文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第5回)

日時:平成26年9月30日(火)
    10:00~12:00
場所:東海大学校友会館 阿蘇の間

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クラウドサービス等と著作権について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第4回)における主な意見概要(案)(273KB)
資料2
一般社団法人日本経済団体連合会提出資料(190KB)
資料3
浅石委員・畑委員・椎名委員提出資料(397KB)
参考資料1
ロッカー型クラウドサービスの分類について(平成25年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム(第2回)配付資料1)(453KB)
参考資料2
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第1回~第3回)等におけるクラウドサービス等と著作権に関する主な意見概要(案) (421KB)
参考資料3
公衆用設置自動複製機器関係参照条文 (87KB)

議事内容

【土肥主査】  それでは,定刻でございますので,まだ委員全員御出席ではないようでありますけれども,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第5回を開催したいと存じます。本日はお忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてです。予定されておる議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするに及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 なお,本日は津田委員が御欠席ということでございますので,津田委員の申出によりまして,一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事の小寺様がオブザーバーとして出席されておりますので,御紹介いたします。
 次に,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  お手元の議事次第の下半分のところを御覧ください。今回は,資料1としまして,前回小委員会における意見概要,資料2としまして,一般社団法人日本経済団体連合会様の提出資料,資料3としまして,浅石委員,畑委員,椎名委員からの提出資料を御用意しています。それから,参考資料1から3としまして,本課題に関連する資料を議事次第記載のとおり御用意しております。
 落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお伝えください。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,議事に入りますけれども,初めに議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,(1)クラウドサービス等と著作権について,(2)その他の2点でございます。
 (1)の議事に入りたいと思います。クラウドサービス等と著作権の問題につきましては,前回の本小委員会において議論すべきポイントが絞られてきたように思います。そこで,本日は,事務局から前回の議論の概要を論点ごとに整理いただいているということでございますので,まずはこれを御説明いただきたいと考えております。
 また,一般社団法人日本経済団体連合会から,クラウドサービスと著作権に関する考え方について意見が提出されております。本小委員会における審議の参考となると,このように考えますので,これについても併せて事務局から説明をいただき,これらに基づいて議論を行いたいと思います。
 さらに,本日は,権利者側の委員から意見発表の御希望がございましたので,御発表いただき,質疑応答と討議を行いたいと思っております。
 それでは,前回の議論の概要案及び一般社団法人日本経済団体連合会からの提出資料につきまして,事務局から説明をいただければと存じます。よろしくお願いします。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,御説明いたします。まず,資料1を御覧ください。前回の小委員会におきましては,ロッカー型クラウドサービスのうち,タイプ2に関して重点的な議論が行われました。本日の論点の整理の仕方としましては,汎用ロッカー型サービスに関する意見,そのうちの利用行為主体について,それから,公衆用設置自動複製機器該当性について,さらに,対価の関連について,それから,汎用ロッカー型以外のロッカー型サービスに関する利用行為主体等についてということでまとめをさせていただいております。
 まず,1ページの汎用ロッカー型サービスに関する意見から紹介したいと思います。利用行為主体についてでございますが,まず行為主体は利用者であるという見解としまして,Dropboxなど一般的なユーザーアップロード型の汎用ロッカー型クラウドサービスについては,私的使用目的の範囲内と整理されるという御意見がございました。
 また,事業者の行為主体性が認められる条件としまして,コンテンツを事業者が提供しているといったことを含めた三つの要件が必要であるとされた上で,本件を当てはめると1の要件が満たされないということで,汎用ロッカー型の行為主体は利用者と解するべきであるという御意見もございました。
 また,利用者が行為主体であるという理由付けとしまして,三つ目にありますように,サーバーが普及して当たり前の技術になっており,普通の道具として見るべきであるというような御意見もございました。また,この御意見の際には,ロクラク2事件判決の結論が当該ケースについての主体の認定を行ったものであるから,汎用ロッカー型サービスの主体の判断には影響がないというような御見解もございました。
 また,こうした御意見に対しましては,行為主体は事業者であるという見解としまして,事業者が営利活動として利用者に複製の場を提供しているサービスであるという点に着目すれば,このようなサービスは私的使用目的の複製の範囲内と整理することには反対であるという御意見もございました。
 次に,(2)としまして,汎用ロッカー型クラウドサービスにおけるサーバーの公衆用設置自動複製機器の該当性についての意見を整理してございます。ここでは,該当しないとする見解としましては,現行法の解釈上該当しないとする見解と,それから,立法的な対応が適切とする見解がございました。
 まず解釈上該当しないとする見解でございます。一つ目としましては,条文の解釈においては,立法趣旨や立法経緯を踏まえるべきであるとされた上で,公衆用設置自動複製機器に関する規定が制定された際は,貸しレコード店などが問題となったということで,高速ダビング機器のようなものが想定されていたということでございました。それから,文言上も,「設置されている」という文言に表されていることから,サーバーはこれに該当しないのではないかという御意見でございました。
 2ページ目をお願いいたします。もう一つ,サーバーが公衆用設置自動複製機器に該当しないという御意見に関してですが,自動公衆送信装置が公衆に送信するという機能自体が装置に対して条文上定義されているのに対しまして,法第30条1項1号の公衆用設置自動複製機器は条文上はそのような規定をされていないということで,複製の機能の単位で見ればよいということで,差を付けて考えることも許容されるべきではないかという御意見がございました。
 また,仮にクラウドサーバーが公衆用設置自動複製機器に該当すると解すると,そういったサーバー以外にも,立法当初想定されていた高速ダビング機器等以外の様々な機器が該当することになってしまい,これら全てを除外することは困難ではないかという御意見もございました。  それから,条文上該当しない旨を明確にすることが適切であるという見解ということでございます。まず一つ目の矢印ですけれども,該当性の有無に疑義があるというのであれば,条文上明確にすることも意義があるのではないかという御意見でございました。もう一つの御意見としましては,クラウド上のサーバーは全体として公衆に提供されているということで該当性があるという解釈の可能性もあるということでございまして,立法的な対応が適切ではないかという御意見でございました。
 次に,該当するとの見解でございます。一つ目にありますように,公衆用設置自動複製機器を用いた複製について権利者の許諾が必要とされているのは,第三者の関与と当該第三者が利益を享受しているという観点が重視されているのではないかということで,該当しないという整理でいいかは疑問であるという御意見でございます。それから,こうした議論に関連しまして,こういう該当性の議論をするのであれば,法第30条第1項自体がクラウドがなかった時代に制定されたものであるということを踏まえて,同項全体について議論すべきではないかという御意見もございました。
 次の論点としまして,(3)権利者への適切な対価の還元についての御意見を紹介いたします。この点につきましては,汎用ロッカー型について私的使用目的の複製の範囲内と整理した場合には,私的録音録画補償金制度に相当するような制度など,クリエーターへの対価の還元についても論点となるのではないかという御意見がございました。これに対しましては,まずは汎用ロッカー型が私的使用目的の範囲内と整理し得るかを決することが先であり,こうした対価の還元については今後の議論とするべきではないかという御意見があったところでございます。
 3ページ目をお願いいたします。汎用ロッカー型以外のロッカー型クラウドサービスに関する御意見として,まず(1)の利用行為主体についての御意見でございます。一つ目の矢印のところでございますけれども,複製の主体というのは,複製の対象,複製の方法,複製への関与の程度といったいろいろな事情を総合的に考慮して判断するというのが最高裁の立場であるということで,その適法性を明確に切り分けることは難しいのではないかという御意見がございました。
 それから,少なくともこれは利用行為主体が個人であるから適法というボトムラインはともかくとして,上限をどこまでとするかを決めるのは困難であるという御意見がございました。
 それから,今後,技術がどう進歩してくか分からない状況の中では,ロッカー型クラウドサービスについて明文の規定を置くことはかえっていろいろな弊害を生み出しかねないのではないかという御意見がございました。
 こうした利用行為主体の切り分けが困難であるという場合の対応についての御意見として,下に三つ整理してございます。まず訴訟による対応を図ればいいのではないかということで,将来様々なクラウドサービスが登場することになると思うが,仮に特定のサービスについて主体の認定に争いが生じる場合には,訴訟によって個別具体的に解決を図ればよいという御意見でございました。
 一方,こうした切り分けが困難ということに関しては,コンテンツに対する関与又はコンテンツを提供する場に関与している事業者が,権利者と何らかのライセンス契約を締結することで広く適法性を確保する方策の方が現実的ではないかという御意見。
 それから,法律でカバーできない部分については,訴訟による解決を図るのか,リスクヘッジのために契約を締結するのかは,事業者において判断されるべきではないかと,こうした御意見がございました。
 前回の御意見に関しては以上でございます。
 それでは次に,資料2に移らせていただきます。先ほど主査から御紹介があったように,一般社団法人日本経済団体連合会の産業技術本部様から,本課題,クラウドサービスと著作権に関する考え方ということでペーパーの御提出をいただいていますので,事務局から代わって読ませていただきます。
 経緯の部分に関しましては,クラウドサービスが日々進化,発展しているというようなことが述べられた上で,あとは,こうした議論が審議会で行われることとなった経緯がここに述べられてございます。中身は省略させていただきます。
 2ポツ,「タイプ2」サービスの促進というところでございます。タイプ2の中にも多様なサービスがあり,今後も新しいサービスの展開が見込まれるとされた上で,利用者利便の観点に立てば,現在享受しているサービスが引き続き利用できるとともに,将来より魅力的なサービスが利用できるための環境整備がなされるべきであるとされております。
 こうした観点から,現在提供されているサービスは基本的に継続されることが望ましく,既存の事業者に新たな義務を課す等の負担が強化されるべきではないとされております。他方,新規事業者の参入の促進並びにサービス自体の今後の発展に向け,事業者が一括で円滑に権利者と契約できる集中管理型ライセンシング体制の構築が有効な方策として認められるべきであるというふうな御意見を頂いております。
 3ポツは,これはロッカー型クラウドサービス以外の点も含めた今後に向けてということに関する御意見でございます。ここでは,文化審議会において現在ロッカー型クラウドサービスに焦点を当てた検討を行っているということを踏まえて,今後当該サービス以外の形態に関する検討を積極的に行うよう求められております。
 また,そもそも現行の著作権法は,急速に進展しているデジタルネットワーク社会に必ずしも合致していない面があり,当事者間の契約を進めることや,弥縫策的な法改正を重ねることだけでは限界があるとの指摘もあるとされた上で,文化審議会には,コンテンツの創造,保護,利用のバランスの観点から,デジタルネットワーク時代にふさわしい著作権法の在り方について,より根本的で包括的・網羅的な議論を行うことを期待するとされてございます。説明は以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,ただいま事務局におまとめいただいておりましたところをお聞きいただいたわけでございますけれども,この資料1に従って議論を行いたいと思っております。まず1ポツ(1)の利用行為主体でございますけれども,これは前回の小委員会における議論において,汎用ロッカー型クラウドサービスの行為主体は利用者と,このように考えられるという御意見を多くの委員から頂戴しておるところでございますので,本日は,(2)の汎用ロッカー型クラウドサービスにおけるサーバーの公衆用設置自動複製機器該当性から議論を行いたいと思います。先ほどの説明にございましたように,前回も後半部分においてこの問題については議論に取り掛かっておるところでございます。前回の議論に引き続き,この点から本日は御意見を伺いたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。どうぞ御自由に御意見頂ければと思います。
 浅石委員,どうぞ。

【浅石委員】  主査から今整理していただきましたが,今回,公衆用設置自動複製機器の該当性についての議論を進めるということでございます。資料1のとおり,利用行為主体について,一部を除いてユーザーであるということについての御意見というのはある程度まとまっているのかなということでございますが,30条1項に該当するかどうかというところの議論がされないままに自動複製機器該当性の議論に入ってしまっているのではないかと思います。まずは,利用行為主体が利用者であった場合について30条1項に該当するかということの御判断を頂かなければ,次に進めないのではないかと私は考えております。
 資料の2ページの(3)の一つ上のところに,その旨,制定当時の趣旨,目的をまず検討した上で議論を進めるべきという発言をさせていただきました。私としては,立法趣旨について全てを読むことができませんけれども,加戸さんの逐条講義を見ますと,第1項の立法趣旨について,閉鎖的な範囲内の零細な利用を許容するものであって,外部の者を介入させる複製を認めないと,立法趣旨に書かれてございます。次の自動複製機器についても,第1項第1号の説明で加戸さんは,外部の者を介在させる複製を認めていないことから見まして,私的複製の名の下に認容し難い事態でありますというふうに立法趣旨を御説明してございます。
 そういう意味からいきますと,私は,外部の者が介入しているクラウド事業というサービスについては,仮に利用行為主体が利用者であったとしても,30条1項には該当しないと考えております。

【土肥主査】  ほかにございますか。
 では,椎名委員。

【椎名委員】  公衆用設置自動複製機器に該当しないという見解の中で,これ,立法時に想定していたのは,高速ダビング機器のようなものを想定していたんだということが書いてあります。当時の複製というのは,例えば3分40秒の曲があったら,それを複製するのには3分40秒掛かったわけです。正に高速ダビング機器というのは,1曲20秒ぐらいでコピーをしてしまうというようなことを当時想定していたんだとするならば,正に今,サーバーに楽曲を上げるのに,トラフィックのスピードもありましょうけれども,1曲20秒から30秒程度,正に高速ダビングに相当するものではないかと思います。だから,高速ダビング機器を想定していたんだからとすれば,正に該当するんではないかと思います。

【土肥主査】  ほかにございますか。
 大渕委員どうぞ。

【大渕委員】  今まで御発言があったところに2点あります。先ほどの資料1で御説明いただいた2ページに,先ほども言及されておりましたが,(3)と書いてある真上のところの先ほど議論になっておりました,法30条1項1号自体がクラウドがなかった時代に制定されたものであることを踏まえてうんぬんというくだりであります。これと,対比してみると分かりやすいかと思います。
 これも言わずもがなのことでありますけれども,30条1項というのは,柱書ないし本文と,例外である1号,2号,3号から成るという形をとっております。まず30条1項の話というのは30条1項全体の話だし,30条1項1号というのは1号だけの話で,それぞれ別々に区別して考えていく必要があるかと思います。1号の方は,前回申し上げたとおり,先ほど言及のあった高速ダビング機器を想定して,そういうものを含めるものとして,先ほどありましたけれども,法解釈についてのごくごく普通の一般理論だと思いますけれども,文言だけではなくて立法趣旨や立法目的,立法経緯等を総合的に考慮して立法者の合理的意思を探求して法解釈を行っていくというのは鉄則のようなものだろうと思います。
 その観点から致しますと,1号については当時,立法,先ほどまとめていただいたとおりなので文言は繰り返して申し上げませんが,その話は1号の単位で考えた話ですけれども,30条1項の方は,30条1項が当初作られた際の議論と,その後,30条1項の骨格を維持しつつ,当初は1号,2号,3号という例外がなかったのが,1号,2号,3号という例外ができて,3号の例外というのはこの文化審でもごく最近に行った議論であります。
 そのような意味では,この30条1項全体というのは,昭和45年にだけ考えたわけではなくて,それを再確認する形で1号,2号,3号とできております。現行法というのは3号まで入った上での話ですので, 3号を作った際には,サーバーが30条1項の対象にならないと思っていたら,この3号を作るはずもないわけですから,これは当然対象となるという上で,1号,2号,3号というように,30条1項の範囲の例外が次第に広がってきているということです。
 30条1項全体について考える際には,当然現行法として考えるべきものでありますので,それは3号が入ったものということなので,3号を入れた時点では,サーバーなども対象になることは当然の前提になっておりますので,その話と1号の話とは,繰り返しになりますけれども,30条1項全体の単位として考える3号まで入った話と,1号だけの話というのは次元が異なるのではないかと思っております。
 それから,先ほど立法論として高速ダビング機器が入っているのだったら,サーバーも似たような話ではないかというのはまた別途あるかと思います。これは今後,1号を広げてサーバーまで入れるかという立法論があるとしたらそういう話なのかもしれないのですが,現行法の1号として入るかという解釈論であれば,この点については,1号を作ったときに立法者が想定した範囲に限定されるというのは当然ではないかと思っています。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 奥邨委員どうぞ。

【奥邨委員】  公衆用設置自動複製機器の関連であります。確かに当時,高速ダビングマシンが念頭にあったわけですけれども,当時なぜ規制したかといえば,それは業者が預かってコピーをすると違法になるので,その代わりに機械を使わせていたと。通常,業者が預かってコピーをする場合は,家庭の中にはないような特殊な機械でコピーをするんだけども,それをユーザーに使わせていたという状況があって,コピー業者による一種の法律回避のような行為が行われていたわけです。
 ところが,今回のロッカーの場合は,高速といっても家庭の中にあるハードディスクと同じか,むしろインターネットを通じれば遅くなるわけでありまして,別にそこは差がない。たとえると,家庭の中にあるハードディスクと同じものが,長い線があってずっと先のところに設置されているというふうに見ることも可能なのです。業者がコピーをする代わりにユーザーにさせるというふうな一種の法律回避行為を規制したというところに1号の趣旨があったとすると,今回は家庭の中で行っていることとある程度等価だということを考えますと,同じ土俵にのってくる機械ではないんではないかなというのが,私自身の感想として思っているところであります。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 補足ですか。

【椎名委員】  いや,大渕先生のお話についてなんですが。

【土肥主査】  じゃ,どうぞ。マイクをお願いします。

【椎名委員】  3項がもうサーバーを想定していて書いてあるんだというお話だったんですが,僕,読みますと,これはやっぱり今回整理されている汎用ロッカーを中心とした類型の中にあるものとしてではなく,違法配信とかそういったものの温床としてのネットワーク利用について述べられていると思うので,今,汎用ロッカーサービスを中心として展開されているユーザーに対する利便性の提供とは一種違うのではないかなというふうに思ってお話を聞いていました。
 それから,奥邨委員のおっしゃったことは,家庭内でやることが広がっていって,ある種違法を幇助(ほうじょ)するというような言い方をされたんですが,権利者にとっての影響としては同じなんですね。私的な複製という,ユーザー自身ができる範囲内でのことを超えて複製が拡散していくという意味では,権利者にとっては全く同じことに映るんです。その点だけ指摘させていただきます。

【奥邨委員】  よろしいですか。

【土肥主査】  奥邨委員どうぞ。

【奥邨委員】  御意見についてコメントするということではないんですが,若干だけ補足ということで。私,違法幇助(ほうじょ)するということを申し上げたつもりは全くなくて,業者自体が預かってコピーするとそれは違法なので,それを回避するために,ユーザーがやっているという見掛けを作るという意味を申し上げたわけです。誰かの違法行為を誰かが幇助(ほうじょ)するということではなくて,むしろ逆に,違法になるのを見掛け上,まあ,見掛けかどうかというような議論があるのかもしれませんけれども,回避するために機械を使わせたということです。見掛けは一種の回避行為,脱法とまで言っていいかどうか分かりませんが,それはけしからんだろうというのが1号だったんだけれども,今回の状況はそういう状況なのだろうかなという,そういう差があるのかなという議論です。幇助(ほうじょ)うんぬんではないかなという理解をしております。

【土肥主査】  大渕委員どうぞ。

【大渕委員】  先ほど椎名委員から御指摘があった点なのですけれども,この二つの議論は別にした方がいいかという,そういう話で,御安心くださいという感じなのですが。二つのものが実質的に一緒かというのはまた別途やっていただくことにして,先ほど申し上げたのは,1号ができた際には恐らくサーバーというのを想定していなかったということに異論ない。それと同じような議論を45年法の時点でやると,30条1項にサーバーは入らないのではないかという議論になりそうなので,45年の際だけだったらそうだったのでしょうが,この30条1項というのは類似の1号が付き,2号が付き,ごく最近3号が付きということになっております。そういう意味では基準時がどんどん繰り下がってきて,3号導入後の現行法としてはサーバーは全く想定しているような時点以降のものなので,30条1項の立法者の意思としてサーバーが入っていないというのは恐らく現時点では誰もそういうことは思ってないと。その上で,だから,今回何らかの形で立法する際に実質的にどう考えるのかというのは次の段階の話だと思っておりますので,そこの点だけ少し指摘させていただければと思います。

【土肥主査】  今現在御意見頂戴しておりますところは,該当性を肯定される方,それから,該当性を否定される委員の方の御意見なんですけれども,先ほど事務局から御説明いただいた中には,それなら明確にすればいいじゃないかという御意見も前回当然あったわけであります。この辺りの御意見の委員の方から何かございますか。それはございませんか。
 浅石委員どうぞ。

【浅石委員】  そこのところ,是非お教えいただきたいところがあります。要は,私有財産を制限しようということになってくると思うわけです。そうしますと,文化庁のホームページを見ますと,「著作権なるほど質問箱」というところがありまして,著作物等の例外的な無断複製ができる場合というところで,通常は公益を実現するための費用は税金で賄われていますが,著作権の制限の場合はその費用を権利者個人に負わせているということもよく認識しておく必要がありますというふうに記載されています。
 これは憲法29条の3号の,私有財産は,正当な補償の下にこれを公共のために用いることができるということを意識して書かれていると読めるのではないかというふうに私なりに判断しております。そうしますと,法律で改正しようというところで29条の2項に,公共の福祉に適合するように法律で定めるんだというふうに書いております。ですから,法改正をしようというところにおいて,公共の福祉とか公共というところと,今行われている個人の利便性,それから,私企業の営利目的というサービスが公共の福祉あるいは公共目的に該当するのかというところの判断をした上で法改正に行くのかというところ,私,ここのところがよく分からないので,その辺り,憲法の問題等含めて著作権法を,いわゆる私有財産の問題をどう制限するのか,この辺については是非先生方の御意見を聞かせていただければなと思っております。

【土肥主査】  純粋ロッカー型のサービスの議論をしているわけですけれども,別に純粋ロッカー型サービスの場合は,JASRACが管理されておるところの楽曲が当然含まれているわけでもないんですね。私的使用目的で,かつ利用者が主体であるというところにおいていわば自動公衆送信装置に該当するというようなことになっていったとき,一部の委員から御説明いただいておりますけれども,当初予定していないようなそういう文言がクラウドの純粋型ロッカー型のサービスについて否定してしまうというふうになってくるということは,私なんかの認識だと,いわばしっぽが頭を振ってしまうような話だと思っています。つまり,その文言がもし問題であれば,それは改正すればいいだけの話じゃないかなと思うんですけれども,そういうふうには考えられませんか。

【浅石委員】  主査の御意見ですが,最初に申し上げたとおり,30条1項柱書に当たるのかどうかということについて全く議論がされないままに,それは自明の理として次に進もうというふうにお考えになっているのではないかと,今の御意見を伺うと思えてしょうがないんですね。ですから,閉鎖的な範囲の零細な利用を許容するものであって,外部の者を介入させる複製を認めないとした30条1項柱書の立法趣旨,これに今のクラウドのビジネス,サービスが該当するのかどうかを検討した上で次に進むのではないかと思いますが,そこの議論を主査も吹っ飛ばして自動複製機器うんぬんというところに進むのははいかがなものでしょうかと考えております。

【土肥主査】  では,大渕委員どうぞ。

【大渕委員】  浅石委員の方から非常にいわば学者好みというか根源的な質問を出していただいた以上は,私も答えざるを得ませんので。憲法29条というのは,別途やっております職務発明についての審議会でもよく出てきて,最近注目を集めている条文ではあります。著作権法1条に,その精神を具現化したような財産権としての本質を具現したような条文がせっかくありますので,それを使って説明させていただければ。
 釈迦に説法で前の方は飛ばしますが,この法律は,・・・を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的とするということで,これ,憲法29条的なものを当然踏まえた上で著作権法として著作権法の趣旨,目的に沿った形でパラフレーズされている,説明しやすいもの。特許法の審議会では特許法の条文を使いましたけれども,ここでは著作権法だから,著作権法の条文を使わせていただきます。
 その観点からいうと,この30条というのは,私なりの理解では非常に,著作者の利益というのが一方にあれば,それをサポートする業者というのはちょっと置いておいて,30条1項のこの原型を考えると,一方には著作者の権利があり,一方では我々私人がそれを私的使用のために利用するという,対抗利益ないし私的行動の自由というものは,これは憲法13条を持ってくるかどうかは別として,ほとんど誰も余り異論がないところです。憲法29条対憲法13条という図式がいいのかどうかは別として,憲法的な利益に対しては憲法的な利益もあって,そういうものを悩み悩んで,私は,加戸先生がそうだったかと思うのですが,それを導いたのがここで,両者のバランスに配慮しつつ考えるべしということであります。このようなものでありまして,そこで何かすっ飛ばしたわけでもないと思っています。
 最近出した,『著作権研究』掲載の「著作権間接侵害の基本的枠組」の中編にその辺書かせていただきましたけれども,そこの差が出てくるのはやはり主体の点であります。私人が主体であれば,やはり私人の私的行動の自由の問題となるし,業者が主体であれば,業者の方の営業的な問題となります。ここで,皆様が,30条1項の問題でさほど異論がないのは,冒頭に主査が御整理されたとおり,ここでの主体は私人だという共通認識があるためのように思われます。ここで業者が主体ということになれば,御懸念のような著作権者対ビジネスという図式になりますけれども,ここでは主体が私人ですので,そういうところのものとして皆さんが納得されているから,30条1項を前提とした上で1号の話に入っているのであって,すっ飛ばしたわけではないと理解しております。

【浅石委員】  すみません,時間を取って申し訳ないですけれども……。

【土肥主査】  いえいえ,どうぞ。

【浅石委員】  大渕先生の御発言も,立法趣旨の,外部の者を介入させる複製を認めていないということを置いて議論をなさっておるんですね。私人対私人だということなんですけれども,ここの分野には確実に外部の者の介在があるということがサービスの基本でございまして,そこはどうお考えになるのでしょうか。

【大渕委員】  外部の者の介在というのは,私の理解としては主体的介在という意味です。要するに,主体としては私人だけど,それをサポートしてあげるというのは中心は私人で,それを業者がサポートしてあげるというのは,むしろ私人の利益が中心となって,少し言葉はよくないですけれども,その私人の下僕のような形で業者が入ってくるようなものであり,業者の主体的関与ないし介在とはいえないと思われます。なお,それと,例えば共同してやるというような主体的関与ということがあり得ると思われます。私なりに理解している加戸先生の御趣旨というのは,主体的関与ということではないかと思っております。

【土肥主査】  松田委員どうぞ。

【松田委員】  加戸先生の他人の介在うんぬんということは,大渕委員と同じ意見です。全く個人の密室で個人が使用するために複製するということももちろんありますが,それを現代社会の技術と併せて考えるならば,複製機器や複製ソフトが,売られるということ自体は,これは他人の関与がありながら,なおかつ複製ができるようなものを個人が買って,その使用の目的のために自らコピーをするという,こういう状況が生まれているわけです。
 そうすると,他人の関与というのは千差万別に存在し得て,事実上の問題として,他人の関与が全くないような複製というものは,現代技術を考えると,ほぼあり得ないと考えていいんじゃないでしょうか。例えば外付けの記憶装置を昔買ってつけていましたよね。あれを売ることは他人の行為ではないのか。
 ハードディスクがPCの中にあり,外付けで線をつないでいく。その先に今度は構内において一つサーバーを置いて共通に複製をしていく。その先に,構内からインターネットを介して外に外付けがある,こういうような技術が発展していったときに,果たしてどこまでが許されるのかというのは,その技術と,個人が行う複製ということの社会的承認がだんだん拡大していくという過程の中にあるんだということを認識しなければならないんだろうと思っています。全ていいと私は言っているわけじゃありませんけれども,複製機器の在り方も考えながら1項を考えていかなければならないんだなというふうに思っているわけです。
 それで,まず1項を考えた後に自動複製機器を考えろという浅石委員の意見は分からないではないですが,30条第1項は,完全タイプ2の場合においては当たるのだという認識を持っているということは,一定の意見を持っている人たちはそうだと,私もそういう発言をいたしました。そう考えています。それは目的が個人的な使用の目的であれば,そして,使用する者がコピーをするのであれば,そのコピーをする場所というのは余り限定はされていないんじゃないでしょうか。そして,先ほど言われた加戸さんの言葉も含めて考えるなら,外部の者の介入を許さないというのは,結局,自分が自分の目的のために複製をするという形態として事実を認定できるかどうかと,こういうことに尽きるのではないかと私は思っております。

【土肥主査】  奥邨委員どうぞ。

【奥邨委員】  外部の者の関与のところなんですけれども,これについてはもちろん条文全体に掛かっている部分もあるんですが,やはり条文の中では,柱書の中であれば,「使用する者が複製する」と,今,松田委員からもありましたが,そこのところに結実しているんだろうと思うんです。外部の者が関与してはいけないからこそ,「使用する者が複製する」という規定ぶりになっている。そうすると,今回の場合ですと,ユーザーが主体となれば,これは使用する者が複製しているという整理になってくるんではないかなと思います。
 さっき言ったように1号の問題というのは,正に使用する者が複製するというところを脱法と言ったらまた問題がありますから,回避しようとするのが問題だからということであったわけです。回避によって,使用する者が複製ということだけでは押さえ切れないので1号が出てきたというふうな流れになっていくんだろうと思うのです。外部の者の関与の問題は,大渕先生がおっしゃった主体的関与のお話と結果同じですが,「使用する者が複製する」というところである程度押さえられているということではないのかなと思っている次第であります。

【土肥主査】  椎名委員どうぞ。

【椎名委員】  複製機器該当性についてネガティブな先生方の意見が多い中であえてやはり疑問を感じるんですけれども,第三者の関与ということについて,例えば仕事で使うワードのファイル,エクセルのファイル,パワーポイント,そういったものをお預かりしますというサービスで,それを展開して利益を上げるという事業者さんがいて,そこにコンテンツが入ってくることによって得られる利益に差があるとすると,その利益は一体どこから来るんだろうというふうに疑問に思ってしまうんです。やはりコンテンツを自ら複製しているんではないけれども,コンテンツの複製から利益を上げていることは確かなことだと思うんです。そこを見なくていいんですかとどうしても思ってしまうので,第三者の関与という文脈からやっぱり自動複製機器に当たるんじゃないかと思うのが1点あります。
 それと,土肥先生のおっしゃった,純粋な汎用ロッカーというふうにしばしばそういうフレーズが出てくるんですが,世の中に純粋な汎用ロッカーなんてほとんどないんです。全てが共有の機能もあり,ひどいものになると,ロッカーに預けると,そのロッカーから相手方にメールが行って,ダウンロードしてくださいみたいなものとか,強いて言えば,アップルアカウントで管理されているiCloudに関してはクローズドということが保たれていますけれども,様々な汎用ロッカーサービスと称するものは,共有とか公開の可能性を秘めている。現に,事業者さんの方からでも,そこは余り線引きしないでほしいというような意見も出ている。そうすると,純粋な汎用ロッカー型なるものについてクリティカルな法的な定義を定めていっても問題の解決にはならないんじゃないかとも思います。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございます。純粋汎用ロッカー型の存在については,実務的にそういうところがあるのかもしれませんけれども,本小委の中では,皆様の合意の中で,まずは純粋汎用ロッカー型のサービスについてまとめた上で,更にいろいろな機能を伴うようなものについて議論していこうと,こういう段取りでやってきております。そういう議論の過程の中ではそこを前提に議論していただいて,また機能を伴うような様々なタイプのものについては,タイプ2でも,右側にございましたけれども,ああいうものについては,そこでまた論じていただければと思っておりまして,今日の予定でもそういうふうにさせていただいておりますので,御了解いただければと思います。
 ほかに。
 畑委員。

【畑委員】  今まで出されておる意見の繰り返しになってしまうんですが,公衆用設置自動複製機器への該当性という部分について,やはりこの1号が設置された趣旨というのは,高速ダビング機器という趣旨にあるとおり,やはり複製が非常に容易にできる。そこに第三者がその場を提供し関与する,それによって利益を享受しているという観点でやはりこの1号というのがあるんだろうと私は理解をしています。その観点では,前回も申し上げましたけれども,これは手放しに該当しないという整理をしてしまっていいのかという点について,やはりいまだ疑問が残っているということを申し述べさせていただきます。

【土肥主査】  ほかにはございません。
 はい,どうぞ。

【作花文化庁長官官房審議官】  委員の皆さん,熱心な御討議ありがとうございます。この資料1の1ページだけでというので,既に時間も50分を経過してしまったんですね。行政としても,事務方としてもちょっとつらいことはあるんですが。申し上げておきたいのは,この1ページの例えば(1)で行為主体は利用者であるとする見解では三つ印が付いてあるということで,別にこれ,多数で決するという意味でもなくて,前回こういう意見があったという記録をとどめていると。複数の行為主体が関与する場合に,著作権の利用行為主体あるいは侵害行為主体が誰かというのは,これしょせんいろいろな意見があって,個々の事案ごとに結局は裁判所が判断せざるを得ない。しかも事案ごとの判断をせざるを得ないというのが状況だと思うんです。ですから,ここで完全にこうだという話じゃなくて,こういう意見があったという記録としてちょっと心広く見ていただければ有り難いかなと。
 それから,前回,榊原委員欠席で,代理の方が御説明いただきましたけれども,JEITAさんの方から提示された資料でも,例えばドイツなんかでは,53条で私的使用目的の複製規定がありますけれども,ここで,複製が無償で行われ,又はうんぬんかんぬんの場合にはその複製物を他人に製作させることができると,他者の関与を認めながら私的使用目的の複製を許すという規定がある。
 あるいは前回御紹介いただきました,本年,正に明日10月1日から施行されるイギリスのレギュレーションによるCDPAの改正によって,いわゆるクラウドストレージにおいても私的使用の複製として認める。ただし,アップロードする方は適法な所有者に限定するとか,あるいは日本のような私的使用の範囲というのがなくて,当該個人のみが利用できるとか,厳しい限定が掛かった上での立法がなされている。あるいは2年ぐらい前ですか,カナダにおいて前回紹介ありましたような,イギリスほどあんまり明確ではありませんが,そういうストレージを許容するような規定がある。
 つまり,何と,逆に言えば,どの国においても,私的使用目的の複製だけれども,他者が関与する場合の解釈の在り方は,これはやっぱり百家争鳴状態になって,国によっては,そこは立法において,こういう条件の下では他者が関与しても私的使用目的の複製という枠組みの中で許容するというようなことがなされているということでございます。ですから,これは日本に限らずどこの国でも,ある既存の条文の解釈によってはいろいろな解釈のありようがあるということはもうこれは否定できないことですから,そこはそういう前提で見ていただければいいのかなと思います。
 それから,公衆用設置自動複製機器,名前からしてちょっと舌をかみそうなんですけれども,この議論も結局,この審議会でもそうであり,サーバーがこれに該当するかしないかというのは,やっぱりいろいろな意見があるわけです。では,ここで決着が付けられるかというと,これ,別に立法当時意識してその範囲を確定した上で立法しているわけじゃありませんから,やっぱり多様な解釈がある問題です。ですから,ここのペーパーに書いてあるのも,こういう意見があったという記録にとどめていると思います。
 浅石委員がおっしゃる趣旨も,確かに文化庁,昭和45年当時の立法担当者の意識として,現在のようなデジタル化あるいは何ギガバイトぐらいの蓄積容量を持つようなものが家庭用のものとして廉価に販売されるという,こういう事態は想定していなかったと思います。多分浅石委員はそこをおっしゃっているのだと思います。だから,本当に根本的に30条なのかどうかというところに権利者としては一言言いたいというお気持ちは,それはそれとして分かるわけでございます。
 ただ,そこをここで根本からどうのこうの議論してもやっぱり決着は付かないし,立法としてどう考えるかも二つの方向性があると思うんです。つまり,今,明確でないから,サーバーも該当するような立法をするのか,いや,サーバーは明確に除かれるような立法をするかと,やっぱり二つの立法の方向があるわけなんです。だから,曖昧なものは立法によってある程度解決はできるにしても,結局,基本方向が定まらないとどういう立法するかも分からないということです。
 ですから,我々としては,やはり既存の条文の緻密な学者的な解釈で余り時間を費やすというよりも,今問題になっているプライベートロッカースタイルのこういった利用というものが,他国の少ない例ですけれども立法例のような形で完全にセーフにするのか,それとも,それは余り実際上意味がなくて,それよりはライセンシングで円滑にできるようにするのか,それとも,椎名さんがかねておっしゃるように,やっぱり補償金の問題も考えなきゃなというような問題に行くのか,その辺りのところをより政策的な議論の方にもうちょっと重点を置いていただければ,より効率的になるのではないかと思います。以上でございます。

【土肥主査】  というのが事務局からの御意見でございましたので,本小委においても参考にさせていただければと思います。いずれにしても自動複製機器該当性の問題については,議論が妥当するという考え方と,そうではない,当てはまらないという考え方と分かれておるところであります。そもそも汎用ロッカー型サービスが私的使用目的の中で,利用主体が使用者,ユーザーであるという前提の中での問題であり,かつそういう認識での捉え方が1号の複製機器該当性のところで問題が生ずるのであれば,それは法改正が必要なのではないかと思いますけれども,問題は,そういう汎用ロッカー型サービスの問題というよりも,もっといろいろな機能,つまり,汎用ロッカー型以外のロッカー型のクラウドサービスのところがじつは実務上問題なんだと,こういう御意見も今あったところでございますので,次にこの問題に移りたいと思っております。
 今,審議官からは,対価の問題についてもどうするのかという,政策的なところで捉(つか)まえてこの小委では議論してほしいということがあったわけですが,その問題については,別に汎用型のロッカー型サービスではなくて,もっと全体的な議論の中で議論しなければならないんだろうと思います。本日の次の議論としては,タイプ2のロッカー型クラウドサービスの様々な発展的なサービスがある,こういう状況を受けて,そこでの行為主体をどう捉えるのかという点について皆様の御意見を伺えればと思っております。いかがでしょうか。右側のこの参考資料1で言うところの2ページのコンテンツロッカー型,変換機能付加型,スキャン&マッチ型等いろいろなものがあるんだろうと思いますけれども,こういうものについての利用主体は誰なのかという問題でございます。
 では,畑委員からお願いします。

【畑委員】  コンテンツロッカー型,変換機能付加型あるいはスキャン&マッチ型の一部という形で参考資料の方では整理をされておるわけですが,恐らく現実のサービスというのは,これ以外にももっといろいろあるでしょうし,また,これからもいろいろな形でタイプ2サービスというのは出てくる可能性があると思うんです。そうした場合,行為主体については,近年の最高裁の判例にもあるとおり,やはり様々な角度で事案ごとの判断が必要になろうかと思いますので,ここは一概に利用者が行為主体とも整理できないし,事業者が主体と考え得るケースもやはり含まれておるのではないかと考えております。

【土肥主査】  では,松田委員どうぞ。

【松田委員】  タイプ2の範囲を超えて共有になったところでは,もう個人的な使用の目的を超えているので,これを想定して利用者がコンテンツをアップロードすること自体は違法になると,こう考えればいいと思っています。個人の範囲内で使う限りにおいては,例えばデータを他のメディアに対応するような変換をすることができるかとか,どこまで自分の利用に合わせて翻訳,翻案ができるかなどということは現行法をそのまま当てはめればいいのではないかと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにいかがで。
 大渕委員どうぞ。

【大渕委員】  今,松田委員が言われたのにかなり近いかと思いますけれども,発展系の中にはいろいろなものが入っていますけれども,分かりやすく議論を整理した方がいいかと思います。一つあるのは,先ほど出ていた共有という問題でありますが,またまた『著作権研究 中編』で書いたとおりであります。要するに,主体が重要だということで,共有しているということは,要するに,AさんとBさん二人が使うのに,Aさんだけが複製したということになれば,半分については,前回も申し上げた,利用者イコール複製者という原則から外れてしまうので,現行法を前提とすれば共有にならない。
 恐らくこれは加戸先生が悩みに悩んで,もうこれで線を引くしかないということで割り切った立法で,私的使用目的があって,かつ使用者イコール複製者というところが満たされていれば,分量や手段態様は問わず,後に1号,2号,3号で例外ができる点を除けば,本体として見れば,その二つの,私的使用目的と主体の一致という,そこさえ満たせば認めるという大原則を打ち出せば,いわゆるコロラリーということになってくるかと思いますけれども,そうした瞬間を共有というのは,半分の部分というか3分の1の部分については,使用者イコール複製者という要件を満たさなくなってしまいます。
 これは,たしか録画ネットの異議審判決で示されていると思います。現行法を前提とする限りは100%一致しなければいけないということになると,共有であれば満たさなくなってしまうというのは,これはもう現行法を前提する限りは,これは価値判断はどっちにもあるかと思うのですけれども,我々が当面出発点とする現行法を前提にしたらそこのところはなる。そこははっきりさせた上で,これがまた論点としては,前回出ていたように共有機能なのかというと,機能ではなくて,私の理解では共有実態が決め手であります。機能があるかどうかが重要ではなくて,実態として共有したら要件を満たさないけれども,機能が付いていても使わなければ別に問題はない。そこのところを区別して,共有機能でなくて共有実態だというところはクリアにしておいた方が議論が混乱しなくて済むのではないかと。
 それから,もう1点が変換の方でありますが,これも少し前からある弁護士からお尋ねがあって,最初は何か違和感がおありのようでした。結論から申し上げますと,重要なのはコンテンツ自体が変換ないし翻案等されているかどうかであってコンテンツ自体でないファイル形式などといった技術的な部分の変換だけでは,コンテンツ自体は何ら変わっていない。そこのところは前から気になっているんですけれども,変換変換と言っているけれども,また翻案等の御意見も出てくるかと思いますけれども,コンテンツ自体をいじってやればまた問題になってきますけれども,そもそもコンテンツは一緒でファイル形式だけ変更しているというのは,別に著作権法的には,著作権というのは著作物を中心に考えていますので,そこを変換というので重視するのはおかしいのではないかということをその弁護士に説明したらすぐ納得していました。今まで議論として,コンテンツ自体と,それから,技術的な部分がやや混乱されてきたので,そこは変換等の用語を使う際にもきちんと区別して議論していけば,議論の混乱が防げるのではないかと思っております。以上です。

【土肥主査】  丸橋委員どうぞ。

【丸橋委員】  以前から申し上げているとおり,そういう変換という点については,MYUTAのような変な判決をリバースすべきだと考えています。最終的に利用形態で見るという大渕先生の意見にもちろん賛成でして,タイムシフト,プレースシフトあるいはデバイスシフトするために必要な変換というのは当然認められなければいけないものだと思っています。以上です。

【土肥主査】  榊原委員どうぞ。

【榊原委員】  資料1の3ページのところを議論されているわけですけれども,主体の切り分けが困難だとかという分け方がされていて,3ページの後半部分の解決策として,契約による方がいいか,それとも訴訟か,それか,両方か,事業者が決めればいいというような選択肢があります。先ほど大渕先生もおっしゃったことでそうだなと思うのは,複製の主体がユーザーだという中で,プラスその発展系として,事業者が,タイムシフトだとか,いろいろな端末機器で使えるように大きさが変わるようにするとか,いろいろな変換とかの機能を付けてできるようにしたときに,複製自体をやるわけではない。コンテンツを複製したりとか,コンテンツを変える,翻案するとか,そういうことをしないのであれば,切り分けが困難だという話にそもそもならないのではないかなと思います。
 それと,ここでは触れられていないんですけれども,やっぱりいろいろな発展系があるので,柔軟な規定を検討してほしいということをずっとお願いしているんですけれども,そこがちょっと抜け落ちているので,例えば訴訟による個別的な解決を図ればいいという考え方も,以前議論されていたC類型ですね,著作物を享受しないような類型というようなものがやはり規定としては考えられるのではないかと思います。以上です。

【土肥主査】  これは前回の小委の御意見をまとめたもの,前回に絞ってまとめた意見です。それ以外のものはもっと別にもう一つ別にまとめたものがございますので,そこには反映されております。
 今子委員どうぞ。

【今子委員】  今,主査から前回の発言について取りまとめていただいたという御説明があり,この3ページの(1)について,切り分けは困難ということにはならないのではという榊原委員の御発言がありました。私は前回,現在提供されているサービスはもちろん,将来登場するサービスも,利用者がコンテンツをアップロードするタイプ2については,基本的には利用者が主体であると考えられると申し上げましたので,切り分けは困難というよりも,むしろ基本的には利用者が主体であるという意見があったと記載していただければと思います。
 それから,同じ3ページのところで,契約による解決が現実的であるとする見解に対して,私は,その弊害,仮に権利者団体と契約したとしても,契約を望まない権利者とか,団体に属さない権利者等の存在により,ユーザーがアップロードしたコンテンツ全てについて権利処理をすることは不可能となり,サービス提供ができなくなるというようなことも指摘させていただいたので,そういった点も反映していただければと思います。以上です。

【土肥主査】  事務局,よろしいですか,今の。

【秋山著作権課課長補佐】  このペーパーは,主査がおっしゃいましたように前回の意見を整理したものでございますが,今後議事の取りまとめに当たりましては,全体の御意見を整理してまたまとめたいと思います。

【土肥主査】  よろしくお願いします。
 ほかにいかがでございますか。
 河村委員どうぞ。

【河村委員】  先ほど主査が発展系とおっしゃったのは,参考資料1の2ページですか,タイプ2の中のコンテンツロッカー型とか変換機能付加型のことだと思うので,そのことについて申し上げたいと思います。
 まず消費者として,利用者として申し上げたいのは,ある行為ができるようになるのであれば,法律的な位置付けは「我々」,つまりビジネスをする側(がわ)に任せなさいというような言われ方をされているような気がするときがあって,それはとても心外です。ですから,この間も本質的なところをきちんと位置付けている議論は無駄ではなく建設的だと私は思うと申し上げたのはそこのところでして,やはり技術が発達した中で,私たちのプライベートな行為として自由のある中でやれる範囲をきちんと位置付けられるというのはすごく大事なことです。本当は自由じゃないのだが許してあげているんだよと言われることとは,全く違います。
 コンテンツ,適法に自分が所有するコンテンツを,この技術が進歩した中でどこまでプライベートな行為として,誰にも文句を言われないものとして扱えるか。そういうことでいうならば,ほかの方何人かの方がおっしゃったように,コンテンツロッカー型は,変換機能付加型であろうと,自分が用意したコンテンツをアップロードして,今の30条がオーケーだとしている範囲内の利用をするのであれば,利用主体は私たち個人であると思います。
 先ほど椎名委員の方から,純粋な汎用ロッカーはないという意見がありましたけれども,そもそも今,私的複製をできる我々が持っている機械は,純粋に私的利用の範囲しかできない機械というようなものないわけで,それはやはり使い方によって,私的利用という法律的にオーケーな行為が認められているわけで,クラウドになったとしてもそれは同じことなんじゃないかなと考えています。

【土肥主査】  では,椎名委員どうぞ。

【椎名委員】  共有があったときに,それは私的複製じゃない,侵害行為であるといったときに,質問なんですけれども,侵害主体は事業者ですか,ユーザーですか。

【土肥主査】  御質問になるわけですよね。

【椎名委員】  はい,大渕先生に。

【土肥主査】  では,大渕先生お願いします。

【大渕委員】  共有といってもいろいろあるので,私人同士で共有しているという場合,私は共有の場合には行為は,これ,日本語になりにくくて,共同正犯的という言葉はよくないですけれども,ドイツ語だとMittaterといって共同行為者になるので,その二人で,要するに,この30条1項は,共同行為は認めない,単独行為で,使用する人が自分で複製するのだけを認めますというので,共同行為になった瞬間に,これ,評価は分かれますけれども,現行法を前提にしたら違法になるのですが,そのときの主体は,二人の私人の共同行為主体ということになります。いろいろあり得るので,私人と事業者が共同して行為することもあるので,それは事案ごと違ってくるのではないかと思っております。いずれにせよ,私人同士で共同してでも30条から外に出てしまうぐらいですから,業者と私人が共同しても,私人の主体だけど,業者と共同してやれば30条1項の枠外になってしまうということになります。これでよろしいでしょうか。

【椎名委員】  はい。

【土肥主査】  ほかにございますか。
 小寺オブザーバーどうぞ。

【小寺氏】  すみません,オブザーバーですので,手短に。共有機能に関しては,大渕先生がおっしゃったように,行為が発生した時点で考えるというのが妥当かと思います。共有機能さえあればユーザーは必ずそこで共有するのだという前提で制度設計すると,多くのユーザーはそうしてないユーザーが大半ですので,ちょっと難しいことになるのかなと思います。
 それから,タイプ2のスキャン&マッチ型についてなんですけれども,これより前の,例えばそのまま上げてそのまま戻すとか,変換するというのは,飽くまでも手持ちのコンテンツがそのまま行って,ある意味,形を変えて帰ってくるだけでありますけれども,照合型というのは,いわゆる手持ちのコンテンツが新しいユーザー体験の参加券,参加のチケットに変わるというビジネスになろうかと思います。これがクラウドサービスのある意味だいご味といいますか,非常に未来のある話で,自分が持っていたものをどこに上げてぐるぐる戻している分でどうこうしようというよりは,未来ってやっぱりそこにあると思われますので,そういったところを中心に議論していただければと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。この問題につきましては,いろいろな事情等も我々勉強しておく必要があるんじゃないかと思っております。この行為主体の面について,つまり,タイプ2の右側の様々な幾つかの類型についての行為主体についてどう理解するのかということについては,もうちょっとまだ議論も要るんだろうと思います。ここの点については,これまでの議論を背景にいたしますと,個々の訴訟において個別的な解決を図っていくしかないとか,契約による解決というのが現実的ではないかというような御意見もあったところでございます。
 この点について,事業者団体としては様々なことを御検討のようでございまして,本日,浅石委員,椎名委員,畑委員お三方が御検討になっている,そういうところもあるようでございます。この点,御検討の部分について畑委員から御発表が頂けるんではないかと思うんですけれども,お願いできますか。

【畑委員】  はい。先ほどから汎用ロッカー以外のクラウド,この参考資料の右側の方の部分ですけれども,そこの行為主体について議論がございました。そういったことも併せ考えた上で,かねて我々権利者側は,この問題は契約関係で解決できるんではないかということを申しておりますが,それを更に円滑に進めていくための方策として,今日は音楽権利者3団体で検討中のワンストップ型の集中管理スキーム,これについて少しお話をさせていただきたいと思います。詳細についてはまだ検討中でございますので,今日は概要という形でございますけれども,資料3を用意させていただいておりますので,そちらの方を御覧いただければと思います。
 まず,ページ番号1番,「1.総論」のところでございます。我々権利者側は,先ほど公衆用設置自動複製機器とかいろいろな場面で法の該当性について意見を申しておりますけれども,このロッカー型クラウドサービス,これは利用者に利便性を提供するサービスとしてやっぱり社会的に必要なサービスなんだと,これからも伸びていくサービスなんだと期待をしていることがまずベースにございます。
 その上で,ロッカー型クラウドサービスが今後ビジネスにおいて伸びるためには,ステークホルダーであるサービス事業者,利用者及びクリエーター,この3者全てがWINになるという仕組みの構築が不可欠と考えております。
 今後のビジネスとしての取組の促進,また利用者からすれば,適法で安心かつ便利な環境を手に入れられるということを実現するためには,サービス事業者と権利者が密接に協力をして,そういった契約関係を構築し,クラウドのビジネスの発展に取り組んでいくということが必要ではないかと考えておるところでございます。
 そのため,契約を結ぶとは言ってもいろいろなハードルもあろうかと思います。そういったハードルを下げていくために,今現在,我々音楽権利者3団体では,ワンストップ型の窓口の導入による集中管理によって契約を円滑化できるんではないかと検討をしているところでございます。
 1枚めくっていただきまして,「2.前回の検討」のところは,これは先ほど50分掛けて検討されたところも含んでおりますけれども,私の方から申し上げたとおり,我々権利者側は,コアの汎用型――先ほど純粋ロッカーという表現を主査がされた部分でございますけれども,ここについて利用行為主体が利用者であり,仮に私的複製に該当するとしても,その周辺にあるその他のタイプ2ロッカー,これについては事案によっては事業者が主体と認め得るものもあるのではないかと考えております。そこの境界というのはやはりなかなか線引きをし難い。したがって,こういうふうにちょっと真ん中をぼかしたような,にじみのある図で描かせていただいておりますけれども,こういったような状況ではないかと考えておるところでございます。
 そういったことを踏まえまして,我々が言う契約の意義でございますけれども,次の3ページでございます。コアの汎用型,純粋ロッカーの行為主体を利用者とした場合でも,それを超えるサービスというのはあるでしょう。それについては,複製への関与度合い,その他の指標,基準を総合的に判断する必要があるわけでございますけれども,それら評価から事業者を行為主体と認め得るものがあるんではないかと考えております。
 ただし,現実のサービスの境界というのは非常に曖昧でありまして,また,今は行為主体が利用者とみなされるサービスであっても,今後のサービスの進化によっては,事業者の関与度合いが増していくサービスもこのタイプ2の中にあるのではないかと考えております。そこを予測した上で,今現段階で明文の規定を置くというのはなかなか難しいことではないかなと考えております。
 そこで,先ほどの資料2にありました対応方法ということでございます。事案によって,訴訟によって明確化すればいいのではないかという御意見もありますが,我々権利者としては,そのような今後の多様なニーズに対応し得る柔軟性のある契約スキーム,これを集中管理という形で提供することによって,サービスをできるようにしていくと。契約のハードルを下げ,サービスをできるようにしていくという方向での解決策を模索する方がいいのではないかと。それによって利用者も安心して利用できる,いわゆるオフィシャルな空間を提供できるんじゃないかというのが今回の提案でございます。
 そのためには,契約において誰と話したらいいのかとか,いろいろな課題も提起されておりますので,現在,我々3団体は,ワンストップ型窓口を設置し,集中管理による契約円滑化を図ってはどうかということで検討を進めているところでございます。
 次,4ページでございます。「概念」ということで,左の方がタイプ2ロッカーを表しております。文化庁さんの絵をそのまま引用させていただきました。右側が権利処理をするとした場合というところの概念でございます。現状は,右の上側,ブルーの「現状」という矢印が現状ということです。タイプ2ロッカーに関して,今,現状,権利処理をするとすれば,楽曲を管理されるJASRAC様等の著作権管理事業者,レコードについてはレコード各社,それから,実演については各実演家。各実演家の部分はレコード会社との契約で,レコード会社が窓口をやる場合も多くございますけれども,いずれにしても各権利者と個別にお話をしていかないといけないというのが現状でございます。
 これを今,検討しておりますのはオレンジの矢印でございます。仮称ですが音楽集中管理センターというワンストップ型の窓口を設け,そこを窓口に,事業者が計画されるサービス内容あるいは権利処理,そういったものの相談,協議をしつつ,必要な場合は,ライセンスの申請,発行をこのワンストップ型の窓口を通じて行う。そこには,楽曲を管理されるJASRAC様等の管理事業者,レコードにつきましては,日本レコード協会の方で一任型管理事業の範囲を広げるという形でレコード会社からの委任を受ける。また,実演につきましては,芸団協CPRA様がやっていらっしゃる,これも現行の一任型管理事業の範囲を広げる形で委任を受け付け,この窓口の下で管理事業を行う団体が権利処理に当たっていくという形で,事業者と協力関係のもとに集中管理による契約処理を進めていければ,ビジネスも今後促進してくんではないかと考えておるところでございます。
 次,5ページ目がワンストップ型の窓口の位置付け等でございます。先ほど申し上げましたとおり,仮称,音楽集中管理センターは,事業者と,このセンター構成団体3団体と密接に協力し,サービス内容,権利処理の相談・協議,また必要に応じて申請窓口業務を行うということで,権利処理そのものは,JASRAC様,レコード協会,芸団協CPRA様,3団体がそれぞれ当たるという仕組みを今,検討しております。ライセンスとしては,原則として包括的利用許諾契約ということで,曲ごとに個別に契約する形ではないということで,今後出てくるサービスの内容,機能,また著作物等の利用度合いに応じて柔軟にライセンスを出していくということを検討しておるところでございます。
 最後のページに,想定される疑問点ということで,もう何回も俎上(そじょう)に上っております,団体に委任をしない権利者あるいは著作物等の取扱いについて述べさせていただいております。我々は,これをノンメンバーと言っておりますけれども,ノンメンバーの問題は,なかなかこれ,ゼロにはならない。ただ,このワンストップ型の集中管理スキームをやっていく上で,このセンター及び構成団体と致しましては,まずは各団体がノンメンバーの取り込み努力を行うということ。また,既存の団体に委任をしたくないという権利者がいる場合には,集中管理センターを一任型管理事業者とする管理委託の受皿を検討しようと考えております。
 また,既にいろいろな形で個別ビジネス,これは権利者の方と個別の協議,契約によって進行しているビジネスがありますので,そういったディールをこの集中管理がオーバーライトするのではないという形で,今,検討しておるところでございます。
 ワンストップ型窓口の設置につきましては,著作権等管理事業法又は独禁法との関係も検討の必要がありますので,そういった観点からの検討も進めつつ,なるべく早期に詳細を固められるよう,それによってこのクラウドビジネスの今後の発展に貢献できるよう検討を進めていく所存でございます。説明は以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ただいま畑委員に御説明いただきました検討中のスキームについて,御質問等ございましたらお願いいたします。
 では,榊原委員どうぞ。

【榊原委員】  質問ではないんですけれども,コメントをさせていただきたいと思います。参考資料1で2ページ目ですか,タイプ2の左側から議論をしてきていると理解をしているんですけれども,今おっしゃった契約のスキームというのは,タイプ1では当然こういうものが進んでいくということは望ましいでしょうし,タイプ1とタイプ2の混在型というのが,ちょうど文化庁さんの資料ではピンクと緑で混ざっているところがある。混ざっているものについては,こういったスキームが進んでいくと非常によろしいのではないかと思いました。
 ただ,左の方というんですかね,左から行くと右の途中になるいろいろな機能については,左端だとユーザーが主体だという御意見が多い中で,いろいろな機能が付いたときに,じゃ,契約が必要かと言われると,不要な場合もあるわけです。そのときには契約自由の原則で,契約をしたい人についてはもちろんなさったらいいと思うんですけれども,そもそもユーザーが主体で,先ほどデバイスシフトとかプレースシフトという言葉が出ましたけれども,家の中じゃなくていろいろな場所で使えるようにしてほしいとか,端末をいろいろなタイプのものをユーザーは使われているので,端末が変わると見え方がおかしくなると困るとか,容量もいろいろあるので圧縮してもらわないと困るとか,そういうニーズに合わせていろいろな機能を付けたときに,主体が急に業者に変わるということはないと思います。そこは切り分けが困難だという話ではないということも再度申し上げたいと思います。
 ボタン押し理論というようなことは前回御紹介をされたと聞いておりますけれども,あれも,左の図から右に行っても,やはりユーザーがコンテンツを用意するという部分についての重要な要件については何ら変わらないんではないかと思っています。複製の主体が変わるという境界線が不明確だからというわけですけれども,例えばボタン押し理論などは,私は聞いていて要件としては非常に分かりやすい要件だと思いますので,そういう解釈で判断をしていけばいいことなのではないかと思います。
 それに加えて,ちょっとしつこいようなんですけれども,もっといろいろな機能があるというんであれば,やはり柔軟性のあるような,ストレッチのある規定で考えていかざるを得ないと思っています。
 それから,今日は時間がないので前回の質問の補足は次回以降にでもさせていただいたらと思いますけれども,やはり競争上,ユーザーが主体だということについて海外でも認められるようなものについては,やはり日本でも同じものを認めていただきたいという点も意見として申し上げておきたいと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 松田委員。

【松田委員】  3団体の契約スキームについてという御説明に対する質問,意見ということですので,意見を言わせていただきたいと思います。このペーパーにある限りにおいてはどこも反対するところはありません。これを進めてもらいたいと思います。これを進めるについては,コアで適法になる部分(タイプ2)については,私の意見では,確定した方がいいと思っています。その部分については,それを純粋にやるならば,契約する必要もないんだという判断になっても,これはしょうがないと思います。しかし,発展形態においてグレーの部分があるなら,このシステムにのるということはこれまたいいことだろうと思っています。
 このシステムをもっと確実にするならば, 4ページの,これは権利者3団体が集中管理センターを作って受けますよと,こういうふうに言っているんですけれども,利用者側の方も,利用者がまとまって,そして,この管理センターと対等に話合いをするような団体といいますか,組織を作るべきだと思っています。音楽の権利者側は,レコ協とJASRACがまとまれば受皿ができるのです。それで,利用の対応ごとに使用料規定を現実的なものに修正していけば受皿として機能します。今の規定をそのまま適用するといろいろな問題が起こります。だから,特定の目的ごとに使用料規定を柔軟に適用していく。これはJASRACはその意向が十分にあるわけで,それはできると思います。だから,この3団体の黄色で示した組織はできます。
 だけど,利用者の方は,利用ごとに団体が違うんです。サーバーを設けたいよという団体があるとすれば,それは多分プロバイダー側の団体になるんでしょう。それ以外に違う目的は幾らもあります。例えば学校でコンテンツを作るときに,音楽を入れて学校教材を作ろうなんていう要請があります。これは利用者団体としては学校の利用者団体が組織されなければならないのです。利用者団体の中では結婚式場なんていうのがあります。結婚式場は,もしかしたら一部については音楽の利用について問題があるかもしれません。それを全部クリアするというのであれば,結婚式場が団体を作ればいいんです。そして,その団体と管理センターとが話し合って協約すればいいんです。
 そして,その団体等が協約したら,組織率は高ければ高い方がいいんですけれども,漏れるものがあったとしても,その協約でビジネスを作り上げていけば,だんだんそれに収れんしていくと思います。
すなわち,使用料規定の柔軟性,それから,利用者団体の特定目的ごとに受皿を作るという組織作り。それと,この管理センターとの協約。その協約によってある程度のシェアが握れてくれば,日本というのはそういうものできちんとそれに収れんしていきますから,それを期待するというのがいいのではないかと思っています。この協約を支える契約法も考えるべきです。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 奥邨委員どうぞ。

【奥邨委員】  ビジネスのところはコメントできませんので,ちょっと横に置きまして,ただ,非常に大変な御苦労されて,御努力されているということは分かりますので,その点は敬意を表しておきたいと思います。今回おまとめの畑委員御発表資料の3ページのところについて感想を申し上げます。さっきの機能に関する御議論を難しいなと思いながら聞いていたんですが,今回,サービスという視点で,境界は曖昧というようにおまとめになっているのを見て,むしろ非常にすっと,ストンと落ちました。機能だけというふうに考えると難しい。それよりも,実際は機能がリッチになるというよりはサービスがリッチになるわけです。サービスがリッチになるときは,機能がリッチになるだけじゃなくて,併せて業者の関与がどんどんと強まるというのが普通でしょう。そうなってくると当然,ロクラクの基準に照らしても,機能プラスアルファで,業者の関与がどんどん高まれば,これはもう主体が変わっていくということも十分あり得るわけです。
 そうすると,タイプ2の中でそうなのか,これは定義の問題だと思いますけれども,タイプ2と例えばタイプ1の,それこそ海水と淡水の混じる汽水みたいなそういうところがどんどん広がっていくんだろうと思うのです。そういう意味では,そういうところについてこういう仕組みを用意されるというのは非常に重要なことだろうと思いますし,またそういうふうに理解すれば,私は整理としては非常に分かりやすく,納得のいく整理かなと思って伺いました。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 龍村委員どうぞ。

【龍村委員】  先ほどの報告を伺いまして,この小委員会で議論して,大枠においてコンセンサスが得られつつあるラインに乗った,その延長線上のアイデアであると承りました。この仮称センターなる窓口が,極めて柔軟な利用規約を持ち,タイプ2ロッカー型について,全くの私的使用であるという実態であるとセンターの方で判断したときには,対価はゼロにすることを含め,極めて柔軟な規程を設けることで,実質,この小委員会で議論されてきた結果が実現できる可能性を秘めているスキームと伺った次第です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 丸橋委員どうぞ。

【丸橋委員】  私的利用のための複製物置場の点について争わないという前提でのこの包括利用許諾契約ということ自体には意味があると思うんですけれども,コアの周辺で更にまだ争う余地があるところで,全体の利用許諾の範囲という形で事実上固定化されてしまうことに懸念を覚えます。フォーマット変換とか,フォーマット変換機能1機能ごとに幾らだとか,フォーマット変換実績に基づいた利用許諾幾らというのにはお金を払いたくないというのが事業者の考えです。ユーザーが権利を持ってしかるべきということであるので,そこに対して事業者がお金を払ってしまっては,ユーザーの権利をないがしろにしてしまうということになりますので,そうやってライセンスのスキームを通じて,事実上,権利の拡張がされてしまうというようなことは絶対避けたいと思います。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 今子委員どうぞ。

【今子委員】  ワンストップ型の集中管理を進めていかれるとのこと,事業者と致しましても,コンテンツの円滑な利用・流通に鑑み,是非進めていただければと思っております。ただ,契約の円滑化という御提案は,タイプ1や3については妥当するものだと思いますが,タイプ2については,契約というのは適当ではないと考えております。私としては,コアな汎用型かどうかに限らず,タイプ2は全般的に許諾も契約も基本的には要らないというふうに考えております。前回も申し上げたとおり,タイプ2はどういったコンテンツがアップロードされるか分からないので,全ての権利者から許諾が得られないというような問題がありまして,契約を促進したとしても事業者にはやはり侵害リスクが残ってしまいますので,タイプ2のクラウドの発展には直接的には結び付かないと思っております。したがって,タイプ1や3であれば賛同させていただきたいと思っております。以上です。

【土肥主査】  椎名委員どうぞ。

【椎名委員】  畑委員の御説明の補足ということなんですが,正に先ほど来,純粋なタイプ2はありませんよねと再三しつこく申し上げていたのは,侵害行為となってしまう共有機能を兼ね備えたサービスも含めて,もちろんどういう共有なのかということは慎重に吟味する必要があると思いますが,タイプ2とタイプ4の間に位置するようなもの,あるいは今後想定していないようなサービスを内包するものを,事業者さんが許諾を得ることによって,利用者の法的リスクも軽減するし,事業者さんもそこで得た利益を何らか還元することができるというような考え方に基づく提案でございます。
 さっきタイプ1,タイプ3の話が出ていましたけれども,これは全くこの集中管理の対象としているものではございません。飽くまでもタイプ2とその辺縁にある様々なサービスを,4とはっきり言ってしまいますことはできないですけれども,様々なサービスを複製主体の議論で切り分けることもいいんですけれども,それを丸々と協約の中に落とし込んではどうかというのが我々の提案でございます。

【土肥主査】  恐らく今のはいろいろ御意見があるんだろうと思うんですけれども,では,河村さんから大渕さんの方にしましょう。河村委員どうぞ。

【河村委員】  権利者さんの資料3のスライド4ページ目にタイプ2ロッカー全般と書いてありまして,しつこいようですが,タイプ2ロッカーというのは,プライベート型でユーザーアップロード型ですよね。いろいろな変化形があるにしても,タイプ2というのはプライベートでユーザーがアップロードすると。
 この図の中でも,1でユーザーが自分のものをアップして,そのものを2としてほかのデバイスで聞ける。私の素直の解釈でいうと,JASRACさんはじめ権利者さんと消費者の間に関係があるなと思うのは,上げるコンテンツを入手するところだと思うんです。2個目,3個目を買うことによって,権利者さんたちのビジネスとなる。この会の最初の方の委員会でも申し上げましたけれども,1曲持っているだけなら,その1曲を違うデバイスで聴けるだけなので,そのコンテンツを増やしていきたいと思う,そこに権利者さんのビジネスがあるのではないかと思います。タイプ2でいえば,消費者と権利者さんたちとの関係はそこにあると私は素直に考えているんです。私たちがもう既に持っている1曲が単にクラウドに保存されて別の自分のデバイスに降りてくるとき,つまりタイプ2という範囲の中で,権利者さんが示されたような仕組みが必要だというのは,私には納得感がありません。

【土肥主査】  それでは,大渕委員どうぞ。

【大渕委員】  今まで出たところに関連いたしますけれども,定義が実務的定義で入っているものですから,参考資料1でよく使っている,タイプ1,タイプ2,タイプ3,タイプ4というこの四つのマトリックスに,要するに,これは分かりやすくて,配信型というのは,私流に理解すると,コンテンツを業者が提供しているし,ユーザーアップロード型というのはコンテンツはユーザーが提供しているし,プライベート側と共有型というのはちょっと研究者的には分かりにくいのですけれども,恐らく非共有と共有というふうにした方が二分法はきれいだと思うのです。
 ただ,ここは今まで当然過ぎて言っていませんけれども,前々回でたしか土肥主査が御整理されたところかと思いますけれども,これはもう30条の常識だと思いますけれども,分かりやすく言うと,親兄弟と,それから,親兄弟に準ずるぐらいの本当の親友という,この広さが人によってかなり違う。ここは当然いろいろな論点で広かったり狭かったりしますけれども,基本線としては,30条は本人の中には,本人に準ずるような人,つまり親兄弟と親兄弟に準ずるような友人の範囲ではいいけど,それの外として共有したりすることはできないという。そういう意味で絞った上でいうと,非共有というのは,自分と親兄弟ないしそれに準ずる範囲だけで共有しているのは非共有の方に,ちょっと言葉は分かりにくいですけれども。それ以外の人と共有しているのは共有だと。
 そういうふうにきれいに切ったときに,先ほど出ていましたけれども,私が理解しているところでは,これは私が思うのは,実務的に今までタイプ2と思われていたところと,それから,理論的に純粋ロッカー型と言われている本当にコアの部分にやや開きがあって,そこが議論の混乱を生じさせているのかなということです。理論としては,要するに,さっき言ったような,これを現実的に少ないのではないかと言われるとそういう気もしますけれども,そういう,現行30条を前提としたときに非侵害になるようなものだと。主体はユーザーで,かつ共有もしないから合法になるという部分があることは間違いない。
 ただ,そこを余り今回のこの包括契約で本当に純粋ロッカー型で現行法非侵害の部分までやるとなるといろいろ問題が起きてくるのですけれども,私が傍で聞いておりますと,こういう理解でよろしいんでしょうかということなのですが,今まで漠然とタイプ2と言われた中では,実は本当に現行法非侵害の部分というのはかなり狭い。それはなぜかというと,実際は共有機能があるだけじゃなくて,共有してしまっていれば,さっき言ったように現行法上合法とは言えなくなっていまいますので,だから,そういう部分を拾おうと,ここが重要な点だと。
 今までタイプ2と漠然と言われた中には,本当の意味でのタイプ2というか,私が思っていたタイプ2というのはかなり狭くて,逆に言うと,侵害の部分はかなりあったと。侵害を規制する分であれば,別に契約するのは何ら問題はないし,むしろしなければ合法的にサービスできないからと。先ほどタイプ2も対象にしますと言われているのは,私的に理解すると,今までタイプ2と言われた中で,本当の共有実態もなくて,非侵害になるような部分を除いた部分のタイプ2についても契約の対象にしているという,逆に言うと,本当にぎりぎり詰めたときに非侵害になっている部分というのは,今回の契約の対象にはしていないという理解でよろしいのでしょうか。

【椎名委員】  侵害の部分がかなりあるという点,全くその通りです。再三申し上げていますけれども,私的領域にとどまる純然たる行ってこいのサービスというのは事実上なくて,共有ボタンがあるかないかは別にして,使い勝手として共有が可能で,かつされているというのが実態です。また共有というのは,飽くまでも一つのサービスのアイデアですよね。今後どういうアイデアが出てくるのか分からない。そういうようなものも事業者さんがきちんとリスクをとっていただいて,話合いの中で解決していこうと。今,どこまで入るんだということは申し上げにくいと思いますけれども,そういう考え方です。

【土肥主査】  畑委員どうぞ。

【畑委員】  一口に共有といってもいろいろな形の共有があり,大渕先生がおっしゃるとおり,30条の範囲,そこより広いけど,やはりかなり特定的な範囲の共有。全く不特定多数との共有であれば,これは正にタイプ4で今,我々,違法対策として対応している部分です。この共有ということをどこまでライセンシングの柔軟性の中に盛り込むことができるか,正にこの権利者3団体の間で話し合い,また,サービス事業者さんの今後のモデルみたいなお話もお伺いしながら検討していかないといけないところだと思います。

【土肥主査】  杉本委員どうぞ。

【杉本委員】  すみません,質問とかではなくて,意見というか要望なんですけれども,今回こういう御提案を頂いたということに関しては,これは非常に前向きな考え方として非常に敬意を表するというところを踏まえて,これを進めるに当たっての幾つか要望があります。
 一つは,タイプ2に集中し過ぎている。大渕先生の話にもちょっとかぶっちゃうんですけれども,タイプ2に対しての対処法だけに話が集中し過ぎているので,せっかく集中処理機構みたいなものをきちんと考えるのであれば,もう少し将来を見据えた形で,著作権の処理そのものをどういうふうにしていくかといったところの未来予想図も含めて,最終的にどこまでやるんだというようなところの想定をやっぱりしていっていただきたいなと思うんです。
 何が言いたいかというと,ここに関しては極めて限定的とあえて言いますけれども,限定的な音楽に関しての著作権の話を集中的にされています。当然この3団体がコアに処理している部分はそこになりますのでそれは仕方のないことなんですけれども,やはり事業者視点であったりとか,あるいは利用者視点でいったときには,当然それ以外の権利処理も視野に入れて検討していただくといったことが,こういった機構,同じような機構が幾つもできてもしょうがないと思いますので,そこは包括許諾を考えるのであれば,権利の処理そのものを包括的な範囲をもって考えていただくといったところをもう少し見据えていただければと思います。それは現段階でその他の団体に対しての声掛けだったりとか,話ができてなくてもいいと思うんです。ただ,飽くまでもそこまでは想定したいというような強い意志を是非持っていただきたいなと思うんです。
 それとともに,現状,いろいろな形で権利処理そのものが例えばマーケットを毀損しているとか,あるいはマーケットそのものがもしかしたら右肩下がりになっている可能性もあるという市場動向もあると思うんですけれども,決してその補填材料として考えていただきたくないなと思うんです。飽くまでも未来に向かって新しいマーケットをきちっと作っていくとか,著作権の処理そのものによっていろいろな形でのエンターテインメント等が伸びていくということを想定した青写真をやっぱり是非見せていただきたいなと思っております。
 それと,こういった話をするに当たって,きょうもいろいろな委員の方からも意見が出ているとおり,限定的な話合いの場でいろいろなことが決まっていくというのに関しては,やはり一事業者としては,当然この話の中に入っていないわけですから,懸念を感じます。ですので,例えば事業者あるいは利用者,こういった団体であり,選抜でも結構ですので,そういったメンバーを踏まえて,中の仕組み作りに関しては是非,議論の場とか検討の場を持っていただきたいなと思っております。
 それと,すみません,長くなってしまうんですけれども,あと少しです。全体的に,この場なのでしょうがないんですけれども,エンドユーザーのメリットというのがちょっと不明確な気がします。今何となく問題になっているところに対して,権利者と事業者の間でそこをこういうふうに対処しようというような話は分かるんですけれども,最終的には利用者に対してどういう恩恵が与えられるのかというところがいまひとつ明確になっていないなといったところがちょっと指摘させていただきたいところです。
 あとはこれは要望なんですけれども,私が以前この場で発表させていただいた段において,権利処理において包括的許諾を望むというところに対して,できればオプトアウトにしてほしいという話をしたと思うんですけれども,是非そういったところを前提に盛り込んでいただけると,事業者側であったりとか,利用者側としては非常に使いやすい機構になるのかなと思っています。
 それと,やはり大渕先生の話に乗るようなんですけれども,私どもとしてはやっぱりタイプ2のロッカー型というのは,現段階,この資料においても極めて限定的だと思っています。当然,共有スキームが入ってきて初めて,包括処理だったり,権利処理の部分も大きく話ができると思うので,今すぐというか,第1段階からその話を是非していただきたいという話ではないんですけれども,やはりそこも未来予想図として視野に入れた状態で話を進めていくというような第一歩を持っていただければと思います。以上です。

【土肥主査】  はい,華頂委員どうぞ。

【華頂委員】  今の杉本委員の話を聞いていたんですけれども,商業用映画は包括契約というのはなじまないのかなと。タイプ2自体が,私,8月7日でしたっけ,お時間頂いてお話ししたときに,商業用映画の利用ではタイプ2というのは考えられない対応であるというふうに申し上げました。タイプ2以外にこの集中センターの契約を広げるとしても,商業用映画はやっぱり包括契約というのは,繰り返しになりますけれども,なじまないのかなと。個別具体的な契約で全てうまくいくと思っていますので,一言意見を申し上げました。

【土肥主査】  ありがとうございました。本日畑委員に御説明いただいた契約スキームについては,非常に結構なスキームではないかというふうに私も伺っておるわけであります。スライドの2枚目にあるように,コアになる,本来30条の部分としてのところもカバー,覆ってしまうようなそういう御説明もあったかと思いますけれども,こういうスキームが社会的に承認されるには,権利者団体,事業者団体,一般ユーザー,その3者がなるほどと思うような,そういうスキームであることが発展していく前提的な条件ではないかと思います。今後もまた議論をさせていただきますが,本来タイプ2のロッカー型サービスの中の青になっていない,内側にある白い線の部分,そういう部分については極めて謙抑的なスキームを作っていただければと思います。
 あと,時間がもうほとんどないんですけれども,先ほど事業者の方がいろいろ御発言いただいておるところでありますけれども,契約でやっていくのか,あるいはコアになる部分については,ここまではカナダとかイギリスのような形と同様法制化をして,この部分は30条の私的複製なんだという,そのことを明確にすることが望ましいのかどうか,そういう法制化の必要があるのかどうかという点について,事業者の方の御意見を最後にお伺いして終わりたいと思っています。簡単にお願いしたいんですが,今子委員,どのようにお考えでしょうか。

【今子委員】  立法によって30条の……。

【土肥主査】  コアになる部分は明確にするということが望ましいのかどうか。

【今子委員】  先ほども述べましたように,タイプ2は,そもそもユーザーによる私的複製と考えておりますし,まして汎用ロッカーサービスに関してはそのことは明らかだと考えておりますので,私としましては,非常に限定的なサービスを特定して規定を設けることは,たとえ明確化のためであるとしても,かえって反対解釈のおそれを懸念するところです。ただ,クラウドについて全く法改正が不要と考えているかというとそういうわけではなく,少なくとも明確化のための30条1項1号の削除や,さらには,権利制限の一般規定のような柔軟な規定を設けることがなお検討されるべきではないかと思っています。

【土肥主査】  榊原委員どうですか。

【榊原委員】  産業界としては,もともと個別条項をちょっとずつ付け加えていくというのは,それ以外が反対解釈されるのではないかと思います。だから,柔軟性のある規定の方がいいという意見なので,明確なのであれば,30条をちょこちょこといじるというのはちょっとどうなのかなと思いますけれども,むしろストレッチのある規定の中にそういうものも読み込めるようにしていただきたいというのが一番の希望です。
 ただ,30条1項1号については,該当しないという御見解が多いようですけれども,それについていろいろなものがあるので,何が当たらないで何が当たるのかということを書き分けるのが難しいということは該当しない意見の中にも書かれていて,そうであれば,例えば立法当時に想定していたもの,違法にしなければいけないものがなくなったのであれば,1号自体が要らないのではないかという意見を申し上げたいと思います。コンビニについてはちょっと議論になると思いますけれども,あれも15年ぐらいですか,放置をしたままなので,そもそもそのために必要なのかと思っています。以上です。

【土肥主査】  同じ質問なんですけれども,杉本委員,その点いかがでしょうか。

【杉本委員】  きょうもいろいろな意見が出てきたと思いますし,やはり一概に統一された意見には僕は聞こえていないので,いろいろな方の意見とは僕はちょっと違うかもしれないんですけれども,ここにこだわっていろいろな時間を使うよりは,やはりどういったケースがそもそも市場のニーズとして今できていて,それを成立させるためにどういった話合いが必要なのかといったところに時間を費やした方が得策のような気がしております。その結果論として,30条1項そのものが要らないのであれば省けばいいし,変えた方がよければ変えればいいしといったところで,これの解釈から話を始めるのは,すみません,前回も言いましたけれども,時間の無駄です。

【土肥主査】  それでは,丸橋委員いかがでしょう。

【丸橋委員】  線を引くとしたら,ユーザーのタイムシフト,プレースシフト,デバイスシフト,利用に必要なフォーマット変換等の様々な付加価値も含めてユーザーが自由に利用できる線を30条1項で明らかにするということであれば,事業者としてはその範囲を見定めた上で事業開発をすることができるようになると思うのです。線を引くのであれば,コアの部分だけじゃなくて,そこまで含めた線にしていただければと思います。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 今日は事業者の御意見を伺うだけにしておきたいなと思っているんですよ。

【大渕委員】  30秒だけ。

【土肥主査】  30秒ですね。はい,じゃあ。

【大渕委員】  集中管理させるかどうかそれだけですから。

【土肥主査】  じゃ,お願いします。

【大渕委員】  これは,前から間接侵害のときから申し上げているのですけれども,これは間接侵害のときも,間接侵害本体はすごく立法提案いたしましたけれども,主体の問題というのは,これはもう法律家の方はお分かりかと思いますが,事実認定部分でそれに法律を当てはめるのが,そちらの方は立法の対象になりますけれども,そのような意味では,先ほどから立法の要否の中で恐らく一番重要なのは,これはユーザー主体かどうかという部分だと思うのですけれども,そこは事実認定なので。だから,私は立法論として展開していて何何法理と言っているのは,立法では手が出せないところなので,そこは,最初から立法の対象にならないものを立法の要否を検討するのも無駄なところがありまして,そこのところは恐らくよく考えたら異論ないところだと思いますので,少しそこだけ。要するに,ここは,事実認定なので,立法の対象にならないマターだということだけ注意喚起させていただければと思いました。

【土肥主査】  ありがとうございます。要するに,質問としては,今日の3団体のスライドの2番にある,点線の中の部分があるんですけれども,真ん中のところ,そこが30条の話だと思うんですけれども,更にそこの中で幾つかについては明確にしておくと。つまり,ここは30条の中に入るということをカナダやイギリスのような限定的な要件の下で明確に法制化するということをどうお考えなのかということでお尋ねしたわけでございます。
 時間がもうないのでやめざるを得ないんですけれども,本来であれば,前回榊原委員の代わりのオブザーバーとしておいでになった太佐さんがいわゆる宿題を持ってお帰りになって,本来今日は榊原委員にその御説明を頂く予定で,委員も準備なさっておったようでございますけれども,誠に申し訳ないんですが,時間がもうなくなってしまいましたので,次回,榊原委員にはその点よろしくお願いいたします。
 時間が過ぎてしまいまして,本日はこれくらいにしたいと思いますけれども,この小委の始まる頭でお話ししましたように,我々の議論の取りまとめというのは,もう最終段階に,時間的にはそこに来ております。したがいまして,近々は取りまとめというふうに行かざるを得ないと思っております。どの段階で行けるのかというのはあるんですけれども,しかし,急に事務局に取りまとめをお願いするというのも何でありますから,準備の方は常々しておいていただければと思います。
 最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  次回小委員会につきましては,改めて日程の調整をし,確定次第御連絡いたします。今日はありがとうございました。

【土肥主査】  それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第5回を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動