文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)

日時:令和3年8月25日(水)

13:00~15:00

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)法制度小委員会主査の選任等について【非公開】
  • (2)今期の法制度小委員会における審議事項及びワーキングチームの設置等について
  • (3)研究目的に係る権利制限規定の創設について
  • (4)DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策に関する検討について
  • (5)その他

3閉会

配布資料

資料1
第21期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(66KB)
資料2
デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(諮問概要及び諮問)(文化審議会著作権分科会(第61回)(令和3年7月19日)資料2及び3)(245KB)
資料3
第21期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における主な検討課題(案)(91KB)
資料4
ワーキングチームの設置について(案)(54KB)
資料5-1
「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」(文化庁委託事業)の結果概要(452KB)
資料5-2
「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」(文化庁委託事業)の結果報告書(798KB)
資料5-3
研究目的に係る権利制限規定の創設に関する今後の検討について(103KB)
資料6
DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策に関する検討(105KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(158KB)
参考資料2
第21期文化審議会著作権分科会委員名簿(91KB)
参考資料3
第21期文化審議会著作権分科会における検討課題について(令和3年7月19日文化審議会著作権分科会決定)(87KB)
参考資料4
小委員会の設置について(令和3年7月19日文化審議会著作権分科会決定)(78KB)
参考資料5
「知的財産推進計画2021」等の政府方針(著作権関係抜粋)(1.4MB)
参考資料6
DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する「課題の整理」骨子(DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する勉強会)(505KB)
参考資料7
文化審議会著作権分科会(第61回)(第21期第1回)における意見の概要(172KB)
参考資料8
令和2年度法制度小委員会の審議の経過等について(179KB)
参考資料9
「著作権法の一部を改正する法律」関係資料一式(1.6MB)

議事内容

今期の文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員を事務局より紹介。

本小委員会の主査の選任が行われ,茶園委員を主査に決定。

主査代理について,茶園主査より大渕委員を主査代理に指名。

会議の公開等について運営規則等を確認。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(令和元年七月五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【茶園主査】では、傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮ください。

では、改めて御紹介させていただきますけれども、先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして、私、茶園が主査を務めることとなり、主査代理として大渕委員を指名いたしましたので、報告をいたします。

本日は今期最初の法制度小委員会となりますので、中原文化庁審議官から一言御挨拶をいただきたいと思います。中原審議官、お願いいたします。

【中原文化庁審議官】ありがとうございます。文化審議会著作権分科会法制度小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

皆様方におかれましては、日頃より著作権施策の検討・実施に当たりまして、御協力・御指導をいただいておりますとともに、このたびは御多用の中、法制度小委員会の委員をお引き受いただきまして、誠にありがとうございます。

さて、本小委員会で昨年御議論をいただきました図書館関係の権利制限規定の見直しをはじめとする著作権法の改正が5月26日に成立いたしまして、6月2日に公布をされました。これによりまして、今後、国民の情報アクセスの充実や研究活動の推進などを図ることができるものと考えてございます。

これをはじめとしまして、これまで文化庁では権利者保護と著作物の利用円滑化の観点から様々な法整備等を進めてきているところでございますが、昨今の情報通信技術の発展等を背景に著作物の創作・流通・利用をめぐる状況が刻々と新たな進化を遂げているところでありまして、大臣より7月19日に文化審議会に対してDX時代に対応した著作権制度・政策の在り方について諮問がなされたところでございます。

委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、社会の要請を踏まえた我が国の著作権制度の在り方につきまして、中長期的な観点も含めまして、精力的な御議論をお願いさせていただきたいと存じます。

私からの挨拶は以上でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。

【茶園主査】中原審議官、どうもありがとうございました。

では、続きまして、議事(2)に入りたいと思います。これは「今期の法制度小委員会における審議事項及びワーキングチームの設置等について」でございます。

去る7月19日に著作権分科会を開催されまして、今期の検討課題及び本小委員会を含む3つの小委員会の設置が決定されております。

これを受けまして、今期の本小委員会の審議事項及びワーキングチームの設置等について確認、そして意見交換を行いたいと思います。

まずは事務局より、今期の本小委員会におけます主な検討課題及びワーキングチームの設置等につきまして、まとめて説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】資料2を御覧ください。「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」の諮問が7月19日、文化審議会においてされました。

諮問の理由は、資料2にございますとおり、DXの推進は、文化芸術における創作・流通・利用にも大きな影響があること。また、DX時代における社会・市場の変化やテクノロジーの進展に柔軟に対応した「コンテンツクリエーションサイクル」の実現と、その効用を最大化し、文化芸術をはじめとした我が国の発展を下支えするものとして、著作権制度・政策を位置づけていくことが必要というものです。

審議事項につきましては、「権利保護・適切な対価還元」と「利用円滑化」の両立を基本としつつ、以下の事項を御審議願いたいとしています。

大きく2つございます。

1つ目、DX時代に対応したコンテンツの利用円滑化とそれに伴う適切な対価還元方策について。こちらについては、資料にある2点について具体的に中身を挙げております。1点目が、様々な利用場面を想定した簡素で一元的な権利処理方策。2点目が、デジタル化・ネットワーク化に対応した公的機関、企業等で推進されるDX、これに対応する基盤としての著作権制度・政策に関する課題になります。

また、審議事項の2つ目は、DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策です。これにつきましては、具体的には、今後の著作権侵害に対する実効的救済、我が国のコンテンツの海外展開方策、また、デジタルプラットフォームサービスに係るいわゆるバリューギャップや契約の在り方についての課題や実態を踏まえた対応、DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発・教育方策となります。

これが文化審議会全体の今期の主な審議事項となりますが、続きまして資料3を御覧ください。資料3では、今御説明した課題のうち、今期の法制度小委員会における主な検討課題を案として示しております。

具体的には資料にある3点です。1つ目が、「DX対応」としまして、DX時代に対応した著作物の権利保護・利用円滑化・適切な対価還元に係る法制度についてです。

2つ目、「ライセンシーの保護」。これは継続課題となっておりますが、独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンスの対抗制度についてです。

続きまして、「権利制限規定の創設・見直し」ですが、まず1つ目が、これも継続課題でございます、研究目的に係る権利制限規定の創設について、また2点目、裁判手続に係る権利制限規定など既存の権利制限規定の見直しについて、となっております。

資料3の次のページお開きください。この法制度小委員会における審議の進め方でございますが、本日第1回の後、この後お諮りする独占的ライセンシーのワーキングチームの設置。ここは、このとおり設置となれば、まずこちらを集中的に3回程度議論する予定でございます。

その後、秋以降、ライセンスワーキングチームにおける検討状況の報告、また、DX時代に対応した著作物の権利保護・利用円滑化・適切な対価還元に係る法制度について御議論いただき、年度末は審議経過報告の取りまとめ、こういったものを予定しております。

続きまして、資料4の説明に移ります。

【高藤著作権調査官】資料4を御覧ください。検討課題案のうち、ライセンシーの保護、独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンスの対抗制度については、昨年度までワーキングチームを設置して集中的に議論を進めてきたところです。

そこで資料4のとおり、今年度も引き続きワーキングチームを設置して、集中的に議論を進めてはどうかと考えております。

資料4の1のところですけれども、ワーキングチーム名としては、引き続き「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム」と。

検討課題としましては、(1)独占的ライセンスの対抗制度の導入について、(2)独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入について、(3)その他と。

2のワーキングチーム員の構成についてですけれども、こちらにつきましては、法制度小委員会の委員のうちから、座長を法制度小委員会の主査が指名し、ワーキングチーム員に関しましては、主査が法制度小委員会の委員のうちから指名した者とその他の者であって主査と協議の上で文化庁が協力を依頼した者で構成するということにしております。

また、議事の公開につきましては、分科会、小委員会に準じた取扱いということにさせていただいております。

こちらにつきまして、このようなワーキングチームの設置について問題ないか、御審議いただきたいと思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ただいま御説明いただきました検討課題のうちで、「研究目的に係る権利制限規定の創設」及び「DX時代に対応した著作物の権利保護・利用円滑化・適切な対価還元に係る法制度」につきましては、後ほど個別に議論を行いますから、それ以外の点を中心に、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。

それでは、資料2から4までの内容につきましては、事務局から説明があった案のとおりとしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

(「異議なしの声あり」)

【茶園主査】では、お認めいただいたものとして取り扱わせていただきます。ありがとうございました。

ワーキングチームの構成員につきましては、私のほうで指名させていただきまして、後日事務局よりお知らせをいたします。

では、続きまして、議事(3)の「研究目的に係る権利制限規定の創設について」議論を行いたいと思います。

まず、昨年度、文化庁委託事業といたしまして「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」が行われておりますので、その結果報告を委託先でありますアライド・ブレインズ株式会社からお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

【アライド・ブレインズ(大野氏)】アライド・ブレインズ株式会社の大野でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、令和2年度に実施いたしました研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究の報告書の概要について御報告させていただきます。

御手元の資料5-1として概要版、5-2として報告書本編が配布されているかと思いますけれども、概要版に沿って御説明させていただければと思います。

まず1ページ目、調査の概要ですけれども、この調査は、「知的財産推進計画2019」において、研究目的の権利制限規定の在り方について検討するということで、令和元年度に実施されました「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」で実態調査を行った上で出てきた、国際的な制度調和の観点から諸外国における制度やライセンスの実態について把握するということを目的として実施をさせていただきました。

調査対象国としては、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、そして、国ではありませんがEUの調査も併せて実施をしております。

調査方法につきましては、文献調査及びメール等によるヒアリングで実施をしております。

次に、2ページ目、調査の概要ですけれども、こちら、検討委員会、本日委員になられている先生方、多く参加していただいておりますけれども、検討委員会を設置いたしまして、調査の内容及び調査結果について御審議いただき、その下に調査を実施いたしました。

期間としては、2021年2月から3月という非常に短い期間で実施をいたしましたので、調査としてあまり深掘りできていない部分もあるかと思いますけれども、御容赦いただければと思います。

検討委員会の委員の先生方につきましては、3ページ目でお示しをしております。

続きまして、調査結果について御報告させていただきます。まず各国の著作権法における研究目的に係る著作物の利用に関する利用制限規定ということで、各国の著作権法や判例、そしてガイドライン等を調査し、各国の動向を整理いたしました。

まず、5ページ目、アメリカですけれども、アメリカでは、研究目的に係る著作物の利用に関する利用制限規定というところでは明示的な条文はございませんけれども、著作権法第107条(フェアユース)において、教育、学問、研究といったところの利用についてのフェアユース規定が定められています。

アメリカの場合は、フェアユースになるかどうかというところに関しましては、商業的性質を有するか、非営利の教育目的であるかというところが判断の要素として挙げられておりますけれども、判例によりますと、たとえ商業的性質を有する場合でも、状況によってはフェアユースとなる場合もある。例えば絶版書籍について、潜在的な市場への影響が低く見積もられ、フェアユースになるとした判例もございました。

また、アメリカに関しましては、補償金制度に関しては特に規定がされておりません。

また、フェアユースに関しまして疑義がある場合には、裁判によって判断するという形になっております。

続きまして、6ページ目、イギリスについて報告させていただきます。イギリスですけれども、イギリスは第29条(非商業的研究及び私的学習)の条文において、研究目的の著作物利用について、権利制限、フェアディーリングと位置づけられるということが示されております。

また、2014年に29A条が追加されまして、非商業的研究のためのテキスト及びデータの解析のための複製に対しましてもフェアディーリングになるということが示されております。

イギリス著作権法におきましては、研究及び私的学習に関しては非商業的であることが明示されております。

また、次の7ページ目でございますけれども、テキスト及びデータマイニング、こちらにつきましては、適法にアクセスする権利を有する著作物に限って権利制限規定が適用されるということが示されております。

また、補償金につきましては、イギリスの場合には、制限規定に該当する場合には著作権者への補償金は支払われないことが原則となっております。

続きまして、フランスについて御報告させていただきます。フランスでは、著作権法第122の5条(3)e及び(10)において研究目的の著作物利用に関して規定されております。

このうち(10)項につきましては、2016年10月にテキスト及びデータマイニングに関して規定が追加されたものとなっております。

フランスの場合は、著作物の利用の対応として、第120-5条(3)eでいずれの商業的利用ももたらさないことというふうに規定されておりまして、非商業利用であることが求められております。

また、フランスにおいては、報酬によって補償される報酬請求権が規定されているというところがアメリカやイギリスと異なるところになっております。

9ページ目でございますけれども、補償金制度につきましては、第122-5条(3)eにおきまして、集中管理機関に譲渡され、一括払いを基礎として交渉される報酬によって補償されるということが規定されておりまして、集中管理機関に対して補償金を支払うという形になっております。

次に、10ページ目でございますけれども、ドイツでは、第60c条と第60d条で、学術の研究及びテキスト及びデータマイニングについての規定が定められております。

この60c条と60d条に関しましては、2013年10月に定められたものであり、2023年3月までの時限立法と、時限的な適用となっております。

ドイツの著作権法におきまして、研究目的の権利制限に関しましては、非商業的な研究というふうに規定がなされております。

また、ドイツ著作権法においては、利用の範囲が非商業的な学術の研究を目的とする場合に著作物の15%を上限とする、また、固有の学術の研究を目的とする場合は75%を上限とするというような形で、複製可能な量についても明示的に示されております。

また、ドイツに関しましても、フランスと同様に補償金制度が定められております。ドイツの場合には、第54条におきまして、機器及び媒体からの補償金制度という形で定められております。

規定の明確性・柔軟性のバランスという点では、権利制限となる利用について、利用可能割合が条文内で示されており、明確性が高いと言えます。

また、補償金制度が定められており、著作権者と利用者のバランスを取った内容となっているということが言えるかと思います。

次に、12ページ目、韓国でございます。韓国におきましては、35条の5で著作物の公正な利用、フェアユース規定が定められておりまして、研究目的における利用に関しましては、フェアユースに該当するかどうかが判断基準になる形となっております。

ただし、判例等では、実際に研究目的の著作物に関するフェアユース規定に該当するかどうかの判例があまり蓄積されていない状況にありまして、そういった点ではどこまでが権利制限の対象になるかというところについてはまだ明確になっていないということが言えるかと思います。

補償金制度についても、韓国においては特に定めがございません。

続きまして、EUですけれども、EUは国ではないので、EU加盟各国に対する指令を出すという形でルールを定めておりますけれども、研究目的の著作物利用に関しては、2001年に出された「情報化社会における著作権並びに著作隣接権の調和に関する指令」の中で、研究目的、学術研究を目的とする著作物の利用について権利制限を設定することを許容するということが定められております。

また、2019年に成立しましたデジタル単一市場における著作権指令におきまして、学術研究目的でのテキスト及びデータマイニングについて、権利に対する例外または権利制限の規定を設けることを要求するということで、ここでは明示的に要求をしております。

これに基づきまして、フランス、ドイツでテキスト及びデータマイニングに関する規定が著作権法上に新たに追加されたという形になっております。

次に15ページ目、各国における研究目的に係る著作物の利用実態及びライセンシング環境等について報告いたします。

まずアメリカですけれども、アメリカに関しましては、著作物利用については、フェアユースとみなされて著作権処理が不要となる場合もありますけれども、ケースごとに判断されるということで、研究機関や教育機関、民間企業等は集中管理団体から年間著作権ライセンスを受ける、あるいは従量制の著作物利用許諾を得るといったことが一般的になっております。

特に、このうち言語の著作物に関しましては、Copyright Clearance Center、CCCが民間企業として集中管理を行っております。

教育研究機関向けのライセンスも用意されておりますけれども、これは研究目的の複製に限定したものではなく、営利目的も含めた多様な用途を対象にしたライセンスとなっております。

イギリスに関しましては、フェアディーリングであれば無償で利用することが可能であるが、利用形態、利用範囲について明示的に示されていないということもございますので、高等教育機関、研究機関、民間事業者等が集中管理機関から包括ライセンスを取得している場合が多いとなっております。

また、ライセンシングに関しましては、Copyright Licensing Agencyが年間包括契約を提供している。これは例えば教育機関に関しましては、学生人数に応じたライセンス体系になっているという状況です。

また、NLA Media Accessという団体がジャーナリズムに関して著作権の集中管理を行っているという状況になっています。

次に、フランスですけれども、フランスは集中管理機関での複写複製権の譲渡が規定されていて、CFCが著作権の集中管理を行っているという状況になっております。

図書館での貸出しに関する補償金については、SOFIAという団体が集中管理を行っています。

また、複製機器の製造・輸入業者からの補償金につきましては、COPIE FRANCEという団体が徴収・分配を行うという形になっております。

続きまして、ドイツですけれども、ドイツでも権利制限に伴う報酬請求権が規定されており、言語の著作物に関しましては、VG WORTという団体で、また視覚的芸術や画像・映像に関しては、VG BILD KUNSTという団体、そして音楽に関する著作物に関しましては、VG Musikeditionという団体が集中管理を行うという形になっております。

韓国に関しましては、韓国文学芸術著作権協会(KOLAA)という団体が集中管理を行っております。こちらはもともとKORRAという略称の団体でしたけれども、2021年1月に名称変更を行ってKOLAAという団体名になりました。

また、学術雑誌出版社の動向ということで、研究で多く利用されている著作物である学術論文についてですけれども、こちらにつきましては、民間の学術雑誌出版社がライセンス処理を行って教育機関や研究機関に提供しているという形が多くなっております。

上位5社で全学術出版物の半分から7割程度を占めていて、電子ジャーナルのコストが非常に高い割合で増加してきております。この結果、最近では大学あるいは研究者の側で無償で論文を公開するオープンアクセスの動きも強まっています。

これを受けて、学術雑誌出版社もオープンアクセス用のジャーナルを提供するといった動きも出てきております。

最後に、各国の制度及び運用状況に関する比較について簡単にまとめさせていただいております。

23ページ、権利制限の対象となる研究者の属性、あるいは利用目的に関しましては、繰り返しになりますけれども、アメリカに関しては、フェアユースかどうかというところで、利用の目的、性質が商業的性質を有するか、非営利の教育目的かというところを判断基準の1つとして、総合的に判断を行うという形になっております。

イギリスに関しましては、非商業的目的のための研究を目的とする著作物の公正利用に関して権利制限の対象となると。

フランスでは、権利制限となる利用に関して、いずれの商業的利用ももたらさない場合ということで、非商業目的であることが求められています。

ドイツも同様に非商業的な学術の研究を目的とするということが示されています。

韓国については、アメリカの場合と同様にフェアユース規定として利用の目的と性質で判断されるという形になっております。

次に24ページ目、研究目的でのテキスト及びデータマイニングでの著作物の複製ですけれども、こちらに関しましては、フランス、ドイツのヨーロッパの3か国につきましては、EU指令に基づいて明示的にテキスト及びデータマイニングでの著作物の複製が制限規定の対象になることが示されております。

アメリカ、韓国に関しましては、フェアユース規定の中で他の要素と併せて総合的に判断されるという形になっております。

図書館等での研究目的の複製に関しましては、各国において、非営利目的、研究目的であれば権利制限の対象となるということが示されています。

また、報酬請求権に関しましては、フランス及びドイツで、集中管理機関による報酬請求権の規定と集中管理機関における管理が示されている。アメリカ、イギリス、韓国に関しては、報酬請求権に関する規定はないという状況になっております。

以上、調査報告を終えさせていただきます。ありがとうございました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただいまの御説明を踏まえまして、御意見、御質問等がございましたら、お願いいたします。何かございますでしょうか。

【池村委員】池村ですけど、よろしいでしょうか。

【茶園主査】では、池村委員、お願いします。

【池村委員】ご説明ありがとうございました。研究目的という概念は非常に曖昧で多義的だと思うんですけれども、仮にこれを広く捉えた場合に、日本の現状という意味では、恐らくはいわゆる企業内複製を含め、著作権法的にグレーと言うか、黒と言うべきか、明確な法的根拠なく無許諾で行われてしまっているものも少なくないと言わざるを得ない状況にあると認識しております。この点、諸外国では日本と異なって、権利制限規定の整備ですとか集中管理のカバー率とかの関係でそういった状況にはないということになるのでしょうか。それとも、諸外国も、程度の差はあれ、日本と同じような状況にあるということなんでしょうか。

【アライド・ブレインズ(大野氏)】実際の利用実態について深く調べているわけではございませんけれども、日本と同様に企業内での利用に関してはそれほど大きな違いはないと考えております。

【池村委員】ありがとうございました。となると、ここから先はちょっと意見的な話になるんですけども、今回創設を検討することになる研究目的の権利制限規定は、仮に現状明確な法的根拠なく無許諾で行われてしまっているものを全てカバーするようなものだとすると対象が広過ぎると思います。権利制限規定で対応すべきもの、原則どおり契約で対応すべきもの、あるいは、現在基本政策小委員会で議論がされ始めている拡大集中許諾的なもので対応すべきもの、いろいろあろうかと思いますので、きめ細やかな検討をすべきかなと思いました。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。福井委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。大変勉強になるおまとめありがとうございました。多くの委員の方々が、既に調査の段階で加わっていらっしゃるようで、初歩的なお尋ねでお恥ずかしいんですが、2点ございます。

1つ目は、非商業的利用という言葉が例えばヨーロッパ3国などでも見られるようです。これはどのような意味合いの概念であるかについては、調査の過程でどの程度明らかになりましたでしょうか。例えば、企業が基礎的研究を行う場合は、これは商業的利用という整理がされているのでしょうか。あるいは場合によってはそれが基礎的研究であるならば非商業的利用というふうに考えられ得るものなのでしょうか。これが1つ目です。

それから2つ目として、研究利用に限らず、集中管理による包括的な許諾というライセンスモデルと、それから、権利制限による自由利用という仕組み、これらが2本立てで行われているケースが多いように拝察いたしましたけれども、その両者のすみ分けというか、協業、これが日本でも制度設計する上でどんなふうにやるのかなというのがやっぱり気になるところなんですが、これについては何らかの知見が得られたのでしょうか。お教えいただければと思いました。

【アライド・ブレインズ(大野氏)】非商業的利用の範囲ですけれども、企業が基礎的な研究目的で実施するところが非商業的になるかどうかにつきましては、実はそこまで深く掘り下げ切れてない部分ございましたけれども、アメリカの判例等を見ますと、例えば特許出願等で商業利用でもフェアユースになる場合もある、または出版でもフェアユースになる場合もあるといったようなことで、必ずしも明確にどこまでの範囲が非商業的でどこからが商業的になるかというところは、法律の中、あるいは運用上整理されているわけではないと理解しております。

2点目の集中管理と権利制限のすみ分けというお話ですけれども、企業及び大学等における著作物利用に関しましては、権利制限で適用される範囲、非商業的な研究目的という部分に必ずしも該当するかどうかが不明な場合も多々あるということで、そういったところも含めて包括的な集中管理のライセンス契約を結んでいる場合が多いのではないかと考えております。

お答えになりましたでしょうか。

【福井委員】ありがとうございました。まず前者についてですが、アメリカはそうです。フェアユースはそうだろうと思うんです。ただ、ヨーロッパは、御報告いただいた3国全て非商業利用であることがはっきり条件になっておりますので、米国で商業利用もフェアユースになり得るというのはあまり参考にはならないと思うんですね。そういう法制度をつくった以上、ヨーロッパではその議論があったはずなので、その点がちょっと分かると参考になるなと思った次第です。

それから、後半に関しては、なかなか制限規定の適用がされるか不明確な場合が多いので、集中管理が登場するというのはよく分かるんですけれども、私が伺いたかったのは、例えば大学でも制限規定の対象になる利用もあり得るわけですよね。それについて例えば補償金の支払いが必要だというときに、補償金を支払う仕組みが存在するはずですね。一方で、集中管理・包括許諾によってライセンスに基づいて利用できる部分がありますよね。その関係なんです。例えば両者が並行的に走っていて、制限規定の補償金はこの団体が受け持ってこういうふうに払っていますよ、ライセンスはそれとは完全に並行でこうやって払っていますよというなら、それは1つのお答えだし、いやいや、制限規定はほとんど実は機能していません、ライセンスでほとんどやっていますというなら、それも1つのお答えだと思うのです。これは日本の今後の議論でも恐らく念頭に置いておくといいことかなと思ってお尋ねいたしました。

以上です。

【茶園主査】では、大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】先ほどのように、2月から3月ということで、時間的に非常に制約がある中でここまで調査をまとめていただきまして、ありがとうございます。

先ほどから出ている御質問は私が申し上げたかったところでもあり、かつ今回の調査研究の当時からお願いしたところに関係しています。当初の予定からすると、調査研究の中でここに主に書いていただいているような法制度の整理だけでも非常に大変だったかと思います。が、この前半のような基礎に加えて、それを踏まえた上でそれらがどのようにワークしているのかという実情ですとか、どの程度うまくいっているのか、今後改善の余地があるのかという本音部分をインタビューで聞いていただくという部分が後半部分にあったのですが、前半の制度の骨格の部分でほとんど力と時間が尽きてしまいました。先ほどお尋ねになったようなところが対象になる、非営利、非商業的というのは、実際はどうなのか等々、ないしは研究の定義等々のところは、実情のところになりますので、これは時間の関係もあるので、今後また更に深掘りされるかと思います。また後で議論になるかと思いますが、今回のものを生かして、やっていただくしかないので、そのような意味では、今回の調査研究はあくまで、そこの礎をつくるというところが中心だと思いますので、先ほどお尋ねになったような点は、これを踏まえての更なる深掘りの調査研究の対象になるものだと思っております。

【茶園主査】どうもありがとうございました。私も参加させていただいておりましたが、時間的に強い制約がありました。そのため委員の皆様方から御質問いただいたようなところを、恐らく更に研究を進めないといけないのであろうと思っております。

ほかに何か御意見、御質問等ございますか。では、今村委員、お願いします。

【今村委員】今村です。

確かに非営利的な利用とか非商業的な利用というのは、先生方がおっしゃるように今回は本当に時間の制約があって、本当はもっと深掘りして調べるべきところかと思います。例えば報告書本体でいいますと44ページに、情報社会指令の前文(42)というのが挙がっています。これも各国が前文(42)のところの非営利の性質というものをどういうふうに、これが述べているところを各法に導入したときに解釈するかということをそれぞれの国で判断していくということになると思います。個人的にはイギリス法でどうなっているのかとか、興味を持って調べた点ではあるんですけども、報告書にはまだ今後の研究課題ということで盛り込まれていないということになったかと思います。非常に重要な点の御指摘であったかと思います。今後の宿題かと思います。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。

【アライド・ブレインズ(大野氏)】ありがとうございました。

【茶園主査】アライド・ブレインズ様、どうもありがとうございました。

では、続きまして、「研究目的に係る権利制限規定の創設」に関します今後の進め方等につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【高藤著作権調査官】資料5-3を御覧ください。「研究目的に係る権利制限規定の創設に関する今後の検討について」と題している資料になります。

検討の経緯に関しましては、先ほどのアライド・ブレインズ様の御説明の中にもありましたけれども、1ポツのところで改めて整理しております。

研究目的に係る権利制限規定の創設に関しましては、令和元年度の小委員会の議論でその検討が必要だという御指摘がありまして、それを踏まえまして、令和元年度に「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」を実施しております。

その調査研究の中で、2つ目の白丸のところですけれども、(ⅰ)のところ、「さらに多くの分野・人数にわたる研究者のニーズを適切にくみ上げるために、より広範・詳細な実態調査を行う」ことが必要として、ニーズの深掘りをする必要があるのではないかという御指摘がありました。また、(ⅱ)のところですけれども、「国際的な制度調和の観点から、諸外国における制度やライセンスの実態等についても把握する」必要があるという御指摘もあったところです。

これを踏まえまして、3つ目の白丸ですけれども、令和2年度に、先ほど御報告いただいた「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」ということで、まずは諸外国における制度やライセンスの実態等について調査研究を実施したところです。

 一方で、(ⅰ)のニーズの深掘りに関しましては、昨年度の著作権分科会において、研究目的の著作物利用にとっても重要な役割を果たしております図書館関係の権利制限規定の見直しに関する検討が進められていましたので、その見直しによっても対応できない部分を整理した上で、その調査をした方がよいのではないかと整理していたところです。

これらの検討経緯を踏まえまして、今後の検討の進め方については、2ポツの1つ目の白丸ですが、まずは、残っていた(ⅰ)のニーズの深掘りに関する調査研究に関しまして、図書館関係の権利制限規定の見直しによっても対応できないニーズについて更に深掘りをするということで、調査研究を実施し、その進捗状況も見ながら適宜小委員会において具体的な制度設計等に関する議論を深めてはどうかとしております。

2つ目の白丸ですけれども、この調査研究の具体的な調査範囲といたしましては、図書館関係の権利制限規定が調査研究の過程において資料を入手するという場面のものになるかと思いますので、それ以外の場面ということで、例えばですが、主に研究成果発表場面における著作物利用のニーズについて実態調査を行ってはどうかと御提案をさせていただいております。

先ほどの御議論の中でもその他更なる調査が必要ではないかという御指摘のあった事項もありましたが、今回頂いた御意見も踏まえて、調査研究の範囲については検討したいと思いますので、是非御意見いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。では、大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】どなたも御発言がないようであれば、先に発言させていただきます。要するに、今事務局から御説明のありました資料5-3の一番最後の2.の今後の検討の進め方というのはフィージビリティー的にこれしか考えられないかと思いますので、これで大変結構かと思います。

まず前半につきましては、当初から言われていたかと思いますが、研究目的というのは、狭い意味での研究だけではなくて、大きなものとして図書館関係というのが2本の柱のようになっていて、それについて大幅に前進しておりますので、それでも拾い切れないニーズはどこかという、今までからすると新たなより深まった視点から見直していくというのは大変よろしいかと思います。

それからあともう一つ、後半のように、研究成果発表場面というのがあって、研究の問題は幅広いのですが、その中で実は一番難しいぐらいの論点が最後に残ってしまっているので、今までは研究成果発表についてはあまり調査研究等もやっておりませんので、そこもしっかりやっていただくとともに、先ほどの点でも法制面の調査はできたんのですが、実際上使ってみてどうかという、非商業目的の実際のスコープとか、そのようなところにも関わってくるかと思いますが、そういう点も含めた実情とか、本音とか、そういう部分を、主にインタビュー調査を予定していたかと思いますが、時間の関係でほとんどできなかったので、そういう点も含めてやっていただくということでお願いできればと思います。先ほどの点だけではなくて、研究成果発表についても同じですが、実態調査は、いろいろマンパワーの関係等で制約があるかと思いますが、宿題として少し残っていた点もありますので、総合的にトータルに進めていただければと思っております。これは希望でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。では、井奈波委員、お願いいたします。

【井奈波委員】ありがとうございます。私もこの調査研究に参加させていただきましたが、やはり調査研究という概念が非常に幅広く、大学における調査研究という狭い態様から一般の人たちの調査研究という幅広い態様まで非常に多くの態様がありますので、そのターゲットをまずカテゴリー化するなり、ある程度絞っていかないと現在の状態ではまとめていくのが難しいように思います。そこで、ここで研究成果発表場面における著作物利用のニーズということで対象を絞っていただくことは、非常に現実的な望ましい対応かと思います。

それ以上のことを対象とするのであれば、調査研究という中で何をターゲットにしていくのかを少し明らかにしていかないと、やりづらいのではないかなと考えております。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何か御意見、御質問等ございますでしょうか。では、福井委員、お願いいたします。

【福井委員】大渕委員にも聞き取っていただきましたけれども、やっぱり追加の調査の中で、先ほどの運用面での深掘りをぜひ入れていただければと思います。その段階では、対象を絞るのではなくて、こうした調査研究の文脈で一体どのような運用が行われているか、やっぱりファクトがないとちょっと判断が難しくなりますし、せっかく先行しているヨーロッパなどの例がありますので、そこのところをぜひお伺いできればと思いました。

特にちらっと先ほど後半で申し上げた、制限規定による自由な利用と、それからライセンスに基づく許諾による利用とをどういうふうに整合させているのか。例えばガイドラインで整理して、この利用は自由にできるよ、この利用は許諾に基づくよというふうに切り分けているのか、あるいはやっぱりそんなことはあまりしていないのか。で、仮に切り分けているとしてそれがうまくワークしていると当事者たちは評価しているのか。こういったようなこと、若干範囲は広くなってしまいますが、今後への影響が非常に大きな法制度だと思いますので、伺えればなと思った次第です。

【茶園主査】ありがとうございました。では、田村委員、お願いします。

【田村委員】今の福井先生の御意見に、私も賛成です。実情を調査するときには、池村先生もおっしゃっていましたけど、結局、紙というか、ブラックレターというか、条文とか、あるいは明示的な話を、インタビュー等でぜひお願いします。確かに、条文上の制限や補償金制度があるけれども、実際は、私の言葉で言えば寛容的引用で、グレーゾーンとも言われていますが、そういうもので何となくうまくいっているといったような本音に近いこともぜひ聞くことができればいいとおもいます。それも含めて社会の実態だと思いますので、大変かもしれませんけれども、インタビューに期待をしています。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

研究というのは非常に広範な内容を持つもので、特に先生方におかれましては、実態としてどのようなことが行われているのかということについて、大変御関心があり、その点が制度を考える上でも非常に重要だと思います。事務局におかれましては今いろいろ頂きました御意見を踏まえて、新たな調査研究を実施していただき、その状況を踏まえながら適宜本小委員会におきまして議論を行っていきたいと思っております。どうもありがとうございました。

では、続きまして、議事の(4)「DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策に関する検討」につきまして議論を行っていきたいと思います。事務局に検討に当たっての論点に関する資料を準備していただいておりますので、まずその説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】資料6を御覧ください。「DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策に関する検討」でございます。

1ポツ目、背景・課題をまとめておりますが、デジタル化・ネットワーク化に対応した取組が、立法・行政・司法の公的機関や企業等で推進されています。

これに対応して、例えば対面・押印の廃止等、デジタル・ガバメントの推進等が進展しているところでございます。

こうした公的機関や企業等におけるDXの基盤整備の観点から、今後考えられる著作権法上の課題について検討する必要があるのではないか。

2ポツ目、検討すべき論点案をお示ししています。※印にも書いてございますが、今般、冒頭に説明しました文化審議会著作権分科会における諮問につきましては、文化庁でDX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する勉強会といったものを開催しておりまして、様々な参加者から意見を頂いております。今回は、この検討すべき論点案、その中からも一部お借りして作成させていただいております。

まず①立法・行政・司法の目的のための複製を認める著作権法第42条について、公衆送信を含めることについて、また、民間分野でのDX対応を踏まえた検討、立法目的での国会図書館資料の閲覧について公衆送信も含めた手法の検討、こういったものを検討してはどうかというものです。

①にも関連するところは出てきますが、②電子決裁や審査書類の共有に係る公衆送信行為について、例えば複製だけでは電子決裁に対応できないといった課題、徹底したパスワード管理等の手法も含めた検討、行政手続の簡素化、オンラインの会議や決裁等、災害時やテレワーク時でもネット上で行政が機能する体制の検討といったものを例示させていただいております。

また、③政治上の演説等の利用を認める著作権法第40条に関連して、国会審議映像等の複製や公衆送信を可能とすることについて、国会審議中継に係る権利の実態に応じた検討が必要ではないかとしております。

これら以外、④その他DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しについて、としております。

これらについては、まずは事務局にて関係者に実態や意見を聴取し、運用上の解決も含め、具体的に検討することとしてはどうかと考えております。

以上、説明を終わります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただいまの御説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたらお願いいたします。

では、池村委員、お願いします。

【池村委員】ありがとうございます。資料6でおまとめいただいているのは、現状複製しか認められていない権利制限規定について公衆送信も認めるべきではないかという内容と理解いたしましたけれども、権利制限の観点からだけではなくて、権利保護の観点からもDX対応という視点で検討が必要な部分もあるような気がしています。

最近実際気になった一例を挙げさせていただきますと、121条という条文がありまして、著作者名を偽って著作物の複製物を頒布する罪について規定していますけれども、これは条文上公衆送信には適用されませんので、著作者名を偽った書籍を作成したというケースを考えると、アナログな紙の書籍として販売すれば刑事罰の対象だけれども、デジタルな電子書籍として販売すれば刑事罰の対象にはならないという、ちょっとアンバランスな結論になってしまいます。

この121条に関しては、現状あまり機能していないとも思われますので、この条文自体、必要なのかというそもそも論は勿論あろうかと思いますし、仮に公衆送信にも広げるとすると、対象を厳格に絞るといった工夫や配慮が必要だと思いますけれども、この条文に限らず、権利保護の観点からも、現行法は十分にDX対応ができているのかという視点で一通り見直しをする必要があるんじゃないかなと思いました。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかにございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

【福井委員】福井です。今の池村委員の御意見に私も賛成です。

また、1つ御質問ですが、国会審議中継が今、例示として挙がっておりますけれども、同様に例えば政府の定例記者会見の公衆送信なども同様に検討されるということでしょうか。現在の制限規定上、これはカバーされていないという理解でよろしいのでしょうか。だとすると、これも同様に検討されることが念頭にあるかどうかという、ちょっとシンプルで、思いつきの質問で恐縮です。

【茶園主査】事務局、何かございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】ありがとうございます。この政府の定例的な会見について、40条2項で使えるかどうかといったところも要確認かと思いますが、当然こちらも重要なことだと思っておりますので、今の時点でそういったことも含めてニーズとか課題とか検討していくことになるのかなと思います。

ただ一方で、文部科学省の場合は、記者会見は即座にホームページのほうでアップしておりまして、ホームページにさえ行けば誰でも見られるような状況にはなってございますが、例えばそれを一部切り取って使いたい場合とか、こういったところも確かめてみたいなと考えているところでございます。

【茶園主査】では、大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】先ほど池村委員が最初に言われた点に、私も賛成でありまして、これは今回DX時代に著作権法が対処すべき問題ということで、元々、どうしても著作権法は複製等を中心に体系ができているのですが、公衆送信などが入ってきたために、支分権にせよ、権利制限にせよ、それにきちんと対応したものにするという観点からは、両方必要であることは間違いないと思います。したがって、広げるか、狭めるかにかかわらず、要するに、DX時代に即応するように考えていくという点では、両方向にらみながらやるということは大変重要だと思っております。

特にここでは、42条で電子決裁などを挙げていただいていますが、多くの人が気になっていたかと思うのですが、電子決裁が、特に新型コロナのためにテレワークなどでニーズが高まっていると思いますが、そこで複製しか42条に挙がっていないことをどうするか、ただ、複製は比較的うまく権利制限で絞りやすいような支分権ですが公衆送信というのはあまりに一般的に広げると権利者に対する影響が大き過ぎるので、公衆送信権をどううまく絞っていくかというのが大変でなかなか今まで手をつけられなかったところではないかと思いますが、いよいよここにも正面から立ち向かわなければならないような状態になっています。その一例が、42条であります。それから、国会中継の話が出ておりますが、この関係でも、40条の1項と2項との関係など、今までも議論は多少されてきたのですが、この点にもきちんと正面から立ち向かうべきところが来ているのではないかと思っております。

その関係で、方法論としては、事務局が率先してまずはやっていただけるということで、これしか現実的な解はないかと思いますから、やっていただくのは大変結構かと思いますので、よろしくお願いいたします。

ただ、この40条などは何ゆえか外国法の研究は今までほとんどなされてきてないものですから、そのような点も含めて、またその調査研究をやる時間があるかどうかなどを含めて御検討いただければと思います。本格的に40条、42条を本質から見直すというような面もありますので、その際には、法制面だけではなくて、現実に各国で我が国の40条、42条に対応しているものの実情ですとか、本音ベースでどの程度うまくいっているのかも含めたニーズをきちんと洗い出していただくことが重要かと思っております。先ほどの点に加えて、大変御負担が多いかと思いますが、これは粛々と進めていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。では、田村委員。

【田村委員】ありがとうございます。大渕先生と福井先生が池村先生に賛成ということで、私も総論では池村先生に賛成します。その中で、池村先生が挙げた例が適切なものかどうかは少し検討しなければいけないというのは、池村先生御自身がおっしゃっていたことだと思います。

121条は、御案内のとおり、著作者人格権とは異なる規律で、必ずしも著作者の保護ではないものを含んでおります。むしろ著作者の保護ということであれば、既に氏名表示権について刑事罰も含めても整備されているわけですから、あえて特に著作者の保護という名目の下に、121条を広げる必要はないのではないかと思います。

むしろ、池村先生がおっしゃったように、現行法上、規律が頒布にとどまっていて、公衆送信権に及んでおらず、いびつになるというのは、むしろ同一性保持権のほうにあると思います。20条の同一性保持権の改変について、細かなことは時間の関係で省略いたしますけれども、ある特定の判決等を考えますと、改変というのは改変行為そのものでなければいけないとされました。そうすると、改変後の伝達行為については、113条1項2号の頒布で検討しなきゃいけないとすると、公衆送信は落ちるのではないかということが問題になった裁判がございました。そこで、少しいびつになっているということで、池村先生の問題意識を受け止めたいと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに。奥邨委員、お願いします。

【奥邨委員】私としては、事務局の御提案のように、関係者に実態、意見を聴取していく、まず状況を調べていただくということに大賛成です。ただ、その際には、デジタル化・ネットワーク化しますよねということだけで聞いていただくのではなくて、DXというのは、デジタル化・ネットワーク化だけではなくて、デジタル化・ネットワーク化による社会とか様々な仕組みの変革というものも伴ってまいります。

したがって、従来のやり方が、デジタル化した、ネットワーク化した、だから、そこに対しての対応をしますということだけではなくて、元々の制度・政策自体が大きく変わるという部分もありますので、その辺も含めて、実態を知りたい、DX化に伴ってそもそも何が変わっていくのか。デジタル化・ネットワーク化します、通信手段が紙だったのがネットになりますねということを聞くだけではなくて、それによって例えば株主総会の運営も変わります、それから、裁判所の運営も変わります、また今私たちが参加しているこういう審議会も、従来は全員が顔を合わせてというところがこういう形に変わったことによって様々な変化が出てきますということがありますので、その辺も含めて、背景的な部分も含めて実態を聞いていただくということを望みます。その後の、対応というのは、立法になるのか、様々な運用による解決なのか、それは個別の課題の中で判断していけばいいんですけども、実態については、少し幅広に聞き取っていただければいいのかなと思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。では、前田委員、お願いします。

【前田委員】ありがとうございます。関係者に実態や意見を聴取して、運用上の解決も含めて具体的に検討するということ自体には賛成なんですが、先ほど池村先生からの御提案に基づいて議論になっている、そもそも今まで複製だけを念頭に置いている規定がいろんな箇所にあると。それを公衆送信も含めるように変えなくていいのかどうかということについては、関係者に意見を聞くだけでは足りなくて、体系的な観点から条文を見直すということも必要かと思いますので、その作業も含めて、まずは事務局でお願いできればと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。では、大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】私も、今前田委員が言われた点に賛成です。やはり、元々が、昭和45年の現行著作権法制定当時には、DXやデジタル化などのことは、考えずにできています。それはそれで1つの体系ができていたのですが、ほぼ世紀の変わり目ぐらいのころから技術がどんどん進んできており、その際に、全部が全部体系的に見直すというのではなく、いろいろ少しずつやってきているかと思います。しかし、DX対応ということで諮問もあったこともあるので、個々のニーズももちろん重要なのですが、体系的に一度きちんと全体的に見直した上で、それも視野に入れた上で1個1個見直していくということが重要であると思っております。

その関係で、先ほど出ていました121条も、保護法益が権利者の利益か、もっと公益的なものかという争いはありますが、公益的なものだとしても、複製物に係るものに限られるものなのか、それとも公衆送信も含まれるのかという観点から見る必要がないわけでもないので、121条自体に特に改正のニーズがあるというわけではないのでしょうが、やはり先ほど最初に言われた御疑問というのは、体系的見直しというところにも関わってくるかと思います。個別にニーズが出ているものはもちろんそれを中心にやるのですが、それ以外のものも波及効果がどう及ぶのかという点も含めた体系的な見直しというのもきちんと視野に入れないといけない次元の問題に来ているのではないかと思います。先ほどの113条1項2号のことは20条問題にも関わってくる大変なことだろうとは思いますがあまり小さい問題だけに限定せずにトータルに見直していくというのは重要なことだと思っております。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。

よろしいでしょうか。では、今村委員、お願いします。

【今村委員】検討すべき論点案というふうに書かれているものについて、まずは実態を把握するということで進めていただくという流れでいいかと思います。

42条にはただし書きがあるわけですが、35条を公衆送信について拡大したときに、ただし書きの範囲をめぐって教育関係者と権利者の間で非常に大きな議論になっていました。一応はまとまったんですけども、何でまとまったかといえば、利害を取りまとめる団体があったためです。42条の場合には多分そういう当事者構造にはなっていなさそうなので、利害関係者が非常に多様であって、利用されている空間も閉鎖的なので、実態把握というものをするのも結構大変なのかと思います。その辺、適切に意見聴取をしていただき、多様な実態があると思いますので、偏りがないように聴取していただければと思っております。

あとは、これは全体に関わる問題で、契約との関係の問題ですね。例えば政治上の演説とか国会審議の映像については、クリエーティブコモンズライセンスとか、そういう形で映像自体を何かライセンスで処理するという形で解決するということもあるでしょうし、ただそれができなければ法制度の改正という形でやるとか、いろんな切り口があると思うので、まずは実態の聴取をしていただければと思います。

また、権利制限に関して、オーバーライドの問題で、権利制限で許容されている複製や公衆送信を契約で制限する場合に、契約規定の当事者間での有効性とか、契約による支障が生じていないかということも踏まえた検討もできればと思います。42条は公益的な目的の規定だと思いますので、私益との調整で制限する場合と違って、当事者間であっても契約の有効性が制約されるという方向に傾くかもしれませんし、こういった権利制限規定との関係で、契約上の問題があって制限規定の利用がうまくいかないという部分もあれば、その実態とか意見も聴取していただければ。著作権法にオーバーライドを規律するような規制を設けた方がいいというわけではないんですけども、その辺の契約実態というものも把握していただければいいかなと思いました。

あとは、公衆送信について、既存の権利制限などを拡大するという検討をするときに、先ほど来複製権を中心に法律ができたということがありましたけれども、公衆送信するときでも、いろんな場面で複製が生じているということがあります。例えば送信者側には送信行為の準備のための複製も生じてきます。制限を拡大するのであれば、そういった送信行為に付随して生じる複製も取りこぼしがなく、対応されている必要があります。ある著作物の利用行為の全体の中で送信行為と複製行為がどこでどう生じているかということを全て的確に把握した上で、権利の制限の在り方とか運用の見直しとかを考えていくべきだと思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。では、澤田委員、お願いします。

【澤田委員】澤田です。①の行政のための…というところについて、現状の42条1項は、行政目的のために内部資料として必要と認められる場合には、複製できるという規定になっていますが、この内部資料は解釈としては狭く厳格に解釈されているところです。このDXという時代にその解釈が合っているのか、というところも含めて検討しないと、公衆送信を対象に含めてもあまりDX時代に対応できていないということになってしまうかもしれません。その辺りも含めて検討していく必要があるかとは思っております。

ただ、そのときにやはり留意すべきなのは、社保庁LAN事件のようなものまで権利制限の対象としてよいのか、許諾市場が存在していたり、有償の著作物についてまで対象としていいのかというところは当然検討する必要があると思います。そのような検討も踏まえつつ、これまでやや狭かった部分を広げることも含めて検討していくのがよいのではないかと思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。いろいろと御意見をいただきました。ここに記載されていますように、事務局において、いろいろと意見聴取などをしていただきまして、まずは検討したいということで、そのようにしていただきたいと思いますけれども、その際は、委員の先生方からいろいろと御意見をいただきましたように、幅広に、権利制限のみならず、権利の保護、制度面、いろいろな点についても視野を広げて御検討いただきたいと思います。

では、どうもありがとうございました。

それでは、全体を通して何か御意見、御質問等ございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

ほかに特段ございませんようでしたら、本日はこれくらいにしたいと思います。ありがとうございました。

では最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。本日はありがとうございました。

まず、本日の会議冒頭に、一般傍聴者に対するウェブ公開、こちらの接続に少々不備がございまして、委員の皆様方、また傍聴者の皆様、少々お待たせしてしまった、あるいは一部画面が欠けてしまったといったところがございました。誠に申し訳ありませんでした。

次回の本小委員会につきましては、ワーキングチームでの議論の状況も踏まえつつ、改めて日程の調整をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。では、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)を終了させていただきます。

本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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