文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第2回)

日時:平成30年7月13日(金)
    13:00~15:00
場所:文部科学省東館3F1特別会議室

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1-1
私的録画に係る「補償すべき範囲」について(288.7KB)
資料1-2
「著作権審議会第10小委員会(私的録音・録画関係)報告書」(平成3年12月)抜粋(143.4KB)
資料2
具体的な制度設計に向けた検討(案)(201.6KB)
参考資料
ドイツ・フランスにおける私的複製補償金制度について(197.6KB)
出席者名簿(53.7KB)

議事内容

【末吉主査】ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第2回)を開催いたします。

本日は御多忙の中,大変お暑い中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。

まず,第1回は御欠席でございましたが,今回より奥邨弘司委員,宮下令文委員に御出席を頂いておりますので,御紹介を差し上げます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきまして,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々には御入場いただいているところでありますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】ありがとうございます。

それでは,本日の議事は公開ということで傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

続きまして,事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。

【堀内著作物流通推進室室長補佐】配付資料の御説明をいたします。資料1-1といたしまして,「私的録画に係る『補償すべき範囲』について」,資料1-2といたしまして,これは平成3年の報告書でございます。「著作権審議会第10小委員会(私的録音録画関係)報告書」(平成3年12月)の抜粋でございます。資料2といたしまして,「具体的な制度設計に向けた検討(案)」でございます。参考資料といたしまして,カラーの横表の資料でございますが,「ドイツ・フランスにおける私的複製補償金制度について」と題する資料でございます。

また,資料1-2の報告書の抜粋の関係でございますけれども,全体版につきましては,机上に配付をさせていただいております黄色のファイルに全体版をとじさせていただいておりますので,必要に応じて適宜御参照いただければと存じます。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

それでは,初めに議事の進め方につきまして確認をしておきたいと思います。本日の議事は,(1)「クリエーターへの適切な対価還元について」,(2)「その他」となります。

それでは,議事に入りたいと思います。クリエーターへの適切な対価還元につきましては,まず前回に引き続きまして,私的録音に係る「補償すべき範囲」について検討を行いたいと思います。

初めに事務局より資料の御説明を頂きまして,その後意見交換を行いたいと思います。

それでは,事務局より御説明をお願いいたします。

【白鳥著作物流通推進室長】資料1-1をお手元に御準備ください。『私的録音に係る「補償すべき範囲」について』ということで,前回,第1回の本小委員会における発言をまとめたものを本日準備させていただきました。

前回の会議におきましては,録画に関して継続課題として残っている二つの論点について御議論いただきました。そちらにおける主な発言をまとめたものでございます。

1ページに一つ目の論点,タイムシフトに関しての御発言の内容をまとめております。四角の括弧内にありますところが前回の御発言の主なものということでまとめておりますので,そちらを中心に御紹介いたします。

一つ目から三つ目のところについては,タイムシフトについて,特に経済的な観点での不利益の有無といったことについて御議論を頂いたものです。

一つ目ですけれども,リアルタイムで視聴されることによる経済効果が録画での視聴によって減少するのかといった観点で議論することも一つの方向ではないかといった御意見がありました。

それに対しまして,定量的な証明は難しいが,CMとの関係で,リアルタイムで視聴されないことによる経済的不利益がないとは言い切れないという御発言もありました。

また,それに対しまして,必ずしも権利者に不利益が生じないとは言えないから補償が必要だということではなく,程度問題ではないかということでありました。

その下の発言ですけれども,30条1項と2項の関係についての御発言です。30条1項につきまして,私的複製の規定を設けておりますけれども,諸外国に比べてユーザーにとって優しい規定だということで,広く複製を認めていると。そのような中で,クリエーターの利益,そしてユーザーの利益の調和のため,従来のアナログ時代と同じような広範な私的複製を許す代わりに,補償金という形で間接的に補償するとしたのがこの30条2項の補償金制度の立法趣旨だといったことであります。

一番下のところですけれども,補償すべき範囲について議論するには,具体的な制度設計までつながった話をしなければいけないのではないかといった御発言でありました。

1枚おめくりいただきまして3ページを御覧いただきたいと思います。御議論いただいた論点のうち,二つ目ですけれども,DRMと私的録画についての内容であります。

一つ目ですけれども,総務省における情報通信審議会でどのような検討がされたのかということについての内容であります。平成19年に「ダビング10」の導入が提言をされたと。そしてまた翌年におきまして,「ダビング10」といったものの考え方と,それから,補償金,私的録音録画補償金制度の関係性といったことについて言及がございました。平成20年の中間答申におきましては,総務省における会議においては,補償金制度の在り方自体はその検討対象とはなっていないことが明記されているといったことであります。

二つ目の丸ですけれども,「ダビング10」というのが総務省さんにおける検討の中で検討され,そして導入が決定されていったわけでありますけれども,その当時は補償金制度が機能していたので,「コピーネバー」といったようなことは権利者としては言及していない。また,権利者として「ダビング10」を選択したわけではないといった御発言でありました。

その下ですけれども,DRMと私的録画,私的複製ということの関係でありますが,DRMがあるからということで直ちに私的複製の範囲外となるわけではないのではないか。そのような整理は無理があるだろうと。ただ,ライセンスがそこにおいてあるかどうかということで評価されるといった御発言,御指摘であります。

また,その下ですけれども,私的録音録画補償金制度導入時の事実関係についての御紹介でございました。録音についてからスタートしたわけですけれども,その際には孫コピーは作れないといういわゆるDRMがかかった前提での補償金制度のスタートだったといった御指摘です。

その下ですけれども,補償金制度導入時と比べて現在はコンテンツホルダーが選ぶ流通チャネルが非常に多様化しているという視点も必要なのではないかといった御発言です。

その下ですが,公共的な放送について私的複製ができるのは当然であり,また,DRMにはそもそも反対だといった御発言でございました。

その下ですけれども,映画に関わりまして,特に4K・8Kというのが本年12月から衛星基幹放送でスタートするといったことに関わりまして,特に洋画の製作配給会社は,コピーネバーの運用を強く求めている会社もあると。そして,映画関係者におきましては,コピーネバーの運用を4K・8Kにおいて可能とすることを求めているけれども,補償金制度が形骸化している状況を鑑みれば,このような求めも致し方ないのではないかということであります。

一番下ですけれども,本来は権利者にリターンがあるべきだけれども,リターンがないということをもって全部コピーをやめてしまえといったような方向に走ってしまうのは負のスパイラルになって非常に好ましくない。他方で,私的複製の権利制限規定につきましては,プライバシーの侵害もなく,家庭内には法が入らない形で自由に録画ができ,かつ権利者へのリターンがあるといった補償金制度があるわけで,その精神を生かすような形で議論を進めていく必要があるといった御発言でございました。

録画に関わりまして,前回の議論はこのようなものであります。

なお,御参考に資料1-2を準備させていただきました。特にタイムシフトに関わりまして,イギリスにおける状況についての御発言もありましたし,また,本制度が,この制度が導入された当時にそもそもどのような議論があったのか,なかったのかといったところも確認をしておくことも有益ではないかということから,そもそもこの制度の導入について議論されておりました著作権審議会第10小委員会における記述の抜粋を御準備いたしました。資料1-2を御覧ください。

まず1ページ目ですけれども,こちらは国際的動向ということで,まずドイツの状況について紹介されております。タイムシフトに関しては,報酬請求権の対象から除外する理由とはならない。ただし,報酬額の決定に当たってはタイムシフトに配慮をして減額をしているといったような状況の御紹介で,これは現在もそのような状況が変わっていないと考えられます。

アメリカの状況がその次にありますけれども,2ページの上の方に下線を引かせていただいております。最高裁の判決におきまして,録画機器によるテレビ番組の録画に関しての判決が出ております。いわゆるタイムシフトということについて,著作権法第107条の公正使用,いわゆるフェアユースというふうに言われておりますけれども,こちらに該当するということで,特に権利侵害には当たらないとする判断がありました。

なお,ここにおきますタイムシフトというのは,一旦録画したものを後で時間をずらして見るわけですけれども,その録画したものを消去することが前提になっているというものだと承知しております。

なお,下線を引いておりませんけれども,家庭内録音法というものがこの時点ではまだ議会に提案という状況でございました。翌年,これは1991と書いてありますが,92年に法案が実際に法律として制定をされまして,デジタル音声の録音装置について,SCMSと言われるいわゆる連続複製制御システムですけれども,そちらを備えないものについての製造などを禁止するとともに,その装置・媒体について補償金が課せられている状況になっております。

他方で,イギリスについては,その下ですけれども,特に下線を引いておりませんが,一つ目のパラグラフのところに「1986年には」と書いてありまして,通産省におけるホワイトペーパーの内容についての紹介がされております。そこにおきましては,録音に関しては,一定の賦課金を課することが現実的な解決策だということ。

それから,他方で,その下の方に下線を引いておりますけれども,ここで議論されています録画に関わりましては,その実態がほとんどタイムシフトであるという考え方に立って賦課金を課すことから除外をする考え方が示されています。ただ,今後の実態の推移によって,保存され,繰り返し視聴されるような態様が一般的に見られるときは,録画用機材についても賦課金の対象とすることが考えられていたということでありました。

ただ,実際のその後の法改正におきましては,録音については特に賦課金は課せられていません。録画に関しては,1988年の法改正でタイムシフトのための私的録画は適法だということで,現在に至っているということです。

ただ,ここについては,昨年度御紹介をさせていただきましたとおり,イギリスについては,日本のような広範な私的複製の権利制限規定は定められておりませんので補償金制度もない,という状況になっております。この点については,昨年の会議においても御紹介しましたとおり,近年動きが一旦ありまして,2014年に一旦私的複製規定が,限定的な範囲で認めるということで導入はされましたけれども,補償金制度を伴わないものでありました。しかし,それはEU指令に違反するというふうに判断をされ,結局,規定は無効という判決が出され,現在は結局のところ私的複製について広く認めるといった規定がないという状況です。その中で,録画に関してはタイムシフトについて権利制限の規定があるという現状になっているところです。

このような外国における動きも踏まえつつ,我が国における補償金制度をどのように考えるかということの検討が第4章以降に書かれておりまして,3ページのところにタイムシフトについての記述が若干ございます。ここにおいてはいろいろ意見があるということが紹介されています。特に実質的な不利益が,タイムシフトについては,録音と同視できないのではないかといったような意見があるとしつつ,ただ,直ちに除外するのはどうなのかといった意見もあったといったことで,それと併せまして,タイムシフトについての扱いは報酬額の決定において配慮する必要があるという指摘があるとされております。

そうしたことを踏まえつつの結論として,第5章と書いてありますが,3ページから4ページにかけて該当記述がありまして,特に4ページの上の方にありますけれども,タイムシフトに関わりましては,実質的な不利益を生じさせていないのではないかといった意見もあるので,具体的な額を定めるに当たってこれらの意見についても検討する必要があるというふうにされたということであります。このような議論が行われていたということでの御紹介も併せてさせていただきました。

説明は以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。前回の議論も踏まえますと,タイムシフトの論点も,DRMの論点も,具体的な制度設計の議論の中でこれらをどのように考えるべきかということが大切であって,その際には,現行の補償金制度,これは30条2項でございますが,この趣旨に立ち返りながら,保護と利用のバランスをどのように図るかという観点から検討すべきであるというのが全体的な御意見の流れであったように思います。

特にタイムシフトにつきましては,現行の補償金制度の導入時に既に検討されたテーマであり,また,録音についてではありますが,DRMを前提に補償金制度がスタートしたという御紹介もありました。

こうしたことも踏まえていただきまして,さらに,これらの論点について何か御意見があるようであれば,ここで伺うことといたしたいと思います。

最初に資料1-1の1番,1ページから2ページにかけてのタイムシフトの論点に関しまして御意見をお願いいたします。どうぞ。

【太佐委員】JEITAの太佐でございます。まず意見というより訂正です。私の発言部分が抜粋されているんですけれども,要約の仕方のぐあいで,やや誤解を招きかねないかなと思う部分があります。ちょっとその点だけ言及させていただければと思います。

1ページ目の四角の中の五つ目の白丸ですね。「『補償すべき範囲』についての議論をするには」,「フェーズごとの話だけでは」という部分でございますけれども,これ,「具体的な制度設計までつながった話をしなければいけないのではないか」というまとめ方をされています。しかし,実際の発言時には,議事録をチェックいただければ分かるかと思いますが,最終的にはクリエーターに適切な還元がなされているか,という,その先までつながった話をしなければいけないという趣旨の発言になっております。ですので,その点は,間を縮めた表現となった関係で意図が伝わりにくくなっているかなと思いましたので,修正させていただきたいと思います。その先まで含めた全体設計ということをしないと,断片的な議論だけでは不十分という趣旨の発言でございました。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

【世古委員】今タイムシフトにつきまして,平成3年の,資料1-2で,これまでの第10小委員会の議論を整理していただいたわけですけれども,このときに,資料1-2の3ページにもありますように,私的録画の全てがタイムシフティング的でなくて,また消去されるのではないので,直ちに補償の範囲から除外するものではないというような形で整理されているわけですけれども,平成3年の状況と更にまた今状況が異なっているのではないかということも押さえる必要があるのではないかと考えております。

と申しますのも,そもそもこの時点で,タイムシフティングというのは,放送されている放送時間帯で視聴できないといようなことがあって,後から見るために録画しといて,それを見るということを前提だったと思うんですけれども,現在では複数のチューナーを一つの機器に搭載して,同一時間帯に放送されている複数のチャンネルを同時に録音・録画することができるというような機器が増えているという状況でございますので,こういった場合について,それを果たしてタイムシフティングと呼ぶのかというようなことも考慮すべきではないかと。これは今後の具体的な制度設計を考える上でそういった点が考慮されるべきではないかと考えております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【小寺委員】今の御意見ですけれども,複数のチャンネルを同時に録画しているのがタイムシフトであるかということに関しては,私個人の意見ではタイムシフトだと考えております。その理由は,従来のアメリカのベータマックス裁判におけるその時点でのタイムシフティングというのは,目的の番組をあらかじめ探して,それを視聴すると。事前に予約をするという形でありました。それが技術の発達によって,たくさん一遍に録画しとけば,選ぶのは後でいいというふうに変わっただけでありまして,実質的にはやっていることは時間をずらしてテレビを見ているということにしかすぎませんので,複数同時に録画する,しないにかかわらず,ああいう行為をタイムシフティングと呼ぶのであろうと考えております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかに。どうぞ。

【奥邨委員】若干,どっちでもいいといえばどっちでもいいのかもしれないですが,タイムシフト,アメリカのベータマックスで問題になったときは,結局,どっちがどっちだったか忘れましたけれども,「刑事コロンボ」と,たしかもう一つも,刑事ドラマの「刑事コジャック」,二つが表裏番組だったんですね。こっちを見るときはあっちが見られない,あっちを見るときはこっちが見られない。でも,ベータマックスなら両方見られますよということだったのです。ですから,タイムシフトというのは,複数であろうが,何であろうが,時間をずらして見るということが重要ですから,別に裏番組だろうが,何だろうが構わない。複数録(と)れるかどうかということに重きを置くというんだったら,それは別かもしれませんけれども,時間をずらして見るということなので,同時に録画できる云々(うんぬん)というのは余り関係ないのではないかなと。裏番組だということであれば関係がないと私は思います,タイムシフティングという言葉の関係では。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【華頂委員】映画という作品を作って,製作をして,一次的な利用から二次的な利用までを含めて,その都度ビジネスチャンスで,収益を最大化して成立している私ども映画製作者の立場からタイムシフトの録画について少し意見を申し上げたいと思います。

結論から申し上げますと,やはり不利益をこうむっていると言わざるを得ません。仮に,これはあくまでも仮定の話なんですけれども,レコーダーがこの世に存在していなければ,テレビ番組はリアルタイムで鑑賞するしかないわけです。そんなときに,すばらしい,誰もが見たいなと思うような番組が放映されたとします。口コミとかうわさが番組のすばらしさに拍車をかけて,番組を見られなかった方々は,何とか見られないものかというふうに思うと思います。こうなったときに,コンテンツホルダーや放送事業者には二次的なビジネスチャンスが生まれるわけですね。見たいと思う方々の多くのニーズに応えまして,まずは再放送,それから見逃し配信。コピーが一切存在していないわけですから,早い段階でパッケージ化すればキラーコンテンツとして大きなビジネスにつながる可能性もあるなどなど,仮定の話で非常に恐縮ですが,このような理想的な展開も期待できるはずです。

ところが,タイムシフトと称して録画が行われれば,今申し上げた二次的な展開をするにしても,大きなビジネスにはつながらないのではないかなと。

このように,タイムシフトといえども,録画が行われれば,当然に権利者は不利益をこうむるわけです。今現在,権利者,クリエーターへの適切な対価還元がないこの状態で考えてみれば,タイムシフトと称する録画の行為でも,視聴者は利便性を享受する。それから,レコーダーを製造・販売しているメーカーは利益を享受する。対価還元がない権利者は不利益のみがあるというようなことだと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【河村委員】タイムシフトのことについて,今華頂委員がおっしゃったことは,視聴者という立場から聞くと,非常に極端な例に聞こえます。すごく前評判が高いものがあって,リアルタイムでしか見られないから,見られなかった人はお金を出して買うであろうということになっているわけですが,私は全く逆の影響を及ぼすということを指摘することができると思います。もしリアルタイムでしか見られなかったら,そのコンテンツを見る人の数は極端に減るということです。極端に減ることがコンテンツを作ったり権利を持っている人にとっていいとは思いませんし,タイムシフトであれ,見る人が増えた方が権利者には利益があるのではないでしょうか。例えば様々な広告効果も含み,例えば前作の映画を流して,次作は映画館で見てねというようなパターンもあることを考えますと,リアルタイムでしか流さないことで見る人が極端に減ることは権利者には不利益ではないでしょうか。リアルタイムでしか見られないとしたら,まずテレビというものが見離されてしまうでしょうし,そこに映画なりのコンテンツを流す効果というのがなくなれば,前評判というようなものが高くなったりとか,それでコンテンツが売れるということにつながるというのは夢物語のようにしか聞こえません。視聴する人がタイムシフトによって増えることによって損害があるという方が私には違和感を抱くものでございます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうですか。どうぞ。

【太佐委員】度々で恐縮です。今の河村委員の意見と一部重複するとは思うんですが,タイムシフトというのは,結局のところ,コンテンツへのアクセスの回数を増やすという側面もあるのだろうと思います。そういった場合に,必ずしも不利益一方だけかというと,そうとは言えない。著作権法の議論はおいておくとしても,利益/不利益という点に関しては,必ずしも不利益とは言えないのではないかと思っております。

資料1-1の1ページの四角枠の中にCMの話が出てまいりますけれども,ここは,現実に私的複製があり,不利益が生じる,ゆえに補償すべき範囲に含まれるべきだという議論になっております。しかし,ここでの不利益というのは,例えばCMが見られないということであれば,不利益の帰属主体はCMの提供者であって,コンテンツの権利者ではありません。このあたりの利益/不利益を論ずるときにどこを向いているのかということも一応きちんと見極めた上で議論する必要があるのかなと,今話を伺っていて思いました。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。どうぞ。

【岩本委員】今おっしゃったCMの視聴が影響を及ぼすという話に関しては,放送事業者のビジネススキームそのものへの影響ということであって,そもそもリアルタイムで視聴されることを前提とした広告取引が行われてきたということが現実ある中で,タイムシフトをすることでCMが見られない,飛ばされるといったようなことで,コンテンツを制作する下支えになるような,そういう制作費の目安といったことについて影響が出てくるということを言っている話であって,そういうことで言えば,それ自体が誰の不利益かというと,放送事業者の不利益ということにしかならないということはあるのかもしれません。ただし,今,デジタル放送に代わって,放送される番組が,ダウンロードサービスかのような,同じような高いクオリティの状態でハードディスクに半永久的に大量に残すことが可能になっているという状況は,この30条の逐条講義の解説等を読む限り,個人の使用のためであるからといって,家庭にビデオライブラリーを作って,テレビ番組等を録画して多数の映像を備える行為が認められるかといいますと,ベルヌ条約上の許容されるケースとしての,著作物の通常の利益を妨げず,著作者の正当な利益を不当に害しないことという条件を充足しているとは到底言えないという問題が出てまいりましょうと書かれております。

こういったことを勘案して,デジタルの時代に今私的複製の補償金に関してどういう制度を構築していくかということを考えていただければと考えております。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【椎名委員】今,他チャンネル同時録画というものをタイムシフトと考えるのか,考えないのかという議論からこの話が始まったと思うんですけれども,タイムシフトと考えるのかどうかということを議論するよりも,現行の補償金制度というものが,タイムシフトというものを除外しない一方で,ユーザーの実質的な利益の程度や実質的な不利益な程度を考慮して,報酬額の決定においてこの点をある程度配慮するという立場をとっているとするならば,一つ重複して録画できるというサービスと一気に8チャンネル録画できるサービスとは,その差異について,恐らく補償金額の決定プロセスで何らか配慮がされるべきなんだろうということが言えるんじゃないかなと思って聞いておりました。

【末吉主査】ありがとうございます。それでは,次の項目に話を進めたいと思うんですが,資料1-1の3ページ,項番の2番というところ,DRMの論点,これに関しましても御意見をお願いいたします。

【小寺委員】意見というより,確認なんですけれども,華頂委員に確認をしたい部分がございます。ここの下から2番目のポツは華頂委員の御発言だと思うんですけれども,コピーネバーの運用を求めている権利者さんもいらっしゃるということでしたが,これは今のところ,有料チャンネルの放送に関してということでよろしいでしょうか。それとも,無料放送でもそういうことを求められている方がいらっしゃるのでしょうか。

【華頂委員】有料チャンネル,有料のBS,CSの4K・8Kでコピーネバーを求めていると。無料に関しては,まだお話をしていないと思いますけれども,私の予想によれば,無料のBSの民放さんがやっているようなものがあると思うんですけれども,きっとコピーネバーを求めている洋画の配給会社はコピーワンスを求めてくると思いますね。

それはなぜかというと,無料の方がウィンドウが遅い。要するに放映が遅いので。有料は非常に早いですから,公開から,ですから,コピーネバー。公開から放映が遅い無料のBSについては,4Kですから,少なくともコピーワンスは,今の有料放送と同じような条件は求めてくると思いますけど。

【末吉主査】よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。DRM案件はほかにございますか。つけ加えるところはほとんどないという理解でいいですか。どうぞ。

【河村委員】つけ加えることはないですかと言われると,何も言わないとそのまま通り過ぎられてしまうと思うと思わず手を挙げてしまうわけでございますが,何度も申し上げているんですけれども,純粋に著作権的な見地からだけ見ると,「ダビング10」とかというと,10枚できますねとか,孫コピーはできませんよねとか,そういう条件の話になるわけですけれども,一般消費者の側(がわ)から見ると,何枚であろうと,今まで地デジが始まるまで,地上波や無料放送に入っていなかった著作権利者さんの権利を守るために施されるDRMという仕組みのために,消費者は非常に影響を受けているんですね。

しかも,そんなことは関係ないと言われるかもしれませんけれども,例えば著作権者の権利を守るために,録画を全くしない全国のテレビを見る視聴者が,その仕組みに巻き込まれた機材を買い,巻き込まれた放送を受信し,放送をエンフォースするためのスクランブルを解除しなければならずといった,それ全て著作権利者さんの権利を守るために,その利益のために行われていることです。何枚できるでしょうとか,そういうことではなくて,そもそも全く録画をしないから,損害を何も与えない人も含めて,全テレビ視聴者がそのような仕組みの中に巻き込まれているということを考えると,大きな不利益を消費者は被っていますので,不便さとか,不利益さとか,消費者にとっての損失をお金に換算することもできると思います。

ですから,消費者の代表として出ている側(がわ)から言うと,十分著作権利者さんの権利を守るため,利益を守るための仕組みのために我々は制度を受け入れているということを申し上げたいのです。もともとは制限されていなかった世界だったにもかかわらずです。それは無尽蔵にコピーができる自由な世界だったと言いたいのではありません。要らないような仕組みを押し付けられることなく放送を受信できていた世界から,それが何枚であろうと,録画を制限する仕組みを押し付けられているわけですから,その残ったところが何枚であるから,そこにまだできるから補償金ということは受け入れられないというのが消費者としての意見です。繰り返しになりますが。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

【小寺委員】DRMに関しては,2ポツのところの議論の前に,1ポツにもそれに関わる御発言があったので,そこの関連性を御指摘申し上げられればなと思うんですが,資料1-1の1ポツの四角の中の上から4ポツですね,これの中段に,従来のアナログ時代と同じような広範な私的複製を許す代わりに補償金という形でという御発言があったんですけれども,デジタル放送,特に録画に関しては,DRMがかかっておりますので,従来のアナログと同じような広範な私的複製にはなっていない状況で,プラス補償金というものになっているということですので,ここの1と2のところの部分というのは,やはり関連があるお話で,DRMと補償金とはどういう関係なのかというところはここの委員会でもまざるを得ないのかなと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【大渕主査代理】今御指摘があった1ページ目の四つ目の丸について,これは法的な話をしています。別に補償金がDRMがかかっているかどうかということに特に着目をした発言はしておりませんので,そのような趣旨で御理解ください。DRMについては,また別にDRMとして前回かなり議論があったかと思うのですが,それはライセンスを含んでいるのかという別の論点ではないかということで,先ほどの趣旨はそうだし,2番目の点はそちらの方の論点ということで分けて整理した方が議論がスムーズにいくかと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。

【椎名委員】DRM,この「ダビング10」というものが導入されるきっかけの会議に僕も参加をしていて,当時EPNということが言われていて,世代制限も個数制限もしないと。その代わりインターネットには出ないというような技術を採用してはどうかというようなことがあって,コピーワンスの改善策としてどうするかということが話されたんですけれども,最終的に「ダビング10」というところに落ち着いた経緯があったと思います。

DRM自体の考え方というのは,ユーザーを殊更制限するということよりも,複製機能が無尽蔵にできるような状態にあった場合に,実質的に私的複製と言われる程度のエリアを超えてどんどんどんどん拡散していってしまうことを外側からある程度防止するという意味合いで付け加えているわけであって,そのエリアでできる私的複製というのは全く自由なわけですよね。実際今回も私的録画の実態調査というのをやられるので,その結果を見ればいいとは思うんですけれども,前回の実態調査でも,「ダビング10」というものがある状況下で,ユーザーが行う複製って,たしか平均2回程度が一番多かったという実態調査が出ていると思います。ユーザーが行う私的複製を厳しく制限しているという解釈は当たらないんだろうなと思います。むしろ私的複製と思われる領域を超えて複製がどんどん拡散していくことを防いでいるのが,正に「ダビング10」じゃないかなと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【河村委員】「ダビング10」の説明とかがなされる場合,必ずこの議論に陥るので,今椎名委員がおっしゃったことの訂正,消費者の立場から反論させていただきます。

テレビの録画は,2枚するかどうかという人がほとんどだと思います。だから不便じゃないだろうという話ではなくて,全く逆なんです。さっき申し上げましたとおり,そういう仕組みがなければ非常にシンプルなテレビが世の中に出ることになります。スクランブルをかけることもない,解除させるためのB-CASカードなど,また今問題になっておりますACASチップなど,そういうものも要らない。全く録画しないおじいちゃん,おばあちゃんが買うテレビにもB-CASカードを差さなきゃいけなくて,311の地震のときにB-CASカードが飛び出ちゃって災害放送が見られなかった。そういうことも何も起こらない。だから,仕組みそのものが要らないんですよ。2枚しかやらない人がほとんどだとするならば,そのような制限は要らないというのが私どもの意見なんです。

それで,無制限にやってしまう人たちというのは,私的録音録画の話の範疇(はんちゅう)外の方々でございまして,そこは海賊版対策をしていただくなりしてください。それに,言わせていただければ,DRMをかけたところで,海賊版を作るような方は何らかの方法でやるんです。DRMが縛っている,その仕組みをエンフォースするため,またそれに乗っかってくるキャスとかいろんな仕組み,一緒くたにして放送事業者さんは入れ込んでいますけれども,そういうことによって,不便を強いられ,コストをかけられているのが一般消費者でございまして,2枚しかやっていないから何の不便もないんじゃなくて,2枚しかやらないから全く不必要な制度なんです。たくさんやる人がいるとしたら,その人たちは私的録音録画の範疇(はんちゅう)の人たちではありません。

もう少し言わせてください。そういうDRMがかかるようになってから,録画はとてもしにくくなりました。前回も言いましたが,昔は中高年の人でもVHSのテープに録画をしたり,好きなコンテンツを残したりということをしていましたが,今は,ハードディスクに入れるのは簡単ですけれども,そこから何かメディアに移すということは大変面倒くさく難しいことになっています。同じメーカーじゃなきゃいけなかったりとか,外付けハードディスクはそのテレビでしか再生できないとか,様々な制約がかかってきて,これらは全てテレビ番組にDRMをかけたことによる影響です。消費者が被っている不利益って本当に大きいと思っています。

ですから,そんな仕組みをやめてしまえば,もしかしてきちんとした補償金というものも議論として消費者団体は乗れると考えております。

【末吉主査】ありがとうございます。

【椎名委員】いつも河村さんとバトルになっちゃうんですけれども,そうだともう一言言いたくなるので。伝統的に補償金制度というのは,SCMS,録音においてSCMSというDRMがあることを前提にしているわけです。

それと同じ考え方に立つならば,10枚という制限は,私的なエリアをはみ出していかないための上限規定にすぎないのであって,その中で平均2枚というユーザーの複製動向から考えれば,そこをスポイルしているものではないでしょうということを申し上げたかったわけです。

SCMSと補償金制度の関係性から考えると,「ダビング10」が補償金制度というものを何らかスポイルするようなものではないと思います。

【末吉主査】華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】先ほどの河村委員の意見なんですけれども,私的録画補償金,あるいは,適切な対価還元がなされている状況であれば,初めて,もしかしたら私も同意できるかもしれないと思いました。だけど,そういうことが行われていない今現在では,コピーをフリーにしろというのはいかがなものかなと。同意できるはずがないなと思いました。

【末吉主査】どうぞ。

【大渕主査代理】DRMが必要かという話は,また別途重要な論点かと思うのですが,研究者の立場から申し上げれば,ここは,DRMがよいかどうかという話ではなくて,DRMがなされた場合に補償金をどうすべきかという話をしておりますので,これら2点を混ぜ合わせないように御注意いただきたいと思います。ここでは,著作権の立場から,DRMがあった場合にどのように補償金として扱うかという話をしているので,DRMの必要性についての議論はこの程度にして,先に進んでいただければと思っております。

【末吉主査】ありがとうございました。意見交換はこのくらいにさせていただきまして,本日も様々な御意見を頂きました。無料及び有料放送における「ダビング10」,あるいは,コピーワンスといった回数制限に関する放送の規格,あるいはその運用につきましては,総務省の審議会や民間の会合で皆様の議論の下に決定されたものと理解しております。

そのような回数制限を前提といたしまして,対価還元の在り方を検討しております本小委員会としてでありますけれども,回数制限から直ちに補償の範囲というものを一義的に決めるというような,そういう結論を出すことはやはり困難であると思われます。

また,前回の会議において,補償すべき範囲について議論をするためには,具体的な制度設計までつながった話をすべきであるという趣旨の御意見も頂いたように思います。

私的録画の実態につきましては,今後いろいろお諮りしながら,実態調査も行われる予定となってございまして,したがいまして,私的録画の補償すべき範囲の議論は,具体的な制度設計の議論の中で,私的録画の実態調査結果も必要に応じて参酌をしていただきながら適宜検討をしていくということとして,補償すべき範囲の議論は一旦ここで一区切りとしてはいかがかと思うんですが,いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】よろしゅうございますか。ありがとうございます。

それでは,具体的な制度設計の議論に入りたいと思います。昨年度の本小委員会の審議経過報告では,私的録音に係る対価還元手段につきまして,具体的な制度設計に向けた検討を深めるというふうにされておりました。初めに,事務局より資料の御説明を頂き,その後皆さんで意見交換を行いたいと思います。それでは,事務局,お願いいたします。

【白鳥著作物流通推進室長】資料2を御覧いただきたいと思います。タイトルは「具体的な制度設計に向けた検討(案)」というものでございます。昨年度の小委員会におきまして,それぞれの三つの対価還元手段について,三つの選択肢について御検討いただきました。それぞれの手段について,それぞれ課題,それから,課題に対する考え方などについて御検討いただき,それを審議経過の報告として昨年度おまとめいただいたところでございます。その中で個別の各論点についても御言及を頂いておりまして,今回のこの資料2におきましては,そちらで整理を頂いたものを,更に具体的な制度設計の議論を進めていく観点から,どの点を更に深掘りすべきかどうかといったところをまさに御検討いただきながら,必要な論点について更に御検討を進めていただければということでこの資料を御準備させていただいております。

そのような観点から,資料2を御覧いただきたいのですが,私的録音録画補償金制度というものについての見直しの考え方というところで,1ページのところに書いてあります。また,ほかの二つの手段につきましても,7ページ以下になりますけれども,代替措置についてということで,一つは契約と技術による対価還元手段,それから,一番後のページですけれども,クリエーター育成基金,それぞれの手段について,更に具体的な制度設計という観点から御議論いただくとすればこのような論点例があるのではないかというものを記載したものであります。

そこでまず,1ページから御覧いただきたいと思います。まず私的録音録画補償金制度の見直しに関わる論点として,まずは対象機器・媒体についてということでございます。マル1ですけれども,その範囲につきまして,まず資料の中で現状についての整理をさせていただいております。現在補償金制度の対象は,一部の専用機器・媒体に限定されているといったことですけれども,機器と媒体が一体型であるもの,それから,汎用機器などは対象とされていないという状況があり,このことを踏まえながら,昨年度御検討を頂きました。

下に矢印を引いておりまして,下線を引いているところですけれども,昨年度の審議経過報告におきましては,この対象機器・媒体の範囲について見直しを行う際には,私的複製の実態とともに,契約と技術による対価還元モデルの構築状況等も勘案しつつ決定する,柔軟な運用を可能とする方向での見直しを行うことが望まれるといったような考え方の提示も頂いたわけであります。

一番下のところに更なる検討課題例として書かせていただきました。これは前回の会議,それから,昨年度の会議におきましても御言及いただきました。今,スマートフォンにつきましては,無料でストリーミング配信されているコンテンツについて,画面収録をできる機能も登場しているということの御紹介がございました。今回は,対象機器・媒体の範囲の判断をするに当たりまして,このような機器についてどのように評価できるかといった論点を書かせていただいております。

2ページを御覧いただきたいと思います。対象機器・媒体の決定方法です。現状におきましては,政令で対象機器を具体的に指定するということになっておりまして,技術仕様に着目してそのような指定がされているという状況でございます。

昨年度の本小委員会におきましては,下線を引いておりますところですけれども,先ほどの実態を反映した形で,柔軟な運用を可能とする方向で見直しを行うというふうにする場合には,今申し上げた政令指定方式について抽象度を高めた規定内容とするということも考えられるとされておりました。

そこで,今回更なる検討課題例としましては,そのような実態を踏まえた柔軟な運用を可能とするには具体的にどのような決定方法が望ましいかといったところを提示させていただいております。

マル3については,補償金額の決定についてです。現状について御覧いただきますと,今は指定管理団体があらかじめ製造業者等の意見を代表すると認められるものの意見を聞いた上で,補償金の額を定めて,文化庁長官の認可を受けるというプロセスになっております。

3ページを御覧いただきますと,昨年度の検討の結果といたしましては,この決定方法につきましては,現行制度の枠組みを基本的には維持しつつ,私的録音録画補償金制度の対象とする機器等ごとに私的複製の実態等を反映して決定していくことが可能となるような工夫を講じる必要があるとされておりました。

更なる検討課題例のところですけれども,三つ記載をさせていただいております。一つ目ですけれども,先ほど出ておりました対象機器・媒体の決定方法というものと補償金額の決定,これらについては一体的に行うことが効率的かどうかといった点です。

二つ目につきましては,この補償金額等の決定におきましては,関係当事者による協議をどのように考えるかといったところであります。ただ,協議ということにつきましては,特に独占禁止法に抵触しないといったことが当然前提になってまいりますので,この辺りの関係性も意識しつつ,関係当事者による協議についての問題提起をさせていただいております。

それから,三つ目ですけれども,補償金額の算定ということでございますけれども,どのような要素を考慮すべきかということです。

その下,補償金の支払義務者についてです。これは現状のところに書いてございますけれども,今,この制度におきましては,録音・録画を行う者が支払義務を負うとともに,製造業者,輸入業者は支払の協力義務を負うという整理になっております。

これについて,昨年度の検討の結果につきましては,4ページを御覧いただきたいと思います。この位置付けの見直しについては,抜本的な見直しを行うことについて意見集約には至らなかったということで,それぞれの意見が書かれております。

他方で,引き続き協力義務を負うとした場合であっても,製造業者等の位置付け・役割をより明確にする観点から,法令上,協力すべき行為の明確化を図ることも検討すべきではないかとされております。

そこで,更なる検討課題例としまして,その位置付け・役割の明確化といった観点から,法令上協力すべき行為の明確化を図る必要があるかということと,その必要がある場合には,具体的にどのような内容とすべきかということをお示ししております。

その下ですが,(3)補償金の分配等です。これについては,5ページの方で御覧いただきます。昨年度におきまして,この観点につきましては,もともと補償金の分配の透明性・適正性についての課題が指摘をされておりましたけれども,5ページの一番上に整理されておりますとおり,本制度は,この補償金制度というのは個々の利用者の私的領域に立ち入ることの限界を前提に,広範な私的複製の許容を基礎とするということから,制度に内在する課題として個別の利用実態の把握ということには限界があるということが確認されております。ただ,その中で分配の適正性といったような観点が指摘されているわけですけれども,そこについては,利用実態についてどのように推定していくかということの合理性が重要である。また,共通目的事業との組合せも必要だといった整理も頂いておりました。

更なる検討課題例としまして,この課題に対しまして,更なる分配・支出の適切性といったところを確保するための方策は何か考えられるかといったようなところで,例えば実態調査といったことも例示として書かせていただいているわけであります。 その下ですけれども,録音と録画ということに関わりまして,現在といいますか,もともと制度としては,録音と録画と,それぞれ指定管理団体というのが,特に録画についてはかつて存在していたというところもありましたけれども,現在は録音と録画が同一の機器でできる機器も販売されているという状況に鑑みて,録画についても仮に徴収を行うというふうに整理する場合には,機器への二重請求の回避,管理費用削減の観点から,これを一つの団体とすべきかどうかといった問題提起もここで書かせていただいております。

あと,最後の論点ですけれども,共通目的事業についてです。法律上2割以内とし,政令で2割とされておりますが,いわゆる共通目的事業という著作権の保護に関する事業,それから,著作物の創作の振興・普及に資する事業に関して,徴収額の一部を支出する制度になっておりますが,これについて,昨年度の整理におきましては,選択肢の一つとして提起を頂きましたクリエーター育成基金,この提案の精神に合致させた改善ということも考え得るのではないかといったことを整理いただいております。

また,そのような観点から,5ページの下にありますけれども,運用上の工夫としまして,ユーザー,利用者の意見も取り入れた形での運用を図っていくと。それから,また2割というものについても,この上限を更に引き上げていくといったことも考えられるのではないかといったところもございました。

そこで,6ページのところですけれども,更なる検討課題例としまして,具体的な改善の,特に運用面が中心かとは思いますけれども,具体的にどのような措置を講じるべきかといったような観点,それから,2割といった割合についてもどのように考えるかということについて,課題例として提示させていただいております。

それから,7ページですけれども,代替措置ということであります。この補償金制度の代替措置の可能性が将来的にあり得るものとして,二つの手法,二つの選択肢が提起されておりました。

まずは契約と技術の対価還元手段ですけれども,真ん中のところに昨年度の整理があります。この契約と技術の対価還元手段については,様々な御議論いただきましたけれども,整理を頂きましたとおり,少なくとも当事者間で合意される範囲においては,この対価還元手法,契約と技術による対価還元手段も有効な手段であるというふうに確認をしております。

ただし,一番下のところに下線を引いておりますが,今後これが,どのような実効性ある形でモデルが構築されて,どのように有効に機能し得るのかといったことについては,推移を見守っていくことが重要であるというふうに整理をされておりました。

そこで,更なる検討課題例というところですけれども,昨年度の議論のお取りまとめは本年の3月になりますので,その後の状況なども踏まえつつ,代替措置としての契約と技術の対価還元手段というものについては,どのような実効性ある手段が具体的に想定されるか,また,いつ実現する見込みがあるかといったところがまず一つ目の問題提起であります。

二つ目ですけれども,仮にこの契約と技術によって全て複製が捕捉できる状況になる場合には,そもそも30条1項により広く私的複製,その中でも録音・録画といったものについて権利制限をする必要があるかといったところも恐らく論点になってき得るのではないかということから,30条1項との関係性についても問題提起をさせていただいております。

あと,8ページ,最後ですけれども,クリエーター育成基金についてですが,こちらについては,先ほどの補償金制度の議論で確認しておりますとおり,特に補償金制度の共通目的事業において,この精神,趣旨を生かしていくという形で改善を図っていくことが適切ではないかといった整理を頂いておりました。

そこで,更なる検討課題例といたしましては,補償金制度における改善といったこと,特にこのクリエーター育成基金の趣旨を生かす形での改善といったことを進める場合にも,なおクリエーター育成基金の実現について更に検討する必要があるか。そしてその必要がある場合には,実現可能性が高い仕組み・内容としてはどのようなものが考えられるかというふうにしております。

なお,こちらについても,特に補償金制度に関わりましては,もともとドイツからスタートした制度でもあるということ,それから,その後にフランスにおいても導入されたということで,一定程度参考になる部分もあるのではないかという観点から,本日,参考資料を準備しております。これはドイツ,フランスにおける私的複製補償金制度の内容を法文などから分かる範囲で整理をしているものでありますが,特にそれぞれの国については,欄を設けて対比できるようにしておりますけれども,上から二つ目の欄のところに対象機器・記録媒体の範囲等について記載がございます。これは必ずしも法律の文言そのものではないのですけれども,ただ,法律上の規定としては,ドイツもフランスもかなり広い形で規定がされている。私的複製を行うために利用される機器・媒体というのが補償金の対象として整理されています。

ただ,ドイツとフランスの違いとしましては,ドイツが機器と記録媒体の両方が対象になっているのに対して,フランスは記録媒体が対象になっております。

それから,具体的な対象機器について,それではどのように定めていくのか,決定していくのかというのがその下の欄になります。こちらは,製造業者等は,下の方にありますけれども,支払義務者ということでありまして,この支払義務者と権利者である著作権管理団体,いわゆる当事者同士の交渉によって決定されるといった枠組みになっております。この辺の決定がうまくいかない場合は,仲裁所で裁定がなされ,それでも決着しないものは裁判所で決着するといった流れになっております。

フランスにつきましては,純粋な当事者ということに加えて,国の代表を委員長として構成される委員会で決定されています。権利者,製造業者,消費者団体で構成される委員会において多数決で決定するといったような枠組みになっております。

それから,ドイツとフランスにおきまして,その下の欄ですけれども,報酬額の決定に当たって考慮しなければならないとされている項目が法律上整理されて,規定されております。幾つか書いてありますけれども,一言で申し上げれば,その利用の実態を踏まえて決定するといったようなことが書かれているといえます。その際には,技術的保護手段の利用の程度も考慮することが書かれております。

なお,フランスにおきましては,その判断に当たりましては,実態調査を基にするということで,実態調査については,管理機関が徴収した報酬の1%以下の額をこの資金に充てるということが規定されております。

また,NPVRという用語が出てきます。これはネットワーク上のビデオレコーダーのようなものでありまして,このNPVRで保存されたファイルについては,クラウドで保存され,どこからでもアクセスできるといういわゆるクラウド上のサービスについて,フランスにおきましては,補償金の制度の対象にしているということであります。ただ,ほかの国についてはまだ検討中のところが多いと承知しておりますし,この辺も昨年度御紹介させていただいたところであります。

支払義務者のところにつきましては,製造業者等が支払義務者ということで位置付けられている点が日本とは違うところになります。

また,この補償金制度は,ドイツもフランスも録音・録画というものに限定されておらず,私的複製が広く対象にされております。ドイツにおきましては,写真複製機運営者というふうに一応記載させていただきましたけれども,このようなものも支払義務者として位置付けがされております。

あと,共通目的基金については,フランスは25%という定めがあり,ドイツについては,パーセンテージの規定はないのですけれども,最近の法改正によって,文化振興の啓発・支援を行うということが義務付けられているようでございます。

更に御参考までですが,2ページ以下がドイツとフランスにおける対象機器・媒体,フランスにおきましては媒体について,それぞれどのようなものに幾らぐらい補償金がかけられているかということの情報を付記させていただいております。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。それでは,意見交換に移りたいと思いますが,今御説明いただいた資料2に基づいて御意見を頂きたいと思いますが,一応三つに分けさせていただきまして,1ページから3ページの中頃までの(1)番,「対象機器・記録媒体について」で一区切り,それから二つ目に3ページから始まる(2)の「補償金の支払義務者」,(3)の「補償金の分配等」,(4)の「共通目的事業」,ここまで,6ページまででございますかね,これを二つ目の区切りにしまして,「代替装置について」を三つ目の区切りにしまして,御意見を頂きたいと思います。

それでは,まず1番の私的録音録画補償金の見直し,(1)「対象機器・記録媒体について」,1ページから3ページの中ほどまでにつきまして,御意見,いかがでございましょうか。

【太佐委員】1ページ目の一つ目の論点で,更なる検討課題例として,スマートフォンにおける画面収録の件が言及されております。この件につきまして,事務局の方からJEITAさんの方で説明してもらえないかという依頼を受けておりますけれども,前回の会議後しばらくたってから依頼され,今日までに準備するのは非常に難しいということで,次回以降にもう少し詳しく内容を調べたものを発表する機会を頂ければと思っております。iPhoneだけではなくて,Android携帯ですとか,他にもございますので,全てをカバーするのは物理的に難しいですが,そのあたりも踏まえた形で御紹介できればと思っております。

その前提で,今日,全く何も言わないというのもちょっと不誠実かなと思いまして,今のところ分かっている範囲で三つほど補足をさせていただければと思っております。

1点目は,まずこういう画面収録をする機能,これは現にございますが,ただ,その実現方法に関しては,機器によって若干異なるところがあるということです。先日,これは椎名委員だったと思いますけれども,iPhoneの例を出されておりまして,2017年9月でしたか,新しいiOS11の発表に際して,OSのレベルでその機能を追加しているようです。ただ,これはオプションの機能になっており,ユーザーが意図的に設定しないとその機能は使えない形にはなっております。このようにOSレベルでやっているものもあれば,アプリのレベルで可能になっているという機器もございますということで,そのあたり,機能の実現方法に違いがございますというところが1点目でございます。

2点目に関しては,そもそもその機能を追加した目的は何かということです。これは意外に大事だと思うのですが,少なくともiOSの発表時にアップルさんが開発者向けにアナウンスされ紹介内容を拝見しますと,その機能の主な目的は,実際のiPhoneの画面操作を分かりやすく説明するために動画を撮って相手に伝えることにあると。そういった場面を実際に紹介されているというふうに聞いております。

つまり,そういったインストラクションといいますか,画面操作の例を相手に伝えやすくするというのが主目的であると説明されておりますので,必ずしも私的複製を促進するとか,そういったことを意図しているものではないということになるのではないか。そういう意味では,汎用の目的を持った機能であると考えておりますというのが2点目でございます。

3点目としては,実際,これは何でも録(と)れるわけではないということでございます。前回の会議でも,小寺委員が実際その場で操作をして御確認いただいたかと思うんですが,著作権にある程度配慮した,コンテンツのホルダーに配慮した制限というのは設けているということです。

代表例は,前回もありましたとおり,有料の動画配信サイトのものはそもそも録(と)れないようになっております。あと,例えばアプリを実際操作している画面を録(と)るということもできるのですが,アプリの側(がわ)からその動画の機能を起動させないようにするというような開発もできるようになっている。つまり,アプリのオーナー側からその辺をコントロールできるという仕組みはあるようです。このように,全くコンテンツの権利者に配慮しない形で画面収録の機能が導入されているわけではないという所感を持っておりますので,きょうのところは以上3点の御紹介とさせていただければと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。是非御紹介,後日よろしくお願いいたします。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。

【高杉委員】2ページの今の対象機器・記録媒体の決定方法について意見を申し上げたいと思いますけれども,現在,御存じのとおり,政令で個別の機器を指定する形になっておりまして,二つ問題があると思っております。一つは,政令自体が技術的仕様を長く書いておりますので,政令を見ただけだと何が対象か全く分からないというのが一つ。

それから,政令指定ということでありますので,閣議で決めるわけでございますけれども,結局,全省庁が同意しなければ追加指定がなされないと。この二つを改善しなければいけないんじゃないかと考えております。

それから,続いて補償金額の決定でありますけれども,現在は製造業者等の意見を聞いた上で,指定管理団体が文化庁長官に認可申請をし,文化庁長官が文化審議会の審議を経て決定するという枠組みになっておりますけれども,実態としては,指定管理団体と製造業者間の意見は異なりますので,そうなりますと,最初に定めた使用料規定が今日までそのまま適用されているという実態がございます。

したがって,先ほどドイツ,フランスの例の御説明がございましたけれども,補償金額の算定に当たって考慮すべき要素をあらかじめ法定するなどして,補償金の額は,私的録音に供されている割合とか,DRMの程度などを勘案して,柔軟に決定できるような仕組みに変える必要があると考えております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【椎名委員】同じ意見です。ちょうどドイツとフランスの事例を紹介いただきましたけれども,いわゆる対象機器として条文上は私的複製を行うために利用される機器及び記録媒体というふうな書きぶりで,具体的な中身については何らかの協議機関で,それこそ,DRMの影響とか,タイムシフトの評価の仕方とか,そういったことも含めて補償金額を会議体で決めていくということなんだけど,そこできちんと結論が出せる,一定の期間できちんと結論が出せることが担保されるような形で会議体に委ねるという形がよいのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございますか。この点はよろしいですか。

ありがとうございます。それでは,二つ目の区分に参りまして……。どうぞ。

【大渕主査代理】一番初めのまとまりにつきまして,少しコメントいたします。2ページのところですが,現行では,このように二つに分かれており,補償金額の決定と,それから対象機器・記録媒体の決定がばらばらになっています。この両者は非常に密接に関連しておりまして,もともと密接に関連しているものをばらばらにすること自体にかなり法的に無理がありますので,形はいろいろあり得るのですが,一体的な形で考えることが必要だと思います。太佐委員も言われたように,きちんとリターンがクリエーターのところに行くという,この目的を実現しない限りは制度としては意味をなしません。最終的には一体的に決定できて,現実にきちんとリターンがクリエーターのところに行くというところを保証しない限りは,文化審は何をやっているのかということになってしまいますので,ここのところは相互に関連しているものは一体として扱えるようなものにしていくというところを,細かい話は別として,枠組みの点としてはそこをまず押さえていくことが重要であると思っております。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにはよろしゅうございますか。どうぞ。

【龍村委員】3ページ目,補償金額の決定等の方法ですけれども,関係当事者間の協議を重視する方式というものが一つ挙げられておりまして,ドイツが現にそうなわけです。ただ,これは独禁法の問題があるわけですが,この問題は適用除外を法定すれば問題はクリアできると思います。そのような方式については,日本の現況に鑑みた場合には,当事者間協議というのはなかなか難しいのではないかと。その土壌が必ずしもない。今も高杉委員からもお話がございましたけれども,過去もそういうような経験もないということを踏まえますと,ドイツ方式は日本には果たしてどうかなというような感じを受けます。

それとドイツの場合,結局,仲裁に移り,更に訴訟に移りということで,対立を解きほぐすプロセスも複雑な状態かとお見受けしますので,むしろ参照されるべきはフランス方式で,何らかの委員会方式といいましょうか,その中に,権利者側,製造者,さらには消費者団体等も参与しているようです。日本でもそのような文化庁を含めての行政当局などの横断的な関係省庁も関与する,行政委員会の一種になるのでしょうか,そういうものが決定するようなイメージのものが考えられないか。もちろん行政行為ですので,行政争訟の手続も,一応,控えているという背景の下で,そういうようなイメージのものが一つ考えられないかと思います。

その中で,対象機器の決定も媒体の問題の決定も,あるいは料率の問題も,両者は複合的に関わってくると思いますので,全てその委員会なりで議論していくというような方式の方が文化庁長官だけに負担がかからないという意味でもよろしいのではないかという気がいたします。

もう一つは,文化庁長官が行政行為をするとしても,それに対する諮問を受けて,そのような行政委員会が諮問に答えるというスタイルももう一つ考えられると思います。いずれにしても,どちらかというと,多数関係当事者が関与し,その意見調整,集約を行うような会議体が必要なのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【奥邨委員】問題としては,後の,誰が支払うか,それから,どのように支払うかというところと関係してきますので,そちらで議論した方がいいかなとも思うんですが,論点出しということで申し上げておきますと,対象を何にするのかという議論をするときに,今は機器と媒体ということになっているわけですけれども,この制度が導入された時点の機器というのはイコールハードウェアだったわけですけれども,現状,先ほど冒頭で御紹介があったような形で,機器というのは純粋にハードウェアなのだろうかと。ハードウェアだけではなくて,先ほどiPhoneの例があったように,ソフトウェアが絡んで初めてこういうことができるということがありますので,そうすると,対象機器の中には,ハードウェアなのか,ソフトウェアなのか,ハードとソフト両方なのか,合体として見るのかというようなことは,特に,誰が支払うかとか,どういうように支払うかとの関係では出てくるかなというふうに思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかには,よろしいですか。どうぞ。

【松田委員】最初の論点のところは,結論的なことになっていくはずです。私の意見は,現行制度を実質的に動かすためにはという視点でお答えいたします。汎用機器も含め,スマートフォンも含め,対象機器とすることを考えざるを得ないと思っています。

それから,政令指定方法はなくして,法令で定め,それに該当するものについては,全て補償金の対象とするという制度にすべきだろうと思います。これは現実に,政令指定の方法において実効性がなかったことは明確だろうと思うからです。

補償金額の決定の方法については,現行制度の方法しかちょっと考えつかないです。申し訳ございません。そこまでにしておきたいと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【大渕主査代理】汎用機器の点はもう既に済んだ点だと思って意見を申し述べませんでしたが,ここは前から申し上げているとおりで,現行の制度は,等しきものは等しく扱うという法の基本原則にも反していて,要するに,同じように私的複製に寄与していながら,専用機だけが対象になって汎用機はおよそ対象にならないという,非常にバランスを失した形になっております。ここはやはりいろいろな意味で,後ほどの論点もそうですが,実体に合わせて,等しきものは等しく扱うということが実現されるような形で制度をきちんと考えていく必要があると思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【太佐委員】私も汎用機器の議論はここではしない方がいいのかなと思って控えておりましたけれども,汎用機器に課金するかという点に関しては,JEITAとしては従来より反対しております。最終的にまたこういう議論するのであれば,長くなるので,ここではあえて踏み込まないようにしたいと思っておりますけれども,やはり私的複製に全て供されるとは限らない,特に補償金の対象とするような私的録音録画に供されるとは限らない使い方も多くであるわけでございまして,その部分についての納得感のある説明がない中で,汎用機器にも課金すべきであるというのは,やはり素直には肯定し難(がた)いかなと。本日のところはこのあたりにさせていただきます。

【末吉主査】ありがとうございました。恐らく実態調査もそこら辺が見えてくるようにも思います。どうぞ。

【河村委員】御意見ないですねというところでスルーしてしまうと,賛成したと思われてしまっても困りますので。対象機器のことで,このような余り活発でないと言うとおかしいんですけれども,この議論でここが通り過ぎていくのかと思うと,非常に恐ろしく感じます。専用機器,汎用機器という問題で,汎用機器であるから入れるべきじゃないとか,専用機器じゃなきゃおかしいというような意見を言うつもりはございませんが,汎用機器で損害を与えているかどうかが問題です。録画の話はちょっと棚上げさせていただき,録音について意見を言わせてください。補償金の対象になるような録音が,例えばスマホでなされているのか。つまり,補償する程度の複製がなされているのかということです。この間の大々的な調査は,配信のダウンロードとコピーと分けていなかったんですよね。あと,マルチデバイスも混ざってしまっていました。スマホに焦点を当てると,スマホでいわゆる複製を行った音楽をそこに入れて聞いていたという割合は,明確に結果から見えなかったと思っています。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。

【椎名委員】この専用,汎用の議論は後ほどということだったので,余り蒸し返すつもりはないんですが,専用機,汎用機と分けたときに,ヨーロッパ等では汎用機ではなく多目的機器なんていう言い方をしていますけれども,そこで複製をしている実態があるから対象に含まれてきたという経緯があると思うんですね。納得性の問題をおっしゃったけど,実際にそれが複製が行われる主体になりつつある,その真ん中にすわりつつあるという実態をどうするのかという議論で進んできていると思います。それを考えれば,ここで汎用機を対象に含めないという選択は恐らくないのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

【世古委員】ちょっと違う話なんですけれども,河村委員から今お話があった,前回の実態調査で,スマートフォンに録音されるということについてあの調査では具体的に分からなかったんじゃないかと。確かに質問の形式といったもので明確にそこが分かったかなという部分ではなかなか不明な点はあるかと思います。

ただし,実態として,CDからパソコンを通じないでリッピングしてスマートフォンに録音させるという機器が現に売られています。ですので,今まではCDをリッピングするためにはパソコンが必要だったというようなことから,パソコンも持ってないような若者が増えてきているので,それに対して,借りてきた,あるいは買ってきたCDから直接通常のデバイスであるところのスマートフォンに録音できるというような転換する機器が発売されておりますので,先ほど奥邨委員の話にあったソフトウェアとかハードということだけではなくて,ソフトウェア,あるいはそのような転換するような機器といったものが今後どうするのかということも含めて,実態としてはそういった行為が行われているのは確かであると思っています。

【末吉主査】ありがとうございます。

【太佐委員】余り多くしゃべりたい訳ではないのですが,議論の流れ上,発言させていただきます。先ほどの汎用,専用というのは,また今後議論されるとは思うんですが,例えばCDに関して申し上げますと,CDの流通形態としては二つあって,購入するものとレンタルするものです。人から借りるというのは一旦おいておきますが。それぞれについて,どの程度の不利益が私的録音により生じているかは,ある程度分けて考えないといけないのかなと思います。

私自身,スマートフォンのユーザーでございますけれども,CDからそういう面倒な手数を踏んで,わざわざ音源をスマホに録音するよりは,実際はほとんど有料の音楽配信サイトで買ってきて,ダウンロードして聴いている。私自身のスマホではほとんどそういう音楽の聴き方をしていて,そういう(CDからPCを介さず直接リッピングして聴くという)使われ方をすることの方が非常に少ないようにも思います。少なくとも私の周辺では余り見ないし,聞かない。そういう一部のできる可能性があるという事実をもってすべからく汎用機のスマホに課金すべしというのは,ちょっと首をかしげてしまうというのが,正直な感想でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【高杉委員】すいません。さっき補償金額の決定のところで1点言い忘れましたので,申し添えますけれども,現在補償金の額については,定率方式,価格の何%という形になっておりますけれども,ドイツ,フランスを見てお分かりのとおり,容量に応じ定額で規定されております。機器,あるいは媒体の価格,発売当初は当然高く,だんだん下落していきますから,それに従って補償金の金額が減ってきているというのが現実であります。

したがって,このドイツ,フランスのように容量に応じて補償金額を決定すべきであろうと考えております。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【椎名委員】先ほど奥邨委員から指摘があった,ハードウェア,ソフトウェアということをどう考えるのかということに関していうと,先ほど申し上げたように,条文上は私的複製を行うために利用される機器・記録媒体というふうに書いておけば,結局ソフトウェア,ハードウェアの働きで私的複製を行うために利用される機器・媒体として機能を備えるということになろうかと思いますので,その中で,じゃあ,具体的な中身については,補償金の対象を検討していけばいいということになろうかと思います。

あともう一つの観点として,フランスで対象になっているNPVR,これはまさにクラウド上のサービスではあるかと思うんですね。クラウド上のサービスをどう評価するかというのは,もともと小委員会の中で議論してきた話で,そこをどうするのかというのは,議論半ばにあるとは思うんですけれども,そういう意味でいうと,書きぶりとしては,私的複製を行うために利用される機器・記録媒体並びにサービスというような書きぶりにもなるのかなと思って聞いておりました。

もう1点だけ。今高杉さんおっしゃった定額ということなんですが,そのこともさることながら,ユーザーの納得感ということでいうと,諸外国の例のように,金額を明示した上で,ユーザーに対して,例えば徴収するときに外税みたいな形で,明確にこの部分は補償金ですということを理解してもらった上で徴収するというような仕組みが必要なんじゃないかなと思いました。ここでの議論じゃないかもしれないですけど,そのことをちょっと申し上げておきます。

【末吉主査】ちょっと論点が広がってまいりましたので,恐縮ですけれども,3ページの真ん中の「補償金の支払義務者」,4ページの(3)「補償金の分配等」,5ページの(4)「共通目的事業」,ここまで広げさせていただいて御意見を引き続き伺いたいと思います。どうぞ。

【椎名委員】支払義務者の件について申し上げたいと思いますが,支払義務者ということでいうと,奥邨委員がおっしゃった,ハードウェアを前提としたときに,そのハードウェアを製造する者に利益が上がるだろうと。そういった観点から,ヨーロッパ等と同じように,そういった事業者さんを支払義務者にしてはどうかという意見を申し上げてきたかと思います。

その一方で,協力義務について,それを履行する上でのエンフォースメントの担保といいますか,何を協力しなければならないかということが法文上明確化されるのであれば,十分効果があるのではないかというふうな御意見もあったかと思います。その考え方もあろうかなと思って考えておりますが,仮に支払義務者をユーザーのままにした場合,より実効的な徴収というものを考えれば,従来想定していたメーカーさんとか輸入事業者というもの以外に,先ほども申し上げたインターネット上のサービス事業者の部分であるとか,あるいは,販売をして利益を上げている量販店とか,もうちょっと協力義務者の範囲が拡(ひろ)がっていく可能性があるのかなと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【太佐委員】立場上発言せざるを得ないかなと思っておりますけれども,先ほどの議論からの流れではあるかとは思いますが,ドイツ,フランスの例が世界の殊更中心であるかのような議論にはなっています。しかし,これは全世界の中で見れば非常にごく一部の事例でございますので,これらの国の例だけに依存するのはいかがなものかとは個人的には思っております。先ほどお話しされた,メーカーは利益を得ているというところでございますけれども,これは私的録画・録音を許容する機能を提供することで利益を得ているのか,それが実際に権利者の方といいますかクリエーターの方に実際損害を与えているのか,それが補償金の対象になる程度のものなのか。そういった議論がごちゃっと混ざっているように思います。

実際昨年度のアンケートの結果をどう評価するかというのは,きちんとなされているかというところ,まだちょっと疑問の部分があるんですが,あのアンケートから見えてきた事実の一つは,実際には複製数や複製の頻度というのは減っているのだ,ということだと私たちは理解しています。その中で,補償金,これは別に今の補償金の対象になっている複製が増えているか,減っているかということ自体より,複製の行為そのものが減っている中で,じゃあ,これを広げるという話をするのかというところ,非常に大きな疑問を持ってございます。

で,義務者をメーカーにするか。これは確かに集める側(がわ)からすると,楽だろうなと思うのかもしれませんが,そもそもは私的複製を行う主体は誰か,それから,利益を得る主体は誰か,そういったところを考えたときに,メーカーに義務主体を負わせるというのは,別に憲法論とか,そういうことを言うつもりは現時点ではございませんが,これこそ,学者の先生方に御意見を伺いたいところではございますけれども,そこの部分の法的な妥当性というのは必ずしも過去の議論では明確にはなっていないと理解しております。

ということで,全ての論点をたたいていくとキリがありませんので,このあたりにさせていただきたいと思います。何分,企業側の関係団体が非常に少のうございますので,何度も発言することになって恐縮ではございますが,とりあえず以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【今子委員】何度も同じことを申し上げていますが,今後配信サービスの利用が主流になっていくと考えられまして,そういうことも踏まえて,補償金制度を仮に残すとしても,それは過渡期的な措置であるという意見が,私だけではなくて,ほかにも多くあったと理解しております。制度をもし直ちに廃止しないとしても,汎用機に拡大すること,抽象度を高める規定内容とすることには到底賛成ができないと思っています。

また,過渡期的措置だということであれば,今後どのように縮小し,あるいは廃止していくのかということも併せて話ができたらと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【奥邨委員】若干先ほど申し上げたこととも重なるんですが,私自体は,誰が支払うかということとどのように支払うかということと何に対して支払うかというのはある程度ワンセットの議論であろうと思います。今朝もう1回確認してきたんですけれども,条文上,著作物の利用行為者が補償金を払うというのが,基本になっています。その例外になっているのが30条の私的録音録画補償金であり,また今度新しく新設される35条の補償金ということになって,これは両方違うということになってきます。

例えばなんですが,汎用機を除くかどうかという議論にしましても,別段複製のたびに,これ,フィジビリティがあるかどうかは横に置いてなんですが,理論的には私的複製のたびにお金をユーザーが直接払うんだということにしてしまえば,別段汎用機であろうが,専用機であろうが,行為のたびに払うのであれば構わないということになるわけです。しかし,それは少なくとも制度導入時はフィジビリティがないということで,その方法はとらなかったということで,じゃあ,どうやってとろうかという中で,とり方と集め方,負担の仕方と対象機器等がセットになって議論される。もちろん全てを一緒に議論してしまうと収拾がつかなくなるのは,それはよく分かっているんですが,ただ,行ったり来たりになるところは,私は仕方がないんだろうと思っております。

もう一つ,30条について,私も今まで不正確な発言をしたかもしれないんですが,改めて条文を見ると,30条の中で,私的録音録画補償金の根源的な本来的な支払義務者は私的録音録画を行う者なんですが,実質的な支払義務者,若しくは特例支払義務者というのは,これは購買者なんですね。録音録画者ではないんです。特例である104条の4がかかってきて,特例で購入のときに一括で請求されたら,購買者が払いなさいと書いてある。条文を見ても,購買者イコール絶対に録音録画者とは保証はされていないんです。買った機械を使って私的録音録画する場合は,私的録音録画補償金を30条2項に従って個別に払う必要はないですよという定め方になっていて,ちょっと差があるんですね。

したがって,制度の立て方としては,誰が支払うかということは,既に30条においても,多くの場合は私的録音録画する人と私的録音録画装置を買う人はほぼ一緒だろうということなんですが,ただし,必ずしも一緒かどうかは分からないという中で制度ができているのです。ずらすということは,集め方との関係,またその集まった金額が負担に耐える金額かどうかという総体の中ではあり得るんだろうと思います。

また,35条にしましても,公衆送信を行うのは,大学の教員又は学生ということになるわけですけれども,実際に今回支払うのは教育機関ということになるわけです。教員と大学との間は,手足なのか,雇用関係なのかは別ですけれども,学生と大学,学校教育機関との間は,利用主体論が立つのかどうかというのはあります。それらと比べてメーカーがどうなのか,又は,先ほど申し上げたように,誰が払うのか,販売者が払うのかもしれませんし,サービス提供者が払うのかもしれませんが,そういうことをトータルで考えていく中で,当然のようにことここはセットでなければいけない,使う人しか払えないということでもないし,一方で,それを分離しなければいけないということでもなくて,実際の払い方,集め方,そういうことをトータルで考える中で,フィジブルなものに収めていくというのが一つの方向性なんだろうと理屈の上で私は考えております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【大渕主査代理】奥邨委員が言われた内容には共感する点が非常に多いのですが,もともと補償金制度というのはドイツが起源になっていて,法制度の場合には元祖の法制度がどのような形をとっているかというのは非常に参考にする価値が高いわけですけれども,参考資料に書いていただいているとおり,ドイツでは製造業者等が支払義務者であると明示されており,ユーザー自体は支払義務者になっておりません。もともとの補償金の発想はこのような形でできているので,それが日本に導入する際に若干中途半端な形の現行法になっているのではありますが,補償金制度というのは元々がこのような基本思想でできているのではないかと私は理解しております。30条1項の前の21条的発想でやるのであれば,個別の複製は,その都度課金するとなるわけです。だから,30条1項的というよりは,その前の21条的なのですが,そのような発想でやれば,個人が当然払うとなって,それをまた協力義務ということでその趣旨がよく分からなくなっていますけれども,本来は,ドイツ法と同様であって,そのような発想ではない。補償金は,21条的でなく,30条2項の発送であります。前から申し上げているとおり,21条に対して30条1項という権利制限をする後支えとして30条2項ができていますので,そこのところは,余り21条だけにとらわれたような発想をすると全体が崩れきてしまいます。その関係では,今般できた新35条というのが大きくて,先ほども御指摘あったように,これは明らかに利用者と支払義務者が分離しています。もともと補償金というのはそのようなものなのであって,どう持っていくのが一番公平に合致するのかということが眼目なのであります。余り支払義務が個別のユーザーというところだけを出発点にすると,全てが崩れてしまいます。そもそも,私人が自由にコピーはできるが別に支払は自分でするわけではないというのがドイツ法の眼目であると思いますので,トータルに考えて,誰が複製をしたかではなくて,その複製によって誰が利益を得ているのかという発想となり,そうなると,ドイツ法のように製造業者,輸入業者云々(うんぬん)というように業者も入ってきます。このような発想でいけば公平な分担がおのずから定まってくるものと思われます。

今まで,補償金の基本思想が余り理解されないままに来ていたような気もしますが,本質に立ち返ると,今のような話になってくるのではないかと思っております。

【末吉主査】どうぞ。

【松田委員】私も結論的に同じ意見です。なぜ支払義務者の点について,現行の協力義務者が問題になったかというと,先の訴訟において,これは判決の結論には出ているわけじゃないのですが,自然債務だというふうに主張されたからです。協力義務というのは自然債務なのであって,具体的な債権的請求権は生じないのだという読み方です。そのようなことは104条の5にはないと理解しておりましたが,そういう主張が出たのです。

したがって,この協力義務は明確にすべきだと思います。少なくとも現在ある制度を実効ならしめるためには,そのような議論が出ないようにすべきだろうと思います。

したがいまして,支払義務者に,104条の5の規定されているところのものが,協力義務ではなくて支払義務者になるような規定の仕方をすべきだろうと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【太佐委員】話を伺えば伺うほど,私,補償金の話をしているのかどうかよく分からなくなってきたというのが正直なところでございます。というのは,音の世界になりますと,実際,契約と技術の世界でできていることがほとんどで,むしろそちらの方に非常に距離が近いという印象を受けています。例えば音楽をスマホで聴くというときの手段に何があるかというと,一つは当然ですけれど,有料の配信サイトから楽曲をダウンロードして聴くということです。これは実際契約し,技術的な制限=プロテクトをかけた上で,お金を払うという契約と技術の世界で動いております。この中では当然複製はございますし,マルチデバイス対応というのもございますけれども,これも含めて契約の世界で閉じている世界であろうと。この世界においては直接クリエーターの方に対価が還元されていき,補償金という間接的なクッションを経ずとも直接対価が還元されていきます。

次に,最近の動向として,ストリーミングというのがございます。これはスマホに複製すら作らずに,音楽を自由に聴くことができるということでございますけれども,これについても,誰がどの曲を聴いたというデータに基づいて,徴収された金額から実際に聞かれた部分が案分されて,補償金を介さずともクリエーターの方に直接還元されていきます。

あとはCDでございましょうか。CDに関しては,購入した者が,これもパソコン経由であれ,ちょっと特別なデバイス経由であれ,これをスマホに入れる,これはあり得るかもしれません。じゃあ,これは補償金の対象になるような私的複製なのかというと,既に対価を支払っているという点でちょっと疑問がございます。

もう1点はCDのレンタルでございましょうか。レンタルCDに関しては,実際にはレンタルショップで払って,それを実際にパソコン経由であれ,デバイス経由であれ,コピーを作ることはできます。であるとすると,ここはもしかすると,権利者の方からすると一番どうかと思われることかもしれません。であるとするならば,このようなクリエーターの方への利益還元ができていない部分についての,何らかの課金の仕組みを考えればよいのではないかと。実際に借りられているCDというのが明確に特定されるわけですから,そこから実際に対価が還元される仕組みというのが直接クリエーターへの対価還元という,もともとの小委員会の趣旨につながるのではないかというふうに感想を持っております。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございますか。どうぞ。

【小寺委員】ちょっと話が飛びますが,共通目的事業の部分のお話を少しさせていただきます。もともと共通目的事業というのを提案させていただいたのは私どもでございまして,その際には,補償金とは別の仕組みを考えておりましたが,補償金制度の中にもし組み込むのであれば,共通事業目的の方へ組み込んだらどうかというふうな話で今議論が進んでいるというところかと思います。

現状は,補償金の2割以内でというふうに共通目的事業というのは決められていて,この範囲をどのようにしようかというところが課題となっているところでございますが,そもそもの共通目的事業というものを提案した私どもの考え方としては,やはり2割は少ないだろうということであります。具体的には何割かというと,個人的には,運営に係る費用を除いた全額かと考えております。じゃあ,クリエーターの報酬はどこに行くのかということになろうかと思いますが,具体的にどの作品やどのアーティストを何回,どれだけコピーしたのかということは測定は不可能でありますから,そこから算出できるはずのどのクリエーター幾らというものもやはり算出が不透明になってしまいまして,権利者の皆さんは本当に苦労されて,それが公平になるように努力していらっしゃるのは重々承知をしておりますけれども,それでもやはり本当にそれが本当なのかというところの疑問というのは払拭し切れない部分であろうと考えます。

ですので,そこを,幾ら掘っても無理,むだなところをやめて,未来のアーティストへ向かって投資して,文化振興へ,よりよいアーティストが出る,よりよい映像作品が出るというふうに振り分けることで,現状の業界全体,そして消費者全体に利益があるはずだというふうな発想をもって共通目的事業というのを提案させていただいた。そこが根拠でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【松田委員】今の意見は,共通目的事業の割合を大きくして,その方がむしろ公平なんだという意見なんですね。それは結局,将来のクリエーターの育成基金に使うということになって,最後の問題として解決すべきなんだろうと私は思っています。8ページの問題だと思います。それであるならば,それは別に反対する理由は格別ないのですが,現段階の著作者に配分すべき利益を将来の著作者に配分する,直接配分ではありませんが,クリエーター育成資金というのはそういう性質を持っています。

ですから,これはやたらと大きくしていいというわけにいかないと私は思っています。制度それ自体が崩れます。要するに,権利者に配分するという制度じゃなくなるわけです。

したがって,共通目的事業のための一定割合というのは,大きくすればいいというわけにはなかなかいかないのではないかなと思っています。一応その点だけ。

【末吉主査】ありがとうございます。8ページの方にも議論が及びましたので,7ページ,8ページを含めまして,きょうの資料全体で御意見を最後に伺っていきたいと思いますが,どうぞ。

【椎名委員】全額と言われても,ちょっとそれはそれでどうなのかなと思いますが,以前も発言したんですが,その採否を決定する意思というのはやっぱり権利者の意思によるべきであろうかと思うんですね。そこで,例えば,じゃあ,20を30にしましょうという合意があれは30にすればいいし,80にしようという合意があるんだったら80にすればいいと思いますが,基本的に外的にそれを決めていくというよりは,権利者の合意ということがプロセスとして必要なのではないかと思います。

あと,どこまでいってもデータがないんじゃないかというお話されましたけれども,例えばインターネット上で動く音楽ファイルなんていうのは,データをとろうと思えば,別にユーザーの名前を伏したとしても,どういう曲がどういうふうに流れているかというログをとることは可能になってくるんじゃないかというようなこともありますので,全部が全部,データが,いつまでいっても,どこまでいっても抽象的なんだということではないのかなと思います。

【末吉主査】どうぞ。

【松田委員】私に対する意見でもあるので,私が続けさせていただきます。権利者が割合を納得すればいいのではないか。その限りにおいてはそのとおりです。どこで納得するかの問題だと思います。配分されるべき使用料が管理者団体に1回入って,その配分を当該団体の会員間で,自分たちに配分されるのは何%で良い,ないしは,粗いデータだけれども,配分率が定まったということであれば,それで良いというふうに納得すれば,それは団体間に支払われた後のルールで決めることはできるんだろうと思っております。そういう意味で納得してもらうのであれば,それを制度化すれば良いと思っておりました。

ただ,それを超えて,この制度自体に何%,クリエーターが何%ということになると,現在の権利者の配分のための,少し粗いルールだけれども,これで納得しようという制度にはならなくなっちゃうのです。先ほど言ったのはそういう趣旨でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【高杉委員】クリエーター育成基金については,今条文上明示されてはおりませんけれども,今の補償金というのは,購入時の一括払いの補償金ですから,将来の権利者分のお金ももらっているわけですね。将来コピーされる権利者の分も。したがって,今の共通目的基金の趣旨にクリエーター育成基金に支出することについても十分含まれると考えています。それを明らかにする意味で,条文上も明記するというのはいいと思っておりますし,現在の20%に更に一定割合上乗せするということについてはあり得ると思うんですが,全額というのは制度の趣旨からは逸脱するのじゃないかと考えます。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【上野委員】2点コメントさせていただきます。1点目は,今の共通目的事業についてでありますけれども,問いとして,現状で2割とされている支出割合を「具体的に何割にするべきか」というのがございますので,――もちろんこれは補償金制度を維持する場合ということになりますけれども――,もし対象機器等に汎用機器等も含まれるということになるとするならば,私的複製の実態の把握は現状より困難になり,また,アウトサイダーも増えることになりますから,その場合の支出割合は2割を超えるように定めることは理由のあることだと思っております。

2点目は少し戻りますけれども,支払義務者に関しまして,こちらの方は,決め方というより,その内容が問われておりますので,一言コメントさせていただきます。先ほど奥邨委員と大渕委員の方から,現行30条の私的録音録画補償金制度においても,原則として録音・録画を行う私的複製者が支払義務を負うことになっているけれども,104条の4に基づく特例としての支払においては,購入者がその支払義務を負うこととなるということが指摘されましたし,また,改正後の35条の支払義務者は,教員でも生徒でもなく,「教育機関を設置する者」というふうに規定されており,この点で行為主体と支払義務者はずれているのだから,新たな制度見直しに際しても,メーカーあるいは輸入者を支払義務者とすることに特段大きな問題はないのではないかという趣旨の御発言があったと理解しております。

ただ,まず現状の30条に関しましては,機器を購入する者と私的録音録画を行う者は,現実には大体同一であろうと考えられますし,また,改正後35条にいう教育機関における公衆送信につきましては,実際に行為をする授業を担任する者や生徒と教育機関の設置者はほぼ同視できるということで,正当化しやすかったと思うわけですけれども,私的録音録画に関して,製造者や輸入者を録音録画の主体と同視して支払義務者にするということは,それとは異なり,少しハードルが高いのかなと思いますので,この点は更なる検討が必要ではないかと思います。そこでは,現行法の私的録音録画補償金制度でも,メーカーに協力義務ではなく直接の支払義務を負わせてもよかったんだというふうに考えるかどうかがポイントになるかと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。河村委員,どうぞ。

【河村委員】まず大前提としては,何人かの委員もおっしゃいましたけれども,補償することが必要だという対象になるような複製の数というのは,複製の方法というのは,明らかに音楽に関しましても,録画,これから調査もされますけれども,減っていっている中で,わざわざ制度にてこ入れをして生き返らせたりするということ自体には大変疑問を思うところですので,そこはそもそも反対なんですが,その上で,今分配の話になっているわけですけれども,前からちょっと疑問だったことがあります。複製に対するクリエーターへの対価の還元ということで,そのコンテンツに対して権利を持っている人が複製されて損害だという話なんだと思うんですけれども,そうしましたら,そもそもコンテンツが音楽だったら,売られたときに,配信であろうと,何であろうとですけれども,番組だったら,その番組が放送されるに当たって,当初の対価の還元を受ける人,報酬を受ける人たちがいるはずで,私はその方たちがどういう構成であるのか正確には分からないんですけれども,その当初の対価還元を受ける権利者さんたちが,そこで分配される程度と複製されたときの補償の程度ってリンクされるべきなんじゃないかなと思っておりました。

補償金制度はそうなってないんじゃないかなと思っていますことが一つと,今手を挙げた大きな趣旨は,5ページ目に,共通目的事業のちょっと上の更なる検討課題例のところのチェックマーク二つ目に,録音と録画の機器が分かれていたけれども,今は同一の機器等でできるので,一緒にしたらどうかというようなことが書かれておりますけれども,まず,私,録画の補償金制度の命をもう一度吹き返らせるということについて,複製が全くないとは言いませんけれども,補償金という制度をもう1回作り上げるほどのものがないと思っているので,反対です。しかしながら,議論はされていくと思いますので,そのときには,音楽と,録画補償金の対象とするNHKとか民放のテレビ放送というのは全く違うという認識が必要です。機器が同一だからとおっしゃいますけれども,放送が対象だということになりましたら,音楽もありますし,ドラマもありますし,バラエティーもありますが,お相撲を見たり,ウィンブルドンを見たり,サッカーを見たり,私,子供がおりますけれども,スポーツとか見る方が主流ですし,オリンピックが今すごく話題になっていますし,海外のドキュメンタリーとか,報道をやっているとか,そういうことを全部考えあわせると,どういう権利を持っている人がそこに存在するのかとか,そういうことを見ていかないといけないのではないですか。ここの席に着いている権利者と呼ばれている人たちが分配を決めていいとか,そういう問題というよりは,納得感ということからいえば,きちんと透明で,このコンテンツにはどういう権利が発生しているのかとか,それを複製するとき,捕捉できないんだから,じゃあ補償はアバウトにやりましょうねと言っても,そのアバウトな分配は最初の報酬の在り方とリンクするべきだと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。

きょうはこんなところでよろしゅうございますか。すいません。ちょっと時間を過ぎておりますので,意見交換,きょうのところはこのくらいにしたいと思います。

いろいろありがとうございました。いろいろ貴重な御意見も頂いておりますので,次回には更に具体的な制度設計に向けて,更なる検討を行っていただくということにしたいと思います。

それでは,この辺で終わらせていただきまして,最後に事務局から事務連絡等ございましたらお願いいたします。

【堀内著作物流通推進室長補佐】次回の開催につきましては,改めて日程の調整をさせていただきまして,確定次第,御連絡をさせていただきます。本日はありがとうございました。

【末吉主査】それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第2回)を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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