文化審議会著作権分科会(第46回)(第17期第1回)

日時:平成29年4月12日(水)
10:00~11:30

場所:文部科学省旧庁舎6階 第2講堂


議事

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)文化審議会著作権分科会長の選出について
    2. (2)第17期文化審議会著作権分科会における検討課題について
    3. (3)小委員会の設置について
    4. (4)その他
  3. 3閉会

配布資料

資料1
第17期文化審議会著作権分科会委員名簿(110KB)
資料2
第17期文化審議会著作権分科会における検討課題について(案)(72.7KB)
資料3
小委員会の設置について(案)(57.3KB)
参考資料
文化審議会関係法令等(131KB)
机上配布資料
第16期文化審議会著作権分科会における審議状況について(2.2MB)
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 中間まとめ(1.9MB)
出席者名簿(56.2KB)

【議事内容】

○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介した。

○本分科会の分科会長の選任が行われ,道垣内委員が分科会長に決定した。

○分科会長代理について,道垣内分科会長より鈴木委員が指名された。

○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【道垣内分科会長】傍聴の方々におかれましては,失礼いたしました,私,文化審議会著作権分科会の分科会長に選任されました道垣内でございます。よろしくお願いいたします。

本日は今期最初の著作権分科会でございますので,中岡文化庁次長から一言御挨拶をいただけることになっています。よろしくお願いいたします。

【中岡文化庁次長】ただいま紹介いただきました文化庁の中岡でございます。今期1回目ということでございまして,開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げたいと思います。

先生方におかれましては,日頃から著作権政策の充実に御協力・御審議・御指導を賜りまして,またこのたびは御多用の中,著作権分科会の委員をお引き受けいただきまして,まことにありがとうございます。

今年度は文化行政全体を見ましても非常に重要な年になってございます。

一つ目は,これは新聞紙上等でも御覧になったと思いますけれども,文化庁は京都への移転をするという方針がございまして,その新たな政策ニーズに対応する「新・文化庁」に生まれ変わる,その機能の強化を図るということでございますけれども,早速4月から京都におきまして「地域文化創生本部」を設けまして,約40人弱の体制で先行的な取組を開始したという状況がございます。

また,二つ目には,開催まであと3年となりました東京オリンピック・パラリンピックを見据えまして,様々な文化プログラムの展開につきまして本格的な時期に入ってきました。さらには,これらの取組を含めまして,文化関連施策を横断的に取り扱って統合強化をすることが必要でございまして,これまで文化庁は文化財の保護,著作権の保護,あるいは様々な文化団体の活動に対する支援をしてきたわけでございますけれども,経済拡大戦略の観点から,もっと文化庁を越えた,各省をまたがった視点を持って取り組まなければいけないということで,「文化経済戦略特別チーム」を各省の職員も交えてこの3月に文化庁内に立ち上げました。

文化行政に対しましては,先ほど申し上げましたように,これから観光,産業,教育,福祉,まちづくりなどの様々な関連分野との連携の下で総合的に施策を推進することが必要でございます。文化芸術資源を核とする地方創成や,戦略的な国際文化交流・海外発信等に取り組んでいくことが求められております。

文化芸術の基盤を担います著作権につきましても,このような視点を踏まえまして,適切な施策を講じていただくということがございます。

また,とりわけ著作権につきましては,近年,政府は成長戦略の柱といたしましてAI,IoT,ビッグデータを活用いたしまして「第四次産業革命」の推進をうたっているところでございます。こうした情報関連産業の振興の観点からもその重要性が強く認識されておりまして,著作権分科会におきましても大変期待をされているという状況がございます。

したがいまして,この分科会におきましては,こうした文化行政,あるいは著作権行政に対する社会の要請を受け止めるというところと,技術革新等がもたらします著作物の創作・流通・利用をめぐる環境の変化に応じまして,迅速かつ的確に施策を講じていくことが期待されているところでございます。

昨年度の法制・基本問題小委員会におきましては,いわゆる「柔軟性のある権利制限規定」,さらには「教育の情報化の推進」等々の課題について御検討を頂きまして,具体的な制度整備の提言を含みます中間まとめをお取りまとめいただいたところでございます。今期の著作権分科会におきましては,早期の法制化に向けまして,できるだけ速やかに最終的な報告書の取りまとめをお願いしたいと考えております。

また,そのほかの問題といたしましても,リーチサイトへの対応,クリエーターへの適切な対価の還元,国境を越えたルールづくりや海賊行為への対応などの継続的な課題に加えまして,社会の要請を踏まえました新たな課題につきましても精力的な御議論を頂戴することをお願いしたいと思います。

最後になりますけれども,委員の皆様方におかれましては,お忙しい中,大変恐縮でございますけれども,一層の御協力をお願い申し上げまして,私からの御挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

それでは,議事の2番目に移りたいと思います。今期における著作権分科会によって検討すべき課題についてでございます。これは資料2に事務局案を作ってくださっておりますので,この説明を事務局よりお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元に資料2を御用意いただけますでしょうか。第17期文化審議会著作権分科会における検討課題について(案)と題する資料を御用意いたしました。

まず,柱書きとしまして,第17期の文化審議会著作権分科会における検討課題としましては,以下の課題が考えられる,なお,知的財産推進計画2017や今後の状況変化等を踏まえて適宜見直しを行っていく,ということを記させていただいております。

まず,審議事項1としましては,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関することでございます。その検討課題の例といたしましては,さきの法制・基本問題小委員会で御議論いただいておりましたような新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等,教育の情報化の推進等,障害者の情報アクセス機会の充実,著作物等のアーカイブの利活用促進,リーチサイトへの対応などが考えられるわけでございます。

審議事項2としまして,クリエーターへの適切な対価還元等に関することでございます。検討課題例としましては,クリエーターへの適切な対価還元等のための私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入としてございます。

審議事項3としまして,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することでございます。検討課題例としましては,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方等としております。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。ただいまの御説明を踏まえまして,資料2を参考にしつつ,今期の著作権分科会において検討すべき課題につき,皆様方の御意見を伺いたいと存じます。どの点でも結構ですし,ここに例が挙げられておりますけれども,これに加えて何かほかのものがあるんじゃないかということもあるでしょうし,さらに審議事項そのもの,マル4というのだってあるんじゃないかという御意見でも結構ですが,今日キックオフなので,御自由に御意見いただければと存じます。どうぞ福井委員。

【福井委員】新聞協会の福井です。例示していただいたテーマはそれぞれもっともだと思います。それに加えて,まとめサイトに関して発言をさせていただきます。

まとめサイトの中には,リンクごとのサイトの画像や動画を表示する直リンクを用いて無断転載した記事などを売り物にし,多額の広告収入を得ているものがあります。これはコンテンツへのただ乗りだと言えます。新聞社のコンテンツは多大な労力,費用を掛けたものです。このようなただ乗りが許されれば新聞社の日々の報道に支障を来し,知る権利,ひいては健全な民主主義の発展をも危うくするおそれがあると考えます。

もっともただ乗りが問題なのは新聞社に限った話ではありません。著作物の再生産に必要な対価を得られなければ流通する著作物の質・量ともに低下して,著作権法の目的である文化の発展を損なうことになります。

直リンクは,現行法では違法ではないという説が有力です。しかし,この直リンクは,技術の進歩に法整備が対応し切れていないのではと思います。著作権者の権利保護を図る著作権法の目的に反する行為だとも考えます。権利者にとっては許諾していない会社から勝手に映像を使われていて,これは明らかにおかしいと思います。DeNA問題の第三者委員会も倫理的な問題はあり得ると指摘しています。

また,無断転載について,我々はプロバイダーだと。プロバイダーなら責任制限法を遵守し,権利者から侵害の訴えがあれば対応していると主張しているまとめサイトがあるようです。しかし,そうしたまとめサイトの運営者は,日常的に無断転載が横行していることを知っているのではないでしょうか。仮に公になってもプロ責法で対応すれば責任はないという態度であるとすれば,それは問題だと考えます。

法制・基本問題小委員会はリーチサイトの侵害対策について検討されてきました。もちろんその対策は重要です。しかし,仮に営利目的のまとめサイトに現行法上問題がないとしても,権利者に多大な不利益が生じているのではないでしょうか。今年度に実態を調査して,看過できない不利益が生じていると分かれば,著作権法改正などの対策を検討していただきたいと思います。

以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。今の点でもよろしゅうございますし,ほかの点でも結構ですが,どうぞ瀬尾委員。

【瀬尾委員】瀬尾でございます。今,福井委員からのお話もありましたけれども,今日私は一言申し上げたいことがあってちょっと考えてきたんですが,現在,著作物と著作権というのは人間の最も崇高な行為であって,文化の源泉である,人にしかそれは表し得ないという観点でこの著作権法が作られてきた。そして,これまである,例えば文章,絵画,音楽そのほか,そういったものが頭の中にある中でできてきていると思うんです。

ただ,今のAIの進歩というのは,社会基盤を揺るがすくらい大きな進歩をしています。これは今まで人間しかできなかった行為を,いわゆる人工知能と呼ばれるものは変わってくる時代になります。その時代に著作権法はどうするのか。しばらくはこの状態で持つと思います。だけど,必ずや違った局面と問題が起きてくると思っています。

ですので,先ほど言ったAIの進歩と,次長もおっしゃったオリンピック・パラリンピックの開催という非常に大きな節目を迎えて,大きな視点を持ってこの審議会の中で議論をしていただきたい。目先の細かなことももちろん重要です。ただ,大きな視野を下敷きにしないと,きっと後付けになって,後で困ることが出てくるんじゃないかと思っています。

その中で幾つか御提案したいこともあるんですけれども,今,福井委員がおっしゃったことが一つ象徴的だと思います。まとめサイトと呼ばれているリンク先による侵害,これが実際に,写真もそうですし,文芸の方もそうでしょうし,新聞その他権利を保持していく方たちの侵害を行っているということだと思いますが,これを単純に禁止する方法でいいのかどうか。それとこれをどう解決するのかということは,より新しい時代の新しい問題解決の糸口になるような気がします。ですので,是非の前に,まず現状をきちんと審議会の中でも調べていただいて,法制・基本問題小委員会などできちんと現状を把握していただくということから始めて,ここから大きな展望を含めて対応を考えなければいけないんじゃないかと思います。

どちらにせよ,この審議会に私も参加させていただきまして,微力ですが,いろんな意見は言わせていただこうと思いますが,極めて重要な時期である。これまでの5年前,10年前と比べ物にならないくらい,もしかすると今後の5年は大きな責任がこの審議会に掛かってくるんじゃないかということを考えて,非常に身が引き締まる思いでいます。ただ,どうしても目の前の細かなことを優先する傾向もなきにしもあらずという危惧は持っておりますので,今言ったように将来につながる事象を少しずつ研究していくことを是非事務局にも,また私自身もそのように心掛けたいと思いますので,そのような方向で進めていただければありがたいと思います。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。そのほか。どうぞ椎名委員。

【椎名委員】審議事項2番,クリエーターへの適切な対価還元等に関することということで,ここに書かれております私的録音録画補償金制度の問題というのは,現行法によります制度が必ずしもきちんと機能していないということが顕在化したのが平成15年ぐらい。それから十数年の議論をしても解決してない問題でございます。その間の権利者の得べかりし利益というのは広がるばかりであるというところがございますので,この問題を何とかスピード感を持って解決していただきたいと思っております。

この問題を議論しております保護と利用・流通に関する小委員会では,対価還元の現状,補償すべき範囲というふうに位置付けて議論してまいりまして,今期におきましては補償の具体的な方法,制度の具体的な話をしていくというふうに伺っております。是非ともこの問題はスピード感を持って検討していただきますよう,よろしくお願いしたいと思います。

以上でございます。

【道垣内分科会長】そのほかいかがでしょうか。どうぞ永江委員。

【永江委員】昨日,文藝家協会の理事会がありました。議論になったことの一つが,学校現場での著作権教育が足りないのではないかという問題です。昨今,話題になっている事件に,ある公立中学校の校長が配布物に書いた卒業生に贈る言葉が,じつはほかの学校の校長先生の言葉をそのまま剽窃したものだったというものがあります。剽窃した校長は3月末日をもって定年退職が決まっていたわけですけれども,学校長ですら著作権について全く無自覚であることを示しています。しかも教育委員会の処分も甚だ軽い。いま全国の学校で,どのような著作権教育が行われているかは推して知るべしだと思います。著作権侵害が横行する根底には,国民が著作権について教育される機会が全くないという問題があります。国民からすると,なんだか権利者がわあわあ金をよこせと言っている,あいつらは守銭奴か,というような意識のレベルではありませんか。著作権者と利用者の間には相当のギャップがあると思います。

ただもう一方で,読書推進運動をすすめる立場からすると,著作権者の権利を声高に主張する余り,国民が書物,あるいはメディアに接することが制限されてしまうことがあると,それはゆゆしき問題だと思います。そもそも著作権とは何なのか,著作権を保護するのは何のためなのか,誰のためなのか。あるいは権利制限はなぜ行われるのかといったことを,きちんと学校教育の中でも反映させていくよう文藝家協会としては求めていきたいと思います。当分科会ではそのような議論も含めて行われることを望んでおります。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。井上委員。

【井上(伸)委員】昨年に引き続きまして,リーチサイトの問題を今年は何かしらの成果みたいなものを是非残していきたいと思っております。今,永江先生からもお話がありましたけれども,学校においての著作権教育というのは非常に重要で,今思い返してみましたら,私が高校生のころはたしか教科書にマッド・アマノさんのタイヤのパロディー写真が載っていて,これは著作権侵害なのか芸術なのかみたいなことを学んだような気がしますけれども,そういう一例ぐらいしか昔は出てなかったような気がいたします。

学校現場において著作権というのは絶対に学ぶべきことですし,これだけ映像や情報が氾濫している中,子供たちの段階からきちんと著作権についての意識とか考えを持ってもらわないと大人になったときに大変困るなというのが,これからの社会だと思っております。

そういうことも含めまして一例を申し上げますと,映画館に行かれた方はよく見ると思いますけれども,盗撮防止法のPRでありますカメラ男の映像は,観客によっては毎回出てきてうるさいという方もいらっしゃるんですけれども,あれが出てきたことによって,映倫の方で毎月報告されております映画館での盗撮というのはかなり減ってきたという実感がございます。それに類するような啓蒙活動や教育活動,例えばそれはビデオでも何でもいいんですけれども,そういうことで,例えばリーチサイトというのはいかにいけないものかとか,著作権の意識というのを高める教育というのを,学生もそうなんですけれども,例えば一般の方への啓蒙活動なども道を示していただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。どうぞ久保田委員から。

【久保田委員】瀬尾さんや福井さんからの御意見をまとめるようになってしまうんですけれども,著作権を考えるときに情報社会という視点が大切。とりわけ著作権教育を普及していく過程の中で感じているのは,高校でやっている教科「情報」という科目があるのですけれども,ここでベースとして,情報の本質,情報の意味,価値というものは何なのかいうことがしっかり理解されると,その応用問題として個人情報保護法,著作権法というのは非常にわかりやすいロジックの上に乗ってくるのです。

そういう意味では著作権法ではなくて,著作権教育を普及させるベースとして情報教育という,ここの連動をしっかりと理解する中で,デジタル化された管理のしにくい情報を守っていくためには,法と電子技術と教育という,この三つの観点からバランスのいいアプローチが必要。そういった結果になるのではないかと思っております。国家機密情報にしても同様ですが,多大な情報という中に著作物があるという観点が今非常に重要なのではないかと思っています。

そういう意味で,著作権教育が著作権法教育になってしまうと,法制度がどうなっているかということを知ることが重要なところに足場がいってしまい,情報というものが見えなくなってくる。特に教育現場では先生方は35条の関係で随分幅広く著作物が利用できる環境にあるんだけれども,著作権法若しくは著作権というものの理解が進まないために,逆に萎縮してしまうようなことも言われています。

そういう観点では正しい著作権の理解というものが非常に重要になってきまして,情報社会という大きな観点から教育現場における著作権という狭い視点ではなく,我々国民として,故紋谷先生が言われたように,著作権法が保護しているのは生活様式の総体たる文化なんだと。こういう大きな観点から著作権や著作権法に対する理解が進むような教育があって,そして法を遵守するというところにいくのではないかと思っています。

そういう意味では著作権教育というのは緒についたばかりでありますし,先生になる大学の教育学部の学生の中にも,まだ著作権のことをほとんど知らずに社会に出てくるという状況であります。教育学部を中心にした著作権思想の普及や,他学部においては社会に出てくれば著作権法を知らずに仕事はできませんから,こういう意味ではネットの機能やコンピューターの機能を含め,また情報社会というものをしっかりにらみながら,著作権教育というものを大所高所からアプローチする必要があると思っております。

著作権関連団体の皆さんが見識を持たれてやっている著作権教育の実態等も,この分科会で情報を共有することは非常に重要かと思っております。

以上です。

【道垣内分科会長】じゃ,続きまして小池委員どうぞ。

【小池委員】小池です。同じような話になってしまうかと思いますけれども,例えば私は現場に近いところにいるわけですが,図書館で一番問題になるのはコピーをするというのが一番分かりやすい例としてあるわけですけれども,そのときにどのぐらいコピーしていいのだという話になるわけです。全部コピーしてはいけないというのは大体の人は分かってもらえるのですけれども,一方,税金で運営されている図書館なのだから,それはいいだろうとおっしゃる方もいる。

正に今,久保田委員がおっしゃったように,著作権法が禁じているとか許しているという問題ではなく,なぜそういう規定をするのかという,例えば権利制限規定を設けるのはなぜなのかということが,そもそも分からなくなっている時代なのだろうなと。その背景には,結局,便利な社会になってきてしまって,コピーするのも容易なわけです。

そうしてくると,何でこんなうるさいことを言うのだという話が,普通の生活の中に出てきてしまう。コンビニ行ってコピーしているのと図書館でコピーするのは,何の違いがあるのだという話になってくる。それを制限するというよりは,前段の話としてのなぜ著作物というものを保護するのかとか,そういうことは次の著作,あるいは文化というものを発展させるのだという考え方がきちんとしてないと,半分だの,半分じゃないだのという話をずっとしていることになりかねないので,そういう視点も制度設計する上では大事なことと思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。じゃ,どうぞ。井村委員。

【井村委員】井村でございます。先ほど来から,教育現場における著作権の教育が重要だということは何人かの方がおっしゃっておられます。前回の分科会でも申し上げましたが,今回,法改正が行われようとしている。そういうことに対応して,我々出版の方もできるだけ協力していこうということを考えておりますが,その間,私も何人かの学校の先生方と話をしていますが,現場で何か変わってきていますかという質問を投げかけると,そのような教育するみたいな話は一切出てきてないとおっしゃっている先生方もいらっしゃいます。そういったこのままの状況で改正が行われたり,権利制限が行われることになれば,私ども出版業そのもの自体がやりづらい状況が起こってしまいます。そうならないよう,教育現場に限らず,著作権法の重要性という啓蒙活動がどう進んでいくか皆さんでよくウォッチして,是非やっていただきたいと考えております。

それと,先ほど福井さんがおっしゃっていたまとめサイトに関しては,私ども出版界としてどのくらいの悪影響があるかということはまだきちんと検証したわけではありませんが,かなりの雑誌などのサイトが使われているということは確かだと思います。そういう意味では今後,大きな問題になってくる可能性が非常に大きいと思いますので,是非この場でも議論を進めていただきたいと思っております。以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。どうぞ河島委員。ではないです,すみません,間違えました。

【河野委員】河野です。今までの委員の方の御発言を聞いていて,重なるところもあるかと思いますが発言します。

著作権制度というのは私たち社会の文化を発展させるためにとても重要な制度で,暮らしを豊かにしてくれるものだと思っております。ただ,今私たち普通に暮らしている者から見て,オリジナルを尊重し守ること,その事実に対する国民というか,消費者の理解というのが全くできていないと感じています。それは当然のことながら,技術の進歩によって,複製も拡散も再生も非常に安易にできるようになっている。かつては専門家の方が介在しなければできなかったことが,一般家庭でも普通にできるようになってきている。そうした多様なディバイスの利便性のみに目がいってしまっているという現実があります。

それから,もう一つは無料ということなんです。様々なサービス等が無料で提供されています。先ほど問題になっているキュレーションサイトにしても,一見無料なんです。でも,どこかで実は権利侵害をしている。本来ならば利益を受けるべきところに利益がいってなくて,別のところに利益誘導されてしまっている。そういったところに私たちは気がつかないという現実があります。本来ならば著作権者の方にいくべき利益がそうではないところにいってしまって,そこに不利益が発生しているということに私たちはほとんど気づいていません。

先ほどから何人かの委員の方もおっしゃっていますが,オリジナリティーやクリエイティビティーに対する敬意というのが社会全体で大きく不足している現状だと思っています。国民の著作権に対するリテラシーを上げる何らかの対策,規制は必要ですが,法律を決めるというのはとかく後手後手に回ってしまって,時間がかなりかかってしまう。でも,今のこの現状を考えると,そんなゆっくりしたことでいいのかという指摘もあります。本当に権利を守るためには,後追いにならないようにスピード感を持って臨機応変な対応をしていただきたいと思っていますし,私たち消費者分野でもなかなか気づきにくい著作権というものに対する意識を高めていく何らかの努力をしていかなければいけないと感じています。

【道垣内分科会長】河野委員,先ほどお名前,失礼いたしました。ありがとうございました。

幾つかの多くの御意見が出ましたけれども,インターネットは今更新しいということはないわけですが,昔はなかった技術で,それが新会社の方にうまく使われてしまっていて,AIもそうですが,権利者側がうまく使うみたいな仕組みを作るということだってあり得るんじゃないかと思いますけれども,これは法律を議論する場がふさわしいのか,あるいはテクノロジーの人たちに働きかけた方がいいのか分かりませんけれども,負けないように使うということで,権利者にちゃんと利益が還元される仕組みもあり得るんじゃないかと思います。

また,教育につきましても,私,ずっと海賊版というのを国際小委員でやってきたわけですが,外国でも啓発活動をして何とか守ってもらおうというわけですが,なかなか時間もかかるし,人のものを取っちゃいけないというのは昔から言われていることですが,泥棒がなくなった社会はないわけで,教育だけでは完全ではないと思いますので,日本国内での海賊行為というか,ただ乗りを何とか抑える方策を考えて,それを国際的に普及させるくらいの発想じゃないと,今,国境なき世界になっているので,本来の目的,最初申し上げた権利者の円滑な利用と文化の共有が図れないんじゃないかと思っています。

今,利用者,権利者の方々の御意見が多かったんですが,研究者の方なり弁護士の方から,そういう研究はやっているよという,もう先は見えている,もうちょっと待ってねという議論があれば是非伺いたいと思うんですが,いかがですか。

じゃ,井上委員お願いします。

【井上(由)委員)】私も著作権教育は非常に大切だと私も思っております。ただ,現状で著作権教育をやろうと思っても著作権法の表面的な知識を教えるだけに終わってしまいかねず,著作権法の目的や基本的な考え方を教える体制づくりが重要だと思います。

私は学部の教育からはしばらく離れているのですが,学部レベルや法律でない分野の学生を対象に教えておりますときに,学期の最後に,どのような行為が著作権侵害となるのか細かく理解度を確認する試験を行うと,知識は身についている。そこで,そのような制度に納得できますかと聞くと,幾つかの行為類型については侵害となることに納得できない,おかしいのではないかという意見が,自由記述でいろいろでてきます。また,今後著作権法を遵守しますかと聞くと,今まで知らずにコピーしていたが今後は著作権法を守るという行為類型もあるのですが,侵害になるとわかっても今後もまず守らないだろうというものも出てきます。

これはなぜかというと,道を渡るときに赤信号で足を止め青信号になったら渡っていい,そういうルールなら,青信号を待つぐらい待とう,とルールを守るわけですけれども,例えばここで道を渡るたびに国交省に申請してください,ごくわずかの金額でいいのですが通行料を窓口に行って払ってくださいですとか,そういう手続が課されるとなると,まず守る人はいなくなると思うのです。取引コストが掛かり過ぎる制度では,国民の納得は得られづらいと思います。

今回,検討課題に挙がっているクリエーターへの適切な対価還元の仕組みをうまく作る,分科会長からお話がありましたように,技術を使ってうまく処理するような仕組みを考える,拡大集中管理制度なども含めて検討されていると思いますけれども,取引コストのかからない仕組みにしないと,著作権制度は国民に支持されなくなってしまうと思います。著作権教育も重要ですが,納得感を高めるような仕組み作りを制度の側でも検討していかなければいけないと考えております。

【道垣内分科会長】どうもありがとうございました。大渕委員どうぞ。

【大渕委員】今日も非常に多面的に重要なテーマを出していただきました。その中には喫緊に解決しなくてはいけない問題もあれば,もっと哲学的な視点からの問題もあって,私も両方とも非常に重要な点ではないかと思っております。

例えば先ほどAIが出ておりましたけれども,当然かと思いますが,現行の著作権法は人間が著作したものしか著作物としては想定しておりません。先ほど言われたように見た目は同じようなものがAIによってできるということになってくると,現行法は「人間著作権法」ということなのでしょうけれども,それとAIとの関係という,これは著作権法というよりは人間と機械との関係というか,人間自体の在り方のような大きな話であり,言えば言うほど哲学的になってくるような気がいたします。著作権法はそのような根源的な問題にもともと,特許法以上に触れることが宿命なのかもしれません。人間とは何ぞやといったところに入り出すと哲学的な話になりますが,そのような視点を持たないことには解決できないようなものだということは皆分かっていたけれども,何ゆえか,今それが表面化してきた,永遠の課題がまた戻ってきたということで,技術の変化に応じて著作権と人間の在り方は変わってきているのですが,それがまた非常に大きな形で出てきているように感じております。

根源のところには今言ったような社会の在り方,特に人間の在り方という問題があるように感じられます。私は,知的財産法を専攻しておりまして,特許法だと経済中心で,これもビジネスで大変重要なのですけれども,著作権の場合には,ドイツの有名な学者も言われますとおり,人格面と経済面が一体となっているのであって,まさしく人間の本質に関わっているものだと思います。そして,昔ながらの課題を最先端のリーチサイト等のところで考えていくということであります。先ほど出ていましたとおり,技術も制度も人間のためにあるものだと思っておりますので,その点をよく考えていくことが重要だと思います。

先ほど教育という話が出ておりましたが,大学で教えておりますと感じますけれども,研究と教育は一体となっておりまして,教えるべき内容が研究できてないと教えることはできないのはどの教育課程でも同じだと思います。そのような意味では,もちろん分かりやすく教えるというところも重要なのですが,何を教えるのか,どのように教えるべきかということから考えると,ここで議論している先ほどの問題に直結してくるかと思います。

もう一つ,先ほど出ておりましたとおり,著作権法は人間のためにある制度で,技術と経済以外にも,もちろん文化的な背景があり,幸いにも多方面の専門家に出てきていただいていますので,トータルに考えていくことが重要なのではないかと思っております。そのような基本的視点を持ちつつ,スピード感を持って今日的な課題に当たっていく必要があると思います。問題を1個1個潰していくしかないのですが,スピード感がないと,著作権法は何やっているのかという話になってしまいます。また,単なる論争でなくて,実態が分からなければ対応のしようがありませんので,基礎研究,実態調査というものもしっかりやっていく必要があるのではないかと思っています。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。どうぞ椎名委員。

【椎名委員】いろんな方が発言されていることとちょっと関係すると思って申し上げるんですが,著作権に付随しては著作権の権利の許諾ということがあり,またその対価の支払ということがございます。それがなぜ必要なのかということをもっとみんなに分かってもらう必要があるという議論は,正にそのとおりでありまして,井上(由)先生がおっしゃった国交省にお金を払うという話とは違って,道を渡るのに国交省になぜ金を払わなきゃいけないんだというのは十分議論があるところですけれども,クリエーターにお金を戻していく必要があるんだねということをいかに納得していただいて,分かりやすい制度を作るかということが非常に重要なのではないか。その意味で教育ということも非常に重要なファクターであると同時に,法律とか制度を作っていく上で,分かりやすい制度を作っていく責任が僕らにはあるのかと思いましたので一言。

【道垣内分科会長】どうぞ渡辺委員。

【渡辺委員】今の椎名委員の御発言に続くような内容なんですけれども,教育をしていくときに,特に小学生のようなレベルで教育をしていく際に,そういう基本的人権に重なる部分であるという大切なことを伝える必要はあると思うんですけれども,もっと分かりやすく,現実にどうなんだということを具体的に示した方が分かる例もあるかと思うんです。

例えば音楽家,歌の作曲をしている人はどのように利益を上げているのかということを具体的に示していくと,思っているよりも生活していくのは大変なんだなということが分かってきたりする。例えばCDのために1曲かく。作曲家はかいた時点では,一切何ももらえないということを知らせることは大事だと思うんです。幾ばくかもらっている上に,更に印税をもらっているんじゃないかと一般の人は考えがちですけれども,全くゼロ円で,これが具体的に,例えば1曲売れて2円とか3円という印税である。これは昔ですと,10万枚売れなければチャートに入れませんでしたけれども,今は1万枚でも10位以内に入るという本当にCDが売れない時代を迎えている。

こういう中で新たに作曲家として生活をしていこうという志を持った人が,どれだけ苦労しているかということを具体的に示す。例えば1万枚売れて3円だとすれば,3万円です。それでも大ヒットと言われるような時代の中で1曲をかいていく。それも今は1曲が採用されるためには,100曲以上応募する中に提示して,採用されなければ全くお金が入らないという中で曲をつくっているという様々な現実を伝えた上で,これほど苦労しているんだよということを伝えると,そうかそうか,印税というものがなければこの人たちは暮らしていけないねという現実面から理解が得られるのではないかと思います。

あと,私が単純に心配しているのは,今,サブスクリプション型の音楽配信などもありますが,例えば携帯で読めるdマガジンというものが最近ありますね。ずっと前からあります。私も便利で使用していますが,あれだと400円ぐらいで様々な雑誌が読み放題で,本当にこれで日本の書籍の関係は大丈夫なのかなって,ここまで物の価値を安くしてしまって大丈夫なのかなというのは,様々便利なものを享受しながらも心配している状況であります。音楽の面でも対価を権利者側も受け取っているとはいえ,必ずしも納得できる率までいっているのかどうか,未知数な部分がたくさんあります。

それと,海外に目を向けますと,最近,サブスクリプション型で動画配信というのが行われていて,日本のアニメの作品は月1,000円ぐらいの金額で見放題。そうすると,海外に行ってみると,日本のアニメを,あれも見ているよ,あれも見ているよと言ってもらえるのは日本人としては非常にうれしいことなんですけれども,実際そこでアニメの制作会社は対価を受け取っているんですけれども,現状においては,普通ですと,そこに付随している音楽家の著作権というものは何らかの形で還元されるべきなんですが,まだ少なくともアメリカにおいて行われている,そういったことに関してはそこの権利処理ができてないです。

ですから,このデジタル時代,様々な問題が次から次へと現れてくるので,そこに追い付いていくのは大変なんですけれども,この著作権分科会の中間まとめを読ませていただいたんですけれども,活発な議論が交わされているということは作曲家としてもうれしく思っておりますので,是非とも,特にクリエーターへの適切な対価還元に関することというのは,早急に結論に持っていっていただければと思っております。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。今後,また御議論いただきたいと思いますけれども,取りあえずは資料2でございますが,今,御議論いただいた中でここに挙がってなさそうなものというのは,教育問題みたいなことはもしかしたら今後別に課題として取り上げることがあり得る,御意見によればそうかなと思いますけれども,柱書きというんですか,前文2行目の「なお」書きのところで,「今後の状況の変化等を踏まえて適宜見直す」ということになっておりますので,それは今後あり得るということで御理解いただければと思います。

それから,例示なので,リーチサイトとまとめサイトというのは定義上明確に違うんですか。すみません。私はそういうところはあんまりやってないものですから。

【瀬尾委員】別です。

【道垣内分科会長】ああ,そうですか。じゃ,ここにリーチサイトだけでなく。

【瀬尾委員】「等」を入れれば違います。

【道垣内分科会長】「等」でもいいですし,これは例だから,更に「等」と書くとあれなんですが,せっかくだからまとめサイトというのももう一つ加えることはあり得るということで,その修正はお任せいただきたいと思いますけれども,この(案)を取って,それから月日,平成29年の今日の日付を入れて,この分科会の今後の検討課題とはこれだということにさせていただきたいと思いますけれども,それでよろしゅうございますでしょうか。どうもありがとうございます。

それでは,次の議題,3番目,小委員会の設置です。この運営規則の3条1項の規定に基づきまして,この分科会に小委員会を設置することができるということになっておりまして,これにつきましても資料3でたたき台を作っていただいておりますので,これをまず事務局から御説明いただけますでしょうか。よろしくお願いします。

【秋山著作権課長補佐】資料3は,小委員会の設置について(案)と題する資料でございます。

1番,設置の趣旨。文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項の規定に基づき,著作権分科会に特定の事項を審議する以下の三委員会を設置するとしております。(1)法制・基本問題小委員会,(2)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,(3)国際小委員会でございます。

2番,各小委員会の審議事項でございます。(1)法制・基本問題小委員会につきましては,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関すること。(2)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会につきましては,クリエーターへの適切な対価還元等に関すること。(3)国際小委員会につきましては,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することとしております。

3番,各小委員会の構成につきましては,著作権分科会長が指名する委員,臨時委員及び専門委員により構成する。なお,著作権分科会長は会議に出席し,随時発言することができるものとするとしております。

4番,その他としまして,議事の手続その他各小委員会の運営に関し必要な事項は,当該小委員会が定めるとしております。

御審議のほどよろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。これは先ほどの資料2を前提として,そこで取り上げられている課題に対応して三つの小委員会を置くものでございます。これにつきまして何か御意見ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。では,この資料3も(案)を取って日付を入れて,このように設置するということにさせていただきたいと存じます。

なお,これ以外に使用料部会というのがございまして,これは運営規則2条で設置が前提となっているものでございまして,設置決定は要らないんですけれども,この使用料部会も含めまして,使用料部会とこの三つの小委員会に属すべき委員,臨時委員及び専門委員につきましては,様々な規定がございまして,その中の規定によれば分科会長が指名するということになっております。したがって,後日,指名の結果について皆様にお知らせしたいと存じます。よろしゅうございますか。

それでは,4,その他で何かこの際ございますか。特に私の方から,事務局としても多分ないですね。

では,先ほど申し上げましたとおり,使用料部会等三つの小委員会に属すべき委員につきまして後日お知らせいたしますが,その小委員会におきましては,今日御議論いただいた点を踏まえて御議論いただければと思います。

特にございませんようでしたら,今日はこのくらいにしたいと思います。

最後に,事務局から何か連絡事項がございましたら,よろしくお願いします。

【秋山著作権課長補佐】次回の著作権分科会につきましては,各小委員会における検討状況等を踏まえつつ,改めてお知らせしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】では,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会の第46回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

――了――

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