文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第2回)

日時:平成27年7月24日(金)
13:00~15:30
場所:文部科学省旧庁舎6階 第2講堂

議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)ワーキングチームの設置について
    2. (2)教育の情報化の推進について
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1
ワーキングチームの設置について(案)(45KB)
資料2
文部科学省生涯学習政策局情報教育課説明資料(2.92MB)
資料3
文部科学省高等教育局専門教育課説明資料(394KB)
資料4
大学eラーニング協議会提出資料(775KB)
資料5
公益社団法人私立大学情報教育協会提出資料(503KB)
資料6
明治大学提出資料(4.59MB)
資料7
東京大学提出資料(493KB)
資料8
佐賀県教育委員会提出資料(1.7MB)
参考資料1
小委員会の設置について(平成27年6月2日文化審議会著作権分科会決定)(57KB)
参考資料2
文化審議会著作権分科会の議事の公開について(平成22年2月15日文化審議会著作権分科会決定)(64KB)
参考資料3
著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集について(167KB)
参考資料4
ヒアリング出席者一覧(38KB)
参考資料5
第15期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員名簿(63KB)
 
出席者名簿(44KB)

議事内容

【土肥主査】定刻でございますし,ただいまから文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第2回を開催いたします。本日はお忙しい中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】御異議なしということでございますので,それでは本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 まず前回,第1回を御欠席でございましたけれども,今回より御出席を頂いております委員の方を御紹介したいと存じます。
 まず窪田充見委員でございます。

【窪田委員】窪田でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】よろしくお願いいたします。
 前田陽一委員でございます。

【前田(陽)委員】前田です。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】森田宏樹委員でございます。

【森田委員】森田でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】それから,横山久芳委員でございます。

【横山委員】横山でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】どうぞよろしくお願いいたします。
 それから,本日の議事では,広く関係団体の御意見を聴取,ヒアリングをしたいと思っております。既にヒアリングで御出席を頂いた方々が着席しておいでになりますので,併せて御紹介を申し上げます。
 まず,大学eラーニング協議会の方でございますが,最初に望月雅光創価大学経営学部教授でございます。

【望月氏】よろしくお願いします。

【土肥主査】小野成志特定非営利活動法人サイバー・キャンパス・コンソーシアムTIES副理事長でございます。よろしくお願いいたします。

【小野氏】よろしくお願いいたします。

【土肥主査】それから,信州大学高等教育研究センター教授の矢部正之教授でございます。
 それから二つ目の団体でございますが,公益社団法人私立大学情報教育協会から神奈川大学大学院法務研究科の中村壽宏教授でございます。

【中村氏】中村でございます。

【土肥主査】次に,関西医科大学大学情報センター学術・業務部門の准教授,渡辺先生でございます。

【渡辺氏】渡辺でございます。

【土肥主査】次に,公益社団法人私立大学情報教育協会事務局長の井端正臣様でございます。
 同じく,教育協会事務局の第2係長平田千奈美様でございます。よろしくお願いいたします。
 それから次に,明治大学教育支援部ユビキタス教育推進事務室から,宮原俊之様でございます。
 それから,東京大学,大学総合教育センターの助教,藤本様でございます。

【藤本氏】よろしくお願いします。

【土肥主査】最後に,佐賀県教育委員会副教育長福田孝義様でございます。

【福田氏】福田でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】本日は暑い中,遠くから御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 続きまして,事務局から配布資料の確認をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。

【秋山著作権課課長補佐】お手元の議事次第,下半分のところを御覧ください。まず資料1としまして「ワーキングチームの設置について(案)」というペーパーを御用意しております。また,資料2から8としまして,文部科学省及び関係団体様からの提出資料を御用意しております。また,参考資料1から5としまして,それぞれ議事次第記載のものを御用意しております。落丁・乱丁等がございましたら,お近くの事務局員までお伝えください。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは議事に入りますけれども,初めに,議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,(1)ワーキングチームの設置について,(2)教育の情報化の推進について,(3)その他となっております。
 最初の1の議題に入りますけれども,前回の小委員会ではデジタルネットワークの発達に対応した法制度等の在り方を検討するに当たっては,ニーズの把握を行った上で専門的・集中的に検討することが望ましいとの議論もあり,そのため,ワーキングチームを設置するという方向性について,本小委員会において御了解を頂きました。
 つきましては,本日は正式にワーキングチームの設置案についてお諮りをしたいと思いますので,事務局からこの点,説明をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】御説明いたします。お手元に資料1及び参考資料1から3を御用意ください。
 まず,資料を使わずに経緯の御説明を若干申し上げます。先ほど,主査からも御説明がございましたが,前回の小委員会での御議論を受けて,ワーキングチームの設置を正式にお諮りするものであります。その設置の経緯と趣旨の詳細につきましては,前回の小委員会での記録において明らかにされているわけでありますけれども,ここではその点について改めて簡潔に御確認させていただきます。
 まず前回の小委員会では,今期の法制・基本問題小委員会における当面の検討課題の一つとして,デジタルネットワークの発達に対応した法制度等の整備を挙げさせていただきました。本課題につきましては,平成24年の著作権法改正や昨年度のクラウドサービス等と著作権に関する報告書に関する経緯,そして知的財産推進計画2015において,新たに柔軟性の高い権利制限規定や円滑なライセンシング体制など,新しい時代に対応した制度等の在り方について検討することとされたことなどを踏まえまして,本小委員会においてデジタルネットワークの発達に伴う新たなニーズの把握を行うなど,著作権制度等の在り方の検討を引き続き進めるということを御提案させていただいたところでございます。
 このような提案に関しまして,前回の小委員会の議論におきましては,委員の先生方からは次のような意見が寄せられました。すなわち,「特に柔軟性の高い権利制限規定の議論に関し,機動的な対応が必要となることもあり得るのではないか」,また,「技術的な面について細かく専門的に見る必要もあるのではないか」,それから「柔軟性の高い権利制限規定と言ってもいろいろな形があり得るのであり,広い観点で権利制限規定の在り方を検討するのは意味があるのではないか」,また,「一般規定や柔軟性の高い権利制限規定とは何ぞやという方法論の議論から出発するのではなく,ファクトというか,利用者がどういうところに困っているのかといったニーズをきちんと把握するところから出発するべきである」といった御意見がございました。
 このような御意見を踏まえまして,主査からこうした点などについて検討を行うということでワーキングチームの設置の御提案がありまして,その方向性について御了承いただいたものと理解しております。
 以上の経緯を踏まえまして,ワーキングチームの設置につきまして,正式に委員の皆様にお諮りするべく,設置紙として資料1を御用意いたしました。資料1を御覧いただければと存じます。
 まず,ワーキングチームの名称等についてでございます。今回,新たに設置をお願いするワーキングチームとしましては,ここの丸1にありますとおり,「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」という案とさせていただきました。検討課題としましては,(1)新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方について,(2)その他とさせていただいております。
 次にワーキングチーム員の構成でございますが,これは通例にならいましてワーキングチームに座長を置き,法制・基本問題小委員会の委員のうちから主査が指名するということにさせていただいております。
 またチーム員につきましては,法制・基本問題小委員会の委員のうちから主査が指名した者及びその他の者であって,主査と協議の上で文化庁が協力を依頼した者ということにさせていただいております。
 3番の議事の公開についてであります。ワーキングチームの議事の公開につきましては,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」に準じて行うものとさせていただいております。すなわち,会議そのもの,会議資料及び議事録を原則公開としつつ,正当な理由があると座長が認める場合に,その全部又は一部を非公開の取扱いとするということとしております。
 以上がワーキングチームの設置に関する御説明ですが,この際これに関連して,最近の文化庁における取組について御説明申し上げたいと思います。参考資料の3をお願いいたします。文化庁においては,今月7日付で著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集を,文化庁ウェブサイトを通じて開始いたしました。詳細は本資料をお読みいただければと思いますが,ここではポイントのみ若干触れさせていただきます。
 本ニーズ募集は,著作権をめぐる国の政策動向ですとか,社会の様々なお声,それから先の小委員会での御議論を踏まえまして,まずは著作物等の利用円滑化という観点で世の中の皆さんがどのような著作物利用の場面でお困りなのかという点を把握しようとするものであります。
 すなわち,一般のパブリックコメント等で見られるような政策課題の解決のための手段や方法論を御提案いただくということよりも,むしろ政策課題を特定し,その要因等を分析していくために必須である,その前提となるニーズをできるだけ詳しく把握しようとするところに,その主眼がございます。
 また,もう一つのポイントとしましては,昨今のいわゆる柔軟性の高い権利制限規定をめぐる議論を踏まえまして,現存する立法事実・ニーズのみならず,将来想像されるニーズについても,可能な限りこれを把握し,政策立案の参考にしようとするものであります。その旨,本募集要項においても明記させていただいたところでございます。
 本ニーズ募集につきましては,今月27日を締切りとして現在も受付中であります。結果が取りまとまりましたら,整理をした上で,必要に応じてワーキングチームや本小委員会での御議論に御活用いただくことを考えております。
 長くなりましたが,以上でございます。御審議のほど,よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ただいま事務局から説明がありましたワーキングチームの設置案について,御意見・御質問等がございましたら,お願いをいたします。
 方向性については,既に前回御了承いただいておりますので,特別付加するようなこともないのかなとは思いますけれども,御意見・御質問は特にございませんか。
 はい。山本委員,どうぞ。

【山本委員】この予定されているワーキングチームでは,従前の議論がありましたフェアユースの論点だけではなく,ライセンシング体制などのテーマも入っているようなので,御参考までに新たな問題点を指摘させていただきたいと思います。
 といいますのは,6月の初め,アメリカの著作権局が報告書を出しまして,孤児著作物についての対応,これは責任制限という形で対応すべきだという報告を出したのですが,同時に大量ライセンスについても報告を出しております。その中では,前回も議論になりました拡大集中許諾制度について提案をしております。パイロットとして,まずは音楽や,言語著作物について拡大集中許諾制度を導入すべきだという報告を出しております。これがアメリカで具体的に運用されるというようなことになると,今度は例えばそれで具体的に管理していない方の著作権者の使用料も,その管理団体が徴収するということになります。そうすると,今まで考えられていなかったかもしれないですが,今度は日本側でそれに対応する受皿がなければ,それに分配されるべき日本人の著作物の使用料というのが入ってこなくなるという問題が新たに出てきたと思います。
 ですから,もう,これは検討しないといけない課題として,目の前に現れてきているということを御指摘しておきたいと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。特に御意見・御質問がないようでございましたら,ワーキングチームの設置については正式に御了承いただいたということでよろしゅうございますか。
 はい,ありがとうございました。
 それでは,先ほど事務局の設置案の中でも御紹介があったのですが,ワーキングチームの座長は,本小委員会の主査であります私が指名することになるということでございます。それからワーキングチームのメンバーにつきましては,私と事務局との相談の上で決定させていただくことになります。メンバーが決まりましたら,本小委員会でも追って御報告することといたしますので,その際はよろしくお願いいたします。
 それでは,本日のメーンのテーマでございます2番目の議題,教育の情報化の推進についてに入りたいと存じます。本議題につきましては,前回の小委員会で文化庁の委託調査研究の結果報告がございました。ICT活用教育における著作物の利用の実態や課題について,全体的な問題状況が明らかになったと思います。
 本日は,本課題の政策的意義等を明らかにするため,まずICT活用教育の政策担当者からヒアリングをしていただいた上で,続いて教育関係者の皆さんからICT活用教育における著作物の利用状況やそこでの課題,そして著作権制度に関する御要望等について,より具体的な内容をお伺いしたいと考えております。
 まず,ICT活用教育の意義や最近の政策動向について,文部科学省より説明を頂ければと存じます。生涯学習政策局情報教育課豊嶋課長,高等教育局専門教育課山路補佐,よろしくお願いいたします。

【豊嶋情報教育課長】文部科学省情報教育課長の豊嶋と申します。私の方からは,資料2について簡単に説明をさせていただければと思います。「教育の情報化について」というタイトルが付いている資料2でございます。こちらは,主に初等中等教育における教育の情報化の政策動向の資料になっております。最初のページでございますが,教育の情報化について,その目的として「ICTの活用により,子供の興味関心を高め,子供たちが分かりやすい授業を実現」,また「主体的・協働的な学びを通じて,一人一人の個性や能力を発揮できる新しい学びを創造」することとしております。実際の各学校の教室のイメージで申し上げますと,下の方に写真がございますが,電子黒板や,子どもに一人一台のパソコン,最近だとタブレット端末を使っている学校もあります。その右側に「各自の考えを電子黒板に転送し」とありますように,無線LAN等を使いながら,個々のパソコンの映像等を電子黒板に転送するということができますので,例えば協働学習とか,「つながり,広がる学び」と書いていますが,遠隔地間で双方向型の授業のような取組もあります。また,個々で一人一人の個別学習という取り組み方として,家庭にタブレット端末を持ち帰って学校の授業と連動させる「反転学習」という取組が一部の自治体の中で行われているところでございます。
 文部科学省としましては,具体的な取組の柱として,教科指導におけるICTを効果的に活用すること,児童・生徒の情報活用能力を育成すること,校務の情報化,この三つを大きな柱として取り組んでいるところでございます。
 ページをおめくりいただきますと,政府全体の方針,主に各種閣議決定の中に教育の情報化の観点が盛り込まれております。例えば「日本再興戦略」が平成25年6月14日に閣議決定されましたが,この中で情報端末による教育の本格的展開に向けた方策を推進しながら,デジタル教材の開発,教員の指導力の向上に努め,双方向型の教育等の新たな学びへの授業革新を推進することが,盛り込まれています。
 具体的に取り組む内容については,同日の閣議決定で「第2期教育振興基本計画」が定められております。この中でICTの活用等による新たな学びと,教材等の教育環境の充実という項目が立てられており,取り組むこととしております。この計画自体は平成25年度から平成29年度末までの期間に実行していく位置づけになっております。
 そのほか,「世界最先端IT国家創造宣言」,「教育再生実行会議 第7次提言」で,このICTを活用した新たな学びの推進に関する閣議決定あるいは各種提言がなされているところでございます。
 個別の詳細の文言については,後ろに参考で載せておりますので,お時間のあるときに目を通していただければ幸いでございます。
 次に4ページを御覧いただきたいと思います。文部科学省では,平成23年度から25年度までの3年間かけまして「学びのイノベーション事業」という実証研究を行いました。小学校・中学校合わせて20校の実証を対象とし,ICTを使いながら,実際に授業での学習場面の類型化,及びそれを実際に組み合わせることによって展開をしている授業のパターンということを研究報告という形で,平成25年度にまとめたものでございます。
 その次のページをめくっていただきますと,3年間の「学びのイノベーション事業」の取組の過程の中で,児童・生徒の意識として,ICTを活用した教育に関する肯定的な評価が極めて高かったこと,また教員の意識としては,ICTを活用した授業についての効果的であるかどうかということに関する認識が極めて高い傾向が見られました。
 その下でございますが,学力の傾向の状況を見ますと,特に学力の低い評定の出現率が下がっている傾向が見られております。
 次のページでございますが,現在,文部科学省では総務省と連動しながらクラウドを活用した新たな学びの方策について,平成28年度まで実証研究を取り組むとともに,国立教育政策研究所におきまして,教育情報共有ポータルサイトを平成26年度から運用を開始しているところでございます。
 それから次のページでございますが,高等学校につきましては,今年の4月から全日制・定時制高校において,同時双方向型の遠隔教育について,36単位を上限として遠隔教育を解禁する措置がなされたところでございます。
 小学校・中学校につきましては,下に具体例がありますが,お互いに交流する遠隔授業を幾つか取り組んでいるところでございますが,次のページですが,今年度より3年間かけまして,小規模学校において協働学習を充実する観点から,テレビ会議システム等を隣接の学校と結び,遠方の子供と協働学習を進めながら学習の質を高めるには具体的にどうすればできるかという実証研究に取り組んでいるところでございます。
 雑ぱくな説明でございましたが,以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは,高等教育局専門教育課山路補佐からも御報告があるということでございますので,よろしくお願いいたします。

【山路専門教育課課長補佐】私は,今御紹介いただきました専門教育課山路でございます。私の方から,資料3で高等教育機関におけるICT活用教育について,国における各種提言と現状について,手短に御説明させていただきます。資料3です。
 こちらを1ページおめくりいただきまして,まず,各種提言でございますけれども,教育再生実行会議における第6次・第7次,それぞれの提言におきまして,eラーニングを活用した教育プログラムの提供の推進や,アクティブ・ラーニングの推進など,多様な教育の提供や学習環境の向上を図るため,MOOCの活用を進めるというような提言が出されているところでございます。
 次のページに移らせていただきます。こちらにつきましては第2期の教育振興基本計画におきましてICTを活用した双方向型の授業・自修支援や教学システムを整備すること,大規模公開オンライン講座の配信やオープンコースウェアによる教育内容の発信などについて書かれているところでございます。
 次のページに行かせていただきます。こちらはICT活用教育の実態の調査というものを京都大学に委託いたしまして,その結果について資料を付けさせていただいております。
 次に5ページに移らせていただきますけれども,こちらはeラーニング又はICT活用教育の重要性ということについて94%の大学事務局,こちらの全学的な調査項目に関しましては事務局での回答を求めておりますので,個々の教員の意識ではないということは御留意願いたいのですけれども,94%がeラーニング・ICT活用教育を重要だと考えているというような結果が出てございます。
 1ページ飛びまして,7ページでございます。ICTツールの利用目的といたしまして,こちらの下にその具体的な状況が書かれておりますけれども,授業支援を目的とした内容が目的の上位となってございまして,教育再生実行会議の先ほどの第7次提言にありますようなアクティブ・ラーニング型授業で想定される項目については,やや低い状況になっているという結果が出てございます。
 次に8ページでございますけれども,ICT環境の導入状況ということで,こちらにつきましては情報インフラの導入・普及は進みつつありますけれども,教授学習に直接関わる環境整備や活用が後れている現状というものが出てございます。
 1ページ飛ばせていただきます。10ページでございます。ICT活用教育の導入効果というものでございますけれども,こちらにつきましても,具体的な内容につきましては下の方にお示しさせていただいておりますけれども,ICT活用教育の導入につきましては,学生に対して便利な環境の提供や,学習効果の向上に寄与されている一方で,近年の高等教育施策で注目されている項目とのリンクはまだまだ不十分な状況ではないかというような結果が出てございます。
 11ページ以降,まとめでございますけれども,今ほどデータに基づいて御説明したとおり,授業内外でのICTツールの効果的な利用を促すことが今後必要ではないかということと,高等教育においていかに活用していくのかについて運用面の強化が必要ではないかということ,次のページ,12ページに行きまして,近年の高等教育施策で注目を集めている事項がICT活用とうまくリンクしていない可能性があるので,両者を結び付けるような教育実践の成功事例の提示なども効果的であると考えられるというようなまとめになってございます。
 次に,13ページでございますけれども,MOOCコンテンツを提供する大学の状況でございますけれども,こちらにつきましては一部に限られている状況ということが調査によって分かってございます。
 このMOOCに関しましては,東京大学の藤本先生の方からまた御説明があると思いますけれども,次の14ページでございます。日本におけるこのMOOCの普及・拡大について,一般社団法人JMOOCの方で活動をしていただいているところでございます。こちらのその円グラフを御覧になっても,一番左,20代から60代まで広い範囲でこのJMOOCというものが利用されているというような状況が見受けられるところでございます。
 登録受講者全体の数の推移でございますけれども,15ページ,こちらにつきまして,JMOOCの利用者は年々増え続けている状況でございますので,こちらにつきましても今後の展開について文部科学省としても期待をしているところでございます。
 私からは以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。
 生涯学習政策局から初等教育について,それから高等教育局から高等教育機関におけるICT活用教育の状況等について,説明を頂きました。豊嶋課長,山路補佐,どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,教育関係者の方々からのヒアリングを行いたいと思います。教育の情報化の推進について,先行的な取組を行っていただいている教育関係者に様々な御意見を頂戴したいと思います。
 本日は,大学eラーニング協議会,私立大学情報教育協会,明治大学,東京大学,最後に佐賀県教育委員会の方々に,それぞれ発表を頂きたいと思っております。せっかくおいでいただいたわけでございますけれども,円滑な議事進行のために各団体には誠に申し訳ないのですけれども,大体15分でお話を頂きたいと思っております。是非その点,御協力を賜れれば幸いでございます。質疑応答・意見交換の時間は,二つずつ団体が終わりまして,その都度行いたいと思います。
 それでは最初に,大学eラーニング協議会の望月様,小野様,矢部様,よろしくお願いいたします。

【望月氏】創価大学の望月です。それでは,パワーポイントを使いながら説明していきたいと思います。お手元の資料も同じものですので,そちらも御覧ください。
 最初に,大学eラーニング協議会の概要を説明します。2009年6月に緩やかな大学連携ということで,文科省の現代GPを採択された大学を中心に本協議会を設立しました。全部で三つの部会からなっておりまして,一つ目はシステムの運用に関する部会,二つ目はコンテンツと教材を共有していく部会,三つ目がICT活用教育の事例部会となっております。私は第3部会を担当しております。
 次のスライドに,現在の高等教育の要請とICT活用の可能性について,幾つかまとめてみました。関連するものを三つ挙げております。一つ目に,主体的な学修というのが言われておりますけれども,その中で先ほども出てきましたアクティブ・ラーニングというのが一つのテーマになってくると思います。アクティブ・ラーニングとして,例示されているものに反転授業がありますが,推進すべきものの一つです。二つ目・三つ目に,学修行動・学修成果の把握,学修時間の確保ということが必要になってきます。これは単位の実質化において授業外学修時間の確保ということで話題になった内容だと思います。
 先ほど出たアクティブ・ラーニングの中で,反転授業を例に取り上げてみたいと思います。この反転授業というのは,従来の授業と授業外における学習内容を反転させたものです。スライドの上側にある反転授業における事前学習の部分が従来授業中にやっていたもの,スライドの下側にあるような演習などが従来授業の外でやっていたものにあたります。ちょうど宿題の部分と授業の部分の学習内容が入れ替わっているということで,反転授業と言われています。もともとアメリカの学校で始まったものです。
 今,一般的な事例で考えますと,事前学習としてスライドの一番上側にありますeラーニング教材を使って授業外で学修することになります。ここでは知識の獲得とかを行ってもらって,授業に来るときにはもう知識の獲得は終わっている状態で教室に来る形になります。このときに,先ほど出てきましたMOOCとか,外部サイトの教材とか,あるいは大学で用意した教材を使うことになります。「現在の高等教育の要請」として述べた,授業外学修時間というのは,このようなアクティブ・ラーニングの導入による影響もあって増える傾向にあります。
 授業中は知識の確認やディスカッション,演習による知識の定着や活用に集中することで,深い学びにつながるアクティブ・ラーニングが実施できます。
 反転授業を実施するには,先ほど言いましたように,eラーニング教材が必要になるのですが,教員が授業の収録をしたり,教材を開発したり,もう一つ大変なのが著作権処理というのがやはり大変でして,このようなことが教員の大きな負担になっています。反転授業を導入しようとするときに,この負担が一つの阻害要因になっていると考えています。
 高等教育におけるICT活用の可能性を幾つか例示として挙げてみました。資料では,その後に6ページから10ページまで続いていきますけれども,細かく説明する時間がありませんので,全体をまとめた5ページを使って説明します。随時,関連する資料を御参照ください。
 まず,アクセシビリティの向上が挙げられます。基本的にICT活用のいいところは,いつでも,どこでも学習できるということです。いつでも,どこでも,もしかしたらスマートフォンを使って電車の中でも勉強できるわけですので,学修時間の確保ができるようになります。いつでも,どこでも勉強できるからこそ,反転授業の宿題をやることができるということです。
 もう一つは,ICTですから学修の記録を残しやすいというのがあります。学修状況とか,学修行動を正確に把握して,データに基づいて指導・改善することができます。例えば,どの時間帯に学修しているのかの把握もできます。クラブが終わった後に勉強しているのか,あるいは深夜なのか。私の経験からも,24時間どこかかしこで学生さんがシステムにアクセスして勉強しているという事例が分かっています。
 あとは個人に合わせたカスタマイズができます。例えば自分が学習するように言われたところより前の部分が分からなかったら,もう一度そこにさかのぼって勉強することができますので,個人の状況に応じてカスタマイズすることが簡単です。
 あと,事前・事後の学修の質の向上が期待できます。先ほどの反転授業もその一つだと思います。
 あと,教材のデータ共有が簡単になります。時間の関係で飛ばします。
 ここで,教材のデータ共有の具体的な事例を挙げたいと思います。eラーニング協議会の8大学で文科省の大学間連携共同教育推進事業に採択された事業を推進しています。もともと大学の機能分化の中で,その機能の特色を生かすということで国に支援していただいているものです。この事業の中でeラーニングの教材を共有して整理することを試みています。複数の教員や複数の団体の協力によって,スライド11,12ページ目に載っているくらいの教材が作れているのですけれども,こういうものを作っていく中でも,著作権に配慮しないと,共有することができないので,共有するに当たって全部一から作り直すということも起こっています。ただ,補助金があるおかげで,比較的スムーズには行っているのですけれども,もし補助金がなかったら簡単には進まなかっただろう事例になります。
 この後,二つの事例を個別に紹介したいと思います。

【小野氏】私は,NPOの活動をしておりますけれども,このNPOは,もともとは大学の情報センターの一部門でありましたところから独立したという経緯のある組織です。従いまして,大学の教材制作という点では大学の悩みを共有しているという点から,事例の御紹介をしたいと思います。
 また,私どもNPOは研究所を持っておりまして,そちらには大学の教員を受け入れたり,海外からの研修生を受け入れたりといった活動も行っております。そうした研究成果の一つとして,我々の利用するラーニングマネージメントシステム(LMS)は独自に開発いたしました,電子書籍を使うシステムです。eラーニングと電子書籍としての性格を併せ持っております。従いまして通常のLMSより著作権の処理も少し難しい点があるのです。e-ラーニングの仕組みとしましては,学習者がまず電子書籍を電子書籍ストアなどからダウンロードし,それを個人で勉強し,最後に試験などでアウトカムを得るというフローになっており,著作権に配慮する部分がそれぞれの部分にあります。縷々御紹介したいところではございますが,今回は時間がございませんので,その中で特に電子教材制作の点についてだけの問題を御紹介したいと思います。
 我々は今,このスライドにありますように,電子書籍型のLMSのために作られたコンテンツを9講座くらい作っています。このほかに,過去に従来型のLMSで利用されるコンテンツも講座数にして1,800ほどを持っていました。その中での著作権処理というのは,既にこの部会の「ICT活用教育など情報化に対応した著作物等の利用に関する調査研究報告書」の20ページの表でも大体100から200と御紹介されておりますが,我々もやはり1講座について200点くらいの著作権について考慮しなければいけない問題があります。ですが,我々のところはほとんど引用で処理しておりまして,もうこれは著作権処理が必要だと思った分は全部捨てています。なぜかというと,費用面というよりも,著作権処理のために交渉する時間が,とても取れないからです。
 例えばこのスライドの最後に「俳句の世界」というのがありますけれども,今,制作中になっております。これは昨年JMOOCに開講したコンテンツですけれども,この中には,例えば童謡が出てきます。この部分につきまして著作権処理をするか諦めるか判断する必要があります。昨年は,開講期間が決まっているJMOOCで利用する限りでしたので,処理いたしましたが,その後開講期間の決まっていないようなコンテンツ公開をする場合には,改めて処理するべきか諦めるべきだろうかといったような判断を,今やっているところです。結構,著作権のために諦めなければいけないコンテンツというものがたくさんあるというのが一つの事例でございます。

【矢部氏】続きまして,個々の大学でどういう問題があるか,どういうふうに困っているかということで,信州大学の例でお示ししたいと思います。
 信州大学は,今年の4月の入学式で,大分情報関係では物議をかもした学長の発言がございましたけれども,ああいう発言が出るほど,実はICTがかなり身近でして,それを利用しないとなかなか教育が進みにくいというところがあります。なぜかと言いますと,信州大学というのは,長野県内の広いところに五つキャンパスを持っておりまして,離れております。更に県内で大学間連携をしようとしても,やはり同じように離れておりますので,そういうふうなことをやるためにはやはりICT,特に「C」ですが,コミュニケーションの部分がないと,なかなかうまくそういうことができない。これが,後で御説明しますけれども,長い歴史を持っています。
 というわけで,その中で教育をうまくやり,かつ質を高めていくというためには,それをふだんの教育ツールにしなければいけない。ICTを,特に「C」を使ったものをふだんのツールとしていく。それがかなり進んでおります。ただし,そのときに,コミュニケーションということはサーバーの上に置かなければいけない。それはもう公衆送信になるわけで,そうすると通常の授業で著作物を使う,そのときは著作権が制限されるわけですけれども,そういうことが公衆送信になった途端にできなくなってしまうという,これがかなり大きな足かせとなって,かなり利用は促進されているのですけれども,その一歩先に行かないという,そういう状況もあります。
 次,お願いします。その中で,信州大学はどういうことをやってきたかなのですが,遠隔授業システムというのが遠く離れたキャンパスのために,もう30年の歴史がございます。これは同時の授業ですので,この場合は著作権の処理は要らないのですけれども,それを一遍録画してサーバーの上に載せた途端に,公衆送信になって著作権の問題が出てくると,そういうものがあります。
 その中で,更にこの取組を進めるために,eラーニングと,この遠隔授業システムをリンクさせ,eラーニングそのものを使った教育改善のGPで二つありました。「信州大学発“学び”のビッグバンプロジェクト」,これが2004年です。それから「自ら学び,学び続ける人材育成の基盤形成」という,これが2006年です。立て続けに二つGPを取らせていただいたのですけれども,この中からeラーニングというものを,遠隔授業に加え,eラーニング,これはLMSを使ったeラーニングですけれども,それを進められるようになりました。上(「信州大学発“学び”のビッグバンプロジェクト」)はどちらかというと外に向けたもので,下(「自ら学び,学び続ける人材育成の基盤形成」)は通常の授業の改善というのに使われています。さらに,今度は地域の大学と連携して,これもまた補助金を頂きまして,これが2008年になりますけれども,こういう形で進められました。
 では,こういう取組の中で,我々は普通のツールとして使えるようになってきた訳です。では実際にどういうことがあったか。これまで具体的な教育・学習手法の例は既に望月さんからお話しいただきましたので,信州大学でどんなのが出てきたかというと,遠隔授業によって空間的・時間的な制約が克服された。それからeラーニングによって,多様な教育機会と国際化,これは多言語化しましたので,それでグローバル化ができるようになった。それから,今度は「自ら学び続ける」でアクティブなラーニング,それから学修時間の確保,そしてそれによって教育の質保証ができるようになる。そして,今,求められる,特に長野県というのは過疎地ですので,その中で地方創生を達成するためには,実はこれは国の数値目標の半分以下というものが随分あるのですが,そのためにはやはり地方の大学の教育力強化をしなければいけない。そのときに信州大学が培ったICTを活用したこういうノウハウを使うというのが,かなり大きなメリットになるのではないか。そのときに,やはり今の著作権制度ではなかなか難しいというのがあるということ。
 以上。

【望月氏】二つの事例を紹介しました。一つは先ほどの電子ブックCHiLOですが,恐らく次世代型の電子ブックで,通常の電子ブックとは違うということだけ御理解いただければと思います。
 信州大学さんは本当に歴史がありますので,すごくいろいろな困った話とか,いっぱい事例もあるのですけれども,きょうは時間がないので省略いたします。
 それでは,まとめに入っていきます。文化庁の委託調査研究において大学全体のICT活用における著作権処理の状況について整理されています。我々の協議会においても,文化庁の調査結果と同様の課題が浮き上がりました。やはり著作権処理が難しい場合,先ほどもありましたように,問題になりそうな部分を削除する。それで教えたいことを教えられないということや海外の著作物の場合には,著作権処理にかなり負担があるということが挙げられました。
 文化庁の委託調査研究を踏まえつつ,各課題より具体的な内容・状況についてもう少し説明したいと思います。
 基本的に,ICT活用教育をしている担当者というのは,もともとソフトウェアなどの開発などに関わっていますので,著作権に関して意識が高い状況があります。ですから意識をして,徹底的に守ろうとする方向にあるということを,まず御理解ください。
 その上で,許諾を得る際の問題点を挙げてみます。実際に許諾が得られない場合,もともとデジタル利用全般を禁止しているという出版社さんというのもあります。教育目的で使ってください,無償でオーケーですというところもあれば,もともと教育目的で作ったものではないので,eラーニングでは利用しないでくださいというようなケースもあります。
 許諾を得られる場合でも、相手にコンタクトを取りにくかったり、あるいは「どんな形でするんですか。じゃあ、実際見せてください」と言われたりする事例があります。でも、それは作る前の話なので、実際に見せることはなかなかできないのですけれども、見せてからでないと許可が取れないみたいなことも実際に起こっています。
 通常の授業の場合は,多様な資料とか,いっぱい使っています。それを収録してeラーニング等で使用したい場合,個別に著作権処理するというのはなかなか難しいというのが現状になっています。
 あと引用に関しても非常に難しい問題がありまして,どこまでやっていいのかというのがなかなか分からない,だから慎重に対応しないといけないということで,費用が掛かります。なかなか正しい引用の仕方について理解が乏しい教員もいるということで,eラーニング化する段階では業者にお願いする場合も多く,費用が高騰する原因になったりとか,引用としての利用の要件を満たすためにいろいろ努力しないといけなかったりするということが,多くあります。それで,教員が行いたい授業内容の多様性が損なわれて,教育の質を保つことが難しくなるということが考えられます。
 まとめますと,現在,eラーニング等のICT活用教育の実施に当たって,著作権の問題で適切な著作物が利用できないケースが生じたり,著作権をクリアするために教員がすごく負担を感じたりしているということです。負担が大き過ぎるために,使いたい著作物を教材として使用できない状況があります。
 大学のICT活用教育の環境は,一般にIDとパスワードを有する履修者しかアクセスできないようになっていますので,通常の教室での授業においてコピーを利用する場合と比べて,デジタルネットワークを通じて伝送されるという点以外に大きな差はなく,著作権者の経済的利益を不当に害することではないと我々は感じております。
 また,教員間・大学間で教材の共有というのは,高等教育の質を高めていく上でも極めて重要なものになってきています。著作権処理をめぐる現状と課題も踏まえて,こうした場面での著作権利用の円滑化を図っていくことには第35条の趣旨にもかなうものであると思います。
 最後にまとめのかわりとして要望を5点まとめました。
 1,eラーニング等のICT活用教育を実施する場合においても,対面授業と同様に,授業を履修する学生を対象として一定の条件下で許諾なく著作物の公衆送信を行えるようにすることをお願いします。
 2,教員間・大学間で著作物を活用して作成した教材等を共有するため,一定の条件下で許諾なく複製・公衆送信を行うことを認めていただきますと,ICT活用教育をこれまで以上に推進することができると考えています。
 3,ICT活用教育における著作物利用のうち契約によるべきものの著作権処理を円滑化するために,例えば音楽の著作権によるJASRACのような形で,窓口を一本化していただけると非常に助かります。著作権の著作権者を探したりするのが本当に今大変な状況になっています。
 4,事前に個別の著作権の利用許諾を得なくても利用ができる包括的な契約ができるような仕組みの構築や,教育目的利用の公益性や実際の利用態様を踏まえて,これに特化した料金体系を改めて定めておくことなど,契約方法や内容の改善・充実をお願いします。
 5,引用や35条但し書きの解釈について,明確化をお願いしたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。

【土肥主査】ありがとうございました。本当に短い時間と言いますか,十分な時間がない中で御発表いただきまして,ありがとうございました。望月様,小野様,矢部様,どうもありがとうございます。
 それでは続いて私立大学情報教育協会から中村様,渡辺様,井端様,平田様,御発表をよろしくお願いいたします。

【井端氏】私情協の井端と申します。このような機会を与えていただきましたことを,まず政府に対してお礼を申し上げます。
 この,きょういろいろ議論いただく,又は検討いただく著作権問題というのは,単なる法律上の問題ではなくて,我が国の成長と発展というものを将来方向づける,そういう意味で大きな問題であると。それだけに,この問題について,私情協としては真剣に今取り組んでいるということでございます。
 大学の教育の中で大事なことは,今,山積しておりますいろいろな日本社会の問題から,地球的規模の問題にやはり一人一人の市民がそれぞれの立場でもって,それぞれのいわゆる関与をして,そして全体でもって多様な個の力を組み合わせて,やはり問題解決又は自分なりに対応していくと,そういう人材の育成というのが,今国に求められております。これは小学校,幼稚園から生涯にわたる問題でございます。
 そういう中で,高等教育の中では,そういうことを本質的に,問題を自分で考えて自分で答えを見いだしていくというような仕組みを新たに作っていこうと。今までも大学教育は努力してきましたが,更に課題を探求して,課題を解決できるような授業に切り換えていこうと,そういうところで,このような教材を作る上で出てきた問題が著作権上の問題でございます。
 御存じのとおり,主体的に学ぶというふうなことになりますと,どうしても教室の授業だけでは対応できないわけでございます。したがってどうするかと言いますと,やはり教室の外で学ばせる,学んでいただく,そういう仕組みというものをもっともっとシステム化していかなければいけない,それがeラーニングというような言葉で総称されております。
 そうなりますと,では,そのeラーニングをどうやって本当に学生が知識の量を獲得して,その知識を定着させて,その知識をまた自分なりに活用して,またその活用した中で知識を創造していく,こういうようないわゆる学びの仕組みを作っていくためには,そのeラーニングの土台となる教材というものについていろいろな知恵を組み合わせて,そしてそれをネットの上で先生方,また大学機関間が共有して,その上で授業,教育を展開していくということが日常のいわゆる日常茶飯事と言うのでしょうか,当たり前のことでございまして,これを目新しい問題ではなくて,そういうふうないわゆる学びがどんどんICTに興味のない先生でもそういう問題について教員の意識を改革していかざるを得ない,そういう状況にあります。
 そういう中で,私情協としましては,先生方一人一人にどういう意識で教育を展開しているかということをお尋ねいたしました。平成25年に本協会加盟の教員,専任教員,助教を除きますが,私立大学教員の授業改善白書というものを発表しておりまして,その中で授業を改善するためにICTを積極的に活用されている助教を除く先生方,専任教員,回答大学251校,全私学で言いますと4割相当になりますが,その中で回答された教員が1万6,000人で,その中でICTを専門に使って,ふんだんに使って学びを高めていくという先生方が約8,000人でございます。約でございますから,8,000人以上ということになります。約5割でございます。
 その内容を聞いていきますと,大半はネットで授業内容を明確化するとか,それから学生の学習の方向付けをしていく,これが大半でございますが,しかし5割の先生方がネット上で事前に予習・復習すると,そういうようなことについて,又はネットの上で学習できるようなeラーニングを展開しております。
 私情協では,3年後の成果を聞いておりまして,ちょうど平成28年度,来年度になりますが,3年後ではこういうeラーニングについては7割の先生方,1万6,000人の7割の先生方が試行しているということでございまして,一定程度の大学では,eラーニングによります教室外授業が実施され,又は計画されようとしているというふうに言えると思います。
 私情協は,こういうような調査に限らず,以前より電子著作物の利用環境を整備しようということで,電子著作物相互利用事業を実施しております。そのメリットはといいますと,やはり利用者としての教員は学生の能力に応じたきめの細かい教材作りに対応することに限界がありますので,多様な視点によります教材を組み合わせるということで,最適な教材を用いた事業が展開できるようになります。
 また,提供した側の先生方は,提供したコンテンツ・教材が他者の授業でどのように利用されたか,その実績をいわゆるカウントすることができる。言ってみれば教育業績の資料になる。さらには他者に授業でどういうふうに使われ,どのような効果がありましたかということを尋ねることができる。そういう意味で,改めて教材の効果を確認した上で,教材の質をより高めていくことができるようになっております。
 この事業の対象者は,教員だけに限らず職員も一緒になって教材作りをしていきますので,国公私立大学・短期大学の教職員としております。
 ここから相互利用事業の仕組みについて,担当者の方から報告をさせます。

【平田氏】相互利用の方の仕組みですけれども,画面にありますように,私どもの協会のウェブ上にインターネットでシステムを構築しまして,無料で実施しています。そして画面が今,御覧になったようなものですが,仕組みとしましてはコンテンツを提供してくださる方がコンテンツファイルや,そのタイトルですとか,いろいろな情報を私どもの協会のサーバーに登録をしていただいて,片方の利用者の方は検索画面を通じてコンテンツのファイルをダウンロードできると。ダウンロードしたファイルを今度は御自分の授業の中で参考にするだけではなくて,こちらは利用の方法としては複製ですとか,公衆送信可能化権まで認めるようにしておりますので,実際の教材として,さらに,御自分も授業の中で利用するだけではなくて,学内のサーバーにおいて,それをまた教材として学生さんが利用するというような,そういうeラーニングでも使えるような仕組みをとっております。
 そして,一応利用者を限定するために,提供する方と利用者の方のID・パスワードで管理しておりまして,利用の履歴などを全て私どもの協会で管理ができるようになっております。
 そして,コンテンツの実態なのですが,講義スライドですとか,練習・演習問題,資料(文章・静止画・動画)ですとか,プログラム,教育方法に関する事例の研究論文やレジュメなどがコンテンツとして対象となっておりまして,学問分野は全部の学問分野なのですが,現在はお手元の資料の3ページ目の中段にありますような各語学からいろいろな分野が登録をされています。そして登録件数なのですが,現在のところ2,907件,そして第三者の著作物を利用したコンテンツというのが,御自分の提供いただいたコンテンツの中にほかの方のものが少し含まれているとか,そういったもので手続をとってあげていただいたものが628件となっています。
 その件につきましては,お手元の今の資料の3枚目をめくった裏側のところに参考資料1というのがございまして,そこにこの登録画面のところの点線枠が下の方にありまして,そこに他者の著作物を使った場合に権利処理をしていますかという確認画面があるので,ここでチェックされたものとして拾ってきたものが628件ということです。
 それから利用登録者数は1,874名となっております。
 あとはどんなものが具体的にサンプルとしてあるかということを御紹介したいと思います。まずは物理学の方で,これは動画と音声が入っているものです。ちょっとこちらを簡単にお見せします。

(音声放映)

【平田氏】今のが物理でして,例えばあとは建築の方が画面に今映っているようなものなのですが,こちらがPDFになっていまして,例えばこういう建築の絵があって,ここのところをクリックしますとアニメーションで画像のところが回っていくようになっています。
 最初にお見せした物理学の方は,ほかの学内の教員の方ですとか,ほかの方の著作物,教材も権利処理を学内の方で取っていただいて,それで使っているということでして,今お見せしている建築学は自作なのですが,このアニメーションの部分が,例えば建築関係の専門の方ですとか,ほかの大学の先生のものを使ってここに取り入れるということも,今後考えられるかと思います。
 そして,この授業の利用の課題なのですが,それについては,今お見せしましたように,著作権処理の煩雑さが少し影響してくることもありまして,現在登録されているコンテンツは大半が自作となっております。第三者の著作物の教材利用がインターネット上でできないというようなことも,登録コンテンツ数の規模の拡大ですとか,利用が増えないというような要因ではないかというふうに,私どもでは捉えております。
 それから,これに関しまして,あとは第三者のコンテンツの教育利用に伴う著作権処理につきまして,どのような問題があるかということを私どもなりに,eラーニングを積極的に実施している私どもの協会で協力いただいている教員の先生方,委員の先生方223名にアンケートを実施しまして,24分野・43名の先生から70件の意見が寄せられました。その意見はお手元の資料の4枚目をめくっていただいた裏側に,参考資料2というのがあります。そこでアンケート結果が掲載されておりまして,それぞれの御意見があります。
 その主なところを拾いますと,非営利の教育であっても許諾を必要とすることは,現実的には大変煩雑な作業であって,進歩の激しい現代社会では対応するには障害の一つに考えられるのではないかとか,許諾手続の手間や時間が取れずに利用を諦めたとか,連絡先が分からないので利用を諦めた,それから許諾の回答が来ないので利用を諦めたなどの意見がありました。
 そこの中で,アンケートにも答えていただいた方が,きょうお見えになっていらっしゃいますので,具体的な事例として医学分野を例に関西医科大学の渡辺先生から御紹介いただきたいと思いますので,お願いいたします。

【渡辺氏】渡辺です。医学の分野で学習の質を担保するには,毎回の授業に際してたくさんのコンテンツが実は必要になります。それらを授業直前まで改善し続けるということも珍しくありません。そこで,そういった教材をeラーニングで提供する際に,それらの中の各専門家が書いた転載するコンテンツの全てについて,利用・修正に関する許諾を頂くことは簡単ではございません。
 また,権利者に連絡しても返事を頂けずに,配信できなかったことも少なくありません。さらに,イラストレーターがかき直した図の利用ですとか,テレビ局のオンデマンドサービスの対象になっていない映像の利用など,権利関係が複雑で適切に処理できなかったことも多々ございました。
 こういったことから,教材をeラーニングの中で配信することが著作権処理の難しさによって困難となっていて,これが知識全体を扱った講義から能動型学習への併用を阻む要因の一つになっているのではないかと考えております。

【井端氏】時間がほとんどありませんので,あと1分くらいで,こちら側の要望を3点いたします。
 一つは,異時利用での公衆送信を可能とするための著作権法の改正を要望したいと思います。御存じのとおり,こういうICTを使った学修は時間や場所を問わず学生の理解度に応じて繰り返し学びを実現できる点で,先ほど来,教育に不可欠なシステムとして多くの大学に導入されていますが,現行の著作権法では電子著作物を公衆送信する条件が同時利用に限定されておりまして,異時利用での公衆送信が認められていないため,なかなか手続が煩雑であるとか,権利者からの許諾が得られないなどの理由から適切な教材を利用した教育が実施できないという実態になっております。
 そういう意味で,異時での自動公衆送信が教育機関等で認められますように,著作権法の改正を要望いたしますとともに,法の運用に当たりましては著作権者の利益を不当に害しないよう,大学として遵守すべき利用条件を明確にし,組織として対応することを前提に改正の御検討を頂くようお願いしたいと思います。
 もう一つは,教員間・教育機関間で行われる教材共有を促進するための著作権法改正でございまして,授業だけでなくてタイムリーに教材を整備していくには,教員自らが授業に使用する教材を作るだけでなくて,第三者のコンテンツ利用を前提とした教員間や教育機関間で教材を共有できることが不可欠ですが,現在の著作権法においては,他の教員や教育機関が教育に利用できるよう,教材を複製,公衆送信することができません。一定の条件の下で教員や教育機関間を超えた教材の共有が可能となるよう,著作権法の改正を要望します。
 最後でございますが,権利者側によります著作物利用の円滑化等の問題でございますが,社会にある豊富ないろいろな著作物を,そういう教育のために利用したいときに契約処理などが必要となりますが,そのような場合に簡便にアクセスできるよう,著作権の集中管理の仕組みですとか,又はICT活用教育に対応した著作権処理の体制づくりに早急に取り組んでいただくことをお願い申し上げ,ヒアリングの要望とさせていただきます。
 ありがとうございました。

【土肥主査】井端様,平田様,渡辺様,どうもありがとうございました。
 それでは,最初の大学eラーニング協議会,それからただいまの私立大学情報教育協会より御要望いただいた点等について,御不明な点,あるいはより詳細に伺いたい点がもしございましたら,その点を中心に質疑応答を行えればと思っております。
 いずれにしても,この2団体はいずれもよく分かりやすくお話を頂いておりますし,かなり共通するところは多いかと思いますので,できればこの後の方に時間を残したいと思うのですが,もし,ございましたら,お願いいたします。
 特によろしゅうございますか。はい。また後でお気づきの点がありましたら,全体が終わりました後で,また振り返ることができればというふうに思っております。
 それでは,続いてでございますけれども,明治大学の宮原様から御発表を頂戴したいと存じます。

【宮原氏】明治大学の宮原でございます。きょうは,私の方はどちらかというとICT活用,大学で実際にどんな感じでICTを活用しているかというところを御紹介した上で,著作権の課題を感じているところを,明治大学の事例が中心になりますけれども御紹介をさせていただきたいと思っております。
 頭が多分邪魔になると思うので,着席をしてお話をさせていただきます。すみません。お手元の資料を見ていただくと分かるかと思うのですが,資料をまとめていたら,かなり膨大になってしまいまして,その点,資料を後で見ていただければ大体内容がつかめるようにしてあります。
 ただ,配布資料には少しそぐわないような内容の部分をカットしてありますので,その辺を中心に事例的な形でお見せしながら話を進めていけたらというふうに思っております。かなり分量が多いですので,多分最後まで話し切れるか,微妙なので,先にまとめでお伝えしたいことをお伝えしたいと思っております。
 五つ,ポイントとしては挙げてあります。一つ目はメディア授業。メディア授業と言っているのは,基本的にeラーニングで単位が取れる正規授業というふうにお考えいただければと思います。文部科学省の方でもメディア授業という名前を使っておりますので,ここではメディア授業イコールeラーニングを活用した単位が取れる正規の授業というふうに置き換えて見ていただければと思いますが,メディア授業においても対面授業と同様な権利制限をお願いしたいというふうに考えております。
 今ここで挙げているものは,後で,なぜそう思っているかということが出てきますので,理由はそちらを見ていただければと思います。
 それから,正規の授業でなくても,その内容が大学における教育事業の一環である場合は,対面授業と同様の権利制限が必要だと考えているという点が2点目です。
 それから3点目としては,大学の目的の一つとして,広く深く専門知識を教授することがあり,その実現のために質の高い教材を確保して,多くの受講生に対しそれを教授することが効率的・実効的につながるということで,著作権者の保護をもちろん最大限図りつつも,教材の共有を認めてほしいというふうに考えております。
 それから,上の三つに当てはまらない場合についても,非営利の教育活動の公益性に鑑みて,教育活動の目的達成のために必要な範囲で,もちろん著作権者の正当な利益の保護を図りつつ,第三者の著作物を広く無許諾で利用できるといいというふうに思っております。
 もちろんいろいろな扱い・条件等があると思うのですが,例えば非営利の教育活動のために必要な限度であり,かつ○○などに照らして権利者の利益を不当に害さない場合は認めるとか,そのような扱いができるかどうかというところを検討していく必要があるのではないかというふうに思っています。
 それから,ここからもっと大きい話になってしまいますけれども,これらのほかに,新たに表現物を創り上げるという文化的な側面が認められると同時に,著作物を利用される著作権者の利益(主に経済的理由)を害さない程度であれば,教育目的の場合にとどまらず,自由な利用を認める方が文化の発展に資するのではないかというふうに考えるところもありますというところでお伝えしておきたいと思います。
 どうしてこういうことを考えているかというところを,この後,少しお時間を頂いて話をしていきます。まず,私は基本的には教員と職員とを両方やっている立場で,教育工学を専門にしていて,その中でも教授設計学,いわゆるインストラクショナルデザインとか,インストラクショナルマネジメントといったところの分野を専門にしている人間なのですが,明治大学の中では情報部署と少し離れて,教育支援という形ということで,ユビキタスカレッジ運営委員会ということで立ち上げて行っているというところになります。
 内容としては,そこにもう書かれているとおりで,明治大学は実はそんなに,先ほど信州大学の先生からあったように歴史が古いわけでは全然なくて,大学としての歴史は古いのですけれども,なかなかICTの活用という意味では進んでおりませんで,2006年くらいからようやく考え始めているというような状態でございます。その辺のことはコンセプトに入っているという形です。
 とは言っても,ICTの活用をする必要性ということでよく議論があるのですけれども,私がいろいろなところで話をすると,高等教育においてICTが活用されていないのではないかということをよく聞きます。設備的に入っている大学は多分すごく増えていると思うのですが,でも,うまく活用できているかというものとは別物であるというところで,恐らく多くのところがうまくいっていないというところは,教育にICTを活用しようということを目的に考えている。要するにICTを何とかして教育に使っていかなくてはいけないという方で考えている。
 でも,実は違っていて,ICTの活用によって教育活動に変化をもたらすことが重要ということが本当は考えていかなければいけないということになると思います。
 先ほどから学修者中心の学びということで,主体的学びなどという話が出ているのですけれども,これは本当にレクチャー型の授業からの転換をしなければいけないということで,そもそもレクチャー型の授業というのは1500年くらいのときに修道者が字を読めない人に対して本を読んであげたとか,そういうところから始まっているものなので,今は皆さん,もちろん学生さんは本を読める方がほとんどですから,そういった方に対して同じようなレクチャー型でいいのかというのは,やはり問題であるということで,やはり変化をもたらすためにはICTの活用というのは非常に大きな重要な部分があるというふうに考えられます。
 ただ,「行うこと」が目的になる危険性があるという,ここが多分うまくいっていないうわさなどにつながってくるところで,下に「昔から続く誤解」というのと関係するのですけれども,eラーニングを入れれば,教育の質も上がって効率化も行えるとか,そういうふうに考える場合がよくあって,実際にやってみると,全然学生の質が上がらないじゃないかとか,途中でリタイアしてしまう率が高いじゃないかとかいう話題によくなるのですが,これは,本当は,因果関係はないというふうに私は思っていて,もちろん教育の効率化は図れるかもしれないけれども,だからと言って,eラーニングを入れたからといって質が上がるわけではないということで,その中身がすごく重要だということをやはり考えなければいけなくて,もちろん施設的な充実も必要ですけれども,そういった授業設計をできる人というのが,日本に今非常に少ないので,そういった専門家を育成していくというのが一つの大きな高等教育としての役割になってくるのではないかというふうに思っています。
 そういった背景もありつつ,うちは先ほど御紹介したとおり,非常にICTの活用という意味では後進組というのもあって,やるからには「やっぱりね」と言われないように,ちゃんとやっていこうということで,学長直轄の委員会を,教員組織ですが,作って,明治大学には今9人の副学長がいるのですけれども,その中の筆頭の副学長が委員に入って,あとはそれぞれ役職者の教員が中心に委員会になっていると。その下に事務室を作っていて,これも情報の部門ではなく教育支援の部門の下に作っています。
 9人くらいでやっているのですが,一人,派遣の職員で著作権処理の担当者を入れています。この方は,うちに来てから資格を,もともと弁護士事務所に勤められていて,辞められていろいろとうちに少し協力してもらっているという感じなのですが,今はたしか1級知的財産管理技能士という資格を取りまして,今はコンテンツ専門業務なのですが,ほかの業務の資格を取ろうとか,いろいろと著作権に対してチャレンジをしている方が加わってくださっているというのがあります。
 一つ言っておくと,明治大学には実は研究知財戦略機構というのがあるのですが,ここは研究メーンであり,著作権の処理はほとんどできないということで,今ここの我々のユビキタス教育の推進体制において,著作権の処理なんかを行ってきているというようなことになっています。
 すみません。いろいろなことをやっていますということで,この辺は飛ばさせていただきます。まず,メディア授業の話を簡単にしていきますけれども,今,明治大学でICTを活用した授業支援のシステムとしては,システム的には二つあります。e-meijiシステムというものと,Oh-o!Meijiシステムというものと二つありまして,e-meijiシステムの方がLMS,ラーニング・マネジメント・システムと言われているもので,いわゆるeラーニングで使っているもの,メディア授業で使っているものです。
 右側のOh-o!Meijiシステムというのは,対面授業で使っているものです。全科目に1個ずつ専用のページが出来上がるのですけれども,そこでレポートの提出とか,先生の教材の配布とか,そういうことが行われるようなシステムになっています。
 ちょっとメディア授業に特化して,最初にお話ししていきますが,先ほども話したように,単にeラーニングを入れるだけでは駄目ということもありまして,本学ではメディア授業をやるに当たってちゃんとしたインストラクショナルデザインに基づく授業設計,それから組織的な支援体制をとってやっていこうということで,学びを助ける体制をとろうということでやっています。
 すみません。ちょっと走りますが,いろいろと体制をとっていて,このような組織の支援体制,いろいろと学修者から,それから教員側というところで,あとは制作側・運用側というところを考えて組織図の支援体制を構築して回しているというような状況にございます。
 それからメディア授業の授業構成は対面授業に準ずるという形でやっておりますので,いいかと思います。
 それから,どんな形でやっているかというものをサンプルで御紹介しますけれども,今,四つ挙げさせていただいています。手元には恐らく三つしかないかもしれないのですが,ここの右下に出ているものは,後で御紹介しますけれども,実は使っている図と内容が翻案している形になるので,メディア授業で利用する場合にという形で許諾を取っているので,ちょっと配布資料から削除させていただいております。そのような形で少し限定して取ったりしています。
 それから,メディア授業をやる上でのフローなのですが,もともと考えていたのは,打合せをして,きちんと設計をした上で素材を準備します。この辺は先生たちとスタッフと一緒になってやっていきますが,その上で,著作物の一覧,先生が使いたいもののリストを出していただいて処理をして,それから収録などをやろうと思っていたのですが,現実的にはやってみると,そんなことはなかなか難しくて,最初にお願い,著作権のお願いなどもしつつ,授業設計をして,収録をしてしまった上で一覧を作って著作権処理などを行っていくというような形で,結局処理が,収録が終わった後に来てしまうということが現実の世界ではあるということで,大きな課題があります。
 サンプルを幾つかお見せしたいと思っていますが,小さいのですが,著作権の一覧などはこんなような形で取り終わった後にバーッと作って,リスト化していて,要とか不要とかの判断をしています。それから,著作物の一覧サンプルとしては,それぞれに対してどんなようなことをやっているかというのは,こういうふうに記録をしていて,許諾を取ったか,取らなかったかとか,その辺の手間も掛けています。
 それから更新リストということで,大体1年契約,若しくは長くでも3年くらいの契約しかできないので,許諾を取った契約を忘れて更新しないことがないようにということでやっています。もちろん,図だけではなくて,右の下のように文字の情報に関しても翻案しているようなものがあれば,全て許諾を取るという処理をしております。
 それから,時間がなくなってきたので次を飛ばしますが,フローになった理由というのは,やはりなかなかそこに書いてあるようなポイントが多いということです。実際にやってみてどうなのかというと,メディア授業の成果としては非常に高く上がっています。対面授業とほぼ同じくらいのレベルの質を確保できているということは分かってきています。
 1個目のお願いの事項に関連するのですが,メディア授業における著作権処理の課題ということで,文部科学省は,メディア授業の教育効果について以下のとおり告示を行っていて,そこに赤字で書いてあるとおり,面接授業に相当する教育効果を有しないと,要するにメディア授業をやってはいけないというふうに言っているわけなのですが,それに向けて各大学はいろいろ努力をしてやっているのだけれども,どうしても著作権の取扱いが違っているということで,同じ質,同じ単位,2単位なら2単位で同じ質をしかもやっておきながら,メディア授業においては著作権の処理に対する稼働がかかってしまって,必要なタイミングで使用ができない,先生が断念しようなどという話にもなりかねないということです。
 もちろん,そういうことを業者にお願いしてさっさとやることはできるかもしれませんけれども,それは非常にお金が掛かる。実際に昔はやっていたのですが,非常にコストがかかって継続的な予算取りというのが難しいということになっています。
 それからあとはほかの話で,今,アクティブ・ラーニングとかいうのがあるので,そういった施設的な話をちょこちょこ書いています。この辺はICTの活用の紹介なので飛ばします。
 対面授業における著作権の課題というのも実はあるのかなというふうに考えていまして,先ほどe-meijiシステムのお話はしましたが,隣にOh-o!Meijiシステムの話をしたと思うのですが,あの部分などもやはり結局そこに先生が授業で使った教材を載せようとすると,サーバー上に載せる形になるので,やはり著作権の問題で,対面授業では使えるのだけれどもアップできない場合などもあるということで,いろいろ今技術の発達があって,複製不可,印刷の不可という形もできるのですが,今はそういったところで,大学というのは予復習,予習が重要というところもあるので,そういったところでマイナス面もあるということになります。
 あとは引用のチェックなどもいろいろあるのですが,やはりコマ数が1万3,000くらいあるので,全部をチェックしていこうというのは不可能に近いというような状態になってきています。
 すみません。なかなか終わらなさそうなのですが,授業以外の教育活動,2点目に当たるところです。リメディアル教育という形で,大学入門講座でeラーニングをやっています。ここはちょっとNHKの高校講座を利用している関係でNHKと契約を結んでやっているという部分がありますという御紹介。
 それから,eプレゼン・コンテスト事業ということで,学生に社会に出てから使える力を育成しようということで,インターネットを活用したプレゼンのコンテストをやっていますけれども,やはりここでも著作権の取扱いというのが非常に難しくなってきているという現状があります。この辺は紹介なので飛ばしますが,一応,難しいところがあるので,基本的には説明会で著作物の取扱いを説明して,制作した後に著作権のチェックを入れて,修正をしてもらってから出してもらうという形にしています。
 もちろんいい機会になるので,いろいろと教育なども行っています。それは多分後半の方にも出てくると思います。例えば,こういうふうに一個一個チェックします。今年の春の大会が終わったのですが,21チームがエントリーして,6チームにこういう修正の依頼をして直させています。例えばどういうところかというと,左上で,これはどこかから持ってきたものなのですが,これは同じようなものでフリーの素材を変更してもらったり,クレジットが入っていないものはクレジットを入れてもらったり,こういう変更をしてもらっています。
 そういったところもあって,教育に準ずる形のものに関しては許可を頂けるといいなというふうに思っています。ですが,著作権を知るきっかけになるチャンスではあるので,学生に対してはこういうものを利用して著作権の理解向上に対する取組にも頑張ってもらっているということが言えます。
 すみません。その後はオープン・エデュケーションの話で,この後,東京大学の先生から紹介していただくと思うので,この辺は私の方からはパスさせていただいて,最後に少し事例のところだけで終わりにします。
 対応サンプルで,引用できる場合はいいと思うのですが,利用を断念した場合の話を少ししておきますと,利用を断念した場合,スカイツリー,これはGPの学生発表会で使った資料なのですが,スカイツリーの方で許可を取ろうと思ったときに,使えないということで断念しました。左側は,そのままああいうぼかしは駄目と言われて,真っ白にしたのですけれども,下の方の左側はCGで作ったもので,建設途中のものなのです。それを作って学生が作ってきた成果発表会で,ネットで成果として公開しようと思ったときに駄目と言われて,結局すごくやり取りがあったのですけれども,最終的には実写,自分で写真を撮りに行って撮ってきたものをここに張り付けて許可をもらったという形にしたり,似たようなものに置き換えたりとか,そういった形でしてきています。
 問題点は,やはり必要なタイミングで必要にできないということがあるのとともに,実際にオープン・エデュケーションの意義というのがあると思うのですが,公開するためにいろいろ差し替えていくと,もともとの教育内容の質やレベルから離れていってしまうのです。先生が伝えたかったものがちょっとずれてしまったりとか,見せたかったもの,教育の質というのが少し変わってきてしまったりするということで,その辺の危険があるかなというところがありました。
 すみません。もう時間がオーバーなので,あとは文字で書いてありますので,処理が大変だった事例ということで三つくらい挙げてありますので,御参照いただければと思います。
 予想どおり,最後まとめに行けませんでしたが,最初に御紹介したとおりの要望を私どもとしては持っているということで,是非御検討を頂きたいというふうに思っております。すみません。オーバーしましたけれども,以上になります。ありがとうございました。

【土肥主査】宮原様,どうもありがとうございました。
 続きまして,東京大学の藤本様,よろしくお願いいたします。

【藤本氏】東京大学の藤本でございます。私は,東京大学の大学総合教育研究センターに所属しておりまして,本学の海外向けMOOCの開発,企画全般の業務の実務を担当しております。その立場から,きょうは事例を御紹介させていただきます。着席で失礼します。
 まず,最初にMOOCの全般的な概要,どういったところが特徴になるのかというところを御紹介しまして,実際に本学の一つの講座の開発に関する著作権処理についての現状を御紹介するという流れで進めさせていただきます。
 まず,MOOCですが,大規模公開オンライン講座と,御承知の方が多いと思いますが,日本語ではこういった形で訳されておりまして,Massive Open Online Courseの略でMOOC,あるいはMOOCSと呼ばれております。
 特徴としましては,インターネットの環境があれば世界のどこからでも,誰でも無料で受講ができるというものであります。それから,これまでのeラーニングと異なる大きな特徴としましては,そういった世界中にオープンに公開している講座ですので,世界中から数万人,あるいは十数万人もの大規模な受講者が共に学習できると。世界で同時につながって,それで同じコンテンツを10万人以上の受講者が学習できるということです。
 それから,講義映像の公開は,先ほども御紹介がありましたオープン・エデュケーションと比べたMOOCの特徴としましては,授業の課題や,オンライン掲示板でのディスカッションといったものも公開しております。修了基準も提示しており,その基準を満たすと修了証も取得できるところが特徴になっております。
 MOOCも2012年ごろから現在のような注目を集める動きが出ているのですが,世界に向けたグローバルMOOCと呼ばれるMOOCプラットフォームと,それからJMOOCで展開しているような言語圏ごとの地域MOOCと呼ばれるプラットフォームが展開をしている状況にございます。
 MOOCの意義として幾つか簡単に御紹介したいと思うのですが,まず組織の枠を超えたグローバルな教育機会の提供という点があります。これまでのオンライン教育ですと,個々の大学が提供するという形で展開していて,組織の枠を基準にして提供されていたものなのですが,MOOCになりますと,いろいろな大学の講座をそれぞれ自分の興味に応じて受講ができます。それで,世界中の非常に不便な地域,あるいは高等教育が十分に提供されていない地域においても利用ができる。モンゴルの山の奥の方ですとか,あるいはアフリカのどこかの奥地でも,インターネットさえつながれば利用ができるというところが一つの特徴になっています。
 それから,大学の側からすると,そういった今までリーチできなかったような優秀な学生を集めることができるということで報道でも紹介されていたのが,MITにモンゴルの山奥の高校生が非常に優秀な成績でMOOCを修了して,奨学金を得てMITに入学したようなことが可能になってきました。
 もう一つ,システム的な特徴としまして,世界中の幅広い受講者の学習活動を全てログで取って,その履歴データを使って日々教育の改善ができることがあります。どこで躓いたかということが一目瞭然にデータを見れば分かるようになっていまして,コースの作り方ですとか,あるいは課題の提示の仕方,課題の難易度も随時調整ができるような形で提供されています。
 アメリカを中心に進んでいる例ですが,Google,Facebook,Yahooなどの大手のIT企業では,既にMOOCを修了してITスキルを持っていることを就職の際に参考にするような動きになっていまして,徐々に職業人教育の新たな枠組みが提供されるようになったという状況になってきています。
 それから,もう一つの大きな展開としまして,学習者コミュニティの形成ということです。オンラインでつながった学習者同士がFacebookですとか,あるいはオフラインで会ってミートアップと呼ばれるオフライン会のようなものを通じて,それぞれに学習者コミュニティを形成して,発展させているという状況がございます。こういったところが,この何年かで進んでいるMOOCの意義として注目をされている点であります。
 次に,グローバルMOOCのプラットフォームの紹介と,JMOOCも一緒に記載をしています。最大のプラットフォームがスタンフォードの教授が開始したCourseraと呼ばれているプラットフォームであります。こちらの登録者数が既に1,400万人に迫る勢いになっておりまして,利用者も190か国以上からの利用者があります。パートナー大学・機関も120を超えていまして,既に1,000を超えるコースが提供されています。
 もう一つ,edXと呼ばれる,MITとハーバードが連携をして立ち上げたプラットフォームであります。こちらも受講登録者数が350万人以上で,同じような形で非常に大きな規模で展開をしている状況です。
 それにはなかなか規模的には追いつかないですが,JMOOCで三つのプラットフォームが提供されていまして,登録者数も昨年度末で12万人を超え,パートナー機関,大学ですとか,企業の会員数もこういった形で徐々に増えてきているということが挙げられます。
 Coursera・edXに参加している大学は,世界の名門大学,有名大学と呼ばれているところが参加をしております。世界の大学連合というか,大学コンソーシアムが,このMOOCのプラットフォームを軸にして形成をされているような現状でございます。
 東京大学の取組について,ざっと御紹介します。本学は2013年よりCourseraに参加をしまして,MOOCの配信を開始しました。2014年よりedXにも参加をしまして,こちらでも配信をしております。現在,今月までに全7コースを配信して,これまで2年間の累計で登録者数は21万人以上に達しました。それから修了者数も1万人以上に達しています。これは参考までに,本学のキャンパスで学んでいる学生数が約3万人弱で,留学生の数も3,000人足らずというところでして,その数からすると非常に大きな数の学生,世界中の学生にアクセスする手段になっております。
 本学以外にも,edXには京都大学と大阪大学と東工大が参加をして,配信を世界に向けてしております。国内のMOOCにつきましては,gaccoで2コースを配信しております。こちらは本学の本部の方で提供する事業ではなくて,各部局で予算を取って各部局の裁量で配信しております。既に2コースで3万人の登録者数と4,500人の修了者数に到達していると,かなり大きな人数の受講者と学習活動ができる状況になっております。
 その次のページに,参考までに各コースの状況を御紹介する資料を載せております。それぞれのコースで2万人とか,3万人の受講登録者数があり,その中の1割程度,あるいは数%の修了者が出ているという状況にあります。
 ここから時間もありませんので,取り急ぎ駆け足で著作権処理の業務の体制について御紹介をさせていただきます。本学は非常に少ない人員でMOOCを運営しており,Coursera・edXそれぞれ開発担当の専任教員が1名ずつ,それから非常勤の事務職員が1名で対応しております。それに私が企画担当として入って,もう全部で3,4人という小規模な体制で運営をしております。それと講師とティーチングアシスタントが一緒にチームを組んで一つのコースを開発するという状況で進めております。
 実際の標準的なコースの開発のプロセスについて表にして掲載しましたけれども,半年くらいのプロジェクトとしてコース開発を進めております。その中で,コース概要を掲示して,その後,講義の収録がかなり大きな活動になるのですが,講義の収録に向けて,講師の先生に講義のスライドを作っていただきます。講義のスライドが出てきたところから,順次,著作権処理に入るのですけれども,この仕事がなかなかそんなにスムーズに進まなくて,結局,講義の収録の前日や1週間前に出てくればいい方という感じで,実質は講義の収録を終えて,その後に講義のスライドを差し替えながら著作権処理も同時並行で進めるようなケースも出てきています。ですので,そういった,かなりコース開発の中で集中する状況で,短期間でどれくらい著作権処理ができるかというところが勝負になってきます。
 一つ事例として,きょう御紹介しますのが「Visualizing Postwar Tokyo」というコースです。こちらはedXで配信している情報学環の吉見俊哉教授の授業で,戦後の東京史をいろいろなビジュアル資料,映像ですとか,写真をたくさん豊富に用いて読み解いていくという授業であります。
 ここに出てきていますけれども,マッカーサー元帥が厚木基地に降り立つようなこういう資料写真ですとか,あるいは東京オリンピックですとか,戦後の復興から東京オリンピックから,新宿の街並みの変遷ですとか,そういったものをドキュメンタリー映像ですとか,あるいは記録写真,映像,市販されている映画といった資料,NHKのアーカイブスの映像資料のようなものを使って紹介するという授業です。
 実際に,皆さんに御覧いただこうと思ったのですが,時間が押しておりますので,ここは割愛させていただいて,後で是非御覧になってください。「東京大学 MOOC」などで検索していただきますと,すぐに御覧いただけます。講義プロモーション映像については登録しなくても見られます。
 実際に著作権処理がどういうふうに進んでいるかというところなのですが,先ほどのこの授業「Visualizing Postwar Tokyo」については約300点以上の,次のページに具体的な数値を掲載していますが,300点以上の写真,あるいは映像の資料を使っています。それぞれ1週間から2か月,著作権者・権利管理者の方に問合せをして許諾を得るという作業を集中的に行います。長いものは2か月くらい掛かるということです。
 時間が掛かるものとしましては,例えば出版社を介して複数の,個別の著作権者に一つ一つ問合せが必要な場合とか,あるいはテレビCMのように複数の権利者が関係しているものについてそれぞれ個別に問合せをする,あるいは海外の権利者についてはなかなかやり取りに時間が掛かるというケースが非常に多くなっています。
 MOOCに関しては,本学は著作物使用のライセンス購入をして配信するものも結構あります。今回については新聞社ですとか,NHKのアーカイブスと契約をしましてNHKの映像も使いましたし,新聞社で提供している写真やアーカイブの写真を,大体1万円とか,2万円とか,そういった費用を払って配信をしております。年間料金になりますと,継続的に5年間は配信するので,継続的に毎年費用が発生するような状況になっています。こちらは詳細の,どんな点数がどれくらいのものか,それぞれの項目別に紹介をしています。
 直面する状況としまして,権利処理の手続上の負担が結構発生します。例えば古い出版物を今回非常に多く利用したのですが,出版社側も権利者情報を確認していないとか,把握していないとか,あるいは「もう面倒なので聞いてくれるな」のような反応・対応をするところもありました。
 例えば企業の社史などは,その企業の広報担当の方が「どこに聞いていいか分からないので,使わないでくれ」みたいなことも起こりました。それから権利管理者が自治体とか,公的機関の場合は,申請すれば大体許諾されるのですけれども,書式がかなり古い書式で,この書式について印鑑を押して,ファクスで送ってくださいとか,返信用の封筒が云々とか,そういうそれぞれの自治体とか管理機関で対応の方法がまちまちでして,電子化していないなどというところで手続が煩雑になっているという状況があります。
 それから,法解釈の不明確性というところなのですが,これは現状,引用で対応できるかどうかというのは判断しにくいので,安全策を取って,全ての著作物について権利処理を実施する現状にあります。
 それから利用目的や利用様態に応じた使用料設定というところなのですが,こちらも同様でして,MOOCはネット上での公衆送信が前提です。公開されているものですので,対象が数万人規模になっていまして,利用者数で従量課金するような論文データベースとか,そういったものについては非常に利用が困難になっています。それでほかの画像に差し替えたりして処理をするという状況にあります。
 営利・非営利の枠組に対する料金体系も異なります。Courseraは営利企業として展開をしていまして,edXは非営利として扱われています。基本的には活動自体は非営利として理解されているのですけれども,組織形態が若干異なるので,そこの説明も必要になります。それから料金設定がない法人も多いので,それでいろいろ個別にディスカウント交渉をするなど,そういったコスト削減策も行っています。
 いろいろな工夫をしまして,負担の軽減をしております。まず講師に相談をして,同じ資料だったらほかのものはないかとか,あるいは直接論文の図版を出している著者に問い合わせてもらえないだろうかとか,そういった形で費用が発生しない,あるいは手間を省くことを工夫しております。
 以下,いろいろな形で工夫をするのですが,ちょっと時間がなくなりましたので,ここは飛ばさせていただきます。
 今後の課題につきまして,望ましい状況としましては,やはりすぐれた著作物を活用してすぐれた教育コンテンツを効率的に開発するということが一番望ましいと。権利者の方もすぐれた価値を伝える機会が増大するということで理解をしていただくのがよいかと思います。利用者の方は,当然そのすぐれた著作物を使うことによって教育の質の向上につながるのですが,実際にはやはり先ほど申し上げたような手続の煩雑さですとか,個別にたくさんの権利者と対応する必要がある。それから可否の判断や手順をお互いに認識していないので,権利者の方も答えるときの負担が発生します。余り関心がない方からすると,その返信自体もわずらわしいというような状況の中でやっていますので,そういった方々の対応については,手続を簡素化するとかいうことも考えられるかと思います。
 権利保護につながらないような非効率については,まず改善ができれば非常に有り難いと思っております。例えば公共機関に関しては,かなり引用で対応できる範囲を広げるというか,問題ないような形にするとか,あるいは利用できるものがかなり明確になって,それを使う分にはその権利処理についての手続が必要ないとか,そういったことが対応として考えられると,非常に利用も促進されるのではないかと思います。
 それから最後に,権利保護をしながら利用を活性化させる仕組みです。これは権利を当然保護するということは前提にあって,さらに,やはり利用者の側,特に教員,講師の方が利用ルールを理解した状況において著作権処理ができると,著作権処理の活動もスムーズに進むのではないかと思います。
 私の方からは以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】ありがとうございました。ただいま藤本様から御発表いただきました。
 明治大学の宮原様,東京大学の藤本様の御発表を頂戴したところで,お二方のその御発表の中で,より詳細に何かお尋ねしていただくようなことがございましたら,この時間にお出しいただければと思いますが,いかがでございましょうか。もしなければ,後で一括してお伺いするようにしたいと思いますけれども,この時間ではよろしゅうございますか。
 はい。それでは,続いて佐賀県教育委員会副教育長福田様,御発表をお願いできればと存じます。福田様の御発表が終わった時点で,残された時間の中で全体についての質疑応答・意見交換をやってまいれればというふうに思っております。

【福田氏】こんにちは。佐賀県教育委員会の福田でございます。これまでお話をお聞きしておりまして,主に大学の取組でしたが,私の話はどちらかというと現在の教科書法に一番大きく影響を受けているということで,特に小学校,中学校,高等学校についての事例です。まずは国の方で検定教科書がございまして,それに沿って著作権処理をした場合の発生する課題というのを中心に,パワーポイントの資料に沿ってお話しさせていただければと思います。

【土肥主査】どうぞ,お座りいただいて。

【福田氏】はい。
 佐賀県では,基本的には教育の情報化の推進につきましては,ここに3点書いておりますが,高度情報化社会に対応した教育の実現が必要であるということ等々を書いております。特に,下の方に丸1,丸2,丸3,丸4と書いておりますように,今言われているいわゆる21世紀型教育にどう移行するかということで,具体的に申し上げますと,現在の小学生,中学生,高校生が20歳を過ぎて,30歳過ぎて,40歳を過ぎて,社会の中でいわゆる核として活躍する時代を踏まえたときにどうあるべきかということで考えております。
 そうした中で,佐賀県は平成23年から教育の情報化に取り組んでまいりましたが,実はこれは時間軸といたしましては現在の学習指導要領が改訂されたのが,平成23年が小学校,24年が中学校,25年が高等学校の1年生から学年進行でしたので,学習指導要領,つまり教科書が変わる時期を踏まえて,佐賀県としては取り組んできたという状況でございます。
 この中で,特にこの進行表に黄色で付けておりますが,これは今日のテーマだと思います。いわゆる教材の共有,又は教育のデジタル化をした場合の課題ということで考えております。これはあくまでも参考までに,佐賀県の教職員は,実は,この平成22年・23年の事業を始める以前はアンケートをとりますと,あなた方はICT機器を使って授業ができますかという文科省の質問があったのですけれども,6割未満でした。それがこの事業を始めるに当たりまして,約2年間集中研修をやりまして,現在では95%を超える先生方が授業についてはできると答えております。けれども,では,実際どうかというのは,後ほど話をさせてください。
 これが今回,いろいろ御説明がありましたけれども,佐賀県も同じようなものを作っておりまして,佐賀県独自に作っております教育情報システム,これは韓国,イギリス,シンガポール等を参考にさせていただいたのですが,いわゆる教育の情報化を進める上では,どうしても教職員の校務負担の軽減に向けた校務管理システム・校務管理機能,そして今後,情報端末が入ってきますので,情報端末が入ってきた場合に,それを有機的に教員のものと生徒機をつないで制御するといった意味で,学習管理機能。この中には当然,図では左側に示しておりますが,市・町の教育委員会,つまりこれは小学校・中学校がここにぶら下がっております。右側は県立学校ですので,高等学校と特別支援学校がぶら下がっております。それを有機的に結ぶというのは,先ほどもございましたけれども,子供たちの成育歴をデジタル化しまして,それをいわゆる物理的に有機的につないでいくというシステムでございます。
 そして最後に一番下ですが,これが教材管理システムでして,現在我々はかなり予算を立てまして教材を購入しておりますけれども,どうしても市販の教材というのは教科書準拠ですので,実際の学習場面で言うと,若干,やはり帯に短したすきに長しという意味もありまして,改善を加えたいという希望があります。
 そうなってくると,県独自の教材が必要ではないかということで,構築をさせていただきました。
 これがそのSEI-Netの中にありますいわゆる画面構成です。つまり,この中に教職員が使います出席管理とか,成績管理といった機能がございますけれども,それとは別で,ここは教職員も使えますし,児童生徒も使う機能ですけれども,その日の時間割が提示されますので,その時間割にひも付いている教材が,そこから引っ張り出せるという機能でございます。
 当初は,それで十分対応できると思ったのですが,ただ,やはり市販の教材を使う中で学校現場から,また保護者から,もう少し実態に合った教材が欲しいという声がございまして,ここに,「佐賀県教材ばるーん」という名前を付けておりますが,新しい機能を付加しております。これは教職員が独自に作った教材を登録できる,そして佐賀県全部の教職員及び児童生徒がシェアできるというシステムに仕上げております。
 これがその組織図でございます。ここでちょっと,後ほど出てきますが,この部分です。ただし,これに登録するためにはどうしても著作権のクリアが条件でありますので,つまり器としては出来上がったのですが,その器に入れるべき,いわゆる米びつに入れるべき収穫すべき米を見たときに,やはりこの著作権のクリアがどうしても必要になるということで,佐賀県としては課題と捉えているという状況です。
 ここで,少し佐賀県でこれまでやってきまして学校現場から上がってきている声,そして我々が把握している声だけ申し上げますと,電子黒板については,先ほどの御説明の中にもありましたけれども,いわゆる電子黒板だけのときには学校には学校ライセンスで指導者用のデジタル教科書を入れると,大体,今は1教材7万円くらいするのですが,それを一つ入れておけば,ある程度学校全部でシェアできますので,そんなに負担感はなかったのです。
 それに対して,ここで,この図の指導場面は「MAKE10」という学習活動で,先生がパワーポイントで自作した教材ですが,これを生徒のパソコンに送って,生徒のパソコンの状況を,今度はもう1回電子黒板に反映させながら指導しているのですけれども,仮にこれが自作でなくて市販の教材を使おうとすると,送る側も送られる側もライセンスを持たないと教材を使えないというのが,現在のいわゆる教材会社が開発されている学習者用デジタル教科書です。そうなってくると,1ライセンスにつき,安くでも数百円,高いのは数千円しますので,それを生徒分用意しようとすると,かなりの費用負担を強いられているという状況です。
 ただ一方で,先生方,教職員からは非常に授業がやりやすくなった,生徒からは自分のペースに応じた学習ができるということで評価は高いです。ただ一方で課題もありまして,ここに書いておりますように,とはいえ,現在学校現場にいる教職員は,私も含めてですが,誰もそういう授業を,学生時代を含めて受けたことがございませんので,やはり暗中模索,また試行錯誤しながら,自分の指導事例を今構築しているという状況でございます。
 もう一つは,教材を確保する,確保しようとすると,現在はどうしても自作教材については著作権の壁がありまして,それで市販のものを買おうとすると経済的な負担が相当伴ってきているという状況です。
 一方,これも先ほども話がありましたが,佐賀県は特別支援学校についても小学部,中学部,高等部の全員が情報端末を持っております。重度重複の子供達はいわゆる操作性が非常に楽に使えるiPadを,それからある程度障害の程度が軽いお子様については,将来の就労等も考えてWindowsPCを使っております。全員がそういったものを使っておりまして,例えば,図にあるような形で,知的障害の学校で漢字の書き順ドリルを使ったり,肢体不自由の重度重複でほとんど手足の自由の利かないお子さんが頭のところにヘッドセットを付け,そこに電子ペンを置いて,自分の意思表示をしたりしております。
 これは,病弱のお子さんでして,身体のいわゆる状況で学校に通学できない日が週に何日かある。その場合,従前は家では紙の教科書で勉強するしかなかったのですけれども,現在はテレビ会議システムを使って学校から授業を遠隔でやっております。こうした場合についても,やはり先ほど申しました教育情報システムがあってできることということで,特別支援学校については非常に保護者含めて評価が高いというのが現状です。
 それでは,どうして今,小学校・中学校・高等学校での取組状況を知りたいとういうことでしょうが,私がこの場に呼ばれたかということになると思うのですが,いわゆるまず一番トップに来るのは,現在の法制度上,検定教科書が非常にすぐれておりますけれども,これの使用義務がございます。あえてデジタル教材を使おうとしても,どうしてもこの教材に引っ張られるということで,いわゆる検定教科書で設定されている著作権,この取扱いがデジタル教材についてもどうしてもオーバーラップしていくという状況。更に言いますと,デジタル化することによって,35条の特例等についてもかなり制約を受けますので,現在佐賀県では自作教材を作りたいのだけれども著作権法上の課題がある。一方,それを市販の教材で補おうとすると,商取引上というのは,いわゆる教材会社さんもそこで相当の多額に費用を負担されていますので,そういったものをどうカバーするかという課題が残ってくるという状況です。
 ここに一つ事例を書いていますが,実は佐賀県はベネッセコーポレーションに業務委託を行っており,その費用として,これまでに数億掛けております。億単位の金です。学校現場で去年1年間,今年もやっておりますが,指導主事と現場の教員,主には,これは大体スーパーティ―チャーと佐賀県では呼んでおりますが,その分野のエキスパート,そしてベネッセコーポレーションで著作権のある程度力を持っている方をチームといたしまして,全教科にわたって佐賀県独自の教材を作ってみました。最終的に250教材まで出来上がったのですが,これは最後に登録できた数が250ということでして,当然,ここには数倍の候補がありました。
 例えば英語を例にとりますと,英語の指導主事,それから現場教員5名,専門チームから1名ですから7名で,大体月に2回はface to faceで,それ以外はメールベースでやっていきまして,130シートの素材を作ったのですけれども,最終的に許可が下りたのは76シートという結果でした。つまりこれは,こういった専門チームであっても,それくらいの歩留まりしかなかったという状況です。これが現状,著作権のチェックをしていただいたところ,出てきた課題でございます。
 これも,先ほどeラーニングについての御説明がございましたが,実は佐賀県でも発達障害とか,不登校のお子さんの就学の場を支援しようということで,新しい高校を立ち上げましたが,その準備段階の平成21年に国語1,英語1,数学1のいわゆる基礎学力養成のためのeラーニング教材を作ったのですが,これも1年掛けて作ったのですけれども,教学図書協会等でチェックをしてもらったところ,ほぼ使えないと。要するにネット上で使うことはほぼ厳しいという結論が出ております。
 そういったことで,これは後ほどで結構ですが,我々としては,今日せっかく呼んでいただきましたので,お願いしたいのは,この教育の情報化につきましては,やはり今日の高度情報化,グローバル社会ということを考えた場合にどうしても必要な取組であると,そして,今後学校外での教育を考えた場合にも,非常に可能性が高いと思っております。
 ただ一方で,ここに書いておりますように,いわゆるデジタル化することによりまして,かなりまだまだ著作権の壁は非常に大きな制約があると思っておりますので,そういったところに対して,例えば,できれば35条の解釈について,デジタル化についてももう少し詳しく対応をお書きいただくとか,改善が必要なところについて検討いただければと考えております。
 それから,もう一つは,先ほど申しましたけれども,教職員はやはり自分の授業に応じて自分なりの教材を作りたいと思っております。
 そういった意味で,データベース的なものがありまして,そこからだったら自由に使っていいよというものが,もし組織的に,又は国の方であれば,非常に有り難いということで,本日御提案させていただければと思って,この場にまいりました。
 最後に,これは別件ですが,佐賀県は3分間で見られるプロモーション動画をホームページに上げておりますので,是非見ていただきまして,佐賀空港をお使いいただければと思います。
 以上でございます。

【土肥主査】福田様,どうもありがとうございました。
 それでは,佐賀県教育委員会より頂いたただいまの御意見において何か御不明な点とか,あるいはより詳細にお尋ねいただきたいことがもしございましたら,お出しください。
 福田様の御発表に限らず,本日,五つの団体より頂きました御意見,全体を踏まえて何か御質問・御意見がございましたら,お願いいたします。

【末吉委員】ありがとうございました。委員の末吉でございます。
 東京大学の藤本さんの御発言で,一つ伺いたいのでありますが,私はかつてお取り組みなさっている事業にプリミティブな段階で著作権法上の問題で検討したことがありまして,やはり同じような手間暇が掛かるだろうなというようなことを検討したのを思い出しまして大変懐かしく思うのと同時に,立派にやっておられるのでびっくりしました。
 質問は,当時,例えばアメリカの大学も同じような取組をなさっていて,そのときにアメリカにおけるフェアユースと言いますか,教育目的の場合にかなり広範囲に許諾なく素材として使えることが大きなネックにならないかという点が問題になったことがあります。
 つまり,このようにしてネットで配信をされて,例えば英語で東京大学から発信をされると。そうすると英語の中で,ある意味では国際競争をする中で,それに生き残れるのかということを議論したことがございまして,そのときに,現況では引用のルールがよく分からないので許諾を取らざるを得ないというお取扱いはよく分かるのですが,教材と捉えた場合に,教材としての国際競争の中で,もし何かお取組の中で考えられたところとか,頂いている問題点のほかに,国際的な競争の中で著作権処理の問題点というのがもしおありであれば,教えていただきたいのですが,お願いします。

【藤本氏】御質問ありがとうございます。まさに末吉委員の御指摘いただいた点がネックになっておりまして,国際競争的な観点から言いますと,予算も5倍から10倍の予算を掛けてアメリカの大学はMOOCの開発をしております。人員についても同じような形です。東京大学が例えば4人でやっているところを,ハーバード大学は50人でやっているとか,コースの作る数も違いますし,著作権処理ができる量も全く異なります。
 さらに,制度面で御指摘のあったようなフェアユースの中で,かなり幅広く,あるいはクリエイティブコモンズですとか,そういったものを使いなれたスタッフや専任の弁護士も対応できる中で開発を進めているのと,片やリソースが少ない中で制度面,あるいは手続面の非効率さの中で苦しみながら開発をしているのとでは,なかなか本来東大の持っているいろいろな教育的なポテンシャルが生かせないような状況の中で海外に向けてコンテンツを発信しているというところがあります。
 MOOCについては,大学のグローバル化,高等教育の行政の中で進んでいるグローバル化の流れの中で非常に重要な取組になってきておりまして,各大学が魅力あるコンテンツを世界に向けて発信するということは,非常に重要であるかと思われます。その中で,せめて制度でも非常に発信がしやすいような体制になることが,今後重要になってくるのではないかと思います。
 以上です。ありがとうございます。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにございますか。はい,前田委員,お願いします。

【前田(哲)委員】著作権法32条1項の引用がなかなか使いづらいという御指摘があったと思うのですが,私は,特に高等教育のeラーニングの教材に他人の著作物を部分的に使う場合には,32条1項の引用でいける場合が結構多いのではないかと思うのですけれども,先ほど大学eラーニング協議会様の御発表の中で,俳句について利用を断念したというお話があったかと思いますけれども,それがどういう具体的な利用だったのか,もしお分かりであれば,御説明いただければと思います。
 それから,もう1点ございまして,明治大学様の御説明の中で,スカイツリーを利用することが自由にはできなかったという御指摘がありますけれども,通常の著作権法の理解からしますと,スカイツリーは建築の著作物でございますので,それをCGで描こうが,写真で撮って載せようが,著作権上は問題ないと理解できますけれども,これは建築前だったので,建築前には建築の著作物であっても著作権法46条が適用されないという理解の下でこういう紛争になったのか,その点について,もし可能であれば教えていただければと思います。

【小野氏】俳句の件でございますが,説明が半端で申し訳ございませんでした。
 先ほどの俳句のケースで言いますと,先生が俳句の解説をするときに童謡を歌いながら,その童謡との俳句の関係を説明されたシーンがあったのです。そこで歌っておられる童謡をどう処理するかということが問題になりました。楽曲は,引用では処理できないと我々は判断しております。昨年JMOOCで配信したときには,JMOOCは開講期間が定められておりまして,それが終わったら消えてしまうものですので,その範囲の中で管理団体を通じて処理いたしました。しかし,それを今度,自由にいつでも使えるようなコンテンツとして電子書籍ストアなどにおいたときに,さて,同じように処理をしていいのかどうかという……。いいのかというのは,ここが電子書籍型のe-ラーニングシステムの悩み所でもありますが,電子書籍として改めてどのように処理すべきか,あるいは継続的にコストがかかってしまうかもしれないがそれを管理し負担しきれるのかという問題も考えなければならず,そこをどう処理するかというのは,我々のような小さな団体ですと,そういうところで悩んでしまって,じゃあ,それはちょっとやめようかなというふうになります。
 だから,教材にとっては非常にいいシーンなので残念だというやり取りも結構あるのですけれども,ちょっと処理し切れないなというふうに思っているというところです。

【宮原氏】スカイツリーの件は,まさにおっしゃるとおりで,記憶によると,開業前のCGなのでやめてほしいということを最終的に言われました。
 ただ,これは学生が成果発表のために作った資料なのですが,ちょっと色を紫と青で表現している部分を使いたいということで入れてきたということもあって,問合せをかけていたのですが,無理ということで,写真であればどうぞということを言われましたので,最終的には写真に差し替えたという形で,ちょっと色がはっきりしない感じにはなってしまったのですけれども,文字でそこの情報は補いましょうということで修正をしてもらったという形になります。

【土肥主査】ありがとうございました。よろしゅうございますか。
 ほかに。どうぞ。

【大渕主査代理】直前に前田委員が引用についてお伺いされましたが,先ほどからお聞きしまして,私も引用のところは非常に気になったところであります。私の個人的見解として,この32条の引用というのは,普通は学術引用的なものしか念頭に置いていないと思いますが,これは日本語として,むしろ漢字どおりに読むと,「引いて用いる」というようにも読めるので,その意味では伝統的に考えられてきているよりは,この32条のカバーする範囲というのは広く及び得ると思っております。本日はその点をひとまず少しおいて,恐らく前田委員が読まれたように,狭義の引用ないし学術文献的引用の意味で授業の中でいろいろ,特に大学などであれば自説を展開する際に批判の対象だったり,支持の対象だったりという,普通の狭い意味での引用という形でやられることも多いと思うのですけれども,このような意味での引用では拾い切れないところを拾いたいという御趣旨かについてお伺いしたいと思います。この点についての具体的なニーズにつき,もう少し教えていただきたいと思います。
 私の考えでは,現行法ではできないのだけれどもできるようにするのか,それとも,本当は現行法でも柔軟に解釈すればできるのだけれども,反対の説の方がいらっしゃったら,実際教育現場としては使いにくいから,そこは使えることを明確化してほしいかのいずれであるかという点は,法制化するに当たって非常に重要なところであると思います。その前提としても,先ほど言われた引用とは,具体的にどのような場合のことを言っておられるのかについて,お伺いしたいと思います。
 もう1点,重要なところで,やや気になるところがあります。先ほどどなたかが言われましたが,普通にやると非常にコストが掛かるからという点の御趣旨について。コストが掛かるという意味は,コストが高過ぎるということなのか,あるいは,そもそもそれは教育なのだから,コストなしで使えてしかるべきという発想であるのかという点について,お伺いできればと思います。

【土肥主査】どの団体にお尋ねするかですけれども,ほとんどの団体が,きょうの御意見の中で引用について言及されたところでございますので,大学eラーニング協議会を始めとして全団体に順に御意見を頂けますか。
 その次には,公益社団法人私立大学情報教育協会様にもお尋ねしたいと思っておりますが,最初にeラーニング協議会の望月様,お願いいたします。

【望月氏】先ほどコストの面というのは,引用の範囲が多分どこまでが引用で,例えば図をそのまま持ってきたときに,じゃあ,引用になるのかどうかとか,海外のものを持ってきたらどうかというのがありまして,ちょっとでも不安になると,後でトラブルになって教材全体が止められてしまうと困るので,その怖さゆえに逃げてしまっているというか,避けているというのが一つです。
 コストが掛かるというのは,念のため問い合わせようということになると,その問合せするための時間とか,人件費とかがかかります。問い合わせてみると,やっぱりこの写真は引用ではなくてお金を払ってください,例えば美術系の何か写真だったら年間5万円くらいとかいう高い金額を要求される事例もあります。引用で済ますことができなかった事例が積み重なってきて,結局その不安感があるばっかりに使えないというのが,一つ大きな点だと思います。

【矢部氏】本学でも同じようなことがございまして,本当に著作権は気になって,いろいろな専門家の方に来ていただいて,文化庁にいらっしゃった方でも,もう全部引用でいけるのだとおっしゃる方もいらっしゃるわけで,それは,でも大学としてはコンプライアンスとしても怖いというのがございまして,かなりの量を引用で授業のときに使いますので,それはやはり通常の対面授業と同じくらいの著作権の制限がかかっていただけると,随分やりやすいという,そういう感じでおります。

【望月氏】あと,結局怖いというので,最終的にどうするかというと,コンテンツを学内で処理できる大学さんはいいのですが,できないところになると,結局外部に委託してしまわないといけない。例えば弁護士事務所にお願いすると,人を雇うよりも安いのかもしれないのですが,その本数掛ける幾らという形でお金がかかるということが起こっています。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは,次に公益社団法人私立大学情報教育協会様,いかがでございましょうか。

【中村氏】神奈川大学の中村です。
 先ほど御指摘があったように,私は授業の中で他者のコンテンツを引用という形で使う場合には,いわゆる引用は3要件というのがございますね。あれをきちんと満たしている限りにおいては問題ないだろうという立場ではあるのです。
 クリエーターやコンテンツホルダーの側から「いやいや」という意見が出てくるかも知れませんが,これはもう単純に法解釈の問題であって……,そうですね。改正を要するほどのことかというのは,個人的な意見です。
 ただし,最も重要なのは主従関係の問題があって,他人のコンテンツだけをバーッと引っ張ってきて授業が90分成立しましたというので,それでいいのかというのは,そこは確かに問題だろうという問題意識を持っております。

【渡辺氏】例えば腎臓の病気を理解させようという教材を作るとします。そうしますと,泌尿器の授業だということで,泌尿器科の写真や絵だけではなくて解剖学だ,循環器だ,それから内分泌だと,そういったいろいろなところからの教科書や論文から取ってきた絵というのを,その援用に使うわけです。そうすると,メーンのボリュームが1に対して,その理解を助けるための量というのは,これまたそちらの方がかなり多くなると。いわゆる主従関係が反転するということは,学生の理解を助ける場合,非常に頻繁に起こっていると。こういうことが稀であれば,そこは引用ということも主体でいけるのですが,実際はそういうことになってこざるを得ないと。
 それから教員も,専門が例えば非常に狭くなっていたりするので,例えば循環器の授業を持っていても,自分は動脈の中の一部のところが専門だけれども,心臓の講義もしなければいけない。そこはほとんどが他人の著作を使わざるを得ない。こういうようなケースが非常に頻繁に出てくるということは経験していることでございます。

【土肥主査】主従関係がやはりそんなに問題になるのですよね。はい。
 ほかにも明治大学の宮原様,東京大学の藤本様,佐賀県教育委員会の福田様,もし,今の引用等について何かお感じのところがありましたら,御発表いただいても結構ですし,なければなくても結構ですが,いかがですか。

【宮原氏】じゃあ,一言だけ。
 やはり大学としては,主従関係をどう見ていくかというのはやはり重要なところで,今の先生の話もあったのですけれども,量的にどうかというところを一つ判断して,ちょっと,どこでこう……。やはり作った先生と話をしながら考えていかなければいけないということになってきます。一つの授業の中でも,たくさん引用というか,そういう他者の著作物を埋め込んでいると,それを一つずつ先生に確認をしながらやっていかなければいけないということで,かなり時間がかかってきます。
 なので,我々の判断として,話を聞いた上で引用できるものに関しては,明治大学の場合は割と引用で行ってしまう場合もありますけれども,少しでも「うーん,これはなくてもいいかな」くらいの先生の話になってくると,じゃあ確認を取りましょうということでなってくるというのが一つあります。
 その辺が,ちょっと心配だからということで引用を余り適用しないケースにつながってくるというふうに思っています。
 ただ,私はその以前の話として,対面授業ではある程度権利制限という形でできているものが,同じeラーニング,単位が取れる正規の授業とか,例えばいろいろ前提を付ける形にはなるかもしれませんけれども,そちらではやはり引用とか,何だかんだそういう形の今の法令上で,法制度の中で運用していかなければいけないというのが,その同じ単位で同じ質のものを確保してやっている教育の担当者としては,そこは何とかならないのかなと。そうすれば,もう少しスムーズな形でタイミングよくコンテンツを作って短期間でいいものをリアルタイム制というか,タイミングよく世の中というか,学生に対して送り出していける形になるのではないかなということは考えています。

【土肥主査】ありがとうございました。引用についても,もちろんお話しいただいていいのですが,藤本様は,この我々の机の上に置いてある検討のための調査研究事業の報告書ですか,これをおまとめいただいた委員でもあるわけですけれども,この報告書の中ではかなり対価の問題というのがございますね。外国の制度の紹介の中で。
 で,今大渕委員からも対価の関係の問題が出ましたので,それも織り込んでいただければと思います。

【藤本氏】私はコストの方に重点を置いて御回答しますけれども,そもそも前提として,持っている予算が少ないので,購入しなければいけない著作物に関しては,もう本当に数を絞らなければいけないところです。先ほど300点使っていると言いましたけれども,300点のうち,かなり有料のものがあって,それで使えないものもあったのです。それは単純に予算の都合です。
 それから,論文の引用で済むものと関連するのですけれども,論文データベースに載せてある論文の図版とか,そういったものは引用でなくて著作権が論文データベースの会社にあるということなので,それを利用する場合には何か問い合わせ,許諾が必要で,大概のケースは有料になってしまいます。
 そういったものは個別に対応していくと,有料になったり,許諾はしたのだけれども,時間がかかって,しかも報告をしてくれ,どういう著作物になったのか見たいのでコピーを送ってくれといったり,それぞれの著作権利者によって対応が異なっていて,かなり必要のないところまで,本来は引用で済んで,それでもう報告も必要のないところまでも細かくいろいろ説明をしなければいけないようなケースが出てくるという点で,純粋に人件費ですとか,対応のコストがかかってくるというところがコストの大きいところになるかと思います。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございます。
 福田様,ございますか。

【福田氏】恐らく,引用につきましては小学校,中学校,高等学校の場合で言いますと,そのまま教科書の内容を引っ張ってくるということは,もう教科書を見れば済むことでして,やはり先生方はある程度改編したりとか,編集したりするものですから,そのままの引用はなかなか適用できないのかなと思います。
 それから,先ほど「引用だったら全部いいんだけどな」という意見を頂きまして,うれしいような,ちょっと困ったなと思う面があるのですけれども,私たちもこの事業を始めるときに,いろいろな弁護士さんとか,教材会社にも集まっていただきまして協議をしたのですが,やはりグレーなのです。そうすると公務員の,要するに先生方は公務員ですので,そこを預かっている我々としては,仮にそこにもしノーという判定が出たときには,いわゆる公務員としての身分の失格条項とかでかなり厳しいことが出てくるものですから,グレーなものについてはなかなか渡れないというのが現状でございます。
 以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。はい。

【前田(健)委員】すみません。質問させていただきます。
 今,32条の引用のお話がございましたけれども,例えば仮にその35条を改正して公衆送信とか,異時送信についても利用できるということにしたとしても,また現状の法律で言えば,但し書きで著作権者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りではないということになるわけです。
 そういった意味では,35条を使ったとしても,不明確性というものは残る部分というのはあろうかと思うのですが,そのあたりについてはどのようにお考えでしょうか。

【土肥主査】もし,どなたか今の御質問にお答えいただければ,お願いいたします。
 それでは,中村先生ですか。いや,どなたか分かりませんが。

【藤本氏】不明確なところはあると思うのですが,ある一定のこういう使い方であれば大丈夫ということが,お互いに権利者と利用者の間で認識が共有できることで,かなりのところが効率化できるところがあると思うのです。
 そこまでは一定やった上で,更に不明確なところは対応するということになれば,大分活動,実務のところでは改善するところが大きいというふうに考えています。

【土肥主査】前田委員,よろしゅうございますか。

【前田(健)委員】はい。

【土肥主査】茶園委員は手を挙げられましたか。じゃあ,茶園委員,お願いします。

【茶園委員】佐賀県教育委員会の方にお伺いしたいのですが,デジタル教材について著作権法上問題になりそうなものとして,どういうものがあるかについて私は余り想像できないので,教えていただけますか。
 私は大学で教えていますので,大学の教材で著作権法上問題になりそうなものは,ある程度分かるように思うのですが,小・中学校などの教材については,どのようなものがあるのでしょうか。先ほどの御報告でもありましたけれども,小・中学校では検定教科書があって,検定教科書を教えることになっていると思います。そこで先ほど御報告されたデジタル教材というものは,まさに補助教材という位置づけとなるように思います。
 そのような教材で,例えば教科書に書いてあるものを十分に理解してもらうように箇条書にするとか,ポイントを書くというものであれば,著作権法上問題にならないように思います。これに対して,教科書に書いてあるものの例などを示すために,他人の著作物を何か生徒に見せるというものであれば,問題になりそうかなと,漠然と思うのです。デジタル教科書について著作権法上何か問題になりそうなものを,もう少し具体的に教えていただければと思います。

【福田氏】まず,最も簡単な事例としては,せっかく児童生徒がタブレットPCを持っているとしますと,手元でそれを拡大したり,又は自分なりに色を付けたりしてみたいということで,紙を少し超えたという意味ですが最近では非常に便利なツールがありまして,まずPDFで焼いたものに音声を載せたり,またそこに必要な動画を自分で張り込んだりできます。しかし,そうなってくると,やはり先ほどのいわゆるそういうものを作っておられる業界の方たちの権利を著しく阻害するということで,かなり厳しい指摘を受けました。
 ということで,おっしゃるようにPDFレベルでそのまま使うのであれば,もう紙の教材,教科書とちっとも変わりませんので,そこについてとやかく言う気はございませんし,意見は出てこないと思います。やはりせっかく子供たちが紙の教科書プラス参考図書を手にしたときに,参考図書くらいはいわゆる動画がそこに入っていたり,音声が入っていたり,又は自動で自分の不得意な問題だったら易しい問題に飛ぶとか,得意な問題だったら難しい問題に飛ぶといった機能が必要なのですが,そういった場合に,それを自作で作ろうとすると,どうしても先ほどの引用ではないですけれども,教科書の一部を引っ張ってきて,更にそこに自分なりの考えを載せたりするものですから,どうしても引用の壁があって,引用で処理するという考え方だけでは適用できませんし,35条のいわゆる紙の場合だったらある程度,これまでグレーはグレーだと思うのですが,許容範囲であったものが,佐賀県の場合にはサーバーに載せるものですから,いわゆる共有するために,そこはもうアウトですよという状況だということです。

【土肥主査】よろしゅうございますか。

【茶園委員】すみません。私の質問の仕方がまずかったようです。
 著作権法上問題となりそうな,利用される著作物が,どういうものかということをお尋ねしたかったのですが。デジタル教材において利用される著作物のうちで,具体的にどういうものが問題になるのかについてお聞きしたかったのです。

【福田氏】例えば,一つの例を挙げまして,私たちが厳しいと言われたもので言いますと,英語1の紙の教科書にイチロー選手がマリナーズに入団したときの1ページがございました。それをいわゆる佐賀県のネットワークに載せようということで,指導主事がその文章をまず映し出しまして,そこに読み上げて,更にそこに動画をはめ込もうとしたときに,そこまで来ると,それはもうちょっとアウトだという指摘を受けました。
 ですから紙の教科書を引っ張ってきて,それに子供たちがより分かりやすいようにと考え,教職員は音声を載せたり,又はプラス,別のところから動画を引っ張ってきて入れたり,動画といっても自分たちが,教師がお互いにインタビューする人間とイチローを模したような形でやったのですが,そういったものを入れただけでもやはり厳しかった。
 そういった教材を今使うことで,子供たちの学習意欲を高めようとしているのですが,それを作成する段階で,やはり厳しいという状況が今はあるということです。

【茶園委員】すみません。私は本当に分かっていないので。
 今あげられた例は,検定教科書にあるイチロー選手に生徒たちがより興味を持ってもらうために,こう言ったら何ですが,それ自体は教える必要がないのだけれども,イチロー選手の当時のいろいろな情報とかを,生徒に興味を持ってもらうために見せるという,そういう意味でしょうか。

【福田氏】おっしゃるとおりです。子供たちがより理解を深まるということは,興味を持たせることが一番大事で,そのときにちょっと私が付け加えなければいけなかったのは,実はそのときにその教材会社の方に確認をしたところ,これは紙の教科書用に著作権処理をしているから,いわゆるそれだけの対価しか払っていないから,それをデジタル化するための対価を求められる場合は佐賀県で負担してくれるかと。そうすると,それが数十万,数百万単位になったということで,うちは断念したということでございます。
 それは,今までであれば,多分,紙の教科書であれば許されたことだけれども,デジタルになるとできなかったというのは,そこに新たな対価が発生しますので,対価を全部ちゃんと負担できればよかったのかなという気もしますけれども,先ほど言った引用も含めて,なかなかできる状況にないということでございます。私の説明が悪く申し訳ございませんでした。

【茶園委員】そうですか。どうもありがとうございました。

【土肥主査】どうもありがとうございました。
 ちょうど予定されております時間になっております。それで,もし最後にどうしてもこの点だけをきょうお聞きしたいというようなところがございましたら,最後になりますが,お出しいただければと思いますが,いかがでしょうか。
 はい,じゃあ,松田委員,これは最後になりますけれども,よろしくお願いします。

【松田委員】ありがとうございました。
 今の小学生ないしは中学生の検定教科書の利用という問題も,そのまま利用しなければならないという場合が想定されると,これはよく分かります。いわゆる「準拠教材」の問題ということになります。
 高等教育の方なのですが,大学の教材として共有化して利用したいという要望が出ています。このときも,検定教科書と同じような問題は起こりますか。
 典型的な各学問分野の教科書,これは検定ではありません。ですけれども,これを引用するとか,これを共有化してしまって,そしてそれをベースにして講義をするというようなときに,もともとのその典型的な教科書を利用するということに対しても,これを共有化したいという要望があるのでしょうか。
 いや,そこまではないという答えを,私は正直言って期待しているのですが,どうなのでしょうか。検定教科書的な利用が高等教育でもありますかということです。

【土肥主査】どちらにお尋ねでしょうか,大学eラーニング協会にお答えいただきますか。

【松田委員】そうですね。大学eラーニング協会がいいのではないでしょうか。

【土肥主査】はい,じゃあ,お願いいたします。

【望月氏】すみません。教材共有というのは,非常に進めたいというのはあります。まず教材の作成にあたって,デジタル化に対して出版社になかなか理解していただけず,その場で断念してしまうという問題があります。その上で,共有するということを考えると,どうしてもそういうことに触れないように,独自に作り直さないといけないということで,教えたいものが教えられないという現実があります。二つの問題が重なっているといえると思います。
 共有するときに,先ほどの検定教科書みたいなことはないのかもしれないのですけれども,例えばある大学がたまたまよく使われる教科書の許諾を取って共有しようと思ったら,ほかの大学もまた許諾を取りに行かないといけないという問題は実際に起こっています。だから,できるだけそれを避けるように教材を作るというのが,共有するときの前提になっているような感じがします。

【土肥主査】よろしゅうございますか。はい。
 きょうは予定されている時間もまいっておりますので,このお忙しい中,またこの暑い中,大学eラーニング協議会,あるいは公益社団法人私立大学情報教育協会,明治大学,東京大学,佐賀県教育委員会の関係者の方々にお集まりいただきまして,本当にありがとうございました。非常に有意義な時間を持つことができたと思います。
 それで,今後,本件についてどのように進めていくかということでございますけれども,権利者の方々の御意見も伺うということが重要であろうと思いますので,次回の本小委員会におきましては,権利者側の団体からも御意見を伺い,その上で,本件に関する議論を深めていければ,このように考えております。
 この点を含めて,事務局から連絡事項がございましたら,よろしくお願いします。

【秋山著作権課課長補佐】次回小委員会につきましては,来週金曜日,7月31日の午後1時より,中央合同庁舎4号館12階の1208特別会議室にて開催いたします。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございます。
 本日の開始のときに,前回御欠席の委員の御紹介をしたわけでございますけれども,河村真紀子委員も本来なら御紹介すべきところであったのですが,おいでにならなかったのですが,どうぞよろしくお願いいたします。

【河村委員】よろしくお願いします。すみません。遅参してまいりました。

【土肥主査】それでは,これで法制・基本問題小委員会の第2回を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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