文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第5回)

日時:平成30年11月9日(金)
10:00~13:00
場所:東館15階15F特別会議室


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)改正著作権法第47条の5第1項第3号に基づく政令のニーズについて【※非公開】
    2. (2)地理的表示保護法及び種苗法の審査手続等に関する権利制限について
    3. (3)著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化について
    4. (4)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1-1
改正著作権法第47条の5第1項第3号の規定により政令で定める行為(サービス)のニーズ募集について(125KB)
資料1-2
改正著作権法第47条の5第1項第3号の規定により政令で定める行為(サービス)として位置付けるべきとの意見・要望が寄せられたニーズの概要【※非公開】
資料1-3
改正著作権法第47条の5第1項第3号の規定により政令で定める行為(サービス)として位置付けるべきとの意見・要望が寄せられたニーズの詳細(個票集)【※非公開】
資料1-4
前回の小委員会における議論を踏まえた対応について【※非公開】
資料2
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律及び種苗法に基づく行政手続における著作物の複製等についての権利制限に関する論点整理(案)(775KB)
資料3-1
「改正著作権法の施行状況等に関する調査研究報告書」(平成25年12月)の概要(522KB)
資料3-2
静止画ダウンロード規制への考え方(インターネットユーザー協会提出資料)(438KB)
資料3-3
プログラムの著作物のダウンロード実態とダウンロード違法化に関する要望(コンピュータソフトウェア著作権協会からの意見書)(586KB)
資料3-4
ダウンロード違法化及び技術的保護手段に関する著作権法改正の要望について(ザ・ソフトウェア・アライアンスからの意見書)(166KB)
資料3-5
ダウンロード違法化に関する検討の視点について(102KB)
参考資料1
特許審査手続等に関する権利制限について(855KB)
参考資料2
私的使用目的の権利制限について(諸外国の取扱いを含む)(267KB)
参考資料3
前回の小委員会におけるヒアリング概要(ダウンロード違法化)(95.1KB)
参考資料4
文化審議会関係法令等(抜粋)(46.9KB)
出席者名簿(43.7KB)
机上資料
改正著作権法第47条の5第1項第3号に基づく政令のニーズに関する議事進行予定表【※非公開】

議事内容

(傍聴者入室)

【茶園主査】それでは,続きまして,議題の2番目,(2)地理的表示保護法及び種苗法の審査手続等に関する権利制限について,審議を進めたいと思います。

なお,本日のカメラ撮りにつきましては,冒頭2分程度とさせていただきますので,御了承願います。

本日は,まず,農林水産省から,前回のヒアリングの補足説明があるということですので,農林水産省から説明をまずお願いいたします。

また,その点も含めまして,事務局で論点の整理を行っていただいておりますので,続けて,御説明をお願いしたいと思います。

では,農林水産省の方から,まず,よろしくお願いいたします。

【尾﨑氏】ありがとうございます。農林水産省の知的財産課長の尾﨑でございます。よろしくお願いいたします。

私の方から,前回の会合のときに,GI法と種苗法の登録手続を中心に,御説明をさせていただいておりますけれども,そのときに,併せて御説明すべきだった種苗法の47条の手続につきまして,本日,補足として,御説明をさせていただきたいと思っております。

この種苗法47条の規定は,一度登録された植物の品種につきまして,登録された品種のその後の管理の仕方によっては,時が経過するうちに,その品種の特性が,登録時から変化してしまうということが考えられますので,その観点から設けられたものでございまして,その調査の結果,登録要件を満たさなくなったと判断される場合には,登録が取り消されるという手続でございます。

この47条の調査は,現地調査及び栽培試験によって,その品種の特性を改めて調査するということが中心でございますけれども,先日御説明した出願時の審査の場合と同じように,仮に異なる特性が確認された場合に,育成者権者から,例えば,登録時から特性が変化したわけではなくて,その植物種について,一定の気温や天候の下では,花の色,葉の形などの特性に変化が生じる可能性があるといったような主張が,学術論文の著作物などを使って,行われる可能性があるということが想定されますので,この47条の調査につきましても,著作権法第42条の特例の適用をお願いしたいと考えているところでございます。よろしくお願いいたします。

【澤田著作権調査官】それでは,続きまして,私の方から,資料2に基づいて,GI・種苗法に関する論点整理案について説明させていただきます。

まず,問題の所在2,1ページ目でございますけれども,御案内のとおり,現行著作権法42条2項において,特許審査手続等において,当該手続のために必要な文献等の複製をすることが可能となっており,これは,これらの審査手続を迅速・的確に実施する趣旨で設けられているものです。

この度は,現行法が対象とするこの手続には含まれていない地理的表示法・種苗法に基づく手続についても,この42条2項と同様の権利制限の対象としてほしいというような要望を,農林水産省から頂いたところでございます。

その各手続の概要については,2ポツに記載しております。

まずGIについてですが,地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物等の特性が産地と結び付いていて,その結び付きを特定できるような名称,いわゆる地理的表示(GI)が付されているものについて,その地理的表示を知的財産として登録することができる制度が,特定農林水産物等の名称の保護に関する法律,いわゆる地理的表示法において整備されております。登録を受けますと,登録産品の生産者団体が定めた基準を満たすような生産者については,その産品の名称の表示を付することができるようになり,それ以外の者は表示を付することができなくなるということで,模倣品の排除による侵害対応のほか,取引拡大,価格上昇,担い手の増加などの効果が期待されるところであります。

1ページ目の下からは,諸外国においても,この地理的表示は,知的財産の1つとして位置付けられていることを紹介し,我が国の農林水産物や食品の海外展開を図っていく上でも,非常に重要な知的財産保護制度であるということを書かせていただいております。

地理的表示の登録の要件といたしましては,産品が地域に定着していること,品質,社会的評価,その他の特性を有して,それが生産地の自然条件や伝統的な生産方法等に帰せられることのほか,産品の名称についても様々な要件が定められております。

地理的表示の登録に関する手続におきましては,これらの要件の充足性を判断するために,文献や新聞記事等の著作物が用いられているとのことです。

例えば,産品の品質に関しましては,独自品種の科学的な特性を示すために,学術論文等の著作物が利用される場合や,全国規模の品評会などで評価されているといった社会的評価を示すために,新聞記事等の著作物を利用する場合があるとのことです。

手続の中で,具体的に著作物が利用される場面としては,[1]~[4]で挙げているような場面が想定されております。

3ページ目にお進みいただきまして,農林水産省からは,この手続に関する著作物の複製を権利制限の対象とする要望が出ております。

その理由といたしましては,特性の有無につきましては,著作物に基づいて,疎明をすることが一般的でございまして,適切な判断をするためには,著作物の利用が必須であること,

現状では,著作物が提出される際に,許諾を得ているかが不明なケースがほとんどでありまして,それについては,書類を差し戻すようなことが常態化しており,迅速な審査が困難な状況であり,平均の登録までの要する期間としては,約370日ということになっていること,

結果として,許諾が取れずに,資料の提出が取りやめられることもあり,現状のままでは,審査に支障を生じるおそれがあること,審査官の方から,論文の提出を求める場合もあること,登録前から,不正の目的なく,名称を使用していた第三者は,登録後も名称を使使用することが可能という先使用権の制度があり,審査の長期化は申請者にとってのリスクを増加させることが挙げられております。

以上の理由で,この手続の的確かつ迅速な実施のためには,著作物の利用が必須であることから,この手続における著作物の複製を権利制限の対象としてほしいという御要望であると理解しております。

4ページ目(2)は種苗法に基づく手続についてでございます。種苗法では,新品種の育成者の権利を適切に保護するといった目的の下で,種苗法に基づく品種登録制度というものが用意されており,登録を受けた育成者には,知的財産権の1つである育成者権という排他的な権利を与えることにしています。

品種登録に際しましては,様々な要件が求められておりまして,他の品種との重要な形質における区別性ですとか,均一性,安定性,未譲渡性,名称の適切性といった要件がございます。

この要件の充足性の判断に当たりましても,著作物が必要となる場合があるとのことです。例えば,耐病性や機能性などの形質に関する情報が掲載されている学術論文等の著作物の利用ですとか,未譲渡性との関係で,種苗カタログなどが提出されることがあるとのことです。

5ページ目で,実際の手続の中で,具体的に利用される場面としては,ここに掲げております[1]~[6]のような場面が存在するということでございます。

農林水産省からは,この手続に関する著作物の複製を権利制限の対象とする要望が出ております。理由としましては,要件について適切な判断をするためには,著作物の利用は必須であり,特に近年,他の品種との区別性につきましては,機能性ですとか,耐病性などについて着目した品種が開発されており,そういったものを重要な形質として追加するか否かの判断に当たって,学術論文等に基づいたデータが求められること,

品種の多様化,特に海外から出願される植物につきましては,なかなか審査当局,自ら情報を把握することが難しい例が増えているということで,出願者からの著作物に基づく情報提供というものが重要になっていること,許諾を得られない場合には,出願等の証拠として提出できないこととなるため,品種登録に支障を来すおそれがあること,

入手困難な資料もあり得るため,申請者が反論の機会を失うような可能性があること,

手続上,名称変更命令に基づく名称の変更の期限が30日以内ですとか,拒絶理由通知に基づく意見書の提出期限についての期限が設定されており,期間内に迅速に書類を提出する必要があることが挙げられております。

このような理由から,こちらについても,権利制限の対象とすることを要望されているということでございます。

6ページ目の中ほどから下は,冒頭農林水産省から御説明のあった調査手続についてでございますので,割愛させていただきます。

こうした農林水産省からの要望を踏まえまして,事務局において論点を整理しましたものが8ページでございます。

まず,権利制限の必要性については,地理的表示法や種苗法の目的というものを適切に実現するためには,行政庁によって,登録の要件等が的確かつ迅速に判断されることが必要であり,こうした要件の判断に当たりましては,著作物を利用しなければ,的確な判断をすることができない場合があり,許諾を得ていると,迅速な審査に支障を来すおそれがあり,それによって,申請者等に不利益を生じるおそれもあるというところから,こうした手続において,著作権者の許諾を得ることなく,著作物を利用することができるようにする必要があるものと考えられると記載しております。

また,種苗法に基づく調査手続においても,同様のことが言える旨を記載しております。

以上を踏まえると,地理的表示保護法及び種苗法の目的を適切に実現するという公益的な観点から,地理的表示法に基づく審査手続ですとか,種苗法に基づく審査手続・調査手続において,必要と認められる限度で行われる著作物の複製を権利制限の対象とする必要性があるものと考えられると記載しております。

なお書きでは,特許審査手等と同様に,外国語文献を提供することですとか,文献等の提供に際し,譲渡権の及ぶ行為がなされる可能性も否定できないことから,翻訳及び譲渡についても,42条2項に倣って,権利制限の対象とすることが考えられるとしております。

他方で,権利者に与える不利益については,これらの手続において,必要と認められる限度において,著作物が複製される限りにおいては,その著作物の提供先,利用目的が限定的であることから,権利者に与える不利益は限定的であると評価することができるものと考えられると記載しております。

なお書きでは,こうした不利益が限定的であることから,特段,権利者に対して,補償金請求権を付与する必要ないものと考えられるとしております。

御審議いただきたい点といたしましては,以上の権利制限の必要性及び権利者に与える不利益についての評価が妥当かという点と,そうした評価を踏まえると,これらの著作物の複製について,権利制限の対象とすることが適当と評価できるかという点について,御審議いただければと思います。

私からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいま御説明いただきました内容につきまして,御質問,御意見がございましたら,お願いいたします。

では,前田委員。

【前田(哲)委員】1点御質問なのですが,譲渡権の及ぶ行為がなされる可能性も否定できないので譲渡権も権利制限の対象とすることが考えられるという整理と思うのですが,具体的に譲渡権が及ぶ行為がなされる可能性としては,どういう場合があり得るということになりますでしょうか。

【澤田著作権調査官】共同出願で出願人が多数の場合には,行政庁から特定多数者に対して,複製物を提供するという場面もあり得るのではないかと考えている次第です。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

【前田(哲)委員】はい。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。

では,松田委員。

【松田委員】調査のために必要なという必要という概念なんですが,先ほどの課題でも必要性というものが出てきました。債権法上,必要な限度でという条文は,実は諸所にあるのです。

42条の必要性は,実は,ほとんど必要性が考慮されないぐらいに薄い必要性なのです。裁判の当事者が,ないしは行政の当該手続をする者が,自ら必要だと思えば,必要なのです。そういう意味では,特に42条は,必要性という言葉について,他の条文とは違うという認識を持つべきだろうと思っています。場合によると,これは,当該手続の当事者が求める場合にはというような程度の必要性でいいのではないかなと思っています。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】今の点は,少し引っ掛かるところがあります。これは手続の上ですから,結果的に見たら,そのようなものは必要なかったということはあるかもしれないのですが,その時点で見れば,必要と思われている。後で前提条件が変わって,必要ではなくなっているかもしれません。そこのところは,単に主観で決まるのではなくて,客観で決まると思います。ただし,事後的に見ると,いろいろ必要性がなくなっていることがあったとしても,そういう厳しいことは言わないという御趣旨であれば,別に問題ないと思われます。

それはともかくとして,全体として,権利制限の必要性は,同じ知的財産として,公益の観点からきちんとした審査がなされる必要がありますので,その観点からは必要性は非常に高いし,他方で不利益の程度は,ここで御整理いただいたとおり,限定的にとどまるということでありますので,この整理のとおりでよいと思います。

工業所有権四法,特許法,実用新案法,意匠法,商標法についても,現に権利制限を設けたわけですが,細かいところは違っておりましても,基本は,特許法ないし商標法と似たようなものなので,等しきものは等しく扱うという観点からしても,特許,商標法で権利制限しているのに,これだけしないということも,均衡しておりますので,これはこのとおりでよろしいかと思います。

【茶園主査】では,上野委員。

【上野委員】この問題につきましては,既にもう特許審査手続等についての規定がありますので,私も,――補償金請求権がなくてもいいかどうかということについては,やや気になるところもございますけれども――基本的にこのような権利制限を設けることは妥当だろうと思っております。

なお,これまでは,特許,意匠,薬事など,個別にこうした行政手続について権利制限規定を追加するということをやってまいりましたところ,もちろん,明確性の観点からは,こうした個別の追加を法律で行うのは大変意義があることかと思いますけれども,ただ,これと同様のものは,他の行政手続にも,今後また出てき得るのではないかと思います。その意味では,一定の明確性を備えつつ,一定の柔軟性のある規定というものを,今回,検討するということも意味があるかもしれません。

例えば,先ほど議論があった47条の5第1項3号は,「前項に掲げるもののほか…政令で定めるもの」という規定でして,このようなやり方は,法律を作るよりは,やや柔軟性のあるものかもしれませんので,実際の立法に当たっては,そうした方法論も検討の一案として考えてもいいのではないかと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

では,大渕委員。

【大渕主査代理】先ほどの47条の51項3号の,政令に落として,柔軟性を出すということについて特許法等は全て法律でやったので,今度は種苗法等も法律レベルで新たに加えるということがイメージされているということは,その他これに類するものということで,法律で定めてあとは政令に落とすということだと思います。

特許法が改正されてから迅速にというよりは,かなりたってからニーズを出されたぐらいなものですから,先ほどのような,ものすごく迅速性が貴ばれるところで,一部政令に落としているものがありますけど,民主的ルールとして,国会で決めることが基本なので,法律レベルであったら,やはり,きちんと今回のように,法律としてやることが筋だと思っております。

【茶園主査】では,森田委員。

【森田委員】私自身は,先ほどの上野委員の意見に賛成でありまして,前回,42条を加えた頃の思想は,権利制限は例外なので,個別に法律で解除するという思想だったと思いますけれども,平成30年改正をはじめ,各項の考え方は,それとは違ってきておりまして,法律で一々解除しなくて一般的な規定を置いて,政令で解除するという方が,現実のニーズに合っているのではないかと。

以前は,そういう意見が全く通らなかったのは,全体的な考え方が,当時は,先ほど申し上げたような考え方をとっていたことでありまして,今回は,現在に合った考え方で臨むことが適当だろうと私は思っております。

【茶園主査】では,前田哲男委員。

【前田(哲)委員】政令指定の対象にするということに反対というわけではないのですが,更に一歩進んで,法律上の要件を,ある程度,抽象的・包括的なものにする。行政上の審査手続というような何らかの適切な概念を設けて,それにより包括的に,権利制限の対象にするということも考えられるのではないかと思います。

【茶園主査】前田健委員。

【前田(健)委員】基本的には,上野委員,森田委員に賛成なんですけれども,今回の権利制限の必要性について,様々,理由を挙げていただいたんですけれども,地理的表示法とか種苗法の中身に,すごく立ち入った理由というよりは,一般的に審査の的確性,迅速性というような形からの御説明だったというふうに理解しております。そういった趣旨が妥当するものというのは,ほかにもあるだろうと思います。

立法と行政の役割分担という話なんですけれども,こういった利害状況がある場合については,権利制限をしてもかまわないという決断を立法でしていれば,それに沿って,行政が適切に政令を指定するということは,強要されてしかるべきなのではないかと理解しております。

【茶園主査】龍村委員。

【龍村委員】今の御意見とほぼ同じですけれども,いわゆる行政法上の講学概念としての特許,権利付与行為的なもの,あるいは,紛争解決手続的なもの,例えば,行政不服審査手続であるとか,そういったものは,一応,大方,権利制限に適するようなものではないかという部分はあるかと思います。したがいまして,前田委員がおっしゃったように,今後は,外枠の要件を決めて,包括的に規定してもいいのではないかという印象を持ちます。むしろ,政令等で機動的に,それらの新しい手続が制定されたら指定していく方が,行政の目的にも適合しますし,著作権法においても,並行して,権利制限の対象とするように運用されるのではないかと思います。

更に言えば,この規定は,1項の方も,実は問題を含んでいると思います。例えば,裁判手続というものも,例えば,仲裁などは,一体どうなるのだろうかとか,あるいは,昨今,普及が進んでおりますADR,殊に認定ADRなどもございますし,そういうもの諸々も,裁判手続に含める必要がないかとか,いろいろな問題があると思います。ですので,そこら辺を機動的に対応する形を,法として持つべきであるということは,一理あるように思います。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。

では,松田委員。

【松田委員】今の皆さん方の意見に,基本的に賛成ですが,今回の改正は,この種苗法等の限りにおいて,42条を改正して,行政全般の問題につきましては,別に議論すべきだろうと思います。

といいますのは,行政全般において,行政庁が当該著作物を複製するだけでなくて,関係者が複製するという立場もあるんです。そこに求められることもあるんです。そういう場合について,全て無償でいいかという問題を検討すべきだからです。

今回は,この限りにおいて,改正をしておくべきではないかなと思っております。

【茶園主査】何かほかにございますでしょうか。

42条のこの権利制限を今後どのように考えるのがよいかということについて,いろいろ御意見を頂きましたけれども,今回,審議の直接的な対象になっている農林水産省の地理的表示と種苗法につきましては,特に御異論がないので,御了承を頂いたものと理解しておりますが,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】では,どうもありがとうございました。

では,本日の事務局が作成した整理案で御了承を頂いたということに,取り扱わせていただきますので,今後は,先ほどの42条はどうあるべきかというような意見等を踏まえまして,取りまとめを行っていきたいと思っております。どうもありがとうございました。

では,続きまして,議題の3番目,(3)著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化についてです。

本日は,まず,前回の議論を踏まえまして,事務局から,平成25年の調査研究「改正著作権法の施行状況等に関する調査研究」の概要の報告をお願いしたいと思います。

続きまして,本課題に関するユーザー側の実情・意見を把握するために,インターネットユーザー協会様より,ヒアリングを行いたいと思います。

また,コンピューターソフトウェア著作権協会とザ・ソフトウェア・アライアンスから,プログラムの著作物の取扱いについて,意見書が提出されておりますので,事務局からその紹介をしていただきたいと思います。

これらが終わった後に,委員の間で,制度化に向けた議論をお願いしたいと思います。

それでは,初めに,事務局より,調査研究の概要について,報告をお願いしたいと思います。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元に資料3-1を御準備いただければと思います。

前回の小委員会におきまして,ダウンロード違法化・刑事罰化の効果がどの程度だったのかという御質問を頂きましたので,それに対応する資料として,準備したものでございます。

冒頭ございますとおり,平成24年の著作権法改正におきまして,ダウンロードの刑事罰化が行われておりまして,平成24年10月1日から施行になっております。

この改正法におきましては,附則10条というところで,施行後1年を目途として,フォローアップをするという規定が設けられておりましたので,これを受け,文化庁の委託事業として,調査・検討を行ったものの報告書でございます。

報告書の中では,(1)のように,関係事業者がどのような措置を講じたのかということも含まれておりますが,今日は,本題である(2),(3)の刑事罰化の効果の部分に絞って,御説明を差し上げたいと思います。

まず,1.が客観的な指標による検証でございます。この調査研究におきましては,[1],[2],[3],[4],[5]という5つの客観的な指標を立てて,違法ダウンロードが減少したかどうかという検証が行われております。

後ほど,グラフを御参照いただきますけれども,いずれの調査結果におきましても,ダウンロード刑事罰化に対する改正が施行された10月1日を機に,値が減少しておりまして,特に[2]から[5]につきましては,値が大きく減少し,その値が以前の水準まで回復していない,低い水準が維持されているということが確認をされております。

次のページを御覧いただければと思います。ここでは,代表的なものといたしまして,P2Pを利用したネットワークのノード数の推移をお示ししております。

上がノード数,下がファイル保持数でございますが,いずれも2012年,10月1日,刑事罰化の施行のタイミングで,がくっと値が落ちており,その後も低い水準で推移しているということが,見てとれるかと思っております。

また,次のページにおきましては,図表3ということで,P2Pで流通する有償著作物,刑事罰化の対象になると想定をされるものを対象に,同じように推移を把握しておりますが,こちらも,施行の10月1日時点におきまして,数値が減少していることが,確認をされております。

また,翌年の値がグレーで記載されておりますけれども,翌年においても,低い水準で推移しているということが確認をされております。

また,次のページ,図表5とありますけれども,こちらはP2Pではなくて,ダウンロード違法化に利用される可能性のあるサイトなどの利用者が,どのように推移したかというデータでございます。幾つかの類型のサイトをグラフ化しておりますが,いずれも,2012年10月のタイミングで,がくっと値が落ちまして,その後も減少傾向,若しくはその低い水準が維持されているという状況だと把握をしております。

また,次の5ページで,2.ウェブアンケート調査結果というものを記載しております。こちらは定量的なデータといいますよりは,ユーザーの方にダウンロード刑事罰化によって,どのように行動が変わったかという調査を行ったものでございます。

下に表がございますとおり,刑事罰化によって,違法なダウンロードをやめた,減ったと回答されている方が半数,ファイル共有ソフトに至っては7割程度ということでございますので,ここからも,一定の効果があったということが認められるのではないかと思っております。

3.につきましては,調査研究の報告書におけるまとめを抜粋したような部分でございますが,今,縷々御説明したところから,ダウンロード刑事罰化が,違法ダウンロードの一定の抑止効果を及ぼしたと評価できるというふうにまとめられているところでございます。

簡単ですが,以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,次に,インターネットユーザー協会様からのヒアリングを行いたいと思います。

済みませんけれども,時間の関係上,インターネットユーザー協会の御発表の時間は5分程度でお願いいたします。

なお,傍聴者の皆様におかれましては,写真撮影等はお控えいただきますようにお願いいたします。

それでは,インターネットユーザー協会の中川様,どうぞよろしくお願いいたします。

【中川氏】よろしくお願いいたします。

まず,我々の姿勢としまして,静止画ダウンロードの違法化については,反対の立場をとっております。

理由として,大きく振り分けて,3つありますけれども,我々に,今回,このお話を頂いたということは,まず,海賊版にブロッキングに対しての対応の延長として,お話がやってきたのかという理解をしております。

我々としましては,海賊版サイト対策の一環としまして,漫画村の運営者の情報を開示する努力などをずっと取り組んでまいりまして,成果がございました。そうした成果を踏まえた上で,静止画ダウンロード規制ということを考えると,これは,かなりピントのずれた規制をやろうとしているということが,今回の姿勢でございます。

根本的に,このやり方が,海賊版サイト対策として駄目なことは,この方法では,漫画村が止められないということです。静止画ダウンロード規制で,今,検討されているやり方では,漫画村が止まりません。なぜなら,漫画村は法的なダウンロードに該当しないからです。なので,これを違法コンテンツ対策だといって出されるのは,違和感しかございません。

私は,今,出版社の仕事をしています,今も漫画家だったりしますので,実際に,こういう作家側の立場として,これは,本当に真剣に海賊版をやる気があるのかという強い疑問を呈したいと思います。

静止画ダウンロード規制の問題について,以下,3点,述べさせていただきますが,静止画というものの定義が,非常に困難であろうということが想像されます。

写真やイラストや動画のキャプチャー,スクリーンショットなどが対象でしょうかと言うと,恐らく,そうではないとおっしゃるんではないかなと思うんですが,漫画のように,複数の画像のレイアウトが組合され,固定化され,物語を伝達するような画像表現に限定するというようなことを考えていったとしても,では,その単行本なら,デッドコピーなのかとか,各エピソードなら,ページなら,コマなら,コマの一部なら,どこで切るのかと。

コマの一部を切り取って,連続ツイートしたようなものを,どこで見た,それをどこで違法というふうに,まとまったデッドコピーというふうに捉えるのかみたいなところは,定義が非常に難しいところであろうと思います。

また,絵本や絵物語というものが書いてございますけれども,リフローレイアウトというものは,御案内しないといけないかなと思うんですが,文字と絵というのは,そんなに簡単に切り離し難い部分がございまして,電子書籍というのは,雑誌の紙面をそのままPDFのようにしたものではなくて,絵と文字が自在に組み合わせが変わり得るものというものがあるわけです。そういうものは,文字の大きさを変えられたり,挿絵の大きさを変えられたりみたいなことがあるわけです。

その場合の静止画というものは,どこを,どう定義するかということは,非常に難しいところだと思います。しかし,これをきっちりやらないと,何をもってして,違法とするかということが,線引きが非常に曖昧になってしまいます。

さらに,個人が零細な行為というふうにしましたけれども,ダウンロード違法化にされた後に,個人がダウンロードするというようなことを,恐らくこれは対象としない情報を知ってやったとしても,恐らく対象にしないというようなことになるのかもしれませんけれども,ただ,原理的には駄目なはずです。

そういうことを,恐らく,大きな声で,普及啓発として,やっていかなければならなくなると思うんです。それは,本当にいいことなのか,どうなのか。

また,それが,ちょっと矛盾を感じるのは,現在,漫画のコマを1コマをせりふを書き換えて,SNSに投稿するようなことは,日常的に行われて,これは,現行法で明らかに違法ですけれども,それを摘発した例はあるのかということです。

現行法で,違法なものの摘発もやってないのに,更に漠然と写真をダウンロードして,確かにこれは違法行為かもなみたいな感じで,ダウンロードして,それも,更に違法化する。違法化の範囲を増えていくということを,現行法でも間に合ってないものを,更に違法化を増やして,どうするのだというところが,定義の困難性と併せて,実効性に,次のところに係る疑問でございます。

ACCSさんの資料と意見書などを拝見して,疑問を感じるところも多々あるのですが,インターネットの利用形態というのは,この10年弱で大きく変化しまして,ダウンロードしているという御理解の委員の方も大勢いらっしゃるのかもしれませんけれども,昨今の総務省のトラヒックデータなどを見ていただければと思うのですが,この10年間のトラヒックは,とてつもなく増えておりまして,それは,ほとんど合法的な動画サイトのストリーミングの視聴によって,べらぼうにトラヒックが増えているということが今のインターネットの実態です。

P2Pノードは,この五,六年間,ほとんど変化していません。現状でも,Winnyは5万ノードぐらい,常に動いていて,違法なはずなのに,誰も何もやっていません。

シェアも1万ノードぐらい動いているはずですが,何もやっていません。

一方,動画の合法的なストリーミングは,めちゃくちゃ伸びています。

こういう状況を鑑みますと,動画が違法にダウンロードされて云々ではなくて,正当な,合法な正規の動画の楽しみ方というものが,広く普及したというふうに評価したというふうに評価するということが,まずは妥当であろうかと思います。

我々,正規サービスで,正規コンテンツを楽しんでやっているわけでございます。それは,合法に毎月のサブスクリプション,毎月一定額を払うような形でやっているということが,今のインターネットの一般的な在り方であろうかなと理解しております。要するに,ダウンロードということは,もうやらないのです。

昔のまま,5年前,10年前のまま,Winnyノードの数が止まっているということは,違法な状態のまま,立ち上げた人は,ある種の確信犯的な意図を持って,やり続けているのでしょう。

少なくとも,正規ユーザーは,そのようなことをする必要性自体が,もう何もない。違法なものを使おうなどという動機自体が発生しようがないという状態になっている。

ここで,ダウンロードの違法化を考えるのは,全く後ろ向きな話です。そして,今違法なものも放置したまま,更に違法の枠を増やすので,極めて後ろ向きな発想だと思います。

ACCSさんの話で,プログラムのダウンロードの云々という話が出ていましたけれども,プログラムは,今オンラインでアクティベーションしないと使い物になりませんので,違法なものをダウンロードしたところで全く意味がなく,某社の事務処理ソフトが出ていましたけれども,あんなものは先方が違法だということになれば,契約を解除すれば終わりですから,違法なものは違法だという会社が解除をすればいいという。それで,全て対応ができるようになっています。

なのに,違法を増やすということは何なんだろうということは,非常に後ろ向きな対策をとっておられるように私には感じます。

我々,ユーザー協会として,特に言っておきたいことは,次の「安心・安全を脅かす恐れ」のところは,特に御議論を頂きたいところだなと思います。

詳細なところは読んでいただければなと思うのですが,特に作家的な立ち位置として,大きく声を上げておきたいと思うことは,正規版であることを示すマークの導入を御検討されているというようなお話を伺っておりますが,そもそも,漫画には限りませんけれども,静止画というのは個人が写真や画像や漫画,その他を作っていって,それをネット上に上げているという広い文化活動があり,その個人を主体とする広い文化活動というのは日本の文化の豊かさを支えているという御認識については,恐らく皆さんも御異論はないと思います。

それを一定のディストリビューターを通したものが,正規の流通であり,それ以外のものは,個人が怪しげにやっているものにしかすぎないみたいな立ち位置を国が示すということです。後押しをするということになるわけです。私は,そういうやり方は本当に文化の発展について考えた上での行為と言えるのかという,覚悟を決めて,そういうことを言っているのかというところについて,かなり疑義を示しておきたいなと思います。

詳細については,また,意見書の方を御確認いただければと思います。

済みません,長くなりましたが,以上でございます。ありがとうございました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいま御説明いただきました内容につきまして,御質問あるいは御意見等がございましたらお願いいたします。

では,深町委員。

【深町委員】頂いた3点についての前提としてのところの一番総論的な理由のところからお伺いしたいのですけれども,まず,この問題となったサイトの話としては,リーチサイトに対して,あるいは,海賊版サイトに対するブロッキングの経緯を経た上で,そのようなブロッキングに対する反対の立場と,要するに,今回のダウンロードについてと,同じスタンスで考えていらっしゃるようにも,私には見えるわけです。

しかし,通信の秘密に関するブロッキングが緊急避難の法理でという話と,今回のリーチサイトに対するダウンロード違法化という話が,緊急避難の法理を考えても,合理性のある対応であるという形で,同じような事例に捉えられていること自体に,私は,強い違和感を覚えます。

一応,背景としまして,私は,緊急避難に関しては,日本の刑法研究者の専門家として,単著も出しておりますので,これは,自信を持って言えますが,何か処罰規定を作るときに,その背景として,緊急避難の行為を考えなければ,処罰規定を設けられないという考え方,あるいは,刑事罰をするというときに,緊急避難の法理ということ自体が,多分,そんなに言われていないと思うわけです。

それに対して,リーチサイトのときに,なぜ言われたかというと,それは,ブロッキングというものが,通信の秘密を侵害する行為であることは,要するに,構成要件の該当性は満たした上で,しかし,それに上回る利益があると主張されているからこそ,緊急避難の法理の問題があり,なおかつ,緊急避難の法理として,それを語られたことが,批判されたわけです。

それに対して,この世において,いろいろな諸事情で,様々な社会侵害行為を刑事罰を科す,刑事立法をするというときに,常に緊急避難の法理を考えるかというと,そんなことはあり得ないのであって,もし,ここで言いたいことが,もし……。

【中川氏】僕,緊急避難を前提としていないんですけど,そのお話は,余り意味がないと思うんです。我々が前提にしていることは,海賊版を止めるということを前提にしていて……。

【深町委員】分かりました。

【中川氏】その有効性として,ブロッキングはどうなの,リーチ規制はどうなのという話をしているので……。

【深町委員】分かりました。

【中川氏】緊急避難がどうのこうのということは,正直,今,どうでもいいんですけど,どういう御趣旨ですか。

【深町委員】ええ,分かりました。

そうすると,ここで言う緊急避難の法理を考えても,合理性がある対応だという書き方自体に,なぜこのような無意味な文章に見えることを書かれたのかをちょっとお尋ねしたい。

【中川氏】それは曲解で,我々は,海賊版サイトを止めましょうということを言っているだけで,そのやり方として,ブロッキングはどうですかということを言われたら,それは緊急避難の話を考えた上で,ちょっと,均衡がないんじゃないのというお話を差し上げただけです。

【深町委員】分かりました。済みません……。

【中川氏】海賊版サイト対策として,リーチサイト等を対策するために,静止画違法ダウンロードはどうなのというお話を受けて,静止画違法ダウンロードとか,ちょっと斜め上過ぎますよということが,我々の答えです。

【深町委員】分かりました。ありがとうございました。私のちょっと誤解があったのかもしれませんので,まとめて申しますと,ここで,緊急避難の法理というようなことを書かれると,このような誤解が出ると思うので,書き方について,私のみならず,もしかしたら,誤解を生じることがあるので,その後誤解の可能性を指摘させていただきました。

【中川氏】分かりました。ありがとうございます。

【深町委員】おっしゃるとおりだけでしたら,私としても,構いません。

そうすると,ここで,次のお話としては,非常によく分かることは,新たな刑事罰化をする際には,いわゆる刑罰の補充性という観点から,他の有効な手段があり得るのであれば,それを有効,まず検討すべきではないかという主張の刑罰の補充性という御主張であるというんだったら,私としても,よく分かるので,そのような前提として,この主張を受け止めるということでよろしいでしょうか。

【中川氏】はい,そうです。正解でございます。

【深町委員】分かりました。ありがとうございます。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。

では,前田委員。

【前田(健)委員】前提としての事実についてお伺いしたいのですけれども,お話の中で,漫画村のような,いわゆるストリーミング型ということですか。

【中川氏】そうです。

【前田(健)委員】というようなサイトには,効果がないではないかという御指摘があって,それは,そうなのかもしれませんけれども,こういう海賊版漫画サイトには,いわゆるダウンロード型のものも,多数あるというような意見も耳にしたことがあるのですが,その点について,何か御意見があれば。

【中川氏】幾つかあることは確認しています。ただ,正確な規模感が分からないということが,調査しているときでの感触です。これが,一体どれぐらいの部数が,違法にコピーされているのかということについて,正確な数字が非常にとりにくい。

そのために,我々,CDN側と具体的な,表で言い兼ねる部分があります。まだ公表できない部分がありますけど,いろいろ具体的に,これはどれぐらい出ているのかというようなことについての調査もしています。

それで,ダウンロード型のものがどれぐらいの被害があるのかということについては,少なくとも,漫画村のあの騒がれ方にはならないだろうというふうに思っています。

ただ,具体的な数字は,まだちょっと断言はできないものが多々ありますが,既にダウンロード型で,昨年でしたか,一昨年でしたか,裁判になって,和解に至っているものもあります。海賊版で挙げられたものでもあります。そのときは,それも和解になってしまったので,正確な部数が分からないのですけれども,規模感がはっきりしないので,漫画村の比ではないだろうということのみが,一応言えるところというふうなところです。

【前田(健)委員】分かりました。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

ほかに何かございますでしょうか。

では,松田委員。

【松田委員】ありがとうございます。

21年にダウンロードの民事違法化,24年に刑事違法化を法制として,改正してきました。そのときの最大の議論は,このような違法ダウンロード化をすると,インターネット利用者の利用が萎縮して,インターネット全体の価値に関わる。ないし,言論自体がというか,表現自体が浸透しなくなる,これは文化の衰退になるのだという指摘がありました。

今の資料で,少しその点も書かれているかと思うのですが,特に24年以降,具体的にどのような萎縮が生じたかということがありますでしょうか。

【中川氏】ダウンロード違法化刑事罰化によって,ユーザー側に萎縮が生じた実例が,どれぐらいかという形での御質問でよろしいですか。

【松田委員】そのとおりです。

【中川氏】それは,問いの立て方として,どうなのかなということが,我々の率直な感想でございまして,萎縮がなかっただろうと。それは,要するに,言外としては,萎縮というものはなかっただろうと。だから,違法化すればいいんじゃないのかというお話の流れに見えてしまうんですが,そういうことではないですよね。

【松田委員】いえ,決してそんなことではございません。

【中川氏】そういう御発想ではなく,萎縮があったか,なかったかということですね。

【松田委員】はい。

【中川氏】あったか,なかったかということで言えば,萎縮があったのは,間違いないと思います。

で,それは,表側で見える表現として,例えば,こういう漫画作品が,こういう映画作品が,アニメ作品がというようなところでの明快な萎縮ということではなくて,明らかな萎縮が起きたのは,P2Pという通信モデル自体が,ほぼ崩壊してしまったということです。

それは,ちょっと技術的な話には,どうしてもなってしまいますけれども,P2Pは,もうイメージとして,悪いもの,違法なものというものが,がっちり定着してしまって,これは,ただの通信技術だったのですけれども,ただの通信技術に色が付いて,もうP2Pというものを,合法的にビジネスで使うということ自体が,今,表舞台ではほとんどなくなってしまいました。

今,スカイプというアプリケーションが残っていますけれども,チャットや音声が動画の通信ができるものです。あれも,P2Pでなくなってしまいました。昔はP2Pだったのですけど,P2Pを使わなくなってしまいました。

なぜかというと,ビジネス側として,P2Pという言葉が,もう非常によくない。しかも,違法らしいじゃないですかという話になって,マーケットとして,成立しなくなってしまうのです。P2Pの通信アプリです,これだと,通信料が抑えられて,お得ですみたいなことを言っても,それ,違法でしょうという誤解が生まれてしまって,P2Pという通信モデル自体が,非常に傾いてしまった。ほぼ使い物にならなくなってしまって,今,我々がメーンで使っているような通信のアプリケーションで,P2Pというものは,ほぼないんです。もちろん,合法的なもので,P2Pを使っているものは,ほぼなくなってしまったと言っていいと思います。

これは,Winnyは,通信の仕組みとしては,かなり優秀だという評価はあったと思うのですが,あれを伸ばすというようなところが,全く起きなくなってしまったということは,日本のインターネット発の技術だったのですが,悪い面として,悪い形で使われてしまったということがあった。

それで違法化というものを合わさり,そちら側のP2Pという技術が伸びるという面は,もう徹底的に断たれたなということは,壇弁護士などもよく言っているところだと思いますけれども,憂慮すべきところだったなと思います。

済みません,話し過ぎました。

【松田委員】関連します。

今度の改正は,映像,音楽,音声だけではないので,正に,もしかしたら,言論のダウンロードに影響するかなと思っているわけです。

【中川氏】はい。

【松田委員】そういう意味では,24年改正以上に,その点は,慎重でなければならないと考えているんです。

【中川氏】はい。

【松田委員】はい。考えているんです。それで……。

【中川氏】ちょっと1点だけ,補足させていただくと,それに近い部分が,リフローレイアウトの書籍などはどうするのだということが,我々の懸念としてはあります。要するに,どこまで文字で,どこまで画像とするのかみたいなことを,真剣に考えないと,言論の遮断みたいなことにまでつながり兼ねない面はありますねということが,意見書の2番目ぐらいに,まとめて書いたところです。

【松田委員】今度は,音声や映像を超えての応用もありますから,その点を検討しようと思っているのです。

それで,特に24年のときに,多分,同じ団体だったと思います。インターネットユーザー協会が,これをやったら,インターネットが死んじゃうんだというような趣旨のことを言われていて,大変に心配しました。そのことについては,審議会内でも,いろいろ議論がなされました。

私が知る限りにおいては,そういう議論があったことは間違いないのですが,改正後に,こんなことが起こったというのであれば,是非知りたいんです。

【中川氏】今,P2Pが死んだというお話を申し上げたところなんですが,今,合法的な動画サービスや正規配信のサービスを,今,ほとんどのユーザーは見ている状態になりましたと言いましたけど,これは別の言い方をすると,非難をするような文脈で言えば,GAFAの支配とか,そういうような言われ方をするところです。要するに,大手のプラットフォーマーに,全てとられているというような物言いになるところです。

つまるところ,もう配信する能力などを持った大きい会社が,全てのコンテンツを握って,そこにお金を払わないと,何もできないという形になるわけです。それを,我々は,抽象的に,そういう形ではなくて,もっと個人が,例えば,情報発信したり,何なりしていくということが,インターネットとしては,望ましいというふうに考えておりましたので,そういうところでは,例えば,P2P技術などは未来があるし,これで,個人がどんどん情報発信していくみたいな未来があって,インターネットは,本来,そっちを向いていくべきだと思っていました。

なので,個人から情報を発信していくことは,後押しできるP2Pみたいな仕組みというものに対して,かなり致命的なダメージが起こるであろう,先年の映像,音楽のダウンロード違法化は,結局,P2Pを殺したわけですけれども,P2Pに対してのダメージが,インターネットを殺すというのは,ちょっとレトリカルに,やや過剰に申し上げた部分があるかもしれませんが,象徴的にインターネットの形は変えたということ自体は言えるだろうなと。

結局,大手プラットフォーマー主体になるということを,我々は,レトリカルに,インターネットを,個人から商業的なものに徹底的に替えてしまうねということを,殺すというふうに表現しました。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。

では,大渕委員。

【大渕主査代理】参考資料3-2で配られたものによると,ドイツ,フランスでも,日本と違って,録音・録画に限定されずに,一般的にダウンロードは違法化されていて,かつ刑罰の対象にもなっているということです。

インターネットの世界だから世界にまたがっていることが多いのですが,今までは,録音録画だけれども,静止画像までいったら,どうなるのでしょうか。仮想的な話なのですが,現に,ドイツやフランスでは,静止画像についても同じようなことになっているかと思います。そこで,先ほど懸念されたようなことが起こっているのでしょうか。

インターネット世界だから,何かいろいろドイツのことやフランスのこともお聞きになっているかと思いますが,ドイツやフランスで,先ほどの御懸念されていたところがどうなっているのかというところで,何か情報がありましたら教えていただければ,大変参考になります。

【中川氏】我々は,まず,日本の団体なので,国際事例について,そんなに豊富に存じ上げていないので,フランスやドイツとかで,一体どれぐらい,これによって抑止されているのかということについて,具体的なことは存じ上げません。

具体的に摘発されたり,裁判になったりということはあれば,知っているはずですけれども,これを見る限り,打合せをした限りでも,これで,具体例があるか,摘発例などがあるのかというと,なさそうなので,これが,有効に何らかの機能を持っていたのかどうかということについては,ちょっとよく分からない,判断し難いところです。

ただ,懸念としては,DMCAの悪用というようなお話を意見書に書かせていただきましたけど,そこの延長の話として,対抗言論的なものを,著作権で潰すみたいな悪用の仕方というものは,全世界的には起こっていることとして,考えていかなければならないのかと思っています。

フランス,ドイツについては,具体的に分かりません。現状では分かりません。

【茶園主査】では,どうもありがとうございました。

それでは,ここで,インターネットユーザー協会様には,御退席いただきたいと思います。どうもありがとうございました。

(インターネットユーザー協会退室)

【茶園主査】では,続きまして,コンピューターソフトウェア著作権協会とザ・ソフトウェア・アライアンスから,プログラムの著作物の取扱いについて,意見書が提出されておりますので,それらについて,事務局から紹介をしていただきたいと思います。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料3-3を御参照いただければと思います。

一般社団法人コンピューターソフトウェア著作権協会(ACCS)様からの要望書でございます。代わりに御紹介をさせていただきます。

冒頭ございますとおり,違法ダウンロードに係る改正議論の際にも,プログラムの著作物を対象とするよう要望されておられました。それが2008年の9月。それから,10年余りが経過し,プログラムの提供の形態が,大きく変化しているということでございます。

その具体的な内容が,次の段落以降で記載されておりますが,いわゆるパッケージとしての提供形態からダウンロード方式に移行しているということでございます。ダウンロードしたコンテンツを利用するために必要な情報を併せて提供するという形態に,ビジネスモデルは移行しており,それに伴って,不正利用の態様についても,同じように,変化をしているということが書かれております。

3段落目にその具体的な内容が書かかれております。インターネットオークション等で,出品者から,ソフトの利用に必要な情報とソフトをダウンロードして,入手するためのURL等を教えるという形で,取引がされておりまして,そのURLとしては,ソフトウェアが違法にアップロードされたストレージサイト等が指定されているものも,存在しているということでございます。

また,次の段落では,インターネットオークションにおける実情を調査されたということが書かれております。ソフトウェアの利用のための情報と違法アップロードされたソフトウェアのダウンロードの指示をしていた出品者につきまして,評価数を調査したところ,全体で1万2,299件,そのうち,よい評価が97%を超えているということで,多くは問題なくダウンロードができ,不正に利用することができたのではないかと書かれております。

また,次の段落では,ACCSさんの所属会員に対するヒアリングを行ったところ,ゲームソフト,ビジネスソフトとともに,現在でも,ウェブサイト,リーチサイト,P2Pを介した違法アップロードが確認をされており,削除要請等を行っているものの,効果が一時的にとどまっているということでございます。

次の段落では,P2P全盛期と比べると,被害の実態は減少しているように思われますが,今でも,インストールして,利用するものがほとんどだということで,音楽,映像と比べても,ストリーミングへの移行ははるかに遅いと書かれております。

また,ゲームソフトについては,録画物に含まれるということで,現行規定で捉えられている範囲もあろうかと思いますが,実用性を重視したようなゲームソフトにつきましては,録画物に含まれない,また,ビジネスソフトは含まれませんので,対策に苦慮しているということでございます。

以上のことから,プログラムの著作物についても,違法配信からの私的使用の複製の違法化(ダウンロード違法化)を要望します,というような内容になっております。

なお,3ページ目,4ページ目では,実際のインターネットオークションにおける不正な出品例が記載されておりますので,御参照いただければと思います。

続きまして,資料3-4,BSA,ザ・ソフトウェア・アライアンス様からの要望書を御紹介いたします。

こちらも,冒頭記載をしておりますとおり,2009年の著作権法改正の際には,録音録画のみ違法化され,コンピュータープログラムは,違法の対象とされなかった。その際にも,ソフトウェア産業に損害を及ぼすものだということで,法整備を行うべきと考えておられましたし,今でもその考えが変わっていないということでございます。

一方で,ビジネスモデルが変化しておりますので,侵害態様も変わっているということで,それに対処する観点から,ダウンロード違法化とともに,技術的保護手段の規定についても,改正いただきたいという要望になっております。

まず,1.(1)ビジネスモデルの変化でございます。これは,先ほどのACCS様の要望書に記載しているものと同趣旨かと思いますが,パッケージ販売が中心だったものから,ダウンロード方式に変わってきているということが書かれております。

また,ダウンロード方式におきましては,いわゆるライセンス認証の仕組みが取り入れられているということで,こういったライセンス認証のための技術的手段が,ソフトウェア企業の利益を守るために,重要なものだということが書かれております。

また,2ページ目,(2)侵害態様というところでございます。BSAにおきましては,2004年から現在まで,IDCという調査会社に委託をされまして,違法コピーに関する定点的な調査を行っておられます。

2009年のデータが書いておりますが,日本における不正ソフトウェアによる損害額が,約1,719億円でしたということでございます。この内訳としては,海賊版,企業内不正コピー,インターネットを利用した複製ということで,いわゆる違法ダウンロードによる被害も,この中に含まれているということでございます。

このデータが,2017年におきましては,同じ損害額として,1,106億円であって,いまだに継続している問題で,過去のものではないということでございます。

一方で,侵害態様には変化が見られるということも書かれておりまして,先ほどのACCS様と同じように,インターネットオークションを中心に,ライセンス認証を回避するようなプロダクトキー,クラックプログラムが販売されており,それにより,不正にソフトウェアが利用できるようになっているということでございます。

そのインターネットオークションへの出品数が,次の段落で書かれておりますが,探知しているだけで,1月当たり3,000件から5,000件で推移をしているということで,こういったものにおきましては,体験版とか違法にアップロードされたプログラムを,落札者にダウンロードさせ,その際,ライセンス認証を回避させることで,不正な利用がなされているということでございます。

次の段落は,プログラムの具体的な仕組みなどを記載がされております。

3ページ目からが,著作権法に関する改正要望でございます。まず,(1)がダウンロードの違法化でございます。先ほど御説明したような状況がございますので,下の3行目辺りからですけれども,違法にアップロードされたプログラムの著作物のダウンロードが,落札者のニーズを満たすために用いられるということを防止するために,当該ダウンロードは,違法化すべきですということでございます。

また,(2)技術的保護手段につきましては,今回と直接関係はしませんが,御紹介をいたします。

不正なクロックプログラム及びプロダクトキーの販売・提供の状況に対応するために,平成30年5月に,不正競争防止法が改正されております。アクティベーション方式による技術的制限手段を含まれることを明確化するための定義規定の見直しやそれを無効化するための符号の提供を不正競争と位置付ける改正が行われております。この背景には,従来の定義規定や規制の内容では,十分なエンフォースメントができなかったということが書かれております。

これを受けて,著作権法におきましても,現在の技術的保護手段の定義だと,実際の認証システムに合致していないという疑義が生じる。また,プロダクトキーの譲渡者を罰することができなければ,ソフトウェアの不正使用が増加してしまうということで,著作権法におきましても,不正競争防止法と同様の改正を要望しますと,このような内容になってございます。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,これから,委員の間で,制度化に向けた議論をお願いしたいと思いますけれども,議論のたたき台として,事務局で検討の視点について整理を行っていただいております。

そこで,まずは,その説明をお願いしたいと思います。お願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料3-5をお手元に御準備いただければと思います。

まず,この説明に入ります前に,先ほどのヒアリングの中で出てきた問題について,政府としての立場を改めて御説明を申し上げたいと思います。

先ほどのヒアリングの中では,全く漫画村に効果がなくて,ピントのずれた対策だという御指摘もございましたが,政府としては,全くそのようには考えておりません。飽くまで海賊版サイトというのは,漫画村に限らず,様々ございまして,ダウンロード型のサイトも多くあるというふうに認識をしております。

海賊版対策というのは何か1つの対策で,全てが解決するものではなくて,いろいろなものを組み合わせることで,対応していくべきものだと思っております。そういう意味で,ダウンロードの違法化というものも,1つの重要な方策だと思っておりますし,また被害額について,漫画村と同等ではないから,対応しないということはないと思っておりますので,被害が生じている以上は,必要な対応は講じていくべきだと,これが,政府としての考え方でございます。

これを前提にして,資料3-5の御紹介をしたいと思います。議論用に,事務局で整理した論点ペーパーでございます。

まず,1.被害実態でございます。前回のヒアリングにおきまして,出版社,権利者団体の方から御説明がございました。静止画と言われる漫画,雑誌,書籍に係る被害額が,主要な4サイトに限っても,半年間で738億円,トレントサイトでは347億円という御説明がされておりました。

この額につきましては,一定の留意が必要ではありますけれども,著作権者,出版社にとって,看過できない規模に達しているのではないかということを書かせていただいております。

留意が必要な点につきましては,3点,書いておりまして,被害額が,飽くまで一定の仮定・推計を基に,機械的に算出されたデータであり,正確な逸失利益というものを示すものではないということが1点目。

また,2点目としては,著作権は作家が有しておられますので,被害額の全てが出版社の被害というわけではないないということ。

また,3点目としましては,漫画以外の分野につきましては,現時点では,具体的な被害額が明らかではないということ,また,報告された以外にも,様々,海賊版サイトは存在し得るということで,被害の全容を把握するために,引き続き,幅広い調査が必要。

この点に留意が必要だと思っております。

2.が措置の必要性でございます。先ほどの被害実態を前提にいたしまして,出版社の方から,悪質な海賊版サイトについては,なかなか対応が難しいという御指摘がございました。

具体的には,[1]として,削除をしても,自動的にファイルが再掲載されてしまうですとか,[2]のように,サイトが閉鎖しても,サーバー,ドメインを変更して,運営が継続される。また,[3]新規サイトが生まれる。若しくは,[4]といたしまして,サーバー運営者が,海外に所在しているといったことなどから,アップロード者・サイト運営者への削除要請,法執行には限界があるということが御指摘をされておりました。

これを踏まえまして,海賊版サイトの利用を抑制するために,ユーザー側のダウンロード行為を違法化する必要が認められるかどうかということが,論点かと思っております。

3.は,措置による効果でございます。先ほど,調査研究の報告書を御紹介いたしましたけれども,音楽,映像については,ダウンロードを刑事罰化することにより,一定の抑止効果が見られたと思っております。静止画についても,このような効果が見込めるかどうかということが論点かと思います。

4.が,国民生活への影響でございます。まず,(1)として,先ほどのヒアリングの中でも,やり取りがございましたが,既に音楽,映像については,違法化・刑事罰化が行われております。そのときに,実際,懸念されていたような実例が生じているのかどうか。また,もう少し広くインターネット利用の萎縮というものが生じているのかを確認する必要があるかなと思っております。

※で書いているものは,その当時,懸念をされる声が多かったものを代表的に書いておりますが,少なくとも,事務局としては,このような事例が生じているということは,把握をしていないということでございます。

裏面に行きまして,(2)が静止画の特性を踏まえた対応についてでございます。違法にアップロードされた静止画につきましては,典型的な海賊版サイトのみならず,ブログやSNSにも掲載されている可能性がございますので,音楽・映像と比べても,国民生活に影響が及び得る範囲は広いという懸念が示されておりまして,これをどう捉えていくかということでございます。

一方で,現状の規定でも,「事実を知りながら」という主観要件が課されておりまして,これが,厳格に解釈されると捉えられておりますので,そうしますと,違法にアップロードされたかどうかがよく分からないという場合には,ダウンロードは,違法にならないということだと思いますし,また,あわせて,文化庁,出版社等による普及啓発を適正に進めた場合に,懸念が解消されないのかどうかということが論点かと思います。

また,(3)といたしましては,今回,静止画だけではなくて,プログラムについても,御要望が上がってきておりますが,こういう他の著作物に広がった場合に,懸念が増大するのかどうかということも,検討が必要だと思っております。

ちなみに,※で記載をしておりますとおり,現在,音楽・映像のダウンロードは違法化されていますが,単に視聴・閲覧する行為は違法とはならないという扱いになっております。

視聴・閲覧に伴いまして,キャッシュという形で,複製が生じる場合もございますが,こちらも現行の著作権法の47条の8,改正後は47条の4に規定が移っておりますが,いずれにしても適法になるということは申し上げておきたいと思います。

最後は,5.措置を行うとした場合の論点についてでございます。

まず,(1)対象著作物の範囲をどのように設定するかということでございます。今回,静止画のみならず,プログラムについても,御要望がございまして,こういうものを踏まえて,対象著作物の範囲をどのように設定すべきかということが,論点だと思っております。

国民生活への影響を十分に考慮する必要がありますけれども,その点,混乱が生じさせる等の事情がないのであれば,その他の分野における被害を未然防止する等の観点から,諸外国の例も参考にして,違法配信からのダウンロード全般を違法化することも選択肢になり得るかどうかという御議論をお願いしたいと思っております。

諸外国の状況につきましては,参考資料2の4ページ以降,記載をしていますので,少し資料を飛びますが,そちらを御参照いただきたいと思います。

参考資料の2の4ページ以降で,3.諸外国における取扱いというものを記載しております。

初めのところに記載をしておりますとおり,大陸法系のヨーロッパ諸国におきましては,日本と同様,私的複製の例外規定が設けられておりますが,ドイツ,フランスをはじめ多くの国が,違法に多くアップロードされた著作物等を複製する行為は,例外規定の対象から除外している,すなわち,違法化をしているということでございます。その際,対象著作物等については,特段限定がされていないという状況でございます。

また,大陸法系ではない,イギリス,カナダにおきましても,近年の法改正によって,同様の規定を導入しているというふうに承知をしております。

また,少しページが飛びますが,8ページをお開きいただければと思います。[5]その他とございますが,フランス,ドイツ,イギリス,カナダ以外にも,ここに掲げておりますとおり,スペイン,フィンランド,ハンガリー,スウェーデン,デンマークなどにおきまして,同様に,違法配信,違法複製物からの許諾を得ない複製については,例外規定から除外するという対応が行われております。

また,その下(2)アメリカにつきましては,御案内のとおり,私的複製一般の例外規定はございませんので,フェアユースに該当するかということが,重要になってまいります。

下の方のなお書きに書いておりますが,違法にアップロードされた著作物を複製する行為につきましては,フェアユースに該当せず,権利侵害だというふうに判断された判決があるというふうに承知をしております。

そちらが,9ページと10ページの参考判例というものでございまして,いずれも,ファイル共有ソフトによる音楽のダウンロードの事例ではございますが,いずれにつきましても,フェアユースの適用が否定されているというふうに承知をしております。

恐縮ですが,資料3-5の(2)の部分に戻っていただければと思います。主観要件につきましても,現行で,「事実を知りながら」という要件が書かれております。これは,利用者の方に過度な負担を掛けないようにするために重要な措置だと思っておりますので,仮に静止画などに対象を広げる場合にも,当然,維持すべきものだと理解していいかどうかということでございます。

また,この「事実を知りながら」につきましては,厳格に解釈しておくべきだという御意見もあると承知しておりまして,「当然,知っているべきだった」というようなものが,対象に含まれないように,解釈を明確化しておく必要があるかどうかということも,論点になり得るかと思っております。

また,(3)刑事罰の扱いでございます。抑止効果を高める観点から,刑事罰が必要になるかどうか,既に音楽・映像については,刑事罰化が導入されておりますので,それと異なるような取扱いをする事情があるかどうかという観点から,御議論を頂くものかと思っております。

また,刑事罰が必要になる場合におきましても,現行どおり,有償のものに限定をすべきですとか,法定刑の水準をどうするかという点についても,論点となり得るものと思っております。

なお,※で記載をしておりますが,TPP整備法が本年の12月30日に施行されることになっておりまして,その中で著作権等侵害罪は一部非親告罪化をされることになっております。

ただ,音楽・映像のダウンロード違法化につきましては,この対象外ということで,明確に位置付けられておりますので,引き続き,全て親告罪でございます。

そういう意味で,仮に静止画などに対象を広げた場合でも,そこは親告罪だということは変わらないということでございます。

(4)普及啓発でございまして,国民の方々に混乱を生じさせないということは,非常に重要だと思っておりして,その観点から,どのような対応が求められるかということでございます。

なお,前回のヒアリングにおきましては,出版社の方から,正規配信サイトに対するABJマークというものを導入する予定であるということですとか,法改正が行われた場合には,キャンペーンの一環として,しっかり周知を行っていくという旨が表明をされておりました。

少し長くなりましたが,事務局からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいまの御説明を踏まえまして,委員の間で,議論を行いたいと思います。意見等がございましたら,お願いいたします。

では,深町委員。

【深町委員】済みません,時間の関係上,すぐに去らなければならないので,刑事罰という観点から,2点ほど申し上げておきたいと思います。

1点目です。先ほどのインターネットユーザー協会の方もおっしゃっていたように,刑事罰を科すということは,国民に対する強い意思効果をもたらす可能性があるということと,刑事罰化というのは,やはり,最終手段であると。なるべく用いない方がいいということは,もちろん,間違いないことだと思っております。

ただ,その前提でいいますと,先般の動画ダウンロードについて,検挙件数が1件もないということで,現状において,まだ,そういった検挙がないという事実をどう評価するかということは,やはり議論をするべきだと思っております。

要するに,これが,いわば伝家の宝刀,あるいは,存在はするけれども,それによる威嚇効果を期待するだけであって,実際の検挙はなかなか難しいんだということを前提の上で,このようなことを我々は静止画でもするんだということについて,議論をした方がよろしいかと思っております。

具体的に申しますと,アップロードと異なり,ダウンロードというのは,それをしたかどうかということについて,探知が極めて難しい状況がございます。

これは,例えば,児童ポルノとかでも,単純所持について,単純所持を理由とした検挙がなかなか難しいということと似ておりまして,ダウンロード,それ自体は,アップロードとは別に探知することが難しい状況であり,検挙がそもそも困難な構造があるということを前提とした上で,しかしながら,このような規範を作ったのだということと同じことを,静止画でもやるのかどうかということについて,委員の先生方には,御留意を頂いた方がいいと思います。これは,1点目です。

2点目です。もし仮に,それでもやはり,刑事罰を導入すべきだということであれば,そこで考慮すべきは,従来,動画につきましては,有償著作物などに限定されている,あるいは,事実を知りながら限定されている,この限定は,当然必要だと私は思っております。

それに加えて,法定刑としても,従来の動画につきましては,2年以下の懲役,200万円以下の罰金となっておるところですが,法域侵害性の大きさとして,動画というのは,やはりデータ量が大きいということで,法定刑について,2年となっているところ,もし,仮に静止画については,そこまで,類型的に法域侵害性が大きくないということであれば,もうちょっと法適用を下げて作るという考え方もあり得るところである。

逆に,いや,静止画といっても,漫画丸ごと全部,全部ダウンロードするようなものについては,なお法定刑を同じように,要するに,今までの動画と同じように考えてもいいという考え方もあり得るところです。

このような観点から,具体的に想定される法域侵害性との観点で,法定刑についても,御議論いただければと思っておるところです。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

では,今村委員。

【今村委員】参考資料の2で,外国法に関して,いろいろ言及があったところについてなんですけれども,イギリス法については,28条のBが私的使用のための複製の例外規定ということですけれども,これについては,2014年にそれで制定されたんですけど,2015年の高等法院の判決が,これは無効だというふうに判断して,その後,要するに,有効性を失っているので,基本的にイギリスでは,現在でも,私的使用の複製をするべきではないということです。違法にアップロードされたか,適法にアップロードされたかに関わらず,私的使用のための複製に関する制限規定はないという運用だということです。

私の方で,イギリス著作権法を翻訳して,CRICのウェブサイトでアップしているものは,古いものであったのかもしれませんが,その点から来ているのかもしれませんけど,後で,また御確認いただければと思います。その点だけ。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

では,奥邨委員。

【奥邨委員】最初に,確認しておくというか,議論の前提として,整理しておく必要があると思うものは,静止画ダウンロードは,録音録画に対する概念ということで,静止画と使われているんですが,実は,今,書かれているように,漫画,雑誌,書籍ということなので,実は絵には限っていないんです。

ですので,この静止画ダウンロードというまとめ方自体も,非常に誤解を与えて,例えば,先ほど,インターネットユーザー協会さんがおっしゃっていたように,文字の部分と絵の部分をどう分けるんだというんですけれども,今のところ,書籍ということで考えていますから,別段,その分け方は,考えているというか,今,事務局の出されているものだとすると,余り関係がないかもしれないということになる。

どちらがいいかはあるんですけれども,そうすると,この静止画という括り自体が,議論をしている上で,非常に混乱を招くんではないかなということは,気にしております。

したがって,もう少し適切な……。それが難しいんですが,括りを作る必要が一つあるだろうと思っております。

2点目としましては,私よりも,もっと詳しい先生方がおられると思うんですけれども,状況を整理しますと,録音録画に関するダウンロードが違法化されたということは,振り返りますと,まず,私的録音録画小委員会で検討されたわけであります。

補償金の議論との関係性の中で,私的録音録画補償金で,本来補償すべき範囲を明確にするという議論の流れの中から,まず出てきたんだという理解をしております。

資料3-5の4の(1)に,いろいろ懸念事項が挙げられておりますけれども,これも,法制小委で議論したわけというよりも,少なくとも法制小委の報告書に出ているのではなくて,こういうものは,どちらかというと,私的録音録画小委で,いろいろと議論をされた中で,議論をされたものだったと思います。

したがって,映画や音楽のファイルに関する利用形態を念頭に置いて,議論されたものでして,全ての著作物に拡大した場合を論じているものではないということ。

当時の時代状況を見ると,やはり,ファイル交換が非常に重要視されて,大問題であったということ。これらの対処というのは,その時点の状況では,ダウンロードを規制する以外に,いい方法がないという議論もあった。

今,アメリカの例が挙がっておりましたけれども,アメリカも,この時点では,個々のP2Pユーザーを狙い撃ちにして,訴えて,一種の見せしめ的な形で対応するということを,権利者サイトさんはやっておられました。

ただ,かなりの反発があったり,また訴訟上,難しかったりすることで,現状は,一般ユーザーを訴えることは,ほぼやっていないと思っています。

したがって,当時の時代状況の中で,日本としても,こういうことが必要なんではないかというような中で,もちろん,効果もありましたし,やられたということだったろうと思っています。

そういう中が終わった後で,では,ほかの著作物についてはどうなんだろうということで,法制基本小委で議論されて,その際に出ていたことは,とりあえず,プログラムについては似ているんではないかという議論があったけれども,まだ具体的な数字もないし,時期尚早だねと言って,議論が終わったということがありますので,私としては,いろいろなことについて,既に議論が終わったということでは……。

終わったとは言わないんですけれども,おおむねが終わっているということでもなくて,録音録画に限って,当時の状況の中で,様々な状況の中で,これは是という答えが出ただけであって,よりいろいろなところに広げていくことに関しては,様々,検討することがある。

導入自体,反対しているということではないんですけれども,どういう副作用があるかとか,どういう主効果があるかということは,必ずしも録音録画のときの話の流れだけではなくて,検討しないといけない問題があるんではないかなと思っているということです。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】奥邨委員が言われた1点目は,私も共感するところがあります。静止画の定義が難しかったりするので,むしろ,この点は,先ほどの諸外国のところに係ってくるわけですが,諸外国では別に対象は特定せず,一般的にダウンロードを違法化して刑事罰も科しているということです。そこのところは,我が国においては,ニーズが高かったので,録音録画だけ先行して違法化し,さらには刑罰化へ進んでいるということだと思います。

そこのところは,もう少し幅広くというか,少なくとも諸外国では一般的な形でやっているということもありますので,静止画に絞ってしまうと,また静止画の定義のところでいろいろな困難なことが生じてきます。

今まで録音録画としているが,それに静止画なのか,それとも,細かいことで切っていくと定義が大変だから,今,言われたように,精査していく必要はありますが,プログラム等も含めて一般を対象にすべきかというところを明確に議論した方がよいのではないかと思っております。

【茶園主査】では,田村委員。

【田村委員】今,ずっとお二人の委員から,特に録音録画との比較が出ていましたけれども,録音録画の対象となるもの以外の静止画,あるいはもしかしたら文書にも広げるというところについては,やはり質的な相違があるように思っています。

それは,今回の事務局からの意見にもここかしこに,出ているところなのですが,まず,動画,あるいは音楽と比べると,今回,視野に置かれているものは相対的に誰もが創作し得るものであるということで,著作権者がより多様化しております。その中には,非常に強い保護をしている漫画の業界さんもあれば,特にどうでもいいと思っている,そういう著作権者もいるということが,まず一つです。

もう一つは,今度はユーザー側において,定型的にファイル容量がそれほど大きくないということや,今申し上げたように,動画や音楽と違って……これは事務局で出ていたと思いましたけど,ブログ,普通のウェブサイトなど様々なところに,他人の侵害著作物は潜んでいる,あるいはあからさまに出ているということがあるわけです。しかも,ダウンロードが,ほぼ一挙手一投足ですぐに終わるというようなところもありますので,ユーザーの方が思いとどまる可能性はかなり低いという問題が,相関してあるわけです。

そう考えますと,プログラムは,どちらかというと録音の方が近いと思いますけれども,それ以外のものに今回,対象を非常に広げるということになりますと,大きく質的に相違するものが取り込まれるだろうと思うのです。したがって,対象の著作物の範囲については,きちんと考えた方がよいと思います。

そこで,私からの提案ですけれども,頂いた立法事実は,漫画がほとんどでありまして,あるいはプログラムを含めても,結局ほとんどが有償著作物を念頭に置いた議論だろうと思います。そうすると,有償著作物以外に,果たして,広げる必要があるのか。

現在,有償著作物の定義に関しては,もちろん,刑事罰の方へ入っているわけですが,いま申し上げたように,質的な相違を勘案すれば,今回,民事の方で新たな違法類型を導入する場合も,有償著作物という要件を課すことが,立法事実を踏まえた上での対応ではないかというふうに思いました。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。

では,上野委員。

【上野委員】このいわゆる「静止画ダウンロードの違法化」につきましては,ブロッキングをめぐる議論でも取り沙汰されてきたものでありまして,ブロッキングの制度化に反対する側からも,例えば,JILIS(情報法制研究所)の2018年10月11日の意見書の中にも,海賊版対策を総合的に進めるべきだという文脈の中で,「リーチサイトの違法化や電子出版のダウンロード違法化のための立法も含めた各手法の検討を更に含めることが必要である」と述べられておるところであります。

私自身は,最近の海賊版サイトは,ダウンロードしないでも,漫画や映画を閲覧できてしまうようなものが増えているように思っていましたので,静止画ダウンロードを違法化しても,その効果は限定的ではないかとも考えてきたわけですけれども,しかし,ダウンロード型も依然として存在するということですし,そしてまた,最近では,高額の科学論文を大量にダウンロードできる海賊版サイトが世界的に大きな問題となっているところでもありますので,その意味では,現在,録音と録画によるダウンロードだけに限定されているこの規定を,すべてのダウンロードに一般化することには一定の理由があると考えております。

実際のところ,諸外国では,カテゴリにかかわらずダウンロードを違法化しているのみならず,デジタル以外の複製も含まれます。したがって,例えば,違法に複製された本を複製するということは,いくら私的使用目的でもできない国が多いわけであります。ですので,日本の私的複製の規定は,依然としてかなり広いと言えるかと思います。

もちろんユーザーの過度な規制になってしまってはいけませんので,現在,ダウンロード違法化の規定には「知りながら」という要件がありますけれども,ここに「知るべきであった」などが含まれないようにすることが必要ですし,その点で世間に誤解されないよう周知を図ることも重要なことかと思っております。

また,先ほど事務局からもお話がありましたように,仮に静止画ダウンロードを違法化しても,ブラウジングは依然として適法であり続けますし,ブラウジングに伴うキャッシュも日本法では明文の規定によって適法なわけでありますので,そのような状況は確認される必要があるかと思います。

ただ,このような改正を行う際に,現在の権利制限規定が,本当にそのままでいいのかということは,引き続き検討が必要かと思います。例えば,研究機関に属する研究者が自己の研究のために,違法サイトと知りながら資料としてダウンロードするということを適法とする規定は十分ないと私は思っておりまして,この点も諸外国の立法に目を配りながら,今後も権利制限規定について検討し続けていく必要があるのではないかと私は考えております。

以上です。

【茶園主査】生貝委員。

【生貝委員】ありがとうございます。

まず,1つとしては,やはり,これから,この静止画というところと提起したとしても,やはり,今までの動画や,あるいは,音声といったようなところとは,非常に関係する利用者の数も,ばくだいに違ってくるだろうというふうに言ったとき,やはり,国民の情報の取得する,あるいは,それを表現すること全体に関わってくる情報法制全体として,違法情報,違法状態を広く作り出した上で,規律していくというふうにいったような方法自体をとることについて,やはり,非常に慎重な検討が必要であろうと考えます。

その上で,例えば,こういった立法を具体的に検討する際に,対象著作物の範囲というものを,非常に綿密に限定していくことは,大変重要であろうとともに,やはり,特にブログですとか,様々な一般的なウェブサイトからの情報の収集というところを妨げないためにも,例えば,今,リーチサイトに関して,主に念頭に置かれているような,例えば,主として,そういった海賊版等を助長するようなところからのダウンロードを限定して,対象にするですとか,やはり,今回,主に政策としての目的というものが,非常に明確に,特に悪質な海賊版サイトにどう対応するかというところ,存在するところでございますので,それに比例した,必要に十分であり,かつ過度でない立法措置というものを,是非,御検討していただく必要があるのかなと考えます次第です。

【茶園主査】では,小島委員。

【小島委員】静止画のこととは少し異なるんですけど,プログラムに関して,幾つか御要望が出ていることとの関係で,1点,指摘をさせていただきます。

ソフトウェアの利用の形態が様々であるということから,私が抱いている疑問なんですけれども,このような問題については,いわゆるデジタル消尽についての問題というものを,一つきちんと整理をしておく必要があるんではないかということを感じました。

昨年の著作権学会でも,議論になったところであるかと思いますけれども,特にソフトウェアについては,いわゆるライブラリー化のようなものが進みづらいので,デジタル消尽について,より肯定的な方向で考えていいんではないかというような見解というものも,存在しているところであります。

今日頂いた資料の3-3,3-4などを見ていますと,具体的にどういうふうなソフトウェアの利用形態というものを念頭に置かれているのかということについて,多分,複数のものが混在しているような印象を受けましたので,その点についても,もう少し当会などから,具体的な形で,事実をお示ししていただいた上で,議論を進めた方が,より建設的な議論になるのではないか。

私も,技術的な制限手段を回避するようなものについてまで,特に異論はあるものではないのですけれども,この辺りが,複数の類型が混在しているのではないかなという印象を持ったために,そのようなことを指摘させていただきます。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。そろそろ時間ですが。

では,井奈波先生。

【井奈波委員】まず,対象著作物の範囲ですけれども,個人的には著作物を区別しない方向性での議論の方が分かりやすいと思ってはいるのですが,その前に,諸外国で,著作物を区別しない法制をとっているところがあると思いますので,その効果については,やはり,1度,調べた方がいいのではないかと思います。

特に懸念がありますのは,プログラムについて,ダウンロードは探知が難しいという前提で,当初の議論は始まっていたと思いますが,今の状況を見ますと,アクティベーションが一般化されていますので,そういう前提も崩れている可能性があります。

実際,そういう前提が崩れているのかどうか,技術的な問題はよく分からないですけれども,アクティベーションで,権利者側が警察的な役割を持ってしまうのではないかという懸念があります。

また,先ほどのソフトウェアの問題ですけれども,中古ソフトの取扱いも問題だと思いますので,その点も明確にする必要があると思います。

御報告でも,不正に利用されているものの中に,中古商品が含まれているのかよく分かりませんでしたので,その点を明確にした方がいいと思いました。

【茶園主査】ありがとうございました。

よろしいでしょうか。では,どうもありがとうございました。

いろいろ意見を頂きまして,ありがとうございました。

事務局におきましては,本日の議論を踏まえて,論点等の整理をお願いしたいと思っております。

他に特段思ってございませんでしたら,本日はこれぐらいにしたいと思います。

最後に,事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】済みません,資料の取扱いでございます。今回非公開としてお配りしている資料が幾つかございます。前回は,お持ち帰りいただいても結構だと申し上げてしまったんですけれども,今日で,審議が一区切りつきましたので,今日お配りしているものは,机上に置いて,御退室いただければと思っております。

また,前回お持ちいただいた資料,もしお手元に保存されておりましたら,可能であれば,破棄をお願いしたいと思っております。

次回の日程でございますけれども,11月26日月曜日15時から18時を予定しております。

以上でございます。

【茶園主査】何を置いておく必要があるということですか。

【大野著作権課長補佐】済みません,非公開資料である1-2から1-4,机上資料というものでございます。

【茶園主査】1-2から1-4ですね。

【大野著作権課長補佐】はい。

【茶園主査】分かりました。1-2から1-4を,このまま置いておいていただきたいということです。

では,どうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第5回)を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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