(平成23年第3回)議事録

1.日時

平成23年7月7日(木) 16:00 ~ 18:30

2.場所

旧文部省庁舎 6階 第二講堂

3 出席者

(委員) 上野,大須賀,大渕,小泉,末吉,多賀谷,土肥,中山,前田,松田,村上,森田,山本(たかし)の各委員
(文化庁) 吉田文化庁次長,永山著作権課長,佐藤国際課長ほか関係者
(ヒアリング出席者) 1.一般社団法人日本レコード協会

畑 陽一郎(一般社団法人日本レコード協会 理事)
楠本 靖(一般社団法人日本レコード協会 法務部副部長

  2.一般社団法人日本映画製作者連盟・一般社団法人日本映像ソフト協会

華頂 尚隆(一般社団法人日本映画製作者連盟 事務局長)
酒井 信義(一般社団法人日本映像ソフト協会 管理部著作権担当部長

 3.社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会

久保田 裕(社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事・事務局長

 4.公益社団法人日本文藝家協会

長尾 玲子(公益社団法人日本文藝家協会 著作権管理部部長

 5.社団法人日本書籍出版協会・社団法人日本雑誌協会

井村 寿人(社団法人日本書籍出版協会 常任理事)
平井 彰司(社団法人日本書籍出版協会 知的財産権委員会 副委員長)
五木田 直樹(社団法人日本雑誌協会 著作権委員会 副委員長

 6.一般社団法人インターネットユーザー協会

小寺 信良(一般社団法人インターネットユーザー協会 代表理事

 7.一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム

岸原 孝昌(一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム 常務理事)
板谷 恭史(一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム 知財・著作権委員会モバイル著作権部会 部会長)
長谷川 篤(一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム 知財・著作権委員会 副委員長

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)著作権法第30条について(関係団体よりヒアリング)
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1-1~1-2 一般社団法人日本レコード協会提出資料 (224KB)
資料2-1~2-2 一般社団法人日本映画製作者連盟・一般社団法人日本映像ソフト協会提出資料 (92KB)
資料3-1~3-2 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会提出資料 (496KB)
資料4 社団法人日本書籍出版協会・社団法人日本雑誌協会提出資料 (300KB)
資料5 一般社団法人インターネットユーザー協会提出資料 (160KB)
資料6 一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム提出資料 (452KB)
参考資料 ヒアリング出席者一覧 (104KB)

6 議事内容

【土肥主査】  それでは定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第3回を開催いたします。本日は,お忙しいところ,ご出席いただきましてまことにありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されておる議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておりますけれども,この点については,特にご異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 それでは,議事に入りますけれども,初めに議事の段取りについて確認しておきたいと存じます。
 本日の議事は,(1)著作権法第30条について(関係団体よりヒアリング),(2)その他となっております。今回もまず著作権法30条の私的使用目的の複製の権利制限のあり方につきまして,関係団体からご発表をいただきまして,その後にまとめて質疑応答,自由討議を行いたいと思っております。
 まず,事務局から配付資料の確認と出席者のご紹介をお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  それでは,配付資料の確認をいたします。
 お手元の議事次第の下半分をごらんください。本日は資料1から資料6まで,及び配付資料をそれぞれそちらにございます一覧のとおり配布をしてございます。お手元の資料をご確認いただきまして,落丁等ございましたら事務局員までお声かけいただければと思います。
 次に,ヒアリングのご出席者の皆様方を発表順にご紹介させていただきます。お手元の参考資料をごらんください。
 まず,一般社団法人日本レコード協会,畑様。
 同じく楠本様でございます。
 続きまして一般社団法人日本映画製作者連盟の華頂様でございますが,ただいまこちらに向かわれていらっしゃるということでございます。間もなくいらっしゃると思います。
 それから一般社団法人日本映像ソフト協会の酒井様でございます。

【酒井氏】  酒井でございます。よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  続きまして,社団法人コンピューターソフトウェア著作権協会の久保田様でございます。

【久保田氏】  よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  続きまして,公益社団法人日本文藝家協会の長尾様でございます。

【長尾氏】  長尾でございます。よろしくお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  続きまして,社団法人日本書籍出版協会の井村様でございます。

【井村氏】  井村でございます。よろしくお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  同じく平井様でございます。

【平井氏】  平井です。よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  それから社団法人日本雑誌協会の五木田様でございます。

【五木田氏】  五木田です。よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  続きまして,一般社団法人インターネットユーザー協会の小寺様でございます。

【小寺氏】  小寺でございます。よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  最後に,一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの岸原様でございます。

【岸原氏】  岸原でございます。よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  同じく板谷様でございます。

【板谷氏】  板谷です。よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  同じく長谷川様でございます。

【長谷川氏】  長谷川です。よろしくお願いします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは議題に入りたいと存じます。本日は2時間半の時間を予定しておりますけれども,質疑応答の時間が確保できますように,ご発表に当たりましては,まことに恐縮でございますけれども,15分程度の範囲内でご発表をお願いしたいと存じます。
 それでは最初に,一般社団法人日本レコード協会,畑様,楠本様,どうぞよろしくお願いいたします。

【畑氏】  紹介にあずかりました日本レコード協会でございます。着席させていただきます。
 本日はこの法制問題小委員会の場におきまして,著作権法第30条にかかる我々の意見を述べる機会をいただきまして,ありがとうございます。既に当協会の意見につきましては,資料1-1号及び1-2号で配布をいただいておりますが,当協会は30条につきまして2点ほど意見を述べさせていただきます。
 1点目は「違法配信を撲滅するための「新たな法整備」の検討」。2点目は「私的録音録画補償金問題」でございます。
 まず1点目,「違法配信を撲滅するための「新たな法整備」の検討」でございますが,著作権法が改正されまして,昨年1月より,「違法な音楽・映像を違法と知りながらダウンロードする行為」が違法となりました。この法改正の周知につきまして,2009年の著作権法改正に関する国会附帯決議におきまして国民への十分な周知が求められたところでございます。これを受けまして我々権利者団体は,関係省庁様のご協力もいただきながら,施行日の前後におきまして,数々の周知・啓発活動を実施してまいりました。
 その一部をここでご紹介させていただきますと,例えば,知的財産戦略推進事務局様,文化庁様の政府広報テレビ番組の制作に協力をいたしまして,地上波テレビ,ネット上での周知を図ったという活動がございます。また,当協会を中心として,施行前の2009年12月にJR新宿駅東口前のステーションスクエアに特設ステージを組みまして,有名アーチストも動員し,啓発イベント,周知のためのイベントを開催いたしました。これにつきましては関係省庁様,他の音楽権利者団体様のご後援もいただき,法改正の趣旨と我々が導入した識別マークである「エルマーク」のご案内,ノベルティーの配布などを通じまして,延べ8,000人の方々に法改正の周知をいたしました。通行人レベルでは23万人が,イベントについて何らかの認識をしたと把握をしているところでございます。これらイベントの模様は主要テレビ局のニュースとか,あるいは主要な一般紙等でも大きく報道されたところでございます。
 また,皆様もごらんになったことがあろうかと思いますが,映画関係の団体様のご協力によりまして,映画館で実施されております盗撮防止法キャンペーン,いわゆる「盗撮防止男」というパントマイムの,映画本編上映前に流れるコマーシャルフィルムのリニューアルにご協力いただき,盗撮防止周知の後に,違法と知りながら行うダウンロードも違法となったことを周知いたしました。これにつきましては,2010年3月下旬公開の新作映画から上映が開始され,全国映画館700館,3,400スクリーンで上映され,延べ1億7,000万人が見たものと推定されております。その他,施行日前後におきまして,一般紙に法改正の趣旨を解説する記事を掲載していただき,またテレビにおいても,ニュースあるいはワイド番組で特集コーナーを組んでいただき,周知に努めました。また,ポスター等も作り,全国約1万8,000の小中学校に送付し掲示してもらうなどの形で周知に努めてまいりました。
 このような形で,多大なリソースをかけ,官民一体で周知に取り組んできました結果,法改正の内容は,徐々にユーザーにも浸透してきておると認識しています。我々,日本レコード協会が2010年に実施したユーザー調査では,10代,20代の若年層の法改正認知率は55%となり,半分を超えたという結果がおります。
 しかしながら,我々日本レコード協会の認識としましては,依然として正規流通を上回る大量の著作権侵害ファイルが蔓延している状態は変わらない,むしろ改善するどころか,悪化しておるのではないかと考えております。
 資料1-1号の1ページ目の参考資料1に数字を表組で載せましたけれども,違法ファイルのダウンロード数に関する調査結果の法改正前後の比較をしたものでございます。法改正前の2007年調査は,2008年度の私的録音録画小委員会の報告書にも掲載されておる数字ですが,これが左側の縦列の数字になります。「携帯サイト」「P2P」を使った違法ファイルのダウンロード数を調査しております。法改正後の2010年,実査の時期は夏過ぎでございましたが,改めて違法ファイルのダウンロード数調査をしております。こちらは「携帯サイト」「P2P」の定点観測とともに,2007年には調査をしなかったその他の類型からの違法ファイルのダウンロード数も調査しております。
 2010年の調査におきましては,違法な音楽・映像等のダウンロード数が年間43.6億ファイルという推計をいたしました。2007年との比較といたしましては,「P2P」については若干減少しておりますが,「携帯サイト」については微増,また2007年は未調査であった「その他PCサイト」につきましては,いわゆるストレージサービスとかロッカーとかと呼ばれる,リンクサイトからのリンクによりファイルをダウンロードさせるサイトが含まれます。また「動画サイト」のダウンロード,こちらがこの3年間で主流になってきております。動画サイトからのダウンロードについては,もはや看過することのできない膨大な量であるという実態が明らかになっております。43.6億ファイルの実に約60%が動画サイト。これは本来,ストリーミングで見ることを意図されているサイトでございますが,そこからダウンロードされておるという実態がこの調査でわかっております。
 注意点としましては25.3億ファイル,動画サイトからのダウンロードの数字ですが,これは,違法と知りながら行われておるダウンロード,つまり著作権法第30条第1項第3号の適用となる違法ダウンロードだけではなくて,公式にストリーミングコンテンツとして提供され,視聴のみが許可されておるにもかかわらず,許可なしにユーザーがダウンロードしておる数字も含むことにご留意いただければと思います。
 このような状況を踏まえ,当協会では特に動画サイトからのダウンロード実態,この数字を精査すべく,「動画サイトの利用実態調査検討委員会」を設置しております。こちらの概要はお手元の資料1-2号に参考で配布しております。「動画サイトの利用実態調査検討委員会」の座長は東京大学の濱野教授にお務めいただき,学者,利用者,動画サイトのプロバイダー,またオブザーバーといたしまして関係省庁の方々にも入っていただく形で動画サイトに関する実態の深堀調査をし,報告書をとりまとめる作業を今行っております。こちらの報告書については近く公表できる予定でおります。
 このような,一向に減る様子を見せない著作権侵害ファイルの流通,これに対して当協会は違法対策に力を入れております。2010年度,当協会は各種類型,各種サイトのプロバイダー,事業者に対しまして,年間23.5万件の違法ファイルの削除要請を行いました。また違法なP2Pユーザーに対しては,会員レコード会社が発信者情報開示請求によって得られたユーザー情報に基づき,損害賠償請求を実施するなど,いろいろな角度からの対策を強化しております。しかしながら先ほどの調査結果の数字を踏まえると,違法ダウンロードのファイル数というのはいかにも膨大な量であります。我々権利者だけの努力で対処できる規模を既に超えてしまっているという実態についてはご理解いただけるのではないかと考えております。
 また先ほど,10代,20代の若年層の法改正認知率は55%あるという調査結果を紹介しましたが,そういった結果を踏まえますと,現在,違法なダウンロードを行っているユーザーというのは,違法行為であるということを認識しながら行っている実態があると理解しております。先ほどの2010年,当協会が行いましたユーザー調査ではグループインタビューを実施いたしました。これは中学生女子,高校生女子,20代社会人男女,この3グループに分けましてグループインタビューを実施いたしました。テーマとしては違法配信の利用実態,有料・無料の使い分け,あるいは音楽にお金を使うことに対する意識などをヒアリングするために行ったものでございます。特に10代,20代のグループからは,資料1-2号の2ページの中段でご紹介したような,非常に衝撃的な意見,発言が出ております。やはり「タダで手に入る違法ダウンロードはやめられない」と。みんなやっているので,自分だけが何らか罰を科せられるということは考えていないといった発言がございました。
 つまり法改正後の2010年調査でわかったことは,法改正の趣旨というのは相当レベル認知されているにもかかわらず,違法としたことによる抑止等の効果についてはまだ十分に発揮されていないということです。これを放置することは,違法行為を行う若年層の犯罪者を増やしていくことにつながるという危機感を持っております。また,このような違法状況の蔓延というのは正規流通を阻害し,音楽を創作する者に対する正当な対価の還元がなくなります。よって,新たな音楽の創作に悪影響を与えることとなるため,我々といたしましては違法アップロードに対する罰則と同様に,違法ダウンロード,著作権法第30条第1項第3号に対する刑事罰を導入する法改正の検討をお願いしたいと考えております。
 もう一つ,2点目の意見でございます。「私的録音録画補償金問題」についてですが,現行著作権法の制定時におきましては,個人あるいは家庭内の複製というのは量的にも零細でありまして,著作権者等の利益を不当に害するものではないという考えに基づき,権利は及ばないということになっておりました。しかし,とりわけデジタル技術などの複製技術の発達によりまして,個人・家庭内においても,市販のコンテンツと同等の高品質の複製物を大量,容易に作成することが可能になっております。このように著作権者等に及ぼす不利益が看過できなくなったことから,平成4年に私的録音録画補償金制度が導入されました。その後,現在に至るまでいろいろな形の見直しの機会があったわけでございますが,新たな録音録画機器等が政令指定をなされておらないということで,特に録音については制度が形骸化しつつあるというのが実態でございます。
 録音につきましては携帯音楽プレーヤーなど,今巷で主流として使われている大容量の録音機器がまさに指定されておらないということで,私的録音補償金は2001年の40億をピークに,昨年2010年にはピーク時の8%,3億円まで落ち込んできております。このように大量の私的録音録画が行われているにもかかわらず,権利制限の適切な代償措置を権利者側は今受けておらないという理解でございます。今こそ著作物等の円滑な利用と,著作権者等の権利の保護との適正な調整を図るために,私的録音録画補償金制度の充実,あるいはそれにかわる代償措置の制度の創出を早急にご検討いただければと当協会は考えております。
 以上でございます。

【土肥主査】  どうもありがとうございました。
 それではですけれども,すぐにされますか。

【華頂氏】  済みません。大変遅くなりまして申しわけありません。

【土肥主査】  それでは一般社団法人日本映画製作者連盟,華頂様と,それから一般社団法人日本映像ソフト協会の酒井様にお出でいただいておりますので,よろしくお願いいたします。

【華頂氏】  済みません,大変遅くなりまして。日本映画製作者連盟の華頂でございます。本日は現行の著作権法第30条につきまして,このように意見を申し上げる時間をいただきましてありがとうございます。
 それではお手元の資料に沿いまして,映連と,それから日本映像ソフト協会からの意見を手短にご説明させていただきます。最初に私のほうから資料1に沿ってご説明申し上げた後に,日本映像ソフト協会の隣におります酒井さんのほうから,補足の説明もさせていただきます。
 それではページをおめくりいただきまして,早速ですが2ページをごらんいただきたいと思います。まず「1.」にございますように,デジタル技術が著しく発達することによりまして,私的複製の範囲が拡大してしまっているのではないかと。そのことへの対応が必要ではないかという意見でございます。30条1項が不当に拡大されまして,権利者に大きな悪影響をもたらしている1つの原因,これは,私どもが考えるには,同項に用いられております,「その他これに準ずる限られた範囲内」との文言が非常にあいまいで,その外延が必ずしも明確ではないというふうなことで拡大解釈されがちであるということじゃないかと思います。そこで今申し上げた文言,「その他これに準ずる限られた範囲内」,この文言を削除していただいて,私的使用とは個人的に使用すること,それから家庭内において使用すること,この2つであるというふうにして,許される私的複製の範囲,その限界を明確にしたらどうかということが1つございます。
 もう一つ,著作権法30条は,ベルヌ条約9条(2),それからWIPO著作権条約10(1)などによって,いわゆるスリー・ステップテストを満たすものでなければならないと考えます。すなわち国内法令で定めることのできる権利の制限規定は,「著作物の通常の利用を妨げず,かつ,著作者の正当な利益を不当に害しない特別な場合」というふうに限られているのではないかということでございます。私的複製にもさまざまなものがありまして,複製対象となる著作物の性質,それから用途,それから複製の部数とか態様によっては,著作物の通常の利用を妨げず,かつ,著作者の正当な利益を不当に害しない特別な場合とは言えないケースがあると思います。例えばパッケージ商品として,あるいはストリーミングによる商用ネット配信で提供されている映画の本編を,そこから丸ごと,もう一度デジタル録画する行為,これは商品と同等の観賞価値のあるものを,商品を購入することなく入手する行為でありまして,そのような行為はもともと,パッケージもストリーミングの配信も個人的視聴を目的として我々は提供しているわけです。ですからそういうビジネスと正面から衝突して通常の利用を妨げるものであると考えています。
 したがいまして35条1項,2項,それから36条1項,42条1項と同様に,30条1項に,「ただし,当該著作物の種類及び用途,並びにその複製の部数及び態様に照らし,著作者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りではない」というただし書きを設けて,私的複製の範囲が際限なく拡大することに歯どめをかけていただきたいというご提案でございます。
 続きまして,ページをおめくりいただきまして3ページです。これもテクノロジーの急速な進歩に端を発する著作権侵害の対応,これが現行法では不十分ではないかというふうなご意見でございます。30条1項3号が新設されたことによりまして,「著作物を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,その事実を知りながら行う場合」は,私的複製であっても違法とされておりますけれども,著作権を侵害する行為によって作成された海賊版などのものを,その情を知りながら入手して行うデジタル方式の録音または録画,これは私的複製である限り,現在では,適法と言いたくないのですが,適法とされているというような現状がございます。ただ,著作権を侵害する行為によって作成されたもの,それを知りながら入手すること自体が,侵害行為を故意に助長するものであって,そのようにして入手したものをさらに複製することを認める合理性はないんじゃないかということでございます。したがいまして,著作権を侵害する行為によって作成されたものを,その情を知りながら入手して行うデジタル方式の録音または録画,これは違法アップロードからのダウンロードと同様に,私的複製であっても違法とするべきであると考えております。
 さらに現行法では,30条1項1号,2号,3号に該当する行為は,違法ではありますけれども,刑事罰の対象にはなっておりません。ですけれども,著作権侵害は原則として刑事罰の対象とされるべきであると思っております。ほかの権利制限規定について見ても,権利制限規定から除外されている行為,例えば32条2項ただし書き,35条1項,2項のただし書き,36条1項ただし書き,42条1項ただし書き,46条各号などに該当することによって,権利制限規定の適用対象とならない行為は,すべて刑事罰の対象となっているという事実がございます。それからこれは,ちょっとおくれてきたのでお聞きできなかったのですけれども,レコード協会さんも,同様のご意見を申し上げたと思うんですが,特に違法アップロードからのダウンロード,これは法改正後も,違法になった後も多発しておりまして,刑事罰をもって防止することが必須であると映連としても考えております。ですから30条1項,1号,2号,3号に該当する行為を刑事処罰の対象としていただきたいと考えています。
 それから最後に4ページでございます。私的録音録画補償金につきましても,これもテクノロジーの進捗に合わせまして,拡充することが必要ではないかという意見でございます。先ほど申し上げましたとおり,私的使用目的であっても,パッケージ商品として,あるいは商用ネット配信によって提供されている映画の本編を丸ごとデジタル録画する行為は,著作物の通常の利用を妨げるものであって許されるものではないということですけれども,ただ,映画本編を丸ごとデジタル録画する行為,つまり,テレビ放送からの録画については,現状のところ,私的複製を禁止することは現実的ではないので,そのようにして録画を皆さん行っているわけですけれども,その場合には,私的録画補償金は確実に権利者に支払われるというふうにしなければならないと考えています。
 現在の私的録音録画補償金制度のもとでは,汎用機器とかハードディスク,これが特定機器・媒体として指定をされておりません。私的録音録画補償金制度の対象となっていない機器,そのような機器・媒体によって大量の私的録音録画が行われているのは事実でございます。汎用機器及びハードディスク,これは録音録画の機能を有しているものが多いわけです。それで大量の私的録音録画が行われているというふうなことなので,何でこのような機器が,媒体もそうですけれども,補償金の対象から除外されているのか。これは我々にとっても非常に不思議な現象でございます。確かに汎用機器というふうなことであれば,録音録画の目的以外に使う場合も当然あるんですけれども,であれば,その中の機能,私的録音録画に用いられている機能の割合を,どの割合でほんとうにその機能を使って録音録画が行われているのかをきちんと推定して,その割合を考慮して制度設計をすればよろしいわけで,単純に私的録音録画補償金から汎用機器及びハードディスクを除外するのは,今この現在では,合理的ではないんじゃないかと思っております。
 済みません,きょうは遅刻をしまして。以上,映画製作者の立場から現行の著作権法第30条について意見を延べさせていただきました。このようなさまざまな課題を内在していると思われる現行の著作権法第30条でございますけれども,本委員会で集中的にこれから議論をしていただいて,改善するところは速やかに改善するという方向でご検討いただければありがたいなと思う次第でございます。映連からは以上でございます。それでは続きまして日本映像ソフト協会から補足の説明をさせていただきます。お願いします。

【酒井氏】  日本映像ソフト協会の酒井と申します。きょうは著作権法30条につきまして発言の機会をいただきましてありがとうございます。私どもからは,映像パッケージソフトを録画源とする私的録画につきまして,用意させていただきました資料のうち,4ページを中心に意見を申し述べさせていただきたいと思っております。まず私的録音録画の問題でございますが,「テープ録音事件」ドイツ連邦通常裁判所判決が説くように,私的複製も本来,著作権者の複製権が及ぶべき利用であると私どもは考えております。それゆえ著作権者が著作物を発行するに際し,複製制御の著作権保護技術を用いることは著作権者の権利であると考えております。そのような見地から,映像パッケージソフトにつきましては,1994年に複製不可の技術的手段が講じられるのであれば,私的録音録画補償金は要求しないということを明らかにし,私的録画問題に著作権保護技術によって対応するという道を選択させていただきました。
 そして表現の本質的特徴を感得できるという点では,デジタルとアナログとで相違はございませんので,DVDビデオやブルーレイにつきましては,総合的な複製制御技術で,これらすべての複製を制御しているところでございます。すなわち擬似シンクパルス等の技術によってVHS等のアナログ録画機器を接続して複製することは制御し,CGMSによってアナログ出力端子からデジタル録画機器を接続して複製することも制御し,そして暗号型技術によって専用機での高速ダビングやパソコンでの複製を制御しているところでございます。こうした総合的な複製制御技術はCSSとかAACSとか言われて,ハードメーカーもソフトメーカーも,これらの技術をライセンス契約によってライセンスを受けて利用し,機器やコンテンツを提供しているところでございます。
 これまで,これらの要素技術のうち,DVDビデオに用いられているCSSの暗号型技術につきまして,これは複製防止技術ではなくて,アクセスコントロール技術だとされてきました。本年1月の著作権分科会報告書におきまして,これを複製制御技術と位置づけていただきましたことにより,私的録画問題に著作権保護技術で対応するための大きな障害が取り除かれることになったと認識しておりまして,心より感謝申し上げる次第でございます。
 この総合的な複製制御技術では,バックアップもメディアシフトも著作権保護技術によって制御されますので,ソフトメーカーはそのような複製が行われないものとしてコンテンツを提供していますし,パッケージ等にも複製ができない旨の表示をして,ユーザーの方々にご理解をいただいた上でご購入いただくようにしております。
 また本年1月の著作権分科会報告書40ページで,憲法の専門家の方が指摘する,「本来利用者に認められる著作物の利用か」という視点から考えましても,映画の著作物は劇場等での視聴が本来の利用ですし,1956年にビデオ機器があらわれてからも,ビデオグラムで公の上映をして視聴していただくような用途に供給をさせていただくものであって,提供した媒体からコンテンツを複製するというのは本来の使い方ではございません。
 ところで技術的保護手段の回避ツールは特定の目的のみで機能するわけではありませんので,その目的を超えた利用がなされるであろうことは容易に推測されます。事業者に頼んで回避したとしても,やはり技術的保護手段は回避されてしまいますので,それは目的を超えた利用に利用されることは容易に推測されるわけでございます。
 複製制御の暗号型技術を技術的保護手段と位置づけていただいたとしましても,それに例外規定が設けられますと,回避して複製したものには著作権保護技術による制御が及びませんので,ネットへの流出等を未然に防ぐ手立てがなくなってしまいます。たとえ1個の複製物がつくられるだけでも,その影響というのは甚大なものになってしまいます。もっとも著作権保護技術制御のもとで一定の私的複製ができるような商品もあらわれてきております。携帯端末でのご利用のための私的複製ができるDVDビデオを出しているビデオソフトメーカーもありますし,またブルーレイで用いられていますAACSという技術の規定では,マネージドコピーという仕組みも予定されているところでございます。
 このように著作権保護技術の制御のもとで私的録画に対応する仕組みも予定されているところでございまして,各ビデオソフトメーカーそれぞれの判断により,著作権保護技術と契約で私的録画問題に対処する道を探求しているところでございます。欧州では,補償金による私的録画問題の解決を前提に考えて,その技術的保護手段回避の例外を考えているのかもしれませんが,我が国の映像パッケージソフトの私的録画問題に関しては,著作権保護技術と契約による解決を今,探求しているところでございます。AACS等のライセンス契約を無効化するような権利制限規定が導入されますと,せっかくパッケージソフトについての私的録画問題が解決に向かったと思っていたところですが,またこれが振り出しに戻ってしまうと懸念をしているところでございます。パッケージソフトの私的録画問題につきましては,ぜひその解決は市場にゆだねていただきたいと考えている次第でございます。
 その他,資料にご用意させていただいた点につきましては,時間も限られておりますので,資料でもって発言にかえさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【土肥主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして社団法人コンピューターソフトウェア著作権協会の久保田様,よろしくお願いいたします。

【久保田氏】  ソフトウェア著作権協会の久保田でございます。よろしくお願いします。当協会のは非常にシンプルにいたしました。各団体さん,それぞれデジタル化,ネットワーク化の中で問題提起されていますけれども,当協会は生まれ落ちたときからデジタルなものですから,すべてほかの団体さんが言われているところについては,基本的には同じ立場に立っていると考えております。
 私どもにつきましては,30条1項3号につきまして,平成21年度1月の著作権分科会報告書において,プログラムの著作権についても,録音録画に限定することなく,明文化といいますか,入れていただけるというのを検討いただけることになったにもかかわらず,昨年度は何も検討がされるきょうに至っているということをまことに遺憾と思っております。なぜなれば,そういったものの積み上げの中にきょうの議論等が結実すると考えておりまして,一つ一つ,きちんと積み上げていただかないと,デジタルの問題は常に,先ほど酒井さんが言われたように振り出しに戻ってしまうということが実態としてあります。
 当協会の調査レポートに目を移していただきたいのですけれども,情報の取得日時が2010年とちょっと古いのと,上から調査方法の6行目ですけれども,約6,120,000万件と,「万」が入っておりまして,このままいくと612億というとんでもない数字になってしまうのですが,これは間違いですので訂正してください。古いデータで,当時議論されたままでございますので,改めて,かぶせて言うつもりはないんですけれども,ACCSとしましては,ビジネスソフトや各種のツール,アプリケ―ションツールなどもたくさん出てきていまして,アンドロイドとか,いろいろな端末用に,いろいろなプログラム,小さなプログラムから大きなプログラム,たくさんネットワークに上がっているわけでありまして,こういった実態についてなかなか具体的に把握することが難しい部分がありますけれども,この調査結果,古いですけれども,実態としては,プログラム著作物という,機能がリテールワークとして表現されているたくさんのツールがあります。こういうことについて改めて違法とすることについて明記していただきたいと希望しております。
 そのほか,30条との関係で言いますと,47条の3もプログラム著作物の特殊性として47条3の制限規定があるわけですけれども,こちらにも制限規定の中で規定が認められるとすると,30条で,仮にきちんと明記されたとしても,47条3のほうで複製ができてしまう。この問題につきましては,30条の中で検討ということになるのか,そのほか,47条の3,個別にやるのかということにつきましては議論があろうかと思いますけれども,47条3との関係について,ぜひプログラム著作物がきちんと保護されるようにしていただきたいと考えております。
 47条3につきましては,酒井さんのほうからお話がありましたように,違法と知りながらダウンロードする行為が違法となった場合においても,違法とされる複製を行って保有した複製物であっても,それを47条3によって複製を行えば,インストールする行為を,業務上使用するというふうに113条で押さえておりますけれども,その間に複製ということが適法となる可能性が出てくると。こういうポイントでございます。
 最後になりますが,私的使用の問題と,後ほどまたいろいろご意見あろうかと思いますけれども,クラウド等の技術が出てきたときに,一体,実質的に私的な領域で,今まで法律のたてつけとして認められた当時の立法事実がほんとうに当たるのか。こういった意味で,常に実質的判断を考えていただいて,著作者の正当な利益を害しない,そういうことを前提に議論を進めていただきたいと思います。
 短いですが,私のほうからは以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは続きまして,公益社団法人日本文藝家協会の長尾様,よろしくお願いいたします。

【長尾氏】  日本文藝家協会,長尾でございます。よろしくお願いいたします。特に資料は用意してございません。言うことが一言なので。長い説明と,いろいろ背景は,次のお2人がきちんと資料を用意してくださっているのでお任せしたいと思います。
 何を一言申し上げたいかと申しますと,いろいろ問題がある中で,私どもの協会のほうで一番困ったなと思っておりますのは,例の「自炊」の問題でございます。先ほどから皆様がおっしゃっておられますように,法整備のほうが技術の革新に全く追いついていないというのがいつの世もあるんですけれども,この自炊の問題に関しましては,スキャナの技術が,性能が非常に向上した結果,昔のスキャナのような文字化けがほとんど起きません。断裁されてしまった本を高速スキャナでスキャンしてしまうと,全くそのままのデジタルデータがすぐにできてしまう。しかもそれが1冊幾らの本であっても100円でできてしまうということが今,現実起きております。
 それで違法な業者は,自分が違法だということをちゃんとわかっている業者のほうが多く,「著作権法上問題があると思うのですが大丈夫ですか」とユーザーのほうが聞きますと,「問題があると思われる方はご利用を控えてください」というふうにおっしゃっておられる業者のほうが多く,中にはとても優良な業者さんがおられまして,最近ですが1件ございました。許諾の申請はお客様のほうからありまして,自分は難病でページをめくることができなくなった。全20巻の全集があるのだけれど,4巻目から先はもう読めそうにもない。寿命のある間に全部読みたいので,業者に出してもよろしいかというお問い合わせがございました。著者の方に伺いましたら,わからないから,申しわけないけれども難病指定のもののコピーをいただきたいと言われまして,その筋をお伝えしましたら,快く送っていただきました。
 ということは,自炊の必要は世の中にはあるのだということがここでわかったのですけれども,それはごく特殊な場合に必要で,これは難病に限らず,脳梗塞の後遺症などによって手が不自由になってしまったのだけれども読書はしたい。学者の先生にも結構いらっしゃいます。そういう場合に自分で自炊をすることは不可能であることは十分に察せられます。業者は必要なのだと思いますが,そこに何か課金制度を制度化するなり,違反業者に,皆様おっしゃっておられますように,きちんとした刑事罰が当たるのであって,それも1年以下,50万円以下とか,そういうのではなくて,5年以上,500万以上とか,そういうとんでもない額を法制化していただきますと,違法な業者がいなくて,しかも安全に使えて,ニーズに合った利用のされ方をするのではないかと,私ども考えておりますので,その点をお考えいただければありがたく思っております。
 もう一つございます。「自炊の森」という会社がございます。今は秋葉原にしかないので,何となく見過ごされているような気もします。何かアキバの人は特別と皆さん思っていらっしゃると思いますが,とんでもないと思います。これが例えばターミナル駅に,例えばJRさんが気がついて,JRが自炊の森をテナントとして入れた場合,これは全くとんでもなくて,出版社はほとんど全部つぶれてしまうと思いますし,作家は食べていけなくなると思います。自炊の森さんは裁判で勝ったよと言って威張っていらっしゃるのですけれども,これは何らかの形でお取り締まりいただく法整備を必要としていると思われます。
 私どもからは以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは続きまして社団法人日本書籍出版協会の井村様,平井様,それから社団法人日本雑誌協会,五木田様,よろしくお願いいたします。

【井村氏】  日本書籍出版協会で常任理事を務めております井村と申します。本日は私ども出版界に発言の機会をいただきありがとうございます。
 本日の私ども発言の趣旨ですが,お手元の資料4にございますとおり,著作権法30条の附則第5条の2の削除に関するものでございます。昨今の複写複製技術の発達により,これまでの紙から紙への複写から,紙の本をPDF化,つまりデジタルとして複製することが容易になりました。これにより,これまで主流であった専門書や参考書などの必要な部分のみの複写から,すべてのジャンルの全文にわたる複製が容易になり,また,その使われ方もこれまでは考えられなかったほどの広がりを見せつつあります。本日は書籍業界と雑誌業界を代表し,2名により実態の説明をさせていただき,附則5条の2の削除をお願いする次第でございます。
 それではまず初めに書籍協会の知財委員会副委員長である平井より,現況についてご説明申し上げます。

【平井氏】  平井でございます。資料に沿ってご説明させていただきたいと思っております。表紙をめくっていただけますでしょうか。まず皆さんに,現状の出版業界を俯瞰するような形で数字を抑えていただければと思っております。現在,出版社数は3,979社,十数年前は5,000社ほどありましたが減ってしまいました。売上金額も2年ほど前に2兆円を割り込んだと大騒ぎしましたが,その後も順調に下がっております。このうち書籍が8,200億円,雑誌が1兆500億円ということになっておりますが,この雑誌の中にはコミックが含まれておりますので,その辺はご留意ください。推定販売部数は年間約29億冊,うち文字物の書籍が7億冊,コミックが10億冊,雑誌が12億冊ということになります。
 ついでにこの参考データをつけさせていただきましたが,中古書店業界の最大手の1社で2億8,185万冊を年間で売り上げています。したがいまして,日本で最大の書店は中古書店であるということが言えます。また公共図書館の個人向けの貸し出しは,書籍の販売部数とほぼ見合っているというおもしろいデータがございます。書籍の貸し出しというのは,必ずしも無料ケースの図書館だけで行われているわけではありませんで,いわゆる有料レンタルですね。こちらのほうも出版界と著作者の皆さんとで,出版物貸与権管理センターという管理事業者を運営させていただいておりまして,昨年1年での有償の許諾部数が663万冊。これが数年かけて,数十回転する,何度も貸し出しされるという基の数字でございます。
 出版界,現在に至るまでの状況ですが,1996年にピークを迎えました。日本の多くの産業は大体バブルの時期に1つのピークを迎えて,その後,上がったり下がったりというのを繰り返してきたかと思いますが,出版界は,この書籍と雑誌を足した数で考えますと,96年から下がりっ放しです。一度も上がったことはありません。
 まためくっていただきまして,そういうふうに下がり続けている出版界ではございますが,電子書籍の区分では少ないながら伸びております。昨年は電子書籍元年などと言われて大騒ぎをしておりましたが,ことし,昨年,順調に伸びておりまして,ここに書かせていただいたのは2009年段階のデータですが,実はきょう,まさにきょう2010年の数字が発表されました。2010年では650億円,対前年比113%ということになっております。内訳は,去年段階ではやはり相変わらず携帯が多く,携帯で88%,加えて昨年たくさん発売されましたタブレット端末ですとかスマートフォンですとか,そういったものが4%を占めておりまして,それ以外の部分がPC,Macということになっております。構成比はあまり変わらないのですが,新しく入ったスマートフォンですとかタブレットに関しても,これはPC同じように30代がメーンというふうなレポートがされておりました。
 これから先ほど長尾さんが言われた,しっかり数字を用意しておいてねというやつに入らせていただきます。まず書籍の複製,出版物の複製というと,どうしてもコピー機,複写機ということですが,昨年の段階ではほとんどがデジタル複写機です。アナログ複写機の新規出荷というのはゼロに近いというふうなことらしいです。モノクロ,カラーを足して50万台を超えるということです。これらのコピー,ほとんどは業務用です。したがって5年リースで使われていると思われます。そう考えると,最低でもこれを5倍した数字が市場で利用されているのかなと推察されます。それから最近増えているのが中古市場です。リースアップしたもの。中古市場もかなり活況を呈しているようでございます。これは数字のつかみようがないということですが,それも換算すると,やはりかなりのコピー機が日本で稼働しているということです。
 最近はコピーだけではございませんで,スキャナで読み取って,それからデジタル複製してプリンターに出力するというものも結構あります。プリンターの台数はごらんのとおりです。スキャナもごらんのとおりでございまして,スキャナはどんどん増えて,年々出荷台数が増えているということです。プリンターやコピーなどは市場が一種飽和して,買い替え需要しかないのに対して,スキャナはどんどん増えているということです。ほかにOCR専用機というのもあるようです。
 続いて数字を申し上げますが,パソコンの普及率,これは総務省さんの調査によると,既に83.4%で,すべての家庭におけるインターネットの私的利用率,これは既に半数を超えているということです。これだけ普及したパソコンに対するプリンターの普及率が90%になっており,またここ数年で出荷された家庭用のほとんどのプリンターは複合機ということになっていると考えて間違いないようです。これらの状況の背景となる,技術の進歩という関係のところまで,なかなか,我々は技術的なことに関しては素人なものですから,あまり資料をそろえられませんでしたが,例えば国産初の普通紙複写機が出たのが1970年,現行著作権法制定の年ですね。そのころ複写機,コピー機というのはものすごく大きくて,ものすごく高価なものでした。さらに言えば,現在のように精細ではなくて,よく見るとプツプツと点が見えるぐらいのクオリティーしかなかったわけです。複写機自体も高かったのですが,1枚複写することのランニングコストもめちゃくちゃ高かったそういう時代ですから,紙の本から大量にコピーするということは恐らく想定していなかったんだと思います。それが現在では家庭までデジタル複写機が入り込んでいる。40年たってこういう状況になったということは見てとれると思います。
 そのスキャナですが,先週調べましたところ,一番安いもので8,300円でした。新品です。高級なマシンはすごいですね。100万円を超えるものもあるという話のようです。とはいえ,その中で一番,つまり家庭用あるいはSOHOなんかや,小さな企業さんなんかで使われるようなものが,現状,先週の段階では4万円程度で手に入る。毎分20枚・40面ですから,5分もあれば200ページがコピーできてしまうという実態です。
 こういったスキャナを利用しているんだと思いますが,これも長尾さんからしっかり言えと言われているやつで,「「自炊」関連業者の多様化」というのを次,7ページに入れさせていただきました。自炊請負業者が,ネットで検索して調べてみたところ,全国で90店舗ありました。1冊当たりの価格が最低で50円,最高で300円,いろいろなオプションがついたりして変わっているようですが,価格帯としては1冊当たり100円ぐらいのが一番多いというのが実態です。それ以外に,自炊自体はしないのですが,自炊スペースと機材を提供しているという業者もあります。これは有料提供ですね。場所貸しをしている。それから自炊スペースと機材を提供しつつ,同一の店舗内で,断裁済みの書籍をたくさんそろえておいて,それを要望に応じて貸し出すなどという,ちょっと,こういうのが広がったらと,想像したくないような,すざまじい業態が出てきております。
 先日のヒアリングで,自分が持っているモノをメディアシフトするようなのはいいんじゃないかというふうな意見を出された団体さんがおありでしたけれども,これを見ていると,自分が持っているものじゃないですよね。人が持っているものを,法的には問題ないだろうと,勝手にデジタル化しているという実態があります。さらには,コピーというのは既に生活の一部ですから,カジュアルにどんどんいろいろなコピーをされていると思いますが,たとえばビジネス利用のコピー,自分で持っているものではなくて,人から借りたものなんかをコンビニで簡単にコピーしてしまうそのコピーも,昔に比べて安くて早いということです。
 さらに,ちょっとだめ押しをいたしますが,例えば31条,図書館における複製ですね。図書館では,定期刊行物,雑誌であれば,一定期間を経れば,雑誌掲載のうちの1つの記事,1つの論文を全部コピーできる。書籍であれば,全部をコピーしちゃいけない,一部分しかコピーしちゃいけないということになっておりますが,これが一たん貸し出されたら,コンビニで全部コピーできちゃうわけです。最近,ある大学図書館では紙の裏に広告が書いてあって,その紙を使ったコピーは無料できると。大学図書館の隣にある大学生協で,無料でコピーできちゃうわけです。これが何ら違法ではないと,附則5条の2がある限り違法ではないという実態がございます。
 数年前になりますが,首都圏のある公立図書館では,この図書館内においてあるコピー機は30条のためのコピーですと,わざわざポスターを貼っていたという実態までございました。これに関しては我々抗議をして,少なくともポスターの掲示はやめていただきました。あとはこういう例もあるというので,8ページ目,最後に書かせていただきましたが,コンビニはコピー機を置いています。と同時に雑誌も売っています。雑誌を立ち読みしていて,あ,おもしろいなと思ったら,10円出して,その雑誌の見開きをコピーして,それでまた雑誌を棚に戻すというふうなユーザーがいるわけです。これはやめてくださいというふうに言う法的な根拠がありません。コンビニの店員のアルバイトの方がやめてくださいと言ったら,何で悪いのかと居直られるという実態もあるようです。
 そもそも附則5条の2,これは30条,当時改正するときに,附則5条2が設けられた理由なんですが,加戸先生の逐条講義によりますと,全文読ませていただきますが,「文献複写の分野については,既にコピー業者がかなり広範に営業しており,利用者の数も多数に上っているにもかかわらず,まだ,それに関する権利を集中的に処理する体制が整っておりません。このように集中的権利処理体制が未整備の現状の下においては,権利者も実際の権利行使が困難であるばかりでなく,利用者及び機器提供者も権利者の許諾を得ることが実際上困難でありますので,権利を及ぼしてもいたずらに違法状態を作り出すという結果をもたらすことになります」とういふうなものでした。
 それから随分たちまして,我々も権利処理の仕組みをきちんと運用できております。例えば日本複写権センター,これはかなり長いことやっておりまして,現在,これが最新の数字ですが,1991年から運営をしておりまして,委託者数は1,100社の出版物の発行者,さ加えて文藝協会さんから1万3,106名の著作者の方に委託をいただいております。さらに複写権センターのような包括的許諾以外に出版者著作権管理機構。これも出版社で立ち上げました。前身の組織は2001年からですが,現行の組織体になったのは2008年です。既に委託者として192の出版者が委託をしておりまして,徴収額は昨年実績で8億円を超えるということになっております。したがいまして,この附則5条の2がつくられた時点での立法理由というのは既に消失しているものと考えております。
 最後にまとめさせていただきます。まず附則5条の2自体に,「当分の間」という文言が入っております。その「当分の間」というのが既に27年に及んでいるというのはいかがなものでしょうか。日本の法律,「当分の間」というのが50年を超えるものもあるというのは承知しておりますが,少なくとも著作権法でそういった状態を許すべきではないと考えております。また先ほど申しましたように,附則5条の2をあえてつくらなければいけなかった理由というのも既に消滅していると考えております。また,自炊業者に限らない,ドキュメントサプラヤーという業態もございますが,営利を目的とした出版物の複製業者は,これがどんどん増えていくということは権利者を不当に害する結果になると,これは断言していいと思います。以前に比べて,大量に,瞬時に,全部,丸ごとの複写ができてしまうわけですから,以前とは事情が全然違ってきているとお考えください。現実に中古本市場に断裁済みの書籍があふれ始めました。オークション市場にも,断裁済みという書籍がものすごい数出ています。自分が持っているものをメディアシフトするだけというのではない。中古市場での売買というのは,著者の先生方や出版社に何の利益ももたらしませんし,そこだけで回って,どんどん複製物がデジタルでつくられているというのは,我々としては,ほんとうに衰退産業の一つに数えられ始めた出版業として容認できない状態であります。
 また,最後になりますが,今まで出版物の複製というのは紙から紙,つまりペーパー・ツー・ペーパーということが主流でした。ここにおられる多くの皆さんもそのように実感として思っておられると思いますが,現在,大量に行われているのはペーパー・ツー・デジタルです。ペーパー・ツー・デジタルのものが大量に行われている。今までいろいろな団体の皆さんが発言されていらっしゃいましたが,デジタル複製されちゃうと,これは一度漏洩すると,回復不能な被害になってしまうということは,皆さんのご経験で明らかですので,ほんとうにこれを何とかしたいと思っています。現実にデジタル複製されたものが数多く,海外を中心とするサイトで侵害物として出回っております。特にコミックなんかはダウンロードじゃなく,閲覧をさせている。数百万タイトルを閲覧させるというふうなサイトも実際に出てきておりまして,我々はそれに対してもいろいろな手を打っておりますが,入り口のところを何とかしたい。そのためにも附則5条の2は削除していただきたいというのが,重ねて申し上げますが我々のお願いでございます。
 コミックのように,世界に冠たる日本の文化を守っていかなくてはいけない。あるいは日本語の文化,これも日本人自身の手で守るよりほかにないわけです。ぜひとも日本の文化を守るために,この辺りご議論いただければと考えております。あとは雑誌協会さんに補足をいただきます。

【五木田氏】  雑誌協会の五木田でございます。2点ほど補足させていただきます。主に自炊についてですけれども,自炊業者の多様化というのを先ほど平井のほうから発言しましたが,1つの例としてお聞きいただきたいと思うのですが,CCC,カルチャア・コンビニエンス・クラブのTSUTAYAさん,ご存じだと思いますが,さまざまなレンタル等をやっていらっしゃいます。このTSUTAYAさんが,2店舗で自炊の実験をされております。場所は大阪の枚方市駅前店。これは昨年10月10日から。もう一店舗は横浜のみなとみらい店,これはことしの2月2日からです。我々はTSUTAYAさんとも商売上のお取引がございますので,そういうところからお話を伺うことができました。
 非常に数が,まだ実験という形で数が少ないので,例えばでございますけれども,3月の利用者は横浜のみなとみらい店ですと50人が99件を自炊したと。大阪の枚方市駅前店は,3月のみですが,24名,61件,自炊が行われました。なぜTSUTAYAさんがこんなことを始めたかというと,お客のニーズとしてどのくらいのニーズがあるのか,それを把握することで,基本サービスとしての可能性を探るという位置づけだそうです。あくまでもサービス目的で,TSUTAYAさんで中古の本とかを購入しなければならないという条件はついておりません。持ち込んだものでも,それからそこで買われたものでも結構だと。料金としては,やや高めの,店頭でのスキャン料は300円。裁断手数料,これをスタッフに頼むと100円かかるそうですが,現在は無料サービス中だということです。スキャン後のデータは当然消去していると。裁断した本はお客さんに持ち帰っていただいているということです。
 どんな本が自炊されているのかといいますと,ここにリストがありますけれども,これは店員さんが横からのぞき込みながら,どんな本をスキャンしているのかなというのをノートに書きとめたもののリストです。ほとんど多いのは,やはり参考書とか,ビジネス書,ビジネス関連の単行本,ハウツー物が多いのですが,中にはもちろんのことコミックス,雑誌,これも結構な数にのぼります。文庫もございます。見ておりますと,書籍のほとんどの分野が自炊の対象に,この先なるのではないかというのが十分うかがえる実験になっております。
 TSUTAYAさん,5月現在で全国に3,832店ございます。今でも毎月二,三店舗ずつフランチャイズが増えておりますので,全国展開でやられてしまうと,これは自炊関連業者,自炊請負が90店舗となっていますが,それのとんでもない倍数になってしまいます。
 もっと言いますと,現在,コンビニのコピー機,これにもスキャン機能がついたものが増えております。例えばコンビニのコピー機は,ふたをあけて1枚ずつスキャンしなければいけませんけれども,そういうやり方でスキャンができます。例えばUSBメモリを差し込むことができるようになっていますから,データに入れて持ち帰る。機械に詳しい人に聞きますと,今,ふたをあけなければできないようなコピー機を,自動的に流し込むような機能にするには,上の部分だけを取り変えればいいそうなので,そんな大したお金をかけずに,もしニーズがあるとなれば,そういう機能を追加することは,大したお金をかけずにできると。もしコンビニがそういう対応をとるようになったら,全国数万の規模でございますので,とても太刀打ちできるものではございません。
 もう一点,これは文藝家協会さんではないんですけれども,ある著名な作家さんが属する団体がございまして,その著名な作家さんが自炊の業者をニュース等で見て,何とならんのかと。各社の担当者に一斉にメールを送りました。各社担当者は慌てて,総務的な,法務的な部署に駆け込んで,どうしたらいいんだということで,各社代表がその団体の理事会にご説明に伺いました。それで自炊業者の実態等をご説明して,出版社には訴え出る権利がございませんので,何とか原告になっていただきたいと。出版界を挙げて全面的にバックアップしますというお願いをしたのですが,理事のある方から,その裁判は絶対に勝てるのかというお尋ねがありました。
 裁判というのに絶対はないというのは,これはもう皆さんご存じだと思いますけれども,当たり前のことですが,絶対はございませんと。ただ,出版界としては最高裁までバックアップいたしますというお約束をしたんですけれども,その方が知り合いの弁護士さんにお尋ねしたところ,5条の2があるから,ひょっとしたら負けるかもしれんというお答えだったと言われて,要するに理事会のほかの理事の方々も,絶対に勝てない裁判だと,作家というのは個人の商売だから,例えばブログが炎上してしまったり,2ちゃんねるで,何でこのぐらいのこと目くじら立てるのかというような袋叩きにあったり,非常に弱いんだと。立場がですね。だから団体としてやるのならいいんだけど,個人で,作家で,全責任,まあ,人気商売的なものもあるので,読者を敵に回すようなことはしたくないというのが理事会の空気となって,その著名な作家さんも,自分だけ立つというふうにも言えなくなってしまったということがございました。
 著作権の改正ということであって,ここに権利者の方もいっぱいいらっしゃるんですけれども,出版界というのは著作権者とともに,ここまでやってこれたわけです。著作権者の方の代弁者として,ぜひ申し上げたいと思うのは,附則5条の2の撤廃,これをぜひ実現していただきたい。それをお願いしたいと思います。拝聴ありがとうございました。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは続きまして一般社団法人インターネットユーザー協会の小寺様,よろしくお願いいたします。

【小寺氏】  一般社団法人インターネットユーザー協会の小寺でございます。本日は弊団体をこのようなヒアリングの席にお呼びいただきまして,あつく御礼を申し上げます。委員の皆様には大分お疲れのご様子が見られるんですけれども,手短に行いますので,もうしばらく私どものお話におつき合いをいただければと思います。
 私どもインターネットユーザー協会は,インターネットやデジタル機器の技術の発展など,利用者の利便性にかかわるようなことに関しての意見の表明であるとか,あるいは知識の普及などの活動を行うことを目的としております。インターネットユーザーの立場に立てば,私的利用のための複製に対する権利制限を記した第30条の規定というのは,ユーザーの行為に大きく影響を受けております。それに対して当会の意見を4項目に分けて述べさせていただきます。
 まず1といたしまして,録音録画補償金制度についてでございます。録音録画補償金制度は05年から06年にかけての,本法制問題小委員会で抜本的見直しの必要性というのが指摘されて以降,議論が続けられてまいりましたけれども,いまだ抜本的と言えるような制度の改革というのは行われていないように思われます。少なくとも,その制度の周知もいまだ十分とはいえず,制度の趣旨あるいは実施方法に関しても,デジタル時代のあり方とかい離しているのではないかというユーザーの意見も多くあります。周知に関しては,近年はその調査があまり行われなくなっておりまして,近々の資料があまりないという状況になっております。我々が今年,ユーザーアンケートという形で約1万人を対象にアンケートしたところ,制度を知らないと答えたユーザーが約3割ございました。実際にユーザーが,デジタルコピーをした権利者に対して,ダイレクトに支払われているのかどうかが確認できないといったところも不満の一事由になっているかと思います。
 また現状の制度は,コンテンツの再生機と,それから消費メディアに,補償金がかかるわけですけれども,今はもうメディアを消費するという行為がだんだん衰退しておりますし,また専用機というものもだんだんなくなって量が減っておりますので,そういった実態と合わなくなっているのかなという気がいたします。
 それからユーザーといたしましては,DRMと補償金というのはどういう関係にあるのかということが明らかになっていない現状では,なかなか制度に関して,ユーザーからの積極的な支持というのは得られないのではないかと考えています。
 録画補償金制度に関しては,デジタル放送専用機器の支払いをめぐって,現在抗争中でございまして,今後の裁判の行方も注目されるところではございますけれども,この件に関しては非常に事情が複雑でありまして,総務省のデジコン委員会での議論も,それからダビング10の実施,文科省・経産省間の両省合意など,さまざまな要素が複雑に絡み合っておりまして,補償金制度一般を考える題材としては,ちょっと特殊過ぎるのかなと考えております。
 補償金制度に関しましては,消費者の複製行為の実態が,補償が必要なほどに,コンテンツビジネスに影響を与えているのか,またDRMのあり方とバランスがとれているのかといった点についても,消費者の意見が反映されることを強く望みたいと思います。
 現在の複製行為について簡単にご説明申しますと,現代のコンテンツ利用における複製というのは,フォーマット,あるいはコーデック変換を含んでおりまして,旧来のようにデジタル・ツー・デジタルで,1ビットの狂いもなくコピーをするというような行為は主体ではございません。デジタルコピーといっても,技術的にはアナログのように非可逆の劣化が起こっております。つまりデジタルだから完全に同じものができるという実態からは,今はかい離しつつあるように考えております。
 それから2010年にディズニーがキーチェストという視聴権の管理技術というのを発表いたしまして,最初にコンテンツを購入するときは視聴権を購入しているのだと。あとはその権利をどんどんほかのメディア,あるいはフォーマットへ引き継いでいくのだというような考え方ですけれども,このような考え方というのはユーザーになじみやすいのではないかと思っております。
 続いて2でございます。「アクセスコントロール回避規制導入」に関して。1月25日に文化審議会著作権分科会でまとめられた報告書の中で,該当のアクセスコントロール回避規制を盛り込むという旨のまとめがされております。しかしこの件に関しては,ユーザーの正当なコンテンツ利用,あるいは我が国のICT技術の発展を妨げる恐れがありますので,その点を既に,パブリックコメントでも我々は同様の意見を提出してございますけれども,ここでもう一度4点に分けて,簡単にご説明をさせていただきます。
 まず1といたしまして,ユーザーが正規に入手したコンテンツを長期的に鑑賞できる保障がなくなるのではないかという懸念でございます。例えば消費者が正規に購入をしたコンテンツであっても,技術が発展していく中で,記録メディアが劣化したり,あるいは再生機や再生フォーマットといったものが陳腐化していく。その結果,その中身が視聴できなくなるということは,これまでにも実際にございました。そのときに,新しいメディアやフォーマットにコンテンツを移すという作業がユーザーとしては必要になってしまうわけでありますけれども,アクセスコントロール回避規制は,この行為を違法化することになろうかと思います。
 資料のほうに書いてございますけれども,みずから選んだ様態で長期で聞くことができないというのは,具体的に何を指しているかといいますと,例えば音楽の例で言いますと,サラウンドでリマスターされた音源というのが結構一時期はやりまして,私もたくさん買ったんですけれども,現状そのフォーマットは衰退して,ほとんど売られなくなっております。多分あと10年とか先を見ると,まず再生できなくなるであろうと考えられるわけです。そのときに,10年後にまた新しいフォーマットで買い直せばいいのではないかと思われるかもしれませんが,大もとのマスターは2チャンネルの音源しかございませんので,これからサラウンドのフォーマットでまた再販される可能性というのはないわけです。ですからユーザーが最初にサラウンドがいいからといって購入したものが,その様態で聞くことができなくなる可能性がありますので,同じ様態で長期的に聞きたいというユーザーのニーズに対応できるよう,ご配慮をいただきたいと思います。
 それから2つ目の理由として,アクセスコントロール技術の技術的な正当性が検証できなくなるという問題がございます。過去,アクセスコントロールのために使用されたルートキット,あるいはコピーコントロールCDといった技術がございますけれども,これはユーザーのコンピューターやCDプレーヤーを誤動作させた結果,コンピューターに対してはセキュリティーホールの発生,あるいはCDプレーヤーに対してはハードウェアの故障の原因になるということもございました。このような問題は,ユーザーの間で解析によって,この事情が検証されて,インターネットを通じて,その問題が初めて明らかになったという経緯がございます。この規制は,そのような追求をすることが難しくなる。その結果,ユーザーが安全にコンテンツを利用することがまた難しくなるのではないかと懸念をしております。
 3つ目の理由といたしまして,侵害コンテンツの流通防止に対する法的枠組みは既にあるということでございます。回避規制導入のきっかけになったのはゲーム機のマジコンだと思っておりますが,マジコンのような機器では不正競争防止法というのがございます。それから侵害コンテンツの不正アップロードに関しては,著作権法における送信可能化権と公衆送信権で対応できると考えております。既存のこのような枠組みがあまり活用されないまま,また新たな規制を導入すると,ユーザーの家庭内におけるバックアップ行為などの利用にも大きな影響と混乱を及ぼすのではないかと懸念をいたしております。
 4つ目の理由といたしまして,著作権法が実質的に特定のハードウェアやプラットフォームを保護してしまうことになるのではないか。著作権法は,そもそもソフトウェアあるいはコンテンツの保護と利用のバランスを図って文化の発展に資するということが目的でございますけれども,この回避規制の導入は,特定のプラットフォーム,ハードウェア以外の再生を禁止することにつながっていきます。これは特定のハードウェア,それからプラットフォームの囲い込みを著作権法で保護してしまうということになりますので,著作権本来の目的を逸脱してしまうのではないかと。それからこれよって健全な市場競争であるとか,国際競争力を押し下げてしまうのではないかという懸念がございます。
 それから主張の3つ目に移らせていただきます。権利制限の一般規定について。現在インターネット上では,ユーザーによるコンテンツの批評のようなことが幅広く行われております。例えばテレビ番組というのも,その対象になっていくわけですけれども,例えば参照として静止画のキャプチャーであったり,あるいは動画の一部分を掲載する,あるいはリンクを張るといった行為も行われているわけですけれども,これらはどのような形態であれば引用というふうになるのかといったことが不明であります。ユーザーの間でも,それに関してはいろいろな意見が散見されております。これらの行為に対して,引用との関係が明らかになるまでは,一般規定で何とか手当をすることができないのかと考えます。
 また,既に任意のほうでも述べましたけれども,再生プラットフォームの変化に伴ってコンテンツのフォーマット変換が必要になるといった事情があるわけですが,その複製行為も消費者自身が行うということになるわけです。ただ,消費者といいましても,個人,個人の知識であるとか技術レベルというのが必ずしもそういうことに対応できるとは限りませんので,プラットフォームの陳腐化によるフォーマット変換に関しては,すべてのユーザーが,購入者が,等しく,コンテンツの干渉が末長くできるように,権利制限の一般規定として,事業者の関与を認めてもいいのではないかと考えております。なぜならば,それらの事情によるフォーマット変換というのは,複製される元のフォーマットがもう再生できなくなってしまうわけでありまして,そういうことを考えれば,複製数として数が増えたというふうには言えないのではないかと考えるからでございます。
 それから4つ目の論点でございますが,送信可能化権及び公衆送信権の整理について。まねきTV裁判というのがございまして,これの最高裁の判決が先日出たわけでございます。該当サービスがテレビ局の送信可能化権及び公衆送信権を侵害しているという判決になってございます。しかしこの結論が導かれる過程におきまして,1対1通信しかない機器であっても,自動公衆送信装置に当たる,あるいはだれとでも契約できるということで,その送信は自動公衆送信に当たるという解釈がなされております。この解釈は既に,現時点でクラウドサービスを日本国内で展開する上で,大きな障壁となり始めております。ユーザーの健全な利用であっても,アップロードあるいは利用行為が事業者の違法行為に加担するということで,潜在的な違法状態を大量に生み出してしまう可能性もございます。まねきTVの最高裁判決で示された法解釈は,国内のコンテンツあるいはインターネットビジネスの障害となるばかりか,世界規模のクラウドサービスから,いわゆる日本外しを生む可能性がございます。これはユーザーにとっては非常に不利益なことでございます。したがいまして送信可能化権及び公衆送信権につきましては,隣接権者の利益の一部分を保護するかわりに,多大な違法状態を生み出すといったことが起こらないように,解釈の範囲をより限定的にすべきと考えておりまして,そのための法改正であるとか,あるいはガイドラインの策定など,具体的な対応を講じるべきであろうと考えます。
 最後になりますけれども,コンテンツのユーザーというのは,権利者の皆さんとかメーカーさん,あるいはサービス事業者の皆様と別に存在しているわけではございませんで,皆さんもうちに帰ればコンテンツの一ユーザーになるわけでございます。より豊かな,そして利便性の高いコンテンツ利用というのは,国民の文化的生活の向上に直結しておるわけでございまして,その利便性と,私的複製というのはもはや切り離せない問題というのは既にご認識のとおりでございます。今後の著作権法の議論には,ぜひ利用者の視点というものを加えていただければと我々は考えております。
 以上でございます。どうもご静聴ありがとうございました。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは最後になりましたけれども,一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの岸原様,板谷様,長谷川様,どうぞよろしくお願いいたします。

【板谷氏】  モバイル・コンテンツ・フォーラム,板谷でございます。本日は発言の機会を与えていただきまして,まことにありがとうございます。
 早速ですが著作権法30条にかかわる意見を述べさせていただきます。お手持ちの資料6,2ページ目をお願いいたします。まず初めにスマートフォンなども含めましたモバイルビジネスの環境ですが,クラウドサービスとソーシャルサービスが今後のトレンドになっていくのではないかと。そのように思われますので,どのようなサービスかをお話しさせていただきます。
 クラウドサービスですが,図示しましたように,このサービスはサーバー同士をつないだネット環境ということであります。ここではその代表的な1類型であるストレージサービスを取り上げております。ストレージサービスでは,クラウドサービスのサーバーを利用して,利用者が私的複製をした著作物を個人的に使用するために蓄積している便利なサービスになっております。これはみずからのモバイルなどの機器のハードにデータを蓄積しないため,例えば機器を紛失したとしても,その私的なデータを失うことはないといった点で便利なサービスでもございますし,私的複製をした著作物を,携帯端末でもPCでも,個人的に利用できるといった点で,利便性が向上しているサービスになっております。クラウドサービスも今後進化していくと思われますので,それに合わせて私的複製の範囲の整理が必要であろうと推測しております。
 3ページ目をお願いします。ソーシャルサービスになります。ソーシャルサービスはネットの世界で利用者同士がつながっていき,ネットの中で関係を構築して,利用者同士の物理的な距離は関係なくコミュニケーションができるといったサービスになります。ソーシャルサービスの代表例としては,我が国ではMobage,GREE,mixiなど,グローバルにおいてはFacebookやTwitterなどがございまして,資料のように,利用者人口も経済的な面からも急成長しているというトレンドになっております。
 4ページ目をお願いします。さて,著作権法30条1項3号についてでございます。同法は利用者による特定のダウンロード行為について,著作権法違反であることを定めており,現状罰則はございませんが,関係各所の多大なるご努力もございまして,特定のダウンロード行為が著作権法違反であるということを利用者に認知向上した点で,有効な改正だったと考えております。ただし,利用者においては,みずからの行為が違法ダウンロード行為なのか,判断が容易ではないという現状があるように思います。と申しますのは,ダウンロード対象がほんとうに違法アップロードされた著作物であるのか,判断が容易ではないということでございます。また悪意がなくても,法上の「事実を知って」に該当してしまう可能性があるのではないかということでございます。このような現状の中で,仮に罰則が定められてしまいますと,判断が容易ではないために,利用者のネット環境における行動を委縮させてしまうと。そういったことが想定されます。そうなりますと,著作物の利用も阻害されることになりますし,文化の発展も,新しいビジネスも,生まれにくくなると。ひいては社会全体にも悪影響を及ぼすのではないか。このような危惧をしているわけであります。このような理由からも,利用者保護,文化の発展,経済の発展の観点から,同法の厳罰化といったようなことについては慎重になるべきであるとの意見を持っております。
 次の5ページ目をお願いいたします。引き続き,同号につきましては,まず問題をシンプルにとらえる必要があるのではないかと。著作権者の保護の観点からも,同号の違法ダウンロードに対してではなく,そもそも著作権法に違反してアップロードをしている者に対しての問題が大きいのではないかと。基本に立ち返って考えることが妥当であろうと思っております。罰則が改正され,強化されました著作権侵害に対しては,こちらも団体関係者様などのご活躍がございまして,多大なる成果を挙げておられることは周知のことであると認識しております。ですから現状の同号の厳罰化は慎重にすべきであり,規制対象として問題の大きい,違法アップロードした者に対しての対策を検討することが妥当と。そういう意見を持つに至っております。
 6ページ目をお願いします。最後にMCFとしての意見のまとめになります。著作権法30条,私的使用のための複製ということについてでありますが,著作権者の独占排他的な権利の保護と,利用者保護,文化の発展,経済の発展のバランスが重要であると考えております。このことがまずは大原則である。このように考えております。我々としては,3つの意見を持っております。
 まず1つ目の意見でございます。法目的にかない,著作権者の権利を事実上害しない範囲で,著作物の私的複製の範囲を,文化及び経済の発展を阻害しないように判断するといったことが妥当である。そういう意見を持っております。
 2つ目でございます。特に利用者保護の観点から30条1項3号の厳罰化というものは慎重にすべきであり,著作権者の保護の観点から違法アップロード側の対策を検討することが妥当。そういった意見を持っております。
 3つ目です。技術的保護手段の回避規制については,利便性との関係で保護強度等に差異があるとしても,文化及び経済の発展に必要なものでありまして,実態として利用されている技術的保護手段が網羅されるように定義されることが必要であろうという意見を持っております。
 ここまでが意見ですが,最後に,あくまでもご参考としてつけております7ページ目をごらんいただけますでしょうか。今後のトレンドにかんがみますと,将来考え得るサービス事例といたしまして,クラウドサービスとソーシャルサービスが,例えば融合したような,ここでは利用者同士がネット環境を利用して,物理的な距離は関係なく,まるで自宅でBGMを流しながら話をするといったようなサービスもあり得るのではないかというふうに,そういったことを図示して表現しております。我が国においては文化の発展と将来の新しいビジネスの創出や育成などといったことから,現行法において,まずリアルな環境で認められている範囲においては,このようなネットの世界でも,実際には認められる必要性があるのでは。これはあくまでもご参考でございます。簡単ではございますが,以上,モバイル・コンテンツ・フォーラムとしての意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。

【土肥主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,残る時間を質疑応答や自由討議としたいと考えます。まず出席者の皆様方に対するご質問やご意見,もしございましたら,せっかくの機会でございますので,どうぞ遠慮なくお出しいただければと存じます。どなたかございますか。
 大須賀委員,お願いいたします。

【大須賀委員】  日本書籍出版協会の方にお伺いしたします。附則5条の2を削除するということについてのご意見はよく理解できたんですけれども,そういうことをした上での出版業界の未来像というんでしょうか,その点をどうお考えになっているのか,お聞きしたいと思います。こういうふうに単純化してしまうと,あまり適切じゃないかもしれませんが,あえて単純化して言うと,旧来の紙ベースの書籍購入者層というのは一定程度確保して,部分的にはそれが少しずつ電子書籍の購入層に移っていく,紙ベースの書籍の購入層の方と,電子書籍の購入層の方が,従来どおりの数で保持されると,そういうふうな未来像なのかどうか,それとも,またそれとはちょっと違ったものなのか,その辺がよくわからないところがあるものですから,教えていただければと思います。

【平井氏】  大変難しい質問でございます。我々,商業出版物を出している団体でございます。商業出版物に限らずというところで見ますと,日本人の活字,活字というと印刷物になってしまいますかね,文字の享受に関しては,かなり地殻変動が起きてしまっているんだろうなと思っております。恐らく2000年代に入ってからは,多くの方々が印刷物による文字情報の取得よりも,ディスプレー等による文字の取得のほうに逆転しておるのではないか。これは調査結果があるわけじゃないので何とも言えませんが,そういう印象を持っております。
 一方で,電子出版がどんどん発展していると言われながら,この10年間で,まだまだ650億円程度という事実があります。それを考えますと,ディスプレーで文字を読む習慣自体はかなり広まったにもかかわらず,それぞれの読者が趣味や楽しみのため,あるいは勉強や仕事のため,研究のために必要としている情報は,まだまだ紙からのものほうが圧倒的に多い。商業出版物に関しては,デジタルに対するニーズよりも,紙の出版物に対するニーズのほうがまだまだ多いというふうに感じております。日本の出版界は10年以上,電子出版に携わっておりまして,その都度,その都度,10年後には逆転するんじゃないかと考えてきましたが,最近ではなかなか読者の,コンテンツ享受の志向というのは変わらないものなのだなという印象を持っております。ただ,これからどんどん若い世代,生まれたときから圧倒的にデジタルによる文字情報の取得が日常であった方々がマーケットにどんどん参入してくるというところですので,これからは少しずつ変わってくるのかなとも思っております。
 ただその場合,我々はすべての日本人,日本語を解するすべての方々が読者であって,その中から生まれた書き手,一定以上のクオリティーを持ち,反復的に作品を生み出せる書き手の皆さんと一緒に,できるだけ多くの読者に,紙であろうが,デジタルであろうが,読者が望む形で提示をしていきたい。それで,何かの事情で,どこかの段階で,紙よりもデジタルの需要のほうが増えてきたということになれば,それはそれで読者の要求ですから,自然のことだと思います。我々出版界は何かの未来図を描いていると言うよりも,読者のニーズに対して,その都度,その都度,最適なものを提供していければと考えております。このぐらいしかお答えできないんですが,よろしいですか。

【大須賀委員】  先ほどお伺いした趣旨は,要するに文字書籍であれ,電子書籍であれ,第一次購入層というのを固定化して維持させるという方向で考えていく,それは1つの考え方で,業界を維持するためには,そういう発想が出てくるのは理解できるところです。ただ,一次利用者と二次利用者を少し分けて考えて,二次利用者が出てくるのはやむを得ないという考え方もあり得る。その二次利用者のところは,むしろ業者を介在させて,そこから利用料金なりを回収するという考え方。その額は今の一次利用者を固定して維持するということよりは下がってくるのかもしれませんけれども,今の情報の流通の仕方で,有料流通情報と無料流通情報の比重で,無料流通情報の比重が非常に高まっているわけですね。そういう中で出版業界の未来を考えるときに,あまり現状の,一定の固定的な形で考えるのがいいのかどうかということが,ちょっと疑問としてある気がするものですから,あえてお伺いしているわけです。

【平井氏】  実は私どももそっちの方向にはシフトする努力はしておりまして,例えばレンタルコミックへの対応,あるいは私的領域以外での複写利用に関してのライセンシングシステムですとか,そういったものはどんどん出してきております。ところが,出版社というのはご存じのように,隣接権もございませんがゆえに,お金をもらう根拠があまりないですとか,あるいは附則5条の2があるがゆえに,要求できたはずの対価が要求できないというようなことがございますので,なかなかこの部分をビッグビジネスに持っていけないというふうな恨みがございます。さらに言えば,今後の検討でいつかお願いしたいと思っておるのですが,デジタルへの複製ですから,これも私的録音録画補償金のようなタイプの補償金の対象になっても,実はおかしくないんじゃないかということも考えております。こういう時代ですから,二次利用の部分をできるだけ大きなビジネスにしていこうというふうな試行錯誤は今まさに行っているところでございます。

【土肥主査】  ほかにいかがでしょうか。
 上野委員,お願いします。それでは,最初,メディアシフトのほうからお願いいたします。

【上野委員】  それでは私のほうから2点お伺いできればと思います。1点目は日本書籍出版協会に対して,2点目はモバイル・コンテンツ・フォーラムに対してであります。
 1点目は,ただ今,大須賀委員から日本書籍出版協会に対して大所高所からのご質問がありましたけれども,私は細かい点についてお伺いしたいと思います。
本日のご意見は附則5条の2を削除すべきだということだろうと思いますけれども,この点に関しては,確かに,「当分の間」という文言を持つこの経過規定が25年以上にわたって残っているということや,その間に,改正当時前提にしていた文献複写機器の性能が向上してきたということはご指摘のとおりかと私も思います。
ただ附則5条の2を削除し,30条1項1号だけが残るということになりますと,例えばコンビニのコピー機を用いたコピーは,たとえそれが私的使用目的であっても著作権侵害になるということになります。したがって,これをどうするのかが問題になります。
この点に関する本日のご趣旨はよくわかりませんが,30条1項1号の適用を受ける自動複製機器を用いた私的複製についても複製権という許諾権を残した上で,これを複写権センターのような仕組みで処理していくということなのでしょうか,それとも,いっそのこと報酬請求権にしてしまうということでしょうか。
 私は個人的には,一般論として言えば,私的複製に限らず,図書館や学校教育その他の権利制限規定について,利用者の便宜をより拡大する一方で,現在権利制限によって完全に自由とされている部分も含めて報酬請求権化していくという方向性が,将来の著作権法にとって1つの選択肢だと考えております。ただ,報酬請求権化した場合に問題となるのは報酬の徴収分配です。特に文献複写に関しましては利用者の数も権利者の数も非常に膨大で広範囲に及ぶわけです。そうすると,権利者と利用者をどのようにカバーしていくかということが避けられない課題になると思います。
 先ほどのご報告では,複写に関する集中的権利処理体制は,複写権センターやJCOPY等が「十分にその機能を果たしている」ということで,附則5条の2を設けた当時に懸念されていたような集中的権利処理体制が未整備だという状況はすでに解消されているというご趣旨だったかと思います。
そこで,この点に関しまして現状をお伺いしたいわけですけれども,まず利用者側の方に関しましては,先ほどのご紹介で,複写権センターは5,673者,そしてJCOPYは132者と許諾契約を締結しているというお話でしたけれども,これは実際に行われている複写行為のどれくらいの割合をカバーしていると考えたらよろしいのでしょうか。また他方,権利者の方に関しましては,例えば書籍でいえば,複写権センターは83,712点,JCOPYは68,371点の委託を受けているというご紹介でしたが,これも現実に利用者のもとで行われている複写対象のどのくらいの割合をカバーしていると考えたらよろしいのでしょうか。
また,ここで管理の対象となる複写権というのは――もちろん出版者の権利というのも立法論としては別途問題になるところでありまして,私も意見を持っていますけれども――現状ではあくまで著作権だということからいたしますと,出版者が複写権管理に関与するためには,出版者自身が著作者である場合ももちろんあるでしょうけれども,そうでなければ著者から出版者に著作権が譲渡されているか,あるいは管理委託されている必要がありましょう。では現状において,こうした著者と出版者の契約というものはどのようになされており,現実に著作権譲渡や権利管理がどれくらい実現しているというふうに理解したらよろしいのかをお伺いできればと思います。
 権利と利用のカバーというこの問題は確かに簡単ではないということを私もよく理解しているつもりではありますけれども,もし私的複製行為も含めて,著作権の集中管理を拡大するとか著作権を報酬請求権化していくということになりますと,このことはやはり避けて通れない重要な問題かと思われますので,現状についてお伺いしますとともに,将来的な可能性につきましても展望がございましたらご教示いただきたく存じます。これが1点目です。
 2点目はモバイル・コンテンツ・フォーラムにお聞きします。先ほどのご説明の中で,5ページ目におっしゃっておられたことは,ダウンロード行為について規制を強めるのではなく,基本に立ち返って違法アップロード対策を検討するのが妥当だというお話だったかと思います。
確かに違法アップロードがなくなればダウンロードの規制を強化する必要はないと思いますし,30条1項3号も要らなくなるかもしれません。
ただ,違法アップロードに対する方策といたしまして,何か具体的なイメージはお持ちでいらっしゃいますでしょうか。例えばプロバイダーに何らかの義務を課すとか,スリー・ストライク制度だとか,いろいろ言われておりますけれども,そういった対策が現実にはなかなか難しいから,あるいはそうした対策が別の問題を生じさせるから,今こうして議論になっているのかなと思ったものですから,もし何かお考えがございましたらご教示いただきたく存じます。

【平井氏】  上野先生は相変わらずご質問が鋭くていらっしゃいますが,まず現状の委託作品数に関してでございますが,この数字はあくまでも私的利用目的に必要なものは全く含んでおりませんので,例えばJCOPYの委託に関しては,JCOPYが対象とする領域で日常的に複写がとられているだろうジャンルはほぼすべて網羅されており,それ以外のものであれば,JCOPY,あるいは出版者に対して複写の要請があった段階で,すぐに委託できるという体制をとっております。ですからこの辺は,何アイテム委託されているかというよりも,何者が契約しているかということを見ていただいたほうがいいんだと思います。必要があれば,その都度どんどん委託作品に加えていくというふうなことです。必要というのはユーザーからのリクエストがあったときに加えていくということです。あるいはユーザーのリクエストが多いジャンルにおいては,あらかじめ全部やっておくと。
 その根拠ですが,書籍出版協会が公表しております出版契約のひな型において,複写に関するライセンスについては出版者に委託するという条項が含まれておりますので,出版契約を結んだ段階で,これは出版者に委託されるということ,自動的にそのようになるということだと思います。
 その分配の方法ですが,やはりこれは何らかのサンプリングも行うということにならざるを得ないでしょう。それから徴収の仕方,こちらに関してはユーザー個人,個人からというのは難しいというのは承知しております。何らか,複写機器を提供している業者さんですとか,そういったところとの交渉になるんだろうと思っております。この問題,出版界だけで解決できることではございませんで,いろいろな方がどれだけの協力をしていただけるか。日本の出版文化のために,ひと肌脱いでやろうというふうな方が多くいらっしゃれば,いろいろ解決は早いと思いますし,出版なんかなくなってもいいんだよという,もし日本人がそういう選択をするんだったら,なかなか難航するんだろうなと考えております。

【岸原氏】  先ほど申しましたアップロードの具体的なというところですが,先生おっしゃるように,対策としてはいろいろ考えられるかと思うのですが,まずここでご提示させていただきたいのは考え方ということで,どうしてもダウンロードの違法化というところを含めて,今,非常に違法の範囲を広げていく,その中で対策をとっていくということが広がっているのではないかなと思うのですが,あいまいな範囲がどんどん広がってくることによって著作物の利用も阻害されてきますし,逆に取り締まりも厳しくなって難しくなってくると。本来あるべきは,悪意ある,ほんとうに問題のあるところをきちんと罰していくことが今は行われていないというのが一番大きな問題であると。そういうことで言うと,まずダウンロードする部分とアップロードする部分ということで考えていくと,まずアップロードが第一義的に考えられて,その上で,アップロードの中でも,一律にすべて対策をとるというのではなく,真に問題を起こしているようなものを特定して,その上で,先ほどおっしゃっているような対策といった考え方を踏んでいくべきではないかというのが今回の趣旨という形になります。

【土肥主査】  よろしいですか。ほかにございますか。じゃあ松田委員,どうぞ。

【松田委員】  モバイル・コンテンツ・フォーラムの資料を見ながら質問させていただきます。2ページと7ページに,クラウドの図として,ほぼ同じ図が記載されています。7ページを見ますと,携帯端末を持っている個人が,持っているコンテンツを私的利用のためにストレージし,いつでも,ほかの端末からでも,利用できるようにするという図が示されています。この図では音楽のストレージ,観賞をできるようにする図のように思えます。このように個人がコンテンツをストレージをして,これを楽しむということと,この図にあるクラウドの他のサーバーがつながっておりますけれども,この関係はどのように考えたらよろしいでしょう。これが1点です。その後まだあります。

【岸原氏】  済みません,ここの部分はインターネットの概念を示したものですので,全体的にそこのコンテンツがどんどん広がっていくという形のものをイメージしたものではございません。

【松田委員】  いや,そういう質問をしているわけじゃございません。インターネットであれば,このユーザーにつながっているサーバーから,ユーザーの間にネットがなきゃいけないのに,サーバー間にネットがあるわけですから,これはむしろクラウドというより,単純にストレージサービスの一態様ではないのでしょうか。

【岸原氏】  ちょっとご質問の意味がよくわからないのですが,クラウドとストレージの違いということを今,議論されているのでしょうか。

【松田委員】  クラウドというのは,もっと高度に考えるならば,例えば企業がPCないしは自社のサーバー上には,コンピュータープログラムもデータも本来保有しないで,最も適正なデータと,最も適正な,新しい,機能の高いプログラムを,クラウド上で利用することができて,そしてそのサービスを受けたときに料金を払う,こういう形態が最もクラウドに似合う形態だと思いますが,自分がアップロードしたものを,自分がダウンロードする。ほかの人たちは,それを見たり聞いたりはできない。こういうサービスということは,別にクラウドと言わなくてもいいのではないかと思います。いかがでしょうか。

【岸原氏】  済みません。クラウドサービスというのは技術的な部分を指しておりますので,先生がおっしゃっているような,それはビジネスモデルの定義になってくるかと思います。要するにクラウドという環境がこれから出現してくるというのは紛れもない事実で,これはユーザー利便性,あるいは著作物のより拡大ということも当然起きてくると思うのですが,その上で,先生がおっしゃっているような部分は1つのビジネスモデル,利用形態としては当然考えられることかと思うのですが,それがクラウド上で,そのビジネスモデル以外はだめだということを法規制するのでなければ,それはこれからいろいろなものが出てきて,その中で自然と淘汰あるいは拡大をしてくるというふうになるのではないかなと思います。

【松田委員】  私の答えに直截に答えていただけないのは残念です。クラウドが30条等の問題で,発展に支障になるという図として示されています。著作権とクラウドの問題提起として,この図が上がってくるのです。皆さん方が今提示した図です。クラウドがあってアップロードして,ダウンロードする。これは今,クラウドの1例だと言えば,じゃあ置いておきましょう。じゃあほかの例はありませんか。30条が障害になってクラウドコンピューティングシステムが発展しない例というのは,どういうのがあるのか。この例以外です。私はこれ以外に見たことがないんです。教えてください。

【岸原氏】  済みません,サービス形態というのはいろいろ考えられるかと思います。一般的に今,世の中に出てくるところで言うと,i・クラウドがあったり,amazonのクラウドがあったり。これはアップロードするかどうかも違いますし,コンテンツマッチングする仕組みも多分違うんだと思うんですが,基本的にはここについて,我々がすべてビジネスモデルをご提示して提供するというよりは,技術要件といいますか,環境としてそういうふうになってくると。なぜこれをやってくるかというと,クラウドをやりたいというよりは,これは世の中のニーズあるいは流れとしてそうなってきている。
 モバイルコンテンツはこれまで非常にいい環境にありまして,国内の著作権者の皆様方と,デジタルコンテンツで6,000億のマーケットをつくってきたと。これは多分,全世界の中でもデジタルコンテンツとして非常に大きな部分だったと思うのですが,逆に今の環境であれば,我々,国内事業者といったものはほとんど提供できないという環境になる可能性もあります。そうなりますと,海外から来たサービスモデルに,これは当然考えられるシナリオでありますし,既に起こっていることなんですが,事業者さんが行うものを,全世界的なデファクトスタンダードとなって,国内の事業者あるいはコンテンツのホルダーの方たちも,みんなそれに合わせなければいけないという最悪のシナリオになるのではないかということで,今後出てくるサービスについて,国内の事業者あるいはコンテンツを持たれている方,それぞれ話をして提供をしていくという環境をこれからつくっていくのがいいのではないかということをご提案させていただいているとご理解いただけるかと思います。

【松田委員】  それと30条の関係を示してくださいと言っているんです。新しいクラウドビジネスが生まれるのはわかっているんです。それと30条の関係で,この図のストレージサービス以外のものです。

【岸原氏】  済みません,そういった意味での,法的な部分でということで言いますと,当然のことながら今,複製というところについてある程度,30条の中に入っているかと思うんですが,当然のことながら日本の中では,送信可能化権ということもありますので,そういったことも含めて,どういうふうに整理していくかがこれから必要になってくるのではないかなと思います。

【土肥主査】  松田委員のお尋ねのところなんですけれども,まだ十分,ご理解をいただいていないのではないかなと思うんですが。

【松田委員】  これから先は委員で議論したほうがいいです。

【土肥主査】  そうですね。じゃあ挙手された中山委員,お願いします。

【中山委員】  自炊について,長尾さん,平井さんにお伺いしたいのですけれども,けしからんからやめてほしいというのは自炊それ自体でしょうか,それとも自炊代行業でしょうか,あるいはその両方でしょうか。

【長尾氏】  先ほど最初にちょっと申し上げましたように,ご自分が買ったものを煮て食おうと焼いて食おうと,漬物石にしようと勝手だということはございますが,実際お困りになっていて,デジタルにならないと使えないという方もいらっしゃるので,自炊そのものを規制してほしいと言ってるわけでは私どもございません。自炊代行業者でございます。それも違法だとわかっていたらおれたちに頼むなよと明言しているような悪質な自炊代行事業者をどうにかしていただきたいと。そう申し上げたわけでございます。

【中山委員】  平井さんも同じでしょうか。

【平井氏】  はい,同じです。前回のヒアリングで思ったのですが,30条に対してみずから行うというようなのじゃなくて,代行させてもいいんじゃないかと,自分のものをシフトするだけだったらいいじゃないかという意見がございましたが,ちょっとプレゼンテーションでも説明したように,必ずしも自分で買ったものでもないものを,どんどん複製しちゃっていると。あるいは中古市場で買って,それをどんどん転売しながら複製物が増えていくというふうなことの温床になる自炊業者及び自炊行為は,これはぜひとも何とかしていただきたいということでございます。特に自炊の場所を,本がたくさん置いてあるところで自炊機器を提供するというビジネスが,法的に成立可能にしてしまうということは何とかしていただきたいと思います。

【五木田氏】  済みません,補足させてください。自炊代行というか,請負はもちろんですけれども,自炊の機器,これの提供と,そのスペースを与える。これも我々としてはやめていただきたい。自動複製機の例外である附則5条の2を外していただくことで,それもとめられると考えております。個人が自宅にスキャナを買ってきて,自分の本を裁断してスキャンする。これまではとめられない。もちろんのことです。だから,それを公衆の用に供されるコピー機,スキャナ,これにもっぱら文章を,または図画の適用を外していただいて,例えば先ほどご紹介したTSUTAYAさんのようなところに,こういう機器を置くのはやめていただきたいと考えています。

【土肥主査】  五木田さんにちょっと補足的にお尋ねしたいんですけれども,先ほど自炊の関係で大阪と横浜ですか,1カ月間TSUTAYAさんがおやりになったということをご紹介いただいたわけですけれども,1カ月間とおしゃっていたと思いますが,数としては,伺った限り,そう多くないようにも思えまして,客1人当たりが,2つぐらいの文献を自炊されているというふうな数字だった気がするのですが,そういうように伺ったのですが,それでよろしいでしょうか。

【五木田氏】  人数等の把握をTSUTAYAさんがされているのが,ともに3月1カ月間の実績ということでございます。それぞれサービスとしては,昨年の10月とことしの2月から始められていて,これはまだ現在も実験として続けていらっしゃいます。トータルでどうなのかというのは,TSUTAYAさんのほうで人数としてではなく,利用金額,言ってみれば売り上げというような形で出していらっしゃって,人数として把握しているのは3月の1カ月という意味でございます。ちなみに大阪の枚方駅前店では,金額を言っちゃっていいのかわかりませんけれども,昨年の11月時が1,600……これは単位は……。

【土肥主査】  先ほど大阪は24名,64件というふうな数字ではなかったかなと思ったんですが。

【五木田氏】  3月度の売り上げが,大阪の平方は1万7,446円,みなとみらい店は2万7,743円となっています。数として把握されているものがあります。枚方のほうは11月が6人,12月が9人,1月が13人,2月が39人,3月が24人。みなとみらいのほうは2月から始まって,2月が56人,3月が50人という人数だそうです。

【土肥主査】  自炊というもので大変出版界の方々が被害を受けておいでになるとか,あるいは今後,非常に懸念されておられるような形で伺っているわけですけれども,おっしゃっておられるような数字を懸念されておられる,そういうことですか。

【平井氏】  いえ,今のはあくまでもTSUTAYAというチェーンが,500店舗以上持っているチェーンが2店舗で,実験的に1台ずつ置いて行ったというもので,大きなビジネスとしてやっているわけではないですね。一方,自炊請負業者の最大手ですが,これは報道記事による情報ですけれども,最大手の1社は1冊100円でやっています。そこは300人近い作業員が朝から晩まで作業をしておりまして,1冊100円で賃金その他のコストを賄うわけですから,断裁,スキャン,そうですね,1時間に1人が数冊できるんでしょうか。そこに今,この時点で,本を送って,自炊してくれとお願いする人は3カ月待ちです。実際どのくらいの量がなされているのかわかりませんが,少なくともその規模があるにもかかわらず,それだけの時間がかかるということがあれば,相当数が自炊されていると考えられる蓋然性はあると考えております。

【大渕主査代理】  大きくいうと2点ありますけど,全然違うことなのでちょっと切ってお伺いいたします。まず書籍関係,今の自炊のところです。,先ほどお伺いしていて,非常に強調されていた点として,自分のものでもないのにというところを非常に強調されたのですが,それはどの程度重みがあるのかという点であります。自分のものだったらいいが,自分のもの以外では切ってほしいという強い意味があるのか,それとも全体的な,トータルの中での一場面のような形で言われているのかという点が1点です。それから自炊関係では,先ほどたしか,自炊を個人でやっている人自体が悪いのか,それとも業者かというと,どちらかというと個人というよりは業者だということを言われたかと思うのですが,若干のニュアンスは別として。その関係でお聞きすると,附則5条の2を削除してしまうと,直接的には30条自体は個人が直接的に対象になっているわけで,そこの1項1号の適用が生じてくるから,まずはインパクトとしては,直接的には個人のほうに行くわけですけど,それと,先ほどのように,業者のほうを押さえたいということとの関係についてお伺いできればと思います。まずは,この2点です。

【平井氏】  まず附則5条の2に関しては,さっき五木田がお話ししたとおりです。自己所有というのを強調させていただいたのは,必ずしも自己で所有しているものばかりではないことを強調させていただいたのは,これは前回のヒアリングで,自分のものをメディアシフトする分にはいいんじゃないかと言った団体さんが2つ,3つあったということなので,現実にはそうではないということを申し上げたかったのと,自己所有のもの,通常の新刊市場から入手した自己所有のものであれば,確かに我々出版界にも著作者にも,直接的な被害は及びにくいということがあり,それほど目くじらを立てるものじゃないかなと思っております。
 それから附則5条の2は確かにコンビニコピーの問題,これは多くの場合個人です。ところが業者のほうは附則5条2ではなく30条自体の問題でございまして,これに関して言うと,いわゆる手足理論だとか,そういうことを用いて,これは30条だと言い張っている業者があるわけです。30条に手足理論を持ち込むと結構ずぶずぶ,何でもありになっちゃう可能性がありますよね。福祉目的とか,そういうものは別の条項で何とか対応してください。30条は手足理論だとか,そういうのがあまり入り込む余地がないような厳密性を持っていただければ,自炊請負業者にも我々は対応しやすくなると考えております。

【大渕主査代理】  ありがとうございました。それから先ほどとは全然違う点なのですが,次にインターネットユーザー協会にお伺いできればと思うのですが,1点目が先ほどユーザー関係の団体としては,モバイル協会のほうでは,ペーパーの4ページにあるように,30条1項3号の刑罰化については慎重にすべしというご意見だったのですが,同じユーザー関係として,今回特にそういう関係,ペーパー等で出してご説明もなさったものですから,今の点についてインターネットユーザー協会はどうお考えかということをお伺いしたいというのが1点であります。次に,もう一点が,インターネットユーザー協会が出されたペーパーの一番最後で,4点目の公衆送信権可能化権の整理というところの最後に,法改正やガイドラインの作成など具体的な対応を講ずるべきであるというご主張があるのですが,法制化というと,細かいことは結構ですので,大体ラフに言ってどういう感じに改正してほしいということなのかをお伺いできればと思います。

【小寺氏】  30条1項の第3号の話ですか。ダウンロード違法化に関しましては,私どももともとダウンロード違法化に反対するためにというか,それは結果的に結成された団体でございますので,当然反対の意見に……。

【大渕主査代理】  違法化自体というよりは,違法の上で刑罰化,そちらのほうにむしろ焦点を当ててお伺いできればと思います。

【小寺氏】  私どもも,まず刑罰化の前にダウンロード違法化されて,周知が,どなたかの資料で50%程度であると。それで効果がないので違法化,処罰化しようというのは,まだ早急ではないかと考えています。もう少し認知を上げてからその後の議論に進むべきと思います。
 もう一つのご質問,資料最後の法改正,ガイドラインでございますけれども,最高裁の判例を私どもも拝見して,随分読み込んだんでございますが,自動公衆送信権及び送信可能化権の概念自体が非常に難しいので,一般ユーザーがこの行為にかかわることにインターネットの世界ではなっておるのに,どのように解釈していいのかがよくわからない現状がある。ということは,もうちょっとこの権利に対しては,ひらいた文書が必要なのではないかというふうに感じております。そうすれば,もともと悪意を持っていないユーザーの行為が結果的に違法になってしまうケースはかなり避けられるはずだと考えております。

【土肥主査】  ありがとうございます。どうぞ。

【中山委員】  また自炊に戻って申しわけないのですけれども,出版業あるいは著作者が自炊によって一体どう困っているかという点についてもう一回お伺いしたいんですけれども,学者や学生などは,自分の本を自炊して,iPadに入れて,鞄に入れやすくする人はいっぱいいるわけですね。それは別に大して困っていないと思います。先ほどのお話を伺うと,切断したものを中古本屋に売るとか,あるいはデジタル化したものをアップする,それが困るのだという話ですが,それでよろしいんでしょうか。

【平井氏】  そうですね,自分のものをメディアシフトするのは原則として構わないと思います。一方で基本的な対価を支払うことなく,自炊の対価だけ支払って,あるいはコピー代金だけ支払ってお金を払った気になっているユーザーがいて,コンテンツには全然お金を払っていない。例えば例で言った,コンビニで雑誌を立ち読みしながら,1ページ,10円払ってコピーして,金払ってコピーして何が悪いんだと居直るような方々がいるというふうな,そういった出版物をコピーしたりデジタル化したりするのは,特にだれの許諾もなくていいんだ。出版物の内容は空気のようなものなんだという雰囲気が助成されるというのは,我々としては長い目で見て一番嫌だなと思います。それからペーパー・ツー・ペーパーの時代からペーパー・ツー・デジタルになるって,本自体にDRMをかけるというのは不可能ですから,デジタル化がいとも簡単にできてしまうという時代に初めてなって,それを抑止する何の手立てもないまま,そのデジタルデータがどうなっていくのかということを,ほかのメディアの皆さんの現状をずっと見ていまして今,空恐ろしい思いをしています。現状において,直接的にどのような被害があるかということを,今数字として申し上げることはできませんが,将来における遺失利益を最小にするために,今何かできないかという観点が大きいととらえていただけるとありがたいと思います。

【中山委員】  デジタル化されると,ネットに簡単にアップできるから困るというんでしたら,それは自炊業者の話というよりは,むしろ自炊自体の話になってくるんではないでしょうか。

【平井氏】  これは自炊業者,先ほどの資料で90社ですか,要するに業者自体がデータの管理をどのくらいできるのかがちょっと心もとないということ。データの納品は一番安い方法だとクライアントに対してメールで送り返しているんです。これも恐ろしいことですよね。1対1の通信だから公衆送信じゃないということで,悪意ではなくても,不可抗力で結果として流出してしまうということも非常に,それも自炊業者から大々的に出てしまうと恐ろしいと考えています。

【長尾氏】  2つございまして,今,先生がご指摘の,データ化されてしまうと困るという問題が1つあって,まだそういう被害の報告は私ども受けておりませんけれども,自分でやろうと思えばできるなということもございまして,デジタルになっているデータを自分でオンデマンドでペーパーの本にすることは今は可能なんです。おっしゃったような非常に精巧なスキャン機能のあるものが,実は私の個人の家にもありますので,やろうと思えばすぐでいちゃうという恐ろしさもあります。それはまだあまり,まず今のところ,実外の報告はないので,あるかもしれないという可能性なのですが,現に起きていることとしては,先ほど申しました,ある業者さんのところには,壁一面に断裁された本が並んでおります。それをそこにある,お店の人はやってくれませんが,自炊のスキャナの機械を使ってデジタル化を自分ですることは,そのお店ではどう扱っているかというと,まずお客様が「自分で購入していない本を複製することは合法ですか」とお店に人に聞きます。すると店員さんは,マニュアルどおり「図書館で借りた本をコンビニでコピーすることが合法であるように,あなたがお買いにならなかった本でも,それをあなたが自分の私的使用のためにコピーすること及びスキャンすることは合法ですよ」といって,100円もらって「機械を使っていいよ」とおっしゃるわけです。
 これは,その本は例えばコミックでしたら500円ですとか,そんなことないと思いますが,私どもの先生たちの1,600円ぐらいの本をほんとうならば本屋さんで買っていただきたい。ところが100円でできちゃっています。完全にそれは権利を侵害されております。そういうことが現に起きている。これがまだお店の数が少ないので,コミックの先生方にはまだそんなに被害を受けておられませんが,TSUTAYAさんのような,もしくはコンビニエンスストアでそれが始まったときは,権利侵害どころの騒ぎではなく,うちの理事などは生活権の問題だと申しております。そういうことが始まらないように,始まる前にどうにかしていただきたいとご意見を述べさせていただいております。

【中山委員】  何か自炊の話よりもっと違う,デジタル化に伴ういろいろな大きな問題ではないかという気がするんですけれども,自炊だけを敵扱いしても,なかなか問題は解決しないのではないかとい思うんですけれども。

【長尾氏】  それはいわゆる自炊というのが,ものすごく,言葉だけがはやっているのかもしれませんが,テレビなどでもどんどん紹介されまして,自虐的な,若めの著作者の方は,じゃあ文藝家協会の会議室に自炊機を持ってきて,著者と一緒に自炊しようサロンなんていうのをつくったらどうかなんてことを言っているような方もいるぐらいになってしまっていまして,デジタル化そのものがというところまで広げますと,皆さんに検討していただければ大変助かりますが,モグラたたきのようにはなりますけれども,目立ったところからどうにかならないかなということを,会から代弁してまいれと申しつかっております。

【平井氏】  中山先生のおっしゃるとおりです。したがってこれだけ,ペーパー・ツー・ペーパーからペーパー・ツー・デジタルの複製機器が一般的であり,普遍的になってくるということは,やはり補償金のような何らかの手当も今後考えていただかざるを得ないかなとは感じております。

【土肥主査】  ほかにいかがでございましょうか。じゃあ松田委員。

【松田委員】  ちょっと自炊から離れさせていただいて。3号ですけれども,レコード協会さんの資料の2ページ目を見ますと,刑事告訴ができるような刑事罰の導入をということを書かれているページです。多分実態はこういうことなんでしょうということで,真ん中あたりに10代,20代のグループの主な発言ということで,みんながやっていることだから,自分もやっても大丈夫,お金なんて払うつもりないよということを書いています。こういう実態を,刑事罰を導入したら告訴するんですか。

【畑氏】  ダウンロード行為をどのように特定するかはいろいろ難しい部分があるかと思っております。ただ,違法なダウンロードが刑事罰対象になることによりまして,違法アップロードに対する摘発とともに,摘発可能な範囲が広がるということは,対策の強化につながると考えております。

【土肥主査】  よろしいですか。じゃあ山本委員どうぞ。

【山本(た)委員】  レコード協会に1点お伺いしたい点があります。簡単な質問です。音楽,レコードの違法配信がものすごい量だというのはよくわかるのですが,実際にCDを取り込んで配信しようと思ったら極めて簡単だと。パソコンを使えばいいというのは私でもできるのでよくわかります。それだけに,例えばDVDであればCSSというような技術的手段がとられています。それが回避されるような状態になると,またブルーレイでは新しいAACSとか,いろいろな技術的手段がとられています。しかし,CDの場合には技術的手段としてはほとんど無防備です。さっき申し上げましたようにSCMSだってパソコンでとれば全くむだです。であるのに,違法配信撲滅したいと思うのであれば,なぜコンテンツにもっと技術的手段を講じるとかいうことをなさらないのか,あるいはその動きは何かされているのか,その点だけ伺いたい。

【畑氏】  モバイル,パソコン環境への音楽配信につきましては,配信ビジネスやコンテンツ提供プラットフォームの中で,それぞれコンテンツプロテクションあるいはDRMを採用し保護を図った上で提供されているところでございますが,1982年から世の中に登場しておるCDにつきましては,先ほど小寺さんからも言及があったとおり,かつてルートキットやCCCDという取り組みをした経緯もございます。しかし,やはり一番難しいのは,何らプロテクションをデコードする機能のないCDプレーヤーや再生環境がこれだけ出回っている中で,それらの環境下でも有効なCDのプロテクト手段があるかどうか,というところが問題の根源であると認識しております。そういう面では,そのような技術が世の中にあるという知識を我々は持ち合わせていないという状況でございます。

【土肥主査】  ほかにございますか。大体予定しておる時間も来ておりますけれども,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 本日,ご発表をいただいた皆様方にあつくお礼申しあげます。ありがとうございました。それでは本日はこのくらいにしたいと存じます。前回と今回と2度ヒアリングを行わせていただきました。いただいたご意見については参考にさせていただき,今後本小委員会において議論を進めてまいりたいと思っております。
 それでは次回の予定につきまして事務局から連絡事項ございますか。

【壹貫田著作権課課長補佐】  本日は皆さまありがとうございました。次回の小委員会の日程につきましては決まり次第またご連絡させていただきたいと思います。以上でございます。

【土肥主査】  それでは第3回の法制問題小委員会を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。

── 了 ──

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