文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第7回)

日時:令和4年12月5日(月)

14:00~16:00

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  • (1)文化審議会著作権分科会法制度小委員会報告書(素案)について
  • (2)その他

3閉会

配布資料

資料1
文化審議会著作権分科会法制度小委員会報告書(素案)【概要】(1MB)
資料2
文化審議会著作権分科会法制度小委員会報告書(素案)(1MB)
参考資料1
第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(109KB)

議事内容

【茶園主査】それでは、ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第7回)を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと思いますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですけれども、この点、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。配付資料につきましては、議事次第の配付資料一覧にあるとおりでございます。

なお、本日は、資料1の素案、概要のほうを中心に使いまして、資料2の素案につきましては、概要に書かれております内容に加えまして、これまでの経緯であるとか、前回審議会までの論点をまとめたものとなっております。

配付資料の確認の説明は以上になります。

【茶園主査】それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)、(2)の2点となります。

早速、議事(1)の「文化審議会著作権分科会法制度小委員会 報告書(素案)について」に入りたいと思います。

資料1につきまして、事務局より御説明いただいた後に意見交換を行います。それでは、事務局より御説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。資料1、報告書(素案)【概要】を御覧ください。資料の右下にスライドページを振っております。

資料の2ページ目を御覧ください。こちらは検討経緯・検討事項でございます。「はじめに」とありますが、令和3年7月、文部科学大臣より諮問を受けまして、昨年、令和3年12月に著作権分科会として一定の方向性を取りまとめました。今期、ヒアリング等も含めまして、法制度小委員会において検討を行ってきたといったところを記しております。

検討事項は、スライド2ページ下半分にあるところですが、本日、この概要資料では、検討事項4点のうち、上記3点につきまして御説明させていただきたいと思います。

それでは、スライドの3ページ以降の「簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化」につきまして、説明いたします。

スライドの4ページ目を御覧ください。こちらは、分野を横断する一元的な窓口組織を活用した新しい権利処理の仕組みというところでして、昨年12月の著作権分科会中間取りまとめにおいて示された方向性を抜粋しております。また、その下側には※のところで、昨年度の審議会から気をつけて議論を行っているところであります「クリエイターの意思(許諾権等)の尊重や二次創作に係る柔軟な運用を阻害しないこと、既存のライセンスビジネスや商慣行に悪影響を与えないようにすること、安心して著作物等を利用できること」、このような留意点が示されておりました。今年度、こちらにつきましても気をつけて議論を行ってきたというところを示しております。

スライドの5ページ目を御覧ください。こちらは制度のイメージ図になります。法制度小委員会の第1回のときにお配りした資料となっております。こちらの説明は割愛いたします。

スライドの6ページ目を御覧ください。制度化イメージの絵になります。先ほどのイメージ図にありました右上のところの新しい権利処理方策、こちらについての具体化のところでございます。制度化の骨子のところですが、著作物の利用の可否や条件に関する著作権者等の「意思」が確認できない(「意思の表示」がされていない)著作物等について、一定の手続を経て、使用料相当額の利用料を支払うことにより、著作権者等からの申出があるまでの間の当該著作物の時限的な利用を認める新しい制度を創設するというものです。

こちら、「時限的な利用」という表現にしておりますが、前回まで、「暫定的な利用」、「暫定利用」と使っていたものです。言葉の趣旨を分かりやすくするために、「時限的な利用」という言葉にさせていただいております。

こちらの※のところでございますが、前回の議論までですと、法的安定性の確保や著作権者等との協議を通じた円滑な利用を促す観点からは、著作権者等からの申出後、直ちに利用を停止するのではなく、一定期間の利用を可能とすると、このような議論をしておりましたが、各関係者からのヒアリングも踏まえまして、権利者の利益を不当に害することとなる場合等については、速やかな利用停止を求めることができるようにしてはどうかといった記載案を示させていただいております。

また、2つ目の白丸を御覧ください。新制度の手続については、利用者にとっての窓口の一元化及び手続の迅速化・簡素化及び適正な手続を実現するため、文化庁長官による指定等の関与を受けた窓口組織が担うこととし、「併せて」のところでございます。こちらも今回の資料で新たに追記した点でございますが、各関係者ヒアリングで示されました御懸念等を踏まえまして、併せて、違法利用や濫用的な利用等の抑止の観点から、文化庁長官の一定の関与を設けることとするといった案としております。

また、3つ目の白丸です。新制度による利用については、公告を行い、著作権者等による申出の機会を確保するとともに、著作権者等の申出に基づき、使用料相当額の利用料が支払われる仕組みとする。

4点目、時限的でない利用を可能とする仕組みについては、前回までは「本利用」といった表現を用いておりました。本利用につきましては、裁定制度の活用を検討する。併せて裁定制度については窓口組織を活用した手続の迅速化・簡素化を図るとしております。

続きまして、スライドの7ページ目を御覧ください。新制度の主な意義になります。1つ目の丸につきましては、著作物等の利用の可否や条件に関する著作権者等の「意思」が確認できない著作物等を対象とすること。2つ目の丸、著作権者等が申出を行えば利用を終了させることができる時限的な利用とすることで、著作権者等の権利を直ちに失わせることのない、柔軟なスキームとすること。3点目、窓口組織において手続を一元化し、著作権者等の探索や使用料算定手続を合理化することにより、利用者や関係団体の負担を軽減すること。4点目、裁定制度においては、申請中利用まで1~2か月程度要していたケースがあるところ、この新しい新制度では相当程度時間の短縮を図ること。

5点目、新制度に係る手続を窓口組織が担うことにより、利用者のみの判断によらず手続の適正化を図ることができること。

以上でございます。

スライドの8ページ目を御覧ください。これまで説明しました制度化の骨子をさらに具体的な制度の要件という形でお示ししております。要件の(1)です。

以下に掲げる要件を全て満たすこととしております。

1つ目の丸、公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物であることです。※にありますように、「新制度の創設前に創作され、公表された著作物についても対象とする」としております。

2つ目の白丸を御覧ください。前回までも、この意思の表示、意思の有無、こういったところの確認をどのように行っていくかといったところが議題に上がっておりました。今回は、以下の判断プロセスによって、著作権者等の利用に係る意思が確認できないことを要件としております。プロセスは、今から御説明する1から4です。

まず①、集中管理されている著作物、こちらは対象外となります。②、集中管理されていないものの著作物で、利用の可否や条件等が明示されている著作物。オプトアウトが示されている著作物も含みます。こういったものは対象外となります。この利用の可否や条件、オプトアウト、こちらにつきましては、※にありますように、著作権者単位、著作物単位、双方で可能とすると示しております。

この①の集中管理もされておらず、②の利用の可否や条件等が明示されていない著作物につきましては、③のほうにプロセスとして進めます。③-1は、著作権者等に係る情報がない・連絡不能。このような場合は、これ以上、著作物の利用に係る意思を確認する手はずがないことから、今回の制度の対象とする。

③-2です。著作権者等に係る情報がある場合は連絡を試みまして、利用の可否や条件等を確認しに行こうというものです。この※の「②の段階で」というところでございますが、各団体ヒアリングにおいても、いかなる場合にも連絡が来て、それに対して応答していくといったことは一定の負担があるのではないかといった御意見もありました。このため、※で示しておりますように、「②の段階で利用の可否等の明示がある場合は個別の連絡をするまでもなく対象外」とするという仕組みとしております。さらに、この③-2の確認をした後に、④に行きます。その確認をした後に、返答がある。(交渉の意向等を含む)としておりますが、何かしらの返答があれば対象外、④-2、一定期間返答がないといったものは対象というところにしております。

このコメ印の「①~④について、効果が時限的であり申出により利用を止められることを踏まえ、著作物等、公式ウェブサイト、データベース、検索エンジン等を活用したより短期間となる手続としてはどうか」としております。

また、※の2つ目です。「②について、著作物自体に利用の可否等が明示されているものの、現在市場に流通していないなどにより現在の意思が確認できない場合の扱いについては、引き続き要検討」としております。こうした場合は、著作権者等不明の場合の裁定制度が活用できることも踏まえ、その手続を迅速化・簡素化することによる利用円滑化を併せて図ってはどうかというところを記載しております。

要件の(1)の白丸の3つ目です。著作権者等の利益を不当に害すると認められるときに該当しないこととしております。こちらは主に各関係者からのヒアリングにおきましては、著作権者あるいは著作者の意に反するような翻案利用、こういったことの懸念があったことから、このような要件を加えております。

また、要件の(2)です。使用料相当額に当たる利用料を支払うこととしております。この要件の(1)、(2)の手続は、窓口組織による監査の手続が想定されます。

続きまして、スライドの9ページ目を御覧ください。新制度の具体的な設計の②のスライドです。まず効果でございますが、先ほど申し上げましたとおり、著作権者等からの申出があるまでの間の時限的な利用を可能とするといったものです。また、新制度の具体的なイメージを記しております。左から右に進むようなフローチャートとしておりますが、まず利用の可否等の表示、意思表示がされているか、されていないかを確認、探索します。これは利用者が行ったり、窓口組織に相談することで、窓口組織も行うといったことを想定しています。探す場所は先ほどの資料のとおり、著作物そのもの、あるいは著作物の周辺情報、また、データベースや検索エンジンによる検索、このようなことで、確認、探索していく。この上で、利用者が申請書を作成しまして、申請する。申請書といっても、基本的にはオンラインであるとかデジタルの活用が想定されます。

その後、先ほど御説明した要件に合致しているかどうかを窓口組織において確認いたします。そして、利用料を決定する。その結果、利用者が利用料を支払うことで、その右側にありますように、時限的な利用、権利者等からの申出があるまでの間の利用ができるといったものとなります。この時限的な利用に合わせて、窓口組織は公告を行うという仕組みとしております。

また、前回まで本利用と申しておりました、時限的ではない利用、権利者等から申出があったとしても、引き続き、申請を行ったとおりの利用を希望する場合につきましては、この右下にありますように、裁定の要件を満たす場合であれば、その裁定申請の手続に入っていただきまして、裁定制度による利用をしていただく。こちらの手続の迅速化、簡素化も併せて検討するとしております。

また、このスライド中、ちょうど真ん中のところですが、確認・決定(窓口組織)とあるところですが、先ほどの資料のとおり、緑枠で吹き出しをつけておりますが、「文化庁長官の一定の関与について検討」、このようなところを記させていただいております。

10ページ目を御覧ください。窓口組織による新制度の事務の実施というスライドになります。手続の迅速化・簡素化を図るため、文化庁長官による指定等の一定の関与を受けた窓口組織が、新制度の事務を担うとしております。また、裁定制度に係る手続についても、利用者・権利者双方の負担軽減の観点から窓口組織の活用を図るとしております。

窓口組織の担う事務のイメージになります。1つ目の丸ですが、利用者からの申請に係る相談、申請の受付、申請要件の確認。コメ印にありますが、相談や申請の受付はデジタル・オンライン活用を想定しております。また、2つ目の白丸です。申請に係る利用料について算定します。この算定ですが、括弧書きにありますように、文化庁長官による一定の関与を設けた算定基準等により算定することとしてはどうかと考えております。

また、定型的な利用につきましては、文化庁の裁定補償金額シミュレーションシステムの活用等も想定されるところです。※にありますように、個々の利用申請ごとの利用料決定に係る文化審議会の諮問、こういったものを不要としてはどうかとしております。

また、3つ目の白丸、利用に係る公告、窓口組織が担う事務になります。※にありますが、公告に必要となる限度での著作物の公衆送信を可能とするとしております。具体的には、どういった著作物が使われているのか、権利者にしっかりその情報を届けることが重要という観点から、こちらは入れておりますが、例えば写真を撮るなどして、そちらをアップするとか、使いたい著作物の解像度を下げるとか、ピクセルとか非常に少ない、小さいサイズにしてホームページに載せる。このような形で、どの著作物が使われているのかといったところをより明らかにするような方策を検討してはどうかというところです。

4つ目、利用料の収受・管理も行います。

5つ目、著作権者等からの申出の受付、本人確認、申出に基づく利用料の支払いとあります。括弧書きにありますように、(分配のための著作権者等の特定・探索等の業務は行わない)ということで、こちらは前回会議におきましても、現行法にあります、事業目的、公衆送信補償金制度の仕組みとは少し異なるといったところを示しております。

最後の白丸でございますが、権利者等が現れずに支払うことができない利用料につきましては、権利者・利用者のための活用ということで、括弧書きに示しておりますように、分野横断権利情報データベースの改良・拡充等に活用することも考えられるのではないかとしております。

また、窓口組織の運営・必要な体制整備等についてですが、手数料収入のほか、これまでの審議会の御議論では、公的な支援、共通目的事業等の活用を検討するとされておりますので、その旨、記しております。

以上が、簡素で一元的な権利処理方策の説明となります。

次が、11ページ目を御覧ください。立法・行政・司法のデジタル化に対応した著作物の公衆送信等になります。

スライドの12ページ目を御覧ください。1つ目の白丸にありますように、立法・行政のデジタル化への対応を著作権法の観点からも支えていくために、内部資料として必要となる著作物の公衆送信や、公の伝達を可能とする所要の制度改正が必要としております。前回までの議論のとおり、その下に、その際、現行法下での複製行為において許容される範囲と同一の範囲での公衆送信に限定することや、ライセンス市場等の既存ビジネスを阻害しないように留意するとともに、内部資料について、その解釈を含め周知を徹底することが必要とまとめております。

また、次のパラグラフです。また、行政手続及び裁判手続のデジタル化に対応するため、以下の所要の制度改正が必要としております。

1点目は、特許審査等の行政手続、行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続に必要となる著作物の公衆送信や公の伝達を可能とすること。

2点目は、令和4年の民事訴訟法改正に伴う民事訴訟手続のIT化に続きまして、民事訴訟以外の民事・家事事件手続が原則として電子化・オンライン化されることに伴い、適正な裁判の実施、裁判を受ける権利の保障の観点から、当該民事・家事事件手続等に必要となる著作物の公衆送信や公の伝達を可能とすることとしております。

その際、これらの手続は、法令上規定された方法で行う公衆送信等のみを対象とするとしております。

続きまして、資料の13ページ目以降を御覧ください。海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直しについてです。

スライドの14ページ目となります。こちらは現行規定でございますが、著作権侵害に対する損害賠償請求については、著作権法第114条において、以下のとおり、著作権者の損害の立証負担を軽減する規定を置いております。侵害品の譲渡等数量に基づき損害額を算定する。侵害者の得た利益を損害額と推定すること。ライセンス料相当額を損害額として請求可としていること。

こちらにつきまして、課題とありますが、114条1項の侵害者の譲渡等数量のうち、著作権者等の販売等の能力を超える数量について、ライセンス料相当額が認められるか、条文上明らかではなく、裁判実務上も判然としないところ、権利者への十分な賠償、侵害の抑止、訴訟当事者の予見可能性等の観点から立法的解決が必要。

課題の2つ目、ライセンス料相当額の認定に当たって、ライセンス機会を喪失させた等の訴訟当事者間の具体的な事情が十分に斟酌されているか、裁判実務上判然としないといったもの。

対応案につきましては、前回までの御議論も踏まえまして、令和元年の特許法改正等を踏まえ、現行規定とその他の知的財産法体系との整合性を取る観点や、著作権者等の被害回復に実効的な対応策を取れるようにするニーズに対応する観点から、著作権法についても、以下のとおり、損害の算定方法を見直すとしております。

1点目が著作権者等の販売等の能力を超える部分の損害をライセンス料相当額として損害額に加えることができるというもの。2点目が、著作権侵害を前提とした交渉額を考慮できる旨、明記し、ライセンス料相当額の増額を図るといったものです。

その下、その他の検討課題としております。各関係者からのヒアリングで御意見をいただきました、損害賠償額に「懲罰的な効果」といったものを期待することについては、実損の補填を原則とする民法等の関係を踏まえる必要があることから、引き続き、裁判実務の動向も注視しつつ、その具体的な必要性や状況等に応じて検討課題として扱う。ストリーミング型サイトの著作権侵害への対応その他のさらなる立証負担の軽減策については、損害額の立証に資する技術の進展や、裁判実務の動向を踏まえつつ、今後の検討課題として取り扱う。3つ目ですが、損害賠償制度の見直しに当たっては、権利者の実効的救済を追求する中で創作活動が萎縮しないよう留意して検討するとまとめております。

事務局からの説明は以上になります。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただいまの御説明を踏まえまして、項目ごとに意見交換を行いたいと思います。

まず2ページの検討経緯・検討事項及び簡素で一元的な権利処理と対価還元の制度化につきまして、御意見等がございましたらお願いいたします。

池村委員、お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。これはあれですか。報告書本体に書いてある内容でもいいのでしょうか。

【茶園主査】構です。お願いいたします。

【池村委員】ありがとうございます。いわゆる意思表示の部分が重要で難しいなと再認識しておりまして、意思表示があるのに、利用者も窓口組織もないと勘違いして利用されてしまうといったことですとか、あるいは、意思表示がないのに、あると勘違いして、利用が萎縮してしまうといったようなことが極力起きないように、ガイドラインなど法律の条文以外のツールも十分充実させる必要があるのではないかなと思います。

それで、素案本体の10ページの真ん中辺りに、「二次利用されている場合や二次的著作物である場合は、原典や原著作物を可能な限り確認」という表現があるんですけれども、こことの関係で2点ほど事務局にお尋ねしたい点がございます。まず、可能な限り確認したものの、原典等が発見できず、意思表示を確認できなかったので、新制度の下で利用したものの、実際は、原典なり原著作物なりには意思表示的なものが存在したという場合は、利用自体が違法ということになるのか、それとも、そこまではならないのか、どちらなのかという点が一つ。

もう1点としては、例えば、既に世に出てしまっている原典なり原著作物には意思が表示されていないものの、その後、著作権者が別の手段や方法で利用の可否や条件などを表示したという場合は、それは意思の確認ができるということで、新制度の対象外になるという理解でよろしいのかということです。

2点目に関しては、仮に遡及効を認めるということになると、公表時に特に意思を表示しなかった権利者、著作権者としては、事後的に利用の可否等を表示するという形で、自衛を迫られるということになろうかと思いますので、確認させていただく次第です。

以上です。

【茶園主査】事務局、よろしいでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。今、池村委員から2点御質問がありました。1点目につきましては、こちらは基本的にケース・バイ・ケースになるかと思いますが、しっかりと要件の確認であるとか、探索、そういったところが適正に行われていれば、基本的には適法な利用になると。その上で、仮に著作権者等が見つかって判明した場合、申出があれば、すぐさま利用の停止が止められるということで、基本的にはこの制度が想定しているような仕組みに乗るのかと思います。

ただ、ケース・バイ・ケースと申し上げましたのが、例えば利用者からの申請であるとか、その確認に非常に不十分なところが取られていたとか、重大な過失があるといったところで、その点すらもこの制度の要件に合致していないではないかといったような訴えが起こされるといったことも想定がされますので、事案に応じてといった説明をさせていただきました。

すみません。2点目の質問、手短にもう一度、どういった御趣旨か、すみません。確認させてください。

【池村委員】著作権者として、原典とかには意思表示的なものを公表時に記載せずに、それはもう世の中には出てしまっている。ただ、事後的に別の方法で利用の条件などを表示しましたという場合は、それは意思表示、意思の確認ができるということで、この新制度の対象外になるという理解でよいのかどうなのかという趣旨でした。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。ありがとうございます。当初は載っていなかったのだが、事後的に載った場合ということですね。それは制度の対象外になりますし、当初載っていなくて、この制度によって、時限的な利用が行われている間に、改めて意思の表示がなされたといった場合には、この制度にありますように、申出をいただいて、利用を停止する。その後は、この制度によらず、通常のライセンス交渉による利用に移行する。このような流れになるかと考えております。

【池村委員】ありがとうございました。

【茶園主査】ほかにございますでしょうか。

早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】6ページ目の、この制度を使って利用していたけれども、権利者が出てきたと。こういう場合に、一定期間、法的安定性の確保や著作権者等との協議を通じた円滑な利用を促す観点からは、直ちに停止させるのではなく、一定期間の利用を可能としつつというのが前段にございまして、この「一定期間の利用」というのが、人によってかなり期間のレベル感が違うのではないかなと思っておりまして、これについては、文化庁さんのほうで今お考えになっている期間をお聞かせ願いたいというのが1点。

2点目がすぐ下のところの権利者の利益を不当に害することとなる場合等については、速やかな利用停止を求めることができるようにしてはどうかということですが、この利用停止を求めるというのは、そのすぐ下の②に記載がありますように、「文化庁長官の一定の関与を設ける」というようなことになるので、文化庁長官の処分等の、そういうもので利用停止を文化庁長官が求めるのかどうかという、その制度の方法について教えていただきたいと思います。

【茶園主査】事務局、よろしいでしょうか。

【早稲田委員】事務局です。まず今の早稲田委員からの1点目の質問の一定期間でございますが、基本的には、こちら、この後、皆様方にぜひ御議論いただきたいところではありますが、例えば3か月程度、そういったところも一つの目安になるのかなと思っております。一般的な催告であるとか、契約の解除を行う際とか、こういった実務等も踏まえて、決めていくことがいいのかなと考えております。

また、御質問の2点目の停止方法でございます。こちらは、この窓口組織による決定であるとか、文化庁長官の関与をどのように設計していくかといったところにも大きく関わってくるかなと思います。基本的には、窓口組織が利用者と相対するわけでして、権利者から窓口組織に何かしらの申出が出て、窓口組織から利用者に対してその旨をお伝えする。そして、利用を停止いただく。こういったことも考えられますし、今、委員がおっしゃられたような文化庁長官の関与のところに、長官がそういったものを受け止めて、停止させる。このような構成もあり得るかと思っております。

文化庁長官の関与につきましては、また、こういった御議論も踏まえまして、引き続き、検討、御議論いただければと思っております。

【早稲田委員】ありがとうございました。私も利用停止について文化庁長官等の関与がないのであれば、窓口組織と申請者の契約みたいな感じで、何かあったら、速やかな利用停止を約束するみたいなことなのかなと思っていたんですが、ただ、やはりここで権利者の利益を不当に害するという判断が一つ入ってきてしまいますので、なかなか窓口組織と申請者だけの間で決めるのはちょっと難しいのかなという感想を持ちました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。池村委員、お願いします。

【池村委員】何度もすみません。今の著作権者等の利益を不当に害するという部分に関連しての質問です。先ほど、意に反する翻案利用といった御説明があったかと思うんですけども、ここで言う著作権者等の利益を不当に害するというのは、経済的な不利益だけではなくて、人格的な不利益も考慮する条文にするという趣旨と理解してよろしいのでしょうか。既存の権利制限規定のただし書で、人格権的な利益も考慮する条文はないかと思いましたので、確認させていただく次第です。

【茶園主査】事務局、よろしいでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】今、池村委員の御指摘の点、まさに池村先生のおっしゃるとおり、現行の著作権法の権利制限規定でよくある著作権者等の利益を不当に害すると認められるときにといったものは、基本的には財産的利益であるとか市場の流通、こういったものを想定しております。今回の仕組みは、権利制限規定の議論ではございませんので、ここの報告書のこの言葉がそのままといったところではありませんが、これまでの各関係者のヒアリングの御意見の中では、その作品の価値自体がおとしめられるような利用であるとか、そういったことにも懸念がありましたので、一部そういった経済的利益もあろうかと思います。

一方で、この仕組みにつきましては、著作者人格権については何ら影響を与えるものでありませんので、人格権的な侵害があれば、それは著作者人格権を盾に主張されるといったことになろうかと思いますが、各関係者のヒアリングの中では、そのような、それに近い侵害が行われたときに何とか止めてほしいというような御意見もありましたので、そういった趣旨から言うと、今、池村委員が御理解されているような御発言があった点についても、ここで止められるようにするというところも一つ重要なのかなと思っております。

【池村委員】ありがとうございました。

【茶園主査】上野委員、お願いいたします。

【上野委員】2点、コメントさせていただきます。

1つ目は、「時限的な利用」ということについてでありますが、先ほども少し御説明がございましたように、一定期間だけでいいのかという御意見もあろうかと思います。ただ、この新しい制度は、全ての著作物カテゴリー、そして、全ての利用行為が対象となり得るものでありますので、ケース・バイ・ケースで実に様々な状況があろうかと思います。したがいまして、今回御提案のように、権利者の利益を不当に害することとなる場合があるようであれば、その場合には速やかな利用停止を求めることができるようにするというのもやむを得ないところなのかなと思います。ただ、一定期間の利用というのが本当に「一定期間」のみで終わってしまうということになりますと、あとはもう現行の裁定制度に頼るしかなくなってしまうかもしれませんので、例えば一定期間が経過しても、改めて更新、ないしは、もう一度この制度を利用することが可能であるようにすべきではないかと思います。そうであれば大きな問題はないのかなと考えております。

以上が1点目です。

もう一つは、窓口組織に対する文化庁の関与でありますけれども、これは非常に重要な点と思っております。もちろん、そもそも窓口組織というのはどこが担当するのかということが問題となるところでありまして、これを国がやるとほとんど裁定制度と同じになるかと思いますし、もし権利管理団体がやると、事実上、ECLすなわち拡大集中許諾と同じになるかと思います。

私は、以前から、このような窓口組織は、権利管理団体でもなく、国でもない、どこか公益的な団体が担当するのが妥当ではないかということを申し上げてきた次第であります。韓国には著作権委員会という第三者委員会がありまして大きな役割を果たしておりますので、日本でもそういう委員会を設けるのが理想かと思いますけれども、そうでない場合は、何らかの公益的な団体などが窓口組織を担うのがよいのではないのかと思います。実はこれまでも私は勝手にCRICがやってくれたら一番いいのではないかということをいろいろなところで言っていまして、ひょっとしたら御迷惑をおかけしているかもしれないんですけれども、実際そのように思っております。

また、文化庁の関与としては、設立の際の関与に加えて、今日の資料の中においても、日常的な「確認・決定」のところで一定の文化庁長官が関与するということが想定されているかと思いますので、この点も重要と思います。つまり、実質的には窓口組織が行うのだとしても、それは文化庁の外部委託のような形であって、形式的には文化庁長官が行うようにすることが可能と思います。このように、今回の新しい権利処理の仕組みが私人の有する財産権の制約に当たるとしても、それを国がきちんと関与して行うということによって、制度の法的な正当化もしやすくなるのではないのかと思います。つまり、文化庁の関与について工夫することによって、この制度の正当性は高まり、十分な正当性が得られるのではないかと思っておりますので、引き続き、この点について御検討いただければよいのではないかと考えております。

以上でございます。

【茶園主査】澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】ありがとうございます。6ページの※のところに関して、一定期間をどれぐらいにするのかというお話が先ほどありました。例として3か月程度が挙げられ、もちろん決まった期間を定めることができればそれでよいとは思います。もっとも、先ほど上野委員からもありましたとおり、様々な利用が考えられるというところからしますと、ある程度柔軟性を持たせて、窓口組織の方で著作物の利用の態様なども踏まえて一定期間を設定するみたいな仕組みにしてもよいのではないかと考えます。また、標準期間を設定した上で、事情に応じて、それを伸ばすことができるなど柔軟性のある仕組みにするのが適当と考えます。

次に、権利者の利益を不当に害することとなる場合について、これに該当するかどうかの判断において都度文化庁長官が出てくるという話になると、プロセスとしてはかなり重たくなってくると思います。私としては、権利者や利用者の意見を聴取するプロセスを踏んだ上で、窓口組織に権利者の利益を不当に害することとなるかどうかというのを判断する裁量を与えて、その判断に従って利用を停止するという形の仕組みにするのが全体として望ましいのではないかと考えました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

では、島並委員、お願いいたします。

【島並委員】島並でございます。先ほどから何度も話題に出ておりますけれども、文化庁長官の関与について一言意見を述べさせていただきます。これは恐らく財産権について、国家的な関与がないにもかかわらず、民間団体等が権利者に成り代わって許諾を行うことについての抵抗感、あるいはその正当性の根拠を求める要請から、こうした行政の関与を構想されているのだろうと思います。

その限りでは理解ができるのですけれども、他方で、このような新制度をつくるそもそもの目的が、迅速、簡便な許諾制度の構築というところにあったということにぜひ御留意を頂きたいと存じます。

財産権と申しましても、著作権は有体物の所有権とは相当異なる、情報に関する財産権でございますので、常に利用者の利益との衡量の中で柔軟に制度が構築されるべきものであります。仮に行政の関与がなくても、著作物の濫用的な利用があった場合には事後的にそれを修正する手続が置かれていたり、あるいはそもそも窓口組織の設立について行政によるきちっとした審査がなされているということであれば、その行政のいわば傘の下で、公益的窓口組織のみが自律的に手続を遂行するという制度も決して背理ではないと考えております。したがいまして、仮に行政的な手続を入れるとしても、できるだけ軽い、形式的な関与にとどめていただくことが望ましいと考えております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

池村委員、お願いいたします。

【池村委員】細かい点で恐縮ですけれども、報告書本体の6ページとか12ページのほうに、新制度が利用できない、対象外としている記載があります、「著作物等の利用を廃絶しようとしていることが明らかなとき」という場合についての質問ですけれども、本体の12ページでも記載されているとおり、廃絶については、現行の70条に「著作者が」と書いてあって、条文上は、著作権が著作者から第三者に移転している場合であっても、著作者が廃絶の意思表示している場合は裁定してはいかんという解釈になるのかなと思います。

他方で、出版権に関する84条3項では、「複製権等保有者である著作者」は、利用の廃絶のために出版権の消滅請求ができるとあって、ここでは条文上、著作者イコール著作権者の場合のみ適用されるということになるのかなと思うわけです。なので、廃絶の意思表示の主体としては、著作者のみ、著作権者のみ、著作者兼著作権者のみ、著作者も著作権者もどっちもという4パターンぐらいあるのかなと思うのですけれども、この新制度においては、いずれを想定されているのでしょうか。

【茶園主査】事務局、よろしいでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】ありがとうございます。現行の裁定制度では、確かに著作者となっておりまして、今の出版の部分であるとか、まさに著作者が著作権者と一緒なのかどうなのか、そういったところがあるかと思います。今回、仮にこういった方針で、制度化を進めていくということであれば、そういった現行の規定のそれぞれの狙いとするところと違いを設けながら考えていくのかなと思っております。例えば著作権者が不明な場合の現行の裁定制度、著作権者が不明なので、そこには著作者としているといった制度設計時の趣旨もあるんだろうと思います。この辺り、確認の上、どのような要件といったものが望ましいのか。引き続き確認していきたいと思っております。御意見ありがとうございます。

【池村委員】ありがとうございました。

村井委員、お願いいたします。

【村井委員】ありがとうございます。資料をおまとめいただいてありがとうございました。8ページ目に書かれている②の点で、注に書かれている部分ですけれども、「著作物自体に利用の可否等が明示されているものの、現在市場に流通していないなどにより現在の意思が確認できない場合の扱いについては、引き続き要検討」と書かれていて、ただ、どちらかというと裁定制度の利用を指向されているような書き方になっているようにも思われました。

この点は前回、たしか福井先生が御指摘されていたところかと思うのですが、例えば書籍の奥付に書かれていたとしても、これを全て対象外としてしまわないほうがよいのではないかという御意見があったように思います。

やはりそのような定型的な決まり文句として書かれているようなものについては、著作権者の意思を本当に反映しているとは限らないにもかかわらず、出版物などで対象外となってしまうものが多く出てきてしまうように思います。

資料の中でも、新制度の対象として、アウト・オブ・コマースなども対象として想定しているということが書かれていますので、そのようなものを活用可能とするという観点から見ると、前回の福井先生の御意見に賛成で、一律に対象外としたり、全て裁定制度に委ねてしまうよりは、できれば、一定程度でも新制度で対応するという方向で検討していただけるとよいのではないかと思いました。

それから、よろしければ質問させていただきたいのですが、新制度のイメージとして、利用者をどの範囲で想定していらっしゃるのかという事務局のお考えをお伺いできればと思います。例えば企業とか組織のようなところを主に念頭に置いているのか、より広く個人の瑣末な利用なども、この制度の対象で拾っていくということを想定しているのかというのかということと、それと関連して、手数料の金額についてどの程度のものを想定していらっしゃるのかということです。例えば裁定制度と同じくらいですと、個人にとっては高い金額のように思うのですが、その辺りのイメージをお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】事務局、よろしいでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】ありがとうございます。今の村井委員の1点目のところでございますが、アウト・オブ・コマースにつきましても、この制度の対象となり得るというところは方針どおりの案となっておりますので、その点は、1点補足して説明させていただきます。

ただ、前回の福井先生の御発言につきまして、まさにこの意思表示がされているんだけど、アウト・オブ・コマース、この両方が重なる場合についてありますと、こういった場合はどうするかといった点でございます。この点は、もし村井委員のほうで情報があれば、また、この後、御教示いただければと思うんですが、どういう意味で、アウト・オブ・コマースというものを使っていらっしゃるのか。アウト・オブ・コマースで意思表示がないものは具体的にどういった著作物なのか。村井委員のほうで思われているところなども明らかにいただけると、少し議論が進むのかなと思っております。

関係者のヒアリングの中では、そういったところの定義もなかなか複数あるのではないかといった御意見もあったところなので、この辺り、慎重な検討が必要かと思っております。

また、2点目の新制度の利用主体ですが、こちらはそもそもの議論の発端がありましたように、今は企業だけではなく、個人についてもいろんな場面で著作物を創作して、それを発信できる。また、それを利用する方々も、いろいろな場面で手に入ったり、自ら作ったりして、著作物の利用をする。このようなところなので、今回の制度案も利用主体というものは、当然企業でもあれば、まさに図書館といった公共的な主体もありますし、逆に個人が使うといったことも想定されるのかなと思います。

3点目の手数料につきましては、窓口組織の運営に当たって、やはり必要となる原資となりますので、そういった点、窓口組織がどの程度、役割をどういった体制でしていくのかということも含めて、そこは利用規模に応じて、今後検討される必要があるものなのかなと理解しております。

以上でございます。

【村井委員】どうもありがとうございました。個人も想定しているというお話のところで、そうすると、やはり手数料をなるべく抑えるほうが利用が進むように思いました。また、以前申し上げたことで恐縮なのですが、著作権者が現れずに支払うことができない利用料につきましても、最初から必ず充当しなければいけないという形ではなくても、もし制度を運用していく中で余剰が出てきたら、例えばデータベースの拡充だけではなく、窓口組織の運営などにも充てて、その分、手数料を抑える、もしくは徴収しないですとか、さらには利用料などにも充当することで権利者に配分することを可能としておくと、実際の運用状況を見ながら、より広く利用されるような制度にしていける可能性があるのではないかと思います。

そのように運用することによって、今まで控えていた利用などが広くなされて、その利用から権利者が対価を得る機会が増えるということになれば、権利者にとっても利益となっていくと思いますので、柔軟な制度設計を可能とするような条文の文言などにしていくことをご検討いただければと思いました。

以上です。

【茶園主査】では、早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】すみません。また違うお話で大変恐縮ですが、6ページの、今回、「暫定的な利用」は「時限的な利用」という名前になったので、かなり明確化してきたのではないかとは思うんですが、この時限的な利用の「時限的」ですけれども、これは著作権者等からの申出があるまでの間はずっと使えるという御趣旨なのか。例えば利用方法でインターネットなどの場合は、ずっとそのまま掲載していくとか、ずっと配信しているということはあると思うんですが、一定期間の区切りとかそういうものは要求しないのか。こういうことを1点お聞きしたいと思います。

【茶園主査】事務局、お願いできますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】ありがとうございます。今、早稲田委員から御質問のあった時限的な利用ですね。基本的には、著作権者等からの申出があるまでの間というところで考えておりますが、確かに御指摘のようにネット配信であるとか、ずっと期間を定めずに使われる場合、延々と利用されることになる。この点につきましては、関係者からのヒアリングに際しても、少し御懸念の声も出ていたかと思います。例えばこういった時限的利用につきましては、今後、例えば制度化に当たって、利用の上限期間みたいなものを定めることで、著作権者の意思が、先ほどの御意見でも意思の更新があったり、当初書いていなかったけど、後ほど意思の表示がされる、こういった状況の変化もあり得るところかと考えられますので、少し上限期間みたいなものをつくるとか、あと、つくるにせよ、継続利用といいますか、更新ですか。先ほど、また別の委員からも更新できるようにするとか、そういった点もありましたので、条例案を定めつつ、更新も可能にする。こういったことも考えられるのかなと少し思っております。

【早稲田委員】ありがとうございました。すみません。もう1点、よろしいでしょうか。また別のところですが、やはりこの制度を見ていて、かなり窓口組織が重要な役割を果たす、こういうことになろうかと思います。これは前からも言われていましたけれども、いろいろな権利者の方々の配慮等もかなり入ってきて、相当ここが重要になってくるかなと思いますので、これについては、先ほど上野委員がおっしゃったように、公共的な団体で、かつ、著作権の関係をかなり実務を知っているというような団体が担うのが適当ではないかと思っておりまして、先ほどCRICのお名前も出されていましたけれども、裁定制度の広告をしているようなCRIC等も一つの方法になるのかなと思いました。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。今村委員、お願いします。

【今村主査代理】窓口組織に対する文化庁長官の一定の関与の話ですけれども、従来から著作権者等不明の場合の裁定制度でも、あくまで著作権に対する裁定利用ということでありましたが、著作者人格権であるとか、あるいはその他の著作者のプライバシー価値とか、パブリシティ価値とかそういったことは別段、決定する際には大きく配慮せずに、とはいえ、著作権者不明の裁定制度自体は円滑に運用されてきたと思います。濫用的な事態が起きていたのかどうかは、どういう申請があったのか、運用状況も含めて詳しく知らないので分からないんですが、裁定制度で行われてきた中で、そこまで問題となるものがなかったのだとすれば、そんなに心配しなくても大丈夫なのかとは思うんですね。

ただ、一方で、先ほどありましたように、今回、手続を迅速化、簡素化して使いやすくするという側面があって、その使いやすさから、今まで権利者不明の場合の裁定制度を使ってじっくり時間をかけて権利者が分からない人のものを使うという手続きとは違って、より迅速に、返答がなければ使うということになったときに、どのような利用態様が出てくるのか、なかなか読めない部分があるかもしれません。

そういった中で制度が動き出して、著作権の利益は守ったけれども、著作者の著作者人格権であるとか、その他の様々な人権的な価値、たとえばプライバシーなどへの配慮について、この制度はあくまで著作権についての時限的な利用を認めるものだからいいんだということになってしまっては、必ずしもよくない部分もあると思います。なので、そういったことを含めて、窓口組織がそれを、著作権以外の権利の侵害のおそれがあるから止めるというわけでは必ずしもなくて、今までの裁定でもそういう注意事項はあったかと思うんですけれども、利用に際して、著作権以外の様々な権利の利用についての配慮といったものを利用申請する人に対して、的確に申請時やその利用を認めるときに案内するとか、そういったことをしないといけないと思います。今回の制度は、返答がないという場合でも利用を認める場合もありうるわけですが、通常の権利制限の場合には、それで使えた場合でも、権利者が目を光らせている場合も多いと思うので、何かあったら権利を主張してくるわけで、その場合には、著作権に限らず、著作者人格権も使って、場合によってはプライバシーなどほかの権利も使って、その利用を止めに来ると思うんです。けれども、今回の制度では、返答がないということをきっかけに利用が始まる場合もあるという制度なので、窓口組織もできる範囲でパターナリスティックな観点からの対応をあらかじめできるようにしておいたほうがよいと思いますし、場合によっては制度自体の想定しないような利用のされ方がなされるようなことがあれば、文化庁長官の一定の関与が円滑にできるようにしておくのが望ましいと思います。制度の運用当初に、想定外の変な使われ方がしたときには目も当てられない事態になりますので、著作物の利用の手続を迅速、簡素化することに伴って生じうる派生的な問題にも配慮して、制度の運営の仕方を考えていったらよろしいのではないかなと思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。澤田委員、お願いします。

【澤田委員】9ページ目のところで、裁定制度についても窓口組織のほうで手続の迅速化、簡素化することを検討いただいていると理解しています。私としては、ここは非常に重要だと思っておりまして、事前供託の制度については様々な課題があるところでありまして、何とか事前供託を免除するような方向で御検討いただきたいと思っています。先ほどもあった窓口組織に対する文化庁長官の一定の関与、窓口組織の財産的な規律についてのルールの設定、文化庁の監督などの措置を組み合わせることで事前供託制度の趣旨である権利者の取りっぱぐれを防ぐというところは実現できるのかなとは思っております。そういった形で事前供託を免除できるような形で御検討いただきたいと思っております。

また、窓口組織が利用者の代わりに申請手続を行うような形になるのか、そこもまだいろいろ御議論はあるかとは思うんですけども、法律上、窓口組織を介して申請手続きを行うことができると定めれば、諸業法との関係はあまり問題ないかなとは思っております。そのため、そこについても裁定の利用がよりしやすくなるような形で、手続の迅速化、簡素化の実現に向けた検討をお願いできればと思っております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、またありましたら後ほどお願いするといたしまして、続きまして、資料1の11ページ、12ページにございます、立法・行政・司法のデジタル化に対応した著作物の公衆送信等につきまして、この点につきまして御意見等がございましたらお願いいたします。

佐伯委員、お願いいたします。

【佐伯委員】ありがとうございます。議論の内容をまとめていただきまして、ありがとうございました。この論点に関しまして、特段掘り下げた意見があるわけではないんですけれども、私としましても、事務局案に賛成したいということの意見だけ述べさせていただきたいと思い、挙手をさせていただきました。よろしくお願いします。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】ありがとうございます。私としても事務局案に賛成しておりまして、行政手続は裁判手続のデジタル化に対応して公衆送信を可能にするというところで、特許審査等の行政手続ですとか、行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続についても、これも公衆送信や公の伝達を可能にするということもやはりデジタル化という観点では重要だと思っておりますので、この内容も盛り込んでいただきまして、ありがとうございます。

あと1点、コメントですけれども、1つ目の丸のところの2段落目で、ライセンス市場等の既存のビジネスを阻害しないように留意するとともに、内部資料についてその解釈を含め周知徹底と書いていただいているんですけれども、やはりライセンス市場等の既存ビジネスの阻害という観点では、ただし書の解釈というのも重要だなと考えておりまして、ただし書の部分についても、解釈を周知徹底していただくことが重要かなと考えております。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。では、またございましたら後ほどお願いするといたしまして、では、資料1の13ページ、14ページにございます海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し、この点につきまして御意見等がございましたらお願いいたします。

これは特許法等と同じようなルールを定めるというものでしょうが、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

池村委員、お願いします。

【池村委員】ありがとうございます。方向性について賛成なんですけども、その他の検討課題でお書きいただいたこと、特にストリーミング型サイトの対応などについては、速やかに検討を進めていただきたいなと思います。

【茶園主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。

それでは、前のもの、全体を含めまして、何か御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

本日は、報告書(素案)というものもつけていただきましたけれども、次回は、本日いただきました御意見を踏まえまして、本小委員会の報告書(案)をお示ししまして、委員の皆様に御審議いただく予定でございます。

本日も、報告書の素案につきまして御意見をいただいたところがありましたけれども、この素案につきまして、さらに、御意見等がございましたら、事務局までメールでお知らせいただきますようにお願いいたします。

ほかに特段ございませんようでしたら、ちょっと早いですけれども、本日はここまでといたしたいと思います。よろしいでしょうか。

では、最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。次回以降の法制度小委員会は、改めて事務局より日程をお知らせさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】それでは、少々早いですけれども、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第7回)を終了とさせていただきます。

本日は活発な御議論、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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