文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第1回)

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日時:平成28年6月6日(月)
10:00~13:00
場所:文部科学省東館 15F特別会議室

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議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)法制・基本問題小委員会主査の選任等について
    2. (2)今期の法制・基本問題小委員会における審議事項について
    3. (3)ワーキングチームの設置について
    4. (4)拡大集中許諾制度に係る諸外国基礎調査報告について
    5. (5)教育の情報化の推進について
    6. (6)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1
第16期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員名簿(63KB)
資料2
小委員会の設置について(平成28年5月12日文化審議会著作権分科会決定)(56.2KB)
資料3
第16期 文化審議会 著作権分科会 法制・基本問題小委員会における当面の検討課題及び検討の進め方について(案)(269KB)
資料4
ワーキングチームの設置について(案)(44KB)
資料5
拡大集中許諾制度に係る諸外国基礎調査報告書概要(242KB)
資料6
教育の情報化の推進に関する論点とこれまでの意見<市場が形成されている分野への影響について>(167KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(128KB)
参考資料2
第16期文化審議会著作権分科会委員名簿(78.8KB)
参考資料3
第16期文化審議会著作権分科会各小委員会における検討課題について(81.7KB)
参考資料4
「知的財産推進計画2016」等で示されている今後の検討課題(610KB)
参考資料5
次世代知財システム検討委員会報告書~デジタル・ネットワーク化に対応する次世代知財システム構築に向けて~(平成28年4月知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会次世代知財システム検討委員会)関連部分抜粋(427KB)
参考資料6
文化審議会著作権分科会(第44回)における意見の概要(法制・基本問題小委員会関係)(178KB)
机上配布資料
拡大集中許諾制度に係る諸外国基礎調査報告書(3.1MB)
 
ICT活用教育など情報化に対応した著作物等の利用に関する調査研究報告書(2.1MB)
 
出席者名簿(49.4KB)

議事内容

○今期の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員を事務局より紹介した。

○本小委員会の主査の選任が行われ,土肥委員が主査に決定した。

○主査代理について,土肥主査より大渕委員が主査代理に指名された。

○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。

※ 以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【土肥主査】それでは,本日は,法制・基本問題小委員会の1回目となりますので,中岡文化庁次長から一言御挨拶を頂戴したいと存じます。

【中岡文化庁次長】ただいま御紹介を頂きました,文化庁次長の中岡でございます。
 文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の開催に当たりまして,一言御挨拶申し上げます。
 先生方におかれましては,大変御多用の中,法制・基本問題小委員会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。
 先ほど,主査からもお話がございましたけれども,前期,TPP協定の締結に伴います著作権法の関係部分につきましての改正の御審議を精力的に行っていただきまして,並行いたしまして,様々な新たな課題につきましても審議が行われていたわけでございます。今回,取り分け,審議の課題が目白押しになっているということは,主査の御指摘のとおりでございまして,本日も大変長い会議に御出席を賜りまして,恐縮でございます。
 この著作権制度は,我が国が掲げております「文化芸術立国」,「知的財産立国」,あるいは「クールジャパン戦略」を実現するために重要な役割を担っておりまして,また,IT政策や産業政策の文脈におきましても,著作権は我が国の社会・経済の発展の基盤の一つとして位置付けられているところでございます。
 去る6月2日でございますが,「日本再興戦略2016」が閣議決定されております。この戦略におきましては,社会課題を解決するビジネスを生み出し,国際競争に打ち勝つために,ビッグデータなど技術革新を活用する第4次の産業革命を今後の我が国の生産性向上の鍵として位置付け,これに対応するための知的財産制度の構築が必要であるとしております。この中で,著作権制度も,この成長戦略の一翼を担う大きな役割を果たすということでございます。
 今期の本小委員会におきましては,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定等の在り方,教育の情報化の推進,アーカイブの利活用促進やマラケシュ条約についての対応等の課題の検討を着実に進めていただくとともに,リーチサイトへの対応をはじめといたします,国境を越えた海賊版対策の強化などの新たな課題につきましても,迅速に対応していくことが期待されております。
 とりわけ,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方につきましては,昨年度,政府の知財本部等におきましても,イノベーション促進の観点から検討がなされまして,柔軟性のある権利制限規定の創設が提言されるなど,著作権制度の見直しを求める声は一層強くなっているという状況がございます。
 この柔軟性のある権利制限規定につきましては,その方法論にも様々な見解があるわけでございますが,先生方におかれましては,制度が実際に我が国の著作物等の創造,流通,利用のサイクルの最適化につながるのか,我が国の社会厚生の最大化につながるのかという観点から,我が国にとって最善の選択肢を見いだしていただくべく,専門的な検討をしていただきたいと考えております。何とぞ,精力的な御審議を賜りたいと存じます。
 最後でございますが,委員の皆様方におかれましては,お忙しい中,大変恐縮でございますけれども,一層の御協力をお願い申し上げまして,私の御挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございます。

【土肥主査】中岡次長,ありがとうございました。
 次に,今期の本小委員会の審議事項について確認しておきたいと思いますので,本小委員会における当面の検討課題について,事務局から説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】御説明申し上げます。資料としましては,資料3及び参考資料3から6を使用して御説明申し上げたいと存じます。
 まず,知財計画等において示された課題につきまして,御紹介したいと思います。参考資料4をお願いいたします。各具体的な中身につきましては,後ほど資料3に基づきまして御紹介いたしますので,大きなフレームワーク等について,御紹介いたします。
 まず1ページには,「知的財産推進計画2016」の抜粋を整理させていただいております。本年の知財計画におきましては,まず第1としまして,「第4次産業革命時代の知財イノベーションの推進」としまして,「デジタル・ネットワーク化に対応した次世代知財システムの構築」という柱が設けられております。ここでは柔軟性のある権利制限規定や権利者不明著作物の利用円滑化,それから,ライセンシング体制の改善といった様々な課題がまとめられてございます。
 また,新たな課題として,インターネットを通じた知財侵害などについても,こちらで記載がされてございます。
 少し飛びまして,7ページでございます。第2としまして,今年,新しく「知財意識・知財活動の普及・浸透」という,やや知財教育,普及・啓発といったことが,新たな柱として掲げられてございます。詳細につきましては,御説明を省略いたします。
 11ページでございます。第3としまして,コンテンツの新規展開の推進という柱が掲げられてございまして,具体的には1ポツ,「コンテンツ海外展開・産業基盤の強化」,それから少し飛びまして,16ページでございます。「アーカイブの利活用の促進」といったことが,昨年度からの継続的な課題も含めまして,再整理がされているということでございます。
 また18ページ,第4としまして,「知財システムの基盤整理」ということが柱として掲げられておりまして,著作権との関係では,「国際連携の推進」ということで,様々な協定への対応が述べられております。
 また,ここには抜粋しておりませんけれども,第4の柱としましては,「知財紛争処理システムの機能強化」という柱も立っておりまして,ここでは主に特許を対象とした損害賠償制度や,その環境整備について,今後,検討を行っていくということが提示されているということでございます。
 続きまして,20ページをお願いいたします。「日本再興戦略2016」でございます。こちらにおきまして,先ほど,次長からも説明申し上げたとおり,第4次産業革命の実現ということが銘打たれております。その具体的内容としまして,中ほどの下にありますようなIoT・ビッグデータ・人工知能などの新たな技術の社会実装の進展に伴った著作権制度の見直しなどが述べられているというところでございます。
 それから,22ページでございます。こちらは既に昨年度,閣議決定された,「文化芸術振興基本方針」を改めて掲載しております。
 それから,24ページにおきましては,「規制改革実施計画」,それから,「世界最先端IT国家創造宣言」,さらに,「サイバーセキュリティ戦略」と,様々な戦略目的に関わる計画において,著作権に係る問題が取り上げられているというところでございます。
 それでは,次に参考資料3をお願いいたします。こうした政府全体の計画や,もちろんこれまで文化審議会で御議論いただいた内容,昨年度,ニーズ募集で明らかになった課題なども含めます継続検討課題も含めまして,参考資料3におきましては,今年度の著作権分科会において検討すべき課題を整理いたしまして,さきの5月12日の著作権分科会で御了承いただいたものでございます。
 1ポツの法制・基本問題小委員会におきましては,審議事項を「著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関すること」を審議するとされております。具体的な検討課題例としましては,まず一つ目,デジタル・ネットワーク社会に対応した著作権制度等の整備としまして,具体的には,一つ目として,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方。次に,教育の情報化の推進,そして権利者不明著作物等の利用円滑化,著作物のアーカイブの利活用促進,リーチサイトへの対応等とされてございます。
 また,これも継続課題でございますけれども,障害者に係るマラケシュ条約への対応などについても,検討を行うこととなってございます。
 これを前提としまして,5月に著作権分科会で御議論いただいたところでございまして,そこでどういった議論が出たのかというのを先に御紹介したいと思います。参考資料6をお願いいたします。
 まず,1番「総論」に係る御意見としまして,著作権分科会においては,法制度だけではなくて,様々な著作権制度全体について検討していく必要があるのではないかという御意見がございました。
 それから,今回分科会では,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限等に関する御意見がかなり集中したわけでございまして,そこを少し御紹介したいと思います。
 まず,権利制限規定に関して,政策目的と政策課題を掘り下げて検討を行う必要があるという御趣旨の意見が複数ございました。
 一つ目のポツでは,ただ漠然と「柔軟な規定」というだけでは不十分だという御意見ですとか,2ポツ目,「イノベーションのために権利者の利益を不当に害さないものは無断で使えるようにする」といった曖昧な表現では議論が煮詰まらないのではないかといった御意見。目的と課題を掘り下げて議論するべきだという御意見もございました。
 一つ飛ばしまして,後半の方ですけれども,制度を設ける以上は,どのような行為を対象にした制度とするのかについて,ある程度明確にしておく必要があるという御意見がございました。
 これに対して,最後のポツですけれども,具体的な立法事実だけを基に議論するのではなく,経済,イノベーション,文化の発展という抽象的な事項についても,これまでの議論から半歩ぐらい出て議論する必要があるのではないかという御意見もあったところでございます。
 次に,権利制限規定の柔軟性を高めることの効果や影響に関する分析を行うべきという趣旨の御意見も複数ございました。
 一つ目ポツにその趣旨があるわけですけれども,効果と影響を十分に吟味して,我が国の法体系や社会状況,他の制度を多面的に考えた上で議論するべきだという御意見。
 二つ目,居直り侵害による権利者側の侵害コストの増大といったことについても検証するべきだという御意見。
 三つ目でございますけれども,法の制定機能を立法から司法に移すということの妥当性の問題もあるのではないかといった御意見。
 一つ飛ばしまして,柔軟な権利制限規定の導入によりまして,先ほどもありましたが,具体的なルールを決める主体が立法府から司法府に移ることを意味することだとすると,とりわけ,文化など社会の持つべきプライオリティーについては一定の民主的なプロセスの中で政策判断として選択すべきものであり,全部司法に委ねてしまうというのはしっくり来ないという御意見もございました。したがって,憲法等の分野についても,十分に専門的な検討を行うことは必要ではないかという御意見でございました。
 次のポツでございますけれども,アメリカでは,損害賠償制度,証拠提出制度,アミカス制度,判決・和解の効力拡大の制度などがあるということや,高裁や最高裁において,スタッフも充実しているということから,日本において著作権法だけを変えるということは,弊害の拡大をもたらすのではないかという御意見もございました。
 それから,次のポツですけれども,日本については,判例法国ではなくて,法典法国だということで,法律の条文の解釈を超えた意味での判例法というものが法源としてあるわけではないということを留意して検討すべきであるという御意見もございました。
 また,柔軟な権利制限規定に関して,利用者側がどのような制度を望んでいるのかという点も重要ではないかという御意見。
 それから,訴訟に慣れている外資系企業が有利になる可能性もあるのではないかという御意見。
 それから,この問題に関連して,日本で検索エンジンが育たなかったのは,著作権法に問題があったからということが言われているわけですけれども,こうした事実関係の検証もやるべきではないかという御意見でございました。
 それから,柔軟性のある権利制限規定の検討と併せて,現行制度の見直しが必要という御意見でございます。
 まず一つ目ですけれども,この柔軟な権利制限規定の理論の理由として,個別の立法を待たなくても,時代の変化に対応できるようにする必要性が述べられているわけでございますけれども,これは権利の拡大,保護の強化の観点でも同じ問題があるということで,既存の権利制限規定全体の柔軟性の問題にまで議論を掘り下げていくべきではないかという御意見でございました。
 次のポツでございますけれども,予見可能性の低下や権利コストの増加ということへの対応としまして,懲罰的賠償制度や追加的賠償制度についても検討すべきではないかという御意見もございました。
 それから,柔軟性の高い規定を検討する上で,著作物の一部使用などが問題となるという場合には,同一性保持権との関係についても併せて検討を行うべきではないかという御意見もございました。
 次に,具体的な制度設計の方向性に関する御意見としまして,まず一つ目,経済界の御意見としては,アメリカ型のフェアユースやフェアユース類似の一般規定は適用の有無の判断が難しく,権利侵害のリスクも起こるということで,想定されるニーズに応じた一定の個別具体的な規定の方が妥当という御意見。そして,当事者の予見可能性などに配慮した制度設計の検討をお願いしたいという御意見でございました。
 それから,アメリカのグーグル・ブックスの関係では,商用で対価を得て書籍を提供するサービスにはフェアユースでは対応できないということで,日本での検討についても,データの蓄積や一部表示を認めるところまでは対応するべきだとしつつ,柔軟な規定の限界を考えていかなければならないという御意見でございました。
 それから,(2)としまして,ライセンシング体制の在り方に関して,この著作物の利活用の促進は,円滑なライセンシング体制によって実現できるものだということで,権利者側からの御意見として,こういうものに積極的に対応していくという表明があったところでございます。
 それから,(3)としまして,法の適切な運用を図るための方策についても御意見がございました。
 これに関しては,著作権教育について,全体的,総合的な教育啓発方針を検討することが必要ではないかということでございました。
 さらに,その他の課題としまして,リーチサイトについて,早急な処置をお願いしたいという御意見もあったところでございます。
 少し長くなりましたが,これらを踏まえまして,資料3をお願いいたします。
 ここから本題に入るということなんですけれども,資料3におきましては,今期の法制・基本問題小委員会における当面の検討課題及び検討の進め方について整理をさせていただいております。課題としましては,先ほどの著作権分科会での御決定に対応しまして,六つの課題を掲げさせていただきました。
 まず第1としまして,「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方」でございます。ここは,問題の所在につきまして,若干新しい情報のアップデートだけ御紹介いたしますと,二つ目のパラグラフでは,IoT・ビッグデータ・人工知能などの技術革新に対応ということで,知財計画ですとか,成長戦略でも,これらの対応の必要性が述べられているということを整理してございます。こうしたことも踏まえまして,最後のパラグラフですけれども,技術革新など,社会の変化に適切に対応できる柔軟性を備えた権利制限規定の整備やライセンシング体制の構築の支援など,多様な政策手段の中から適切なものを組み合わせることによって社会の要請に応えていくということとしております。
 これを踏まえまして,これまでの検討状況と今後取り組むべき事項と題して整理いたしております。こちらも大半は昨年度の最後の小委員会における審議経過においてお諮りした内容が中心でございますので,おおむね割愛させていただきます。2ページ目の一番下のパラグラフですけれども,これまで,ここに書いてありますような「手順4」,「手順5」のあたりまで行ったわけでございまして,今後,更に権利者側の意見聴取等も経まして,「権利制限ニーズの束」の輪郭や性質を明らかにし,そして今後の広がりや発展性にも留意しつつ,権利制限による対応の是非や在り方を検討するとしております。
 その際,規定の柔軟性の内容や程度を含め,我が国にとって最も望ましい制度設計を検討することが求められるとしておりまして,規定が実際の社会にもたらす効果と影響を考慮して行うということが求められるとしております。この点は,昨年度の審議会でもその旨を御提示いただきましたし,今期の知財計画におきましても,その旨が明記されているところでございます。
 こうした効果と影響ということに関して,先ほど御紹介したとおり,著作権分科会においても,我が国の法体系や環境,社会状況等を含め,多角的な視点から効果と影響に関する検討を行うべきという意見もあったところでございます。
 あと,知財本部の下に設けられた検討委員会の報告におきましても,柔軟性が高まることによるメリットとデメリット,双方あるということや裁判に対する意識や司法制度等の海外との違いの観点から,バランスの取れた仕組みを目指すべきだという内容が示されているところでございます。
 このほかにも,一つパラグラフを超えまして,ライセンシング環境の充実・改善により課題解決が見込めるものについて,政府の支援・関与を考えていくという内容。
 それから,法整備やライセンシング環境の整備と並行しまして,法の適切な運用を図るための方策についても併せて検討するということを整理してございます。
 参考としまして,「知的財産推進計画2016」の記述をここに掲載してございますので,御参考いただければと存じます。
 それでは,次に6ページをお願いいたします。「教育の情報化の推進等」としてございまして,これもおおむね昨年度の最後の会議でまとめていただいたものが中心になってございますので,説明は割愛させていただきます。
 新しい情報としましては,一番下のパラグラフ,デジタル教科書・教材に関して,文部科学省の設置する「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議」が既に立ち上がっておりまして,学校教育法体系における位置付けなどについて,議論が行われているわけでございます。6月に中間まとめが出されまして,平成28年中に結論を得る予定となってございますのでこれについても,時期に応じて,この検討を踏まえつつ,著作権制度の在り方についても御検討いただきたいと存じます。
 では,次のページをお願いいたします。障害者に関わるマラケシュ条約への対応などについてでございます。こちらも特段新しい情報はございませんで,9ページにありますような三つの主な御要望事項につきまして,意見集約を文化庁のコーディネートの下で行っているところでございますので,こちらもタイミングが来ましたら,また具体的な制度改正案についてお諮りしたいと存じます。
 次に4ポツ,「権利者不明著作物等の利用円滑化」についてです。この課題は,昨年度までアーカイブの促進を図るという政策課題の文脈の中で,こうした問題についても取り扱ってきていただいていたわけでございます。昨年度はTPP協定締結に向けた保護期間の延長の提言などもございまして,これに伴って,権利者不明著作物等の増加が予想されるということで,この問題にしっかり取り組んでいくということが提言されたわけでございまして,柱として切り分けて,ここに掲げさせていただいたところでございます。
 具体的に取り組むべき事項としましては,括弧の以下に整理いたしております。
 まず,下から2行目の「今後は」というところですけれども,平成26年度本小委員会において方向性の示された裁定制度の補償金供託の見直し。これは,主にアーカイブの文脈の中で,公共的な機関などにおいて補償金の支払を後払いにするということの検討が求められていたところでございますので,これに取り組むということが一つでございます。
 次にその続き,本年5月に8権利者団体で権利者不明著作物の権利処理に関する提言というものが出されました。ここでは,まずは裁定制度の現行制度を基に,捜索の努力の効率化を権利者団体の皆さんで取り組んでいくということでございまして,こうした民間団体と連携した裁定制度の利用円滑化方策を検討する予定でございます。
 また,権利情報の集約化に関しましても,昨年度,文化庁の委託事業において調査研究を行いまして,主に諸外国の状況などについて確認したわけでございます。これに関しては,我が国における権利情報の管理・活用に係る課題,今後の方向性についても検討を行ったわけでございまして,まずは,二つ目のパラグラフの下から4行目ぐらいですけれども,権利情報集約の基盤が整っている音楽の分野から,プラットフォームの構築を官民連携して目指すという方向で,今後検討を進めてまいりたいと存じます。
 さらに,最後のパラグラフ,拡大集中許諾制度につきましては,こちらも昨年度,文化庁の委託事業によりまして,外国調査を行いました。詳細は後ほど御紹介いたしますが,今年度は,その調査結果を活用しながら,この集中管理の状況や実施ニーズ,法的正当性,その他の課題などに関して,更に調査研究を行いたいと存じます。
 続きまして,13ページをお願いいたします。「著作物のアーカイブの利活用促進」でございます。こちらも昨年度おまとめいただいた方向性に沿いまして,引き続き検討を行うということが中心でございまして,具体的には13ページの下から二つ目のパラグラフにありますような,美術の著作物等又は写真の著作物を展示する者が,観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介を目的としたデジタルデータを館内の端末を用いて,観覧者の閲覧に供すること及びアーカイブ機関において美術の著作物等の紹介を目的として,これらの著作物のサムネイル画像をインターネット送信することについての法的対応を今後検討していく予定でございます。
 最後に6番の「リーチサイトへの対応」でございます。15ページをお願いいたします。こちらは,一応新規の課題ということでございまして,問題の所在のところに若干その内容を書いております。4行目あたりにありますとおり,他のウェブサイトに蔵置された著作権侵害コンテンツへのリンク情報を提供して,利用者を侵害コンテンツへ誘導するためのウェブサイト,これを便宜上「リーチサイト」と呼んでいるわけでございます。こうしたものを通じた侵害コンテンツへの誘導行為が,侵害コンテンツへのアクセスを容易にし,著作権侵害を助長しているという報告もあるところでございます。こうしたインターネット上の海賊版の流通を助長する行為につきまして,著作権者が正規版を展開する上での大きな問題となっているということで,その対応が求められているところでございます。
 本課題に関する,今後取り組むべき事項としましては,リーチサイトの実態等を踏まえた上で検討をすることとし,リンクを形成する行為は,個人の表現活動に関わる事柄でございまして,インターネットの利用を過度に規制することにならないよう,保護と利用のバランスに留意することが求められるとしてございます。
 御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】どうもありがとうございました。
 それでは,ただいま事務局から説明を頂きました本小委員会における当面の検討課題について,御質問,御意見等がございましたら,お願いいたします。
 いかがですか。特にございませんか。
 これは,今御紹介のあった検討課題を一つ一つ集中的にやって,解決したら次に行くということなのか,あるいは適宜並行して,この検討課題に本小委員会は取り組むことになるのか,どういう段取りになりますか。

【秋山著作権課長補佐】主査の御質問の御趣旨は,検討順序ということでございましょうか。

【土肥主査】そういうことも含むわけでございます。

【秋山著作権課長補佐】分かりました。私どもの想定しております小委員会での検討の進め方につきましては,後ほどワーキングチームの設置をお諮りするわけでございますけれども,それとの関係もありますが,1番の新たな時代のニーズに対応した権利制限規定というものが,昨年度に引き続きまして,集中的にこの小委員会,若しくはワーキングの場で御議論いただくことになろうかと思っております。そのほか,教育の情報化とリーチサイトへの対応に関しては,本小委員会で次回以降,集中的にと申しますか,議論をお願いしたいと思っております。
 他方で,障害者の関係,アーカイブ及び権利者不明著作物の利用円滑化の三つの課題につきましては,障害者とアーカイブについては,まずは関係者間の協議や文化庁における検討を待つということになっておりますので,それが整った段階で御議論いただきたいと思っております。
 権利者不明著作物につきましては,まずは文化庁における取組を進めることとさせていただいておりますので,その状況を随時御報告させていただきたいと思っています。
 そういうことで,お答えになっておりますでしょうか。

【土肥主査】はい。ありがとうございました。
 検討課題についての今後の取組の段取りといいますか,順序というのは,以上のように事務局としては考えているということのようでございます。
 どうぞ,ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますか。我々本小委の検討会,それからこの検討課題への取組の段取りといいますか,こういったものは以上のようなことでございますが,よろしゅうございますか。よろしいですね。
 それでは,本小委といたしましては,今御紹介のあった検討課題について,適宜進めていきたいと思っております。
 そこで,今説明の中にも出てきたわけでございますけれども,ワーキングチームというものの設置について,入りたいと思います。ちょうど事務局の説明に出た,新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の在り方について,専門的・集中的に検討するために,昨年度,本小委員会の下にワーキングチームを設置し,議論を行ってきたわけでございます。この点は,皆さん御存じのとおりでございます。
 ただ,何分,このワーキングチームにおける議論というものは,まだ半ばでございまして,今年度も引き続き検討を進めていかなければならないと,このように考えております。したがいまして,私といたしましては,ワーキングチームを今年度も設置して検討を進めてはどうかなと,このように思っております。
 ワーキングチームの設置案について,先ほど出ました事務局からの考え方につきまして,説明いただければと思います。

【秋山著作権課長補佐】はい。御説明申し上げます。資料4をお願い申し上げます。「ワーキングチームの設置について(案)」と題する資料を御用意いたしました。
 まず第1,ワーキングチームの構成。「小委員会の設置について」,4の規定に基づきまして,法制・基本問題小委員会に,以下のワーキングチームを置くとしてございます。
 ワーキングチーム名は「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」。検討課題としましては,「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方について」,「その他」としてございます。
 第2に,ワーキングチーム員の構成でございます。ワーキングチームに座長を置き,法制・基本問題小委員会の委員のうちから法制・基本問題小委員会の主査が指名するとしております。ワーキングチーム員は,法制・基本問題小委員会の委員のうちから主査が指名した者及びその他の者であって,主査と協議の上で文化庁が協力を依頼した者で構成されるとしてございます。
 最後に議事の公開につきましては,この「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」に準じて行うものとするとしてございます。
 したがいまして,公開については原則,会議,議事録,資料を公開するとしつつ,正当な理由があると座長が判断する場合は非公開とするという案でございます。
 御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ただいま事務局から説明があったワーキングチームの設置案,資料4でございますけれども,この設置案につきまして,御意見,御質問等ございましたら,お願いいたします。
 上野委員。

【上野委員】今御説明がございましたように,今回のワーキングチームの議事の公開につきましては,文化審議会著作権分科会の「議事の公開に関する決定」(平成22年2月15日)に準じて,小委員会の取扱いと同様に,議事を原則として公開とするものと承知いたしました。かつては,ワーキングチームといいますと,むしろ原則非公開として,自由度の高い議論を機動的に行うのが一般的だったように認識しておりますが,どうも最近,ワーキングチームは議事公開がデフォルトになったようであります。
 もちろんケース・バイ・ケースでしょうから,これからもテーマや状況によっては,かつてのように議事を非公開として,議事録は要旨のみの公開にとどめることがあってもよいように思います。ただ,今回のワーキングチームは,そのテーマも社会的な関心がかなり強いもののように思いますので,実際の議論が議事録の形で公開されて,これに対する社会からの反応も踏まえつつ,オープンな検討が進められるのがよいのではないかと思います。したがいまして,今回のワーキングチームの議事の公開に関しては,事務局の御提案が望ましいのではないかと思います。
 ただ,昨年度ワーキングチームに参加した経験からいたしますと,ウェブサイトにおける議事の公開の在り方につきましては,事務局に取扱いを御再考いただいた方がよいのではないかという点があります。
 と申しますのは,昨年度のワーキングチームは,合計4回(第1回〔2015年10月7日〕,第2回〔同月28日〕,第3回〔同年12月9日〕,第4回〔2016年2月18日〕)開かれておりますが,その議事録は,本日の時点で,一つもウェブサイトに載っていないようです。このうち最後の第4回は非公開で行いましたので,これはよいのですが,それ以外の3回分は,開催から既に半年以上たっているにもかかわらず議事録が掲載されておらず,もう既に年度末の報告も終わってしまっております。
 もちろん,傍聴は認められておりますので,傍聴者の方は議論を知り得るわけですが,傍聴できる人は限られますので,それ以外の人にとっては,議事録が適時にウェブサイトに掲載されない限り,どのような議論がなされたのか知りようもありませんので,せっかくワーキングチームの議事を公開にする取扱いをしても,これでは議論をオープンに進めるという目的は達成されないように思います。
 もちろん,それはチーム員の問題だという御意見もあろうかと思いますが,私は,事務局側の運営として,発言者への確認のとり方に工夫の余地があるではないかと思っております。例えば,中村伊知哉先生を委員長として最近まで行っておりました知財戦略本部の次世代知財システム検討委員会では,発言した委員に議事録の内容に関する確認をとる場合も,1週間や10日間という期限を設けた上で,「もし修正があれば連絡するように」という形で通知があります。したがって,特に連絡がなければ,テープ起こしした発言のままウェブサイトに掲載するという運用がなされておりまして,その結果,非常にスムーズに議事録が公開されております。
 もちろん,いったんそのように公開された後であっても,修正の申出があれば差し替え可能にするとか,他にもいろいろな方法があるかと思います。にもかかわらず,発言者のほぼ全員が議事録の確認を終えて長期間経過していても,全員が確認を終えるまでは何も掲載しないという方法をとっておられるとすれば,それは運営のやり方に問題があるのではないかと私は思います。
 これはワーキングチームだけの問題ではないかもしれませんけれども,あえてワーキングチームの議事を公開にするという決定をする以上は,事務局の運営といたしましても,そうした発言者への議事録の確認の取り方について御再考いただいた方がよいのではないかと思いますので,大変僣越ではありますけれども提案させていただきます。
 以上です。

【土肥主査】事務局から何かございますか。

【秋山著作権課長補佐】上野先生の御指摘のとおりだと思います。真摯に受け止めまして,私どもの事務局の不手際で公開が遅れているということでございますので,善処したいと思います。

【土肥主査】我々の方に問題があるのかなとも思うんですけれども,そうではないんですか。要するに,我々の方が遅れているというか,そういうことではないんですか。

【秋山著作権課長補佐】皆様には,ややばら付きはありますけれども,適宜対応はしていただいておりますので,我々の方でしっかり努力したいと思います。

【土肥主査】そのようなことでございますので,我々も努力をして,上野委員がおっしゃるような形をスムーズに取りたいと思います。できるだけ事務局には迷惑を掛けないようにして,迅速校正を確保したいと思っております。
 ほかに。はい,どうぞ。

【末吉委員】1点確認なんですけれども,先ほど,資料3で御説明いただいたとおり,資料4で求められているワーキングチームの検討課題というのは,昨年度検討してきたところの積み残りをやるというところは,一つイメージできたんですけれども,もう一つ,先ほど,資料3で伺うところによると,ビッグデータであるとか,人工知能であるとか,もう少し新しい直近のトレンドも取り組んで,こういう権利制限を考えていけという御趣旨も知財計画では感じられるところでございます。後者の点については,このワーキングチームで取り扱うのか,あるいはそうでないのかという点だけ,1点確認させてください。

【秋山著作権課長補佐】御趣旨に添えているか自信がないわけですけれども,知財計画や成長戦略で述べられているIoTやビッグデータ等に関わるニーズは,昨年度のワーキングチームの検討の前提として行ったニーズ募集においても様々寄せられたところでございます。例えば,資料3の1ページの三つ目のパラグラフにおいて,知財計画では,広く公衆がアクセス可能な情報の所在を検索することを目的としたサービスや,若しくは分析結果の提供サービスなどを具体例として挙げつつ,さらに,このほかにも多種多様なサービスが挙げられるとされておりまして,このようなサービスについては昨年度のワーキングチームにおいても検討が行われてきたものと承知しております。少なくとも,こうしたものを踏まえた検討については,昨年度の御審議の内容も含めて,引き続きお願いしたいと思っております。
 それから,人工知能については,少し新しい視点なのかもしれませんが,人工知能によって創作された著作物の権利の在り方ですとか,権利処理の在り方などについては,今年度,ワーキングチームで明示的に議論すべきという方向で知財本部での議論が行われたようには認識しておりません。この点につきましては,更に課題として成熟してまいりましたら,検討課題として加えていただきたいなと思っております。

【土肥主査】末吉委員の御発言は,ワーキングチームの検討課題として取り上げてみてはどうかという御趣旨ですか。

【末吉委員】いや,そこを確認するということです。

【土肥主査】そうですか。
 ほかに御質問,御意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 では,お願いします。龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】ワーキングチーム員の構成の2点目で,委員の方が構成員になるほかに,その他の者で協力依頼をするということですが,具体的にどういうイメージのものなのか,何か原案のお考えがございますでしょうか。

【秋山著作権課長補佐】これも基本的には座長に最終的な御判断を頂く中で,私どもも相談させていただくということでありますので,まだそこまで詰まった検討ができておりません。しかしながら,今回,資料3で整理させていただきましたとおり,少し多面的な検討が必要だということもございますので,そうしたことに留意して相談してまいりたいと思います。

【土肥主査】龍村委員の御意見として,特に何かチーム員の構成について,お考えはございますか。あればどうぞ。

【龍村委員】恐らく,社会的なニーズを拾ったり,社会の実態とのすり合わせが必要になるのではないかという意味で,例えば,外部のシンクタンク等の外部委託を念頭に置かれているのであれば,その作業ボリュームとか,どういうアウトプットを求めるのか,どういう方にお願いするのか,などのお考えをお伺いしたいと思いましてお尋ねいたしました。私としても,そういう必要性も視野に入れた方がいいかという気がいたします。法的な観点からの検討を超えて,いわば社会調査といいましょうか,そういう作業も必要になるのではないかと思った次第です。

【土肥主査】ありがとうございました。
 この点については,後でまたワーキングチームの設置が本小委員会において承認されましたら,お話しいただきたいと思います。
 ほかにございますか。
 はい,どうぞ。道垣内委員,どうぞ。

【道垣内委員】この方向について,別に異論があるわけではないのですけれども,新しい時代のニーズに的確に対応するというワーキングチームである以上は,いつまでにその産物を出すのかということについて,心積もりのようなものがあるべきかと思います。先ほどの御発言の中には,広くいろいろ調査してという御指摘がありましたけれども,それはもちろん大切なんですが,やはり早くしなければいけない。場合によっては,全部を一度に出さなくても,できたところから出していくとか,いろいろなやり方があると思います。スピード感をどんなふうにお考えなのか,あるいはここで決めればいいのかもしれませんが,そこを少し明らかにした方がいいのではないかと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。
 道垣内委員の御指摘のように,昨年,前期のワーキングチームにおきましては,100を超えるニーズを集めまして,それに基づいて仕分けをさせていただいております。A類型,B類型,C類型,そういった仕分けをさせていただいて,更にA類型における緊急度の高いもの,ニーズの高いもの,必要性の高いものというところで,更に仕分けをさせていただいて,重要度の高いものから,既に相当程度,審議,検討を進めているところでございます。
 しかし,アンケート調査を頂きましたので,ワーキングチームの考え方としては,いずれ全部のニーズに,あるいはアンケートにお応えしたいというのが基本的な姿勢でございます。
 さはさりながら,今おっしゃったように,必要性の高いところから順次出させていただいて,この後,そういうお話になるかと思いますけれども,委員が御要望のような形にしていきたいし,現にそのように進めているということでございますので,御了解いただければ幸いでございます。
 ほかにございますか。
 はい,松田委員,どうぞ。

【松田委員】同じ話は,分科会の方でも出ておりまして,そこで前回,大変貴重なお話の会議が進んだと思っております。このワーキンググループで検討してもらうことにおいて,今年度の改正としてどういう点ができるかをまとめ上げなければ,何年たっても,なかなかできない。特に柔軟な規定につきましては,実質的にもう長くやっているわけですから,そこでいろいろな意見が出ました。主に権利者団体からは,日米の法制度といいますか,民事司法制度の違いが指摘されまして,そのことによって柔軟な規定が導入されたときの効果等が両国においては違うのではないか。場合によると,日本で柔軟な規定だけを導入した場合においては,弊害もあるのだという意見も出てきておりました。そういう点は,私も重要だと思います。
 しかし,この日米の違いを検討しておりますと,著作権法の議論をはるかに超えた司法制度ないしは国の在り方の議論になってしまいますので,恐らくワーキングチームで検討し,なおかつ,この小委員会で検討して結論を出すということができなくなる。私は,分科会では,そこまで入り込まないで著作権法の範囲内で議論するほかないのではないでしょうかという意見を出しました。確かに司法制度の大きな問題はあるにしましても,ここで議論をするということは,そこのところは議論に入らないでやっていくほかないのではないかという発言をさせていただきました。それは,とりもなおさず,何らかの結論を早く出すということは,きょうのペーパーでもあります知財戦略本部や内閣決定から考えますと,求められているところなんだろうと私は思うわけです。
 そういう点で,著作権法の改正の点だけに集中して議論をすべきだろうということを,あえてここでも発言して,記録に残しておきたいと思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。
 大渕委員,どうぞ。

【大渕主査代理】私も先日,分科会に参加いたしまして,日米の法制のことについて発言して,先ほどの要約のところにも出していただいています。あのときに発言いたしましたように,柔軟な規定というものがムード的に論じられると,何が柔軟な規定の中身なのかが各自で全く違った内容でとらえられてしまい,同床異夢の典型のようになってしまうことが懸念されます。民事・刑事上の国民の権利義務に直結するような非常に重要な問題でございますので,ムード的なものではなくて,しっかりと柔軟な規定の法的な意味を吟味し,明確化する必要があります。
 本当にアメリカ流のフェアユースをそのまま導入してくるのであれば,それこそ大陸法的な裁判官をコモンロー・ジャッジに変えるぐらいの大きなインパクトのある話となってまいります。松田委員がおっしゃるとおりで,恐らく日本の知財高裁等の著作権担当の大陸法的裁判官をコモンロー・ジャッジに変えろという御発言をされている方は誰もいらっしゃらないと思われるにもかかわらず,ここでムード的に議論していると,出来上がった成果物は,権利制限に関する限りは,日本国の大陸法的な裁判官,すなわち,制定法の解釈適用を旨とする裁判官を,それとは大きく異なるコモンロー・ジャッジに変えるぐらいの大きなインパクトがあることになってしまうということであります。
 一つ一つ,ファクトとニーズを洗っていくのは,私は大変重要なことだと思います。その上で,何をどのように変えると,どういうインパクトがあるのかということを考える際には,当然のことながら,我が国の著作権法は著作権法だけが独立して単独で存在するわけではなくて,民事,刑事,ないしは司法制度の中の一部分としてあるわけですから,常に1か所変えると法制度全体にどういう波及効果があるのかもきちんと考えていく必要があると思います。このようなことを十分に念頭に置きつつ,きちんとファクト,ニーズを洗い出すということが先決ではないかと理解しております。

【土肥主査】ありがとうございます。
 今,大渕主査代理も御発言がありましたけれども,やはりファクト,ニーズをまず認識するというのが,やはり大事なことなんだろうと思います。その上で,著作権法における柔軟な権利制限規定が,どういう形がベストモードであるのかという,そのベストモードをニーズの中から把握していくという作業をせざるを得ないんだろうと思っております。
 特に,先ほど御紹介がありましたけれども,分科会におきましては,効果と影響といったものを十分認識した上で,過去におけるファクトとニーズ,プラス,今後そういう柔軟な権利制限規定を入れた場合について,どういう影響があるのか,どういう効果があるのか,そこも把握した上でという状況が,今現在のところでございます。
 ニーズも,著作権法の規定の見直しによって対応できるものももちろんあるわけでありますけれども,ライセンシング体制をもっと機動的な柔軟なものにできれば,それによってニーズに十分応えることができるものもあるわけでございます。そういう仕分けの中で,きょう,もしお認めいただければ,このワーキングチームの中で集中的な議論をやっていただきたいと,このように思っているところでございます。
 そもそもワーキングチームの設置について,御異議のある方はおいでになりますでしょうか。設置についてはよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】はい。それでは,先ほどの資料がございましたけれども,ワーキングチームの設置についてというのがありましたよね。資料4ですね。「ワーキングチームの設置について(案)」となっておりますけれども,この(案)を取って,平成28年6月6日という日を入れるということになります。それでよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】はい。ありがとうございました。
 それでは,ワーキングチームの設置については,正式に了解いただいたということにさせていただきます。
 資料にもありましたように,ワーキングチームの座長は,本小委員会の主査が指名することになるわけでございます。したがいまして,ワーキングチームのメンバーにつきましては,本日の御意見も踏まえて,私と事務局との間で相談の上で決定していきたいと思います。メンバーが決まりましたら,本小委員会でも追って報告させていただくことといたします。
 なお,先ほど御確認いただいた資料3の当面の検討課題にもあったんですけれども,ワーキングチームにおきましては,我が国における最も望ましい柔軟性のある権利制限規定を見いだしていくことが求められております。そのためには,権利制限規定の柔軟性を高めることが及ぼす効果や影響についても,多角的な視点から専門的に吟味していくことが求められているところでございます。これは非常に難しい問題でございますけれども,ワーキングチームにおいては,この点にもよく留意をして議論の整理をお願いしたいと思っているところでございます。
 しかし,一方で,本課題についてはスピード感を持って成案を得よという御意見も本日あったわけでございますので,審議の効率化を図るためにも,事務局におかれましては,必要な情報の収集,あるいは関係する論点の整理等を御多忙とは存じますけれども,並行してお進めいただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,議題4に入りたいと思います。拡大集中許諾制度は,平成26年度の本小委員会において,アーカイブ化の促進につき検討を行った際,諸外国において導入されている制度として紹介されました。著作物の流通促進に資するという評価がある一方,制度についての疑問点もあるということから,昨年度は文化庁委託事業により,諸外国基礎調査が実施されております。
 本日は,その調査の内容について,事務局から報告があるようでございますので,よろしくお願いいたします。

【俵著作物流通推進室長】ありがとうございます。
 今,主査から御指摘いただいたように,昨年度,拡大集中許諾制度について諸外国の基礎調査を行いました。先生方のお手元に報告書を置いてあります。この報告書の概要について,紹介をさせていただきたいと思います。
 ちなみに,部数が足りないので,傍聴の方には報告書を配ることができていませんが,文化庁のウェブサイトに掲載していますので,そちらを確認いただけたらと思います。
 概要について,資料5を見ていただけますでしょうか。一昨年度の小委員会で拡大集中許諾制度について検討を進めるべきといった意見を踏まえて,昨年度に海外調査を行ったものです。
 一番後ろのページに,調査期間,受託機関などを記載しています。調査期間は平成27年10月から28年3月,受託機関はソフトウェア情報センターです。この委員会の今村先生にも入っていただきましたが,委員の方々4名に参加いただき,各先生方に幾つかの国を担当いただいて,報告をまとめていただきました。
 既に拡大集中許諾制度を導入している国として,北欧諸国と最近導入したイギリス,そして,まだ具体的な制度にはなっていませんが,導入を検討している国としてアメリカの調査を行いました。
 この調査では,拡大集中許諾制度について,法定された規定に基づき,著作物の利用者と相当数の著作権者を代表する集中管理団体との間で自主的に行われた交渉を通じて締結された著作物利用許諾契約の効果を,当該集中管理団体の構成員ではない著作権者にまで拡張して及ぼすことを認める制度と捉えて調査を頂きました。
 スライドの3ページ目以降に,それぞれ各国の制度をざっと整理したものをまとめています。今回はこれは省略させていただきます。スライドの10ページ目からが各国の制度を項目ごとにまとめたものになっていますので,こちらについて説明をさせていただきたいと思います。
 最初は,拡大集中許諾制度の対象となっている分野であったり,利用行為について整理したものです。北欧の5か国については,これらの分野,あるいは利用行為の多くが共通しているということが分かっています。具体的には,ここの括弧に書いているような放送分野。例えば,著作物の一次放送における利用であったり,図書館,美術館における複製,教育活動のための複製,企業における内部複製といったものが具体的な対象になっています。これらは,我が国における個別の権利制限規定であったり,報酬請求権の対象とされている分野と重なる部分も比較的多いかなということで,そういう整理がされています。ただ,最近では,この北欧諸国においても,対象の分野であったり,利用形態を特化しないで,一般ECLという形での導入が相次いでいるようです。
 アイスランドについては,2016年,スウェーデンは2013年,この北欧諸国の中では一番デンマークが古いと言われていますが,2008年,ノルウェーでは2015年に,この導入がされています。
 例えばスウェーデンでは,具体的には放送の見逃し配信であったり,美術館のデジタルアーカイブ化といったものについては,一般ECLの規定に基づいた活用が始まっているということのようです。
 最近制度導入されたイギリスでは,2014年に分野を限定せずに一般ECLという形で導入されています。
 アメリカについては,グーグル・ブックス訴訟の和解案のスキームをベースに,パイロットプログラムという形で提案がされている段階ですが,これについては対象となっている著作物を「言語」と「言語著作物に付随する絵画や図形」,「写真」という形で,限定して提案がされています。
 利用形態についても,教育・研究利用ということで,比較的限定的な形でのパイロットプログラムとして提案されているのが特徴的かなと指摘されています。
 続いて,集中管理団体の適格性というところで,スライドの11ページ目を確認いただけますでしょうか。これらについては,スウェーデンを除きまして,適格性として権利者の相当数を代表する団体であること。そして,政府等の認可を得ることが要件となっています。
 この相当数という具体的基準については,それぞれの国において具体的な数であったり,割合が示されているわけではなくて,柔軟に対応するということが基本になっているようですが,相当数という一定の要件が課せられているということになっています。
 スウェーデンについては,代表性の要件だけでよくて,政府の認可が必要ないということが一つの特徴になっています。
 デンマークについては,一度政府による認可を受けた集中管理団体であっても,ECL契約を新たに結ぶたびに認可を受けることが原則として必要となっています。ただ,この契約についても,包括的な契約をベースとするフレームワークについて,包括的な認可が受けられるということでもあるようですので,契約ごとに必ず認可が必要だということにはなっていないようです。ただ,新しい契約をするたびに,この認可が必要とされています。
 フィンランドとイギリスについては,認可の有効期間が定められているようでして,5年間と定められているようです。
 次に,スライドの12ページ目をお願いいたします。それぞれの国に共通して,非構成員である権利者がECL契約から離脱する,その適用を受けないというためのオプトアウトという仕組みが設けられています。特にアメリカやイギリスにおいて,この仕組みは,この制度を担保する重要な要件と考えられています。
 一方で,北欧諸国においては,対象行為についてオプトアウトが法律上明確に規定されている分野もありますが,実はそうでない分野も一部あるということのようです。
 これは,スライドの5ページ目のデンマークをごらんください。アンダーラインを引いている分野が,オプトアウト権の行使を認める必要のある分野ということで,これ以外の部分については,オプトアウト権が設定されていないということになっているようです。比較的広い範囲でオプトアウト権の設定の必要がない分野がデンマークでは規定されています。こういったように,一部の国においては,一部の行為について,オプトアウト権が設定されていない分野もあるということが分かっています。
 さらに,オプトアウト権が設定されている国においても,オプトアウトについては,実務上,余り行使されていないというのが,現状であると報告を頂いています。
 ここに書いてありますが,理由として考えられることとして,ECL契約の対象にとどまって,使用料の便益を受ける。使用料を受けた方がいいだろうという権利者の選択があるのではないかということが示されています。
 その下の著作者人格権についてですが,これはECL規定の中で,別途著作者人格権の保護を義務付けている国はアイスランドだけということになっています。それぞれ個別のECL契約の中に著作者人格権の保護と同じ内容を定めた規定を設けている例が見受けられています。
 使用料の分配についてですが,それぞれの集中管理団体の規定に従って行われていますので,様々ではありますが,原則として各権利者に分配する。ただ,受け取れる額が少ないといった場合のように,経済合理性の観点から,権利者が活用できる助成金に換えたり,文化振興目的の活動に出資されているという例があります。
 具体的には,北欧諸国については,分配されなかった使用料は,一定期間経過した後,3から4年が通常のようですが,ほかの権利者に再分配という形であったり,著作権保護のために使われたり,芸術家への助成金に充てられるといった形で運用が行われているようです。
 イギリスでは,分配されなかった使用料は,3年経過したら国務大臣に移管する。国務大臣は,8年を経過してから,社会的・文化的・教育的活動への出資といった形で使用料の使途を決められるとなっているということです。
 いずれの国においても,構成員と非構成員の待遇は平等にしなければいけないという規定が盛り込まれています。
 スライド14枚目になりますが,使用料を分配するに当たって,非構成員をどこまで探すかということについて,法令上定めている国はないということです。ただ,団体の中には,最大限に調査する,あるいは可能な限り探し出す責務を負うといった規定を設けているところがあります。
 一方でアメリカにおいては,これは飽くまでパイロットプログラムの中ですが,集中管理団体に非構成員の著作者の探索を義務付けるということが提案の中に含まれています。
 調停・仲裁制度ということで,ECL契約の締結交渉が不調に終わった,うまくいかなった場合の対応について,それぞれ北欧諸国においては,調停・仲裁制度が規定されています。
 ここで,調停制度については,拘束力のないものとして整理し,仲裁制度については,拘束力があるものとして整理がされています。アイスランド,スウェーデン,デンマーク,ノルウェーについては,調停制度があります。そのほか,一定の利用行為,例えば写真の複製であったり,教育・研究利用であったりといった形で適用範囲を限定した仲裁制度を設けている国も幾つかあるということが分かっています。
 スライドの15枚目になりますが,北欧諸国におけるECL制度に対する評価についても整理を頂いています。これらの調査対象国においては,権利者,利用者,有識者のいずれからも,おおむね肯定的な評価がされています。その主な理由としては,権利者,利用者双方にとって権利処理を非常に効率化して,取引費用を低減できるということが挙げられています。
 権利者のメリットとしては,個別に権利制限を設けるという形と比較すれば,交渉によって利用の対応ごとに条件を柔軟に変えることができるということが指摘されています。
 一方で,利用者のメリットとしては,多数の著作物を煩雑な手続を経ずに利用できるという点が挙げられています。
 また,北欧諸国の特徴としては,歴史的に幅広い分野で集中管理が発達しているという背景から,集中管理団体に対する信頼度が高いということもあるとされています。課題としては,ECL集中管理団体の公正性であったり,透明性をいかに確保するかであったり,管理運営のコストの上昇にどのように対応するかといった点が挙げられています。
 最後になりますが,イギリス,アメリカについての評価ですが,イギリスについては,ECLの申請・更新手続が複雑であったり,許可の期間が短いという点も指摘されているようですけれども,利害関係者の反応としては,全体として肯定的になっています。
 ただ,イギリスでは,制度が導入された後,具体的な運用がされていない状況です。現在では具体的な申請を待っているという状況なので,具体的な内容については,今後の評価を待たないといけないということになっていますが,アーカイブ団体からは,かえってライセンス料のための支出が増えるのではないかといった懸念も示されているところです。
 アメリカにおいては,このパイロットプログラムについて,パブリックコメントが出されています。このパブリックコメントの結果について,83件ほど意見があったようですが,賛成があったのが9件,反対が52件ということで,導入に懸念を示す意見が多く出されているということのようです。権利者からは,著作権制度の原則を転換させるということに対する懸念であったり,代表制の要件を満たすハードルが高いので,団体が出てこないのではないかといった懸念を示されています。利用者からは,非公表著作物が対象でないと,大量デジタル化には不十分といった懸念が示されています。
 今年度は,この海外調査の結果を踏まえまして,日本国内の導入について,調査研究という形で有識者の先生に集まっていただいて,具体的な課題であったり,論点について整理し,検討を進めたいと考えています。
 済みません。今村先生,もし補足があれば,よろしくお願いします。

【今村委員】私も調査研究に携わった関係で,幾つか補足をしたいと思います。まず,アメリカ著作権局がパイロットプログラムの提案をしたということで,導入に懸念を示す意見が割と多く出されたということでしたが,拡大集中許諾は基本的にライセンスということであり,それを制度化するということになるわけですが,フェアユースの適用範囲を狭めるのではないかという懸念が大きいようです。
 この点については,報告書の114ページ,115ページに詳しく書かれております。この著作権局のパイロットプログラムの提案でも,フェアユースを留保する確認規定を置くということにはしているのですが,それでもアメリカの大事なフェアユースの適用範囲を狭めてしまうのではないかという懸念があるということでございます。この点については,今後議論になると思うんですけれども,日本でも既存の権利制限規定と,拡大集中のライセンスのスキームとの相互関係が問題となる場合として検討しなくてはいけない部分もあるのではないかと思います。
 また,北欧諸国では,この拡大集中許諾制度が1960年代から伝統的に採用されてきたわけでございます。当初は,一次放送の分野での著作物利用などにおいて活用されてきた,導入されてきたということですが,この背景としては放送というものが,ノルウェー,スウェーデン,フィンランドのような国では非常に公益的なものであるという理解が強く,そういった場で著作物を利用することに対して,こういう制度を導入することが受け入れやすかったということがございます。また,先ほど御案内がありましたように,集中管理団体の集中の程度が高いということもあり,信頼度も高いということがあったということでございます。
 北欧諸国で導入されてきたこの制度ですが,公共の利益というと,放送などはそういうことになるのですが,便利な制度だということで,次第に適用範囲が拡大してきた。教育の場面でこれを使ってみたり,企業内複製の場面におけるライセンスの円滑化のような形でも使われてきているということで,そういう場面に次第に拡大してきているということであります。
 その点について,今回この制度を導入したイギリスは着目したんだと思います。ただ当初イギリスでは,この制度を導入する前の議論としては,孤児著作物の利用円滑化に使えるのではないかということで議論が始まりました。しかし,議論を進めていくにつれて,これはどうも孤児著作物の利用円滑化への対応に限定した制度ではないようだということが次第に分かってきたようでございます。先ほど御案内がありましたように,イギリスの制度ですが,想定している利用範囲としては,既存の集中管理団体が既に有している集中ライセンスのスキームを補完するということであり,そこに主眼が置かれております。この制度を導入して,何か新たなビジネスモデルを展開するということを念頭に置いているというわけではないということが,調査研究の結果,よく分かってまいりました。
 その結果,拡大集中許諾が全ての問題を解決できるのではないという発想の下,イギリスでは,この導入に併せて,アーカイブに関する権利制限の主体を拡大してみる法改正であるとか,あるいは孤児著作物に関するライセンススキーム,これは我が国の裁定制度に類似したものですけれども,そういうものを別途導入しました。もちろんEU孤児著作物指令に対応する立法的手当も国内法でいたしました。その他,少額の小口のライセンスの円滑化を促進するための著作権ハブといったもの,これは当初は著作権取引所みたいなものとして構築を想定していたんですけれども,現在のところ著作権ハブという形で,少額の小口のライセンスの円滑化を図るような民間の仕組みを促進するということもいたしました。このように様々な手当も併せて行っているという状況であります。
 補足する点としては,以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは,この拡大集中許諾制度について,御紹介,御報告がございましたように,今年度,更に踏み込んだ調査研究を実施し,多面的な視点からの論点の深掘りを行っていくことになるんだろうと思います。
 ただいまの事務局,今村委員からの報告をお聞きになって,御質問,あるいは今後の調査研究を実施するに当たって,御要望等がございましたら,お願いいたします。
 松田委員,どうぞ。

【松田委員】調査の御議論,ありがとうございました。
 これについて,三つほど質問があるんですけれども,まず一つ,利用者団体と権利者団体がどういう協定,契約を結ぶかという大きさが私にはちょっと見えてこないんですね。うんと小さくしてしまえば,個別的契約にどんどん近付いていってしまいます。大きければ大きいほど,利用するといいますか,価値は増してくるんだろうと思います。しかし,そうなりますと,アウトサイダーも含めて,権利処理についての妥当性が担保されるかという問題が出てくると思います。当然,そのことについては,オプトアウト制度をきちんと確立しておかなければならないということになるんだろうと思います。これは,協約の大きさとオプトアウトの許容性というか,どのようにこのバランスを取ったらいいのかという問題に,多分なるんだろうと思います。その点が1点です。できれば,何々団体と何々団体がこういう契約を結んでいますよという一例を頂戴できればと思います。そうしたら,イメージが湧くのかなと思います。
 それから,オプトアウトの点ですけれども,先ほど,俵さんからの御説明では,全部の国ではないのかもしれないけれども,アウトサイダーにオプトアウトの地位を与えていると聞こえいてしまったんです。インサイダーであっても,先ほどの協約,契約の大きさからしたら,オプトアウトという制度はあり得るのではないかと思っているんです。それについては,そういう国のところはないでしょうか。それが2点目です。
 3点目は,日本の著作権法から眺めてしまっているのかもしれませんが,人格権,特に同一性保持権については,契約の中に盛り込んで処理していますという御説明がありました。この中にもそう書いてありました。果たして,権利者団体と利用者団体の合意の中で,利用許諾契約の中で,同一性保持権や人格権を行使しませんよという規定を設けているという理解でいいのかどうかであります。そのときに,権利者団体というのは,著作権権利者団体なのか,著作者団体なのかという問題も出てくるんだと思いますが,その点について,何か議論がありましたら,御紹介願いたい。この三つであります。

【俵著作物流通推進室長】ありがとうございます。
 2点目のオプトアウトがインサイダーについて認められているかどうかですが,そもそも拡大集中許諾制度を適用するかどうかという段階において,構成員の了解が要るというのが,ほぼどの国にも共通した規定になっているかと思います。そういうことからすると,もし自分がその契約に入りたくないという,その段階で主張をするということになるのではないかと思います。
 3点目の人格権についてですが,これは各契約の中にきちんと人格権についても配慮すべきということで規定がされているということだと思います。特に行使しないということを規定されているよりも,むしろ確認的にきちんと人格権についても配慮するということが規定されているのではないかと思います。

【松田委員】その部分は,個別に残る可能性はあるんですね。

【俵著作物流通推進室長】個別に残るというと。

【松田委員】済みません。きちんと人格権を処理しなければいけませんよといったときに,人格権者の処理が個別に残ることはありませんかということ。

【俵著作物流通推進室長】はい。残ると思います。

【松田委員】そうですか。はい。

【俵著作物流通推進室長】1点目については,具体的にぱっと出ないんですが,今村先生,分かる部分ありませんか。

【今村委員】私はイギリスの調査研究担当だったもので,ほかの国のECL契約は随分たくさんあると思うんですけれども,この報告書にはそれらが紹介されているので,そちらを御参照いただければ分かると思います。イギリスについては,まだ申請がないという段階なので,大きな枠組みのECLが出てくるのか,小さな枠組みのECLが出てくるのか,まだ分からない状況です。ただ,イギリスでは既存の集中管理スキームを補完するということを想定しています。例えばブランケットライセンスですと,レパートリーに含まれないものは,どうしてもこぼれ落ちてしまうわけです。例えば利用者の人数ベースでライセンスを与えているような場合には,事実上使われているものに,非構成員のものも含まれているという運用もあるのだと思われます。様々な形で使われている既存の集中管理のスキームを補完するという形で導入するというわけですから,それは比較的大きな枠組みだと思うんですね。そういう大きな枠組みとして既に運用されているスキームについて,各種の集中管理団体が,これはどうですかということで認可を受ける申請手続をするという流れになるということだと思います。このように比較的大きな既存のものに類するものが出てくるのであって,何か個別の新しい限定的なスキームが出てくるということは,今のところ考えにくいと思います。
 そして,2点目はオプトアウトの話なのですけれども,構成員のオプトアウトは,先ほど俵さんから御紹介があったような形になるのだと思います。基本的には,アウトサイダーのオプトアウトというものを想定していると思われますが,インサイダーの利害については,導入予定のライセンススキームを構成員と団体の間で合意するプロセスの中で調整していくのではないかと思います。
 また,人格権については,特にイギリスの著作権法に限られた話になりますが,イギリスのECLに定めているECL規則の中では,著作者人格権について取り扱う個別の条項は特に設けていないので,著作権法の一般的な定めがそのまま有効となります。
 以上です。

【土肥主査】道垣内委員,どうぞ。

【道垣内委員】これらの国の中にはドイツ,フランスが入っていません。お伺いしたいのが二つありまして,一つは,著作権は私有財産ですので,それを私人間の契約で処理をして,一方当事者はお金をもらってしまい,片方の当事者は自己の利益のために使うということになりますが,調査対象国において,憲法上,そういうことが問題ないのかという点は,議論はどのようにされているのでしょうか。
 この点,日本ですと,裁定制度が憲法違反とされていないとすれば,裁定制度の延長線上で考えた方が安全だと思います。つまり,国が主体となり,事務処理を誰か民間に処理させるという形で動かすことはあり得ると思います。なお,このような制度を導入する場合,この制度だけを考えればいいというわけではないので,法体系の中できれいに収まるようにする必要があろうかと思います。調査対象国において,そのような説明が通常の法律論の中でされている国はあるのでしょうか。ここにこういうふうに位置付けられるんだという議論はあるのかどうかを伺いたいと思います。
 私は裁定制度を動かす使用料部会をやっているんですけれども,何とかしていただきたいという気持ちはすごくあります。今の制度は,大きな数はこなせないことは明らかですから,そこを何とかしていただきたいと思いますけれども,そういった基本的な法律論をクリアしておかないといけないので,もし議論があれば御紹介いただければと思います。

【俵著作物流通推進室長】ありがとうございます。
 この調査に入る前に,質問項目を確定するときに,先生が今言われたような,そもそも権利者から委託を受けていない内容についてまで,なぜ権利行使ができるようになるのかという視点についても項目として入れていただきました。それぞれ確認を頂いたんですけれども,憲法上の問題,民法上の問題のような,いわゆる法体系の議論については明らかにならず,それを可能にするために法律を作ったんだということしか,この調査の中では出てこなかったというのが現状かと思います。それぞれの国の法体系上,どういう整理がされているのかというところまで分からなかったということです。

【土肥主査】森田委員,どうぞ。

【森田委員】ただいまの道垣内委員が御発言された点については,私も関心があるところで,ざっと報告書も拝見しましたけれども,その点について説明がなされているところも,いろいろな議論があるというだけであって,先ほど御指摘のあった点について一定の整理を経た上で,こういう法制度を導入したという国はなさそうだということのようです。なぜそうなのかということ自体は,比較法的な検討の対象として重要だと思いますけれども,我が国で拡大集中許諾制度を導入する場合には,その点についてはっきりさせないまま導入するということは,おおよそ考えにくいのだろうと思います。
 我が国の法体系の中で,こういう制度がどのように位置付けられるかということを考えるときに,直接には孤児著作物の関係で出てきたものですが,オプトアウトがあるか,ないかで,理論的な正当化の仕方は全く違ってくるように思います。
 オプトアウトがある場合には,ある種の意思推定的なものを認めた上で,権利者がこのスキームから離脱しなければ,集中管理団体が締結した利用許諾の合意を承認したものとみなすとか,あるいはそこから使用料を受け取ってしまえば,それは承認したことになるけれども,承認しなければ,合意には拘束されないと説明することが可能であって,この場合は,権利は全く尊重されているということになると思います。
 これに対し,オプトアウトを認めないという場合には,権利者は,自己の意思に反して,自分が代理権を与えていない者が結んだ合意に拘束されるということですから,これは一種の権利制限であると捉えることができるように思います。そして,そのような権利制限が認められるかということは,法律の規定によって権利を制限することはどのような場合にできるかという問題になってくるかと思います。
 権利者が代理権を与えていない場合であっても,民法では事務管理という制度があって,本人の意思が明らかでないときであっても,本人に代わって一定の行為ができる権限を認めることは可能です。これにより,事務管理者として団体が締結した合意に権利者が拘束されるとすることはありえますが,その場合には,事務管理として行うことができる範囲は,事務管理の要件を満たす場合に限定されますから,事務管理の論理でできる範囲はおのずと限られてくることになります。したがって,それを超えて一般的に利用許諾をする権限を集中管理団体に認める場合には,やはり権利制限の理屈になってくるのだろうと思います。そうすると,どういうタイプの権利制限であるのかが問題となりますが,例えば,ある特定の公益があって,この公益とのバランシングで権利制限がなされる。そして,その権利制限の内容として,一定の手続的な要件を組み込んだ権利制限とする。すなわち,一定の要件を満たした集中管理団体が利用者と交渉して,権利者に一定の報酬請求権を付与する代わりに利用許諾をするという合意をすれば,権利者自身がそれに対して許諾をしなくても,この合意に拘束されるというタイプの権利制限があり得ます。
 そのような制度が有用であって実際に成功を収めているとすれば,そういうタイプの権利制限の在り方として,我が国でもこれを導入することが考えられます。そして,これは,孤児著作物の問題に限られず,この後に議論が予定されてくる教育のICT化など,手続費用などの理由で個別の利用許諾だけではうまく対応しえない,いろいろな局面でこういうスキームを導入しようということは出てくるかと思います。そういう意味でも非常に興味深い制度であると思いますので,この成果を,いわば孤児著作物の問題だけではなくて,いろいろなところに関連する議論として位置付けていただく必要があるのではないかと思います。

【土肥主査】ほかにいかがでしょうか。
 はい,奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】すみません。予習がちゃんとできていないもので,数字の点,事実の点を教えていただきたいんです。ECLの適格団体ですけれども,相当数の代表をすることとなっていて,それ自体に数字の定めがないということは分かるんですが,実際問題として,現在適格団体として認められているところはどれぐらいの代表性があるのでしょうか。何%ぐらいの代表をしているのかという具体的な数字は,報告書を勉強すれば後で出てくるのでしょうか,それはまだ今後の調査なのでしょうか。
 それから,分配している金額の中で,インサイダー向けとアウトサイダー向けの割合がどれぐらいのものなのか。例えばインサイダーに対して10分配して,アウトサイダーは1分配ですとか,20に対して1ですとか。アウトサイダーがどの程度この制度で補足され,また潤っているのかということが,この報告書を読めば,ある程度数字が出てくるのかというあたりをちょっと教えていただきたいなと思いました。

【俵著作物流通推進室長】既に団体として指定されているところの代表制の具体的な割合について,この報告書の中では明確になっていなかったかなと思います。確認をして,後で分かれば整理してお伝えするようにします。
 2点目は,何でしたか。

【奥邨委員】2点目は,アウトサイダーはどれぐらいの割合で分配に預かっているのかです。例えば,適格団体が100なら100,分配に回しているとしたら,そのうちのインサイダーがもらっているのは97で,アウトサイダーは3ですよとか,そういう割合ですね。どれぐらいアウトサイダーに対してインパクトがあるのかということは分かりますか。

【俵著作物流通推進室長】それも今すぐ分からないので,確認して,この時間の中で分かれば,また後で報告します。

【奥邨委員】分かりました。

【土肥主査】ほかにいかがでごさいましょうか。

【河島委員】河島です。

【土肥主査】お願いします。

【河島委員】この制度を調査した目的ですとか,今先生方がおっしゃっていたような法体系といった本質的な質問ではなくて,純粋に疑問に思ったことが二つありましてお伺いしたいんです。
 まず,1点目は,非構成員であっても構成員と平等の扱いを受けるということですよね。そうすると,構成員であるメリットというのがどこに残っているのかなということがよく分かりません。こういった集中管理団体は,構成員からの会費のようなものが結構重要な収入を占めていると思うんですが,その会費を払って残るメリットというのがだんだんなくなるように思うんですけれども,そのあたりはどうなのかなというのが,本当に純粋な疑問です。
 それから,もう一点は,先ほど,少し今村先生から御説明がありましたが,北欧諸国の経済規模から言えば,どこも小さい。言語的にも特殊といいますか,小さい国々が先にこういうことを始めていて,そこにイギリスとアメリカという英米法の国が関心を示しているということが,どういう意義があるのかなというか,これらの国々の特徴と,この制度が始まっている,あるいは既に存在していることの関係性のようなことで,もし何か解釈をお持ちでしたらお聞かせください。よろしくお願いします。

【俵著作物流通推進室長】構成員であるメリットですが,この拡大集中許諾制度について,そもそも構成員として契約をした人たちが契約を結んでいる集中管理団体と利用者との契約は,全てが適用されるわけではない。それが個別に規定されているというのがこれまでですし,一般ECLについても,それぞれ契約を拡大集中許諾制度として認めるかどうかというのもそれぞれの判断になってきます。入っていなかったら,全てその規定が適用されるわけではないので,そういう意味では,これがどれぐらいまで範囲が広がってくるかによっては少し変わってくるのかもしれませんが,そこは構成員と非構成員で明確に違う部分なのかなと思います。
 あと,後半の部分については,最近アメリカ,イギリス,日本もそうですけれども,一番は著作物の大量デジタル化をする場合に,一々許諾を得ることができないというところから来ているのかなと思います。アメリカやイギリスにおいて著作物の大量デジタル化をする際に簡易にライセンスを得られる制度を考えたときに,この北欧の制度に着目したのかなと思います。

【土肥主査】ECLというのは,利用者の方にメリットがあって,インサイダー,アウトサイダーというのは余り関係ないんですね。要するに孤児著作物や絶版著作物,ドイツが最近入れたのがそうなんですけれども,利用者の方にメリットがある。もともとはデンマークで始まったと言われていますけれども,日本でもアウトサイダーに団体の合意の効力が及ぶという制度があるんですよ。労働組合法の団体協約の一般的効力というのがありますけれども,あれは使用者と従業員の代表が合意をしますけれども,アウトサイダーにも及ぶというのが日本の労働法の中にちゃんと規定がありますし,そういう制度をデンマークのある学者が労働協約の研究からヒントを得て及んだのがECLと承知をしております。
 先ほど,アングロ・アメリカン法だけとおっしゃいましたけれども,ドイツもちゃんと入れておりまして,孤児,絶版著作物の著作権法改正でこの制度は入っているんですね。ただ,今回の調査はドイツが入っていないというか,上野さんが入っていないので,多分そこはされていないんだろうと思うんですけれども,それは入っております。上野さんの方が多分お詳しいので,ドイツの制度については,紹介があるんだったら頂ければと思いますが,いかがですか。

【上野委員】ドイツ法におけるECL的な規定というのは,著作権法ではなく,権利管理団体法に設けられたものでありまして(13d条,13e条),最近,同法は全面改正されましたが(51条,52条),それは1966年1月1日以前に公表された絶版著作物(Vergriffene Werke)に関するもので,そもそも対象が非常に限定的なものでありますし,この規定の内容も,一定の管理団体について権利者から権利委託を受けたと推定するものであります。したがいまして,このドイツ法の規定は,今回の調査で取り上げるべきものだったと言えるかどうかということ自体,問題になり得ることではないかと思います。
 なお,先ほど話題になりましたECLの正当性につきましては,森田先生も御指摘になりましたように,確かに事務管理論で説明できるという見解もあるわけですけれども,ECL制度の下では,ある団体がECL認可を受ければ,アウトサイダーの権利についてもライセンスを出せるというだけではなくて,ライセンス料を収受する――その使途に一定の規制を及ぼすといたしましても――というところは,通常の権利制限プラス補償金請求権とはやはり大きく異なるところでありますので,そこまで認めてしまってよいものかどうかという点は,この制度を我が国で導入する際には問題とならざるを得ないだろうと考えております。
 以上です。

【土肥主査】大渕委員,どうぞ。

【大渕主査代理】1点だけ。今まで伺ってきた中には,既に導入している国と導入を検討している国と,孤児著作物等に関してだけ導入している国も出ていました。ポジティブに導入している国の情報はもちろん重要ですが,導入していない国については,まだ検討していないだけなのか,いろいろ検討してみたけれども,問題があるから導入していないかというネガティブな情報も,我々が考える際には参考になると思います。余り御負担をおかけするつもりはございませんが,ポジティブとネガティブの両面について聞いた方が参考になるかと思いますので,可能であれば,そちらもできる範囲で入れていただければと思っております。

【土肥主査】はい。ほかにございますでしょうか。
 日本で入れるとなれば,著作権法や管理事業法など,そういうところにきちんと基点を置いて,その団体の認定をやってという段取りになるんだろうと思いますけれども,まだこういったところについては,調査検討の段階かと,このように承知しております。我々としては,その検討の推移を注目していければと思いますが,よろしいですか。
 今現在,時間としては12時ぐらいになっておりまして,あと1時間ございますけれども,次の議題に入ってもよろしいでしょうか。よろしいですか。
 それでは,五つ目の議題でございます,教育の情報化の推進について,に入りたいと思います。この教育の情報化の推進につきましては,昨年度の本小委員会において,いわゆる異時送信や他の教育機関等の教材の共有に係る権利制限の是非と,その在り方を中心に御議論を頂きました。本件については,今年度も引き続き議論を深めてまいりたいと思っております。
 本日は仮に,いわゆる異時送信について権利制限を拡大するとした場合の市場が形成されている分野への影響に関して,昨年度の議論の概要を確認しつつ,事務局で整理されました論点について議論を頂ければと存じます。
 まずは,事務局からこの整理いただいた論点についての説明をお願いします。

【秋山著作権課長補佐】資料6をお願いいたします。
 今回は,論点としまして,論点1から4まで御用意しておりますけれども,主査からもありましたように,中心的に御議論いただきたいのは論点2と3の市場が形成されている分野の影響について,どう考えるかというところでございます。
 論点1としましては,まずその前提として,35条の権利制限の趣旨・正当化根拠及び異時送信の一定のものについて権利制限の対象とすることの趣旨・正当化根拠についてとしております。
 飛ばしまして3ページですけれども,論点2では,学校等の授業における著作物等の送信に係るニーズを満たすために権利者が教育機関に対して配信サービスやライセンススキームを提供している場合における配慮の在り方,更に何らかの配慮が必要という場合に,論点3として,具体的な要件といいますか,どういう場合であれば配慮が必要かという中身の議論をしていただいた上で,論点4としましては,そういう立法政策的な中身の議論の結果を実際の法制的な措置としてはどういう方法が妥当かという順序で御議論いただきたいと思っております。
 そういう意味では,論点1の位置付けとしましては,論点2,論点3を御議論いただく際に,いかなる場合に権利者の提供している配信サービスやライセンススキームを優先させるべきかという検討を頂く上で,スリーステップテストや著作権法の考え方からしますと,権利者の利益を不当に害するのか否か。不当か正当かといいますのは,権利者の利益に対抗する利益でありますところの35条の権利制限の趣旨の理解が前提になってこようかと思います。したがいまして,その前提となる理解について,一定の認識の共有をさせていただいた上で,論点2,3の議論にお入りいただいた方がよいのではないかと考えまして,この論点1を設定させていただきました。
 論点1でございますけれども,先ほど申し上げたように,現行35条及び異時送信に係る見直しをする場合の趣旨・正当化根拠について御審議いただきたいと存じます。便宜上,私ども事務局でこれまでの本小委員会の議論や学説の動向を踏まえて,整理のたたき台を御用意いたしました。読み上げます。
 整理案(たたき台)。現行法35条の趣旨としまして,学校等の非営利教育機関における教育活動には高い公益性が認められることから,各教育機関の教育目的の実現に資するため,権利者の利益を不当に害しない限度において,各教育機関が,教育上必要かつ適切な著作物等を適切な形で,権利者の許諾が得られない,許諾を得るための手続費用が過大である等の事情に妨げられることなく,円滑に教育活動における使用に供するために複製し得るようにすることが必要であるという趣旨と整理させていただきました。
 さらに,異時送信も権利制限の対象とすることについてでございます。これについては,ICT活用教育は,学校等における教育目的を達成する上で,従来の複製物による著作物等の提供と比べて,教育政策上も,これと同様,若しくはより高い意義と必要性が認められている。このことに鑑みれば,少なくとも上記の現行第35条の趣旨は異時送信についても同様に妥当すると整理をしてございます。
 参考としまして,本小委員会における意見と,次のページでございますけれども,著作権法に関する学説を幾つか御用意しております。こちらは省略させていただきます。
 続きまして,論点2でございます。学校等の授業における著作物等の送信に係るニーズを満たすために権利者が教育機関に対し著作物等の配信サービスやライセンススキームを提供している場合において,第1,スリーステップテストの考え方,第2,我が国の著作権法の権利保護の在り方に関する基本的な考え方,第3に権利制限の趣旨。ここでは,仮に権利者の利益と非営利教育機関における教育の公益性との調整としております。これらに照らして,少なくとも一定のものについては,権利制限の対象とすることについて,どう考えるかという論点としております。また,その際,現行法の35条ただし書の射程範囲との異同についてはどうかということも併せて御審議いただきたく存じます。
 さらに,具体的な保護の在り方としまして,論点3を御用意いたしております。まず3-1としまして,権利制限の趣旨との関係において,配信サービスやライセンススキームの利用に係る手続コストの観点から,どのような場合に権利制限を対象外とすべきか。
 3-2,権利制限の趣旨との関係において,対価の水準は考慮されるべきか。考慮されるべきとする場合,どのような水準であるべきか。
 3-3,権利制限の趣旨との関係において,権利制限の対象外とすべきか否かの判断に当たり,教育機関側のニーズに照らして,配信サービスやライセンス提供の範囲や対価の水準は考慮されるべきか。
 3-4,以上の論点に関して,著作物等の制作目的,例えば主として教育機関の利用に供するために制作されたものか否か,又は著作物等の提供態様,教育機関向けに特別に設計されたものであるか否かに応じて,結論は異なるべきかとしてございます。
 最後に論点4としまして,この論点2,3の検討結果の実現方法として,法制上のどのような措置によることが適当か。例えば,現行第35条ただし書の解釈による対応で十分か,若しくは別途規定の整備を行うことを要するかとしてございます。
 論点2及び論点3につきましては,既に昨年度の御審議におきまして,先生方から意見を頂戴しておりますので,関連する部分を御紹介したいと思います。
 まず,論点2のそもそもの一定の範囲で権利制限の対象外とすべきかどうかという点につきまして,大きく分けると二つの意見に分かれているというところでございます。
 まず,一定の範囲で権利制限の対象外とすべきとする御意見につきましては,4ページの大半のところにございます。御意見としては,財産権上も必要だという御意見ですとか,スリーステップテストとの関係を考えると,権利者の通常の利用を妨げないということが要件となるので,こういった市場が形成されているものに関しては,ただし書で除外されるとするべきだという御意見。
 それから,一つ飛ばしまして,ライセンススキームを発展させる上での妨げとなっているということが35条について言われておりまして,そのためにも仕組みが考慮されるべきだという御意見。
 また一つ飛ばしまして,ライセンス構築のインセンティブを与える法制度が必要だという御意見もございました。
 少し飛ばしまして,少なくとも全てのライセンススキームを権利制限に優先させることには消極的な御意見もございましたし,これに対して,下から二つ目の丸ですけれども,ライセンススキームは権利制限の対象外とはせず,補償金付権利制限で対応すべきという御意見も複数ございました。
 理由としましては,最後の丸のところですけれども,権利者側が使用料を自由に設定でき,事実上オプトアウトに近いことができるということですとか,利用者が高額な使用料を支払うことになったりすることへの懸念が述べられてございます。
 また,スリーステップテストの解釈としまして,通常の利用というのは,著作物の本来市場を意味すると述べられておりまして,ライセンススキームについては権利制限を行っても問題は生じないのではないかという御意見でございます。
 それから,合理的な手続や対価のライセンススキームを包括許諾又は包括徴収とした場合は,ライセンス優先型の権利制限と補償金請求権の違いというのは,差止請求が認められるかどうかということになりますが,そうした必要性は乏しいのではないかという御意見でございました。これが主に論点2のそもそもの入り口論のところに関する御意見だと存じます。
 それから,論点3-1の手続コストに係る御意見としましては,5ページの真ん中あたりです。一つ目の丸で,1回の授業で何十個という著作物を利用する場合に各社に連絡をしなければならないとすると,合理的な仕組みだとは言い難い。写真を例に挙げられまして,網羅性が必要だという御意見でございました。
 それから,二つ目の丸ですけれども,35条の趣旨を踏まえたものになるべきであり,教育機関向けに特に配慮したものであるべきだという御意見。
 それから,三つ目の丸,取引コストが掛かり過ぎるため,事実上利用が困難となっている場合は,合理的ではないという御意見でございました。
 それから,論点3-2の関係でございます。対価の水準につきましても,5ページの真ん中から二つ目の丸です。ここでも利用料金について,教育機関向けに特に配慮したものであるということで,費用が低廉であるということが挙げられております。
 その次の丸でも,事実上利用禁止として機能するような使用料を設定するということについては,合理的でないという御意見がございました。
 それから,3-3と3-4につきましては,教育機関に特化したサービスであるかといった論点でございます。昨年度の御意見におきましては,真ん中から二つ目の丸で,利用対象,利用者について,教育機関向けに特に配慮したライセンススキームであるということや,利用対象はできる限り網羅的であり,利用者も網羅的であるというところを少なくとも必要とする御意見がございました。
 それから,著作物の制作目的という観点では,5ページの一番下の丸ですけれども,漢字ドリルのようなものは,種類や用途に照らして,権利制限の対象とすべきではないという解釈が成り立つ一方で,それ以外のものについては,そのように考慮するのは難しいのではないか。例えば,新聞社が教育機関向けにライセンススキームを開始すれば,その複製は許されないということになるのは不適切ではないかという御意見でございました。
 関連する御意見は以上でございます。
 済みません。ちょっとだけ戻りまして,論点3の補足をさせていただきます。
 論点3の3-3の論点で触れさせていただいた趣旨としましては,例えば,ここに書いてあります教育機関側のニーズに照らしてサービスが提供されていないということの趣旨です。例えば,何か市販されている教材のうち,ごく一部分だけを授業に使いたいというときに,全部買わないと使えない,あるいは一部分についてライセンスが提供されないという場合にどう考えるのか。それに見合った価格が設定されているかどうかといったことも含めて,3-3の論点については御議論いただきたいという考えでございます。
 それから,3-4につきましては,先ほど漢字ドリルなどの例が出てまいりましたが,著作物等の制作目的に関しましては,典型的な教育目的に特化した著作物である漢字ドリルといったものについては,多くの御意見として権利制限の対象外でいいのではないかという御意見なわけです。そのほかにも専門書ですとか,一般の書籍ですとか,新聞といった著作物の制作目的には様々なものがあるわけですが,そういう中でどのように考えるのかという論点でございます。
 さらに,著作物等の提供態様については,制作段階では教育機関向けに特化した利用は念頭に置いていなかったけれども,実際に著作物を提供する段になって,教育機関に特にデザインしてサービスを提供するという場合はどうかという論点でございます。昨年度の小委員会でも,例えば新聞社の方から,学校向けに特にフォーカスしたデータベースサービスを包括許諾の形で提供しているといった御発表もあったわけでございますので,そのあたりについて御議論いただきたいと思います。
 あとは,御参考としまして,6ページに35条ただし書の解釈に関する御意見を載せております。
 ここでは,大きく二つございまして,一つ目,二つ目,三つ目の丸につきましては,35条ただし書に含まれる範囲の解釈としまして,少なくともライセンススキームについても一定の範囲で入るべきだという御意見でございました。
 一方で,四つ目の御意見に関しては,ライセンススキームというのは,これに入らないという解釈が示されていたところでございます。
 それから,次の参考,「スリーステップテストについて」では,通常の利用を妨げないといったことですとか,著作者の正当な利益を不当に害しないということの意義について,関連するWIPOの文献中の記述を御参考までに掲載しております。
 7ページをお願いいたします。その次の参考では,35条ただし書の解釈に関する学説としまして,幾つか御紹介しております。ポイントとしましては,35条ただし書の適用判断のメルクマールとしまして,著作物利用市場との衝突の有無を挙げているものが複数見られるところでございまして,その具体的事例としましては,ワークブックやドリルのような教育用に作成された著作物は権利制限の対象外の典型例として挙げられております。そのほかにコンピューターソフトウェアなど,汎用的な著作物も含まれるとする学説も見受けられるところでございます。
 御説明は以上でございます。御審議のほど,よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。
 それでは,ただいま事務局から説明を頂きました論点について,御意見を頂きたいと存じます。事務局のペーパーによりますと,論点1,論点2,論点3,論点4と,4部構成になっているわけでございますので,まずは論点1の35条の趣旨・正当化根拠について,いわゆる異時送信との関係でどのように考えればいいのか,この点について御意見を頂ければと存じます。
 前田委員,お願いします。

【前田(健)委員】まず35条の趣旨に関してですけれども,基本的には御説明いただいたとおりでいいのかなと考えております。
 異時送信と従来の複製物との違いという点ですが,私の理解では,この二つの違いというのは,主に技術的な観点に基づく違いということで,教育を実際に行っていく上での実質的な位置付けということでは,そんなに差はないんだろうと理解しております。ですから,35条の趣旨というのは,基本的に異時送信についても同様に妥当するという理解でよろしいのかなと思います。もちろん,個別具体的な事案への当てはめにおいて,複製の特性,若しくは異時送信の特性によって,個別の結論が変わってくる可能性はあるのかもしれませんけれども,考え方としては,妥当するということでよろしいのかなと思います。
 それから,35条の趣旨についてですけれども,この資料6においては,主に公益性という話と手続費用が過大であるということの2点が指摘されていたのかなと思います。公益性ということの意義ですけれども,教育を効果的に行うことによって,利益を受けるのは教育機関や個別の生徒のみならず,社会全般であるということだと思うんですね。そうしますと,社会的に望ましい体制で著作物の利用許諾が行われるようにするためには,それを完全に利用者と権利者の当事者間に丸投げするという形ではうまくいかない可能性があって,それについて,何らかの制限を課すことが正当化し得るのかなと思います。
 もう一点,手続費用が過大だという点もそうでして,これについても介入の正当化をし得るということなんだと思います。
 公益性と手続費用が過大だということの関係なんですけれども,この二つが共に正当化理由として言及されているということが重要なのかなと思います。つまり,単純に手続費用の面が解消されていると一見見えるということが,直ちに制限を課さなくていいということになるわけではないと思います。教育には公共性があるということなので,適切な価格で,ある程度低廉な価格でライセンスを必要な部分にだけきっちり受けられる体制が整っているということまで含めて,ライセンス体制が整備されている,あるいは手続費用が過大であるという問題が解消されているという整理になるのではないかなと思います。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにこの点に関して。
 はい,奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】ありがとうございます。
 まず,現行の35条の趣旨という点で,基本的にはおまとめいただいている点については,私もそのとおりだと思います。一言付け加えるといたしますと,若干広く言い過ぎ,一般的過ぎるという御批判があるかもしれませんけれども,教育というのは,文化の発展の基礎と考えられるべきでありますから,教育を重視するということは著作権法が目的としているところとも合致する。教育の重視は,著作権の目的の外側にあるのではないと理解をいたしております。
 それから2点目,異時送信も権利制限の対象とするかということ。これも,今の前田委員のお話と近いんですけれども,今ニュースなどを拝見していますと,デジタル教科書の本格的な導入に向けた検討というものが,現在行われていると伺っております。この点は,事務局の方がお詳しいかと思いますので,もし誤解などがありましたら訂正くださったらと思うんです。
 ただ,本格的なデジタル教科書の導入が視野に入っているという理解で,以下発言いたしますと,35条は教科書に関する規定ではありませんけれども,普通に考えまして,教科書がデジタル化するのに,授業で利用するその他の資料がデジタル化できないというのは,当然望ましい状態ではないと思います。その意味では,以前から申し上げておりますように,紙とデジタルというのは自由に行き来できるべきであり,紙に権利制限を認める限り,デジタルについて認めないという選択肢はないんだろうと思います。
 異時送信をはじめ,授業内で教科書がデジタル化されているのにあわせて,その他の資料もデジタルを利用できるようにするために必要な対策をするということは,社会上,現在望まれる当然の状況ではないかと思います。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにいかがでございましょうか。ここの議論は,今後の議論のベースになるところでございますので,できれば各委員の認識を共有しておきたいと思うようなところであるわけです。是非御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。
 森田委員,どうぞ。

【森田委員】先ほどの前田(健)委員の御発言の中にありました,手続費用の問題と教育目的という両方が必要だというのは,「かつ」ということだと思いますが,「かつ」の組合せの仕方もいろいろあるのではないかというのが,先ほどの論点の中にも入ってきているように思います。
 例えば,教育目的なので無償で使えてよいものである,つまり公益性が高いので,本来,文化発展のためには無償で提供されてよいという意味での権利制限であるとしますと,ライセンススキームがあろうが,なかろうが,本来無償で使えるはずのものがライセンススキームを提供したら,権利者が希望した対価が取れるようになるということにはならないのだろうと思います。
 そういったものは一定の権利制限をする。もっとも,その制限の中には,教育目的という公益性から通常よりはディスカウントされた対価でという中間的なものもありえますが,そういう意味で対価の合理性が問題となってくる場合がありえます。
 他方で,純粋に手続費用の観点から考えますと,本来であれば個別の許諾を任意に得て行うべきところが,その手続費用が高いので権利制限によって対応するという場合は,その対価に介入する根拠にはなりにくいように思います。ある種の市場の失敗に対応するために権利制限をして個別の許諾がなくても利用できるようにするけれども,本来であれば利用に対する対価を払うべきであるということだとすると,それが教育目的であるゆえに低廉であってしかるべきだというのは,そこからは直接出てこないように思います。
 そうしますと,教育目的と手続費用という両者の程度や組合せによって,いろいろなバリエーションが出てくるように思います。その論点の中で,一定のライセンススキームがある場合に,それだけでよいのか,それとも利用料の額が教育目的に適合したものとなっているかを考慮した上でということなのかという点については,イエスかノーかで答えるというよりは,その組合せのバリエーションをどう考えるかという問題が提起されているように思います。
 そうだとしますと,現行の35条の本文とただし書の書き分けだけで,その組合せを解釈によって対応するということになってしまいますと,実際上のスキームとして動かないように思います。そのあたりの仕分けをするなり,あるいは当事者が望ましい行動に誘導するような仕組みをそこに作り込まないと,単に35条の規定を異時送信にも及ぼすという形にするだけでは,当初に期待したような解決は図れないのではないか。そのような問題を検討する上で,先ほど言われた二つの正当化の要素というのが,一体どういう関係に立っているかについて,もう少し詰めておく必要があるのではないかと考えた次第であります。

【土肥主査】奥邨委員,後で御意見を伺いたいんですけれども,紙でできることはデジタルでもという,それが基本的に委員のおっしゃるところなんですけれども,森田委員がおっしゃるようなことも気になって,後で御意見を伺いますので,まず大渕委員。

【大渕主査代理】私が申し上げようと思っていたことは,今,森田委員が言われたことに少し近いかと思います。最終的には,各論的な組合せの問題を具体的に詰めない限りは,最終的にどのようにして権利者の利益の保護を図るかが明確になってこないので,早めに各論に進んだ方がいいのではないかという感じもしているところであります。

【土肥主査】奥邨委員,いかがですか。

【奥邨委員】若干,主査の御質問を十分理解できているかどうか分かりません私が申し上げたかったのは,こういうふうに分割して,まず趣旨について聞かれていますので,総論として,そうあるべきだということを申し上げたわけです。今の大渕委員の御発言をかりれば,各論の部分で,もちろんスリーステップテストとかいろいろありますので,調整をするということについて否定しているわけではありません。35条の今の在り方のそのままを全てデジタルに適用しなさいと申し上げているわけではなくて,バリエーションはあり得るということは申し上げております。
 ただ,考え方としては,紙でできることとデジタルでできることは,基本的には同じでないと,むしろデジタルの方がもっといろいろなことができないと意味がないのではないか。そのためには,利害調整をどう行うかというのは,今後,別途考えることだということで,まず理念の部分として趣旨についての質問がありましたので,趣旨としてはより広くということで,紙とデジタルとの間で行き来ができるということはまず大前提であろうということを申し上げたところであります。

【土肥主査】何分,ここは同時送信だけではないわけで,異時送信の話をしているところでございますので,異時送信についてもということなのかどうか,そこをちゃんと確認させていただければと思うんです。
 特に授業の過程においてという場合に,最も広く介する立場からすると,1年全体を通じて,一つの授業であるという理解も,この小委の中では出ているように私は記憶しているわけであります。例えば,異時送信ということを皆さんはどのように理解されているのか,そこを是非御意見として反映していただければと思うんですけれども,いかがでしょうか。
 では,事務局にお尋ねしたいと思うんですけれども,ここで言う異時送信というのは,どのぐらいの幅を持って考えればよろしいんでしょうか。

【秋山著作権課長補佐】仮に異時送信についても権利制限の対象とする場合に,どういう範囲にするのかという御質問です。それは,まさに奥邨先生からもありましたように,デジタルやICTの特性を踏まえて,今の35条の複製が認められている範囲と比較して,どういう影響なりが権利者に及び得るのかということとの関係で,要件の見直しも,当然可能性としてあるんだろうと思っております。現時点で,何か前提を設けた上で,この権利制限の正当化について御議論を頂きたいというよりは,少なくとも一定の範囲について異時送信を認めるべきかどうかについて,正当化根拠に関する御意見をお願いしたいなと思っております。そういうことでよろしゅうございましょうか。

【土肥主査】もちろん,前期において異時再送信についても,35条の適用の中に入れるべきであるという意見の方が多かったと私は承知しております。しかし,その前提として,どういう条件が必要なのかというところまでは議論はなかったと思うんです。異時再送信というと非常に広くなりますし,それから授業の過程で絞られるかというと,授業の過程も広く理解する人が当然いるわけですよね。そうすると,今行われているようなアーカイブ化して,学校のハードディスクに入れておいて,1年間自由にアクセスできるようなところまで考えておられるのかどうか。そういうことなんですよね。
 では,松田委員。

【松田委員】再送信ではなくて,送信だけでいいんですよね。

【土肥主査】はい。

【松田委員】再送信という言葉ではなくて,送信ですね。

【土肥主査】はい。言い間違いました。

【松田委員】35条の考えで,まずパラレルに紙とデジタルを考えるならば,その授業の過程における使用ということの限定があるのですから,その35条の範囲内でデジタルもできるようにする。それは当然無料であります。
 ただし,紙の場合と性質が違うのは,デジタルというのは,紙の場合にはせいぜい事前に配るとか,事後で復習するということで,家庭の中に持ち帰って復習をするのも当然許されるに決まっていますから,それであるならば,デジタルの特性から言えば,授業の前に当該授業の先生が入れたデジタル情報を事前に見ることができ,なおかつ帰った後に復習でそれをもう一度見ることができる。言ってみればサーバーにアクセスできるという範囲内で,35条をやや拡大して,今と同じような状況を作って,無料で作るというのは,私は賛成でありまして,そういう意見を述べたことがあります。
 しかし,それより拡大して,違う授業体でも,それから違う学校でも,同じ教材を使いたいということが起こるわけですから,そのことを禁止してはいけないんだろうと私は思うんです。それがデジタルの次の特性になるんだろうと思います。すぐれた教材が他の場面にと言っても,それはもちろん授業ですが,授業の場合に使われるということを促進すべきだろうと思います。
 その場合に,果たして35条の域を超えるので,それを有料でやるのかどうかということは,検討すべきだろうと思う。その部分については,35条にもう一つ加えて,対価請求権,使用料請求権を含めた制限規定を加えていけばいいのではないかと思いました。個人的意見では,かつてそう言ったものですから,一応意見を示させていただきました。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 異時送信に関しまして,35条の権利制限,この権利制限はどういう形であるかは別にして,補償金を伴うような形かどうかはまた別にして,35条の中で考える。ただし書があるわけですけれども,ただし書についても同様に考えていく。たしか前回のとき,コンピュータープログラムについては非常に問題があるという御意見も,この小委に出たと私は思っております。著作物の種類等々を考慮しなければならないので,ただし書の規定というのは,当然併せて置いておく必要があるということなのかなと思います。
 今申し上げたようなものでよろしいのかどうか。つまり35条の中に異時送信も含めて規定をするけれども,権利制限の具体的な設計,立て付けは今後の議論ということでよろしいですか。
 はい,森田委員,どうぞ。

【森田委員】全体の論点の整理の中で,今どこの部分を議論しているかというのがちょっと分からなくなったので確認させていただきたいのですが,直前に松田委員が言われたような,あるいは前回から出ているような,一定の場合には対価請求権を与えるべきだという議論については,現行法にはそれを認める規定はないわけです。それを入れた上で,ただし書のような考慮をするということにした場合に,それはどこで議論されるのか。対価請求権があるか,ないかは別にして,35条の趣旨はどうかというと,それが入っているのか,入っていないのか,よく分からないところです。対価請求権がある場合とない場合,それによって35条ただし書の考慮が違ってくるのかというのは,きょうの論点の整理の中にはありませんが,それは,この先に更に論点5,6,7があって,その中で出てくるという整理なのでしょうか。

【土肥主査】そのあたりは,今後議論していただくことになるわけですけれども,ここで大事なところは,異時送信に関しても35条の中で規定をする。そのときに,対価請求権の設計の仕方というのは,何分,教科書だって,デジタル教科書だって,当然その対価,補償金を払うわけですね。教科書についてはちゃんと補償金を払うにも関わらず,それに関連して使用される著作物については,今のような35条の1項,2項のような対価なしの形で入れるかというと,それはなかなか難しいのではないかなと思うんです。
 では,その場合に,取引費用という問題が大変大きな問題としてあるわけでありますから,個別のライセンス交渉といいますか,対価の個別の契約ということは,この教育問題に関しては,事実上できないだろう。そうすると,対価の問題というのは,取引費用を考えた上でのものということになるはずであります。
 したがって,そのあたりまである程度予測をして,35条の基本的な考え方というものを了解といいますか,共通の認識として持つことができればなと思っているところであります。
 御意見ございますか。前田委員。

【前田(哲)委員】教育現場で異時送信が何らかの形でできるようにすべきだということには,ほぼ共通の認識があるのではないかと思います。
ただ,異時送信を認めるということになると,量的にも従前の35条で認められた範囲よりも大幅に拡大していくことが予想されますので,何らかの利益還元が権利者になされるような制度設計にすべきだろうと思います。その手段として,補償金制度を設けるという方法が一つありますし,それからもう一つは,従前のただし書のようなものにより,適切な手続コストで,かつ適切な対価で利用許諾ができるライセンス体制が整っている場合にはそれによるべきであって,その場合には権利制限はされないという整理の仕方もあるでしょう。更にもう一つは,その両方を組み合わせるというやり方もあるのかなと思います。
 もし異時送信が認められるべきだということと,権利者への対価還元の方法を考える必要があるという点に共通認識があるのだとすれば,その共通認識があるかどうかも議論の対象かもしれませんが,仮にその共通認識があるとすれば,その次は,その仕組みをどう考えるかという議論をするのがいいのではないかと思います。

【土肥主査】おっしゃるとおりだと思います。
 ほかに異時送信に関して,35条の中に含めて,今後検討を進めていくという点については,ほぼというか,一致しているのではないかなと思うんですけれども,この点はそもそも入れるべきではないとおっしゃると,今度は止まるわけですが。
 はい,窪田委員,どうぞ。

【窪田委員】専門外の人間が余計なことを申し上げることになるのかもしれませんが,御容赦ください。
 今お話を伺っておりまして,前田委員から整理をしていただいたとおり,あるいはその前の森田委員からの御発言にもあったのだろうと思いますが,異時送信について,それを権利制限として許容するかどうかという問題。その上で,どういう仕組みで対応するのか,教育目的をどう反映させるのかということの制度設計が問題となっているというところまでは,多分誰も争っていないのだろうと思います。
 ただ,それを現行法35条の枠組みの中で扱うということについて共通理解が得られるかというと,現行法35条は,一方で本文の方で無料で使うということを前提として,ただし書で例外となる場合を定められているということになりますから,35条の枠組みで議論するというと,やはり自由に議論できなくなるのかなという感じがいたします。
 もちろん論点2,3,4というのは,そうした点も踏まえた上で著作権法35条との関係で,どういうふうに処理したらいいのかということなのだろうと思いますが,むしろ前提としての枠組み,論点について共通の理解があるのであれば,それを踏まえた上で考えられる制度設計をして,それが現行法35条についてどういう修正が必要なのか,あるいは35条の枠組みで対応することが適当なのかを考えるということだと思います。特に対価請求権については,これ入れようと思うと,ただし書のただし書なのか,何なのかよく分からない形になると思いますので,35条の枠組みの中でという前提で共通理解を得るというのは,少し先送りにしてもいいのではなうかという感じがしました。

【土肥主査】35条の枠組みの中でということを申し上げている理由は,いずれにしても立法論をやっていくことになりますので,35条という規定の中に,例えば1項,2項,3項という異時送信に関する特別規定を設けるような形もありますし,要するに教育目的での著作権の制限の一つの対応として,デジタル・ネットワーク時代の教育関係規定の権利制限がどうあるべきかという趣旨で枠組みということを申しているわけです。
 大渕委員,何か。

【大渕主査代理】先ほどから主査をはじめ言われているのは,割と漠然とした意味での現行の枠組みであろうと思います。その上で,最終的には,現行法のような補償金のないものと補償金付きのものとの2本立てということもあり得るかと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。
 はい,上野委員,どうぞ。

【上野委員】確かに現状の35条は,補償金請求権を伴わない権利制限規定でありまして,その代わりに,ただし書を設けて,「当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない」と規定し,そのような場合には権利制限の対象から除外しているわけですけれども,このようなただし書を設けると共に補償金請求権を定めることも不可能ではありませんで,実際のところ,現行法36条は,試験問題としての複製等に関して,「ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない」という35条とほぼ同じ文言のただし書を持ちながら,一定の場合に補償金請求権を定めております(36条2項)。
 ですので,もし35条を異時送信についても対象にするように改正するといたしましても,現状のただし書を維持したままで,補償金請求権を複製又は送信について付与することは可能と思います。
また,現状の35条1項は,権利制限と言いましても,「必要と認められる限度において」とか,あるいは「授業の過程における使用に供することを目的とする場合」という条件を課しておりますから,35条の対象に異時送信を含めたからといって,直ちに広い権利制限になってしまうわけではないように思います。具体的に申しますと,去年の小委員会でも議論しましたけれども,35条の対象に異時送信を含めても,権利制限されるためにはそうした条件を満たす必要がありますし,更に送信については,例えば,ウェブサイトへの掲載は一定の期間だけに限るとか,あるいはパスワードを掛けなければいけないといったような条件を,――条文に書かずに政省令に落とす方法もあるかと思いますが――定めることも可能かと思います。そうした細かいことまで考えれば,異時送信を35条の対象に含めるという方向性は可能ですし,不自然なことではないように思います。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。
 ほかにございますか。論点1は,この程度でよろしゅうございますかね。よろしいですか。
 論点2もやるということですね。論点2は,権利者が教育機関に対して著作物の配信サービスやライセンススキームを提供している場合に,丸1から丸3の観点から,権利制限の対象外とすることについてどう考えるかという点でございます。この点について,御意見がございましたら,お願いいたします。
 済みません。事務局からもう一回,論点2を簡単に整理してお話しいただけますか。

【秋山著作権課長補佐】申し訳ありません。趣旨を改めて御説明いたします。
 既に昨年度の小委員会におきましても,教育機関が利用可能な形で著作物の提供やライセンススキームが提供されている場合に権利制限の対象外とすべきかどうかという点について議論がございました。特にスリーステップテストとの関係で,これは「通常の利用」に当たるということで,例えばただし書の中で除外するという方法によって,対応してはどうかという御意見があったわけです。
 これに対しまして,4ページの下の方の御意見では,ライセンススキームというのは,通常の利用には当たらないということで,例えばただし書の解釈からもそういうものは含むという解釈をする必要もないし,こういうものを権利制限の対象外とする必要はないと。ただし,補償金によって対応すべきだという御意見もあったわけでございます。
 御意見はある程度出てきているんですけれども,この点について,更に委員会全体としての意見集約をお願いしたいという趣旨でございます。それが論点2でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。
 論点2は,著作物の通常の利用を妨げないというスリーステップテストの一つのエレメントがあるわけでありますけれども,これと配信サービスやライセンススキームが既に存在する場合,この関係をどう理解すればいいのかということでございます。
 はい,前田委員,いいですか。

【前田(哲)委員】資料6の5ページの一番下から2行目のところに,「例えば新聞社が教育機関向けに低額の包括ライセンススキームを開始すれば,それ以降教育機関で新聞記事の複製が許されないことになり,おかしい」という御意見が記載されております。
 私の理解では,確かに新聞社にとって記事というのは,本来は教育目的のために作ったものではないのでしょうが,新聞社が教育機関向けに低額の包括ライセンススキームを開始したとすれば,それはスリーステップで言う「通常の利用」の中に組み込まれることになる。したがって,そういう低額の包括ライセンススキームを新聞社が開始すれば,それに乗っかればいいのであって,その場合にあえて権利制限をする必要もない。その場合にも権利制限をするならば,スリーステップテストに照らすと問題があるのではないかと思います。

【土肥主査】ありがとうございます。
 その際,もちろん取引費用の問題もあるんですけれども,恐らくそれについては,また出てくるんだろうと思います。
 上野委員,どうぞ。

【上野委員】これは大きな論点でありますが,今,前田哲男先生がおっしゃったように,条約上のスリーステップテストにいう「通常の利用」に,著作物の本来的市場のみならず,単なるライセンス市場にすぎないものを含むという考えも聞かれるところでありまして,もしそのように考えるならば,権利者が合理的なライセンススキームを用意しているような場合に権利制限を行うことは,スリーステップテストにいう「通常の利用」を妨げてしまうことになるから,そのような権利制限を行う規定は条約上許されないということになるかと思います。この点をどう考えるかが問題で,前田先生と私はこの点で考え方が異なるかもしれません。
 そこで,ちょっとお伺いしたいのは,きょうのペーパーでも「既に市場が形成されている」といった表現がよく見られる点についてです。そもそも,権利者によるライセンススキームが用意されている場合には権利制限の対象外とすべきという御意見の正当化の仕方は,二つあるのではないかと思っております。
 第一の正当化として,現在,排他権が付与されている状況において,既に,権利者が排他権に基づくライセンスビジネスを行っているのであれば,今から権利制限してしまいますと,現在行われている既存のライセンススキームを害してしまうことになりますので,そうしたライセンス市場が成り立たなくなってしまうではないか,だから権利制限されるべきではない,という考え方があります。
 この考え方に従いますと,例えば,権利制限を内容とする改正法の施行時において,既に権利者によってライセンススキームが用意されているのであれば,これを害しないように権利制限はされるべきでないということになりますが,これに対して,改正法の施行によって権利制限が行われた後に,権利者がライセンススキームを用意しても,それは既存のライセンス市場を害する,ということにはならないので,基本的には,権利制限は覆らないということになるのではないかと思います。
 第二の正当化としては,基本的に規範というものは,立法によりも当事者が決定する方が望ましい,したがって,権利者が合理的なライセンススキームを用意する場合は,これを権利制限という立法より優先させるべきだという考え方があります。
 この考え方に従いますと,権利制限よりも当事者の決定が優先されるべきだというわけですから,たとえ改正法によって権利制限が行われた後であっても,権利者がライセンススキームを用意すれば,権利制限が覆るということになるように思います。
 このうち後者の考え方をとる場合,極端なことを言えば,現状の著作権法35条1項によって,既に権利制限が行われている「複製」についても,権利者が今から合理的なライセンススキームを用意すれば,権利制限が覆って排他権に基づくライセンスが優先されることになるかと思うのですけれども,そのようなお考えでよろしいでしょうか。
 これが一つの重要な論点になるように思いますので,もし前田先生に何かお考えがありましたら,お聞かせいただければと思います。

【前田(哲)委員】よろしいですか。

【土肥主査】どうぞ,お願いします。

【前田(哲)委員】今,上野先生がおっしゃった,改正法施行時に既にライセンス体制がある場合にそれを害しないことが必要となるのか,それとも,改正法施行後に当事者がつくったライセンススキームでも,それを害する権利制限は許されないとするのかという点に関しては,私は後者ではないかと思います。
 もっとも,ライセンススキームが,適切な対価とか,適切な手続費用とかで運用されていると考えるのか,つまり,何をもって適切と考えるのかという大きな論点があって,その論点が資料6で言うと【論点3】に当たるのかもしれません。その点にはなかなか明確なアイデアが出てこないところなのですが,非常に日本的かもしれないのですけれども,当分の間,教育関係者の方と権利者の代表の方が協議をして,落ち着きどころを探っていただく。何が適切な対価で,適切な手続コストとはこれくらいを超えない範囲であるというような,落としどころを探っていっていただくことしか方法がないのではないかと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。
 法の施行時の前後というよりも,取引料がいかにゼロに近いのかというのが重要なことなのではないかなと思います。だから,取引料ができるだけゼロになるような仕組みとして,ECLとか,何かそういうものがあればいいんですけれども,個別の利用の都度,ライセンススキームによって許諾を受けて,著作物の対価以上の取引料というのは,なかなか説得力がないのではないかなとも思うんですけれども,いかがでしょうか。
 はい,前田委員,どうぞ。

【前田(健)委員】先ほど出た正当化根拠のうち,取引費用という点に重点を置くのであれば,個別の利用の時点において,低い取引費用において許諾を受けられる手段があったかというのが問題になるというのが筋な気がいたします。
 ということになれば,立法時というよりは,利用の時点において,そういうライセンススキームが提供されていたのかということが問題になると思うんですね。そういうライセンススキームが提供されていたのであれば,そちらの方を優先するという考え方はあり得るわけですけれども,立法目的との関係で,それが十分でないと判断するのであれば,単純に何らかのライセンススキームがあるということでは駄目だということになります。例えば,今,主査もおっしゃいましたように,個別の教員が一々許諾を取らなければいけないというライセンススキームであれば,恐らく法の目的は達成できないということになると思うんですね。
 あと,先ほど公益の話がありましたけれども,それとの関係で,高過ぎる利用料も問題になると思います。例えば,教育の個別のニーズに対応したライセンスではなくて,「包括的に本1冊全体についてライセンスを受けないと使えない。本当は1ページだけ使いたいだけなのに。」というケースの場合だと,適切なライセンス体制,合理的なライセンス体制が整備されていると言えない可能性はあると思うんですね。そういう形で考えていくことになるのではないかと思います。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございます。
 35条の公益目的という目的を実現する上で,合理性のあるライセンススキームという御意見は非常によく理解できたところでございます。
 時間が13時5分前ぐらいになっておりますので,もし御意見があれば,最後に御意見を頂戴したいと思いますが,ございますか。よろしいですか。
 よろしければ,きょうのところはこのくらいにしたいと思うんですけれども,よろしいでしょうか。
 それでは,本日1回目から3時間に及ぶ議論にお付き合いいただきまして,本当にありがとうございます。本日はこのくらいにいたしまして,以降は次の第2回の法制小委での検討とさせていただきたいと存じます。
 事務局から連絡事項がございましたら,お願いします。

【俵著作物流通推進室長】1点報告なんですけれども,今年度,著作権と管理事業法の5年に一度の見直し検討の時期に当たっています。前回のときは,その見直しの検討の結果,実際には見直しをしていないんですけれども,今年度,見直しの検討の年度に当たっていますので,今パブリックコメントという形で意見を募集しています。今年度は,この意見を踏まえて,また有識者の先生方に集まっていただいて,具体的な制度改正が必要かどうかということを検討する予定にしています。
 その結果を踏まえて,場合によってはこの小委員会でも検討いただくことがあるかもしれません。現在,そういった形でパブリックコメントとして調査研究の形で有識者の先生方に御意見を頂くということを考えていますので,報告させていただきます。
 済みません。ありがとうございます。

【土肥主査】ありがとうございました。
 事務局からほかにございますか。

【秋山著作権課長補佐】次回小委員会につきましては,改めて日程調整をした上で,御連絡したいと思います。よろしくお願いします。

【土肥主査】それでは,本日は,これで第1回の法制・基本問題小委員会を終わらせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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