議事録

文化審議会著作権分科会国際小委員会(平成20年第2回)

日時:
平成20年12月19日(金)
9:59~11:40
場所:
文部科学省東館16階特別会議室
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)WIPOの最近の動向について
    2. (2)国際ルール形成検討ワーキングチーム報告について
    3. (3)今後の検討課題について
    4. (4)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

【道垣内主査】 まだ1分ぐらい前かもしれませんけれども,大楽先生は少し遅刻されるということですので,他の委員はおそろいのようですから,ただいまから第2回国際小委員会を開催したいと思います。
 本日は,御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とする必要はないと思いますので,既に傍聴の方には入場していただいているところでございます。特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 それでは,本日の議事は公開ということでそのまま傍聴していただくことにいたします。
 まず,事務局から本日の配付資料の確認と,それから人事異動について御紹介いただけますでしょうか。

【高柳専門官】 おはようございます。
 それでは,お手元に資料1,2,3と参考資料1から5を御用意させていただいておりますが,もし資料の過不足がございましたら,事務局の方までお申しつけいただければと思います。
 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,事務局に人事異動がございましたので御紹介いたします。
 7月11日付で,関裕行が新しく文化庁の長官官房審議官に就任しております。

【関審議官】 関でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【道垣内主査】 それでは,よろしくお願いいたします。
 まず,本日の議事のうちの1番でございます。WIPOの最近の動向につきまして,事務局から御報告をお願いいたします。

【高柳専門官】 それでは,資料1に基づきまして,WIPOの最近の動向につきまして,御説明させていただきたいと思います。
 まず,1.の第45回WIPO加盟国総会につきましては,本年9月に開催されまして,向こう1年間の方針が決定されたところでございます。重要な課題といたしましては,新たに豪州のガリ氏が新事務局長に選任されたということでございまして,全体の議論といたしましては,途上国の開発問題が全体中心を占めていたかなという感じでございます。
 個別テーマにつきましては,SCCR関係では,AV条約,放送条約,権利の制限と例外が次年度のSCCRの議題として決定されております。なお,権利の制限と例外につきましては,途上国から視覚障害者教育向けの権利制限に関心が示されたというところでございます。
 そのほか,開発と知財に関する委員会のCDIPにつきましては,開発問題へのリソース配分の問題,更にフォークロア等に関する政府間委員会(IGC)では,議論の加速化に関する要望が途上国から出されたというところでございます。
 続きまして,次のページの方にまいりまして,2.の第17回著作権等常設委員会(SCCR)でございますが,こちらの方は11月に開催をされております。本会合では,期間中の前半に視覚障害者と図書館の権利制限に関する事務局の報告書というものをもとに情報交換会合が開催されまして,後半では,今後のSCCRでの進め方というものが議論されたというところでございます。
 ポイントといたしましては,権利の制限と例外につきましては,各国の権利制限の情報を詳細に把握するという目的で,各国にアンケートを行って,各国の権利制限の実態調査をして,それを分析するということが必要ではないかというのが途上国から提供されたというのがございまして,また次回のSCCRにおきまして,教育の権利制限に関する情報交換会合を行うということが決定されております。
 会期期間中におきましては,国際NGOの世界視覚障害者連合(WBU)というところから,権利制限の条約に関する要望というのが出されまして,途上国の多くから,早急な検討が必要というふうな意見が多数出されたほか,先進国につきましては,総論では国際的にそのような権利制限に関するルール形成を行うというのは時期尚早であるということでありますが,一部には肯定的な意見表明をする国もあったという状況でございます。
 また,放送条約につきましては,どう状況を打開するのかが大きな課題でございまして,議長より,検討の方向性のオプションといたしまして,従来どおり排他的著作権を放送機関に付与するという方式か,あるいは条約では保護する旨だけを規定して,その保護の方式については問わないという形で条約の妥協を図っていくのか。さらには,合意が得られないのであれば,そもそも検討を休止してはどうかというオプションが提案されたところでございまして,結論といたしましては,議論を継続するということになりまして,放送条約について,議論を開始してからかなり年数たっておりますので,改めて理解増進のための情報交換会合を次回開催するということになっております。
 また,AV条約につきましては,引き続き重要であるというような意見が多数国から出されておりまして,地域セミナーを継続開催していくということになっております。
 最後に,EUが前回,前々回と提案しておりました追及権,準拠法,オーファンワークス,集中管理を新しい課題として取り上げるべきということに関しましては,時間の制約の関係上,既存の議題を優先すべきではないかというような指摘があったところでございます。
 次回の会合につきましては,来年の5月25日から29日にかけて開催するということが決定されております。
 続きまして,3ページの3.の開発と知財に関する委員会(CDIP)でございますが,こちらは7月に開催されておりまして,開発問題,具体的にどのように取り組んでいくべきかという作業計画の中身が議論されております。とりわけ開発問題へのリソース配分,WIPO内のリソース配分をどうするかが主な論点ということになっておりまして,今後の計画予算の修正に向けた議論をしていくというようなことになっております。
 また,4.フォークロアを扱っておりますIGCにつきましては,こちらは10月に開催しておりまして,いわゆるギャップ分析という既存の国際的な枠組みで保護できていない,保護が不十分な点というものを抽出するという作業が行われておりまして,今後の作業といたしましては,こういうものを踏まえまして,議論の加速化のための会期間会合の設置というのが提起されたわけでございますが,先進国と途上国内での対立というものがございまして,特段,合意が得られず,閉会に至っているという状況でございます。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 ただいまの報告につきまして,何かご質問等ございますでしょうか。
 すみません,私から一つ。
 これは,2,3,4と3つの委員会の動きを御紹介いただいたわけですが,この3つはいずれも総会にぶら下がっていて,同じレベルのものなのですか。それとも,2の常設委員会が上にあって,そこが指示してつくったのが3,4なのでしょうか。

【高柳専門官】 総会の下にSCCR,CDIP等があるというような並列の形になっております。

【道垣内主査】 2番を先にされたようで重要なのかなと思いましたけれども,日付から言うと,3,4があって2があったということですね。
 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,続きまして,議題の2でございます。この委員会は,第1回を5月に開きまして,今日,議事録も配布されておりますけれども,その第1回におきまして,ワーキングチームを設置して,問題点の洗い出しをしていただくということになったわけでございます。そして,ワーキングチームの方々に鋭意検討を続けていただきまして,できましたのが,この資料2の案でございます。
 これにつきまして,ワーキングチームの座長をお願いいたしました上原委員に,15分ぐらいで内容をかいつまんで御説明いただければと思います。その上で,委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

【上原委員】 では,既にこの資料自体は皆様のところに事前配布されていると思いますので,簡単に御説明させていただきたいと思います。
 一番最後のページのところに出ておりますけれども,ワーキングチームでは6回にわたって検討いたしました。1回目が7月7日で,最後が12月8日の報告案の取りまとめということでございます。
 1ページ目に戻っていただきまして,本ワーキングチームの目的ということでございますが,基本的には,途上国と先進国との間で知財に限らず南北問題が出ているという状況を受けまして,ページの半ばぐらいに書いてございます。途上国にとってはグローバル経済の参画が先進国の知識移転の契機となるというところで,知財制度の設計については,むしろできるだけ使いやすい,アクセスしやすい方向を目指すということであり,一方で,先進国側からすれば,著作物の市場が拡大するという中で,TRIPSによる強制的な保護が進むことにより,ある程度市場確保の可能性が高まっており,そのような保護を強めるという方向性がある中で,南北問題が表に出てくる背景があり,先ほど御報告がありましたように,放送条約やあるいはAV条約などがなかなか前に進まない状況の中で,どのような国際状態にあるのかということを分析する中から,問題点が抽出できればという方向で作業いたしました。
 その次に国際著作権を巡る動向についてというところでございますが,ここでは,現在1995年にTRIPS協定が締結され,96年にWCT,WPPTが締結されましたが,その後,この著作権分野におきましては,国際条約として重要なものができ上がっていないという状況にある中で,様々な動きが一方で出てきているということです。それが,いわゆる二国間のバイ,あるいは複数の希望国だけで新たな国際規範を創っていこうとするプルリというような動きが,先行する状況がある程度見られるようになってきているということでして,そこを分析いたしました。(1)の先進国側の動向を見ていきますと,先進国側といたしましては,ある程度,著作物の市場確保というところから,何らかの形での保護の強化,あるいはエンフォースメントの強化,すなわち実効性確保を目指す動きがあるわけですが,先ほど申し上げましたように,マルチの動きがなかなか進まないというところから,TRIPSの履行義務違反に関するWTO提訴や,あるいは二国間協定,あるいは二国間協議というようなものを通じて,実質的にエンフォースメントを求めていくという状況がいろいろな場面であらわれているということでございます。
 ただ,その結果といたしまして,二国間協定での締結内容は,TRIPS協定による最恵国待遇原則の導入及び内国民待遇原則の規律の強化によって,原則として,当事国以外にも均てんされるということでございますので,結果として,二国間協議でTRIPSプラスが決まりますと,それが均てんされるということで,デファクトスタンダードになっていく可能性がある。つまり,気をつけないと,我が国が関与しないうちに二国間協定で進められたものがだんだんとデファクト化していく可能性もあろうという分析でございます。
 また,一方で,プルリの動きといたしましては,海賊版問題への対応ということで,3ページの頭の方に入りますが,模倣品・海賊版拡散防止条約,いわゆるACTAと言われるような動きが出ていまして,現在,来年にも成立かというようなことで,早いテンポで動きが進んでいるという状況でございます。
 一方で,先進国におきましては,物理的な海賊行為,つまり,CD,DVD等の問題に対するエンフォースメントも相変わらず重要な問題であると同時に,インターネット時代ということで,国境を越える様々な問題が起こっております。そこでは,やはり視聴覚実演条約,放送新条約が締結されていないために,いわゆるWIPO Internet Treatiesが完成していないという状況が出ているわけでございまして,それについて今後,どのような方向で作業していくのかということが,我が国を含めた先進国にとって重要なポイントになるということであろうかと思います。
 また,インターネット上の海賊行為については,P2P等が非常に重要な問題になっておりまして,これにどのように対応するのか,今のところ各国がばらばらの対応になっているところでございますので,それを今後どういう形で情報共有していくのかということが問題になっていく場面であろうというふうに分析しております。
 その次が2番目で,途上国の側から見た動向ということでございますが,途上国側からいたしますと,WTOへの参画による貿易取引の拡大への希望というものが思ったほど進まない割には,一方でTRIPS協定等による保護の縛りというものが負担になってくるというような状況も出てきているところから,4ページ目に移っていただきますと,2001年のWTO閣僚会議(ドーハラウンド)では知財と開発問題が出てきており,また,WIPOでも2004年から開発アジェンダの提案が出てきて,正式な委員会が設けられるに至っているということでございます。
 先ほども申し上げましたように,知識へのアクセス機会の確保が途上国の経済発展に不可欠,つまり先進国の持っている知的財産,あるいは様々な成果に素早くアクセスし,取り入れることによって,自らの国力,ないしは産業の発展につなげるという方向性が強く出ているわけであります。とりわけ,インターネットの発展ということがそのような要望を強くしているというところから,国際的な保護の枠組みが,知識へのアクセスの障壁になっているというような途上国側からの指摘が出ているところでございます。
 これにつきましては,単にインターネットだけではなく,例えば本などでも,一部学術書などでは,むしろ途上国の方が高い値段になってしまうというような状況もあるというところがWIPOの会議などでも示されております。
 ということで,WIPOにおいても,開発アジェンダのみならず,スタンディング・コミッティー,すなわち著作権等常設委員会の方では,制限と例外というようなことで,いかにしてアクセスを確保するかという形の動きが出ているところであります。
 また,一方で,途上国側からの強い国際的な動きといたしましては,伝統的知識並びにフォークロアについては,バインディングな制度による保護を訴える声がますます強まっているという状況でございます。
 というような全体の分析を受けまして,3.の国際著作権を巡る各課題への対応状況と今後の検討の方向性ということでございますが,ここにおきましては,3つのポイントで示させていただいております。
 1番目が,著作権保護に向けた国際的な取組ということでございまして,今までのテーマに即したベーシックな問題ということで,WIPO Internet Treatiesの完成というところが何よりもまず必要なところであろうというところから,今後それをどのように成立させていくかということでございます。当然,マルチの場での追及が必要でありますが,現実にはある程度行き詰まり感があるところでございますので,これを突破するためには,必要に応じて二国間での協議等の働きかけも通じて,WCT,WPPTへの加盟あるいは内容の遵守の働きかけも含め,更にそうした場を利用して,新しい条約,残っている2つの条約についての働きかけも強めていくということが必要になっていくのではないかということで分析しております。
 というところから,今後の検討課題でございますが,イタリックス体になっているところが,主たる検討課題として抽出したところでございます。
 1つ目が,視聴覚実演及び放送機関の保護については,国際的な動向を十分に見極めつつ,合意形成が可能な環境整備のため,多数国家における検討の場,二国間協議の場などで引き続き各国の理解増進に努め,合意可能な内容の在り方の検討が必要ではないかということでございまして,今後,どのようにして行き詰まっている状況を突破するかということについては,国際状況,それから多国間状況とともに,状況整理というようなことを二国間で進めるということ等,総合的な手段を講じていく,そうした検討が必要であろうということでございます。
 2つ目でございますが,二国間協定を通じた保護については,今後は,後発発展途上国や先進国の間での交渉が増加することが見込まれることになりますが,多国間でのルール形成枠組みにおける議論を十分に尊重しつつ,国際的な制度調和に資する方策の検討が必要ではないかというふうにまとめております。
 こちらは,先ほども申し上げましたように,二国間協定で他国の間で進んでいるものが,下手をするとデファクトになるおそれがあるということも含めまして,我が国としては,どのような二国間協定の持っていき方をするのかということについての基本的なパターンを著作権について模索していく必要があるだろう,検討していく必要があるだろうということでございます。
 その次が,エンフォースメントの実効性確保に向けた取組という2番目のテーマでございます。
 2番目のテーマにつきましては,現状では海賊版対策というものは,今までの国際小委員会でも議論してきたような様々な取組が行われているわけでございますが,なかなかDVD,CD等の物理的な海賊行為についても,これがおさまらないという状況でありますし,一方では,インターネットを通じた海賊行為がますます増えてきているという状況でございます。インターネットの上での著作物の利用状況から言えば,正規の産業利用よりは海賊行為の方が多いということが実情になりつつあるという状況があります。海賊行為に対する対応というのは,国境を越えるところもありますし,一方で正規のビジネスを行っていく上でも,今後,インターネット上の配信は国境を越えていくということが考えられるところから,国際私法の問題への取組が重要になってくるであろうという現状があるかと思います。
 そういう意味で,ハーグの国際私法会議自体が大きな成果を得るというところには至らなかったところから,アメリカやEUなどから既に様々な提案が行われたり,あるいは提案に向けての作業が進んでいるところでありますし,我が国におきましても,いろいろな大学等で検討が行われているところでございます。
 したがいまして,これらへの検討ということが,つまり国際私法上の対応ということの検討が必要になっているという状況にあるということが言えると思います。
 更に,インターネット上の国境を越える侵害につきましては,様々なものが次々と出てくるという状況の中で,これを捕捉するのが非常に難しいというところから,ともかく現状の調査,認識,分析ということを先に進めていく必要があろうという状況があるというふうに認識しました。
 結果といたしまして,今後の主な検討課題といたしまして,下に書いてございますが,1つ目としては,効率的なエンフォースメントを図るためには,準拠法,国際裁判管轄についての具体的な検討が必要ではないかということで,国際私法での著作権問題への対応を検討していく必要があろうという提案でございます。
 それから,2つ目が,インターネット上における個人の海賊行為への対応方策については,今後の各国間の情報共有や国際協調との可能性の検討のために,まずは各国における制度整備に関する情報収集及びその分析を行うことが必要ではないか。各国における動きがばらばらに行われている状況はありますが,それらをまとめた対応の方向性を探るための情報収集と分析をまず行っていく必要があろうという提案でございます。
 それから,次のページへまいりまして,現在交渉が進められている模倣品・海賊版拡散防止条約の実効性を高めるべく,効果的な活用方策について検討していくことが必要ではないかということです。これは,まだできていない条約ではございますが,これができて,ただ飾りになっているということでは意味がないということで,これが急速に成立に向けて作業が進められておりますので,これができた暁には,十分な活用を検討する必要があろうということでございます。
 最後に,途上国を中心に主張されております開発と知財問題への対応ということでございますが,こちらの方につきましては,途上国の側からは,知識へのアクセスの改善に資する権利の制限と例外の国際ルールの新たな設定に対する強い要望が,SCCRで出ているところでございます。このようなSCCRの動き,更に一方でWIPOではフォークロア,あるいは伝統的知識についての保護というものが強く出されるということがございます。
 このような動きが,一方で例えば開発アジェンダであれば,開発アジェンダの進め方,会議を何回持つかというところで会議が紛糾する。あるいは,フォークロアにつきましては,バインディングなものがいいのか悪いのかという話で,話が毎回紛糾するということで,サブスタンシャルな議論が進まないままに,両者のフラストレーションが高まっていくという状況がございますので,こうした状況に対し,我が国としてどのように取り組むかということを考えると,単に外形的な議論にとどまることなく,内容の検討をしていくことが必要ではないかということで,今後の検討課題ということでございますが,次のページをめくっていただきますと,1つ目が,国際条約の複数の条項で保証されている柔軟性について,途上国が十分に認知し国内法に反映できているか,また国内法に反映できていても法運用が実効性を伴うものになっているかの把握が不可欠である。このため,WIPO等で進行中の調査を踏まえつつ,仮に国内法制への未反映や法運用の実効性が原因となっている部分があれば,理解増進や情報提供による国内法整備や権利許諾の円滑化を促進する仕組みの整備に協力していくことが必要ではないか。また,知識へのアクセスという視点では,権利者不明の著作物の利用に関する問題等,我が国を含む先進各国において関心が高い観点も含めた包括的な議論を検討すべきではないかということでございます。実は,途上国から出ている権利制限問題等につきましては,現在,既に国際的な法規範として定められている権利の制限等を,とりわけ途上国が十分に生かしていない状況がございますので,そうした問題を精査した上で,どこが本来今後の新しい国際的法規範として求められるものかというところを,今WIPOでもやろうとしているところですので,それを進める必要があるということと同時に,現在出ている知識へのアクセスという問題につきましては,先進国側からも,例えばEU提案にございましたように,幾つかの問題点が出ておりますので,一方的に受け身になるということではなく,トータルにどのような観点から総合的に考えるべきかということを検討していくべきではないかということでございます。
 それから,その次にフォークロアでございますが,フォークロアについては一つの枠組みで保護が達成されるものではなく,各国が地域や民族の特性において柔軟に対応すべきものであり,多様なアプローチが認められることが望ましく,当面はガイドラインやモデル規定としての位置づけを中心に国際的なハーモナイゼーションを目指すべきとする,平成18年1月の文化審議会著作権分科会報告書にある多様な方向性が引き続き必要であると考えられます。今後は,フォークロア保護に係る各国の動向,「無形文化遺産の保護に関する条約」をはじめとした関連する国際条約等の動向を注視し,フォークロアの保護に関する国際的議論の進展に貢献すべく,我が国も含めた関係各国において柔軟な対応が可能となるようなガイドラインやモデル規定の在り方等について検討することが必要ではないかということで,基本的な方針といたしましては,平成18年の著作権分科会報告書,これは国際小委員会から出しました意見,報告書をもとにつくられたものでございますが,そのベースを引き続き守りつつも,具体的な内容についてどのようなことが考え得るのかということで,国際貢献の準備をしていく必要があるのではないかという御提案でございます。
 最後が,むすびでございまして,現在,検討課題ということで,3.のところで,(1),(2),(3)に分けて,分析あるいは御提案をさせていただいたわけでございますが,(1)と(3)につきましては,今後の政策検討が更に必要であろうということで,(2)については,主として検討という以前に,調査・分析等がまず必要ではないかということがむすびでございます。
 一応,駆け足でございますが,御報告でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 この最後のページにございますように,上原座長をはじめとしまして,この委員会の委員の方でないお二人,小島さんと駒田さんというお二人の准教授に入っていただいて,その下にありますように6回の会合を開いていただいたわけでございます。このワーキングチームのミッションについては,前回のこの小委員会の議論の結果,この小委員会での議論に資するようなテーマの抽出,あるいはその調査ということをお願いしたわけでございます。この報告書の案では,その目的を1の本WTの目的のところで明確にした上で,国際著作権の現状を早急に把握すべく,2番のところで全体の動きを書いていただいています。そして,3のところで,そういう状況を受けて,ここでは3つの問題を取り上げていただいて,情報の収集や分析が必要ではないかということをおまとめいただいております。
 したがいまして,この報告書の案を受けまして,まずはこの小委員会として,これを正確に把握した上で,もしお願いしていたことはもう少し違うんだということであれば,まだWTの開催は可能でございますので,もう1回ここを検討してくれということを御指摘いただくことでも結構でございますので,まずはこの報告書について御検討いただきまして,その次の今日の議題として,今後,小委員会としてどうしていくべきかということを,この報告書を踏まえて検討することになります。まずはこの報告書の案について御意見ございますでしょうか。
 それぞれ御関心の向きから見ていただいて,ということでも十分でございますので,いかがでしょうか。
 久保田委員。

【久保田委員】 基本的な質問ですが,こういった問題提起がなされると,関連機関としてどういうところが,どのように動くということを狙ってこういうレポートが作成されるのか。我々権利者団体などはどのように,アプローチをかけたらいいのか。レポートは,非常によくまとまっていますが,具体的な権利保護活動している中で,こういう疑問を持ってやっているんですけれども,こういったレポートが出ることによって,関連の省庁や,それからそのほかいろいろな活動をしているところと,どういうふうに連動する狙いといいますか,こういう課題が出たときに,どういう機関にアプローチをして,どういう動きを期待しているのかというところが,我々現場では理解しづらいわけです。
 それぞれの課題が各省庁かかわる部分がたくさんあるわけですけれども,我々,現場で持っている情報をどこに,どういうふうに上げていったらこういった課題が解決できるのかというようなことについて,御示唆いただきたい。

【道垣内主査】 まず,私の方から申しますと,このワーキングチームの報告書自体は,この小委員会向けに発せられているメッセージでございますので,まずは受けとめるのはここだと思います。そのことを考えてつくっていただいたはずでありまして,この小委員会も,上の著作権分科会に向けて,もし何かメッセージを出すとすれば,そこへ出すということになります。分科会が受けとめると,今度は文化庁長官に行くんでしょうか。諮問は文化庁長官から発せられていると思いますので。そして,お役所としてしかるべく受けとめて対応をとっていただくというのが,審議会の在り方ではないかと思います。上原座長,もっと直接的にどこかにアプローチするということで,メッセージを発せられる見通しであれば,御説明いただけますでしょうか。

【上原委員】 今,主査がおっしゃっていただいたとおりでありまして,あくまでもワーキングチームといたしましては,本小委員会に対する報告ということでまとめておりますので,飽くまでこの分析と,それから一定の検討課題ということで問題提起をしておりますので,どのように受けとめて行動指針を出していただくかは,小委員会でお願いしたいというふうに思っております。
 ただ,一応むすびのところで書いてありますように,一定程度調査分析を進めることと,具体的な検討をしていただいた方がいいのではないかということとは,分野別に分けて御提案は申し上げたつもりでございますが,それをどのように受けとめて進められるかは,小委員会での検討事項というふうに考えておりますので,そこまでがワーキングチームの検討内容でございます。

【道垣内主査】 そのほかいかがでしょうか。
 山本委員,どうぞ。

【山本委員】 この報告書を見せていただいて,最初,ワーキングチームで一体どういうことが議論されることになるのかなというふうに実は危惧していたところはあるんですが,この報告書で大変よかったなという実感を持っております。といいますのは,今までここで審議しているときも,ほかの小委員会で議論している国内問題と,ここの国際小委員会とでの議論の対象が重なってしまっていて,どういうすみ分けをするのかなというのは,いつも疑問に思っていたところでした。ここで検討課題として挙げていただいているのは,まさに国際小委員会として議論すべき課題を選び出していただいているという意味で,大変意義のある報告だなというふうにまず思っております。
 それから,検討課題として挙げていただいたものもそれぞれ,今までよく議論されているところです。例えば視聴覚実演の保護であるとか,放送機関の保護であるとか,この辺ももう何年にもわたって議論されております。こういう個々のテーマも,例えばまた別にワーキングチームをつくって,そこで従来の議論とそれから今後の問題点の整理,そして関係者の意見を聞いて,問題点を総合していくようなそういう作業も必要だろうと思います。また,その他準拠法の問題であるとか,国際裁判管轄の問題も同じようにワーキングチームをつくって,検討していったりするのにはふさわしいだろうなと思います。
 ただ,全部一度にできるわけではないと思いますので,優先順位をつけてやっていかないといけない事柄だろうとは思います。私個人としては,特に挙げていただいております,準拠法の問題であるとか,国際裁判管轄であるとかは,御紹介されておりますように,アメリカの法律協会であるとか,マックス・プランク知財研究所から報告書が出されているというようなホットなテーマになってきているというところです。そこを見据えて,今,すぐにでもとりかかったら良いテーマじゃないかなと,この報告書を見させていただいて思ったところです。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 優先課題をどういうふうにするかという話はまた次の議題のところで議論していただきたいと思いますが,思っていたことと違うとおっしゃらなかったので安心しました。
 ほかの方で,もう少し,この点を検討したらよいのではないかという点がもしあればどうぞ。あるいは記述についてよくわからないというところでももちろん結構でございます。
 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,この報告書につきましては,特に追加の項目の御指摘はございませんでしたので,細かい修正は上原座長に御一任しまして,最終的なものとしてしかるべく報告書を小委員会に出していただくということにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,日付はどうなるんですかね。小委員会自体は今日が最後ですので,今日の日付でファイナルなものを出していただければと思いますので,よろしくお願いいたします。

【上原委員】 はい,かしこまりました。

【道垣内主査】 次の議題の3でございますが,今後の検討課題についてです。今,この報告書を受けまして,小委員会として来年度以降どういう課題を検討し,またそれをどのように実現につなげていくかを御議論していただくことになります。本当に実現するかどうかは,この小委員会の力ではどうしようもないことではございますけれども,そういう審議をしていく課題として,どの点が重要かということにつきまして,検討課題の案を事務局でつくっていただきました。資料3につきまして,御説明をお願いできますでしょうか。

【高柳専門官】 それでは,資料3に基づきまして,今後の検討課題の案ということで,事務局の方で用意させていただいたものを説明させていただければと思います。
 まず,ワーキングチームの御報告の方を踏まえまして,大きく4つに整理して課題ということで挙げさせていただいております。
 今後の国際情勢も踏まえまして,またリソースの制約もありますので,優先的に,あるいはより深掘りして検討していくべき課題は何かというところを,この後いろいろと御議論をいただければと考えております。
 まず,初めに1.でございますが,著作権保護に向けた国際的な対応ということでございまして,この部分につきましては,やはり視聴覚実演及び放送機関の保護に関しまして,WIPOでの議論を十分に踏まえまして,今後の対応の在り方について検討していくべきではないかということでございまして,次回,5月のSCCRにおいて放送機関の保護に関する情報交換会合というのが開催されるということで,それ以降,ある程度,今後の見通しというのが見えてくるのではないかと考えられるところでございますけれども,今後,そのようないわゆるマルチと言われている場で,どう対応していくべきなのかというのが論点としてあるかなというように考えております。
 また,一方で,欧州議会におきまして,域内での放送機関の保護の在り方についての検討の動きがあるほか,APECでも放送前信号の在り方等について,アメリカ等が提案している動きがございまして,そのようなリージョナルな動きが出つつある中で,これらに対して,どう対応していくべきなのかというところも一つの論点になるかなと考えております。
 続きまして,2.のエンフォースメントの実効性確保に向けた対応ということでございますが,まず初めに,準拠法及び国際裁判管轄に関して,我が国の著作権関連ビジネスの円滑化に資する国際ルールの在り方について,米国や欧州で検討が進められておりますモデルも踏まえつつ,検討していくということはどうかというものでございまして,御案内のとおり,国際交渉の場では,ハーグ以降,議論が進んでいないということではございますが,欧米学会,国内でもそうでございますけれども,欧米中心に条約の素案に関する議論が進んでいるということでございますので,今後,国際交渉等の場において再度また議論がなされる可能性も見据えるということで,我が国独自の視点から何か議論をしておく課題はあるかということでございます。
 また,本件に関して,最近インターネットでのコンテンツの流通がどんどん進んでおりますので,コンテンツ等の事業者の方々のニーズにはこういう件でどういうようなものがあるのかというものも含めて,議論してはどうかというようなことでございます。
 もう一つは,デジタル化,ネットワーク化による国境を越えた侵害行為へのいわゆるエンフォースメント,すなわち,権利執行に関しまして,その実効性確保に資するような各国との情報共有や連携の在り方について,国際動向も踏まえて検討してはどうかということでございます。インターネット上の侵害に関する権利執行に関しましては,実効性を確保するということで,近年,アメリカ,とりわけ欧州,韓国,国内でもそうでございますが,ある意味でそれぞれ個別に対応,国内問題として対応がなされているというのが現状かなというように考えておりますが,一方で,一つの国での対応というのは必ずしも十分と言えないというところもあるのではないかということで,関係国間で何か相互に協力をしていくべきことはないだろうかということでございます。また,例えば,ACTA,すなわち,模倣品・海賊版拡散防止条約のように,権利執行に関するルール形成ですとか,国際協力を念頭に置いた枠組みも形成される可能性もあるということもございますので,このようないわゆるプルリですとか,あるいはバイ等の枠組みを具体的にどう活用していくのかというところも含めて,さらにはそもそも海外,とりわけ欧州等における最近の動向も含めて,情報も収集するということもあわせて議論してはどうかというものでございます。
 続きまして,3.の開発と知財の問題への対応ということでございますが,1つ目は,途上国における開発問題に関して,知識の利用を促すような法制度及びその運用の在り方について,WIPO等の動向を踏まえつつ検討してはどうかというものでございます。
 最近のWIPOの議論を見ます限り,途上国の方からは,いわゆる知識へのアクセスを実現するという観点から,権利制限の図書館,教育等々の権利制限の条約をつくるべきと主張しているというわけでございますが,そもそも,このような権利制限規定を国内法に規定していないのは途上国側であるというような矛盾も存在しているという状況でございまして,途上国側は,知識へのアクセスを実現するために最適な方策は何かを見いだせていない部分もあるのではなかろうかというように思われます。実際,WIPOの議論を見ておりましても,どうも途上国側の問題意識に不透明感が漂っているという状況もありますので,引き続きWIPO等での議論等々から情報を収集いたしまして,途上国の知識アクセスの向上のためには何が最も適切なのか,国際条約を制定するというのではなくて,国内の法制度の整備,あるいは国内法制の運用問題も含めて,先進国側からも検証するということが必要ではないかというようなことでございます。
 もう一つのフォークロアの対応に関しましては,各地域や民族の特性に応じて柔軟な対応が可能となるようなガイドライン,又はモデル規定の在り方等につきまして,WIPO等の動向を踏まえつつ検討してはどうかというものでございまして,こちらもWIPOの議論を見ております限り,フォークロアを保護すべきという主張につきましては,総論ではそうではないかというふうなことではありますけれども,実際にはどういうふうに保護するのかという部分につきましては,議論が進ちょくしていないという状況がございます。その意味で,各地域や各民族の特性を十分踏まえたガイドラインやモデル規定とはどのようなものが考えられるのか,その在り方というのはどうあるべきなのかというものをあらかじめ議論しておくということもあるのではないかという趣旨でございます。
 最後に,4.その他の検討課題というところでございますが,今回のワーキングの議論の中で出てきましたTRIPS協定や二国間協定への対応の在り方ですとか,あるいはワーキングで議論がなされていない著作権に関する制度運用の国際協力等につきまして,上の1.か3.の具体的な検討課題の文脈の中で,具体的にどのように活用していくべきかという点も今後の検討課題として考えられるのかなということでございます。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 4つの項,その下の項目でいいますと7つ事項を検討課題の案として取り上げてはどうかという案であります。この小委員会として,全部を平等に扱うというのは,余り効率的ではないでしょう。仕組みとしては,今日でこの小委員会はできたら終わりにして,上の委員会に報告書を出し,その中で国際小委員会の対象事項としては,これが重要な事項であるというメッセージを出しておいて,次期の著作権分科会が,それならまた国際小委員会を設置し,これを検討しなさいという指示をする,以上のような流れになるのではないかと思います。ですので,余り総花的に検討課題を出してもいかんし,かといって,何かつまらなそうなテーマでも,そうではどうかということになりますので,ちょっと目玉になりそうなもの,せいぜい1つか2つを優先的な課題にして,問題としてはたくさんありますが,特にこれとこれが重要ですという形がいいのではないかと思います。したがいまして,どこが重要なのかの優先課題を特定していただくような御議論をここでしていただければと思います。いかがでございましょうか。

【久保田委員】 まず,それに当たって,4.の2ポツの著作権に関する制度運用の国際協力の在り方というのは非常に大きなとらえ方なんですが,2.のエンフォースメントのところの2ポツに出てきた,国際動向を踏まえた協力関係というふうに読める部分もあると思うんですけれども,こことのかかわり合いで4.に何か張り出している理由があるんですか。

【高柳専門官】 4.の方の著作権に関する制度運用の国際協力の在り方の部分につきましては,むしろ具体的には途上国へのいわゆる著作権の法制度の整備等々の協力というものを念頭に置いております。

【久保田委員】 途上国の法の整備についても,我々から言うと,結局執行面がきちんと機能することが大切。そのための制度がきちんとあって,なければ執行もできないわけですから,そういう観点でも2.のエンフォースメントのところとクロスする部分が多分非常に大きいところではないかと思います。
 当協会からは,2.の2ポツの方のデジタル化・ネットワーク化によりまして,国境を越えた侵害行為の権利侵害に対してどういう対応をとるか,ここについて最も興味があります。一方,これをやるためには国際小委員会における議論として,国際的な見地とともに,必ず反射的に国内の状況がどうかということが問われます。
 実際,我々権利保護団体が海外で権利執行活動を行うときに,最も重要なのは著作権制度の基本的な問題でありますが,権利の帰属と著作物性なのですね。こういったところを国内的な側面から見れば,著作物性とそれから権利の帰属ということを直接,間接的に政府が認証をしていくとか,それがあると海外での,インターネットも当然同じ視点ですけれども,侵害があった場合に,これは日本のコンテンツですよ。これはどこまでいっても帰属の証明というのは厳しいということはわかっておりますが,少なくともその蓋然性を政府の承認や信用保証団体というような観点から,政府がきちんと認可している団体からの証明があることで,蓋然性が高まるということは,今後実効性を担保するのに最も重要なところだと考えます。
 EUにおきましても,統一著作権法というものがあるわけでもなく,それぞれの国でそれぞれの裁判管轄も含めて判断していく部分があるわけですね。こういったところをきちんと固めておかないと,幾らエンフォースメントの実効性といっても,現実に著作権が私権である以上,そこで民事,また刑事,とりわけ刑事で行う場合には,帰属とまたライセンスがあるのかないのかといった問題を,一権利者が証明していくというのは非常に大変であります。この点につきましても,この実効性を確保するといったときに,両面ありまして,国内的な整備についても国際小委員会で出てくるという,当然の結果として,国内の実効性を高める制度との関係と連動しないと,幾ら国際的な観点に向けていっても,では権利者はどこまでその努力をしているんだと,国はそれに対してどこまでサポートしているのだということを海外で言われるだけなのですね。
 そういう意味では,登録という手続や他国とのライセンス管理業務を行っているJASRACさんなどは強力なポジションにあると思います。この点を国内的にも検討し,その検討の状況を世界に知らしめて,具体的な整備がされている状況で日本は検討していないと,条文上とか海賊版が出回っているという現象面だけを言っていっても何も変わらないと思います。
 当協会としましては,この2の2ポツの部分につきましては,是非そういった観点から検討していただいたらと思っております。
 それから,一つ情報なんですけれども,最近,我々の方で調査しましたインターネット上におけるファイル交換ソフトの実態調査なんですけれども,このウィニーやシェアなどのP2Pの共有サイトで共有されているアドレスは9割が日本です。実はインターネットが国際的だと言いつつ,違法サイトにアップロート,ダウンロードしたり,ファイル共有ソフトを使って,その情報を共有しているのは9割が日本のアドレスということですから,国際的な視点もあろうかと思いますけれども,実は我々の日本国民が,ファイル交換技術を利用して,ダウンロードすることはまだ今の段階では適法かもしれませんけれども,違法行為を行い,若しくはそれに荷担しているのは間違いないわけであります。
 一方,いわゆるパッケージ海賊版の問題についてもその量や販売実態についての情報が少なく,中国を中心にしたアジアの方でひどいと言われておりますが,実はヨーロッパでも同じような状況であるということも我々自身も知らなかったわけであります。こういった観点こそ海賊版対策を行いフェアなコンテンツビジネスを確立するための重要な情報ですから,こういう情報も関連省庁,各団体から,きちんと現場から情報をとってくるような環境もつくる必要がある。全くもって間違えた情報のもとに,間違えた投資や対策にコストをかけてしまうということになろうかと思います。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 著作権は,もともと19世紀のベルヌ条約のときから国際問題なので,国内法としての検討課題も当然に国境を越えた問題が含まれ,法制問題小委員会との重複が起こることは当然かと思います。もっとも,WTOとか条約とかに関する事項は国際小委員会の管轄事項でしょうが,それ以外の事項はすべて重複の可能性があります。その場合,お互い遠慮し合うよりは重なっても,うまく調整しながら議論していくべきではないかと思います。法制問題小委員会の方はテーマが山積ですので,特に国際がらみの問題はこちらでやるということはあり得るのではないかと思います。
 いかがでしょうか。
 どうぞ,石井委員。

【石井委員】 今のことに関連して質問なんですけれども,確かに今,国内でいろいろ話題になっていること,例えばオーファンワークスの問題でも,それからフェアユースの問題でも,保護期間でも,それからIPTVの問題でも,すべて国際的な動向がどうなるかということと深く絡んでいるわけなんです。そういうものは今いろいろなところで議論されているものですが,それぞれのところで議論をして,それとは別に国際小委員会では何をするかというような整理でよろしいのでしょうかということ。
 それから,2.のひとつ目の準拠法の問題なんですけれども,これは今日の参考資料5にあります「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方」でもかなり力点を置かれるような形で報告があるんじゃないかと思うんですけれども,それとの関係というものはどのように考えたらよろしいのかということ,とりあえず質問は2点でございます。

【高柳専門官】 今御指摘のございました国際小委員会で議論していくべき話と,国内で議論していくべきものの整理でございますけれども,やはり国際小委員会では対外的に向けてどう働きかけをしていくことがあるのかという部分を中心に議論をしていただくことになるのかなというように考えております。
 その過程で,当然国内の現状を海外に発信していくですとか,国際対応と国内対応との連動の観点から国内についても分析をする可能性はあるとは思いますが,飽くまで最終的に国際小委員会で求めていくべき部分は,対外的にどのように働きかけをしていくのかという部分かなというように考えております。
 それと,先ほどの準拠法の部分でございますが,知財本部のデジタル・ネット専門調査会の方でも,インターネット上の侵害に関する問題ということで取り上げておられるということでございまして,実際,どこまでそこで議論ができたかというふうな部分もございますので,より著作権という観点からスペシフィックに議論をするとすれば,本件に関しまして,それなりの体制で別途議論していくということの方が,より深い議論ができるということもあるのではないかなというふうに考えております。

【道垣内主査】 よろしゅうございますでしょうか。

【石井委員】 はい,ありがとうございます。

【道垣内主査】 そのほか,何か御意見ございますでしょうか。どうぞ。

【久保田委員】 今の模倣品・海賊版拡散防止条約の方の進ちょく状況と,これは我々のCODAという団体で活動しているが,模倣品と海賊版ってそもそも法益,性質の違うものを中ポチでつないで条約を結んでいこうと。現象面だけ見ると,パッケージ海賊版ではすごくよくわかりますが,今日のテーマでありますインターネットというのは,まさにここに模倣品が流れると。模倣品という範ちゅうに二次的著作物的,パロディー的なものを指すのであればわかるのですが,多分ここは特許とか商標の権利侵害のものを指しているとするならば,全然性質の違うものをまとめていることになる。条約を締結させ,侵害排除を狙おうとするならば,日本としては,侵害対象物の性質に合わせ,文化振興とか文化防衛とかという観点で海賊版の問題をとらえ,模倣品の場合には,日本のものづくりに直結する部分として訴求するといった目的や手段を考えるべき。こういう観点から,条約の今の進ちょく状況とか戦略とか,こういうものがあって締結に向けた交渉を行えているのかどうなのかについて,非常に興味があるので,お答えできる範囲で教えてください。

【高柳専門官】 模倣品・海賊版拡散防止条約,ACTAというふうに通称言われておりますけれども,先ほどワーキングの報告書の方でもございましたが,このような動きが出てきた背景といたしましては,知的財産に関する国際的な共通のルールを形成するということで,TRIPSができたわけでございますけれども,実際には,知的財産の保護のためのルールを作っても,実際の権利の執行面での実効性が伴わなければ,なかなか難しい面があるという認識に至ったことがあるものと思われます。そのため,権利執行面の実効性を高めるために,より一歩進んだ国際的なルールをつくっていくべきではないかということで,いわゆるTRIPSプラスと言われておりますけれども,このような知的財産全体の大きな流れの中で,権利執行の部分の協力体制を構築する目的で,ACTAの議論が出きたのかなというように理解しているところでございます。では具体的に中身はどうなのかというところになりますと,やはり権利執行という観点から,今までのTRIPSでは足りない部分は何なのかという点が重要になってくることとなります。そういう意味では,いわゆる刑事執行,民事手続等に関するルールですとか,あるいはとりわけ模倣品の方が極めて重要な問題というふうになっておりますけれども,国境措置での税関等での権限の在り方,さらには著作権等に関しましては,民事,刑事等も関係いたしますが,インターネット上の侵害に対してどういうことができるかというのが中心になってくるのかなというふうに考えております。
また,各国でそれぞれ権利執行の実務をやっているという形では,なかなか非効率な面もあるかと思いますので,より情報共有等を含めながら,効率的にやっていくためにどういうことができるのかというあたりも重要になってくると思われますので,このような点も中身の中に盛り込まれていくのかなというふうに考えております。

【久保田委員】 模倣品と海賊版の違い自身については,どう考えていますか。ネットでの侵害状況と,パッケージ海賊版を前提とした物の形をしていて,そこに商標が張りつけてあってとか,もちろんコンピューターソフトの著作物の特許等もかぶる部分もありますが,それはほとんどここ十数年見ていてクレームの範囲も狭いということで,権利保護の観点から,実態とはちょっと違うよなというような判断がされている中で,これからまさに情報材というのは非常に重要になってくる。この観点から,この模倣品・海賊版拡散防止条約締結に向けて,どのように議論されているのかということが聞きたいわけです。

【高柳専門官】 具体的な中身といたしまして,いわゆる模倣品の方の問題につきましては,商標の侵害の問題があるわけでございますけれども,当然のことながら,日本の商品が海外で輸出される場合には,それがいわゆる日本のある特定のブランドのもとで海外に出ていくわけでございますが,このような日本のブランドの商品が,模倣して使われているということになりますと,日本のブランドの信頼の問題というふうなことになりますし,また一方で,そのような模倣品で事故等が起きたということになれば,日本の信用問題というのは更に深く傷つくというふうな問題意識があるのではないかと思われます。
 一方で,著作権とかの方に関しましては,やはりインターネットでの著作物の流通というのが非常に活発になっている中で,権利執行という観点から,なかなか難しい面も出てきているということで,その部分をどう考えていくのかというあたりが,一つ大きな背景として問題意識にあるのかなというように考えておりまして,条約の中では,模倣品・海賊版という形になっているわけでありますけれども,そのアプローチというのは商標の問題と共通する部分もあれば,当然,共通しておらず,別々に考えなければならない部分もあると思いますので,全体の条約の中では,各々の観点から必要なものが盛り込まれていくような形で検討がされていくというようなことかなと理解しております。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 今の点にも関係しますが,知的財産戦略の関係では,参考資料4と5が今日配布されておりますけれども,そちらに関係された先生もいらっしゃって,そういう全体的な戦略的なことから御覧になって,今の検討課題について何か御意見,その他いただきたいんですが,いかがでしょうか。中村先生。

【中村委員】 様々なテーマがこれまでも様々な場で議論されてきておりますけれども,例えば,制度問題の調査会などの議論を,私も参加して聞いておりましても,制度面の対応と,それから実態面の対応を同時にダブルできちんと進めていかなければいけない。どちらか偏ってもなかなか解決をしていかないという,だんだんそういう状況にもなってきたかと思います。今後のこの場での検討課題の中でも,先ほど久保田委員がおっしゃったのと同じような私も感覚を持っておりまして,現状を踏まえますと,制度論議とあわせて実社会に作用する実行可能な施策にきちんと力を入れていくという,そういうタイミングにあるだろうと。ここで言いますと,2.エンフォースメントの2つ目などは,非常に重要な課題だと思っております。
 その際に,私は3点ぐらいポイントがあると思っておりまして,一つはマルチとバイの複層的なアプローチを具体的にどうしていくのか。それから,2つ目は国内の関係省庁間の連携というものをどう図っていくのか。3つ目は,産学官の連携,例えば産業界でいいますと,関係業界の海外における人材や組織をどう連携させていくのかとか,学界でいいますと,こうした問題にも対応できるように,コンテンツ学会を10月に立ち上げたんですけれども,そういった様々な組織をどのように協力させていくのかといったようなことも,手厚い施策として検討する必要があろうかというふうに思います。
 以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
石井委員,どうぞ。

【石井委員】 私も実効性確保に向けた対応というのが大変重要になってくるのではないかと思います。その前に,1番のWIPOの議論,特に放送機関保護に関する議論ですけれども,これはこの前のSCCRで出まして,アジア太平洋放送連合の総会がバリ島で11月にありましたけれども,そこでもこれから各国レベルにおいて政府への働きかけが大変重要である,あるい
はその実態面,侵害面での調査をして実態をきちんと踏まえることが必要であるという議論がなされたところです。WIPOの議論はこれはこれで大事なんですけれども,やはり時間がかかることだろうというふうに思います。
 一方で,侵害行為は日々進んでいるわけです。その中で,私どもNHKの場合,NHKオンデマンドが始まるということで,特に動画投稿サイトが問題であるということが言われまして,中国へこの春行きまして政府関係者とお話しすることもできたんですが,かなりそれぞれの国において法制度の整備が進んできているんじゃないかなという印象は受けております。例えば,中国の政府の方のお話でも,ちゃんと制度はできている,日本で言う著作権法ですとか,プロバイダ責任制限法に該当するような法律があるから,その手続にのっとってやってもらえれば削除されるということは言われるんですが,問題はその手続がなかなか煩雑であったり,そもそも放送番組特有かもしれませんけれども,アップロードされている動画の権利者が私どもであるということを一体どうやって証明するのかというような問題とか,そういうところがあります。
 そういうことでいきますと,いかに実効性を確保していくか,例えば簡便な手続でどれだけ違法なコンテンツが削除されるかというところを,二国間あるいは各国間で協議していくかということが重要ではないかなというふうに思います。中国の場合,かなり個別にお話をして,それぞれのプロバイダから削除していただけるようにはなってきましたけれども,今後こういうことは数限りなくあると思われますので,是非そういうところの検討,あるいは対策推進というものをやっていかなければならないんじゃないかなと思います。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 そのほか御意見ございますでしょうか。上原委員,どうぞ。

【上原委員】 今,いろいろとお話が出ていましたけれども,この中で,検討課題というふうに出されておりますが,一応ワーキングチームとしてお答えさせていただいた部分もございます。恐らくはこの2.の皆さんがおっしゃっている中の2つ目のポツ,デジタル化・ネットワーク化に関するエンフォースメントのところについては,ワーキングチームの報告の方では,各国の法制度,あるいは海賊版の状態の調査をする,まずはそこから入る必要があるのではないかということを申し上げております。したがいまして,ちょっとその調査をするという部分がこの課題の中では,表からは見えにくくなっておりますが,そうした必要性もちょっと御認識いただければと思います。つまり,今皆さんがおっしゃってらっしゃったことというのは,実はその前にやはり各国の状況を十分に知らないとできないことでありまして,私,昨日イギリスから帰ってきたところですが,イギリス,フランスそれぞれが例えばコンピューターソフトウェアの保護についても別々の規定を持っておりますし,フランスでは既にデータベースのsui genericsを,著作権法の中に持っているという状況もございますので,そうしたことを全体として踏まえた上でないとなかなか進められない。
 あるいは,法律があっても,どのようなエンフォースメントの仕方をしているのかということがわからないと,なかなか我が国としてどういうふうなことをしたらば効率的かということがわからないということがあろうかと思いますので,そうした観点もちょっと,表にちょっと見えにくいところがありますので,考えていただければというふうに思います。
 それともう一つは,新しく出てきている状況に対応することが必要ということで,新しい問題がどうしても出てまいりますが,視聴覚実演及び放送機関の保護のWIPO Internet Treatiesの完成というものにつきましては,これができないと恐らく国際的なハーモナイゼーションという動きなり,それに対する意欲というものが国際的に非常に後退する懸念がございますので,これに対する,具体的に何をするかということはともかくといたしまして,国際小委員会として重要な問題と考えるという部分のプライオリティーは落とさないようにお願いしたいというふうに思っております。
 以上です。

【道垣内主査】 これは,今おっしゃった中に検討の方法も入っていると思いますが,方法については次期の小委員会ができて決めることになると思います。場合によって,またワーキングチームをつくって,更に海外調査,もちろん日本で入手できる情報はすべて入手した上で,更に足りないところがあれば,法制度の調査と更に実態の調査もあり得ると思いますけれども,そういうことは検討方法としてあり得ると思います。そういう前提で御理解いただきたいと思います。
 池田委員,どうぞ。

【池田委員】 私も2.の2番目の課題が非常に重要ではないかと思っております。民間放送事業者も,NHKさんほどではございませんが,国内向けの放送番組などの配信を始めましたし,例えばアニメーション,日本での放送のすぐ後に海外で海外向けに配信するというビジネスを始めた社もございます。そういう中でいいますと,やはり動画投稿サイトにおける侵害行為というのが世界中ではびこっている現状は,早急に何とかせねばならないというふうには考えております。
 今,石井委員,それから上原委員からお話があって私も気づいたんですけれども,やはり各国でそれぞれの国において,それぞれの法制度がきちんとあるという,どのような対応をすれば違法なものが落ちるのかという,その辺のこともやはり早急に調査をしていただいて,我々にお示しいただければと思っております。
 その上でもやはりその手続が非常に煩雑でありますと,実効性はないということもございますので,その上で,更にどのような交渉をして,確実にエンフォースがきくというような道筋を見いだしていけたらと思っております。
 著作権の部分ではそのような対応があるかと思いますけれども,一方,放送事業者という立場でいいますと,やはり1.にあります放送条約の成立というものがなければ,海外においての権利行使というものはなかなか難しいかと思いますので,放送機関の保護に関する条約というものも非常に重要なものであり,一刻も早い成立を求めていくということはこの小委員会でも変わらないんだというふうに考えたいと思っております。

【道垣内主査】 もちろん条約の対応につきましては,日本から提案をするとか,あるいは,相手国からの提案を検討するというのは当然この小委員会として対応していくことであろうと思っております。
 どうぞ,高杉委員。

【高杉委員】 エンフォースメントの実効性の確保につきましては既に皆様から出たとおりですので,重ねて申し上げません。今,日本はコンテンツの海外展開を図っておるわけでございますけれども,日本のコンテンツが外国で侵害された場合の対応については,今までもいろいろな場で議論されており,これは引き続き行われるべきだと思っております。もう一つ,日本の著作物が外国で使われた場合に,きちんと使用料が戻ってくる仕組みになっているのかどうかという点を整理するべきじゃないかと私は思っております。
 制度的な面で言うと,例えば条約に加盟してるかどうかという問題もあると思うんですが,日本のコンテンツが今出ていっている先の国でどのように保護されているのか。例えばレコードについていうと隣接権条約に入っていないところが多いため,放送で使われても使用料が得られる状況にはなってないということがございます。
 それらの整理等,すなわち,法制度があるかどうか,法制度があったとしても実際使用料がきちんと管理団体によって徴収されているのかどうか,法制度が機能しているかどうかも一度整理をすべきではないかと思っております。
 以上でございます。

【道垣内主査】 久保田委員,どうぞ。

【久保田委員】 政府といいますか,委員会でお願いすることばかりじゃなくて,権利者団体の方も,それぞれ守っている著作物ごとに特性がありまして,ビジネス慣行も違うという観点からは,やはりそれぞれの権利者や権利保護団体がまず自分が現場に行って踏み込んで,実態調査をして,それについて実費程度のお金を政府につけてもらうというような発想に変わっていかなければならない。私はソフトウェアの権利保護団体ということから,アニメやゲームといったコンテンツや音楽の方も比較的ビジネスを理解して,海外での調査をしますが,テレビというような世界になると,これはまた隣接権の世界で難しい。またビジネスの慣行も違うということから,それぞれの団体が各国に飛んでいって現場を見てくると。それすらも金がないという場合には,これはやはり国際課の力をかりて,調査費用等を出してもらうようなことになろうかと思います。侵害状況,海外におけるビジネスの実態を踏まえて,そこから議論するべきだ。
 イタリアで我々は権利侵害対策を3年やりまして,2つの刑事事件を通じてイタリアに一石を投じた自負はあります。初めての事件の公判が始まり,当方の特別代理人が公判廷で発言をします。イタリアの裁判所はとんでもないところで,刑事手続の場合には1件5年ぐらいかかると。民事をやれば10年だと。そういう国で権利執行をやっていくというようなことも重要なポイントでありまして,そもそも弁護士さんの数は何人いるのかということや,その中でアニメやゲームソフトに精通している弁護士が何人いるのかというようなレベルの話なんですね。
 ですから,そのことに早く気がついて,それぞれの著作物ごとに著作権団体があるわけじゃないですが,自分の守備範囲については,自分の目で見て,権利執行や情報収集をやってみて,その情報を元に,政府が戦略が立てられるというふうにしない限り,効率かつ適切な戦略やその実行は,一歩も進まないんじゃないかというふうに思うわけです。
 これにつきましては,本当に権利者団体ってどこもみんな今運営が厳しく,それこそ海外に足場を持ってどうやってそういう実態調査をするのかと。それは私権だから,あなたたちがやるべきでしょと言われても,ほっておけばシュリンクしていくだけなんですね。では,どんな方法があるかと言えば,例えばそれは先ほど言いましたように,権利者団体の連携が必要。各諸国とうまくつながっている我々の大先輩の団体なんかたくさんありますから,そういうところと連携して関係性を深めていく。
 例えば,イタリアではSIAEという著作権保護団体のおかけで,ACCSがSIAEに準じる団体として訴訟が遂行されたために,ある種の信頼性があって,警察が動いた経緯や裁判になっても進ちょくしていくということがありました。多分ACCSが単独で行動しても,イタリア政府もイタリアの裁判所も相手にしてくれなかったんじゃないかと。この辺がやっぱり政府のお墨付きがあり,政府の傘下で,(我々,大臣から認可をもらって活動している団体ですから,)そこのところはすぐにでもやれる部分もあるわけですね。
 本当に実効性を担保するための緻密な情報を,上も下もつき合わせてやる時期が来ているのかなと,感想めいたことで恐縮ですが,意見として聞いていただきました。

【道垣内主査】 語り尽くせない豊富な御経験に基づく貴重な御意見,ありがとうございました。
 どうぞ,前田委員。

【前田委員】 私もやはり皆様の御意見のように,2.の2つ目のポツが非常に重要だと思います。ただ,この2つ目のポツで,「実効性の確保に資するような」というところが非常に重要で,その次の「各国との情報共有や連携の在り方」,もちろんこれも非常に重要なのですが,これに尽きるものではなくて,より実効性の確保に資するような具体的な方策が検討されるべきではないかと思います。
 そういう意味で,今後の検討課題に掲げられている事項の中で目玉がどれかというと,やはり2.ではないかと思います。2.のうちでも,特に2つ目のポツなんでしょうが,1つ目のポツ,先ほど山本委員からも御指摘がありましたように,これも重要な問題ですので,2.が目玉になるのではないかと思います。
 しかし,他方,1.や3.を検討課題から落としていいかというと,これもまた実際にWIPOで議論が進んでいることでございますので,検討課題から一切外すということもちょっと難しいのではないかというふうに思います。そうすると,結果的には,この検討課題で挙げられたことは,網羅的に課題として挙げざるを得ないけれども,その中で2.の特に2つ目のポツをハイライトといいますか,中心的な課題として掲げていくのがいいのではないかと思います。
 以上です。

【道垣内主査】 増山委員,どうぞ。

【増山委員】 増山です。
 国際的な対応と国際協力の在り方の視点について少しお話をしたいと思います。
 このワーキングチーム自体の報告というのは大変立派なもので,特に国際著作権法を巡る動向については,大変わかりやすく先進国の動向と途上国の動向という形で整理して,非常にわかりやすかったんですが,ただし,よくよく国際交渉の場の状況を見ますと,決してこのような単純な構図になっているわけではありません。
 例えば,検討課題の中の1.のところなんですけれども,視聴覚実演及び放送機関の保護に関して,2000年の外交会議が失敗した一番の理由は,むしろ先進国と途上国の対立ではなく,先進国同士の対立によるものでした。また,放送機関の保護に関しても,当初はやはりアメリカとEU側との対立が,つまりウェブキャスティングを含むかどうかという議論から始まりまして,だんだん途上国が入ってきて状況が複雑になってきたということです。
 確かに,3.の開発と知財問題の対応については,今WIPOに行っても,おっしゃるように先進国と途上国の対立が非常に目立っておりますけれども,しかし国際的な対応を考えるときには,むしろ我が国にとって何が得なのかを私は先に考えるべきだと思うんですね。例えば,文化多様性条約については,余りこの小委員会では紹介されておりませんけれども,実は先進国の中でも大変この文化多様性条約と強くリンクして,国内文化産業の育成を図ろうと,あるいは強化するというところに力を入れる国もあります。例えば,フランス,カナダ,つまり国内映画産業の保護をするためには,この文化多様性条約をむしろ提唱した形で,つくったのは先進国側だったと思うんです。彼らは途上国を味方につけた形で,自分の国にとって有利に展開していったいきさつもありますので,結局私が言いたいことは,こういった対応を検討するときには,単純に先進国と途上国とで分けて考えると,重要な問題を見落としてしまうという危険性がありますので,やはり今後この小委員会で議論をするときには,我が国にとって有利な方向へ持っていきたいときには,先進国とか途上国とか,そういう分け方ではなくて,まさに実態あるいはずばり各々の問題,それぞれの持っている,抱えている問題の内容を見極めながら,やはり検討していく必要があるんじゃないかと思います。
 せっかく文化多様性条約があるわけですから,どういう形で作成・採択され,どういう状況になっているのかを是非来年のこの委員会で,文化多様性条約との関係についても,多少でも,紹介程度でも結構ですので,取り上げていただければと思います。
 以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 そのほかいかがですか。山本委員からは,先ほど,この前の議題のときに,2の最初の方のポツについて御発言がございましたが,何かつけ加えておっしゃることはございますでしょうか。

【山本委員】 準拠法や国際裁判管轄の点について,先ほど申し上げたところですが,この問題を優先順位に上げた方がいいと思いますのは,例えば視聴覚実演であるとか,放送条約の保護の話は,もう古いというか昔からの話なんですが,この準拠法,国際裁判管轄の問題はこれからの問題だと。その国際関係の中で,日本がどちらかというと,受け身じゃなしに,先手をとるまでいかなくても,ちゃんとついていって,積極的な発言をするということを可能な限りやっていくべきだろうと。そのためには,新しい問題である準拠法や裁判管轄の問題に決して遅れることなく,恐らくアメリカやEUの方も国益ということも考えて,その観点から発想してくると思いますので,日本としては,日本の国益のためにはどういうのがいいのか,法理論的だけじゃなしに,国益という観点からこの問題について検討を重ねていく必要があると思います。
 そういう意味で,単純に準拠法や国際裁判管轄であれば,研究者に任せておけばいいという問題になりそうなんですけれども,必ずしもそうじゃない。こういう場で検討するべき問題だという認識を私はしております。

【道垣内主査】 2.の2番目の課題の前提にも準拠法,裁判管轄の話はあるかもしれませんので,決して排除するわけではございませんけれども,どれかと言うと2番目の項目の方が重要だという御意見が特に実際の実務に携わっている方から多かったように思います。そして,先ほど前田委員がおっしゃった点が重要かと思うんですが,各国との情報共有や連携の在り方というふうに限定する必要があるのかどうか。先ほど,ほかの方々からも戦略的に考えた方がいいということからしますと,この「ような」から「在り方」までのところを「方策」か何かに変えて,もう少し広くいろいろなことが入るような形でドラフトしてはどうかなと思います。この点,いかがでしょうか。もちろん,各国との情報共有や連携は入るわけですが,様々な方策があり得ると思いますので。
 それから,もう一つ,質問ですが,デジタル化・ネットワーク化による,という限定を付けるか否かという点ですが,これはデッド・コピーができてしまうという点で特に問題であり,この文言をとってしまうと余りに漠然とし過ぎますので,これはそのままにしておくということでいいかなと私は思いますが,いかがですか。
 そうすると,2の項目のタイトルですが,このままですと法制問題小委員会と重複しているような印象となりますので,「国境を越えた」というのを冒頭に入れて,「国境を越えたエンフォースメントの実効性確保に向けた対応」ということにしておくと押し出しがきくかなと思います。そういう若干の修正をした上で,2.を特に優先課題としてはどうかということをこの小委員会の意見として報告書に入れるということでよろしゅうございますでしょうか。
 それでは,そのようなこととともに,他の点についても,細かく御相談するということは難しゅうございますので,文言修正は御一任いただき,この小委員会での審議結果を踏まえまして,1月26日に開催される著作権分科会にこの審議結果を私から報告するということにさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 ありがとうございます。
 そのほか,特に御意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 特にございませんようでしたら,本日の会議はここまでにしたいと思います。
 先ほど申しましたように,本日が今期の小委員会の最後の会合でございますので,事務局から一言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【関審議官】 それでは,最後に一言御礼を申し上げさせていただきます。
 今期の国際小委員会におかれましては,冒頭に御報告をいただきましたけれども,ワーキングチームにおきまして,国際ルール形成検討ワーキングチームにおきまして,非常に積極的に御検討をいただいたわけでございます。近年の国際的な状況,すなわち国際的な合意形成に今まで以上に微妙な対応が求められるようになってきたというこの状況を踏まえまして,著作権を巡る国際動向と今後の検討課題ということにつきまして,整理をいただいたわけでございます。
 上原委員を始めこのワーキングチームに御参加いただきました先生方に対して,改めまして御礼申し上げさせていただきたいと存じます。ありがとうございました。
 それからまた,本日のこの小委員会におきましては,ワーキングチームの報告を踏まえて,来期以降の検討課題について御審議をいただいたわけでございます。来期におきましては,本日頂きました御意見も踏まえまして,引き続き検討を賜りたいと思っておりますので,是非よろしく御指導賜りたいと思っております。
 その意味におきまして,本日は大変率直な御意見,積極的な御意見を多々いただいたわけでございます。それぞれ皆様方のお立場,団体の代表,あるいは実務,あるいは研究というお立場,いろいろおありでございますけれども,それぞれのお立場から大変積極的な御意見を頂いたと私ども考えておりますので,是非次期の小委員会におきましては,私どもといたしましても,もう少し精力的に審議をお願いできればというふうに考えてございますので,是非改めましてよろしくお願い申し上げたいというふうに考えております。
 最後になりましたけれども,改めまして先生方におかれましては,お忙しい中,御尽力を頂きましたことに御礼を申し上げまして,簡単でございますけれども,御挨拶にさせていただきます。どうもありがとうございました。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 私からも,委員の皆様,御協力いただきまして,ありがとうございました。
 それでは,ここで終わりにします。

―― 了 ――

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