「間接侵害」に関する中間報告

平成20年9月4日
司法救済ワーキングチーム

1 今期の検討の背景

(1)「間接侵害」に係る課題の概況

著作権法においては,同法上の権利を「侵害する者又は侵害するおそれがある者」に対し,同法第112条第1項に基づき,差止請求を行うことが認められている。しかし,著作物等につき自ら(物理的に)利用行為をなす者以外の者に対して差止請求を行うことができるかどうかについては,現行著作権法上,必ずしも明確ではないと考えられる。
従来の裁判例においては,著作物等につき自ら(物理的に)利用行為をなすとは言い難い者を一定の場合に利用行為の主体であると評価して差止請求を肯定したもの(クラブ・キャッツアイ事件1等)や,一定の幇助者について侵害主体に準じるものと評価して差止請求を肯定した下級審裁判例(ヒットワン事件2)や,著作権法112条1項の類推適用に基づき差止請求を肯定した裁判例(選撮見録事件3)も見られる。
しかし,これをめぐっては様々な議論が展開されているほか,従来の裁判例においても,自ら(物理的に)利用行為をなす者以外の者に対して差止請求を肯定できるかどうか,肯定できるとすればその相手方となる主体はどのような者か,そしてその差止請求の根拠は何か,ということについて一致した認識があるとは必ずしもいえない。
そこで,著作権法上,物理的な利用行為の主体以外の者に対しても差止請求を肯定することができるかどうか,また,その立法的対応の必要性等の検討が課題とされてきた。そこで,これまでの法制問題小委員会においては,従来の裁判例からのアプローチ,外国法からのアプローチ,民法からのアプローチ,特許法等からのアプローチのそれぞれにより,基礎的な研究及び検討を行った上で,具体的な立法案の検討を進めてきた。
一方,近年では,情報通信技術の発展により,インターネット等を利用した著作物の創作・流通が活発になったことに伴う著作権法上の課題の指摘が見られるようになっており4,裁判例においても,従来のカラオケスナックの経営者などのような著作物の直接的利用者を物理的に支配下におく者に対して侵害主体性を認めるケースに加えて,ファイルローグ事件5,2ちゃんねる小学館事件6,MYUTA事件7などインターネットを通じて著作物の利用の場を提供する事業者に対して著作権等侵害に基づく差止請求や損害賠償請求を認めた例が見られるようになっている。
この点については,政府の知的財産戦略本部においても,情報通信技術の発展を踏まえ,技術革新や新しいビジネスモデルに対する法的予測可能性を高める観点から,コンテンツ流通に間接的に関与する者の法的責任の明確化の必要性が指摘されている。

1最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁

2大阪地判平成15年2月13日判時1842号120頁

3大阪地判平成17年10月24日判時1911号68頁

4「『インターネットの普及に伴う著作物の創作・利用形態の変化について』報告書」(平成20年3月,三菱UFJリサーチ&コンサルティング)では,ストレージサービスやファイル共有サービスなどの提供を巡る著作権上に関わる問題点について指摘されている。

5東京高判平成17年3月31日最高裁HP

6東京高判平成17年3月3日判時1893-126

7東京地判平成19年5月25日最高裁HP

●「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について<検討経過報告>」

(平成20年5月29日,デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会)

3.改革が必要な課題について

(5) 新たな技術やビジネスモデルの出現に際して,柔軟に対応し得る規定がなく,新たな動きが萎縮しがちである。

情報通信技術は,従来の技術に比べ,その普及の速度と範囲は桁違いであり,現状の技術への対応のみに終始すると,制度は常に時代遅れのものとなってしまう。また,現行著作権法では想定されていない新たな技術やビジネスモデルについては,企業等は著作権侵害となることを恐れ,挑戦することに萎縮しがちになるという指摘がある。
このため,技術革新や新しいビジネスの創出を促す観点から,今後の技術の進歩や新たなビジネスモデルの出現に対応しうる一般的な権利制限規定を設け,今後の変化に柔軟に対応できる法制度とすることが考えられる。一方で,情報通信技術の発展に応じたいわゆる間接侵害に係る法的責任の明確化を図ることにより,新しいビジネスモデルに対する法的評価についての予測可能性を高めることが必要である。

<具体的課題>

  • (1) 権利者の利益を不当に害しないと認められる新たな利用について柔軟に対応し得る包括的権利制限規定の導入。
  • (2) コンテンツの流通に対して間接的に関与する者の法的責任の明確化。

●「知的財産推進計画2008-世界を睨んだ知財戦略の強化-」

(2008年6月18日,知的財産戦略本部)(抜粋)

第4章 コンテンツをいかした文化創造国家づくり

Ⅰ.デジタル・ネット時代に対応したコンテンツ大国を実現する

1.デジタル・ネット環境をいかした新しいビジネスへの挑戦を促進する

(1)動画配信ビジネスの成長を支援する

(1)コンテンツ共有サービスの法的環境等を整備する [P84]

新たなメディアとして成長しつつある動画投稿サイト等により今後の新しいコンテンツ市場の創出が期待されるため,サービス事業者による権利者との著作物の利用に係る包括契約の締結や違法コンテンツを排除するための技術的手段等の活用などの自主的な取組を促進する。また,サービス事業者が萎縮しないよう,著作権の間接侵害について検討を行い,2008年度中に結論を得る。 (総務省,文部科学省,経済産業省)

(2)関係事業者及び権利者団体の動向

このような状況の下で,情報通信技術を利用したコンテンツの流通に関わる事業者等からは,著作権侵害に係る間接的責任の在り方について,次のような指摘がされている。

【事業者の意見】

○ カラオケ法理が拡大解釈されることに懸念している。要件定立により明確化し,予測可能性を確保してほしい。

○ まねきTV事件,選撮見録事件,MYUTA事件などについては,複製等機器の所有・占有,ユーザーにとっての複製の技術的困難性,複製等に使用されるソフトの提供者などの要素が考慮されているが,管理支配性の判断においてどういう要素が重視されているのかが不明確。

○ 録画ネット事件,まねきTV事件,選撮見録事件,MYUTA事件はユーザーの利用行為は私的複製として適法なものである。ユーザーが適法な場合,アメリカでは間接侵害責任は生じないが,我が国では問題となっているため,対応が必要。

○ アメリカのGrokster事件では著作権侵害を積極的に助長する意図等が要件とされているが,我が国のWinny事件では非営利,非管理で,積極的侵害意図をもたない場合であっても,実際の態様についての認識,現実の利用方法についての認識があることを理由に幇助犯の成立が認められており,諸外国より責任の範囲が広い。

○ 間接侵害類型に,仮に「専ら侵害の用に供されるサービスの提供」という要件を課す場合は,その範囲については要検討。ウェブサービスは提供時点ではそれが違法に利用されるのか適法に利用されるのかは事業者には分からない。

○ YoutubeはアメリカではDMCAに基づき運営されていて侵害を指摘された段階で消せば基本的には責任は負わないはずだが,日本では間接侵害が広く認められており,Youtubeのようなサービスの実施も非常に困難。

○ 新しいサービスが常に出るからこそ,こうすれば免責されるというセーフハーバーが必要。

○ インターネット・サービス・プロバイダ(以下「ISP」という。)の間接的責任について,プロバイダ責任制限法ガイドラインの範囲で削除をすれば著作権法上も免責されるようにしてほしい。

他方,権利者団体からは,次のような指摘がされている。

【権利者団体の意見】

○ ネットワーク上での違法利用は匿名性が高く,権利者が直接侵害者を特定するのは困難。広範で深刻な権利侵害が行われる背景には,直接侵害者に道具を提供している者があるので,そのような者に一定の責任を負ってもらうことが必要。

○ 規範的に侵害の主体と認定できるような類型はもちろん,侵害の幇助者に対しても主観要件など一定の要件の下で差止めの対象とすべき。具体的には,電子掲示板運営者に対する小学館事件,P2P管理者に対するGrokster事件のような類型も対象とすべき。また,著作権侵害が差し迫っているとの立証をした場合は,実演の興行のための会館の提供など,場所の提供という幇助に対して差止めを認めるべき。

○ 管理支配性が高くなくても重大な侵害に寄与しているケースもある。例えば,違法複製物へのリンクを提供するサービスを侵害とするべき。

○ 間接侵害者に対する差止請求を112条において明確化する方向が適切。ただし,裁判所が事案に応じて柔軟に判断してきた侵害主体の判断を硬直化,又は不適切に狭めることのないようにしてほしい。

○ 立法の際は,欧米先進諸国の保護のレベルを下回ったり,現在の保護の水準より後退しないようにしてほしい。

○ 侵害が多様化しており,安易に責任を制限する立法は不適切。ケースに応じて判断できるようにすべき。

(3)今期の対応方針

上記(2)を概観すると,間接侵害に係る裁判例の蓄積が見られる現状について,立法による明確化への希望は事業者,権利者団体両者に共通してみられるものの,その観点については,次のように異なる。すなわち,権利者側としては,権利行使の明確な根拠を得るため,基本的には,判例で蓄積されてきた内容を踏襲する形で侵害となる類型の明確化をしてほしいという要請があるものと捉えられる。
一方,事業者側からは,サービス提供に当たっての予測可能性・法的安定性を確保するため,カラオケ法理の過度の拡張解釈を抑えた形で侵害類型を明らかにすることが求められている。また,これに加えて,情報通信技術を活用して日々新しい技術やサービスが生まれる現在において,特にISPがそのサービス提供を行うに当たり,米国法のDMCA等を踏まえて,著作権法上の「間接侵害責任の生じない範囲の明確化」を図ることへの要請があるものと捉えられる。
上記のうち「間接侵害類型の明確化」への対応については,これまでも検討を進めてきたが,ISPについて「間接侵害責任の生じない範囲の明確化」への対応については,前者と関連する面もあるが,特にISP特有の状況などを踏まえた特別な制度設計の要否等については別途の検討を要する面があると考えられることから,まずはこの点に係る別途の立法的対応の必要性について,急ぎ検討を進めることとし,これまでの検討課題である「間接侵害類型の明確化」全般の問題についても,並行して,引き続き検討を行うこととした。
具体的には,ISPの「間接侵害責任の生じない範囲の明確化」については,関係者の要請を踏まえた現状分析及び法的な課題の整理を行うこととした。
また,「間接侵害類型の明確化」については,これまでの検討に加えて,上記の指摘を踏まえて新たな課題にも配慮して検討を進めることとした。

2.検討経過

(1)ISPの「間接侵害責任の生じない範囲の明確化」に関する検討

(1) プロバイダ責任制限法の運用状況
ISPの著作権等侵害に係る責任については,平成13年に制定された特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)で,一定の条件の下で免除が認められている。
具体的には,侵害の防止措置が技術的に不可能な場合,又は侵害について知らなかったとき,又は侵害について知ることができたと認めるに足りる相当の理由がない場合については,損害賠償責任が免除されることとなっているが,この「相当の理由」の判断について,具体的基準は法律上明らかにはされていない。
このため,同法の運用に当たっては,著作権者等及びISPがその行動基準を明確化することを目的として,権利者,事業者及び利用者の参加の下でプロバイダ責任制限法著作権関係ガイドラインを策定し,同ガイドラインに従った侵害情報の削除請求等の対応を行うこととしている。
すなわち,同ガイドライン所定の要件を具備した方法によって著作権者等から侵害防止の申出があった場合には,ISPは同法3条1項2号又は同条2項1号の「相当の理由」があったものとして取り扱い,当該ISPは,同法3条2項2号所定の手続き(発信者に連絡をして7日間経っても反論がない場合に削除等を行うこと)によらず,速やかに削除等の送信防止措置を講ずることが可能であるとしており,いわゆる「ノーティス・アンド・テイクダウン」手続きが私的枠組みの下で実現されている8

8「プロバイダ責任制限法著作権関係ガイドライン」(平成15年11月,プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会 著作権関係WG)1頁,2頁参照。なお,同ガイドラインに定められるノーティス・アンド・テイクダウン手続きにおいては,次のような事項を定めることにより,侵害防止申出の信頼性の確保が図られている。
  • ア 対象とする著作権等侵害の範囲については,主なものとして複製権,公衆送信権,送信可能化権侵害の場合を例示していること,
  • イ 対象とする権利侵害の態様としては,情報の発信者が著作権等侵害であることを自認しているものや,著作物等の全部又は一部を丸写ししたファイル等に限定すること,
  • ウ 申出の際,権利者であることの確認や侵害情報の特定,著作権等侵害であることの確認のために必要となる資料を定めていること,
  • エ 申出が「信頼性確認団体」を経由して行われる場合には,ISPはその申出書が適切に確認されたと判断できることとすること。

著作権等侵害に係るISPの責任については,現行のプロバイダ責任制限法の運用状況について,事業者から次のような指摘がある。

  • a ガイドラインへの認識のない者もいるため,権利者でない者からの申立,侵害情報の特定や証拠資料の添付が不十分である状態での申立等,ガイドラインの要件を充足しない手続きで侵害防止措置の申立てがあった場合にどのように対応すればよいか不明確。
  • b ISPには侵害情報を事前監視していないことで権利侵害に問われるのではないかとの懸念がある。事前監視はコスト面及び技術面から実際上困難である。通知があるまではそのような作為義務が生じないことを明確化してほしい。
  • c サービス全体の停止を内容とする差止命令や,事実上サービスを停止する以外に対処が不可能な差止命令が出るのではないかとの懸念がある。
  • d 申立を受けた過去の侵害情報の削除を行ったとしても,将来にわたる差止命令がなされるリスクについて懸念する。
  • e 現行では,損害賠償請求と差止請求を受ける時点との法的な関係が不明確であり,これらが合致することが実務的には望ましい。
  • f プロバイダ責任制限法では,刑事罰については免責されないため,法的リスクが残る。

(2) 我が国における裁判例の状況

<著作権関係の裁判例>

◆ 2ちゃんねる小学館事件(東京高判平成17年3月3日)
電子掲示板に書き込まれた発言内容が,原告が著作権を有する書籍に収録された記事の一部に係る権利を侵害しているとして,当該電子掲示板の運営者に対して,当該発言を自動公衆送信又は送信可能化しないこと及び損害賠償を請求した事例であり,両請求ともに認容された。
本判決では,
「インターネット上においてだれもが匿名で書き込みが可能な掲示板を開設
し運営する者は,著作権侵害となるような書き込みをしないよう,適切な注意事項を適宜な方法で案内するなどの事前の対策を講じるだけでなく,著作権侵害となる書き込みがあった際には,これに対し適切な是正措置を速やかに取る態勢で臨むべき義務がある。掲示板運営者は,少なくとも,著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合には,可能ならば発言者に対してその点に関する照会をし,更には,著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに削除するなど,速やかにこれに対処すべきものである。」
「本件においては,上記の著作権侵害は,本件各発言の記載自体から極めて容易に認識し得た態様のものであり,本件掲示板に本件対談記事がそのままデジタル情報として書き込まれ,この書き込みが継続していたのであるから,その情報は劣化を伴うことなくそのまま不特定多数の者のパソコン等に取り込まれたり,印刷されたりすることが可能な状況が生じていたものであって,明白で,かつ,深刻な態様の著作権侵害であるというべきである。被控訴人としては,編集長Aからの通知を受けた際には,直ちに本件著作権侵害行為に当たる発言が本件掲示板上で書き込まれていることを認識することができ,発言者に照会するまでもなく速やかにこれを削除すべきであったというべきである。」
とされ,当該電子掲示板運営者は,故意又は過失により著作権侵害に加担した者として,
「著作権法112条にいう「著作者,著作権者,出版権者・・・を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に該当し,著作権者である控訴人らが被った損害を賠償する不法行為責任があるものというべき」
とされた。

(参考)<著作権関係以外の裁判例>

◆ 2ちゃんねる動物病院事件(東京高判平成14年12月25日)
インターネット上の掲示板に他人の名誉を毀損する発言が書き込まれ,被害者からの申し入れにもかかわらず削除されなかったことに対して,本件掲示板の管理運営者が訴えられた事例。本事例においては,匿名による発言を誘引している本件掲示板の管理運営者には,利用者に注意を喚起するなどして本件掲示板に他人の権利を侵害する発言が書き込まれないようにするとともに,そのような発言が書き込まれたときには,被害者の被害が拡大しないようにするため直ちにこれを削除する義務があるとした上で,本件掲示板の管理運営者は,被害者からの通知書等により当該発言が書き込まれたことを具体的に知ったにもかかわらず,当該発言の削除等の措置を講じなかったこととされ,その削除義務違反が認められた。

◆ ニフティサーブ事件(東京高判平成13年9月5日)
パソコン通信の電子会議室に他人の名誉を毀損する発言が書き込まれた場合に,その発言についてシステム・オペレーター及びパソコン通信の主催者の法的責任等をめぐって争われた事例。本事例では,誹謗中傷等の問題発言の標的とされた者がフォーラムにおいて自己を守るための有効な救済手段を有しておらず,会員等からの指摘等に基づき対策を講じても,なお奏功しない等の一定の場合には,そのフォーラムのシステム・オペレーターは,当該発言を削除すべき条理上の義務を負うとした。しかし,本件において当該システム・オペレーターは,発信者に対して遅滞なく注意を喚起しており,また,名誉を毀損されたとする者に対して削除対象を明示すべき等の削除の措置を講じる手順について理解を求めている。その上,名誉を毀損されたとする者の訴訟代理人より削除要求がされた際は削除しており,訴訟の提起後新たに明示された発言についても削除の措置を講じている。これらのことに鑑み,削除に至るまでの行動について許容限度を超えて遅滞したと認めることはできず,当該システム・オペレーターは削除義務に違反していないとされ,パソコン通信の主催者(ニフティ)は当該システム・オペレーターの削除義務違反を前提とする使用者責任を負わないとされた。

◆ 都立大学事件(東京地裁判決平成11年9月24日)
大学のシステム内に名誉毀損に当たるホームページが開設され,被害者からの申し入れにもかかわらず削除されなかったことに対して,発信者とともに,システム管理者としての大学が訴えられたケースにおいて,ネットワーク管理者が被害者に対して責任を負うのは,名誉毀損文書が発信されていることを現実に認識しただけでなく,その内容が名誉毀損文書に該当すること,加害行為の態様が甚だしく悪質であること及び被害の程度が甚大であることなどが一見して明白であるような極めて例外的な場合に限られるとして,ネットワーク管理者の削除義務は否定された。

(3) 立法による対応の必要性について
インターネットを利用した著作物の流通過程で,著作物等の複製・送信などが大量かつ自動的に行われる等の特性があることも踏まえ,その事業の安定的遂行の観点から,一定の条件の下で,著作権法上,責任を負わないことを明確化するための立法(いわゆるセーフハーバー規定の導入)を行うことが適当とのことについて,概ね意見の一致があった。
ただし,上記(1)の事業者の指摘のうち,仮にプロバイダ責任制限法に従い侵害防止の申出を受けて侵害情報の削除が行われる場合,差止請求権を制限する利益はなくなることとなり,その意義が不明確ではないかとの意見もあった。

(4) セーフハーバー規定の導入を検討する場合の論点

ア 基本的方向性
本検討における基本的方向性としては,以下のような提案があった。

ⅰ 侵害の認識につき善意無過失である場合,又はプロバイダ責任制限法及びガイドラインで実施されている手続きと同様の手続きに則って侵害防止の申出を受け,侵害の認識を得た場合であって当該ISPがすみやかに当該侵害情報の削除を行った場合は,著作権法上の責任を負わないこととする案

ⅱ 侵害の認識につき善意無過失であることを条件として,米国DMCA512条に規定されるような簡便・形式的な侵害防止の申出を受け,ISPがすみやかに当該侵害情報の削除を行った場合は著作権法上の責任を負わないこととする案

ⅰは,基本的にプロバイダ責任制限法及びガイドラインで実施されている枠組みを著作権法上に位置づけるものであることから,現行の実務に大きな変更を加えず,混乱を生じない形で,一定程度法的安定性を確保できるものと考えられ,方向性としては適当との意見が大勢であった。他方,この案については,侵害防止の申出の手続きをどこまで法律上明示できるかは疑問であるとの意見があった。また,本検討が,現行法の解釈上もISPに責任がないと解されているケースを確認的に規定するものであるならば,そのような確認的立法が同法に馴染むのか疑問であるとの意見があった。

ⅱについては,ISPに侵害であることの判断のリスクを負わせないというメリットがある。他方,この案については,発信者への免責条件の整備又は反対通知・復活制度及び発信者情報開示請求についても米国のような方式に合わせて改めることの検討を行わなければ,権利者の権利の救済及び発信者の権利の保護に欠けるのではないかとの意見があった。

イ 責任制限の保護対象となるISPの範囲について

ISPの責任制限の趣旨が,流通する情報の権利侵害性を逐一調査・確認を行うことが困難であることにあると考えられることから,少なくともISPが自ら流通させる情報の内容に関与すること等により侵害に積極的に関与・誘引していると認められる場合については,免責の対象外とすることが適当との意見が大勢であった。
しかし,その他に,どのような者が免責の対象外となるかについての判断は,「間接侵害」の全体の検討とも関連する事項であり,この関係について留意が必要との意見があった。

ウ 発信者保護のための措置(反対通知・復活制度)・発信者情報開示請求制度について

ノーティスアンドテイクダウン手続きを導入する場合に,発信者の保護が問題となり,米国法のように反対通知・復活制度を設けるべきか否かが問題となる。また,その場合,権利者は自らの権利保全のためには発信者に対する訴訟提起を余儀なくされることから,発信者情報開示手続きについても,米国法にならった簡便なものを導入すべきか否かについても,問題になるものと考えられる。
この点,現行のプロバイダ責任制限法及びガイドラインに基づく運用においては,同ガイドラインの所定の要件を満たした権利者からの通知により,同法3条1項1号の「相当の理由」有りとして取り扱われており,必要的に発信者に意思確認をする手続きとはなっていないものと考えられる。また,発信者情報開示請求手続きについても,ISPに重過失がない限り開示義務を負わないこととするなど,発信者の保護に配慮されていると考えられる。
同制度の変更には,プロバイダ責任制限法においても,通信の秘密や表現の自由に配慮した制度設計になっていることを踏まえ,著作権分野において特別な制度を設ける正当性等について,慎重に検討を行うことが必要であると考えられる。

エ プロバイダによる監視義務について
事業者側からは,(1)bのとおり,侵害情報の存在を事前監視することは困難との意見が出されている。一方,権利者側からは,特に動画投稿サイトにおいては,一日に何万件もの違法情報がアップロードされており,削除要請が追いつかないとして,一定の場合には,プロバイダが監視義務を負うべきとの意見が出されている。
我が国においては,プロバイダ責任制限法でも基本的に事前監視義務は課されていないものと解されており,裁判例の状況でも,ISPが自ら発信者となるような場合は別として,一般的なサービスを提供するISPに対してこのような義務は課されていないものとも考えられる。なお,欧米では,そのような事前監視義務がないことを立法により定めている9
なお,現在,事業者と権利者団体の包括許諾契約の条件として,一定の範囲で事業者において侵害情報の監視が行われているケースもあるとのことである。
この点については,ISPに対して,一定程度の監視コストを払うことも求められるではないかとの意見もあったところであり,ISPと権利者が負うべき監視コストについて,著作権法上特別に定めをおく必要性があるか否か等については,上記のことも踏まえつつ,検討していくことが必要と考えられる。

オ 標準的技術手段について
米国法では,「標準的技術手段」という技術的な防止措置を講じるべき義務をISPに課している。免責の条件として,このような義務をISPに課すべきか否かについては,利用される著作物の性質によって現時点で対応が可能な技術的手段も異なるため,現実的にISPの対応が困難な局面も出てくることが想定される。他方,現在においても,一部の分野では,任意の取組で,音楽ファイルの探査等が行われている。この点については,技術的・コスト的にISPにかける負担に配慮して検討すべきとの意見があり,現在の技術面での対応可能性等について,更に研究が必要と考えられる。

カ サービス全体に対する差止請求について
事業者からは,サービス全体の停止を内容とする差止命令がなされること等についての懸念があるとされているが,現行法では,そのような命令は無理なのではないか,との指摘があった。なお,米国DMCA512条(j)(A)においては,一定の要件を具備したサービス・プロバイダに対しては,サービス全体の停止を内容とする命令は発することができない旨が明確化されている10

キ 侵害情報を特定しない方式での差止請求・将来の侵害の予防請求について
事業者からは,侵害情報を特定しない形での差止請求や11,将来の侵害の予防請求がなされ,これに基づいて差止命令が出されれば,事実上事前監視義務を課されるに等しくなってしまうことについて懸念があるとされている。
この点については,セーフハーバー規定の導入趣旨を考えると,対象となる著作物を削除可能な程度に特定する必要があることを明示するべきではないか,との意見があった。これに対して,一般的には,現行の裁判例12でも具体的な侵害情報の認識を作為義務発生の条件としており,プロバイダ責任制限法でも,そのような趣旨の制度設計となっていることから,現実的には,そのような懸念は当たらないのではないか,との意見があった。ただし,侵害を反復継続して行っている者が存在している場合には,これに対する予防請求ができることとしておくことが適当ではないか,との意見があった。

ク プロバイダ責任制限法との関係について
新たに差止請求権等の制限を含めた手続きを法定するにあたっては,差止請求権等が制限されるときと,現行のプロバイダ責任制限法により損害賠償責任が免除されるときとの間に差異が生じないようにしてほしいとの要望が,事業者側からあった。
この点については,アのⅰ案及びⅱ案により,どのような影響があるかについて,今後,更に検討が必要であると考えられる。

9アメリカ法512条(c)(m)(1),ドイツテレサービス法8条(2),フランスLCEN法6条1-7

10法律上の規定ぶりとしては,裁判所の発することのできる差止命令が,特定の情報の提供や特定情報へのアクセスの禁止(ⅰ),特定の利用者のアカウントの削除を命じるもの(ⅱ)等に限定されている。

11たとえば,URLを特定しない場合,具体的コンテンツではなく著作物の題号や著作者名のみを特定する場合などが例として挙げられる。

122ちゃんねる小学館事件等。なお,継続して発行される新聞において,将来発生する予定の著作権に基づいて差止請求が認められた事例としてウォールストリートジャーナル事件(東京高判平成6年10月27日判例時報1524号118~134頁)があるが,新聞の発行者とは異なり,ISPの場合は,基本的に侵害行為を主体的に行っている者とは言えないことから,同様の請求がなされることは想定されないと考えられる,との意見があった。

(2)「間接侵害類型の明確化」に関する検討 

(1) 検討の方向性

平成19年度の検討では,差止請求が認められる範囲の明確化について,112条において対応することが適当であるとして立法例の検討を行いつつ,意見募集において,113条により具体的な規定を定めるべきとの意見等が寄せられたことも踏まえて,今後,具体的要件について検討を行うこととされていた。
現時点において,侵害専用品の提供については差止請求の対象とすることについて,基本的にはコンセンサスが得られていると考えられることから,その他の類型についてはどのようなものを含めるべきかについて検討を行うことが適当とされた。
今期は,特に,特許法やイギリス法の規定を参考にしつつ,立法手法(何条において対応すべきか)に関わらず,どのような行為類型をいかなる要件設定により差止請求の対象とすべきかを中心に検討を進めた。なお,対象となる行為類型の範囲の画定に当たっては,現在,問題とされている関係裁判例を分析し,各類型について,対象とすべきか否かの判断を行うことが必要であるとされた。
また,関係団体からの指摘事項を踏まえて,今後,近時の情報通信技術を利用したサービス等の提供に関する裁判例のより詳細な分析等を行うこととするとともに,今後の検討に当たっては,特に次のような点についても留意することとした。

・ ファイル共有ソフトやユーザー投稿型サイトなど,権利侵害以外の用途が想定されている物やサービスの提供行為の取り扱い

・ 直接の(物理的)利用行為者の行為が適法である場合の取り扱い

(2) 各論点についての検討状況

ア 立法の手順について
(1)のとおり,立法化にあたっては,裁判例についてより詳細に分析・評価を行う必要がある一方,ただちに結論を出すことが容易でない事例もあると考えられることから,まずは,上記のコンセンサスの得られている部分(専用侵害品の提供)について立法により明確化を行い,その他の部分については,検討の進捗にあわせて別途立法を行うという選択肢もあるのではないか,との意見があった。

イ 立法の手法について
これまでの112条に規定する案のほか,113条で一定の行為類型を侵害とみなすことと112条のカラオケ法理の適用に委ねることの両方により対応する案や,イギリス法にならって,113条で一定の行為類型を侵害とみなすことと112条に許諾責任類似の規定を置くことの両方により対応する案が提案された。

ウ 権利侵害以外の用途が想定されている物やサービスの提供行為について

○ 対象とすべき範囲について
特許法101条2号・5号は,「課題の解決に不可欠なもの」の提供について規定しているが,様々な要素から構成されており,不可欠なものとそれ以外のもの,という区別がなじむ特許発明に対して,著作物はそのような性質を有さないため,同様の要件設定は困難ではないかと考えられる。
そこで,著作権の場合は,その物やサービスの使用実態によって,侵害に使用されている割合が異なるという性質のものであり,そのような点に着目した要件設定をすべき,との意見が大勢であった。

○ 主観的要件について 権利侵害以外の用途が想定されている物やサービスの提供行為については,特許法101条2号・5号の規定も踏まえ,主観的要件を課すことが適当との意見があった。ただし,差止請求との関係では,訴訟進行の過程で認識を得ることになるため ,主観的要件は機能しないのではないか,との意見があった。

エ 直接の(物理的)利用行為者の行為が適法である場合の取り扱いについて
現在,裁判例においては,録画ネット事件,ロクラク事件など直接の(物理的)利用行為者の行為が私的複製等の権利制限規定による適法利用であると考えられる行為について,その利用行為を管理支配し,利益を受けている者として,当該者に侵害主体性を認めていると考えられるものがある。
このような状況に対し,事業者からは,今後,インターネットの通信速度の向上に伴い,例えばTV放送の個人用録画スペースの提供など,インターネットを利用して私的使用目的の複製の場を提供するサービス等,その多様化が見込まれるとの指摘もあった。
米国・英国では,直接行為者の行為が権利侵害に該当することが間接侵害の成立の前提となっていることも踏まえつつ,この点について,我が国の状況に留意して慎重に検討することが必要,との意見があった。

オ ストレージサーバー,動画投稿サイト等の取り扱いについて
MYUTA事件の判決により,事業者からは,ストレージサービス全体が間接侵害となる可能性があるのではないか,との懸念が示されている。
また,MYUTA事件では,管理性の判断に当たって,事業者が提供したソフトウェアによりユーザー自身では技術的に困難なファイル変換を行っていた点が,考慮されているが,動画投稿サイトでも同様のファイル変換が行われていること等の事情を考慮して,間接侵害となる可能性がある,との指摘があった。また,この場合,2.(1)(4)イで述べたとおり,プロバイダ責任制限法の発信者となり,免責の対象外となる可能性がある。
このため,サービスの実態によっては,仮に現行の判例法理の状況に照らして管理支配性が認められることとなる場合であっても,このようなサービスを適法とすべきとの判断がある場合は,侵害類型の追加に当たっての要件設定により対応する方法のほか,権利制限規定や,セーフハーバー規定による対応も検討すべきではないかとの意見があった。

カ 侵害情報を掲載したウェブサイトのリンク提供行為について
侵害情報を掲載したウェブサイトのリンクを提供する行為についても,侵害となるようにしてほしいとの要望があったが,リンクの提供行為が権利侵害を助長するものとまで言えるかは疑問であるとの意見があった。この点については,今後の判例や蓄積や学説の動向を待つことが適当であると考えられる。

(3) 今後の検討方針
今期の検討では,以上のように検討に一定の進展がみられたものの,関係団体からの指摘事項を踏まえた裁判例の分析等を含め,なお,検討を要する事項が残っているため,それらについて,今後引き続き検討を行う必要がある。

3.まとめ

ISPの「間接侵害責任の生じない範囲の明確化」については,差止請求や刑事罰との関係から法的予測性を高める観点から,一定の要件の下で,ISPの責任の範囲を明確化するための法的措置を行うことが適当であるとのことについて,概ね意見の一致があった。
他方,上記2.の各論点においても様々な意見があったことから,これらの判断がISP及び権利者双方へ与える影響について配慮しつつ,更に研究を行うことが適当と考える。また,この課題については,必ずしも著作権のみに留まることがらでもなく,プロバイダ責任制限法全体に関わるものであるとも考えられること,及び,知的財産戦略本部においても検討課題とされていることも踏まえ,国内の動向を注視しつつ検討を進めていくことが適当であると考えられる。
また,ISP以外も含めた「間接侵害類型の明確化」については,近年の裁判例の分析等を深めつつ,引き続き検討を行うことが適当と考えられる。

参考資料:諸外国における立法例(プロバイダの責任制限関係)

■アメリカ法(「外国著作権法令集(29)-アメリカ編-」2007年7月,社団法人著作権情報センター)(抄)

第512条 オンライン素材に関する責任の制限

  • (a) 通過的デジタル・ネットワーク通信 (略)
  • (b) システム・キャッシング (略)
  • (c) 使用者の指示によってシステムまたはネットワークに常駐する情報

(1)総則
サービス・プロバイダによってまたはそのために管理されまたは運営されるシステムまたはネットワーク上に,使用者の指示により素材を蓄積したことによって,著作権の侵害を生じた場合,サービス・プロバイダは,以下の条件を全てみたす場合には,著作権の侵害による金銭的救済または第(j)節に定める場合を除き差止命令その他の衡平法上の救済につき責任を負わない。

(A) (i) サービス・プロバイダがシステムまたはネットワーク上の素材もしくは素材を使用した行為が著作権侵害にあたることを現実に知らないこと,
  (ii) かかる現実の知識がない場合,侵害行為が明白となる事実もしくは状況を知らないこと,または
  (iii) かかる知識もしくは認識を得た際,速やかに素材を除去しもしくはアクセスを解除するための行為を行うこと。
(B) サービス・プロバイダが侵害行為をコントロールする権利および能力を有する場合,かかる侵害行為に直接起因する経済的利益を受けないこと。
(C) 第(3)項に掲げる侵害主張の通知を受けた場合に,侵害にあたるとされるまたは侵害行為の対象とされる素材を除去しまたはアクセスを解除すべく速やかに対応すること。

(2)指定代理人
本節が定める責任の制限は,サービス・プロバイダが以下の情報を,そのサービス(公衆がアクセス可能なウェブサイト上を含む)を通じて利用可能にし,かつ,著作権局に対して提供することによって,第(3)項に掲げる著作権侵害主張の通知を受領するための代理人を指定した場合にのみ適用される。

(A) 代理人の名称,住所,電話番号および電子メールアドレス。

(B) 著作権局長が適切と考えるその他の情報。

著作権局長は,代理人の最新の名簿を公衆の縦覧(インターネット上の閲覧を含む)に供すべく,電子コピーおよびハード・コピー双方の形式で保持しなければならない。著作権局長は,名簿維持の費用のために,サービス・プロバイダに対し料金の支払を要求することができる。

(3)通知の要素
(A) 著作権侵害主張の通知が本節に基づき有効となるには,以下の情報を実質的に含む書面による通知を,サービス・プロバイダの指定代理人に送付しなければならない。
  (i) 侵害されたと主張される排他的権利の保有者を代理する授権を受けた者の,手書き署名または電子署名。
  (ii) 侵害されたと主張される著作権のある著作物の特定,または,単一の通知が単一のオンライン・サイトに存在する複数の著作権のある著作物を対象とする場合には,当該サイトに存在する当該著作物に代えてその目録。
  (iii) 侵害にあたるまたは侵害行為の対象とされかつ除去またはアクセスを解除されるべきである素材の特定,およびサービス・プロバイダが当該素材の所在を確認する上で合理的に十分な情報。
  (iv) 通知を行う者に連絡のとれる住所,電話番号および(もしあれば)電子メールアドレス等,サービス・プロバイダが通知を行う者に連絡する上で合理的に十分な情報。
  (v) 当該方法による素材の使用が著作権者,その代理人または法律によって許諾されているものではないと,通知を行う者が善意誠実に信ずる旨の陳述。
  (vi) 通知に記載された情報は正確である旨の陳述,および,偽証の制裁の下に,通知を行う者が侵害されたと主張される排他的権利の保有者を代理する授権を受けている旨の陳述。
(B) (i) 第(ii)段を条件として,著作権者または著作権者の代理人の通知が,第(A)号の規定を実質的にみたさない場合,当該通知は,第(1)項(A)においてサービス・プロバイダが侵害行為を現実に知っていたかまたは侵害行為が明白となる事実もしくは状況を知っていたかを判断する際に考慮されない。
  (ii) サービス・プロバイダの指定代理人に対して送付された通知が,第(A)号の規定の全てをみたさないが,第(A)号(ii),(iii)および(iv)を実質的にみたす場合には,本号第(i)段は,サービス・プロバイダが直ちに通知を行った者に連絡することを試みまたはその他第(A)号の全ての規定を実質的にみたす通知を受領するよう相当な手段をとったときにのみ,適用される。
(d) 情報探知ツール (略)
(e) 非営利的教育機関の責任の制限 (略)
(f) 不実の表示-本条において
  • (1) 素材もしくは行為が侵害にあたる旨,または,
  • (2) 素材もしくは行為が錯誤もしくは誤認により除去されもしくは解除された旨,故意に重大 な不実の表示を行う者は,サービス・プロバイダが侵害にあたると主張された素材もしくは行為を除去しもしくはアクセスを解除するにあたってまたは除去された素材もしくはアクセスを復活させるにあたってかかる不実の表示に依拠した結果,かかる不実の表示により被害を受けた侵害者と主張された者,著作権者もしくはその許諾を受けたライセンシーまたはサービス・プロバイダが被った全ての損害(費用および弁護士報酬を含む)を賠償する責任を負う。
(g) 除去されまたは利用不能にされた素材の復活およびその他の責任の制限
  • (1) 削除の原則的無責任
    第(2)項を条件として,サービス・プロバイダは,素材または行為が侵害にあたると最終的に判断されるか否かにかかわらず,侵害にあたると主張される素材もしくは行為へのアクセスを善意誠実に解除しもしくはこれを除去したことに基づく請求,または侵害行為が明白となる事実もしくは状況に基づく請求に関して,何人に対しても責任を負わない。
  • (2) 例外
    サービス・プロバイダによってまたはその者のために管理または運営されるシステムまたはネットワーク上にサービス・プロバイダの加入者の指示により置かれた素材であって,サービス・プロバイダが第(c)節(1)(C)に基づく通知に従って除去しまたはアクセスを解除したものについては,第(1)項を適用しない。ただし,サービス・プロバイダが以下の条件を全てみたした場合を除く。
    • (A) サービス・プロバイダが,素材を除去しまたはアクセスを解除したことを加入者に速やかに通知すべく,合理的な措置をとること。
    • (B) サービス・プロバイダが,第(3)項に掲げる反対通知を受領した際に,第(c)節(1)(C)に基づく通知を行った者に対して速やかに反対通知のコピーを提供し,かつ,10営業日後に除去された素材またはアクセスを復活させる旨を通知すること。
    • (C) サービス・プロバイダが,反対通知の受領後10営業日以後14営業日以内に,除去された素材およびアクセスを復活させること。ただし,その指定代理人が第(c)節(1)(C)に基づく通知を提出した者から,加入者に対してサービス・プロバイダのシステムまたはネットワーク上の素材に関連する侵害行為の差止を命ずる裁判所命令を求める訴訟を提起した旨の通知を最初に受領した場合を除く。
  • (3) 反対通知の内容
    反対通知が本節において有効であるためには,反対通知は,サービス・プロバイダの指定代理人に対する以下の内容を実質的に含む書面による通知でなければならない。
    • (A) 加入者の手書き署名または電子署名。
    • (B) 除去されまたはアクセスが解除された素材の特定,および,除去されまたはアクセスが解除される前に掲載されていた素材の所在。
    • (C) 偽証の制裁の下に,除去されまたはアクセスが解除されるべき素材の錯誤または誤認の結果として当該素材が除去されまたはアクセスが解除されたものであると,加入者が善意誠実に信ずる旨の陳述。
    • (D) 加入者の名前,住所および電話番号,ならびに,加入者がその住所を管轄する地区の連邦地方裁判所の裁判管轄権を,また加入者の住所が合衆国外に所在する場合にはサービス・プロバイダが存在する地区の連邦地方裁判所の裁判管轄権を承諾する旨および第(c)節(1)(C)に基づき通知を行った者またはその代理人からの送達を受領する旨の陳述。
  • (4) その他の責任の制限
    サービス・プロバイダは,第(2)項を遵守することにより,第(c)節(1)(C)に基づく通知に特定された素材に関して著作権侵害の責任を負わない。
(h) 侵害者を特定するための文書提出命令
  • (1) 請求
    著作権者またはその代理を授権された者は,本節に従い,連邦地方裁判所の書記官に対して,本節に従って侵害者と主張される者の特定のためにサービス・プロバイダに文書提出命令を発行することを請求することができる。
  • (2) 請求の内容
    請求は,以下を書記官に提出して行うことができる。
    • (A) 第(c)節(3)(A)に掲げる通知の写し,
    • (B) 求める文書提出命令,および
    • (C) 文書提出命令を要求する目的は侵害者とされる者を特定することであり,かつかかる情報は本編に基づいて権利を保護する目的のみに使用される旨の宣誓陳述書。
  • (3) 文書提出命令の内容
    文書提出命令は,サービス・プロバイダに入手可能である範囲において,通知に記述する素材を侵害すると主張される者を特定するに十分な情報を著作権者またはその代理を授権した者に対して速やかに開示することを,通知および文書提出命令を受領したサービス・プロバイダに授権しかつ命令するものでなければならない。
  • (4) 文書提出命令を発行するための理由
    提出された通知が第(c)節(3)(A)の規定をみたし,求める文書提出命令が適切な形式であり,かつ,添付の陳述書が適切に執行されたものである場合には,書記官は,求められた文書提出命令を速やかに発行しかつ署名して,サービス・プロバイダへ送達するために請求人に返還しなければならない。
  • (5) 文書提出命令を受領したサービス・プロバイダの行為
    発行された文書提出命令を第(c)節(3)(A)に掲げる通知と共にまたはその後に受領した場合,サービス・プロバイダは,他の法律のいかなる定めにかかわらず,また,サービス・プロバイダが通知に応答するか否かを問わず,著作権者または著作権者が代理を授権した者に対して,文書提出命令が要求する情報を速やかに開示しなければならない。
  • (6) 文書提出命令に適用される規則
    本条または裁判所規則に別途定める場合を除き,文書提出命令の発行および送達の手続ならびに文書提出命令違反に対する救済については,可能な限り文書提出命令の発行,送達および執行を定める連邦民事訴訟規則の規定を適用する。
(i) 資格を得る条件
  • (1) 技術の導入
    本条が定める責任の制限は,サービス・プロバイダが以下の全ての条件をみたす場合にのみ,適用される。
    • (A) サービス・プロバイダのシステムまたはネットワークの加入者およびアカウント保有者が反復して侵害を行う者である場合にしかるべき条件の下で契約を解除することを定める運営方針を,採用し合理的に実行し,かつ,加入者およびアカウント保有者に対してこれを通知していること。
    • (B) 標準的な技術的手段を導入しかつこれを阻害しないこと。
  • (2) 定義
    本節において,「標準的な技術的手段」とは,著作権のある著作物を特定しまたは保護するために著作権者が使用する技術的手段であって,以下の条件を全てみたすものをいう。
    • (A) 公開,公平かつ任意の多産業間標準設定手続において,著作権者およびサービス・プロバイダの広範な合意に従って開発されたものであること。
    • (B) 合理的かつ非差別的な条件においていかなる者にも使用可能なものであること。
    • (C) サービス・プロバイダに対して多大な費用を課し,またはそのシステムもしくはネットワークに多大な負荷を及ぼすものでないこと。
(j) 差止命令
本条に基づき金銭的救済の対象とならないサービス・プロバイダに対する,第502条に基づく差止命令の申立については,以下の規定を適用する。
  • (1) 救済の範囲
    • (A) 第(a)節に定める救済の制限を受けない行為については,裁判所は,以下の一つ以上の形式においてのみ差止命令を発行することができる。
      • (i) サービス・プロバイダに対して,サービス・プロバイダのシステムまたはネットワーク上の特定のオンライン・サイトに置かれた侵害にあたる素材または行為へのアクセスの提供を禁じる命令。
      • (ii) サービス・プロバイダに対して,サービス・プロバイダのシステムまたはネットワークにおける加入者またはアカウント保有者のアカウントであって命令で特定するものを消去することによって,侵害行為を行う加入者またはアカウント保有者であって命令で特定される者へのアクセスの提供を禁じる命令。
      • (iii) 特定のオンライン上に所在する著作権のある著作物であって裁判所の命令で特定するものの侵害を防止または禁止するために裁判所が必要と考えるその他の差止命令。ただし,当該救済は,同じ目的に対して同等に効果的な救済形式のうち最もサービス・プロバイダに対して負担が少ないものでなければならない。
    • (B) サービス・プロバイダが第(a)節に掲げる救済の制限を受ける資格を有する場合,裁判所は,以下のいずれか一方または両方の形式においてのみ差止命令を付与することができる。
      • (i) サービス・プロバイダに対して,サービス・プロバイダのシステムまたはネットワークにおける加入者またはアカウント保有者のアカウントであって命令で特定するものを消去することによって,侵害行為を行うためにサービス・プロバイダのサービスを利用する加入者またはアカウント保有者であって命令で特定される者へのアクセスの提供を禁じる命令。
      • (ii) サービス・プロバイダに対して,アクセスを阻止するために命令で指定する合理的な措置をとることにより,合衆国外に所在する特定のオンライン地点へのアクセスの提供を禁止する命令。
  • (2) 考慮すべき事項
    裁判所は,適用される法律に基づいて差止命令を発行する基準を検討するにあたり,以下を考慮しなければならない。
    • (A) 差止命令が,単独でまたは本節に基づいて同一のサービス・プロバイダに対して発行された他の命令と共に,プロバイダまたはそのシステムもしくはネットワークの運営に著しい負担を及ぼすか否か。
    • (B) 侵害を防止しまたは禁止するための措置がとられなかった場合に,著作権者がデジタル・ネットワーク環境で被る可能性のある損害の程度。
    • (C) 差止命令の実行が技術的に実施可能かつ効果的であり,かつ,その他のオンライン地点における非侵害的素材へのアクセスを阻害しないか否か。
    • (D) 侵害素材へのアクセスを防止しまたは禁止するために,より負担が少なくかつ同等に効果的な他の手段があるか否か。
  • (3) 通知および方審尋命令
    本節に基づく差止命令は,サービス・プロバイダに対する通知がなされかつサービス・プロバイダが裁判所に出頭する機会が与えられた後にのみ認められる。ただし,証拠保全の命令またはその他サービス・プロバイダの通信ネットワーク運営に重大な悪影響を及ぼさない命令についてはその限りでない。
(k) 定義
  • (1) サービス・プロバイダ-
    • (A) 第(a)節において,「サービス・プロバイダ」とは,使用者が特定する二地点または多地点間で,使用者が選択する素材を送受信にあたって内容を改変することなく,送信し,転送しまたはデジタル・オンライン通信を接続するサービスを提供する事業者をいう。
    • (B) 第(a)節を除く本条において,「サービス・プロバイダ」とは,オンライン・サービスもしくはネットワーク・アクセスの提供者またはそのための施設の運営者をいい,第(A)号に掲げる事業者を含む。
  • (2) 金銭的救済
    本条において「金銭的救済」とは,損害賠償,訴訟費用賠償,弁護士報酬賠償その他の形式の金銭的支払をいう。
(l) その他の抗弁に対する無影響
  サービス・プロバイダの行為が本条に基づく責任の制限を受ける資格を有しないことは,サービス・プロバイダの行為が本編において侵害にあたらないとの抗弁その他の抗弁を検討するにあたって,否定的影響を及ぼさない。
(m) プライバシーの保護
  本条のいかなる規定も,第(a)節ないし第(d)節の適用に,以下の条件を付すものと解釈されてはならない。
  • (1) サービス・プロバイダがそのサービスを監視し,または侵害行為を示す事実を積極的に探索すること。ただし,第(i)節の規定に従う標準的な技術的手段に合致する範囲の監視または探索を除く。
  • (2) サービス・プロバイダが素材に対して,法律で禁止されているアクセスを行い,素材を除去しまたはアクセスを解除すること。
(n) 解釈
  第(a)節,第(b)節,第(c)節および第(d)節は,本条の適用にあたって,別個独立の機能を規定するものである。サービス・プロバイダが上記のいずれかにおける責任の制限を受けることができるか否かは,その節の基準にのみ基づいて判断されるのであり,当該サービス・プロバイダが他の節に基づいて責任の制限を受けることができるか否かの判断に影響を及ぼさない。

■ドイツ「テレサービスの利用に関する法律」(株式会社日本翻訳センター)

第8条 一般的原則

(1)サービスプロバイダは,自らが利用のために用意する自己の情報に対して,一般法に基づき責任を負う。

(2)第9条から第11条までの意味におけるサービスプロバイダは,当該プロバイダによって伝達もしくは蓄積される情報を監視し,または違法行為を示す事情を調査する義務を負わない。一般法の規定による,情報の削除または情報利用の遮断をする義務は,第9条から第11条までの規定によりサービスプロバイダが責任を負わない場合においても,影響を受けない。電気通信法第85条の規定による電気通信の秘密は保持しなければならない。

第9条 情報の通過

(1)サービスプロバイダは,自らが通信網において伝達し,または利用を目的とする情報へのアクセスを仲介する他人の情報に対して,当該プロバイダが次の各号に該当する限り,責任を負わない。
1. 伝達するように仕向けておらず,かつ,
2. 伝達される情報の受信者を選択しておらず,かつ,
3. 伝達される情報を選択もしくは変更していない場合。
第1段の規定は,サービスプロバイダが違法行為を行うために,意図的に自己のサービスの利用者と協働する場合には適用されない。

(2)第1項の規定による情報の伝達,および当該情報へのアクセスの仲介には,当該情報の自動的で一時的な中間的蓄積も含まれるが,ただし当該の蓄積が通信網における伝達の実行のためにのみ行われ,かつ,当該情報が伝達に通例必要な時間よりも長く蓄積されない場合に限る。

第10条 情報の伝達を加速するための中間での蓄積

サービスプロバイダは,他人の情報をその他の利用者へ当該利用者の求めに応じて伝達する際に,伝達をより効率的にする目的でのみ利用される,自動的で一時的な中間における蓄積に対して,当該プロバイダが次の各号に該当する限り,責任を負わない。

1. 情報を変更しておらず,かつ,
2. 情報へのアクセス条件を順守し,かつ,
3. 広く認知および使用される産業界の基準に定められる情報の更新規則を順守し,かつ,
4. 広く認知および使用される産業界の基準に定められる,情報の利用に関するデータを収集するための技術の,許容される利用を侵害しておらず,かつ,
5. 本規定の意味において蓄積された情報が,発信元において通信網から削除されたか,または当該情報へのアクセスが遮断されたか,または裁判所もしくは行政官庁が削除もしくは遮断を命じたことを知るに至り次第,当該情報を削除し,または当該情報へのアクセスを遮断するために,遅滞なく行為する場合。

第9条第1項第2段の規定を準用する。

第11条 情報の蓄積

サービスプロバイダは,次の各号に該当する限り,利用者のために蓄積している他人の情報に対して責任を負わない。

1. 当該プロバイダが違法行為もしくは情報を知らず,かつ,損害賠償請求の場合には当該プロバイダが違法行為もしくは情報が明らかとなる事実もしくは状況も知らない場合,
または,
2. 当該プロバイダがかかる知識を得次第,当該情報を削除し,もしくは当該情報へのアクセスを遮断するための行為を遅滞なく行った場合。
第1段の規定は,利用者がサービスプロバイダに従属しているか,またはサービスプロバイダによって監督される場合には適用しない。

■フランス「デジタル経済の信用を目的とする2004年6月21日法2004-575号(LCEN)」(株式会社日本翻訳センター)

第6条

I.- 1.電信公共通信サービス利用を提供する事業者は,加入者に対し,特定のサービス利用を制限するか,またはそれらの選択を可能にする技術的手段を通知し,それらの手段のうち少なくともひとつを提供する。

2.電信,信号,文書,絵,これらのサービスの受給者によって提供されたあらゆる性質の音またはメッセージによる公共通信サービスを公衆が利用することをたとえ無料でも保証する個人もしくは法人は,もしそれらの不正な性質または事実,およびこうした性質を生じさせる環境を効果的に知り得ない場合,またはこうしたことを知って以後,これらのデータを引き出したり,アクセス不能にしたりする対応をした場合,これらのサービスの受給者の需要のために確保された活動または情報の行為にともなう公共の責任をもつことはできない。
前段落は,サービスの受け手が前記段落で述べた人格の許可または統制のもとで行動する場合には適用されない。

3.2で対象とされた者は,もしそれらの不正な性質または事実,およびこうした性質を生じさせる環境を,効果的に知ることができない場合,もしくはこうしたことを知って以後,これらのデータを引き出したり,アクセス不能にしたりする対応をした場合,これらのサービスの受け手の需要のために確保された情報にもとづいてコミットされた刑事責任を負うことはできない。
前段落は,サービスの受け手が前記段落で述べた人格の許可または統制のもとで行動する場合には適用されない。

4.すべての者にとって,2で言及された人々に対し,ある内容またはある活動を,取り下げまたは普及停止という目的において不正に紹介する行為は,1年の禁固刑および15,000bの罰金を課せられる。

5.訴訟事件の知識は,2で指定された者に以下の要素が知らされたときに獲得されたものと見なされる。

- 告知日
- 告知者が個人の場合: 告知者の姓,名,職業,住所,国籍,出生日,出生地。
  告知者が法人の場合:法人形態,呼称,所在地,法的代表者。
- 受給者の名と住所,法人の場合は呼称と所在地
- 訴訟事件の記述と正確な場所
- 法的規定の言及と事件の根拠も含めて,内容を引き出さなければならない動機
-訴訟の情報または行動の発信者または編集者に寄せられた情報のコピー。中断・取り消し・修正,発信者または編集者が連絡を取れなかった理由を付する

6.1および2で言及された者は,視聴覚コミュニケーションに関する1982年7月29日法no 82-652 第93-3条の意味における生産者ではない。

7.1および2で言及された者は,事件調査の一般義務であろうと,訴訟行為に関する知識であろうと,本人が移管または保管する情報を監視する一般義務に服さない。
前段落は,法的機関によって対象とされ,一時的に要求されたあらゆる調査活動の損害をともなわないものとする。
人道に反した犯罪の称賛,人種的憎悪,児童ポルノの奨励を抑止することに結びついた一般利益を考慮し,上記の者は報道の自由に関する1881年7月29日法第24条の第7条および第8条,刑法第227-23条で対象とされた違法行為の普及防止に努めなければならない。
このため,上記の者はすべての人々がこの種のデータを知ることを可能とし,容易に利用および閲覧できる対策を実施しなければならない。すべての者は同様に,一方では前段落で言及したすべての訴訟行為について,彼らのサービスの受給者が行使する公的機関に速やかに通知する義務があり,他方ではこれらの訴訟行為に対してその人々が提供する手段を公表する義務がある。
前段落で規定した義務を怠った場合,Ⅵの1に規定した罰則を受ける。

  • 第97条A サービスプロバイダーへの差止命令
    (1) 高等裁判所(スコットランドにおいては民事控訴院)は,サービスプロバイダーがそのサービスを第三者が著作権侵害のために利用していることを現実に知っている場合には,サービスプロバイダーに対し,差止命令を発する権限を有するものとする。
    (2) この条の目的上,サービスプロバイダーが現実に知っているか否かを決定する際には,裁判所は,関連する個別の状況においてそのように考えられるあらゆる事柄を考慮に入れるものとし,とりわけ,以下のことを考慮するものとする。
    • (a) サービスプロバイダーが,電子商取引(EU指令)規則2002(SI 2002/2013)の規則6(1)(c)に従って利用可能とされた接触手段により通知を受領したかどうか;
      及び
    • (b) 以下のものを含む通知の程度
      • (i) 通知の送信者のフルネームと住所;
      • (ii)問題となっている権利侵害の詳細.
    (3) この条において “サービスプロバイダー” は,電子商取引(EC 指令) 規則2002の規則2に定義されるところを意味する.
  • 第191条JA サービスプロバイダーへの差止命令
    (1) 高等裁判所(スコットランドにおいては民事控訴院)は,サービスプロバイダーがそのサービスを第三者が実演家の財産権の侵害のために利用していることを現実に知っている場合には,サービスプロバイダーに対し,差止命令を発する権限を有するものとする。
    (2) この条の目的上,サービスプロバイダーが現実に知っているか否かを決定する際には,裁判所は,関連する個別の状況においてそのように考えられるあらゆる事柄を考慮に入れるものとし,とりわけ,以下のことを考慮するものとする。
    • (a) サービスプロバイダーが,電子商取引(EU指令)規則2002(SI 2002/2013)の規則6(1)(c)に従って利用可能とされた接触手段により通知を受領したかどうか;
      及び
    • (b) 以下のものを含む通知の程度
      • (i) 通知の送信者のフルネームと住所;
      • (ii)問題となっている権利侵害の詳細.
    (3) この条において “サービスプロバイダー” は,電子商取引(EC 指令) 規則2002の規則2に定義されるところを意味する.
    (4) 177条は,第1部と同様,この条についても適用される。

司法救済ワーキングチーム名簿(平成20年9月現在

座長 大渕 ( おおぶち ) 哲也 ( てつや ) 東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授
座長代理 山本 ( やまもと ) 隆司 ( たかし ) 弁護士
  上野 ( うえの ) 達弘 ( たつひろ ) 立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授
  平嶋 ( ひらしま ) 竜太 ( りゅうた ) 筑波大学大学院ビジネス科学研究科准教授
  前田 ( まえだ ) 陽一 ( よういち ) 立教大学大学院法務研究科教授
  横山 ( よこやま ) 久芳 ( ひさよし ) 学習院大学法学部法学科准教授
以上6名

今期(第8期)の開催状況

第1回   平成20年 4月9日(水)
  「間接侵害」について
第2回   平成20年 5月15日(木)
  「間接侵害」について
第3回   平成20年 6月16日(月)
  「間接侵害」について
第4回   平成20年 7月14日(月)
  「間接侵害」について
第5回   平成20年 7月29日(火)
  「間接侵害」について
第6回   平成20年 8月11日(月)
  「間接侵害」について
第7回   平成20年 8月28日(木)
  「間接侵害」について
第8回   平成20年 9月12日(金)(予定)
  法定損害賠償について
第9回   平成20年 9月30日(火)(予定)
  法定損害賠償について
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