文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)

日時:令和2年7月29日(水)
17:00~19:00
場所:AP虎ノ門 B室

議事

1開会

2議事

  1. (1)法制度小委員会主査の選任等について【非公開】
  2. (2)平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について(報告)
  3. (3)「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」について(報告)
  4. (4)今期の法制度小委員会における審議事項及びワーキングチームの設置等について
  5. (5)研究目的に係る権利制限規定の創設について
  6. (6)図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)について
  7. (7)その他

3閉会

配布資料

資料1
第20期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(283.9KB)
資料2
遠隔教育等を推進するための「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について(3MB)
資料3
「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」関係資料一式(5.2MB)
資料4
「知的財産推進計画2020」等の政府方針(著作権関係抜粋)(1.3MB)
資料5
第20期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における主な検討課題(案)(149.2KB)
資料6
ワーキングチームの設置について(案)(108.4KB)
資料7
第20期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における審議スケジュールのイメージ(案)(189.6KB)
資料8-1
「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」(文化庁委託事業)の結果概要(590KB)
資料8-2
「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」(文化庁委託事業)の結果報告書(1.6MB)
資料8-3
研究目的に係る権利制限規定の創設に関する今後の検討について(137.1KB)
資料9
図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する主な論点について(316.7KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(408.2KB)
参考資料2
第20期文化審議会著作権分科会委員名簿(389.5KB)
参考資料3
第20期文化審議会著作権分科会における検討課題について
(令和2年6月26日文化審議会著作権分科会決定)
(190.1KB)
参考資料4
小委員会の設置について(令和2年6月26日文化審議会著作権分科会決定)
(令和2年2月4日文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会)
(179.7KB)
参考資料5
文化審議会著作権分科会(第58回)(第20期第1回)における意見の概要(212.4KB)
参考資料6
令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(537.3KB)

資料5、資料6について異議なく、案の通り了承されました。
了承された資料については、以下の通りです。

資料5
第20期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における主な検討課題(147.8KB)
資料6
ワーキングチームの設置について(107.6KB)

議事内容

  • 今期の文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員を事務局より紹介。
  • 本小委員会の主査の選任が行われ、茶園委員が主査に決定した。
  • 主査代理について、茶園主査より大渕委員が主査代理に指名された。
  • 会議の公開等について運営規則等の確認が行われた。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(令和元年七月五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【茶園主査】では、傍聴される方々におかれましては、2点お願いがございます。1点目は、会議の様子を録音、録画することは御遠慮ください。2点目は、音声とビデオをオフにしてください。

それでは、改めて御紹介させていただきますけれども、先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして、主査に私、茶園が、主査代理として大渕委員を指名いたしましたので、御報告いたします。

本日は最初の法制度小委員会となりますので、今里文化庁次長から一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【今里文化庁次長】文化審議会著作権分科会法制度小委員会の開催に当たりしまして、一言御挨拶を申し上げます。

皆様方におかれましては、日頃より著作権施策の検討、実施に当たって、御協力、御指導いただいておりますとともに、このたびは御多用の中、本小委員会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。

初めに、平成30年の著作権法改正で創設された授業目的公衆送信補償金制度につきまして、今般の新型コロナウイルス感染症に伴う遠隔授業等のニーズに対応するため、当初の予定を早めまして、4月28日から施行されていますので御報告を申し上げます。

また、インターネット上の海賊版対策をはじめとする著作権法等の改正が6月5日に成立いたしまして、6月12日に公布されました。昨年の法案提出の見送りの経緯を踏まえまして、国民の皆様の声を丁寧に伺いながら検討を重ねてきた結果、海賊版対策の実効性確保と国民の正当な情報収集等の萎縮防止のバランスが取れた内容とすることができたものと考えております。

これらをはじめ、文化庁では様々な法整備等を進めてきているところでございますけれども、昨今の情報通信技術の発展等を背景に、著作物の創作、流通、利用をめぐる状況が刻々と新たな進化を遂げており、それに対応した措置が必要となる場面も多く出てくるものと考えています。

委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、社会の要請を踏まえた我が国の著作権制度の在り方について、精力的な御議論をお願いしたいと思います。

私からの挨拶は以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【茶園主査】今里次長、どうもありがとうございました。

続きまして、本年4月28日に施行されました授業目的公衆送信補償金制度につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【日比著作物流通推進室長】それでは、資料2に基づきまして、遠隔教育等を推進するための「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について御説明申し上げます。

資料の1ポツ、法改正の概要を御覧ください。学校等におけるICTを活用した教育の推進のために、平成30年の著作権法改正によりまして、授業の過程における著作物の公衆送信について、従来は個別の許諾が必要であったものを、設置者が文化庁の指定管理団体に一括して補償金を支払うことにより、無許諾で可能といたしました。

この改正は、法律の公布日から3年を超えない範囲内の政令で定める日、令和3年5月までに施行することとなっておりまして、当初令和3年4月からの施行に向けて、関係者で準備が進められておりました。

2ポツ、早期施行のところを御覧ください。このたびの新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、教育現場においてオンラインでの遠隔授業等のニーズが急速に高まっております。

こうした教育現場の実情に対応するために、この制度を当初の予定を早めて、令和2年4月28日から施行いたしました。また、権利者団体の皆様の配慮によりまして、令和2年度に限って、特例的に補償金額は無償(ゼロ円)としたところでございます。

令和3年度以降の補償金額につきましては、別途、指定管理団体からの申請に基づき認可がされる予定でございます。これにつきまして、今年4月20日に閣議決定されました政府の緊急経済対策において、令和3年度から有償となる本制度の本格実施に向けて、補償金負担の軽減のための必要な支援について検討することとされております。

3ポツ、経緯でございますが、4月16日のところにありますように、著作物の教育利用に関する関係者フォーラムという場がございます。こちらは、教育現場で利用される各分野の権利者団体、それから教育関係者の皆様が一堂に会しまして、この制度の運用に向けた議論を行っていただいております。ここで、4月16日には今年度特例的に無償となる制度に対応した運用指針を策定いただきました。また、その後、来年度以降の運用指針を策定すべく、議論を進めていただいております。

資料の3ページ目以降に、制度の概要を示したポンチ絵ですとか、分かりやすく解説したリーフレットをおつけしておりますが、詳細の説明は省かせていただきます。

1点だけ、ポンチ絵の右下に、ページ番号がついている6ページ目の授業目的公衆送信補償金制度開始までの流れというページがございます。こちらを御覧いただければと思います。この資料の下半分、補償金額の決定プロセスというところがございますけれども、今後、令和3年度の補償金額につきましては、指定管理団体であるSARTRASから文化庁に対して申請が行われる予定でございます。

図にありますように、SARTRASは、申請前に教育機関の設置者の代表の意見聴取をした上で、文化庁に申請がなされます。申請がありましたら文化庁では文化審議会に諮問いたしまして、著作権分科会、それから使用料部会で審議をいただいた上で、それを元に補償金額の認可の可否を決定するという流れでございます。

文化庁といたしましては、来年度からこの制度の本格実施ができるように努めてまいりたいと思っております。

説明は以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

【奥邨委員】奥邨です。よろしいでしょうか。

【茶園主査】お願いします。

【奥邨委員】まず、今回の件に関しましては、関係者の御努力、また文化庁さんの御努力に対して、本当に心より感謝したいと思います。すばらしいことであったというふうに思っております。逆に言いますと、本当にこの改正がなければ今どうなっていただろうというふうに考えると、非常に時宜にかなった改正をあらかじめなし得ていたのだと思います。

よく著作権法については、世の中の進歩に追いついていない、遅い、遅いというようなことを巷間言われるわけですけれども、今回の改正は本当にそういう点では先回りしたというのが、今回の問題に対していいのかどうかは別としても、時代に対する必要なことができていたということで、私どもも審議会で関与させていただいていたので、多少手前みそになりますけれども、やはりもっともっと誇っていいですし、社会的にも評価されていい著作権法改正だったと私は思っております。

単なるコメントですけれども、一言申し上げさせていただきました。ありがとうございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。

では続きまして、さきの国会で成立いたしました著作権法の改正につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは、お手元の資料3を御覧いただければと思います。先般、著作権法等の改正が国会で成立しておりますので、簡単に概要の御紹介をしたいと思います。文化審議会の著作権分科会におきましては、2019年の2月に法改正の方向性を示す報告書をまとめていただいておりまして、基本的には、その内容に沿った形でこの法律が組み立てられてございます。

1枚目の改正の概要のところに改正事項を列挙しておりますが、全体で8項目の改正事項がございます。そのうち内容の中心となりますのが、1ポツ、インターネット上の海賊版対策の強化でございます。海賊版対策をより実効的なものとする観点から、2つの措置を盛り込んでおります。

1つ目は、いわゆるリーチサイト対策でございまして、侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したリーチサイトに関しまして、その運営行為やリーチサイトに侵害コンテンツへのリンクを貼る行為などを新たに規制対象とするものでございます。

2つ目は、侵害コンテンツのダウンロード違法化でございます。皆様御承知のとおり、音楽、映像につきましては、既に違法にアップロードされたと知りながらダウンロードを行う行為が違法化されておりますところ、音楽、映像以外の著作物についても同様の規律を及ぼしていこうというものでございます。

ただしこれも皆様御承知のとおり、ダウンロード違法化の要件につきましては様々御議論がございました。国民の間でも、インターネット利用が萎縮するのではないかという懸念が拡大しておりましたので、昨年の秋以降、文化庁として改めてパブリックコメント、国民アンケートなどを実施し、国民の皆様の不安を把握し、それに対応した措置を検討してまいりました。その結果、違法化対象から除外するための例外規定も様々なものを設けまして、それをもって、海賊版対策としての効果は確保しつつ、国民の情報収集を過度に萎縮させないという、バランスの取れた内容にすることができたものと考えております。

それから改正事項の2ポツ、その他の改正事項について御説明いたします。丸1から丸6までございますが、最初の3つが著作物利用の円滑化を図るための措置、後ろの3つが著作権等の適切な保護を図るための措置でございます。

まず丸1は、写り込みに係る権利制限規定につきまして、生配信やスクリーンショットに伴う写り込みを新たに対象に含めるとともに、様々な要件の緩和を行うことで、幅広い場面にこの規定を適用できるようにしたものでございます。

丸2は、行政手続に係る権利制限規定につきまして、従来から特許審査手続などは対象になっておりましたところ、新たに種苗法、GI法の審査などの手続を対象に加え、さらに、今後新しいニーズが出てきたときに柔軟に対応できるよう、政令で手続を追加できる仕組みを設けるものでございます。

丸3は、著作権者等から許諾を受けて著作物などを利用する権利に関しまして、その著作権等が譲渡された場合の譲受人など、第三者に対抗できる仕組みを新たに設けるものでございます。

丸4は、著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化といたしまして、裁判所が書類提出命令をより実効的に発することができるよう、手続面での改善を図るものでございます。

丸5は、著作物等の不正使用を防止するためのアクセスコントロール技術に関しまして、例えばソフトウェアのライセンス認証など、最新の技術への対応に万全を期す観点から、保護対象の明確化や新たな規制対象行為の追加を行うものでございます。

最後の丸6は、プログラムの登録に関しまして、関係者のニーズなどを踏まえて新しい証明制度を設けるとともに、手数料の規定について見直しを行うものでございます。

資料の一番下に記載のとおり、改正法は原則として来年の1月1日から施行されることになっております。ただし、1ポツの丸1のリーチサイト対策と、2ポツの丸1から丸3までの利用円滑化のための措置につきましては、本年の10月1日から施行されるなど、改正事項によって施行日が分かれております。

今後、改正法の施行に向けまして、政令、省令の整備やガイドラインの策定などを進めていく必要がございますし、とりわけ1ポツ、丸2のダウンロード違法化につきましては、幅広い国民の皆様の行動に影響するものでございますので、丁寧な普及啓発などが必要になってくるかと思います。皆様方の御知見もお借りしながら、円滑な法施行に向けて取り組んでいきたいと思っておりますので、引き続き御指導いただければと思います。

簡単ですが以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。よろしいですか。

では、どうもありがとうございました。

では続きまして、議事の(4)に入りたいと思います。これは、今期の法制度小委員会における審議事項及びワーキンググループの設置等についてであります。

去る6月26日に著作権分科会が開催されまして、今期の検討課題及び本小委員会を含む3つの小委員会の設置が決定されております。これを受けまして、今期の本小委員会の審議事項及びワーキンググループの設置等につきまして、確認、意見交換を行いたいと思います。

まずは事務局より、知的財産推進計画2020等の政府方針の内容と、それを踏まえました今期の本小委員会における主な検討課題及びワーキングチームの設置等につきまして、まとめて説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは、資料4から資料7までに基づきまして、順次御説明を申し上げたいと思います。

まず、資料4を御覧いただきたいと思います。「知的財産推進計画2020」等の政府方針から著作権関係の部分を抜粋しておりますので、御紹介をいたします。大部になっておりますので、法制度に関わる部分を中心に簡単に御紹介をいたします。

まず、1ページ目からが知的財産推進計画2020でございます。

2ページ目をお開きいただければと思います。2ページ目の真ん中辺りに施策の方向性というものがございまして、この部分に具体的な施策が記載されております。この2つ目のポツを御覧いただきたいと思います。先ほど御紹介をさせていただきましたが、授業目的公衆送信補償金制度に関しまして、今年度における緊急的かつ特例的な運用を円滑に進めることと、来年度からの本格実施に向けて教育現場等に対する周知を行うこと、また補償金負担の軽減のための必要な支援について検討することについて記載がなされております。

次にページが飛びますけれども、4ページを御覧いただければと思います。施策の方向性の2つ目のポツのところでございます。デジタル時代におけるコンテンツの流通・活用の促進に向けまして、著作権制度を含めた関連政策の在り方を幅広に検討していく旨が記載されております。具体的には、下から3行目辺りからですけれども、2020年内に、知的財産戦略本部の下に設置された検討体を中心に、具体的な課題と検討の方向性を整理し、その上で、関係府省において速やかに検討を行い、必要な措置を講ずるとされております。

その次のポツが、放送番組の同時配信等に係る権利処理の円滑化についてでございます。関係者の意向を十分に踏まえつつ、運用面の改善を着実に進めるとともに、制度の在り方について検討を行い、本年度内の法案の国会提出を含め、必要な見直しを順次行うという記載がなされております。

それからその次のポツは、私的録音録画補償金制度の見直しなどについてでございます。1行目の後半辺りからですけれども、デジタル時代における新たな対価還元策やクリエーターの支援・育成策等について検討を進めること、それから私的録音録画補償金制度については、新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として、具体的な対象機器等の特定について検討を進め、2020年内に結論を得て、2020年度内の可能な限り早期に必要な措置を講ずるとされております。

次に、6ページをお開きいただければと思います。一番上のポツが、海賊版対策についての記載でございます。政府では昨年の10月に総合的な対策メニュー、工程表というものを策定しておりますが、それに基づいて、関係府省が連携しながら必要な取組を進めることや、そのフォローアップなどを行っていく旨、記載がなされております。今般の著作権法改正も、この総合的なメニューの一つに位置づけられたものでございまして、他の施策とあわせて効果の検証などをしっかり行っていく必要があろうかと思っております。

最後に、7ページでございます。今般の新型コロナの拡大に伴い図書館が休館し、図書館資料へのアクセスが困難になったということを踏まえて、新しい課題として記載がされております。絶版等により入手困難な資料をはじめ、図書館等が保有する資料へのアクセスを容易化するため、図書館等に関する権利制限規定をデジタル化・ネットワーク化に対応するものとするということが、新たな課題として設定されているところでございます。

次の8ページから15ページまでは、ただいま御説明した施策の工程表などですので説明を省略いたしまして、16ページをお開きいただければと思います。ここからは、知財計画以外の政府計画ということになります。まず規制改革実施計画におきまして、放送番組のネット同時配信等に関して記載がなされております。詳細は割愛をいたしますけれども、具体的な検討の進め方、スケジュール感などについて、知財計画へも踏み込んだ詳細な記載がなされているところでございます。

それから17ページの下半分が、いわゆる骨太の方針と呼ばれているものでございます。この中にも、下線を引いておりますとおり、放送のネット同時配信等に関しまして、2021年通常国会での法案成立を目指すという記載がなされているところでございます。

それから18ページ以降が、成長戦略フォローアップという文章でございまして、こちらも中身の説明は割愛をいたしますが、授業目的公衆送信補償金制度やデジタル時代に対応した著作権の在り方など、先ほど御紹介した内容が重ねて記載されているところでございます。

資料4については、以上でございます。

次に、資料5を御覧いただきたいと思います。ただいま御説明をいたしました政府方針などを踏まえまして、今期の本小委員会において検討いただきたい課題を案として書かせていただいているものでございます。

まず、ライセンシーの保護という観点から、独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンスの対抗制度について、課題として記載しております。昨年度からワーキングチームで議論いただいておりますが、引き続き御議論をお願いしたいと思います。

それから、権利制限規定の創設・見直しについては、3つ記載をしております。

1つ目は研究目的に係る権利制限規定の創設でございまして、こちらも昨年度から審議を行っていただいておりますが、継続的な議論をお願いしたいと思っております。

2つ目は、先ほど新規課題として御紹介した図書館関係の権利制限規定の見直しでございます。

それから3つ目に、裁判手続に係る権利制限規定など、既存の権利制限規定の見直しについて記載がなされております。これは昨年度から課題として設定されておりましたが、まだ検討に入れておりませんでしたので、今期、状況に応じて検討をお願いしたいと思っております。

それから、その他の課題に記載されている、追及権等と損害賠償額の算定方法の見直しも昨年度から課題としては設定されているものの、まだ検討に入れておりませんので、状況を見ながら必要に応じて検討をお願いしたいと考えております。

資料5は以上でございます。

続いて、資料6を御覧いただきたいと思います。ただいま御紹介した検討課題のうち、図書館関係とライセンシーの保護に関しましては、ワーキングチームを設置して、集中的に審議を進めていただくこととしてはどうかということで、提案をしているものでございます。

まず、1の丸1にございますとおり、図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチームを設置してはどうかということでございます。検討課題としては、絶版等資料へのアクセスの容易化、図書館資料の送信サービスなどを想定しております。

丸2が、著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチームでございまして、独占的ライセンスの対抗制度、独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入などについて御審議をいただきたいと思っております。

それから、2ポツがワーキングチーム員の構成でございます。ワーキングチームに座長を置き、法制度小委員会の委員のうちから法制度小委員会の主査が指名すること、ワーキングチーム員は法制度小委員会の委員のうちから主査が示した者及びその他の者であって、主査と協議の上で文化庁が協力を依頼した者で構成される旨、記載をしております。

それから3ポツ、議事の公開につきましては、冒頭御紹介した著作権分科会の議事の公開に準じて扱うとしております。

続きまして、資料7を御覧いただきたいと思います。今期の小委員会における審議スケジュールのイメージについて御説明をいたします。

まず、本日、第1回におきまして、審議事項及びワーキングチームの設置などについて御了承いただけましたら、研究目的の権利制限と図書館関係の権利制限についての議論をお願いしたいと考えております。

第1回の小委員会が終わりましたら、ワーキングチームを設置いただきまして、図書館関係の権利制限規定と、独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与等について、集中的に議論をいただくことを想定しております。それぞれ四、五回程度開催し、一定の方向性がまとまった段階で改めて小委員会を開催いただきまして、ワーキングチームから検討状況の報告を受けるということを想定しております。また、その他の課題についても適宜議論を継続いたしまして、方針がまとまりましたら中間まとめを行った上で、パブリックコメントを実施することを想定しております。

その上で、恐らく1月頃になろうかと思いますが、今期最後の小委員会を開催いたしまして、パブリックコメントの結果の報告、結論が出た課題についての報告書のとりまとめ、検討中の課題については審議経過報告のとりまとめをしていただくことを想定しております。

少し長くなりましたが、事務局からは以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。検討課題のうちで、研究目的に係る権利制限規定の創設と、図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)、この2点につきましては、後ほど個別に議論を行いたいと思います。そこで、それ以外の点を中心にして、御意見、御質問等がございましたらお願いしたいと思います。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、ありがとうございました。それでは、この資料の5から7までの内容につきましては、事務局から説明いただいた案のとおりとしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

ありがとうございます。では、設置されますワーキンググループの構成員につきましては、私のほうで指名させていただきまして、後日、事務局よりお知らせするようにいたします。

では、続きまして、議事の(5)の研究目的に係る権利制限規定の創設について、議論を行いたいと思います。

まず、昨年度文化庁委託事業として、研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究が行われておりますので、その結果報告を、委託先でありますソフトウェア情報センター(SOFTIC)の亀井専務理事からお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。

【亀井専務理事】御紹介いただきましたソフトウェア情報センターの亀井でございます。お手元に配付されております資料8-1と8-2でございますが、本日、8-1の概要、パワーポイントの資料をもって御紹介、報告をさせていただきたいと思います。今、茶園先生からございましたように、昨期の著作権分科会法制・基本問題小委員会にて御検討が始まったうちの検討事項の委託を受けましたということでございます。

資料8-1のパワーポイント資料を開けていただいて、2ページを御覧いただきたいと思います。調査に当たりまして、昨期の法制・基本問題小委員会からこのような委員の先生方に御参加をいただきまして、まず委員会というものを設置いたしました。調査対象、あるいは調査事項、論点など、この先生方の御指摘、御教授をいただきながら進めたということでございます。

ページを開けていただきまして、3ページ下段にございます調査研究の目的については割愛をさせていただきます。

次のページ、調査方法でございます。実態調査を中心に行いました。利用者に対する実態調査、それから権利者団体に対する実態調査を行い、それら実態調査の結果を受けて、委員会において今後議論になる論点等について御検討いただいたという形で進めさせていただきました。

5ページから、利用者に対する調査の結果ということをまとめております。詳細は後ほどでも、資料8-2の報告書、6ページ以下を御覧いただけれと存じますが、ここにございますように、18社からヒアリング並びに書面回答を終えたというのが今回の調査でございます。サンプル的に行いました。なるべく偏りの出ないように努めましたけれども、時間と数の限度があったということでございます。

この各ヒアリング先の番号が振ってございます。この番号は、それぞれの御意見等に紐づいておりまして、報告書の中で、この番号をもって特定していただくような形になってございます。企業の所属研究者、あるいは大学等研究機関の所属研究者、それから研究者、あるいは組織としては美術館から御意見をいただいたというところでございます。

次のページ、利用者に対する結果で、まずは研究において利用する著作物等というところからでございます。今般の調査では、あえて研究というものについて具体的な定義を置かず、一般的な辞書の用語程度で、具体的にどのようなことをされているかということをなるべく多く集めるという趣旨で行っております。

アの対象コンテンツ、これはもうあらゆる著作物が利用されていることが確認されました。

利用目的等では、研究過程で著作物自体を研究対象としているという御回答もありましたし、それから、もちろんよくございます、論文発表時に利用するというような、大きく2つに大別した回答を得ております。

利用方法・態様でございますが、これはあえて著作権法に触れるかどうかというところを問わず、実態としての回答を得たのですが、これもあらゆる体裁的なコピーから、電子化、電子データの保存というものが多いです。それを共同研究者などとフォルダー、メールで共有するという利用態様も見て取れております。研究成果の利用としては、当然引用という形がございますが、慣習的に出典明示が非常に多く行われているということが確認できております。

それから利用場所としては、昨今あらゆる場所で利用されるということも確認いたしました。

次のページ、利用主体でございますが、これは研究者御自身が使われるということはもちろんですが、お聞きしておりますと、広い意味での研究チーム、補助者であるとか共同研究者、あるいは企業内のチームなどで共有されているといいましょうか、利用されていることが非常に多く見て取れております。研究内容の特殊によるものとありますが、特に日本語の研究をされている研究者の先生は、利用するデータが膨大であるので、事業者に委託しているという例も見て取れたところでございます。

対象コンテンツの入手先としては、やはり最近は電子的なものが非常に多く増えておりますけれども、基本的には購入されたものが多くの回答が寄せられております。

次の研究の営利性という点。この営利性ということについては、語義、定義が非常に難しいところがございますが、企業研究者においても営利性があるという認識があるところ、企業内においても学術的研究を手がけているという方もいらっしゃいました。したがって、研究目的でどれが営利か非営利かということを区分するのは難しいという回答も寄せられたところでございます。あるいは、大学との共同研究のときはどうなるのかというような回答もございました。

大学に御所属の研究者の中にも、企業との共同研究の場合に、これは一体営利であるのかということは非常に微妙だ、社会的意義があって行っている研究だけれども、当該企業の利益にもなるという点で微妙だというような回答もございました。

それから、大学に御所属の研究者からは、研究成果の企業へのライセンス、あるいは研究対象についての解説の執筆をする場合に、これは営利なのだろうかというような回答もございました。

次に、現在行っていないが行いたい研究ということでは、技術によって使い方が変わるという回答もございましたけれども、むしろ現状阻害要因を感じておられて、それが取り除かれれば研究の幅を広げたいという回答が最も多く見て取れてございます。

研究内容の区分。学術研究と製品目的の研究ということについては、企業研究者の中には、意識とましては、違いがあるが、どこからが製品目的かという辺りで非常に区分が難しいという回答が多くございました。

それから、コンテンツを利用する上での組織の内部規定ということも聞いてございますが、これは何らかのルールを大抵の方が持っておられるというふうに回答をいただいております。

許諾取得における問題意識ということでは、大きく3つ問題意識が示されておりまして、許諾の窓口に関すること、どこへ行けばよいか、それから許諾までの時間がかかる、手続が煩雑であるということ、それからウとしましては、利用条件の中身ということについて問題意識が示されております。

次に、利用の是非を迷うことはありますかという質問に対しては、やはり著作物への該当性という回答が一番多く、続いて権利範囲であるとか権利制限の適用可能性が難しい、あるいは権利処理の仕方が分からないといった回答が寄せられております。

研究利用における阻害要因の解決策ということでは、それぞれの回答者がお考えのものということで、幾つか解決策の御提案を出された回答が結構ございます。

続いて次のページでございますが、利用者である研究者の方々に、権利者としての立場ではどうお考えですかということで、同じ方に聞いた調査でございます。お答えいただいたのは18人のうちの13人の方でございますが、9ページにありますような方々から御回答を得ております。

10ページでございますが、御自身が創作する著作物の種類としては、基本的に論文が一番多くございます。そのほか幾つかバリエーションがあると。

帰属については組織に帰属するという方もいらっしゃいましたし、論文誌については論文誌のポリシーに沿っているということ、広く実務的な現実的な回答を寄せられております。

(3)として、御自身の著作物を許諾なく無償で利用しても構わないと考える場合はありますかという問いに対しては、多くの方が、多くの人に論文を見てもらえることを一番優先するのだということで、条件は問わないという回答をいただいております。ただし剽窃されたり、内容改変、あるいはおとしめるような対応での利用については認められない、あるいは出典は正しく表示してほしいというような条件を示された方が多くございました。もちろんウェブ等への無断アップロード、あるいは出版社への配慮ということを示される回答もございました。

続いて、補償金があれば大丈夫ですかというようなことも質問しましたが、一様に、お金をもらうという発想はお持ちでない方がほとんどでございました。

それから、御自身の調査許諾の手続というものはあまり意識をされていない。

許諾を求められた経験もあまりある方が今回は見つかっておりません。

あるいは、侵害行為によって利用可能になっているものをどう利用しますかということについては、自らの著作物が仮に海賊版のように侵害行為になったとしても、問題ではない、使ってもらえればいいという御回答。ただやはり先ほどと同じように、改変や名義を偽る等の場合は問題、それ以外は大丈夫、問題ないというような回答、知らなければ問題ないという回答、そのような意識が見て取れてございます。

一方でというところですが、本来は有償のサイトから入手するべきものが配信されている場合、それは問題ではないかという回答、あるいは違法にアップロードされているような場合は、海賊版の研究そのものはいいけれども、そうではないものは、2次的な意味で避けるべきというような御回答をいただいております。

研究目的とされる利用で侵害行為であると考えた例。これは剽窃。ただアイデアの登用というようなことを口にされる例などがございました。

(10)番、警告の経験等はあまりお持ちでないということでございます。

(11)番で、一般的に新たに権利制限を行うことについてどうかということについては、第一に無許諾の利用環境の拡大を広げてほしいという回答がございました。一方で、権利制限ということではなくて、許諾ベースで利用を促進するという回答もございます。

主なところはそんなところでございます。

13ページ目からは、権利者団体の皆様にお伺いをいたしました。回答いただきましたのは、ここに挙げました8団体の皆様でございます。

14ページに、具体的にその調査の結果を掲げてございます。許諾なく、かつ無償で利用して構わないと考える場合があるかということについて、これは多くは否定的な御回答でございます。そもそも「研究」が未定義であるから回答できないというようなことが最も多くございました。それから、権利許諾のためのスキームをつくることが前向きに最適であるという回答をいただいております。一方でというところでございますが、論文の論を構築するためであれば、限定的条件の下で許容できるという回答もございました。

(3)補償金の支払いがあれば許諾なく利用できるかということについては、非営利の研究機関の場合は補償金制度というものが考えられるという御回答、あるいはお金を払って利用する仕組みづくりが、双方にメリットがあるという御回答がございました。

一方で、立場上是も非もできない、回答できないというような回答、それからニーズが分からないので回答困難というようなことでございます。

15ページ、研究利用に可能な許諾の仕組みについてでございますが、現状で一定利用可能であるという回答を寄せられてございます。それから大学に関しては許諾無用としているという回答もございました。

それから、許諾を求められたり、問合せを受ける経験ということでは、多くがたくさんの問合せを受けているということでございます。

それから(6)の今後の取組みでございますが、既存の仕組みもある、それを活用できるのではないかという御意見、あるいは新たな取組を考えているのだというような御回答もいただいてございます。

著作権侵害によって可能となっている場合の利用について、これについて、侵害は侵害として特別な取扱いをする必要はないという回答がほとんどでございます。

続いて16ページでございますが、研究目的とされる中で侵害行為と考えた例ということでは、学会発表で引用として非営利であればいいけれども、企業主催の講演会等で対価を得られる場合には利用許諾が要るという考え方を示す団体がございました。あるいは研究者と称する方がライブラリーを構築しているようなケース、あるいは仲間と共有するということはやっぱり侵害ではないかというお考えを示された団体もございます。

警告等、事例を幾つか御紹介いただきました。

(10)番目、一般的に新たに権利制限を行うことについてどうかということについては、権利制限規定は補償金制度を前提とすれば賛成であるという団体が1つございました。ほかの団体の皆様は、やはり権利制限まで行くのは不適当である、あるいはそもそも研究者のニーズが具体的でないので慎重に検討してほしいという御回答をいただいたところでございます。

続いて17ページから、今後の課題ということで委員会で整理をいただきました。

18ページから順に、タイトルだけになりますが御紹介をしてまいります。

まず、基礎となる考え方のうち、1つが権利制限規定の検討を行う必要性についても御意見がございまして、委員会の結論としては検討する必要があるという御意見を頂戴しております。

正当化根拠、これにつきましては様々なお立場がありますので、多少の御議論をいただいたにとどまってございます。

19ページ、研究目的に係る著作物の利用実態と現行著作権法との関係。今回いろいろヒアリングで聞きました利用態様についても、既存の権利制限規定に照らして許容できるかどうかという点のまず仕分が必要であるという御意見をいただいております。その上で、仕分けた結果、緊急性が強い、重大性が高いという利用行為については、優先的に検討することも考慮するべきではないかというような意見がございました。

それから、既存の利用許諾市場への影響ということで、その影響を考慮して適切に配慮することが必要であるという御意見をいただいてございます。

それとともに著作権者の利益の影響ということで、ベルヌ条約上、スリーステップテストに反しない形で制度設計をすべきであるという御意見もございました。

続いて20ページ、権利制限を適用する場合の研究の範囲ということで、ちょっと紙幅の関係でここだけ活字が大きくなってございますが、アからキまでございまして、主体の属性、分野、目的、営利とは何かということ、それからオの資格要件といいますのは、公的な助成や審査を受けているかどうかという辺りの要素を含めるかという論点でございます。それから最後の研究の準備段階の取扱いというのは、研究に至る前の情報収集のような行為をどう考えるかという論点を挙げられております。

21ページ、対象コンテンツ、著作物の種類でございますが、これについては市場に影響を与える、出版社の事業に影響を与えるようなものをどう考えるかという辺りの御意見がございました。

利用方法・態様、あるいは利用する割合、利用する著作物の適法性等、論点として掲げられてございます。

22ページ、権利制限以外の方法による対応可能性ということに関しましても、この文脈で幾つかの課題の御指摘がございました。利用許諾をワンストップ化する方法、それからクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを利用促進してはどうかという点、あるいは、学術論文についてはオープン・アクセスを更にどう推進していくかということ、学術論文に係る著作権の帰属先というような問題意識、論点も掲げられてございます。

23ページ、(10)図書館・アーカイブの利用拡大ということで、研究者の皆さんからは、図書館での利用ルールについて、様々少しずつ違っていたりして困るというような御指摘がありました。

委員会の皆様からは、図書館利用というものを少し検討すれば、先ほど、別途ワーキンググループをつくることをこれから御検討されるということがございましたけど、ライセンススキームを含めた活用の検討が考えられるという御意見がございました。

最後、24ページでございますが、今般の調査研究で御指摘のあった留意事項として、3点ございました。

追加調査の必要性ということで、御紹介しましたようにサンプル数は非常に少ない状況でございますので、予備調査にすぎないということで、エビデンスとしてはもっとちゃんとした調査をすべきであるという点が1つ。

それから、国際的調和への配慮ということで、日本だけそのような調査をしてみても、制度をつくってみてもということの問題に対する対応でございます。

それから(3)でございますが、これは制度と直接関係のないことではないかと思いますが、学術出版物の市場の状況について、特定の出版社が寡占状態にあることによる弊害を指摘する御意見がございました。

以上でございます。

【茶園主査】どうも亀井専務理事、ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。

【大渕主査代理】よろしいでしょうか。

【茶園主査】大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】詳細なご説明ありがとうございました。この研究というのは非常に重要なテーマで、非常に大きな項目なのに、ほかのものとは違って、狭い意味での研究目的の権利制限規定というのはまだないわけですが、やはり考えれば考えるほどそれにはそれなりの理由があると思います。今まで権利制限規定を新しくつくるときには具体的なニーズが立法事実としてあって、それをトップダウンではなくボトムアップで、具体的に出てきたニーズを抽出して、新たな改正を行ってきたのですが、この研究については、今般特にそのような形で具体的な、改正してほしいというニーズが出てきているわけではございません。抽象的な話で出てきてやっていますので、やはりきちんとこのニーズを吸い上げるというところが重要だと考えております。今までずっとそうしてきました。先ほどのお話の最後の留意事項で、今回やっていただいたのは予備調査的なところにとどまっているということでしたので、これを突破口にして本調査を早急に進めていただいて、具体的に今まで出ていないニーズを吸い上げていただきたいと思います。ドイツ、フランスなどには規定がありまして、比較法的といいますか、各国でどのような法制としているのかというのが重要な点なので、その点についても調査を深めていただいてやっていただければと思います。

もう1点、御報告はいただかなかったのですが、重要と思われる点が、この本体の資料8-2の32ページで、短いので、その該当部分を読み上げます。「この場合、権利を制限することにより、研究活動を促進したほうが、相対的に社会にとって望ましい帰結がもたらされると判断される場合には、研究利用に関する権利制限を正当化することなる。ただし、権利制限がなされることにより創作のインセンティブが過度に害されてしまい、無料で著作物を利用させることが望ましくないと判断される場合には、補償金制度の導入が考えられる」。

何を申し上げたいかというと、ここは言わば究極のif、「もしも」ということになっています。一定の方向性が示されているというよりは、研究の権利制限をしたほうが社会にとって望ましいのであれば正当化根拠があるということで、要するに、望ましいかどうかという点の検証はなくして、これは単なるifが書いてあるだけなので、そうなると先ほどのところになってきて、望ましいかどうかの判断のためには、緻密にニーズを拾い上げて調べていくしかないのではないかと思っております。

なお、先ほど奥邨先生が言われたのは私も同感なのですが、一昔前は著作権法というのは、時代の流れについてなくて改正が遅いとも言われていたのですが、最近はそのようなことは聞かれなくなってきております。先ほどの35条ですとか、あるいは平成30年改正の柔軟な権利制限規定とか、むしろ時代の流れに即して着実に成果を上げてきておりまして、最近は著作権法の改正が遅いとは言われておりません。

その関係で申し上げたいのは、図書館など緊急のニーズが出てきておりますので、一遍に全部やろうとしても無理なので、できるところから確実に成果を出していくという現実的なアプローチが重要だと思います。そのような意味では、狭い意味での研究については、なかなか一朝一夕に成果が出るものでもないので、きちんと本調査をやった上でじっくりと検討し、緊急のニーズが高い図書館等は先んじてやるというように、めり張りをつけてやっていくことが重要だと思っております。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。今、大渕委員から、この論点に関する進め方についても言及されましたけれども、この研究目的に係る権利制限規定の創設に関する今後の進め方等、まさにその点につきまして、事務局より説明をお願いしたいと思います。

【大野著作権課長補佐】それでは、お手元の資料8-3を御覧いただければと思います。研究目的に係る権利制限規定の創設に関して、今後、検討をどのように進めていくかということを簡単に整理したものでございます。

まず、1つ目の丸は昨年度の振り返りでございますけれども、昨年度から本課題について小委員会で議論を行っていただいております。その中で、制度設計等の検討を進めるに当たっての視点・留意事項が整理されるとともに、まずは国内における著作物の利用実態・ニーズ等をまず把握する必要があるだろうということで、先ほど御紹介いただいた調査研究が実施されたという経緯でございます。

また、2つ目の丸は先ほど御紹介いただいた調査結果を集約したような形になっておりますけれども、この調査研究により、著作物の利用実態やニーズ、円滑な利用に当たっての課題、権利者団体の意向、検討に当たっての論点などが一定程度明らかになった部分はあろうかと思っております。

一方で、調査研究報告書では、まだまだ深掘りを行う必要性があるという指摘もされております。具体的にはローマ数字の1にありますように、さらに多くの分野・人数にわたる研究者のニーズを適切に酌み上げるために、より広範・詳細な実態調査を行うこと、ローマ数字の2は、国際的な制度調和の観点から、諸外国における制度やライセンスの実態などについて把握すること、この2点について深掘りの必要性が指摘をされているところでございます。

このため、3つ目の丸にございますように、今年度は、まずこのローマ数字1、2の点に関して新たな調査研究を実施しまして、その進捗も踏まえながら、小委員会において、制度設計等に関する議論を深めることとしてはどうかというふうに考えてございます。

なお、米印に記載のとおり、図書館関係の権利制限規定については、研究目的での著作物利用にとっても重要な役割を果たしていると考えられますところ、先ほどワーキングチームの設置をお認めいただきましたとおり、別途、集中的に議論を進めることになっております。

簡単ですが以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。今説明いただきましたとおり、まず文化庁におきまして新たな調査研究を実施いただきまして、その状況も踏まえながら、適宜議論を行うこととしたいと思っております。何かこの点について御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、この研究目的に係る著作物の利用に関する権利制限規定の創設に関しましては、今申し上げたような進め方で進めていきたいと思っております。

では、続きまして、議事の(6)の図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)につきまして議論を行いたいと思います。事務局に、検討に当たっての論点に関する資料を準備いただいておりますので、まず、その説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは、資料9を御覧いただければと思います。図書館関係の権利制限規定の見直しに関しまして、検討を行うに当たっての論点を整理しておりますので、御紹介をしたいと思います。

まず1ポツ、問題の所在でございますが、著作権法31条に規定される図書館関係の権利制限規定については、従来からデジタル化・ネットワーク化への対応が不十分という指摘もなされてきたところでございまして、さらに今般の新型コロナの感染拡大に伴いまして図書館が休館してしまったことで、インターネットを通じた図書館資料へのアクセスに関するニーズが顕在化したものと承知しております。

こうした状況を踏まえ、先ほど御紹介した知的財産推進計画2020におきまして、この課題が短期的に結論を得るべきものとして明記されたことから、早急に対応を検討する必要があろうかと思っております。

その際、デジタル化・ネットワーク化への対応が優先課題ではございますけれども、その他、従来から指摘されてきた様々な諸課題もございますので、それらについても併せて検討を行うこととしてはどうかと考えております。

2ポツに検討課題及び論点(案)を記載しておりますので、順次御紹介をいたします。まず、検討課題としては、大きく(1)から(3)まで3つございますので、順番に御説明をいたします。

(1)は、絶版等資料へのアクセスの容易化についてでございます。著作権法で言うと31条3項に関わる部分ということになります。

まず、丸1の1段落目に記載のとおり、現行規定上、国立国会図書館が絶版等資料をデジタル化して、それを他の図書館等に送信し、その送信先の図書館で閲覧することや一部分を複製して利用者に提供するということが可能とされております。

一方で、館内での閲覧に限定されておりますので、家庭などからインターネットを通じて閲覧することはできませんし、また、一部分の複製及び複製物の提供という形で可能な行為が限定されておりますので、メール等でデータを送付することもできないのが現状でございます。

このため、2ページ目にございますように、例えば、感染症対策等のために図書館等が休館している場合、病気や障害等により図書館等まで足を運ぶことが困難な場合、そもそも近隣に図書館等が存在しない場合など、図書館への物理的なアクセスが難しい場合には、絶版等資料へのアクセス自体が困難になるという課題が指摘されてきたところでございます。

これを受けまして、丸2に記載のような対応をしてはどうかと考えております。具体的には、図書館等への物理的なアクセスができない場合にも、絶版等資料を円滑に閲覧できるよう、国立国会図書館が、一定の条件の下で、絶版等資料を各家庭等にインターネット送信すること、これを可能とすることについて検討を進めてはどうかと考えております。

検討に当たりましては様々な論点についての検討が必要かと思いますが、ここでは主な論点を3つ挙げさせていただいております。

1つ目は、送信の形態でございまして、公開の方法として、誰もが閲覧できるよう一般公開を行うのか、ID・パスワードなどにより閲覧者の管理を行うか、もしくは初めから特定の者だけを対象にした限定公開とするかという論点でございます。また、送信の実施方法として、ストリーミング・閲覧のみという扱いにするのか、プリントアウトやダウンロードといった複製行為まで可能とするかということも論点になろうかと思います。

また、この送信の形態をどうするかにもよりますけれども、現行法上、絶版等資料については一般の資料と同じようなコピーサービスが認められておりますところ、この両者の関係についても留意が必要かと思います。

2つ目の論点は、絶版等資料の内容の明確化及びその担保・確認の徹底でございます。絶版等資料に関しましては、著作権法上の31条の1項3号で定義が置かれております。「絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料」と規定されておりますが、この規定だけでは、具体的にどういった資料がこれに該当するのかは、必ずしも明確ではない部分もあろうかと思います。

この点、2ページ目の米印のところに記載のとおり、関係者間で協議が重ねられておりまして、その中で、実際に送信する資料の範囲や、そこから除外するための手続などが様々定められているところでございます。その中では権利者の利益保護などの観点から、法律においては規定されていない様々な条件についても記載がされているところでございまして、こういった関係者間の議論も踏まえながら、改めて絶版等資料の内容をどう捉えていくのか、その担保・確認をどのように確保していくのか、こういった点について御議論いただきたいと思っております。

3点目は、国立国会図書館から送信される絶版等資料に係る公の伝達権の制限でございます。現行規定上、国会図書館から他の図書館等に公衆送信ができるという規定はございますが、それを受信した図書館等において、公に伝達できるという明文の規定は置かれておりません。今回、各家庭等に対しても幅広に送信できるということになりますと、図書館以外の場において公に伝達するという場面も出てくるかと思いますので、そうした点についても議論をお願いしたいと思っております。

以上が絶版等資料の関係でございまして、次に、(2)が絶版等資料に限らない図書館資料の送信サービスについてでございます。現行法31条1項1号に関わる部分でございます。

まず現行規定におきましては、国立国会図書館及び政令で定める図書館等は、営利を目的としない事業として、調査研究を行う利用者の求めに応じ、著作物の一部分を1人につき一部提供する場合に限り、図書館資料の複製・提供ができるということになってございます。

一方で、可能な行為が複製と複製物の提供に限定されておりまして、公衆送信権までは制限されておりませんので、図書館等から利用者に対して、ファックスやメール等でデータを送信するといったことはできないことになってございます。

この点、3ページにございますとおり、遠隔地からの利用について課題があるという指摘が従来からされております。もちろん複製物の提供はできるので、郵送で複製物を送っていただくことは可能ですけれども、郵送サービスを実施している図書館等は多くなく、複製物の入手までに時間がかかるなどの課題もありまして、デジタル・ネットワーク技術が発展している一方で、利用者のニーズに十分に応えられていないのではないかと考えております。

このため、丸2のような対応を検討してはどうかと考えております。具体的には、図書館等が保有する多様な資料のコピーを利用者が簡便に入手できるようにしつつ、権利者の利益保護を図るため、新しく補償金請求権を付与することを前提に、一定の要件の下で、図書館資料のコピーをファックス・メールなどで送信できるようにする、このことについて検討を進めてどうかと考えております。

この課題につきましては、先ほどの絶版等資料と比べましても権利者の利益に与える影響が大きいため、幅広い論点について丁寧な検討が必要になろうかと思っております。

ここでは主な論点として、5つ記載をしております。

1つ目が、送信の形態でございます。データなどを送信するといいましても、ファックス送信、メール送信、もしくはID・パスワードで管理されたサーバーへのアップロードなど、いろんなやり方があるわけでございまして、どういった形態を認めていくのかということでございます。

また米印にありますように、来館した人に対して、電子媒体でコピーを提供するということについて、必ずしも現行規定上も排除はされておりませんが、実際には行われていないと聞いておりますので、こういった電子媒体でのデータの提供について、運用面も含めて検討が必要かと思っております。

それから、2つ目が補償金請求権でございまして、新しく補償金を課すということになりますと、様々な観点から補償金のスキームについて検討する必要がございます。対象範囲としては、新しく可能にする公衆送信だけを補償金の対象にするのか、従来からできたコピーの部分についても補償金をかけていくのかということでございます、また、補償金の支払い主体・実質的な負担者が誰になるのかという論点もございます。仮に利用者に対して補償金の負担が課されるということになりますと、図書館法に規定する公立図書館の利用の無料原則との関係にも留意が必要かと思います。

また、補償金額につきましては、決定方法、料金体系、徴収・分配スキーム、誰が受領するのか、こういった点についても一つ一つ議論が必要かと思っております。特に権利者に適切に対価を還元するということからしますと、実際の利用実績を正確に把握・管理をして、それに基づいて適切に分配していくことが重要になりますので、そういった点を念頭に置きながら御議論をいただきたいと思っております。

3つ目の論点が、データの流出防止措置でございます。この権利制限規定による公衆送信のためにつくったデータが別の目的で流通していくと、権利者の利益が害されることになりますので、そういったことが生じないような担保が必要ではないかという問題意識でございます。例えば図書館等において送信後にはデータを破棄することが必要かどうか、図書館において流出防止のための管理体制をどのように構築していくのかということも論点になるかと思いますし、また、データを受信したユーザー側が不正に拡散させてしまうこともしっかりと防止することが必要かと思います。そのためには、例えば公衆送信の際に電子形式での複製などを技術的に禁止するという方法もあろうかと思いますし、利用登録時に契約を締結する、データを送る際に著作権法上のルールを明示するといった措置などを講じることで不正拡散を抑止してはどうかということでございます。どこまでの措置が必要かつ合理的なのかという観点から議論が必要かと思います。

それから4つ目が、電子出版等の市場との関係でございます。今回、権利制限規定の範囲を拡大することで、既に形成されている電子出版等の市場を阻害することは避ける必要があろうかと思いますので、それをどのように担保していくかが重要となります。例えば、ただし書を新設して、電子出版などで簡易に資料が入手できる場合は権利制限は適用しないといったような仕分をしていくことも、選択肢としてあり得るかと思っております。仮にこういった形で、一定の資料については権利制限の対象にしないという制度にする場合には、どのようにその資料であることを確認するかということについても併せて検討する必要があろうかと思います。

次に、4ページに参りまして、最後の論点として、主体となる図書館等の範囲について記載をしております。新しく送信サービスを権利制限規定の対象にするとした場合に、全ての図書館等で実施できるようにする必要があるのかどうかという問題意識でございます。当然、図書館等によって送信サービスの実施のニーズも異なるかと思いますし、先ほど申し上げたような様々な点について、適切な運用が担保されるかという観点も踏まえながら、主体を限定していくのかどうか、どういう条件をかけていくのかということについて議論をお願いしたいと思っております。

その際、米印にありますように、適切に運用を図るためには、著作権教育・研修などを充実していくことも必要かと思いますので、併せて検討をお願いしたいというものでございます。

以上が図書館資料の送信サービスでございまして、最後に(3)その他関連する課題について御紹介いたします。

まず、丸1が「一部分」という要件の扱いでございます。現行の複写サービスにおいては、一部分だけ複製して提供できるという規定になっておりますところ、全ての著作物についてこの要件を維持する必要があるのかどうかという問題意識でございます。例えば、公的機関が作成した広報資料・報告書については、全部の複製を認めていいのではないかという御提案も従来からされているところでございまして、その他ここに記載したような様々な場面において、一部分の要件を維持すべきかどうかという議論をお願いしたいと思っております。

ただ、米印にございますとおり、一部分という要件を見直しますと、権利者に悪影響を与える可能性もありますので、併せてどのように利益保護を図っていくのかという検討も必要かと思います。

それから丸2は、図書館に設置されたパソコンを使って、利用者の方がインターネット上の情報をプリントアウトするといった行為について、著作権法上可能なのかかどうかという点の整理でございます。私的使用目的の複製と評価できるかという点も含めて議論をお願いしたいと思います。

それから丸3は、図書館において図書館資料のコピーを行う際に、そこに置かれたコピー機で利用者が自らコピーしている場合をどのように捉えるかという論点でございます。30条が適用されるのか、もしくは図書館における図書館資料の複製については専ら31条で規律していくのか、こういったすみ分けについても議論をいただきたいと思います。その際、図書館においては、来館者がスマホ等で資料を撮影するということも問題視されておりますので、そういった運用上の課題についても留意が必要かと思います。

丸4は、図書館等の範囲でございまして、小・中・高の学校図書館については現行制度上、対象になっていないということがございますので、こういったものを追加していく必要があるのかどうかという論点でございます。

丸5は、複製、送信などを認める「図書館資料」の定義でございまして、例えば他の図書館から一時的に借り受けている資料もここに含まれるのかどうかなど、取扱いについて御検討をいただければと思います。

最後に、先ほど少し触れたことと重なりますが、適切な運用を担保するためには、利用者を含めた著作権教育、図書館職員に対する研修等の充実も必要になってくるかと思いますので、その点も課題として記載をしております。

資料の5ページから7ページまでは、著作権法をはじめとして関連する条文を抜粋しているものでございますので、必要に応じて御参照いただきたいと思います。

先ほどワーキングチームの設置を御了承いただきましたとおり、今後ワーキングチームで集中的に御議論いただくことになりますが、その前に、本日は、さらに検討すべき論点がないか、ここに挙げた論点についての具体的な御意見などを含めて、幅広に意見交換をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。ただいまの説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。よろしいですか。

【大渕主査代理】すみません、ほかの方かと思ったのですが、どなたもいらっしゃらなければ。

【茶園主査】では、大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】図書館というのは非常に重要なテーマで、今まで図書館と言えば基本は、物理的に行ってそこで本を見るというのが中心だったことは間違いないのですが、今は新型コロナのために、それができない状態になっているのが現状です。今後の図書館としても、もちろん物理的に行くというのも重要なのですが、そうなってくるとインフォメーションセンターのように、そこのインフォーメーションをデジタル的に送ってもらうなどということで、図書館の機能をどう活用していくかというところにもわたる非常に重要な論点であります。ユーザーとしてはどんどんそちらの利便性を高めていただきたい。先ほど申し上げたような研究といってもかなりの程度は図書館で賄える部分も多いので、図書館自体だけではなくて研究の一端としても非常に重要なことなのですが、利便性が高まればよいと思う反面、あまりに図書館の利便性が高まり過ぎて本が売れなくなったりとか、電子出版などの問題も含めて、総合的に考えていく必要があります。もともと大きい論点なのですが、来年の通常国会に出さなくてはいけないというようにお尻を切られている、非常に喫緊の課題でもあります。そこのところは「選択と集中」でもないですが、やはり全部に手を出しだしたらとても手が回りませんから、本年度はこの図書館に法制小委ないしはワーキングの力を集中してやっていく必要があるのではないかと思っております。

一個一個の論点を言い出すと切りがなくて、どれもこれも重要なのですが、1つ大きいのは補償金の関係であります。先ほど奥邨委員が言われたとおり、35条は非常に時期にかなった、よい改正だったと思います。なぜ35条が進んだかというと、公衆送信のほうに補償金を組み入れたからうまく進んだということで、もともとドイツではそれに限らずたくさん補償金制度があって、幅広の権利制限が肯定できているという、ウィン・ウィンになるような非常に良い制度なわけです。やはり30条もそうだし、35号もそうだし、それと同じ図書館についても、先ほど3ページのほうに書いてありましたが、やはり補償金と組み合わせることによって利便性の高い幅広の権利制限ができるというところがあって、うまく権利者と利用者の利益を調整するということになりますので、別に図書館だけに限定されるわけでもなく、30条のほうにも波及する話でもあります。この補償金というのは、今まで、ドイツに比べると日本はあまりうまく利用できていなかったのですが、そこをうまく活用して工夫することによって、権利者と利用者のバランスを上手な形で取っていくという、一つの重要なツールだと思います。これを入れると実施が文化庁にとって大変であることは分かるのですが、ここを組み合わせることによって、いろいろな点で突破口が開けるのではないかと思っておりますので、今後この補償金のところに重点を置いていただければと思っています。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ほかに何か御意見等ございますでしょうか。

【龍村委員】すみません。

【茶園主査】では、龍村委員。

【龍村委員】若干の補足ですけれども、例えば著作権法施行令等で、この法31条の図書館の範囲等が決められていると思いますが、図書館の範囲がいろいろな関連法令が引用される形で定められており、例えば博物館はどうなのか、あるいは学術研究所とか試験所はどうなのかと、それらの要件はどういうものなのかなど、図書館の範囲がわかりにくい面があり、ここら辺も一つ見直しといいましょうか、余裕があればの話かと思いますが、一度整理しておく必要もあるのではないかなという気もいたします。例えば施行令1条の3や博物館法、あるいは図書館法どの関連法令の整理も進めたほうがよろしいのではないかという点を補足したいと思います。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

【奥邨委員】奥邨ですがよろしいでしょうか。

【茶園主査】奥邨委員、お願いします。

【奥邨委員】すみません、簡単になんですが、35条のときも同じように申し上げたのですけれども、もはや現在においては、紙でできることは、基本的にはネットやデジタルでも同じようにシームレスでできるということが、やはり大前提として存在するんだろうというふうに思います。大渕委員からの御意見にもありましたように、これも35条とも同じですけれども、デジタルにする分、非常に利便性が上がるとか、従来できなかったことができるようになるところ、これについてはまた少し違う仕組みを入れて、権利者の不利益であるとか、利益を受ける人のバランスというのを取っていく。

補償金もありますが、補償金だけではなくてほかに、今回であれば、特にデータの流出防止なんかの措置がうまくその辺をコントロールするということもあるでしょうし、そういう点で言えば、単に送信だけではなくて、つまり、主な論点のところだけではなくて、例えば来館者への電子媒体のこともありましたし、それから図書館の中での情報のプリントアウトとか、こういうのも今まではもう図書館というのは紙ですということに固まってしまって、言葉は悪いですけど、あまりに現在では時代遅れの形になっていた部分を、この際、紙とデジタルはある程度シームレスにできるということ、35条のときの基本的なコンセプトだったと思いますけれども、今回も、そのコンセプトの下に全体のバランスを取っていくということが重要ではないかというふうに、お話を伺っていて思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。

【今村委員】よろしいでしょうか。

【茶園主査】では、今村委員、お願いします。

【今村委員】今、紙というお話があったんですけれども、4ページの丸5の図書館資料の定義ということで、言及されたのは他の図書館から借り受けた資料の取扱いということでした。図書館等にはいろいろなものを含みますので、映像資料とか録音物など、紙には限らない資料というものもあると思われます。

31条3項を念頭に公衆送信ということを考えていくのだとすれば、国立国会図書館が主体ですので、紙以外の図書館資料といっても、限られてくるとは思います。ただ、31条1項1号を念頭に送信サービスの拡大を考えると、単に図書館資料というふうに言った場合には、図書館等の範囲にもよると思いますが、結構幅広い種類の資料が入ってくることになりますので、図書館資料の定義自体も、借り受けた資料ということだけではなくて、どういうタイプの資料を対象とするのか、どういうニーズがあるのかということも含めて検討していくべきであると思います。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。では、上野委員。

【上野委員】もう既にほかの先生方からも、このテーマを取り上げることについて賛成の御意見がありますので、私から特に申し上げる必要はないかと思いますけれども、私もこの図書館の規定は非常に重要なテーマだと思っておりますので、ご方針に賛成したいと思います。

もちろん現行法でも、平成24年の改正によって設けられました31条3項による絶版等資料の送信が可能ですし、また31条1項に基づく国会図書館によるコピー郵送サービスというのも非常に便利であります。海外にも郵送してくれるということで、私もよく利用しておりました。ただやはり紙の郵送ということですので、コストがかかりますし、その割には、権利者への利益分配はないというのが我が国制度の現状であります。図書館サービスによって国民が便益を受けているのに、著作者にも出版社にも利益分配がなされないということになっております。

国際的に見ますと図書館による資料送信サービスは報酬請求権付きの権利制限規定が広く見られるところであります。私が10年前にドイツにおりましたときにも立法ですとか判例の動きがありまして、図書館によるファクス送信やメール送信サービスがあり、私自身も自分の論文を6ユーロで送信してもらったことがあります。また、大学や研究所の図書館にあるコピー機でコピーする場合、もちろん紙で出力することもできるんですが、むしろ普通はあらかじめ登録されている自分のアドレスにPDFファイルが届くようにすることが多いかと思います。これはとても便利なのですが、現状の日本法では基本的に公衆送信に当たり許されないかと思います。

ただ、そのドイツの図書館にあったコピー機はキヤノン製、つまり日本の製品だったのですね。ですからこれは技術の問題ではなくて、法律の問題なのです。ですから、この問題について、権利者の正当な利益を確保しつつ、著作物の円滑な利用を確保していくために、立法的手当を検討することが非常に重要だろうと思います。

もちろん、そのような立法論においては、我が国における出版ビジネスに十分配慮する必要があると思いますし、そこでは我が国特有の個性や特性というのもあろうかと思いますので、これに配慮するというのは重要だろうと思います。具体的には、他の委員の先生方からも御指摘がありましたように、図書館資料といってもどの資料を対象にするのかとか、電子出版市場との関係をどのように確保するのか、あるいは除外の在り方をどうするのかなど様々な課題があると思いますので、こうした点について十分配慮する必要があるのではないかと考えております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

【奥邨委員】すみません、奥邨です。1点だけよろしいでしょうか。

【茶園主査】お願いします。

【奥邨委員】ちょっと海外のことで一言さっき申し上げるのを忘れたんですけれども、アメリカで、インターネットアーカイブによって、ナショナルエマージェンシーライブラリーという事業が行われておりました。

これはコロナで図書館にアクセスできないからっといって、インターネットアーカイブがいろんな本を全部スキャンして、フェアユースだと言って、全部誰でも自由に見られますというサービスを始めましたが、実際もう訴えられております。訴えられて今やめているんです。もちろん今後裁判になりますからどうなるか分かりませんが、私はこれは非常に乱暴なフェアユースの議論であって、エマージェンシーの状況であればフェアユースが優先して、本を全部デジタルにして誰でも使っていいんだみたいな極端な議論がなされたわけです。

それに比べれば、フェアユースを重視される方もおられますけれども、柔軟な規定をはじめ、日本のアプローチの正しいところを見ていただくということでも、私は今回のような形で、非常に丁寧にバランスを取って立法で議論していく、規定を進めていくのは非常に望ましいことだと思っていますので、ぜひこの形で御議論を進めていただきたいと思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】今、奥邨先生が言われたのは全く当然で、エマージェンシーかどうか、そのような議論でなくて、これはもう当然のことながら、きちんと我々のアプローチが正しいことは平成30年改正などで論証済みであり、フェアユースで丸投げするのではなくて、柔軟な規定できちんと個別規定を組んでいくのは当然だと思います。それを一個一個やるという作業ですが、あまり紙とデジタルはシームレスと言われると、疑問もあります。もちろん利便性が高まったほうがよいことは間違いないのですが、その反面で、先ほどの電子出版との競合などいろいろ問題となります。私は一個人としては、できるだけ便利になっていただいたほうがよいかと思いますが、やはり今までのような図書館は、ただでできる範囲で広げようと思っても限度があります。補償金をどう組んでいくかにもよりますが、先ほどもあったように、6ユーロ出したら入手できるという辺りに全てかかっているかと思いますが、無償でできる範囲と言えばおのずから限られてくるので、我々ユーザーとしては多少の合理的なフィーであれば払って、きちんと利便性の高いサービスを受けたいと思っております。無償の範囲だけではなくて、有償にするけれども利便性が高いという辺りをうまく組んでいかない限りどうにもならないから、前広に、「ただ」というところの制約を取り払って、お金を払うというところに入れれば、一気に合理的なバランスを組めるようになるかと思いますので、そこのところは進めていただければと思います。もう一点気になるのは、これはお尻が切られていることです。このテーマはこんなにたくさんあるので、1年でやるのは恐らく無理で、拙速にやるとろくなことはありませんので、できるだけワーキングに頑張って、1年内でやっていただきたいとは思うのですが、できるところはきちんとやって、それ以降は継続にして、2年目に回すとか、その辺りうまく現実的にしていかないと、これ全部というと、もう大変なことになりますので、そこはうまくめり張りをつけて、現実的アプローチを取っていただければと思います。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。では、井奈波委員。

【井奈波委員】このテーマは非常に重要なテーマと考えます。現在の状況のもとでは、図書館に実際にアクセスしないと書籍を閲覧できないというのは、逆に不公平な状況を生じさせるのではないかとも思われます。

ただ、やはり民業の圧迫になってはいけないと思いますので、そのバランスが一番重要かと思います。資料2ページ目の検討に当たっての主な論点の箇所で、絶版等資料の内容の明確化とありますが、絶版等資料というと、かなり範囲が広くなります。孤児著作物もここに含まれると思いますが、絶版等資料の内容を明確化して、補償金制度の導入も検討し、利害のバランスを考えていく必要があると思いました。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。村井委員、ではお願いします。

【村井委員】まず、図書館関係の制限規定の整備を進めるということについては賛同いたします。

それから、もしかして今回の改正に含めるのは難しいかもしれませんが、国立国会図書館で電子化された資料について、絶版等資料以外のものもインターネットで利用者に配信するような活用についても、今後検討の余地があってもよいように思いました。

また、先ほど研究目的での制限規定のお話がありましたけれども、文献研究の手法で行う研究については、31条が整備されれば、かなり円滑な研究活動が期待できるように思います。ただ、研究にも様々な手法の研究があり、現在の著作権法の下ですと、厳密に著作権法を守ろうとする方にとっては必要な研究を行うことが難しいというような話を耳にすることもありますので、やはり研究目的の制限規定のほうも別途整備が必要なように思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。

では、どうもありがとうございました。この図書館関係の権利制限規定の見直しにつきましては、先ほど認めていただきましたけれども、今後ワーキングチームにおいて議論をいただくことになります。その際には、本日、今までいただきました様々な御意見を十分に踏まえていただければと思っております。どうもありがとうございました。

では、その他ですけれども、全体を通じて何か御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、他に特段ございませんでしたら、本日はこれくらいにしたいと思っております。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】本日は夜の開催になりましたけれども、活発な御議論をいただきましてありがとうございました。

次回の小委員会につきましては、ワーキングチームでの議論の状況も踏まえながら、改めて調整をさせていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会第1回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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