(平成24年第4回)議事次第

日時:平成24年9月4日(火)
    10:00~12:00
場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂

議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)「間接侵害」について(関係団体ヒアリング)
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1 日本放送協会・一般社団法人日本民間放送連盟提出資料 (144KB)
資料2 一般社団法人日本映像ソフト協会提出資料 (988KB)
資料3 一般社団法人電子情報技術産業協会提出資料 (216KB)
資料4 一般社団法人インターネットユーザー協会提出資料 (548KB)
参考資料1 ヒアリング出席者一覧 (100KB)
参考資料2 「間接侵害」等に関する考え方の整理 (204KB)
参考資料3 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第2回)における「「間接侵害」等に関する考え方の整理」に関する主な意見概要 (164KB)
  出席者名簿 (112KB)

【土肥主査】  定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第4回を開催いたします。
 本日はお忙しい中,御出席をいただきまして,まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段,非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 議事に入りますけれども,初めに議事の段取りについて確認をしておきたいと存じます。本日の議事は,1,「間接侵害」について(関係団体ヒアリング),2,その他の2点となります。
 今回も,昨年,司法救済ワーキングチームにおいて取りまとめていただきました「『間接侵害』等に関する考え方の整理」について,関係団体の方々からお考えを御発表いただいて,その後にまとめて質疑や議論を行いたいと思っております。
 まず,事務局から配付資料の確認と出席者の御紹介をお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  それでは,配付資料の確認をいたします。次第の方をごらんください。
 本日は,また前回に引き続き,関係団体の皆様方からヒアリングということで,資料1から4として,それぞれ御発表資料をお配りしてございます。
 また,そのほかにも参考資料を3点ほどお配りしてございますので,落丁などございます場合にはお近くの事務局員までお声がけいただければと思います。
 以上でございます。
 それから,本日の出席者でございますけれども,事前に私の方から確認をさせていただければと思っております。参考資料1に沿って紹介をさせていただきたいと思います。
 まず1つ目,日本放送協会と一般社団法人日本民間放送連盟から,まだちょっといらっしゃっていませんけれども,梅田様,笹尾様,それから大澤様でございます。
 それから2つ目で,一般社団法人日本映像ソフト協会から酒井様,小林様でございます。
 それから3つ目といたしまして,一般社団法人電子情報技術産業協会から榊原様,太佐様,赤松様にお越しをいただいてございます。
 最後でございますけれども,一般社団法人インターネットユーザー協会から小寺様,相馬様にお越しをいただいております。
 以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,議事に入りたいと存じます。若干,参考資料の順番を調整いたしますけれども,御発表に当たりましては各団体とも15分程度で御発表いただければと存じます。その後にまとめて質疑応答,意見交換を行っていきたいと思っております。
 それでは,最初に一般社団法人日本映像ソフト協会,酒井様,小林様,よろしくお願いいたします。

【酒井氏】  日本映像ソフト協会の酒井と申します。本日は「『間接侵害等』に関する考え方の整理」に関しまして,意見を申し述べさせていただく機会をいただき,ありがとうございます。弊協会内に法制度委員会という委員会がありますが,そこでこの「整理」につきまして検討させていただきまして,意見をまとめさせていただきましたので,その委員会を担当しております小林より,配付資料の説明とその要点の発表をさせていただき,その後,私より補足説明させていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【小林氏】  日本映像ソフト協会の小林と申します。まずは私の方より,弊協会の法制度委員会でまとめた資料に関しまして,また,意見の概要の説明をさせていただきます。
 本日は,「『間接侵害』等に関する考え方の整理」に対する当協会の意見という資料を御用意させていただきました。弊協会の意見としましては,資料の1ページにございますとおり,50回にわたるワーキングチームでの御審議の成果を踏まえ,本小委員会でさらに慎重な審議を進めていただき,間接侵害に対する差止請求が一定の場合に認められるべきということを公にしていただくことを要望いたします。しかしながら,本「考え方の整理」でお示しいただきました3類型の立法化につきましては,慎重にお考えいただきたいと思っております。
 また,資料の5ページに飛びますが,5ページで述べておりますとおり,弊協会の会員社が現在,深刻な課題と考えておりますリーチサイトに対する差止請求についても,リーチサイトなどに関する実態調査の報告書(*)が本年3月に公表されておりますので,その結果を踏まえてさらに検討し,その結果を本小委員会の報告書に反映していただきたいというのが弊協会の意見となります。
 本「考え方の整理」にかかわる意見の理由といたしましては,2ページより4点にまとめさせていただきましたので,概要を説明させていただきます。まずは2ページの立法措置の必要性についてですが,理由については箇条書きで挙げているとおりです。不法行為の継続を放置することの妥当性の観点から,間接侵害に対しましても差止請求は認められるべきではないかと思っております。また,現行法の解釈でも間接侵害も差止請求の対象となるとの見解もございます。ですから,立法措置を講じなくても間接侵害についても差止請求は認められるべきではないかという立場で意見をまとめさせていただきました。
 3ページ目は,判例法理と本「考え方の整理」の3類型との関係に関して不透明であるということです。3類型自体が裁判例の積み重ねによらなければ内容は明確にならないのではないかという疑問がございます。
 4ページ目は従属説の当否についてですが,当否についても諸説がございます中で,従属説によるべきとの方向性を確定してしまう必要はないのではないかという意見をまとめさせていただきました。
 5ページは先ほど申し上げましたとおりで,6ページについてはリーチサイトの特徴を,先ほど述べた報告書に基づきまして,被害に関する状況も含めてまとめさせていただいております。
 以上が意見の概要の説明になります。
(*)電気通信大学「平成23年度知的財産権侵害対策ワーキング・グループ等侵害対策強化事業(リーチサイト及びストレージサイトにおける知的財産権侵害実態調査)報告書」< http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E002243.pdf>

【酒井氏】  それでは,私より,それぞれの意見につきまして補足説明をさせていただきます。
 まず,配付資料2ページに記載してございます立法措置の必要性についてでございます。特許法101条には間接侵害に関する規定があるのに,著作権法にはそういう規定がないことや,それから,不法行為に基づく差止請求が原則として認められていないというようなことなどから,現行著作権法の解釈論としましては,間接侵害に対する差止めに否定的な御見解があることは承知しております。
 しかしながら,不法行為に基づく差止請求を肯定する有力な民法学説もございますし,また,現行著作権法は特許法101条が創設された後に制定されているにもかかわらず,その制定過程で間接侵害に対する差止請求を否定する議論があったというふうにも思われません。著作権制度審議会答申や答申説明書,それから,当時『ジュリスト』に連載されました「新著作権セミナー」などにも当たってみましたけれども,そのような御議論は見つけられませんでした。また,作花審議官の御著書を拝見いたしましても,112条1項の解釈論としましても間接侵害を含まないと解するという理由は必ずしもないというように記されているかと思います。今回の「考え方の整理」でも,間接侵害に対する差止めを一切認めるべきではないという御見解はないように思われます。
 差止請求は,我妻先生の民法講義Ⅱの「物権法」などを拝見いたしましても,22ページで記されていますように,物権が目的物に対する直接の支配権であることに基づいて当然に認められるものであり,民法でも間接侵害に関する規定は置かれておりません。そして,我妻先生の同じ御著書で23ページから24ページでは「請求の相手方は,みずから物権の妨害状態を生ぜしめた者に限らず,その者の支配に属する事実によって物権の侵害状態を生ぜしめている者をすべて含む」とされています。間接侵害に対する差止請求が認められるかどうかという点は,物権の性質から法理論上どう考えるべきかという観点で考えられていると認識しております。
 このように,民法でも間接侵害に関する規定を特に置いていないのですから,著作権法でも間接侵害に関する立法措置をとらなくてもいいのではないかと思っております。
 間接侵害も112条1項の対象となり得るのだということを本小委員会の報告書などで公表していただきまして,あとは著作権の性質に基づく法理論上の問題として,法原理部門である司法の判断に委ねるのが妥当ではないかと思っております。
 次に,配付資料3ページ目の判例法理と3つの類型について意見を申し述べさせていただきます。本「考え方の整理」の3類型の立法化による効果につきましては,本小委員会の委員の諸先生方の御認識も分かれておられるように思われます。前回のヒアリングで配付されましたJASRACさんがお作りになりましたフローチャートのように,間接侵害に関する3類型の立法化が限定列挙であって,かつ,不法行為に基づく差止請求を否定する趣旨であるとするならば,直接支配権としての性質から当然に認められるべきケースが差止請求の対象外とされ,具体的妥当性を欠くケースが生じるのではないかと懸念しております。むしろこの3類型を見ますと,既に判例法理で差止請求が肯定されているようなケースであり,今これを立法化しなくてもいいように思われます。
 次に,配付資料4ページ目でございますが,従属性につきましてでございます。従属性につきましても諸説あるようでございますし,間接侵害について従属説をとったとしても,直接侵害を広く認めるならば,従属説と独立説との差異がなくなります。そうだとするならば,本小委員会であえて従属説か独立説か,どちらか一方によることを決めて立法化する必要はないのではないかと思っております。
 それから,5ページ,6ページにリーチサイトについて資料を御用意させていただきました。前回のヒアリングにおきまして,リーチサイトの問題は間接侵害の問題と別枠とすることになっている旨の御説明がありました。しかし,弊協会といたしましては,差止請求の対象となるかどうかに対し,最も関心があるのがこのリーチサイトの問題でございます。弊協会の会員社は,映画やドラマ,アニメ等をパッケージソフトとして販売したり配信したりしております。そうした商業用コンテンツが大量に違法配信されるということは,コンテンツビジネスの阻害要因となっておりまして,その対策のために各会員社は人員を割いて対応をしております。しかしながら,一向に違法配信というのは後を絶たないという状況にございます。
 前回,レコード協会さんも御指摘になっておられましたが,先ほど小林が御紹介させていただきました実態調査報告書の15ページでございますが,そこではリーチサイトによる配信の被害を平均視聴回数で見ますと約62倍,それから特定のリーチサイトについては311倍に増幅されているという実態が明らかにされております。リーチサイトによる被害の増幅は違法配信と同等ないしそれ以上にコンテンツビジネスの阻害要因になっていると思われます。
 また,弊協会の会員社には本格的に映像配信市場の形成,拡大を目指したいと考えているものの,違法配信とそれを助長するリーチサイトや違法コンテンツにリーチしてダウンロードする機能を有するスマートフォンアプリの出現等が,その阻害要因になっていると感じている事業者が多くいます。映像配信ビジネスはこれから拡大が見込まれる市場であり,その市場形成の段階にあって大きな阻害要因の排除は喫緊の課題と考えております。また,ユーザーの皆様からも正規配信の拡大を求める声が聞かれるところでもあります。
 こうした理由から,弊協会といたしましては,コンテンツビジネスの阻害要因となっている違法配信と,それを助長するリーチサイト等につきまして,もっと実態に踏み込んだ御見解をお示しいただきたいという希望を持っております。先ほどから申し上げております実態調査報告書の175ページでは,「実態調査で明らかになった事実を,規範的に考えれば,一連の侵害コンテンツ拡散のスキームの中心的な役割をリーチサイトが担っていることや,一般的に利用されているリンク行為とは異なり利用者の違法行為を助長しコンテンツホルダーに被害を与えているとの評価は揺るぎようが無い。」と記されております。
 この評価は,リーチサイトでは放送番組の放送された曜日ごとにインデックスがつけられていたり,あるいはタイトルの五十音順,それから,人気ランキング順などのインデックスがつけられていることや,リンク先のサイトが侵害コンテンツばかりであるというようなこと,通常の検索機能では検索できないような,アップローダーに置かれた侵害コンテンツへのリンクが設定されたりしていること,こういったような詳細な実態認識に基づいてこういう評価をされているわけであります。
 差止請求権は,過去の侵害行為に対する責任を追及するというものではなく,現に生じている権利侵害状態を除去し,あるいは生じるおそれのある権利侵害を未然に防ぐためのもののはずだと思います。そこで考慮されるべきは,過去の「権利侵害行為」ではなく,現に生じ,または生じるおそれのある客観的な「権利侵害状態」だと考えます。それゆえ,現に生じている「権利侵害状態」が不可罰的事後行為によって生じているか,継続中の侵害行為によって生じているかは,差止請求権の成否の考慮要素とはならず,故意,過失というような関与者の主観的事情も考慮要素とはならないというのが民法学の通説ではないかと認識をしております。
 我妻先生の『事務管理・不当利得・不法行為』(新法学全集)の198ページでは,「因って生ずる損害の種類や程度と,侵害行為を禁遏することにより生じる社會的損失の種類や程度を相關的に考察して決せられるべき問題」とされています。この視点から見ますと,侵害コンテンツへのリンク行為に保護に値する社会的利益があるのかという点にも疑問がございますし,サイト運営者にリンクを切除させることに大きな負担が存するようにも思われません。個々のリンク行為であれ,リーチサイトであれ,現に生じている権利侵害を増幅する状態をそのままにし,損害が生じるのを待って損害賠償をすべしとすることを正当化する理由があるのか,非常に疑問に思っております。
 本小委員会におかれましては,この報告書に示されました実態から見まして,リーチサイトや侵害コンテンツへのリンクを差し止めることにより,どのような社会的損失がどの程度生じるのか,それから,権利侵害を増幅させている状態を権利者が甘受すべき理由があるのか,こういった点につきましても御審議いただきまして,その結果を本小委員会報告書に記載していただけるとありがたいと思っております。
 差止請求の相手方の問題は,著作権法上の権利をどのように制度設計するかという問題に比べまして,立法政策の側面は少ないように思われます。立法政策の判断を経て定められた排他的権利の侵害状態が生じ,または侵害状態の生じるおそれがある場合に,権利の円満な状況を回復しあるべき権利状態にすることと,それによる社会的損失との利益衡量という具体的妥当性の問題ではないかと思われます。したがいまして,間接侵害も差止請求の対象となり得るという意見の一致を見たことを本小委員会及び著作権分科会報告書等で公表していただきまして,具体的運用につきましては法原理部門である司法の判断に委ねるのが妥当ではないかと考えている次第でございます。
 以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,続いて一般社団法人電子情報技術産業協会から榊原様,太佐様,赤松様,よろしくお願いいたします。

【榊原氏】  電子情報技術産業協会の榊原でございます。
 お手元の資料3をごらんください。まず,間接侵害の立法措置の必要性につきまして,一のところで「はじめに」とございますところから御説明させていただきます。
 司法救済ワーキングチームにおきましては,間接侵害の立法的措置のあり方につき,約50回,5年間にもわたり十分な検討をいただいたことに敬意を表したいと思います。ワーキングチームの労を無駄にすることなく,「間接侵害等に関する考え方の整理」に沿った速やかな立法がなされるべきと考えております。
 次に,差止請求の対象につきましては,一定の範囲の間接行為者も差止請求の対象とすべき点については異論はございません。
 それから,間接侵害成立の前提として,直接侵害の成立の要否につきましては,直接行為者による侵害の成立を前提とする考え方,いわゆる従属説につきましても賛同いたします。適法行為を誘引,促進することは,適法行為を累積蓄積するに過ぎず,適法な行為が違法な行為に転ずることはないはずであると考えております。また,従属説は刑法学者等の法律専門家の立場からすれば自明だと理解しておりますが,ワーキングの結論として,著作権法の分野においても同様であるということが,著作権法の専門家の方々に御確認いただけたことに意義があると考えております。
 四のところですが,間接行為者の類型化につきましては,予測可能性や明確化に寄与するものと評価しておりまして,112条などで条文化をいただきたいと考えております。現在,多くの判例,裁判例,それから専門家による評釈が乱立しております。このような状態が新規サービスに対する躊躇や萎縮効果をもたらしているということを御認識いただきたいと考えます。差止請求の対象となる間接行為者の類型の立法化によって萎縮効果が軽減され,新規ビジネスの推進が期待できます。また,同時に,ユーザーが技術による利便性という利益を享受できるような社会を作り出すことにも貢献できると考えております。法律である以上は規範的解釈がなされる部分は残るとしましても,立法による判断基準が示されれば多くの裁判例が乱立している現状よりも解釈の統一化が促進され,さらなる予測可能性の向上が期待できるのではないかと考えております。今後,小委の委員の先生方によって類型化中の表現,例えば「侵害発生を知り,又は知るべきでありながら」とか「侵害発生防止のための合理的措置」といった表現について,この場で意見交換や確認がなされ,可能な限り明確化が図られることを望んでおります。
 1ページ目の最後ですけれども,解決いただきたい具体例としまして,当協会の会員や多くの日本企業はグローバル競争や価格競争の下にさらされております。デジタル化,ネットワーク化が発展する中で,従来の物の売り切り型ビジネスでは企業経営は立ち行かず,サービスと組み合わせた新たなライフスタイルの提案や顧客の要望に応じたソリューションの構築など,新しいビジネスモデルを提供しなければならなくなってきております。しかしながら,ビジネスの現場では著作権侵害に対するかなりの萎縮的効果が生じております。その代表例としましてクラウドとメディア変換がございます。今般の「考え方の整理」に沿った立法化がなされれば,いかなるクラウドやメディア変換が適法であるかについて,予測可能性や明確化に寄与すると考えております。
 これらの事例のうち,一定の範囲については社会的ニーズが高く,他方で権利者の利益を損なう可能性も低いことから,認められるべきと考えておりますが,その解決方法としましては,今般の間接侵害の立法化の審議の中で整理いただくか,それとも権利制限規定の創設によって対処するかのいずれかの解決をお願いしたいと思っております。後ほど,この解決いただきたい具体例についてはプロジェクターの方で補足説明をさせていただきます。
 次に六としまして,直接行為者の範囲につきましては,「著作権間接侵害の基本的枠組(説明用レジュメ)」において,「直接行為主体」は「入口で振り分ける重要な分岐点である」,あるいは「擬制的でない正しい直接行為主体の認定が強く求められる」とされている点は全くそのとおりであり,この点は当協会の重大関心事であります。今般の「考え方の整理」に沿った立法化がなされることにより,差止請求の対象となる間接行為者の外延が明確化され,その結果として擬制的でない正しい直接行為主体の認定が行われることを期待しております。
 同レジュメで検討の明確化の分析軸として要件化が試みられている点は,擬制的拡張的直接侵害に対する歯止めとして,予測可能性や明確化に大きく寄与するものと評価しておりまして,小委で更なる議論がなされることを期待しております。
 最後に「その他」としまして,出版社の権利付与について,いろいろな場で議論されているようですが,新設した権利を行使することが想定されている,いわゆる自炊代行につきましては,適法とされる場合がありましょうし,また,新たな権利の創設・付与がクラウドなどの新規ビジネスを阻害するおそれがあるのではないかと考えております。諸外国でかような立法例はほとんどないということですし,立法化の要否や内容については審議会の場などでの慎重な議論を望んでおります。
 最後に30条の見直しにつきましては,間接侵害の従属説を採用するという立場に立ちますと,30条についても検討の必要性は認められるものの,2つの大論点を同時に検討すれば議論は錯綜し,長期化は避けられないと考えております。したがいまして,まずは間接侵害の結論を得た上で,その後に30条について御議論いただきたいと考えております。
 続きまして,プロジェクターの方で補足説明をさせていただきたいと思います。先生方,後ろ側で申しわけありませんが,ちょっと振り返ってごらんいただければ幸いです。
 まず,具体例の1つ目,クラウドサービスについてでございます。左側の消費者がせっかく買ったのだから大好きなコンテンツを家でも外出先でも楽しみたいと,そういったニーズが現在ございます。この消費者が購入をしたり,どこかで入手したコンテンツをこのストレージクラウドサービスに預けます。音楽の場合もあれば,動画だったり電子書籍,文書,写真,ゲーム,いろいろなものが考えられます。これを消費者が保有する様々な機器で楽しみたいというニーズがございます。その場合には,様々な機器の端末に適した形式にフォーマット変換をするということが必要になりまして,それをサービス事業者の方で行います。そうすることによって,例えばどこかで購入した音楽を携帯で通勤中に聞いたり,ドライブ中に動画を見たり,また,自宅でゲームをプレーしたりということが可能になります。
 これにつきましては,サービス事業者の方は,このストレージは個人のユーザーのみがアクセスできるところなので,当然,中に何が入っているかということを見ることはできません。米国ではこういったサービス,既にGoogle MusicやAmazon Cloud Playerといった会社がサービスを提供しています。これらのサービスの共通点は,やはりオンラインストレージ上にユーザーが音楽ファイルをアップロードし,音楽だけに限らないと思いますけれども,サーバー上のファイルを様々なデバイスで再生できるようにするということがポイントになっております。このGoogleやAmazonのサービスというのは,法的な問題をそのままにしてサービスを始めたというわけではなくて,ケーブルビジョンという判決をきっかけにクラウドサービスが展開されたということで,単品の売りからサービスへということが米国で起こっているということです。
 別の例ですけれども,これもケーブルビジョン判決を受けて,全米最大のケーブル局のcomcastという会社が類似サービスを検討しているという例でございました。こういったサービスが米国では既に可能になっているということで,当協会としても同じようなサービスをするニーズがユーザーにもあるということです。産業界でもそういうことをやりたいというふうに考えているわけです。
 Googleはアメリカではサービスをしているわけですけれども,日本ではこういうサービスは現在行われていないと。これはコンテンツを預けると,先ほど申し上げたとおり,消費者が所有する様々な機器,スマートフォンやタブレットで再生することができます。それから,さらに同期とかシンクロと言われるサービスですけれども,サーバー側だけをアップデートしておきますと,いろいろな様々な端末がそこにアクセスをすると,すべての機器の内部もアップデートされていくというようなことも可能になっております。Google以外にAmazonも同じようなサービスをやっていますが,日本からだと利用できず,現在は米国ユーザー限定というふうになっているそうです。
 こういったサービスを当協会もやりたいと思っているわけですけれども,なかなか萎縮をしてできないということです。これは例えば,会員企業の会社の社員同士の会話でございますが,「日本の裁判例によると,AmazonやGoogleのサービスは日本ではできないんだよね」と,商品やサービスを企画する人から質問されるということが日常起こっています。私どもも「できると言いたいけれども,どうなるかわからないので保証はできないわ」というふうにお答えをせざるを得ないことになります。「社会的に意義があるから裁判でどうなるかわかりませんけれども,まあ,やってみましょうよ」と言いましても,「確かにそのとおりだけれども」ということで,これがいわゆる萎縮効果というもので,ほとんどのサービスは検討はするのですけれども,なかなか実現には至らないというのが現状でございます。
 次に,2番目の具体例としまして,メディア変換サービスというものがございます。メディア変換サービスの典型例としましては,例えば古いVHSテープを新しいメディアに書きかえたいというものです。御自宅にたくさん録り貯めたビデオテープがあって,古いVHSプレーヤーはもう捨てたいというニーズがございます。ただ,古いVHSプレーヤーを捨ててしまいますと,そのビデオが見れなくなるので,新しいDVDやブルーレイに書き換えたいということです。ないしは,先ほどの例のようにクラウドに保存をしたいという例がございます。これはユーザーの方にとってもできることですけれども,やはりよくわからないとか,忙しいとかいうことで,自分でやるのではなくて業者にやってもらいたいというニーズがございます。メディア変換サービスにつきましては,いろいろなタイプのメディア変換サービスがあります。これらをすべて業者が手伝うと違法になるということについて,問題があるのではないかと思います。一部については認めてもよいのではないかということを検討いただきたいと考えております。
 ここに挙げました例で,左端からブルーの線で囲ってあるところは,基本的に利用者がコンテンツを用意したというものなんですけれども,左端の方は既に個別の権利制限が対応措置をされているというもので,左端から行きますと,例えば古いテープの救済というのは,先ほどのVHSテープのような例ですし,互換性確保目的とか,クラウドというのは,例えば様々な端末機器で使えるようにするために,サービス事業者側でフォーマットを変換してあげたりするというようなことが含まれると思います。また,実際にスキル,時間がないために,自分でできないのでやってほしいというような,物理的な行為を依頼をされるというようなケースもございます。
 右の方に行きますと,大量に複製するとか,業者がコンテンツを用意するとかいったようなものは,当然,認められるべきではないのだろうと考えておりますが,全部一律業者が手伝うとだめなんでしょうかということです。社会的ニーズが高くて権利者の損失が少ないものについては,何らかの措置が必要なのではないかということで,これが間接侵害,直接行為者の要件化のところで,例えばコンテンツ提供することによって直接行為者がユーザーになるというような御検討も前回の資料でされていましたので,それと従属説の組み合わせで,ある程度ユーザーが主体になるということであれば,今般の間接侵害の中である程度は明確化ができるのかもしれませんし,それが無理だということであれば,個別の権利制限規定で解決いただきたいというお願いでございます。
 最後に,これは適法行為の支援サービスの権利制限をもしつくるのであれば,こういった試案が考えられるのではないかと,書かせていただいたもので,自ら消費者に代わって第三者,業者が複製をさせることができるという例で,例えば,ユーザー自身が複製権限を持っているということ,ユーザーが適法に入手した著作物をコピーのオリジナルとすること,それから,必要最低限の部数,例えば1部とか2部に限定をすること,そして,コピーの終了後にはコピー元を依頼者に返還したり廃棄をするということ,著作者の利益を不当に害しないこと,といったような厳格な要件で認めていただくということも一案ではないかと考えております。
 JEITAからは以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは続きまして,一般社団法人インターネットユーザー協会の小寺様,相馬様,よろしくお願いいたします。

【相馬氏】  インターネットユーザー協会,MiAUの相馬と申します。本日はこのような機会を設けていただきましてありがとうございます。
 資料4に当協会の意見をまとめさせていただいておりますので,そちらに従って御説明させていただきます。
 まず,インターネットユーザー協会の立場を述べさせていただきますと,間接侵害の創設につきましては反対の立場をとっております。ただし,これから述べさせていただく3つの問題点について解決される場合には賛同したいというような立場でございます。
 では,その3つの問題点について順に述べさせていただきます。
 まず初めに,いわゆる「カラオケ法理」などによって過度に拡張された直接侵害の範囲を縮小・整理し,その上で間接侵害を定義することが必要であるというふうに考えております。これまで間接侵害がなかったことから「カラオケ法理」によって直接侵害の範囲を広げ,擬制的に直接侵害として対処してきたというふうに認識しております。したがって,新たに間接侵害を規定するのであれば,直接侵害の範囲をここで整理をした上で,間接侵害を規定するというような必要があると考えております。
 先日行われましたヒアリングでは,JASRACさんなどから過去の判例には十分な蓄積があって,その維持を望むというような御意見がございましたが,そうであれば新たに間接侵害を創設する意義というのがどこにあるのかなというふうに思えるところでございます。これまでの判決を受ける形で立法して,そういったこれまでの判例というものを明確化するというところに意義を持って間接侵害を創設するというのであるのか,それとも,これまでの直接侵害の拡張,擬制というところに限界があって,現状ではどうしても対応できないというような問題があるために間接侵害を創設するというところがその意義としてあるのかというところで,検討の趣旨というところがどこにあるのかなと,不明確かなというところがございます。
 直接侵害を整理せずに新たに間接侵害を規定するということになりますと,直接侵害にも問えるし,間接侵害にも問えるというような事案というものも出てくるように思えますし,重複しつつもそれぞれに独立した領域というところに拡張されていくという部分もあるんじゃないかなというふうにも考えております。そうなってくると,著作物にかかわるサービス,製品等々が今後,萎縮していくというようなことも考えられますし,そうなりますと,そういったサービスを利用できていたはずのユーザー,消費者の不利益にもつながるというふうに考えております。
 以上の理由から,直接侵害として扱うべきものと間接侵害として扱うべきものを明確に区別,分けた上で,整理した上で間接侵害を規定するべきであるというふうに考えております。
 続きまして,当協会が考える2番目の問題点といたしましては,公正な利用を著作権侵害としないことで,間接侵害の範囲を過度に広げないようにすることが必要であるというふうに考えております。
 インターネットやウェブサービスというものが発達いたしまして,それにあわせてデジタル機器というのが一般に普及しております。その中でユーザーの考える私的領域の範囲というのは確実に広がっております。例えば,先ほどJEITAさんからも御説明がございましたけれども,オンラインストレージやクラウドサービス,メディア変換サービスといったものでは,サーバーにデータが複製され,それをユーザーが利用する際にはサーバーからデータが送信されるというような形態をとっておりますが,そのサービスを利用する消費者,ユーザー当人にとっては,外部のサーバーにアップロードして複製して,それを使うときに受けているというふうな感覚で使っているというよりは,そこは自分の領域であると,私的な領域であるという認識の下で保存し,利用しているというような感覚であるというふうに思います。しかし,このような感覚で利用しているものであったとしても,現行法に照らせば,例えばMYUTA事件のように,著作権侵害とされるものもございます。しかし,ユーザーが正当に取得した著作物で,かつ私的使用を目的としているのであれば,権利者の方に新たな経済的損失が生じるというものではないのではないかと考えます。先ほど,JEITAさんから御説明いただきましたけれども,私たちも同様の考えを持っております。したがって,実質的に私的使用を目的としているというような場合には,ある程度,手段の制限等々を緩和してもよいのではないかと考えております。
 例えば,著作権法第30条1項1号では,私的使用目的であっても,公衆自動複製機器を用いた複製というのを禁じておりますけれども,私的使用を目的としているのであれば複製がどこで行われるかという違いはあったとしても,実質的に自身が所有する複製機器で複製するというのと変わらないのではないかというふうに考えます。私的利用目的の複製であることを考えると,それを私的複製として認めてもよいのではないかというふうに考えます。
 また,第30条1項柱書きの,「その使用する者が複製することができる」というところにつきましても,同様の理由から,利用者以外の者であっても一定の範囲で複製を行えるようにすべきであるというふうにも考えております。
 また,第30条以外のところでも,時代に即した公正な利用を規定するために,アメリカのフェアユースに該当する条件を国内事情に照らし合わせて検討するなど,国際的にも整合性のとれたものにするべきであるというふうに考えております。
 以上,間接侵害を創設するに当たっては,ユーザーによる著作物の利用を過度に制限する規定について,実際にどのように利用されているのか,これからどのように利用されていくのかというふうな視点を踏まえた上で,ユーザーの利便性を損なわないような形で検討していただければと思っております。
 続きまして3点目として,間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定することについて述べさせていただきます。
 司法救済ワーキングチームの取りまとめでは,間接侵害の定義に一部曖昧なところがあるのではないかというふうに思われます。特に類型2,3について意見を述べさせていただきますと,類型2では,「侵害発生の実質的危険性を有する」でありますとか「知るべきでありながら」というふうにございますけれども,これらにつきましては具体的にどのような状況であるのかと。どういった要件によってそのように判断されるのかというのがちょっと分かりにくいなというふうに思います。
 また,「侵害発生の防止のための合理的措置」という部分につきましても,一体それがどういったものが合理的措置とされるのか,今後そういった措置,合理的措置としてどんどんエスカレートしていくのではないかというふうな危惧もございますし,ある種の監視義務というものを課すようになってしまうようになってしまうのではないかという部分も危惧しております。
 類型3につきましては,司法救済ワーキングチームの取りまとめにおいて,「当該ウェブサイトに無許諾の音楽ファイルを投稿することを積極的に呼びかける者」というふうな例示がされておりますけれども,例えば,無断アップロードをしましょうというように呼びかけるようなウェブサイトというのは現実的にはなくて,別の形で暗に呼びかけているという形になっているというふうになると思いますので,じゃあ,どういった業態が侵害発生を積極的に誘引する業態に当たるのだろうというふうに,ちょっと分からないなというふうに思うところがございます。
 また,間接侵害の類型といったものが1から3についてなんですけれども,これがどこまでの射程を持っているものなのかという点につきましても,ちょっとまだわからないなというところがございます。
 例えば,日本には世界に誇る同人文化というものがございますけれども,その活動の中心の一つであります,コミックマーケットといった同人誌の即売会も開催されておりますけれども,それを開催する人もその中で多くのパロディ作品を扱うというものでございますから,これも間接侵害だということになる可能性もございまして,差止請求の対象となるというふうなことも考えられます。当協会といたしましては,同人というのはなかなか判断に困るものではございますけれども,文化の発展や多様性を支えるという側面もございますので,一意に違法化すべきではないというふうに考えております。そうした点につきましても,一定の配慮というものが必要ではないのかなというふうに考えております。
 以上が当協会の間接侵害についての意見でございます。
 続きまして,小寺の方からリーチサイトについての意見を述べさせていただきます。

【小寺氏】  MiAUの小寺でございます。リーチサイトについて意見を述べさせていただきます。
 リーチサイトへの規制というのは,私どもの立場としては全面的に反対の立場でございます。まず,そもそもインターネット技術というのは,リンクという行為をもって,それが根幹技術であるわけですから,リーチサイトへの規制ということは,おそらくリンク行為を規制していくということになっていくのではないでしょうか。そうなると,ユーザーの通常のインターネット利用に重大な影響を及ぼすことになりかねないわけですから,当然ここは慎重にならざるを得ないわけです。
 現在,懸念されておりますリーチサイトとか,あるいはリーチアプリというようなパターンでしょうか,非常にわかりやすい形態,一つの固まっている形態というのを想定されていらっしゃると思うんですけれども,インターネットの特性としては,そのようなわかりやすい形ではなく,そういったリンク集のようなものが,例えばSNSのようなコミュニティーの中に溶けていってしまうような状況というのも当然,考えられるわけです。私どもとしても当然,著作権侵害を誘引するようなサイトを支持するわけではないわけですけれども,一番の懸念は,冤罪の可能性であったり,あるいは一般のインターネットの利用者の知的活動が萎縮するのではないかという懸念が大変に大きいことでありますので,別の方法でリーチサイトへの問題は対処できるのではないかと考えています。
 別の方法というのは,一つは,マネタイズというところを押さえるというところが効果的ではないかというふうに考えております。多くの違法コンテンツを掲示しているサイトでは,基本的にはそれで対価を取ってマネタイズをしているわけですけれども,それは,その利用者から何らかの形で決済をしなければならないわけで,その決済をしているところ,例えばクレジット会社であったり,あるいは電子マネーの決済会社であったりというところに協力を要請して,それの決済を差し止めていくというようなことが,海外の事例でもこのような侵害サイトに対して効果的であるという事例があるようです。このように民民の取り組みでまだやれる余地が残されているわけですから,そちらの方をまずは推進していくということが妥当ではないかと考えています。
 私どもの方からは以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,最後になりますけれども,日本放送協会・一般社団法人日本民間放送連盟,笹尾様,大澤様,よろしくお願いいたします。

【笹尾氏】  承知いたしました。民放連,笹尾と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は日本放送協会及び日本民間放送連盟共同での意見ということで申し上げさせていただきます。
 資料1を御参照いただければと思います。日本放送協会,民放連加盟の放送事業者は権利者として,さらに権利者の皆様方から様々な権利をお預かりして利用するという立場で,日々,事業をやっているわけでございますが,はっきり申し上げまして毎日のように権利侵害というものにさらされております。それらの脅威に様々な形で対処しているということが日々の業務となってしまっているという状況でございます。しかも,いろいろな新しい形で,全く予期せぬような形で権利侵害がそこかしこにあるという中で,ワーキングチームが「考え方の整理」の「2.考え方」の冒頭で,権利侵害というものの発生に関しまして,その因果的寄与の強度という点において直接行為者と価値として同様のものとして評価されるのであれば,一定の範囲の間接行為者も差止請求の対象とすべきという考え方をお示しいただいたことに関してまず感謝申し上げます。本当に長きにわたってこのテーマに関して様々な御議論を続けていただいたということにも感謝申し上げます。
 ただ,資料1の最後の方にもあるのですが,私どもの結論といたしましては,立法措置に関しては慎重であるべきではないかという結論に至っております。まず私どもの現状認識というところを資料に沿って御説明申し上げますと,いわゆる裁判の中で,2ちゃんねる事件,ファイルローグ事件,ここにありますような様々な裁判の中で,本当に先ほど申し上げたようないろいろな形で権利侵害というものが起きてきたという中で,現行の著作権法を前提として,直接侵害主体を弾力的に認定していただき,個別ごとにケース・バイ・ケースで妥当と思われるような結論が導き出されてきて,差止めも容認されてきたという認識に立っております。
 それから,放送事業者にとっては極めて大きな影響を持ちましたまねきTV及びロクラクⅡ両事件の最高裁の判決があったわけでございますが,これらに関しましても先ほど申し上げたような判例と方向性が同じと申し上げましょうか,直接行為主体というものを弾力的に認定するということで,個別の事案ごとにケース・バイ・ケースで結論を導くという立場を最高裁として示していただいたというふうに受けとめております。
 立法措置の必要性というところでございますが,ここまでのところ,私どもの周辺では,本来,差止めがなされてしかるべきであるにもかかわらず,間接侵害の規定がないために,例えば侵害自体が否定されたり,あるいは肯定されても差止めが否定されたという裁判例は,括弧の中にありますように,上級審で変更されたというものはあるのですが,ないのではないかというふうに認識しております。
 さらに,第2回の小委員会の御議論の中で,委員の方の御指摘にもあったと思われますが,裁判所が判断している管理性とか支配性といった概念に関しましては,これまで様々な判断が示された中でのある一定の相場観というものがもう醸成されているのではないかと。つまり,今回の立法措置ということによって,何かを明確にしていかないといけないという,そうしないと行為者の予見可能性が確保できないとまでは言えないのではないかというふうに考えております。
 新たに間接侵害に関する規定が改正・新設されたとしても,このような上記の最高裁判所の行為主体の判断手法,これに影響を及ぼすとは限らないのではないか。試案の中でお示しいただいている3つの類型というようなものがございますが,このあたりに関しては他の団体さんでも御発言があったように,この類型の解釈というものも一様な解釈ができるのかどうか,というところがございますので,侵害の有無についての予測可能性を高めるという効果はなかなか期待できないのではないかと思っております。
 この方向性では,直接侵害と間接侵害の重複部分というものが,より一層この辺の判断の混乱を招いてしまうのではないかという考えに至っております。
 先ほど申し上げましたように,権利侵害というのは毎日ありまして,それに対処しているわけでございますが,結論といたしまして,現時点において,現在の著作権法の下で間接侵害の規定が存在しないがゆえに,いわゆる司法の救済というものが不十分であるとか,権利侵害あるいは差止めの対象が不明確であるといった,間接侵害の立法化を進める具体的な,差し迫った必要性に関しましては,私ども認識しておりません。先ほど申し上げましたように,直接あるいは間接の侵害の重複部分を生じさせることによって,混乱を招く要因になってしまわないかということが,その懸念がぬぐい去れないというところでございます。
 例として,間接行為者の類型というようなものをお示しいただいているわけでございますが,これが立法化の中で果たしてどういうものになっていくのかというのが,なかなかイメージできず,それが具体的になっていく過程で非常に限定的なものになる,あるいは非常に広いものになる,このあたりの懸念がぬぐい去れないというような意味もございます。
 したがって,現状においては少なくとも現在のお示しいただいた試案を前提に,この3つの類型に該当する間接行為者というものが差止請求の対象となることを明確にする方向での立法化,立法措置,これに関しましては慎重であるべきというふうに考えております。
 簡単でございますが,以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,残る時間で質疑応答や意見交換を行いたいと思っております。本日,意見を発表していただいた出席団体の方々に対する御質問や御意見がございましたらお願いいたします。

【大須賀委員】  一般社団法人電子情報技術産業協会の方に質問したいのですけれども,先ほどの資料の中でパワーポイントで説明された分,それの一番最後に,適法行為の支援サービスの権利制限試案という御説明をいただきました。その部分について御質問したいのですがよろしいでしょうか。
その説明内容で,「次の条件を満たす場合には,自らに代わって第三者に複製をさせることができる。」という見出しになっていて,この見出しだけですと30条1項のことを書いてあるようにも見えるのですけれども,全体を見ると,間接侵害で非侵害となる場合のことを書いておられるようにも思えます。そこで,この試案の法的な位置づけとしては,どういうものとして作っておられるのか,そのあたりがはっきりわからなかったものですから,御説明をいただければと思います。

【榊原氏】  御質問ありがとうございます。
 この前に具体的に説明させていただいた2つのような事例が,ある程度可能になるということを求めておりまして,その方法についてはいずれでもいいということで,こういった個別の権利制限規定のような,例えば30条を直すということも方法論としてはあるでしょうし,また,別途の規定を設けていただくということもあるでしょうし,さらには間接侵害の議論の中で,直接行為者との分岐点ということが議論されていますので,例えばその直接行為者について従属説との組み合わせで解決いただけるのであれば,こういった規定は多分不要になるのだろうということで,これ自体は権利制限規定の一形態としてはこういう解決方法があるのではないかということで御提示させていただきました。ただ,これに限って,こういった方法をとっていただきたいという,限定した意味ではございません。

【土肥委員】  よろしゅうございますか。

【大須賀委員】  はい,ありがとうございました。

【土肥委員】  ほかにございましたらお願いします。いかがでしょうか。
 今日御発表いただいた団体の方々の中から,補足的な御意見とか,あるいはワーキングチームの考え方についての,もし質問などがありましたら,この際,よい機会かと思いますので,その辺もお出しいただいてもいいかと思いますが。
 酒井様,お願いいたします。

【酒井氏】  それでは,1つお教えいただきたいのですが,「考え方の整理」の中で間接行為者類型として(i),(ii),(iii)と3つ挙げられております。先ほど,ほかの団体さんからもお話が出ている要件でございますが,2つ目の類型で「侵害発生を知り,又は知るべきでありながら」という要件が入っております。これは故意過失を前提とする予見可能性の問題を議論しておられるのか,それとも因果関係の相当性か何かを判断する要件としてお考えになっておられるのか,その辺ちょっとよくわからないのでお教えをいただければと思っております。
 今回の間接侵害の問題は,差止請求の問題だと思いますので,差止請求だとすれば,故意過失という主観的要件は考慮する余地がないと思いますので,その辺ちょっと教えていただければと思います。

【大渕主査代理】  御質問ありがとうございます。
 今のはもう半分答えが出ているようなものですけれども,これはもちろん間接侵害として一番最初のところで留保してあるかと思いますが,損害賠償は民法の方の一般理論に委ねるので,これはあくまで著作権法上の差止めに限定してという話ですので,御指摘があったとおり,故意過失は差止めの場合には関係ないというのが大前提ですので,そういう意味での帰責性については,民法だと過失責任の原則の関係で,故意過失というのは当然,損害賠償の前提になってきますけれども,そういうものとしては全く異質の世界であります。ただ,ここでそれに似たようなものが出てきているのはどういう趣旨かという,そういうお尋ねではないかと思いますが,故意過失という損害賠償で問題になる帰責性としてのものとは全く別の話として,これは対象行為の絞り込みの過程で,そのような意味では先ほどのお尋ねからすると,因果関係の絞り込みのその一環として,「合理的な措置」というあたりでいろいろ知恵を絞って,組み合わせの中で出てきている一定の合理的範囲内に絞るために必要なものとしてのものであります。先ほどの御質問にも関係してくると思いますが,仮に「知り又は知るべきでありながら」という部分がなければ,そういう状態ではなくても,(ii)類型の対象になってくるのですけれども,ここは,そういう状態でなければ(ii)の類型には入ってこないという意味で対象行為を絞り込んでいるという趣旨でございます。

【土肥主査】  よろしいですか。

【酒井氏】  もう1点よろしいでしょうか。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【酒井氏】  そうしますと,仮に差止請求が起こった後に発生する権利侵害状態というのは,この第2類型でいくと,「侵害発生を知り,又は知るべきでありながら」という要件を満たすことになるのか,ならないのかということなんですが,差止請求を受ける前であれば知らないということはあるのだろうと思いますけれども,差止請求を受けた後,さらに侵害状態が継続しているという状態になりますと,これはもう知っているということになるんじゃないのかなという気がいたしますので,その辺もお教えいただければと思います。

【大渕主査代理】  御質問ありがとうございます。
 これも前回出た御質問にも関係していますけれども,これは差止めの対象行為をどう理解するかということにかかってきて,過去の1回だけのものなのかどうかというところにもかかわってくるお話ではないかと思います。これも考え方はチーム委員内で分かれるかもしれませんが,これはあくまで枠組みを定め,立法の暁にはこういうものが条文になるということで,その際には差止対象となる行為というのは個別的に判断していくので,問題になるのは継続的に行われているような性質のものではないかと思いますが,それは考え方としてはいろいろあって,1回やって終わりだという説もあるのでしょうけれども,私は個人的には,日々新たに,状態が改められることなく継続しているというように考えると,最終的にはこれも前々回あたりの御質問でお答えしたかと思うのですが,差止請求に関しては,その基準時においては,多くの場合には訴状の送達などで知る状態になっていますので,要件はこういう要件ですが,実際上は多くの場合満たすということになろうかと思います。その意味では,いろいろなものに対応するために条件を設定しておりますが,今言われたような,例えば訴状を送達されてきて,知っている状態になっていれば,要件はこうだけど,実際上はほぼ満たすようになるという,そういうことでいろいろな状況を念頭に置いた上でこのように規定しております。今の問いに対するお答えは以上のとおりです。

【土肥主査】  チーム委員の方で,何か今のやり取りといいますか,質疑応答について補足がございましたらお出しいただいていいかと思いますが,何かございますか。
 山本委員,お願いします。

【山本(た)委員】  私もワーキングチームの委員でして,ここの第2類型のところはかなり議論をやったところなので,どういうものが含まれるのかということについてちょっと補足させていただきたいと思います。
 これはかなり何度も御指摘があったように,わかりにくい文言です。想定しているのは,例えばあるサイトに違法物がアップされているというときに,まず一つは,現に違法物がアップされていれば,それを削除しろということを言えるのは当然だと思います。さらに,その前の段階で,例えばそのサイトに,極端な例で申しわけないですけど,95%,違法物ばかりが出ているというような場合に,そういうサイトが発生しないように合理的な措置をとるべきであって,95%も違法物が載るということをわかっていながら,そういうサイトをあえて開いているというのに対しては差止めができるというふうにあるべきだと考えています。したがいまして,合理的な措置としては,例えば最初の段階では違法物を載せてもらっては困りますという警告を載せるのは当然ですし,場合によってはフィルタリングをかけてそういう違法物が載らないようにするとか,その合理的な手段というのは状況でいろいろなものがあると思います。ここで考えられる合理的,抽象的,規範的な概念で申しわけないんですけれども,そういう合理的な措置をとらなければそれは差止めの対象にするという,いろいろな段階での合理的な措置をとらないと差止めの対象にするということを含めた,全体を表現するためにこの第2類型になっています。まあ皆さん理解するところは違うとは思うのですけれども,私はそういうふうに考えております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございましたらお願いします。質問などございませんか。
 今日御出席の方から何かありますか。
 ございませんか。委員の先生の中からございますか。小泉委員,ありますか。

【小泉委員】  目が合ってしまいました。感想でもいいのでしょうか。

【土肥主査】  はい,お願いします。

【小泉委員】  2回にわたって多くの関係者の方からご意見を伺うことができまして,立法事実の有無を確認するという意味で大変有益だったと思います。2つ感想というか,ちょっと心配なことがあって申し上げたいと思います。
 一つは,「考え方の整理」で提示されている3つの類型というものと,著作権の実効的な保護のために実務上,非常に切実に保護というか規制が求められている類型がずれちゃっているんじゃないかと。具体的に言うと,リーチサイトの話が,前回も今回も随分出てきていて,リーチサイトって非常に難しい問題で,相手がそもそもどこにいるかわからない場合もあるとか,ほんとうに裁判上,エンフォースできるのかという問題が多々あるとは思うんですけれども,随分その話が繰り返し繰り返し出されたなというのが非常に印象的でした。私はワーキングチームの委員ではないので,今さらそれはある種の蒸し返しだということでワーキングチームの委員からお叱りを受けるかもしれませんけれども,私が目にしているのはあくまでこの「考え方の整理」という1枚紙の部分だけなのでご容赦いただきたいと思うんですね。
 確かに法理論の問題として前回,大渕先生から詳しくご紹介ありましたとおり,いわゆる間接侵害というものとリーチサイトが全く同列には扱えないんじゃないかという,理論的な説明としては理解はできたんですけれども,審議会という場で,ほんとうに求められているものについて一応知恵をもう1回絞ってみるということが必要なんじゃないかなと。みなし侵害みたいなものも含めて検討して,現状ではなかなか難しいですねという結論でもいいんですけれども,もう少し詳しくご説明するのがいいんじゃないか。そうしませんと,お困りの類型は学問的には間接侵害にそもそも当たりませんということだけで終わってしまうと,私の心配し過ぎかもしれませんけれども,審議会というフォーラム自体への信頼というものがもしかしたら失われてしまう危険性というのがあるのかなと思いました。
 それから,2つ目ですけれども,他方で,最高裁の,乱立という言葉が今日使われましたけれども,判例の射程というのを明確化してほしいと。そのために立法してほしいというお話も随分出されました。お気持ちは非常によくわかるんですけれども,改正法を適用するのが裁判所のお仕事であるということを忘れてはならないと思うんですね。そうしないと我々のひとり相撲に終わってしまっていて,万が一,ロクラクの射程が及んでしまうかもしれないので,絶対に及ばないような条文をつくってくださいと,これで大丈夫ですと,我々がコンセンサスがもしあったとして,それで大丈夫なのかと。そういうことを審議会の報告書に書いて,世の中にある条文を送り出しましたと。私が2回目のときに言ったことなんですけれども,今までの法理というものと,今回の新しい条文というのがどういう関係になるかは送り出してみなければわからないので,これで大丈夫です,明確化しましたというのは,とんでもない空手形に終わってしまうんじゃないかということを,私は気が小さいのかもしれませんけれども,非常に,だんだん心配になってまいりました。
 長くなりましたけど,以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。

【大渕主査代理】  率直な御感想をありがとうございます。何か,もわもわしたのを出していただいて,かえってクリアになってよかったのではないかと思いますが,2点,順次申し上げます。
 まず,1点目は,これは学問的にというのは当然でありまして,そのために,前回も申し上げたとおり,ローマ数字のIとローマ数字のIIに明確に分けてあるのは,これは別のものを一緒にしてしまったら議論が大混乱して,そもそも議論にもならないということで,ここでは明確に分けているのであります。これはむしろ当然であって,別に学問に偏しているというのではなくて,私は学問と実務とは全く別のものとは思っていなくて,当然,理論と実務というのは,相携えながら車の両輪のごとく進んでいくものだと思っておりますので,これは理論だけに偏したわけではなくて,理論も踏まえた上で実務的なニーズも我々なりに踏まえた上で打ち出した結果でございます。Iの方は,直接侵害と区別された意味での間接侵害であって,これは刑法で言えば教唆とか幇助に当たるような,犯罪が終了する前に正犯の行為を助けるという性質のものであります。それに対して,リーチサイトの方は,前回もお話ししたとおり,メインは,おそらく違法ファイルの拡散行為という意味では事後従犯的という性質なので,両者は分けた上で検討すべきということでございます。これも,前提として30条問題とどちらを先にするのかというのにやや似ていますが,我々も,時間等の限られた中でやっておりまして,全能の神であれば全部の論点をすべて100%一気に,関連論点を30ぐらいまとめてやるというのもあり得なくはないのでしょうが,時間等の限られた中では,やはり物事には順番というものがあります。これも,どなたか大変いいことを言われたかと思うのですけれども,これは法政策的度合いが低いという,たしか大変いいことを,我妻先生の御論説なども引用されておっしゃっていましたが,我々もまさしくそのように考えておりまして,法政策性の高いような30条というものと,他方で法政策性がやや低い,私は当然の法理の明確化だと思っておりますが,間接侵害自体のような枠組み的論点とを混同せずに,明確に区別して,後者についてまず土俵をつくってその上で正しく法政策的議論をしていただいた方がいいのではないかという考えで,順番に分けてやっております。やっていないというわけではなくて,現実的な解として,まず共通の土俵を明確化して,その上で権利制限,先ほども出ておりました30条問題,というのは整った土俵の上で考えるべきだと考えております。また,リーチサイトという難しい問題も,それも踏まえて,IIにおいていろいろ検討してみたけれども,そもそも間接侵害のIとは性質が違う面があるので,議論をごっちゃにせずに別途,別枠でやるということでございます。これはむしろ,先ほどから出ておりますリクエストは,むしろ我々の理解としては,I自体に対するリクエストというよりは,IIを進めてほしいということかと思いますが,このII自体が司法救済ワーキングチームのマンデートかどうか自体もあまりはっきりいたしませんけれども,きちんと議論は分けた上で,メインは50回続けておりますIの方ですが,IIについてもいろいろ検討してみた結果,現時点ではとりあえずはこうであるということであります。これも前にお話ししたとおり,検討すればするほど短くなっているというところもありますので,短いとこれしかやっていないのかと思われるかもしれませんが,実際は逆でありまして,練れば練るほどワーキングチーム員全員のコンセンサスを得て書ける部分が少なくなって短くなっておりますので,そういう結果でございます。御説明させていただく機会をいただきましてありがとうございます。
 次に,判例云々のところは,これも審議会のマンデート問題にかかわってきますけれども,審議会で行うのは立法提案だということで,立法の対象になるのは法規範の対象になるようなものでありまして,裁判で言いますと法の適用の部分でありまして,事実認定の問題自体を著作権法で規律するわけではありません。著作権法自体でこのように事実認定すべしという性質のものではなくて,これは,裁判所が正しい手続に従って正しく事実を認定して,そこに法を締結していくという,法的三段論法の大前提に当たる事実認定の問題なので,そこ自体をどうこうするというのは,ここでの著作権立法の対象となる性質のものではないと解されます。いかなる事実認定があるべきかという点については,一法学研究者ないし一法律家としては一定の考えがないわけではないですが,ここはそういうものを打ち出すべき性質の場ではないということでございます。御心配はわからなくもないのですが,そういうことでありまして,もともとのなすべき使命というのが,要するに立法提案なので,事実認定自体は対象外だということを御理解いただければと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 確かに大渕委員がおっしゃるとおりなんだろうと思うんですけれども,今回,それから先週と,貴重な御意見を伺っておりまして,確かにリーチサイトの問題で非常に関係団体の方々は御苦労といいますか,御心配なさっておいでになるというのは伝わっております。30条1項3号の録音・録画の問題もあって,特に日本書籍出版協会がお出しになったような,前回の資料4-1なんかを拝見しておりますと,おそらく委員の方々は感じられている懸念は少なくないだろうと思うんですね。
 間接侵害の問題も切実な問題だけれども,若干,実際に立法事実の問題というか,悩んでおられる問題と,我々が50回かけて議論した結果のところに若干そごが出てきているのではないかということについて,事務局もこの点については2回にわたって関係団体の方から御意見を伺ったところはお聞きになっておられるとおりだと思いますし,委員からもそういう御意見が出ておりますので,この点についてぜひお考えといいますか,今後の問題もありましょう,お考えをお聞かせいただければと思います。

【壹貫田著作権課課長補佐】  この場をおかりして,今まで2回ヒアリングを伺って,あるいは司法救済ワーキングとしておまとめいただいた中間まとめを,前々回になりますけれども,お示ししたときの法制小委の委員の方々から示された御意見ということも含めましての今現時点での考えでございますけれども,客観的に申し上げて,このいわゆる間接侵害については大きく2つの御指摘があるのではないかと思っています。
 最初の1つ目は,まさに入り口論のところでございますけれども,関係団体の方から示されたお考えとして,あるいは範囲の明確化ということで,立法措置が必要なんだという御意見。片や,今日,JVAの方々や民放連の方々から御発表があったように,本当に現時点において必要なのかということ。これは一つの大きな対立軸と言うとちょっと言葉は悪いのかもしれませんけれども,実際に示されたお考えなのだと思っています。法制小委の,先ほど小泉委員の方からも御発言がありましたけれども,今までのワーキングということで非公開で5人のメンバーの中でやってきたわけですけれども,今こうして,法制小委にも上げているわけですので,そこの部分について,前々回,小泉委員の御発言であるとか,あるいはちょっと趣が変わりますけれども,大須賀委員の御発言でありますとか,種々御発言があったところですので,そこのところ,最初の入り口の議論をもう少し深めるということは必要なのではないかなと思っております。
 それは平成14年に間接侵害の御議論をスタートしてから,やはり24年ということで,足かけ10年たってございますし,先程来から御発表の中にもあるように,いわゆるまねき,ロクラクの最高裁判決が出ているということで,客観的に言って状況が変わってきていること自体は,それは間違いないことだと思いますので,50回の検討を重ねて,今,この現時点においてどういうふうにお考えになられるのかということは,さらに議論を深めていくという必要はあるのではないかと思っております。
 もう一つ,明らかになったなと思うのは,最初の入り口論のところのステップの次の話なのかもしれませんけれども,いわゆる3類型というものに対する御意見と御懸念というのが明らかになったのではないかと思います。立法措置が必要であるというふうに御発表いただいている関係団体の方々の中にも,やはりこの3要件の中身をさらに具体化していかないと,今の内容だけだとちょっとどうなるかわからないと。1つ目の,仮に立法化したときにこれが司法に対してどういう影響があるのかということになってくるのかもしれませんけれども,いずれにしても3類型の内容についてはさらなる検討が必要なのかなと思っております。
 それは前々回,森田委員の方からも御発表があったように,今あるのは3類型ですので,3類型を前提として,さらにそれをどういうふうに考えていくのかというのは,それはそれで大変重要な問題じゃないかなと思っております。
 したがって,ちょっと長々となって恐縮ですけれども,最後にまとめて言うと,そもそも現時点において間接侵害という議論をどのように考えるのかというところの議論が深められるように,我々としても用意をしたいと思いますし,さらに3類型についてどのように深めていくのかというところについても,事務局として知恵を使っていきたいなと思っております。
 最後にリーチサイトの御発言,先ほど土肥先生の方からいただきましたけれども,これも私もワーキングでの議論を脇で伺っておりまして,確かに大変難しい問題だと思います。一方で,先ほど御指摘いただいたように,リーチサイトに対する御懸念と,先ほど皆様の方の違うベクトルでの御懸念も当然あると思うんですけれども,そこについてどのように考えるかというのは,これはもうちょっと考えていきたいなと。なかなか難しい論点ではあるのですけれども,先ほどの2つ目の3類型の中身をどう考えるのかというところと密接に結びついていくかもしれませんけれども,当然,リーチサイトについても御懸念を踏まえてどういうことが言えるのかということは当然,検討の対象になっていくのではないかと思っております。
 長くなってすみません。

【土肥主査】  ただいまの事務局の考え方について何かございますか。
 よろしゅうございますか。
 ほかに全体を含めて御質問,御意見ございますか。
 なければ本日の委員会はこのくらいにしようかと思いますけれども,よろしゅうございますか。梅田さん,何かありますか。

【梅田氏】  遅参いたして大変失礼いたしました。特にございません。結構です。

【土肥主査】  それでは,特に御質問などないようでございますので,本日は各団体の皆様におかれましては本当にお忙しい中,御出席をいただき,貴重な御意見をありがとうございました。前回,今回のヒアリングを含めて,いただいた御意見を参考にさせていただき,先ほど事務局からもありましたように,今後の本法制小委における議論の中で進めてまいりたいと思っております。
 今後の予定について,先ほどありましたけれども,ほかに連絡事項ございますか。

【壹貫田著作権課課長補佐】  いえ,特段ございません。次回につきましてはまた日程などを調整させていただいた上で御連絡を差し上げたいと思います。以上でございます。

【土肥主査】  それでは,本日はこれで第4回法制問題小委員会を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動