文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)

日時:令和4年7月22日(金)

10:30~12:30

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)法制度小委員会主査の選任等について【非公開】
  • (2)今期の法制度小委員会における審議事項について
  • (3)研究目的に係る権利制限規定の創設について
  • (4)簡素で一元的な権利処理に係る新しい権利処理の仕組みの導入について
  • (5)立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について
  • (6)その他

3閉会

配布資料

資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(108KB)
資料2
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における主な検討課題(案)(225KB)
資料3
「知的財産推進計画2022」等の政府方針(著作権関係抜粋)(3.6MB)
資料4-1
「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」(文化庁委託事業)の結果概要(718KB)
資料4-2
「研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究」(文化庁委託事業)報告書(1.4MB)
資料5-1
分野を横断する一元的な窓口組織を活用した権利処理・データベースイメージ(474KB)
資料5-2
簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る新しい権利処理方策について(182KB)
資料6
立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等に関する論点案(150KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(353KB)
参考資料2
第22期文化審議会著作権分科会委員名簿(124KB)
参考資料3
第22期文化審議会著作権分科会における検討課題について(令和4年6月27日文化審議会著作権分科会決定)(328KB)
参考資料4
小委員会の設置について(令和4年6月27日文化審議会著作権分科会決定)(140KB)
参考資料5
文化審議会著作権分科会(第64回)(簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る新しい権利処理方策について第22期第1回)における意見の概要(214KB)
参考資料6
令和3年度法制度小委員会の審議の経過等について(253KB)
参考資料7
「民事訴訟法等の一部を改正する法律」関係資料一式(963KB)

議事内容

今期の文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員を事務局より紹介。

本小委員会の主査の選出が行われ、茶園委員が主査に決定。

主査代理について、茶園主査より今村委員を指名。

会議の公開について運営規則等の確認。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十四年三月二十九日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【茶園主査】傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮ください。

それでは、改めて御紹介させていただきます。先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして、私、茶園が主査を務めることとなり、主査代理としまして今村委員を指名いたしましたので、ここで御報告いたします。

本日は今期最初の法制度小委員会となりますので、杉浦文化庁次長から一言御挨拶をいただきたいと思います。杉浦次長、お願いいたします。

【杉浦文化庁次長】よろしくお願いいたします。文化審議会著作権分科会法制度小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。

皆様方におかれましては、日頃より著作権施策の検討・実施に当たりまして、御協力・御指導を頂戴しております。誠にありがとうございます。また、このたびは御多用の中、法制度小委員会の委員をお引き受けいただきましてありがとうございます。感謝申し上げます。

今年度は昨年度に引き続きまして、昨年7月に文部科学大臣から諮問されました、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について、知的財産推進計画2022をはじめとする政府方針等を踏まえ、法案の提出を見据えての御議論を頂戴したいと考えております。コンテンツは我が国の文化の主要な基盤でございます。人々の生活を豊かにするとともに、日本の産業発展にも大きな役割を果たすことが期待されているところでございます。

委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、特に法制度面を中心に、社会の状況変化を適切に踏まえた我が国の著作権制度の在り方について、精力的かつ建設的な御議論をお願いしたい、このように考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】杉浦次長、ありがとうございました。

では、続きまして、議事(2)に入りたいと思います。これは今期の法制度小委員会における審議事項についてです。

去る6月27日に著作権分科会が開催されまして、今期の検討課題及び本小委員会を含む3つの小委員会の設置が決定されました。これを受けまして、今期の法制度小委員会の審議事項につきまして、確認・意見交換をさせていただきたいと思います。

まずは事務局より、今期の本小委員会におきます主な検討課題につきまして、まとめて説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。資料2を御覧ください。第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会における主な検討課題(案)としております。

第22期の小委員会におきましては、知財計画2022をはじめとする政府方針を踏まえ、主に下記の課題について検討を行うことが考えられるとしております。以下4点です。

簡素で一元的な権利処理に係る新しい権利処理の仕組みの導入について、研究目的に係る権利制限規定の創設について、立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について、損害賠償額の算定方法の見直しについて(令和元年特許法等改正を参考)になります。なお、検討課題につきましては、今後の状況の変化等を踏まえ、適宜追加・見直しを行う可能性がございます。

続きまして、資料2の次のページを御覧ください。審議の進め方でございます。今回は、第1回、7月22日となっております。月1回程度の審議を踏まえまして、夏から秋につきましては関係団体からヒアリングを行いまして、ヒアリングを踏まえ、報告書(案)をまとめ、12月以降パブリックコメント等を実施し、1月には報告書の取りまとめというスケジュールを考えております。

続きまして、資料3を御覧ください。こちらは知財計画2022等の政府方針等の著作権関係部分の抜粋です。大部になりますので、先ほどの法制小委における審議事項に関連する、簡素で一元的な権利処理部分につきましてのみ御紹介します。

資料3の9ページ目、こちらの下、施策の方向性とございます。この2ポツ目の部分、少し次のページにまたがっておりますが、そちらの最後のところでございます。「具体的な措置を検討し、2023年通常国会に著作権法の改正法案を提出し、所要の措置を講ずる」とされているところです。

なお、これにつきましては、同じく資料3、26ページ目にございます、いわゆる骨太の方針、こちらについても上段、下線が引いてあるところでございますが、「コンテンツの利用拡大に向け、2023年通常国会での関連法案の提出を図る」とされております。

また、次の28ページ目、こちらには、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画とありまして、(3)メタバースも含めたコンテンツの利用拡大としまして、「簡素で一元的な権利処理を可能とする措置を検討し、来年の通常国会に関連法案の提出を図る」とされているところでございます。

事務局からの説明は以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。今御説明いただきました検討課題全般につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

【茶園主査】では、もしございましたら、また後ほどお願いするといたします。それでは、資料2の内容につきましては、事務局から説明があった案のとおりとしたいと思っておりますが、よろしいでしょうか。

(「異議なしの声あり」)

【茶園主査】ありがとうございます。それでは、本小委員会におきましては、この検討課題に沿って審議を進めていくこととしたいと思います。

では、続きまして、議事(3)の研究目的に係る権利制限規定の創設について議論を行いたいと思います。

本日は、昨年度、文化庁委託事業として行われました、研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究の委託先であります一般財団法人ソフトウエア情報センターから亀井正博事務局長に御出席いただいておりますので、まずは御報告をお願いしたいと思います。

亀井事務局長、よろしくお願いいたします。

【ソフトウエア情報センター(亀井氏)】 亀井でございます。ただいまより、研究目的に係る著作物の利用に関する調査研究結果概要を御報告させていただきます。資料4-1でございます。

こちらの研究を昨年度させていただきまして、まず体制といたしまして、お目にかけておりますような委員会を構成いたしております。このうち外国法の研究に関しまして、井奈波先生にフランスを、今村先生にイギリスを、上野先生にドイツを調査、御執筆いただいております。

研究の内容でございますが、2点ございます。ページの下のほうに2つ述べておりますけれども、1つは図書館関係の権利制限規定の見直しによっても対応できない場面として、主に研究成果発表場面における著作物利用のニーズについて、広範・詳細な調査研究を実施する。

もう一つは、外国における権利制限規定の解釈・運用、とりわけ非商業目的の解釈と契約によるオーバーライドについて、より詳細な研究を実施するということで、イギリス、ドイツ、フランスにつき研究を実施しております。

少しページを飛ばせていただきまして、まず、項目の1つ目でございますが、より広範にニーズを調査するということで、アンケート調査をしております。ウェブを用いたということで、本年の2月、一月間で募集をいたしまして、回答総数は6,241件でございます。

回答者の組織も書いてありますが、多くは大学、大学院等の機関に属されている方、それから公的研究機関の方、企業、個人という、このような構成でお答えをいただいております。分野としては、一応多くの分野の研究者の方におうかがいできたかと思います。

まず、質問事項の1としまして、引用による利用の経験を聞いております。回答者の97.3%が引用したことがある、あるいは引用しようとしたということの回答を得ております。

引用した著作物の種類というのは、これは文章が多いわけでございますけれども、あらゆる著作物に及んでいるというところ、それから分野ごとに見てみますと、若干の違いがあるところが分かりました。

引用の際に困ったこと、気になったことでは、延べ回答者は1万2,700人ですが、43%の方があったと答えております。その内容につきましては、許諾が必要か否か分からなかったというのが45.6%、許諾を得ようと考えたが大変だった、または得られなかったということが18.6%、それから、許諾を得ず引用しようと考えたが適切な条件や方法が分からなかったが25.1%ということでございます。

具体的には、9ページに少し載せております。困ったこと、気になったこと(自由記述)という中では、多くは引用の方法、条件、あるいは32条で言えば、要件に関わるところが多かったようでございますが、様々な場面で困ったケースがあるというようなことが回答に寄せられております。

引用に際して権利者の許諾を得ようとしたかにつきましては、回答者の32.4%が、そうしたことをチャレンジしたということであります。ただ、許諾を得ようとした理由としましては、念のために許諾を得ようとしたという回答が最も多かったですが、業界などの慣行として得る必要があるというふうに理解されている場合も一定程度ございました。

許諾を得ようとした際の経験ということでは、結果的に許諾を得られたケースが最も多くパーセンテージが出ておりますが、権利者不明である、あるいは連絡が取れないという場合も多数見て取れるところでございます。

引用の目的・態様としては、一般的に考えられている程度ではないかと思われます。

続きまして、学会であるとか研究会における発表での利用ということで、38条を念頭に置いたところでございます。そうした利用をした、しようとした方は、回答者のうちの56.1%ということになってございます。

著作物の種類ということでは、引用の場合と比較をいたしますと、写真・画像、図面・図表、映像等の割合が相対的に増加したところでございます。

発表での利用の際に困ったこと、気になったことでは、経験のある方は43.6%が困ったことがあったと。その内容については、引用の場合とおおむね同様の傾向でございます。

実際にどういうことがありましたかということでは、実際の回答の中では、引用の適切性に関する問題指摘、困ったという記述が3分の1に上っておりまして、あまり発表の場合と区別されていないのではないかということで、あまり38条に基づいた利用が認知・活用されていないのではないのかということも考えられたところでございます。もちろん38条を一定程度理解された上での回答というものもございました。

許諾を得ようとしたことの有無では、25.9%の方が得ようとしたことがある。得ようとした理由ということでは、引用とこれも同様の結果が出ております。

経験としまして自由記述で具体的なところですけれど、引用の場合と比較をいたしますと、スムーズに利用許諾を得られたとする回答が多く出た結果になっております。ほかの回答割合も、引用の場合と、パーセンテージにおいては若干傾向が違うというように見て取れます。

発表における利用の目的・態様というところでは、インターネットにアクセスして、アップされている他人のものをそのまま使われたというケースが見て取れます。

あるいは謝金についても、多くは謝金がないというケースでしたが、謝金を受けた上で発表に使われているというケースもあるようです。

大きな3つ目としまして、引用の場合、あるいは学会等での発表以外に何か利用したケースがありますかということにつきましては、17%の方がそういう経験があるということでしたが、具体的にどういうケースかということでは、多くは引用あるいは発表というようなケースに重なるものが多かったのですが、そのほかでは、授業、研修・セミナー、市民講座というものを挙げられた方が多かったところです。

その際に困ったこと、気になったことでは、半数近くの方が、経験があるということですが、具体的に困った内容では、引用の場合、発表の場合とおおむね同様の傾向というように見て取ることができます。

それから少し飛ばしますが、権利者の許諾を得ようとしたことがあるかどうかにつきましては、37%の方が許諾を得ようとしたということでございます。この場合の理由といたしましては、やはり引用、発表の場合と同様でありまして、許諾が必要かどうか分からなかったから念のためということが大半です。そのほか、業界慣行という御理解もあったようです。

許諾を得ようとした際の経験ということでは、発表の場合に傾向が類似しているかなというふうに思われます。スムーズに許諾を得られたという割合が多く出ておりますが、個々のパーセンテージを見ますと、引用の場合とは若干傾向が異なるということです。

続いて、これらにつきまして委員会で御議論いただいたということでは、32条、38条に関しましては、1つは著作権法の認知が足りていない部分があるため、法律であるのか、慣行であるのかということを混同して理解されている人が一定数いるのではないか、それから引用の要件に関しましては、現場の研究者が判断しやすくなるような方策を考える必要があるのではないかという御指摘、それから、その際ガイドライン等を作成する場合には、業界慣行などの関係を整理することが望ましいという御指摘、それから別の観点の御指摘では、引用したリンク先の情報が消えてしまう、ネット上の著作物を引用するような場合だと思いますが、そこは政策の論点の一つになるのではないかという御指摘、あるいは38条については、そもそも認知されていないことが分かったという御指摘をいただいております。

それから、次のページですが、ストリーミングを利用する引用であるとか、謝金を受領する場合、先ほどの38条のケースですが、そういう場合が利用実態として存在することが分かったという御指摘、あるいは学会などの利用場面においては、利用に当たってお礼をするという慣行がある、そういうことが負担となっているのではないかという御指摘もいただいております。

許諾取得に関しましては、業界、学会等の慣行が研究者の行動にかなり大きな役割を果たしている可能性があるという御指摘、あるいは、特に生物系、理工系という理系では、二重投稿防止、あるいは学会・出版社への権利譲渡、あるいはトラブルは自分で責任を負うという確認書を出すような慣行があるという指摘があったということです。著作権を譲渡した場合に、自己の論文でも改めて許諾を得なければいけないというような問題があるという指摘もありました。許諾が取れなかった理由におきましては、これから御検討されるということですが、いわゆる簡素で一元的な権利処理方策の問題とかなり重なっている、その必要性の裏づけではないかということを御指摘いただいております。

アンケート結果といたしまして、簡単に3点のみまとめておりますが、32条要件を満たすかどうかについては、現場が分かりやすいための方策が必要であるということ、それから38条については役割の周知の必要性があるのではないか、それから35条、あるいは36条とも、重畳適用等に関する周知も要るのではないかと、3つでまとめさせていただいております。

許諾の取得に関しては御検討が進められております、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元という方策に関しまして、研究場面を含む許諾の在り方についても議論されることが望ましいと考えられるというようにまとめさせていただいております。

続きまして、外国法調査でございます。こちらはかなり省略することになりますので、ぜひ資料4-2の報告書のほうも御参照いただければと存じます。かいつまんで御報告をいたします。

まずイギリスですが、御承知のように著作権法29条というものがございます。これに関しましては、当初1988年法の下では、非商業的研究という限定はなかったところ、情報社会指令に対応するために限定されたところでございます。公正利用であるというのが条件になっておりますが、その場合には補償金請求権が生ずるといった制度は用意されていないという報告がございます。

要件に関しまして詳細がありますが、ちょっと割愛させていただきまして、焦点の一つでございます非商業的目的についてというところで御報告をいたします。こちらは情報社会指令前文42、当該活動それ自体によって判断されなければならないという一文がありますけれども、それにのっとった解釈がなされているというところで、具体的には、「研究が実施された時点で、何らかの商業的価値を持つ目的のために最終的に使用されることが予定または意図されている研究は許容されないだろう」という現地有識者の解説書を紹介いただいております。

また、訴訟となった時点で研究開発段階であったが、最終的に商業的利用目的だったということで、それは認められないというふうに判断した高等法院の判例があるところでございます。

非商業的な範囲につきましては、イギリス著作権庁がガイダンスも出していて、かなり厳格に解釈されているというところを述べられております。

それから最後でございますが、例えば営利企業が直接費用を負担する研究は、営利企業の社内研究所で行われている研究と同様、明らかに商業目的とされていると述べる解説書もあるということでございます。

ライセンスとの関係におきましては、イギリス法においては、一言で申し上げれば、契約によってオーバーライドできないようなことだという御報告をいただいております。

続きまして、ドイツでございます。御承知のように60c条という条項がございます。こちらも2017年法改正によりまして、既存の規定を統合して構成されたというところです。一定の利用行為を許容する一方で、その利用行為に対して相当なる報酬の支払いを求める請求権が権利者にあるということで、その請求権は集中管理団体のみが行使できるとされているということです。

各要件についていろいろお調べをいただいておりますが、非商業的目的のところに飛びます。こちらも情報社会指令前文42に則って解釈を行われているというところでございます。ただ具体的な解釈では少し先ほどのイギリスとも異なってまいりまして、民間の資金によって公立大学で行われた研究は適用を受け得る。研究成果を出版社で発表する際に報酬を受けたとしても、それによって研究自体の商業性を基礎づけるものではないということ、反対に営利目的の研究機関や企業であっても、営利目的を追求するのではない場合は適用を受けるという解釈をお示しいただいております。

ライセンスとの関係につきましては、権利制限を契約によってオーバーライドすることは、一定の例外を除き援用できないというふうに解されているところでございます。援用できないということにつきましては、ライセンス契約が締結された場合であっても、権利制限によって許容できる行為というものを利用者側ができる反面で、権利者がライセンス契約に基づいて当該利用行為に対する対価を請求できる根拠になるのだと、そういう解釈、理解であるという解説を御紹介いただいております。

続きまして、フランスです。こちらは122-5の3号eという条項がございます。情報社会指令の国内法制化で、教育及び研究に関わる規定ができたところ、DSM指令の法制化によりまして、教育目的と研究目的に二分された経緯があるところでございます。

各要件について、同様に少し省略させていただきますが、非商業的目的に関しましては、やはり情報社会指令前文42における解釈と、それからDSM指令からということで、組織が公的団体であっても、営利目的であれば商業的利用に該当すると考えられるという御報告をいただいております。一方で、組織が営業団体である場合に、非営利目的であれば商業的利用にならないと考えられるかどうかは明確ではないという御報告がありました。

ライセンスとの関係につきましては、契約に基づく合意、加えて補償金支払いに基づく支払いというものを必須とする権利制限であるという解釈を御報告いただいてございます。フランスでは一般論として、契約によってその例外規定に定める事項を修正することができるということでありまして、その例外が、公序に該当する場合には契約の自由が否定されるのではないかというあたり、最近の学説を御紹介されております。

まとめますと、非商業的目的に関しまして、3か国とも情報社会指令前文42が解釈の基礎にございます。ただ、具体的にはどういう場合に相当するかについて、微妙な差異があるというふうに報告をいただいております。

契約によるオーバーライドに関しましては、これは3か国において取扱いが全く異なっているということでます。繰り返しますと、イギリスは、当該契約は執行できない。ドイツに関しては、オーバーライドは援用できない。それからフランスについては、契約による合意、補償金支払いが権利制限の行為の前提にあるとまとめていただいております。

雑駁でございますが、以上で報告を終わらせていただきます。

【茶園主査】ありがとうございました。ただいまの御説明を踏まえまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。

では、福井委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。大変充実した御調査、ありがとうございました。

1点確認ですけれども、例えば、パワポの資料の10ページなどで、10ページですと引用ですけれども、どう判断したらいいか分からなかった、あるいは許諾を取るのが業界慣行と理解していた、微妙な場合には許諾を取るという組織のルールがあったというような、いずれも、曖昧であるけれども許諾を取ろうとした、そういうケースが多かったということはよく理解できまして、まさに実態であろうというふうに思うわけですが、例えば質問項目の中に、許諾が法的に必要であると判断したから、許諾を取ったというような選択肢はおありだったのでしょうか。

また、おありだった場合、パーセンテージは恐らく低かったということになるのだろうと思いますが、それはどのくらいであったのか、もしお分かりであればお教えいただければと思いました。これは引用以外についても共通のお尋ねということになります。

【ソフトウエア情報センター(亀井氏)】では、亀井からお答えしてもよろしいですか。

【茶園主査】お願いいたします。

【ソフトウエア情報センター(亀井氏)】本日、資料4-2に報告書をお配りいただきまして、その末尾に調査票をおつけいただいております。この中で、例えば引用に関してはページ45、Q5-1というところに、許諾を得ようとした理由を教えてくださいという質問があります。

この選択肢の中では、法的にということは聞いておりませんで、組織のルールによってはということは言っておりますが、法的にという言葉は一切使っておりません。法律上どうかということではなくて、素としてといいましょうか、ともかくとして、許諾が必要か否かが分からなかったというような聞き方をしているところでございます。お答えになりましたでしょうか。

【福井委員】 そうですね。質問項目の御指摘ありがとうございました。拝見するとやっぱり、分からなかった、あるいは不明な場合は取りあえず得ようとしたという選択肢が並んでいるようであり、許諾が必要と判断したという選択肢がちょっとなかったようにお見受けしました。

そうすると、許諾が必要と判断した人が何割ぐらいだったのかというのが、ちょっと分からないのかなというように思いました。複数回答可能ということもあって、全体として、分からないけど取りあえず許諾を得にいった人が何割ぐらいいたのかなというのが、やや曖昧であるのかなとも感じたところでした。この点は私の的外れかもしれませんので、もし何かありましたら教えていただければと思いました。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

ほかに何かございますでしょうか。村井委員、お願いいたします。

【村井委員】御発表ありがとうございました。1点お伺いさせていただきます。今回の調査は主に成果発表場面を想定されているということで、入ってきていないかもしれないのですけれども、例えば研究対象が著作物である場合や、研究に著作物を用いるような場合に困ったことなどがアンケートの回答で示されていないでしょうか。例えば以前、テレビコマーシャルを被験者に視聴させて実験を行いたいというような場合に、現在の著作権法ではなかなか難しいという例があったりしたのですが、そのように研究対象が著作物であったり、研究過程で著作物を用いるような例がアンケート調査で出てきていたら、教えていただきたいのですけれども、いかがでしょうか。

【ソフトウエア情報センター(亀井氏)】そういう場合、区別せずに聞いておりますので、特段そういうアンケート結果は、残念ながら今回は取れてはおりません。

【村井委員】ありがとうございました。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】貴重な研究発表ありがとうございました。学会、研究会等の発表の点で少し伺いたいのですが、このアンケートを取られた実施期間が令和3年12月からということですので、既にもうコロナ禍の状況で、学会発表とか研究発表等も結構ハイブリッドが多かったのではないかなと思うのですが、ハイブリッドの場合、公衆送信の問題が出てまいりまして、その点については何かアンケートの御質問で配慮されたか、ないしはそれについては特に配慮せず、自由回答等でもそういう点についての回答はなかったということでよろしいのでしょうか。少し確認させていただきたいと思います。

【茶園主査】亀井事務局長、お願いいたします。

【ソフトウエア情報センター(亀井氏)】回答選択肢に具体的に、そのハイブリッドというようなことは書かなかったのですが、回答の中には、例えば発表の後、発表しているさまの録画を転送してよいのか、サーバーで共有してよいのか、その辺りの疑義といいましょうか、そういう指摘があったと記憶をしております。

例えばパワーポイント資料のほうで言いますと9ページの引用のところでも、オンライン配信の可否であるとか、あるいは発表の今の御質問のところですと、録画を使っていいかという御指摘があったのは事実でございます。すみません、ちょっとちゃんとお答えできていなくて失礼ですが。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、私から質問させていただきます。私もこれに関わったので、少しお伺いしたいのですが、許諾を受ける相手に関することですが、よく聞くところでは、文科系の場合は著作権譲渡というものがあまり行われなくて、著者が著作権を持っている。ですから許諾を受けるのであれば、その著者本人にコンタクトを取らなければいけないということになると思います。これに対して、理科系の場合は、学会なりに著作権譲渡がされる場合が多い。その場合は学会にコンタクトを取るということになり、許諾を受けやすいということになるではないかなという気がするのですが、その点に関して、何かこの調査において表れたことがありましたらお教えいただきたいと思います。

それと、それとの関係で、ここで調査結果のまとめとして、これからこの本小委員会で議論することになりますが、簡素で一元的な権利処理というものと重なる点があるというように御指摘いただいていますが、この調査研究を行われた亀井さんの目から見て、研究目的の利用に関しまして、簡素で一元的な権利処理方策の中で、特に注意すべき点といいますか、何か考えなければならない点がございましたらお教えいただきたいと思います。

【ソフトウエア情報センター(亀井氏)】まず1点目でございます。ちょっと回答者の所属される研究分野とのクロス集計をしていないので、はっきりとは分からないところはあるのですが、許諾を得るのに際して、出版社を介して許諾を得たと回答されたケースが結構あったという記憶がございます。あるいは学会も出てきておりましたけれども。そうしたケースというのは多分、先生がおっしゃった理系の方が多いのかもしれません。ただそこはクロスで見ておりませんので、少し把握できておりません。

それから研究目的利用とこの許諾のところというのは、私も多少法律を知っているということで言えば、32条の要件を満たせば許諾が要らないというあたりの前提が、はっきりとまず伝わっていないケースがあって、許諾を取りに行って苦労しているという研究者の姿が何となくイメージとして浮かびましたので、まずは、その許諾が要らないケースはちゃんとあるというところ、もちろん契約があればそれをどうするかという御検討はあると思いますが、ここをまずちゃんと理解していただくところが、研究者の厚生にはいいのではないのかという感想を持ちました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

では、発表者はこちらで御退席いただいて結構です。どうもありがとうございました。

【ソフトウエア情報センター(亀井氏)】失礼いたしました。ありがとうございました。

【茶園主査】それでは、続きまして、議事(4)の簡素で一元的な権利処理に係る新しい権利処理の仕組みの導入について議論を行いたいと思います。事務局に、検討に当たっての論点に関する資料を御準備いただいておりますので、まずは説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。資料5-1をお開きください。分野を横断する一元的な窓口組織を活用した権利処理・データベースイメージでございます。これは昨年から継続して議論を行ってきているものでございます。昨年度は基本政策小委員会で議論の上、著作権分科会で一定の方向性を出しております。本資料はその方向性を少しブラッシュアップしてまとめたものです。

青枠囲みの部分を御覧ください。今回の議論は、この著作権者等を探索するコストが減少し、権利処理が容易になるといった意義、また、著作権者が不明の場合や意思表示のない著作物の利用を可能にすることで、新たな利用創出に伴うクリエーターへの対価還元機会の拡大、また、メタバース空間でのコンテンツの活用促進、デジタルアーカイブの促進、こういったものに貢献するという趣旨、さらには、著作権の普及・啓発による適法利用の促進やコンテンツ人材の育成にも資する、といったものです。

その主な骨格でございますが、フローチャート図の部分を御覧ください。左側から、利用者が著作物を利用したいという場合、どこに許諾を取ればいいのか分からない。こういった場合に、まずこの分野を横断する一元的な窓口組織に問合せを行います。この組織において、探索なり分野横断権利情報データベースの検索、こういったものを行います。

この結果、権利者が判明して、右下になりますが、集中管理がされている場合は、集中管理団体を御案内して、そちらで許諾を得てくださいという流れになります。また権利者が判明して、集中管理がされていない場合ですが、その右下の個別の許諾の意思表示があるという場合、例えば個人であるとか企業であるとか、こういった場合は個々の権利者から直接許諾を取ってくださいという形で、可能な範囲で案内をするというものになります。

ポイントは、この右上の部分につながるところですが、一番上の権利者不明の場合だけでなく、今回は、集中管理されていない場合で意思表示がされていない場合、こういったものについて、新しい権利処理の仕組みにより利用可能にする方向性で議論を進めていけないかといった流れになっております。

この新しい権利処理の仕組みが、今期の法制度小委員会で具体化をしていくところのポイントになりますが、昨年度までの議論ですと、少し字が小さくなっていて恐縮ですが、そちらの新しい権利処理の仕組みの想定イメージとしまして、いわゆる拡大集中許諾制度のように、窓口組織または特定の管理事業者が許諾に相当する効果を与えること、窓口組織への申請や十分な使用料相当額の支払いをもって利用または暫定利用を可能とすること、窓口組織が著作権者等不明著作物に係る文化庁長官への裁定申請手続を代行すること、このようなイメージが出されておりました。

これらについて少し論点をまとめた資料が、次の5-2になります。

なお、少し資料を飛んで恐縮ですが、参考資料5に、第64回の著作権分科会における委員の意見の概要をまとめさせていただいております。そちらでは、この簡素で一元的な権利処理の仕組みについて、法制面のハードルはなかなか難しいが、最大限チャレンジして取り組んでほしいといったことであるとか、権利処理の時間とかコストがかかっていてなかなか難しい実態があるので、そこを何とか解決してほしいというニーズの声、また、権利者・既存ビジネスへの配慮も考えてほしいといった御意見が出ておりますので、お知らせします。

それでは、資料5-2に入ります。1ポツの中間まとめにつきましては、先ほどのフローチャート図で御説明した中身になります。

中ほどの2ポツ、制度化の方向性及び主な論点・検討課題(例)を御覧ください。(1)新しい権利処理の仕組みの制度化でございます。新しい権利処理の仕組みとして中間まとめに挙げられている①から③の方策など、様々な方策を組み合わせて利用円滑化を実現させる必要がある。それぞれどのような仕組みが考えられるかとして、幾つか論点をまとめております。

なお、以下、上記中間まとめ、資料5-1にあるフローを経て、権利者不明または意思表示等のない著作物を対象とするということを前提として記述しておりますので、あらかじめお伝えします。

その黒丸の部分を御覧ください。いわゆる拡大集中許諾のようにといったところでございます。その下に書いてございますが、拡大集中許諾制度のように、一定の利用場面において、利用者が使用料相当額を特定の管理事業者等に支払うことで許諾に相当する効果を与え、集中管理されていない他の著作物等の利用を可能とする仕組みの検討としております。

こちらの論点例としましては、その下にございますように、自ら管理する著作権等のみならず、管理していない著作権等についても利用許諾を与えることのできる仕組みを創設する場合の制度的論点は何かとしてございます。文化庁の過去の調査研究につきましては、この法的正当性をどのように考えていくべきか、そのような論点も出てございました。

続きまして、2ページ目をお開きください。一番上段のところでございます。現行著作権法においてはきめ細やかな権利制限規定が整備されていることを踏まえ、補償金の有無や、補償金がある場合の指定管理団体の運用上の実効性について留意しつつ、例えば、一定程度のニーズと補償金の徴収・分配を行う団体の設立双方を要件として、利用円滑化、例えば権利制限などの仕組みを考えることはできるかといったものにしております。

また、その次の黒丸、窓口組織への申請、十分な使用料相当額の支払いをもって利用または暫定利用可能とすることといった部分でございます。こちらは、文化庁長官が一定の関与をする窓口組織または特定の管理事業者等に、利用希望者が申請し使用料相当額を支払うとともに、当該組織が公告等を行うといった手続を取ることで、利用または暫定利用を可能とする仕組みの検討ができないかとしております。

論点例でございます。1つ目の白丸、現行の著作権者不明等の場合における著作物の裁定利用類似の仕組みとして、例えば文化庁長官ではなく窓口組織への申請、使用料相当額の支払いをもって、利用または暫定利用を可能とする仕組みを創設する場合の制度的論点は何か。この場合の窓口組織への文化庁の関与はどうあるべきか。

また、2つ目の丸、著作権者等の意思を尊重しつつ、特定の利用場面に限定しない柔軟な仕組みを取ることが可能か。その場合の制度的な課題は何か。

3つ目になります。窓口組織による公告等の手続期間中の暫定利用を可能にしつつ、公告期間中に著作権者等が申し出ることにより、利用者による利用を終了させ、その後の利用継続は著作権者と利用者の契約によるものとするといった仕組みなど、どのようなものが考えられるか。また、一定の期間や一定のプロセスを経て、暫定でない利用を認めることについてはどうかとしております。

続きまして、次の黒丸部分、窓口組織が裁定申請手続を代行することについてでございます。この仕組みの検討としましては、論点例にございますように、裁定申請手続代行について、窓口組織の実現や持続性の観点から、一定の手数料収入等を得て事業として取り組むことが考えられるが、この場合、弁護士法、司法書士法、行政書士法等における代理行為等の禁止との関係についてどのように考えるか。例えば、代理行為ではなく、窓口組織が利用主体として申請するといった整理などは可能かどうか。また、この現行の裁定手続に指摘されている手続の煩雑さ、供託手続の難しさといった運用改善をどう解決するかといった論点を示しております。

以上が、(1)の新しい権利処理の仕組みの制度化に係る部分です。

続きまして(2)、これまで話したいずれの方策にも共通して検討すべき論点として並べております。

1つ目が、著作権者が不明または著作権者と連絡が取れない場合、さらには連絡を試みても返答がない場合も含むと書いております。例えばこちら、現行の著作権者不明等の場合における著作物の裁定利用につきましては、相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない場合とされております。これはどの程度の探索の措置を取ったかにより判断がなされているところでございます。窓口組織やデータベースによる探索を取り入れることで、この要件を緩和することが考えられるかどうか。また、例えば新しい権利処理の手続に公告等の手続を課すことで、事前の相当な努力を軽減することも考えられるかとしております。

次の意思表示がされていない場合についてです。この意思表示につきましては著作物やその流通形態により様々であり、また、クリエイティブ・コモンズや利用規約による意思表示が一般的であることから、意思表示の在り方を限定したり、意思表示のみで利用条件や範囲が判別可能なものに限定したりすることなく、著作物を利用しようとする際に著作権者等へのアクセスが可能かどうかといった観点からも検討してはどうかとしております。

また表示の有無については、市場にあるものやそうでないものなど――アウト・オブ・コマースなどです—―実態に応じ、窓口組織が客観的に判断することで一定の公平性・妥当性を担保してはどうか。また意思表示の有無の判断基準につきまして、窓口組織への申請後の公告期間や窓口組織による判断時点とすることが考えられるか。この場合、事後、利用の後に意思表示がされた場合の扱いについてはどう考えるかとしております。

続きまして、オプトアウトの制度化でございます。オプトアウトも一種の意思表示と考えられるので、上記の意思表示があることをもって、実質的にオプトアウトが達成されると考えられますが、例えば具体的な方法として、著作権者単位による簡易で包括的なオプトアウトの仕組み、例えばデータベースへの掲載、こういったものも考えられるかどうかとしております。

続きまして、使用料相当額についてです。現行の著作権者不明等の著作物に係る裁定利用では、使用料相当額の算定を利用者が著作権等管理事業者等への照会を行い、その後文化庁長官が文化審議会の諮問を経て決めることとなってございます。こちらについて、利用者にとってはその照会や算定が難しく、また、管理事業者等の協力が不可欠であるといったような課題が多いと指摘されております。これについては、今回の新しい権利処理の仕組みにおいては、例えば窓口組織が権利者団体の協力を得て中立的に決定することとしてはどうかとしております。

続きまして、翻案等改変を伴う利用についてです。新しい権利処理の仕組みにおける著作物の利用または暫定利用について、現行の裁定制度においても一定の翻案等の利用も認められていることを踏まえ、可能な限り対応できる仕組みとすべきかとしております。なお、同一性保持権については、昨年度の最後の法制度小委員会でも少し議論がありましたが、やむを得ない改変等も含め、柔軟な運用が望まれるといった意見が大勢でございましたので、その旨記しております。

また最後、その他でございます。仮に新しい権利処理の制度化を行った場合、制度施行以前に、創作・公表された著作物を対象とするべきかどうかでございます。著作物がいつ創作され、公表されたかにつきましては判別が難しいところでございますが、制度化前後で切り分ける運用がそもそも可能なのか、また、新しい権利処理の対象となるかどうかの判断プロセスにおいて、意思表示の機会を設けていくといった工夫なども考えられるかとしております。

その後は現行の裁定制度による参照条文になります。

以上、事務局からの説明を終えます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたらお願いいたします。これには複数の論点がございますので、分けて検討を進めたいと思います。資料5-2の2.の(1)、すなわち新しい権利処理の仕組みの制度化と、(2)の共通して検討すべき論点、これを分けまして御意見等をいただければと思います。まずは(1)の新しい権利処理の仕組みの制度化について御意見等がございましたらお願いいたします。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】 ありがとうございます。この点についても非常に短期間で多くの論点を網羅され、また意欲的な論点提示をいただいた事務局に、まずは敬意を表したいというように思います。

その上で、これは(1)と茶園先生はおっしゃいましたが、その前の部分についてもここで御意見申し上げてもよろしいでしょうか。

【茶園主査】はい。もちろんです。お願いいたします。

【福井委員】(1)の上の部分に、この制度に関する概念図がございますね。権利情報データベースの連携や、あるいは簡素で一元的な新しい権利処理の仕組みを一覧できる図があり、恐らくこういう図というのは今後もいろいろなところで参照され、人々の印象に大きな影響を与えるだろうというふうに思うのです。ゆえに申し上げることですが、膨大な今回の資料ですので、通しで言うと冒頭から14ページ辺り、知財推進計画の中のこの権利上、分野横断の権利情報データベースについての記載があります。

私はこの新しい権利処理の仕組みは、この権利情報データベースとまさに切っても切り離せない関係にあって、権利情報データベースの充実は、権利処理の仕組みと同じぐらい、ひょっとしたらそれにも勝るほど重要な要素であろうというふうに考えています。今のところ探そうにもどこに権利者がいるか分からないという問題に、現場は常に直面するからです。

その中でこの知財推進計画の該当箇所では、例えば接続すべきデータベースとして、ニーズのある全ての分野のデータベースとの接続ということを明記されており、また集中管理されていない著作物等の既存のデータベースに登録されていないコンテンツの登録が円滑に行われるようにといったような言葉もあって、現在集中管理されていない著作物に関する情報も、できるだけデータベースというものを充実させようという考えが色濃く出ているように思えます。

ところで、この資料5-2のすぐ上にある概念図で言いますと、この分野横断権利情報データベースのところが、集中管理団体A、B、C、それからMINC等その他のDBというのがあって、その下に、新たに接続する対象であろうと思われるものとして、UGCクリエーター、ネットクリエーターなどが明記されており、最後に紫で、裁定制度により利用された著作物というのがあります。

これは読んだ人が、よく読み込むと、多分その他のDBのところで読み込むのだろうなということは分かっていただけるかなとは思うのですが、初めて見る方が誤解をしてしまうといけないので、集中管理されていない多くの著作物というような言葉を、この点線で囲われた権利情報、分野横断権利情報データベースを、右上に持っております、この点線内に加えていただくのがどうかなというように思いまして、少し長くなりましたが御提案ということになります。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。この点に関しまして、まず事務局のほうから何かございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。福井委員、ありがとうございました。このフロー図につきましては、知財計画中に既に掲載されているものですので、今からこの資料を修正することにどういった意味があるかというところでございますが、間違いなく福井委員がおっしゃられたように、集中管理されていないものの情報をどうやって集めていくか、ここが非常に重要なところだという認識はございます。今後の文化庁が作成する資料や議論につきましては、その点もしっかり含まれていることを大前提に、検討を進めていければと思っております。

【福井委員】ありがとうございました。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】幾つかあるのですが、資料5-1の表に関して、この表ですと、問合せとか、探索、検索といったような、何かある種人海戦術みたいなものをイメージさせてしまうと思います。しかし、実際にはこれが本当にスムーズにいくためには、自動で識別し、判別するというような、非常に技術的な仕組みをどんどん入れて、利便性を高めていくことをすることにならざるを得ないし、そうすれば多分活用もされると思います。言葉から受けるイメージとして、この問合せとか、探索、検索というのは、いろんなイメージを持つ人がいると思いますけれども、そこの辺でもう少し幅を持ったものなんじゃないかなというふうには思っております。

その辺が1点と、全体にこの問題を解決するには制度化するという点については非常に賛成というか、そうしていくべきだと思っています。先ほどの表とも関係するのですが、結局、集中管理していない、あるいは意思表示していないというのは、世の中の潜在的に存在するほとんど全ての著作物は多分そうした場合に該当します。だから非常に大きな問題だと思います。

今までは、権利制限を通して制度化して解決し、あるいは一部の権利者は集中管理をするとか、一部の権利者はクリエイティブ・コモンズの意思表示、CCライセンスを表示するとかいう形で対応しています。けれども、ほとんどの著作権者はそういうことをしていない状況があるなかで、必要性や許容性という観点から、こういう場合は他人に使われても支障がないというようなケースを限定しつつ、制度的に使わせていくことになります。どういうふうに限定するかという要件論を、この①から③の方策の中で検討をしていくことになると思います。限定し過ぎるとよくないのかもしれませんけれども、やはり著作権者の意思というのも非常に大事だと思います。本来であれば集中管理してほしいのにしていない著作権者や、するべきなのにしていないとか、意思表示をしてくれたら許してくれるはずだけど意思表示していない著作権者の著作物の利用を、こういった①から③の制度の枠組みの中で要件化して、利用円滑化に進めていくということになると思います。個々にライセンスを取得する、つまり制度化をせずにマーケットに任せるのは、やはり限界があると思います。利用円滑化が必要な利用行為を類型的に把握し、制度的に利用できる道を開いていくことが必要であり、拡大集中許諾もその選択肢の一つとしてありますし、ほかにもいろいろな幾つかのものを組み合わせて、権利者と利用者、利用者というのもすごく幅が広いと思いますけれども、それらの利害のバランスを図る最適解を見つけていく、そういった作業になるのではないかなと思います。

あともう一つは、後でまた出てくるのかもしれませんが、オプトアウトの問題については、著作権者の利益と著作者の利害が微妙に違う場合もあると思います。著作権者はオプトアウトしたくないけど、著作者はもうこんなものは絶対使わせたくないという意思を持っている場合もありますし、それは同一性保持権の問題とも関係してくるのかもしれませんけど、著作権者の意思なのか、著作者の意思なのかということにも目配せしながら制度設計をしていかなくてはいけないし、利益の還元とかも含めて見ていかなくてはいけないのかなと思います。

あとは、外国著作物の関係とか、条約との関係とかがあります。制度化する上では外国から文句を言われても困りますので、そうした点について検討をしていかなければいけない部分もあるのだと思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。上野委員、お願いいたします。

【上野委員】 この簡素で一元的な権利処理方策は非常に重要な問題でありまして、これは世界が抱えている問題に対して我が国独自の解決策をチャレンジングに示すものになるかと思います。短期間ではありますけれども、これが実現すると大変結構なことかと思いますので、論点は多いのですが、今後ぜひ前向きに御検討いただくとよいかと思います。

多くの論点のうち、(1)のところで示されている3つの方策、もちろんこれは実際には様々バリエーションがありますし、それらの組合せという形もあるかとは思うのですが、今後検討していく上で、この具体的な方策としてどのようなものがいいのかというのが最大の課題になるかと思います。

今日は簡単に少しずつコメントいたしますと、1つ目の拡大集中許諾制度のようなものは、確かにヨーロッパの指令でも見られるわけですが、やはり権利管理事業者等が自ら管理していない著作権について利用許諾を与えることに関する理論的な説明が最大の課題になるかと思います。

3つ目の裁定制度の手続代行は、すでに御指摘がありましたように、代理等ということになりますと弁護士法との関係が問題になるところでありますし、また、裁定を受けた人でない人に当該裁定の効果が帰属するとすれば、そのことの理論的な説明が問題になるかと思います。実際のところ、いわゆる「オーファンワークス実証実験」では、そのような他人の利用のための裁定を行うということがあったようでありますけれども、例えば加戸逐条解説におきましては、68条に関する記述ではありますが、「裁定の効力は、裁定を受けた当事者にしか及びません」といった説明もあるところでありまして、この点は第3の方策の問題点になるかと思います。

2つ目の方策は、裁定制度を言わば民間化するというアイデアを含むものかと思いますので、従来の議論におきましても、国でない機関が強制許諾のようなことを行うことについていろいろな御意見があったように思います。ただ今回の御提案では、窓口組織等に文化庁が一定の関与をするとか、あるいは当該組織が公告等を行うといった形が想定されているようですので、私自身はこれで問題ないのではないかというふうに考えております。

もっとも、この3つの方策に共通する課題として最大のものは、権利者本人に分配できなかった使用料の使途であると思います。特にこの制度では、権利者不明であるとか、連絡が取れないとか、連絡しても返事がないといったような場合において徴収された使用料でありますので、プールされたまま何年たっても結局権利者に分配できない事態になる可能性が高いのではないかと思います。

特に気がかりなのが、1つ目の方策や2つ目の方策にいて、特定の権利管理事業者がこの窓口組織を担当する場合です。その場合に、もしかすると10年たっても権利者本人に分配できないままとなった使用料を、その事業者の構成員に内部分配するという運用が考えられるかもしれませんけれども、当該使用料は当該事業者のアウトサイダーである権利者が収受すべき金銭であることからしますと、そのような運用には問題があるのではないかと思います。

そういう意味では、例えば2番目の方策を取るにいたしましても、権利管理事業者でない何らかの組織がこの窓口業務を担うのが妥当であるように思います。ただ、その場合でも、権利者本人に分配できなかった使用料の使途につきましては問題となるところでありまして、例えば共通目的事業であるとか、あるいは、当該制度の運用コストなど、公共的な目的のために適正に用いられるように措置すべきではないかと思います。具体的には、窓口組織が権利者本人に分配できなかった使用料についてはそのような一定の目的に支出することができるということを、あらかじめ法律上定めるべきではないかと思います。

実は同様の問題は既に、権利制限に伴う補償金制度や現在の裁定制度でも存在しているように思います。例えば、著作権者不明等の裁定によって支払われた供託金も、現状では単に一般的な国庫に入ってしまっているわけですけれども、その趣旨からすれば、もともとこれは著作権者等に帰属すべき著作物利用の対価としての性質を有する金銭なのでありますから、取り戻されないまま一定期間経過した供託金というのは、文化予算に充当するとか、何か著作権法に関する共通目的事業に使用できるようにするのが妥当ではないかと考えているところです。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】ありがとうございます。(1)についてコメントさせていただきます。

拡大集中許諾と、窓口組織による暫定利用と、窓口組織の裁定申請手続代行と、この3つが挙がっているところでありまして、拡大集中許諾制度については諸外国で導入されている例を見ますと、基本的には一定の利用場面に限定した形で制度化されているようですし、代表性というものが求められるのが基本的なところであります。そのため、今回の政策目的である、分野を横断するという部分に、この拡大集中許諾がどの程度マッチしているのか、ある特定の分野だけになってしまうのではないかというところは、課題としてあるのではないかというように思っております。より広く、分野を横断した形で解決ができる方策をまずは中心に検討するのがよいのではないかと考えます。また、上野委員からも御指摘のあったとおり、正当化根拠というところで、多くの人が預けている団体がよいと言えば許諾権を奪えるということを正当化する根拠については、様々な課題があるのではないかと考えております。

3つ目の裁定申請手続代行に関しても、2つ目の窓口組織による暫定利用が、おそらく裁定を民間で出せるようにすることも含んでの検討になるのだと理解しております。そういうことができるのであれば、裁定申請手続代行について検討する意義は薄れるのかなとも思っております。そのため、2つ目の窓口組織による暫定利用がどのような形で実現できるのかを見つつ、それで漏れる部分について、1つ目の拡大集中許諾制度ですとか、裁定申請手続代行について検討していくのがよいのではないかなと考えております。

ひとまず今のところは以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

では、早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございます。非常に難しい問題だと思いますけれども、こちらに書かれているように、やはり1つの制度ではなかなか全部カバーしないので、幾つかを組み合わせていくという方向性はよいのではないかと思っております。

先ほどから皆さんおっしゃっているように、拡大集中許諾制度でございますが、これはここに例として挙げられているように、教育目的利用とかデジタルアーカイブ等の、ある程度公共性があるもの、ないしは一つ一つ許諾を取っていくのが非常に難しいというようなところでないと、なかなか実行が難しいのではないかと思っておりまして、やっぱり公共性とか、その団体がかなりの範囲をカバーしているとか、オプトアウトとか、それから、データベースでどのくらいカバーができているのか、そういう条件が必要になってくるのではないかと思います。そうすると、かなり分野的には制限されるのではないかと思っております。

それから、3番目の裁定申請手続でございますけれども、確かに弁護士法72条というのは非常に難解な条文ではあるのですが、いわゆる弁護士法72条で考えていた非弁行為の取締りというのとは、本件はちょっと違うのではないかというところがありまして、これは日弁連とか司法書士会とか行政書士会等の御意見もあると思いますので、そこら辺と調整して何とかできないのかなとは思っております。窓口組織が本人という整理は、法的な関係でちょっと難しいのではないかなと思いました。

最後に、2ポツのところでございますけれども、これは非常に実現的、実用化ができるのではないかなとは思っているのですが、これについてはちょっと御質問でございまして、論点例の2番目、特定の利用場面に限定しない柔軟な仕組みを取ることが可能かということ、これはどういうものを考えていられるのか、御質問させていただきたいと思います。

以上でございます。

【茶園主査】事務局、何かございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】早稲田委員、御質問ありがとうございます。資料の2ページ目の中ほどにあります、特定の利用場面に限定しない柔軟な仕組みとあるところでございます。こちらにつきましては、先ほどこの1つ目の拡大集中許諾に関連したところと、委員の御指摘とも関係してございますが、文化庁の過去の調査研究によると、拡大集中許諾、またいわゆる一般ECLという仕組みを取った場合でも、基本的にはこういった著作物をどういった場面で使う際に、拡大集中許諾制度といったものを活用しますというような、やはり著作物の種類と利用場面、例えば、先ほど申し上げたような教育目的であるとか、そういった特定がされております。

ただ今回の検討の趣旨は、インターネット上でのデジタルコンテンツ、をさらにインターネット上で活用する。例えば先ほどの資料5-1ですと、デジタルアーカイブ、あるいはメタバース空間でのコンテンツ活用と書きましたが、メタバース空間で何かしらのライブイベントを行うとか、こういった場合は、著作物の種類であるとかその利用方法、様々なものが考えられると思っておりまして、このようななかなか1つの分野に特定し切れない利用ニーズ、こういったものに応じた利用円滑化方策ができないかなというところが今般の検討でして、少し分かりづらい表記となってしまって恐縮でございますが、このような論点の記載とさせていただきました。お答えになっていますでしょうか。

【早稲田委員】ありがとうございます。そうしますと、利用したいと申請するときは、その利用場面は一応こういうふうに使いたいという形で特定はするのでしょうか。それとも、それもかなり柔軟な形で申請するというようなことを念頭にお考えになっているのでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】その点につきましては、申請のときには、どういった著作物をどういうふうに使いたいのと、そういった個々の具体的なケースがあるのだと思います。そういった運用の場面では実際特定をしていかないと、なかなか判断も、あるいは著作権者を探すことも難しくなってきます。ただ制度上は、いろんなケースを想定、対応できるようにしておくことができないかといったものになります。御理解のとおりでございます。

【早稲田委員】ありがとうございました。分かりました。

【茶園主査】島並委員、お願いいたします。

【島並委員】島並でございます。あり得る制度について、3つの候補を挙げていただきました。事務局の御説明ですと、これら3つは相互排他的なものではなくて、並存可能なものであるということでありましたけれども、何名かの委員の方から既に御指摘があったとおり、この②の制度をどうつくり込んでいくかということによって、結局①や③との関係が大きく変わってくるのかなと感じました。

したがって、②の制度の内容が非常に重要な役割をこれから担ってくると思うのですが、その前提として、①や③、つまり拡大集中許諾や裁定のように、あくまでも許諾という大きな枠組みの中でこの②の制度も構想していくのか、それとも、むしろ権利制限に近いものとしてつくり込んでいくのかという性質決定が、出発点として非常に重要なのではないかなという気が個人的にはしております。と申しますのも、権利者以外の者が許諾をするとか、あるいは、場合によっては許諾の効果が申請者以外にも及ぶといったようなことになってくると、ここは水津先生の御意見を伺いたいところですけれども、伝統的な民法の契約ないし許諾のフレームから相当程度離れてくるわけです。そうだとすると、これまで相当の議論蓄積のある権利制限の一形態として、②を把握するというのも一つあり得る方向性のかなと思います。

その場合に、意思表示がなされていないとか、自動的にオプトアウトするとかいったような、権利者の意思に係る制度との関係が出てくるわけですが、それも新たな権利制限のシステムとして権利者の意思に係らしめる制度は十分に設計できると思いますので、まずは出発点として、あくまでも許諾ベースで考えるのかどうかということが、②については問題になるように思います。

また、それとも大きく関わるのですが、この窓口組織は恐らく1つしかつくらないということでしょうから、競争にさらされない民間の団体をまた新たに1つ新設するのかという批判が容易に想定されるところです。そこで、わざわざ申請するのではなく要件を満たせば自動的にこの②が想定しているような効果をもたらすような制度づくりができないのか、つまり窓口組織が本当に必要なのかということを検討し、必要だということであればその理由をきちんと示していくことが求められると考えます。

その理由に関連して、この窓口組織は実際に何をやるのかというところが気になるところでありまして、例えば相当な努力を事前に払ったかどうか、データベースをちゃんと調べたかどうかということの実質的チェックをするのか、それとも、それはもう申請者に委ねて、使用料を一時的に預かったり公告をしたりといったようなことだけを形式的にやるのかといったことも、十分な検討が必要でしょう。

さらにそのことと関連して、この窓口組織の判断を信じて利用した人がいたとして、しかしその判断が仮に誤っていたという場合に、法的な責任が、窓口組織自身、およびその窓口組織を経由して利用した利用者にどの程度かかってくるのかということも、議論としては詰める必要があるように思います。具体的には、差止請求を受けるのはもう仕方がないと思いますので、その窓口組織の判断を信じて、利用した過去分についての損害賠償については、過失をどのように認定するのかということが、法制度のつくり込みとしては重要かと思います。

御案内のとおり、弁理士の意見を信じて考案を実施した場合であったとしても、過失推定は覆らないという裁判例が、やや古い下級審レベルですが、産業財産権についてはあるところですので、そのような関連制度も睨んだ上で、窓口組織の判断を信じた利用者の過失の問題を議論していく必要があろうかと存じます。

私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。麻生委員、お願いいたします。

【麻生委員】麻生でございます。私から委員の方々の御意見に付け加えることはあまりないのですが、私としても、基本的にはこうした制度をつくるという方向性自体には賛成でして、あとは具体的にどのように制度に落とし込むかだと理解しています。

その場合に、拡大集中許諾でやるのか、権利制限でやるのかというところは、やはりどちらにしてもそれらを採用する正当化理由が必要だと思いますし、拡大集中許諾と権利制限では、効果としては権利が制限されるという意味で同じでも、正当化理由のレベルとしては違うものが想定されるのかもしれませんので、その検討が必要だと思います。

他方で既に御指摘があるように、拡大集中許諾については、権利者不明ですとか、連絡が取れない相手への効果帰属をどう捉えるのかは、法的な論点として重要だと思います。諸外国のお話もありましたけれども、DSM指令を受けて拡大集中許諾の規定を導入したフランスのような国で、民法理論との関係で効果の帰属がどのような理屈で捉えられているのか、何かヒントが得られる可能性もあるのかなと考えております。

私からは、簡単ですが以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

この(1)に関しまして、ほかにございますでしょうか。澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】 先ほど大きいところの話をしたのですが、2つ目や3つ目について、細かな点について意見を申し上げさせていただきます。3つ目の裁定申請手続代行との関係で、供託の手続については利用者の方々から聞くと、まず事務的なコストは大きいというお話も聞きます。また、供託金を著作権者のために預けているわけですので、消滅時効にかかったら、本来的には取戻しができるべきものであろうと考えているのですが、そうした取戻しをするためには、確定判決などの公的な書類がないと法務局が受け付けてくれないといったような話も聞いております。このように、供託手続というのはなかなか利用者への負担が大きいという問題もあると考えております。

2つ目の窓口組織による暫定利用に関して、民間組織が裁定を出せるのかという点については、先ほどの島並委員の御意見のとおり許諾でやるのか権利制限でやるのかという大きいところもあるとは思うのですけれども、裁定のような行政処分を民間の団体に行わせるような場合に、ほかの例を参考にするのがよいと考えます。例えば認可ですとか、文化庁長官が定める基準に従って何かやるとか、そういった形で関与を担保すれば、おそらく実現は可能なのではないかと考えます。

ここでの使用料相当額の性質というところで、先ほど上野委員からあった、権利者が出てこなかったときのお金の取扱いに関わりますが、出てこなかったときに取戻しが可能になるのかとか、そのあたりもよく整理していく必要はあるのかなと思います。

あと、2つ目の窓口組織による暫定利用の最後に書いていただいている、一定の期間や一定のプロセスを経て、暫定的でない利用を認めるというところですが、これについてはビジネス上のニーズはあるのではないかなと思っています。1年間使えると思っていたら1か月で権利者が出てきた、そうしたら利用を中止しなければならないということになったときに、例えば過去の裁定の例ですと、サウンドロゴの裁定を受けてCMとかを流していたような記憶があるのですけれども、そういったものが止まってしまうと困る場面は容易に想像できるところではあります。そのため、暫定的でない利用というのも認めるような方向での検討もしたほうがよいのかなとは思います。一つのやり方としては、暫定的でない利用については、現行の裁定と同じ程度のプロセスを求めるのはあり得るのかなというのは、現時点では思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。よろしいですか。

では、またありましたら後ほどお願いするとしまして、続きまして、(2)の共通して検討すべき論点についての審議に移りたいと思います。(2)の共通して検討すべき論点については、何か御意見等ございますでしょうか。

上野委員、お願いいたします。

【上野委員】この(2)に書かれている様々なことにつきましては、私は全て賛成であります。例えば、1つ目の「相当な努力」を軽減するということにつきまして、今回データベースをつくるということでもありますので、これを受けてぜひその軽減緩和がなされるべきではないかと思います。やはりこの点が従来の裁定制度においても負担であるというふうにも聞いております。

上野委員、お願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございます。

また、オプトアウトの制度化につきまして、著作権者単位での簡易な包括的オプトアウトは考えられるか、と記載されておりますが、自分の作品あるいは自分が権利を持っている作品については全て一括してオプトアウトしたいというようなニーズもあるかと思いますので、これも可能にする形で進めるべきではないかと思います。

「使用料相当額」の相当性につきましては、裁定制度でもこれを担保するのは非常に難しい問題なのですけれども、今回の御提案の「窓口組織が権利者団体等の協力を得て中立的に決定することとしてはどうか」というご提案に賛成いたします。

また翻案等の改変を伴う利用につきましても、従来から日本の裁定制度の有利な点は、二次的著作物の作成利用についても文化庁長官が裁定を出せるということでありまして、これは今回の新しい制度でもできるようにすべきではないかと思います。もちろん同一性保持権との関係は問題になるのですが、著作権法では、権利制限規定にしても裁定制度にしても、著作者人格権は別問題と考えてきたわけでありますし、現行法のままでも同一性保持権についてはやむを得ない改変等の柔軟な解釈によって、これはクリアできるのではないかと思います。

最後に、「その他」の点でありますけれども、過去に創作された著作物等についても今回の制度の対象にすべきかどうかということで、これはある意味では改正の遡及効とも言えるかも知れません。ただ、かつて裁定制度を著作隣接権に拡大した平成21年の改正におきましても、附則3条で、改正法施行後に裁定申請したものに適用するとは規定されているかと思いますが、改正後の裁定制度の対象となる権利や客体については区別していないものと理解しておりますし、区別するというのは現実に難しいのではないかと思います。したがって、この制度からオプトアウトしたい人がオプトアウトできるように適切な期間を確保することは必要かと思いますけれども、過去に創作された著作物や実演等についてもこの制度の対象となると考えていいのではないかと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

では、福井委員、お願いいたします。

【福井委員】ありがとうございました。何点か言わせていただきます。

まず、この論点に私もほとんど賛成でございまして、特に今回意欲的な、非常に重要な改正であるだけに、権利者の皆さん、社会の理解を得られるということは重要であろうと思います。その意味で、例えば意思表示がされていない場合について、アクセス可能性を重視するということはもっともであるし、さらには、現に意思表示がされているか、いないかということだけではなくて、意思表示の機会が与えられたか否かということも重要ではないかなというふうに思います。

そうでないと、例えば一般の市民の撮った、写真のコンクールで飾られていた写真、これは意思表示がされていないから利用されてしまうのかみたいな誤解が広がってしまっては、大変制度にとってよろしくありませんので、意思表示の機会が与えられているかということも視点として入れていただいてはどうかと思いました。

それからオプトアウトです。これもまさに簡易であることが重要であろうと思います。よって、著作権者単位による包括的オプトアウト、私は賛成いたします。

それから使用料相当額です。これを中立的に窓口組織が決定することについて。何度も申し上げてきたことですが、これを個別に申請者などに算定させようとすると、ほとんど乗り越えることが困難な壁になってしまいます。よって、窓口組織の中立的な決定に賛成いたします。

翻案などへの対応です。例えば2次創作に関わるところと思いますが、これはまさに日本のコンテンツの強みであり、ニーズも多いところだと思います。そうすると、十分なオプトアウト、あるいは意思表示の機会を与えた上で、人格権も含めて柔軟な運用を認めていく、これがよいのではないかと思います。

最後にその他の部分ですけれども、制度化以前に創作・公表された著作物についてですが、これはさすがに対象に入れないようでは、過去の膨大な作品をどう使えるかという問題意識に対して答えたことにはならないと思います。よって、もちろん対象となる利用行為は施行後の利用行為を対象にすべきだとは思いますけれども、作品は制度以前に創作・公表された著作物も含むべきではないかというふうに感じました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございます。私も今皆さんがおっしゃったのにほぼ賛成でございまして、まず一番最後から行って、遡及効の問題ですけれども、これは御指摘のように、遡及効を入れないとほとんど意味がない制度になると思いますので、移行期間とか周知期間は非常に重要だと思いますので、そこは丁寧にやっていかなければいけないと思いますけれども、これは遡及効にするということが賛成でございます。

それから、翻案等改変を伴う利用につきましても、やはりなかなか翻案にならない利用というのは非常に利用が制限されるということですので、同一性保持権の問題にならない程度、ないしは同一性保持権については20条のやむを得ない改変等で解釈するということで、翻案等改変を伴う利用を認めることも賛成でございます。

それから、先ほど福井委員がおっしゃったように、意思表示の機会を与える、これは非常に重要なことだと思っておりますので、例えばUGCとかネットとかの場合に、先ほどの図で、プラットフォーム等各サイトに集約された情報における利用規約とかいうふうに書かれておりますけれども、こういうところで意思表示のものをつくるとか、そういう形も必要ではないかと思いました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】全体に共通して検討すべき論点として、権利者の意思表示といっても著作物の種類によっては、多人数で創作されるとか、権利者自体が相続などで非常に多岐にわたるとか、一部の権利者の意思は分かっているけど、自分だけが権利者かどうか分からないとか、そういったケースも多々あると思います。

だから1つの著作物に1権利者ということでは必ずしも全くないといったような複雑さもあると思います。しかし、そういう場合にはすべて許諾を得なければならないということは結局使えなくなるわけですので、これが検討すべき論点のどこに入るかは分からないのですが、そういった問題もあるということを前提に検討していただければというふうに思いました。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、先に進めたいと思います。続きまして、議事(5)の立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について、これにつきまして議論を行いたいと思います。

事務局に、検討に当たっての論点に関する資料を準備していただいておりますので、まずは説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】資料6を御覧ください。資料6の1ポツ、経緯のところでございます。DXの基盤整備の観点から、昨年度より検討を行ってきているものです。

2つ目の白丸にありますように、昨年度では、民事訴訟法の改正に伴う民事裁判手続のIT化に対応した著作権法の改正等について検討を行い、所要の制度改正が行われたところです。本制度改正につきましては参考資料に資料を入れておりますので、後ほど御覧いただければと思います。

資料6の2、主な論点でございます。こちらは、昨年度最後の著作権分科会の法制度小委員会の審議経過から主に抜粋してきております。

まず、1つ目の立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について。こちらについては、現行法では複製のみ認められているところではございますが、デジタルでも同様の利用ができるようにすることが必要といった御意見が多く出ておりました。ただその際、ライセンス市場等既存ビジネスを阻害しないように対象を認定した検討が必要であるとか、内部資料の解釈については周知を徹底する必要がある、このような御意見がありましたので、こちらを抜粋させていただいております。

②、その他、DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しについてということで、昨年度の議論では、オンラインの進展、ネット空間の拡大に対応した著作権法38条、39条、45条といった公衆送信が権利制限されていない規定について、検討が必要とされております。また、災害発生時の情報収集、情報発信等のための著作物の利用についても検討が必要とされております。DX時代に対応した著作物の利用円滑化とバランスを取りつつ、著作権・著作者人格権等の権利内容の検討も必要という御意見がありました。

この点につきましては、具体のニーズ、利用場面といったものを踏まえながら、著作権者にどのような影響あるのか、こういったことを検討する必要があると考えておりまして、今期の引き続き検討課題としております。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。ただいまの説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、全体を通じまして、何か御意見、御質問等ございますでしょうか。

【水津委員】発言をしても、よろしいでしょうか。

【茶園主査】水津委員。よろしくお願いします。

【水津委員】先ほど発言しそびれてしまったので、一言申し上げます。権利者不明等財産の管理・利用等については、近年、いわゆる所有者不明土地を中心として、共有のケースを含めながら、各法律において制度が整備されています。簡素で一元的な権利処理の方策を検討するに当たっては、日本法の体系的整合性という観点から、これらの制度とのバランスも意識したほうがよいのではないかと思います。簡素で一元的な権利処理の方策についての基本的な考え方や方針が、他の権利者不明等財産の管理・利用等に関する制度についての基本的な考え方や方針と異なるときは、権利の対象や性質の相違等に基づいて、その違いを正当化する必要が出てきそうです。

例えば、権利者が不明や不在であるときと、判明している権利者が意思表示をしていないときとを同列に扱ってよいかどうか、共有者の一部が不明等であるときにどのような規律を設けるべきか、誰も受け取りに来なかったときの対価をどのように扱うべきかといった問題については、他の権利者不明等財産の管理・利用等に関する制度についての基本的な考え方や方針も踏まえて、権利の対象や性質の相違等を考慮しながら検討したほうがよい気がいたします。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかに全体を通じて何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。ではどうもありがとうございました。

それでは本日の議事はこれで終了いたしましたので、他に特段ございませんでしたら、本日はこれまでとさせていただきたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】本日はありがとうございました。

次回の本小委員会につきましては、8月30日14時から16時を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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