日時:平成24年6月7日(木)
14:00 ~16:00
場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂
議事次第
- 1 開会
- 2 議事
- (1)法制問題小委員会主査の選任等について
- (2)法制問題小委員会審議予定について
- (3)その他
- 3 閉会
配布資料一覧
資料1 | 第12期文化審議会著作権分科会法制問題小委員会委員名簿 (104KB) |
資料2 | 小委員会の設置について(平成24年3月29日文化審議会著作権分科会決定) (120KB) |
資料3 | 第12期の法制問題小委員会の当面の検討課題について(案) (120KB) |
資料4 | 海外における著作物のパロディの取扱いに関する調査研究報告書 (1.67MB) |
資料5 | ワーキングチームの設置について(案) (148KB) |
参考資料1 | 文化審議会関係法令等 (164KB) |
参考資料2 | 第12期文化審議会著作権分科会委員名簿 (140KB) |
参考資料3 | 第12期文化審議会著作権分科会 各小員会における検討について(第36回著作権分科会配付資料3) (132KB) |
参考資料4 | 平成23年度法制問題小委員会の審議の経過等について (1.97MB) |
参考資料5 | 著作権法の一部を改正する法律案の概要 (284KB) |
出席者名簿 (120KB) | |
机上配付資料 | 著作権法の一部を改正する法律案資料 |
4 議事内容
(1)法制問題小委員会主査の選任等について
- ○ 本小委員会の主査の選任が行われ,土肥委員が主査に決定した。
- ○ 主査代理について,土肥主査より大渕委員が主査代理に指名された。
※ 以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。
【土肥主査】 それでは,今期の法制問題小委員会の審議予定について検討したいと思いますので,事務局から当面の検討課題についての説明をお願いいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】 それでは,お手元の資料3に基づきまして,本小委員会の当面の検討課題について説明申し上げたいと思います。
資料3にございますとおり,今期は3つの課題,すなわち,1つに,いわゆる間接侵害に係る課題,2つ目といたしまして,著作権法第30条に係る課題,3つ目といたしまして,著作物のパロディとしての利用に係る課題,これらの3つにつきまして,ご検討いただいてはどうかと考えてございます。
このうち,まず,間接侵害に係る課題につきましては,前期に司法救済ワーキングチームにおいてお取りまとめいただきました論点整理の結果,こういったものを踏まえまして,今後は当小委員会においてさらに検討を深めていただければと考えております。また,この検討に当たりましては,必要に応じて関係団体からのヒアリング等も行ってはどうかと考えてございます。
また,2つ目の著作権法第30条に係る課題につきましては,これも前期の本小委員会におきまして論点の整理を行っていただいているところでございます。そういった中,当面はこれらのおまとめいただいた論点のうち,間接侵害に係る検討と相互密接に関係すると思われる30条第1項柱書き,それから,同項1号に係る課題につきまして,間接侵害に係る課題の検討とあわせまして,検討を行ってはどうかと考えてございます。もちろん間接侵害を含めまして,30条の先ほどの課題を検討していくに当たりましては,しっかりと論点を整理しながら進めていく必要があろうと考えてございますので,事務局といたしましても,主査をはじめ,司法救済ワーキングチームの座長をお務めいただきました大渕委員と十分にご相談をさせていただきながら検討を深めてまいりたいと考えてございます。
それから,最後に,いわゆるパロディとしての利用に係る課題についてでございますが,昨年1月にお取りまとめいただきました著作権分科会の報告書などにおいても,その検討が求められておりますので,当面はワーキングチームを設置し,そのワーキングチームにおいて検討を進めてはどうかと考えてございます。
以上,本小委員会における当面の検討課題の(案)といたしまして,3つの課題を提示させていただいておりますけれども,そのほかにも去る3月29日に開催されました第36回の著作権分科会におきまして,委員の方より保護期間の延長や戦時加算の撤廃についての問題,あるいは追及権の問題,こうしたものについて検討するべきではないかとのご指摘をいただいております。もちろんこれらの課題につきましても,大変重要な課題でございますので,当面は先ほど申し上げた間接侵害を中心にご検討いただくという中でございますけれども,今後,国際的な状況等を踏まえた上で,時期に応じて検討していくこともあるのではないかと考えているところでございますけれども,いずれにいたしましても,検討のタイミングや検討の仕方等につきましては,また分科会長等とご相談をさせていただきながら進めさせていただければと思ってございます。
当面の検討課題につきましては,以上でございます。
【土肥主査】 ありがとうございました。
ただいま今期の検討課題ということで,この資料には3つ挙げてあるわけでございますけれども,その3つ目の著作物のパロディとしての利用について,昨年度,文化庁の委託研究として,海外におけるパロディの取り扱いにかかる調査研究が実施されておるということのようでございます。したがいまして,その研究成果について,上野委員からご報告をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【上野委員】 ただいまご紹介いただきましたとおり,パロディに関する調査研究が行われまして,私が取りまとめ役を仰せつかりました関係上,まことに僣越ではございますけれども,私の方から簡単にご報告をさせていただきたいと思います。
いわゆるパロディにおきましては,他人の著作物を何らかの形で利用することが多いことから著作権の問題が生じることになるわけですけれども,我が国著作権法にはパロディに関する明文の規定がないということから,これがどのように評価されるか必ずしも明確でないと言われ,これまでにもいろいろと議論されております。立法論といたしましても,権利制限規定の一般規定について議論しておりました平成22年度の法制問題小委員会におきましても,パロディ問題は一つのテーマとして議論されていたところでございます。その検討過程におきましては,パロディとしての利用も,権利制限の一般規定の対象とする方向性を求める意見も見られたようであります。
ただ,最終的な報告書におきましては,パロディ問題の解決を権利制限の一般規定の解釈にゆだねるのは必ずしも適当でないと述べられております。その理由といたしまして,我が国では,そもそもパロディとは何かということや現行法上の解釈による許容性の問題,あるいは表現の自由や同一性保持権との関係など,議論が十分に進んでいないという点が指摘されておりました。
これを踏まえて,パロディ問題を検討する場合には,そうした関係諸論点について十分議論を尽くした上で権利制限の必要性を慎重に検討する必要がある,というふうに報告書ではまとめられているところでございます。
こうしたことを受けまして,今回の調査研究におきましては,今後,具体的な方向性を検討する際の参考とするために,まずは,諸外国におけるパロディとその制度を調査し,我が国において立法論を検討するための論点整理を行ったところでございます。したがいまして,この調査研究及び報告書自体は,我が国における立法の必要性や可能性について具体的な検討を行ったものではありませんし,一定の方向性を志向するものでもございません。
それでは,報告書の中身といたしまして,外国法について簡単にご紹介いたします。具体的には,パロディを広い意味でとらえた上で,この広い意味でのパロディに関する法制度や裁判例,あるいはこれをめぐる議論が盛んな国ということで,主にアメリカ,フランス,ドイツ,あるいはイギリスという4カ国に焦点を当てました。そして,それぞれ野口先生,駒田先生,本山先生,青木先生に調査検討をお願いした次第でございます。外国法に関しましては,すでに先行研究といたしまして,特に2010年の著作権法学会におきましても,小泉先生の司会によりまして,アメリカ,フランス,ドイツに関しまして,奥邨先生,本山先生,長塚先生が詳しく検討されたものがございまして,これは大いに活用させていただいております。また,アメリカ法におけるパロディに関しましては,権利制限の一般規定に関する調査報告書におきまして,奥邨先生が詳しくお書きになられましたものがありまして,その成果を大いに活用させていただいたことをあらかじめ申し添えます。
また,これらの4カ国以外に,パロディに関する個別規定を有しているオーストラリアあるいはスペイン,そして,パロディに関する個別規定の導入を検討しているとされるカナダにつきましても,事務局のほうで補足的に調査をお願いした次第でございます。
さて,まずアメリカについてであります。アメリカ法につきましては,本日ご出席の奥邨先生や山本隆司(たかし)先生もお詳しいわけですけれども,いわゆるフェア・ユース規定と呼ばれる権利制限の一般条項によって一定のパロディが著作権法上許容されていることがよく知られております。具体的には,プリティ・ウーマンの主題歌がラップ調のパロディ作品にされたことが問題となった,いわゆるCampbell事件におきまして,商業的なパロディであってフェア・ユースに当たり得ることを認めた連邦最高裁の判決が代表的でございます。
もちろん,アメリカ法上のフェア・ユースは諸事情の総合衡量とはいいましても,これに該当するためにはそれなりに高いハードルをクリアしなければならないと考えられるところです。ただ,アメリカにおけるフェア・ユースをめぐる議論におきましては,ある著作物それ自体を批判・論評の対象とするパロディ,これをよくターゲット型と呼んでおりますけれども,そういったものだけではなく,当該著作物を通じて別のものを批評・論評するというパロディ,いわゆるウェポン型と言われるものも排除されているわけではないようであります。
次に,イギリスです。イギリスにおきましては,パロディに関する明示的な規定はないわけでありますけれども,解釈論によって適法となる可能性がいくつか指摘されております。とりわけ「批評または論評のためのフェア・ディーリング」を定めた30条1項の規定が一定のパロディに適用可能であることを一般論として認める裁判例がございます。ただ,実際にこれを適用してパロディを認めた裁判例は確認されていないとのことでありました。そこでイギリスでも,近時の立法論におきましては,パロディを明確に許容する規定を設けることが提案されているようであります。
次に,フランスです。フランス著作権法には,パロディ,パスティシュ,カリカチュアに関する明示的な権利制限規定があることで知られております。このパロディ,パスティシュ,カリカチュアというのは,その区別をめぐっていろいろと議論があるところですけれども,これは現在,欧州情報社会指令にも取り入れられているフレーズでございます。そしてフランスでは,実際にも,例えばシャンソンの歌詞を改変したパロディが適法とされた枯れ葉事件など,結果として広くパロディが許容されているようであります。そこでは,主観的側面として,単なる批評・論評という目的をもったパロディだけが許容されるのではなく,パロディの許容性に関して,ユムール(humour)の意図というもの――それは笑いを生む目的あるいはたとえ笑いとは無縁であってもユーモアの目的で行われること――が問題とされているようであります。また,客観的側面といたしましても,パロディ作品がオリジナル作品と混同させないということが求められているようでありまして,この点も興味深いところでございます。フランス法につきましては,いずれ森田宏樹先生にもお話を伺えればと考えております。
それから,ドイツです。ドイツにはパロディに関する個別規定はありませんけれども,24条に自由利用という規定がありまして,一定のパロディは,この規定に基づき,いわば他人の著作物の保護範囲に属さないとして,結論として認められるようであります。実際のところ,ドイツ連邦のシンボルマークであるワシをパロディ作品にしたものが許容されたGies-Adler事件など,結果としてパロディが許容された裁判例が見られるところでございます。ただ,パロディとして許容されるためには,ドイツでは,対象となる著作物の主題あるいはその周辺領域が批評の対象となっていなければならないとされているようでありまして,これはよく反主題性などと呼ばれております。したがいまして,あるパロディがその著作物やその著作者を批評等するものであればパロディとして許容され得るのに対しまして,それとは無関係のテーマや第三者が批評等の対象となる場合は,パロディとして許容されないようであります。
以上のように外国法におきましては,さまざまな基準によりまして,一定のパロディをそれぞれの方法によって著作権法上適法とすべきということが議論されているようであります。これらを踏まえまして,我が国としてパロディに関して何らかの立法的対応をすべきかどうかを検討していくことになろうかと思われます。
そこで,本報告書の最後のところでは,そうした検討の際に問題となり得ると思われる論点を整理しております。大きく2つ分けることができます。1つは,パロディに関して立法的対応を行う必要があるかどうかを検討する際に問題となり得る論点,もう1つが,立法的対応が必要だと判断された場合に,ではどのような立法的対応を行うべきかを検討する際に問題となり得る論点であります。
詳しくはお読みいただければと思いますが,まず前提として,結論として許容されるべきパロディというのが存在するのかということが問題となります。もしそれが存在しないのだとすれば,そもそも立法的対応を行う必要はないからです。そこで,我が国において,パロディというものがどのような現状にあるのかということを把握することが必要になりますし,また,現状はともあれ,いわば結論としてパロディが許容されるべきものと考えるかどうかが論点となるかと思われます。ただ,すでにこの点において,いろいろと意見が分かれるところではないかと思われます。
次に,許容されるべきパロディが存在するといたしましても,現状において立法的対応を行う必要があるかどうかということが問題となります。と申しますのも,立法的対応を行わなくても,一定のパロディは,例えば解釈論等により,現実には著作権法上の問題が生じていない可能性もあり,そう言えるのであれば,あえて立法的対応はする必要はないということになるからであります。解釈論の可能性といたしましては,例えば現行法の中にある権利制限規定がその候補になろうかと思います。
とりわけ32条の適法引用の可能性がよく指摘されますが,ほかにも考えられるように思われます。例えば,46条には屋外恒常設置美術等に関する規定がありまして,この規定により一定のパロディが許容される可能性があるように思われます。具体例を申しますと,例えばスカイツリーのような建築物を写真に撮ったパロディというのは,この46条によって,現状でもかなり広く認められるのではないかと思われます。
また,権利制限規定以外にも,著作者の権利が客体とする著作物,すなわち創作的な表現が利用されているとはいえないとして許容される可能性があろうかと思います。例えば,他人の小説の登場人物を用いて別のストーリーを有する続編パロディ小説を作成するという場合,これは表現ではなくアイデアの利用にとどまることを理由に著作権侵害に当たらないと判断される場合が多いのではないかと思われます。さらに,あるパロディが著作権侵害に当たるとしても,これに対して差止請求をすることは権利濫用に当たるとされる可能性も否定はできないように思われます。
こうした解釈論以外にも,事実上黙認によってパロディが許容されているということもあるように思われます。いわゆるコミックマーケットにおいて販売されている同人誌などは,もちろんパロディに当たるものばかりではないと思われますけれども,いわば黙認によって成り立っている可能性があろうかと思います。
以上のような検討を経た上で,パロディに関して何からの立法的対応を行うべき必要があるかどうかを検討し,あると判断された場合におきましては,次に具体的にどのような立法を行うべきかが問題となります。そこでは,どのようなパロディを対象とすべきか,そして,それをどのような手法によって規定するかということが問題になろうかと思われます。とりわけ許容されるべきパロディの内容につきましては,諸外国の議論において考慮されているさまざまなファクターがありました。例えば,ターゲットなのかウェポンなのかといった目的を問題にするか,反主題性が必要か,あるいはオリジナルと混同しないことが必要か,などです。そういった議論を参考にした上で,わが国における具体的な立法のあり方を検討することになろうかと思われます。
以上のように,本報告書はさしあたり論点を整理してみた次第でございます。したがいまして,この報告書と調査報告は,具体的な方向性を志向するものではありませんけれども,外国法の調査ということに関しましては,今回の調査にご協力いただいた委員の先生方および事務局の皆さまの大変なご尽力のおかげで,また先行研究の蓄積のお力も得て,充実した成果が得られたのではないかと考えております。今後,立法の必要性やその内容について検討する際の参考となれば幸いと考えております。
以上です。
【土肥主査】 上野委員,ありがとうございました。
それでは,事務局よりご説明をいただきました今期の法制問題小委員会における検討課題につきまして,ただいま上野委員からご説明ございましたけれども,この内容についてのご質問等も含めまして,本日は意見交換を行っていただければと存じます。それでは,ご質問,ご意見ございましたら,どうぞお願いをいたします。どうぞ,ご自由にご発言いただければと思いますが。いかがでしょうか。何かございませんか。
上野委員,ご報告いただきましたけれども,おそらく時間的に何か制約をお感じになってご報告といいますか,説明あったのかもしれませんが,何かございますか,付加するようなことが,なければ結構なんですけれど。
【上野委員】 いえ,特に。
【土肥主査】 特にございませんか。
【上野委員】 はい。
【土肥主査】 事務局からないでしょうかね。
皆さんのご意見がもしないということであると,今期の法制問題小委員会の検討課題としては,資料3で事務局から説明ございましたように,いわゆる間接侵害問題を中心に,それを軸に,それと関係する,密接に関係するであろう30条1項柱書き及び同項第1号に係る課題についての検討をまず進めるということになるわけでございますけれども,そういう方向性で皆様のご了解と思うんですが,よろしゅうございますか。
親委員会の分科会でも,事務局からいろいろその説明ございましたように,本法制小委には要望が出ておりますし,その要望の一端については,先ほど説明がございまして,保護期間問題とか,そういった追及権の問題とか,そういったことがもう既に出ておるわけであります。こういう問題について,仮に余裕があれば,そういうことになるかのかもしれませんけれども,当面は間接侵害問題で議論していきたいと思います。よろしいですか,皆さん。ご意見,特に,ご質問ございませんか,パロディについての。よろしゅうございますか。じゃあ,松田委員,お願いします。
【松田委員】 1つだけ。上野先生にね,せっかくご質問する機会がありますので,させていただきましょう。
狭義のパロディと,それから,作品から離れた事象の風評,風刺ですね,のサタイヤというのが大きく外国法制でも保護の対象になるという方向性があるように聞いております。特にフランスはそうだったと思いますが。狭義のパロディの場合は,作品ないしは作者に対する批判や風刺,それ自体になりますから,場合によると,公表された著作物については,ある意味では社会的な利用としては甘受しなければならない範囲なのだろうなと思っているわけですけれども,その作者,ないしは作品を離れた他の事象の風刺のために利用される著作物というのは,その風刺がかなり文化的に高度であって,それも社会的に極めて重要だというような評価がないと,少なくとも現行著作権法上の枠から考えますと,甘受すべき範囲内ではないのではないかと思います。作者が発表すれば何にでも使われて,他の目的に使われていいというのはそう簡単ではないように思うからであります。
そのときに判断要素としては,そういうサタイヤとしての風刺が社会的に極めて文化的に有用である,重要である。だから,著作権法上の保護を与えましょうといった場合に,具体的な訴訟になったときに,裁判所がそれを高度な風刺である,力のある風刺であるということを判断しなければならなくなるように思うのであります。そのときにかなり裁判所としては苦慮するのではないか。この点について,外国法制ないしは外国裁判例としては,何か留意を払っているようなところがあったでしょうか。すいません。どうぞよろしくお願いいたします。
【上野委員】 ご質問ありがとうございました。
パロディとサタイヤの区別というお話から,裁判所におけるパロディの許容性の判断についてまでご質問いただきました。まず,パロディの定義につきまして,狭義・広義という形でお話いただきましたけれども,このパロディの定義というものをめぐりましては各国において非常にさまざまな議論があるようでありまして,必ずしも2つに分けられるというものでもないようであります。確かにアメリカでは,ターゲット型をパロディと呼び,ウェポン型をサタイヤと呼んでいるようですが,フランスでは,パロディというのは3つあって,それが区別できるという見解もあれば,結局すべてを含めて広義のパロディと呼ぶべきだとする見解もあるようです。また,ドイツの反主題性とアメリカで言われているターゲット型というものが同じものなのかとかいうのも,よくわからないところであります。ですので,いろいろと比較いたしましても,パロディについて一定の定義を前提として議論することはなかなか容易でないように思われます。
ただ,とにかく広い意味でのパロディにおいて,利用されている著作物が批評等の直接の対象になっている場合にはより許容されやすいと考えるべきだというのは,ご指摘の通りかと思います。たしかに,パロディにおいて利用されている著作物を批評等の対象としているパロディは,第三者やその他の何か別のものを批評等の対象としているそれと比べると,ハードルが異なるのという議論は外国にもあるようであります。
ただ,その上で,諸外国の議論におきましても,許されるべきパロディかどうかを判断する際にさまざまな事情が考慮されておりますけれども,そこで考慮されている事情が裁判所における司法判断になじむものなのかどうかということは,ご指摘の通り,確かに問題になるものと思われます。特にフランスなどにおきましては,先ほどもご紹介いたしましたように,ユムール(humour)ですとか,ユモリスティックですとか,そうしたものを考慮してパロディの許容性を判断することになるわけですが,我々の目から見ると,そのようなことを裁判所がどのように判断しているのかということは確かに気になるところであります。そうした点は,本来ではフランスでも問題になり得るところかと思われます。そして,仮にフランスでは問題になっていないとしても,そのような判断というものは特定の文化的な背景を前提にしてこそ可能なのだという考えもあろうかとは思いますので,我が国で同じように考えることはできないかも知れません。そのあたりはたしかに問題になろうかと思います。
今回の報告書において,その点に関しても十分な検討ができているかどうかわかりませんけれども,今後の具体的な検討におきましては,そういった視点は重要ではないかと考えております。お答えになっているかどうかわかりませんが,さしあたり以上です。
【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。よろしゅうございますか。
それでは,今,松田委員から質問が出ましたパロディについてなんですけれども,先ほど事務局の検討課題の説明の中で,パロディとしての利用に関しては,ワーキングチームの設置を予定しているということのようでございます。このワーキングチームの設置について,本小委員会にお諮りしたいと存じますけれども,この内容について事務局から説明をお願いいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】 それでは,ワーキングチームの設置につきまして,説明申し上げたいと思います。
資料2といたしまして,配付しております小委員会の設置についてにおきましては,その4,(2)にございますとおり,議事の手続,その他各小委員会の運営に関し,必要な事項は,当該小委員会が定めるとされてございます。これを受けまして,本日お配りしている資料5におきまして,ワーキングチームの設置についての(案)をお配りしておりますけれども,先ほども申し上げましたように,これにつきましては,パロディワーキングチームを置くということとしてございます。それから,ワーキングチームの構成についてでございますが,2,(1)にございますとおり,座長を置き,法制問題小委員会の委員のうちから,法制問題小委員会の主査が指名するということとされておりますほか,(2)にございますとおり,座長は,必ずしも法制問題小委員会の委員に限定せず,必要な若干名を指名することとされております。なお,検討方法につきましては,3にございますとおり,メーリングリストの活用等による機動的な検討ができるものとするとされておりますほか,原則として会議は非公開で行い,議事要旨を作成の上,これを公開するとされてございます。
ワーキングチームの設置についての説明につきましては,以上でございます。
【土肥主査】 ありがとうございました。
ただいま事務局から説明のございましたワーキングチームの設置(案)について,ご意見,ご質問等ございましたら,お願いいたします。特によろしゅうございますか。
特にご意見ございませんでしたら,ワーキングチームの設置については,ご了承いただいたということでよろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
【土肥主査】 はい。ご異議ございませんので,この本法制小委の中にパロディワーキングチームというものをつくるということにいたしたいと存じます。
それでは,パロディワーキングチームの座長についてでございますけれども,先ほどこれも事務局から説明ございましたとおり,この小委員会の委員の中から指名することになっております。したがいまして,私といたしましては,小泉委員に座長をお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
小泉座長におかれましては,ワーキングチーム員の構成を固めていただきたいと存じます。固まりましたら,この小委員会で名簿を配付してご紹介したいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,検討課題及びワーキングチームの議題はこれくらいにしたいと存じますけれども,次回以降の検討課題につきましては,特にご異議等ございませんでしたので,先ほどの事務局の説明にございましたような方向で,次回以降の検討課題を相談しながら決めていきたいと思っております。
第1回目の法制問題小委員会でございますので,全般的な事項について,何かご意見ございましたら,お出しいただければと思います。何でも結構でございますけれども,お気づきの点がありましたら,お出しいただければ幸いに存じます。特にご意見はないでしょうか。
特にないようでございます。したがいまして,時間は十分まだ残っておるわけでございますけれども,本日はこのくらいにしたいと思います。事務局におかれましては何かご意見ございますか。特にございませんか。
【壹貫田著作権課課長補佐】 特段意見ということではないんですけれども,先ほど申し上げましたように,次回,ちょっと先走る話になりますけれども,次回一応6月29日を予定してございますけれども,その場におきましては,間接侵害の今期初めての本格的な検討ということで,前期にも大渕代理のほうから,一度司法救済ワーキングでおまとめいただいた内容をご報告いただいているんですけれども,改めてもう一回冒頭に大渕委員のほうからご説明をいただいて,それを踏まえて,それを受けてご議論を進めさせていただければと思っております。
それから,それ以降も,司法救済ワーキングのほうでは,一度非公開という形ではございますけれども,関係の事業者の方とか,途中の段階でそのご意見を賜っているということでございますけれども,司法救済ワーキングとして,中間まとめとしておまとめいただいた内容については,これは,また初めてご意見を伺うという形になろうかと思いますので,そこで関係の団体の方々,事業者の方々という方からお話を伺いたいなと思ってございます。
今日がもう6月7日ということで,次回は6月の下旬ということでございますので,はや,今年ももう半ばぐらいまで差しかかってきているんですけれども,ヒアリング,これは司法救済ワーキングの過去の検討の経緯でありますとか,事業所の皆さんからお話を伺った後の検討の経緯を見ましても,なかなかに大変難しい問題が絡んでおりますので,そこは事務局といたしましても,議論が錯綜するというか,こんがらがらないように,我々のほうとしてもぜひともしっかり論点を整理して,議論が建設的に進むように尽力をしたいと思っております。
また,それから,30条1項柱書き,それから,1項1号,自動複製機器の話も先ほど申し上げましたけれども,これもおそらく間接侵害の議論をしていく中では,フレーズの端々にそういった言葉が飛び交うようになっていくと思うんですけれども,そういったこともしっかりと整理をしないと,繰り返しになりますけれども,錯綜する可能性もございますので,そこも十分に我々としても留意したいと思っておりますので,大変難しい問題ではございますけれども,どうか委員の皆様方も精力的なご議論を賜りたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【土肥主査】 ありがとうございます。
次回,そういうご予定のようでございますけれども,ヒアリングをあわせて,関係団体からのご意見も次回お伺いするということですか。
【壹貫田著作権課課長補佐】 いや,次回ということではないです。まだご準備もあろうかと思いますので,その辺はまたちょっとご相談をさせていただきながらと考えております。いずれにしても,もう次が6月の下旬ですから,早くても7月に入って以降の,夏以降の話だと思っております。
【土肥主査】 ありがとうございました。
それでは,そういうことを含めて連絡事項がございましたら,お願いいたします。
【壹貫田著作権課課長補佐】 すいません。先ほどちょっと先走ってしまったんですが,次回は6月29日の10:00から2時間の予定で,東海大学校友会館の朝日東海の間にて開催することとしております。お忙しい中,恐縮でございますけれども,ご出席のほどよろしくお願いいたします。
【土肥主査】 ありがとうございました。
それでは,本日予定しておりますものはすべて終わりましたので,これで第1回法制問題小委員会を終わらせていただきます。本日はまことにありがとうございました。
―― 了 ――
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