
日時:平成29年4月21日(金)
10:00~12:00
場所:東海大学校友会館 東海・三保・霞の間

議事次第
- 1開会
- 2議事
- (1)法制・基本問題小委員会主査の選任等について
- (2)文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書(案)について
- (3)その他
- 3閉会
配布資料一覧
- 資料1
- 第17期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員名簿(96.8KB)
- 資料2
- 法制・基本問題小委員会報告書(案)(2.5MB)
- 資料3
- 法制・基本問題小委員会中間まとめ(平成29年2月)に関する意見募集の結果について(案)(473KB)
- 参考資料1
- 文化審議会関係法令等(131KB)
- 参考資料2
- 第17期文化審議会著作権分科会委員名簿(113KB)
- 参考資料3
- 小委員会の設置について(平成29年4月12日文化審議会著作権分科会決定)(58.5KB)
- 参考資料4
- 第17期文化審議会著作権分科会における検討課題について
(平成29年4月12日文化審議会著作権分科会決定)(75.4KB) - 参考資料5
- 法制・基本問題小委員会中間まとめ(平成29年2月)に関する意見募集の結果一覧(2MB)
- 参考資料6
- 新たな情報財検討委員会報告書 抜粋(138KB)
- 参考資料7
- 教育利用に関する著作権等管理協議会提出資料(65.4KB)
- 出席者名簿(49.4KB)
議事内容
○今期の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員を事務局より紹介した。
○本小委員会の主査の選任が行われ,土肥委員が主査に決定した。
○主査代理について,土肥主査より大渕委員が主査代理に指名された。
○会議の公開について運営規則等の確認が行われた。
※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。
【土肥主査】それでは,再開いたしますけれども,本日は今期最初の法制・基本問題小委員会となりますので,水田著作権課長に一言御挨拶を頂戴したいと存じます。よろしくお願いします。
【水田著作権課長】文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。
皆様におかれましては,御多用中のところ,法制・基本問題小委員会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。
文化庁におきましては,その機能強化を図るために4月から京都に「地域文化創生本部」というものを設置いたしまして,また3月には文化関連施策を横断的に取り扱いながら経済拡大戦略を図る「文化経済戦略特別チーム」,こういったものを立ち上げるなど,「新・文化庁」に向けて非常に重要な時期を迎えているところでございます。
文化行政全体に対しましては,観光,産業,教育などの様々な関連分野との連携のもとで総合的に施策を推進していくとともに,文化芸術資源を核とする地方創生や,戦略的な海外発信等に取り組んでいくことが期待されているところでございます。文化芸術の基盤を担う著作権についても,これらの観点を踏まえまして,適切な施策を講じていくことが求められているところでございます。
また近年では,政府の成長戦略の柱でもあります「第四次産業革命」を支える知財戦略の一つとして著作権制度が掲げられております。我が国の産業競争力を強化するための基盤として,そういった役割もますます強く認識されておるところでございます。
昨年度の本小委員会におきましては,いわゆる「柔軟性のある権利制限規定」や「教育の情報化の推進」等の課題について御検討いただきまして,「中間まとめ」を取りまとめていただくに至りました。早期の法制化に向けまして,本日の本小委員会におけるさらなる審議を経て,できるだけ速やかに著作権分科会としての報告書の取りまとめをしていただきたいと考えております。私どもとしましても最大限努力してまいる所存でございます。
また,今期の本小委員会におきましては,「リーチサイトへの対応」をはじめとします国内外の著作権侵害対策の強化等の新たな課題につきましても,迅速に対応していくことが期待されております。
委員の先生方におかれましては,昨今の文化行政や著作権行政に対する社会からの要請や,技術革新等がもたらす著作物の創作・流通・利用をめぐる環境の変化,そして情報化社会における国民の著作権制度に対する認識や理解等,こういったものを踏まえながら効果的な施策を適時に講じていくべく,引き続き精力的な御審議をお願いしたいと存じます。
最後になりますが,委員の皆様方におかれましては,お忙しい中,大変恐縮ではございますが,一層の御協力をお願いいたしまして,私の挨拶とさせていただきます。
【土肥主査】水田課長,どうもありがとうございました。
では,議事に入ります前に,今期の本小委員会において検討すべき課題について,簡単に紹介いただきたいと思っております。去る12日に著作権分科会が開催されまして,今期の検討課題及び本小委を含む三つの小委員会の設置が決定されております。こうしたことを含めて事務局から御紹介を願いたいと思います。
【秋山著作権課長補佐】まず参考資料3を御用意いただけますでしょうか。こちらは先の著作権分科会におきまして御決定いただいたものでございます。小委員会につきましては,昨期と同じく,法制・基本問題小委員会,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会及び国際小委員会の三つの小委員会を設置することを決定いただいたところでございます。
参考資料4をお願いいたします。こちらも同じく分科会で御決定いただいたものでございまして,今期の検討課題に関する資料でございます。まず冒頭のところでございますけれども,検討課題としましては,以下の課題が考えられるとしつつ,知財計画2017の策定など今後の状況の変化を踏まえて適宜見直しを行うとされてございます。本小委員会に関する審議事項は,審議事項マル1でございまして,検討課題例としましては,昨期に引き続いての課題としまして,中間まとめにおける検討課題及びリーチサイトへの対応等とされてございます。ほかの小委員会では,クリエーターへの適切な対価還元等,国際小委員会では国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方について御検討いただくこととなってございます。
説明は以上でございます。
【土肥主査】ありがとうございました。
それでは,本小委員会では昨年度からの課題について引き続き検討を行いつつ,今後,知財推進計画2017の策定や今後の状況の変化に応じて,改めて検討課題については見直しをすることとしたいと思っております。
では,本日の議事の(2)に入りたいと思います。本小委員会の報告書(案)についてでございます。昨年度の本小委員会では2月に中間まとめを取りまとめ,3月下旬まで国民の皆様方からの意見募集を行ったところでございます。今回,その意見募集の結果を踏まえ,事務局において報告書(案)を御用意いただいておりますので,この内容について審議を行いたいと思います。また,この報告書(案)の取りまとめに当たりまして,意見募集の結果の概要及びお寄せいただいた意見に対する見解について,事務局としての案も御用意いただいておりますので,報告書(案)と併せて必要に応じ御意見を頂戴したいと思っております。
まず,第1章でございますけれども,「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等」の部分について,事務局から説明をお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】御説明申し上げます。
では,まず資料3を御覧いただけますでしょうか。こちらは中間まとめに対する「意見募集の結果について(案)」と題する資料でございます。
まず冒頭,1ページ目のところに意見募集の結果の概略を書かせていただいております。意見募集は2月28日より約1か月にわたって行いました。寄せられた意見の総数は412件,団体・個人別及び各章別の件数はここに記載のとおりでございます。
主な意見の概要につきましては,次のページ以降に要約したものを書かせていただいております。丸の記号が書かれているものが寄せられた意見の概要で,こちらは事務局の判断で要約をさせていただきましたので,原典につきましては参考資料5を参照いただければと存じます。
それから,その御意見に対するコメントとしまして,矢印のマークを付して案を御用意させていただきました。このコメントにつきましては,中間まとめの内容に対しまして,ある程度具体的な御説明をもって反対若しくは消極的な御意見,懸念を表明されているといった御意見など,特にコメントを付しておくべきものにつきまして,その考えを整理させていただいたものでございます。もっとも,コメントを付していないものにつきましても非常に貴重な御意見が多々あるわけでございまして,そちらにつきましても,コメントは割愛しておりますが,今後審議会での御審議,あるいは今後の行政における制度設計や運用面での施策の展開において参考にさせていただきたいと思っておるものでございます。
それでは,中身に入らせていただきます。
まず,柔軟な権利制限規定関係のところの意見の概要を御紹介したいと思います。時間の関係から,ポイントのみ簡単に御紹介したいと思います。
2ページをお願いいたします。まず,1-1,第2節,検討手法と検討経過に関する御意見としましては,ニーズ募集の取組を評価いただいております。
次に,1-2,第3節,権利制限規定の整備に関する検討結果でございますが,まず,柔軟性が及ぼす効果と影響等に関しては,かなりたくさんの御意見を頂いております。
2ページにあります四つの丸におきましては,今回の検討の手法を評価する御意見をお寄せいただいたところでございます。
一方で,3ページから6ページにかけましては,とりわけ,効果・影響分析の手法やそれを踏まえた小委員会としての結論の出し方に対する疑問,疑念といったことをかなり詳細に御指摘いただいておるところでございます。こちらは報告書の結論の信頼性にも関わる事柄だろうと思いまして,長くはなりますが,一つ一つコメントを御用意いたしました。ここでは一つ一つ御紹介することはいたしませんが,御指摘の事柄としましては,3ページの方ではアンケートの調査の手法についてですとかアンケート調査の評価方法に関する御意見が出されておりますし,4ページの方では,まず一つ目はアンケート調査の手続に関わるようなこと,それから,二つ目から四つ目の丸につきましては質問の内容とその評価の方法について,5ページにつきましては「公正な利用」の促進効果の分析の在り方について御意見を頂いております。それから,5ページの一番下から6ページにかけましては不公正利用の助長の効果に関する御指摘,そして6ページの一番後の丸では明確性原則の分析に関する御指摘を頂戴してございます。詳細な説明は割愛させていただきます。
次に7ページでございますけれども,(2)制度整備の基本的な考え方に関する御意見でございます。こちらは三つに大別して意見を整理させていただきました。
まず一つ目,「柔軟性のある権利制限規定の導入に消極的又は慎重な意見」というふうにカテゴライズさせていただいております。一つ目の丸,日本雑誌協会様の方では,利用者の著作権法に対する理解不足を理由としまして,侵害行為の増加や利用の萎縮といったことの懸念が示されておりまして,規定の在り方としては具体的なケースを盛り込む形にとどめるべきであるという御意見でございます。
二つ目の丸,日本国際映画著作権協会様の御意見としましては,第1層,第2層に係る柔軟な規定につきましては,大陸法を基礎とする我が国の法体系になじまないといったこと,訴訟に関する我が国の現状を前提とすれば事後的な法規範形成は望めず,混乱するのではないかということで,個別具体的な制度整備を要請されておられます。
また,日本ビジュアル著作権協会様からは,第32条や第36条といった現行の権利制限規定の主張によって,当協会様としては「不公正な利用」がなされているということの問題点を指摘されておられます。
次のページをお願いいたします。このほか,日本音楽著作権協会様から,第1層,第2層において権利者の権利行使の場面を「本来的市場」に限定するという考え方はライセンス市場に係る権利者の利益を奪うといった懸念があるということが御指摘されております。
それから,日本出版社協議会様などにおかれては,「書籍検索サービス」に関するスキャニングに対する問題意識の御表明があるとともに,複製物の違法流出の危険性ですとか,故意・過失による権利侵害の助長といったところの問題点が指摘されております。
一つ飛ばしまして,8ページの一番下,一般的・包括的な権利制限規定に関する御意見としまして,次のページに行かせていただきますが,一番上の丸で,日本レコード協会様からは,アンケート調査等の結果を踏まえると,抽象度が極めて高い一般的・包括的な権利制限規定は我が国において必ずしも利用促進につながるものではなく,むしろ「不公正な利用」の助長など,負の効果が予測されるということにつきまして,こうした認識を今後著作権制度の在り方を検討する際にも重視すべきであるという御意見が出されておりまして,ほかの団体様もこれに近い御意見が出されております。
9ページの一番下,マル2,中間まとめの提言する制度整備の考え方に肯定的な意見も多々寄せられております。まず9ページの一番下の丸は,日本新聞協会様,コンピュータソフトウェア著作権協会様,日本書籍出版協会様に概ねこうした肯定的な御意見を頂いておりますし,それから10ページの方では,法曹関係としまして日本弁護士連合会様,それから経済界としましては日本経済団体連合会様ですとか日本知的財産協会様,そして電子情報技術産業協会様,ほかに個社の会社様からも基本的にはこの方向性を評価するというような御意見を頂いております。
また,これらを見渡して共通して言われている部分につきまして,こうした方向性を指示するとともに,実際の法文化作業においてこの趣旨をしっかりと実現してほしいという御心配というか,激励というか,そういったメーセージも頂いております。
11ページをお願いいたします。マル3,一般的・包括的な権利制限規定の導入を求める意見としまして,電子情報技術産業協会様からは,今回のニーズを前提とした検討方法ですとか,アンケート調査の手法,評価方法等に疑問があるということで,一般的・包括的な権利制限規定の導入に向け,議論を継続すべきであるという御指摘がございました。こちらの問題点の指摘につきましては,3ページから6ページの方に細かく御紹介をしております。
次の丸の,日本製薬団体連合会様も,概ね同趣旨の御意見でございます。
続きまして,(3)具体的な制度設計の在り方に関する御意見でございます。
まずマル1,第1層に関する御意見を紹介してまいります。一つ目の御意見としまして,利用目的に公共性,相当性などがあることを求めるということを,コンピュータソフトウェア著作権協会様などから求められております。
12ページをお願いいたします。日本ビジュアル著作権協会様からは,この利用により新たな利益が生み出されるのであれば権利者にも還元すべきだといった御意見。
一つ飛ばしまして,日本雑誌協会様からは,目的外使用禁止のための措置を講じるということをしっかり実現してほしいという御要望がございました。
それから,リバース・エンジニアリングにつきましても幾つか御意見がございまして,コンピュータソフトウェア著作権協会様からは,目的を明確にするように要望するという御意見。それから,次のページ,日本オラクル株式会社様からは,競合プログラム等の開発目的で行うものについては権利者の利益を害するのではないかという御指摘,それから,ライセンス契約によってリバース・エンジニアリングを禁止する,オーバーライドの有効性を確認してほしいという御要望でございます。
続きまして,第2層に関する御意見を御紹介してまいります。日本音楽著作権協会様からは,ライセンス市場が形成されているというのにあえて権利制限の対象とした場合に,利用者が収益を上げるという一方で対価の還元が権利者は受けられないという不均衡が生ずるという問題が指摘されております。
14ページをお願いいたします。このほかに日本書籍出版協会様からは,所在検索等の目的を達成するために必要十分な範囲に明文上限定すべきと,条文化に当たっての留意事項を御指摘いただいております。
一つ飛ばしまして,新聞協会様からは,権利侵害やライセンス市場への悪影響や人権への配慮など様々な問題点が提起されておりまして,ガイドラインの策定やオプトアウトの導入などの措置を講ずることが求められております。
次に15ページをお願いいたします。権利者の本来的市場への影響に関わる御意見としまして,本来的市場との競合が生じないように,政令又は省令で明記してほしいという御意見でございました。
それから,一つ飛ばしまして,「軽微性」に関しては,「必要と認められる限度」ということでは尺度が利用者において曖昧になってしまうということで,「軽微」であることをしっかり明記すべきだという御意見でございます。
少しまた飛ばしまして,16ページのところでは,真ん中のところですけれども,こちらも中間まとめでありましたように,映画の「核心部分」である場合における配慮が必要だということで,そうした緻密な利益衡量が実現されることを要望するという御意見が日本映像ソフト協会様から寄せられております。
そして,権利者の意思に対する配慮に関する御意見としまして三つほどございますが,三つ目の丸では,例えば研究書はもともとネットで検索されるということを想定せずに出版されているので,プライバシーに言及するような内容もあるということで,そういった著作者の意思に配慮してほしいという御意見でございました。
次に,市場が形成されている場合への配慮ということでございますが,幾つかの団体様から,有償のビジネスモデルが既に存在するような場合,次の丸では新聞の見出し提供サービスについての配慮を求める後意見,それから一番下の丸では日本レコード協会様から,ライセンス契約による対応可能性というものも権利制限の適用に当たっての考慮要素の一つとして掲げるべきだという御意見を頂戴しております。
18ページをお願いいたします。ソフトローの整備をしっかり進めてほしいという御意見や,著作権以外の権利について,「所在検索サービス」における著作者人格権の問題に関する御指摘や,これまでも指摘されておりましたように,肖像権,プライバシーなどの問題の指摘が幾つかございました。
19ページをお願いいたします。第3層,翻訳サービスに関する御意見としましては,三つございました。一つ目は,中間まとめにも書かれておりますように,有償著作物は範囲外とするべきだということを確認される御意見です。
それから,三つ目の丸,権利制限の範囲が狭くなり過ぎないように,例えば日本語話者も翻訳サービスを受けられる制度にすべきだという御意見がございました。
あと,これら以外のその他としまして,一般的な御意見だと思いますが,柔軟な規定を導入するということでありましたら,著作権教育と並行して,権利侵害に対抗できる簡便な制度の整備を求めるという御意見を出されております。
次は,(4)としまして,権利制限規定の整備に関連する事項に関わる御意見を御紹介します。
まず,普及・啓発に関する御意見としまして,基本的には進めてほしいという御意見なわけですけれども,その方法としまして,知財創造教育推進コンソーシアムの活用を述べられた御意見。
それから,三つ目の丸では,学校教育のみならず,全国民を対象とした教育をするべきだという御意見がございました。
20ページをお願いいたします。マル2,行政府における政策形成の在り方に関する御意見としまして,今回の社会調査を通じて分析を行うという手法を評価されておられまして,今後もこうした取組を行うべきだという御意見を頂戴しております。
それから,1-3,第4節,ライセンシング体制の充実に関する御意見でございますけれども,裁定制度ですとか,二つ目の丸ではライセンシング体制の構築,四つ目の丸では拡大集中許諾制度といったことについて,積極的に検討するべきだという御意見を頂戴しております。
また,21ページの方では,少し個別の話ですけれども,放送の同時配信に係る処理の問題についても検討をお願いしたいという御意見を頂いております。
それから,第5節,優先的に検討することとしたニーズ以外のニーズについて,ちょっとテクニカルな情報提供でございますが,第31条の「図書館等における複製等」について,本の中に挿絵の全部複製が生ずるという場合における今の運用としまして,ガイドラインでうまくやっているというようなことの御報告がございました。
柔軟な規定に関するパブリックコメントの意見の概要の整理は以上でございます。
それから,今回少し新しい情報がございますので,アップデートさせていただこうと思います。参考資料6をお願いいたします。本年3月に知的財産戦略本部の下に「新たな情報財検討委員会」という会議が設置されまして,その報告書がまとめられました。この検討委員会は,AIの開発ですとかビッグデータの保護や利活用の在り方というのを主に産業振興の観点から議論されている会議であると承知しておりますが,その中で著作権に関する話題も言及されておられまして,具体的に文化審議会でも検討してほしいということがこの報告書でも書かれておりますので,この際,御紹介するものでございます。
1ページの第2,「AIの作成・利活用促進のための知財制度の在り方」という部分の2ポツ,「論点」というところに,AI学習用データに関する論点として,データ作成者とAI学習を行う者が異なる場合の著作権法上の課題等が指摘されております。現行法では第47条7に基づきまして,自ら情報解析のためのデータを整備し複製するということが認められるわけでございますけれども,特定者間を超えて,他のAI学習を行う者に学習データを提示する行為というのは,譲渡権の制限や公衆送信権の制限がなされていないという現行法下においては侵害と解されるおそれがあるということが指摘されております。
こういう状況認識のもとで,2ページなのですけれども,課題1-2としまして,知財本部様としては,今後は民間におけるAIの学習用データの作成,それから特定当事者間を超えた提供・提示を進めていく必要があるという御指摘をされておられます。2パラ目にありますように,「特定当事者間であるとは言えない可能性のある多数の者が参加するコミュニティにおいて,学習用データ等を共有してAIの研究・開発を実施した方が学習効率が向上するとの御指摘があった」ということでございまして,産業総合技術研究所様もそうした意見表明をされているということでございまして,こうしたことを今後進めていくべき旨がこの報告書では提示されております。
その手段としまして,次の3ページの2パラ目でございますけれども,本小委員会において著作物の表現の知覚を伴わない利用行為を含む一定の行為について柔軟性の高い権利制限規定を整備するとの方向性が示されているところであり,我が国のAIの作成の促進に向け,特定当事者間を超えて学習用データを提供・提示する行為について,新たな時代のニーズに対応した著作権法の権利制限規定に関する制度設計や運用の中で検討を進めることが適当であると括られております。
こうした政府全体の方針につきまして,本日,少し報告書の中での見直しについて御提案申し上げたいと思います。
それでは,この二つのパブコメの結果と知財本部の議論を踏まえまして,報告書の関連部分の修正箇所の御提案をさせていただこうと思います。まず41ページをお願いいたします。こちらは「具体的な制度設計の在り方」というところに関わるページでありまして,まず(1)の第1層に関する説明の部分でございます。ここの脚注53というのを追加するというのが今回の修正の御提案でございまして,この理由は,先ほど直近御説明申し上げたAIの学習用データの提供の取扱いについての考え方を整理させていただこうという意図でございます。事務局といたしましては,第1層の考え方,表現の知覚を伴わない利用ですとか非享受型の利用といった利用にしっかりと限定されるという前提であればAI学習用データの作成提供もここからあえて排除する理由もないと考えまして,その旨をこの脚注53に書かせていただいております。
それから,次の修正部分でございますけれども,51ページをお願いいたします。こちらは第2層に関わるサービスにおける権利者の利益保護の在り方に関わるセクションでございまして,最後に「ウ」としまして,これまで著作権法で保護される権利以外の権利についての記述がございました。主にプライバシーですとかパブリシティに関する記述があったわけでございますが,今般,意見募集において,著作者人格権についてもしっかり配慮すべきだという御意見がございましたので,同様の考え方に基づきまして,こちらにその旨を明記したいと考えております。
それからもう1点,67ページでございます。先ほどパブコメの終盤の方で御紹介しました「図書館等における複製等」に関する情報提供がありましたので,脚注107を新たに追加しまして,ガイドラインに関する説明を追記しております。
柔軟な権利制限規定に関わる修正内容の御提案は以上でございます。御審議のほど,よろしくお願いいたします。
【土肥主査】ありがとうございました。
では,第1章「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等」の部分について,ただいま事務局から3か所について御提案がございましたけれども,こういったことを含めて御意見,御質問等ございましたら,どうぞお願いいたします。いかがでございましょうか。この3点に限らず,第1章,柔軟な権利制限規定に関するところについて御質問,御意見ございましたら,お願いをいたします。奥邨委員,どうぞ。
【奥邨委員】今,御提案いただいたところでなくても構わないですか。
【土肥主査】どうぞ。構いません。
【奥邨委員】少し細かいところで恐縮なのですけれども,42ページ,これはまだ第1章でよろしいですよね。注の54なのですけれども,ここで第47条の5についてちょっと言及があるのですけれども,第47条の5については,私,コンメンタールで担当したことがあることもあって,読んでいてちょっと気になりましたので,一言コメントしたく思いました。この注は,本文の上から10行目ぐらいのところにあります「権利者の利益を通常害さない」という部分に関するものであって,注では,現行の権利制限規定でも権利者の利益を通常害さない場合は権利制限するけれども,利益を害する場面についてはあらかじめ制限から排除していますよと述べた上で,例として第47条の5が挙げられているわけです。
それで,注の54のところで,「第47条の5第1項第1号は,自動公衆送信装置等による送信の遅滞等を防止する目的での著作物の記録媒体への記録(バックアップ)を権利制限の対象としているが,同条第3項第1号において,著作権を侵害して送信可能化等が行われていることを知った場合にはバックアップしてはならないこととしている」云々ということで,そういう場合については,「違法にアップロードされた著作物に関するバックアップは著作権侵害を補助するものであって,権利制限を許容する必要に乏しい」云々となっているわけであります。ただ,これ,まとめ方もあるのですけれども,条文を読みますと,バックアップをするなと書いてあるわけではなく,バックアップした複製物を保存してはならないということになっているわけであって,どちらかというと後の第49条との組合せによって,目的外使用の禁止というような形になっているところもあるわけです。
それから,更に第47条の5の第3項というのは,第47条の5自体がもうものすごく複雑な規定なのですけれども,プロバイダによるキャッシングですとかミラーリングですとかという,かなり技術的で,行為的にも具体的に特定された状況を念頭に規定されたものなわけでして,それをここの柔軟な権利制限規定の第1層という,一番抽象的な形で考えていきましょうというところの例として出すというのはちょっと違和感があるかなと。完全に間違っているということではないのですけれども,何か本文で言っていることと,ここでの脚注の補足が少し誤解を与えないかなと。さっと読んだだけなので,具体的にこう書いた方がいいのではないですかとまでは今提案はないのですけれども,何か誤解のないように,第1層の趣旨である抽象的,類型的というようなところが生きてくるような形に少し御検討いただければなというように思った次第であります。
【土肥主査】ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。前田(哲)委員,どうぞ。
【前田(哲)委員】今の奥邨委員の御指摘に関することでございますけれども,私の理解としましては,現行法の第47条の5の第3項第1号というのはごく当然の価値判断を規定したものであって,ミラーリング等の場合,元の送信可能化等が著作権を侵害するものであることを知ったときには複製物を保存してはならないというのは,侵害の助長となる行為を防止するという意味で,著作権者の立場からすると当然のことであると思います。脚注の54が書きぶりとして細か過ぎるのではないかという御指摘についてはそのとおりかもしれませんが,第一層についても,例外的には,権利者の利益を不当に害すると考えられる場合は生じるおそれがありますので,例外的に権利者の利益を不当に害する場合には,権利制限の対象にならないという安全弁を設ける必要があるという点は,報告書において維持される必要があると思います。
【土肥主査】ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょう。前田(健)委員,どうぞ。
【前田(健)委員】今の点にちょっと関連してコメントさせていただきたいと思います。そもそも論みたいな話をしますけれども,第1層に関わる権利制限規定というのは,報告書の中の結論で,柔軟性の高い規定を整備することが望ましいと書かれておりまして,パブリックコメントの中でもこの報告書の方向性を評価して,そのような方向で条文化が図られるのが望ましいというコメントもあったと思います。そうすると,41ページから42ページにかけて,[1],[2],[3]という類型が掲げられているわけですけれども,このような類型を参考にしながら,これに近い形で柔軟な条文を作るということも検討の選択肢に入るのかなと思っております。そのときに,今挙がった第47条の5というのは[3]の一つの例という側面を持っていると思います。
そもそも,[3]の類型がなぜ権利制限の対象になったかというと,情報処理,情報通信の円滑化・効率化のために行われる行為というのは新たな享受の機会を生じないので,権利制限をかけてもよいだろうという考え方に基づいていたのだと思います。47条の5の場合は,元の利用があって,それのバックアップをとる行為という位置付けになると思いますので,元の利用の方が適法だとすると,そちらで権利者は対価を徴収できるので,バックアップの方にはわざわざ権利というか,対価徴収の機会を与える必要がないということだと思います。一方,元の利用の方が違法で,著作権侵害する利用だということになると,バックアップを正当化する理由はないと言えばないので,その意味で47条の5のように細かく,そういう場合は違法だという処理をするというのは考え方としてはあると思います。
一方で,[3]類型の別の例の現行の条文として,例えば第47条の9というのもあると思いますけれども,そっちでは今言ったような処理はしていないわけです。第47条の9の考え方というのは恐らく,元の方に対して権利行使できれば,バックアップ的な部分については権利行使できなくても結局最終的には違法な利用を抑制できるからということだと思います。
どっちのルールがいいかというのは個別の場合においていろいろ違いまして,確かに47の5のようなルールを持つことにメリットがないわけではないと思います。ただ,奥邨委員がおっしゃいましたように,技術的な問題なので,どちらを選ぶかというのはある種,決めの問題ですので,ここで注54で書かれているほどの強いニュアンスを持って第47条の5のルールが選択されているというわけではないと思います。仮に47条の5と47条の9でルールが例えば違うときにどちらかに統一した方がいいというような話があった場合には,そこはテクニカルな部分ですので,適宜判断して,どちらかに統一するということがあっても問題はないのだろうと思います。今のは仮の話ですけれども,そういう程度の話なので,お二人のおっしゃっていることはそんなに違わないと思いますが,そこまで強いニュアンスとして第47条の5の現行の規定が置かれているわけではないのだろうというふうに私も理解しております。
ということです。以上です。
【土肥主査】ありがとうございました。
この点,難しい問題ですけれども,何かほかにございましょうか。大渕委員,どうぞ。
【大渕主査代理】第1章には,明確性と柔軟性が重要であるということが,思想としては非常にクリアに表明されています。享受がない,いわば形式的・機械的な複製については,私は以前からこのような立法をしなくても,実質的な複製ではないという理論構成で認めてしまってもいいのではないかと思っておりました。このような考え方も解釈論としてはあり得ますが,立法上,明確にした方がよいという思想が非常にクリアに表れています。私もこれは個別規定だと思いますが,今までのような個別規定と違うのは間違いなくて,そこをどう持っていくかというのが今出ている話ではないかと思います。思想としては非享受のものは第1層という対象外にしていいのではないかと考えております。他方で,非享受のものは権利者に不利益を与えないということが前提だから,そのように非常に幅広い,従来では考えられないような非常に一般的な形でしているわけですが,御指摘があったように,それにはマイナス面もあります。今までは割と細切れの規定でやっていくと,そこの正の方向と負の方向と細かく規定してきたので,まさしく今御指摘のあった二つの条文のどちらの方向で行くのかという話になってきているのは,今回の立法の方向を象徴しているように思われます。
このニュアンスの点は最後は修文レベルになるかと思いますが,このような現行法的な書き方をするのがいいのかどうか迷うところであります。ただ,そうは言いつつも,マイナス面があるのだったら,そのようなところを無視してクリアに広くしてしまうことはできないものですから,そこはうまく,今までどおりでないけれども,やはりマイナス面はきちんと配慮しない限りは,バランスのとれたものになりません。このあたりは,御趣旨としては,余り今までどおりの細かいニュアンスにしてほしくないというのと,きちんと不利益があるのは示してほしいという,その両方を新たな枠組みの中でどう出していくのかというところの問題だと思います。ただ,脚注54の中に問題点があるのであれば,そこは保存のためかどうかは別として,そのようなところはきちんと出すような形でうまく処理する必要があると思います。これはニュアンスだけの問題なのかもしれませんが,今の点がクリアに出て,かつ余り個別規定的でないという形にすることが大切だと思われます。これはいじり出すと大変なのですが,そのあたりは,ニュアンスも重要なのですが,広げるとなると,きちんと問題点に配慮したというところを出さないと納得感が得られませんので,そこのところはきちんとクリアに出すことが重要だと思っております。
【土肥主査】ありがとうございました。
この点。では,上野委員,どうぞ。
【上野委員】先ほどからの議論で問題になっているのは,脚注54において47条の5第3項1号が「権利者の利益を害する場面」の一例に当たるものとして断言されているということの是非です。これについては,確かにそれが妥当だという考え方もあるわけですけれども,先ほど前田健委員からも御指摘がありましたように,同じ第1層に位置付けられている47条の9の方には,47条の5に見られるような限定がありません。ですので,今度の法改正で,第1層に対応するものとしてある程度包括性のある規定を作る可能性があることを考えますと,脚注54で,現在のような断定をするところまで書く必要があるのかどうか私も分かりません。そこで,この部分をもう少しやわらかい書きぶりにするということについては賛同いたします。
以上です。
【土肥主査】では,龍村委員。
【龍村委員】これは質問ですが,41ページの注53の先ほど御紹介のありました「新たな情報財検討委員会報告書」を受けての追記の4行目ですか,「この点,特定当事者間を超えた公衆に対するAI学習用データの提供・提示についても」と,「公衆」と明記してあるわけですが,先ほどの参考資料6の「新たな情報財検討委員会報告書」の,例えば2ページにも幾つか出てきます,8行目あたりにも意識されているわけですが,「公衆」に該当しない特定当事者間の提供・提示であれば現行法でも可能とか,あるいはその後,課題[1]-2の中でも,「公衆」への提供からやや腰が引けているといいますか,そういう部分があるようにも見えますし,報告書でいいますと44ページの末行ですかね。結局,目的外使用のリスクですか,そこら辺のリスクがこのような第三者,特定当事者間を超えた者への提供においてはより強く高まる,ということのバランスで考えられているところではないかと思うので,「公衆」という書き方はやや踏み込み過ぎていないかという点についてはどうでしょうか。
【土肥主査】質問でございますので,それでは,括弧が付いておりますけれども,「公衆」についてお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】こちらは先ほど先生からも御紹介がありましたように,知財本部の御議論をよく踏まえてということで,「公衆」と書かせていただいております。参考資料6の2ページ目のところでも,脚注8でNTTリース事件みたいなものが引かれておりまして,一般には特定当事者のように思われるようなリース関係というようなものも人的な結合関係がないということをもって公衆性が認められたという例もあるということから,公衆に対する提供を完全に排除してしまうと,知財本部としてはAIの学習用データの活用が十分進まないという強い問題意識が示されておりますので,一応そこは文化審議会でも議論いただきたいと思って書かせていただきました。
【土肥主査】よろしゅうございますか。
【龍村委員】そういった提供対象者が広くなれば広くなるだけ,44ページの末行にある目的外使用が禁止されるための措置もそれなりに深く対応されるべきだというようなバランスの中で対象者を広げるという理解ですよね。ということでしょうかね。
【秋山著作権課長補佐】そこは恐らく法律上しっかり目的外使用を禁ずるということを定めていくことになろうかと思います。また,御参考までに第47条の7,情報解析のための記録を認めた権利制限規定につきましては,情報解析の目的以外の目的で公衆に提供・提示することのみならず利用することが禁じられており,これは視聴行為も「利用」に入るという理解のもとで書かれているものと考えられますが,そういうものも禁ずるということになっておりますので,そこの運用の中で公衆への提供・提示の際に起こり得る目的外使用のリスクの低減をしっかり図っていく必要があろうかと思っております。
【土肥主査】よろしゅうございますか。ほかにございますか。どうぞ。
【大渕主査代理】恐らくこのあたりは書き方の問題だと思います。先ほど御提示のあった譲渡や公衆送信になるのではないかという話は,新たに規定しなくても,例えば1社だけでやっている場合だったらそもそも社内で流れる限りは譲渡にも公衆送信にもなるとは普通思われていないわけでありますが,それを例えばA社とB社が共同でやっていると,共同行為者ということになったら,共同意思主体と呼ぶかどうかは別として,その内部で流れているものはまた先ほどと同様に,形式的には譲渡になり公衆送信になるのかもしれませんが,例えばその二つの会社が合併してやればそれは明らかに1社の中でやっていることであります。私としては,そのようなレベルのことを想定していました。
ただ,先ほども言われていますとおり,ダンス教室事件なのかNTTリース事件なのかは別として,「公衆」というのは非常に広い意味を持ち得ます。契約上結び付いているようなものは「公衆」ですから,今言った2社も「公衆」と言えば「公衆」なのでいいのですが,恐らく御懸念のあったのは,そのようなものを超えた「公衆」というのか,共同でAI開発をしている2社3社とかというのではなくて,一般ユーザー等も含めると捉えられるリスクもあり得るところだと思います。実際には先ほど述べたようなNTTリース事件的意味での「公衆」なのですが,むしろ国語的には「公衆」というとパブリック,一般という感じも出てきますので,そのあたりはもう少し工夫する必要があるように思います。法律家でない人が一見すると,本当にパブリックでいいのかというようにも読めなくもないので,それは困ることになります。私が理解しているところでは先ほどのような範囲にとどまるので,そこはそのような懸念のないようにということと,そのような可能性があればあるほど,先ほどの安全弁もそうですが,目的外使用,ないしは広がり過ぎる懸念というのはきちんと押さえておく必要があると思っています。
【土肥主査】ありがとうございました。
ほかにございますか。
これまでのところ頂戴しておる御意見としては,ただいまの注の53の,特に「公衆」のところに関わる御意見,御質問でございますし,もう一つは注の54ですか,そこに関する記載上の御意見でございます。基本的にここをどうするかというところにつきましては,結局,侵害状況が起きて,それに対して権利者の通常の利益を損なうような事態が生じた場合に,基本的に差止め請求として,侵害の除去のためにどこまで必要なのか,こういうところが必ず出てくるわけだろうと思います。したがいまして,ここのところをより明確に詰めて書いておくのがいいのか,ある程度今の段階では膨らませて書いておくのがいいのか,こういうことなのだろうと思いますので,前田哲男委員がおっしゃっておられるようにこの必要性は十分あるわけでございますけれども。いずれにいたしましても,この先,条文化の問題が出てきたようなときに,余り絞り込むということよりも,本来の権利者の通常の利益を害してしまうような場合についてきちんと,一般的な,いわゆる権利制限規定の第1層,そこが及ばないようにしておくということを確認しておけばいいのではないかなというふうに思っておりますので,そういう形でまとめさせていただければと思いますが,よろしゅうございますか。
それでは,このところはそのような形にしたいと思います。
それで,よろしければ今度は教育の情報化の推進に入っていきたいと思いますけれども,「教育の情報化の推進等」の部分について事務局から説明をお願いしたいと思います。
【秋山著作権課長補佐】御説明申し上げます。
では,まずはパブリックコメントの結果の概要の方から御紹介したいと思います。資料3の22ページでございます。
まず,異時送信に関する議論についてでございますけれども,マル1,異時送信を権利制限の対象とすることについて,賛同する御意見が複数寄せられております。
一方で,次の丸では,公益性があることのみをもって権利制限するということは妥当性を欠くのではないかという反対の御意見もございました。
それから,マル2,異時送信の範囲について,異時公衆送信の定義を明確にしてほしいという御意見ですとか,具体例としては,予習,復習の際の送信というのはどこまで認められるのかが不明確であるという御意見。
それから,次の丸,放送大学の行うテレビ・ラジオ放送授業についてもICT活用教育,異時送信ということだと思いますが,これと性格は同じであるということから,同様の取扱いをすべきという御意見でございます。
次のページをお願いいたします。マル3,権利者の利益を不当に害する場合の取扱いについてでございますけれども,例えばライセンススキームの提供を合理的な手続コストと対価の支払によって行っているというような場合には対象外となるように明確にしてほしいという御意見がございました。
あと,少し飛ばしますけれども,一番下の丸にありますように,ただし書が抽象的であるということで,法文若しくは行政においてこれを明確にする方向で反映するべきだという御意見でございました。
24ページをお願いいたします。マル4のところでは,今回の異時送信につきまして,利用行為主体の限定をすべきでないという御意見でございます。理由は,サーバとかがクラウド上に著作物を蔵置して利用するという場合の主体の問題ということが念頭に置かれているのであろうと思います。
そして,マル5,アクセス制限・技術的保護手段についてというところでは,受信者の限定を技術的に行うべきだという御意見や,二つ目では技術的保護手段をとるということを要件とするべきでないかという御意見がございました。
次に,補償金制度に関する御意見ですけれども,これに賛成する御意見も幾つか寄せられておりますし,25ページの方では,学費の増につながる,学習機会が減るという形で反対の御意見も寄せられております。
それから,補償金制度の運用に当たってです。二つ目の丸ですけれども,教育機関側と権利者間での協議に当たっての当事者間協議に文化庁がしっかり仲介してほしいという御意見。
それから,一つ飛ばしまして,各国の例をよく見て管理団体や補償金額の在り方についての検討が必要ではないかという御意見でございます。
それから,次の丸では,教育の質に差が生じるおそれがあるということで,補償金請求権を付与しないか,強制徴収するという制度にしてほしいという御意見です。
あと,補償金額につきましては,一番下の丸にありますように,低廉な額にしてほしいという御意見もあれば,片や,十分な額にしてほしいという御意見もございました。
それから,補償金の徴収の方法として,包括徴収型というのを中間まとめにも書いておりましたけれども,これを支持する御意見もございました。
それから,分配につきましては,配分根拠の確認の簡便化を図ってほしいという御意見があった一方で,一つ飛ばしまして,全ての教育機関にサンプリング調査に応じる義務を課すべきであるという御意見も片やございました。
少しまた飛ばせていただきますけれども,27ページの方で,教育機関における研修・普及啓発活動に関して,これはしっかりやるべきだという御意見が多々あるわけでございますけれども,その方法としまして,一番下の丸,コンピュータソフトウェア著作権協会様から,既存の資料についての認知度が低いというのが問題だということで,実際,調査結果とかもお示しいただいておりまして,こちらへの対応も何らかするべきだという御意見でございます。
それから,ライセンシング環境の整備・充実に関わる部分では,28ページのところで,放送大学様からも,そういった放送事業やMOOCも念頭に置いて強化すべきだという御意見を頂いております。
それから,一つ飛ばしまして,ワンストップショッピングの許諾体制の構築に当たっては,それを構成する管理団体間の調整や協議がうまくいくようにするべきだという問題意識から,法的・制度的な仕組みの必要性が訴えられております。
次に,ガイドラインの整備に関わる御意見も幾つかございます。教育関係者,権利者で共に協議してやるべきだというような御意見などが寄せられております。
あとは,教材の共有ですとか,MOOC等に関しても幾つか御意見が寄せられておりますが,ここは省略させていただきたいと思います。後ほど御覧いただければと思います。
それからもう一つ,参考資料7を御覧いただければと思います。こちらは昨年12月に状況を少し御紹介しました「教育利用に関する著作権等管理協議会」の最近の活動状況が分かる資料でございます。4月17日付で「法制・基本小委員会中間まとめを受けての当協議会方針について」というペーパーを分科会向けに頂戴しております。2月24日に中間まとめで補償金付きの権利制限という方向性が示されたということを受けまして,当該協議会においても,こうした補償金制度の導入がなされることになった場合には,改正法の施行に向けて,その受皿となる団体を設立し,必要な準備に当たることとするという方針を決定し,御報告を頂いたということでございます。
これらのことを踏まえまして,今回,報告書(案)への修正の内容を御提案したいと思います。
まず,教育関係のところで,最初の修正案部分が71ページでございます。こちらは網掛けになっているところです。これはパブコメとは別に事務局の方で自発的に追記させていただきました。71ページの一番下のパラグラフの冒頭1行分でございます。高等教育関係のICT活用状況の全体状況はアンケート調査で結果を付記しておりましたけれども,初等中等教育機関に関してもデータがありましたので,そのあたりを追記しております。
それから,次が82ページでございますけれども,こちらも事務局の御提案ということで,82ページは異時公衆送信について権利制限の対象とするという方針を記載されているところでございますけれども,一番上から4行目の結論部分のところの脚注を追記しまして,公衆送信権の制限をするという場合に当然,公への伝達権のことも問題となってきますので,その検討も行うということを念のため確認させていただきました。
次に89ページでございます。こちらは教育機関における著作権法に関する研修・普及啓発稼動に関するセクションでございます。こちらはパブリックコメントにおきまして,コンピュータソフトウェア著作権協会様から,具体的なデータとともに関係者に周知させることの問題が大きいという御指摘がございましたので,89ページの下から四つ目ぐらいのパラグラフのなお書きのところにその旨を少し追記しております。
それから,96ページでは先ほど参考資料7で御紹介した「教育利用に関する著作権等管理協議会」の状況のアップデートをしております。
済みません。私,パブリックコメントの御意見の中でデジタル教科書部分の御紹介をしていなかったことに今になってやっと気付きました。申し訳ありません。不手際をお詫び申し上げます。ちょっと戻っていただいて,資料3の31ページをお願いいたします。教育関係では,第2節でデジタル教科書関連の議論をしていただいたわけでございまして,御意見としては賛成するという御意見を複数頂いております一方で,マル2としまして,学校教育法上の位置付けの付与される部分以外のデジタル教科書に付属する音声・動画等も権利制限の対象とすべきだという御意見も頂いております。
あと,32ページの方では,デジタル教科書というのは中身が完全に紙の教科書と同一でありますので,補償金額も増えるということにしなくていいのではないかという御意見でございます。
それから,その他としまして,今回のデジタル教科書に関する第33条の見直しと併せて,第33条の2の見直しも考えてほしいという御意見がございました。
これを踏まえて,資料2の105ページの方で,こちらはデジタル教科書に関する権利制限に関わるセクションですけれども,最後に(4)を付け加えまして,パブリックコメントで頂いた御意見を踏まえて,第33条の2につきましても併せて手当てを考えるべきだということを書かせていただいております。
それから,済みません,また一つ,私,御説明を飛ばしておりました。86ページに戻っていただけますでしょうか。前後して恐縮です。こちらは異時公衆送信の権利制限に伴います補償金請求権に係る制度設計についてというセクションが85ページから始まっておりまして,その2ページ目に当たる部分でございます。こちらはもともと中間まとめにおきましては,理論上,補償金請求権の導入が肯定されるにしましても,実際に補償金管理団体の設立の見通しが必要であるということが書かれておりまして,今後その管理団体の検討状況を見守るということになっておりましたところ,参考資料7で御紹介いたしましたように,権利者団体37団体による著作権等管理協議会の方で補償金制度の受皿としての団体設立を行っていくという方針の表明がありましたので,それを受けた評価ということをここで追記させていただきました。
説明にいろいろ不手際がございまして失礼いたしました。御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【土肥主査】ありがとうございました。
それでは,ただいま御説明がございました「教育の情報化の推進等」に関する報告書(案)の見直し部分について,御意見,御質問がございましたら,お願いをいたします。今村委員,どうぞ。
【今村委員】確認をしたいところがあるのですけれども,82ページで脚注の146を追加した点なのですけれども,具体的には,私のイメージとしてはサーバにアップされているような情報を教室内で画面に映し出して見せるというようなことかなと。現在でもいろいろ行われているのかもしれませんが,そういうことなのでしょうか。
【秋山著作権課長補佐】はい。そういう行為が含まれております。今回,公衆送信を認める上で,公衆送信を受信して伝達することも併せて検討すべきではないかということでございます。
【土肥主査】ほかに御質問,御意見がございましたら,お願いをいたします。井上委員,どうぞ。
【井上委員】また細かいところなのですけれども,今の今村委員のお話があった82ページの注の146ですけれども,どんな場面かというのが余りはっきりしていなくて。注の146というのは異時公衆送信についてやりましょうという話ですから,後から送るとかそういうことでも構わないというような話だったと思うのですけれども,今のお話ですと,同時に別の場所でやっているような場合に公の伝達でカバーしましょうという,そういうお話ですよね。
【秋山著作権課長補佐】同時授業のときに,一方の教室の受信元が不特定であるという場合には公衆送信になるわけでありますが,そのときに受信した教員が児童生徒に何らか伝達するということも入っております。
【井上委員】そうしますと,もう少し注の146を具体的に書いた方が分かりやすいのではないかなというふうに思いました。
【土肥主査】ありがとうございました。確かにどこまで詳しく書くかというのはあるのだろうと思うのですけれども,無料,無償,非営利,あのあたりのところも含めて考えないといけないことになったりしますし。ここは割合,公の伝達についてはちゃんと書くということなのですけれども,今までこういうことについては法改正のときに落としたりしたことも結構あったのですけれども,きちんと対応するということのようでございます。今御意見を頂きましたところ,お二人から御質問御指摘を頂いたというのは,やはり我々委員においてもよく状況というものが分かりにくかったのであれば,これをオープンにした場合,更にそういうことが考えられますので,この部分については分かりやすくしていただければと思います。
あと,訂正部分というのは,デジタル教科書,それから補償金管理団体に関するところ,そのぐらいでしたかね。データの追記がございましたけれども,初等中等教育に関するデータがあったので,それを追記したと。これは結構かと思いますし。
ほかにいかがでございますか。よろしゅうございますか。
それでは,注の146については,分かりやすいという方向の中で考えさせていただければと思います。
では,「教育の情報化の推進等」についてはこのくらいということにさせていただきます。
次に,「障害者の情報アクセス機会の充実」と「著作物等のアーカイブの利活用促進」なのですけれども,この部分についての御紹介をお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】また資料3を御覧ください。ページは33ページでございます。障害者の関係の方から御紹介いたします。障害者関係の御意見は大半が審議会の方向に賛成するということでございますので,御覧いただければよろしいかと存じます。
下から二つ目の方では,日本書籍出版協会様から,方向性として賛同していただいた上で,権利者保護の観点などから,事業の責任者が著作権法に関する基礎的な講習を受講していることですとか,ボランティアグループが安定的に録音図書等を提供できる体制であるというふうなことを担保することを求められておられます。あとは御参考いただければと思います。
それから,35ページのアーカイブについても基本的には方向性に賛同という御意見が多々寄せられておりますが,これも御覧いただければよろしいかと思います。
4-2の国会図書館による資料送信サービスの拡充というところで,賛成する御意見は海外の図書館からかなり多く寄せられておりまして,これが,今回意見募集に対して寄せられた意見の総数のうち大半をこの第4章が占めているということにつながっているように見受けられます。非常に評価されているということだろうと思います。
それから,一番下の丸ですけれども,送信対象となる資料につきましては,「国立国会図書館のデジタル化資料の図書館等への限定送信に関する合意事項」に基づくものであることを確認したいというような御意見もございました。
次のページをお願いしたいと思います。(3)展示作品に係る情報をインターネット上で提供するための著作物の利用につきましては,展示作品のみならず,対象を所蔵作品全体に拡充してほしいという御意見ですとか,あるいはサムネイル画像について画素数やサイズに制限を設けるべきでないという御意見がある一方で,第47条の2のような基準を課すべきだという御意見があったということがここで整理されております。
アーカイブの関係で,あとは37ページですけれども,権利処理の円滑化全般に関する御意見としまして,権利情報の集約化ですとか,拡大集中許諾制度についての検討を求めるという御意見も改めて述べられております。
あと,5の方はその他の意見でございまして,こちらは本日御説明は割愛させていただこうと思います。
こちらのパブリックコメントの御意見を踏まえますと,特段,報告書の修正には及ばないというふうに考えましたので,御説明としては以上とさせていただきたいと思います。御審議よろしくお願いいたします。
【土肥主査】ありがとうございました。
それでは,第3章の「障害者の情報アクセス機会の充実」及び第4章の「著作物等のアーカイブの利活用促進」の部分について,御質問,御意見がございましたら,お願いいたします。いかがでございましょうか。特にございませんか。
展示作品に限らず,所蔵作品全体に及ぼしてほしいというふうな御意見はすごくもっともではないかなと伺っておったのですけれども,日本版ヨーロピアーナとか,そういうようなことがしばしばこういう場でも出たと思いますけれども,正に情報アクセスの改善ということにつながっていくのではないかと思うのですけれども,特に御意見ございませんか。
特になければ,今回の報告書(案)につきましては,本日頂いた御意見,42ページの注の54の取扱い,それから82ページの注の146,公の伝達の部分,この部分については,そういったものを踏まえて事務局とひとつ相談させていただいて取りまとめたいと思っております。修正案に関しては私に一任していただければと思いますけれども,いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【土肥主査】ありがとうございます。それでは,そのように取り扱わせていただき,本報告書を著作権分科会にお諮りさせていただきたいと思います。
本日用意しておりますのはそういうところでございますけれども,時間がございますので,もし何かその他としていろいろ御意見がございましたら,お願いをいたします。特によろしいでしょうか。
特にないようでございましたら,本日はこのくらいにしたいと思います。
最後に,事務局から連絡事項がございましたら,お願いをいたします。
【秋山著作権課長補佐】次回小委員会につきましては,日程調整の上,追って御連絡したいと思います。どうもありがとうございました。
【土肥主査】ありがとうございました。
それでは,以上をもちまして文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第1回を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
――了――

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