を分けて考えることはできず,ページをおめくりいただきまして,現に制作をする電子書籍の約97%は自社の紙媒体の出版物をベースとしているといったような実態を反映してほしいこと,それから,(ⅲ)著作権者が懸念する制度への不安等に対しては,著作権者に契約の範囲を明確に説明し,契約上明示していくこと,著作者団体と話し合いながら契約ガイドラインの作成や,契約を巡る紛争処理のための仲裁機関を設けることも検討していることなどが挙げられております。そのほか,日本印刷産業連合会や日本写真著作権協会からも,積極的な意見が示されていることを記述してございます。
 次に,イでございますが紙と電子は一体とすることに消極的な意見を整理をしてございます。まず日本漫画家協会及び日本美術著作権連合からは,(ⅰ)紙媒体での出版と電子出版について必要な分だけシンプルに契約を行いたいと考えていること,それから,(ⅱ)著作者の十分の認識のないまま一方的に電子出版が含まれてしまうことが危惧されることから抵抗感が強いことなどを理由といたしまして,紙と電子を一体とすることに消極的な意見が示されてございます。また,日本経済団体連合会からも(ⅲ)出版者が紙媒体での出版と電子出版の双方を行うのであれば,出版者と著作権者との契約において双方の権利を同時に設定することになるのであり,紙媒体での出版と電子出版に係る権利を制度としても,一体化させる理由は判然としないことなどの理由から,消極的な意見が示されてございました。それから,次のページになりますが,有識者からも(ⅵ)複製を基調とする紙媒体での出版と公衆送信を基調とする電子出版は法的には全く別の行為であり,権利としてそれを一体化することは妥当ではないとの意見などが示されてございます。
 ウでは小委員会における議論を整理してございますが,この課題を検討するに当たっては抽象的に論ずるのではなく,紙と電子を一体として扱うか否かにより生じる得る差異について,1つ目には消滅請求の在り方,2つ目には権利の内容を明示することなく単に出版権を設定するという契約を締結した場合の権利の内容,そして,3つ目には法改正前に設定された現行出版権の扱いの各論点について個別に検討を行い,そこから帰納的に判断すべきであるという意見が示されておりましたので,各論点について検討結果を以下で記載してございます。まず(ⅰ)の消滅請求の在り方についてでございますが,紙媒体での出版と電子出版で分けて考え義務違反に対応する権利のみとするべきであるという意見が多勢を占めたと整理をさせていただいたおります。同様に(ⅱ)・(ⅲ)それぞれの論点についても記載のように議論をいたしております。
 23ページをお開きいただければと思います。これらは先ほど申しました3つの各論点を検討した限りでは,小委員会の検討では紙媒体での出版と電子出版に係る権利を一体的な権利とする制度的な意義については必ずしも明らかではないと考えられると整理をしてございますが,しかしながら,出版という社会的経済活動がこれまで紙媒体のみによって行われてきたため,著作権法も紙媒体の出版を対象とした規定のみが定められていたが,技術の発展によって紙と電子の双方の形態によって出版が行われるようになってきたという変化を踏まえ,出版権の概念を拡大し,その一内容として電子出版に係る権利を含めることが適当であるとの意見も示されていると記載させていただいております。
 これらを踏まえましてエのところ,小括をさせていただいておりまして,小委員会における検討を踏まえれば一体的な権利として制度化する場合と,別個の権利として制度化する場合との差異は特段ないと考えられる。本件について関係者の意見に隔たりがあるのは,電子出版についての契約慣行が十分に確立していないことが一因となっていると考えられると整理をさせていただいておりまして,出版権制度が設定契約を基礎とする制度である以上,出版界として出版者と著作権者が協力して契約慣行を形成していく努力を行うとともに,実際の契約締結の過程においても出版者が著作権者に対し契約の範囲を説明し,契約上明示していくことが極めて重要となると考えるとさせていただいております。こうした出版界の取組等を通じまして,著作権者と出版者との間に信頼関係が構築されれば,紙媒体での出版と電子出版に係る権利がおのずと同一の出版者に具体的に設定されていくことが想定され,そのことにより出版者が紙媒体での出版及び電子出版を行うだけでなく,インターネット上の海賊版に対応できるようになることが期待されるというふうにしてございます。最後に,これらを踏まえ,電子書籍に対応した出版権の立法化に当たっては,小委員会で示された関係者の意見や,出版・電子出版の実態,出版者の役割等を考慮することが必要であると考えられるとまとめさせていただいております。
 それで,次に25ページをお開きください。次は第3節の権利の内容に関連をいたしまして,3「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の是非についての議論を御紹介いたします。まず(1)の「問題の所在」といたしましては,特定の版面の権利とは,当事者の特約により特定の版面に対象を限定した上で,その複写利用などにも権利を拡張し,企業内複製やイントラネットでの利用許諾などに対応するというものということが説明されております。次に,(2)「小委員会における検討」でございますが,〔1〕「特定の版面」に対象を限定した権利の法制化の是非につきましては,企業内複製などの利用許諾などに対応するという趣旨に対して反対意見が示されてございます。具体的には2つが並んでいるところでございますけれども,日本複製権センターでは著作者単位で行っていた管理から,出版物や特定版面ごとの管理に変更しなければならず,複製権センターの運営業務に支障を来すおそれがあるというような御意見,それから,企業内複製への対応という目的は,本来の改正趣旨と整合しないと考えられるといった御意見が示されてございます。これに対しましては,日本書籍出版協会からは,出版界としては企業内複製を含む出版物の複製利用について,現行のシステムに影響を及ぼす制度設計は望まないという旨の意見を示されていたところでございます。
 26ページ目の下の方から27ページになりますが,法制化すること自体につきましても反対の意見が示されてございました。具体的には27ページになりますが,漫画家などの原稿と版面の区別が困難であるということ,それから,リフロー型のような電子書籍の場合には版面を特定することが困難であること,そして,少しでも版面が変われば権利行使できず,海賊版対策として実効性に疑問があるということなどが示されてございました。これらを踏まえまして「以上のとおり」という段落で書かせていただいておりますが,小委員会での議論では頒布目的ではない利用態様に権利を及ぼすべきではないとの意見で収れんをし,加えて特定の版面の権利の法制化に反対する意見が多勢を占め,日本書籍出版協会からも海賊版対策が可能な方策が講じられるならば,特定の版面に対象を限定した権利にはこだわらないとの意見が表明された結果,この権利の法制化に向けた合意形成には至らなかったということを記述させていただいております。
 次に,〔2〕「出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策」についてでございます。アの問題設定では日本書籍出版協会から,雑誌をデッドコピーしたインターネット上の侵害に対応する必要があるが,雑誌に出版権設定契約が行われた事例がないことについて説明をされており,こうした海賊版に対する対策について議論を行ったということを記述してございます。28ページを御覧いただければと思います。イの「雑誌を構成する著作物に電子書籍に対応した出版権を設定することの可否」でございますが,雑誌に出版権設定契約が行われた事例がないとの説明がなされておりましたことから,出版権の設定が可能であるかどうか問題となってございました。これにつきましては,このイの2段落目にございますように,雑誌を構成する著作物に関する権利侵害事例が増大していることに鑑みると,雑誌に係る出版者の利益を確保する方策を講じる必要性があり,出版権制度において対応することが妥当であると考えると。それから,ページをおめくりいただきまして,したがって,雑誌を構成する著作物についても現行の出版権を設定できるようにし,電子書籍に対応した出版権においても同様に設定することができることが適当であると考えるというふうに記述をさせていただいております。
 次に,少し飛びまして30ページのオ「みなし侵害規定の創設の可否等」について御覧いただければと思います。ここではみなし侵害規定,具体的にはインターネット上の違法配信を紙の出版についての出版権の侵害とみなすという規定を創設することについての議論を整理してございます。31ページをお開きください。2段落目になりますが,みなし侵害規定の創設につきましては積極的な意見がある一方,法制的にハードルが高いのではないかといった意見も示されてございます。また,著作権者が権利行使を望まない場合,出版権者がみなし侵害規定により差止請求等が可能であるとしてよいのかという意見や,現行の出版権を見直して紙媒体での出版に加え,電子出版に係る権利を出版権の一内容に含める場合においては,電子書籍に対応した出版権を設定することができる状況であるにもかかわらず,電子書籍に対応した出版権を設定しないで,みなし侵害規定により差止請求等を行うのは,法律としてバランスを欠くというような意見も示されていたところでございます。それから,次の段落では,著作者の立場の委員より期間限定の著作権譲渡契約を締結するなどの方法も考えられる旨御意見がございましたので,著作権者自らがインターネット上の海賊版に対応することに加えて,期間限定の著作権譲渡契約を締結するなどの方法も考えられるというようなことを記載してございます。
 それで,32ページを御覧ください。最後にカ「小括」でございますが,2段落目の後半にございますように,電子書籍に対応した出版権による対応について,紙媒体での出版と電子出版に係る権利が一体的に設定されるのであれば,出版者が海賊版に完全に対抗できるということに照らせば,まずは電子書籍に対応した出版権の創設により対応する方向で進めることが適当であるというふうに整理をされてございます。ただし,電子書籍に対応した出版権の創設に当たっては,個別には様々なケースが考えられますことから,出版者が海賊版対策ができるよう更に制度設計を工夫することも考えられるということを,脚注の62のところで記載をさせていただいているところでございます。そして,本文に戻りますが「さらに」の段落でございますが,その中ほどから,海賊版対策は喫緊の課題であり,出版者のみならず著作者等も含めて海賊版対策の必要性については共有されていることに鑑みると,電子書籍に対応した出版権による対応に加え,実務上,著作権者が自ら海賊版に対応することや期間限定の著作権譲渡契約,一部譲渡契約を締結するなどの方法も含め,著作権者と出版者との間でこれらを組み合わせた対応により,効果的な海賊版対策を行うことが重要であるというふうに結ばせていただいております。
 海賊版対策につきましては以上でございますが,最後に37ページを御覧いただければと思います。この小委員会のまとめを37ページと38ページで記載させていただいてございます。この「おわりに」でございますが,一番下の段落でございます。今般の取りまとめを踏まえ電子書籍に対応した出版権を創設することにより,出版者の電子出版を行う地位が法的に強固なものとなり,出版者が自ら独占的に電子書籍を制作・配信するだけでなく,権利者として主体的に第三者と電子出版に係る契約交渉を行ったり,インターネット上の海賊版に対し権利行使することができるようになると考える。また,紙媒体での出版と電子出版に係る権利を一体的に設定を受ける場合には,出版者は紙媒体と電子媒体を通じて出版事業を安定的に実施することができるようになると考えると。次のページになりますが,このことにより,著作者の利益の保護のもと,出版者の権利と著作者の権利の調和が図られ電子書籍の普及が促進される結果,ユーザーにとっても利用しやすい健全な電子書籍市場の形成が期待され,また,これまでの紙媒体の出版もより豊かになることによって,我が国の多様な出版文化が次代に受け継がれ,かつ更に進展し活力ある社会の実現に寄与するものと考えるということも記載させていただいております。
 それから,39ページ以降では小委員会における委員の名簿,審議の経過について参考となる資料を記載をさせていただいておりますのでまたお読みいただければと思います。以上,長くなりまして恐縮でございますが,報告書の内容の補足につきまして説明申し上げさせていただきました。以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。それでは,ただいまの報告につきまして御意見・御質問等ありましたらお願いいたします。井村委員。
【井村委員】
  日本書籍出版協会の井村でございます。この電子書籍に対応した出版権の設立に関しましては,私ども出版界にとって大変重要な法改正ということで,一言御挨拶をさせていただきたいと思います。
 先ほど御説明いただきましたとおり,本件に関しましては出版関連小委員会におきまして9回にわたり,長時間の御審議をいただきました。参加いただきました委員の方々,そして,文化庁著作権課の皆様方には本当にお世話になりありがとうございました。感謝を申し上げたいと思っております。今日この審議会を通りますと,これから二,三週間,国会にかけるということで高いハードルがあります。著作権課の皆様方にはこれからもお世話になる部分が多く残されておりますが,この最終報告書全文の趣旨に添ってこれから条文を作成いただき,成立に向けて何とか御尽力を願えればと考えております。
何とぞよろしくお願いしたします。
 最後になりますが,紙媒体のみでしか出版できないものの海賊版対策に関しましては,やはり若干積み残されているのではないかという印象は持っております。契約によって対処をせよとの御指摘を,小委員会においてもいただいておりますので,私ども出版界も今後努力を重ねてまいりますが,この審議会のレベルにおきましても,みなし侵害等に関し更なる御議論をいただければと幸いに存じます。以上でございます。本当にありがとうございました。
【土肥分科会長】
  ほかにいかがでしょうか。特にございませんか。山本委員,どうぞ。
【山本委員】
  今回の電子出版に出版権を設けるという方向には賛成ですが,問題の抜本的な解決のためには,この報告書の中でも述べられている独占的ライセンシーに対して訴権を与えるという方向を検討すべきじゃないかという問題提起だけ少しさせていただきたいと思います。出版権の設定と独占的ライセンシーと何が違うのかというと,意思の問題としては,おたくにだけ使ってもらいますよということで,つまり中身的には一緒です。少し違うのは,出版権という名前をつければ訴権が発生し,独占的ライセンシーとすれば訴権が発生しないという効果の違いだけです。要は出版権というラベルをつけるかどうかだけの違いなわけです。であるとすれば,私はもともと独占的ライセンシーに差止請求権を認めるべきだと思うのですが,著作権の分野の中には出版権という実質的には独占的ライセンシーに対して訴権を認めるような制度があるのですから,議論には時間かかると思いますが,もう少しそれを広げてすべての著作権の独占的ライセンシーに対して差止請求権を認めるという方策を今後は検討していくべきだと思います。
 という意見を述べさせていただくとともに,1点,今申し上げたところに関連していますが,この報告書の中の10ページにアメリカの記述があります。アメリカでは独占的利用許諾を受けた者が権利侵害に対して訴訟を提起することができるとあり,次に「独占的ライセンシーは,著作権登録がなされていることを前提として,権利侵害について訴訟を提起することはできる」と書かれています。ですが,少なくとも私の理解するところでは独占的ライセンシーが侵害訴訟を提起するためには著作権登録は必要ありません。これには区別があって,アメリカを本国とする著作物とベルヌ条約加盟国を本国とする著作物と分けており,アメリカを本国とする著作物についてはベルヌ条約の無方式主義を採る必要がないということから,アメリカを本国とする著作物について侵害訴訟を提起するには,著作権者であろうと独占的ライセンシーであろうと著作権登録が必要だという制度を採っております。しかし,それ以外のベルヌ条約加盟国には,独占的ライセンシーであろうと著作権者であろうと著作権登録が必要だという制度はありません。したがって,ここの記述はその点において誤りだと思いますので,確認していただいた上で訂正していただければと思います。
【土肥分科会長】
  事務局から今の点いかがですか。
【菊地著作権課課長補佐】
  ちょっと確認させていただければと思います。
【土肥分科会長】
  いずれにしても米国を本国とする著作物に関してはこういうことでよろしいということですね。
【山本委員】
  独占的ライセンシーに限っての話ではなく,著作権者についても同じだという前提であれば……。
【土肥分科会長】
  このとおりでいいということですね。
【山本委員】
  はい,そうです。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。ほかにございますか。茶園委員,どうぞ。
【茶園委員】
  この報告書の内容自体に異論があるわけではないのですけど,ここに記載されていることを立法化する場合にどういうようなことになるのかについて質問させていただきたいと思います。報告書の25ページで電子書籍に対応した出版権の内容としまして,複製権と公衆送信権が書いてありますが,現在の出版権は頒布の目的を持った複製というように複製権だけであるわけです。仮に現在の出版権制度のもとで電子書籍を付加するとした場合には,どのようになるのでしょうか。あるいは,電子書籍を含めることとの関連で,現在の紙媒体の出版権の中身自体も変えるということになるのでしょうか。
 2点目として,これは意見なのですが,出版権の内容も関連することなのですが,この報告書でもみなし侵害に関する議論がありましたが,現在の著作権法113条1項,特に2号の頒布絡みのみなし侵害は,それ自体,また著作権の譲渡権との関係で大変分かりにくいものとなっているのではないかと思います。そこで,今後のことなのですが,譲渡や頒布絡みの侵害・みなし侵害について,もう少し整理し,明確化した方がよろしいのではないかと思います。以上です。
【土肥分科会長】
  後段の方は御意見ということですけれども,前段の方で,今,何かお答え可能なようなところがもしあれば。
【菊地著作権課課長補佐】
  現在,政府部内でこの報告書を踏まえながら条文案を作らせていただいております。茶園先生御指摘のとおり,現行法では頒布目的の複製が権利と内容となっており,譲渡権はその権利の内容とはなってはいないということでございますが,その現行法における出版権の内容とのバランス等も踏まえながら,今,政府内で調整をしているところでございます。その詳細についての御紹介・御説明は現時点ではお許しをいただければなと思っております。条文を御説明できるタイミングになりましたときに御説明させていただければと思います。
【土肥分科会長】
  茶園委員,そういうことでございますので,どうぞよろしく御了承いただければと思います。
【茶園委員】
  はい。
【土肥分科会長】
  ほかにございますか。よろしゅうございますか。先ほどの井村委員から出版関連小委員会のメンバーに対していろいろお礼を頂きましたけれども,私からも,今回,出版関連小委員会のメンバーの方々には集中的に,夏の暑いとき月2回ぐらいのペースでやっていただきまして,おかげさまでこういう報告書をまとめることができたわけでございます。関係の委員の皆様方にこの場をおかりして厚くお礼を申し上げたいと思います。それでは,出版関連小委員会の報告についてはこのくらいにしたいと思います。
 次に,法制・基本問題小委員会の審議の経過についてでございます。これについても主査の私の方から報告をさせていただきます。資料といたしましては資料4でございます。資料4を御参照いただければと思います。法制・基本問題小委員会では,急速なデジタル化・ネットワーク化,こういった社会の進展に対応するために著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本問題に関する様々な課題について,知的財産政策ビジョン等に示された検討課題も踏まえつつ検討を進めてきたところでございます。今期は第1回の小委員会においてなされました意見交換の結果を踏まえて,クラウドサービス等と著作権及びクリエーターへの適切な対価還元に係る課題,もう一つ,裁定制度の在り方等に係る課題,これらの課題について検討を行ってまいりました。これらの課題の検討状況について簡単に御報告をいたします。
 資料では1ページ,2ページにまたがるところでございますけれども,クラウドサービス等と著作権及びクリエーターへの適切な対価還元に係る課題についてでございます。この課題についての審議の状況について御説明をいたします。クラウドサービス等と著作権に係る課題につきましては,関係者からのヒアリングの実施や小委員会での議論の結果,あるいは複数の委員からクラウドサービスに係る検討を進めるためには,クラウドサービスの内容をより細かく分析し,集中的な議論を行う必要があるといった意見が示されたところでございます。また,私的使用目的の複製が関係するクラウドサービスに関連しまして,クリエーターへの適切な対価還元の在り方も併せて検討すべきではないかといった意見も示されたところでございます。以上の議論を踏まえ,昨年11月1日に開催された第4回小委員会では,これらの課題を集中的に検討するためのワーキングチームの設置が決定され,検討が行われてきております。
 具体的な検討内容につきましては2ページ目のところを御参照いただければと思います。2ページ目の上にありますけれども,今年度ワーキングチームは2回開催され,クラウドサービスと著作権等に係る課題について,クラウドサービスのより詳細な実態や米国の裁判例の動向等についてヒアリングを行い,それに基づく議論を行ったところでございます。議論の結果,まずは私的使用目的の複製に関連するクラウドサービスについて検討を行うこととされております。また,クリエーターへの適切な対価還元に係る課題につきましては,関係団体より新たな補償金制度創設に係る提言についての発表がなされたほか,私的録音録画に関する実態調査についての報告がなされたところでございます。これらの課題につきましては今後も専門的・集中的な検討を更に行い,各関係者の合意に向けた議論を通じて,一定の結論が得られるべく努めてまいることが必要である,このように考えております。
 それから,2の「裁定制度の在り方等に係る課題について」ございます。この裁定制度の在り方等に係る課題につきましては,まず昨年3月に取りまとめられた文化庁の委託調査研究に基づき,諸外国における権利者不明著作物に関連する法制度について議論を行ったところでございます。議論の結果,現行法で定められている裁定制度をどのように見直していくかという課題の検討を行うことに加え,新たな制度の構築についても検討すべきではないか,このような意見が示されておるところでございます。このうち裁定制度の見直しについては,小委員会における関係者等のヒアリングや,それに基づく議論を行ったところであり,権利者捜索のための相当の努力の要件等についての議論の結果を踏まえ,まずは文化庁において告示等の見直しを行うこととなったところでございます。また,本課題につきましては,裁定制度の在り方の見直しに加え,デジタル・アーカイブの取組等も踏まえつつ,引き続き検討を行うことが必要である,このように考えておるところでございます。以上,簡単でございますけれども,報告とさせていただきます。
 なお,この法制・基本問題小委員会の委員の皆様方には,今期を通じ精力的な議論をいただきましたことをこの場をかりてお礼を申し上げますし,更に継続的な検討もお願いしたいと思っております。法制・基本問題小委員会の審議経過報告については以上でございます。
 ただいまの私が行いました報告について何か御意見等がございましたらお願いをいたします。特にございませんか。それでは,法制・基本問題小委員会からの報告についてはこのくらいにしたいと思います。
 次に,国際小委員会の審議の経過につきまして,道垣内主査より報告をお願いいたします。
【道垣内委員】
  資料5を御覧ください。今期の国際小委員会では第1回の小委員会におきまして,ここに掲げられております4つの論点・課題について検討を行うこととされ,その検討を行ってまいりました。その1つ1つにつきましては個別のところで読み上げたいと思います。
 第1の課題でございますが,「インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方」についてでございます。これは1ページ~4ページのところまででございますけれども,中身が2つございまして,1つ目が「国境を越えた海賊行為に対する対応」でございます。これにつきまして,文化庁から政府間協議において聴取した韓国政府による侵害対策の取組の報告,中国における著作権侵害の実態調査の結果報告が行われました。それを受けましてこの小委員会といたしましては,2ページ目の真ん中あたりのところでございますけれども,このような調査を経た知見を踏まえ,より実効的な海賊版対策の実施を要請することが必要であり,動画投稿サイトに対する削除要求等においては,権利者がまとまって権利行使をするための団体としての連携が一定の効果を得ていることから,引き続き団体としての効果的な侵害対応が可能となるよう,政府としても必要な支援を検討していくべきであるという,これは結論ではなくて審議経過でございますが,この方向で検討すべきであるということでございます。また,不正流通対策として正規版コンテンツの流通を進めていく上で,中国において様々な阻害要因があり,日本の正規コンテンツの流通が迅速に行われていない状況についても指摘されており,海賊版対策として我が国の正規コンテンツの流通促進の問題も検討を進めていくべき課題であるというまとめになっております。
 次に,この第1の課題の2番目「政府間協議の対象国拡大に向けた今後の取組」についてございます。これにつきましては,本年度,インドネシア,タイ,ベトナム,マレーシアと2国間協議を実施したことが事務局から報告をされました。そういう報告を受けまして,4ページの上のところの第2パラグラフでございますけれども,今後の著作権分野における協力事業としては,これまでの成果及び対象国の要請を踏まえ,海賊版の取締り,権利執行の支援,著作権集中管理の強化,普及啓発の向上等に対して継続的な支援を行い,こうした協力を通じて政府間協議を対象国拡大のための環境整備を進めていく必要があるというまとめになっております。
 2番目の課題,「著作権保護に向けた国際的な対応について」でございます。これも大きく分けて2つございまして,1つは条約が採択されたという件でございます。視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約が採択されました。これは昨年の6月末でございます。それを受けまして5ページ目の下のところですけれども,この条約の成立により視覚障害者等に関する権利の制限について国際的規範が定められるとともに,点字図書やDAISY図書等の利用しやすい形式の複製物の国境を越えたやりとりが円滑化されることにより,我が国はもとより,世界中の視覚障害者等の著作物へのアクセス環境が改善されることが期待され,非常に有意義であります。今後は締約国家間の利用しやすい形式の複製物の輸出入を担う機関,組織の選定,肢体不自由者のための複製等についても権利の制限と例外とする著作権法の改正等,必要な作業を進め,条約を早期に締結することが望まれると,日本は早く入るべきだという方向の議論でございました。
 第2の課題の2つ目でございますが,まだWIPOで審議中のテーマでございます。1つは〔2〕の1となっております「放送機関の保護」についてでございます。これはもう随分前,1998年から検討が進められてきているところでございますけれども,ここ数年ようやくといいますか,再び議論が活性化しつつあるということで,我が国も昨年12月,インターネット上の送信に関する追加議定書をWIPO事務局に提出するなど,条約の早期採択を目指して積極的な議論に参画しているという御報告を受けたところでございます。それを受けましてこの小委員会といたしましては,7ページの一番下のあたりでございますけれども,我が国としては各国における議論の動向を踏まえながら,著作権法及び関連する法制度による対応の状況を考慮しつつ,積極的な対応をしていくべきだというまとめになっております。
 もう一つ,審議中のテーマであります「その他の権利の制限と例外」についてでございます。8ページでございますけれども,視覚障害者等以外のための権利制限についてでございます。まだ議論が緒に就いたばかりであるということでございまして,この小委員会といたしましては8ページの〔2〕の2の一番後のところでございますけれども,これらの権利の制限及び例外については,我が国としては引き続きスリーステップテストの考え方を踏まえ,適切な議論を行うことが必要であるとの方針のもと,何らかの国際文書を作成する場合には,各加盟国がそれぞれの国内事情を踏まえ,柔軟な対応が可能になるようにすべきであるというまとめをいたしております。
 次に大きな課題の3番目,「フォークロア(伝統的文化表現)の問題への対応について」でございます。これも相当前から議論があるところでございますけれども,なかなか意見に隔たりがあるという御報告を頂いております。これにつきましては9ページの真ん中あたりでございますけれども,我が国は従来,フォークロアの保護の取組は各国が地域の特性や文化に合わせて,文化財保護の取組,不正競争防止法等による対応などによって実施していくことが適切であるとの方針ではございますけれども,引き続きその方針を踏まえてIGCをはじめとした国際的な議論の動向に留意し,これに参画していくことが必要であるというまとめをいたしました。
 最後,課題の4番目「主要諸外国の著作権法及び制度に対する,課題や論点の整理」でございます。これは9ページ~11ページにかけてでございます。ここに挙げられておりますように,著作者不明著作物の扱い,フランスの書籍電子利用法,ドイツにおける私的複製補償金制度についてそれぞれ専門家に来ていただいて御報告をいただいたということでございます。
 以上のように今期の国際小委員会は,審議経過といいますか,審議状況についての御報告をするにとどまりますけれども,このまとめに至るまでの過程で熱心に審議をいただいた国際小委員会の委員の方々には,この場をおかりしてお礼を申し上げたいと思います。以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。それでは,ただいまの御報告につきまして御意見等ございましたらお願いいたします。よろしゅうございますか。特にございませんか。それでは,国際小委員会の報告につきましては以上にいたしたいと存じます。
 本日の議題として「その他」というのがあるわけでございますけれども,その他といたしまして改正著作権法の施行状況等に関する調査研究について,文化庁より研究を委託した新日本有限責任監査法人の福井様,渡邉様においでいただいておりますので御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉様】
  新日本有限責任監査法人の渡邉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日,お手元に資料6-1として調査研究報告書の概要,それから,資料6-2としまして報告書を配布させていただいているかと思います。本日は資料6-1の概要を基に御説明をさせていただきまして,6-2につきましては適宜必要であれば御参照いただければというふうに考えております。また,傍聴者の方には資料6-2として報告書そのものではなく,報告書の表紙ともにURLをお配りさせていただいておりますので,御参照いただけましたら幸いでございます。
では,資料6-1に従いまして御説明をさせていただきます。おめくりいただきまして1ページでございますけれども,調査研究の目的につきまして説明をさせていただきます。平成24年通常国会においていわゆる違法ダウンロードの刑事罰化を含む著作権法の一部を改正する法律,この資料では以下「改正法」というふうにしております。また,改正法による改正法の著作権法を「改正著作権法」というふうに言っておりまして,特段の断りのない限り違法ダウンロードの刑事罰化に係る部分について研究しているというふうに御理解くださいませ。こちらの法律が平成24年6月20日に成立をしまして,その後公布され違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定等については,同年10月1日から施行されたというところでございます。
 この改正法附則第10条では,改正著作権法第119条第3項「有償著作物等の違法ダウンロードに係る刑事罰」及び改正法附則第8条「関係事業者の措置」について,改正法の施行後1年を目途としてこれらの規定の施行状況等を勘案し,検討が加えられ,その結果に基づいて必要な措置が講じられるものと規定されております。この本調査研究はこれらの施行状況等についての調査・検討を行うことを目的としたものでございまして,改正法の施行後1年ということでございますので,主な調査は昨年の10月を中心に実施しております。また,データが追って出てくるものについては11月,12月にデータの調査をして分析をしているというものでございます。
 1ページおめくりいただきまして2ページ目でございますけれども,調査研究の内容・方法について御説明をさせていただきます。何種類かの調査をこの調査研究ではやっておりまして,いろいろな調査結果から総合的に分析していったということでございます。関係事業者等が講じた各種関連措置という1番目のタイトルのところですけれども,関係事業者等が講じた各種関連措置,どのようなものが行われたのかということにつきましては,この分析を行うために業界団体,コンテンツ配信事業者を対象としたヒアリング調査を実施したほか,国が講じた各種関連措置について整理を行っております。また,インターネット利用者における改正著作権法の認知状況・評価・行動の変容等につきましては,違法ダウンロードの刑事罰化に関するインターネット利用者向けのウェブアンケート調査を実施いたしました。これにより改正著作権法の認知状況・評価・行動の変容等について把握し,改正による抑止効果があったかどうか等について分析を行っております。このウェブアンケート調査は50,000サンプルのスクリーニング調査で,インターネットユーザーの全体傾向を把握した上で,平成24年10月1日よりも前に,有償で販売・配信されている音楽や映像をインターネットから無料でダウンロードした経験があると回答した層に対して本調査を実施しております。この本調査のサンプル数は1,392でございました。調査実施時期は昨年の10月でございます。また,そのほか客観的なデータから何かが言えないかということで,客観的な指標等に基づく違法ダウンロードの刑事罰化の影響に関する検討も行っております。こちらは違法ダウンロードの刑事罰化がもたらす影響に関して,インターネットトラヒック,P2Pファイル共有ソフトネットワークにおける各種数値等の客観的な指標等に基づいて検討を行っております。
 以上の3種類の調査につきましては,それぞれ報告書のⅡ,Ⅲ,Ⅳで整理をさせていただいております。また,この一連の調査研究におきましては調査研究委員会を設置いたしまして,先生方に御検討を頂いたということでございまして,座長は苗村先生にお務めいただきまして計6名の委員会で御検討をいただきました。
 では,その調査研究の成果といたしましてまとめのところを中心に以降御説明をさせていただきます。まとめは報告書ではVにて整理させていただいております。まず(1)「関係事業者等によって各種関連措置は実施されたか」ということにつきましては,改正法の施行前から関係事業者が講じた各種関連措置について,改正法の施行前から,違法ダウンロードを防止するための措置として主に普及啓発活動という形で多くの事業者が実施をしています。改正法の施行後の措置としては,従来の措置の継続的実施や,措置内容の量的・質的拡充が中心ということが確認されました。例えば日本レコード協会では違法ダウンロードの刑事罰化の規定の施行後にエルマークというマークを充実化しています。ここに「3種類のマークの追加作成・導入」というふうに書いておりますけれども,ダウンロードOK,視聴のみOK,転載OKというように利用態様に応じてマークを作成したということと,キャラクター「エルマーくん」の作成等の取組をされておられます。エルマークの採用実績は平成25年12月末時点で267配信事業者1,643サイトに上っております。ただしアンケート調査結果によれば,エルマークの認知度が約14%との調査でありまして,更なる認知拡大が必要ということを指摘させていただいております。それから,「映画館に行こう!」実行委員会,こちらは日本映画製作者連盟,外国映画輸入配給協会,モーションピクチャー・アソシエーション,そして全国興業生活衛生同業組合連合会の4団体で構成される委員会ですけれども,こちらでは映画盗撮防止法のCMに違法ダウンロードの刑事罰化に関する新たな注意喚起メッセージを追加するという取組をしておられます。
 また,改正法の施行に当たって積極的な啓発活動を新たに展開した事例,これは新たに展開したということで注目すべき点として整理させていただいていますけれども,日本レコード協会と音楽関係団体7団体,具体的には日本レコード協会,日本音楽事業者協会,日本音楽制作者連盟,日本音楽出版社協会,日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター,演奏家権利処理合同機構,映像実演権利者合同機構の7団体,それから,日本音楽著作権協会が協力団体として設立した「STOP!違法ダウンロード広報委員会」では様々な広報を実施しています。「STOP!違法ダウンロード」特設キャンペーンサイトを設置しておられまして,その訪問者数は平成25年12月時点で延べ94万件を記録しています。また,日本国際映画著作権協会ではキャンペーン・セミナー等による啓発活動のほか,コミックマーケット等のイベントや警察が主催するサイバー犯罪防止教室への啓発活動等を精力的に実施するという取組をしておられます。また,国による啓発活動としては,文化庁ホームページでの改正法の解説資料「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」の掲載,政府広報オンラインへの広報記事の掲載等,違法ダウンロードの刑事罰化について様々な広報活動を展開しておられまして,以下,記載させていただいておりますような成果を上げているということでございます。このような調査結果を踏まえますと,関係事業者の措置は特定侵害行為を防止するための普及啓発活動を中心に,着実に実施されたものと評価できます。また,国による啓発活動は一般ユーザーにおける法改正の内容についての理解度向上に寄与し,一定の成果を上げたものと評価することができるというようにまとめさせていただいております。
 4ページ目に参りまして,(2)「法改正の事実は認知されたか」という点につきましては,昨年10月に実施いたしましたウェブアンケート調査結果で,まず平成24年10月1日よりも前に有償で販売・配信されている音楽や映像をインターネットから無料でダウンロードした経験があると回答した層のうち,本調査に進んだ回答者1,392人における違法ダウンロードの刑事罰化の認知度を調査したところ,82.3%という結果が出ました。また,スクリーニング調査の結果,本調査の対象とならなかった回答者4万5,809人については,認知度は62.3%という結果でございました。前者の認知度の高さはその経験内容から違法ダウンロードの刑事罰化の問題がより身近で関心が高かったためというふうに考えております。
 それから,業界団体及びコンテンツ配信事業者へのヒアリングの調査結果としまして,やはり普及啓発等により違法ダウンロードが一定の場合には刑事罰の対象となるということについて,インターネット利用者の認知は進んできているとの認識が調査結果から得られております。また,違法ダウンロードの刑事罰化に関するツイッター等での投稿件数というのも調査しております。こちらでは違法ダウンロードの刑事罰化は同規定の施行と同時期,すなわち平成24年9月・10月の主要なニュースのうち,幾つかと同等数の投稿件数があったということで,インターネット利用者にとって大きな関心事項であったという調査結果を得ております。下の方に書いてございますように,違法ダウンロードの刑事罰化の投稿件数は,今回の調査方法に基づきますと2万552件でございまして,その同時期のニュースとしてレスリング女子の吉田選手に国民栄誉賞,こちらが1万6,012件,それから,日馬富士の横綱昇進が1万4,262件というような対比になっております。以上の調査の結果を踏まえますと,違法ダウンロードの刑事罰化の認知度は比較的高い水準にあると評価でき,その要因としてインターネット利用者にとって大きな関心事項であったことと,その後の関係事業者や国等による普及啓発活動等があると考えられるというふうに結論をまとめております。
 それから,次のページでございますけれども,(3)「法改正の内容は正しく理解されたか」につきましては,ウェブアンケート調査結果でまずどのようなダウンロード行為が刑事罰の対象になるのかということについて「具体的に知っていますか」という質問をしたところ「知っている」を選択した回答者は約半数でございました。ただし刑事罰の対象となる行為に対する理解を確認する設問では,選択肢を幾つか設定して正解するかどうかということを調査いたしたものですけれども,内容によって理解度が異なる状況だということが分かりました。それから,業界団体及びコンテンツ配信事業者へのヒアリング調査結果では,一部のコンテンツ配信事業者から刑事罰の対象となる要件,対象となる行為ですとか,著作物等が複雑であるという指摘を受けております。これを踏まえますと,今後違法ダウンロードの刑事罰化に係る法改正の内容への理解度を高めていくことは重要な課題であり,その際にはインターネットの利用について委縮(いしゅく)効果を生まないよう,適用要件をより分かりやすく伝える工夫が必要と考えられるというふうにまとめさせていただきました。

 それから,6ページでございますけれども,(4)「違法ダウンロードは抑止されたか」というところを見てまいります。こちらは客観的な指標による検証ということで,こちらに書いてございますようないろいろなデータを基に,違法ダウンロードが抑止されたかどうかを客観的なデータを基に検証してみました。こちらでは,Winny・Shareネットワークのノード数の推移というグラフと,それから,右側に図表「違法ダウンロードに利用される可能性があるサイト等の日本における利用者数の推移」というグラフを掲載させていただいております。御覧いただきますとお分かりになりますように,縦長の楕円(だえん)で囲っているところがちょうど平成24年10月1日のあたりでございまして,法改正の日を機に大きく値が減少していること,また,それが下がってその後もまた上昇することなく下がったまま推移し,以前の水準まで回復していないという結果が確認できます。それから,ウェブアンケート調査結果ですけれども,こちらでは刑事罰の対象となる違法ダウンロードの可能性があると考えられる行動について,以前に実施した経験があると答えた回答者に対して,平成24年10月1日以降の実際の行動変容を質問したところ「減った,やめた」との回答の割合は比較的高い数値であるということが確認できました。このようなことから,違法ダウンロードの刑事罰化が違法ダウンロードに一定の抑止効果を発揮したものと評価できるというふうに記載させていただいております。
 7ページの方に参りまして,(5)「正規コンテンツの流通に影響はあったか」というところでございますけれども,こちらはデータの分析というところに書いてございますが,レコード生産実績,有料音楽配信売上げ実績,ビデオソフト売上げ実績に及ぼした違法ダウンロードの刑事罰化の影響について検討しましたが,平成25年11月時点で公表されているデータでは,平成24年~平成25年にかけて漸減傾向が見られ,これら売上げ・生産実績の推移と違法ダウンロードの刑事罰化の影響について明らかにすることはできなかったというふうにまとめております。それから,ウェブアンケートの調査結果として,本調査のQ24の調査におきまして,権利者の許諾を得た正規ビジネスを利用したものと考えられる行為について今後の増加意向を示した回答者の割合は,この表のとおりでございまして,それぞれ増えるというふうに回答した回答者の割合が一定割合あるということが確認できたことから,今後,正規コンテンツの流通にプラスの影響が出る可能性も考えられるというふうに整理をしております。やはり法施行後1年という短い期間を置いての調査ということで,こちらの影響までは把握が難しいのではないかという御指摘は委員会でもいただいたところでございます。
 最後,8ページでございますが,総括といたしましてこの調査のまとめをさせていただいております。違法ダウンロードの刑事罰化は違法ダウンロードに一定の抑止効果を及ぼしたものと評価できるということをまずまとめさせていただいております。P2Pファイル共有ソフトネットワークにおける有償著作物等にs該当すると考えられる音楽,映像ファイルの検知ノード数等や,違法ダウンロードに利用される可能性があるサイト等の利用者数の推移,これは先ほどいずれもグラフの形で見ていただいたものでございますけれども,こういった客観的な指標に基づく検討結果,それから,違法ダウンロードの可能性があると考えられる行動について「減った,やめた」とした回答者の割合が平均で50%程度に上ったアンケート調査結果等からいたしますと,違法ダウンロードの刑事罰化が違法ダウンロードに一定の抑止効果を及ぼしたものと評価できるというふうに整理をしております。なお,改正法の施行後,有償著作物等の違法ダウンロードを被疑事実とした検挙は,平成25年12月時点ではないということでございます。
 それから,関係事業者・国等による普及啓発活動の展開もあり,刑事罰化の認知度は比較的高い水準だというふうに考えられるとまとめております。関係事業者において普及啓発活動を中心とした各種関連措置が積極的に講じられたことがこの調査で確認できておりまして,また,国等による啓発活動が様々な形で実施されたことも相まって,改正法の施行後1年程度を経過した段階で違法ダウンロードの刑事罰化についての認知度は,比較的高い水準に達していると評価できるというふうにまとめております。
 一方で,刑事罰の対象となる行為の具体的内容等に係る理解度は必ずしも十分ではないこと,エルマークはユーザーにおける認知拡大の取組の途上にあるということも確認できております。以上を踏まえますと,今後,違法ダウンロードの刑事罰化に係る法改正の具体的な内容についての理解度を更に高めるためには,普及啓発活動においてユーザーを的確な情報ソースに誘導すること,受け手の特性に合った媒体等も活用しながら,刑事罰の対象となる要件をはじめとした違法ダウンロードの刑事罰化に係る法改正の内容を,より分かりやすく伝えるような工夫を行うこと,関係事業者及び国等が適宜適切に協力を行っていくこと等が重要であるというふうに考えられます。また,関係事業者においては上記の普及啓発活動に加え,エルマークの普及促進・認知拡大をはじめとする違法ダウンロードを防止するための措置を,より一層進めていくことも重要であると考えられるというふうに書かせていただきました。
 今回のウェブアンケート調査では,例えばですけれども,受け手の特性によって見ている媒体が違うといったような結果も得られておりますので,今回の調査結果を活用いただきまして,今後の取組に役立てていただければというふうに考えております。以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。それでは,ただいまの御報告につきまして御質問等ございましたらお願いいたします。よろしゅうございますか。龍村委員,どうぞ。
【龍村委員】
  詳細な御報告ありがとうございました。いろいろと認知度についてのデータにより,一定の認知度は達成され,客観的指標によっても減少が見られるということですが,1つには,一般にこの程度の認知度というのは,達成目標としては,例えば100点満点中で言うと何点ぐらいに相当するものなのでしょうか。また,6ページ平成24年10月1日を機に値が減少しているとのことですが,このくらいの減少の仕方というのは,減ってはいるのでしょうけれども,減り方としてまだまだ足りないという範疇に入るのか,あるいはかなり減少した,非常に評価できるというレベルにまで行くのでしょうか。3点目とまして,附則に定めていますように,これに基づいて必要な措置を講じるということになっているわけですが,今後講ずる施策として,今のところ認知度を高めるという話は出ていますが,それ以外にどのような措置が必要な措置として考えられるのか,その辺のお考えなりがあればお聞かせいただければと思います。
【渡邉様】
  御質問ありがとうございます。まず認知度の水準がどうなのかという点は,大変難しい御質問いただいたというふうに思っておりますが,本調査研究の検討委員会におきましてほかの法改正の認知度についての調査結果を複数集めてみまして,それらとの比較をいたしました。その結果,例えばシートベルトの着用ですとか,一般の生活者にとって非常に身近な法改正については違法ダウンロードの刑事罰化の場合よりも高い結果が出ておりますけれども,概して,今回の調査結果の62.3%という値は比較的高いということを確認しております。ただ,各認知度調査はそれぞれ調査方法が異なりますので一律には比較は難しいと考えております。集めたデータを基にあえて申し述べさせていただきますと,そういった状況であった,ということでございました。
 それから,2点目でございますけれども,この客観的な指標,資料で言いますと6ページのところで平成24年10月1日を機に大きく値が減少というところ,これがどのぐらい大きいのかどうかというところを御質問いただいたかと思いますが,このようなデータの下がりぐあいというのは非常に顕著な波形であるというふうに理解をいたしまして,このように掲載をさせていただいておるところでございます。
【所著作権課課長補佐】
  では,3点目の件につきまして事務局の方から説明させていただきます。この調査研究では普及が更に必要だということでございますので,何をやればどんと皆さん理解していただけるかということは,難しいところでありますが,既にやっておりますけれども,文化庁における講習会,それから,いろんな各種会議においてこの違法ダウンロードの刑事罰化について説明をしておるところでございますので,そういったことをこれからも着実に実施していこうというふうに考えております。以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。よろしゅうございますかね。ほかにございますか。じゃ,松田委員,どうぞ。
【松田委員】
  グラフの見方がもしかしたら間違っているのかもしれませんが,135ページのグラフについて御説明いただきたい。「違法ダウンロードに利用される可能性があるサイト等の日本における利用者数の推移」という情報になっています。これは違法ダウンロードが生じやすい利用形態における情報ということで示しているのでありましょう。2012年10月のところで大きな変化(利用の減少)があるということは,このグラフから読めるのだということなのでありましょう。しかしこのグラフの右の方(2012年10月以前)を見てみますと,2011年11月にはどの線も2012年10月の段階とほぼ同じ高さというか,低さになっていたことが分かります。その後の2011年の12月から2012年9月までに大きな山(利用の大きな増加)があって,その後に2012年10月に落ち込んでいるということになります。このように見るべきではないかと思うのですが,なぜ直前に大きな山が,利用者数が増大して,そして10月に落ち込むのか,この点はどういうふうに見たらいいのでしょうか,それが1点目です。 これは違法ダウンロードの刑事罰化の施行の効果ということになるのであるかということです。
2点目は以下のとおりです。実は2009年には既に違法化を導入をしているわけです。民事的な違法化をしているのです。その民事的違法化をしたときの効果というのは,135ページの短期のグラフでは現されていないのであります。それとの対比をなぜしなかったのかということは,かなり疑問として残ります。お聞かせ願いたいと思います。
2点の質問は,2012年10月の減少が直近の駆け込み利用の誘発からの落ち込みで全体的減少傾向に戻っただけのデータであると,考えるからです。
【渡邉様】
  御質問ありがとうございます。まず報告書135ページのグラフというのは,この資料6-1の6ページの右側の方のグラフでございますけれども,こちらの波形をどう見るかというところでございますが,確かにその直前に例えばストレージサービスサイトにつきましては大きな山があって,それが2012年10月で下がっているということで,その手前に大きな山があるということにつきましては,この調査では詳細な要因確認ができているわけではございません。ただ,この2012年10月のデータの落ち込みと,それから,その後の山型のところまで戻らずに低いまま推移している,すなわち,一旦下がってそれが元に戻るのではなく低いまま推移しているというところをもって,2012年10月1日の違法ダウンロードの刑事罰化のインパクトであろうというふうに解釈をしたということでございます。
 それから,過去に遡ってダウンロード違法化のところからデータを補足すべきではないかという御指摘につきましては,御指摘のとおりだと存じますけれども,今回の調査研究の範囲の中でデータをそこまで遡るということができず,できるだけ遡るということを今回の枠組みの中でやりました結果,例えば2010年10月1日ですとか,そういったところまでのデータから以降について分析をするということになったものでございます。
【土肥分科会長】
  ほかにございますか。河村委員,どうぞ。
【河村委員】
  消費者代表,ユーザー側という立場から,今回の調査研究のことについて感想と要望なんですけれども,私として注目したいのはまとめの<V>,概要版の7ページにありました「正規コンテンツの流通に影響はあったのか」というところです。影響はなかったということに加えて,わずかに減っている傾向が見られていることで,もちろんまだ短い期間なので分からないということはあると思いますが。こういう行為をしてもいいと申し上げるつもりは全くありませんが,市民のこういう行為を刑事罰の対象とした背景には,被害が深刻であったからであるということは報告書にも経緯として書かれておりますし,それを根拠として刑事罰が入れられたのであれば,その被害は,違法化,厳罰化によってその行為が抑えられれば,その結果売り上げ上がるということを意味していると思います。しかしそれが確認できないということであれば,今後も引き続きこの点については調査をして,この刑事罰化の影響,また先ほどの違法化だけでの影響はどうだったのかということも含めまして,正規コンテンツの流通への影響を今後も継続して見ていっていただきたいと思います。
【土肥分科会長】
  じゃ,お願いします。
【所著作権課課長補佐】
  御指摘ありがとうございます。そこに書いてございますように売上げ実績とか,そういったところがデータ上は漸減ということでございます。売上げ等につきましては経済動向とか,個々の企業のいろんな努力,それから,ビジネスのやり方,そういったことによって大きく左右される側面もございます。そういった意味で非常に変動要因が多くなかなか刑事罰化の影響というところにつきまして明らかにするところは難しいんじゃないかというふうに考えておるところでございます。また,権利者等の関係団体におきましてそういった調査をまたやるかもしれませんので,そのあたりも見ていきたいというふうに考えております。以上でございます。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。ほかにございますか。じゃ,里中委員。
【里中委員】
  実は河村委員の質問とちょっと似通っているんですけれども,このまとめの7ページのウェブアンケート調査結果というところで,「今後,正規コンテンツの流通にプラスの影響が出る可能性も考えられる」となっておりますが,ここのアンケートによりますと,今後,増加意向を示した回答者の割合ということでアンケートが取られていますが,今後こういう調査をやるときに,これ実際はもっと年月が必要なんだと思いますが,こういうことをしようと思っているというだけで,実際にそうするかどうかはまた別の問題だと思うんですね。ですから,実際に思ってはいたけれども,しなかったという人も結果的にやっぱり出てくると思いますので,こういうアンケートを採った場合に河村委員の御指摘にもありますように,違法なものが手に入りにくければ結果的に売上げに貢献するんじゃないかということを期待して,様々な施策が取られたと思うんですけれども,やはり長いスパンで実際にどうなのかということも今後知りたいなと思いました。
 あと,禁じたからすぐ,じゃあ,売上げに結びつくかというと,それはなかなかそうじゃなくて,実際違法なものを,違法ダウンロードをする人は気楽に何でもダウンロードしちゃうという人もいたと思うんですね。その中身が聞きたいとか見たいとかじゃなくて,やみくもに何でもかんでもゲットしちゃう人もいるとは思いますので,そういう人たちが全て違法にできなくなれば買うかというのとはまた違うと思います。だから,設問がもう少したくさんあってもよかったかなという感想を持ちました。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。ほかにございますか。よろしいですか。ありがとうございました。それでは,ただいまの御報告につきましては,今後この問題,著作物問題に関するこの領域の施策に反映できるような形で活用していただければと思っております。
 本日最後でございますので,何か特別委員におかれましては御発言がございましたら,お願いしたいと思いますけれども,いかがでしょうか,特にございませんか。よろしゅうございますか。
 それでは,特に特段ないということでございますので,本日はこのくらいにしたいと思いますけれども,まさに今期最後の著作権分科会ということになりますので,河村文化庁次長から一言御挨拶(あいさつ)を頂戴できればと思います。
【河村文化庁次長】
  お時間を頂きましてありがとうございます。今期の著作権分科会締めくくりに当たりまして一言御礼(おんれい)を申し上げます。
 今期の著作権分科会におきましては,先ほど来御紹介いただきましたように,出版者への権利付与などに関すること,クラウドサービス等と著作権及びクリエーターへの適切な対価還元や裁定制度の在り方などの著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的な問題に関すること,さらにはWIPOなどにおける国際的ルール作りへの参画の在り方,インターネットによる国境を越えた海賊行為への対応の在り方など,多岐にわたる課題について御審議をいただいてまいりました。今後の施策の方向性についてまた多々御示唆も頂いてまいりました。各委員会で大変熱心に御審議をいただきました皆様に,改めてこの場をおかりして御礼(おんれい)を申し上げます。
 出版者への権利付与等につきましては,電子書籍に対応した出版権を整備することを軸とする報告書を受けまして,著作権法の一部を改正する法律案を今国会に提出すべく準備を進めてまいります。また,クラウドサービス等々と著作権,それから,クリエーターへの適切な対価還元など,これからまだ検討を十分にしていくべき課題も多々ございます。これからも保護の強化と利用の円滑化のバランスの取れた著作権制度が求められているというふうに存じます。今期の著作権分科会に挙げられた課題の中には,来期も引き続き検討をお願いすることがございますけれども,是非,また皆様には今後とも精力的な御検討をお願い申し上げたく存じます。
 最後に,今期の委員の皆様方の御尽力・御協力に重ねて御礼(おんれい)申し上げまして御挨拶(あいさつ)とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【土肥分科会長】
  ありがとうございました。時間がちょうど19:00なんですけれども,最後に私からも一言御挨拶(あいさつ)をさせていただければと思っております。
 今回は第39回でございますけれども,第38回,つまりこの前,1年ほど前に第38回の分科会を開催いたしましたときに,この分科会で3つの小委員会ですね,1つは出版関連小委,それから,法制・基本問題小委,それから,国際小委,この3つの設置を御承認いただき,その際,委員の方々から御意見・御要望等々を頂戴(ちょうだい)いたしまして,課題山積の折から既存のこれまで行われてきた様々な成果の上に基づいて,39回のこの期ではしかるべき成果を実現せよという御意見・御要望を頂戴(ちょうだい)しておったところを重々承知しておるわけでございます。
 その成績表はどうかということになるわけでございますが,出版関連につきましては先ほど御報告させていただきましたように,報告書を委員の皆様の御協力を得てまとめていただいております。しかし法制・基本問題小委に関しては委員会を5回,それから,中でワーキングチームを設けていただいて議論をさせていただいておるんですけれども,まだ道半ばというところにございます。できれば次期においてしかるべき成果を上げれば,上げることができればというふうに期待をして,私から言うのも何なんですけれども,希望しておるところでございます。何分クラウドの問題等々は確かにこれまで成果も上げていただいておりまして,そこでの議論も参考にさせていただいたわけではありますが,何分この領域については動きが速うございまして,従来想定しなかったようなサービスなんかも議論の俎上(そじょう)に上がっておったりしておるわけでございます。そういうような言い訳もさせていただきながら,今回,法制・基本問題小委を含めて,しかるべき成果というものを皆様にお示しできなかったことについておわびを申し上げたいと思います。
 そういう意味ではきょう3月5日はヨーロッパでは灰の(水)というふうになっていると思うんですけれども,アッシェン・ミットヴォッホという日だと思うんですが,まさにそうような思いでおりまして,また次期の委員の方々の委員会の成果に期待をしているところでございます。それを通じて文化の発展なり,文化産業を含めてですけれども,そういったクリエーター,それから,事業者,それから,一般ユーザーの方々の利益の総和が最大になるような,そういう著作権法制度というものに到達できることを期待しておるところでございます。私の最後の挨拶(あいさつ)としてちょっとまとまりがなかったのではないかと懸念しておりますけれども,これをもって挨拶(あいさつ)に代えさせていただければと思います。どうもありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして今期の文化審議会著作権分科会は終了とさせていただきます。本当にありがとうございました。

―― 了 ――

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