文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)

日時:令和4年2月4日(金)

10:00~12:00

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)「民事訴訟法の改正に伴う著作権制度に関する論点整理(案)」及び「独占的ライセンスの対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する報告書(案)」に関する意見募集の結果について
  • (2)DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策に関する検討について
  • (3)簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に関する検討について
  • (4)その他

3閉会

配布資料

資料1-1
独占的ライセンスの対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する報告書(案)(1.3MB)
資料1-2
民事訴訟法の改正に伴う著作権制度に関する論点整理(案)(193KB)
資料2-1
DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策に関する検討(文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)(令和3年8月25日)資料6)(133KB)
資料2-2
国会審議中継に係る権利の実態等について(著作権法第40条関係)(139KB)
資料3-1
中間まとめDX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について【概要】(650KB)
資料3-2
簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に関する法制度小委員会における審議について(案)(92KB)
参考資料1
第21期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(92KB)
参考資料2
独占的ライセンスの対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の 導入に関する報告書(案)【概要】(539KB)
参考資料3
文化審議会著作権分科会法制度小委員会「民事訴訟法の改正に伴う著作権制度に関する論点整理(案)」及び「独占的ライセンスの対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する報告書(案)」に関する意見募集の結果について(300KB)
参考資料4
第21期文化審議会著作権分科会「中間まとめ」(簡素で一元的な権利処理方策と対価還元部分)に係るこれまでの主な委員意見の概要(216KB)

議事内容

【茶園主査】ただいまから、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、基本的には、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただくとともに、御発言いただく際には、自分でミュートを解除して御発言いただくか、事務局でミュートを解除いたしますので、ビデオの前で大きく手を挙げてください。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思いますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですけれども、この点、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。本日の配付資料は、議事次第にあるとおりでございます。

以上です。

【茶園主査】それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)から(4)の4点となります。

早速、議事(1)の「民事訴訟法の改正に伴う著作権制度に関する論点整理(案)」及び「独占的ライセンスの対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する報告書(案)」に関する意見募集の結果についてに入りたいと思います。

これらは、12月の第2回での審議を経て、パブリックコメントを行ったものとなります。

それでは、事務局より御報告をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】資料1-1と1-2を御覧ください。こちら2点は、昨年末第2回の法制小委員会での審議を経て、パブリックコメントを付議しておりました。当該パブリックコメントの結果を本日、参考資料3においてまとめております。

1ページにありますとおり、パブリックコメントを12月13日から12月26日までの期間、行っておりました。御意見は13件でございまして、おおよそ大きな方向性に対する変更等はございません。本日は、参考資料にある意見の概要、それに対する文化庁の考えは別紙のとおりまとめておりますが、こちらの資料をもって報告という形にさせていただきます。

なお、本文につきましては、一部の字句とか体裁の修正のみを行っておりますので、こちらにつきましても改めて御説明は割愛させていただきます。

事務局からの説明は以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

ただいまの報告を踏まえまして、御質問等がございましたらお願いいたします。御質問等ございますでしょうか。では、大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】これだけのパブコメをいただきまして、ありがとうございました。事務局のほうもこれを整理されるのは大変だったかと思います。せっかくの機会ですので、これだけきちんとした御意見をいただきましたので、少しだけコメントというか、御礼を申し述べたいと思っております。

それで、内容は、結論的にはもう賛成ばかりなので、全くこの報告書自体を変える必要はないと思います。その観点から貴重なコメントや御意見をいただいたかと思うのですけれども、最終的には、今回の参考資料2に出ている概要版の32ページのところに全体の結論部分が載っていて、これだけを見ると、一応両論併記にはなってはいますが、独占的利用許諾構成が有力な選択肢になると、他方で専用利用権構成も選択肢として否定されるものではないということなので、両論併記とはいえ、おのずから見れば結論は見えているようなものだけれども、最終的には文化庁において具体的な制度設計をする中で判断することが適切であるということになっているかと思います。今日フィックスするこの報告書に基づいて、最終的には文化庁のほうで御判断されることになるかと思いますが、それを今後やられるこの御判断の際に有益なコメントをいただいていますので、それについて、コメントというか御礼を申し上げたいと思います。

(参考資料3)ページ数が入っていませんが、恐らく8ページから9ページになるかと思いますが、8ページの一番下のところで、出版権のように強い権利に類似する専用利用権構成は、一般的な独占的ライセンス契約の内容とは言い難く、かつ、業界団体(書籍協会)がヒアリングで述べたように、そもそも出版権規定が妥協の産物であり、その内容の合理性について疑義が生ずるような曖昧な権利を有するものを導入することは妥当でないと言われております。最終的には名称が専用利用権構成となりましたが、ずっと最後になるまで出版権的構成と呼ばれたぐらい、出版権の延長線的なものなのですが、それについては非常にネガティブな御意見をいただいているということであります。それ以外に、9ページで独占的利用許諾構成のほうが著作権者の保護に資するということをいただいていますし、12ページの一番下のところは中立的なコメントで、一層の検討をいただきたいということで、ワーキングチームとしてはもうやり過ぎるほどやっていますので、これ以上はやることもないとは思いますが、そういうニュートラルなコメントもいただいています。

それから、13ページから14ページのところも、今回のワーキングチームでの審議を聞く限り、現実の著作物利用契約内容の自由度の観点からすると前者(独占的利用許諾構成)が望ましいと考えられるとあります。ワーキングチームでは、私の記憶では前者(独占的利用許諾構成)を推す意見が、多数というよりも、ほぼ全員そうだったかと思うのですけれども、要するに、独占的利用許諾のほうがよいという御意見が2つあって、ほかに、中立が1個で、もう1個が先ほどのようにむしろ専用利用権構成には積極的に反対だということで、大変貴重な御意見いただいています。御意見等を1個1個見ていくと独占的利用許諾のほうがよくて、専用利用権構成は難があるということなのですが、これを踏まえた上で、文化庁で、今回フィックスする報告書に基づいて最終決断をされる場合には、今まで以上に、さらに独占的利用許諾構成の方向性が強まったと言えるのではないかと思います。この御意見を下さった方は、本当にお忙しいところ貴重な御意見を下さいましてありがとうございました。

以上でございます。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では、池村委員、お願いします。

【池村委員】ありがとうございます。内容の話ではないのですが、事務局に一点お伺いします。この2点については、今国会で改正が予定されているという理解でよろしいのでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局ですが、よろしいでしょうか。

【茶園主査】お願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】この2点につきまして、独占的ライセンシーにつきましては改正時期は未定となっております。

また、民事訴訟法に伴うものにつきましては、民事訴訟法の改正法案と併せて行うことを予定しておりまして、昨年末の状況ですと、民事訴訟法もこの国会に提出を検討しているという御説明がありました。今国会で提出されれば今国会ということになろうかと思いますが、いずれにしろ、まだ、条文含めて調整中の段階でございます。

【池村委員】ありがとうございました。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、どうもありがとうございました。民事訴訟法の改正に伴う著作権制度に関する論点整理(案)及び独占的ライセンスの対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入に関する報告書(案)につきましては、修正を要する点はなさそうですので、このまま本小委員会の論点整理、報告書として取りまとめさせていただきます。今後は、著作権分科会においてさらに審議をいただいた上で、報告書については著作権分科会としての報告書として取りまとめさせていただく予定でございます。

では続きまして、議事(2)、DX時代に対応する基盤としての著作権制度・政策に関する検討についての議論を行いたいと思います。

事務局より、まず、著作権法第40条に関連して、国会審議中継に係る権利の実態等につきまして、ヒアリングの御報告をいただき、続けて、その他、DX時代に対応する著作権制度・政策の見直しに関する検討の御報告をお願いいたします。

なお、後半のDX時代に対応する著作権制度・政策の見直しに関する議論に当たりましては、委員の皆様には、議論の円滑化の観点から便宜的に、権利制限規定の条文状況をまとめた資料を委員限りの資料として配付しております。この資料につきましては、議論の円滑化のために事務局に御用意いただいたものですけれども、情報量や詳細さよりも見やすさを優先して作成していただいたものとなっておりますので、委員限りということで御了承いただければと思います。事務局や委員の皆様におかれましては、傍聴者にも分かりやすいように心がけて御説明、御発言をお願いいたします。

では、事務局よりお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。まず、資料2-1をお開きください。昨年8月の法制小委第1回でお配りした資料になります。

この中に、2、検討すべき論点案とございます。8月にこちらを議論した際に、その後、民事訴訟法の改正の動きがございましたので、①に当たる、立法・行政・司法のための民事訴訟法の部分のみ、前回第2回の12月に議論をさせていただきました。今回は、またこちらの論点案に立ち返りまして御説明をするものです。

まずはこのうち、③に該当する、政治上の演説等の利用を認める著作権法第40条に関連して、国会審議映像の複製や公衆送信を可能とすることについてを、資料2-2に基づいて御説明したいと思います。資料2-2を御覧ください。

1、問題の所在でございます。国会審議中継につきましては、衆議院、参議院のホームページにおいて誰もが閲覧することが可能になっております。この審議中継の映像について、複製やSNS等への掲載、公衆送信を行いたいといったニーズがございます。

これにつきまして、国会審議における発言等につきましては、現行著作権法第40条1項の「公開して行われた政治上の演説又は陳述」に該当する場合であるとか、同条第2項の「報道の目的上正当と認められる場合」につきましては、既に一定の利用が認められているものでございます。

ただ、3段落目にありますように、一方で、これらの演説または陳述を収録した映像の利用につきましては、当該演説等に係る著作権とは別に、映像の著作権について考慮する必要があるところ、当該映像の著作権については、同条の権利制限規定の対象外と考えられるため、その利用に当たっては、原則として当該映像に係る著作権者の許諾が必要となるというものです。もっとも、32条1項の要件を満たす限度においては、引用した利用、そういったものは可能となっております。

2、実態等についてです。これにつきまして、事務局のほうで、衆議院インターネット審議中継を所管する衆議院事務局様から、また、参議院インターネット審議中継を所管する参議院事務局様から、それぞれの審議中継映像等に係る権利の実態や考え方について聞き取りを行ってまいりました。

審議中継の制作・権利の所在についてを御覧ください。そもそも、この審議中継が著作物であるかどうかといったところでございます。審議中継につきましては、複数のカメラで撮影が行われ、発言者等へのカメラの切替えやフォーカス、また、中継映像への委員会名、発言者名等のテロップの挿入等が行われております。この撮影・作成に当たっては、映像制作会社等の外部の組織を活用しているということです。これら審議中継映像の著作権は、いずれも衆議院、参議院がそれぞれ有しているという御説明でございました。このため、これ以降の御説明につきましては、審議映像中継が、著作物であるということを前提に、説明を続けさせていただきます。なお、映像中に映る議員作成のパネル、参考人による発言・資料などについては、中継され利用されることについて、事前に了承を得たり周知がなされているということです。

次のページを御覧ください。審議中継の利用についてです。問題の所在に示しましたSNS等への掲載に係るニーズは、主に国会議員等から寄せられているということです。これにつきまして、議員本人による審議部分、議員の質疑及びそれに対する答弁、こちらの映像の利用につきましては、衆議院事務局・参議院事務局に申請を行うことで映像データが提供され、自身の発言に関する動画をSNS等で発信することは可能となっているということです。また、国会議員のみならず、放送事業者等への映像の提供も行われているようです。その際の利用に当たっては、政治的な公平性を守ること、院の権威または議員の名誉を傷つけるような取扱いをしないこと、第三者への無断でのデータ提供の禁止など、一定の条件が付されているようです。その他、それ以外の第三者による国会審議中継等の利用につきましては、それぞれホームページにおいて、枠囲みにありますように示されております。いずれも、著作権法の範囲内で御使用くださいと書いてございます。これは、院の権威または議員の名誉を傷つけるような取扱いやその他の悪用を防ぐ観点から、基本的には、著作権法32条、40条などの範囲内においての利用を認めているということです。

3、検討でございます。国会審議中継の映像の利用については、衆議院または参議院のホームページで閲覧ができることに加え、議員本人の利用のための映像の一部の複製手続が用意されており、さらに報道機関等への無償提供も行われているため、利用のニーズに対する一定の対応は取られているものと考えられます。一方、上記の実態を超える利用、条件の範囲を超える利用につきましては、政治的な公平性の確保、院の権威または議員の名誉の保護、その他の悪用の防止など、立法府における取決めや運用が深く影響するところでありまして、今後、立法府における運用の状況等を踏まえて検討すべきものと考えられるがどうかをまとめております。

資料2-2につきましては、以上でございます。

続きまして、資料2-1にお戻りいただきます。

2ポツ、検討すべき論点案のうち、①の民事訴訟法以外のもの、②の公衆送信行為等について、あと④、その他、DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しについては、昨年8月の第1回の議論に際して、論点をあまり最初から場面に限定せず、広く議論、検討すべきではないかといった御意見であるとか、現行の著作権法上の権利制限規定において、どういった規定が公衆送信まで認められているのか、また認められていないのか、そういったものを全体像を踏まえて議論すべきではないかといった御意見がありました。

これにつきまして、幾つか条文に即して御説明をしたいと思います。先ほど主査のほうからありましたような、委員の皆様には参考資料で少し一覧にしたものをお配りしております。そちらも御参照いただきながら、簡単に説明したいと思います。

現行の著作権法の権利制限規定でございますが、例えば複製のみが認められるものとしましては、著作権法30条1項の私的使用のための複製規定がございます。こちらは、委員の皆様御案内のように、個人的にまたは家庭内、その他これに準ずる限られた範囲目的というところで限定がかかっております。このような性質から、複製のみということで、当然に広く第三者あるいは多数の方に著作物が届く公衆送信、こういったところが認められていないところでございます。

ただ、一方で、著作権法の中に、当初は複製のみでございましたが、公衆送信を近年のデジタル化に対応して改正されてきたものも多くございます。例えば著作権法31条の図書館等における複製等、こちらは令和3年改正によりまして、一般の図書館につきましては、特定図書館という限定をかけた上でございますが、令和3年改正で、メール送信等の公衆送信が可能になっております。また、31条6項・7項の国立国会図書館における絶版等資料についても、自動公衆送信を可能としているところでございます。また、その他公衆送信を追加的に認めるものとしては、著作権法35条の学校その他の教育機関における複製等とあったところですが、こちら30年改正で公衆送信を付しております。また、試験問題としての複製も、オンラインによる試験といったことが想定されることから、平成15年に改正が行われているものでございます。

その他、近年の改正といたしましては、著作権法の47条の1項と2項、美術の著作物等の展示に伴う複製とございましたが、こちらも、観覧者のために解説・紹介を目的とする場合において、自動公衆送信を認めるといった改正、このようなものが行われています。

その他、この複製だけであったものを公衆送信に拡充するといったもののみならず、例えば、著作権法の30条の2から30条の4まで、30条の4、思想または感情の享受を目的としない利用は、平成30年改正で追加されたものですが、複製公衆送信含めて利用することができるといった広い規定を設けております。また、著作権法33条の2のデジタル教科書を想定しました教科用図書代替教材の掲載等の利用も新規に追加されております。

こうして見ると、著作権法、これまでかなり、公衆送信も含めて少しずつ手当てが進んでいるものと見て取れますが、その中でも、先ほど一部少し説明をしました著作権法の40条の課題、あと、前回、民事訴訟法の部分のみ議論しておりますが、著作権法第42条の裁判手続等における複製、この辺りはまだまだ御要望などをいただくところです。また、その他、複製自体は現行法でも認められておりませんが、著作権法38条1項の営利を目的としない上演等につきましても、例えば絵本などの読み聞かせといったものについて、オンラインでできないのかといったような御意見も出ているところでございます。

以上、全体をかなりはしょって説明させていただきましたが、先ほどの資料と含め、この後、皆様に御審議いただければと思っております。

事務局からの説明は以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの御報告を踏まえまして、御質問、御意見等がございましたら御発言をお願いいたします。

【奥邨委員】奥邨です。よろしいでしょうか。

【茶園主査】奥邨委員、お願いします。

【奥邨委員】今の御説明、ありがとうございます。

ちょっとこれ、傍聴者の方の手元にない資料なので説明が難しいんですけれども、今頂いた資料は、若干分かりづらいというか、比較するためにはちょっと不十分かなという気がいたします。というのは、複製の後、複製したものをその目的の範囲内であれば頒布できるという規定があるわけです。47条の7ですね。複製権の制限により作成された複製物の譲渡という規定があるわけですけれども、それに見合う部分が載ってないわけです。

問題になってくるのは、紙であれば譲渡できるときに、公衆送信できないということになると、紙でしか使えないよという枠をそこではめてしまうことになりますよというケースが、まだ幾つかやっぱり残っているわけです。

公衆送信の可否だけでなくて、その辺をちょっと見ないと。複製はできる、したものを紙で譲渡できるとなっているのに公衆送信はできない場合があるわけです。ただ、公衆送信といっても何のための公衆送信であってもいいわけではなくて、その権利制限規定の目的の範囲内の公衆送信ということになるわけですけど、それができない。だから、イコールフッティングができないものがあると。もちろんやらなきゃいけないのかどうかは個別に検討しなきゃいけないわけですけれども、そのことはこの表からは出てこないということです。

例えばですけども、これもやる必要があるかどうかですが、例えば公文書管理法による保存のための利用で、42条の3あたりで複製できるとなっていますけれども、この複製したものはたしか譲渡できるはずなんです。その目的の範囲内であれば。これを紙でないと駄目だというふうにする必要があるのかどうかと。例えばその目的の範囲内で、不特定の人に対して請求があれば送ると、図書館なんかでできるようになったのと同じようにするというようなこともあってもいいかもしれない。

ですので、そういう形で見ていくとやっぱり幾つかまだ抜けがあって、それについては、私は、そのDXという点で検討していくべきものとして、さっき御説明があったもののほかに残っているものが幾つかあるのではないかなというふうに思います。ただ、私も全部、今すぐにやらないといけないということを申し上げているわけじゃないんですが、比較という点ではそういう点を検討していく必要があるんだろうというふうに思っています。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。では、大渕委員、お願いします。

【大渕主査代理】事務局の方々には、非常にたくさんあるものをきれいに整理していただきまして、ありがとうございます。

まず、順番の関係ですが、2-2の国会審議中継というので、これは恐らく前回、事務局にて関係者実態や意見を聴取し云々…ということでありまして、実態調査の結果によって非常によく分かったということで、この実態調査だけでも、ほぼ解が見えてきたということではないかと思います。事務局におかれましては、衆議院、参議院等にいろいろ聴取されるのは非常に大変だったと思います。

これを拝見しますと、国会審議中継の映像が問題になるわけですけれども、著作権はいずれも衆議院、参議院が有しているとありますが、これは本来から言えば国に帰属するのでしょうけれども、国(衆議院、参議院)ということで、衆議院、参議院が実質的に決定権限を握っているということで、これが今までのものと違って、最終的には、法改正には立法事実が必要なのですけど、特に法改正をしなくてはいけないという立法事実が見えなかったということであります。

要するに、特殊なものなのですが、著作権を国家機関たる衆議院、参議院が持っているから、そこがいろいろな権利を害さないとかそういう範囲で適切に許諾を出していっているから特に問題ないということなので、今後も、衆議院、参議院の的確な許諾というか著作権行使に委ねるのがよかろうということで、特にこれは国会の関係ですので、衆議院、参議院の自律権というものも重要になってくるので、自律的に中でやっておられるところを中途半端に法が介入するというのも好ましくないので、そういう観点からも最終的には、今後立法府における運用の状況等を踏まえて検討すべきということは、もうおっしゃるとおりでありまして、今のところ問題がないので、このまま特に現行著作権法40条だけでうまくいっているわけですので、今のところ、それを特に変えなければならないという立法事実は見受けられなかったということが分かったという、ここの点が大きいかと思いますので、これで大変結構であるというようなところです。

それから、資料2-1に戻っていただいて、③は今申し上げたので、①、②が問題になって、かつ①は民事訴訟だけ前倒しで先ほどフィックスしたところなのですが、拝見しますと、いろいろ細かい点はあるのですが、あまりに大きいのでもう一個一個、少しずつ今後やっていくしかないかと思います。

ただ、少し気になるのは、公衆送信といってもパブリックにばらまくようなものから、電子決裁のようなもので、公衆送信に形式的には当たるけれども実質的には今まで紙決裁で複製でやっていたのと同じものが、クラウドに置いたりする関係で公衆送信になっているというのは、実質的には複製と同じ実体があったりするので、公衆送信といっても非常に幅が広いものであります。このように、ばらまくような形の公衆送信もあれば、複製と大差ないようなものもあるので、これら全部を一遍に手をつけるのは無理なので、例えば今の電子決済ような複製に代替するようなもの、こういうものは行政の在り方としても今重視されているところなので、このあたりのできるところから一歩一歩やっていくということが重要ではないかと思っております。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。では、福井委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。私からも、まずは事務局の大変なおまとめ、そして調査に感謝を申し上げたいと思います。

その上で、論点でいうと③の、政治上の演説等の利用を認める40条に関連しての国会審議映像の複製、公衆送信についてですが、私は大渕委員と異なりまして、少なくとも解決が自明であるというふうには全く思わなかったので、その点から申し上げます。

御報告は、2つの点、つまり悪用防止が心配であるということ、それから適切に許諾を出せているからいいのであるという、この2点から構成されていると理解しましたが、もし悪用が心配で、そして適切に許諾を出していけばいいんだというならば、政治上の演説全体もそうすればいいのですね。

何でそういう運用に委ねてしまわないで40条で制限をしているかといえば、それは参政権や知る権利という重要な憲法上の価値に関わるからです。よって、40条全体の議論の中で国会審議映像についても考えるべきであろうというふうに、私は思います。

それから、④を含めて、この机上配付資料の表全体については奥邨委員の意見に賛成です。特に、こういう点も今後の論点にあげていくべきではないかと気づいたところを申し上げます。まず38条の非営利の上演、演奏、上映その他に関してですが、オンラインの読み聞かせだけではなくて、メタバースなどのXRへの対応を検討の対象にしていくべきではないかと思います。この点、昨年3月、経産省が仮想空間に関する様々な法的課題の調査報告を、既に行っておりまして、知的財産権の処理が重大な課題になると。言ってみれば、仮想空間、XR全般で今後気の遠くなるような量の権利処理の課題を抱えることになるのではないかという指摘が行われているところです。私もそのような可能性は十分あろうと思います。

例えば現在、メタバース上で非営利の演奏を行いたいというミュージシャンがいた場合、それは恐らく公衆送信というふうに理解されますので、非営利であれ何であれ権利処理が必要になります。それはそれでいいのかもしれない。ただ、少なくともここには論点が存在しているので、議論の対象にしていくべきであろうと思います。世界もこうした課題に向かって一斉に走り出している。御存じのとおり、昨年の秋以降、欧米メディアもはやメタバースの話しかしていない状況にすらあるわけであり、我々も検討において再び後れを取るようなことがあってはならないと感じます。

また、45条の所有者による展示です。現在は所有者やその許諾を得た者による作品の展示行為が認められています。他方で、NFTでのアートの取引が活発化しています。デジタルアート作品についてNFTによって仮想的にオーナーシップを譲り受けたNFTオーナーは、通常そのデジタル作品をネット上で展示したいのです。オンライン展示をしたいわけです。しかし、これは法的には展示ではない、公衆送信というふうに整理されますので、やはり対応する制限規定はないことになろうかと理解しています。これもどうすべきという前に、少なくとも論点はあろうということで申し上げたいと思います。

長くなりました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかにございますでしょうか。前田委員、お願いいたします。

【前田委員】ありがとうございます。まず、国会の審議中継の問題についてなんですけれども、これは、参議院、衆議院の運用ないし規則として、著作権法で定める範囲においてのみ利用を認めると定められているがゆえに生じている問題という理解もできるのではないかと思いますので、仮に問題があるとすると、衆議院、参議院において、従来の運用ないし規則が適切かどうかを議論していただくのがいいのではないかと思います。

それから、一覧表につきましてなんですけれども、先ほど40条の政治上の演説の問題が議論の対象として挙げられましたが、39条の時事問題に関する論説の転載等につきましても、現行法では転載と放送、放送類似の利用のみ認められておりますけれども、これについては、公衆送信に一般に広げるかどうかを検討する必要があると思います。

38条につきましては、リアルの演奏であれば、現行法では、1万人に対してであっても非営利無料であれば演奏することが自由となっているのですけれども、それ自体が本当に適切なのかという問題もあると思います。公衆送信に拡大したときには、それによって対象となる人の数が膨大になり得るということがありますので、38条に関しては、これを公衆送信一般に広げるかどうかについて、非常に慎重な検討がなされる必要があると思います。

私からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかにございますでしょうか。

まず、国会審議中継に関しまして、色々な御意見をいただきましたけども、ほかに何かございますでしょうか。

それでは、40条以外のところで、事務局において委員限りということで資料を作っていただき色々な御意見を既に頂戴いたしましたけれども、その他にございますでしょうか。

よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。

では、先に進みたいと思います。続きまして、議事(3)、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に関する検討についての議論を行いたいと思います。

まず、事務局より、資料3につきまして御説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】資料3を御覧ください。資料3-1、中間まとめ、こちらは、昨年12月の文化審議会著作権分科会において取りまとめられたものでございます。

この取りまとめのうち、今、説明する中身につきまして、昨年の分科会で法制度小委員会において法制的な議論を、というところになってございます。そこの該当部分について、抽出して御説明させていただきます。

まず、1ページ目を御覧ください。「はじめに」とあるところでございます。まず、問題の所在を冒頭に御説明します。

昨年の7月に大臣から著作権分科会において諮問がございましたが、こちらであった問題の所在と背景、その1ページ目の下半分でございます。DXによる環境の変化を踏まえ、利用円滑化による対価還元の創出や増加が新たな創作活動につながるという「コンテンツ創作の好循環」の最大化を目指し、文化振興を図るといったものです。

その次の丸にありますように、過去のコンテンツに加え、無数に創作されるコンテンツは、その著作権者等の探索といった権利処理コストが高いといった理由で必ずしも利用に結びついていないとの声がある。

3つ目の丸になりますが、コンテンツの利用円滑化とクリエーターへの適切な対価還元の両立を図るため、いわゆる拡大集中許諾制度等を基に、様々な利用場面を想定した、簡素で一元的な権利処理が可能となるような方策の審議を行う。こちらが、昨年の著作権分科会で審議がスタートしました。

その後、かなり多くのヒアリング、関係者、事業者の意見を踏まえて議論してきたものでございまして、こちらの取りまとめについて、その概要資料の3ページ目のフローチャートのようなものを御覧ください。

そこで議論で一定の方向性が取りまとまったものでございますが、これは新しい権利処理のイメージについての資料になります。左から進んで見ていきますが、まず利用者は、著作物を使いたい場合、どちらに許諾を取っていいのか分からない場合がある、あるいは無数にあって、なかなか安心して使えないといった事情があるといった場合に、まず利用者が、分野横断する一元的な窓口組織に問合せをします。その組織において、分野横断権利情報データベース等を活用した権利者の探索などを行います。

ここで集中管理がされている場合は個々の集中管理団体へ取次ぎが行われまして、許諾手続を行う。集中管理されていない場合につきまして、2通りに分けておりますが、例えば個々の会社とか企業、そのようなところで、すぐに権利者が分かる場合、また、そういった意思表示、意思が示されている場合は、その会社への個別の許諾手続に進んでいただく。一方で、このUGCなど、個々人の作成するコンテンツが非常に増えている中、必ずしも、その意思表示、使っていいのか駄目なのか、示されていなかったり連絡先が分からない、こういったものがあります。こちらについて、今回、新しい権利処理の仕組みのほうに移行して、利用の円滑化を検討すればどうかといったものです。

なお、一番下の権利者不明の場合は、現行法ですと文化庁長官の裁定制度もございますが、こちらも含めて検討といったものになります。この新しい権利処理の仕組みにつきましては、1つページを遡りまして2ページ目の一番下に書いてございます。新しい権利処理の仕組みの例、①、②、③とございます。こちらの詳細につきましては、次の資料で御説明したいと思います。

それでは、資料3-2を御覧ください。「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に関する法制度小委員会における審議について(案)」といったペーパーでございます。

1、本小委員会で扱う検討事項についてとありますが、先ほど御説明しました、新しい権利処理の仕組みに関して法制的な課題を審議いただくということになります。

中段が、中間まとめにおいて示された「新しい権利処理の仕組み」に係る検討課題例のところでございます。先ほどちょっと飛ばしました中間まとめの該当部分でございますが、「分野横断権利情報データベース等に情報がなく、集中管理がされておらず、分野を横断する一元的な窓口による探索等においても著作権者等が不明の場合、著作物等に権利処理に必要な意思表示がされておらず、著作権者等への連絡が取れない場合、又は連絡を試みても返答がない場合等」について次のようなことを可能にするということで、①、「いわゆる「拡大集中許諾制度」のように、窓口組織又は特定の管理事業者が許諾に相当する効果を与えること」。②、「窓口組織への申請や十分な使用料相当額の支払いをもって利用又は暫定利用を可能とすること」。③、「窓口組織が著作権者等不明著作物に係る文化庁長官への裁定申請手続を代行すること」としております。

検討課題例をその下に示しておりますが、今、枠囲みで囲んだ部分についても、例えばこの「新しい権利処理の仕組み」に至る要件や手続について、先ほどフローチャートみたいなものを用意しましたが、法制的な要件とか手続はどうあるべきか、また、意思表示の具体的な内容、あるいは意思表示自体の保護について、また、利用または暫定利用の制度化、現行の裁定制度との整理について、裁定申請手続の代行について、また、簡易で分かりやすいオプトアウトの仕組みについてとありますが、こちらオプトアウトは、こういった新しい権利処理の仕組みを設けたとしても、事前に、こういった仕組みには乗りたくありませんと意思表示をされている場合に、この新しい権利処理の仕組みを適用させない、こういったような仕組みでございます。

次のページを御覧ください。審議の進め方のイメージですが、今期の法制度小委員会は、今回の第3回と次回、2月下旬の第4回を予定しておりますが、まず、本日の審議をいただきまして、次回、法的な課題、論点の整理を一定程度した上で、審議経過報告(案)としてまとめ、次期に継続して検討する課題の整理を行っていきたいと思っております。

事務局からの説明は以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。本議題につきましては、昨年、基本制度小委員会において幅広い関係者からのヒアリングを経て、濃密な審議を行い、方向性がまとめられております。昨年末の著作権分科会においても、この方向性を堅持しつつ、その実現に向けた法制化の議論を本小委員会で行うよう示されております。

本議題についての本法制度小委員会での審議は本日が最初の第1回目となりますので、ただいまの説明を踏まえまして、まず、委員の皆様全員から、制度化に向けての論点や課題等について御意見を頂戴したいと思っておりますので、1人当たり2分から3分程度で簡潔に発言をお願いいたします。

それでは、まず池村委員よりお願いいたします。

【池村委員】こういうときトップバッターってやりにくいのですが、五十音順なので諦めたいと思います。

まず、非常に意欲的な取組であると思われる反面、実務でしっかり使える仕組みにするという観点からは非常に難しい課題がいろいろあるんじゃないかなという印象を受けております。全く精緻な検討はできておりませんけども、中間まとめを拝見して現段階で幾つか気になった点ということで若干コメントさせていただきます。

私も、問題の所在や背景というところは大きな違和感はございません。その上で、中間まとめの本文のほうの、諸外国における拡大集中許諾制度の導入というところを拝見する限り、北欧等で拡大集中許諾制度が導入されているといっても、基本的にはかなり限定的な場合、例えば図書館ですとか、文化遺産機関とかいった公的機関による利用などで導入されているように思われて、そこは日本では権利制限規定等で対応済みな部分も相当程度あるような気がしました。

なので、拡大集中許諾制度的な制度の導入に後ろ向きという趣旨では全くございませんが、本件は、これまで様々な論点で度々言われてきたような、日本の法制度が諸外国に比べて遅れているから何とかしなきゃいけないという文脈とはちょっと異なる、もっと前向きな取組なんじゃないかなというふうな印象を受けております。

次に中身についてですが、今回検討が求められている新しい仕組みというのは、先ほど御説明いただいた、概要のフローチャートを見る限りは、データベース等を確認した結果、権利者が分からないといった場合には新しい権利処理の仕組みを利用するということのようですので、権利情報データベースというものが非常に重要になって、これをいかに充実したものにするかということが、法制度以上にポイントになるんじゃないかなというような気がしています。

どれだけ予算がかかるものなのか見当つきませんけども、しっかり予算確保して、データベースに登載される、登載することのインセンティブがちゃんとあるようなものを構築することが強く求められるんじゃないかなというふうに思います。

最後、UGCというのがキーワードになっていたと思いますが、これは中間まとめでもお書きいただいているとおり、極めて多種多様なコンテンツを含む概念だと思いますので、その分、慎重に検討することが求められるんじゃないかなというふうに思います。恐らくはSNS上で投稿された、いろんな写真画像だったりとか、短い動画だったり、そういったものもUGCの範疇に含まれてくるという理解ですけども、これらの中には、創作性の観点から、著作物と評価されないようなものも多々含まれ得るところですし、あるいは今後AIが自動生成して、外見的には著作物と全く見分けがつかないようなものも含まれてくる可能性が大いにあるように思います。

仮にこうしたものも著作物であるとして、大量に権利情報データベースに登載されることによって、新しい仕組みに基づく対価還元の対象になってしまうといったことになってしまうと、せっかくの新しい仕組みが悪用されることにもなりかねませんので、そういったことも防ぐ方策も併せて検討していく必要があるんじゃないかなというふうに思いました。

ネガティブなことも一部申し上げましたけれども、柔軟な権利制限規定に続いて、世界に先駆けた形で、権利保護にも十分配慮した、日本独自の画期的な権利処理システムが生まれることを期待したいなと思っております。

以上です。

【茶園主査】池村委員、ありがとうございました。

では井奈波委員、お願いいたします。

【井奈波委員】簡素で一元的な権利処理の方策として、分野を横断する一元的な窓口の創設は、非常に意欲的な取組なのではないかと考えております。2ページ目に記載のある一元的な窓口の創設や分野横断的権利情報データベースは、存在するのが望ましいと思いますし、利用者の利便性を考えると、このような取組はあるべきだと思います。

ただ、例えばインターネット上で、日々、発生しているUGCのようなコンテンツをすべて把握することが可能なのかどうかなど、分野横断的な権利情報データベースの構築にあたって直面する問題があると思いますので、取りあえず著作物ごとに対応せざるを得ないかと考えております。

インターネット上にあるコンテンツは非常に膨大なので、これを逐一データベース化していくというのはあまり現実的ではないとは思っております。インターネット上にあるコンテンツには、著作者も判明しやすく、連絡も取りやすいという状況も存在するので、そのようなコンテンツのためにはむしろ、権利者側のほうで権利管理情報をつけられるようなツールを提供するというような方向で、自ら権利処理ができるような手助けをしてあげたほうがいいのではないかと考えております。権利管理情報を付すことによって、将来的には集中管理を促すことにもつながるのではないかと考えてます。したがって、一元管理を目指しつつも、権利者側が個別の許諾をできるようなシステムというのを構築していくことが必要なのではないかと思います。

あと、2ページ目に権利処理に必要な意思表示と記載されていますが、その意思表示としてどの程度の意思表示を求めるのかも、問題になってくると思います。個々の権利者が、許諾していい悪いという意思表示をするのは、非常にハードルが高いと思います。どのレベルを設定するかを慎重に検討して、個別管理を希望している権利者が安易に集中管理に組み込まれないように注意することも必要なのではないかと思います。

以上です。

【茶園主査】井奈波委員、ありがとうございました。

次は今村委員、おられますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。今村委員は本日、欠席となってございます。

【茶園主査】そうですか。すみません。

では、大渕委員、お願いいたします。

【大渕主査代理】資料3-1の資料についてですが、これは、単なる机上の空論でなくて、非常に広範に関係者の方にヒアリングを遂げていただいて、この3ページに一覧性のある形でまとめていただいておりますが、恐らく唯一の解といえるぐらい現実的なものを、基本政策小委員会のほうで頑張られてお作りいただいたので、これは大変結構だと思います。これについては先日の著作権分科会で申し上げましたので、詳細は省略して、あとはこれをどのように法制的に落とし込むかというところがこの法制度小委員会で問われていることかと思いますので、そこに限って、以下コメント等を申し上げたいと思います。

やはり、これもある種の立法実務を我々がやっているわけですけれども、実務というのは実が上がらないと意味がなくて、議論のための議論、机上の空論ではなくて実(じつ)を上げるようにするためには、何といっても法制的なハードルが高くなくて、日本の法制に無理なくフィットして使いやすいものになるようなものが必要だと思います。その観点で申し上げますと、資料3-2の真ん中にまとめていただいている①、②、③とあるのですが、私としては、どう落とし込むかに当たっては、やはりこの中の②と③を有機的に組み合わせていくのが最も現実的であろうと思っております。

その中でも中心は②なのですが、最後は、利用または暫定利用とありますところ、恐らく利用というよりは、最低限みんなが使いたいと重視されているのはこの暫定利用というところなので、今回、暫定利用というものを出していただいたのが、肝となるところではないかと思っております。暫定利用というのはどういうことかと法律的に考えてみると、真の権利者が判明すると、連絡がつくとかいろいろありますが、まとめて真の権利者が判明するまでの間に、暫定的に著作物の利用ができ、真の権利者が判明するなどした後においても、暫定期間中の利用について差止め・損害賠償のような法的責任を追及されないことを確保するというのが、この暫定利用の眼目ではないかと思っております。

法的責任としては、普通は差止めと損害賠償が問題になるわけですが、真の権利者が判明したなどの後においては、その時点から見るとその暫定利用期間中というのは過去になりますので、差止めというのは将来のものを差し止めるのであって、過去のものを差し止めるというのは関係ないから、差止めのほうの責任は考える必要がないということなので、専ら損害賠償で多額のものを払わされたりするというのが懸念されて暫定利用ができないことになっているかと思います。暫定期間中に損害賠償の責任を負わないということをどうやって法的に実現していくかを考えると、当然のことながら、損害賠償のためには故意過失が不可欠でありますので、逆に言いますと、無過失というものを認めてあげることができれば損害賠償責任は免れて、安心して暫定利用ができるということになってきます。

そこでつらつら考えますと、この新しい権利処理の仕組みでどうやって損害賠償を否定していくかというとやはり、最も法制的ハードルが低いであろうと思われるのは、この権威ある民間の機関が、言わば民間版裁定のようなものをした場合であれば、無過失擬制というのは法制的に苦しいと思いますが、無過失推定とする、要するに権威ある民間団体がこれは暫定利用していいという裁定をしたら、それに基づいて利用した場合には、その利用は無過失と推定してよいのではないかというのは、無理なくやれるのではないかと思っています。

そうすると、無過失推定なんてあるのかと言われるかもしれませんが、我々知的財産法学者には、なじみの深い特許法103条に、過失の推定があります。これは御説明をする必要がないほど特許法としては有名な重要規定であります。過失推定の規定があるのであれば、無過失推定の規定をつくることにも、特段法制的な問題があるとは思われませんし、かつ、御案内のとおり、これは過失の推定となっていますが、特許の世界ではこれは実質的には過失の擬制(みなし)に近いといわれています。たしか裁判例もあって、弁理士の見解を聞いて実施した場合であっても、過失が推定されて推定が覆滅されないというように割と厳しいもので実務は固まっているかと思います。同様に考えますと、無過失推定規定もつくってみれば、実際上、無過失擬制ないし無過失みなしに近いようなものになるので、その民間版の裁定を受けた場合には損害賠償を心配しなくてよいということになろうかと思います。

その暫定利用期間について、違法性を完全に否定するというところまで行くと、またハードルも高いのですけれども、そこまでは行かなくても、過失が否定されれば結局、損害賠償を負わないから、安心して暫定利用ができるということにするのであれば、さほど法制的ハードルも高くないのではないかと思っております。

ただ、先ほども利用と暫定利用とがあったわけですけれども、暫定利用以上に本利用したいとき――ここでは本利用という言葉を使わせていただきますが――本利用したいというニーズもあると思いますので、そのためには③の窓口組織が著作権者等不明著作物に関する文化庁長官への裁定手続を代行するということであり、このようにすると、現行の裁定制度の活用につき、ユーザーが自分で手続をする必要がなくなり、負担なく、最大限使いやすくなるように、その窓口組織が代行してくれるということです。

ということで、以上のように②と③を有機的に組み合わせるということもいえますし、また、暫定利用と(本)利用を有機的に組み合わすと目標が無理なく実現できるということであります。今まであまり暫定利用ということを考えてこなかったのですが、(本)利用だけ考えるとどうしても無理があるため、暫定利用と組み合わすことが重要であり、また、暫定利用されたくない者のためには、きちんとオプトアウトができるように、簡易で分かりやすいオプトアウトの仕組みがあることも重要であると思います。

少し後回しにしてしまいましたが、①のところがもう一つ重要な点であります。これはやはり非常に考え抜かれた文章で、「いわゆる『拡大集中許諾制度』のように、窓口組織又は特定の管理事業者が許諾に相当する効果を与えること」と書いてありますとおり、これは「ように」でありますから拡大集中許諾制度自体でももちろんよいのですが、拡大集中許諾ではなくても同様に、「窓口組織又は特定の管理事業者が許諾に相当する効果を与える」というものであればよいのであります。先ほどの観点からいうと、拡大集中許諾制度は、暫定利用ではなくて本利用を拡大集中許諾という形で可能にするものといえますが、本利用だけで暫定利用がないと、先ほど申し上げたように、暫定利用したいという人のニーズが拾い切れないので、限界があります。そもそも、拡大集中許諾というと法制のハードルが非常に高いと思います。今回のこのDX関係の喫緊の課題に対する解としては拡大集中許諾は法制的ハードルが非常に高いので、これを追求していくうちに何年もたってしまったら、何をやっているのだということにもなりかねません。やはりこの喫緊の課題のニーズに応え得るような法制的に無理のない制度をまずは考えていくことが重要だと思っております。

取りあえず以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。では奥邨委員、お願いいたします。

【奥邨委員】私のほうは、この中間まとめをつくりました基本政策の委員会のほうにも出ておりましたので、基本的にはこちらでまとめられている内容が、私としても基本的な内容だというふうに思っております。

若干、私自身のこれに対する考えを申し上げますと、基本的に著作権というのは私権でありますから、許諾をもらって使う許諾権であるということが大前提なわけです。ただ一方で、非本来的な利用ですとか公益性が強いもの、これは権利制限ということで、使いやすくするということがあっていいんだろうと思いますけれども、やはり本来的利用であるとか公益性が強いとは言えないというふうなものについては、先ほど申し上げたように、許諾を取って使うというのが原則なわけです。

ただ、実際問題著作物の場合は、登録がないので、誰が権利者か分かりませんので、許諾を取って使うといっても非常に難しいということで、現実解は、やはり私たちが長年やってきた、各国で長年やられてきた集中管理制度であろうというふうに思います。ただ、集中管理制度はもちろん利用者にとっても権利者にとっても一番いい方法なんですけれども、現実問題としては、いろいろそこからこぼれてしまうものがある。それをいかに補完していくかというのが、一つの方向性の問題なんだろうと思います。

したがって、出てきています拡大集中許諾も基本的には、集中管理があってこその拡大集中許諾であって、それをいかに補完するかという一つの解でしかありませんので、それも含めてですけれども、いかに補完するかということで考えていくということになろうかと思います。

そういう意味で、今回の制度というのは、その私権であること、許諾が前提であり、そしてできる限り集中管理のほうに誘導していくということが原則になっているということで、方向性として望ましいのではないかと。やはり集中管理をすることによって、権利者にとっても利用者にとってもハッピーになるということをまず一つ、大前提に置いていかないといけないんだろうというふうに思います。

一方で、そのそこからこぼれるものをどうするかということなので、そういう点では今回課題として上がっていますような、こぼれたものに対する処理のところでその意思表示の在り方ですとか、それからオプトアウトというところが今度は問題になってくるわけですけれども、そういう点では、基本政策小委員会のほうではいろいろと制度全体について議論しましたけれども、さらに今後落とし込んでいくという上では、どういう意思表示が実際に世の中で行われていて、また、この辺だったら許容できる、実際動く、それから、これは権利者側もできる、利用者側も分かる、またオプトアウトといってもこういうものが実際にあり得るというようなことを、今度また、やはり実際の行われていることも丁寧に見ながら、一つ一つ細かく積み上げていく必要があるんだろうというふうに思います。

もう一つだけ申し上げますと、いろいろ大きな枠では、私はここの検討課題例に出ているような方向を現実化していくということで十分だと思っているんですけれども、ただこれ、具体的にするためにやはり法制度上はいろんな仕組みを組み合わせて行わないといけないというところもあろうかと思いますので、その辺はかなり詰めて理論的なところを議論しておかないと、後で何が対象だったか分からないとか、本当にこの制度が適用できているのか分からないということになりますので、その辺を詰め専門的な法的な議論が必要なんだろうというふうに思います。

すみません。以上です。

【茶園主査】奥邨委員、ありがとうございました。では澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】申し上げようと思っていたことの大半を奥邨委員がおっしゃってくださったので、今ちょっと動揺しております。私も許諾権の存在を前提として、特定の利用目的や権利制限のような観点に限られずに権利者の意思を尊重して検討を進めるという大きな方向性については賛成しておりますし、前向きに検討すべきだと思っております。

現在は、クリエイティブコモンズライセンスなどの積極的な権利者側からの意思表示がないと、簡素に使えるとは言い難い状況ではあって、そこの部分をどこまで緩くできるのかという話なのだろうと考えております。ある意味では、権利者に使わせるかどうかという選択を迫りに行くというようなところもありますので、権利者サイドのほうから話を聞くと、やはり許諾を求められた際に、別に使ってもらっても構わないんだけど、手続とか契約とかやっぱり面倒くさいよねという話も聞いたりします。例えば連絡を試みても返答がない場合とかどう扱うかという点は大きなところですが、返答がなかったら使われてしまうということになるのと、返答するコストを権利者側に負わせるということにはなりますので、その辺り、どういった形でその意思表示というものを簡易で分かりやすくできるのかは、よく検討していく必要があると考えております。

拡大集中許諾制度はよく議論されているところで、数年前に調査研究とかやっておりましたけども、私の認識では、諸外国では代表性のある団体が拡大集中許諾を出せることになっているというのが基本であると認識しております。代表性というのは要するにその分野の大半の権利者が入っている団体ということで、やはり前提としては、その集中管理が進んでいるというところがあると理解しております。そのため、奥邨先生もおっしゃっていたとおり、まずは集中管理を進めるというのを一つの基本線であるというところはぶらさないのが、適当であると考えています。仮に、現在集中管理が進んでいない理由に何か管理事業法上のネックがあるんだったら、それも併せて議論するなどということもあってもよいのではないかと思っております。そういった意味で、集中管理促進策というのも、併せて議論していくのが理想的であると考えております。

今後の法制的な課題というところで、大渕先生から先ほどお話のあった、民間版裁定というアイディアは非常に面白いと思っており、これも併せて検討すべきだとは思っています。今の裁定は何らかの行政処分だと思いますけれど、そういったものを民間の団体が出せるようにするということがあり得るのかどうかとか、その辺りは議論をしてもよいのかなとは思っております。また、裁定申請手続の代行はオーファンワークスの実証事業で既に色々やっておられたと思いますが、士業の関係の法令との関係で整理が必要であるように思いますので、委員会の中で議論して、より裁定手続とか使いやすくしていく方向で議論していくのがよいのではないかと考えております。

少し長くなりました。以上です。

【茶園主査】澤田委員、ありがとうございました。では続きまして、柴田委員はおられますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。柴田委員、本日、御欠席でございます。

【茶園主査】そうですか。では、島並委員、お願いいたします。

【島並委員】島並でございます。私も大きな方向性としては賛成でありまして、むしろよくここまで来たな、議論を進めていただいたなと思う一方で、他方でここから大きく後退するようなことがないように、事務局を中心に果断に今後も進めていただきたいと思います。

以上を前提に、私からは2点、ごく簡潔に気になる点を指摘しておきたいと思います。

1つは、全体を通じて改変的な利用をどの程度認めるのかということの視点というのをぜひ加えていただきたいと思います。これは集中管理団体であれ、いわゆる新しい権利処理の仕組みであれ、本案なり、あるいは同一性保持権なりということとの関係が気になるところであります。

私なんかは授業をしていても授業目的に係る権利制限近似に従事してきたところですけれども、やはりこの教育目的との関係で、既存のもの、著作物をそのまま配るとか示すということだけではなくて、様々加工して教育効果を高めたいと思うところがあるわけですけれども、そうしたものへの対応というのを今後どうしていくのか。これまでの権利制限規定の活用だけで足りるのか、やむを得ない改変も含めて、そうした処理で足りるのかどうかということを議論していかなくちゃいけないというふうに考えております。

第2点ですが、これは第1点とも大きく重なりますけれども、別の少し違う観点から、著作者人格権一般の処理というものを今後どう考えていくのかということも正面から議論しなくちゃいけないと思っております。その中には、先ほど出てきた、同一性保持権についてのやむを得ない改変を重視した考え方を今後取っていくということもあるかと思いますが、もう少し根本的に、特に同一性保持権については、侵害成立条件の条約レベルへの引下げといったことも含めて、大きな議論をしていく時期にそろそろ来ているのかなと。

氏名表示権も含めまして、リツイート事件の最高裁判決が出たところですけれども、一ツイッターの利用者としては、やや窮屈だなという結論だという印象は否めませんので、そうした現行法の限界ということも考えながら、DX時代に対応した権利処理というものの人格権について、どこまでが可能なのかということを検討していく必要があるなと考えております。

以上、改変的な利用、それから、それも含む著作者人格権への対応ということを検討いただきたいと考えております。

私からは以上です。

【茶園主査】島並委員、ありがとうございました。では、水津委員、お願いいたします。

【水津委員】新しい権利処理イメージの図を見ると、新しい権利処理の仕組みが適用される場合には、3つのケースがあるとされています。すなわち、権利者が不明であるとき、権利者と連絡を取ることができないとき、権利者が意思表示をしないときです。

このうち、最初の2つのケース、つまり権利者が不明であるときと、権利者と連絡を取ることができないときは、権利者が不明または不在であるケースとして、両者を同列に扱っても大きな問題はないかと思います。裁定による著作物の制度を含む、権利者不明等財産の利用等についての様々な制度では、一般に、権利者の不明と不在は同列に扱われています。これに対し、最後のケース、つまり権利者が判明しており、かつその権利者と連絡を取ることができるものの、その権利者が何らかの事情により意思表示をしないときは、最初の2つのケースとは、問題状況が基本的に異なるのではないかという気がいたします。最初の2つのケースでは、探索の方法や程度等についての検討が重要となるのに対し、最後のケースでは、意思表示の在り方や手法、オプトアウトの仕組み等の検討が重要となるのではないかと思いました。

【茶園主査】水津委員、ありがとうございました。では、田村委員、お願いいたします。

【田村委員】どうもありがとうございます。今話題になっている資料3-1の3ページの図ですけれども、これ、大変すばらしいものだというふうに思っております。今の水津委員からの御発言にもありましたけれども、非常にこのドラスティックなところがあるように感じられるのは、やはり権利者のほうが意思表示をしていないとか、あるいはさらには、水津委員はそこは大きく問題とはいたしませんでしたけれども、権利者不明の場合等について、この新しい権利処理の仕組みに流すというところでございます。

これは基本的に、意思表示があったり集中管理されている場合は、普通の権利許諾での処理と変わらないということになっておりますので、こういったものを私たち、著作権法の学者の一部はオプトアウトと呼んでみたり、つまり新しい権利処理の仕組みに行きたくないのであれば、権利者のほうで意思表示をすることを求めるということをオプトアウトと呼んでみたり、あるいはフラグを立てる。つまり、私の権利についてはしっかりきちんと許諾を取ってくださいね、あるいは集中処理でお願いしますね、そういったフラグを権利者に立てさせるといったふうな形で整理しています。

従来の著作権法はむしろ逆で、特許などと違いまして、出願や登録もせずにいきなり権利が発生するというシステムを取っていたんですけども、どうしてここに来て、このようなオプトアウト、フラグという、権利者のほうでのイニシアチブが必要とされているかということについて、委員の中ではほぼ皆さんお分かりになっているかと思いますが、こういう公の情報になりますので、少しお話しさせていただきますと、やはりこれはデジタル時代、インターネット時代の対応ということが非常に大事だということです。アクセスがデジタル時代、インターネット時代になって容易になって、大量処理が可能となってきましたが、そこでこういった制度を用意しようとしますと、やっぱりどうしてもその権利を弱めるかのように見えることがあり、その分、反発が来ることも多いように思います。

しかし、この狙いは、しっかりと保護すべきものはしっかり保護する、その代わり保護しなくても良いものは保護しないという、その切り分けをしようとしていることです。その切り分けのコストが今までは、全部にオプトアウトがない状況では、あるいはフラグがない状況では、利用者のほうで全部調べなきゃいけない、そこが大変大きなコストに大量処理、技術的にはできるようになっているにもかかわらず、権利処理のところで極めて大きなコストがかかる。そして、その大きなコストは、結局は個人著作物を中心に、全く保護をしていない人を見つけて、保護しなくてよかったなというのを明らかにするためだけに行われているという徒労感が非常に無駄なんです。

そこを解決するための仕組みだということだということで、それによって、例えば様々なその、そこにコストに回していたもの、処理コスト、探査コストに回していたものを、例えば利用料にしっかり振り向けることができることになりますので、ウィン・ウィンの関係に、保護すべきものをしっかり保護することにつながるんじゃないかと思っています。

何人かの先生方もおっしゃっていたように、やはり集中処理がどのくらい進むのかとか、データベースがどのぐらい充実するかというのは非常に重要なことだと思うんです。ただ、このオプトアウトの仕組みを取れば、結局、自分のものは集中処理してほしいなとか、集中処理じゃない人もしっかり守ってほしいなと思った権利者は、続々とフラグを立てて集中処理に参加したり、あるいはデータベースにせめて登録をしていくというような行動を取ると思いますから、問題の解決もかなり進むことが期待できると思います。

細かなことをいろいろと議論しなければいけませんし、例えば十分な使用料額などについても常々いろいろなところで申し上げていますが、なかなか現れる見込みが、もう0.0何%という権利者不明の個人著作物に対して、通常適正な利用料を用意して、それを供託しなきゃいけないという仕組みは非常に無駄なように思いますから、権利者が出現する割合などを加味した供託額にする、あるいは補償金額にする。その代わり、出てきたときには十分、いっぱいに、しっかり払うといったシステムで運用を目指すといったことも必要かと思います。

とにかく、まとめますと、これは権利を弱めるというものではなくて、保護できるものはしっかり保護する。ただ、その場合に、フラグを立てるコストを権利者のほうに持っていただく。それによって、集中処理、あるいはデータベースの活用をするのだ、そういう制度だというふうに思うということを申し上げさせていただきます。

以上です。

【茶園主査】田村委員、ありがとうございました。では、福井委員、お願いいたします。

【福井委員】私も基本政策小委員会の末席におりましたので、今日、先生方からどういう評価をいただくか、かなりどきどきしながら座っておりました。ありがとうございます。

この件では中途で、パブコメが行われました。文化庁のパブコメとしてはかなり大きな反応が寄せられたと記憶しています。そこでは、市場で流通していないアウトオブコマース作品や、あるいは過去の作品のアーカイブ、復刻、それからもちろんUGC、こういったものの活性化に向けた権利処理への大きな期待が寄せられたし、また、必要という声も届いたなと感じています。その声に我々は応えていくべきだろうと思います。

具体に入ってまいりますと、資料で5ページ目、権利情報データベース、窓口組織の充実が重要であると。そして、これに対しては、予算の確保や政府の支援が重要であろうという池村委員の指摘に、私も賛成です。これは横断的な権利情報データベースだけではなくて、個別の各分野ごとの権利情報データベースがまだ全く進んでいない分野も多いですので、その点も含めた十分な支援の仕組みが必要だろうと思います。ここでは、授業目的補償金の共通目的事業による支援を視野に入れるべきという指摘に賛成いたします。

新たな権利処理の仕組みに参りますと、これは実効性が重要であろうという、大渕委員の指摘に賛成です。私も現状では選択肢2の、利用または暫定利用を中心にすべきかなと感じているところです。また、こうした仕組みによって、集中管理に誘導していくべきであるという、奥邨委員はじめ複数の委員の御指摘、全くおっしゃるとおりだと思います。

分けても、今日、島並委員から御指摘のあった、改変的利用の許諾、人格権に対しても、そろそろ我々は対応を考えていくべきではないか。これは大賛成です。その視点は非常に重要であろうと思います。

もう1点、この集中管理や一元的な窓口に対して視点を付け加えるならば、こうした集中が進めば必ず独占の弊害が出てまいります。そうならないように、組織の透明化、運営の公平性、こうしたことは、仕組みの中にもビルドインしていくべきであろうと思います。

また、権利者の意思表示は非常に重要です。権利情報データベースとひもづけた意思表示ももちろんですが、より社会一般的に、例えばクリエーティブコモンズのような権利者による意思表示を促していくという視点自体が重要であろうと、井奈波委員の御指摘にあったとおりだと思います。

6ページに進みます。裁定制度の抜本見直しは、上の新たな権利処理の仕組みだけではなくて、独立の項目としても注目度も高いし、重要だと考えます。田村先生の御指摘もありましたけれども、供託金については不要化に、もう踏み出すべきだろうと思います。なぜならば、その算定の負担が大変だからです。よって、金額が小さくなるだけではなくて、もはや権利者は現れない可能性が極めて高い故に不要化を考えるべきではないかと思います。

あわせて、P6では、現場を時として非常に悩ませる複雑な保護期間の計算の明確化や、あるいは権利者間で意見が不一致である場合の利用を可能とする方策に向けた、大胆な踏み込みがあります。この議論もぜひ進めていきたいと思います。

全般に、固定的な制度をつくって終わりではなくて、現場の様々な取組と連携しながら、現実に権利処理が進んでいくような柔軟な仕組みをつくり上げていく、そんな議論ができればと思っています。ゴールは、活発なデジタルライセンス市場の育成ということに尽きるかなと思います。

最後に、7ページに普及啓発についての指摘があります。これは、パブコメにおいては新たな権利処理の仕組みと同じぐらい、権利についてお互いに学び合える、そういう普及啓発への期待は非常に大きいものがありましたので、御報告いたします。

長くなりました。

【茶園主査】福井委員、ありがとうございました。では、前田委員、お願いいたします。

【前田委員】コンテンツの利用円滑化とクリエーターの適切な対価還元を両立させる方策として、集中管理の促進や、拡大集中許諾制度の導入ということが検討対象になり得るわけですけれども、集中管理というのは、あらゆる利用方法について適合するものではないと私は思います。

コンテンツビジネスというのは、権利者自らがコンテンツを活用する、あるいは許諾権を適切に行使して利益を最大化していくこと、そしてそれによって得られた利益を次の作品に投下していくことによって成り立っているわけです。

このようなコンテンツビジネスの屋台骨を支えているのは、権利者自身による許諾権の行使ということだと思いますので、集中管理を著作権のあらゆる分野において、あるいはあらゆる利用方法について進めていくというのは不可能ですし、また適切でもないと私は思います。この点は奥邨委員、澤田委員、あるいは福井委員の御意見と私の意見とはちょっと異なるのかもしれません。

拡大集中許諾につきましては、集中管理を前提とするものですので、既に集中管理が進んでいる分野においてはともかくとして、そうでない分野あるいは利用方法については前提を欠くことになるのではないかと思います。そのような中で、利用円滑化と適切な対価還元の両立を図るための方策としては、この分野を横断する一元的な窓口組織をつくること、そして、それを活用した新しい権利処理の仕組みをつくることは、現在考えられるベストの選択肢ではないかと私も思います。

もっとも、これも当然課題がございまして、新たな権利処理の仕組みは制度設計いかんによっては、権利者の意思に反して他人によって著作物が無断利用される、あるいは暫定的に利用されてしまうおそれがあるのではないかという懸念を権利者側が持つかもしれません。そのような懸念を払拭していくためには、オプトアウトの仕組み、あるいはどのような方法で、どのような意思表示を権利者側がすればそれを尊重してもらえるのか、そういったことを今後検討していく必要があるのではないかと思います。

それから、大渕委員から暫定利用について、無過失の推定という考え方のお話がありましたけれども、暫定利用を認める以上は必然的に違法性がないということになるのではないかと私は思いました。

また、島並委員から御指摘がありました同一性保持の点につきまして、私は、利用目的との相関関係で、やむを得ないと認められる改変を大幅に柔軟化していくという方策があるのではないかと思いました。

私からは以上でございます。

【茶園主査】前田委員、ありがとうございました。では村井委員、お願いいたします。

【村井委員】今回の円滑な権利処理の仕組みの構築に向けた試みというのは、現在の著作権法における課題を解決するために意義のある重要な試みであると思います。基本的な方向に賛成いたします。

従来の裁定制度の問題をクリアするためには、やはり利用者にとっての時間的あるいは経済的に過度な負担とならないような仕組みが必要で、例えば、先ほどからお話に出てきているような、使用料相当額や供託金の問題など含めて、使いやすい仕組みを設計していくということが必要になるかと思います。特に、企業や組織だけではなくて、個人による利用なども想定しているとしますと、実際に利用される制度にするためには、コストの面の配慮が必要であるように思いました。それから、法制度的な課題とは少し離れるかもしれませんが、実際の著作物の利用においては、どこからが許諾の必要な範囲かという判断が難しいケースもあることを考えると、特に個人の利用などを想定した場合、窓口などでは許諾を得るための橋渡しだけではなく、そもそも許諾が必要なのかということについても相談できるような何かがあるとよいようにも思いました。

また、著作権制度や政策の普及や啓発・教育が今回セットで提案されているかと思われるのですが、伝え方によっては、明白に白と言えるような利用以外の利用について、権利者にとってあらゆる利用に権利行使を促したり、利用者にとってはあらゆる利用に許諾を得なければいけないというメッセージを伝えることになってしまうと、やや窮屈な著作権制度になってしまい、長期的には文化の発展という観点から見てマイナスの影響を与えてしまうおそれがあるようにも思いましたので、啓発や教育の在り方には少し注意が必要なようにも思いました。

基本的には円滑な権利処理を促進するということで、法制度の方向性については異論ございません。

私からは以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

今、委員の皆様全員から御発言いただきましたけれども、さらに御意見等がございましたらお願いいたします。さらに追加的に御意見等ございますでしょうか。

よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

では、本日の議題全体を通じまして、何か御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、少々お時間がありますけれども、ほかに特段ございませんようでしたら、本日はこれくらいにしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。次回の法制度小委員会につきましては、2月28日15時からを予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには、Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は、こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動