文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第9回)

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日時:平成28年2月24日(水)
10:00~12:00
場所:東海大学校友会館 阿蘇の間 

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議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への対応について
    2. (2)平成27年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(案)
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等に関する報告書(案)(536KB)
資料2-1
新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム審議経過報告(210KB)
資料2-2
新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームにおける検討の進め方(102KB)
資料2-3
ニーズ募集に提出された課題の整理(簡易版・番号順)(206KB)
資料2-4
ニーズ募集に提出された課題の整理(簡易版・分類順)(212KB)
資料2-5
ニーズ募集に提出された課題の整理(簡易版・カテゴリ順)(244KB)
資料2-6
ニーズ募集に提出された課題の整理(詳細版・番号順)(504KB)
資料3
平成27年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(案)(281KB)
参考資料1
コンピュータソフトウェア著作権協会提出意見書(99.9KB)
参考資料2
インターネットユーザー協会提出意見書(343KB)
参考資料3
著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集について(207KB)
参考資料4
著作権者不明等の場合の裁定制度の要件緩和について(53KB)
参考資料5
第15期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員名簿(64.1KB)
 
出席者名簿(47.1KB)

議事内容

【土肥主査】それでは,定刻でもございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第9回を開催いたします。本日は,お忙しい中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】では,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 なお,本日,カメラ撮りをしていただいていると思いますけれども,これは冒頭5分程度ということにさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 では,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元の議事次第,真ん中から下半分をごらんください。まず配付資料1としまして,「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等に関する報告書(案)」と題する資料を御用意しております。それから,資料2としまして,5点,ワーキングチームの審議経過に関わる資料を御用意しております。それから,資料3としまして,本小委員会の審議経過等について(案)と題する資料でございます。その他,参考資料5点,議事次第記載のとおり,御用意しております。不備等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥主査】初めに,議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,(1)環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への対応について,(2)平成27年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について,(3)その他,このようになっております。
 早速,議事に入りますけれども,前回の本小委員会におきまして,TPP協定への対応の具体的な在り方について早急に方針を取りまとめるべく,TPP協定に伴う制度整備の在り方等について,御審議を頂いたところでございます。そして,基本的な方向性について了承を頂きました。この制度整備の在り方に基づいて,前回,委員の皆様から頂いた御意見等を踏まえ,事務局において報告書(案)を作成していただいておるところでございます。本日はこれについて御審議を頂き,本小委員会としての報告をまとめればというふうに考えております。
 また,前回審議いたしました制度整備の在り方等については,幾つかの団体から御意見が寄せられておりますので,これも踏まえ,御審議をいただければと思っております。
 では,事務局より,報告書(案)と団体から提出のあった意見について御紹介をいただければと思います。

【秋山著作権課長補佐】それでは,お手元に資料1,参考資料1及び参考資料2を御用意ください。
 まず団体様からの御意見につきまして御紹介したいと思います。参考資料1では,コンピュータソフトウェア著作権協会様からの御意見でございます。同協会様からは,アクセスコントロールに関する制度整備について御意見を頂戴しております。
 同協会様の御意見としましては,今回の審議会の方針であるところの「信号付加型」及び「暗号型」の2類型の技術方式を保護の対象とすることについては歓迎するとされてございます。一方で,認証技術をはじめとする新たな技術的手段を回避する装置の保護の在り方については引き続き検討を進めていただきたいとされてございます。
 次に,参考資料2でございます。インターネットユーザー協会様からの御意見でございます。
 まず著作権侵害の非親告罪化につきましては,二次創作活動以外の社会貢献活動や企業内利用における軽微な複製といったものについても,今回の審議の結果が同様に及ぶようにということを確認されてございます。
 それから,アクセスコントロールの回避に関する制度整備でございますけれども,今回,広く例外規定の対象を定めるという方針については評価をされてございます。他方で,この下の方ですけれども,下記に列記する回避行為については,それが可能となるような例外規定を設けるべきだというようなことで,幾つか例をお示しになって,御提案を頂いております。
 次のページをお願いいたします。2ページの真ん中辺りで,回避行為に関する例外規定の設定の仕方としましては,個別的な規定ではなく,一般的な規定を定めることが求められてございます。さらに,次の権利制限の一般規定(フェアユース)の導入についても,併せて改めて御要望がされておるというところでございます。
 関係団体様からの追加的な御意見は以上でございます。
 それでは,資料1にお戻りいただきたいと思います。
 前回からのアップデートのあった主要な部分を中心に御紹介いたします。まず今回,報告書の形で体裁を整えまして,第1章,検討の経緯を,ページでいいますと,2ページ,3ページにわたりまして整理をいたしております。説明は割愛させていただきます。
 それから,追加した部分としましては,ちょっと飛んでいただきまして,16ページ,一部非親告罪化の部分でございますけれども,前回の御議論を踏まえまして,少し具体的な事例についての考え方を付記するということをいたしました。ごらんいただきたいのは,脚注50番,16ページの下のところでございまして,ここでは,漫画を一冊全体ではなく一部分をそのまま複製する行為,それから,漫画の文字部分を翻訳して,絵の部分をそのまま複製する行為などの場合について今回の要件との関係を整理しております。
 それから,次のページでございますけれども,脚注の52の方では,企業内複製などの事例について整理をしてございます。
 続きまして,23ページをお願いいたします。アクセスコントロールに関する制度整備に係る部分でございますけれども,そのうち,このマル2の保護対象とする技術的手段の技術方式につきまして,前回,認証技術を含めた様々なものを対象にすべきではないかという御意見があったことを受けまして,この一番下から4行目の「なお」以下の一文を追加しております。
 それから,25ページをお願いいたします。例外規定につきまして,若干補足的なものとして,真ん中辺りの「また」以下の一文の追加をしてございます。これは,例外規定が広く対象となるようなものを制度設計するという方向でお示しを頂いたわけでございますけれども,その際に,不当な不利益を及ぼすか否かの判断に当たりまして,今回の制度整備の趣旨及び現行の権利制限規定の趣旨を勘案して,適切な結論が導かれることが期待されるということを付記させていただいております。
 また,その下のパラグラフのところですけれども,予測可能性の問題との関連につきましては,今回,インターネットユーザー協会様からも具体の事例も挙げた御提案があったわけですけれども,こういう具体的な回避行為についての適法性の有無といったことが明確になるのは望ましいというふうに考えられますので,制度趣旨の周知等に今後努めていくというふうにしてございます。
 続きまして,36ページをお願いいたします。これは35ページからの続きでして,制度整備の方向性というセクションの中で,協定が求める法定の損害賠償とは何かということを書いた上で,それに対して,現行法はどう対応しているのかということを整理させていただいた部分でございます。
 追加いたしましたのは,36ページの6行目でございます。「権利者を補償するために十分な額に定め,及び将来の侵害を抑止することを目的とする」との関係につきまして,現行規定による所定の損害額の請求が可能であるということによって,要件を満たしているということ。それから,特に「将来の侵害を抑止することを目的とする」ということとの関係についても,ここに記載のとおり整理をいたしました。
 それから,38ページをお願いいたします。こちらのマル3の制度整備の具体的内容について,全般にわって複数の先生方からコメントを頂きました。具体的には,著作権等管理事業者の使用料規程がいかなる場合でも合理的であるというような前提にも見えかねないといった御指摘や,裁判官の裁量を拘束するかのような表現にも見えかねないといった御指摘もありましたので,そうした誤解を生じないよう,若干表現を改めさせていただきました。修正の具体的内容の御説明は省略させていただきます。
 続きまして,39ページでございます。この真ん中のなお書き以下の一文を追加しております。こちらは今回の改正部分のところが著作権等管理事業者に限定されているということの関係で,協定上の義務との関係をどのように理解するべきかということに関して,このような御意見がありましたので,明記させていただいたというところでございます。
 主な修正部分は以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは,ただいま説明のありました報告書(案)について御意見ございましたらお願いをいたします。よろしゅうございますか。
 河村委員,お願いいたします。

【河村委員】特に文言がどうとかということではないんですが,今後の制度設計も踏まえまして,そのことも視野に入れまして,本日配られたインターネットユーザー協会さんからの意見書というのは大変分かりやすくて,懸念についてのことが書かれていると思いますので,その辺を重視していただきたいということ。特に非親告罪化のところですけれども,実は私も先日そう感じたんですが,やはり二次創作文化に対して萎縮効果ということが非常に特定されて,何回も出てくるんですが,そこだけじゃないということがもし多少ニュアンスを変えられるのであれば,一番最後ですね。このパートの19ページの一番最後についても,その「国民の二次創作活動等」と,下から3行目に「等」は入っているんですけど,その上を見ると,やはり「二次創作文化に対して」という特定がとてもされているので,インターネットユーザー協会さんの意見書にもあるように,そのことだけじゃなくて,公正な利用,社会貢献活動や企業内利用における軽微な複製が非親告罪の対象になってしまわないようにということがニュアンスとしてもう少し分かるようになればいいなと思いますし,そういう意見を述べさせていただきたいと思います。
 もう一つは,アクセスコントロールのことについてですけれども,これも文言をどうこうということではないですけれども,海賊行為を目的としないような使い方については,個別にこういうものというよりも,そういう目的をしない使い方については例外であるということをきちんとユーザーとかに分かりやすいような規定ぶりになることを望むものでございます。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 今回,報告書(案)の御説明を前回の在り方等を御検討いただき,そこでの意見を基本的に反映させていただいて,まとまったものと承知をしております。したがいまして,特に御意見等ないのかなと思いますけれども,よろしいですか。
 河村委員の御意見の中にあった二つの点でございますけれども,前者のところの非親告罪のところはできればその「等」の中で読ませていただければというふうに思っております。それから,アクセスコントロールのところについては,確かに周知等は非常に必要なことだろうというふうに思いますので,その点においては事務局において十分承知いただければというふうに思います。
 そういうことで,本小委員会におきましては,現在の報告書(案)ということになっておるわけでございますけれども,ここの環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等に関する報告書(案)の,(案)というものを取った形で取りまとめたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】ありがとうございます。それでは,そのように進めさせていただきます。
 それでは,次の議事に入りたいと存じます。議事の2,平成27年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について,御検討いただきたいと存じます。
 本日は今期最後の法制・基本問題小委員会ですので,次回の著作権分科会において,私から本小委員会の審議の経過について報告をさせていただきたいと,このように思っております。
 そこで,まず昨年7月に本小委員会の下に設置いただきました「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」の審議経過について御報告を申し上げたいと思います。このワーキングチームは,今期,計4回開催されまして,知財計画等を踏まえ,権利制限規定の見直しについての検討を集中的に行ったわけでございます。今期のワーキングチームでは,7月に事務局から照会のあった「著作権等の利用円滑化のためのニーズ募集」というものがあったわけでございますけれども,この結果を基に,ニーズの整理,あるいはそのニーズの束ね,あるいはニーズの優先順位,こういったものを行いました。更に優先度の高いニーズにつきましては,ニーズ提出者からのヒアリングも実施し,その内容を精査しつつ,柔軟な権利制限による対応の是非に関する議論を行い,今後の議論の方向性についての一定の見通しを得ることができたのではないかなというふうに思っておるところでございます。
 来期は,権利者団体の御意見も伺いつつ,検討を更に深め,権利制限による対応を適当とするかどうか,そういったニーズの輪郭を明らかにした上で,規程の柔軟性の内容や程度を含め,具体的な制度設計の在り方を検討する段階へと進んでまいりたいと,このように考えております。
 私からは,簡単でございますけれども,概略にとどめ,詳細については事務局から御報告をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】御報告申し上げます。資料としましては,資料2-1から2-6まででございます。2-2以降は詳細には御説明せず,位置付けのみ簡単に御紹介いたします。
 資料2-2につきましては,これはワーキングチームの検討を開始するに当たりまして,どのような進め方をするのかという検討の進め方を整理していただいたものでございます。そこから資料2-3から6につきましては,文化庁において行いましたニーズ募集の結果を踏まえて行ったニーズの整理や優先順位付けの結果を示すものでございます。こちらはまた後ほど参照いただければと存じます。
 それでは,資料2-1をお願いいたします。
 1ポツの経緯は省略させていただきます。
 2ポツ,検討の進め方でございます。先ほど申し上げたように,本ワーキングチームでは,知財計画の内容等を考慮し,当面権利制限規定の在り方について集中的に審議をすることといたしました。そしてまず検討に当たっての基本的な視点及び検討の手順についてお定めいただいたというところでございます。これは先ほどの資料2-2に詳細があるわけでございます。
 検討の視点といたしましては3点ございます。
 1点目としまして,ニーズに基づき政策手段を検討するということ。それから,効率的・効果的に審議を進めるためニーズに優先順位を付けるということとしまして,その優先課題の選定は公正性の観点から原則書面の内容に基づいて行う。しかし,追加的な御説明を頂けるのであれば,それについては別途対応を検討するということになってございます。
 また,3点目としまして,現在具体的に特定されているニーズだけではなく,将来のニーズも踏まえた検討を行うよう,これはニーズ募集の段階からそのように明記をさせていただきまして,本ワーキングチームでもそのような点に留意して検討を進めていただいておるところでございます。
 次に,検討の手順でございます。この手順につきましては,以下,1から6までこの整理をさせていただいてございます。
 まず手順1としまして,文化庁のニーズ募集に提出されたニーズを基にこのニーズを特定するということでございます。
 そして,手順2・3としまして,ニーズにも様々なものがあるわけでございまして,権利制限規定の見直しが求められているものもあれば,ライセンシング体制の構築,若しくは他の法制度の整備が求められているものもございました。したがってここでは,そういった課題の解決手段に応じてまず整理をいたしました。
 次に,手順4といたしまして,ニーズのうち権利制限規定の見直しが求められているものにつきましては,以下の三つの観点に照らして検討の優先順位を決定し,分類をいたしました。観点1は,ニーズの明確性。観点2は,権利制限による対応の正当化根拠の見通しが一定程度立つかどうか。観点3としましては,知財計画等を踏まえて,いわゆる新産業創出環境の形成といったこととの文脈における優先度でございます。
 なお,抽象的なニーズにつきましても,ニーズ募集の段階からそういった点も付記しまして,かつ,このワーキングチームでも観点1との関係ではどのような類型のニーズであるのか,その外延が明確にされているかどうかという観点。それから,観点2との関係では,当該抽象的なニーズの全体について妥当する正当化根拠について説明がされているかと,こういうことに照らして整理をしたわけでございます。
 次に,手順5としまして,そのような整理の結果を踏まえまして,優先度の高いものを中心に,まずはこの各ニーズについて,観点1及び観点2についての議論を更に深めるということをする手順でございます。
 そして,最後に手順6としまして,観点1,観点2が肯定されることとなったニーズ,あるいはその束につきまして,更に優先度を考慮して,具体の権利制限規定による対応の是非やその規定の在り方について御検討いただくという段階でございます。
 この後御紹介いたしますけれども,今期はこの手順1から4までを完了したところでございまして,更に優先的な検討課題につきましては,手順5の検討を一定程度お進めいただきました。残るニーズの手順5に係る検討及び手順6の具体の制度設計の議論は来期の議論ということで整理を頂いてございます。
 では,3ポツ,審議経過のところを御紹介いたします。先ほどの手順にありましたように,1から4の結果がこの(1)の冒頭の方にございます。本ニーズ募集では,112件のニーズを個人,団体様から頂戴しました。詳細は参考資料3の方にございますので,後ほど御参照ください。その結果,権利制限の見直しに係るニーズとして整理された主要な課題は以下のとおりでございます。
 ここの括弧に書いてあるA-1-1というものとか数字は,これも資料2-3以降のところと対応しておりますので,また後ほど御参照いただければと存じます。この整理に基づきまして,このワーキングの審議経過ではここにあるアからウに整理させていただいております。まずアは,優先的に検討を行うこととされたニーズというものでございます。こちらに該当するものとしましては,公衆がアクセス可能な情報の所在検索サービスの提供が挙げられました。また,システムのバックエンドにおける情報の複製というものもございました。また,イ,ニーズ提出者に追加説明を依頼して,ワーキングチーム等において検討するとされたニーズにつきましては,ここに記載されておるとおりのものでございます。さらに,ウ,優先的な課題の検討を行った後に順次検討することとされたニーズとしましては,ここに記載されている3点でございました。
 これらのア,イ,ウのニーズのうち,今期のワーキングチームにおいて優先的に検討しようという御判断を頂きましたのが,アの全てはもちろんのこと,イにつきましては,三つ目のCPS(サイバーフィジカルシステム)による情報提供サービス,リバース・エンジニアリング,そして,次のページのビッグデータの解析結果提供等サービスでございました。
 (2)の各ニーズの検討のところをごらんください。今申し上げたことが1パラ目にございまして,この関係でニーズ提出者からのヒアリングも行った上で検討したわけでございまして,その結果,2パラ目でございますけれども,この新産業創出環境の整備に関するニーズとしましては,大別しますと,aからfまでのサービスにおおむね分類できるのではないかというふうに御整理を頂いております。
 順次御説明いたします。まずa,所在検索サービスでございます。こちらはニーズ提出者からの御説明によりましては,この本サービスは,「広く公衆がアクセス可能な情報」の所在。この所在といいますのは,インターネットのURLや書誌情報,TV番組の名前など,情報へのアクセスの手掛かりとなる情報とされております。こうしたものを検索することを目的としたサービスとされてございます。具体例としましては,書籍の検索サービス,街中風景検索サービス,音楽の曲名検索サービスなどが挙げられてございます。
 本サービスは大量の情報があふれる情報化社会において知へのアクセス機会を提供するという大きな社会的意義があり,権利者にとってもメリットがあるというふうにされてございます。また,本サービスは,著作物そのものを提供することは目的としておらず,検索結果提供に当たって,サムネイル,スニペットなど,所在情報を知らせるために必要な限度にとどまるということでございまして,軽微であるとされてございます。また,現行法との関係につきましては,これは現行法では対応が困難であるということが述べられておりまして,また,許諾を得て利用することは現実的ではないとされておりました。これについて,本ワーキングチームの議論におきましては,当該情報自体の享受をさせることを目的とするものではなく,当該情報への「道しるべ」を提供する行為は社会全体の利益にもつながり,権利制限の正当化根拠となり得るなどの肯定的な御意見が寄せられたところでございます。他方,こうしたものについてはどこまでの表示であれば軽微な利用なのかといった線引きについては更に検討を深めるべきとの御意見もあったところでございます。
 bをお願いいたします。分析サービスでございます。本サービスは,情報を収集して分析し,求めに応じて分析結果を提供するサービスであるとされております。具体例としては,評判情報分析サービス,論文剽窃検出サービスなどが挙げられております。本サービスは,無数,多様に存在する情報(ビッグデータ)を活用し,分析結果という有用な情報を提供するという点で社会的有用性があり,かつ,著作物の表示は,分析結果を提供するために必要な限度で行われるため,軽微であるとされてございます。
 現行法との関係でも対応が困難でありまして,また,サービスの目的を達成するためには大量かつ網羅的な情報を対象とするということが必要となるところ,全ての情報について妥当な条件で許諾を得ることは不可能であるとされてございました。
 これについて,ワーキングの議論では,情報分析・解析の結果の有用性を評価されまして,その結果を分かりやすくするための参考資料として一部分の著作物を表示するということも正当化され得るのではないかといった御意見など,肯定的な見解が複数示されたところでございます。他方,これにつきましても,この表示の程度としてどこまでが軽微なのかという点については,引き続き検討を深めるべきという御意見がございました。
 次に,c,システムのバックエンドでの複製でございます。こちらにつきましては,現行法での対応可能性ですとか,このa,bのサービスとの関係について整理をすべきという御意見でございました。
 次に,dの翻訳サービスでございます。こちらはサービスの詳細は割愛させていただきまして,ワーキングチームの議論について三つ目のパラグラフをごらんいただきたいと思います。
 まず用例データベース,翻訳サービスと言われるサービスにつきましては,これは様々な著作物の表示の程度があるだろうというような御説明もあったところでございまして,どこまでであれば軽微な利用が許されるのかといった線引きについて検討を深めるべきであるという御意見がございました。
 また翻訳サービス全般につきましては,利便性も認められるということで,例えば看板など日本語が読める人であれば適法に読むことができるようなものについては,翻訳を権利制限によって認める意義はあるのではないかという御意見がございましたほか,翻訳に関する権利制限の正当化根拠については,さきに述べたサービスとは種類が異なるということで分けて検討すべきではないかという御意見がございました。
 次に,リバース・エンジニアリングでございます。リバース・エンジニアリングにつきましても,ニーズ提出者から,現状の新たなニーズにつきまして御説明を頂いたところでございます。本ワーキングチームの議論におきましても,これは平成21年の報告書にも議論があったところなんですけれども,ここで結論が出なかったものに該当するのではないかという御意見や,そうしたこととの関係で,これは新たなニーズが出てきたと言えるのではないかという御意見がございました。また,過去の検討からの状況変化を受けて何らかの対応を考えるべきではないかという御意見でございました。
 最後にf,その他CPS関係サービスでございます。ニーズ提出者からは,CPSに関わるサービスとして,このaからdのような様々なサービスのほかにも,教育支援サービス,障害者サービスをはじめ,様々なものがあるということが述べられまして,現段階でどのようなものが提供されるか具体的に特定することが困難であるとされました。
 その上で,CPS関連サービスにおいては,出力段階では著作物の表現を利用者が享受することとなり,場合によっては権利者の正規ビジネスと衝突する場合も考えられるとされた上で,しかし,利用が軽微なものもあるということや,公益的観点からその表示について社会的要請が高いと判断されるものもあるとされております。
 また,このために個々のサービスごとに判断される余地があるとよいのではないかということで,具体には社会的に見たサービスの効用と,著作権者や関係するコンテンツビジネスの利益との比較衡量がされるべきだと。その衡量要素としましては,サービスの目的やその公益性・公共性といったものが一つ。それから,利用の態様,つまり,些細か,軽微か,あるいは「必要な限度」といったもの,これを基準として判断される余地があるとよいのではないかという御要望でございました。これにつきまして,本ワーキングチームの議論においては,所在検索サービスや分析サービスと,障害者支援など公益的なサービスは分けて考えた方がよいのではないかという御意見がございました。
 また,具体的な制度設計につきましては,個別規定,一般規定ありきという議論ではなくて,柔軟性を確保することが重要なのであるという御意見。それから,規定ぶりとしては,新たな個別規定なのか,包括的なものなのかは選択肢としていずれも排除されていないのではないかという御意見。それから,検討の段階としまして,今期はニーズの把握を行う段階であって,制度設計は次の段階の議論であろうという御意見。更にこれらのニーズ自体が漠然としておりますので,どのような方策が必要となるのかが分からないといった御意見もあったところでございます。
 マル2,その他のニーズでございますけれども,これは今期,検討の対象とはならなかったニーズでありまして,今後優先度を考慮して,検討するとされたものでございます。これにつきまして,ワーキングチームの委員の先生方からは,以下のものについては重要であるという御指摘がございました。五つございまして,まず一つが教科書・入試問題の二次利用,二つ目がパロディ・二次創作,次にメディア変換サービス,図書館等における複製,送信。放送番組のインターネットでの同時配信と,こういったものについて指摘があったところでございます。
 それから,障害者関係や教育関係のニーズについては,現在,法制・基本問題小委員会において検討を進めていただいておりますので,この小委員会における検討に委ねるのがよいのではないかという御意見もございました。
 最後に,4ポツ,今後の検討の進め方等についてでございます。ここは先ほど申し上げたことのまとめでございますけれども,今期のワーキングチームにおきましては,手順4までを完了し,一部のニーズについて,手順5に着手したというふうにしておりまして,少なくともその所在検索サービスや分析サービスに係るものについては,一般に権利制限規定による正当化根拠となり得る社会的意義が認められるか否かという点に関しては,ワーキングチーム員の中でおおむね肯定的な見解が示されたところでございます。これらのニーズにつきましては,今後更に検討を深めるとともに,権利者団体の御意見も聞いた上で,権利者の正当な利益への影響の有無等について更に精査を行うことが求められるとされてございます。
 また,今後これらのニーズ以外のニーズにつきましても,手順4の検討,分類及び,先ほど紹介したワーキングチームにおける議論も踏まえまして,適切な時期に手順5の検討を行うことが求められるとされております。
 それから,今年度の状況としましては,国民から寄せられた幅広いニーズについて,特に権利制限による対応を検討することが妥当と認められるニーズを吟味した上で,これらを整理し,束ね合わせる処理を行ってきました。来年度は更なる検討を経て,この権利制限ニーズの束の輪郭や性質をより明らかにした上で,これらの「ニーズの束」を基に,また同時にこれを「シーズ」と捉えまして,今後の広がりや発展性にも留意しつつ,手順6で示したように権利制限規定による対応の是非や規定の在り方について,具体的な検討を行うことが求められるとされてございます。
 また,その際,権利者の利益を不当に害することなく,著作物等を利用する新たな取組への挑戦が可能となるよう,新しい時代にふさわしい新産業創出環境の整備に関する社会からの強い要請に十分に応えていくという視点に留意することが必要であること。また,新たに設ける制度が実際にどのように機能し得るのかなどを踏まえ,我が国にもたらされる便益や影響を考慮しつつ,規定の柔軟性の内容や程度を含め,我が国にとって最も望ましいと考えられる制度設計やその組合せを検討していくことが適当であるとされてございます。
 報告は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。非常に詳細に説明をしていただきましたので,よくお分かりいただけたのではないかと存じます。
 本ワーキングチームは,来期以降においても引き続き設置され,議論を続けていただけるものと,そのように期待しておりますけれども,一旦このような形で本小委員会の審議経過とし,併せて著作権分科会には報告をしたいと考えております。
 本ワーキングチームの審議の経過についての御質問,あるいは今後の検討の進め方についての御意見等があればお願いをいたします。
 はい。松田委員,お願いします。

【松田委員】ワーキングチームの報告,その中の3ページでございますが,ここに情報の所在の検索サービスについて書かれております。
ここに書かれていること自体は私も納得するところであります。サムネイルやスニペット,所在情報を知らせるために必要な限度にとどまり,こういう利用のところは促進した方がいいのではないだろうかという方向になるんだろうと私も思っております。
 昨年の秋だったと思いますが,アメリカで,グーグル判決が出ております。グーグルブックスの商用的利用のところではございませんで,アーカイブ化と,それから,この情報検索については,フェアユースで可とするという判決が出ています。
 ところが,日本の法制では,これを例えば検索サービスが可といたしましても,その前提といたしまして,大量な情報をどこで集積するかという問題があるわけであります。ここにもやっぱり大量な情報が前提になっていることは,この節でも書かれておりますけれども,これについては,日本については,グーグルがやっているような図書館からの情報を集めて,それをアーカイブ化するということ,それ自体についてはこの報告書では多分触れていないんだろうというふうに理解してよろしいかどうかであります。まず1点。
 そして,日本の場合にはそういうことができているのは現行法上,国立国会図書館におけるアーカイブ化です。このワーキングチームでは,まずアーカイブ化については手を付けない。現行制度のままでやっていく。しかし,この情報検索サービスの点については促進すると,こういう理解でいいのかどうか。これは主査が委員長をやってらっしゃるわけだから,その点の理解が間違っていないかどうかはいかがでございましょうか。

【土肥主査】御指摘のとおりでございますが,そのアーカイブ化に関しては,本法制・小委でも検討は別途進めておるところでございます。このワーキングの中においても,そういうアーカイブの問題まで必要であるということになってまいりますと,それは検討の対象に入ってくると思いますけれども,今現在のところは,そこまでは行っていないということでございます。専らその47条の6の送信可能化されていない情報という,その部分のところにつきましては現行法上,問題があるという認識は共通なんじゃないかなと思っております。
 よろしゅうございますか。

【松田委員】はい。

【土肥主査】ほかに御意見,御質問ございましょうか。特にございませんでしょうか。これは御報告ということでございますので。
 はい。井上委員,お願いいたします。

【井上委員】大変精力的に検討していただいているというふうに伺いました。1点ちょっと気になりましたのは,今回の検討の進め方のところで,数多く寄せられたニーズを分類し,優先度も考慮して,優先度の高いものから検討していくということになっています。今後の進め方次第ですが,結局その柔軟な権利制限規定が求められている趣旨というのはいろいろあると思いますが,その一つは,ロングテールなニーズといいますか,優先度がそれほど高く出てこないかもしれないけど,世の中に幅広くある細かなニーズに立法が事前に対応することが難しいということにあると思います。
 そうしますと,例えば今回新しく出てきたCPS関連サービスのように,CPS関連サービスという新産業創出のために非常に重要な切り口から見てどうなのかという観点から,こちらの方はむしろその目的ですとか,それから,利用対応についてあらかじめ特定できないが強いニーズがあると。そういうタイプのもの以外にもロングテールなニーズを拾い上げるような権利制限規定の可能性は今後検討されてもよいと思いました。

【土肥主査】はい。ニーズそのものはたしか112ぐらい寄せられたのではないかと思います。その中で,柔軟な権利制限規定による対応を求められているもの,それから,ライセンシング体制の充実といいますか,もっときちんとしたものを作ってほしいというようなニーズもあると思いますし,やはり112の中には現行の法規定の中で十分対応できるものもあり,いろんな御意見がある,ニーズがあるわけでございました。
 それで,例えば,最後におっしゃったCPSのところも少なくともヒアリングでお伺いしたところからすると,非常に広い内容を伴っていますので,ここにはワーキングそのものも,何ていうんでしょうか。非公開でやらせていただいたものもありまして,どの程度お話をしていいのかがあるんですけれども,とにかくCPSに関するようなものについてはもっとお考えのようなものが更に分類できるのではないかなというふうに思っております。
 つまり,そこの中に含まれるものが非常に大きなものですから,そこら辺りは今後,次期以降のワーキングチームにおいて先ほどおっしゃった,更にニーズを精査して束ねて,そして,それに基づいて判断をしていくということをする必要があるんじゃないかなと思います。
 それから,いずれにしても,ワーキングの中で百十幾つのニーズについて,いずれにしても,全てそのニーズについては検討するといいますか,一応そのワーキングの中で判断をしていくと。どういう形でお示しをするかという形はあろうかと思いますけれども,いずれにしても,頂いたものはきちんと対応していきたいというふうに考えております。
 よろしいでしょうか。はい。
 ほかにございますか。今村委員,どうぞ。

【今村委員】資料2-1の2ページ目の手順の2・3,「求められている課題の解決手段等に応じてニーズを分類」という部分なのですが,例えば権利制限規定の見直し,ライセンシング体制の構築というのは,これは明確に区別できるものもあると思うのです。ライセンシング体制はおよそ考えられなくて,権利制限でしか対応できないものもあると思うのですが,中には両者が密接に関連し合っているものもあると思います。例えば教科書・入試問題の二次利用などについても単純に権利制限の見直しの問題というよりも,ライセンシング体制の構築として考え,あるいは両者併せて考えるということもあると思います。ですから,そういうライセンシングと権利制限を両方見直し,あるいは構築を考えていかなくてはいけないような問題に対する手順のようなものをもう少し考えてみてもよろしいかなというふうに思いました。

【土肥主査】おっしゃるとおりでありまして,翻訳サービスとかいろいろ出ておるわけでありまして,どこまでが柔軟な権利制限規定に対応し,どこまではライセンシングの仕組みの中で解決するかというのは当然あると思います。今,例に挙げられた教育の問題は,法制・小委で議論をしていただきたいというふうに思っておりますけれども,おっしゃるとおりだと思いますので,そういう意識を持って,次期においては議論を詰めていきたいというふうに思います。
 ほかにいかがでございましょうか。はい。茶園委員,どうぞ。

【茶園委員】これは後で聞いた方がよいことかもしれませんが,先ほど承認されたTPPに関する報告書において,権利制限規定等が必要になるのではないかと記載された箇所がありますけれども,それらについては今後このワーキングチームで検討されるということになるのでしょうか。

【土肥主査】いずれにしても,ワーキングチームで先ほどの説明のあった6まで,その議論をし,そして,ある程度の形としては出していくんだろうと思うんですね。つまり,その段階に行く前に,当然個人的には権利者の方々の御意見等も伺う必要もありますし,簡単ではないんだろうとは思いますけれども,この手順の1から6までについてはワーキングで検討すると。その中において,その柔軟な権利制限規定のイメージとかどういう程度のものかというようなことはお示しができればというふうに考えています。
 茶園委員,よろしいですか。

【茶園委員】質問の仕方がよろしくなかったようです。TPP対応として,例えばアクセス制限に関して新たな措置を設ける場合。

【土肥主査】アクセスコントロールですね。

【茶園委員】すみません。アクセスコントロールに関して新たな措置を設ける場合,権利制限が必要となるのではないかということが記載されていましたが,この点は,現在,ワーキングチームで検討されているものには入っていないのではないかと思いますが。

【土肥主査】はい。入っていません。

【茶園委員】このようなTPP対応に伴って必要になる可能性のある権利制限に関しては,このワーキングチームにおいて検討されることになるのでしょうかということをお聞きしたかったのですが。

【土肥主査】TPPだからということはないんですよね。百十幾つのニーズに基づいて,それをこのワーキングでは検討すると。だから,そのニーズの中にそういうものがもしあれば,茶園委員がおっしゃったようなTPPにも関連するようなものがもしあれば,それはこのワーキングの中に入ってくると思うんですけれども,今のところ,どうですか。何か記憶にありますか。ですから,先ほどお答えしたように,TPPの問題をワーキングでやるということは考えておりません。

【茶園委員】はい。分かりました。

【土肥主査】どうぞ。

【秋山著作権課長補佐】事務局から失礼いたします。ちょっと補足といいますか,確認させていただきますが,茶園先生がおっしゃったように,TPPのための制度整備に伴って,どういう措置が必要かということにつきましては,11月11日の会合におきまして,本小委員会にも方向性を御整理いただきまして,それに基づきまして,きょうの資料1の報告書をおまとめいただいたと承知してございます。
 アクセスコントロールに関しましては,まさにここの中で適切な例外規定を政府によって検討するということはここで御提言いただいていたのだと思いますので,そちらはこちらの方で責任を持って検討させていただきたいと思っております。
 そして,その他の課題につきましては,この報告書の第3章において,TPP協定を契機として検討すべき措置というもの,それから,2章の方ではTPP制度の整備に伴って,関連して必要な措置と,こういうふうに分けて整理をさせていただいたわけでございまして,2章の方では例えば保護期間の延長に伴う孤児著作物対策などについて明記していただいておりますし,3章の方では,先生がおっしゃったように様々な権利制限規定が必要じゃないかと,御意見があったわけでございますが,これは主査からもございましたとおり,TPPだから必然的にといいますか,直結してという流れでは必ずしもないのですけれども,TPPの趣旨も考えて,これを契機として,このワーキングチームの議論を加速するべきだというような御提言を頂いたというふうに理解してございます。

【土肥主査】はい。茶園委員,いかがでしょうか。よろしいですか。

【茶園委員】はい。結構です。

【土肥主査】ほかにございますか。河村委員,どうぞ。

【河村委員】先ほどのやりとりの中で,ワーキングチームの今後の進め方の中で,権利者の方の御意見も聞いてというようなことが主査の方から出ましたけれども,その場合,権利者の御意見という一方の側だけではなくて,やっぱりユーザー側の意見というものも聞いていただきませんと,これまでと同じ繰り返しといいますか,視点が非常にこう,新産業創出とかそういう点に傾いてしまったりですとか,一方的な見方になる可能性があるので,この問題というのはやっぱり産業振興だけじゃなくて,言論や表現の自由ということですとか,広く社会的な活力というものにもつながるものだと思うので,ユーザー側,一般消費者側の意見というものも権利者から意見を聞くというようなときには併せてお考えいただきたいと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。フェーズ,ニーズによっては,そしてまた,段階によってはそういうような場面もあるのではないかなというふうには承知しておりますので,今の御意見を,何分,その来期のことに関してなかなか申し上げにくいんですけれども,引き継ぐように期待をしておるところでございます。
 井上委員,どうぞ。

【井上委員】今期に引き続き,来期は手順6のところをしっかり詰めていくという理解をしておりますけれども,その場合にどのような制度設計にするのかということを本格的に議論するフェーズに入ってくると思いますので,その際には,条約上の義務であるスリーステップテストとの関係についてしっかり検討していただきたいと思います。教育関連の権利制限規定の問題でも同様ですが,スリーステップテストとの関係についての議論がなかなか深まらないままになってしまうケースが多いので,その辺りをしっかり検討し,法制化の準備をしていただけたらよいと思います。お願いします。

【土肥主査】ありがとうございます。このワーキングチームの審議経過報告の中に,スリーステップテストということは確かにないんですけれども,そのスリーステップのそれぞれの通常の利用を妨げないで,不当に利益を損なわないというような,そこはちゃんと入っておりますので,そのことを踏まえて進めていただければというふうに思っております。ありがとうございました。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 それでは,次の本小委員会の審議の経過についてに入りたいと思います。本小委員会の審議の経過についてでございますけれども,資料にございます審議経過等の報告案について,まず事務局から説明を承りたいというふうに思いますので,よろしくお願いします。

【秋山著作権課長補佐】お手元に資料3を御用意ください。本小委員会の「審議の経過等について(案)」と題する資料でございます。
 1番の「はじめに」は,今期の小委員会の検討課題を紹介したものでございまして,割愛させていただきます。
 ローマ数字2番,各課題の審議の状況でございます。今期は5点ございました。
 まず第1に,教育の情報化の推進等に関してです。これは今期の議論の結果を整理したものでございますので,ごく簡略化して御紹介したいと思いますけれども,まず検討の経緯として,1節に述べまして,次のページ,第2節で,調査研究の概要を紹介してございます。
 そして,4ページの方で検討の状況の紹介に入るわけでございます。
 4ページでは,まず(1)ICT活用教育を推進することについて,意義がある旨を御確認いただきました。
 そして,(2)検討の視点としましては,今回,権利制限規定だけを検討しても問題の解決にならないということで,包括的なライセンスの促進も含めたライセンスと権利制限規定の組合せで検討していくべきだという御意見がございました。
 それから,(3)具体的な類型に応じた検討ですけれども,まず授業の過程において教材等を送信する,いわゆる異時送信に関する課題でございます。
 このマル1では,まず教育機関における著作物の利用実態と課題の存在の有無について御検討いただきました。ここでは,現行法では対応がなかなかできない課題があるということを認定いただいたところでございます。
 続きまして,マル2,権利制限規定による対応の必要性・正当性についての議論でございます。これにつきましては,委員の先生からはおおむね理論的には権利制限による対応の必要性・正当性を肯定する意見が複数あったわけでございます。下の方でございますけれども,他方で,実際に教育機関において規定が遵守されるのかというようなことを懸念するお声もございまして,次のページですけれども,こうした指摘などとも関連しまして,小委員会における制度面の議論と並行して運用面の検討を関係者間で行っていただきたいというような御提案を頂きました。これを受けまして,後ほど御紹介いたしますとおり,教育関係団体と権利者団体との間で協議が開始されたというところでございます。
 今後のことですけれども,関係者協議の進捗状況も踏まえながら,権利制限による対応の是非や制度の在り方について更に検討を深めることが求められるとしてございます。
 次に,仮に権利制限による対応するとした場合の論点についても議論を行っていただきました。マル3,市場が形成されている分野への影響についてでございます。この点についても,基本的には市場が形成されている分野への配慮が必要であろうという御意見が多く示されたところでございます。一番下のパラグラフですけれども,この論点については,権利制限の対象範囲とライセンスビジネスの関係,具体的には,教育機関が利用できる形のライセンススキームのうち,どのようなものであれば権利制限の対象外とすべきなのか,あるいはそうしたものがあるのかないのかといったことや,その範囲について引き続き検討を深めていくことが求められるとしております。
 次に,マル4,権利者に報酬請求権を付与することの要否についてでございます。これにつきましても,委員の先生方からは,諸外国との比較などもされた上で補償金制度の導入を肯定する御意見が複数示されたところでございます。この点,仮に補償金制度を導入するとした場合にどの範囲で導入すべきかという点につきましては,委員の先生によって見解が若干分かれていたところでございます。
 つきましては,少し飛ばしまして,この論点については,いずれの立場を取るにしても補償金請求権を付与することを是とする場合は,その理論的根拠を整理した上で,その当否や制度の在り方について,今後更に検討を深めていくことが求められるとしてございます。
 このほかにマル5,制度の円滑・的確な運用を促進するための取組について,それから,マル6,権利制限規定の対象外となる著作物の利用円滑化方策について議論を整理いたしました。
 それから,(4)教育目的で教員や教育機関の間で教材等を共有する際の著作物の利用円滑化についてでございます。これについてもここに記載させていただいているとおり,様々な御意見がございます。9ページの三つ目のパラグラフですけれども,この論点に関しては,権利制限による対応の必要性・正当性の有無や,仮に権利制限の対象となる場合の共有の範囲について,今後更に検討を深めていくことが求められるとしております。
 また,このほか,(5)としまして,MOOCのような一般人向けの公開講座における著作物の利用円滑化についてでございますが,この点,権利制限によって対応すべきというような御意見は余りなかったわけでございますが,他方で,3パラにありますように,一般人向けの授業とMOOCとの違いということについてもよく整理をする必要があるんじゃないかという趣旨の御意見もあったところでございまして,したがって,この論点に関しては権利制限より対応しないとするのであれば,その根拠等について更に検討を深めていくことが求められるのではないかということにしております。
 最後に,(6)法の適切かつ円滑な運用に向けた関係者間の協議の状況についてでございます。先ほど御紹介申し上げたとおり,小委員会の方針を踏まえまして,今,関係者間の協議の場が新たに設けられて,議論が開始されております。この協議においては,教育関係者と権利者団体との間で著作権法上の教育関係規定の解釈運用(ガイドライン)の在り方,それから,教育機関側の著作権保護意識に対する指摘に関わることなど教育機関における規定の適切な運用に関すること,そして,契約により著作物等を利用する際の利用円滑化方策,例えば集中管理の促進や関係する使用料規程の整備等について検討が行われているところでございます。この関係者協議におきましては,権利者側,教育関係者側ともにそれぞれの分野等を代表する団体に御参画いただいておるところでございまして,このICT活用教育を推進するという共通の認識でもって対話が開始されたということは非常に喜ばしいとしてございます。本課題の解決策の早期の取りまとめに向けて,関係者協議においても,迅速かつ精力的に検討が進められることを期待したいとしてございます。
 次に,第2章でございます。マラケシュ条約対応など,障害者の情報アクセスに関わる課題でございます。こちらは昨期より,障害者関係団体及び権利者団体との間で意見集約に向けた取組を進めるべきであるという方針をお示しいただいたところでございます。
 一番下のパラグラフですけれども,現在,そうした取組が継続的に行われているところでございまして,二つの論点に分けて議論いただいております。第1が,法第37条3項の複製等を行える主体に関する課題。それから,マル2としまして,映像に字幕や解説音声等を付与して放送等を行うことに関する課題と,ここら辺は分けて,今,議論を進めていただいているところでございます。
 次に,第3章,著作物等のアーカイブ化の促進でございます。こちらも昨年,昨期の小委員会において基本的な制度整備の方向性をお示しいただいたところでございまして,文化庁の取組について簡単に御紹介いたします。
 第2節,検討の状況のところでございまして,まず著作権法第31条の「図書館等」の範囲の拡充ということで,平成27年6月22日付で,博物館法のいわゆる登録博物館及び博物館相当施設の非営利のものについて,図書館等に含めるという見直しをいたしました。
 そして,次のパラグラフですけれども,権利者不明の裁定制度に関しては,本年の2月15日付で見直しを行いました。この点につきましては少し別の資料を御用意しておりますので,ごらんいただきたく存じます。
 参考資料4をお願いいたします。これは裁定制度の要件緩和についてという資料でございまして,この2月15日に,一度,過去に裁定を受けた著作物等の利用を更に円滑化するための「相当な努力」の要件を緩和するということを文化庁告示の改正により行いました。
 この水色で囲まれた枠のところにありますとおり,改正前の権利者捜索要件としましては,(1)から(3)の全てについて行う必要があったということでございます。これに対して,改正後の権利者捜索の内容としましては,(1)権利者情報を掲載する資料の閲覧,それから,(2)の広く権利者情報を保有していると認められる者への照会については,文化庁において新たに整備をいたしましたデータベースを御参照いただくことで変えることができるというふうにいたしました。
 したがいまして,このデータベースの閲覧と(3)の公衆に対する権利者情報の提供の呼び掛けを行っていただきましたら,過去に裁定を受けた著作物については利用が可能になるということでございます。
 それでは,元の資料に戻っていただければと思います。11ページの下の方ですけれども,これらの課題以外にも御提言いただいた内容としましては,美術の著作物又は写真の著作物を展示する者が行う著作物の利用というものがございました。このうち館内端末での展示著作物の表示についてでございますけれども,今,関係団体との意見聴取などを行っておりまして,その結果,12ページの方ですけれども,その電子端末に著作物を上映したり,公衆送信をするということに関して,法第47条の規定の見直しについてはおおむね賛成の意見が示されておるというところでございます。その他の条件については引き続き検討ということになっております。
 それから,館内端末での利用ではなくて,サムネイル画像のインターネット送信ということにつきましては,これもそのアーカイブ機関が著作物の紹介を目的としてサムネイル画像を公衆送信するということについて賛成の意見が示されたということでございまして,現在その詳細の制度設計など,要件面について更に協議,議論が進められているというふうに承知してございます。
 それから,少し飛びまして,真ん中辺りの「これらのほか」のパラグラフですけれども,昨期の小委員会において権利処理の円滑化のための方策として,著作物等の権利情報の集約化,それから,拡大集中許諾制度の検討ということが提言されました。今年度,これらについては文化庁において調査研究を実施しているところでございます。
 あと,第4章,第5章は,本日御議論いただきましたワーキングチームの議論とTPPへの対応について整理をいたしております。
 最後に13ページをお願いいたします。「おわりに」ということで,今後の展望について若干記載させていただいております。
 マル1,教育の情報化につきましては,授業の過程における著作物等の公衆送信に関しては,権利制限により対応することにおおむね肯定的な意見が示されたところですが,法の適切な運用に向けた協議や権利者団体によるライセンシング体制の構築に向けた取組状況も注視しつつ,市場が形成されている分野への影響や補償金請求権の付与の要否なども含めて更に検討を行うとしてございます。
 障害者関係につきましては,引き続き関係者の意見集約の取組を注視するとしてございます。
 マル3,アーカイブ化の促進につきましては,制度的対応が必要な措置について,更に検討を進めるというふうにしておりますとともに,権利処理の円滑化のための措置としまして,先ほど御紹介したような調査研究により得られた成果を基に今後の検討を進めることが適当としております。
 また,マル4につきまして,本日のワーキングチームの議論に関する議論を踏まえまして,また更新させていただければと存じます。
 御報告は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは,ただいま説明いただいた審議の経過等について御意見を頂きたいと思いますけれども,1ページのところの真ん中の上の辺りに五つ,ポツがございまして,要するに,1章,2章,3章,4章,5章ですか。章立てになっているんだろうと思いますけれども,下の二つは,TPP,それから,先ほどのワーキングの問題でございますので,これは格別といたしまして,上の三つ,教育の情報化の推進,それから,障害者の情報アクセス改善,それから,アーカイブ化の促進,このそれぞれ一つずつ分けて御意見を伺いたいと思っております。
 まず,第1章の教育の情報化の推進等について,これは内容的に相当あるわけでございますけれども,これについて御意見を頂きたいと存じます。
 井奈波委員,お願いいたします。

【井奈波委員】10ページ目の上の方,最初の部分に書いてあるところなんですけれども,このような形で,関係者団体の対話が開始されたということは非常に貴重な,今後の解決にとって非常に望ましいことであると考えております。ただ,下の注を見ますと,関係者団体,利害関係のある団体,権利者団体とユーザー側という形で終わっておりますが,第三者的な立場の調整者というのは存在するのかどうかということをお伺いしたいのと,そういう調整者がいないと,対話が開始されたとしても,このまま利害が対立したまま終わってしまうのではないか,意見の集約がなされないまま終わってしまうのではないかという危惧があると思うんですが,そういう理由で,その第三者的な調整役がいた方がいいのではないかという意見を述べさせていただきます。

【土肥主査】じゃ,これは事務局からお願いできますか。

【秋山著作権課長補佐】はい。ここに書かせていただいたのは,実際,協議の主たる構成員ということでございますが,事実上,文化庁の者も一緒にこの場には参加させていただきまして,本小委員会でどんな議論がされているのかということをよくお伝えするような形で尽力させていただいておるところでございます。また,調整者としてということではないかもしれませんけれども,法学的な見地からしっかり議論を整理していただくという観点から,本小委員会の今村委員にはアドバイザーという形で,この協議会に御参画いただいておるところでございます。我々もできる限り先生のおっしゃった問題意識にお答えできるように努力してまいりたいと思います。

【土肥主査】じゃ,井上委員,お願いします。

【井上委員】今,井奈波先生がおっしゃったことと基本的には同じ視点なのですけれども,ステークホルダー間での協議をしていただいて,一定の合意を形成するということで,著作権制度を円滑かつ適切に運用していこうということは大変結構でと思います。ただ,ステークホルダーといった場合,この会合では教育関係者と権利者側の2者のみですが,ステークホルダーとして重要なのは教育の受益者である学生,生徒であろうと思います。こういった隠れたステークホルダーの声がなかなか反映されづらい場の構造になっていると思います。もちろん今村委員ですとか文化庁の方が入っておられるので,その意味の公益的な観点は入るのだと思うのですけれども,ステークホルダーというのは,権利者と,直接の利用者である教育機関の2者に尽きるというような書きぶりに見えますので,隠れたステークホルダーが存在するんだということを明確にしていただいて,それが形に出るような運用にしていただくことも考えられるのではないかと思います。
 特に権利制限の32条,35条等についてのガイドラインをこの協議の場で作成して,ここで合意が形成されれば,それを周知して,教育機関に守っていただくというストーリーが出てくると思うのですけれども,この2者の代表による協議で教育という公益性を考慮したような合意が形成されるかどうか,この体制で担保できているか不安があるということを申し添えさせていただきます。

【土肥主査】厳しい御意見ありがとうございました。今,井奈波委員,井上委員の御意見を伺っておられて,事務局からはコメントあったんですけれども,お名前の出た今村委員,今のを伺っておられて何かございますか。

【今村委員】おっしゃるとおりの部分もあるかと思います。確かに権利者と教育者だけではなく,実際の教育を享受する側,そういった観点も必要だと思いますし,私が法的な観点からアドバイスするという形で入ってはございますけれども,十分な役割を果たすことができるかどうか。権利者と利用者ということで,なかなかこれは合意形成がもともと難しい分野であるとは思います。35条のガイドラインというのは従前から,一応権利者団体側が示したものとしてはございますけれども,32条の方についてはなかなか法解釈等難しい部分もあるので,これができるのかどうか。そういうことも含めて,今後の検討においては,参加している団体とか関係者を拡大するとかそういう話も議論が出てくる部分ではないかというふうに考えております。この点,文化庁から何か付け加える部分があればと思いますけれども。

【土肥主査】ありがとうございました。何分,この関係者協議が権利者側と,それから,教育関係者としてこういう国立大学協会,公立大学協会,私立大学団体連合会,全国都道府県教育委員会連合会,こういう当事者がともかく協議をしていただく場を作ったということ自体,恐らく大変なことだと思うんですね。ですから,まずそこでいろいろ協議をしていただいて,井上委員がおっしゃったようなそういう場面も場合によっては出てくるんだろうと思いますが,まずそこをちょっと見守っていただければありがたいなというふうに思っております。
 なかなかこの権利者の方は割合まとまるんですけど,大学の教育関係者の方がなかなかこれまで難しかったという経緯がございますので,一つここで,こういう方々に議論していただく,協議をしていただくというのがいろんな面で,いわゆるライセンシング体制の問題,それから,現行の法規定の問題,あるいは場合によっては補償金の問題,非常にしっかりしたものが出てくるのではないかなというふうに期待をしておりますので,よろしくお願いいたします。
 ほかに。

【大渕主査代理】今のは大変によい視点を出していただいたと思います。このようなものは,まず確実にできるところから始めて,次第に進んで行くので,途中のしかるべき段階から入っていただき,最終的には学生,生徒の意見も反映するようにすればよいだけだと思います。ただ他方で,最初から,必ず学生,生徒の代表者を選んできて話合いに入れなければならないとすると,そのためにスタートが遅れることとなってしまうので,確実にできるところとして,ある意味,教師,先生は学生,生徒の声を代弁しているところがありますので,この点では先生,生徒を併せたワングループと,それから,権利者ということで話合いを開始した上で,途中のしかるべき段階から,学生,生徒の代表者にも入っていただき,最終的にはその声も反映するという現実的なアプローチをとるということが重要だと思います。先ほどの御指摘は学生,生徒の意見も最終的にはきちん反映すべきであるということが眼目であって,学生,生徒が直ちに現時点から入らなければならないという御趣旨ではないと思います。今から,学生,生徒の代表者にも話合いに入ってもらうというのは,実際上は大変かと思いますので,学生,生徒の代表者も入れて話を大きくすればするほどなかなか動かなくなってきます。そのために,現実的なところから一歩一歩着実に話合いを進めていくということが重要であると思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。この第1章ですね。1章に関してよろしいですか。教育の情報化の推進,この本小委でも比較的早い時期にこの問題を取り上げたわけでございますし,そのときにもかなりいろんな議論を頂戴したわけですけれども,よろしいですか。
 じゃ,第2章に入りましょう。第2章は,障害者の方々の著作物へのアクセス改善の問題でございます。これは量としては10ページのところにまとめられているところでございますけれども,この部分。これも法制・小委で,早い時期に扱わせていただいたと思います。何か御意見ございますか。よろしいですかね。
 ここでもその関係団体,それから,関係の権利者団体,それから,障害者の団体による意見集約に向けた協議というものが継続的に行われておるということでございますので,御記憶と思いますけれども,法制・小委で検討したときも,まずはその当事者で協議をさせてほしいということをその障害者の団体もおっしゃっておられたと思います。ですから,そこでどういう結果が出てくるのか,我々としては注視をしたいというふうに思っておりまして,こういうまとめ方になっております。
 よろしいですか。はい。
 それでは,第3章,11ページ以降ですけれども,著作物等のアーカイブ化の促進でございます。これは非常に重要な問題なんですけれども,先ほど説明ございましたように,幾つか細部において改善はされておるということでございます。いかがですか。
 じゃ,前田委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】細かいところで大変恐縮でございますが,参考資料4について,ちょっと御質問をさせていただきたいと思うのですが,今回新たに追加された,過去に裁定を受けた著作物等に関するデータベースの閲覧,若しくはそのデータベースを保有する文化庁への照会をすれば足りるというのは,このデータベースの閲覧,又は照会によって,過去に裁定を受けたことがあることが分かった場合には,マル1,マル2は不要になるという趣旨であって,その過去に裁定を受けた著作物等ではないことが照会,閲覧の結果分かった場合には,マル1,又はマル2が必要になると,こういう趣旨と理解してよろしいですね。

【俵著作権課著作物流通推進室長】はい。そういうことです。

【土肥主査】前田委員,よろしいですか。

【前田(哲)委員】はい。

【土肥主査】ほかにいかがでしょうか。松田委員,どうぞ。

【松田委員】そのアーカイブ化の促進について書かれているのは,11ページ,12ページにわたっております。まず,この検討の状況で最初に図書館等の制度について手を加えられたということについては,これは事実の報告としていいのですが,その第2の後の,第2の第2段落,第3段落かな。「また」と書いてあるところなんですが,11ページ下の方,「また」であります。
 「また」のすぐ後には,「美術の著作物又は写真の著作物の展示する者」と書いてあります。ですから,これはまさにこれらの著作物を展示するもの,例えば美術館等なのでありましょう。これについて,観覧者の閲覧に供するための制度が必要だと。デジタル,館内の端末によってというのがありまして,その同じ段落に,「及び」と書いてありまして,アーカイブ機関においてと書いてあるんです。これは展示する機関ではなく,アーカイブ機関なのでありましょう。これについては,サムネイル画像の送信を検討したというふうに書かれております。ここには,展示する者とアーカイブ機関と二つのことが書かれていることになります。
 その次の段落ですけれども,「館内端末での展示著作物」というふうに書いてありますから,まさにこれは,展示する者,美術館等というふうに読んでいいのでありましょう。それにつきましては,現行47条の解説文書に加えて,電子端末による上映もできるようにしましょうというふうに書かれてあるのだろうと思います。これは私,賛成意見を出したところであります。
 その次に,今度は,サムネイル画像のインターネット送信,これについては,アーカイブ機関が,これができるかどうかということについて書かれていて,賛成の意見が示されたというふうに書かれております。ということは,これはこの文章の中に,美術館等の展示する者の制限規定の問題と,アーカイブ機関としてのサムネイルで送信することの意見といいますか,制限規定の問題と二つ混在して書いてあるように思うのですが,これは分かりにくくないでしょうか。

【土肥主査】ありがとうございました。
 じゃ,俵さん,お願いします。

【俵著作権課著作物流通推進室長】今御指摘いただいたように,前段のものについては,美術館,博物館などの展示者を対象にしています。後段の部分については,美術館,博物館など,美術品等を所蔵する施設のほか,こうした所蔵施設を束ねる機関も含めて,アーカイブ機関というふうに記載をしています。
 ただ,そのアーカイブ機関を主体として関係者から意見を頂きましたが,その主体については,一定の限定が必要であるという意見がありました。その内容としては,公共性を有するものに限定すべきといった意見のほか,美術館,博物館のような所蔵施設に限定するとした方がいいんじゃないかという意見もありました。主体については,個々の美術館,博物館より少し広い概念で検討いただき,その結果,主体については一部限定した方がいいというような意見を頂いたという整理になるかと思います。

【土肥主査】はい,どうぞ。

【松田委員】そうすると,私の読み方として決して間違っているわけではないわけですね。

【俵著作権課著作物流通推進室長】はい。

【松田委員】であるとしますと,12ページの法第47条の規定の見直し,これはまさに展示している美術館等における47条の問題でありまして,これとアーカイブ機関との関係はまずないと考えていいと思うわけです。アーカイブ機関でサムネイルの問題が出るとしたら,47条じゃなくて,むしろ図書館等の規定の近いところで改正しなきゃいけないのではないかと思います。

【俵著作権課著作物流通推進室長】前段の電子端末の話は,先生御指摘の通り,47条では小冊子を作る場合に権利者の許諾を得なくてもできるとしているものを,電子端末についても同じようにすることについて意見を頂きました。サムネイルのインターネット送信については,47条並びというよりも,少し観点が異なる議論になるかと思います。

【松田委員】はい。結構です。

【土肥主査】47条の問題で解決がつくもの,それから,そこを少し超えてしまうもの,確かにございますので,ここではそういうことも踏まえて慎重に書かれているんだろうなというふうに思います。
 ほかにございますか。第3章はよろしゅうございますか。
 そういたしますと,4章,5章につきましては,先ほど既に検討させていただきましたので,残るところは,1の「はじめに」と,ローマ数字の3のところですね。「おわりに」,こういうふうにまとめさせていただいておるところでございますけれども,この審議の経過状況報告について,こういう整理でよろしいのかどうか。御意見を頂ければと思います。よろしゅうございますか。はい。
 それでは,この審議経過報告をもって,著作権分科会には報告をさせていただきたいと思っております。
 本日は法制・小委最後の9回目の委員会でございますので,その他として特にこの際,御意見,何でも構いませんけれども,何か御指摘等頂けるものがあれば,ここで頂きますが,いかがでしょうか。よろしいですか。
 特に特段ないようでございましたら,今期の法制・小委はここまでと,このくらいにしたいと思っております。
 今申し上げましたように,今期最後でございますので,磯谷文化庁長官官房審議官から,一言御挨拶を頂ければと思います。

【磯谷文化庁長官官房審議官】土肥主査,ありがとうございます。今期の著作権分科会法制・基本問題小委員会を終えるに当たりまして,一言御礼を申し上げたいと思います。今期の小委員会におきましては,先ほど来おまとめいただきましたように,教育の情報化の推進,それから,アーカイブ化の促進,マラケシュ条約への対応,そして,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定等の在り方,さらにはTPP協定への対応といった,我が国の著作権制度における,非常に幅広い重要な課題について御審議を頂いたわけであります。
 教育の情報化の推進については,先ほど来御指摘いただいておりますが,我が国の教育機会の確保,あるいは質の充実を図っていく上で,大変重要な課題でありまして,本小委員会におきましてもこうした重要性ですとか政策目標を後押しすることをしっかりと御確認を頂いた上で,具体的な法制面の検討を進めていただきました。運用面の課題も含めた一体的な解決に向けて,先ほど御紹介も頂きましたが,関係者協議という形で具体的な取組も始まり,大きな前進があったところであります。
 また,小委員会の下に新たに設置していただきましたワーキングチームにおいて,デジタルネットワーク化の進展に対応した権利制限規定の在り方について御検討を頂きました。この問題については社会の関心も非常に高く,現在,知的財産戦略本部においても,大所高所からの議論が進められているわけでございます。
 ワーキングチーム及び本小委員会では,今期は政策目的及び課題を明らかにするため,まずは社会の幅広い100を超えるニーズを把握していただき,前向きに分析,検討,整理をしていただきまして,今後の検討の展望をお示しいただいたわけであります。今後,主査も御指摘いただきましたように,具体的な制度整備に向けて,我が国に最も望ましい権利制限規定の柔軟性の在り方などについて,先ほど来いろいろ御指摘もありましたが,利用者の視点も含めた多面的かつ専門的な見地から御検討を深めていただきたいというふうに思っております。
 更にTPP協定の対応に係る課題につきましては,昨年秋の大筋合意を受けて,短期間に非常に密度の濃い議論をしていただきました。本日,報告書を取りまとめるに当たりまして,関係委員,各委員の皆様方の御尽力に厚く御礼を申し上げたいというふうに思います。
 本報告書は,次の著作権分科会に報告させていただくとともに,御提言内容を踏まえて,法案提出に向けた準備を引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。
 以上のように,今期の小委員会は,非常に広範にわたって,大変重要な課題について議論を頂きまして,ある意味で大きな一歩を踏み出していただいた委員会であったというふうに認識をしております。各委員の皆様方におかれましては,今期の小委員会の充実した審議のためにお忙しい中,多大な御尽力を賜りましたこと,改めて感謝を申し上げますとともに,今後も様々な形で御指導,御鞭撻を頂くことをお願い申し上げまして,私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【土肥主査】ありがとうございました。今,審議官からお話ありましたように,大変広範なテーマを取り扱わせていただいて,この数年,法制・小委としては非常に特徴のある委員会であったのではないかなというふうに思います。我々も大変だったんですけれども,恐らく事務局は相当大変だったんだろうなと私は思っておりまして,むしろ事務局にお礼を申し上げたいというふうに思っております。ありがとうございました。
 では,事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】今期の小委員会は本日が最後でございまして,審議経過の報告を2月29日月曜日15時30分からの著作権分科会においてお願いしたいと存じます。
 1年間,どうもありがとうございました。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして,今期の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会を終了させていただきます。長い間ありがとうございました。

―― 了 ――

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