文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第1回)

日時:令和3年8月5日(木)

10:00~12:00

場所:オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)基本政策小委員会主査の選任等について【非公開】
    • (2)デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について
    • (3)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(134KB)
資料2
デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について(諮問概要及び諮問)(文化審議会著作権分科会(第61回)(令和3年7月19日)資料2及び3)(245KB)
資料3
「知的財産推進計画2021」等の政府方針(著作権関係抜粋)(1.9MB)
資料4
デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方に関する検討の方針について(案)(603KB)
資料5
文化審議会著作権分科会(第61回)(第21期第1回)における意見の概要(458B)
資料6
簡素で一元的な権利処理方策に係る検討課題例
(参考:DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する「課題の整理」骨子及び簡素で一括的な権利処理等に係る各種方策(DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する勉強会))
(1.7MB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(262KB)
参考資料2
第21期文化審議会著作権分科会における検討課題について(令和3年7月19日文化審議会著作権分科会決定)(122KB)
参考資料3
小委員会の設置について(令和3年7月19日文化審議会著作権分科会決定)(96KB)
参考資料4
文化審議会著作権分科会における著作物等の流通促進のための権利処理の円滑化等に係るこれまでの検討経緯(505KB)
参考資料5
いわゆる拡大集中許諾制度の概要等について(641KB)
参考資料6
権利制限規定について(485KB)
参考資料7
裁定制度について(1.1MB)
参考資料8
許諾推定規定について(989KB)
参考資料9
著作権等管理事業について(580KB)
参考資料10
オーファンワークス対策事業について(1.7MB)
参考資料11
コンテンツの権利情報集約化について(624KB)
参考資料12
一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会の設立に関するプレスリリース(412KB)
参考資料13
「著作権法の一部を改正する法律」関係資料一式(1.6MB)
参考資料14
令和2年度基本政策小委員会の審議の経過等について(300KB)

議事内容

  • 今期の文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員を事務局より紹介。
  • 本小委員会の主査の選任が行われ,末吉委員を主査に決定。
  • 主査代理について,末吉主査より奧邨委員を主査代理に指名。
  • 会議の公開等について運営規則等を確認。
  • ※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(令和元年七月五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

    (配信開始)

    【末吉主査】  傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮をください。

    それでは、改めて御紹介をさせていただきますが、先ほど本小委員会の主査の選出が行われまして、私、末吉が主査を務めることになりました。また、主査代理としては奥邨委員を指名いたしましたので、御報告をいたします。

    本日は今期最初の基本政策小委員会となりますので、矢野文化庁次長から一言御挨拶をいただきたいと思います。お願いします。

    【矢野文化庁次長】  ありがとうございます。文化庁次長、矢野でございます。

    著作権分科会基本政策小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

    先生方におかれましては、日頃より著作権施策の検討・実施に当たりましては、格別の御協力・御指導を頂戴しておりまして、また、このたび、非常に御多用な中、基本政策小委員会の委員をお引受けいただきまして、誠にありがとうございます。

    先日、7月19日の文化審議会著作権分科会において、文部科学大臣より文化審議会に対して「DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」の諮問がなされたところでございます。

    DX時代を迎え、コンテンツの創作、流通、利用のそれぞれの場面でデジタル化・ネットワーク化の影響を大きく受けておりまして、今後も変化は加速していくものと考えております。

    現行著作権法につきましては、こうした時代に着実に対応するため、制度改正を近年積み重ねてまいりました。昨今の急激なデジタル化・ネットワーク化を踏まえ、クリエイターが良質な作品を創作し続けることができるよう、DX時代に起こり得る多種多様な著作権侵害に対応するとともに、クリエイターへの適切な対価還元を受ける仕組みを根本的に考え直す時期に来ていると考えております。

    このような時代におきまして、人々の生活をより豊かにしていくコンテンツを生み出していくためには、クリエイターの意思を尊重しながらも、迅速に著作権の処理が行われ、その利益の享受が新たな創作につながる仕組み、この絶え間ない創作活動の好循環を実現し、その効用を最大化していくことが必要であると考えております。

    先ほど、根本的にと申しましたけれども、例えて言うなら、今までの著作権制度は、地中に大事に隠して著作権を守るということから、地上でもっともっと利活用していただいて、その結果クリエイターが受け取る対価というものが、その絶対値が抜本的に向上すると、そういったようなものを我々としては想定しているというところでございます。

    こうした問題意識の下、今回の諮問では、「権利保護・適切な対価還元」と「利用円滑化」の両立を基本としつつも、DX時代に対応した新たな著作権制度・施策の在り方について総合的な検討をお願いしているところでございます。

    冒頭に御紹介ありました、故瀬尾太一さんから、後ほど御紹介があるかと思いますけれども、DX時代の著作権の勉強会の報告のときに、残念ながらこれまでの殻を破れてないのではないかというような非常に厳しい御指摘がありました。これは瀬尾さんの遺言だと私は受け取っておりますが、それに恥じないような議論、そして実行を文化庁としても必ずやり遂げるという、そういう決意でおります。

    この小委員会がまさに今後の著作権制度の在り方についての本丸中の本丸だと考えております。今後の我が国の文化芸術活動のあるべき姿を描きつつ、制度論にとどまらない幅広い政策論を御議論いただければと考えております。

    委員の皆様方におかれましては、先ほど申しましたように、著作権制度のタコつぼの中だけでの議論ではなくて、文化芸術活動、幅広い観点から積極的な御議論、忌憚のない御議論を頂戴できればと心からお願い申し上げて私の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

    【末吉主査】  ありがとうございました。

    次に、議事2の「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」に入りたいと思います。

    7月19日に開催されました文化審議会著作権分科会におきまして、本件に関して大臣より諮問をいただいております。諮問を踏まえて、審議事項や検討の方針等に関して事務局に資料を御準備いただいております。

    それでは、事務局から説明をお願いします。

    【小倉著作権課長補佐】  それでは、資料2をお開きください。資料2が、ただいま御紹介のありました諮問の概要を1枚にまとめたものでございます。

    このたびの諮問の理由としましては、DXの推進、文化芸術における創作・流通・利用にも大きな影響があるということ、また、先ほど次長の矢野からもお話がありましたが、コンテンツクリエーションサイクルの実現とその効用の最大化により文化芸術をはじめとした我が国の発展を下支えするものとして著作権制度・政策を位置づけていくことが必要という趣旨に基づくものでございます。

    審議事項は、その下にありますように、大きく2点あります。1点目が、「DX時代に対応したコンテンツの利用円滑化とそれに伴う適切な対価還元方策について」、2点目が、「DX時代に対応したコンテンツの権利保護・適切な対価還元方策について」でございます。

    詳細は後ほどの資料でまた御説明いたします。

    資料3につきましては、「知的財産推進計画2021」等の政府方針の著作権関係部分の抜粋になります。こちらについても詳細な説明は割愛させていただきます。

    それでは、資料4をお開きください。資料4「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方に関する検討の方針について(案)」です。

    1、「本小委員会で扱う審議事項について」になります。

    本小委員会では、先ほどの諮問に対応しておりますが、(1)、(2)の中身について審議を進めていってはどうかというところです。

    まず(1)「DX時代に対応したコンテンツの利用円滑化、適切な対価還元方策について」です。コンテンツの利用円滑化とクリエイターへの適切な対価還元の両立を図るため、過去のコンテンツ、一般ユーザーが創作するコンテンツ、権利者不明著作物等の膨大かつ多種多様なコンテンツについて、いわゆる拡大集中許諾制度等を基に、様々な利用場面を想定した簡素で一元的な権利処理が可能となるような方策について審議を行う。

    その際に、クリエイターや著作権者、ユーザー、事業者を含む幅広い関係者の意見を丁寧に聴取するとしております。

    検討項目例といたしましては、デジタル化に伴う創作・流通・利用をめぐる環境変化に関する認識や評価、利用場面やデジタルコンテンツの種類等のニーズがどういったところにあるのか、また、利用円滑化に資する新たな仕組みの創設や、現行制度の見直しと運用の改善、集中管理の促進等の様々な方策の利用場面に応じた検討、こういったものを検討項目例として示させていただいております。

    (2)「DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策について」です。こちらにつきましては、サービス事業者とクリエイターの間のバリューギャップ等、クリエイターへの適切な対価還元の在り方について、クリエイターと各種事業者の関係性の実態や状況を踏まえて審議を行う。

    また、DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発・教育方策について審議を行うとしております。

    検討項目例につきましては、デジタル化によるコンテンツの権利行使に係る意識やビジネスの変化、集中管理団体による著作物の管理の在り方、持続的なコンテンツ創作のための方策、普及啓発等としております。

    続きまして、資料の4の2ページ目の2番、「検討の進め方」を御覧ください。知的財産推進計画等を踏まえまして、「年内に一定の結論が得られるよう」とありますが、その直下に枠囲みで知的財産推進計画の該当箇所を抜粋しておりますので、こちらを御覧ください。

    知的財産推進計画2021、Ⅲ。知財戦略の重点7施策の4(1)のところに「デジタル時代のコンテンツ戦略と著作権制度・関連政策の改革」がございます。

    このうち示された施策の方向性の1つに、今資料に挙げております、「文化庁は、デジタル技術の進展・普及に伴うコンテンツ市場をめぐる構造変化を踏まえ」とありまして、中ほどに飛びますが、「拡大集中許諾制度等を基に、様々な利用場面を想定した、簡素で一元的な権利処理が可能となるような制度の実現を図る」とされております。

    また、こちらにつきましては、下から3行目ですが、「文化審議会において、クリエイター等の権利者や利用者、事業者等から合意を得つつ2021年中に検討・結論を得、2022年度に所要の措置を講ずる」とされているところでございます。

    このように、こちらの利用円滑化につきましては、政府の方針、閣議決定等で年限が切られてございますので、本小委員会の検討もこちらのDX時代に対応したコンテンツの利用円滑化・適切な対価還元方策について優先して先に審議を行うこととしたいと考えております。

    3番、「関係者へのヒアリングについて」です。各種計画等にもございましたが、DX時代の著作権制度・政策について幅広く検討するため、クリエイター等の権利者や利用者、事業者等の多様な関係者から意見聴取を行いたいと考えております。その際、ネットクリエイターやいわゆるZ世代等のDX関係者を含めることとしたいと思っております。

    意見聴取の観点として、事務局で、クリエイターの観点、ユーザーの観点、管理事業者向けといったように少し項目を分けまして聞き取っていくようなイメージを資料には挙げさせていただいております。

    例えばクリエイターの観点ですと、1ポツ目にありますように、デジタルコンテンツの権利行使に係る意思はどのようなものか。例えば商用なのかどうかとか、あるいはその意思表示や権利処理の状況について伺うとともに、何か課題があれば聞いていくものになります。

    3ページ目のユーザーの観点につきましては、例えば、デジタルコンテンツの利用許諾を取る過程で生じる課題とか解決策、また3点目ですが、過去コンテンツやUGC、権利者不明等著作物、また、いわゆるアウトオブコマースのコンテンツの利用場面・ニーズ、どういったところにあるのか、また許諾が得られない事例があるのかどうか。このようなことについてヒアリングを行っていければと考えております。

    また、管理事業者に対しましても、集中管理の状況のほか、分野横断等、他の権利団体との窓口の統一等について確認を取るほか、拡大集中許諾制度等を基にとありますが、例えば非構成員への対価還元への関与について、このような意識についても聞き取りで確認していくことが重要かと考えております。

    その他、本小委員会の検討テーマである普及啓発、バリューギャップ、こういったものにも言及をいただくということも考えております。

    その下、「意見聴取の方法」でございますが、時間等限られていること、また幅広く御意見を集めることが重要だと思っておりまして、審議会でのオンラインヒアリングのほか、資料提出や事務局聴取による説明等、多様な手法を用いて多くの意見を聴取していきたいと考えております。

    次の4ページを御覧ください。スケジュールイメージになります。第1回が本日8月5日となりますが、8月から10月にかけましてまず関係者にヒアリングを3回程度実施してはどうかと考えております。

    また、今般の議論は、UGCなど、幅広く関係するというところがございますので、早めのパブリックコメントを実施してはどうかとも考えております。

    また、年内の中間まとめに向けまして、あまり多く時間もない中ですので、各回ともヒアリングだけで終わるのではなく、ヒアリングを踏まえました出席委員の意見交換、協議の時間、こういったものも設けるように事務局としては工夫をしていきたいと考えております。

    そこでまず、期限が切られている利用円滑化につきまして、年内に一定の方向性を中間まとめとしてお示しし、年明けにつきましては、著作物のもう一つのテーマである権利保護法策・対価還元に係る基本政策について議論を行い、年度末に向かいたいと思います。

    年度末ですが、現時点で、審議経過報告とのスケジュールにさせていただいております。次期に継続して検討する課題の整理等もこちらで併せて報告するということを考えております。

    資料4の説明は以上です。長くなりまして申し訳ありません。

    次、資料5をお開きください。資料5につきましては、文化審議会著作権分科会、先日行われました会議の意見の概要を事務局にて抜粋させていただいたものです。

    このうち、本小委員会の検討事項に関わるものを、主なものを簡単に御紹介させていただきます。

    1ページ目は総論ですが、2つ目の白丸のパラグラフの2行目にありますが、丁寧なニーズの洗い出しと立法事実の検証が不可欠といったもの。

    あと、3つ目の白丸ですが、運用の改善やガイドラインの策定などのいわゆるソフトロー的な手法を組み合わせること。

    また、4つ目の中ほどにもありますが、法で保護する部分と商習慣として確立していかなければならない部分の区分けについても議論する必要があるのではないかといった御意見。

    下から3つ目の白丸のパラグラフ、権利者の意向、あるいは権利者による個別のビジネスの実態にも留意しながら議論すること。

    その次のパラグラフでは、デジタル技術の活用。こういった御意見がありました。

    また、次のページ、2ページ目には、利用円滑化に係る主な御意見をまとめております。まずニーズにつきまして、2つ目の白丸のパラグラフですが、アクセスが容易になり、大量処理が可能となった反面、保護すべきものと保護しなくてよいものの区別のコストが非常に甚大になっている。これは、現在はこの区分けを利用者が探索しなければならないので、なかなか利用が進まないといった課題。

    あるいは、3つ目の白丸でございますが、ネット配信では大量にコンテンツを流通させることが可能だが、ビジネスの観点からすると、著作権料と権利処理のコストをかけてもペイできないと判断されれば、正規の配信を諦めざるを得ないといったような御意見がございました。

    また、次のパラグラフから3点ほどはいわゆる拡大集中許諾制度についての御意見ですが、日本には従来ない法制度であり、具体的に検討していく必要があるとか、あるいは、授業目的公衆送信補償金制度といったように、既に現行法である仕組みが広い意味で拡大集中許諾の制度的なものとも言え、こういった知見も活用すべきではないかといった御意見。

    また、拡大集中許諾制度の導入のみの可能性や是非だけに議論を絞ることでは適切でなく、例えば裁定制度の抜本的な見直しや既存の集中管理団体による集中管理の促進、許諾推定、こういったものも解決策として考えられるのではないかといった御意見もありました。

    また、3ページ目の上から2つ目の白丸になりますが、著作物等の利用円滑化を促進する上では、データベースの構築や集中管理の促進、不明権利者の権利処理に関する手続の負担軽減、こういった取組も極めて重要であるといった御意見がございました。

    また、3ページの下後半ですが、DX時代に対応したコンテンツの権利保護、適切な対価還元方策については、1つ目の白丸のパラグラフはいわゆるバリューギャップの問題。

    また、4つ目のパラグラフでは、DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発についての御意見で、例えばここでは一番下の行にありますように、学校教育以外の日常の生活の中で著作権の存在というものを感じさせることが重要といった工夫もありまして、これまでやってきているようなセミナーであるとか著作権テキストの配布、こういったものに代わるものも今後検討していく必要があるのかなというところの御指摘をいただいております。

    事務局からは以上でございます。

    【末吉主査】  ありがとうございました。

    それでは、「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方」につきまして議論を行いたいと思います。特に今御説明のあった資料4の審議事項や意見聴取の進め方につきまして御意見をいただき、今後の方向性を確定したいと思います。

    構成員の皆様全員から御意見を頂戴したいと思いますので、お一人当たり二、三分程度で恐縮ながら、簡潔に御発言をお願いしたいと思います。

    それでは、まず生貝委員からお願いをいたします。

    【生貝委員】  ありがとうございます。DX時代に対応した著作権制度は非常に重要なテーマだと思っておりまして、まさに官民で非常に活発な取組が進む中で、意見聴取という意味でも、あるいはその実施においても、どうやってそういう多様な主体と連携をしていくかということを念頭にまさに御説明いただけるとよいかなと感じております。

    その上で、ごく手短に簡単に二、三点ほどコメント、意見というところですけれども、まず1つ、利用促進と対価還元というところでは、やはりデジタルのネットワーク化、DXの、著作権分野における非常に大きな特徴は、従来著作権法が主に対象とは恐らく必ずしもしてこなかったような商業流通の外側にあるコンテンツ、まさに広い意味でのアウトオブコマースのコンテンツというものが非常にネットワーク上で大量に流れるようになり、それがもっとさらに有意義な形で活用できる可能性というものを開いたところであろうかと思います。

    そういったまさに著作物の種類ですとか、あるいは性質というものに応じた施策というものをどのようにやっていくかということが極めて重要であって、例えばECLのような仕組みを進めていくに当たっても、欧州のほうではまさにアウトオブコマースに焦点を当てたものに非常に力を入れた形でまずは導入するということをやっているところもございますので、様々な形で参照する意味があるのだろうというのが1点目。

    そして2点目に関しては、まさに後半の論点になるかと思うのですけれども、プラットフォームのバリューギャップ等の問題というのは極めて重要だと思っております。やはりネットワーク経済の最大の特徴の1つは、およそあらゆる産業において、ごく少数のデジタルプラットフォーム、そして、そのコントロールによってあらゆる経済主体が活動する、場合によっては従属した形で活動する、これは良し悪しとはあまり関係なく、まさしくネットワーク経済のダイナミクス、力学そのものであり、構造的な性質であろうかと思います。そのことを果たして、誰が、どのような形で、中期でやるべきことと短期でできること、それらの整理を含めてぜひ積極的な重要なテーマとして位置づけていただきたいなと思います。

    最後に、これらの議論、様々な形で検討をしていくに当たって、やはり欧州のほうで、全欧州で導入をしたデジタル単一市場著作権指令というもの、様々参考になる部分があるかと思いますので、特に現在国内法化が進む中、積極的な参照をいただけるとよいのではないかと思います。

    以上でございます。

    【末吉主査】  ありがとうございました。井上委員、お願いいたします。

    【井上委員】  私は利用円滑化に関して申し上げたいと思います。デジタル化・ネットワーク化の進展で利用可能性が大きく広がっているにも関わらず取引コストの問題で著作物の利用ができないということは、これは社会的に非常に大きな損失だと考えておりまして、取引コストを下げて利用可能とする何らかの仕組みを充実させていくということは極めて重要だと考えております。

    本日の配付資料でも簡素で一括的な権利処理等に係る各種方策としまして考えられるメニューが整理されておりますが、これをベースにその実現可能性や採否、実現までのロードマップをこの小委員会で示していくことが重要だろうと思っております。

    具体的な点について若干申し上げますと、裁定制度と、それからデジタルアーカイブについて申し上げたいと思います。

    まず裁定制度につきましては、欧州で孤児著作物問題への対応が検討され出した頃は、日本の裁定制度というのは非常に先駆的な制度として注目されたわけですが、利用実績は皆無に近かったということがございます。その後、法改正、運用改善、実証事業などで利用実績は着実に増えておりますが、世の中で著作権者不明著作物の利用に係る潜在的なニーズは膨大なはずですから、そのニーズに比較すれば、現在の利用実績はスズメの涙ほどにすぎないと言わざるを得ません。

    この点、今回、裁定制度の抜本的な改革ということと拡大集中許諾制度の導入ということが並列的に掲げられておりますけれども、裁定制度については、これまでは既存の制度を前提とした漸進的な大胆な改革が体格化しづらかったという現状がございました。

    他方で拡大集中許諾のほうは、その正当化根拠について議論があって、実現には一定のハードルがあるということだろうと思います。

    これから短期的に集中的討議を経て結論を得るということになっておりますが、両者は目的としては共通性が高く、別の機能を持たせて役割分担するというよりは、中長期的には1つの仕組みに収れんさせていくほうが分かりやすいし合理的なのではないかと思います。

    アーカイブについて申しますと、各種アーカイブをつなぐジャパンサーチがローンチしたばかりでございますが、各デジタルアーカイブのコンテンツの2次利用を促進するということが極めて重要な課題になっていると思います。

    その際には、2次利用条件の表示をどうするかという問題がございます。権利者情報や意思を集約する仕組みの充実が今回の小委でも課題の1つに挙げられておりますけれども、アーカイブ機関に権利者情報の集約に関して一定の役割を果たしてもらえるよう支援をしていくといったようなことも考えられるのではないかと思います。

    また、特に2次利用の公益性の高い公文書館、国立公文書館などについては、その公益性に鑑みて、権利制限の整備も含めた検討が必要だろうと考えております。

    以上でございます。

    【末吉主査】  ありがとうございました。今子委員、お願いいたします。

    【今子委員】  今子でございます。よろしくお願いいたします。DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方について、この小委員会で権利保護・適切な対価還元と利用円滑化の両立を基本としつつ検討していくというのは非常に重要でありまして、進め方、賛同いたします。

    今後の文化・社会・産業の発展に向けて利用円滑化を進めるというのは当然重要だと思いますし、持続可能な変化につなげていくという観点からも対価還元の在り方というのもやはりしっかり検討していきたいなと思っております。

    デジタル化・ネットワーク化が進んできたというのが、結構時間がたつのが早いなと思っているんですが、随分前から検討を進めてきているわけなんですけれども、ここ数年、やはり新たなフェーズに入ってきたのではないかと思っております。ユーザーの皆様の利用の仕方だったりとか、いろんなサービスが発展してきたりとか、AIが進展してきたりとか、いろんな変化がありますので、こうした中でこのタイミングで検討を行うというのは非常に重要なのかと思います。

    DX化というのがどういった意味なのかというか、それぞれ皆さんがお考えのことがちょっと違ってくるのかもしれないんですけれども、幅広く検討ができるとよいなと思っております。

    先ほど資料でも意見の紹介がございましたが、私は検討において重要なのは実態の把握だと思っております。1つには、変化が急激で、新たな技術・サービスの発展が進んでいて、特に私、ここにおられる方々もそうかもしれませんが、技術・サービスの発展を十分に把握をしていないかもしれないので、ヒアリングを何回か行っていただけるということなので、著作物のどういった利用事態があるのかとか、どういった課題があるのかというのをしっかり把握をして検討ができたらと思っております。

    また、DX化といって、新たな側面、新たな利用方法というのだけに目を配るのではなく、過去の著作物がうまく流通できていないという、従来型のというか、そういった課題もやはりまだ残っているのかと思っております。

    そうした時代に合わせた当事者の意識変革とか、商習慣の進化とか、そういったことも進めていく必要があるのかと思っていますので、例えば法改正とかだけではなくて、ソフトロー的なアプローチというのも必要なのかと思っております。

    先ほど生貝先生、井上先生が御指摘のとおり、裁定制度とか、集中管理の在り方とか、これまでの枠組みにとらわれないような議論ができたら非常によいなと思っております。

    以上でございます。

    【末吉主査】  それでは、太田委員、お願いいたします。

    【太田委員】  太田でございます。法と経済学とか、AIと法などをやっておりますが、専門は法社会学という学際的分野であります。

    まず一般論として、DX化がどんどん進んではいるのですが、現状ではまだそれがどのような改革を市場や社会にもたらすかの具体像がはっきりしてない面があるという気はしております。

    ただ少なくとも言えることは、既存のコンテンツ、既存の商品、既存の企業組織、既存の市場といったものをデジタル化していくという以上のものになるということは明らかなことでして、新たなコンテンツの形態、新たな企業組織の形態、新たな市場の在り方というものが、DX化によってもたらされるのだろうと思います。  そういう中で、文化というものがどう発展していくかの動態についての洞察をもって、文化の発展をうまく制御するといいますか、寄り添うというのが著作権制度のあるべき姿だろうと思います。

    そのときには、多様性を育むという基本的な思想が必要だろうと考えております。ともすると少数精鋭的な発想をしてしまうんですけども、やはりそれでは多分失敗すると考えます。

    多様性をなぜ私が重視するかといいますと、著作権等の知的財産権制度の対象である文化が発展するプロセスは一種の遺伝アルゴリズムだと考えているからです。複製子(replicator)としての文化要素が、多様性、すなわち変異に基づく多様性を創発させ、それが利用され、模倣され、改定されることを通じて複製されていく。その中で、多様性の中で、より拡がるもの、人々が価値があると思いより利用するものが残っていく。こういったダイナミクスを通じて選択されていくという遺伝アルゴリズムだと思っています。その意味でいくと、多様性がまず出発点にあるわけでして、それを育むような著作権制度、知的財産権制度にしていくことが必要だろうと考えております。

    「法と経済学」的に言いますと、市場の失敗、すなわち取引費用、交渉力の不均衡等、寡占、それから情報の偏頗、そういうことによって市場が失敗するという傾向が、情報資産、すなわち文化には、内在する問題としてあります。それを解決するために、著作権制度というもの、すなわち有体物上の所有権の考え方をいわば流用して著作権制度がつくられたのですけれども、DX化の中で、多分もうそれで十分に対処できる段階を超えてきているのだと思います。すなわちゼロかイチかという形態での権利・義務の有無という発想を超えた法制度の在り方を模索しないと、DX化の中での著作権制度の適正な発展といいますか、制度設計ができないのではないかと思っております。

    ちょっと抽象的な話になってしまいましたけれども、そういうバックグラウンド理論というものをにらみながら、ヒアリング等での質問内容を決めていく必要があるのかなと考えております。

    以上です。

    【末吉主査】  奥邨主査代理、お願いします。

    【奥邨主査代理】  奥邨です。3点、簡単に申し上げたいと思います。特に1点目、2点目は簡単に。

    まず、1点目、利用の円滑化・適切な対価還元から優先して議論するということには賛成です。

    それから、2点目として、この議論をするときにですけれども、まさに先の部分にあるんですけれども、利用の円滑化だけを議論するのではなくて、利用の円滑化と適切な対価還元がセットで議論の対象になっているということはやはり重要な視点だろうと思います。この点は議論をする上でも、またヒアリングをする上でも、単に利用を円滑化すればいいのではなくて、適切な対価還元が行われるのか、必要があるのか、どうするのかということを併せ考え、併せ聞いていくということが重要なんだろうと思います。

    3点目としまして、利用の円滑化の部分なんですけれども、例えば著作権法を見ましても、著作物の類型として9つありますし、支分権は13、それから著作財産権だけでなくて人格権、隣接権もあります。さらに著作権法を離れて考えると、利用者、利用方法、利用場面と、これも多様なものがあるわけですね。

    このように様々なものがありますので、利用円滑化に関しても、たった1つの万能薬で、これさえ飲めば全て効くというものは、もちろんそういうものがあればいいんですけれども、なかなかやっぱり難しい部分はあるんだろうと思います。ものによっては効き過ぎる、ものによっては効かな過ぎると、場面によっても、権利によっても、利用者によってもいろいろなことがあると思います。

    権利処理を円滑化するというのが目的であって、そのためにどういう制度を採るかというのはあくまで手段ですので、著作物の類型、支分権、利用場面も踏まえて、目的を達成するのに一番効率的な制度を採用するということが重要なんだろうと思います。

    ただ一方で、あまり細かく制度を分割して細分化し過ぎると、これはもちろん全体として見ると非効率になりますし、特に利用者からすると細分化された制度というのは当然使いにくいということになります。

    したがって、全体と部分の効率のバランスを取るということが必要であります。著作権分科会のほうで制度を導入する際には、ある程度射程を限定して導入して、その効果を見極めながら拡大して手直ししていくという御指摘も出たようですけども、これもやはり非常に重要な部分であって、今言ったように様々な利用場面、様々な著作物があるだけに、果たして期待されるものが万能薬になるのかどうかということを調べていく上でも、実際にリアルの世界で考えていくためにも、こういう取組も含めてアプローチしていくということが重要なんだろうと思っております。

    私からは以上です。

    【末吉主査】  岸委員、お願いいたします。

    【岸委員】  資料4で言えば、DX時代に合った形で利用の円滑化と対価還元を進めていく。この方向性は多分誰も異論がないと思うんですね。

    ただやっぱり問題は、今奥邨先生がまさにおっしゃられたように、じゃあ、それをどう具体的にバランス取れた形で実現をするかと。特に著作物、いろいろ種類がある中で、どうやっていくかという具体的な制度設計の部分が多分一番大変になると思っていますので、そういう意味では、総論はほぼ異論がない中で、じゃあ、具体論でどこまでしっかりできるかというところが大事になると思うんですけども、個人的にそこでやっぱり一番注意していただきたいのは、括弧にある、まさにプラットフォーマーとのバリューギャップの問題なんですね。

    というのは、一般的な対価還元というレベルの議論ならば、まだある程度制度上いろんな処理の対応の仕方があると思うんですけども、プラットフォーマーとの間のバリューギャップの問題に関しては、多分世界的に見てもいい解決策はまだないと思うんですね。

    その中で、じゃあ、この部分をどう対応するのか。多分これ、政策的に考えると、著作権法の枠を当然超えちゃうわけで、もしかしたらそれが独禁法的世界なのか、不正競争防止法的世界なのかはともかくとして、そういったほかの制度なり法律との連携をどうやっていくかという部分も結果的にカバーしなきゃいけなくなる可能性があると思っていますので、そういう意味ではまさに著作権法の体系、政策面で言えば、新しい次元に入らざるを得ない部分があるんだろうなと思っていますので、そこを具体的にどうやれるのかというのはぜひしっかり考える必要があると思っていますので。

    その観点からぜひ意識していただきたいのは、当然ヒアリングを幅広くやるのは大事だと思うんですけども、ヒアリングで、特に権利者とかから聞いて、バリューギャップ問題がどこまでしっかり浮かび上がるのかというのが若干心配ではありますので、そこの部分は留意していただきたいということと、あとは多分これを具体的な制度に持っていく段階で当然いろんな議論が出ると思うんですけども、結局政府の中で、いろんな関係省庁がある中で、多分このバリューギャップ問題を唯一しっかり問題意識として明確にして声高に言っていけるのは文化庁しかないと思っていますので、ぜひぜひ、それでなくても大変ではあるんですけども、具体論を、具体的な対応、政策の中身を、制度の中身をつくるのが一番大変と思いますので、その段階でこのバリューギャップ問題は、ほかの省庁は絶対強調しないという観点からも、しっかり意識してそこを大きく取扱うというか、問題提起できる形にしていただければなと思っております。

    以上です。

    【末吉主査】  倉田委員、お願いいたします。

    【倉田委員】  失礼いたします。長崎大学の倉田です。いわゆる教育学部に所属しております。僣越ながら自分の考えを述べさせていただきます。発言する時間が限られておりますので、今回は主に(1)のDX時代に対応したコンテンツの利用円滑化・適切な対価還元方策について、教育の観点から簡単に意見を述べさせていただきます。

    ここでは拡大集中許諾制度などを基に、コンテンツの円滑化は積極的に進めていくという大前提で、そのための簡素で一元的な権利処理をどのようにすべきかという検討を行っていくものと理解しています。資料4にはそのための検討事項として幾つか挙げていただいております。ありがとうございます。基本的にはこの検討内容に賛同いたします。

    その上でちょっと述べさせていただきますと、利用円滑化に資する新たな仕組みの創設のために国民全体に対してどこまで負担を求めるのかというのが、そういう議論も必要に思いました。極端に言えば、コンテンツの利用者が何も意識しなくても、著作権の管理者が知らないところで何でもやってくれるのか、処理をしてくれるのか。それとも、利用円滑化のためにコンテンツ利用者に最低限身につけてほしいことだったりとか、やってほしいこと、知識・スキルを求めるのかということです。いわゆる著作権に関する教育の高度化が必要かどうかという論点です。

    個人的な意見としては、著作権に関する教育の高度化は必要だと思っております。なぜならば、これからの時代はクリエイターとユーザーが同一人物になるという可能性が非常に高く、コンテンツを公開するという責任だったり、コンテンツを利用するという責任の両面からのマインドセットが必要になると考えるからです。

    つまり、コンテンツの利用円滑化というのは、ユーザーに対していかに面倒な手続を省いてあげるかという観点だけではなく、ユーザーがコンテンツを円滑に利用できる、また、ユーザーが一元的な権利処理ができるための知識・スキルの育成においても同時に検討の余地があるのではないかなと考えております。

    学校教育におきましても、2025年度から大学入学共通テストに情報が正式に追加される予定ですので、情報教育としての知識・スキルは著作権を広く普及していくタイミングでもあります。

    よって、御提案の検討項目について全般的に賛同いたしますと同時に、どのような考え方を持って簡素で一元的な権利処理を進めていくのかという観点が検討事項に含まれればよいのかなと思いました。

    私からは以上です。

    【末吉主査】  河野委員、お願いいたします。

    【河野委員】  河野でございます。資料4の提案の方向性、特に(1)に書いてくださっています、DX時代に対応したコンテンツの利用円滑化・適切な対価還元方策について優先して審議することに賛同いたします。

    その上で、制度創設ありきではございませんけれども、例えば拡大集中許諾制度の創設などを念頭に置いて、実現可能性に軸足を置いた具体的で踏み込んだ議論を行うことを期待します。既にこの件に関しては、勉強会で課題の整理が先行して行われており、本日の資料にその骨子が添付されています。そこにまとめられた提言と方向性をぜひ尊重していただき、前向きで積極的な議論ができればと考えています。

    今回の諮問の背景として記されているように、デジタル化・ネットワーク化による流通環境、消費動向及び創作環境の変化、さらにグローバルなプラットフォームサービスの台頭など、環境は大きく変化していまして、その流れを受けて、私たち一般消費者の著作物に対する意識、そして著作物の持つ価値を享受する手段や方法も大きく変わってきています。新たな方策を打ち出すことに時間的な猶予はないと感じています。

    また、現状を適切に認識するために多方面からのヒアリングを行うという御提案がございましたけれども、丁寧な意見聴取においては、ネットクリエイターやZ世代等に加えて、既存の組織に属していない関係者、難しいと思いますけれども、そうした方々の御意見をぜひ伺いたいと思っております。

    併せて、バリューギャップ対策として、可能であればデジタルプラットフォーマーへのヒアリングの検討もお願いしたいと考えています。

    最後に、全く本筋から外れるのですけれども、文化庁さんと所掌している著作権についてクローズアップし、文化庁の持つ役割を社会に知ってもらうという意味で、つい最近ホームページにおいて、コロナワクチン職域接種を文化芸術に携わる個人向けに実施する旨の告知がございました。検討項目にあるDX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発・教育方針からはちょっと遠いですけれども、一例としてこうした具体的な施策を都度適切に行うということも回り回っては役立つのではないかと感じております。

    私からは以上でございます。

    【末吉主査】  後藤委員、お願いいたします。

    【後藤委員】  進め方等については文化庁事務局さんにお任せしたいと思いまして、私から意見と最近の報告ということをさせていただきたいと思います。

    いわゆるDX時代、そしてこの5Gの運用、やはり懸念されるのはオンライン上の海賊版問題だと思っています。報道によりますと、東京オリンピックの開会式の映像が海賊版、8Kムービーということで出回っているという状況でもあります。

    こういった状況の中、我々コンテンツホルダーは、限られた予算、限られた人材の中で効率的・効果的な実効性を持った対策を講じなければいけないという状況にございます。

    それを実行する上で我が国が強化しなければならないことは、国際執行力、教育、そしてサイトブロッキングが挙げられると思っています。

    国際執行につきましては、本年4月より経産省の支援を受けまして、昨年もプレ実験をやったんですけども、国際執行プロジェクトということで、エシカルハッカーと連携して対策を講じています。

    この中で2つ分かったことがありまして、やはり海賊版サイトの運営者、これは本当高度なサイバー技術を擁していまして、多国間のサービスを多層式に運用するという形で、明らかなプロ集団です。ということで、そう簡単には追いつけません。

    それともう1点、国際執行の執行例としまして、ファスト映画の対策です。ユーチューブに無許諾でアップロードするというファスト映画の運営者につきまして、国際執行手続ということで、ユーチューブのグーグルさん、グーグル本社に情報開示手続を行いまして、開示された情報に基づきまして、宮城県警と連携して、刑事事件に結びつけたということであります。

    55あったアカウントが、これはもう検挙がなかったら500、5、000とぼんぼんぼんぼん伸びたと思いますけども、今、8アカウントまで減っているというところです。

    次に教育ですが、今回のファスト映画の摘発で感じたことが、やっぱりZ世代中心なんですね。それでタイムパフォーマンスということで、彼らは小さいときからスマホを持っていますから、これは非常に情報過多でありまして、その中でこのファスト映画のように、かいつまんで結末を見るというのが浸透しつつあったということがあります。

    やはり教育、時代時代に合った教育というのは常にアップデートしなきゃいけないと思っています。

    最後になりますが、サイトブロッキングですけども、先ほど触れました国際執行、これはやはり非常にお金がかかるんですね。福井先生もいらっしゃいますけれども、出版社の皆さんも大変苦労されています。非常にお金がかかるということになると、他国でもそうなんですけども、コンテンツホルダーがそこまで費用を出して苦労するのであれば、他国が導入しているサイトブロッキングを検討しましょう、導入しましょうという動きが今流れでありますから、その辺も含めて、今回は難しいのかもしれませんけども、皆さん、ちょっと片隅に置いといていただければと思います。

    以上です。私の意見です。

    【末吉主査】  坂井委員、お願いいたします。

    【坂井委員】  坂井です。よろしくお願いいたします。DX勉強会に引き続きお世話になります。エンターテインメント表現の自由の会の代表をしております。エンタメ表現の消費者団体として活動しているんですけれども、やっぱり著作権という問題は非常に大きな問題です。それから、表現の自由というところでも、かなり著作権と絡んでくるというところで、今回この委員に選んでいただいたのかなと思っております。

    利用の円滑化と適切な対価還元ということで、これ、年末までに結論というのは相当なハードルだと思いますけれども、やっぱり思い切った、かつ具体的な案を出せればなと考えております。

    次長おっしゃっていた、地中に隠しているものを表に出して利活用するんだという観点は、我々、本当に大事だと思っていまして、端的に言うと、DX時代にスズランの写真をリツイートすると違法になってしまうという、これはやっぱり活用という観点でいうとかなり問題があるというか、厳しい状況なのかなと思っています。

    先ほどから御指摘あるように、プロとアマチュアというところ、何点か挙げられているんですけれども、アマチュアといっても、皆さんがイメージされているセミプロではなくて、本当に単なる日常の写真をツイッターにアップしたユーザーというような、そういうレベルでのアマチュアというレベルでもぜひ考えていただきたいと思っています。ここにいらっしゃる多分皆さんも、写真を撮れば、それは著作権者ということなんだろうと思いますので、そういうクリエイター、アマチュアといっても、1億2、000万人のクリエイターという意味で捉えていただきたいなと思っております。

    それから、使うという意味では、安心して使えるという観点が非常に大事だと思っていまして、我々、著作権法を勉強すればするほど安心して使えなくなってしまうんですよね。そういった意味で、安心という観点はぜひ取り入れていただきたいなというところと、確かにグローバルで、各国の制度を見習うのはいいとは思うんですけれども、やっぱり日本には日本の文化というものがありますので、文化あるいは商習慣といったものも加味した形で今回まとめられればいいなと思っております。

    ちょっと時間があれなので、拡大集中許諾について言うと、事務局にはぜひお願いをしたいんですけれども、各団体のヒアリングを多分文化庁さんのほうでされると思うんですけれども、組織率というんですかね、実際に団体が認識をしている、プロだけだと思いますけれども、プロのユーザー数がどのぐらいで、どのくらいの人たちがその団体に属しているのかという数字をぜひ集めていただきたいなと思っております。

    資料6について、まだ説明はないんですけど、ちょっと先走ってお願いをすると、検討の観点で孤児著作物が入っていないので、ちょっとそこについては資料6で検討していただきたいなと思っております。

    以上です。

    【末吉主査】  菅委員、お願いいたします。

    【菅委員】  SF作家の菅です。私が最近感心したのは、NHKのニュースで写真の出どころをちゃんと示すようになっていますね。例えばゲッティであるとか、国立感染症センターとか。そういうふうに何かを使うときには必ず出どころを出すというのは、これはマスコミがやってくれると、それは本当に一番大きな教育である、著作権法の教育であると感じました。ここまでちゃんとしなければいけないのか、そして、それには対価があるんだろう、払っていらっしゃるんだろうなという予測も含めて、本来はそこまですべきものだということが、全国民、若い子に伝わったいい例だと思って、NHKには少し感謝をしております。

    私の立場から言いますと、先ほどおっしゃった、アマチュアがクリエートをする時代になってきております。例えばツイッターでも、CCをつける。クリエイティブコモンズ。これは使ってもいいよ、私の書いたイラストですけれども、使ってください。CCにもたくさん種類があって、商用利用だけはできませんとか、いろいろ条件づきのCCが何種類かあるんですね。そのCCマークを積極的につけていく。そして自分のつくったものを自分でプロデュースをして、ここならいい、これは駄目というふうに自分から表明していくというのを習慣的にやってほしい。それが自分の身を守るためだと思います。

    CCなり、あとマルC、これはプロのほうになりますけど、マルCなり、あと@で始まるツイッターアカウントですね、そういうものを積極的に作品につけるという習慣をつける。そうすると、なりすましもなくなりますし、あと、これは使っていい、使って駄目だという、使う側が調べる手間というのが、それを見た時点で分かることになりますので、これをどんどん進めて告知をしていくのが一番の著作権教育ではないかと考えます。

    出版の時点ではISDNというのがもう大分前に始まりまして、それは文庫本なり単行本のカバーのデザインを崩すと言ってバーコードをつけるのをとても反対する人たちがいたんですけども、私も最初は嫌だなと思いつつ、今はもうあれがないとやっていけないような習慣になっております。

    ので、最初は自分の作品にそのようなものをつける、埋め込む、またはキャプションとして強制するのは反対意見が出るかとは思いますが、必要なものであるということを告知していって、そうやって作品に条件がちゃんと付随していくような形はどうかなと思っています。

    技術としてはステガノグラフといって画像に情報を埋め込むこともできるんですけども、それでは抑止力になれない。見た瞬間にどうしていいか分からないということになりますので、ぜひ見える形で何かクリエイター側、特にアマチュア系が自分でつけていくという教育、それが広まれば、もっと一般周知されていって、結果的に教育になるというようなことを今回考えました。

    以上です。

    【末吉主査】  仁平委員、お願いいたします。

    【仁平委員】  日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。私のところは、先ほど河野様のほうがお話しされましたような既存の権利団体に属していない会員さん、そしてプラットフォーマーさん、そういった方々を会員にさせていただいている団体です。まさに今回のこういう取組は、ネット系のコンテンツをより広く皆さんに知っていただくチャンスだと思っております。

    その中で我々のほうが考えていることは3つあります。1つは、まずどういう使い方をしていいのか、使っていいのかどうなのかということをちゃんと宣言する場所というものをきちんとつくるということ。

    2つ目は、使えるようというふうに宣言したコンテンツを実際に使ってみたいと思った放送局の方などが気軽に手に入れられるという、そういう場所を用意するということ。

    そして3つ目は、当然のことながら、使用されたときにその使用料等がちゃんと権利者のもとに帰るという仕組みを有するということ。

    この3つが大切だと思います。

    これを解決するための1つの例なんですけども、例えばネット系コンテンツですと、今日本国内にもある幾つかの大きなプラットフォームの中にはかなりたくさんのネット系コンテンツが既にアップロードされていて、そこには当然のことながら、データもあれば、メタデータ、つまり、権利者が誰かということもある程度分かる。ここをさらに充実させていけば、いわゆる民間がやっているSNS自体が大きなデータベースになる可能性もあるんじゃないかなと思っています。

    そういうこともありましたので、先ほど河野様のほうからお話しされたようなプラットフォーマーの方にも意見を聞くべきだというところにはすごく大きく賛成をしております。

    私のほうからは以上です。

    【末吉主査】  畑委員、お願いいたします。

    【畑委員】  畑でございます。日本レコード協会に属しておりまして、レコード会社の業界団体、及び集中管理を著作権等管理事業法の下で行っている団体でございます。

    今期の基本政策小委員会の検討テーマがDX時代に対応した著作権制度・政策の在り方ということで、検討の進め方として、まず利用円滑化を適切な対価還元とのバランスを踏まえて検討する、そして、年明けぐらいから権利保護等を対価還元の視点を含め検討を進めるという検討の仕方には全く異議ございません。賛成でございます。

    その上で3点ほど意見を述べさせていただきます。1点目につきましては、レコード協会もやっております集中管理、あるいは検討の俎上に上るであろう拡大集中許諾制度等についてです。この検討におきましては、先ほども他の委員の方々の御意見が出ておりましたけども、利用場面、あるいは利用目的、商業利用なのか、公益性の高い利用なのか、そういったことを踏まえるということがひとつ重要であるとともに、コンテンツの種類、我々レコード協会は商業流通されているレコードを集中管理で扱っているわけですけども、そういったコンテンツなのか、あるいはアウトオブコマースのコンテンツなのか、そういったことを踏まえながら検討を進めていくということが重要かと考えております。

    日本レコード協会では2006年から放送番組のネット配信を対象としてレコードの集中管理を行っておりますけども、昨年から放送番組の二次利用を離れて、ネットオリジナルのコンテンツについても一定範囲で集中管理を始めたところです。

    ただ、対象としておりますレコードというのはあくまで商業的に流通されているコンテンツでございますので、利用場面、利用方法によっては集中管理に適さないと権利者が考えるものもあります。いろんな理由で集中管理に適さないという状況があるのですが、中には、集中管理をせず、権利者が個別のライセンスビジネスとして取り扱ったほうが権利者利益が最大化できる利用もあります。

    そのようなコンテンツ権利者の意向、あるいはビジネスの実態というものも今後のヒアリング等で明らかにしていきながら、踏まえながら、拡大集中許諾制度等については、過度に利用促進にぶれることなく検討を進めていければと考えております。

    2点目は、これも先ほど来出ていますバリューギャップの話ですけども、御存じのとおり、EUにおきましては、「デジタルシングルマーケットにおける著作権指令」が制定されました。DX時代においてデジタルプラットフォーマーの影響力、パワーというのが極めて大きいわけでございますけども、先陣を切って制度をつくったEUにおいても、制定後2年たってもまだ加盟国においてはあまり国内法制化が進んでないという実態もあり、まだまだEUにおいても十分に整備がし切れてないのかなと見ております。

    ここに関しましては、著作権法で手当てができる部分、あるいは、それ以外の不競法、独禁法等、いろんな制度の絡む部分があるかと思いますので、そこについてもこの場で一定の議論が進めばいいなと考えております。

    3点目につきましては、DX時代におけるソリューションを模索する上での技術の有用性ということかと思います。著作物等の利用円滑化を促進する上で広範囲な権利情報を網羅的に集約したデータベース、これの重要性というのはもう既に認識されているかと思います。

    また多様な場面で利用されるコンテンツを特定する、例えばフィンガープリント等の技術、あるいは特定された情報を横断的に一意に特定するためのコンテンツIDが広く利用可能になっていること。そういった技術基盤の整備状況、あるいはそれを整備していくこともまた重要なことではないかと考えております。

    音楽分野につきまして、文化庁さんの実証事業が平成29年度からスタートし、3年間にわたって、権利情報を網羅的に集約化していくデータベース、それと検索サイトを構築・公開していく事業が行われました。この4月から一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会という民間自走の団体が立ち上がって、そこで今継続的に権利情報の収集・公開を進めておりますけども、そういった基盤を使うということも1つのソリューションの在り方としてこの小委員会で検討できればと考えております。

    私からは以上でございます。

    【末吉主査】  福井委員、お願いいたします。

    【福井委員】  福井でございます。皆さんの御意見、大変勉強になるなと思って伺っておりました。DX勉強会の最後に瀬尾さんが「殻が破れてない」とおっしゃったときに、自分はその後で、いや、これで結構合格点じゃないかなというふうに申したんですね。今、そのことを猛省しております。我々に時間は永久にはないんだということを肝に銘じて、今回の検討にも臨みたいと思っております。事実、今回適切に事務局におまとめいただいた多くの課題と視点は、10年前から既に存在しているものばかりじゃないでしょうか。

    1番の利用円滑化について、ここではクリエーターとユーザーの二分論がまだ随所に残っている気がするんですけれども、この二分論自体、もうやめるべきじゃないかと思うのですね。坂井さんもおっしゃったとおり、1億総発信者、1億総利用者です。そこにおいてみんながクリエーターとユーザーの両方である、という場面は非常に多いですね。過去コンテンツのアーカイブ発信やUGC、こういう活動は二分法でははかれないのではないかと思います。

    特に映像のような過去のコンテンツは、関わる権利者が極めて膨大で、管理されていない権利も非常に多いんですね。それを一番2次利用したいと思っているのは当のクリエーターであったりします。でも、他の権利が処理できないから死蔵されてしまう。こういう問題に対処していくことが大事じゃないかと思います。

    ここでは保護が特に求められていない作品の利用可能化、自由化と、それから保護が求められている作品のデジタルライセンス市場の促進、この双方を大きい意味で進めていくことが大事だろうと思います。

    その点で、権利者不明問題は極めて重要なんですけれども、ただそれだけの問題に矮小化するような議論はしてはいけないと思うのですね。まさに集中管理の革新に我々は取り組むべきときが来ていると思います。

    ただし、それはあまり大きい課題で、最初から全てやろうとし過ぎると、スピードがなくなってしまいます。だから、小さく産んで大きく育てていくような拡張性のある制度が、大事じゃないかなと思うところです。

    次いで2番の権利保護ですね。海賊版の問題は確かに極めて深刻です。これについては、政府内での対応の体制や国際的な協力体制が鍵であるということを言い続けておりますが、この間大幅に進んできたように思います。それを定着させることが重要。まず現行法でできることを、各国の協力の下でやっていく。それが重要ではないかと思います。

    最後に、教育・普及です。大学などの各種の専門課程の中で著作権教育をしっかり位置づけるという具体の議論に入るべきだと思います。

    また、オンゴーイングな社会教育の中で著作権教育をどう位置づけていくのか、そのインセンティブをどう与えるのか、こんな議論にも踏み込んでいければと感じました。

    私からは以上となります。

    【末吉主査】  前田委員、お願いします。

    【前田委員】   前田でございます。利用円滑化の観点からは、拡大集中許諾が検討対象の1つになろうかと思います。しかし、私は仮に拡大集中許諾制度を導入するとしましても、導入可能な対象著作物の種類あるいは利用範囲はかなり限定されたものにならざるを得ないのではないかと思います。

    現在集中管理の割合が高い音楽の著作物については導入の可能性があるかもしれませんが、そのような分野はどちらかというと例外的で、集中管理が全く行われていない分野、あるいは利用範囲を限定した集中管理しか行われていない分野が多くあるのではないかと思います。それは単に整備が遅れているというだけではなくて、相応の理由があってのことかもしれません。そうだとしますと、拡大集中許諾制度は、仮に導入するとしても、限定的なものにならざるを得ないのではないかと思います。

    また、拡大集中許諾を仮に導入する場合に、集中管理団体によってうまく運用することができる見通しがあるのかどうか。それについては、現在集中管理を行っている団体の御意見を伺ってみたいと思います。

    それから、集中管理の拡充・促進についてでございますけれども、既に集中管理が行われている分野については、その拡充を図ることが考えられますけれども、そもそも集中管理が行われてこなかった分野についてどうするべきかという問題があると思います。

    これらに対しまして、権利者不明等の場合の裁定制度の抜本的見直しにつきましては、それによって幅広く利用円滑化に資することのできるものになる可能性があります。井上委員から御指摘がありましたように、拡大集中許諾制度や集中管理の拡充促進と裁定制度の改革というのは、目的とする点に共通するものがありますが、しかし択一的な関係にあるわけではございません。拡大集中許諾等の検討と並行して実現可能なものですので、ぜひ裁定制度の抜本的見直しの検討を進めるべきかと思います。

    それから許諾推定の制度につきましても、私は有力な候補の1つであると思います。最も法律上の推定規定を新たに設けるとなりますと、限定された分野のものにならざるを得ないかもしれません。

    しかし、ソフトロー的な手法によって、例えばこういう場合には黙示の許諾があると考えられるというようなガイドラインをつくっていくということは考えられるように思います。

    いずれにいたしましても、資料4にお書きいただいておりますように、多様な関係者から多くの意見聴取を行うという方針には私も賛成です。

    また、限られた時間の中にはなると思いますけれども、解決策の候補を絞り込むのではなくて、いろんな方策を検討すること、そして複数の方策を組み合わせていくことが必要、有益なのではないかと思います。

    私からは以上でございます。

    【末吉主査】  吉村委員、お願いいたします。

    【吉村委員】  ありがとうございます。まず最初に私からも、これまで長年著作権の世界で御活躍された瀬尾様への感謝の念を申し上げるとともに、心からの御冥福をお祈りしたいと思います。

    福井委員からもお話がございましたが、私もDXの勉強会でも御一緒させていただいた際の瀬尾様の発言を今また改めて思い出しております。あのような熱い思いも心に刻みながら、これからの新しい著作権法の在り方等々を考えていきたいなと強く思った次第です。

    そこで改めて確認したいのは、DXとは何ぞやということかと思います。ここにいらっしゃる委員の方々には当たり前のことかもしれませんけども、DXは単なるデジタル化ではないということであります。著作権の関係で言えば、デジタル関連の様々なテクノロジーが入ってきて、それの利活用が進むことで、クリエーターの種類も変わります、コンテンツの質も変わります、ボリュームも大量になります、となる中で、関与する企業のビジネスモデルとか、参入する企業の種類とかも、どんどん変わってくるということで、いろんなものが根本的に変わっていく、まさに革新だというのがDXの中核をなす考え方だと思います。

    なので、誤解を恐れずシンプルに言ってしまうと、著作権の世界もこれまでの村の論理だけでは通用しなくなるということだと理解をしています。

    著作者の権利が重要であるという基本は大事ということは論を待たないわけですけども、保護の仕方であるとか、対価の還元の仕方、ビジネスモデルの描き方、そういったものは従来の延長線にないものがどんどん出てくる可能性が高いですし、実際今も出てきていると思います。

    こういったものを著作権法でどういう形でカバーしていくのかというのは結構大変なことではあるんですけれども、チャレンジしなければならないということだと思います。

    今日は詳しくは申し上げられませんけど、私自身は、一定の類型化みたいなものが、1つの方向性としての鍵なのではないかと思っております。

    いずれにしても、そういう少し高い視座を持って、新しい時代の著作権法の在り方、それから商習慣の在り方、そういったものを議論する必要があると非常に強く感じているところであります。

    そのときに、ほかの先生からもいろいろお話がありましたけれども、プラットフォーマーをめぐる議論であるとか、恐らくデータ利活用自体をめぐる議論であるとか、そういったものがグローバルでいろいろ展開されているかと思います。そういったものも参考にしながら議論していくということも非常に大事だと思います。

    いずれにしても、根本的な議論をするには非常にふさわしい時期に来ていると思いますし、この時期に必要な議論を幅広く且つ奥深くやっていくということが非常に大事だとの認識でおります。

    私自身は微力ではありますけれども、いろいろな先生方のお知恵を総動員し、ていいものができたらいいな、そこに少しでも貢献させていただけたらいいな、と強く思っているところでございます。ありがとうございます。

    【末吉主査】  ありがとうございました。委員の皆様に一通り御意見を伺ってまいりました。ほかの委員の方の御発言を受けて追加で御発言、あるいは御自分のお考えを補充なさりたいという委員がおられましたらば、ぜひさらに御発言をいただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。菅委員、どうぞ。

    【菅委員】  ありがとうございます。1人だけ具体的なことを言って、ちょっと反省しているところでございますが、とても簡単に使える集中管理というのはもちろん必要であると思います。ところが、今のアマチュアクリエイターの時代になってくると、そこに所属したくない人たち、または所属するほどでもないと自分で思ってしまっている人たちがいるというのは少し考えておかないといけないと思います。

    そうすると、ちょっと前時代的になりますけども、やはり1対1で使いたい人がつくった人に対してこれ使わせてくださいというのに少し逆行するような、何でしょうね、緩衝時期というんでしょうかね、一括集中に向かう前の段階が少し、助走期間があるかもしれないというのは覚悟しておかなきゃいけないと思います。

    先ほど私は絵のほうばかり言いましたけれども、音楽のほうで言うと、マルCとかはやはりキャプションとかにしかつけられないわけで、引用との差というのがちょっと気になっているところであります。文芸のほうでは、例えば主と従があると、主にならないように従として引用するというのは学校の教科書に既に書いてあるところです。

    私の知っている音楽の引用としては、8小節ぐらいは大丈夫というような、いわゆるネット系の習慣というのがあって、それが真実かどうか分かりませんけども、そうやって対価を払うというのを標準にしていく場合、若い人たちにとってはハードルが高いので、ここまでは引用である、そしてここからはこの人に言う、もっと大きなことで言うと、プロに頼むときにはこの団体に言うというふうな振り分けをしていかないといけない。それをちゃんと道筋を立ててあげる集中的な駆け込み相談というんですかね、相談窓口のようなところがあればいいなと思いました。

    何か取り留めがないようなことになってしまいましたけども、私としては以上でございます。

    【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。

    【太田委員】  太田でございます。先ほどの私の発言の補足なのですけど、最近では認知科学や行動経済学等が発展してきており、法学にも影響を与えております。その点でいくと、検討する上で必要なことは、情報の偏頗、取引費用など市場の失敗をもたらす要因の法的是正という基本的発想を超えて、人々、とりわけクリエイターが持っている認知バイアスにも注目する必要があると思います。消費者が著作物などの情報資産を消費する上での、利用する上での認知バイアス、クリエイターが文化をクリエートする上での認知バイアス、それらの影響を重視する必要があると思います。認知バイアスの影響が大きいことが分かってきており、合理人をモデルの出発点とした法制度の分析とかソフトローの設計ではもしかするとあまりうまくいかない可能性があるという危惧の念を抱いております。

    その点では、ソフトローの中には認知バイアス等も含めて考えているものがあることは確かですけど、例えば行動経済学で注目されている「ナッジ」の考え方とか、そういうものも少し視野に入れて法制度を考える必要があるだろうと思っております。

    それと2つ目は、法制度というのはどうしても統計学で言うワン・シグマ(1-σ)とかツー・シグマ(2-σ)ぐらいにおさまる平均的な人々を対象として考えざるをえないのですけど、本当のクリエイターというのはスリー・シグマ(3-σ)のいわば外れ値にあたるような人が多い気がします。それをどのように法制度の対象としてうまく取り込むかというのは、法制度のジレンマだという気がしております。このジレンマをどう克服するかも著作権制度の新たなあり方を考える上での1つの課題だろうと考えています。

    以上です。

    【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。坂井委員、どうぞ。

    【坂井委員】  すいません。教育のところで手短にちょっと補足をさせていただきたくて、先ほどスズランの写真のリツイートという話をしましたけれども、教育するのは非常に重要だと思うんですけれども、皆さんおっしゃられているように、ソフトロー的なところの解釈をすごく入れていかないと、多分判例によると写真のリツイートはしちゃいけませんという結論にしかならないので、そこはちょっと教育というところでは考えていただきたいなと思っています。

    以上です。

    【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。

    【福井委員】  福井です。先ほど前田先生から集中管理が現に進んでいない分野では集中管理というのはあまりなじまないんじゃないかという御意見が出たようにも理解しているんですけれども、これは、相当に決定的な判断の分かれ目だと思うのですね。

    今回の審議事項は簡素で一元的な権利処理が可能となるような方策、これをみんなで話し合って結論を出すということだと思います。そう考えると、集中管理が現に進んでいる分野って、私は、そんなに多くはないように思うのですが、そのほかの分野では権利は今ばらばらであって、権利者と連絡を取ってお話をするのにも苦労しているような状況があることに対して、前田委員はどういう解決策を念頭に置かれているのか、お伺いできればと思いました。

    【末吉主査】  これは前田委員への御質問だと思うんですが、前田委員、いかがでございましょうか。

    【前田委員】  私は、拡大集中許諾あるいは集中管理の拡充によって解決できる分野もあることはあると思いますけれども、それが全ての分野、あらゆる分野に及ぶものではないだろうと思っています。じゃあ、その代替策として何を考えるべきかについては、先ほど申しましたように、まず裁定制度の抜本的改革を進める、これを検討すべきだと思います。

    井上先生からも御指摘がありましたように、拡大集中許諾と裁定制度の抜本的改革とは目的においてオーバーラップするところがありますので、拡大集中許諾で対応できない、あるいは拡大集中許諾が妥当しない分野においても、裁定制度の拡充によって、権利処理の円滑化が図れる可能性があると思います。

    それから、先ほど申しましたように、許諾の推定、それが法律上の推定ということになるとハードルが高いという御意見もあることは承知の上なんですけれども、ソフトロー的な手法を組み合わせることによって利用の円滑化に資することが可能なんじゃないかと、そういった方向性で考えていくのがいいのではないかと思っております。

    取りあえず以上です。

    【福井委員】  福井です。ありがとうございました。裁定制度の抜本的な改革は、御存じのとおり、私もうるさいほど言い続けてきた立場でして、全くそのとおりだと思います。これは待ったなしで行うべきだと思うんですね。

    ただ一方で、権利者不明作品、裁定制度の対象になる作品とは、探す努力を尽くしてもなお権利者が見つからない場合を言います。それは相当に、対象となる権利処理したい作品全体からすると一部なのですね。もちろん重大な問題ですから、解決しなきゃいけないけれども、やっぱり一部なんです。取ろうと思えば連絡が取れる膨大な作品群に関する解決策が必要だということを申し上げたいと思います。

    それについて、全部一々メールか、あるいはツイッターでリプライを送ってお返事を待って、お話をする。そんなことは10年も20年も前から言われてきたけれども、現実にそれによって権利処理コストは下がらなかったということを我々は踏まえるべきじゃないかと思うのですね。

    それから、許諾の推定に関しては、前田先生の御意見に全く賛成です。ただし、法改正を伴わないものだけに最初から議論を狭めるのではなく、法改正ということも1つのメニューにしながら考えていくのでいいのではないか。この具体の議論も重要ではないかと思ったところでした。

    以上となります。

    【末吉主査】  前田委員、どうぞ。

    【前田委員】  今の福井先生の御意見のうち、許諾の推定について、法制度の改革を全く伴わないソフトローだけでやるべきだということではなくて、法律上の推定を設けることも検討対象にすべきだと。ただそれをあまり広げるということは難しいんじゃないかと。それはやはり限定された範囲になってしまうんじゃないか。広げられない部分についてはソフトロー的な対応が考えられるのではないかと考えております。

    【福井委員】  ありがとうございました。

    【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。御発言ございますか。

    今日のところはもうよろしゅうございますか。どうぞ。

    【生貝委員】  ありがとうございます。じゃあ、少しだけ、2点だけ。1点目は、拡大集中許諾のところに関して、まさに万能ではないが、そのことによって解決できる方法はあり、なおかつほかの手段との最適な選択というものを行っていく必要があるんだろうというふうに、これまでお話あったように感じているところであり、プラス、そういった手段を横に並べることと同時に縦に重ねる方法というのもある。例えばさっき言及したヨーロッパの指令ですと、ECLで機能できるところはECLで、機能しない分野は権利制限で、フォールバックで対応しようという2段構えの方法を取っていたりして、このような方法というのはもしかすると様々な使い道があり得るのではないか、ここに限らずというのが1点目です。

    2点目で、デジタルプラットフォーマーに関して、これまで発言あったところ、大変共感でございます。まさにほかの法や政策手段との関わりを含めてどのように考えていくのか。そのようなときに僕はほかの法や政策手段の観点からデジタルプラットフォーマーの議論には関わらせていただくことが多いのですけれども、1つやはり強調しなければならないのは、このことをやはり実態把握というのが極めて大変でございます。

    ですので、具体的な検討を後半に置くというところに関して、進め方に異存はないのでございますけれども、まさに具体の検討に入る前の実態把握というものを、オープンなヒアリング、あるいはその他の様々な調査研究をしっかりと進めておくことが極めて重要かと思いますので、そのことについてはできるだけ早いうちに行っていくことも考えられるのではないかなと感じました。

    以上でございます。

    【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

    そろそろよろしゅうございますか。倉田委員、どうぞ。

    【倉田委員】  簡単に短い御提案なんですけれども、私が聞き漏らしていたのかもしれないですけれども、ヒアリングの件について、話の中にSARTRASの話が出てきたと思うんですが、皆さん御存じのとおり、SARTRASには今TSUCAOという学校向けの入力のウェブ申請システムがありますので、例えばこういうふうな集中許諾的なことをやっている方のヒアリングもちょっと伺いたいなと思いました。

    すいません。簡単な意見です。以上です。

    【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。

    今日はここら辺でよろしゅうございますか。

    それでは、皆様、貴重な御意見をありがとうございました。

    本小委員会でいただきました御意見を踏まえまして、次回からのヒアリングにつなげてまいりたいと思います。

    それでは、次回以降のヒアリング及び審議に当たりまして、簡素で一元的な権利処理方策を検討するに当たっての課題例、これを整理した資料を事務局に準備いただいております。事務局から御説明をお願いします。

    【小倉著作権課長補佐】  失礼します。資料6をお開きください。先ほどの意見交換の際にも何度か出ておりますが、資料6の冒頭、※印で書いておりますが、文化庁におきましては、DX時代に対応した著作権制度・政策の見直しに関する勉強会というものを4月、5月に開催させていただきまして、幅広く意見交換とか勉強をしてきました。こういった議論も参考に本日冒頭に御説明しました諮問を行わせていただいているというものです。

    こちらの勉強会の成果物の1つである「課題の整理」骨子は資料6の2ページ以降に本体をつけしておりますが、資料6の1ページ目では、本小委員会の検討課題の1つの簡素で一元的な権利処理に係る部分を幾つか検討課題例として事務局でまとめさせていただきました。

    簡単に御紹介させていただきますと、1つ目でございますが、簡素で一元的な権利処理のニーズ、そういった権利処理はどういった場面で使いたいといったニーズがあるのか。また、ニーズに対する実効性のある具体的利用場面といったものはどういった利用場面になるのかといったところでございます。

    ここは、例えばそういった一般の方々がつくっている作品とか、ホームページに上がっているものとか、膨大なコンテンツはありますが、そもそもこういった膨大なコンテンツを一気に使っていくといった部分ってどういった場面でしょうかとか、そういったようなところでございます。

    今後こういったところもヒアリングとか検討で詰めていくという必要があるかと思います。

    また、2点目、コンテンツの性質に応じた多様な観点からの検討。こちらも先ほど意見交換のときに幾つか意見ございました。

    例えば1つ目、クリエイターや著作権者の意思の観点からの検討と書かせていただいておりますが、例として、著作権者が権利主張をしていない場合、また許諾権によるコントロールを欲していないものの取扱い。

    また2つ目の観点として、著作権者の利益を不当に害しない範囲の観点、ここは例としてアウトオブコマースの取扱い等です。

    ただ勉強会ではこのアウトオブコマースも定義が多義的でありまして、実務上のビジネスモデルも踏まえつつ、検討の対象を明確にしていくべきといった留意点も付されております。

    また3つ目の観点としては、著作物の創作背景や使途ですね。例として、デジタル空間において自由に活用されることを想定したものの取扱い。

    また4点目、過去の著作物の活用の観点からの検討ということで、過去に放送された番組、過去に収録された講演等、これらにつきましても、デジタル化ということで、例えば配信のニーズがあったりするかと考えております。

    また、ここに示しているものは、勉強会で出た議論を事務局で例として挙げさせていただいておりますが、先ほど坂井委員からもお話ありましたような、例えば孤児著作物とか、権利者、なかなかアクセスが困難な著作物、こういった観点も当然にあり得るかと思っております。

    3点目の検討課題例ですが、ユーザーが簡便かつ安心して著作物を利用できるようになるための方策は何かといったところでございます。

    4点目、簡素で一元的な権利処理等に係る各種方策の総合的な検討。勉強会でもいろんな方策が示されました。こちらは列挙したものでございますが、まさに生貝委員おっしゃられたように、こういった横に並べて、それぞれか、どれかというだけでなく、こういったものを複合的に組み合わせることも当然できていくのではないかいった観点が今後の議論でも必要になってくるかと思います。

    また、最後のところですが、簡素で一元的な権利処理等に係る各種方策をより実効性あるものにする環境整備方策やその実現に資する多様な立場(クリエイター、権利者、利用者、事業者等)からの相互的な協力の在り方。イメージが湧きづらい表現となり恐縮でございますが、例えば各種方策にありますデータベースの構築であるとか、あるいは、拡大集中許諾制度を見越した集中管理団体、こういったものを整備していくに当たって、どういった方々が協力し合えばそういったものができるのか。コンテンツホルダーの権利者のみが力を結集してやるのか、あるいはしっかり利用者が入っていくのか、事業者の協力があるのか、こういった観点からの検討も必要ではないかといったところを示させていただいております。

    なお、資料6の8ページ目、9ページ目をお開きください。資料6の8ページ、9ページ目ですが、こちらは先ほどのDX勉強会の議論に基づいて事務局で整理したものでございますが、簡素で一括的な権利処理等に係る各種方策についても勉強会では様々な意見が出されました。それを各方策ごとにまとめた資料になっております。

    この中には、こういった方策がこういった場面で活用できるのではないかといった御意見や、あるいは、制度的な論点があるといったような課題の提示であるとか、様々な観点の意見を一緒くたにはまとめております。

    これらも前提にしながら今後の議論を進めていくことで、スピーディーな審議会運営を心がけたいと思っております。

    なお、各種方策を並べておりますが、本日、説明は割愛しますが、本日お配りの参考資料に関連する情報を事務局で集めてお配りさせていただいております。

    議事次第の配付資料一覧を御覧いただくか、参考資料の目次を御覧いただければと思いますが、例えば参考資料4では、著作物の流通促進のための権利処理の円滑化等に関するこれまでの分科会の検討経緯を過去数年分集めて用意しております。

    議論の蓄積もございますし、先ほどまさに意見交換の際に、10年来議論をし続けているといった厳しい御指摘もございましたが、こういったことを参考に検討を進めると。

    参考資料の5は、いわゆる拡大集中許諾制度の概要等につきまして、文化庁が過去に行った調査研究事業、こちらの成果物を簡単にまとめたものです。

    参考資料6以下、それぞれ権利制限規定、裁定制度、許諾推定規定、著作権等管理事業、こういったものについても関連する情報を集めております。

    また、参考資料10は、オーファンワークス対策事業、あと11はデータベースの関連として、コンテンツの権利情報を集約化、また、参考資料12の一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会の設立のプレスリリース資料も御参考にお配りさせていただいております。

    説明は以上となります。

    【末吉主査】  ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、御質問はございますでしょうか。

    【太田委員】  よろしいでしょうか。

    【末吉主査】  どうぞ。

    【太田委員】  利用者が安心して使える制度というのが丸で掲げられておりますが、あそこにはポツがなかったのですけど、具体的にどのようなものを検討されたのか教えていただけますでしょうか。

    【小倉著作権課長補佐】  ありがとうございます。こちらですが、実際に著作権法であるとか、そういった権利が発生するものについて勝手に使ってしまっていいのかどうか。あるいは、場合によっては著作権法上の罰則がかかってしまうかもしれない。こういった不安から利用が萎縮する、使いたいけど使うのを諦めてしまうと。こういった実態があるのではないかといった意見が紹介されておりました。

    これにつきまして、例えば、簡便かつ安心して著作物を利用できるようにするためにというところで、こういった場面だったら使ってもいいよといったような普及啓発を進めるとか、例えば罰則がどういった場合にかかるのかとか、そういった部分をもう少し明らかにすると。あるいは、また一例としては、保護期間が切れているのか、切れていないのか分からなくて難しいと。この調査に非常に時間かかるといった御意見もございました。

    このような部分を何かしら分かりやすくできないかといった議論になることを想定しております。

    以上です。

    【太田委員】  どうもありがとうございました。私も講義やセミナーのための教材を作ったり、論文等の著作をしたり、あるいはプレゼン資料を作るときに、しばしばこのコンテンツが使えるのか使えないのか、ということが問題となります。大学の方でもサイトに公開する教材等をアップするときには、著作権上の問題は処理済みか否かといったことを、必ず質問をされるのです。そういうときに、萎縮してしまうという経験は私自身にもよくあることなのです。その経験に鑑みたとき、一般の利用者から見て安心・安全を手軽に確保できる手段が欲しくなると思います。1つのアイデアとしては、供託制度と保険制度を兼ね備えたような制度で、そこに幾らか払っておくとか、あるいは著作権侵害保険みたいなものに入っておればひとまず安心できるというような制度が考えられる気がします。利用者の側が防御できる、予防といいますか、安心できることを目指す制度という観点も考えられるのかなということです。今まで検討してきたのは、むしろ権利者側がどういう制度によって著作権料を取り立てるかという感じで、拡大集中許諾制度なども含めてですが、権利者の権利実現の実効的手段という方向の気がしなくもありません。それはそれで非常に重要な焦眉の課題なのですけど、利用者の利用の安心・安全の視点で考えると、保険とか、供託とかという制度もあり得るのかなと感じます。裁定制度が若干それに近いには近いのですけども、このようにちょっと考えた次第です。

    【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。

    ただいまの説明事項に限らず、今日の全体を通じまして、御意見、御質問、さらに御発言があれば、承りたいと思います。いかがでしょう。

    よろしゅうございますか。

    それでは、ほかに特段ございませんようなので、本日のところはこのくらいにしたいと思います。

    最後に、事務局から連絡事項がありましたらお願いします。

    【小倉著作権課長補佐】  本日はありがとうございました。次回の本小委員会につきましては、8月24日の10時から関係者のヒアリングと審議を予定しております。

    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。以上です。

    【末吉主査】  皆様、どうもありがとうございました。

    それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第1回)を終了させていただきます。

    本日はありがとうございました。

    ―― 了 ――

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