- 日時:平成26年7月18日(金)
- 10:00~11:30
- 場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂
【議事】
- 1 開会
- 2 議事
- (1)文化審議会著作権分科会長の選出について
- (2)小委員会の設置等について
- (3)その他
- 3 閉会
【配布資料】
- 資料1
- 第14期文化審議会著作権分科会委員名簿(62KB)
- 資料2
- 小委員会の設置について(案)(58KB)
- 資料3
- 第14期文化審議会著作権分科会 各小委員会における検討課題について(81KB)
- 参考資料1
- 文化審議会関係法令等(129KB)
- 参考資料2-1
- 著作権法の一部を改正する法律 概要(131KB)
- 参考資料2-2
- 著作権法の一部を改正する法律 新旧対照表(135KB)
- 参考資料3
- 「知的財産推進計画2014」等で示されている今後の検討課題(214KB)
- 出席者名簿(57KB)
【議事内容】
- ○ 今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介した。
- ○ 本分科会の分科会長の選任が行われ,土肥委員が分科会長に決定した。
- ○ 副分科会長について,土肥分科会長より大渕委員が副分科会長に指名された。
- ○ 会議の公開について運営規則等の確認が行われた。
- ※ 以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。
委員の皆様方におかれましては,大変お忙しい中,この著作権分科会の委員をお引き受けくださいまして,まずは御礼を申し上げます。
我が国の文化芸術は世界に誇る,我が国の大変重要な資産でございます。これら文化芸術は,祖先から引き継いできた伝統的なものもございます。こうしたものを継承していくとともに,新しい創造活動,創作というものの進んでいく環境が充実されることが大事だと考えております。そうして国内外に,これらの有形・無形の文化遺産をしっかりと発信していく必要があると存じます。
文化庁,また政府全体といたしましても,2020年に東京オリンピック・パラリンピックが招致されるということを見据えまして,またさらに,それを超えた文化芸術立国を目指した政策の振興が大事だと考えています。こうした文化政策の振興に関連しまして,著作権については,著作者等の権利の保護を図りつつ,すばらしい作品の創作,創作された作品についての活用,いわば円滑な流通の促進,これらが図られることが重要であると考えています。
こうした観点で,昨年度のこの著作権分科会においては,電子書籍に対応した出版権の見直しを一つの大きな課題として御審議いただきました。この件については,今年の4月に著作権法の一部を改正する法律が成立いたしまして,現在,文化庁としましても,関係する方々と相談しつつ,来年1月の施行に向けて準備を進めさせていただいております。
一方,クラウドサービスやクリエーターへの適切な対価の還元,アーカイブの利活用の促進など,デジタル化,ネットワーク化された時代ならではの課題がなお多くございます。引き続きこれらの課題の解決に向けた審議を進めていくことが,時代の要請であろうかと存じます。これらそれぞれの課題の解決を目指し,さらには,我が国が標榜する文化芸術立国を実現して,心豊かな,また活力ある社会の実現に寄与するために,是非とも委員の皆様方のお知恵をおかりし,前進してまいりたいと存じます。 これからの御尽力,御協力をお願い申し上げまして,初めの御挨拶(あいさつ)とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
次に,文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項でございますが,これも参考資料1の8ページにあるんですが,この規定に基づいて,小委員会の設置につき決定したいと思っております。
今期の小委員会の設置案につき,事務局より説明をお願いいたします。
文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項の規定に基づきまして,法制・基本問題小委員会,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,それから国際小委員会の3つの小委員会を分科会に設置する旨を記載させていただいております。
各小委員会での審議事項につきましては,2をごらんいただければと思います。まず,法制・基本問題小委員会では,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関すること,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会では,クラウドサービス等と著作権及びクリエーターへの適切な対価還元等に関すること,それから,国際小委員会では,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することを,審議事項として記載させていただいております。
3の各小委員会の構成員についてですが,分科会長が指名する委員,臨時委員及び専門委員により構成されると記載させていただいております。
それから,4その他といたしまして,各小委員会の運営に関し必要な事項は,その小委員会が定めるということを記載させていただいております。
資料2の説明は以上でございます。
特にございませんか。何かこの際,御発言いただくとか。それはございませんね。
格別御意見,御質問がもしないということでございましたら,ただいまの事務局からの説明に基づいて,小委員会の設置等を決めたいと思いますけれども,よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
なお,使用料部会とこの小委員会への分属をお願いする委員につきましては,文化審議会令第6条2項,これは参考資料1の3ページにございますし,また,文化審議会著作権分科会運営規則3条第2項,これも参考資料の8ページにございますけれども,これらの規定により分科会長が指名することとされております。したがいまして,私から指名をさせていただくことになりますけれども,各小委員会等への委員の分属につきましては,後日,皆様にお知らせさせていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。
次に,今期の著作権分科会において検討すべき課題について,意見交換を行いたいと思っております。
各小委員会における検討課題等につきまして,事務局より一歩進んだ説明をお願いできればと思っております。また,昨年度の著作権分科会の検討課題であった,出版者への権利付与等に関しまして,著作権法の一部を改正する法律が成立しておると,このようなことでございますので,これについての説明も,併せて簡単にお願いできればと思っております。よろしくお願いします。
まず,参考資料3に基づきまして,「知的財産推進計画2014」などで示されております今後の検討課題を御説明させていただいた後に,資料3に基づきまして,各小委員会において検討すべき課題の例を御説明させていただきます。
まず,参考資料3でございますが,ここでは,本年7月に知的財産戦略本部において決定されました知的財産推進計画2014や,6月に閣議決定された規制改革実施計画の中で取り上げられております著作権関連の課題について,記載をしております。
まず,知的財産推進計画2014からですが,デジタル・ネットワーク社会に対応した環境の整備といたしまして,クラウドサービス等の新たな産業の創出や拡大を促進するため,著作権の権利制限規定の見直しや円滑なライセンシング体制の構築等の制度の在り方について,文化審議会の議論を加速化させ,今年度のできる限り早期に結論を得て,必要な措置を講ずること,それから,クラウドの検討とあわせて,クリエーターへ適切に対価が還元され,コンテンツの再生産につながるよう,私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について検討を進めることなどが求められております。
また,コンテンツ提供のプラットフォーム構築とありますが,コンテンツに関するデータベースの構築や,国際的に共通化されたコンテンツの管理システムの導入に向けた民間での取組が促進されるように,必要に応じて支援を行うこと,それから,後ほど御紹介をいたします今般の著作権法改正を踏まえて,電子書籍の本格的な普及促進に向けて,改正の趣旨の周知等を行うことが求められております。
2ページをお開きください。次は,教育の情報化の推進でございます。
2つ目のポツにありますように,大規模公開オンライン講座等のインターネットを通じた教育や,デジタル教科書・教材の位置付けや,教科書検定制度等の在り方に関する検討とあわせて,こうしたデジタル教科書・教材に係る著作権法制度上の課題について検討することが求められております。
次に,アーカイブの利活用促進に向けた整備の加速化でございます。諸外国の取組・動向等も参考としつつ,アーカイブ化の促進に向けて新たな制度の導入も含めた検討を行うことが求められております。
次に,コンテンツを中心としたソフトパワーの強化といたしまして,総務省とともに,aRmaによる一元的な権利処理に関して,権利使用料の徴収・分配に係るシステム化を行い,一元的な窓口としての機能強化を図ること,それからその下ですが,海外の権利処理団体の育成支援を行うことが求められております。
3ページをお開きください。次に,模倣品・海賊版対策についてでございます。官民一体となった働きかけや各国との連携により,侵害発生国での模倣品・海賊版の取締りを強化すること,それから,4つ目のポツにありますように,官民が連携し,侵害発生国政府による著作権の普及啓発活動を支援することなどが求められております。
それから,グローバルな模倣品・海賊版対策の強化として,ACTAへの参加を働きかけ,協定の早期発効を目指すことや,その下,国際的な問題の解決・改善のため,通商関連協定の活用に関する事項が記載されております。
4ページ目をお開きください。国内取締りの強化でございます。ここでは,国内取締り強化としての啓発活動の推進等が求められております。
以上が,知的財産推進計画ですが,次は,規制改革実施計画についてです。内容は,クラウドメディアサービスの実現のための規制の見直しというふうに記載をされておりまして,先ほど御説明いたしました知的財産推進計画2014とほぼ同様の内容でございます。その内容といたしましては,著作権分科会において検討を行い,関係者間の合意が得られることを前提に結論を得るということ,それから実施時期につきましては,今年度の上期に結論を得ることが求められているというところが,知的財産推進計画との違いでございます。
なお,5ページ以降では,昨年,知的財産戦略本部において取りまとめられました知的財産政策ビジョン,これは,今後10年間を見据えた長期のビジョンとして策定されたものでございます。こちらを記載しておりますが,その説明については省略をさせていただきます。
次に,資料3に戻っていただければと思います。先ほど申しましたような知的財産推進計画等において,様々な検討課題が示されておるところでございます。資料3では,各小委員会における検討課題例を,先ほども申し上げました課題例も踏まえて記載をさせていただいております。
まず,1ポツでは,法制・基本問題小委員会の検討課題例といたしまして,例えば,著作物の利活用促進や,教育の情報化の推進など,2ポツ,3ポツの各小委員会の課題例とされるもの以外の課題を掲げさせていただいております。それとともに,視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約,これは仮称でございますが,このマラケシュ条約についての対応などを課題例として挙げさせていただいております。
次に,2ポツでは,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の検討課題例について,クラウドサービス等に関して著作権の権利制限の見直しや円滑なライセンシング体制の構築等とともに,クリエーターへの適切な対価還元等のための,私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入を課題例として掲げております。
最後に,3ポツでは,国際小委員会の検討課題例として,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方や,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,それから,知財と開発問題,フォークロア問題への対応の在り方を掲げております。
以上,3つの小委員会における検討課題例をお示ししておりますが,資料3の冒頭にありますように,今後の状況の変化等に応じまして,検討体制等は適宜見直すことも考えられるとしております。
各小委員会における検討課題例についての説明は,以上でございます。
それから,引き続きまして,参考資料2-1と2-2をお手元にお持ちいただければと思います。参考資料2-1に基づきまして,今般の著作権法改正の概要について簡単に御説明をいたします。また,参考資料2-2として新旧対照表をお配りさせていただいておりますので,適宜,併せて御参照いただければと思います。
この著作権法の一部を改正する法律につきましては,昨年度,著作権分科会,出版関連小委員会での検討結果等を踏まえて作成されたものでございます。本年3月14日に閣議決定され,国会に提出された後,衆議院,参議院において政府案に対する質疑,それから参考人質疑が行われ,本年4月25日の参議院本会議において可決成立し,5月14日に公布をされております。
まず,改正の趣旨としては,近年,デジタル化・ネットワークの進展に伴い,電子書籍が増加する一方,出版物が違法に複製され,インターネット上にアップロードされた海賊版被害が増加していることから,紙媒体による出版のみを対象としていた出版権制度を見直し,電子書籍に対応した出版権の整備を行うということ,また,視聴覚的実演に関する国際的な保護を強化するため,視聴覚的実演に関する北京条約の実施に伴う規定の整備を行うこと,これらが改正の趣旨となります。
そして,改正の概要でございます。電子書籍に対応した出版権の整備については,(1)から(3)に記載のように見直しておりまして,下線を引いてあるところが特に変更のあったところでございます。
まず,(1)の出版権の設定について,これまでは,紙媒体による出版を引き受ける者のみが対象となっておりましたが,こうした者に加えて,〔1〕の括弧書きのように,記録媒体に記録された著作物の複製物により頒布すること,これはCD-ROM等による出版を表しています,こうした出版や,〔2〕の記録媒体に記録された著作物の複製物を用いてインターネット送信を行うことを引き受ける者に対しても,出版権を設定することができることとされております。
また,(2)は出版権の内容ですが,出版権者は各当事者間の合意である設定行為で定めるところにより,〔1〕の頒布の目的をもって,文書又は図画として複製する権利や,記録媒体に記録された電磁的記録として複製をする権利,〔2〕の記録媒体に記録された著作物の複製物を用いてインターネット送信を行う権利,これらの全部又は一部を専有することとされております。こうした権利を専有することによりまして,独占的に出版を行うということともに,その権利を侵害する海賊版に対して対応することができるということになります。
さらに,(3)の出版の義務・消滅請求ですが,出版権者は,出版権の内容に応じて以下の義務を負うと。具体的には,原稿の引渡し等を受けてから6月以内に出版行為又はインターネット送信行為を行う義務や,慣行に従い継続して出版行為又はインターネット送信を行う義務を負うこととなります。ただし,これらの義務につきましては,設定行為に別段定めてある場合にはこの限りでないということとされております。
それから,(3)の〔2〕では,出版権者が今申し上げましたような義務に反したときは,義務に対応した出版権を消滅させることができるとされております。
以上が,電子書籍に対応した出版権の整備の概要でございます。
それから,2ポツの,視聴覚的実演に関する北京条約の関係ですが,条約を締結するため,著作権法の保護を受ける実演,第7条でございますが,この著作権法の保護を受ける実演に,視聴覚的実演条約の締約国の国民が行う実演を加えるとされております。
これらの施行期日につきまして,電子書籍に対応した出版権の関係については,来年,平成27年1月1日から施行されることとされ,視聴覚的実演条約の関係については,条約が我が国について効力を生ずる日から施行されることとされております。
最後になりますが,改正法の条文や解説等を文化庁のホームページに記載させていただいております。お時間のございますときに,この概要の一番下に小さく書いてあります記載のURLからごらんいただければと思います。
長くなりましたが,私からは以上でございます。
井坂委員。
その結果かどうか分かりませんが,今日も椎名委員がいらしていますけれども,芸団協と,それから超党派の文化芸術振興議員連盟と共同での文化芸術推進フォーラムで,昨年の決議で初めて,映画監督等の権利を見直そうということが正式な議題で上がりました。これは,今年の文化芸術振興議員連盟の先日総会がありましたけれども,そこでも,映画監督等の権利の見直しということについて言及を頂いております。その中で,自民党の伊藤信太郎議員を座長とする映像問題研究会という,これも超党派の国会議員の勉強会が立ち上がっており,現在まで5回,勉強会が進んでおります。
これは国会議員の勉強会ですので,我々はあくまでオブザーバーで出席しておりますけれども,その中で,単に監督の主張だけではなくて,第2回は文化庁,総務省,観光庁,経産省からも御出席いただいて,発言を頂いております。それから,我々の,もともと対立関係ではないんですけれども,日本映画製作者連盟,いわゆる映連からも発言を頂いたり,先日はニコニコ動画の社長であったり,WOWOW,それと,最後の5回目はユニフランスとMPAですか,アメリカの代表なんかに来ていただいて,いろいろ勉強を行っております。
そういう機運もございますので,これは一朝一夕ということではないんですけれども,監督協会もいろいろ変わっていこうとしている時代でもあります。そういうことも踏まえて,我々の主張も組み入れていただきつつ,同時にやっぱり我々自身も,これだけインターネットというか,ネットの流通がすごい時代になってきて,実際に先日もニコニコ動画の状況なんかを聞いてみると,従来の我々の主張と相入れない部分もありますが,例えば最初にユーザーのアップしたものを,別にその投稿した人に断りなく2次利用,3次利用して,いろいろ組み替えていって,そのことが,かえって最初の著作者の作品の知名度アップにつながったりとか,変な話ですが,非常にもうけを生んでいるとかという,このことは,著作権者としてはどうなんだろうというところもありますけれども,現実にそういう形で,ここにもありますけれども,クリエーターへの対価の還元が結果として行われているような事態もあり,要するに今までの,30年前,40年前の法律で縛れないこともいっぱい出てきているんじゃないかと思っておりますので,そういうことも含めて,是非,法制・基本問題小委員会などでは,そのあたりの,我々の権利も含めて,どういうふうにこの21世紀の時代の著作権の在り方というのを,何かちょっと一度お考えいただければなと,そんなことを思っております。
長くなりました。申し訳ありません。
ほかにございますか。
今,井坂委員もおっしゃったように,小委員会における議論,小委員会への検討の反映という,そういうところもございますので,是非,分科会の委員の方々におかれましては,御発言いただければと思います。
前田委員,お願いします。
以上です。
引き続き,孤児著作物も含めて,デジタルアーカイブの在り方,それから,孤児著作物の利用円滑化ということは,共に重要なテーマだとは認識しております。ありがとうございます。
ほかにございますか。龍村委員,お願いします。
ここには,「関係者間の合意が得られることを前提に」という言葉が入っているわけですが,関係者間の合意というものが果たして得られるのか,どういう枠組みで考えられるべき問題なのか,このあたりを時間的には優先的に取り上げる必要があるのではないかと思う次第です。
昨年来,法制・基本問題小委員会の下に置かれておりましたワーキングチームで,また法制・基本問題小委員会において審議を続けておりますので,法的な論点であるとか,具体的に問題となるようなサービスというのは,少しずつ明らかにはなってきているのかなとは思っております。今,検討課題としては,著作権の権利制限規定の見直しということとあわせて,円滑なライセンシング体制の構築ということが書かれておりますけれども,さらにそこから,実際にどのような出口と申しますか,関係者間の合意が得られるような方策というのはどういうものかというのを,文化庁も汗をかいて研究させていただきたいと思っております。
ほかに御意見ございますか。御発言ございますか。松田委員,どうぞ。
出版権の設定につきまして改正が行われました。これの主たるところはもちろんのところ,電子的な出版権設定において,海賊版等の違法の利用に対して,出版権を設定された者が,出版者が,それを差し止めるという武器を持ったということは,整えば武器を持ったということになります。そして,その議論の中で,こういう設定型ではなくて,少し版面のところに視点を持っていって,版面権を隣接権的な保護にしてほしいとかいう要請があり,なおかつ次には,一体化論と言っていましたが,紙で編集したところは電子的なものも取得できるというような考え方はできないかという要請があり,次がみなし侵害規定というような議論もしたわけです。
これは何かというと,その3つの共通したところは,出版者が出版行為をする等の編集行為について,隣接権とまでは言わない場合であったとしても,何らかの武器を取得することによって,さらに差止め等,海賊版等の違法な利用についての差止めを可能にしていこうという考え方があったわけです。もちろんこれは全ての人が賛成するわけではありませんが,一つ背景に理由があることは間違いないと私は思っています。しかし,今回のこの改正では,もちろんそれは入れられなかった。電子出版のきちんと設定契約を結んで,出版者がその部分についても契約を結びましょうということになるわけで,これから先,恐らく団体間でそういう契約なんかについての御検討がなされるんだろうと思って,期待はしております。
是非,それはできるだけ実務に密着して,そして,差止め等が容易にできるような状況を団体間で作ってもらいたいと,再三私はそういうふうに意見を言っていたわけでありますが,一つの問題は,そういう契約が結ばれないような,毎週出るような週刊誌的な発行による記事等の保護をどうするかなんていう点については,さらに議論が必要になるところが残っているということは間違いないと思います。しかし,この部分については,現行法ではなかなか難しいところがあると思います。どうぞ,その点についても,果たして団体間の協定によって,今度の79条等の武器を使えるのかどうかということを御検討願いたいと思います。それが使えない場合についてどういう点があるのかということは,また後日議論する余地は多少残っているのではないかというふうに思っています。それが,この電子出版における,今度の問題点の一つだろうと思っています。
もう一つは,もっと広い視野で見ますと,さきに改正いたしました国立国会図書館のアーカイブ化とその後のデータの利用については,恐らく今後も数次において,だんだん利用を拡大していく可能性はあるんだろうと思っています。その先には,電子出版を行う出版者ないしはプロバイダーによる電子的なデータの利用と,そのアーカイブの関係がどうなるんだろうかという,もっと先を見たものがビジョンとして必要なのではないかなというふうに思います。国の財産になります。国立国会図書館のアーカイブは国の財産です。国民の財産です。多分,文化科学において発展する大きな原動力にもなると思うんです。これをどう有機的に使うかというようなことも,電子出版との関係では必ずどこかで結びつくところがあると思います。そういう政策も,むしろ政治家さんだとか,ないしはお役所でも,きちんとビジョンとして持っていただきたいと思います。今度の改正では,そういう点も含めまして課題があるなというふうに思っております。
感想まで。
ほかにいかがでございましょうか。井村委員,どうぞ。
ただ,松田先生が今御指摘のとおり,全ての著者,特に雑誌等に関しましては,全ての著者の方々と契約が結ばれるかというと,なかなかやはり厳しい面はまだ残されていると思います。
昨日,今日と書籍協会におきましては,出版者に対する今回の改正著作権法につきまして,勉強会等を開催しております。森課長にも昨日御挨拶(あいさつ)を頂いて,新しい法律の周知徹底,それと契約で何とか対処をしていきましょうという形で進めておりますけれども,やはり松田先生御指摘のとおり,まだまだ難しい面はあると思います。そういう意味では,みなし侵害はなかなかハードルが高いと先生方に御指摘を頂いておりますけれども,限定的な版面を利用した何らかの方策でさらなる海賊版に対処できるようなことが考えられれば,本当に有り難いなというふうに考えておりますので,今後とも引き続き御議論の方をよろしくお願いしたいと思っております。
以上でございます。
ほかにございますでしょうか。よろしゅうございますか。せっかくのよい機会でございますので,時間も十分ございますので,是非御発言いただければと思いますが,よろしゅうございますか。
よろしゅうございますね。はい。
ないか,ないかと言うのも何ですので,本日,幾つか貴重な御意見を頂戴(ちょうだい)いたしましたけれども,これらは,本日お認めいただいた小委員会において継承して,そこでの検討に反映していくようにしたいと思いますので,どうもありがとうございました。
ほかに特段事務局で予定しているような議事はないのかなと思います。したがいまして,本日はこのくらいにしたいと思いますけれども,事務局から連絡事項がもしございましたら,お願いいたします。
それで,次回の著作権分科会につきましては,それぞれ今日お認めいただきました各小委員会における検討の状況を踏まえつつ,改めて日程の御相談をさせていただければと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会第40回を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
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