文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第3回)

日時:令和2年12月14日(月)

13:00~15:00

場所:AP虎ノ門 I+J室

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について
    • (2)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1-1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(報告書)(令和2年12月2日放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム) 概要(2.1MB)
資料1-2
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(報告書)(令和2年12月2日放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム)(709.2KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(408.2KB)
参考資料2
第20期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(141KB)
参考資料3
基本政策小委員会の運営について(令和2年8月4日基本政策小委員会)(96.1KB)
参考資料4-1
総務省提出資料(「放送コンテンツの同時配信等における権利処理円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ」 概要)(300.9KB)
参考資料4-2
総務省提出資料(放送のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する放送事業者の要望 取りまとめ)(別紙を含む)(554.7KB)

議事内容

【末吉主査】ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第3回を開催いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。

また,議事1に関して,同時配信等ワーキングチームの委員,総務省情報流通行政局情報通信作品振興課の三島課長,放送事業者を代表して,NHK知財センター著作権・契約部長の広石様,テレビ東京ホールディングス法務統括局番組契約部長の丸田様にも陪席をいただいております。

皆様におかれましては,ビデオをONにしていただくとともに,御発言をいただく際には,御自分でミュートを解除して御発言いただくか,事務局でミュートを解除いたしますので,ビデオの前で大きく手を挙げていただきたいと思います。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきまして確認をいたします。予定されている議事の内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々には入場していただいているところでありますが,特に御異議はございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】ありがとうございます。それでは本日の議事は公開ということで,傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することはどうか御遠慮いただきますようお願いいたします。

本日は,三谷文部科学大臣政務官に御出席をいただいております。三谷政務官から一言御挨拶をお願いいたします。

【三谷文部科学大臣政務官】文部科学大臣政務官の三谷英弘と申します。著作権分科会基本政策小委員会第3回の開催に当たりまして,一言御挨拶申し上げます。

委員の皆様方におかれましては,これまで同時配信等の円滑化をはじめ,様々な課題について貴重な御意見を賜りまして誠にありがとうございます。同時配信等の円滑化については,第2回の本小委員会でいただきました御意見も踏まえ,ワーキングチームでさらに議論が重ねられ,12月2日に報告書が取りまとめられています。その中では多岐にわたる課題について幅広い関係者の意見を踏まえ,総合的な解決を図るための制度改正の方向性がきめ細かく示されております。

本日はその報告書を基に,視聴者,放送事業者そしてクリエーターの全ての皆様にとって利益となる措置が講じられますよう,精力的に御議論をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。私からの挨拶は以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

まず,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただきたいと思います。

資料1-1が,12月2日にワーキングチームでまとめていただいた報告書の概要,1-2が報告書の本体となっております。また,参考資料といたしまして,関係法令や委員名簿など,関連する資料をおつけしております。不足など不備がございましたらお伝えいただきたいと思います。

【末吉主査】それでは,議事に入りますが,初めに,議事の進め方について確認をしておきたいと思います。

本日の議事は,1,放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化について,2,その他の2点となります。

早速議事に入りたいと思います。

議題1,放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化についてです。

12月2日に放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチームにて,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書が取りまとめられました。まず,本ワーキングの座長である私から概要を報告した上で,事務局から補足説明をしたいと思います。

放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関しまして,ワーキングチームでの検討状況等を御報告いたします。

本課題については,9月上旬以降,ワーキングチームにおいて集中的に議論を進めてまいりました。8月末に総務省が取りまとめた放送事業者の要望を基に,幅広い権利者からのヒアリングを行いつつ議論を進め,12月2日にワーキングチームとしての報告書が取りまとめられています。報告書では,丸1,権利制限規定の拡充,丸2,許諾推定規定の創設,丸3,レコード・レコード実演の利用円滑化,丸4,映像実演の利用円滑化,丸5,裁定制度の改善,という5つの柱で,放送事業者の抱える様々な課題に対応した法改正等を行うことをお示ししております。具体的な内容については,事務局から追加説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料1-1を御覧いただきたいと思います。ワーキングチームで取りまとめいただいた報告書の概要を整理しておりますので,こちらに基づき御説明をいたします。なお報告書の本体は資料1-2になりますので,必要に応じて併せて御参照いただければと思います。

まず,資料1-1の1ページ目を御覧いただければと思います。検討の経緯については,先ほど座長から御説明のあったとおりであり,12月2日にワーキングチームとしての報告書が取りまとめられています。今後の予定としましては,本日の小委員会での議論を経て,御了承いただけましたらパブリックコメントを行いまして,最終的には,著作権分科会としての報告書を取りまとめ,次期通常国会への法案提出・成立を目指していくことにしております。

次に,対応に当たっての基本方針でございます。放送番組の同時配信等は非常に重要な取組であることから,放送と同等の権利処理を可能とする制度改正等を行うという方針でございます。対応に当たりましては,視聴者,放送事業者,クリエーターの全てにとって利益となるような措置を迅速に講じていくことにしております。その際の留意事項については,一番下の丸に書いておりますが,多様なサービス形態,実態変化等に柔軟に対応できる仕組みを構築すること,それから,著作物の創作・流通・利用のサイクルを維持・活性化するため,放送事業者からクリエーターに適切な対価が支払われるようにすることが極めて重要であること,この2点を留意事項として記載しております。

次に,2ページを御覧ください。制度改正の対象とするサービスの範囲についてでございます。同時配信のほか,追っかけ配信,一定期間の見逃し配信を対象にすることを基本にしておりまして,さらに,放送対象地域との関係を問わず,番組内容の一部変更,CMの差替えも認めるなど,柔軟な仕組みを構築することとしております。

具体的な要素については,下の丸1から丸7に記載をしております。まず丸1の見逃し配信の期間につきましては,過度に期間が拡大しないよう注意をしながら,例えば毎週放送の番組は1週間,月1回放送の番組は1か月とするなど,実態に即した柔軟な期間設定を可能にすることにしております。

また,丸2につきましては,放送対象地域に関わらず,同時配信等を可能とすることにしております。

また,丸3,放送で流す番組との差異に関しましては,権利処理未了のために生じるフタかぶせなどに伴う最小限の変更やCM差替えも可能とすることとしております。

丸4,配信形態につきましては,放送事業者からの御要望に基づき,ストリーミング形式での同時配信等を対象にすることにしております。

それから,丸5,実施主体,こちらも放送事業者からの御要望に沿いまして,放送事業者が主体的に実施していると評価できるサービスであれば,配信プラットフォームが自前かどうかを問わず,対象にすることにしております。

丸6,視聴者からの対価徴収の有無に関しましては,多様なビジネスモデルに柔軟に対応し得るよう,法律上の制約は設けず,今後の実態等を踏まえつつ,政省令等で具体的な取扱いを規定することにしております。

それから,丸7,ラジオ,衛星放送・有線放送の取扱いでございます。これらのサービスは地上波のテレビ放送とは若干の差異を有するものですけれども,類型的に一律にこういったサービスを除外するということはせず,音楽配信ビジネスとバッティングする部分などをきめ細かく特定し,必要最小限の部分を除外するという方針になってございます。

次に,3ページを御覧いただければと思います。制度改正によって対応する措置内容の一覧でございます。後ほど個々に御説明をいたしますが,(1)から(5)まで5つの柱に沿って,法改正などを行うことで総合的な課題解決を図ろうとするものでございます。

なお,一番下の米印に記載のとおり,これとは別途,運用面で対応を進めるべき事項については,早急に当事者間での協議・対応等を進めるとされておりまして,既に総務省,文化庁の呼びかけの下,協議が始まっているところでございます。

次に,4ページを御覧いただきたいと思います。1つ目の措置内容である権利制限規定の拡充についてでございます。放送では許諾なく著作物等を利用できるという権利制限規定の全てについて,同時配信等にも拡大するという方針でございます。基本的に全ての規定について同時配信・追っかけ配信・見逃し配信の全てを対象に含めることにしておりますが,丸2の38条3項(営利を目的としない公の伝達等)については,ほかの規定と比べて若干差異のある記載ぶりになっております。

まず,38条3項の前段,非営利・無料で行う公の伝達につきましては,権利者に与える影響も比較的小さいことから,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を全て対象に含めることも検討の余地があるとされております。一方で,後段の営利または有料で行う場合,こちらについては,権利者側の御懸念が特に強いということも踏まえて,少なくとも同時配信は対象に含めることとしつつ,具体的な対象範囲については,視聴者・伝達を行う者の利便性と権利者の利益保護のバランスに十分留意をしながら,具体的な範囲を特定するという取扱いになってございます。その他の規定は全て見逃し配信まで拡充することにしております。

次に,5ページでございます。2つ目の措置である許諾推定規定の創設について記載をしております。まず,借用素材を含めた著作物と映像実演につきましては,放送・配信ともに許諾権が付与されておりますので,放送だけする場合も同時配信等を併せて行う場合もいずれも許諾が必要ということになっております。その上で,放送を認める契約を締結した際に,同時配信等の可否が不明確な場合もあるため,そうした場合の利用円滑化を図る観点から措置内容を記載しております。

具体的には2つ目の丸にありますように,放送及び同時配信等に係る許諾権原を有する者が,送番組での利用を認める契約を放送事業者やその委託を受けて,放送番組を制作する者と締結するに当たりまして,権利者側が別段の意思表示をしていない場合には,放送だけではなくて,同時配信等の許諾も行ったと推定するという規定を設けることにしております。これにより権利処理をワンストップ化していこうというものでございます。

推定を及ぼすサービスの範囲につきましては,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を全て対象に含めることとしております。ただし,権利者側からは,この推定規定によって不利な条件での契約を強いられることへの懸念も示されていたことから,その払拭のための対応についても併せて検討する必要があるとされております。

この点に関しまして,米印に記載のとおり,法改正以前に締結された契約に遡及できるかということがワーキングチームでも議論され,結論としては,直接の推定効果は及ぼすことはできないと整理がされております。もっとも,ここに記載のように,過去に放送やオンデマンド配信の許諾を包括的に得ていたような場合には,許諾推定規定が遡及するということではなく,当初の契約の解釈として,リピート放送の同時配信等も許諾したと認められることもあり得るということで整理がされております。

いずれにしましても,この許諾推定規定については,権利者側の懸念を払拭しつつ,放送事業者にとって安定的な利用が可能になることが重要であるため,具体的なルール作りを行う必要があるとされております。

次に,6ページでございます。許諾推定規定について,具体的な制度設計・運用などについて,ワーキングチームで行っていただいた議論を整理しております。

まず,検討に当たっての視点としましては,放送事業者による安定的な利用が可能か,権利者側の不意打ちや不利な契約の助長といった懸念を払拭できるか,法的に推定を及ぼすに足りる事情が認められるか,この3点に基づいて,議論を行っていただいております。

まず,推定を受けるための条件につきましては,放送事業者側の条件と権利者の別段の意思表示の在り方について,それぞれ3つずつ,留意事項を記載しております。まず,(1)放送事業者側の条件としては,同時配信等を業として実施していること,その旨を権利者が把握できるよう一定の方法で公表していること,契約に当たって放送のみを行う,同時配信等を行わない旨を明示していないこと,この3つを求めることにしております。なお3点目は,単に放送すると伝えただけではこれに該当しないことも確認的に記載をしております。

次に,(2)が,権利者側が推定を及ぼさせないために行う別段の意思表示の在り方についてでございます。別段の意思表示は契約時に行っていただくこと,メールなどを含む書面での契約の場合は別段の意思表示も書面で行うこと,また,別段の意思表示の内容でございますけれども,同時配信等を拒否する旨の意思表示のほか同時配信等を行うに当たっての条件等を伝える意思表示も含まれるということを記載しております。

次に,7ページを御覧いただければと思います。ここでは,一旦なされた推定を権利者側が覆す際の事情,考慮要素の例を記載しております。これはあくまで解釈の領域の話かと思いますけれども,ワーキングチームで御議論いただいた考慮要素を2つ整理して記載しております。

1つ目は,その権利者が同じ放送事業者との間の過去の契約交渉において,同時配信等を明確に拒否する旨の意思表示をしていたことでございます。典型例は矢印のところに記載のとおりでございまして,番組のジャンルに関わらず長期間にわたって繰り返し同時配信等を拒否する旨の意思表示をしていた場合,もしくは,ごく近接した過去において同様のジャンルの番組で同一の著作物について同時配信等を拒否する旨の意思表示をしていた場合,こうした場合がこの考慮要素に該当するだろうということでございます。

それから(2)は,権利者に支払われた対価が明らかに放送のみを行う場合の水準になったことでございます。これも例を矢印で記載しておりまして,放送のみを行う場合と,放送と同時配信と併せて行う場合の対価の水準の相場が異なる場合に,前者の水準しか支払われていない場合,こうした場合がこの考慮要素に該当するだろうと整理がされております。

なお,米1に記載のとおり,この2つの要素はあくまで考慮要素となり得る事情として示されたものでございまして,これに該当することをもって必ず推定が覆るというわけではございません。あくまで総合的に事情を勘案した上での解釈ということになろうかと思います。

それから米2では,こうした推定が覆り得るという特殊事情がある場合には,放送事業者が権利者の意向を明示的に確認すれば,容易にリスクを解消することができるとされております。ワーキングチームにおきましては,放送事業者,権利者双方にとって,契約条件をクリアにした上で契約を行うのが最も望ましいという御意見も多く示されたところでございます。

こうした基本的な考え方をワーキングチームで整理をいただきまして,今後の対応としては,より具体的な内容等について,総務省,文化庁の関与の下でガイドラインを策定することが適当とされております。その際には,例えば推定を覆すことができる期間の取扱いなど,法律上の解釈・要件に関わらない部分も含めて,幅広い事項について合理的なルールづくりを行うことが望ましいとされているところでございます。

次に,8ページを御覧いただければと思います。3つ目の措置内容であるレコード・レコード実演の利用円滑化でございます。これらについては,放送と配信で制度上の差異があるということに起因する課題を解決しようというものでございます。

具体的には,同時配信等に当たって円滑に許諾が得られないと認められる「被アクセス困難者」のレコード・レコード実演に関しまして,通常の使用料相当額の補償金を支払うことを前提に権利制限規定を創設するとしております。すなわち報酬請求権化を行うことで,事前許諾を不要にしようというものでございます。ここでは権利制限の対象者を「被アクセス困難者」と便宜上呼んでおりまして,これは,放送事業者から見て許諾をとるためのアクセスが難しいという点に着目した用語でございます。

具体的な内容は米印に記載をしておりまして,「著作権等管理事業者による集中管理が行われておらず,かつ権利情報プラットフォーム上で,適正な使用料で確実に許諾する旨が明らかにされていないもの」,これを対象にすることが基本とされております。ただし丸3の外国原盤につきましては,日本の管理事業者が管理していない場合も相当程度あり,かつ,丸2の日本のプラットフォーム上に登録することを求めるのも現実的ではないところでございます。この点,権利処理窓口が別途明らかになっている場合にまで全て権利制限を行うのは適当ではないため,外国原盤の取扱いについては適切に対象範囲を定める必要がある旨が整理されております。

このレコード・レコード実演の権利制限の対象とするサービスの範囲につきましては,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を全て対象に含めることとされております。

また,補償金の徴収・分配スキームに関しましては,放送事業者による権利処理手続の簡素化と被アクセス困難者による対価獲得の実効性確保の両面から,一元的な窓口を設けることを可能にすることが望ましいと整理がされております。ただし米印に記載のように,法律上は一元的な窓口を設けることを可能にしつつ,実際に,そうした団体を指定するかどうかにつきましては,被アクセス困難者の規模,手続コストの負担などを踏まえつつ,合理的な運用の可能性を見極めた上で,判断をすることが必要だとされております。

いずれにしましても,より詳細な運用等については,今後関係者間でさらに議論を行っていただく必要があろうかと思っております。

次に9ページでございます。4つ目の措置である映像実演の利用円滑化でございます。こちらは,特に過去に制作された放送番組のリピート放送を行う際に,併せて同時配信等を行おうとすると,その部分について許諾が必要になるという課題が挙げられておりました。対応としては,同時配信等に当たって円滑に許諾を得られないと認められる「被アクセス困難者」の映像実演に関して,初回契約に別段の定めがない限り,実演家の許諾は不要としつつ,通常の使用料相当額の報酬の支払いを求めることにしております。「被アクセス困難者」の定義につきましては,米印に記載のとおりでございまして,「著作権等管理事業者による集中管理が行われておらず,かつ,権利処理窓口が明らかでないもの」を対象にすることが基本とされております。

なお2つ目の米印に少し特殊な場合の取扱いを記載しております。初回放送時に同時配信等がされていない場合や,法施行前に初回放送が行われている場合,こういう場合には,初回契約時に実演家がリピート放送の同時配信等を見越して別段の定めをするということはなかなか難しいと考えられますので,こういう場合には別途,同時配信等を行う前に特定のウェブサイトでの公示などを通じて,実演家側の意思表示の機会を確保する必要があるとされております。

制度改正の対象にするサービスの範囲については,レコードと同様,同時配信・追っかけ配信・見逃し配信を全て対象に含めることとされております。また,補償金の徴収・分配スキームについてもレコードと同様,一元的な窓口を設けることを可能とすることが望ましいなどと整理がされております。

次に,10ページを御覧いただければと思います。5つ目の措置である裁定制度の改善でございます。まず,丸1では,協議不調の場合の裁定制度について,放送だけでなく,同時・追っかけ・見逃し配信に当たって協議が整わない場合にも,制度を活用できるようにし,さらに著作隣接権にも準用することとしております。

丸2,権利者不明の場合の裁定制度については,3つの措置を講ずることにしております。1つ目は補償金の事前供託免除の拡大でございまして,民放事業者について権利者が現れた場合の補償金支払いの確実性を担保するための要件を設定しつつ,事前供託免除の対象に加えることとしております。

2つ目は「相当な努力」の要件緩和でございまして,CRICのウェブサイトへの広告掲載について,現状では,7日間の掲載が終わった後にはじめて申請できるという取扱いになっておりますが,広告掲載直後からの申請を可能とすることで,利用開始までの期間を1週間短縮することとしております。

3つ目は申請手続の電子化,こちらは可能なところから速やかに進めることとしております。

それから丸3として,裁定に係る事務処理の迅速化についての記載もございます。今回の制度改正などを通じて,裁定制度の利用ニーズがより高まることが想定されることから,文化庁において事務処理体制の充実に努めるとともに,申請から利用開始までの標準処理期間を定めて公表するなど,事務処理の迅速化に向けた対応も進めることとされているところでございます。

内容は以上でございまして,今後のスケジュールとしては,冒頭でも御説明いたしましたけれども,パブリックコメントを実施し,最終的には,著作権分科会として報告書をまとめていただいた上で,次期通常国会への法案提出・成立を目指していくことになろうかと思っております。事務局からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。このワーキングチーム報告書につきましては,本日,御意見をいただきまして,内容についての御了解をいただけた場合には,本小委員会における中間まとめとして取りまとめの上,パブリックコメントを実施することを予定しております。

それでは,報告書の内容等につきまして,御質問,御意見等がございましたらば御発言をお願いいたします。いかがでしょう。

【高杉委員】高杉でございます。まず,短期間の間に,報告書をおまとめいただきましてありがとうございました。主査をはじめ委員の皆様に御礼申し上げたいと思います。

法改正の大枠については今,示されているところかと思いますが,問題は,まだまだ詰めなければいけないガイドラインなどがございまして,これにつきましては,放送事業者さんと権利者も含めて,真摯に十分な話合いをした上で,フェアなルール形成を目指したいと考えております。

それで,報告書の内容につきまして,2点,念のために確認をしたいと思っておりまして,資料1-2の報告書でお聞きしたいんですけれども,まず,4ページでございまして,7のラジオや衛星放送・有線放送の取扱いについてというところでございます。一番下のポツにございますけれども,ラジオや衛星放送・有線放送等を類型的に対象サービスから除外することはせず,音楽配信ビジネスとバッティングする部分などを具体的に特定し,そうした必要最小限の部分のみが除外されることとなるよう処置することが適当であるとしておりまして,政省令等において具体的な規定を行うこととしておりますけれども,政省令で定めるに当たっては,報告書にも記載されている通りに,ラジオに関してライセンスに基づく権利処理システムが着実に構築されてきた経緯があることを尊重するとともに,音楽配信ビジネスとバッティングするものを対象から除外するという理解で正しいのかどうか,お聞きしたいというのが1点。

それから,もう1点ですけれども,11ページでございます。これはレコード・レコード実演の利用円滑化の補償金スキームに関するところでございます。下から2つ目のポツのところに,仮に著作権等管理事業者が文化庁長官の指定する団体となる場合は,委託者に係る許諾に伴う使用料と,被アクセス困難者に係る補償金を区分して,受領・管理を行う必要があり,その前提として,放送事業者が両者を区分して支払う必要があることとありますけれども,これは,放送事業者は委託者に係る許諾に伴う使用料とは別に,被アクセス困難者の補償金を支払うという理解でよろしいのかどうか,念のために確認をしたいと思っております。以上です。

【末吉主査】お願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,事務局から回答をいたします。

1点目は,ラジオなどの取扱いについてでございます。事務局としても御指摘いただいたとおりの理解をしております。ここでは,除外するサービスの典型例として,有線ラジオ・衛星ラジオの個人向け配信というものを挙げておりますけれども,必ずしもこれに限らず,ライセンスの状況などをきめ細かく把握した上で,音楽配信ビジネスとバッティングするなど権利者の利益を不当に害するようなものについては,適切に除外していくということが想定されるところでございます。

それから2点目については,補償金スキームと,許諾に係る使用料の関係についてでございます。御指摘の点につきましては,ワーキングチームの中でも,放送事業者様から,現行の許諾に係る使用料とは別途,今回の補償金を支払う旨,御発言があったものと認識をしております。報告書では両者を区分して支払うと書いておりますけれども,これは概念上区分するというだけではなくて,現在支払われている使用料とは別途,今回の補償金をしっかり支払うという意味だと理解しております。その趣旨を明確化する必要があるということであれば,例えば,「区分して」の後ろに「別途」という文言を加えることもあるかもしれません。意味は変わらないと思いますけれども,記載を明確化する必要があるかどうかについて,さらに御意見があれば伺いたいと思います。ひとまず以上です。

【末吉主査】いかがですか。

【高杉委員】差し支えなければ,「別途」と入れていただくと,より明確になってよろしいかと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかに御意見,御質問ございますか。

岸委員からお願いします。どうぞ。

【岸委員】今の高杉委員の意見の延長というか,類似になると思いますけれども,まず,制度自体については,短期間で本当にいい方向でおまとめていただきまして,事務局の皆様,本当に御苦労さまでした。ただ,規制改革会議の議論なんかを踏まえますと,この制度の改正と,本来は対価還元の仕組み,これが両方セットだというのが河野大臣の認識でもあると思いますし,その点をしっかり,両方をうまくなるべく近いタイミングでセットするのが大事と思っておりますので,そういう意味で,高杉委員の指摘も踏まえまして,これは総務省や放送事業者の皆様の御協力も当然必要になりますけれども,ぜひ対価還元の仕組みも早い段階でセットいただければと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。御意見として承ります。ありがとうございました。

中村委員,どうぞ。

【中村委員】ワーキングに参加をしておりましたので,コメントだけをしておきます。

本件は私,法律論というよりも,放送局と権利者というステークホルダー間の調整問題と見ておりまして,その厄介な案件をこの短期間に調整をしてここまで落とし込んだという文化庁と総務省の対応を評価しております。これは利用者にとっては利便の向上になりますので,立法府としてもさほど異論はないと拝察をいたします。なので,早期に法制化を図っていただきたい。著作権法案の策定をめぐっては,内閣法制局が壁になって政府部内の調整に苦しむ姿をこれまで何度も見てまいりました。本件は順調に進むことを願います。

一方で,許諾の推定について,より具体的な内容等については,法施行までの間に,総務省・文化庁の関与の下で,関係者間十分に議論の上でガイドラインを策定することが適当とされています。補償金も同様の枠組みで合理的なスキームを構築することが適当とされているところでして,この著作権の制度というのはハードローの比重が重くて,官民での共同規制ですとかソフトローの対応が弱かった面があります。しかしデジタル時代の制度は,ガイドラインや協議の場づくりによるアプローチが不可欠です。法制度と並行としてこちらに力を注ぐように,官民の関係者双方にお願いを申し上げます。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。御意見として承りました。

福井委員,どうぞ。

【福井委員】ありがとうございます。福井でございます。

私,前回の議論以降,流れに十分ついていけないところもあるかもしれませんので,基本的なお尋ねでしたら恐縮ですけれども,今回のまとめ,概要の中で言うと8ページと9ページで,「被アクセス困難者」という言葉が出ております。従来で言うと「アウトサイダー」という言葉が使われており,私のほうで「ノンメンバー」という表現のほうが一般的ではないのかと申し上げていて,それで今回,「被アクセス困難者」という言葉になったという経緯でよろしいでしょうか。まず,この確認をさせていただきたいと思います。

【末吉主査】お願いします。

【大野著作権課長補佐】経緯は御指摘のとおりでございます。ワーキングチームの議論では,今回の制度改正の対象者は,ノンメンバーであるということを基本としつつ,そこからさらに一定のものを除いており,なかなかノンメンバーとも言いきれないことから,別の用語を様々模索した結果,少し難しいですが,「被アクセス困難者」という用語が選択されたところでございます。

【末吉主査】ありがとうございます。

【福井委員】ありがとうございます。そうであるとすると,おっしゃるとおり,この言葉は何なのかという反応が出てくることは,かなり確実かという気はするんですけれども,特に今,9ページでの御説明の意味合いを見ると,「集中管理が行われておらず,かつ,権利処理窓口が明らかでないもの」,これが被アクセス困難者だという表現ですね。従来,私,アウトサイダー,ノンメンバーという話をするときには,むしろ丸1の「集中管理がおこなわれていないもの」,このように理解しておりました。例えば拡大集中許諾の議論が行われるときには,集中管理が行われていないものが大体対象の定義になってきますね。そこについて一定の利用円滑化を図るからこそ,一気にこうした放送の配信ビジネスが進むわけです。それに対して今回は「権利処理窓口が明らかでないもの」という条件を付け加えて,両方そろって初めてこの制度対象になるのだとするならば,それは権利者不明の場合とどう違うのか,私にはよく分からなくて,裁定制度の話とどうすみ分けるつもりなのか。権利窓口が明らかな場合というと,要するに権利者が明らかな場合はほぼ広く含むように私には思えるのですね。それについては全部対象外にするのだとすると,本当にそれで放送の配信円滑化が進むのかという素朴な疑問を持ったのですけれども,あるいは私の問題意識が全然追いつけていないのかもしれませんので,御説明をいただければと思います。

【末吉主査】お願いします。

【大野著作権課長補佐】この部分については,放送事業者からのニーズを改めて聞き取り,権利者からの御意見も踏まえて議論する中で,この丸1,丸2を両方加味した上で,制度改正の対象者を定めることになったものと理解をしております。先生のおっしゃったとおり,この丸1,丸2を両方クリアするのは,権利者不明などの場合が多いだろうという認識もワーキングチームでは共有されております。ただ,仮にそうした場合でも,裁定制度を使うには時間的な余裕もなくて間に合わない際の利用を円滑化するものとして,放送事業者からもこの措置を入れてほしいという御要望が示されていたものと理解をしております。

【末吉主査】ありがとうございます。福井委員,ほかにどうですか。大丈夫ですか。

【福井委員】ありがとうございます。現場がこれで進むということであるならば,もちろんそれは何よりのことですので,それによって放送の配信が進んでいくことをぜひ期待申し上げたいと思います。ただ,さてこれで本当に十分なのかというところは,今後推移を見てみないと分からないように私は感じました。以上,コメントです。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。

大渕座長代理,どうぞ。

【大渕座長代理】今の点につきまして,私がワーキングチーム委員として参加した関係から申し上げますと,これで全部カバーしているというよりは,この範囲でどこまでカバーできるかというところで,最大限カバーしてみたらここまでだったということです。先ほどあったように,これから漏れるものは,また裁定で拾うということなので,別にこれだけで全部拾うわけではありません。そのような意味では,この制度で拾う分を最大限広げてみたらここになったということであると思いますので,そこのところはトータルベースで裁定と併せて御理解いただければと思っております。

私としては,今回,今の点も含めて,無理なく法律上カバーできるところはカバーしていて,法律としてはできることになるかと思います。他方で,先ほどから多くの方が言われているとおり,著作権制度というのは法律だけで機能するわけではなくて,法律を中核として,その周りにいろいろな関係者間の真摯な協議があって機能するものであります。なかなか今までは話合いがうまくいっていなかったとかいうことはありますが,せっかくこのように新しい法律という土台ができるのですから,この土台を生かして両者に真摯に協議をしていただいて初めて今やろうとしている目的が達せられるのであります。法律はコアではあるのですが,全てではありませんので,むしろこれを土台にして,これから真摯に細部についてもよく協議していただいて,初めて利用円滑化という大目的が達成されると思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

河野委員,どうぞ。

【河野委員】ご報告ありがとうございました。今回のワーキングチームの皆さんの報告書案について,一般利用者,消費者として,この案に賛同したいと思っております。利用者の立場からしますと,特に若い世代は,車離れなどと同様に,テレビ離れが顕著になっているところですけれども,クリエーターの皆様から提供される優良なコンテンツを享受する機会を,今回のインターネット配信の利用のルールづくりによって幅広く確保していただいたこと,法的問題,それから権利関係の問題に関して,専門家の先生方から見ると十分ではないという御判断もあるかもしれませんけれども,一般消費者から見ると大変分かりやすく的確な整理を行っていただいたと感じております。

そして,適切な制度変更と運用が行われることによって,権利者の皆様への利益を正当に確保することも可能になりますし,私たち一般視聴者が普段感じることができない仕組みに埋没しているクリエーターの皆様の御尽力といいましょうか,映像や音楽配信に何度も触れることができるという,文化に触れる機会を確保してくださるということで,感謝申し上げたいと思います。

その上で,先ほどから幾つか指摘がありますけれども,今後のガイドライン策定等においてぜひ御配慮いただきたいと思っているのが,クリエーターの皆様に本当にしっかりと利益が確保できるのかという点です。事務手続が煩雑になればなるほど,大きな仕組みがそこに入っていけばいくほど,クリエーターの皆様に回る分が少なくなってしまうのではないかという危惧がありますので,そこはガイドラインでしっかりと担保していただければと思います。

それからもう1点は,先ほどの被アクセス困難者の方々の権利保護も含めてですけれども,このルールが今後パブコメにかかると思いますが,クリエーターの方々で知らない方がいらっしゃらないように,ぜひ情報提供,広報をしっかりしていただきたいと思っています。被アクセス困難者の当事者の方も,パブコメ等で御自分の状況とか,今後の申し出る先など仕組み全般について,ルールが決まる前にしっかりと意見を言っていただくような状況をつくっていただければと思っております。ぜひ困難な道行きにならないように,上手に制度化していただければと思いました。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

福井委員,どうぞ。

【福井委員】ありがとうございます。先ほど大渕委員から私のコメントに対して御意見をいただきましたので,申し上げておきます。総論として現場でのスキームづくりこそが命であること,全く私もそのとおりだと思います。その点で今後に大きく期待申し上げたいと思います。

ただし,大渕委員がおっしゃっていた,「権利者不明問題について,裁定制度などとともにこれを拾っていくという視点」とおっしゃったと理解したんですけれども,私は先ほど権利者不明以外でも利用円滑化を図っていくニーズがあるのではないか,権利者が分かっている部分の放送実演,レコード実演などについても利用円滑化を図るニーズがあるのではないかという視点から問題提起したものです。そのため,大渕委員の御意見は,私の問題提起に対する御回答にはなっていなかったかもしれませんが,総論については私も全く賛成です。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

大渕座長代理,どうぞ。

【大渕座長代理】私の申し上げたかった趣旨があまり伝わっていなかったかもしれません。両方で拾うというのは,かなり問題点に幅があります。純粋に権利者不明の場合には裁定の問題になりますが,そこまではいっていないがアクセスが困難という場合が実際問題になります。権利者不明とは言い難いので,以前から申し上げているとおり,本来は契約すればよいという話なのですが,そのようなことが容易でない場合があるので,今までは裁定しかないのですが,幅広く拾うということで,かつ,無理のない範囲でやった結果がこのようなことであります。裁定で拾う分を重ねてこれで拾うという意味ではありません。裁定まではいかない一定程度の領域の部分はこれで拾えるようになるという趣旨であります。

それから,先ほどは申し上げませんでしたが,今回の改正の大目的は利用の円滑化です。何度も申し上げているとおり,許諾権を,いろいろな推定をかけたりして,ある種弱める形で最後は蓋かぶせを防止しようとしていますので,その蓋かぶせ防止の下支えになるのは,どなたかも言われていましたとおり,許諾権が事実上制約されることになるクリエーターの方に,単なる法制度があるというだけではなくて,きちんとリターンが現実的に行って初めて,その下支えがあって初めてこの蓋かぶせ防止という大目的が実現されます。細かくいろいろな形で,被アクセス困難者も取りこぼさないようにしながら,うまく最後は大目的を実現しようとしています。被アクセス困難者なども含めて,取りこぼしのないように,きちんとクリエーターにリターンが行くというところが実現されて初めてこの大目的が実現されるので,そのために,どなたか言われたように,蓋かぶせ防止とクリエーターへのリターンとがワンセットになっていますので,両方,法律面及びその周辺の協議面を含めてきちんと達成して初めてトータルの全体スキームが成り立つものだと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

太田委員,どうぞ。

【太田委員】太田から一つ教えていただきたいことがあります。7ページの一番下のほうに「今後の対応」というところがございまして,そこの2行目真ん中辺りに「推定を覆すことができる期間の取扱い等を含め」とあります。推定規定というのは,民事訴訟法学では,裁判になったときの証明責任の転換ということになっていますので,この「推定を覆すことができる期間」という概念がよく分からなくなります。一種の時効のような形で,一定期間が経過したら推定規定が適用されなくなるというようなことをお考えなのでしょうか。教えていただきたいと思います。以上です。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。御指摘の点は我々も同じ認識を持っております。あくまで今回の推定規定は,挙証責任を権利者側に転換するという位置づけのものでして,それをいつまで覆せるかというのは,特に法制度上の制約はないものと思っております。法制度上いつまでという明確な期限はないわけですけれども,ただ,いつまででも覆せる余地があると,放送事業者のリスクがずっと残り,法的な安定性が損なわれるという御指摘もなされております。このため,法制度上の制限というわけではありませんが,当事者間での取決めとして,推定を覆す場合にはこのぐらいの期間までに申し出ましょうという取扱いを運用上定めることはあっても良いのではないかと,そういう意味で例示として記載をしております。報告書では「必ずしも法律上の要件に限らず,幅広い事項について」と書いておりまして,それは今,申し上げた趣旨を示しているものでございます。

【太田委員】分かりました。ありがとうございます。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

大渕座長代理,どうぞ。

【大渕座長代理】今,太田先生が言われた点は恐らく法律家だったら引っかかるところかと思います。「期間」というものが,法律上の期間ではなくて,運用上の期間として大体常識的な範囲があるということであります。ガイドラインを作る際には,ガイドラインだから法的なものと運用上のものと両方あってよいのですが,できましたら,運用上のものについては,これは法律上のものではなくて運用上のものであるということをさらっとでも明示していただくと,法律家が見たときに混乱せずに済むのではないかと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがですか。

瀬尾委員,どうぞ。その次,上野委員,行きます。

【瀬尾委員】今回,非常に私はうまくまとまって大変良かったと思っているんですけれども,第一に,対価の還元がきちんと行われることが,私なんかは非常に重要だろうと思っています。ただ,本質的に,今回,いろいろな,例えば蓋かぶせにしても何にしても,法的な問題があるから進まないという見解がありますけれども,私は全くそう思っていなくて,ビジネススキームが確立していないから今回うまく回っていなくて,その中の一要素として法律があると私は思っています。今回,新しいビジネススキームをつくるとか,基本的に法律で何ができるのかというと,サーチコストが低減されるわけですよね。だからそういったスキームの中で,サーチコストを法によって低減をした上で,うまく回るスキームをどうつくっていくのか。その中ではガイドラインも重要でしょうし,例えば今の民間放送で普通の放送にあるようなアドモデルがどのようにこれと絡み合っていけるのかとか,全体的なスキームに目を向けて,今後の実用をやっていただきたいと。

最初に話が戻りますけれども,対価の還元が,ビジネススキームが失敗すると,対価も払います,放送局ももうかりません,誰ももうかりません,でも同時放送はやりませんみたいな安全な失敗スキームになると,だんだん廃れていってしまうので,基本的に回るように。私が対価の還元と申し上げたのは,スキームとして成功するように持っていってほしいということです。法律が阻害要因ではないという視点を持たないと,ビジネススキームは広がりませんから,そこのところをどうしてもうまくやっていただきたいというのが基本的な私の考え方ですので,意見として申し上げます。

もう1点は,被アクセス困難者。非常に最初聞いて,すごい言い方だと,何か難民のようで,これいいのかと思ったけれども,あまり異論も出ずに,皆さん苦しまれたということで,私もアイデアないのであまり言えませんけれども,こういうアクセスができないような組織外の人たちが今後どんどん増えていって,逆に数でいくと基本的にはメインストリームになる可能性もあるんですよね。なので,うまくこういう方たちを捕捉することは大事ですが,何か呼び名についてはもう少し皆さん継続して考えてはいかがですか。あまり法律関係にこの用語が出てくるのは,何かあまり気持ち良くないという気もするので,アイデアなくて申し訳ないんですが,皆さんもうちょっと継続してお考えいただくという視点をお持ちいただければと思います。以上,2点です。

【末吉主査】ありがとうございます。どうぞ。

【大野著作権課長補佐】事務局です。「被アクセス困難者」という用語は,あくまでこの報告書で便宜上使っている用語でございまして,法令上これを使うということではございません。ただ,一般的にこの制度を語るときにこの用語が使われることになると思いますので,より良い用語がないかというのは引き続き御検討いただけるとありがたいと思っております。

【瀬尾委員】よろしくお願いいたします。

【末吉主査】御指摘ごもっともなので,継続して考えたいと思います。

上野委員,どうぞ。

【上野委員】ありがとうございます。まずは,この報告書に関わられた皆さまに敬意を表したいと思います。これは同時配信を促進するというのが主たる目的ではあるんですけれども,併せて,特に裁定制度の改善も提言されていまして,これは単に同時配信を促進するというのにとどまらない一般的な効果が期待できるものだと思います。いずれにしましても,全体を通して非常にいい方向性だろうと思っております。

1点だけコメントさせていただきます。報告書で言いますと11ページ目の下から二つ目のポツでありまして,ここには,「仮に著作権等管理事業者が文化庁長官の指定する団体となる場合」には,「委託者に係る許諾に伴う使用料」と「被アクセス困難者に係る補償金」を区分して支払う必要があることと書かれておりますが,その後に,「当該団体が事前に補償金をまとめて受領する場合には,被アクセス困難者に分配しきれない補償金について,権利者全体に裨益する事業に支出したり,一定期間経過後に放送事業者に返還するなど,公正な取扱いを行う必要があること」と,このように記載されておりますところ,これは非常に重要なことだろうと思っております。

もちろん,同時配信に関して「被アクセス困難者」がどれぐらいいるのか,実はそんなにいないんじゃないかという見方もあるのかもしれませんけれども,今回のスキームとして,権利制限に伴う補償金を著作権等管理事業者が指定管理団体として受け取るということになりますと,当該団体の委託者でないクリエーター等の補償金を受領することになります。これは,指定管理団体が非委託者の補償金請求権を法律上行使できるという点において,教育利用に関するSARTRASと同じような仕組みになるかと思います(著作権法104条の11第2項)。従来,放送二次使用料につきましては,「クレーム基金」と呼ばれる一定の実務があると承知しておりますけれども,二次使用料請求権というのは,あくまで権利者から申込みを受けた権利のみが行使されるという制度になっておりますので(著作権法95条8項),指定管理団体が受領した金銭は申込みを受けた権利者の権利を行使したものだったと事後的に理解するならば,これを一定期間後に委託者に分配することが可能なのかも知れませんけれども,今回の同時配信について指定管理団体が被アクセス困難者の補償金請求権を行使できる制度にするのであれば,SARTRASと同じように,指定管理団体が非委託者の権利を行使できるように定めることになりますので,指定管理団体が,委託者でない被アクセス困難者の権利を行使して受け取った補償金を被アクセス困難者に分配しきれない場合は,あくまで他人の権利を行使して受領した金銭である以上,その取扱いには注意を要するところであります。これを例えば,10年たったから時効だなどと考えて,団体内部の分配資金に組み入れて委託者にそのまま分配してしまうようなことがあるとすれば問題があるように思っております。つきましては,この報告書に記載されているように,そのように被アクセス困難者に分配しきれなかった補償金については,一定期間経過後,共通目的事業あるいは権利者全体に裨益する事業に支出したり,あるいは放送事業者に返還するといった公正な取扱いが確保されるように措置をする必要があるように思います。これは大変重要なことと思っておりますので,改めて強調させていただきます。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

田村委員,どうぞ。

【田村委員】どうも,田村です。ありがとうございます。今回の報告書,私も基本的な方向性として賛成いたします。それで,先ほど話題になった言葉の問題で恐縮ですけれども,最初にこの「被アクセス困難者」という言葉を見たときに,どうしても「アクセスが困難である者」ということで,私は利用者を想像してしまいました。ただ,もちろん「被」がついていますので,論理的には間違いがないですが,しかし一般の方もなかなかこれがどちらを指すのか分かりにくいというところが最大の問題のような気がいたします。もちろん御検討の上だと思いますが,「被アクセス困難な権利者」では長いですから,例えば,「被アクセス困難権者」とか,あるいは「権者」がつけば「被」は要らないので,「アクセス困難権者」とか,何か権利者側のということが分かるような文言のほうがよろしいように思いました。ただのアイデアですし,既に御検討済みかもしれませんので,一応コメントとして提唱させていただきました。以上です。

【末吉主査】御意見ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

井上委員,どうぞ。

【井上委員】井上でございます。9月から集中的にワーキングチームで御審議いただきまして,大枠,非常に良い方向でまとめていただきましたこと,御礼申し上げます。これから,先ほど来出ておりますように,ステークホルダー間でガイドラインなどを策定するということで,協議が始まるということを伺いましたけれども,御案内のとおり,授業目的の公衆送信補償金制度におきましても,同じく権利者と(音途切れ)でガイドラインの策定に今,努力をしていると伺っているところです。なかなかこれは大変な作業だと思いますので,道のりはそんなには簡単ではない。今回,大枠はできましたけれども,その後のステークホルダー間の協議によって,この制度に魂が入っていくことになると思いますので,ぜひ関係者の皆様方には,お互いにウィンウィンの結果が得られるように御努力をお願いしたいと存じます。

もう1点,今回,権利者不明の著作物の裁定制度についても改善の御提案が出ております。権利者不明著作物の裁定制度につきましては,これまでも数次にわたって改善の試みがなされてきていて,利用者にとっても利用しやすいような方向で少しずつ進んできているとは思いますけれども,しかし,この権利者不明の著作物の利用に係る潜在的なニーズというのは,現在裁定に関わっている(音途切れ)件数に比べれば,桁違いに大きいものだと考えられます。ユーザーにとって使い勝手が良い制度になるかどうかということ,それから行政資源,コストをどのような形で使用するのが合理的かということ,それからさらに,納められた補償金,これは時効にかかりますと国庫に入ることになっておりますが,結局,その出口のところで誰にも使われずに国庫に入っていくものがあるという制度に今なっているわけですけれども,こういった裁定という形で著作者不明の著作物の利用について処理していくのがいいのかどうか,そろそろ現行の制度を基にしていく改善というのは限界に来ているのかという気もいたしますので,先々,この権利者不明の裁定制度については抜本的に見直していくことも考えられるんじゃないかと,今回の御報告を見ていて感じました。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

福井委員,どうぞ。

【福井委員】申し訳ありません,もうすぐ離席しなければいけないものですから,最後に一言コメントさせていただきます。

従来,放送番組の配信では,権利処理,中でもトランザクションコストが,業界・権利者ともに直面していた壁であると思います。今回,アウトサイダーやノンメンバーと当初語っておりました人々を報酬請求権の対象にすることは,言ってみれば集中管理されていない権利については利用を大きく進めていくことを通常は指向いたします。その場合,これらの権利の集中管理を進める効果をも,これは通常は伴います。つまり拡大集中許諾的な方向に一歩進む制度を入れると,任意でも集中管理に権利が集まりやすいという,そういう力を持っています。

しかし,先ほど来のお話を伺うと,今回はむしろ権利者不明のものに,この新設の報酬請求権化はおおむね寄せていこうという方向を感じました。つまり,権利者が明らかであるものに関しては,少なくともこの制度においては対応しない。権利者が明らかなものについては,対価の決定を含めて民間でのスキームづくりに委ねようと,そういう方向だと理解しました。その場合,スキームが,先ほど瀬尾委員のお話にもあったとおり,命になろうと思います。同時送信は行われない,よって対価も支払われないということになってしまっては,これは権利者も,それから放送側も,全てが損をすることになりかねませんので,そのスキームづくりを今後も見守らせていただきたいと思います。

最後に,裁定制度,これについて抜本的な再検証の時期に来ているのではないかという井上委員の御指摘に,私も全面的に賛成いたします。以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

大渕座長代理,どうぞ。

【大渕座長代理】まずは,どなたかが言われた「被アクセス権者」という名称とすると,先ほど言われた方の御趣旨とは逆に,「著作権者」や「特許権者」と同等の新たな権利ができたかのような印象を受けますので,「被アクセス者」のほうが難が少ないと思います。

権利者不明ではないが,アクセスが困難かというところが鍵なので,言葉が変かどうかは別として,意味・趣旨はよく出ていると思います。アクセスというのは,原点であります。相対(あいたい)での契約をして決めれば済むのに,アクセスが困難であれば相対の契約が困難だから,仕方がなく補償金付きでの権利制限というところに流れていくと思いますので,「被」という言葉がよいかどうかは別として,アクセスに注目しているのは,ここでの趣旨がよく出ていると思います。

それからもう一つは,分配しきれない場合ということです。あえてインサイダーとアウトサイダーという言葉を使いますと,両者はむしろ利害が対立しているので,これはきちんと分別管理する必要があります。前もお話ししたとおり,新たに団体つくるのは困難だから,インサイダーについての既存の団体にアウトサイダーの分も申し訳ありませんがやっていただくことになります。その際には,きちんとコスト負担は公平になるように考えていただくのと,両者の利害は対立しますので,最終的には個々のアウトサイダーに行くお金が,たまたま配りきれないから,ゆくゆくはきちんとエンドアウトサイダーに行くべきものが,たまたまインサイダーの代表たるレコ協さん等に預かっていただいているだけなので,そこのところは混ぜないことが必要です。同時に,私もお金が放送局に返るのはやはり変だと思っていますので,最後は恐らく共通目的事業等の方に行くのではないかと思います。最終的にはきちんと今の趣旨が,アウトサイダーとインサイダーのお金は別だという趣旨がきちんと守られるようにやっていただくことが肝要です。原点は相対の契約で,そうはいってもしきれない場合には,アクセスできない人は仕方がないし,それから推定もあるのですが,第一義的には契約で,契約にすれば,推定に伴ういろいろな不安定性も全部なしに,全てをクリアに両方で合意すればよいだけです。今度,新しい土俵はつくるのですが,そうはいっても,原点たる,相対の明示的な契約,放送だけではなくて配信も,今後は放送及び配信契約になるのではないかと思いますが,きちんと問題意識を持って細部まで契約していく努力というのは,常に出発点になるものだと思っております。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

菅委員,どうぞ。

【菅委員】小説家の立場として,先ほどの言葉の問題をいろいろと聞いておりました。言いたいことが二つあります。一つは,これからそういう「アクセス困難者」と今言われている人たちは多くなるという意見には,大いに賛成します。ネット文化がもっと激しくなって,匿名の作者が絵を描く。その絵を使いたい場合に,どうやってもその匿名の作者とは交渉ができない場合とか,もっとネットで自分たちの文化を発信していく若手が出てくると,団体に所属しない人はもっともっと増えていくと思っていますので,大事な問題かと思われます。

それから,先ほどの言葉の問題ですけれども,「アクセス」という横文字をどうしても使わなきゃいけないのかという疑問を覚えました。例えば「交渉困難者」であるとか,「交渉困難権利者」であるとか,「アクセス」というと,ネットのウェブ文化とか,そのような印象がありますので,「アクセス」という言葉に私はこだわらなくてもいいかと勝手に思ったりしていました。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】裁定制度にしても,オーファンワークスの実証事業を含めてずっと関わってきましたし,集中管理についても大分関わってきております。その中で,今,菅さんもおっしゃられましたけれども,被アクセス困難者と呼ばれているような,要するに著作者が集中化するというところより,拡散していく時代に入っているんですね。だから,これから絶対に捕捉していこうとしても,多分追いつかない。どんどんどんどん,これまでのような一部のプロが全てを作っていくのではなくて,一部のプロを中心としながら,周りに創作者が拡散していくという創作の時代になっていくだろうと考えています。

そのときに,拡大集中許諾なり裁定制度の拡充なりをして,当然何らかのことをしていくんですけれども,基本的に重要なことは,創作者が薄まるから対価が薄まって要らなくなるんじゃないかと。つまり,社会がみんなで作って,みんなでただで使おうという方向になると,逆に言うと,中核をなす創作をしているプロたちは食えなくなってしまう。なので,基本的に創作物はきちんと対価が必要であるという原則を押さえた上で,例えば集中管理にしても裁定にしても行う。とすると,実際のスキームの中で,配れないお金というものを集めなきゃいけなくなってしまう。それは先ほど上野先生もおっしゃったように,SARTRASでやっていることでも,多分,実際に特定できない権利者の補償金が多く集まってくると思います。それを一部の中核をなす権利者が,はっきり言って,例えば10年後であろうが何だろうが,取ってしまうことは絶対にあってはいけないことだと思います。つまり,今後増えていく特定できない人たちに,どうやって社会的・文化的に還元していくかという仕組みをつくることが,今後一番大きなことです。それは,この補償金という,ある意味でサブスクリプションと呼ばれているような,社会的に広く取って,社会的に還元するときに,社会的に確実に還元されなければいけない。

私は今,考えている中で,一つパーツが抜けていて,SARTRASがいろいろ補償金をやる,今度の放送も補償金をやる。ただ,いろいろやったときに,分配とかそういった正当性を確保するのに,例えば著作権監視機構とか,著作権の集中管理について外部から管理をするような組織というのは,私は今後大変必要になってくると思います。ですので,そういったことによって第三者的に監視をしつつ,社会的にきちんと還元をし,徴収をしていく。そして分配できる人には分配をしていく。そういう大きなスキームの変わり目に来ているので,今回の放送もそうですし,ある意味で図書館の補償金もそうだし,教育の補償金もそうです。そういった意味で,今言った現状の著作物の在り方とか拡散とかスキームとしての成立性みたいなものを考えた大きなパズルを考えていったときに,社会的に集めて,社会的にどう還元するか。そして,それを当事者だけに任せない。きちんと公正性が担保される,そんなような仕組みを基本的には目指すべきではないかと思っています。

このような集中管理の在り方で,拡大集中許諾,裁定もいいんですけれども,限界があります。ですので,今言ったような形での補償金システムなり何なりを使って公正にすることを,ぜひ今後の方向性としてお考えいただければと。現場のスキームを動かしてやっている者としては,非常に強くそう思うので,意見として述べました。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

竹内委員,どうぞ。

【竹内委員】ありがとうございます。私は法律の専門家ではございませんので,コメントが若干的外れかもしれません。その点については御容赦いただければと思います。

全体としてはとても良くできた制度だというのが率直な感想でございまして,確かに幾つか言葉づかい点で,例えば先ほど来話題になっております「被アクセス困難者」などというのは確かに変えていただいたほうがいいと思います。また,裁定制度の改善について含まれていることも,私としては大変賛成をしているところでございます。

35条の話も31条の話も,そして今回の話もそうだと思いますけれども,先ほど瀬尾委員からお話があったように,権利者の把握というのはだんだん難しくなっていく状況にあるというのは,多分間違いないだろうと思います。それと同時に,だからこそ過去の分も含めて,きちんと管理できる方についてはきちんと管理する体制を並行して確立していくべきではないかと思います。その上で,著作権者としての意識が薄くなっている方々についてのカバーをどうするかを考えるのが,筋としては正しいのではないかと考えているところです。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ。

【大野著作権課長補佐】事務局でございます。先ほど制度改正の対象者についての御指摘や,裁定制度の抜本的な見直しを含めた今後の大きなビジョンについても御指摘をいただきました。今回の同時配信等に係る課題については,あくまで放送事業者からいただいた御要望をもとに,その範囲で何ができるかというのを議論してきた結果,こういう措置内容になっております。一方で,このデジタル時代を迎えて,大きな制度改正の議論というのは,別途行う必要もあるのではないかと思っております。

今日の資料1-2の報告書の2ページの一番下のところにも,そういった問題意識を若干記載しております。なお書きで「今回の対応をきっかけに,権利情報のさらなるデジタル化・集約化など,様々な場面における円滑な権利処理に資する取組についても,検討を進めていくことが望まれる」としており,今回の議論をきっかけに,それにとどまらない著作権制度・政策全体の在り方について,御議論をいただく必要もあろうかと思います。まさに,この基本政策小委員会は,そういう意図で設けた小委員会でございますので,また別途,そうした御意見をいただく機会も設けていきたいと思っております。引き続き,よろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

どうぞ。

【龍村委員】ただいまの報告書,おおよそ,この3か月ぐらいの集中的な議論の結果であり,事務局には御苦労さまでしたと申し上げたいと思います。ただ,ガイドラインに振られた部分もかなり多く,その中には委員の中で意見が割れるようなものも残っている部分はあろうかとは思います。

様々ございますけれども,例えば対象サービスの範囲の中で,見逃し配信という概念,これをどうするかについてはいろいろな議論があり,結局,資料1-2で言いますと,3ページ目の中ほど,丸1,配信のタイミングや期間の中で,実態に即した柔軟な期間設定を可能とすべきだと括弧でくくっているわけですけれども,この内容をどのように画していくのかというのは,関係当事者間で十分御議論いただきたい点で,同時配信の部類に属するものか,むしろ異時配信というべき範疇に入るか,ここの切り分けが難しいところだと思います。ですので,この点は意識しながら関係団体で御協議いただきたいと思います。以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますか。ありがとうございました。それでは,本日いただきました御意見を踏まえ,若干の修正を行おうと思いますが,その上で本委員会における中間まとめ,これを作成したいと思います。

修正につきましては,主査である私に御一任をいただくことでよろしいですか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】ありがとうございます。そのほか,全体を通して何かございますか。

よろしいでしょうか。それでは,本日はこのぐらいにしたいと思います。

最後に,事務局から連絡事項がありましたらお願いします。

【大野著作権課長補佐】本日も活発に御意見をいただきまして,誠にありがとうございました。次回の小委員会につきましては,パブリックコメントの結果が取りまとまった段階で開催をさせていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

【末吉主査】ありがとうございました。それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第3回を終了させていただきます。本日はありがとうございました。

──了──

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