文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第6回)

日時:平成30年12月4日(火)
14:00~16:00
場所:文部科学省東館15F特別会議室

議事

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(クリエーターへの適切な対価還元関係)(案)(2.9MB)
出席者名簿(53.3KB)

議事内容

【末吉主査】それでは,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第6回)を開催いたします。

本日は御多忙の中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々には入場していただいているところでありますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。

なお,本日のカメラ撮りにつきましては,冒頭5分程度とさせていただきますので御了承をお願いいたします。

次に,配付資料の確認をお願いいたします。

【堀内著作物流通推進室室長補佐】本日の資料は1点のみの御用意となっておりまして,資料1といたしまして,「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(クリエーターへの適切な対価還元関係)(案)」と題する資料でございます。不備等がございましたら,近くの職員まで教えていただければと存じます。以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

それでは,はじめに議事の進め方につきまして確認をしておきたいと思います。本日の議事は,1,クリエーターへの適切な対価還元について,2,その他となります。

それでは,議事に入りたいと思います。クリエーターへの適切な対価還元につきましては,平成27年度より対価還元についての現状から,具体的な制度設計に向けた検討まで,一通り検討を進めてまいりました。そこで,過去の整理も含め,4年間の状況について整理していただくよう,前回の会議において事務局に資料の準備を依頼いたしました。まず,事務局より資料について説明をお願いし,その後意見交換を行いたいと思います。

それでは,事務局よりお願いします。

【白鳥著作物流通推進室長】資料1を御覧いただきたいと思います。ただいまのお話にございましたとおり,これまでのこの小委員会における審議の状況を一通り整理したものということで,今回準備しております。

そういう意味で,資料の一番上に少し書いてございますけれども,過去の審議経過報告で整理されたものに加えまして,今年度に入ってから御審議いただいたものもございます。特に,審議の状況を踏まえて新たに追記等をさせていただいた箇所には下線を引いております。「下線箇所は,平成29年度までの審議経過報告からの主な変更点を意味します」というふうに,注意書きをさせていただいております。過去のものもございますので,また,本日は,時間の制約もございますので,この資料1につきまして,変更点である下線の箇所を中心に御説明したいと思います。

まず「はじめに」ということで,1ページ目から2ページ目にかけてでございますけれども,この私的録音録画補償金制度の見直しに関わりまして,これまでの経緯などについて記載をしております。2ページ目につきましては,特にこの小委員会において,平成27年度から御審議を頂いております各論点について,順を追って御審議を頂いているといったことについて記載をしております。

3ページ以降につきましては,前回の会議におきまして,議論の整理として御審議を頂いた項目立てに沿いまして,整理をしております。3ページの一番上にありますローマ数字のⅠですけれども,まず一つ目,この小委員会として設定を頂いた一つ目の論点,クリエーターへの対価還元についての現状ということにつきまして,特に3ページにおきましては,私的録音に関わりまして,現在の音楽コンテンツの流通に関しては,パッケージ,それから音楽配信といったものに着目して,四つの分類をしていただいたところでございます。

4ページを御覧いただきますと,私的録音に係る対価についてという項目がございます。一つ目のパラグラフのところにございますとおり,小売店,音楽配信事業者,レンタルショップ等が権利者に支払うライセンス料等に私的録音に係る対価は含められていないとして,一昨年度の審議経過報告で整理いただきました。

ただ,ここについては,本資料の原案について事前照会をさせていただいたところ,脚注2にございますように,ダウンロード型音楽配信については,私的録音に係る対価も加味してライセンス料等が支払われている場合もあるとの意見もあったという旨の追記意見を頂きましたので,それを反映しております。

また,その下のパラグラフですけれども,ダウンロードした楽曲には,DRM技術が施されていないので,利用者は自由に私的複製を行えることとなっているというふうに,これもかつて整理いただいたところでありましたけれども,併せて今回の事前照会における御意見の中で,端末によっては複製が行える場合もあるという御意見いただきましたので,そちらも反映をしております。

また,私的録画につきましては,7ページになります。こちらについても,コンテンツの流通形態に着目しまして,パッケージであったり放送であったりといったような整理を頂きました。その中で,私的録画がDRMとの関係で可能になり得るものとして,(2)のDRM技術のところにございますけれども,無料放送と有料放送が妥当するということで,無料放送についてはダビング10,有料放送についてはコピーワンスが一般に採用されているといったことについて,確認を頂きました。

10ページからが次の項目になります。補償すべき範囲ということです。一つ目のところに,補償についての基本的な考え方を整理いただいておりまして,これも基本的におととしの整理での内容をそのまま書いてあるものでございますけれども,三つ目のパラグラフの最後にありますが,補償が必要となるのは,権利制限規定により権利者に不利益が生じている場合であると考えられるとした後,その下,この点についてというパラグラフの最後の文章ですけれども,私的複製に対して権利行使が制限されていることは,権利者にとっての不利益であると法的には評価されることとなるとしています。

その上で,この不利益が補償が必要な程度に存在しているか否かという点について,平成4年におけるこの補償金制度についての制度趣旨の確認をしつつ,一番下ですけれども,「現時点においても私的録音・録画の実態があり,補償金制度を廃止するほどに必要な立法事実があるとはいえない場合」には,なお補償が必要な程度の不利益が権利者に生じていると考えられるとしております。ここは下線が引かれておりますけれども,もともとは「現時点でも社会的に大量の私的複製が行われている状況に鑑みれば」という文章がございましたが,実際にこの審議経過報告を頂いた翌年に,私的録音の実態調査を行っておりまして,そちらについての記述,そしてその評価についての記述はまた後の章で出てくるということとの関係から,このような言い回しに,御指摘を踏まえて修正をしております。

次に,そのことを踏まえて補償すべき範囲についての内容ですけれども,これもおととしの整理の中での記述を,基本的にはそのまま引いております。12ページから,特に音楽ということで,録音関係についての記述がございますけれども,13ページから個別の対象に着目して整理をしております。例えば,マル1が,複製目的に着目したものとして,プレイスシフト,バックアップ等に関しての記述がございます。

また,動画につきましては,15ページからになっております。こちらについては,16ページを御覧いただきますと,特に放送波の最初の録画と補償すべき範囲の切り分けについてということで,タイムシフトとの関係。2につきましては,DRMの有無による補償すべき範囲の切り分けでということで,特にダビング10といったようなDRMとの関係について,御審議を頂きました。

ここに下線を付しておりますのは,この部分については,今年度の本小委員会の第1回,第2回を中心に,この部分についても引き続き御審議を頂きまして,そこにおける議論をこの下線の部分で,反映を追加でさせていただいているということでございます。

それから,17ページからが三つ目の大きな論点ですけれども,対価還元の手段ということでございまして,補償金制度,それから契約と技術による対価還元,クリエーター育成基金という三つの手段について,検討を頂いたということでございます。

19ページからが,先ほど少しお話し申し上げた私的録音・録画の実態調査結果に関してのものです。こちらは昨年度における実施として,まず録音の実態調査がございました。19ページのところにその内容,データが記されておりますけれども,録音については,録音の経験者は4割というところが,3年前とほぼ変化はないということが書かれております。

また,20ページの下を御覧いただきますと,録音に使用した機器についての調査結果が出ております。パソコン,スマートフォン,ポータブルオーディオといったところも多いといった状況が,調査結果として出ていたということでございます。

それから,2次調査結果というのが21ページから続いておりますけれども,こちらは録音経験をしたという,先ほどの4割の方を対象にした調査になっております。若干脚注におきまして,私的複製との関係について追記の御意見を頂きましたので,21ページの一番下の記載や,あとは23ページの一番下の記載などについて,御意見を踏まえて反映をしております。

そのほかにつきましては,昨年度の調査結果,そのものを記載しているところでございまして,このような実態調査結果の評価については,27ページから29ページのところにかけてのところになります。これも昨年度の整理の内容そのものでございますので,特に修正等は施しておりませんが,このときの整理としましては,例えば,29ページの最後のところ,「近い将来のうちに私的録音の全体の量が確実に更に減少していくといった主張は,広い支持を得られなかった」といったような評価も,この時点で行っていただいていたところでございます。

30ページからが,録画についてでございます。こちらは今年度の調査結果ということで,全体的に下線をして追加しているところでございます。30ページの一番上を御覧いただきますと,録画の経験者は72.1%だということでございます。また,30ページの一番下の文章ですけれども,録画に使用した機器としては,ブルーレイディスクレコーダーが,4年前と同様に最も多いといった特徴がありました。

31ページの下の方から,2次調査結果となっておりまして,こちらも録画の経験者を対象にした調査になっております。一つ目の丸のところにございますけれども,1個のテレビ番組の録画データをふだん何個ぐらいコピーしたか,ダビングしたかという問いについては,1個,1回と答えた方が最も多かったという状況でございました。

また,32ページを御覧いただきますと,録画を行ったテレビ番組について,意識的に削除したかどうかという質問に対しては,意識的に削除したといった番組の割合は全体の4から5割,意識的に保存した番組というのは,全体の2から3割であったということでございます。また,ブルーレイディスクといったメディアにテレビ番組を録画した方については,自分で保存しておくためとする回答が最も多かったという状況でございます。

次に,34ページです。こちらが,いわゆるタイムシフトなどの状況についての問いになっております。後で見るためという回答が最も多かったところでありますけれども,あわせて,興味ある番組を保存するためと答えた方は,4割ぐらいということでございます。後で見るためと回答をした方が,後で実際に視聴する回数,その番組を視聴する回数としましては,平均1回が最も多く,また,1回と回答した人のうち,その番組をほぼ毎回視聴後に削除すると回答した人は,71.5%であったということでございます。

また,35ページにつきましては,一番上ですけれども,スマートフォン,タブレット端末をテレビ番組の録画に利用していると回答した人は,5.1%であったところでございます。

その録画の実態についての評価については,2-2に書かれています。35ページになりますけれども,冒頭はデジタル放送についての歴史を簡単に御紹介しております。その上で,30年度の私的録画実態調査結果については,その次のパラグラフから,先ほど御紹介した内容を確認的にここに記載をしております。録画の使用機器としては,ブルーレイディスクレコーダーが多かったということでございまして,私的録音については,パソコン,スマートフォンといったようないわゆる汎用機と目されるような機器の使用割合が高かったところですが,それと異なる特徴があるといえるのではないかということでございます。

また,その次のページにかけてですけれども,特にダビング10といったDRMとの関係で,実際どれぐらい録画をしているかといった設問については,大体1回とか1個といったような回答が多かったということから,視聴者がこのテレビ番組を録画する際に,ダビング10といったコピー回数の制限は,その制約になっているものではないということができるとしております。

また,タイムシフトの状況については,先ほどのとおりでございますけれども,これも全体の傾向としては2014年と比較して,大きな変化はないということができるということ。

それから,最後のところですけれども,録画した番組を見たことで,物品やサービスの購入に結びついたことがあるかといったことについては,一部ではそうしたものに結びついている側面も見受けられるというふうにしております。ただ,ここについては,一番下の脚注31にございますけれども,権利者には還元されていない旨の認識が示されたということで,これも御意見を頂きましたので,反映をしております。

それから,37ページですけれども,そういったことを踏まえつつ,私的録音録画補償金制度とその代替措置についてということでございまして,まずこの補償金制度については,制度に内在する課題など,従来指摘を頂いておりました。そうした意味合いの中で,補償金制度の位置付けや,またそれに代わる手段があるかといったことも含めて,三つの選択肢を念頭に,御議論を頂いてきているということでございます。

38ページの下ですけれども,特に,代替措置についてという項目の冒頭のところで,今年度の著作権分科会において,小委員会の検討について,「昨年までの検討結果を土台として,検討を前に進めるという意識で取り組んで」頂きたいこと,そして,「制度が追いついていない,つまり制度がないということが,それが録音や録画は対価なしに自由にできるということではないことをしっかり確認した上で,正しい理解普及につなげていただければ」といった御意見など,事態の早期打開を求める声が出されているといった,分科会における審議の状況の御紹介をしております。

その上で,代替手段として,この契約と技術の手法,それからクリエーター育成基金といったことについて御議論を頂きましたので,その審議の状況,これは去年の議論になりますけれども,去年の審議経過報告の中で書かれているものを,基本的にそのままここに掲載しております。

その検討の結果,43ページの下から,(3)対価還元手段の方向性ということになりますけれども,この代替措置として議論いただいた契約と技術の手法や,クリエーター育成基金については,補償金制度に完全に取ってかわるものとしての位置付けとなし得るかは,現時点では課題が残るとされています。

その上で,44ページに移っていただきまして,一番下,「とはいえ」から始まるパラグラフですけれども,補償金制度の在り方について,いずれの立場についても,私的録音の実態を踏まえるべきだという点では一致していたということでございます。そのような実態に鑑みたときに,そのパラグラフの中段ぐらいですけれども,補償金制度に代わり得る対価還元手段がない範囲においては,私的複製の実態があり,かつ現行制度を廃止するほどに必要な立法事実があると言いにくいことを踏まえれば,そのような代替措置が構築されるまでの手当てとして,引き続き補償金制度により,対価還元を模索することが現実的であるとする意見が多かったというふうに整理されておりました。

そして,ここについては,その方策として具体的にどのようなスキームがあり得るのかといったことで,更に御議論を頂いたのが,今年度の主な内容であり,それが,45ページ以下の「対価還元の手段」になります。

まず,対価還元の手段ということで,1ポツでは,当面の手当てとしての見直しについてという項目がございます。その中におきましては,特に,先ほどの意見のとおり,引き続き補償金制度により対価還元を模索する場合は,私的複製の実態の変遷に対応し得る柔軟なスキームとしていくことの提案を頂いたところでございます。

他方,その場合には,先ほどの私的複製の実態調査結果などから,いわゆる汎用機器による複製の実態も見られるということを踏まえたときに,この汎用機器について補償金の対象とすることが検討対象となると考えられます。また,その下に続く,なお書きで始まるパラグラフでございますけれども,先ほどの調査結果から,録音と録画におきましては,注目すべき点が異なるのではないかといった御指摘も頂きましたので,そのあたりのことも記載をしております。

そこで,46ページからは,特に汎用機器の扱いに関して,今年度の御議論を中心に記載をしております。46ページ,2ポツですけれども,汎用機器を補償金制度の対象とする場合の課題についてということです。特に下線を引いておりませんところは,昨年度,同じように汎用機器についての検討についても御議論を頂いておりました内容を記載しております。これにつきましては,私的複製の実態を踏まえた柔軟な運用を可能とすることにより,補償金制度で対応する場合の課題も解消するのではないかといったような御意見も頂いておりました。

他方,46ページの一番下,下線を引いてあるところからですけれども,特に今年度の議論におきましては,それが現実的かつ実効性ある対価還元手段として,どのような仕組みを導入し得るのかといった問題提起がなされました。特に汎用機器の購入者というのは,私的録音・録画を行わない可能性もあるとし,それら私的録音・録画を行わない購入者への補償金返還の実効性をいかに確保できるかといった課題について問題提起され,御議論を頂いたということでございます。

そこで,46ページから47ページにかけまして,そのあたりの課題の解決に向けた方策として,例えば補償金返還請求に関してのネットの活用といった,簡易化を図る御提案,それから業務用に購入される機器をあらかじめ補助金の制度の対象から除外していくといったような御意見や,また集合的かつ統計的に考えるというのが,本来のこの補償金制度の性格になじむということで,補償金額で調整するということの御意見も頂いたところであります。

ただ,他方で,このあたりについて御議論いただく中で,しかしながらというふうに書いてございますけれども,支払義務者について,現行制度の位置付けの変更を行わない限り,録音・録画を行わない利用者との関係では,この返還の在り方というのは課題として残るものと考えられるというふうに,審議の状況を踏まえて記載をしております。

なお,これに関しては脚注41がございまして,この支払義務や協力義務の位置付けの変更によって,このあたりの問題が解決し得るかといったところについては,両方の立場から御意見を頂いたので,そのあたりの御意見の状況について,御意見を踏まえて脚注に追記をしております。

それから,2-2ですけれども,次の論点としまして,録音・録画機能の多様な提供主体の責任についてどう考えるかということでございます。特に,汎用機器を使った録音・録画の場合には,ソフトウエア等も複合的に機能した形での録音・録画が実現する場合があるとした場合に,その様々な機能の提供主体の扱いをどう考えるかといったことについての問題提起でございます。これについてはという,二つ目のパラグラフの3行目あたりにございますけれども,いわゆる二重課金ということに関して課題があって,それを回避するためには,正確な実態の把握も必要だといったようなところについての御意見を頂いたところであります。

その下,以上のようにというところにありますけれども,課題が大きいとする御意見がある一方で,そのすぐ上にもございますけれども,著作物の固定が可能な機器等を補償金の対象とすれば,この目的は達成されるのではないかとして,必ずしも現時点で解決が不可欠な課題とはいえないのではないかという意見もあったということでございます。

なお,これに関しましては,協力義務の位置付けについて,法律上明確化する必要があるという意見もあったということの御紹介も,この箇所に併せて行っております。

続きまして,48ページです。2-3,こちらは今の論点にも連動し得る部分もございますけれども,課金対象を機器,それから記録媒体というものに限定している現状についてどう考えるかということで,特にクラウドサービスを中心に御議論いただいたところもございますけれども,この48ページの一番下にございますとおり,これも先ほどの2-2の論点と同様に,現時点で解決が不可欠な課題とは必ずしもいえないとの意見があったとしております。

また,49ページですけれども,対象機器等については,政令で指定するといった方式になっております。これについては,この「なお」と書いてあるパラグラフの中段にございますけれども,明確性,法的安定性の観点から,このような規定ぶりになっているという一方で,実際の私的複製の実態に適切に対応できていないのではないかといった指摘があることから,その調和をいかに実現すべきかといった問題提起が,書かれております。

また,指定については,技術仕様に着目した専門的な記載ぶりになっているものですから,製造業者等以外には理解できないといったようなこと,それからまた既に販売されていない機器が指定されたままであるといった課題も,御指摘を頂いたところです。

こうしたことを踏まえつつ,2-4,小括ですけれども,支払義務者の位置付けをどう考えるかということが特に重要な論点となってくるわけですけれども,これも昨年度におきまして,かなり御議論を頂いたところですが,49ページの下のところにございますけれども,意見集約には至らなかったといった状況がございました。

また,ここの位置付けの見直しをする場合には,補償金制度全体を抜本的に見直す必要が出てくるといったところが,49ページの一番下から次のページにかけまして書かれております。さらに,その見直しについては,検討に時間を要するということも考え得るところ,そうしたことが関係当事者にとって望ましいかといったところについても,疑問が呈されたということでございます。

そのような状況の中で見ますと,現時点ではその見直しについて課題が大きいと考えられる。このことを踏まえつつ,機器等の価格に補償金を上乗せ徴収する現在の補償金制度の運用を前提にして,対価還元手段を検討する場合には,いわゆる私的録音・録画の蓋然性が一般的に高くない汎用機器を補償金の対象とするということは,引き続き課題として残るということになります。

もとよりということで,継続して審議を頂いているところでございますけれども,こうしたことを踏まえつつ,現実的かつ実効性ある手段を模索するといった観点から,どのように考えるべきかということで,録音と録画に分けて今年度更に御議論いただいたというのが,51ページからのところになります。

そこで,51ページですけれども,私的録音についてです。こちらについては,本年度特に,ダウンロード型音楽配信とパッケージソフトの二つの形態に分けて,それぞれについて御審議を頂いたところでございます。3-1が,ダウンロード型音楽配信についてですけれども,こちらについては,その中段ぐらいにございますけれども,総体としても私的複製は減少していくとして,補償の必要性は乏しいとする意見がある一方で,実際に私的複製の実態がある以上は,補償が必要だという意見があったということでございます。

パッケージソフトにつきましては,この点という二つ目のパラグラフにございますけれども,CDの購入やレンタル時に,私的録音の分も含めた全ての対価を徴収するモデルを模索してはどうかとする意見も出されたところです。他方で,これに対しては,現在の私的複製の権利制限規定を前提にして,今のビジネスモデルとしては,そのような対価は含めない前提でモデルが確立して,慣行が確立しているといったことで,その転換は現実的ではないであるとか,また友人から借りたCDの場合は,そもそも対価を乗せるのは困難だといったような御意見もあったという御紹介をしております。

52ページ,他方,本小委員会ではという二つ目のパラグラフですけれども,先ほどの議論は,特に契約と技術の手法についての見直しの可否ということでの御審議でありましたけれども,ここでは,補償金制度を前提としながら,従来の補償金制度についての運用とは異なって,つまり補償金を製品価格に上乗せ徴収する従来の方式以外の在り方を模索することも考え得るのではないかといった御意見を頂いております。

具体的な手法については,お立場によって提案の内容は若干異なっておりますけれども,そのあたりの御提案の趣旨なり内容を,そちらに併せて記載しております。一つは,レンタルCDショップを協力義務者とし,同ショップでのCD貸出時に消費者から補償金を徴収する形に改めるといった御提案。もう一つは,製造業者等の協力のもと,利用者による対象機器等の購入時に私的録音・録画の意向を確認し,その意向のある購入者から,購入時に補償金を徴収するといった方法についての御提案などもございました。

それから,3-3です。これが今のことを踏まえつつ,現実的な解決策としてどう考えるか,どのようなものが考えられるかということでございます。契約と技術の手法については,先ほどのようにビジネスモデルの転換といったことも関わる中で,現実的にこの新しいモデルの構築に向けた具体的な見通しというものは,現時点では得られなかったというところが現状であると思われます。

その場合には,仮に私的録音の実態があるとしても,汎用機器を一律に補償金の対象とするということは課題が残ると考えられるわけですけれども,今の補償金制度の運用では,私的録音の蓋然性が高い機器を補償金の対象として政令で指定することが想定されております。そこで,改めてこの現在の私的録音の実態を踏まえたときに,私的録音の蓋然性の高い機器として具体的に何が該当するのかについて,確認が必要であるのではないかとしております。

また,53ページですけれども,「なお」から始まる,下から二つ目のパラグラフですけれども,先ほど出ておりましたとおり,私的録音を行うものに適切に課金するといった,新しい補償金徴収方法の在り方についての御提案もあったところでございます。

今の著作権法30条2項は,録音・録画をする方が補償金を支払う義務があるという整理になっておりますので,今後,このような提案の内容がもし実現するとすれば,30条2項が想定している補償金支払の在り方により近い対価還元の方法ともいえることから,「このため」とする最後のパラグラフですけれども,私的録音に係る対価還元手段の在り方としては,私的録音の蓋然性の高い機器への課金を行うという現行の運用を前提とした場合の対応の検討と併せて,補償金徴収方法の在り方の工夫など,多様な私的複製の実態を踏まえた適切な対価還元手段の構築に向けた検討を深める必要があると考えられるとして,小委員会として更に検討を進めるべきと考えられるポイントを明記しているというところでございます。

54ページからが,今度は私的録画に関しての記述になります。こちらについては,最初の方に出ておりました,特にDRMとの関係やタイムシフトとの関係で,中心的に議論を頂いたところでございます。

54ページの真ん中のところ,4-1というふうにございますけれども,先ほど御覧いただいた私的録画の実態調査結果から,実際の録画回数については,一,二回が多いといったような状況から,ダビング10という回数制限が,私的録画の回数を制限していると評価できる状況にはない等の状況がありました。ただ,これに対しては,特に放送における様々なコピー制御技術といったものは,そもそも不要だといったような御意見もありました。

それから,54ページの一番下ですけれども,DRMが適用されたコンテンツというのは,契約と技術によりコントロールが可能なので,補償は不要というふうに考えるという意見もあったということでございます。

55ページの方につきましては,これに対しては,コピーネバーも含めて権利者がDRMを真(しん)に選択可能になって初めて,補償の可否が議論できる環境が整うことになるというような意見,それからまた社会全体として見れば,膨大な大量のコピーが行われているということに鑑みて,補償は必要だとする意見があったといったような意見の御紹介をしております。

4-2,タイムシフト目的のところですけれども,平成3年の著作権審議会第10小委員会の報告などの御紹介をしております。こちらについては,脚注49,過去の整理との関係におきまして,そもそもタイムシフト目的の録画は補償不要との前提で,補償金の額の検討に織り込まれたとする解釈も可能ではないかという意見が出されたという意見を御提示いただいたので,それを反映しております。

他方,平成3年の報告書の後に,実際に国会で,補償金制度を導入する法改正が行われたわけですけれども,その際に,タイムシフト,そしてプレイスシフトに関わりましても,国会質疑がありましたので,そちらの状況も脚注に併せて記載しております。

また,56ページの一番上ですけれども,タイムシフトの状況についても,私的録画の実態を踏まえれば,立法事実に変化があったとしても微細な変化にすぎないとして,具体的な額において調整すべき問題ということではないかといった御意見があったところも紹介をしております。

4-3ですけれども,今のような状況も踏まえつつ,また録画の実態調査結果から見て,4年前と比べて大きな変化が見られないことが確認されたといったあたりのことを記載しております。

併せて一番下ですけれども,「上記を踏まえれば」ということで,現在の私的録画の実態等を踏まえてもなお,DRMが適用されているコンテンツであれば,補償が不要と言い得る根拠が見当たらない場合には,コンテンツの私的録画について,補償の必要性が否定されるものではないと考えられるということで,先ほどの録音における場合と同様に,特に私的録画における私的録画の蓋然性が高い機器として,具体的に何が該当するのかを確認していくことが必要と考えられるとしております。

また,タイムシフト目的の録画に関しては,先ほどの第10小委員会の報告の記載と同じ整理をここでしております。具体的には,権利者に実質的な不利益は生じさせていないのではないかとする意見については,具体的な補償金額を定めるに当たって,検討する必要があると考えられるというふうにしております。

なお,特にダビング10の関係を中心に,明示的に御議論いただいたので,本文はそのようにしておりますけれども,今回,56ページの脚注50ですけれども,御意見を頂いたので追記しております。有料放送についての御意見でございまして,有料放送については,視聴者から対価を徴収するとともに,コピーワンスを原則とした厳しい制限のもとで運用されており,契約と技術による対価還元が不可能な理由がなく,また補償の対象として検討されるべき理由もないとの意見が出されたということで,追記しております。

それから,最後の章になります,58ページです。これが対価還元の手段についての具体的な制度設計ということで,1ポツ目です。基本的な考え方ということで,先ほど御確認を頂いたような大きく二つの点について記載しております。特に二つ目のパラグラフ,「本小委員会は」というところからですけれども,先ほど出ておりましたとおり,私的録音・録画の蓋然性の高い機器ということに関わりまして,現在の実態を踏まえて確認していく必要があると考えられるとし,あわせて,補償金制度については,内在する課題などが従来指摘されてきたところでもありますので,この補償金制度の見直しを行う場合には,こうした課題にも留意した制度設計が適当だろうということでございます。

他方,その次のパラグラフにつきましては,もう一つの論点であります,新しい枠組みの構築の可能性といったことについての問題提起がここでなされておりまして,以上を踏まえて,一番下のパラグラフですけれども,現行の運用を前提とした対応の検討と併せて,補償金徴収方法の在り方の工夫など,私的複製の動向をより捉えた対価還元手段の構築に向けた検討を深める必要があるというふうにしております。

あと59ページ以下ですけれども,こちらは二つの論点のうち,一つ目の,現行の補償金制度の運用を前提として手当てを行うとした場合の補償金制度の在り方に関する記述です。この箇所については,基本的に昨年度,補償金制度の見直しを行うとした場合の方向性について御議論いただいておりました。それをベースに記述を行っておりますが,今年度の御議論を踏まえて,アップデートするべきところについては御意見を踏まえて,アップデートした内容としております。

簡単に御紹介しますと,59ページ,2-1ですけれども,補償金制度の対象範囲というところにつきましては,先ほど出ておりましたとおり,蓋然性の高い機器というのは,具体的に何が該当するのかを確認する必要があると考えられるといったことがあります。また,画面収録について,今年度御議論を頂きましたので,そのあたりについても記載をしております。

2-2につきましては,対象機器・記録媒体の決定方法ということで,政令指定方式の在り方について御意見があるということについての御紹介をしております。60ページの一番上のところにその関連で,実態を適切に反映することができる仕組みを検討していく必要があると考えられるというふうにしております。

2-3が,補償金額の決定方法ということです。こちらについては,現在文化審議会に対して指定団体の方から認可申請を頂いて,それを踏まえて金額を認可するといった仕組みになっております。こちらについても,その在り方について御意見を頂いたところでありまして,そうした意見の状況などを御紹介しております。

あわせて,今年度におきましては,補償金額の算定に当たりまして,複製の実態のほかにDRMの状況,それから価格,保存容量等が考慮要素となるだろうといった御意見も頂いておりましたので,そのような点や,ダウンロード型音楽配信については,配信契約に含まれているものである限り補償が要らないと整理したことから,この点についても考慮した上での価格決定が必要だろうということで記載しております。

あと,2-4ですけれども,支払義務者等については先ほどのとおりで,いろいろ御議論があったというところであります。

2-5については,補償金の徴収・分配ということで,特に録画について,これから徴収を再開するとした場合には,録音と録画を一つの団体で徴収するといったような在り方が望ましいのではないかといった御意見を,昨年度頂いておりましたので,そうしたあたりを記載しております。

62ページは,このこととの関連で,併せて補償金制度についての周知も必要だといったことや,補償金返還制度の運用の改善といった御提案があったことも紹介しております。

最後,63ページが共通目的事業に関わってですけれども,特にここでは,汎用機器を一律に課金するといった考え方には立っていない前提となりますので,今の補償金制度について,私的録音・録画の蓋然性の高い機器に課金するという考え方をベースにした整理ということになるとしますと,特に昨年度におきましては,この2割という上限を引き上げるといったところについても御意見も頂いておりましたけれども,今のような前提であれば,改めてこの2割という条件については維持するということが適当ではないかと。64ページに,その辺りの考え方を記載しております。

ただ,そうは言いながら,やはりクリエーター育成基金の趣旨をしっかり生かすべきだといったような御意見も併せて頂いておりましたので,運用の改善の中で,そのような点にも配慮しながら進めていく必要があるのではないかといったようなところも,この小委員会における御議論を踏まえて記載させていただいております。

少し長くなりましたけれども,説明は以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。年末に近付いてまいりましたので,本年度までの審議の状況の整理に向けて検討を進めてまいりたいと思います。

そこで,本日はただいま事務局より説明のあったこの資料1について,本小委員会における審議の状況を整理した文書として,表現ぶりを中心に御確認を頂きたいと思いますが,議論に入る前に,ただいまの事務局の説明について御質問,まず御質問から先に承りたいと思うんですが,御質問のある方はおられますか。

御質問はよろしいですか。ありがとうございます。

それでは,意見交換に移りたいと思いますが,事務局の説明にありましたとおり,下線が付された文章が本年度の審議を整理した箇所だとのことでございますので,下線部の箇所を中心に御意見を頂きたいと思います。なお,記述に対しての修正意見はできるだけ具体的にお願いをしたいと思います。

なお,本日は華頂委員と丸橋委員におかれましては,所用のため15時には退出されるという御予定と承っております。これからの時間は,各委員よりまず御意見をお伺いしたいと思いますが,その前に早く退出される両委員におかれまして,修正意見がある場合にはどの箇所についてでも,この64ページのどの箇所についてでも結構ですので,このタイミングで恐縮ですがお願いしたいと思いますが。

華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】すいません,御配慮いただきまして恐縮でございます。1点だけ意見を述べさせていただきます。

資料1のこの今日頂いた資料によりますと,56ページの一番下でございます。注釈で言うと50番ですが,ここには先ほど事務局の方からも御説明にもありましたように,コピーワンスを運用した有料放送は,補償の対象ではないというふうにおおむね記載されているわけですけれども,その上の本文にも書かれておりますように,現在の地上デジタル放送はメーカーさんと放送事業者さんとの取決めによって,当初はコピーワンスから始まったというふうに私も記憶しております。

しかしながら,ハードディスクからDVDなどの記録媒体に保存するための作業工程での不具合,これを視聴者から指摘されまして,その件に関するクレームが頻発したことから,総務省が情報通信審議会を設置して,権利者,消費者も含めた座組でその改善を検討し,なぜか結果的には,誰も望まない形のダビング10に決まったといういきさつがあるというふうに理解しております。

ということは,逆に考えてみますと,コピーワンスについても,視聴者が行う録画物の保存を十分に考慮していたということでもあります。視聴者の保存行為までをも念頭に置いていたが,コピーワンスでは保存する作業工程のふぐあいが多数指摘されたと。つまり,ダビング10は,録画物の保存に関するクレーム回避のための手段だったともいえるわけです。

このような視点から考えますと,ダビング10はもちろんコピーワンス,そしてコピーフリーは当然のように録画補償金の対象といえるのではないでしょうか。このような協議会ですから,御意見をおっしゃるのは自由ですが,仮にこの御意見が今申し上げたいきさつを御存じの方からの御発言でしたらいかがなものかと強く思いますし,そうでなくても,この50番の注釈については削除を要請いたします。

このまま記載するというのであれば,今私が申し上げましたいきさつも含めた記述で,無料放送,有料放送に関わらず,コピーワンス,ダビング10,コピーフリーは,当然に補償の対象であるとの意見も出されたというふうなことも,併記していただくことをお願いしたいということでございます。以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

丸橋委員からもございますか。

【丸橋委員】具体的な箇所についてのコメントは,短期間に途中でドラフトが変わったりしていますので,差し控えさせていただきます。今日,これから1時間ちょっとの議論の中で,どういう方向性が出るかわかりませんが,多分まとまらないと思いますので,次回までの間にまとまった書面での意見提出を考えたいと思います。単独,又はほかの委員の方と一緒にということでお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございます。終わってからまた申し上げますが,次回までちょっと間が空(あ)くものですから,書面による御意見はできるだけ早くというふうに,多分後でお願いすると思いますので,丸橋委員におかれましてもよろしくお願いいたします。

ありがとうございました。それでは,ここからは今の64ページにわたる資料1でございますけれども,四つに分けて皆様方から御意見を伺いたいと思います。まず,はじめに,と,ローマ数字Ⅰ,クリエーターへの対価還元についての現状について御意見を伺います。次に,ローマ数字Ⅱ,補償すべき範囲,その後にⅢ,対価還元の手段,そしてⅣ以降は最後にまとめてという形に,四つに区分して伺ってまいろうと思います。

まず,はじめに及びⅠ,クリエーターへの対価還元についての現状,資料1で申しますと1から9ページにつきまして,修正意見等がおありになりましたらばお願いいたします。なお,下線が付されていない文章につきましては,御指摘がある場合には,過去に整理済みであるということをどうか踏まえていただきまして,例えば明確な事実誤認があるというような訂正意見を頂きたいと思います。それでは,いかがでございましょうか。

どうぞ。

【高杉委員】すいません,3点申し上げます。まず,全体の話で二つ申し上げたいと思います。

主査からも,また事務局からも御報告があったとおり,4年間の議論のまとめというふうな理解でございますので,審議経過の報告というよりも,議論のまとめという形の整理でお願いをしたいと思っておりますし,最終ページで,少なくとも今年度までに何がまとまったのかは明記しておくべきだと考えます。

それから,2点目ですが,はじめにと,それからⅠのところについての意見ということでありますけれども,資料1につきましては,昨年度までの報告書を大分引用されているところが多うございます。昨年度までの報告書については,著作権分科会の方に報告しておりますので,その本文の修正はやはり行うべきではないと考えます。一度まとめたものについて,本文を修正することは適当ではないと思いますし,議論の経過によって変更等,あるいは追加の意見があるのであれば,脚注でその旨明示をするべきだと考えます。

それから,3点目,はじめにのところでございますけれども,補償金の総額の推移が出ておりまして,これについて非常にわかりやすい資料かとは思いますけれども,現在の私的録音・録画補償金制度導入から現在までに何が政令指定されて,それがいつ政令指定されたものかということを,一覧でこのはじめにのところに追加していただいた方がいいと考えます。以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。

どうぞ。

【河村委員】今,高杉委員がおっしゃった,以前の下線が引いていないところに関する直しの件ですが,以前まとめられた内容を引いてきているからといって,今期改めてこの場で確認されたことによって,新たに事実が確認されたとか,新たな意見でも私はよろしいと思いますが,そこを付け加えて変えたものを今期の審議経過として出すことについて,何の問題もないと思っています。

例えば意見が割れた部分について,両論併記であっても,ある意味決着がついていますねという書き方であったとして,事実が改めて確認されたとか,新たな現状が追加されたとか,年月がたって変わったことが確認されて,そこについて現時点で争いがないというものであれば,そこを直すのはおかしいという御意見には賛同できません。

【末吉主査】ありがとうございました。今の両委員の御意見ですが,ちょっとここで止めていただいて。両委員のお気持ちをできるだけ反映したドラフトにしたつもりなので,もう少し具体的に,ここをこう直せというふうに言っていただいた方がよろしいので。

【河村委員】私は特に。

【末吉主査】原則は大体,両委員もおっしゃっていることは同じだと思うので。

【高杉委員】ですから,直すなとは言っていないですよ。

【末吉主査】だから,具体的な御指摘を頂きたいと思いますので。

【高杉委員】脚注に追加で書いたらどうですかと。

【末吉主査】わかりました,わかりました。

ほかに御意見はございませんか。ここはよろしゅうございますか。

どうぞ。

【椎名委員】Ⅰに類する話かどうかはわからないんですが,全体的な印象として,毎年毎年少しずつ議論を重ねてきて,ある程度の結論を得た上で進めてきている話,例えば契約と技術による解決というのが,できるのか,できないのか,そこら辺でそれが実現するまでの間は,じゃあ補償金制度による対応が考えられるのではないか等々,段階を追って報告書を重ねてきているように思うんですね。にもかかわらず,その先にまたその契約と技術の話が蒸し返されて出てきちゃうような報告書になっているような印象がありまして,先生,具体的な場所を指摘できなくて申し訳ないんですが,そういった印象があります。

一方で,この小委員会の中で発言された内容として非常に重要なことが抜け落ちていると思うんですが,補償金制度が必要ないという立場,すなわち契約と技術で解決できたり,あるいはストリーミングの世界に移行するんだから,複製はもうなくなるのではないかというような御意見があったわけですけれども。それに対して僕らは,じゃあ30条の範囲の見直しなり縮小なりという方向に進む選択肢もあるんですかね。そうだったら,そういう議論をしましょうよということを申し上げたと思うんですね。そのことが,この報告書には,報告書と言っちゃいけない,このまとめには決定的に抜けていると思います。

誰もが望まない,そんな方向は取らないんだというのは,この会議の最初のところで確認されたことだし,そのことには,辛うじて言及があるんですが,そういった複製を伴わない世界,複製が生じない世界が来るんだという御主張に対して,じゃあそっちの方向の検討もするんですか,してみたらどうですかというようなことも申し上げたかと思うので,その部分はしっかり書いていただきたいなと思います。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

どうぞ。

【太佐委員】主査の議事の進め方に沿ってということで発言を控えておりましたが,全体の話が出ましたので,ちょっと一言。

「まとめ」として,文章を作るべしという点については,私,これは個別に事務局の方にもお伝えしましたけれども,そもそも議論がこの委員会でなされていない,あるいは議論した結果,結論が出ていないものを「まとめ」の形で書くということについては,賛同いたしかねます。そういう意味では,「審議の経過」として,現状,特に整理されていない事項について,極力,フェアな書きぶりで両論併記を望みますということをお伝えしておりますので,是非,そういう方向性で作成いただくようにお願いしたいと思います。この文書は大変な労作だと私も思っておりまして,かなり時間を取っていただき感謝しておりますが,そういう方向性という観点からの意見は個別にも申し上げていきたいなと思っておりますというところが1点です。

あと,過去の報告等で記載されている箇所は,全く修正すべきではないという点について。脚注として補足すべき等,形式面の適否はあるかなとは思うんですが,リアルなビジネスやリアルな技術というのは,日進月歩で進むものでございますので,そういった部分も一切書きかえるなというのは,ちょっと現実的ではないのかなと。書き方の問題というのはあるのかもしれませんが,全く加筆すべきではないという御意見にはやはり賛同しかねるという点は申し述べさせていただきたいと思います。

議事を無視する形ですいません。

【末吉主査】いえいえ。ちょっと範囲を広げましょうか。本当は全部と言いたいところですけれども,全部だとあれなので,今一応議論していましたけれども,ローマ数字のⅡ,補償すべき範囲というところを含めて御議論いただきたいと思うんですが,これは10ページから16ページになってございます。ほとんどの部分は過去に整理済み,したがってアンダーラインのない部分でございますけれども,動画コンテンツの論点及び意見,16ページの一部になろうかと思いますけれども,これは本年度の議論の結果を整理したものとなってございます。いかがでございましょうか。修正意見等,頂きたいと思います。

どうぞ。

【今子委員】11ページの2行目のなお書き以降のところの,サブスクリプションサービスなどの新たな音楽サービスの提供が増えているという点なんですが,10月23日にアジアインターネット日本連盟として,提出させていただいた意見書の2ページ目の第3パラグラフのところで,IFPI,すなわち国際レコード産業連盟の年次レポートで,どのようにその音楽の売上げが増えて,その中のデジタル売上げが19.1%増の94億ドルで,全体の売上げの54%となったとか,2017年にはストリーミング売上げが初めて単独でパッケージ売上げを超え,音楽産業の最も重要な収入源となっているとかということを御紹介させていただきました。新しく出てきた数字ではありますけれども,非常に重要なものだと思うので,追記をお願いできたらと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ。

【河村委員】今の同じ箇所について,過去の文章を引いている部分ではあるんですけれども,11ページの上から3行目のところで,我が国ではいまだ8割以上とあり,注記の方に行きますと,「日本のレコード産業2016」から,2015年の実績というのが引かれているんですね。で,まあ2018年も終わろうとしていて,4年前の調査と今回の調査とで比較するというような,この文章の全体がそういう事実確認から行われている中で,2015年の実績というのを「いまだ」という書き方を,この時点のこの日付を付けて出す文章について,書くのはどうなのかなと思います。そういうところが,少しこうアップデートされた書き方であるとか,これ自体を注記に持っていくというようなことが必要なんじゃないかと思います,ほかのデータの取り方から考えると。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【高杉委員】今,河村委員の方から御指摘のあったところについては,2017年の直近のデータを脚注で直していただくということについては,差し支えないと思います。結果的には,2017年も80.2%がフィジカルの方で,本文としては変わる必要はないと思っています。

【河村委員】サブスクリプションも入っているんですか。

【高杉委員】ええ,もちろんですよ。パッケージと配信の比率です。

【河村委員】配信の中にサブスクリプションが。

【高杉委員】はい,入っていますよ,もちろん。

【末吉主査】ありがとうございます。また後で,データの方は詳しく教えていただければ,多分事務局が入れてくれると思うので。

ほかにいかがでございましょうか。もう少し範囲を広げましょうか。

ありがとうございます。それでは,更に広げて,ローマ数字のⅢ,対価還元の手段,これは17ページから44ページでございます。前半部分は,過去に整理済みのアンダーラインのない部分でございますけれども,私的録画の実態,30ページから36ページ,あるいは補償金制度の代替措置に係る記述の一部,これは38ページ,39ページにつきましては,本年度の議論でアンダーラインを付してございます。修正意見等,いかがでございましょうか。

どうぞ。

【小寺委員】32ページのところを御覧ください。真ん中のあたりに丸として書いてあるところで,意識的に削除した番組の割合は全体の4から5割と,保存した番組の割合は2から3割というふうに丸めて書いてありますが,グラフの方にはしっかりと数字が出ております。この文章もそれ以降の部分については,しっかり数字の実数で書いてございますので,ここをぼかすというか,丸める必要は特にないのではないかと思いますので,ここはしっかり4割,5割ではなく,数字を書いたらいかがでしょうかという御提案です。

それからもう一点,35ページを御覧ください。ダビング10というコピー回数とその実態についての言及がございますところなんですが,ここで既に委員の方からも過去御発言があったように,これは録画可能な回数が問題ではなく,いわゆる孫コピー等ができないことにより,メディアチェンジができないことに大きな問題があるのだという御指摘が委員会の中であったと思いますので,その意見もこのあたりで追記したらどうかという御提案でございます。

それから,もう一つ同じページの先ほど申し上げた「なお」以降の過去のパラグラフ,過去1年間の録画を行ったものがというパラグラフのところでございます。こちら,メディアへ記録する経験等の数字が出ておりますが,調査の中では,新たにこの1年間で光ディスク以外の記録メディアを購入した経験があるかどうかという調査をしておりまして,これがほぼゼロという結果があったと思います。要は,録画経験はあるが,メディアは買っていないというところに関して,この委員会では余り細かくそれに対する関連性というか,評価をしていなかったんじゃないかなと思いますので,ここはその点,ここでもう一度簡単に議論するか,それともその事実を追記するかということをしていただければと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。これは,追記の方向で考えていただいていいですかね,今の点,最後の点。

【白鳥著作物流通推進室長】孫コピーの制約に関わる御意見については,その評価をこの会議で行わない場合には,脚注にて追記するということになると思います。

【末吉主査】まず追記をしていただいて,その後次回の議論をしたらどうですか。

【白鳥著作物流通推進室長】はい。

【末吉主査】ほかにいかがでしょうか。

どうぞ。

【龍村委員】若干戻りますけれども,10ページ目の補償すべき項目のところの一番下の下線の記載ですが,前からちょっと気になってはいたのですが,「補償金制度を廃止するほどに必要な立法事実があるとはいえない場合」とありますが,ここは冒頭のタイトルも,「補償すべき範囲」とあり,それについて議論しているわけで,補償金制度の廃止論というのは,フォーカスされて議論されたというわけではないのではないかと思うのですね。その意味で,補償金制度の範囲を拡大するほどにという程度に収めた方が,据わりがいいのではないかというように感じたのですが。いかがでしょうか。

【末吉主査】10ページの一番下のところですね。

【龍村委員】はい。

【末吉主査】だと思います。ここは何か事務局からありますか。

【白鳥著作物流通推進室長】私的録音の実態調査結果に関する評価に関する記述は,後ろの方に出てまいります。29ページあたりです。評価自体は27ページから続いているのですけれども,御指摘の用語としては29ページの一番上のパラグラフにございます。私的複製の量との関係について御意見を頂く中で,現行の補償金制度を廃止するほどに必要な立法事実があるとはいえないといった御意見を頂いておりましたので,そうしたことを意識しながら,文章を整理させていただいたのですけれども。もちろん,案としてお示しした限りのものですので,適切な表現ぶりが他にあるということでありましたら,そのことについて御審議いただいて,御確認を頂ければ有り難いと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

どうぞ。

【太佐委員】今のところの廃止することに必要な立法事実が,というところに関して,私,昨年度は委員ではなかったのですが,JEITAとして廃止論的な発言はしていたかと思うので,それを踏まえるのであれば,決しておかしい表記ではないのかなと考えます。むしろ,拡大する根拠もないよねというような意見も含めて出していたと私は記憶しております。修正するにせよ,維持するにせよ,そのあたりも含めた評価を頂ければと思っております。すいません,関連事項で。

【松田委員】すいません。確認させてください。

【末吉主査】はい,どうぞ。

【松田委員】今の10ページのアンダーラインを引いたところは,昨年度の3月の報告書のどこかの一部にあったと思っているんですけれども,違いますでしょうかね。すいません,私も探しているんですけれども。

少なくとも,3月での段階でのまとめは,立法事実としては廃止するところの状況ではないという結論には至ったと考えております。そういう趣旨だろうと思いますが。だから,立法事実があるとはいえない場合にはという言い方じゃなくて,立法事実がないというふうに言って,その場合に不利益が,権利者に不利益が生じているというふうに言い切ったらいいのではないでしょうか。3月の報告書を踏まえれば,ごめんなさい,審議の経過等についてを踏まえればであります。

【末吉主査】どうぞ。

【白鳥著作物流通推進室長】先ほど申し上げたのですけれども,少しわかりにくかったのであれば申し訳ありません。この27ページから29ページにかけての文章については,また,44ページにも関連の記述がありますが,これまでの審議経過報告から特に追加をした箇所はございません。先ほどのページで申し上げれば,29ページの一番上のところに,「したがって」というパラグラフがございますけれども,そこに先ほど御紹介をしたというか,松田委員から今お話を頂いた「現行の補償金制度を廃止するほどに必要な立法事実があるとはいえないとする意見があった」といったくだりがありましたので,その表現を意識して,先ほどの10ページにおいて記載をしているということでございます。

なお,一応御参考までですけれども,昨年度における審議経過報告の本体については,机上資料の冊子の一番上にございます。関連記述については,そちらの一番上にあります審議経過等について,平成30年3月5日とある報告書の15ページ目,上から2行目のところに「したがって」ということで,同じ文章が書かれてございますので,併せて御確認を頂ければ有り難いと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

はい,どうぞ。

【椎名委員】ちょっと細かい話,3ページなんですけれども,DRM技術に関して記述しているところで,基本的にCDにより楽曲を入手するパッケージ販売やパッケージレンタルについては,DRMがかかっていないので複製できると。ダウンロード型音楽配信についても,基本的に現在の状況としてはかかっていないということがあって,追記されている端末によっては複製ができない場合もあるということがあり,もう一か所ぐらい同じことが出てくるんですが,御参考までに,どういったことを指しているのかを御説明いただけるでしょうか。

【末吉主査】いいですか。

【白鳥著作物流通推進室長】これは意見として頂いたものを反映したものですので,意見を提出された委員の方から御説明を頂ければ有り難いと思っております。御意見は,複数の委員から頂いておりました。この記述が不適切であるということであれば削除いたします。

【末吉主査】いかがですか。

【河村委員】すいません,よろしいですか。

【末吉主査】どうぞ。

【河村委員】私だけじゃなくて,この箇所にはほかの委員も意見を出しているようですが,私が出した意見といいますかコメントは,配信についてはDRMがかかっていないという記述が繰り返し出てくるので,本当に一律に音楽配信がそうなっているのか御確認くださいというものです。確認ができたのだと理解しておりますが。具体的なところを,どなたかがおっしゃっていただけると。

【末吉主査】どなたか御意見ございますか。

どうぞ。

【今子委員】サービスによっては,DRMがかかっていて,そのサービスの外に音楽が持ち出せないものと,かかっていないものと両方あるというようなお話をさせていただきました。

【末吉主査】はい,椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】今おっしゃったのは,サービスによってはということですよね。端末によっては,複製できない場合もあると断言しているんですけれども。

【今子委員】あ,そうです,はい。

【椎名委員】だから,サービスによっては,端末によって複製できない場合もあると。

【今子委員】違います。

【末吉主査】どうぞ。

【今子委員】サービスによっては,特定の端末しか使えないようなものがありまして,特定の端末以外は持ち出せないようなものもありますということです。

【椎名委員】例えば?

【今子委員】例えば,アップルさんのサービスとかですね,iPhoneとかですね。

【椎名委員】もちろん,デッドエンドになっていて,その端末から外に出せないという意味ですよね。iPhoneから外に,例えばUSBをつないで,あるいはSDカードをつないで出すことはできないという意味でということなんですかね。

【今子委員】だから,そのサービスにつなげている端末からは出せないという意味です。

【椎名委員】それは,そのDRMとの関係というよりも,その端末の構造上の問題ではないですか。

【今子委員】端末の構造上の問題というより,そのサービスでDRMを活用しているから,ということになります。

【椎名委員】今例示されたのはiPhoneなんですけれども,iPhoneは基本的にSDカードとかというものを差したりできませんから,物理的にそこから動かすことはできないですよね。だから,まさに端末によってはということなんだと思うんですが。DRMとの関係ではないような気がするんですけれども。

【今子委員】端末からは持ち出せないんですけれども,DRMという言葉の使い方が完全に正しいかどうかというのをちょっと確認しますが,サービスの使用によってであって,端末の使用ということではないと思います。

【末吉主査】すいません,椎名委員,この書きぶりって,DRMって断言していないんじゃないですか。

【椎名委員】DRM技術っていう表題ですが。

【末吉主査】いやいや,「DRM技術をかけずに配信しており」まであるんですけれども,複製ができないということと,DRM技術を結び付けていないから,今の今子委員の説明でいいんじゃないかと思ったんですけれども,駄目ですか。

【椎名委員】いや,複製ができない場合もある,DRMをかけないから複製ができるけど,端末によっては複製ができない場合があると。

【末吉主査】そう読めるんじゃないですか,あ,ちょっと書き方が不正確だということですか。

【椎名委員】だから,DRMとの関係を言っているんじゃなくて,端末の構造なんじゃないかなと単純に思っただけで。

【末吉主査】ああ,なるほど。

【椎名委員】うん。だったら,DRMとの関係で出てくるのはおかしいのかなと思っただけです。

【末吉主査】ただ,書きぶりとすると直結していないので,間違いとは言わないけれども,不正確だということですかね。

【椎名委員】紛らわしい。結構強く断言しているので。

【末吉主査】なるほど,わかりました。ちょっと書きぶりを工夫しないといけないです。

どうぞ。

【河村委員】私がこの部分を確認してほしいとコメントを書いたのは,つまり私がとても気になったところは,音楽配信については,利用者が自由に音楽コンテンツを複製することが可能であると断言するかたちで書いてあったからです。元の文章では。一律にそうであるわけではないなら,その断言はよくないでしょうと思いましたので,一律に複製可能であるかどうかを確認してほしいということを求めました。音楽配信について,「利用者は自由に音楽コンテンツを複製することが可能。」という記述通りの状態ではなくて,複製できない場合があるのであれば,そのことを,端末によってと書くのかどうかはよくわかりませんが,そのような場合があると書くのは強く求めたいと思います。

【末吉主査】ありがとうございました。

【椎名委員】いや,ここでは著作権保護技術と複製可能性について言っていて,その関係において可能であるというふうに結論付けているんですけれども,先ほど来申し上げているとおり,端末の構造上,複製が不可能なものを並べて書くのはちょっと変なのではないかなと思ったので,申し上げました。

【末吉主査】すいません,これは我々の表現の問題なので検討いたします。御趣旨はよくわかりました,両委員。

ほかにございますか。

じゃあ,もう全体をということで,一番御議論があろうかと思いますが,ローマ数字のⅣ以降最後まで,45ページ以下でございます。アンダーラインがほとんど引いてございますので,これについてはいろいろ御意見もあろうかと思いますが。

お願いします,どうぞ。

【太佐委員】細かく言うといろいろあるのですが,冒頭お話があったとおり,最終的には書面でということだと思っておりますので,とりあえず,最低限ということで三項目ほど。記載箇所は複数に及ぶところですので,内容としてまず三つほど申し上げたいと思います。冒頭,少しお話ししましたとおり,方向性が結論付けてられていないものは,「まとめ」というような形ではなくて,フェアな書きぶりで両論併記いただきたいという文脈でのお願いでもあります。

まず1点目は,機器の追加指定ありきのような,そういった議論がなされて結論が得られたかのようなトーンで書かれているところ,これはちょっと,改めていただきたいというようなことでございます。代表的には,例えばですね,具体的な箇所をとおっしゃっているので,53ページの(3-3)「現実的な解決策としてはどのようなものが考えられるか」という項目の三つ目の「すなわち」以下のパラグラフの中です。ページで言うと53ページの上ですか,「私的複製の蓋然性の高い機器であって,かつ私的録音の実態が認められるもの,換言すれば,相当の蓋然性をもって私的録音に供されるであろう販売形態や広告宣伝が行われるものについては,記録媒体内蔵型録音機器を含め補償金制度の対象とすることが考えうるが」という記載があります。「記録媒体内蔵型」の機器という表現を含んでいるのはここのみで,それ以外は消していただいているようなのですが,こういう表現が残った形で,私的録音等の蓋然性の高い機器の追加指定につながるような結論が方向性として確認されたような記載になっているところは改めていただきたいということです。議論や意見は出ていても結論付けられてはいないと思います。このあたりの記載をどうするのかは,我々の方でも提案できるものは追ってと考えています。同趣旨の記載が,ほかにも2か所か3か所あったと思いますので,そこを修正いただきたい。これが1点目でございます。

2点目が,政令指定方式を簡便なものに改めましょうというトーンの書きぶりのところです。これも複数箇所あったと思うんですけれども,例えば49ページの上になりましょうか。「なお」以下のところ,「対象機器等の定め方に関し,現行の政令による指定方式では技術の進歩に対応できず権利者の不利益は解消されないことは明らかであるので」これこれの方式を提案するという意見と,「現行の政令指定のスキームは,関係者の利害調整をするために必要であるとして制度維持を求める意見とに分かれた」という記載があります。見かけ上,両論併記で書いていただいているようには見えるんですが,前者の新方式を提案する意見に多くの分量を割いています。ここは知財高裁の判例も引用して私も意見を出させていただいたところなんですが,現行の政令指定方式は,一定の敬意を持って尊重されるべき方式として運用されてきており,そのあたりの記載のバランスはとっていただきたい。この部分についての合意もなかったと思いますので,そこはバランスをとる方向で修正いただきたいと。同じような箇所が他にもあったと思いますが,全部ちょっと拾えずすいません。大まかなところでお願いします。

【末吉主査】はい,大丈夫です。

【太佐委員】あともう1点は,製造業者等の協力義務のところで,協力の具体的内容を法定しましょうというようなトーンの記載,これもそういう意見があったことは承知しておりますが,これについても,我々は,知財高裁の判例も引用しながら,「協力」というのはこういう趣旨で尊重されるべきものですよねという意見を述べております。具体的な箇所としては,例えば47ページの一番下の段落にあるなお書きのところが協力義務の話でしょうか。ここは,そういう現行の方式を尊重すべきという意見も出されていることを書いていただきたいと思います。大きくはそんなところです。あと,これに関連して,知財高裁の判決が引用されている箇所,ここでは注42でございますけれども,ここの記載もですね,ちょっとその場で議論していないような,私が発言した意図とはちょっと違う文脈で判決文が引用されている箇所があったりもするので,その点も追って付記させていただきたいなとは思っております。

とりあえずは,以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。書きぶりとしては,太佐委員の事前に頂いたコメントを反映したつもりなんですけれども,多分それが反映し切れていないという御意見だと思うので,具体的に修正を入れていただいた方が,多分うまく反映できるような気がしますので,どうかよろしくお願いいたします。

【太佐委員】はい。

【末吉主査】ほかにいかがで,ああ,どうぞ。

【小寺委員】45ページを御覧ください。ちょっと細かいところではございますが,3段落目,代替措置が構築されるまでの手当てとしてというパラグラフの文末のところでございますけれども,私的録音・録画の実態のあるものを補償金の対象とすることが検討対象となるという書きぶりが,ちょっと勇み足かなというふうに思います。ここは,議論の状況を正確に書くならば,補償金の対象となり得るかが検討対象となると書くべきかと思います。

その根拠といたしましては,その次のパラグラフを御覧ください。なお,私的録音云々(うんぬん)のパラグラフの上から3行目,私的録音に関しては,汎用機器を補償金制度の対象とすることの是非が特に問われると書いております。是非が問われるという状況というのは,まさにこの会議の状況を正確に表しているものと認識しております。

それから,その同じパラグラフの下から2行目,こちらは録画の補償金でありますけれども,それらの機器を対象とすることの是非がと書かれておりまして,こちら認識としては正しい。こういうところから察すると,この上の段に書かれておりますように,「補償金の対象とすることが」と書くのは正しくないと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【龍村委員】46ページの「汎用機器を補償金制度の対象とする場合の課題について」のところの記載順序についてですが,これは前から気になっていたのですが,前々回の小委の前にアンケートの提出があったときに,その直前にこの2-1の「購入者への補償金返還の実効性の確保」の論点が唐突に出たといういきさつがあったと思うのですね。その経緯自体もやや気になることなのですが,むしろこの諸論点の中核をなすのは,2-2のいわゆる製造業者等の協力義務者という位置付けの問題,つまり支払義務があるのか,協力義務にとどまるのかという論点が中核論点であって,あるいはその次の2-3の課金対象を機器,記録媒体に限定している現状についてどうするかという,この二つが中心部分であって,この補償金返還の実効性の問題というのはむしろその支払義務,協力義務の付随的な論点として位置付けられる程度のものであって,つまり2-2,2-3が,2-1,2-2に繰り上がって,2-1が2-3に繰り下がるという順序の整理の方が,議論の全体的な流れに即していることと理論的な位置付けの問題としても適切なのではないかと思います。

このあたりの点は,前回の整理のときにもこの順序で並んでいたもので,ついこの格好で議論が進んでしまったのですけれども,この点,整理の段階では,やはり論理的な順序に従って整理された方がよろしいのではないかというように思います。

【末吉主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【今子委員】すみません,今の点なんですけれども,私は2-1は非常に大事な論点だと思っております。最終的な書きぶりはお任せしたいと思うんですけれども,補償金返還の話について,前々回意見を述べさせていただいたときには,実効性の話だけしていたわけではなくて,録音・録画を行わない人も含めて,それもしかもかなりたくさんの人たちに,返還請求の手続という無用で過大な負担を生じさせるということが,社会的に適切ではないと考えられるので,そもそも汎用機を対象としていくのは問題ではないかというふうにつなげて発言をしていたつもりです。単なるその実効性の確保という付随的な論点であるというふうには,私は思っておりません。

【末吉主査】はい,椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】様々御意見が出てくるし,これから紙でも出てくるとは思うんですが,補償金の対象とすることが検討対象となると書かれていて,その後で対象とすることの是非を検討するんだから,検討対象になるんじゃないかなと思って,ちょっと小寺委員の御発言を聞いていたんですが。それぞれのテイストといいますか,御自身の文章に対する思いとかも含めて,様々な御意見が出てくることはしょうがないと思います。

それから,当面の手当てとしての見直しについてという論点の中で,是非一つだけ明言,明言というか明確に触れていただきたいのは,両論併記の報告,あるいはまとめを繰り返していてどうするんですかということなんですね。両論併記で話がまとまらなければ,権利者の得べかりし利益はずっと積もっていくだけなんですよ。この会議体として,どういう政策的な意図を持って,何を解決するのかという意志を持たないことには,両論併記の報告書を毎年重ねていったって何も変わらないんですよ。だから,結論が出ないのであれば,先ほどちょっと触れましたけれども,30条1項を見直していくとかというふうに,順番を追ってやっていかないことには,いつまでもいつまでも両論併記のままでいったら,この会議体は一体責任を果たしていることになるのかということを,ちょっと申し上げたいと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

どうぞ。

【高杉委員】今の椎名委員の意見と全く同じでございます。特に,先ほど太佐委員の方から,政令指定の追加につながるような記載は云々(うんぬん)というお話もございましたけれども,今までの議論の中で,少なくとも専用機器については政令指定の対象とするべきだという,大勢の方々がそういう意見だったというふうに私は認識しております。

この報告書,昨年の私的録音の実態調査によっても,この中で実態調査の結果が出ていたと思うんですが,21ページですか,21ページの図表の3に私的録音に供される機器,使用したパーセント等が出ておりますけれども,この中で具体的に専用機器でありながら,政令指定から漏れているものを確認して,明記するべきだと私は考えております。その内容としては,ポータブルオーディオプレイヤー,それからハードディスクレコーダーで音楽専用の据置き型,それから録音機能付きカーオーディオ,これは明らかに専用機器で,政令指定されていないものであります。

それから,録画についてはブルーレイディスクレコーダーのハードディスク内蔵型が一番多かったと思いますけれども,これらの機器について,専用機でありながら政令指定されていないということについては,非常に問題があると考えておりますので,時機を失することなく政令指定すべきだという方向性を,是非出していただきたいと考えております。以上です。

【末吉主査】ほかにいかがでしょうか。

どうぞ。

【太佐委員】すいません。どうしても流れで発言してしまいますけれども,多少繰り返しになるんですが,まとまっていないものを「まとめ」として方向性を出すということには,やはり反対です。補償金制度というのは,そもそもこの機器を買った方にはすべからく課金しますよと,税金のように国民の財産権に広く影響が及ぶ仕組みです。専用機は課金されるべきという意見が大勢であったという意見ですが,これについては,私,少なくとも今年からしか委員として出ていないのですけれども,そういう空気ないし方向性であったとは認識しておりませんので,そこは改めてコメントしたいと思います。

先ほど言及された具体的な機器についてですが,その議論をじゃあ来年度しましょうということは,それはそれであるとは思いますけれども,例えば先ほど例に出されたポータブルオーディオプレイヤー,つまりiPod課金ですね,については過去に議論がなされ,そのときに,課金は見送られたわけです。で,そのときの状況から今日に至るまでに何が変わったのかという点について,どう整理されているのかは,私自身,理解できておりません。そういう過去見送っておきながら今回追加する・新たに指定するということがあるならば,それは新たな論点ではあると思いますけれども,過去に議論しておきながらまた俎上(そじょう)に乗せるものについては,過去の議論から何が変わったからそうするべきなのかという事実関係も,お考えいただく必要があるのかなと思っております。

以上でございます。

【末吉主査】はい。ああ,どうぞ。

【大渕主査代理】1点だけ手短に申し上げます。やはり30条1項の見直しの議論が出てきてしまったという感じがいたします。私は前々から申し上げているとおり,この30条1項というのは大変よい制度なので,きちんと守っていくべきだと思いますが,少なくとも私的録音・録画の分野では,30条2項であと支えしているからこそ,30条1項が守れるという状況にあるのに,もう10年以上も機能不全が続いているようでは,ほかのところでももうしびれを切らし始めておりまして,これは私は一ユーザーの立場からしても,大変憂慮すべき状態だと思っております。

そのような意味では,どなたか言われたとおり,毎年毎年両論併記だけしているという状態は,大変好ましくない状態だと思います。議論は議論として,例えば最低限,協力義務が法的義務であることの明示をするなど,ただ両論併記をするだけではなくて確実に成果を出していかないと,本小委員会の責任問題にもなってくるのではないかと思っております。

【末吉主査】ありがとうございました。

どうぞ。

【世古委員】記録媒体内蔵型の録音・録画について,確かに太佐委員のおっしゃるように,2004年の検討において,補償金の対象ということについての結論は見送られたわけですけれども,対象としないということが確定したということではなくて,今後も状況を見ながら検討していくということになっていたと思います。

iPod,ウォークマンなどのポータブルオーディオプレイヤー,あるいはハードディスク内蔵型のブルーレイディスクレコーダーなどは,現在でも録音・録画可能な容量,あるいは機能を持って,それをうたって販売されているというようなところが明らかですので,また私的複製に使用されている実態も調査によって確認されているということから,至急当該機器を政令に追加するというような判断をしていただきたいと思います。

それと,もう一つなんですけれども,よろしいですか。52ページの2段落目で,パッケージの対価還元策についてどう考えるかということなんですけれども,「他方」というところで,本小委員会では対価還元手段については,私的録音・録画を行う者に最も近いポイントでの対価回収を行うことが,透明性の観点からも現実的だというふうになっていますが,最も近いポイントというのは,レンタルCDについてはレンタルCDショップと,それと製造事業者の協力のもとに,利用者が対象機器の購入時に録音・録画するかどうか意向を確認して,意向のある人には機器に補償金を上乗せして徴収する方法の両方を言われているんだと思うんですけれども。

ただ,ここの書きぶりを見ますと,明らかにCDレンタルショップを協力義務者として,CD貸出時に消費者から補償金を徴収する制度に改めてはどうかというような部分がかなり大きく書かれておりまして,CDショップの方から取ればいいじゃないかというような議論に見えてしまうのが一つと。

それと,それが透明性の観点からも現実的であるというふうに書かれているのが,何をもって透明性の観点といわれるのか,じゃあ現状は透明性がないのかという話になってしまいますので,そこを明らかにしていただきたいと思います。もし駄目であれば,ここは書きぶりを考えていただきたいと思います。

【末吉主査】はい。ああ,どうぞ。

【松田委員】その書きぶりについて,私が答える立場にないのですけれども,CDのレンタルだけじゃなくて,CDの販売時においても,課金をしたらいいのではないかという御意見は,河村委員からずっと出されていました。それは,果たしてこの制度全体の構造から可能なのでしょうかということについて,説明願いたいと思います。委員会で既に示されているところと同様で,これまで理論的に無理です。

どうしてかというと,ヨーロッパでも同じで,媒体・機器メーカーから徴収し,これを権利者の団体に支払うという制度を取っています。なぜかCDの販売,楽曲の送信までの段階は権利者とその被許諾者による流通過程で,ここには私的複製がありません。ユーザーが楽曲を取得した後に私的複製が生じこれに市場を形成する媒体・機器が介在するからです。コンテンツを利用する媒体・機器によって,収益を上げる構造があって,社会,経済学的にこのことから権利者に損害が生じるという構造があるからです。そこから徴収しようというのが全世界の制度思想です。CDの販売等の過程で課金をするというのは理論的にありえません。

【末吉主査】はい。どうぞ。

【河村委員】誤解していただきたくないのは,私はパッケージやレンタルのところで取る仕組みを,是非入れるべきだと申し上げているのではなくて,もともと,皆様御存じのように,補償金は役目を終えつつありますし,今日の議論でも最初の方で今子委員からあったように,世界的に見ればサブスクリプション等で,クリエーターはたくさんの利益を得る機会があるはずで,そのようなビジネスチャンスが用意されているんですよね。先ほど,高杉委員の方から,新しいデータにしたってパッケージが多いんですよという話がありましたが,クリエーターに対価の還元というなら,もっとクリエーターにきちんと対価の還元のいく音楽ビジネスというものを考える方が,現実のクリエーターにはよっぽどいい議論になるのではないかと,10年来思っているわけで,ますます近年強く思っているわけなんですが。

先ほどのパッケージのところに戻りますと,透明性の観点と申し上げているのははっきりしています。分配のところで,補償金をメーカーのところから行くのであれば,補償金を管理する団体のところで,パッケージの売上げとかいろんなことから考えて分配を決めていくとか,録音したのが何かがよくわからないから,そういうアバウトなものであると,10年間,20年間言われてきていますし。また,その団体に所属していないクリエーターにとっては分配の機会もないなど,ほんとに透明で公平なものなのか。クリエーターのためと皆さんおっしゃいますけれども,そういう意味から言えば,強いて言えば,どうしても補償金制度だというのなら,なぜきちんと当該権利のある人に,パッケージが借りられたときとか,売れたときには行く流れがもう既にあるのであれば,そこに補償金等をやれば確実に,録画をされるか,録音されるかどうかというそのアバウトさは残りますよ。でも,そのどこかにアバウトさが残るのであれば,少なくとも当該クリエーターに行くという意味において言ったので,この透明性ははっきりとそういう意味です,当該クリエーターに行くという意味なんです。

【末吉主査】どうぞ。

【世古委員】そうすると,対象機器から補償金を徴収して,それを関係団体で配分し,それぞれの団体が各権利者に分配しているということ自体が,不透明でアバウトだということなんですか。それを否定されるということですか。

【河村委員】違います。もう10年来,私この議論に10年ぐらいいるんですけれども,矛盾も抱えているけれども,仕方がなくこういうやり方しかないんだということが繰り返し言われてきました。この制度が絶対的でいいやり方だなんていう議論は,過去のまとめとか報告書を見ても一つもないと思います。仕方がなくこういうやり方になっているんだ,個人の行為を捕捉することができないしと。だから私は,不透明だと糾弾しているというよりも,もともとずっとそうやって言われてきたものだから,じゃあ考え方をがらっと変えることだってできるのではないんですかという意味で申し上げたんです。必ずしもそうするべきだという意味ではありません。

【世古委員】はい。私もそういうことを確認しているだけです。どういう御理解をされているのかというのを,確認したかったんです。昨年度も補償金の分配の流れについて,丁寧に御説明いたしました。その際にも御説明していますように,私的録音補償金の分配というのは,それぞれの団体で私的録音のソースとなる放送であったり録音物の制作,あるいはレンタルといったような,そういったもともとの音楽の利用の際に徴収した使用料を分配するための資料をもとに補償金を分配しているんです。

【河村委員】わかります。

【世古委員】わかりますね。それにはどういったものがあるかというと,例えばレンタルであれば,全国のお店で借りられているCDのタイトルは何か,それが何回借りられるかというものの全量を逐一報告してもらっています。それに基づいてレンタルの使用料も分配しますし,補償金も分配しているんです。もし,レンタル店から消費者がレンタルする際に上乗せして徴収したとしても,その補償金をクリエーターに分配するための資料は何ですかといったら,それ以外のものはないと思います。もっと言えば,家庭でどのぐらいの複製をするのかといったことは,河村委員がおわかりのように,それは不可能なことですから,それはできないにしても,一番合理的な方法として,私的複製のソースになっている利用形態の使用料の分配に使った全量資料をもとに分配するという以上の,細かい適正な分配方法はないと思いますので,今の河村委員の御発言は,適正ではないのではないかとっておりますが,いかがでしょうか。

【末吉主査】すいません,大体わかりましたので,昔やった議論の続きみたいなので。この論点はちょっとやめて,ほかの論点の御意見を頂きたいと思います。

【椎名委員】この論点,ちょっとだけ。

【河村委員】それはアンフェアですよ。

【椎名委員】いやいや,いやいや。22ページを見ていただきたいんですけれども,販売とかレンタルに乗っけて徴収すればいいじゃないかということに関していうと,僕も最近気が付いたんですけれども,家庭内にCDっていっぱい既にあるわけですよね。既に持っていたり,あるいは友達に焼いてもらったCD-Rであるとか,そういったものがソースになるというところが,全く捕捉できないということがあるのではないかと思います。

河村委員とはもう何年の付き合いだかわからないんですけれども,役割を終えた補償金制度とか,サブスクリプションに行くんだということを盛んにおっしゃるけれども,だったら30条1項の話を始めましょうよという,それをリードしてくださいよって,心から思います。

【末吉主査】はい,ほかに御意見いただきます。

【河村委員】はい。

【末吉主査】ほかにいいですか。

【河村委員】もうレンタルのことは結構です。ただ,もしひとこと言わせていただけるなら,徴収をレンタルの現場でやった方が,管理経費とかコストとかははるかに少なくて済む,その分クリエーターの方に行くのではないかなと思います。これは,考えられることだと思うので。

30条1項のこと,30条のことですけれども,著作物の権利を持っていらっしゃる方たちの権利を守るために,いろんな方がここにいらっしゃるかもしれませんが,私は消費者団体としてここにいる以上,個人としての権利,著作物を買ったり,自分のものにしたときに,私的に複製する権利,大きな意味では知る権利も含めて,いろんな権利を守るという視点を大事にしています。消費者の権利であり,人権でもあり,いろんなものを守る見方があるということを繰り返しここで私が申し上げないと,その立場からものを言う方がいないとするならば,アンバランスだと思っていますので。

30条がなければとよくおっしゃいますけれども,あるんですから消費者の側(がわ)に権利があるわけです。それは権利じゃないという人もいるかもしれませんが,2種類の考え方があると私は聞いています。権利制限という言葉があるから,いかにも何かが制限されているかのようですが,もしそれがなければ,個人に対する,ある意味大きな権利制限になると思います。サブスクリプションに移行する現実があるから,30条1項が要らないのではなくて,それは残るんです。大きな損害を与えていないからこそ,補償金制度はかつて30条になかったように,それ以外のところからきちんとクリエーターの方が対価の還元を得られるようにすることこそが本当に必要だと,もう世界では取り残されているように私は見えます,先ほどの数字の御発表を聞いても。

今子委員のおっしゃった追記は是非,注釈のところで国際的なデータではそうなっているということを入れていただきたいと思っております。もし30条1項の存在の是非を議論するのであれば,そのことをきちんと国民の側(がわ)に,文化庁の方から,そういう議論もしますとアナウンスしていただかないと,補償金制度に絡めてですね,30条1項云々(うんぬん)ということを何か簡単にここで決めるというのは,消費者側の立場に立つ委員として私一人の責任では到底支えられる問題ではありません。きちんと別の場で国民的議論としてやっていただきたいと思います。

【末吉主査】はい。ほかの論点に行きましょう。

どうぞ。

【高杉委員】今の論点とちょっとだけかぶりますけれども,日本がパッケージが主流だということについて,世界的に配信が伸びているのが事実であるんですけれども,日本もそれにならわなければいけないというのが,そもそもちょっと理解できません。日本は,パッケージもあり,配信もあり,レンタルもあり,非常にユーザーにとって幅広い選択肢があるわけじゃないですか。それをそのまま維持していいんじゃないですか。それが,何で全部配信に行かなきゃいけないのか,それがそもそも余り理解できない。

それから,違う論点で申しますと,協力義務の関係ですね。太佐委員が先ほどおっしゃったけれども,支払義務と協力義務の関係は継続審議ということではありますが,太佐委員も,専用機器については引き続き協力義務を担うというふうにおっしゃいましたよね。第4回の資料にもそのように書かれておりますので,そういう意味では専用機器については,引き続きメーカーさんの方が協力義務を担っていただけるものと理解しますので,議論を進めさせていただきたいというのが私の考えでございます。

【末吉主査】はい。どうぞ。

【太佐委員】過去の発言というのは正確にトレースする方がいいと思いますが,専用機器だから当然に協力するという趣旨ではなく,実際それによって権利者の不利益があって補償金制度の対象とするべきであるという結論が仮に得られたものについては,それはメーカーとして,メーカーとしてというのは,製造業者として協力しなさいよという法の定めになったら,それは当然協力しますという趣旨の発言でありましたので,そこは誤解のないようにしていただきたいと思っております。

過去も協力してまいりましたし,私個人的には日本語に,協力なのに義務というのはすごく違和感のある表現ですが,これは存在しているので仕方がないのですけれども,そういうことでございます。

ちょっと内容の話も1点,付け加えてよろしいでしょうか。

【末吉主査】どうぞ。

【太佐委員】ちょっと脚注で気になっている箇所がございまして,55ページの脚注49のところで,今回新たに国会答弁からの引用がなされている箇所がございます。これは,タイムシフトの論点は昔から議論していましたよという文脈で,まあ議論されているところではあるんですが。ちょっと細かい話になるんですが,脚注49は「この点について,」とはじまって,3行目からの抜粋部分の括弧の冒頭に「…」とあります。そして,「著作物を利用してその利用者が利を得ているという状況はございますし,かなりの部分が保存されているというようなことを考えますと,プレースシフティングあるいはタイムシフティングというような場合があり,そして通常これらの場合は侵害の程度は必ずしも高くはないということがあったといたしましても,全体として考えますと権利者の利益を侵害しているという状況が見受けられるのではないか…」と続く答弁が抜粋されています。

先ほどの抜粋部分の冒頭にある「…」で何が省略されているか,私ちょっと調べてみましたらですね,「こういった状況を考えますと」という語が省略されていました。「こういった状況」というのは,その前に発言があって,その内容を踏まえてということなんですが,当時政策委員の佐藤禎一さんの御発言によりますと,その内容として平成3年の調査についての言及がされています。で,その調査によれば,通常のタイムシフトとかプレイスシフトのような目的で録音するのですよという理由もあれば,それ以外の録音理由として,レコードとかを買うよりも安く済むからとか,自分で編集したテープを作って聞くんだとか,まあそういった理由も挙げられており,そういった「状況」を考えますと,というふうに受けての文章になっています。だとすると,どういう趣旨で,このタイムシフトやプレイスシフト目的であっても課金だという根拠に,これを引用されたのは,ちょっと私には正確に理解できません。

どちらかというと,その後の「全体として考えますと」というのは,そういうちょっとイレギュラーな理由,つまりタイムシフトないしプレイスシフト以外の理由での録音,これは当時はやっぱりレコードとかテープといった時代だったかと思いますので,そういったイレギュラーな理由も踏まえて考えると,という文脈で使われておりますので,引用の仕方とかコメントの付け方は私どもでも検討いたしますけれども,できるだけ前後の文脈も含めて正確に引いていただく方がいいかなと,今は思っておりますということでございます。

【末吉主査】はい,ありがとうございます。

そろそろお時間になってしまいました。今日もいろいろ御議論いただきましたが,何か具体の文章というよりは,だんだん抽象的なところに,若干ちょっと困っているところでございますけれども。本日のところは,この程度にしたいと思います。

本日は委員の皆様から,様々な御意見をちょうだいいたしましたが,追加の御意見がおありの委員におかれては,できるだけ速やかに事務局まで追加の御意見をお寄せいただきますようお願い申し上げます。事務局におかれては,それらを踏まえまして,資料を改訂したものを作成し,次回御審議いただくというふうにしたいと思います。

次回の会議にて確定していきたいと思いますので,御協力をお願いいたします。

最後に事務局から連絡事項等お願いいたします。

【堀内著作物流通推進室室長補佐】ただいま,主査より御発言いただきました追加の御意見につきましては,追って改めて御提出用の様式等をお送りさせていただきますけれども,現在の予定では来週の14日金曜日までに御提出いただければということで,お願いをしたいと考えております。

また,次回の開催の日程等につきましては,確定次第,御連絡させていただきます。

本日はどうもありがとうございました。

【末吉主査】それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第6回)を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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