文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第2回)

日時:令和3年8月24日(火)

10:00~12:30

場所:オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)関係者からのヒアリング
    • (2)自由討議
    • (3)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第2回)ヒアリング出席者一覧(127KB)
資料2
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第2回)ヒアリング資料一式(5.8MB)
資料3
事務局によるヒアリング結果の概要(679KB)
参考資料1
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(135KB)
参考資料2
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第1回)における意見の概要(538KB)
参考資料3
簡素で一元的な権利処理方策に係る検討課題(129KB)
参考資料4
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会今後のスケジュール(222KB)

議事内容

【末吉主査】  ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第2回)を開催いたします。

本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、基本的に、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して、御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオオンにしていただくとともに、御発言いただく際には、自分でミュートを解除して、御発言をいただくか、事務局でミュートを解除いたしますので、ビデオの前で大きく手を挙げてください。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところでございますが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】  ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】  本日の配付資料ですが、議事次第の配付資料一覧にあるとおりでございます。

【末吉主査】  それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、1から3の3点となります。早速、議事1「関係者からのヒアリングについて」に入りたいと思います。本日は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方」について、ヒアリングを行います。

まず、事務局より簡単に趣旨の説明をお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  関係者からのヒアリングについて御説明いたします。本小委員会においては、クリエイター等の権利者や利用者、事業者等の多様な関係者から意見聴取を行うこととしており、前回の御審議においても、ネットクリエイターや、いわゆるZ世代に加え、団体に属していない関係者からも意見を聞きたいといった御意見がありました。

また、本日は、前回御議論いただいた「簡素で一元的な権利処理に係る検討課題例」について、会議での御意見を踏まえて更新し、本日、参考資料3として配付させていただいております。参考資料3にあります簡素で一元的な権利処理のニーズや実効性のある具体的利用場面、コンテンツの性質に応じた多様な観点からの検討、各種方策の総合的な検討について念頭に置きつつ、本日のヒアリングを進められればと思っております。

本日は資料1のとおり、10の関係者・関係団体に発表いただきます。御覧のとおり、権利者団体のほかに、ユーザーやクリエイターの方もお呼びしております。この方々におかれては、業界や立場を代表するものではなく、1企業・1個人として御意見をいただくことになりますので、あらかじめ御了承ください。

また、関係団体の皆様には、事務局より、前回審議も踏まえまして、お聞きしたい内容を事前にお示しし、そちらに回答いただいております。御発表者様におかれましては、事前に事務局よりお願いした発表時間に御留意いただき、円滑な議事進行に御協力賜れば幸いです。

なお、こちらで時間を測っておりまして、時間経過した際には、個別のチャット機能でお知らせをするといった運用をさせていただきますので、チャット欄等、御発表の際には適宜御参照ください。

よろしくお願いします。以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。

それでは、初めに、日本放送協会の広石美帆子様、お願いいたします。

【日本放送協会(広石)】  NHKの広石でございます。今日は発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

まず初めに、昨年度は、放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化のための御議論を集中して行っていただき、無事に先の国会で改正著作権法案が成立しましたこと、放送事業者として関係する皆様に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

それでは、始めさせていただきます。資料の下段を御覧ください。ここでは制作した放送番組の活用について、NHKの取組の現状を御紹介しています。放送以外にも、番組をインターネットでも配信していますし、特に国際放送では、ネット配信の活用がますます重要になってきています。また、国内外の事業者様へも、放送だけでなく、ネット配信を目的とした番組提供を行っています。番組を制作して放送するだけに終わらず、番組を再活用することで、さらに権利者の皆様に利益を還元し、また、新たな創作につなげていくことが大事だと考えております。

次のページをお願いします。このインターネットが主流となったコンテンツの流通ですが、その特徴の一つとして、大量の流通が可能となったことが挙げられます。NHKに対しても、過去の放送番組をネットで見たいという御要望があると承知しております。一方、このネット時代においては、国境を越えた海賊版も大量に流通していますし、違法配信を増長させる安価な機器の流通も深刻な問題となっています。

NHK番組の、海外の日本人向けサービスも、それらの影響で、正規の事業が打撃を受けています。この海賊版対策には、現状、決定的な方策がないと言われている中でも、正規版のコンテンツの流通を迅速に進めることも一つの対抗策であると考えます。

下段を御覧ください。過去の放送番組をネットで配信しようとした場合の課題ですが、権利処理業務にかかるコストの問題が大きな課題となっています。一方で、海賊版は権料支払いも権利処理コストも不要です。無料の海賊版が広く流通していれば、アクセスが期待できない番組の配信については、正規の事業者にとって、人件費をかけて権利処理を行っても「ビジネスとして見合わない」と判断されるのではないでしょうか。

放送番組には、様々な著作物等が含まれますが、日本の場合は、集中管理が進んでいないため、個別に権利処理をするケースが多く、それだけ手間暇がかかります。また、不明権利者については、それ以上に探索等のコストが大きくのしかかってきます。

次のページをお願いします。過去の放送番組をネット配信する場合に必要な作業等ですが、やはり放送番組には様々な著作物等があるため、これらに係る権利処理コスト、取引コストの削減が過去の映像資産の配信には不可欠です。

下段を御覧ください。では、権利処理コストを下げるためにはどのような対策が考えられるか、ですが、まずは裁定制度についてです。これまでも随分改善していただきましたが、まだ使いやすいとは言えないと思います。様々な課題をここに書き出しましたが、個人情報の保護が強化される中、今は探索しても、権利者の方が見つかることはほとんどなく、疎明資料を集めることにコストをかけることに疑問を感じています。世の中の動きを考えると、ますます対応は困難になると思われますので、今の裁定制度の改善も大事ですが、抜本的な改革、新たな対応策が必要ではないでしょうか。

次のページをお願いします。不明権利者にも対応できる拡大集中許諾制度の導入についてです。放送番組は多種多様な著作物等を利用していますので、それらを一元的にワンストップで権利処理ができることが理想です。そのような仕組みがもしあれば、裁定制度の改善よりも利用の円滑化に資するのではないでしょうか。

SARTRASは幅広い分野の著作権等の団体が集まり、教育現場での利用の補償金について、ワンストップで徴収・分配を行う組織です。拡大集中許諾制度の導入には、様々な課題があると思われますが、SARTRASのような仕組みが期待されると思います。ただ、拡大集中許諾制度を導入するには、集中管理が進んでいないと難しいとの意見もあります。これまでも集中管理の推進は言われてきましたが、ほとんど前進はありません。せめて、集中管理ができていない分野で、まずは集中管理を進める方策を検討していただくことが大変重要だと考えます。

下段を御覧ください。次は、権利者の意思についてです。団体に管理を委託していない権利者や個人のクリエイターの方については、その所在の確認とともに、権利者の意思の確認もできるような仕組みがあれば、かなりの手間と取引コストの削減になります。権利者情報をデータベースに集約していく取組を進めていただくとともに、データベースに登録されていない場合には、公益性や利用の目的によっては、権利をある程度制限するなど、簡便な権利処理ができるよう、制度的な対応を考えていただけたらと思います。

次のページをお願いします。最後にデジタル技術の導入についてです。NHKでは、音楽の利用報告には、フィンガープリント技術を導入していますが、これにより、かなりの労力が削減されました。ほかにも過去番組の再利用に当たり、人件費をかけて一つ一つ行っている、出演者やインタビュー内容の確認作業を、例えば顔認識や音声認識の技術を活用して、労力を削減することなども考えられます。しかし、放送番組には多種多様な要素が含まれるため、どれも音楽のフィンガープリント技術のような決定打には欠けます。

過去番組の再利用のための円滑な権利処理には、どのようなデジタル技術の導入が有効なのか、これは今後も検討していかなければならないことだと思います。私からは以上です。どうもありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして御質問がありましたらば、御発言いただきたいと思いますが、御質問いかがでございましょうか。

坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  おはようございます。坂井です。御説明ありがとうございました。念のため教えていただきたいんですけれども、NHKさん、様々なコンテンツを持っていらっしゃっていて、ただ、大きく分けると、今まで過去につくってきたコンテンツと、それから、これからつくるコンテンツというものに分かれると思います。認識ではもう最近はかなり契約関係、権利関係の処理についても、1回目、地上波で流す段階である程度もう処理されているという認識なんですけれども、今日お話いただいた内容は主に過去の作品の再利用のところを重点的におっしゃっていただいたのか。いやいや、そうじゃなくて、今もやっぱり大変だからというお話だったのかというところをもう1回改めて明確に教えていただければと思います。

【日本放送協会(広石)】  本日申し上げたのは御指摘のとおり、過去の映像資産を再利用するに当たって、特にインターネットで配信するに当たってということに力点を置いてお話をさせていただきました。

【坂井委員】  ありがとうございました。では、今のものは、ある程度はもう大丈夫という認識でよろしかったですね。

【日本放送協会(広石)】    そうですね。今はNHKプラスという、今、放送している番組のインターネットの同時配信等をさせていただいていますので、制作時に配信の権利まで確保するという運用をしています。

以上です。

【坂井委員】  ありがとうございました。

【日本放送協会(広石)】  ありがとうございます。

【末吉主査】  ほかにいかがでございましょうか。奥邨主査代理、どうぞ。

【奥邨主査代理】  奥邨です。ありがとうございます。簡単にお伺いしますけれども、相続人の把握が困難ということが挙げられていましたけれども、例えば土地でも今、問題になっていますようし、複数の相続人がいて、共有状態で、一部の人は所在が分かっているんだけれども、所在が分からない人がいて困るという、そういう状態で、困っているということはありますでしょうか。それとも、土地の場合と違って、そんなに複雑ではなくて、そもそもみんな所在が分からないのか、それとも、みんな分かるのか、というような話しなのか、その辺はいかがでしょうか。

【日本放送協会(広石)】  御指摘のとおり、1人の方に引き継がれていればすぐに継承者が分かるということもありますが、お亡くなりになって、あまり時間がたたないときには、どなたが相続しているのかが分からなくて、なかなか使用できないということもございます。

以上です。

【奥邨主査代理】  すみません。伺いたかったのは、相続人が5人いて、そのうち2人まで所在が分かったけど、残り3人は分からないとか、そういうことは著作物の場合もありますかという話です。

【奥邨主査代理】  分かりました。ありがとうございます。

【末吉主査】  ほかにいかがでございましょう。よろしいですか。

ありがとうございました。続きまして、EPAD事務局の三好佐智子様でございます。三好様には、デジタルアーカイブと配信の観点から御意見をお聞きしたいと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。

【EPAD(三好)】  EPAD事務局マネージャーの三好と申します。皆様お手持ちのPDFの7ページ目から資料を御覧ください。

EPADは、文化庁令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業の文化芸術収益力強化事業として行われました。寺田倉庫と緊急事態舞台芸術ネットワークの共催で行われた事業です。簡単に言いますと、コロナ禍で経済的な損失を受けている現場を支援するために立ち上がった事業でして、公演映像や戯曲などをデジタルアーカイブ化し、一部に権利処理を施して、商用配信を目指す。それから、デジタルアーカイブ化したものを早稲田大学演劇博物館が監修するサイトを中心に、皆様に共有するといったような事業です。

収集対価や権利金が現場の皆様のお手元に落ちます。これまで権利処理が煩雑で、劇団やプロダクションが独力で対応することが難しかったために、権利処理のサポートを行ったという点が画期的と言われています。

では、資料の次のページに移ります。8ページ目のEPADの立ち上がりとその経緯というスライドになります。目指したことは、今、申し上げましたように、コロナ禍で仕事を失って経済的な苦境に立たされている人を救うこと、それから、権利処理を徹底して作品を未来に継承すること。事業は、20年度の9月から始まって、21年の3月に完了いたしました。

数字的な実績としましては、公演映像を1,283本収集し、そのうち権利処理を291本、行いました。戯曲は553本。美術資料は2,500点、eラーニング動画は63本、制作いたしまして、映像提供団体に支払った権利処理対価としては、合計で5.4億円、事業費の72%を現場へ還元いたしました。

次のページに移ります。実績の2分の2と書かれているページですが、収集した作品は、杉村春子さん主演の1961年の『女の一生』から、2021年の『ヒプノシスマイク』まで多岐にわたります。今でもありますEPADポータルサイトで作品の全容を見ることができますし、先ほど申し上げたJapan Digital Theatre Archivesでは、日英表記で概要が見られること。それから、権利処理の済んでいる作品を3分、動画で見ることができます。このような事業の結果、2020年度のデジタルアーカイブ推進コンソーシアム、産業賞の奨励賞を受賞いたしました。

また、実績として非常に大きいのは、権利処理がされた動画がコンテンツ資産として今年度も活用されていることが言えます。例えば、EPADは今年度、国際交流基金、「STAGE BEYOND BORDERS」というユーチューブチャンネルにおいて、舞台芸術映像に6言語字幕をつけ、国内外に無料配信するという事業を国際交流基金と共催いたします。また、欧州のオンライン演劇祭に出展された作品もございます。

では、このような事業を短期間でどのようにして実現したかと言いますと、組織図を御覧ください。まず、文化庁から委託を受けて、EPADが事務局を担います。協力団体の協力を経て、アーティストから映像を収集し、2番、早稲田大学演劇博物館がアーカイブのプロフェッショナルとして、デジタルアーカイブの監修いたしました。濃いピンクで囲まれた四角の中に、3、4、5番とありますが、日本レコード協会さん、MPAさん、NexToneさんのような著作権団体の皆様のお力なくしては、楽曲の権利処理は到底できませんでした。また、日本照明家協会さんをはじめとする協会組織の皆様が、権利者を探す段階、それから、権利者への啓蒙という点でお力添えをくださいました。

それらの中で、これだけ多くの作品を舞台映像として権利処理を行った事例がなかったものですから、たくさんの問題点が見えてきました。実際には291本が権利処理可能となったわけですが、実は377作品の配信可能化を目指していました。皆様御承知のとおり、日本では、上演の際には、音楽著作権の許諾が必要で、国内の多くの楽曲の権利は主にJASRACさんが集中管理しています。著作隣接権と言われているものは、上演の際には処理が不要なものですから、日本では、既成楽曲をのびのび多用する文化があるんですね。そのために、映像を撮ったはいいけれど、いざ二次利用するとなったときに、原盤権者の許諾を改めて取らなければいけなくて、その新たな権利処理ができなくて死蔵されている作品が多いという課題がございます。

それは皆様御存じのことかとは思うんですけれども、結果的に、権利処理ができなかった作品の理由の1位は、「同意が得られない」。例えば、EPADで収集した作品のデータで言いますと、1作品平均9.3名の権利者がいまして、多い場合には56名、権利者がいました。その権利者が散逸する前に、二次利用の同意を得ておくことが肝腎だと考えています。

不可の理由2位は、「楽曲権利者が分からない」ということです。イベントを開始する前にどの楽曲を使うか、権利処理を念頭に置いて考えることが必要です。また、EPADでは専任スタッフをおいていましたが、権利処理完了までに2週間以上を要した作品が8割以上に上りました。つまり、今、劇団やプロダクションが行っている権利処理は、素人の方が簡単にできることではないことを示しています。業界として、権利処理の正しい知識や、効率的に権利処理を行うためのスキームづくりが必要だと考えられます。また、創作時に観客の映り込みをケアしたりですとか、有名楽曲を口ずさんでいる事例、有名ミュージカルの替え歌を行ってしまっている事例、それから、衣装に既成のコンビニのユニフォームを使ってしまっている事例、それから、実在の遺書を改定して作品を創ってしまっていて、後に、二次利用のときに遺族の許諾が得られない事例など、様々な知識不足が見受けられました。

では、次のページに移ります。スライドの番号で言いますと、10番のページです。真ん中の鉱山の絵は、権利処理ができていない舞台芸術映像を表しています。舞台映像をデジタルアーカイブ化することをマイニングに例えるならば、つまり、権利処理で活用を可能化することがエネルギーに変換することと言えます。権利処理をした作品をマネタイズすることで、社会にエネルギーを供給する、マネタイズをして得た資金で新たな作品を作り、再び社会に提供していくことが次のマイニングにつながると言えます。つまり、デジタル映像、デジタル化された資産を再生活用するためには、権利処理を行わないと何もできないということです。

例えばEPADで集めた作品の中に、『空白に落ちた男』という作品がありまして、2008年にシアターテレビジョンで収録はされて放送に至らなかった作品です。シアターテレビジョンは後ほど倒産し、収録していた作品の多くは、早稲田大学演劇博物館で保管されていると言われています。ただ、『空白に落ちた男』の場合は、制作さんがたまたまそのデータを持っていたので、EPADで権利処理を行い、結果的に、本年度の国際交流基金の事業で国内外に配信することが決定しました。つまり、マネタイズが12年越しに実現したということなんですね。ただ、それは本当に1例にすぎなくて、多くの作品は死蔵されたままであるということは考えられます。まとめますと、権利処理に対する知識が不足していて、配信対価の支払い先や支払い方法がまだ不明である業界においては、権利処理サポートの体制がDX対応として必須インフラなのではないか。また、原盤権、許諾の集中管理体制、それから、舞台芸術関係者や舞台映像の権利の集中管理体制が望まれるというふうに考えております。

以上が、EPADの活動実績と見えてきたことの事例でございます。

私からは以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問がありましたら御発言をお願いいたします。

福井委員、どうぞ。

【福井委員】  私からお尋ねするのも何なのですけれども、短期間、複雑な事業を非常に手際よくまとめていただいたと思います。権利に関しては恐らくお詳しい委員の方々が多いので、おおむねどういう苦労があったかはきっと御想像いただけたところだろうと思いますけれども、私からは反響についてお伺いしたいと思います。

舞台界とか、あるいは舞台ファンの方々から、この事業はどんな反響があったでしょうか。

それから、二次利用をさらなる展開として、国際交流基金で、6言語字幕をつけて、世界に向けて発信するというプロジェクト、これは先行するものが既にあると伺っていますけれども、どのぐらいの視聴がされていて、また、どういう人々に届いているのか、この辺りお伺いできますでしょうか。

【EPAD(三好)】  ありがとうございます。ファンからの反応といいますと、非常に好意的に受け止められています。早稲田大学演劇博物館に、実際に足で赴いていただきますと、AVブースでほぼ全ての作品(一部非公開)がフルで視聴できるんですね。そうしますと、非常に人気だった作品が掘り起こされたような事例もありますので、それこそ早稲田に行って、1日中、そのAVブースにいたいなと言う方もいます。

それから、例えば『わが星』という人気作品が配信開始のツイートをした際、400リツイートぐらい反応がありまして、それから、維新派という作品がユーネクストさんでライブビューイングが行われた際にも反響がございました。

国際交流基金の事業で、どのような事業かと申しますと、既に20年度の4月から配信が20作品ほど始まっておりまして、ほぼ全ての作品が4万ビューを超えております。今回は6言語を想定していますので、英語、中国語(繁体字・簡体字)、フランス語、ロシア語、スペイン語を想定しておりまして、それらの国々に広報もかけて、日本語教育に興味がある方や、日本の文化に興味のある方たちに広く周知していきたいと考えているところです。

【末吉主査】  ほかにいかがでございましょうか。

【EPAD(三好)】  補足になるのですが、早稲田大学演劇博物館にこれだけの作品が収蔵されていて、3分動画が見られるという点で、学校で授業がなくて、どのようにして興味を持っていったらいいかなというような学生さんが、学校に行きたいというモチベーションにしていただいたりですとか、東京外で演劇を見る機会が少ないという方たちが、3分だけでも、作品に触れて、演劇や、東京あるいは都市に行くということに興味を持っていただくというようなきっかけとしても活用されるのではないかなと予測しております。ぜひ皆様も早稲田のサイトを見ていただけたら幸いです。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにはよろしいですか。

私、末吉から1問伺ってもよろしいですか。ありがとうございました。私の理解によると、権利情報のデータベース等の基盤整備という課題がまず一つあるのかなと。それからもう一つ、権利処理をアシストする仕掛というか、そういう基盤整備という点についても御指摘いただいたと理解しているんですが、後者の点についてもう少し何か御指摘をいただく点があれば言っていただけたらありがたいんですが、いかがでしょうか。

【EPAD(三好)】  まず権利処理についての知識が圧倒的に欠けている舞台芸術業界から望まれる権利処理サポート体制というお答えですと、例えばEPADの権利処理を進めている中で、公共ホールの知人から何件か問合せがありました。権利処理というのは実際、誰がどうやっているの? 海外からオンラインフェスのようなものに誘われて作品を出さなきゃいけないんだけど、何から手をつけたらいいの? といったような質問です。たまたまEPAD事務局には権利処理チームがいて、まとまって弁護士と共同で作業を進めていく。そのためのマニュアルと、誰が権利者なのかを設定するためのルールづくりが行われてたのですが、その知識を皆さんに共有するべきなのか、それを外注で皆さんが気軽に発注できるようにすべきなのかというのは難しいところだなと思うんですね。大きな会社さんでしたら法務がありますし、弁護士事務所さんに委託してもいいかもしれないし、それは広石さんが言っていた、まさに権利処理コストというところになりますが。芸術業界でのクリエイターたちの視点から言うと、まず何が問題になりそうかということをクリエーションする前に知れるということ、権利処理するために必要な最低限の契約書の啓蒙というのが必要なのかなと。次に、権利処理をサポートするそういう何か中間機関のようなものがあって、協力をお願いできるような体制があるといいのかなと考えております。

【末吉主査】  ありがとうございました。

それでは、続きまして、株式会社ドワンゴの甲斐顕一様から伺いたいと思います。甲斐様には、動画投稿等プラットフォームサービスの観点から御発表いただけると思います。よろしくお願いします。

【ドワンゴ(甲斐)】  インターネットにおいて、音楽を利用したいシーンが広がっている。この点に関してはもう皆さん認識を一にされていると思います。いろんな動画、ゲーム制作、DJイベント、生放送、BGM等々で音楽を利用したいというリクエストが非常に増えております。

このネットにおける音楽なんですが、このネット音楽の音楽使用に関しては特徴がございまして、それは、二次創作物というものが非常に多数輩出しているということでございます。二次創作物というのは、ネット音楽でされました一次創作の作品をベースにして、それを素材として新たな新しい創作物を創っていくと。これはさらに二次創作、三次創作、四次創作という形で、次々に連鎖して広がって、どんどんネットに上がっていくと。そういう特徴を有しております。そして、これは、単なる一部のネットのユーザーだけの傾向ではなく、一般的な形でも1作品1商品という形で、CDで発売されましたり、ゲームに使われたり、配信されたりという形でどんどん広がっていっております。

私どもはニコニコとしては、この二次創作、三次創作というものを非常に促進していく、応援していくと、そういう体制を取っておりますが、この中で幾つかにおける課題が見えてきております。その中でその課題と、それに対してどういう対応をしているかということに関しまして、若干御説明させていただきます。

1点は、まず「ネット音楽の著作者が、自分の楽曲の利用法を指定できない」という問題がございます。これは二次創作を認めてもいいんだけど、無条件に全面的に何でも自由に使っていいよというのはなかなか、クリエイターの立場からとしては難しくて、やっぱりこういう範囲だったらいいよとか、こういう使い方だったらいいよというものを指定したいというのがやっぱり多くのクリエイターの考え方です。その中で著作者が利用法を宣言できるニコニ・コモンズという制度を設けております。このニコニ・コモンズというのはどういう制度かといいますと、権利者が自分のコンテンツの使用方法を宣言できると。例えばインターネットだけならいいですよとか、テレビもいいですよとか、あるいは映像はやめてください、映像でもいいですよというようなそういう形で、使用方法に対しての一定のそういう規定を宣言できると、そういうコーナーがニコニコの中にございまして、それで了解できる、利用したいという方は、その条件に従った形で素材をダウンロードして、二次創作物を自由に創ることが可能であると。そういうニコニ・コモンズという制度を設けております。

2点目として、二次使用を許諾するのはいいんですけど、やはりこれをどういう形で使われているのかというのをやはり知りたい、確認したいというのは当然、一創作者としては考えるわけですが、それをなかなか追っかけることができない、十分報告できないという現実がございます。

これに対して、コンテンツツリーという制度を設けております。このコンテンツツリーという制度は、二次創作の関連性をデータベースにして登録するという制度でございます。ですので、いわゆるツリーという、ここに表で書いてありますが、どういう形で二次著作物が創られ、それが連鎖して三次創作、四次創作という形で広がっているかということを、登録した原著作者は見ることができる、確認することができる。ああ、こういう形で使用されているんだなということを確認することができる。これはコンテンツツリーという制度にして、これもニコニコ動画の中で提供をしておりました。

3番目に、クリエイター奨励プログラムというものがあります。やはり二次創作に許諾するのはいいですけども、その二次創作が非常にはやったと。それはいいんだけど、じゃあ、その対価というのは一次創作者は何も入らない、ただ許諾だけですねということなると、やはり一次創作としてはなかなか、そこまでして許諾することに対してのちゅうちょを覚えるという現実がございます。

これに対して、クリエイター奨励プログラムという制度を設けております。これは著作者が作品をニコニコに登録して、収益化できる制度です。これは全ての作品に関して、自己の収益に関して一定の再生数に応じて収益を還元するという制度なんですが、これは一般的な収益制度を設けているサイトは他にあるかと思うんですが、ニコニコ独自のシステムとしては、二次的著作物者に対してもこの収益を還元することが可能とされますと。この仕組みは「子ども手当」というふうに我々は呼んでいるんですけれども、二次創作者が、再生数が増えて、奨励金が多数の分配が行われると。これに関して、その一部が原著作者に還元されると、そういう制度です。したがいまして、二次創作者のいわゆる「子ども」と言われるものは、増えれば増えるほど一次創作者に対しては、一次創作物が必ずしも再生数がそういう大きな形でなかったとしても、そういう木がどんどん広がっていくと。そういう形を取っております。このことによって、二次創作を促進する。これらの幾つかの施策を取っております。

それと、これはちょっと視点が違う制度なんですが、ライツコントロールプログラムというものを導入しております。これは言うまでもなく、簡単に言うと、フィンガープリントシステムを導入して、正確な使用数、使用データを把握するということでございます。フィンガープリントシステムというものは、先ほどNHKさんからもありましたように、テレビ局さん等で最近多く導入されているシステムですけれども、我々は自社でフィンガープリントシステムを開発しまして、独自に精度の高いものを導入して、これにより、より正確なデータの把握もし、正確な使用状況が報告できるという形を取っております。

このような制度なんですが、結局、最終的に取りまとめまして、どういうものが新しい音楽利用の理想的な形かといいますと、まずは楽曲の登録、検索のデータベースがきちっと確立していると。一方で、その使用状況を把握するためにはどうしてもこのフィンガープリントというものが切り札になって、ここに楽曲のデータベースがきちっと確立して、きちっとしたデータがあると。この両者をきちっとした管理をするシステムが構築されて、正確なデータが把握でき、それに基づいて権利者に正確な対価の分配が行われると。こういう形が求められる、こういう形を目指していきたいと考えております。

また、そういう状況において、具体的に何をやるのか、何をしようとしているのかということなんですが、最後の取りまとめとしまして、フィンガープリント技術のデータベースをネット音楽にも拡充させるということを急ぎたいと思っています。現況、フィンガープリントというのは既に導入されているんですが、基本的に元のコンテンツの楽曲のフィンガープリントデータが基本的な、メジャーと言われる、レコード協会加盟会社の音源しかない。これはレコード協会から提供されて、データベース、流れが出来上がって、フィンガープリントのデータを提供する。しかしながら、いわゆるネット系、ボカロPとか言われるネット系クリエイターという者は個人で活動しています。個人で、一方で、実演家であり、レコード製作者であり、ディストリビューターでもあるということから、このデータをきちっと把握して、フィンガープリントすることができていません。この作業に大至急取りかかり、データベースを広げて拡充するという作業に取り組みたいと思っております。

具体的に、じゃあ、それをどうやってやるんだという話なんですが、これは最後のマル2のところなんですが、「ネット音楽の作品情報のデータベース化と、作品利用促進のための情報登録窓口の設置の検討」とあります。要は、ニコニコ動画というサイトを、プラットフォームを運営しているわけですが、ここには7,000万人を超える会員が登録しております。

多くのネット系クリエイターという方たちに御利用いただいているわけですが、これをプラットフォームとして、楽曲に関する申請を行っています。情報の申請を行っていただいて、このデータを登録して、データベースをつくるという作業に取りかかりたいというふうに思っております。そのことによって、作品データ、権利者データ等の情報を集約していくと。これを提供できるような形にしていきたいと考えております。まずはここからネット系の音楽に関する、いろんな取組を行っていければというふうに考えております。

以上、簡単ですが、説明を終わります。

【末吉主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問がありましたら御発言お願いいたします。いかがでございましょう。

奥邨主査代理、どうぞ。

【奥邨主査代理】  ありがとうございました。1点だけ簡単にお伺いします。コンテンツツリーですけれども、コンテンツツリーに、例えば二次創作をした、三次創作をしたと登録をできるのは、二次創作者、三次創作者だけでしょうか。それとも、例えばニコニコさんだったら、視聴者の方が見ていて、この作品はあの作品の二次利用じゃないのか、三次利用じゃないのかというような、コメントをつけられるとか、申告できるとか、そういうことになっているんでしょうか。そこはどうでしょう。

【ドワンゴ(甲斐)】  渡邉さん、その辺補足していただけますか。

【ドワンゴ(渡邉)】  ドワンの渡邉です。御質問の答えなんですけども、申請ベースになっていて、登録できるのは二次創作、三次創作した本人のみになっています。第三者からの申請というのは基本的に受け付けていません。

【奥邨主査代理】  ありがとうございます。

【末吉主査】  ほかにいかがでございましょう。

福井委員、どうぞ。

【福井委員】  もしお分かりになればですが、データ的なことを少し教えていただければと思います。ニコニ・コモンズが付与されているコンテンツの数は今、どのぐらいの規模であるのか。それから、クリエイター奨励プログラムでの分配の規模、コンテンツツリーでの把握されている親子関係の規模等、もし共有いただけるようなデータがあれば御紹介いただければと思います。

【ドワンゴ(甲斐)】  具体的な金額はここでは控えさせていただきたいんですが、渡邉さん、数字でお話しできる部分だけ御説明いただけますか。

【ドワンゴ(渡邉)】  まずクリエイター奨励プログラムのほうなんですけれども、具体的な金額はお伝えできないものの、今現時点までに活用いただいているクリエイターの数というのが、6万ユーザーほどいらっしゃいます。その方々が日々コンテンツを投稿し、収益確保を行っています。コモンズのほうの素材数に関してなんですけども、ざっと現場のほうで集計している……。今すぐ出せる状況にはないので、別途まとめたものを展開させていただくという形であれば可能です。

【ドワンゴ(甲斐)】  よろしいでしょうか。

【末吉主査】  菅委員、どうぞ。

【菅委員】  ありがとうございます。ニコニコさんには日々お世話になっておりまして、私もクリエイターズコモンズ、今お話しされた全てのことをやらせていただいております。少し疑問に思って、お聞きしたいのですが、例えばコンテンツツリーとか、あと、ニコニ・コモンズの仕組みはよく分かっているつもりなんですが、クリプトン・フューチャーさんのほうでも、自分のボカロ曲、楽曲を登録して、そこから使用ができるというふうに、今、窓口が2つあるように私には見えてしまっているんですね。そこのすみわけというか、どちらかに登録すればいいのか、申請すればいいのか、両方に申請しないといけないのか。そこら辺のすみ分けについてお話を聞きたいです。

なぜかというと、これからいろいろ集中管理一元化していくわけですけども、そうやって同じようなことをするところが複数出てきたときの参考にさせていただきたいので、現段階のすみわけを教えてください。

【ドワンゴ(甲斐)】  現況、どちらかという形で特定はされておりません。今後、何らかの全体的な権利の集約という中で、何らかの統一が必要だということであれば、それは連携しながらやっていくということを考えていきたいと思っております。現況はそういう取組を全体でやっていこうという方向性がないものですから、ドワンゴはドワンゴで単体でそういう取組をやっているという現実がございます。ただし、今後その全体をまとめようという方向性を打ち出されれば、我々も調査に協力していきたいと思いますね。

【菅委員】  統一するかどうかは私の権限ではございませんが、今のお話で了解いたしました。ありがとうございます。

【末吉主査】  倉田委員、どうぞ。

【倉田委員】  失礼いたします。長崎大学の倉田と申します。御説明いただきありがとうございました。私の聞き漏らしかもしれないんですけれども、1点質問させてください。コンテンツツリーについての質問です。動画のコンテンツライブラリーということで、動画に対する二次的、三次的著作物を申請していくという方式と伺ったんですけれども、例えば動画というのは、恐らくイラスト、音楽、文字とかいろいろなものの複合メディアだと思うんですね。その動画の中にあるイラスト自体とか、音楽自体とか、そういうものの別メディアに対する原著作物への登録というのはございますでしょうか。そこら辺の部分をお聞きできればと思います。よろしくお願いします。

【ドワンゴ(渡邉)】  私から御説明します。資料上では動画ベースの説明をさせていただきましたが、イラストであったり、音声、楽曲その他のメディアにも対応しています。

【倉田委員】  ありがとうございました。恐らくイラストとか音楽というのが有名な音楽だけじゃなくて、要するに、今、いわゆるアマチュアみたいな方の作品、コンテンツもいっぱいございますので、そういう質問をさせていただきました。ありがとうございました。

【末吉主査】  ほかにいかがでございますか。よろしいですか。

ありがとうございました。それでは、続きまして、松本杏奈様でございます。松本様には、クリエイターやZ世代の観点から御意見をお聞きしたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

【松本氏】  皆さん、おはようございます。はじめまして。松本杏奈と申します。今年の春に徳島県の徳島文理高等学校を卒業して、今年の秋からスタンフォード大学に進学します。私、今回は、実は学生としての立場というよりは、デジタルネイティブ世代、かつアーティストという立場から参加させていただいております。

まずアーティスト活動に関しては、簡単に説明すると、昨年度、MONSTER Exhibition2020という絵画展示にて、去年の9月に、東京都の渋谷ヒカリエにて展示して、来年の3月からは、フランスのパリのGalerie Grand E’ternaで展示しております。もともと社会問題への意識啓発活動などを芸術活動を通して行っております。その他は、徳島市の公式阿波踊りTシャツや徳島市の公式クラウドファンディングの返礼品などのデザインをしております。

私のほうから最初に、若者という視点で話していければなと思います。まずコンテンツの権利処理についてなんですが、最近、権利処理の状況について、私は若者からしたらすごく悪い状況にあるなと思っております。例えば学校で研究活動などを行った際に出典を書く人というのは誰もいません。

そして、次に、芸術活動だったり、クリエイターの作品を発信するに当たって、そのクリエイターの低年齢化というのがすごく問題になってきていると思います。例えば最近SNSが発達してきて、音楽に関しても、絵に関してもすぐ発信できるようになりました。それで私は、高校生のときからユニバーサルミュージック合同会社さんにてインターンさせていただいているんですが、そこで新人発掘のお仕事をさせていただいて、そこで発掘する年齢が私よりも低かったり、小学生がいたりだとか、そんな感じでどんどん低くなってきています。

そこでどういうことが起こるかというと、日本の現在の権利関係の教育というのが全然進んでいないせいで、だんだん犯罪のハードルが下がるなと思っているんですね。例えば私は高校1年生のときに、学校の公式キャラクターのデザインを手がけました。そうしたら、今年ついに、光栄なことに学校のチャリティーグッズのデザインにそれが使用されました。それでその確認を行ったところ、私が作ったのはピンク色のキャラクターなんですが、なんとグッズは水色のキャラクターになっておりました。キャラクターの色が変わって、形も若干変わっている。「何ということだ、これは」と思って、後輩に、「何でこんなことになっているんだ?」というのを聞いたところ、「いや、グッズなんで大丈夫だと思っていました」とのことでした。

なので、その権利関係についての教育がまだまだ足りていないなという感じで、先ほど三好さんもおっしゃっていたように、若者への興味、権利に関して興味を持ってもらう活動というのがすごく難しいなというのは今すごく感じています。

次に、集中管理についてなんですが、事業者が複数のコンテンツの権利の管理を担当するというのは、私はすごくこれから大事になるなと思っていて、その権利についてそれぞれが専門家レベルの知識を持っているわけじゃないというのを最近どんどん実感してきていて、私はたまたま自分で興味を持って、いろいろ調べて、いろいろ気をつけながら、その資料を使ったりだとか、クリエイターの作品を使ったりしているんですけど、そういうのを分からない状態で使ってしまうと、簡単に犯罪に足を踏み入れてしまったりだとか、もう極端な例ですけど、そういうことになってしまうんじゃないかなと思っていて、一括で管理してしまうのが一番楽だなという。クリエイターを守ることにもつながりますし、その作品をもっと広く広めることにもつながるなと思いました。

私は、個人的には芸術作品を、社会問題に関する意識啓発で作品を創っているわけなので、作品だけが独り歩きすることに関しては、すごく私はうれしく思っています。でも、その作品が、誰が創ったかが分からない状態であるというのは、クリエイターからしたらすごく悲しいことで、あんまり作品の意義を見いださないというか、クリエイターの命に関わることですよねと思っています。私の場合は作品に関して、そういう作品だからいいんですけど、ほかのクリエイターからしたら、そういうのがよくないと思っています。

その他、私は、簡素で一元的な権利処理についてなんですが、期待することとしては、先ほどのようにクリエイターがもっとちゃんと守られていくような世の中になるというのを感じているんですけど、次に懸念することとしては、そういう人が発掘されにくいんですね。私が音楽分野で新人発掘を行うに当たっても、全然まだまだ発掘できない人というのがいっぱいいて、そうなるとどんどん埋もれていく人がいて、これから先、そういう金の卵が埋もれていくだけじゃなくて、犯罪もどんどん埋もれていくなと思っていて、だから、その辺がちゃんとできていったらいいんじゃないかなと思っています。

拙い説明で申し訳ありません。勉強不足の部分もあると思いますが、私からは以上になります。

【末吉主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問がありましたらば、御発言をお願いいたします。

後藤委員、お願いします。

【後藤委員】  おはようございます。今のお話、非常に興味深く聞かせていただきました、いわゆるクリエイターの低年齢化ということで、犯罪のハードルも下がるということでありまして、私も本当に日々、海賊版対策をやっている中で痛感しているところであります。先般、ファスト映画の摘発というのがあって、Z世代の皆さんには、そこまで侵害へのアクセスのハードルが下がったということに非常にショックを受けたという経緯があります。

そこで、率直な質問なんですけども、松本さんの感性、豊かで、若い、とんがった感性で、若者に対して、この著作権保護の認識、著作権は大切なんだよと認識を持たせるための手段、方法というのはいっぱいあると思うんだけども、松本さんの直観で何がいいと思いますか。

【松本氏】  身近なところに著作権法の違反しているものはいっぱいあるんですよ。だから、これが違反なんだ、これが違反なんだというのをちょっとずっと言っていくのがいいと思っていて、例えば私が高校のとき貼られていたポスターは、ドラえもんかな。ドラえもんか何かのちょっと違うキャラクターの絵が貼られていて、これは駄目ですみたいなポスターが貼られていたんですよ。多分それがちゃんとしたところの、本当に文化庁さんが出されているようなものだと思うんですけど、そういうのでいいと思うんですけど、もう少しマニアックなものでもいいのかなと思っていて。

【後藤委員】  なるほど。ありがとうございます。

以上です。どうもありがとうございました。

【松本氏】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ほかにいかがでございましょう。

福井委員、どうぞ。

【福井委員】  非常にまとまった御発表で、ありがとうございました。2つお伺いしたいです。1つ、権利が侵害されることの御心配をおっしゃっていたのだけれども、逆に、創作する上で、著作権が窮屈だなと思うことはないですか。著作権があるせいで、こういう活動が止められてしまっているのが窮屈だなと感じるようなところはないでしょうか。これが1つ。

それからもう1つは、権利を守られるために集中管理にあずけると安心だろうというのは全くそのとおりだと思うのですけれども、同時に、集中管理に預けるということは、どういうふうに使ってもらうかについて、ある程度、形が決められていきやすいんですよね。こういう利用は自動的に許可されて、対価は幾らです。こういう利用を止めるのはなかなか難しいですというふうに。もちろんそうはならないように、できるだけ柔軟な集中管理がされていくべきなんだけれども、やっぱり集中管理されるということは、自分自身で管理するほどはきめ細かく、これはいいけど、これは駄目ということがやりにくいところもあるんですね。そういう自分自身から管理の手が離れてしまうということへの心配などは感じないでしょうか。

以上、2点です。

【松本氏】  創作活動についてはないんですが、学生はいろいろ研究発表とか、学校内での発表とかにいろいろ資料を使ったりするんですね。そうしたら、私の場合は使っていい画像しか使わないせいで、全部いらすとやのフリー素材みたいな感じになっちゃうんですよ。その辺がちょっと窮屈だなと思っていて。例えば学校の先生が使う資料にはオーケーとされていても、学生がつくる資料にはオーケーされていないというのが割と大きな問題だなと思っていて。

例えば私は高校時代に自分が先生をするというプログラムがあって、スーパースタディというプログラムがあって、それで私が同じ同級生に対して授業をしていたんですよ。でも、やっぱり使える素材が全くなくて、全部自分で一からつくらないといけないという。だから、それがすごく窮屈だったんですね。だから、その場合、権利の使い方についても深く説明した上でのことではあるんですけど、もう少し学生に対してもっと緩くしてほしいなと思いました。

2つ目に関してなんですけど、やっぱり若くなってくると、若いと一概に言うわけじゃないんですけど、一つ一つの管理が大変になってくるんですね。となると、一つ一つが大変になって、それでおろそかにしてしまうぐらいなら確実なところにまとめてもらったほうがより安全なんじゃないかなというのは思っていて。一括にされて、自分の望まない条件をつけられるか、それか、自分で自分の望む条件をつけて、でも、おろそかになってしまうというのをてんびんにかけたときに、私は前者のほうがもっと重要なんじゃないかなというのを思って、集中管理のほうがいいと思いました。

【末吉主査】  ほかにいかがでございますか。よろしいですか。

松本さん、末吉です。一つ教えてください。松本さんのこの著作権に関する知識、それはどうやって学ばれたんでしょうか。興味があったので教えてください。

【松本氏】  はい。私は多分、自分が使われる身だったからこそ、使われるクリエイターの気持ちがすごく分かっていたというのがあると思うんですけど、それで最初に、例えば学校の小さい資料を作るのに関しても、出典をめちゃくちゃ深く書き出したのが始まりだったんですね。それで、すごくいろいろ調べて、ああ、これが駄目なんだ、ここのラインから駄目になるんだというのを多分、高校生時代は誰よりも知っていて、同級生に指導する側に回っていたみたいな感じでした。

【末吉主査】  著作権について、どこで何を調べたのかなと思ったんですけど、その点はいかがですか。

【松本氏】  どこの何をこう使っていいみたいなところを、全部条件を調べていったんです。いらすとやの規定も全文読んで、その他の変な法律とかそういうのを覚えるのがめちゃくちゃ好きで、そういうのを全部覚えています。

【末吉主査】  ありがとうございました。

ほかにいかがですか。よろしいですか。

ありがとうございました。

【松本氏】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ここからは、権利者団体などからのヒアリングに移ります。

まず、お時間の都合があるということで、資料順と入れ替わりますが、公益社団法人日本文藝家協会様より、資料2-5に基づき、御発表いただきます。お願いいたします。

【日本文藝家協会(平井)】  公益社団法人日本文藝協会の平井です。よろしくお願いします。スーパーティーンエイジャーの見事なスピーチの直後ということで、大変な力不足を痛感しています。とはいえ、本日はこのような機会を御提供いただき、感謝申し上げます。

当協会は、大正15年、1926年1月に、当時の小説家協会と劇作家協会が合併し、文藝家協会と設立されました。戦時体制下に統廃合、解散を経験しましたが、終戦後、間もなく再建、1946年に、新たに社団法人日本文藝家協会としてスタートしました。その後、2011年に公益社団法人へ移行し、おかげさまで、今年、創立95年を迎えました。  現在は、林真理子理事長の下で、小説家、詩人、歌人、俳人、あるいは、批評家、ノンフィクション作家、エッセイスト、翻訳家を中心に、約2,250人の会員で構成されています。

2003年からは、日本文芸著作権保護同盟の業務を引き継ぎ、言語の著作物を対象に、著作権管理業務を行っています。我々はこれを公益団体として、文芸文化振興のための非営利事業と位置づけ、目下、著述業、執筆家、約3,800名の方々から著作権の管理の委託を受けています。

初等中等教育における、主に国語科目での許諾が必要な利用については、当協会が全体の3分の1程度をカバーしていると言われています。副読本や学習参考書などの出版物、塾・予備校のテキスト、過去問集や模擬試験、eラーニングなどの利用に対して、昨年度の実績で延べ7万5,000件の申請を処理しており、出版社さんや教材会社、教育産業の皆さんから御好評をいただいているところです。ほかにも、アンソロジーへの収録や部分転載、朗読会などのイベント、放送番組やホームページの利用と、様々なニーズに対応しています。

こうした単純許諾に加えて、例えば、物故者の御遺族の皆さんですとか、一部の委託者の御要望に応じて、単著の出版のような独占利用許諾、あるいは映画化に代表される翻案利用許諾、ゲームの原案利用許諾をめぐる契約などのお手伝いも行っています。このように、利用者の皆さんの多様化する御要望にお応えすべく、日々努力を続けており、年を追うごとにより御満足いただけているものと自負しています。

もっとも、我々が受けている委託作品は、膨大な文芸作品の中ではまだまだごく一部にすぎません。日夜、出版社さんなどのお力もお借りしながら、受託の拡大に向けてできるところから努力を続けています。幸い、教育目的や福祉目的といった定型化された利用に関しては、順調に必要な作品の受託が進んでいます。

一方で、文芸作品の特性上、著作者の方々にとって、一任型の全面委託には高いハードルがあるのも事実です。本日ここに御出席の委員の先生方におかれても、多くの方々が、書籍や論文、ウェブ等で文章作品を公表されておられますが、恐らく管理団体に委託されている方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。いらしたとしても、一部の作品の限られた利用目的にとどまっているのが現実であろうと拝察します。

申し上げるまでもなく、著作権者には委託しない自由が保障されています。そもそも言語表現とは、それ自体が、思想・心情に直結する場合が少なくありません。自身のあずかり知らないところで作品の二次利用が行われることに対して不安を抱かれるのは致し方のないことと存じます。

創作者が、第三者による自己の作品の利用に関して、自分自身でコントロールしたいと願うのは基本的な権利であり、自由社会において当然に尊重されるべきものです。著作権者から許諾権が剥奪されるようなことがあってはならないと考えます。DX時代における制度・政策の議論を進めるに際しましても、ぜひともこの前提は崩すことのないよう、心からお願いをしたいと思います。

時間になってしまいました。詳しくは当協会が提出した資料を御参照ください。

以上、御清聴ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明と質疑につきましては、時間の都合上、後ほどまとめて行っていただきます。

続きまして、一般社団法人映像コンテンツ権利処理機構様でございます。映像コンテンツ権利処理機構様では、複数の団体が連携して一つの窓口をつくって管理されていますので、特にその観点から事例紹介をいただき、御意見をお聞きできればと思います。よろしくお願いします。

【映像コンテンツ権利処理機構(中井)】  おはようございます。aRmaの中井でございます。私は、aRmaの中の日本音楽事業者協会という、非一任型の、いわゆる芸能プロダクションの業界団体の専務理事もしております。

松本さんの「私、変な法律を読んだりするのが好きなんで」というのが最高でした。とても世代を感じて、ちょっと刺激をいただきました。

17ページ、通し番号の17なんですけれども、こちらから御説明を始めたいと思います。文字が多くて恐縮です。簡単に申し上げますと、いわゆる放送番組の二次利用の権利処理を担当する組織として設立いたしました。これは今から12年前です。それはどういうタイミングかといいますと、世の中にネット法とかネット権みたいな議論が盛んにされていたところであります。一々、権利者を特定するのが面倒くさいと。取りあえず使わせろと。金を払えばいいじゃないかというような、若干乱暴な議論が進んでおりまして、じゃあ、実演家、映像の実演家の方々をちゃんと特定できるように一元管理をしようということで、非一任型の音楽事業者協会と、その他、一任型の音制連さんとかPREさんという、映像実演家を管理しておられる団体があわさってできたのがこのaRmaという団体でございます。

2015年には、放送実演に関わる著作権管理事業ということで、管理事業を本格的に開始いたしております。

ですので、この団体自体がそもそも権利処理の簡素化、あるいは権利処理の一元化を図るためにできた団体である。団体の設立そのものの経緯が、今回の一元化、簡素化というところに沿っているものであるということをまず御理解いただければと思います。

次のページ、通し番号、18ページになるんですが、権利処理の図解をしております。これは御覧いただいたとおり、放送事業者の方々から、これを使いたいんだと、こんな出演者が出ているよというのを全部放り投げていただくと、aRmaのほうで、どこの団体の所属かを特定しまして、そこに振って、その各団体から各プロダクション、各実演家に許諾を取ってという形になっております。ですので、これは放送事業者の方々等につきましては、非常にaRmaに全部放り投げれば解決するという、それまでの、どこの事務所で、どこの団体で、どう許諾を取ったらいいのか分からないみたいな、ネット法の議論の基礎になったようなところをこれで解消していったということでございます。

その向かって右側のところの不明権利者探索業務というのがございますけれども、裁定制度は、NHKの広石さんもおっしゃっていましたけれど、改定に改定を重ねて、随分使いやすくはなったんだけれども、まだまだというか、そろそろ限界かなというふうにおっしゃっておりました。私もまさにそのとおりかなと思っております。

これは放送局などから直接ということになっておりますけれども、これも実はaRmaのほうで業務委託を頂戴して、不明者探索も行っているということでございます。ここの不明者探索の上から3番目の箱にも書いてございますとおり、aRmaホームページへの記載ということが入っております。

現在の集中管理の状況等々で申し上げますと、昨年度、1万5,000件になりまして、処理した実演家の延べ人数で言いますと58万5,957人、そのうち、aRma管理下の実演家ですね。aRmaの構成する団体が管理している実演家数が51万3,795人。カバー率としては87.7%ということになります。9割弱がaRmaにおいて全部処理できているということでございます。

これで一元化、簡素化のほぼ9割は実現しているということでございます。簡素で一元的な権利処理への期待と懸念ということでございますけれども、ついつい、先ほどもネット法のところで申し上げましたとおり、ここには迂回縮減という言葉を使っていますけれども、要は、権利の引下げというか、権利制限につながることをやってしまうんじゃないかというようなことが懸念されております。

そもそもDX時代の著作権制度を考える上で、一元化と簡素化というようなお題を頂戴したんですけれども、正直、少し私自身は困惑をいたしました。うがった見方をすると、またネット法の議論があったときのように、DXの名の下にまた権利制限しようという意図なのかということすら、ちょっと疑って、それはうがち過ぎなんでしょうけれども、思いました。なぜなら、そもそもDXというのは人の手を使ったりすると煩雑で手間と時間がかかってしようがないものを、AIとかのプログラムデジタル手法を使って簡素化するということにほかならないと思うんですね。

何が煩雑かというと、権利者の特定なんですね。これはもうずっとさっきから申し上げたとおりなんですけれども、それが特定されると、私どものARMsというシステムに乗っかると自動的に実演家の集配、分配というのができるようになっているんですね。ですから、ここで言うと、そこに、ルーティンに乗っけるまでの権利者の特定というのが一番大変なんです。例えば古いテレビドラマだと、出演者表というか、台本を見ながら、局の人が1時間、この人、出ている。あれっ、台本に名前が載っているのに出ていないと。いや、それ、時間の関係で編集でカットしたんですよみたいなことがあったりする。それを省力化するために、我々は今、DXと言われていることにも今、取り組んでおります。総務省さんとか放送事業者の方々と一緒に実証実験を行おうとしているんですが、これはAIの画像認識で出演者を確定させると。番組のメタデータと、共にブロックチェーン技術で、それを補助して、各権利者団体のデータベースを、アーティストIDという統一の付番を今、アーティストコモンズという権利者団体が集まった団体でやろうとしているんですが、そこのデータベースで、各権利者団体を連携して、特定しましょうとか、あるいは音楽に関しましては、先ほどニコニコさんもおっしゃっていましたけど、フィンガープリントの技術がもう九十数%の確率で楽曲を提供できるようになっているので、これもDXの力で、放送局の担当の方が手作業によってしなくていいということに、もう既に出口が見えている状況であるということです。

これでDXで簡素化すると、別に根本の著作権法を触るとか改定するという必要もないんじゃないかなという気はいたしております。なので、命題自体がちょっと自家撞着しているのではないかなというところで困惑をした次第です。

なぜ乱暴な権利の切下げ、報酬請求権を反対しているかというと、やはり映像実演の場合、どうしても勝手に何か変なところに使われちゃったりとか、著作権者が予期せぬことで使われたりということをやっぱりコントロールしないと、著しく権利を毀損してしまうということが多々あります。特に音楽の場合、何回聴いても、聴けば聴くほど売れていくんですけど、映像の場合、皆さんも御存じのとおり、映画なんか何回も同じ映画を見る人はあんまりいないわけで、それの機会をうまくコントロールしないと、コンテンツの価値というのはちゃんと保てないという特性がございまして、そこをちょっとこだわっているということでございます。

それから、次のページ、複数の権利団体による連携ということでございますけれども、先ほどからも出ていましたSARTRASですね。こちらでは教育機関の、教育に使われた部分の権利処理を一括して、全ての分野でなさるということなんですけれども、それゆえに難しいことがいっぱいあるということだと思います。これこそ、権利の特定とかについてはDXに期待するところは大ということだと思っております。

共有データベースの整備についてということでございますけれども、これは先ほどから繰り返し申し上げてきたことでございます。権利者の特定というためにはやはり全て映像も音楽もワンストップで行けるような仕組みをつくるためには、どうしても共有データベースというものの必要性があると思っております。

すみません。私の担当はここまでで、続きを椎名理事からよろしくお願いいたします。

【映像コンテンツ権利処理機構(椎名)】  手短に御説明いたします。スライドの6番から御説明いたします。

今回の令和3年著作権法改正においても、非構成員に対するケアということが非常にクローズアップされているということなんですが、実は実演家の場合は、ほかのジャンルに比べて1つの作品に関与する権利者の数が多いということで、非構成員の取扱いについてはかねてより特段の注意を払って行ってきた経緯を持ちます。

そこら辺の事例をちょっと御紹介したいんですが、2006年10月に当時映像の権利処理を非一任型で行っていた芸団協CPRAは、当時管理事業法が出来まして、一任型で管理をするということになりますと、委任した人の権利処理しかできなくなってしまうんですね。扱える権利者の数がすごく減少してしまうということがありまして、そのことに関して放送局さんが困ったなというような話もあった中で、文化庁さんの強い要請によりまして、暫定措置として過渡的受け皿というのをやりました。つまり、二次利用申請された放送番組の出演者のうち委任していない実演家に関して、その実演家の委任を取得するように努力するとともに、その期間中に発生した使用料を預かって、委任を得て支払う。期間経過後に分配できなかった使用料は放送局に返還するという取組を行いました。

スライドの7を見ていただきますと、2001年から2006年までは非一任型で音事協さんと芸団協CPRAである程度処理ができていた。もちろん不明者や権利処理を個別にやろうという人たちはある程度いるんですが、それ以外の方々はカバーできていたものが、一任型の開始と同時に、委任のある人しかできなくて、CPRAのインサイダーとアウトサイダーというのが生まれてしまった。そのために、過渡的受皿というのをやって、アウトサイダーの部分について委任取得のアプローチをして、その部分の使用料をお渡しするというようなことをやったということでございます。ある意味で拡大集中許諾制度の変形と申しますか、そんなようなことですね。

この過渡的受皿によって委任者が一定数増加して以前の水準に戻るまで続けようということだったんですが、2010年1月1日の著作権法改正で実演家に裁定制度の適用が認められ、また、2011年1月11日にaRmaが不明者探索業務を開始したことによって、この過渡的受皿は終了したということでございます。

その後aRmaは何をやっているかというと、裁定制度における利用者の相当の努力というのをaRmaが代行して、そこで所在が判明した権利者についてはaRma管理下へと勧誘を行い、勧誘を拒否したり、所在が判明しなかったりした権利者については、放送局が個別処理する、あるいは裁定制度を利用すると、そんなようなことで実務が定着しております。

スライドの8番にございますが、2011年から2020年まで、右から4番目の不明者数というのを見ていただきますと、ある程度不明者の数というのは減ってきているということでございます。委任の取得率はあまり変わらない。やはり管理外でいたいという、個別に処理をしたいという実演家さんはある程度の数は必ずいるということでございます。

これが芸団協CPRA並びにaRmaでやってきた非構成員に対するケアということなんですが、今回の法改正において映像実演について新たに権利制限の対象となる非構成員というのは、恐らく再放送の同時配信に限定されると思うんですが、この部分をやるとなりますと、地上波の再放送の報酬請求権に関しても、NHKと民放さんで取扱いが違ったりして、集中管理がされてないという状況がございます。恐らくは、地上波の再放送が報酬請求権、再放送の同時配信のうち権利制限の対象とならない集中管理下やプロダクション等による意思表示があった権利者は許諾権、それ以外の権利制限の対象となる方々は報酬請求権。今回の法改正で、ノンメンバーあるいは被アクセス困難者の権利処理をやる指定管理団体を設けて処理を担当させましょうということなんですが、これらを個別にやりますとコスト的にかなり厳しいというところがあると思います。ここら辺の再放送全般を一体的に管理するというような取組もしていかなければならないと思っていまして、それに必要な協議とか検討とかが必要になってくると思います。

最後に、拡大集中許諾に関してですけれども、これまでも御説明したとおり、既にCPRA、aRmaで行ってきた部分というのは、ある種、拡大集中許諾に期待される同じニーズに根差すものでございまして、そこら辺の取組が有効であったということに関していえば、拡大集中許諾制度は、映像実演に関しては、実演家に関しては一定の合理性を持つ仕組みであるかもしれない。今回の法改正もノンメンバーのことをおっしゃっているわけで、検討の上のハードルというのはいろいろ分科会等でも御指摘あるところですが、取り入れてもよい制度なのではないかというふうに思っております。しかし、ノンメンバーの方々のお金を預かって、その処理の仕方というのは各国各様であるようですし、ここら辺は導入するのであれば非常にクリティカルな検討が必要になると思っております。

最後になりますが、権利制限を目的とする導入であるような場合には、これはやはり先ほどの中井さんのお話もありましたが、我々権利者団体としては納得がいかないということでございます。

すいません、長々となってしまいましたが、以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。ただいまの映像コンテンツ権利処理機構様の御発表につきまして、御質問がありましたらば、御発言どうぞ。坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  ありがとうございました。1点、組織率というか、カバー率について教えていただきたいんですけれども、これ、ほかの権利者団体の方もできれば教えていただきたいと思っているんですけれども、分母となるところの基準というんですかね。先ほどのNHKさんの話だと、過去のものが大変なんだというふうに聞いていて、ただ、この8割、9割近い数字を見ると、何かあんまり、結構行けるんじゃないかという気もするし、もしかしたらNHKさんは例えば本当に1回再放送をやるのに1,000円とか2,000とかそれぐらい払えばいいぐらいの人のところで困っているのか、そこら辺が分からなかったので、この母数となる数字の意味合いを教えていただけると助かります。

【映像コンテンツ権利処理機構(椎名)】  では、私のほうから。スライドの3ページにあります87%というのは、放送番組の二次利用が発生した案件に関して、その中の出演者の方々の87%がaRmaの関係者であったということでございます。あまねく放送番組に出演している実演家が何人いるのかということは我々は把握できておりませんので、そこら辺はNHKさんなんかから見れば違う印象があるのかもしれませんが、少なくとも権利処理という意味で、名前が挙がってきた方々の87.7%は網羅できているということでございます。

【坂井委員】  理解としては、aRmaさんのほうで「ぜひaRmaのほうで集中管理させてください」と言ったときに、13%の人が断られてしまったりとか、そもそも不明とかそういうような数字ということですね。

【映像コンテンツ権利処理機構(椎名)】  そのとおりです。

【坂井委員】  分かりました。ありがとうございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。今の御質問は大変重要な点でございますので、この場だけではなくて、基礎データですよね、組織率等に絡んでくると思いますので、また別途調査をしてみたいと思います。

ほかに御質問ございますか。福井委員、どうぞ。

【福井委員】  歴史と現状がよく分かる御発表、本当にありがとうございました。

1点質問で、判明した実演家に対する委任の取得率、この数年は、最近の数字で大体50%前後かなと拝見しました。断られる理由としてはどのようなものがあると想像されますでしょうか。

【映像コンテンツ権利処理機構(椎名)】  そもそも居場所が判明しないというのがある程度あります。やはり個別に処理をしたいという方もおられて、この数字になるということだと思います。

【福井委員】  50%というのは、判明分に対して持ちかけたけど委任を断られてしまった率の話かと思ったんですが、居場所が分からない方も母数に入ってくるんでしょうか。

【映像コンテンツ権利処理機構(椎名)】  不明者数がある程度いて、判明数の中から委任が取得できたのが2020年でいえば50%で68名ですね。そういう意味では、ごめんなさい、不明者というのはこの数字から入ってないですね。

【映像コンテンツ権利処理機構(中井)】  すいません、そもそもやっぱりアウトサイダーを選んでいる人というのは、故なくやっているわけではなくて、もともと事務所にも入りたくない、団体にも所属したくないという一定の方々がいらっしゃいまして、そういう方の場合は、いくら持ちかけてもお断りになる。あるいは、先ほどもありましたように、御遺族がもう面倒くさいから要らねえよと言われることも結構な数ございます。

そういう意味でいうと、NHKさんなんかは実に丁寧に申請されるんですけれども、一方、民放なんかの場合だと、出演時にもう買取処理をしてしまっている、全ての権利をよこせというような契約で出演契約をなさっていたりするので、民放の場合、逆にそういうのがあまり出てこないと。それはそれで非常に大きな問題だと思うのもあるということでございます。やっぱり遺族の方々が、もう一々そんな面倒くさいとか、あるいは遺族の間で、さっき奥邨先生もありましたけれども、じゃ、これ、誰もらうんだよみたいな話で、もうもめるの嫌だから要らねえよというようなケースが結構散見されます。

【末吉主査】  ありがとうございます。今の御質問も非常に重要なポイントだと思いますね。なぜ組織化で集中管理できないのかということの原因に絡んでくると思いますが、ちょっと時間の関係で、引き続きまして権利者団体様からのヒアリングを順次進めまして、一通り御説明を伺った後、まとめて質疑を行いたいと思います。

続きまして、株式会社NexTone様、よろしくお願いいたします。

【NexTone(荒川)】  NexToneの荒川と申します。本日はよろしくお願いいたします。まず私ども株式会社NexToneは、2000年の著作権等管理事業法の成立に基づいて、音楽著作権分野の民間における管理を進めようということで設立された株式会社イーライセンス並びに株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス、この2社が2016年、5年半ほど前に合併をし、NexToneという形になって現在に至るというところであります。音楽著作権分野に関していわゆる支分権、利用形態、様々ある中で、原則として今我々としては、演奏権という固まりを除く分野についての著作権の管理をしております。

皆様既に御承知いただいているとおり、JASRACさんが非常に大きな団体として存在しております。JASRACが昨年度いわゆる利用の実績に基づいた分配の対象になった作品が約280万曲あるというふうに認識をしております。ここの資料に記載されています約24万曲というのは、これの多くは、例えば演奏権についてはJASRACに預けてあるけれども、それ以外はNexToneであると、そういったような形で1つの作品が2団体にまたがって管理されるということをも含めて構成されておりますが、いわゆる集中管理という機能、これは音楽著作権分野においてはほぼ十分に機能しているのではないかというふうにまず認識をしております。

2番目に、簡素で一元的な権利処理への期待・懸念についてということでありますが、この簡素並びに一元的というのが何を指すのかちょっと不明確なままでありますが、一般的には、そういうふうになることによってコンテンツの利用促進が図られる、すなわち、それは収益の増加につながるというような認識を持っている一方で、例えば現実としては、そのスキーム、例えばJASRACがやっていることとNexToneがやっていること、それを1つにしてしまおうと、仮にそういうようなことを簡素・一元化というふうに呼ぶのであれば、これは著作権等管理事業法というのはそもそも、競争原理を働かせることによって、著作権の利用、それから、権利者、そういう様々なフィールドを活性化させよう、競争原理を大事にしているというところで、それをそぐような方向を向くのであれば、これは極めて問題があるのではないかというふうに思っております。そういう中で、もし仮に何らかで進めるのであれば、例えば各団体が持っているデータそのものの持ち方だったり、フォーマットだったり、そういうことについての議論を深めていく必要があるのでないかというふうに考えております。

続いて3番目ですが、我々は今、MINC、音楽情報プラットフォーム協議会に参加をし、音楽ジャンルにおける実演、それから、原盤、著作権の統合というところの事業に積極的に関与しておりますし、また、SARTRASからの補償金の受領ということについても前向きに検討をさせていただいております。

4番目のポイントですけれども、原則としては、やはり我々、契約している委託者のみに分配をしているという実績ではありますけれども、ポイントとして、意思を持って非管理ということを選択している人というのもたくさんいるということなので、非構成員並びに次のポイントの拡大集中許諾、この制度設計という部分においては、そういう権利者がいるということも十分に考慮する必要はあるだろうなというふうに思っております。

その一方で、いわゆる拡大集中許諾制度というところにおいては、運用コストをどういうふうにするのか。これを権利者側で負担せよというような議論になると、いささか乱暴ではないかと思っております。そういったところをも含めて、権利者への対価還元であったりとかそういうことについて、新たな法制度、枠組み、そういうものを考えていくということが重要であって、その場合のポイントというのは、先ほど中井さんのお話にもありましたが、権利者の確定であったり、データベースの拡充、テクノロジーの活用、そういったものが望まれるのではないというふうに考えております。

私からは以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。続きまして、一般社団法人学術著作権協会様、お願いいたします。

【学術著作権協会(石島)】  よろしくお願いします。学術著作権協会の石島と申します。本日はこのような場を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。時間も限られておりますので、かいつまんで、意見書を出させていただいた中から幾つかピックアップして御説明できればと思います。

まず当協会でございますけれども、1989年に設立いたしまして、大体32年経過しております。もともと日本医学会、日本歯科医学会、日本薬学会、日本農学会、日本工学会、この5団体が協力して設立した組織でございます。

現状は国内の学協会が発行している自然科学系を中心とした学術雑誌、専門書、こういったものの権利を管理しておりまして、学会名鑑、学術会議等がデータベースとして公開しておりますが、この中での学協会のカバー率というのが大体34%程度となっております。団体数にしますと約930団体ということになります。一方、海外につきまして、学術分野に限らずテキスト・イメージの分野を網羅的に管理している複製権管理団体と35の国地域と双務協定を締結しておりまして、日本で利用頻度が高い海外の出版物につきましてはおおむね当協会で網羅的に管理できているのかなと考えております。基本的には集中管理の促進に向けた取組をずっと継続しておりまして、集中管理ということにつきましては賛成の立場を取っております。

続いては、簡素で一元的な権利処理というところになります。学術分野に限っていえば、拡大集中許諾制度を導入することで、これまで著作権処理の仕組みに精通した人材が不在であるようなそういった学会様も多々ありますので、そういった学会様の著作物の利用性が高まるということとともに、適正な対価還元が行われて、さらに集中管理促進にもつながり得るということでメリットは少なくないと考えます。

ただ一方で、管理事業者としての実務上は、一部の利用者様とか非構成員の方々との間では、先方に著作権処理にやはり精通した人材がいないということもあって、徴収・分配がスムーズに進まないケースとか、トラブルの原因になると、そういったことが実際ありまして、一元的な権利処理の導入から当面というのは、かなり事務コストがかさんでしまうのではないかということを危惧するところでございます。

一元的に権利処理する場合に、これはちょっと拡大集中許諾制度の話とかぶってきますけれども、対象となる利用行為によっては、既存のライセンスの成熟度とか市場性がかなり異なるということが想定されます。また、著作物分野ごとに求められる利用の態様要件が異なるということも踏まえると、一元的に権利処理に集約するというのは非常に困難だろうということで、導入するとしても個別ECLのような個別具体的な導入を検討すべきだろうと考えます。

例えば当協会では、特に民間企業における利用ということで、これは研究開発利用も含んでいますが、こういった部分については米国のCCCとパートナーシップを組んでおりまして、その中でMulti National Licenseということで、本社のある国・地域だけでなくて、子会社とか関連会社がある国・地域を含めて一括で著作権処理すると、そういった契約を展開しておりまして、こういった既存のライセンスモデルとの競合が起こってしまいますと、調整等において困難を極めるだろうということを危惧しております。

また、制度設計上、海外の権利者の利益を考慮しているかという点についても、これは懸念がございます。学術文献に関していいますと、圧倒的に海外出版社が権利者となっているという実情もございますので、海外著作物も一元的な権利処理に含めるということであれば、これは海外著作物の権利者からも広く意見聴取が必要であろうというふうに考えるところでございます。

あと、5つ目の拡大集中許諾制度について、少し御説明させていただければと思います。先ほど個別ECLの導入になるのではないかという話をしましたけれども、ECLの議論で重要な点といたしましては、ECLはExtended Collective Licenseということで、既存の包括ライセンスが既に存在していて、多くのステークホルダーが既存の包括ライセンスの仕組みを受け入れていて機能しているということが前提で、その上で何をエクスパンドするのかという点を明確にして、ステークホルダー間で合意してからスタートするという必要があるんだろうと考えます。使用料の設定とか徴収方法、分配方法、こういったものをどのように設計するのかという点について、利用実態をまず十分に把握した上で慎重に検討すべきであるということを考えると、相応の時間をかける必要があるのではないかと考えております。

また、これも先ほどから何名かの方々からも意見が出ているかと思いますが、非構成員といっても自団体・自社での管理を主張する場合も多々見受けられますので、オプトアウトを設けるなど、フリーライドを回避する対策も必要かなというふうに考えます。

また、著作権法は属国法ということで、ECLの施行というのは日本国内のみに適用されるんだろうと理解しておりますが、その場合、先ほど申し上げたようなMulti National Licenseというようなものについては、影響を与えないような制度としておく必要があるのではないかと考えております。日本のユーザーの特性を考慮すると、国内では許諾可でも海外では許諾不可というのは、これは使用料を調整すべきと、そういった議論になってきますと、かえって権利処理が複雑化してしまう可能性があるのではないかということを懸念しております。

また、今後仮に拡大集中許諾制度が導入されるとすれば、分野によっては非構成員が相当数存在するという可能性がありますし、分配の遂行が極めて困難になるということも想定されますので、北欧諸国のように、分配されなかった使用料について、例えば一定期間経過後に一定条件で使用を認めておくとか、そういった措置も事前にしておく必要があるのではないかというふうに考えるところでございます。

私のほうからは以上になります。

【末吉主査】  ありがとうございました。続きまして、一般社団法人日本映画製作者連盟様、お願いいたします。

【日本映画製作者連盟(華頂)】  本日はありがとうございます。日本映画製作者連盟、映連の華頂でございます。私どもの団体は、松竹、東宝、東映、KADOKAWA、邦画メジャー4社で構成する映画産業団体でございます。お時間もないようなので、早速お話をさせていただきます。

意見書の繰り返しになりますけれども、映画ビジネスは当該映画の映画製作者が、その完成原版を主体的にコピーコントロールしながら、映画館での上映を起点に、続けてパッケージ販売、テレビ放送、配信、海外流通など、ワンソースマルチユースのビジネス展開を行いまして、それら各局面における収益の最大化を図ることで成立をしていると。つまり、映画作品単体でビジネスを遂行しているわけでございます。したがいまして、著作権を集中管理する必要はありませんし、拡大集中許諾制度を利用する局面も想定し難く、制度自体がなじまないのではないかというふうに考えております。

また、映画には、基本的に文芸、シナリオ、原作があれば原作ですけれども、それと音楽の著作権が複合的に内在をしておりますけれども、それら原著作者及び原著作者が所属する著作権管理団体、これもおおむね友好的で、映画作品の流通は総じて良好でございます。

このように、映画ビジネスは、映画製作者が完成原版を主体的にコピーコントロールしながらマルチユースすることで成立をしておりまして、その各局面における収益の最大化を図る必要から、映画館での盗撮をはじめ、パッケージや配信からのコピーといった第三者による無断複製を禁止していると。意見書の最後に書きましたけれども、そのような中で、違法行為を別とすれば、唯一、映画製作者がコピーコントロールできない複製は、昔も今も変わることなく、著作権法第30条1項を基にしたテレビの無料放送から大量に行われる私的複製でございます。権利者への対価還元の一環として、現在停止している著作権法30条2項の私的録画補償金制度の早期運用開始を強く最後に要望をさせていただきまして終わります。以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。最後に、一般社団法人日本動画協会様、お願いいたします。

【日本動画協会(宮下)】  日本動画協会の宮下です。このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。意見書を出させていただきまして、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。

先ほどの映連の華頂さんとほぼ同じ意見という形になろうかと思います。アニメーションの場合なんですが、先ほどワンソースマルチユースという言葉が出ていましたけれども、全くその形を取っております。最近のアニメーションのほうは、いわゆる劇場版映画から出てきている製作委員会方式で作られていることがほとんどだと。8割以上の作品が製作委員会方式を取られているということになります。各窓口会社がありまして、出資をして権利処理とか販売とかそういったことを担っていくということになります。

そこの製作委員会の中で制作途上できちっとした契約をそれぞれの権利者と行っていきますので、トラブルとかそういったことも特にないという形になります。もともと原作に対してリスペクトをして制作に入っていますので、原作者をはじめとする脚本家、音楽原盤の権利者ときちっと契約の交渉をして進めていくと。それから、ほとんどオリジナルで作っていきますので、権利者の分からないものを中に使用するということは例としてはあまりないということになります。ですので、やはり集中管理ということでいうと、なじまないんじゃないかなというふうに考えております。

それから、一元管理という言葉なんですけども、確かにそれにマッチするものはあると思います。例えば個人で制作したりとか少人数で作ったりということはもうアニメーションではできるようになってきましたので、そういうこともあるかと思いますけれども、当協会で考えると、そこはあまり関係ないのではないかなというふうには感じております。

それから、3番目、複数権利団体による連携ということになりますけれども、それぞれの窓口会社というのが設定されて、ホームページなりで作品のことを表示していきますので、どこに問い合わせるか分からないというような状態にはなってないということで、その辺もきちっとスムーズに権利者団体と連携を取るということができるんじゃないかなというふうに考えています。

それから、非構成員に関しては、特に意見はありません。

拡大集中許諾制度については、先ほど申し上げたとおり、制作・利用に関しても、特にアニメーションに関しては制度的にはなじまないんじゃないかなというふうに考えております。

それから、6番目のいわゆる著作権侵害ですけれども、それぞれの会社が、いわゆるUGCサイトというんですかね、違法アップロードに対して、動画投稿サイトというんですか、それに対して対応をそれぞれしております。ですけど、会社さんの力で差がやっぱり出ておりますので、この辺、CODAさんが侵害対応を積極的にされていますので、そういった団体の支援を希望しております。動画協会としては希望しているということになります。こういった動画投稿サイトに関しての違法アップロードに関していうと、アニメーションの場合は海外販売というのは非常に重要なウエートを占めますので、そこに違法なコンテンツが上がっているとなかなかビジネスに結びつかないということがありますので、この辺は非常に問題点としては大きく把握をしております。

日本動画協会からは以上になります。

【末吉主査】  ありがとうございました。それでは、日本文藝家協会様からただいまの日本動画協会様までの御説明につきまして、御質問ございましたらば、御発言をお願いいたします。奥邨主査代理、どうぞ。

【奥邨主査代理】  日本映画製作者連盟様と日本動画協会様に、確認のために質問したいと思います。2点あります。まず1点目として、映画製作者連盟さんは、今日議論になっている部分、映画は関係ないというふうにおっしゃいましたけれども、「映画」とおっしゃっておられるのは、著作権法上の「映画の著作物」という趣旨でしょうか。それとも映画会社が作る、端的に言えば、劇場用映画を中心としたものという趣旨でよろしいでしょうか。というのは、先ほど動画協会さんのお話の中にもありましたけれども、今、UGC映像がいっぱい存在しますけれども、これらの多くも映画の著作物になる可能性があるわけでして、そういうものも含めて関係がないということなのか、いや、そうではなくて、あくまでも映画会社が作る劇場用映画を中心にしたものについては関係ないということでよろしいでしょうか。

同じことは、動画協会さんにも確認したくて、アニメビジネスとおっしゃっていますけれども、それはあくまでも、アニメ制作会社の皆さんが作っておられる、そういうビジネスベースのものを前提にお話しになっているということでよろしいでしょうか。これが1点目です。

2点目は、そういう形でビジネスとして作られているものは、映画会社さんであったり、製作委員会に権利が集中しているということは了解しているんですけれども、仮に、そういうところが倒産してしまったり、潰れてしまったりとしたときに、結果的に誰が権利を持っているか分からなくなって死蔵されているものというのは、現実問題として結構なボリュームで存在するんでしょうか。それとも、そういうのは、どちらかといえばexceptionalな、例外な問題なんでしょうか。これも両団体にお伺いできればと思います。

以上です。お願いします。

【日本映画製作者連盟(華頂)】  では、映連の華頂でございます。最初の御質問ですけれども、これは先生おっしゃるように、私が意見申し上げましたのは、劇場用映画、商業用映画ですね。工業製品に近い経済財としての映画ということで申し上げました。

それから、権利が不明になる云々の話なんですけれども、今申し上げましたように、映画を我々が作るときに投下する資本というのは、もうこれ完全なリスクマネーです。といいますのは、映画が完成して劇場で公開しても、極端な話ですけれども、誰一人鑑賞する人がいなければ、投下資本が失われるわけです。そういうふうなリスクマネーを投下して作る。製作委員会が今主流ですけれども、顔なじみの仲間と一緒に作っているわけですが、そのようなリスクマネーを投下した作品であって、権利者が不明になるということは、その収益を放棄するということです。何で収益を放棄するかというふうに考えてみれば、非常にまれなケースであり、何か特別な問題が起こったんだろうなというふうな理解であります。ですから、権利者が不明になる映画も確かに過去から見ていけばありますけれども、そういった意味で非常にまれなケースであるなというふうに考えています。

【日本動画協会(宮下)】  日本動画協会の宮下です。先ほどの御質問なんですが、我々としても、日本動画協会はアニメーションの著作権を持っている団体ということに、会社の集まりというふうに考えていますので、いわゆる商業上の著作権法の映画のビジネスをやっているというふうに認識をしております。なので、最近は放送が初めてじゃなくて、インターネット配信から入る作品とかそういったものも増えてきているという状況にあります。

それから、先ほどの例えば出資者が破産した場合とかということになりますけれども、今のところあまりそういったケースはなくて、1つは、契約書にきちっとそういうことは書きます。破産したりとかその兆候があった場合に関しては、脱退していただくと。脱退した場合の持分はどうなりますとか、そういったものの条項が必ず最近は製作委員会の契約に入っているということです。

それから、破産する前にどこかの会社が吸収合併したりとかということで権利を受け継いでいきますので、権利が誰にあるか分からないというような状態になるということは、ケースとしてはほとんど聞いたことがないという状況です。

以上になります。

【末吉主査】  ほかに御質問いかがでございましょう。坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  すいません、皆さんのほうであまりないようだったので、発言させてください。NexToneさんにお伺いしたいんですけれども、すいません、私ちょっと不勉強で申し訳ないんですけれども、簡素で一元的なというのを考えたときに、ユーザーからすると海外の楽曲というのもやっぱり簡素で一元的に使えたほうがいいわけで、先ほどの学術著作権協会さんの話だと、何か相互協定みたいなものをしていますよというお話があったと思うんですけれども、例えば一部の分野であったとしても、そういうことを海外の楽曲についてやることというのは、ビジネス上どういうところが難しいんでしょうか。ちょっとごめんなさい、分からないので教えていただきたく。

【NexTone(荒川)】  これは私がというよりも、JASRACさんがもう六十数年、七十数年前からいわゆる海外の団体との相互管理の協定を結んでいて、それに基づいて、例えばイギリスの楽曲であれば、イギリスの団体が持っている楽曲が日本で使われるときにはJASRACのルールに基づいて許諾をされるというようなルールがあって、これによってずっと日本において音楽著作権の海外の作品の利用というものも一元化されています。

そこに対して、今、NexToneとして、これまでは海外の作品を受けるということはやっていませんでしたが、まず第1段階としては、日本国内で我々が管理をさせていただいている作品の海外における利用の許諾というところに関しては、何らか新しい方法がつくれないかなということでスタートをしております。

その際に、今、デジタルに関していうと、各国が独自に展開されているようなサービスの場合と、例えばもう具体的に言えばユーチューブとかスポティファイであったりとか、そういうようにグローバルに展開をしているサービス事業者がいる、そういう場合があります。後者に関しては、各国での利用実績というよりも、大本のグローバルDSP、そこと何らかのルールを決めて徴収をしていくということがこれからの時代の著作権管理というところにふさわしいのではないかということで、そのような模索を今始めていて、一部そういうことが少しずつ、日本国内のものを海外でだけではなくて、海外のものもまさにグローバルに使うというような取組というのはスタートをしているというような形であります。このような回答でよろしいでしょうか。

【坂井委員】  ありがとうございました。私のほうで聞いているのは、特に外国製のVRとかの場合はそういう問題が出てくるというふうに聞いていますので、ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう、御質問。生貝委員、どうぞ。

【生貝委員】  貴重な御説明ありがとうございました。一橋の生貝でございます。学著協様に1つ御質問と、それから、文藝家協会様に1つ御質問でございます。

まず学著協様におかれましては、特にECLの導入に関する御説明の中で、個別ECLのような方法があり得るのではないかという御指摘がございましたけれども、まさに個別というふうにいったときに、どういった具体的な利用シーンとか、あるいは用途等を想定しておられるかもしイメージがあれば御教示をいただければと存じます。

それから、文藝家協会様におかれましては、こういった簡素で一元的な権利処理というものが特にプラットフォーマーに関わるバリューギャップの軽減につながり得るものと期待されるという御指摘をいただきましたけれども、ここにおきましても、特に文芸著作物のような著作物のどのような利用シーンに関してこういった効果が期待されるのか、例えば電子書籍の利用なのか、そういったところについてもし具体的なコンテクストがあれば御教示をいただければありがたく存じます。

【学術著作権協会(石島)】  御質問いただき、ありがとうございます。個別ECLというところで特定の何かこういう使い方が合致するのではないかというのを明確に持っているわけではないんですけれども、例えば最近は研究目的の利用に関して権利制限とかという話もあると思うんですが、そういったものに関して、例えば公的な機関での研究と、あと、共同研究で民間の企業と共同で研究する場合があると思うんですけれども、そういった公的研究機関が携わるような研究に関して例えば拡大集中許諾制度が利用できるというのは結構利用目的としてはいいのではないかというところです。

一方で、民間での研究利用に関しては、先ほども申し上げましたとおり、私どもの学著協でもそうですし、海外でもかなり民間へのライセンスが進んでいますので、ここに関してもし導入するとなるとバッティングがかなりあると思うんですけども、あまりまだ許諾というのは進んでないというか、あまり実際やっていない、非営利目的での研究利用とかというのは比較的まだ手がついてないところなので、合致する可能性はあるのかなというふうには思っています。

【生貝委員】  ありがとうございます。

【日本文藝家協会(平井)】  生貝先生、ありがとうございます。私どもの協会に委託をいただいているのは、基本的に個人からのものです。相手がメガプラットフォーマーに限らず、個人と組織ということになると、どうしても個人のほうがいろいろな意味で弱い立場、不利な立場に置かれてしまうのが現実です。ただ、従来の出版社とかそういうところが相手だと、それなりの慣習の厚みもありますし、これまでの信頼関係もあるので、比較的うまくいっている。電子書籍に関してもうまくいっているんですが、相手が海外プラットフォーマー等の場合、そういった慣習が全くのゼロベースから始まります。

一方で、文芸家側は、ゼロベースから始まるとは思っていない。これまで通り、我々の文化の枠内で収まるだろうと思っていたところが、結果は全然、違っていたというようなことがあります。あるいは、全てが細かい契約書ベースであったり、膨大な約款であったりとか、そういったものを個人の、素人の単なる普通の物書きに理解しろというのはなかなか難しいので、私どものような、一定の相場感があったり、案件種別ごとに固有な前提の下で動けるところが仲立になることで、予期せぬ被害を防いでいるという側面もあると思います。

以上です。

【生貝委員】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございますか。福井委員、どうぞ。

【福井委員】  日本文藝家協会さんにお尋ねいたします。御発表ありがとうございました。拡大集中許諾の部分で、拡大集中許諾は、制度設計の内容にもよるが、権利委託を行わないと判断した著作権者から許諾権を奪い去る結果になるから、慎重に検討する必要があるというふうに記載されています。この「制度設計の内容にもよる」のところをもう少しお伺いできればと思うんですが、一般にはオプトアウト、つまり、委託することを望まない権利者は簡易に離脱できるという制度が同時に議論されるべきであろうと思いますけれども、この「制度設計の内容による」というのは、そういう望まない権利者に対する配慮というようなことを意味していらっしゃるのでしょうか。あるいは、そのほかにも御知見や御提案があればお伺いできればというふうに思いました。

【日本文藝家協会(平井)】  そんなに細かいことまで考えているわけではありませんが、今、福井先生からおっしゃっていただいたように、オプトアウトが前提であることがまず第1だと思います。ただし、オプトアウトを前提とすることが皆さんのコンセンサスになっているところまではまだ来てないと思いましたので、取りあえずこれを記載させていただきました。

また、このオプトアウトですが、例えば、この作品はNG、こういった利用はOK、これを超えた場合は非一任型でというように、かなり細かい指定ができなければ、なかなか権利者の要望に応えることができず、結果として予期せぬアクシデントの原因になりかねません。ただし、細い指定を可能にすればするほど管理コストは上がっていきます。それをリーズナブルな利用料の中から捻出することは事実上困難だろうとも考えます。理論的に可能なことと、現実的に諦めざるを得ないこととのバランスが今後は大切になってくると思われます。そういったところまで見通した制度設計を行う必要があると存じます。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございますか、御質問。

よろしければ、その他、事務局において関係者よりヒアリングを行っておりますので、そのヒアリングの概要報告をここでお願いいたします。事務局、どうぞ。

【小倉著作権課長補佐】  事務局からのヒアリング結果の概要です。資料3を御覧ください。

事務局がヒアリングを行ったものについて概要を報告するものです。以下の資料の記述は事務局にて原案を作成しておりますが、その記述内容については、事務局からヒアリング者に事前に確認・修正をいただいて、公表の承諾を得ているものとなります。

2番、事務局によるヒアリング者一覧ですが、今回は、時間の関係上、1、ANYCOLOR株式会社、2、大学院生(美術系専攻)、3、大学生(非クリエイター)としております。これらは、前回の御議論にもありました、管理団体に管理を委託されてない場合とか、まさにネットのデジタル上で生み出されるコンテンツを扱う企業、また、商業・営利目的ではないのですが、ネット上に自ら創作した著作物をアップするような方々の意見も聞きたいということで丸2番の美術系専攻の大学院生、また、丸3番は、いわゆるZ世代の一般の若手のユーザーといった意味で聞いております。

3番、意見の概要についてです。まずANYCOLOR株式会社より聴取したものを報告します。視点・属性としましては、ネットクリエイター関係の事業者として、同社につきましては、VTuberのキャラクター制作やマネジメントということで、いわゆるCGで描写されたキャラクターやアバターを用いて動画配信を行う方々、こういったものを制作・マネジメントしている会社であります。当然、前回の御議論にもありましたように、事業者、クリエイターではありますが、動画制作と動画配信の過程ではユーザー的側面もございます。また、同社の子会社を除いては、管理団体の非構成員となっているとのことです。

主な意見について紹介します。まず、会社の事業につきましては、VTuberのキャラクターの制作、同キャラクターを用いて動画共有プラットフォームにおける配信活動等を行う実演家のマネジメントを行っているということです。制作したキャラクターを演じる実演家は実演に関する契約を締結しておりまして、コンテンツの権利は同社に帰属するということでございます。

一番下の行ですが、プラットフォームでの広告収入、投げ銭等の仕組みのあるライブ配信、キャラクターグッズの販売、企業とのタイアップ等を収益としているとのことです。

次のページになります。2ページ、一番上のところ、まずコンテンツの利用側面、ユーザーの観点からの聞き取りを行っています。VTuberとしては、ゲーム実況等の動画の投稿または生配信を行うということで、楽曲、ゲーム利用の権利処理が必要となるということです。ゲームの権利処理に関しましては、複数のゲーム会社と包括的許諾契約を締結していたり、あるいは各ゲームが公開しているガイドラインにのっとり個別に許諾を得ているとのことです。

上から4つ目の白丸のところに、各権利処理体制について御紹介があります。(1)ゲームの利用に関する権利処理体制としましては、利用許諾の有無や利用条件をまとめた権利確認表の整備・更新とか、専門的に担当するスタッフの配置、こういった工夫をされているとのことです。

また、(2)楽曲の利用に関する権利処理体制につきましては、楽曲の著作権と利用音源の原盤権の処理に分けて体制を構築しているということです。また、原盤権については、音源の制作の外注及び同音源の買取りによって同社に原盤権を帰属させたり、一般に公開されている商用利用可能な音源を使用することとしているようです。また、こういった包括契約も行っているようですが、これらの処理方法に乗らないものについては、個別に権利者から許諾を得ているということです。

また、2ページ目の一番下の白ポツでありますが、一番下のところ、問合せ窓口が不明であることにより権利者とのコンタクトが取れない場合、また、コンテンツに関する利用条件が不明確であるものについては、同コンテンツの利用を控える運用としているということです。

3ページ目に行きます。一番上側のポツにありますように、アマチュアクリエイターのコンテンツについては、同社に帰属するVTuberの配信内利用を行うことも多いということです。こういったものは、SNS等を経由して利用の許諾を得ているということです。また、その次の下線が引いてあるところですが、アマチュアクリエイターが同社のキャラクターイラストの二次著作物を制作した場合にあっては、同社の公開する二次創作ガイドライン上で、二次著作物の公開の条件として、同二次著作物の利用を同社に許諾するという旨の規定を置いており、二次著作物たるイラストを同社としても円滑に利用できるようにされているということです。

続きまして、クリエイターの観点からの聞き取りを行っております。メディアを含め企業からキャラクターや動画等の使用の希望があった際は、同社におきましては、その利用許諾の可否、利用条件について個別に調整しているということです。また、動画の著作権は同社に帰属しておりますが、実際には、VTuberの実演家に事前に了承を得るといったようなことも手続としては行っているとのことです。また、使いたいという使用の希望にゲーム実況動画など他社のコンテンツを含む場合は、許諾をする前に当該関係者の承諾を同社において得ているということです。

また、同社のキャラクターイラストの二次創作及びその公開を希望する一般の利用者に対しては、二次創作の条件を明示した二次創作ガイドラインを同社ホームページで公開しているということです。なお、そこの下から3行目になりますが、ライブ映像の掲載、コピー商品の販売の単純な複製行為はその許諾の対象としていないということで、公開の差止め、是正を行っている場合もあるということです。

また、3ページ目の下から2つ目の白丸のパラグラフですが、音楽著作物以外の著作物については、管理団体へ登録をせず、権利処理を自社で対応しているということです。これは例えば、二次創作で収益を得ている人の把握や侵害事案への対応等、自社のみでは対応が困難な部分を管理団体に機動的に依頼できるようになると、管理団体を利用する前向きな動機になると考えているといった御意見もありました。

また、次の4ページ目、簡素で一元的な権利処理についてお尋ねいたしました。こちらにつきましては、ユーザーの視点からは使いやすいが、クリエイターの視点からは、キャラクターのブランディングや第三者による悪意のある使用の懸念等、使われ方によっては抵抗がある場面もあるといった御意見もありました。

また、オプトアウトする際の意思表示として、コンテンツが無数にあるため、どの単位で表示できるかが課題といったコメントもございました。

3つ目の白丸、簡素で一元的な権利処理に関しまして、クリエイターの立場から、著作物の無断利用の横行を抑止できる効果を期待できる一方、コンテンツの利用許諾の可否の判断に際して、個別の事案に応じた自社の意思が反映されなくなるおそれといった懸念もおっしゃられていました。

また、上から4つ目の白ポツです。普及啓発についてですが、同社によれば、視聴者が権利侵害の有無についてシビアに観察していると感じる場面もあるということですが、一方で、著作権法上引用と言えるかどうかといったところでも、引用だから問題がないという理解が示されることもあり、著作権法に対する正しい理解というところはまだまだ疑問に思うといった御意見がありました。

続きまして、4ページ目の下半分、大学院生です。視点・属性ですが、ゲームや絵本、メディアアート等、デジタルコンテンツを製作・研究している者、Z世代、個人クリエイターという観点でございます。

主な意見としては、5ページ目の一番上のパラグラフになりますが、基本的には、全て自作することはできないので、ネット上のフリー素材を活用すると。フリー素材の活用の観点としては、利用規約を確認し、最も広範に使えるものを利用している。2つ目、BGMの利用に際して、集中管理団体への申請の必要があって断念したことがありました。それは個人の利用者が集中管理団体に許諾を得るのは、心理的なハードルがあったということです。また、データベースにつきましては、安心して使え、便利という趣旨で、無償のコンテンツのデータベースとかもあったらやりやすいということです。また、クリエーティブ・コモンズの普及、こういったものもいいのではないかといった御意見もありました。また、上から5つ目の白丸でございますが、創作活動にデジタルコンテンツを利用する際、利用規約、肖像権、著作権法以外の制約を含め、どこまで許されるのか判別が難しいといった御意見もありました。

また、クリエイターの視点でございますが、インターネットにアップする際は、無断転載、自作発言を禁止する利用条件を記載することもあったり、あるいは、あまり考えず、意思表示をしていないといったこともあるといった方もいました。その次のパラグラフでございますが、集中管理につきましてお尋ねしたところ、集中管理は積極的に預けたいとは思わないと。許諾したい相手や条件等を自分で判断したいといったような御意見もありました。また、クリエイターの観点の一番下の4つ目の白丸でございますが、著作物が利用されることを著作者、著作権者が把握できる仕組み・技術があれば、侵害対策にもなるのではないかといった御意見がありました。

最後、丸3、大学生、属性はZ世代、ユーザーでございます。主な意見でございますが、例えば2つ目の白丸、高校、サークルのイベントなどで著作物を使用する場合は、許諾を取る、規約を見て著作権侵害にならないものを利用しているといった、許諾を取って利用しているといったものもあったり、次のパラグラフでございますが、特定のコンテンツへの利用のこだわりがない場合が多いということで、こういった場合は利用規約が明確な無料コンテンツを使うといった御意見もありました。また、その次のポツですが、権利者や連絡先、条件、こういったものが掲載されると利用しやすいという御意見もありましたが、これはその下に書きましたように、SNS上等では、情報拡散されて、誰が著作権者なのか分からないといったようなこともあるといったこともありました。

最後、普及啓発関係でございますが、官公庁のホームページを能動的に閲覧することはほとんどないということで、情報が届く状態にしていただくとか、あるいは、写真、文章の転載に関する注意喚起がSNS等にあるとか、あるいはSNSを使って発信する際に権利侵害してないような確認が行われる仕組みといったこともアイデアとしていただきました。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。以上でヒアリングを終了いたします。御説明いただいた皆様には御協力ありがとうございました。

続きまして、議事の2番、自由討議に入りたいと思います。デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方につきまして、本日のヒアリングでお聞きした内容を踏まえまして、自由討議を行いたいと思います。御発言をお願いいたします。

仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】  すいません、日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。私のところで見させていただいているコンテンツというのが、皆さんいわゆるフリーな方たちで、そのコンテンツそのものも権利団体様にて管理されていない作品というのは結構多いんですが、いろいろ最後までお話伺った中で、やはりそういったフリーのコンテンツをどういうふうに使っていくかということが、結構やっぱり私にとっても重要だし、皆さんにとっても結構重要な話なんだなというのを理解しました。

その中で改めて、今回お話いただいた、要は、そういうフリーコンテンツがたくさんあるニコニコ動画の中では、今日お話しいただいたとおり、宣言ができていますよということと、データベース化ちゃんとされていますよということと、収益の分配も親子関係含めてできるというところまでお話があったので、改めてドワンゴ、甲斐さんにお話を伺いたいんですけれども、そういったフリーなコンテンツのデータベースであるニコニコ動画のそういうデータとか仕組みを、他の権利団体様に開放するという御予定、もしくは開放というか、データをやり取りし合うという御予定というのは今あるんでしょうか。かなりこれは面白い話かなと思いまして。

【末吉主査】  これ、御質問ですね。甲斐さん、いかがですか。

【ドワンゴ(甲斐)】  会社内できちっとオーソライズをとった考え方ではありませんが、当然ニコニコ動画あるいは我々だけという形ではなくて、全体としてコンテンツ全てに関して共有していくべきだと思っていますので、前向きに開放する方向あるいは提供できるような方向で検討したいというふうには考えております。

【仁平委員】  ありがとうございます。ぜひお願いいたします。

【末吉主査】  ほかにはいかがですか。中村委員、どうぞ。

【中村委員】  中村でございます。前回欠席して失礼いたしました。デジタルで著作権政策も2.0を迎えると考えているんですが、そうなりますと、これまでのようなハードな法制度以上に、ソフトローあるいはデータベースなどの技術、教育といったソフト政策が重要になってくると考えています。

そこで今日のヒアリングなんですけれども、ドワンゴ様はフィンガープリント技術や作品情報のデータベース、aRmaさんが出演実績のデータベースやアーティストコモンズ、NexToneさんが統合データベース、それから、学術著作権協会さんが分野別データベース、いずれもデータベースの整備を強調されました。なので、この会議でもそのプライオリティーを高くするのがいいと思います。ただし、作品とか出演とか統合とか分野別とか、データベースと一口に言っても様々な種類や設計がありまして、その方向性をここで見定めるのがいいと思います。この分野は、制度改正は進むんですけども、こういう施策物がなかなか進みません。何のお金で何を作るのかというのをここでも落とし込むべきと考えました。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにはいかがでございますか。奥邨主査代理、どうぞ。

【奥邨主査代理】  全体を伺っていて思ったんですけれども、具体的にどうなるかは別としてですけれども、簡素で一元的な処理を実現する上では、やはり集中管理団体への参加が広がるということは、どういう制度を作るにしても大前提であろうと思うんです。そのために何をしていくべきか、どうすればいいのか、を考える必要があると思います。今日も幾つか御質問が出ていましたけれども、なぜ集中管理団体に預けられないのか、預けたくないのかというところ、もちろん著作権者の御自身の意思の問題はありますけれども、それを上回るメリットを出すとか、いろいろなインセンティブを出すとか、いろいろな工夫の余地はあると思うんです。そこの点について、特に関係する方からのアイデアとかそういうものを伺うということは必要なんだろうなと思いました。

それからもう一つ、今日伺っていて思ったのは、今の仕組みで処理しづらいものを処理するということですが、その背景には、今コストがかかっているものだということがあるわけです。簡素で一元的な仕組みにすることによって、個々ばらばらに処理するよりはコストを下げるということを考えているわけですけれども、一方で、それによって処理コストがゼロになるわけではない。そうすると、そのコストは誰がどういう形で負担するのか、それから、そのコストを下げるためにはどうするのかということが重要になってきます。今、中村先生からも、データベースや技術による工夫の話もありましたけれども、コストのことも、どういう形でかかって、それを下げるとするならどういう提案があるのかなど、そういう点も含めて伺っていくということが、具体的に制度をつくっていく上で、考えていく上で役に立つと思います。制度は出来たけどコスト問題で機能しないとなっては何にも意味がありませんので、その辺も含めて現場の方からいろいろお困りの点、御提案というのを聞けていけばいいのかなというふうに思いました。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがですか。菅委員、どうぞ。

【菅委員】  ありがとうございます。小説家というクリエイターの一人として、また、ニコ動のプレミアム会員として、いろいろな側面でお話しさせていただきたいと思います。

まずクリエイターとして一番不安なのは、私、文藝家協会にも所属しているんですけれども、実は委託をしておりません。なぜか。一番大きな理由は、コストが幾らかかるか分からないんです。これはアマチュア、UGCの方々もそうだと思うんですけれども、預けることによるベネフィットと、こちらが幾らか払わなければならないんでしょうかということがどこにも明確に書いてないんですね。例えばどこかに掲載された場合に、「菅さん、掲載しましたよ。50円です」と言われたら、困るわけです。それが500万なのか50円なのかもすら分からない状態で作品をお預けすることはできない。

ですから、どこかで金額をしっかり提示をして、これができる、これができない、ベネフィットはこうだ、あなたの不利益は悪いけどこんなことがあるというのは、各団体ぜひお願いしたい。ちゃんと明記をして、そして、勧誘をしていただければ、クリエイターとしてはもっと入りやすくなると思います。別に料金をつり上げようと思って入っていないわけではなくて、分からないから不安で預けられないという私のようなタイプが大変多いと思いますので、各管理団体の方が条件的なことをまず明示をする、これをぜひしていただきたいと思います。

ただし、ドワンゴさんの場合は、クリエイター奨励金というのはたしか、私の調べでは、景品表示法か何かで公表できないんでしたよね。そういう何か縛りがあるんです。幾ら還元するというのを、対価ではなくて、子ども手当を親に還元するというのはどうも景品表示法になるらしくて、ちょっと法律的なことは分からないんですけれども、それでドワンゴさんは発表できない。

ただし、ドワンゴというかニコ動の場合は、発表したいというクリエイターの野心といいましょうか、もうただでもいいから見てくださいというのが第一義であって、それでもうけようとする人はユーチューブなり別のところに行くと思うので、それはそれで公表できないというのでも構わない。そういうプラットフォームがニコ動だと私は思っていますので、それは問題ないと思います。ただし、プロが所属するところというのは、ぜひ明示をしていただきたいと思います。

あと、先ほどあったユーチューブ絡みで2点だけお話しさせてください。まずユーチューブ、あと、アマゾン、そういった世界的な大きなインフラと契約を結ばないとどこの世界からも見られてしまうというのは本当に不安なことですね。例えばアメリカはオーケーでもカナダは駄目とか、そういう細かいことはやっていられないと思うんです。だから、大きなプラットフォームと一元的に契約するという手段も考えていただければありがたいと思います。

あと、ごめんなさい、私、新しい名前が覚えられなくて、にじさんじさんとしか言えないんですけど、にじさんじさんのゲームのところで面白いなと思ったのは、にじさんじさんのところは、ちゃんとゲーム配信するときにはゲーム会社と契約しています、著作権料を払っていますというお話がありましたね。

ところが、にじさんじがやっているから僕たちもできるという一般ユーザーがとても多いと思うんです。ですから、使うときには、契約はしています、丸Cはここからもらっています、ここはちゃんと許可をもらいましたというのを、やはり明確に作品中もしくはキャプションで出していくことが大事だと思います。そうすると、これ、ゲーム配信しているけどちゃんとゲーム会社は許しているんだ、本当はこうやらなきゃいけないんだという教育面にもなりますし、そういう許可を取っているということを積極的に発信していかないといけないと思います。

中村先生お休みでしたけれども、前回少しお話しさせていただいたのは、CCであるとか、ああいう使用許諾をしっかりクリエイターは発信しましょう、使う側は許可を取ったということをキャプションで表明しましょうというのを前回少し私の意見としてお話しさせていただきましたけども、やはり今日のヒアリングを聞いていて、あまり間違えてはいなかったかなと思ってほっとしております。

長々ありがとうございました。以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。太田委員、どうぞ。

【太田委員】  どうもありがとうございます。今日も大変勉強させていただきました。簡素で一元的な権利処理に対する温度差が随分とあるということに大変印象を受けました.それで思いますに、やっぱりDX化が新たな動きをもたらしている分野、とりわけ、同一人がクリエイターと利用者の両方であり,しかもそのようなことが大衆化して来ているというような分野が一番、データベースとかを作りにくいとか、登録をしにくいとか、あるいは逆に一元的処理に参加したくないという人たちが多い分野かなと感じました。

そこでちょっと興味を持ったのが、日本映画製作者連盟の華頂様のご説明の中で,映画の場合、AI技術を使って、誰が出演しているのを調べることができ、そういう技術を使って権利者探索をしていらっしゃるということです.やはりデータベース等にクリエイターやユーザーが積極的に登録するシステムでは多分、面倒さやコストやインセンティブの欠如などのために,いわゆるマニュアル(手作業)が必要なのでどうしても先に進めないのではないかと思われます。そうすると、AI技術とDXがもたらしてきている新たな技術革新をどう取り込むかということが、このシステムを導入するとしたら,それがうまくいく鍵になるのかなということを感じた次第です。印象論で申し訳ないですけど、以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょうか。よろしいですか、今日のところは。坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  坂井です。今日いろいろ皆さんからお話をお伺いして何となくちょっと私のほうで考えているのは、ECLについては、一般ECLはちょっとやっぱり厳しいのかなという印象を持ちました。ただ、そうはいっても、個別ECLについてはもしかしたら一部のところでは可能性があるのかなというふうには考えていますけれども、私はまだ個人的にはちょっと状況は整ってないのかなというふうには考えています。

それから、中村先生がおっしゃられていたデータベースのところなんですけれども、これ、私、言っているんですけど、経産省さんと文化庁さんで似たようなデータベース、経産省は多分売る目的で、どちらかというと利用する目的というのでデータベースを構築していて、文化庁はどちらかというと作品の保護とかそういう目的で集めているんですけけれども、やっぱりそこってまとめていかないといけないんじゃないかなというふうには感じています。それはやっぱり著作物というのは当然網羅的に知ることも大事ですけれども、活用されないと意味がないというふうに私は思っていますので、その観点からやっぱりここは一緒に見ていく必要があるのかなというふうに思っています。もちろん全項目、例えば粗筋まで載せるとかそういうのは大変だと思うんですけれども、そうじゃないところでやっぱり使いやすいという意味ではそこも考えていかなければいけないのかなというふうに考えています。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございますか。よろしゅうございますか。全体を通しても、何か御発言があればどうぞ。

ほかにないようでございましたらば、本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がありましたらばお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  次回の本小委員会につきましては、8月31日10時から、関係者のヒアリングを予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

以上です。

【末吉主査】  皆様、どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第2回)を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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