
日時:平成30年7月27日(金)
13:00~15:30
場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂

議事次第
- 1開会
- 2議事
- (1)権利者不明著作物等の利用円滑化に関する検討について
- (2)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について
- (3)その他
- 3閉会
配布資料一覧
- 資料1
- 権利者不明著作物等の利用円滑化に関する検討(ヒアリング結果)(248.1KB)
- 資料2
- リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について(案)(834.6KB)
- 資料3
- インターネット情報検索サービスの法的責任に関する我が国及び諸外国の状況(209.2KB)
- 資料4
- 木下氏提出資料(352.8KB)
- 資料5
- 出版広報センター海賊版緊急対策ワーキンググループ提出資料(5.3MKB)
- 資料6
- 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 (CODA)提出資料(109KB)
- 資料7
- グーグル合同会社提出資料(4.1MB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
- 参考資料1
- 著作権法における差止請求の対象となる行為と罰則について(104.3KB)
- 出席者名簿(48.2KB)
議事内容
【茶園主査】では,時間が参りましたので,ただいまより,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第2回)を開会いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段,非公開とするに及ばないと思いますので,既に傍聴者の方には今入場していただいているところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【茶園主査】ありがとうございます。
それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくこととします。
まず,前回御欠席でしたけれども,今回,今村委員,柴田委員,田村委員に御出席いただいておりますので,御紹介させていただきます。
まず,今村哲也委員。
【今村委員】今村です。よろしくお願いします。
【茶園主査】柴田義明委員はまだ,お越しになられていませんか。
では,田村善之委員。
【田村委員】田村でございます。よろしくお願いします。
【茶園主査】よろしくお願いします。
また,前回の開催以降,事務局の人事異動があったそうですので,御報告をお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】御報告申し上げます。本日,7月27日付けで文化庁長官官房審議官としまして内藤敏也が着任しております。
【内藤文化庁長官官房審議官】よろしくお願いいたします。
【茶園主査】よろしくお願いします。ありがとうございました。
それでは,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】お手元,議事次第中ほどを御覧ください。資料7点ございまして,1点目,権利者不明著作物等に関する資料,2点目,リーチサイト等への対応に関する資料,3点目,検索サービスに関する資料,4点目,木下先生の御提出資料,5点目から7点目,各団体様の御提出資料でございます。そのほか,参考資料としまして罰則に関する資料を御用意しております。不備等ございましたら,お近くの事務局員まで御連絡ください。
【茶園主査】よろしいでしょうか。
それでは,議事に入りますけれども,初めに議事の進め方につきまして確認しておきたいと思います。本日の議事は,(1)権利者不明著作物等の利用円滑化に関する検討について,(2)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について,(3)その他ということになります。
では,1番目の議事に早速入りたいと思います。権利者不明著作物の利用円滑化に関する検討につきましては,拡大集中許諾制度に関しまして,これまで諸外国の状況や制度の導入について調査研究が行われてきました。本小委員会の議論におきましては,今後は具体的なニーズを踏まえた上で,法的正当化の可否や他の制度との関係も含めまして,望ましい制度設計について検討を進める必要があるということを確認いたしました。昨年度は,こうした検討の方向性の下,事務局において関係者へのヒアリングが行われましたので,これからその報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【白鳥著作物流通推進室長】資料1を御覧いただきたいと思います。
その2ページ目ですけれども,ただいま主査より御紹介いただきました,本年の第1回の小委員会におきまして,この課題についてどのように取り進めていくかということについて御確認いただいております。拡大集中許諾制度だけでなく,ほかの制度との関係も含めてどのような制度設計が望ましいのかといったことを,個別のニーズに照らしながら検討していく必要があるということで,ヒアリングの結果についての報告を御要請いただいておりましたので,本日はその結果を御報告するものでございます。
3ページを御覧いただきます。ヒアリング対象といたしましては,これまでの意見募集から見えるニーズなどを踏まえながら,ヒアリングをさせていただきました。大きく五つのテーマについて,今回その結果をまとめさせていただいております。3ページにあります,御覧のテーマになります。順に追って説明いたします。
4ページを御覧いただきたいと思います。一つ目ですが,アーカイブの利用に関してのものでございます。こちらのテーマにおきましては,一番上に利用行為例とございますけれども,企業などが過去の広告等の成果物についてアーカイブを作成したり,またその成果物について職員が参照するための検索システムを構築したりするといったような利用行為,そして,このテーマにおきましては,特に博物館類似施設と書かせていただいておりますけれども,企業が設置・運営する博物館等におきまして利用者の求めに応じて一部を複製する行為,そしてまた保存目的で複製するといったような行為についてのニーズがあるというようなところでございました。
その結果について,その下のところにヒアリング結果と書かせていただいておりますけれども,左側の欄にあります,「しかし」というパラグラフにありますが,おおむねこのテーマにつきましては,アーカイブというものの性格にも関わりますけれども,対象が古くなるにつれて,著作権者が不明等の理由で連絡がつかないものが多いといったような状況が見られます。また,右の欄にありますけれども,特に博物館類似施設につきましては,現在,著作権法の第31条の対象施設ではないということから,複写サービス,複製サービスを行う場合には個別に権利処理の必要があるといったような状況について,意見があったところです。
その下に四角囲いで幾つか整理しております。一つは,濃いブルーのところですけれども,著作物の利用行為等の特徴と書いてあるところです。ここに書かせていただいておりますのは,実はほかのテーマにも大体おおむね一致して見られるような傾向になっております。そこに書かせていただいておりますけれども,成果物の種類は多様であり,集中管理が進んでいない分野が多い。それから,また著作物の数が多い。また,著作者不明著作物の割合が高い場合があるといったようなところが,このヒアリングから出てきたところであります。このテーマに関わりまして,その他留意点と書かせていただいております。将来取得する成果物については,契約の締結の推奨の中で解決できるところもあるのではないかといったこと。そして,二つ目ですけれども,裁定制度については,特に権利者不明の著作物の利用に関しての裁定制度につきましては,これまでも相当な努力についての要件の明確化,そしてその要件の緩和などの改善を進めてきているところがありますが,さらに課題があるとするとどのような課題があるかといった点での見直しも考えられると。特に,権利者不明著作物の割合が高いといったところが,このほかのテーマもそうですけれども,全体を通じてありますので,裁定制度に関する更なる見直しも検討課題と考えられます。また,今回成立いたしました著作権法におきまして,第47条の5の改正がございます。成果物を電子計算機により検索する,それに伴う著作物の利用ということに関わって,このアーカイブ利用について,この法律の該当規定が適用される部分もありうることも考えますと,その運用状況を見ていく必要もあるのではないかといったことです。一番下が,特に拡大集中許諾制度についての課題ですけれども,特に代表性を満たす可能性のある管理団体が存在していないと考えられるといったような点を掲げさせていただいております。
次のテーマが,次の5ページです。企業等における内部利用。こちらにつきましては,社内会議で資料の一部に著作物を利用する行為であったり,また職員間で電子媒体の資料を回覧するために複製・公衆送信したりするといった行為などが利用行為例として想定されるものであります。
ヒアリング結果のところですけれども,新聞など一部の集中管理が進んでいる著作物については,管理事業者との包括契約により複製が可能である一方で,電子媒体しか用意されていないような資料,文献等の場合には,紙の著作物であればそれを回覧するということで皆さんがそれに接することができたわけですけれども,電子媒体であるということで,それを共有するために,特に共有フォルダーに保存したりメールで共有したりする際には許諾が必要になるという状況があるということです。
下の特徴のところは,先ほど出ておりましたところとおおむね重なっておりますけれども,やはり著作物が多様であり,集中管理が進んでいない分野が多いといったような課題が指摘されております。その他留意点のところですけれども,これはどのような利用を取り上げるかによって利用目的,それから著作物の量などが異なってくるといったことであったり,また,既存の管理事業者においても電子媒体での利用許諾といったものについての体制の整備を進めようとしているといったことがありますということであったり,あとは拡大集中許諾につきましては先ほどと同様に代表性を満たす可能性のある管理団体が存在していないと考えられるといった状況がございます。
以上2点,アーカイブ,企業等における内部利用ということでしたけれども,これはもともとECL,拡大集中許諾ニーズとして提案あるいは出されてきたものではなくて,一般的にこの権利者不明の著作物の利用ということについての課題としていただいたものでございました。
次のテーマが6ページになります。入試問題に使用された著作物の利用です。こちらについては,過去の入試問題を問題集等にするために利用する行為ということになります。試験問題への著作物の利用につきましては,第36条に基づきまして,許諾を得ることなく利用ができるわけですけれども,過去の入試問題を更に二次的に利用する,問題集等に活用するといった場合には,個別に権利処理が必要となります。特にこの点につきまして課題として問題提起されているのが英語の問題でありまして,特に試験問題の特性上,多くの場合,文章を改変して利用するといったことが実際上必要になってくるわけですけれども,出典が判明しない関係で権利者不明となる場合も多いという状況でありました。
特に外国語の文芸の著作物といったことについては,特徴の方にありますけれども,集中管理が進んでいないといったような状況であったり,また,権利者不明著作物が多いといったりすることであります。現在,権利者不明著作物の裁定の中で,特にいろいろな著作物の利用があり得るわけですけれども,この過去の入試問題の活用ということについては,裁定制度の活用も一定程度見られるところです。その他留意点のところですけれども,文部科学省による大学入学者選抜実施要項におきまして,各大学は,学力検査問題等について,正解について原則として公表するとされたところです。また,試験問題中の著作物の権利処理が困難である場合には,著作物名を明示するといったことなどによって問題の内容を明らかにするよう努めるとされたというところが31年度の入試要項において記載されました。こうしたことから,今後の出典表記等の状況がどういうふうになっていくかといったところにも,このテーマについてはよく関わってくるのではないかと考えられます。また,裁定制度の改善というところも当然ありますし,また,拡大集中許諾制度に関わりましては先ほどと同様に代表性の観点でその課題があるのではないかといったことであったり,また,著作者人格権ということについてどのように考え得るかといったところも課題としてあったりするのではないかということであります。
次の7ページ,そして8ページ関係が,特に放送コンテンツについてのテーマであります。7ページが過去番組の利用ということであります。過去放送した番組をDVD販売,ネット配信で利用するということについて,このテーマでは課題として提起されているわけですけれども,特にヒアリング結果におきまして書かれております,実演家ですね。いわゆる脇役などの方々については連絡がつかない場合が多いといったことから,権利処理が困難な実情があるといったことでございました。
その下,特徴のところですけれども,集中管理といった点での課題は共通しておりますが,過去の作品について権利者不明著作物が多い場合があるといったことでございます。その他留意点ですけれども,拡大集中許諾の関係でいいますと,特に代表性の観点については,ほかと同様に,その代表性を満たす可能性のある団体が存在していないとされる可能性があるといったこと。それから,また特に映像に対しての権利者としての考え方として,いわゆる露出コントロールというものについての権利者のお考えがある中で,この拡大集中許諾といったものの導入をした中でも,オプトアウトということで主張される権利者も相当程度出てくる可能性も考えられます。また,裁定制度の改善も考えられます。併せまして,このテーマに関わりましては,規制改革実施計画という今年の6月に閣議決定された決定におきまして,そこに記載させていただいておりますけれども,放送コンテンツの流通インフラ整備の必要性や課題について総務省さんが整理していくといったことがまず想定されておりますので,こうした状況にも留意する必要があると考えられます。
あと,最後のテーマですけれども,8ページになります。これは放送コンテンツを同時にネット配信する,いわゆるサイマルキャストについての扱いでございます。審議会の結果とここに書いてあるのですけれども,これはまさしく総務省の情報通信審議会におきまして,このテーマについて集中して検討が行われております。現在,検討委員会が立ち上げられておりまして,その最終報告書というのが近くまとめられる段取りになっていると承知しておりますけれども,特にその場におきましては,音楽分野と実演分野に分けまして,放送事業者,権利者団体,有識者等によるメンバーにより検討が行われてきております。特にその中で指摘されておりますのがレコード,これは音の分野に関して,レコードについて特に指摘されており,また,映像分野ですと特に実演について指摘されております。どちらにしても,放送といわゆる通信というものの関わりにつきましては,著作権における権利の働き方に違いがあるといったことが制度上の整理としてあるわけですけれども,特にレコードについては,三つ目のポツのところにございます商業用レコードの同時配信については,包括的利用許諾契約により対応可能と思われるけれども,管理外の作品には個別許諾が必要だといったこと。それから,包括利用許諾で対応すると権利者団体の方も表明されていらっしゃいますけれども,ただ,同時配信となったときに本当に100%権利処理が可能かというと,そういう意味での管理,処理というのは難しいのではないかといったことの指摘がございました。実演につきましては,先ほどのように多様な実演家がいらっしゃる中で,個別に許諾がとり切れない場合もあると。その場合には,その部分は配信できなくなるといったことの課題も指摘されておりました。
ここにつきましては,その他留意点にありますけれども,実は民間放送事業者につきましては,この放送コンテンツの同時配信ということについて実施するかということについてはまだその判断は明確になっていないといいますか,具体的に進めるといったことについての意思形成がされているわけではないという状況があるようです。また,拡大集中許諾については代表性についての課題がある。それから,また,オプトアウトについても相当数存在する可能性があるといった点では先ほどと同じであります。また,いわゆる権利制限といったことについても,この検討会議の中では意見として出されておりましたけれども,放送のサイマルキャストというものについて,特に放送法制上の放送としての位置付けはなされていないという状況もございます。このような中,総務省の会議におきましては,一番下に書いてありますけれども,同時配信における権利処理の具体的な課題は現段階ではまだ明らかでないことを踏まえ,継続的な検討のための体制作りが重要であると整理されているということであります。
以上,ヒアリングの結果について報告させていただきました。よろしくお願いいたします。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
今やっていただきました事務局の報告を踏まえますと,それぞれのテーマにつきましては,運用の改善あるいは総務省における検討の状況など,まずは今後の進展を見守ることが適切ではないかと思いますし,本小委員会といたしましては,積年の課題となっておりますリーチサイト,現在ワーキンググループで検討しておりますライセンス制度の在り方といった重要な議題を抱えておりますので,まずはこれらを優先することが必要かと考えてはおりますが,今後の進め方について御意見がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。では,生貝委員。
【生貝委員】ありがとうございます。手短に2点のみなんですけれども,一つ,こちらの不明著作物の利用というところに関して,今,アーカイブという課題を挙げていただきましたが,こちらは特に試験場でも,あるいはこれから集中管理拡大のような形が進んでいくことというのも非常に重要なところと考えております一方で,そのタリフといいますか,利用料金というところに関して,通常の商業的利用とアーカイブのような非営利利用の使い方の料金といったようなものが例えば同一になっていたりするといったようなところを含めた,アーカイブを進めていく上でのそういったソフトローの部分というのも併せて見ていく必要があるのではないかといった論点が一つでございます。
それからもう一つ,こちらは特に権利者不明というところに関わりの深い問題として,今度のTPPに関連して著作権保護期間が20年間延長されるといったようなことが近付いているところかと思いますけれども,こちらはセーフガードというところで,例えばアメリカの著作権法,1998年に延長した際には,著作権保護期間の最終20年間に入った著作物に関しては108の(h)項というものを新しく設けまして,図書館及び文書館等につきましては通常の商業利用がなされていない場合にはかなり,著作物のアップロードというところを含めて使ってよいというセーフガードの仕組みというものを設けていると,そういったまさに権利制限による権利者不明の対応といったようなところも保護期間と併せて検討の材料にはのせていただく余地があるのではないかと考えた次第です。
手短ですが,以上でございます。
【茶園主査】ありがとうございました。
ほかに何かございますでしょうか。
この権利者不明著作物等の利用円滑化の問題に関しましては,今いただいたようないろいろな論点もあると思いますけれども,今後,特に取り組むべき必要性の高いニーズが出てきましたら,その際改めて取り扱うこととしたいと考えております。その際には,今いただいたような論点についても検討を加えたいと思います。
なお,文化庁におきまして取り組んでいる事業等も現在ございますので,それらが報告できる段階になりましたら適宜お願いしたいと思っております。
では,続きまして,議事(2)リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応について議論を行いたいと思います。本課題につきましては,前回の本小委員会におきまして,リーチサイト等への民事及び刑事の対応,それからインターネット情報検索サービスへの対応について議論を行いました。このうち後者のインターネット情報検索サービスにつきましては,前回の小委員会におきましても,事業者の法的責任の在り方について十分に検討すべきだという御意見をいただきました。そこで,本日は,まずは検索サービスの問題を議論していただきまして,その後にリーチサイト・リーチアプリの問題を取り扱いたいと思います。
では,まず,検索サービスの議論に入りたいと思いますけれども,検討の順序といたしましては,1番目,検索サービス事業者の負うべき法的責任について,理論面から,立法政策的な観点も含めまして議論をいただきたいと思っております。次に2番目,検索サービスにおける侵害コンテンツ対策に関する取組状況,課題等につきまして,関係団体の皆様からヒアリングを行いたいと思います。そして3番目,さらにそれらを踏まえた上で検索サービスに係る対応の在り方について御議論いただければと思っております。
それでは,まず1番目の検索サービス事業者の負うべき法的責任についてという論点につきまして,事務局より説明をお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】まず,お手元,資料2の方を御用意いただけますでしょうか。検索サービスに関しまして14ページ以降に整理しておりますけれども,こちらの資料は,前回御用意した資料に,前回の小委員会でいただきました御意見を付け加えた上で,更に御議論いただきたい点につきまして実線四角囲みで記載したという位置付けの資料でございます。本日,時間の関係でかいつまんで御紹介しようと思いますけれども,前回,そもそもインターネット検索サービスに対して一定の差止請求権を認めるということについての御議論をまずいただいたわけでございますけれども,15ページ下の方から第1回小委員会における意見を御紹介しております。
まず,検索サービスを対象とすることについて肯定的な御意見としましては,現在もアメリカのDMCAに基づいて運用がなされているということで,同様の範囲で差止請求権を付与するということでありましたら実際大きな支障はないのではないかという御意見。
それから,次のページ。今回,検索エンジンにつきましては,行為の主観的な意味では悪質性はないかもしれないが,客観的には著作権侵害を助長する結果を生み出しているということに着目して,削除の要請を可能とするということはあってもいいのではないかという御意見でございます。
それから三つ目,こちらも,リーチアプリとかリーチサイトとは性格は違うものの,実際に検索結果が出たと分かって,削除を求められているのにあえて放置するということについては,悪質な行為であるので,みなし侵害にする必要は高いという御意見がございました。
一方で,慎重な御意見としましては,この問題は,中立的なサービス,中立的な立場からインターネット上の情報流通の共通基盤として不可欠な役割を果たしている検索事業者に著作権侵害行為の拡散を回避するために一定の協力を求めるとすればどういう場合に可能かという問題であるので,問題全体についての整理が必要ではないかという御意見でございました。
本日,こうした御意見を踏まえて御議論いただくわけでございます。今回御審議いただきたい点,実線囲みの部分でございますが,インターネット情報検索サービスが中立的な目的を有するということや最高裁で示された同サービスの性格,さらに同サービスが実際に侵害コンテンツの拡散に寄与している度合い・状況を踏まえまして,公共の福祉による制約とのバランスの観点から,立法政策として,インターネット情報検索サービス事業者は一定の責任を負うこととするべきか否か,つまり差止請求の対象とすべきか否かということについて御意見を頂戴したいと思います。先ほど御紹介しましたとおり,先生方の御意見の中では,一定の範囲で責任があるのだという御意見と,責任があるかどうかということは別として協力を求めるということで御意見がございまして,事業者の責任があるのかどうかという性格の問題が今のところ重要になっているのかなと承知しております。
こちらの論点について御意見をいただくために御用意しました資料が資料3と4でございます。
まず資料3でございますけれども,こちらは我が国,国内におけるインターネット情報検索サービスの法的責任の在り方につきまして御議論いただくための基礎的な資料としまして,我が国及び海外のそうした議論の状況について整理したものでございます。
まず1ポツ,日本でございます。丸1,インターネット情報検索サービス事業者の行為,サービスの性格としましては,平成29年1月の最高裁決定によりまして,検索サービス事業者による検索結果の提供は事業者自身による表現行為という側面を有するということ,それから二つ目のポツ,インターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしているということで,これらに関連して削除が求められているということは,表現行為の制約,それから,そうした役割に対する制約であるとされております。
著作権との関係につきましては,さほど判例とか議論が蓄積されているわけではないわけでございますけれども,ここに書かせていただいておりますとおり,検索サービス事業者に対する著作権侵害を理由とするURL提供の差止請求についてはこれまで判例が見当たらないわけでございます。
二つ目のポツ,しかし,リンク掲載行為につきましては,ロケットニュース24事件ですとかリツイート事件などがございまして,いずれもリンク掲載行為が著作権侵害の幇助に当たるかどうかが争われまして,この事案においては幇助への該当性は否定されましたものの,前者の事件につきましては,著作権侵害コンテンツへのリンクを張る行為が一定の場合に公衆送信権侵害の幇助が成立する可能性があるということが示されたのであるという解釈論も展開されているところでございます。
それから,次のポツですけれども,こちらも御参考でありますが,現行著作権法47条の6ただし書におきまして,検索結果の中の,URLではなくて,サムネールとかスニペットそのものを検索事業者が発信するという行為につきましては,その元の著作物が著作権侵害のものであると知った後はその送信を行ってはならないとしております。先ほど申し上げましたように,これはリンクに関する条文ではありませんので,同じケースではありませんが,一定の範囲で検索事業者の表現行為についての差止請求を受け得るということを示したものではございます。
それから,その他としまして,著作権以外の権利,利益との関係では,プライバシー侵害ですとか名誉権侵害をめぐる事案におきまして,一定の場合に検索結果の削除請求が認められるという旨を示した裁判例はございます。詳細は御説明省略いたします。
次に3ページの中ほど,諸外国についての基礎的な情報でございます。
まず米国でございますけれども,米国ではインターネット情報検索サービスによる検索結果の提供につきましては,一定の場合に「寄与侵害」に該当し差止請求等の対象となる可能性があると理解されております。
寄与侵害につきまして,基本的な情報をこの下に御紹介しておりますけれども,詳細の説明は割愛させていただこうと思います。
4ページをお願いいたします。寄与侵害につきまして若干補足いたしますと,4ページの上から二つ目の黒ポツでございますけれども,表現の自由と著作権侵害の関係につきましては,既にアメリカ著作権法の中でその調整がされていると理解されているようでございまして,同様に,寄与侵害者に対する差止めにつきましても,表現の自由との関係は調整済みであって問題ないというふうに判例上も考え方が確立しているとされてございます。
そうしたことを前提としまして,インターネット情報検索サービスについて寄与侵害が成立するかについて争われた事案としましては,2007年のPerfect10事件控訴審判決というのがございます。こちらでは,以下,かぎ括弧に書いてあるようなことが判示されております。ポイントの部分だけ述べますと,2文目の,グーグルにつきまして,全てのウエブサイトについてリンクを提供するという中立的なサービスだということを前提としましても,著作権者に及ぼす影響を割り引いて考えることはできないとサービスの評価をしました上で,その次ですけれども,グーグルはPerfect10の著作権を侵害する画像がその検索エンジンを通じて利用可能とされていることについて認識を有しており,かつPerfect10の著作物についての被害の拡大を防止するための容易な手段を講じることができるにもかかわらず,その手段を講じなかった場合には,寄与侵害としての責任を負い得ると判示がされております。ただ,この控訴審判決では,実際に寄与侵害に当たるかどうかという当該事案についての判断は原審に差戻しがされておりまして,地裁での審理の結果としては,本件事案については寄与侵害は認められなかったところではございます。
それから,5ページでございますが,ⅲとして,DMCA512条におきまして,仮に何らか侵害責任が検索結果に認められ得るという場合でも,512条(d)によりまして,削除等の対応をしておけば免責されるという規定がございます。本小委員会におきましても,グーグル様から,DMCAにのっとった対応を既にやっているという御報告をいただいているところでございます。
それから,少し飛ばしまして7ページ,欧州に関する状況でございます。欧州では,情報社会指令3条1項におきまして,加盟国に「公衆への伝達」に関する権利の付与が求められております。そこで,それに関連しまして,オランダのGSMedia事件におきまして,いわゆるリンク掲載行為が公衆への伝達に該当するか否かということについて,とりわけリンク先が著作権侵害のものであるという場合における判断が欧州司法裁判所によって行われました。具体的には括弧書きの部分でございますけれども,違法なものと現に知っていた又は知り得べきであった者については,そのリンクの提供は公衆への伝達に該当するということ。それから,リンクの掲載が利益を目的として行われるときは,そうした認識に関する推定がなされるという判断がされております。
もっとも,これは情報社会指令の解釈に関するものでございまして,国内法でどのように適用されるかというのは各国における判断になるわけでございますけれども,例えばドイツにおきましては,関係判例で,インターネット情報検索サービスにおいて違法な画像が検索結果に表示されたという場合について争われまして,先ほど御紹介したCJEUの判断の中の利益目的を理由とする認識の推定という部分については否定されて,残りの枠組み自体は採用されたということであると承知しております。
以上のことから,アメリカや欧州では,侵害コンテンツと知りながら,容易に削除できるにもかかわらず放置している場合には,一定の場合に検索事業者も侵害者としての責任を負うという考え方をとっているものと考えられます。
以上が日本と諸外国の基礎的な状況の御説明でございました。
次に資料4をお願いいたします。こちらは先ほど若干御紹介いたしました平成29年のプライバシーの問題に関する最高裁決定を示唆としまして,憲法的な視点から今回の問題について論じられた意見書です。これは神戸大学の木下先生,憲法学の御専門の先生から御提出いただいたところでございます。非常に重厚なものになっておりまして,いずれも重要なものだと思うのですけれども,本日,時間の関係からポイントを絞って御紹介したいと思います。
まず3ページの方でございますけれども,平成29年最高裁決定最決の射程範囲としまして,2文目にありますように,この決定はあくまで個人のプライバシーに関するものでありますので,当然,著作権についての判断枠組みを示すものではないということ。それから,29年の最高裁決定が問題としたプライバシーの法的保護というのは,立法によって何か決まっているということでの法的保護がない中でのものでございまして,立法による法的保護が憲法との関係においてどこまで許容されるかについての判断を示したものではないということを断られております。
それから,4ページの一番上のところです。この平成29年最決の射程範囲につきまして,そのまま著作権に応用できないものの,判決理由の中で示された基本的な論理については,合理的な理由のある限り,著作権についても及び得ると考えられております。
その具体的な内容の検討でございますが,3ポツの方で,まず最高裁決定が示した論理の中で重要なのは,これは検索事業者自身による「表現行為」に対する「制約」であって,「インターネット上の情報流通の基盤」の役割に対する「制約」でもあるということだと述べられておりまして,前者に関しましては,四つ目のパラグラフ,「このように」というところのパラグラフですけれども,こういうふうに表現行為として位置付けるということは,一面では,検索結果の提供についての法的責任が検索事業者自身にも帰属し得るということを合意すると。一方で,しかし,これは憲法21条1項による保障の対象にもなるということが述べられております。
それから,5ページの2パラ目でございます。二つ目の観点,検索結果の提供というものが情報流通の基盤的役割に対する,その削除を求めるのは制約だということでありますこととしますと,その帰結としましては,削除等の法的義務付けを課し得る要件について,検索結果提供の場合と通常のウエブサイト上の記事等の提供の場合とは異なるということで,前者の方が後者よりも限定された場合に削除が認められ得るということが示唆としてあると述べられております。
それから,4ポツのところで,検索結果の義務付けの可否というところで,少し飛ばしまして6ページの二つ目のパラグラフでございますけれども,今回の29年最決は,検索結果の削除を法的に義務付けることができる場合があることを最高裁自身が認めたと捉えられておりまして,次のパラグラフ,「そして」というところですけれども,権利の性質に違いはあるものの,著作権についても削除請求権を法定することは同様に憲法上許容し得るとされておられます。
次に削除対象でございます。(2)の(ⅰ)でございますけれども,ちょっとまた飛ばしまして,7ページの方ですが,一番上の部分,平成29年の最高裁決定によりまして,URLの先のウエブサイトの方に他人のプライバシーを侵害する情報が含まれるという場合も,この最高裁決定は射程に置いたものであると理解されておられます。
こうしたことを踏まえまして,大分飛びますけれども,9ページでございます。5ポツ,検索結果削除を義務付けることのできる要件としまして,(1),平成29年最決が提示した判断方法と実体的要件というところにおきまして,これはまた次のページになるのですけれども,三つ目のパラグラフ,平成29年の最決の中で示された,公表されない利益が優越する場合ということにつきましては,優越が「明らか」であることを削除の要件として加えたというのが大きな特徴であるとされておられます。その趣旨につきましては,担当調査官の解説から,「削除の可否に関する判断が微妙な場合における安易な検索結果の削除は認められるべきではないという観点」があったという解説がなされておりまして,次のページの4行目のところですけれども,これを踏まえて木下先生としましては,この明白性の要件というのは過剰削除のリスクを最小限にするという趣旨で課されたものだという御理解になっているということでございます。
こうした理解を前提としまして,(2)の著作権法事案への応用ということにつきましても考察をいただいております。この平成29年最決の判断枠組みが著作権の法的保護の場面にどのように及ぶかということにつきまして,まず前提としまして,(ⅰ)というところの中ほどにあるところですけれども,今回,平成29年の最高裁の決定につきましては,これが利益衡量論に依拠してきたというのは,プライバシーの法的保護に関しては明文の規定がないということで,一般的な法原則である利益衡量に頼らざるを得なかったということを理由とされております。他方で,著作権につきましては,著作権の法的保護の著作物の自由利用との間での利益衡量というのは既に著作権法の中で立法府によってなされているということから,次のページのところでございますけれども,著作権につきましては,端的にURLによって識別されたウエブページに著作権侵害コンテンツが存在するか否かを検討すればよいとされておられます。
こうしたことを基礎としまして,具体的な要件といいますか,どういう場合に許容され得るかという考察に入られているわけでございます。まず,明白性ということの解釈というか,考え方でございますけれども,最高裁の判断の中の明白性の要件については著作権の事案においても考慮されるべきだと。これは,過剰削除のリスクと弊害というのは,プラバシーであろうと著作権であろうと同じだということが言われております。
次のパラグラフが一番結論に近い部分でございますが,「以上のように」としまして,特定のウエブページのURLが検索結果として提供される場合には,単に当該ウエブページに著作権侵害コンテンツが含まれるというだけの理由でそれを削除対象とすることは過剰削除の弊害が大きいとされた上で,当該URLの提供の削除を請求することができず,過剰削除の弊害の小さい場合,すなわち,当該ウエブページの内容が著作権侵害コンテンツであることが明らかである場合には,当該URLの提供の削除を請求することができると解することが適切だとされておられます。
それから,明らか要件の具体的な中身につきましては,その後少し述べられておりまして,具体例としましては,一番下の方ですけれども,過剰削除となる危険性がほとんど考えられないような場合,例えば,海賊版サイトに原作そのままの動画や漫画が掲載されているような場合は侵害であることが明らかだと言えるのではないかと言われております。
あと,削除の対象とし得るURLの範囲につきましてもこの後議論がされておりますけれども,若干ポイントだけ申し上げますと,ウエブページ全体の中に侵害コンテンツ以外の情報が入っている場合でもその削除は認められ得るとされた上で,ただ,その中にほかのページのリンクが入っている場合に,そのリンク先のものまで削除対象にできるかということですとか,あるいはホームページ全体,ウエブサイトのトップページも削除できるかということについては慎重になるべきというのが14ページに書かれております。
少し駆け足になりましたが,御報告,以上になります。よろしくお願いいたします。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
ただいま御説明いただきました内容につきまして,御質問,御意見がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。
【秋山著作権課長補佐】済みません,ちょっと私の説明が長くて,そもそもの問題点がぶれてきたかもしれませんが,先生方に御議論いただきたいのは,資料2の16ページの今回更に御審議いただきたい点,丸1にお示しさせていただきましたとおり,検索サービス事業者が一定の責任を負うべきかどうかということについて御審議いただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
【茶園主査】よろしいですか。では,前田委員。
【前田(哲)委員】議論すべきなのは,インターネット検索サービスが一定の場合,法的責任を負うことがあると考えるべきかどうかということでよろしいのでしょうか。そういうことであれば,特定のURLが侵害コンテンツを掲載していることを具体的に知りながら,知った後においても当該URLを検索結果として表示するサービスを継続することについては,検索エンジンサービス主体が法的責任を負い得るということは当然なのではないかと私は思います。
【茶園主査】ありがとうございました。
ほかに何か御意見,御質問がございますでしょうか。では,大渕委員。
【大渕主査代理】問いの立て方が少し抽象的で分かりにくいかと思いますが,資料2の注6にある2ちゃんねる小学館控訴審判決は今回の論点となっている検索ではありませんが,いわゆる蔵置サイトに誰かが違法なものをアップロードしていたのに対し特定性のある削除通知が来たのに,それを知りながら放置したら差止めを含めて責任を負い得るという,ごく常識的なことを判示した判決であります。この事件と同様の状況にあるものが恐らくここで問題になっているものであると思われます。この例だと特定のアップロードされたファイルだったのですが,それと同様にパラレルに考えると,特定のURLが侵害対象になっているので,それについて特定性のある通知が来て,そこが先ほど言われた知りながら放置ということになるかと思います。十分知っていながら,URLを放置して,そこへの到達というか,拡散を放置しているということになれば,差止めを含めて法的責任を否定するのは難しい。何かもっと抽象的な形で差止めるのかという話と,個別具体的に特定性ある通知が来たものを差止めるのかという別の次元の話があるかと思いますが,基本として,今言ったような特定のURLに対して特定性のある削除通知が来たのに知りながら放置するということをすれば,差止めを含めて法的責任を負わないというのは非常に難しいのではないかと思っております。
【茶園主査】では,奥邨先生。
【奥邨委員】基本的な考え方は私も同じように思うんですけれども,ただ,ここにも出ていますように,インターネット情報検索サービスの中立的な目的であるとか社会インフラとしての重要性ということを考えた場合に,通知が来たからということだけで削除していいのかということについては,若干,通常の一般の人などと比べると違うのでは,特に機械で自動的にやっているとか大量の数があるとかいう点は,具体的な判断を下す際に考慮される余地としては出てくるのかなと。例えばアメリカとかでも,これは場面は違いますが,DMCAのNotice and Take Downなので違いますけれども,例えば権利者がそれについてフェアユースが成立する余地があるんじゃないかなということを考慮せずに,自動的に削除通知を送って,いきなりプロバイダが削除してしまうというのは,これはDMCAの仕組み上も問題がありますよという事件もあるわけです。そういう点では,大枠としては2ちゃんねる小学館であるとか,今大渕先生がおっしゃったような形で私はいいと思うんですけれども,ただ,注意義務と言ったらおかしいですけれども,どのレベルの通知が来てどれぐらいの対応をしたときに是となるか非となるかというのについては,検索エンジンの特殊性ということは考慮されてしかるべきではないかなとは思います。
以上です。
【茶園主査】ほかに。では,龍村委員。
【龍村委員】特定のURLを削除するということが検索エンジン事業者において,これは後にグーグルさんですか,今日お見えなので,御質問が出るのかもしれませんが,どのようにして実現し切れるのかという技術的な問題がよく分かりませんので,そのあたりが絡むと思うのですが,当該URLそのものを世の中から抹殺することはできないわけで,どこかにあると。また,URL自体も変転していくということになると,検索した場合に対象のコンテンツが表示されないようにするということを実現する技術といいましょうか,そのあたりを押さえておく必要があるのではないか。例えば検索用語,クエリーというんですか,ある特定の検索用語を入れると出てきてしまうと。それが端的に特定のサイト名だとかコンテンツ名だったらもちろんそうなのでしょうが,多少クエリーを変えてもやっぱりひっかかってきてしまうと,そういうことになりますと,どのクエリーを入れるとひっかかってくるのかということの関係性を検証していかないとならないくなる。徹底的に対応するとなると,そういうステップが本来は必要になってくるのではないのか。例えば,ある特定の違法サイトに達するためにどのクエリーを入れると到達するのかという関連性が問われ,削除請求する人が,このクエリーを入れたときにこれが出ないようにしてください的なことを言わないと実現できないのではないかなという気もするわけです。それが徹底して果たして技術的にできるものなのかどうなのか。それが非常にハードルが技術的に高いものであると,検索事業者の責任が余りにも高くなるのではないか。そのあたりが一つ論点になり得るのではないかという気がいたします。
【茶園主査】ありがとうございました。
この後にいろいろヒアリングを予定しておりますけれども,今,先ほどの事務局からの説明につきまして,御意見,御質問はございますか。では,前田委員。
【前田(健)委員】理論的なところということで抽象的なことを申し上げますけれども,検索サービス事業者が一定の場合に検索結果を削除する責任を負うことがあるのではないかというのは私もそうだと思います。その一方で考えなければいけないのが,検索サービス事業者が情報の流通の基盤として大きな役割を果たしているということなので,恣意的に検索結果を削除するとか,あるいは基準がはっきりしない中で検索結果の削除が行われるという事態も望ましくないと思います。したがって,どういった場合に検索結果の削除が許されるのかということも併せて検討していく必要があると思っております。
【茶園主査】では,森田委員。
【森田委員】事務局の説明で,「責任」という言葉が二義的にといいますか,曖昧に使われているところがあるように思います。削除義務を負うということが責任を負うことと同義であるとすると,結論として削除義務をどういう場合に認めるかが問題となるだけです。これに対し,削除義務がどういう場合に認められるかを考えるときに,インターネット検索事業者には,著作権侵害行為に対する寄与侵害や幇助といった責任があるから削除義務を負うと考えるのか,それともそのような責任があるかどうかということを離れて,違法情報の拡散を回避しうる立場にあることを考慮して,どのような場合に削除義務を負わせるべきかという見地から論ずべきなのか,そのどちらの観点から議論をするのが適切なのかという前提として,インターネット検索事業者には「責任」があるかないかを検討しましょうという場合には,削除義務を負うこととは区別された意味で「責任」の有無が問題となります。先ほどの御説明でも,また資料2でも,「責任」という言葉が文脈によって異なる意味で使っておられたので,そこが曖昧に使われていると論点ははっきりしないのではないかと思います。 諸外国の状況について御説明いただきましたが,アメリカでは,寄与侵害責任については認められる可能性はあるものの,実際に認めたものはなくて,それも裁判例としてはそれほど多くない。他方で,DMCAでは,責任があるというよりは,セーフハーバーとして一定のことを行っていれば免責されるということになっているので,検索事業者はそれによって対応しているわけで,アメリカ法では,責任があるかないかと離れて,DMCAの枠内で処理しているというふうに,きょうの御報告の内容は理解できるように思います。また,欧州についても,検索エンジンについて,GSMediaの法理で検索事業者がリンク提供行為について責任を負うことになるかどうかということについては,まだはっきりしていないという状況だと思いますけれども,それと離れて,検索エンジンについて一定の場合に削除義務を負うかどうかというのは,EC指令における媒介サービス提供者の義務の解釈としてどこまでいけるかという問題は別に立ち,そのような観点からも論じられています。 したがって,そこの問題を区別する,明らかにするということが,前回の議論を踏まえて,きょうの御説明の冒頭での問題提起であったと思いますが,資料2の16ページの「今回更に御審議いただきたい点①」にいうところの「一定の責任」は,検索結果のリンク情報につき差止請求の対象とすべきか否か,つまり,検索事業者が結論として削除義務を負う場合があってよいかどうかという意味で「責任」があるかないかという言葉を使っており,このような用語法では,かえって議論が混乱してくるように思います。
それから,先ほど龍村委員が言われたことは,きょうの木下さんのペーパーの中にも出てきていると思いますけれども,クエリーによって区別するという観点は一つあり得ると思います。それを考慮するということの意味は,検索というのは様々な人が様々な目的でインターネット上の情報を検索するというものであって,全ての人に対して中立的に一定の情報を提供するということが,検索エンジンが担っている公益的な機能であるとすると,特定の利用の仕方との関係では違法となりうるけれども,検索エンジンにおける当該URLの表示が全ての人との関係で一般的に違法になるとはなかなか言いにくいのではないか,そういう面を考慮すべきではないかということだと思います。
平成29年の最高裁の決定の理解について,先ほどの御説明では,明らか要件というのが過剰削除の防止という点に絞られるかのようにまとめられましたが,木下さんがそのように書いておられるかどうかというのは読み方の問題であると思いますけれども,最高裁決定の枠組みそのものは,検索エンジンが持っているインターネットにおける情報流通の基盤としての公益性というものと,それと対立する法的利益との衡量をした結果,対立する法的利益の方が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを請求できるというものです。そして,プライバシーあるいは著作権侵害というような法的利益に対立する利益として検索エンジンが持っている公益性はどこにあるかというと,「一貫性を有する表現行為」,つまり,検索事業者がインターネット上の情報について一貫性を持って収集して,それを体系的に提示するということ自体が一定の公益的な価値を持っていて,その中で特定の情報だけを削除するということがその一貫性を持った表現行為に対する制約となる面があるのだから謙抑的であるべきだとされます。ありとあらゆる情報について,良い情報と悪い情報を仕分して,良い情報だけを提供するというのではなく,一定の方針に従ってインターネット上の情報の収集,整理及び及び提供をしている,そのこと自体に重要な価値があるということを押さえた上で,それと対立する法的利益との間の衡量をすべきであるというのが最高裁の枠組みであると思いますので,そうしますと,明らか要件の意義を検討する場合にも,インターネット上の情報流通の基盤として検索エンジンが有している公益性というのはどこにあるのかという点をまず議論としてはっきりさせた上で,それとの関係で,ある侵害される法的利益の方が明らかに優越するというのはどのような場合に限られるかという点を詰めていくべきであると思います。そのような利益衡量の枠組みを離れて,侵害コンテンツと知りながら放置しただけで違法であるというところから出発しますと,最高裁が指摘しているような検索エンジンの持っている公益性に対する考慮がやや軽視され過ぎてはいないかという感じを持ちました。
以上です。
【茶園主査】前田委員。
【前田(哲)委員】どういうクエリーによって当該特定のURLにたどり着いてくるかということがプライバシーとの関係においては意味を持つ可能性があるとは思います。プライバシー侵害になるかどうかは諸般の事情を総合考慮して決定されることですので,どういうクエリーによってそこのページに来た人に対して表示するのかも,プライバシー侵害の成否を決定する事情の一つになることはあり得ると思うのですけれども,公衆送信権侵害については,そこにアップされているコンテンツが違法に公衆送信されているものであれば,どういうクエリーをたどってアクセス者がそのURLに来たのかということにかかわらず,当該URLのコンテンツが自動公衆送信されること自体が公衆送信権侵害になるのであって,どういうクエリーによって検索結果が表示されたかということは,著作権侵害との関係においては特に考慮する必要はないと思います。
【茶園主査】大渕委員。
【大渕主査代理】細かい議論は後に回しまして,責任につきまして,このペーパーの16ページには,責任を負うというものの中で括弧して差止請求ときちんと書いてあります。もともとこの議論が,恐らく一般法では損害賠償なり,犯罪は幇助ですけれども,差止めをどうするのかというのがここでの問題であります。私は差止めだけ特別視するのはおかしいと思っておりますが,今までは日本では何故か,論文ではさんざん書きましたが,直接侵害者限定ドグマというのがあって,何故か差止めだけは物すごく過大なものと思われているようであります。実際,ネットの関係者に聞くと,むしろ差止めよりも怖いのは巨額の損害賠償だと言われるのですが,その関係で,恐らく損害賠償,犯罪というよりは,この責任というのは結局差止めだというところをはっきりさせた方が議論が混乱しないのではないかと思っております。
【茶園主査】では,田村委員。
【田村委員】今の大渕先生のお話に少し関連しますが,責任といったときに差止めと損害賠償は非常に大きな違いがあると思います。差止めについては,もし侵害コンテンツがあることが明らかであれば,対応するというのは相対的にいえば比較的楽な話ではないかと思います。損害賠償となりますと,場合によってかなり巨額になったりしますので,今回はっきりと差止請求については触れて,損害賠償の話にはほとんど触れていないのはそのせいだと思います。ただ,従来型の形でみなし侵害とか何らかの形で著作権法に入れるということは,過失さえあれば損害賠償が認められるというたてつけにはなりますし,さらには不当利得返還請求という過失と関係ない金銭請求も生じるわけで,不当利得の方は利得の解釈で多少は何とかなるかもしれませんが,金銭的な問題も関わっているということに関しては,少し慎重に考えた方がよいと思います。従来型ですと,そうなるということです。
それから2番目は,侵害コンテンツであることが明らかかどうかという話ですけれども,一般的に言うと,デッドコピーであれば比較的分かりやすいとはいえ,やはりプライバシーと同様に,一般に2次創作と言われているようなものになってきますと,限界が不明です。さらに,もちろん類似までは普通は侵害になるので,そういうものを入れると萎縮効果がすごく怖いですね。検索サイトが過剰に反応する可能性がありますので。そういうことを考えると,前の方では一つの論点として,デッドコピーがあるかどうか,丁寧な論点がありますけれども,こちらの方も同じことが関わっていると思っています。森田先生のプライバシーの話に少し関係するかと思いますけれども,侵害コンテンツであることが明らかというか,あるいはデッドコピーに限るとか,何かしないと萎縮効果の方が怖いように思っています。
【茶園主査】では,今村委員。
【今村委員】責任があるということで,差止めが認められるとなった場合に,その差止めに応じるにもいろいろ対応が必要になるわけです。その点については,後でお話があると思うんですが,コストの問題というのも出てくると思います。コストが非常に掛かる,時間も掛かるしお金も掛かるものだとすると,例えばグーグルさんのように,お金もあるし,いろいろ対応もできるような検索エンジンはそういうものに対応できてよろしいかもしれません。けれども,そういう規模ではない検索エンジンはなかなかそういう対応が難しいという状況も生じ得るのではないかという懸念があります。グーグルさんしか生き残れないことになってしまうんじゃないかとか,そういう懸念もあるわけです。差止めの前提となる責任の問題とも関係してくると思うのですが,コストの分担の問題やどの程度コストが掛かるのかと,そういうことも踏まえて責任の問題を考えていくべきなのではないかと思いました。
【茶園主査】では,奥邨委員。
【奥邨委員】先ほど田村先生からもありました,損害賠償との関係で一言だけ関連して申し上げますと,アメリカの場合は損害賠償責任についてはDMCAで免責ということになっておりますし,それから,差止めについては,資料には免責と書いてあるんですけれども,実際は検索エンジン業者が落としてしまえば差止めの必要がないので,そもそも免責も云々もなく,関係ないということになります。落とさなかった場合は,普通,アメリカの裁判所というのは非常に強いパワーがありますので,差止めといってもいろいろなことを命じることができるんですが,それがDMCAによって法定された形でしか命じられないということで,かなりプロバイダ,検索エンジン等々を配慮した形になり,その事業に影響のない形の差止めに限定されているというわけです。ただ,ここまでは説明とした上で,問題は,日本の今の状況では,多分検索エンジンがリンクを提供するということ自体,そもそもそれ自体が不法行為かどうかというのもありますが,一方で検索エンジン業者がプロバイダ責任制限法の特定電気通信役務提供者になるのかどうかというのもちょっと分からないところがあるかもしれません。そういう意味では,まずプロ責法的な形で検索エンジン業者が損害賠償を免れることができるのかどうかということも疑問が付くところはあるかもしれません。それから,今度新しく,もしリンクを提供する行為自体を,検索エンジンがではなくて,一般論としてリンクを提供する行為自体をみなし侵害等々にした場合,それがプロバイダ責任制限法の評価にどう関わるかという問題もあると思います。さらにもう一つは,仮にプロ責法の適用があるといっても,TVブレイク事件のような形で,放置したら主体になると言ってしまうと,発信者になってプロ責法の適用がないんだという裁判例もあったりしますので,先ほどの差止めの話だけだとあれですが,損害賠償については注意して,過大な負担,萎縮効果にならないようにするということは必要であろうと,プロ責法との関係で思いました。
以上です。
【茶園主査】今の論点につきまして,ほかに御意見があるかもしれませんが,次にヒアリングを行いますので,それとの関係で,済みませんが,もしありましたら3番目の今後の対応のところで,お願いいたします。
それでは,検索サービスを通じた侵害コンテンツへのアクセスに係る現状と課題,そして今後の対応についてのヒアリングにこれから移りたいと思います。流れといたしましては,まず3団体の皆様に御発表いただきまして,その後に質疑応答の時間を設けたいと思います。時間の関係で,各団体の御発表時間は10分程度でお願いできればと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
では,最初に出版広報センター海賊版緊急対策ワーキンググループの伊東様よりお願いいたします。
なお,傍聴者の皆さんにおかれましては,写真撮影等はお控えいただきますようにお願いいたします。
【伊東氏】出版広報センターの伊東です。実は出版社で海賊版対策の現場におりまして,その立場からきょうはお話しさせていただきます。
配布された資料は,かなりの部分,墨塗りされておりますので,とりあえずこちらの方のプロジェクターの画像を見ていただければと思います。
最初に現在のリーチサイトの状況を簡単にお話しさせていただいてから,検索エンジンなどの話につなげたいと思います。御存じのとおり,2018年に入ってからは漫画村という非常に悪質なリーチサイトではない海賊版サイトがしょうけつを極めまして,ただし,4月中旬に閉鎖以降,漫画村に匹敵するような,そういう悪質なサイトはないんですけれども,その陰でこっそり,やはりリーチサイト型が伸びております。最大手のリーチサイトでリーチサイトAというリーチサイトがあるんですけれども,4月の訪問者数が1,426万人だったのが,6月は1,600万人を超えて,16%増になっております。
ほかにも多数のリーチサイトが健在です。この健在というニュアンスは,これも去年かなり話題になったんですけれども,はるか夢の址という日本最大級のリーチサイトの組織が大阪府警などによって摘発され,逮捕,取調べされた人間は多分数十人に及ぶ,かなり大規模な組織だったので,出版社の人間としても,これでリーチサイトがかなり駄目ジを受けるんじゃないかと非常に期待していたんですけれども,残念ながらいまだにかなりの数のリーチサイトが健在で,さっきのリーチサイトAに比べると若干少ないんですけれども,それでも300万人のアクセス数を稼ぐリーチサイトだったり,100万人超えのリーチサイトだったりが複数あります。これ以外にも100,200,500,リーチサイトがいまだに健在です。ですので,出版社としては,こういうリーチサイトがこの世からなくなってくれるためにいろいろなことを努力しております。
もう1回今の話を説明しますと,FreeBooks,漫画村という,直接そのサイトで読める,いわゆるオンラインリーディング型の海賊版サイトがしょうけつを極めて,一時期彼らが主役を奪ったんですけれども,その二つが閉鎖された後,現在はリーチサイト型の海賊版サイトが主役になっています。改めて説明しますけれども,リーチサイトが使用する海賊版ファイルの蔵置先は,いわゆるサイバーロッカーというところにありまして,我々はサイバーロッカーに日々大量に削除要請を送って,一応削除されるんですけれども,リーチサイトは素早く再掲載して,残念ながら常にダウンロードできる状態になっています。なので,サイバーロッカーをたたくだけでは限界があるので,リーチサイトそのものが閉鎖されない限り,このリーチサイト型を止めることはできないと感じています。
例えばどれぐらい出版社がやっているかというのを数字上申し上げますと,これは経済産業省さんとCODAさんとマンガ・アニメ海賊版対策協議会で2016年度にやった大規模削除の事業なんですけれども,削除に応じるが,再掲載を繰り返す特定な悪質の6リーチサイトで,出版社70社連合で260万ファイルのサイバーロッカーのファイルを削除しました。でも,結局,リーチサイトは閉鎖に追い込むことができませんでした。我が社でも今,月に3万ファイルぐらい毎月削除しています。
ここからちょっと検索エンジンの話になりますけれども,検索エンジンから海賊版サイト(リーチサイトを含む)にたどり着く方法として一般ユーザー目線でどういうふうにやっているかというと,検索語句に,済みません,作品名だけ入れると,「ONE PIECE」とか「進撃の巨人」とか,そういうメジャーな作品名だけ入れると,アニメのページだったり公式のページだったりが出てくるんですけれども,そこに「zip」とか「rar」とか「無料」,「ネタバレ」などを入れると,いわゆる海賊版サイトで,この場合,「終末のハーレム」というのを入れてあるんですけれども,一番上に,トップに表示されているのがいわゆるリーチサイトの個別の作品ページのURLになります。さっき申し上げたとおり,サイバーロッカーに海賊版ファイルは蔵置されているんですけれども,検索エンジンで幾ら検索してもサイバーロッカーのURLは直接出てきません。必ずリーチサイトのURLが出てくる仕組みになっています。
検索エンジンが海賊版流通で果たす役割ということで簡単にまとめてみました。さっき申し上げたリーチサイトAが最初に登場した2017年の1月なんですけれども,このときは直接ブックマークなどしてダイレクトで行く人は少なくて,やはり検索エンジンからの経由が20%ぐらいありました。直近だと,もう検索エンジン経由から行く人は2.6%とほとんどいなくて,みんなブックマークしているんだなというのがこれでうかがえます。ただし,検索エンジンからの流入が老舗なのにずっと一定量あるサイトもありまして,二つ今ここにありますけれども,21.6%,24.4%とずっと高率のままでいるサイトもあって,ここら辺がどういう理由なのかはちょっと私も分かりません。
ちなみに,しょうけつを極めた漫画村の場合は,漫画村が登場した初期の頃はダイレクトで行くのが44%,検索エンジンからたどり着いたのが32%で,かなりな数の人が検索エンジン経由から行っていることがうかがえます。閉鎖直前でも検索エンジン経由からは24%でした。
現在,我々はサイバーロッカーのファイルだったり海賊版そのもののファイルだったりの削除要請をしていますけれども,当然,検索結果に関してグーグルさんやマイクロソフトさんに表示抑制の申請をしています。具体的に言うと,何を表示抑制お願いしているかというと,赤い輪っかで囲んでいるところがありまして,いわゆるリーチサイトの個別作品のページのURLをグーグルさんなどに,これを表示しないようにしてくれというお願いを今,大体月に6万ぐらいやっています。先ほどグーグルさんがお金が掛かって大変だという話も出ましたけれども,出版社もこの6万の表示抑制のお願いをするだけで非常にコストが掛かっています。個人じゃできないので,いわゆる侵害対策会社でやっていますが,かなりコストを掛けてやっているんですけれども,なかなか海賊版サイトは消えないという状況です。
ちなみに,過去いろいろとグーグルさんとはお話合いをさせていただいて,こういうページのURLの削除要請がいっぱい寄せられる悪質サイトに関してはしばらくするとトップページそのものが検索結果に表示されなくなりますようにというふうに説明を受けていて,結果としてそのサイトが検索結果に表示されなくなるというケースは幾つもあって感謝しているんですけれども,どれぐらいの数を送ればトップページが抑制されるのか,いつ抑制されるのかというのが分からない状態で,我々は非常に先行き見えないまま個別のURLを送り続けなければいけないというちょっとつらい状況にありまして,特に漫画村の場合は2018年4月に,それまで我々はいっぱい個別のURLを送っていたんですけれども,全然検索結果のトップページからの削除が行われなくて,どうしたもんだろうと思っていたら,4月に突然ページ全体が表示されなくなって,やっと働いたのかというふうに,ちょっとどういう力学が働いたのかが分からないという状態ではありました。
出版界として希望することとしては,もちろんリーチサイトが刑事,民事の面で明確に違法であると規定されることをまず強く望みます。特に,はるか夢の址,大阪府警さんを中心に摘発してくれたんですけれども,やはり非常に摘発が困難でした。やはりアップロードした人間も必ず捕まえなければいけないので,アップロードした人間を捕まえるには,サイバーロッカーにそのファイルをアップしたことを証明しなければいけないんですけれども,サイバーロッカーは基本的に絶対アップロードした事実,個人情報を日本の権利者,警察に教えません。教えない中で苦労して大阪府警は摘発したので,本当にリーチサイトの摘発は困難です。ですので,リーチサイトそのものが違法となると,摘発がより潤滑に進むのではないかと非常に期待しております。
あと,先ほど申し上げたとおり,グーグル,Bingの検索結果の表示抑制と,あとトップページの降格メカニズムが非常に不明瞭なので,それが明瞭化されると非常に助かります。更に言うと,信頼性確認団体が認定した悪質なリーチサイトなど海賊版サイトに関しては,個別のURLの抑制申請,これ積み重ね不要で降格シグナル,トップページが検索結果の奥底に沈むというのをやっていただけると非常に助かります。
あと,現在グーグルさんに,さっき申し上げたとおり,グーグルもBingも我々,月に合計で6万ぐらいやって,ほぼ100%削除されています。削除というか,表示抑制されていますけれども,それは恐らくDMCAで運用されていることなので,日本の著作権法でそれがやるべしと規定されれば将来的には非常に安心かと思います。
あとそれと,海賊版で,先ほどもちょっと2次創作とかのお話も出ましたけれども,侵害行為者が翻案しているケースがありまして,翻案だったら絶対,翻案した海賊版に関しては――ちょっと今お見せしようとしたんですけど,あった。翻案に関しても対象としていただけた方が安心になりますが,残念ながらちょっと出ないですね。非常に見事にモノクロの漫画を創作性ある感じで着色していたり,なおかつ,漫画で止まっているにもかかわらず,動画っぽく一部の絵が動いたりするような非常に手の込んだことをやる海賊の人たちがいるんですけれども,残念ながら出ないですね。御覧になりたい方は,私までメールいただけると,URLをお送りして,YouTubeに上がっているので,ウイルスとかの危険性がないので,どなたでも楽しめますので,私に御連絡いただければ,文化庁さん経由で私に言っていただければ,海賊たちがどのように翻案して,いわゆる2次創作ではなくて,いわゆる漫画のデッドコピーをちょっとだけ,ちょっとというか,きれいに着色して,動きなど入れているケースというのがあり,基本,着色が多いです。モノクロの漫画で物足りない海賊たちが自分たちで勝手に着色するというケースがあります。大丈夫ですか。
ちょっと心残りですが,私はこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
当初の予定では,次にCODA様,そしてグーグル様より報告をいただき,その後に3団体まとめて質疑応答させていただく予定でしたけれども,報告者の御都合で,次のCODA様の御報告に対する質問は発表後に直ちにお願いしたいと思います。では,続きまして,CODA様の墳崎様,よろしくお願いいたします。
【墳崎氏】済みません,資料を映さないので,ちょっと座ってやらせていただければと思います。
CODAの墳崎です。きょうはこのような機会をいただき,ありがとうございます。私の方からは,主に映像コンテンツに関して,インターネット上の情報検索サービスエンジンの方での検索結果表示抑止についての現状についての確認と当方からのお願いといったことをちょっとお話しさせていただければと思います。
まず1枚目,「机上配付資料」というものになりますけれども,そちら1枚目をおめくりいただければと思いますが,こちら,侵害サイトを一つ載っけさせていただきました。今回お話をいただいて,お話をいただいた中では,検索結果表示抑止がどういうことになっているのかという現状を報告してほしいというお話でしたので,CODAの方で今週まさに検索結果表示抑止の方をグーグル様の方に申請させていただいて,その結果を一通り載せさせていただいております。ですので,今回,統計的なデータで,必ずこうなるわけではないという点は御承知おきいただければと思います。
今回対象にした,まず侵害サイトですが,このサイトは中国のサイトでして,非常に侵害コンテンツが多数載っているサイトになります。CODAの方からも,中国の行政機関に行政投訴,要は行政処罰を求めているサイトの一つでありまして,従前からちょっと手を焼いているサイトでして,削除要請も日々出しておりますが,基本的には削除率がゼロというサイトになっております。
次のページを御覧いただければと思います。これは侵害サイトのトップページのものですけれども,このようにサムネールが並んでおります。ここについて検索結果表示抑止の申請をしたところ,結果としては拒否になります。ちなみにですけれども,CODAはグーグルさんの方から簡易な検索結果表示抑止の申請ツールというのをいただいておりますので,基本的には申請したら24時間以内に対処,対応はしていただけるということで,非常に迅速な対応はしていただいております。なのですが,トップページについては拒否されております。これは理由はよく分かりません。ただ,一つちょっと可能性としてあり得るのは,トップページはそもそも対象にしていないということなのか,若しくはトップページのサムネールというのは日々日々変わるので,それによる可能性も否定はできないところです。
続きまして,これ,トップページのところに「アニメ一覧」というタグがあるんですけれども,そこをクリックすると,アニメ一覧というところで,別のページに飛ぶんです。このURLに関して同様に検索結果表示抑止の要請をさせていただいたところ,これにつきましては承認されていて,検索結果表示は抑止されております。
さらに,次のページになりますけれども,「新着New」というページもあるんですが,このページに関しても申請は承認していただいて,表示は抑止していただいております。
あと,ページ内検索を掛けた結果というのを次のページに書かせていただいておりますが,ここでいうと『ONE PIECE』ですけれども,「ONE PIECE」で検索を掛けた結果として出てきたページにつきましては,現状まだ保留になっていて,結果が出ておりません。
続きまして,侵害コンテンツのページですけれども,これはもう結果としては承認されております。CODAとしましては,削除要請通知というのはいろいろなサイトに権利者の削除要請通知等を届けるということをやっておりますけれども,それと同時に,グーグル様の方に検索結果表示抑止の申請を同時に出していますけれども,基本的にほぼ100%に近い割合で侵害コンテンツのページに関しては承認されております。一部拒絶されるんですけれども,それは動画サイト側がグーグル様が検索結果表示抑止する前に動画を消してしまっているために,動画が見当たりませんということで拒否されるということぐらいです。
続きまして,リーチサイトの方に関しても同様に検索結果表示抑止の申請を今回やらせていただいております。次のページになります。先ほどちょっと伊東様の方の発表がありましたけれども,「無料動画」というのを付けて検索すると,こういうふうにリーチサイトというのが出てきます。このリーチサイトに関して,まず次のページ,トップページですけれども,トップページについて表示抑止しましたが,これについては拒否されております。
次のページになりますが,リーチサイトの中のリンクで,『ONE PIECE』のリンクをクリックすると,このページに飛ぶわけですけれども,これに関しては承認していただいております。これ2分割になっていますが,ページが大き過ぎて2分割にしただけで,上の方に『ONE PIECE』という題名があって,下の方に行くと1から50話,51話から100話というような次のリンクが載っているというような状況になっております。
その後,これらのリンクを更にクリックすると,次のようなページ,各話リンクページと書かせていただいておりますが,そのページに飛びまして,各話に関するリンクが張られたページになっていて,これに関しては承認していただいているという状況になります。
お手元の資料6を見ていただきたいんですけれども,以上のとおり,インターネット検索サービスについては,トップページ以外のものは基本的には御対応いただいているという状況にはなっております。なので,一応それなりにスムーズに対応,しかもどれも24時間以内に対応いただいているものになりますので,非常にスムーズに御対応はいただいているところです。ただ,やはりコンテンツホルダーとしましては,トップページを消していただきたいというのがかなり強い要望としてはあるので,現状で完全に満足かと言われると,決してそういう状況ではありません。当然ながら,サイトのトップページの名前を入れて検索するユーザーというのはいっぱいいるわけなので,それが消えていくというのが非常に重要だと考えております。なので,そこについては基本的には継続的に御検討いただきたいところではありますが,何よりも,でも,基本的に優先していただきたいのは,リーチサイトの違法化の法制化というのがとにかく早急にやっていただきたい。先ほどの伊東様の発表にもありましたとおり,リーチサイトに関してはかなり手を焼いているところでもありますし,最近はやはり侵害動画の入り口として本当によく使われているなというような状況になっております。これは一部のサイトですけれども,ストレージ,サイバーロッカーと言ってもいいですけれども,サイバーロッカーに動画が上がっているサイトが動画を入れて,そこに行くためのリーチサイトというのが当然あるんですけれども,そういうケースですと,CODAの場合にはリーチサイトについて削除通知を打ってもなかなか対応されないことが多いので,サイバーロッカー側とかストレージ側とかに削除通知を打つんです。そうすると,直接そのサイトに見に行くと消えているんですけれども,見えなくなっているんですが,なので,削除されたのかなと安心するんですけれども,リーチサイト経由で行くと見えるんです。これは何でこんなことが起きているのかよく分からないんですけれども,そういった形になっていて,まさに窓口になっているという状況なので,そうすると,やはりアップローダーとリーチサイトの運営者が同じケースなんだろうなとは思うんですけれども,その辺の確証はどうやってとるの?という話もあるので,やはりリーチサイトへの対策というのは早急に御検討いただきたいという意見を持っております。
あと,先ほど申し上げたように,検索エンジンに関してはトップページの運用改善というのはちょっとお願いしたいところではありますが,そういったあたりに関して,インターネット情報検索サービス事業者と権利者との間でそういった協議の場があると非常にいいんじゃないかなと思っております。例えばトップページ全部を申請されても困るけれども,一部,本当に悪質なものに関して,協議が調ったものについては検索結果のそのサービスからは除外するといったような運用などができればと考えている次第です。
最後になりますけれども,「机上配付資料」の最後のページですが,これは現在御議論いただいている中での論点について一つ御意見させていただきたいところではありますが,今,リーチサイトの対応に関して「原作のまま」とかデッドコピーに限定するという話があるかと思いますけれども,これに関しては,先ほどの伊東様にもありましたとおり,侵害コンテンツにもいろいろな形があるので,解釈の問題になってくるとは思いますけれども,例えば動画の尺が違っているものとか,あとは動画のフィンガープリントをすり抜けるために,「枠」付き動画,反転させたり,明るさとか色味とか変えたりとか,あとは若干字幕とか吹き替えとか,そういった形で侵害者が手を加えたものなども上がっておりますが,やはりこれらも当然ながら抑止していただきたいものではあるので,このあたりについて除外されないように御配慮いただければと思います。
簡単ですが,私からは以上です。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
先ほど申しましたように,CODA様の御発表に対する質問は今受け付けたいと思いますので,今の御発表に対して質問がある方はどうぞお願いいたします。何かございますでしょうか。
では,もし次の御発表の後におられましたら,済みません,またお願いいたします。
では,続きまして,グーグル合同会社の山口様に御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【山口氏】よろしくお願いします。グーグルの山口です。資料7-1を基本に御説明させていただければと思います。今日は,弊社がどのように著作権侵害対策をとらせていただいているかということを御説明するようにということでしたので,先ほど伊東様や墳崎様から大分運用面について権利者側からということで御説明いただいたので,ある程度,重複するところもあるかもしれませんが,御説明させていただきます。
まず大前提ですけれども,グーグル検索は,もちろん検索エンジンとしていろいろと頑張らせてはいただいていますが,グーグル自体がイコールインターネットではありません。グーグルが今検索でやっていることは,ウエブ上にある60兆以上のページをキーワードに応じて瞬時にユーザーの方にお返しするというようなことを常にやらせていただいております。先ほどいろいろな先生から言っていただいて非常に有り難かったのですが,できるだけ中立的な立場でいろいろな情報を届けることということが弊社のミッションの一つになっております。とはいえ,私たちがこの検索エンジンを運営するに当たって,ユーザーの方に害のあるような情報ですとか,著作権を侵害するようなものを届けたいと思っているわけでは全くございませんので,そういった意味では弊社として著作権侵害については権利者の方々と一緒に戦わせていただいているつもりです。先ほども御指摘いただいたように,そもそも検索エンジン側でできることに限界があり,いろいろと運用面で改善できることがあるのかもしれないですけれども,一生懸命やらせていただいておりまして,本日はその取組を御紹介させていただければと思います。
まず大前提として,弊社の検索に来てくださっているユーザーの方々がどんなコンテンツを探そうとしているのかということについて,日本の面白い漫画コンテンツはたくさんございますので,それを探しておられる方は多くいらっしゃいます。先ほどの伊東様の御説明の中に,やはり「zip」とか「無料」とか「ネタバレ」とか一緒に入れると,そういった侵害コンテンツが見つけやすくなってしまうというような御説明がありました。今ちょうど画面に映していただいていますが,このページはリアルタイムにどんなキーワードがどれくらい検索されているかをキーワードごとに比較できるツールです。先ほど龍村先生からも御指摘ございましたけれども,こういったツールも無料で提供しておりますので,それぞれ御自身の携帯やパソコンからお使いいただけます。例えばさっき事例にありました『終末のハーレム』ですけれども,「終末のハーレム
zip」と「終末のハーレム」のみを比較してみると,今,青い線が「終末のハーレム」のみを検索している方で,赤い線は「終末のハーレム
zip」なのですが,ほとんどゼロに近いかたちで下の方に出ております。もし、検索量的な相対性がもう少し近いものですと,ある程度波が出るんですが,今は「終末のハーレム
zip」が余りにも少ないので,ゼロになってしまって,ちょっと比較することができないぐらい低い割合になってしまっております。そういった悪いものを探そうとしているユーザーはそれぐらいの差があるということがこれでお分かりいただけるかと思います。これを例えば「無料」と変えていただくなどしても,同じように確認することができるのですが,そういった形でそもそも海賊版みたいなものを探している方というのは本当にごくわずかな方だという前提をまず御紹介御紹介させていただいて,本日の説明に入らせていただきたいと思います。ありがとうございました。
資料の7-1の1枚おめくりいただきまして2ページ目ですけれども,先ほどからDMCAの御説明がありましたが,「Notice and Take Down」と「降格シグナル」,これらを基本モデルとしてやらせていただいております。アメリカのDMCAで求められているNotice and Take Downですけれども,これにのっとって5億5,800万のユーザーからのリクエストに対応しておりまして,98%以上削除させていただいております。これはもしかしたら先ほど墳崎様から御説明があったところとも近いのかなと思うのですが,基本的には正当な権利者の方,若しくはその代理人からいただいておりましたら,それらには全て対応させていただいております。残りの2%については申立ての不備ですとか,そもそも正当な方からの申立てではなくて,例えばライバル会社を陥れようですとか,自分の名誉毀損に至るようなことをあの手この手で何とか落とそうとしているような,例えば政治家の方ですとか,そういった例が報告されております。これらは,いずれも透明性レポートで紹介させていただいております。
次のページをめくっていただきまして,DMCAについてですけれども,アメリカの法律ではございますが,日本語でフォームを設けております。審査自体はアメリカの方でやっておりますが,日本の権利者の方からの通知もこちらで受け付けています。まず通知いただく必要がある情報としては,住所,電話番号など基本的な情報と,それからその方が権利者であるということ,どのURLに侵害コンテンツがあるかということをお示しいただいて,宣誓いただくといった形で,フォームでクリックして通知するという流れになっています。こういったフォームを通じて大量のリクエストが送られており,こちらを大規模に処理しております。このいただいたリクエストというのは,ここに書かせていただいているとおり,かなり大量ですけれども,何よりこういったものが早く処理するということが権利者の方に必要だと思っておりますので,Googleとしてもかなりの投資をして,平均で6時間以内にはこれらに対応できるようにしております。
この削除についてなんですけれども,これは日本国内だけではなくてグローバルの検索結果からの削除になります。この点につきましても,これDMCA自体はアメリカの法律ですのでアメリカ国内で対応していればいいということなのかもしれないですけれども,弊社としましては,著作権法が条約を通じて基本的にグローバルでハーモナイズされていることを前提として,最初に,どこに著作権侵害のものがあるかということだけは権利者の方に教えていただく必要があります。教えていただいたからには,これは海外であっても,この方が権利者であるという状況は変わらないであろうという前提のもとで,全世界共通の方法で対応させていただいております。これは,例えば日本で通知いただいたことが,ほかの国で反映されるのも同様ですけれども,他国で通知いただいたことも日本で見られない,検索には出ないようになっております。
次のページをおめくりいただきまして,先ほどのフォームはURLをやはり一件一件いただかなければならず,権利者の方にはかなりの御負担ということで,先ほどCODA様からも御紹介いただいたんですけれども,Trusted Copyright Removal Programというものを設けております。そのトラステッド・パートナーになっていただいた方については,バルクのリクエストが可能であるとか,専門の相談窓口みたいなものがアメリカの方に付きます。したがって,まず,どこに著作権侵害コンテンツがあるかということをグーグルに御一報いただくということがまず非常に大事になってきまして,正当な権利者の方からたくさんのリクエストをいただくことで,私たちは,この次に御紹介させていただきますような法律の要請以上のことも,これらの通知を根拠として活用させていただいております。トラステッド・パートナーになった方からは直接パートナーシップのチームに相談ができますので,例えばちょっと最近件数が増えてきたからもう少し通知を増やしたいですとか,こういう侵害の新しい形が出てきたので,今のフォームでは少し入れにくい,といった,そういう御相談をいただいて,対応させていただいております。
先ほどトラステッド・パートナーの方も含め,たくさんのDMCAの通知をいただくことが大事と申し上げましたのは,そもそもDMCAの削除通知自体はNotice and Take Downなので,Take Downさえしていればいいということなんですけれども,侵害のNoticeをせっかく私たちとしてはいただいたわけなので,これをもっと活用して,効率的にかつ広い範囲で著作権侵害と戦っていきたいと思っております。具体的には,DMCAの削除通知を検索結果のランキングを評価するアルゴリズムに活用して,悪意のあるサイトを検索結果上で降格するシグナルとして利用しています。基本的に降格シグナルは,削除通知が何件あれば降格シグナルが働くというふうに説明できるものではなく,また,降格シグナル自体を検索のあらゆるアルゴリズムの一つとして使っているものですので,例えば,大量のDMCA削除通知が大量に出されているサイトは,これは怪しいかもしれないという要素の一つとして加味されているものとお考えいただくと分かりやすいかと思います。ほかにもいろいろな検索のアルゴリズムのシグナルがある中での,一つのシグナルとして使わせていただいておりますため,この降格シグナルがなかなかいつ動くか分からないというような御不満,御意見もいただいておりますけれども,上記のような背景があることを御理解いただけますと幸いです。ただ,アクセスが多いサイトですとか,そもそもサイトの規模が大きい場合には,その規模に応じてシグナルが働きますので,DMCAの削除通知は絶対数としてはある程度いただいているんだけども,割合としてはまだ十分ではないといったことも起きますし,サイトに応じてシグナルが働くタイミングも異なってまいりますので,権利者の方が望むほど早急には働かないというような状況も確かに過去にはございます。Googleでは検索エンジンの順位は恣意的に変えるということは決してやっておりませんので,権利者の皆様から御覧になったときに,突然,ある日あるサイトの降格が利いたというふうに,少しびっくりされたかもしれないんですが,これは中で勝手に操作してシグナルを利かせたというわけではなく,まさに権利者の皆様にたくさんのDMCAの削除通知をいただいたからこそ,降格シグナルが利いたということだろうと思います。この降格シグナルが働きますと,検索のトップページには表示されなくなりますので,過去の経験ではトラフィックは平均で89%減少すると聞いています。普通のユーザーの方が,先ほど御紹介したように作品のタイトルで検索している場合には,2ページ目,3ページ目まではほぼ見ないようです。
次のページをおめくりいただきまして,Follow the Moneyという取り組みの御紹介御紹介です。このDMCAシグナルをいただいた場合については,そのウエブサイトのオーナーにグーグルの広告で資金が行くということは好ましくなく,決してそういった方々とGoogleはビジネスをしたいとは思っておりませんので,DMCAの削除通知の結果検索から削除されたウェブページに対しては,広告を遮断して掲載できないようにしております。これはベストプラクティスとして,ほかの会社さんや業界団体の方などとも共有させていただいておりますが,海外でもこれは大変効果的と言われておりまして,広告収入を遮断することで著作権侵害サイトの95%が閉鎖を余儀なくされるというイギリスの政府の調査もございます。
ただ,先ほど申し上げましたように,DMCA削除通知の濫用もやはり非常に重要な問題でして,私たちは,その点も問題視しております。6ページにグーグルが検索の削除に応じないケースということで掲載しております。DMCAの削除通知はかなり強力なツールとして設けていることから,こういった形で濫用されることもございますので,濫用と判明したものについては対応しなかったということを,更に透明性レポートでも載せております。
トップページについての御質問が先ほどございましたので,今回の資料にはないんですけれども,一応申し上げておきますと,トップページでも侵害コンテンツが掲載されている場合には,DMCAの削除通知をいただければ,もちろん,どんなページかというケース・バイ・ケースではあるのですけれども,削除できる場合もございます。一律にトップページだから駄目ということはないということを,事前にアメリカの本社の方に確認してまいりましたので,その点,御報告させていただきます。
以上になります。ありがとうございます。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
これで3団体,すなわち,出版広報センター様,CODA様,グーグル合同会社様から御発表いただきました。御発表いただきました内容につきまして御質問などがございましたら,どうぞお願いいたします。御質問の際には,どちらの団体にお尋ねされているかをお示しになった上で御発言いただきますようにお願いいたします。では,奥邨委員。
【奥邨委員】まず一つ目は出版広報センターの伊東さんにお伺いするのと,あともう1点はグーグルの山口さんにお伺いしたいと思います。
伊東さんにお伺いしたいのは,資料の4ページ,5ページの書き方で,少しよく分からないんですけれども,「リーチサイトが使用する海賊版ファイルの蔵置先はサイバーロッカー。大量に削除要請を送り削除されるも,リーチサイトは素早く再掲載し,常にダウンロードできる状態」ということですが,これはリーチサイトを運営している人とサイバーロッカーに侵害ファイルそのものをアップロードしている人が同一人物ということを前提にお書きになっているように思いますけれども,そういうことでよろしいですか。
【伊東氏】一応,この前のはるか夢の址の件でも,はるか夢の址の一味の連中が一応アップしていたという事実。
【奥邨委員】ですから,逆に言うと,ここでいう「大量に削除要請を送り」というのは,サイバーロッカーからファイルを落としてくださいと頼んでいるということ。
【伊東氏】サイバーロッカーにですよ。はい。
【奥邨委員】リーチサイトにリンクを落としてくださいと頼んで,そのリンクが再掲載されていると,そういう話ではないんですね。
【伊東氏】ではなくて,済みません,サイバーロッカーのファイルが再アップ,若しくはサイバーロッカー側が削除しないでリンクだけを別のリンクに書き換えているということが推測されております。
【奥邨委員】ですから,先ほどのはるか夢の事件もありましたけれども,日本でいえばもう1件,「どーじんぐ娘。」事件がありましたけれども,そういう形で同一人物がアップロードとリンク張るのと両方やっているということを前提にお書きと。
【伊東氏】はい,そうです。
【奥邨委員】分かりました。
山口様にお伺いしたいのは,先ほどグーグルさんにリンクを削除してもらうとき何を伝えるかという話のところでクエリーという話が出ていたんですけれども,この資料を拝見して,3ページですね。それから,DMCAの定めを考えてもなんですけれども,基本的にはこういうクエリーをしたときにということをお願いするのではなくて,権利侵害に当たるURL,すなわち,ここにこういう侵害物が載っていますという目的先のURLをお教えするということで,そうしたら,それが載らないようにしてくれると,そういう理解でよろしいですか。
【山口氏】はい。先生の御理解のとおりです。URLでいただいて,それはもし削除となりましたら,どんな検索クエリーであっても削除されます。
【奥邨委員】分かりました。ありがとうございます。
【茶園主査】では,上野委員。
【上野委員】グーグルの山口さんにお伺いしたいんですけれども,先ほどトップページでも検索結果からの表示抑制というのがなされている,したがってトップページだからといって一律に表示抑制されていないというわけではない,という御説明がありました。
実際のところ,漫画村については,――今は,サイト自体が存在しないから検索結果に出てこないだけなのかもしれませんけれども――サイトが存在するときから漫画村のトップページがグーグルの検索結果に出てこない時期はあったように認識しております。
これに対して,先ほど御紹介がありました「リーチサイトB」というものについては,そのトップページが検索結果から削除されていないということのようです。また,いわゆる「3サイト」と呼ばれる悪質サイトの一つであるMioMioにつきましても,現在,グーグル検索いたしますと,トップページが検索結果の冒頭に出てくるようであります。
そうすると,これはなぜなのか――「透明性レポート」を見ればある程度分かるのかもしれませんけれども――,権利者からの十分な数の削除リクエストがないということなのか,あるいは,漫画村とMioMioあるいはリーチサイトBのトップページでは何か質的な相違があるということなのか,ということについて,差し支えのない範囲でお教えいただけることがあれば,お聞かせいただきたく思います。
以上です。
【山口氏】特に質的な相違のために落とせないというよりは,ページ単位であれば,1件でも削除通知を出していただければ,それはNotice and Take Downの対象になり,Take Downできますけれども,ケースによっては,また新しくページをすぐに作られてしまったりですとか,毎回違うURLが表示されていたりといったケースが見受けられます。本当にこういった方はあの手この手を使いますので,権利者の方もたくさん大変な思いをされていて,私たちも6時間以内に対応しているんですけれども,それよりも速いペースでどんどんページを作られているのかもしれません。代替の作成が非常に低コストな中で,そもそも検索エンジンというものは,皆さんに地図をお示しするようなものです。ウエブサイトを建物とすると,ウェブサイト自体を私たちが持っているわけではないので,壊したりすることはできないという,そもそもの性格なものです。建物が存在する以上は様々な方法でたどり着けてしまうですとか,それから,建物も簡単に仮設で作れてしまうような状況がインターネットの特殊なところですので,そもそもDMCAという仕組み自体ももちろん限界がございますので,いろいろなパッケージで,資金源を断つですとか,そういったことも含めて私たちはやっていく必要があると思っております。
【上野委員】ちょっと私の質問の仕方が悪かったかもしれませんけれども,「MioMio」とグーグル検索すると,そのトップページが検索結果に出てくるという現状にあるのに対して,漫画村の場合はトップページが検索結果に出てこないように削除されているという,この違いについて,――サイト自体には質的な相違がないという御説明がありましたが――,するとどうして一方は検索結果に出てきて,もう一方は出てこないのか,ということをお伺いしたつもりでありました。以上です。
【山口氏】既に申し上げたとおり,個別の検索結果についてお答えすることは控えております。
【茶園主査】では,大渕委員。
【大渕主査代理】詳細に御説明いただきまして,ありがとうございます。降格なり広告を付けないなどトータルで考えるという部分は少し脇に置いておきまして,要するに基本はNotice and Take Downで,その基本のところに入ったときには,Noticeが来れば6時間以内かどうかは別として,Take Downするということだと理解しております。私は元から,間接侵害の理論から言っても,基本はNotice and Take Downだと思っているので,一般法理かなという気がするのですが,Noticeが,それがどの程度の特定性があるのか等々は別として,きちんと,はっきりと分かるものであれば,またイタチごっこで別のものが出てくるかどうかはまた第2,第3の話ですので,当該URLに関してだけ表示してくれるなということが来れば,それは対応できるということなのでしょうか。もう一つは,先ほど統一性,中立性という話がありましたけれども,例えば,裁判所の命令,オーダーがあれば,それに応じて降ろすのであれば,別に中立性ということは関係ないように思われます。自主的な判断で降ろすのであれば,どういうものを降ろすのかということはもちろん統一的かどうかの問題があり得るわけですけれども,裁判所の命令で差止めということに日本だとなるかと思うのですが,こういうものが来たらそれは降ろすということは先ほどの統一的なポリシー云々というところの問題は生じないのではないかという気がいたしますので,そのあたりをお伺いできればと思います。
【山口氏】Notice and Take Downが基本でございます。裁判所のオーダーがあったからとおっしゃっておられましたが,先ほども申し上げたとおりNotice and Take Down が根本的な考え方で,基本的に私たちは削除の方針をとらせていただいており,実際98%以上において削除させていただいております。中にはもう少し情報くださいというパターンもありますが,実態としては,民間同士でいただいたリクエストに対して対応させていただいていますので,わざわざ権利者の方に裁判を提起していただかなくても,私たちとしては対応させていただいております。
【茶園主査】では,前田委員。
【前田(健)委員】グーグルの山口様にお伺いしたいと思います。著作権侵害については,グローバルでDMCAの要件に従って対応しているとお聞きしました。ということは,著作権侵害に当たるかどうかの判断というのは基本的にはアメリカの著作権法に準拠してやっているということでよろしいのでしょうか。あと各国で著作権侵害の範囲とか,あるいは著作権侵害に関して法的に責任を負う範囲というのは違う部分もあるのではないかと思うんですけれども,そういったところについてはどういう考え方で対応されているのかということについて教えていただければ幸いです。
【山口氏】DMCAはアメリカの法律ですけれども,インターネットそのものの性格がグローバルだということで,DMCAモデルで対応させていただいております。何が著作権違反かどうかの判断というところですけれども,基本的にはアメリカ法の考え方はもちろん存在しますが,各国法についてもそれらに沿ってもちろんサービスを運営しておりますので,そういった形で対応しております。何より,何%著作権侵害のものがあったら,というような基準や,何リンク先までいいという基準があるというよりは,これを見たユーザーが著作権侵害のコンテンツに容易にたどり着くかどうかというところで判断しておりますので,侵害しているコンテンツを明らかに権利者の方が示してくださるのであれば,私たちはそれについて対応することができるようになります。そのために補足の情報をくださいとか,リンクが変わっているようですけど,教えてくださいとかということで何度かやりとりが発生することはあって,お手間を掛けているかもしれませんが,そういった情報さえいただければ,私たちはアクションをとることができますので,そのようにやらせていただいております。いただいた御質問にちょっと関連して,先ほど申し上げられなかったことを補足で申し上げたいんですけれども,今回,日本でもこういったDMCAのような,Notice and Take Downなのか,検索エンジンに対して知らせがあった場合に削除するというようなフォーマットについて考えられていると認識しております。日本の今のこの法律の議論については,私の同僚の韓国や台湾のチームもかなり注目しておりまして,各国それぞれ似たような法律を考えようとしているようです。そのときに,インターネットそのものは,先ほど申し上げましたようにグローバルなものですので,海賊版を作る人は1回インターネットに上げてしまえば世界中にそれを見せるようにすることができるわけです。一方で,権利者の方は各国の法律に基づいてしか対応できないとなってしまうと,日本で新しい法律ができて,それをベストプラクティスとしてほかの国が追随してしまうと,「検索エンジンに対しての削除」という限定的な範囲ではありますが,いろいろなフォーマットで削除通知をしなければいけないことになってしまい,逆に戦いのための時間を長引かせ,コストがより掛かってしまうんじゃないかと危惧しております。グーグルにDMCAで引き続きお知らせをいただけるのであれば,Notice and Take Downのみならず,より効果的な方法をとらせていただくことができますので,権利者の方々には引き続きDMCAを御活用いただきたいと考えています。DMCAの運用面での改善についても,例えばまだまだ新しい海賊版の形にフィットしていないといった点については,引き続きCODAさんや伊東さんなどとお話をさせていただき,民間レベルでやらせていただく取組の方が,私たちはいい戦いができる,権利者の方と一緒に著作権侵害に対して戦っていけるなと思っております。
【茶園主査】では,生貝委員。
【生貝委員】ありがとうございます。今の前田委員の御質問にかなり近付いてなんですけれども,今,基本的にグローバルに米法ベースのDMCAで御対応しているという話でございましたが,やはりこれ,特に200か国,グローバルに展開する中で,現状においては何かそれ以外の手続が必要になる国,例えばヨーロッパ等を含めて,今のところ特に共通のルールから逸脱する形なく対応できているという理解でよろしゅうございますか。
【山口氏】はい。アメリカとヨーロッパの著作権の担当の者に確認してまいりましたけれども,各国制度の関係でDMCAに追加で手続が必要なケースはないと聞いております。
【茶園主査】では,松田委員。
【松田委員】またしても山口さんで申し訳ないな。この議論の中でトップページの話を聞きたいと思っています。URL個別の請求に対して,それについては対応をとっているということで,それはほかの報告者からも聞いている。ところが,ある程度いくとトップページも削除するという状況があるというのも報告されています。そうすると,個別のURLの請求でない部分についても削除することになるんですが,その場合には請求がある件数以外のものについて何らかの内部的審査をして,これはトップページを削除すると判断するのですか。
【山口氏】トップページもページの一つですので,1ページ目か2ページ目か3ページ目かということでグーグルの方で何か区別を設けているわけではございません。トップページであっても,そのページに対するDMCAのリクエストをいただければ,そのDMCAのリクエストが正当であれば対応できるということになります。
【松田委員】請求者の方がURL,トップページが含まれている,その下にあるURLを幾つか削除要求して,しかるが故にこのトップページ全体を削除してくれという要求にはどういうふうに応じるのでしょうか。
【山口氏】もし私が,済みません,理解が正しくなければあれなんですけれども,権利を主張できる方が,トップページについてDMCAを御申請いただければ対応できます。トップページ以下にこれだけ悪いものがあるのでトップページもということはできませんので,トップページについても個別にDMCAの通知が必要であるということになります。
【松田委員】分かりました。
【茶園主査】ほかにございますでしょうか。
【伊東氏】済みません,ちょっと今の件で補足させてもらっていいですか。例えばリーチサイトのトップページというのは毎日作品が変わっているわけです。ある日は『進撃の巨人』がトップページに蔵置されているので,これは講談社さんが多分DMCAを申請すれば落ちるかもしれません。でも,翌日はスクウェア・エニックスさんの作品とかがあって,トップページにどの作品があるかによって,集英社が毎日トップページのURLのDMCA申請をできる状況ではないように今思いました。なので,我々は各出版社の作品のページを送るのが基本と考えております。
【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。
【龍村委員】確認ですが,若干誤解しておりましたもので,再度確認ですけれども,URLを特定すれば,その削除については,グーグルさんとしては削除に応じた以上は確実にもう検索結果として表示することはないということは保証されるということなんですね。
【山口氏】はい。検索結果には表示されません。
【龍村委員】そうすると,トップページから始まって下層階まで全部を網羅的に削除請求した場合,それがそれぞれ一応該当するとしたら,全部についてもう表示されなくなるということなんですね。
【山口氏】そうです。はい。
【茶園主査】よろしいでしょうか。
【龍村委員】もう一つ。そうすると,降格シグナルの問題というのは,削除に応じなかったものを対象にしているんですか。
【山口氏】もちろん理論的には,全てのページに対してDMCAが受理されれば,すべてのページ,つまりサイトがまるごとなくなるのではないかということは理論的にはそのとおりです。とはいえ,先ほど伊東様が御説明いただいたように,実際はそういったふうにいかなかったり,毎日毎日違うものを更新するみたいなサイトが多いものですから,なかなかウエブサイト全体をDMCA全ページを除外する状態にすることができません。一方で,DMCA 通知を大量に受け取っているページがある場合は,そのサイトが悪意あるものである可能性が推察でき,私たちとしてできる最善の策として,検索結果の2ページ目,3ページ目に落とそうということで追加的な措置をとっております。
【龍村委員】集中的にNoticeを与え続ければ下がっていきますという仕組みであると。
【山口氏】はい,そうです。
【龍村委員】ただ,そうだとすると,そういうサイトを見たい人は後ろから見ていけばいいわけですね。降格し切ったところから逆に見ていけば早く到達できる。
【山口氏】多分そういった方は何かしらの手段で,短いURLだったりですとか,ブックマーク,そもそもウエブサイトのURLを知っていれば,直接ブラウザーに打ち込めばサイトに行けてしまうわけなので,そこのどこかのページにたどり着いて,そこから上に行ったり下に行ったりしながらいろいろなコンテンツを見ることは,インターネット上に存在し続ける限りはやはりできてしまいます。
【龍村委員】クエリーとの関係を考慮しているものでは一切ないんですか。
【山口氏】このDMCAの削除は検索クエリーとは関係ないですが,もちろんどういうクエリーで探されているかということは,傾向を見る上では重要なことだと思います・先ほど御紹介したグーグルトレンドを使っていただければ,どれぐらいのユーザーがそういったコンテンツをそもそも最初から見に行こうとしているのかとかというところは御確認いただけると思います。
【茶園主査】では,今村委員。
【今村委員】済みません,どうしても質問したかったので。グーグルの山口様にお伺いしたいのですが,まず1点目として,お話を聞く限り,グーグル様の方ではNotice and Take Downで対応しているということなので,日本で新しい何か法規制をするしないにかかわらずやっているので,新たな法規制は要らない,なくてもやるということなんでしょうか。
2点目は,コストの問題をさっきお伺いしようと思っていたのですが,こういったシステムを導入するのにどのぐらいの投資をしているのか。中立性のある立場を維持しながら質の高い情報を世の中に提供するというのは現在の情報社会にとってはとても大事な,特に検索エンジンにとっては大事なことだと思います。それなりの投資は必要だと思うんですが,これは大手のグーグルさんだからこそできる技術開発なのかでしょうか,それともそんなに投資が必要ではないものなのでしょうか。ちょっとその辺をお伺いしたいです。検索エンジンというのは他にも世の中にあるわけですから。
3点目は,仮に日本で法律を作るとしたら,先ほどの話ですと,アメリカのDMCAのカーボンコピーみたいなものを作っていただいた方が助かると,そういうお話,そういうふうな理解なんでしょうか。要するに,似たようなものを作ってもらわないと混乱するから困るということ。
以上の三点をお伺いできればと思います。
【山口氏】御質問ありがとうございます。まず1点目について,そもそも法律がなくてもやるのかという御質問ですが,既にやっておりますので,引き続きやっていきます。
コストについては,私も幾ら掛かっているのかは分からないですけれども,そもそも著作権侵害は非常にゆゆしき問題だと思っておりますので,かなりのコストは掛けているものと思います。そもそもインターネットに存在する情報が膨れ上がってきている中で,6時間以内で迅速に対応するということだけでもかなりなコストだと御理解いただければと思います。
日本でアメリカのコピーがあったら,コピー版みたいなものだったら許容できるのかという趣旨の御質問かと思いますけれども,本件は,そもそもインターネットの性質を考えると,各国で個別の法律を作るよりもグローバルで共通のやり方で戦った方が効率がいいという点があります。海賊版を作る人はグローバルに,一瞬でコピーを上げられるのに対して,権利者の方が各国の法令に則り,それぞれの国に対して通知しなければいけなくなってしまうとコストが大きくなってしまい,効率的な海賊版との戦いができなくなるのではないかという趣旨において,現状のDMCAモデルで引き続き運用させていただく方が効果があるように思います。こういった形でベストプラクティスで各国で協力してやっていくという形の方が,昨今サーバーが海外にあるとかといった問題もあるかと思いますけれども,インターネットの性質を考えると,各国でガラパゴスな法律ができるよりは,そういったグローバルなベストプラクティスの方がいいのではないかなと考えております。
【茶園主査】では,大渕委員。
【大渕主査代理】繰り返しかもしれませんが,Notice and Take Downでやられているというのであれば,それをなぞるような例えば法律ができても,余り変わりがないということでしょうか。損害賠償は過去の侵害分について請求することができますが,差止めは,降ろしさえすれば,もうそれ以上のものを請求することはできませんので,先ほどお聞きしたように,自主的取組のような形で既に降ろしているのであれば,法律が仮にあっても余り変わらないというところがあります。 それから,グーグルさんがすごくきちんとやっておられるのは分かるのですが,ほかの検索エンジンの会社も同じようにやられているのでしょうかということをお尋ねできればと思います。
【山口氏】1点目の御質問は,おりているなら差止め,済みません,もう一度1点目の御質問を教えていただいてもよろしいですか。
【大渕主査代理】降りてさえいれば,法制度はあっても空振りというか,降りていない人に対して降ろせというのが法として要るわけですから,降ろしているのであれば要らないということなのでしょうか。そのあたりが少し気になったものですから。
【山口氏】理解しました。確かに,Notice and Take DownというTake Downの面についてはそうかもしれませんが,私たちNoticeを更に活用して,資金が行かないようにしたりですとか,降格させたりというようなことをプラスアルファでやらせていただいているものです。どんどんイタチごっこで出てきてしまうという中で,DMCAのフォーマットでいただくということが,一時的に検索から見えなくしただけではなく,せっかくいただいた,教えていただいたシグナルをもっと活用して,資金源を断つとか,追加的な戦いをしておりまして,日本法ができたり各国法ができたりして,そっちにシグナルが分散してしまうと,私たちとしては追加の戦いに使うためのシグナルが足りなくなってしまい,そういう意味では二重に通知の提出が必要になるかもしれない,といったことが考えられるかなと思っております。今のモデルの方が,Take Downについては先生のおっしゃるとおり実質的には一緒かもしれませんが,その先,追加的な手段としてやらせていただいているところの効果が減ってしまうかなという懸念がございます。
他社さんの運用についてはちょっと私は申し上げられないので,それぞれ文化庁の方経由で聞いていただければいいかと思いますが。
【茶園主査】では,最後に松田委員。
【松田委員】削除した後,権利者はこれでいいんですけれども,載せた方の人たちが削除したことによってグーグルに対して損害賠償を請求してきた,そういうケースというのはありますか。どれくらいありますか。それがまず一つ。その後,関連の質問があります。
【山口氏】損害賠償請求については,私が聞いている限りでは把握しておりません。本人同士でやってもらうことが基本ですので,その後,グーグルに対して何で落とすんだというよりは,権利者と申立てをされた側とでお話し合いをするというフォーマットになっております。
【松田委員】グーグルは直接,削除に対しての損害賠償は受けていない。仮定的な質問といいますか,想定ですが,各国,Take Downの要件というのは微妙に違うわけです。それで,DMCAの基準でやっていますと,各国のルールをクリアしたことになるのかという問題が生じるように思います。DMCAよりもいささかグーグルのある程度包括的な緩やかな要件を定めたガイドラインを作って,削除をする,場合によったら,総件数が上がらなくても,トップページをダウンさせるというようなグーグル固有のガイドライン,ルールを作って,それは当然各国の削除に関する規定を全部クリアしていることになります。そのようなルールを作ったとしたらどういう問題が生じますか。仮定の問題で答えにくいことは承知しておりますが,言ってみれば,私が言いたいのは,グーグルの固有のルールによってもっと削除を促進するという方法をとれないんだろうかということを質問しているわけです。
【山口氏】著作権については,まず権利者の方に,どこにコンテンツがあるかを教えてもらわないと,グーグルとしてはそれは分かりませんのでいずれにしてもまずはリクエストをいただく,Noticeをいただくということは必ず必要になってくるという前提です。その上で,グーグルが各国で定められている著作権の範囲というのを,全ての国の基準を包括するような緩やかな基準を設けて,それをガイドラインとして公表することで,より抑止的な効果が出ないかということと,より効率的にTake Downができないかという御質問ですね。それについては,ガイドライン,私たちがそもそもなかなか,例えば何件DMCAを上げたら降格するのか分からないとか,それから,トップページについても,どういう状況だったら降格するのか分からないというふうに,分からないという声をいただいていることも承知しておりますし,分かりやすく表示,何か公開できるようなものがあればいいんじゃないかという議論ももちろんございます。一方で私たちがやらせていただいている,例えば,この中で何%のコンテンツが違法であればTake Downするとか,リンクが幾つあって,そのうちの何個が違法だったらどうしますということについて,逆に公開してしまうと,その裏をかいてくる人という者ももちろんたくさんいるということです。私たちとしては,正規の権利者の方に,ここで侵害が起きていると教えていただけたときに,できるだけそれをTake Downするように,きちんと解釈できた方がいいと思っております。実際,今,98%達成できているんだと思っております。著作権侵害は財産権ですので,正規の権利者の方がおっしゃっているということが分かれば,濫用とのバランスはもちろん大事なんですが,プロセスに則ってお知らせをいただければ,私たちはNotice and Take Downで対応をとることができます。それはもちろん先ほどの最初の御質問にありました,損害賠償請求のところが免責になっているという,そもそもDMCAがNotice and Take Downだけではなくて免責規定がきちんと入っているからというところが大前提になりますけれども,そういう意味では,できるだけ広く解釈した方がいいと思いますので,そういった運用をしております。けれども,それを逆に公開してしまうとなかなか,海賊版の人たちにまた新しい知恵を与えてしまうだけですので有効ではないかなと考えております。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
私の不手際で,大幅に予定時間を越えておりまして,済みませんが,15時30分まででしたけれども,16時まで延長させていただいてよろしいでしょうか。
どうもありがとうございます。では,今までの検索サービス事業者の負うべき法的責任に関する議論,そして今の御発表いただきましたヒアリングの結果を踏まえまして,今後の検索サービスを通じた侵害コンテンツへのアクセス防止に向けた対応の在り方について御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。例えば,新たな立法を行うべきかどうかとか,あるいは,先ほどのヒアリングではグーグル様なりは現実にやっておられるということで,場合によっては,今のところはこれに任せて,更に運用を改善する方向で考えるべきとか,いろいろな御意見があるとは思いますけれども,何か御意見ございましたらお願いいたします。では,井奈波委員。
【井奈波委員】先ほどの御意見の,知りながら掲載し続ける場合は責任を負うということは不法行為の一般理論としては肯定できる話だと思いますが,それと,こちらで問題になっている検索結果のリンク情報を差止請求の対象とするかどうかというのはかなりレベルが違った話ではないかと思います。差止請求の対象とするとすれば,当然,違法かどうかの判断や撤去するかどうかの判断というのを自ら行わなければならないということになりますので,それをしなければ違法になるとすると,かなり企業活動に対する制約にもなりますし,表現の自由に対する制約にもなってくるのではないかと思っております。それを考えますと,検索結果の削除に対する差止めを認めるかどうかという議論よりも,その前提として,リーチサイトが違法であるかどうかを明確にすることの方が重要なのではないかと,そこをはっきりさせるのがまず重要なのではないかと考えております。
【茶園主査】ありがとうございました。
ほかに何か御意見がございますでしょうか。前田委員,お願いします。
【前田(哲)委員】特定のURLについて検索結果から表示されないようにすることは今現に行われているということだと思うのですけれども,それについて差止請求権を認めても特に問題はないのではないかと思います。ある著作物が検索結果として一切表示されないようにせよというような要求については,それをどうやって実行するのかという問題が出てくると思うのですけれども,URLが特定されて,その特定のURLの検索結果表示の差止請求であれば,それに応じることは検索事業者の方の大きな御負担になるわけでもないだろうと思いますので,そういう差止請求権を肯定することでいいのではないかと思います。
【茶園主査】ありがとうございました。
では,大渕委員。
【大渕主査代理】先ほど不法行為とあったのですが,資料2注6のポイントは,日本の場合,共同不法行為が広いので,それで損害賠償責任を認めるという判例ではなくて,行為主体性を認めて,差止めを肯定している判例であるという点であります。私はこれは幇助で認めてほしいと思っているのですが,行為主体性を認めているから,損害賠償というよりは,ごく普通の差止めの話になっていることであります。 そこのところは,このペーパーの作り方もそうですが,差止めを明記するかという点につきましては,自主的にやられているかどうかは別として,アメリカ法に準拠してやられているということですが,差止請求権があるのと同じ状態,要するに特定性のあるNoticeが来たら,きちんと特定のURLはおろすという形になっているので,そこをいわばエンドースする形になるだけではないかというのが1点目です。 それからもう1点,ここが少し皆さんと違うところなのですが,私はこの注6なり,私が前から間接侵害といっている,幇助者と見るのか,不作為による放置と見るかは別として,現行法でも対処できると思っていますので,先ほど法定されたというのが,リーチサイトやリーチアプリのときには擬制侵害で,恐らく113条になるかと思うのですが,113条というのは実質が新たな支分権追加なので,ここで何度も申し上げたとおりなのですが,そのような単なる幇助を超えたような,独立正犯的なリーチサイト・リーチアプリの話と,現行法の注6の延長線上にあるような検索のところの話とは,随分違ったものと思われます。なお,立法を考える際にも,私は明確化立法があってもよいのではないかとは思っております。いずれにせよ,性質が違うものを混ぜてしまうと議論が混乱しますので,擬制侵害の部分と,そうではない一般法理的な部分というのはきちんと分ける必要があるのではないかと思っております。
【茶園主査】ほかに何か。では,田村委員。
【田村委員】本日はまだ余り論点が出ていないようですが,この前は出ていたようで,トップページの問題をやはり少し考えなければいけないと思います。やはり今の著作権のたてつけというのは個人の権利者が請求することになっていますので,いろいろな多数の著作権者を束ねているような代理人の方あるいは仲介の方々が請求する分には容易なのですが,今までの著作権法の仕組みのように個別の権利者が請求できるとするのにはかなり無理があるように思います。もしかしたら,これは随分大きな話かもしれませんが,18ページに,集合的な意味での著作権の救済という位置付けにする必要があるという御意見が前回あったようですが,私もこうせざるを得ないかなと思っています。アナロジーですけれども,何か消費者団体訴訟のようなもの,つまりそれなりの権利者の関係の団体の方が請求する場合に認めるような特別の立法もありうるような気がしています。
【茶園主査】では,上野委員。
【上野委員】先ほどからの議論で,既にグーグルの実態として検索結果の表示抑制ないし削除が行われているのであれば,法改正によって権利者に差止請求権を付与しても,そんなに大きな負担を検索事業者に課すことになるわけではない,という御意見があったように思います。確かに,きょうのグーグルに対するヒアリングでは,現状において検索事業者に対する規制があるわけではないのに,自主的な運用として,著作権侵害サイトに関する検索結果の削除が行われているというお話でした。しかも,トップページについても一定の範囲で検索結果の削除が行われているということですので,その点ではむしろ今の事務局提案を超えているような取り組みさえ,グーグルの実務ではなされているということかと思います。その意味では,今回のような差止請求権を付与する立法をしても検索事業者に新たな負担を課すものではないという側面もあるのかもしれません。
ただ,現状の事務局提案によりますと,少なくとも主観要件につきましては,検索事業者が,「違法にアップロードされた著作物であると知った」ときに削除義務を負うことになるかと思います。この「知った」という概念の具体的内容にもよるわけですけれども,少なくとも知るための手段を問わない,つまり,誰かから電話が掛かってきて知ったというように,権利者からの通報でもないけれども結果として知ったという場合もこの主観要件を満たすということになりますと,これは現状でグーグルさんがやっていらっしゃるような運用を超えるようなものを改正によって要求することになるのではないかと思います。
したがって,差止請求権を付与する立法を行う場合,その内容によっては,必ずしも現状のグーグルさんの対応で十分であり,それ以上に追加の負担を課すことになるわけではない,というわけではなくて,結果として,現状以上の対応をグーグルさんに求めることになるのではないかと思いますので,それをどう評価するかということを検討すべきではないかと私は思います。
以上です。
【茶園主査】では,森田委員。
【森田委員】検索エンジンについてどう考えるかについて,この場でのこれまでの議論というのは,二つの異なる流れがあったように思います。 最初は,いわゆるリンク行為一般がいかなる場合に違法になるかということで,広い意味の間接侵害とか幇助に当たる責任を問うという流れの中で,リーチサイトと検索エンジンとを並べて,いずれも間接侵害の枠内で,悪質な侵害ということができる一定の場合に絞り込んで差止請求の対象とすべきか否かという議論をしばらくしてきたように思います。このうち,リーチサイトの方については,前回の議論において,場や手段などの客観的要件と主観的要件とで限定するという方向が見えてきたと思いますが,それと対比すると,検索エンジンの方については,削除請求の対象とすることが間接侵害や幇助といった問題なのかどうかという点については,いまだ方向性が定まっていないように思います。 先ほどからDMCAの議論をされましたけれども,DMCAのNotice and Take Downの要件というのは,別に間接侵害や幇助責任に当たる場合の要件を規定したものではなくて,その手続をしていれば責任を負わないという免責要件を規定しただけであって,どのような場合に間接侵害として責任を負うのかということについては,これとは別の一般法理に委ねられているという構造を持っています。そして,DMCAのNotice and Take Downに相当するような手続を日本法上どのように位置づけるべきかという問題は,既にホスティングサービスについてどう考えるかに関して,プロバイダ責任制限法の法案を検討するさいに議論をしました。そのときに,日本法では,なぜセーフハーバー規定を置かないことにしたかというと,免責規定だけ入れてしまうと,免責規定がなければ一般法上責任を負うという原則があるということになってしまうのではないか。免責規定を置くことによって,仮に免責規定がなければ責任を負うという民事上の一般法理があるという解釈が成り立つことになると,関連する他の局面において問題を生ずることになってはまずいので,そういう解釈がなされないような規定振りにしようと考えたわけです。そのほか,先ほど言及されたように,DMCAのNotice and Take Down手続では,Noticeがあれば削除するというだけでなく,これを争う相手方が一定の反対通知をした場合には,一定期間内に侵害通知者が相手方に対して侵害訴訟を提起しなければ削除された情報を回復しなければならないといった,それ以降の固有の手続がありますから,それらも含めてDMCA手続を日本法にそのまま導入する,先ほど「コピーする」という御指摘がありましたが,「コピーする」という法制は難しいということで,これを採らなかったわけであります。 その上で,ホスティングサービスにつきましては,ソフトローといいますか,プロバイダ責任制限法ガイドラインを作って,その中で実際上は迅速に削除するという枠組みが日本法の固有のものとしてできております。これはソフトローではありますけれども,TPPの枠組みにおいては,一定の要件を満たした通知がなされた場合には迅速に削除するという手続を定めたソフトローを有していることが,DMCAのNotice and Take down手続に相当するものを日本法が有していることを意味し,それを理由にTPPに適合しているという解釈が採られております。したがって,TPPへの適合性を担保するソフトローということであって,単なるソフトローではないという位置付けに日本法上はなっているということにも留意が必要です。今回は検索エンジンが問題となっていますが,これについても,先ほどからDMCAの手続が普遍性を持つものとして妥当するということだとしますと,それに相当するような手続を日本法内に導入するとすれば一体どのような仕組みで導入するのかが検討されるべきでありますが,ホスティングサービスについては既にプロバイダ責任制限法がありますから,それとの整合性も担保しながら,どのような法制を設けるのか,そのような課題設定になるのではないかと思います。
リーチサイトの運営事業者とは問題の性質が異なるのは,検索サービス事業者というのは著作権者と利害が正面から対立しているわけではなくて,それらの向いている方向は一緒であって,その意味では,協力関係を築くことができるということです。ホスティングサービスについてプロバイダ責任制限法ガイドラインの作成に向けて,著作権者とプロバイダの各団体が協議した結果,得られたことは,要するに,協議の場を持つことによって,お互い相手方の事情についていろいろな分からないことについて情報共有しながら望ましい方向に協議をして解決に向かっていくということができるということであります。仮に検索エンジンについても,そのような場を設定して協力関係を促進するような方策を考えることができれば,双方にとってより望ましいことではないかと思います。立法するのであれば,そういう流れを促進するのが望ましいものであって,単に検索事業者が侵害コンテンツであることを知っている場合には差止請求権を与えるという立法をしたとしても,きょう御紹介いただいたようなプラクティスを更に進める効果はなくて,その程度のことであれば既にやっています,そのような法律があろうとなかろうと関係ありません,というような立法をするだけであって,それでは余り意味がないと思います。検索エンジンの問題について,最高裁決定も踏まえて,ここでは著作権侵害についてだけ議論していますが,他の局面でも同種の問題が存在しますが,違法な情報であることを知っていれば全部削除請求に応じなければならないというポリシーを日本ではとるのかというような問題一般にも関わってきますので,検索エンジンに固有の問題として捉えて,リーチサイトとは切り離して,また間接侵害とは切り離して議論を詰めていくべきではないかと私は思います。
【茶園主査】ほかに何か御意見ございますでしょうか。では,生貝委員。
【生貝委員】ありがとうございます。今の森田委員の御意見とかなり関連する部分があるかと思うんですけれども,やはり僕自身,この解釈論としての著作権法というところというよりは,インターネットに関わる広く政策論というか,ルール形成を研究対象にしている中でも,やはり今様々な問題についてグローバルな自主規制で問題が平準的にもしある程度解決されているという事実があるのであれば,それはやはりインターネットのフラグメンテーションを避けるという意味からも,ある程度の尊重という部分は立法政策上,ある程度すべきという部分が殊この分野に関しては一つの向きとしては働くんだろうと思います。なのですけれども,しかし,やはりそこに,グローバルに共有されたルールの中に,日本という局面において運用の不十分がある,使いづらさがある,あるいは当然,日本独特の事情,漫画に関わる対応といったようなところを含めて問題があろうといったときに,やはり法としてのグーグルというのに全く口を出す方法がないというのは,これは恐らく望ましくはないといったときに,その継続的な是正の方法論というのをどのように図っていくかというのがやはり実質的な論点として大きいのかなと思います。ですので,今回の結論としても,やはり法を作る,あるいはdo-nothingという,1対ゼロというのではなくて,やはりその間にあるオプションというのも,これは複数考えた上で結論の議論というのは出していくべきではないか。これ,よく僕の分野ですと,ソフトローを用いた規制政策ということで,共同規制という表現で,これはヨーロッパのこのプラットフォーム政策の分野でも広く用いられているものでございますけれども,例えば著作権分野だけをとっても,今様々な意味で議論になっているデジタル単一市場のための著作権指令案,あれは13条のかなり議論があって,いわゆるコンテンツ検出技術というところに関して,権利者との協力によって,アグリーメントに基づいてYouTubeのようなプラットフォーム事業者が対策を行うということを,そして必要な情報を権利者の側にしっかり提供していくといったようなことも含めて法定するといったような,まさに法の関与が強いような共同規制のアプローチをとっていたり,あるいはグーグルさんが,特にもともとあれはイギリスでやられていたと思うんですけれども,Follow the Moneyのアプローチのような,政府の後押し,各国の規制当局の後押しを受けながら,やはりアグリーメント,自主規制ルールというものを共同で作って,そこにみんなでサインするというような方法もあるといったときに,恐らく4段階ぐらいの方法論が多分オプションとして考えられるんだろうといったときに,しかし,やはりこの分野は自主的に物事を解決してくださいというだけではなかなか進まないところ,ヨーロッパの方法論ですと,例えば3か月以内にアグリーメントを作る。そして,1年以内に効果がしっかり出ているかどうかというものを確認する。その効果が出ていなかったら新しい立法を行うということを,これ公式な立場として明示する。そういった時間と方法を区切っての対応というのが,やはり自主的な努力を促していくための立法政策的な方法論としては極めて重要であろうかと。日本でどうするかというと,例えばでありますけれども,例えばこういったような基本委員会の場所で,来年の何月までに問題が対応されていなければ,そのときは具体的な立法をしよう。それまでのまさに話し合い,フォーラムというか,アグリーメントをどのように作っていくのかといったような形の議論をするというのも一つのオプションとしては例えばあり得るのかと考えたところでございます。
少し長くなりました。恐れ入ります。
【茶園主査】ありがとうございました。
大分時間が延びてしまいましたので,最後に田村委員。
【田村委員】17ページのところで,上野先生のお話に関係するのですけれども,主観的要件について,事前に監視義務を課すのは適当でないと私も考えます。本日,グーグルさんが非常に強調していたのが,とにかく特定してほしいという話でした。検索サービスというのは,極めて当たり前ですが,極めて大量の情報を管理しているので,特定の方式でフラッグを立ててもらう必要があると思います。ですから,注16に書いてあるところに対応する本文は極めて正当なことを言っているのですが,「したがって」以下のところがそれを実現していないのではないかということが大きな問題だと思います。要するにNoticeというのは,認識ではなくて,ある程度一定の手続に従ったNoticeが必要だ,フラッグを権利者に立ててもらうというような要件を立てた方がいい,そういう意味では,従来の著作権侵害と違う責任に――もし作るのであれば,そういう責任にすべきだと思っています。特に上野先生がおっしゃっていましたけれども,主観によると,特に企業のときの悪意がよく分からないことがあると思います。裁判例でも,知的財産権の世界では,出願に基づく補償金請求権などで認識を要件としている制度もあるのですが,そこでは,特定の自然人の認識を問うことなく,一定の事情がそろうと会社そのものについて悪意と認定する傾向があります。ただ,そういうふうに認定する裁判例もあれば,他方で,弁護士さんたちの攻め方にもよるのでしょうが,会社内の特定の人の悪意を認定することあるという状況なので,主観によると,一体,そもそも自然人の特定を要するのか,かりに特定するとしてどこの誰の悪意なのか,担当者の方なのか社長なのか,そういう問題を起こしそうなので,もし立法するなら,フラグを立てさせる定型的な処理とすることが必要で,そのときは注15に対応する本文の方に書いてあること,つまり監視義務がないということがまずは本則となり,あとは技術的にそれをどのように実現するかということを考えるということだと思います。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
検索エンジンについていろいろ御議論いただきまして,ありがとうございました。
それでは,後半に移りまして,リーチサイト・リーチアプリ等への対応につきまして,前回の議論を踏まえて事務局で整理していただいておりますので,まず御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】本日,事務局の不手際で時間の延長になりまして,申し訳ございません。
資料2の4ポツ,リーチサイト・アプリ等への対応の議論でございますけれども,本日は焦点を絞って四角囲み,実線の部分の御議論いただきたい点について議論をお願いしたいと思っております。
まず8ページ,米印のリーチサイト運営者に対する差止請求についてです。これはサイト全体の削除ということではなく,リーチサイトの中の個々のリンク情報が侵害コンテンツにつながるものとなった場合に,網掛けのところにございますように,前回の資料では,個々のリンク情報が差止めの対象となる場合に,サイト運営者に対して差止請求ができるかどうかということにつきましては,参考として,2ちゃんねる小学館事件のことなど参照しつつ,間接侵害に関する一般論に委ねようという方向でございました。この点につきまして,四角囲みのところにございますように,事務局で関係者にヒアリングを行いましたところ,こうしたやり方というのは実際の実務とはちょっと離れたものであるとされ,サイト運営者に対して削除請求を行うというのが一般的であることから,差止請求の対象となる者やその要件を明らかにしてほしいという御意見もございましたので,この点,どうあるべきかということについても少し御議論いただきたいと思っております。
それから,10ページでございます。対象著作物の範囲につきまして,前回,「原作のまま」とか「デッドコピー」的なものに限定するかどうかという御意見をいただいたところでございまして,こちらは今,両論ございますところですけれども,そもそもデッドコピーというものがどういうものかという認識も共通していないという気もいたしますので,本日,こちらの実線のところにありますように,具体例を見ながら,こういうものはマルとかバツとか,そういう御意見をいただいた方がより認識の共通化につながるのではないかと思っているところでございます。丸1としまして,著作物の一部分を切り出したもの。丸2,映像の上下左右の端を少し切除したもの。丸3,映像の音声に字幕を付したもの。丸4,漫画のせりふ部分を翻訳したもの。丸5,2次創作。一応これらは完全な複製物というよりは,少なくともどこか一部分でも変わっているところがあるという例を取り出してみましたので,こういうものについて今回の法的対応の中で差止対象とすべきかどうかということについての価値判断について御議論いただきたいと思います。
それから,13ページでございます。刑事罰につきまして,前回,リーチサイト・リーチアプリ等におけるリンク情報の掲載行為,それとリーチサイト運営行為そのものの両方について罰則をそれぞれ設けるという方向で御議論いただきました。それに関連しまして,右側,13ページの実線囲みのところですけれども,法定刑について本日御議論いただければと思っております。法定刑につきましては,参考資料の方で現行著作権法の主に財産権侵害に関わるような部分の罰則の法定刑を御紹介しておりますので,そちらも御参考いただければと存じます。
以上でございます。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
それでは,今説明いただきました実線四角囲みの3点につきまして,まず御意見をいただきたいと思います。まず1点目の8ページのリーチサイト運営者に対する差止請求について,御意見がございましたらお願いいたします。前田委員。
【前田(健)委員】今回の差止請求において侵害行為として想定しているのはリンクを提供する行為だと思います。侵害者に対して要求できる行為として想定されているのはリンク情報を削除する行為だと理解しています。このときに何を侵害行為と捉えているのかというと,リンクをウエブページ上に書き込むという一回的な行為を問題にしているわけではなくて,恐らくですけれども,リンクが提供されているという状態を作出したことが侵害だということなのではないかと思います。そうであるからこそ,そういう侵害行為の停止請求としてリンクの削除ができるという整理なのかなと思っています。誰がリンクを提供しているのかということを考えるときも,そういう理解が前提にあるのかなと思います。ということは,現実にそのページ上にURLを打ち込んだと,そういう人だけではなくて,サイトを運営しつつ,削除する権限や義務もありながら,書き込まれたリンク情報を放置しているという者も,一定の場合にはリンクを提供しているという行為の主体になるということは当然なのではないかと考えております。そういう考え方ができると思うので,あえてリンク情報を現実に掲載するという一回的な行為をした者とそうじゃない者というのを区別して,そうじゃない者の責任をどこまで追及するのかということを具体的に法律で定める必要性というのは高くないように考えております。もちろんそういった点を明確にした方が予測可能性に資するというのはそのとおりだとは思いますけれども,柔軟に裁判所に解釈を委ねた方が,妥当に解決が導かれるということもあると思います。さらに,具体的にどう立法するかに依存するとは思うんですけれども,規定の置き方によっては,著作権侵害の主体の判断の方法論一般に対して悪影響がないのかどうかということが懸念されます。つまり,こういった拡張的な規定がない限り,侵害の主体について柔軟に判断してはいけないというような解釈を仮に招くのであれば,それは問題ではないかと思っております。
以上です。
【茶園主査】では,大渕委員。
【大渕主査代理】これは今まで申し上げたことの延長線上になりますが,ここに書いていただいている,8ページの薄墨を付けた部分が今キーポイントになっている部分だと思います。これ自体,私は賛成で,間接侵害というのは一般法理で,私は当然幇助者にも差止めができるべきと思っているのですが,直接侵害者限定ドグマというドグマが強くて,なかなか認めていただいていないのが現状なのですが,その話と,リーチサイト・リーチアプリではむしろ擬制侵害ということで,区別した方がいいと思います。単なる間接侵害というのは基本的に幇助で,基本は注6にあるような,知りながら放置のような,不作為によるものなのか幇助かは別として,かなり受動的な,要するに知りながら放置しているということなのですが,それよりは積極的にリンクを張っている人というのは,受動的な形ではなくて,もっと能動的であるということであります。先ほどの話に戻りますが,みなし侵害というのは支分権追加的なものであり,現行でいうと113条1項2号の知情頒布の延長の知情送信の補助のような形になるのかもしれませんが,そのような話とこの薄墨部分の話は同じではありません。受動的な運営者はこの薄墨部分のとおりだと思うのですが,やるのであれば,もっと積極的誘因であるような,単なる私が間接侵害と思っているような話でない,もっと正犯性の強いようなものをまた別途擬制侵害にしていくというような,いろいろなものが混じっているので,そこはきちんと分けて議論していくことが必要だと思っております。
【茶園主査】では,田村委員。
【田村委員】8ページの注6で関連判例として俗にいう2ちゃんねる事件が挙げられていますけれども,やはり2ちゃんねるとこのリーチサイトの運営者はかなり状況が違っていると思うのです。2ちゃんねるは,私の記憶の範囲では,これは漫画に関する論評の掲示板で,別に侵害物ばかり載っているわけではないですよね。だからこそ受動的と判断されて,こういう放置型の不作為でようやく主体性が認められるとなると思うのですけれども,リーチサイトの運営というのはむしろ,今回の定義ではリーチサイトは侵害の専用のサイトのように考えられていますが,その運営をしているということは,ここまでゆっくりとした責任を,ゆっくりというのはつまり,いろいろな事情が重なって,不作為だけれども,放置し過ぎているから作為とみなすというような法理でいく必要もないようなケースなのではないかと思います。それからもう一つは,この判決の後,皆さんよく御存じのまねき・ロクラク2判決が出て,特にロクラクが枢要な行為という基準を出していて,それが最近の下級審では,ロクラクが本来相手にした複製以外に伸ばしている判決が出てきている中で,2ちゃんねる事件と違って,非常に積極的に侵害を誘発するサイトの運営をしているということであれば,むしろ裁判所は2ちゃんねる事件の法理を使わないのではないかという気がします。ですから,2ちゃんねる事件の法理を前提で話さない方がよいように思っています。私の感覚は,前田先生によく似ていまして,裁判例できちんと押さえられるのではないかという気がしてはいます。ただ,立法することに特にすごく反対しているわけではないですけれども。
【大渕主査代理】
私はまねきTV・ロクラクⅡというのはもう何度も論文にも書いていますが,ジュークボックス法理という名称を使うかどうかは別として,全くの直接侵害なので,ここの議論とは混ぜない方がよいと思っております。
【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。
では,続きまして,次の10ページ目の対象著作物について,御意見がございましたらお願いいたします。では,田村委員。
【田村委員】連続してしまってすみません。これについては,デッドコピーの話でよろしいのですよね。
【茶園主査】はい,そうです。
【田村委員】先ほどちょっと申し上げたのですが,切り口として,10ページに書いてあるデッドコピーに限定すべきとする意見に私は賛成です。きょう例を挙げていただいて,確かにデッドコピーという言い方はいろいろと問題があります。先ほど,CODAさんの方から最後のページで幾つか出されているのですけれども,ああいうものはもう全て規制すべきだと思うのです。それで,切り分け方として,例えば可能性があるのは,「デッドコピー」とすると,定義が難しいという問題がある。あるいは,「原作のまま」と書くと,切り取った場合どうなるのかという問題がある。むしろ,創作的なものについて,場合によっては,パロディであっても現在は侵害という前提でお話をしているのかもしれませんが,例えば,新しい裁判例が出て,本質的特徴を直接感得し得ないという要件を活用するなどして侵害としないことになるかもしれないのですから,そのようなものを規制しないようにということが,デッドコピーに限定する案の一番の趣旨ではないかと思います。あるいは,そこまではいわないけれど,過度の過剰対応を防ぐために,基本的には悪質性の高いものだけに今回は絞って新たに立法するというのが,デッドコピーに限定しようとする意見をお持ちの方の,私を含めた人たちの趣旨だと思うのです。そうだとすると,分かりやすい基準として,むしろ27条と28条を省いた形の21条型の,具体的には,27,28を省いて,複製あるいはそのまま利用ですね。つまり,27,28がないときの無形も含めたそのままの利用を規制するような形の条文,テクニックがあるかなと思っています。そうすると,結局,切り取っていても,そこの部分に創作的に翻案が加えられていなければ全部規制の対象になりますし,複製あるいは,とにかく無形のものも含めて,そのままということで押さえられるのではないかと思いました。
【茶園主査】では,小島委員,お願いします。
【小島委員】田村先生がおっしゃったことに余り付け加えることはないのですけれども,私も墳崎先生が出されたものについては基本的には,いわゆる複製又はそれに類する範囲として,これらについては全て規制していいんじゃないかと感じていました。10ページのところでも書かれていることで,デッドコピーと要件を書くのか,これをどういうふうに書くのかということとも関わると思いますが,私はいわゆる「トランスフォーマティブ」なものではないようなものついては基本的に規制の対象にすべきではないかと思います。ただ,先ほどちょっと田村先生がおっしゃったところとも関わりますが,本質的特徴の直接感得という話をどういうふうに考えるかと。21条のときでも27条でも出てくるわけで,多くの事案を見ていますと,21条と27条両方を原告は請求してくると思いますので,このあたりの議論をもう少しちゃんと詰めた上でやるべきだということはそのとおりかと思います。ただ,私としては先ほど挙げられたPerfect10のケースとかでも出てきているかと思いますが,いわゆる「トランスフォーマティブ」なものについては議論が要するに長期化したり,早期の救済ということに反したりするんじゃないかと考えていますので,それらを除外するということが望ましいのではないかと感じています。
【茶園主査】では,大渕委員。
【大渕主査代理】私は逆の見解でありまして,通説的見解だと,実は翻案といっても表現者の何らかの個性が発揮されていればよいということになっており,恐らく先ほど出されたものは全部何らかの個性の発揮がないとは思えないので,そのような意味では,よく注意する必要があります。あのようなものも全部翻案になって,この規制から漏れてしまうと,文化審は何やっているのだということに必ずなります。翻案というのは実はそんなに大変なことでもないのであります。また,デッドコピー,原作のままというような絞りでは簡単に脱法されてしまいます。前回申し上げたとおり,最初のところで絞り込むしかないので,このようなところでやるのは無理だというように思います。そうすると,脱法を招来するだけになってしまいますので。先ほどのものは全部規制すべきだと思いますが,いずれも翻案に恐らくなってしまうと思います。
【茶園主査】では,前田委員。 27条,28条を除外することで対応できるかどうかということなのですけれども,具体的には10ページの丸4をどう考えるかということなのですが,私は丸4を対象に含めるべきだと思います。ただ,翻訳の部分があるので,確かに絵の部分だけ見れば翻訳・翻案は含まれていなくて複製だから,27条,28条を除外しても丸4はなお対象になるのだという理解ができるかもしれないのですが,少し気になります。それから,先ほどお話がありました,絵はそのままで色を塗っているというケースがあって,色を塗れば確かに創作性の付加があるのでしょう。私は結論としてはそれも対象に含めるべきだと思うのですが,それをどういう表現で対象に含めるか。他方,いわゆる2次創作的なものは除外するとして,その切り分けができる何かうまい表現を見つける必要があると思います。今,私自身は何もうまい表現は見つかっていないのですけれども,丸4は対象に含める。絵の線はそのままで,色を付けたものも含める。しかし,いわゆる2次創作的なものは除外する。その結果を実現するようなワーディングを何か考えていただければなと思います。
【茶園主査】では,上野委員。
【上野委員】そうすると,①から④までは差止の対象になって,⑤が外れるということになるかもしれませんね。だとしますと,「原作のまま」という言葉の解釈にもよるかと思いますが,一応,加戸守行氏の逐条講義によりますと,「原作のまま」かどうかは,原著作物として「複製権として機能する」行為か,それとも翻案など二次的著作物としての行為かという分け方をしていますから,――27条及び28条という権利によって分ける方法もあり得るかもしれませんけれども――,まさに「原作のまま」という文言を用いることによって,ちょうど①から④までが対象になることになると思います。例えば,④漫画のせりふだけを翻訳するというのは,漫画の絵の部分がそのまま残っているので「原作のまま」に当たります。
なお,漫画のせりふだけ翻訳したという例については,平成26年改正のときの国会でもそれは「原作のまま」に当たるとの政府答弁があったと承知しております。そのような意味でも,「原作のまま」という言葉が,――最終的にいいかどうかはともかくといたしましても――立法に当たって一つの選択肢になるのではないかと思います。
以上です。
【茶園主査】では,今村委員,最後に。
【今村委員】済みません,前回欠席したもので状況を正確に把握していないかもしれないのですが,この「原作のまま」というものという対象著作物の範囲というか,解釈の問題なのですが,差止請求の範囲とも関係していると思います。前回の議論かどうか分からないですが,9ページ目のところで,リーチサイト運営行為そのものの差止請求については,これはちょっと過剰になるということが書いてありますが,でも他方で,一つの書籍とか,一つの著作物でも全部差止めの対象になるというような,そういう意見もあったということでした。これが仮に一つの著作物でもリーチサイトの運営行為を全部止められるということになると,対象著作物の範囲について余り緩やかに範囲を認めてしまうと良くない気がしますけれども,そうではなくて,一つ一つのアドレスなんかをリーチサイト運営者に削除してもらうとか,そういう差止めであるとしたら,対象の範囲について緩やかに解してもそんなに差し支えないように思います。もちろん刑事罰の問題がありますから,そのこととの調整は必要だと思いますが,対象範囲をどこまでとするのかは,差止めの範囲とも関係しているのではないかと考えた次第です。
【茶園主査】どうもありがとうございました。
では,枠の三つ目の最後,13ページ目の法定刑につきまして,御意見ございましたらお願いいたします。深町委員。
【深町委員】こちらの方の法定刑,参考資料の方もありますけれども,今回新たに導入しようとしている犯罪は要するに二つの類型がございまして,一つ目はリンクを張った者,もう一つはリーチサイトを運営する者ということで,まず重要なことは,リーチサイトを運営するということが例えば注11のような社会的法益侵害だと仮にしても,社会的法益侵害だからといって,例えば法定刑が重くなるといったこととは直結しないということです。社会的法益侵害の犯罪は例えば刑法典にもたくさんありますが,別に窃盗罪,刑法235条の法定刑より高いかというと,そうではないので,私権侵害であるか,あるいは,要するに個人的法益侵害であるか社会的法益侵害であるかとは連動しない議論であるということがまず前提です。
次に,では,リーチサイトの場合はどうかといいますと,リーチサイトというものを先ほど,ずっとこの議論の前提であるように,専ら侵害コンテンツを集めているような場であると。そういった場を運営するということは,要するに,非常に大きな権利侵害性をもたらす可能性があるんだということを考えるのであれば,まさにこのリーチサイトという場の運営行為ということに着目した形での法益侵害性の高さと,個々のものを超えた非常に集合的な権利侵害性をもたらす高さということに鑑みると,個々のリンク掲載行為に比べると,全体として法益侵害性が高いというような構成が可能であると思われます。そのような観点から従来の法定刑のリストを見ますと,119条1項の10年以下ということと同じようにするというところまでみなし侵害でいかないとするのであれば,あともう一つは,2年以下というのはこれはやはり私的使用目的であえて処罰するんだというような,軽くてもいいから処罰するんだということだとしますと,この二つを除くとしますと,3年と5年の中で決まるという方向になるのかなと思っておりまして,あとは結局,個々のリンク掲載行為に比べて,リーチサイトという場の運営行為の方が重いと評価するかどうかに係るものと思われるわけです。このような観点から,例えば運営行為の方が重いとするならば,例えばそちらの方を5年にし,普通の場合は3年にするといったような形で差を設けるというのも一つの決断ですし,例えばそうではないと。具体的に言いますと,盗品等関与罪,刑法でいうと256条2項のように,盗品を有償で買い受ける場合と盗品の有償処分あっせん,ブラックマーケットの形成に寄与するような場合とでも法定刑は同じであるというようなことと考えて,両方同じにしてもいいんだという考え方もあり得るところでして,幾つかの立法のオプションないし選択肢があろうかと思うところです。
以上です。
【茶園主査】ありがとうございました。
ほかに何か御意見がございますでしょうか。よろしいですか。前田委員。
【前田(哲)委員】みなし侵害にするという前提で考えますと,今,深町委員から御指摘がありましたように,やはり5年か3年かというところになるのだろうと思うのですが,今回は悪質な行為を特に切り出して対象にするというところがございますので,5年か3年かという選択肢の中ではやはり5年が適切なのではないかと思います。
【茶園主査】ありがとうございました。よろしいですか。
では,特に御議論いただきたい実線四角囲みの3点について御意見をお伺いいたしましたけれども,その他の点について,もう予定時間が越えてしまっているのですけれども,特に今何か御意見がございましたらお願いいたします。では,奥邨委員。
【奥邨委員】中身について大きく問題があると思っているわけじゃないんですが,全体の整合性ということでいいますと,資料の6ページ,7ページ等々含めて,非常に重要な概念となっているのが,到達容易性という概念が出てくるわけです。ところが,前の方の例えば場とか手段を定義するところ,例えば4ページですけれども,到達容易性から見るのではなくて,自動公衆送信を助長するという方で見ていて,視点が逆になっているんです。どちらかといえば,リーチサイトというのは,例えばいろいろ議論があるように広告でもうけるということを考えても,視聴者を増やそう,閲覧者を増やそうということですので,視点としては到達を容易にするということで全体を整理する方が実態にもかなうと思いますし,例えば主観というのをどういう形で入れるかというのはいろいろ議論もあるのですけれども,どちらかといえば閲覧者との関係で到達を容易にするというようなことで説明がつく限りはした方が分かりやすいのかなという気はいたしました。
以上です。
【茶園主査】ありがとうございました。
ほかに何かございますでしょうか。
どうも,私の不手際で大分時間が延びてしまい,申し訳ありませんでした。では,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応につきまして,次回は取りまとめに向けて更に議論を深めていきたいと思っております。事務局におきましては,これまでの本小委員会での議論を踏まえまして論点整理をお願いしたいと思います。
他に特段ございませんでしたら,これまでにしたいと思います。本日は,延長に次ぐ延長で申し訳ありませんでした。
最後に,事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。
【秋山著作権課長補佐】次回小委員会につきましては,日程調整の上,改めて御連絡したいと思います。ありがとうございました。
【茶園主査】では,どうもありがとうございました。本当に長くなって済みませんでした。では,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第2回)を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――

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