文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第4回)

日時
平成29年11月29日 (水)
13:00~15:30
場所
文部科学省東館3F1特別会議室

議事次第

1開会

2議事

  1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
  2. (2)その他

3閉会

配布資料一覧

資料1
対価還元の手段に関する検討(451.6KB)
資料2
榊原委員提出資料(2.6MB)
出席者名簿(52.4KB)

議事内容

【土肥主査】それでは,定刻でございます。ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,第4回を開催いたします。本日は,お忙しい中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されておる議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいているところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方には,どうぞそのまま傍聴いただくことといたします。もし,カメラ撮りを御希望の場合は,冒頭の5分程度の中でお願いをいたします。

事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

【堀内著作物流通推進室長補佐】配布資料につきまして御説明をいたします。本日2点御用意がございます。資料1といたしまして,対価還元の手段に関する検討と題する資料,資料2といたしまして,こちらは一般社団法人電子情報技術産業協会様に御作成いただきました資料でございますが,クリエーターへの適切な対価還元と題する資料。以上2点でございます。不備等ございましたら,近くの職員までおっしゃっていただければと存じます。

以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,初めに議事の進め方について確認しておきたいと思います。本日の議事は,(1)クリエーターへの適切な対価還元について。(2)その他。このようになっておるところでございます。議事に早速入りたいと思います。

クリエーターへの適切な対価還元につきましては,引き続きまして,対価還元の手段について検討を行いたいと思っております。前回は,対価還元の三つの手段,すなわち「補償金制度」「契約と技術による対価還元」「クリエーター育成基金」におけるそれぞれの強みや課題,留意事項等について意見交換を行ったわけでございます。今回も,前回に引き続きまして,更に議論を深めたいと思っております。

既に御紹介がございましたけれども,榊原委員より御発表のお申出がございましたので,これを伺いたいと思います。そこで,初めに事務局より資料の説明を頂いた後,榊原委員には続いて御発表をお願いしたいと存じます。その後で意見交換を行いたいと思います。

では,事務局から資料1についての説明をお願いいたします。

【白鳥著作物流通推進室長】資料1でございますけれども,現在この資料を基に議論を行っていただいております。前回の議論を踏まえまして,一部改正等させていただきましたので,そちらを中心に御説明したいと思います。資料1の3ページを御覧ください。3ページには対価還元の手段に関する基本的考え方といたしまして,前回一定程度共通認識が得られたのではないかと考えられる事項を,委員の方々に出していただきました意見と併せまして,それを集約したものをこちらに記載をしております。一番上に四角囲いになっておりますところについて御覧いただきたいと思います。こちらが,その集約をさせていただいたところでございます。

一つ目の二重丸のところでございますが,30条1項の私的複製の範囲については,広範であるということでありますけれども,その範囲は維持すべきであるということについて,前回お話しいただきました。契約と技術による対価還元手段についても併せて議論をされておりますけれども,その手段が有効な領域が他方で出てきているのではないかというようなことで検討を進められておりますが,その一方で,およそ全ての私的複製について完全な個別課金がされることをユーザーが望んでいるわけでもないといった御指摘も頂いたところでございます。

二つ目の二重丸のところです。私的複製に係る権利制限自体は,準物権的な権利の制限であり,それに伴う権利者への対価還元は実効性のある制度である必要があるといった法的な考え方,制度についての内容でございます。

三つ目のところです。現在三つの手段について御議論いただいております。特に補償金制度,そして契約技術による対価還元手段,この関係性についてでございますけれども,補償金制度が適切な領域と,契約技術により対価還元が実現できる領域,これらについてのそれぞれの範囲と限界も踏まえつつ,手段の組合せということも含めて現実的な解を探っていくべきであるといった御指摘を頂いたところであります。

また三つ目の手段として提案いただいておりました,クリエーター育成基金に関わりましては,補償金制度において私的録音録画補償金制度において共通目的事業がございますけれども,その在り方の改善において生かしていくことも適切であるといったような指摘でございます。

このような考え方を踏まえながら,併せて各手段について更に御議論を深めていただければということで,4ページ以降,それぞれの手段について更に論点の案を提示させていただいております。

4ページを御覧ください。4ページは補償金制度についてのところであります。まず基本的考え方といたしまして,追記をさせていただいた主な点は,点線囲いの中に四角囲いになっておりまして,片仮名で(ア)(イ)(ウ)と書かせていただいているところになります。(ア)でございますけれども,現在,先ほど出ておりました事項にそのまま直結する論点でございますけれども,30条1項というものが非常に広い範囲での私的複製を認めており,その中で個別にそれぞれの複製行為を把握することが困難である状況を踏まえ,補償の手段としては現在,私的録音録画補償金制度が包括的な制度として制度化をされているところであります。

他方で,契約と技術でカバーすべき領域があるのであれば,そこは補償金は不要になるのではないかといった観点も提起を頂いておりまして,それでは両者の関係はどのように考えるべきかといったようなことが,この(ア)として具体的に書かせていただいております。私的録音録画の実態が保護技術等の進展により捕捉可能となるとすると,対価還元の手段としての補償金制度が適切な領域の範囲と限界はどこまでと考えるべきかといった点であります。

(イ)につきましては,特に契約と技術の手段は配信の領域においてなじむのではないかといったような御指摘も頂いておりました。その配信事業におきましては,他方で,従来課金と補償金の二重取りの可能性について御指摘もされてきたところでございます。昨年度の本小委員会の審議経過等についてということの中で,特にマルチデバイスダウンロードについての整理がございます。このような整理を新たに行ったということも踏まえつつ,この課題についての指摘はどのように整理できるのかといったところが,この(イ)についての点であります。

また,(ウ)ですけれども,これも二重取りの指摘とも関わる部分になります。そもそも補償金制度が包括的な制度であるということに由来する課題が指摘されておりますけれども,総じてそのような課題の解決に向けた方策としては,どのようなものが考えられるかということで,問題提起をさせていただいております。ただし,具体的な課題については,各論に関わってくる話になりますので,それはその後の箇所から続いております。

課題としてどのようなものが指摘されてきたのかを御紹介させていただいているのが,6ページの下の箇所に参考として付けさせていただいているところでございます。平成18年1月に著作権分科会の報告書におきまして,補償金制度の課題として幾つか整理をされております。それを御紹介させていただいております。最初の一つ目のポツと二つ目のポツ,これは制度上の課題として整理をされておりました。特に一つ目のところにつきましては,今申し上げたことに関わりますけれども,複製を行うものの正確な捕捉等の困難性ということに関わりましての指摘でございます。また,二重取りの可能性についての指摘も併せて書かれております。

また,三つ目につきましては,運用上の課題として,認知度が低い等の課題が指摘されているということであります。

四つ目につきましては,正に補償金と契約と技術の関係性に関わる指摘でございます。

また,それ以降のところについては対象機器の範囲,あるいはその定め方をどのように考えるか。そしてまた,国際動向との関係性というのも考慮する必要があるとする観点からの指摘でございます。

このような指摘あるいは課題についての整理がされている中で,今回それらの課題に対してどのように解決していくべきかといったような観点も含め,各論のところで更に御議論いただくために,7ページ以降でございますけれども,更に論点を付記させていただいております。

7ページについては,対象機器・記録媒体についてという項目の下で,一つ目のところにありますのは,その範囲についてでございます。(エ)に書いてありますのは,これは汎用機器等を使用して私的複製が現に行われているという実態をどのように考慮するべきかという部分であります。現在対象とされているのは,一部の録音専用機器と記録媒体,これもまた,分離型という状況がございますけれども,それ以外の機器を使用して私的複製が行われているのではないかということ。そして,そのことを踏まえつつ,それでは補償金との関わりの中で,そのことを踏まえてどのように考えるべきか。あるいは,このことは対価還元手段として,どのようなものが適切かといったところに関わる論点かと思います。

また,(オ)でございますけれども,契約と技術による対価還元の方策の中で,そのビジネスモデルが構築される場合には,その在り方により,補償金が対象とすべき記録媒体の範囲は具体的にどのように確定されるのかといった点であります。

また,この対象機器等の定め方に関わりましては,現在政令で指定をするという方式になっております。こちらについて(カ)のところにございますけれども,こちらについても,改めるべきではないかといった御指摘も,この会議の中でも頂いておりますけれども,その見直しの是非等について(カ)におきましてお示しをさせていただいております。

続きまして,支払義務者等についてという大きな項目でございます。10ページを御覧いただきたいと思います。10ページには,まず支払義務者に関わりまして,論点は(キ)としております。こちらにおきまして,読ませていただきますと,機器等の発達普及に伴い,社会全体として著作物等の利用が促進をされている反面,録音録画機器等の発達普及が私的録音録画を増大せしめる結果をもたらしているということから,保護と利用の調整を図るために,公平の観念上,機器等の提供者である製造業者等が支払に協力する義務を負っているという,この制度についての制度趣旨を確認的に書かせていただいております。

返還制度の観点も課題の中に触れられているところもございます。支払義務者の見直しというのは,そのような問題の解消にもつながり得る論点でもございますけれども,そもそも支払義務者の位置付け,協力義務者の位置付けに関わりまして,その見直しが必要であるかと。何らかの見直しが必要であるとする場合は,どのような改善方策が考えられるかについて,協力義務の位置付けの見直しや,協力義務の内容の明確化等を例示として書かせていただいております。

また,(ク)につきましては,これはむしろ先ほどの一つ前の論点に直接的には関わり得る部分にはなりますけれども,補償金額の定め方ということにつきまして,方式の見直しの必要はあるかといった観点。そしてまた,補償金額について,機器そして媒体ごとに私的複製の実態などを反映して決定をしていくということが適切かどうかといった点を書かせていただいております。補償金額の設定に関わりまして,より関係者の意向を反映した柔軟な決定方式があり得るかどうかということ。そしてそれが適切かどうかということについての論点でございます。

補償金関係で,新たに論点として付記させていただいたのは以上でございます。他の大きな論点としましては,次の12ページにおいて分配等について記載がありますけれども,これは前回,分配の実際の状況などについて御説明を頂いたところでもあり,共通目的事業の在り方についての議論も,前回頂いたところでございます。

また,14ページを御覧いただきたいと思います。二つ目の手段であります契約と技術による対価還元手段についてでございます。先ほど(ア)のところ,最初のところで,補償金の観点から見た契約と技術の対価還元手段との関係性が論点として提起されておりましたけれども,こちらは同じ観点を,契約と技術による対価還元手段の観点から書かせていただいているものでございます。契約と技術による対価還元手段の課題について,それらの課題解決に向けて,どのような現実的な方策が考えられるかということで,特にこの手法によって実効的な対価還元が実現できる領域の範囲と限界はどこまでか,どのような実効的なビジネスモデルが考えられるかといったようなことでございます。

新たに付記させていただいた論点として以上でございます。あと,資料におきましては,次の17ページは特に修正等しておりませんけれども,実際に契約と技術による対価還元手段に絡みまして,現在どのような価格の設定のされ方をしているのかといった点について,これまで主な意見のところに書いてありますような形での整理がされておりますし,また,価格設定の在り方についての指摘を頂いておりましたので,そちらをこのまま記載をしております。

また,最後のクリエーター育成基金につきましては,19ページ以降ですけれども,主な意見のところは,強み,課題,課題解決という部分に整理をさせていただきましたけれども,特に内容についての変更はございません。前回の会議におきましては,こちらは補償金における共通目的事業との関わりの中で,特に御議論いただいたところでございます。

資料1についての説明は以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,続きまして榊原委員より御発表をお願いいたしたいと思います。資料2を御覧いただければと思います。

では,お願いいたします。

【榊原委員】お時間頂きまして,ありがとうございます。お手元に資料2を御準備いただけますか。それでは,始めさせていただきます。まず,タイトルとしまして,この審議会の審議事項でもある「クリエーターへの適切な対価還元」ということで,2枚目の2ページ目です。下の段ですけれども,今日お話しさせていただくことは,本来のこの小委員会の審議事項である,クリエーターへの適切な対価還元に関することということで,現行の制度を取り巻く環境変化を御紹介しつつ,既に契約と技術を利用した適切な対価還元によるWin-Winの世界が実現しているということを御紹介させていただきたいと思います。

めくっていただきまして,目次ですけれども,大きく2点。問題提起としまして,まず今,世の中で何が起きているか。総体として大量に私的複製が生じているというような意見も出ていたのですけれども,そうなのかということ。それから,諸外国では現在どのような状況なのか。補償金制度なのか,それとも契約なのか,それともまた別の道なのかという論点がありますけれども,国際的に見ると,どのようなものが納得感があり,いいのかという視点です。最後に,目指すべき方向性ということで,まずはスライドの4から,まず今,世の中で何が起きているかということを御紹介させていただきます。

関連製品の出荷統計ということで,ラジカセは4分の1に減っています。MDは市場自体が消滅をしてなくなっています。デジタルオーディオプレーヤーにつきましては,3分の1以下に激減をしているというような,関連製品の出荷動向を御紹介させていただきました。

次のスライドは,パソコンです。パソコンは汎用的な使い方をされているものですけれども,個人向けにつきましては,下の方を見ていただくと,どんどん減ってきている。15年以降減ってきているということでございます。

その下,スライドの6ですけれども,携帯電話,スマートフォンなども含みますけれども,委員の方はカラーの資料を御覧になっているのですけれども,一番上のゾーン,ブルーのところはフィーチャーフォン,緑がSIMフリーと書いていますけれど,赤,グラフでいくと一番下の段がスマートフォンです。携帯電話は減少傾向ですけれども,スマートフォンも既に頭打ちになっているということでございます。

それから,めくっていただいて7枚目,こちらは消費者の消費の支出動向についても,どれも半減ということで,私的複製に用いられる,こういった機器への消費者の方の支出を10年前から見ますと,激減をしているということです。

その下のスライドは,音楽離れが進んでいるということで,一番左の列,カラーの方はブルーですけれども,有料でお金を払って音楽を聴く人は5割から3割に減少している。他方で,一番右側の列,カラーの方だと紫色の部分ですけれども,無関心層は以前は15%ぐらいだったのが,今は3割強増加をしてきていまして,ここ2年連続で3割超えであるということで,お金を出して音楽を聴く人が減っている一方,音楽に無関心層がかなり増加をしているという状況です。

次,9枚目のスライドですけれども,音楽CDの売上げ等に占める比率を見ていただきますと,これはJASRACさんの資料をお借りしているのですけれども,2000年当時は音楽CDが8割を占めていた。音楽市場の大半を占めていた。他方で,2016年になりますと,それが37%に減っているということです。では何が増えているかというと,インタラクティブの配信等が増えているということが,右側のグラフです。ですから音楽CDが8割を占めたものが,今や3分の1にすぎない。この3分の1にすぎない音楽CD37%についても,販売された音楽CDの全てが聞かれているのかとか,コピーをされているのかという疑問が湧くわけですけれども,次の10のスライドがランキングでございます。縦3列ですけれども,右と真ん中はレコチョクランキングとUSEN HITランキングですけれども,これはどのような曲を聴きたいか,配信とか有線ですから,聞きたい曲のランキングなわけです。見ていただくと,真ん中と右側のランキングはほぼ一致をしています。これは聞きたい曲ランキングです。

左の縦の列は,これがCDの売上げ,先ほどの37%の部分のランキングに当たるわけですけれども,全く右側の2列とは曲が一致をしていないということで,ベストテンのうちの9曲は握手権付の音楽であるということです。結局,一人でたくさんのCDを買うという社会現象というのは,ランキングを塗り替えるほどの規模感であるということで,CD何百枚も買われても,結局コピー目的ではなくて,これを見るとベストテンは握手権目的で買われているということで,大量の私的複製が生じているわけではないのではないかと思います。

めくっていただきまして,では今,消費者の方はどのように音楽を聴いているかという聴取の手段ですけれども,既にトップはYouTube,半分にもなっています。それ以外にも,下から半分下ぐらい,ピンクの囲みのところですけれども,ニコニコ動画とかダウンロード有料音楽配信であるとか,多様な配信サービスに移っていっているということで,コピーしたものを聞いている人というのは,今や27%,3割以下になっているということでございます。

右側のところに注で書いてありますけれども,YouTubeによって30億ドルぐらいが契約・技術でクリエーターに既に対価還元をされているということが,これはGoogleさんの資料から引いた数字ですけれども,分かるということです。

今まで現在の状況,環境変化というものを見てきましたが,12枚目のスライドでは,それをまとめたものでありまして,メーカーの関連機器の出荷台数は減少している。消費者の支出についても,そういった関連機器について大幅に減少している。音楽離れがしていまして,音楽CDから,今度は配信が台頭していっているということで,音楽CDの比率とか地位が低下をしている。他方で,契約・技術による,今見たようなYouTubeによって対価還元が主流になってきているということですので,対価還元の方法としては契約・技術でなされるべきではないかというように,現状の環境変化を見る限りにおいて,そのような意見を申し上げたいと思います。

ここからは,次の項目で,諸外国はどのような状況かということで,スライドの14枚目を見ていただきますと,世界の補償金制度の導入状況でございます。ベルヌ条約締結国174か国中,制度がある国,その中でも100万ユーロ以上の徴収ができて,実質的に機能しているような国というのは1割,18か国にすぎません。G20の中でいきますと,事実上制度凍結されているカナダを除くと,わずか4か国にすぎないという状況でございます。

スライドの15ページで,機能している,100万ユーロ以上の補償金を取っている国,ドイツ,フランスがよく批判されるのですけれども,ここでざっと私どもの可能な範囲で調べた限りですので,恐らく訴訟の中の一部にすぎないと思いますけれども,ドイツでは20件,フランスでも20件ぐらい訴訟になっています。日本では1件訴訟になっただけでも結構大騒ぎだったと思うのですけれども,私どもが調べただけでも20倍の訴訟があるというのは,制度として,私は政策の失敗をしているのではないかなと思いますし,訴訟に巻き込まれている会社さんの固有名詞は書いておりませんけれども,多くがアメリカや日本の企業である。外資からドイツやフランスがお金を取っているという構造であるということだろうと思います。

18ページ目までに進みまして,コンテンツ市場が活性化している国はどこなのかということで,音楽,映像市場の規模のランキングで行きますと,断トツでアメリカ,イギリス。これらの国というのは補償金でお金を取っているというよりは,契約・技術でここまで活性化をしているということで,ドイツやフランスは,それらの3分の1以下であるということだろうと思います。どのような国を参考にするべきかということで,国民もアメリカやイギリスの国民は音楽や映像をより楽しんでいるのだろうと思いますし,クリエーターの方も還元が多くされているのだろうと思います。

次の19ページのスライドは,諸外国の状況のまとめでございます。左側が174か国中,ほとんどの国に補償金制度がないということ。それから右側ですけれども,訴訟に苦しむ補償金大国のドイツ,フランスに対して,市場規模もイギリス,アメリカは非常に大きくて,Win-Winでやっているということでございますので,これが諸外国の状況です。

それでは,最後21ページで,目指すべき方向性というのは,私どもは契約技術による解決がなされるべきだという意見で,その実例としまして,1としてJASRACさんの使用料の規程をここで一部張り付けさせていただいていますけれども,ストリーミングの率とダウンロード型の率を比べていただくと,差が設けられているところからも分かりますとおり,配信も複製を考慮して対価設定済みだと。そうであれば,配信以外についても,こういった対価設定というのは可能なのではないかと思います。

それから22ページも契約で解決している実例ですけれども,先ほど申し上げた,消費者の方が今音楽を聴くのはほとんどYouTubeが圧倒的に多いということで,このYouTubeではコンテンツIDという技術を用いて対価還元が既になされているという例でございます。

それからGoogle Play Musicというものも,家族間共有ということで,家族の間での共有のサービスが既になされていて,それによって対価還元も実現をしていて,ユーザーの利便性も,クリエーターへの対価還元も,両方のWin-Winで行われているということです。

最後,23ページのスライドですけれども,結論としましてはCDがメーンであった時代の制度ではなくて,権利者の意思とかユーザーの利便性,それからいろいろな多様な選択を用意することができる契約や技術を用いた対価還元の両立というものを目指していくべきではないかと考えております。

このような意見は24枚目,2年前にもJEITAの方から申し上げさせていただいているところで,意見としては変わりませんけれども,現在の状況を御報告させていただいたということです。

最後に,種類が違いますけれども,参考として25枚目については,第3の方策としてクリエーター育成基金というのが,消費者の方などから意見が出ていたかと思いますけれども,これについては,制度設計や財源の確保はもちろん必要なのですけれども,現在ある制度の維持とか拡張の仕組みとして導入されるのであれば賛成はできないということを申し添えたいと思います。

以上でございます。ありがとうございます。

【土肥主査】ありがとうございました。今回は,前回までの委員の御意見を踏まえて,事務局において整理していただいた論点ごとに議論を進めていきたいと基本的に考えておるわけでございます。本日,御紹介のあった事務局からの説明,それから,ただいまの榊原委員からの御発表,これらについての御質問,御意見があれば,それはこれからの議論の中で適宜お願いしたいと思うのですが,ただ,冒頭どうしても御発言をする必要があるとお考えの方もおいでのようですので,ある程度時間を限らせていただきますけれども,おいでになりますか。どうぞ。

【高杉委員】レコード協会,高杉です。今,資料2について,榊原委員から御説明いただきましたけれども,これについて,たくさん言いたいことはあるのですが,少しずつ発言させていただきます。

まず,重要なステークホルダーの一人である製造事業者さんで構成する団体が,団体名でこのような形の資料を出されたことについて,非常に驚きを感じております。一部の情報を切り取って極端な形で拡大をさせて印象操作をしているとしか,私には思えないのが正直なところであります。

第一に,4ページから6ページまで,関連製品の出荷統計のところであります。御指摘のとおり,4ページ,減少傾向にあるとはいえ,ラジカセが100万台,それからデジタルオーディオプレーヤー200万台が出荷されています。他方,補償金の対象であるMDがゼロという状況でありますけれども,パソコンは依然として400万台,スマートフォンは3,000万台出荷量があるということが明らかであります。

録音補償金の徴収額のピークは平成12年で40億というときがありましたけれども,このとき媒体を含んで40億でしたので,機器だけですと28億なのですが,このときのMDの出荷は525万台です。それを考えますと,それを大きく超える私的録音に供される機器が流通されているという実態が,これで明確になったと思います。

それから,あと,これらの表をずっと見てみますと,MDとかデジタルオーディオプレーヤーなど,機器ごとに個別に切り出して減少ということで表現されているのですけれども,パソコンの出荷統計を含めて,ユーザーの私的複製に使う機器が変遷しているということが,これで明確になっていると思います。

一般的なケースとして,音楽聴取にMDを使用していたユーザーが,その後,デジタルオーディオプレーヤーに切り替えて,現在はスマートフォンで聞くようになったというユーザーも多いと思われます。グラフが示すとおり,それぞれの機器の下降の時期と,切り替わった先の増加が,見事にリンクしております。つまりグラフの見方を変えますと,MDがデジタルオーディオプレーヤーに切り替わって,スマートフォンの普及に伴ってデジタルオーディオプレーヤーも3分の1に減少しているわけですけれども,減少のほとんどがデジタルオーディオプレーヤーと同等以上の機能を持つスマートフォンに切り替わっているだけだというように私は考えます。

それから更に6ページのスマートフォンの出荷台数なのですが,スマートフォンも既に頭打ちと記されておりますけれども,こちらで示していただいたURLを開きますと,SIMフリーの拡大でスマートフォンは年間初の3,000万台というリリースになっております。あえてSIMフリー端末とスマートフォンを別立てでグラフ化するという演出がなされている理由が,私にはよく分かりません。

とりあえず,その点だけ,まず指摘したいと思います。

【土肥主査】世古委員,よろしいですか。どうぞ。

【世古委員】21ページでございます。これも榊原委員からの資料2の21ページなのですが,私どもJASRACの使用料規程を引かれて,配信は複製を考慮して対価設定済みと結論付けていらっしゃいますので,これについては誤りであるということを改めて御説明したいと思います。ここに記載されていますのは規程を抜粋したものですけれども,見ていただきますと,ダウンロードのイとウ,これにつきましては,他の記憶装置への複製ができないことと,もう一つ再生可能期間,二つの要件によって料率を設定しております。もともと配信ビジネスにおきましては,アのダウンロードと,それから一番下にありますストリーミングの二つの形態しかビジネスとしてはなかったのですけれども,イとウというのは,その後,再生ができる期間を1週間あるいは30日と限定することでサービスの提供価格を下げたサービスが登場したということで,利用者団体の求めに応じましてダウンロードとストリーミングの間の料率として設定したというものでございます。

このアの記憶装置への複製ができないことという条件を設けていますのは,複製できてしまうと再生期間の制限のないダウンロードと全く同じことになってしまうので,他の記憶装置への複製ができないことということを条件として設けているにほかなりません。

したがいまして,ユーザーへの私的複製の対価を含んだ使用料設定をしているわけではありませんので,これは利用者団体との間の協議で合意してできている使用料規程でございますので,そういった内容になっております。

また,さらに,ここに引用されていますものは使用料規程の抜粋なのですけれども,規程の冒頭,頭書きにはこのように書かれております。公衆送信及びそれに伴う複製により著作物を利用する場合の使用料は,次により云々(うんぬん)ということで,配信事業者が行う著作物の利用行為に対する使用料を定めたものです。配信事業者がする利用行為というのは何かといいますと,具体的には著作物をサーバーに蓄積すること。それと利用可能化を含む公衆送信をすること。ユーザーの受信装置への複製ということでありまして,消費者による他の記憶装置への複製は当然含まれていないものでございます。

以上によりまして,配信は消費者による複製を考慮して,消費者の私的複製について対価を設けているという御主張であれば,それは誤りでございます。何度もここでも御説明しておりますけれども,そもそも消費者による私的複製は30条1項で自由ですので,使用料は発生しません。このことは,既に平成27年第4回の私どもの方からのヒアリングにおいて資料の配布とともに説明しておりまして,その後の資料にもこのように反映されていると認識しております。

私どもからは以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。これ以降の質疑,質問,あるいはそれに対する回答は,議論の経過の中で適宜織り込んでいただきたいと思います。そうしないと,延々ここだけで続いていきますので,そのような形で進めさせていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

まず,全体に関わる話,つまり前回から続きまして全体に関わる話としましては,今日,榊原委員がいみじくも紹介されましたけれども,契約と技術による対価還元の部分,領域の問題ございます。それから補償金制度の領域の問題がございます。つまり基本的な考え方として,補償金制度と契約と技術による対価還元の可能性と制度と,これが今,テーブルの上にあるわけでございます。したがって,この二つの制度は当然ながら併用するというように私は思うわけでありますけれども,問題は補償金制度と契約・技術による手段について,それぞれの妥当する範囲,あるいは妥当しない限界,そういったようなところを現実を踏まえながら解を探っていくべきだとも思っておるところでございます。

その境界について,どのように考えたらいいのか。特に契約・技術による対価還元手段については,関係当事者によりビジネスモデルの構築ということが当然期待されるわけでございますけれども,このようなビジネスモデルの構築についても,御意見があれば伺いたいと思っております。どうぞ,この基本的な問題についてお願いをいたします。

松田委員。

【松田委員】主査に今の提言といいますか,お考えについて質問したいと思うのですが,その両制度の間をどのように考えるかという御提言のようでした。私にとってみれば,この委員会でも何度かお話ししたと思いますけれども,概念的には極めて明白だと私は思っています。

一つ,契約や,それから技術によってちゃんとコントロールできて,その契約において私的複製についての許容もオーバーライドで,契約で許すというような契約関係があったとしたら,これは30条から外すべきだと思っています。

それから,違法な複製,実はこれが一番被害が大きいけれども,これは30条から外すべきだと思う。概念的には明白になっているということになります。そうすると,その間の部分だけ30条の適用を受ければいいのではないかと思っています。

とりあえず,そのように言っておきます。

【土肥主査】ありがとうございます。

では,椎名委員。

【椎名委員】僕も全く同じことを考えていたので,重なるのですが,30条1項があることで,JASRACさんもおっしゃっていたように,私的複製が許されている領域では著作権は行使できないわけではないですか。したがって,契約と技術で解決される部分というのは,30条1項から外れないとおかしいはずです。

現状での議論の道行きを見ていると,30条1項の,比較的海外と比べて広い範囲といわれている私的複製が許される範囲については,いじるのをやめましょうということを前提に議論をしてきていることがあると思います。これから変わってくるのかもしれないけれど。その辺をちゃんと踏まえた上で議論をしていかないと,話がおかしくなると思います。

以上です。

【土肥主査】河村委員,どうぞ。

【河村委員】30条1項のことなのですけれども,広い範囲の自由が認められているという言葉が示すもの,つまりその広さと,一方で広い範囲のものが認められている中で,自由にできて捕捉できない部分が私的複製であるとするならば,それが量としてどれくらいあるかは考量する必要があると思います。広い範囲のものが許されているというルールと,純粋に30条1項の,自由にできているというその自由を行使している程度は別に考えるべきということです。YouTubeで聴いたり,配信の場合でも,スマートフォンにダウンロードした最初の分は30条1項ではないです。私的複製ではないのは間違いないです。マルチデバイスのところは,何度も申し上げてきましたけれども,パソコンで配信をダウンロードしてスマートフォンに入れたら,私的複製といえるかもしれませんが,多くの若者たちはスマートフォンに配信で買っているとするならば,それは別のデバイスに移さない限り私的複製ではないです。ですから許されている自由を行使している範囲,それを利用している範囲というのはどんどん減っているのではないかということはいえると思っております。

ですから,自由の範囲が広いという表現をもって,膨大な複製があるという理屈は,常に違うなと感じておりました。

【土肥主査】ありがとうございました。

大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】契約・技術でカバーされる部分と,補償金でカバーされる部分との,二つがあると思います。全部,契約と技術で完全にカバーされているとしたら,30条1項のカバーする範囲がなくなっているともいえるし,補償金も要らなくなっているわけですが,現実には現在全てが契約と技術でカバーされているわけではないし,近々にそうなるわけでもないと思われます。全部完全に契約・技術でカバーされるのであれば補償金は要らないという話になり得るのでしょうが,それでカバーできないのだから補償金は必要だという部分は否定できません。二つの部分の線引きをどうしていくのかの点は別として,法的には言わばデフォルト的ルールというものが必要となります。契約というのは後からやっていけば広くも狭くもなるわけですが,もともとは契約で捕捉するのが困難だからというのも理由の一つになっていますので,契約でカバーし切れない部分は当然あることを前提とした上で,制度が作られているわけであります。

それと,もう1点も重要なところで,後に2行ぐらいしか書いていないのですが,補償金の算定の際には,そのような部分が契約でカバーされているのだから,その分だけ補償金の額は減るべしという話は各論としてあるわけですけれども,全部契約と技術で完全にカバーされているから補償金は廃止すべきというのとは次元が全く別であると解されます。

また,何度も申し上げているとおり,30条1項というのは権利制限の範囲が広いのですが,それは日本国民として非常に好ましい制度だから,これは維持すべきだし,広いものを狭くするのは各人の自由を損なうことになると思われます。この観点からは,契約と技術というのは,強調の仕方によっては,30条1項のカバーする範囲を減らしていくという議論に結び付いてくるのではないかというところが懸念されます。

【土肥主査】ありがとうございます。御意見を伺っておりまして,具体的に契約と技術によって解決できる領域の具体的なものとしてはマルチデバイス,ネット配信,この二つを河村委員から挙げていただいたわけでございます。あと,30条1項の領域から外すべきものとしては違法複製物。現行法の30条1項に関しては,どのようなものでも私的複製の対象になるわけです。そのような範囲の広さ,そのような部分についても適用される30条1項の私的複製として認められるかどうかという問題も,また一方においてあるわけでありまして,ここでの議論は後者の話ではなくて,前者のビジネスモデルとして成立する部分,マルチデバイスとネット配信に限って考えればいいのかどうか,ここのところです。ここについて,何かアイデアを頂ければと思うわけであります。

もちろん,ビジネスモデルでありますので,プレーヤーの問題が当然あるわけです。権利者と,それからネット配信業者,この中にネット配信業者の方は当然おいでにならないのだろうと思いますけれども,いずれにしてもステージは変わってくるのだろうと思います。

しかし,我々の中の議論として,そのような部分については30条1項から外すということは,方向性として決められるのだろうと思います。

いかがですか。松田委員。

【松田委員】正に権利者が承知していて,マルチデバイスで複製するビジネスに参画していて,そしてそれが契約と技術によって供給されていれば,これはもう30条から外すのは当たり前だと思います。それ以外のビジネスにどのようなものがあるかというのは実は千差万別で,正直言って,委員である私も捕捉しているわけではありませんが,典型的に一つのケースを考えてみると,マルチデバイスではなくて,送信します,それを有料で送信します,受けてください,契約しました,しかし,そこから先の複製については,もう個人の問題ですから,私的複製で複製する方はしてくださいというようなビジネスが,もし,あったとしたら,これは30条の問題だと私は思います。

要するに,契約と技術によって私的複製をオーバーライドして許諾しているか。30条に委ねて複製を可能にしているか。このビジネスのすみ分けをしてみるほかはないと思うわけです。

多分これは千差万別あるのではないかと思います。

【土肥主査】この点,ほかの方で御意見はございますか。世古委員。

【世古委員】今,松田委員からお話がありました配信事業者が消費者の持っている複数台のデバイスに対して配信していくということについては,受信した機器までの数台といった部分については,配信事業者の複製行為として,これは判例とか,そういったことで確定されている部分ではありませんけれど,正に契約で配信事業者の複製行為として,そこまでについては許諾をしている。今現在この点に関しては,そういったことで対応しています。

ただ,松田委員がおっしゃったように,そこから先に消費者がする複製行為については事業者がする複製行為ではないので,これは当然ながら私的複製の問題になってくるのだというような整理をしておりますし,今ビジネスで行っている事業者様は全てその辺について御承知だと思います。

【土肥主査】椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】結局,現状でJASRACさんの使用料規程もそうですけれど,事業者が行う部分について契約で対価を回収しているという部分があるとして,現状で私的複製の対価まで回収しているわけではないことは,まず確認しておいた方がいいと思うのです。話があれこれしますので。

その上で,30条1項に関してマルチデバイスに関しては外しますよということになるのであれば,そこから先を,例えばJASRACさんが使用料規程で別の対価を定めていくこともできるという整理でいいと思うのです。

だから,契約と技術で対応できる部分というのは,私的複製から離れていく話になって,権利者が著作権を行使する世界であるとすれは,私的複製に関する対価の還元の議論からは外れていくのではないかと思います。

【土肥主査】この点,今,権利者団体の方から御意見を頂戴しているのですけれども,他の委員の御意見を頂ければと思うのですが,先に大渕委員から伺った後でお願いします。

【大渕委員】今の点は何度も出てくる話ですが,行為主体,行為者の話になってくるのでありますが,その点についてやや混乱しているように思います。マルチデバイスの部分まで複製を業者の方がやっていれば,これは30条1項の話になるはずもないわけであります。ネット上で実際にボタンを押しているのはユーザーであっても,業者が複製主体のこともあり得ます。他方,契約でもって1個だけファイルを入手した上で,買ってきたCDを自分で焼いているのと同じようなことをするのであれば,私人の方が主体になるのであって,そうであれば,これは30条1項の話になります。その点はケース・バイ・ケースでありますが,鍵になるのは行為主体だと思います。そこを分けないと話が大きく混乱してまいります。30条1項であれば,著作権の行使を受けずに,ユーザーの方で複製できるのですが,契約でやるということは,著作権の行使があるのを前提に,契約でもって著作権についてライセンスを受けるという話なので,そこのところを整理しないと議論が大混乱してくるのではないかと思います。

【土肥主査】マルチデバイスについても,それからネット配信についても,結局末端のところで,私的複製を認めるような形でのビジネスモデルを構築するのか,それを一切認めないということなのか。通常は今,権利者団体の方からの御意見を伺いますと,これはマルチデバイスにしても,ネット配信についても,最終的な段階のところで私的複製が認められるような運用が行われているのだとすれば,それは30条1項の適用がある。つまり30条1項問題として考えざるを得ないと私も思うのですけれども,そうではないというような御見解があれば,是非お願いをしたいのですけれども,いかがですか。

【河村委員】そうではないのですけれど,いいですか。

【土肥主査】できれば,その点についてお答えいただくと,一番話が進んでいくと思うのです。

【河村委員】そもそもこの議論の始まりは,クリエーターへの適切な対価の還元,クリエーターの方,権利者の方に対価が行っているか。補償金の話ではなくて,対価の還元が行っているかという話から始まって,段階を経て,私的複製の補償金の話に狭められていったと思います。議論の過程で若者がスマートフォンにお金を払って1曲入った段階で,それはCDとして買ったのか,データとして買ったのかの違いで複製ではないですし,マルチデバイスも30条1項ではないという確認がされました。

持っている曲は,鍵が掛かっていないものならば,ほかのデバイスに移していこうとすれば移していけますし,そうすれば私的複製なのですけれども,そのような使い方がほとんどされていないでしょうと。だから私的複製の自由が要りませんと言っているのではありません。今パソコンを持っていない若者は山ほどいて,音楽の多くはスマートフォンに入っているではないかと,よくおっしゃいますけれど,その多くの部分は補償金対象のものではないです。マルチデバイスのものも違うという整理だとすると,つまり,自由複製できる可能性があるデータがたくさんあるかもしれませんけれども,それは必ずしもなされていない。スマートフォンに入っているものをマルチデバイスサービスを使わないで,自分で他のデバイスに出すことは大変難しいと。たしかヒアリングに来た方が,普通の方には非常に難しいとおっしゃっていましたから,実際ほとんどなされていないと思います。

片や,YouTubeだ,ストリーミングだというものが,物すごい勢いで音楽を聴く手段になっていっているとなると,つまり私的複製,自由というのはあるのですけれども,それを使って損害を与えているという範囲はどんどん狭まっていて,ゼロではないからといって補償金を,今ワークしていないからといって,もう1回昔の制度をやることはないでしょうというのは,最初から消費者団体として申し上げていたことです。30条1項が要らないということではありません。自由はあるのだけれども,損害を与えるような複製の仕方,音楽に関して,そのような利用は本当に少なくなっているのです。

あるからといって補償金を出すというのではなくて,私から言わせていただければ,例えばYouTubeで聴ける音楽に権利処理がなされているようですけれども,そのようなことがきちんとしかるべきクリエーターに対価還元されているのかとか,いろいろな形で,補償金の形ではなく,きちんとした対価の還元を,新しい音楽の聴き方の世界の中で実現していくことこそ,そもそもこの議論の始まりにあったクリエーターへの適切な対価の還元ではないかと思っております。

【土肥主査】そのような使われ方をしていないというように思うとおっしゃるわけですけれども,そうすると,恐らく来月は使用実態の調査が,この委員会に出てくると思いますけれども,そのような客観的な使用実態の調査を見て,河村委員は思うというところから,客観的なデータに基づく議論に入っていただくということで,よろしいですか。

【河村委員】先ほどから申し上げているように,そのようなことが全くないとか,私的複製がされていないなどと言うつもりは全くないのです。それが損害を与えているか,10年前からその話を椎名委員とはしているような気がするのですけれども,そのことによってクリエーターの方に損害を与えているのかどうか。あと,アンケート調査の結果を見ないと分からないですけれども,マルチデバイスと,そうではないものの違いというのが,質問の段階では非常に微妙な感じで私は読んでいましたけれども,厳密にやろうとすると質問がすごく難しくなって,かえってアンケートの答え方が難しくなるという弊害があるような御説明が事務局からありましたから,本当にそれがきちんと切り分けられた数の捉え方になるかどうかも,私は大きいと思っていますが,もちろん出てきて,見せていただかないと分かりませんが,全くないとか,そのようなことを申し上げたいわけではありません。それが補償金制度をもう1回復活させるような流れにするような裏付けになるかどうかという見方をさせていただければと思っています。

【土肥主査】お言葉どおりに言うと,私的複製の量は少なくなっているということであった場合であっても,家族の中で行われる場合と,家族を超えて,30条1項で認められている範囲は超えていますね。そのようなところからすると,権利者からすれば,本来二つ売れたところが,一つしか売れないという,そのようなことになるわけですから,それは権利者に対する損害といいますか,そのような可能性は当然論理的にはあるということだと思います。

つまり権利者の利益を不当に損ない,著作物の通常の利用を妨げていることになるのだろうと思います。

いずれにしても,ここのところは使用実態調査というようなものを見ていくということで,客観的な議論をさせていただきたいとは思いますが,しかし,前提として踏まえていただきたいことは,マルチデバイスにしても,ネット配信についても,これは契約と技術によって相当程度クリエーターに対する適切な対価還元につながっていく部分はあるのだけれども,なお30条1項の私的複製が行われる領域はあるということは,そこは皆さんよろしいわけですね。それはないという話ではない,あるのだという,そこの前提に立っていただかないと次の話に進めませんが,そもそもビジネスモデルの構築に関して,今日,榊原委員はこのペーパーでも相当おっしゃっているわけですが,そのような可能性について何かこの段階でおっしゃることはありませんか。今日の話だと,そのようなお話だと思うのです。

【榊原委員】質問の意味がよく分からないのですけれども。

【土肥主査】要するに,契約と技術によって,この問題を解決すべきであるということを,このペーパーで,縷々(るる)御説明になっているのだろうとは思います。契約と技術によってというのは,確かに私的録音録画補償金制度が今から25年前にできて,それから25の時間,四半世紀の経過の中で,デジタルネットワーク技術というのは相当程度,格段に進歩し,変化しているという現状は確かに事実として我々の前にあるわけです。

そうすると,25年前に考えられなかったようなビジネスモデルというものによって,クリエーターに対する適切な対価還元が行われる。その可能性が論理的にはあり得るのだろうと思いますが,そこについて,今日御説明があった中で,何か具体的なイメージを持ってお話しになっているかどうかという,そこのお尋ねでございます。

【榊原委員】具体的なイメージを持っているかというのは,今日の発表させていただいたものというのは,現状このような状況ですと,いろいろなビジネスは進んでいますと,一番多いのがYouTubeですということで,先ほど河村委員もおっしゃいましたけれども,この小委員会というのはそもそも別に30条限定の小委員会ではなくて,クリエーターに適切な対価還元を行うべきだというところは誰も異論がなくて,それができているのかどうか。できていないのであれば,どうやってするべきなのかというのが議論のスタートだったはずで,現状を見ると,このように環境が変わって対価還元がなされている,YouTubeであれば半分以上がされているということは明らかで,もちろん私的複製の部分がゼロだとは私も思いません。一部はあると思いますけれども,コピーを手元に持たないとか,コピーを作らないという人がほとんどになっているというのが感覚なのです。

いろいろな客観的な情報を出したのも,そのようなことを分かっていただくということなので,具体的なイメージというのは,もちろんビジネスモデルでいろいろなものが出てくるので,こうなります,あのようになりますと私どもが申し上げられることではないですけれども,今の使われ方というのは,コピーをしないという方に行っているとか,音楽をそもそも聴かないというようになっているような中で,制度を作ってまで,制度を維持してまでそちらの方法の方がいいかというよりも,今どんどん増えている契約でやられる対価還元の方が,既に金額を見ると,もちろんクリエーターに幾ら届いているのかは私たちには見えないわけです。ですけれども,YouTubeなどを見ると,当然契約スキームはあるわけですから,対価還元されているのだろうと。そちらの方がウエートがどんどん増えているのに,制度を,ここからまたどんどんそちらの方向に行くことは結構自明だと思うのに,昔の制度をごちゃごちゃたて変えるというのはナンセンスではないかなと,私のイメージとしては,そのようなイメージを持っています。

【土肥主査】小寺委員。

【小寺委員】私どもとしても,契約と技術による対価還元の可能性というのを探っていきたいと思っているのですけれども,榊原委員の資料の21ページで,インタラクティブ配信型のダウンロードの契約モデルが書かれております。こちらは使用料としては,JASRACさんの資料なので,JASRACさんに支払われている額だと思うのですけれども,このビジネスモデルにおいて原盤権はJASRACさんと同じように処理をされているのですか。

それから,このモデルの場合に,実演家の方への対価還元というのは,原盤権の中からされるということでよろしいのですか。その辺りをお伺いします。

【土肥主査】御質問ですので,お願いします。

【高杉委員】原盤権については,個々のレコード会社の方でコントロールしていますので,このような形の集中管理は行っておりません。原盤権について各社の方で仮にライセンスを出した場合には,契約に基づいて実演家の方に支払をするという対価還元になっています。

【小寺委員】追加でいいですか。それは1曲単価での支払があるわけではなくて,原盤権として音楽ファイルを事業者さんに提供されるときに一括での支払があるというイメージですか。

【高杉委員】個々の契約の内容は,協会としては契約については把握していないので,お答えできないのです。

【小寺委員】もう1点いいですか。榊原委員の資料の中で,11ページですけれども,今,一番視聴手段でトップはYouTubeということでございました。YouTubeの中でもクリエーターへの対価還元があるということでしたけれども,YouTubeから具体的にJASRACさんとレコード会社さんへの対価還元があるということですか。

【高杉委員】これも詳細は分かりませんけれど,Googleさんの方で発表されている30億ドルというのが,これが10年分ぐらいだと思いますけれども,まとめた額だと思うのですが,支払先の方は我々ははっきり言って分からないということと,YouTubeについて私どものユーザー実態調査の資料を引いていただいているので,少し補足しますけれども,YouTubeからが聴取手段のトップである事実は昨年も確かにそうなのですが,減少傾向にありまして,4年前は62%ありました。YouTubeの場合には広告があるとか,音質が悪い,あるいはフルの曲が出ていないというようなことで,今は減少傾向にあるということを申し上げておきます。

それから30億ドル自体が,複製の対価ではなくて視聴の対価です。そのようなことで,少し問題が異なるのではないかと思っています。

【土肥主査】世古委員,お願いします。

【世古委員】YouTubeで使われている楽曲の権利者としてJASRACにYouTube,Googleさんからお支払を受けています。先ほど高杉委員からもありましたように,30億ドルというのは10年間で全世界の1クリエーター等に対して,対価としてそれぞれの管理団体ですとか,原盤権者,コンテンツ権利者たちに支払われた額と聞いています。

私どもに使用料を支払っていただいたものについては,Googleさんからの利用報告に基づいてそれぞれの権利者に分配しています。

以上です。

【土肥主査】椎名委員ですか。

【椎名委員】榊原委員の資料の話に戻るのですが,14ページを見ていただくと,いかに補償金制度の導入をしている国が少ないのかというようなことがありますが,高杉委員は印象操作とおっしゃいましたけれど,正にそのような気がしていて,幾つかの例外はあるとしても,補償金制度を導入している国のほとんどは,言い方は悪いですけれど,先進国といわれる,そのようなカテゴリーにある国であると。コンテンツ産業が比較的大きな規模を持っている国が導入をしているという傾向があると思うのです。この制度は,その部分に密接に関係すると思われることから,ただ全世界の国を並べて,補償金制度導入国はいかに少数派であるかというような見せ方は,妥当ではないと思います。

アメリカとイギリスのことが後で出てきますけれど,18ページにアメリカとイギリスはほとんど補償金制度を導入していないけれど,コンテンツの活性化は図られているということなのだけれど,補償金制度がないから活性化しているわけではないとむしろ思うのです。実際に比べてみると,アメリカの私的複製に関する規定,イギリスの私的複製に関する規定というのは,日本よりはるかに厳しい。イギリスなどは少し前まで違法行為であったわけです。

そこで,そういった国と違う広さを持った権利制限規定に対する補償金制度をどうするのかというのを,今,議論していると思うので,この辺の御説明にはなかなか納得がいかないなと思って拝見しておりました。

続いて15ページ,17ページ辺りのドイツ,フランスの判決例ということで,すごくいっぱい拾っていただいたのですが,もともとこれは榊原委員がユーザーの納得感のなさを表すものとして,ヨーロッパで頻発している訴訟案件があるではないかというようなことでおっしゃっていたのを,今回出していただいたと思うのですが,専門用語があって,100%理解できているとはいえないのですが,例えばドイツにおいては,少なくとも補償金を支払う側(がわ)が提起した訴訟というのは,たった1件なのです。ましてやユーザーが訴訟を起こしたというのは1件もない。

逆に,この表をずっと見ていくと,パソコンに代表される多目的な機器が次第に対象となっていく時系列が分かるのではないかと思います。

同じくフランスにおいても,フランスは媒体のみを対象としてきたところで,若干性格は異なると思うのですけれど,機器との一体型であるタブレット等の多機能機器が指定されるようになっていく時系列が分かるのではないかと思います。

ユーザーの納得感のなさから訴訟が頻発しているという趣旨なのですけれど,これを見る限り,ユーザーが提起した訴訟はたった1件なのです。榊原委員が従来おっしゃっていた,ユーザーの納得感のなさから訴訟が頻発しているということを,この資料から見て取ることはできないのではないかと思います。

加えて,消費者団体のその他の活動例ということで,マル1,マル4とか掲げられていますが,これは補償金制度が存在することを前提として,その制度に対して消費者がどのような意見を言っているかということですよね。だから納得感がない,国民的な理解が得られていないことを証明する資料としてはおかしいのではないかと思います。

以上です。

【土肥主査】今,声を出されたのは。松田委員,どうぞ。

【松田委員】この資料,10から17まで,これは前々回だったと思います。私が発言したことが契機になっているのだろうと思います。ヨーロッパであったとしても,この制度が国民的納得感が得られていないという発言が,たしかJEITAさんからあって,そのような意味で,判決が出ているものはないでしょうと私は言ったのです。そのようなことはありません,たくさんヨーロッパではありますと,そのときの発言もありました。そのことのために,これが出てきたのだろうと思います。たしか丸橋委員も,そのように発言したと記憶しております。

しかし,ここに納得感と書いてあるのです。権利者団体が請求した場合に,判決によって国民が納得感を得られていないから,社会制度として維持できないから請求棄却だと。これは入れ込んでいますので,分かりにくい。それが社会制度として維持できないから,制度としては請求権が成り立たないという意味で判決が出たものなどあり得ないでしょう,ないでしょうという発言を私はしたのです。

それで,この表を見て,そのような判決になっているかどうかは,おおよそ分からない。どのような意味で認容し,どのような意味で請求を棄却したのもあるようですが,それが果たして機器の問題なのか,どこかで処理されていたのか。先ほど言ったような技術的処理がされていたのかというようなことが争点になっていたとしたら,その納得感の問題ではないのです。この中で,表題として「納得感?」というように書かれるのであれば,これらの訴訟のうち1件でもいいから,私的録音録画補償金制度の社会的意義としては法的に無効だというように判決をした裁判があるか,ないか,これを出していただきたい。ただ数を出しても,意味がないです。ましてや委員に,どちらが,どう請求して,どちらが請求棄却なのか認容なのか,争点も分からないのに出されても,そして表題で納得感としてクエスチョンということは,結局は多発しているから社会的に承認されていないのだという,いってみれば誤導ではないですか。私の発言に対する数を挙げたというのは,誤導ではないですか。これをJEITAの名前で出してよろしいのですか。

【土肥主査】龍村委員。

【龍村委員】今の松田委員の御意見に補足ですが,資料の15ページ,ないし17ページ辺りにリストが出ているわけですけれども,一つはっきり言えるのは,ドイツでは係属中の事件のピンクの表記は一部あるわけですが,フランスについては,継続中のものは1件もないということのようでございます。それに,元々,フランスについては多くの場合,私的録音補償金の徴収の除外措置があって,それに該当性を巡って,その返還に関して係争になったケースがほとんどかと思います。

例えば,除外されるべき違法複製について補償金が徴収され,その取り過ぎ部分の返還請求とか,あるいは除外されるべき事業上の目的での使用部分を過誤によって徴収していた部分を元に戻すとか,そのような係争がほとんどであって,仔細(しさい)は1個1個事件を調べないと分かりませんけれども,後半の幾つかは製造業者というのはAppleのケースではないかと思いますが,ほとんど全てが消費者との関係ではなく,製造業者との係争だと思います。

ですから,例えば19ページにイラストがありますが,ドイツとフランスの国旗の横に,手をついた人物バーサス一般大衆,恐らく消費者を意味しているのと思いますが,消費者と対比させるという格好で,訴訟に苦しむ補償金大国独・仏という説明になっていますが,これは,誤導ではないかと思います。

この委員会では,知的財産計画にうたわれているクリエーターへの還元ということをテーマにしているわけで,その一番取り挙げやすい制度として,既存の制度である私的録音録画を使いながら,それを行おうではないかという切り口から,今,私的録音録画補償金制度が議論されているのだと思うのですが,何も利害対立している業界団体あるいは利害グループを代表して議論するという格好で,ここでは議論されているとは思いません。客観的な立場で,各有識者の皆様が議論するという場なわけですから,そのような意味では,今回のJEITAさんの御報告は,語弊があるかもしれませんが,なりふり構わない議論のような気がしまして,どうなのだろうかという印象を受けているところでございます。

それからもう一つ,先ほど私的録音録画補償金制度が適切な領域と,契約・技術による対価還元が実現する領域との二つがあるという,そのすみ分け論の問題ですけれども,今までの議論で明らかになったのは,契約・技術だけでは対応できない領域があるということは,ほぼ否定できないであろうということは,皆さんコンセンサスがあるように思うわけですが,この二つの領域は,ある境界線を区切ってきれいに二つに区切れるものでは,恐らくないのではないかと。特に後者の契約・技術による対価還元については,ビジネスモデルをどのように作るかという,今後の議論の問題として将来に残された問題であって,既に一部実施されているものもあるのでしょうけれども,その他については,新たなビジネスモデルが生じて初めて認識することができるようになるものなので,そのようなものとすみ分けをするというのは,なかなか困難ではないか。

つまりA足すBが100になるというきれいな図式があればいいのですけれども,A足すBを足してきれいに100は出ないということであれば,まずベースになる制度,本件でいえば私的録音録画補償金制度だと思うのですけれども,それを下敷きにして,それが不要になった部分については引き算をしていけばいいのではないか。A引くBの引く部分が徐々に増えていくという発想,アプローチが,思考経済上,制度設計においては有効なのではないかという気がするわけです。

そのような作業は,例えば,私的録音録画補償金の補償金額設定の中で,実際には契約・技術によってこれだけのものがカバーされているのだということで,その場面で調整するということも,ものの運びとしてはやりやすいのではないかと感ずるところであります。

【土肥主査】ありがとうございました。JEITAに出していただいた,納得感のところでありますけれども,クエスチョンマークをお付けになっておりまして,別にびっくりマークではないので,JEITAも,そのような納得感を前面に強調するところではないのだろうと私は思いますし,更に考えてみますと,ドイツ,フランスに関する裁判例というものに関して具体的に挙げていただいて,我々が何かのときに,このようなものを見ることもできますし,私としては感謝を申し上げたいと思います。

あと,椎名委員も言われましたけれども,消費者団体が行っているところは,確かに私的録音録画補償金を否定しているわけではないのです。もっと透明性を出せと,フランスの私的録音録画補償金団体,そこにおける透明性を確保するようにと,民主的な運用をやってくれというようなことを言っているところでありまして,それは椎名委員のおっしゃるとおりだろうと思います。

それから,今までの議論の中で,最後に龍村委員もおっしゃったわけでありますけれども,A-B=Cという,Aというのは30条1項の私的録音録画の適用領域なのですけれども,ここからBというものを契約と技術によって30条1項から外すことができるもの,これがはっきりすればいいのですけれども,一応今のところネット配信とかマルチデバイスというものが挙がってきても,しかしビジネスモデルの中には,その末端の部分で,更に私的複製,私的領域の範囲内において複製が行われる範囲がなおあるということでありますので,Bという値をはっきりここで今,画することはできないということなのだろうと思います。しかし,25年の経過の中で,技術の進歩の中で,Bというものがはっきりするということは,権利者にとっても,ユーザーにとっても,メーカーさんにとっても利益になることだろうと思いますので,議論の方向性としては,このBという値というところをできるだけ明確なビジネスモデルとして明確にするような努力を,関係者の中でやっていただくというのは歓迎すべきことであると思うところであります。

それと,今,2時半になっておりまして,我々が予定しているのは3時半までということになっております。今のところずっと総論的な御意見を頂戴しているわけですけれども,各論的な御意見も頂戴したいと思っているわけであります。

各論的な意見を伺いながら,総論ということにも関係しましょうから,その辺は流動的に御意見を頂戴していいと思いますけれども,先ほどの(ウ)のところでありますけれども,補償金制度を維持する領域において,包括的な制度であるが故に,どんぶり勘定的な制度であるが故に,いろいろな解決すべき課題というものがあるわけであります。

したがって,このような課題を解決していく方向で現実的な方策を考えるとすれば,どのようにすればいいか。現実的な方策についての,何かアイデアを,皆さんからお聞きしたいと思っております。

特に対象機器,記録媒体のところです。特定記録媒体という限定が,これまでの政令の中ではあるわけでありますけれども,このようなところが,先ほどのJEITAさんの資料からすると,毎年,日本の人口は1億人しかいないはずなのに,2,500万台から3,000万台のスマートフォンが出荷されているということです。これはすごいことなのではないかと思うのです。

このスマートフォンの中に私的複製をされるというのは少ないかもしれませんけれど,やられているものも当然あるのだろうと思います。したがって,対象機器,記録媒体について,従来の特定記録機器媒体から,どのように考えていけばいいのか。現在の政令指定方式をどのように考えていけばいいのか。

末吉委員,どうですか。

【末吉主査代理】割合的には少なくなるとしても,指定を入れるべきではないかと思います。数値的なものは,割合は少ないものかもしれないけれども,その範囲を含めるという形で指定をしていくべきではないかと思います。

【土肥主査】ほかに。小寺委員。

【小寺委員】順序として,補助金制度の方から議論をしたらどうかという主査のお考えも分かるのですけれども,頂いた資料1の中の6ページに書いてありますけれども,この制度は基本的に正確な捕捉が困難という制度なのです。先ほどの納得感のお話に触れるところがあるのですけれども,私たちの団体でいうところの納得感とは,例えば私がコピーをしたアーティストに,本当に私がコピーした回数分だけのお金がきちんと行くのかというところの納得感がないという,そのようなところがこの制度の不満が大きいところかなと思うのです。これはこの制度がこの形である限りは,このままずっとやっていても解決できないのです。

議論のやり方として,先ほどから複製の数が少なくなっているというお話もあります。これは当然でありまして,なぜならば,これまで反対で動いてきた音楽再生機器が,スマートフォンへ数が替わるということは,スマートフォンはネットワーク機器ですので,ネットから直接ダウンロードするという方が,線をつないでコピーするより簡単なのです。ですから機器の特性からしても,私的複製が少なくなることは,考えられ得る現象だろうということなのです。

数が少なくなるところから,まず先に議論ということよりも,契約モデルでやるというのは,新しい制度を作りましょうという話なので,議論としては,そちらの方がモチベーションが上がるのではないかと思うのです。先に進める議論は,そちらなのではないでしょうかと私は思うのです。

【土肥主査】先ほどから契約モデルについて何かあればと,私から相当お聞きしたわけですけれども,それについては,そのタイミングでは出なかったものですから,次に入っているわけでありますので,その辺のところを小寺委員は十分御了解いただければと思います。

この点ですか。大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】この関係では,教育でも似たようなこと,つまり,権利制限すなわち法律だけを議論するのではなくて,権利制限すなわち法律,プラスライセンスで行くべきと言ったかと思いますが,結局,法律プラス契約となったと思います。ここでも,基本的に同様に,契約・技術でカバーされる範囲と,それが困難なので補償金すなわち法律でカバーされる範囲の二本立てとなってきます。現実味があるかどうかは別として,何かフォーラムでも立ち上げて,そこで権利者と利用業者が今後契約・技術でどんどん契約してやっていくというライセンスの方も頑張るし,それでできない部分は法律すなわち補償金でもやるというように,結局,常にこの二つすなわち契約と法律の両方の組合せをやるしかないわけであります。それこそ,Win-Winの契約ができるのであれば,どんどんやればよいのですが,それではカバーできない部分があるために,常にこの二つの柱の組合せになっているものですから,契約ではカバーできない部分は法律でやるというように,教育と同じことになるのではないかと思っております。

【末吉主査代理】今の大渕委員の御発言に続けて申し上げると,今,音楽の権利情報のデータベースを作る実証実験を,文化庁の御協力を得て始めているのですけれども,その中で感じることは,例えばレコードの権利者のデータベースというのは,完成しているわけではなく,完成までにはまだ何年か掛かる状況であり,一番私が問題だと思うのは,権利者意識がない点です。だから多くの権利者は,自分が許諾して,自分が許諾を取るというステータスにないのです。そのような方々を,どうやってディベロップメントして,権利情報を出してもらうかというのは大問題だと思うのです。

そのような意味で,クリエーター育成資金という言葉が使われていて,どこにお金が消えてしまうか分からないとお思いかもしれませんけれど,私は大いに賛成です。まず権利者に権利者意識,自分たちはどのような権限を持っていて,どのようなことができるのかというのを啓発する機会をもっと作るべきだと思いますし,ここまではいろいろこのような資金を使ってやられてきた面はあると思うのですけれども,今は資金枯渇しているわけです。そこから始めて,契約と技術によるシステムまでに至るのには,まだ長い時間が掛かると私は思います。

だから大渕委員の言われるとおりなのですけれども,現実問題とすると,私は補償金しか機能しないのではないかと思います。それぐらい今,権利者は追い詰められているのではないかと思うのです。

それから,例えばアメリカでは,アーティストはみんなハッピーなのかというと,これはどなたかが何回か前に御指摘されましたけれど,コピーライトオフィス自身が,アメリカのクリエーターは虐げられていると,プラットフォーマーによって独占的な立場で価格を決められていて,大問題ではないかと。問題提起するだけで,まだ具体的なところは何も示されてはいないわけですけれど。

したがって,私は補償金制度の持っている意味合いというのは,どこまでの効果があるかどうか,どこまで還元されるかというのは未知数のところもありますけれども,少なくともクリエーターに報いているという姿勢を示す意味では,私はすばらしい制度だと思いますし,その意味で,主査が補償金の方向でまとめておられることに私は賛成です。

以上です。

【土肥主査】これに関連して,高杉委員,どうぞ。

【高杉委員】資料の方に戻るかもしれませんけれども,今対象となっている専用の録音機器,記録媒体から少し汎用的なものへ,汎用という言葉は余り使いたくないですけれども,広げざるを得ないということになると思います。

それに当たりましては,今は政令指定方式で対象が決まっておりますけれども,具体的に,少なくとも政令の1条に具体的な規格内容,対象となる規格が政令の1条に細かく書かれておりまして,それから外れると全く対象にならないということになっておりますので,政令の1条を抽象化する,柔軟な形の政令にするということで,臨機応変というか,時機を逸することなく対象とするような改正をしていただきたいというのが一つ。

それから,今,一応著作権法上返還請求制度が制度としてはありますけれども,今,基本的には専用機器,記録媒体なので,余り返還を想定していないわけです。それが広く,ある程度汎用的な機器,記録媒体に広げるということになりますと,返還制度自体を簡易な形で返還請求できるように改善していくことが必要になるのではないかと考えています。

以上です。

【土肥主査】椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】土肥主査のお話にお答えをしていきたいと思うのですが,その前にまず4ページの(ウ)の上にある(イ)の話です。これは補償金制度をずっと検討してきた中で,配信事業における二重取りがあるのではないかということが毎回出てくるのですが,今日ある程度明らかになったように,現状,私的複製の対価は回収されていないということを整理できたと思うので,ここの部分は,もう省いてもいいのではないかと思います。

それから(ウ)の部分に関して申し上げますと,包括的な制度であることに由来する課題ということで,分配のことのヒアリングをさせていただいたときに,権利者団体で取っている分配の方式,放送市販録音物,それからレンタルというようなカテゴリーを分けて,ユーザーの行う私的複製を類推するような技術論でやってきていることは御紹介したと思うのですが,その精度を更に上げていく必要があることは,権利者団体の問題意識としても十分にあります。小寺委員がおっしゃったように,クリエーターに本当に届いているのかということでいうと,精度を上げていく必要があるのではないか。ゆえに,むしろ分配に類する話なのではないかと思います。

それから,7ページを御覧いただいて,対象機器の話で出てくる(オ)の話ですけれど,契約と技術による対価還元のビジネスモデルが構築される場合に,その在り方により対象機器,記録媒体の範囲は具体的にどのように確定されるかという問題の立て方なのですが,ここで注意しなければならないのは,契約と技術による対価還元のビジネスモデルの影響はあるとして,一方で汎用的な多機能機器というのは,この機械では,このサービスしかできないということではなくて,そうしたサービスを含めていろいろな方法で複製ができたりするわけなので,対価還元のビジネスモデルの影響が,すなわち対象機器,記録媒体の範囲に直接リンクするものではない。除外して考えるサービスモデルの話は話として,対象機器,媒体の検討というのは,それぞれが持っている機器の機能等々を見ながら考えていく。これを別の議論にしていかないと,話がごちゃごちゃになると思います。

【土肥主査】ほかに。河村委員,どうぞ。

【河村委員】話が少し戻ってしまうかもしれませんが,クリアにしておきたい点があるので,もう一度教えていただきたいのです。まず配信サービスにおいて,ある曲がダウンロードされましたというような,ダウンロード回数に関して,権利者といわれる方々にはどのように著作権料というのですか,関係するものが支払われているのかということを教えていただきたいことと,先ほどのマルチデバイスのところを私が聞き漏らしたのかもしれませんが,よく分からなかった。3デバイスという契約になっていますね。そこはきちんと事業者による複製という形で権利処理がされているというときに,その金額というのは,どなたがもらっているものなのですか。

私的録音補償金の分配の話のときに,JASRACさんと,CPRAさんと,レコード協会さんのお答えがあったのですが,まず1曲の配信のときと,マルチデバイスのときと,あと,今一番音楽が聴かれている形態としてYouTubeも,全部ではないでしょうけれども権利処理されているとしたときのお金の流れを,ここに3団体いらっしゃるので,確認させていただけませんか。

【土肥主査】しかし,それは前に出た話なので,もう1回ですか。

【河村委員】出ましたか。

【土肥主査】前,お答えになりましたね。

【世古委員】もう一度お答えしましょうか。

【土肥主査】そうですね,質問ですので,簡単にお願いします。

【世古委員】まず1点だけ確認させていただきたいのは,マルチデバイスということと,1曲ダウンロードというのは違う話で,1曲ダウンロードでも複数のデバイスにダウンロードできるものもあれば,一つのデバイスにダウンロードするものもありますということです。

【河村委員】私の質問はシングルデバイスとマルチデバイスです。1回だけという。

【世古委員】1曲を複数のデバイスにダウンロードすることがマルチデバイスということです。複数のデバイスであっても,事業者さんが配信をして消費者のデバイスまでの複製のライセンスをしているということです。

JASRACの私がお話をしますのは,そこで利用されている楽曲の作詞・作曲家の権利の話ですので,音源ですとかの権利は別の話になりますので,音楽の著作権だけについてお話しいたしますと,それぞれの配信事業者さんから,榊原委員の資料にありますように,利用方法に従って配信事業者さんからそれぞれリクエスト回数ですとか,広告料モデルであれば広告料の一定率といったものの使用料を徴収しています。

それをどのように分けるかといいますと,それぞれの事業者さんからということです。

【河村委員】その先は結構です。その先のことではないのです。

【世古委員】今のでよろしいですか。

【河村委員】レコード協会さんはいかがですか。

【高杉委員】それも先ほどお話ししたと思うのですけれども,団体として権利を管理しているわけではありませんので,個々の曲のライセンスについては各レコード会社の方で,配信事業者に対して許諾をするという形になります。配信事業者の方からレコード会社が対価を得るわけですけれども,契約に従って実演家の方に分配するのが通常だと思います。

個々の中身については,契約なので,私の団体では把握しておりません。

【椎名委員】先ほど小寺委員からも実演家の部分,御質問がありましたので,おおよそレコード会社にアーティストが所属するという場合の多くは,実演家の権利が専属契約でレコード会社に移転します。レコード会社が実演家の権利と,レコード製作者の権利も併せて行使をして,アーティストは専属契約の中でレコード会社から支払を受けるということになって,その中で対価が還元されていくという形を採っています。

【河村委員】もう1点だけいいですか。

【土肥主査】まだ続きがあるのですか。

【河村委員】補償金の分配のお話の発表資料では,およそJASRACさん,CPRAさん,レコード協会さん,30何パーセントということで3等分のような感じになっているのですけれども,今私がお伺いした1デバイス配信とか,マルチデバイスとかYouTubeの権利処理されたものに関しても,おおよそそのようなものだと考えてよろしいのですか。

【土肥主査】お答えになるのだろうと思いますけれども,私的複製に関して,補償金が必要であるという話と,それから,その補償金がどのような形で分配されていくのかというのは別の話です。

【河村委員】そもそもの最初の議論に戻ってはいけないとは思いますけれども,クリエーターへの対価の還元というところが後回しになって,どのデバイスを指定するかとかという細かいところにすぐに議論が行ってしまっています。でも,私はここはとても大事なところだと,本当にクリエーターへの対価還元のためにこの議論をしているのであれば,すごく大事なことで,どのような方法を採ると,どのようなお支払がされているのかは大変必要なところだと考えているのです。

【土肥主査】大事なことだと思います。思いますけれども,そもそも30条の私的複製が行われるときに,録音録画補償金が認められませんと,クリエーターに対する適切な対価還元の原資というものがないわけですから,論理的には,その原資を先に決めた上で,次の段階ということになるのではないですか。

【河村委員】補償金がない国のクリエーターは何ももらっていないわけではないので,私が申し上げたいのは,クリエーターが適切な対価の還元を受けるということが目的だと思っていて,ですから補償金しかワークしないとか,補償金ではないと無理だという言い方は,例えばアメリカは補償金がほとんどない国ですけれども,権利者の方たちにペイは行っていますし,確かに中には少なくて苦しんでいる方もいるかもしれませんが,補償金が入ったから,その人たちがハッピーになるわけではないと思うのです。

ですから,私が申し上げたいのは,今どうしても補償金の機器の指定とかになるので,その前に確認したいのです。補償金の場合は,前回か前々回ですか御発表がありました3等分に分けられているというのが分かったのですが,ほかの場合の,今若者たち,音楽を楽しむ人たちが聞いている,今伸びている音楽の聴き方できちんと対価の還元がなされなければ,どんどん細っていく私的複製の量のことで,機器の指定とかの話の細かいところに入っていくのはおかしいと思うのです。

【土肥主査】だから契約と技術によってクリエーターに対する適切な対価還元が行われる部分と,それから30条1項の私的複製の録音録画補償金を通じてクリエーターに対する適切な対価還元が行われる面と二つある,それは基本的には了解されているのだろうと思います。

その上で,例えば契約と技術による仕組みの中で適切な対価還元が行われるかどうかについては,ビジネスモデルを構築するときに関係者が十分留意する必要があるわけですし,そのような中で,一般ユーザーの方の意見も反映していただければいいのではないかと思います。いずれにしましても,それも次の議論だと私は思います。

今,汎用機器それから特定機器,そのような問題の中で,汎用機器というものについて私的録音録画補償金を認めていかなければ,私的複製の適切な権利者への対価還元,クリエーターへの対価還元はできないという点については,御異論はないのかなと思いますけれども,依然として政令指定方式で定められている,あの部分だけでいいというようにお考えの人はおいでになりますか。

榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】先ほどから少し議論が戻るとか,各論を議論すべきだとかいう点で,議論の前後関係,どちらを先に議論すべきかという点ですけれども,私も今日のプレゼンの最初に,クリエーターに対する適切な対価還元というタイトルにしたのは,制度ありきの議論になっているのではないかと。今も何人かの委員の方が,補償金制度がなければならないというような,それがないと駄目だというような,ほかの方法では無理だというような結論があって,実態調査とかはこれからするにもかかわらず,そのような発言が出ていて,多くの委員の方が,そのような御意見をお持ちであるのかもしれませんけれども,利用側の立場からすると,この場というのは適切な対価還元がテーマで,それは別に補償金制度でなくてもいいわけです。契約と技術との比較ということは当然要求されると思うのですけれども,先ほど河村委員がいろいろ御質問をされた点は,補償金制度だとこのようになりますと,以前の平成17年9月の資料で,委員の手元には補償金のお金の流れが書かれたものがあって,このように分配をされていくのだと。だから間違いなく都度の納得感というのはないわけですけれども,何がしか分配されていることは分かるわけですけれども,契約の方は,例えばYouTubeとかだと把握をされているから納得感があるのではないかというような御示唆がありましたけれども,実際にYouTubeさんなどに聞くと,どの曲がどのくらい使われてとか,そういったものが情報としてもきっちり公表されているという,その上流部分ははっきりしているわけです。ですけれども,それが本当にクリエーターに行っているのだろうと思ってユーザー側は見ているわけですけれど,それはどうなのですかという御質問だと思うので,補償金との対比,対価還元の対策として何がどうなのかという対比としては必要なのではないか。

先ほど椎名委員だったか,高杉委員だったかが,専属契約のところで実演家の方は契約の中身次第なのだと。もちろん契約の場合は契約の中身次第だというのは,そうなのですけれども,そうするとクリエーターの方には本当に行っているのか。専属の人の場合はお給料のような感じでもらっているということなのであれば,専属ではない人はもらっていないのかとか,その辺りはブラックボックスで分からないわけです。ありきの議論はどうかと思います。

それから,マイクを頂いたのでついでに申し上げますと,私の資料が誤導だとか,いろいろ言われたのですけれども,一応アメリカとかイギリスの契約技術でうまくいっている国というのは事実なのです。数字で出しているわけです。世界の制度の数も,これは事実なのです。印象操作でも何でもないです。調べれば,これは間違っていないことは明らかで,ドイツとフランスの訴訟についても,いろいろ補償金制度しかないという人からすると,このような書かれ方をすると腹が立つのかもしれませんけれども,これだけ訴訟が起きていること,納得感の言葉の意味は人によって違いますから,例えばフランスであったら補償金の決定というのが委員会で決議をして出されるわけですけれども,その決議というのは消費者団体が全員反対をしても通るような仕組みにもともとされているわけです。だから,裁判をしても負けたというケースがあるわけですけれども,やっても絶対に負けるという部分なのです。非常に不満だということは,消費者団体の方は常々おっしゃっています。その人たちの意見を取れば,納得感がないことが証明できるというのであれば,幾らでも取れるわけですけれども,そのようなことです。

フランスもドイツもメーカーなり輸入業者が支払義務者になっていますので,訴訟をするとなると,その人たちを被告にするのが当たり前で,なかなかテクニカルに消費者団体が被告になることも,もちろんあり得ませんし,フランスの場合も,原告になっても結局決定の方法が法律で定まっているので,それ自体を違法だというようにトライをしたことはありますけれども,やって駄目だったら,同じことを何回やってもできないという背景があるわけです。

そのようなことを全部簡単なパワーポイントには書けませんから,書いていませんし,この訴訟というのは私どもJEITAの会員企業数社が分かった範囲だけなのです。分かっただけでもこんなにある制度は普通ではないと思います。これだけ訴訟をやっていて,それで納得感がないという証明にならないというのは,私は自分が弁護士ですし,電機業界ですし,一ユーザーとしておかしいのではないかと思うのです。

この小委員会というのは団体の方も多いですし,外から見たときに,このような議論をしていて,本当にこの補償金制度をまた作り変えるのかというような意見があるのではないかと思うのです。だからそこは中立的に契約・技術ありきの議論はやめていただきたいと思います。

【松田委員】榊原委員の納得感という概念は,二つ意味があるのを皆さん方お気付きでしょう。社会的に,ないしは利用者がこの制度を納得しない,そのような意見が社会にある,そのような意味の納得感。これは日本だって,ヨーロッパだってあります。それは前にも発言しました。大体課金される側(がわ)が納得するというのはなかなか難しい。そのような意味の納得感。

ところが,判例を引用して,その争点が納得感があるか,ないかという意味で判例を引用するということは,どのようなことかというと,制度が社会的に承認されなくて,その制度に基づく請求権が認められないというような判例があるかないかという意味では,判例は社会的に納得感がないから制度が違法だという判例はない。このことは二つの意味のうち,後者と,前者と混同した掲載方法だということを私は言っているのです。法律家だから言っているのです。曖昧なデータで誤導だというのも,そのためです。

【土肥主査】どうぞ,丸橋委員。

【丸橋委員】松田委員の,ヨーロッパで消費者が納得感がなくて,運動が激しくなっているという証拠を出せといった意味も二重の意味もあったと思うのです。

【松田委員】私は言っていません。

【丸橋委員】そのようには聞こえませんでした。どれだけ反対があるのか,証拠を出せというようにしか私には聞こえなかったので,議事録に一言だけ残ってしまいましたけれど,そのようなことはないと私は直感的に反応したので,立法が無効だというのであれば,無効になっていないのだから,無効には今なっていないです。それは当たり前で,無効にはなっていないけれど,どれほど反対があるのかというのは,このような数で見てもおかしくないでしょう。

【松田委員】そもそも判断する内容が,制度それ自体の適法性を判示したかどうかも示さないで,それで裁判所の判断も,納得感についてはいろいろあるというような多様な判決があるかのように引用するのは間違いではないのでしょうか。

それから私は,そのような意味の証拠を出せと言ったことはありません。正確に言うと,裁判所において社会的納得感がないということで請求棄却になった例がありますか。それを出してくださいと言ったのです。

【丸橋委員】そこまで言っていないでしょう。

【松田委員】議事録を読んでください。

【土肥主査】納得感云々(うんぬん)と,裁判例の関係というのも,一つ関係があるのかなと思って伺っておりましたけれども,ここはドイツ,フランスの話でもございますので,恐らく榊原委員も,その一つ一つの判決の中身について調べられた上で御紹介されているわけではなくて,このようなものがあるという紹介にとどまっているという理解をさせていただいております。

あと,例えば議論の順番として,契約と技術による,その問題から,クリエーターに対する適切な対価還元の可能性を,まず補償金ではなくて契約と技術からというように言われるわけでありますけれども,当初申し上げたように,作っていただいた資料の7ページは,記録媒体のところでありますけれども,14ページの契約と技術による対価還元の基本的な考え方の(ケ)は,正にこれは先ほどから議論させていただいた(ア),(イ)というところの話と裏表の関係になっているのです。

つまり,小寺委員は補償金の方から議論をスタートしているのではないかというように言われますけれども,本日議論をさせていただいたのは,補償金の面からでも,それから契約と技術による方策の面からでも同じ,同時スタートになっているのです。その場合に大事なことは,ビジネスモデルの構築の可能性についてということになっていくわけでありますけれども,それは十分時間を掛けてお尋ねをしたので,そこで元に戻って対象機器の問題,さらには協力義務,こういった問題についてお尋ねをしてみたいということでございます。

補償金の支払義務者等についての,メーカーさんの協力義務の問題については,これは本委員会でも相当,当初の委員会のときから出ておりましたけれども,ここは見直さなければならないのではないかという意見も強くあったわけであります。この汎用機器の問題,それからメーカーさんの協力義務,製造業者,輸入業者の協力義務の問題。さらにはクラウドサービスの提供業者の場合の,これも新しい問題でありますけれども,ここをどうするのか,そのような点についての御意見は頂けませんか。

松田委員。

【松田委員】法令上,協力義務という義務を定めておいて,それが何らの法的効果を生じないという法制は極めてまれです。そして日本で起こった裁判においても,この協力義務があたかも自然債務であって,請求権としては肯定されないという学説や鑑定書がありましたけれども,そのことによって判示されたわけではありません。私は事件に関与していませんが,読んではいます。何かというと,機器の政令指定の点から,当該争われた機器については,それに該当しないのではないかということで漏れてしまったのです。

ですから,協力義務が,もし疑義があるのであれば,法令上定めた義務が何らの法的効果を生じるか,生じないかということの議論をすべきでありまして,それは答えとしては一義です。法律上,義務として定めたのであれば,請求権として肯定すべきだろうと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。

大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】今日は主査が各論の議論をされたいのに,なかなか入れないので,手短に申し上げます。7ページの汎用機器の点につきましては,現行のような専用機器,それも分離型に絞ってというようなことでは,実態に即していないと思います。私的複製への寄与度ないし加功度に応じて実質的に範囲を画されるべきものであります。当時は専用機器しか想定されていなかったので,そのようなものに絞ったというのはあったのかもしれませんが,前に申し上げたように,法というものは等しきものは等しく扱うということが大原則であります。専用機器はそれしか使わないのですが,汎用機器も一定の範囲では少なからず使われるということであれば,それを全部除外してしまって,専用機器だけに絞るというのは,平等にも反してくるし,実態にも合わないと考えます。汎用機器をどのような形にしていくのかはまた別の各論としてあるのですが,今のように専用機器だけに,それも更に絞るという形になるのは実態を反映していないから,やはり非常におかしいのではないかと思います。

それから,支払義務の点ですが,もともと補償金制度というのはドイツ型というか,ヨーロッパ型のモデルを使っています。法制度というのは大体一つモデルがあったら,それを参考にしながら組んでいくのが普通なので,全くゼロから始めるというのは経済学者などはお好きなのかもしれませんが,我々法律家としては,例えばドイツの場合であればローマ法を継受しているというように,ほかの法制でうまくいっているものを自国に合うようにアレンジしながら採用していくというのが普通であります。そのような観点からすると,支払義務者の点でもヨーロッパ型を参考にする必要があると思います。実際やっている人はユーザーなのかもしれませんが,受益者負担などいろいろな理由付けによって輸入業者,製造業者というフォーカルポイントというか,それで最も利益を得ている人につき,協力義務というような曖昧な形ではなくて,支払義務を明確な形で課すのが補償金制度の原型なものですから,そこを踏まえた上で議論を始める必要があると思います。

ここでは,30条1項という大前提の上で,その後支えとしての2項の話をしていますから,そこのところは個別の複製者しか支払義務者になり得ないという21条的な発想は超えた30条的な世界になっておりますので,その点に関しては出発点を明確に定めないと,議論が大混乱してくるのではないかと思っております。

【土肥主査】ほかに挙手されたのは。小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】汎用機器を含むかどうかに関してですけれども,今,大渕委員の御指摘があったように,一つの汎用機器の中でどれぐらい私的複製に関与するかという,1個の機器の中のパーセンテージという考え方も,もちろんございます。個人的には,それよりももっと影響が大きいかなと思うのは,汎用機器であるが故に私的複製に全く供されないというのも相当数あるわけで,それを制度の中でどうやってはじいていくのか,その辺りの知恵も皆さんから,権利者の方々もアイデアを出していただかないと,汎用機器を含めましょうというようには,消費者団体としては,うんとは言えないということでございます。

【土肥主査】その前に,榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】汎用機器についてではないのですけれども,受信装置に,先ほどマルチデバイスとか,シングルデバイスの話のところで,昔から合点がいかないのですが,配信業者からユーザーの受信装置に配信をされる行為というのは,よく配信側の人とかJASRACさんは,ユーザーの受信装置に事業者がコピーをしたので,30条ではないのだということをおっしゃるわけです。

ボタンを押すのがどうのこうのという話を大渕委員がおっしゃっていて,ボタンを押すのは購入しようとするユーザーはストリーミング型にしようか,ダウンロード型にしようかと迷って,私自身もよくそのようなものを利用するものですから,どちらにしようかなと思ってストリーミングにしたり,ダウンロードにしたりするわけです。ダウンロードにしたときに,自分はダウンロードしたと私自身は認識をしているのですけれど,事業者がやったから,そこが30条ではないのだというところが重なっている。事業者がやったといえば,事業者もやっているわけですけれども,ユーザーもやっているように思うので,ユーザーがやったというところを見ると,そこは30条になるのだけれども,でも契約で対価は取られているというオーバーライドというのですか,なるのではないかと思うのですけれど,そこはすっきり事業者が100%やっていて,ユーザーはやっていないのだというくくりにすることによって,30条と契約を完全に切ってしまって,本来はそのような複製の対価というのは契約でできるのではないかというJEITAとか消費者の方の意見ですけれども,それに反論するために技巧的なことをおっしゃっているような気がします。

JEITAの資料では契約のところで,ダウンロードとストリーミングの資料を引用させていただいたわけですけれど,そこでも私的複製とは書いていないですけれども,複製によって差を設けていることは,昔はダウンロードの後,ストリーミングしかなかったとおっしゃったので,その二つで比較しても分かるわけですけれども,ダウンロード型とストリーミングで差を付けるということは,それが30条なのかどうなのかというところは意見が違うと思うのですけれども,どちらの立場になっても,複製に対する対価還元をするということが,既にやっておられるわけだから,できるのではないですかと。だったら,ほかのことだって全部できるのではないですかという御主張なので,これが私的複製だったら誤りだとおっしゃったのですけれども,複製を考慮して対価を決めていって還元をしていくということ自身が,もう既にやられていて,できるのではないですかということを申し上げたかったのです。

【大渕委員】先ほど申し上げたのが分かりにくかったのかもしれないので,前にやっていた間接侵害での議論を思い出しますと,30条1項はごく普通の一般的見解としては,当該使用する私人が自分自身で,単独で,ここが重要ですけれど,自力で,1号以外はどのような機器を使ってもいいけれども,主体として複製するときだけが対象になっているので,当該私人ではなく業者が主体であれば,30条1項の権利制限は不成立となります。先ほど言われたように,ボタンを押すことをどのように考えるかは別として,完全に複製可能化状態作出行為が終わっていて,ボタン押しによってスタートさせるだけであれば,業者だけが主体になります。また,先ほど気になったのは,共同主体であれば,すなわち,業者と私人が共同で複製主体になれば,普通の見解としては30条1項から外れてしまいます。業者は一切共同行為者ではなくて,私人だけが主体のときだけが30条1項の対象となるわけであります。状況をいろいろ聞いてみなければわからないのですが,実際は共同行為のことも多いので,そうであれば30条1項の対象になりませんから,そうなると,そもそもここでの30条1項の権利制限から漏れてしまうことになります。このように,主体のところはいろいろ難しい問題が出てくると思います。

【椎名委員】小寺委員がおっしゃったことなのですが,これは何回か発言していることなのですが,支払義務者を輸入事業者とかメーカーとした場合,そうすると,そこでの返還制度というのは何かというと,恐らくは複製機能を持った機種を販売することで上げる利益に着目して,支払義務者というようなことになるのだと思いますが,当然複製機能を持っていない機器を販売したことから上がる利益は対象にならない。だけど複製機能を持った機器を販売した部分から上がる利益から還元という考え方でいうと,その部分を対象とする限り,返還制度は必要なくなると思います。

【土肥主査】録音録画補償金の実質的な負担者,受益者,これは一般ユーザー。それははっきりしているわけですけれど,支払義務者としてメーカー,それから輸入業者,これはなれないのか。これは可能なのだろうと思うのですけれども,この点,どうなのですか。どうぞ。

【松田委員】主査の今,可能なのかという意味は,一方的に可能なのかという意味であれば,それは現行法上の104条の5を,支払が最後にあるかのように書くことはできるだろうと思います。当然そうなれば,利用者,複製者と104条の5,新条文についての債務等は,多分不真正であると思いますが,連帯債務になって,理論的にはどちらに請求してもいいということになるのではないですか。

ただ,104条の5,このような補償金を権利者に支払わなければならないという規定方法をとることも,立法的に私は可能だろうと思っていますが,現行法上の協力義務だって何らかの行為をしなければならない義務はありましょう。しなければならない行為として書いてあるのです。104条の5,これは法律的に見れば,義務があることを明記しています。これに対する,先ほど言ったような裁判所の判断は,最終的にはないのです。

それで不明確であるならば,受領に協力しなければならないというのを,もう少し,そのような行為をしなければならないというような規定ぶりにすればいいのかもしれません。その程度のことではないかと思います。

もちろん,行為を求める債務になりますから,その行為をしなかったら,損害賠償請求になるのです。損害賠償請求になれば,金銭債権で請求できるのです。私はこの前の訴訟も,そのように請求すればよかったのだと思っています。

それから,104条の5は,請求権者は書いていないのです。請求権者は書いていないけれど,著作権法は請求権者を書いていないけれど請求権を認めている条文はあります。探してみますと,48条の出所明示義務です。これは著作権者がとか,著作者がとか,出版社がという請求権者を規定していませんが,そのように解釈されています。

それから,60条です。60条は,侵害となるべき行為をしてはならないという不作為債務的に書いてあります。この不作為債務の請求権者は別条で定められていると解されます。だとしたら,104条の5も,協力しなければならない義務者と,協力を求める権利者というのは,この制度を介して請求できる団体が法定されているのですから,当該その団体が請求権者になっていいのだろうと思っています。協力しなければ,損害賠償請求ですべきだろうと思っています。

【土肥主査】松田委員の解釈を伺いながら,前の訴訟の中で,もう少し頑張って耐えていればよかったのかもしれませんし,ECJでも,このような判決は出ていると私は理解をしております。つまり,実数的な負担者は一般ユーザーだけれども,製造業者,輸入業者には支払義務を,その者に対する請求権を有するという,これはECJなので,欧州の著作権法の仕組みは,そのように動いているものと私は承知をしております。具体的な判決に対してお尋ねがあれば,また調べて申しますけれども,Padawan判決でそのようなことを判示しております。

今現在,3時25分になっております。そこで,最後に今日の議論を通じて,どうしても御発言いただきたい方がおられましたら,お願いをいたします。

今子委員,お願いします。

【今子委員】ありがとうございます。二つありまして,クリエーターへの対価還元という観点から,先ほどアメリカでアーティストへの還元が非常に少なくて問題になっているというお話がありました。これは定額聞き放題のサービスなどで,アーティストへの還元がCDと比べて非常に少なくなっているという話だったと思います。これはビジネスモデルの問題だと思いますので,補償金の制度に結び付けるのではなく,契約モデルの見直しをするなどの対応が必要なのではないかと考えております。そういった問題もこの場で検討してみてはいかがでしょうか。

それから,これは繰り返しになりますが,CDからの私的複製が存在しているというのは,もちろんそのとおりなのですけれども,ストリーミングなどの契約による配信が増えて,私的複製からの視聴が非常に減っていく方向性であることは否定できないと考えています。

それをベースといたしますと,古い制度を拡張していくという議論には違和感がございます。特に音楽などの私的複製をしていない消費者に補償金を課すような方向性は,受け入れ難(がた)いものと思っております。

以上です。

【河村委員】先ほど,私的複製はおよそそれぞれ30%台で,JASRACさん,レコード協会さん,CPRAさんが分配されているところ,マルチデバイスなどの場合はどうですかという質問を最後にしたところで,お答えいただく前にさえぎられてしまったのですが,私がこれにこだわる理由は,例えばマルチデバイスというサービスは,そもそもは複製を容易にできるものであれば私的複製でいろいろなデバイスに自由にやるという,私的複製という範囲内でやっていたかもしれないことを,随分前に出たヒアリングの方が言うには,スマートフォンに入れたものをほかの自分のデバイスに私的複製の範囲で複製することは,普通の人には技術的に難しいので,そもそも権利処理して三つか四つのデバイスに入れること,つまりこれは私的複製という,補償金が必要だといわれている範囲から,契約と技術モデルに移行したすごく分かりやすい部分だと思うのですが,補償金の場合は,非常にきれいに3等分な感じで,権利者の方たちに行っているのですけれども,マルチデバイスなどの場合は,もしそれが著しく違うのであれば,そうなってくると消費者から見て,クリエーターへの対価の還元という意味において,こちらの方に将来進めばいいと言っている方向性論議において,問題点があると感じていますので,マルチデバイスの場合は契約だから,全くケース・バイ・ケースということなのですか。実演家さんの方に,補償金のように行っているのですか。

【椎名委員】行っています。

【土肥主査】もう最後にしてください。

【椎名委員】もう最後にいたします。先ほども説明したように,専属契約の中でロイヤリティーを頂くということでやっている。ただ,個々の契約は,そのアーティストのパワーにもよります。レコード会社に対して有利な立場にあるアーティストであれば,より有利な条件で契約をするでしょうし,より大きな対価を手にすると思います。

一方で,補償金の方はどうかというと,より露出の多いアーティストには,御説明したように三つのジャンルに分けて,そこで出てくるデータを基に分配しているということが,どのような結果を生んでいるかというと,そのアーティストの方々の露出の度合いに応じて,各ジャンルにおける露出の度合いに応じて対価が還元されるということで,何も違う基準を基にお金が戻っているということではないことだけ,最後に。

【河村委員】最後に。私の質問が誤解を生んでいると思うのですが,露出の度合いの話をしているのではなくて,実演家さんと,レコード協会さんとJASRACさんへの30数%ずつの分け方が私的録音補償金なのですが,つまり,ほかの契約モデルに変わっていくという場合に,露出の度合いによる個々の権利者への分配段階の話をしているのではなくて,その手前で,団体間で録音補償金のようなほぼ三等分の分け方が事実上なされているのですかということです。言っていることがおかしいですか。

【榊原委員】言っていることが分からない。

【河村委員】では,次の回で,ほかの方からもう1回聞いていただくようにします。

【土肥主査】もう時間が参りましたので,このぐらいにさせていただきたいと思います。

次回についてでございます。私的録音に関する実態調査の結果を報告いただけるようでございますので,本日皆様より頂いた御意見を踏まえて,議論の集約に向け,更に議論を深めていきたいと思います。

最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【堀内著作物流通推進室長補佐】次回の開催につきましては,既に御案内をさせていただいておりますけれども,12月20日水曜日,15時から旧庁舎の6階の講堂で開催をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

【土肥主査】それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第4回を終わらせていただきます。

本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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