平成25年度文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第1回)議事次第

日時:平成25年6月17日(月)
10:00~12:00
場所:東海大学校友会館 望星の間

議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)法制・基本問題小委員会主査の選任等について
    2. (2)法制・基本問題小委員会審議予定について
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1
第13期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員名簿(76KB)
資料2
小委員会の設置について(平成25年5月8日文化審議会著作権分科会決定)(84KB)
資料3-1
知的財産政策ビジョンの内容(法制・基本問題小委員会関係)(180KB)
資料3-2
知的財産政策ビジョンに示された今後検討が必要な課題例(法制・基本問題小委員会関係)(912KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(180KB)
参考資料2
第13期文化審議会著作権分科会委員名簿(72KB)
参考資料3
第13期文化審議会著作権分科会 各小委員会における検討課題について(第38回著作権分科会配付資料3)(108KB)
参考資料4
知的財産政策に関する基本方針(平成25年6月7日閣議決定)(160KB)
参考資料5
知的財産政策ビジョン(平成25年6月7日知的財産戦略本部決定)(一部抜粋)(2MB)
 
出席者名簿(92KB)
  1. 文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員を事務局より紹介した。
  2. 本小委員会の主査の選任が行われ,土肥委員が主査に決定した。
  3. 主査代理について,土肥主査より大渕委員が主査代理に指名された。
  4. 会議の公開について運営規則等の確認が行われた。
  5. 以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【土肥主査】

 本日は法制・基本問題小委員会の第1回目となりますので,河村文化庁次長から,一言御挨拶(あいさつ)を頂戴(ちょうだい)したいと存じます。
 なお,もしカメラ撮り等がございます場合は,この河村次長の御挨拶(あいさつ)までとさせていただきますので,御了承をお願いいたします。
 それでは,お願いいたします。

【河村文化庁次長】

 改めまして,皆様,おはようございます。文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の開催に当たりまして,一言御挨拶(あいさつ)申し上げたいと存じます。
 皆様には,大変お忙しい中,この法制・基本問題小委員会の委員をお引き受けくださいまして,誠にありがとうございます。
 先週金曜日,6月14日に閣議決定が幾つか行われております。第1の閣議決定は,内閣としての目指す経済社会の姿と,それを実現するための政策の基本的な取組方針,題して経済財政運営と改革の基本方針,いわゆる「骨太の方針」と言われてきたものでございます。この中では,目指すべき社会の姿として「強い日本,強い経済,豊かで安全・安心な生活の実現」ということを述べております。国際競争力のある産業の発展を目指すとともに,国民一人一人にとって健康長寿,あるいはITの活用,豊かな食,文化・芸術・スポーツなど,質の高い生活環境ということが書かれておりまして,文化芸術立国の実現ということも明記されております。
 このような社会を目指していくために取るべき方策として,これまでも3本の矢というものが言われてきました。1つ目は大胆な金融政策,2つ目が機動的な財政政策で,これらについては既に公表され,実施に移されつつあります。3つ目の民間投資を喚起する成長戦略につきましては,日本再興戦略として,「骨太の方針」と同じ日,6月14日金曜日に閣議決定されております。この中に,知的財産戦略の推進,知的財産立国を目指すことが書かれているわけでございます。
 今年は,知的財産基本法が施行されましてから,ちょうど10年という節目の年にもなっております。文化庁でも,文化審議会著作権分科会における審議結果に基づきまして,この10年間,ほかの法律に伴う改正を除いても,6度にも及ぶ著作権法の改正を行ってまいりました。直近の改正につきましても,この1月から全面施行となっております。しかしながら,昨今のデジタル化・ネットワーク化の進展やコンテンツなどを取り巻く状況の変化は,皆様が日々,感じておられますように大変著しく,今なお検討すべき課題が多いものと承知いたしております。
 先ほど6月14日の閣議決定を引用させていただきましたけれども,それに先立つ今月7日には,政府の知的財産戦略本部において,今後10年間を見据えた長期ビジョンとしての知的財産政策ビジョンが策定されております。この中でも,著作権法制度や関連施策について様々な課題が示されております。
 皆様方に委員をお願いいたしましたこの委員会では,文化芸術の創造と享受,強い経済と国民一人一人の質の高い生活環境という複数の価値の追求について,迅速さとバランスをもって解決の方法を見いだしていただくという大変重要な使命を担っていただく場と存じます。先生方には,大変お忙しいと存じますけれども,御尽力をお願い申し上げまして,私の御挨拶(あいさつ)とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 次に,今期本小委員会の審議予定について検討したいと思いますので,本小委員会における検討課題例について,事務局から説明をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】

 資料2,資料3-1,資料3-2,この3つの資料に基づきまして,本小委員会における検討課題例について御説明させていただければと思います。
 まず,お手元の資料2をごらんいただければと思います。この資料2は,5月8日に開催されました著作権分科会において決定されました「小委員会の設置について」という資料でございます。5月8日の著作権分科会におきましては,文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項に基づきまして,出版関連小委員会,法制・基本問題小委員会,国際小委員会を著作権分科会に設置する旨が決定されております。
 法制・基本問題小委員会における審議事項につきましては,2の(2)にありますように,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関することを審議することが求められております。
 このほか,4にございますように,小委員会における審議の結果につきましては,分科会の議を経た上で公表することとされております。
 次に,資料3-1をごらんください。こちらでは,先ほど御紹介がありました6月7日に知的財産戦略本部において取りまとめられました知的財産政策ビジョンのうち,著作権に関連する課題として,特に本小委員会に関連すると思われる課題を列挙させていただいております。ここに掲げた課題のうち幾つかのものにつきましては,資料3-2においてもう少し詳細にさせていただいておりますので,後ほど説明させていただきたいと思います。
 まず,資料3-1でございますが,知的財産政策ビジョンでは,第3,デジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備として,1ポツ,コンテンツ産業をめぐる生態系変化への対応といたしまして,インターネットを活用したユーザーが作り出す新たなコンテンツの創造と自由な利用の促進を図る観点から,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスといったパブリックライセンスの普及などについて検討を行い,コンテンツ利用の促進に必要な措置を講じることとされてございます。
 次の○は括弧書きで参考扱いとしており,内閣官房が担当とされておりますけれども,著作権にも関連する項目でありますので,記載させていただいております。これは,公共データの広範な二次利用を促進する観点から,公的機関が保有する公共データに関して,利用促進のための統一的なルールなどの基盤整備について検討を行い,必要な措置を講じることとされてございます。
 次に,3ポツ,コンテンツ産業の市場拡大に向けた環境醸成についてでございます。
 まず,(1)新しい産業の創出環境の形成に向けた制度整備といたしまして,クラウドサービスやメディア変換サービスとの関係で,著作権の権利制限規定の見直しやライセンシング体制の構築等について検討が求められております。
 また,(2)では,私的録音録画補償金制度の見直しなど,クリエーターへの適切な対価還元に向けた制度整備について検討が求められているところでございます。
 2ページ目をお開きください。(3)新しい産業の創出・拡大に向けたコンテンツの権利処理の円滑化についてでございますが,1つ目の○では放送番組などの二次利用促進に向けた取組について,2つ目の○では孤児著作物などに関連して裁定制度の手続の簡素化や迅速化が求められているところでございます。
 また,3つ目の○では放送コンテンツのインターネット配信に係る権利処理の円滑化を図るための方策について,4つ目の○ではライセンシーの保護方策について検討が求められているところでございます。
 5つ目の○では,コンテンツにIDを付与し,権利処理に係る情報を集約するといったデータベースの整備とコンテンツ利用に係る対価の徴収・分配システムの整備を促進することが書かれてございます。
 6つ目の○では,著作権法などにつきまして,各省においてセミナーの開催など普及啓発活動を強化することが求められております。
 3ページ目をごらんください。4ポツの(1)では,文化資産のデジタル・アーカイブ化の促進について検討が求められております。
 (2)教育の情報化の推進といたしましては,デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度などの在り方と併せて著作権制度の課題を検討し,必要な措置を講じることとされてございます。
 続きまして,資料3-2に基づきまして,今,御紹介いたしました知的財産政策ビジョンの内容に関連して,もう少し詳細に説明させていただければと思います。
 資料3-2をごらんください。まず,1ポツといたしまして,新たな産業の創出や拡大を促進する全体的な法的環境の整備ということで,特にクラウドサービスと著作権との関係を整理してございます。
 (1)は省略させていただきます。
 (2)現状等についての箇所をごらんください。1といたしまして,平成23年に文化庁が実施いたしました委託調査研究について記載させていただいております。
 2ページ目をごらんください。まず,中ほどのクラウドサービスのイメージ図をごらんいただければと思います。この図では,クラウドサービスの例といたしまして,ユーザーがコンテンツをクラウドサーバーにアップロードしたり,そのユーザーが所持するタブレットやスマートフォンなどの各種機器において,アップロードしたものを視聴したりダウンロードしたりすることを図として表させていただいております。このようなサービスを,まずは念頭に置いてお話をお聞きいただければと思います。
 ページの冒頭に戻りまして,文化庁が行いました調査研究におきまして,著作権等とクラウドサービスとの関係として検討された課題を点線の枠で整理させていただいております。課題1から5までとして並べさせていただいておりますが,まず「クラウドサービス」と著作物の利用行為主体との関係について,次に「クラウドサービス」と私的使用目的の複製(30条1項)との関係について,3つ目,「クラウドサービス」と著作権法上の「公衆」概念との関係,4つ目,データセンター等でリスク分散等を目的として行われる複製について,最後の5つ目として47条の3の適用範囲との関係についてでございます。
 3ページ目をごらんください。このような課題について検討の結果,いずれの課題につきましても従来から指摘されている課題であり,クラウドサービスがこうした課題を顕在化させるという側面があるとしても,クラウドサービス固有の問題ではないことが調査研究においては確認されてございます。これは,先ほど課題1から5として申し上げたことが,必ずしもクラウドサービス特有の問題ではないかもしれませんけれども,従来から指摘されている課題であることも確認されたところでございます。
 次に,2では,クラウドサーバー内における一定の複製について,平成24年の著作権法改正で権利制限規定を創設していることを記載させていただいております。また,平成21年の改正についても記載させていただいております。これらの詳細については,説明を省略させていただきます。
 (3)近時の動き,まず知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会における議論でございますが,文化庁の委託調査報告書が公表されてからも,複数の委員から,著作権の懸念とともに,クラウドサービスのための環境整備を求めるという発言がされております。また,脚注にもございますように,知財本部の委員のほかにも,例えば電子情報技術産業協会は,昨年度の法制問題小委員会における間接侵害についての関係団体ヒアリング等におきまして,クラウドサービスと著作権についてのコメントをしておるところでございます。
 4ページ目をごらんください。このほか産業競争力会議におきましても,この図にありますように,会議の構成員から,著作権侵害のリスクが企業を萎縮(いしゅく)させ,クラウドサービスの普及を妨げているといった旨の資料も出されているところでございます。
 最後に(4),これらを踏まえまして,著作権等の権利の適切な保護を図りつつ,新たな産業の創出や拡大を促進させるためには,著作権法とクラウドサービスとの関係について今後どのように考えていくべきかを検討事項として書かせていただいております。
 5ページ目をお開きください。次は,2ポツのクリエーターへの適切な対価還元に向けた制度整備についてでございます。
 (2)現状等については,私的録音録画補償金制度の概要を書かせていただいております。詳細な説明は省略させていただきます。
 6ページ目をお開きください。著作権法施行令で定めておりますデジタル方式の録音・録画機器や記録媒体について,一覧を書かせていただいております。冒頭に,現在,私的な録音・録画の際に利用されている機器の一部が規定の対象外になっているのではないかということも併せて記載させていただいております。
 中ほどにいきまして,この私的録音録画補償金制度の見直しにつきましては,文化審議会において平成18年に私的録音録画小委員会を設置し,検討が行われたところでございますが,最終的な合意形成には至らなかったところでございます。その後,平成21年11月には,私的録画補償金管理協会(SARVH)がアナログチューナー非搭載のDVD録画機器から補償金徴収を求めてメーカーとの間で訴訟となっておりましたが,平成23年12月,知財高裁が,アナログチューナー非搭載DVD録画機器が政令指定機器に該当しないという旨,判示いたしまして,また平成24年11月,最高裁も上告を棄却したため,その内容が確定したところでございます。点線の枠囲みの中には知財高裁判決の概要も記載しておりますので,お読みいただければと思います。
 7ページ目をお開きください。ここでは,近年の私的録音録画補償金の額の推移を記載させていただいております。グラフをごらんいただきますと,近年,減少傾向であることが分かろうかと思います。
 そして,(3)近時の動き,知的財産戦略本部における議論ですけれども,委員からは,喫緊の課題として補償金制度の内容の見直し,実効性の確保について議論すべき旨の発言もあったところでございます。
 8ページ目をお開きください。(4)検討事項としては,クリエーターへ適切な対価が還元されるためには,私的録音録画補償金制度についてどのような制度の見直しを行うべきか。検討に当たっては,現在の私的複製の状況をはじめ,現在のコンテンツの利用実態等も踏まえる必要があるのではないかと記載させていただいております。
 9ページ目をお開きください。3ポツでは,裁定制度の在り方等の見直しとさせていただいておりまして,ここでは裁定制度とデジタル・アーカイブについて記載しております。
 まず,(2)現状等については,[1]は裁定制度について書かせていただいております。御案内のとおり,著作権法では,権利者不明の場合でも著作物を利用できる制度といたしまして,相当な努力を払っても権利者と連絡ができない場合には,文化庁長官の裁定を受けた上で補償金を供託すれば利用することができるという制度が設けられております。
 10ページ目をお開きください。この裁定制度につきましては,平成21年の著作権法改正におきまして,裁定制度の範囲を実演等にも拡大するとともに,裁定申請中であっても担保金を供託することにより著作物等の利用を開始できるように措置したところでございます。さらに,実際の手続につきましては,権利者捜索のための「相当な努力」について,文化庁で作っております「裁定の手引き」に分かりやすく記載するなどして,利用者負担の軽減と利便性の向上を図ってきたところでございます。
 10ページ目の表にありますのは,裁定制度の利用実績でございます。裁定の件数と対象著作物等の数に大きな開きがございますのは,1申請当たり複数の著作物等を申請することができるからでございます。
 11ページ目をごらんください。一方で,裁定に必要な権利者捜索のための「相当な努力」につきましては,その具体的な内容について点線の枠囲みに記載させていただいておりますけれども,枠のすぐ上に記載しておりますように,特に大量の著作物についての利用の場合や非営利の利用の場合などにおいて,金銭的な面と時間的な面の双方について手続コストの負担が過大になるといった指摘がされているところでございます。また,このほかにも,補償金額の算定が困難な場合があることや,申請中利用制度ができても,なお利用可能になるまでに掛かる時間が長いといった指摘もあるところでございます。
 次に,[2]のデジタル・アーカイブについての現状でございます。デジタル・アーカイブにつきましては,平成19年から2年間にわたって,過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で検討がされております。
 12ページ目をお開きください。この小委員会での検討の結果,平成21年の著作権法改正によって,国立国会図書館における図書館資料の電子化についての権利制限規定が設けられたところでございます。詳細な説明は省略させていただきます。
 (3)近時の動きとして,知的財産戦略本部における議論では,委員の中から,裁定制度について抜本的に見直すべきである旨の発言があったところであり,また国会図書館でのアーカイブ事業には多額の費用が掛かっており,民間の小さなアーカイブには難しいことから,EUの孤児著作物指令等も参考にしつつ検討すべきである旨の発言があったところでございます。EUの孤児著作物指令につきましては,13ページ以降で平成24年度に文化庁が実施いたしました委託調査研究の報告書から概要を記載させていただいておりますので,またお読みいただければと思います。そして,14ページ目に飛ばせていただきますが,このほかにも,民間における権利処理の円滑化等の取組につきましては17ページ以降も御参照いただければと思います。
 これらを踏まえまして,裁定制度をどのように見直し,手続を簡素化・迅速化することが考えられるかといったことなどが検討事項となろうかと思います。
 15ページ目をお開きください。4ポツは,著作物などの権利帰属を一元化したライセンシーの保護に関する論点と記載させていただいております。
 (2)現状等としては,ライセンシーの保護につきましては,平成14年度以降,契約・流通小委員会や法制問題小委員会の契約・利用ワーキングチームにおいて検討されてきたところでございます。法制問題小委員会の平成19年度の中間まとめでは,ライセンス契約で設定された「許諾に係る著作物を利用できる権利」を登録することにより,ライセンシーがその権利を第三者に対抗できる制度が提案されておりました。しかしながら,この提案に対しましては,意見募集の結果,慎重な検討を求める意見が多く寄せられたため,「今後,実務や学説の動向を考慮するとともに,本制度の参考とした特定通常実施権登録制度や通常実施権登録制度の運用状況も踏まえながら,実効性のある制度の在り方について多面的な調査研究を進めることが適当である」という結論に至ったところでございます。
 16ページ目をごらんください。(3)近時の動きとして,知的財産戦略本部における議論におきましては,日本経済団体連合会より,現行著作権法制を基礎としつつ,著作物の利用目的に応じた2つの制度,産業財産型コピライト制度と自由利用型コピライト制度を新たに創設することによる複線型著作権制度の整備について検討が求められておるところでございます。
 (4)検討事項といたしましては,権利帰属を一元化したライセンシーの保護の在り方について,どのように考えていくべきかと記載させていただきました。
 17ページ目をお開きください。今度は,5ポツ,放送コンテンツの二次利用の促進等についてでございます。
 (2)現状等については,過去の文化庁での検討会では,権利者不明時における利用促進や,権利者情報の整備等による二次利用に係る権利処理の円滑化について提言がされているところでございます。
 18ページ目をお開きください。権利者不明時の利用促進につきましては,先ほども御説明いたしましたように,平成21年の著作権法改正によって裁定制度の対象に実演が加わったところでございます。権利処理の円滑化につきましては,当初から二次利用を想定した利用契約を締結しておくことが有効であるとの観点から,日本経済団体連合会において二次利用を含めた出演契約ガイドラインが取りまとめられているほか,平成21年6月には,契約処理業務の統合を目的とした映像コンテンツ権利処理機構(aRma)が設立され,申請窓口の一元化が図られているところでございます。
 19ページ目をごらんください。(3)近時の動きについては,まず脚注をごらんいただきたいのですが,先ほど次長より紹介いたしました,6月14日に閣議決定された日本再興戦略におきましても,コンテンツ等の海外展開の促進などについて記載されているところでございます。また,本文に戻りまして,総務省において,平成24年11月に放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会が設けられ,平成25年6月に放送コンテンツの権利処理の効率化・迅速化に向けて必要な取組等が取りまとめられたところでございます。その詳細は,中ほどに抜粋しております資料をごらんいただければと思います。
 また,その図の下に参考として記載しておりますが,権利情報の集約・整備に関する民間における取組として,著作権情報集中処理機構や日本複製権センターにおいて,権利情報管理のための取組が行われているところでございます。また,デジタル時代の著作権協議会では,デジタルコンテンツ流通における情報管理,オンライン手続を容易にするための共通ID体系であるCCD-IDを策定し,その活用を推進しているところでございます。
 (4)検討事項といたしましては,より円滑な権利処理に向けてどのような取組が考えられるのかと記載させていただいております。
 最後に,20ページをお開きください。電子行政オープンデータの推進につきましても整理させていただきました。
 (2)現状等については,政府のIT戦略本部の下に置かれました電子行政オープンデータ実務者会議におきまして,各府省がホームページなどで公開しておる文書などの各種情報,例えば脚注12で記載しておりますように白書や防災・減災情報,地理空間情報などが想定されておりますが,こうした国が著作権者である公開データの取扱いについて,ガイドラインなどを策定し,二次利用を制約する具体的・合理的な根拠などがあるものを除きまして,二次利用を原則として認める方向で検討がされているところでございます。点線の枠囲みの中では,電子行政オープンデータ戦略を書かせていただいております。
 21ページの枠囲みの中では,電子行政オープンデータ推進のためのロードマップを記載させていただいております。
 また,22ページ以降の枠囲みでは,二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)の案を記載させていただいております。
 二次利用を促進するルールと著作権との関係につきましては,23ページ目の下線を引かせていただいておりますところをごらんいただきたいのですけれども,ガイドラインの中では「国が著作権者である著作物については,広く二次利用を認める形で,あらかじめ著作物の利用に係る考えを表示する。当該表示については,できるだけ分かりやすく統一的なものとする」とされているところでございます。
 長くなりましたけれども,本小委員会における検討が考えられる課題例につきましての説明は,以上でございます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 それでは,ただいま事務局から説明していただきました今後,検討が必要な課題例も含めて,今期の本小委員会での審議すべき事項について意見交換を行っていただければと思います。御意見等がございましたら,どうぞお出しいただければと存じます。先ほど申し上げましたように,親委員会のメンバーの方々には,同時にこの法制・基本問題小委員会の中に入っておられる方もおいでになるわけでございますので,是非。山本委員,どうぞ。

【山本委員】

 これは質問なんですけれども,ここに記載されている検討事項はまさにやるべきことだは思うんですが,具体的にどういうふうに進めるのか,検討の進め方ですね。どういうふうに考えていくべきかなどと課題が書いてあるんですが,その考え方についての案,答えのメニューみたいなものは,事務局の方で作成されて,この場で議論の俎上(そじょう)にのせるという進め方をお考えなのかどうか,その辺をお聞かせください。

【土肥主査】

 では,菊地さん,どうぞ。

【菊地著作権課課長補佐】

 今後の議論の進め方にも関係してくるところだと思いますけれども,本日,御紹介させていただきましたのは知財政策ビジョンという非常に様々な課題が列挙されているものでございまして,また,それぞれの課題についても非常に難しい問題がいっぱいあると理解しております。今後,議論を進める上では,全てを一緒に議論していくのは難しかろうと思いますので,まずどのような課題を議論していくのか,本日の委員の皆様方の御意見もお伺いさせていただいた上で,また主査と御相談させていただいて資料を作らせていただきたいと思います。ただ,どのような方法であるかや,どのような考え方であるかなど,解決策につながるようなものをお示しできるのかは課題によっても変わってくると思いますので,主査と相談させていただきながら議論のための資料を出させていただきたいと思います。すみませんが,今日は,まずは御意見をお伺いさせていただければと考えております。

【土肥主査】

 よろしゅうございますか。
 ほかに,もちろん御質問も含めて結構かと思いますが,御意見を頂戴(ちょうだい)できればと思います。上野委員,どうぞ。

【上野委員】

 この小委員会は知的財産政策ビジョンで示された課題について検討することになっているようなのですけれども,この知財政策ビジョンには非常に多様かつ多数の課題が盛り込まれておりますので,これに対応するのはなかなか大変ではないかと思っておりました。ですけれども,この資料3-2を拝見いたしますと,そうした諸課題が大変適切に整理されておりまして,これは今後議論を効率的に進めるために結構なことだと感じております。
 もちろん,いずれの課題も重たい課題であることは間違いありません。ただ,今日は第1回ということですから,そうした個別の問題に立ち入るというよりは,今期の検討をどういうふうに進めていくのかという点がどうやらポイントとなるようですので,私などが申し上げるのは甚だ不そんなのですけれども,若干の意見を申し上げたいと思います。
 まず,資料3-2に掲げられました諸課題の中でも,課題例1「クラウドサービスやメディア変換などの促進」は特に重要だろうと思います。と申しますのは,この課題は,先ほども御紹介がありましたように,主として権利制限の一般規定に関して検討した平成23年1月の文化審議会著作権分科会報告書でも取り上げておりまして,このとき既に「クラウドコンピューティングの進展等に伴う問題については,関係者の要望も強いことから,早期に検討する必要があると考える」とまとめられていたわけであります。その後,苗村先生を座長とする委託調査研究も行われまして,これに関して問題となる著作権法30条や「公衆」概念,あるいは利用行為主体の認定について有益な検討がなされました。これ自体もちろん大変結構なことではあったかと思いますけれども,そこでも,なお検討を進めることが適当である,とされていたわけであります。
 著作権法30条につきましては,その後,平成23年度の法制問題小委員会でも取り上げられまして,私自身も,メディア変換であるとか自炊代行といったことを例に挙げて,30条の諸問題,すなわち柱書,1項各号,2項,附則5条の2といった点について問題提起をいたしました(平成23年5月11日)。その後,小委員会では,ヒアリングが行われるなどしましたが,最終的に「論点の整理」が行われたにとどまります。
 このように,クラウドサービスやメディア変換に関して,とりわけ30条問題につきましては,かねてから審議会における検討対象となってきたわけですけれども,必ずしも具体的な方向性を得るには至っておりません。
 そのような中,先ほども御紹介がありましたように,知的財産戦略本部あるいは産業競争力会議において,クラウドサービス推進のために著作権法上の環境整備を具体的に進めるべきとする御要望が,なお強く示されているようであります。
 その意味では,この問題について,本当に対応が必要だというのであれば,そろそろ何らかの具体的な方向性を示す時期に達しているのではないかと私は思います。
 もちろん,これまで何も対応していなかったというわけではありませんで,既存の権利制限規定の中にも適用可能なものがあり得ようかと思いますし,また,とりわけ昨年の著作権法改正によって設けられました47条の9の規定は,こうした問題に対しても一定の意義を持っているだろうと思います。
 ただ,実際のところ,この1年間だけを見ましても,私の知る限り,諸外国にも新しい動きが見られますし,日本国内にも様々な新しいサービスのアイデアがあるのではないかと思います。このように,クラウドサービスが将来の発展可能性を秘めたものだとすれば,これを促進すべく,可能な範囲で事前の措置を講じておくことが,我が国における「新たな産業の創出及び拡大」を志向する知財政策ビジョンの実現にとって重要なのではないかと思います。
 そういう意味で,この課題例1は,――もちろんこれに関して様々な御意見があることは承知しておりますけれども――,それがどのような方向になるにせよ,目下,早急な対応が求められていると言ってよいのではないかと思われます。
 もちろん,そこでは,「クラウドサービス」としてどのようなものを想定するのか,どこまで具体的に想定できるのか,すべきなのか,といった点も問題になり得るところではありますけれども,最新の状況がどうなっているのか,まずは現状を踏まえた上で――これは関係者のお話をお聞きするということになるのかもしれませんけれども――,より立ち入った検討が進められてしかるべきではないかと思います。
 ただ,クラウドサービスに関して,例えば30条の見直しという方向性になるといたしますと,先ほど河村次長からもお話がございましたように,バランスの観点も重要でありますので,そうした権利制限だけではなくて,併せて権利保護や権利者等への対価還元という観点も同時に考えられてしかるべきであるように思います。
 その意味では,課題例の中でも課題例2の「クリエーターへの適切な対価還元に向けた制度整備」を課題例1と併せて検討することが,一つのアイデアにはなるのではないかと私は思います。
 たしかに,我が国における現在の私的複製補償金制度は,一定の私的なデジタル録音・録画に限られたものでありまして,直ちにクラウドサービスに直結するというわけではないとも言えるのですけれども,いずれも30条の問題であることは間違いありませんし,私的複製をめぐる権利制限と補償金というのはまさに表裏の関係に立つと言えます。
 もちろん,補償金制度を取り上げるということにつきましては,これまた非常に様々な御意見があろうかと思います。実際のところ,先ほども御紹介がありましたように,この問題が,かつての私的録音録画小委員会など,ずっと以前から盛んに議論されていながら,必ずしも十分な方向性を見いだすことができないまま今日に至っているというのは,それが簡単な問題でないことを物語っていると思います。
 ただ,知財政策ビジョンなど,最近の議論を見ておりますと,――これは私だけの印象かもしれませんけれども――,補償金制度などの具体的な手段の在り方はともかくといたしまして,「クリエーターへの適切な対価還元」というゴールについては一定のコンセンサスがあるのではないかという印象を受けております。
 もちろん,知財政策ビジョンにおいて,あえて「権利者」ではなく「クリエーター」という言葉が用いられていることにつきましては,――ちなみに,現状の補償金請求権者は自然人クリエーターでない著作権者や実演家,あるいはレコード製作者も含むわけですが――,ここであえて「クリエーター」という言葉を用いることによって,知財政策ビジョンが特に自然人クリエーターを意識したものなのかどうか,それは定かでないのですけれども,いずれにしましても,「クリエーターへの適切な対価還元」という目的については意見が一致した上で,そのためにどのような手段がふさわしいか,ということが焦点となっているように私には感じられるのです。
 手段の在り方ということにつきましては,諸外国,とりわけヨーロッパにおきまして,いわゆるlevy systemを今後どうしていくのかという点をめぐって,最近,非常に様々な議論が展開されておりまして,そこでは,例えば税制の活用といった,場合によっては著作権法を超える手段も含めて,いろいろと新しいアイデアが見られるところであります。
 もちろん,ヨーロッパの制度をそのまま真似(まね)すればいいというものではないというのはその通りですけれども,我々がどのような方向に向かうにせよ,そして,最終的にどのような手段を採用することになるにせよ,我が国もそうした諸外国の状況を広く参照しつつ,かつ,必ずしも既存の制度にとらわれない柔軟な発想で,補償金制度の再構築を検討することが重要かと思います。そうすると,そうした議論の中から,ひょっとしたら我が国に適合的な新しいアイデアが出てくることも期待できるのではないかと思っております。
 とはいえ,そうした検討はかなり細部にわたることになると考えられますので,従来よりも規模が拡大したこの小委員会という場がふさわしいのか,あるいはワーキングチームを設けるなど,何らかの工夫をする必要があるのかは検討を要しますけれども,課題例2は課題例1とともに積極的に検討を進めるべき時期に達しているのではないかと私は考えております。
 もちろん,孤児著作物問題など,その他のテーマも重要なのですけれども,1と2は,いずれも積年の課題でありながら具体的な結論が出ておらず,また著作権法30条という,利用促進と権利保護というバランスのとれた表裏の関係にある規定に係る問題であることから,今後,本小委員会の議事におきましては,差し当たりこの2つをセットにして重点的に議論することが一つの選択肢になり得るのではないかと考えております。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 ほかに御意見を頂けますか。では,椎名委員,お願いします。

【椎名委員】

 私も分科会の席でも発言したんですが,今,上野先生からありました課題例1と2は関連して議論されるべきだという御意見に対して,全く同感でございます。とりわけ私的録音録画補償金制度については,7ページのグラフを見ていただくと,ブルーが録音で茶色が録画でございますが,録音は恐らくピーク時の100分の1程度にまで下がっているし,なおかつ録画についても,裁判の結果,極めてゼロに近いところまでいってしまっていて,この制度が機能していないことは誰の目にも明らかだと思います。諸外国においても,日本のように新たに対象機器が指定されるということが行われなかった結果,裁判で政府が権利者に対して損害賠償を命じられるといった事件がオランダで起きたり,あるいは伝統的な補償金の制度の対象になっていないスマートフォンやタブレットについて,それに対してコンテンツに係る税金を課すべきではないかというような考え方がフランスで紹介されたりと,世界的に見ても,この問題が右に行ったり左に行ったりしていることは確かなことでございまして,やはり日本においても,もう10年来,議論をしていると思いますけれども,それについて一定の結論を導くべきときに来ているんではないかと思います。
 そういう意味から,クラウドサービスというのを眺めますと,上野先生のおっしゃり方と逆になるんですが,ユーザーの私的複製に代替するようなサービスもたくさん用意されているということで,これらは,やはり不可分に議論されるべき問題なのではないかと思います。是非,この期でこの問題をすっきりと解決していただけたらなと思います。
 それと,ちょっと違う話なんですが,放送コンテンツの流通の円滑化に関連して,私は,aRmaという放送番組の二次利用を促進するための団体に関与しております。様々な乱暴な意見が数年前に出まして,放送番組の利用を円滑化するためには,一定の権利制限のようなものが必要なのではないかというような話も出てまいりましたところで,いやいや,民民での一定の努力でできるんですよということで,このaRmaということを始めてきているんですが,そこでやはり一番問題になってくるのは,現状のコンテンツというものが様々なマルチユースを前提に作られていないために,先ほどCCD-IDのことが出てきましたけれども,コンテンツのメタデータを生成するメカニズムがきちんとできていないんですね。そうすると,権利処理がそこの負荷を負ったまま進めなければならないということがありまして,これをある程度,国が後押しして,コンテンツに係るメタデータの整備をきちんとやるふうにしていくと,更に権利処理が円滑化するということが考えられると思いますので,この点も是非御議論いただければ有り難いと思います。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかに御意見ございましたら,お願いいたします。

【久保田委員】

 今のところにも関連するんですけれども,17ページの四角括弧の中の3ポツ目,「取り組むべき施策」の一番下の「コンテンツのグローバルな流通と適正な保護を促進するため」という,ここのところなんですけれども,我々,権利侵害対応も含め,また新しいライセンスビジネスをやるためと,まず権利の帰属が明確で,誰が著作者なのかと,いつ,それは著作物として公表されたのかと,こういったことが全て,このコンテンツIDの付与のところやタイムスタンプの技術を利用したり,そういった既存のいろいろな技術を組み合わせることによって,もちろんデータベースの整備というところも絡むんですけれども,いずれにせよユーザーが作っていく,二次的な創作も含めて,いつの時点でどこに情報が発信されたのかと。誰がその著作者なのかについては,どうしても技術的なものを取り込んで,無方式主義ですから,その掛け合わせの中で,裁判所に持っていったときに帰属が明確になるといいますか,信憑(しんぴょう)性が担保されるところでございますので,法律上の無方式の問題とは別に,そういった権利主張をし,なおかつライセンスの契約が成立するための根拠として,こういった徴収,分配システムの整備となっておりますが,その前提としては,これは専ら個人著作物の問題にもなろうかと思いますけれども,誰が,いつ,どこで情報を発信したのかというところを何らかの形で具体的に検討し,さらに,できれば,そういった環境を国の方が担保してくれると。それは間違いなかろうと。ここは国の方というとあれなんですけれども,民間の中でのオンブズマンみたいなものなのが,一応,そういうものを保障することによって,例えば中国や近隣諸国で日本のコンテンツが侵害されたときも,その情報が確かに日本のコンテンツであるよというところの橋渡しを,何らかの形で知恵を出せないかなと思っております。
 これについては,ちょっと悩ましいところなんですけれども,是非,何らかのアイデアが出てくるようなアプローチがされると幸いですし,私の立場でいいますと,デジタル時代の著作権協議会,CCDですが,権利問題研究会の主査をずっと務めながら,この問題についてはこつこつとアプローチをしておりますので,是非,皆さんのお知恵を借りたいと思っております。また,椎名委員もCCDビジネス著作権研究会の主査をされていまして,同時にこれを議論していこうというお話になっておりますので,是非お知恵を貸していただきたいと思います。

【土肥主査】

 ありがとうございました。それでは,梶原委員,どうぞ。

【梶原委員】

 5ポツの「取り組むべき施策」の2つ目のポツの後半に関わることですけれども,NHKのラジオは,今,「らじるらじる」というサービスで,ラジオのネットによる同時配信をやっています。ところが,日本の著作権法上,伝送手段によって権利関係が違ってくるため,その権利処理の円滑化の点でかなり支障があるということでございます。特に音楽の分野では,放送はAという権利者団体,ネットになるとBという権利者団体,あるいは個人が管理しているといったことがございます。見る人,聴く人にとっては同じ放送番組なのに,権利処理ではそれぞれ異なるということがございますし,商業用レコードでいうと,放送の場合は報酬請求権,ネットだと許諾権ということになってきます。日本においては著作権法上,放送権,送信可能化権という別々の権利ということもあって,権利処理の円滑化の点でかなり支障があるんじゃないかと最近,感じております。諸外国なんかを見ると,結構,ラジオのウェブキャスティングなんかが盛んに行われていますけれども,日本においては,その辺が解決されないと,円滑な権利処理という点からも放送番組のネットによる同時配信がなかなか進んでいかないんじゃないかと懸念を持っているところでございます。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかにございますか。道垣内委員,お願いします。

【道垣内委員】

 2つあります。1つは全体に関わることでございまして,ここに示されているような立法事実というんでしょうか,立法を必要とする社会的なニーズがあるとすれば,是非,必要な措置を講じるべきだと思います。その場合,時間軸が大切ではないかと思います。短期的に,中期的に,あるいは長期的に対応すべきものを区分する必要があり,また,長期的といっても3年くらい,つまり,できれば1年,2年,3年ぐらいを目途に措置を講ずるようなペースでやらないと,この時代にはついていけないんじゃないかと思います。この分科会として,幾つかの問題については1年以内に何らかの案を示すという目標をたてるべきではないでしょうか。それくらいのスピード感が必要なんじゃないかと思います。
 2つ目です。デジタルな社会において必要な課題についての御指摘が多かったわけですが,3番目の裁定制度について余り触れられていないように思います。そこで,ここで,これを申し上げておかないと,これは重要じゃないと後回しにされてしまうと困りますので,使用料部会に関係している立場から申し上げたいと思います。使用料部会での作業に照らして申しますと,裁定制度については特にそうなのですが,10ページにあるような状況なわけであります。
 この数字が本当の社会での孤児著作物の利用の実態を反映しているのかというと必ずしもそうではなく,幾つかの会社や団体がコンプライアンスの意識が高くて,このような手続を面倒だけれども踏んでいる。そうでない人たちもきっといるのではないかと思います。そうすると,制度自体がアンフェアなことを生んでいるかもしれません。著作者不明と扱うためには「相当な努力」が確かに必要だとは思いますけれども,明治の時代に出版された本でも,書いた人がどこにいるか分からない,いつ死んだか分からないとすると,死後何年経過しているか分からず,この裁定制度を使わざるを得ないという非常に不合理なことになってしまいます。著作権の保護期間とは別の期間を設けて,相当な努力のレベルを下げてもよいタイミングを示してあげるという必要があるのではないかと思います。つまり,公開からある一定の期間を過ぎれば,ある程度の努力はする必要がございますけれども,それで著作者が分からなければお金を払って使ってよいという扱いを認めてよいのはないかと思います。
 そして,お金は,もっと有効に使えるんじゃないかと思います。国に供託するのではなく,著作権全体のために使えるようなお金としてよいのではないかと思います。そういう制度にすれば,孤児著作物の利用にかかるお金をたくさん集めるインセンティブが生まれるのではないかと思います。そのファンドを使って著作権についての意識を高め,あるいは外国での著作権侵害対策をとるとか,いろいろなやり方があろうかと思います。以上のことから,是非この3の項目についても早急な対応を取っていただければと思います。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。先ほど挙手された,今子委員,どうぞ。

【今子委員】

 今子でございます。今回,法制・基本問題小委員会となりまして,立法の専門家ではない私のような企業の人間もメンバーに加えていただきました。現在,著作権を取り巻く課題が,大きなものからささいなものまで目まぐるしく現れてきていますし,そこに関わるプレーヤーも多種多様です。そうしたことも当然で,インターネットを取り巻く技術の進展に伴い,次々と新しいプレーヤーが出現し,ドッグイヤーと言われる以前にも増して,サービスの展開のスピードが増しているという背景がございます。
 資料では,課題例1として,新たな産業の創出や拡大を促進する全体的な法的環境の整備とありますが,このスピード感の中で課題を関係しようとするとき,立法により白黒はっきりつけていくやり方というのが適さない場合もあるのではないかと思い始めています。そもそも法律ができ上がるまでに何年も掛かってしまって,法律ができ上がったころには,もはや環境が大きく変わってしまっているということも生じ得ますし,また,硬直的に白黒はっきりつけてしまうということによる弊害も,ひょっとしたらあるかもしれません。著作権者の利益を守りながら,次々と発展していく技術による利便性を世界に遅れることなく日本の利用者が享受できるようにするためには,ステークホルダー間の話合いと解決のスピードを加速させていく必要があります。
 そして,規制の在り方も,マルチステークホルダーによる話合いによって,システムとして課題解決を行うというソフトロー的な規制についても検討されるべきではないかと考えております。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。それでは,野原委員,どうぞ。

【野原委員】

 野原です。私は3点申し上げたいと思います。
まず,1点目は,冒頭での次長の御挨拶(あいさつ)にもありましたけれども,安倍内閣の3本の矢の1つの成長戦略は,新しい産業の創出や拡大を重視しています。その点がこの委員会のテーマにも反映されています。その精神を考えると,資料に挙げられた数多くの検討課題をいかにスピード感を持って1つ1つ結論を出し,実行に移していくかが重要だと思います。なかなか難しい課題も見受けられますし,進め方として,概念からじっくり検討しなくてはいけないものもあれば,実務的に,具体的な内容を詰めて速やかに実行に移していくべきものもあるかと思いますので,全体としてスピード感が出るように,どれをどう検討していくのかを冒頭に決めることが重要ではないかと思います。それが1点目です。
 2つ目は,資料3-1,3-2,どちらも冒頭で「デジタルネットワーク社会に対応した環境整備」ということを挙げています。この資料では,クラウドとソーシャルがキーワードとして取り上げられております。「クラウドサービス」では,著作物あるいは情報を書き込みアップロードしている人と,物理的なサーバーを運営している人が別の人だということが問題のポイントだと思います。これまで事業者サイドにあったサーバーが,サーバーを運営管理するクラウドサービス事業者のところにあるために,新たな課題が出てきています。また,「ソーシャルサービス」では,クリエーターがプロでなく一般の人であり,複数の人々が書き込み,共同制作する形でできあがっているので,どこまでが一つの著作物なのか,著作権の捉え方が変わってくると思いますし,引用する,コピーするといった概念も不明確だと思います。公開するというのも,誰に向かって,どこまでということを,深く考えずに自由にやり取りできることこそ,ソーシャルサービスの特徴かと思います。
 そういった点で,この2つが基本的問題,課題と認識されていると思います。更に加えて,「ビッグデータ」もキーワードになっております。大量データがどんどん生成され,多方面に活用される枠組みができてくる。データ解析の方法も次々新しくなっていきます。
 言いたいことは,デジタルネットワーク社会の変化は著しく速いので,常に新たな課題に対応していける柔軟な検討体制をどうやって構築するかが重要だと思うということです。
 3点目は,最後に資料3-2の20ページ以降に電子行政オープンデータ推進の件が書かれていますが,私は,電子行政オープンデータ戦略を決定した,高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部,いわゆるIT総合戦略本部の本部員として,この策定に関わりました。その立場から言えば,この政策をスピード感を持って実現していくことが重要ですので,IT戦略本部や内閣府の動きとうまくリンクを図っていただいて,適切に素早く対応していただくようにお願いしたいと思います。
 以上,3点です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかに。畑委員,どうぞ。

【畑委員】

 畑でございます。私からは2点ほど申し上げさせていただきます。
 1点目は,資料3-2に掲げられております多くの課題例のうち,2ポツの「クリエーターへの適切な対価還元」について検討を進めるべきではないかという意見でございます。
 これにつきましては,先ほど椎名委員などからも出ておりますけれども,この3-2の5ページ以降でまとめられている経緯のとおりでございまして,平成18年度の私的録音録画小委員会では,まさに結論は出なかった。それ以降,録画についてはダビング10の導入あるいは訴訟等の動きがあり,ここまで来ているわけですけれども,とりわけ録音については,この平成18年度の小委員会以降,何も検討がされていない。その状況の中,7ページの(3)「近時の動き」にまとめられているとおり,まさに現にユーザーに利用されている機器と対象機器の指定が全く乖離(かいり)してしまっている。そのため,徴収額が激減しているという状況でございます。その部分につきましては,制度の内容若しくは制度そのものが,今,機能不全に陥っているということでございますので,今年度の検討で方向性を是非,見いだすべく,ここについては検討をすべきではないかと考えております。
 もう一つは,どのテーマというよりは,今後の全体的な検討の進め方に関する意見,お願いでございます。先ほどより,クラウドサービスなど皆様の御意見が出ておるところでございますけれども,どういったところが課題で検討していくのか,最初の段階で明確にしていくことが,制度の検討において必要ではないかと思っております。
 特にクラウドについては,文化庁様の検討報告書においても,ある程度,類型化をして検討されたという経緯がありますけれども,そこからもう時代は動いております。まさに許諾に基づくビジネスとしてのサービスと,ビジネスにおける著作権制度上の扱いがグレーではないかとされるサービスとのせめぎ合いということかと思いますので,どこの部分を検討するのか,それについては,今ビジネスをやっていらっしゃる方からのヒアリングであったり,あるいは課題を感じていらっしゃる関係者からのヒアリングということも重要だと思います。また,5ポツの「放送コンテンツの二次利用の促進等」ということにつきましては,まさに今,集中管理で既に対応されておる部分,海外展開については,まさに今,総務省等の場でこれから取組を進めようとしている部分,つまり放送コンテンツの二次利用の形態に応じて,既にできている部分,これからやろうとしている部分がございますので,どこについて支障があるのかを明確化にするヒアリング等を,是非まず行っていただきたいと思います。
 以上でございます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかに。華頂委員,お願いします。

【華頂委員】

 冒頭の上野委員,それから椎名委員と全く同意見,同感なんですけれども,その後,皆さんもおっしゃるように,デジタル技術は日々,いや,時間単位で革新していると思います。今このときも,録画で言えば利便性の高い方法で高精細な映像が複製をされているという現状がきっとあると思います。このような状況を考えれば,現時点で非常にシュリンクしているクリエーターへの適切な対価の還元に向けた制度,これの整備の検討,これはスピード感を持って実行しなければいけないと思っております。そして,またデジタル技術の革新ということを鑑(かんが)みれば,クラウドサービスと,これを念頭に置いたデジタルネットワーク社会に対応した環境の整備,これも同じくスピード感を持って検討しなければいけない非常に重要な課題だと思います。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかに。山本委員,お願いします。

【山本委員】

 意見なんですが,この資料3-2に挙げられている課題は,いずれも検討すべき課題だとは思うんですが,検討の仕方として,最初のクラウドサービスについての問題は,解決の方向性を出すためには専門家の知恵やアイデアが必要な問題だと思いますので,こういうものはワーキングチームで知恵を出して一定の解決方法を出してもらう。それから,こちらの小委員会で議論するのに向いているんじゃないのかなと思います。
 次のクリエーターへの適切な対価還元も補償金の問題なんですけれども,これは解決の方向は,どちらかというと,えいやで,利害の対立する人たちの利害の調整の課題ですので,この場でやるのがいいのかどうか分かりませんが,別にそのワーキングチームを作ってやるような問題ではないと思います。
 それから,裁定制度は,いろいろな方の知恵を出せば,いろいろな方向性が出てくるんじゃないのかなと。例えば,先ほど道垣内委員のお話がありましたように,いろいろな問題があるんですが,発行後何年かしたら,著作者が分からない場合には死亡したという推定制度を設けるとか,いろいろなアイデアがあるのではないのかなと思いますので,そういうアイデアを基に方向性を出していくという意味で,ワーキングチームを作って議論するのに向いているんじゃないのかなと思ったりします。
 4番目のライセンシーの保護の方向も,割と,えいや,じゃないのかなと。何でやらないのかなと思ったりするぐらいの問題ですので,答えの方向性を出すのは別に難しい話じゃないと思うのですが。
 5番目の放送コンテンツについては,私,よく分からないのですが,現状の民間での取組であったり政府での取組があったりする,それを基にして著作権法を改正したりして,どういうふうにサポートできるのかというのはアイデアが必要です。しかし,中身がよく分からないので結論は分からないですが,場合によっては,知恵を出すということが必要になるかもしれませんので,そういう場合には,ワーキングチームとかという形で議論をしていく,それを基にして小委員会で議論をするというのが適切なのかもしれないと,今のお話を聞いていて思いました。

【土肥主査】

 ありがとうございました。龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】

 幾つか御提案を頂いている中で,比較的,テーマとして取り上げやすいという点でいえば,2番のクリエーターへの適切な対価還元に向けた制度整備による私的録音録画の見直しなり代替案の問題と,裁定制度の見直しなどは進めやすいテーマなのではないかと思います。
 特に前者のクリエーターへの還元問題は,椎名委員はじめ,皆さま御指摘のとおり,今回の東芝事件の判決でとどめを刺されたといいますか,ほぼ制度として絶滅したというに近い状況ですし,何よりも私的録音録画補償金という制度の仕組みが,多々御指摘が出ましたとおり,現在ユーザーが利用している端末機器と全く乖離(かいり)しておりますし,今後,まさに展開されようとしているクラウド型のビジネスと全くそぐわない時代遅れのものになってしまっていることは余りにも明らかだと思います。
 例えば,かつて貸しレコードという新たなビジネスが出てきたときに,それに応じて法整備がなされたわけですけれども,今,まさに起きようとしている事象もそれに匹敵するか,あるいはそれ以上のインパクトのあるビジネスモデルの変化,移行ではないでしょうか。これに対して著作権法制として等閑視し対応も検討しないということは,過去,私的録音録画補償金制度を設けたときのバランス感と比較しても,問題があると思います。
 したがいまして,私的録音録画補償金は,見直しの検討がなされてきたが結論が出なかったということでありますけれども,その後の事態もわずか数年でまた変わり,状況は違ってきていると思いますので,この問題はプライオリティーが高いかと思います。
 この問題はかなり力わざといいますか,思い切った提案なり,法的な法技術を提示しないと,なかなか整理がつかない問題なのではないかと思います。貸しレコードのときには,貸しレコード事業という業態が出てきて新たな問題が生じたわけですが,現状のクラウドビジネスを行っている大きな事業者が存在していて,こういう方々がいわば貸しレコード業者に相当するような存在であって,こういう事業者との利益調整を図ろうとしたときに,法技術として,どのような方法がいいのか,例えば報酬請求権制度を新たに設けるのかなど,相当ドラスティックなことまで視野に入れた検討を行う必要が出てくるのではないか,という気もいたします。
 あるいは,先ほどヨーロッパの状況として,ヨーロッパでは文化振興税のような制度もあるというお話も出ましたが,これもまた視野に入る問題ではないかと思います。税ということになりますと,この審議会の守備範囲との関係で問題があるにしましても,例えば,携帯電話サービスを主宰してされているキャリアも関係者になる可能性もあり得る。そういった事業者の潤沢な利益の一部をいわゆるクリエーターという,文化を生み出す担い手の方々に何らかの形で還元を図るという方向性が課題として浮上してくるように思います。それは法的制度の整備の問題だと思いますので,これは力わざになりますが,この審議会や小委員会の場で議論するにふさわしい問題だろうという印象を受けます。
 次に,裁定問題についても,この制度をよりブラッシュアップして使い勝手を良くすると意味で,やはりこの委員会で取り扱うテーマとしてまさにふさわしい問題だろうと思います。
 放送コンテンツの二次利用の促進の問題については,総務省・経産省でまさに今般,行っているわけですけれども,その中で話題に上ってきたのは,従来,実演家の権利処理という問題が放送コンテンツの流通に対して阻害要因となっているという話が当初言われていたわけですが,次に俎上(そじょう)に載ったのが原盤権で,この原盤権の処理の問題が厄介だということで,今,まさに取り組んでいるわけですが,前者,実演家の問題については,18ページにあるaRmaという組織を立ち上げて手当をした。そうすると,次は,原盤権についても,実演家の権利処理におけるaRma相当のものが,あるいは検討されていいのではないか,という問題が出てくることになります。海外番版の際の原盤権処理の問題については,まさに実証実験をこれから行うわけですけれども,そういった問題のありようとして,どのようなものがふさわしいのか,あるいはこの種の問題にとって,集中権利処理の枠組みがふさわしいというようなことがあるのであれば,適切な権利処理団体の在り方を検討したり,今の法制では合わない部分があるのであれば,集中管理に関する法制度の在り方を検討するということも,あるいはその視野に入れる必要があるのかもしれません。
 以上,3点ほど指摘させていただきました。

【土肥主査】

 ありがとうございました。椎名委員,もう一度,お願いします。

【椎名委員】

 山本先生から,補償金制度については,利害関係者での調整が主たる要素となるというお話があったと思うんですが,文化庁の審議会での検討経緯も全くそのままなんですね。利害関係者,象徴的にメーカーと権利者がいて,その人たちの対立が非常に先鋭化した結果,結論が出ませんでしたということでずっと来ているわけですけれども,上野先生も御指摘になったとおり,その利害関係者が,もうその2つの利害対立だけでいいのかどうか,クラウドサービスも含めたときに,新たなステークホルダーが出てくるんじゃないですかというところで,どういうグラウンドデザインを描くのかは,パワーバランスで決めていくべき問題じゃなくて,著作物の利便性と権利の保護を大体どういう落としどころで作っていくかも議論だと思うので,僕は,利害調整ということだけでは済まないんじゃないかなと,そういう観点を,むしろもっと深めていった方がいいんではないかと思います。

【土肥主査】

 ありがとうございました。末吉委員,どうぞ。

【末吉委員】

 私も1番と2番が非常に重要な課題というか,急ぐ課題ではないかと思います。やり方については,まだアイデアがないんですが。これらは,一番最初に取り上げるべきではないかと思います。ただ,いずれも,立法事実のすくい上げがすごく難しいと思います。1点目は,以前も十分に検討されていると思うのですが,今回,またいろいろな声が上がっている。その声を立法事実としてどうすくい上げられるかが重要です。2番目はいろいろな利害対立もあるでしょうし,新しいステークホルダーというものもあると思うんですが,そういう方々から上手に立法事実をすくい上げて,いい制度設計をして立法につなげることにトライするのが,この小委員会の課題ではないかと思います。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかに。大須賀委員,お願いします。

【大須賀委員】

 先ほど道垣内委員から時間軸という話が1つありまして,また今子委員からは,どこまで立法でやるべきなのかというお話があり,更に椎名委員からは権利のメタ処理という話がありました。これらに関連して私の考えを申し上げたいと思います。
 現行の著作権法は,基本的に著作権者が著作物を手から放した後のコントロールができないという前提でいろいろな制度できていると思います。そのために複製権などのいろいろな支分権を作って,コントロールできないものを支分権でコントロールするという制度になっていると思います。しかし,デジタル的な著作物の場合には,最初の段階で,著作権者は,自ら著作物に関する情報を,その後,どこまで,どう使用できるかということをコントロールできると思います。
 そうすると,デジタル的な著作物については,今までの著作権法とは違った考えができるのではないかと思うわけです。つまり,著作権者が市場にリリースするときに,自由に使用条件を設定できる,そこで自由に設定した使用条件で自由に競争すると,こういった発想で考えれば,著作物の利用範囲の調整を著作権法でどこまで行えばいいのかについては,もう一回,考え直すべき問題があるのではないかと思います。このようにシンプルに考えれば,著作権法の立法の在り方は,もう少しすっきり考えられるのではないかという感じがしておりますので,私としては,そういう方向での議論,つまり議論の整理をしてみるというのも1つ方向として考えられるのではないかと考えております。

【土肥主査】

 ありがとうございました。浅石委員,どうぞ。

【浅石委員】

 今のお話の中で,1番と2番の問題ですけれども,いわゆるクラウドと補償金というのは非常に似ているようで全く違うものだろうと,私どもは考えております。
 まず,クラウドについては,法的なものを考えるというよりも,もう基本的に契約でいっちゃうんだ,できちゃうんだとJASRACとしては基本的に考えておりますし,今,既にそういう話をしているわけでございます。しかも,この三木谷さんが言っているように,自分たちに来るなというのが分かっているような性質のものでございますので,こういった部分を法的な部分で何か処理をしようとなりますと,どんどん,どんどんその処理が遅れていってしまいますし,新たなサービスが出た段階で追いつかないのは目に見えている。暫定的な許諾を出していって,その間で新たなものを検討していくような,基本的には話合いの中で,契約の中で決めていく問題だろうとは思っています。補償金の問題は,完全に制度自体が壊れてしまった内容でございますので,一からどうやって考えていくのかというところでございまして,補償金とクラウドをセットにするという考え方については,何か基本的に違った考え方ではないかなと,今,考えてございます。
 以上でございます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかにございますか。椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】

 クラウドと一口に言っても,いろいろなクラウドがあるわけですね。ネット上にコンテンツが用意されていることをもってクラウドとおぼろげに言うんですが,今おっしゃったことは,同じクラウドでも,許諾の世界に持ち込めるものと,許諾の世界に持ち込めないもの,トレーサビリティーの違いも含めて,そういう差異がある。許諾の世界で処理できるものまで含めて補償金の世界に持ち込むのは違うでしょうという御意見だったと思うんですが,クラウドと言われているものの中身をしっかり吟味して,その中でも,そういう世界もあるし,そういう世界でないものもあるという議論を,まさにするべきなんだと思っていて,何もかも一緒くたに議論をするという趣旨ではないと思います。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかにございますか。よろしゅうございますか。じゃあ,もう一度。

【龍村委員】

 補足ですが,これは親会でも若干申し上げましたが,例えば音楽で,クラウドサービスとして,定額制聴き放題サービスというものが今,欧米で主流になっている。日本にはまだ本格的には展開がまだなわけですが,これが実際,日本に上陸した場合には大きなインパクトがあって,いわゆるクリエーターの利益が100分の1になっていくような出来事が,まさに起きようとしていると思います。
 従来の私的録音録画補償金の時代というのは複製,コピーの問題だったわけですが,今はそうではなく,ストリーミングサービスが主流になっていて,コピーではない。ですので,複製権を中心にした仕組みには合わないことになってくる。そういった現象をどのように考えるか,ということがポイントになると思います。その点,補足させていただきたいと思います。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかには。上野委員,どうぞ。

【上野委員】

 先ほど浅石委員から,課題例1と2を関連させるということについて若干消極的な御意見があったかと思います。確かに,現状の補償金制度がクラウドと直ちに関係するというわけではありません。また,いわゆるクラウド型の音楽配信サービスですとか,あるいは,団体等による権利管理カバー率の高い音楽コンテンツに特化したロッカーサービスなどにつきましては,これに権利者の排他権が及ぶとしましても,確かに,権利者団体等が事業者にライセンスすることによって解決する方法があるというのは御指摘のとおりかと思います。先ほど今子委員が「ソフトロー」で解決する道もあるというような御指摘をされたように思いますが,そのことともつながるのではないかと思われます。
 ただ他方で,クラウドサービスとして想定され得るものとしては様々なものが含まれるのではないかと思います。例えば,汎用(はんよう)的なストレージサービスですとか,あるいは,権利管理カバー率の低い分野のコンテンツのロッカーサービスなどにつきましては,これに権利者の排他権が及ぶという理解を前提としながらも,全ての権利者からライセンスを得て適法にビジネスを進めるというのは,現状では困難のように思われます。
 その意味では,現在想定されているクラウドサービスというものが,そのようにライセンスで処理できるようなサービスにとどまるのかどうか,そうでないのかを見極める必要があります。もし,そうしたものにとどまらないサービスが想定されるとか,あるいはそうしたものが将来的に出てくる可能性があるとしたら,それに対して法制度上の措置を講じる必要性があるかどうかを検討すること自体は,十分意義のあることではないかと思います。
 知財政策ビジョンの中でも,「著作権の権利制限規定の見直しや円滑なライセンシング体制の構築」を図るというふうに,権利制限の見直しとライセンシング体制の構築の両方が挙げられておりまして,これは恐らくそういった状況を受けたものではないかと思われます。ですので,こうしたことを両方とも視野に入れながら検討していくことが重要なのではないかと私は考えております。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかにはございますか。井上委員,どうぞ。

【井上委員】

 先ほど野原委員から既に御発言がありましたが,オープンデータ戦略に関して私も一言,申し上げたいと思います。
 私も電子行政オープンデータの推進に一部,関わっておりまして,今般,オープンデータ化を進めるために著作権の問題も明確化していこうということで内閣府で議論をしております。オープンデータに関しては,資料3-2の20ページの脚注12にありますように,オープンデータの対象となるデータは非常に多様です。脚注では,白書,防災・減災情報,地理空間情報,人の移動に関する情報,予算・決算・調達情報などが重点分野として挙げられていますが,見ていただいて分かるように,著作権のあるものと,著作権のない完全なデータにすぎないもの,あるいはデータであっても,データベースとして著作権法上の保護を受ける可能性があるものも含まれているわけでございます。また,白書などのように,第3者の権利が混入しているものもあります。したがって,公共データのオープンデータ化を進めていくに当たっては,著作権の関係の明確化をしていくことは避けて通れない課題となっています。
 他方,利用状況,利用態様も多様です。野原委員から御紹介がありましたように,例えば気象データをビックデータとして活用していくというものも考えられますし,地理空間情報のように,重ね合わせによるマッシュアップでの利用ということが考えられる場合もあり,著作権法上の種々の問題が生ずる可能性もございます。
 今までの著作権法の考え方を淡々と当てはめて結論を出していけばいいということにもなるわけで,特に目新しい問題があるわけではないのですが,現実にオープンデータ戦略を進めていこうとすると,果たして,これは著作権法上,大丈夫なのだろうかという問題がいろいろ出てきているわけでございます。
 現在のところは,クリエイティブ・コモンズのようなパブリックライセンスを活用して公共データの円滑な利用を推進していこうという議論が内閣府で進んでおり,必ずしもこの小委員会で議論していただく必要はないのかもしれません。そういう意味で,今回の資料では「参考資料」として位置づけられたのだとの思います。ただ,考えてみますと,この小委員会での課題例として挙げられている3.の裁定制度や4.の権利の一元化,5.の放送に関する問題などは,既存の著作物の二次利用を促進していく仕組みを考えなければいけない,それは立法なのか,それともそれ以外の方策によるのか分からないけれども,そういうことを考えていこうということだと思うわけです。オープンデータの問題も,既存の著作物,――著作物性があるかもしれないデータも含め――,二次利用をできる限り円滑化していこうということですから,この小委員会の課題と関連があるということはいえます。参考資料3に今回の著作権分科会の小委員会の構成がございますけれども,出版関連,国際小委員会では扱い得ない問題ですので,扱うとすればこの小委員会ということになるだろうと思います。
 オープンデータ化はアメリカ,ヨーロッパをはじめとする先進諸国では,ここ数年で顕著に進んでおり,アメリカあるいはヨーロッパに後れを取らないためには,スピード感を持った対応が必要とされております。必要があれば,この小委員会でも適宜,取り上げていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。ほかにございますか。松田委員,どうぞ。

【松田委員】

 幾つもある中で,最初のクラウドの問題だけお聞きしたいところがあるわけです。これを議論しているときに,2ページの図を見ていただきたいんですが,この図は,そもそも従前からの議論で時々,出てきた図でございまして,ここにアップロードする1の女性の図が描かれておりますけれども,この図は,当たり前のことでありますが,この女性がクラウドサーバーを利用して,ほかの機器に自分が使う場合の図であるわけです。だから,タブレットもスマートフォンもテレビも,1の女性が使う場合の図なのであります。これは,もう委員は皆さん方承知の上でありますが,ここで今,議論が出てきたのは,クラウドサーバーを介して音楽等をストリーミングで配信して使い放題というようなサービスが海外では起こりつつあって,日本では,それがいささか遅れているのではないかと言われておりまして,JASRACでは,こういう問題については契約ベースで解決すべきことであるというような発言が既にありました。
 これは,クラウドサーバーを運営する企業と送信サービスを行うところと権利者,権利者団体が協議をしてルールを確立していけばいいわけで,まさに誰かが言っておりましたソフトローで確立していくということの1つの表れなんだろうと思います。しかし,この2つのサービスは全く違うことでありまして,1つは,まさに契約ベースで私はやるべきだろうと思いますが,この契約ベースは,恐らく団体間協議みたいなことで行われることだろうと思っています。そういう協議や契約,個々の利用者が契約を結ぶ場合におけるルール等をどのように作るかというのは,まさに著作権契約法の問題であろうと思っております。そこに論点があると考えていますが,現行,著作権法の改正として,このサービスをストリーミング配信を促進するようなクラウドサービスを著作権法上の個々の規定の検討として行うべき立法事実はないと思います。もし立法事実があるのであれば,どうしてそれが著作権法上の制限規定等を設けなきゃいけないのかを御指摘願いたいと思います。
 次に,この図のまさに最初の意味は,典型的なサービスの1つでありますが,クラウドと言いましても,実は個人のデータをストレージするサービスに関する著作権法上の問題です。これについて議論するのであれば,もうほとんど答えは分かっているわけでありまして,このサービスはできれば促進した方がいいと,みんな思っているわけであります。今までの議論の中ではですよ,もし障害があるとすれば,30条1項の1号だったかな,自動複製機器に該当するかどうかだけを検討すればいいのではないか。ないしは,このサービスが承認されるのであれば,このサービスについては著作権法上,適法だよというストレージサービスの適法性のことを,場合によっては制限規定の中に入れてもいいと私は思っています。それで解決できると思っています。それ以外のクラウドサービスについては,先ほどの例も含めまして,立法事実を出していただいて議論させていただけないかなと思います。いつもこの図だけで議論しているのは,次のサービス,次の社会を議論するにはいささか足りないように思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【土肥主査】

 ありがとうございました。では,時間の関係がございますので,山本委員で最後にさせていただきます。

【山本委員】

 クラウドサービスについて,今,松田委員から御指摘がありました。この図がクラウドサービスの全てじゃないというところが,まず問題の出発点だと思います。まさに立法事実の話なのですが,ここで重大な問題は,2で「ユーザーが所持する各種機器に著作物を送信」とありますが,クラウドサービスで利用される著作物の利用の仕方というのは,必ずしも送信は伴いません。サーバーにアップして,それをユーザーが利用する場合に,いろいろなタイプがあるんですが,例えばワードプロセッサーで文書を作るというときに,ワープロソフトはこのサーバーにありますが,ユーザーのところにはダウンロードされません。このサーバーの中で文書を作って,自分が作った文書をダウンロードすることはあっても,ワープロソフトをダウンロードはしません。精々,インターフェースだけです。ゲームソフトもそうです。今はサーバー上に置いてあって,ゲームをやって,映像データなどの個々のものはダウンロードされることはあっても,ゲーム自体がダウンロードされるということはないです。
 というふうに,ほかにもいろいろあって,会計ソフトもそうです。判例のデータベースなどのデータベースもそうなのですが,検索結果がダウンロードされるだけで,アップしたデータベースという,データベースの著作物自体がダウンロードされるわけではありません。ということで,著作物がダウンロードされることを想定したこの図は,クラウドの全てじゃありません。今,申し上げましたように,サーバーにアップしながら,単にそれを利用するだけ,ダウンロードはしないというサービスは,現行の著作権法の中では把握し切れません。そこが,新たな問題としてクラウドサービスにどういうふうに対処するのかを著作権法上考えないといけない問題だと,まさにそこに問題があると私は思っております。

【土肥主査】

 ありがとうございました。済みません,私,ちょっと確認できなかったんですけれども,井坂委員,挙手されておられたようで,どうも大変失礼いたしました。

【井坂委員】

 済みません,短く。今回から初めて参加させていただきます。
 皆さんの意見を伺っておりまして,本当に青臭いことだけを言わせていただければ,本当に,この2番のクリエーターの適切な対価還元というものを私たちは一番大事にしなくちゃいけないところだと思っています。1番から5番までの課題も,実は全てそこに還元されていくものではないかと僕は思っております。いわゆる作り手がいなければ著作物も生まれないわけですし,現状のいろいろな状況を聞いていますと,特に音楽の状況なんかを伺っていますと,安い配信とかで,結局,新人を育てられなくなってきて,どんどん新人がデビューすることがなくなっていく。それで音楽業界が縮まっていっているというようなことも伺っています。ですので,いろいろな法制度,それからスピードアップしていかなくちゃいけないこともあると思いますけれども,それの原点には,やっぱりクリエーター,著作者を殺さない方向で,それでもって事業者もユーザーもみんながウイン・ウインになれるという観点で,でも,原点にあるのは,やっぱり著作者がいなければ著作物が生まれないんだということを,いつも考えていただければ有り難いなと思います。
 以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。本小委員会,熱心な御意見をたくさん頂きまして,本当に有り難く思っております。恐らく,まだ御意見があるのではないかなとも思うんですけれども,時間が来ておりますので,本日のところはこのぐらいにしたいと思っております。
 先ほどからメモを取りましたけれども,本日はクラウドサービスと著作権の関係,クラウドサービスについても,極めてサービスの内容が多様化しておりまして,私どもが直ちについていけないようなところの御紹介の一端もあったわけでございます。あるいは,私的録音録画補償金制度の見直し,さらにはクリエーターの適切な対価還元,こういった制度の整備について連動して,あるいは別個に議論をしてほしいという御意見,あるいは裁定制度の在り方の根本的な見直しというように伺いましたけれども,そういう御意見,あるいはコンテンツの二次利用,その他における権利処理の在り方についての御意見,公共データ,オープンデータの利活用について著作権法が考えるべきこと,そういった様々な御意見を幅広く頂いたところでございます。これらの課題はいずれも大変重要な課題であると,私としては認識をしたところでございます。その中でも,クラウドサービスについては,これまでの本小委あるいは外部的な資源の活用なり,そういった継続性の問題もございますし,さらにはクリエーターへの適切な対価還元については,必要性があるという声が少なくなかったと感じてもおるところでございます。
 次回以降,本小委員会における議論の進め方としては,こうしたことを含めて,今後,議論をしていきたいと思いますので,各委員から御意見ございましたけれども,まずはクラウドサービスというものについての実態,あるいは関係者が抱えておいでになる問題意識,そういったことを踏まえ,権利の適切な保護を図っていくことが大事なのではないかと感じておるところでございます。
 次回以降の進め方については,本日,皆様から頂きました御意見を踏まえて,事務局とも相談の上,決めさせていただきたいと思っております。いずれにしても,本日,各委員の非常に熱心な御意見を伺っておりますと,十分時間を掛けてというよりも待ったなしであるということが,ひしひしと感じられたわけでございますので,事務局とも,よくそのあたりの意識を共有した上で,今後,この本小委において成果を上げていきたいと思っております。まだまだ,御意見があろうかとも思いますけれども,本日はこのぐらいにしたいと思っております。
 事務局から連絡事項がございましたら,お願いをいたします。

【菊地著作権課課長補佐】

 本日はありがとうございました。次回の法制・基本問題小委員会につきましては,改めて日程の調整をさせていただきまして,確定し次第御連絡させていただければと思っております。
 以上でございます。

【土肥主査】

 それでは,本日は,これで第1回の法制・基本問題小委員会を終わらせていただきます。本日は熱心な御意見,誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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