(平成22年第10回)議事録

1.日時

平成22年11月2日(火) 10:00~12:00

2.場所

旧文部省庁舎 6階 第二講堂

3 出席者

(委員)
大渕,岡山,小泉,末吉,茶園,土肥,中村,中山,前田,松田,村上,森田の各委員 
(文化庁)
芝田文化庁長官官房審議官,永山著作権課長,大路国際課長ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)権利制限の一般規定について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1
資料2
資料3
参考資料1
参考資料2

6 議事内容

【土肥主査】
委員の方,皆さんおそろいでございますし,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第10回を開催いたします。
本日は,お忙しい中ご出席をいただきまして,まことにありがとうございます。
議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましてですが,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいているところですけれども,特にご異議はございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【土肥主査】
それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
それでは,事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。
【池村著作権調査官】
おはようございます。それでは,配布資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第の下半分,配布資料一覧をご覧ください。
本日は,資料1から資料3,そして参考資料1と2をご用意してございます。まず資料1,こちらは8月に行いました関係団体等からのヒアリングで聴取した意見の概要をまとめたものでございまして,最終ページは10ページとなってございます。資料2,こちらは第6回から第8回の本小委員会において,委員の皆様よりいただいた主なご意見をまとめたものでございまして,こちらの最終ページは5ページとなってございます。続いて資料3ですが,こちらは権利制限の一般規定に関する報告書(案)重要部分と題するものでありまして,最終ページは18ページでございます。詳細につきましては後ほどご説明させていただく予定です。
続きまして参考資料の1と2,こちらは第6から第8回でも配布させていただきましたパブコメの結果をまとめたものでございます。参考資料1が概要で,両面印刷で36ページ,参考資料2が意見,本文で両面印刷84ページとなってございます。
本日の配布資料は以上です。不足や落丁等,不都合がございましたら,お近くの事務局までお知らせください。
【土肥主査】
ありがとうございました。それでは議事に入りますけれども,初めに,議事の段取りについて確認しておきたいと存じます。
本日の議事は1,権利制限の一般規定,2,その他となっております。議事1につきましては,第7回と第8回の本小委員会における関係団体からの中間まとめに関するヒアリングを行ったわけでございますけれども,このヒアリングを受けまして,皆さんご案内のように事務局に対して,その際の議論や意見募集の結果も踏まえて中間まとめを修正すると,報告書(案)の重要部分を作成するようにお願いをいたしたところでございます。本日はその最終の取りまとめに向けて修正した報告書(案)の重要部分について議論を行いたいと思います。
そこで早速議論に入りたいと存じますけれども,まずは第7回,第8回のヒアリングで出された意見の概要と,第6回から8回までの委員の意見の概要,続けまして,これらに基づいて修正した報告書(案)の重要部分について,事務局から説明をお願いいたします。
【池村著作権調査官】
それでは資料1から3につき,順にご説明申し上げます。
まず資料1,こちらをごらんください。こちらは第7回,第8回で実施しましたヒアリングにおいて出されましたご意見をまとめたものとなります。ざっと概略のみご説明申し上げますと,1ページから3ページ目の冒頭まで,こちらは一般規定を導入する必要性に関してのご意見です。こちらにつきましては,導入に賛成するご意見,反対するご意見に二分しており,賛成するご意見の中には,中間まとめの内容に賛成するご意見と,中間まとめに示した内容よりもより広い範囲を対象とする一般規定を導入すべきとするご意見がございました。
続きまして,3ページから7ページまで,こちらはいわゆるA類型からC類型についてのご意見でございます。こちらも同様に一般規定の対象とすることに賛成するご意見,反対するご意見,それぞれいただいており,また中間まとめで示した要件につきましても,限定的であるのでもう少し緩和すべきとのご意見をいただいた一方で,拡大解釈のおそれを指摘するご意見や,明確性に欠けるなどといったご意見を,特に一般規定の対象とすることに反対する立場の方よりいただいてございます。
続いて7ページの5,こちらはA類型からC類型以外の利用行為に関するご意見でございます。A類型からC類型にとどまらず,より広い一般規定を導入すべきとのご意見を複数いただいているところでございます。
続きまして8ページの6,こちらは条文化する場合の検討課題に関するご意見です。まず,要件につきましては,拡大解釈を導かないよう明確化が必要とのご意見や,米国フェアユース規定における「公正な」という要件を判例などの蓄積がないまま我が国に導入すると混乱が生ずるとのご意見をいただいている一方で,規定に柔軟性を持たせるべきといったご意見,予測可能性を持たせようとする余り,必要以上に詳細な規定にならないことを望むといったご意見をそれぞれいただいております。
続きまして資料2,こちらをごらんください。こちらは第6回から第8回の本小委員会において委員の皆様よりいただきましたご意見の概要です。こちらもざっと概略のみご説明申し上げますと,1ページ目から2ページ目までは導入の必要性,いわゆる立法事実についてのご意見でございます。パブコメにおきまして,立法事実についての検討が不十分とのご意見を複数いただいたことを受けてのご議論でありましたが,本小委員会としては,立法事実についての検討は十分行ったとのご意見が多かったように思われます。
続きまして2ページ目から4ページ目にかけましては,A類型からC類型についてのご意見をまとめております。特にC類型につきましては,この後もご議論をいただくことになると思いますが,プログラムの著作物との関係につき,別な視点で検討すべきとのご意見や,リバースエンジニアリングとの関係につき,ご意見をちょうだいしております。
その他,パロディにつき一般規定とは別の問題として検討すべきとのご意見などをいただいているほか,いわゆる企業内複製につき一定程度適法化すべきであるものの,一般規定の問題とは別に複写権センターの法制化をした上で必要なルールや手段を確立すべきといったご意見をいただいてございます。
その他,詳細につきましては,資料2や第6回から第8回の議事録,こちらをご確認いただければと思います。
最後に資料3についてご説明申し上げます。こちらは土肥主査のご指示を受けまして,意見募集に対するご意見やヒアリングでのご意見,そしてこれまでの本小委員会におけるご議論を踏まえて,中間まとめを事務局において修正したものでございます。本日はそのうち重要部分の抜粋版ということで,第3章の導入の必要性に関する部分のうち諸外国の状況以外の部分,そして第4章の権利制限の一般規定を導入する場合の検討課題のうち,いわゆるA類型からC類型に関する部分,そして条文化する場合の検討課題のうち,対象とする著作物の種類に関する部分,こちらを抜粋したものをご用意させていただいております。
その他,本日ご用意していない部分につきましては,中間まとめの内容からの大きな変更は特段,現在のところ考えてございません。抜粋版ということで,本日ご用意していない部分について言及している部分につきましては,例えば脚注の番号が一部●表記となっておりますので,その点ご了承ください。なお,全体的に細かい言い回し等変えている部分も多々ございますが,大きな修正部分のみハイライトを付してございます。
それではハイライト部分を中心に内容の説明をさせていただきます。
まず1ページ目をごらんください。権利制限の一般規定を導入することについての関係者の考え方の部分でございますが,中間まとめにおきましては,権利者側からは導入に消極的な意見が多く出され,利用者側からは積極的な意見が多く出されたと,このように整理してございましたが,ヒアリングなどで,特に個人のクリエーターを中心に,権利者側でも積極的な意見を持つ者も多いとのご意見を複数いただきましたので,その旨を追記してございます。
続きまして2ページをごらんください。こちらは権利者に与える不利益についての部分でございますが,ヒアリングや意見募集において,特に権利者団体より権利制限の一般規定が導入された場合に,本来権利者の許諾を得る必要がある利用についても一般規定の対象になるとの誤解などに基づき,許諾なく利用が広く行われてしまうのではないかという強い懸念が示されましたことから,その点につき追記をするとともに,こうした懸念については,中間まとめにおいては,一般規定の要件や趣旨を条文上一定程度明確にすることで対応するという形にしておりましたが,それに加えて,導入に際して要件や趣旨,あるいは権利者の利益を不当に害するような利用行為までもが権利制限の対象となるわけではないといったこと等につき十分に周知をする,こうした方法もあるのではないかということを追記してございます。
続きまして3ページ目をごらんください。こちらは経済的効果についての部分でございます。この部分に関しましては,まず冒頭に検討の経緯として,知財本部のデジネット調査会報告書における問題意識を受けて検討を行ったという旨を追記しております。また最後の部分,形式的権利侵害になることを恐れて新規ビジネスの展開を萎縮する場合もあり,係る意味においてはビジネス促進という観点からの意味もあるとのご意見,こちらは昨年度の本小委員会における上野委員のご発言でございますが,こちらを追記してございます。なお,注釈の6でございますが,いわゆるCCIA報告書,こちらは中間まとめの後に2010年版が公表されておりますので,その旨,付記しております。なお,用語の定義等は2007年版と変更はなく,数字のみアップデートされたものとなっております。
その他,4ページ目から6ページまで,こちらにつきましては,特段大きな変更はございません。中間まとめと同様に,権利制限の一般規定を導入する必要性は一定程度認められる,こういった形でまとめてございます。
続きまして7ページ目をごらんください。権利制限の一般規定により権利制限される利用行為の内容についてでございますが,ここは中間まとめより構成を大きく変更してございます。具体的には,8ページをごらんいただきまして,中間まとめにおきましては,形式的権利侵害としてA類型,形式的権利侵害行為と評価するか否かはともかく,その対応等に照らし,著作権者に特段の不利益を及ぼさないと考えられる利用としてB類型・C類型という形で整理をしておりました。しかしながら,形式的権利侵害という概念自体,論者によって見解の異なる概念であり,このような区分は余り意味がないというご指摘を中間まとめの段階から複数の委員よりいただいておりまして,今回最終的な取りまとめに当たりましては,そのような区分は設けず,A類型からC類型を並列的に表記するという構成に改めてございます。
8ページ,その関係でハイライトが多くついておりますが,構成変更に伴う修正でございまして,内容的な変更は特段ございません。
続きまして,A類型についてですが,こちらは9ページをごらんください。まず,「こうした著作物の利用は」から始まる段落でございますが,A類型を権利制限の対象とする必要がある理由として,権利者の利益を不当に害するものとは言えないと考えられること,日常さまざまな行為に不可避的,偶発的に付随するという側面があり,あらかじめ権利者から許諾を得ることは困難であることといったことを書いてございます。
さらに続く「このような」で始まる段落でございますが,A類型につき,映像や写真を撮影する際といった形で,利用局面を限定した個別規定にするのではなく,より一般的な規定になじむのではないかといったことを新たに追記してございます。
続きまして10ページ,こちらをごらんいただきまして,B類型についてでございます。まず,脚注の17,そして18におきまして,ヒアリングでB類型の対象になるのではないかということで出されました事例を幾つか紹介してございます。また,本文に戻っていただきまして,本文の後半部分,「ここで」で始まる段落でございますが,内容的には中間まとめと同様でございますが,B類型では適法な著作物の利用を達成しようとする過程としておりますので,最終的に適法な著作物の利用が行われることが条件とはならないわけでございますが,ヒアリングでその点明確ではないというご意見をいただきましたので,この点,若干丁寧めな記載に改めてございます。
続きまして,11ページをごらんください。ただいまの点とも関連しまして,権利者団体からは,最終的に許諾を得るつもりだったとの名目であらかじめたくさんの複製物が作成される場合があり得るといった強い懸念が示されていたところでありますので,B類型は合理的に必要と認められる利用であること,そして社会通念上軽微であることが求められるため,こうした利用までも権利制限の対象となるものではないということを記載してございます。
次に同じく11ページの後半部分のハイライト部分でございますが,先ほどのA類型と同様に権利制限を及ぼす必要性,そして一般的な規定がなじむ類型であること,これらにつき追記をしてございます。
続きまして,12ページから14ページにかけてのC類型,こちらは若干細かい表現につきまして修正しておりますが,特段大きな修正部分はございません。
次に15ページをごらんください。条文化するに当たっての検討課題についての部分のうち,[2]の権利制限の対象とする支分権及び著作物の種類についてでございますが,こちらは中間まとめと同様に,一般規定という性質上,支分権や著作物の種類を限定する必要はなく,個別事案における一考慮要素として位置づければ足りるという形でまとめてございます。
続いて16ページをごらんください。著作物の種類に関しましては,特にプログラムの著作物につき,他の著作物と大きく異なる性質があり,これを対象とするかについてはヒアリング等でも賛否が分かれていることから,この点について検討してございます。結論といたしましては,大きく3つの理由からプログラムの著作物のみを明示的に権利制限の対象から除外するのは適当ではなく,プログラムの著作物であるということは,個別具体的な事案のもとにおける一考慮要素としてとらえることで足りるというふうにしております。
まず1つ目の理由,「この点」から始まる部分でございますが,プログラムの著作物の場合,いわゆるソースコード形式,プログラムリスト形式で存在する場合もあり,その場合は伝統的な著作物同様にA類型からC類型に該当することがあり得るという理由でありまして,こちらはヒアリングでもご意見として出されていたものでございます。
次に「また」から始まる段落でございますが,特にB類型の場合,適法な著作物の利用が前提でございまして,それには権利者からの許諾により適法な利用と,個別権利制限の適用により適法な利用と,大きく2種類あるわけでございますが,後者,個別権利制限の適用により適法な利用を考えた場合,既存の個別権利制限規定の多くは条文上プログラムの著作物も対象となっておりますので,これとも整合性という意味でも,プログラムの著作物を明示的に除外する必要はないというものでございます。
3つ目の理由は,「さらには」から始まる段落でございますが,近時,映画や音楽等の著作物とプログラムの著作物が相互密接に関連する,いわゆるマルチメディアソフトといったコンテンツが多いことにかんがみますと,プログラムの著作物のみを明示的に条文から対象から除外した場合,不都合,あるいは不合理な結論を招くことになってしまいかねないというというものでございます。
以上,3つの理由によりまして,プログラム著作物を明文上,対象から除外する必要はなく,著作物の種類は一考慮要素としてとらえればよいという結論にしております。
次に16ページの一番下,「なお」から始まる部分でございますが。ここではC類型とプログラムの著作物について補足をしてございます。C類型の場合,「表現の知覚」という基準で現在整理しているわけでございますが,プログラムの場合,これが実行形式,オブジェクトプログラムで存在している場合,表現の知覚は伴わないため,すべからくC類型に該当し,権利制限の対象になってしまうのかという疑念が生じるところであり,実際のヒアリングでもそのような懸念が強く示されております。
17ページをごらんいただきまして,ここではプログラム著作物の場合は,―実行形式で存在する場合ということになると思いますが,プログラムを実行し,その機能を享受するための利用か否かを基準としてCの類型の概念を整理するなど,条文化に際しては,プログラムの著作物の特殊性を考慮する必要があると,このような形でまとめさせていただいております。
次に(2)著作者人格権との関係,こちらにつきましては大きな修正はございません。一点,18ページをごらんいただきまして,(3)のすぐ上,意見募集等において,50条の見直しを検討すべきとのご意見を複数いただいておりますので,その旨追記してございます。
最後に(3)著作隣接権等との関係です。中間まとめにおきましては隣接権や出版権との関係につき,特段記載はしておりませんでしたが,今回,既存の個別規定と同様に隣接権等についても一般規定の対象とすることが適当であるという旨追記してございます。
駆け足になりましたが,資料に1から3についての説明は以上でございます。資料3につきましては,冒頭申し上げたとおり,この抜粋版に含まれていない部分につきましては,それぞれ中間まとめから大きな変更はないという前提でごらんいただければと思います。
どうぞご審議のほど,よろしくお願いいたします。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,これから幾つかのパーツに分けて議論をしていきたいと存じます。それでは,まず1ページから6ページまでですね。各類型の前のところでございますけれども,1ページから6ページの第3章,権利制限の一般規定を導入する必要性について,ご意見がございましたら,お願いをいたします。
この必要性の部分についてはよろしいですか。
よろしゅうございますか。その後の部分についてのご発言があるのかなと思いますので,よろしければ各類型の検討に入りたいと思いますけれども,一般規定の導入の必要性については,よろしいということで議論を進めさせていただきますけれども,よろしいですね。
それではそのようにさせていただきます。
それでは,7ページ以降のところでございますけれども,ここからA・B・C類型がございます。まずA類型ですね。A類型は7も入れますと,8ページ,9ページに出ておるところでございますけれども,A類型についてご意見ございましたら,お願いをいたします。
中村委員,どうぞ。
【中村委員】
まず7ページから8ページにかけてなんですが,事務局のほうで,この新しい取りまとめ案を訂正されるに当たりまして,一つ重要なポイントとして形式的権利侵害行為という説明をやめられてということについて,簡潔なご説明で,意味がないからというご説明があったんですが,一方で,これまでの議論を見せていただくと,例えば第6回法制問題小委の議事録の30ページでもA類型の議論のときに,主査のほうからこのA類型は形式的権利侵害行為なので,というご発言がありまして,この形式的権利侵害という概念が消えてしまうとこれまでの議論が反映されないことにならないのかという点と,もう一つ,形式的権利侵害行為というのがあることによって,実質的には権利侵害とは評価できない場合という大前提に立って私どもは議論していたように考えておったんですけれども,実質的権利侵害とは評価できない場合という部分までなくなっているように読めてしまうので,本当にそういうふうな,実質的権利侵害とは評価できない場合の以外のものまでAに含んでいいのかというのは,まだここでの議論が尽くされていないのではないかというふうに思われまして,そこは例えば,もう一度明記していただくか,あるいはそのことすら,実質的権利侵害と評価できない場合以外も含むんだというのが,ここでの議論の中で強いのか。強いのであれは,その理由をご教示いただいて,私どもとしてもまたよく考えたいと思っております。
【土肥主査】
ありがとうございました。ご質問ということかと存じますけれども,形式的権利侵害行為の表記の部分を除いた理由について,お願いいたします。
【川瀬著作物流通推進室長】
 池村からご説明しましたとおり,私どもとしては形式的権利侵害行為という言葉を最初使って議論してきたわけでございますけれども,どうも複数の委員の先生から形式的権利侵害の概念というのが非常にわかりにくいというようなご議論がございましたので,私どもとしては,実質的な中身を変えて構成を再構成したということではなくて,そういう概念を用いずに,もちろん文章の中には,そういうようなたぐいの文章は当然ずっと生きているわけでございまして,そういう意味で事務局としては,今ご指摘のような,例えば大胆に構成を変えたという意識はございませんので,内容については従前からと同様だというふうに認識しております。
【土肥主査】
ということなんですけれども,いかがでしょうか。
【中村委員】
形式的権利侵害行為という表現に特にこだわっているわけではありませんで,むしろこだわっているのは,実質的に権利侵害と評価できない場合が,このA類型なんだという理解がこの小委員会としていいのか。特に形式的権利侵害行為という表現に意味がないとおっしゃられた先生方がここにいらっしゃると仮定して,そういった先生方もそれは言葉の問題だけで,実質的に権利侵害とは評価できない場合というのを指しているんだというふうに考えてよろしいのかという,そこをちょっと確認したいんですが。
【土肥主査】
この点は本委員会の委員のご意見も伺ったほうがいいのかと思いますけれども,今の中村委員のご質問。
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
私が理解しているところでは,これは,結局は,先ほど最初事務局のほうからご説明あったかと思うのですが,何をもって形式的権利侵害にすぎず,実質的ではないと言っているのかというのが,まず問題であります。要するに,こういうものは権利制限の対象にしていいという意味であれば,A・B・C類型のいずれも,そちらの,権利制限の対象にしていいというほうに入ってくるので,何でAのところとB・Cのところが切れているのかというところがわからないし,結果的にはAもBもCもすべて権利制限をかけてもいいという意味では,いわば平等な立場にあるので,そこを形式的権利侵害云々という必要があるのかという点が,問題となってきます。
Aは形式的権利侵害だと言って,B・Cはそれに当たるかどうかにかかわらずというふうに中間媒介項を入れてしまうと,結局,その中間媒介項が何かということで,結局はよくわからなくなってしまうので,最終的にはそういう中間媒介項を外して,そのまま,直接に,A,B,Cのそれぞれは,権利制限の対象にすべきかどうかを考えたほうがいいと思われます。
そういう意味では,今の問題意識からすると,むしろ3つとも形式的権利侵害といったほうがいいのかもしれないくらいなのであります。ただ,今の点からもおわかりのとおり,そういったところで形式的権利侵害ということ自体にさほどの意味があるわけじゃないので,まさしくストレートに中身を考えた上で,何が権利制限の対象としてふさわしいかというところからストレートにアプローチしたほうがいいということは間違いないと思います。
そのような権利制限の対象にしていいようなものを形式的権利侵害と呼ぶのであれば,むしろA・B・C,いずれもそちらのほうに入るのではないかと私は理解していて,それは名前だけの問題で,余計なラベルはつけずにストレートに何を権利制限の対象にすべきかというふうに,ストレートに考えたほうがいいのではないかということで,こういうふうになっているのではないかと思います。
そういう意味で,中身を変えているということではなくて,むしろ,構成の仕方を変えて,わかりやすくしたと,余計な中間媒介項を外してストレートに構成したということだと思います。中身としては,言葉の上は別として,変わっていないのではないかというふうに私は理解しております。
【土肥主査】
どうぞ,中村委員。
【土肥主査】
今,大渕先生におっしゃっていただいたんで確認なんですけれども,要は新しいペーパー上,実質的に権利侵害と評価できない場合というのが消えてしまっていますので,実質的に権利侵害と評価できないということは動かさないという上で,例えば今後,AならAの要件について考えていくと,そういう理解でよろしいわけですよね。
つまり,今からAの中身について少し議論されると思いますけれども,実質的に権利侵害と評価できないものとして,このAの要件を考えていくのか,全然,実質的権利侵害なんだけれども,著作物の付随的な利用だったらいいんだというのかでは,全然歩いていく道が違いますので,それは今までどおり前者でよろしいわけですよね。
【大渕委員】
前者と言われても,要するに実質的権利侵害でないのだから,権利制限にふさわしいという意味では,それは要するに権利制限の対象にふさわしいということを言いかえているだけなので,そういうことになってくるので,それを実質的権利侵害という言葉を入れて,かえって整理できていないのではないかと問題意識なので,あえて使うのであれば,実質的に権利侵害というのは権利侵害の対象にする実質を有さないものという意味では,それはまさしく権利制限の対象にすべきものというのを言いかえただけではないかという感じがして,何かその辺の議論は余り意味がないのかなという気がしている次第です。
【土肥主査】
ほかにこの点よろしいですか。
末吉委員。
【末吉委員】
今の点にかかわるんですけれども,今回の8ページの[1]の冒頭の最初のパラグラフが非常にわかりやすく書かれていて,形式的権利侵害とか実質的に権利侵害というわかりづらい概念を使わないで実態をあらわしているということで,私はこの原案に大賛成です,以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにございますか。
今回A類型について事務局に修正をいただいたところでございますけれども,事務局のご説明,及び大渕委員に示されるような考え方―内容的にはそれは変わっていないということで,認識をしておりますけれども,この点さらに何かご意見ございましたら,お願いをいたしますし,また,ここにある内容の要件的なところは従来から変わっておりませんので,皆さんご承知といいますか,ご了解いただいているところかなと思いますけれども,いかがでございましょうか。
中村委員。
【中村委員】
Aについての,大きく積み残しているところで,これも第6回の法制問題小委の議事録の27ページで,大渕先生から主にご発言いただいているところなんですが,このAについて「写り込みしかないのか,写り込みは代表選手であって,それ以外にもAがあるのかという点について,議論が積み残されておりまして,大渕先生からもどっちかわからないものということは関係あり得ないし,どっちかにしないと,後でできたときに大混乱が起きる」というご発言がありまして,私もそのとおりかと思っておりますので,この機会に,ちょっとそのあたりの議論をしていただければと思うんですが。
【土肥主査】
今の中村委員のご提案にある写り込みの問題ですね。そのような類型があるのかどうか,この点について,ご意見ございますか。
末吉委員。
【末吉委員】
今の点は,私,8ページの下の注13で言い得ているのではないかと思います。私は写り込みとは言い得ないものでもA類型の適用があるのではないかという考え方に賛成でございます。
例えば著作物の鑑定書を書く場合に,鑑定書にアタッチする,ある意味で写し取ったものですが,これなどは,私はA類型の適用があり得るのではないかと,個人的には考えています。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかに。
中山委員,どうぞ。
【中山委員】
実質的に見た場合に写り込みと写し込みというのはそんなに簡単に区別できないと思います。両者はかなり連続的だと思うます。雪月花事件でも,あれよくみると,部屋は借りているけれども,かかっている書は買ってきた事件なんですね。あるいは,ミッキーマウスのTシャツを着て写真に写った場合,写り込みか写し込みか。シャツを変えてこないと写し込みでだめだと言えるか。限界はあいまいであり,写し込みはだめだと当初から決めるのは,私もよろしくないと思っております。
【土肥主査】
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
私は,この写り込みに関しては,時々,ここの議論でも写り込みの意味のことを写し込みと呼んだりして混乱していたかと思うのですが,おおむね,この注13にあるように,認識があるものは写し込みということで,それが写り込みに入るかどうかというのが,いわば写り込みがA類型の対象だとした上で,その中に写し込みも入るのかというサブ問題みたいな形でうまく整理されてきているかと思いますけれども,そこのところはおおむね注13で大体コンセンサス的なものはできているのかなと思います。認識があるという一事だけで入らないとは限らずに,あと個別具体的にサブ問題みたいなもので判断されるということだと思います。写し込みの部分はこのような形でまかなわれます。
あと,問題があるとすれば,写るというと,大体写真など,そういうものに入るので,私はそれも意識して,何かの機会には,これは場合によっては「入り込み」のほうがいいいのかなと言ったりしています。これについては,ほかの国でも「挿入」となっていたりするので,インクルージョンのほうなので,写すというものに限定されるかというところは,考えておいたほうがいいと思います。ちょっと確認したかったのは,写すという,物理的というか視覚芸術みたいな,そういうものに限定されずに,入り込みみたいなものとしてやれば,おおむねこのAが,写り込みと言われているけれども,実際は,例えば音楽で入ったりするのも入れる趣旨かと思うので,そういう意味では写り込みというように,典型的には写るというものですけれども,取り込みという人もいるらしいのですが,音楽で入っちゃうというようなことも入ってくるので,入り込みのほうがいいのかもしれないのですが,ちょっと私が前のときにお聞きしたのは,入り込みというところまで広げていたら,おおむねほかの国で挿入とか言っているのとイコールになるのかと思うのですが,そこでとどまっているのか,そういう,いわゆる写り込みというよりは,うまく言えば入り込みですけれども,入り込みでないようなものも入っているとするのかという,そこは検討しておいたほうがよいと思います。
私の理解では,これは,写り込みの中にはそもそも写し込みも,さきほどのように,入り得るしということで,写り込みを典型とするような,入り込みぐらいのところがAなのかなというふうに理解しておりますけれども。ただ,それより広がるのかどうかというのは,その当時,議論した際には必ずしもはっきりしていなかったので,そこを確認しておいたほうがいいのではないかという趣旨で申し上げていたかと思うのですが,そこは私は今言ったような次第で入り込みだろうというふうに思うのですけれども,いや,入り込み以上にまた何か,軽微だったらいいとかいうのがあるのかどうかというのは,ある程度確認しておいたほうがいいかなという気持ちがあって,先ほど言及されたところで発言した次第です。
私はおおむね,大体入り込みでいいのかなと。そうすると,入り込みで,意図が入るかどうかというのは,サブ問題で注13で解決済みなので,それを含めた上で入り込みでいいのかなというと,ある程度このAの対象というのも明確になっているのではないかというふうに理解しているのですが。
【土肥主査】
ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
中山委員。
【中山委員】
Aの文章を読んでいる限りは,別に写り込みも入り込みもなくて,一般的に書いてあるわけで,13は例えばというので書いてあるので,余りこの実益ないかと思うのですけれども。
ただ,先ほど末吉委員がおっしゃったケースは,つい最近,知財高裁で出された判決だと思うんですけれども,あれなんかは,判決では引用と言っていますが,私は実質フェアユースじゃないかと思っています。雪月花事件と同類だと思っておりますけれども,あれなんかは,写し込みかといわれると,恐らく写し込みには入らないということになると思うんで,やはりそこはケース・バイ・ケースで決めざるを得ない。そのときの利用の態様とか目的,どのぐらい権利者に損害を与えるか等々,総合的に判断すればいいんで,余り写り込み,写し込みの議論というのは細かくやっても意味がないと思います。
【土肥主査】
中村委員。
【中村委員】
ヒアリングでも,これは第8回の議事録の24ページなんですが,写し込みまで入ると,スタジオの中で撮影する背景にあらかじめ絵や写真を意図的に配置して利用するという場合にまで権利制限の対象となることになり容認できないという意見があったんですが,写し込みまで入るとなると,これまで対象となるということになるんでしょうか。
【土肥主査】
中山委員,どうぞ。
【中山委員】
写し込みが入るというのは,写し込みは全部セーフである,換言すれば写し込みは全部フェアユースになるという意味ではなくて,その他もろもろの要素を勘案して初めてフェアユースが適用されるわけです。スタジオに持ち込んだ場合は,かなりのものが違法になるのではないかと思います。
雪月花事件のように,ほんの数ミリ角で筆の勢いやかすれ具合がよく見えないと等の,いろいろな条件があって初めてフェアユースになると思います。
【土肥主査】
この点,9ページの今回修正していただいた部分の2つ目の段落の中の理解というのは,各委員におかれまして,いかがでございましょうか。こういう理解ができるのではないかというふうに,ご提案をしているところでございますけれども。要するに付随的で,利用の程度が軽微であることを特徴にする,そういうものであるところから,格別に利用を,写し込み,写り込み,そういった利用局面を特定の場合に限定しないで,こういうある程度包括的な考慮要件を定めた上で裁判所の判断にゆだねる,そういう考え方でございますけれども,こういう考え方,いかがでございましょうか。
【中村委員】
もちろん最終的に裁判所の判断なんですが,これ刑事罰にもかかわっておりますので,運用の主体というのは裁判所に行く前の段階でも相当多数,いろいろな機関が出てくるんですが,結局今のいろいろな先生方のお話でも,ケース・バイ・ケースだと言われても,結局あとは要件の理解だと思うんですけれども,主たる目的としないとか,付随的とか,軽微とか,この3つに代表されると思うんですが,極めてあいまいなものが並んでいて,今回補正していただいた事務局案でも主たる目的としないということはこういう意味なんだとか,付随的にというのはこういう意味なんだとか,質的・量的軽微というのがこういうものなんだということも特に示されていない状況の中で本当に運用できるのかというのが物すごく疑問がありまして,できましたら,これからこの後,一体それぞれの要件が何を意味していて,本当に明確で,また運用できるのかという観点でもぜひご議論いただきたいところなんですが。
【土肥主査】
予定といたしましては,本日そこも含めて議論いただきたいということでございます。いかがでございましょうか。
大渕委員。
【大渕委員】
今のは要するに,前から言っているところですが,今回のは余り条文が注に出ていませんが,ドイツなどでも非本質的な付随物といったようなものでやっているようなものなので,多分これ以上明確にするのは容易ではないように思います。また,もともと,それを言い出すと,引用の条文だって非常に包括的でありまして,32条もそういうことになっています。それは社会通念上,大体引用というのはこういうものだという漠然としたイメージはあるし,この私が理解しているところではAの写り込みというか,入り込みも,もともとはこういうのは違法だと考えられていたかというと,実質的利用がないとか,背景的利用にすぎないとかで,おおむねこういうものは侵害にはならないということがあって,今回,それをもっと明確化するためにA類型としてやっているので,そういう意味では実質がすごく変わって,新たに全く創設したというよりは,今までも何かほかの理由で否定してきたようなものという意味では,関係者間にはある程度のイメージがあるところなのでありまして,全くゼロからつくっているというわけでもないし,かつ,これ以上このあたりを詰め出すと,多分,一般規定として意味がなくなってきて,これは先ほどあったように,局面などを限定せずに一般的な形でやりましょうというものなので,それはもうこれ以上やるとなったら多分これとしては成り立たないところであります。それもあってか,ほかの国でも細々と書かれている規定も多い中で,付随的な挿入物,インシデンタル・インクルージョンとか,日本語でどう訳すか難しいですけれども,そういうもので条文になっているというところからも多分,各国とも苦しんだ上で,できるだけ明確化したほうがいいとは思いつつも,この程度しかできていないというこができますし,他方で,それだけできれば,少なくともここに上がっているようなドイツとかイギリスでは特にそれを運用して問題が起きているとも聞かないので,あとはこういう,なるべく。また文言についてはいろいろとあるのでしょうが,最終的にでき上がったものは判例法の蓄積みたいな形で明確化が図られているということは,別にここに限ったものではなくて,32条だって,最初できたときには似たような状態だったのではないかというようには思います。
【土肥主査】
大渕委員におっしゃっていただいたとおりでございまして,現状既にこういう問題について規定がなく,著作権侵害罪の問題との関係というのはあるわけでございますけれども,ここは従来から刑事責任を伴わない,そういう領域であるという,そういう領域をより明確に,ここまでは刑事責任は及ばないというふうにしているわけでありまして,範囲を,刑事責任を伴わないところをよりはっきりと,ここは入らないんだというふうに言っているのではないかと,私はそう認識をしております。
したがいまして,これがもし問題であるとすると,従来どうなるのかという問題にもなるんではないかと私は思うんですけれども,そういう考え方ではいけませんかね。
【中村委員】
主査のおっしゃること,そのとおりだと思いますが,例えば何ですけれども,今後のいろいろな私どもの検討に資するためにせっかくこれだけの先生方がいらっしゃるのでご教示いただきたいんですが,例えば主たる目的としないというのは,ほかの法令を見てもそういう「主たる目的としない」,何々を目的とするというのはいっぱいあるんですけれども,そういう「主たる目的としない」という用例はちょっと見当たらない状況なんですが,そういった中であえて「主たる目的としない」というのをつけていこうとすることの意味は,こういうものなんだ,主たる目的としないというのはこういう意義なんだというのは,ぜひ議論で出していただきたいですし,逆に「主たる」というのが本当に要るのか。あえて「主たる」というのをつける意味はどこにあるのかという点もぜひ議論で出していただきたいところなんですけれども。
【土肥主査】
今のご質問について,ございますか。
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
今の点も先ほどのところに関係してくるところがありますけれども,これを外しちゃって,先ほどのような付随的利用といった点一本でやっている立法例もあるわけですから,そう書いちゃうのも一つの手かもしれないのですけれども,これはなるべく,付随的利用一本だけでやってしまうよりは,こうやったほうがよりわかりやすくなっているだろうということだと思います。多分,この手の話はそういうところが多いのではないかと思うのですが,もうこういうのをやめちゃったら,付随的利用はいいと一行書くのも手かもしれないのですけれども,そこをなるべく明確化を図ろうとして,こういうふうに書いた結果なのであって,ほかの立法例に今まで例がないのかもしれないのですけれども,ここにあるようなものは外してしまって付随的利用一本だけでやるよりは,ある程度,明確化を図ったほうがよいと思われます。ここにあるものでは,その著作物の利用を主たる目的としている場合は外れるということがわかるので,意義があると思います。
その著作物の利用を主たる目的としているものだったらこのAには当たらないということは最低限わかるのでありまして,明確化が図られていると思います。そういう意味では,一定の,先ほどの付随的利用だけとしてしまうよりは明確化が一定程度前進するといえると思います。ただ,これはもう言い出すと,完全に明確化を図ろうとすると多分動かなくなってしまうので,ある程度こういう部分は残らざるを得ないのかなと思います。むしろ,これをやめるのであれば,これは外せばだんだん広がっていってしまうわけでありまして,逆に,要件がついているほど狭くなるわけで,付随的利用だけにしてしまうよりは,ここにある点で明確化を図っているという,そういうたぐいの話であると思います。
【土肥主査】
村上委員,どうぞ。
【村上委員】
私,経済法制全体としては,中村委員の指摘というのはよくわかるので,非常に抽象的文言でも現実には刑事罰規定にしている経済法制関係の法令というのは結構多いわけです。したがって,結局この問題も最後,条文化するときと,それから本当に刑事罰の対象にするときかどうかを検討するところで,もう一体検討されるべきものだと思います。
ただ,現実問題は,ほかの経済法制を見ても,例えば「おそれ」とか何とか,非常に抽象的な文言が使われている実体規定がありまして,それが当然最高裁まで行って,刑事罰の対象としてそれでいいのか,抽象的にすぎるんじゃないか,あいまいじゃないかという議論が,必ず出てくるわけです。ただ,最高裁に行くと,ほとんどそれでもいいという感じの憲法上は問題ないという判決が下されているわけです。私個人的には,どちらかというと中村委員のほうに賛成なので,余りにも日本では抽象的な条文であっても刑事罰を認めすぎているのであって,本当はもう少し限定すべきではないかと。
その結果,実際には動いていない刑事罰規定はやまほど日本にはあるというのが実態になっています。そこの問題意識はよくわかるのですが,全体の経済法制として,今の日本の法制のバランスを考えたら,抽象的な文言であっても刑事罰の対象としたり,そういうことが実際には最高裁も認めるというのが,現実の法律解釈はそんな感じかなというので,そういう意味で気にされるなら,条文化するときと本当に刑事罰との関係を考えるときには,もう一回そこは詰める必要があるというのは同意見ですが,この段階で余りぎりぎりそこを法制の体系上おかしいとか何とかという議論は余り問題にならないのかなという気はしていますが。
【土肥主査】
ありがとうございます。
【中村委員】
村上先生のご指摘もよくわかりまして,そのとおりかと思っております。
そうなりますと,今,村上先生がおっしゃった,この後のそういういろいろな検討につなげさせていただく意味でも,例えばなんですが,このAでいきますと,「主たる目的としない」というのは例えばこんなものだとか,「付随的に」というのはこんなものだとか,「質的または量的に軽微」というのをせめて事務局の,こういうペーパーの中に例として入れていただくということでも,せめてやっていただけると,その後の検討につながるんではないかと思われるんですけれども,なかなかこの場で,それぞれの主たる目的,付随的,軽微について,明確に意義を決めていくのが難しい,またそれはその後の検討によるべきだというのは確かにおっしゃるとおりだと思われますので。ただ,これだけ非常にお詳しい先生方がいらっしゃる中で,事務局において,主たる目的としないというのはこんな場合だ,付随的というのはこんな場合だ,質的・量的軽微とはこういうものだというのを,このペーパーの中に本文でも注でも何か例として入れていただくと,それを踏まえて,今後の作業に生かせるのかなと思いますが,これはいかがでしょうか。
【土肥主査】
委員のご希望について,事務局の考え方をお尋ねしたいと思うんですけれども,権利制限の一般規定の場合,要件の内容について,やはり裁判所の判断の積み重ねということを前提にしておりますので,あらかじめどの程度書けるのかというのは難しいんではないかと私は思っているわけですが,事務局はいかがでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】
この8ページを見ていただくと,例えばということで,写り込みと言われるものがA類型の代表例ということになりますので,まず例示を書いて,その例示を踏まえた上で,概念整理をしたのがA類型ということです。
もちろん,このA類型の柱書きは,そっくりそのまま法律になるわけではございませんで,そこは主旨を呈して,立法技術を踏まえた上で,例えば「主として」というものを使うか使わないかとか,例えば「軽微」という言葉を条文で使うかどうかというのは,これは内閣法制局とご相談しながら決めていくということになるのだと思います。
したがって,その段階で,例えば「主として」という用語を使う,ないしは「軽微」という用語を使う場合には,そこは法律上の概念はきちっと整理すべきだと私は考えております。ただ,審議会では,一つの典型例を踏まえた上で概念を整理しただけでございますので,今の段階で,「主として」という言葉の定義をしたり,「軽微」という言葉の定義をしたりするのがいいのかどうかというのは,正直言いまして,若干疑問があるわけです。
したがって,繰り返しになりますけれども,法律をつくる段階でこのような用語を必ず使うということが決まっているわけではございませんので,私どもとしては法律をつくる段階で,そこに選択された用語については,当たり前の話ですけれども,概念整理はきちっとし,かつそれを周知もする必要があるわけですけれども,今の段階でというのは,ちょっといかがなものかというふうに考えております。
【土肥主査】
ということなんですけれども,よろしゅうございますか。
【中村委員】
最終的には,もうやむを得ないかとは思うんですが,例えば,8ページの下の「例えば」となっているところが,私もこれまで議論してきて,結局よくわからないまま,最終的に進んでしまうというのはどうかなと思っておりまして,その例えばという例を挙げておられる中で,この中のどういったものが主たる目的としない場合で,あと軽微で付随的なのかというのを,もう少し明らかにしていく努力というのがあってもいいのではないか。主たる目的としないとか,付随的とか軽微というのが,何かよくわからないけれどもAなんですというのが,この議論だというふうに言われるんであれば,もうそういう前提として,検討して行かなければいけないと思いますが。
【土肥主査】
茶園委員,どうぞ。
【茶園委員】
今の議論は,この対象自体が一般規定ということで,どこまで具体化すべきかということにもかかわるのですけれども,先ほど議論のあった,主たる目的とか付随的とか,社会的軽微とかに関しては,私個人は,A類型の中核ともいうべきは付随的という点にあると思っています。先ほど大渕委員が諸外国の立法例を挙げておられましたけれども,付随的かどうかの判断において考慮されるファクターがいろいろあって,それは目的とか,あるいは影響とか,あるいは行為態様などであると思います。そのうちで,主たる目的というのは,目的というものを切り出して,普通はそれは主たる目的とは言えないでしょうとか,影響についてはそれを切り出して,著作権者に大きな影響を与えるというのは,それはだめでしょうとか,そもそもそれは付随的とは言えないでしょうということになるのではないかと思います。そして,先ほどの写り込みとか写し込みの問題は,行為者の意図も考慮される要因になるのでしょうが,ただ,写し込みも含まれないではないという意味は,意図の有無が決定打ではない,つまり,意図があればそれだけで認められないということではないという,そういう趣旨だと考えることができます。
そこで最初の問題に戻って,どこまで具体化するかについては,この段階でもより説明できるところはしたほうがいいと思いまして,ただ,例を挙げることがなかなか難しいということであれは,例えば,考慮ファクターを示して,こういったものがいろいろ考慮されますとか,付随的というのは,こういうものからいろいろ考えられますとかいうことは書くことができるのではないかと思いまして,もし書けるのであれば,書いたほうが,これを読んでいる人はより理解しやくなるのではないかと思います。
以上です。
【土肥主査】
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
今出た中でも,例えば写し込みに関しては,この注13のものは,認識があるものを写し込みと考えて,認識があってもその一事だけでは直ちには落ちないという話なのですが,これが,認識にとどまらず,意図まであったらどうなるのかというので,茶園委員の今のお考えでは,意図があっても場合によっては入りうるというところなのですが,そういうふうにかなりいろいろ細かいところが出てきて,最後はその部分は完全に決めきるというよりは,さっきの諸外国の立法例ではないですが,多分そういうのを決めきれれば,ほかの国も書いているところを付随的利用とか,そういうことで済ませてしまっているのでありまして,やはり,そこは決めきれないところがあって,今いったような条文にしかなっていないのではないかと思われます。例というのが,典型例で,普通に出てきているのは,たまたま自分の娘の写真を撮ったら後ろにトラックが突然通りかかって,そこに絵がかいてありましたというのは,多分だれが考えてもこれはいいんで,そういうものであれば,ほとんど今までも全く,そういうものはつかまえようとは思っていなかったと思うのですが。
意図があって,たまたまいい絵が描かれているトラックが来たから写してしまっていいのかといった,そういう複雑をものになってくると難しいのですけれども,今のみたいに,全く目的は完全に自分の娘を撮るだけで,後ろのものは全く認識もしていなくて,一番極端な例だと,後で写真を見てみたら写っていましたというのまで含めて,いろいろなものがあり得るので,何かちょっと例を書き出すと切りがないところもあって,ちょっとそれを書くとなると,かなりいろいろ考えて,本当に一番極端のだと,全く気がつきもせずに後から見たらというようなものは,多分,今までも全くそのようなものは,実際には,侵害であるとは,一般に考えていなかったと思います。そこからあと,撮るかどうかだけじゃなくて,そこから送信するかどうかとか,いろいろ複雑になってくるのですが,どこまで認めるのかというのは,そういうのがなかなか詰め切りにくいために,むしろ,一般規定として導入しようとしている部分があるので,そこはちょっと,やるとなったらかなりの覚悟を持って決めないといけないのかなと思います。本当に典型例で撮るときだけだったら,ある程度の典型例はあるのでしょうけれども,それだけかと言われると,それだけでもないから,こういうふうに悩んでいるところがあるので。
【土肥主査】
事務局もこのA類型について法制化を考える段階においては,規定の要件を詰める中で,具体的な例も射程も書いていくと,こういうふうに言っておりますので,今の段階で,余りこの例を追加しても,どこまで追加していくか,なかなか際限がないわけですし,それから先の法制化の過程においてせっかく苦労いただいても,そこのところが生きないということもありますので,これは事務局に確認はいたしますけれども,中村委員,茶園委員がおっしゃっておられるようなことについては,具体の規定との関係で詰めるということでよろしゅうございますか。事務局,いかがですか。
【川瀬著作物流通推進室長】
主査とご相談させてもらって,決めさせていただきたいと思います。
【土肥主査】
よろしゅうございますか。
それでは今おっしゃっていただいた中村委員,茶園委員のご意見等については,今後,相談させていただく過程の中で,私のほうから伝えるようにいたします。
A類型に関しまして,よろしゅうございますか,それでは。
【中村委員】
最後に,9ページの上から6行目と7行目なんですが,この「あらかじめ権利者から許諾を得ることには極めて困難を伴い,さらにはすべてにつきあらかじめ権利者から許諾を得ることはおよそ現実的ではあるとはいいがたい」,かなり強い表現で書いておられるんですけれども,これは今までの議論,もしくはヒアリングなのかわかりませんけれども,何をもとにこういう強い表現になったのかというのを,ちょっと最後にご教示いただけますでしょうか。
【土肥主査】
お願いいたします。
【池村著作権調査官】
具体的な写真を撮るとか,そういった典型例を考えた場合に,一々すべて許諾をとることは難しいだろうということで,事務局内で議論して,こういう表現になったんですけれども,もう少し弱いほうがよろしいというご意見が強いのであれば,それなりに修正いたしますが,その辺はご議論いただければと思います。
【土肥主査】
少なくとも,こういう状況において,あらかじめすべての権利者から許諾を得ること,なかなか現実的ではないですよね,確かに。そういうことはありませんか。私はなるほどというふうに思って,読ませていただいたんですけれども。
【大渕委員】
これも私,読んだときも余り抵抗感なくて,「およそ」とか,「すべてに」とか,いろいろ重ねた上で強くなっているから,先ほども一番極端と申し上げた,娘を撮っていたら,後ろに,たまたま自分が気がつかないうちにトラックが通っていて,そこに著作物が写っていたというなら,多分事前に撮ろうという認識すらないので,事前に許諾を得よというのも無理があるので,多分そういうものまで含めてすべて入れればというふうなので,強めて,だからそのせいか,そんなにひっかからないのは,すべてについて―主要なのもだったらともかくも,さっき言った,極端な例みたいな自分も気がつかないうちに入っちゃっていたと,それも端っこに入っただけのようなもの,それは事前に撮らせてくださいというのは,およそ。撮った後でしか気がついていないぐらいだから,撮る,事前に撮ろうというのも出てこないので,そのようなものについてまでという,そういう意味ではおよそ現実的ではあるとはいいがたいという点は,それを読んだときに余り抵抗感がなかったという感じですけれども。
【土肥主査】
事務局も,もしそのこの表現が誤解を与えるのであれば,そこのところは,トーンについては考えるということのようでございますので,それでよろしゅうございますか。
それでは,B類型に入りたいと存じます。これは10ページ,11ページ,12ページの中ほどまででございますけれども,この点について,ご意見ございましたら,お願いをいたします。
B類型については,よろしゅうございますか。
中村委員,どうぞ。
【中村委員】
このB類型についてなんですけれども,前回までの議論とか,パブコメとかヒアリングのときまでは,少なくとも私の理解としては,最終的に適法な著作物の利用が行われるということを前提に考えておったんですが,今回,最終的に適法な著作物の利用が行われることは要件ではないというふうに明示されていて,ちょっと私の今までの理解が全く違っておったなというふうに思っているところなんですが,これまでの中間まとめにおいては,適法な著作物の利用行為があとあと出てくるということを前提としていたんではなかったんですかね。それとももともと最終的に適法な著作物の利用が行われるのは要件でないというのがこの場の理解だったんでしょうか。ちょっとそこをまず確認したいんですが。
【土肥主査】
これは池村調査官お願いします。
【池村著作権調査官】
もともとワーキングチームの報告書では,ここは「達成する過程」というふうになっていたのを,たしか松田委員のご発言だったと思いますけれども,そういった適法な利用が達成するかどうかかかわらず事前のものも含めるべきだというようなご意見がありまして,それを支持するご意見も多かったことから「達成しようとする」という表現に改めたという経緯がございますので,そのような前提だったというふうに考えてございます。
【土肥主査】
そうですね。割合,法制問題小委の早い段階で,そういう意見がございまして,最終的にまとまらなかった場合といえども,その過程におけるというようなところも含めていいのではないかというご意見に,たしか中村委員もおいでになったように私は思うんですけれども,そういう認識を持っておりますけれども。何か,松田委員,この点。
【松田委員】
まさにその趣旨です。
【土肥主査】
どうぞ。
【池村著作権調査官】
中間まとめの20ページにおいて,特に適法な著作物の利用が最終的に行われなかった場合を想定すると,黙示的許諾の法理等による解決には限界があるという記載がございますので,中間まとめの段階からそのような考え方だというふうに理解しております。
【土肥主査】
ほかにございますか。よろしゅうございますか。
【中村委員】
ちょっと改めて明確に,最終的に適法な著作物の利用が行われることは要件ではないと書かれ,しかも権利者の許諾申し込みにまで至らなかった場合とか,許諾が得られなかった場合も含まれると,はっきり書かれていますので,これだと,結局無限定となってしまわないか,また行為者において,後で許諾が得られる,許諾が得られると安易に考えさえすれていた場合にもこのBに含まれてしまうのではないかという,無限定につながってしまうのではないかという懸念については指摘しておきたいと思います。
【土肥主査】
中山委員。
【中山委員】
そういう場合,途中でできたものを使えば,恐らく目的外使用の規定が入るでしょうから,違法となると思います。したがって,それは余り心配する必要はないと思います。例えば外国のものを翻訳しようとする場合,許諾を得る前に一応訳してみることも多く,あるいは半分ぐらいやって諦めるときとか,でき上がってから許諾が得られなかった場合等もあるわけですね。それが全部犯罪になってしまうというのは,これまた問題で,その場合,目的外使用で規制をかけるということで十分ではないかと思います。
【土肥主査】
事務局,何かありますか。
【池村著作権調査官】
本日,抜粋版なのでご用意していませんけれども,目的外使用については,ほかの部分でちゃんと書いてございます。また,本日の資料3の11ページのなお書きのところで,そういった懸念については,合理的必要と認められるですとか,軽微といった要件がございますので,そういうものが無限定に入るわけではないということは意識して書いているつもりでございます。
【土肥主査】
B類型,いかがですか。よろしゅうございますか。
【中村委員】
そうすると,最終的に個別権利制限規定に基づく利用が行われることについても,それは要件ではなくなるということなんでしょうか。
【土肥主査】
お願いします。
【池村著作権調査官】
そういうことだと思います。
補足しますと,具体例としては,10ページの注18あたりの例が考えられるんじゃないかと思います。
【土肥主査】
よろしいですか。
それではC類型に入りたいと思いますけれども,C類型は12ページ,13ページ,14ページでございますけれども,C類型についてご意見をいただければいうふうに思います。
松田委員,どうぞ。
【松田委員】
C類型は,プログラムのところにも及んでもよろしいでしょうか。
【土肥主査】
プログラムのところは,15ページ以下に,16ページに中心的に出てくるんですが,どうしましょうか。一緒に……。
【松田委員】
後にしましょう。
【土肥主査】
後でやろうかと思ったんですが。じゃ,プログラムとの関係は,この次にさせていただくことにいたします。
プログラム以外の関係において,このC類型でご意見ございますか。
どうぞ。
【中村委員】
C類型については,立法事実の考え方が大きく2つ分かれていたように思いまして,松田先生の第6回の議事録の25ページでC類型については,むしろ現段階で立法事実を具体的に示さないで条文をつくらざるを得ないというお考えと,山本先生の第6回の同じ28ページで,これは技術開発のために他人の著作物を検証の素材として使うということは立法事実として出ていたというご指摘もありまして,これはどちらの方向でこの委員会としては考えていくべきなのかというのが,一つ問題として残っていたのではないかと思っております。
【土肥主査】
お願いします。
【松田委員】
私は全く立法事実は要らないと言っているわけじゃなくて,想定できない,技術の発展に伴って想定できない部分があると,そういう前提のもとで発言したところでありまして,多分ご引用のところは2つとも余り差異はないというふうに考えております。
【土肥主査】
ありがとうございます。
【中村委員】
すみません,申しわけありませんでした。そうであれば,それを前提として,技術開発とか検証とかいうのをずっと,私もこの場で聞かせていただいていたんですが,そういうものと,念頭に置いているものと,このCの文言が余りにも違いすぎていて,Cの文言では全く技術開発とか検証とかいうことに限定されていませんので,このCがそのまま設けられてしまうと,全く無限定だという批判を受けるのではないかということで,今の松田先生のお話もありました,もう少し技術開発とか検証とかいうのがわかるような表現にすべきではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【土肥主査】
今の委員のご発言をお聞きになっていかがでございましょうか。権利制限の一般規定という観点から議論をしておりますので,格別,技術開発の目的,検証の目的,そういうことは,ここでの検討からすると合わない,そういう話かなと思っておるわけですけれども,皆さんいかがでございましょうか。
お願いします。
【松田委員】
今,主査が整理なさったとおりで,ここにプラスして研究開発,技術開発ということを入れる必要はないと私も思います。
【土肥主査】
ほかにございますか。
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
これはどこかの段階かで議論したかと思いますけれども,これ,多分やり方は2つあって,技術開発とか検証とか,そういう目的もプラスした上で,Cに加えて何か一定の公益的なものも含めて合わせ技みたいにして,権利制限を組むやり方と,多分ここで今あるペーパーのようなこういう形じゃなくて,要するにいわば形式的には複製等が行われているけれども,それは享受するための利用ではないと。形式的に複製が―ちょっと形式的侵害みたいになっちゃいますけれども,何をもって著作物の享受というかというのは,またプログラム等であり得る,そういうものじゃないのはすべて外れますということなので,むしろ。
技術開発とか,ちょっと前申し上げたときにあったのは,技術開発とか検証のためにやっている場合というのは,むしろ,ここでいう享受でないことの間接事実,ないしは,重要な徴表のような感じになってきて,一段落ちてくるので,そういうこともあって,中に書いてあるのは,検証とかいう言葉が出てくるけれども,最終的に四角の中にはそういう言葉が出てこずに,非享受みたいなのが要件というかポイントになってきて,それをうかがわせる事情として技術開発とかやっている場合にはデモデータしかないから別として,その対象物を享受するためじゃなくて技術開発とか検証の目的でやっているということは,その対象物を享受しないことの重要な徴表みたいな感じで出てくるということだと思います。
それは組み方の問題で,さきほどの2点を合わせ技みたいにして組むやり方もあれば,これはそうではなくて,非享受がむしろポイントで,形式的には複製等が行われても,それは著作物の享受に―表現の知覚を通じてこれを享受というふうにいろいろと形容詞がついていますけれども,そういうものもつけられていない,むしろそっちのほうが主位の要件だよということで,先ほどの検証云々というのは,検証とか技術開発の目的でやっている場合には,これはその著作物自体を鑑賞したいとか,そういう目的ではありませんよねという,それをうかがわせる間接事実というか事情みたいな形で出てくるので,これはどっちに組むかで,これは後者というか,研究開発とかが独立の2本の柱の一つとかいうんじゃなくて,要は最後は非享受一本だというところのほうで組んであるから,むしろ出てこないのがある種当然と言えば当然ということになるのではないでしょうか。要件のほうとしては。
【土肥主査】
ほかに。
村上委員,どうぞ。
【村上委員】
これは全体を読んだときのイメージが,このC類型は,著作権法的に書くとこういう書き回しになるのかなという感じもしたんですけれども,逆に中村委員の言うように,こう書いてあると,デジタル関係において研究開発,検証のための素材として使う場合という形に言いかえたとして,どのような違いが出てくるのかなという感じがして,全体として読んでいた感じですが,これはどんな感じなのでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】
報告書にも書いておりますけれども,もともと調査研究,研究開発というのが一つの大きな例示でありまして,現に利用が行われていると考えております。それに関して,特に問題が生じていないということもあるのですが,特にネット社会が進展してくる中で,21年法改正でいろいろな手当てをしたところでございますけれども,あれは現状の技術を踏まえた上で手当てしましたけれども,例えば通信過程の利用とか,IT機器を利用する場合の利用とか,そういう中間過程で行われるような複製とかは,さまざまあるんだと私どもは考えております。そういったことでC類型について調査研究,研究開発というのは,一つの大きな,先ほどの写り込みの話と同じでして,大きな典型例ではありますけれども,やはりそこに限定すると,権利制限の一般規定創設意義と言いますか,そういうものがやっぱりある種非常に限定的になってしまうということでして,それ以外にも当然あるんだということを前提にして,このような表現になっているということでございます。
【土肥主査】
よろしゅうございますか。ほかにいかがでしょうか。
中山委員。
【中山委員】
何回か前に,たしか山本委員のご発言だったと思うのですけれども,表現を知覚することを通じてという,この要件については問題じゃないかという問題提起があったと思うんですが,その点はどうなんでしょうか。
【土肥主査】
どうぞ,お願いします。
【川瀬著作物流通推進室長】
それもいろいろな考え方が多分あると思いますけれども,例えば調査研究や研究開発の過程で,著作物を,文献複写をするとか,それから例えばアーカイブ化をするとかいう例があると思います。そういうものに関しては,これはワーキングチームでもご議論がありましたけれども,やはりそれを権利制限する場合に,権利者の利益を不当に害するというようなこともやっぱり生じるのだと思います。したがって,一応今のような形で整理されていると私どもは理解しているわけでございます。
【土肥主査】
よろしゅうございますか。
【中山委員】
本当に表現の知覚だけを取り出して,それでセーフとして,それ以外はだめとしていいかという問題があると思います。例えば,特許庁に出す特許明細書,あれは多分著作物であると思うんですね。特許庁が複製するのは特許法上の条文があるからいいのですけれども,あれ現在,民間でもみんなコピーして見ています。あるいはもっともそれをまとめて整理して販売したりしています。日本だけでなく,世界中でやっているわけですね。あれは今さら違法だということは実質的になかなか言いにくいわけですけれども,あれはもろに表現を利用しているわけですね。そういうものは一切,一切排除していいかどうかという問題です。
【川瀬著作物流通推進室長】
先生のご趣旨,私もよく理解できます。ただ,権利制限の一般規定と言いましても,これは無限定で,例えば米国法のような形でやるわけではございません。権利制限の一般規定は,ある種の限定を付した上で,その限定,ある種の限定の中で考慮要件をできるだけ一般化して,フレキシブルに対応するということだというふうに理解しています。したがって,外縁部分をどのようにして限定するかという場合に,やっぱりそこは権利者の利益を害する可能性が高いか低いかとか,そういうような要件があるんだと思っています。したがって,今ご指摘の例は私も十分理解はしますけれども,それ以外にやはり特に権利者側が強く懸念されている,例えば組織内における知覚で認識するような形での複製については,とりあえず今回の外縁部分からは外して,その中で,とりあえずは考えていこうと整理がされていると私は理解をしております。
【中山委員】
もちろんその枠組みをこれ全部取っ払って,この中から表現を知覚することを通じてという状況をなくすという意味ではなくて,本質的利用だとか,何かそういう他の要件に変えたほうがいいのではないかと,こういうご意見だったわけです。
したがって,野放図にするということはもちろんあり得ないので,仮にここで本質的な云々にしたとしても利用の目的及び対応とか,あるいは権利者の利益を害さないというのは大前提ですから,そういう条件をセットになってという意味ですから,決して野放図だということにはならないと思ういます。本当に知覚を通じてということだけでいいのかどうかという問題意識です。
【土肥主査】
ぞうぞ。
【池村著作権調査官】
今の部分ですけれども,13ページの最初の「例えば」から始まる段落の4行目の「また」以降で,技術開発,検証の過程で当該映画等の上映(表現の知覚)が行われる場合であっても云々かんぬんということで,必ずしも知覚があるなしで形式的にばっさり切ってしまうというわけではなくて,その態様等に照らして,当該映画等の表現を享受することに向けられたものと評価されないのであれば,この類型に該当することとなると考えられるという形にまとめてございますので,実際条文化するときは,このあたりもしっかり考えて,文言を考えることになると思います。
【土肥主査】
どうぞ。
【中山委員】
この,今のご指摘のところは,最終的にはあくまでも技術開発とか検証を目的として,その過程で絵が使われたという話ですけれども,先ほどの特許の例はそうじゃないわけです。最終的にその明細書を知覚して,利用するということなので,そういうものは含まれないんですかという質問です。
【池村著作権調査官】 
そこはまさに何をもって享受というかというところで,ケース・バイ・ケースなのかなというふうに思います。
【土肥主査】
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
先ほどの知覚の部分で,表現の知覚というのは,私が認識しているところで,山本委員も言われていたかと思いますが,だからプログラムとの関係があって,これで拾いきれるかというのはむしろ,後でやるところですけれども,16ページのあたりで,表現を知覚して云々というのは,またここはプログラムの特性に応じて十分考慮する必要があるとかいうところで賄われるので,このままではないように,プログラムが入るところで,後でちょっと,議論が2カ所で割れちゃっていますけれども,そこでいろいろやられるんで,またそこも含めてまた検討されることになるので,このままだけだと,私も読んだときにひっかかりますけれども,そこも合わせての問題になるし,かつこれを妙にいじり出すと趣旨が広がりすぎて,またそれ自体でちょっと問題が起きてくるので。これは少なくともプログラムをあわせてやった上でやらないと,ちょっとここのところは難しいのではないかと思います。
【土肥主査】
C類型との関係で,限界から超えるところ,あるいは著作物の種類としてのプログラムの著作物の関係,そういうところも今出てきておるわけですけれども,よろしければ次に入ってもよろしいですか。次のというのは,15ページ以降を議論していただいて,もし必要であればCに戻っていただくと。つまり,Cと15ページ以降を連動させてご議論いただくと,こういうことですけれども。
それでは先ほど,質問していただいた松田委員,お願いします。
【松田委員】
16ページのところに,プログラムをC類型のところでどう扱うかについて書かれています。16ページの最後の段落に至るところまでは,プログラムの特性を考えることについて,一般的考慮要素として特性を考えることはあるけれども,プログラムを特別扱いしてC類型から別途に考えるべき規定は設けないという,そういう趣旨のように読めるわけです。それで良いと思っています。次の段落ですが,プログラムを普通に利用した場合には,文言上はC類型に当たってしまうことから,最後の行でに掲載されていますが,「当該基準をそのままプログラムの著作物に用いることは適当でない」,結論として適当でないということになってしまうという意味であります。このため,プログラムの著作物の場合は,プログラムを実行し,その機能を享受するための利用か否かを基準としてC類型の概念を整理する等,条文化に当たってはプログラムの著作物の特殊性を十分考慮する必要がある」と,こういうふうに書かれているんです。
これは事務局が大変苦労して書かれているということはよくわかります。わかるのですが,私の意見としては,この17ページの2行目の享受するための利用はC類型に該当しないものとしてと,はっきりここで言ってしまったほうがいいのではないかという意見を持っています。その上で,Cの類型の概念を整理すると,条文化に際しては,プログラムの著作物の特殊性を十分考慮する必要があるというふうに書くのはいいのかと思うのであります。ここに「否かを基準として」というふうにしますと,何かまた違う基準が,プログラムにあって,C類型に該当するか該当しないかという議論が再燃するかのように思えてならないからであります。これが私の意見です。それが一つです。
それから,ここに注27が書かれています。この注27は,プログラムの著作物の特殊性から考慮しなければならない事案として掲示しているかのように思われるのであります。ところが,注27は,必ずしもプログラムの著作物の特殊性が問題になるのではなくて,複製防止技術と,それに伴う結果としての複製の問題を書かれているので,通常のコンテンツについても当てはまるCの議論ではないかなというふうに思うのです。この例をここに持ってくると,かえって議論が整理できないように思うのです。これも意見として述べておきたいと思います。
結論としては,16頁から17頁のはじめまで書かれていることは,内容としては賛成しておきたいとは思います。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにございますか。
中山委員,どうぞ。
【中山委員】
私もこの事務局の網がかかっているところの文章はこのとおりだと賛成したいと思いますけれども,それにつけても,先ほどの知覚云々というところとうまく平仄がとれるかという感じがするわけです。その点はいかがでしょうか。むしろ変えたほうが,知覚云々を変えたほうが,この文章には適合する可能性が強いのじゃないかという気がするわけですけれども。
【土肥主査】
どうぞ。
【川瀬著作物流通推進室長】
先生ご指摘のとおりにC類型がああいう書き方をしておりますので,それに関連して,こっちのなお書きはこういう書き方をせざるを得ないということです。 なお,C類型の概念には,山本委員,中山委員のご発言,十分承知しておりますけれども,私どもとしてはいろいろと関係者のご意見も伺った上で,そこは動かせないのかなという,正直言いまして,そういう考えを現在でも持っております。
【土肥主査】
松田委員。
【松田委員】
私がC類型に該当しないものとしというふうに記載を変えたらどうでしょうかというのは,実は関連しているところでございます。確かに前のところで知覚という言葉を使ったから,こういうふうに言わざるを得なくなった。ですから,知覚に外れるところが出てくることにならないようにしようということで,記載を変えてはどうかというふうな意見になります。
実はこの意見は,今,中山先生が知覚の部分でもC類型に当たるようにしようという考え方の一つであります。いささか,明確に対立しているのかもしれないと私は思っております。
それで,今までの議論の中で,それでは前に戻りまして,C類型の知覚ということに,ある意味では制限をして,この範囲内であるならば一般的制限規定として許容されるであろうということで,私はぎりぎりこれに賛成してきたつもりであります。できればC類型はないほうがいいかなと思ったときもありますが,その他の諸要素も加えまして,C類型でこの限りであればいいのではないかということで,賛成してきたわけです。これを,知覚を取って,知覚できる場合であったとしても総合評価の上に適正な利用があるというふうに書きかえますと,議論が振り出しに戻るということと,アメリカ的なフェアユースを導入するのことになる。これはビジネスモデルを適法とするか不適法とするかという判断をこの規定に求めることになり,それを踏まえて裁判所にゆだねられるということになる。そこについてはまだ踏み切れることではないのだろうという意見のもとで,私はC類型までは賛成したということであります。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにございますか。
森田委員,どうぞ。
【森田委員】
C類型は,もともとは著作権が本来想定していたような利用という意味で「本来の利用」という言葉を使っていたのだけれども,そうするとそれが何かということが不明確なので,もう少し書き下す必要があるということから「著作物の表現を知覚するための利用」というのが入ってきたわけですが,ただそれはプログラム以外の著作物を念頭に置いた場合には,そういう書き下しはできるけれども,プログラムの場合の具体化としてはそれではまずいので,そこで例えば「機能を享受するための」という別の書き下し方をしてはどうかということが提案されているのだと思います。したがって,一番上の概念としては「本来の利用」というのがあって,それをそれぞれの著作物に即して明確化するという形で議論は進展してきたものというふうに理解しております。
ですから,プログラムについて,この16ページに書かれているように,原則として権利制限の対象に入るとする場合には,本来の利用というのをプログラムに即して何らかの形で具体化しなくてはいけないという17ページの冒頭で書いてあることは,ある意味では論理必然的な帰結だと思いますので,それをどう書くかというのは次の問題ですけれども,これはこの次のステップの問題だろうと思います。
それで,先ほど中山先生が挙げられた例は,私の理解でいきますと,著作物の本来的な利用にはやはり当たるのだというふうに思います。つまり,C類型で念頭に置いてきた権利制限の対象にはそもそも当てはまらないようなケースではないかというふうに思います。したがって,もしその種のものを入れるとしますと,それはD類型として論ずべき問題ではないかと思います。つまり,権利制限の一般規定の類型としてここに挙げたもので,すべてをカバーしているというわけじゃなくて,そこから落ちたものもあると思います。しかし,ワーキングチームの検討の中では,それを例えばD類型という形でくくり出すことは難しいし,またそれも適当でないだろうということでC類型ができ上がっていると思いますので,A・B・Cだけでは狭すぎて,もう一つ別の権利制限の一般規定が必要なんだと,そういうご指摘ではないかというふうに私は受けとめました。そういうことが,要件化が仮に可能であって,また適当であるとすれば,D類型として検討することも考えられます。適当であるという趣旨は,ここで権利制限の一般規定と呼ばれているものは,要するに個別の公益目的というものを要求としないという意味での「一般規定」でありまして,個別の何らかの,例えば,先ほどの検証のためといった特定の目的を掲げたうえで,それとの関係で権利制限を考えるというのは,ここでの概念規定でいきますと,個別規定の拡充のほうの問題であって,ここで議論しているのは,そういう特定の公益目的を掲げないで一般的な形で妥当するものを掲げるという前提でA・B・C類型について議論しておりますので,先ほどの特許明細書の問題は,むしろそちらの個別規定で対応したほうがよいような問題なのか,それともそれに類する問題はほかにもたくさんあって,それらをひっくるめて,特定の目的を掲げずにD類型というのが考えられるとすれば,そういう形で議論をするのが適当であるという,そういう位置づけになる問題ではないかというふうに思います。したがって,C類型を限定を取って射程を広げて,そこにいろいろなものを読み込めるようにしようという議論は,ワーキングチームでC類型を考えたときのC類型の射程の外にある問題ではないかというふうに私は理解しています。
【土肥主査】
ありがとうございました。
大渕委員。
【大渕委員】
私も,Cのポイントは,さっき言ったように,二本立てにするというような別途の可能性もありえますけれども,ここでは一言で言ってしまえば,むしろ非享受一本みたいな話なので,そういう意味では先ほど出た例というのは,むしろ享受しているほうに入っちゃうんで,そういうものを入れ出すとCが崩れてくるというか,むしろ一番のポイントは非享受で,それが伝統的著作物だったら表現の知覚で説明して,これは入れたほうがわかりやすいという話もあったと思うんですが,ただ,プログラムの場合にはむしろ後ろにあるように,中身を,表現を享受するというよりは,実行するとか,そちらのほうなんで,だからそういう意味ではプログラムが入る段階で,Cのところを,伝統的著作物についてはこうであるし,プログラムについてはこうであるというように,それぞれに分けて書くことにはなるのでしょうが,いずれにせよ,くくったものは享受か非享受かで,非享受というものは形式的には複製とかそういうものに当たっても著作権侵害とはしないということであり,そうすれば非常に広い一般性のあるものだと思います。ほかのものを入れ出すとそこが崩れてくるので,そこは非享受というものの内容の明確化というのは,いろいろあるかと思うのですけれども,そこを外してしまうと,このC類型自体が崩れてくるのではないかというように感じます。
【土肥主査】
ありがとうございます。ほかにこの点,いかがでございますか。よろしゅうございますか。プログラムの著作物との関係についてもC類型との関係。よろしゅうございますか。
中山委員,どうぞ。
【中山委員】
ワーキングチームの報告のときだと,プログラムとパロディは別だというにことになっていたと思うので,プログラムはこれでいいだろうと思うんですけれども,パロディのほうはどうなっているんでしょうか。
【土肥主査】
お願いします。
【川瀬著作物流通推進室長】
特に記述,先ほど池村も言いましたように,重要部分以外の部分については,細かい用語のチェックはしておりますけれども,基本的には変えておりませんので,パロディについては中間まとめのとおりということでございます。
【土肥主査】
従前どおりということでございますが,いかがございますか。
【中山委員】
ということは,パロディはフェアユースには当たらないという結論になるわけでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】
A・B・Cの概念には,パロディということでは入っておりません。個別に,パロディが何かという概念もまだきちっと整理されていませんから,個別の事例でたまたま入るというようなことがあるかもしれませんけれども,パロディ全体としては,別途,中間まとめにございましたように,まず概念整理から始めて検討していくというような,問題提起に終わっているということでございます。
【土肥主査】
そういうことなんですけれども,よろしゅうございますか。
全体,C類型,プログラムの著作物についてございますか。よろしいですか。
じゃ,プログラムの著作物,C類型ということについてもうご意見,ご質問ないようであれば,全体を通じて,ご質問,ご意見ございましたら,お願いします。
【中村委員】
Bのところで一つだけ,ご教示いただきたいところがございまして,11ページの上から4行目でございます。せっかく例を挙げていただいておりますので,よく理解を深めるという意味でお尋ねしたいんですが,この例えばの例で権利者の許諾を得ないままに最終的な利用で用いることが可能な複製物を作成しておくことについてはBの類型に該当するものでないことは当然であるという,ご趣旨はよくわかるんですけれども,このBの要件に当てはめて考えたときに,これがこの例えばの例がBの類型に該当しないことが当然であるというのは,それはどの要件で切っていくというふうに理解すればよろしいでしょうか。
【池村著作権調査官】
ここに書いてありますとおり,合理的に必要と認められるものではないと思われますし,あらかじめつくっておくということは軽微でもないというふうに考えられますので,そこのあたりの要件で切られるんだと思います。
【中村委員】
そうすると,軽微かどうかは,あらかじめつくっておくかどうかで決まって,数の問題ではないということなんですか。
それから,合理的に当たらないというのは,達成しようとする過程ではなくなっているから,なんでしょうか。
【土肥主査】
どうぞ。
【川瀬著作物流通推進室長】
軽微という言葉は,まさしく量もありましょうし,質もあると思います。したがって,そういう意味で軽微という言葉自体は多義的な意味だというふうに思います。
合理的と認められる範囲というのは,一連の流れの中でそれを逸脱しているという意味だというように私は理解をしています。
【土肥主査】
よろしゅうございますか。
全体を通じて,どうぞ,岡山委員,どうぞ。
【岡山委員】
少し私のほうで個人的に教えていただきたいところがあるんですが,A類型とかB類型というのは,先ほど来から議論しているところを聞いておりますと,例えば著作権侵害の訴訟というものを念頭に置いてきた場合にA類型,B類型に当たるということについては侵害として訴えられている者が主張すること,いわゆる抗弁的なものかなというふうに印象として思っておるのですが,もう一つのC類型につきましては,先ほど来から議論を聞いておりますと,そもそも著作物を享受しない,要するに非享受というふうなことが言葉が出ておりますね。そうしますと,そもそもそれは要件に当たらない,要は著作権侵害に当たらないということで,積極否認なりのそういった理由に位置づけられるのかなとも思われますし,他方で,これまでのいわば,A類型,B類型,C類型というものが共通として言えるのは,著作権を侵害として訴えられた者が主張していくほうが,あるいは立証していくほうが望ましいというふうになるのか。少しよくわからなくなってきましたので,その辺を教えていただければなというふうに思っております。
【土肥主査】
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
今のような話は必ず出てくる話かと思いますけれども,多分これも組み方いかんにかかってくる問題ですが,著作権侵害というか,普通でいう請求原因のほうをものすごく価値的にとらえると,そもそも物理的に複製しているだけではだめで,それは享受のために複製しているものだけが複製だよというふうに請求原因のほうに持ってくれば,そういうふうな発想になってきますが,それはそういう組み方もあれば,そうでなくて,物理的に複製しているだけで請求原因は満たして,むしろ,実質的享受でないものは抗弁で外すという組み方もあるかと思います。要するに,それは組み方の問題いかんにかかるものでありまして,おっしゃるとおり,どっちもできるけれども,これは明確化のためには,余り価値的にせずに請求原因のほうは比較的非価値的にした上で,実質に享受していないようなものというのは抗弁のほうに持っていっているという組み方でありまして,その関係で,このようになっていると思います。
もともと支分権にするか権利制限にするのかというのは,一義的に決まってくるというよりは,立法政策的には,かなり多様な可能性がありうるものと思っています。日本で当然,権利制限になっているものが,請求原因のほうで「公」性になったりとか,そういうものはあるものですから,その辺は組み方の問題で,どっちにでも持っていけるという面があります。今後,C類型というのが入らないと,だんだん割と請求原因のほうが非常に価値的になってきて,物理的に複製等がされていても,享受するようなものしか,支分権該当性という請求原因には当たらないよというふうに持ってくることになってくると思われますが,これは,むしろ明確性を高めるという観点からは,請求原因のほうは非価値的にして,抗弁で,C類型のようなものを入れるということであるというように理解しております。
【土肥主査】
よろしゅうございますか。ほかにございますか。
ほかにございますか。よろしゅうございますか。
それでは本日,皆様,各委員から貴重なご意見をちょうだいいたしまして,幾つかご意見等もいただいておるところでございます。そのご意見を踏まえて,現在,本日説明いただいた報告書案の内容についてどうするのかについては,事務局と若干相談させていただいて決めさせていただきたいというふうに思います。今後の事務局のご予定としては,きょういただいたご意見を踏まえて,このまとめを修正するところは修正した後,再度,この法制小委にお出しになる,そういう予定でしょうか。それとも,何かお考えがあればお尋ねしたいんですけれども。
【川瀬著作物流通推進室長】
私どもとしましては,主査とご相談させていただいて,修正すべき点があれば修正しまして,一度早い時期に委員の先生方に,多分メールになると思いますけれども,送らせていただきまして,個別にご意見等も伺わせていただきまして,最終版を作成させていただきたいと思います。それで,12月,多分12月になると思いますけれども,法制問題小委員会の開催予定もございますので,その際に最終確認ということでご確認いただきまして,法制問題小委員会としての最終案として,その時点でお認めいただければありがたいと思っております。
そうしますと,1月に分科会がありますので,いわゆる分科会報告という形につなげていきたいと思っております。
【土肥主査】
ありがとうございました。今,説明ございました,そのような形でこの報告書案の取りまとめについては進めていきたいと存じますけれども,それでよろしゅうございますか。
ありがとうございます。
それではまた事務局から,連絡,メール等,ありましょうから,ぜひよろしくご協力をいただければ幸いでございます。
【中村委員】
申しわけありません。途中でも,これはもうお願いベースなんですけれども,A・B・C,それぞれに出ている文言,例えば主目的とか付随的とか,軽微とか,それから最後にお尋ねした達成しようとする過程や合理的というものですとか,Cで出てきた非享受の範囲ですとか,もし事務局のほうで何か,具体例なのか,要素なのかで少しでも明確化できるようでしたら,あわせてお願いできればと思います。
【土肥主査】
それはメールベースでよろしいんですね。
そういうご要望が出ておりますので,ご了承いただければと思います。
それでは,事務局から連絡事項をお願いいたします。
【池村著作権調査官】
本日はどうもありがとうございました。次回の法制問題小委員会ですけれども,まだ日程は決まっておりませんので,日程が決まり次第,またご案内をいたします。
【土肥主査】
それでは,本日はこれで第10回の法制問題小委員会を終わらせていただきます。本日は熱心なご議論をいただきまして,まことにありがとうございました。

11:48閉会

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