文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第8回)

日時:平成31年1月25日(金)
10:00~12:00
場所:スタンダード会議室新虎ノ門店Bホール


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(2018年12月)」に関する意見募集の結果について
    2. (2)文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書(案)について
    3. (3)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(2018年12月)」に関する意見募集の結果について(571.8KB)
資料2
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書(案)(5.1MB)
資料3
田村善之委員提出資料(102KB)
資料4
前田健委員提出資料(164.7KB)
参考資料1
パブリックコメントで提出された御意見を受けた事務局としての考え方(ダウンロード違法化の対象範囲の見直し)(151.2KB)
参考資料2
「環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」による著作権法改正の施行について(通知)(抄)(313.8KB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
参考資料3
著作権法の一部を改正する法律等の公布・施行について(通知)(抄)(601.9KB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
出席者一覧(53.6KB)
参考資料
報告書(案)に対する意見書(122.3KB)

議事内容

【茶園主査】では,定刻になりましたので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第8回)を開催いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思いますので,既に傍聴者の方には入場していただいております。この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

なお,本日のカメラ撮りにつきましては,冒頭5分程度とさせていただきますので,御了承願います。

では,まず,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第の配布資料一覧を御参照いただければと思います。

まず,資料1といたしまして,本小委員会の中間まとめに関する意見募集の結果についてという資料をお配りしております。

また,資料2が本小委員会の報告書(案)。

資料3が田村義之委員提出資料。

資料4が前田健委員提出資料でございます。

また,参考資料1といたしまして,パブリックコメントで提出された御意見を受けた事務局としての考え方(ダウンロード違法化の対象範囲見直し)という資料をお配りしております。

参考資料2が,昨年12月に施行となったTPP整備法の施行通知の抜粋。

参考資料3が,本年1月に施行となった著作権法改正の施行通知の抜粋でございます。

また,議事次第に記載しておりませんけれども,机上配付資料といたしまして,5名の委員の先生方からの意見書を頂いておりますので,そちらもメーンテーブルに配付しております。不足などございましたら,事務局までお伝えいただければと思います。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

では,まず初めに,議事の進め方について確認しておきたいと思います。

本日の議事は,(1)「文化審議会著作物分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに」関する意見募集の結果について。(2)文化審議会著作物分科会法制・基本問題小委員会の報告書(案)について,(3)その他ということになります。

では,早速議事に入ります。1番目の議題,(1)文化審議会著作物分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の結果についてです。前回,昨年12月の本小委員会では,中間まとめを取りまとめまして,1月上旬まで国民の皆様からの意見募集を行いました。本日は,まず事務局よりその結果の報告を頂きたいと思います。

それでは,事務局から説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料1を御参照いただければと思います。資料1の表紙の1.に記載しておりますとおり,昨年12月10日から本年の1月6日まで,約1か月間,意見募集を実施いたしました。2.に記載のとおり,合計で718件の御意見を頂いておりまして,そのうちの団体からの御意見が95件,個人からの御意見が623件となっております。章ごとの御意見の内訳については記載のとおりでございますが,第1章,リーチサイトの関係が60件,第2章,ダウンロード違法化の関係が534件ということで,こちらが多くの意見を頂いた項目となってございます。

3番,意見概要でございます。2ページ目以降で,それぞれの章ごとに頂いた御意見の概要を記載しております。大部でございますので,ごくかいつまんで御紹介したいと思います。

まず2ページ,第1章,リーチサイトの関係でございます。1番,総論といたしまして,マル1,海賊版対策としての効果に期待する意見が,権利者団体を中心に多数寄せられたところでございます。

また,3ページから5ページの上のあたりにつきましても,観点は少し異なりますけれども,リーチサイト対応によって海賊版対策が進むことを期待する意見というふうになっております。

一方で,5ページ目のマル2,法整備に反対する意見も幾つかございました。今回のリーチサイト対応につきましては,そもそもアップロードが違法だという前提でございますので,その違法アップロード対策をベースに考えることが原則といった観点での御意見を,幾つか頂いております。

また,次の6ページに参りまして,2.リーチサイト・リーチアプリの現状についての御意見,情報というのも頂いております。1つ目にございますとおり,日本における海賊版サイトの主流はリーチサイト型である。アクセスの上位10件のうちリーチサイト型が9件を占めているといった御意見を含めまして,幅広い実態についての御意見を頂いております。

また,7ページ目の3番,現行法における対応の可能性についての御意見もございました。1つ目の丸にございますとおり,「はるか夢の址」につきましては,現行法においても摘発されているということで,現行法での規制がどこまでできるのか,この検討をまずされるべきといった観点の御意見がございました。

また,次の8ページに参りまして,4.として,リーチサイト規制と「表現の自由」との関係についての御意見も幾つか頂いております。マル1は,リーチサイト規制につきましては,公共の福祉による制約として認められるという御意見,また,次の9ページのマル2につきましては,表現の自由への影響を懸念する意見ということで,双方の御意見があったところでございます。

また,10ページからが各論になりますけれども,民事(差止請求)についての御意見を頂いております。

11ページの5-2は,手段,これをどのように限定していくかという点について,双方御意見を頂いております。マル1は,規制対象が広くなり過ぎることを懸念する意見ということで,サイト運営者の方々が判断に苦しむような場合があると表現が萎縮するということで,要件の明確化を求める意見などがございました。

また,12ページ目に参りまして,反対にマル2として,規制対象が限定的になることを懸念する御意見というものもございました。1つ目の丸にございますとおり,審議会報告中間まとめでは,「主として」という文言を用いておりましたが,これが解釈上,「専ら」「のみ」といった形の限定的な解釈に陥らないような手当てを講ずべきという御意見がございました。

また,13ページに移りまして,5-3,主観要件につきましても多様な御意見を頂いております。マル1-1としましては,中間まとめに沿って主観要件として故意・過失を求めることに賛成をする意見がございました。一方で,マル1-2,過失を含めることに否定的な意見,故意に限定すべきだという御意見もございましたし,逆にマル1-3としては,主観要件自体を求めることに反対する,主観要件は不要ではいなかという趣旨の御意見もあったところでございます。

また,14ページに移りまして,場・手段に対する主観要件を課すかどうかという御意見も幾つか頂いております。マル2-2といたしましては,「場・手段」に関する要件につきましては,過度の立証負担を避けるためにも不要であるという御意見がございました。また,マル3といたしましては,主観要件ではなく,一定の手続に沿ったノーティスを必要とするような要件を立てるのが望ましいといった御意見などもあったところでございます。

また,下の5-4,行為についてでございます。まず,マル1,侵害コンテンツへの誘導の直接性ということで,侵害コンテンツへの到達を容易にする行為を漏れなく対象とする必要があるといった御意見がございました。

また,15ページ,マル2に誘導の方法がございますけれども,いかなる方法であっても対応ができるようにすべきだといった趣旨の御意見がございました。

また,飛びますが,16ページ,対象著作物につきましても御意見を頂いております。マル1,マル2,同趣旨かと思いますが,対象著作物の限定,有償著作物への限定は不要であるという御意見,一方で,マル3として,デッドコピーへの限定を求める意見や,マル4といたしまして,同趣旨かと思いますが,二次創作の除外を求める意見がございました。

それから,18ページに移りまして,5-6としまして,その他の要素(正統な目的を有する場合の取り扱い等)についても,御意見を頂いております。場・手段,主観の要件を満たす場合につきまして,正統な目的を有するケースは想定しがたいので,除外規定の創設は不要という趣旨の御意見を頂いております。

また,5-7はリーチサイト運営者に対する差止請求についての御意見でございます。マル1としては,個々のリンク提供などにつきまして,リーチサイト運営者に対する差し止めも認めるべきではないかという御意見がございました。また,マル2の1としては,リーチサイトの運営行為そのものの差し止めを認めるべきだという趣旨の御意見もございました。

一方で,これに対しましては,マル2-2として過剰差止になるのではないということを懸念する意見も寄せられたところでございます。

次の19ページ,6番が刑事罰の関係でございます。マル1として刑事罰に賛成する御意見,またマル2として,法定刑の水準に関する意見,マル3としては制裁の手段,方法についての御意見も頂いたところでございます。

それから,20ページに参りまして,8.インターネット情報検索サービスへの対応についての御意見もございました。マル1,立法対応によることに積極的な御意見もございましたし,マル2として,立法対応は見送るべき,当事者の取組に委ねるべきという趣旨の御意見もございました。

また,21ページに参りまして,9.として,法整備を行う際により実効性を高めるためにガイドラインの策定,普及啓発などを求める意見というものを大量に寄せられたところでございます。

また,22ページに参りまして,10.として,今後も継続的な議論を求める意見というものがございました。マル1にございますとおり,今回は悪質なところを切り出して措置をするという方針になっておりますが,侵害コンテンツへのリンク提供全般について,継続的な議論を進めるべきといったような御意見を頂いております。

駆け足でございますが,リーチサイトについては以上でございます。

24ページから,第2章,ダウンロード違法化の御意見を簡単に御紹介したいと思います。1番,総論の1-2,海賊版対策への効果についての意見でございます。マル1として,海賊版対策への効果に期待する意見につきまして,権利者団体,出版社の方々などから多数御意見が寄せられたところでございます。

またページ,飛びますが,26ページのマル2といたしましては,反対に効果にダウンロード違法化をしても,海賊版対策には余り効果がないのではないかという観点からの御意見も多数いただいております。

さらに27ページから,先ほど御紹介したのと趣旨が重なる部分がありますけれども,ダウンロード違法化の対象を拡大することで抑止効果を期待する意見ですとか,一方で,28ページのマル2にございますとおり,抑止効果には疑義があるという御意見もあったところでございます。

また,28ページの2.検討の前提として,現行法の趣旨ですとか,音楽・映像,既に行われている部分の効果などにつきまして,それを評価する意見と疑義を呈する意見,双方の御意見が多数寄せられたところでございます。

また,29ページ目,3.に参りまして,被害実態,措置の必要性についての御意見が多数出てきております。マル1としましては,侵害コンテンツのダウンロードによる被害実態を危惧する意見ということで,現状で多大な被害が発生しているという御意見をたくさん頂いたところでございます。

ただ,これに対しましても,31ページ,マル2に記載しておりますとおり,被害実態に疑義を呈する御意見がございました。とりわけ1つ目の丸にございますとおり,海賊版サイト,ファイル交換,これ以外の部分につきましては,どの程度の被害が発生しているか,中間まとめからは分からないという趣旨の御意見があったところでございます。

それから,32ページに参りまして,各論の部分でございます。4番,対象範囲ということで,対象範囲をどのように設定していくかにつきまして,様々な観点の御意見がございました。マル1としては,著作物間での措置の整合性などの観点から,録音・録画と同様の要件の下で対象範囲を著作権全般にすべきという御意見,こちらは出版社中心に御意見を頂いております。

一方で,33ページ,マル2にございますとおり,音楽・映像以外の著作物の特性を踏まえまして,録音・録画とは別の新たな要件を追加するということで,慎重に対象を限定していくべき,こういった御意見もたくさん頂いたところでございます。

また,34ページに参りまして,4-2,ユーザー保護の必要性・正当性という部分でございます。

35ページあたりからでございますが,マル2といたしまして,ダウンロード違法化の範囲を拡大した場合に弊害が生じるという事例について,たくさん御提出をいただいております。後ほど報告書のところで御説明しますので,説明は割愛しますけれども,研究活動への影響が及ぶという点を中心としまして,様々な観点から支障があるという御意見を頂いたところでございます。

ページ,飛びますけれども,40ページに飛んでいただきまして,マル3,さらなるユーザー保護のための措置を行うとした場合の対応の選択肢につきまして,御意見を頂いております。これは中間まとめにおきましても4つの方法を記載しておりましたが,それぞれについて支持する意見,それぞれの限定をすべきだといった御意見を,それぞれ頂いたところでございます。

また,41ページに参りまして,4-3,対象範囲を拡大することで,ユーザー側に萎縮効果が及ぶのではないかという御意見についても頂いております。

一方で42ページのマル2にございますとおり,音楽・映像については,それほどの萎縮効果が生じていないということで,対象範囲を広げても,それほど萎縮を懸念するに及ばないのではないかという御意見も頂いたところでございます。

それから,42ページの下の部分,5.制度整備の際の留意点ということで,主観要件の扱いについて御意見を頂きました。中間まとめの中では,より厳格にということを記載しておりましたが,それが過度に制限的に解釈される余り,抑止効果が低下するといった懸念が示されたところでございます。

また,43ページの一番上のあたりにございますけれども,違法だと知らなかった場合には,重過失があったとしても違法とならないなど,慎重な線引きが求められる厳格な解釈,運用が必要という,中間まとめの方向に沿った御意見も頂いたところでございます。

少し飛びますけれども,45ページに参りまして,刑事罰の取り扱いについても多数御意見を頂いております。マル1,諸外国との比較ということにつきましては,中間まとめでも記載しておりますが,あくまで形式的な比較だということで,実態が分からないという御意見ですとか,国によっては民事では違法にしているけれども,刑事罰の対象にはしていないですとか,刑事罰の際にはさらに高いハードルを課していると,このようなこともありますので,中間まとめの諸外国の取り扱いから,一律に刑事罰の必要性は説明できないだろうという趣旨の御意見かと理解しております。

また,マル2として,親告罪は当然維持すべきだという御意見がございましたし,また,マル3として,刑事罰の対象にすることによって捜査の乱用が懸念されるという趣旨の御意見もたくさん頂いたところでございます。

あとは47ページに飛びまして,7.普及啓発等の在り方についての御意見も頂いております。マル1としては,ダウンロード違法化と普及啓発など,これが相まって効果を期待し得るという御意見がございました。

また,マル2といたしましては,出版社の方で策定された正規版の配信マーク,ABJマークを普及することでユーザーの不安を解消していくという取組につきまして,出版社の方々から御説明がありました。

また,48ページに参りまして,8.その他といたしまして,ダウンロード違法化以外の海賊版対策が必要なのではないかという御意見もございました。マル1,プロバイダー責任制限法の改善を求める御意見,マル2として,広告収入に対する対応を求める御意見,また,マル3として,国際的な連携を求める意見,マル4として,サイトブロッキングを含めた対応を求める意見などがございました。

また,マル5としては,こういった対象範囲の拡大よりも,正規コンテンツの流通促進を優先させるべきだという御意見もございました。

また,8-2といたしまして,中間まとめでは,このダウンロード違法化の範囲拡大を契機として,研究目的の権利制限を検討すべきという記載がございました。研究目的に限らず,様々なところに影響をもたらすことのないように,既存の権利制限規定の柔軟な解釈ですとか,新たな権利制限規定の創設を含めて,緻密に検討すべきという御意見も頂いたところでございます。

次に,50ページに参りまして,第3章,アクセスコントロールについての御意見でございます。マル1としまして,アクセスコントロールに関する保護の強化を求める意見,中間まとめを賛成という御意見がございました。一方で,マルとしましては,アクセスコントロールを強化することで,その技術の正当性の検証などができなくなる恐れがあるということで,規制の強化を懸念する御意見もございました。

また,マル3といたしましては,既に不正競争防止法で措置がされている中で,著作物で重ねて保護をすることの問題ですとか,そもそもDRM保護を行うことの適当性についての御意見もございました。

また,51ページに参りまして,今回,定義規定の明確化をするということにしておりましたけれども,これを評価する意見とともに,またこの定義規定を見直す際に,もともとあったとともにという要件を排除することで,著作権者の意に反する利用方法がおよそ犯罪行為になりかねないということで,対象が広がり過ぎてしまうという点についての懸念の御意見もございました。

また,3.規制対象行為としまして,今回不正なシリアルコードの提供を規制していくべきという中間まとめになっておりましたが,この不正なシリアルコードの中には,ソフトウエアメーカーが認めていない不正な譲渡,提供というものも含まれるということを明確にしてほしいという趣旨の御意見もございました。

また,52ページに参りまして,4.として,今回不正なシリアルコードの提供等の規制について中間まとめで記載しておりますが,それに加えて技術的保護手段,利用制限手段の無効化の方法を示したマニュアルの提供,こういったものにつきましても著作権侵害とすることを検討すべきという御意見がございました。

また,5.といたしましては,ダウンロード違法化との関係で,アクセスコントロール回避規制,これをしっかりと行うのであれば,違法ダウンロードの方にソフトウエアを含める必要性はなくなるのではないかという御意見がございました。

次に,53ページは,第4章,著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化ということで,中間まとめの方向性に賛成する御意見を頂きました。

それから,54ページからが第5章,対抗制度の導入についての御意見でございます。1.としては,中間まとめに沿って対抗制度の導入を求める意見がございます。また,2.としましては,電子書籍におきまして,ユーザーが利用されている場合に,その配信会社が事業から撤退,事業譲渡などをした場合のユーザーの保護についても検討すべきではないかという観点の御意見を頂きました。

また,55ページに参りまして,4.出版との関係に関しましては,今回の対抗制度の導入によって,現行法の出版権につきましては,特段の措置が必要ないという結論を支持する御意見がございました。

また,5.といたしまして,これは必ずしも中間まとめに記載されていなかった部分でございますが,対抗制度を導入する前に結ばれた契約,これについても効力を認めるかどうか明らかにしてほしいという御意見もございました。また6.といたしましては,継続検討となっている独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与,こちらについて継続を行うことを希望する御意見が複数ございました。

次に56ページに参りまして,第6章,行政手続に係る権利制限規定の見直しについての御意見でございます。1.として,その方向性に賛成する御意見がございました。また,2.として権利制限の対象範囲に関する御意見ということで,2つ目の丸にございますが,複製などの主体につきまして,専門家に委託することも認められるべきではないかという趣旨の御意見ですとか,下から2行目あたりからございますが,申請に先立つ検討・選定の過程での複製についても認められるだろうという御意見がございました。また,3.として補償金は不要であるという御意見がございました。

また,4番といたしまして,今後,新たに同種の手続が現れた場合の対応に関しまして,1つ目の丸にございますとおり,柔軟に対応できるように広く包括して権利制限を認めるべきという御意見があった一方で,2つ目の丸にございますとおり,権利者に与える影響を十分に討議して慎重に検討すべきであり,原則としては法律によるべきという御意見もございました。

次,57ページに参りまして,第7章,その他(改正著作権法第47条の5第1項第3号の規定に基づく政令のニーズ)に関する意見,こちらもございました。例えば1つ目の丸にございますとおり,今回,非公開で審議をしておりましたが,付随性要件の充足性をめぐって委員間で多様な意見があったということで,その具体的な内容について詳細に公開されるべきであるという趣旨の御意見を頂いております。

また,2つ目の丸にございますとおり,政令のニーズを民間から募集することにつきましては,継続的に行うべきという御意見もございましたし,また,解釈を明確にするということで,新法の第1号の所在検索,第2号の情報解析,ここに該当し得るサービスの事例ですとか,付随性要件の具体的な内容などについて分かりやすいQ&Aを作成すべきという御意見などもございました。

またページ,飛びますけれども,58ページに参りまして,第1章から第7章以外,各論的な御意見ではなくて,総論的な御意見ということで,幾つか御意見がございました。1.としましては,小委員会での審議方法ということで,総じて様々な観点で,マルチステークホルダー,いろいろなステークホルダーの方々の御意見を幅広く,いろいろな手段で聞いていくべきだという趣旨の御意見を幾つか頂いたところでございます。

また,最後になりますけれども,59ページ,2.といたしまして,意見募集の実施方法,手続などについての御意見もございました。期間が30日以上確保されていないという点ですとか,文字数が2,000字に制限されている,こういったところが不適切ではないかといった趣旨の御意見などを頂いたところでございます。

駆け足でございますけれども,意見募集の結果の概要については以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,続きまして,議題の2番目,(2)文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書(案)についてです。先ほど御説明いただきました意見募集の結果を踏まえまして,事務局において本小委員会としての報告書(案)を整理していただいておりますので,その内容について審議を行いたいと思います。

それでは,事務局から,中間まとめからの修正点等につきまして御説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料2に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。

主査からございましたとおり,パブコメの結果を受けて追記・修正などを行ったものでございます。また,委員の皆様方からも事前に御意見を頂いておりますので,その点も含めまして追記・修正などを行っております。中間まとめから内容的に変更している部分につきましては,黄色のマーカーを付しておりますので,その部分を中心に御紹介をしていきたいと思います。

まず,1ページ,「はじめに」というところにつきましては,パブリックコメントの結果も踏まえて取りまとめを行うものだという趣旨とともに,先ほど御紹介したパブリックコメントの実施方法などについての御意見があり,より良い在り方を検討していく必要があるということを付記しております。

また,ページがかなり飛びますけれども,22ページをお開きいただきたいと思います。リーチサイトの関係の御意見がここからございます。注の21といたしましては,先ほど御紹介しましたが,今回の中間まとめにおきましては悪質なところを特に切り出して対応するということにしておりましたが,侵害コンテンツのリンクそのものの取り扱いにつきましても,引き続き検討すべきという御意見を記載しております。

また,右側の注の22といたしましては,リーチサイトに対する措置を行うことで,民間ベースで行われている様々な取組についても効果が出てくるという趣旨の御意見がございました。

また,24ページの本文,上の部分でございます。パブリックコメントでも,法整備に当たりまして,過度な萎縮が生じることがないようにという趣旨がございましたので,そういった観点ですとか,適法な法運用,著作権意識の向上等に資するよう,制度内容の丁寧な周知等が必要になるということを記載の追加をしております。

また,注の23というものがございます。もともとの記載でございますと,場・手段としまして,中立的な目的のSNSなどについては除外をするという記載がございましたけれども,パブコメでは,SNSのアカウントを全て除外する趣旨ではないですねという確認がございました。当然そうではなくて,SNSのアカウントなどであっても,悪質なものについては規制対象となり得るという記載を追加しております。

また,注の25番としては,先ほど御意見しましたとおり,今回の対象以外にも必要な部分がございますので,継続的に議論を望むという御意見を付記しております。

また,25ページに参りまして,注釈の28,29につきましては,先ほど御紹介したとおり,主観要件の限定などにつきまして,狭くなり過ぎないようにという観点の御意見や,ほかのもう少し明確なノーティスなどの要件とするのが望ましいという御意見を追記しております。また,注の31といたしましては,先ほども御紹介しましたけれども,故意・過失を要件とすることは反対,不要だという御意見を付記しております。

また,26ページに参りまして,注の33,同趣旨でございますけれども,主観要件として,場・手段に関する主観要件は屋上屋を架すものであり,過度の立証負担を避けるためにも不要というパブリックコメントの意見を追記しております。

また,30ページに移っていただきまして,注の38というものを追加しております。これは,対象の著作物につきまして,デッドコピーなどへの限定を行うべきかという観点の御意見でございます。翻案を伴う場合には,新たな表現行為を含んでいるので慎重な検討が必要だという観点での御意見を幾つか頂いておりますので,その趣旨を記載しております。

また,32ページに飛びまして,注釈の41番といたしまして,先ほども御紹介をしましたが,正当な目的を有する場合を除外するかどうかという点につきまして,その他の要件を満たす場合には,正当な目的を有するケースというものは想定をしがたいため,除外規定は不要だという御意見を追記しております。

また,次のページ,注釈の43番,こちらはリーチサイト運営者に対する差し止めを認めるべきという御意見でございます。削除依頼の現行実務との整合性の観点から,リンク提供についてリーチサイトの運営者,アプリ提供者への差し止めも可能とすべきという御意見について追加をしたものでございます。

それから,36ページに飛んでいただきまして,注の45番でございます。こちらは侵害があった場合の罰則,制裁についての御意見といたしまして,インターネットアクセスや,その場での情報発信を禁じるような罰則はあってはならないという御意見がございましたので,そちらを追記しております。

また,ページ飛びますけれども,43ページの注釈の49番でございます。ここは,インターネット情報検索サービスにつきまして,当事者間での協議を行うという点に関しての御意見でございます。もともと第三者の利益の反映のために,政府関係者や独立した第三者が関与することが望ましいという御意見を記載しておりましたが,それに加えまして,ユーザー側の団体についても協議の場に参加すべきという御意見がございましたので,そちらを追記しております。

次に45ページに参りまして,第2章,ダウンロード違法化の関係でございます。こちら,たくさん御意見を頂いておりますので,本文を中心にしまして重要な部分をかいつまんで御紹介したいとおす。まず,注釈の51番につきましては,ダウンロードの定義といたしまして,より明確化すべきという御趣旨の御意見がパブリックコメントでもございますので,事例も含めて幾つか追記をしております。説明は省略いたします。

また49ページに参りまして,注釈の56番に追記を行っております。諸外国の事例につきまして,そのままこれを基に立法はできないという御意見もパブリックコメントでございましたので,あくまで参考事例であるという趣旨を明記しております。

次に,58ページに飛んでいただきまして,第2節,検討結果という部分に,今回,1番,検討の前提という記載を追加しております。パブリックコメントにおきましては,現行法の趣旨ですとか,音楽・映像のダウンロード違法化,刑事罰化についての御意見も幾つか頂いておりますので,当初どういう趣旨で立法化されたのか,その後の経過がどうだったのかということを確認的に記載するということで追記をしております。委員の先生方,御案内の内容が多いと思いますので,説明は割愛させていただきます。

それから,61ページの本文の部分に参ります。こちら,中間まとめでも同趣旨の記載がございましたけれども,静止画・テキストなどにつきまして,悪質な海賊版サイト等以外にも,違法ファイルが掲載されているという記載がございました。この趣旨を明確にするために,なぜこの記載をしているかというと,個々に見れば影響は軽微かもしれないけれども,総体としては権利者の利益を害している可能性もあると,こういう趣旨で記載しているということを明確にしているところでございます。

また,62ページの本文に参りまして,今回の検討の射程について明確化する記載を追加しております。「その際」という段落でございますが,まず(ア)といたしまして,特に経済的な被害が顕著である部分,例えば海賊版サイトなどからの作品全体のダウンロード,ここのみについて対応を検討すれば足りるという考え方もあります。

また,一方で(イ)のように,汎用的な掲示板・ブログ・SNSなどにおけるファイルの掲載ですとか,作品の一部のダウンロード等につきましても,総体としては権利者の利益を害している可能性があることも踏まえまして,ダウンロード全般について対応を検討すべきと,この双方の考え方があり得るということを明示しております。

その上で,次の段落で,「この点」ということで,マル1からマル4まで,4つ理由を掲げました。まず検討の射程としては,(イ)のように幅広く捉えた上でユーザー保護の必要性,正当性の観点から必要な措置を検討していくのが適当だと記載しております。

マル1といたしましては,汎用的な掲示板などにおきまして,正式販売前のコミック,雑誌の数ページがアップロードされるなど,売上低下に直結するおそれのある行為も現になされている。そういった中で,そういった事例行為をあえて検討の射程外にする行為は認めがたいのではないかということ。

また,マル2としましては,法30条1項の立法理由からしますと,権利者の利益を害し得る事例・行為が想定されるのであれば,検討としては幅広く行うのが自然であろうということ。

また,マル3といたしましては,第1号から第3号で今除外をしておりますけれども,そこでは一定程度,類型的に除外をしております。括弧でございますが,特に第3号におきましては,違法にアップロードがされたと。この点を類型的に捉えて音楽・映像のダウンロードを除外しているということがございますので,今回も違法にアップロードされたものを類型的に捉えて議論していくということは不自然ではないだろうという記載でございます。

また,マル4といたしましては,特性としまして,二次的な拡散,将来的な被害の深刻化を防止する必要性なども一定程度あるということでございますので,こういった観点から,検討としては,まず幅広く射程をとるべきだろうという記載を追加しております。

また,63ページの上の部分に参ります。こちら,パブリックコメントにおきまして,ダウンロードを違法化しても,いわゆるストリーミング型の海賊版サイトの視聴・閲覧は違法にならないので,効果がないといった趣旨の御意見を頂いております。これに対しましては,ダウンロード違法化はそういったストリーミング型のサイトをターゲットにした施策ではないということ,多数存在しているダウンロード型の海賊版サイトについては,一定の効果が見込めるものだという趣旨を記載しております。また,海賊版サイトには当然様々な類型のものがございますので,ダウンロード違法化以外にも,また著作権法以外の手法も含めて対策を検討していく必要があるということを追記しております。

続いて,3.ダウンロード違法化の対象範囲について,ここがパブリックコメントで最も多く意見を頂いたところでございます。中間まとめでは,まず民事に限って記載して,後ろで刑事罰という記載の構成をとっておりましたけれども,民事・刑事,双方,同様の観点からの御意見を多数頂いておりますので,ここでは双方合わせて対象をどうすべきかという観点の記載に改めております。

まず,65ページをお開きいただきまして,こちら注釈でございますが,重要な御意見を頂きましたので御紹介いたします。注釈の75番でございます。今回の検討につきましては,法第30条1項の趣旨としまして,中間まとめの際にはあくまで閉鎖的な私的領域における零細な複製は,権利者の利益を害しないから認める規定であると。だからこそ,権利者の利益を害するのであれば除外していくのが原則と,こういう考え方に立って記載をしておりました。

ただ,この点について少し違うのではないかという御意見がございましたので,明示しております。具体的には,私的領域における活動の自由を保障する,こういった権利者の利益を害しないという観点ではなくて,ユーザーサイドから見た積極的な意義があるという見解もございますので,それを追記しております。

また,実態としまして,当初の立法趣旨については限られた範囲だったかもしれないけれども,その後,多様な機能を果たしてきたというのが事実でございまして,その点も考慮して検討する必要があるのではないかという御意見がございました。この趣旨につきましては,知財高裁の裁判例の中で同趣旨のことが述べられているということも付記したところでございます。

また,その下,76番の注釈についても御紹介させていただければと思います。今回はパブリックコメントの中でも,ユーザーに萎縮効果が及ぶという御意見を多数頂いたところでございます。中間まとめでもこういう想定でございましたが,ここでの萎縮の捉え方といたしましては,マル1のように,許容する必要性,正当性のある行為まで制約されるということ,また,マル2としては,法規制の対象外となる可能性の高い行為までユーザーが控えざるを得なくなる,こういった場合には萎縮効果が及ぶものとして,しっかりと対応を検討しておく必要があるだろうということを記載しております。

一方で,ダウンロード違法化の範囲を拡大するということになりますと,当然拡大する分だけユーザー側の行為の制約というものが生じてまいります。これが正当かどうか,必要かどうかという議論を十分にする必要がありますが,拡大するから不適当ということは少し萎縮と呼ぶのは,言葉の使い方としてどうかということがございますので,その趣旨も付記をしたところでございます。

次に,66ページの(オ)という記載を,今回追加いたしました。こちらは音楽・映像以外の著作物,静止画・テキストなどの特性を記載している部分でございます。静止画,特にテキストなど,論文などにつきましては,音楽・映像と比べても,ダウンロードして享受するニーズが高いのではないか。また,音楽・映像と比較しても,知的な生産活動に活用するための資料収集,保存という観点がより重要となると,こういう御指摘がございましたので,それを明記することにしております。

それから,(3)ユーザー保護の必要性・正当性についての記載の中で,とりわけ主観要件の設定につきまして重要な御指摘を頂いておりますので,小さい字ですが,注釈の77番のところに記載を追加しております。これまでも,録音・録画につきましても,事実を知りながらという要件を掛けておりまして,これは違法か,適法か分からなかった場合には,違法にならないような趣旨を確保するためだという説明がされておりました。

ただ,これが少し文言上,表現できていないのではないかという御指摘の御意見でございます。いわゆる事実の錯誤につきましては,当然事実を知りながらという文言で除外ができますけれども,法律の錯誤のようなものがあった場合には,除外ができないのではないかという指摘でございます。

例として記載しておりますが,アップロードされた著作物がユーザー側からは適法引用されているんだろうと,そういうふうに認識してダウンロードしたけれども,実際には著作権法第32条の引用の要件を満たしていなかった場合,こちらについては違法と分からなかったということで,ダウンロード違法化の対象からは除外する趣旨でございましたけれども,これが刑法の一般論との関係ですとか,関連の裁判例との関係では,少し不明確なのではないかということで,法律の錯誤があっても,事実を知りながらという要件だけでは除外できない可能性が高いと,こういった御意見がございましたので,まずそれをしっかり記載することにしております。

この点につきまして,後ほど制度整備の際に,しっかりとこういうものが除かれるような追加措置を検討すべきという記載を追加しているところでございます。

それから,67ページの本文にローマ数字3という記載を追加しております。これはパブリックコメントでも懸念の御意見がございました。今回は,あくまで私的使用目的の権利制限,30条1項の適用を除外するかどうかという検討をしておりますので,当然,例えばほかの権利制限に該当する場合には,違法にアップロードされたものをダウンロードする行為も適法となる余地があるという記載を追加しております。

また,次の段落,当然でございますけれども,複製権を有する著作権者の方が,違法にアップロードされた自らの著作物をどこかで集めて,それを証拠保全のためにダウンロードする。こういった行為は,自らの権利を持っている者のダウンロードでございますので,当然自由に行えるものでございまして,ダウンロードを違法化しても影響があるものではないということを,確認的に記載しております。

次に,ページが飛びますけれども,69ページに移っていただきます。(ウ)パブリックコメントで提出された個別事例――少し誤字がありますが,及びそれを踏まえた検討という記載を追加しております。先ほども御紹介しましたとおり,パブリックコメントにおきましては,ユーザー保護の必要性がある事例,ダウンロード違法化を行った場合に弊害が生じる事例というものが,たくさん寄せられたところでございます。

それにつきまして,非常に多様な観点の御意見がございましたけれども,事務局の方では,大きくマル1からマル7まで,7つの項目に分類できるのではないかということで,分類をした上で概略を記載させていただいております。

まずマル1といたしまして,研究活動の影響の御指摘,これが最も多く頂いた御意見でございました。大学教授等と書いておりますが,こういった職業的な方に限らず,研究している方が,学術論文などを活用した研究活動,他人の研究成果の批評等を行うことも阻害されてしまうのではないかという御意見でございます。

また,マル2としましては,著作権侵害ですとか,その他の反社会的行為などがインターネット上で行われている場合に告発などをすると。その場合に,スクリーンショットなどで証拠を保全する必要があるけれども,それができなくなるのではないかという御意見ですとか,ウェイクニュース,政治家の失言などの検証のために,新聞の切り抜き,テレビ画面の撮影などを行うことも困難になるという御意見がございました。

また,マル3,少し一般的な御意見でございますけれども,作家,漫画家などの方が創作の前段階で行う資料収集,また,引用,批評目的でのダウンロードなども困難になるという御意見がございました。

また,マル4としては,パロディー,二次創作などにも影響があるのではないかという御意見。

また,マル5としては,ビジネスにおきましても,資料の収集が困難となり,国際競争力を損なうことになるという御意見がございました。

また,マル6といたしましては,著作権侵害が紛争化した著作物につきましては,たとえ正規のプラットフォームからでも購入ができなくなるのではないかという御意見がございました。

また,マル7といたしましては,写り込みのような事例でございますけれども,重要な情報と同じページに違法にアップロードされた著作物が存在する場合。具体的には,SNSのアイコンに違法物が使用されている場合には,そのSNSの具体的な書き込み内容につきまして,スクリーンショットで保存ができなくなるのではないかという懸念についての事例がございました。

この事例,個々につきましては,参考資料1というものをお配りしております。それぞれにつきまして,あくまで事務局の立場ということではございますけれども,事務局として,こういった事例をどう捉えていくべきかということを記載しております。

時間の関係もありますので,説明は省略させていただきます。先ほどの本文の70ページの真ん中あたりに戻ります。事務局の方で整理した内容も踏まえて,全体としてこのマル1からマル7の事例をどう捉えるべきかという記載について御説明をいたします。

まず,これらの事例についてはという段落がございます。(ア)から(エ)ということで,4つの観点を示しております。まず(ア)といたしましては,30条1項の趣旨の捉え方でございます。これ,様々な捉え方があるわけでございますけれども,専ら閉鎖的な私的領域における零細な複製については,通常は権利者の利益を害しない,こういう理由で設けられた権利制限規定であると。こういった厳格な理解を前提にしますと,ここで挙げられた事例は,そもそも30条1項の射程とは言い難い行為が多いのではないかということがございます。

また,(イ)といたしましては,この規定を介さずも可能である行為もあり,また,ほかの権利制限規定引用ですとか,裁判手続,このための権利制限規定の対応を検討すべき事例でもあるのではないかということがございます。

また,(ウ)としましては,正規に流通する著作物を利用したり,また,違法にアップロードされた著作物の部分を外してダウンロードしたりするということも,一定程度可能な事例も含まれているのではないかということで,あえて違法にアップロードされたものを用いる必要があるかに疑義があるということを記載しております。

また,(エ)といたしましては,こういった事例に当たらなくて必要性自体はあるという場合におきましても,著作権者の利益保護,既に行われた違法アップロードによる被害拡大を防止したいと,こういった利益保護の観点よりも,ユーザー側の行為を優先すべき正当性があるかという点につきましては,疑義もあるのではないかということで,全体としてこれらの事例を基に特別な限定を行う必要性,正当性は認めがたい,こういう立場もあり得るだろうという御意見を記載しております。

一方で,次の段落の部分が重要なところだと思っております。「しかしながら」という部分でございます。30条1項の趣旨についての捉え方が多様で,それを前提にすると結論が変わってくるのではないかという指摘でございます。具体的には,先ほども少し御紹介しましたが,個人の指摘な領域における活動の自由を保障する,こういった積極的な意義を認めつつ,また,実態として様々な機能を果たしてきており,その点を考慮,尊重する必要がある,こういった指摘もあるわけでございます。

こういった考え方を前提にしまして,パブコメで示されたマル1からマル7の事例,こういったものを兼ね備えて考えますと,特に経済的被害が顕著な部分だけ対応すればいいと,こういう考え方もあり得るのではないかという見解を記載しているところでございます。

次に,71ページに移りまして,(4)番,さらなるユーザー保護の措置を行うとした場合の対応の選択肢について,幾つか記載を追加しております。まず重要な指摘がございました。これは委員会の中でも指摘されておりましたけれども,必ずしも記載ができておりませんでしたので,注釈の89番を新たに追加しております。もともとの中間まとめの記載では,いずれも課題があるので採用は難しいといったニュアンスの記載になっておりましたが,それにつきまして委員の先生から,こういった現状で適用されている行為を違法化する際には,当然社会に対する様々な影響を考えて限定的にするというのは通常の行為であって,課題というものにつきましては,課題というよりは,むしろ限定の効果ということで,許容されるべきものもあるという御意見がございました。

また,こういった限定によって,許容範囲を超えるような影響が及んでしまうということであれば,そうならないように努力をすべきであって,そういった可能性があるから限定をしないということにはならないだろうという御意見を頂いておりますので,その旨を明記しております。

次に,(ア)から幾つか限定の選択肢の中で追記しておりますので,御紹介いたします。まず(ア),民事におきましても有償で限定するということにつきまして,大きな記載の変更はございませんが,91番の記載を追記しております。ここでは民事に有償することの課題といたしまして,広告モデルのものなどがあるだろうということを記載しておりましたが,委員の先生方からは,静止画・テキストなどにおきましては,地上波放送とは違いまして,広告モデルの無料コンテンツが違法にアップロードされているというのが,事例として現時点では存在していないのではないかと,そこに疑問があるという御指摘がございましたので,その御意見を追記しております。

また,72ページに移りまして,(イ),いわゆる海賊版サイトなどからのダウンロードに限定すべきという選択肢の部分でございます。中間まとめでは,いわゆる海賊版サイトと書いておりましたが,P2Pに限定するという御意見もございますので,その双方ということで記載を改めております。

課題のところの最初の部分に,リーチサイトの議論との関係を記載しておりました。リーチサイトでは,リンク情報の提供が表現の自由の対象になると,これを前提にしているということで,少し違うのではないかという記載がございました。

これに対しましては,注の93番ということで,委員の先生方から,ダウンロード行為につきましても,表現の自由の前提となる情報収集として重要だということで,リーチサイトと違って重要ではないという観点はおかしいという指摘がございましたので,それを追加しております。

また,本文に戻りまして,リーチサイトの関係で申し上げますと,みなし侵害と位置づけずとも,解釈による対応の可能性があると。リーチサイトにおきましては,悪質な部分を切り出しておりますが,切り出した部分以外につきましても,幇助などの解釈論によって違法になる可能性があったという一方で,こちらにつきましては違法にしないと,完全に適法ということになりますので,その点が前提として違うという記載を追記しております。

次に,73ページに参ります。こちら,大きく変わっている部分ではございませんが,重要な部分だと思いますので,御紹介をいたします。まず1つ目といたしまして,いわゆる海賊版サイトやP2P以外にも違法ファイルが存在する。こういった部分の対応の必要性をどう考えるかということ記載しております。

注釈の94番をごらんいただければと思います。先ほども御紹介しましたが,汎用掲示板におきまして著作物の一部がアップロードされていて,それによる被害というものも生じているというのはあるかと思います。また,後段で委員からはと記載しておりますとおり,今後,個人によるSNSなどでの違法アップロードが増大する可能性もある。とりわけ海賊版サイト,P2Pに限定した場合には,SNSなどが対象外になりまして,そこからダウンロードすることは適法になるということで,ユーザーがそちらに集中するということもあり得るのではないかという御意見がございました。

そういう意味で,現時点で深刻な被害が確認されていないからといって,それで場を限定することは適当ではない,こういう趣旨の御意見だろうと考えております。

本文の上から2つ目のポツをごらんいただきまして,個々のダウンロード行為に着目するとという部分でございます。総体としては,当然どこからのダウンロードかによって被害の実態は変わるわけでございますが,個々のダウンロードということに着目しますと,どこからダウンロードしても,権利者への不利益,行為の悪質性が変わるものではないのではないかという記載をしております。これに対しましては,注釈の95といたしまして,さはさりながら,総体として見た場合に,権利者に与える不利益の程度等には差異があるだろうという御意見もありましたので,そちらも記載しております。

本文の3つ目のポツでございますが,音楽・映像とのバランス,整合性という部分でございます。音楽・映像につきましても,当時P2P,海賊版サイトからのダウンロードが深刻化しておりまして,そちらを抑止するという観点から,違法化,刑事罰化されたものというふうに考えられますけれども,実際の立法につきましては,それ以外の場合をあえて除外するということはせずに,違法にアップロードされたものという点を類型的に捉えて措置がされております。この点,静止画・テキスト等の特性を踏まえて,これとの関係をどう考えていくかという点でございます。

4つ目につきましては,先ほどリーチサイトの関係で言及したところでございますが,海賊版サイト,P2Pからのダウンロードに限定した場合には,少なくとも現時点におきましては,それ以外からのダウンロードは法的に問題がないと,このような評価したことになりまして,ユーザーに対する謝ったメッセージを発することになるのではないかという懸念を記載しております。ただ,これにつきましても,注釈の96番に記載がございますとおり,普及啓発などによって,誤解のないように対応は可能ではないかという考え方もあり得る旨を記載しております。

次に,73ページから(ウ),作品を一定のまとまりとしてダウンロードする場合に限定するという選択肢を記載しております。これ,一部分を利用したものですとか,軽微な事例,二次創作など,こういったものについては対象に含める必要がないのではないかという観点からの御意見でございました。

課題としましては,先ほどと重複しますけれども,一部分であっても,相応の経済的価値を有する著作物がございまして,それらを除外すべきかどうかという論点ですとか,若しくは,一部分であっても,アップロード自体は違法だということとの関係をどう考えるか,音楽・映像との整合性等々につきまして,先ほどと同趣旨の課題を記載しております。

また,(エ)につきましては,音楽・映像との整合性につきまして,若干表現を修正しておりますので,それを追記したものでございます。

それから,(オ),こちらにつきましては,パブリックコメント,委員の先生の御意見を踏まえまして,新しい限定の選択肢として追記を行ったものでございます。TPP整備法におきましては,非親告罪化の対象範囲,これをくくり出すために様々な要件を設定しておりまして,今回もそれに準じた限定を行っていくべきという趣旨の御提案でございます。特に被害が深刻化,顕在化している部分に限って措置を行うべきだろうという考え方の下で,ここに記載しておりますとおり,マル1,マル2,マル3,マル4,4つの縛りを掛けていくこととしてはどうかという提案でございます。

76ページに参りまして,この限定についての課題を新しく記載しております。まず1つ目のポツにつきましては,非親告罪化とは少し文脈が違うのではないかという観点でございます。非親告罪化は罰則の対象になるということを前提にしまして,そこからさらに権利者による告訴が必要かどうかというのを切り出すものでございまして,今回のように刑事罰の対象にそもそもすべきかどうかという議論とは性質が違うのではないかということを記載しております。

例えば今回,マル1からマル4で示された要件のうち,マル2につきましては,非親告罪化の際には海賊版の頒布などが想定されておりまして,こういう要件を書いておりましたけれども,個人が私的にダウンロードする場合にこのマル2を満たす場合はそもそもないのではないかという観点があろうかと思っております。

また,76ページの課題の2つ目に戻っていただきまして,この限定はかなり厳しい限定だと思います。その点,相当多くの場合がダウンロード,少なくとも刑事的には許容するということになりまして,抑止効果が限定的になってしまうおそれがあると。それだけの限定をするようなユーザー保護の必要性が大きいと評価できるか,この点が議論になろうかと思います。あと,音楽・映像との整合性というのはこれまでと同じでございますし,また,最後に書いておりますが,権利者側の告訴の際の負担が重くなるのではないかという懸念もあり得るかと思います。

これにつきまして,注釈の番号がずれていて恐縮ですけれども,75ページの102番のところに,この告訴が困難になるという観点についての御意見を注釈で記載しております。音楽・映像につきましても,現時点までに訴訟,摘発事例がないということで,この告訴ができなくなるということを過度に懸念する必要はそもそもないのではないかという御意見を追加しております。

76ページの本文に戻っていただきまして,(カ),反復継続して行う場合に限定をするという限定の選択肢を新たに追記しております。これは趣旨のところにございますとおり,特に反復継続して行う場合には行為の悪質性が高いということだと思いますので,こういう場合に限定をしてはどうかということでございます。

この限定を行う際には,既存の法体系における用語の使用例,解釈を踏まえまして,例えば業として,継続的に,又は反復してなど,適切な規定を設けていく必要があるだろうという観点でございます。

課題としましては,当然反復継続して行う場合に限定しますので,単発のダウンロードにつきましては罰則対象から除かれまして,抑止効果が限定的になるおそれがあるということですとか,あと,音楽・映像につきましても,恐らくこういった部分を捉える趣旨で立法化されたということとの整合性をどう考えるかということがございます。

また,77ページの上にございますとおり,権利者が告訴などを行う際に,反復継続性を証明するためには,自らの著作物が反復継続してダウンロードされていない限りは,他人の著作物の部分につきましても立証する必要があるということで,少し負担が重いのではないかという観点もあり得るかと思います。ただ,これはそもそも告訴・摘発事例がこれまでないということもございますので,どこまで懸念する必要があるのかというのは議論の余地があろうかと思います。

これを踏まえまして,77ページ,(5)検討結果というところの記載を大幅に改めております。まず,77ページの真ん中あたりで,ローマ数字の(1),(2)という記載をしております。まず(1)といたしまして,違法にアップロードされた著作物だと確定的に知りつつ,なお積極的,意図的なダウンロードを行うユーザーへの影響,これが今回検討すべきところでございます。権利者に及ぼす不利益,すなわち違法アップロードにより被害拡大,これよりも優先して対応すべきと考えられる確たる事例が確認されたとは言い難いのではないかということ。

また,ローマ数字の(2)といたしましては,ただいま御紹介したとおり,具体的な限定方法につきまして一定の課題があるということもございまして,直ちにこういった限定を行うことが適当とまでは言いがたいのではないかということを,まず記載をしております。

また,パブリックコメントにおきましては,音楽・映像の場合と差を設けることの不合理性,問題点を指摘する御意見も複数寄せられましたので,その旨も追記しております。

それから,78ページに移っていただきまして,こういった状況を勘案しますと,まず現時点における具体的な対象範囲の在り方といたしましては,録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大する,対象行為を複製全般に拡大していくと,これが有力な選択肢の1つとなり得るということを記載しております。

一方で,しかしながらというところが今回のパブコメの結果を踏まえた重要な記載の追記だと思っております。ローマ数字の(1)から(4)まで観点を期待しております。まず(1)としては,先ほど御紹介したとおり,30条1項の趣旨,射程の捉え方につきまして様々な考え方があり,それによって結論が変わってくるということで,現時点で一概な議論ができないのではないかということがございました。

また,(2)といたしましては,現在把握されている静止画・テキストなどの被害実態につきまして,海賊版,P2Pによる被害が深刻であることは分かるけれども,それ以外の部分がどこまで深刻かということにつきましては,当然評価の考え方,様々あり得るということ。

また,(3)といたしましては,主観要件につきまして,先ほど御紹介したとおり,法律の錯誤の場合も含めて,どこまで除外されるのかというのが断言できないということ。また,(4)といたしましては,音楽・映像との整合性について議論がされておりますけれども,同等の保護をすると,音楽・映像と同等だということを前提にいたしましても,静止画・テキストの特性を踏まえると,異なる要件を設けていくと。逆に言いますと,そういった限定をすることで,音楽・映像と同等だと,こういう評価をすることも十分許容されるだろうという御意見もあるというふうに思っております。

ですので,こういった点を全体として踏まえますと,法整備に当たりましては,全般に拡大するということを基本にするのではなく,(4)(ア)から(カ),こういった選択肢があるということを前提にしまして,ユーザー保護の効果,課題も踏まえながら最適な対象範囲の設定を行うことが適当という記載にしております。

審議会におきましては,全般に拡大すべきという御意見と,ここで書いた趣旨と恐らく同趣旨だと思いますけれども,限定していくべき,両方の御意見がございましたので,その審議会での議論の状況を中立的にまとめるとこのような記載になるのかなと,事務局としては考えております。

次に,78ページ,4.の制度整備の際の留意点についてでございます。マル1,主観要件の取り扱いにつきましては,中間まとめの段階から重過失の場合を除外することも含めまして,厳格な解釈,運用のための措置を検討すべきという記載をしておりました。これに対しまして,注釈の106番,主観要件を厳格にし過ぎることの弊害を懸念する御意見がございました。過度に制限的に解釈する余り,抑止効果が弱化したり,法の抜け穴になったりするという点を懸念するという御意見が示されたところでございます。

これについては,現時点で実際の摘発例などはございませんので,専ら抑止効果が低下してしまうのではないかという懸念の御意見だと理解しております。

本文に戻りまして,78ページ,その際という段落を新たに追加しております。先ほど御紹介しましたとおり,今ある事実を知りながらという要件におきましては,事実の錯誤ではなく,法律の錯誤,この場合が除外されるのかどうかというのが不明確だろうという御意見がございました。少なくとも,刑法の一般的な理解や判例の裁判例との関係におきましては,法律の錯誤があった場合につきましては,事実を知りながらという要件を満たすものとして,ダウンロードが違法になる可能性が高いという御指摘でございます。

この点,もともとの立法趣旨としては,違法かどうかを知っているかどうか,これが重要だという観点でございますので,恐らく当時の立法趣旨と文言が必ずしも合っていないという状況が生じているのだろうと思っておりますので,法整備において主観要件の規定の仕方を見直すに当たりましては,当初の立法趣旨に沿って事実の認識,違法性の認識,この双方につきまして確定的な認識を要求することを明確化することについて,適切に検討,対応を行う必要があるということで,主観要件のより厳格的な対応についての記載を追加しております。

次に,79ページに参りまして,5.刑事罰の取り扱いについての記載も改めております。まず,マル1,基本的な考え方の1段落目におきましては,これはこれまでの記載とそれほど大きく変わりませんけれども,少なくとも音楽・映像と同等の保護を確保し,一定の範囲で抑止効果を確保するために刑事罰を設けられる必要性が認められるという,総論的な内容をまず記載しております。

その上で,80ページの上の段落,「この点」というところが,今回のパブコメの結果も踏まえて修正をしている重要な部分でございます。最初の3行目あたりからは繰り返しでございますけれども,刑事罰に関しましても,録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことを有力な選択肢としつつということで,一方で(イ)から(カ)の選択肢もあるということで,それを踏まえて最適な対象範囲の設定を行うことが適当ということをまず記載しております。

ただ,これは当然民事と同じ検討をすればいいということではなくて,刑事罰につきましては,謙抑性の観点からより厳格な対応が求められますので,その趣旨を後段で記載しております。具体的には,謙抑性の観点から,音楽・映像の場合と同様,有償に提供・提示されている著作物のダウンロードに限って刑事罰の対象にすると,これは当然の前提としてございます。

その上で,さらなる対象範囲の限定の必要性につきまして,民事措置の場合と比較しても,より強い考慮が求められることに十分に留意すべきということを記載しております。この段落の趣旨といたしましては,冒頭の3行の前半が有力な選択肢というのを言うという趣旨ではなくて,この最後の部分,刑事罰につきましては,全般に拡大するというのが恐らく基本ではないだろうと。限定していくという考え方が基本になり得るという趣旨で記載しているものでございます。少し誤解を招き得る表現でしたので,補足的に御説明をさせていただきました。

それから,次の段落につきまして,少し細かい文言でございます。パブリックコメントにおきましても,刑事罰の対象にした場合には,安易な摘発,捜査がされるのではないかという懸念がございましたので,小委員会としましては,なお一層ということで,音楽・映像の場合と比べましても,より慎重な配慮を捜査機関に行っていただきたいという趣旨の記載を追加したものでございます。

次に82ページに参りまして,普及啓発などにつきましての記載を追加しております。権利者団体,出版社からの御意見としまして,海賊版サイトにアクセスした場合には,警告表示を行うという取組を提案もございますので,それについても御紹介をしております。

また,法制化を行った際にはという段落におきましては,その効果をしっかり検証する必要があるということで,事務局において必要な検証・調査を行ことが必要だということを記載しております。

また,7番としましては,先ほど御紹介したとおり,ダウンロード違法化以外の海賊版対策が重要だという意見もございましたので,その旨を追記しております。また,(2)につきましても,先ほど御紹介したとおり,研究設定以外にも様々な権利制限の見直しが併せて必要になるという記載を追加しております。

次に,87ページ以降,アクセスコントロールに関しましては,確認的な記載が多いわけでございますので,説明は省略します。1点,89ページの注釈の128番のところで,どこまでが不正なシリアルコードの提供になるのかという点について,解釈を明確化すべきという御意見がございました。不正競争防止法との整合性を図りつつ,今後整理をする必要があるという記載を追加しております。

次,147ページに移っていただきまして,対抗制度の導入につきまして,先ほど御紹介したとおり,出版権につきましては,特段の措置の必要性がないという御意見,パブコメでございましたので,それを使いしております。

また,150ページに移りまして,注釈187番でございます。先ほどパブコメの御紹介をいたしましたが,法改正前に結ばれた契約についても対抗力を認めるべきかどうかという点につきまして,特許法の取り扱いも引用しながら,同様に改正前のライセンスであっても対抗力を賦与すべきではないかということで記載をしております。

あとは154ページに飛んでいただきまして,行政手続の権利制限規定につきましては,地理的表示に関しまして,審議会で御紹介があった手続以外にも,外国の農林水産物を保護するための手続もございますので,こちらについても権利制限の要望があったという旨を追記しております。

それから,162ページに移っていただきまして,政令のニーズに関しまして追記をしております。注釈は194番でございます。委員から情報処理の結果の提供の一部として付随的に著作物が利用される場合もあり得ることから,解釈次第では付随的利用が結果の提起に含まれ得るということで,付随性をそれほど厳格に捉える必要はないのではないかという趣旨,御意見を頂きましたので,記載を追加しております。

また167ページの注釈,197,198につきましては,先ほど紹介をしたとおり,継続的なニーズ募集,Q&Aの必要性などについての御意見を御紹介しております。

少し説明が長くなってしまいましたけれども,事務局からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。それでは,今説明いただきました報告書(案)の審議に入りたいと思います。第1章のリーチサイト,及び第2章のダウンロード違法化につきましては,頂いた御意見や,修正箇所も多いようですので,これらは後半に回しまして,まずは第3章から最後まで,これから始めたいと思います。

つまり,まず第3章以降をやりまして,その後に第1章,第2章に戻ると,この順序で審議を行いたいと思います。

それでは,まず84ページから95ページの第3章,アクセスコントロール等に関する保護の強化につきまして,御意見,御質問がございましたら,お願いいたします。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では,続きまして,次の96ページから100ページ,第4章,著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化につきまして,こちらには特段修正はないようですけれども,御意見,御質問がございましたら,お願いいたします。よろしいでしょうか。

では,続きまして101ページから150ページ,第5章,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入につきまして,御意見,御質問がございましたら,お願いいたします。ここもよろしいでしょうか。

では,続きまして,151ページ以降,第6章の行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)から,本報告書(案)の最後までにつきまして,御意見,御質問がございましたら,お願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございました。

では,最初に戻りまして,2ページから44ページまでの第1章,リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応につきまして,御意見,御質問がございましたら,お願いいたします。第1章につきましては,何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では,45ページから83ページ,第2章のダウンロード違法化の対象範囲の見直しについて,審議をお願いしたいと思います。なお,意見書が幾つか提出されておりますけれども,資料3として皆さんに配付されております意見書を提出された田村委員は,本日欠席ですので,この意見書を,事務局から御紹介いただきたいと思いますので,お願いいたします。

【大野著作権課長補佐】一言だけ御紹介をさせていただきます。田村委員からの御意見といたしましては,刑事規制に関する議論が特に十分にされていないということがございますので,刑事規制につきましては,非親告罪化と同様の範囲で限定すべきという御意見を頂いております。また,民事につきましても,有償に限定すべきというのは,これまでも審議会でおっしゃっていただいておりましたが,その趣旨が改めて記載されているものと理解しております。

【茶園主査】では,第2章につきまして,御意見,御質問がありましたら,お願いいたします。

では,前田委員。

【前田(健)委員】私から,個別で意見書と,それから追加で机上配付いただいたと思いますけれども,私も含めた5名の委員の方々の連名の意見書があると思います。私の個人の意見書については後ほど議論の中で触れさせていただくとして,ひとまず連名の意見書について説明させていただきます。

生貝直人委員,小島立委員,鈴木將文委員,本日欠席の田村善之委員,そして私と,あと,ここには書いておりませんけれども,本日御欠席の井上由里子委員から,この意見書の内容に賛同するという御連絡を頂いております。

この内容ですけれども,先ほど事務局から説明がありましたように,報告書(案)においては,刑事罰についても,その対象範囲を著作物全体に拡大するというのが,今有力な選択肢と書かれております。先ほどの説明では,限定を考えていくということでしたけれども,仮にここが出発点になったとしますと,海賊版サイトとは直ちに関係がないような行為にも刑罰が及ぶということになります。

従いまして,検討に当たっては,そういった国民全般に対して行為が及び得るかもしれないという状態で議論が始まっていることに留意すべきだと思います。そして,刑事罰は国民に対して課される最も強力な制裁手段でありまして,その制定に当たっては慎重な議論が求められると思います。とりわけ国民の私生活上の幅広い行為を対象とする刑事罰の制定には特に慎重を重ねた議論が必要と考えます。

実際パブリックコメントなどにおきまして,多くの国民から不安や疑問の声が寄せられていると認識しております。現在の報告書(案)におきましては,今なぜ海賊版サイトとは直接関係のない範囲にまで刑事罰範囲を拡大する必要性があるのか,あるいは萎縮効果や,将来国民の文化的活動についてどのような影響があるのかについて,正確な資料に基づく立法事実に裏づけられた検討が不十分と言わざるを得ないと思います。

従いまして,国民の不安や疑問を払拭できる内容には至っておらず,パブリックコメントに対する意見にも不十分な論証に留まっていると考えます。刑事罰の対象とすべきダウンロードの範囲については,本委員会においても本格的な議論が始まってからわずかの期間しかたっておりません。刑事罰の対象範囲を著作物全般のダウンロードに拡大するというのを基本にしつつと,有力な選択肢と位置づけてという形で議論を進めていいという段階には至っていないのではないかと思います。

このまま報告書(案)を取りまとめることは,私たちはできないのではないかと考えております。したがいまして,少なくも,特にこの部分については,本日,報告書(案)を取りまとめることはせず,次回以降,引き続き検討することがよろしいのではないかと考えた次第です。

なお,私から若干だけ補足させていただきますけれども,私の申し上げていることは,国民生活全般に影響が及びかねない本件について,緻密に議論を深めた上で審議会として取りまとめをするべきだというものでありまして,決して議論を棚上げしようというものではございません。

本日の議論が建設的に議論を深めていく貴重な公の機会であると認識しております。本日,必要なことを議論して,その成果を精査した後に,次回以降取りまとめをするということを提案するものであります。以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。この共同意見書を提出された方々におかれて,その他に補足等はございますでしょうか。では,生貝委員。

【生貝委員】ありがとうございます。今,刑事罰に関しましては,前田先生から御説明を頂いた意見書に私も賛同させていただいているところでございますが,それ以外の部分を含めましても,特に年末年始に掛けまして,賛成側,反対側,両方の意見を様々聞きながら,私自身,考えをめぐらせていたところでございました。

その上で改めて考えを述べさせていただきます。これは,これまで述べさせていただいたところとも大きく重なるのですけれども,まず大前提として,繰り返しになりますが,現代の日常生活と密接に関わるダウンロードという行為,そして,表現の自由や文化の発展の前提となる情報の取得という行為に広く違法の網を掛けること,ましてや多数の国民を潜在的な犯罪者とするような法改正は,前提として避けるべきであろうと,私は考えます。

私自身,緊急の海賊版対策の必要性自体を否定するものではありませんけれども,知的財産権戦略本部の議論の当時から,緊急の対策を行う対象としては,緊急の対策を要する,特に悪質性の高い海賊版サイト等が念頭に置かれていたところと認識しております。今回,その目的に照らして,過度ではない,比例した手段をとるべきというのが,やはり基本的な立場としてはあるべきと考えます。

今回,この小委員会で議論するに当たり,政策目的自体が,抑止的な手段についても念のため緊急に行っていくという形で,大きく政策目的を変えられたところだと存じておりますけれども,私自身はやはり十分な立法事実と検証なくして,政策目的自体を大きく変えるということを行うべきではないと考えます。

そうして,考えましたときに,民事規制に関しましても,最低限,この検討の中でも書いていただきましたとおり,例えばリーチサイトと同様に対象を限定し,主として著作権の侵害をし,送信可能とされた著作物を掲載するウェブサイト等からのダウンロードに限定する,あるいは,それと同等の限定を行う措置は不可欠であるというふうに,さきの意見書に加えて個人的な意見を述べさせていただきます。

そして,言うまでもなく,殊さらに議論が不十分であり,影響が甚大である刑事罰に関しては,導入自体を取りやめるべきであると,私は考えるところです。そうした観点から,今回頂戴いたしました小委員会としての報告書(案),並びにパブリックコメントで提出された御意見を受けた事務局の考え方の中で示された方向性というものを,改めてよくよく拝読させていただきました。

その上で,今回のような,この議題が上げられたのが10月29日の会が初めてであったと理解しておりますけれども,実質3か月にも満たない異例の短期間で緊急の対応として行うべき法改正の範囲としては,これは大きく超えていると言わざるを得ないと考えます。特に,ここ数日間でも,例えばメディアの側の方々からの懸念の報道というもの,それから,ここ数日の間でも,まさに保護されるべき漫画家の方々からも懸念の意見が出されているものと思います。

そういった意見をしっかり取り入れていくという観点からも,今回の小委員会がこの問題について恐らく審議できる最後の機会となるであることに鑑みましても,もはや,これは私は今年度内に,綿密な検討に基づいた国民全体への,文化の発展への悪影響を最低限縮小するための修正自体が,非常に困難ではないかと考えています。私としては,やはりこの第2章のダウンロード違法化対象範囲の見直し全体について,本年度の小委員会で結論を出すこと自体を控えて,来年度の検討事項として回させていただくことを改めて強く主張するところでございます。

1つ,誤解を避けるために,最後に付言いたしますと,私自身,緊急の海賊版対策の必要性自体を否定するものでは一切ございません。この第1章のリーチサイトを通じた侵害コンテンツへの対応に関して,これも様々懸念,批判も多いところと承知しておりますけれども,私としては,この内容は,喫緊に対応するべき政策課題と釣り合いのとれたものであり,副作用の影響に関しても綿密な検討がなされているものと考えております。

ダウンロード違法化,の論点に関しても,確固とした立法事実と,緻密な検討がなされた上での法改正が行われることを,強く期待するものでございます。以上です。

【茶園主査】ほかにございますか。

【小島委員】それでは,私からも一言述べさせていただきます。私も海賊版対策は重要であるということ,それから音楽・映像と静止画・テキストというものが共に文化的な表現であって,著作権法で保護される場合にその重要性に差異を見出すことができないということについては,そのように感じています。

そうなのですけれども,私が先日,事務局に提出させていただいた意見の中で重要であると考えている点は,以下の2つでございます。1つ目が,音楽・映像を私たちが享受する態様と,静止画・テキストを享受する態様には違いがあるのではないかということであります。音楽・映像についての法規制がなされた頃に遡って考えてみても,そのときの状況と,現在のこの静止画・テキストについての法規制を導入しようとしている状況を比較してみたとしても,私はやはり,ダウンロードして享受するというのは,どちらにより当てはまるのかというと,これは明らかに静止画・テキストであろうと考えています。

そうだとしますと,やはり私たちに与える影響がより大きいということは,ひとまず言えるのではないかと。特に一定年齢以上,私たち以上とか,かつ,PCなどの媒体で静止画・テキストを享受するというときには,これはダウンロードしてから享受をするということはかなり一般的に行われていることではないかということは,確認できるのではないかということです。

もう一つ,私が重要であると考えて意見を述べさせていただいたことは,私たちが行う知的な生産活動との関係です。この享受の態様だけに焦点を当てるということも好ましくないと思っていまして,私たちが思索を深めて,表現を行うと,こういう知的な生産活動,これは別に高尚なことを行うということではなく,日常生活で私たちが行っていることであると思いますが,こういう場合には,資料を収集,保存する目的で,静止画・テキストのダウンロードを行うということは一般的なことであろうと思っております。

確かに音楽・映像について,そういうことがなされないかと言われれば,そういったものについて,何かを論じようというときには,収集,保存の目的でダウンロードがなされることはあろうかとは思いますけれども,一般的に考えますと,音楽・映像のダウンロード,収集,保存ということよりも,やはり静止画・テキストのダウンロードの方がやはり一般的になされているだろうということが言えようかと思います。

そうであるとするならば,音楽・映像についてのダウンロードと静止画・テキストについてのダウンロードには,やはり質的に異なるところが存在するのではないかと,私は考えています。報告書(案)66ページのところで,先ほど追記していただいていたとご紹介のあった(オ)という指摘でございますが,これは私といたしましては,私たちの知的な創作活動に広く関わるのだという認識を持つべきであると,こういうことであると理解しておりますし,報告書(案)69ページ以降で論じられていることについても,同様でございます。

そうだといたしますと,やはり享受者である私たちが権利者の許諾なしにこのコンテンツをダウンロードする可能性,それから必要性,これは静止画・テキストについては,音楽・映像に比して高いと予想されます。そうであるとするならば,やはり音楽・映像についてのダウンロード違法化を行った場合と同じ考慮事由で論じてよいのかというのが私の出発点でございまして,やはり享受者の行動に対する過度な制約にならないような,そういう配慮をすべきであると考えます。

そうだといたしますと,一般論としては民事規制,それから刑事罰,両方について,やはり音楽・映像の場合と比べて範囲を絞るべきであるということになろうかと思います。これ以上話をしておりますと長くなりますので,こういう理由に基づきまして,この共同意見書に対して賛成させていただいたという次第でございます。

【茶園主査】では,鈴木委員。

【鈴木委員】私は,この小委員会に欠席がちで,その点,大変申し訳なかったのですけれども,ただ,この第2章の部分については,やや議論が非常に短時間に結論めいたところまで進んだことにやや驚いております。とはいえ,今回お示しいただいた案の前のバージョンについて委員の意見照会を頂いて,私の意見も一定程度盛り込んでいただいたことについては,感謝はしたいと思います。

他の委員が言われたことの繰り返しは避けて私が非常に引っかかる点について申し述べさせていただきます。それは30条1項の趣旨についての書きぶりでございます。58ページのところで,権利者の利益を害しないという点を強調する説明があります。それは必ずしも一般の理解と違うのではないかという意見を私は事前に,申し上げました。おそらくほかの委員からもそういう趣旨の意見があったかと思いますが,そういった意見を踏まえて,65ページの注の75でありますとか,あるいは70ページとか,78ページに,個人の私的領域における活動の自由の保障,そういう見解もあるということを御紹介いただきました。ただ,そのように30条1項の趣旨について個人の私的領域における活動の自由を保障する面があると解する立場について,注で触れるとか,あるいはそういう見解もあると位置づけるのは,ちょっと客観的に見て,少なくとも知財法の専門家の間での一般的な理解とはずれているのではないかという気がいたします。むしろ,注75に示されたような見解が一般的な理解であり,報告書をそのような前提に立った書きぶりにしていただいた方がいいのではないかというのが,私の意見です。

すなわち,注75に示された見解は,そこに書かれているように,一判決ではあるものの,知財高裁という裁判所,公的機関が示しております見解でありますとともに,学界においても標準的な教科書の多くで述べられているところでございます。名前を出して恐縮ですけれども,主査の茶園先生が書かれた「著作権法入門」にも,個人の活動の自由を私的領域において制限しないという趣旨が30条1項の趣旨の一つであると書かれております。多くの学説がそのように理解していると思います。

したがって,30条1項の趣旨の理解という,出発点において,現在の報告書の書きぶりについては疑問を感じるところであります。そういう趣旨についての理解,すなわち個人の活動の自由ということをある程度重視する観点から見ますと,先ほど意見書で御紹介いただきましたように,とりわけ刑事の分野については慎重な検討が必要と思いますので,現時点でのこの審議会における検討の現状では,結論を出すのは,まだ時期尚早ではないかというのが,私の意見でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。明確に意見書を提出していただいたので,提出された方にそれぞれ御意見をお伺いしましたけれども,これから,御自由に御質問,御意見がございましたら,お願いしたいと思います。

では,前田委員。

【前田(哲)委員】海賊版対策の緊急性というか,緊急に対策が必要だという点については異論がないところだと思います。先ほど,報告書を今日取りまとめるのは適切ではないという御意見と,来年度以降に回すべきだという御意見があったと思いますが,私の考えとしましては,今日取りまとめるのではなくて,もう一期日を入れるということについては強くは反対するわけではございませんけれども,緊急性に鑑みると,来年に延ばすということには,私は反対です。今期中に報告書をまとめる必要があるのではないかと,私は思います。

それから,海賊版対策というのは必ずしも海賊版サイト対策ではないと,私は思います。いわゆるサイバーロッカーからのダウンロードも重大な被害をもたらしていると思いますし,それから,ビットトレンドなどを通じたダウンロードも深刻な被害をもたらしているところと思いますので,対象を海賊版サイトからのダウンロードに限定することには,私は反対です。

ただ,それ以外にも,対象を限定することには幾つかのアイデアが示されています。その中で,例えば原作のままに限定をする案があります。あるいは,今回,反復継続するものに限定するという案が新たに示されたところかと思います。この反復継続について,業としてというにしてしまいますと,事業としてという意味に理解されたり,あるいは一定の社会生活上の地位に基づいてというふうに解釈されたりするおそれがあり,そうなると,今議論しているダウンロードの問題には当てはまらないと思います。

ですので,業として行うものに限定するというのは適切ではないと思いますけれども,反復継続して行う場合に限定するというのは1つのアイデアだと思います。私の意見としては,原作のままの場合に限定する,あるいは,反復継続して行う場合に限定するということも有力な考え方だと思います。そういうことも視野に入れつつ,何らかの報告書の取りまとめを今期中に行うことが必要なのではないかと思います。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。

では,大渕委員。

【大渕主査代理】今までもたびたび述べておりますので手短にしたいと思います。先ほど私的領域での行動の自由が重要だということがあって,私も全くそれ自体はそうだと思うのですが,少し前に申し上げたとおり,散歩する自由があっても,他人の私有地に入り込んで散歩する自由はないというのと同じように,私的複製する自由はあるかもしれないが,違法ソースから私的複製をすることまでが,私的領域で当然に説明できるものではない,私はこれが国際標準だと思っています。ドイツ,フランス等は,全て私的複製の範囲から,違法なソースからの,ないしは明らかに違法なソースからの複製・ダウンロードは外しているのであって,そのあたりは当然の前提ではないかと思っております。

先ほど引用された注75の判決も,あくまで私人が提供した本からスキャンしていますから,ソースは適法であるという前提で,私的領域は重要であるといいつつも,結局は,違法という結論にしています。

理論構成は別として,最終的には違法にしているということから分かるように,やはり,ソースの適法性というところは実質的価値判断の大前提となっておりますので,それを最初から崩してしまうというのは,いかがかなものかと思います。やはり,そのような観点からは,これは国際標準だと思いますが,ソースの適法性というのを大前提とした上で議論していくことが重要であります。

その点からいいますと,これは,私的録音・録画補償金で出ている話ですけれども,我々は,とかく30条1項は当然だと思いがちなのですが,ほかの国の法制と比べてみると,非常に日本は私的複製に優しい法制になっています。これにどんどん違法なものを入れるようになってくると,また30条1項自体に疑義が生じかねないといった問題が生じてきます。

私も,根本の私的領域の行動の自由確保のための30条1項は重要だと思いますが,それを理由に広げ過ぎると,結局大本のところが台なしになってくるおそれもありますので,そこのところはきちんと押さえるべきではないかと思っております。

その関係で,いろいろ制限するというのは,全て有償とか,問題があるし,非親告罪化というのも,もともと訴訟条件のものを実体の,先ほどあったように非親告罪化でやったのは,犯罪が成立するのは当然の前提とした上で訴訟条件は絞り込むという話なので,そこで犯罪の成立自体まで動かしてしまうと,前提が全然違ってきます。全く別の論点のところを持ってきても,話がめちゃくちゃになってきます。

先ほどの刑事の方は,やはり謙抑性というのがあるので,絞り込みというのが一定の程度あるのかもしれませんが,民事の,少なくとも録音・録画に関しては現行法の形で出来上がっておりますので,それとの間で有意な差があるかというと,疑問だと思います。

それから,振り返ってみますと,あれは,たしか私的録音・録画小委員会でやったから録音・録画を対象にしていますが,あのときに録音・録画だけが被害が大きいという話もなかったし,被害が大きいものだけをダウンロード違法化するという話もなくて,もともとマンデートが私的録音・録画だったので録音・録画にしただけであります。そのあたりは,原点に立ち返ってみると,日本はそのような経緯で先に録音・録画だけやりましたが,基本的には録音・録画とそれ以外というのは,区別するだけの有意な差はないのではないかと思っております。

【茶園主査】では,奥邨委員。

【奥邨委員】私の立場は,最初にこの検討をし始めたときから,民事においても刑事においても対象を限定すべき,録音・録画と同じというのはおかしくことさらに刑事についてはより限定するということを前提としております。

その点において,事務局がお作りになった,今回配られた原案では,録音・録画よりも民事も刑事も限定する可能性を示されているということについては,私の立場からすれば,事務局の労を多としたいと思います。

ただ,現在の書きぶりでは,そうだけれども,検討してみると,やっぱり必要なかったとか,不要だったということになって,元に戻るということでは,ちょっとそれはまだ足りないのかなというふうに思っているというところでありまして,その点は,是非さらに踏み込んでいただきたいと思っております。

さらに,今もありましたけれども,対象を広く拡大するという,非限定説の正当化理由というのは,結局まずは,限定する理由がないと。区別する理由を説明できないと。次に,定義が難しい。最後に,平成21年改正,平成24年改正で問題が顕在化しなかったじゃないかというのが大きな理由だと思うのですけれども,どれも,結局は不十分なものではないかと思います。改めて,今回のパブリックコメントを見てそのように考えたところです。

まず,限定を正当化する理由がないという意見ですけれども,これ,発想が逆転だと思います。録音録画以外のダウンロードは,そもそも違法な行為ではなく,現在,適法な行為なのです。これは明らかに現在,適法なのです。違法な行為が,たまたま適法にされていないわけじゃないわけです。著作権は,及んでいないのです。その及んでいない適法な行為を,違法化,刑事罰化するわけですから,当然,限定的にするというのはどの分野だってやっていることなのです。

それをできないと。普通は限定的にするのだけれども,限定的にできないんだというなら,限定的にできない理由を言わないといけないのです。限定を正当化する理由じゃないんです。限定できない理由を言う。そうすると,漫画なんかの事例を超えて,例えばブログやSNSでわずかな部分の違法アップロードが行われて,それがダウンロードされるので看過できないような被害が発生しているから,そこも含めてやるべし,だから限定できないのだなんていうような話しが,ここまでで話が出てきたかというと,私は出てきていなかったと思うのです。

それから,もう一つは,今回の措置は,どんな限定を付けたとしても,権利者は今までよりも必ず改善するのです。権利者にとってはいい方向に動くわけです。一方で,この措置の影響を受ける一般利用者は,今よりも必ず確実に何らかの形で規制や制限が増えるわけです。となれば,一般利用者に悪影響ができるだけ出ないようにするというのは,何よりも優先されると。これは,ほかのものに比べて最優先で考えないといけないということになるわけです。

したがって,先ほどの事務局の脚注にも取り上げていただいていますけれども,限定手法に関して,71ページ以降にいろいろ課題が挙っていますが,あれは課題でも何でもないわけです。あれは,限定する以上,当然の効果であって,それを課題だからとだけ言うんじゃなくて,課題だと言うのだったら,その課題を少しでも減らす検討をしないままに,限定手法は採用できませんというのは,納得がいかないところだと思います。私だけではなくて,一般の方が納得していただけないと思います。

それから,定義が難しい。これは,主客逆転で,その難しい定義を考えるために私たちの委員会があるわけですから,それはできないということは説明にはならないと思います。

それから,あと平成21年改正,24年改正で問題は生じなかったですけれども,これも主客逆転です。なぜなら,21年,24年改正は限定したわけです。限定したから,その限定が有効に効いて,結果的に問題が生じなかったとそれだけのことでしかないわけです。今回,限定を外してしまうことで問題がないかということは,限定したもので,結果的に何ら問題がなかったことから,限定を外しても,当然,問題がないということに帰結するということは言えないはずだと思うのです。

それでも大丈夫なのかということは,別段丁寧に議論したという覚えもないということになると,今まで言ってきた非限定説という立場の正当化の根拠というのは,十分な議論の下に出てきたものかというのはやっぱり議論になるし,それは影響を受ける一般の方に御納得いただけるようなものだったかというのは,十分検討されるべきだというふうに私は思います。

【茶園主査】,結局のところ,これから検討をさらに進めるべきという御趣旨ですか。

【奥邨委員】そうですね。少なくとも現状のままでは,元へ戻ってしまう可能性があるようなまとめ方だというふうに冒頭申し上げましたけれども。

【茶園主査】すみません。私がお聞きしたのは,検討した結果,もとに戻るということの意味なのですが,ここで何らかの報告書を決定させるが,明確に1つの意見を出さなかった場合に,その後の検討は国会がやるわけですから,国会でどうなるかは,もうこちらとしては分からないと思うのですが。

【奥邨委員】いえ,違います。そうではなくて,今のこの報告書は,そのほかの選択肢も十分検討するということにはなっていると思うのですが,検討したあと,戻ってしまうと,結局なしのまま,そのほかの選択肢がつかないまま法案が出てしまうということだと,ここで書いてあっても余り意味がないのではないかということを申し上げているわけです。

国会に出た時点で,何かプラスアルファの限定が出ていたけれども,国会での議論で,いやいや,それは要らないとなるのは,それはもちろん当然だと思うのです。今,審議会で皆さんの議論は,今の録音・録画と同じだけでは足りないんじゃないかと,プラスアルファが必要なんじゃないかと言っているわけですから,そこを,プラスアルファを考えるというところまで行くのが,答えを出すというところまでが,やはり審議会としては必要なんじゃないかということだと,私は思っています。

【茶園主査】では,松田委員。

【松田委員】今の奥邨委員の御発言は,多分78ページの第2段落,「(ア)~(カ)の選択肢もあることを前提に,そのユーザー保護の効果や課題も踏まえつつ,最適な対象範囲の設定を行うことが適当であると考えられる」というところを,もう少し立法時において拘束するような規定ぶりにしろということになるのではないかと聞きました。それは,その限りにおいて,その程度の修正は私もいいのではないかと思います。

この30条の問題が,特に刑事罰も含んだ個人の違法ダウンロードが,同法の基本的な趣旨といいますか,考え方というか,理論といいますか,これに問題を提起したものであるという発言は,研究者の方々から今出たところです。そのとおりだろうと思います。なぜそれが出たかであります。

それは,この刑事罰の違法化も含めて,国民に対する影響がどういう形で行われるかというと,民事訴訟,刑事裁判,よって解決されるという場面が想定されない。そして,違法化することによって,利用者,一般国民の複製に関する萎縮が生じるだろうというところに,自由を制約することになるのだという危惧なのだろうと思っています。そういう問題が,ないとは思っておりません。

しかし,この議論は,既に音楽・映像の議論のときにも相当に行われたものです。それは,同じ問題が当時もあったことは御存じでしょう。そして,その法律的効果を,30条の趣旨を踏まえつつも,少し変更しなければならなかったということがあったのだろうと思います。

これは,大きな変換だろうと思います。何かというと,二当事者間の権利関係,をベースに司法制度を介した著作権法上の執行と共に法のメッセージ効果によって法的秩序を維持しようということになったのです。これはは,静止画・テキストの問題ではありません。既に音楽・映像のところで生じたというべきです。

音楽・映像と静止画・テキストとの関係で,顕著に質的な差が,ないとするならば,著作権法上の効果の問題について,30条の一般国民の自由を制限することはすべきでないという,憲法上の保障に戻って議論する必要は,ないと思っております。

【茶園主査】では,前田委員。

【前田(健)委員】先ほど来,30条1項の趣旨についての話が出ているので,それについての私の考えを述べさせていただきたいと思います。鈴木委員をはじめとしてたくさんの委員から御指摘がありましたように,30条1項の趣旨というのは,著作権者の経済的な利益と,それから個人の活動の自由というものが天秤の両方に乗って,それをどちらを優先すべきかという比較衡量を行う場であると,私は理解しております。

先ほど,大渕委員から違法領域に入って,自由はないというお話がありましたけれども,今,我々がここで議論しているのは,30条1項で違法の範囲をどこに設定すべきかという話であって,大渕委員のおっしゃることはトートロジーでありまして,それは立法政策を議論するときには特段意味のないということになるかと思います。

その上でなんですけれども,30条1項には,個人の自由の領域を確保するという機能があることに照らして,特に刑事罰については国民に規制を課すということになるわけですから,自由が出発点であって,それに対して規制を掛けるべき立法事実があるのかという方向で議論しなければならないと思います。

先ほど,前田哲男委員がおっしゃいましたように,いわゆる海賊版サイトだけが問題だというふうには,私は思っておりません。様々な海賊版というのが蔓延しているという事実は私も把握しておりますし,それに対する対応が必要だということを毛頭否定するつもりはございません。ただ,そういった被害実態が把握されている範囲を規制するためには,どの範囲に規制が必要なのかということを綿密に議論した上で,それが懸念されている国民の生活に影響を与えないのかというのを検証した上で,最終的な決断に至るべきだというふうに考えるわけです。

現在の報告書の書きぶりですと,その国民の側の自由を守るべきというところの視点が弱くて,このままの報告書では,私は承認することができないと考えております。さらに限定するとして,様々な選択肢があるとして,選択肢が網羅的に列挙されて,課題のあるものが挙っていますけれども,そのどれにどういった利害得失があるのか,つまり,海賊版対策に対してどれほど有効で,どれほど国民に対して制約を加えることになるのかということの比較検討が不十分なように思います。

そういった方向性を一切示さないまま,この報告書を取りまとめてしまっては,結局その限定をするということについて何も意見を述べていないということになりかねないんじゃないかということを,私は懸念しております。したがいまして,仮にまとめるんだとしたら,今言ったような点は少なくとも補足していただかないと,これを取りまとめることはできないというふうに考えております。以上です。

【茶園主査】では,生貝委員。

【生貝委員】ありがとうございます,手短に。先ほど,奥邨委員からございました,規制対象を広げることについて,しっかり合理性を求めていくべきだということについて,私も前提としてそのご意見に非常に賛成するところでございます。どのような制限というのも確かに課題はあるわけで,当然ここが入ってこない,ここが入ってこないというところはあるわけでございますけれども,こういったダウンロードの違法化という形で水も漏らさず対応する必要性というのは,そもそも果たしてあるのか。

海賊版対策は総合的に実施するべきであるところ,海賊版の対策というものは,そもそも本丸はアップローダーへの対応であって,念のため,メッセージ効果を期待して,国民に広く違法化の網を掛けるというふうなことを隙間なくやっておく必要があるのかということについて,私は合理性がないと理解せざるを得ないところです。

それから,もう一つだけ。この問題について,私のような者が大変こだわっておりますのも,著作権法というのが,これからの情報社会のインフラそのものであるというふうに考えるからです。今の,そして,特にこれから現実空間全体というのもインターネットに,つながって私たちが生きていく中で,何が違法か合法かというものを決めることが,この著作権法であって,分けても30条であるものだというふうに確信しているからです。

一定の業界の利益の調整という著作権法が持つ役割,これは引き続き極めて重要ではありますけれども,そのことだけに決して留まることではない,本当にこれからの日常生活全体の違法,合法を決めるルールに関して,このような短い期間で刑事を含めた結論を出してよいのかということについて,私自身,強く疑義を持つということになります。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】先ほど,違法と申し上げたのは,違法ソースとはっきり申し上げたつもりです。その行為自体が違法かどうかというのは決める話ですが,先ほど申し上げたのは,違法ソースからの複製を認めるべきかという大きな論点があって,国際標準としてはそういうものは外しているのであります。適法なソースから複製物をもう一個作ったら,原則からいうと侵害にはなるのだけれども,それを侵害にしないのが30条1項だというように思っております。

そのような意味で,前から言われているとおり,日本の30条1項は優し過ぎるのではないかともいわれておりますが,そこの大きなところが外れて何十年も来ているわけですけれども,そこのところをよく考えないといけないと思います。

それから,先ほども出ていますとおり,ダウンロードを認めてしまうということは,アップロードの方の助長にもなるというように,いろいろ波及的な問題も大きく関わっている話ですので,そこのところは議論を矮小化させてはいけないと思います。かつ何度も申し上げていますとおり,録音・録画では民事も刑事も違法にしたことについて,いろいろ懸念もされましたが,結局,いいか悪いかは別として,刑事は起訴等はされていないし,民事訴訟ですら余り提起されたという話も聞かないような,状態にあります。

普通に考えると,今度これを録音・録画以外に拡大したから,すぐ刑事事件が立件されるとも,民事訴訟が提起されるとも思われない,恐らく同じような状態が続くと予想されます。このような状態が現実的であると,余り言うと,メッセージ効果もなくなってしまいますが,国民の間に,先ほどから言われているような深刻な問題を起すのかという疑問は,1点あります。

それから,先ほどから,刑事は看過できない法益だけだと言われることが,先ほどからずっと当然のように言われています。119条1項なら30条が絡まないような形であれば,普通に侵害すれば,犯罪は成立するわけです。刑罰だから必ず看過できない法益の侵害がなければならないということはいえません。それは逆に言うと,法は単純に著作権を侵害することは,刑罰にふさわしいだけの看過できない権利侵害だと考えているとも言えますので,そこのあたりは余り看過できないようなものというのを強調し過ぎるのも,法体系全体からするといかがかなと思われます。

【茶園主査】では,小島委員。

【小島委員】先ほど松田先生から,音楽・映像と静止画・テキストで違いがあるのかということで御指摘がありました。私が事務局に提出させていただいた,特に刑事罰のところでは,そもそもその有償著作物というのがよいのかということも提起をさせていただきました。いわゆる伝統的な広告モデルもありますし,現在ですとユーチューバー的な存在もいるはずですし,さらには,コンテンツから何らかの形で報酬を得るということじゃなくて,フリーのビジネスモデルのような形でアップをしているという,いろいろな形があるだろうと思うのです。

これは,要するに,いわゆる「市場経済」的な要素と,いわゆる「評価経済」的な要素というものが,今のこの世の中というのは混在しているわけです。今の著作権法の難しさというのは,そういうものを全て包摂するような形でルールを作っていかないといけないというところにあるのだろうと。この状況というのは,私は録音・録画のころに比べてさらに多様になっているんじゃないかというふうに感じています。

そうだとしますと,そもそもこの有償著作物でよいのかという問いを提起しているところからもそうなのですが,音楽・映像に関する議論をそのまま,今回,引き継いでよいのかという,その問題を私は少し感じています。要するに,経路依存でよいのかということです。

さらに,もう一つ言いますと,メッセージ効果ということが何度か言われているんですけれども,このメッセージ効果ということを余り正面から言ってしまうと,これは,法のまさに表出力であったり,信頼に関わるのではないかという気もします。なおかつもう一つ言いますと,刑事罰が入ってしまう以上は,全く問題が顕在化しないということを保障するものではないと思いますので,静止画・テキストについては,私はやはり白地で別途考えるということが望ましいのではないかと感じております。

【茶園主査】では,深町委員。

【深町委員】刑事法の研究者の立場から,刑事罰が新たに導入されるということに関して,意見を申し上げたいと思います。まず,メッセージ効果についてですが,端的に申しますと,処罰範囲が文言上広いにも拘らず,しかし,実際の適用は余り想定されない処罰規定という形で,もしメッセージ効果を維持しようとすると,恐らくですが,却って,国民が刑罰,に対する信頼を失い,それによってメッセージ効果が逆に低下するという事態が生じます。

これは,従来でも刑法の様々な領域で生じている事象であって,著作権に関する処罰規定に限られた話ではありません。メッセージ効果を,本当に維持したいのであれば,それにふさわしい処罰規定を明確な形で設け,そうした規定が適用される可能性も留保した形でなければならないと思われます。逆に言いますと,使われない刑事罰であるものの,メッセージ性がそれなりにあるといったことは今後は期待できないと思います。したがいまして,もし本当に刑事罰によるメッセージ性を維持したいと考えるのであれば,丁寧に限定的な形で処罰規定を作る必要があると考えております。これが一般論です。

次に,報告書(案)について言いますと,78ページから79ページをご覧いただきたいと思います。私もこの点に関して,意見書を事務局に提出いたしました。どのような内容の意見書を提出したかについて一言で申し上げますと,従来の著作権法119条3項の「事実を知りながら」という文言についてです。事務局が,あるいは,先に大臣も言及されたような,「違法であることを知りながら行った場合に限定する」ということは,およそこの文言からは出てこないということを申し上げました。

具体的に申し上げると,次のとおりです。現行法の規定では,このような「事実を知りながら」との要件がありますが,少なくとも,刑法の議論におきましては,犯罪の構成要件該当「事実」と,それから,そうした事実に対する「違法性」の評価,とは区別されております。

こちらの報告書(案)にも,中間まとめの後で入れていただきましたが,少なくとも刑法の一般的な解釈論で申しますと,故意の内容として違法性の意識は入っておりません。この解釈論を前提とすると,「事実を知りながら」の「事実」の中に「違法性」は入ってこないものになります。したがいまして,現在の著作権法119条3項の立法において,既に私の理解からすると,「違法性を認識しながら行った場合」といった限定的な解釈が行えないような文言が選択されていたことになります。

今般の78ページ,79ページの報告書(案)は,まさにこの点が立法的に問題であったことを正面から認め,その結果として,立法措置によって,事実の認識と違法性の認識の双方について,確定的な認識を要求することを明確化することについての対応が必要であると指摘されています。

私の理解では,これは静止画ダウンロードの刑罰規定のみならず,現行119条3項の「事実を知りながら」にも当然反映します。すなわち,我々は現行の119条3項をいじらずに,新しい規定だけを導入することはもはやできません。現行の119条3項についても,「事実を知りながら」の要件を適切に限定する形での改正をせざるを得ません。

このような状況から考えますと,現時点での議論だけでは,現行の119条3項のこのような主観要件に関する文言も訂正することをも視野に含めた広範な議論については,まだなされていない状況であると私は考えております。

したがいまして,前田委員はじめ,様々な委員から出されている報告書(案)に対する意見書の一部については,私も賛成しております。すなわち,本日,直ちに報告書(案)を取りまとめるには,刑事罰の規定についての検討がなされていない点がまだ残っているということです。

主観要件について,このような特別な規定を設ける趣旨,すなわち,「事実を知りながら」という特別な要件を,一般的な著作権侵害罪とは違って設けることの趣旨が何であるのか。そのことを,法の文言として明確化するにはどのような規定を導入すればよいのか。この点は,我々が提案し,なおかつ立法府に訴え掛けるべき問題です。この点を明記しない限り,立法府の側では,現行の119条3項と同じような規定を設けかねません。

このような丁寧な議論を,少なくともあと1回はすべきであると,私は考えております。これが主観要件に関する私の理解であり,78ページ,79ページの記述は,このような私の意見も反映されているものと受けとめております。

翻って,このような観点からしますと,例えば同じ報告書(案)であるにも関わらず,67ページの上から1行目,2行目では,もちろん民事と刑事の共通した話だからということかもしれませんが,現行の119条3項と同様,「事実を知りながら」という要件を維持しつつ,要件の厳格な解釈が重要であるという言い方をしていて,ここでは,あたかも立法的な措置はとらないかのような記述にも見えるわけです。

このように,同一の報告書(案)の中にも幾つかの齟齬が見られるということは,この報告書(案)を作られた,事務局の方々の非常なるご努力にはもちろん敬意は払いますが,しかし,なお問題が残っているということです。このような齟齬を可能な限り除去し,丁寧な議論をするためにも,是非いま一度の,小委員会を開くべきであると,私は思っているところです。

次に,客観的な構成要件,すなわち,刑罰規定としての客観面の明確性を担保するための考え方について,80ページで示された議論に関して,一言だけ申し上げさせていただきます。既に,刑罰規定を導入することに賛成の委員の先生方からも,民事に比べて刑事ではやはり限定すべきだという意見が出ています。しかし,重要なのは,どのように限定すべきなのかという点です。事務局のご努力により,(イ)から(カ)という形の選択肢があり得るということが示されております。

しかし,その選択肢の中での軽重について,この書き方では具体的な判断基準が示されていないと,私は理解しております。したがいまして,(イ)から(カ)のような選択肢を提示する際には,それぞれの特質,課題という形よりも,それぞれの見解がなぜそのような主張をしているのかということのメリットをまず提示した上で,そのメリットを減殺するであろうデメリットを述べ,その上で,我々の立場からもう一度丁寧に議論する必要があろうかと思っております。

このような限定が要らないというのが小委員会の総意であれば,このようなテーマは不要ですが,少なくともこの80ページの書きぶりを見,ますと,そのような限定をすべきであることについて,むしろ提案の中心に据えるべきだと解されます。このような限定は要らないという提案を有力な選択肢と言ったのはやや言い過ぎであり,これは予備的な提案であって,むしろ主提案としては限定をする方向を考えるべきだとのご説明が,事務局からもございました。

私は,このご説明をまさに是とするものです。したがいまして,このような検討をするためには本日の残りの時間では足りません。このような立場から,私としては来期に延ばすかどうかということはさておきまして,少なくともあと一度,いま一度,事務局と我々の総意に基づく丁寧な検討が必要だと思っているところです。以上です。

【茶園主査】ほかに何か。

今村委員。

【今村委員】時間が過ぎているようですが,大丈夫ですか。先ほどのメッセージ効果との関係で,ちょっと。今回,抑止効果を狙って刑事罰を設けるというのが主眼に置かれているような感じはするのですけれども,やはり,本当に刑事罰を課すべきモデルケースのようなものと,そうではないものとがあって,今回は,そうではないもの,も含めて抑止効果を狙って幅広くということになっていると思うのです。そこは,ダウンロードの違法化を新しくかなり大幅に拡大するということであれば,本当にモデルケースとして刑事罰を課すべきところ以外に対する抑止効果は少し控えておくということも考えるべきかと思います。

たとえば業としてとか,反復継続性とか,そういう形で刑事の方は限定する,あるいは,原作のままという要件を入れるのでもいいのですけれども,幅広く抑止効果を狙うというような刑事罰の設け方は,ちょっと今回のメッセージ効果としては強過ぎる。もう少し国民を信頼して,対象を狭めるような要件というか,限定するような要件を入れるべきではないかと思います。

そういう意味では,そういうことも含めて対象範囲を限定する必要性ということを十分考えて,具体的にどういう限定をするかというところを,もう少し議論する時間があった方がいいという意見には賛成です。ただ,来期に延ばすかどうかはまた別だと思います。これは緊急の課題ということで,何か対応をとらなくちゃいけないという話もありましたので。

あと,もう一点だけ。70ページの記載の部分で,これは,69ページのマル1の研究活動への影響というところに関係する部分なのですが,この(ア)のところで,これこれを理由に設けられた権利制限規定であるという理解を前提とすると,そもそも同項の対象とは言いがたい行為も多いと考えられること,という記述があります。このままの書きぶりですと,研究活動が30条1項の規定に当たらないことが多いというふうな形で捉えられかねないのですが,実際には研究者が私的な研究活動などをして,それが大学の研究として生かされる場面も当然あるわけです。

なので,行為の態様によっては同項の対象とはならない場合もあるというように,もう少し含みを持たせた表現にしていただいた方がいいと思います。さらに言えば,たとえばイギリスでは私的使用のための複製の制限規定すらないのですけれども,他方で,非商業的な研究とか,私的な学習目的の複製を含めた著作物の利用については,権利の制限規定があります。70ページの記述は,研究とか,学習とか,そういう場面での著作物の利用に関しての基本的な考え方にも影響を与えますので,この部分の記述の仕方には,もう少し御配慮いただければと思います。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】先ほど深町委員が言われた点は,刑法の観点から非常に重要であることは間違いないと思います。恐らく,今までの書き方がやや舌足らずだっただけであって,私の理解では,真意はずっとこのとおりで一貫して,事実を間違えた人だけではなくて,法律の当てはめも間違えてやってしまった人も,不可罰となるということであります。だから刑罰としては,弱過ぎるという点を除けば,書き方が舌足らずなだけで,真意はずっとこれで来ていると思います。

ほかの部分は,民事中心に書いているのを,後から刑法をくっ付けたので,やや不整合を生じさせていますが,真意としては,刑法に関してはこれでずっと来ていると思います。最後の条文化のときには,きちっと作らなければいけませんが,立法政策としてどうするかという点は,これを事実の誤りに限るという人も余り今までいたとは思えないので,この趣旨で来ていると思います。そのところは,きれいさは別にして,真意というか,立法趣旨というか,ここでの趣旨は明らかになっていると思います。

あとは,私が思ったのは,先ほどの何ページでしたか,何々を有力な見解とするとして,あとは含みを持たせたものになっています,が,これを現状で取りまとめるとすれば,そのような意見もあったけれども,そうではない意見もあったので,両方書いてあるということであります。そのような意味では,やや分かりにくいという点を別にすれば,ここでされた議論を,客観的に述べている,だから,両方の意見が書いてあるという意味では,現状を表していると思います。

【茶園主査】では,深町委員。

【深町委員】ただいま,大渕委員が言われたことについてですが,私は,法の命は法の文言,法の規定それ自体にあるものと思っています。本音ではそうである,本心ではそうであるということはもちろんあることと存じます。しかし,私が見る限りでは,幾つかの特別法における刑罰規定の立法の経緯やその後の解釈論などを見ますと,もともと立法者はこのような意図で,規定したのだという理解が,後に一旦裁判の場で問題となったときに,そうした理解が容易に覆されるという事例は,それこそ,枚挙にいとまがございません。

もちろん,大渕委員もそのようなことは御存じの上でおっしゃっていると思いますが,私としましては平成24年改正の後に,我々がもう一回新たな規定を作ろうという話であれば,従来はそのように考えられていたということを,法の文言として明確化することが必要だと思っているわけです。元から皆がそう考えていたと言うのであれば,元から皆がそう考えていたというその内容を,正に法の文言として明確化すべきであると考えております。そうすると,どのような文言として明確化すべきかという問いが次に来ます。

要するに,皆そのように考えてきたという点は,私も大渕委員と全く同じように理解しているところです。しかし,現行の119条3項の「事実を知りながら」という文言のみでは,そのような理解だけが必然的に導かれるとは限らない。この点も,大渕委員と私とは多分,共通していると思います。

したがいまして,私の提案は,皆が暗黙のうちに前提としていたことを明示的に法の文言とすることです。そのためには,法の文言の作り方も含めて,いま一度の議論が必要だろうというのが私の立場です。以上です。

【茶園主査】では,前田委員。

【前田(健)委員】今の深町委員の御指摘に関してですけれども,主に主観要件を念頭に置かれて御発言されたと思いますが,おっしゃることは,客観的な要件についても同様に当てはまると考えております。報告書の中の76ページあたりに,平成24年改正における音楽・映像の刑事罰化についても,もともと海賊版を抑止するという観点から設けられたという趣旨があるという旨の説明がされております。

80ページの注110において,これはコメンタールの解説ですけれども,刑事罰の解釈において,事実上,海賊版若しくはそれに準ずるものに限定するかのような解釈論が提案されております。つまり,このことは,平成24年改正の趣旨に,そういった海賊版対策に必要な範囲に限定するという思想があったことをうかがわせるものであります。ただ,深町委員も御指摘されましたように,現状の文言がそれを反映しているかどうかというのは,少し疑問な部分があると思います。

そうすると,平成24年改正,若しくはその前のダウンロード,民事違法化も含めて,何が立法意図であったのかというのをもう一度精査して,そして,新たな文言を設計し直すということが必要になると,私は認識しております。以上です。

【茶園主査】では,松田委員。

【松田委員】事実の認識と違法性の意識の問題ですけれども,この委員会で客観的事実の認識だけで足りるというふうに「事実を知りながら」を理解している委員は,いないのだろうと思います。もちろん,委員会の意を踏まえて,これからの条文がどうなるかは,という問題にはなりますけれども,その段階で歯止めをしなければならないのであれば,今回の改正,だけではなくて,21年,24年改正における要件も変えなければならないはずです。

それも踏まえて,違法性を意識するという趣旨のことも踏まえて,今回の報告書に記載すべきだろうと思います。それは,委員において,同一の認識に立っている以上,委員長に表現をお任せしてもいい範囲ではないかと思っております。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】,どのレベルまで審議会でやるのかというのは,いろいろお考えがあるかと思います。私は,特許庁の審議会などでもいろいろ委員をやりましたが,最終的な法制局的なレベルの文言まで詰めてやっている審議会というのは,まずないと思います。それをやり出したら動かないから,立法政策の骨子を示したら,あとは立法担当部局の方で,法制局と詰めながら文言を,先ほどの点も含めてきちっとやっていくということです。

重要なのは,事実なのか,違法性も含むかという,立法趣旨の骨子のところです。今まで,ここでも,特許庁でも,刑罰関係も含めて文言まで審議会で議論して詰めたことはないと思います。

それから,もう一点,110ページの池村・一貫田文献を引いておられますが,これは,普通,閣法の方だったら,文化庁の職員が書けば,個人的見解かどうかは別として,立案者の意思というもので加戸逐条のように参考になるのですが,これは,たしか24年は議員修正の方なので,提案した国会議員に聞いてみない限りは,文化庁の方ではこれを言う立場にないから,恐らく全く2人の私人の立場で書いたものということになります。

だから,池村等文献を,24年改正の立法者意思として重視するのはいかがかなという気はするし,先ほどの事実の点については,ここで骨子を決めれば,録音・録画と,それ以外も含めて,119条3項を新たな文言で書き換えることになるので,そこのところは本来あった趣旨に沿うような新文言で統一的に書かれることになるので,最終的には,その点は問題ないと思っております。

【茶園主査】もう大分時間が過ぎたのですけれども。

【松田委員】最後に,お願いします。

【茶園主査】では,松田委員。

【松田委員】今回,研究者の,新たな要件を加えることの意見が出ました。有償性の問題,海賊版サイトやP2Pに限定するという考え方,それから,TPPの申告罪に対応したような3つの要件を加えて,制限を加えようという考え方などが出てきております。

最後の問題,これは時期的に言えば,過去の審議においてはしなかったことであります。TPPの法との関係で検討されることはありませんでした。しかし,ここで提出されているのは有償性,原作のまま,これらは既に議論したところでありまして,かつても議論しました。利益を害するかどうかということについては,織り込み済ではないでしょうか。そうすると,新たに現段階で提出された研究者からの歯止めといいますか,制限の要請は,過去の審議においても尽くされていたし,今回の委員会でも尽くされていると,思います。

確かにア~カの意見は,かつての違法ダウンロードの,特に刑事罰化の議論のときから考えますと緻密で固い主張であると思っております。しかしながら,過去において同様の議論がなされて,その上で映像と音楽については既に立法化がされていて,静止画・テキストにおいても,現実の顕著な被害があるということが前提になっています。これについては恐らく反論がないのだろうと思います。

であるならば,立法事実としては,音楽・映像と同一のレベルまで静止画・テキストを保護すべき状況はあると,考えております。これに反論するのであれば,小島委員が言われたように,音楽・映像とテキストは違うのだということを明確にしていただかなければならないと思いますが,果たしてそうでありましょうか。一般の国民が思考のためにダウンロードして,後日のためにコピーをとっておくことについて,立法事実を異にする状況はない,と思います。

でも,それは音楽・映像でも同じでしょう。殊さらテキストにおいて強い要請があるとすれば,研究目的じゃないでしょうか。研究者の方々は,研究のためだということが前提にあって,どうもそこに引きずられているように思いますが,そもそも研究それ自体は30条で自由にできることではございません。その点を御了解願いたいと思います。

【小島委員】よろしいですか。手短に申し上げます。松田先生の御指摘に対してなんですけれども,私は,意見書を書いたときには,自分の研究のことを念頭に置いているというよりは,むしろ私が一般的に何かを表現しようと思うのであれば,どういうふうな振る舞いをするだろうかというふうに考え,なおかつ,自分なりに社会を観察し,それを認識した結果として,私はやはり静止画・テキストについては,音楽・映像とは違う状況にあるのではないかと考えました。

私自身も文化政策を研究している者として,音楽・映像の方がより劣後するとか,そんなことは何も思っておりません。しかしながら,やはりユーザーの享受の態様が違うのであれば,その享受される著作物の特徴に,文化的な表現の特徴に応じてカスタマイズした立法をしていくということが必要なのではないかと,それだけでございます。

ですので,そういったことに配慮した立法を,民事,刑事両方でお願いしたいと,そういうことだけでございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。もう大分時間が過ぎてしまって,会場の都合上,そろそろ終わらなければいけないことになっています。皆様方からいろいろな御意見をいただきました。さらに審議をという御意見もありましたけれども,恐らく少なくとも今年度中に,もう一回,審議会を開くということは,実際上は無理であろうと思います。

今日で一応,報告書を取りまとめたいと思っております。先ほど議論のあった主観的要件に関する齟齬については,誤解を生じないように修正すべきですが,その部分の表現については,私に御一任していただきたいと思います。そしてとりわけ,刑事につきまして様々な議論がありましたが,制限を掛けるとして,どういう制限を掛けるかということに関しては,80ページの「現時点における具体的な対象範囲の在り方としては,刑事罰に関しても,録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことを有力な選択肢としつつ」という部分について,有力な選択肢という表現が適当ではないということであればこの部分を消して刑事については抑制的に考えなければいけないということが大前提としてあり,そのために制限が必要であって,その選択肢はいろいろあるということを明瞭にするという修正が考えられるのですが,それでどうでしょうか。

【前田(健)委員】私は,何度も申し上げているとおり,現状の記載では承認することができない。今,主査から御提案がありましたけれども,そういった細かい表現の修正に留まらず,報告書全体の発想,構成についての御意見が多数出たと認識しておりますので,その状況下で承認するのは難しいのではないでしょうか。

【茶園主査】では。

【水田著作権課長】先生方,ありがとうございます。本日配られております意見書も含めまして,先生方から本当にいろいろな意見を短時間の間に頂きまして,どうもありがとうございます。

前々から申し上げておりますように,海賊版対策については喫緊の課題ということで,速やかに取りまとめる必要があるというのも,事実でございますので,事務局からの提案といたしましては,主査預かりという形にしつつも,その中で今頂いた御意見を,例えば脚注の部分を本文に書く部分があるかもしれませんし,最大限に反映していただくようなことを,これから少し短い期間になるかもしれませんけれども調整していただいて,最終的には主査に預かっていただくという形にしていただけると大変ありがたいと思っております。

【茶園主査】生貝委員。

【生貝委員】全く別の観点から1つ。政策形成プロセスの正統性と,それに基づく法律の価値というものを重視する観点からは,特にここ1週間ほどで声明を出された日本マンガ学会から,そのプロセスの中で是非意見をお聞きいただきたいと思います。まさに当事者中の当事者であり,しかも非常に意見の言いづらいお立場にあるあの方々というのが,ああして意見を出していただいた。その意見を,聞いた上でなければ,私は報告書として,これは法律論,そのものではないかもしれませんが,正統なものになり得ないというふうに考えます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただ,これも緊急対策として必要ですので,今いただいた意見は十分に反映させて,これを修正していきたいと思っておりますし,何とか,先ほど言いましたけれども,いろいろな選択肢があるのだということを明確に示すということで,御理解いただけませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり。)

【茶園主査】よろしいでしょうか。では,どうもありがとうございました。

では,私の方で,責任を持ってまとめていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

では,続きまして,議題の3番目,その他といたしまして,昨年の通常国会において改正されました著作権法の施行に関しまして,事務局より御報告をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】済みません,一言だけでございますが,参考の2として,TPP整備法の施行通知,参考3として,今年1月の著作権法改正の施行通知をお配りしておりますので,御参考までにお目通しをいただければと思います。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では,他に特段ございませんでしたら,本日はこれぐらいにしたいと思います。大分延長して済みませんでした。

なお,本日は,今期最後の法制・基本問題小委員会ですので水田著作権課長から,一言御挨拶をお願いしたいと思います。

【水田著作権課長】今期の法制・基本問題小委員会におきまして,一言御礼を申し上げます。今期の小委員会におきましては,昨年度からの継続検討課題でございましたリーチサイトへの対応に加えまして,ダウンロード違法化の対象範囲の見直しですとか,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入などの政策課題につきましても,検討を進めていただいたところでございます。

特に,先ほど申し上げましたインターネット上の著作権侵害の対応につきましては,一刻も早く被害の拡大を防止するという必要がございまして,短期間に集中的,かつ充実した御議論をいただきましたことを厚く,改めて御礼申し上げます。

本日,議論にございましたけれども,インターネット上の著作権侵害の被害というのは,海賊版サイトに限ったものではございません。文化庁としましては,ユーザーの方々への影響にも十分に配慮して,実効性のある対策を迅速に講じていきたいと考えております。

今後は,本日の議論を受けて,これから小委員会の取りまとめをいただきますけれども,その後に,2月中旬の著作権分科会におきまして,最終的な取りまとめに向けた審議をいただきまして,その後,来週に始まる予定であります通常国会に著作権法改正を提出したいと考えているところでございます。引き続きの御指導をどうぞよろしくお願いいたします。

最後に,今期の小委員会における充実した審議のために,多大な御協力,御尽力いただきました委員の皆様方に重ねて感謝を申し上げまして,私の御挨拶とさせていただきます。誠にありがとうございました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

では,その他,事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【大野著作権課長補佐】本日はありがとうございました。課長からございましたとおり,著作権分科会の方は2月13日,10時より予定をされております。これから,また報告書の内容を修正させていただきまして,状況を報告し,また,まとまりましたら著作権分科会の方にも御報告をして,その議論も皆様方にフィードバックしながら作業を進めていきたいというふうに思っております。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第8回)を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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