日時:平成27年7月3日(金)
13:30~15:30
場所:文部科学省旧庁舎6階 第2講堂
議事
- 1 開会
- 2 議事
- (1)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会主査の選任等について
- (2)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会審議予定について
- (3)クリエーターへの適切な対価還元について
- (4)その他
- 3 閉会
配布資料
- 資料1
- 文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会委員名簿 (71KB)
- 資料2
- 小委員会の設置について(平成27年6月2日文化審議会著作権分科会決定) (57KB)
- 資料3
- 第15期文化審議会著作権分科会 各小委員会における検討課題について(平成27年6月2日文化審議会著作権分科会配布資料) (81KB)
- 資料4
- 諸外国における私的複製制度の比較 (77KB)
- 資料5
- 諸外国における私的複製制度について (254KB)
- 資料6
- 小寺委員・河村委員発表資料 (885KB)
- 資料7
- 榊原委員発表資料 (857KB)
- 参考資料1
- 文化審議会関係法令等 (128KB)
- 参考資料2
- 第15期文化審議会著作権分科会委員名簿 (79KB)
- 参考資料3
- 第15期 文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会検討課題に関する「知的財産推進計画2015」について (66KB)
- 出席者名簿 (56KB)
議事内容
○ 今期の文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会委員を事務局より紹介した。
○ 本小委員会の主査の選任が行われ,土肥委員が主査に決定した。
○ 主査代理について,土肥主査より末吉委員が主査代理に指名された。
○ 会議の公開については運営規則等の確認が行われた。
※ 以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。
【土肥主査】
本日は,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の1回目となりますので,有松文化庁次長より,一言御挨拶を頂戴いたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いします。
なお,もし写真等をお撮りになる方は,有松次長の御挨拶までとさせていただきますので,御了解いただければと存じます。
では,お願いいたします。
【有松文化庁次長】
小委員会の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。
まず,皆様方におかれましては,御多用の中,この小委員会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。
私から改めて申し上げるまでもなく,著作権制度は,我が国が掲げます「文化芸術立国」「知的財産立国」や「クールジャパン戦略」を実現するために大変重要な役割を担っております。
政府におきましては,今年の5月に,第4次となります文化芸術振興基本方針を定めました。また,去る6月19日には「知的財産推進計画2015」が策定され,デジタル・ネットワーク社会に対応した制度整備など,様々な課題が提起されております。
こうした政府の計画の動向は,日進月歩で発達します技術と著作物の創作・流通・利用環境の急速な変化を踏まえました対応への社会からの強い要請を表すものでございます。文化審議会には,これに的確かつ迅速に応えていくことが期待されているものと考えております。
この小委員会では,昨年度,クラウドサービス等と著作権に関する問題につきまして報告書を取りまとめていただきました。今年度は,昨年度の議論を引き継いで,「クリエーターへの適切な対価還元」の問題につきまして,御検討を頂きたいと思っております。
また,昨年度の報告書を踏まえましたクラウドサービス等に係る円滑なライセンシング体制の構築につきましても,御意見を頂戴したいと考えております。
クリエーターへの適切な対価還元の問題につきましては,私的録音録画補償金制度の在り方をめぐりまして,長年議論が行われてきたところでございます。そして,政府の知的財産推進計画等におきましても,審議会で検討を進め,結論を得て,必要な措置を講ずることが求められております。
クリエーターに適切な対価が還元され,創造のサイクルが活性化し,関係をします権利者,事業者,それから著作物を利用するユーザー,この三者がウィンウィンとなる結論が得られますように,この大変重要でかつ難しい課題の検討には,是非とも皆様方のお力添えが欠かせないものと考えております。
最後になりますが,皆様方におかれましては,お忙しい中,恐縮ではございますが,なお一層の御協力をお願いいたしまして,簡単ですが,挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【土肥主査】
有松次長,誠にありがとうございました。
それでは,次に今期の本小委員会の審議事項について確認をしておきたいと存じます。先ほどの次長のお話の中にもありましたように,メインのテーマは大体流れがあるわけでありますけれども,本小委員会における審議事項について,事務局から改めて説明をお願いできればと存じます。
【秋山著作権課課長補佐】
説明申し上げます。お手元に資料2,資料3,それから参考資料3を御用意ください。
資料2は先月2日に開かれました著作権分科会において決定された小委員会の設置に関するペーパーでございます。分科会では,ここに記載された三つの小委員会の設置を御了承いただきました。著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会としては,クリエーターへの適切な対価還元等に関することを審議することとされております。
また,資料3も著作権分科会で御議論いただいたものでありまして,法制・基本問題小委員会においては,デジタル・ネットワーク社会に対応した著作権制度等の整備について広く議論を行うということになっております。また,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会におきましては,検討課題の例として,クリエーターへの適切な対価還元等のための私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入が挙げられております。それから昨年度の「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」において,音楽集中管理センター等のライセンシング体制の構築に向けた関係者間での取組を促進すること,そのために,文化審議会としても,この取組を注視していくとの報告があったことを受け,クラウドサービス等に係る円滑なライセンシング体制の構築に関しても本小委員会で議論を行うこととされております。
また,国際小委員会においては,昨年度と引き続き,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方が議論されることとなっております。
参考資料3を御紹介したいと思います。参考資料3は,先月,政府の知的財産戦略本部において決定されました「知的財産推進計画2015」でございます。そのうち本小委員会に関係が深いであろうと思われる事項について抜粋させていただきました。
まず,この一つ目の四角囲みの5番,デジタル・ネットワークの発達に対応した法制度等の基盤整備というカテゴリーの中で,持続的なコンテンツ再生産につなげるための環境整備ということで,クリエーターへの適切な対価還元に関することが計画として提示されております。また,同じ5番の中に,権利処理の円滑化に向けた集中管理の促進ということで,音楽集中管理センターの具体化等,民間におけるライセンシング体制の構築等が促進されるよう,必要に応じて支援を行うということとなってございます。
説明は以上でございます。御審議のほど,よろしくお願いいたします。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいま事務局から説明を頂きました本小委員会における審議事項について,御質問,御意見等がございましたら,お願いをいたします。
どなたかございませんか。
もしなければ,資料の3にあるように,審議事項としては,クリエーターへの適切な対価還元等に関することという事項について,本小委においては,まず取り上げていきたいと思っておりますけれども,そういう方向でよろしゅうございますか。御異議ございませんか。
それでは,本小委において取り上げるべき審議事項については,事務局の説明のあったように,資料3にあるように,クリエーターへの適切な対価還元に関する問題を取り扱いたいと存じます。その文脈の中で,円滑なライセンシング体制の構築等も出てくるということのようでございますので,そうしたことも併せて今後検討していければと存じます。
特に御意見,御質問なければ,次に入りたいと思いますが,よろしいですか。
それでは,次に参りますけれども,本日の一番重要な議事ということになりましょう。クリエーターへの適切な対価還元について入りたいと思います。
本件につきましては,昨年度,本小委員会において行われた議論を引き続き進めていきたいと思っております。昨年2月の小委員会において,諸外国における私的複製をめぐる制度に話が及んだところでございます。諸外国制度の概要を事務局において改めてまとめていただいておりますので,まずは,その御紹介を頂きたいと思っております。
また,昨年2月,本小委員会において,権利者側の委員の方から,クリエーターへの適切な対価還元の在り方について,御発表を頂いております。したがいまして,今回は消費者側の委員の方,それから事業者側の委員の方より,この対価還元の在り方についての御意見を発表いただければと思っております。その後で一括して質疑応答,意見交換,これを行ってまいりたいと思います。
それでは,初めに事務局より御説明をお願いしたいと存じます。
【俵著作物流通推進室長】
ありがとうございます。
今,土肥主査から御紹介いただきましたけれども,諸外国における私的複製制度についてということで,資料は資料4と資料5を確認いただければと思います。
今回,海外に行って訪問調査等できなかったものですから,WIPOの調査,これは2013年に調査報告書が出ているようですけれども,ここに書かれていることを整理したのが,この二つの資料になります。
資料5が少し詳しくなっていますけれども,資料4の表に基づいて,簡単に紹介をさせていただきたいと思います。
資料4には9か国を挙げていますけれども,補償金制度を設けているWIPO調査の対象となっている国は, 31か国あるようです。そのうち主な国をピックアップしたものが,この表の9か国になります。
補償金の対象行為については,カナダ,アメリカを除いて,録音・録画。また,表にはでていませんがアメリカ,日本を除いて,デジタル,アナログに関わらず,録音・録画行為に対しての補償金が設けられているようです。
対象機器・媒体については,ここにそれぞれずらっと一覧を書かせていただいておりますけれども,それぞれの国において対象にしているものが違っていまして,パソコン,タブレットという,いわゆる汎用機器を対象としている国もあれば,基本的には専用機器を中心としつつ,それに一部汎用機器を加えているといったような国もあります。調査結果から読み取れるのはここまでだったんですけれども,それぞれの国において,いろいろな形で対象機器を指定しているということだと思います。
支払義務者については,皆さん御存じだと思いますけども,この9か国については,製造業者を支払義務者と指定をして,補償金制度を作っているというのが基本となっています。
1か国,スペイン,これは右から3番目の表の中に入っていますけれども,2006年に補償金制度を導入しましたが,2012年から,国家予算から補償金を支払うスキームに変えています。国家基金制度と呼んでいるようですけれども,2012年からは新たな制度として,国がその補償金を支払うという制度に変えているということが特徴的かなと思います。
その下の徴収団体につきましては,基本は一つの団体が法律等に基づいて指定をされていて,その団体が徴収・分配をしているというのが現状であろうと思います。
補償金額の決定方法,これにつきましては,これもそれぞれの国において少し違っていますけれども,大まかに言えば,関係者の協議を踏まえて決定されるという国が多いと言えると思います。
一つ,ドイツ,これは右から5番目の表になりますけれども,ドイツにおいてはZPUという徴収団体がありまして,ここが製造業者,輸入業者の協会との交渉を踏まえて補償金額を決定するということになっているようです。ただ,交渉が不調に陥った場合,うまくまとまらなかった場合については,市場調査のデータに基づいて,ZPUが最終決定をするという仕組みになっているようです。ただ,この決定に不服がある場合には訴訟に発展するということが多いようでして,この下から2番目に書いてあるんですけれども,WIPO調査当時には,補償金がまだ支払われていないというような状況になっていたようです。このように,制度がうまく完全には機能していないという国も出てきているということがあるようです。
徴収・分配方法については,これもそれぞれではありますが,徴収団体が支払義務者から補償金を徴収して,それを個人,あるいは権利者団体を通じて分配をするというのが基本スキームになっているかなと思います。
国民1人当たりの補償金支払額について,1人当たりの補償金額の高い国はフランスです。1ユーロは,今130円から135円ぐらいだと思いますので,フランスでも1人当たり400円弱であり,国民1人あたりにするとそれほど大きくない額といえるかと思います。
日本のように一部共通目的の基金を設けて支出している国は全部で4か国あるようです。それぞれ金額,割合が決められているようであり,フランスであれば25%,イタリアであれば50%,スペインであれば20%というような形で,一部の国において日本と同じような共通目的の制度が設けられています。
表には書かれていませんが,最近の動きとしては,一番左のベルギーについては2013年の10月に補償金の額自体を減額する一方で,タブレットを対象に追加するという制度改正を一部行っているようです。
先ほどスペインの例をちょっと紹介したんですけど,フィンランドも大きな制度改正があったようでして,2014年の12月に補償金制度を廃止して,政府が運営するアーティストへの補償を目的とした基金というものを作ったということのようです。これも大きな制度改正の一つかなと思います。
ということで,本来であれば,なぜこの対象機器を追加しているのかといったような実態を含めて紹介をできれば一番よかったんですけど,現状としては,このWIPOの調査を踏まえて整理したものを紹介させていただきました。
資料5については,この資料4でまとめたものの詳しい版になっているので,また確認をいただけたらと思います。よろしくお願いします。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,続きまして,クリエーターへの適切な対価還元の在り方についての御意見の発表ですが,一般社団法人のインターネットユーザー協会から小寺委員,主婦連合より河村委員,お願いいたします。
【小寺委員】
インターネットユーザー協会の小寺でございます。このたび,栄えある1回目の小委員会で私どもの発表の機会頂きまして,誠にありがとうございます。今回の発表は,主婦連,河村委員に多大な御助言を頂きまして作成をいたしました。つきましては,今回の発表は,私どもインターネットユーザー協会と主婦連の共同発表という形にさせていただきます。
それでは,資料6の1枚目から御説明をさせていただきます。
まず,資料の2ページ目,パワーポイント的に2ページ目ということですね。
最初に,コンテンツ利用形態の変化をまとめました。まずは音楽の方から,見ていきたいと思います。
まず1番目,サブスクリプション(聴き放題)サービスの台頭ということで,今現在,日本でサービス運営している事業者を,ここで書き上げてみました。日本未進出のものも,世界的には大手なSpotifyというのがあります。PlayStation Musicというのは,日本では以前,Music Unlimitedという名前でサービス運営していたものが廃止になりまして,他国ではPlayStation Musicという形になりましたが,日本では撤退しただけで終わっております。TIDALというのは,アメリカのSpotifyの対抗サービスだと聞いております。
続きまして,2ポツ目,スキャンマッチ型。これは昨年の小委員会でも議論をさせていただきましたが,いわゆるiTunes Matchのようなタイプのものです。日本では2014年に導入が開始されましたが,本国アメリカでは2011年からサービスをスタートしております。そこから足掛け4年半ぐらいたっているわけですけれども,世界的に見ても,同様のサービスというのは参入がどうも少ないようで,ほぼ同様のサービスを行っているのがGoogle Musicというものになります。ただ,これは日本ではサービス事業をしておりません。
それから3ポツ目,YouTubeやニコニコ動画といったプラットフォームで音楽視聴をするという習慣は定着したと見ております。これはUGCと書いてありますが,ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ,ユーザーが,アマチュアが作るコンテンツですね。これが一つの鑑賞に堪え得るものとして聴かれ始めているということも,またその背景にはあるんだろうなと考えております。
それから,音楽配信サービスによる音楽購入,これは定着をしていると。特に近年はハイレゾと言われます高音質の音源というのが,現状はメディアとしての入れ物が公式にはございませんので,データをダウンロードするしか楽曲を入手する手段がないものですから,必然的に音楽配信サービスから買うということが主流になっております。
それから,着信音の売上げですね。これはいわゆる着うた,着メロのような旧型の携帯電話向けの音楽サービスでございます。こちらの売上げは減っていると。これはいわゆる旧型の携帯電話からスマートフォンへの移行が進んでいるからということでございます。昨年の調査では,たしか国民の60%ぐらい,所持率がそのぐらいだと聞いておりますが,旧型の携帯電話というのが,だんだん製造しなくなっております関係で,これはもう年々,携帯電話の利用そのものは減っていくわけですから,当然,着信音の売上げというのも減っていくだろうと見ております。
それから,CDの購入は微減ということで,昨年の日本レコード協会様の資料によりますと,前年比6%減ということになっております。ただ,昨今はCDに付加価値を付けるという商法,例えば,握手券を付けるとか,投票券を付けるとかといった付加価値を付けることで,1人のユーザーが大量に購入をするというようなケースも出てきております。ですが,1人の人が何枚買ったかというような調査というのは,当然,これは難しいと思われますので,いわゆる国民が一般的に利用する,1人のアーティストの作品を聴きたいからCDを1枚購入するというような習慣を数値から見取るのはなかなか難しいのかなと思っております。
では,めくっていただきまして,次は映像の方のコンテンツ利用の変化について,まとめさせていただきました。
こちらの方も同じくサブスクリプション型サービスが定着するのではないだろうかと見ております。というのも,やはりこの手のサービスというのがたくさん,昨年あたりから参入が開始されました。それから,この秋にはアメリカでは最大のサービスでありますNetflixが日本でもサービスを開始するということになっております。秋を迎えてみないと,どのぐらいの勢力図になるのかは,ちょっとまだ分からないところはありますが,全体的にはサブスクリプションサービスは順調に推移するのではないだろうかと見ております。
それから,テレビ局自身が,昨年あたりから,一昨年ぐらいからですかね。見逃し配信サービスに対して非常に積極的に転換をされましたことで,放送後1週間後など間をあけた後に,インターネットを経由して番組が見られるというようなサービスもスタートいたしまして,これも徐々に定着をしていくのかなと思っております。
それから,オンデマンド型,いわゆるPay Per View型の視聴は,認知はされているようですけれども,それが右肩上がりで伸びているかというと,どうもそのように顕著に伸びているというような形ではないように思えます。
それから,こちらも音楽と同様ですが,YouTubeやニコニコ動画などで映像の視聴というのは完全に定着をしたと。これもやはりユーザーがつくるコンテンツが,これまでの商業コンテンツと肩を並べる勢いで見られているというような状況もあろうかと思います。
とはいえ,日本は諸外国に比べますと放送コンテンツのクオリティーが非常に高いものですから,よく視聴をされます。レコーダーを録画して視聴するということは,もう完全に定着をしておりますし,もちろん放送中の番組をそのままテレビで,生で見るというような慣習も残っております。ただ,昨今の視聴率調査で,全般的には視聴率が下がってきているということを見ますと,やっぱり生視聴よりは録画視聴の方へシフトを続けているのかなと見ております。
続きまして4枚目ですけれども,コンテンツの利用形態の変化ということでまとめました。
時間や機器,場所,つまりタイムシフトやプレースシフトというのは,技術的には,もうできるようになっているということですね。DLNAというのは,タイプの異なる機器であったり,違うメーカー間であったりというものをネットワークでつなぎまして,家庭内で,どこにどんなコンテンツがあって,それを単一の手元にある機器で参照して再生するというようなルール決めをされまして,これはもう2004年ぐらいから実用化されておりまして,今はスタンダードな形になっております。それからDTCP-IPは,ネットワークを通じた著作権保護技術ですね。それからデジタル放送受信におけるリモート視聴要件の緩和。これはNexTVフォーラムというところが取りまとめをしまして,昨年の夏頃から,これに対応したレコーダーなどの機器が出てまいりまして,家庭で録画をしてあるテレビ番組を宅外で視聴ができるようになったと。これは昨年夏ぐらいから商品が出始めまして,今,かなりホットな話題ということになっております。
当然,そういうことができるということの背景には,スマートフォンやタブレット,あるいはファブレットといった視聴端末が普及をしたということになります。ファブレットというのはスマートフォンとタブレットの間ぐらいのもので,平たく言えば,でっかいスマートフォンですね。こちらにいわゆるファブレットと言われるものがありますけれども,このぐらいのサイズのスマートフォンをファブレットと呼びます。こういったものが普及をしていると。それに加えまして,宅外視聴に関しては,高速な通信回線網が普及をしまして,動画ですと結構データが大きいわけですけれども,それでも視聴ができるような太い帯域の回線が使えるようになってきたということであります。ただ,利便性には,まだ課題が残るところでありますし,宅外視聴は昨年からできた比較的新しい技術ですので,まだまだ,これからいろんなことを整理していかないといけないのかなということになります。
では,めくっていただきまして,次に行きます。
これは録音と録画をまとめたものなんですけれども,トータルでどういうことが起こっているかというと,特に音楽の方は,いわゆる私的複製,つまり聴く,便利に聴くためにコピーをするという機会というのは,もうかなり減ってきております。それから録画の方も,やはりサブスクリプション型サービスの台頭や,あるいはテレビ局様がやっていらっしゃいます見逃し配信などにより,だんだん録画をして,それを複製して楽しむというような行為もまた減ってくるのではないかと私どもは見ております。
テレビ放送に関して言えば,これは私的複製が可能になっておりますけれども,ダビング10によって複製の枚数と,それから孫コピーができないということで,制限が掛かっております。ですから,こういうコピーという行為自体が,長い目で見れば,次第にはなくなっていく傾向にあると御指摘をさせていただきます。
それから,6枚目,現在あります複製技術のためにユーザーの利便性が落ちているというポイントを5つまとめさせていただきました。実際には,お読みいただければと思うんですが,DVDやBlu-rayをスマートフォンなどで楽しむことができないであるとか,それからLinuxやMacOSといったPCでテレビ番組を録画したDVDやBlu-rayは見られないと。市販の映画を収録したBlu-rayなどは再生ができるんですが,テレビ番組を録画したディスクに関しては再生できないということになります。こちらの方の複製制御技術がありますために,ユーザーの利便性というのは落ちているということでございます。
では,めくっていただきまして,次ですけれども,イノベーションや新しいサービスを考える議論をこれからしていきたいと私たちは思っております。ユーザーが選ぶのは,やはり利便性が高いサービスです。利便性が高くなれば,その分に対価を新たに支払う,利用料を支払うということに対しては,もちろん支払うわけですね。補償金という形ではなく,新しいサービスやイノベーションを促進して,そのサービスの契約の中でアーティストには対価還元が行われていくべきであろうと考えております。
それから,今回の議論に関しましては,タイムシフトやプレースシフトといった,これまで行っていることですね。それからコンテンツの継承,これはメディアを引き継ぐという意味でございます。それからコンテンツを引用すること。例えば,テレビ番組を引用したいといった場合に,私たちはどういう手段がとれるかというと,原理的には,今,手段はないわけですね。それから,教育利用などの公正な利用については,やはり自由であるべきというような議論も,今回加えていただければと思っております。
それから,最後になりますけれども,消費者・ユーザーの自由確保を前提とした,新しい「対価還元の仕組み」の可能性として,少し御提案をさせていただきたいと思います。
ユーザーの私的な範囲での複製・利用の自由が確保できる場合には,何らかの新しい対価の還元の仕組みの構築の議論は可能だと考えております。
ただ,その中で,テレビ番組に関してはダビング10というものがありますので,これによりまして,ユーザーの利便性というのは現状損なわれているということであります。
対価の還元なんですけれども,これまでの補償金のスタイルというのは,家庭で何かを複製したと。それがメディアの数であるとか,あるいは機器を購入した段階で補償をするということになっていたんですが,各家庭でどんなコンテンツが複製されたかを調べるすべはないわけでございます。ユーザーとしても,そんなのを調べられたら困るわけで,ここはアンタッチャブルなところになっているわけです。そうなると,補償金のようにお金を集めても,それを現制作者に分配をするとなった際に,もともと誰のものがコピーされたか分かりませんので,どうしてもそこには偏りというか,正確さを欠けるということになってしまいます。ですので,ここは,ある程度割り切って,直接のクリエーターへの還元にこだわらず,例えば,これまでの補償金にも20%あるんですけれども,クリエーターの振興に大きくかじを取ってはどうかというふうな御提案を一つさせていただきたいと思います。
一つの例といたしましては,下の方に書いてありますけれども,サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)であるとか,Midemであるとかといった,コンテンツの見本市ですね。英国のMusic Fundというのがありまして,これは英国のレコード協会に相当する団体と国とでファンドを組みまして,海外の見本市に作品を出すときに,渡航費であるとかといったものを援助するというような仕組みがあるそうでございます。こういった形で,アーティストがより活動をしやすいためにお金を使うことであるとか,あともう一つ新人クリエーター,若手クリエーターの登竜門的なものとして,何かコンテストのようなものを行い,それで優秀だという作品に賞金としてお金を援助するというようなことですね。こういう形にしていただくと,消費者側としても非常に,集めたお金が誰にどのぐらい使われたかというのが見えやすくなりますので,消費者としても非常に納得のしやすい制度になるんじゃないかなと思います。
私どもの発表は以上でございますが,河村委員の方から何か補足があれば,お願いいたします。
【河村委員】
8ページにあります,新しい対価の還元の仕組みの可能性というところですけれども,このように書いた意図といいますか,ここでいう新しい仕組みが対象としているのは,地上波のテレビ放送の録画のことです。地上波のテレビ放送の複製制御技術,そのルールの見直しが行われたあかつきには,ということでございます。さっき小寺委員がおっしゃったみたいに,そこでは何が複製されたか捕捉できないので,新しい対価の還元の仕組み――補償金という言葉は余り使いたくないんですが――その構築が可能なのではないかという御提案でございます。これはダビングを20枚したいとか30枚したいとかという話ではなくて,もうそういうことは不必要なことでございまして,複製を何枚もするという習慣がどんどんなくなっているわけです。
何が問題かといいますと,10枚とか何枚とかということを制限するために行われて,そこに実装されている制御技術があり,それが実装されていないと,録画をそこに入れてはいけないとかというルールがありますが,そのことが便利で魅力的な使い方,そのようなサービスの可能性をことごとく阻害されていることです。それがなければ,いろいろなサービスが可能になりますし,また,孫コピーを可能とすることによって,無料放送の私的な録画についてメディア変換もできるようになります。
先ほどのLinuxやMacOSでテレビ番組の録画が見られないという問題につきましても,ダビング10が掛かっているものを読み取ることができないからですよね。世界で日本だけが無料のテレビ放送にそんなものを掛けているので,日本のためだけに,わざわざそのようなソフトウェアを開発するようなことをしていないと聞いております。
繰り返しますと,地上波のテレビ放送に関して,魅力的なサービスの可能性を縛らず,私的複製のメディア変換ができ,不便を強いている制約を外すことができたなら,そのことに対して,何らかの対価の還元が考えられる。そういう意味ですので,コピーを何枚したいのかという無駄な議論をもう一回繰り返したくはないと考えております。
とりあえず,以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは最後に,一般社団法人電子情報技術産業協会より,榊原委員,お願いいたします。
【榊原委員】
榊原でございます。ありがとうございます。資料の7になります。
本日はお時間をわざわざ頂きましてありがとうございます。パワーポイントの資料,約12枚ですけれども,大体,最初の5ページぐらいまでは,今,小寺委員が御説明されたこととほとんど重なるので,簡単に御説明をいたしますけれども,まず2ページ目,クリエーターへの適切な対価還元に関して,ここ10年,20年の環境の変化というものが影響するということで,環境の変化の主要なものを挙げております。多機能化・汎用化,保護技術の発展,ダウンロードからサブスクリプションへ,ネット配信ビジネスの成長,User Generated Contentの増加ということで,これらについて少し次のページから,3ページ以下から順番に,表というか絵で御覧いただきたいと思います。
まず3ページ目ですけれども,時代と環境の変化ということで,左端から,80年代以前から最近までと右に向かっていますけれども,コンテンツソースの変化として,CDパッケージが減ってきているということですね。それから動画,ビデオからDVDやBlu-rayになるということ,放送はアナログからデジタル放送になっているということ,点線部分は,右上に少し注記をさせていただきましたが,赤の点々が技術でコントロールしているエリア,青の点々がユーザーとの契約で対応しているエリアということでございます。ですから,こういったものは増えてきているということで,コンテンツとかビジネスモデルの多様化と拡大していくということです。
下の段で,デバイスの変化についても,音楽についてはCDカセットだったものがMDになって,最近ではスマートフォンとか,そういったものになってきていると。DRMがほとんどのものに実装されてきているということ。
それから動画。ビデオだったものがDVD,Blu-rayということで,いろいろなDRMが実装されているということで,赤と青が錯そうしておりますけれども,製品の多機能化。昔は単一機能で専用品だったものが多機能化,汎用化をしていますし,ほとんどのものがネットワークにつながるようになってきているということです。
4ページ目の下のスライドですけれども,ネット配信サービスの変化でございます。
右上に注記をしてございまして,ブルーと赤と紫にしているんですけれども,上の段が音楽で,下の段が動画で,左から右に時代が進んでいっているんですけれども,昔はダウンロード型。コピーをするという文化から,だんだんコピーをしなくなってきているということで,サブスクリプションというような契約に移った中で,ストリーミングというものがほとんどになってきているということで,一番文末のところですけれどもユーザーの端末に複製物を作る必要はなくなって,クラウドからのストリーミングにより,いつでもどこでも音楽,動画が視聴できるような状況に変化をしてきているということです。
5枚目のスライドに行きまして,同じくネット配信のまとめですけれども,ネット配信は,2004年以降ですけれども34倍に増えてきているということで,契約・技術で対応できる範囲は拡大してきているということが分かります。更にサブスクリプションが増えることで,ユーザーの手元への複製というものは減っているんであろうと。また,売上比率でも,パッケージから配信というものが増加に転じているということです。
次の6枚目のスライドですけれども,こういった状況変化を受けて,もともとそのデータは以前の録音・録画の委員会でも主張していた内容とほとんど変わらないんですけれども,現行制度は使命を終えたんではないかということで,こういった保護技術とか契約とかの進展が政策上大きな背景要素となっているというような知財高裁判決ないしは最高裁へ行くということがございますし,中山先生の拒否しないという前提,合意の上で成立していたというようなものが砕け散ったというような表現を最近はされております。リセットして,契約・技術で解決する方法を今後は模索していくべきであろうと,ますます考えております。
次のページですけれども,補償金制度というものは矛盾があると以前の審議会でも御指摘させていただいていたんですけれども,その矛盾が拡大しているだろうということで,矛盾の代表的なものを挙げております。これは前例となる状況の変化というもので,直接課金の実現が増えてきているとか,コピー制御等の技術の向上と。また,直接ネット配信が増えますと,対価の二重取りという問題が拡大するということ,それから3番目ですけれども,そもそも私的録音録画を行わないユーザーに課金するということについての問題点,これはコピーするかもしれないという人よりは,直接の契約で必ず利用するという人に対価を還元していただくというのが筋であろうということです。
最後に,分配の問題というのは,ヨーロッパなんかでも非常に大問題になっているということで,ここでも同じ問題があるかと思います。
この制度,対価還元については解決にならないということで,結論として,8ページ目に書いてございます。
今後に向けては保護と利用のバランスという基本の理念を基に議論がされるべきで,契約や技術によって,創作から利用,コンテンツが生まれてから流通をして提供される一連の過程で,著作権者にとって適切な対価還元を得る機会を実現できるということを考えておりますので,現行制度であるとか,新たな法制度というような対価還元は不要ではないかと考えております。
次のスライドで,関連議論として,諸外国の情報で,先ほどヨーロッパについては,俵室長の方から詳しく御紹介を頂いたとおりでございますが,やはりスペイン,フィンランドが廃止になっていたり,ドイツ,フランスでも,制度としてはあるんですけれども,裁判になったり,フランスは,先ほど御紹介なかったですけれども,私的補償委員会というものから,業界団体6団体のうち5団体が抜けていると,また消費者団体も一番大きいところが抜けて,この3年間,機能停止状態に陥っているということで,欧州は余り機能していないということを申し添えたいと思います。
他方で,多くの国で私的複製も含む柔軟性のある規定を導入している国が,併せて補助金制度は非導入,導入していない,ないしは凍結しているということでございます。
次のスライドに行きまして,データの視聴で契約や技術で代価還元が行われるべきだということについての一例として,最近,非常に学会周辺とか,権利者の方も,昨年少し御提案をされていたように思いますけれども,拡大集中許諾というものが一つの例ではあると思います。欧州でも相当導入をされていますし,アメリカでも導入が通常になってきたということで,こういったものでオプトアウトなんかもあるようなので,活用推進をすることで対価の還元を増やしていくということができるのではないかと思います。
次のスライドに行きまして,これは今申し上げてきたコンテンツ流通,上流の左上から,クリエーターの方がコンテンツを作成して,上流から下流までコンテンツが流通をされていくと。この距離が短い場合も長い場合もあると思いますけれども,最後の私的録音録画するかもしれないという可能性のところで負担をするという制度ではなくて,やはり使う人が,上流部分ないしは,その中間というか,そういうことで対価還元ができていないのかと思います。
最後のスライド,結論になりますけれども,補償金といった納得感のない法制度によるのではなくて,契約や技術による解決を志向されてはどうかと思います。また,末端の行為を捉えるのではなくて,対価の還元というんであれば,創作から最後の提供(活用まで)の全過程を広く捉えて検討されるべきと考えます。
以上でございます。御清聴ありがとうございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの御発表ですね。事務局からの説明,小寺委員,河村委員からの御発表,それから榊原委員の御発表,これらにつきまして,質疑応答,意見交換を行いたいと存じます。どうぞ御自由に,御質問,御意見いただければと存じます。
松田委員,どうぞ。
【松田委員】
御報告ありがとうございます。
お三方の御意見を総称すると,これから先の技術は,自分が持っているいろんなデバイスに蓄積・利用することになる。さらに,自分のコントロールするどこかの機器にコンテンツを蓄積するのではなく,ストリーム型で利用することになるという御指摘のように思います。
質問なんですけど,そう言いましても,どこかで探してきて,ユーザーのどこかのデバイスにストリームされなきゃいけないわけで,その探してくる先なんですけど。これは,これから先の世の中では,例えば,何々協会の音楽の音源を管理します。何々会社が映像の管理をしますというサーバにアクセスをして有料で配信しますという形ではないようです。これからの利用は,検索する,探してくるという技術と無縁ではないように思います。その点はいかがでしょうか。コンテンツのサーバ保管ということは,どのようになるのでしょうか。
【土肥主査】 じゃあ,難しい見通しかもしれませんが,お願いします。
【小寺委員】
では,私がお答えをさせていただきます。
自分が探したいという,見たい,聴きたいというコンテンツが,まず先にあって,それがどこにあるのか,どんなサービス事業者がそれを持っているのかを探す技術という御質問かと思いますけれども,アメリカの方では,複数の事業者さんがお持ちのコンテンツを貫いて検索をするというようなサービスもあるようでございます。それはテレビでありますとか,あるいはケーブルテレビのセットトップボックスなどを通じて,そういうデータベースをお持ちのサービス上で検索を実行していただく。そこからコンテンツがこことこことここがサービスをしていますよというのが出ると。ここはサブスクリプション型ですよ,ここは買うと幾らです,もうちょっと安いサービスはここにありますというようなことが分かるようなサービスというのは,アメリカでは既に実働しております。日本では,まだ聞いたことはございません。
【松田委員】 どこかの業者がコンテンツサービスを提供していることになりますと,ネット上で契約を結んでいかなきゃいけないわけですよね。ないしは,契約を結ばなくてもコンテンツだけを受信するということになりますかね。
【小寺委員】 有料で配信をしているサービス事業者の方に対しては,あらかじめサービスを加入しているサービスが見つかると。加入していないサービサーしか見つからなかった場合は,それをクリックすると契約をするページへ飛ぶというような仕組みになっております。無償で見られるような,YouTubeなどに権利者が自らプロモーションのために上げたものが見つかるというケースもあろうかとは思いますけれども,基本的には,有料コンテンツであれば,有料の契約を結んで視聴するというのがベースでございます。
【松田委員】 アメリカのお話は,よくまだ私には分かってないですけれども,いつかそういう御説明があると,かなり有益なんじゃないかと思うんですが,著作物の種類ごとですか。音楽なら音楽だけ,それとも映像も含めた全てのコンテンツが,そういうアメリカの場合には,一つのデータベースがあって,そこから検索できると,こういうことでしょうか。
【小寺委員】 私がアメリカで見てきましたのは,主に映画コンテンツですね。アメリカは映画コンテンツの視聴が非常に盛んですので,映画コンテンツを探すというのがメインでございます。あるいはテレビドラマでも,人気のあるシリーズというのは,放送局が持っているのではなく,制作会社が権利を持っている,いわゆる番販ができるような形になっておりますので,比較的いろんなサービサーがテレビの連続ドラマ的なものは売りやすい状況になっておりますので,そういうものも探せます。音楽の方は,寡聞ながら,私は存じ上げておりません。
【土肥主査】
ほかにいかがでございましょうか。
椎名委員,お願いします。
【椎名委員】 まず,事務局の御説明に関して,ちょっと補足的な情報として申し上げるんですが,これ,つい最近の話だと思いますが,イギリスでは,この委員会でも前出ていましたけど,私的複製の定義をすごく厳格にして,自分自身のコンテンツからの複製じゃなきゃ駄目だとか,自分のためのものじゃなきゃ駄目だとか,そういった厳格化をして,それをした上で,私的複製の補償金制度は必要ないという決定を政府がしたということで,このJEITAさんの資料も,イギリスが補償金制度のある国には入っていないということなんですが,政府に対して,その決定を不服とした権利者が訴えて,このたび高等法院というところの司法審査で,政府が権利者に与える不利益は無視できる範囲であると結論付けたことついて,違法であると。不利益がないということの証明がされてないという決定をしまして,その政府の決定は違法であるので,その部分の条文を削除するか,若しくは補償金制度を導入せよという決定をしたという話が入ってきましたので,僕も詳しくは分からないんですが,これ,補足的に事務局で調べていただいて,次回でも報告していただければと思います。
【俵著作物流通推進室長】 ありがとうございます。できる範囲で調べて,提供できるようにしたいと思います。
【椎名委員】
はい。
それと,お二方の御説明を聞いていて思ったことをちょっと申し上げるんですが,まず,サブスクリプションへ移行しているという,確かにそのとおりだと思うんですが,かつて補償金制度をめぐる議論の中で,そのときも言われたのが,いずれDRMで全てコントロールができるようになると。そうなったときに,もう補償金制度は不要になるんですよというようなことを盛んに言われたんだけど,結局,世の中はそうならなかったということがあります。それで,今はサブスクリプションということになかなか集中していますけど,評論家の方なんかで,サブスクリプションの限界みたいなことをおっしゃる方もいらっしゃったりするので,今後どういうふうになっていくかは分からないというのが本当のところだと思うんですね。そこでむしろ大切なことは,手段とかサービスのトレンドとは無関係に,様々なフォーマットのコンテンツが混在して流通していくというのが実態だと思うんで,そこの間にも権利者は対価の還元を受ける機会を失い続けているということがあるので,時点時点での状況に左右されないような,いわゆるストレッチの効いた柔軟性のある対価の還元の仕組みができたらいいんじゃないかとすごく思っております。
あと,榊原委員の御発表ですが,やはりこれを聞いて思いましたのは,やっぱり産業の上げる利益については一切言及されてないということに大きな違和感を覚えます。先ほど事務局の御説明にもあったように,日本を除く世界中の制度がそうであるように,ユーザーが行う複製に関する対価の還元というたてつけではありながら,実際にはユーザーが私的複製を行うことが可能であること。日本でいえば30条1項が存在しているということになると思いますけど,そのことによって利益を上げる産業と権利者との間の利害調整であるわけですね。我が国においても,本来は無許諾・無償。30条1項で,無許諾・無償でやることが可能だった私的複製について,その影響に着目して補償金制度を設けようというときに,わざわざメーカー等を協力義務者と位置付けたということでも因果関係としては明らかなんだと思います。
クラウドをめぐる議論の中でも明らかになったように,ユーザーのために複製等の手段を事業として提供する者が,ユーザーに代わって包括的な処理を行うこと。言い換えれば,その利益の中から応分の負担をしていくということが可能なわけですから,真の意味でウィンウィンの関係を作っていく上では,ユーザーが利用者であるという日本の補償金制度のドグマから離れて,産業界も利害調整という視点を持った方がいいんではないかと強く思っています。そういう観点から見ると,先ほど来,補償金制度の矛盾とかという形で,いろいろ挙げられていることの大方が解消していくような気がしてなりません。
質問ではなくて,意見ということです。
【土肥主査】
ありがとうございました。
ほかに。今の椎名委員の御意見に何か,あるいはその質問にまたがるようなところもあったのかもしれませんけれども,何かおっしゃるようなことがあれば頂きますけれども。
じゃあ,小寺委員,お願いします。
【小寺委員】
すいません。御意見ありがとうございました。椎名委員の御発言の中で,ちょっと分からない点がありますので,御質問させていただきます。
一般に評論家がサブスクリプション型サービスの限界とおっしゃっているようですが,ちょっと私は寡聞にして,その限界の内容を存じ上げておりませんので,もしよろしければお教えいただきたいということが1点。
それから,いろんなコンテンツが混在した中で失う利益があるとおっしゃいましたけれども,具体的には,どういう利益が失われるのでしょうか。お教えいただければと思います。
【土肥主査】 じゃ,お願いします。
【椎名委員】
サブスクリプションの未来に疑問を呈しているというのは,都度課金の配信サービスに比べて割高感が結構出ている,そういうふうに感じる人たちが多くなっているというような記事を読んだこともあります。
あと,権利者の失う不利益というのは,さっきのイギリスの話と同じで,権利者の不利益をどれぐらいかということを立証せよ,あるいは権利者の不利益が存在しないことを立証せよというのは,なかなか難しいことであると思うんですね。だからこそ,産業間の利益調整というふうに視点をシフトしていった方がいいと思っています。権利者の不利益というものを見ていく場合に,イギリスなんかは,ソフトの売上げの下落みたいなことを見たようですけれど,そういう結び付け方をすれば,それはそれでデータとして出るとは思うんですが,一方でそこは消費者団体の方々もかねて指摘されているように,それだけじゃないわけですよね。一般的にコンテンツが流通していくことがもたらす利益・不利益というのは,そういうことだけでははかれないものであって,不利益の立証や,不利益が存在しないことの立証というあい路に入ってしまうと水掛け論になってしまうんじゃないかなと思っています。
【土肥主査】
ありがとうございます。
ほかにございますか。御質問。浅石委員,お願いいたします。
【浅石委員】
浅石でございます。御発表ありがとうございました。主婦連合会さんとインターネットユーザー協会さん,それからJEITAさんに一つずつ質問させてください。
結論のところですが,主婦連合会さん,それからインターネットユーザー協会さん,音楽についてはどうお考えなのか。
それから,JEITAさんについては,やはり12ページですけれども,将来的に契約と技術で解決できれば,私的複製の権利制限というのは,もう要らないと,要するに30条はもう要らないんだという主張につながるということなんでしょうか。その1点ずつでございます。
それから,若干,文化庁さんが出していただいた資料4で,ドイツが訴訟継続中のため支払われていないということですが,コンピュータメーカーの事業者団体とZPUと3年余りにわたる訴訟が2014年の1月に和解をし,2011年の01月から2016年の12月までについて,パソコンの補償金については合意を見たという連絡が入っています。まだ詳しくその他がどうかというところは確認しておりません。少し分かりましたら,また次回にでも報告させていただければと思っております。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,順にお答えいただきたいと思うんですけど,まずユーザーの委員の方から,音楽についてお願いいたします。
【小寺委員】
では,まずインターネットユーザー協会の方から,先にお答えをさせていただきます。
音楽に関してどうかということでございますけれども,私どもの考え方としては,音楽も映像も行く行くは同じスタイルになっていくということで御理解いただきたいというところなんですが,現時点で,音楽の方が,やはり先に進んで,複製をしない視聴スタイルが主流に,どうもなりつつあるという認識でございます。
ユーザーの習慣としては,必ずこれは一定数,古い習慣を変えたくないという方はいらっしゃいます。例えば,ずっとメディアとしてのCDを聴き続けたい方とか,あるいはLPレコードを聴き続けたい方とかという方というのは,一定数いらっしゃるわけです。
今後,複製という点にポイントを絞りますと,音楽の場合は,主に複製が生じるのは,例えば,過去に音楽CDを1,000枚とか2,000枚とかお持ちの方が,何らかの形でメディアが壊れてしまうのを懸念して,何かにバックアップをしておきたいから複製をしたいというような用途が純粋には残っていくだけで,聴きたいから複製をするという行為は減っていくのではないだろうかと思っております。
【河村委員】
主婦連合会です。
付け加えるといたしましたならば,消費者としては,音楽は,少なくとも私が聴きたいと思う音楽は,どこかで必ず探すことがネットでできますし,それがサブスクリプション型であれ何であれ,有料で自分が選んだ音楽を聴くわけですから,きちんと「誰」の「何」を「どのくらい」と捕捉されている。その料金を払うということこそが,著作権者のための対価の還元であり,その時点で払っているものと考えております。
多分,御質問の意図は,録画のところ,特に地上波の放送のところに,新しい対価の還元の仕組みと書いてあるので,何で録画だけということなんだと思いますが,それに対比して申し上げますならば,テレビ番組の方は,残念ながら過去のものも含めて,全てがそういうふうに何か探してきて,リーズナブルな価格で使いやすく見ることができるなんていうサービスは実現しておりません。あと何度も申し上げていますように,公共性のある地上波のテレビ番組を無料広告放送,あるいはNHKの場合は視聴料を取って,受信料を取って放送しているので,それは違うだろうというところで切り分けているということでございます。音楽の方は,サービスを通じて,誰の音楽をどのくらい消費者が聴いたかということが捕捉できる世界に事実上なっていると考えてのことです。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,榊原委員,契約と技術と30条の私的複製の規定の関係についての御質問でございました。
【榊原委員】
御質問ありがとうございます。
契約が進んでいくと,30条の領域が減るというのは,今ももう起こっているんではないかなと思います。これは別に補償金がない,ほかの制限規定でも同じことが言えるわけで,そうすると,できたときはそうじゃなかったのかもしれませんけれども,非常に広い30条の契約が,ある部分はオーバーライドされていくと思います。それがゼロになるということは多分ないのだろうなと思いますけれども,そういう関係に立つのかなとは考えております。
それから,ちょっと御質問のお答えではないですけれども,先ほどから話題に出ている資料の4についても少し意見を申し上げたいなと思うんですけれども。世界中で補償金を入れているという,ここには9か国ということだったり,30か国ぐらいという御指摘だったので,むしろ入れている国が少数だということだろうと思いますし,あと,この資料の4で,フィンランドとスペインが廃止を最近されていて,これはWIPOの調査団から転載だからなのかなとは思ったんですけれども,例えば,フィンランドやスペインに対象機器とかって書いてあったり,支払義務者とか,こういう欄が埋めてあること自体が,もうこういうのは全く関係がないので,本来,ここって白紙であるべきじゃないのかなと思います。例えば,スペインの支払義務者が文化省になっているんですけれども,これは税金なんで,文化省が負担しているわけではないんじゃないかなと思います。文化省の予算から削られているということなのであれば,こういう書き方は正しいのかもしれませんけど,ちょっとどうなのかなと思ったのと,あとやっぱり主要国ということで比較をされていることについては,中国,韓国なんかは私的複製ができる範囲が非常に広いですけれども,補償金制度の導入をしていませんので,そういった国が,今,イギリスもということもありましたけれども,言及があってもいいのかなと思いました。
あと,ドイツの訴訟については,浅石さんの情報提供どおりなのだと思いますけれども,結局,機器ごとに訴訟が起こるので,この期間についてということで訴訟が起こるので,同じ商品でも期間ごとに違う訴訟になっていたりしますので,全部が多分支払っていないということではないんです。でも,支払われていないものが非常にたくさん残っているということなのだろうと思います。
【土肥主査】 事務局に今度は質問が来ているんですけれども,浅石さんの質問と,今の榊原委員の質問と両方,もしできればお願いいたします。
【俵著作物流通推進室長】
特に最近の動きについては,我々も把握していない部分がありますので,先ほど頂いた意見など,もし付け加える情報などありましたら,是非今後も提供いただけると有り難いなと思います。
この資料4については,まずフィンランドについては,補償金制度から,政府運営の基金化へ移行ということになっているようなので,その基金化の内容によっては,表の内容が白紙になることがあるのかもしれません。現時点では詳細について確認ができていないので,調査の結果を日本語に訳したものをそのまま書いているということです。
スペインについては,文化省が新たに国家予算の中から補償金を支払うというスキームに変えたということなので,この表はその制度を反映した形で書かせていただいています。したがって,文化省のところは国民と記載してもよかったのかもしれませんが,調査結果をそのまま反映して,文化省と書いたということです。
【土肥主査】
ありがとうございます。
ほかに。華頂委員,どうぞ。
【華頂委員】
ありがとうございます。
小寺委員と河村委員の資料6なんですけれども,その5ページに,録画という枠が,括弧がありまして,その横に「テレビ放送のみ私的複製が可能だが,ダビング10によって複数枚数と孫コピーが制限されている」と書かれているんですけれども,映画のビジネスというのは,第三者による複製を禁止,あるいは制御して成立をしているわけですね。ですから,ダビング10どころか,一つのコピーによっても,我々が投下した資本を回収する計画,これとバッティング,衝突を一々するというふうなことになっております。ですから,その下に書いてある音楽や映像の私的複製の機会は減ると御指摘されているんですけれども,これは我々の目指す方向性で,仮に映画の私的複製がなくなれば,私もここに座っている意味がないんで去りますけれども,そんなことでございます。
それで,更に申し上げますと,7ページ,8ページなんですけれども,結論が書かれているわけですけれども,ここは我々と非常に同じというか,賛同する部分も多い書きぶりになっているなと思います。
特に8ページなんですけれども,ダビング10のことが書かれているわけですけれども,きっとアプローチする方向は真逆だと思うんですけれども,我々もダビング10についてはいかがなものかと思っていることは確かでございます。
ここで一つ質問なんですけれども,このダビング10について,総務省さんの範ちゅうだと思うんですけれども,この審議会でダビング10について審議をすることが,実りある審議ができるのかなというのが一つあります。これは質問です。
それから,もう一つ,8ページの最後の方ですけれども,このクリエーター振興に関する事業に用いることも視野に入れるべきではないかとして,例示がこうされているわけですけれども,仮にこういうふうなことが実現をしたとしても,こういうふうに個別具体的な作品とか人に個別に助成するというのは,やっぱり公平性が担保できないのかなと。やっぱりクリエーター振興ということであれば,あまねくクリエーターの皆さんに振興する施策,これが必要なんじゃないかなと思います。これは意見です。
以上です。
【土肥主査】 ありがとうございました。華頂委員から質問が出て,前にも審議会でもこの質問が出たんですけれども,お答えいただけますか。ダビング10。
【俵著作物流通推進室長】 ダビング10を入れるか入れないかの結論をここで出すというのは無理なので,その話をここで議論していただくのは余り生産的ではないかなと思います。ただ,例えば,権利者の方として,どう考えているかというような,今,御発言があったようなことについては,ここでの議論として必要なことと思います。ただし,ダビング10を入れるか入れないかの結論を出すための議論は避けていただきたいとは思っています。
【土肥主査】 前も,この点について同じような回答があったかと思うんですけれども,河村委員,やはりその点ですよね。ダビング10の話。
【河村委員】
ここで審議ができるかできないかということを議論しても意味がないと思っているんです。
私が申し上げたいのは,ここの部分,対価の還元議論について,何かの新しい第一歩を踏み出すのであれば,その対価の還元については,ここの議論のカテゴリーに入るわけですね。だけど,私たちの主張は,そのことと地上波に掛けられているDRMを見直すこととセットですよと。ですから,ここで議論するかどうかということではなくて,そうなんだという御理解がここでいただければ,別に外国のお話ではないので,同じ霞が関の中で,それでは合同会議を開くということも視野に入れられるのではないですか,ということです。ほかの省庁で,合同で審議会をやっているとか,そういうのはたくさんあります。ですから,やれるはずです。決めたものは見直すことができるはずですし,今回,政策の議論が文化庁と他省庁と分かち難くリンクしているのであれば,一緒にやりましょうということだって十分可能なわけなので,そういう呼び掛けをするのかしないのか。もしそれは,ここで議論することはできないから全然駄目だということであれば,もうこの議論を進めることは難しい,新しい対価の還元の仕組みには入っていかれないのではないかと考えているので,ここでできるかできないかを言い合っても仕方がないのではないかと思っております。
【俵著作物流通推進室長】
すいません。ちょっと説明が不足していました。
ダビング10について,権利者の方がどう考えているかということと,消費者の方々がどう考えているかということについては,ここで発言してもらうということは意味があることだと思います。ただ,ダビング10を入れるか入れないかについて,この場で決定することはできないということを,先ほど発言しました。
【土肥主査】
その問題を所与の問題として扱うんだと,これはこれから先の審議に入っていく条件であると捉えるのか,このあたり突き詰めていくと非常に大きな問題になってくるんだろうと思うんですけれども,どなたか御意見ございませんか。
奥邨委員,どうぞ。
【奥邨委員】
すいません。ちょっと話がこれから先,どう展開するか分からないので,今の関係,先では伺えなくなるかもしれませんので,是非伺っておきたいんですが。主婦連さんにですけれども。
ダビング10の見直しと録画に関する対価の関係は同時に議論すべきだという御主張があるんですが,そこのところ,どれだけ伺っても,理屈上の関係性というのがよく分からないんですね。ダビング10で複製が一切できないというんでしたら分かるんですけれども,複製はできるわけであります。
過去でいえば,音楽はSCMSという孫世代が作れないコピープロテクションがあったけれども,それでも補償金は支払われていたわけです。著作権法の理屈で考えれば,コピー制限があるので,複製に対する補償の額を減額すべきという議論ならば理屈は分かるんですが,そうではないわけですよね,先ほどの御意見だと。むしろ,補償金の議論をするためには,コピー制限を緩やかにすべしという御主張なんだと思うのですが,そうすると,これは理論的な話としては,複製の補償として,若しくは著作権の補償としての話をされているというよりは,より広い政策論,バランス論をここでお話しになりたい,若しくはどこかでお話しになりたいという,そういう御提案と理解すべきなのでしょうか。理論的に詰めて考えて,複製の対価であるとか,補償であるとか,そういう方向性の話なのか,そうではない,少し色合いが違う御提案なのか,どういう御趣旨でその辺はお考えなのかなということを伺いたいなと思いました。
【土肥主査】 どちらがお答えになりますか。小寺さん。
【小寺委員】
では,小寺の方でお答えをさせていただきます。
ダビング10に関しましては,オリジナルのものからファーストコピーが何枚できるかということは,余り実は問題ではなくて,そのコピーした子供から,そこから先がコピーできない,つまり継承ができない,メディアチェンジができないというところに消費者としては不自由があるということでございます。
河村委員の方から。
【河村委員】
そのような質問が出ると思っておりました。
私としては何回も申し上げているつもりなんですが,つまり複製という観点から法律的に見ていくと,そういう御質問になるのかもしれませんが,ダビング10が何を縛っているかといえば,ダビング10という,10でも何枚でもいいのですが,ダビング何とかというものをきちんと実現しなければならないというルールのために,あらゆる録画したものが行くかもしれない機器に,全部そのルールを確実に守るための仕組みが,備わっているということがマストになるわけですね。そのことによって,例えば,先ほどの小寺さんの方からの発表にもありましたけれども,地デジが始まって,もう何年もたっているのに,昨年にルールがごく一部ですが緩和されるまで,ダビング10の範囲内で,適法に私的録画したものを,自分のタブレットで別の場所で見ることすらできなかった。ネットに出すということがルール上できない……。ネットに出すと言うと,また大騒ぎになるかもしれません。ネットワークを介して,自分が録ったものを自分が見る。ほかの人ではなくて自分が見るということすらできない。つまりダビング10を実現するための事業者の規格ががちがちに固まっていることで,そのルールの触れる可能性があると,これはグレーな機器だ,ブラックな機器だということになって,消費者が,せっかくデジタル放送が始まっても,豊かなサービスを,技術は幾らでもあるのに受けられなかった。そこが非常に問題なんです。ですから,先ほどのLinuxやMacでテレビ番組の録画を見られないというのも,そんな日本だけで掛けているような,テレビに掛けているスクランブルをどうこうするとかという仕組みを,日本のためだけに,こういうようなところがソフトを開発することをしないから,日本の消費者は技術の進歩による自由や楽しみが制限されるということが起きているわけです。ですから,そのようなことは少なくとももう複製の枚数で制限されることに意味はないということは,多分,理解していただけていると思うので,ですからそういう制限は地上波には掛けない方がいいのではないか,掛けないという新しいルールに対して,「録画補償金」とは異なる,新しい対価の還元の仕組みが考えられないか,ということを申し上げています。
もう一つは,10枚できているのでどうのこうのということでしたけれども,それは榊原委員の資料の6ページにもありますけれども,録画補償金裁判の判決文に,複製制御技術の有無程度が録音録画補償金の適用範囲を画するに際して,政策上,大きな背景要素となることは否定できないとあります。しかも,権利者さんの権利を守るための枚数制限だったり,孫コピーができないとか,そういう仕組み,またそれを担保するためのスクランブルを解除するとか,そのような仕組みに対して消費者はコストを負担しているわけです。ですから,ルールはそのままでよろしいということであれば,それに対する補償金を議論することは多分できないと考えております。
【土肥主査】 30条の下で私的複製ができると,ダビング10で10回コピーができる,そういうことですよね。その10回複製をするということに関して,クリエーターに適切な対価還元の問題を検討するということはおかしいですか。できると思うんですけれども。先ほど奥邨委員も,まさにそのことをおっしゃったと思うんですが。一切コピーができないのであれば,それはもちろん,コピーネバーであれば,それはもちろん,そういう議論はできないんだろうと思いますけれども,少なくとも10回できるわけですよね。その10回しか認められないんだから,補償金の対価を決定するときに考慮すべきであるとか,何かそういう別途判断を加えるということは当然あり得るんだろうけれども,議論をすること自体はできるんじゃないかと思うんですけれども,いかがでしょうか。
【河村委員】 個人的には議論は難しいと思います。録画補償金というのが制度として入ったとき,そのときは,やはりデジタル録画機が世の中に出てきて,そのときはアナログ放送で,それには複製制御も掛かっていない,無制限にコピーができたわけでして,だから録画補償金が必要だということで入ったわけです。それが10枚できるんだからということなんですが,その制限に加えて,先ほどのメディア変換ができなくなったことですとか,枚数制限をするために,その技術に付随する不便さ,不利益が消費者の側にいっぱいあるわけで,10枚できることに対して録画補償金ということに関しては,無制限に録画できるときにできたルールを,ここまで技術で制御した中で,同じ補償金の仕組みが必要かということについては,私自身は必要ないと考えます。しかしながら,そのことについて議論するかしないかを決める権利が私にあるわけではありません。
【土肥主査】 松田委員,どうぞ。
【松田委員】
議論がダビング10のところに集中しておりますので,私も質問させていただきます。
個人の生活の中で,30条が適用になる範囲内で10枚コピーをするなんていうのは,余り意味がないことなのです。小寺さんが言われているように,やっぱり転換できない,ほかのメディアで見られない,そういうことの方が利便性に事欠いてるじゃないかというのは,私もそう思います。だとしたら,どうでしょうかね。そういう利便性を追求するとしたら,その点についての何らかの対処。例えば,仮説ですけど,ダビング10を事実的に廃止して,ほかのメディアにも転換できるような技術にした場合に,その場合でも私的録音録画補償金制度の適用ないしはその拡大ということは議論することはできないのでしょうか。その制度がもしできないとしたならば,メディア転換を法的に,適法だと言わなきゃならなくなりますよね。自分が私的に31条で録画した。だけどメディアを替えるとそれがうまく利用できないけども,メディアを替えるためのサービスを提供しましょうというようなことが出てくると,これはどういうふうに考えたらいいでしょうかね。それについては31条の問題ではなくて,むしろほかの規定が必要になる。例えば柔軟な規定がね。こういうふうに考えるんでしょうか。
【土肥主査】 今のは……。小寺委員,どうぞ。
【小寺委員】
御意見ありがとうございます。まさに松田委員はさすがよく分かってらっしゃるというところだと思います。
私どもの資料で何が言いたかったかというと,例えば,ダビング10というルールを今運用していますが,これ,ダビング10でコピーしなくなるという話なんですね。このままいくとディスクに焼かなくなるという世界は,もう間もなく来ます。ですので,何らかの補償が必要ということになると,今できないことなんだけど,新たにコピーできる用事を作らないといけなくなるわけなんですね。ですから,例えば,ダビング10でコピーしたディスクから,分かりませんけど,次のメディアへコピーができるというふうに,新たにコピーする要件が増えれば,それは私どもの団体としては補償に対する議論には乗れる話だと,私どもは考えております。
【土肥主査】 椎名委員,どうぞ。
【椎名委員】 僕も専門家じゃないので,詳しいことは分からないんですけど,ダビング10のせいでいろんなことが不便になっているというお話を聞いていて,B-CASの話とダビング10の話がちょっとごっちゃになっているのかなという気がしていて,B-CASでスクランブル掛かっていることの影響と,それからダビング10という基礎技術の話と,ちょっといささか混同があるのかなと。小寺さん,そういうの詳しかったですよね。だから,そこら辺,一度整理された方がいいなと思います。もう一つ,僕も最近知ったんですけど,外付けハードディスクってテレビに付けて録画できるじゃないですか。あれって,例えば,P社の何とかというテレビに付けて録画したものを,例えばS社のテレビに買い換えるとフォーマットしちゃうらしいんですね。同じモデルを買い換えると,また見られる。それって著作権保護のためですと表向き言われているのかもしれないけど,メーカーを守る,ブランドを守るような趣旨もあったりする。そういうようなことが,ともすれば著作権保護のためですって言われがちなので,何かそこら辺,1回整理して考えた方がいいのかなと思って聞いていました。
【土肥主査】 その技術の詳しい方に。奥邨委員,どうぞ。
【奥邨委員】
技術のことは,例えば小寺委員が後で,何かの機会で補足していただいた方がいいと思います。若干不正確なところもあるんじゃないかと思いますけれども。
それはそれとして,私自身,自分の発言,補足しておきますけど,10枚コピーできるかどうかという話をしているわけじゃなくて,過去,SCMSという孫コピーができない技術が音楽で採用されていて,それでも補償金を払っていたということがあるのですね。ですから,メディアチェンジができないから,当然に補償金うんぬんという話は,もう既に議論としてはあったということは注意にとどめておいていただきたいと思うのです。別段新しい論点ではないわけです。ただ,私的録音録画補償金導入時点で,テレビには当時コピー制御がなかったのが,デジタル化して入ったというのは議論としてはあるかもしれない。だから,音楽とは状況が違うんだという議論はあるとは思います。ただ,それは先ほど座長がおっしゃったように,いろんな考慮要素という中の一つであろうと思います。
さらに,逆に言うと,1回コピーがあったら,常に必ず補償しなきゃいけないのかどうかというのは,議論がある。閾値(いきち)論というのはあっていいと思います。どのレベルだったらどの程度という議論はあると思うんです。したがって,私は幅広い議論をしないといけないし,いろいろなお考えを,どう思っておられるかというのを伺わないと,なかなか判断ができないのかなと思って,意見を言うというのではなくて,ちょっと突っ込んだ形で質問しました。御理解いただければということで,補足をしておきます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
本日,1回目の委員会で,それぞれのお立場の考え方を頂戴したり,あるいは外国の制度の比較検討といいますか,その情報を提供したりしておるわけでありますけれども,本日のところは,まずは認識を共有するといいますか,いろんな状況について,いろんなお立場のお考えを正確に理解するというところが,まずあるんだろうと思いますので,残されたところ余り時間ないと思いますが,遠慮なく頂ければと思います。
奥邨委員,どうぞ。
【奥邨委員】
すいません。ちょっと事務局に一つ要望というか,心にとどめておいてくださると有り難いんですけれども,さっきフィンランドとスペインのお話が出ましたけれども,これも今後の議論を踏まえつつ,どうなるかによると思うんですけれども,必要なときは適宜詳細を御紹介いただければなと思います。
もう一つ気になっていますのは,ドイツの場合,例えば,支払う人が製造者だけじゃなく,製造者,輸入者のほかに,販売者とかも支払義務になっているので,それはどういう兼ね合いで払っているのかとか,あとベルギーは外国のウェブショップとか購入者も支払義務者に入っているわけでして,この辺も今後の議論の展開によっては御紹介いただけると有り難いときが来るかもしれないということには,少し心にとどめておいていただければというのがあります。
それから,もう一点,JEITAさんに,榊原委員にお伺いしたいんですが,7ページの環境の変化に伴う矛盾の拡大のところに,対価の二重取りの話があるんですが,ちょっと私自身の理解としては,技術が進歩すると二重取りの問題って減るんじゃないのかなと,ずっと思っていたんですけれども,なぜ増えるという議論になるのかが,ちょっとすっと入らないというのがあります。例えば,ユーザーがコピーできないように技術的に管理してコンテンツを提供するという場合は,コンテンツを提供する人は,もはや最初の価格設定時に,それが複製されるかもしれないなんていうことは一切思わないで値付けをするわけですね。ですから,それに対して仮に補償金なり何らかの対価の還元措置が入ったとしても,二重取りという余地はないんではないかなと。逆に言えば,そういう完全に管理されたコンテンツが増えれば,コピーはもうできないわけですから,それ以降,それについては二重取りというのはないんじゃないか。だから,ここでおっしゃっている二重取りの拡大というのは,もう少し違うことなのかどうなのか。ちょっとその辺が私自身の二重取りの捉え方と榊原委員のおっしゃっているのが違うのかどうかって,少し,ちょっとすっと入らなかったものですから,教えていただければと思いました。
【土肥主査】 じゃ,お願いいたします。
【榊原委員】 対価の二重取りというのは,コピーネバーの場合ではなくて,契約の中身として何個かデバイスとか携帯端末にコピーができるもの,例えば3個までとか7個までとか,契約条件で自在に決められると思うんですけれども,その部分というのは契約の部分と30条の部分がオーバーライドというか,重なるのではないかと,そういう意味合いで対価の二重取りというふうに説明をしております。
【土肥主査】 今のでよろしいですか。
【奥邨委員】 ちょっとなかなか,すっと入らないので,反すうして考えてみます。
【土肥主査】
はい。ほかにいかがでしょうか。
松田委員。
【松田委員】
きょう質問させていただいたところで,お考え願いたい方向性というのは,ユーザーの利便性を拡大していけば拡大していくほど,私的録音録画補償金制度の拡大というものが一方において求められる素地はあるのではないですかという点です。
そんなことはない,利便性を拡大させても私的録音録画補償金制度に頼ることはないんだというふうな議論をするんであれば,それは,ユーザーの利便性を最大拡大することが,将来のコンテンツに課せられた方向性だということであって,それが産業も文化も発展するのだというのであれば,私的録音補償金制度に頼らないで,ほかの制度を考えなきゃいけないということになるのではありませんか。
そこで出てくるのが,制限規定を作って,正しく複製をするということが求められるのではないでしょうか。私的複製をして,そして,その個人の利用の範囲内であったら,メディアを替えてもいいじゃないかという制限規定を作ることですよね。でも,そういう個別的制限規定を作るのがなかなか難しい。コンテンツのデータが家庭用のPC,スマホ等に限定して格納されていないからです。そこで出てくるのが,例のフェアユースだとか,柔軟な規定だとかということにつながるのではないかと私は思って,それで質問したわけであります。そういう方向性があるなら,真正面切って出してください。そして議論してください。
もちろん,権利者団体の方は,そういうことではなかなかスムーズに受け入れられないかもしれませんけれども,具体的にコンテンツの利用態様が示されれば,議論はしなきゃいけないと思います。私はそういう方向性を出すために,2回質問させていただいたということであります。
【土肥主査】 はい。今の松田委員の御質問に,あるいは御意見について,お答えいただけるのかどうか。つまりユーザーの利便性を拡大する場合に,補償金制度というこの制度に頼らなくて,何か別途考えているのかどうかという,そういう御質問等もあったと思いますので,お願いします。
【小寺委員】
では,小寺の方でお答えをさせていただきます。
フェアユースと言うと怒られる方もいらっしゃるので制限規定と言いますけれども,制限規定の話を発表でしたらよかったという御意見かと思いますけれども,そちらの方は,どうも別ワーキングでやるのではないかというお話を聞いておりました。一方今回のこの小委員会は,あくまでも補償のお話と伺いましたので,そちらに絞って発表させていただきました。もし機会が頂けるのであれば,制限規定のお話も是非させていただければと思います。
それから,ちょっとついでで申し訳ございませんけれども,先ほど椎名委員が御質問いただき,御懸念を申し上げられたように,ダビング10やB-CAS回りの技術的な制限で,いろいろ難しい,複雑なものがあるので整理した方がよいのではないかという御意見であるとか,あるいは外付けハードディスクの現状の制限のようなものというのを整理した方がよいのではないかという御意見も頂きましたので,きょうは時間がありませんので,もしよろしければ次回,そのあたりをまとめて,資料などを私どもで提出をさせていただくということは可能でございますので,後ほど事務局の方と御相談をさせていただければと思います。
【土肥主査】
ありがとうございます。事務局と相談の上,適宜対応していただければと思います。
松田委員,どうぞ。
【松田委員】 私の後半の質問は,是非,榊原委員の方でお答えください。
【土肥主査】 どうぞ。
【榊原委員】
よろしいですか。御質問いただけると思っておりました。
松田先生の御指摘というのは,おっしゃるとおりというか,諸外国の法律を見ますと,もともとアメリカはフェアユースで補償金がほとんどないような法制ですけれども,第4要素というのが著作権への影響というものを加味していると理解していますので,市場で著作権者の利益を害しないということですね。だから,そこを厳格に考えて,ああいう柔軟な規定を入れた場合には,そういうものについては補償というものは入れる必要はなくなるでしょうし,そこを非常に緩和して考えていくと,著作権者の利益と衝突しますので,何らかの補償というのか,報酬請求権というのか,言い方は別として,そこの経済的な損失について何か制度を設けると。そういうことによって,活用も推進をするしということだろうなと思います。
先生方,学会なんかでは,そういう柔軟な規定型の考え方ではなくて,個別の条項にそういうものを少しずつ広げて,補償金なり対価還元制度を加味するというような考え方もあるようですけれども,そういうもののどちらがいいのかというのは,私どももまだJEITAの中では議論したことはございませんけれども,JEITAの今日の資料,9枚目で諸外国の動向を簡単に御紹介させていただいた,最近柔軟な規定を入れている国は,やっぱりその第4要素をぱちっと入れて,プラスアルファ,ベルヌ条約なんかも付け加えている規定が多くて,そういうものがやはり理想なのかなと今の時点では考えております。
【土肥主査】
ありがとうございます。
いずれにしても,本小委においては,クリエーターに対する適切な対価還元,この問題を審議するということで,先ほど御審議いただきましたといいますか,本小委の中でも了解いただいておるところでございますので,きょうを含め,次回以降,この問題を軸に,常に検討していきたいと思っております。
いわゆる柔軟性のある権利制限規定の問題については,これは法制基本問題小委においても少し出たところでございまして,また,それについては何らかの形で御報告が,この小委においてもされるんだろうと思いますけれども,そちらの方に入っていくということは考えておりません。恐らく,その点については御了解いただけるんだろうと思います。
それで,時間がもう28分,29分になっておりまして,時間がもう,きょうは尽きておりますので,皆さんの御熱心な討議ありがとうございます。本日のところは,このくらいで止めたいと思います。
事務局におかれましては,きょう,いろいろ委員の方々から出されましたところを受けて,また次回,開いていただければと思います。
それで,本日の審議はこのぐらいにしたいと思っておりますので,最後に事務局からの連絡事項がございましたら,お願いしたいと思います。
【俵著作物流通推進室長】
ありがとうございます。本当にきょうは貴重な御意見ありがとうございました。
先ほど御指摘のあった海外の動向については,我々が調べられる範囲については我々でも調べますし,また,先ほど幾つか御意見いただいたような情報があれば,それも提供いただければと思います。
既に先ほど土肥主査からも有松次長からもコメントがありましたけれども,この問題はどうしても利害対立の関係になりがちで,なかなか難しい問題だと思います。ただ,私的録音録画補償金制度,これ自体については既に機能を失いつつあるということについては,皆さん共通に理解できるものと思います。この制度を持っている担当者として,是非その補償金制度の在り方も含めて,クリエーターへどうやって対価を還元するかということを共通の目標として共有いただいて,是非,きょうのような積極的な議論を続けていただきたいと思います。事務局としてもできるだけの努力をしまして方向性を何とか見いだしていきたいと思っていますので,是非,皆さま方の協力をよろしくお願いしたいと思います。
【土肥主査】
ありがとうございます。
事務局には資料4と5,特に5,大変御苦労をされたということはよく理解できるところでございますので,委員の皆様におかれましても,事務局の成果としてある資料4,5をよく1度御覧いただいて,また次回以降のこの場における議論のベースにしていただければと思います。
また,先ほど浅石委員がおっしゃいましたように,ドイツの最近の状況なんかについては,またいろいろあるし,イギリスについても,またあったようでございますので,そういうものも加えながら,正確な議論に努めていきたいと思っております。
本日はどうもありがとうございました。これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の1回目を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【俵著作物流通推進室長】 次回の日程については,また相談をさせていただきますので,確定次第,連絡をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
―― 了 ――
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