議事録

文化審議会著作権分科会
国際小委員会(第1回)議事録

日時:
平成23年7月8日(金)
10:00~12:00
場所:
中央合同庁舎第7号館西館(金融庁)
共用会議室13階1320
  1. 開会
  2. 委員及び出席者紹介
  3. 議事
    1. (1)主査の選任等について
    2. (2)今期の国際小委員会の進め方について
    3. (3)WIPO等における最近の動向について
    4. (4)アジア著作権会議等の報告
    5. (5)その他
  4. 閉会

配布資料

議事内容

○10:00開会

○本小委員会の主査の選任が行われ,道垣内委員が主査に決定した。
○主査代理について,道垣内主査より大楽委員が主査代理に指名された。
以上については「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)における1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【吉田文化庁次長】 今回の会合は,今期の国際小委員会の第1回目ということでございます。この間,事務局の方にもいろいろと異動がございまして,また新しいメンバーで,先生方の審議をサポートさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
 皆様も御承知おきのとおり,インターネットや,インターネットにかかわる様々な情報機器の発達,普及ということで,著作権の問題,特に国際的な側面についても,様々な課題が今や起こっているところでございます。今期は前年に引き続きまして,国際的な海賊行為への対処方策について,また御議論いただきますけれども,あわせまして,この後,いろいろと御報告をさせていただきますけれども,WIPOをはじめとするマルチな場でのいろいろな動きもございますし,また二国間での動きなどもいろいろとございますので,そういったあたりをお聞きいただきまして,今後どのような形で対処していけばいいのかということについて,また御意見を賜りたいと思います。今日も大変暑い中で,座っていても汗が出るぐらいでございますけれども,これから今期の報告に向けまして,どうぞよろしくお願いいたします。

【道垣内主査】 どうもありがとうございます。
 こちらこそ,よろしくお願いします。
 では,事務局から,この小委員会の位置づけといいますか設置の趣旨あるいは設置されたときに与えられたミッション等について御説明いただけますでしょうか。

【堀国際著作権専門官】 事務局から,設置の趣旨や所掌事務につきまして簡単に説明させていただきます。配付資料の資料2をごらんいただけますでしょうか。
 資料2は「小委員会の設置について」という資料でございます。今年の4月18日の文化審議会著作権分科会で決定された内容でございます。文化審議会著作権分科会の運営規則に基づきまして,2つの委員会が設置されてございます。法制問題小委員会,国際小委員会,この2つが設置されておりまして,各小委員会の審議事項といたしまして,2番にございますが,国際小委員会は国際的ルールづくりのへの参画の在り方に関することにつきまして審議するということになってございます。各小委員会の構成といたしましては,著作権分科会長が指名する委員,臨時委員,専門委員によりまして構成するということとなっておりまして,分科会長は会議に出席して発言していただくこともできるようになってございます。それから4ですが,小委員会の審議の結果は分科会の議を経て公表するものとなってございます。以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございます。
 この小委員会の所掌事項は,国際的ルールづくりへの参画の在り方に関することという一般的な表現で定められております。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,議題の2,今期の国際小委員会の進め方についてでございます。まず,資料に基づきまして御説明いただけますでしょうか。

【佐藤国際課長】 お手元の資料3「今期(第11期)の国際小委員会の進め方について(案)」をごらんいただきたいと思います。9期の国際小委員会から引き続き検討することとなった4つの項目のうち,特にインターネットによる国境を越えた海賊版に対する対応の在り方について特に議論を行いまして,第10期の小委員会の報告書概要は,委員の先生方御存じのとおり,下記のとおりまとめられました。参考までに載せておりますが,[1]としましてはコンテンツ業界の著作権侵害の実態と課題ということで,下記にあるような記述がなされています。それから各国・地域における取組ということで,コンテンツ業界からのヒアリングにおいてインターネット上の著作権侵害への対策として,下記のような問題意識,関心,要望等,幅広く出されておりまして,政府として今後とも諸外国の動向を注視していくというふうにまとめられています。
 それからページ2になりますが,WIPOの動向が視聴覚実演,放送機関の保護,権利制限,例外,フォークロアの保護の記述がこのような形でございまして,二国間協議の状況ということで,特に政府レベルの協議の重要性にかんがみて二国間の枠組みの位置づけを更に強化・拡大させるというようなことが報告書でうたわれているところでございます。
 今期,検討の進め方でございますが,デジタル化・ネットワーク化の進展に伴いまして,コンテンツがインタ-ネットを介して,いろいろ大規模な侵害されている状況が深刻で,いろいろなところで,様々な取組,検討がなされているところでございます。知財計画2011,これは4ページに参考までつけておりますが,グローバルな著作権侵害への対応を強化するということで,状況認識がこのように,侵害対策の必要性について書かれておりまして,具体の施策例ということで進めていくべき施策が一応,計画上,載せられているところでございます。
 また,その下にありますように,G8サミットの首脳宣言の中でも各国におけるインターネット上の知財保護の取組の重要性が,この5月に開かれましたドーヴィル・サミット首脳宣言に著作権,知財一般でございますけれども,特に仮訳にありますように,著作権等についての重要性が国際的にもうたわれているような状況でございます。
 このような中で今期11期におきましては,このような認識を持ちながら,昨年に引き続き特にインターネットによる国境を越えた海賊版対策ということで,昨年は各企業さんの取組状況とか実態のお話をお聞きしました。そのような中で,今期は特に,今後ちょっとまたいろいろな先生方の御意見を頂きながら,関係団体からの,特に企業というよりは,関係団体,権利者団体の最近の直近の海外における海賊版被害の状況の把握,あるいは現在行っている対策,それから海外の関係団体との連携の取組の状況とか,あとは文化庁,政府等への要望。これまでの施策に対する評価とか,二国間協議対象国。これは海外における,特に今,中国が中心になっているかと思いますが,ビジネス展開によっては,新たな対象国としてどう拡充していっていいかというようなことも御示唆いただけるかなと思いますし,そういうような情報を,是非2回目以降ヒアリングをさせていただくような取組にしまして,二国間協議等の枠組みの強化をはかっていくことについて検討したらどうかというのが1点ございます。
 それから3ページに書いてありますように,国際的な対応ということ等,国際的議論にかかわる事項,WIPOもございますし,今回ちょっと資料がお手元にございませんが,EUの方でブループリントみたいなものが発出されたり,WIPOでのノルムセッティング以外の動きとかを踏まえた中で,どういうことを今後検討したらいいかとかいう,何かございましたら,また意見等出していただければなと思っております。簡単でございますが,以上でございます。

【道垣内主査】 はい,ありがとうございました。
 今の資料の2ページから3ページにかけての2,3,4という数字がついた項目を取り上げてはどうかということです。2,3,4というのは,1ページの上の背景の最初のところに書いてある1から4のうちの2から4ということで,国際裁判管轄と準拠法に関する国際ルールの形成の在り方については,第9期でしたでしょうか,一応の日本としての議論の中間取りまとめといいますか,一本化されたわけではございませんが,国際的対応のための資料は相当,密な議論をしてつくりましたので,そこはしばらくおくとして,2から4について取り上げてはどうかということでございます。2についてはヒアリングをしてはどうかというのが,たたき台の案でございます。これにつきまして何か御意見,ございますでしょうか。
 ヒアリングをするといっても,どういう人たちに何について伺うかということをはっきりさせる必要があります。取りまとめが必要なので,ばらばらに言われても困りますから。ですので,こういう点を調査してはどうかと,あるいはこういう人たちに聞いてはどうかということも含めて,何か御意見あれば,この場でおっしゃっていただければ,それを考慮に入れて具体的なスケジュールを組んでいくということになると思いますので,是非よろしくお願いします。いかがでしょうか。事務局に原案はございますでしょうか。

【佐藤国際課長】 まずは権利者団体から取組状況などについて事務的にお聞きしながら,今後の進め方を考えたいと思います。

【道垣内主査】 どこに伺っているかということも。

【佐藤国際課長】 放送機関であるNHKと民放連,日本映像ソフト協会から事務的なヒアリングを始めました。

【道垣内主査】 要するに日本として,海賊版,海賊行為の被害を受けているところで,意見を聞いておいた方がいいというところですね。日本としての対応を考えるんだったら,もちろん国が何でもできるわけじゃないので,国としてできる範囲で環境をつくったり,あるいはルールづくりの方向を模索したいということかと思いますけれども,何か御意見,ございませんでしょうか。せっかくの場ですので,有効に使っていただければと思います。いかがでしょう。

【畑委員】 畑でございます。ヒアリングということですが,先ほど放送機関様というお話が出ましたが,音楽についても,いわゆる動画投稿サイトについて海外における侵害実態がございます。そういった観点から,我々日本レコード協会あるいはほかの音楽関係団体もヒアリング対象に加えていただければと思います。

【道垣内主査】 小原さんのところも同じようなことでしょうか。

【小原委員】 ヒアリングといいますのは,つまり,我々JASRAC,私はJASRACですけれども,JASRACに対するヒアリングという理解でよろしいのでしょうか。

【道垣内主査】 直接かあるいは,幅広に様々な。

【小原委員】 音楽の著作権に関して言えばということでよろしいですね。

【道垣内主査】 その業界はどうでしょうか。

【小原委員】 音楽を入れるということについては,私は異議はございません。ただ,やはり音楽著作権の場合は,JASRACとなりますと,侵害状況も含めて,それがヒアリングの中心になろうかと思いますが,なかなか把握をし切ない状況にあります。これは,音楽著作権の場合は各国に管理団体がありまして,そことの相互管理契約の中で管理を全部一任する,つまりそれぞれのレパートリーを相互に管理しあうという状況で,相手国の管理団体に管理を任せている状況にあることによります。したがって,侵害状況については一応把握はしておりますけれども,より詳細なということになれば,その団体の方から情報を得て,それをまとめてレポートするというようなことになろうかと思います。したがって,ちょっと違う観点からということであれば結構ですし,音楽関係につきましても,いろんな形の中でヒアリングの中に含めていくということは,むしろ必要であり,全然問題ないんじゃないかと考えています。

【道垣内主査】 畑委員,どうぞ。

【畑委員】 はい。度々ですみません。
 日本のコンテンツ,日本の音楽がどのような形で海外において侵害を受けているか,そこにつきましては小原委員がおっしゃったように,網羅的に把握するのは難しいところでございますが,あくまでも日本において我々音楽関係団体が把握しているレベルで,どういう対策を講じるかという観点です。もう一つは,申し訳ありませんが私は今年からの参加なので昨年どういう議論が行われたか,つぶさには把握しておりませんが,スリーストライクの話も昨年出ておるものと把握しております。その中で,アメリカ現地で7日に発表されたかと思いますが,民間レベルで,アメリカの映画業界団体,レコード業界団体と大手ISPの間でスリーストライクの導入合意ということが発表されていると思います。そのような事例とか,イギリスにおける進展,また,情報によりますとアイルランドのスリーストライクでは一定量の誤爆ということも起こっていると聞いてますので,そういった海外における対策の動向把握ということも,日本の関係団体を通じての情報収集ということかもしれませんが,1つのヒアリング項目に入れてはいかがかと思います。

【道垣内主査】 はい,ありがとうございます。
 映像の方でも,こういうスリーストライク制度の導入のようなものは効果的だと考えられているのでしょうか。もし可能であれば,ちょっと御紹介いただけましたら。

【後藤委員】 スリーストライクは議論されてますけれども,ただ実態として,そうなった際,日本のコンテンツホルダーがどこまで運用面で対処するのかということまではまだ深掘りしていないのかなと。映像に関してはですね。現況,映像の場合はワンソース・マルチユースで,ウインドービジネスで展開してますんで,その範囲での被害の大きさを考えますと,それと,その運用をどうするかということを考えますと,まだそこまで深い議論には至ってないのかなという気がしております。スリーストライクに関してはですね。以上です。

【道垣内主査】 被害は相当あるだろうと思います。正確にはわからないとは思いますが,いかがでしょうか。

【後藤委員】 日本の一例に映画をとれば興行して数か月後にパッケージになって,数か月後に放送とかその他で売るというワンソース・マルチユースなわけですね。幸い映画盗撮防止法をおつくりいただきましたものですから,非常にこれが,映画関係者,映連さんや,興行組合等と連携がとれまして,映画盗撮というのは日本ではないんですね,幸い。ゼロなんです。ゼロ。これはなぜわかるかというと,P2P,Winny,Share等でアップされて,それが流通して初めて気づくというケースが多いんですね。日本の場合はそれがここ数年,映連さんと映像ソフト協会で24時間365日,P2Pをネットワーク監視してますけれども,ここ数年一つも上がっていません。上がったのはアメリカで公開した,アメリカで先行プレミアとかやったやつがアメリカで撮られちゃってワールドワイドで回っちゃったという例はあるんですけれども。そうなりますと,日本のところでいうと,最初の部分の大きなダメージというのはさほどないと認識してまして,パッケージになった際に,それがリッピングされて出てしまうということはありますけれども,そうなった際に映像全体,業界としてどこまでスリーストライク,今やっと映画盗撮防止法をうまく運用できてますんで,そっちの方にまだシフトしてますんで,それをどうやって動かしていくかという段階ですんで,スリーストライクまでには議論が詰まってないというのが実情でございます。

【畑委員】 よろしいですか。

【道垣内主査】 どうぞ。畑委員。

【畑委員】 スリーストライクの日本における運用可能性あるいはその効果というのは,我々日本レコード協会でも,特に精査をしているとか,それが非常に有効な策であると認識しているというわけではございません。あくまでも海外における対策の動向把握ということが主眼でございます。

【道垣内主査】 もちろん,そのスリーストライクを日本で導入するかどうかという話になると,これは法制問題の小委員会の方のお話になるでしょうから,海外の運用を見て,調査して,それが効果的であるかどうか見極め,日本に導入した場合にどういう問題点があり得るか程度までは,こちらでやってもいいとしても,そこから先は管轄が違うかなと思います。放送の方は,事務局として意見聴取の対象としてお考えのようですけれども。

【石井委員】 一言感想を言わせていただければ,なかなか放送の場合は被害額というものがわからない。有料放送ではありませんので,これがどれだけ損害があるかとか,算定しにくいんですけれども,やはり海賊版対策が問題になる裏には,これでなかなか正規流通ができないという問題があろうかと思うんです。一番それが大きいのではないかと思います。いろいろな方策も,海賊版対策というのは,私どもとしてはかなり進んできている。CODA,経産省,それから総務省さんもいろいろな場をつくってらっしゃいます。ヒアリングと同時に,それをもとにして,じゃあ一体どうしていくのか,特にそれがコンテンツ流通にどう生かされていくのかというところが,これからますます重要になってくるのではないかなと思います。映画の方は今,盗撮の話がありましたけれども,放送の方は相変わらず,簡単にエアチェックできて,それがP2Pにしろ,動画サイトにしろ,投稿されているという状況は変わりません。7月24日以降,アナログ放送停波でかなり改善されるかなという期待もあるんですけれども,一方でいろいろと回避する装置も出てきているようでありますので,そういうところも見ながら,いろいろと考えていかなければならないと思っています。

【道垣内主査】 私がわかんないんですが,そのデジタルになるとどうしてそのあたりが減りそうなんでしょうか。

【石井委員】 運用上は,デジタル放送は,コピーに関しては,いわゆるダビング10というルールがありまして,ハードディスクからDVDに最大10枚はコピーできるという限定と,そこから孫コピーができないということになっているんです。それともう一つは,チューナーからデジタル信号のままでのネット出力禁止ということがルールづくりされております。しかし世の中いろいろなツールも出ているようですので,必ずしもそうもいかないかなというところは懸念はされるところなんです。

【道垣内主査】 ありがとうございます。そのほか,いかがですか。
 お伺いする内容としては,実態はどうでしょうということと,どういうふうに対策をとられているのか,その過程でどういう問題が起きているのか,その中で更に国として何かできることはあるでしょうかと,そんなところでよろしいんでしょうか。
 ターゲットというか,どこかの国が相当多いということがわかっているのであれば,二か国間の交渉の対象国として考えるということになるのかもしれないので,実態の中では,もし国別のことがわかれば,そういうこともいかがかと思います。そんなところでよろしゅうございますでしょうか。
 はい,では,3,4の方は,いかがですか。これはWIPOの動きがいろいろあるようでございますので,それに対応しつつ,またその二か国間その他,ほかのフォーラムもうまく使って国際的なルールづくりを進めていくということでしょうか。(3)はわりと一般的なことで,(4)は途上国との関係がテーマになっております。これは,状況に対応しつつ議論していくということでよろしゅうございますか。
 スケジュールについては,第2回については,相手先もあることですし,それから皆さんの御都合もあることなので,まだ決まっておりません。大体いつごろをお考えでしょうか。

【佐藤国際課長】 今ぐらい。そうですね。秋,11月か12月か,ちょっとわからないですけれども,後半ぐらいで1回ほどと,あと年明けぐらいを想定しております。

【道垣内主査】 あとは皆さんの御都合もあると思いますので,そのようなスケジュールでということで,よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,頂いた御意見を踏まえて,具体的にどのようにしていくかということにつき,これは主査に御一任いただくということでよろしゅうございますでしょうか。具体的なところは。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 はい,ありがとうございます。
 それでは議題の3に入りたいと思います。3は,WIPO等における最近の動向についてでございまして,これも事務局からまず御説明いただいて,それから委員の意見を伺うということにしたいと思います。ではお願いいたします。

【佐藤国際課長】 はい。お手元の資料4をごらんいただきたいと思います。「WIPO等における最近の動向について」ということでございます。
 一つはWIPO関係ということで,まず(1)でございますが,著作権等常設委員会の非公式会合,この4月に行われておりまして,視聴覚的実演の保護と,(イ)の方にある放送機関の保護ということで,昨年の常設委員会での結論の中で組まれた非公式会合でございます。AV条約の方につきましては,12条についてブラジル・インド・米・メキシコから提案がなされております概要が説明されて,各国から既に合意されている19条の議論をリオープンしないということと,12条に関して集中するべきだというようなことが出されまして,インド・アメリカ・メキシコから統合案の検討を表明したというような状況でした。放送機関の方につきましては,同じ2日間に行われたんですけれども,スイスの方が議長となりまして,特に各国から提案が出されている南アフリカ案,カナダ案,日本案について質疑応答がなされたということでございます。日本からは放送の重要性と日本のコメントを出しております。それはSCCR/15/2/revをベースに,少なくとも伝統的な放送機関の保護に関する中身の議論を進めるべきだという,これまでの,従来の方針,スタンスを発言いたしました。この非公式の会合の中では,放送条約の3要素,目的,対象,権利について,いろいろ有識者から議論,意見がございまして,その中では伝統的機関が行う伝統的放送のみならず,伝統的放送機関がインターネットで放送する場合も含めてするべきだという意見も多く見られたという現状でございました。
 結論としては,この非公式会合の概要,議論を整理するのを改めて文書にし,6月のSCCRに臨むということになっております。
 それから2ページでございます。遺伝資源等政府間委員会(IGC)は5月の頭に開かれておりまして,伝統的文化表現についてでございます。基本的には,一応,遺伝資源と伝統的知識と伝統的文化表現,3議題ありますが,この5月の会合におきましては,伝統的文化表現が結構進んでおりますので,特に伝統的知識の方のドラフティングの会合を進めるということで,そちらの方が全体的に,おくれているところを進めていくというようなことで,基本的に伝統的資源につきましては全体会合での議論はなされず,非公式ドラフティンググループで,作業を半日ぐらい行った程度で終わったというふうになっております。その非公式のドラフティングの成果物を,次回,再来週のIGCの作業文書にすることでコンセンサスが得られたというような状況でございます。
 それから第22回著作権等常設委員会,(3)になりますが,これは6月に開かれまして。議題,今回は権利制限と例外の関係で,特に視聴覚障害者の関係をプラス3日特別会合をやるということが決まっておりまして,全体で10日間ぐらい行われました。それで視聴覚障害者の議題につきましては,これまで米国・EU・中南米から,あと南アフリカの4提案が出されておりまして,途上国は条約で,法的拘束力のあるもの,EUは共同勧告,米国はコンセンサスインストルメントという法的拘束力がない文書が提案されていまして,その共同で新たな案を提案するという作業が行われておりました。アフリカグループが折り合いつかず,EU・中南米・アメリカの共同提案が条文ごと,条文形式,ただ文書の位置づけは法的拘束力があるかどうかが不明のまま,一応共同提案がなされ,それについて質疑応答がなされ,オーストラリアやロシア等共同提案国がかかわり計12か国及びEUによる共同提案作業文書がまとめられたのが今回の状況でございました。特にこの作業文書につきましては,中南米は法的拘束力のある条約,米・EU・先進国は拘束力のない勧告という形で,それぞれ思いをもち議論が行われました。今後,この文書の取扱いについてどう進めていくかというのが,大きな問題点,課題点,争点になってくるかと思っております。
 それから視聴覚的実演の保護について。先ほどの非公式会合の後を受けまして,権利移転条項について,今回SCCR前に米・インド・メキシコが共同提案を行うことになっておりましたが,事前に提案策定は至らなかったんですが,SCCR期間中に提案がなされました。その後,ブラジル・EU等の非公式会合が行われまして,基本的にブラジル・EU等も合意した共同提案という形で外交会議を開催するためのリコメンデーションを総会に対して行うことになりました。「結論文書の内容」というところを見ていただくと,委員会は,暫定合意済みの19か条,22回SCCRで合意した12条の新提案,1条,2条,15条に関する追加的な合意声明で条文を外交会議に向けた最終的なものとするとの理解のもと,総会に,2000年に中断された外交会議の再開を勧告することとされました。
 それから放送条約の関係でございますが,4月の非公式会合に基づいて,非公式会合の議長が作成した今後の検討のためのエレメントを盛り込んだ資料が提出されました。伝統的な放送事業者が行うインターネット放送を含めるかどうかといった点について各国のそれぞれの主張がなされ,結局,サブスタンスについて具体的な議論が深まらないまま,今後の進め方,ワークプログラムを一応決めるということで,とにかく先に作業を進める姿勢が示されました。これは結語の内容の4ページにありますように,上から2番目になります,SCCRでは2007年の総会のマンデートに基づいてシグナルベースでトラディショナル・センスで放送機関及び有線放送機関の保護に関して条約策定できるのかなということでワークプランを行うということで,次回の委員会では非公式コンサルテーションを2日間,一応やるということです。この下に書いてありますように,そのような形になっております。基本的には条約を進めていこうというのがあるのですけれども,そこまでのアプローチについて差があるという状況になっております。
 それからAPEC関係でございますが,知的財産専門家会合,これは3月に開かれております。これは御存じのように知財に関する政府関係者の出席で,セミナーの提案とか各国の施策等の情報交換等を実施したということで,何か決めたというものではございませんが,当方からも参加いたしております。米国から,特に違法な映画録画に対する効果的な処理の最新情報に関して発表がありました。日本からは先ほど後藤委員の言いました盗撮防止法の効果みたいなのを発言したという状況になっております。その他,参加国の関心事項について紹介がなされたという形で一応終わっております。
 最近の動向は以上でございます。あとは今後,再来週にはIGCの遺伝資源の関係の会議がございまして,9月の総会に向けて,常設委員会でございませんので,次期委員会のマンデートをどうするかというのが議論なされるかなというように思っております。以上でございます。

【道垣内主査】 はい,ありがとうございました。
 ただいまの御説明いただいた最近の動向につきまして,何かご質問,御意見ございますでしょうか。
 前田委員,どうぞ。

【前田委員】 視聴覚的実演の保護に関する議論で,新たに提案された12条の新提案というのは,どういった内容のものでしょうか。

【佐藤国際課長】 資料に12条の新提案の英文をつけております。一番最後の裏面に記載されているものが共同提案という形で,今回テキストベースにするということでコンセンサスを得られた条文案になっております。
 内容としては,第1項は,「締約国は国内法において,国内法に定められたように,交わされた実演家と当該視聴覚的固定物の製作者間の契約にほかの定めがない限り,一度実演家が自らの実演を視聴覚的固定物に固定することに同意した場合には,本条約第7条(複製権)から第11条(公衆送信権)に規定する排他的許諾権は当該視聴覚的固定物の製作者(プロデューサー)が有し若しくは行使し又は当該製作者に移転するものとすることを規定することができる。」ということです。第2項は,「締約国は,自らの国内法の下で製作された視聴覚的固定物に関し,そうした(第1項に規定する)同意や契約は,書面により,かつ契約の両当事者又は適正な代理人によって署名されることを要するものとすることができる。」ということです。第3項は,「上記の排他的許諾権の移転とはかかわりなく,国内法又は個別的,集合的若しくはその他の契約等をもって,第10条(利用可能化権)及び第11条(公衆送信権)を含む本条約により定められた実演のいかなる利用についても,ロイヤリティ(上演料)又は同等の報酬を受け取る権利を実演家に与えることを定めることができる。」ということです。いずれも「may」という形の規定になっております。

【道垣内主査】 従来の経緯については,私も完全には記憶しておりませんけれども,この権利の移転についてもめて,2000年の外交会議はうまくいかなかったということですね。

【佐藤国際課長】 そうですね。それで今回,特に当方からは,この提案については,現行法との整合性の関係から検討する必要があるので,日本からは新提案12条は条約の下で許容されるほかのアレンジメントを禁ずるものではないと解するとしている。日本法の現状の取扱いは排除されていないという理解のもと全体のプロセスはブロックしないという発言をしました。米国・EUから,その日本の理解と同様であるという支持発言がありました。

【道垣内主査】 どうぞ,前田委員。

【前田委員】 確認ですが,この3つの文章がございますけれども,3つともこれは「may」であるということで,各国が国内法でこの3つのことを定めてもいい……。

【佐藤国際課長】 そういう理解です。

【前田委員】 我が国は,我が国の法律に照らすと1番目のものを定めているとという理解になるように思うんですが。

【佐藤国際課長】 その点については,このアレンジ以外でもいいですよねという確認をしてきたということです。

【前田委員】 一番上の文章は,日本の現在の条文と同じことのようにも思いますけれども,これは違うんでしょうか。

【佐藤国際課長】 そこを含めてです。

【道垣内主査】 上野委員どうぞ。

【上野委員】 長年の懸案であったAV条約がこういう形でまとまってきていることは大変結構なことであり,関係者の御努力のたま物だろうと思います。ただ,この共同提案の中で,今,前田先生が御指摘になった点につきましては,多分これから検討される課題なのだろうとは思いますけれども,若干懸念しております。
 と申しますのも,この共同提案によりますと,実演家がその実演を視聴覚的固定物に固定することに同意した場合について,その排他的許諾権が製作者に移転するか,製作者によって行使されるか,あるいは製作者に帰属するものと定めることができるということになるわけですけれども,我が国著作権法上におきましては,例えば,実演家の録音・録画権は,許諾を得て映画の著作物に録音・録画された実演については「適用しない」という規定ぶりになっております。こうした適用除外というのは,権利がいわば消えるというか,消尽するというか,なくなってしまうということになりますので,先ほどの共同提案がいうような,製作者に権利が移転するわけでも帰属するわけでも行使されるわけでもないということになると思います。
 しかし,そうであるとしても,共同提案の冒頭が「may」となっているので,日本法は,現状のままでいけるのかもしれない,という理解でよろしいでしょうか。

【佐藤国際課長】 現状でいけるのではないかということを確認したということです。

【上野委員】 ごめんなさい。現状でいけるという根拠は,「may」のところでしょうか。

【佐藤国際課長】 「may」及び「the contracting parties」でなく「a contracting party」,ということも含めてです。

【上野委員】 ただ,余りお聞きするといけないのかもしれないのですけれども,そうなった場合,実演家に権利を与えるという前提は満たされているということになるのでしょうか。つまり,この12条の前に,実演家に権利を与えるという規定があるわけですよね。加盟国はまずそれを満たした上で,新12条案のような規定を設けることができる,という構造になっていると思うのですけれども。現行法だと……。

【佐藤国際課長】 そういうのを含めてということです。

【上野委員】 そうですか,失礼しました。

【道垣内主査】 よくわからないんですが,含めてというのは,もし何でもいいというのだったら条文を置く必要もないということですよね。何をやってもよろしいという条文だと読むということですか。ちょっと,その趣旨がわからないんですけれども。

【増山委員】 よろしいですか。

【道垣内主査】 どうぞ。

【増山委員】 増山です。
 この条文なんですけれども,7条から11条は,要は,実演家にその視聴覚実演に関していろいろな排他的権利を与えると規程しているが,12条はこれら排他的権利の移転のルールに関する条文です。2000年当時アメリカ国内では,映画製作者を中心に,やはり製作者への権利の移転がないと,映画の流通に関しては非常に不安定な状況が生じてくるとの意見が主流となって,何としても条約上の義務として実演家の権利を契約に基づき,要は反対の取極めがなければ,映画製作者に推定譲渡することを明確に書き込むべきだという主張。ところがそれで合意できなかったため,条約づくりはできなかった。その後アメリカ国内,いろいろな状況の変化がありまして,いわゆる海賊版の問題が非常に深刻となったため,映画製作者側と実演家側が,非常に頻繁に話合いが行われまして,実演家への権利付与につきましては反対しない,むしろ一緒に権利者となって海賊版と戦うべきだという認識が生まれました。話し合った結果,アメリカ政府に対して共通の提案を出しました。映画製作者としては,条約づくりに関しては賛成するんですけれども,ただ国際条約上,権利の移転に関して何らかの条文を置かないと,ちょっと不安なんじゃないかということもありまして,そこで出された提案は,ほぼ現在のような提案なんですね。アメリカからすれば一歩譲歩して,条約づくりをブロックしているようなことはしていないことをいうことができます。つまり,確認の条項として,締約国は国内法において権利移転を定めることができるが,条約上の義務ではないんです。今の各国法上,実演家の権利の移転に関しては様々な取決めがあるわけなんです。我が国の場合は,多分ローマ条約19条を忠実に守っている条文だと思うんですけれども,権利の移転ではないんですね。上野先生がおっしゃるように。アメリカはそもそも著作権法上,実演家の権利はないので,すべて団体間の労働協約みたいなもので取り決めて,報酬請求権みたいな形にしているんですけれども,一方,ヨーロッパ諸国は権利の移転をしている国と,していない国というのも,様々なんですね。こういう条文を出すことによっては,条約上の義務ではないですけれども,でも,アメリカ法が仮にそのまま何も改正しなくても,日本法が改正しなくても,もう自由にやっていいんですよというようなところが趣旨だと理解しております。
 第2パラグラフは恐らく,権利移転をする際に,要件ですよね。書面によるかよらないかの。これも多分,各国法で自由に決めることができると。
 第3パラグラフは報酬請求権。報酬請求権も,権利の移転とは切り離して考えているわけで,権利移転だから必ず報酬請求権を与えなきゃいけないという書きぶりにもなっておりません。ですから,まあ,アメリカからすれば,何もしなくてもアメリカはこの条約に加盟することはできると。ヨーロッパも多分できるし。どちらかというと確認をするという意味で,これで合意ができれば視聴覚実演保護条約を採択しましょうということが,多分,背景の一部になっているかと思います。

【道垣内主査】 ちょっと補足があるという方。

【後藤委員】 はい。

【道垣内主査】 後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】 すみません。よくわからないんで質問の質問で申し訳ないんですけれども。今の増山先生のお話ですと,現行,別に日本の現行法を変える必要はないんですよね。

【増山委員】 この権利移転については,多分変える必要も,やればできますし,変えなくても多分,条約の義務ではないので違反はしないですね。

【後藤委員】 はい,ありがとうございます。

【増山委員】 この権利移転についてですよ。

【石井委員】 すみません。もう1つ。

【道垣内主査】 どうぞ。石井さん。

【石井委員】 すみません。ちょっと11年前をいろいろ思い出していたんですけれども,2点質問があります。1点はたしか当時,連結点って,いろいろな国によって微妙に法制が違ってきた場合,どこのものを適用するかについてかなり最終盤,問題になったような記憶があるんですが,そこについては今回,何か議論があったのかということとですね。当時,すみません,これは余りはっきりした記憶ではないんですけれども,それと関連するんですが,どこかの国が報酬請求権だけは絶対に移転しないで残るんだとした場合に,そういう俳優さんがいた場合に,例えば映画の著作物の場合,いつまでも報酬請求権はある特定の,その国の俳優さんについてまわるのかというような議論もあったように思うんですけれども,そこについては何か議論ございましたでしょうか。

【佐藤国際課長】 ないです。

【石井委員】 ありがとうございます。

【道垣内主査】 上野先生,どうぞ。

【上野委員】 こういう共同提案がアメリカなどから出てきたということで,今,増山委員がおっしゃったように,彼らは,これに乗ったとしても問題ないということなのだろうと思いますけれども,我が国にとっては,実際にこれが条約になったとき,日本法を改正する必要が本当にないのかどうか,なお検討すべきではないかと私は思います。
 そこで,もしお伺いできればということでお聞きするわけなのですけれども,つまりこの条約は,まず実演家に排他的許諾権を与えると。その上で,この新12条案によって,その権利を製作者に移転させたり,帰属させたり,あるいは行使させたりできるということになる。ということは,いずれの場合も,実演家か製作者のいずれかが排他的許諾権を持っているという状態になります。ですから,もし第三者が侵害行為をした場合は,実演家か,あるいは製作者が,これに対して差止め請求できるということになりますよね。ただ,日本法の場合,例えば91条2項は,実演家に録音・録画権を与えている同条1項の規定を「適用しない」という規定ぶりになっておりますので,ここもいろいろ解釈の分かれ得るところかとは思いますが,普通にこれを読めば,2項が適用されるようなケースにおいては,もはやだれも排他的許諾権を持っていないということになります。たとえ第三者が無断で録音・録画行為をしたとしても,録音・録画権に基づいて差止め請求することはできないわけです。だとすれば,この共同提案が条約となった場合,日本法は何らかの対応を迫られるということがありはしないのかという点が気になるわけですけれども,いかがでしょう。

【佐藤国際課長】 御指摘の点も含めよく確認していきたい。

【道垣内主査】 これは先ほど話があったように,AV条約とローマ条約との関係はどうなるのですか。オーバーライトするのですか。それとも両方残るのですか。

【佐藤国際課長】 アップデートになると思います。両方。

【道垣内主査】 部分的アップデートでしょうか?

【佐藤国際課長】 あ,部分,というより。

【道垣内主査】 全部のアップデートでしょうか?

【佐藤国際課長】 その分の。一応,互いに権利はオーバーライトしないというような条文があります。

【増山委員】 権利の内容に関しては,ローマ条約に比べて,これもいわゆるWIPO。WCTでなくて……。

【佐藤国際課長】 WPPTと同じレベル。

【増山委員】 同じレベルですが,異なる部分が一つあります。放送権の規定です。放送権に関しては,これは例の11条なんですけれども,非常に複雑な条文構成となっておりまして,要はアラカルト,一品メニューですね。排他的権利を与えていいし,報酬請求権を与えていいし,何も権利を与えなくてもいいとなっています。

【佐藤国際課長】 各国の選択方式になっています。

【増山委員】 選択ですよね。ここは,実は排他的権利7条から11条と言ってますけれども,各条文を詳しく読みますと,条文の構成,かなり複雑になっておりまして,必ず与える部分と,与えなくてもいいという書きぶりが混在しているので,非常に理解しにくいかもしれません。

【道垣内主査】 はい。前田委員どうぞ。

【前田委員】 先ほど上野先生が御指摘をされた点ですが,この3つの第1のパラグラフは「may」だから,あえて議論する必要はないのかもしれませんが,これが仮に「shall」だと,すなわち義務だという前提をとったと仮定して,日本法との整合性を考えたときに,先ほど上野先生からは,日本法は1項を適用しないという形になっていて,結局,だれも実演の隣接権,録音録画権としてはだれも行使できないということになり,ここの第1文で書かれていることと,必ずしも整合しないのではないかという御指摘だったように思うんですが。

【上野委員】 これは「may」ですので,今回の12条案のような移転等の規定を設けなくてもよいということにはなりますが,その場合には,実演家が排他的許諾権を持ったままでなければならないということになりはしないかと。ところが,日本法の場合は…。

【前田委員】 なるほど。わかりました。

【上野委員】 許諾に基づく録音・録画など一定の場合に当たると,実演家の排他的許諾権が消滅して,だれも権利を持っていない状態,いわばパブリックドメインになってしまうので,それで条約の条件を満たすのかどうかという点です。

【前田委員】 はい。理解しました。
 ただ,どうなんでしょうかね。この第1文のところが,「shall be owned or exercised by or transferred to」というのは,規定ぶりはどうでもいいよというニュアンスが,ここの部分からは受け取れるように思います。確かに上野先生御指摘のとおり,日本法は「適用しない」という条文になっていて,それは「shall be owned」でもないし,「exercised by」でもないし,「transferred to」でもないということで,そもそも権利が消尽するというか発生してないというか,発生したのが消えたというのか,そういった規定ぶりになっていますけれど,それは単に規定の仕方といいますか,91条2項というのは,本来は,制限規定というような書き方でも,あるいは移転という書き方でも,ほぼ同じ内容は実現できる。ただ,たまたま,たまたまというか,現行法の条文はローマ条約の書きぶりに合わせて,そう書いてあるだけであって,その書きぶり自体は,どういう書き方であっても,結局は映画製作者の方が実演家の許諾権によっての制肘を受けないということを実現することが,この第1文の意味であって,その規定ぶりには余りこだわらないという趣旨にも読めるようにも思うんですが,その点はいかがでしょうか。

【増山委員】 おっしゃるように,そこの5行目,6行目あたりですかね。あ,4行目の後半ですね。この「shall be owned or exercised by or transferred to」という3つの選択肢があります。1つは所有,この「owned」と「transferred」という,どこがどう違うか,正直申し上げますと私もわかりませんけれども,所有されるか,若しくは行使されるか,若しくは譲渡されるかという書きぶりになって,ここもWIPOの議場ではいろいろ皆さん議論があったと思うんですけれども,要は国内法でどれを選んでも別に自由ですよという考え方だと思います。ちょっと答えになってるかどうかわかりません。

【道垣内主査】 もう1回,今のすみません。
 どれを選んでもいいですよでしたら,限定的メニューですよね。それ以外でもいいですよという言葉で読めるかどうかということだと思いますが。確かにちょっとどうかなと思います。

【上野委員】 いいですか。

【道垣内主査】 どうぞ。

【上野委員】 ですから,現在の3つのメニューに更に加えて,例えば「expire」つまり消滅するとかですね,そういうような文言を加えていただくことが可能であれば,現行法のままでも問題ないということがより明確になるのかもしれません。

【道垣内主査】 今の点も更に御議論いただいてもいいですし,ほかの点でも結構なのですが,いかがでしょうか。
 ちょっと私の方から,資料4のですね。1個だけじゃないんですが,資料4の丸,上から3番目の「19条」と書いてますね。次の3ページのところにも「19条」これは,19か条のことですか。

【佐藤国際課長】 19か条です。

【道垣内主査】 か条ですね。はい。
 そこはリオープンしないで,残された論点のところだけ議論すると。3ページのところにも「19条」が出てきますが。

【佐藤国際課長】 これも「19か条」です。

【道垣内主査】 これも19か条で。この19という数は,1,2,10,12,15を含まない数なのですか。

【佐藤国際課長】 12を含まない数です。「19か条」の意味です。

【道垣内主査】 実体規定は全部で23あるということですか。すみません。今,条文持っていないものですから。

【佐藤国際課長】 20条ですね。

【道垣内主査】 20条? そうすると……。

【佐藤国際課長】 20条以上。実体規定のところはですね。管理規定のところは別に。

【道垣内主査】 1条,2条,15条は,追加はあり得るということですか。

【佐藤国際課長】 合意声明に関してはということです。これは途上国の方から提案された話です。

【道垣内主査】 ここの部分に関してはリオープンすることはあるという趣旨ですか。

【佐藤国際課長】 テキスト条文はもういじらないという趣旨と理解しています。

【道垣内主査】 あ,そうですか。

【佐藤国際課長】 追加の合意声明については,1,2,15条に限るということです。

【道垣内主査】 わかりました。いずれにしても,この3ページのところにありますように,外交会議をもう1回セットしましょうという方向になったということは,画期的な進歩ですが,その画期的な切り札が,このよくわからない条文ということですね。どうにでもやってくれという条文ならば,もうずっと前にできたような気がしますけれども。これだと,実演家の権利がどうにでもされてしまうように読めますが,そこはまあ,いいということなのですか。アメリカの中での議論は,もういいということなのですね。現行法を変えなくても。

【増山委員】 条約が,もし採択されまして,今後は多分,議論が国内に移っていくと思います。つまりこの権利移転については,そもそも条約上の義務ではないので,各国法は自由にやることができるという認識で,この案は,本当はもともと2000年のときのEUの案だったと思うんです。当時,どうしても移転しなきゃいけないという主張に対してEUは,最初は12条は置かないと提案しました。ところが,権利移転の条文を置かないとやっぱり困るという主張が引かないため,EUは一歩妥協しまして,場合によっては国内法で移転のルールを決めればいいじゃないですかという提案を出しました。いろいろありましたが,最終的には,準拠法による解決が不可能だということもわかったので,権利移転ルールに関する議論は,また元へ戻ってきたような気がします。

【道垣内主査】 今おっしゃった準拠法というのは,連結点は統一して,準拠法の決め方を統一しましょうということは無理だということですね。しかし,その話は残るわけですよね,いずれにしても。ヨーロッパの人がアメリカの映画に出て,契約はしたのだけれども,もう1回ヨーロッパでその映画が上演されるときに,どちらの法律が適用されるのかという話は残らざるを得ないですね。それは多分,石井委員がおっしゃったのはその点だと思いますけれども。一番いいのは,各国の法律の中身を統一してしまうことですが,それはできないと。準拠法の統一規則をつくるのもできないと。もうばらばらにやってくれということになりますね。

【前田委員】 よろしいですか。
 その,ばらばらにやる前提として,今まで利用地国法というのが原則と考えられていたと思うのですけれども,今回の議論も,利用地国の法律によるということを前提として,じゃあ,あとはばらばらにしましょうと,こういう議論になっているのでしょうか。

【増山委員】 この辺の議論はなかったと思います。

【佐藤国際課長】 ありませんでした。

【道垣内主査】 私の理解では,それまで議論するとまた決まらなくなる。だから,そこを詰めるのはやめましょうという案だろうと思いますけれども。
 そのほかは,いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 進展なのか,あるいはあきらめなのか,よくわかりませんが,動きがあるということはよくわかりました。
 それでは次の議題4のアジア著作権会議等の報告,これも事務局から御説明いただきます。

【都築海賊版対策専門官】 それでは事務局から御説明させていただきます。
 お手元にお配りいたしました資料の5「第2回アジア著作権会議について」の資料をごらんください。
 2月23日,24日,両日,京王プラザホテルにて開催させていただきました。第1回アジア著作権会議,平成22年に開催させていただきまして,アジア諸国の著作権担当部局を中心にしまして,各国の代表に御参加いただくということでございます。それ以前はアジア著作権セミナーとして,いわゆる実務者レベルで,著作権に関します国際的な課題の意見交換等を目標にしておりましたが,先般の,今までの国際小委員会の御議論の中で,前回の報告書の中にも二国間の枠組みの位置づけを更に強化,拡大させるとともに,多国間のネットワークのさらなる強化が求められるという御提言を頂いてございますので,私どもとしましては,こうした会議を設けることで,多国間のネットワークの強化にもつなげていこうということでございますので,アジア著作権会議として,参加者のいわゆるランクアップを目指しまして,より高い政策的なレベルを目指して第2回の会議を開催させていただきました。
 参加国としましては,中国,韓国,タイから御参加いただいておりますし,従来意識しておりますのは,こうしたアジアの多国間の会議におきましても,常にアメリカ,EU等の議論を参考にさせていただこうと考えてございますので,アメリカ,英国からの御参加も頂きました。またWIPOからも担当課長,著作権法規担当課長に御出席いただいております。それと今回のアジア著作権会議,1つのテーマ設定として,こうした多国間の問題解決あるいは協議の場におきましても,いわゆる民間セクターのいろいろな協力でございますとか連携というのが重視されることになってございます。したがいまして日本からコンテンツ海外流通促進協会(CODA),そして国際レコード産業連盟(IFPI),モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)などの御参加を得ることによりまして,民間レベルでどういった試みが可能かといった試みが可能かというふうなことにつきましても,意見交換を行ってございます。
 テーマは,改めて申しますと,国境を越えた著作権保護のための連携ということで設定させていただいております。この問題意識は,既に十分御議論いただいているところでもございますが,インターネット等の普及,あるいは通信テクノロジー等の高度化に伴いまして,著作権の保護ということが一国内で完結するという状況ではなく,やはりいろいろな形で多国間の連携を通じまして,外国におきます権利侵害についても適切に対応していく,あるいは権利者の方の権利執行をいかに支援していくかというようなことが,今後お互いに多国間の場で話をやるし,必要があれば連携,協力をしていくということが必要になってくるということでございます。プログラムにつきましては,そうした問題意識をもとにしまして,各国の代表の話合いと,2日目におきましては民間の方も含めました連携の話合いをさせていただきました。
 1枚めくっていただきまして後半の方でございますが,アジア著作権会議の議論のまとめとして,前国際課長名で,こうしたペーパーを作成いたしまして,今回のアジア著作権会議の議論のいわゆる要旨をまとめさせていただいているところでございます。
 かいつまんで御説明させていただければ,このアジアという地域を含めますと,著作権の問題につきましては,なかなか全く同じような意識あるいは制度に取り組むということはまだ途上の段階でございますので,やはりお互いのそれぞれの地域,国が置かれている状況を踏まえて取り組んでいく必要があった。ただし,それだけではなく,インターネットプロバイダーなどは,かなりお互いに共通意識を持って同じような対応を進めていくという問題もあるであろうと。
 エンフォースメントにつきましては,いろいろな形でエンフォースメントを行っていく上で,それぞれの国がいかに諸外国の権利,正当な権利者,あるいは正当なコンテンツを認めていくかというようなことが課題となっておりますし,そういったことが,日本の権利者の方も,なかなか諸外国で権利侵害があった時に対応するのが難しいということで,このあたりを,我々いかに連携を強化していくかというのも一つの課題であろうと。
 そして3番目としましては,こういう実態が起きているということについては,それぞれ個々のいわゆるユーザーの方,あるいはコンテンツを使用されている方にも,やはりこういう問題を意識させていただいて取り組んでいく必要があるであろうと。そんなことを議論のまとめとしているところでございます。
 今後の課題につきましては,まだまだやはり我々としては,こうした他国間の場での議論を深化させていくとともに,このアジアという地域の中でどういった多国間の取組が行われているかということを,引き続き議論を深めていく必要があると考えてございます。
 本年度におきましては,WIPOとの連携をすることによりまして,本年の10月にアジアリージョナルミーティングということで,アジア地域の各国の著作権担当部局の代表の方にお集まりいただきまして,更により包括的にこういった問題を議論させていただくということを,私ども計画しているところでございます。報告は以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 ただいまの御説明に対しまして,何か御意見,御質問等はございますでしょうか。
 これは,アジアの定義というのはどこまで入るのですか。インドとかパキスタンとか,その辺までいくのですか。

【都築海賊版対策専門官】 今のところ,私どもの方とWIPOの方で一応,ターゲットになるアジア諸国というのは決めておるんですが,そこにまだインドは入ってきてございません。

【道垣内主査】 東南アジアは入るのでしょうけど。

【都築海賊版対策専門官】 東南アジアは入ってございます。

【道垣内主査】 タイしか来てないというのは,寂しい感じはしますが。

【都築海賊版対策専門官】 なかなか調整が難しく,この時御参加いただいたのが,たまたま東南アジアからはタイだけでした。当然,いろいろな諸国に参加は呼びかけてございます。

【道垣内主査】 あと,よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,5,その他でございます。何かこの際,次の回は秋ということですので,なかなか集まっていただいて御意見伺う機会ないのですが,何かこの小委員会で,マンデートが一応,枠が決まっていますけれども,その中の具体化も既に御検討いただきましたが,何かこの際,御意見があれば。はい,どうぞ。石井委員。

【石井委員】 すみません。3のところで申し上げるべきだったんですけれども,AV条約の方が先行したような形になって,放送条約がどうも取り残されぎみなんですけれども,まだ議題に残っておりますので,どうぞよろしくお願いしますということでございます。
 特に放送通信というものがどんどん連携してきて,そういうところからの不正利用行為もありますし,これからどんどん,いろいろな適正な流通も推進しなくてはいけない状況がございます。そういう視野に立って,適正な流通も促進できるような条約ができればいいと思ってますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【道垣内主査】 そのほか何か。はい,どうぞ。久保田委員。

【久保田委員】 御報告なんですけれども,今日のテーマ,国際的ルールづくりへの参画の中で,日本の立ち位置なんですね。うれしいニュースが1つありまして,BSAというアメリカのBusiness Software Allianceという団体が,毎年,定点調査をしています。 その中で,日本は企業内違法コピーに関しては世界で同率1位になりまして,違法コピーの稼働率が20%で,被害額が1,400億円だと。政策的なメッセージもあるんで,日本が1位になることはないんじゃないかなというふうに,ずっと斜に構えて見てましたが,今年5月の発表で,アメリカ,ルクセンブルク,日本が20%ということで,世界で一番,企業内のソフトウエアに関しては違法コピーがないという調査が出ました。
 こういった情報を今度うまく,国際委員会の方に,どういうふうに絡むかなのですが,日本のまじめさと,管理等を一生懸命やっているわけでありまして,昨日のように法制小委では,どうしても我々権利者団体としてはこんなに被害があるんだということを一生懸命つくって,法制度に投影させようということから,どうしても数字づくりに東奔西走してしまいます。こういった良い情報を逆に武器に使って,とりわけ先ほどのアジア著作権会議等では日本が20年近くこのソフトウエアの管理や企業内の違法コピーについては,こつこつと,いろいろなソフトウエア管理はじめ,著作権思想の普及をしてきたわけなんですけれども,こういうアメリカからの評価ですから,上手に受け取って,今度我々はそれをアジアの人たちに返していくと。なぜうまくいったのかとかですね。これはプロバイダーとの関係なんかにおいても,日本方式という言葉をできるだけWIPOでは使って,ISP事業者と権利者が法律を超えて,ガイドラインづくりの中で上手に違法行為に対応していくということが,こつこつと,本当に毎日のようにされているわけです。こういうことを上手に発信することで,逆に日本のコンテンツが,そういう環境の中で育ってきたと。
 ゆえに諸外国においては,我々もお手本なる部分もありますが,日本のコンテンツも大事にしてほしいというロジックを使って,上手に近隣の諸国や欧米に対しても胸を張って,日本はコンテンツ立国なんだということを上手にPRするような方法を,ここの委員会で考えるかどうかはわからないんですけれども,外務省さんを始め,関連の,日本を上手にPRするところにひもづけられないのかなと。そういう議論をこの場で持ち寄っても面白いかなと思うんですが,国際的ルールづくりへの参画ということなので,その前提としてのいろいろな努力とか成果とかいうものをうまくPRできるような視点も,この委員会が適切かどうかわかりませんけれども,是非。もう,粗茶ですが,粗飯ですがという民族はやめて,こんないい国なんですよと。そんないい国だからいいコンテンツが生まれてきて。そのコンテンツを大事にしてほしいというような切りかえをどこかでしたいと。ただ我々,法制小委で,私的業務の範囲とかいろいろな問題で,どうしても被害額が大きいんですと言わざるを得ないところと相反する部分が出てきてしまうんですが,そこを上手にPRに切りかえられたらなと思っています。意見ですけれども。

【道垣内主査】 わかりました。ありがとうございました。
 せっかく御紹介いただいたんで。その20%という数字は,私,悪い方なのかと思ったんですが,すべての文書の中で20%が違法な,文書だけじゃないですね,ソフトウエアですか。

【道垣内主査】 わかりました。ありがとうございました。
 せっかく御紹介いただいたので伺います。その20%という数字は悪い方なのかと思ったのですが,どうなのでしょうか。ソフトウエアですか。

【久保田委員】 そうですね。稼働してるのが20%。

【道垣内主査】 20%が。

【久保田委員】 5台に1台は違法コピーでまだ動いてるという。

【道垣内主査】 ああ,それでも一番ですか。そうですか。
 もっと悪いところは相当多いということですか。

【久保田委員】 ほかはもう,ここのデータだと,1番はグルジアとかジンバブエとか90%超えてますし,先ほどの関連のアジアというところで見ると,ベトナムが83%ぐらいですね。このあたりは逆に日本の企業が出ていって,その国で例えばソフトウエアの違法コピーしてしまうという問題も,あちらに行ったらあちらのということになってしまうと,日系企業が当事国から摘発を受けたりというようなことも起こり得るということはありますけれども。少なくとも私がこの運動を始めたころは,これもつくられた数字だと思いますけれども,中国,タイ,日本が違法コピーの稼働率が90%を超えているということで,米国ビジネスソフトメーカー大手の弁護士さんから指摘を受けたことがありまして,そこからうちの協会なんかは活動がスタートしたんですけれども。そういう意味では長足の進歩というか。

【道垣内主査】 ありがとうございます。かつて90%だったというのは,20%は相当低いということで,よくわかりました。
 ほかに何かこの際という御意見ございますか。よろしゅうございますでしょうか。特にこれ以上ございませんでしたら,本日の会議はこれまでにしたいと思います。
 事務局から連絡事項がありましたら,よろしくお願いします。

【堀国際著作権専門官】 本日は御多忙中のところ,誠にありがとうございました。次回の委員会の日程ですが,調整の上,追って御連絡させていただきます。

【道垣内主査】 はい。では,本日の国際小委員会はこれで終了いたします。ありがとうございました。

○11:29閉会

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動