文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第1回)

日時:令和2年8月4日(火)
17:00~19:00
場所:AP虎ノ門 D室

議事

1開会

2議事

  1. (1)基本政策小委員会主査の選任等について【非公開】
  2. (2)基本政策小委員会の運営について
  3. (3)平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について(報告)
  4. (4)「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」について(報告)
  5. (5)放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について(ワーキングチームの設置を含む)
  6. (6)私的録音録画補償金制度の見直しについて
  7. (7)デジタル時代に対応した著作権施策の在り方について
  8. (8)その他

3閉会

配布資料

資料1
第20期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(234.9KB)
資料2
基本政策小委員会の運営について(案)(177.9KB)
資料3
遠隔教育等を推進するための「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について(3MB)
資料4
「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」関係資料一式(5.2MB)
資料5-1
放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について(これまでの経緯と今後の対応)(1MB)
資料5-2
ワーキングチームの設置について(案)(100.4KB)
資料6
クリエーターへの適切な対価還元について(1KB)
資料7
デジタル時代に対応した著作権施策の在り方について(これまでの経緯と今後の対応)(604.6KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(408.2KB)
参考資料2
第20期文化審議会著作権分科会委員名簿(389.5KB)
参考資料3
第20期文化審議会著作権分科会における検討課題について(令和2年6月26日文化審議会著作権分科会決定)(190.1KB)
参考資料4
小委員会の設置について(令和2年6月26日文化審議会著作権分科会決定)(179.7KB)
参考資料5
文化審議会著作権分科会(第58回)(第20期第1回)における意見の概要(212.4KB)
参考資料6
「知的財産推進計画2020」等の政府方針(著作権関係抜粋)(1.3MB)
参考資料7
「放送コンテンツのインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化(著作隣接権に関する制度の在り方を含む)」に関する基本的な考え方(審議経過報告)
(令和2年2月4日 文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会)
(206.7KB)

資料2,資料5-2について異議なく,案の通り了承されました。
了承された資料については,以下の通りです。

資料
基本政策小委員会の運営について(108KB)
資料
ワーキングチームの設置について(99.6KB)

議事内容

  • 今期の文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員を事務局より紹介。
  • 本小委員会の主査の選任が行われ,末吉委員を主査に決定。
  • 主査代理について,末吉主査より上野委員を主査代理に指名。
  • 会議の公開等について運営規則等を確認。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(令和元年七月五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【末吉主査】お待たせをいたしました。傍聴される方々におかれましては,私のほうから2点お願いがございます。1点目は,会議の様子を録音録画することはどうか御遠慮ください。2点目は,音声とビデオをオフにしていただきたいと思います。

では,改めて御紹介させていただきますが,先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして,主査に私,末吉が選出されました。主査代理といたしまして,上野委員を指名いたしましたので,御報告申し上げます。

本日は今期最初の基本政策小委員会となりますので,今里文化庁次長から一言御挨拶をいただきたいと思います。お願いします。

【今里文化庁次長】文化審議会著作権分科会基本政策小委員会の開催に当たりしまして,一言御挨拶を申し上げます。

皆様方におかれましては,日頃より著作権施策の検討,実施に当たりまして,御協力,御指導いただいておりますとともに,このたびは御多用の中,本小委員会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。

初めに,平成30年の著作権法改正で創設された授業目的公衆送信補償金制度につきまして,今般の新型コロナウイルス感染症に伴う遠隔授業等のニーズに対応するために,当初の予定を早め,4月28日から施行されておりますので御報告を申し上げます。

また,インターネット上の海賊版対策をはじめとする著作権法等の改正が6月5日に成立をいたしまして,6月12日に公布されたところでございます。昨年の本法案提出の見送りの経緯を踏まえて,国民の皆様の声を丁寧に伺いながら検討を重ねてきた結果,海賊版対策の実効性確保と国民の正当な情報収集等の萎縮防止,この二つのバランスが取れた内容とすることができたと考えております。

これらをはじめ,文化庁では様々な法整備などを進めてきているところでございますが,昨今の情報通信技術の発展等を背景に,著作物の創作,流通,利用を巡る状況が刻々と新たな進化を遂げており,それに対応した措置が必要となる場面も出てくるものと思います。

そうした中で,本小委員会におきましては,関係者の利害関係が複雑に錯綜する難しい課題も取り扱っていただくこととなりますが,委員の皆様方におかれましては,ぜひ大局的な視点から,我が国の著作権施策の在り方について精力的に御議論の上,解決の方向性を見いだしていただければと考えております。何卒よろしくお願いを申し上げます。

【末吉主査】ありがとうございました。

続きまして,本小委員会の運営につきまして,基本政策小委員会の運営について(案),資料2でございます。これに基づきまして,事務局より説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料2を御覧いただきたいと思います。基本政策小委員会の議事の運営に係る留意事項について,お諮りを申し上げたいと思います。

冒頭に記載のとおり,6月26日の著作権分科会におきまして,「小委員会の設置について」という文書が決定されております。本日の配付資料でいいますと,参考資料4としてお配りをしているものになります。この文書におきまして,基本政策小委員会をはじめ3つの小委員会の設置が決定されるとともに,その中で小委員会の運営に関して必要な事項はそれぞれの小委員会で定める旨が記載をされておりました。この規定に基づきまして,基本政策小委員会の位置づけや個別の課題についての議論の進め方について,あらかじめ定めておいてはどうかということで提案をしているものでございます。

内容は2点ございます。まず1ポツにおきましては,本小委員会は,著作者等の「権利の保護」と著作物等の「公正な利用」のバランスに留意しつつ,著作権関連の政策の在り方を大局的な観点から議論する場として設置されたものであり,各委員は,個々の立場・利害関係を離れて,専門的知見に基づく議論を行うことについて記載をしております。

それから,2ポツはワーキングチームの関係でございまして,関係者間の意見の相違が大きく,特に慎重な検討が必要となる個別課題については,研究者・弁護士により構成される中立的なワーキングチームを設置し,関係者からのヒアリングなどを丁寧に行いながら議論を進めること,また,ワーキングチームにおける議論の結果,取りまとめが行われた場合には,それを十分に尊重しつつ,小委員会における議論・取りまとめを行うことについて記載をしております。

以上の2点につきまして,御審議の上,議事の運営方針として決定をいただければと思っております。

【末吉主査】ありがとうございました。それでは,事務局のただいまの説明,案のとおり,本委員会の運営に係る留意事項を定めたいと思いますが,委員の皆様いかがでございましょうか。御異議ございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】それでは,御異議がないようですので,資料2の案のとおり決定することといたします。ありがとうございました。

次に,本年4月28日に施行されました授業目的公衆送信補償金制度につきまして,事務局より説明をお願いします。

【日比著作物流通推進室長】失礼いたします。資料3を御覧ください。遠隔教育等を推進するための「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について,御説明いたします。

1ポツの法改正の概要を御覧ください。学校等におけるICTを活用した教育の推進を図るため,平成30年の著作権法改正により,授業の過程における著作物の公衆送信について,従来は個別の許諾が必要であったものを,設置者が文化庁の指定管理団体に一括して補償金を支払うことにより,無許諾で可能としたところでございます。

この改正の施行日は,法律の公布日から3年を超えない範囲内の政令で定める日とされており,令和3年4月からの施行に向け,関係者間で準備が進められていたところ,2ポツの早期施行のところにありますとおり,新型コロナの感染の流行に伴いまして,オンラインでの遠隔授業等のニーズが急速に高まってきたという教育現場の実情に対応するため,この制度を当初の予定を早めて令和2年4月28日から施行することといたしました。

また今年度,令和2年度に限って,権利者団体の皆様の御配慮によりまして,特例的に補償金額は無償(0円)ということで決定をされたところでございます。

来年度,令和3年度以降の補償金額につきましては,別途指定管理団体であるSARTRASから申請が行われ,それに基づき認可がされる予定でございます。

これに関しまして,本年4月20日の閣議決定されました政府の緊急経済対策におきまして,本制度の本格実施に向けて,補償金負担の軽減のための必要な支援について検討することとされております。

3ポツの経緯を御覧ください。4月16日のところに,「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」というものがございます。こちらは教育関係者と教育現場で利用される様々な分野の著作物の権利者団体が集まりまして,この制度の運用に向けた議論を行っていただいている場でございます。

本小委員会のメンバーとして御参加いただいております瀬尾太一委員,竹内比呂也委員におかれましては,このフォーラムの共同座長として運営に御尽力をいただいております。誠にありがとうございます。4月16日のフォーラムの場におきまして,今年度,令和2年度の補償金0円ということに対応した運用指針を策定いただいております。また,来年度,3年度以降の運用指針について現在御検討をいただいている状況でございます。

今後につきまして,御説明をさせていただきます。何ページかめくっていただき,ポンチ絵の右下のところのページ番号の6ページというところを御覧いただければと思います。補償金制度開始までの流れという図がございますけれども,その下半分を御覧ください。

来年度の補償金額の決定プロセスでございますけれども,指定管理団体であるSARTRAS,先ほど御紹介いたしました瀬尾太一委員も常務理事に御就任されておりますけれども,このSARTRASが教育機関の設置者の代表の意見を聴取した上で,補償金額について文化庁に認可申請を行うという予定になってございます。申請を受けましたら文化審議会に諮問いたしまして,認可の可否を決定するという流れになります。

文化庁といたしましては,この制度について来年度からの本格実施が円滑になされるように努めてまいりたいと考えております。

簡単ですが,御説明は以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。ただいまの説明につきまして,御質問等ございましたら,お願いをいたします。いかがでしょうか。

中村委員,どうぞ。

【中村委員】ありがとうございます。子供パソコン1人1台の運動を私自身が始めて10年になるんですが,日本は途上国でございまして,5人に1台のままでした。それが昨年の補正予算とコロナの緊急対策で4,000億円強が措置されまして,今年一気に達成できる見込みになったんですが,同時にこの補償金の制度がセットになったことでようやく両輪がそろって展望が開けることになりました。知財本部の会議でも申し上げたんですけれども,制度改正に携わった政府をはじめ関係者の皆さんと,特に瀬尾委員を筆頭とする権利者の皆さんに教育情報化を推進する立場として御礼申し上げます。どうも本当にありがとうございます。

ただ,これは今説明にありましたように,来年度以降の措置をどうするかというのが本丸のテーマで,制度論から運用論に移りますけれども,予算措置を含めて関係者の調整を期待するところです。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかに御意見いかがですか。よろしいですか。ありがとうございます。どうぞ,どうぞ。

瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】すいません,お名指しいただきまして,誠にありがとうございます。

ちょっと現状について,最新の情報をちょっとお話させていただきますと,今まさに来年度の運用指針について教育関係の皆様ともお話し合いをさせていただいたり,また,丁寧に意見聴取をさせていただいたりということで,次年度の体制に進むようにしております。

ただ,コロナの状況という中で,非常に教育環境があまりよろしくないところも出てきているし,制度としてきちんと促進しなければいけないと,教育環境をきちんと保全をしてICT教育に進んでいかなければいけないということは権利者の中でも共有されています。単純に権利制限があってお金がついたと,補償金がついた。これによって補償金額をどういうふうにするか,補償金運用をどういうふうにするかということではなく,この補償金の運用につきましては,きちんと教育関係者の皆さん,権利者,同時に利用者でもあり権利者でもある大学の先生等の皆様と,それから一般的な小中高,そういうところできちんと運用ができてかつ円滑にできるように,ライセンス等も含めて整備していくように今進めております。

決して,補償金制度をつくるだけが使命と考えているわけではありませんので,きちんとした教育ICTの推進に権利者も積極的に向かっているということは御理解いただきたいと思います。鋭意進めてまいりますし,この委員会の皆様にはまたいろいろな形での御協力をお願いすることもあるかもしれませんけれども,早急に時間も大事ですので,早急にいろいろなものを進めていきたいと思っておりますので,一言,SARTRASの常務理事という立場もございますので,コメントさせていただきました。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。竹内委員,どうぞ。

【竹内委員】瀬尾委員に続きまして,私も先ほどお名指しいただきましたので,一言申し上げます。

資料3にございますように,早期施行がなされて教育機関としては大変助かっているところでございますけれども,令和3年度以降の本格実施をいかに円滑に進められるかというのが大きな課題であると思っております。

資料3の1ページ目にもございますように,令和3年度からの有償となる本制度の本格実施に向けて,補償金負担の軽減のための必要な支援について検討することとされていると閣議決定された文書に出ているということでございますので,ぜひこれにつきましては,いろいろとちゅうちょ(躊躇)している教育機関,特に初中等教育機関に多いと思うんですが,その背中を押していただきますように,文化庁だけではなく関係省庁への働きかけにつきまして,どうぞよろしくお願いいたします。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

ほかにいかがでございますか。吉村委員,どうぞ。

【吉村委員】ありがとうございます。教育のICT化については,先ほど中村先生からもお話があった通り,我々もこのタイミングで,1人1台端末配布実現に向けて相当努力はさせていただきました。併せてまさに著作権関係で迅速な対応をしていただいたというのは,非常によかったと思います。

今後についてなのですが,偏見を含めて,どうしても著作権は悪者になりがちなところがあって,そういう意味では,現状についてこれまで以上に建設的な発信にぜひ努めていただきたいというのが一つのお願いです。もう一つは,今後,特にデジタル教科書等様々な課題について,今このような制度だから,もう金輪際変わりませんということではなくて,常にその状況,時代時代に応じたフレキシブルな在り方について,なるべく多くのステークホルダーを集めて,巻き込んで議論していくということを今後ともぜひお願いできればと,そこは強く期待しているところでございます。

よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにはいかがですか。よろしゅうございますか。ありがとうございました。

それでは,次に参りたいと思います。さきの国会で成立しました著作権法の改正につきまして,事務局より説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料4を御覧いただきたいと思います。先般成立した著作権法等の改正につきまして,簡単に御紹介を申し上げたいと思います。

文化審議会著作権分科会におきましては,2019年の2月に報告書をまとめていただいておりまして,一部の事項を除き,基本的にその報告書の内容に沿って法律の内容が定められているという形になってございます。

今回の改正法における改正事項は大きく8点ございます。「改正の概要」の記載に基づいて簡単に御紹介をいたします。

まず,内容の中心となるのが1ポツ,インターネット上の海賊版対策の強化でございます。昨今の海賊版被害の深刻化を踏まえて,より実効的な対策を講じるという観点から,2つの措置を盛り込んでおります。1つ目は,リーチサイト対策でございまして,侵害コンテンツへのリンクを集約したリーチサイトについて,その運営行為を刑事罰の対象にするとともに,リーチサイトなどに侵害コンテンツへのリンクを貼る行為を侵害とみなすといった規定を設けるものでございます。

それから,2点目は侵害コンテンツのダウンロード違法化でございます。音楽・映像につきましては,既に違法にアップロードされたものをそうと知りながらダウンロードすることが違法化・刑事罰化されておりますが,同じような規律を音楽・映像以外のコンテンツにも及ぼしていこうというものでございます。

ただ,このダウンロード違法化の要件をめぐりましては,様々御議論がございました。国民の間でも,日常的なインターネット利用が萎縮するのではないのかという不安・懸念の声が広がっていたところでございまして,文化庁では,昨年の秋以降,見直しに向けた議論を重ねてまいりました。

その結果,違法化から除外するための規定も幾つか設けまして,また,運用面からも配慮していくという規定も設けることで,海賊版対策としての効果は確保しつつも,正当な情報収集には萎縮が生じないようにする,というバランスを取った形での法制化ができたのではないかと思っております。

2ポツがその他の改正事項でございます。6つありますが,1から3が,著作物利用の円滑化のための措置,4から6が,権利保護のための措置でございます。

まず,1は写り込みに係る権利制限規定につきまして,従来は写真の撮影,録音,録画に伴う写り込みだけが認められておりましたところ,新しく生配信,スクリーンショットなどに伴う写り込みも対象に含め,また,その他の要件緩和も様々行うことで,幅広い場面に対応できるようにしたというものでございます。

次の2は,行政手続に係る権利制限規定につきまして,従来から特許審査などは対象になっておりましたところ,今般,種苗法(GI法)の審査手続を新たに規定するとともに,さらに,今後新しいニーズが出たときに政令で随時手続を追加できるような仕組みを設けるものでございます。

3は著作権者等から許諾を受けて著作物を利用する権利に関しまして,その著作権等が譲渡された場合の譲受人などにも対抗できるという仕組みを設けることで,ライセンシーが安心して利用継続できるようにするものでございます。

4は著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化といたしまして,裁判所が書類提出命令をより実効的に発することができるよう,手続面の規定の充実を図るものでございます。

5は著作物の不正利用を防止するためのアクセスコントロールに関しまして,例えばソフトウエアのライセンス認証など最新の技術にも的確に対応できるよう,保護対象の明確化,規制対象行為の追加を行うものでございます。

最後の6はプログラムの登録に関しまして,関係者のニーズを踏まえつつ,新しい証明の手続を設けるとともに,手数料の取扱いを変更するものでございます。

一番下に施行期日を記載しているとおり,改正法は,原則として令和3年,来年の1月1日から施行ということになっております。ただ,1ポツ,1のリーチサイト対策と,2ポツの1から3までの利用円滑化のための措置につきましては,今年の10月1日から施行されるといった形で,改正事項によって若干施行日が分かれております。

今後,改正法の施行に向けまして,政令省令の整備や運用面を定めるガイドラインの策定などを進めていく必要があろうかと思います。

また,特に1ポツの2,ダウンロード違法化につきましては,国民のインターネット利用に深く関わるものですので,丁寧に分かりやすく,改正内容を周知していくということが求められてくるものと思っております。

この法案をつくる過程でも,委員の先生方の何名かには多大な御尽力いただいておりますが,円滑な施行に向けましても,引き続き御指導を賜れればと考えております。

事務局からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいまの説明につきまして,御質問等ございましたらお願いをいたします。いかがでございましょう。よろしゅうございますか。はい,ありがとうございました。

それでは,次に参ります。去る6月26日に著作権分科会が開催をされまして,放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化及び私的録音録画補償金制度の見直し,デジタル時代に対応した著作権施策の在り方につきまして,本委員会の審議事項とされました。これによりまして,順次,検討してまいりたいと思います。

それでは,議事の5に入りたいと思います。放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について(ワーキングチームの設置を含む)についてであります。

本著作権分科会等でのこれまでの経緯と今後の対応につきまして,事務局から説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それではまず,お手元の資料5-1を御参照いただきたいと思います。本課題に係るこれまでの経緯と,今後の対応の見込みについて御紹介したいと思います。

まず資料1ページ目,問題の所在でございます。冒頭に記載のとおり,放送番組のネット配信,これは高品質なコンテンツの視聴機会を拡大させるものでございまして,視聴者の利便性向上,コンテンツ産業の振興などの観点から非常に重要な取組だと理解をしております。ただ,放送番組には非常に多様かつ大量の著作物などが利用されておりまして,権利処理の負担が重いということが従来から指摘されておりました。当然放送するだけでもかなり権利処理に御苦労をされているところ,さらにネット配信を進めるということになりますと負担が増えていくため,これまで以上に迅速・円滑な権利処理の環境を整備していく必要があるということでございます。この点,既に権利者団体による集中管理が進んでおりまして,その中で包括許諾が行われたり,もしくは音楽分野については権利情報を集約したデータベースが整備・充実されるなど,運用面の取組も着実に進んでは来ております。ただ,どうしても運用では対応し切れない部分もあり,そうした部分については,制度面での対応が必要になろうと考えております。

特に米印に記載のとおり,著作権法上,放送と配信で権利の在り方にずれがある規定がいくつかございまして,この部分の手当ても必要になってくるかと思います。

ちょっとページが飛びますが,5ページをお開きいただきまして,権利の在り方にずれがある部分を簡単に御紹介したいと思います。まず,5ページが放送とネット配信に係る著作権制度の現状について,表で整理したものございます。著作権法上の権利は,大きく「著作権」と「著作隣接権」で成り立っておりまして,著作権というのは著作物を創作した人に与えられる権利でございます。放送,インターネット配信に関しましては,公衆送信権という権利が設定されており,その性質は許諾権となっていますので,事前に権利者の許諾を得ないと使えないということになります。放送事業者からしますと,放送にせよ配信にせよ,事前にしっかり許諾を取らないと,著作物が放送番組で流せないという仕組みになっております。

次に,著作隣接権につきましては,著作物を創作するというよりは著作物を演じたり,伝達したりするという人に与えられる権利でございまして,ここでは,映像実演,レコード実演,レコードという3つについて記載をしております。

この著作隣接権については,放送とネット配信で制度が異なる部分がございます。例えばレコード実演,レコードにつきましては,放送する場合には報酬請求権という権利が設定されており,事前の許諾は必要ないけれども,使った場合には事後的に報酬を支払うことが求められております。

一方で,ネット配信になりますと,許諾権という位置づけの権利が設定されておりますので,事前の許諾が必要ということになります。このため,放送では流せるけれども,ネット配信について許諾が得られないので,ネットでは流せないという場面が生じ得るという状況になってございます。

ただ,米印で記載のとおり,許諾権の下でも円滑な利用が可能となるよう,集中管理が進んでおります。集中管理がされていれば,基本的に一定の対価を払うことで自由に使えるという仕組みになっておりますので,この部分は実質的に報酬請求権と同じような運用がされていると言えるかと思います。

他方,集中管理団体に属していない方,ここでは便宜上「アウトサイダー」と書いておりますが,団体に属していない方の権利については,個別に許諾を得る必要があるため,許諾を得るための手続的な負担などが重いということが課題になっていると承知しております。

次に,6ページを御覧いただきたいと思います。今,著作隣接権の取扱いについて御説明をしましたが,そのほかにも著作権法上,放送と配信で権利の在り方がずれている部分がいくつかございます。

まず,1では,38条3項を挙げておりますけれども,これは,営利を目的としない公の伝達などについての権利制限規定でございます。これにより,権利者の許諾なく喫茶店などでテレビで放送される番組を見せることができる一方で,同時配信等は見せられないという問題がございます。

2も同様に,国会などでの演説を放送することはできるけれども,同時配信などを行うことはできないという取扱いになっております。

また,3では68条の著作物の放送に当たっての裁定という規定を記載しております。権利者との協議が整わないなどの場合には,放送事業者は文化庁長官の裁定を受けて著作物を放送できるという規定がありますが,同時配信等には対応しておりませんので,配信に当たって協議が整わない場合には,この仕組みは使えません。

こうした形で,著作隣接権や権利制限規定などにおいて,放送と配信で権利の在り方がずれているという点が,課題として存在しているということでございます。

恐縮ですが,また,1ページに戻っていただければと思います。ただいま御説明したような権利のずれの部分も含めまして,今後制度的な対応を議論していく必要がございますが,その際には,権利処理の円滑化と権利保護・適切な対価の還元を両立させる必要があろうかと思います。当然,放送番組をネットで円滑に流していくというのは重要な取組でございますが,その中で,どうすれば放送事業者と権利者がWin-Winの関係になるのかということを意識しながら,具体的な制度設計等を検討することが重要かと思っております。

下に図をつけております。これは放送番組の制作から,放送・配信・再活用の流れを簡単に図示したものでございます。

従来は,上のラインにありますように,初回の放送をして,場合によってはリピート放送,DVD化などをしていくということが行われてまいりました。これが最近では,下のラインにございますとおり,インターネットを使って,同時配信,追っかけ配信,見逃し配信,VODという形で様々なサービスが普及してきており,これに係る権利処理をいかに円滑化していくかということが課題として設定されているということでございます。

次に,2ページ目に参りまして,本課題に関するこれまでの検討の経緯を簡単に御紹介いたします。

この課題についてはもともと規制改革の文脈の下,2年ほど前から議論が重ねられてきたものでございます。平成30年6月の閣議決定におきましては,放送業界を所管する総務省がまず課題の整理などを行い,それに基づきまして著作権制度の在り方について必要な見直しを行うということが求められておりました。

その後,総務省での検討が重ねられ,また,規制改革会議においてもフォローアップなどがされまして,令和元年11月中旬に総務省においてひとまずの取りまとめが行われております。放送事業者の要望を踏まえた取りまとめがなされ,これに基づく検討が文化庁に依頼をされたという経緯でございます。

その後,令和元年12月から令和2年2月まで,3か月間集中的に文化審議会の小委員会で議論をいただきました。その中では,放送事業者,権利者団体など幅広い関係者からのヒアリング・議論を経て,制度整備の大きな方向性を「基本的な考え方」として取りまとめております。

また,その後,右に記載しているように,規制改革推進会議におきましては,改めて放送事業者などの意見を踏まえながら,具体的な制度がどうあるべきかという議論が継続され,直近では令和2年7月に規制改革実施計画が改めて閣議決定をされています。この中で検討の段取り,スケジュールなどが定められております。後ほど御紹介しますが,次期通常国会での法案の成立を目指すということまで明記されているところでございます。

次に,3ページに参りまして,昨年度,文化審議会の小委員会でまとめていただいた基本的な考え方について,概要を御紹介いたします。この課題については非常に多岐にわたる課題を解決しないといけないとものであり総合的な検討が必要となりますが,一方では早急な措置も必要であり,ある程度優先順位をつけながら議論していこうという方針が決まっております。

特に,放送とネット配信で権利の在り方に差異がある部分,これを優先的に扱おうというのが昨年度のまとめでございます。先ほど御紹介したような著作隣接権の取扱いや現行の権利制限規定などの拡充から検討に着手をする一方で,その他,著作権の取扱いなどの様々な課題も重要でございますので,これについても継続的かつ総合的に検討を行うことになっておりました。

また,検討に当たっての留意事項を,ここでは3点記載しております。1点目は,同時配信に加え,追っかけ配信,見逃し配信など,放送事業者では様々なニーズを抱えておられますので,それに対応していこうということが記載されています。また,米印にありますようにその際にはウェブキャスティングと呼ばれるネット独自の配信につきましても,放送のネット配信とは少し異なる部分もありますが,それも視野に入れつつ検討を行うということになってございます。

2点目は,運用面の改善を進めつつも,いわゆるアウトサイダーへの対応など,運用では対応し切れない課題については法整備を検討することが記載をされております。

3点目は法整備の検討に当たっての留意事項でございまして,既に権利者団体と放送事業者の間でライセンス契約が結ばれている部分もありますので,そうした市場を阻害しないように十分注意すること,また,例えば権利制限をつくる場合には補償金請求権を付与するなど,権利者の利益保護に適切な配慮を行うということが記載されております。

次に,4ページに参りまして,今後の検討の流れについて御紹介をいたします。規制改革実施計画の記載を基に整理しているものでございます。まず,8月末までの間に,総務省において,放送業界として具体的にどういう対応を求めているのかという要望を改めて取りまとめていただくことになっております。それを受けて,文化庁における検討を行うわけですけれども,この文化庁における検討は大きく2段階に分かれております。

1段階目は,9月から10月末と書いている部分でございまして,総務省でまとめていただいた要望を基に,権利者,関係者などからの意見をお伺いし,措置の方向性について検討し,結論を得るという段階でございます。

また,2段階目は,11月から12月末と記載しているところでございまして,10月末までの段階で結論が出た方向性に基づいて,具体的な制度設計などの詰めを行っていくということになります。当然,改めて詳細について関係者の合意を得る必要がありますし,また,議論する中で,優先度の高いものから順次,制度設計及び法案概要の作成をしていくという流れになろうかと思っております。

本基本政策小委員会におきましては,9月から12月末までの4か月間,集中的にこの課題について議論をいただき,方向性をおまとめいただきたいと思っております。その後,親会である著作権分科会で報告書を取りまとめの上,スムーズに行けば,次の通常国会に著作権法改正案を提出していきたいと考えております。

この流れに沿って検討する課題については,規制改革実施計画において大きく3つに区分されておりまして,若干スケジュール感など違いがありますので,御紹介いたします。

小さい米印で書いている部分になります。課題の1つ目は,放送のインターネット同時配信等に係る権利の在り方で,これは,先ほど御紹介した著作隣接権や権利制限規定など,権利の在り方自体をどうしていくかという部分でございます。2つ目が,文化庁長官による裁定制度の見直しでございます。裁定制度とは,権利者不明などの場合に,権利者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け,通常の使用料に相当する補償金を供託することで,著作物を適法に利用できるという制度でございまして,これまでも制度運用の改善を重ねてきておりますが,放送のネット配信という文脈の中でより使い勝手の良い制度にすることが求められております。

この1点目の権利の在り方,2点目の裁定制度につきましては,優先的に措置をするということで,上に記載したスケジュールのとおり,次の通常国会への法案提出を目指して議論を進めていくことになっております。

一方で,3つ目に,拡大集中許諾制度など新しい制度をつくっていくとことも課題として設定されておりますが,こちらは令和3年中に改めて要否について検討を行うという形で,1年遅れのスケジュールになってございます。

この拡大集中許諾制度につきましても簡単な説明を下に記載しております。著作権等管理事業者が,自ら管理していない,いわゆるアウトサイダーの権利についても一括して許諾を出せる制度でございまして,北欧諸国では導入例があると承知をしております。ただ,これを我が国に導入するとなりますと,法制的な面でも運用面でも様々な課題を乗り越える必要があり,課題が多いだろうということで,まずはほかの課題について優先的に処理をした上で,令和3年中に要否を含めて検討するという取扱いになってございます。

次の5ページ目からは参考資料でございまして,5ページと6ページは先ほど御紹介しましたので飛ばしまして,7ページを御覧いただきたいと思います。

著作権者不明等の場合の裁定制度について,より詳細な利用のための要件や手続,これまでの改善の経緯などを記載しております。詳細は割愛いたしますが,利用実績について右側のグラフを御覧いただきたいと思います。

この裁定制度自体は,現行著作権法が制定された50年前から存在しておりますけれども,制度創設当初からしばらくはあまり利用がされてきませんでした。ただ,真ん中辺りに2009年とありますが,この辺りから制度の大きな見直しを実施し,それをきっかけに,折れ線グラフにありますように利用実績が年々増加しているところでございます。この10年で大体4倍ぐらいに申請数が増えているということでございまして,制度の改善に伴って利用が大きく増えていることが見てとれるかと思います。

ただ,この制度が,放送や放送番組のネット配信に当たってはあまり活用されていないということもございますので,放送事業者のニーズを酌み取った上で,どういう見直しが望まれるのかという点について議論をいただきたいと思っております。

最後の8ページ目は,規制改革実施計画などの本文を記載しておりますが,先ほど御説明した内容と重なりますので,説明は割愛いたします。

資料5-1は以上でございまして,続けて資料5-2を御覧いただきたいと思います。ワーキングチームの設置についてお諮りをしたいと思います。

まず1に記載のとおり,ただいま御説明した放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関して,ワーキングチームを設置して,集中的に御審議をいただきたいと考えております。

ワーキングチーム員の構成については,2に記載しております。ワーキングチームに座長を置き,基本政策小委員会の委員のうちから基本政策小委員会の主査が指名すること,また,ワーキングチーム員は,基本政策小委員会の委員のうちから主査が指名した者及びその他の者であって,主査と協議の上で文化庁が協力を依頼した者で構成されることとされております。

それから,3でワーキングチームの議事の公開については,著作権分科会で決定された方針に準じて行うこととされております。

事務局からは以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいまの説明につきまして御質問等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。今子委員,どうぞ。

【今子委員】はい,御説明どうもありがとうございました。インターネットの利用環境が非常に進んでいるということは,現在のコロナ禍で明らかになったところで,同時配信等のインターネットの利用ニーズがさらに高まっているものと思います。

ですので,課題の解決に向けて今集中的に議論すると御紹介があったんですけれども,その点,非常に賛同しております。同時配信等に含まれているとは思うんですけれども,ウェブキャスティングについても課題は同じであるとの認識なので,併せて議論を行っていくべきだと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

福井委員,どうぞ。

【福井委員】どうも詳細な御説明をありがとうございました。

私自身がラジオのほうのradikoの権利処理に関わっておりまして,まさに権利の集中処理が鍵だということが同感であります。この関連で,ちょっと呼び名について御質問したいことがありまして,アウトサイダーという言葉が何度か登場して,実は若干違和感がありました。あるいはそういう呼び方も一般的なのかもしれないのですが,私自身の集中管理団体に作品を委ねていない方は,海外でもノンメンバーと呼ぶことのほうが,なじみがある気がするのですね。ノンメンバーであればメンバーではないということで,事実そのままなんですけれども,アウトサイダーというと団体に加わっていないことが若干悪いことのようなニュアンスも感じます。確かに加わっていただくことがもう理想には違いないんですけれども,御存じのとおり団体というものは関わっていると,時に窮屈な部分もありますので,いろんな考えで加わっていない方はいらっしゃって,呼び方としてどうなのかなということを感じました。

もう一つは実質的な質問で,例えば放送番組等についてサンプル調査でも結構なんですが,幾つか取り上げてみて,関連する権利者のうち一体何割ぐらいが集中管理をされていない権利者であったのかというようなデータはこれまであったのかなと。この資料で言うところのアウトサイダー問題が,実際どのぐらいの率であるのかということが分かれば教えていただければと思いました。

【末吉主査】はい,ありがとうございます。

【福井委員】すいません,もう1点だけ。

【末吉主査】どうぞ。

【福井委員】裁定制度,これはアーカイブやその他のデジタル配信にとっても非常に重要なことで,権利者不明問題の解決のためにもぜひ,さらに進めていただければと思います。確かに制度改善は進めていただいておりますが,実際に使っている立場からすると,まだまだ一般の人あるいは事業者でも,そう気楽に使える制度とはちょっと言えないなというのが率直な思いです。そのハードルは明瞭で,事前供託制度だと思うのです。事前にもし権利者が現れたとするならば,このぐらいの使用料が適当であろうということを,著作権課の方々にお示しして,その金額を事前に供託しないといけない。

ところが,いない相手に向かって,一体どのぐらいが適当な金額かということを算定し説得するのは非常に難しい。しかも,過去の権利者の出現率は1%前後などと一般に言われていると思いますが,ほとんど出てこないんです。ほとんど出てこないということは,供託してもいわば無駄になる可能性が高い。この事前供託制度については従来から議論もありましたが,ぜひ見直しの議論を進めていただければと思うところです。

以上です。

【末吉主査】はい,3点いただきました。事務局でお願いします。

【大野著作権課長補佐】まず1点目,用語の使い方でございます。この「アウトサイダー」という用語に若干違和感があるという御指摘でございましたけれども,事務局としては検討の経緯を踏まえてこのように記載をしております。つまり,本件は総務省で課題の整理が行われた上で文化審議会で議論が進められてきたわけですけれども,総務省で議論がされていたときから,集中管理団体に属していない方をある意味分かりやすく表現するために「アウトサイダー」という表現が使われており,それを引き継いで,昨年度の文化審議会の審議に係る資料にも記載をしておりました。

ただ,改めて御指摘もいただきましたので,どういう用語が適切なのかという点については,その概念整理も含めて,ワーキングチームで議論を頂き,整理していきたいと思っております。

2つ目は,サンプル調査などを基にした集中管理されていない割合に関するデータの有無についてでございますが,現時点では,あまり正確なデータの把握というのがされていないのが実態です。ただ,民放におきましても,同時配信の実証事業が既に行われておりまして,その中でフタかぶせという形で配信できなかった割合が何%だというデータも出されておりますので,それをより詳細に分析をしていけば,どういう要因で権利処理ができなかったのか,集中管理されていないものがどれぐらい使われていたのかという点が,明らかになろうかと思います。規制改革会議の答申の中では,そうしたフタかぶせの詳細な要因分析なども求められておりますので,総務省と連携しながら課題を明らかにし,それに対応した措置をワーキングチームで議論いただけるように整理したいと思っております。

3点目の裁定制度につきましては,御指摘のとおり,事前供託制度の改善についても課題として規制改革会議でも指摘がされてきたところでございます。御承知のとおり,平成30年の著作権法改正で,一定の範囲で免除ができるという仕組みが設けられておりまして,既に,国,地方自治体,NHKなど,確実に補償金を事後的に支払えると見込まれる主体については,免除対象として指定がされているところでございます。政令で対象を更に追加していくということも可能でございますので,どういう主体であれば確実に事後的な補償金の支払いが可能なのかということも精査しながら,政令での指定を含めて制度の在り方を幅広にワーキングチームで御議論いただきたいと考えております。

以上です。

【末吉主査】はい,ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

中村委員,どうぞ。

【中村委員】ありがとうございます。次の議題である私的録音録画補償金については,私,16年前の見直し論に参加をいたしました。それから,12年前のダビング10の整理にも携わりました。非常に激しい利害の対立がありまして,そのときは複数の大臣が登場して,訴訟もありました。それでも解決していないという,そういう問題であります。

一方でこの問題,通信放送融合という言葉が,公文書に初めて登場したのが1992年,電気通信審議会の答申でございまして,30年近くのテーマなんです。日本の著作権制度がガラパゴス化したこの30年のテーマなのに,制度の見直し論議というのはこの一,二年前に始まったということであります。これ本来論ずべきタイミングとしては,送信可能化権をつくったとき,あるいは電気通信役務利用の放送法をつくったとき,これ2001年のことです。それから通信放送の法体系をガラポンにした,約10年前,何度もあったんですけれども,この議論はきちんと行われませんでした。それを今直ちに整理をするというのは,かなりステークホルダーの皆さんのそれなりの覚悟とアクションが必要だと私は考えます。とても重いテーマで,簡単じゃありません。第三者が理論的な整理をしたからといっても動かないというのがリアリティーだと思っています。

もちろん,この問題の解決はデジタル化に遅れを取った日本にとって待ったなしの重要課題でありますし,私自身は海外の制度と歩調を合わせるべきだと考えているんですけれども,それを前進させようと思ったら,まずステークホルダーの皆さんの意見集約,その調整に期待をしたいと思います。

それから同時に,この件は通信放送の法制度ともリンクをしていきます。著作権の制度と通信放送法制度がばらばらに議論されてきたということも問題の一因であるということも留意すべきではないかと思います。

以上,コメントです。

【末吉主査】ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。

ほかにいかがでございましょうか。上野委員,どうぞ。

【上野委員】ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。

ほかにいかがでございましょうか。上野委員,どうぞ。

【上野委員】ありがとうございます。今,中村委員も御指摘になりましたように,この問題は,具体的な議論としては最近かもしれませんけど,非常に以前から問題とされてきたものと承知しておりますし,また,我が国特有の法状況が指摘されているところでもあります。今回ようやく,この問題に関して具体的な立法に進んでいくとすれば大変結構なことと思いますので,今後の動きに期待したいと思います。

ただ,留意点として幾つか指摘されておりまして,本日の資料でも,特に「ライセンス市場を阻害しないよう十分注意する」とか,あるいは「権利者の利益保護に適切な配慮を行う」といったようなことが書かれておりますところ,もしそのようにするのであれば,これを実現するための具体的な制度論のメニューを幅広く検討していくべきではないかと思います。

実際のところ,国際的にはこの問題に関しましても様々な立法例が見られるところでありまして,先ほどちょっとお話がありましたようなECL――日本ではこれについてはもうちょっと先の段階で検討することになるのかもしれませんけれども――もありますし,権利制限するにしても,ライセンスがある場合にはそちらを優先するといったライセンス優先型の権利制限規定ですとか,あるいは強制許諾であるとかいった立法例もあるところです。日本法にとっての是非はともかくといたしましても,そうした諸外国における立法例のアイデアというのは我々の選択肢を豊かにするものと思いますので,視野を広げて幅広に検討するのがよいかと思います。また,日本法にも,探ってみるといろいろ面白いアイデアがありまして,例えば視聴覚障害者に関する37条という規定は権利制限規定なんですけれども,同条3項但書は,権利者等が自ら公衆への提供提示を行っている場合はこの限りでないとして権利制限を除外するという規定になっていまして,言ってみたら権利者がちゃんと自分でビジネスをやっているという場合は権利制限が働かないということになるような規定であります。もちろん,そのようにすべきかどうかは今後の課題ですが,そういった国内外の立法例を幅広く視野に入れて,様々な選択肢でこの問題乗り切っていただければと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございますか。

福井委員,どうぞ。

【福井委員】今の上野委員のライセンスをしている場合には権利制限が働かないという視点は私も大賛成で,ぜひそういう視点を議論に加えていっていただければと思います。

それから,先ほどの裁定制度についての事務局のお答え,どうもありがとうございました。誤解のないように申し上げておくと,これは支払う補償金が惜しいという金銭の問題では恐らくなく,多くの利用者にとっては,処理コストの問題です。その金額を確定するのに非常に手間暇がかかって,制度利用が困難な処理コストになってしまっている問題だと思うのです。

その意味で,事後的に万一権利者が現れたときに,確実に支払えるであろう団体というご説明が今あったのですが,そこに絞ってしまうと,一番この制度の利用を必要としている団体や個人にまでは,広がらないんじゃないかなということを危惧します。

ぜひ制度のありようについては,権利者不明問題がかなり利用の障害になっているという実態もあると思いますので,ゼロベースで議論をいただければと思うところでした。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。

はい,ありがとうございました。先ほど決定をされました資料2の2ポツ目の留意事項に基づきまして,また今事務局から資料5-2に基づいて説明がありましたとおり,本小委員会に放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチームを設置することとしたいと思いますが,いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】よろしゅうございますか。ありがとうございます。

それでは,ワーキングチームを設置させていただきたいと思います。放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化につきましては,今後ワーキングチームにおいて議論をいただくこととなります。

このチームの構成員につきましては,私のほうで指名をさせていただきまして,後日,事務局よりお知らせをしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

続きまして,議事の6に入りたいと思います。私的録音録画補償金制度の見直しについてでございます。著作権分科会等でのこれまでの経緯と今後の対応につきまして,まずは事務局より説明をお願いします。

【日比著作物流通推進室長】それでは,資料6を御覧ください。

クリエーターへの適切な対価還元についてという資料に基づきまして,私的録音録画補償金制度の見直しについて御説明をいたします。

本小委員会に初めて御参加いただく委員もいらっしゃいますので,制度の概要と現在の検討状況につきまして,御説明をさせていただきたいと思います。

まず,制度の概要でございますけれども,私的使用のための複製,こちらは著作権法第30条第1項によりまして,権利者の許諾なくできるということになっておりますが,デジタル方式の私的録音録画につきましては,権利者の利益を保護するために,録音録画を行う者が,機器や記録媒体の購入時に一括して補償金を支払うという制度でございます。

資料の趣旨というところにありますように,技術の発達普及によりまして,録音・録画というのが家庭内において容易に行われるようになり,その結果として社会全体として,大量の録音録画物が作成されるという状況について,私的複製を無許諾で認めるということと,権利者への対価還元ということのバランスを取ったものでございます。

補償金の支払いと分配の仕組みについて,1ページ目の下に書いてございます。こちらは文化庁の指定管理団体が補償金をまとめて請求をするという仕組みになってございまして,支払義務者は機器の購入者ということでございます。

まず,左側の支払いの仕組みのところですけれども,この指定管理団体として録音につきましては,私的録音補償金管理協会,sarahと呼んでおりますが,このsarahが指定をされておりまして,こちらが購入者に請求をするということでございます。

購入者は機器を小売店等で購入をいたしますけれども,製造業者・輸入業者が,この制度の協力義務者として位置づけられておりまして,機器等の価格に補償金額を含めて,まとめて補償金を払うということで,製造業者・輸入業者がsarahに販売量に応じて補償金額を一括支払いするという仕組みになってございます。

補償金額につきましては,小さく右下のほうに書いてありますように,基準価格の1.5%程度ということでございます。

右側,分配の仕組みですけれども,sarahから,基本的に音楽に関わる権利者であります作曲者ですとか歌手,演奏家,レコード製作者に,団体を通じて分配をされるという仕組みになってございます。

ただし,私的録音録画の行為そのものをつぶさに補捉,把握をすることは困難でございますので,例えばCDの販売やレンタルの実績,あるいは放送の実績データを基に分配をしているということでございます。

このように,分配の制度には一定の限界があるということから,どうしても分配がなされない権利者が一定程度存在をするという仕組みでございますので,それに対応するために,権利者全体のために補償金の一部を使うということになっておりまして,左側に書いてありますところの共通目的事業,著作権等の保護に関する事業ですとか著作物の創作の振興や普及に資する事業を行うために,補償金額全体の2割を支出するという運用をしてございます。

2ページ目を御覧ください。この制度の運用の現状ということでございます。まず左側,補償金の対象機器・記録媒体の一覧を載せております。録音については,例えばミニ・ディスク,MDのレコーダーですとかそのディスク,あるいはCD-Rといったようなものが指定をされておりますが,現在広く使われておりますポータブルオーディオプレーヤーですとか,あるいは録音録画以外の用途にも用いられるようなスマートフォン,パソコン等は現在の制度の対象になっていないということでございます。

録画につきましては,例えばDVDでありますとかブルーレイ・ディスクといったようなものが指定をされておりますけれども,こちらはアナログ放送をデジタル信号に変換をして録画するというタイプの機器のみが指定をされているという状況でございまして,現在のデジタル放送を録画する機器というのは,対象になっていないという状況でございます。

右側の補償金収入総額の推移というところですけれども,このようなことから制度創設以降,ピーク時,平成12年においては録音と録画を合わせまして41億円程度の補償金収入がございましたけれども,その後,年々減少いたしまして平成30年度においては2,600万円にとどまっているという状況でございます。

次の3ページ目を御覧ください。この制度の見直しに関する検討の経緯を簡単に書いてございます。

この補償金制度は一番上にありますように,平成4年度に創設をされ,録音については5年度から,録画については11年度から運用開始されております。機器を指定する,あるいは追加をしていくということに当たりましては,随時権利者とそれから協力義務者であるメーカー,あるいは文化庁と経済産業省とが協議を行いながら,合意をしたものを指定してきたわけでございますが,その後,右側の上の方にありますように,流通するポータブルオーディオプレーヤーといった機器についても,この制度の対象にすべきという権利者側の立場と,そのような機器というのは,インターネットを通じた配信によって音楽を提供する際に課金済みであって,加えて補償金を徴収するとなると二重課金となるということで,制度の対象にすることに反対をするメーカー側との対立が顕在化いたしました。

そのような中,平成16年度から文化審議会の著作権分科会で,この制度の見直しの議論がスタートしたわけでございますけれども,5年間議論して,20年度の時点で,関係者間の意見の対立が大きく,見直しについて合意に至らず,一旦,文化審議会の議論は中断をしたという状況がございます。

その下に参考として書いてある,20年から24年度までの間には,地上デジタル放送の完全実施におきまして,放送番組の録画回数を10回までに制限をするというダビング10と言われる著作権保護技術を導入することが決まりました。

その一方で,このようなものを導入する環境整備の一助として,その当時のブルーレイディスクレコーダーとディスクにつきまして,新たに制度の対象にしたということでございますが,先ほど御説明いたしましたように,この対象とした機器にについて,アナログ放送のデジタル録画をできる機器のみを対象とするのか,あるいはデジタル放送をデジタル録画する機器もこの対象に含まれるのかという点で,メーカー側と権利者側とで意見の対立がございまして,資料にございますように,平成21年度から,SARVHと呼ばれる私的録画補償金管理協会が,メーカーである東芝を提訴したということがございます。

裁判の結果,知財高裁において,ここに書いてありますように,デジタル放送専用の録画機器というのは,現行の政令指定機器には含まれないという判決で確定をいたしまして,その後,議論がまた中断をしているという状況でございました。

改めて議論を再開したのは,平成27年度からでございます。著作権分科会にありました保護利用小委と言われるところで,平成27年度から4年間,クリエーターへの適切な対価還元の在り方を改めて検討行いました。平成31年2月の時点で審議経過報告をまとめておりますけれども,その時点でも残念ながら,一定の方向性を合意できるというところには至っておりません。

そういう状況を踏まえまして,その下に書いてございますように,昨年度,平成31年度から,関係府省庁,内閣府の知的財産戦略推進事務局,それから文化庁,経済産業省,総務省の4府省庁によって検討するというフェーズに入ってございます。こちらは関係当事者間の意見の隔たりが大きいということを踏まえまして,改めて関係省庁において議論を整理しようということでございます。

次の4ページ目を御覧ください。主な論点を簡単に御紹介する資料でございます。一番上問題の所在ですけれども,課金対象につきまして,先ほど御紹介したとおりMD等の過去に広く流通していた機器に限定をされているということ,また,それらを用いた私的録音が減少する一方で,対象外のパソコン・スマートフォン・ポータブルオーディオプレーヤーといったものによる複製実態が広がっているということ,また,ストリーミング配信など,そもそも私的複製を伴わないサービスも台頭しつつあるということ,それから録画につきましては,先ほど御説明したように,現在の対象機器,アナログ放送を録画可能とする機器というものは,現在市場には流通をしていないということでございます。

このような論点につきまして,大きく言いますとこの補償金制度は役割を終えたのか,それとも,複製の実態に対応して,課金対象を広げるべきかどうかという点で,当事者間で意見の相違があるということでございます。

その下の主張の違いのところを御紹介いたしますけれども,まず左側,製造業者等,メーカーの立場といたしましては,オレンジの主な考え方にありますように,私的複製の正確な捕捉が困難なこの制度は拡大をすべきではない。それから,汎用機器(パソコン等)は,そもそも私的録音録画を行わないものも多いという意見でございまして,代替手段,契約による手法などを模索をして,公平な徴収分配に限界がある現在の補償金制度は廃止・縮小すべきであるという立場でございます。

一方で右側,権利者側の立場といたしましては,黄色い主な考え方にございますように,現行補償金制度は,私的録音録画の実態に追いついていないということ,また,欧州諸国では,補償金制度が普及をしておりまして,それに倣い,補償金の対象を拡大すべきであるという立場でございます。契約手法などの代替手段も直ちには機能し得ず,実際の複製機器に課金できていない実態を改善すべきであるという立場でございます。

そのような中,今年度につきましては,その下に書いてあります知的財産推進計画の2020におきまして,以下のような記載がされております。施策の方向性の下ですけれども,クリエーターに適切に対価が還元され,コンテンツの再生産につながるよう,デジタル時代における新たな対価還元策やクリエーターの支援・育成方策について検討を進めるとともに,私的録音録画補償金制度については,新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として,私的録音録画の実態等に応じた具体的な対象機器等の特定について,関係府省の合意を前提に文部科学省を中心に検討を進め,2020年内に結論を得て,年度内の可能な限り早期に必要な措置を講ずると決まっております。

このような計画に基づいて,現在関係4省庁で議論を継続しているところでございますが,次の5ページ目において,実際にどのような議論されているかということを簡単に御紹介したいと思います。

コンテンツの利用行為と私的複製の関係(イメージ)ということで図にしたものでございますが,録音につきましては,その音源としてCDからの録音と,それから音楽データのダウンロードによる録音ということ,それから,そもそも私的複製を伴わないストリーミングサービスという大きく3つのパターンがあるという前提に基づきまして,ストリーミングについては,今回の問題とは関係がなく,また,2つ目のダウンロードサービスにつきましては,複数デバイスへのダウンロードというのはダウンロードの際の契約で,対価還元についても処理済みであるという整理でございますけれども,その先,ダウンロードした後のコピーということはあり得まして,その部分,水色で書いておりますけれども,私的複製として捉えると考えられております。

また,CDからの録音につきましては,そこにパソコンの図がございますけれども,様々な録音機器にCDの音源を録音するということ自体が私的複製に該当いたしますし,また,パソコン等にためた音源を別の機器や記録媒体にコピーをするということも可能でございますので,水色で塗った部分というのが私的複製として,対価還元がなされていない部分ではないかという前提で,これを行うような録音機器,私的録音を行う蓋然性の高い機器というのは,どのようなものがあるかという議論がなされております。

右側の録画についてでございますけれども,こちらは4つ録画源を示しております。まず一番下,DVD,ブルーレイ・ディスクからの映像の再生というのは,私的複製を伴いませんので問題になりません。また,動画データのストリーミングサービスも同じように私的複製を伴いません。議論になるのがテレビ放送,無料放送や有料放送において,それをコピーをする,ダビングをするといったような行為についてでございます。

これにつきましては,上の無料放送につきましては,先ほど御紹介したとおりダビング10という技術が施されていることによりまして,10回まで複製が可能ということになっておりますので,その10回までの複製というのが私的複製に該当し得るということでございます。

また,有料放送からのコピーというのは,多くは1回まで複製可というケースが多いかと思いますが,ここにつきましてもコピーがあり得るということでございます。

以上のように録音について大きく2類型,録画について2類型について,契約で対価還元が必ずしもされていないのではないかという部分の私的複製につきまして,実際にこれを行う蓋然性の高い機器がどのようなものがあるか,それに対して現行制度の対象にすべきかどうかという議論の整理をしてございます。

先ほど中村委員からも御指摘がございましたように,この問題は長年にわたり議論を続けている中,なかなか結論を得られていない大変難しい課題でございまして,そういう意味で関係当事者間では意見の隔たりが大きくまとまりませんので,昨年度からは関係省庁で議論を整理をして,それから,改めて審議会での議論を行っていただこうという段取りで努力をしているところでございます。

今年度先ほど御紹介しました知財計画のスケジュールに則って,できる限り議論が進むように,文化庁としても努力をしていきたいと思いますし,関係府省庁の合意と議論の整理ができましたら,また,本小委員会に御説明をし,意見交換をしていただきたいと考えてございます。

説明は以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。ちょっと日比室長,私から1つ確認したいんですけど,ちょっと念のため,今御説明いただいた資料の3ページ目のところで,今最後にもちょっと言われた,平成31年度から関係府省庁でいろいろ検討いただいていると。今の段階はその段階だという理解でよろしいでしょうか。

【日比著作物流通推進室長】はい,おっしゃるとおりでございます。

【末吉主査】ありがとうございます。その検討の結論が出てから,この小委員会でいろいろ議論することになるとそういうイメージですか。

【日比著作物流通推進室長】そのように考えております。

【末吉主査】ありがとうございました。

それでは,この点,御質問等ございましたらよろしくお願いします。どうぞ。

【高杉委員】すいません,御説明ありがとうございました。保護利用小委員会に出席していた者としてちょっと補足的な意味も含めて一言申し上げたいと思うんですけれども,平成31年の2月の審議経過報告で2つの方向性が示されていたと思っておりまして,1つは現行の私的録音録画補償金制度は一律に上乗せする方式でありますので,いわゆる録音録画専用機器に事実上限定されていると。その現行制度が想定している録音録画専用機器で,対象となっていないものがあるやなしや,これを確認するというのが一つ。

それからもう一つは,大きな意見の対立があった汎用機などの録音録画問題でございます。私の認識としては,今4省庁で協議をしておるものについては,前者,現行制度が想定している録音録画専用機器で対象となっていないものがあるのかないのかということについての議論をしているものと理解をしております。

それで補償金については,平成4年度に導入されておりますけれども,まさに権利の保護と利用のバランスを図るために導入された補償金制度が機能していないということについて非常に残念な思いでありますし,この補償金制度をうまく使うことによって,双方が利益を得られるような形で,著作権の保護と利用のバランスが取れるような形で,制度が動くことを何とか今年度実現したい,していただきたいと思っております。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。

ありがとうございました。それでは,次に参りまして,今度は議事の7番目でございまして,デジタル時代に対応した著作権施策の在り方について議論を行いたいと思います。

事務局には,検討に当たっての資料を準備していただいておりますので,まず,これまでの経緯と今後の対応につきまして,説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料7を御覧いただければと思います。本課題についてのこれまでの経緯,今後の対応について簡単に御紹介をいたします。

まず,1ページ目でございます。皆様,御案内のとおり,現行著作権法は昭和45年に制定をされてから,50年を迎えたところでございます。その間,社会状況が大きく変化してきましたので,それに対応して,累次にわたる制度改正を数十回重ねてきております。

特に近年では,デジタル・ネットワーク技術を活用して様々な新しい著作物の利用形態が出てきておりますので,それを円滑化する観点から,新しい権利制限規定をつくるなどの対応を短期間で積み重ねてきているところでございます。

また,米にありますように,一方では,インターネット上で著作物が不正に流通するといった問題も顕在化してまいりましたので,それを防止するための法整備であるとか,もしくは,法整備に限らず,データベースの構築など運用面の取組も随時進めてきたところでございます。

下の部分では,近年の主な制度改正を列挙しておりまして,白丸が利用円滑化のための措置,黒丸が権利保護の強化のための措置でございます。例えば平成21年の著作権法改正におきましては,インターネット情報検索サービス,いわゆる検索エンジンに対応した権利制限規定をはじめとして,デジタル・ネットワークを活用した様々な著作物利用を円滑化する措置を創設しております。また,黒丸にありますように,違法にアップロードされた音楽・映像のダウンロードwp一定の要件の下で違法化するという形で,ネットワーク上での不正流通への対策も併せて講じてきております。平成24年にも同様の趣旨の改正をしておりますし,平成26年には電子書籍の市場が拡大してきたことを踏まえて,電子出版権という新しい権利の設定も行っております。

次に,2ページに参りまして,冒頭にTPPと書いておりますけれども,こうした国際的な動きにも対応して,随時著作権法の改正を進めてきております。また,デジタル教科書というものが学校教育制度の中で制度化される際に併せて,そこに著作物を掲載することに関する権利制限規定を設けるということも併せて行っております。

また,平成30年の著作権法改正におきましては,それまでの議論の集大成として,イノベーションの創出などに資する柔軟な権利制限規定というものが整備をされております。

それ以前の権利制限規定は,個別具体の場面を想定した規定が多く,明確である反面,新しい利用形態に対応できないという点で柔軟性を欠いているという指摘がされておりましたところ,それに対応するため,明確性と柔軟性のバランスが取れた形での規定の整備を行っております。具体的には,大きく3つの規定を設けまして,例えば,AIによるディープラーニング,ネットワーク上でのキャッシュ・バックアップ,情報解析・所在検索サービスなど幅広い利用に対応できるように規定が整備されております。また,今日の議事の中でも御報告いたしましたとおり,オンライン授業等の推進という観点からの法整備も行っております。

それから,令和2年著作権法改正,これも本日の議事の中で御報告いたしましたが,インターネット上の技術が発達することで海賊版の流通がより深刻になっていることを踏まえた措置も新たに講じております。

さらに一番下に米で書いておりますとおり,次の通常国会への法案提出に向けまして,まさに本日の議題でもあった放送番組のネット配信の課題,もしくは他の小委員会の課題ではありますが,図書館関係の権利制限規定をデジタル化・ネットワーク化に対応していくといった課題についても,次の法整備に向けた課題として議論が進んでいるというところでございます。

次に,3ページでございます。今,簡単に御紹介しましたとおり,これまでもデジタル化・ネットワーク化への対応は積み重ねてきておりますけれども,昨今さらに技術が発展し,コンテンツの創作・流通・利用を巡る環境がさらに大きく変化しつつあるという指摘がされております。ここでは,国際的なコンテンツプラットフォームの影響力拡大,コンテンツと媒体(メディア)との結びつきの多様化,誰もがコンテンツの制作者となり得るUGCの流通環境の整備,コンテンツ関連ビジネスの収益構造の変化を例として挙げております。こういった変化が著作権制度にどのように影響してくるのか,こういった変化の中でどのように著作権施策を考えていくべきかというのが,大きな課題として設定をされていることでございます。

知的財産推進計画2020におきましては,下線を引いておりますように,デジタル時代におけるコンテンツの流通活用の促進に向けて,著作権制度を含めた関連施策の在り方を幅広く議論していこうということになっております。スケジュールとしては,2020年内に知的財産戦略本部の下に設置された検討体を中心に,具体的な課題と検討の方向性を整理し,その後,関係府省において速やかに検討措置を講ずることとされているところでございます。

これを受けまして,今後の対応というところに記載のとおり,8月から知財本部・構想委員会の下に,新しくタスクフォースが設置をされ,関係者からのヒアリングを行いながら,課題の整理,方向性の議論がされていくと聞いております。年内に一定の整理がなされるかと思いますので,そこで文化庁で検討すべきとされた事項については,来年1月以降,この基本政策小委員会で御議論いただくことになろうかと思います。

その際,当然,制度的な議論もあろうかと思いますし,運用面で改善を図るべきという部分もあろうかと思っております。いずれにしましても,中長期的な視点から,望ましい著作権政策の在り方を幅広に御議論いただきたいと思っております。

そういう意味で,本格的な議論は来年の1月以降ということになりますが,せっかくの機会でございますので,この際,皆様方の専門的な観点から,感じておられる課題や著作権制度の在り方について幅広く御意見をいただきたいと思っております。この場でいただいた御意見については,あらかじめ知的財産戦略本部にもお伝えさせていただきまして,向こうでの議論にも生かして頂くことを考えておりますので,忌憚のない御意見をいただければと思います。

事務局からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

ただいま,事務局から説明がありましたとおり,本課題は知財事務局のタスクフォースで議論が行われた後に,来年から文化庁で議論するということになりますが,本件に関する課題やそれを解決するための施策などにつきまして,委員の皆様方の自由な御議論をここではいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】この問題の抽出みたいな部分になってしまって,実際の解決というのは正直言ってできるのかどうかという問題もあります。知財のほうでもいろいろな意見を出させていただこうと思いますが,最初に今のコロナの状況から非常にフリーのクリエーター,これは単純にパフォーマーだけじゃなく,一般的なクリエーターも非常に逆境というか,苦しい状態に至っています。外に出られないということから,これについてはやっぱりフリーという非常に脆弱な経済基盤の人たちで,今まで日本は非常にそれがよいとされてきた風潮があるので,今後権利者の中でもいわゆる事務所制度とかそういう努力をして,経済基盤を強固にしていくということも大事なんでしょうけれども,非常に憂うべき状態にあります。

これは単純にクリエーターが脆弱になってって,それでその人たちがいなくなるというだけじゃなくて,実は日本というその文化の問題に関わってくるという大げさに言えばですね,非常にもそういう何か今回のコロナのインパクトは,文化基盤に関わってくるぐらい大きな波だったというふうに私は捉えています。

この中で,先ほどずっとここの年限でありました,これまでの著作権法改正の年表がありましたけれども,やはり今のデジタルの活用ということになってくると,旧来の権利の中で権利制限というのは非常に多くなってきます。もちろん権利者に有利な,そういった改正もありますけれども,やはり権利制限が非常に多くなってきている。

その中で,権利者は先ほど言った事務所化して,集団化すると同時にやはり集中管理をどうしても進めなきゃいけない時期に来ているんだと思います。先ほどの拡大集中許諾もそうですし,なぜ日本で拡大集中許諾がしにくいかというと,やはり集中化ができないから,なかなかできていない分野が多いからです。そういうふうなことだと認識しています。

これを改善しようとしていくんですけど,日本の中での固有な事情として,実は各国ではかなり大きな資金源となっていた教育での利用に関する補償金がなかった,ずっとなかったわけですよね。つまり還元されることがなかったというようなことが集団化を妨げていった要素はあると思います。

今回新たに補償金制度ができたことによって,権利者というのはきちんとそれを還元するシステムをつくって,集団化をしていく,管理化をしていくということが行われるかと思うんですが,もう一つ,実は重要な問題があって,それは私はこれが実現できるのかどうか,アプローチすらあるのかどうか分かりませんが,公衆送信権と複製権が完全に分離をして,公衆送信権というのはアナログからデジタルの時代に,切り替わるときは非常に明確な権利として確立しているし,独立した権利として扱いやすかった。だけど,例えば当たり前に全てがデジタルになっちゃった時代に,公衆送信権,複製権,それからさらに上映する,打ち出すときにほかの権利制限が抜きにしても上映するという権利が非常に分かれていることで,実は集中管理が物すごくしづらくなっているなという気がするんです。

一連の事業なり何なりの行為を集中管理しようとすると,たくさんの権利を一度に預からなきゃいけないし,そもそもそれのばらばらなもので公衆送信権といっても,そもそも分からない権者が大半ですから,そういう人たちにいろんな権利を一括で預からなきゃいけなくなってくると,集中管理というのはかなり厳しいなということがあります。

ただ現在,そういった中でも集中管理をして,ライセンスということを出していくことによって,権利制限ではなくライセンスでやっていく努力はしていますけれども,先ほどのお金の問題と,それからいわゆる権利の集中化の難しさということで,より権利制限が単純に増大していくと,先ほど言った今回のコロナとかいろんなときでも,体制がなく,クリエーターがどんどん減っていってしまう。それによって日本独自のやっぱり文化的な後退が見られてしまうんじゃないかという危惧は持っています。

大げさかもしれませんが,少なくともSARTRAS,教育補償金とライセンス,それから複製権センター,これは企業内に出す許諾,それから,写真著作権協会という権利者団体の現場,いろんなところから見ても,非常に権利者が今厳しい状態にある。その中の一因というのは今のやはり運用の中にあるので,こういうことについては新しいデジタル時代に有効な制度と,それから法制度といわゆるスキームですよね。

そういうふうなことを考えていかなきゃいけないのかなと。これは1年,2年,3年,5年,10年変わるのか変わらないのか,私はちょっと法律について分かりませんけれども,何らかの新しい時代に向けた整理が必要なんじゃないか,それが文化的後退をもたらさないようにしなきゃいけないんじゃないかということを,ちょっと危機感を強く感じております。現場からの意見なので,どのようにしたらいいか分かりませんが,今日のこのお題である新しい時代に,要するにデジタルの普及した時代に向けての性道徳議論ということであれば,一つのポイントになるのかなと思って発言をさせていただきました。

いろいろてんこ盛りに盛り過ぎましたけれども,意見でございます。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

久保田委員,どうぞ。

【久保田委員】瀬尾さんの意見にも大賛成なんですけれども,その視点というのがやっぱり法と電子技術と教育という大きな視点からみんなが議論しないと。特に私的録音録画の問題も何十年もやっていて,よく理解できない部分もあるんですが,今,その端末であるハードをつくっている会社というのは,もう日本企業じゃなくなっている。そういう実態になっていますよね。

こういう中で大きな変化が起きているはずなんですけれども,何か本質的なその議論のぶつかり合いにおいて,そういったソフト化,アプリがどんどん出てくる中で,ハードの役割も変わってきていると思います。この辺のバランスみたいなものをもう少しこう大きな視点で見るような期間なり,検討機関,組織,そして考え方がないといつも目先にある事項だけを追っかけるようになってくるのではないかと思っています。

そして,私的録音録画の補償金の問題というのは,今回SARTRASを通じたり,教育フォーラムを通じて,教育機関であるユーザーの方々と権利者がどこまで膝を詰め合わせて,この先を考えていくかという意味では大きな試金石です。海外から見たときも,日本がこういったことを上手に成功できたときの,得られる知識やノウハウといったものは先ほど,瀬尾さんが言われるところに資すると思います。

そういう意味では,私は親会の著作権分科会でも何度も言っているのですが,法と電子技術と教育の,教育の部分がすごく重要で,これから来る我々が豊かな,安心で安全な社会をつくるときのそういった社会というものを前提にしたときに,情報化社会と置き換えてもいいんですけれども,情報の意味とか価値を理解するためには,リベラルな教育から生まれてくると思うので,そういった大きな視点で,「著作権教育は情報教育である」というふうなことを,エピソードとして伝えています。審議会でももっと情報教育,著作権教育の意味とか価値を,多くの知恵のある人たちや,また現場ではそういう意識が沸き起こってくるような教育をどうしたらいいのかというものも,本省の文部科学省の初等教育,中等教育,高等教育を含めて,みんなで議論する必要があると。毎回同じことを言っていますが,ぜひこのことについては,ここの委員会が適切かどうか分かりませんけれども,そういう視点で考える取っかかりをつくっていただきたい。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

ほかに,後藤委員,失礼しました,お待たせしました,どうぞ。

【後藤委員】まず,インターネット上の海賊版対策ということで法改正いただきまして,御尽力いただきました文化庁事務局の皆さんに厚く御礼を申し上げたいと思います。それも含めまして,今海賊版対策ということについてちょっと報告と,今後のお願いということをさせていただければと思います。

まず5G始まりましたけれども,これが本格的に完備されれば,コンテンツはもう膨大に流通するわけであります。反面でこの海賊版問題というのもまた大きな問題になるということがあります。その点において,政府が昨年10月に関係省庁でまとめていただきましたインターネット上の海賊版に対する総合対策メニューでございますが,CODAにおきましては,この第1段階の1から7まで,1,2,3,4,5,6の項目について,尽力をしてまいるということであります。

その中の一例としまして,まず広報啓発でありますが,経済産業省と出版広報センターの御協力をいただきまして,「STOP!海賊版」ということで,16の漫画を著名な先生たちにつくっていただきまして,小冊子にまとめて,関係方面に配布をさせていただいているというところです。

それと先般7月29日には萩生田文科大臣にハローキティ,キティちゃんを著作権広報大使ということで任命いただきました。今年,このキティちゃんによりまして,啓発動画も作りまして,広く一般消費者に著作権の大切さというのを訴えてもらえるツール等々を作っていきたいと思っています。

そして何よりも一番大切なのが国際連携,国際執行です。国際執行ということで,このたび下半期から,今年の後半,そして来年において,経済産業省等の御支援をいただきまして,具体的な国際執行に向けたデジタルフォレンジック調査,プロファイリング調査というのを本格的に進めてまいろうかと思います。

どういう結果が出るか分かりませんけども,その際に求められるのは,やはり国際レベルでの議論。例えばWIPOでの議論が必要なのか,それから,2国間協議の議論が必要なのかということがあろうかと思いますので,ぜひとも文化庁さんはじめ文部科学省さんには今後どうするかと,その結果をも出てどうするかということについても深く関与いただいて,御指導をいただければと思います。

以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

河野委員,どうぞ,すいません。

【河野委員】発言させていただきます。消費者,一般利用者の視点から思ったことをお伝えしたいと思います。

今日はこれまでもインターネット上での同時配信に関わる権利処理の円滑化の話とか,私的録音録画補償金制度の話とか,これまでしっかりと取り組んできたことについて,進捗の御報告をいただきました。

私が消費者として率直に感じているのは,クリエーターとそこから生み出された成果物を届ける環境が大きく変化していると感じています。今ここで検討していただくことになっています,これからの時代のデジタル世代におけるコンテンツの流通活用の促進に向けてというところなんですけれども,技術の進展により大きく状況が変化していて,誰もが発信者になりうる,先ほど今のコロナ禍では,どこかに所属することがクリエーターを守ることになるという御意見もございましたけれども,そもそもクリエーターというありようもかなり変化していくのではないかという受け止めをしております。ぜひここでの検討が包括的に行われ,これまで利害関係が対立していて,なかなか積極的に前に出られなかった権利者の保護と経済の活性化両方に上手に歯車が回っていくように検討を進めていただければと思っています。

消費行動もかなり変わってきています。サブスクリプションのサービスも活発化しており,これまでの感覚とは違う利用の仕方というのがどんどん増えてきますので,そういったこともぜひ考えていただければと思います。

それから,先ほどからやはり気になっていたのが,他省庁での検討とか他のタスクフォースでの検討を受けてというところです。当然それぞれの検討をした組織には,著作権に関わる知識と知見を持った方が,関わってくださっているという前提で,そういったところの検討を受けて,ここで課題の検討を行うという理解だと思いますけれども,どこかの検討結果を受けて,そこの範囲内でこちらで対応を検討するというのはやや残念な気がいたしますし,ぜひ積極的が関与をしていくということも考えていただければと思いました。

以上です。よろしくお願いします。

【末吉主査】ありがとうございます。

福井委員です。どうぞ。

【福井委員】ありがとうございました。3つ申し上げます。

まず状況全体の問題意識に関しては,事務局がおまとめいただいた内容,そして各委員の御指摘,全くそのとおりだろうと思います。どう対処すべきかという回答は,決して一つではないと思いますが,ただ,作品やデータにアクセスして,利用できるような環境を高めていって,同時にクリエーターたちに収益の還元を行っていく,この両輪だという点では異論は少ないだろうと思います。その意味でこの間,著作権法の改正が進んできた道筋は,基本的に正しかったと感じます。保護期間の延長はちょっと要らなかったかなと思いますけれども,基本的には正しかったと。

2つ目です。その方向性をたどっていく上で重要なのはやっぱりスピードと,そして,ルールの分かりやすさだと思うのです。やっぱり著作権法は今や万人の法ですから,多くの人が読んで分からないルールではないのと同じになってしまいます。現在はどうしても条文はどんどん複雑化していますけれど,その中でも分かりやすさをぜひ追求していきたいなと思います。

最後です。その上で,現実の変化のスピードが速いので,法制度だけの議論ではどんなに速度を上げてもどうしても限界がありますね。契約やカルチャーやマーケットなどいろんな要素を組み合わせた,メニューミックスで対応するということがとても大事だと思います。

最大の例は,後藤委員の指摘もあった海賊版です。今回の改正に関しては多くの方の懸念があったので,納得のできる落としどころを見つけられたのはとてもよかったと思いますけれども,ただ,あれが対策の本丸だとは,実は私は思っていません。むしろこの間,通信界と出版界の協力体制は,数年前に比べると格段に進みました。そういう民間の協力がとても大事だなと。

ただそれだけやって対策が進んでも,今でも海賊版サイトの,例えば上位10サイトへの月間のアクセス数を合計すると,1億からどうしても下がりません。対策は進んでいる,でも相手も巧妙化している。身元を隠す技術も今まで以上に巧妙化しているから,例えば海外で訴訟を起こしても,重要な身元情報を取れないケースが増えてきています。

そういう中で,国際的な意味でも民間も含めた協力体制を構築していくべきかと感じます。その中ではプラットフォームとか,ドメインネームの管理に関わっているICANNのような,いわゆるゲートキーパーの役割が重要になるはずですので,そういう議論をぜひ行っていければと思いました。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

今子委員,どうぞ。

【今子委員】すみません,ありがとうございます。2点ありまして,1点目は私的録音録画補償金制度です。先ほど同時配信でも申し上げたんですけれども,インターネットの利用環境が非常に進んでおりまして,制度導入時とはコンテンツ利用環境が異なっているという背景に照らしてしっかり議論すべき問題かと思っております。

先ほどの資料の4ページ目に補償金制度は役割を終えたのか,複製の実態に対応して課金対象を広げるべきかとありますとおり,対象の機器の議論だけではなく制度の縮小・廃止も含めた議論,検討であると認識をしております。

2点目なんですけれども,デジタル時代に対応した著作権施策の在り方についての議論を進めるということをお伺いしまして非常に期待したいなと思います。クリエーターへ収益還元していくことは本当にもちろんのこと,創作がさらに喚起されるような仕組みを検討できたらと思っております。

また,利用の円滑化についてもまだ課題があると思っています。集中管理など許諾の得やすい環境整備の問題がまだ残っていますし,権利制限については著作権の制限が進められてきましたが,例えば,著作者人格権はデジタル化時代に対応しているのかという点も,検討の余地があるのかなと思っています。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。よろしいですか。

ありがとうございます。貴重な御意見をいただきました。恐らく知財本部にいろいろフィードバックもいただけるのではないかと思います。

本小委員会でいただきました御意見につきましては,後日,内閣府知的財産戦略推進事務局にも,事務局のほうから提供させていただきますとともに,今後の検討を進める上での参考とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

その他,何か皆様のほうから御指摘等ございますればどうぞ。よろしいですか。

ほかに特段ございませんようですので,本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に,事務局のほうから連絡事項ありましたらお願いします。

【大野著作権課長補佐】本日は第1回目の会議で,夜の遅い時間の開催になりましたが,大変活発な御議論をいただきありがとうございました。次回の小委員会につきましては,同時配信等に係るワーキングチームでの議論の状況も踏まえながら,改めて調整をさせていただければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第1回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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