(1) 問題の所在
○ コンピューター・プログラムのいわゆる「リバース・エンジニアリング1」については,プログラムの調査・解析を行う過程で複製・翻案を伴う場合があり,このような場合における当該行為の法的位置付けが問題となる。
本課題については,過去にも,平成5年から6年にかけて文化庁に設置されたコンピュータ・プログラムに係る著作権問題に関する調査研究協力者会議(以下「協力者会議」という。)においてその問題の所在及び論点について検討されたが,技術・産業の実態等や国際的な動向を見極める必要性から,「今後の国内外の状況の進展に応じあらためて検討を行うことが適当」とされていた2。
この点,政府の知的財産戦略本部においては,リバース・エンジニアリングの過程での著作権侵害の可能性が,脆弱性の調査・修正のためのプログラム解析等に萎縮効果を及ぼしているとの指摘があり,欧米における立法状況及びその運用状況等にふれた上で,革新的ソフトウェアの開発や情報セキュリティの確保の観点から,対応の必要性について提言されている。
1ここでは,既存のプログラムの「調査・解析」の意味を指すものとして取り扱うこととする。
2「コンピュータ・プログラムに係る著作権問題に関する調査研究協力者会議報告書―既存プログラムの調査・解析等について―」(平成6年5月,文化庁)
●「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について<検討経過報告>」(平成20年5月29日,デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会)
4.早急に対応すべき課題について
(4)コンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングの適法化
技術の発展のためには,他者の製品を解析し,そこから技術を習得するリバース・エンジニアリングが不可欠である。このため,産業財産権法制ではリバース・エンジニアリングに必要な権利制限について規定している(特許法第69条第1項等)。
しかしながら,コンピュータ・プログラムについては,リバース・エンジニアリングの過程で生じる複製や翻案が著作権法侵害に当たるおそれがあるため,プログラムの脆弱性の調査・修正のためのプログラム解析等に相当程度の萎縮効果が働いている。
他方,欧米においては,フェアユース規定等に基づき,相互運用性確保のためのリバース・エンジニアリングは権利侵害に当たらないとされ,かつ,プログラムの脆弱性の調査・修正のためのプログラム解析も広く行われており,現状を放置したままでは,革新的ソフトウェアの開発や情報セキュリティ確保に当たって我が国の著作権法がその障害となりかねない。我が国の主要な情報産業事業者が加盟する(社)電子情報技術産業協会(JEITA)からも「知的財産推進計画2008」の策定に当たってリバース・エンジニアリングを広範に認めるべき 2 との意見が提出されている。
相互運用性や情報セキュリティの確保のためのコンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングに必要な範囲において,その過程で生じる複製・翻案を行うことができるよう早急に法的措置を講ずるべきである。
2 本年4月に「プログラムの研究・開発,性能の検証,バグの発見・修正,相互運用性確保等を目的として行う当該プログラムの複製・翻案を可能とするための権利制限規定につき積極的な検討がなされるべき」という意見が提出された。
●「知的財産推進計画2008-世界を睨んだ知財戦略の強化-」(2008年6月18日,知的財産戦略本部)(抜粋)
第4章 コンテンツをいかした文化創造国家づくり
Ⅰ.デジタル・ネット時代に対応したコンテンツ大国を実現する
1.デジタル・ネット環境をいかした新しいビジネスへの挑戦を促進する
(2)新しいビジネス展開に関わる法的課題を解決する
(5) リバース・エンジニアリングに係る法的課題を解決する
革新的ソフトウェアの開発や情報セキュリティの確保に必要な範囲において,コンピュータ・ソフトウェアのリバース・エンジニアリングの過程で生じる複製・翻案を行うことができるよう2008年度中に法的措置を講ずる。
○ また,リバース・エンジニアリングについては,関係団体から,次のように問題認識及び法改正要望が示された。
- ・ 人間が表現を感得することが困難なコンピュータ・プログラムにおいては,その表現や思想・感情を感得するために,一定レベルのリバース・エンジニアリング行為は許容されるべき。(社団法人電子情報技術産業協会(JEITA))
- ・ リバース・エンジニアリングの適法性が明確になっていないため,セキュリティ企業等にとって相当の萎縮効果が働いている。(1)革新的なプログラムの研究開発,(2)性能,機能の調査,(3)障害等の発見・保守,(4)情報セキュリティ対策,(5)互換性の確保,(6)著作権侵害の調査,発見,を主な目的とするリバース・エンジニアリングは一定の条件で認めるべき。
情報セキュリティ対策では,不正プログラムとそれが送り込まれた情報システムの挙動の解析や,開示されていない暗号プログラムの解析が必要となる場合がある。悪意を持って脆弱性を攻撃してくるプログラムの開発期間は年々短期化しており,迅速かつ正確な脆弱性解析のためのリバース・エンジニアリングの必要性が高まっている。(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)) - ・ 萎縮効果やインセンティブが働かないといったことからリバース・エンジニアリングの問題について検討してほしいと意見を寄せられたことはない。ただし,(1)相互接続性,互換性の確保目的,(2)脆弱性の確認(セキュリティ・チェック),(3)著作権侵害行為の発見目的,(4)主として著作権侵害に供されるソフトウェアの機能性能調査など,公正な目的で行うものについては権利制限を受けることは許容されるのではないか。(社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS))
- ・ 権利制限が不可欠との事情は生じていない。権利制限を設けることによりかえって新規ソフトウェア製品の開発及び普及を妨げるおそれもある。契約を越えて権利制限で対応しなければならないことがあるか否かには疑問もあり,必要性について十分に検証すべき。どうしても必要であるとの事情がある場合でも,相互運用性の達成という限定された目的等の例外的な状況においてのみ認められるべき。((ビジネスソフトウェアアライアンス(BSA))
(2)検討の方向性
(1) 基本的な考え方
この問題については,基本的には平成6年の協力者会議において,概ね必要な検討が行われており,本小委員会としては,この協力者会議の報告書を基礎としつつ,その後の状況の変化を加味して,法改正の必要性,仮に権利制限を行うとした場合の要件等について検討を行うこととする。
なお,上記報告書の後の状況の変化としては,前述のように,国際的に見ても,リバース・エンジニアリングの取扱いに関して大きな議論が存在する状況ではなくなってきていること,脆弱性解析の必要性が高まっていること等が指摘されている。
(2) 現行法下での対応可能性
○ 我が国の著作権法において,プログラムの調査・解析する場合に,一定の形態で調査・解析を行う場合には複製又は翻案に当たる可能性があると考えられる3。
現行法では,プログラムに関する権利制限規定として第47条の2があり,一定程度のプログラムの調査・解析は可能な場合があると考えられるが,同条は自らがプログラムをコンピュータにおいて利用するのに必要な限度でのみ認められる利用であり,プログラムの実行に必要な限度を超えた複製,翻案が存在する場合には同条では対応できないものと考えられる4
○ また,契約による対応については,それで対応が可能が範囲があることも確かであるが,世界中に無数に存在するプログラム開発会社との間で,契約ですべてうまくいのか,事件が起きていないというだけであって理論的には違法の状態ではないかなど,その実効性について疑問とする意見があった。
3前出の協力者会議の報告書では,メモリダンプ(主記憶装置上に記録されたプログラムやデータの一部を印刷したり,ディスプレイ上に表示し,調査する行為),逆アセンブル・逆コンパイル(調査対象のオブジェクト・プログラムを,アセンブラ言語やコンパイラ言語の形式でのソース・プログラムに近い状況に変換し,調査する行為),ソース・プログラムの調査の際に,著作権法上問題となり得る複製,翻案行為が存在する場合があるとしている。
4前出の協力者会議の報告書では,相互運用性の達成のためなどに調査・解析を行う場合には,同条の規定は適用され得ないのではないかとの指摘があった旨が記述されている。
(3) 権利制限による対応を考える場合の考え方と目的の分類について
平成6年の協力者会議の報告書では,プログラムの調査・解析について権利制限規定を設けるかどうかについて,以下のような4つの考え方が示されている。
- 1) 調査・解析一般について権利制限規定を設けるべきであり,調査・解析の目的は特定すべきでない
- 2) 調査・解析について権利制限規定を設けるべきであるが,競合プログラム等の特定の目的の場合には許されないこととすべき
- 3) 相互運用性,エラー修正等の一定の許容される目的のための調査・解析に限って,権利制限規定を設けるべき
- 4) 調査・解析について権利制限規定を設ける必要はない
○ これらの意見の背景は,著作権法は表現を保護するものであり,アイディアは保護しないとの原則については共通認識として確認しつつも,アイディア抽出のための解析の過程で行われる複製・翻案を認める合理的な実際上の必要性があるか,権利者に与える影響をどう評価するかとの点についての相違であるとされる。
このような考え方の相違は,プログラムの調査・解析について権利制限を設けるべき根拠についての考え方から生じていると考えられる。
- A) 現行の著作権法は,著作物の視聴行為自体には権利を及ぼしていない一方,プログラムの場合,通常の著作物とは異なり,そのままの形では表現を見ることができないため,通常の著作物と同じようにその表現を見るための過程で行われる著作物の利用行為については,権利を及ぼすべきではないとの考え方,
- B) また,同様に著作権は,アイディアを保護するものではないため,著作物からアイディアを抽出する過程の著作物の利用行為についても権利を及ぼすべきではないとの考え方
一方で,このような考え方に対しては,以下のような観点から,権利制限を抑制的にすべきとの考え方が生じてくると考えられる。
- C) プログラムの場合,通常の著作物と異なり,著作物の効用を享受することとは,表現を見ることではなくプログラムの機能を享受することであり,表現を見る必要はない一方,表現を見ること等は,その後の模倣等の様々な利用を容易にする可能性があり,ひいては先行的な技術開発のインセンティブを損なうことになるのではないかとの考え方。5
○ また,権利制限を許容すべき目的に関しては,具体的には,改正要望の中では,リバース・エンジニアリングの目的として,次のような事項に言及があったが,これらの目的のうちには,性質の異なるものが並列されており,範囲の検討に先だって,まずは上記の権利制限の根拠に照らして整理した上で検討すべきとして,次のような意見があった。
- ア 性能,機能そのものの調査
- イ 著作権侵害,特許権侵害の調査,
- ウ 障害等の発見
- エ 脆弱性の確認,セキュリティの確保
- オ ウィルス作成等,悪意ある目的のための解析
- カ 相互運用性の確保
- キ 競合プログラム6の開発
- ク 模倣(類似プログラム7の開発
- ケ 革新的なプログラムの開発
・ 障害等の発見,脆弱性の確認,侵害発見のための解析は,表現を見る必要があるが,通常の著作物と異なり,プログラムをそのまま見てもわからないから,リバース・エンジニアリングが必要だという性質のものである。
・ プログラムの開発に関するもののうち,革新的なものか,模倣かどうかの違いは,結果に着目した違いを述べているものであるが,アイディアを抽出して開発を行うとの行為としては,同じものではないか。
・ セキュリティ確保のための脆弱性の確認と,ウイルス作成や攻撃のためのハッカー等が行う解析とは,目的は異なるが,行為としては同じものではないか。
これらの指摘を踏まえ,行為として同じものが含まれるものについては,とりあえず以下のように大括りに検討しつつ,その要件を絞る際に,改めてその違いに着目することとしてはどうか。
- a) 相互運用性の確保
- b) 性能,機能の調査,脆弱性の確認等のプログラムの表現の確認
- c) その他,プログラムの開発のために必要なアイディアの抽出等
○ また,障害等の発見,セキュリティ対策,相互運用性の確保については,ユーザーの立場としてプログラムを利用する上で必要な行為であって,このような観点から権利制限すべきとの分類もできるのではないかとの指摘,競争法的な要素も考慮すべきとの指摘もあった。 これらの点については,権利制限を抑制的にすべきとの考え方(上記c)を考慮する際に,それに対する考え方として併せて考慮すべきと思われるが,どうか。
5前出の協力者会議の報告書では,競合品の開発を除いて認めるという2)の立場からは,先行的な技術開発のインセンティブを守るとの要請,一定の場合に限定するという3)の立場からは,権利制限は必要最小限の範囲にとどめるべきであり,正当な目的の調査・解析に限って許容すべきこと,がそれぞれの立場における範囲の限定根拠とされている。
6ここでは,あるプログラムと同一の機能を有し,市場代替性のあるプログラムの意味で用いている。
7ここでは,あるプログラムと実質的に類似する表現形式からなるプログラムの意味で用いている。
(4) 権利制限を許容すべき目的の範囲について
- a) 相互運用性の確保の目的
○ 相互運用性の確保については,その目的上必要なインターフェース情報等を抽出することについて,諸外国でも規定が設けられていることもあり,基本的には認めるべきとの意見が大勢であったと考えられる。
ただし,その場合に,先行的な技術開発のインセンティブを損なわないようにするとの観点から,競合プログラムの開発となる場合について,どのように考えるべきか。
○ この点については,次のような意見があった。
・ 開発目標とするプログラムと相互運用する別のプログラム(OSなど)の調査・解析を行うことはあり得るのであり,開発目標とするプログラムと競合するプログラムを開発するかどうかだけで,判断すべきではない。
・ 公正な競争を確保する観点から,競合プログラムであっても権利制限は許容されるべき場合があるのではないか。
このような意見を踏まえ,目的の段階で競合プログラムの開発を意図しているかどうかとの区別は特段問題とする必要はないと考えるか。
○ また,目的以外の要件については,諸外国と基本的に異ならせる必要はないと考えてよいか。
・ 許容される行為主体は,「プログラムの複製物を使用する正当な権原を有する者」に限定すべきか。
・ 相互運用性の確保のために必要な情報があらかじめ利用可能でないこと,他の手段によっては入手できないことなどを条件とすべきか。
・ 調査・解析の過程やその結果入手した情報について,権利制限の目的以外の目的での利用や第三者への提供を禁止すべきか。
その他,権利制限規定で認められた行為を禁止する内容の契約は無効である旨規定や技術的保護手段を回避した場合の取扱いについての規定をどうすべきか。
- b) 性能,機能の調査,脆弱性の確認等のプログラムの表現の確認
○ 障害等の発見,脆弱性の確認については,次のような意見があったが,他の目的のプログラムの調査・解析と比べて,さらに公益性等の観点から異なる要素がると考えるか。
・ 少なくともプログラムの使用者に対して,その使用するプログラムの適正・安全を確保することは重要であり,このために必要な行為と考えられるため,権利制限を認めることが適当ではないか。
一方で,ウィルス作成やシステムへの攻撃など悪意ある目的のための解析についても,プログラムの脆弱性等を調査する目的である点では同じであり,区別が可能なのかとの指摘があった。これを踏まえ,仮に脆弱性等の確認のための権利制限を設けるとして,目的の段階で区別を可能とするための措置等が考えられるか。それとも,調査・解析の結果得られた情報の利用の段階で要件を絞れば足りると考えるか。
なお,仮に権利制限を設けるとして,その他の要件について,相互運用性の確保等の場合と異ならせる必要はあるか。例えば,使用者以外の第三者によるセキュリティ対策サービスの提供について要望があるが,この点をどのように捉えるべきか。(なお,セキュリティテストのための調査・解析を明文で許容しているオーストラリアでは,主体はプログラムの保有者又は被許諾者としている。)
○ 著作権侵害,特許権侵害の調査については,プログラムの具体の表現を確かめることは,権利侵害の立証等のために不可欠のプロセスである一方,その調査・解析で得た情報を活用して新たなプログラムの開発等を行うものではなく,先行的な技術開発のインセンティブを損なう可能性は低いと考えられるが,どうか。
仮に権利制限を設けるとして,目的以外の要件については,どのように考えるか。
- c) その他,プログラムの開発のために必要なアイディアの抽出等
○ 相互運用性の確保やセキュリティ確保以外の目的でプログラム開発を行う場合については,次のような意見があった。
・ プログラムの研究開発全般を対象とすることは,範囲が無制限に広がってしまい,適当でないと考えられる。
・ 著作権の考え方からいうと,既存の表現に依拠しているかどうかがポイントであって,なぜ革新的なものでなければならないのか,という議論も出てくるのではないか。
・ 革新的なプログラムの開発であればいいという考え方については,競合品や類似品の開発ということと革新的なプログラムの開発ということとでは,マーケットとの関係ではむしろ革新的なプログラムの方が市場を取ってしまい,むしろ権利者に与える影響が大きいのではないか。
・ 革新的なプログラムの開発と,模倣や革新的でないプログラムの開発との目的の区別は可能なのか。結果の違いでしかないのではないか。
○ このような意見を踏まえれば,革新的プログラムの開発であるとの目的に着目して権利制限の範囲を一律に画することは困難ではないか。それとも,なんらかの方策により,区別する方策が考えられるか。
結局のところ,既存のプログラムのアイディアを利用した研究開発については,著作権法が保護していないアイディアを抽出する過程で行われる複製等であることと,その結果で取得した情報を利用した開発の中に先行的な技術開発のインセンティブを損なうものも出てくる可能性があることとのバランスをどう考えるかによって,範囲を判断する問題であると考えられる。このため,仮に権利制限を設けるとしても,個別の事例に応じて判断するような要件構成とならざるを得ないと考えられるが,どうか。
参考:諸外国の立法例
ドイツ法(「外国著作権法令集(37)-ドイツ編-」2007年3月,社団法人著作権情報センター)
第69d条 同意を要する行為の例外
- (1) 契約上の特則が存しないかぎり,前条第1号及び第2号にいう行為は,それらの行為が,プログラムの複製物の使用につき権限を有する者による欠陥修正を含め,コンピュータ・プログラムの所定の使用のために不可欠であるときは,権利保有者の同意を要しないものとする。
- (2) プログラムの使用につき権限を有する者による保存用コピーの作成は,それが将来の使用を確かなものとするために必要である場合には,契約によって妨げてはならない。
- (3) プログラムの複製物の使用につき権限を有する者は,プログラムの要素の基礎に存する思想及び原則を解析することを目的とする場合には,権利保有者の同意なく,プログラムの作用を,プログラムについてその者が権限を有するロード,表示,実行,転送又は蓄積の行為によって,観察し,調査し又は試行することができる。
第69条e 逆コンパイル
- (1) 第69c条第1号及び第2号の意味においてコードを複製し又はコード形式を翻訳することが,独立して作成されたコンピュータ・プログラムと他のプログラムとの互換性の確立に必要な情報を取得するうえで不可欠である場合には,次の各号に掲げる条件が充たされるものと認められるときは,権利保有者の同意は要しない。
- 1. その行為が,ライセンスの取得者その他プログラムの複製物の使用につき権限を有する者,又はそれらの者の名においてこれにつき権限を与えられた者によって行われること。
- 2. 互換性の確立に不可欠な情報が,前号にいう者にとって未だ容易に使用可能なものとなっていないこと。
- 3. その行為が,元のプログラムの部分で互換性の確立に不可欠なものに限定されていること。
- (2) 前項に基づく行為によって得られた情報は,次の各号に掲げる行為の対象としてはならない。
- 1. 独立して作成されたプログラムの互換性を確立することとは異なる目的のために使用すること。
- 2. 第三者に提供すること。ただし,そのことが独立して作成されたプログラムの互換性にとって不可欠である場合は,このかぎりではない。
- 3. 実質的に類似の表現形式からなるプログラムを開発し,製作し,若しくは商品化するために,又はその他何らかの著作権を侵害する行為のために使用すること。
- (3) 前二項は,その適用が著作物の通常の利用を妨げずかつ権利保有者の正当な利益を不当に害しないよう,解釈するものとする。
第69g条 その他の法規定の適用・契約法
- (1) (略)
- (2) 契約上の規定で,第69d条第2項及び第3項並びに第69e条に抵触するものは,無効とする。
フランス法(「外国著作権法令集(30)-フランス編-」2001年3月,社団法人著作権情報センター)
第122の5条 著作物が公表された場合には,著作者は,次の各号に掲げることを禁止することができない。
- (1) (略)
- (2) 複写する者の私的使用に厳密に当てられる複写又は複製であって,集団的使用を意図されないもの。ただし,原著作物が創作された目的と同一の目的のために使用されることを意図される美術の著作物の複写及び第122の6の1条第3項に規定する条件において作成される保全コピー以外のソフトウェアの複写並びに電子データベースの複写又は複製を除く。
- (3) ~(5) (略)
第122の6の1条 I 第122の6条第1号及び第2号に規定する行為は,ソフトウェアの用途に従い,そのソフトウェアの使用権を有する者によるそのソフトウェアの使用を可能とするため(エラーを訂正するためを含む。) にそれらの行為が必要である場合には,著作者の許諾に従わない。ただし,著作者は,エラーを訂正する権利並びに,ソフトウェアの用途に従い,そのソフトウェアの使用権を有する者によるそのソフトウェアの使用を可能とするために必要とされる第122の6条第1号及び第2号に規定する行為が従う特定の手続を決定する権利を,契約によって保持する権利を有する。
- II ソフトウェアの使用権を有する者は,ソフトウェアの使用を保全するために必要な場合には,保全コピーを作成することができる。
- III ソフトウェアの使用権を有する者は,その者が行う権利を有するソフトウェアのいずれかの組み込み,表示,実施,送信又は蓄積のいずれかの操作をその者が行う場合には,そのソフトウェアのいずれかの要素の基礎にある概念及び原理を決定するために,著作者の許諾なしに,そのソフトウェアの機能を観察し,研究し,又は検査することができる。
- IV ソフトウェアのコードの複製又はこのコードの形式の翻訳は,第122の6条第1号又は第2号に規定する複製又は翻訳が,他のソフトウェアとは独立して創作されたソフトウェアの相互利用に必要な情報を取得するために不可欠である場合には,著作者の許諾に従わない。ただし,次の各号に掲げるすべての条件が満たされることを条件とする。
- (1) それらの行為が,ソフトウェアの複製物の使用権を有する者によって,又はその者のためにそのための権利を有する者によって,行われること。
- (2) 相互利用に必要な情報が,第1号にいう者に容易にかつ急速にアクセス可能とされていないこと。
- (3) それらの行為が,この相互利用に必要な元のソフトウェアの部分のみに限定されること。
- 2 このようにして取得された情報は,次の各号に掲げる行為の対象とすることができない。
- (1) 独立して創作されたソフトウェアの相互利用の実現以外の目的のために使用すること。
- (2) 独立して創作されたソフトウェアの相互利用に必要な場合以外に第三者に伝達すること。
- (3) その表現が実質的に類似するソフトウェアの開発,製作若しくは商品化のため,又は著作権を害する他のいずれかの行為のために使用すること。
- V この条は,ソフトウェアの通常の利用を害すること,又は著作者の正当な利益を不当に害することができるものと解することはできない。
- 2 この条第2項,第3項及び第4項の規定に反するいずれの定めも,無効とする。
スイス著作権法(「外国著作権法令集(15)-スイス編-」1994年3月,社団法人著作権情報センター)
第19条(私的使用)
- 1 公表された著作物は自己使用のために利用することができる。自己使用には次のものがある。
a~c (略) - 2 ・ 3 (略)
- 4 本条はコンピュータ・プログラムには適用しない。
第21条(コンピュータ・プログラムの解析)
- 1 コンピュータ・プログラムを使用する権利を有する者は,独立に開発するプログラムへのインターフェイスに関する必要な情報を,プログラムコードの解析により入手し,又は第三者に入手させることができる。
- 2 プログラムのコードを解析によって得られたインタフェース情報は,プログラムの通常の利用も,権利者の正当な利益も不当に害されない限り,相互に運用できるコンピュータ・プログラムの開発,保守及び使用のためにのみ利用することができる。
第24条(保存用コピー及び補充用コピー)
- 1 (略)
- 2 コンピュータ・プログラムを使用する権利を有する者は,その補充用コピーを作成することができる。この権利は契約によって制限することはできない。
○イギリス法(第50条のB及び第50条のc:「外国著作権法令集(34)-英国編-」2004年7月,社団法人著作権情報センター,第50条のBA:事務局仮訳)
(逆コンパイル)
第50条のB
- (1) 低い水準の言語で表現されたコンピュータ・プログラムの複製物の適法な使用者が,次の行為を行うことは,著作権の侵害ではない。
- (a) それをより高い水準の言語で表現されたバージョンに変換すること。
- (b) 第2項の条件が満たされることを条件として,プログラムをそのように変換する過程に付随して,それを複製する(すなわち,それを「逆コンパイルする」)こと。
- (2)条件は,次のとおりである。
- (a)逆コンパイルされたプログラム又は他のプログラムとともに作動することができる独立したプログラムを創作する上で必要な情報を得るためにプログラムを逆コンパイルすることが必要であること(「許される目的」)。
- (b)そのように得られた情報が,許される目的以外のいずれの目的のためにも使用されないこと。
- (3) 特に,適法な使用者が次のいずれかに該当する場合には,条件は,満たされない。
- (a) 許される目的を達成するために必要な情報を容易に入手することができる場合
- (b) 許される目的を達成するために必要な行為のみに逆コンパイルすることを限定しない場合
- (c) 逆コンパイルすることによって得られた情報を,許される目的を達成するためにそれを提供する必要のないいずれの者にも提供する場合
- (d) 逆コンパイルされたプログラムにその表現が実質的に類似するプログラムを創作するため,又は著作権により制限されるいずれかの行為を行うために,その情報を使用する場合
- (4) ある行為がこの条に基づいて許される場合には,その行為を禁止し,又は制限することを意味する協定にいずれかの条件(このような条件は,第296条のAに基づいて,無効である。)が存在するか否かは,重要ではない。
(コンピュータプログラムの観察,学習,テスト)
第50条のBA
- (1) コンピュータプログラムの複製物の適法な使用者が,そのプログラムの読み込み,表示,実行,送信,蓄積のいずれの行為を行う権限も有する場合には,そのプログラムの要素の基礎となるアイディアや原理を明らかにするために,プログラムの機能の観察,学習又はテストを行うことは,著作権侵害ではない。
- (2) ある行為がこの条により許容される場合には,その行為を禁止し,又は制限することを意図する条項又は条件が契約に含まれるか否かは,無意味である(そのような条件は,第296条のAに基づいて無効である。)。
(適法な使用者に許される他の行為)
第50条のc
- (1) コンピュータ・プログラムの複製物の適法な使用者が,それを複製し,又は翻案することは,次の2つの条件を満たす場合には,著作権の侵害ではない。
- (a) 複製又は翻案が,その者の適法な使用のために必要であること。
- (b) その者の使用が適法であるという状況を規制する協定のいずれの条件に基づいても,複製又は翻案が禁止されないこと。
- (2) 特に,その中の誤りを訂正する目的のためにそれを複製し,又は翻案することは,コンピュータ・プログラムの適法な使用のために必要であるかもしれない。
- (3) この条の規定は,第50条のA又は第50条のBに基づいて許されるいずれの複製又は翻案にも適用されない。
(ある種の条件を無効とすること)
第296条のA
- (1) ある者が協定に基づいてコンピュータ・プログラムの使用権を有する場合には,協定中のいずれの条件も,それが次のことを禁止し,又は制限することを意図する限りは,無効である。
- (a) 協定した使用の目的上有することがその者にとって必要であるプログラムのいずれかの予備の複製物を作成すること。
- (b) 第50条のB第2項の条件が満たされる場合に,プログラムを逆コンパイルすること。
- (c) プログラムのいずれかの要素の基礎を成す着想及び原則を理解するためにプログラムの機能を観察し,研究し,又は試験するためのいずれかの装置又は手段を使用すること。
- (2) (略)
オーストラリア法(「外国著作権法令集(33)-オーストラリア編-」1999年3月,社団法人著作権情報センター)
第47B条 コンピュータ・プログラムの通常の使用または研究のための複製
- (1) 第(2)項に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物に対する著作権は,以下の場合には,当該著作物の複製により侵害されない。
- (a) 当該複製物が,当該プログラムが作成された目的のために,当該プログラムのコピーを実行する技術的過程の一部として,付随的かつ自動的に作成され,かつ
- (b) 当該コピーの実行が,当該コピーの保有者または被許諾者によりまたはこれに代わり行われる場合。
- (2) 第(1)項は,以下の場合にはコンピュータ・プログラムの複製には適用しない。
- (a) 当該コンピュータ・プログラムの侵害コピーから複製する場合,または
- (b) 当該コンピュータ・プログラムの著作権者によりまたはこれに代わり当該コピーの保有者または被許諾者に対して行われた明示の指示または許諾に反して,当該保有者または被許諾者が当該コピーを取得した時に行われる場合。
- (3) 第(4)項に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物に対する著作権は,以下の場合には,当該著作物の複製により侵害されない。
- (a) 当該複製物が,当該プログラムの背後にあるアイディアおよび当該プログラムが機能する方法を研究する目的のために,当該プログラムのコピーを実行する技術的過程の一部として,付随的かつ自動的に作成され,かつ
- (b) 当該コピーの実行が,当該コピーの保有者または被許諾者によりまたはこれに代わり行われる場合。
- (4) 第(3)項は,コンピュータ・プログラムの侵害コピーからの複製には適用しない。
- (5) 本条において,
複製物 とは,コンピュータ・プログラムに関しては,第21条(5)(b)にいう種のプログラムの版を含まない。
第47C条 コンピュータ・プログラムのバックアップ・コピー
- (1) 第(4)項に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物に対する著作権は,以下の場合には,当該著作物の複製により侵害されない。
- (a) 当該複製物が,複製元となるコピー(原コピー)の保有者または被許諾者によりまたはこれに代わり作成され,
- (b) 当該複製物が,原コピーの保有者または被許諾者によるまたはこれに代わり行われる使用のためにのみ作成され,かつ
- (c) 当該複製物が,以下のいずれかの目的のために作成される場合。
- (i) 原コピーの保有者または被許諾者が原コピーの代わりに複製物を使用し原コピーを保管できるようにすること。
- (ii) 原コピーの保有者または被許諾者が,原コピーが紛失し,破棄されまたは使用不能となった場合に原コピーの代わりに使用できる複製物を保管できるようにすること。
- (iii) 原コピーの保有者または被許諾者が,原コピーが紛失し,破棄されまたは使用不能となった場合に,原コピーまたは本項に基づき作成された複製物の代わりに別の複製物を使用できるようにすること。
- (2) 第(4)項に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物および同一のコンピュータ・システム上に当該プログラムと共に保存される著作物または他の権利対象物に対する著作権は,以下の場合には,当該プログラムまたは著作物もしくは他の権利対象物の複製により侵害されない。
- (a) 当該複製物が,複製元となるコピー(原コピー)の保有者または被許諾者によりまたはそのために作成され,かつ(b) 当該複製が,保存のためのデータの通常のバックアップの過程で行われる場合
- (3) 第(1)項は,同項(c)(iii)に定める目的のために作成された著作物の複製に関して,当該著作物の他の複製物が同一のコピーから同一の目的のために以前に作成されたか否かを問わず適用する。
- (4) 第(1)項および第(2)項は,以下の場合には,コンピュータ・プログラムの複製には適用しない。
- (a) コンピュータ・プログラムの侵害コピーから複製する場合,または
- (b) 当該コンピュータ・プログラムの著作権者が,当該プログラムを改変することなくコピーを作成できないように当該プログラムを設計した場合,または
- (c) 当該コンピュータ・プログラムの著作権者によりもしくはこれに代わり,原コピーの保有者が原コピーを取得した時に付与された原コピーの使用許諾が終了しもしくは解除された場合。
- (5) 本条において,コンピュータ・プログラムのコピーとは,当該コンピュータ・プログラムが有形的形式にて複製された物品を指すものとする。
- (6) 本条において,
複製物 とは,コンピュータ・プログラムに関しては,第21条(5)(b)に定める類のプログラムの版を含まない。
第47D条 互換製品を作成するためのコンピュータ・プログラムの複製
- (1) 本節に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物に対する著作権は,以下の場合には,当該著作物の複製物または翻案物の作成により侵害されない。
- (a) 当該複製物または翻案物が,その作成のために使用したプログラム(原プログラム)のコピーの保有者または被許諾者によりまたはこれに代わり作成され,
- (b) 当該複製物または翻案物が,原プログラムまたは他のプログラムに接続して共に使用され,またはその他の方法で互換するために,別のプログラム(新プログラム)または物品を独自に作成することを,原プログラムの保有者もしくは被許諾者またはこれに代わり行為する者ができるようにするために必要な情報を取得するために作成され,
- (c) 当該複製物または翻案物が,第(b)号に定める情報を取得するために合理的に必要な範囲に限って作成され,
- (d) 新プログラムが原プログラムを複製または翻案する限りにおいて,新プログラムが原プログラムまたは他のプログラムと接続して共に使用されまたはその他の方法で互換することができるために必要な範囲に限って複製または翻案され,かつ
- (e) 当該複製物または翻案物が作成された時に,第(b)号にいう情報を他の手段で保有者または被許諾者が容易に取得できない場合。
- (2) 第(1)項は,コンピュータ・プログラムの侵害コピーからの複製または翻案には適用しない。
第47E条 エラー修正のためのコンピュータ・プログラムの複製
- (1) 本節に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物に対する著作権は,以下の場合には,1999年2月23日以後に行われた複製または翻案によって侵害されない。
- (a) 当該複製物または翻案物が,これを作成するために使用したプログラムのコピー(原コピー)の保有者または被許諾者によりまたはこれに代わり作成され,
- (b) 当該複製物または翻案物が,原コピーの以下の動作 (他のプログラムまたはハードウェアとともに使用する場合を含む) を妨げるエラーを修正するために作成され,
- (i) 著作者が意図した動作,または
- (ii) 原コピーと共に提供される仕様書もしくはその他の文書に従った動作
- (c) 当該複製物または翻案物が,第(b)号に定めるエラーを修正するために合理的に必要な範囲に限って作成され,かつ
- (d) 当該複製物または翻案物が作成された時に,保有者または被許諾者が,第(b)号に定めるとおり動作するプログラムの他のコピーを,合理的な期間内に通常の商業的価格にて入手できない場合。
- (2) 第(1)項は,コンピュータ・プログラムの侵害コピーからの複製または翻案には適用しない。
第47F条 セキュリティ・テストのためのコンピュータ・プログラムの複製
- (1) 本節に従い,コンピュータ・プログラムである言語著作物に対する著作権は,以下の場合には,当該著作物の複製または翻案によって侵害されない。
- (a) 当該複製物または翻案物が,これを作成するために使用したプログラムのコピー((原コピー)の保有者または被許諾者によりまたはこれに代わり作成され
- (b) 当該複製物または翻案物が,以下のいずれかの目的のために作成され,
- (i) 原コピーまたは原コピーを含むコンピュータ・システムもしくはネットワークのセキュリティを善意にてテストすること
- (ii) 原コピーまたは原コピーを含むコンピュータ・システムもしくはネットワークのセキュリティの問題または無許諾アクセスに対する脆弱性を,善意にて調査しまたは修正すること
- (c) 当該複製物または翻案物が,第(b)号に定める目的を達成するために合理的に必要な範囲に限って作成され,かつ
- (e) 当該複製物または翻案物が作成された時に,これらにより得られた情報を他の手段で保有者または被許諾者が容易に入手できない場合。
- (2) 第(1)項は,コンピュータ・プログラムの侵害コピーからの複製または翻案には適用しない。
第47G条 コピーまたは情報の無許諾使用
- (1) もし,
- (a) コンピュータ・プログラムである言語著作物の複製物または翻案物が,所定の規定に基づき作成され,かつ
- (b) 当該複製物もしくは翻案物またはそれらから得られた情報が,当該コンピュータ・プログラムの著作権者の承諾なく,当該規定に定める目的以外のために使用されまたは他者に販売もしくはその他の方法で提供された場合には,
- 当該複製または翻案の作成には当該規定を適用せず,また,適用されなかったものとみなす。
- (2) 本条においては,第47B条,第47C条,第47D条,第47E条および第47F条を所定の規定とする。
第47H条 一定の規定の適用を排除する合意
第47B条(3)または第47C条,第47D条,第47E条もしくは第47F条の適用を排除もしくは制限し,または排除もしくは制限する効果を有する合意またはその規定は,効力を有しない。
○アメリカ法(「外国著作権法令集(29)-アメリカ編-」2007年7月,社団法人著作権情報センター
第107条 排他的権利の制限:フェア・ユース
第106条および第106A条の規定にかかわらず,批評,解説,ニュース報道,教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む),研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は,著作権の侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は,以下のものを含む。
- (1) 使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)。
- (2) 著作権のある著作物の性質。
- (3) 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性。
- (4) 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響。
上記の全ての要素を考慮してフェア・ユースが認定された場合,著作物が未発行であるという事実自体は,かかる認定を妨げない。
117条 排他的権利の制限:コンピュータ・プログラム
- (a) コピーの所有者による追加的コピーまたは翻案物の作成
第106条の規定にかかわらず,コンピュータ・プログラムのコピーの所有者が,当該コンピュータ・プログラムの新たなコピーまたは翻案物を作成しまたはこれを許諾することは,以下の場合には侵害とならない。- (1)かかる新たなコピーもしくは翻案物が,機械によるコンピュータ・プログラムの利用に不可欠な段階として作成され,かつ,他の方法では一切使用されない場合,または
- (2)かかる新たなコピーもしくは翻案物が,資料保存目的のみのものであり,かつ,コンピュータ・プログラムの占有を継続することが適法でなくなった場合には全ての保存用コピーが廃棄される場合。
- (b)~(d) (略)
第1201条 著作権保護システムの回避
- (a)~(e) (略)
- (f) リバース・エンジニアリング
- (1)第(a)節(1)(A)の規定にかかわらず,コンピュータ・プログラムのコピーを使用する権利を適法に取得した者は,独自に創作したコンピュータ・プログラムとその他のプログラムとの互換性を達成するために必要なプログラムの要素であって,回避を行う者にとってそれまで容易に入手することができなかったプログラムの要素を特定し解析する目的のみのために,かかる特定および解析の行為が本編に基づく侵害を構成しない範囲において,当該プログラムの特定の部分へのアクセスを効果的にコントロールする技術的手段を回避することができる。
- (2)第(a)節(2)および第(b)節の規定にかかわらず,互換性の達成のために必要である場合は,第(1)項に基づく特定および解析を可能にするために,または,独自に創作されたコンピュータ・プログラムとその他のプログラムとの互換性を達成するために,本編に基づく侵害を構成しない範囲において,技術的手段を回避する技術的手段,または技術的手段により施される保護を回避する技術的手段を,開発し使用することができる。
- (3)第(1)項に基づき許容される行為によって得られた情報および第(2)項に基づき許容される手段は,第(1)項または第(2)項にそれぞれ掲げる者が当該情報または手段を,独自に創作されたコンピュータ・プログラムとその他のプログラムとの互換性を達成するためのみに提供する場合には,本編に基づく侵害を構成せず,また本条以外の適用法に違反しない範囲において他者に提供することができる。
- (4)本項において,「互換性」とは,コンピュータ・プログラムが情報を交換し,交換された情報を相互に使用できる機能をいう。
- (g)暗号化研究-
- (1) 定義-本節において-
- (A) 「暗号化研究」とは,当該行為が暗号化技術の分野における知識を進歩させまたは暗号化製品の開発を支援するために行われる場合において,著作権のある著作物に使用される暗号化技術の欠点や弱点を特定し解析するために必要な行為をいう。
- (B) 「暗号化技術」とは,数式またはアルゴリズムを用いて,情報にスクランブルをかけまた解除することをいう。
- (2) 暗号化研究において許容される行為-第(a) 節(1) (A) の規定にかかわらず,善意誠実な暗号化研究の行為において,発行著作物のコピー,レコード,実演または展示に適用された技術的手段を回避することは,以下の全てをみたす場合には当該規定の違反とならない。
- (A) 行為者が,当該発行著作物の暗号化されたコピー,レコード,実演または展示を適法に入手したこと。
- (B) 当該行為が暗号化研究を行うために必要であること。
- (C) 当該者が,回避の前に許可を得るよう誠実に努力したこと。
- (D) 当該行為が本編に基づく侵害を構成せずまたは本条以外の適用法(第18編第1030条および1986年コンピュータ詐欺・濫用法によって修正された第18編の規定を含む) の違反とならないこと。
- (3)免責を決定する要素-第(2) 項に基づく免責を受けることの可否を決定するにあたって考慮されるべき要素は,以下を含む。
- (A) 暗号化研究により得られた情報が流布されたか。もし流布された場合には,暗号化技術の知識または開発を進歩させるべく合理的に計算された方法で流布されたか,それとも,本編における権利侵害または本条以外の適用法の違反(プライバシーの侵害または安全の侵害を含む) を容易にする方法で流布された。
- (B) 行為者が暗号化技術の分野において,正当な研究に従事し,雇用され,または適切に訓練もしくは経験を積んでいるか。
- (C) 行為者が,技術的手段の適用されている著作物に対する著作権者に,研究結果の研究の文書を通知しているか,また,いつ通知したか。
- (4)・(5) (略)
- (h)・(i) (略)
- (j) セキュリティ検査-
- (1) 定義-本節において,「セキュリティ検査」とは,コンピュータ,コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ネットワークの所有者または運営者の許諾を得て,セキュリティ上の欠点または弱点を善意誠実に検査し,追究しまたは補正することを唯一の目的として,当該コンピュータ,コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ネットワークにアクセスを行うことを意味する。
- (2) セキュリティ検査において認められる行為-第(a) 節(1) (A) の規定にかかわらず,セキュリティ検査の行為を行うことは,かかる行為が本編における権利侵害または本条以外の適用法(第18編第1030条および1986年コンピュータ詐欺・濫用法により修正された第18編の規定を含む) の違反とならない場合には,当該条項の違反とならない。
- (3) 免責を決定する際の要素-第(2) 項に基づき免責を受けることができるか否かを決定するにあたって考慮されるべき要素は,以下を含む。
- (A) セキュリティ検査から得られた情報が,コンピュータ,コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークの所有者もしくは運営者におけるセキュリティを促進するためのみに使用されたか,または,コンピュータ,コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークの開発者と直接共有されたか。
- (B) セキュリティ検査から得られた情報が,本編における権利侵害または本条以外の適用法の違反(プライバシーの侵害またはセキュリティの侵害を含む) を容易にしないような方法で使用されまたは保持されたか。
- (4) セキュリティ検査のための技術的手段の使用-第(a) 節(2) の規定にかかわらず,第(2) 項に掲げるセキュリティ検査の行為を行うことのみを目的として技術的手段を開発し,製作し,頒布しまたは使用することは,かかる技術的手段が他に第(a) 項(2) に違反する事由がない場合には,第(a) 節(2) の違反とはならない。
- (k) (略)