文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第6回)

日時:平成26年10月16日(木)
    16:00 ~18:00
場所:文部科学省東館3階講堂

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クラウドサービス等と著作権について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第6回)検討事項(案)(229KB)
参考資料1
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第4回・第5回)における主な意見概要(案)(342KB)
参考資料2
ロッカー型クラウドサービスの分類について(平成25年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム(第2回)配付資料1) (910KB)
参考資料3
「タイプ2ロッカーサービス」における集中管理による契約スキームについて(平成26年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第5回)配布資料3) (172KB)

議事内容

【土肥主査】  あとお二方,到着ではございませんけれども,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第6回を開催いたします。本日はお忙しい中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてですが,予定されておる議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 なお,本日は榊原委員と津田委員が欠席されておりますけれども,榊原委員の申出によりまして,一般社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会副委員長の明石様,それから津田委員も御欠席なんですけれども,津田委員の申出によりまして一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事の小寺様がそれぞれオブザーバーとして出席されておいででございます。
 次に,事務局より配付資料の確認をお願いしたいと存じます。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,配付資料の確認をいたします。お手元の議事次第の下半分のところを御覧ください。資料1としまして,今回の会議における検討事項案,それから参考資料としまして,第4回,第5回の小委員会における意見の概要案,それから参考資料2,3としまして,それぞれ議事次第記載の資料をお配りしてございます。
 落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥主査】  よろしゅうございますか。
 それでは,議事に入りますけれども,初めに議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,(1)クラウドサービス等と著作権について,(2)その他の2点となっております。
 早速,(1)の議事に入りたいと存じます。クラウドサービス等と著作権の問題につきまして,これまでなされてきました議論を踏まえますと,汎用ロッカー型クラウドサービスについては現行法においても私的使用目的の複製の範囲内と整理され,当該サービスにおける著作物の利用については著作権者の許諾を得ることは不要と解すべきであるという意見が多数を占めておったように思います。
 他方,それ以外の発展的クラウドサービスに関する対応方策については,前回の本小委員会において権利者側の委員の方々から集中管理スキームの案が示されておったところでございますが,この対象とする範囲や有用性等について様々な御意見があったと認識をしております。
 そこで本日は,この発展的なクラウドサービスへの対応方策について集中的な議論をお願いしたいと考えております。
 それでは,本日の小委員会において重点的に検討いただきたい事項でございますけれども,これについて,まず事務局より御説明をいただければと存じます。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,御説明申し上げます。資料1をお願いいたします。
 主査から御提案がございましたように,今回の小委員会で御議論いただきたい発展的なクラウドサービスについてどのように対応すべきかという点につきまして,2つの観点と,それに関連する小委員会における議論を整理させていただきました。
 観点の1つ目としましては,前回の小委員会で浅石委員,椎名委員,畑委員から示された集中管理スキームにつきまして,その有用性と対象についてどのように考えるかということ,それから2つ目としましては集中管理スキームを今後活用するに当たっての課題についてでございます。
 まず,集中管理スキームの有用性と,その対象に関する本小委員会での議論でございますけれども,集中管理スキームの有用性を肯定する展開としましては,次のような御意見がございました。
 まず1つ目として,発展的なクラウドサービスには私的使用目的の複製と評価されるかがグレーな部分があり得ることから,集中管理スキームの活用も考えられ,これを進めるべきであるとの御意見がございました。また,事業者の関与の程度によっては,私的使用目的の複製と整理されないものもあり得るとして,今後展開されるサービスの多様性に鑑みて集中管理スキームにより契約のハードルを下げるべき,それにより利用者が安心してサービスを利用できる環境を提供できるのではないかとの御意見や,それから,利用行為主体の判断が困難な汽水域のようなところについて集中管理スキームが用意されるのは重要であるとの御意見がございました。タイプ2であっても,実際に一定の範囲を超えて共有を行えば,現行法上合法とは言えない利用になるため,集中管理スキームはそういう部分を拾うことができるのではないかとの御意見がございましたし,こうした御意見に関連して,共有の実態がない汎用ロッカー型であれば,集中管理スキームの対象とならないという整理をすべきとの御意見もございました。
 このほか,将来を見据えた形で,タイプ2以外のサービスにも対象を広げて考えるべきとの御意見もあったところでございます。
 次の2ページ目をお願いいたします。
 こうした御意見の他方で,集中管理スキームの有用性を限定的に捉える御意見もございました。まず,タイプ2は,いずれの場合も基本的に行為主体は利用者であり,私的使用目的の複製の範囲内と整理され,集中管理スキームの対象としては適切ではない。タイプ1及びタイプ3においては有用なのではないかとの御意見がございました。
 また,私的使用目的の複製か否か不明なサービスについて,事実上権利者の許諾権を容認することになり,権利の拡張となるのではないかとの御意見がございました。
 それから,タイプ1や,タイプ1とタイプ2の混在型について集中管理スキームの構築が進むのはよいが,タイプ2については基本的に行為主体は利用者であり,切り分けが困難であるとは言えないのではないか。クラウドサービスには様々な機能があるため,ロッカー型クラウドも含めた柔軟性のあるストレッチの効いた規定を考えるべきという旨の御意見がございました。
 次に,集中管理スキームを今後活用するに当たっての課題に関する御意見でございます。
 まず,契約を望まない権利者や団体に属さない権利者に関する課題についての御指摘がございましたほか,現段階では他の団体との調整がついていなくてもよいが,今後,音楽以外の分野へのスキームの対象を拡大することを見据えるべきであるとの御意見がございました。
 また,集中管理スキームを活用するには,権利者だけでなく利用者側も組織化することが必要ではないかといった御意見もあったところでございます。
 意見の整理は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,ただいま事務局に御報告いただきました資料1に基づいて意見の交換をしていきたいと存じます。ただいま事務局の御説明によれば,前回,これまでのこの問題に関する議論の中で,この集中管理スキームに関連する意見をまとめていただいた点線の部分があるわけですけれども,その前に,2つ,この集中管理スキームの一つは有用性をどのように考えていくのかという点,それからもう一つは,今後活用するに当たって課題があるとすればそれはどういうものか,クリアしていくべき課題とはどういうものかという,その2つの点について議論してほしいということでございます。
 時間は基本的には十分あるんだろうと思いますので,この1,2,両者について本日議論をしていければいいなというふうに思っております。充実した検討,議論をするために,皆さんのお力をおかりできればと,このように思っておりますので,よろしくお願いします。
 御質問,御意見がございましたらお願いいたします。明石様,どうぞ。

【明石氏】  JEITAの明石と申します。きょうは代理で参りました。よろしくお願いします。
 資料1に「発展的なクラウドサービス」とあり,「発展的」という言葉が初めて出てきたのですけれども,資料1の下の注釈にその解説として「タイプ2における汎用ロッカー型以外のクラウドサービス」となっているのですけれども,正しくは,「タイプ2における汎用ロッカー型以外のロッカー型クラウドサービス」でよろしいでしょうか。

【秋山著作権課課長補佐】  はい,さようでございます。説明が不足しておりまして,失礼いたしました。発展的なロッカー型のクラウドサービスということでございます。

【明石氏】  ありがとうございます。

【土肥主査】  ほかに。畑委員,どうぞ。

【畑委員】  前回の本小委員会におきましては,椎名委員,浅石委員及び私からワンストップ型集中管理スキームを説明させていただきました。この集中管理の有用性ということにつきましては,我々,権利者側としては主に2つのポイントがあろうかと思っております。
 一つは,ここの資料1の1ページに幾つか意見として記載されておりますが,一つは,侵害となる可能性,リスクを解消していくこと。契約によってオフィシャルなサービスとして利用者が安心して利用できる場にしていくことが一つあると思っています。複製の行為を捉えた場合,利用者が自分でロッカーに置くことについて,今,私的複製と解すべきだという御意見が多いわけですが,これをサービスという観点から考えた場合,30条の私的複製という範囲を超えた利用が可能になるサービスもあるわけでございます。そこについては,複製の関与度合いなど総合的な判断から事業者が主体と判断される事例が今までの判例でもあるわけでございますから,そういったサービスについて,事業者が権利者と契約することによって侵害リスクを解消していくということが一つの有用性と思っています。
 もう一つは,ここの発展的ロッカーサービスという表現でございますけれども,まさに今後のサービスの発展というものに契約スキーム,ワンストップ型集中管理というものが大きく貢献できるのではないかと考え,我々はこれを提案しました。ここでタイプ2,あるいはタイプ1,タイプ3,タイプ4と類別はされておりますが,実際,世の中で魅力的なサービス,ユーザーに受け入れられるポピュラリティーの高いサービスというものは必ずしもタイプ2に限られるものではございません。中には,一定の範囲の友人,知人と共有ができるとか,あるいはこの小委員会の初めの方に御説明させていただいたスキャン&マッチのような配信型とのミックスという形でユーザーからも非常に大きな支持を得ているわけです。そういった意味におきましては,タイプ1,タイプ3あるいはタイプ4とタイプ2の連携によってこれから魅力的なサービスというものが作られていく,発展していくというのが今後のクラウドロッカーの姿なのだろうと思っています。そういったものに柔軟に適用し得る合理的な仕組みとして,このワンストップ型の集中管理スキームが十分有用に機能し得るのではないかと考えております。
 ここについては,どういった具体的なサービスがあるかというのは,我々権利者側だけで考えてもなかなかアイデアが出るわけではなく,ここはやはり実際,そういうサービスに当たる事業者様,あるいは利用者の方々,そういったステークホルダーが今後も継続してサービスの議論をしていける,そのような環境作りというものがあって,この集中管理スキームも有用に機能していく形に今後なっていくのではないかと考えております。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。杉本委員,どうぞ。

【杉本委員】  杉本でございます。よろしくお願いします。
 今の畑委員のお話に追随するような形なんですけれども,これまでいろいろと議論に参加させていただいて,ある程度,クラウドサービスの住み分けそのものはこの委員会の中でいろいろと話し合われたと思っています。その中で私なりに気付いたこととしては,クラウドサービスというか,ロッカー型を含めた形で,クラウドサービスが現段階で大体タイプ4つに分類されるということは事実としてあるわけで,ただ,これも汎用型を基礎にして,当然,バリエーションとしてどんどん増えていくというふうに考えると,基本的にはこれはインターネットサービスのバリエーションが発展的にどんどん増えているということを示唆しているんですね。なので,当然,事業者側の視点からすると,ここにあるのは現段階のバリエーションであって,今後においては当然,いろいろなアイデアの下に更に複雑なクラウドサービスというか,コンテンツデリバリーサービスというのは出てくるのだと思っています。
 事業者視点で考えると,当然,汎用型のロッカーサービスを提供するということは,非常にベーシックな話になっていって,当然,それをユーザーサービスとして考えたときには拡張性を持って歩んでいくというふうに考えると,どうしても許諾の話というのは切っても切れないものかなというふうに思っているんですね。なので,当然,事業者視点で未来永劫,汎用ロッカー型からもう発展しないということに対してコミットメントをしている事業者はなかなかいらっしゃらないということと,そのケースはまれだというふうに考えると,その辺りも,そこからの発展型を含めた形でどういうふうに今後のバリエーションに対して対応していくのかということに関しては,やっぱり一定の話合いをしていくだったりとか,それを検討していく場所というのが当然必要になってくると思っています。
 なので,単純に処理機構というような考え方というだけではなくて,住み分けも含めてきっちりとやっていくということに関しては,前回,畑委員から御提案していただいた集中処理機構というか,第三者機関的な部分というのは当然あってしかるべきだと思っておりますし,当然,この委員会そのものはある程度期限があると思っていますので,例えば,私は提案なんですけれども,直接的なステークホルダーという話でもいいと思うんですが,関係者である,例えば権利者の方であったりとか,事業者,それとやっぱり大事なのは利用者の方ですね。利用者の方に入っていただいて,例えば集中処理機構的なものが必要なのであれば,それがどういうふうに体系付けられて,どんなものを処理していって,場合によっては当然,ここでも議論の中心になっている私的利用の範囲ですね。これに対してどういう部分までを除外項目とするのかということに関してもきちんと話し合っていくために,こういったホルダーの方々に入っていただいて,この議論というのを継続していって,ある段階できっと機構として成立していくというような青写真を描いて進んでいくということができれば,この場のある程度の成果物という形で非常に有用な時間をここにいる方々が持ったのではないかというふうに思いますので,そういったことをちょっとこの次のステップとして御提案させていただきたいなと思っています。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 畑委員は現に3団体との間でこのスキームについての話合いを行われていると思うのですけれども,今のような関係する事業者の方にもお声掛けをされて,このスキームの発展的な技術を考えておいでになるのかどうか。既におやりになっているんじゃないかと思うのですけれども,その点,いかがですか。

【畑委員】  今回御提案差し上げたワンストップ型集中管理については,まだそこまでの段階には至っておりませんで,我々3団体の中で検討している段階ですが,まさに今後のサービスの発展を視野に入れて,利用者の方はどういうサービスを欲しているのか,また事業者としてどういうサービスをしていきたいのか,そういったことを全部議論していく場を作ることについて,私はポジティブに対応したいと考えております。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【椎名委員】  ちょっと補足的にお話をすると,法的な位置付けについては機能ではなく行為を見ましょうということで,私的複製と解されるのか,そうではないのかというところの話があったわけですが,これ,集中管理の話になると,やっぱり機能を見ていかざるを得ない。そこで,既に提案されているサービス,また,これからどういうものが発想されるかということも含めて,その事業をやろうとする方と権利者の間で話合いの中で解決していくということによって,何か物理的な線を引くのではなくて,いろいろな発展性が考えられるというところからのこの提案で,集中管理がもっといろいろなジャンルに広がった方がいい,というような話もあるでしょうし,そういったことも含めて発展性に着目していただければというふうに思います。
 それから,杉本委員もおっしゃっていましたけど,この前,大渕先生から御質問いただいて明確にお答えできていなかったと思うのですが,あくまでも私的領域にとどまって,例えば使い勝手として,外付けハードディスクと事実上変わらない部分にまであえて許諾を求めていくという考え方ではありません。そこの部分はそうなんだけれども,サービスとしてはそうでない部分と一体となって提供されているわけで,そのサービスが一体どういう機能を持っているかということに着目した上で,どういう話合いができるのかということになるのではないかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 今子委員,どうぞ。

【今子委員】  先ほど畑委員の方から,集中管理のメリットとして,侵害リスクの解消になるという点と,それから,サービスの発展に貢献するという点という2つが挙げられましたけれども,その2点について私としては,果たして本当にそうなのか疑問を感じているところです。
 前回もお話しいたしましたけれども,権利者団体と契約をさせていただいた場合,契約した権利者団体のコンテンツについて複製できるという話になるかもしれないのですけれども,団体の中でも契約を拒否する権利者とか,団体に入っていない権利者のコンテンツは複製ができないということになってしまい,クラウドサービスはかえって適法でないという結果になってしまうのではないでしょうか。したがって,御指摘になった2つの点は,いずれメリットにならず,むしろ弊害があるのではないかというふうに思っています。
 言い換えますと,タイプ2は,今のお話にもございましたけれども,利用者が不特定の様々なコンテンツをクラウド上に格納するというサービスでして,どういうコンテンツがクラウドの中にもあるのか分からないというのが実情です。それは皆さんがPCにファイルを複製するというのと同じことだと思っています。そういった私的複製について,たとえ「発展的」といわれるようなものであっても,事業者が許諾を受ける必要はなく,そうである以上,契約するメリットはないと思っています。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 岸委員,どうぞ。

【岸委員】  すみません,個人的に思ったことで,結果的に1つの意見と1つの質問があるんですけれども,もともとこういう集中管理,別にクラウドサービスに限定しないで,ネット上のコンテンツデリバリーのバリエーションが増える中では当然必要な機能になるはずなんですよね。だから,それはそれとして,このロッカーサービスに限定しないで,本来,ネット利用が進む中では必要なものと思いますので,そういう意味ではこういうものを整備していくのは非常にいいことだと。
 その中で,このロッカー型サービスに関して,純粋な私的利用の場合は当然,対象外になるでしょうし,それ以外の部分は必要に応じて適用するという仕組みがうまくできればいいんですけれども,恐らく,多分一番,こういうロッカー型サービス,集中管理というのが出た場合にもめるのは,じゃあ,このロッカー型の特定のサービスが私的利用のみだと。そういう意味で関係ないと判断できるのか,又は,これはちゃんと対価を払う必要があるよねっていう,必ずもめるはずで,そういう紛争処理のファンクションがどこかで必要なはずなんですね。
 そういう意味じゃ,こういうセンターを作りますと。ここがそういう紛争に関して,結局どういう機能を果たせるのかというのがしっかりしていないと,結果的にはセンターができました,でも私的利用に該当するかしないかがもめて,そこばかりの議論になっちゃうリスクもあると思いますので,それをセンターがやるのはいいかどうか,僕はそれは当然疑問ですので,利用者,権利者側両方の意見が入る場というのが本来ないといけないのかなという気も個人的にはしますと。
 その延長でこれも質問になるんですけれども,既に一般社団法人著作権情報集中処理機構,CDCっていうのがあるんですね。これは多分,情報の集中処理がメーン,著作権とか権利がどこにあるのかとか,ありかを教えるというのがメーンだと思いますけれども,それに加えて音楽集中管理センターができると。下手すると屋上屋を架する※感じになっちゃって,使う側(がわ)からするとかえって分かりにくくなっちゃうと思うんですね。そういう意味で音楽集中管理センターを作るっていう場合,CDCとの関係整理はどうなっているのか,そこら辺はもし明確なら教えてください。

【土肥主査】  どうぞ,浅石さん。

【浅石委員】  まず,CDCと今回のスキームの違いですが,今回は許諾を差し上げる窓口を一本化しましょうということで,そこでできた許諾の中身の楽曲の特定についてはCDCを使ってやっていくというような,いわゆるCDCが許諾まで出すということではないというふうに整理をしております。
【岸委員】  すみません,一言だけ。
 そういう説明に当然なるんだと思うんですけれども,すごく供給者目線じゃないですか。使う側(がわ)からすれば,そういうのがあろうと,こういう似たようなものがいっぱいあった場合,当然混乱するわけで,そういう供給者目線だけの整理っていうのが,本当にネットでこれだけコンテンツデリバリーが増えている中でいいのかなというのは個人的に疑問に思います。

【土肥主査】  畑委員,お願いします。

【畑委員】  現状,CDCが持っている機能,それから,今回御提案差し上げた機能の棲(す)み分けはまさに浅石委員の御説明のとおりだと思うんですけれども,そこをいかに利用者から見て混乱のないようにうまく整理できるかという点は,まさにこれからの検討だと思うんですね。CDCは既に法人格を持つ組織ですが,集中管理センターはどういう形で立ち上げるのか,まだこれからの検討でございますので,そこは事業者さんの目線であるとか,いろいろな関係者の御意見を頂きながら,混乱のないような形でうまく作っていくことを検討していく話かなと思います。岸委員の御意見は非常に貴重な意見でございますので,そういったことを踏まえながら検討していきたいと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 よろしゅうございますか。
 ほかにございますか。小寺さん,どうぞ。

【小寺氏】  インターネットユーザー協会の小寺でございます。
 先ほどから皆様の発言の中で,利用者に配慮していただく御意見が非常に多くて感謝をしております。ありがとうございます。
 ユーザーも集中管理のスキームの中に一緒にディスカッションできる場というのに呼んでいただければ,このスキームもより利用者に支持されやすい組織になろうかというふうに思いますので,是非その点をよろしくお願いします。
 この集中管理のスキームは,今現在,クラウドの話に集中をしておりますけれども,これまでもインターネットの中の問題としては権利の処理に関しては,クラウドに限らずネックになっている部分をこれで解決できるスキームであるわけですので,クラウドにこだわらない,もっと広く使える仕組みとして,これが機能すれば非常に有り難いと思います。

【土肥主査】  ほかにございますか。丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  前回も申し上げましたけれども,クラウド事業者がユーザーのタイムシフトとかデバイスシフトも含め,その利用に必要なフォーマット変換ぐらいの付加価値を提供する限りにおいては,集中管理スキームによるライセンスは必要ないと思うんですよね。事業者としてもちょっとはみ出たら,権利者が考えるメニューに従ってお金を払えという体系,例えば,フォーマット変換1個幾らというような体系では全然乗れないです。このペーパーでは有用性に限界があるとか,限定的であるという,そういう言葉を使っていますけれども,全く乗れないというのが私の意見です。
 先ほど来の話で言うと,発展的なクラウドサービスというのは,このロッカーサービスの中の話だと言いつつ,皆さんが話されているのはもっと外側の,コンテンツの縦の流通,あるいはタイプ4の間接侵害的なものについてまで話されているように思います。そうであれば,本筋としては間接侵害法制をもう1回再チャレンジして議論した上で,そこからはみ出る部分について,集中管理なり,そういうライセンススキームというのを考えればいいんじゃないかと思います。

【土肥主査】  浅石委員,どうぞ。

【浅石委員】  タイプ2のピュアな部分というものに対しては椎名委員が権利者の考え方を整理して発言なさったと思いますが,前回の小委員会の議論の中で,タイプ2の中にある共有機能を使って,実際に共有した場合ということについて,私的範囲を超えるものについては,ここにも書いてあるように,現行法上合法とは言えないと整理されました。要するに違法行為に当たるんだと。その侵害をどうやって回復していくのかということが重要な課題であろうかと思っています。
 ですから,いわゆる私的利用を超える共有を実際に行っているであろうタイプ2の多くのロッカー型サービスというものについて,事業者さんは,この中身が見えないサービスについて自分たちは事後的対応をすればいいんだ,責任は全部利用者さんなんだと主張されるのか。既に法的には共有の部分は侵害行為なんだということがこれまでの議論の中で整理されていると思いますので,事業者さんとしてはサービスの提供者としてどういう責任をとっていくのかというところが問われているのであって,それ以上,丸橋委員のおっしゃったようなタイプの違う2の問題を言っているのではなくて,タイプ2であってもそういう状況でありますよと。そこは法的な整理がされているのではないでしょうか。  ですから,権利者としては,いわゆるピュアなタイプ2,これについては許諾の対象から外しましょうと明確に椎名委員が発言なさっておりますし,我々,音楽権利者3団体もそうであると思っております。ただし,その発展形の部分というものについては,侵害行為があるということについて,議論の中である程度一定した方向性が出ているのだろうと思います。そこをどういうふうに侵害を回復していくのかという議論がまずタイプ2の中でされるべきだろうというふうに思っております。
 以上です。

【土肥主査】  まさに今,浅石委員に言っていただいたところをきょうやりたいと思っているわけでありますので,是非御協力いただければと思います。
 丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  機能と実態という問題があると思います。あらゆる複製機器について私的使用の範囲を超える利用実態があるかもしれないですけれども,それについては裁判で決着すればいい話であって,機能だけに着目して,その機能があればすなわち侵害であるというのは,それは暴論ではないかと思います。

【土肥主査】  今子委員,どうぞ。

【今子委員】  今の浅石委員のお話で,実際に共有されていた場合に,どういう取扱いになるのかということですけれども,サービスによって共有とか公開とか,いろいろな呼び方もあるのかもしれないですが,公衆送信されている場合は,ユーザーの違法な行為であるということで,事業者としてはプロバイダー責任制限法の問題として対応することになると思います。
 ですので,インターネットにおけるユーザーの違法行為に事業者がどう対応すべきかという問題は,特にクラウドに限った話ではないですし,クラウドの議論で言うとタイプ4のサービスにおいて行っている対応と同じだと考えられますので,特に難しい話はなく,クラウドサービスに共有機能があるからといって,事業者は許諾を受ける必要があるということにはならないと考えます。
以上です。

【土肥主査】  ほかに。特にきょうはアカデミックからの発言が少ないのですけれども,大事なところですので,是非お願いします。松田委員,どうぞ。

【松田委員】  皆さん方のきょうの意見,実は聞いていて,ほとんど同じ意見ではないかなというふうに聞いております。一番先,主査が整理をした範囲内のもので皆さん方はほとんどそれに合意しているのではないかというふうに思います。丸橋委員は,タイムシフトやデバイスのシフト,これについてはこの集中管理の方法をとらなくともいいという前提でお話をなさっていて,そして,権利者の方々も,3社の方々が純粋なタイプ2については,もう30条の問題として解決しようということになっているように私は見受けられます。
 そして,これまでの議論の中で両者の立場に立たない,学識経験者の方々も,30条として確認かどうかは別論として,総説かどうかは別論として,30条として適法化するということについてほぼ収れんされている。それは先ほどの土肥主査の御意見だったというふうに思います。
 だとしたら,この委員会の報告としては,まずそれを明確にして,そしてそれを超える部分についてはやっぱり話合いをする素地を作ろうという。その組織がどのようになるかについては,それは分かりませんけど,そういう意見のまとめ方をして,それについての発展型がどういうふうになるか分からないから,とにかくまとめないというのではなくて,その2つの柱,タイプ2と管理センター型といいますか話合い型といいますか,先ほど岸委員が言っていたような紛争解決的な機能まで含めて入れたらいいというのは,それは一つのまたアイデアかと思いますが,そういうところでほとんど意見は収れんしているかのように思いますが,いかがなものでしょうか。私の理解は違いますでしょうか。

【土肥主査】  今,松田委員から1つ,重要な御指摘をしていただいたところでございますけれども,このタイプ2に関する汎用ロッカー型にとどまらず,ここで言うところの発展型ですね,発展的クラウドサービスについても30条の私的使用の領域に属するという,そういう基本的なところで,それ以外の部分ですね,タイプ1,タイプ3,あるいは共有的な部分のもの,こういうものについては,これはいわゆる契約スキームに委ねる。こういう理解をしてはどうかと,こういうことなんですけれども,皆さんの御意見はいかがでしょうか。御依存はございませんか。丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  主査のおっしゃることの確認かもしれないのですけれども,先ほど申し上げたとおり,単に機能のあるなしという話ではなくて,基本的にユーザーの私的使用の範囲というものを,できるだけ線をきれいに引く努力をした上で,その外側のクラウドサービスが実際上,ビジネスとしてどれほど,どういう形で構築できるかというところが問題なので,そこについて集中的ライセンスみたいなものは話す意味はあると思います。

【土肥主査】  私的複製といいますか,30条できっちり切れるところを明確にしてほしいという御意見だろうと思うのですけれども,以前はちょっと違っていたようにも思うところがありますので,余りそこら辺をはっきりさせると逆に反対の影響が出るんじゃないかというようなことも委員から伺っておったようにも思うんですけれども。

【丸橋委員】  そこら辺の,コアと言っている部分だけ立法するということについてどう思うかという質問をされて,それは弊害が多いと言ってきたつもりなんですね。ユーザーのデバイスシフトや,その途中のフォーマット変換まで含めて,ユーザーができる範囲がはっきりする形での線引きあれば,それを基に事業者としてはビジネスを作れるというふうに言ったつもりです。

【土肥主査】  はい。
 じゃあ,最初に手を挙げていただいたのは畑委員ですので,畑委員から。次に松田委員,お願いします。

【畑委員】  まさにこれは私的複製30条の範囲なのか,それを超えるのかというところは,前回御説明した図にも書きましたとおり,やっぱり明確な線引きというのは難しいと思うわけですね。それがあるので,先ほど来,お話に出ている利用者,事業者,権利者が常に話合いができる場が機能するのだと思いますし,恐らくそこに岸委員がおっしゃるような紛争解決的な機能もあればということなのだろうと思っております。ここはまさに法制度の問題というよりは,前回も大渕委員がおっしゃっておりましたが,事実認定の問題として事案ごとに判断が必要になってくるところではないかと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございます。
 では,松田委員,続けてお願いします。

【松田委員】  丸橋委員にお聞きしますが,タイプ2のコアの部分について,それだけを明確にして,それ以外のところを線引きしないことについては弊害が多いと,そう言われているわけですか。

【丸橋委員】  そうです。

【松田委員】  ここの委員会の中でのおおよその,大勢と言っていいでしょう。タイプ2は30条で処理をしようと,これは一つの線引きです。それは危険が多くて,ほかの線引きをしろと言うのであれば,どういう線引きをしろと言うんですか。例えば,タイプ1,2,4についてどういう線引きをするというふうに言うのか。ないしは,そういう線引きをしないで,もっとぼわーっとした,フェアユースみたいな規定を作れと言うのですか。どちらでしょうか。

【丸橋委員】  私も何度も申し上げているとおり,タイプ2の線引きというのは,ユーザーがきちんとできる範囲の線引きが必要で,それはMYUTA事件とかを否定してフォーマット変換などに限らず,ユーザーが自分のものを家庭内に準ずる範囲で自分で使う,あるいは友達と使う分については,それ自体は侵害とならないということが明らかになればそれがいいと思っています。
 その周辺の話,例えばフェアユース的な話に戻る,戻らないという話については,私としては,今のポジションをちょっと申し上げる時期にはないと思っています。ただ,先ほども申し上げたとおり,タイプ4との端境について,間接侵害法制についてはもう1回リターンしてチャレンジする,リターンマッチすべきではないかとずっと思っています。
 以上です。

【土肥主査】  松田委員,どうぞ。

【松田委員】  今のお答えであれば,タイプ2で線引きはできている。私はそう考えます。

【土肥主査】  私も松田委員と同じように伺いましたけれども,どなたか。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】  私も,何かお話を伺っていると,細かいところは定義というか,見る方向の違いなのではないかと。この前申し上げたように,汽水域の話ですので,捉え方の問題なのかなと思います。やはり私も,松田委員御指摘のように,基本的には同じようなことをおっしゃっておられるのではないかなと思います。先回もそうでしたし,今回も,権利者さんのペーパーは,機能だけではなしにサービスというお言葉を使っておられます。機能だけじゃなくて,やはりそれに対してプラスアルファ,事業者がどういう関与をしていくかでサービスとなるわけです。その関与の中にはいろいろなやり方があって,コンテンツ自体に決定権を行使するとか,いろいろなことがあるでしょうが,そういうトータルで見ていくということになるのだとすると,余り差はないのかなという気がするんです。
 ただ,今後サービスは,いろいろなものが出てきますので,サービスと広くおっしゃった場合に,あるサービスではここを注目し,あるサービスではここを注目し,ということになるかもしれません。が,それは見方の問題なのかなと思うのです。その意味で,きょうの御議論,理論的にはある程度整理できているように思いまして,むしろビジネス的な御観点なのかなと思うと,若干,なかなか申し上げにくいなと思いながら伺っておりました。似たようなものでも,いろいろとお立場によって,捉え方のところの差がちょっと出ているのかなと思うんですが,どうなんでしょうか。
 あと,1点だけ。ここ,私自身の名前が出ちゃっていますもので,訂正ということじゃないですが,一言。タイプ3のところで,「奥邨チーム員によれば要らない」って書いちゃっているんですけれども,いろいろとお話を伺っていると,タイプ2が接しているのは,タイプ1と接しているだけ,タイプ4と接しているだけではなくて,やっぱりタイプ3のようなことににじみ出ていくところもいっぱいあると思うのです。コンテンツを共有する場合,事業者側の関与がコンテンツに関してかなり大きかったりすると,主体はユーザではなくて業者だったりすることもあると思います。現実にはサービスとしてはやっていないんだけれども,こういう枠で認定するとタイプ3になるみたいなものもいっぱいあると思うので,タイプ2でなければ,1か4かみたいな話だけじゃなくて,実質的にはタイプ3に分類されることもあると思います。サービスとしてタイプ3をやろうということではないんでしょうから,その点では意味はないのでしょうけれども,やっぱり先のような議論はあるのかなと思っておりますので,消しておいてほしいと。勉強が足りなくて,サービスとしては要らないかなと思っていたんですけれども,今までの御意見を伺うと,タイプ2からにじみ出るというのはいろいろな形であるのかなと思うと,タイプ3を意味がないとするのは良くなかったなと思っております。
 すみません,感想のようなことで申し訳ございません。

【土肥主査】  ここの部分は,今後の資料のところからは,我々,タイプ1,タイプ3についてクラウドコンピューティングサービスというものが重要であると。そしてまた,そういうものについては契約スキームというものが非常に重要に関わってくるという認識で議論しておりましたので,ここは取っていただいていいんじゃないかと思うんですけれども。結局,奥邨委員も現在おっしゃっていると思うんです。余り意味のない類型であるというふうに書いてある部分は。

【奥邨委員】  あまり意味がないという部分は撤回いたします。

【土肥主査】  取っていただいた方がいいんじゃないかと思います。

【秋山著作権課課長補佐】  承りました。次回以降は修正させていただきます。

【土肥主査】  よろしくお願いします。  あと,実は,前回の議論の御意見と比べると,非常に3団体の方々にはいろいろ御配慮いただいて,議論を前に進めていただくような御意見を多々頂いておることにまずは感謝をいたしたいと思っておりますが,そういう意味で30条の私的使用のスコープ,それから契約スキームによるスコープ,基本的にはおおよその理解ができたのだろうと思っております。
 問題は,きょうは2つあって,集中管理スキームを今後活用するに当たっての課題はどんなものがあるのかということも聞かれておるわけでありますので,この点についても御意見を頂ければというふうに思っております。この点,御意見いただけますか。杉本委員,お願いします。

【杉本委員】  多分,その辺りの機構の話をするときにかなり重要になってくるのが技術的な話になってくると思うんですね。多分ここではなかなか話ができないテーマになってきちゃうと思うんですけれども,結局,許諾が必要か必要じゃないかということに関しては,これはある意味,ユーザーを守るっていう考え方をもってしても,もしかしたらデータのトラッキングだったりとか,あるいはファイルがどのように変換されていったか,あるいはどういうふうにコピーされていったかということに関して,どこが実装するかっていう話は,そこはそれこそ話し合わなければいけないんですけれども,そういう機能をどこかが実装して,そこがモニタリングできるようなことが必要なのかどうかっていうことを思って,おおよその権利侵害の場合に,ケースとしては,恣意的に権利侵害をしている人というのは当然いらっしゃるんですけれども,当然,自分では意図しないで,その機能を,利便性が高い機能を使ってしまったが故に権利侵害をしてしまっている方というのも,これは多数いると思うんですね。そういう方はむしろ守られる対象だと思っていますから,そういう方を監視するという意味ではなくて,そういう方を守るためにどういった機能が実装されなければいけないのかということを,もう少し具体的なサービスの流れであったりとか,あるいは許諾のスキームの中で話していくということが重要になってくると思うんですね。
 そこには当然,それぞれのユーザーがどういうふうにトラッキングしているかだったりとか,ファイルそのものに対して一定のIDを振っていくというようなことも必要でしょうし,そういったファイルに対して,普及されたファイルに対して,例えばフィンガープリントのような技術をもって中身を検証していくということも場合によっては必要になってくると思うんですね。ただ,そういうのが,僕の言うのは非常にそれでも陳腐な話ですけれども,そういうのが具体的に話し合われた上で,機構の機能というものだったりとか,実装されるべき機能みたいなものというのを話していかないと,ただ許諾をするしないというのは単なる手続の話なんですけれども,そこに至るまでの話では,どういうサービスの流れになっているかだったりとか,コンテンツそのものがそもそも許諾物に相当するのかどうなのかということを,まさにインターネットサービスですから,そこでデジタルにちゃんと判定していくということがまずもって必要なのかなというふうに思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 いずれにしても,こういう契約スキームができるということは,ないところにこれができるわけですから,前進であるというか,有用性があるということはもう明々白々だろうと思うのですけれども,将来予想されるような課題があるとすれば,それは一つ一つ克服していく必要があるんじゃないかというふうに思いますので,特に関係者の方には,この場で課題等について挙げていただければと。
 龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】  杉本委員と同じ指摘かもしれませんけれども,恐らく問題になるのは純粋なタイプ2であるかどうかの認定の問題,それから先ほど来,出ている,例えば共有機能を搭載したものについて,どういうユーザー層から,どのぐらいの利用頻度があって,どのぐらいの利用がされたかとか,そこら辺の調査の問題,この辺りをどのようにするか,センターのそれこそ機能の実装としてそういうものをやらなければならないんだろうなと思います。
 契約関係ですので,相互に,やはり協力義務といいましょうか,そういうものが必要になるのだろうと。例えば,共有機能が実際ユーザーからどの程度使われたのだろうかということに対するデータの提供義務であるとか,あるいはサービス提供事業者のシステムの概要の報告義務であるとか,どうしてもシステム事業者からの協力がないと許諾システムというのは機能していかないのかなと。そこら辺,普通ライセンスの場合,よく監査権限というのを権利者の方に付与することが多いかと思うんですけれども,このセンターにおいてその辺りをどの程度,監査の機能,あるいはサービス提供者の報告義務なり協力義務を課するかという,その辺りの問題が結構深刻に出てくるのだろうと思います。
 それから,御指摘もあったように,その辺りのディスピュートが生じたときの紛争の裁き方といいましょうか,これを何らかの形で一般の司法裁判所に任せるのがいいのか,あるいは今回の電子出版の中にも議論が出てきたような,簡易なADRといいましょうか,ああいうものを設けるとかですね,何らかの中間段階の裁き方を設けた方が使い勝手がいいんじゃないかとか,その辺の細かい議論が必要になってくるのだろうと思います。

【土肥主査】  なるほど。
 ほかに。じゃあ,明石様,どうぞ。

【明石氏】  今,集中管理スキームの課題ということで議論をされており,そのメーンの課題として契約が要る,要らないの判定というお話が出ているのかなと思うんですけれども,そもそもこれ,課題っていうのかなっていう疑問があります。きょう配付された参考資料2の2枚目ですけれども,先ほどからのお話は,「契約が要るっていうものが圧倒的に多くて,要るか要らないか分からないというものの数が少ない」という前提でお話が進んでいるような気がしてなりません。私の感覚だと,逆ではないかと思います。将来はそれがどう変わるか分からないんですけれども。そういう現状で,「このスキームがまず必要だ」という前提で話が進むことにとても違和感を抱いているところがございます。
 この辺り,ちょっと私も専門じゃないので,このタイプ2の中で,感覚的に契約が要るものと要らないものの比率って,現実にはどうなのかなというところを,もし分かる方がいらっしゃったら教えていただけないかなと思います。

【土肥主査】  すぐですか。

【明石氏】  いや,今後でも結構です。

【土肥主査】  なるほど。
 じゃあ,先ほど手を挙げられた小寺様から続いてどうぞ。

【小寺氏】  先ほど,杉本委員から重要な御指摘がありました。コンテンツの違法な頒布に対してユーザーのトラッキングもある程度必要なのではないかという御意見がございましたけれども,コンテンツとユーザーをひも付けるトラッキングというのは,ユーザー側にとっては非常にプライバシーの問題もあり,リスクの大きいことなんですね。これ,本当にそれをどうやって実装して,仕組みの中に入れていくかもよりけりだとは思うんですけれども,果たして本当に集中管理のセンターというものがそこまでの機能を持たなければいけないのかなというところに疑問があるのと,実装の仕方によってはユーザーの側(がわ)としてはセンターへの合意はちょっと難しくなってくるのかなというふうに思います。

【土肥主査】  丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  小寺さんと同じ趣旨ですけれども,集中管理のライセンスの対象がロッカー型クラウドサービスの発展形も含めた,その外側でということであれば,そういうプライベートなロッカーの中をのぞくような機能というのは,これは実装できないのではないか,むしろ実装すべきではないのではないかと思います。公開機能を付けた場合に,公開の部分について何らかのライセンススキームの中で調査協力義務みたいなものを出せというのであれば,それは議論の余地があるかもしれません。しかし,それは純粋にロッカー型クラウドサービスというよりも,むしろタイプ4で今までJASRACさんが実績上げられてきたような,CGM型サービスと同じようなアレンジになるのではないかと思います。

【土肥主査】  じゃあ,椎名委員,お願いします。

【椎名委員】  機能を見ていくということなんですが,実際にはその実態を見なきゃいけないと思うんですね。どれだけ共有の実態があるかとか。そういうようなことを見ていく上で,先ほど杉本委員から,フィンガープリントっていう話が出ましたけど,まさに岸先生御指摘のCDCっていうのはフィンガープリント技術をブラッシュアップしている場所なんですね。そういうような技術も権利者側から提供していくことができるだろうと。
 小寺委員が御懸念の部分というのは,以前にも1回話が出たんですけれども,ここで必要な情報っていうのは,ユーザーとコンテンツの関係じゃなくて,サービスの中でコンテンツがどういうふうに動いているかということだけです。だから,小寺さんというユーザーとどういうコンテンツがひも付いていたかということではなくて,サービスの中でコンテンツの動きがどうだったかということを見ればいいだけですから,そこでプライバシーの問題は出てこないと思います。

【土肥主査】  じゃあ,小寺さん,どうぞ。

【小寺氏】  サービスの中だけでコンテンツの動きを見るということでしたけれども,これ,例えば違法性が問われた場合には,当然,誰が違法に配信したかということが法的には問われるわけで,そうなればそのトラッキングIDを使って個人を特定していくということにも当然なろうかというふうに思います。
 そういう意味では,技術的に特定の可能性はあり,もしその情報が仮に不用意な形で漏えいした場合のリスクなどを考えると,やはりそこは慎重に議論なり仕組みを作っていくという必要があろうかというふうに思います。

【土肥主査】  ほかにはございますか。杉本委員。

【杉本委員】  小寺委員がおっしゃっていることは,すごく僕も同意しておりまして,そこはやっぱり慎重にやらなければいけないというのは非常に賛成しています。その上で,かなり短期的に決まる要件ではないと思っていますので,そういう意味では,多分ここでは時間切れにしかならないと思うんですね。
 ということと,もう少し,よりインターネットに造詣の深い方たちを交えた上で,それとやっぱり大事なことは,やっぱり利用者の方がきちんと入って,どの辺りの機能を持って,個人の尊厳が侵害されていたりとか,あるいはその範囲ではないであったりとか,とはいえ,違法な行為をしている者に関しては,それはそれできちんと見付けていかなければならないという部分もあると思うので,その辺のバランスというのはかなり時間をかけて話していかなければいけないと思うんですね。
 ですから,一足飛びに処理機構的なものが発足するという話よりも,それを作るための話合いの時間というのをまず持つということがすごく大事じゃないかなというふうに思うんですね。なので,丸橋委員が御指摘されたリスクの部分というのも当然あると思っていますし,ただ,その辺りの議論をすっ飛ばして,要件を固めているわけでも何でもないと思いますので,そこは当然,畑委員が御提案された中においても,実装される機能というのはこれからの話でしょうし,あるいはCDCのフィンガープリントを使うのか,あるいはこの機構に対して一極集中的にその機能を実装させるのか,あるいはそれはもしかしたら事業者が担うのか分からないですよ。あるいはプロバイダーが担うのかといったところも含めてやっぱり議論をし直さなければいけない部分ではあると思うので,一旦,材料を全部並べた上で,もう1回ちゃんときちんと議論していくことが必要かなと思うんですね。
 細かいリスクを並べれば幾らでも出てきます,これは。ただ,その話は今,幾らしても余り意味がないと思うんですよね。

【土肥主査】  ありがとうございます。
 丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  ユーザーのロッカーの中を探知する仕組みを付けるかどうかという前提がはっきりしないままで話合いに乗ることはできないと思います。そこは絶対手を付けないという前提でないと話合いには乗れない。
 以上です。

【土肥主査】  今のところそういう個別のこのサービスのスキームの内容について,この3団体の方はまだおっしゃってはいないわけで,そういう御懸念があるということは承知しておきたいと思います。
 ほかにございますか。浅石委員,どうぞ。

【浅石委員】  土肥主査に整理していただいた内容について,私たち,音楽3団体は賛成しているわけでございます。どうも事業者の方たちは,そうではないように思えてしようがないんですね。いわゆる,実際に共有して,家庭の範囲を超えた場合については,もうそれは違法行為ですよということについても認めていらっしゃらないのかなというふうに思えてしようがないんです。それでは全く議論にならない。要するに,そこが違法なんだということであれば,それをどうやって解消しましょうかという次の議論になっていくんだと思うんですけれども,そこが全く御理解いただいていないというか,法的な整理はある意味,付いているはずなのに,嫌だよというふうに言われているようにしか思えないんですね。そこはいかがでしょうか。

【土肥主査】  そこをひとつよろしくお願いします。

【丸橋委員】  それはそうではないですよね。再三,消費者側の委員,利用者側の委員もおっしゃっているとおり,あらゆるテクノロジーであれデバイスであれ,何らかのシステムサービスを使うときに私的使用の範囲を超えた違法な利用というのはあるわけですが,それを違法じゃないと言っているわけではなくて,それは権利制限の話の外でしょうと言っています。そして,全く最初から違法な利用に対してエンフォースするのは権利者側の権利だし,当然やっていただければいいというだけですよね。
 以上です。

【浅石委員】  よろしいでしょうか。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【浅石委員】  最初から私ども申し上げているように,クラウドサービスの共有までというものについては権利者側が見ることができないサービスなんです。公開すれば当然,見ることができるわけですけれど,中で何をされているのかということについては我々は分からないんです。ですから,その中でもただ法的整理としては今言ったようなものがありますねと,じゃあどうするんですかというようなところが具体的な話になってくると思います。例えば,ブログサービスにつきまして,許諾を差し上げています。それについての音楽の利用については事業者さんと合意の上で,CDCを使わずにJASRACサイドで楽曲の特定をさせていただいている。こういう実態があるわけでございますので,そういったところについて,何か,こう,殻をかぶってしまうということではなくて,フランクに話ができるような,そういうテーブルに是非乗っていただければなというふうに私どもは思います。

【土肥主査】  どうぞ。

【丸橋委員】  先ほども申し上げたとおり,権利者は,ユーザーの違法な行為をトレースして,それを権利者側に報告する義務をクラウド事業者に課したいと言っているようにしか思えないんですね。ユーザーのロッカーの中を見て,共有機能と言いながら,家族だけじゃなくて,世界中にばらまいているという実態を調べるのはクラウド事業者の義務で,それを報告して初めてこの権利制限の話,あるいはその先の集中管理の話が乗れるというふうにおっしゃっているというふうにしか聞こえませんということです。
 しかし,そういう権利者が見付けられないような侵害なんて,別にクラウドとかに限らなくて,リアルでもあるわけです。中学生が友達にはただで貸していたけど,その友達の友達からお金もらってコピー作っているかもしれないし,そんなこと分からないじゃないですか。それと一緒です。

【土肥主査】  私は伺っていて,丸橋委員がおっしゃっているところは,そのようには聞こえなかったんですけど。先ほどからおっしゃっているところは,中を見せろということは言えないという前提でのサービスの構築ということをずっと一貫しておっしゃっておられるのだろうと思います。
 松田委員,何かございますか。

【丸橋委員】  ロッカー型事業者がロッカーの中を見ることができるポジションにあるということと,ロッカーの中を調査して権利者に見せるべきであるということは別ですよね。

【松田委員】  その違いだと思います。だけどね,何か新しいモデルで話合いをして,それを権利処理をしていこうよねっていったら,どういうサービスをするかっていうのを権利者に見せないと許諾できないんじゃないですか。それをやっていこうというのが,この管理センターなんじゃないですか。何も違法なものをトレースして,権利者側に提供しろと言っているわけでは決してないんじゃないでしょうかね。

【土肥主査】  河村委員が手を挙げられたと思うので,それじゃあ河村委員,どうぞ。

【河村委員】  議論がかみ合っているのかいないのか,ちょっとよく分からないんですが,今,話し合われていることに直接最初,関係ないかもしれませんが,大前提として,きょう,前半の部分で言われていたことも,私はちょっと同床異夢な感じがしたので,もう1回確認させていただきたいんですけれども,タイプ2のロッカー型クラウドサービスで消費者が自分の持っているコンテンツ,どんなコンテンツであれ自分の所有しているコンテンツをそこに保存して,著作権法が30条で言っている家庭内なりそれに準ずる人たちと準ずる範囲で共有するということも含めて,また,自分の持ち物を自分でデバイスの技術の進歩によって変換する必要が出てきたときに,自分が買ったものを,また同じものを楽しむための変換などを含めて,それは私的利用であるとしましょうということですよね。そうですよね。

【土肥主査】  そのとおりです。

【河村委員】  そうだとしますと,そのようなことを許す範囲のサービス,何か,せっかく技術が発達しているんですから,どのようなことが可能なサービスかというのは,今,余りにも可能性で言うともう無限大なので,おっしゃっていることがすごく錯綜していますが,逆に言うと,今言ったような範囲のことをする,今の許される範囲のことができるサービスなのか,それを超えているのかというのは分かるのではないかと思うんですね。
 ですから,私が申し上げたいのは,もしかしたら今言った仕組みの中でもリアルでもあるように,丸橋委員おっしゃるように,もしかしたら侵害部分がないとは言えないかもしれないですけれども,それを見付けて,その侵害を回復するために,もう大多数の,ほとんどのきちんと利用している人たちの行為を必要以上にチェックするようなことは,ほかのことに置き替えてみてもそうだと思うんです。物すごく何か違法なことをやっているかどうか調べるために,ありとあらゆる人のものを調べるのかと。それはだからバランスの問題であって,ですから,侵害があるかもしれないから,そこを回復するためにっていうふうに言っていくと,今言った範囲の中までも侵害回復の名の下にその仕組みが入ってくる可能性は私も感じるんですね。
 ですから,やはりここでは杉本委員がいつもおっしゃっているように,もっと発展的なところに行けば違うルールが,しかもユーザーや消費者も同席した席で話し合うべきだとおっしゃっていただけているわけですから,それはこれから未来に発展していくものに関して,権利者さんも含めて豊かな民民のものが作れるといいですけれども,今やられていることの,しかも30条の範囲ですよねって言っていることに関して侵害があるかもしれないからそこを見られるようにというのが混ざってくるのは,非常に私は納得できないんです。から,そこははっきりと,今確認されていることの世界と,これから発展していくところでの見えない,これから決めていくルールというのを分けた方がいいというふうに,議論を分けた方がいいと考えています。

【椎名委員】  すごく誤解されている部分があると思いますが,トラッキングとか実態の把握というのは,何も違法行為を摘発するためにやるんじゃなくて,いかに合法的にそういうサービスができるようにするか,ということを集中管理の中に収めていくためにやるわけです。そこで事業者さんも一定のリスクをとってもらうことによって,そのサービスを合法的に行えるようにすることを目指しているんです。また,今既に存在しているサービスじゃないサービスが今後発想されたときにも,そのスキームの中で合法化していく。で,ユーザーも安心して使っていけるという考え方であって,何も違法の摘発のためにトラッキングをするというとことではないので,これは事業者にとっても権利者にとっても前向きに納得のできる内容じゃないかと思います。

【土肥主査】  大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】  本日は進み方が必ずしもアカデミックではないので,先ほどの奥邨委員と同じように,少し議論に入りにくいところがあるのですけれども,前回まで整理したところは,もう繰り返して申し上げませんが,少し前提を整理しておくと,先ほど松田委員がさらっと言われたところに尽きるかとは思うのですけれども,要するに,タイプ2の定義の仕方などは人によって違っているので,そこのところは最初から細かいことを言い出すと大変なことになりますので,そこのところは大括(くく)りにすると,私から見ると,名称自体が余り合わないところはありますけど,そこは人によって違うので,要するにタイプ2と言われている部分については,おおむね私的使用の範囲に当たって,これは前提としてはまさしくプライベート型というのか,非共有型の方ですけれども,範囲は先ほど河村委員が言われたとおりに,本人と,家族等に準ずる範囲までは本人と同様だと。そこまでの範囲の共有までは許されるが,その外に出たら許されない共有になり,タイプ2ではなくなるし,それから,主体の話と連動しますけど, 30条というのは私的使用で,私人が複製主体で,ここで言えばおおむねコンテンツ提供が私人が前提だということであります。これらのところは,おおむねコンセンサスはある。
 そのような前提で進んでおられると。そこが非常にさらっとやられたのですけれども,世間には示しておいた方がいいので,そこは飽くまで法30条で許される世界は別ですと。それがざっくり言うとタイプ2で,それ以外の部分は,その外側は,先ほど松田委員が言われたのに尽きると思うのですが,その許される範囲の外側は契約でやっていくということであります。そのような前提できちんと分けた上で,契約していくということだと思います。各論の部分は先ほど言われたように認定だ何だとありますので,そこは入り出すと法律家ですから幾らでも議論はできますけれども,今日はなるべくそのようなことはしないように努めたいと思います。全てそこで尽きた部分でやるということで,そこが明示されているのであれば,最後は契約自由の原則ということであり,誰と誰が契約するかによるし,先ほど言われたところは,基本線について,細かいことを言い出すと人によって違うかと思うのですが,ざくっとした基本線は,今のことを踏まえた上で,先ほどの例で言えばタイプ2以外を契約の対象にするというのを基本にしつつ,契約ですから両者が納得しない限りは契約になりませんから,どの範囲について契約の対象にするのかというのは両方で交渉して,納得の上で,先ほどのどこまで開示するかも含めた上で,両者が納得した上でやらない限り,どっちかがノーと言えば契約が成立しませんから,両方が納得できるような条件が示されて,両方がアグリーしたらそこで契約が成立するという,ある意味,非常に単純なことです。その意味では,個別に一個一個やってみなければ,今から全てそれをプリディクトしてやることは不可能ですけど,今の基本線が定まっている限りは,いろいろ工夫の余地などはあるし,最後はいろいろ細かいところに入らない限り,両方が納得する条件はできませんので,本日はそのような話ではなくて,基本線を示して,あとはやはりきちんといろいろ細かいことも考えて,どういうことを対象にするのか,ないしはどういう料金にするのかなど,いろいろなことが全てワンパッケージになって契約ができますので,そこのところは,このようなことで進めるのであれば,いろいろなことを想定して,両者が納得できるバランスのとれたものを追求していくしかないのではないかと思われます。

【土肥主査】  課題としての細かいことは別なんですけれども,要はワンストップ型の集中管理制度をこの契約スキームの中で導入をするという,ここの部分ですよね。ここの部分についての,この大枠がどうなるか。もちろんこういうものができるということは非常に望ましいことなので,このことを実現するためにもし課題があるとすればということでのお尋ねだと私は承知しております。
 でございますので,この点についてもし特に3団体の方はもう既にいろいろ議論いただいて,ある程度のところまで到達されておるんじゃないかと思うんですけれども,もし3団体の方でこういうようなことを,この委員会の中で聞いてみたいというようなことがもしあれば出していただいても結構でございますし,利用者の方から,今申し上げた本当にワンストップ型の集中管理ができる,そういう場に通常出てくるような話もいろいろあると思うんですけれども,そういうことのためにどうあるべきかというようなことで御意見があればお出しいただければと思いますが。
 特によろしいですか。じゃあ,明石様,どうぞ。

【明石氏】  事前にこの委員会の議事をちょっと眺めてきたんですけれども,最初,タイプ2がとっつきやすいということで,まずそこをつぶそうということで話がされていると思っていまして,その中でも特に汎用はつぶしやすいからということで,まずそこから話が始まって,その次に,汎用じゃないタイプ2のところまで話が広がって,今,結論らしきところに行こうとしているのかなというふうに理解しているんですけれども,更にその外側にタイプ1,3,4というのがあると。それも皆さん,理解のとおりで,ただ,JEITAとしては,そのまた外側にBto Bを中心とする,私的複製ではない情報活用サービスというものがあって,その議論をお願いしますということを今まで言ってきました。ここまでの議論のように私的複製の外側で解決すべきものは契約で,というふうになると,そこまで一気に含まれてしまうのかなという心配をちょっとしています。Bto B型を中心とする,私的複製ではない情報活用サービスの方は全然まだ議論されていません。きょうの議論は,この外側の結論とミックスされて最終的な結論になるべきではないかと思っています。きょうの結論は,30条の法改正は要らなくて,集中管理スキームという仕組みで解決しようという方向に行っているような気もするんですけれども,今度,その仕組みで解決するという話と,30条の外側の話が関係するところも当然あるはずで,最終的には外側の議論の結論を待ってから30条の中の方もそれに合わせて結論が出ていくべきなのかなと思っております。
 ちょっとこれはただ意見,考え方を述べたということなんですけれども。

【土肥主査】  おっしゃっておられるところはよく分かります。そもそもJEITAが最初におっしゃっておられたサービス自由タイプですね,そういうところの問題があるということだろうと思います。しかし,今,御紹介いただきましたように,まずはクラウドコンピューティングサービス,これを4類型に分けて,タイプ2,それから純粋ロッカー型という形でやらないと,議論が非常に拡散するものですから,そういう段取りを踏んだということであります。
 したがいまして,クラウドコンピューティングサービスのタイプ1,2,3,4の問題が終われば,おっしゃるようなその問題ということに行かないと,本小委がスタートしたときの議論すべきスコープが終わらないということになりますので,それはこの後,やらせていただくということになるのだろうと思います。

【明石氏】  はい,分かりました。

【土肥主査】  ほかにございますか。
 よろしゅうございますか。丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  何度も繰り返して申し訳ありませんけれども,今日で基本を確認するということであれば,ユーザーのプライベートな領域での複製活動そのものをトラッキングするのかしないのかというのは非常に大きな問題だと思うので,そこを確認しておきたいと思います。事業者はトラッキングすべきという前提で初めて外側のはみ出る部分についてのライセンスというのが成り立つというふうに皆さんおっしゃっているように見えるので,それだと乗れないというふうに先ほど申し上げました。それはどうなのかということをちょっとお伺いしたいと思います。

【土肥主査】  はい。そこのところはもう既にお答えになったように思うんですけれども,最終的にもう1回,そこをきちんとおっしゃっていただけますか。

【椎名委員】  トラッキングと言っているところについて,そのトラッキングの結果から出てきたデータに個人名が載っている必要は全くないんですよ。そのサービスの中でどういうコンテンツの動き方をしているかっていうだけの話なので,ユーザーのプライバシーの話と一切関係ない話だと思います。

【丸橋委員】  きちんと統計をとるにしても,一人一人のロッカーをのぞくことになるのです。システム的に。システムがやるからプライバシーには関わらないという話ではないです。

【土肥主査】  のぞかないんですよね。

【椎名委員】  はい。のぞかないです。

【土肥主査】  じゃあ,松田委員,どうぞ。

【松田委員】  集中管理センターを作って,権利者と利用者,業者との話合いを進めていこうというときに,どういうモデルを契約の対象にするかという段階で,その段階で違法行為のトレッキングってするんですか。しないでしょう。それは何か違法があったときに,じゃないかなといったときにトレッキングするんでしょう。いや,トレッキングしてくださいよって権利者団体が業者に頼んだらしますか。しませんよね。

【丸橋委員】  いやいや,だから,最初から。

【松田委員】  待ってください。契約を結ぶ段階なのにそんなこと心配することないじゃないですか。もし契約を結んじゃった後,そこに違法があって,そういう証拠が必要だというのであれば,訴訟だってそう簡単に相手方に侵害対応を示せということ言えないんですよ。訴訟だって。だって,明確に規定があるじゃないですか。これ,114条の2ですよ。この審議会で作った条文ですよ。どれだけの要件が必要かというものが定まっているんですよ。そんなもの,訴訟でもないのに,じゃあ,分かりました,権利者団体がそう言ってきたから契約を結んだ後,トレッキングしてみましょうっていうことを事業者が受けるわけがないでしょう。で,ここで論じているのは,その場面でもないんですよ。契約を結ぼうとしたときなんですよ。契約を結ぼうとしたときに,何で違法のトレッキングの問題が起こるんですか。そんなものしないと言えばいいじゃないですか。

【丸橋委員】  いいですか。

【土肥主査】  どうぞ。

【丸橋委員】  それは龍村委員がおっしゃったように,ライセンス契約においては,調査義務,あるいは監査受忍義務的なものの話というのは必ず出てきますし,現に,先ほどJASRACさんがおっしゃった,歌詞なり楽曲なりの包括的許諾契約については調査報告義務がはっきり書いてあります。それをプライベートロッカーの中についても本当に要求するんですか,要求するんであればそういう話には乗れませんと先ほどから申し上げているだけです。
 以上です。

【松田委員】  拒否するということですよ。

【丸橋委員】  いや,だから,この全体のスキームに乗れないと言っている話です。

【松田委員】  拒否すりゃいいんです。

【丸橋委員】  もちろん拒否します。はい。

【土肥主査】  だから,そういうスキームにしないということをおっしゃっていて,そういうスキームには乗れない。乗れないというのは,しないということには乗れない。しないということに乗れるか。要するに,丸橋委員の御懸念になっているように,そういうトレッキングとか,中をのぞく,見る,そういうことはしないという,そういうことでありますので。

【丸橋委員】  中を見ないという前提でないと乗れないと申し上げています。それは利用者側も一緒じゃないかと思いますけど。

【土肥主査】  小寺さん,何かありますか。

【小寺氏】  利用者側はどうかという御意見がありましたので述べさせていただきますけれども,フィンガープリントというのは技術的にはただのツールで,それをどのように使うかが問題なわけですよね。椎名委員とかは,そのツールを使って,個人は見ないと。それは見ないという使い方をするということだけであって,ツール自体はIDを振った時点で個人とはひも付いてしまいますので,どこかにはその情報は載るわけですよね。どこから流出したIDと,個人とIDをひも付けるようなデータがどこかでマッチングすれば,それは個人が特定できてしまうんです。そういうところを懸念すると,本当にこの集中管理のスキームの中にそこまで本当に入れなきゃ駄目なのかというところはやはりユーザー団体としてはそれはもう慎重にならざるを得ない。具体的に言えば,そこまでやるのだったら乗れないということです。

【椎名委員】  ちょっといいですか。

【土肥主査】  はい。

【椎名委員】  フィンガープリントに関しては,僕,何年か前に総務省で研究会をやっていて,その推進を一生懸命応援してきた立場なんですが,フィンガープリント技術というのは,音楽の楽曲の持っている波形の特徴的部分,音楽のDNAと言ってもいいと思いますが,その部分を抽出して,実際に保存されている楽曲と照合することによって,その楽曲を特定することができるというだけの技術です。コンテンツがどれだけの割合で預けられているのか,またどれだけの割合で共有されたのかということを見るのに使える技術であるだけのことで,フィンガープリント技術自体に個人を特定する機能はありません。具体的にどういうところで利用されているかというと,放送でかかった音楽の楽曲名を特定するために,その放送波を受信して,番組中に流れていた音楽をフィンガープリントのサーバーに当てると,どういう曲が使われていたかということがわかる。そういうことを特定するためだけの技術です。個人を特定するようなトラッキングの要素って,この技術とは一切関係ありません。

【土肥主査】  どうぞ。

【丸橋委員】  今,CDCがフィンガープリント技術を使って,侵害ファイルの投稿抑止のために「Fluzo-S」というツールをモバイル投稿型サービスに提供しています。「Fluzo-S」は投稿抑止が目的なので個人を特定する必要はないとCDCは言っていますが,それはそのとおりだとしても,ロッカーに入ってしまったものについても同様のツールを使って探知しろというのは別であって,プライバシーの問題が生じます。侵害ファイルを保有している人は,システム的な探知の過程で何らかの形で特定されてしまうんです。ピー・ツー・ピーの違法なファイル共有者に対する警告スキームとのISPも権利者団体と一緒になって協力していますけど,それは違法なファイルのハッシュ値をあらかじめ権利者団体が特定して,権利者団体がピー・ツー・ピーネットワークをクロールした上でISPが発信者を最後の最後に特定して警告鳴らすというスキームです。

【土肥主査】  いろいろ聞いておりまして,丸橋委員がいろいろ御懸念になっているということが理解できたのではないかと思うのですけれども,いずれにしてもこの小委で議論しようとしているのは,いわゆるこういうクラウドコンピューティングにおいてコンテンツを利用することになる事業者と,それから権利者が,今までのような形で個別の契約とか,そういう取引コストを掛けて,で,やっていくのがいいのか,こういうワンストップ型の集中管理型の,そういう契約スキームを導入することによって取引コストを少なくして,できるだけ小さくしている。で,このクラウドコンピューティングというものが日本の重要な文化産業として他国に遅れないで進めていくという上で必要なんだということなんだろうと思います。今のおっしゃるような問題というのは,特にここの問題というよりも,いろいろな舞台で議論されておられる,そういうお話のように伺いましたけれども,いずれにしてもこの中の契約スキームでは,そういう個人の中を見ない,そういうものであるということを権利者側の委員の方が皆さん一致しておっしゃっておいでになるわけですので,そして,丸橋さんも見ては困るというふうに言われているわけですから,そこにはそごはないんじゃないでしょうか。

【丸橋委員】  いや,本当に見ないと言っているんだったら齟齬(そご)はないです。

【土肥主査】  だけど,見ないというふうにおっしゃっておられるのを,本当か,本当かと言っても建設的ではないような。

【丸橋委員】  いやいやいや,だって,それは皆さんの言葉の端々に,システム的に中でどう動いているのか分からないから,それについてのトラッキングだ,フィンガープリントだっていう話をしているわけじゃないですか。それはあくまでも一旦,プライベートなロッカーエリアの外に出たときの話ですよ,そこについての調査協力義務がありますよというんだったら分かります。そういう話です。

【土肥主査】  この契約スキームがどういう形で出来上がっているかというのは,まだまだこれからなんだろうと思います。そういうスキームが出来上がっていく過程の中で,今のような丸橋さんがいろいろ心配なさっているようなことも場合によっては出てくるのかなと思いますけれども,そこをクリアしていかないと,超えていかないといけない問題じゃないかと思います。
 今子委員,何かありますか。

【今子委員】  ちょっと今日の議論の内容を確認させていただきたいんですけれども,こういうことでよろしいでしょうか。タイムシフトとかデバイスシフトとか,そういったことも含めて,「発展的なクラウド」についても,タイプ2というのは基本的に30条の範囲に属するということ。タイプ2は30条で線引きができるということ。ということであれば,契約というのは基本的には要らないということ。それから,集中管理スキームというのはタイプ2の外側で進めるということ。そのスキームに乗るのか乗らないのかというのは契約自由の原則にのっとり,当事者の自由で決めていくこと。それから,違法に公開されたコンテンツがある場合,事業者はプロバイダー責任制限法に従って,権利者の申出に応じて削除するという対応も可能である。技術的な措置を事業者に課すというものではない,という内容だったかと思うんですけれども,そういうことでよろしいでしょうか。

【土肥主査】  私は,そういう話でこの委員会は進み,かつ,そういうまとめになるのだろうというふうに思っております。その点について御異存がございますか。
 異論はないと私は確認させていただきたいと思います。
 畑委員,どうぞ。

【畑委員】  異論というわけではありませんが,先ほども申し上げた観点ですが,行為という観点では30条の範囲,おおむね私的複製だろうと。サービスという観点の場合,事業者の契約が必要かどうかという点は,これは行為主体等の事実認定の問題ということだと思います。

【土肥主査】  利用主体の問題はおっしゃるとおりだろうと思います。
 大体本日の議論としておおよそのところは収束しつつあるのかなと思っております。もし皆さんの御議論がこれ以上ないようであれば,本日のところはこういう形に,これでまとめたいと思っております。
 つまり,今,先ほどから確認もございましたけれども,本日の議論を拝聴しておりますと,今後の技術の発展に伴うクラウドサービスの多様化に対応する手段として集中管理スキームを基本的に活用する。そして一部における乗り越えるべき課題については,これは乗り越えていくという点で了解を得られたものというふうに思います。私といたしましては,ロッカー型クラウドサービスとして著作権に関する議論について,本小委員会において,この方向性というのがほぼ見えてきたというふうに思っておりますので,今後,先ほどJEITAのオブザーバーの方がおっしゃっておられました10サービス,サービスの10類型,そういったものについての議論を終えた後では,本小委の考え方をまとめていきたいというふうに思います。
 いずれにしても,ロッカー型クラウドサービスと著作権に関する議論としては,これはもう先ほど来から御確認がありますように,本小委において方向性は見えてきたというふうに思いますので,事務局におかれましてはこの点についての取りまとめの案というものを作成をお願いしておきたいというふうに思います。よろしくお願いしたいと存じます。
 本日,大体御議論いただいたわけですけれども,明石さんが何かまだあるということのようでございますので,それを伺ってとりたいと思います。

【明石氏】  今までこの集中管理スキームの資料というのは,前回,前々回と提示いただいていますが,それをテーマに集中的に議論するというのが今回初めてで,特に私どもはたくさんの会社がいるので,全体の考えをまとめてきているわけでもありません。事務局でまとめられるまでに何か意見を表明する,書面か何か分からないですけど,機会を頂きたいなと思っております。

【土肥主査】  取りまとめは,この場で出るんですよ。案はこういうふうに出ますので,そこでおっしゃっていただければいいんじゃないかと思いますが。

【明石氏】  そうですか。分かりました。

【土肥主査】  よろしゅうございますか。
 それでは,本日はこのぐらいにしたいと思います。最後に事務局から連絡事項等がございましたらお願いをいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  次回小委員会につきましては,調整の上,改めて御連絡したいと思います。

【土肥主査】  これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第6回を終わらせていただきます。本日は非常に充実した議論,御意見をありがとうございました。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動