(平成20年第6回)議事録

1 日時

平成20年8月1日(金) 10:00~12:00

2 場所

旧文部省庁舎 6階 第二講堂

3 出席者

(委員)
大渕,清水,末吉,茶園,道垣内,土肥,苗村,中山,前田,松田,森田,山本の各委員
(文化庁)
高塩文化庁次長,関文化庁長官官房審議官,山下著作権課長,ほか関係者
(ヒアリング出席者)
伊藤 愛子 (社団法人日本文藝家協会 著作権管理部 部長)
母袋 美穂 (社団法人日本文藝家協会 著作権管理部 課長)
瀬尾 太一 (有限責任中間法人日本写真著作権協会 常務理事)
梶原 均 (日本放送協会ライツ・アーカイブスセンター 著作権・契約担当部長)
池田 朋之 (社団法人日本民間放送連盟知的所有権対策委員会IPR専門部会 法制部会主査)
川内 友明 (社団法人日本新聞協会 著作権小委員会 委員長)
金原 優 (社団法人日本書籍出版協会 副理事長)

4 議事次第

  • 1 開会
  • 2 議事
    • (1)研究開発における情報利用円滑化について
    • (2)その他
  • 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1
資料2
資料3
資料4
資料5
資料6
参考資料1
参考資料2
参考資料3

6 議事内容

【中山主査】 それでは,時間でございますので,ただ今から文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第6回を開催いたします。
本日は,ご多忙中ご出席を賜りまして,ありがとうございます。
議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開にするには及ばないと考えられますので,既に傍聴者の方々にはご入場していただいているところでございますけれども,特にご異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】 ありがとうございます。
それでは,本日の議事は公開ということにいたしまして,傍聴者の方々にはそのまま傍聴をお願いいたします。
それでは,議事に入ります。
初めに,議事の段取りにつきましては,本日検討したい事項は研究開発における情報利用の円滑化の1点でございます。前回の小委員会に引きまして今回も関係者からのヒアリングを行いたいと思います。
まず,事務局から,配布資料の確認とご出席の関係者を紹介していただきたいと思います。

【黒沼著作権調査官】 それでは,先に本日お越しいただきましたヒアリング関係者の皆様をご紹介したいと思います。お手元の参考資料1に本日お越しいただいた方々の名前が記載してございますので,順次ご紹介させていただきます。
まず,社団法人日本文藝家協会からお二方お越しいただいております。著作権管理部の伊藤部長,母袋課長でございます。
引き続きまして,有限責任中間法人日本写真著作権協会から瀬尾常務理事でございます。
日本放送協会ライツ・アーカイブセンター,著作権・契約担当部長の梶原様でございます。
社団法人日本民間放送連盟知的所有権対策委員会IPR専門部会法制部会主査,池田様でございます。
社団法人日本新聞協会著作権小委員会委員長の川内様でございます。
最後に,社団法人日本書籍出版協会副理事長の金原様でございます。
引き続きまして,資料の確認をさせていただきたいと思います。本日の配布資料は今ご紹介いたしました6つの団体からそれぞれ1つずつ資料をいただいております。資料1~資料6まででございます。1枚ものが多いのでご注意いただければと思います。
参考資料は先ほどの参考資料1のほかに参考資料2,参考資料3,これは前回,前々回と同じ資料でございますけれども,再度お配りをいたしてございます。過不足等ございましたらお知らせいただければと思います。

【中山主査】 それでは,まず研究開発における情報利用の円滑化につきまして,各発表者からそれぞれ10分程度ご発表いただきまして,最後にまとめて質疑応答を行いたいと思います。
最初に研究開発における情報利用の円滑化につきまして,まず社団法人日本文藝家協会著作権管理部部長,伊藤様よりお願いいたします。

(1)研究開発における情報利用の円滑化について

【伊藤氏】 日本文藝家協会著作権管理部部長,伊藤愛子と申します。本日はよろしくお願いします。
このような場で発表するのは初めてのことでございまして,今大変緊張しております。お聞き苦しいこともございますと思いますが,どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本文藝家協会は昭和21年に初代会長菊池寛により文芸家の職能擁護団体として再発足いたしました。平成15年10月1日より著作権等管理事業法に基づいて文化庁に登録し,教育目的の使用から映画の原則使用まで幅広く著作権の管理業務を展開しております。本日は主として活字になりました著作物の二次的利用に関して,著作権管理業務の立場からお話をさせていただきます。
当協会の著作権管理部での現在の許諾状況についてお話しいたします。現在,企業が研究開発のために著作物を録音しデータを蓄積し複製する行為については許諾申請を受け,有償にて許諾をいたしております。これは具体的に申し上げますと,大量の本から大量の文章をナレーターが読み上げ,音声を録音して音声データベースを作成すること。それから,文章をテキスト化し,言語解析を行って言語情報データベースを作成すること。音声データベースと原稿情報データベースを分析し,音声合成システムを作成すること。これらの研究結果を使用した文章とともに学会に発表したり,音声として企業のデモンストレーションにつかうことについての許諾を企業が求めてきた場合につきましては,文藝家協会といたしましては現在,申請を受け付けて許諾を出しております。
次に独立行政法人国語国立研究所の「KOTONOHA」に関してでございます。これにつきましては,文藝家協会が文芸団体ということで日本語に関わっている著作者の団体でございますので,全面的にバックアップをしようということになりました。しかし,文藝家協会の著作権管理部の業務としてはせずに,関係5団体,日本児童文学者協会,日本児童文芸家協会,日本推理作家協会,日本ペンクラブと協議し,会員の皆様に著作物使用料なしでの協力を提案し,将来その使用について,国立国語研究所の場合はこれを有償にて公開するとことがこの時点で話されておりましたので,有償で公開し,収益が上がった場合にはそれぞれの協力した団体に一部謝礼をいただくということを協議で決定し,会員の皆様と他団体全員の方にご協力の旨のお手紙を発送することとなりました。
これに関しましては,重複しますけれども,ここの5団体の会員数,これは延べ数ですけれども約7,650名おりまして,これらの方々に全員にお送りし,その中でヒットした方にだけ後ほど図書カードの謝礼が払われるというふうになっております。
次に,今回の研究開発目的の権利制限についての件です。私たちは企業が製品開発のための著作物利用をする場合については,現在,最初に申し上げました音声のデータ蓄積などについて使用料をいただいておりますので,そういったことを現在やっているという観点で,今回のこういった動きの中で学術のための著作物利用と企業の製品開発のための著作物利用等について不分明な点がございますので,できるだけそこを明確にしていただきたいと思います。
また,企業の研究開発は当然製品化のための研究であるという観点から,私たちとしては著作物の使用にあたっては対価が必要であるというふうに考えております。
短い発言ですけれども,以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。引き続きまして,有限責任中間法人日本写真著作権協会常務理事,瀬尾様,よろしくお願いいたします。

【瀬尾氏】 日本写真著作権協会の瀬尾でございます。本日,ヒアリングの資料の中で「社団法人日本写真家協会」というふうに記名してございます。最初に,その関係について簡単にご説明させていただきたいと思います。
まず,写真家協会は写真著作権協会の正会員メンバーであり,中心的役割を担っております。写真著作権協会は正会員団体によって運営されております。10団体の写真家団体が正会員でございます。その中に幾つかの社団がございまして,その中で今中心的な活動を行っているのが写真家協会なのですが,今回,写真業界全般を代表した形でのコメントということになりますので,私がやらせていただくという形で出てまいりました。
では,お手元の資料に沿ってお話しさせていただきたいと思います。まず,最初にインターネットにおける写真の現状はどうなっているのかということをまず簡単にご説明申し上げたいと思います。まず,現在は写真の分野においてはデジタル化が急速に進行しております。これは技術的な進歩によることも大きくありますけれども,実は銀塩というのは環境問題的に大変処理がわずらわしいプロセスであるということも非常に大きな原因の1つでございます。
またもう一つ,技術的なお話になりますけれども,写真の現像というのはある一定量がないと現像液が安定しないために一定量を割ると激減してしまうという特徴があります。つまりある一定量を常にフィルムを現像していないと,液が弱ってしまって安定した現像ができないために一定量減るとガクンガクンと台を1台1台止めてしまうために銀塩が減ってしまう。そのためにデジタル化が進行するという事情もございます。これは技術的なことでございますが,そういうことで単純な直線で下がっていくのではなくて,ギュンと下がっていってしまうことがある。そういうふうな技術的な理由もございます。
またもう一つは,デジタル化の中で携帯電話に搭載されているカメラの性能の向上というのがデジタル化に拍車をかけております。写真にはプロ用,アマチュア用がございますけれども,アマチュア用のフィルムの使用というのが生産に対して非常に大きな比重を占めておりましたが,現在,先ほどのような携帯電話のカメラが急速に普及することによって,アマチュアの使用料が激減しております。そのために現像も先ほど申し上げたように減ってきている。つまり技術的,環境的なものも含めまして急激にデジタル化が進行しているということが言えると思います。
そのような環境の中でデジタル化によっていろいろなことが起きているのですけれども,やはり一番大きいのはインターネットによる簡単な送信,受信,またはもしくは公表,これが大変容易になってきたということかと思われます。
また,昨今のブログと呼ばれるいわゆる日記形式の表現形式が大変はやっておりますけれども,そこにおいても写真を拡大して見られたり,簡単に載せられる。例えば一般の方が携帯で撮って,それをそのまま自分の文章とともに載せるというのが非常に簡単にできるようになってきたために,インターネットでの写真の使用というのはかなり大きく進んできている。
また,そのような写真の利用の特徴として考えられるのは,写真が鑑賞用であった,趣味のものであったというところから情報として扱われるようになってきたというところかと思います。つまり写真によって言葉では表しきれない,もしくは表すのが非常に大変である,そういうものを一般の方が写真に撮って表現していく。いわば1つの記号的な扱いである写真というものも大変増えてきていると思われます。
また,その場合にもデジタルというのは今までの銀塩と違いまして完全な失敗というものが起こりにくい状況にあります。つまり一般の方でも難しい状況,例えば夜間,例えば反射があるもの,例えば逆光,そういった困難な状況でも比較的容易にきれいに撮れてしまう。そういう特徴がございますので,今のような一般の方の進行が非常に進んできているのだと思います。
以上,申し上げましたのが現状ですが,写真というのは総じて申し上げますと,その基本的な意味合い,もしくは利用方法が大きく変化している時期にあるということが言えると思います。
ちょっと長くなりましたが,写真はそういう現状に基づいて新しい体制,新しい仕組み,または新しい組織の役割を模索している状況にあることを最初に特殊事情としてご理解いただきたいと思います。ほかの分野に比べて変化の度合いというのは大変大きい分野ではないかと思われます。
話は変わりますが,インターネットでの研究ということで,今回の研究開発目的ということですが,今回のお話をインターネットでの研究ということに絞って考えさせていただきました。研究と一般に言いますと,例えば文献複写など全て含めてしまう。ここまで含めて意見を申し上げるのはやはり難しいことでございますので,インターネットについての研究ということで前回の法制問題小委員会でのご発表等々を勘案いたしまして絞らせていただきました。
実際にそのようにインターネットと切っても切れない関係にある写真でございますけれども,社会においてインターネットの技術的なことはよく語られますし,新しいメディアの発表もございますが,社会学的な分析,例えばどのように発達をしているのか,またはどのようなリアルとの関係を持つのか,そのような部分に関しての研究,もしくは発表,そういうものが進んでいくのは大変好ましいことではないかと思いますし,写真分野としても大変興味を持つところでございます。
写真というのは例えば犯罪の証拠等,いろいろなところで使われて急速に広がってしまう。止めようがなかったり,社会的な影響がたくさんございますので,リアルとインターネットのつながりに対しての研究というのはこれから大変好ましいことではないかなと考えられます。
ただ,今回の研究開発目的の著作物利用,またはそういうことに対する様々な権利制限に関しての意見聴取ということでございましたので,それについて述べさせていただきます。
最初に,今回,研究というふうに絞られているわけですが,先ほど申し上げたようにインターネットの研究と勝手にこちらで絞らせていただきましたが,研究というのは果たしてどういうことを指すのか。例えば学校に籍を置く先生が何らかの公的なプロジェクトをやることのみが研究なのか。それとも,そうではないのか。
例えば個人の方が志を立てられて研究をされる。いろいろな研究があって,その範囲というものが今回,ちょっと理解し難い部分がございました。そして,もしこれが研究一般,全般を指すのであれば,かなりの範囲の行為を研究と呼ぶことができると思います。そうなると,その研究目的自体を狭めることなしに権利制限規定を設けるということは非常に難しいでしょうし,これはたとえて言うならばザルになってしまうのではないかという懸念を持っております。まず,その研究とはどういう範囲であるかを明確にしていただかないと,権利制限の諾否その他は考えられないということが1つございます。
次に,関連いたしますけれども目的と主体,例えば企業が製品開発をする過程についても研究と呼べるわけです。そうなると,全ての製品の研究開発,もしくはサービスの研究開発全てを研究と呼ぶのか。または,その目的が営利であるのか,非営利であるのか,または公的なものなのか,何かそこら辺の部分に関しても非常に曖昧な気がいたします。つまり誰がどのような目的でどのようなことをするのが研究であるのかということがある程度でもご提示いただかないと,少なくとも著作権との関連に関してコメントすることはかなり難しいと思われます。
従いまして,今後の議論,内容のより詳しい提示等を待って,その権利制限の可否等についてはこちらの方で考えさせていただくという状況にあるということでございます。
最後に,写真分野独自の何か想定されるシチュエーションがあるのかについて申し上げます。例えば今回,リバースエンジニアリング等,いろいろな話が出ておりますけれども,写真分野に特定されたような,例えば,写真のみをクローリングし,蓄積し,画像検索を行うとか,何か直接的に写真もしくは画像が関連する事案,例がございましたら,そういうふうなものを具体的にご提示いただいて,それについて検討していかないと難しいと思われます。
ここで「写真」「画像」と書いてございますが,実は写真のみならず美術,例えばグラフィックデザインなど,一般の画像も全てインターネットに載せてしまった場合は,その区別というのは大変難しくてなってくる傾向があります。つまり写真を加工する。例えば自分で書く。その差というのが大変難しくなってきている。従いまして,今回は画像という言葉でまとめさせていただきましたが,画像に関連する事案に関してはご提示いただければ検討させていただきたいと思います。
全体的に申し上げまして,写真の現状説明が大半を占めてしまいましたが,今回,ヒアリングの目的である研究開発目的に関しましてはより細かなご提示,より細かな定義等をいただいた上でその内容について検討したい。現時点ではそういうふうな形しか申し上げられない状況でございます。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。続きまして,日本放送協会ライツ・アーカイブセンター,著作権・契約担当部長の梶原様,よろしくお願いいたします。

【梶原氏】 NHKの梶原でございます。よろしくお願いいたします。お手元の資料に沿ってご説明をしたいと思います。
前回のヒアリングにおいて,NHKの文化研究所,技術研究所,それぞれ発言をしたわけですけれども,それを受けて今回,権利者の立場としてNHKが意見を述べるということで,若干意見の相違等がございますけれども,その辺は立場の違いということでご容赦いただければと思います。
まず,最初の1.の現状についてでございます。研究目的での放送番組の提供については提供してほしいというご依頼は多々ございます。最近の例を幾つか挙げておりますが,大学に対して映像を使った教育効果の研究を行うために番組を提供しております。これはNHKと大学との共同研究ということで行いました。あるいは,ヨーロッパ放送連合の技術部会に対して映像認識技術の研究のために放送番組を提供したということもございます。あるいは総務省のハイビジョン映像のIP伝送実験で使用するために提供したということがございます。
提供する番組については権利処理をした上で提供するということになりますが,そういったことからするとなるべく権利処理が容易なものが中心にならざるを得ないというのはあると思います。そういった意味でニュースとか自然ものとか,そういった番組が中心になっているかと思います。
次のところですけれども,主な権利者団体,JASRACさんとかレコード協会さん等々との契約においてはNHKによる学術研究目的での利用は認められております。そういったことでNHKの文研,技研が研究所の中で放送番組を複製をして様々な技術開発を行うといったようなことは可能だということになっておりますし,その団体に所属されていない方々の多くにつきましても契約書等においてNHKが行う調査研究においては使えるように了解をとっているというのが現状でございます。
次に今後の検討に際してということでございますけれども,技術や文化の発展のためにはどのようにすれば権利者の権利を不当に害さずに円滑な利用が可能になるかということで,そのような視点で前向きに検討すべきではないかと考えております。
そのような視点で考えますと,技術開発において著作物そのものの利用でない場合,そういった場合には権利者の権利を不当に害するということも少ないと思われますので,こういったケースについてはかなり前向きに何らかの形で著作物が使えるといったようなことはあってもいいのかなと思います。
一方,マスメディアとかジャーナリズムの研究などを自由にできるということも,これは文化の発展のためには必要だと考えるわけですが,この場合は研究対象が著作物そのものということでございますから,大量にサーバーに複製されたりとか,あるいはデータベース化されたりといったようなことも考えられるわけで,結果的にそういった場合に権利者の権利を,あるいは利益を害うといったようなケースも想定されるのではないかと思います。
よって研究開発目的なら自由に著作物を利用できるとするような権利制限を作る場合には,瀬尾さんもおっしゃっていましたが,研究の主体とか利用の範囲などについては一定の制限を加えるような措置というのはやはり必要だというふうに思っております。
以上,簡単ですけれどもNHKとしてのご報告でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。引き続きまして,社団法人日本民間放送連盟知的所有権対策委員会IPR専門部会法制部会主査の池田様からお願いいたします。

【池田氏】 民放連の池田でございます。ただ今,NHKさんからご報告がございましたことと異なりまして,民間放送事業者におきましてはこの研究開発というものを理由といたしました放送番組の提供要請というものはさほどないというふうに伺っております。確かに科学技術の研究,例えば映像解析とか音声解析,そのような理由で放送事業者に対して研究協力ということの要請は稀にあるようでございます。ただ,そのような提供要請がございましたとしましても放送番組を複製して提供するということはなかなかに困難でございます。
その理由といたしましては,まず番組関係者が非常に多岐にわたるということが挙げられます。放送事業者のみで番組を作っているわけではございませんので,その番組に関与されている方々,権利者の方々,出演されている方々のいちいちの許諾というものが放送番組を作った後ではなかなか得られにくいということがございます。著作権,それから一般人の方の肖像権,プライバシー等の配慮というものも必要になってまいりますので,放送外利用ということにつきましてはなかなかハードルが高いというふうに考えております。
NHKさんのように民放連が各権利者団体の方々と協定を結んでおりまして,その中には非営利の教育機関ですとか,非営利の研究機関ヘの提供ということが一部認められていることもございますが,必ずしもそれが全ての団体さんとの協定において非営利の研究機関への提供が認められているかというと,必ずしもそうではないということがございます。教育機関の方は35条があるということもございまして,ほとんどの権利者団体の方々は非営利の教育機関への提供は認めていただいておりますが,研究機関についてはその中のごく一部というふうな現状でございます。
それから,個々に研究開発のために素材を提供していただきたいというご要請をいただいたとしても,実際には我々の倉庫から素材を出して,それを複製してお渡しするということは実は手間とコストが非常にかかるということがございますので,これもお渡しするのが困難な理由の1つになっています。
それから,研究開発と言われましても,それが営利なのか非営利なのか,目的は著作物そのものを利用するのか,それとも中身は何でもいいのか。映像が何かしら映ってあればいいという映像解析,音声解析をするのか。様々な目的がございますので,それぞれに対する提供の可否について,その範囲について各放送事業者が出してよいと判断する範囲は今のところ明確になっていないのではないかと考えております。
それから,今回のご質問でございます権利制限につきましてですが,一般的に科学技術の研究開発目的とはいえ,権利者の権利を一定程度制限することについては,一般的に慎重な態度で臨むべきであると考えております。
また,仮に研究開発目的において著作権の権利制限を行うのであるとしても,その対象となる研究開発の範囲,それから著作物の複製の範囲,翻案の程度などの基準を厳密に定めるべきであり,著作物の利用と保護のバランスを常にとりながら運用されなければならないと考えております。また,今回はネット等を活用してというお話でございますが,放送番組,特にテレビ番組をインターネット上で我々が配信するという場合には,主にニュース映像,それからプロモーション目的の場合を除きまして,基本的にはDRM,技術的保護手段をかけているということがございますので,インターネット上において無料で収集し得るテレビ番組のその多く,現状流通しているテレビ番組の多くのは動画投稿サイト等において違法にアップロードされているものが多いというふうに推定されます。
このような違法流通物は,我々コンテンツホルダー,それから権利者の方々の意図に反して配信されているというものでございますので,たとえ研究開発という目的であったしても,そのような違法にアップロードされたものを権利者の権利を制限してまで収集することを認めるということにつきましては,なかなか難しいのではないかと考えております。
それから,放送事業というものはやはり科学技術の発展の下に,その果実を受け取って行っている産業でございますので,研究開発というものは放送事業にとっても非常に重要なものであることは理解しております。従いまして,放送事業者としてはその研究開発には積極的には協力していきたい,そのように考える放送事業者ももちろんいると思いますが,その場合におきましても著作物を収集利用するのであれば,その主体となる研究開発機関というものについて明確な定義づけをして,その対象を厳密に限定しなければ,研究開発という名目による抜け道ができてしまい,研究開発であるから何でも利用していいでしょうというふうになってしまいます。例えば個人の方々がこれは研究開発ですからということで,我々の放送番組を勝手に複製して,勝手に利用する。その範囲というものが研究開発という言葉で使われてしまうことにつきましては,非常に大きな懸念を持っております。従いまして,そこの部分については厳密な定義づけが必要ではないかと考えております。
私の方からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【中山主査】 ありがとうございました。引き続きまして,社団法人日本新聞協会著作権小委員会委員長,川内様よろしくお願いいたします。

【川内氏】 川内です。よろしくお願いいたします。お手元の資料5「新聞各社の主な意見(メモ)」と書いてありますが,まずこれについてご説明しますと,新聞協会で意見を発表するためにはいろいろな手続きがございまして,今回はそういう時間がなかったということで,この資料はあくまでも新聞協会加盟各社の一部の考え方,意見を募っただけであり,それを要約したものであることをご認識いただいて,この資料についてはメモ扱いであって,非公開あるいは非公式なメモという形にしていただきたいと考えております。
それでは,総論からお話しさせていただきます。IT技術の普及,汎用化などによって現行の著作権法が対応しきれていないという側面があることは理解できます。特にインターネットの世界では情報の流通という概念が現行の著作権法が想定しなかった形になっているのではないかということで,その点に関しては危惧を抱いております。ただ,その一方で新聞社,通信社が長年にわたって蓄積してきた過去の記事のデータベース,それから現在ウェブで時々刻々と提供し続けている記事というのは膨大な人材,コストを投じて作り上げてきている貴重な知的財産あるいは報道資産と言うことができると思いますが,これを理解していただきたいということが1点。
それから,既にこういったデータベースやウェブで流しているニュースを活用して報道事業を行っている新聞社もかなりの数ございます。この中には研究開発目的のために報道資産を販売している社も多いということです。従いまして,独立行政法人国立国語研究所や,それ以外の民間企業に研究開発目的のために過去の記事のデータベースをご購入いただいたり,現在,ウェブで流れているニュースをスクロールして集めてくる,そういう権利を買っていただいているという現状があるということをご認識していただきたいと考えております。
では,どういう報道事業で出しているかといいますと,大体次のところに書いてありますけれども,膨大な言語データを必要とするコーパス辞典等の作成,文法研究,日米翻訳ソフトの作成,言語構成の分析,検索エンジンのキーワード抽出などの研究目的ということになっております。
提出した資料の2番目,3番目の項目については,ご存じの方も多い思うので割愛させていただきますけれども,何を言わんとしているかというと,有償無償を問わず許諾ベースで使用していただいているということでございます。
続いて各社の主な意見についてご説明申し上げます。主な意見については,これはいろいろな立場がありますので,主要なところだけ挙げさせていただきました。最初に「研究開発に相当程度萎縮効果」という記述について異論を挟んでいる社もございます。これは知的財産制度専門調査会の検討経過報告で,「相当程度の萎縮効果が働いている」という文言が入っていましたけれども,実際の公的研究機関や産業界における研究開発活動に「相当程度」というのは一体何を指すのか不明瞭であり,単なる印象論ではないのかという疑念が出されておりました。
それから,2つ目です。研究開発,これは今までも瀬尾さん,NHKさんもいろいろ言われてきましたが,研究開発の定義を限定して,かつ明確にしてほしいということです。それと同時にウェブ上で氾濫している記事,写真の無断転載,無許諾利用などの取締まりと罰則強化を同時にしてほしい。つまり自由化をするならば権利の強化も同時並行で行っていただきたいということでございます。
研究開発というのは,これも文藝家協会さん,写真家協会さんが仰られたことでございますけれども,本当に純粋なアカデミックな性質ものと,それから産学協同体みたいなもの,それから民間企業がやっている研究開発もあると思います。アカデミックな目的で利用されるものというふうにお考えになっているかもしれませんが,それが結局,基礎の研究開発になって,最終的なゴールは何らかの形で営利事業に結び付くものが最近は非常に増えてまいりました。従いまして,これは全く営利事業とは無関係の形で執り行われる研究開発ということが実際問題として言えるのかという疑念があります。
これまで,いろいろなところから言われましたが,研究開発の名を借りたただ乗りにならないようにしていただきたいというのがございます。それで,これは,今後(研究開発の)ガイドラインであるとか,いろいろな問題が出てくるのだろうと思うのですが,その辺りも全てお含みおきの上で今回の提案があったというふうに私どもは考えておりますので,その辺りの処置を万全にしていただきたい。
それから,3番目です。先ほども申し上げましたけれども,研究開発目的で膨大な記事のデータのセット,これをバルク販売と呼んでおりますが,そういうものやウェブでの記事の収集を許諾ベースでやっており,契約書も交わしているという,現在のこの報道事業と整合性が保てるような形にしていただきたい。つまり今後は研究開発目的だからこれは全部無償で使えますよね,だから,いろいろなウェブ上にある記事データも無償で収集できますよねという話になると,実際に外資系のところでは新聞社と契約を結んでニュースを収集する代わりに年間幾ら払いますという報道事業が成立していますから,そことの整合性を保っていただきたいということであります。
4番目の日本版「フェア・ユース」の導入には慎重に対応してほしいというのは,先ほど申し上げましたけれどもガイドライン,これをどういうふうにさせるかということがポイントになってくるのだろうと思うので,ここまでにしておきます。
5番目です。報道事業の縮小をもたらす可能性があるというのは先ほど申し上げましたけれども,報道事業を弱らせるような権利制限がはたして公益になるのかという問題はあると思います。特に現行の著作権法はウェブ上での著作権法違反に無力とは言いませんが,不法行為であるとか著作権法違反を摘発したり,あるいは裁判で訴えるには非常に面倒な法律構造になっております。特に報道事業に関しては,ニュースの鮮度が高いうちに継続してブログだとか,そういうところで使われていますが,そういったことが今後さらに研究開発という言葉が一人歩きして,先ほど瀬尾さんから言われましたが,一人で研究開発をやっているのだと主張されたときに,それなら集めていいという話になってくると,これが助長されると更に新聞社としての報道事業は困ったことになる。従いまして,先ほど申し上げましたけれども現在行われている報道事業と整合性があるものにしていただきたいということと,自由化と権利の強化は同時に行ってほしいということでございます。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。最後に社団法人日本書籍出版協会副理事長の金原様,よろしくお願いいたします。

【金原氏】 書籍協会の金原でございます。よろしくお願いいたします。
お手元に資料として既に配布をしていただいておりますが,今回の法制問題小委員会の検討事項として,研究開発における情報利用の円滑化ということで,非常に幅の広いテーマであると私どもは理解いたしております。
先週の法制問題小委員会のヒアリングで大分その目的ははっきりしてきたという気はいたしますけれども,これも本日ここで発言された皆様も多くの方がおっしゃっているとおり,研究開発というものは一体どういうものであるのかということについては非常に懸念しております。その上でまず原則を申し上げなければいけないと思います。
数字を打っておりませんが,最初のところで研究開発のために著作物の内容が利用される場合は許諾対象とすべきというふうに考えるということがまず大前提としてあると思います。私どもが出版業界として発行している著作物,とりわけ学術的内容を有する著作物というのは学術研究あるいは研究開発の場で読まれる出版物であるわけですから,こういった出版物が研究開発の場面で利用されること,つまり学術的な研究及びその帰結として新たなシステムや製品の開発のために使用されることを目的としているわけですから,そのような目的のために使われる場合には権利制限の対象とすることは適当ではない,そのような利用は著作物の通常の利用を妨げるということになると私どもは考えております。
ネット上において無料で公開されているものも中にはもちろんあるわけですが,それは私ども出版界,出版業界として公開しているものももちろんあるわけですが,そのようなものについては必ずしもこれにこだわるということでもないと思います。それはそのときそのときの状況によりけりであろうと思いますが,有料のサイトであるとか,あるいは有料で販売されている出版物を複製して研究開発に使うということであっても,研究者に有償で購入してもらうことを前提として発行されている出版物については,当然のことにおいて対価を支払って利用していただくべきだろうと考えております。これはとりわけ文献複写の世界では非常に重要なことであると考えております。
2番目の問題ですが,先週の法制問題小委員会でのヒアリングの中で研究開発において著作物を素材として使う,特にネット上で公開されているものについて素材として利用したいというご要望がありました。そのようなものついては必ずしもその上にあります原則が適用されるということでもないのかと考えております。つまり著作物そのものを享受するのではなくて,研究開発の過程において適法に入手された著作物が素材あるいはサンプルとして利用されるということについては,権利制限の対象とするということにあえて反対するというものではないのではないかと考えます。
ただし,素材として使用されたものが研究開発の成果として公表されるものに明示的に含まれる,つまり枠だけではなくて中味も同時に公開されるということになる場合については,やはり公表に当たっては著作権者の許諾の対象にすべきではないだろうかというふうに考えます。
素材として利用するという場合であっても,例えばそれが出版物のように有料で販売されているものについては,その利用する量の大小にもよるのでしょうが,まずやはり有料で購入していただいて,それを複製あるいはアーカイブ化して利用していただくということが必要なのではないかと思います。
研究開発という言葉の問題ですけれども,これも様々な方が今日おっしゃっていますけれども,様々なものがありまして営利企業が製品開発のために行うのも立派な研究開発ですし,また公的機関が非営利として研究するのも研究開発ということですが,その辺の明確化,限定化というのは当然においてしていただくことがないと,単に研究開発といわれてもこれについていいですとも悪いですともなかなか言いにくいという立場であります。
先週の発言要旨も先刻,文化庁の方でまとめていただいたものを送っていただきました。そこにもビジネスにつながるようにしたいというふうに,ビジネスという言葉が入ってきております。産学協同もありますし,公的な機関における研究もいずれどこかの時点で商用化されることにつながる可能性も非常に大きいわけですから,そのようなことまで含めて権利制限とするということについては,非常に大きな疑問が残ります。
そのような問題を権利制限の対象とするということも可能性はあると思いますが,やはり複製,あるいはアーカイブ化というものは慎重に行っていただきたいというのが私の出版界としては申し上げたいと思います。
情報を組織の内外で共有するという状況が起こり得るわけですから,仮に権利制限するとしても,そういった情報が目的以外に使われないようにするということの管理責任は利用者のところにあるということを明確にしていただきたい。
3番目の問題ですが,話していることはほとんど同じようなことですが,出版活動と競合する恐れがある場合については,当然において著作権者の利益を不当に害する場合になる可能性が非常に高いわけですから,これについては慎重に対応していただきたいと思います。
著作物が研究開発の成果に含まれていない場合であっても,その成果物が出版社の活動と競合するような場合,影響を与えるような場合については権利制限をするべきでないかというふうに考えます。特に今,研究開発されているものが一体どういうものであるのかということについては,私ども権利者としてはなかなか計り知れないところがあるわけで,また予測することも困難ですので,仮にこのような問題を権利制限する場合においてもただし書きが必要であろうと思います。
どのような利用の仕方,成果物の公表方法をとるのかということは百パーセント利用者の判断に委ねられるということですから,結果的に権利者の利益を損なうということについては権利制限の対象にすべきではない。また,そのような判断は利用者にあるわけで,それが権利者の利益を不当に害した場合についての責任体制も明確にしていただきたいと考えております。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。それでは,ただ今の6団体の発表につきまして質問等がございましたらご自由にお願いします。 松田委員。

【松田委員】 文藝家協会の伊藤さんのお話を聞きました。国語研究所との間の取り決めがあるように聞いていますが,資料(2)で私どもがちょうだいしていますところのものを読みますと,コーパスに利用されたときにはとりあえず500円の図書カードが著者に送られるでしょう。そして,有償オンラインでこの間は1年間無償とするけれども,その後,将来,収益事業を行うことになった場合については団体間といいますか,これは文藝家協会さんを含む5団体がその配分を受ける,こういうことになっていますよというのを著作者の先生方にご案内を申し上げている資料なのですね,これは。

【伊藤氏】 はい,そうです。

【松田委員】 5団体と国語研究所との間でも同じ趣旨のことが合意されているのでしょうか。

【伊藤氏】 はい,そうです。これは実際に国立国語研究所から各著者の方へ発送していただいております。

【松田委員】 そうですか。はい,分かりました。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。 土肥委員。

【土肥委員】 金原さんにお尋ねしたいのですが,資料6で真ん中のところで素材サンプルとして利用される場合の権利制限には反対しないというふうに書いていただいていると思いますが,これはアーカイブやデータベースにしないで利用するという趣旨でしょうか。それと,「一方,著作物そのものの享受を目的とするのではなく」という文章の後に素材サンプルとして利用されることについては反対しないというふうに書いていただいていますが,享受だと反対するということになるのですか。

【金原氏】 このように申し上げた趣旨は,出版物というのはそこに含まれているものが文芸作品の場合もありますし,学術専門的な文献の場合もあるわけですが,そういうものを研究開発する上で例えばプログラムであるとか,あるいはそれを処理するシステムであるとか,そのようなものを作るときに当然のことにおいて何らかのデータを流し込んで研究開発に向けて役立てるということをしないと,そのシステム全体,新しいものを作るということはできないだろうと思われるわけですが,それをコンピュータ上で取り込んで,つまり複製して,あるいはアーカイブ化して,結果的にそれが外へ出るということではなくて,研究開発の材料として使うということについては反対しないという意味でありまして,したがって研究開発される方が中に取り込む,複製する,アーカイブするということについても反対はしない,そういう意味でございます。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。 清水委員。

【清水委員】 新聞協会の方にお伺いしたいのですが,既に行っておられるデータの提供サービスとの整合性というのは分かるのですが,2ページの最後の報道事業そのものの縮小をもたらす可能性がある法改正というのは,どういうものを想定されていらっしゃるのでしょうか。

【川内氏】 既に行われているデータベースの販売といいますか,その報道事業について言えば,今回たまたま出てきておりますが国立国語研究所から新聞紙面のデータを使用したいという申出がございました。それで,たまたま私が窓口になって各社を集めまして,統一契約書を作らせていただいて,ウェブ上で流すときには無償でもいいですけれども,それなりにちょっと色を付けられた場合は有償にしてくださいという形で各社と統一契約書を結んで,新聞社との間で契約を結ばせていただきました。
ですから,書き言葉コーパスがそれなりにいろいろな形で販売される形になると,そのときに新聞社の方には幾ばくかのお金が下りていくということになります。
ここで言っているのは,そういう報道事業というのはそれほど大きな金額ではないのですけれども,それなりに報道機関を支える収入になっているということであります。ですから,学術研究とか研究開発のために無償で集められるという話になれば,当然国語研究所の方々も私どもの方にそういう話を持ってこられずに契約書も締結せずに,しかも,それがビジネスになった暁に各社にお金が入ってこない形で進められるということになると思います。そういうことが続くと,これは新聞社のいろいろなデータベースのやり方には各種種類がありますけれども,そういうものに影響を及ぼすのではないかということについて懸念している社が何社かあるというふうにお考えください。

【清水委員】 俗な言い方で恐縮ですが,新聞社にお金が入らなくなるという形で報道事業へ影響がある,そういうことでお書きになっているわけですね。

【川内氏】 そうですね。誠に俗な言い方ですが,そのとおりで,(報道事業へ影響がある)のは確かだと思います。既に報道事業として成り立っている部分があって,これは情報通信機構だとか,今のところはデータベースをお買い上げになっていますし,いろいろな大学だとか研究所がお買い上げになっています。それ以外でも外資系企業とか,IT事業だとか,いろいろなところがデータを買ってくれているのです。そういう事業として,向こうも研究開発ということでこちらもそれを使用許諾ベースで契約書を結んで幾ばくかのお金が入ってくるという実情があるということです。この実情に対して何らかの影響が出るような法改正は嫌だという社がけっこうあるということです。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。 苗村委員。

【苗村委員】 今の質問と関連して,同じく新聞協会の川内さんにお聞きしたいのですが,報道事業に影響があるという表現をとられたことについて,これは単純に言えば報道機関,新聞社等が本来縮刷版であれ,あるいはネット上の販売であれ,パッケージ販売であれ,収入を得られるような使い方について無償で自由に利用するようになるのは困るという意味だというふうに私は理解しました。あえて,それと違う見方でこの言葉の解釈をする見方を申し上げるのですが,実は前回のときにヒアリングで実際にお話をされた中でインターネット上において無料でアクセスできる情報を集めておいて,それをいろいろ分析して,例えばあることに関する報道量がどう変化したとか,これは必ずしも新聞だけではなくて,ブログを含めたウェブ上のいろいろなコンテンツを分析することによってある事柄が経年的にどう拡大してきたとか,変化してきたということを研究するという例を示されたわけです。これは営利か非営利かは別として,そういう使い方は十分あると思いますが,そのときに特に新聞記事の場合は報道された直後はそれが無料でアクセスできるけれども,ある期間が経った後はその新聞社の営業方針に基づいて有料化する。契約がなければアクセスできないことになる。しかしながら研究機関の方は既に一度コピーをしてあるので利用するというお話があったわけです。そういうような利用をすることについても,早い話が有料であればよろしいが,無料で利用するのは不都合だというのが今,私が確認した意味の理解なのですが,これとは別に,例えば新聞もいろいろな理由で誤報ということがあり得るわけです。例のサリン事件の場合のように犯人でない者を犯人のように扱って報道してしまった。そういうことについて既にデータ記事を一度コンピュータ上に蓄積していたものが,それを分析して,新聞における誤報の影響について分析をするといったようなことは単に金銭的な問題ではなくて,むしろ報道機関に関する信頼性を疑われる可能性がある。極端に言えば縮刷版でもそこは真っ白にして出版したい,そういうものを蓄えておいて分析をして,いかに誤報が多いかということを研究発表する,これは別の意味で報道事業に悪影響を与える恐れもあるわけですが,そういった議論は全くなくて,あくまでも金銭の問題であると理解してよろしいのでしょうか。

【川内氏】 今回の資料の中に付言しておきましたけれども,例えば松本サリン事件とか,記事検索に関して言えば個人情報とかプライバシー保護とか,そういうところに非常に気を配っておりまして,実を言いますと松本サリン事件はおそらく,少なくとも外向きのものからは全てのデータベースから削除されていると思います。これは当事者とのお約束で紙媒体のものについては仕方がないが,それ以外のものは出してもらっては困るというご要望がありまして,こちらも誤報したこともあり,当事者のご意見に従っております。
それから,例の日航機の雄鷹山墜落のときに若い娘さんが救出されましたけれども,あの写真も,最近は見られたことはないと思いますが,この女性があの写真を見ると非常につらい思いをするので,あの写真は出さないでいただきたいと希望をされて,これも外販のデータベースからは削除されていて,通常の人はアクセスできないようになっております。
だから,例えば今言われましたように誤報を集めるという話になりますと,またそれはそれで嫌がる社もあるでしょうし,OKだという社もいろいろあると思うのですが,それを外販のデータベースから引っ込めている理由も,やはり新聞社だけの都合ではなくて,誤報を受けた人たちの人権とかそういう問題もあります。今言われたのは,仮の例え話だと私は思っておりますが,そういう人権問題もございますということを指摘させていただきたいと思います。

【中山主査】 ほかにございますか。 茶園委員。

【茶園委員】 できれば全ての団体の方にお伺いしたいのですが,日本書籍出版協会の方が素材として利用する分にはあえて反対しないとおっしゃっていましたが,今まで各団体のご意見を聞いていますと,研究開発というのはなかなか範囲がよく分からないというところですが,その点は置いておいたとして,研究開発という目的で著作物を利用するという場合を,外には一切出さずに,利用が終われば廃棄するという場合と,集めたものをデータベース,アーカイブスで利用し,場合によっては外部にも利用させるという場合の二つのものに分けるとしますと,最初の方の,大学内なり企業内でデータとして技術がうまく機能するかどうかを確認するためだけに使うという場合についてはどのようにお考えなのかをお尋ねしたいと思います。民放連の方は,それに関して契約等を行っているので整合性を保ちたいということであったと思いますが,ほかの団体の方はどのようにお考えなのかをお伺いしたいと思います。

【中山主査】 それでは,伊藤さんからお願いいたします。

【伊藤氏】 実際のところ,画像でのお申込は今まで1件もないのですね。文芸の場合,今日,日本文藝家協会以外にシナリオ作家協会と日本脚本家連盟というのがあるのですが,そういう方たちと合同の場では画像ということが出てくるのですが,本日は文藝家協会だけ単体で来ておりまして,映像だけで文藝家協会が全部権利を持っているものがまずないということなのです。例えば文藝家協会の場合は著作物に表して,一度公表された,主として活字となったものが二次的に利用される場合のことだったので,今画像と言われますと協会というところからは意見を述べにくいところがあるのですけれども。

【中山主査】 画像以外でも一般的に素材やあるいはサンプルとして利用する場合はどうかということですが,例えばよく古典的な例ですが,シェークスピアの全小説の中にどういう単語がどのぐらい使われているかということを手作業で何年もかけてやれば,著作権法上は全く問題ないけれども,コンピュータに入れて解析したら,複製行為が介在しますが,それを違法としてもよいのですか,という問題です。

【伊藤氏】 文藝家協会の場合は先ほど申し上げましたように,文芸家自体が書き手であり,また享受する側でもありますので,そういったことについては,理事会で相当理解が得られれば個別に許諾を無償で出すこともあると思います。

【中山主査】 個別に許諾すれば問題はないのですけれども,権利制限規定として置いた場合はどうかという質問です。

【伊藤氏】 大変申し訳ないのですが,理事会の決議がないとそういったことについて私が単独でここでお返事することができないので,お役に立たずに申し訳ございません。

【中山主査】 瀬尾さん,どうでしょうか。

【瀬尾氏】 画像という言葉が今出てきましたのであれなのですが,今回,率直に申し上げますとキャッシュなど内部的に使う話なのか,それとも外に出る話なのかがまず全然分からないのですよ。外に出るというものなのか,内部的な解析の素材としてこれを分析するのかがまず明確でないと何とも意見を申し上げようがない。仮に外に出るということであると,これは相当問題があると思います。
まず,今のような解析をする中でいわゆるキャッシュであり,一次保存であるということがずっと進んできていますけれども,そのような使い方をするものなのかどうか。まず,その部分が明確になっていないと問題だと思います。私の感じではともかく外に出るということに関しては,これはまず難しいのではないかなと思います。内部的な方に関してはもしかしたら可能性があるのかもしれないのですけれども,もし内部であるということを前提にした場合,それが蓄積されるのか,蓄積されないのか,つまりDB化されてかなり常に持っているのかどうか。これも例えば一部分を持っているのか,全部を持っているのか,それについてはっきりした区分けがないといけない。ともかく著作者として一番嫌なことというのは,外に出るのはもちろん嫌です。ただ,それを一部なり何なり変えて出るのは実はもっと嫌なのです。ですから,一部分だけを出される,もしくは一部分だけを合わせられて出るというのは,やはり人格権の問題もあるでしょうけれども,作る側としては非常に嫌なこと,最も嫌なことと言えると思います。
ただ,今回の話は内部の話だとすると,実際どういうふうに使うのか。部分的なのか,全体なのか。部分的だけ取るとすると,どういうふうに使うのか。ちょっと検討がつかないのです。ですので,内部蓄積的な扱いとして検討することであれば,もう少し議論を進めていただきたいと思いますし,外部にDB化して出すというふうなことになると,外に出したり,DB化することに対してはともかく最大限の慎重な配慮をお願いしたい。今のところ,そういう形でしかご返答申し上げられない。

【中山主査】 ほかの発表の方,もしご意見がございましたら。 梶原さん。

【梶原氏】 資料3の2.の2つ目の○に書いてありますが,NHKとしては技術開発において著作物そのものの利用が目的でない場合には権利制限されても,そんなに問題がないと考えています。

【池田氏】 これは個人的な考えですが,純粋に技術的な研究でございましたら,我々放送事業者にとっても非常にメリットがあることが多いと思います。先ほど申しました映像解析でどんな映像,映像を認識していろいろなものを調べる。例えば視聴率を調べるときに映像で調べるということがひょっとしたらあるかもしれない。そういったこともございますので,必ずしも放送事業者としては否定的なこととは限らないのですけれども,いろいろな番組となりますと,その中にやはり含まれている権利というものがございまして,我々としては勝手にできないということがございますので,その部分を慎重に検討していただければと思います。

【中山主査】 どうぞ。

【金原氏】 今の茶園先生のご質問ですが,私ども出版界はほかの権利者の方々と立場が違うところがありますので,あえて私ども反対はしないということを申し上げたのですが,これは私どもが関与する部分においてという前提ですので,もちろん先ほど文芸作品と申し上げましたが,文芸作品の作者の方が権利をお持ちであるわけで,そのことについては当然,そちらからの意見を参考にしていただきたいということですが,私ども出版業界というのは読者の方に出版物を購入していただくということですから,そこに影響がないのであればあえて反対はしないという意味です。
したがって,出版物の内容を素材として使うということは,それは読者に出版物を購入していただくということの対象にもちろんなり得るわけですが,それを研究のために出版物そのものを利用することではなく,別の目的を持って研究の素材として使うということは,私どもの業務の対象の外と考えておりますから,したがって出版物の販売に影響がないであろうという意味で,あえて反対はしないということです。ただ,そこで営利,非営利の問題は当然において出てくると思いますので,そこについては大変関心を払っているということは申し上げておきたいと思います。

【中山主査】 ほかにご質問等ございましたら。 ございませんでしょうか。よろしいですか。

【伊藤氏】 すみません,先ほどのことで補足させていただきますと,インターネットとかそういったことでなく,いわゆる出版した紙媒体のものであって,研究に使う場合というのは研究開発という名前ではなく,学術研究ということになりますと,引用という1つの使い方がありますので,そういったところでほとんど学術研究については済まされていく部分があると思っております。

【中山主査】 ここで議論しているのは引用とは全然事例が違って,先ほど私言いましたようにある作家にはどういう単語が使われるかということを分析する。そのためには手作業では大変だからコンピュータの中に1回入れる,その複製がどうですか,こういう議論だと思うのですけれども。
その点,茶園委員,何かありますか。

【茶園委員】 今主査がおっしゃったとおりで,ある作家とか,あるいはある時代でどういう言葉が使われているということ分析するとか,あるいはそれを分析する技術を開発するために多くの作品をコンピュータに入れて利用するとした場合に,入れたものを外部に出すということに対しては各団体が懸念を示されていたのですが,単に入れて分析し,それを一切外に出さなくて,一番分かりやすいことで言うと,技術がちゃんと機能すると分かったら,入れた著作物を廃棄するとした場合にどのようにお考えかという質問でした。

【伊藤氏】 今回,急なヒアリングでしたので,そういった準備ができなかったのですが,そういったことが出ているのであれば,改めて理事会の中でそういったものについて一度議論する機会を設けるようにいたします。

【中山主査】 お願いいたします。
ほかに何かございましたら。苗村委員。

【苗村委員】 今の文藝家協会さんに関する質問の延長で,これはお願いするというよりも,もし理事会でご検討いただくならば,今日の参考資料2の知的財産推進計画に書かれた論理をご参考にいただいた方がよろしいのかと思います。この中では例えば高度情報化社会の基盤的技術となる画像,音声,言語,ウェブ解析技術等の研究開発が促進されることによって,イノベーションの創出が期待できる。そういうことについての研究開発の権利のための利用に権利制限が必要ではないかと言っているようですので,具体的には言語解析技術ということが書いてあるわけです。先ほど来のお話もそうですし,多分「KOTONKHA」のようなコーパスも関係すると思いますが,仮に日本語の小説を英語その他の外国語に自動的に翻訳をしてネット上で販売をするということが,このイノベーションの可能性の1つだと仮定した場合に,その翻訳して無料で配るのではなくて,その翻訳がどのぐらいうまくいくのかということを調べるためには当然,コーパスも利用した上で,その言語解析をして,また作者によっていろいろな文体もあるし,言葉の意味も深い意味で使っていますから,できるのか,できないのか。調べようと思ったら,それを勝手にコピーするなと言われたら手でやらなければいけない。そういうことをしようしたときには,「いや,そのつど個別に許諾処理をしてください」と言うとたくさんの小説,せっかく仮にネット上で公表されていても,それを分析する技術が研究できない。
研究した結果,これはうまくいきそうだとなれば,当然,その後は個別のライセンス処理をしてビジネスとして販売するだろうと想像しているのですが,そういったようなことも含めて意図は決して従来は有料であったものを無料でできるようにしてほしいという意味ではなくて,新しい科学技術の利用によって,特にネット上での新しいビジネス展開ができないかということが狙いで要望が来たのだろうと思うんです。
そういう意味で,文藝家協会さんも何らかの意味でこの範囲ならばいいけれども,これから先は駄目だよということを明快に言っていただいた方が,個別に言ったらそのつど理事会で検討しますというと,多分この立法の議論にならないのではないかという気がしました。余計なコメントで恐縮です。

【伊藤氏】 分かりました。それで,今,ネット等を利用してということが私たちの非常に引っかかっているところでございます。実際に司馬遼太郎氏の作品においてもネット公開を認めていないにも関わらず,ほとんどのものが違法に掲載されております。そういった違法に掲載されているものの中には非常に不正確な,同一性保持権を全く無視したものもございまして,そういったものを使って何かなさるということ自体に私たちは懸念があります。
まずほとんどのものが無許諾で掲載されていると考えております。司馬先生の場合もそうですけれど,違法サイトを見つけますとこちらでは申請を出していただくか,取り消していただくようにしているのですが,はっきり言ってほとんど効果が上がらないことがあることと,違法サイトの中に非常に間違ったものが多いというのは事実です。
先般もある出版社が詩を使いたいということで申請手続きを出してまいりましたが,全く1行目から違った書き出しになっておりました。私から編集者にこれは全くオリジナルの詩とは違うけれどもどこから取られましたかと伺いましたところ,ネットでヒットした一番上から取りましたので,どこから取ったのかも今は分かりませんという返答でした。その詩については著作者の意に反したように改ざんされておりましたので,オリジナルのものをきちっと取り寄せて使用していただくようにお願いしました。許諾を得てネットに流したものと無許諾で違法にネットに載せているものとの間には非常に差があるということもご考慮いただきたいと思います。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。大渕委員。

【大渕委員】 先ほど茶園委員が言われたところの延長線上になるのですが,要するに研究自体として内部にとどめておくのか,さらに外部に出すのかというところでまず区切って,先ほどの例のようにどの時代にどの単語が一番使われているかとか,技術としてどうやったら一番処理が速いかとか,研究自体として内部にとどめて利用する場合に絞って議論するとどうなるのでしょうか。外部でも活用するということを考えると,主体がどうなるかという問題もあり,いろいろ広げていくとちょっと分かりにくくなってしまうので,外部に発表するのはターゲットから外した上で,議論を一番集中させて,大学の研究者というような,普通に考えてみんなが純粋に研究と思うような形で行われる場合にはどうかというふうにお聞きするとどうなりますか。その場合もネットうんぬんというのでなくて,普通に先ほどの全部の文献を例えばデジタルで複製して,それで頻度を調べてみるというようなときにどうかというのが一番すっきりとしていると思いますが,もうちょっと絞った方がいいのかもしれませんが,それでも例えば「いや,そういう素材は別途ビジネス的に提供するのだから,そっちで買ってください」というような話なのか,各団体にお伺いできればと思います。外部には出さずに,内部だけで利用し,かつ主体も普通にみんなが研究者と思うような者が行っている場合,細かいことを言い出すといろいろあるのでしょうけれども,そういうことでもう1回お伺いできればと思います。

【伊藤氏】 国語に関する研究であれば理事会の中でもかなり理解は得られると思っております。かつ,それが国立国語研究所の場合は最初のお話を伺ったとき,将来,有償化ということがあるということでしたので,私たちとしては有償化であるのであれば,協力したということで,いただきたいということだったのですが,有償化ではなく純粋な研究対象としてのものであれば相当な部分は理事会の中で理解は得ることはできると思っております。

【瀬尾氏】 今のご質問ですが,今回の研究ということを,私もインターネットということで限定させていただいておりますが,単純にキャッシュと同じような考え方で,内部に例えば写真であるとすると,今の時代は何色の写真が多いのかを解析するとか,例えばそれをクローリングした中でその色とそれのバランスを解析するとか,元の著作物自体を利用すること。またそれを複合して二次著作物を製成すること,そういう可能性があることに関しては非常にナーバスですし難しい問題があると思いますが,その属性というか,出ているものの属性自体をどう解析していくのか。それを内部的に研究の対象とするということ。
ですので,今言われた限定の中でそういう属性情報に相当するものを解析するのであれば,これは検索エンジンやほかのインターネット上の仕組みと同じように可能性があるというふうに申し上げられると思います。要するに,元のものが使われてしまう。ただ,蓄積すると使いたくなるのもやはり人情でございますので,蓄積というのはかなり怖いなというのが正直なところです。
ただ,可能性としては今のような解析,そのもと元の著作物の属性を解析するということであれば,可能性があるというふうにも申し上げられるのではないかと思います。

【中山主査】 ほかの方でもしご意見がございましたら。
よろしいですか。
大渕先生,特にこの人に聞いてみたいというのは。

【大渕委員】 全般にさきほどの範囲でいかがかというのをお聞きできればと思います。

【中山主査】 それでは,松田委員。

【松田委員】 大渕先生のご質問につながるのですが,実は最初のこの委員会の会合のときに研究者の先生方が研究目的のために他の論文をファイルとして確保しておくこと自体も,著作権法上は実は制限規定上はないのです。しかし,それは普通の法感情といいますか,感覚として違法だというところはないのではないかという議論はあったのです。
それを整理しますと例えば大学の教員が当該教員の研究目的の範囲内で大学内で当該教員が複製し保存すること。それから,同一研究目的を有する教員に際してこれを提供する。この範囲内であれば,どの団体もおおよそこれはいいでしょうという感覚でよろしいでしょうかね。多分,大渕先生がお聞きしたいのはそういうことなのではないかと思っているのですが。

【中山主査】 それは著作物をそのままコピーして置いておくということですね。

【松田委員】 それは小さなデータベースも同じですね。

【中山主査】 これについてはむしろ書籍協会さん辺りはご意見があると思いますが。

【金原氏】 これはまさに私ども書籍協会の範囲の話だろうと思います。程度問題だろうと思うのです。例えば日常的に学術専門誌というのは研究者の方以外に市場がないのです。そういう方に読んでいただくことを前提に発行されているものを講読しないで全て複製を保管しておくことによってそれに代えようということになると,やはり問題だろうと思うのですが,恒常的にということではなくて,時折そういうことがあるということについては,これは図書館でコピーということもあるでしょうし,あるいはほかの方法でということもあると思うのですが,それがどの程度の範囲であって,どの程度の量であるかということによりけりなのではないかと思います。
全く大学の教員が一切学術論文等のコピーを利用しないということは考えられないと思います。ただ,原則としては学術専門出版物というのは学術研究をされている方に購入していただくことを前提で,それ以外に市場をもち得ないわけですから,それを先生方が全部コピーで済ませてしまおうということになると,これは問題だろうと思います。したがって,今の松田先生のご質問に対してはイエスであり,ノーでもあるのですね。やはり程度問題であって,それがどの程度恒常的なのか,あるいは非恒常的なのか,そういうことによりけりなのだと思います。しかし,現状では先生のおっしゃるとおり著作権法では何の手当てもないわけです。しかし,おそらくそういう先生方は施設内で図書館の利用もできるわけで,そこは31条が生きるわけですから,その範囲において複製物を利用されるということについては,我々は権利者,出版者としても特に異論を唱えるわけではないのですが,ただ同じ31条でももうそういうことだけに専念して,全て図書館のコピーで済ませようということになると,これはやはり仮に31条があるとしてもやはり問題は残るのではないか。したがって,どの程度の範囲で,どの程度の頻度で行われるかということによりけりなのではないかと思います。

【中山主査】 どうぞ,瀬尾さん。

【瀬尾氏】 うちの場合,例えば写真を研究目的のためということで全て集めて,学者の先生方がご自分のデータベースを作られて,それを教育者の間で交換されるということに関しては,著作物そのものの利用になりますので先ほどの話とはちょっと違うと思うのです。属性ではなくて,そのものの利用になりますので,それをおしなべて権利制限のような形で処理するというのは正直写真はまず難しい。賛成できる立場ではないというふうには申し上げておきます。

【中山主査】 ほかに今日ご発表された方でご意見ございましたら。

【川内氏】 今日来る前にもちょっと考えていたのですが,(著作権法のような)この手の問題は,一般の常識が通用する世界でないとまずいのだろうと思うんです。あまり法律でがちがちに縛って,それを純粋に守ろうとするととてもじゃないけれども,いろいろな権利処理があって何も前に進まないのだろうと思うのです。その結果として,日本の著作権法が時代に対応できなくなりつつあるというのは十分理解はしております。あとは,これをどこでブレークスルーさせるかという問題だろうと思うのですが,現行で既にビジネスが成立しているところについては,なるべく影響がないようなブレークスルーを考えていただくというのが,(法改正に対する)抵抗勢力も少なくて,うまくいくのではないかなと私は個人的に考えているところではございます。

【中山主査】 ほかによろしいでしょうか。 土肥委員。

【土肥委員】 文藝家協会さん,それから新聞,書籍,この3つの団体の方にお尋ねしたいのですが,一つ著作物の利用の場合,新聞なら新聞の全部,書籍なら書籍の全部というような,あるいは小説なら小説の全部という,そういう利用の仕方ではなくて,部分的に素材として利用していく。例えば先ほどの苗村委員のおっしゃったような過去の記事の中から報道の姿勢とか,そういう研究をしていくという上で著作物の一部を,記事の一部を,あるいは新聞全面ではなくて1つだけ取り上げていく,そういう理由の仕方を商業的目的でなく利用する場合,複製をする場合,そういうような場合であれば,それは問題ないのかどうかということと,もしその全部について,データベース化しない,つまり先ほど主査の方からシェークスピアということになっておりましたけれども,ある著作者の1つの著作物を全部複製するのだけれども,それをアーカイブ化というか,データベース化していかない。そういう商業的でない使用の仕方の場合に,そういう2つの利用形態についてはお認めになるのかどうか,そこを教えていただきたいのですが。

【中山主査】 伊藤さんからお願いできますか。

【伊藤氏】 部分的というところで,細かいことで大変申し訳ないのですけれども,短歌・俳句というのが非常に短いものであって,1句で1作品という概念なのです。部分的となるとそういったところの線引きももちろん,大変細かいことで,皆さんあれと思うかもしれませんが。ですから,今度のコーパスの場合もそうですが,短歌俳句の場合は完全に1行出るのですね。それを全部と考えるので,短いものについては少し外して考えさせていただきますと,現在では著作権法上で認められている範囲内の使用以外はやはり文藝家協会としては真っ向から言うと現行に即して判断するしかないと思っております。ですから,部分的であろうと全部であろうとそこには違いはないと思っています。

【土肥委員】 短歌,俳句の場合は全部と申し上げたのは一部と同じ扱いになる,そういう意味なのですが。量的に少ないという意味で。

【伊藤氏】 短歌,俳句についてはちょっと影響が大きすぎると思います。

【川内氏】 新聞協会の方で,これはまだ意見集約を行ったわけではありませんが,私は著作権小委員会の委員長をやらせていただいていて,色々こういう問題について他社と話す機会があるんですが,ただごく標準的な通常の文章というのはございますね。どこそこで誰々がどうしたというだけの文章,これに著作物性があるかというと別にないわけで,そういう文章を切り取って使われていくという部分については,それほど神経質な新聞社はあまりいないのではないかというふうには考えます。ですから,切り取り方にもよりけりでしょうが,このワンセンテンスだけほしいというような使用の仕方であれば,多分,問題なく許諾できるというような社が多いというふうに個人的には考えています。

【土肥委員】 したがって著作物性が認められる範囲の記事の一部,そういう意味ですね。

【川内氏】 そうですね。ですから,そこのところから一部切り取ってというお話で。

【土肥委員】 切り取ってもなお著作物性がある。

【川内氏】 切り取っても,なお著作物性があるという話になってきますと,これは質と量の話になってくるのだろうと思います。つまり全体でいうと,切り取った部分の9割については著作物性がほとんどない。でも,1割は著作物性があるものがあると考えられるものもある。そこら辺はこれからいろいろご審議なさる上で考えていただきたいのですが,例えばデータベースというか,ウェブ上の全ての情報についても許諾がとれるものととれないものとあるだろうと思います。そこを,ではどう考えるかというと,許諾がとれるものはとっていただきたいというのが基本的な考え方であります。おそらく許諾をとれるものが全体の8割ぐらいは占めるのではないか。残りの2割,3割は許諾が取れない部分,それからそんなにデータとして重要でない部分について,そこまで許諾を取らなければならないのかという議論ももちろんあるのではないかとは考えています。
ですから,先ほどから申し上げていますけれども,新聞社としては報道事業ということで,今,許諾ベースでやっていますが,これは,その値段もそれに合わせてアカデミックな料金でかなり安くしたり何かして,実際は赤字だったりするのですが,そういうこともやっている。そこも許諾は要らないのだとされると,かなり抵抗があるのだろうと思います。
ただし,ウェブ上のデータを全部集めますから,新聞社のデータは各社合わせても2割か3割ぐらいしかありませんよとか,その質と量を勘案されたようなガイドラインみたいなものをお作りになれば考え方も変わってくるのかなという気は個人的にはしております。

【金原氏】 ご質問の趣旨がいまだよく理解できていないところがあるのですが,私ども出版協会としては素材として利用されるということにおいては反対はしないという立場をとっておりますので,それが部分であれ,全部であれ,いずれにしても我々の考え方は同じであるわけですが,そういうことではなくて著作物そのものを素材としてではなくて,著作物そのものとして利用されるという場合の部分なのか全部なのかということについて,もし部分的に利用することで用が足りるという状況があるとするならば,私どもの基本的には考え方としては,それが購入の代替になるのかならないのかという観点で考えるしかないと思うのですが。
例えば非常にごく限られた部分を利用するということにおいて,じゃあ例えば本を丸々1冊買えということもないでしょうし,あるいは雑誌1冊買えということもないかもしれない。そういうような状況においては,それが研究開発ということであるならば何らかの手当てというものは考えられるかと思いますが,先ほどのご質問にもありましたが,例えば学術論文ということになりますと部分的に利用ということは多分あり得ないのではないと思います。そういうものは最初から最後まで全部,前提から読んで研究の過程を読んで,結論を読まないと役に立たないのではないと思います。したがって部分的に利用するということは多分ないのではないかなと思うのですが。したがって,お答えにならないのですけれども,部分的にもし利用できるような状況があれば,それは状況を判断してからでないと正確にはお答えできないということでしょうか。

【中山主査】 よろしいでしょうか。ほかに何か質問等ございましたら。

【茶園委員】 これは単に印象をお聞きすることになるかもしれないのですが,お伺いしたいことがあります。例えば100のデータが必要であるとして,著作者が創作した著作物を利用するという場合に,そのような使い方をされるのは嫌だという意見があるかなと思っていました。
著作物はそれぞれの著作者が一生懸命に作られたものですから,本来は作品として使ってほしい,部品みたいなものとして使われたくないという,単なる素材として使われることについて否定的に考えられているということはあまりないのでしょうか。

【伊藤氏】 国立国語研究所のときに何人かの会員の方からこちらにいろいろなお問い合わせがあったのですが,そういうことに関するご意見は1つもありませんでした。先ほどから申し上げているように国語研究,学術研究のために文章が分解されることについての抵抗感はないと思っております。ただ,作家が抵抗感を覚えるのはそういう使い方ではなくて,自分の詩(著作物)を勝手に改変されるとか,短歌俳句の「てにをは」を勝手に変えられてしまうとか,そういうことに対することで,同一性保持権についての目指すところが違うのです。それについてはほとんど抵抗はないと思っています。

【瀬尾氏】 先ほども申し上げましたが,今の伊藤さんのご発言ともかぶりますが,作品自体を改変することについては抵抗はあります。また,私は先ほどから素材ということは一言も言っておりません。作品自体を素材という呼び方をすることは私自身非常に抵抗があります。ですので,先ほどから作品の属性を分析するという申し上げ方をしていると思います。作品の内容を実際に扱うのか,作品として見るのではないと。例えば絵を見たときに,絵を修復したりしますね。そういう作業をインターネット上のデータに対して行う。例えばその中の属性を取り出して統計をとったり,いろいろなことをするのだというものと,先ほどから申し上げるように表現としての作品自体を利用するのと,これは大きな違いがありますので,素材という言い方を私自身はしていただきたくない気持ちもあります。
ただ,今ここで議論になっている分析に関しては作品の属性,いろいろな特性を分析するお話だと思っておりますので,作品の分析もしくは解析または属性に対しての統計という呼び方をしていただければ,これは単なる呼び方の問題で,それを嫌だと,私の作品を分析していただきたくないというふうにおっしゃられるということは,これは非常に少ないと思います。

【中山主査】 ほかにございましたら。苗村委員。

【苗村委員】 ちょっと前の議論の中で例えば大学の教員がもっぱら教育目的で新聞であれ,図書その他のものであれ,それを複製して利用することは35条で認められているけれども,研究目的であれば,図書館のものを31条でコピーする場合を除いては認められていないというご発言がありました。それに関連して,どなたからお答えいただいてもいいのですが,参考資料3との関係でご意見を伺いたいのです。参考資料3は,諸外国の立法例です。この仲で英米法の国はほぼフェア・ユース的な条文があって,その中に研究利用も特に非営利であれば含まれるという雰囲気が見られますが,ドイツは非商業的目的の研究まではいいよと。ただ,その場合には報酬請求権が発生して,その請求権は集中管理団体によってのみ行使できるということを非常に明確に書いてあるわけです。こういったような解決策があり得るのか。あくまでも許諾権を行使するということにするのか。
私が質問した趣旨は,現実に私自身も大学におりますが,実際に著作物を複製する必要があったときに,教育目的であればいい,しかし研究のためは駄目だというのは非常に境界を明確にして取り扱うことは難しいわけで,どちらかというと無料にしてほしいといういよりも,むしろ自由に複製ができるようにしたい。複写であれば複写権センターを介してということもあり得るわけですが,電子的なコピーについては現実的な手段がないというのが現状なので,さてどんな対策が可能かという趣旨で,このドイツ法のような考え方は受入れられるのか。いや,それも駄目であくまでも許諾でなければ駄目だとおっしゃるのか,どなたからでもいいのですが答えをいただければありがたいと思います。

【中山主査】 ご意見がございましたら。

【金原氏】 複写ということについて言うならば,紙媒体であれ,電子的な媒体であれ,私は同じだと思います。したがって許諾を得ることが適当という範囲については,電子的な許諾についても同様に私ども権利者サイドとしてはシステムを作っていくべきであろう。まだ現状,電子的な複製について許諾ベースでの対応がほとんどできていない状況にありますけれども,ご承知のように海外の著作権管理団体は電子的な複製についても許諾するシステムができ上がっておりますので,そのような対応も当然我々としてはとっていかなければいけないと思います。
一方で,許諾を得ることが適当かどうかという,いわゆるアカデミックユースについて,例えば外部から複製を入手するとか,あるいは外部に依頼して入手するということについて,私は当然許諾を得て行うべきだと思っておりますけれども,学内で複製することについて31条あるいは35条に該当しない部分の権利制限というものが果たして本当に必要であろうかということについては,これは検討には値すると私は思っております。
現状において研究活動,非営利な組織において,具体的には大学の先生方が学術研究のために複製をするということが一番身近な問題であろうと思いますが,それも先ほど私申し上げたように特に学術研究目的で出版されているようなものが,そのような形で全部利用されてしまうということになると,出版そのものが成立しませんから,先生方も利用できるものがなくなってしまう。これは本末転倒だと思いますので,そうならない範囲においては何らかのアカデミックユースというものについて,一定の海外におけるフェア・ユース的なものは,ベルヌ条約との整合性から見てもあってもいいのかなという気はしております。ただ,その限定するのは非常に難しいだろうと。
日本法は個別の項目について権利制限とするか,しないかという議論をしていますので,海外のアメリカのフェア・ユースのような規定を持ち込むと日本が訴訟社会になってしまうが,そういうことが果たしていいか悪いか。そういうような環境が整うかどうかということによっては,もしかするとアカデミックユースのものを対象とした権利制限というものはあってもいいかもしれない。ただ,出版の私どもがやっているような業務の芽をつぶさないようにすることは大前提だと思いますので,それに影響を与えるようなことがあってはならないと思いますが,全部の複製に影響があるとは必ずしも私は思いません。

【中山主査】 どうぞ。

【瀬尾氏】 今のお話ですが,先ほどから私も繰り返して申し上げますとおり,著作物自体を使うというアカデミックユースの問題と,それから機械の中に解析の途中で蓄積するという問題と,本質的に私は違っているのではないかと思います。著作物自体を研究目的ということで,たとえ対象を限定しつつも蓄積もしくは利用を,いわゆる教育利用と同列に上げるという議論は今回,実は私は想定しておりませんでした。インターネット上での蓄積,解析ということでの権利性,どちらかというとキャッシュの,もしくは検索エンジンの権利制限の延長線上のあるようなお話かなと思っていましたので,今のような著作物自体を学内の研究利用もしくはそれ自体を蓄積することに関しましては今のところ検討しておりませんし,私個人の感じから申し上げますと大変慎重に考えなければいけない問題だなと思っております。

【中山主査】 どうぞ。

【川内氏】 報道事業について,これまでいろいろお話しさせていただいたときに,私は許諾ベースという表現でお話をさせていただいたと思いますが,報道事業を許諾ベースで進めなければいけないということはあり得ない話でありまして,例えば使用料なり,そういうものが請求できる権利だけ残していただいて,ご使用になった後,現在の報道事業と合うような形で,それなりの金額なりが入ってくるということになると,これはお使いになる方もかなり便利になってくるのだろうと思うのです。事前に許諾をとらなくてすみますから…。
そういった考え方について,現在の報道事業と整合性をとってほしい。では,その整合性とはなんだという話になりますとビジネスの話になってくるのだろうと私どもは考えております。事後承諾で使用しましたということで,例えばそれなりの対価が入るという形であれば,これはそれなりに使い勝手がよくなるのではないかというふうには考えております。

【中山主査】 法的には対価請求権にするという趣旨ですね。刑罰規定はなしということでしょうか。

【川内氏】 著作隣接権のような使用料請求権,報酬や対価を請求できる権利ですね。
話は変わりますが,ある意味でいいますと,新聞社あるいは報道機関というのは報道があまねく知れ渡っていかなければならないという世界でもありますので,(日々のニュースについて)これを許諾ベースでやること自体について基本的に果たしてそれでいいのかどうかという問題も少しははらんでいると僕は思ってはいます。これは個人的見解ですが…。ですから,そういうふうな請求権さえ確保していただければ…という,そういう考え方もあるということです。

【中山主査】 放送局の方はいかがでしょうか。

【梶原氏】 非営利の大学内での研究等における利用であれば,放送番組について言うとそんなに問題はないかなというふうには思っています。特に学問の自由と言ったような問題もあるでしょうから,許諾権であることが本当にいいのかどうなのかというような感じを持っております。ただ,放送番組の中にはまた放送事業者以外の権利がたくさん含まれていますので,その方々の理解は得るという前提の下で放送局としてはそんなに問題はないかなと思っております。

【池田氏】 民放の場合,多くが無料広告放送でございますので,その場合は無料で放送をどんどんしている。研究者の方々のお手元にも既に放送番組は届いているという前提であれば,その後の利用につきましてはある程度我々に障害が生じない範囲であれば問題はないのではないかと個人的には考えますが,そうではない過去の番組についてのご提供ということになりますと,またちょっと違ってくるのかなと思います。物理的にコストや手間がかかるということもございます。30条で私的複製ができますように研究者の方々が手元で放送を複製されるということであれば35条と,そんなに遠くない話だとは思っております。

【中山主査】 仮に権利制限規定を設けるとしても,放送局にその情報を出せということまで義務づけるわけですから,それは問題ないと思うのですけれども。
よろしいでしょうか。ほかにございましたら。

【金原氏】 先ほどの苗村先生のご質問に関連することですが,それぞれの研究施設あるいは東京大学にしても慶應大学にしてもそれぞれの研究機関においても,やはりアカデミックユースが仮に権利制限になったとしても,それ以外の複製利用というものもあるわけですから,それについて複写管理団体と包括的な契約を結んでおけば,更にその包括的な契約は当然アカデミック機関,研究機関と一般企業とは違う料率を設定すべきだろうと思います。そうしておけば先生方が学内で複製することについても全てカバーされるわけですから,その中で処理いただくということが一番トラブルも起きないし,料金的にも非常にリーズナブルな金額で研究機関とはアカデミックユース,権利制限ではないところのアカデミックユース料金,包括料金というものを設定することによって,全てカバーされる。ということでやるのが一番いいのではないかと私は思います。

【中山主査】 ほかにご質問等ございましたら。
よろしいでしょうか。

【土肥委員】 これは事務局ヘのお願いになるのかもしれませんが,例えば参考資料3で研究目的の権利制限ということでドイツ法を出していただいているわけですけれども,イギリス法もですが,52条のA,53条,そういう権利制限の規定の趣旨を損なうようなことでDRMが付けられているような場合については,前に吉田審議官のお話でもあったように,調べて出していただくということだったと思うのですが,52条A,53条の規定を損なうようなDRMが施されているという場合には95条Bで権利制限の趣旨を実現するような形での相当な手段を提供するという規定を置いていて,これをオーバーライドするような特約は無効にする。オンライン提供については特則を設けたりしているようですが,いずれにしてもこれは2001年の欧州指令6条4項の規定に基づいて加盟国は義務付けられていると思いますが,このような研究のための権利制限という趣旨を実現する上でかなり趣旨を徹底させる規定を置いている国も当然あるわけでありますので,そういうこともきちんと資料としては出していただきたいということでございます。

【中山主査】 よろしいですか。

【黒沼著作権調査官】 頑張って調べたいと思います。

【中山主査】 ほかに何かございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
そろそろ時間でございます。本日の会議はこのぐらいにしたいと思います。事務局から連絡事項ございましたら,お願いします。

【黒沼著作権調査官】 本日はどうもありがとうございました。次回の小委員会は前回と今回のヒアリングを踏まえまして,出されました論点について整理を試みて資料をご用意したいと思います。
日時でございますが,8月20日(金)13:30から。場所は三田の共用会議所を予定しております。よろしくお願いいたします。

【中山主査】 場所は三田で,また違いますので,お間違えないようにお願いいたします。
本日はこれをもちまして文化審議会著作権分科会の第6回法制問題小委員会を終了いたします。本日はありがとうございました。

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