日時:平成30年6月8日(金)
15:00~17:00
場所:中央合同庁舎第4号館1208特別会議室
議事
- 1開会
- 2議事
- (1)文化審議会著作権分科会長の選出について
- (2)著作権法の改正について
- (3)文化審議会著作権分科会運営規則等について
- (4)第18期文化審議会著作権分科会における検討課題について
- (5)小委員会の設置について
- (6)その他
- 3閉会
配布資料
- 資料1
- 第18期文化審議会著作権分科会委員名簿(119.5KB)
- 資料2
- 著作権法の一部を改正する法律の概要(87.6KB)
- 資料3
- 学校教育法等の一部を改正する法律の概要(149KB)
- 資料4
- 文化審議会著作権分科会運営規則改定案(64.2KB)
- 資料5
- 第18期文化審議会著作権分科会における検討課題について(案)(62.8KB)
- 資料6
- 小委員会の設置について(案)(57.2KB)
- 参考資料1
- 文化審議会関係法令等(133.5KB)
- 参考資料2-1
- 著作権法の一部を改正する法律の概要 説明資料(1.3MB)
- 参考資料2-2
- 著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院・参議院)(747.7KB)
- 参考資料3-1
- インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策(1MB)
- 参考資料3-2
- 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会-これまでの検討の状況-(78.9KB)
- 机上配布資料
- 平成29年度著作権分科会における審議状況について(2MB)
- 著作権法の一部を改正する法律(新旧対照表)(280.4KB)
- 学校教育法等の一部を改正する法律(新旧対照表)(189.4KB)
- 出席者名簿(59.1KB)
議事内容
○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介した。
○本分科会の分科会長の選任が行われ,道垣内委員が分科会長に決定した。
○分科会長代理について,道垣内分科会長より鈴木委員が指名された。
○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。
※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。
【道垣内分科会長】よろしゅうございますか。
お待たせいたしまして申し訳ございませんでした。私,先ほどこの委員会,分科会で選出されました道垣内と申します。分科会の会長を務めさせていただきます。よろしくお願いします。それから,隣に座っていらっしゃるのは鈴木委員で,分科会長代理に指名いたしましたので,よろしくお願いいたします。
本日は,著作権分科会の第1回の会合でございまして,中岡文化庁次長もいらっしゃっていただいていますので,一言御挨拶を頂きたいと思います。
【中岡文化庁次長】ただいま紹介ありました,文化庁次長の中岡でございます。
今期の著作権分科会の開催,第1回目ということでございますので,一言御挨拶を申し上げます。
先生方におかれましては,日頃より著作権政策の充実に御協力,御指導賜りまして,このたび御多用の中著作権分科会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。
昨年度の著作権分科会におきましては,柔軟性のある権利制限規定,教育の情報化の推進などにつきまして,制度改正の方向性を示す重要な提言を報告書として取りまとめていただきまして,今年2月23日に,著作権法の一部を改正する法律案を,政府として本国会に提出したところでございます。今年度に入りましてからは,国会におきまして,この法律案を御審議賜りまして,大変活発な御議論を頂いて,お認めいただきました。先月18日に成立し,先月25日に公布されたというところでございます。
今般の改正に当たりましては,10年来の課題であったと言われております重要課題につきまして,我が国にふさわしい保護と利用のバランスの取れた制度設計を御提案賜り,それに基づいた制度の柱ができ,厚く御礼を申し上げます。
また,この報告書で御提言いただいております,デジタル教科書の制度化に関わります権利制限規定の整備につきましても,この国会で,著作権法に続きまして,学校教育法等の一部を改正する法律案として提出をして,先月25日に成立,今月6月1日に公布されています。こちらの法改正につきましても,著作権法の改正がございましたので,御協力賜り,深く御礼を申し上げます。
文化庁におきましては,今年6月,この月でございますが,旧文部省の文化局と文化財保護委員会が統合いたしまして文化庁ができましてから,50年ということの節目でございます。
文科省設置法の改正が,実は先ほど11時45分に参議院の本会議を通りまして,成立をしたところでございます。この中身につきましては,既に御案内だと思いますけれども,各省庁にまたがっております様々な文化関係の行政分野を,文化庁が,ある意味聴取できる,そういう権限を付けたものでございます。
それに基づきまして,今年10月には,新たな体制ということで,大きな組織改編が予定されております。実はこの組織改編自体は,京都移転に対応した機動的な組織体制ということでございまして,著作権課におきましては,東京に残るのか,京都に行くのか,様々な議論があったわけですけれども,様々な団体等の対応,あるいは様々な各省庁との連携など大変重要な局面もございます。国会対応も非常に多いところでございますので,東京で著作権課を設置することで御理解いただいております。
新文化庁ということで,観光あるいは産業,教育,福祉,まちづくり,様々な幅広い分野での,行政分野も含めて,文化関係につきましては,総合的に施策を推進したいということでございます。
このような中,今年度の分科会におきましては,昨年度からの継続課題,いろいろございますが,社会の要請を踏まえました新たな課題につきましても,精力的な御議論を頂きたいということでございます。
とりわけ海賊版の対策につきましては,報道でも様々取り上げられております。インターネット上でのコンテンツの不正流通におきまして,著作権侵害の被害も深刻化している,あるいは複雑化していることで,著作権分科会でも,リーチサイトの御議論いただいておりましたが,今年4月にインターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策で,昨今話題となっておりましたサイトを含めて,政府として対策が決定されてございます。
この分科会におきましては,このような新たな動き,本決定を踏まえまして,精力的な御審議に向けて,今一度,お願い申し上げます。
結びになりますが,委員の皆様方におかれましては,お忙しい中大変恐縮でございますけれども,一層の御協力をお願いいたしまして,私からの御挨拶とさせていただきます。本日は,誠にありがとうございます。
【道垣内分科会長】ありがとうございました。
50年ということで,形式的におめでたいだけでなくて,中身も機能も強化されるようでございまして,よろしくお願いいたします。著作権もよろしくお願いいたします。
では,今お話の中にも出てきましたけれども,今国会で成立した著作権法の改正の中身につきまして,事務局より御説明いただきます。これが,議題の2番目でございます。
【秋山著作権課長補佐】御説明いたします。
まず,資料2を御覧いただければと存じます。
先ほど次長からも申し上げましたとおり,先月25日に法律が公布されました。
概略につきましては,審議会報告書で御提言いただいた内容に沿って,法律としては御提案しておりますが,具体的に条文化したところで特に御説明しておくべき部分を中心に御説明したいと思います。
柱としましては,丸1,柔軟な権利制限規定の整備,丸2,教育の情報化に対応した権利制限規定の整備,丸3,障害者の情報アクセス機会の充実,丸4,アーカイブの利活用促進となっております。
施行日につきましては,来年1月1日が原則でございまして,このうち,丸2の教育情報化の権利制限規定につきましては,公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日となっております。
また,これに加え,教育に関して,後ほど御説明しますとおり,補償金の徴収,分配に関する特別なルールを作っておりますので,その関係の準備行為につきましては,この法律の公布の日から直ちに実施ができるようになっております。
では,少し具体的な内容を補足しながら,御説明していきたいと思います。参考資料2-1をお願いいたします。
この際,背景的な部分も資料としては御用意しておりますけれども,条文に関わる部分を中心に御紹介します。
参考資料2-1の,スライド9を御覧いただければと存じます。
こちら,柔軟な権利制限規定の整備のイメージでございます。提言の中では,第1層,第2層という形で権利者に及び得る不利益の度合いに応じて,適切な柔軟性と明確性のバランスを確保することで御提言いただいてございました。
今回,左側にあります既存の権利制限規定を整理,統合いたしまして,右側にある形で,3つの新しい柔軟な権利制限規定を整備する形にしております。
次のスライド,まず新30条の4としましては,右側にございますように,著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用について一般的包括的に利用を認める規定になっております。
それから,次のスライドでございます。こちらも,第1層の2つ目の条文としまして,電子計算機における著作物の利用に付随する利用等という形で,キャッシュですとかバックアップの関係,こうした行為が一般的な形で認められるように規定をしております。
その次のスライドです。黄緑色の第2層ですけれども,スライド13を御覧ください。第2層に関しましては,条文としては,新たな知見・情報を創出する電子計算機による情報処理の結果提供に付随する軽微利用等という条文になっております。こちら,丸1,丸2,丸3と下にございますサービスのために,著作物を,その結果提供に付随して軽微な形で利用できることにしております。こちらによりまして,丸1の所在検索サービス,丸2の情報解析サービスが可能となりますし,又これらにとどまらず,今後新たに生じるニーズに対応するために,丸3としまして,新しいニーズについては政令で定めることで機動的に追加できるような制度設計としております。
柔軟な規定につきましては,以上でございます。
続きまして,教育の情報化関係でございます。スライド14にその概略が書かれておりまして,ここは先生方御承知の部分だと存じます。
補償金の徴収,分配の仕組みにつきまして,簡単に御紹介します。17ページをお願いできればと思います。
今回,補償金につきましては,私的録音録画補償金制度にもございます,全国に1つの団体がワンストップの窓口として,徴収,分配に当たる仕組みを採用してございます。左側にありますように,文化庁長官が指定する指定管理団体があらかじめ教育機関の設置者の代表団体から意見聴取を行った上で補償金の額を定め,文化庁長官の認可を受ける。そして,認可に当たりましては文化審議会に諮問する形を採用しております。その他の仕組みにつきましても,おおむね私的録音録画補償金制度を参考にしたものとなってございます。
著作権法の改正については以上ですが,参考資料2-2で国会における附帯決議についても,簡単に御紹介したいと思います。
参考資料2-2の2ページ目以降,参議院のものを中心に御紹介したいと思います。
まず漢数字1としまして,この法改正を契機として,今後も権利の保護と文化の継承のバランスにおいて,この制度の運用に十分に配慮するという一般的な考え方が述べられております。
また,漢数字2番におきましては,今回の柔軟な規定につきまして,これによって利用の委縮効果ですとか,あるいは逆に誤解による著作権侵害の助長といったことが起きないように,ガイドラインの策定などの対策を講じることが言われております。
それから,3号は,先ほど御紹介しました,47条の5,軽微利用を認める規定でございます。ここで,第1項第3号で,今後新しくサービスに関する政令につきましては,速やかにこれを定めるよう努めることとされております。
4番では,今後の更なるデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う制度の見直しを適切に行っていくということが言われております。
5番,こちら教育の関係ですけれども,授業目的公衆送信補償金の金額が妥当な水準になるようにすることが言われています。
6番,こちらも同じく教育関係ですが,授業目的公衆送信補償金の徴収事務の簡素化といった形で,教育現場の負担に配慮するといった視点が示されております。
7番,こちら障害者関係でございます。37条3項の視覚障害者等のための著作物に利用に係る規定につきまして,そうした行為が認められる主体の拡大についても,しっかりと取り組むとされております。これは,審議会でも既に御提言いただいている部分でございます。
8番,美術品等の紹介・解説のための著作物の利用につきましては,画像等が不適切に拡散されない対策をしっかり講ずることと言われております。
9番は,デジタルアーカイブの構築に向けた国会図書館をはじめとする関係機関の連携協力といったことが言われております。
10番としまして,著作権を含む知財に関する学習及び教育機会の更なる充実ということが決議されております。
続きまして,学校教育法等の一部を改正する法律の概要につきまして,資料3に基づいて御説明申し上げます。
こちら,6月,今月1日に法律が公布されてございます。
概要の1番にありますように,学校教育法の一部改正の内容としましては,丸1記載のとおり,学校教育法上,原則紙の教科書の使用義務があるわけですけれども,検定済教科書の内容を電磁的,デジタルに記録したデジタル教科書がある場合には,その義務に関わらず,教育課程の一部において,通常の紙の教科書に代えて,デジタル教科書を使用することができるとされております。
下のイメージですが,「紙の教科書」に赤い線で囲ってありまして,これと同じ内容がデジタルになった部分につきまして,「デジタル教科書」と認定がされるとなってございます。
これに伴いまして,2ポツ,著作権法の一部改正でございます。ここにおきましては,上にありますデジタル教科書と学校教育法上認められた教材につきましては,紙の教科書同様に権利制限規定の対象となるよう,規定を新たに設けるという改正を行っております。
また,補償金につきましても,紙の教科書と同様に支払義務がございまして,金額につきましては,文化庁長官が定める算出方法により算出した額としております。
今後,これらの著作権法及びこの学教法の関係の改正に伴いまして,著作権分科会において,諮問させていただく事項も幾つかございますので,よろしくお願いいたします。
それから,本日資料は御用意しておりませんけれども,これらのほかに,今国会に,著作権法に関わる法案としまして,TPP関係の法案が1つ出てございます。こちらは,まだ可決,成立には至っておりませんが,TPP11の締結のために,関係法律の整備を行うものとなっておりまして,基本的には,平成28年に成立いたしましたTPP12のための整備法の施行日を見直す形で,平成28年の法律で既に整備された著作権法の改正部分が,そのままスライドしてTPP11の発効に伴って施行するという案が提案されてございます。
説明としては,以上でございます。よろしくお願いします。
【道垣内分科会長】ありがとうございました。
これにつきまして,何か御指摘いただくことはございますでしょうか。
特にないようでしたら,御報告いただいたということにさせていただきたいと思います。
では,議事の3番目,今の法改正に伴うことかと思いますけれども,文化審議会著作権審議会運営規則等の改訂についてです。よろしくお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】御説明いたします。
資料4を用いて,御説明したいと思います。
まず,資料4の別紙2を御覧いただきますでしょうか。
今回,先ほど申し上げましたように,著作権法の一部改正法及び学教法の一部改正法によって著作権法が改正されておりまして,その中で文化審議会の諮問をお願いしなければならない事項が幾つか追加されておりますので,それに関連して,今回文化審議会著作権分科会の運営規則の見直しをお願いするものでございます。
まず35条2項で,補償金の支払義務が今回新たに科されるわけでございます。この補償金の徴収,分配に関しましては,少しページをおめくりいただいて,3ページの下,左側にございますように,第5章第2節に授業目的公衆送信補償金という節を新たに設けております。すぐ下にあります104条の11という条文におきましては,指定管理団体のみがこの補償金の徴収,分配に当たることが規定をされております。
さらに,104条の13におきまして,補償金の額の決定のプロセスが書かれております。こちらも,先ほどポンチ絵を用いまして,御説明申し上げたとおりでございます。
補償金の額の決定,認可に当たりまして,同条第5項におきまして,文化審議会の諮問が義務付けられております。
それから,104条の15は,著作権等の保護に関する事業等のために今回徴収された授業目的公衆送信補償金の一部を当てなければならない旨の規定をしています。こちらも,先生方が御承知のとおり,私的録音録画補償金制度におきましても採用されている制度でございます。こちらの当該事業に充てるべき額につきましても,政令で算出方法を制定するとなってございまして,その政令の制定又は改正の立案に当たっては,文化審議会への諮問が義務付けられております。こちら,2項に規定がございます。
これが,1つ目の事柄でございます。
少しページ,1つお戻りいただいて,67条の2が,2ページの下にございます。今回,アーカイブの促進の文脈におきまして,67条2項と67条の2の2項,これらにおいて,国等は補償金の事前供託を要しないとしております。これに伴いまして,67条の2の6項におきまして,新たに文化庁長官が定める額の補償金の支払義務という部分が,一部規定として追加されてございます。こちらも,文化審議会の諮問事項となっております。これが,2つ目でございます。
3つ目としまして,教科書の関係ですので,ページとしては7ページ以降になります。
学教法の改正に関わりまして,まず中心的な改正事項は,下にあります33条の2を新設した部分になってございます。こちらの教科用図書代替教材,これはデジタル教科書を指すものでございますけれども,この教科用図書代替教材への著作物の掲載を許諾なく認める規定が1項にございまして,次のページの2項では,文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金を支払うべき義務について規定をしております。
今回,この規定の整備に伴いまして,既存の教科書関係の権利制限規定も併せて見直しを行うこととしております。1つさかのぼっていただきまして,7ページの33条2項を御覧いただけますでしょうか。
これまで,紙の教科書に係る権利制限規定である同条2項では,補償金の額につきましては,文化庁長官が毎年定める額となってございました。今回,この規定につきまして,2点の見直しをしております。1点目が,「毎年」を削除した部分でございます。これは,もう近年,長く使用料部会でも補償金の額について御審議いただいておりましたが,もう長期間にわたりまして,その算出方法が定着するに至っておりまして,必ずしも毎年,必ず改定しなければならない状況でもないのではないかと考えまして,そういった実態を踏まえた見直しを行ったものでございます。
見直し事項の2点目でございます。現行33条2項では,文化庁長官が額を定めるとなっていたわけでございますが,今回算出方法を定めるとしております。こちらも,先ほど申し上げましたように,使用料部会で御審議いただいて,算出方法について御決定を頂いた上で,その算出方法に基づいて機械的にそろばんをはじいて額が算出されることになっていったわけでございます。そういうことからしますと,むしろ算出方法について文化庁長官が定めるとした上で,その内容について文化審議会でしっかり審問させていただくという方がより本質的ではないかと考えまして,そのような見直しをしたところでございます。
以上が,見直し事項でございます。先ほど申し上げました33条における見直し内容につきましては,33条の2を改め新しく33条の3となりました,拡大教科書等の作成のための権利制限規定に関しても同様の見直しをしております。
以上が,今回の改正事項のうち,文化審議会の諮問に関わる部分でございます。
これを踏まえまして,資料4にお戻りいただき,改訂案の御紹介をしたいと思います。使用料部会の所掌事務に関わります2条を見直すこととしております。
まず,第1号,1項第1号におきまして,33条の2,これはデジタル教科書の関係ですとか,あと教科書につきましても,規定の見直しをしております。それから,2号におきましては,67条の2の第6項,アーカイブの関係の,権利者不明の裁定制度の見直しに伴う規定の見直しをしております。
次のページでございます。7号と8号におきまして,35条の教育関係の授業目的公衆送信補償金の額の認可,それから共通目的事業への支出額の算出方法を定める政令に関する事項として,それぞれ新たに追加をしています。
その他,これらに伴いまして,表現上の修正は少し行わせていただいておりますが,実質的なものではございません。
以上,見直しの概略でございます。
一応,これとは別に,資料4,別紙として御用意しておるものもございますけれども,これは,法律の施行日が幾つかの時点に分かれておりますことから,その施行日,その時期によって適用される規定が異なるものになるように,附則においてそういった調整をしたことを反映したものとして,御参考までに御用意したものでございます。これは,後ほど御参考いただければと思います。
説明は,以上になります。よろしくお願いいたします。
【道垣内分科会長】ありがとうございます。
参考資料1の中に,この規則全体が入っております。その中で,この規則は,この分科会が決定することになっておりますので,今御案内いただいた資料4の改正をすることにつき,決定を頂く必要があろうかと思います。
その前に,何か御議論,御指摘いただく点,ございますでしょうか。 法律が変わったことに伴う技術的な改正ですし,更に細かく施行時期が異なるために,時期を変えてということもあるのだろうと思います。よろしゅうございますか。
はい。では,この議題の3番目につきましては,このとおり決定したということにさせていただきたいと思います。
引き続きまして,議事の4番目,第18期文化審議会著作権分科会における検討課題についてでございます。これも,事務局から御説明いただけますでしょうか。
【秋山著作権課長補佐】それでは,資料5を御用意いただければと存じます。
今期の著作権分科会における検討課題(案)を御用意いたしました。
今期の分科会の検討課題としましては,以下の課題が考えられる。なお,知的財産推進計画2018の策定等ですとか,今後の状況の変化を踏まえまして,適宜見直しを行う,とさせていただいております。
審議事項,3つ御用意してございます。
まず1つ目として,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関することでございます。現在想定されております検討課題の例としましては,インターネット上の海賊版対策についてとさせていただいております。
審議事項丸2,クリエーターへの適切な対価還元等に関することでございます。
審議事項丸3,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することでございます。
これらの検討課題例につきましては,昨年度と実績の内容につきましては,引き続いてということになろうかと思います。後ほど,対価還元につきましては,別途御説明申し上げます。
まずインターネット上の海賊版対策につきまして,現在の政府全体の検討状況をまとめまして御説明申し上げたいと思いますので,参考資料の3-1を御覧いただきたいと思います。
こちら参考資料3-1は,インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策に関わる資料でございます。
こちらは,本年4月13日に,知的財産戦略本部及び犯罪対策閣僚会議の合同会議によりまして,御決定があった文書でございます。
まず,このポンチ絵1枚ものに基づいて,御説明申し上げます。背景としましては,「例えば」とあります「漫画村」「Anitube」「Miomio」等のサイトのように,サイトの運営管理者の特定が困難であるものですとか,侵害コンテンツの削除要請が難しいサイトの出現によりまして,著作権者等の利益,権利が著しく損なわれているという事態の認識がなされました。
2ポツとしまして,これは,国内に著作物,海賊版サイトの情報が国内に入ってくる段階で,アクセスプロバイダがアクセスを遮断すると,これはブロッキングと呼ばれておりますが,こういうものについての考え方が整理されたものでございます。ここでブロッキングと言いますのは,通信の秘密を形式的に侵害する可能性があるものの,緊急避難の要件を満たす場合には違法性が阻却されるといった考え方が示された上で,3ポツとしまして,ブロッキング対象ドメインについてでは,法制度整備が行われる前の間の臨時的かつ緊急的な措置として,民間事業者による自主的な取組として,これらの3サイト等についてブロッキングを行うことが適当という考え方が示されております。
さらに,こうした問題への対応のために,知財本部の下に,関係事業者,有識者を交えた協議体を設置するとなってございます。
また,更に4ポツにございますように,海賊版の流通・閲覧の防止のために学校,地域における著作権教育に取り組む。そして,著作物等を尊重する意識の醸成を図ることが示されたわけでございます。
以上,御覧いただきましたように,このペーパー自体は運用上,アクセスプロバイダの方々が,海賊版サイトのアクセスを遮断することについての考え方が整理されているものと承知しております。
それから,更にということで,この資料の束の後ろから2枚目の裏側ですね,インターネット上の海賊版対策に関する,9ページでございます。
9ページの,インターネット上の海賊版対策に関する進め方についてという文書も,この日に同じく決定がされております。
(1)と(2)は先ほどの概要に載っていた事柄でございますけれども,(3)法制度整備を御覧いただきたいと思います。海賊版サイトへのブロッキングについて,緊急の対応として(1)(2)を講じつつ,並行してその法的根拠を明確にするため,通信の秘密,知る権利との関係を含む法的論点について検討を行い,関係者の理解を得つつ,次期通常国会を目指し,速やかに法制度の整備に向けて検討を行うとされております。また,2つ目のポツにおいては,リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応等についても早急に検討を進め,次期臨時国会又は常会を目指して法案を提出するとされております。
さらには,次のページの別紙で,「その他論点となり得るもの」で,静止画のダウンロードの違法化といったことも論点となるのではないかということも御紹介があるところでございます。
こちら,いずれにしましても,まだ知財本部,犯罪対策閣僚会議という政府全体のこういった調整機能を担う組織での取りまとめ文書でございます。
したがいまして,この問題への対応につきましては,まずは政府全体で今後検討調整を行うことになろうかと承知しておりまして,現時点では,直ちにこの著作権分科会で,どのようなことを取り扱っていただく必要があるのかですとか,時期ですとか,そうしたことは必ずしも明確になっているわけではございません。今後,政府全体の方針を踏まえまして必要に応じて対応をお願いすることになることを念頭に置いていただきながら,この資料5に御用意した課題設定ということで,提案させていただこうと思っている次第でございます。
【白鳥著作権課著作物流通推進室長】引き続きまして,クリエーターへの対価還元に関わりまして,参考資料を御用意させていただいております。参考資料3-2を御覧いただきたいと思います。
このテーマに関わりましては,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会が設置をされ,これまで御覧いただいている流れで検討が行われてまいりました。
この小委員会におきましては,まず平成25年度にクラウドサービス等と著作権との関係について整理を行い,私的複製への領域がどの部分で発生するのかについての整理を行っていただきました。
その上で,クリエーターへの適切な対価還元につきまして,平成27年度より検討が進められております。平成27年度におきましては,点線囲いの中にあります,大きく3つの点について順次検討を行うことで,検討が進められてきております。
1つ目が,現状の確認。そして,2つ目が,補償すべき範囲。3つ目が,対価還元の手段でございます。
私的録音録画補償金制度が,対価還元手段の制度として,平成4年度からスタートしておりますけれども,特に録音と録画が制度の枠組みとして設定されておりますので,この録音と録画のそれぞれについて,今申し上げた3つの点について検討が進められてきた状況でございます。
平成28年度におきましては,現状の確認と合わせまして,補償すべき範囲について,私的録音と私的録画について検討が行われました。
平成29年度,昨年度でございますけれども,特に私的録音に関わりまして,それまでの検討結果を踏まえて,対価還元の手段についての検討が行われたところであります。その中に書かれておりますとおり,対価還元手段といたしましては,現行制度であります私的録音録画補償金制度のほかに,丸2にありますけれども,契約と技術による対価還元手段,そして丸3にありますクリエーター育成基金,このような選択肢の下で,適切な対価還元手段の在り方について検討が行われております。
私的録音についての昨年度の検討の状況でありますが,昨年度報告がありましたとおり,様々な御意見がこの部分ではございまして,私的複製の実態があることを踏まえて,代替措置が構築されるまでの手当として,引き続き私的録音録画補償金制度により対価還元を構築することが現実的であるとする意見などが紹介されまして,審議の経過報告がまとめられております。
なお,昨年度につきましては,録画の部分は,その補償すべき範囲の検討というところが,一昨年度の検討で,ここで一旦中断しておりました。本年度におきましては,特に残された課題としまして,特に私的録音につきましては対価還元手段の具体的な制度設計に向けた検討,私的録画につきましては,一旦中断されております補償すべき範囲に関しての検討整理からの部分も含めて,対価還元手段の検討が,引き続きの課題と考えられます。
全体としまして,昨年度の審議経過報告におきまして,対価還元手段の在り方について方向性を示していくことが必要とおまとめいただいているところでございます。
以上でございます。
【道垣内分科会長】ありがとうございます。
今御説明いただきましたように,資料5で挙げられている3つの問題の背景事情を御説明いただいたわけでございます。このような認識でよいのか,それとも,ほかにもまだ重要な事項があるのか,あるいは重点を付けた方がいいのか,そういう御議論いただきたいと思います。その次の議題の小委員会の設置の土台になりますので,まず検討課題について,御意見等を頂ければと思います。
どうぞ。井村委員。
【井村委員】書籍協会の井村です。
先ほど御説明いただきました,参考資料3-1に書いてございます海賊版サイトに関してですが,当面の対応としては,その現行法の解釈に基づいて,プロパイダーが,私どものような出版社や著作者の要請に基づいて,それをブロッキングしていく形になるかと思うのですけれども,こういう動きに対する利用者のネットにおける書き込み等を見ていますと,こんなにいいサイトを閉鎖しようとするのは出版社と著作者の横暴だと書かれているのですね。まるで著作者や出版社が悪者のように書かれていて,こういう状態を今のまま放置して本当にいいのかということを考えますと,最後の4で書いています啓蒙というか,著作権法をどうやって一般の人々に知らせるかを,本当に真剣に考える時期に来たのだと思っています。
私が本当に危惧しているのは,そういった書き込みの中に出てくる利用者の中には,漫画村等の違法性を認識している人たちも多くいるのですが,そういう人たちが,こういういいサイトが違法なら我々の運動によって合法化させようと煽(あお)っておりそれに多くの人たちが同調している点です。ここまで来ると,我々のような一民間事業者でどうこうできる問題でもなくなってくると思うのです。
文化庁さんや国でこれを規制することには難しい部分があることも承知しておりますし,最適な教育の仕方を考えることも難しいとは思うのですが,そろそろ本格的に本腰を入れて,この問題に取り組んでいただきたいと思っております。
以上です。
【道垣内分科会長】ありがとうございます。
どうぞ,井上委員。
【井上(伸)委員】今の関連いたしますけれども,去年からずっとお話をさせていただいておりますが,学校教育において,著作権法ですとか著作権意識を,若い時代から,特に小学校,中学校ぐらいのときから,きちんと教えていくのが,本当に重要かと思っております。
今の井村委員のお話にもありましたけれども,若年層になればなるほど,1回お金を著作物に払ってから,それを見たり買ったりする習慣がつく前に,海賊版に最初に触れてしまいますと,とにかく著作物にお金を払うのが正当だということ自体を知らないで育つ危険があります。今の井村委員の御紹介した人は,まだそういう一種の常識を持っておりますが,常識の根本が変わってしまう危惧を,本当に抱いております。
ということで,一刻も早く若年層の時代から,きちんと著作権を,著作物とはどう成り立っていて,クリエーターにどうお金が入って,それでないとクリエーターは生活できないのだ,強いては,文化そのものがなくなってしまうのだということを意識させる教育の充実が,本当に求められていると思いますので,その辺を何度でも主張させていただきます。
【道垣内分科会長】ありがとうございます。
どうぞ。
【河野委員】御説明ありがとうございました。
今年度の課題として御説明,御報告いただいたことに関しましては,適切だと理解しております。
今,お二人の委員の方がお話されたことに重なりますけれども,私も,つい最近,とても気になる報道を見ました。お子さんと親のやり取りですが,「漫画や音楽って,ネットならただなのに,お店で売っているものにはお金を払うの。これって変じゃない」というお子さんの問い掛けに対して,親御さんはどう答えたかというと,非常に真っ当な回答をされていて,Youtubeや違法サイトで無料で楽しめるのだから,お金出すのばからしいというお子さんの問い掛けに,たとえ無料のものがあったとしても,そこに関わる人たちは,実はたくさんいる,漫画であれ音楽であれ,当然原作と言いましょうか,クリエーターがいて,その編集に携わる人,営業で携わる人,印刷なり,音源にする人たち,物流に関わる人たち,倉庫管理や,最終的には小売など,本当にたくさんの関わる人がいて,そういった結果として,ものが自分のところに届くのだから,たとえ一見無料と見えたとしても,皆がそのことをちゃんと理解しないといけない。お金を払わないことになったら,作る人が作れなくなってしまう。ということは,あなたの生活も,とても寂しくつまらないものになってしまうよというやり取りでした。
目に見えない部分,社会の中で今見えなくなっている部分,特にデジタル化,情報通信技術が発達して,私たちの日常では隠れている部分に,実はしっかりとお金が掛かっている,その対価は,誰かが負担しなければいけないことを,今の2人の委員の方と同様に,今こそしっかりと社会に向けて発信すべきときに来ているのではないかと思っております。
そうした,社会に対して著作権の正しい理解に向けた,その機運を醸成するには,今はいい時期だと感じております。
先ほど御紹介いただきましたとおり,5月25日には,新しい法律改正がなされました。それをさかのぼり,4月には,インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策等が,政府から報告という形で報道されました。さらには,もう少し大きな土壌で考えますと,2015年に国連で採択されました持続可能な開発のための2030アジェンダ,SDGsですね,その辺りのことを考えれば,次世代に向けて文化的な価値をつなげていくという土壌は,今こそできているのではないかと感じております。そうした土台にしっかりと現状を照らし合わせて,主張すべきは主張していく,それから,教育の現場で伝えるべきは伝えていくと,是非考えていただきたいと思います。
それから,きょう2つ目のテーマとして検討をしていったらどうかと御提案いただきました,クリエーターへの適切な対価還元でございます。この間,計画的に様々な分野に関して,専門家の方が対応を考えてくださっていると思いますが,現在,私的録画に関しましては,昨年度は,まだ手がついていない部分がございます。この辺りに関しましては,特に録画に関する技術の進歩は,1年掛けてじっくり検討している間に,もう何年分も先に技術というのは行ってしまうと,私自身は感じておりますので,是非,技術の進歩に遅れることなく,クリエーターへの対価という,文化を守っていくための原資をしっかり確保するために,この辺りは積極的に取り組んでいただきたいと思っております。
議論を丁寧にやりたいということは,私自身もよく分かっておりますけれども,昨年までの検討結果を土台として,検討を前に進めるという意識で取り組んでいただければと思います。制度が追い付いていない,つまり制度がないということが,それが録音や録画は対価なしに自由にできるということではないことをしっかりと確認した上で,正しい理解の普及につなげていただければと思っております。
以上です。
【道垣内分科会長】はい,ありがとうございます。
どうぞ,続いて。
【久保田委員】河野さんの意見に全く同感です。河野さんの団体から,こういう意見が出てきたのは,もう本当に180度転換で,すばらしいと思います。本当に,ずっとそのことで悩んでいたのですけれども,本当にきょうはありがとうございます。
私も同じようなことが言いたくて,きょうは文章も作ってきたのです。まず著作権教育に関しては,実は私,先週国語の教育機関の学会にも出てきたのですが,それはまさに「豊かな言語生活を拓く国語教育の創造」というタイトルで学会がされています。こういうところに,特に文書関連の,言語関係の著作物の団体の人が行かれて発言されると,国語の先生たちは,子供たちにどのような豊かな,表現力豊かな作文を書いてもらおうかと思って,日々思案しているわけです。
そういう意味で著作権法との関係や,著作権法が言っている創作とは何かという,本当に具体的な現場の先生ならではのワーディングで,この著作権法の骨子である創作ということについて,きょうは隣に美術の先生がいらっしゃいますけれども,美術の著作物,また,言語の著作物,そのアプローチは相当違うと思うのですが,そういうことも現場で,文化庁さんや文部科学省さんにお願いするのではなくて,それぞれクリエーターを抱えている団体が,もっと現場に行って先生たちに懇切丁寧にお話をする。また,スターのクリエーターの方を学会や学校に連れていって,創作がどういう現場で行われているかという具体的な話を,もっと子供のうちから聞かせて,子供たち自身も,自分もクリエーターになりたいと。
今SDGsと言われましたけれども,まさによりよく生きるということを,外務省などでも一生懸命考えているわけです。これだけ日本のように精神文化が豊かになってきているにもかかわらず,豊かな情報にお金を払いたくないと,海賊党みたいなことを言っていること自身,発展途上国ではないですから,本当に悲しいと思っています。
今回の法制度の検討などについても,先ほどの対価還元の話も,補償金が欲しいとか支払いたくないとかをキーワードとして言われていますけれども,まさに補償,支払いたくないと言っている立場の人が変わられて,この辺はもうそろそろと言うか,遅きに失すると思いますが,結果遅いことで,国民自体は情報に金を払わない方が幸せだ,情報が共有された方が幸せだと言ったような間違った考えが定着しないうちに,もう早く対応する時期に来ていると思います。
当協会は,そういう意味では,直接この補償金制度に関わる会員は少ないのですけれども,僭越ながら,そこについては言わせていただきました。
もう1点,著作権教育についてです。これは,文化庁さんにはかなり耳が痛いかもしれませんが,知財創造教育等ですね。現在,知財創造教育推進コンソーシアムが設置されて,いろいろな検討がされているのです。教科書作りも行われるようになっておりますし。こういう検討会の中で,残念ながら文化庁さんが参加していない。検討会での質問をいろいろ聞いてみると,余り産業財産権の進歩性とか新規性とか,そういう議論がされているわけではなくて,ほとんど著作権法に関わる質問が中心なのです。
ということは,初等教育,中等教育レベルで,産業財産権教育を,真っ向から法制度上から,持ってくるよりは,創造・創作というレベルで,著作物についての疑問や,人間が創造や創作するベースとしての情報に対する取捨選択とか発信の問題を,もっと分かりやすく伝えていく必要があります。こういった検討会では,経産省や特許庁や,文部科学省や農林省が参加しておりますけれども,文化庁さんがいなければ困るのです。そういう場において,きちんと50年の歴史を持って知見があるところを披露していただきたい。そういった会議に反映させて,内閣府の知財の教育活動などに,もっと文化庁さんが著作権に関わる,又その周辺について知見を述べていただければ,相当,私は大きく流れが変わる時期に来ていると思います。
以上です。よろしくお願いします。
【道垣内分科会長】ありがとうございました。ではどうぞ。
【瀬尾委員】この検討課題について,今海賊版とかいろいろなことがあります。いろいろたくさんあるのですけれども,きょうは1点だけ。
まず,この審議事項の1番,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に関わる基本的問題に関することの中で,1つお願いをしたいことがあります。
それは,昔,入江観先生という女子美の先生がずっとおっしゃっていたことでもございます。追及権という権利が世界的にあるのですけれども,日本ではほとんど知られておりません。これはどういうものかと言うと,例えば絵画の原作が販売され,次に売られるとき,又その次に売られるとき,その一部を著作者に還元するシステムであり,権利であります。
これにつきまして,新しい権利を1つ創設することは,非常に大変なことでもあるし,その影響等を含めて,簡単なことではないのは重々承知しておりますけれども,これについて,どのような取組か,調査なのか,議題の1つなのか,現状の把握なのか,どのような形でも,とりあえず1つのテーマとして取り上げていただきたいと思います。
なぜならば,これは単純に権利を1つ創設して,権利者がそれを得ることが重要だという観点だけでは,ございません。この辺については,美術家の北郷先生も出席していらっしゃいますところ,写真である私から申し上げるのも恐縮ですが,美術,写真などの視覚芸術の著作権をきちんと保護していくためには,流通をきちんとさせていくという積極的な流通政策があって,初めて保護ができると思っております。この追及権とは,新しい流通の仕方,美術若しくは写真,若しくはスクリプトなどの原作を流通させることに対して,非常に深く関わっている権利だと思っています。
ですので,この権利をきちんと回すことができるということは,今,非常に昔ながらのやり方というか,そういう形である原作品の流通に新しい視点をもたらすのではないかと考えているからです。
また,それともう1つは,AIの時代に,AIは,どんどん作品を作り出します。これによって,社会にコンテンツは豊富化して,これまでのロジックで言えば,皆幸せになっていくということがあるのかもしれません。でも,彼らの学習する対象というのは,限られたリソースです。常に人が作り出したものが新しいリソースになっていく時代には,それを奨励していかないと,きっと文化自体は停滞してしまう。同じものの繰り返しになってしまう。とすると,新しいクリエーターを育てることが,このAI時代だからこそ急務なのではないかと思います。
ですので,追及権などは,はっきり言って,大家の先生方はもともと販売価格が高いですから,それほど恩恵はないのです。これから出る若い方たちに,インセンティブを与えて,新しい創作を掘り出していくことのために,何らかの検討をお願いしたいと思っております。
こういう新しい切り口を出していくことが,創作の活性化につながるし,流通の活性化にもつながるし,そして,しいては,保護と流通のバランスを取ることになるのではないかと考えております。
方法等その他について,急に言われても,なかなか文化庁も難しいかもしれませんけれども,何らかの,この審議事項1の中に,少しでも入れていっていただきたいとお願いいたします。
以上です。
【道垣内分科会長】どうぞ。
【永江委員】文藝家協会の永江でございます。
せっかく瀬尾さんがおっしゃったのに,又サイトブロッキングの話に戻して申し訳ございません。
著作権教育が重要だというのは言うまでもないことですけれども,ただ今回の緊急避難的な措置と言いますか,4月に緊急対策が発表されてから,事実上,名前具体的に挙げられた3つのサイトは,アクセスできなくなったわけですよね。
今回の緊急措置が行われる前提になったのが,この資料の,参考資料3-1の6ページにある,被害見積りがあったわけです。これを見ると,漫画村では,月間1億6,000万人という日本人の人口を超える日本人がアクセスしたというすごい数になっていて,金額も出ているわけです。
事実上,これが発表されてから,3つのサイトにはアクセスできなくなり,もう一月余りたったわけです。出版界としては,実際に売上げとして,どれだけこの1か月で増えたのかを,国民に対して説明をする必要があるのだろうと思います。
というのは,憲法で保障された国民の権利を侵害しかねない形でのサイトブロッキングをやるぞというふうに見せた,その根拠の数字ですから。この被害額が本当に妥当だったのかどうなのか,出版界は,これから説明が求められるだろうと思います。
もう1つは,サイトブロッキングしていく,著作権について啓蒙をしていくことだけでいいのかということも感じます。
漫画村だけでも1億6,000万人ものユーザーが漫画を読みたいと思っている読者がいる。彼らが,本,コンテンツを読みたい,利用したいと思っているということは,まぎれもない事実です。なおかつ,その漫画村は利益を上げていたわけですから,だったら,合法化してしまって,そっくりそのお金を取り上げて,漫画家に分配するみたいな形だってあり得るだろう。音楽で言うと,海賊版が散々横行した後で,今のSpotifyだとか,Appleミュージック,amazonミュージックなどのサブスクリプションモデルによる音楽の消費のされ方が発展したわけですよね。だから,犯罪の先に新しい文化が作られてきたのだと考えるならば,単純にブロッキングして遮断して,非合法化するだけではなくて,これだけいる読者を,間接的に広告収入というのが背景にあってでもあれ,それで成り立つコンテンツの消費のされ方も作っていかないと,読者が拡大していかないのではないか。読むな,見るなと言うだけでは,将来の読者が育っていかないのではないかと思います。
また,なぜこのような海賊版が横行するのかという理由の1つとして,昔のように1冊の漫画を皆で回し読みみたいなことができなくなったことが背景にあるのではないかという評者もいます。読者にとってコンテンツを享受するのはどういうことかも含めて考えていかないと,それが,次のビジネス,文化につながる,あるいはビジネスにつながることが,芽を摘んでしまってはいけないとも考えています。
以上です。
【道垣内分科会長】では,もう一度,どうぞ。
【井上(伸)委員】きょうは,映画製作者連盟から来ているはずですが,出版にも若干関わっておりますので。
今の永江先生の御指摘は,そういう御意見もあるとは思うのですけれども,一方で,海賊版サイトによる被害額と,海賊版サイト閉鎖直後の実際の売上げ増加額は,別のものだと,我々は捉えております。だから,海賊版サイト閉鎖直後にその分売上げが伸びたか伸びなかったかというのは,また別の問題かと。仮に閲覧した人に売れていたならば得られたはずの金額が被害なのであって,それがこれぐらいの額であったということでございます。
もちろん,出版社側にも大きな責任があると思います。出版社側の努力として,よく言われるのは,そういうサイトを活用して,余り何もやっていないのではないかという御指摘があります。実際,そのようなこともなく,個々の漫画出版社は,それなりの努力をしております。
例えば,私の所属しているKADOKAWAという会社は,3年前からネット上で,自社のコミックを,ほとんど今全て公開している。コミックウォーカーというサイトを運営しております。これは,最新の話数を見て,それはだんだん消えていくわけで,結局それはプロモーションとして使っているわけです。単にそれで終わりかと言うと,そこから電子書籍の販売サイト,例えばブックウォーカーやamazonなどに読者を紹介して,気に入った作品があれば,その電子書店で対価を払って買っていただく。それは,eBookであったり,ものによっては,フィジカルな漫画単行本などもそこで買えるというものをやっております。今,月間でもう200万ユニークユーザー,実際200万人の読者を持っているところまで育っております。というところで,月間の売上げも,ウェブだけですね,今2,500万円ぐらいの月の売上げをそこで売っているということで,これも徐々に育っている。各社スマホのアプリなども使って,課金も積極的にやっております。
では,出版社が運営するプロモーションサイトと海賊版は何が違うのかと言うと,それはもちろん著者のOKを得ているかどうか。著作の権利を侵害しているかどうかというところで明確に違ってくるわけです。一般の読者からすると,これはプロモーションでただで読めるのに,なぜ漫画村は駄目なのというところを,逆にきちんと説明していく。それこそ教育していかなければいけないというのは,大きな課題ではあるかと考えております。
先ほど自分のところで言い忘れて,自分の息子のエピソードを若干披露させていただきます。
私の息子は,幼い頃から小説や漫画,場合によってはゲームやアニメは,作家の努力と関係者の大きな制作費を投じて作られていくもので,必ずお金を出して買いなさいと教育してまいりました。変な話,自社の出版物やアニメなど,私が見本を持っているわけですから,極端に言えばただでもらえる立場にいるのですけれども,彼は必ず買いますね,今でも。先般も,KADOKAWAから発売されるアニメのDVDが,「この作品もうすぐ出るよ」という話をしたら,「では買わなきゃ」というふうに,いかに幼少期の教育が重要かという一例かと思っております。
私自身も最近勉強したことはすぐに忘れてしまうのですが,子供の頃に学校で習ったことというのは意外と覚えていたりしますので,先ほどの話に戻りますが,是非義務教育の時代に,きちんとした著作権教育をしていただきたい,充実させていただきたいという繰り返しでございます。
【道垣内分科会長】ありがとうございました。
今様々な御意見を頂きました。
第1に,インターネット上のいろいろな著作権絡みの困った問題にフォーカスが当たりがちであり,それは確かに重要だということです。これについては,ただ時間を掛けるよりは,さっさと議論をして,ちゃんとインプリメントしていくのが必要だと御指摘がありました。
それから第2に,追及権のように,インターネット上の問題に埋もれている問題についても御指摘がありました。しかるべき場において,このような問題にもちゃんと目配りして,議論する時間は取り,必要な論点を詰めていくべきかと思います。
第3に,著作権保護についての教育啓発についての御指摘がありました。昔から,幼稚園ぐらい頃にきちんと学ぶことが大切だといわれていますので,義務教育だと遅いかもしれない。うそをつかないとか,人のものを盗まないとか,そういうことと一緒に,見えないものだし,お金を出して買ったものであっても,中身をコピーしたり,インターネットに載せたりするいけないことだということを教える必要があろうかと思います。これは,見えないものですので,なかなか難しいわけです。幼稚園の子にどう説明するのか,私にはよく分かりませんが,先ほどのお母さんみたいな方を連れてきて,上手に説明していただきたいと思います。
幼稚園は,文科省の管轄外ですか。
【永山長官官房審議官】中です。
【道垣内分科会長】中ですか。では,幼稚園の頃から,とにかく早い段階で教育啓発を行っていただければと思います。
以上のことは伺ったということで,この審議事項自体はこれでよいということで,よろしゅうございますでしょうか。
ありがとうございます。それでは,この分科会としては,今のような御意見を頂いたということで,今後対応していきたいと思います。
それでは引き続きまして,これを受けて議事の5番目,小委員会の設置でございます。これも,事務局から御説明いただけますでしょうか。
【秋山著作権課長補佐】資料6,小委員会の設置について(案)と題する資料を御説明いたします。
2ポツにございますように,3つの小委員会の設置を御提案したいと思います。
まず1つ目,法制・基本問題小委員会。こちらでは,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関することについて,処理をしていただきたいと思います。
2つ目,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会。こちらでは,クリエーターへの適切な対価還元等に関することを処理していただくことを想定しております。
3つ目,国際小委員会。こちらでは,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することを処理していただくことを想定しております。
各小委員会の構成につきましては,著作権分科会長が指名する委員等によって構成をすることとなってございます。
御説明,以上でございます。よろしくお願いいたします。
【道垣内分科会長】ありがとうございます。
この3つの小委員会を設置することにつきまして,いかがでございましょうか。
これ以外に,使用料部会は自動的に設置になっています。それぞれで御審議いただいて,ここに上げていただくことになろうかと思うのです。
委員につきましては,小委員会設置を御決定いただいたことを受けて,指名をさせていただくことにしたいと思います。事務局から連絡が行きましたらよろしくお願いいたします。
以上が用意された議事です。よろしゅうございますでしょうか。
その他,この際意見を頂けることがあればお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
では,今後は,小委員会が設置され,その委員も決まり,それぞれの小委員会での審議をしていただいた上で,分科会の日程を調整して開催させていただきたいと思います。
では,最後に,事務局から連絡事項等ございますでしょうか。
【秋山著作権課長補佐】次回分科会のスケジュールにつきましては,小委員会の検討状況等を踏まえつつ,追って調整させていただければと思います。
ありがとうございました。
【道垣内分科会長】では,きょうも長い間ありがとうございました。
――了――
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