文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第4回)

日時:平成30年10月29日(月)
16:00~19:00
場所:東館3階第1講堂


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方について
    2. (2)地理的表示保護法及び種苗法の審査手続等に関する権利制限について
    3. (3)著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化について
    4. (4)改正著作権法第47条の5第1項第3号に基づく政令のニーズについて【※非公開】
    5. (5)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1-1
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム 審議経過報告書(案)(669KB)
資料1-2
著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入と出版権制度との関係(123KB)
資料1-3
著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度が導入された場合の具体的事例における利用者の地位に関する整理(121KB)
資料2-1
地理的表示(GI)に関する資料(農林水産省提出資料)(1MB)
資料2-2
品種登録制度に関する資料(農林水産省提出資料)(597KB)
資料3-1
静止画(書籍)ダウンロードの被害実態(コンテンツ海外流通促進機構提出資料)(346KB)
資料3-2
ダウンロード違法化への意見、及び出版界の海賊版対策について(日本書籍出版協会提出資料)(180KB)
資料3-3
ダウンロード型海賊版サイトへの対応状況(日本雑誌協会提出資料)(753KB)
資料4-1
改正著作権法第47条の5第1項第3号の規定により政令で定める行為(サービス)のニーズ募集について(125KB)
資料4-2
改正著作権法第47条の5第1項第3号の規定により政令で定める行為(サービス)として位置付けるべきとの意見・要望が寄せられたニーズの概要【※非公開】
資料4-3
改正著作権法第47条の5第1項第3号の規定により政令で定める行為(サービス)として位置付けるべきとの意見・要望が寄せられたニーズの詳細(個票集)【※非公開】
参考資料1
特許審査手続等に関する権利制限について(857KB)
参考資料2
私的使用目的の権利制限について(141KB)
参考資料3
文化審議会関係法令等(抜粋)(47KB)
出席者名簿(42.6KB)
机上資料
改正著作権法第47条の5第1項第3号に基づく政令のニーズに関する議事進行予定表【※非公開】

議事内容

【茶園主査】では,時間が参りましたので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第4回)を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

初めに,議事の進め方について確認しておきたいと思います。本日の議事は4点ございます。(1)著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方について,(2)地理的表示保護法及び種苗法の審査手続等に関する権利制限について,(3)著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化について,(4)改正著作権法第47条の5第1項第3号に基づく政令のニーズについてとなっております。

議事に入ります前に,本日の会議の公開についてお諮りしておきたいと思います。議事のうち(4)番の改正著作権法第47条の5第1項第3号に基づく政令のニーズにつきましては,関係団体からのヒアリングを予定しております。このヒアリングにおきましては,実施を検討中の事業の具体的内容など,機微な情報もお話しいただくことになっております。このため,参考資料3として付けておりますけれども,文化審議会著作権分科会の議事の公開についての1.(3)に基づきまして,この議事は非公開といたします。

そのほかの議事の(1)から(3)につきましては,特段,非公開とするには及ばないように思いますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところでございます。

このような取扱いにしたいと思っておりますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。それでは,本日の議事のうち,(1)から(3)は公開ということにいたしまして,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただき,(4)の議題に入る際に,御退出いただくことといたします。

では,済みませんけれども,カメラの方につきましては,これで,御退出願いますようにお願いいたします。

では,議事に入ります前に,前回の開催以降,文化庁において,組織の再編及び人事異動があったそうですので,この点の御報告をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,御報告を申し上げます。

文化庁におきましては,10月1日付けで組織再編を行っております。従来,国際課が担当していた国際著作権に係る業務につきまして,著作権課に移管をされるとともに,著作権課内に国際著作権室が新設されております。これに伴いまして,10月2日付けで,文化庁著作権課国際著作権室長として,石田善顕が着任をしております。

【石田国際著作権室長】どうぞよろしくお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】以上です。

【茶園主査】よろしくお願いします。ありがとうございました。

それでは,まず,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第の配布資料一覧を御参照いただければと思います。

まず,資料1-1が,ライセンスに関するワーキングチームからの審議経過報告書の案でございます。

資料1-2,1-3は,これを補足する個別論点に関する資料となっております。

続いて,資料2-1から2-2までは,議事の(2)に対応した農林水産省からの御提出資料でございます。

次に,資料3-1から3-3までは,議事の(3)に対応しました関係団体からの御提出資料でございます。

次に,資料4-1から4-3までにつきましては,議事の(4)政令のニーズに関係する資料となっております。

なお,資料4-2,4-3につきましては,個別の事業内容が記載をされておりますので,非公開といたしまして,委員の先生方と事務局にのみ,配付をしているものとなっております。

参考資料1といたしまして,議事の(2)に関係をしまして,それと同趣旨で,既に設けられている特許審査手続等に関する権利制限の資料をお付けしております。

また,参考資料2といたしまして,議事の(3)ダウンロード違法化に関係する参考資料も付けております。

参考資料3は,先ほど主査から御紹介を頂いた議事の非公開の根拠規定でございます。

最後に,机上資料といたしまして,委員の先生方と事務局にのみ,議事(4)の進行方法について記載した資料をお配りしております。

非常に大部となっておりますが,不足などがございましたら,お近くの事務局員までお伝えいただければと思います。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

では,早速,議事に入りたいと思います。まず,議題の(1)番目,著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方についてです。

本小委員会の下に設置いたしました著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームにおきまして,著作物等の利用許諾契約に係る権利の対抗制度の導入に関しまして,検討の結果,一定の方向性が見えてきたということでございますので,その審議経過の報告を頂きたいと思います。お願いいたします。

【龍村委員】では,当ワーキングチームの座長をしております龍村の方から,御説明を申し上げます。

著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームでは,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する事項を,それぞれ検討課題として位置付け,専門的かつ集中的な検討を行うこととして,本小委員会の下に設置していただいております。

これらの検討課題に関する検討の進め方について,各検討課題が関連性を有しますものの,それぞれ独立して存在し得る制度に関するものであり,専門的かつ集中的な検討を要する論点を多く含んでいることから,本ワーキングチームでは,まず,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入について検討を行い,その後に,独占的ライセンシーに対し,差止請求権を付与する制度の導入について,検討を順次行うということといたしました。

こうした進め方を踏まえまして,まずは著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入について,対抗制度導入の必要性及び許容性,対抗力付与の在り方,あるいは,対抗に伴う契約承継の在り方,著作権分野における他の制度等の関係といった観点から,具体的な制度設計を検討してきたところでございます。

本ワーキングチームでは,利用許諾に係る権利につきましては,対抗要件を要することなく,当然に対抗できることとする制度,いわゆる当然対抗制度を導入することが適当であるという点については,ほぼ異論がなかったところでございます。

本日,本小委員会の直前にワーキングチームを開催いたしまして,審議経過報告書(案)について議論をいたしました。制度の大枠を含めて,ほとんどの部分について,変更はございませんでしたので,資料1の審議経過報告書(案)に基づいて,本ワーキングチームの検討結果を御報告いたします。

著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度につきましては,独占的ライセンシーに対し,差止請求権を付与する制度とは独立して,制度整備を行うことも可能であると考えられますため,早期の対抗制度導入を求めるニーズがあることを踏まえまして,先行して,可能な限り速やかに,導入を整備することが適当であると考えております。

なお,独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入につきましては,独占性の対抗制度の導入に関する検討と併せて,民法法理との整合性,制度の導入が契約実務に与える影響,他の知的財産権制度との整合性,著作権者の意思との関係などを考慮しつつ,権利行使の実効性を損なわないような制度の在り方について,継続して検討を行い,一定の結論が得られた段階で,改めて御報告させていただきたいと考えております。

審議経過報告書の詳細につきましては,事務局から追加説明をお願いいたします。

【澤田著作権調査官】それでは,私から審議経過報告書(案)の内容を御説明させていただきます。

資料1-1が審議経過報告書(案)となっておりまして,「はじめに」の部分につきまして,今,龍村座長から御説明いただいた内容が記載されております。

まず,問題の所在でございますけれども,現行著作権法では,ライセンス契約における利用者は,著作権の第三者に譲渡された場合に,その譲受人に対して,当該利用許諾に係る著作物を利用する権利を対抗する手段がございません。この2ページ目の図に書いてあるような事例において,利用者は,譲受人に対して,権利を対抗することができないといった点が問題となっております。

また,対抗制度がないために,ライセンサーが破産・倒産した場合に,破産手続等の開始時にライセンス契約が双方未履行の場合には,ライセンシーは,破産管財人等から契約を解除されるおそれがございます。

こうした状況から,ライセンスを前提とした事業を中止せざるを得なくなるなど,ライセンシーの地位は不安定な状況下にあると考えられておりましたので,今回,利用許諾に係る権利の対抗制度の導入について,ワーキングチームにおいて議論をしてまいりました。

ここで「利用許諾に係る権利」と申しますものは,非独占的なライセンスに係る権利であり,当該権利に基づいて,自ら著作物を利用できるということについての対抗制度であります。

検討論点としては,大きく,3つございまして,1つ目は対抗制度の必要性,許容性を含めた対抗制度の在り方についての検討,2つ目が契約の承継の問題,3つ目が他の制度との関係について議論をしてまいりました。

まず,,対抗制度の在り方について,3ページ目以降で,議論の結果をまとめております。

まず,対抗制度導入の必要性に関し,外部機関による調査研究によりますと,ライセンス契約の継続中に,ライセンサーが第三者に著作権を譲渡する事例ですとか,ライセンサーが破産する事例というものが,一定程度,存在することが確認されました。

その中には,譲渡人から引き続き,許諾を受けられる事例ですとか,そうした形で利用を継続できる事例というのは,多くございましたけれども,許諾が受けられずに,利用が継続できなかった事例ですとか,譲受人から許諾を受けるための追加の支払を求められた事例も存在したことが確認されており,やはり,この問題について,課題が存在することが確認されております。

4ページで,現行法上,何らかの対応ができないのかという点についての検討が4ページ以降にございまして,一部譲渡による対応という点については,著作権者の心理的な抵抗感ですとか,権利の細分化に関する問題があること,また,契約による対応につきましては,第三者に対する法的な拘束力がないことなどから,現行制度の下で行い得る対応では,ライセンシーによる著作物の利用の継続を確保するに当たり,限界があるものと考えられるとされております。

また,関係者の意見としても,ライセンシーの立場からは,ライセンス契約に基づくビジネスのリスクを感じており,対抗制度の導入を求める意見が多く寄せられたところであります。

他方,ライセンサーの立場からは,デメリットが生じるとの意見は特に見られず,むしろ,著作権者の意に反して,著作権の譲渡を迫られる状況を変えられる可能性があるとして,対抗制度の導入に前向きな意見も見られたところであります。

そうしたところを踏まえ,6ページ目の検討結果では,以上の状況を踏まえますと,ライセンシーによる著作物の継続的な利用には課題が存在し,また,現行制度による対応には限界が認められ,利用許諾に係る権利の対抗制度を導入する必要性が認められるとしております。

続きまして,対抗制度導入の許容性という点について,まず,6ページ以降で,民法法理を踏まえた法的分析について検討しております。8ページ,の検討結果の部分を御覧ください。対抗制度が導入されなかった場合には,ライセンシーは,利用許諾に基づく利用を継続することができなくなるという不利益を被ることとなります。また,ライセンシーとしては,事前に著作権の移転や破産を知り得ず,自らのコントロールできない事情によって,利用許諾に基づく利用を継続することができなくなるといった不利益が生じます。

他方,対抗制度が導入された場合には,譲受人などの第三者は,ライセンシーの利用を差し止めることができなくなるという不利益を被ることにはなるものの,自ら利用を行うことができ,他者に利用を行わせることもできるという地位には変わりはないしております。

これらを踏まえ,対抗制度を導入しない場合のライセンシーの不利益というものは,大きなものということが言える一方でこのライセンシーが被る不利益に比して,対抗制度を導入した場合の譲受人等の第三者が被る不利益の程度は大きくないと評価することができるものと考えられるとしております。

続きまして,著作権の利用許諾に係る実態等を踏まえた分析についての,検討結果が9ページにございまして調査研究の実態を踏まえますと,譲受人は譲渡等があった場合には,引き続き許諾を与えている例なども多く,対抗制度の導入がされた場合に,譲受人に生じる実際上の不利益としても,ライセンシーが被る不利益に比して,大きくないものと評価することができると考えられるとしております。また,独占的な利用を期待している譲受人に生じる実際上の不利益についても,同様の評価が可能であると考えられるものの,これについては,独占的な利用を期待していない譲受人に比しては,相対的に大きいものと考えられるとしております。

この点については,譲受人が独占的な利用を期待しているとしても,他人から著作権を買い取るときには,確認を行っているといったような実務の状況からしても,問題はないという整理がなされております。

対抗制度導入の許容性についての,検討結果でございますけれども,こうしたライセンシーの保護の要請と譲受人の保護の要請との比較衡量の結果,対抗制度導入を制度化することはできるとしております。

続きまして,対抗力付与の在り方ということで,対抗要件の要否やどのような対抗要件を要するのかという点について,検討をしてまいりました。10ページを御覧ください。

民法法理を踏まえた分析についての検討結果としては,譲受人に与える不利益が大きくないという評価を踏まえますと,善意の譲受人を保護する要請は,ライセンシー保護の要請に比して大きくないと考えられるため対抗要件なくして対抗できる,当然対抗制度の導入が適切であると考えられるとしております。

続きまして,著作権等の譲渡契約の実態等を踏まえた分析として,調査研究におけるアンケート,ヒアリングの結果を踏まえますと,現時点でも譲受人は,著作権の譲受け時に,他者への利用許諾の有無の確認を行っている場合が多いこと,また,譲渡契約上,ライセンス契約の不存在について,表明・保証させている例も,相当程度存在しているといったことや,秘密保持義務との関係等について,検討を行ったところ,特段,譲渡時の利用許諾契約の有無の確認の状況には問題があるとは見られなかったという結論になっております。

また,13ページ以降では,対抗制度に係る関係者の意見も踏まえておりまして,登録対抗制度や事業実施対抗制度,悪意者対抗制度などについての意見を照会しておりまして,16ページの検討結果では,譲受人は譲渡契約時に,利用許諾の存在に関して確認することは,十分に可能であること,登録対抗制度には,登録に係るコストに関する懸念が示されていること,悪意者対抗制度・事業実施対抗制度に関しては,立証の負担や困難性に関する懸念が示されていることから,ライセンシーの利用許諾に係る権利の保護の観点からは,当然対抗制度を採用するのが妥当であると考えられるとしております。

他の知的財産権法との整合性という点についても,検討をしております。特許法や実用新案法,意匠法においては当然対抗制度,商標法等については登録対抗制度が採用されているところ,著作権法については,どのように考えるのが適切かということについて検討をしてまいりました。

19ページの検討結果では,特許法等において,当然対抗制度が採用された理由のうち,主要なものが著作権法に当てはまる一方で,商標法において登録対抗制度が維持された理由は著作権法には,当てはまらないという評価がなされておりまして,そこから,他の知的財産権法の整合性の観点からは,当然対抗制度を採用することが望ましいものと考えられるとしております。

19ページ(4)対抗制度の在り方についてのまとめでありますけれども,以上,見てきたところからしますと,対抗制度につきましては,その導入の必要性が認められ,また,利用許諾に係る権利の安定性を確保するという趣旨や民法法理との整合性,制度の導入が契約実務に与える影響,他の知的財産権法との整合性などを踏まえますと,制度の導入によって,著作権分野における他の制度に悪影響を及ぼすなどの事情がない限り,いわゆる当然対抗制度を導入することが妥当であると考えられるとまとめております。

続きまして,検討論点の2つ目として,対抗制度の導入に伴う契約の承継の問題について検討をしてまいりました。

20ページ,以降で法的な分析について記載しており,契約の承継,いわゆる契約上の地位の移転については,民法上の原則としては,契約当事者の一方と第三者との間で,契約上の地位を譲渡する旨の合意がなされることに加えて,契約の相手方の承諾を必要とされております。

もっとも,不動産賃貸借の例においてこの原則の例外が認められていることを踏まえますと,著作権者とライセンサーの地位が分離することによる法律関係の複雑化を回避する要請が存在し,ライセンサーの交替が,利用者に不利益を生じさせない場合には,契約の承継を認めることも,選択肢としてはあり得るものと考えられるとしております。

関係者の意見としましては,やはり,法律関係の簡明化の観点から,契約は承継されることが望ましいといったような御意見が出てきておりますが,23ページの「ウ.契約承継についての考え方」記載がありますとおり,ライセンス契約の中には,著者が負う校正義務ですとか,ソフトウェア等の保守,修理,サポート,カスタマイズの義務など,誰でも履行することができるわけではない性質の義務が定められる例があることが確認されました。また,ライセンス契約において,一般に定められることのある著作者人格権の不行使特約のように,著作者がその義務を負わなければ,意味がない性質の義務も定められる例も存在しております。

こうしたところを踏まえますと,ライセンス契約全体を一律に承継させることとすると,ライセンサーの交替が,利用者に不利益を与える場面も想定されるため,ライセンス契約を一律に承継させる制度を採用することは妥当ではないと考えられるとしております。

また,契約の一部分だけを承継させるというような制度についても検討いたしましたけれども,法律関係の複雑化の問題などを踏まえて,慎重な検討が必要となるとしております。

また,他の知的財産権法において,当然対抗制度を導入している特許法におきましては,契約の承継については,法定の一律の基準で契約を承継させることなく,個々の事案に応じて,判断されることが望ましいと考えられるといった整理がなされております。

こうしたところを踏まえますと,利用許諾に係る権利の対抗に伴う契約の承継に関しては,一定の基準を法定して,契約が承継されるか否かが決定される制度を設けることは妥当ではないものと考えられ,契約が承継されるか否かについては,個々の事案に応じて,判断されることが望ましいと考えられるという結論になっております。

続きまして,27ページ以降で,著作権分野のおける他の制度等との関係について検討しております。具体的には,著作権等管理事業との関係,出版権との関係,サブライセンスとの関係という3つの点について検討をしてまいりました。

まず著作権等管理事業との関係については,信託譲渡型の管理委託契約の類型,委任型の管理委託契約の中に代理の類型と取次ぎの類型があり,この3つの類型におきまして,対抗制度が導入された場合の影響について検討をしてまいりました。

詳細は割愛いたしますけれども,34ページのところに信託譲渡型管理委託契約に基づく著作権等管理事業に関する,検討結果が記載されておりまして,対抗制度の導入によって,特に信託譲渡型管理委託契約に基づく著作権等管理事業に支障が生ずるような影響がないものと考えられるという検討結果となっております。なお書きでは,利用許諾に係る権利の当然対抗制度の導入に伴う契約の承継については,個々の事案に応じた解釈に委ねることを前提として,管理事業者としては,信託譲渡前に利用許諾契約が存在する場合は,管理委託契約が解約された場合などの対抗問題が生じる場面において,関係者間に混乱が生じたりすることがないよう,これらの場合に関して,管理委託契約や利用許諾契約において,規定を設けることが望ましいと記載しております。

41ページに記載している委任型の管理委託契約に基づく著作権等管理事業に関する検討結果も同様の内容となっております。

続きまして出版権制度との関係については,本日のワーキングチームでも議論をしていた関係で,資料1-2の4ページ以降に審議経過報告書の内容が記載されております。

出版権との関係では,利用許諾に係る権利の当然対抗制度の導入によって,未登録出版権のうち,著作権者から差止め等を受けることのないという地位について,登録なくして対抗できることとなるかということについて検討いたしました。具体的な場面としては,出版権が設定されたが,出版権の設定について,登録がされていない状況において,著作権者が第三者に対して,著作権を譲渡したという場面において,未登録出版権のうち,一部の部分について,利用できるという地位について対抗できるというような制度が考えられるかという点について,検討をしてまいりました。

この点ついて,ワーキングチームでは,ライセンスを受けた利用者の保護と出版権者の保護のバランスの観点から,未登録出版権についても,非排他的な利用の限度で登録なくして利用を継続することができるような制度的な措置を講じる必要があるとの意見もありました。

しかしながら,この点につきまして,著作権法上,利用許諾に係る権利と出版権については,それぞれ異なる性質を持った別個の権利として規定されているということ,出版権が排他的な権利であることを前提して,著作権者と出版権者との間には,特別な法律関係が形成されていることから,出版権のうち一部の地位についてのみ,当然に第三者に対抗することができるとすることについては,慎重な検討が必要であると考えられるとしております。

また,出版権については,その権利の性質から,登録をしなければ,自らの権利を第三者に対して,対抗することができないという制度とされておりまして,出版権を登録していなかった場合に,その地位を一定の範囲で保護しなければ,制度としてバランスを欠くということにならないものと考えられるとしております。

出版権者の保護に関しては,著作権者は,出版権設定行為とは別に,出版権者の利用を継続させることを目的として,利用許諾権原に基づく利用許諾(出版許諾)を行うことも可能であると考えられるとしております。

そうした出版許諾につきましては,利用許諾に係る権利の対抗制度が導入された場合には,出版許諾であるため当然に保護されるということになります。

ワーキングチームにおきましては,単に出版権設定契約を締結した場合であっても,当事者の合理的意思として,出版権設定行為とは別に利用許諾を行っていると考えることも可能であるといった意見も示されたところでありまして,そうしたところを踏まえますと,出版権の設定について,登録をしていなくても,出版権者は明示又は黙示の利用許諾(出発許諾)による保護を受けるということが期待できるといったところを挙げさせていただいております。

結論としては,利用許諾に係る権利の当然対抗制度の導入に伴い,出版権との関係で,制度的な措置は講じないことが適当であると考えられるとしております。

資料1-1にお戻りいただきまして,42ページに,サブライセンスとの関係について書かせていただいております。サブライセンスに関して,問題となりますのは,利用許諾に係る権利の対抗制度が導入された場合に,サブライセンシー持っている権利が,第三者に対抗することが可能となるのかといった点について検討をしてまいりました。

43ページにおいて,法的な構成についてはいろいろな議論があるものの,利用許諾に係る権利の対抗制度が導入された場合にはいずれにせよ,サブライセンスによって,サブライセンシーが得る権利については,対抗制度の適用を受けるものと考えられるとしております。

これまでの検討のまとめを,44ページ,に記載しております。これまで見てきました,とおり対抗制度導入の必要性が認められ,許容性も存在し,他の制度に悪影響を及ぼすとも認められないというろから,利用許諾に係る権利,非排他的なライセンスにつきましては,当然対抗制度を導入することが妥当であるという結論になっております。また,契約の承継につきましては,個々の事案に応じて判断がなされるのが望ましいということで,特段,一定の基準を法定することはしないことが妥当であるとしております。

このような,本ワーキングチームにおける検討結果を踏まえ,適切な形で利用許諾に係る権利の対抗制度が整備されることが適当であると考えるという形でまとめております。そして,対抗制度の導入については,早期の導入を求めるニーズがあることを踏まえまして,ワーキングチームのもう一つの課題である独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与に関する制度整備に先行して,制度を整備することが適当であるとしております。

私からの説明は以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいま御説明いただきました内容につきまして,御質問,御意見がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では,今,御説明いただきました内容につきまして,御了解いただいたと思いますので,今後は,この審議経過報告書の整理を踏まえまして,本小委員会としても,この課題について,取りまとめを行っていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

では,続きまして,議題(2)に進みたいと思います。議題(2)は,地理的表示保護法及び種苗法の審査手続等に関する権利制限についてです。

これは,農林水産省の所管する地理的表示保護制度及び品種登録制度におきましては,それぞれの審査手続の過程で,著作物が利用されておりますところ,迅速かつ的確な審査を図る観点から,特許審査等と同様の権利制限規定が設けられないかと,農林水産省から御要望を頂いているところでございます。

本日は,まず,農林水産省より,それぞれの制度の概要や著作物の利用実態等につきまして,御説明を頂きたいと思っております。

それでは,どうぞよろしくお願いいたします。

【尾﨑氏】どうもよろしくお願いいたします。農林水産省の知的財産課長をしております尾﨑でございます。よろしくお願いいたします。

私の方から,資料2-1と資料2-2に沿って,地理的表示の保護制度,植物の新品種,の登録の制度の関係で,どのような著作物の利用があるのかというようなことにつきまして,御説明をさせていただきたいと思います。

まずは,地理的表示の方でございます。資料2-1でございます。

1ページ目から順に参りますけれども,まず定義として,農水省のGI法上の定義を紹介させていただいております。地理的表示とは何かということでございますけれども,農林水産物・食品の名称でございまして,この名称から,産品の産地が特定できる。産品の確立した特性が,産地と結び付いているということが特定できるということでございます。

具体的には,下にその例としまして,市田柿が挙がっております。市田柿は,長野県の干し柿の名前でございますけれども,旧市田村というところで発祥の市田柿という柿を使いまして,底を川が流れている谷沿いの土地で作られる市田柿でございますけれども,底から上がってくる川霧などの影響で,湿度がある程度保たれるものですから,ゆっくり干し上がることによって,中までもっちりとした食感のきれいなあめ色の干し柿ができるということです。

この市田柿の品質,そういった美しいもの,評判が,この市田柿という名称を聞けば,皆さんに特定されるということで,こういった組合せ全体を,知的財産として,保護するという考え方でございます。

この地理的表示保護制度でございますけれども,WTO協定の附属書でございますTRIPS協定の中でも,知的財産権の1つとして,位置付けをされているところでございまして,特に諸外国でも100か国以上で,独立した保護制度を持って,保護されているということでございます。

1枚おめくりいただきまして,EUでございますけれども,EUは,こういったものの発祥の地でございまして,既に1,400ほどの農産物がGIとして登録されているということで,日EU・EPAでも,このGIを,日・EU間で相互に保護するということで,合意をいたしておりまして,こういった地域では,非常に歴史のある制度として消費者にも定着しているという状況でございます。

4ページでございますけれども,日本における地理的表示保護制度,農林水産物につきましては,比較的新しいものでございまして,平成26年に法律ができまして,平成27年の6月からこの制度が施行されております。

制度でございますけれども,制度の大枠,効果ということで,下に整理させていただいておりますが,生産者団体がその産品を名称,生産地,品質等の基準とともに登録をいたします。

そして,その基準を満たす生産者だけが,この名称である地理的表示を使うことができるということでございます。

この基準を満たす産品には,地理的表示に併せて,GIマークを付けるということでございまして,右側に赤い丸の中にGIと書いてございますけれども,geographical indications,GIのマークを付けて,ほかの産品との差別化をすることができる。

不正な地理的表示の使用につきましては,農林水産省の方で取締りをいたします。一般的な知的財産権の場合には,自ら保証して,知的財産権を行使するということが多いんですけれども,GIの場合につきましては,一定の地域の共有財産として,公的なものとして守るという要素がございますので,行政の方で取締りをするという特徴がございます。

その1つの典型といたしまして,生産者は独自でGIを独占するということではなくて,この登録団体に加入する等の自由が確保されておりまして,この団体への加入あるいは新しい団体を作りまして,GIに登録することによりまして,新しく入る方にも門戸が開かれているという制度でございます。現在,180ほどの申請がありまして,そのうち69産品が,現在までに登録をされております。

5ページに,その様子がございますけれども,国内の68産品,プラス,イタリアからの申請がございまして,イタリアのプロシュット・ディ・パルマという生ハムが登録されているということです。

これまで,この産品,物の性質によりまして,審査に係る期間というのはまちまちでございますけれども,押しなべますと, 1年ぐらい,370日ぐらい掛かっているという状況でございます。

GIを登録することによりまして,いろいろな効果がございますけれども,基本的には知的財産権として,名称が保護されるということでございまして,GI登録の効果ということで,4つ挙げております。模倣品の排除。左上のところが,本来的な制度の効果でございます。

ただ,この登録に当たりまして,登録されたということがニュースになりまして,メディアの注目を浴びるとか,あるいは,登録産地において,登録の過程において,名称でありますとか,製法が統一されるといったようなことが行われますので,そのことを通じて,取引の拡大でありますとか,担い手の増加といった副次的な前向きな効果も出ているという状況でございます。

おめくりいただきまして,7ページでございますけれども,ここからが,具体的な登録の手続についてでございます。

生産者団体からから,まず,申請を受けますと,この頂いた申請,農林水産省の方で内容を確認いたしまして,必要に応じて,補正をいたします。補正を求めて,その必要な書類等を出していただくということでございまして,その後,公示をいたします。

公示をいたしますと,この公示期間,3か月の間に,利害関係者等から意見書が出てくるということがございます。

意見書の締切りの後,学識経験者の意見を,その申請について聴取いたしまして,その意見を踏まえて,農林水産大臣が登録を行い,公示をするといったプロセスで進めてまいります。

GI登録の審査において,要件としては,大きく分けて,3つございます。8ページにございますけれども,産品に関する基準,産品の名称に関する基準,生産者団体や生産行程管理に関する基準ということで,大別できます。

特にこの中で,ア,イ,ウとありますけれども,ウの部分は,生産者団体に決めていただいた文書を出していただいて,それを審査するということですけれども,産品の基準でありますとか,名称に関する基準を審査する際に,いろいろ著作物等の利用が出てくるということでございます。

具体的には,9ページ以降でございますけれども,例えば,産品に関する基準を確認する際には,例えば,いろいろな特性があるということになるわけでございますけれども,ほかにはない独自の品種の科学的な特性があるとか,特徴的な外観があるといったような場合,それが,どういうような形で確認できるのか。 伝統的にいろいろな技法が伝わっていて,そこが特性に結び付いている。

あるいは,その地域においては,特殊な気候等々がありまして,それが,産品の特性に結び付いているというようなことになりますと,そういったものについて,どういった文献が根拠として示されるかといったことが,我々にとって,審査の都合上,非常に重要だということでございます。

また,この特性につきましては,定着性と我々は呼んでおりますけれども,その特徴が,25年以上継続されているということが,我々の方の審査の要件になっております。ということで,例えば,25年前に,こういった活動の記録がありますとか,こういったものの生産の記録が残っていますというようなことで,当時の新聞でありますとか,あるいは,そういった食文化等々の文献などの記録があるといったようなことが,我々の審査上,非常に参考になっているという状況でございます。

名称につきましては,使用実績があること。他のところで使われているかどうか,ほかの団体が使っているかどうかといったようなことが,非常に重要になってくるということでございます。例えば,登録を目指す申請者以外の団体が,同じような名称で,例えば,通販サイトなどで販売をしているといった場合には,そういった情報が,審査上,非常に重要になってくるというようなことでございます。

11ページでございますけれども,この著作権に関する我々の方のお願いということでございますけれども,GIの登録要件で,こういった特性の有無については,文献や新聞記事などで,疎明していただくということが,一般的に行われております。

このために,著作物の利用が必須であるわけでございますけれども,現状,申請者が,申請時に許諾を得ていますということを一緒に出してくるケースは,ほとんどないということでございまして,申請後に補正をお願いして,著作権者の許諾を得るために,差戻しというようなことが常態化しているような状況でございまして,迅速な審査に支障を来しているということでございます。

また,その結果として,許諾が得られないというようなことがありまして,資料が出せなくなるということもございまして,適切な情報が利用できなくなるというようなことも,あり得るということでございます。我々としても,こういったものが,的確・迅速に提出していただけるということが,GIの審査の観点から,非常に重要であろうと思っております。

特にGIにつきましては,登録前から名称の使用をしている第三者につきましては,先使用として,保護の及ばないところに出て,使用が継続されてしまうということになりますので,審査が長期化するということにつきましては,先使用が増えてしまうというようなことも考えられますので,我々といたしましては,この著作物の利用をしながら,審査を迅速に進めてまいりたいと考えているところでございます。

以上がGIの方でございます。

続きまして,資料2-2をお開きいただきまして,今度は,私どもの方でやっております品種の登録につきまして,御説明をさせていただきたいと思います。

品種登録の制度の概要というところからでございますけれども,新品種を育成した者は,その品種を国に登録することによりまして,育成者権を得まして,登録された品種の種苗,収穫物,加工品の販売等について,独占的な権利を得ることができるということでございまして,育成者からの出願を得て,我々の方で,審査・登録の手続をとりますと,権利が付与されまして,育成者権が基本的には25年,木本の植物の場合は30年ということで,その期間の間,許諾して,利用者からは利用料を頂くとか,あるいは,無断の利用については,民事上の措置,刑事上の措置によりまして,侵害を抑制するというようなことが行われるということでございます。

品種登録につきましては,2ページにありますような手続で行っております。出願に対しまして,方式審査,名称審査等を行いまして,補正を行うということでございまして,その後,出願公表して,栽培試験ということで,いろいろな既存の公知の品種との差などを見まして,その後,登録に至るものは登録になりますし,仮に登録できない場合には,拒絶理由の通知,意見書の提出といったような手続を経て,登録あるいは登録拒絶といったような処分をいたしております。

この品種登録につきましては,3ページに掲げているような要件を見ておりまして,この要件を全て満たした場合に,品種登録されるということでございます。

1,2,3,4,5とございますけれども,区別性というのは,今まである,公然知られた他の品種,公知の品種と申しておりますけれども,これにつきまして,いろいろな項目に分かれた形質に沿って,審査をいたしまして,一部,少なくとも1つ,明確な差があるということでございます。

均一性,安定性というのは,均一性は,その同一の品種の群が全部の形質において類似していること,安定性というのは,世代を超えてその全部の形質が安定しているというものを見るものでございます。

未譲渡性につきましては,これまで,その出願日よりも1年以上前に,その種苗等の譲渡が行われていないことということ,また,名称につきましては,品種の名称が適切かどうかといったようなことを審査しております。

年間,1,000件程度の出願がございまして,私どもの方で,申請者からの申請を審査していくわけでございますけれども,その際に,やはり,学術論文でありますとか,植物図鑑の利用等々を行っているところでございます。

5ページでございますけれども,その中で,具体的にどういったところで,この著作物の利用が行われているかということでございます。

出願者から,農林水産省の方に,書類を提出する際に,例えば,今まで出願がなされたことのない,新規の植物につきましては,その植物の学名でありますとか,特性などを説明するために,出願者の方で,植物図鑑等の写しを添付していただくときがございます。

あるいは,今まで見ていなかった新しい形質について,そこも見てほしいということで,新設を求めるような際には,そこの部分の形質についての根拠として,学術論文の写しなどを添付していただくという場合がございます。

さらには,栽培試験の結果,私どもの方で,品種登録要件を満たさないというようなことで,拒絶の理由をお示ししたときには,意見書で反論する機会がございます。例えば,私どもの方で,花の色が不揃いであるといったような形で,均一性を満たしていませんねというようなことで,拒絶理由を通知したときに,そういったものについては,特定の条件下では,異形タイプが出るんだといったようなことについて,学術論文などを写しで添付していただけるような場合といったようなことがあり得るということでございます。

また,私どもの方で,いろいろな未譲渡性の審査などをしておりますときに,例えば,過去の取引,あるいは通販サイトなどで販売などをしているような情報があれば,そういったものが,我々の方で拒絶理由を通知するときに,根拠となって,お示しをするような実態があるということでございます。

こういったことを,我々としては,的確・迅速にやっていきたいと思っておりまして,著作権者からの了承が得られなくて,出願のときに添付ができない場合,あるいは,場合によっては,我々の方で持っている著作物で,それをお示しするに当たって,同じものが出願者側で入手できないような場合もございまして,そういった場合には,出願者の方で確認ができないというようなことがあり得る。

名称変更命令等に基づく変更の期限が30日とか,意見の提出期限については60日といった期限もございますので,期間内に迅速に書類が提出しなければならないことを考えますと,著作者の同意を得ずとも,審査手続において,著作物が利用できるようにしていただくことが非常に有益ではないかと考えております。

6ページに出ておりますものは,そういったものが,具体的にどういったものが考えられるのかということでございます。

まさにちょうど説明したような新規植物についてのいろいろなデータでございますとか,新しい耐病性でありますとか,機能性といったようなものについての情報でございますとか,あるいは,過去の我々の方の説明に対するいろいろな根拠になるような論文があれば,そういったものも役に立ちますし,私どもの方でも,その過去の取引情報みたいなものがあれば,我々の方で未譲渡性を判断する上で,非常に重要であると考えているということでございます。

この後は,参考資料でございますので,適宜,御参照いただければと思いますけれども,1点だけ,8ページに,いろいろな方からの申請の出願者のシェアが入っております。品種登録につきましては,日本においては,まだ,個人の育種家さんによる品種の出願が26%ということで,こういった方につきましては,やはり,学術論文等々のアクセスにつきましても,限られている部分もございますので,私どもとしては,そういったところについては,便宜をできるだけ図っていきたいと考えているところでございます。

説明につきましては以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいま御説明いただきました内容につきまして,御質問,御意見等がございましたらお願いいたします。

では,大渕委員。

【大渕主査代理】詳細な御説明をありがとうございました。

現行制度では,特許等審査手続には権利制限があるので,先ほどの各審査の手続が,特許等とどこが同じで,どこが違うかということをお聞きすると,イメージが湧きやすく分かりやすくなるので,その点を教えていただければと思います。

【尾﨑氏】まず,GIの方は,どちらかというと,商標に近い部分があろうかと思います。国によっては,証明商標でGIを守っているようなところもございますので,そういった意味で,まず申請を受けて,公示をする。公示の中で意見書が出てきた場合には,そこを処理するという中で,いろいろなデータ等々が出てくるわけでございます。

そこで,少し商標との違いを言えば,産品そのものの製法等々も,審査の対象に入っておりますので,そこの部分において,産品の歴史でありますとか,製法の特徴といったようなものが出てくるということでございます。

種苗の方は,おっしゃるとおり,特許の方に近いものがあろうかと思いますけれども,こちらの方は,名称が出てきますので,名称のところは,少し違う部分があろうかと思いますけれども,基本的には出されたものについて,我々の方で,植物を栽培比較して,その差を見極めるというところが,審査の一番の中心になる部分でございます。

ただ,その前提になる比較する項目の部分につきましては,我々の方で,審査の基準を作っておるわけでございますけれども,ここについて,新しいこういう目でも見てほしいといったようなところが出てきまして,そこのところは,申請者から,こういったものを加えてほしいというようなことが出てくれば,そこは随時,いろいろなデータなどをもらい,参照しながら検討して,審議会にも諮りながら,決めていくということになっております。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では,どうもありがとうございました。

本日のヒアリングを踏まえまして,事務局には,本課題につきまして,論点等の整理をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

では,議題を進めたいと思います。

次に,議題の(3)著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化についてでございます。

近年,インターネット上の海賊版サイトによる著作権侵害が深刻化している状況でございまして,政府では,知的財産戦略本部の下に,インターネット上の海賊版対策に関する検討会議が設けられておりまして,総合的な対策について議論が行われてまいりました。

その中で,出版社等から,著作権を侵害してアップロードされた静止画,書籍ですけれども,そのダウンロードによって,相当程度の被害が生じているということを踏まえまして,音楽,映像と同様に,ダウンロードを違法化すべきだという意見が出ております。

また,平成21年の著作権分科会報告書におきましても,音楽・映像以外の取扱いにつきまして,複製の実態等を踏まえまして,引き続き検討を行っていくということとされておりました。

このため,本日は,まず本課題に係る被害実態等について把握を行うために,CODA様,日本書籍出版協会様,日本雑誌協会様の3団体の皆様より,ヒアリングを行いたいと思っております。

流れといたしましては,まず3団体の皆様に順番に御発表を頂きまして,その後にまとめて,皆様から質疑応答及び議論の時間を設けたいと思っております。

時間の関係上,各団体の御発表の時間は5分程度でお願いできればと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

なお,傍聴者の皆様におかれましては,写真撮影等はお控えいただきますようにお願いいたします。

それでは,初めに,CODAの後藤様より,お願いいたします。

【後藤氏】後藤でございます。本日は,貴重なお時間を頂きまして,誠にありがとうございます。

それでは,資料3-1でございますが,静止画(書籍)ダウンロードの被害実態というペーパーでございます。

いわゆる被害の実態といたしまして,ストレージ,サイバーロッカー,両方の言い方がありますが,これが1つあるということです。もう一つは,P2Pがございます。大きくこの2つに,被害が甚大だということでございます。

まず,1つ目のストレージでございますけれども,海賊版サイトを介し,ストレージから配信される漫画・雑誌ダウンロードによる被害ということで,昨年の10月31日,福岡県警をはじめとします合同捜査本部が検挙しました「はるか夢の址」に関する被害額であります。

これは,警察からの照会に基づきまして,ACCS(コンピュータソフトウェア著作権協会)が発表した数字でございまして,731億円という数字でございます。これは,警察の捜査によって裏付けられた資料でございますので,この金額というのは間違いないのであろうと思います。

一応,アクセス数の総数としまして,約1億3,400万と推定をされております。

3つ目の丸ですが,2016年の9月から2017年の6月までのアクセス数,セッション数です。これと,上記のダウンロード数の比較によりまして,導き出されました数字として,全アクセス数の11.28%がダウンロードを行ったと推計がされるというケースが,導き出されてまいります。

「はるか夢の址」の後も,このようなストレージを介して,運営している同様なサイトは数多くございます。今回,4つを対象,主要4サイトということで,調査をしました。裏面でございまして,サイトA,サイトB,サイトC,サイトDということで,掲載ファイルということで,このような数のファイルが掲載をされております。

アクセス数についても,合計で,過去6か月間で,2億を超えるということでございます。

このサイトのアクセスでありますが,75.9から94.35%と,日本からのアクセスが大きくを占めているということです。

4サイトにおける被害額の合計ということを計算しますと,738億円ということが推定されます。主要4サイト,それぞれアクセス数に,上記の先ほど申した推計値11.28%を掛けまして,ダウンロード推計ファイル数を推計いたします。

次に,1ファイル当たりの平均冊数を乗じます。この場合,いわゆるZIPとかRARなど圧縮ファイルで流通しておりまして,多い場合は,『名探偵コナン』1話から95話が1つに入っているとか,『こち亀』は1から200話,全部入っているとか,そういうふうなことがございます。

したがいまして,その辺のファイルの平均冊数を乗じまして,更に,各サイトのコンテンツと平均単価,これはランダムに抽出しまして,平均単価を乗じまして,ここの一覧表にありますような形の金額を合計しますと,738億円という数字が出てまいります。

以上がストレージでございます。

裏面でございますが,ファイル共有に係わるダウンロードの被害ということで,P2P,トレントサイトのEということで,ページをここに掲げていますが,2018年10月6日現在,コミック単行本・コミック雑誌ダウンロード総数は,約3,000万という数字です。

ここの中で,この表で丸1と丸2と書いています。丸1のカテゴリー,「Literature」というもの,いわゆる書籍を検索すると,ずらっと出てきまして,丸2のところで,ダウンロード完了数が出てきます。

したがいまして,この数字を基に,ダウンロードの完了総数と1ファイル当たりの平均冊数を乗じまして,さらにEサイトのダウンロード数,上位120の電子書籍平均単価を乗じますと,ダウンロードの総額は約347億円ということになります。先ほどのストレージと比較しますと,ファイルが小さい,冊数が少ないということになります。

ということで,P2Pの一例としまして,トレントサイトですが,347億円ということでございます。

その他でございますけれども,ほかにも多数存在しているということ,アプリも非常に多くあるということがありますので,この辺も非常に留意していくべきだと思います。

いわゆる見る人がいるということでございまして,静止画のダウンロード違法化というものにつきまして,是非とも前向きに法改正に向けての御審議をお願いしたいと思います。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では,続きまして,日本書籍出版協会の村瀬様,お願いいたします。

【村瀬氏】それでは,資料3-2に基づいて,お話しさせていただきます。

被害実態という数字としては,今,CODAの方から御紹介いただいたとおりの認識を,我々としても持っておりますが,今のところにも出てきました海賊版サイトについては,基本的に,資料3-2の下の段にあります4類型で,こちらとしては,認識をしております。1つはリーチサイト,もう一つはトレントというP2Pです。これは,CODAさんからの御指摘にもあったとおりです。

その中でも,やはり,リーチサイト及びトレントに関しては,これは,制度に,システムとして,基本的にダウンロードを前提とするものであるというところで,そのダウンロードに対する法的強化をどうするのかというところは,我々として,非常に興味がある,興味を持たなければいけないところであると考えておりました。

めくっていただいて,コミック以外の海賊版被害ということですが,ここまで出てきたものは,どうしてもコミックが中心,これは電子書籍市場が,今,コミックを中心に立ち上がってきたというところもありまして,そこがクローズアップされている状況ではありますが,必ずしもコミックだけではなく,昨年もアクセスを集めたfreebooksであるとか,ナナイチといった幾つかの海賊版サイトがありましたが,そこでは,文芸書や週刊誌,一般の週刊誌,女性雑誌,漫画雑誌も当然ですけれども,書籍,雑誌を問わず,かなり幅広く海賊版被害が生じてきたことは確認をされております。

ダウンロード違法化について,私たちはどのように考えているかということですが,今,申し上げたとおり,リーチサイト及びトレントは,ストレージ等からのダウンロードを伴う仕組みでありますし,また,オンラインリーディングと言われるもの関しても,簡単にダウンロード化できるもののタイプとして,流通しております。

やはり,映像や音楽と違って,書籍コンテンツというものは,基本的にはサイズがかなり小さいものが多いです。ですから,実際の正規版流通も,多くがダウンロードによる流通が行われています。

また,P2P,トレントサイトなどを見ていただくと分かるように,一旦ダウンロードされた違法ファイルが,そのまま共有をされている実態もございますので,ダウンロードのユーザーによるダウンロードの違法化というものに関しては,抑止効果というものが期待できるんではないかと考えております。

それと関連いたしまして,被害実態等を言うわけではないのですが,今,出版界において,この問題を御検討いただく上で,参考としていただくような状況について御説明をいたします。

出版界では,このような海賊版対策のために,今,ABJマークという,レコード協会がLマークとして出されているものと,比較的同様の機能を持つマークの導入について,準備を進めております。ABJというのは,Authorized Books of Japanの略称ですが,今のところ,11月30日から,正規版コンテンツの配信サイト,これは,いわゆる電子書店や出版社の直販サイトを含むんですが,そこのところで,正規版コンテンツがあるというように確認できるサイトに対しては,このABJマークを交付をし,これを貼り付けていただくという手続を進めております。

これについては,基本的に全てのサービスごとに,固有のユニークコードを,1点,1点の申請に基づいて,権利者側,いわゆる出版社を中心とした仕組みの中で,その権利処理が行われている正規版コンテンツが配信されているサイトであるということを確認の上,ユニークコードを付したABJマークを交付するというシステムの導入を進めておりまして,これについては,今後も長期にわたって運営していくつもりですので,その辺りの周知,普及啓発についても,継続的に行っていくことを予定しております。

以上をもちまして,書協からの発表と替えさせていただきます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では,最後に,日本雑誌協会より,伊東様,よろしくお願いいたします。

【伊東氏】日本雑誌協会で,著作権委員会のメンバーである,そして,あと集英社という出版社で,10年近く海賊版対策に関わってきた人間として,この場をおかりして,実情を伝えさせていただきます。

先ほど来,CODAの後藤さんからもあったとおり,現在,漫画村とか,freebooksというようなオンラインリーディング型の海賊版サイトが閉じられた現状では,ダウンロード型海賊版サイトが,主流の状態になっております。もちろん,我々は手をこまねいているわけではなくて,現在,侵害対策会社や,あるいは自ら出版社が,いろいろなサイトを監視して,削除体制を整えておりますけれども, 100ぐらいのサイトを,今,監視しております。

本来なら,200,300,500,1,000といったサイトを監視したいんですけれども,マンパワーや金額の問題でも,なかなかそこまで対応できないので,取りあえず100サイトぐらい,特に悪質なものから順番に対応しておりまして,上位30サイトをケアすると,大体,被害の93%ぐらいは。カバーできるかなと思っております。取りあえず100を,今,一生懸命,監視しております。

それぞれ,割と大手なサイトの掲載作品数を2年ほど前に調査したことがあるんですけれども,大体6,000作品から1万作品ぐらいの海賊版の作品が掲載されています。現状,集英社でいうと,正規版の電子の作品が3,800作品ありますので,それをはるかに上回る作品,いろいろな出版社の作品がありますけれども,作品が,ダウンロード型のサイトには掲示されておりまして,ユーザーもすごくたくさんの作品が読めるという状態になっております。

もちろん,削除要請だけではなくて,サイトへの警告や閉鎖要請,サイトが使用するサーバー,レジストラへの要請,広告表示や警察の連携などをやっておりますけれども,なかなか閉鎖に追い込むことはできません。

もちろん,2016年,マンガ・アニメ海賊版対策協議会というところでやったり,総合対策では,100ほどのサイトを閉鎖に追い込んだりもしていますけれども,次から次へと新しいサイトが生まれます。

また,短期間に268万ファイルものストレージ蔵置侵害ファイルを削除するという,割と大規模な侵害対策を実施したんですけれども,これは,悪質な6サイトに関して,集中的にやったんですが,残念ながら,その6サイトは,閉鎖に追い込むことができませんでした。

悪質なサイトは,そのレジストラやサーバーにアクションを起こしても,移転を繰り返すだけです。ですので,対策は非常に難しいです。しかも,削除をいっぱいしても,すぐに自動化して,再掲載するシステムがありますので,本当にさいの河原の石積み状態になっております。

ですので,特にサーバー,ストレージ,レジストラ,全て海外にありますが,唯一,日本国内にいるのが,海賊版ユーザーです。海賊版ユーザーへの普及啓蒙など,我々もできることはやっておりますけれども,やはり,違法なものをダウンロードするということが,世の中に知らしめられれば,一定効果の抑止効果があると思っております。

また,リーチサイト規制も,あわせて,海賊版の流通量が大きく抑え込まれることを期待しております。

最後の資料,一応参考で付けましたけれども,漫画村が4月中旬に閉鎖されまして,それまで,みんな,漫画村で海賊版を読んでいたんですけれども,そのとき,ある最大手のダウンロード型サイトは,1,510万人というセッション数だったんですけれども,夏に向けて,非常に伸びて,26%増,1,916万人という数に増えまして,現状,やや落ち着いたんですけれども,それでも,21%増ということで,やはり,ダウンロード型海賊版サイトへ,人がどんどん集まっているという状況が見てとれます。

このグラフの右側には,その海賊版サイトの先週金曜日の段階のトップページだったんですけれども,漫画があって,あと下は全部,雑誌という感じで,漫画だけではなくて,『東洋経済』,『SPA!』と写真週刊誌の『FRIDAY』の女性のタレントさんのページだけを寄せ集めたファイルなどが,ストレージにアップされております。

以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいま3団体より御説明いただきました内容につきまして,御質問,御意見等がございましたら,お願いいたします。

奥邨委員。

【奥邨委員】ありがとうございます。

まず,後藤さん,CODAに2つお伺いしたいんですが,1点目は,昔,平成21年,19年辺りに検討したときには,これは録音録画ですけれども,金額の話ではなくて,正規版ダウンロードよりも,数として多いというふうな状態があるということも指摘があったんですが,その辺,少し過去と比べて考えるときに,正規版との数の関係,ダウンロード数とか,そういうものとの関係で,どうなのかというようなことを,もし情報をお持ちであれば,お伺いしたいということが1点。

2点目は,被害額というのがよく分からなくて,ちょっと分かりづらいと思います。ここにも逸失利益ではないと,注意をされているんですが,特に漫画を中心に考えた場合は,大体,著作権は作家さんがお持ちだったりするということになると,この金額ではなくて,実際に裁判で請求できるとなると,もっと小さくなるんではないかと思います。

逸失利益を細かくとは言いませんけれども,その辺の金額のイメージは,どんなものなんだろうということが,もう1つです。余り大きい数字ではなくて,ここは飽くまで著作権ですのでということです。

村瀬さんの方にお伺いしたいことは,どちらかというと,CODAさんの資料を見ると,コミックだけなので,コミック以外の海賊版被害というのは,何か具体的に数字とか,回数などで把握されているものがあるのかなというところをお伺いしたい。

最後です。集英社さん,伊東さんにお伺いしたいことは,海賊版サイトの雑誌という言い方になっているのですが,この雑誌という中には,漫画も含まれての数字なんでしょうか。

そうだとしますと,その割合です。漫画とそれ以外の雑誌との割合は,どういうものになっているのかという辺りを,もし分かれば,有り難いなと思います。

以上です。

【茶園主査】お願いいたします。

【後藤氏】まず,1つ目の正規流通の関係ですが,大変恐縮ですが,私の方で,その数字は把握しておりません。

2点目の被害額でございますけれども,先生おっしゃるとおりでございまして,その辺の数字の出し方は,非常に苦慮しております。したがいまして,私ども,いわゆる,この中で判断できる,機械的に算定した数字ということで,一定の指標として御理解を頂きたいと思っております。

印税の関係もございまして,数字を出すということは,長期的に時間を掛ければ可能かもしれませんが,現時点では恐縮ですが,機械的な数字を出させていただいているという現状でございます。

【村瀬氏】漫画以外のコンテンツに関する定量的な数字ということですが,これは,残念ながら,こちらとして,なかなか把握し切れていないということが現状です。

やはり,どうしても,被害の大半がコミックに集中しているという状況があって,全ての対策がそちらの方に注力されているというところで,本来,そちらの,それ以外のコンテンツまで手を伸ばして,カバーすべきところができていないということは,こちら側の問題ではあるわけですけれども,今今の状況での御質問としては,なかなか,そこまで把握し切れていない。感覚的には,8対2ぐらいではないかということが,我々の実感的な感覚です。済みません,その程度です。

【伊東氏】今の話,引き続きまして,例えば,弊社,『週刊プレイボーイ』という雑誌を出しておりまして,そういう女性のグラビアに特化した海賊版サイトもありまして,そういうところへ行くと,100%雑誌になりますので,そういう意味でいうと,なかなか比較検討は難しいですけれども,長年関わった立場でいうと,海賊版サイト,ざっと100作品ぐらいを見ると, 20作品ぐらいが雑誌かなということが,私の個人的な感覚です。そういう意味でいうと,今,私向けの御質問があった漫画と雑誌の比較でいうと,8対2ということが,私の個人的な感覚ということになります。

被害額に関して申し上げますと,計量経済学の先生などに協力いただいて,海賊版がダウンロードされると,どれぐらい実際の売り上げが減るかということを,幾つか調査をした結果, 2割ぐらい売上げが落ちるという傾向が見てとれるということが,調査としてありました。

この前の漫画村がひどかったときも,いろいろな出版社さんの声を聞くと, 2割ぐらい売上げが落ちたというような声を聞いていますので,この2割という数字は,割とそれなりに真実性がある数字ではないかと思います。

ということは,今,仮にコミックスだけだとしても,コミックスは,今,雑誌,紙のコミックスと電子のコミックスを合わせると,4,000億円とか5,000億円ぐらいの売上げがあるので,それが2割減るということは,被害額,実際に売上げがどれぐらい減ったかというと,800億円とか1,000億円という数字は見えてくるんではないかと,個人的には思っています。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

【奥邨委員】ありがとうございます。

【茶園主査】ほかにございますか。

では,松田委員。

【松田委員】かつて,録音と録画の違法ダウンロードは,平成21年に民事違法化されました。そのときに,議論になったことは,果たして,この法律を作ったときに,民事的な請求権とその執行ができるかという問題がありました。具体的な差止めができないにも関わらず,違法化することの必要性は何かということでありました。

その後,直ぐに,違法ダウンロードの刑事罰化の要請が起こりました。これは,平成24年に立法されました。

このときも,実はかなり議論がありました。確かに個人の生活領域でダウンロードする場合における違法化ということは,刑事罰が家庭の中といいますか,個人の中に入り込むことについての危惧というものが,言論界や弁護士会から起こりました。重要な議論であったと記憶しております。

このように2回の立法が行われたときに,現実に権利行使をしたり,刑事罰の捜査等が行わたりされるかということについては,予想するに,恐らく,そういうことはあり得ないほどに,少ないのではないかというふうに,審議しました。

しかしながら,必要だというふうに,音声・画像の著作権者は言うわけです。その効果として,何かというと,違法化することによって,著作権秩序上,そのような行為が違法だという広報ができる。その広報ができることによって,違法ダウンロードが縮小する。そのことによって,正常な市場が守られるという意見が出されたのです。

確かにそういう広報をされています。その効果が顕著であるならば,効果があるならば,この立法の意味はあると,考えたのです。

当初,審議会の中で,効果について,疑問を感じていたのは,私だけではなかったと思います。

しかし,現実に効果が上がっているというのであれば,それは,それ,立法化の意味があるのだろうと思っています。

特に受信する私的領域に刑事罰を持ち込むことの危惧というものは,大分,議論をしましたから,こういう点からも考えますと,かつて刑事罰化に反対した勢力が,今はどう考えているのかということを強いたいと思います。

現段階で,そういう声はないように思います。その声というのは,結局,何かというと,インターネット技術を利用した情報取得ということが,自由な活動ができなくなる,自由に取得ができなくなる。情報を取得する者の萎縮が生じるということによって,インターネット社会が害されると言われたわけであります。本当にそうなのだろうかと,そうであるならば,大変な問題が起こると,私も思いまして,いささか慎重意見を出したことが,ありました。

ところが,今,そういう声がなく,そういう状況がないのであれば,今はどういう意見を持っているのかということを聞いておくことが必要だと思います。

現実にそのような萎縮効果がないのであれば,録音や録画に限らず,書籍のダウンロードの違法化を立法することについて,差異を設ける理由がないなと思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

録音・録画につきましては,数年前に,その効果について調査が行われたと思います。

【大野著作権課長補佐】また,次回,整理して,御紹介したいと思いますけれども,平成24年度,刑事罰化を行った後,文化庁で調査研究を行っております。その中で,P2Pですと,違法ファイルがアップロードされたサイトの利用が,どの程度変化したかということを調査しております。実際に減ったという結果も出ておりますので,また,後日,整理をして,御紹介をしたいと思います。

関係団体のヒアリングについても御示唆いただきましたので,また,事務局の方で,対応を検討したいと思います。

【茶園主査】では,この点は,次の委員会にでもお知らせできると思います。

ほかに何かございますでしょうか。

今村委員。

【今村委員】静止画のダウンロードということで,ダウンロードとオンラインリーディング,ストリーミングというふうな形で区別して,被害額等あるいは被害の状況などを,検討されているということなんですけれども,音楽や映像の場合ですと,ストリーミングというのは,時間とともに流れさっていくということで,しっくりくるんですが,画像ですと,どうしても,何かイメージとしては,その場で,一旦,一時的とはいえ,複製されたものが手元にあって見ているというイメージなので,ストリーミングといわれると,音楽や映像とは,やや違うニュアンスを持っているような気がしました。

また,実際には,恐らくダウンロードよりは,ストリーミングとオンラインリーディング型に分類される形の方が,被害は,今,大きいのではないか。ダウンロードしないユーザーも多いのではないかと思います。今回はダウンロードという形で,被害額等を出されているわけですけど,ストリーミングとオンラインリーディング型を含めると,もっと大きいのではないかとも思うのですが,全体としては,被害額はどのぐらいなのかというものをお伺いできればと思います。

【伊東氏】ダウンロード型とストリーミングで,ストリーミング型の海賊版,日本人向けのストリーミング型のサイトというのは,実はすごい少数で,昨今話題になった漫画村と,その以前のfreebooksという,基本的にその2つで,あとは小さいところが,幾つかあるんですけれども,その2つしかなくて,freebooksと漫画村が,今,閉鎖している状況ですと,事実上,ストリーミング型はない。

一部,漫画村の後継を狙うサイトが幾つか出没しているので,アクセス数でいうと,月間240万人ぐらいのサイトを,我々,今,確認しています。それぐらいですので,基本的には,現状はダウンロード型のみの被害というふうに御理解いただければと。

プラス,YouTubeなどで,動画の形式,紙芝居形式,スライドショー形式になっている漫画の海賊版もありますので,それもストリーミングになるとは言えますけれども,基本,ダウンロード型の被害の方が大きいということが,現状になります。

ストリーミングに関していうと,漫画村は,御存じのとおり,月間1億7,000万人のセッション数を誇る巨大なサイトになってしまったときに,そのときの被害額を計算すると,CODAさんが3,200億円という数字が出たことは,今回の調査に比べて,738億円から3,200億円ということで,ストリーミングサイトの方が,かなり被害が大きかったということは,確かに事実ですけれども,現状,ダウンロード型でも,738億円という,それなりの数字が出ていると御理解いただければと思います。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

【今村委員】ありがとうございました。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では,どうもありがとうございました。

それでは,事務局におきましては,本日のヒアリング結果を踏まえまして,論点の整理等をお願いしたいと思います。

どうもありがとうございました。

それでは,議事の(4)番目に移りたいと思います。ここからは非公開とさせていただきますので,傍聴者の方は,申し訳ございませんけれども,事務局の指示に従いまして,御退室をお願いいたします。

(傍聴者退室)

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