(平成23年第5回)議事録

1.日時

平成23年11月9日(水) 13:30 ~ 15:30

2.場所

グランドアーク半蔵門 3階 光の間

3 出席者

(委員) 上野,大渕,末吉,多賀谷,茶園,道垣内,土肥,中山,松田,村上,森田,山本(たかし)の各委員
(文化庁) 吉田文化庁次長,芝田文化庁長官官房審議官,永山著作権課長ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)国立国会図書館からの送信サービスに係る権利制限規定について
    2. (2)著作権等管理事業法の見直しについて
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1-1 国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定について(検討の概要) (224KB)
資料1-2 「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議『デジタル・ネットワーク 社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項』に係るまとめ」
(平成23年9月)に対する意見募集の結果概要
(456KB)
資料1-3 国立国会図書館における複写サービス等について (200KB)
資料2-1 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006に基づく著作権等管理事業法の見直しについて (288KB)
資料2-2 著作権等管理事業法に関する意見募集の結果概要 (236KB)

6 議事内容

【土肥主査】  それでは,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第5回を開催いたします。本日は,ご多忙の中ご出席をいただきまして,まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,特にご異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 それでは,事務局から,配付資料の確認をお願いいたします。

【鈴木著作物流通推進室室長補佐】  それでは,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第下半分に書いてございますが,まず資料1-1といたしまして,国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定について。前回の法制問題小委員会における検討の概要と,資料1-2が,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議で行いました意見募集の結果概要でございます。資料1-3,国会図書館における複写サービス等について。そして,資料2-1,経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006に基づく著作権等管理事業法の見直しについてでございます。資料2-2,管理事業法に関する意見募集の結果概要。配付資料は以上でございます。過不足等ございましたら,事務局に申しつけていただければと思います。

【土肥主査】  それでは,議事に入りますけれども,初めに議事の段取りについて確認しておきたいと存じます。本日の議事は,1,国立国会図書館からの送信サービスに係る権利制限規定について。2,著作権等管理事業法の見直しについて。3,その他。この3点となります。1につきましては,前回の本小委員会におきまして,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議で示されました,国会図書館による公共サービスのあり方について幅広くご意見をいただいたところでございますけれども,本日は,国立国会図書館からの送信サービスのあり方に係る個別の論点につきまして,いま一度ご議論をいただきたいと思っております。その後で,2につきましては,経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006に基づき,著作権等管理事業法の見直しが求められておるところから,事務局から見直しの経緯を含めてご報告をいただいた上で,委員の皆様からご意見をいただければと思っております。
 それでは,国立国会図書館からの送信サービスに係る権利制限規定につきまして,事務局から説明をお願いしたいと存じます。

【鈴木著作物流通推進室室長補佐】  それでは,説明をさせていただきたいと思います。まず先に,資料1-2と1-3について,概略を説明させていただきたいと思います。
 資料1-2でございますけれども,これは電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議におきまして取りまとめました,「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項」につきまして,9月26日から10月14日にかけまして意見募集を行いました。いただきました意見としましては,総数141通,59団体,個人が82件という形になっておるところでございます。
 この意見募集の結果につきまして,本日議論いただきます国会図書館からの送信サービスに係る権利制限規定についてで関連する部分について,概略ですけれども,ご紹介させていただきたいと思います。2ページ目の下半分のところからが,国会図書館が担うべき役割についての,国会図書館からの送信サービスについてでございます。国会図書館において電子化された資料の活用は当然であり,送信サービスの早期実現のための制度整備が必要であるといったご意見。推進すべしというご意見があったところでございますけれども,あわせまして,他方,送信データの利用方法や対象出版物に係る基準等,整備について関係者間における協議の結果を待った上で実施すべきであるといったご意見として,次のページでございます。3ページ目の一番上ですけれども,現状でも図書館間貸し出しなどの代替措置で対応しているといった部分もございますので,制度改正をしてまで送信サービスを実施すべきでないといったご意見などもあったところでございます。
 そして,国会図書館からの送信先についてのご意見です。各家庭までの送信につきましては,各家庭まで無償で送信を行うことが期待されており,そのための制度改正が急務であるといったご意見から,各家庭への配信は,出版社,著作者等の利益を侵害するといったご意見まであったところでございます。
 そして,国会図書館から図書館等への送信について,3ページ目の一番下のあたりのところでございますけれども,情報アクセスの地域間格差の解消,「知のアクセス」の向上を図るといった考え方については適切である。そして,大学図書館を送信サービスの対象とすることは適切であるといったご意見。そして,4ページ目でございますけれども,対象の図書館といたしましては,国民の情報アクセスポイントとして広く活用されている市立図書館についても,送信サービスの対象とすべし。さらにはアクティブ・ラーニングを実現することが望まれる学校図書館についても,送信サービスの対象とすべしというご意見があったところでございます。また,一般社団法人及び一般財団法人が設置する図書館の著作物の利用に関し,著作権を制限すべきかどうかは慎重に検討されるべきといったご意見などがあったところでございます。
 そして,送信データの利用方法の制限についてでございます。同時閲覧については,同時閲覧に特段の制限を設けないことは適切であるといったご意見が基本的にあったというところでございます。
 5ページ目をごらんください。プリントアウト等の複製についてです。これにつきましては,利便性の観点から,送信先におけるプリントアウトを認めるべきといったご意見があったことに対しまして,著作者等の権利保護にかんがみ,プリントアウト等の複製を認めないことが適当であるといったご意見。さらに,プリントアウトを認めないとした場合ということが前提であったはずですけれども,電子データの閲覧中に,画面上で国会図書館への複写申し込みが可能なシステムを構築すべしといったご意見があったところでございます。
 そして,対象出版物の限定に関する意見ですが,民間ビジネスを圧迫することがないことを留意した上で,明確にその範囲を定義すべしといったご意見があったところでございます。また,学術関連の出版物や公的機関の調査研究報告書のような,広く一般に活用されるべきものを優先的に対象とするという考えは適切であるというご意見。あとは,次のページ,6ページ目をごらんいただきたいと思います。送信サービスの対象出版物の限定に当たっては,出版物単位ではなく,著作物単位で判断すべきといったご意見などがあったところでございます。
 そして,6ページ目の中ごろです。著作権法上の対応についてで,対象出版物の除外につきましてです。対象出版物が改めて出版物として再発行された場合には,直ちに送信サービスの対象から除外することを可能とするような仕組みを構築すべきであり,権利者からの申し出を必要条件とするような仕組みは適当ではないといったご意見と,著作権者等の求めがあった場合に,送信サービスの対象から除外する方式の導入に当たっては,恣意的に送信サービスの対象から除外することを避けるため,一定の基準を設けるべきといったご意見があったところです。そして,著作者等への対価の支払いについてといったところですけれども,対象出版物が限定されており,著作者等の利益を不当に害する可能性が低いといったところから,対価を払う必要性はないといったご意見から,著作権法期間中である場合は,権利者に何らかの報酬が必要ではないかといったご意見があったところです。
 そして次のページ,7ページ目でございます。最後,その他ですけれども,利便性の向上を優先して,送信サービスにおける利用方法,対象出版物の範囲が拡大される可能性があり,その制限によって認められる範囲を条文上明らかにすべしといったご意見があったところでございます。意見募集を行った結果のご紹介は,以上でございます。
 そしてもう1点,資料1-3でございますけれども,現在,国立国会図書館におきまして,複写サービスですとか所蔵資料の図書館への貸与,貸し出しが行われております。その概要について整理したものでございますので,その内容についてもご紹介させていただきたいと思います。
 国会図書館における複写サービスにつきましては,現状の著作権法第31条第1項に基づき行われておるといったものでございまして,調査研究目的のために,求めに応じて1人につき著作物の一部分を複製するということを原則としておりまして,来館してカウンターに申し込むという形態と,来館せずに遠隔地から,例えば自宅,もしくは公立図書館などを経由して申し込むという方法がございます。来館せずに複写を申し込む場合ですけれども,利用者登録をした利用者につきましては,インターネットで国会図書館のホームページなどを通じて,直接来館せずに申し込むことができるということが行われておるところです。費用につきましては,複写料金に加えまして,送料が利用者の負担となるということです。そして,インターネットなどで申し込んだ場合,申し込み後5日程度で発送がなされるという形で行われておるところでございます。
 次のページをごらんいただきたいと思います。次のページが,国会図書館の資料を他の図書館で貸し出すサービスについてです。対象機関といたしましては,大学や高等専門学校,短期大学の図書館ですとか,国,もしくは公立の調査研究機関,図書館法による図書館,議会図書館などが対象となっております。そして,貸し出しの対象資料といたしましては,昭和23年以降に受け入れた和洋の図書資料が範囲となっておりますが,1から7に挙げておりますような逐次刊行物ですとか劣化資料,損耗の著しい資料や,非図書形態の資料,さらには容易に入手することができると判断される資料については,貸し出しの対象からは除外しておるというところでございます。貸し出し期間は,郵送も含めて1カ月以内。貸し出した資料の利用方法ですが,借り受けた利用館の閲覧室の中での閲覧のみという形になっておるというところでございます。かかる経費につきましては,借り受け館への発送は国会図書館が負担し,国会図書館への返却については,借り受け館が負担するという仕組みとなっております。
 最後,3ページ目にございますのは,今の国会図書館から資料を借り受けた図書館における売り受けた資料の複製でございます。これは著作権制度上のというものではなくて,関係者間の合意に基づき実施されておるものでございます。貸し出し対象の承認を受けた図書館であって,なおかつさらに国会図書館から複写,複製を行うことについて承認を受けた図書館が行うことが認められておるというところでございます。また,国会図書館が指定した,可能とした資料のみ複製を行うことができるということ。さらに,資料の貸し出しを要求した利用者の求めがあった場合に限り,複写が認められるということ。さらに複写を行った場合は,国会図書館にその記録を提出するということが求められておるというところです。以上が,資料1-3でございます。
 資料1-1に戻りまして,本日ご議論いただきたいものでございます。前回は,電子書籍における検討会議で取りまとめましたものにつきまして全般的にご議論いただきましたが,やはり直接の制度改正に関連する内容といたしまして,国会図書館からの送信サービスにおける権利制限規定について,前回のご意見などを踏まえて整理をさせていただきまた。内容を説明させていただきます。
 まず,第1ページ目でございます。送信サービスの実施についてです。これは法制問題小委員会におきましては,前回のご議論を踏まえまして,国会図書館からの送信サービスの実施に当たっては,以下の点について合意がなされたという形で整理をさせていただいております。これにつきましては,デジタル化資料の活用の一方策として,送信サービスを実施することは適当であると考えられるという点。そして,公立図書館まで送信を早期に実施するため,著作者等の利益を不当に害することにならないこと,電子書籍市場の形成,発展の阻害要因にならないことに対して十分配慮すること。利用方法について,一定の条件を設ける場合には,著作者の許諾を得ることなく,公立図書館等へ送信するといったことについて,著作権法上明確にすることが適当であるという形で合意がなされたという形で整理をさせていただきました。
 そして,2ページ目以降でございます。送信サービスの具体的なあり方についてです。電子書籍の検討会議におきましては,国会図書館からの送信先,送信されたデータの利用方法,そして送信サービスの対象出版物について,それぞれ整理をしているところでございます。その大きな3つの論点につきましての内容といたしましては,検討会議における検討結果,そして,前回法制問題小委員会において出されました主な意見として整理をさせていただいております。
 国会図書館からの送信先についてでございます。著作権法31条の適用がある図書館等の定義等を参照した上で整理することが必要であるという検討会議の検討結果に対しまして,前回の主なご意見といたしましては,公立図書館に限定せず,大学図書館のような図書館も含むべきではないか。そして,31条の適用がある図書館等になる場合,情報アクセスの地域間格差を解消するという観点から,不十分な点はないかどうかというご意見があったところです。
 送信データの利用方法についてでございます。デジタル化資料の同時閲覧につきましては,出版物の所蔵冊数を超える同時閲覧に対する制限をしないことが適当であるということ。そして,プリントアウト等の複製についてですけれども,送信サービスの実施が電子書籍資料の形成,発展の阻害要因にならないことを配慮する必要があるため,今後の市場動向,送信サービスの利用状況を見極める必要がある。そういった観点から,プリントアウト後の複製については,さらに無制限に複製物が作成される事態につながる可能性があり,当面は認めないとすることが適当であるということ。そして,3ページ目の一番上でございますが,著作者,出版社の利益を不当に害することのない点を留意するという前提を踏まえると,複製を行う場合,有償提供による方策や体制を整備することが必要であるといったところが,検討会議の検討結果でございました。
 これに対しまして,前回の主なご意見といたしましてです。同時閲覧につきましては,特に制限を設けないとすることは適当であるといったご意見。プリントアウト等につきましては,利便性の観点や,出版物が入手困難なものであるといったことに限定するということであれば,31条1項1号の同等の範囲であれば認めるべきではないか。そして,認めないとした場合は,情報アクセスに係る地域間格差が解消されない部分が残るのではないかといったご意見。そして,他方,地域の図書館等で国会図書館に行かなくても見られるようになるということは,一定程度の利便性の向上が図られると考えられるといったこと。この点,国会図書館においては,複製物の提供については,次の段階の検討課題とし,まずは関係者の合意に基づく範囲でのサービスを目指すことが適当ではないかといったご意見が出されたところでございます。
 次に,対象出版物でございます。検討会議における検討結果といたしましては,相当期間重版していないものであるとか,電子書籍として配信されていないものなど,市場における入手が困難な出版物とすることが適当である。そして,その考え方といたしましては,31条1項3号に規定されている,「絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料」の考え方を参照した上で整理するということ。さらには,出版物の著作権者等の求めがあった場合には,対象から除外する方式を導入することも考えられ,その場合には,要件,手続について整理することが必要であるとまとめられたところです。
 そして,4ページ目の上の部分でございます。これらに対しまして,前回のご意見といたしましては,団体間の協議により基準を設けた上で,その基準に基づき,一定の範囲にあるものを提供していくということが適当ではないかといったご意見として,権利者からの求めに応じ,対象出版物から除外する要件につきましても,同様に団体間の協議により一定の範囲が定められていることが適当ではないかといったご意見をいただいたところでございます。また,それ以外のその他のご意見といたしましては,海外のアクセスにつきまして留意すべき点があるといった点。さらには,ドイツなどの例をご紹介いただいた上で,海外の状況も踏まえた上で検討していくことが重要であるといったご意見をいただいたところでございます。以上が,資料1-1の内容でございました。長くなって申しわけありませんでした。資料の説明は以上でございます。

【土肥主査】    ありがとうございました。それでは,早速意見の交換に移りたいと思います。意見の交換ですけれども,今回資料の1-1に基づいて意見の交換をしたいと思いますけれども,2ページ目にある送信サービスの具体的なあり方についてご議論をいただきたい,意見をいただきたい。その場合に,大きく分けて3つあろうかと思います。2ページの(1)の国会図書館からの送信先の問題ですね。送信先をどの範囲にするか,これが1番目。それから,2番目,(2)の送信データの利用方法。どこまで認めるのか。特に複製の問題が出てきたと思いますけれども,その問題。それから,3ページ目の送信サービスの対象の出版物をどの範囲にするか。この3つ大きくあろうかと思いますので,これを一つ一つ議論いただければと思います。
 まず,対象先からいきたいと思うんですけれども,対象先についてのご質問でもご意見でも結構でございますけれども,お出しいただければと存じます。松田委員どうぞ。

【松田委員】   前回,私は対象先につきましては,公立図書館というのではなくて,大学も含めた公共的なサービスを提供していて,既に著作権法上一定の権限を認められている範囲内でいいのではないかという趣旨のことを言いました。これは他の論点も結局同じかもしれませんが,今,ここで審議すべきことは何かというのは,この改正は,現段階で私はやるべきだとはもちろん思っておりますけれども,やはり過渡的な状況であるということも考えなければならないと私は思っています。既に協議会における報告書もその趣旨で書かれておりまして,将来的には一般家庭まで含めて閲覧ができるような状況にすることが,日本の知的データベース,アーカイブである国会図書館の有用性をもっと高め,公共図書館の有用性をもっと高めることになる。
 しかし,それは一方の利益ですから,もう一方の利益としては,やっぱり権利者――この権利者の中には,現実の問題としては出版社は入れるべきだと思っておりますが,出版社を含めた権利者側の利益との調整を,どこかでしなければならなくなるわけでありまして,そこを出版界に影響を与えないような状況までどこまでできるだろうかということを,この段階で考えるべきではないかなというふうに思っているからであります。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。
 前回の法制小委で,この点あまり大きく議論にはなっていなかったんじゃないかなと思います。つまり,「公共図書館等」という「等」の中に,大学図書館も含めるという議論であったかと承知をしております。したがいまして,この対象先につきましては,送信先につきましては,そういう絞る方向ではなくて,そういうものを入れる方向でご検討いただければいいのではないかなと思うんですけれども,何かご異議ございますか。1番はよろしゅうございますか。(1)はよろしゅうございますね。わかりました。
 それでは,(2)の利用方法。これはかなり議論があるんだろうと思うんですけれども,どうぞご質問も含めてお出しいただければと思います。今回は,国会図書館における取り扱い等も紹介をしていただいておるところでございます。前回は,どちらかと言うと国会図書館に行けば複製ができるというふうな議論だったかなと思いますけれども,行かなくてもインターネットでの利用者登録による申込が,運用で行われているようでございます。どうぞ,ご遠慮なく。少なくとも,検討会議と本法制小委が少し意見を異にするとすればここでございますので,どうぞぜひご意見いただければというふうに思います。
 確かに対象をどこまで認めるかということにもつながるんだろうとは思いますけれども,どういう文献が対象になるのかという問題も入ろうかと思いますが,それが広くなればなるほど,当然当事者間にいろいろ許諾に基づく取り決めもできるのかもしれませんが,前回の説明ですと,この対象になる文献等は制限されるという方向で,つまり市場性の文献に制限するという説明であったかと思います。そういう場合に,なかなか関係者間の,つまり,権利者との間の合意ができにくいのではないかなと思うところなんですけれども。どうぞ,上野委員。

【上野委員】  検討会議において,関係者の方々がご苦労なさって合意されたということですから,あまり軽々にコメントできるものではないことは承知しておりますけれども,今回ご提案のように,送信先におけるプリントアウトができないということになりますと,利用者としては,送信先の図書館で資料を閲覧したあと,改めて国会図書館に対して複写の依頼を請求するしかありません。もちろん,現在ではインターネットを通じて複写依頼することが可能ですし,先ほどご報告があった意見募集の結果にも,データ閲覧中に複写申込ができるようなシステムを構築すべきというご意見もありまして,これも利用者の便宜を図るためにはよいアイデアだと思います。
 ただ,たとえボタンを押せば閲覧中の資料が郵送されてくるシステムを構築したといたしましても,実際に郵送されてくるのは5日ぐらいかかるというお話でありましたし,手間をかければその複写物が得られるといえばそうなのですが,送信先におけるプリントアウトが技術的には十分可能であることからすれば,これは何かわざわざ手間をかけさせているというようにも見えなくはないように思うわけです。
 もちろん今回の検討結果は,第1段階の合意ということで,いずれ次の段階がやってくるということなのだろうとは思います。けれども,こういうものは,私の限られた経験の中で考えましても,一たん決まりますとなかなかすぐに変えようという話にはならないように思います。ですので,本当にあるべき姿はどういうものなのかをはじめから模索することも重要ではないかと考える次第であります。
 もちろん,今回のご提案で送信先におけるプリントアウトを認めない理由として示されている「送信先において無制限に複製物が作成される事態につながる可能性がある」という点はたしかに重要かと思われます。けれども,例えば紙のプリントアウトであればデジタルとは状況が異なるでしょうし,紙の複写物の提供という意味では,インターネットで注文して複写物を郵送するというサービスが現在すでに行われているわけですから,無制限に複製物が作成される事態につながる可能性というのがあるとすれば,程度の差こそあれ,今だってないとは言えないのではないかと思うわけです。
 以上のことから,送信先におけるプリントアウトを認めない点については,なお検討してみる余地があるのではないかとわたくしは考えております。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。多賀谷委員,どうぞ。

【多賀谷委員】  この報告書は,送信サービスを複製しないで利用させるというときに,どういう形態を想定したかというのは,多分そこまで書いていない。その場合,端末で見ることになるわけでしょうけれども,その端末が地方図書館等にある1台とか2台の端末で,パソコンの画面のような形で見る形になるのかというイメージで持っていると,それだと不便だという感じでしょうけれども,実際には,おそらくキンドルとか,そういった電子ブックみたいな形態で,そこで見ると。今のところ,まだ複製した紙に比べると見にくいが,次第にそれは見やすくなってくる。そうすると,それを複製権との関係でどう考えていくのかと。そういう感じの利用の仕方に多分なると思うんですよね。そういうことも考慮して,複製権まで認めるかどうかということは考えるべきだろうと。将来の利用形態ということを考えておく必要があるだろうと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。茶園委員,どうぞ。

【茶園委員】  先ほど上野委員がおっしゃったことは,基本的に私も賛成です。今,国会図書館では,インターネットでの申し込みも受け付けていただいているということですが,そうであれば,送信先におけるプリントアウトを認めないことが,それによって四,五日の遅れが生じることになりますが,どういう意味を持つことになるのでしょうか。2ページの下のほうでは,検討会議でも議論いただいて,送信先で無制限な複製物が作成されることにつながる可能性があるとされています。もちろん,このような可能性が高ければ,プリントアウトは認めるべきではないということになるのでしょうが,送信先は,公立図書館,あるいは大学図書館等の一定のものに限るということですから,果たしてこういう事態が起こる可能性がどこまであるのか疑問に思います。
 この可能性が少なくなるというか,ゼロに近くなるということであれば,特にこの点は考える必要がないのではないかと思いますし,この無制限の複製の可能性を除いては,プリントアウトを認めることが著作権者の利益に悪影響を及ぼすということがあるのかを考えますと,それはあまりないように思います。もしあるのであれば,考える必要がありますけれども,あまりないということであれば,四,五日の遅れの受け止め方は様々でしょうが,閲覧して見て,それをさらに研究したいと思っても,四,五日待てと言われることはなかなかつらいものがあると思いますので,先ほど言いましたように,特に弊害が大きくないということであれば,プリントアウトも認めることが適当ではないかと思います。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。では。

【中山委員】  私も,上野委員,茶園委員と同じでして,全部禁止してしまうというなら,いいか悪いかは別として効果はあると思いますが,国会図書館に申し込めば現在でもできます。つまり,5日間遅らせかつ手間をかけさせるというのは,何か嫌がらせをして,なるべくコピーさせないようにするという効果ぐらいしかないのではないかと思います。結局,同じものが出る。おまけに現在のコピー,複写の状況を見ると,数日間待つということは,常識では考えられないわけですね。手書きで書いたほうが早いぐらいですね。したがって,私もこれはやっぱりデジタル化するのではなくて,紙にコピーをしていいということであるならば,認めない理由はないと思います。
 もしこれ,5日間程度待て,などということをやると,おそらくユーザからものすごいブーイングが起こると思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。前回の法制小委でも,無制限な複製を考えておられたご意見は,多分なかったんだろうと思うんですね。31条1項の範囲ということかなと,私は認識しておりましたけれども。多賀谷委員,どうぞ。

【多賀谷委員】  これは最初の図書館の範囲をどの程度に広げるかという話ともかかわってくるんですけれども,もし地方図書館以外のいろいろな図書館に拡げると,そこでどういう形で複製がされるかということを十分管理できるかどうかの話だと思うんです。多分,そうすると全部コピーするというような形が出てくる可能性が多分あると思うんです。
 それで,国会図書館の場合,5日間程度かかるということも,ある程度管理しているわけです。先ほど言った話とつながるんですけれども,オンラインでもって国会図書館と図書館がつながっていれば,問題は要するに,利用者はどの範囲をコピーしたかということを把握できることが必要なんですね。それが把握できれば,複製を広げるのは当然だろうと思うんですけれども,そうではなくて,先でどういうふうにコピーされたかわからないというのだったらそれは問題です。図書館の管理体制がどうなっているかということとの関係で,もしちゃんとした管理をされているんだったら,複写できるようにするんだったら危険はないと思いますので,それは賛成いたします。

【土肥主査】  ありがとうございました。実施する場合には,多賀谷委員ご指摘のような,リスクというのは十分考慮していただくということかと思います。山本委員,どうぞ。

【山本(た)委員】  プリントアウトの点なんですが,プリントアウトするというのが,今前提になっている,相当期間重版していないものとかを前提に議論するのであれば,プリントアウトありというお話はいいとは思うんですけれども,あくまでもそれが前提であって,その前提が変わる場合には,プリントアウトありということには必ずもならないということだけ,ちょっと指摘させていただきたいと思います。
 といいますのは,いろいろな国会図書館から他の図書館に送信サービスがなされて,その先で,最大資料の半分まで1回でコピーできるということであれば,2回コピー依頼すれば全部とれるということになると,著作物の市場に対するインパクトというのは結構大きなものになると思います。今はインターネットサービスで5日ぐらいかかるということで,事実上その影響は抑えられているのかもわかりませんけれども,これが対象が,今,前提にしているような相当期間重版等がないというものであれば,現に市場に出回っている著作物の販売機会を奪うというような問題はないんだとは思うんですけれども,それが崩れて,現に販売されているものになっちゃったら,これはかなりインパクトが出てくることになるので,あくまでもそういう前提だということだけ述べさせていただきます。

【土肥主査】  委員ご指摘のところは,(3)のところで当然議論にはなるわけですけれども,まさにここでどの程度のプリントアウトができるかというのは,山本委員がご指摘のそういう状況を踏まえてということと承知をしております。また(3)で議論いただきたいと思っております。
 ほかにございますか。森田委員。

【森田委員】  私は前回欠席していたので,議論の前提を誤解しているといけないので確認させていただきたいと思いますが,前回,31条1項第1号と同等の範囲であれば認めるべきではないかという意見があったという趣旨は,もし何も規定を置かないと,31条1項1号の適用はないという前提なのでしょうか。つまり,国立国会図書館の送信サービスなるものの法的な構成というのは,送信サービスの利用者は,国立国会図書館を直接利用しているという位置づけなのでしょうか。別に国立図書館まで行かなくても,遠隔地から国立国会図書館のデータを閲覧したり,複製したりすることができるという新たなサービスという位置づけで行われるものであって,送信先の図書館を利用しているということではないという前提で考えればよろしいわけですね。

【土肥主査】  そうです。
 ほかにご意見ございますでしょうか。国会図書館の資料ということが,今回の127億のそういう国費でもって,非常にたくさんのコンテンツができ上がったと。それを東京の,あるいは東京,大阪の市民だけではなくて,国税ですので,北から南まであまねくその利益を受けるということは十二分にあろうかと思います。
 よろしゅうございますかね,2番目。3番目,先ほど山本委員がおっしゃっていただいておる,対象出版物についてでございますけれども,これも実際に,プリントアウトを認めるということになりますと,慎重に考えていただくということが必要かと思います。一応絶版その他,市場性のないものを考えておりますけれども,オプトアウトも考えておりますけれども,具体にどういう形で動かしていくのかということになると,かなり難しくなるんじゃないかと思いますので,この辺,ご質問及びご意見ございましたら,ぜひお出しいただければと存じます。はい,村上委員,お願いします。

【村上委員】  定義として,市場における入手が困難な出版物と書いて,絶版その他,準ずる理由によりと書いています。それで先ほどの議論でここは,狭い範囲に制限がかかるならば,当然先ほどの議論でプリントアウトをして当然だろうという気がするもので,逆にこれはそんなに要件を定義するというか,実際に実務上取り扱う場合に非常に難しい概念というか,何か人によって判断が分かれるというような感じの概念になるのか。むしろだれが見ても,絶版その他とぱっとわかるという,そういう概念でとらえていいのか,著作権の世界ではどんな感じで考えられているのでしょうか。

【土肥主査】  これはどうですかね。事務局にお答え頂いたほうがいいですね,それとも。事務局,いかがでしょうか。

【鈴木著作物流通推進室室長補佐】  絶版を法律上どう定義するかというのはなかなか難しいものかと思いますが,実務上の扱いとして,例えば,さまざまな書店ですとか出版社が刊行している出版物のデータベースをインターネットなどで公開をしております。ですから,一点一点でチェックをするというのであれば,そういったさまざまな出版情報のデータベースで確認した上で,そのタイトルが在庫あり,もしくは出版されていないものであるかどうかという形で判断することは可能かと思います。ですから,概念的なものとしましては,例えば,購入することが極めて困難,つまり,本屋さんに並んでいないとか,通信販売などで申し込んでも在庫がないという状況はあるかと思います。ですから,そういうような形で,具体的には判断されるものかと考えております。

【土肥主査】  じゃよろしいですか。山中さんはよろしいですね。補足はいいですか。
 それでは,どうぞ,お願いします。

【松田委員】  規定が31条1項3号と同じになるかどうかは別としても,もし同じような規定を設けるとしても,この3号は,1つの図書館が他の図書館にかかる入手困難な図書資料だよねということを主張して,そして,個別に,ある意味では1冊ずつ検討して送ってもらうということをするわけでして,その段階では,図書館同士で,この要件を吟味することが当然できるわけですね。ところが,今度同じような情報がもし入ったとして,どこが検討するかということになると,1冊ずつではなくて,国会図書館がかなりまとめて検討して,この要件に当てはまるから,公共図書館等に閲覧その他のことで送ることを可としようかという判断をしなければならない。言ってみれば,個別的事案ごとに1冊ずつ検討するということではなくなるんだということが,大きな違いだろうと私は思います。
 そうすると,私は実務的には,国会図書館が1つずつ,1冊ずつ検討していって,そのデータに何かフラグを立てて,絶版その他の要件だというふうにやるのは,実際上は無理なのではないかなと,私は思っています。そうなると,これはどうなるかというと,出版界,特に書協と国会図書館が,これを運営する一定の実務的なルールを形成して,そして,可とした上で,その上でなおかつここでは除外する方式と書いてありますが,オプトアウトの方式を定めて,そして,それを権利者等の権利の担保として認めるから,これでいいのではないかという実務に定着していくのではないかと思うわけです。
 そういうことを国会図書館と書協等とが運営がうまくいっている限りにおいては,私は,それでいいのではないかなと思っているわけです。個別的にどうしても絶版その他の入手困難なという要件について疑義がある場合には,権利者ないしは,これは出版社も含めるべきなのかもしれませんが,いわゆる除外方式によって,実質的権利を担保するというところまで著作権法が考えないと,ある意味では包括的にデジタルコンテンツ流通を進めていくというような制度はできないのではないかと思っています。そういう点で,私は,3号同等の規定を設けることもやむを得ないし,実務的には今言った方法もやむを得ないのではないかという認識を持っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。それでは,中山委員,お願いします。

【中山委員】  絶版その他,これに準ずるという話ですけれども,実は絶版というのはほとんどないらしいですね。つまり,出版者が絶版にしますというと著者が怒るから,在庫がありませんということにしているのに過ぎないと。大半の本が,形の上では絶版ではなくて,在庫がありませんということのようです。この問題は,デジタルができてから出たというわけではなく,現在でも国会図書館がやっているのと同じことをやるわけですね。したがって,問題は,今生じたわけではなくて従来からあって,そこら辺は今,松田委員がおっしゃったような方法で,適宜やっていくしかないのではないかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかに。

【村上委員】  よろしいですか。今の中山委員の,なかなか国会図書館が自分の判断で決めるのは難しいし,それでもしそこに任せた場合には,絶版というのは実際にはない話になって,かなり広いものになる可能性があるから,一定の関係団体間で協議して歯どめをかけようという趣旨だという形で受け取ってよろしいでしょうか。

【中山委員】  その前に,国会図書館で今,どういう判断をしているのかということを,まず聞いてみる必要があると思いますし,あるいは,国会図書館以外でも,全国の図書館でこれをやっているわけです。公立以外の財団の図書館とか何とか,図書館法上の図書館は多数あるわけですが,みんなやっているわけですね。それをどうやっているかということが,まず問題になってくると思います。
 おそらく私の感じでは,全国の図書館よりは国会図書館はかなりきちんとやっているのではないかという気はいたしますけれども,正確には,そのことを一度国会図書館に問い合わせる必要があるのではないかと思います。

【土肥主査】  ただこれ,個々の図書館というよりも,国会図書館が送信サービスをして,送信を受けた個々の公共図書館等で閲覧は当然できるんだけれども,当然それと同時に,3号,1号の範囲,例えば1号の範囲で複製ができるという,一致している関係が必要なんじゃないんでしょうかね。

【中山委員】  そこら辺のシステムはわかりませんけれども,おそらくそれは国会図書館のほうでまず判断をして,他の図書館はそれに従うのではないかと思います。

【土肥主査】  そうですね。

【中山委員】  そうでないと,なかなか実際は動かないだろう。それはこれからの細かい決めの問題だろうとは思います。

【土肥主査】  つまり,国会図書館のほうで送信サービスをするということが決定できるわけで,そこが主体になって,この3号の範囲というものも決めてもらわないと,そのシステムが動かないですよね。

【中山委員】  そうです。国会図書館が3号でやっているということで送信しているわけですから,おそらくそ他の図書館は,これは国会図書館がそう決めたんだからいいだろうというふうな判断をするのではないかと思いますので,まず国会図書館が問題になるだろうと思います。

【土肥主査】  大渕委員,どうぞ。

【大渕主査代理】  先ほどのプリントアウトの論点というのも,どなたかご指摘されましたとおり,この対象範囲の点と非常に深く連関していると思います。そして,絶版のイメージがかなり人によって違っていているように感じます。本当の絶版というのも変なのですが,そのような狭い意味での絶版なのか,最近あまり店頭に出なくなったというような広い意味での絶版かで,権利者に与える影響が違ってくると思われます。そこで,絶版というのがどのような意味での話なのかという点と,それをだれが判断するのかという点についての,大体のイメージについては,固めておかないと,結局同床異夢になって,ある人は広いものと思い,ある人は狭いものと思って,あけてみたら全然違った話になっていたということになってくるので,法の趣旨なり,現行のプラクティスがどうなっているかということをみておく必要があると思います。
 また,今度は,配信という形で全然違ったことになるので,単なる抽象論ではなくて,実際運営していく際にどうなっていくのかという点のシミュレーションのようなことをやる必要があり,それが,先ほどのプリントアウトのところにも関係してくるかと思います。今までどうやっていたかという点と,それから,今後行うとしたらどういうふうになっていくのかという点については,もう少し調べていただいて,資料を出していただいた上で検討したほうが良いと思われます。抽象論だけやっていても,進まないし,いろいろ後で思いがけないようなことが起きそうな気がいたします。

【土肥主査】  これ,オプトアウトがあるわけで,オプトアウトの仕組みをつくりさえすれば,落とすことはできるわけですよね,いつでも。だから,今回の検討会議の趣旨を十分尊重して,動かしていくということの中から,合理的な解を見つけていくしかないんだろうと思います。一たん固定したものを動かさないのであれば,最初に十分考えておかないといけないわけですけれども,例えば,複数の著者で書かれたものであるとか,編集物であるとか,つまり,革新,変更のケースとか,いろいろあるような気がするんですよね。つまり,単なる市場性の問題だけではなくて,基本的に市場性がないということは,昔書いたものなんかをすべて入っていくと,これは今出されては困るというようなものも,場合によってはあるのではないかなということも考えていますので,市場性の要件だけではなくて,またほかの要素も入れる必要もあろうし,それから,オプトアウトの仕組みというのは,十分最初のところで考えておくことは大事なんじゃないかと思うんですが。
 どうぞ。

【土肥主査】  これ,オプトアウトがあるわけで,オプトアウトの仕組みをつくりさえすれば,落とすことはできるわけですよね,いつでも。だから,今回の検討会議の趣旨を十分尊重して,動かしていくということの中から,合理的な解を見つけていくしかないんだろうと思います。一たん固定したものを動かさないのであれば,最初に十分考えておかないといけないわけですけれども,例えば,複数の著者で書かれたものであるとか,編集物であるとか,つまり,確信不適合のケースとか,いろいろあるような気がするんですよね。つまり,単なる市場性の問題だけではなくて,基本的に市場性がないということは,昔書いたものなんかをすべて入っていくと,これは今出されては困るというようなものも,場合によってはあるのではないかなということも考えていますので,市場性の要件だけではなくて,またほかの要素も入れる必要もあろうし,それから,オプトアウトの仕組みというのは,十分最初のところで考えておくことは大事なんじゃないかと思うんですが。
 どうぞ。

【道垣内委員】  今,おまとめになったのでそれでいいのかもしれませんけれども,一言申し上げます。31条の絶版というのは,今,その資料を使いたのだが,市場にもないので,遠くの図書館から送ってもらうという状況だと思います。したがって,それほど作者の権利を侵害しないと思います。しかし,送信されたもののプリントアウトまで可能にしてしまうと,入手困難という段階ものまで絶版になってしまうだろうと思います。市場性を奪うのではないかということです。紙媒体での出版ももはやできなくなる。オプトアウトして,やっぱり出版するなんてことは,まあちょっと考えられないように思います。つまり,もう絶版にしてしまうという判断になるんじゃないかと思います。その点で,31条とは違うんじゃないかと思います。したがって,絶版という要件は置かない方がいいかもしれないと思います。

【土肥主査】  私の個人的な感想で言うと,プリントアウトされるペーパーの,プリンターから出るA4の紙に印刷されてくるわけでしょうけれども,それと実際に絶版の状態が解消して,市場を介して本の形をとるのとは全く価値が違うように思われるのです。私のように古い人間からすると,情報よりもそっちのほうに価値があるというわけじゃないんですが,本になるのと,プリントアウトで情報を消耗的に利用するような場合と,かなり違うんじゃないかという印象があるんですけれども,いかがでしょうかね。どうぞ。

【中山委員】  私もそう思いまして,道垣内委員のおっしゃったのは,理念的にはあり得るかもしれませんけれども,おそらく現実としてはそれほどは無いと思います。それに,絶版の定義などはする必要ないので,絶版その他これに準ずる理由とありますから,絶版らしきものはこれに入るわけです。一般に手に入らないという点が重要で,絶版はその一事例にすぎません。その判断を国会図書館が一体どうしているのかということを聞いて,それがおかしかったらまたここで議論するということになると思います。
 それ仮にここでだめだと言ってみても,国会図書館に行くと,あるいはネットで注文する,あるいは地元の図書館に行って,国会図書館の本を地元に借り出してそこでコピーをするという方法もあります。いろいろな方法で時間さえかければ,いずれはプリントアウトされてしまいます。したがって,この場合に関してだけは,デジタル化だからどうこうということは,あまり意味がないと思います。デジタル化になったからといって,この範囲である限りは,それほど大きな影響は,実際上はないのではないかと思います。

【土肥主査】  道垣内委員がおっしゃったような状態が起きるということがないような仕組みという,そういうことを考えておるんだと思うんです。はい,どうぞ。

【大渕主査代理】  この点は要するに,今出てきましたけれども,情報だけ得られればいいというユーザーもいれば,むしろユーザーというよりは権利者のほうから言えば,やはり印刷体として市場に出てほしいというタイプの人も多いのではないかと思います。先ほどご指摘があったのは,絶版になりかかっているというのも変なのですけれども,あまり市場で売れなくなってきているものを,これで入手できるようになったらほとんど売れなくなって,今までだったらもう1回ぐらい印刷して市場に出してくれたのに,もうこれ以上売れないからそこで打ちどめということになると,権利者にとってはあまりハッピーな状態ではなかろうかと思います。そこで,その点も含めて,やってみるとどういう影響があるかという点は検討しておく必要があろうかと思います。このように,単なる経済的利益だけでもないような気がいたしますので,その問題が1点であります。
 それから,もう一点としては,前回,どなたかがご指摘になって,ドイツでは有償で云々というのがありました。ここでは今まではもっぱら無償での話だけを対象にして,それは1つの方法だと思うのですが,私としては,いろいろ前広に並べてみて,対象範囲の点とも関係してくるんですけれども,ある程度の合理的なお金はとった上で一定のバランスを図って,一定のシステムを組むのと,それから,そんなものはなしで,無償で組んでいくのとどっちがいいのかというあたりも併せて検討すべきと思われます。また,前に,どこかで聞いたことがあって,これはどこの国だったか忘れましたけれども,公立図書館等に行くと,民間業者がプリンターを置かせてもらっていて,見たらそのままお金を払ったら,プリントアウトができるという例が紹介されていました。それだったら,おそらく契約に基づいてプリントアウトするからあまり問題もないのではないか思います。実際にはどの程度日本で実行可能性があるのかどうかよくわかりませんけれども,このような可能性を含めて,いろいろと検討した上で,将来的にはこうである,段階的には現時点ではこうであるといった形でいろいろ検討できのではないかと思います。
 そのような意味では,今まではわりと抽象論的なところが多かったのですが,ある程度有償のものを含めて,どういう形態があり得るのかというのは,もう少し前広に検討していいのではないかと感じております。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。はい,上野委員,どうぞ。

【上野委員】  対象出版物の限定につきましては,入手困難という概念が緩やかに解釈されるようになると,その対象が広くなってしまい,その結果,プリントアウトを認めてもいいのかということが問題になるというのは確かだろうと思います。
 ただ,現状において,すでに国会図書館が行っている複写郵送サービスの対象となる出版物は,市場で入手困難というものだけではなく,市場で入手容易なものだって含まれております。ですから,例えば,どの大学図書館にも所蔵されているメジャーな雑誌の論文が読みたくなったけれども,研究室から1階の図書館まで複製しに行くのが面倒くさければ,ネットを通じて国会図書館に複写郵送依頼するというような利用の仕方もできます。多少の時間と費用がかかってもよい場合であれば,これでコピーに行く手間を省くことができますので便利です。このように,現状の複写郵送サービスの対象がすでに広いことからしますと,今回問題となっている送信サービスの対象につきましても,市場における入手が困難なものに限定するのが本当に妥当なのだろうかと思われる次第であります。
 このように申し上げると,現状の複写郵送サービスの方法や対象が広すぎるのだというご意見もあるかも知れません。ただ問題は,現状の複写郵送サービスの方法や対象が広いという点にあるのではなく,大渕先生も先ほどご指摘になったように,国会図書館による現状の複写郵送サービスが,著作権者には完全に無報酬といいましょうか,手数料などの実費のみで行われているという点にあるのではないかと思うわけです。ここにも日本法のオール・オア・ナッシング的なところがあらわれているように思います。
 そうしますと,諸外国に例が見られるように,図書館における複製や送信サービスを権利制限によって広く許容しつつも,他方では報酬請求権の対象にするという選択肢も,わが国の立法論としてあり得るのではないかとわたしは思うのです。
 もちろん,このことをすぐに実現するのは無理でしょうし,もしそのような制度になりますと,報酬をどうやって徴収・分配するのかということが問題として生じるのは言うまでもないことなのですけれども,長い目で見るならばこうしたことはわが国がいずれ真剣に検討すべき重要な課題ではないかとわたくしは考えている次第であります。
 なお,オプトアウトにつきましては,そのような「方式を導入することも考えられ」るに過ぎないものとされているのだとは思いますけれども,オプトアウトする可能性をあまり広く認めてしまいますと,例えば,うちの出版物は全部オプトアウトしてくれというような主張を広く認めることになってしまいはしないか危惧するところであります。

【土肥主査】  ありがとうございました。中山委員,どうぞ。

【中山委員】  長期的に見ますと,大渕委員や上野委員の意見に私も大賛成でして,私はすべての文献を家庭まで送られることが望ましいと思います。しかし,しかるべき金額の見返りを権利者,あるいは権利者側への還流をするというシステムができ上がれば,それがもちろん一番いいと思うのですけれども,おそらくそれができ上がるまでの間にも,今,やらなければならないのはこれだということで提示されているのではないかと思うんです。
 したがって,長いスパンの問題はもちろん今後詰めていかなければいけないんですけれども,短いスパンでは,私はやはりこれでいいんじゃないかと思います。プリントアウトは,31条に従ったプリントアウトを認めてもいいのではないかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。茶園委員,どうぞ。

【茶園委員】  私は先ほど,プリントアウトを認めたほうがよいと申しましたが,送信サービスの対象につきましては,現在国会図書館では,所蔵されているものすべてが当然閲覧できますし,コピーもできるわけですが,送信されて閲覧するだけで需要が満たされるようなもの,小説などではそのようなものが多いように思いますが,そのようなものについては,閲覧をするということで需要が減るということもあり得ると思います。特に電子書籍で配信されているものについては,大きな打撃を受ける可能性があるのではないかと思います。そして,すべての新刊書を送信できるとすると,おそらくは地方の図書館は,あまり本を買わないことになるのではないかと思います。国会図書館からの送信を受ければ済むわけですから。ですから,出版という著作物の利用形態に与える影響を,やはり検討しなければならないと思います。漠然とした言い方ですが,市場性のあるものについては出版に影響を与えるということを考える必要があると思います。
 現在,国会図書館では,新刊書についても複製されていますけれども,現実にどのような複製が行われていて,それが実際にどういう影響を及ぼしているのかというのがもしわかれるのであれば,それに関する情報も教えていただきたいと思います。
 長くなって済みません。これが最後ですけれども,先ほど委員長がおっしゃられた,オプトアウトの場合に,著作者の確信に反するということに関してです。これは出版権設定契約の廃絶請求権をおそらく念頭に置かれているのではないかと思いますが,私はこれは認めるべきではないように思います。オプトアウトを認めるとしても,それは著作権者の利益にかかわるものだけに限るべきと思います。著作者の確信に反しても,その本は図書館には存続し続けるわけで,そこからは消えないわけです。そのような本には歴史的な意味というのがある場合もあるでしょうし,調査や研究の対象にする必要がある場合もあるでしょう。そのため,経済的利益以外のところでオプトアウトを認めるというのは,例外はあるのかもしれませんが,否定すべきではないかと思います。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。よろしゅうございますか。

【大渕主査代理】  少し今の点に関して。

【土肥主査】  どうぞ,お願いします。

【大渕主査代理】  今のもまた関連する他の論点のうちの1つが出ているかと思うのですが,オプトアウトというのも人によってイメージがかなり違うように感じます。先ほどのような全くの自由なオプトアウトのように,確信だろうが何だろうが,嫌だと言えばオプトアウトになるというイメージで使われる人もいれば,今の茶園委員のお考えは,むしろ財産権的なものだから,人格等といったものは排して,市場性が落ちるなどというような,財産権な根拠がある場合だけについてオプトアウトを認めるということのようなので,その点についての共通認識をもつことが重要と思います。
 考えれば考えるほど,これらの論点すべてが相互に非常に密接に関連しているので,今の点についてもある程度共通認識がなければ,ほかの論点のところも結局,前提条件が全然違う話になってくるということになってしまいます。今の点は,非常に良いきっかけだったかと思いますが,オプトアウトの意味も含めていろいろと,細かく今後詰めた上で,検討していくのが良いと思われます。いろいろな意味で,この決断というのは,今後の出版や,我が国の文化にとって非常に大きな影響を与えますので,詰めた上で,検討すべきと思われます。特に,ここは法制問題小委ということであり,利害調整だけでなく,法制的な観点から検討する場なので,著作権法上の位置づけですとか,これを1カ所変えることによって,全体にどういう影響を与えるかという点について,いろいろな論点を含めて検討していく必要があるのではないかと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。対象出版物を市場性という観点から見ていくのか,あるいは,市場性という観点は,当然時間の経過とともに変わってくるということは起こってくるわけですよね。そういうときに,一たん決まった対象出版物を,アウトできないという,難しくするという仕組みがいいのか。あるいは,対象出版物というのは,先ほどあった31条のような範囲で,割合国会図書館の判断で市場性というのを見てもらって,送信サービスをやってもらい,プリントアウトということをやってもらうんだけれども,しかし,オプトアウトは割合出版社の利益とか,著作権者の利益とか,そういうものを考慮して,しやすくするのかということなんですよね。どっちが基本的な考え方としていいのかということなんですけれども。このあたり,何かご意見ございますか。
 初めから厳しくしてやっていく,後からオプトアウトはあまり認めないというのがいいのか,初めのところは割合緩やかにやっておいて,オプトアウトは割合自由に認めるという,そういう考え方なんですけれども。はい,森田委員,どうぞ。

【森田委員】  オプトアウトの意味がよくわからなくなってきたのでお伺いしたいのですが,一般に入手することが困難であるという要件は,時とともに変わることはあり得る要件であるわけですね。つまり,ある時点で在庫がなかったものが,その後復刻されれば,この要件からは外れる。その場合は,別にオプトアウトとか何とか言わなくても,要件を充足しなくなったら対象外になるといえばよいだけのことです。ただ,それをどういうふうに確知して,サービスに反映させるかという実務的なつくり込みの問題はあるにせよ,そこはオプトアウトではなくて,客観的に要件に該当するかどうかということで判断できるわけです。そうすると,先ほどから出ているオプトアウトというのは,この要件の充足にかかわらず,権利者の意思で除外することができるという趣旨で,そのようなオプトアウトを認めるべきだという意見もあるということなのでしょうか。私は,そのようなオプトアウトはここでの議論の前提になっているわけではないというふうに理解していたのですが,今の大渕委員のお話だと,それも踏まえて考えていくようなことになってきて,ちょっと議論の方向が見えなくなったので,整理していただいたほうがよいと思うのですが。
 オプトアウトというのは,この要件の充足とは関係なく,権利者の意思によって,つまり随意に対象から除くということを認めるかということで,私自身の考え方としては,こういう制度で構築する以上は,そのような形で対象から除くことは認めないというふうにすべきではないかと思います。しかし,そうでない意見の方もおられるのであれば,どちらの意見が多いのかとか,あるいは,それぞれのご意見がどういう前提に立たれるものなのかを,少し整理をしていただく必要があるような気がします。

【土肥主査】  どうぞ。

【大渕主査代理】  今の点はまさしく,要するに,絶版その他というこの要件を充足するかという話で,それは理論的に言えば,時間とともに変動し得るというのはおっしゃるとおりだと思います。しかし,オプトアウトは,そういう話とは別の話であると思います。さきほどのように,フリーなオプトアウトなのか,一定の根拠がなければならないのか云々という,そこのつくり込みの違いの点は別に問題とはなります。先ほど整理されたのは,それをオプトアウトの方法を厳しくして,入り口のところというのか,この現行の要件なのかはわかりませんけれども,送信する際の要件みたいなものを厳しくして,そのかわりオプトアウトのほうは相当な理由がないとできないとするのか。それとも,入り口のほうは要件を緩やかにしておくので,簡単に始まってしまうけれども,嫌であればオプトアウトすればよいというふうにするのかという話です。それは両方ともつくり込みの仕方の違いの問題ですが,ただ,後者のほうでいうと,オプトアウトするまでの間は,それこそ気がつかないうちに,ばっと出てしまうということもあるので,その辺はいろいろな影響も考えて検討するものと思われます。そして,まさしく森田委員言われるとおり,そもそもこういう制度でつくっていく以上,オプトアウトというのは趣旨に合わないのではないかという考えもあり得るのかもしれませんので,その点も含めて,どのようにいろいろなファクターを組んでいくのが一番関係者の利益にとって一番いいかという観点によって決まる問題と思います。そして,その点も含めて,だんだんと各要件の位置づけや相互関連性という点か出始めているのではないかと思います。
 そのあたりをすべてトータルに見ながら,ここでこういう立場をとるから,こういう影響を与えるので,こうだという形で,何次元かの複雑な,XYZとたくさんあるような,非常に複雑な連立方程式になっていますので,それはその点を認識した上で,一個一個の要件を詰めていかなければならず,ざくっとした話だけでは,後で大変なことになりそうな気がいたします。

【土肥主査】  先に中山委員が手を挙げておられたので。その次,山本委員,お願いします。

【中山委員】  グーグルのように,すべてコピーしてしまって,文句のある人は言ってきなさいというシステムと,この条文とは全く別で,31条は公益的な理由でできているわけです。したがって私は,あまりデジタルが現れてもこれを異なって変える必要はない。現在だって国会図書館に行けば,あるいはネットで申し込めば,あるいは地元の図書館で頼んで国会図書館から送ってもらえばできるわけです。現在でもできるということは,ネットでもできなければおかしいのではないか。ネットというのは,一般的に大きな影響を持ちますけれども,この31条の範囲内で,しかもプリントアウトという条件をつければ,それほどネットによる特殊性というものは出てこない。もしだめなら,先ほど言いましたように31条自体を変えなければならなくなります。
 私だって,昔の論文でもう担任に見てほしくない論文がいっぱいあるけれども,もう消し去りたいんですけれども,それはもう不可能であり,引用されて批判なんかされていて仕方がないと思います。1回社会に出してしまったら,それは社会の文化財として存在しているわけで,これは別に論文だけじではなく,映画だって,昔の映画は嫌だとか,あるいは戦争中書いた絵画は嫌だとかいっぱいありますけれども,しかし,それでも出てしまったものは仕方がないと私は思います。31条は31条の公益理由があってやっていると。その範囲で今回の問題もおなじような処理をすれば済むと思っています。

【土肥主査】  山本委員,どうぞ。

【山本(た)委員】  オプトアウトなんですけれども,今回の制度の対象になるものは市場性,市場に出回っているものか,市場で入手できるものかという要件で切るべきであって,そうすると,本来的にはオプトアウトとか考えなくていいんじゃないかと思います。ただ,じゃあ今度は新たにもう一度刷り直そう,出版し直そうと思ったときに,市場に出回っているかというような要件ですから,一たん出してからでないと外れないということになってしまいます。しかし,私はこれからもう1回やりたいんだと思ったときには,まず外させて,それから重版できるというような,やっぱり事前にとめられるようなのが必要だろうと思います。そういう意味でのオプトアウトの制度というのはあってもいいんじゃないかなと思います。

【土肥主査】  私の言ったオプトアウトというのは,そういうことなんですよね。つまり,再販をするということを,例えば相当前に出版社がお決めになって,出しますよというふうに当然いろいろな関係者の著作権法上許されるような機会を与えたりしていくのに,時間はやっぱり相当かかるんだろうと思いますので,そのときに市場性云々の要件だけでいいのかというと,やっぱりその段階で落とせるような仕組みがないと困るんじゃないかなという,そういう趣旨だったんですけれども。
 では,道垣内委員,お願いします。

【道垣内委員】  私,ビジネスのことも技術のこともよくわからないんですけれども,自分が出版した昔の本が,図書館には確かにあるとします。それを自分でネットにPDF版などによりネットで公開すれば,入手可能な状態になるということでしょうか。もしそうであれば,そのようなビジネスが出てくることは十分あり得るように思います。このままだと皆さんの本は,図書館からどんどん配信されちゃいますよ,しかし,うちであなたの本をネットで公開すれば,それを阻止できます,しかも,ダウンロード料は1回100円かもしれませんけれども,お金も入りますよ,という宣伝をするビジネスが出てきて,そのような業者を利用した著作物については,図書館は手を出せないということでしょうか。
 それから,さらに,であれば,今後はネットで出したほうがいいですよ,入手困難ということはあり得なくなりますから,そういう話になるのではないでしょうか。

【土肥主査】  オンラインサービスがもう行われているということですよね。

【道垣内委員】  今後,小学生の頃からコンピューターやタブレットで本を読むようになれば,みんなそういうことになるかもしれないように思います。さらにプリントアウト等と書いてあるのは,データとして保存することも含むのでしょうか。

【土肥主査】  それは全然考えてないです。

【道垣内委員】  今はそうかもしれませんが,どうして紙でなきゃいけないのかと思う世代も出てくると思います。ですから,このルールは,非常に暫定的なことなんだと思われます。要件の定めが紙文化,出版文化を前提にしているようにみえます。プリントアウトということも今の技術を多分前提にされているんですが,あっと言う間に自分で紙を選べて本にしてくれるビジネスも登場するかもしれず,そういう技術を用いたビジネスにあっと言う間に追い越されるような仕組みではないほうがいいと思います。よくわかりませんが,一言申し上げました。

【土肥主査】  おっしゃるように,オンラインで有償でそういうサービスを受けられるような仕組みができるということは,要するに,著作権者と出版社というのか,そういうシステムを開発する会社との間の権利関係の処理が可能な場合でないとできないんですけれども,ここで市場性がない絶版とかという場合には著作権の相続人の探索を含め許諾によるそういう仕組みをつくるのはなかなか難しい。そうすると,裁定ですべてやっていくかということにもなるわけですけれども,それも難しいわけでしょうから。
 今言うように,無償の31条の枠の中での暫定的というんでしょうか,将来的にはもっとネットの,あるいはデジタル技術のメリットを生かしたようなシステムができ上がってもらいたいと思いますけれども,それまではこういうものでも127億の血税を生かすということは十分いえるんじゃないかと思うんですけれども。
 よろしいでしょうかね。一応本日いただいたご意見を踏まえた上で,一度事務局でまとめというものをおつくりいただいて,このまとめの案を皆さんにもう一度お示しいたします。その上でも議論をしていただいて,できればまとめたいと希望をしております。よろしくお願いいたします。
 それでは,本日のもう一つのほうですけれども,著作権法等管理事業法の見直しについて,事務局から報告をお願いいたします。

【鈴木著作物流通推進室室長補佐】  それでは,資料2-1及び2-2に基づきまして説明をさせていただきたいと思います。
 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006に基づきまして,法令に関する規制については,ある一定期間の周期を定めて,その年ごとにいわば規制強化ではなくて,その規制についてのあり方を見直すべしということとされております。そして,著作権等管理事業法におきましては,現在の現行法の附則におきましては,施行後3年を経過した場合に見直しを行うこととされておりまして,それが平成15年度から17年度に行われたところであります。その後,新たに政府の方針として,2006年に今申し上げたような見直しをすべしということが定められたところでございまして,本年平成23年度が,その見直しを行う年度に設定をされておるところでございます。
 資料2-1の1ページ目にありますように,管理事業法に関する規制として挙げられておりますのが1から8まで,管理事業法の登録,変更の届出,地位の承継の届出といった,いわゆる約款ですとか規定,もしくは登録に当たって,そういった届出の義務を課しておるといった規制に関して,見直しを今回行う必要があるということとなったわけでございます。
 2ページ目をごらんいただきたいと思います。資料2-1の2ページ目でございます。そして,管理事業法に関連する規制の見直しに当たりましては,基本方針2006に基づきまして,ここに9つの見直しの基準が求められておるところでございます。例えば,2として挙げられておりますのが,免許制から許可制へ,許可制から届出制への移行により緩やかな規制の移行といった形で,いわば規制緩和の必要性がありやなしやという観点から見直しをすべしということとなっておるものでございます。そしてまた,その見直しの結果につきましては,その結果,理由をホームページ等で公示することとされております。
 以上の前提に基づきまして,今回管理事業法の見直しにつきましては,直接の当事者となる管理事業者のみならず,当該事業実施にかかわります利害関係者,権利者ですとか,利用者から広く意見聴取も必要であると考えましたところ,9月12日から10月11日までの間に,この規制に関連する意見募集を実施いたしました。その結果,全部で58通の意見が寄せられたところでございます。その意見に基づきまして,管理事業法の見直しの8つの項目について,見直しの必要ありやなしやということを検討したものを,3ページ目以降で整理をしておるところでございます。
 ただ,寄せられた意見につきましては,内容としましては,規制に該当する条文以外,別の条文に関連する内容が記載されておるといったところもありますので,その部分については,直接関連する条文ごとにいただいた意見を整理した上で,今回見直しの対象となっている部分について,検討を行ったということです。
 資料2-2のほうをまず先に見ていただきたいと思います。管理事業法における意見募集の結果といたしまして,どの条文に対してどのようなご意見があったのということは,こちらのほうで整理をさせていただいておるところでございます。例えば,第2条,これは管理事業の定義という形になるわけですけれども,現在一任型のものを登録の管理事業としておるところですけれども,非一任型も含めるべきではないか。そして,第3条,これは見直しの対象となっておるところですけれども,登録制度廃止許可制にすべきではないか。そして,許可制にした上で,現在の管理事業者の事業内容,事業実態を再点検し,許可または不許可を再認定すべきであるといったご意見。まさに規制強化の観点というところがあるわけですけれども,それ以外に,現在の登録制を存続すべきであるといったご意見がったところです。
 このような形で,全体といたしましては,利用者団体,利用者の方たちからの意見が多く,さらにはその内容としましては,現在の登録制を許可制ですとか,各種書類の届出ではなくて,使用料規程とか,管理委託約款につきましては,届出はなく認可制にすべきではないかといったご意見が多く寄せられているところでございます。また,当然現在の登録制,届出制を存続すべきではないかといった意見も,あわせて出されておるところでございます。
 それでは,資料2-1に戻りまして,その3ページ目をごらんいただきたいと思います。それぞれ該当する項目について,例えば,管理事業の登録につきましてを例にとりますと,1としまして,現行制度の概要,2,意見募集の内容,そして検討の結果という形で,関連する8つの項目について,それぞれ整理をしているところでございます。管理事業の登録の部分につきましては,今申し上げましたように,登録制にすべきではないかといったご意見があったところです。その理由としまして,事業を行う能力のない管理事業者が散見されることから,許可に移行した上で,他の事業者についても再認定をすべきであるといったご意見があったところでございます。
 これに対しましては,著作権の集中管理業務の規制を許可制から登録制に改めた管理事業法の趣旨を踏まえますと,再度許可制を導入することは適切ではないと考えられます。したがいまして,文化庁といたしましては,管理事業法の19条から27条,これは報告の聴取から業務停止命令ですとか,そういった指導監督の法文になるわけですけれども,それらに基づきまして,適正な指導監督を行うとともに,管理事業者の実態を注視していくとことし,引き続き登録制を維持することとするという形で考えておるところでございます。
 (2)といたしまして,登録事項の変更の届出でございます。これにつきましては,いただきました意見の中では同様に,登録の届出事項と実際に齟齬がある場合,散見するというところもあり,その登録の事項の変更にあっては,利用者,利用者団体からの意見聴取義務なども課すべきではないかといったご意見などがあったところでございます。
 4ページ目でございます。検討の結果でございますけれども……,済みません,それからもう1点,変更の届出に当たりましてですが,文化庁に届け出る期間を2週間以内としておるところですけれども,これにつきましては,管理事業者のほうから,実務上2週間を超えてしまう場合が少なくないことから,それを遵守することが困難である。いわばその期間を長く設定してほしいといったご意見があったところでございます。
 まず,変更の届出を行っているといった場合に関しましては,罰則などの適用もあり,そのあたりはきちんと実務上の対応でしていく必要があると考えておるところでございます。また,添付資料としましてですけれども,変更事項があった場合,それに係ります必要書類を添付していただくということになっておりまして,登記事項証明書や,またはこれにかわる書面という形で政令で定めておるところでございますので,この施行規則の運用によりまして対応することが可能であると考えておりまして,届出期間を変更する必要がないと考えておるところでございます。
 (3)でございます。管理事業の地位の承継の届出でございます。これらにつきましても,地位の承継は,利用者に大きな影響を与える場合があるといったところから,届出制ではなく,認可制にすべきといったこと。さらにはその地位の承継に当たって,利用者や委託者に意見聴取義務を課す必要があるのではないといったご意見があったところでございます。これにつきましても,そもそもが管理事業法は,管理事業者を登録制にしておるといった趣旨から,税務承継についても許可制にする必要は適切ではないというところがございます。さらに事業承継ですとか,この後にあります廃業の届出の部分ですけれども,それにつきまして,事業を存続するか,さらには廃止するか,譲渡するかについて,その事前説明なども含めて,事業者が行うことが当然であるといったところがありますので,その内容について規制をかけるということは,基本的には適切ではなかろうかと考えております。
 文化庁におきましては,管理事業者の状況を適切に把握をしていくということで対応が可能であるということを考えておりますので,地位の承継などについて,届出制を維持することとするということが適当と考えておるところでございます。
 (4)の廃業の届出につきましても,基本的に内容は同様の形となっております。
 5ページ目の下のところに,委託契約約款の届出でございます。内容としましては,6ページの部分にございますけれども,これにつきましても,届出制を廃止し,認可制にすべきといったご意見があったところでございます。これにつきましては,管理事業者が委託契約約款を定めるということが基本となっておるわけですけれども,その届出をそもそも文化庁に義務づけておるということ。それから,契約締結の際の約款の遵守義務などを法律上定めており,これに関連する罰則もあるといったところから,これ以上の規制の強化は適切ではないと考えておるところでございます。
 (6)委託契約約款の変更の届出でございます。これも委託契約約款の届出と基本的には内容は同様の考え方をしておるところです。
 そして,(7)使用料規程の届出でございます。これにつきましても,利用者側からは,管理能力のない管理者などが存在すること,管理事業者が使用料を恣意的に決めることがなされる可能性があるということから,届出制ではなく,許可制にすべきではないかといったご意見もあったところでございます。これにつきましては,7ページ目のところでございますけれども,基本的には事業者間の競争を通じ,市場原理により,適切な額に収れんすることを考え方として採用しているところですから,この基本原則の大幅な変更になる許可制ということは適当ではないと考えております。そして,意見聴取の努力業務義務違反ですとか,使用料規程の実施禁止期間の延長命令などを,文化庁が行うことができるといったところから,自制措置などを求めることが可能ということから,現行の制度を維持することで適当というふうに考えております。
 (8)使用料規程の変更の届出も,基本的には同様の内容でございます。
 そして,7ページ目の下にございます結論でございます。今回,管理事業法に関連する8つの項目の規制に関し,幅広く意見募集を行った結果,規制の緩和を求める意見はわずかであり,他方,ほとんどの項目において,利用者側から何らかの規制の強化を求める意見が多く見られたところでございます。各項目に寄せられた意見と検討の結果は,今申し上げたとおりでございますけれども,規制を緩和する方向性におきまして,見直しを行うという視点を踏まえますと,それぞれにおいて直ちに管理事業法を改正し,対応すべきと考えられる事項はなかったと考えております。なお,利用者側から,現行法の厳正な運用が求められておるところから,文化庁においては,管理事業法19条から21条に基づき,管理事業者への指導監督を適正に行っていくこととするという形で,この見直しについては取りまとめを行ったところでございます。これにつきまして,今回,ご意見などをいただければと思っております。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。それでは,ただいまの事務局からのご報告へのご質問も含めまして,ご意見等ございましたらお出しください。はい,どうぞ。

【松田委員】  この資料を事前に見させていただきまして,利用者側から,特に使用料規程について,もうちょっと規制を厳しくしてくださいよという意見は,使用料規程が利用者側から見ると現実的な規程になっていないとか,使用料が一般的に高いのではないかという不満があるんだというふうに,私は背景を読んでおりました。そういうものがもしあるとすれば,きめ細かく使用料規程をつくって,なおかつ協議などを重ねて妥当なものにするということは考えられるのですけれども,しかし,それをやっていると,実は使用料って決まらないんですよね。
 この制度自体を,今,何らかの形で改正をするというところまでは必要ないと私は思っておりますけれども,現実の実務でそういう不満があったり,ないしはきめの細かい利用ができていないとするならば,それはどうすべきかということも考えるべきだろうと思っているんです。その具体的な方法というのは,やっぱり管理事業者と,それから,利用者側。利用者側も個別的な利用というよりは,ある程度事業ごとに,利用ごとに包括的に協議をして,そして使用料規程より安くするのは別に協議をして定めるのは問題ないんだと私は思っていますけれども,もちろん権利者側がそれでいいというわけですから。そういうきめの細かい協議の方法を編み出していくということが必要なのではないかなと思っています。
 それは利用者側が,使用料規程の決め方が悪いんだというのではなくて,利用者側の需要がこういうところにあるのだから,使用料規程の具体的,妥当な協定を結んでいこうじゃないかという方法を,やっぱり権利者側と積極的に話し合うという場をそれぞれに設けるべきではないかと思っております。以上です。今の制度の改革として,特にここをということではございません。

【土肥主査】  ありがとうございました。村上委員,どうぞ。

【村上委員】  私のほうも,現行事業法の大きな法的な枠組みまで変える必要はないと考えています。最後のまとめ方が,文化庁において,管理事業者への指導監督を適正に行っていくこととするという形のまとめですので,指導監督を行う場合には,国際的にも,音楽著作権団体では,欧州ではあり方についていろいろな動きがあるというような,そういう意味で変化があるという動きがあったり,それから,管理団体全体については,管理技術というのが随分技術革新で進んできていると思うので,そういうところも仮に指導監督を行う場合には十分勘案して,適正な指導を行っていただくということが要望になろうかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。特によろしいですか。よろしゅうございますか。
 これ,基本方針2006に基づく管理事業法の見直しに関しまして,先ほどご紹介があった8項目について検討いただいたということでございまして,最後におっしゃっておられたように,19条,20条,21条の指導監督権限を適正に行っていくと。これはなかなかあまりこれまで過去,そういう適正に行われていないのであれば,きちんと権限を行使いただくということだろうと思います。特に委員の皆様方におかれましても,特にこの見直しの方向に関して,ご異存はなかったというふうに思いますので,この管理事業法の見直しに関しましては,資料にあるこの結論のとおりとすることで問題がないと。逆に言うと,この結論にあるような形で,今後指導監督を適正に行っていただければと存じます。今後は,この見直しをしていただいた後の手続があろうかと思いますので,それを適切に進めていただければと存じます。
 その他として何かございますか。なければ,これくらいにしたいと思います。
 事務局から,連絡事項がありましたらよろしくお願いいたします。

【鈴木著作物流通推進室室長補佐】   本日は,長時間のご議論ありがとうございました。次回の法制問題小委員会につきましては,改めて日程の調整などをさせていただきまして,確定次第ご連絡させていただきたいと思います。事務局からは以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。それでは,本日はこれで第5回の法制問題小委員会を終わらせていただきます。本日は,ありがとうございました。

── 了 ──

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