文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第2回)

日時:令和4年8月30日(火)

14:00~16:00

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)研究目的に係る権利制限規定の検討について
  • (2)立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について
  • (3)損害賠償額の算定方法の見直しについて
  • (4)簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化について
  • (5)その他

3閉会

配布資料

資料1
研究目的に係る権利制限規定の検討について(225KB)
資料2
立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について(168KB)
資料3
損害賠償額の算定方法の見直しについて(319KB)
資料4
簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージについて(案)(302KB)
参考資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(108KB)
参考資料2
海賊版による著作権侵害相談窓口について(445KB)

議事内容

【茶園主査】それでは、ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会第2回を開催いたします。本日は、御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様には、ウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただいて、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段、非公開とするには及ばないと思いますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですけれども、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なしの声あり」)

【茶園主査】ありがとうございます。では、本日の会議は公開ということで、傍聴者の方には、そのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より、配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

本日の配付資料は、議事次第、配付資料一覧にあるとおりでございます。よろしくお願いいたします。以上です。

【茶園主査】それでは、議事に入りたいと思います。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)から(5)の5点となります。

早速、議事(1)の「研究目的に係る権利制限規定の検討について」に入りたいと思います。

事務局に、研究目的に係る権利制限規定に関する今後の対応等について、資料を準備していただいておりますので、まず、説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

資料1を御覧ください。「研究目的に係る権利制限の検討について」でございます。

1ポツ、経緯にございますように、令和元年度より、こちらの検討をこの分科会においてしてきております。また併せて調査研究をしてきております。3つ目の白丸が令和2年度の調査研究、令和3年度につきましては、上から4つ目の白丸のところでございます。こちらは、前回御報告いただいたものに基づきまして審議を行ったところでございます。

一番下の白丸のところにありますように、この調査研究では、著作権法に基づく許諾や引用とは別に、研究における引用や学会・研究会等での発表における慣行としての許諾や引用の必要性といった存在があることや、著作権法第38条等の権利制限規定の認知・理解が進んでいない実態等が明らかになった旨、報告がありました。

次のページに参ります。また、調査研究報告の中では、許諾の取得について、許諾を誰に求めるのか分からない、返答がない、手続が煩雑といった課題が挙げられておりました。これらについては、現在著作権分科会で行っている簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る新しい権利処理方策の検討と重なる部分が多く、研究場面を含む許諾の在り方についても議論されることが望ましい旨、指摘があったところです。

2ポツ、対応(案)のところでございます。研究目的に係る権利制限については、これまでの審議及び調査研究の結果を踏まえ、引き続き、著作権法第32条、第38条等をはじめとする著作権制度の普及啓発の実施、令和3年改正による図書館関係の権利制限規定の見直し等の運用状況をフォローするとともに、現在検討を進めている簡素で一元的な権利処理方策と対価還元に係る新しい権利処理方策による対応、検討を行い、さらに、これらによっても解決されない支障あるいは新しいニーズ、こういったことがある場合に、必要に応じてそのニーズに応じた検討を行うこととしてはどうかといった案をまとめさせていただいております。

事務局からの説明は以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたら、お願いいたします。御意見等ございますでしょうか。

村井委員、お願いいたします。

【村井委員】御説明ありがとうございました。対応案として書かれているところで、図書館関係の権利制限規定の見直しがありましたので、いわゆる文献を用いた研究、文献研究などは、これによってかなり支障なく研究を行えることが多いと思うのですが、この用語が適切か分からないのですが例えばメディア研究ですとか内容分析のような研究で、著作物を機械的に分析するのではなく、見たり聞いたりして内容を分析するような研究というのは、今の権利制限規定では十分フォローできていない部分があるような気がいたします。そして、簡素で一元的な権利処理が整備されたとしても、オプトアウトが認められていたり、批判的な研究をしようとするときに許諾を得にくいようなケースというのも考えられると思いますので、もし今後、機会がありましたら、研究に係る制限規定の検討が進むことがあるとよいように思います。

以上になります。

【茶園主査】ありがとうございました。

事務局、何かございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

今の村井委員からの御指摘の件、確かに、研究によっても様々あるのかなと思っております。今回の調査研究でも、相当数の研究者の方々によるアンケートも行いまして、その結果も踏まえた議論だったかと思っております。

また、村井委員はもちろん御承知のことだとは思いますが、そういったメディアとか映像作品等、それを見たり研究者自身が使われたりする、こういった部分に関しては、著作権法上の法定利用行為には当たりませんので、当然、許諾の問題とかは出てこないところです。一方で、その一部分について引用利用する、あるいは非営利・無料といった上映であるとか、そういったものは、現行の権利制限規定でも活用できる部分も一部あろうかなと思います。そういったところも、実際のニーズ、そういった御意見も含めて検討していくことが重要なのかなと事務局としては考えております。

補足となりますが、以上です。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

【村井委員】ありがとうございます。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。

では、特にございませんようでしたら、次に進みたいと思います。

続きまして、議事(2)の「立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について」、これにつきまして議論を行いたいと思います。

事務局に検討に当たっての論点に関する資料を準備していただいておりますので、まず、説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

資料2を御覧ください。「立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について」という資料になります。こちらの1ポツの経緯にありますように、昨年度より、DXの基盤整備の観点から、今後考えられる著作権法上の課題について検討を行ってきております。2つ目の白丸にありますように、昨年度の法制度小委員会では、関係者からの実態・意見聴取を踏まえた検討を行い、論点整理を行うとともに、民事裁判手続の電子化・オンライン化を実現する民事訴訟法の改正に対応した著作権法の改正について検討を行い、所要の制度改正が行われたところです。今年度も引き続きその他の課題について検討を行うこととしております。

2ポツの対応(案)を御覧ください。まず、マル1、立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等についてです。こちらについても、前回あるいは前々回、昨年度の議論と検討してきておりますが、まず、黒丸の1つ目のところ、行政のデジタル化への対応を著作権法の観点からも支えていくために、現行法で可能となっている内部資料として、著作権法42条等について、その複製について、デジタルでも同様の利用ができるよう、所要の制度改正が必要である。その際、現行法下での複製行為において許容される範囲と同等の範囲での公衆送信に限定することや、ライセンス市場等の既存ビジネスを阻害しないようにすることに留意する。内部資料の解釈については、現行の解釈も含め周知を徹底する必要があるとしております。

また、マル2、その他、DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しについてに入ります。

1つ目のポツでございます。オンライン化の進展やネット空間の拡大に対応した著作権法第38条、第39条、第45条等の在り方、また、災害発生時の情報収集や情報発信等のための著作物の利用については、引き続き具体のニーズや利用場面、こういったものの意見等お話を聞きながら、こういったものを踏まえて検討を行ってはどうかとしております。

その際、DX時代に対応した著作物の利用円滑化とバランスを取りつつ、著作権・著作者人格権等についても検討を行ってはどうかとしております。

事務局からの説明は以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたら、お願いいたします。

上野委員、お願いいたします。

【上野委員】上野でございます。

DXに向けた見直しを必要とする権利制限規定というのは多いと思うのですけれども、この42条は、現実の行政機関で必要とされる著作物利用に十分対応できていないのではないかと思いますので、見直しを積極的に検討すべきではないかと思います。

もちろん42条も、2項は度々の改正でアップデートしてきたのですけれども、42条1項につきましては、私の知る限り、昭和45年に現行法ができて以来そのままの文言ではないかと思います。確かに、現行法の文言そのままの規定というのは、41条など、ほかにもあるのですけれども、もともと「いずれの方法によるかを問わず、利用できる」というような柔軟な解釈が可能な文言の規定が少なくないところです。他方、42条1項につきましては、単に「複製」できるというだけの規定になっていまして、これは現在では現実にそぐわない状況になっているように思います。

もちろん、既存のライセンス市場との関係については考慮する必要がありますので、現状のただし書等の解釈あるいは立法的見直しというのも課題にはなるかと思いますけれども、そうしたことを検討しつつ、この42条は早急に対応を要するのではないかと思っております。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

どうもありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】ありがとうございます。事務局に対する御質問ですけれども、行政目的の権利制限規定の見直しは、基本的には42条1項について記載されていますが、42条2項については見直しの対象になるのかどうかについて、ご教示ください。

【茶園主査】事務局、よろしくお願いします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

今の澤田委員の御質問の件でございます。42条2項につきましては、前項と同様とするといったような規定ぶりになっております。今般の42条1項の部分、今後の検討次第で42条1項がどういった形になるのかといった法制化の状況次第ではございますが、42条1項の一定の整理あるいは改正を行った場合には、当然、この2項のことも併せて検討が行われるものなのかなと思っております。

以上でございます。

【澤田委員】承知いたしました。ありがとうございます。私としましては、同じ行政目的のものでありますので、2項についても同様に公衆送信まで広げるということは検討されてしかるべきと思っております。

また、対応案のところのマル1の3ポツに書いてある内部資料の解釈について、現行の解釈も含め周知を徹底する必要があるという点について、これは非常に重要だと思っています。その際には、併せてただし書についても解釈の周知をしていただくと、権利者の方々の懸念に対応することになると考えております。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。

福井委員、お願いいたします。

【福井委員】ただいまの上野委員と澤田委員の御意見に私も賛成です。立法そして行政上の諸課題は非常に複雑化しており、それらに対する対応は、かつてないほど早急で、そして時には大胆な対応が必要な場面が増えていると思います。我々日本国民ばかりか、人類全体が直面する課題も数多くある中で、著作権が壁になってその検討が遅れるというようなことがあっては決してならないように思います。その意味で、既存のライセンス市場等に配慮することはもちろんではありますが、従来の範囲に限定をするとか、そういった予断もなく、ある程度は柔軟に拡大を考えてもよいのではないかと感じるところです。

私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】今村です。

私も、この点に関しては、福井委員からお話がありましたように、委員の先生方からの議論があった点に賛成です。また、関連する既存の権利者への影響の部分について、現行法の42条の1項でもただし書がありまして、実際、立法・行政、そして裁判所がどういうふうにこの公衆送信等へ拡大した場合に運用するか分かりませんけれども、何らかの内部的なガイドラインとか、ソフト・ロー的なものをそれぞれの諸機関で設計していくことで、権利者への影響にも配慮するといった運用なんかも望まれるかなというふうに思います。そういったことと併せて、全体的に利用できる範囲を拡大することによって、一般論として言えば、複製自体が公益性との関係でバランスを取った上で制限をしているわけですから、公衆送信に関しても、ただし書の条件付でもありますから、恐らく、権利者への影響は本当に最小限のものに抑えられ、公益性との関係でもバランスの取れたものになるのかなと考えております。

以上です。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。では、次に進みたいと思います。

続きまして、議事(3)の「損害賠償額の算定方法の見直しについて」、この点について議論を行いたいと思います。

事務局に検討に当たっての論点に関する資料を準備していただいておりますので、まず、説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局です。

事務局です。

1ポツ、経緯でございます。現行規定についてですが、著作権者は、その著作権が侵害された場合、不法行為に基づく損害賠償請求が可能であり、その場合の損害額の立証に関しては、著作権法第114条第1項から第3項に基づいて損害額を算定することができます。これにより、著作権者の損害額の立証の負担が一定程度軽減されているところでございます。

次の課題のところでございます。近年、漫画を中心に海賊版サイトによる被害が深刻化されております。注釈にもつけましたが、文化審議会著作権分科会中間まとめの「国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について」(令和4年3月)においても、こういった被害状況について説明を入れております。また、最近、ファスト映画やネタバレサイト等による著作権侵害での摘発事例もございます。

次の白丸のところでございます。一方で、権利者が民事訴訟を提起した場合に、著作権法第114条に基づく損害額の算定が論点となる事案もあり、実務家からも、損害賠償額の算定方法の考え方について柔軟な解釈を求める声も見られます。近年増加する著作権侵害に対し、権利者の被害回復の観点から実効的な対応策を取れるよう、損害賠償額の算定方法に関する規定を見直す必要性が高まっていると考えられます。

2ポツの対応(案)を御覧ください。

まず、特許法等の状況について御説明します。著作権法第114条第1項から第3項の規定は、特許法第102条第1項から第3項類似の規定となっております。特許法第102条については、特許等の権利によって技術等を十分保護できるよう訴訟制度を改善することを趣旨として、令和元年に以下の改正が行われています。括弧書きにありますように、商標、意匠、実用新案についても同様の改正が行われています。

改正内容は、次のページの枠囲みを御覧ください。こちらの枠囲みのところでございますが、侵害者が得た利益のうち、特許権者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた部分について、侵害者にライセンスしたとみなして、ライセンス料相当額の損害賠償を請求するできることとする特許法第102条第1項関係、また、ライセンス料相当額による損害賠償額の算定に当たり、特許権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨を明記する特許法第102条第4項関係でございます。

その下の黒ポツのところで少し補足説明をしておりますが、1つ目のポツのところでございます。こちらについては、3行目のところでございますが、ライセンス機会の喪失による逸失利益も含めて、損害賠償算定の特例を定めることが損失の補塡という観点から望ましいと考えられることから、改正前の特許法第102条第1項による推定が覆滅された部分のライセンス料相当額も権利者が受けた損害の額として認めるものであります。

また、2つ目につきましては、特許法第102条第3項のライセンス料相当額が訴訟当事者間の具体的事情を斟酌して認定されることが想定されているところ、通常のライセンス交渉段階と比べ、損害賠償額算定の段階においては、類型的に増額に働き得ると考えられる考慮要素があり、そうした要素を考慮することができる旨を明らかにするものであると説明されているところです。

続きまして、著作権法における対応について説明をいたします。上記の令和元年の特許法改正の内容は、著作権法における現行規定とその他の知的財産法体系との整合性を取る観点や、著作権者等の被害回復に実効的な対応策を取れるようにするというニーズにも当てはまることから、著作権法についても同様の見直しを行ってはどうか。

枠囲みのところでございます。(i)侵害者が得た利益のうち、著作権者の販売等の能力を超えるとして賠償が否定される部分について、侵害者にライセンスしたとみなして、ライセンス料相当額の損害賠償請求できることとする。

(ii)ライセンス料相当額による損害賠償額の算定に当たり、著作権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨を明記する。

説明は以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

ただいまの説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたらお願いいたします。

池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。

特許法102条4項並びの改正のほうですけれども、実務上、違約金条項のような形で、著作権侵害があった場合や契約で認められた範囲を超えて利用してしまったような場合は、通常料金の1.5倍なり2倍なりを請求するといったことが利用規約上定められているような場合が少なくないという認識でありまして、サービス提供者と利用者との間でちゃんと契約が成立している中で契約違反が行われたという場合は、そのままこれを適用しても問題ないと思いますが、そうではない、単純な侵害者との関係では、損害賠償として、この通常料金の1.5倍、2倍といったことが請求できるのかという問題があって、否定的な裁判例も少なからず存在すると認識しております。

今回御提案されている改正は、最終的には裁判所の判断ということになるとは思いますけれども、先ほどの例でいうところの1.5倍賠償、2倍賠償といったものを可能にするということを意図されておられるのかという点について、事務局に確認をさせていただきたいと思います。懲罰的損害賠償の是非という難しい問題もあるとは思うのですけれども、契約をちゃんとした人のほうが、していない単純な侵害者よりも多くのペナルティーを支払うという結論はバランスを欠くのではないかと常々思っているのと、特許の場合はこういう問題はあまり起きないのではないのかなと思いまして、確認させていただく次第です。

【茶園主査】事務局、ございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】ありがとうございます。ただいま池村委員から御指摘がありましたように、こちらでいろいろ調べたところによると、著作物一般についても、その利用規約とともに、契約であるとか正規利用ならともかく、そうでない場合はこういった額の請求をさせていただきますといったような著作物の例は幾つかあるところでございます。この規定を入れたときの効果として、実際にどういった裁判事案があって、裁判所が最終的に判断するかといったところまでは、なかなか今の段階では答え難いところもありますが、今回のこういった規定を設けることで、少なくともそういったような請求をしやすくするといった観点であるとか、あるいは結果的にそれが認められやすくなればいいのかなと思いますが、そういったところは、また引き続き、この改正の検討とともに、裁判の実務とか、そういった積み重ねによって、少しずつ権利者の救済が図られるようにしていくことが重要なのかなと考えております。今の段階では、説明はこの辺りぐらいにしかできないところではございます。

以上です。

【茶園主査】では、まず、島並委員お願いいたします。

【島並委員】島並でございます。

まずは、特許法等の令和元年改正に相当する規定について、同改正の制度趣旨は著作権法にも妥当すると思いますので、御提案に賛成をいたします。

その上で、特許法等の改正におきましては、損害を超える金銭的救済、すなわち侵害者利得の吐き出しですとか、懲罰的ないし法定損害賠償は議論の俎上には上ったものの、様々な理由で見送られました。翻って、著作権法につきましては、一方では表現の自由とのバランスという特殊事情もございますが、他方で、先ほども御指摘があった海賊版サイト対策等、特許法とはまた異なる侵害抑止の要請もございますので、そうした特に悪質な行為侵害に対する損害を超える金銭的救済の可能性についても、引き続き検討対象に加えていただければと存じます。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

福井委員お願いいたします。

【福井委員】ありがとうございます。

私も池村委員、島並委員の問題意識に同感でありまして、現状、著作権侵害の事例では114条1項2項の場合と3項の場合の落差が非常に大きいと思います。つまり、著作権侵害は間違いないというふうに、侵害論の長いトンネルを抜けて損害論の話にやっと至ったときに、114条2項、これが大きな可能性として浮上するわけですけれども、特許法102条2項での知財高裁判決の影響で1項と同様に、原告側、権利者側の生産販売能力の問題が課題になることがあります。権利者は、通常、自ら製造販売はせず、ライセンス等を行っているケースが多いので、この114条2項は、生産能力ということを問われてしまうと現実には使えなくなってしまうケースが多いわけです。すると、114条3項に行くしかないのですが、これはライセンス料として受けるべき額になるわけです。しかし、侵害事案というのは、現実の事案を見てみると、しばしば、こんな利用であればそもそも許諾なんかするわけはないというような実態を持っているケースが多く、それに対して、使用料相当額しか受け取れない、時には1.5倍にすらならない。ということは何を意味するかというと、その侵害による高額の利益の大部分は侵害者側に残っているということになるわけです。これは侵害され損ということも意味しますし、権利者の救済にも、訴訟の大きな負担ということを考えると決してなっていないケースが多くて、その意味で言えば、今回の改正はやはり望まれるものであろうなと思います。

裁判例に関しては、御指摘もあったとおり、有利な裁判例も見られますけれども、まだまだそういう考え方を否定する方向のものもありますので、立法の必要性というのは十分あるなと感じるところです。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

早稲田委員お願いします。

【早稲田委員】ありがとうございます。

私も皆さんの意見と同様でございまして、著作権は非常に侵害しやすい、侵害しやすく、かつ、著作者が第三者にライセンスをするというのが非常に多いというパターンだと思います。

3項につきましては、通常損害の通常を外した時点で、ある程度柔軟に解釈をしていただければいいのかなと思っていたのですが、やはりなかなか裁判所がそこまで思い切った判決が書けないということであれば、今回のような改正をするということは非常に意味があると思っております。これ自体は、特許のときも同じような議論があって、なかなか侵害をしたという事実が損害額に響かなかったというところでこういう規定を入れたということだと思います。

著作権の損害賠償は非常に難しいところがありまして、さっき島並委員がおっしゃったように、侵害のし得にならないようないろいろな検討は従来からずっとやっていたのですけども、これはなかなか他の法律の関係とか、民法の関係等もあると思いますので、少なくとも今回の改正まではやると。その後につきましては、裁判例も踏まえてまた検討していくということがよろしいのではないかと思いました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

上野委員お願いいたします。

【上野委員】ありがとうございます。

私も、この特許法の改正に沿った著作権法114条の改正について賛成でございます。具体的な内容は2点あるわけですけれども、そのいずれも著作権法においても同じことが当てはまると思いますので、これはぜひ対応すべきものと思います。

それに加えまして、ここで問題提起したいのは、114条1項の中にある「受信複製物」というものについてであります。この部分は、もともと特許法にはない著作権法固有のものなのですけれども、この受信複製物というのは文言上、「公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された複製物」ということになっておりますので、この規定は、いわゆるダウンロードした数量を基に損害額を算定するものと理解しております。

確かに、公衆送信による権利侵害がなされた場合、損害額の算定において、ダウンロードされた数の分だけ権利者が正規版を販売し損なったと評価できるという側面はあるのだろうと思いますけれども、先ほど島並委員からも御指摘がございましたように、近時の海賊版サイトは、ダウンロードを伴わないストリーミングでなされるようなものがかなり増えていると承知しておりますところ、そのような場合には、この114条1項を適用することが難しいかと思います。実際、裁判例のほうでも、最近この「受信複製物」を若干柔軟に解するかのような動きもあるようであります。つきましては、ダウンロード数と正規版販売の減少がどこまで関係するのかということを含めて検討を加えつつ、この「受信複製物」というものの在り方についても再考してみる価値はあるのではないかと思っております。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

今村委員、お願いいたします。

【今村主査代理】今村です。

特許法の損害賠償と著作権の損害賠償に関しては、利用者あるいは権利者等の構造の関係でいろいろ違う部分もあるとは思いますけども、基本的に共通する部分が多いと思いますので、特許法に倣ってこういった改正をするということは問題ないとは思います。ただ、特許の場合には、業として実施している、そういうものが侵害者になるということだと思いますけれども、著作権の場合には、必ずしもそういう侵害者ばかりではないということなので、もちろん海賊版などは、そういった甚大な被害を与えて、何らかの利益をも得ているということもあるのでしょうけども、そうじゃない侵害者、利用者というもの、要するに業者じゃない利用者が侵害するケースも、特許法などと違って多いと思うのですね。その辺の部分については、そういった新たな規定を設けたとしても、運用面で何か実際に交渉した場合に決まるだろう額というものが決まってくるので、差し支えがある結果は生じないとは思うのですけども、一応、特許法をはじめとした工業所有権の場合と著作権の場合には、侵害者となる利用者が類型的に結構異なる部分もあるのかなという点も多少留意して、今後、制度設計を進めて、あるいは運用の想定をしていけばよいのかなと思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

今回事務局から示されている論点が、特許法と違っているところを同様にしてはどうかというものですが、これまで委員の先生方の御意見をお伺いしていますと、このように著作権法と特許法が違っているところを特許法に倣ってといいますか、同様にすることと、これとは異なり、著作権法の特殊性といいますか、著作権侵害と特権権侵害の違いといった点から、著作権侵害の損害賠償額の算定について、さらに別に考える必要があるかどうかということの、大きく2点に分けることができるのではないかと思います。

前者の点については、先ほど上野委員がおっしゃった受信数量に関する問題はあるいはこちらの方、前者の方に入るのかもしれませんけども、特許法に倣うことを、基本的に支持されるという御意見が多かったと思いますが、ほかにございますでしょうか。

よろしいですか。では、次に、後者の点、つまり著作権の特殊性に関わる点について、何かさらに御意見等ございますでしょうか。

では、今回事務局がお示ししていただいている論点に関しては、基本的にこれに賛成していただくという形でよろしいでしょうか。

【茶園主査】では続きまして、議事(4)の「簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化」につきまして議論を行いたいと思います。

事務局におかれまして、その検討に当たっての論点に関する資料を準備していただいておりますので、まず、説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

資料4「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージについて」を御覧ください。

1ポツの制度化イメージでございます。前回の御審議を踏まえまして、中間まとめに示しておりました新しい権利処理の仕組みの検討について、具体の制度化イメージを示しつつ、いわゆる拡大集中許諾制度のような許諾ベースの考え方や権利制限規定のような考え方の検討、著作権者等不明著作物に係る裁定利用の代行等についての検討を行うこととしてはどうかと考えております。

制度化の基本についてですが、窓口組織への相談・申請、著作権者不明・所在不明または意思表示がされていないこと、使用料相当額に当たる利用料の支払い、窓口組織による公告等を要件としまして、一定の暫定的な利用を可能とする簡素な仕組みを設けるとともに、併せて一定の追加的手続を経る、または現行の裁定利用申請を行うことなどにより、暫定的ではない本利用を認めることとするといったイメージ案を、検討のためにお示ししております。

こちらの図、新しい権利処理の仕組みの制度化のイメージを御覧ください。事前相談として、窓口組織への相談を置いております。続きまして、調査・探索として、データベースの探索ということで、権利者等の情報であるとか意思表示の有無について調査・探索を行います。その上で、要件に適応する場合は、利用申込みということで、利用料を支払うことで窓口組織が公告を行います。この公告を行った後、利用者としては、暫定的な利用、少し言葉の不適切さがあるかもしれませんので仮称としておりますが、暫定的な利用を可能にする。図の米印にありますように、著作権者からの申出・意思表示があるまでの間の暫定的な利用を可能とする。著作権者からの申出・意思表示があった場合は、それに基づいた利用料の支払いを行います。

また、この暫定的な利用者のうち、暫定的ではない本利用を希望する者につきましては、この右下の矢印に飛んでいただきまして、本利用の申請として一定の手続、一定の要件を経て、この暫定的ではない本利用を認める、このようなイメージを冒頭に示しております。

こちらについて、今の手続を言葉に起こしましたのが、次のページの制度化イメージのマル1からマル10となっております。読み上げは割愛しますが、今申し上げたような絵図での説明のとおりです。

そのページの下半分、本制度化の主なポイントとしまして、1つ目、著作権者不明等に加え、意思表示のされていない著作物等も対象にすること。著作権者の探索や使用料算定に係る利用者や関係団体の負担軽減に資すること。現行の裁定制度において、申請中利用まで一、二か月程度を要していたケースがあるところ、窓口組織への相談・データベース等による探索等により相当程度の時間の短縮を図ること。利用料については、供託手続を取らないことによる利用者の負担軽減、また、その有効利用が考えられること。最後になりますが、暫定的ではない本利用への選択的移行により、著作権者の権利を直ちに失わせることなく、利用者・権利者双方にとって柔軟なスキームとすることができることといったものを挙げております。

これらの基本イメージについて、どう制度化していくかといった各論点の整理を次の3ページ目以降からしております。基本的には、前回の御審議を踏まえてまとめております。

まず、総論としての考え方でございます。1ポツ目のところです。現行の著作権法では、権利制限規定であるとか、文化庁長官による裁定の仕組みがございます。このことから、今般の新しい権利処理について、著作権者の意思を尊重しつつ、一定の要件・一定の対価の支払いを前提に利用可能とする仕組みを検討すること自体は、著作権法制の中でも不可能ではないだろうといった御指摘が前回の会議でもございました。

2つ目の段落になりますが、新しい権利処理の仕組みの制度化として考えられる幾つかの方策、前回は3つの例示として挙げておりましたが、これらは、利用可能にする制度的帰結がほぼ同一であることに鑑みまして、著作権者等の利益を不当に害することのないよう留意しつつ、ニーズや公益性、そのための一定の要件に焦点を当てて検討することとしてはどうかとしております。

3段落目になります。まず、ニーズや公益性につきましては、昨年度の文化審議会の中間まとめにも示しましたように、著作権者の探索を含む権利処理コストが高いといった理由で、必ずしも利用に結びついていないといった指摘や、このコンテンツ創作の好循環の最大化、こういったものが挙げることができないかと考えております。

また、4段落目です。近年制度化された、いわゆる所有者不明土地の利用の円滑化においても、課題、問題点として、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引が阻害されるなど、土地の利活用を阻害しているといった旨が挙げられておりまして、用地買収や民間の取引の際に、所有者探索に多大な時間と費用を生じさせるなど、国民経済に損失を生じさせている点といったことは、今般の著作権の議論にも一部当てはまる部分があると考えられます。

これについて、著作権法との関係を補足しますと、著作物の新しい権利処理における暫定的な利用については非独占的な利用でありまして、当該利用が認められた場合においても、著作権者は自ら利用し、または他者に利用許諾をすることは可能であり、土地などと違いまして、より柔軟な利用を検討する余地はあると考えられます。

次の段落です。いわゆる拡大集中許諾制度の制度化につきましては、前回の審議会におきましても、他人の財産について第三者が許諾を行うことができるとする法的正当性について、説明が難しいといった指摘もございました。このことにつきましては、諸外国におけるいわゆる拡大集中許諾制度の制度的な理論や運用が参考になると考えられまして、現在文化庁が行っている調査研究事業、こういったものの内容も参考に検討していくべきとしております。

次のページ、4ページ目をお開きください。これまで説明した総論としての考え方に続きまして、ここからは各論として幾つかまとめております。

まず、権利者不明・所在不明でございます。1つ目の丸ポツにつきましては、現行の著作権者不明等の場合における文化庁長官の裁定を活用した著作物の利用についての説明となっております。そちらにありますように、法第67条において、「著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合」と規定されておりまして、制定での規定もそちらのほうに書いておりますが、ここら辺は簡潔に申しますと、そういった探索等の措置により取得した権利者情報その他の保有する全ての権利情報に基づき著作権者と連絡するための措置を取ったにもかかわらず、著作権者と連絡することができなかった場合という整理となっております。

2段落目に行きます。新しい権利処理の仕組みにおける暫定的な利用については、この探索の措置について、分野横断する一元的な窓口組織への事前相談や事後の報告手続、さらには、分野横断権利情報データベースの活用を前提に、一定程度緩和することが考えられます。

例えば、利用者・窓口組織においてデータベース検索を行うこと、事後の報告など一定の過程を経ることで、当該著作物またはそれに付随して、著作権者等に係る情報がなく連絡することができない場合、権利者が不明及び権利者の所在が不明の場合として、暫定的な利用のプロセスに入ることを可能にすることとしてはどうかとしております。

次に、意思表示がされていない場合についての論点です。先ほど御説明しました権利者不明・所在不明の著作物に加えまして、著作権者が権利を有する著作物の利用に関して意思表示を行ってない場合について、当該著作物の利用円滑化の方策を設けることを検討します。

次の白丸の段落です。この意思表示の有無の判断については、著作権者の意思を尊重する観点からは、その意思を確認できる機会を確保することが重要との御意見もありました。この意思表明については、著作物の種類やその流通形態により様々であるが、著作物の利用可否のみならず、利用許諾に係る申請連絡先やその権利の所在が示されている場合も想定されます。

例えば、ホームページ上で「利用申請はこちらから」といったような記載があって利用フォーマットが示されているとか、あるいは、この著作権は誰々が管理していますと言った表示、このようなことをイメージしております。

このため、意思表示の有無につきましては、著作物の利用可否について明記されておらずとも、著作物またはそれに付随して著作権者等に係る情報が示されている場合には、まずは当該条項に基づき連絡を試み利用許諾を取ることを基本としつつ、その上で返答がない場合については、意思表示がされていないとして、新しい権利処理における暫定的な利用プロセスに入ることを可能とすることとしてはどうかとしております。

その次の白丸ですが、これにより上記の著作権者不明・所在不明等の場合に加え、例えば、示されている連絡先に連絡を試みても返答がない場合や、複数の権利者がいる著作物について、そのうちの一部の者のみから回答が得られないために利用がかなわない場合等について、利用の道を開くことが期待できると考えております。

次の白丸のところです。なお書きとしておりますが、現状、連絡を試みても返答がない場合は、一般に許諾が得られたことにならないため、当然に利用することはできません。しかし、このことが権利処理にかかるコストの増大を招き、著作物の利用が滞っている状況に鑑みると、今般の新しい権利処理の仕組みにおける暫定的な利用プロセスにおいて、こうした事前の意思表示の確認と窓口組織による公告等に対応する事後的な意思表示の機会を設けるとともに、それでも意思表示がない場合は、無体物たる著作物の利用の非競合性といった性質も踏まえ、当該利用に係る著作権を一部制約し、著作権者の意思表示があるまでの間、一定の条件の下で著作物の利用を可能とすることも考えられるかとしております。

また、意思表示をしやすくするなどの仕組みや環境整えることも併せて考える必要があるかと提示しております。

続きまして、使用料相当額に当たる利用料についてです。使用料相当額については、窓口組織が著作権等管理事業者等の協力を得て、利用者側の意見を考慮しつつ定めることとしてはどうか。この算定に当たっては、公平性や公正性を担保することが重要であるため、例えば、著作権者や利用者等で構成される会議等の場の関与であるとか、文化庁の裁定補償金額シミュレーションシステムの活用、こういったものを挙げております。

3つ目の白丸のところです。この利用料につきましては、暫定的な利用を行う前に、利用者が窓口組織に対して支払うこととする。また、窓口組織においては、公告等により著作権者が現れた場合に、当該著作権者の意思等を確認の上、一定の使用料相当額を支払うこととするといったようなイメージを記しております。

なお、暫定的な利用の期間中も公告等を続けることを踏まえまして、現行の文化庁長官の裁定利用もそうですが、窓口組織によるさらなる著作権者等の探索であるとか分配は行わないと補足説明をしております。

また、次の4つ目の白丸です。著作権者等が現れない場合が想定されるため、窓口組織が収受した利用料の一定期間後の取扱いについて、例えば、分野横断権利情報データベースの改良・拡充等、著作権者や利用者に資する著作権の関連事業に活用することを可能としてはどうかといった論点も提示させていただいております。

続きまして、暫定的な利用(仮称)についてです。暫定的な利用は、著作物の利用について、窓口組織への利用申込みと使用料相当額に当たる利用料の支払いを行いまして、窓口組織による公告が行われた後から著作権者からの申出・意思表示があるまでの間の利用を可能としてはどうかとしております。

この場合において、著作権者との協議を通じた円滑な利用への安定的な移行を確保する観点から、著作権者等からの申出・意思表示があってから一定期間の利用の継続を認めるなどの配慮が必要かといった論点も挙げております。

続きまして、暫定的ではない本利用を認めることについてです。より簡易な手続により暫定的な利用を認めることに併せて、現行の裁定利用のような著作権者等が現れた場合においても利用することができる仕組みについても検討すべきであるとしております。

暫定的ではない本利用を希望する利用者がいる場合、暫定的な利用に並行し、例えば、次のような一定の手続・要件を経ることで、本利用の道を開くこととしてはどうかとしております。

こちらは例示ではございますが、暫定的な利用の一定期間の継続、現行の裁定利用と同等の探索努力及び使用料相当額に当たる利用料についての文化庁長官の認可、3つ目は、現行の裁定制度が存続する場合、現行の裁定利用申請への切替え。

続きまして、窓口組織の役割についてです。今般の新しい権利処理の仕組みは、著作権者不明等の場合や意思表示がされていない場合についての利用円滑化を図るものであるが、こうした要件の確認を利用者が主観的に独自に判断できる仕組みとしてしまうと、違法利用の拡大・助長といったリスクが生じることとなります。

また、利用に当たっての相談や利用料の支払い、暫定的に利用される著作物の公告の主体等については、複数の組織が分散して存在するよりも、集中しているほうが効率的であると考えます。

このように著作物の適法利用の円滑化を図るため、窓口組織を設け、新しい権利処理に係る手続を一元化することが必要であると考えております。

この窓口組織は、著作権者等へのアクセスを容易にするための組織でもあり、著作権者・利用者双方のための組織であると考えられます。現時点で想定される窓口組織の役割は次のとおりです。1つ目が著作物の利用に係る相談、2点目として、データベースを活用とした著作権者等または著作権管理事業者の探索・案内、3点目が新しい権利処理の案内・手続執行です。この手続執行には、使用料相当額の算出と利用料の収受、あとは公告と著作権者が出てきた場合の著作権者への支払といったものが考えられます。

次のページになります。さらに、上記のように窓口組織が担う新しい権利処理のプロセスや使用料相当額の収受には、一定程度の公益性や公正性等が担保される必要があるため、窓口組織には文化庁による指定や認可等の一定の関与を措置する必要があると考えております。

続きまして、遡及効につきましてです。遡及効につきましては、前回の会議でもほぼ意見が一致して、難しいがこれを何とか認めるべきといったところがございました。

なお書きのところです。平成21年の著作権法改正においては、著作権者不明等の著作物の裁定による利用について、著作隣接権についても対象とされ、また、裁定申請中の利用が可能とされた改正が行われましたが、この改正の際には、こうした対象となる著作物や著作隣接権については特段の制限が設けられていなかったといったところも、事務局のほうでは少しお調べをして出てきたところでありますが、また、いい理屈等あれば、ぜひよろしくお願いします。

続きまして、オプトアウトでございます。新しい権利処理の仕組みを活用しない意思を表明するいわゆるオプトアウトにつきまして、これも前回の議論でも出ておりましたが、例えば、著作権者単位による簡易で包括的なオプトアウトの仕組みをデータベースの活用等も含めて検討してはどうかということも書いております。

また、次の論点、翻案等を伴う利用についてです。こちらも翻案等を伴う利用を可能とするべきであるといった意見が大勢でございました。また、同一性保持権等にも留意した適切かつ重要な運用が望まれるとしております。

続きまして、所有者不明土地に係る民法等の規律の整理との関係でございます。先ほど少し言及しましたが、所有者不明土地・建物管理制度等に関するルールの改正等についてです。5行目のところになりますが、この民事基本法制の見直しと今般の新しい権利処理の仕組みでは、権利者探索を含めた権利処理に多大なコストが必要となり、民間取引が阻害されているという課題や、この解決のために他人の財産の管理・利用に関する新たな制度を創設し、利用円滑化を実現するという課題方策の点では共通していると考えられます。

次のページになります。このため、新しい権利処理の仕組みの創設においても参考になると考えられます。

2つ目の丸のところでございます。参考にする上での両者の違いでございますが、この2つ目の段落の1行目の最後のところからです。権利者不明または連絡不能の場合に加え、意思表示がされていない場合についても対象を想定していることが異なります。この点につきましては、例えば、著作権法においては、第1条において、文化的所産の公正な利用が目的に掲げられており、国民が著作物を利用する者であり文化の享受者であることを念頭に権利保護を図るものと考えられ、他の財産権に比して利用を認める必要性が高い。

分かりやすく言うと、他人が利用することを前提としていると言ってしまっても過言ではないかと思いますが、こう考えられること、また、著作物については、有体物と異なり、ある者が利用したとしても、他の者が重ねて利用することは阻害されない利用の非競合性、こうした点なども踏まえて検討していくことが必要ではないかと示しております。

少々長くなりましたが、事務局からの説明は以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの説明を踏まえまして、本件に関する御意見等がございましたらお願いいたします。池村委員、お願いします。

【池村委員】前回欠席させていただいたため、前回の議事録を拝見させていただきまして、たしか澤田委員だったと思うのですけれども、過去の裁定の例ということで、サウンドロゴをCMに使うといった例を出されていて、暫定利用から本利用への移行を認める必要性について御意見を述べられていたかと思います。

それで、このサウンドロゴの裁定の事案、私が代理人となって裁定の申請をした事案になりまして、著作隣接権の裁定の事案だったのですけれども、まさに権利者が現れてせっかく作ったCMが流せなくなったら大変だという問題意識があったので、利用期間を制限しない形だったり、使用料相当額の供託についても、一括支払いという形で何とかならないかということで、当時文化庁と交渉して、例外的な裁定だったと思うのですけれども、最終的にそのような形で裁定を出していただいたということがございました。

条文上も、利用期間を一定期間に限定しなければならないといったことは書いてありませんし、使用料相当額に関しても加戸逐条には、対象著作物ですとか利用対応に特殊性がある場合はそれが加味されるべきといったことが書かれていて、サウンドロゴに関しては、一般的に買取りという形で将来の利用も含めて一括で対価が支払われている実態にあるということで、広告代理店に対する照会結果などを基に文化庁を説得したという記憶がございます。

前回欠席でしたので、現行の裁定制度の枠内でもこうしたことは一応可能だという一例ということで、本日、情報共有させていただく次第です。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。福井委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。

内容はこれまでの議論を大きく取り上げていただいておりまして、これならば現実にワークするのではないかというイメージのものがだんだんと立ち上がってきているような印象を持ちました。

その上で、暫定利用の前に使用料相当額、通し番号でいうと14ページです。これは個別の意見というほど固まってはいないんですけれども、利用者側の意見を考慮しつつ、また、著作権等管理事業者の協力を得て定めるというようなことから、個別具体的な事案に即してそれに近い額の確定をさせる現在の裁定制度のようなものではなく、むしろある程度外形的に即決できるようなものを想定されているのかなというふうに想像しました。その考え方に対して大変賛成です。

繰り返しになりますが、裁定利用においては、事前に供託金の額を確定するということが非常に現場にとって重い負担になっていて、結局は使えないということにつながってきた過去があるように思います。これは決して運用する事務局側の問題ではなく、制度がそうだったということだと思いますけれども、今回もその轍を踏むことだけは避けなければいけないと思いますので、改めて、外形的に、また簡易に定まる方式をぜひお願いいたしたいというふうに思います。

また、その次の暫定的な利用の部分です。白丸で言うと2つ目になりますが、この暫定利用について著作権者からの申出や意思表示があったときに、一定期間の利用の継続を認めるなどの配慮が必要か否かという点です。この新しい権利処理は言うまでもなく、小規模なユーザーによる利用ばかりではなくて、大規模なビジネス利用などでも使えるようにならなければ、制度としてはもったいないことになろうと思います。

そうしたことを考えると、ある程度規模が大きくなった利用であればなおさらですけれども、権利者が現れてこれを中断するというのは、やっぱりなかなか大変なことです。特に、小規模な利用から始まって大規模に育つようなケースもありますが、大きな可能性として広がったものが権利者の出現によって中断を余儀なくされるというような場面が生まれると、やっぱりその怖さから、なかなかこの手続には手を出せないということも出てきかねません。

そうすると、暫定利用に向けての手続を十分経たにもかかわらず、直ちに利用停止ということでは、結局利活用が進まないということになりかねないので、一定期間の利用の継続を認めることがよろしいのではないかというふうに思います。

直ちに停止といっても、できないものはできませんので、どうせある程度現実的な対応を考えざるを得ない。であれば、むしろ一定期間についての目安を示してあげることで、ずるずると引き延ばすことも避けられるし、この期間内にたためばいいのだな、あるいは、やり方を変えればいいんだなというガイダンスを利用者側が受けられる、そういう形を志向してはどうかなと思った次第でした。

私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。麻生委員、お願いいたします。

【麻生委員】麻生でございます。この暫定的な利用は公告と同時にすぐ開始できるという制度設計になっているように思いますが、著作権者側からしますと、例えば利用希望者から利用したいという連絡に返事をしていない場合には、いきなり公告と同時に暫定的な利用が始まってしまうということになりますので、その意味では、意思表示がない場合について少し著作権者側にとっては不満が出るような場面も出てくるかもしれないという印象を持ちました。

もちろん、公告後暫定利用開始までの期間がどのぐらいの長さが適切なのかはよく分からないのですが、例えば、公告の1週間後から暫定的な利用を認めるというような方策も、方策としてはあるのかもしれないと思った次第です。

制度設計の細かな点で申し訳ありませんが、私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございます。

ちょっと細かい御質問で恐縮ですけれども、この資料の5ページ目の下から2つ目の丸の著作権者等が現れない場合が想定されるため、窓口組織が収受した利用料の一定期間後の取扱いについては、データベースの改良等で活用することを可能としてはどうかというのは、これはこれで賛成ですけれども、そうしますと、一定期間が経過した場合には、その後に著作権者が万一現れても、その人は使用料相当額の利用料はもらえない。そういう理解でよろしいのかどうか。

事前に委員に配られた諸外国の一般ECLとか個別ECLの場合は大体、一定期間が過ぎると、もうそれでもらえなくなってというような形になって、それに似ているのかなと思ったのですけれども、そこについて1点。

もう一点御質問がございまして、6ページ目の暫定利用から本利用に移行する。あまり暫定的なものというのはどうしてもビジネス上使いにくいので、この道は取っておくというのは非常に重要だと思うのですけれども、可能性というか、例として3つ挙げていらっしゃって、現行の裁定制度の場合ですと、そちらのほうに移行した場合に、意思表示をしないというものは対象にならない。結局、著作権者不明でなければ対象にならないのではないかと考えているのですが、暫定的な利用は意思表示をしない場合でも対象になるわけなので、そこのところを裁定制度にするときにどうするかというのは、今後検討するというようなお考えで書かれているのか、その2点についてお聞かせいただきたいと思います。

【茶園主査】事務局、お願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】早稲田委員、ありがとうございます。

2点質問をいただきましたうちの1点目でございます。こちらは権利者が相当期間現れなかった場合の扱いでございます。こちらは一般的な窓口組織に対する請求権の時効が切れたとして見るのか、あるいは、この制度上そこら辺を明確にして支払いを認めていくのかといったところ、今後検討をする必要があるかなと考えております。いずれにせよ、事後的に出てくるということもなくはありませんので、この辺り少し、例えば、現行の裁定制度の運用等々も含めて考えてみたいと思っております。

また、2点目の本利用への移行に際しての現行裁定制度を使った場合についての御質問です。こちらについては、先生御理解のとおり、現行の裁定制度そのままを切替えとする場合は、意思表示がない場合といったところは当然対象外になるので、そこの本利用が認められないこととなります。

ただ、前回の議論でもございましたが、今回の制度設計をどのようにしていくか。その上で、現行の裁定制度で措置すべき部分、あるいは裁定制度自体の存続と、ここもセットで検討することになりますので、現行の裁定制度が残るといった立てつけになった場合には、この現行裁定制度にそういった意思表示のないといったところを入れる余地があるのかどうか、少しここはまた新しい論点になるかと思いますが、検討していくことになるのかなと考えております。以上です。

【早稲田委員】ありがとうございます。

【茶園主査】島並委員、お願いいたします。

【島並委員】島並でございます。

この制度は、実際の要件のつくり込み次第によっては、著作権制度のデフォルトに変更を来すようなかなり大きな話につながり得るものだと思います。実務に影響は少なくありませんし、また、一研究者としましては、理論的にも様々な論議を含むように思いますので、大変興味深いものだと個人的には思っております。

その上で、特にそのつくり込みの中で重要なのは、「意思表示」という言葉が何を指すのかという点かと思います。お配りいただきました今日の資料のページ数ですと4ページ、全体ですとPDFの13ページによりますと、著作物の利用可否のみならず連絡先や権利の所在が示されている場合は意思表示ありだという御整理をされております。この点は、特に遡及効があるということを考えますと、あり得るべき着地点かなというふうに思いますので、基本的には賛成を致したいです。利用の可否についてこれまで細かく表示してきたということはないでしょうから、せめて連絡先の表示があれば、無断では使っては駄目だという意思がそこには表示されているのだという理解は、穏当な結論であるように感じます。

ただ、意思表示の内容を先ほどのように理解しますと、結局は話の出発点であった著作権者不明・所在不明ということに議論が回収されていくのか、あるいは、そこには回収されない別の意思表示の問題というのを観念できるのかという点がやや気になりました。

今後の議論あるいは制度のつくり込みというところで、十分な検討が必要だというふうに個人的には考えております。

以上です。

【茶園主査】池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。

私も今島並委員がおっしゃった意思表示の点は非常に難しい論点だと思っていまして、お書きいただいた整理を踏まえると、例えば、インターネット上にある画像に©表示で著作権者名が書いてあるとか、あるいは、その画像を投稿した方のアカウント名なんかが書いてあれば、意思表示ありということになるのかなというふうに思いましたけれども、第三者がその画像を©表示だとかアカウント名なんかを消して別の場でアップしたようなケースにおいて、第三者がアップしたほうの画像を見てこの画像を利用したいと思った人がいた場合は、この意思表示なしということになってしまうのか、それとも、もともとの画像には権利者情報が書かれているので意思表示ありということになってしまうのか。

ちょっと思いつきで発言していますけれども、似たような問題というのが、いろいろ難しい問題というのがあるような予感がしました。

以上です。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】ありがとうございます。

今、池村先生からも御指摘のあった意思表示のところは、さまざまなケースが想定されるので難しいところがあるなと考えています。書籍でしたら一般に奥付に無断転載とかというのが書かれていたりするので、それをもって意思表示がないということになるのかもしれませんし、著作権法に違反しない範囲での利用は認めるが、それを超える利用は認めないと記載されているときに、今回の制度が導入されたらどうなるのかなど、具体的なケースに即して、これは意思表示があると見るべきかどうかというのはやや難しいところがあるのかなとは思ってはおります。今、池村先生からあったような例なども含めて、もう少し具体的な形でケーススタディーみたいなものもこれからやっていったほうがいいのではないかと思ったところです。

以上です。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。今村委員、お願いします。

【今村主査代理】繰り返しの点になりますけれども、私も意思表示の部分について、議論をさらにしていく必要があるなというふうに思っております。

今までですと、著作物、あるいは、それに付随するものに著作権者に係る情報を書くということは、これは許諾権だから返答がなかったら使えませんと、そういう意思が推定されるような状況である者が多かったかもしれません。けれども、今回、返答がない場合には、著作物に著作権者に係る情報を書いていたとしても、返答がなければこの手続に乗っていくという可能性が出てくるという意味では、先ほど島並委員がおっしゃったように、かなり大きな考え方の転換になるような気はするわけです。

今回想定している制度は、現行の権利者不明著作物の裁定制度と同じように、特に著作物の種類とか、どういうふうに最初に公表されたのかとか、商業的に出版されたのかということを特に区別しないで制度設計をするのかもしれませんけれども、著作物の種類によっては、公表はして著作者の名前とかも書いたけれども、これは情報の非競合性があるから誰でも使えるという意思で別に出したわけじゃなくて、非常に個人的に発表したにすぎないというものもあるかもしれませんし、あるいは、これは作品として世の中の人にどんどん使ってもらいたいという当初の意図があって、でも、連絡を取るのがおっくうになってしまったという場合もあるかもしれません。つまり、権利者のもともとの作品を発表したときの意思というのは、作品がどのような形態で当初公表されたのかによって随分違う場面もあるような気します。

なので、そこを区別していくのはなかなか難しいのかもしれませんし、運用面でどういう作品なのかを見ながら判断していくということにならざるを得ないのかもしれませんけれども、やっぱりこの意思表示をどう見るかという点は、さらに議論を深めていく必要があるのかなというふうに私も思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。村井委員、お願いいたします。

【村井委員】ありがとうございます。

5ページ目の下から2つ目の丸についての部分なのですが、著作権者等が現れない場合が想定されるというお話で、現れない場合が結構多いような気がいたします。以前、そのような御提案があったように思うのですが、裁定制度の実績などを踏まえて、どの程度現れない可能性があるのかというようなことを考慮して、全体でならして利用料を集めるという方法が考えられると思います。すなわち、個別の利用と利用料を一対一で対応させず、最初から権利者が現れない場合を見込んで、それでも権利者には十分な配分ができるような金額を集めてプールしておき、そこから権利者が現れた場合に配分するというイメージです。そのようにしますと、例えば、利用料が高くなってしまうので利用自体を控えるというようなことにならずに、コストを低額に抑えて、しかし権利者には十分な利用料を支払うという制度設計が可能なように思います。

どう理論づけるかというのが難しいように思うのですが、今日の最後のところで御説明いただいたように、著作権法は文化的所産の公正な利用を目的としておりますので、低コストで著作物を利用できて権利者にも利用料を配分できるということであれば、著作権法の最終的な目的にかなうといえると思います。そのような制度設計が可能であれば、御検討いただけるとよいように思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。

窓口組織の点について、今回イメージされている新しい制度がどの程度インパクトがあるものなのか、要は、どの程度たくさん利用され得るものなのかというところの規模感がまだ個人的に具体的にイメージできてないところはあるのですけれども、せっかく制度化する以上、それなりに広く利用されるものにするんだということだとすると、この窓口組織というのはそれ相応の規模のちゃんとした組織でないと、パンクしてしまって立ち行かなくなってしまうように思います。

ですので、せっかく法改正したはいいけれども、施行できる環境が整わないといったことにはならないように、あらかじめ窓口組織についてもしっかり具体的に当たりをつけた上で議論をしていく必要があるのではないかなというふうに思います。

以上です。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】すみません、度々。

意思表示のところをどう見るかが非常に難しいというのは本当にそのとおりだと思っておりまして、現在では、意思表示をしなければ、すなわち、連絡先があって、そこに連絡しても意思表示が何ら返ってこなかったら使えないというのは今までのデフォルトですが、それを変えるというところで、やはり本日の資料にも書かれているように、権利者探索を含めた権利処理に多大なコストが必要となって民間取引が阻害されているというようなところをもう少し深掘りして、その根拠になるのかどうか。

それから、この場合、暫定的な利用というところで、裁定と違って権利者が出てくると、少なくとも一定期間が過ぎればそれをやめなければいけないというところで担保されるというように考えられるかどうかという点も今後議論を深めていって、意思表示というのをどういう形で認めるかということを検討する必要があると思いました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

活発な御議論、どうもありがとうございました。

では、続いて、議事(5)その他に移りたいと思います。次回の法制度小委員会では関係団体へのヒアリングを予定しております。ただいまいただきました御意見を踏まえまして、本日の資料をベースに、関係団体に送付するヒアリング用の資料というものを作成してまいりたいと考えております。この資料につきましては、私に御一任いただくという形でお願いしたいと思っているですけれども、それでよろしいでしょうか。

どうもありがとうございます。それでは、そのように取り扱わせていただきまして、関係団体へ送付させていただきたいと考えております。どうもありがとうございます。

では、その他、全体を通じて何かございませんでしょうか。

【小林国際著作権室長】事務局でございます。私のほうから1点御報告をさせていただきたいと存じます。

【茶園主査】お願いいたします。

【小林国際著作権室長】ありがとうございます。

参考資料2を画面共有しておりますので、そちらを御覧ください。

まず、資料の上半分のところでございます。本年3月の著作権分科会の中間まとめ「国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について」では、海賊版対策の取組を強化するため、相談窓口を新設することを提言いただいています。これを踏まえて、文化庁では本年6月に、インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイトを公開しております。

このポータルサイトでは、権利者の方々に向けて、著作権の基本ですとか削除要請を行う際の手続、海賊版対策のためのハンドブックなどを掲載して情報を発信してきたところでございます。

資料の下半分でございますが、ちょうど本日になりますが、このポータルサイトに新たに相談窓口を開設しまして、権利者の方々から主にインターネット上の海賊版による著作権侵害に関する御相談の受付けを開始いたしました。

相談の対象者は、権利者御自身や代理人という以上に制限は設けておりませんが、特に個人クリエーターや中小企業の方々からの相談がメインになることを想定しております。

相談の仕組みについては、図に示しております。権利者からポータルサイト内の相談受付フォームから相談事項を受け付けます。回答は基本メールで行いますが、案件によっては、オンラインや電話により弁護士との無料個別相談を行うことも想定しております。

実施体制としては、文化庁から弁護士知財ネットが事業を受託しておりまして、本事業のための事務局を特別に構成して実施をいただく予定です。今後、国際小委員会を中心に本窓口の運用状況について御報告して、御助言や御提言をいただきながら取組をさらに充実していきたいと考えておるところでございます。

御報告は以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

その他、全体を通じて何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、他に特段ございませんでしたら、本日はここまでとしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。

次回以降の法制度小委員会の日程でございますが、9月20日の火曜日、9月26日の月曜日、9月30日の金曜日を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

【茶園主査】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第2回)を終了させていただきます。

本日は活発な御議論どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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