文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第6回)

  • 日時:平成29年12月13日(水)
  • 10:00~12:00
  • 場所:文部科学省東館3階講堂

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)リーチサイト等への対応について
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料
「対応すべき悪質な行為の範囲」の検討(案)(505.1KB)
参考資料1
リーチサイト等への対応に関する主な論点と進め方(178.2KB)
参考資料2
「差止請求の対象として特に対応する必要性が高い悪質な行為類型」に限定する方法の例(49.8KB)
参考資料3
法制・基本問題小委員会(第5回)意見概要(221.7KB)
参考資料4
リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為の行為類型(444.5KB)
参考資料5
著作権法における差止請求の対象となる行為と罰則について(財産権関係)(100.3KB)
参考資料6
日本民間放送連盟提出資料(429.8KB)
出席者名簿(48.2KB)

議事内容

【土肥主査】それでは,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会,第6回を開催いたします。

本日は,お忙しい中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されておる議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

始めに,議事の進め方の前に,配布資料の確認をお願いいたします。

【小林著作権調査官】それでは,お手元の議事次第,中ほどの配布資料一覧をごらんください。

まず,資料としまして,「対応すべき悪質な行為の範囲」の検討(案)を御用意しております。また,参考資料1としまして,主な論点と進め方,2といたしまして,「悪質な行為類型」に限定する方法の例,3としまして,前回の意見概要,4といたしまして,侵害コンテンツへの誘導行為の行為類型,5といたしまして,著作権法における差止請求の対象となる行為と罰則についての表,それから,6といたしまして,日本民間放送連盟提出資料を御用意しております。また,委員のお手元には,机上配布資料としまして,サイトの画面をプリントアウトしたものをお配りしております。

配布資料は以上となります。不備等ございましたら,お近くの係員までお知らせください。

【土肥主査】ありがとうございました。

では,議事の進め方でございますが,本日の議事は,リーチサイト等への対応とその他,この2点となっております。

早速議事の1に入りたいと存じます。リーチサイト等への対応についてでございますが,この課題については,前回,事務局において御提案いただいた検討の視点を踏まえつつ,対応すべき悪質な行為の範囲に関しまして,民事上の措置の対象とすべき範囲につき,御意見を頂戴したところでございます。これまで頂戴いたしました御意見について,事務局において整理をしていただいておりますので,御確認を頂くとともに,本日は,刑事上の対応について議論を行いたいと思います。

そこで,まず,刑事上の対応と立法形式について,事務局から説明をお願いしたいと存じます。

【小林著作権調査官】それでは,御説明いたします。「対応すべき悪質な行為の範囲」の検討(案)と題する資料をお手元に御用意ください。

25ページまでめくっていただきまして,(2)刑事の部分をごらんください。刑事につきましては,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為のうち,刑事罰の対象として特に対応する必要が高い悪質な行為類型はどの範囲かとしまして,具体的な論点として,二つの論点を御用意しております。

まず,論点1として,刑事罰の対象として,特に対応する必要が高い悪質な行為類型については,現行制度において対応が可能と言えるか。また,現行制度を踏まえ,新たに制度を設ける必要があると言えるかとしております。

その下の欄では,「本小委員会における主な意見」として,これまで頂いた意見で,この論点に関係するものを記載しております。

ページをめくっていただきまして,上から6行目以下では,権利者側からのヒアリングにおいていただいた,この論点に関係する御意見を記載しております。また,その下には,プラットフォーマー等へのヒアリングにおいていただいた意見で,関係するものを記載しております。

さらに,27ページの上から3行目の〈参考〉部分をごらんください。ここでは,リンク行為と現行法との関係について述べられている二つの論文を御紹介しております。一つ目は,壇俊光氏,板倉陽一郎氏によるものですが,簡単に御説明しますと,違法にアップロードされたコンテンツにリンクを設置する行為について,著作権侵害を行っているとは評価し得ず,また,刑事において,いわゆるカラオケ法理により,正犯性を肯定した事例が見られず,また,罪刑法定主義との抵触も著しいとした上で,次に,幇助行為該当性について,次のように述べられております。

次の括弧書きを御紹介しますと,幇助行為該当性を検討するに,正犯を容易にしたかがメルクマールとなる。リンクの設置は,リンク先コンテンツをより広く公衆送信可能な状態にする場合があり,これが幇助に該当する場合があることは否定できないとされております。

もう一つの論文,中川達也氏のものでは,括弧書きの部分に参りますが,まず,侵害コンテンツをアップロードした者Aとの関係を見ると,リンクを張った者Bがリンクを張った時点では,Aによる送信可能化の実行行為は終了している。したがって,少なくとも刑事上はBの行為を送信可能化の幇助と見ることは通常は困難であろう。しかし,Bがリンクを張った後に,当該リンクを経由して侵害コンテンツにアクセスして受信したCに対して,実際に送信が行われた場合は,Aが行う公衆送信を容易にしたとして,公衆送信権侵害の幇助が成立し得るとしております。

また,Cとの関係を見ると,Cの受信行為について,複製権侵害が成立する場合には,Cが当該コンテンツを発見して受信,複製することを容易にしたとして,複製権侵害の幇助が成立すると考えると記載されております。

続きまして,次のページ,論点2の御説明に参ります。論点2としましては,さきに検討いただいております差止請求の対象として,特に対応する必要が高い悪質な行為類型は,刑事罰の対象として,特に対応する必要が高い悪質な行為類型と同じ範囲であると考えられるか。仮に,異なると考えられる場合には,どのような行為類型が刑事罰の対象として,特に対応する必要が高い悪質な行為類型であると考えられるかとしております。その下には,同じく「本小委員会における主な意見」として,関係する御意見を記載しております。

次に,29ページ,(3)立法形式についての御説明をいたします。ここでは,仮に新たな制度を設ける場合,どのような立法形式によるべきか。その際,当該制度の対象となる行為は,著作権法上,どのような性格のものとして説明されるかとしております。その下の部分では,「本小委員会における主な意見」として,関係する御意見を記載しております。

以上の(2),(3)の論点を御検討いただく際の参考としまして,本日は参考資料5,著作権法における差止請求の対象となる行為と罰則についての関係を示す表を御用意しております。こちらも併せて御参照いただければと思います。

説明は以上となります。御議論のほど,よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。ただいまお聞きのとおりでございますけれども,(2)刑事上の対応,これには論点1と論点2がございますけれども,それと(3)の立法形式をまず検討したいと思います。

最初に,(2)の刑事上の対応について,論点1,論点2を通して,どこでも結構でございますので,御意見がございましたら,お願いをいたします。朝一番でございますが,松田委員,お願いします。

【松田委員】27ページの中川氏の論文の一部が載せられておりますが,質問が1点あります。ここでは,Cに対して実際に送信された場合には,Aが行う公衆送信については幇助は成り立つけれども,送信可能化については,Aの行為は終了しているので,Bにはそれは当たらないだろうと,こういうことを言っているんだろうと思います。

この限りにおいては,確かにそうだろうなとは思うのでありますが,Cに対して実際に送信された場合に,公衆送信権の幇助が成立するというのであれば,さきに立法いたしましたダウンロードの刑罰化も,この場面では働くのではないかなと思うのであります。そういう理解でいいかどうかです。

それから,ダウンロードの刑罰化については,一般のダウンロード,コンテンツの一般について認められているわけではなくて,要件が強化されていたと思います。たしか有償コンテンツに限りというふうになっていたかと思います。この理解でよいでしょうか。

【小林著作権調査官】一点目,中川先生の論文がダウンロードの違法化の部分の複製権侵害というものを正犯としているのかということについては,はっきりと書かれてはいませんが,そういうことだと思います。 二点目,ダウンロードの違法化において,刑事の要件については,有償著作物等という要件が強化されているかということについては,そのとおりとなっております。

【松田委員】わかりました。

【土肥主査】ありがとうございました。27ページの一番下のところに,複製権侵害の幇助が成立するというふうに言っていますので,正犯としては複製権侵害,著作権侵害,そういうことだと思いますけれども,ほかにございますか。深町委員,お願いします。

【深町委員】まず,27ページで書かれていることについて,刑法学の立場から補足いたしますと,ここで問題となっていることは,送信可能化権侵害と公衆送信権侵害の二つが分けられているという点です。著作権侵害コンテンツのアップロードがなされた瞬間に,アップロードという実行行為がもう終わっていると考えますと,正犯の実行行為を促進することで正犯結果を促進するというのが刑法における幇助犯だという理解を厳格に維持する限り,そもそもアップロード後になされたリンクを張るという行為については,正犯の実行行為たるアップロード行為自体を促進することができないので,基本的に幇助犯とはならないということが,中川論文の問題意識だと言えます。

このような理解からは,まず,送信可能化権侵害についての幇助犯の成立を肯定するのは困難であるのに対して,公衆送信それ自体は,コンテンツのアップロード後も,なお公衆(ユーザー)による個々の要請に応じて行われるので,公衆送信権侵害についての幇助犯の成立を肯定することが可能であるという形で議論を分けているように見受けられるわけです。

ただし,アップロード行為それ自体を促進しなければ幇助とは言えないという理解を厳格に維持すると,送信可能化権侵害であろうが公衆送信権侵害であろうが,いずれについても,アップロード行為という正犯の実行行為自体は既に終了しているので,およそ幇助犯は成立しないという理解もあり得るところです。

これに対しまして,壇=板倉論文で言われていることは,公衆送信権侵害についても送信可能化権侵害についても,いずれも継続犯として捉えることで,いわば正犯の実行行為がアップロード後も継続しているという理解をとるわけです。アップロード行為という個々の行為自体は終わっても,その後,著作権侵害コンテンツを依然として掲載し続けている(消去しない)という行為が継続していると構成し,そうした行為に関与しているのだから幇助犯が成立するのだと,こういう理解を採用しているようでございます。

このように,このそれぞれの論文で前提とされている理解は,まず,正犯の実行行為とは何か,具体的な当該アップロード行為だけなのか,それとも,その後の行為も考慮するのかという観点からそれぞれ異なるのですが,その前提として,両論文とも,アップロード行為のみが正犯行為であって,リンクを張る行為自体は正犯行為とはなり得ないという理解が前提とされているという形で整理可能だろうと思います。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。大渕委員。

【大渕主査代理】まず,これはいつも強調しているところでありますが,幇助,事後従犯と独立の正犯の三つは明確に区別しないと議論が大混乱してしまいます。先ほどから出ておりますダウンロードの違法化というのは,独立の正犯にしたものですから,それと幇助や事後従犯を混ぜると議論が大混乱してくると思います。

それから,今言われた点は,私も前から何度も言っているところで,同じ話なのですが,正犯が終わった後では幇助にはなり得なくて,事後従犯にしかなりません。あとは,アップロード行為の捉え方というのは前から出てきておりますが,1回やったら終わるのか,日々,アップロードが続いているのかという問題になってくると思います。

独立正犯化したダウンロードは議論が混乱しますので,脇に置いておいた上で,おおむね,そのようなものを外せば正犯にはならないというところで共通認識があるのだと思いますが,何を幇助しているのか,送信可能化なのか送信なのか,あるいは複製なのかというあたりで,複製の関係では,30条1項3号複製を幇助しているという,それ自体ではなくて,3号で違法になった複製を幇助しているのとありますが,今議論になっているのは,送信可能化であり,送信については余り異論もなくて,可能化したと言えば,次には送信行為が行われるわけですけれども,それを幇助しているという点。

それから,リンクの場合に,純粋に幇助だけかというと,教唆的な面もあって,これは面白い現象なのですが,恐らく,軽くできるから,やや教唆されてやってしまうという人もいますので,完全に犯意を持ってやっている人にとっては純粋に幇助なのでしょうが,あのような装置を見ることによって,犯意が生まれるということもあるので,これは幇助と教唆が合体したような,そのような意味では狭義共犯の混合包括形態のようなものといえると思います。

それはさておき,送信については幇助が言いやすくて,送信可能化の方は日々,アップロードすれば可能化していますが,ただ,送信の場合には受け取ってくれる人がいなくてはいけないので,それを幇助するということは入りやすいのですが,アップロードの場合には,日々,続けているとしても,アップロードするための場を提供して幇助をしやすくしているとか,いろんなことを組み合わせると,また出てくるのかもしれませんが,そのあたりは技術の面などと,何をどの人との関係で考えるのか,送信の場合には比較的分かりやすいのですが,送信可能化の場合には,送信可能化については事後従犯にもなり得るので,2面性があるということを前に申し上げました。違法ファイルの拡散をしているというようにも見られるし,送信可能化というのは,いろいろ分析してくると何かあるのかもしれませんけれども,その辺はいろいろ細かい分析が必要と思います。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにございますか。前田哲男委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】送信可能化が点かどうかということにつきましては,2条1項9号の5の送信可能化の定義によれば,点を捉えているようにも見えるのですけれども,送信可能化を公衆送信に含めるのは,侵害が成立する時期をアップロードの時点にまで遡らせようということであって,送信可能化と,その後,実際にリクエストがあったときに行われる自動公衆送信とは,連続した一体的なものと捉えるべきではないかと思います。

それはさておき,刑事罰の対象にする範囲と民事的な差止請求の対象とする範囲が一致させるべきなのか,それとも刑事罰の対象はより限定すべきかということにつきましては,民事的な差止請求の対象にするべきものは,刑事罰の対象にもするべきであると私は思います。

たしかに,参考資料5に記載されているように,現在,差止請求の対象にはなるけれども,刑事罰の対象から外されている行為が幾つかございます。私的使用目的の複製に関するものなどが刑事罰の対象から外れているわけでありますけれども,今,議論しているリーチサイトの問題につきましては,違法コンテンツの公衆への拡散を助長する行為でありまして,私的領域内で行われている行為というわけではございませんので,こういう行為につきましては,やはり刑事罰の対象にする必要があるのではないかと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにございますか。森田委員,どうぞ。

【森田委員】最初に問題になっております幇助の対象に関して,送信可能化と自動公衆送信との関係ですが,送信可能化自体が一種の危険犯といいますか,その後に自動公衆送信される危険性のある行為を捉えて,その時点で違法とするというものでありますので,実際,その危険性がどれほど増したのか,つまり,リンクを張ることによって,アクセスする人が増えて,違法にダウンロードする人が増えるという関係にあれば,送信可能化という行為自体は終了していたとしても,その後にこのような危険性を増す行為というのは,ある種の幇助として捉えてよいのではないかと思います。

EC裁判所では,新たな利用者といいますか,「新たな公衆」を獲得するような場合にはリンク行為は違法になるとしておりますが,これも同じような考え方に立つもので,このような行為の評価によれば,リンクを張ることによって違法行為を助長するという関係は,送信可能化についても観念することができるのではないかと思います。

それから,論点の(2)の問いですが,これは前回にも述べましたように,ここで問題としているのは,著作権侵害を助長・促進するという幇助に当たるようなリンク情報の提供行為の中で,特に民事上も緊急に対応する必要性が高い悪質な行為類型をくくり出すということであって,このような観点からすると,そこで対象となるような行為は,抽象的には刑事罰が科される幇助犯の対象となるような行為であろうと思いますので,新たに刑事罰を科すかどうかというよりは,もう既に刑事罰の対象にはなっているという整理になるのだろうと思います。

これに対して,幇助に当たらないような場合についても,民事上の差止請求の範囲を拡張して認めようという見解に立つときは,民事はそこまで対象を拡張するけれども,刑事については従来の幇助が成立する範囲にとどめるべきだという議論がありえますが,そうだとしますと,前回申しましたように,そもそもここでの問題設定に反する議論をしているという批判が当たろうかと思います。

もちろん,既に刑事罰の対象となっている行為についても,個々の要件の立証が難しいという場合には,それを形式的ないし外形的な要件に置きかえたような犯罪類型を新たに創出するということは可能かとは思いますが,そのような必要はないのではないかと考えるときには,刑事罰については,ここで特に何らかの対応を図るというよりは,従来の一般法としての幇助の範囲で認めるということで足りるのではないかというふうに私は思います。

【土肥主査】奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】ありがとうございます。先ほど,送信可能化と公衆送信が一体ではないかというようなお話もあったんですけれども,まねきTV事件の最高裁判決を見ますと,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規制した趣旨は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ,自動的に行う送信が既に規制の対象とされていた状況のもとで,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにあると言って,準備だというふうに言っていると。しかも,先ほどあったように,条文の2条1項9号の5を見ますと,基本的には,ある特定の点を指すような形で説明がされていると。特に入力型送信可能化と記録型送信可能化があって,入力型の場合は,これだけは唯一,入力をし続けることということを概念しているということなどを考えますと,これらを整合的に解すると,やはり送信可能化については,原則ある点で終わると。入力型送信可能化はずっと続くのが前提ですけれども,記録型についてはある点で終わると解さないと,準備の状態が,いつまでも準備が続いているというふうに概念するという,必要はないんではないかなというのは1点思います。

それから,もう一点は,これはこの前,申し上げましたけれども,まず重要なのは,規範的な解釈をする前に,技術的には,送信を助けているのではないということです。技術的には,あくまでも受信者がそのホームページにアクセスするのを助けているだけであります。したがって,その結果として送信が行われるから,そこまでとって規範的にということを順番的に議論すべきであって,そのことを飛ばして,見た目で送信が行われるというような議論を一足飛びにするべきではないと思います。

さらに,それで申し上げますと,この前,申し上げましたように,求める側の,受信者の行為は基本的に問題がないという整理を著作権法はしているわけです。受信者の行為は不可罰,求める方は不可罰となる。その不可罰の人を助けることが送信を助けることなんだと言って構成するんであれば,その点を一つ一つ積み重ねて,説得的に説明する必要があるんではないかなというふうに私は思います。

以上です。

【土肥主査】大渕委員,どうぞ。

【大渕主査代理】これも前から言っているところなのですが,独立に違法ダウンロードのような新しい条文を作るのかは別として,普通の幇助で考えれば,故意さえあれば,現行法でも,119条一般について,他人の著作権侵害に故意を持って,これが知りながらとイコールなのでしょうが,故意を持って幇助すれば,幇助というのは容易ならしめる行為一般で,さほど限定していません。そのような行為をすれば,起訴価値があって,現実に起訴されるかは別として,実体刑法上は119条の修正された構成要件としての幇助犯は成立しているということは恐らく誰も否定していないわけです。

それでは足りないから,独立構成要件化をするという議論は別途あるのですが,現に普通の意味での幇助はもう既に刑罰化されているので,そこをいじったり,広げたりするというのは,かえって議論がゆがんでくるように思います。それ以外に,先ほど出ていたような独立構成要件化をする必要があるかどうかという立法の問題として整理した方が議論が混乱しなくてよいのではないか思います。

それから,先ほどから非常に気になっているのですが,送信可能化と送信について,基本的には送信は侵害であることは間違いないのですが,送信可能化は,立法趣旨としては,そこまでいかなくても,どなたかが危険犯と言われていましたように,アップロードすれば,どんどんダウンロードされてしまう状態にあるのだから,そこで差止めをしなくてはなりません。例えば,送信のおそれを言わなくても,送信可能化をやってしまったら,それを差し止めできることは間違いありませんし,そこは刑罰を問えるということなので,どなたか言われた危険犯的な意味での送信可能化の独立性というのはあると思います。そのような意味では,送信と混ぜない方がいいのではないかというのが1点ございます。

それの関係で,例えば私がアップロードしても,サイトを止められたら幇助できなくなってしまうわけでありまして,そのような意味では,日々,アップロードし続けるためには,場がないとアップロードできないから,そのような点を捉えれば,幇助していないかと言われると,していないとは言い切れないと思います。余りに単純過ぎて気にならない継続なのですが,行為というのは,物理的には1回やって放置ではありますが,日々,アップロードしている,1回やったらし続けなくてはいけないということはないので,10分やったらおろしてもいいわけですから,それを10分やって,また次の10分やって,その次の10分,送信可能化状態を続けられるというのは,その場の提供があってできるというように考えると,先ほど言われたような意味での幇助というのが全く言えないかというと,そこのところは細かく分析する必要があろうかと思っています。

以前,ある理系の先生から,送信という概念はなく,受信という概念しかないということを聞いて,なるほど,面白いなと思ったことがあります。私がどこかにアップロードすると,そこで私のやる行為は終わっており,受信者がプロバイダを介してそこまで取りにきて,取るということですが,取ったことをもって,反面では私から送信したといっているとのことでした。このように考えると,送信と受信は,同じものを逆の面から見るものといえます。ただ,他方で,技術だけ見ると,先ほど言われたように受信しか幇助していないという話になるのかもしれませんが,もともとそれは織り込み済みで,放送のように,こちらから直接,電波を流しているわけではなくて,もともと置いたものを取りにきてもらったら,受け取ってくれれば,それをもってこちらからの送信となるとのことです。そのように考えると,余り技術的というような形に組むと変な議論になってきますが,もともとそのような頭で法律ができているので,そう考えれば,受信の幇助でもあり,送信の幇助でもあるというところは否定し難いのではないかと思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。前田健委員,どうぞ。

【前田(健)委員】論点1の現行制度において対応が可能か,又は新たに制度を設ける必要があると言えるかという問いに即してお話ししたいと思います。

今,議論がありますように,現行法を前提としたときに,現行法の解釈としてリーチサイト等による侵害コンテンツの誘導行為が著作権侵害罪の幇助に当たるかというのは,様々な解釈があるということだと思います。私は,幇助に当たるという解釈も十分成立するのではないかと思いますけれども,ただ,異論も大きいということだと思います。

今は立法論を含めて議論しているということだと,当然,思いますので,解釈論としての話は置いておいて,もし,解釈に不明確なところがあるのであれば,立法して明確に刑事罰とすべき行為を定めるというのはあり得ると思います。侵害コンテンツの誘導行為が著作権者の保護すべき利益に対して侵害をする,若しくは危険な状態を生じさせるというふうに言えるのであれば,幇助行為のうち一定のものを類型化して,正犯化するということは検討してもよろしいと思います。

さらに,現行法の解釈で幇助として対処するということだと,立証の問題であるとか,あるいは正犯が検挙される必要があるとか,そういう問題もあると思います。もし,そこについて大きな問題があって,幇助という範疇では対処しにくいということがあるのであれば,正犯化して対処するという選択肢もあり得るのだろうと考えます。

【土肥主査】今おっしゃったように,ヒアリング等で関係者の御意見を聞いたときには,今まさに前田健委員が言われたような問題点の御指摘があったわけでありますけれども,上野委員,どうぞ。

【上野委員】今までの議論をお聞きしておりまして,2点コメントさせていただきます。

一つ目は,論点1に関して,細かく分けると二つあります。一つは,「送信可能化」という行為がアップロード後の送信も含むのかという論点に関しまして,いろいろ御議論がありましたけれども,奥邨先生も御紹介されましたように,私自身も,結論的には,「送信可能化」というのは準備行為であるアップロードだけを指すという,――これが日本法の特殊なところではあるわけですけれども――,そのように解するのが妥当かと思います。

確かに,前田哲男先生も御指摘になりましたように,送信可能化にはアップロード後の送信も含まれるという解釈もないわけではありません。実際のところ,現行法の中にも119条3項の中には,「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信」という文言があり,これは,著作権のみならず,著作隣接権についても「自動公衆送信」という行為によって侵害となるということになります。もし,送信可能化権でしかない著作隣接権が自動公衆送信によって侵害されるということはないと考えるのであれば,この文言はおかしいということになるわけです。けれども,もともとこの部分は議員修正によって設けられた条文でもありまして,その文言は正確とは言い難いものと考えられます。

次に,1点目の二つ目です。先ほど前田健先生からも御指摘がありましたように,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為は,確かに,理論的には,現行法でも侵害幇助として刑事罰が成り立つのかも知れませんが,そうだといたしましても,特に外国において正犯がいる場合を想定いたしますと,現実の運用と申しましょうか,立証と申しましょうか,現実的には,刑事訴追が容易でないようでありますので,そうだとすれば,これはやはり憂慮すべき事態ではないかと私は思っております。

2点目は,論点2に関しまして,刑事罰の対象と差止請求の対象に違いがあるべきかどうかということにつきましても,様々な議論がありました。私自身は,一般論といたしましては,差止請求の対象と刑事罰の対象には差があってもよいと考えておりますし,現に,現行法の中にもそのような規定が見受けられるところであります。

そういう観点からいたしますと,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為が刑事罰の対象となるとしても,現行法119条3項が,違法ダウンロードを「有償著作物等」に限って刑事罰の対象にしているのと同じようにするべきだという考え方も確かにあり得るかと思います。

ただ,この119条3項の対象となる行為は飽くまで私的複製であります。私的複製は,私的領域における私人の行為ということでありますので,私的複製であるにもかかわらず例外的に著作権侵害になる30条1項各号の行為は,もともと差止めの対象にはなるけれども,いずれも刑事罰の対象にはならないものだったわけであります。

したがいまして,119条3項は,そのようにもともと刑事罰が科されてこなかった私的な行為について,有償著作物等のみを対象として限定的に刑事罰化したものであります。

そのような観点からいたしますと,今回問題になっているリーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為というのは私的行為とは異なるものでありますので,これに刑事罰を設けることについて,119条3項にならう必要は必ずしもないのではないかと考えております。

ただ,そもそも刑事罰と差止請求で対象に違いを設けるかどうかという問題は,民事上の差止請求に関して,どのような要件を設定するかにもよって結論が変わってくるものでありますし,また,「目的」要件のところで刑事罰の対象を民事より限定するというような考えもあり得るかと思っております。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。大渕委員。

【大渕主査代理】議論がやや錯綜しかかっていますけれども,これはきちんと整理しないと,また議論が混乱してくるので,一つは現行法でできることについて,ほぼ異論のない,普通の刑法総則を使っての,普通の意味での幇助行為で,これは広げもせずに,特に否定する必要もないと思われます。

ただ,どなたかが言われましたとおり,不明確だから明確化するという明確化立法というのは意外に多いと私も思っております。要するに,解釈論の努力をすればできるけれども,反対説も多いから明確化するという立法です。むしろそのような線で言えば,今引いてある実線を内側から外側に引き替える改正というのは意外とできなくて,点線で引いてあるようなところを明確化するために,点線の上をなぞって実線にしているタイプの改正も多いのであり,そのような立法も大いにあり得るという話であります。

今のは普通の意味での幇助ですが,独立正犯というのは,また別途ある話であります。その両者は観念的競合という関係に立つと思われます。幇助的行為をしたら,普通の幇助にもなるし,今度,作った場合における新独立正犯にも当たるということになってくるので,そのあたりは議論を整理しないと混乱してしまうのではないかと思います。

その場合,考え方として一つあり得るのは,幇助でやっているのは普通の意味の幇助だけなのですが,例えば,非常に大規模にやっているから云々ということで,単なる幇助を超えた別のものを持ってこないと,別の犯罪を作ることは難しいので,何か別の法益で,今までやっているものはそういうのが多いのですが,そこを考えていかないと,幇助だけで持ってくるのはなかなか難しいと思います。やはり新たに正犯というか構成要件を作るというのは,非常に大きな話なので,それは立法事実というか,単なる幇助を超える何か大きなものを持ってくる必要があると思います。

だから,議論としては,幇助の話と,それとは観念的競合に立つであろう独立正犯の違いはきちんと整理して議論しないと,大混乱してくるのではないかと思います。

【土肥主査】ありがとうございます。現行法において,幇助というものが既に刑法典においてカバーされているという,そこはもちろん異論はないと思います。けれども,実際問題として,こういう無断でアップロードしたり,無断で違法と知りながらダウンロードしたりするという場合の,いわゆる正犯となる行為を現実に可罰できるかという問題があるんだろうと思うんです。つまり,現実に可罰するのが難しいにもかかわらず,従犯たる幇助の方だけ,現実問題としてやれるのかということがあるんだろうと思います。そういう意味では,既に幇助というものがきちんとあるので,それを一切,手を入れる必要はないという,理屈のところはよく分かるんですけれども,現実問題として考えて,ヒアリング等々の関係者の御意見を聞くと,なるほどなというふうに思うわけであります。

つまり,独立要件化,あるいは正犯的な行為として,幇助を広げないで,幇助の中の核心的な部分を取り上げて,それだけで可罰できるようにするという,これはある意味で立法形式にもつながるのかもしれませんけれども,(3)の立法形式にもつながるかもしれませんが,そういう問題を我々はどう考えなければならないのか。そういう法理論を超えた現実問題をです。そうしないと,著作権の実効性というものが,今のところ,かなり危くなっているので,これをどうにかしましょうというところで,この委員会が立ち上がっておりますので,ひとつその点についても御意見を聞かせていただければと思います。松田委員。

【松田委員】今,主査が提起されましたことをお話ししたいと思っていたところです。現行法でも,送信可能化に関する幇助というものがもし成り立つのであれば,現段階でも刑事事件として問題が起こらないわけではない。提起できるはずです。しかし,これがなかなか起こらないのは,正犯の方の特定がなかなか難しい,正犯が誰であるかが分からない。刑事罰の場合には,従犯で起訴する場合であったとしても,私の理解では,正犯を罰する必要はないけれども,正犯の行為を特定しなければならない,厳しい従属性説がここに働いているというふうに思うのです。これが民事と刑事の決定的な違いではないかと思っております。

記憶しているところによりますと,ウィニー事件については,ファイル交換それ自体が問われているわけですが,実は,正犯はきちんと特定しているんです。第一審の判決を読んでみますと,正犯は特定しています。あれも,従犯従属性説に従って起訴しているんだろうと思います。この原則がある以上は,なかなか現行法で対処できるでしょうということは,現実としては不可能に近いのではないかというふうに思っております。

そうなりますと,何らかの現在ある幇助形態のものを独立の構成要件にするということが求められることになります。そこで検討しなければいけないのは,今,民事では悪質性の高い行為について,その要件を付加して,そして今の状況よりも要件の厳しいものにしようとしている。言ってみれば,損害賠償よりも差止請求権の要求が厳しくなるということで議論をしているわけです。これが恐らくこの委員会の趨勢であるように私は受け止めております。

差止めでは要件を厳しくしているにもかかわらず,刑事罰については,幇助形態の要件を格別加えないで,そして構成要件化するというのは,これはまずいだろうと思っています。要件を加えるということになれば,当然のことながら,現行の幇助形態ではなくて,要件が加わった独立の正犯になることになります。そうしなければ,民事のところで考察した,いわゆる言論の自由における萎縮効果についての配慮が刑事罰では及ばないということになってしまいます。この方が,実は言論の萎縮効果については,大きいと思っています。この点の配慮をしなければいけないというふうに思っています。

【土肥主査】ありがとうございました。深町委員,お願いします。

【深町委員】今までの議論を刑事法の側から整理いたしますと,二つの局面があって,まずは送信可能化権侵害についての幇助犯はなかなか難しいところがあるのに対し,公衆送信権侵害の幇助犯の成立は理論的にはあり得ると思われるところです。しかしながら,実務上の問題として言えば,現実にはなかなか起訴がなされない。その理由は,今,松田委員がおっしゃったことに尽きるわけですが,やはり正犯が特定されないときに幇助犯だけを起訴するというのはなかなか難しいことであります。Winny事件においても,違法アップロードをした2名の正犯が起訴されているからこそ,幇助犯も起訴されているのではないか。

本罪が親告罪だということも関係するのかも知れませんが,正犯について特定されておらず,したがって告訴もなされていない場合に,幇助犯については告訴があったからと言って起訴するのかと言えば,なかなかそうはなりにくいのではないでしょうか。このような実態を踏まえたときに,理論的に処罰可能な領域(公衆送信権侵害の幇助犯の成立)がないわけではないが,しかしながら,実際には訴追が困難であるということからして,このような実態を立法事実として構成しつつ,そうした立法事実に対応した形で独立の処罰規定(構成要件)を作るときにはどうすればいいのかというのが,次の話につながるものと思われるわけです。

そこで重要なことは,民事の差止請求の要件をどのように規定するかということが,新たな処罰規定の作り方にも影響を与えるという点です。私の理解からしますと,差止請求の要件としてはある程度限定するが,犯罪構成要件としては更に限定的に規定するということはもちろん可能です。ただし,なぜ,刑事罰を科す場合だけそのような限定的な要件を設けるのかということについては,なお独自の議論は必要だと思われるわけです。

松田委員は,先ほど表現の自由に言及されましたが,例えば,もし仮に現行法でも既に幇助で可罰的なのだと多くの人が考えているとすれば,萎縮効果は既に生じているとも言えるのであって,それを超えた萎縮効果とは何かということも考慮した上で,新たに規定する犯罪構成要件について考察する必要がございます。例えば,営利目的といったようなことを要求するとして,なぜ,処罰規定においては営利目的を要求するのかといったことが翻って,民事の差止請求では不要とされたにもかかわらず,刑事罰ではそのような要件が必要となる実質的な根拠までやはり議論しないといけないと思うわけです。

ということで,私の立場としては,論点1と論点2は連動するものであり,理論的に公衆送信権侵害の幇助犯としての処罰は不可能ではないとしても,現実にはそれが難しい実態がある。このような立法事実に対応する形で新たな犯罪構成要件,処罰規定を作る必要がある,と。ただし,このような処罰規定を設ける上で,民事の差止請求よりも更に限定的な要件を課すべきかについては,なお議論の余地があると思っております。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。大渕委員。

【大渕主査代理】2点ありまして,民事の方は後に回しまして,まず刑事について,普通の意味での幇助犯は現行法でも起訴できるとは思いつつ,恐らく一番問題とされているのは,ウィニー事件のときは確かに判決を見ると2名,正犯が起訴されているので,あのような形ならば従犯の起訴に検察官が動きやすいけれども,正犯が不特定だと,なかなか抵抗感があって,できないということなので,そこはそことして理解できる面はあります。

先ほどから気になっておりますのは,現行法である幇助をいじるというのではなくて,新しい独立正犯を作るのであれば,現行法である普通の意味での幇助と違うものを処罰するわけですから,それは単なる侵害幇助ではなく,何かもっと違う,社会法益ではないのでしょうが,個人法域の中でも特別に,例えば大量で営業的だ等の大規模なものだから,一般の幇助を超えるような特別な実体があるというように持ってこないといけないと思います。今までの独立正犯も何か特別なものがプラスアルファされ,通常のものとは違うものだから別の構成要件としているのであって,民事より高い云々という次元ではなく,通常幇助とは違うものを正犯にするというためには,おのずから高いものが要求されてくるのは当然といえます。そこを何とのバランスで作ってくるかは別として,新たに構成要件を作るというのは,著作権法で幾つか例があります。修正された構成要件は,刑法総則によってできるのですが,新たに独立構成要件を作るというのは大きな話なので,そこのところは立法事実を踏まえて考えていく必要があると思います。

先ほど損害賠償と差止めと刑罰の要件の高低の関係というのが言われていて,刑罰というのが法的制裁としては最も峻厳なものなので,それが謙抑的であるべきというのは分かるのですが,私としては,諸外国の例などを見ても,損害賠償よりも差止めが当然高いといわれるのは大いに違和感のあるところであります。

その関係で,これは前から言わなくてはいけないと思っていたのですが,この法制・基本小委で何年か前に間接侵害の議論をやってうまくいかなかったことは間違いないのですが,それを簡単に振り返ってみると,間接侵害は三つ論点があります。幇助者に対する差止めの可否,これが入り口論で,まさしくここでやることなのですが,それは直接侵害者限定ドグマ,なぜ日本だけ,このようなところまで漠然とあるのかと私は不思議に思って,ドイツだとごく普通に,相当因果関係のある関与者は,幇助者も含めて,当然,損害賠償も差止めも対象になることに異論もないのが,なぜ何で日本だけドグマがひどいのかなと気になるところなのですが,それが1点。

2点目は従属説の徹底というもので,特許との関係で一部独立説にしたいという人がいたのですが,それは全く違う別次元の話であります。特許の間接侵害は,実は,幇助ではなく,今言っている独立構成要件の方の話なので,新たに構成要件を作っているのが101条ですから,その関係で,恐らく現在では中間説で,ものによっては従属説だし,ものによっては独立説ということになっています。私は,これは著作権の場合には従属説徹底は当然だと思っており,ワーキンググループでもそのような明確化の提案をしたのですが,この論点は,ここでは全く関係なくて,違法なファイルにリンクを張る者しか想定していませんから,一部独立説というのも考えられないので,従属説の徹底かどうかの点は関係ありません。

それから,3番目は,間接侵害の範囲の明確化という論点がありました。あのときにはリーチサイトも本当は含んでいたわけですけれども,膨大な範囲のものを明確化しなければなりません。私は,ドイツにあるように,相当因果関係のある寄与でよいと思っていたのですが,そこを細々と書くということになったので,これが主因となって頓挫した経緯があるのですが,そこのところは,今回は飽くまで違法なファイルへのリンク張りにつき差止めをすればよいということになっています。

最後に少し判例に触れたいと思います。普通はヒットワン事件と選撮見録事件で大阪地裁が極めてきれいに幇助者に対する差止めを判示して,高く評価されているかと思うのですが,その判例の反対については,少し誤解があるのではないかと思います。

判例としては,2ちゃんねる小学館事件の地裁が類型的に否定しているのですが,あれをごらんになると,先ほどの特許の間接侵害と著作権の間接侵害を混同した形でやられているから,理論的におかしい上に,あれは高裁で取消しされているので,生きている反対判例として,2ちゃんねる小学館事件の地裁はないわけです。

それから,前回も申し上げたとおり,北朝鮮の極秘文書事件というものが反対判例として挙げられているのですが,あの事案をごらんになればすぐお分かりのとおり,事後従犯の事案についてのものであって,間接侵害すなわち幇助の事案についてのものでは全くありません。事後従犯なら,当然,事後従犯の構成要件の条項がなければ差し止めできるはずもないのに,それを誤解されたのか,間接侵害でも同様の条文が必要のように書かれているだけであります。要するに,幇助者に対する差止めの可能性については,支持する判例はヒットワン事件,選撮見録事件と有力なものが複数あるけれども,反対の方はないと言っても過言ではありません。

2ちゃんねる小学館事件の高裁は,放置法理という,放置することによって,結局は差止めを認めているのですが,放置というのは不作為犯と構成される反面,不作為による幇助と把握すれば,間接侵害とも構成され得ます。学説をもう一回,見直してみたのですが,最近では,正面立って,幇助者に対する差止めができないと言われている人はいなくて,112条の適用ではなくて,112条の類推適用だという,そういう細かいことを言われているだけなので,現行法上,差止めができないというのは,少し前まではそうだったかもしれないのですが,今では直接に言われている方は余りいらっしゃらない。だから,そこは,現行法上はむしろできるけれども,明確化するという色彩が強いのではないかと思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。ちょっと広がりましたけれども,一拍,呼吸を整える意味で,まだ形状の対応について少し伺いますけれども,立法形式の(3)についても関係がございますので,これについて御意見を頂戴できればと思います。それを踏まえて,またやりたいと思います。どうぞ。小島委員,どうぞ。

【小島委員】ありがとうございます。刑事罰のところの条文を拝見していまして,例えば119条の2号のような形で,営利を目的としてというようなものが付加されて書かれているけれども,これは119条の方で規定がなされているような類型もございます。これは30条の私的複製との関係のものでありますけれども,こういうふうなところに規定がされているものもあります。

しかしながら,一方では,技術的保護手段の回避の120条の2のようなところについては,要するに,私の中では,これは独立してそういうふうなものを規定しているという,先ほどからの議論に関わるのではないかなというふうに思いますし,同じく120条の2の2号以下を見ていただきましても,やはり技術的保護手段の回避を行ったものについては要件を業としてとか,公衆からの求めに応じてというふうに付加がされていますし,その以下のものについても,営利を目的としたというようなことが書かれていて,こちらは私が興味深いなと思うのは,これはみなし侵害の規定であるということで,みなし侵害の中のあるカテゴリーのものについては,こういう形で要件が付加されている。

こういう形で,先ほどからの議論を伺っていまして,何を幇助と捉えるのか,あるいは,幇助について解釈論上,なかなか一致が見られないようなところについては,こういうふうな形で対処をしていくというふうな形もあるのではないかなというふうに,ちょっと条文を見ながら感じたところではあります。

とりあえずは以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかに。深町委員,どうぞ。

【深町委員】今の小島委員の御発言との関係なのですが,私も,その方向性での議論がありうると思っております。差止請求というのは,結局,リーチサイトの中でも個々のリンクとの関係での削除請求といったことになっていく。すなわち,個々の私権を理由とした差止請求とならざるを得ないと考えておりますが,それに対して,刑事罰を科すに当たっては,むしろプラットフォームというか,そういったリーチサイトという場を設けたという視点が考慮されるように思います。本分科会でも当初から言われていることの一つに,プラットフォームや場を設定した者の責任という観点があったかと思うのですが,このような場を設定したことこそが,犯罪構成要件を新たに規定する上では重要な可罰的要素であると考えられます。そのような観点からは,例えば「業として」とか,そういった要件を規定するというのは,一つの案としてありうるかと思っております。

要するに,1回リンクを張っただけではなくて,何度も繰り返して複数のリンクを張る場合や,一定のプラットフォームを設定してそこから利益を得ることを目的としている場合といった,刑事罰を科すにふさわしいような実態を括りだすために,「業として」といった要件や「営利目的で」といった要件を設けることは十分にありうるのではないか。その意味で,犯罪構成要件を設ける場合には,差止請求よりも更に厳格な要件が付されるべきであり,それはリーチサイトという場を設定すること自体を新たな処罰対象として設定していくべきだという考え方からすれば一理あるかなと思っているところです。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。どうぞ。

【大渕主査代理】もちろん著作権侵害の刑罰は個人法益なのですが,もともと趣旨が民事的な救済ではなくて,一般予防という,よりパブリックなものなので,最終的にそこは違ってきてよいのではないかと思います。それに加えて,土肥先生が得意とされている不正競争防止法だと,民事ですが,無効化のところは,私人が無効化する行為のところは捕捉しないけれども,無効化のための機器等を提供するところは捕捉するという形になっています。普通の考え方から言うと,大元がなくて,なぜ後者があるのかと思いますが,恐らくそれは悩み悩んだ上での独立構成要件化の立法政策であって,特に刑罰としてやるのであれば,その辺はいろいろ工夫しながら,先ほども何度か言われたところに続くかと思います。

先ほどの話は全部大元に違法な侵害があって,その幇助という普通のパターンなのですが,発想を変えて,先ほどの不正競争防止法のように,違うところで押さえていくという考え方もあり得ると思います。今の話だと,普通の幇助を消すなどという話ではなくて,観念的競合で残して,新たなものを作るのであれば,幇助を強めるというよりは,幇助から離れた独立正犯の形でやった方が,すなわち,先ほどのような,本人の行為は押さえないけれども機器等の提供だけ抑えるという,少し別の発想で行った方が議論の前進の可能性があるように思われます。

【土肥主査】ありがとうございました。松田委員,どうぞ。

【松田委員】今,場という議論が出てきました。そこでちょっと質問をしたいと思っているのですけれども,場という概念につきましては,それはサイト運営者がシステムを構築しているその状況とほぼ同じ概念でいいのだろうとは思うのですが,そういう状況,それ自体を刑罰化するということは,恐らくはなかなか難しいだろう。それはなぜかというと,著作権法上の個々の権利の侵害性から離れて,場を設定したから可罰的な構成要件だというのは難しいだろうと思っているのです。そこで,個々の著作権法上の権利侵害ということと場との関係がどうなるのかということをお聞きしたい。

【土肥主査】今すぐですね。じゃ,深町委員,お願いします。

【深町委員】もしかしたら,大渕委員のおっしゃっていることとやや重なるのかもしれませんが,もちろん著作権侵害罪は個々の私権に対する侵害を保護法益としていることは前提でありますけれども,そういった行為が反復継続されれば,より害悪性・不法性が増すということは当然でして,個々の私権侵害であるということと,それが今後も繰り返される可能性があるということとは別個に考えられると思うわけです。様々な刑罰規定において「業として」という要件が規定されていますが,やはり何度も反復・継続されるような状況であれば,将来的に見ても危険であり,より害悪性・不法性が高まるといったファクターとして理解されていると思われます。

このように考えますと,著作権侵害罪が個々の私権侵害であるということと,それが何度も繰り返されるような状況であるということとは両立し得る。その何度も繰り返されるような状況であるということを先ほどは「場の設定」という言い方で表現しましたが,条文上,場ということを書き込むことは難しい。それは全く松田委員がおっしゃるとおりですので,「場の設定」といった実質的な考慮をうまく刑法の,あるいは従来の著作権法の犯罪規定との関係で平仄(ひょうそく)を合わせる文言にするのであれば,例えば「業として」という文言にするとか,あるいは,そのような場を設定することで広告料といった利益を得ることが問題であるとすれば,「営利目的で」といった文言を入れることが考えられます。どのような文言が良いかについては,もちろん立法技術の問題にもなりますが,ダイレクトに「場の設定」ということを文言として入れるのではなく,その実態,すなわち不法性あるいは害悪性の実態を考えた場合に,何度も反復・継続されるような状況であるという点を括りだし,それを例えば「業として」という文言で表現するというのが私の理解です。

それは,先ほど大渕委員の言われたような,単なる個別の私権侵害とやや違った側面がもしかしたら付加されるのかもしれませんが,その点は更に検討を加えることとして,差し当たりここで申し上げたいのは,一定の重大な害悪性・不法性を類型的に表現するような要件を付け加えるべきだろうと,そういう趣旨でございます。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。御意見を伺っておりますけれども,(3)の立法形式についてお尋ねしたいという点で,前回,窪田委員からも御発言があったところでありますが,独立要件化するとか正犯化するというような場合に,従来から幇助犯というものは可罰できることがはっきりしているにもかかわらず,そこだけ取り上げていくことによって,誤ったと言うのでしょうか,従来の理解に対する誤った情報を一般ユーザーに与えたりすることになるんではないかという,そういう御心配があったところなんですけれども,こういうところについても御意見をいただければと思うんですが,いかがでしょうか。じゃ,お願いします。

【森田委員】すみません。先ほどの点についてということなので,時機を失してしまっているのですが,よろしいですか。

【土肥主査】じゃ,どうぞ。その先ほどの件。

【森田委員】場の設定という問題は,独立の刑事罰の対象となる行為としてこれをくくり出すときに問題となるという観点から,先ほど深町委員が意見を述べられたと思いますが,私自身は,民事の差止請求についても,差止請求の対象となるのは個々のリンク行為だとしても,そのリンク行為が幇助としての効果を有しているといいますか,違法なダウンロードを助長ないし促進する効果があるという一定程度の違法性があることを客観的な要素によって評価するものとして,場の問題というのが問題となるのであって,これが前の方の論点2であると思います。そちらでも差止請求の対象となる行為はリンクなのだけれども,それはどこに張られたリンクなのかという形でその行為の評価が問題となりますので,場の設定が同じように問題になるのではないかと思います。

そのような場合に,刑事として問題になる場の設定の問題と,民事で問題になる場の設定の問題というのがずれてくるということなのか,それとも,目的としているところは同じなので,幇助に当たるリンク行為の中で,一定の悪質性が高いものを客観的な要件に置き換えて捉えようということだとしますと,そこが一致することもあるだろうと思います。

そうしますと,独立要件化するためには,民事の方の差止請求の対象となる行為について,リンクが張られた場の設定も含めて一定の違法性が高いものに客観的に限定するということができて,初めて刑事の方でも対応できるというものであって,刑事の方だけ独立に対応するというのは現実には難しいのではないかという感じがしております。したがって,その連動関係も念頭に置きながら,また翻って民事の方の議論を進めていくということが必要になってくるだろうと思います。

【土肥主査】ありがとうございます。この点ですか。お願いします。

【大渕主査代理】今の点でまだ少し誤解があるかと思うのですが,先ほど言われたのは,別に今度の場の刑罰だけがあって,先ほどから繰り返し申し上げているような普通の意味での幇助はなくして,場だけにするということはあり得ないので,恐らくこのようなときには,独立正犯化しているときには観念的競合になるとすれば,両方,検察官が起訴するかどうかは別として,実体刑法としては今までどおり119条の幇助犯は成立して,それにプラスして,今度,新たに加えるということであります。だから,そこのところはきちんと切り分ければ,従来のものに対する悪影響を与えるということも特にないと思われます。

むしろ私は,もっと大規模とか,先ほどの不正競争防止法の話が参考になるのではないかと思います。要するに別法益の問題であります。以前,間接侵害の議論のときにありましたが,普通に幇助で考えているのとは,私権ではあるけれども,別法益的なところをとらえて押さえるということであります。したがって,それを狭めたから一般法の方が狭まるという話ではなく,要するに2本立てで考えるということであります。このように考えないと議論が大混乱してくるのではないかと思っています。

【土肥主査】窪田委員,お願いします。

【窪田委員】主査に前回の発言を拾っていただいたわけですが,刑事の問題に関して言うと,私自身も,先ほどのような懸念というのは必要はないのかなというふうに思っております。前回申し上げたのは,差止めという民事上の枠組みの中の問題として,一定の行為だけを差止めの対象とするといった場合には,それが許されているのかというような誤解を与えてしまう可能性があるのではないかという意味での発言だったのですが,刑事の場合には,もちろん許されない行為であったとしても,その許されない行為が全て刑罰の対象になるというわけではなく,罪刑法定主義や謙抑主義を踏まえた上で,一定の場合に刑罰の対象とするという説明は可能だろうと思います。

まさしく,そのときに「業として」という観点からいくのか,あるいは「営利目的」でという観点でいくのか,それについては既に深町委員から御説明があったところですが,どういうふうに非難可能性を基礎付けるかという点さえきちんと議論すれば,一定の要件のもとで刑罰の対象とするという説明は十分に成り立ち得るんだろうなというふうに思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。まだまだ刑法上の問題,御意見はあるんだろうと思うんですけれども,済みません,いろいろこの後の段取りがございまして,配布資料から見ても,この後がまだあるというのはお分かりいただけると思うんです。岸委員から最後にお願いします。

【岸委員】済みません。議論を聞いていて,一つだけちょっと気になった点があるもので,法律の観点を離れちゃって恐縮なんですけれども,経済の観点から考えますと,じゃ,こういうリーチサイトの経営効果は何だろうと考えると,ネットワーク経済の経済外部性を非常に強めるんです。ですから,さっき場とか業といった議論がありますけれども,場としてのプラットフォームを置くだけでは,実はネット上,全く意味がなくて,それに経済外部性を強化することによって,初めて送信とか受信という観点からも利用可能性が高まるということがありますので,そういう経済の現実を考えますと,実は場とかプラットフォームとか業とか,それをやるだけでは実は何も意味がない。外部性が高まってこそ,それをみんなが使えるようになるんだという現実は踏まえておいた方がいいのかなというふうに思います。

【土肥主査】そのことは非常に重要だろうというふうに思います。この後,法律からそういう経済的な外部性の問題とか,そこまでいくのが,どこまでできるのか,ちょっと分かりませんけれども,きょうのところはこのくらいにさせていただきたいと思います。

用意していただいている資料なんですが,アプリ型の問題が残っておりまして……。

【奥邨委員】立法形式って,これは刑事だけじゃなくて民事もなんじゃないですか。

【土肥主査】それも含むんだろうと思うんですが,ずっと刑事をやってきておりましたので,また機会を設けて民事をお願いさせていただければと思います。

済みません,アプリ型の方の御説明をいただければと思います。

【小林著作権調査官】それでは,お手元に資料を御用意ください。本日はアプリ型だけではなく,サイト型についても少々論点を加えております。

5ページ目,(1)民事の部分をごらんください。民事につきましては,これまでと同様に,リーチサイトによる侵害コンテンツへの誘導行為のうち,差止請求の対象として,特に対応する必要の高い行為類型はどの範囲かについて議論を行うとしておりまして,前回と同様に,大きく6つの論点,論点1から6としております。

まず,論点1ですが,今回,論点1の中に論点1-1から1-6という新たな論点を御用意しております。このうち論点1-1につきましては,今まで論点1として御意見を頂いていた内容に対応する問題提起となっており,その下にはこれまで頂いた意見を整理しておりますので,本日は新たに問題設定させていただいた論点1-2から1-6について議論を頂きたいと考えております。

まずは,御説明の都合上,アプリ型についての論点1-4から御説明させていただきます。8ページ目をごらんください。

まず,8ページ目の1行目で,アプリ型という項目を設けておりますが,このアプリ型の部分の最初の段落では,アプリ全体に関する御意見をまとめております。アプリ型については,サイト型による場合と技術上の差はあるものの,リンク情報を提供する場であるという点については共通しており,区別して考える必要はないという御意見。それから,一方で,アプリ型の技術的なところが必ずしも明確になっていないので,サイトと全く同じように評価してよいのかという問題はあるとの意見や,法律で技術を列挙し出すと,技術自体が変わってしまって,使えなくなるので,法的に絞り込むしかないとの御意見が示されているところでございます。

「この点」以下では,アプリを介したリンク情報の提供方法には複数あり,それぞれの方法について御説明しております。各方法につきましては,昨年の復習となってしまいますが,参考資料4に基づいて御説明させていただきたいと思います。

お手元に参考資料4の裏側のページの下の部分,アプリ型におけるアプリを介したリンク情報の提供方法と書かれている下のスライドをごらんください。まず大きく分けまして,情報埋め込み型という,アプリの中にリンク情報が埋め込まれているタイプと,外部情報取得型という,アプリ内にはリンク情報がないものの,アプリを起動した後に外部のサーバーに蔵置されたリンク情報を取得してくるというタイプがございます。

また,外部情報取得型には,更に①アプリ提供者自身が外部のサーバーに蔵置したリンク情報を取得するタイプ,それから,②アプリ提供者以外の第三者が外部サーバーに蔵置したリンクを取得してくるタイプというものがございます。

さらに,それぞれが細分化されておりまして,②には,②-1アプリに組み込まれた条件で外部の汎用エンジンを使用させて,検索結果としてリンクを取得するというタイプ,②-2外部の特定サイト内の検索エンジンを使用させて,検索結果として当該特定サイト内のリンクを取得するといったタイプがあるということでございました。

資料の8ページに戻っていただきまして,このような行為類型を前提といたしまして,情報埋め込み型のタイプにつきまして,前回頂いた意見として,リンク情報を掲載した人とサイトを作った人とが同一であるケース,つまり,サイト型におけるケースⅠと近く,ボタンを押せばそのまま行くということは,リンク情報自体を提供しているとの意見が示されております。

このような御意見を踏まえまして,論点1-4,議論のたたき台として,情報埋め込み型の場合においては,侵害コンテンツへのリンク情報が埋め込まれたアプリを公衆送信する行為について,差止請求権の対象として特に対応する必要が高いと考えられるかとしております。

他方,外部情報取得型につき前回頂いた意見として,アプリを作った人も情報を提供しているのか,第三者の情報を取り込んでいるのかというあたりが仕組みとしても違う。アプリで見るのかサーバーで見るのかということは技術的に見ていかないと分からない。外部情報取得型のアプリの実質は,汎用性があるかないだけの違いで,単なるブラウザと変わらないという見方もできる。取り込んでくる情報が違法情報と適法情報と混ざっている状態となると,アプリだけの問題か,提供する情報を送り出すサーバーなのか,そのサーバーに載せる者なのか,アプリを配布する者なのか,関与者は増えていくだろう。違う関与者が増えてくる可能性があるので,物によっては少し分けて考えざるを得ないといった御意見が示されております。

このような御意見も踏まえまして,外部情報取得型につきましては,二つのタイプに分けて,以下の点について議論してはどうかとしております。

まず,論点1-5では,外部情報取得型の①のタイプ,アプリ提供者自身が外部サーバーに蔵置したリンクの情報を取得するタイプにおいては,サーバーに侵害コンテンツへのリンク情報を蔵置して,その蔵置されたリンク情報を取得するためのアプリを公衆送信する行為について,差止請求の対象として,特に対応する必要が高いと考えられるかとしております。

また,中の四角囲みには,検討の視点といたしまして,次の(1)と(2)の違いについてどのように考えられるかとしております。(1)は,サーバーに蔵置した侵害コンテンツへのリンク情報が当該アプリを介さなければアクセスが困難となっている場合やユーザーがコンテンツへのリンク情報であると理解することが困難となっている場合としており,それに対して,(2)は,当該アプリを介さなくてもアクセスが容易となっている場合や,ユーザーがコンテンツへのリンク情報であると理解することが容易になっている場合としております。

続きまして,論点1-6では,外部情報取得型②のアプリ提供者以外の第三者が外部サーバーに蔵置したリンク情報を取得するタイプにおいては,外部の検索エンジンを使用させて,第三者がサーバーに蔵置した侵害コンテンツへのリンク情報を取得させる条件を組み込んだアプリを提供する行為については,差止請求権の対象として特に対応する必要が高いと考えられるかとしております。

四角囲みの中では,検討の視点といたしまして,(1)では,先ほどの図で御説明した②-1外部の汎用検索エンジンを使用させてリンク情報を取得させる条件を組み込んでいる場合と,②-2外部の特定サイト内の検索エンジンを使用させる条件を組み込んでいる場合において,違いがあると言えるかという点。

それから,(2)では,アプリ提供者によるアプリの提供行為は,サイト型のケースⅡにおけるサイトの運営者丙による不作為がリンク情報を掲載する行為と評価される場合とは異なり,リンク情報の支配,管理への関与が間接的なものとなると考えられるが,これをどのように評価すべきか,としております。

次に,6ページ目,論点1-2について御説明いたします。ここでは,サイト型にもアプリ型の外部情報取得型②のような,外部の検索エンジンを用いるタイプが確認されていることを踏まえまして,侵害コンテンツへの誘導行為のうち,どのようなものが差止請求権の対象として特に対応する必要が高いと考えられるか。既に検討いただいております侵害コンテンツへのリンク情報を掲載する行為以外の侵害コンテンツへ誘導する行為については,どのように考えられるかとしております。

具体例の例1について,机上配布資料を用いて御説明させていただきます。机上配布資料の2ページ目を開いてください。左上にサイトA(検索型リーチサイト)と書いているページになります。このページは,いわゆるリーチサイトのうち,検索機能を用いたタイプのもので,「アニメC」のアニメ動画へ誘導するページとなっております。このページでは,1話から200話の動画へ誘導するボタンが設けられておりまして,例えば,この下のクリックと書かれている先の丸の囲みの中のボタンを一つ押しますと,次の3ページ目,別のサイトB(蔵置サイト)で「アニメC」200話と検索した結果としてのリンク情報が表示されることになります。そして,例えば,このクリックと書かれている先のリンクをクリックしますと,更に次の4ページ目,サイトB内で「アニメC」200話という動画が含まれているページが表示されるということになっております。

次に,資料の7ページ,論点1-3,侵害コンテンツへの誘導行為の直接性について御説明いたします。ここでは,侵害コンテンツへの誘導行為のうち,どの程度直接的なものが差止請求権の対象として特に対応する必要が高いと考えられるかとしております。こちらの意味するところは,リンクには次の(1)から(4)のような階層が出現しますので,どの程度の距離までのものを特に対応する必要が高いと考えるのかということでございます。

まず,(1)は侵害コンテンツのURLの掲載行為等となります。具体例としては,サーバーに蔵置されている漫画の違法ファイルのURLを掲載することになります。

次の(2)は,(1)のようにファイルへの直接リンクではなく,侵害コンテンツが含まれているページのURLを掲載などする行為になります。机上配布資料を用いて御説明いたしますので,机上配布資料4ページ目をごらんください。4ページ目は,侵害ファイルそのものではなく,侵害ファイルが含まれているページとなりまして,このページのURLが丸囲みの中の大文字BBBBに当たり,このBBBBのリンクの掲載等に該当するのが,2ページ目のクリックと書かれている先の丸の中のボタン,1個1個を掲載する行為であり,(2)の行為に当たります。

また,次に資料7ページ目に戻りまして,(3),(2)のURLの掲載等がされているページのURLの掲載等ですが,これは机上配布資料2ページ目のボタンが掲載されているページのURL,すなわち,httpから始まり,小文字のaaaaというURLを掲載する行為となりまして,机上配布資料1ページのクリックと書いてある先に,このaaaaというURLが埋め込まれておりますが,このaaaaというURLを掲載する行為が,(3)の行為に該当いたします。

さらに,資料7ページの(4),(3)のURLの掲載がされているページのURLの掲載等ですが,この例としましては,汎用検索エンジンの検索結果における,いわゆるリーチサイトのトップページのURLの掲載となります。机上配布資料で御説明いたしますと,1ページ目のようなトップページのhttpから始まり大文字のAAAAというもので終わるURLを,机上配布資料の6ページ目のように汎用検索エンジンの結果として掲載することが,(4)の行為に当たります。

以上が論点1の説明となります。

論点2から6につきましては,これまで頂戴した意見をまとめて記載しております。個々の内容については,時間の都合上,割愛させていただきます。

また,ここで参考資料6について御説明させていただきます。参考資料6をお手元に御用意ください。この資料は,本小委員会におきまして,論点3,すなわち対象著作物等により限定するか否かといった論点の検討状況を踏まえまして,この論点3に関連して,日本民間放送連盟様から情報提供がありましたので,参考資料として配布させていただきました。同連盟様から頂いた御説明に基づきまして,簡単に本資料の意味するところを御紹介いたします。

まず,1ページ目では,放送事業者の収入構造を示したグラフになります。このグラフ中,広告収入というのは,放送時の広告収入を示しておりまして,ラジオ放送を含まずに,テレビ放送のみを行っている事業者については,放送広告収入が収入の8割強となっております。残りの2割弱は,DVD販売や有償配信などによる収入,広告付きのウエブ配信による広告収入,ライセンス収入など,様々なものが含まれております,とのことです。

続きまして,2ページ目ですが,こちらは日本のコンテンツ産業全体の市場規模を示すグラフとなっております。コンテンツ市場全体のうち,地上テレビ番組の占める割合は約24%,映像コンテンツについて見ると,映像ソフト54%から,ゲームソフト10%を除外した44%を母数とした場合,映像コンテンツのうち地上テレビ番組が占める割合は55%となります,とのことです。

続きまして,3ページ目はコンテンツの市場規模を1次流通と2次流通に分けたものとなっております。この資料と先ほどの資料1ページ目と併せましても,放送事業者の収入は1次流通,すなわち放送による広告収入が大きいことが読み取れる,とのことです。

私からの説明は以上となりますが,続きまして,秋山の方から,民放連様による資料提出の趣旨について補足させていただきます。

【秋山著作権課長補佐】当該資料の提出を受けるに当たりまして,その趣旨等を御説明いただいた経緯がございましたので,少し補足させていただきたいと思います。

民放連様の資料提出の背景,趣旨でございますけれども,民放連様と,あと同連盟において活動されている放送事業者様からの御説明を補足させていただきます。

現在,先ほど小林から御説明申し上げましたとおり,論点3について,対象著作物を市販されているもの等に限定するべきか否かということにつきまして,様々,御意見が分かれているという状況でございます。その中では,複数の委員の先生方より,著作権者が得る利益のうち,有償販売により得られる利益が著作権法上,最も保護の必要性が強い利益であるという御意見ですとか,あるいは,そのような考え方を採用した立法例は現行著作権法においてもあるといった御意見があったわけでございまして,このような議論の状況を受けまして,今回,情報提供があったという経緯と伺っております。

今回の資料提出に際しましての民放連様からの御説明のポイントを4点ほどかいつまんで御紹介いたします。

まず,1点目。まず,ビジネスの実態としまして,資料にもございましたように,放送事業者の収入の大半は広告モデルによって成り立っているということでございまして,放送コンテンツの中には有償販売されないものも多いということでございます。

2点目としまして,これは資料の2ページにも関わるものでございますけれども,コンテンツ産業政策という観点で見ますと,その中では,コンテンツ産業に関わる収入を消費者から得るかスポンサーから得るかということによって,どちらのコンテンツ産業が優越するといった議論がなされておらず,広告モデルの放送事業といったものも重要な役割を占めるものとして捉えられているということでございます。

3点目。違法配信サイト及びリーチサイトを通じて違法にアップロードされた放送後の番組が容易に視聴可能となることが放送の視聴者の減につながり,広告料収入に影響することが予想されるということでございます。

最後に4点目。著作物法におきましても,権利者が有償販売によって対価を獲得するか,それから,広告モデルによって対価を獲得するかといったビジネスモデルによって保護の要否を判断するということはしないということが原則であると理解しており,こういうことの関係も踏まえて議論をしてほしいという御趣旨で,今回の資料の提出を頂いたということでございます。

以上の説明は,資料提出に当たっていただいた趣旨の説明をごく簡単に整理したものでございます。もし,連盟様として正式な御意見を今後聴取する必要があるということでございましたら,また別途,検討させていただきたいと思います。

説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,残る時間でアプリ型についての意見等をまずやりたいと思います。つまり,本日の資料のアプリ型が8ページにございます。その論点1-4から1-6まで,このアプリ型に関してどのように考えていけばいいのか。この点についての御意見があればお願いをいたします。ちょっと仕組みについて御理解いただくのは非常に難しいかと思うんですけれども,そのところを,もしまた必要があれば事務局からお願いしますので,どなたか御意見がございましたら,お願いいたします。前田健委員,どうぞ。

【前田(健)委員】ありがとうございます。仕組みについて正確に理解できているかどうかは私自身もちょっと不安があるのですが,いろんな仕組みがあっても,ユーザーの視点からすると,例えばこのアプリやサイトを開いてここをタップすれば侵害コンテンツにたどり着ける仕組みが構築されているという点では共通すると思います。そのときに,実際にユーザーが手にするリンク情報があらかじめ内部にあるのか,外からとってくるのかという違いがあるだけだと思います。

最終的に問題になるのは,ユーザーが侵害コンテンツが置かれている場所に容易にたどり着けるようになるということだと思います。それに関与した者の責任を問題にするということだと思います。

したがいまして,いろんな仕組みがあったとしても,ユーザーが一義的に侵害コンテンツに到達できる手段を提供しているのであれば,それはリンク情報提供そのものと同じように評価して,違法と考えることができるのではないかと思います。

逆に言うと,ユーザーに何らかの追加的なアクションを要求して,リンク情報提供そのものとは違うようなプラスアルファの行為を要するような手段しか提供していないものは,リンク情報の提供とは同様には考えられないのではないかと思います。若干,抽象的ですが,一般的にはそのように思います。

【土肥主査】ありがとうございました。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】まず,1-4の埋め込み型の場合ですけれども,これは考え方によっては,サイト型で言うところの6ページのケースⅠと基本的には同じだろうというふうに理解できると思いますので,ケースⅠが問題ということであれば,この情報埋め込み型も問題ということになろうかというふうに思います。サイトがイコールアプリというふうに考えれば,そこは同じということになろうかと思います。

ただ,現実問題として,こういうことをする人がいるのかというと,違法なコンテンツが蔵置されているサイトというのは,どんどん変わるわけですので,そうすると,どんどん無効になっていくリンクを中に封じ込めているということになる。ソフトごと,毎回毎回,更新しないといけないというようなことをコンピューターを作っている,プログラムを作っている人は普通しないのであって,プログラムと,リンクデータを並べたところを分けて作り,ウインドウズアップデートのような形で,どこかのサーバーから自動的にとってきてアップデートするということになるので,実質的には1-5の外部情報取得型の①と余り境界はないのかもしれないというふうに思っております。

そして,外部情報取得型も,そのサーバーをアプリ提供者が作って,そこに更にリンクも載せている,それがアプリに送られてくるということであれば,さっきのサイトのケースⅠと同じように評価ができるんではないかなと。そこまでは思います。

ただ,外部情報取得型②の中でも,特に外部情報取得型②で,(1)で書かれているような行為,これは結局,キーワードを自動的に入力する機能があるというだけにしか捉えられないんです。すなわち,例えば,通常は,汎用検索サイトAなら汎用検索サイトAに,「アニメB」,「アニメC」200話と入れたら出てくるわけです。それを入れる代わりにボタンがあって,「アニメC」の200話のボタンを押したら,それはアプリから汎用検索サイトAに向けて何らかの形でキーワードが自動入力されて,結果が出てくるということだとすると,そういう自動入力行為というのを果たして今回の差止めの請求にするというような話になるのかというと,かなり遠いという気がします。

私たち,いろんなサイトを横断検索するようなサイトというものを,例えば,いろんなホテルの予約とかやっていると思うんですが,ああいうのも大体,自動入力でやっていますので,そうすると,かなり汎用的な技術を使っているところもあると思うので,特に汎用サイトを使った場合を,そこまで入れるということになると,非常に広いんではないかなというふうに思います。むしろ1-5のようなサイト,アプリ提供者が自分で立てたサーバー,そこには侵害コンテンツのリンクしか載っていないようなサーバーとか,そういうところからの検索を簡単にするようなボタンが載っているということであれば分かるんですけれども,汎用のサイトの中から侵害コンテンツを探すといっても,これはごみも山ほど出てきますので,そういうボタンを載せているだけで差止請求になるというのは,かなり技術に対するハレーションとかを起こす問題が大き過ぎるような気が私はいたしております。

【土肥主査】ありがとうございました。大渕委員,どうぞ。

【大渕主査代理】抽象的には前回から申し上げているところと同じなのですが,要するに,ユーザーが最終的には違法ファイルが蔵置されたところに容易に行けるということが幇助の本質たる正犯行為を容易ならしめるということに当たってくるわけですから,これはどなたかが言われたところだと思いますが,サイトだろうがアプリだろうが技術的にどのような形で組もうが,そのような状態になっていれば,等しきものは等しく扱うということであります。

そのような意味では,今までリンクというのは,私は当然,間接リンクというか,リンク,リンク,リンク,3重リンク,4重リンクでも,直接飛ぶリンクだけがリンクなのではなくて,最終的には,ユーザーから見たら直接に飛ぼうが間に5重入ろうが,現実的に容易に到達できるということであれば,法的利益状況としては同様なので,そこは余り技術にこだわってはいけないと考えます。データを自分で持とうが外部に持とうがというのと同じように,自分自身で検索機能を持たなくても,うまく他の汎用検索エンジンを組み込んだ形で,結局は,最後は容易に到達できるような状態を作っているのであれば,法的利益状況は同様であります。そこのところで区別し出すと,本当は自分でも検索できるのに,他の検索エンジンに少し乗ってみたら脱法できるというようなことにもなりかねません。そこのところは脱法を許さずに,実体として,余り技術にこだわらずに,このように来年また少し変えようと思えばできてしまいますので,要は,正犯行為を容易ならしめているということが言える状態であれば,アプリだろうがサイトだろうが同様であるわけであります。そうではないという例があれば教えていただければと思います。

【土肥主査】どうぞ。

【奥邨委員】私に求められても仕方がないので,是非,汎用の検索エンジンをやっておられる方に聞いていただいて,本当に同じなのか,本当に容易なのかと。しかも,それを制御をするということになった場合にどういう問題になるのかというのは,私は,かなり大きな技術的な問題になると思います。汎用検索エンジンを,その外側で,フロントエンドでちょっと触るソースを作るだけで,出てくる結果はごみもいっぱい出てきますから,その辺は何でもかんでもというのは。技術は来年になったら変わるとはいっても,著作権法は今までずっと技術を細かく見てきたところもあるので,そこは一つ一つ詰めていかないと,それでなくても,もともとこの話はリーチサイト規制と言っていたのが,いつの間にかリンクの規制になりまして,リンクの規制から,更にボタンの規制にまでなっているというふうに,そこまで広げる話をしていたのかなと。特に悪質な行為と言っていた話から,振り返れば,大分来たものだなというような感想を持つ次第であります。

【土肥主査】前田哲男委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】論点1-5と論点1-6とは,リンク情報を外部サーバーに蔵置したのが誰かということの違いだと思うのですけれども,アプリ提供者自身がサーバーに蔵置しているのか,アプリ提供者以外の人が蔵置しているかは,神の目から見れば分かるかもしれませんが,実際にはなかなか分からないし,アプリ提供者と意を通じている第三者がサーバーに蔵置しているとか,暗黙に意を通じている第三者が蔵置しているとかというケースも出てくると思いますので,リンク情報のサーバーへの蔵置者がアプリ提供者と一致しているかどうかで区別するということはできないのではないかと思います。

それから,奥邨委員から先ほど,汎用エンジンを利用した場合にはごみもたくさん出てくることの御指摘があったと思うのですが,ごみもたくさん出てくるということは,ユーザーが侵害コンテンツに容易に到達できないということでもあり,先ほど前田健委員から,ユーザーの追加的行為を必要とする場合は,それは対象外でもいいのではないかというお話がありましたが,ごみがたくさん出てくるということは,その中からまたユーザーが探索をして,選択をして,それでようやく侵害コンテンツに到達できるということになりますので,それは前田健委員がおっしゃる,ユーザーの追加的行為を必要とする場合となり,奥邨委員がおっしゃっていることと前田健委員がおっしゃっていることとは,それほど違わないのではないかなというふうに思いました。

【土肥主査】伺ったことでお聞かせいただきたいんですけれども,汎用の検索エンジンを使うとごみが出てくるという,そういうお話なんですが,アプリの提供者がごみを除いた状態で提供する,それはできないんですか。

【奥邨委員】どういう形で検索しているか分かりませんけれども,ファイル名とかそういうことで検索するとすると,例えば同じファイル名でも中身が違うとか,「アニメC」200話といっても,「アニメC」200話の動画が出てくるのか,それとも単なるレビューが出てくるのか,その中の1枚の写真が出てくるのかというのは,そのファイルを作った人,アップロードした人の名前の付け方で変わってくると思うんです。それが本当に動画ファイルかどうか,そして,また仮に動画ファイルでも,極端に言えば,いろいろ名前は付けているけれども,全然違う宣伝ファイルを置いている人とかもありますから,中身が本当に「アニメC」のファイルかどうかというのをチェックするというのは,最終的には人間が見ないと本来的には分からない。若しくは,大きなサーバーで持っているようなフィンガープリント技術でどうたらこうたらとやればできるかもしれませんが,そういうものをこのアプリの開発者が持っているとは思えませんので,最終的には,そのごみを取り除くという作業はアプリの開発者なり,誰か人間がやらないとできないんではないかなというふうに私は思います。

あと,その点で,ごみがあれば容易じゃないじゃないかという話なんですが,そうすると,もともとこの議論で最初の頃に出ていたのと同じことを逆に言うと,じゃ,程度問題なんですねと。程度問題なんだったら,その議論と同じで,多数,リンクを置いてあるサイトというところも程度問題の話ですから,同じように議論をしてもいいんじゃないですか,というところであって,何でそっちでは程度問題の議論ができないけれどこっちでは程度問題で,容易だ,容易でないというところで議論ができるのか。私は使い分けられるかなというような気がいたします。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。大渕委員。

【大渕主査代理】少し気になったのですけれども,ファイルを見たい人から見れば,少々ごみがあっても,自分で選別してとればよいわけであります。100ぐらいあって選ばなくてはいけないのであればともかく,ごみが少し入っているぐらいであれば,それこそ本当に見たい人だったらとればいいだけなので,そういうことは当然あると思います。ごみのない100%のものしか来ないのしか対象にしないというのであれば,少々のごみには目をつぶる形で脱法する業者が出てきたときに対応できません。だから,ごみがあるから即幇助否定というのは,法律論としてやはり少しおかしいのではないかと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。いずれにしても,正犯の行為を容易ならしめているという,そこの問題,そして,基本的には誘導行為にたどり着くそういうスキームを提供しているということなんだと思います。このあたり,少し技術的にまだ十分分かっていないところもあるんですけれども,事務局におかれましては,先ほど議論が少し出ていたようなところ,例えば汎用検索エンジンの方に確認されるとか,少ししていただいて,またフィードバックしていただければと思います。

したがいまして,基本的には等しいものは等しくということにならざるを得ないだろうとは思いますけれども,少し勉強させていただきたいと思います。

あと,1-2と1-3です。侵害コンテンツへの誘導行為全般についてというものと,誘導行為への直接性の問題ですけれども,先ほど机上資料でるる御説明のあった部分も含めて御意見をいただければと思いますが,いかがでしょうか。上野委員,どうぞ。

【上野委員】論点1-3と先ほどの点を含めて,基本的な考え方について意見を述べさせていただきます。

先ほど奥邨先生からも御指摘がありましたけれども,このリーチサイトの問題は,もう七,八年前でしょうか,かなり以前から議論されておりまして,私も関与してまいりましたが,確かに,もともとの出発点は「リーチサイト」というものだったかと思います。そして,私自身,特に悪質と思われるリーチサイトのみを対象とする小さな規定を作ったとしても,それは現実的に見れば十分意味があると思っておりました。

しかし,リーチアプリのようなものが登場したりとか,あるいは先ほどの論点の1-3にありますように,リンクが多層化したりしているという現状において,サイト型に限定してよいのか,とか,侵害コンテンツへのリンクにまたリンクをして,それにまたリンクがあるというような場合に,どこまでを対象にすべきかが問題になるところでありまして,もし直接性が非常に高いところだけを規制の対象にすると,容易に潜脱されてしまいかねませんし,かといって,直接性がかなり低いところまで規制の対象に含めてしまいますと,過度な規制になりかねないという問題があるかと思います。

ただ,先ほどからも御指摘がございましたように,そもそも,このリンク情報の提供というものがなぜ悪質と言えるのか,なぜ規制すべきなのかということを考えますと,それは結局のところ,侵害コンテンツへのリンク情報の提供をすることによって,ユーザーに対して侵害コンテンツへの到達を容易にしているというところにあるように思います。

そうだといたしますと,侵害コンテンツへのリンク情報の提供をすることによって,侵害コンテンツへの到達を容易にしていると評価できる以上,サイトとアプリを特段区別する必然性はないように思われます。また,多層化に関しましても,侵害コンテンツへの到達を容易にしたと言えるかという観点から見て,どの程度の直接性があれば,侵害コンテンツへのリンク情報を提供したと言えるかという評価の問題に帰着するのではないかというふうに思っております。

このような観点からいたしますと,先ほどのアプリ型に関しても,「情報埋め込み型」は,まさに侵害コンテンツへのリンク情報を提供していると評価できます。また,「外部情報取得型①」に関しましては,たとえリンク情報自体が外部にあるといたしましても,侵害コンテンツへのリンク情報を提供しているという評価ができるかと思いますので,これも規制の対象になってよいということになるかと思います。

問題は,「外部情報取得型②」でありまして,これは自らリンク情報を「提供している」というわけではなく,外部で提供されるリンク情報をいわば「取得させる」ということになるわけであります。恐らく前田哲男先生などは,そうした「取得させる」行為も対象にすべきだという御意見かと思われるのに対して,リンク情報の「提供」に限定すべきという考えもあり得るかと思います。

ただ,侵害コンテンツへのリンク情報の提供に当たるかどうかは実質的に判断されると考えられるところでありまして,たとえ形式的には,外部者が提供しているリンク情報であっても,そうした外部のリンク情報を何らかの方法で取得させることによって,実質的には,「侵害コンテンツへのリンク情報を提供している」と評価できる場合も十分あるのではないかというふうに私は考えております。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかに。森田委員,どうぞ。次に茶園委員に。

【森田委員】まず前提としまして,差止めの対象となる行為というのは,およそリンク情報を提供してはいけないというような,特定のリンク情報の提供行為一般を差止めの対象とするということは,これは抽象的な不作為を求めるものであって,対象が不特定となり認められないと思いますので,当該情報をどういう態様によって提供しているのか,という具体的な提供行為を特定する必要があると思います。そうしますと,その情報提供行為が,特定のサイトにリンクを張ることを通じてなのか,情報取得を可能とするアプリの提供によってなのかという点も含めて,対象となる行為を特定することになろうかと思います。したがって,サイト型であろうとアプリ型であろうと,どれも同じではないかという議論は,その先の具体的な提供行為をどのように特定するためにかという問題に入っていったときには,そのように単純にはいかないと思います。

次に,先ほどから出ている議論は,一つの分岐点として,汎用性のあるものをどのように考えるかという点がありますが,これは幇助というよりは,一般的な情報検索ツールを提供しているだけであって,その中から違法情報を選んでいるのはユーザー自身であり,ここで問題としているのは,特に必要性が高い悪質な行為類型ということでありますから,汎用性のあるものは対象から除くということになるのではないかと思います。このように考えるときは,外部情報取得型のアプリにも,汎用性のあるものは対象とならないが,これに対し,特定の違法な情報のみを選びとって外部から取得するということが技術的に可能であれば,そのようなアプリの提供行為は,情報提供行為そのものを行っているわけではないけれども,ユーザーをして第三者から取得させるという形で特定の情報提供をしていると評価することができるのであれば,そのような外部情報取得型のアプリまで対象に含めてよいだろうと,そういうふうに整理できるのではないかと思います。

そして,アプリ型の方で汎用性があるものを除くとしますと,サイト型の方についても汎用性のあるものは除かないと,等しきものは等しく扱えという要請に反しますので,リーチサイトと言われるような場の設定をどういうふうに限定するかということが,この文脈でも問題となるように思います。アプリ型の場合には,そのアプリというツールの特性を通じて対象を特定するのに対し,サイト型の場合には,リンクが張られているサイトの特性を通じてそこを限定するという方向で,両者のバランスをとっていくということがあるべき議論の方向だろうと思います。

【土肥主査】ありがとうございました。茶園委員,どうぞ。

【茶園委員】私も,奥邨先生がおっしゃったように,最初にリーチサイトが問題になったときから,議論の対象とされる領域が,技術の発展の影響もあるのでしょうが,どんどん広がっているように思います。リーチサイトが議論され始めた頃は,リンクを張るという行為が問題とされていたように思います。すなわち,違法コンテンツに張ったリンクをたくさんどこかのサイトに置くというものです。その場合,リンクを張る人とリーチサイトを提供する人が同じであることが,漠然と前提となっていたように思うのですけれども,現在ではリンクを誰が張るかについては特に問題にされなくなって,主としてリンク情報の提供という行為が問題になっているように思います。

もっとも,リンク情報の提供になりますと,単にURLを示すというだけの行為と結局同じではないかと感じますし,そうだとすると,そのような行為にまで規制をかけるべきかどうかについては,かなり広い議論が必要ではないかというように思います。

それこそ表現の自由とか,あるいは検索エンジンそのものの規制という論点にも発展する可能性がありますので,今回は,悪質なものだけに規制をかけるということで収めるべきであると思います。違法なコンテンツにリンクを張った人,それをたくさん集めた人,そしてそのような人と同視し得るような行為をした人にだけ,まずは規制をかける。アプリ型の場合,恐らく情報埋め込み型の場合には同視し得るといえると思いますし,外部情報提供型でも,自分がリンクを張って,それを提供させるという行為であれば同じであると思います。まず,そのような自らがリンクを張るという行為と同視し得るものに規制を止めて,それ以上の行為については,汎用型の検索エンジンのことも関わりますので,更に議論をその後に行うべきではないかと思います。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにございますか。大渕委員。

【大渕主査代理】一般的にリンクを外させろという話は全くしていなくて,現に自分のものがやるからということで絞り込まれていますが,そこを外してしまうと一般的に汎用が動かなくなるということになるのであります。現にそのような形で侵害があって,それに自分が加担していることが分かったら外すということであれば,そこにスコープはもともと絞られているので,一般的な汎用機の規制などにならないように,個別具体の直接侵害があるときに限ってですし,先ほど申し上げたように,汎用機自体を抑えるというよりは,汎用機をうまく組み込んで侵害行為を容易ならしめる行為をしている人に対してやめさせるということなので,その点は明確に区別する必要があると思います。

【土肥主査】ありがとうございました。先ほど立法形式のところで奥邨委員から民事責任の方に関しても御発言があったように私は認識しておりますけれども,立法形式について,刑事罰の方のみならず,民事責任に関しても御発言があれば,もう時間が12時になっているんですけれども,伺いたいと思います。

【奥邨委員】簡単に2点だけ。

一つは,これはどっちもどっちという話をしてしまうんですけれども,やり方としては,多分,みなし侵害にするという方法と,それから,公衆送信なり送信可能化の支分権の概念を広げて入れるという方法の,二つが今,意見として出ていると思うんです。どっちもどっちで,一長一短というところを申し上げると,一つは,みなし侵害にした場合は,ここでも議論があったように,引用に該当するようなリンクをすくうというような議論があったわけですけれども,みなし侵害にした場合に権利制限規定が適用されるのかという議論をしておかないと,もし権利制限規定は適用されないということになってしまうと,どうするんだというようなことを考えないといけないので,その整理が要るなというのが一つ,みなし侵害にする場合の問題点ということです。

あと,もう一点は,これはみなし侵害にしてもそうですし,それからあと,もう一つは支分権の概念を拡張して,リンク行為なりサイト提供行為を取り込むという場合もなんですけれども,この場合に,さっきの図で言えば,丙の人です。ケースⅡの丙の人を対象に入れるということになると,直接侵害者になってしまうので,どちらにしてもなんですが,場合によっては,プロバイダ責任制限法上の発信者というふうに解されることになって,プロバイダ責任制限法の免責が受けられない,責任制限が受けられないという余地が出てきます。その場合の起こり得る副作用,こういう人は大丈夫なんだとか,駄目なんだということは検討しておかないといけない部分かなと。丙について侵害ということを考える場合は,それがどういう影響を与えるか,この制限法との関係でというのはあるのかなというふうに一応,思っております。

【土肥主査】立法形式ですか。

【大渕主査代理】立法形式を考えるに当たっては,全く新規にやるときにはフリーハンドで書けるのですが,現在でも幇助行為が違法であることは,誰も反対していません。刑法ですら幇助行為を幇助犯として処罰するくらいであります。

ただ,問題はアメリカ法で言う救済,remediesのところであります。何ゆえか日本だけは,著作権侵害幇助につき,損害賠償も刑罰もいいけれども,直接侵害者限定ドグマが,理由は不明ですが,強いため,差止めだけはできないというドグマも強かった。そこがゆがんでいるので,前に窪田委員が言われたように,ここで妙な形で出すと,絞ったもの以外は適法ではないかという誤ったメッセージを出すことにもなり得ます。

現行法では,一般的な幇助の幅広い概念に当たる限りは,違法であることは間違いなくて,立証できれば損害賠償で何かしらのものがとれるのは間違いないのであります。そこのところを考えると,みなし侵害,支分権拡張というのは,強いて言えば,今までの違法ではないところまで違法化してしまうという,物すごく大きな話になり得ると思います。本来であれば,現行法でもできるぐらいの救済の明確化にすぎず,この意味で,違法と救済とがきちんと分かれるわけですが,そうでないと,そこの違法については,従来違法でない部分が違法となったり,差止めを否定する部分は適法との誤ったメッセージを送るおそれが生ずる形になるわけです。

また,現行法は非常によくできていて,32条など,踏み込んでしかるべくきちんと解釈しさえすれば,救うべきパロディーなどもきちんと救えるような,よい立法になっております。そこのところに,擬制侵害等で,新たに別世界を作ってしまいますと,せっかくできている予定調和的なものが崩れた形で,大き過ぎるのか小さ過ぎるのか,変なことになってきたりするので,そこは新たに作るというよりは,既存の中で差し止め肯定につき明確化を図るという方がいろいろな意味でバランスがとれるような形になるのではないかと思っております。

【土肥主査】前田健委員,どうぞ。

【前田(健)委員】参考資料6についてコメントしてもよろしいですか。

【土肥主査】参考資料に関して。分かりました。どうぞ。

【前田(健)委員】済みません。お時間頂戴します。先ほど参考資料6について御説明があって,これに関して申し上げておきたいことがあるので,一言申し上げます。

従来,対象著作物をどう絞るべきかという議論において,基本的に市販された著作物に限るべきではないかという意見が多く述べられておりました。私自身もそう申し上げました。

私自身がそう申し上げた趣旨は,一つには,侵害となるべき行為を著作権者の著作物利用の対価の回収の機会を損なって,大きな経済的損害を与える場合に限るべきということがあり,もう一つには,一般的なユーザーが日常的な言論活動の一環として行ってきたようなリンク行為というものが侵害の対象とならないようにという意図でした。それの前提としては,市販著作物さえ対象にすれば,基本的に著作権者に大きな損害を与える場合というのはおおむね補足できるということだったと思います。ただ,先ほどの御説明だと,その前提がないのではないかということだと思います。市販されていなくて,市販の予定もなくて,専ら広告モデルによって提供されている著作物であっても,リーチサイト等を通じた侵害コンテンツの拡散によって大きな経済的損害を受ける可能性があるということだと思います。そうだとすると,対象著作物に,広告モデルによって商業的に提供されている著作物を含めるということも選択肢に入れた方がいいということになってきます。

ただ,そうしますと,対象著作物あるいは侵害の行為の対象がまた広がるのではないかという問題が出てくると思います。実際,一般ユーザーが,例えば自分の著作物をアフィリエイトとか広告を付けて配信するということは日常的にあると思いますし,そういう著作物の一部などが対象著作物に含まれるということが出てくると思います。そういうものに対して,それが違法にアップロードされた先のリンク情報を提供することも違法になるとことになります。そういった行為が著作権者に大きな経済的損害を与えるということは必ずしもないと思いますし,ユーザーの言論活動に不必要な制約を与えることになるのではないかと思います。

そうすると,先ほどのリンク情報の提供もそうですが,どんどん対象となる行為が広がってきている部分がありますので,一旦,諦めたような別の要件でも,もう一度,絞り直すことを考えるべきなのではないかと思います。先ほども奥邨委員がおっしゃいましたけれども,サイトの特性によって侵害行為を絞るということを今のところ諦めているという状態だと思うのですが,どういう場所においてリンク情報を提供したかということが,侵害コンテンツを拡散される危険性とか,あるいは著作権者に経済的損害を与える蓋然性に差を作るのではないかと思いますので,ここで限定するということも考える余地はまだあるのではないかと思います。

ただ,従前来,議論されておりますように,リンクの数で切るとか,違法リンクの割合で切るとかというのはなかなか難しいということは,その通りだろうと思います。なので,例えば,もう少し別の切り口で,「侵害コンテンツを利用者に取得させることを目的として作られているサイト」というような形で定義して,いわゆるリーチサイトに対象を絞るということはできないのかということを考えております。

いずれにしろ,何が立法事実かということを踏まえながら,各項目にはいろいろな選択肢があって,それを組み合わせて必要十分な範囲を規制の対象にするということが求められていると考えます。

済みません。以上です。

【土肥主査】この点は恐らく論点3で御意見が当然あるというのは分かっておるんですが,ただ,時間も来ておるものですから,事務局にお願いをして,これまで振り返ってみて,論点3とか,これに関連する要件の絞り込みとか,まだまだこれから議論させていただきたいというふうに私からも希望させていただければと思います。

それで,森田委員,手短に。

【森田委員】単純に資料の要望ですが,この資料は広告料収入が一定の割合を占めるということを示すものですが,ここで問題になっているのは,リーチサイトがその広告料収入にどういう影響を及ぼしているか,ではないかと思います。放送番組がリーチサイトでも見られるということになると,本編の放送の視聴率が下がるとか,あるいは,権利者自身が提供している見逃し配信の広告モデルの方の収入が下がるとか,リーチサイトの存在によって広告収入が下がるというのがどの程度の深刻なものなのかということが,恐らく立法事実として重要ではないかと思います。この資料では,広告料収入の割合が大きく,その収入減の抽象的な可能性があるということは示していただいたと思いますが,実際にどの程度の被害が生じているのかということを示すデータというのが,多分,市販著作物のデットコピーの場合と比べて弱いように思いますので,それを具体的に示すような資料がもし提出できるのであれば,提出いただきたいという要望を申し上げておきたいと思います。

【土肥主査】どうもありがとうございました。

時間でございますので,まだまだ議論は尽きないということは重々承知しておりますけれども,本日頂いた御意見等を事務局において再度整理していただいて,次回以降,引き続き議論を進めていきたいというふうに思います。

本日は,時間の関係もございまして,このくらいにさせていただきたいというふうに思います。

事務局から連絡事項がございましたら,お願いします。

【小林著作権調査官】本日は誠にありがとうございました。次回の法制・基本問題小委員会につきましては,改めて日程の調整をさせていただき,確定次第,御連絡いたします。

【土肥主査】それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第6回を終了させていただきます。

本日は,誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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