文化審議会著作権分科会(第42回)議事録・配布資料

  • 日時:平成27年6月2日(火)
  • 10:00~11:30
  • 場所:文部科学省東館 3F1特別会議室

【議事】

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)文化審議会著作権分科会長の選出について
    2. (2)小委員会の設置等について
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

【配布資料】

資料1
第15期文化審議会著作権分科会委員名簿(79KB)
資料2
小委員会の設置について(案)(57KB)
資料3
第15期文化審議会著作権分科会 各小委員会における検討課題について(79KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(128KB)
参考資料2
「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)」著作権関連記述(124KB)
参考資料3
「知的財産推進計画2015」(素案)構成
(平成27年5月28日 知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会配布資料)
(25KB)
参考資料4
「知的財産推進計画2014」等で示されている今後の検討課題(209KB)
 
出席者名簿(55KB)

【議事内容】

  • ○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介した。
  • ○本分科会の分科会長の選任が行われ,土肥委員が分科会長に決定した。
  • ○副分科会長について,土肥分科会長より大渕委員が副分科会長に指名された。
  • ○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。
  • ※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)
     1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【土肥分科会長】  本日は,今期最初の著作権分科会となりますので,最初に,有松育子文化庁次長から一言御挨拶を頂戴したいと存じます。
 なお,もし写真等をお撮りになる場合は,この文化庁次長の御挨拶までとさせていただきますので,御了解ください。
 それでは,お願いいたします。

【有松文化庁次長】  文化庁次長の有松でございます。
 今期の著作権分科会の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。
 皆様方におかれましては,御多用の中,著作権分科会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。
 去る5月22日に第4次の「文化芸術の振興に関する基本的な方針」が閣議決定されました。その中でも,我が国が文化芸術振興のために行うべき体制の整備の一環といたしまして,「デジタル・ネットワーク社会に対応した著作権制度等の整備」が掲げられているところでございます。
 著作権制度は,文化政策,産業政策,IT政策といった複数の政策領域にまたがって,極めて大きな役割を担っております。そして,「文化芸術立国」や「知的財産立国」の実現,また,「クールジャパン戦略」の推進のための重要なインフラの一つとなっております。
 このため,デジタル化・ネットワーク化の進展など,時代の変化に対応して,多様なステークホルダーの状況を踏まえながら,権利の保護と利用の円滑化のバランスに十分に配慮して,著作権の制度や契約・流通の在り方の見直しに不断に取り組んでいくことが求められているものと承知いたしております。
 昨年度のこの分科会におきましては,クラウドサービス等と著作権に関する問題について審議の取りまとめを頂くとともに,著作物等のアーカイブ化の促進に係る課題についても一定の方向性をお示しいただきました。現在,文化庁では具体的措置を講ずるべく検討を進めているところでございます。
 今年度につきましては,「マラケシュ条約についての対応」,「教育の情報化の推進」,そして「クリエーターへの適切な対価還元」等につきまして,昨年度の成果を踏まえて,更に具体的な検討を行うことが求められております。委員の皆様方には是非お知恵をおかりしたいと思っておりまして,そのお知恵をおかりし,課題解決に向けて文化庁としても進んでまいりたいというふうに考えております。
 最後になりますけれども,委員の皆様におかれましては,お忙しい中,大変恐縮でございますが,一層の御協力をお願いいたしまして,簡単ですが,挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 次に,文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項,これも参考資料1の8ページにございますけれども,この規定に基づいて,小委員会の設置につき,決定したいと存じます。今期の小委員会の設置案について事務局から説明をお願いいたします。 

【秋山著作権課長補佐】  説明申し上げます。
 資料2を御覧ください。小委員会の設置について(案)と題する資料を御用意いたしております。
 まず,設置の趣旨に関してですけれども,著作権分科会運営規則3条1項の規定に基づきまして,著作権分科会に特定の事項を審議する以下の三委員会を設置するという案とさせていただいております。これらの三つの小委員会は昨期に引き続いての設置を考えておりまして,法制・基本問題小委員会,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,それから国際小委員会,三つでいかがかと考えております。
 それから,各小委員会の審議事項については2番に記載しております。法制・基本問題小委員会については,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関することとしております。著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会につきましては,クリエーターへの適切な対価還元等に関することとしております。国際小委員会につきましては,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することとしております。
 3番,各小委員会の構成につきましては,著作権分科会長が指名する委員,臨時委員及び専門委員により構成できるということを記載しております。
 また,4番,その他として,その他必要な事項は,当該小委員会が定めるということにしております。御審議のほど,どうぞよろしくお願いいたします。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 ただいまの小委員会設置についての御説明につきまして,御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。
 河村委員,どうぞ。

【河村委員】  すみません。資料2に,小委員会の設置について(案)というのがありまして,その中の2の(2)に著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,そこで審議事項として,クリエーターへの適切な対価還元等に関することとあります。「等」とありますので,それにまつわることが含まれるということではあると思いますけれども,参考資料にもあります,知的財産推進計画2014で示されていることにも通じるのですが,公正な利用と適切な保護を調和させるということに向かうということを考えますと,前期の小委員会で利用に関しては議論が終わっていて,あとはクリエーターへの適切な対価の還元について話し合えば,クラウドサービスや情報活用サービス等の新たな産業の創出ができる,拡大ができるという状態に,現状あるとは到底思えないんですね。
 ですから,クリエーターへの適切な対価の還元は大変大切なことだと思いますが,そこはやはり消費者の利用に関する制限とのバランス,例えば技術的に行う複製制御と対価の還元というのは密接に関わっていると思いますので,そのあたりをきちんと議論に入れて,公正な利用と対価の還元という関係を整理していけたらということを希望しますので,それだけ申し上げておきたいと思います。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 今,資料2に基づいて御意見を頂戴しておりますけれども,資料3で,そのことを取り上げさせていただきたいと思っております。ここでは,今おっしゃっていただいたように,「等」というところの中にそういう広い含みがあるんだろうと思います。小委員会の設置そのものについては,河村委員は,御賛成ということでよろしいですね。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 特に御意見がなければでございますけれども,資料2の1にありますように,法制・基本問題小委員会,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,それから国際小委員会,この三つの小委の設置を御了解いただいたものということで,分科会の決定とさせていただきます。
 河村委員のおっしゃっておられる検討課題,審議事項につきましては,これは更に次に取り上げさせていただきたいと思っております。
 それから,使用料部会がほかにございますけれども,この使用料部会,それからこの三つの小委員会に分属をお願いする委員につきましては,文化審議会令第6条第2項,これも参考資料1の3ページにございます。それから,文化審議会著作権分科会運営規則3条2項,これも参考資料1の8ページにございますけれども,これらの規定により分科会長が指名することとされております。したがいまして,私から指名をさせていただくことになりますけれども,各小委員会等への委員の分属につきましては,後日皆様に,恐らく文書を通じてお知らせすることになるだろうと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 次に,今期の著作権分科会において検討すべき課題につきまして,意見交換を行いたいと思います。各小委員会における検討課題等につきまして事務局より説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】  説明を申し上げます。
 お手元に資料3,参考資料2及び参考資料3の3点を御用意いただけますでしょうか。
 資料3におきましては,今期の著作権分科会の各小委員会における検討課題の例の案を御用意させていただいております。順序としましては,まず,昨年度の各小委員会における検討事項の状況を御説明した上で,今年度の政府全体の動きなども参照しながら御紹介したいと存じます。
 まず1番の法制・基本問題小委員会でございます。この小委員会においては,昨年度,知財計画2014などを踏まえまして,著作物のアーカイブの利活用促進,教育情報化の推進,そして,いわゆる視覚障害者等のためのマラケシュ条約の締結に向けた対応という3点について主に御審議いただきました。
 アーカイブの利活用促進に関しては,法解釈の明確化や一定の法令改正の提言等を頂きまして,政府としても,取り組める部分から措置を講じていくという方向性をお示しいただきました。今期は引き続き,その他の検討課題について御審議いただくことが考えられるところでございます。
 教育情報化の推進につきましては,昨年度においては,まず,政府において,ICTを活用した教育に関する利用実態等の調査をすべきだという御意見がございましたので,そうした調査を政府において進めてきたところでございます。今年度は,そういった調査結果等も踏まえまして,この小委員会で御議論いただきたいと考えております。
 それから,マラケシュ条約対応ですけれども,この条約への対応を契機として,障害者関係団体から様々な御要望を頂くとともに,関係する権利者団体の皆様から御意見を頂くなど,議論の整理をしてまいりました。こちらにつきましても引き続き検討していくということが求められておりますので,今期の小委員会においても御議論いただきたいと考えております。
 それから,2番目の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会についてでございますが,こちらについては昨年度,「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」をおまとめいただきました。2つ目の丸に関連しますけれども,この報告書を踏まえまして,ロッカー型サービスなどを念頭に置いた音楽集中管理センターの設立構想が提示されたことや,その他の情報活用サービスも視野に入れた円滑なライセンシング体制の構築ということがこの報告書において提言されたところでございます。今期の小委員会においても,そうしたライセンシング体制の構築の状況を注視していくということになってございますので,必要に応じて御審議いただきたいと考えております。
 また,クリエーターへの適切な対価還元等に関する議論についても議論を進めてまいりましたが,これについても引き続き審議が必要とされておるところでございます。
 それから,3番目,国際小委員会についてですが,昨期は,著作権保護に基づいた国際的な対応の在り方ということで,放送条約等への対応についての御審議や,諸外国での海賊行為に対する対応策についての課題,更に諸外国の立法動向の調査,審議等を行っていただきました。今期も引き続き,こうした課題への対応が求められると考えておりますので,同様のことをここで掲げさせていただいております。
 次に,参考資料2を御覧ください。先ほど次長からも言及させていただきましたが,平成27年5月22日に文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次方針)が閣議決定されました。これは文化芸術振興基本法に基づくものでございまして,数年に1回,政府全体としての方針を示すという性質のものでございます。ここの第1,1番の中でインターネット等の情報通信技術の急速な発展と普及に関して,メリット,デメリット,すなわち利便性及び課題の双方についての言及がされております。
 こうしたことも踏まえまして,第2の重点施策の中で,重点的に取り組むべき施策として,デジタル・ネットワーク社会に対応した著作権制度等の整備を図るということが言われております。
 そして,その具体的な内容として,第3,7の著作権等の保護及び利用というところで,知的財産基本法及び知的財産推進計画に沿って,その適切な保護及び公正な利用を図るため,次の施策を講ずることとされております。具体的にはデジタル・ネットワーク社会に対応した著作権制度上の課題等について総合的な検討を行い,必要な法制度の整備を行う。また,関連の調査研究,それから流通促進のためのシステム構築等を行うこととされております。また,権利者不明著作物の活用等,アーカイブ化の促進のための方策。三つ目としまして,著作権に関する知識の普及,意識の向上に関する施策。そして,4つ目としまして,海外における海賊版の流通の防止・撲滅といった施策が求められております。
 次に,参考資料3をお願いいたします。こちらは「知的財産推進計画2015」(素案)の構成というペーパーです。内閣の知的財産戦略本部の方で,知的財産推進計画が毎年,取りまとめられるわけでありますけれども,このペーパーは平成27年5月28日の同本部検証・評価・企画委員会において配布されたものでございます。ここで配布したものは一枚物で柱が書かれているわけですが,今後,この中身が具体化されたものが決定されることになります。
 現時点で公表されているものとしてはこういう情報でございまして,まず,第1部の重点3本柱のところにコンテンツ及び周辺産業の一体的な海外展開の推進が掲げられているほか,第2部のその他重要施策としまして,デジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備,その中には法制度等の基盤整備や,アーカイブ利活用促進に向けた整備の加速化が掲げられております。また,第3,コンテンツを中心としたソフトパワーの強化ということで,模倣品・海賊版対策や人材育成についても言及がございます。
 こうしたことも踏まえまして,この資料3にお戻りいただければと思いますけれども,今期の検討課題につきましては,この1,2,3に掲げさせていただいた検討課題例を中心としまして,知的財産推進計画2015や今後の状況の変化等に応じて,適宜見直しを行っていきながら審議を頂くということを考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明も踏まえまして,今期の分科会において検討すべき課題の在り方についての御意見や,これら三つの小委において審議すべき事項として挙げられている課題の例に関して,皆様の中で思うところがございましたら,御自由に御発表いただければと思います。
 どうぞ。松田委員。

【松田委員】  先ほどの河村委員の御発言は,結局,2の小委員会のところで,ここに示されている以外の権利制限規定等についてもう一度検討するという御意見だろうと思います。その点をもう一度示していただいて議論に入ったらいかがかと思いますが,どうでしょうか。

【土肥分科会長】  それでは,お願いします。

【河村委員】  先ほどの意見は,この資料3についての意見だったわけですけれども,参考資料4にも書いてありますが,質問の答えになっているかどうか分かりませんが,何か過去に議論されたり,ある程度過去において結論が出た,そのときのルール設定と同じものを指し示す言葉を私は使うつもりはないんですが,今,新しい技術が日々進歩していく中で,何らかの柔軟性のある規定がなければ,参考資料4の,繰り返しになりますけれども,「クラウドサービスや情報活用のサービス等の新たな産業の創出や拡大」というのは実現できないのではないかと思うのです。ライセンシングのシステムを作り,クリエーターへの対価の還元を議論するだけで,そういう社会が実現するということではないと考えますので,柔軟性のある規定という名前が何を指すのか,それぞれの方で違うかもしれませんけれども,やはりそこに踏み込まなければ未来は開けないのではないかなと思っております。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 松田委員,どうぞ。

【松田委員】  では,河村委員の意見を踏まえまして柔軟な規定というのは何かというのは,誰もよく分からないのであります。近い概念としたら,どうやらフェアユースに近い概念のことを言っているのではないかと思われます。
 ちなみに,さきの土曜日に,エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークというNPO法人のシンポジウムがありまして,そこで柔軟な規定を提言しているJEITAさんからの発言がありまして,まさにその柔軟な規定を導入したい,賛同の意見を頂戴したいという趣旨の発言がありました。このシンポジウムにおいても柔軟な規定の内容については分かりませんでした。
 柔軟な規定について,審議会で議論した日本版フェアユース,特にC類型との関係を聞きしましたところ,C類型よりもかなり大きなものを考えているということでありました。C類型よりも柔軟な規定の導入を審議会で審議した場合の結論はもう分かっているわけであります。ということは,幾ら審議会でそれを議論したとしても,法制化はできないということは,答えとして分かっているのです。JEITAは,ほかの立法プロセスをとるのかということになります。現にほかの立法プロセスをとるという趣旨の発言もありました。要するに審議会に頼らないということであります。これは多分,私が邪推いたしますところ,政治的決定によって,C類型よりはるかに大きい,フェアユースに近い,柔軟な規定を導入したいという考えのようであります。
 片方にそういう動きがありながら,ここで同じ議論をしてもどうなのかと思います。必ずしも審議を拒否するものではありません。一定の条件が整えば議論してもいいと思います。それは何かというと,その柔軟な規定を必要とするような具体的な立法事実を上げていただけるならば議論すべきだろうと思います。
 しかし,立法事実は,さきのクラウドの報告書において12類型が示されて,1類型についてのみ著作権法上の権利の対象にならない,言ってみれば自由にお使いなさいという類型が認められています。いわゆるストレージサービスのタイプ2というものが,このように審議会報告に入れました。その他の類型については一まとめにいたしまして,従前の議論の中のC類型には当たらないので,これを新たな制限規定に設けるべきではないというふうに集約されています。更にデジタルコンテンツ流通の促進をすべきであるというならば,それぞれ権利者及び利用者団体が話合いをして,将来に向かって新しいモデルについてのライセンスの構築をしていこうじゃないかということが決まった。そして,そういう受皿も権利者団体の方では示されたということになります。
 そういう状況下において,もう一度,柔軟な規定をここでも議論しろというのであれば,具体的に柔軟な規定の必要なビジネスモデルを提示していただかない限りは,立法は絶対にできないと思います。それから,C類型を超えて,もっと大きな,柔軟な規定というのは,C類型ですら立法できなかったんですから,それができるという何らかの対応がなければ,議論しても無駄じゃないでしょうか。
 総合するに,クラウドの報告書が近時出たばかりであって,それをまた同じように議論するというのであれば,違う事実を出してもらうべきであると考えます。
 以上です。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 この点についてでもよろしいですし,ほかの点についてでもよろしゅうございますけれども,御意見があればお願いいたします。
 椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】  ここでクリエーターへの適切な対価の還元ということを挙げていただいているんですが,御承知のとおり,私的録音録画補償金制度はもう機能しなくなって久しいところでございます。その補償の必要性,対価の還元の必要性の事実はますます高まっているにも関わらず,その制度が機能しない状態が長らく続いているということがあります。
 その一方で,去年の小委員会の中では,我々もできるだけ利便性に資するような提案といいますか,音楽集中管理センターというものを,まず,その概念を置いた上で,利便性に資するためにどういうことができるのかというお話をしてきたつもりです。
 フェアユースということを考えますと,概念はいろいろあると思いますが,最終的には,訴訟での解決ということでますます権利者に負担がかかっていくと。こういう権利者にとってなかなか厳しい現状の中で,ここで更にフェアユースの導入なんていうことは権利者にとってはあり得ない話だと思います。そのことを議論することの是非を言うつもりはありませんけれど,まずは対価の還元,それから,利便性の向上のための具体的なモデルをどういうふうにしていくのかというところから話し合っていくのが,去年からの連続性から見て筋ではないかと思います。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 河村委員,どうぞ。

【河村委員】  松田委員のおっしゃったことに関しては,私が申し上げている意見よりもはるかに何か大きく酌み取っておっしゃっているように思うのですが,私,そこまではっきり申し上げているわけではなくて,過去のことにとらわれずに,これからのことを考えて,これだけの委員の先生方がいらっしゃるんですからアイデアが出てくるのではないかという意味で,かつての何類型とか,そこで定義された日本版フェアユースのことを必ずしも申し上げたわけではありません。それから,一言多いのかもしれませんが,消費者団体として長く運動してまいりました経験からいいますと,これは法制局が許しませんとか,これは通りませんと言われていたことが,ある時期を過ぎ,いろいろな活動とか,社会状況の変化を経て,駄目かもしれないと言われていたことが駄目じゃなくなることを経験しておりますから,余り,絶対にとか不可能だということをこれから先も決めつけるというのは,私たち,運動体にいる者からするとちょっと納得できないなというところがあります。
 それともう一つ,柔軟な規定と言われていることとは別の観点ですけれども,私的録音録画補償金ということが資料3にもはっきり出てまいります。先ほど私が1つ前の課題のところでちょっと申し上げてしまったことへの補足なんですけれども,私的録音録画補償金ということがはっきりここに出てくる以上,これはやはり地上波の放送にかけられている技術的複製制御との兼ね合いという問題に,きちんとそこに踏み込まなければ,それは関係者みんなで決めたことだから無理だと,ここは触らないで先に行こうといっても,また結局,その先に行けないということが起こると思います。先に進むためには,主婦連合会とインターネットユーザー協会で意見書を,前期の小委員会が終わった後に文化庁に対しても提出しているんですけれども,総務省との合同会議を開いてでも,そこのところをもう1回見直さなければ私的録音録画補償金制度の見直しというところには入っていかれないと思うんです。ですから,そういう一歩前に進めるような大きな決断をして,ルールを変えていく。フェアユースのことではなくて,ここで言っているのは,私的録音録画補償金に関して,消費者を縛らない柔軟なルールのことで,それに対してバランスのとれた,つまりそれに見合ったクリエーターへの対価の還元という議論ができるんだと思っております。そこをきちんと車の両輪として議論していくことを求めたいと思います。サービスが豊かで,使いやすくて,楽しめるものでなければ,消費者がお金を使い,産業を盛り上げることはできないわけですから,そこのところから見ていかないと,対価の還元だけではその目的には向かわないと思っています。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 現在,適切な保護と利用・流通に関する小委の検討課題について集中的に御意見が出ておりますけれども,ほかにも法制小委等もございますし。
 どうぞ。

【吉村委員】  補足して御説明いただければと存じますが,今の河村委員の御発言は,柔軟な規定の議論をしないと対価還元の話ができないという御趣旨でしょうか。

【河村委員】  私が今言った柔軟性のあるルール設定というのは,もっと狭い意味で申し上げました。私的録音録画補償金の制度を解決するためには,今,がちがちに消費者,利用者が縛られている,例えば録画補償金に関わるところって放送の録画だと思うんですけれども,地上波の放送には技術的複製制御がかけられていまして,複製制御がかけられているから消費者としては補償金を払うべき状態にはないというふうに私たちは思っているわけですけれども,そこを柔軟性という言葉を使うから紛らわしいのかもしれませんが,そこの録画制御のルールを変えていけば,つまり利用者の自由度が担保され,自由である代わりにそれに対応した対価の還元ということを議論することで,新たなルール設定を決めていくことができるのではないかと。これは長年,スタックしている問題です。そういうわけで,これに関しましては,もっと狭い範囲のことを申し上げました。

【吉村委員】  続けてよろしいでしょうか。河村委員の御意見の是非について申し上げる気はございませんが,とりあえず私の考えとしては,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会において,クリエーターへの適切な対価還元等に関して議論すること自体は,是非なされたらいいと思っております。そこでは結構,し烈な議論があるのではないかと想像していますけれども,是非建設的な議論を尽くしていただきたいと思っているところです。
 他方で,気になりますのは,資料3の方で検討課題例に書いていただいている「円滑なライセンシング体制の構築」の話が,この小委員会の中の議論で埋没しないか懸念を感じています。少なくとも,前年度を通していろいろ厳しい議論があった中で,この話が一つの大きな成果だと理解しておりますので,これをしっかり育てていくということは大事なことだと思っておりまして,小委員会の場においても具体的な制度設計に向けた検討,議論がなされることを強く期待しております。
 そういうことを考えますと,参考資料22ページに文化庁さん御自身については「注視する」と書いているにとどまっていますが,注視するのみならず,積極的に適切な形での関与を是非お願いしたいと考えております。
 柔軟性のある規定については,やはり必要だとおっしゃっている側(がわ)がもう少し具体的なものを出してくれないと多分,議論にならないのではないかと思います。イメージは分かります,何となく。何となく分かるのですが,少なくとも,松田委員がおっしゃっていたように,前年度の議論で,柔軟性のある規定が必要である根拠としていろいろと具体例のようなものは挙げられましたが,それについては「法改正を行うに足る明確な立法事実は認められなかった」と整理されているわけですから,それでも柔軟性のある規定が必要だと主張されるならば,前年度に示された具体例を上回る説得力を持つ例示,特に我々が聞いても,できるようになれば産業競争力が飛躍的に向上する,あるいはここで稼ぐ力がもっとつく,そういった期待が持てるような,もう少し具体的な案というのを出してもらえば,それについてどう思うかということをもう一歩踏み込んで議論できると思っています。
 今は柔軟な規定と言われるだけなので,権利者の方も御不安ではないかと推察します。それがアメリカのフェアユースなのか,もう少し広いのか,先ほどC類型よりもっと広いというお話もありましたけれども,柔軟な規定というだけだとなかなか建設的な議論ができないように思われます。柔軟な規定をとおっしゃることを否定するつもりはないのですが,言う側(がわ)としてはもう少しイメージを出していただかないと,多分,議論できないと思うので,柔軟性のある規定について議論する機会があるとすれば,もう少し積極的な御提案を頂いた上で議論したらいいのではないかと思います。
 以上です。

【土肥分科会長】  ありがとうございます。
 適切な保護と利用・流通小委の検討課題につきましては,前期,クラウドコンピューティングサービスについて,あるいはそれを含めた10サービスについて検討させていただいたわけであります。一応そこで検討した結果のまとめというものはできておりまして,その中で今,松田委員,吉村委員がおっしゃっていただいたように,いわゆる円滑なライセンシング体制の構築としての一つのアイデアはそこに示されているところであります。理屈の上では,そういうものが前期においてまとまって提案されたわけでありますので,それをまず見る必要があるんだろうと思います。それはどういうものなのかということで。それがもし実効性がないというようなことがあれば,それは次のステップだろうと思いますけれども,まずはそこだろうと思います。
 それから,この適切な保護と利用・流通小委については,そもそもスタートのときから2つあったんですね,大きな柱は。クラウドコンピューティングサービスと,それからクリエーターへの適切な対価還元という,このことは初めから2つ,大きな柱としてあったわけであります。1年間,クラウドコンピューティングサービスについての検討をさせていただいて,10回ほどやりましたけれども,その検討をさせていただいて,まとめというものを出した。もちろんこれが絶対だということを言うつもりはございませんけれども,そこにおける1年間の積み重ねの過程というものは,やはり次の期の我々としては尊重しなければならないんじゃないかなというふうに思いますので,まずはそこに行くのが次の我々が考えるべきところではないかなというふうに私は承知しているんですね。
 恐らく,河村委員もそのことは否定されないんだろうと私は思います。もしそこが駄目ならというような,そういう大きな視点からのお話ではないかというふうに受けとめさせていただいております。
 ほかに,法制小委等も非常に重要なところでございますので,是非,この分科会のメンバーのお顔を拝見すると,法制小委で大変重要な御意見を述べていただいておられる方も多々おいでになりますので,法制小委について何かございませんか。
 大寺委員,お願いいたします。

【大寺委員】  現在,次の学習指導要領の見直しというのを文科省の方で始められたというふうに聞いております。ここに教育の情報化の推進ということで,リテラシーとか,そういう課題もありますし,あるいは情報モラル向上というのもあるかと思うんですが,是非,この審議会なのか,あるいは文化庁御自身なのかわかりませんが,今後の小中高の学習指導要領の中に,いわゆる著作権とその周辺の状況について,きちんと児童・生徒に知っていただく,理解していただく事項を盛り込んでいただくことが必要だろうというふうに思っております。そういうことを是非取り組んでいただきたいと思っております。
 先ほどの録画補償金制度で,いわゆる著作権者への還元の話が出ておりますが,もう一つその補償金は,共通目的基金に配分されています。著作権についての普及啓もうということがCRICで担われてきたわけですが,残念ながら,その財源が補償金から全く出なくなってしまっています。そもそもそうした著作権を維持発展させていく,その基盤となるものが崩壊しているというところも別途やはり考えていただきたいと思います。残念ながら,文化庁の予算というのはそんなに多いわけではございませんので,やはりそこは知恵と工夫を発揮していただき,特に本省の方にもお願いするとか,いろいろなことがあり得るんじゃないかなと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 今,大寺委員は専ら文化庁著作権課の方を向いて御発言なさっていたので,もし,この段階でございますか,何か。
 受けとめられたということにしますか。分かりました。よろしいですか。
 ほかにございますか。
 井坂委員,お願いいたします。

【井坂委員】  監督協会の井坂と申します。
 大きい議論の中で,ちょっと監督協会の話ばかりになってしまうかと思いますけれども,今のクリエーターへの適切な報酬の還元ということに関して言いますと,御承知のように,映画監督は,著作者ではあるけれども,財産権としての著作権者ではないという状態の中で,現状としては,隣に井上さんがいらっしゃいますけれども,映連とかとの協定で,二次的著作物が出たときに追加監督報酬という形で頂いておりますが,これは飽くまで協定ということでございますので,現実として今起こっていることといいますと,例えば若い監督たちで力がない者は,二次的な追加監督報酬を放棄することを条件に契約を求められたりとか,あるいは,やっぱり協定ということで言うならば,監督協会所属,あるいはシナリオ作家協会,日脚連所属の人たちには追加報酬を払うけれども,所属していない人間に対しては協定外であるので,払わないという動きも現実に出てきております。
 何を申したいかといいますと,そういうことでいうと,映画監督,せっかく文化立国というふうにおっしゃっていただくんでしたらば,そこら辺のことも少し考えていただければなと。私どもの理事長の崔がよく言っているんです,権利のないところに才能は集まらないと。全くそのとおりだと思います。我々も別に,だから,監督にばくだいな報酬をよこせとかということではなくて,当然,製作には物すごくお金がかかるということも承知しておりますし,そういう意味で言うと,いろいろな映画製作者とも監督も両輪で,両方がウィンウィンになれるということを求めて,今もそういう形での法改正ができないだろうかということを,現実に国会の文化芸術振興議員連盟の方々とも勉強会を去年から始めております。何かその辺のことも少し御理解いただければ有り難いなと思っております。
 あと,監督協会としては,この1年ぐらいずっと,いわゆるオーファンフィルムのことに関しては,イマジカさんをはじめ,現像所に,現実問題として孤児フィルムになっているものに関して調査,分析をしておりますけれども,残念ながら,かなりのものに関して権利者がはっきりしないという状態で放置されております。これはもういずれ,このままほっておくとジャンクされてしまうということになりますので,その辺も,例えば監督,いわゆる個人に著作権があれば,もうちょっといろいろなことが進むことも現実問題としてありますし,その辺も文化の保護ということも,財産の保護ということも含めて御検討いただければと思います。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 井上委員も挙手されたと思いますので,お願いします。

【井上委員】  すみません。今回,初めて参加させていただいておりますので,ちょっと勝手が分からないところがございますが,御容赦ください。3番目の国際小委員会についてお話しさせていただいてよろしいでしょうか。

【土肥分科会長】  もちろんです。

【井上委員】  当然ながら,議題として海賊行為への対応の在り方ということが非常に重要なテーマになっていて,これは永遠の課題であると思います。昨年は,文化庁さんと,経済産業省さんが出版社やアニメ制作会社と合同で,漫画,アニメ,ゲーム領域におきまして海賊版対策をやりました。Manga・Anime Guardians Projectです。一定の成果は上げられたと思います。
 ただ,一方では,海賊版というのは,幾らたたいてもモグラたたきのように出てくるのが現実でございます。根本的なところを正さないといけません。最近になって中国で,配信の正規版が日本のアニメにおきまして規制が強化されました。中国におきまして,配信は比較的,正規ビジネスとして認知されて今まで伸びてきて,ようやく我々もここを基盤に海賊版撲滅の足がかりになるかなと期待しておったのですが,作品自体を配信してはならないという規定になりました。規制が強化されまして,ここを今,憂慮しているところでございます。
 ということはどういうことかといいますと,例えば日本のアニメの暴力表現ですとか,そういうところが名目になっているんですが,実際にはこれは中国の,アニメの自国産業を振興するために,日本の方を規制しているんではないかというふう声が聞こえてきたりもします。ということで,正規版が逆に配信に乗らないということは,今後,中国のファンが見るためには,当然ながら海賊版を見るということです。時代がちょっと今,逆行しつつあるなというのが実感で,我々の憂慮しているところでございます。
 これは,どうしようもない問題とはいいながら,国同士のもうちょっと高次元のところで,中国の政府の方に理解を求めていくという,それこそやわらかい,地道な努力が必要だと思います。非常にやわらかい姿勢で理解を求めていくという努力が実は必要なんじゃないかと。これ,実は民間だけではなかなか相手に声が届きにくいというところがございますので,是非,文化庁さんですとか,場合によっては外務省さんなのかもしれませんけれども,日本の作品が正規版で流れていくという土壌をつくるところに「官」の皆様の御協力を願えればと思っております。そういうところが実は海賊版を減らしていく一番のポイントなのかなと思っておりますので,そういうところも審議というか,御検討を願えると幸いでございます。

【土肥分科会長】  どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ御遠慮なく,時間もまだございますので,どうぞ。
 山本委員,どうぞ。

【山本委員】  今,国際小委員会のお話が出ましたので,常々思っているところを一言申し上げたいのですが。国際小委員会は,こういうことを言うとよくないかもしれませんが,ちょっと率直に言わせていただくと,報告とかばかりで,余り生産的な議論がなされていないような印象を持っております。条約,例えばマラケシュ条約とかがあると,それについての報告があったり,それに対しての質問があったりというような形で進んだりするんですが,もっと積極的な役割を果たせないのかな,と思っていました。今,井上委員のお話を聞いていて,思っていたところを思い出したことがあります。日本の著作物が外国に今はたくさん出ていっているという状態の中で,今の例で出ましたところの中国とかいうのはかなり日本の法制と違っています。実は条約上で見ると,それでいいのかなと,多分に問題があるんじゃないのかなというような法制も平気でとられていたりすることもあります。そこで,各国の法律状況がどうなのか,我が国として各国の著作権法改正を求めていく必要があるのかどうかとか,もっと外向きの,積極的な事柄を議論するというのもこの検討内容に入れていただくと,もっと生産的になるんじゃないのかなというふうに思いました。

【土肥分科会長】  ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 山本委員にも今,御意見を頂戴したわけでありますけれども,あくまでもこれは検討課題例ということでございまして,事務局から説明もございましたように,知財計画2015等もこれからということでございますので,前期の分科会は,実は6月の終わりか7月の頭ぐらいの,この推進計画が固まった後に開いたわけでありますので,割合,検討課題を絞りやすかったわけですけれども,この期についてはまだこれからというところがございますので,この2015がどういうふうな形のものになってくるのかというようなことも踏まえ,あるいは本日頂いた御意見,そういったものも踏まえて,検討課題については考えさせていただければというふうに思います。
 例えば適切な保護と利用・流通小委のように,前期のものを受けているものについてはその進め方というのは決まってくるんだろうと思うんですけれども,そうでない,例えば国際小委のようなところのものについては,きょう頂いたような意見も十分踏まえていただいて開いていただければというふうに思いますし,この後,委員の分属をさせていただきますけれども,この分属の結果,それぞれの小委に本日の分科会委員の方々がお入りになると思います。そういう方々は,その小委において,本日頂いた各委員のおっしゃっておられるようなところを十分,その中に伝達していただくなり,あるいは小委においてそういったものを紹介いただくなり,是非共有していただくようなことを考えていただければというふうに思います。
 時間はまだあるわけでありますけれども,ほかにもしなければ,このくらいにしたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 それでは,本日はこのくらいにしたいと存じます。
 最後に,事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】  次回,著作権分科会につきましては,各小委員会における検討状況等を踏まえつつ,改めて日程の調整をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【土肥分科会長】  ありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会(第42回)を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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