文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)

日時:令和5年7月26日(水)

15:00~17:00

文部科学省東館 3F1 特別会議室
(オンライン併用)

議事

1開会

2議事

  • (1)法制度小委員会主査の選任等について【非公開】
  • (2)令和5年著作権法改正について
  • (3)AIと著作権について
  • (4)その他

3閉会

配布資料

資料1
第23期文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員名簿(236KB)
資料2
新たな裁定制度における未管理公表著作物等について(384KB)
資料3
AIと著作権に関する論点整理について(640KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(349KB)
参考資料2
第23期文化審議会著作権分科会委員名簿(271KB)
参考資料3
第23期文化審議会著作権分科会における検討課題について(令和5年6月30日文化審議会著作権分科会決定)(276KB)
参考資料4
小委員会の設置について(令和5年6月30日文化審議会著作権分科会決定)(265KB)
参考資料5
文化審議会著作権分科会(第68回)(第23期第1回)における主な意見の概要(320KB)
参考資料6
「著作権法の一部を改正する法律」関係資料一式(1MB)
参考資料7
「知的財産推進計画 2023」等の政府方針(著作権関係抜粋)(3MB)
参考資料8
「AIに関する暫定的な論点整理」(AI戦略会議)(著作権関係抜粋)(314KB)
参考資料9
初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン(著作権関係抜粋)(560KB)

議事内容

〇今期の文化審議会著作権分科会法制度小委員会委員を事務局より紹介。

〇本小委員会の主査の選出が行われ、茶園委員が主査に決定。

〇主査代理について、茶園主査より今村委員を指名。

〇会議の公開について運営規則等の確認。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十四年三月二十九日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【茶園主査】それでは、会議を行いたいと思います。

傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮くださいますようにお願いいたします。

では、改めて御紹介させていただきますけれども、先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして、主査に私、茶園が就任いたしました。また、主査代理として今村委員を指名させていただきましたので、御報告いたします。

今期の本小委員会におきましては、様々な問題につきまして先生方に御議論いただきたいと思います。その中でも、恐らくAIに関する問題が特に重要なテーマとして取り上げられることになるかと思います。

著作権法は、かつては、特定の業界といいますか、特定の限られた人たちにのみ関心を持たれている法律であったように思いますけれども、最近は、社会一般において関心を持っていただいております。それ自体は大変ありがたいことですし、現在は、その中でも、AIに関する問題が特に多くの方々の注目を集めております。そしてここでの審議についても、大いに期待されているところかと思います。そのため、先生方には活発な御議論をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

また、本日は今期最初の法制度小委員会となりますので、議事に先立ちまして、杉浦文化庁次長から一言御挨拶をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【杉浦文化庁次長】では失礼いたします。文化庁次長の杉浦でございます。

文化審議会著作権分科会法制度小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

皆様方におかれましては、日頃より著作権施策の検討・実施に当たりまして、御協力・御指導を頂戴しております。このたびは御多用の中、法制度小委員会の委員をお引き受けいただき、誠にありがとうございます。

まず、令和3年の7月に文部科学大臣から諮問された「デジタルトランスフォーメーション時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」を受けまして、本小委員会で昨年御議論をいただきました、簡素で一元的な権利処理方策等の制度化をはじめとする著作権法の改正が、今年5月に成立・公布されました。この場をお借りしまして改めて御報告申し上げるとともに、丁寧な御議論に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

今期の法制度小委員会におきましては、AIと著作権に関する論点の整理等につきまして、著作物の利用と著作権の適切な保護のバランスに配慮しつつ、御審議いただきたいと考えております。

委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、社会の要請を踏まえた我が国の著作権制度・施策の課題につきまして、精力的な御審議、御議論をお願いしたいと思います。

また、これらの御審議に並行いたしまして、文化庁におきましても、AIと著作権の関係につきましては、立場や分野、業界など、様々な多様な御意見があるということを承知しておりますので、こうしたことから、クリエーターから事業者まで広く意見交換を行っていくこととしました。

今後の検討に当たりましては、そうした御意見や国際的な動向も踏まえてまいりたい、このように考えております。

私からの挨拶は以上でございますが、今年度も何とぞ、どうかよろしくお願いいたします。

【茶園主査】杉浦次長、どうもありがとうございました。

それでは、報道関係者の方は御退出くださいますようにお願いいたします。

(報道関係者退室)

【茶園主査】次に、議事2の令和5年著作権法改正についてに入りたいと思います。事務局に資料を準備していただいておりますので、まず、事務局から説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】資料2を御覧ください。令和5年著作権法改正につきましては、本日説明には用いませんが、参考資料6でお配りしていますとおり、法案成立をいたしまして、今、公布が済み、施行を待っている段階となります。

それでは、資料2に基づきまして、新たな裁定制度における未管理公表著作物等について御説明に入ります。こちらは、第一次答申(令和5年2月)を踏まえまして、令和5年法改正に臨みましたところでございますが、こちらの中で、御議論に参画いただいていた委員の皆様には、一部復習のような中身となりますが、資料2の1ページ目、4ポツ、簡素で一元的な権利処理方策と対価還元の制度化イメージのところをご覧ください。

新制度の要件としては、利用の可否や条件等に係る意思が確認できるか、できないか、これに基づきまして、新しい制度による著作物の利用を可能にするというものでございました。

この中で、1ページ目の一番下側の2行目のところを御覧ください。新制度の対象となる著作物となるか、ならないかの判断に当たって、アウトオブコマースについては、過去に公表された時点で示されている「複製禁止・転載禁止」の記載のみをもって判断すべきではないとの意見があったところでございます。

これにつきましては、次の2ページ目の冒頭にありますように、過去の時点での利用の可否が示されているものの、現在市場に流通していないなどにより現在の意思が確認できない場合の扱いについては、引き続き今後の検討課題とするとされておりました。本日はこれにつきまして、少し議論を進めておきたいと思っております。

資料の2ページの中ほど、下側を御覧ください。2ポツ、令和5年著作権法改正後の第67条の3(未管理公表著作物等の利用)になります。こちらは条文を抜粋しております。第67条の3第1項においては、未管理公表著作物等を利用しようとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託して利用することができるという規定になっております。

その1号では、未管理公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を確認するための措置を取って、その意思の確認ができなかったこと、2号が、廃絶しようとしていることが明らかでないことと示しております。

また第2項において、この第1項に規定する未管理公表著作物とはというところで説明を加えておりまして、未管理公表著作物等とは、公表著作物等のうち、次の各号のいずれにも該当しないものを言うとされております。

資料は次のページに移りますが、一番上のところ、1号が、著作権等管理事業者による管理が行われているもの、2号、文化庁長官が定める方法により、当該公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を円滑に確認するために必要な情報であって、文化庁長官が定めるものの公表がされているもの。これに該当しないものが、いわゆる未管理公表著作物として制度の対象となるところです。

3ポツ、想定される「意思」の確認のフローを御覧ください。ただいま御説明した条文の運用上では、まず未管理公表著作物等か否かの確認が行われ、続いて②にありますように、未管理公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思の確認が行われるという流れになります。

それでは、4ポツ、いわゆる「アウトオブコマース」の扱いについてを御覧ください。新たな裁定制度における、いわゆるアウトオブコマースの扱いについては、第一次答申を踏まえまして、制度の安定的な運用や簡素な手続の実現に配慮の上、次のように考えてはどうかとしております。

1つ目の白丸ですが、アウトオブコマースについて、その過去に公表された時点で示されている「複製禁止・転載禁止」等の記載をもって、一律に未管理公表著作物等の対象外となることのないよう、改正後の法第67条の3第2項の文化庁長官の定め(「方法」及び「必要な情報」)を行っていく。

2つ目の白丸ですが、本制度でのアウトオブコマースについては、当事者が明確にその範囲を特定できるよう、次の2点としてはどうか。

1つ目、ア、著作権法第31条第7項の規定に基づき国立国会図書館から図書館等に対して自動公衆送信を行う対象となる絶版等資料。

イ、著作権法第67条の著作権者不明等の場合における著作物の利用により、過去に使用されたことがある著作物であって、その後に権利者が判明していないもの。

あわせまして、今後、分野横断権利情報検索システム等により、現時点での利用の可否に関する意思が確認できるように目指すことが望ましいと資料に記載しております。

こちらについての御説明は以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、この点、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

早稲田委員、お願いいたします。

【早稲田委員】ありがとうございます。今の御説明のとおり、アウトオブコマースは昨年度もいろいろ議論をして、特に福井委員のほうでも強く、やはりこのアウトオブコマースの扱いについては考えないと、この制度があまり実効性のあるものにならないのではないかというような御発言があったところ、やはりそうは言っても何がアウトオブコマースというのがはっきりしないと、逆にこの制度がうまく実効しないのではないかないかという議論で、今後検討するというようになっていたかと思います。

それを前提といたしますと、今の御説明のとおり、国立国会図書館の自動公衆送信を行う対象となる絶版等資料、これについては関係者協議会でいろいろと議論されて、それで除外手続もはっきりしておりますし、それから、イの裁定制度で既に利用して、その後も権利者が判明していないもの、これも文化庁のほうで公表されているということですので、非常にはっきり明確になっているという意味で、私は、この2つの点を入れてアウトオブコマースを利用することは望ましいのではないかと思います。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかにございませんでしょうか。今、早稲田委員がおっしゃられましたように、アウトオブコマースをどう取り扱うか、いかに考えるかが、この制度の利用がどのようになっていくかにかなり影響することになると思います。よろしいでしょうか。

それでは、どうもありがとうございました。

では、先に進みまして、次に、議事3のAIと著作権について、これに入りたいと思います。事務局に資料を準備いただいておりますので、まず説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。AIと著作権についてでございます。AIと著作権につきましては、今画面投影をしておる資料3が映っておりますが、その前に、参考資料のほうを少し御覧いただければと思います。

参考資料7には、知的財産推進計画2023もございまして、この中でAIと著作権に関する記載もあるところでございます。

また、参考資料8では、AIに関する暫定的な論点整理ということで、2023年5月26日のAI戦略会議において取りまとめられた論点整理の中に、著作権関係部分の記載がございますので、今画面投影しています、まず参考資料8の御案内をします。

こちらの論点整理では、3番、主な論点の整理というところで、3-1、リスクへの対応、懸念されるリスクの具体例と対応ということで、こちら全体版ですと、7点挙がっておるのですが、このうちの⑥として、著作権侵害のリスクという項目がございます。

そこには、生成AIがオリジナルに類似した著作物を生成するなどの懸念がある。生成AIの普及によって個々の権利者にとって著作権侵害事案が大量に発生し、紛争解決対応も困難となるおそれもある。一方で、生成AIを利用して映像制作を効率化する例もある。クリエーターの権利の守り方、使い方は重要な論点である。政府は、まずは現行の著作権法制度を丁寧に周知すべきである。今後、専門家も交え、AI生成物が著作物として認められる場合、その利用が著作権侵害に当たる場合や、著作物を学習用データとして利用することが不当に権利者の利益を害する場合の考え方などの論点を整理し、必要な対応を検討すべきである、とあります。

このような会議の論点整理が行われているところでございます。

これにつきまして、先ほどの資料3に戻らせていただきます。資料3を御覧ください。資料3は、このAIと著作権に関する論点整理についてでございますが、冒頭、枠で囲んでおりますように、まずはクリエーターの懸念の払拭、AIサービス事業者やAIサービス利用者の侵害リスクを最小化できるよう、生成AIの発展を踏まえた論点整理を行い、考え方を明らかにするとしております。

左側に主要論点項目を示しております。1点目、学習用データとして用いられた元の著作物と類似するAI生成物が利用される場合の著作権侵害に関する基本的な考え方。類似性・依拠性の考え方や事例研究。

2点目、AIを作成するために著作物を利用する際の基本的な考え方。1つ目として、非享受目的に該当する場合。この非享受目的は30条の4に記載のある非享受目的のことです。また2点目、著作権者の利益を不当に害することとなる場合。

3点目として、AI生成物が著作物と認められるための基本的な考え方。利用者の創作意図や創作的寄与に関する考え方や事例研究としております。

今後の流れとこれまでの経緯でございますが、6月30日に著作権分科会にて、今期の文化審議会著作権分科会の議論がキックオフしております。

その後、7月4日に、初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドラインの発出などの取組も行っております。本ガイドラインにつきましては、参考資料9に、著作権関連部分の抜粋をつけております。参考資料9を少しだけ紹介させていただきます。参考資料9を御覧ください。

こちらは抜粋となっておりますが、このガイドラインの中に著作権保護の観点という項目を入れさせていただいております。こちらは、各学校において、著作物の利用に関する正しい理解に基づいた対応が必要ということで、基本的な考え方。著作権は、「思想又は感情を創作的に表現した」著作物を保護するものであるということ。また2点目に、原則として利用に当たって著作権者の許諾が必要。

ただし、私的利用、学校の授業における複製等の権利制限規定があるということを示した上で、2番、学校における生成AI利用の留意点として、例えば、学校においてAIを利用して生成した文章等を利用する場合においては、既存の著作物に係る権利を侵害することのないよう留意する必要がある、ここでも類似性・依拠性がある場合は著作権侵害となり得ることを説明しております。

一方で、学校の授業では、著作権法第35条により許諾なく著作物の複製や公衆送信ができるときがあるため、教師や児童生徒がAIを利用して生成したものが、既存の著作物と同一または類似のものだったとしても、授業の範囲内で利用することは可能である旨。他方、広く一般向けのホームページに掲載することや、外部のコンテストに作品として提出するなど、授業目的の範囲を超えて利用する場合は、著作権者の許諾を要する。

このようなことを内容として織り込ませていただいておりまして、各教育機関に通知、ガイドラインの公表がされているところでございます。こちらは少し報告となりますが、7月4日に行ったものの紹介です。

また、資料3に戻らせていただきます。資料3を御覧ください。資料3の右側、今後の流れのところですが、本日、7月26日、著作権分科会法制度小委員会で、主要論点項目における検討のキックオフとなります。

今後は、先ほどは教育場面でありましたが、例えば行政における取扱いの検討はどうかといったような、少し利用場面においた検討を行うほか、その他として、関連する論点が今後生じましたら、これに限らず議論を行っていく。また※にありますように、各検討については、まとまったものから随時公表することも検討、海外の動向についても調査研究を実施予定としております。

文化庁におきましては、審議に並行しまして、クリエーターや事業者などと広く意見交換も行っていきたいと考えております。クリエーターであるとか、いわゆる権利者の関係者の中には、AIの利用、あるいはAIが既存の著作物を学習する、こういったことについて、賛否両論、様々な意見があると承知しております。こういった中身についても文化庁の事務局において聞き取りつつ、今後の審議に生かしていきたいと考えております。

それでは、資料3の2枚目を御覧ください。主要論点で示した議論に入る前提として、AIの開発・利用とそれに伴う著作物の主な法定利用行為についてまとめております。少し字が小さくて申し訳ありません。

タイトルの直下の※にありますように、AIの開発・学習段階と生成・利用段階とは分けて検討することが必要でございます。それぞれの法定利用行為が異なったり、あるいはその利用行為の主体が変わるからです。また※にありますように、本資料は生成AIの開発・利用に伴って生じる著作物の法定利用行為の一般的な例を示したものでございます。ここに示したもの以外の法定利用行為、例えば複製と番号を振って分けてありますが、その中には公衆送信等も行われることがあり得ます。また、示しております権利制限規定は一例でございまして、特定の場面で他の権利制限規定が適用される場合もあります。

資料の左側、上からAI開発者、AIサービス提供者、AI利用者としております。これらの区切りも便宜的なものでありまして、もっと複数の関係者が入ることや、あるいはAI開発者、AIサービス提供者が同一になるということもあり得ます。

それでは、順次御紹介していきます。まずAI開発者が一般的に基盤モデルと言われるもの、本資料では便宜上、基盤モデルを、それ自体はコンテンツ生成には用いられないものとして想定しておりますが、こういった基盤モデルを、様々なデータにより学習して作成する。

この場合、左下の緑の枠にありますように、学習用データとして、これは著作物である場合、あるいは非著作物である場合もありますが、こういったものを収集・加工し、これを学習用プログラムに入力して、基盤モデルを学習させます。この場合に行われる収集・加工行為、複製①、入力行為、複製②と、一旦仮にナンバリングをしております。

また、こういったAI開発者が開発した基盤モデルを活用して、ここでは便宜的に、真ん中の段、AIサービス提供者としておりますが、AI提供者がさらに追加学習用のデータセットを収集・加工するために、既存の著作物、あるいは著作物ではないデータを複製したり、それを追加学習用プログラムとして入力するという行為が行われます。

一般的にこのような追加学習(ファインチューニング)を行うことで、さらなる基盤モデル、あるいは今回の議論の中心になる、生成AIといったものをつくり上げます。こうした生成AIについては、AIサービス提供者が、その生成AIを使って、自ら一部の情報、あるいは著作物、生成物を提供する場面といったものがあります。この絵では、右側の複製⑥-aとしているところです。

AIサービス提供者が複製主体と評価される場合ですが、自らAI生成物を出力し、場合によっては、その中に既存著作物の創作的表現を含むものを出したりするという場合。あるいは、この生成AI、オレンジの部分を、個人あるいは企業の方々が利用者として使う場合があります。これが、資料下半分のAI利用者のところです。

AI利用者は、こうした生成AIにつきまして、プロンプトと呼ばれるような入力・指示を行ったり、あるいは、画像、文章といったものを読み込ませる、入力する。こういった複製行為の後、右側、生成AIでは何かしらのAIによる生成物が創出される。この生成物が出る際は、これが複製となるのかどうかといったところは、少々判断が難しいところもありますので、複製⑥‐bではクエスチョンマークをつけさせていただいております。

また、左下になりますが、AI利用者の中には、こうした生成AIをそのまま使うのではなく、さらにこうした生成AIに自ら追加学習用データなどを収集・加工し、入力させ、追加学習済みモデルとして、カスタマイズされた生成AIであるとか、全く新たな生成AIのようなものをつくり出し、資料の右下になりますが、そうした追加学習済みの生成AIを用いてさらに入力・指示を行うことで、新たなAI生成物を出力するという場合も想定されると考えられます。

それぞれの著作権法上の法定利用行為ですが、資料の一番左上のAI開発者のところに戻りますが、まず収集・加工段階、あとは入力段階で行われる複製、これは情報解析のみを目的とする場合であれば、非享受利用として法第30条の4の適用があるので、著作権者の許諾なく利用することができるのではないか。またAIサービス提供者が追加学習する場合も、同条の適用の可能性があると考えられます。

また、AIサービス提供者の右側の複製⑥-aで示したように、自らAIサービス提供者が複製主体と評価される場合、こちらの情報の中で著作物が含まれる場合、右側のところの軽微利用(法第47条の5第1項第2号)、こういったものに該当する可能性もあるのかなと思っております。

こうした場合は、左側の複製③、④のところでも、軽微利用を目的とする場合ということで、法第47条の5第2項に規定する準備行為の適用により許諾なく利用することがあり得るというような整理を行っております。

また、AI利用者が入力する行為につきまして、複製⑤であるとか、⑦とか⑧、個人の方であれば私的複製の規定の適用もあるのかなと。私的複製の範囲を超える場合ですが、純粋に学習させるだけ、読み込ませるだけということであれば、非享受利用の適用の可能性もあるのではないかというところを示しております。

ただ、この辺りの判断につきましては、本資料では、こちらの一番左下の複製⑦、⑧のところでございますが、※4、AI利用者が行う追加学習として、主に数十から数百点程度の追加学習データを用いて行うようなものを想定しておりますので、例えば複製1、2の際の情報解析とこの個人が行う追加学習、分量であるとか、その行為の性質も少し変わってくるのかなというところも、念のため示しております。

また、生成AIプログラムを個人の方が利用してAI生成物をつくった、この右側の複製⑥-bのところです。こちらが複製に当たるのかどうかというところも御議論かとは思いますが、この⑥-bにつきましては、個人の利用であれば私的複製の該当可能性はあるかと思います。これが企業の場合は、当該生成物について、使うのか、使わないのか、あるいは仮に既存の著作物と類似性・依拠性があるような場合は、許諾を取るのか、取らないのかといった検討過程の利用(法30条の3)などにより、承諾なく利用できる可能性もあるのかなということで、そちらにクエスチョンマークをつけつつも示しております。

また、この中の右側の複製⑥-aと⑥-bのところに※3をつけておりますが、AI生成物に既存著作物との類似性・依拠性がある場合、当該AI生成物を公衆送信等する場合は、原則として既存著作物の著作権者の許諾が必要となる旨明記しております。こちらは冒頭に紹介しましたように、生成段階と生成物の利用段階では、権利制限の適用関係、法定利用行為、主体、皆変わりますので、そのような記載を念のためさせていただいておるところです。

以上が、本資料での主な法定利用行為、あとは適用されると考えられる権利制限規定を示したものとなります。

続きまして、資料の次のページ、3ページを御覧ください。こちらはAI生成物の類似性・依拠性についてでございます。

まず類似性についてですが、これまでの判例上、類似性は「既存の他人の著作物と同一、又は類似している」というためには、他人の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できることが必要とされております。「創作的表現」が共通していることが必要であり、アイデア・事実など表現でない部分、または創作性がない部分が共通するにとどまる場合は、類似性は否定されております。

これまでの裁判例上は、次のような要素を考慮して類似性が判断されております。1点目が、既存著作物との共通部分が表現か、あるいはアイデアなのか、単なる事実であるのか。2点目、既存著作物との共通部分が、創作性のある表現か、ありふれた表現なのか。

こうしたこれまでの類似性についての説明になりますが、この黒矢印の次、こうした類似性の判断に関しまして、AI生成物について人間が制作したものと異なる考え方を取るべき要素があるかどうか、こうした論点があるかと考えております。

続きまして、次のページ、4ページ目を御覧ください。AI生成物の類似性・依拠性についてでございます。

依拠性について、これまでの判例上は次のような要素を総合的に考慮して依拠性を判断しております。後発の作品の制作者が、制作時に既存の著作物を知っていたか。後発の作品と、既存の著作物との同一性の程度。後発の作品の制作経緯です。

こうした従来の考え方に照らして、AI生成物に依拠性ありと考えられる例として、この青枠の中に示しておりますが、AI利用者が既存の著作物の表現内容を認識しており、AIを利用してこれと創作的表現が共通したものを生成させた場合。例として、AI利用者が、いわゆるImage to Imageで既存著作物をAIに入力し、これと創作的表現が共通したものを生成させた場合。この場合は、AI利用者が生成時に既存の著作物の表現内容を知っていることから、従来の考え方に照らせば、依拠性ありと考えてよいのではないか。

また、その下のオレンジ枠のところでございますが、AI生成物の依拠性について新たに検討が必要と考えられる例として、黒丸のところです。AIが既存の著作物に類似したものを生成したが、AI利用者は当該既存の著作物(その表現内容)を知らなかった場合。この場合について、まず1つ目の矢印、AI利用者が当該既存の著作物を知らないことのみをもって、依拠性が否定されるか。2つ目の矢印、AI利用者が当該既存の著作物を知らなくとも、依拠性が認められる場合があるのではないか。

この2つ目の矢印の依拠性が認められる場合に当たるかどうか、今後検討することが考えられる例として、①、AIが当該既存の著作物を学習に用いていた場合。これは学習に用いてすらいない場合は、依拠性なしと考えてよいのか。②、AIが当該既存の著作物を学習に用いていたことに加え、当該既存の著作物をそのまま生成するような状態になっていた場合。このようなところを新たに検討が必要と考えられる例として挙げております。

最後、5ページ目を御覧ください。AI生成物の著作物性についてでございます。

AI生成物の著作物性については、この冒頭青枠のところで示しておりますように、平成5年の文化庁の報告書、また平成29年の知的財産戦略本部での報告書で、一定程度過去の検討の蓄積がございます。創作的寄与に関するこれまでの検討として、冒頭の図示しているところですが、AI生成物について、AIが自律的に生成した場合は著作物性はなしとされ、人が思想感情を創作的に表現するための道具としてAIを使用した場合は著作物性がありと。この場合、道具としてAIを使用したというためには、創作意図及び創作的寄与が必要とされております。

こうした基本的な考え方についてですが、新たな情報財検討委員会報告書の抜粋となりますが、この青枠の下から2行目、「以上から、AI創作物の著作物性と創作的寄与の関係については、AI技術の進展に注視しながら、具体的な事例に即して引き続き検討することが適当である」とされていたところです。

こうしたこれまでの議論の蓄積も踏まえまして、新たに検討が必要と考えられる事項として、オレンジ枠のところで示しております。昨今の生成AIの利用の実態を踏まえた創作的寄与のさらなる具体化は可能か。括弧書きで例示を示しておりますが、プロンプト等の分量・内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択、生成後の加筆・修正等はどのような影響を与えるか。こうしたことを検討事項の一例として示しております。

以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

本日は、今期の法制度小委員会の第1回ということでございますので、ただいまの説明を踏まえまして、委員の全員から御意見を頂戴したいと思います。

遅れて来られる委員を除きまして、お名前の五十音順で指名させていただきたいと思いますので、お一人当たり2分程度で簡潔に御発言くださいますようにお願いいたします。

それでは、まず今村哲也委員、お願いいたします。

【今村委員】明治大学の今村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

このAIをめぐる論点に関しては、非常に幅広いものがありまして、全部細かく扱うということになりますと、非常に時間もかかるし、議論してもあまり意味のない論点というものもあるかと思います。そのために、やはり権利者の方、あるいはクリエーターの方が、特に関心を持っている論点を集中的に議論していくことが大事だと思います。他方で、今回論点にあった部分に関連して、他にも著作者人格権など議論しなければならない論点もあるのかもしれません。

もう1点ですが、特に30条の4について、日本に対して、この規定により非常に緩やかに機械学習を認めていることに対していろいろな意見もあるところです。外国の意見には必ずしも影響される必要はないのかもしれませんけれども、30条の4により、機械学習の自由度が比較的広範に認められるということは事実だと思います。このように利用者側にかなり自由を認めていることを考えますと、その反面で、依拠性の判断などについてまで、あまりにも緩やかに理解してしまいますと、権利者の利益を非常に損なうような制度設計というか、解釈、運用にもなりかねません。その辺について慎重に考える必要があり、得体の知れないというか、具体的に何を学習したのか分からないようなAIを利用したときに出力された結果について誰も責任を負わないということになりますと、やはり権利者の方々は深刻な懸念を覚えるでしょう。この依拠性に関わる部分は、非常に重要な論点であると私は考えております。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

では、続きまして、上野達弘委員、お願いいたします。

【上野委員】上野でございます。

AIと著作権に関しましては、最近非常に激しい議論がなされておりまして、論点も多岐にわたるところでございますので、また折に触れて御議論させていただければと考えておりますけれども、資料3で、これに関係する「主な法定利用行為」につきましては、既に御指摘がありましたように、複製以外にも、公衆送信が実はかなり難しい問題であるかと思っております。また先ほど今村先生からも御指摘があった、誰が責任を負うのかという主体の問題も、これに関係して重要なのではないかと思っております。

また関連して、30条の4と47条の5の関係も大きな問題になりそうです。このことは、これまでも一応問題になり得たのだと思いますけれども、生成AIを機に両者の関係について、より検討が必要になっているのではないかと考えております。

それ以外の点として、類似性や依拠性、あるいは著作物性については、基本的には従来の議論の延長にあるかと思っておりますけれども、依拠性については、2017年までの新たな情報財検討委員会でも生成AIをめぐって結構議論がありました。私自身はAIが学習した著作物については全て依拠性があると認めざるを得ないのではないか、機械は物を忘れないのではないかというようなことを申し上げたのですが、しかし技術的な点も含めて、これをどのように考えるかというのは今後の検討課題になるかと思っております。

他方、類似性と著作物性については、AI生成物であれ、人間の創作物であれ、基本的に異なることはないのではないかと考えている次第でございますが、今後、さらに詳しい議論をさせていただければというふうに考えております。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、澤田将史委員、お願いいたします。

【澤田委員】澤田です。まずは、大きな検討の進め方についてコメントさせていただきます。今まで議論のありました、30条の4の本文やただし書の解釈、AI生成物の著作物性、AI生成物が他人の著作物と同じものであった場合の依拠性、利用主体性という問題については、いずれもこれまでかなり議論がされてきた部分であると思っています。

今回スピード感もかなり重要であると理解しておりますので、これまでの議論をベースにしながら、昨今のいわゆる生成系AIが、これまでの議論で想定されていたものとどの辺りが違うのかという点に焦点を当てて検討ができると、スピード感を持って進められるのではないかと思っております。

また、生成AIといっても、Text to Textのものだったり、Image to Imageのものだったり、かなり色々なパターンがあると認識をしております。私の理解だと基本的な考え方が変わるわけではないと思っているんですけれども、当てはめの傾向においてはかなり違いが出てくる部分もあるのかなと思っておりまして、その辺りも意識して、今後議論が進められるとよいと考えています。

また、生成AIの場合にだけフォーカスし過ぎて、人間が同じことをした場合と平仄が取れなくなってしまうのはどうかなとは思っております。もちろん違う扱いをすべき場面というのは違う扱いをするということで良いとは思っているんですけれども、その人間が同じことをやった場合の解釈との整合性というのは、常に意識して議論が進められるとよいと考えております。

最初の段階では私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、島並良委員、お願いいたします。

【島並委員】島並でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

個別論点への意見は、第2回以降の本委員会で御提示、御議論させていただくとしまして、初回のこの機会には、全体を通じた基本的な考え方ないし希望について、現時点で思うところを、3点申し述べたいと存じます。

第1に、従来の制度や考え方に、差し当たりまずは聖域を設けないということであります。そもそもなぜ著作権が付与されるのかという根本に立ち返って、AIという新しい酒を盛るのに適した、新しい革袋を構想することが、この際必要だと考えます。時間も限られている中、これは一見遠回りなようではありますが、より望ましい、そしてより多くの人が納得できる制度をつくるための、結局は近道になると存じます。

単に特定の条文レベルはもちろん、例えば創作性・類似性・依拠性といった基本概念についても、従来の考え方をAIに単に押し及ぼすのではなく、AIに即した新しい解釈、運用の在り方を、この際広く模索できればと願っております。

第2に、国際的な発信を視野に入れるということであります。コンテンツがネットを介して世界中を駆け巡る現在、著作権制度の国際的調和の重要性は改めて述べるまでもありませんが、AI時代の著作権制度の在り方は、今現在どの国も頭を悩ませている、最新の難問かと存じます。

そこで、たとえ現時点で他国に例を見ないものであっても、それが新しい時代の制度として望ましいのであれば、むしろ我が国が先導して、他国への普及を呼びかけていくことがあってよいと考えます。もちろん現在の諸外国の動向を正確に知ることは議論の前提ではありますが、その上でAIのような国内外共通の新課題への対処法については、我が国の制度を対外的に発信、提案していくことこそが、真の国際貢献になると思われます。

第3に、社会からの信頼と共感を得ることに十分な配慮が必要だということであります。デジタル技術の進展により、著作物の創作者、利用者、伝達者を隔てる壁が低くなり、立場の互換性は高まっていますが、AIと著作権制度の接点においてはなお、立場により先鋭的な対立が見られる局面が多く残ることは周知のとおりです。そのような利害対立の局面において新しい制度を真に支えるのは、社会からの信頼と共感しかないと思われます。

平成30年改正での機械学習に関する権利制限規定新設に際しては、通例に従った議事の公開や意見の公募等がなされたと承知しておりますが、それでも、今になって改めてこれだけ注目と議論を集めているという現状に鑑みれば、今回は、通例以上の丁寧な手続で社会の理解を求めていくことが必要だと感じます。また逆に、報道各社にあっては、AIと著作権制度の調和という最終的な目標は本会議メンバーと共通するかと存じますので、正確な理解の普及や社会からの意見のフィードバックについての御助力をいただきたいと希望しております。

私からは以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、水津太郎委員、お願いいたします。

【水津委員】東京大学の水津と申します。

私の専門は民法です。AIに関わる問題については、主として民法の観点から関心を持って参りました。本委員会において私に求められていることは、著作権法ではなく、民法を専門的に研究している者の観点から、社会の要請等を踏まえつつ、AIと著作権に関する課題を検討することであるかと存じます。微力ではございますが、尽力いたしますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、中川達也委員、お願いいたします。

【中川委員】弁護士の中川でございます。よろしくお願いいたします。

まず、整理いただいた論点については、私も異存ございません。いずれも重要で、社会的な関心も高い論点だと思いますので、これらについて検討を進めていくということで異存はございません。

その上で進め方については、先ほどの事務局からの御説明にもあったかもしれませんが、今回のこのAIに関する整理においては、やはり技術的な側面が非常に重要になってくると思います。技術の点からそごしたような整理が万が一にも出てしまうとか、あるいは我々が技術を理解しないために不適切なワーディングを用いてしまったせいで誤解を与えてしまうとか、そういったことがあってはいけないと感じておりますので、できるだけ技術と整合性の取れた整理、検討が進められていくといいなと思っております。

その他個別の論点については、都度発言させていただければと思っていますが、大きな点としては以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、羽賀由利子委員、お願いいたします。

【羽賀委員】成蹊大学の羽賀でございます。

私は専門が国際私法でございますので、著作権の条文の解釈等は専門の先生方にお任せするとしまして、先ほどたくさんの先生方から御指摘がありましたとおり、AIの論点を各国が急ピッチで進めているところでございますけれども、その各国との整合性と、それを踏まえた我が国の法政策の在り方というものを考えていければというふうに思っております。

とりわけこのAIは、デジタル技術というところもありまして、必ず国境を越えてくるところがございますので、その点におきまして、我が国がほかの国から見て文化的に、ここはどうも使いづら過ぎる、あるいはここはどうも権利の保護がよくなさ過ぎるということがないような形で進めていければと思っております。若輩ではございますが、力を尽くしてまいりますのでよろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、間明宏充委員、お願いいたします。

【間明委員】東京地裁の裁判官の間明と申します。よろしくお願いいたします。

今日話題となっております、このAIと著作権の関係につきましては、今日御紹介いただいたような種々の論点があるということのほか、社会的にも非常に注目されているような話題ということで認識をしております。

現在、東京地裁の知財部で訴訟事件を担当しておりますけれども、現在のところは、この論点がストレートに問題となっているような事案は、まだ見当たらないのが現状ですけれども、今後どんどん具体的にこういったものが訴訟事件として提起されるのではないか、そういう可能性があるというふうに十分認識をしております。この小委員会の中で、こういった裁判の手続の中でどう対処していくかという点が話題に上った際には、色々な観点から発言をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、𠮷田悦子委員、お願いいたします。

【𠮷田委員】大阪工業大学で知的財産法を教えております𠮷田悦子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私は、AIをめぐる知的財産法上の問題についての研究や、クリエーターの皆さんとの実証研究をこれまでやってきました。その側面で何か力になることができればと思っておりますが、今回の小委員会においては、やはり伝えるということが重要なんじゃないかなというふうに理解をしております。

社会を構成する方への理解と先ほどお話が出ておりましたが、この人間中心型の社会を豊かにしていくために、いかにこの法定利用行為を分かりやすく伝えるかということが、クリエーターへの理解をつないでいくためにも、鍵となっていくのではないかと考えております。

論点について私も異論はございませんので、そのテーマ毎に、自分自身の専門の観点から関わっていきたいなというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

では続きまして、早稲田祐美子委員、お願いいたします。

【早稲田委員】弁護士の早稲田でございます。よろしくお願いします。

AIと著作権、特に生成AIと著作権の問題といいますか、生成AIのクリエーターその他に対する影響の大きさから、こういういろいろな大きな議論になっていったというふうに理解しております。その議論の中では、著作権法で解決できるものと、解決できないものがあるのではないかと思っておりますけれども、本日論点整理をしていただいたように、現在の著作権法でどういうことが解決できて、どういう考え方が示せるのかということを、丁寧に議論していきたいと思っております。

それから中川先生がおっしゃったように、やはりこれは相当技術の側面がございますので、従来の著作権法の考え方、例えば依拠にしろ、類似でも、表現が似ているというのと、例えば何々風というようなもので、どこで表現が似ている感がするかというような問題も出てくるかと思いますので、そういう技術の問題で、我々もきちんと理解して議論していかなければいけないのではないかと思っております。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

それでは、福井健策委員、お願いいたします。

【福井委員】福井でございます。遅参をいたしまして失礼いたしました。

伺っておりまして、皆さんの御意見、私も全く賛成するところ大でありました。私からも改めて、現在の技術と、それから現在起きている現象、この確認と検証をぜひ徹底して進めていただきたいということを要望いたしたいと思います。それを踏まえて法解釈を考えるのが、やはり現状と並走する姿勢だろうというふうに思うからです。

例えばですけれども、権利者が望まないAIによる学習の問題があります。これに関連して、LLMの学習において、今標準的と言えるデータセットに、コモン・クロールという巨大なデータセットがありますけれども、そのクローラーは、robots.txtファイルで拒否しているサイトからは学習しないのです。それを表明しています。こういうクローラーは非常に多いと思われ、また御存じのとおり、EUのオプトアウトの制度もこうした技術的な意思表明を利用するわけです。

では、こうした技術によって不本意な学習の問題はどこまで防げるか、あるいは逆に、防げるとしても、それだとAI開発に支障は生ずるのか、生じないのか。この現場の実情をぜひヒアリングしていただきたいと思うわけです。

あるいは類似画像です。それが著作権侵害である、なし以前に、類似画像による被害と感じられることは、どの程度現に生じているのか。また侵害のおそれがある類似画像を検知するツールは、幾つも公表されているわけですけれども、それははっきり言ってどのぐらい役に立つのか、こういうことも確認をすべきだと思います。

そうした現場からのヒアリングをおこない、また、ほかの政府部署でも検討会議が立ち上がっておりますので、そういうところとも知見も、ぜひ共有し合っていただきたいと思います。

その上で、結論はスピーディーに出すのでも私は異論ありませんけれども、それはあくまでも暫定的な結論であるはずだと思います。であれば、1回暫定的な結論を出して、それで終わりでまた5年休むのではなくて、検証と議論を継続するという姿勢をぜひ大切にしていただきたいと感じます。皆さんと一緒に勉強できればと思っております。よろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

これまで各先生から御意見を頂戴いたしましたけれども、これまでの御意見を踏まえまして、さらに御質問、あるいは補足などの御意見がございましたらお願いいたします。さらに御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

事務局、何かございますでしょうか。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。先生方からの御意見、ありがとうございます。

本日資料を作成しておりますが、この資料も事務局のほうで、少しまだ勉強しながらまとめたというところもあります。また、多くの先生からいただきましたような最新の技術がどうなっているのかとか、実際の状況はまだまだ不十分な点もありますが、そうしたものをちょっと今後議論に生かすためにも、本日お配りしている資料の不明な点や関連する御意見、また技術に関して先生方のお耳に入っているところ、国際的な動向、こういったところも、御質問なり御意見、あるいは何かしらの情報などありましたら、少し今後の議論の参考にさせていただきたいと思いますので、お聞かせいただけると幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

それではそのほかに、全体を通じて何か御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。

【福井委員】よろしいでしょうか。

【茶園主査】福井委員、お願いいたします。

【福井委員】では、遅れてきておきながら2度目の発言で恐縮ですけれども、先ほどほかの委員からも御発言があったとおり、国際的な視点です。この点で現在、広島AIプロセスに基づくG7メンバーなどでのAIのルールに関する検討も、海外的には進んでいると思います。

日本でどんな議論をしていても、おっしゃるとおりボーダーレスですし、主要なAIサービスは今のところ、残念ながら欧米発のものがとても多いので、海外で別なルールが決まってしまえば、日本でした議論というのが、一夜にしてひっくり返されるということは十分あり得ると思うんです。そういう議論では残念である。むしろ逆に、国内でこんな議論をしているよというフィードバックをぜひ、日本は一応議長国でありますので、この広島AIプロセスに基づく議論の中にもフィードバックしていく。それをぜひ積極的に行っていただければというふうに思いました。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日の議事はここで全て終了ということになりますので、ほかに特段ございませんようでしたら、本日はここまでとさせていただきたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】ありがとうございます。本日いただきました御意見も踏まえ、技術的な部分であるとか、また海外動向につきましては調査研究を行っていく旨、冒頭御紹介いたしましたが、そういった点も含めて今後進めていきたいと思います。

次回の法制度小委員会ですが、事務局にて改めて日程調整の上、お知らせさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園主査】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会制度小委員会(第1回)を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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