議事録

文化審議会著作権分科会
国際小委員会(第3回)議事録

日時:
平成26年1月31日(金)
10:00~12:00
場所:
文部科学省東館3階 3F2特別会議室
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)WIPO等における最近の動向について
    2. (2)政府間協議等の報告
    3. (3)ドイツ著作権法における私的複製補償金制度について
    4. (4)平成25年度国際小委員会の審議状況について
    5. (5)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

○10:00開会

【道垣内主査】 では,ただいまから第3回の国際小委員会を開催いたします。本日は御多忙の中御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 本日の会議の公開の件でございますが,予定されている議事内容を参照しますと特段非公開とする必要はないと思われますので,既に傍聴者の方々には御入場いただいているところでございます。この点,何か御異議等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 それでは,本日の議事は公開とさせていただきます。傍聴の方にはそのまま傍聴いただくということにしたいと思います。
 では段取りとして,まず事務局から配付資料の確認と本日御発表いただく方の御紹介をいただけますでしょうか。

【中島国際著作権専門官】 おはようございます。事務局の方から,配付資料の確認と本日の発表者について御紹介させていただきます。
 まず配付資料ですが,全部で11点,参考資料が3点となっています。資料1-1から1-7,これが議題1に関するものでして,1-1から,世界知的所有権機関等における最近の動向について。その後,放送条約の素案の英語の文章,それから資料1-3として,我が国の新規提案,それから1-4,これは図になっていますけれども,放送条約に関する主な論点の資料,その後引き続きまして放送条約に関するインドの提案,プロポーザルフロムインディアと書いてある紙です。それから1-6として放送条約に関するアメリカの新規提案,そして最後に,こちらは表ですが,1-7として放送条約に関する主な論点についての主要国のスタンスという資料になっております。
 資料2と資料3ですが,これは議題2についての資料です。1つ目が政府間協議の報告に関するもの,2つ目がインドネシアとの協力についての資料となっております。更に資料4は,きょう御発表いただく辻田先生の御発表資料でして,ドイツ著作権法における私的複製補償金制度についてという資料になっております。資料5ですが,これは本年度,平成25年度の国際小委員会の審議状況に関してまとめた資料となっております。あとは,参考資料1としまして第13期の文化審議会著作権分科会国際小委員会の名簿と,小委員会の設置に関する資料,委員の皆様には,前回,第2回の議事録を配付させていただいております。資料おそろいでしょうか。
 では引き続きまして,本日御発表いただく先生の御紹介をさせていただきます。本日は,議題3,ドイツ著作権法における私的複製補償金制度について,名古屋経済大学法学部の辻田芳幸教授から御発表いただくこととしております。今期の国際小委員会では,引き続き,主要諸外国の著作権法制度のうち,我が国の著作権法と比較して異なる法制度の中から論点となり得る項目を抽出した上でその検討を行い,課題や論点の整理を行うこととされております。今回はその中でもドイツの制度,特に私的複製補償金制度を取り上げさせていただきたく存じます。ドイツの著作権制度におきましては,私的複製補償金制度が非常に充実しているということでして,その全体像を把握することは我が国における補償金請求制度の在り方を検討するに当たって非常に有用であると考えております。
 御報告いただく辻田先生はドイツ・マックスプランク研究所で御研究をされた経験もあるとのことでして,現在ドイツ法を中心に積極的な研究活動をなされていると伺っております。以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 では,本日の全体の議事次第でございますが,クリップどめしてある最初の紙にございますように5点ございます。WIPO等における最近の動向について,それから政府間協議等の報告,更に今,辻田委員にお願いするドイツ著作権法における私的複製補償金制度について,そして4番目が平成25年度国際小委員会の審議状況について,これはこの委員会のまとめということになります。最後,5番目がその他ということになっております。
 では,議事の第1番のWIPO等における状況について事務局より御説明いただき,その後委員の皆様から御意見を頂くということにしたいと思います。では,よろしくお願いいたします。

【中島国際著作権専門官】 それでは,WIPOにおける最近の動向についてということで,資料1-1に基づきまして御報告させていただきます。
 概要としましては,昨年の12月15日から20日までの1週間,WIPOのSCCRの第26回会合が開催されました。今回の会合の議題と時間配分は,放送機関の保護,放送条約が2日間,権利制限と例外,これについては2つ議題がありまして,1つは図書館とアーカイブのための権利制限と例外,もう一つは教育機関と研究機関等のための権利制限と例外ということで,それぞれ1.5日,0.5日議論の時間が費やされました。その後,結論と,将来どういうことをしていくかなどのその他の議題について1日間費やしたという形になっております。順に御報告させていただきたいと思います。
 まず1つ目ですが,放送機関の保護ということでして,これまでの経緯については皆さんよく御存じのことかと思いますが,改めて御紹介させていただきますと,1998年の11月以降,放送機関にインターネット時代に対応した保護を与え,放送信号の不正使用等を防止するということを目的としまして,この国際的なルールを定めるべく新条約の検討が行われています。
 しかしながら,各国法制の相違を主な理由として,長期にわたり目立った進展は見られていなかったのですが,第23回SCCR以降再び動き始め,第24回SCCRで我が国提案を含む形でシングルテキスト化された作業文書(SCCR/24/10Corr)が作成されて,現在この文書に基づいて議論が行われています。
 その後,前々回,第1回の国際小委員会で報告させていただきましたが,2013年4月に開催された放送条約に関する中間会合で,条約の適用の範囲,受益者及び権利・保護の範囲について議論が行われたのですが,依然としてなかなか各国の対立が厳しいという状況が続いていたというところです。主な論点としては,例えば伝統的放送機関が行うインターネット上の送信の保護の在り方,固定後の権利など幾つか挙げられております。
 この中で,ある意味1つ大きな懸隔点となっているのが,御承知のとおり,伝統的放送機関によるインターネット上の送信を条約の保護対象とするか否かという点にあります。これについては,これまでの議論を見ていますと,欧米諸国はこれを保護の対象とすることが必要であるとしています。その一方で,インドは保護対象とすべきでないと強硬に主張し続けていました。この中で我が国はどうしてきたかといいますと,伝統的放送機関とウェブキャスターのバランスや伝統機関によるインターネット上の送信の範囲,サイマルキャスティングのみにするのか,これにウェブキャスティングやオンデマンド送信を含むのかといった点について検討がまだ不十分であるということなので,そのインターネット上の送信を一旦条約とは切り離して,より懸隔点の少ない論点に絞った条約を先行させるのがいいのではないかという主張を続けてきました。
 しかしながら,近年の放送条約の議論ではtechnology neutralという概念が主流になりつつあるというところで,そうはいいつつもインドがインターネット上の送信を保護することは反対だと言い続けている状況を鑑みると,今までの主張を続けるよりも,むしろインターネット上の送信は条約上の保護の対象とした上で,その保護は任意であるとするのがより議論を前に進めるという建設的なやり方なのではないかということと,各国,インドも含めて受け入れやすいであろうという判断の下,昨年の12月に新たな提案を提出させていただいております。それが資料1-3という形になっております。
 ポイントとしましては,まず1つは,6条の2という形で既存の提案に新たに追加する形の提案ということです。我が国のこれまでの提案中ではインターネット上の送信は条約の適用範囲に入れていないという形だったのですけれども,その提案に対して新たに追加としてインターネット上の送信の扱いを入れ込んだ提案になっています。その中身として,伝統的放送機関によるインターネット上の送信を保護対象とする一方で,その保護は義務ではなく任意であるとして,保護の内容も各国が決められるという形で,基本的にはベルヌ条約の14条の3の追及権に沿った提案をしているという形になっています。したがいまして,その保護については相互主義を取るというところも含んだ提案になっています。
 そういう提案をさせていただいたということで,それを踏まえて,[3]ですが,第26回SCCRにおける議論ということで,昨年開催されたSCCR26では,中間会合に引き続き,適用の範囲,受益者及び権利・保護の範囲について議論がなされています。
 まず適用の範囲ですけれども,こちらについては,我が方から新規提案の趣旨説明をまず行いました。その際に,前回の中間会合でも配りました論点整理ペーパー,表で今放送条約の議論でどういう観点が問題になっているかというのをまとめた資料を配って,議論を円滑化させることを目指しました。
 この我々から提案した新規の提案については,多くの国からその柔軟性を歓迎する旨,例えば欧米諸国,メキシコ,ケニア,南アなど,これらの国から発言がされています。インドについては,提案されてから実際にSCCRで議論されるまで2週間ぐらいしか実質時間がなかったというところもあり,もう少し検討に時間を要するということを述べつつも,基本的にはインターネット上の送信を条約上の義務的保護対象とするということは2007年のマンデートを超えるとして反対ということです。また,インドはその場では既存の提案について細かい修正をした提案を議場で配付しております。
 適用の範囲として伝統的放送を保護対象とするということについては異を唱える国は全くなかったのですけれども,もしインターネット上の送信を保護対象とするとした場合にいかなる送信を保護するべきかという点については,アメリカ,EU,今回オーストラリアとカナダが新たに意見表明したのですけれども,これらの国についてはサイマルキャスティングは少なくとも保護対象とすべきという意見でした。オンデマンド送信については,明確にこれを保護対象とすべきだとする国は一つもなかったのですけれども,ただ,EUとアメリカがこれを本当に排除していいのかという点についてはまだ検討したいということで,引き続き態度を保留するという形になっています。
 受益者については,伝統的放送機関と有線放送機関とすることで意見が分かれていません。
 続きまして,権利・保護の範囲については,アメリカが,WPPTのような権利のカタログを設ける必要はなくて,シングルライトアプローチで十分であるとして,同時再送信,これはほぼ同時,near simultaneousと書かれているのですけれども,これを含むものと放送前信号のみをその範囲とする提案を議場で配付しております。これは資料の1-6としてお配りしております。これについては,非常にシンプルな提案ですけれども,アメリカはこの提案の利点について,1つは簡潔であるということ,それから,必要最低限の保護で済んで,定義もシンプルにできるということ,コンテンツの権利との重なりがないということ,保護機関を設ける必要がないというような利点を述べてこういう提案を出しているということです。
 そういう提案がアメリカから出されているのですけれども,その一方で,我が方が以前出した9条B案,これについては固定権,複製権等,固定後の種々の権利を含みますが,これについてはEU,南ア,ケニア等を始め,その概念を支持する国が一定数あったということになっています。
 今回,我々の新しい提案を含めて議論が行われたわけですが,まだ何か結論が出たという形にはなっておりませんで,引き続き,今回出てきた日,米,印の提案を含めて議論を行っていくという形になっています。
 最後,資料1-7をごらんいただきたいのですけれども,こちらが現在の放送条約の主要論点に対する各国のスタンスということで,簡単にまとめさせていただいております。一番上が日本提案の内容ということで,これについてはサイマルキャスティング,ウェブキャスティングは任意で,オンデマンド送信については除くという提案になっています。下の方へ行っていただくと,南ア,メキシコはサイマルキャスティング,ウェブキャスティングとも保護の対象とすべきという話で,オンデマンド送信は除いています。米国,EUについては,サイマルは最低必要だというところですが,残りの2つについてはまだ未定であります。カナダとオーストラリアについては,アメリカ,EU同様に,サイマルキャスティングは保護するという一方で,非公式ですが,オンデマンドは保護しなくていいという話を言っております。インドは全て対象外というスタンスです。ブラジルについては引き続き態度が不明で,少しずつハテナが埋まりつつあるのですが,まだ引き続き残っているという状況が続いております。ということで,以上が放送条約に関するところです。
 あともう一つの議題として権利の制限と例外の話があるのですが,こちらについては,図書館とアーカイブのための権利の制限と例外と研究教育機関のための権利の制限と例外について議論されているのですが,簡単に言いますと先進国と途上国の意見が大きく分かれているということで,議論は余り進んでいません。[2]-1と[2]-2という形で書かせていただいておりますけれども,基本的に状況は同じということで,両方とも,先進国側は各国の法制度プラクティス,経験の共有を中心に行い,法的拘束力のある文書は設けずに,基本的には各国は柔軟に対応できるような形にしたいとする一方で,アフリカグループと中南米諸国,特にエクアドルなのですけれども,ここが法的拘束力のある文書を設けたいということで話が出ております。
 4ページ目のその3というところに行かせていただきますが,今後についてですけれども,次回の会合ですが,第27回は4月28日から5月2日の日程で開催予定です。これについては,放送条約は2.5日,権利の制限と例外に2日,その他の議題に0.5日の時間を割く予定です。秋の加盟国総会の前までにもう一回開催する予定となっています。
 それからもう一つですが,将来の議題案ということでして,この条約の話等が終わった後どうするかということですが,アメリカなどからライセンシング,特にオンライン環境下でのライセンスの話や集中管理団体を含む権利管理の在り方,それから自主的な産業間の取組ということで,例えば,権利者を特定するための権利管理データベース,マスデジタイゼーションですか,大量のデジタル化といったような話も議題の候補として,やったらどうかというところが出てきておりまして,この辺についても将来的には見ていく必要があるのかなと思っているところでございます。長くなってしまいましたが,以上です。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 では,今御報告いただきましたテーマにつきまして御質問,御意見等ございましたらお願いいたします。上野委員,お願いします。

【上野委員】  上野でございます。
 放送条約の6条についてお伺いしたいと思います。先ほどのお話にもありましたように,この点がSCCRにおける合意形成を難しくしている最大の問題の一つだったということでありますから,もし今回の日本の提案によって,合意形成がしやすくなるということだとしますと,少なくとも早期解決という観点からするならば,差し当たり結構なことではないかと思います。また,WIPOという国際的な議論の場で,日本が議論のリーダーシップをとっているとすれば,それも非常に大きな意味を持つことではないかと思います。
 その上で,御提案の中身について1点御質問したいのですけれども,今回の御提案における6条の2というのは,結局のところ相互主義を取るということになろうかと思います。そうしますと,インターネット送信について権利を設けるかどうかは各国の任意ということになりますので,これはインターネット送信権に関する規定を何ら設けないのとほぼ同じではないかという気もいたします。ただ,今回のような提案をすることによって何が変わるのかと考えてみますと,日本法はインターネット送信に関して放送事業者に一定の権利を与えておりますので,もし今回の提案による6条の2のような規定が条約に設けられることになれば,日本の放送事業者がそうした権利を付与している外国において保護を受けることが条約上の義務として可能となる,その点においては6条の2という規定を設ける意味があるというふうに理解してよろしいでしょうか。この点をお伺いしたいと思います。

【中島国際著作権専門官】 御質問ありがとうございます。基本的にはそういう理解でよろしいかと思います。

【道垣内主査】 よろしいでしょうか。そのほか何かございますでしょうか。
 これはもう大分議論が始まってから時間もたち,また,次回で終わるということは決めていないようです。だんだんと技術が変わってきているのではないかと思うのですが,そのあたりは,放送関係の方に伺いたいと思いますけれども,条約ができたころにはもう古い技術を前提にして余り意味がないということになるおそれがありますでしょうか。あるいはそうではなく,意味があるのだということであれば,そのことを教えていただければと思います。事務局でも結構ですし,どなたか放送の関係の方いかがでしょうか。

【梶原委員】 そういった意味でいうと,既にもう十数年議論されている中で,日本政府が伝統的な放送機関が行う無線による放送,あるいは有線による放送のみを保護という話から一歩前進されて,サイマルキャスティング,ウェブキャスティングについても保護の対象とすることについて,任意ですけれども,できるという提案をされたことは大きな前進だと思っていますし,既にNHKでもサイマルキャスティングを一部ラジオでやっていたりしますので,現時点において,いわゆる無線,有線放送だけを保護するというよりは,特にヨーロッパなんかはもうサイマルキャスティング,ウェブキャスティング,あるいは見逃しサービスみたいなことも含めて一般的に行われている中で,そういったことも含めて保護を与えていただくということが今のこの時代にはかなっているというふうに思っております。

【道垣内主査】 ありがとうございました。そのほか何かございますか。

【笹尾委員】 確かに技術的な面というのは毎日進歩しておりますので,そういった面からの検証というのは不確かなところもあるかもしれませんが,今回の日本提案に関しては極めて柔軟性を保っていただけていると。そこがやはり要かと思います。この条約がここまで時間が掛かってしまっているというのは,文書にもありましたけれども,各国の法制が全く違うというところに起因していると。これが一番大きな原因ではないかと思われますので,その面でこういう皆さんから,各国から評価の得られる修正案を,それに向けて御尽力していただいた関係者の方々には放送業界にいる者としては感謝したいと思っております。以上です。

【道垣内主査】 そのほか何かございますでしょうか。どうぞ,浅原委員。

【浅原委員】 これも1つ質問でございます。伝統的放送機関とウェブキャスターのバランスということがございますが,ここでは,この放送条約とは別にウェブキャスターの保護,あるいはそういうウェブキャスティングの保護についての議論というのはWIPOではなされているのでしょうか。

【中島国際著作権専門官】 御質問ありがとうございます。
 ウェブキャスター,いわゆる伝統的放送事業者ではない人たちの保護をいかにするかという点については,まだWIPOの方では特に議論されているという状況ではありません。ただ,放送条約の議論の中で伝統的放送機関というのをどういうふうに定義するかというところがまだ確定していないので,その中で多少ウェブキャスター等の切り分けというのは議論されるのかなというところはあるとは思います。以上です。

【道垣内主査】 そのほかよろしゅうございますでしょうか。
 それでは,次の議題に移りたいと思います。政府間協議等についての御報告ですが,これも事務局より御説明いただき,その後,委員の間での御議論とさせていただきます。では,事務局,お願いいたします。

【佐藤国際課長】 お手元の資料2をごらんいただければと思います。第7回日韓著作権協議の結果と,裏面の第5回日韓著作権フォーラムに関する御報告をさせていただきます。
 平成23年9月に韓国文化体育観光部との間で締結いたしました著作権等における協力に関する覚書に基づきまして,毎年日韓において著作権担当部局との意見交換,あるいは関連のフォーラムを交互に,日本,韓国,1年ごとに実施しているところでございます。この協議の関係ですと,日本側から私と著作権課の山中室長と担当官が出席いたしました。先方は,著作権政策課長を始め,日本に来て協議を行ったところでございます。事前に関係団体の方々から御意見と関心事項をお聞きいたしまして協議に臨んだところでございます。この概要につきましては,韓国側とここまでの線で公表していいということで了解しておりますので,お伝えできる範囲でお伝えさせていただきたいと思います。
 協議の結果ですが,(1)番にありますように,日本の著作権等管理事業制度について,韓国側が現在集中管理団体の複数化及び権利者が集中管理団体に権利を信託する場合に,支分権ごとに選択ができるような制度の規制を緩和する方向に今検討しているということで,韓国側の要請に基づきまして我が国の集中管理制度の状況等について情報提供したところでございます。
 (2)につきましては,韓国における著作権の集中管理制度についてですが,集中管理団体の複数化,あるいは信託の範囲等の緩和等によって,我が国を始め外国への使用料の相互徴収に支障を来さないかどうかという観点について,留意してほしい旨をこちらから要請したところでございます。
 それから(3)でございますが,これは情報交換でございますが,韓国におけるインターネット上の著作権侵害対策について,韓国が実施している状況の最新状況について情報提供をお願いしたところでございます。スリーストライク制度の運用状況,クラウドサービスを利用した侵害の対策,あるいはサイトブロッキングの適用状況等について情報提供を求めたところでございます。
 それから,次の裏面でございますが,日韓著作権フォーラムについてでございます。昨年はソウルで開催いたしまして,この場でも御報告させていただきました。昨年は韓国の日本の集中管理の在り方等が議題ということで韓国に行ってまいりました。今回日本で行いましたのは,「社会の変化に対応した著作物の利用と適切な保護」というテーマで,韓国から文化体育観光部あるいは著作権関係団体から講師を3名招へいいたしまして,ここに書かれておりますような議題テーマ,電子出版等のデジタル著作権取引所,あるいは海外著作権ビジネスと管理に関する御講演を頂いたところでございます。また,関係機関の方々との意見交換を実施いたしました。当日150名ほどの方々に来場いただきまして,活発な情報交換が行われたところでございます。簡単でございますが,この点については以上でございます。
 それから,引き続きまして資料3に基づきまして御説明させていただきます。インドネシアとの協力についてでございます。25年3月,昨年の文化庁とインドネシアの知的財産総局との2国間協議において,インドネシア側から当方に対して,特に日本の著作権集中管理団体制度についての研修,あるいはインドネシアにおける海賊版取締りの機関職員の人材育成について協力依頼があったところでございます。それに基づきまして事業等を実施したところでございます。
 まず,これまで実施していなかったのですが,夏にインドネシアの知財局のトップである知的財産総局総局長と著作権を担当している局長あるいは担当課長を招へいいたしまして,日本における取組,要請のあった取組等についてきていただきまして,関係団体あるいは関係役所との意見交換等をいたしました。今後2国間のつながり強化をしていきたいと思っておりますし,今回はそのような機会になったと思っております。
 それから,2番にありますように,インドネシアにおけるトレーニングセミナーの実施ということで,文化庁では19年度から,特に著作権侵害発生国の取締り職員を対象とした著作権や日本コンテンツに関する知識を付与するトレーニングセミナーを実施しておりまして,これは委託先としては競争公募で選定されております。CODAの方で実施していただいているところでございますけれども,これは中国を対象としていましたが,今回,12月にインドネシアにおいて初めて開催したということでございます。インドネシアの行政機関の中に警察とは別に取締りを行う行政組織があり,そういった組織との関係を構築することは大きな意義があったのではないかと思っておりますし,今後更に続けてもらいたいと思っております。今回ジャカルタでしたけれども,他方でもやってもらいたいという要望は今のところ受けているところでございます。簡単でございますが,以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 では,今の点につきまして委員の方々から御意見,御質問等ございましたらお願いいたします。
 私から1点。韓国の集中管理制度の改正ですが,これはこれからなのですか。もう既に複数団体あるのではないかと思うのですが,どうなのでしょうか。日本でも裁判になったケースがあって,それは新しい団体が管理していた楽曲だったような気がしますけれども・・・。

【佐藤国際課長】 音楽ですと,1つ,JASRACさんと契約を結んでいて,信託を一手にやっているところがございます。

【道垣内主査】 大手ですね。

【佐藤国際課長】 韓国は,音楽の分野の団体を,複数化していく,また,信託している内容を変えていくということを検討しているようです。

【小原委員】 結論からいいますと,現在,音楽の集中管理団体は1つです。韓国は,日本の管理事業法に相当する法令の中で許可制を採用しており,今話が出ておりますKOMCAという団体に対して許可を与え,KOMCAが音楽著作権全てを一手に管理しているという状況です。それを今後,日本の管理事業法も関係していると思いますけれども,創作者の意思等に鑑み複数化をしていこうということで作業が進められている状況だと理解しています。

【道垣内主査】 分かりました。そのほかいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは,3番目の議題で,大部の資料を御用意いただいておりますけれども,ドイツ著作権法における私的複製補償金制度について,辻田委員から御発表いただきます。ではよろしくお願いいたします。

【辻田委員】 辻田でございます。まずは,このような場所で報告する機会を与えていただきまして大変光栄に存じます。それでは,レジュメに従ってお話をしてまいります。
 本日は,ドイツ著作権法における私的複製補償金制度,特に相当なる報酬というのがありますけれども,これに焦点を当ててお話をしたいと思います。レジュメの一番上に少し日本法とドイツ法の形式的な比較をしたのがあります。そこから参ります。
 我が国著作権法における私的複製に関する補償金制度は,私的録音・録画補償金請求権制度として1992年に導入されております。我が国著作権法30条2項は,政令であらかじめ指定された特定機器,記憶媒体により私的録音・録画を行うエンドユーザーに対して相当な額の補償金支払を義務付ける旨規定しております。近時,DRMなどの技術的保護手段の利用や音楽著作物の流通形態の変容を背景に,その存廃論を含めた制度の在り方が議論されております。平成18年1月の文化審議会著作権分科会報告書におきましてはこの制度の抜本的見直しが提言されまして,これを受けて同分科会で慎重な審議が重ねられてきました。
 結果として,この補償金制度の見直しについて一定の方向性は見いだされなかったのではありますけれども,この間,DRMの登場によって,当該補償金制度が縮小されるべきであるとか,あるいは機器等のメーカーに一定の負担を強いることが関係者の理解を得られなくなったから当該補償金制度が縮小されるべきであるとの意見が声高に主張されておりました。
 一方,ドイツ著作権法におきましては,1965年に私的録音・録画機器に対する報酬請求権制度として導入されまして,その後数度にわたる法改正を経つつ現在も継続的に運用されております。とりわけ2007年にEUのいわゆる情報社会指令を受けてなされた法改正は,常に技術発展の影響にさらされる著作権制度におきまして,この報酬請求権制度はいかにあるべきかという点からも注目されるべきものであると思います。
 ドイツ著作権法54条以下で,私的な複製等の補償を目的として,著作物の複製を目的とする一定の機器及び記憶媒体の製造者,輸入者及び販売者に対する報酬請求権が定められています。報酬請求権の法的性質については諸説ありますけれども,54条にいう私的複製補償金は私的複製に対する代償としての性質を有している,こういうふうに考えるのが一般的です。ドイツ著作権法におきましては,私的領域といえども著作権の効力は基本的に及んでいると考えるのでありまして,エンドユーザーに複製を禁止したところで現実的でないとの考慮の下に,実際には許諾を求めないこととしているにすぎません。
 ところでEU理事会は,私的複製に際して,権利者が公正な補償を受けることを条件に複製権を制限することを認めております。したがって,ドイツ著作権法54条が定める「相当なる報酬」も情報社会指令における「公正な補償」として理解されるべきこととなります。近時,欧州司法裁判所におきまして「公正な補償」に言及する判断が示されていますけれども,このような視点から,今後,ドイツ法における「相当な報酬」が情報社会指令に合致するものであるかどうかという検証がドイツにおいても行われるであろうことが推察されます。
 そこで,以下では,私的複製補償金に係るEU理事会の動向,続きましてドイツ著作権法の立法状況を確認することでEU,ドイツでの議論状況を考察することとしたいと思います。
 なお,本報告は,こういった作業を通して外国の制度を無批判に輸入すべきことを提唱するものではありません。我が国の私的複製補償金制度に係る議論の一助となるためにドイツ法を紹介し,ひいては我が国著作権法に内在する課題をかいま見たいというふうに考えておる次第です。
 それでは,レジュメの1のところからお話をいたします。2001年5月22日にEU理事会はいわゆる情報社会指令を採択しました。情報社会指令は,その5条2項におきまして,権利者が公正な補償を受けることを条件に複製権に例外又は制限を規定することができると定めております。
 その後,2011年にはBarnier委員が,Antonio Vitorino前司法・内務問題担当委員に対して私的複製補償金に係る関係当事者の討論のためのタスクを依頼しまして,これを受けて2013年の1月,Vitorino前委員がBarnier委員に提出した勧告が公表されました。この勧告というのは,ECの指令とは異なって法的拘束力はありませんけれども,政治的な影響力は否定できないとされております。
 さて,当該勧告の概要はレジュメの2ページのところに記載したとおりですが,時間の関係で幾つかお話しします。まず1つ目には,権利者に許諾されたサービスにおいてエンドユーザーが私的目的のために行う複製は,私的複製補償金において追加的な補償金を必要とするような損害をもたらすものではないことを明確にすべきことが提言されました。これは具体的に言うと,音楽をパソコンにダウンロードした後にほかの携帯端末にコピーするような場合がここに言っていることに当たるのだというふうな説明がございました。
 次に2番目に,加盟国内における国境を越えた取引においては,補償金はエンドユーザーが居住する国において徴収されるべきこと,それから第3点目に,補償金支払義務は,製造者あるいは輸入者段階から小売者段階に移行されるべきこと,それから,飛びまして第6点目,これは後でお話ししますPadawan事件判決というのがありますけれども,これに関連を有しているものでして,損害を,問題となっている追加的コピーに消費者が付加した有用性,逸失利益としてEUにおいて統一的に定義して,補償金の決定過程のさらなる一貫性が確保されるべきことが提案されました。
 続きましてドイツ法に参ります。ドイツにおきましては,2007年10月26日の情報社会における著作権の規制に関する第2の法律と言われるものによりまして私的複製に対する補償金制度が全面改正されました。この際,法定報酬額に関する別表も廃止されました。
54条の1項は,私的複製に対する報酬請求権の要件を定めています。報酬請求の対象になるのは機器及び記録媒体であって,その類型が単独で,又はほかの機器,記録媒体若しくは附属品と結合してそのような複製行為を行うために使用されるものであるとしております。すなわち,現行規定は旧規定と異なって,録音・録画と複写という区別はしていません。
 また,機器等は53条の1から3項に規定する複製,私的複製の場合は53条の1項ですけれども,これに使用される類型であればよろしいと。例えば,Aさんは実際に使っているけれどもBさんは使っていませんよといった個々の場合でどうであるかは大した問題ではないのだという見解もございます。
 それから,これまでの裁判例から,単体で複製物を作成する機器とされているものは基本的に全て報酬責任のある機器となると思います。ただし,旧規定下の裁判例では,スキャナ,PC,プリンターの機能単位の比較において,スキャナにだけ報酬責任があるとされておりました。すなわち,PC,プリンターについては,旧規定下においては私的複製補償金の適用は否定されていましたけれども,これはほかの機器,記録媒体若しくは附属品と結合して複製行為を行う類型と言えますので,現行規定の下では報酬請求権と無関係とは言えなくなりました。実際,欧州裁判所の2013年の6月27日判決は以下のように判示して,プリンターとPCが互いに接続されている場合は,これらを用いてする複製は当該複製に含まれるとしております。これが富士通とか京セラとかの事例です。
 続きまして2-2のところに参ります。54条1項により義務付けられている相当なる報酬は,情報社会指令5条2項bの「公正な補償」という意味において理解されるべきことになります。
 公正な補償の概念に関連して欧州司法裁判所は先決判決をしましたが,当該概念を解釈するに際しまして,権利者に発生する損害を考慮しております。すなわち,欧州司法裁判所の2010年10月21日判決,これはPadawan事件ですけれども,スペインの権利管理団体とデジタル視聴覚機器のメーカーPadawanとの争いです。これで当事者間にもたらされるべき調和は,私的複製の例外を導入したがために著作者に生じた損害に基づいて,必然的に公正な補償が算定されるべきことを意味していると判示しまして,公正な補償の算定のために権利者に生じている損害に照準を合わせていると言うことができます。
 ドイツ著作権法54条以下の報酬支払は法定許諾の代償と考えるのが通説ですので,54条における補償の概念はこの時点では指令に反するものではないというふうに言えるかと思います。
 続きまして2-3の支払義務者であります。報酬支払義務者について,54b条1項は,機器・記憶媒体の製造者,輸入者,販売者を報酬支払義務者としております。
 私的複製補償金制度における現実の支払義務者が機器の製造者等とされているのは,私的複製者に対する禁止権の行使が現実的に不可能であること,そして,機器等の製造者には,私的複製者に複製機器や媒体を入手させるなど責められるべき私的複製のための貢献を行っている点が考慮されたためであります。
 そしてまた,製造者は補償金に係るコストを価格設定の際にその価格に盛り込むことができるので,これをエンドユーザーに先送りするということが可能な立場にあり,それゆえに私的複製者から製造者に請求権をシフトさせているということには合理性があると言われております。
 この点に関連して,欧州司法裁判所も,公正な補償の責任を負う者は,まずは損害を引き起こした者としてのエンドユーザーであるとしています。公正な補償が目的とする著作権者と使用者の権利ないしは利益の均衡は,私的複製のために賦課金によっても実現可能であるとしております。
 続きまして,3の報酬の額に参ります。54a条は報酬の額について規定しております。旧54d条の法定報酬額に関する別表が廃止されましたことによりまして,報酬額は54a条の基準に従って,関係者間の交渉によって定められることとなりました。関係者といいますのは,例えばGEMAなどの9つの管理団体で構成しているZPÜというところがありますけれども,これが関係者と報酬額を決定するということになります。
 この54a条第1項においては,機器及び記憶媒体が類型として,53条1項から3項までに基づく複製行為のために事実上使用される程度が基準とされるべきことが規定されております。ここに,事実上の使用というのは,経験的審査を経て決定されると説明されております。
 また,技術的保護手段が当該著作物に対して適用される程度が考慮されます。立法理由書によりますと,技術的保護手段が備え付けられた作品が増えれば増えるほど,その分特定の機器でする補償金の対象となる複製の割合は小さくなると説明されております。
 なお,この点につき欧州司法裁判所は,指令6条の意味における技術的保護手段の適用可能性は,5条2項bにおいて企図されている公正な補償の条件を失わせないとしております。
 ちょっと時間の都合で2と3は飛ばしまして,4に参ります。第4項におきましては,報酬は,機器及び記憶媒体の製造者を不当に害してはならないことが規定されています。報酬は,機器又は記憶媒体の価格水準に対して,経済的に相当な関係に立つものでなければならないとされています。
 立法者が製造者を不当に害さないことを考慮すべきとしたのは,機器あるいは記憶媒体の購入者が報酬義務を全く課さないか,あるいは同様の報酬率を課さない外国でこれらを購入することで国内の売上げが害されることを妨げたいのだというふうに説明されております。
 ただし,不当とは何か,つまり,どんなときに経済的に機器及び記憶媒体の価格水準に対して相当な関係が存在しないかは,実務上相当困難な問題になろうとの指摘があります。この点,立法理由書によると,不当に侵害することは,原則として,報酬が機器あるいは媒体の価格水準に対して経済的に相当な関係にないときに限られるとされております。
 かつて,政府草案におきましては,報酬額は機器価格の5%までとするという上限の導入が企図されてはおりましたけれども,結局これは採用されませんでした。それは,これまでに硬直化した報酬規定をフレキシブルな規定と取り替えようという連邦政府の目的設定と矛盾するばかりか,著作権法システムに反して報酬率が強制的に基準になるということでもありましょう。機器,媒体の値段は次第に低下していくものであるから,機器を利用することで手に入る著作権法上の利用価値を計るのに有用な尺度ではないと言われております。
 これに関して面白い比喩をしている文献がございまして,いわく,商品の価格は買物袋の価格とは関係なく定まるのであるというふうな比喩もございまして,なるほどなと思った次第です。
 また,第4項の考慮要素は,相当な報酬の額が機器又は記憶媒体の購入価格から導き出されるわけではないということをも示しております。これは後ほど少し言及しますけれども,我が国の報酬率の決定方法と少し違うところではないかと思います。
 続きまして,既に指摘されているところのドイツ著作権法の問題点です。情報社会指令5条2項bにおける公正な補償が権利者に生じている損害に基づいて算定されるべきとする欧州裁判所の立場と,ドイツ著作権法54a条4項において,今紹介しましたとおり,製造者にとって不当でないことを考慮するいわゆるキャップ制,この2つが両立するかについて疑問が提示されております。確かに欧州司法裁判所は損害の具体的内容には言及しておりませんけれども,仮に54a条の相当なる報酬を損害の填補という点から見るとすると,幾つかの問題が生じ得るということが指摘されております。ここで製造者にとって不当でないことを考慮すると,損害の填補と両立しない場合が生じ得ると考えられているからであります。
 また,製造者が連帯債務者という立場にあるのに,製造者固有の利益が補償を制限するということは正当化され得るのだろうかという問題も指摘されております。
 最後になりますけれども,ドイツ法の考察をして気付いた点を幾つか申し上げたいと思います。
 ドイツにおきましては,私的複製は複製の許諾をするかしないかという自由を奪うものでありまして,私的複製補償金はこういった制約に対する代償として明確に認識されております。対して我が国著作権法におきましては,私的複製の評価それ自体が必ずしも明確にされないままに議論されている面があることも否定できないのではないでしょうか。具体的には,例えば私的複製によって権利者が損害をこうむっているということは当然の前提とされていますけれども,誰が権利者のどのような利益を侵害しているのかが必ずしも明確ではありません。言い換えれば,現在補償金の額の算定基準として定められている機器の価格が権利者のどのような利益を補償しているのかということが必ずしも明確ではないように思います。
 また,ドイツ法におきましては,機器等の製造者等が私的複製者に対して責められるべき貢献をしている者として,補償金の支払義務者に挙げられております。このことは,言い換えれば,ユーザーや機器製造者等の関係者が著作物の価値から直接的あるいは間接的に恩恵を受けているという認識の下に私的複製補償金の役割が位置付けられていると言えます。したがって,いずれかの形で製造者が当該補償金に関連付けられることは合理的な理由があると言えると思います。こういった点から我が国におきましては,私的複製補償金は,単にお金を徴収する装置にすぎないととらえるのではなく,高度な情報化を背景とした著作物利用の果実と負担を関係者がいずれかの方法で分け合う制度ととらえるという視点が必要ではないかなというふうに感じました。
 それから,急速な技術の進歩に私的複製補償金請求権の対象となる機器,記憶媒体や報酬率をフレキシブルに対応させていこうというのが2007年ドイツ法改正の目的の一つでもありました。このような姿勢は,我が国における私的複製補償金請求権においても,その硬直化を防止するという点から参考になるのではないかと思われます。
 非常に雑ぱくですけれども,時間の制限もございまして,報告は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 冒頭の中島専門官からの御説明の中にもありましたけれども,今期の国際小委員会では,この種の比較法的な検討をして,そこから日本法にとって役立つような論点を特定して,もし本当に役立つようであれば別の小委員会に送る,そういうことも課題にしておりますので,一番最後におっしゃったドイツ法が示唆するものというところがこの小委員会としては関心があるところでございます。御説明の中で,なお分からない点,御質問があればしていただき,また,御意見があればおっしゃっていただければと思います。いかがでしょうか。

【作花長官官房審議官】 よろしいでしょうか。

【道垣内主査】 どうぞ。

【作花長官官房審議官】 私の方からお聞きしたいことがあります。まず,きょうは御発表いただきましてありがとうございました。大変参考になりました。
 それで,1ページの下にあります2013年,昨年1月,Vitorino氏が勧告,報告書を提出されたということで,私どもも興味を持って,昨年これが公表されたときにも検討,分析はしたのですが,欧州においてもドイツ,フランスという補償金については優等生の国もあれば,必ずしもそれほどの補償制度を設けていない国もあるということもあり,このVitorino氏の勧告はある意味では,欧州市場における制度の統一化というものも意図されていたような気もします。ただし,問題は,さっきおっしゃったように,法的拘束力はない,しかしながら政治的な意味での尊重を各国に求めるというような性格のものだということですが,1年間たって,Vitorino氏の勧告を踏まえてヨーロッパ各国が何らかの制度の見直しの検討に着手したとか,そういったような情報というのをもしお持ちであれば御教授いただきたいと思います。

【辻田委員】 御質問ありがとうございます。
 これを受けて具体的にどこがどういう議論をしているかというところまではまだつかんでおりませんけれども,特に6番の損害の意味ですけれども,これは時期的に,Padawan事件判決が2010年に出まして,このPadawan事件判決の中で損害に着目するという姿勢が示されて,これを受けてVitorinoの勧告が出ました。この中で具体的な損害については一歩踏み込んだコメントをしております。例外がないとしたら支払うであろう仮定的ライセンス料みたいなものを挙げております。それから各個人のコピーの数から料金を考えるのではなくて,私的複製が権利者にもたらしている全体の数から生じているということを認識すべきだといった基準がありまして,今後そういった方向に進むのではないかと思われます。

【道垣内主査】 いかがでしょうか。どうぞ。

【土肥分科会長】 1点教えていただきたいのですけれども,従来ドイツは定率表のようもので固定化して,それでやっていたということですけれども,それを相当の補償ということで当事者間において,毎年決めていくということになるのではないかなと思うのですが,そういうときに,日本の場合も,決まっているように見えて,定率のように見えて,実は出荷額を幾らにするか等という取引費用,トランザクションコストを当事者は非常に嫌ったという点があるのですが,そういうトランザクションコストという点で,このドイツの制度はうまくいっているのかどうかというのが1つと,当事者間の中で話合いが決まらない場合に,その決まらない場合の担保措置をどういうふうにしているのかということなのですけれども,その2点についてお教えいただければ教えていただければと思います。

【辻田委員】 御質問ありがとうございます。
 まず第1点目の報酬額の決定の仕方ですけれども,トランザクションコストがどのように反映されているのかというところは分からないのですけれども,この報酬額の改定というのは割と頻繁に行われておりまして,毎年というわけではありませんけれども,ものによっては2年ぐらいで改定しているものもあります。
 その決め方が非常に細かくて,具体的には,例えばDVDレコーダー,VHSカセット外付け機能ありなしで分けたり内蔵ハードディスクありなしでパターンがいろいろありまして,それで細かく設定することになっております。それで,これは7ユーロから49ユーロまでの幅で決まっております。 それで,これはZPÜと関係者で決めるんですけれども,これがもし駄目な場合は,レジュメの2ページのところに少し書いてありますけれども,著作権管理法というものがありまして,もし当事者の交渉で決まらない場合は仲裁によって決めます。この仲裁するときに,事実上の使用,経験的審査を経て決めることになっております。レジュメの2の13a条のところに,協議するとあります。あるいは仲裁所の経験的審査を経て報酬額を決定するということでございまして,協議がうまくいかない場合は仲裁所が報酬額を決定するということになっていると思います。

【道垣内主査】 よろしゅうございますか。

【土肥分科会長】 ありがとうございました。
 そうすると,その年度で決まらなかった場合でも,ずっと過去にさかのぼって,決まるまで,仲裁が調うまで相当の補償というのが及ぶということになりますか。

【辻田委員】 御質問ありがとうございます。
 実はそこのところは調べてございませんので,はっきりお答えすることはできません。実際仲裁をしたかどうかというところもまだ調べ切っておりません。文献によると,そこのところまでは出てまいりませんでした。

【土肥分科会長】 ありがとうございました。

【道垣内主査】 そのほかいかがでしょうか。どうぞ。

【作花長官官房審議官】 細かなことはともかくとして,日本の補償金制度の今の状況とドイツあるいはフランスとの状況の決定的な違い,もちろん補償金額が1桁どころか2桁違うというお金の違いというのは大きいのですが,その根底にあるのは,3ページのレジュメの上にあるように,ドイツ等の制度におきましては補償金の対象機器というのが,およそ複製機能を持っている全てと言っていいぐらいの製品を幅広く対象にしていることにあります。ところが日本の場合は,とにかく今一体型の機器ですら駄目だと言われている。つまりアイポッドとかウォークマンとかすら駄目だという強い意見がある。しかも旧来の分離型であっても,DRMが導入されているのだから将来的にはこの制度は縮小・廃止するのではないかというようなことがこの著作権分科会のかつての議論の中で大きな方向性としても出されております。権利者にとってみれば驚くべきことかもしれませんが,それが今の日本の現状だろうと思います。
 一番の大きな違いというのはやっぱり法律を立案する場合の基本的な思想,あるいはそれを支持する国民の一つの見識だろうと思うのですが,なぜドイツにおいてはこういうパソコンやプリンターだといったものについても補償金をかけるということについて国民的コンセンサスがえられているのか,日本の違いというのは根本的に何なのかということについて,もしお考えのところがあればお教えいただきたいと思います。

【辻田委員】 御質問をありがとうございます。
 これは多分に著作権思想というか,そもそも文化に対する考え方というところの基礎が随分違うというふうな感じがします。先ほども少し言及しましたけれども,例えばここに1つの私的複製補償金請求権というものをとってみても,ドイツ法はこれを,ただお金を簡単に取る道具と捉えているわけではなさそうです。DRMが出てくると,そっちでお金を取れるのであれば補償金請求権は不要という選択肢もあるかと思うのですけれども,どうもドイツではそういうことではないようです。立法理由書なども読んでいますと,DRMがあるからといって即報酬請求権を廃止すると考えているのではないようです。 たしかにDRMで対象になっていく複製は減るのだろうけれども,権利者にとってみても,DRMの方を選ぶのか,報酬請求権制度を使うのかということは選択する余地がある。報酬請求権をなくしてしまうと,そういうところの権利者の利益も侵害することになるというふうに書いてございました。
 したがって,権利に対する考え,それからそれに関わる基本的な思想というのもちょっと違うような印象を持ちました。我が国ではそもそも私的複製についても,それ自体がいいのか悪いのかもはっきりさせないうちに,そのほとんどが,権利者はきっと損をしているだろう,だから何かお金を取る道具を考えてみてはどうかというふうに考えたところも否定できないのではないかという印象を持っております。高度な情報化を背景とした著作物利用の利益と負担を関係者間でどのように分担していくのかという視点が必要であるようにも感じられました。

【作花長官官房審議官】 ありがとうございました。

【道垣内主査】 ありがとうございます。
 日本の私的複製の位置付けというのは学界的にはどういう理解なのですか。一般的な日本における理解は,おっしゃるように,本来払うべきものを払っていないのか,あるいはそれは本来の権利なのか。そこの考え方によって大分作りが違ってくるのだろうと思うのですが・・・。

【土肥分科会長】 それは本来の権利ではないのでしょうね。要するに著作権法の立て方からすると報酬請求権というのは支分権あるいは人格権のどれにも当たらないので。本来ということになれば,著作権法が定めている著作者に与えられる著作者の権利の中の一つではない。その外に著作権者が獲得した,そういう権利であるというふうに著作権法上は位置付けられているのではないかと思うのですけれども。

【道垣内主査】 済みません。私が伺ったのはその前のところで,私的に利用する権利なるものが天賦の権利なのか,それとも本来払うべきものを払っていないのかという点です。

【土肥分科会長】 複製という意味ではもちろん本来的な支分権の一つ。

【道垣内主査】 著作者の複製権を侵害している,ということですね。

【土肥分科会長】 はい。損なうおそれがあるということなのでしょうが,もともとはそこからスタートするのだろうと思います。

【道垣内主査】 そうなのですか。

【作花長官官房審議官】 よろしいでしょうか。

【道垣内主査】 どうぞ。

【作花長官官房審議官】 主査の御質問というのはある種永遠の議論が続く課題なのですが,そこは論者,完全に分かれていまして,そもそもこの補償金というのは例外的にもらうものではなくて,本来権利が働くべく複製行為について我々は取り戻したのだというのが権利者側の一つのスタンスです。条文の立て方の問題でもあるのですが,21条で複製権が規定されて,原則全ての複製に働く。30条で例外的に私的使用目的の複製を制限している,更にその例外で補償金制度を設けている。だからこの補償金制度というのは本来のものを例外の例外で取り戻したのだというのが権利者の方々が主張されることだと思います。他方,もともとこの知的財産の世界というのは,誰にどういう権利を付与するか,まさに政策で決定する,その結論であるという考え方もあります。つまり,国民の信託を受けた国会の一つの判断としてどの範囲まで創作者に権利を与えるかという政策判断の問題なのだということです。あくまでも国民合意の下に,それに対して権利者が権利請求していいかどうかは決定すべきであるという意見です。
 ただ,ここは幾ら議論していっても恐らく結論が出なくて,永遠に議論し続けるということになるので,我々としては,そこの哲学論に踏み込むことなく,現実的にどういう制度を構築すればそれぞれの関係当事者の方々がそこそこに御納得いただけるような制度を構築することができるのかということ,そして,更に言えば,日本のいろいろな音楽なり映像文化の発展のインフラとなるような制度としてどうあるべきかと。そういったところから考えていかなければいけないのかなと,そういうふうに思っております。

【道垣内主査】 確かに文化庁としてはそれでいいのだと思うのですが,著作権の在り方としてどうなのでしょうか。辻田委員の御意見は,むしろ根本がはっきりしていないところに混迷があるのだということであろうと思います。ドイツは,先ほどおっしゃったことからすれば,取戻しの権利が当然あるというところからスタートしているのに対して,日本は必ずしもそうではなく揺れているところに問題があるということではないでしょうか。その辺をもう少し御説明いただけますか。

【辻田委員】 ありがとうございます。
 なかなか難しい問題で,一番最初に考えるべき問題ですけれども,審議官がおっしゃったように議論の多い問題でもあるので,非常に難しい問題だというふうに認識しております。
 ただ,ドイツ法のように考えると,非常に読んでいて分かりやすいのです。日本法の場合は,さて,そもそも根本的なというところがきっちりと整理できないというふうに思います。日本的に何となく雰囲気を共有していて,結果オーライならいいというところもあるように感じます。それはそれでいいのかもしれないけれども,理念的にちょっとすっきりしない,そういう印象があります。
 東芝の補償金請求権の事件がございましたけれども,あそこで,メーカーは協力義務者になっています。裁判所は協力義務者と書いてあるだけで,はっきり具体的な協力義務は書いていないから強制できないのだという話がございましたけれども,はて,そうすると補償金請求権制度というのは土台から崩れていってしまうのではないか,だからもうちょっとはっきりした方がいいのではないかなという印象を持って,課題が多いなというふうに思っております。今後も研究を深めたいと思います。ありがとうございました。

【道垣内主査】 上野委員。

【上野委員】  私的複製というものは本来自由なのか,それとも権利の対象なのかという点については,先ほど審議官がおっしゃったとおりで,いろいろな考え方があると思います。私も最近ジュリストに書いたのですけれども,私的複製は本来自由であって,権利者に報酬を支払う必要もないのだという考えから出発いたしますと,補償金制度はこれによる損失を補償して創作等活動を支援するという政策目的を実現するために設けられた制度にすぎないと理解されることになりますし,他方,私的複製というのは完全に自由ではなく,権利者は報酬を受ける権利を有するのだという考えに立ちますと,補償金制度は政策目的の如何にかかわらず,権利を実現するものとして正当化されることになります。そういう意味で,両方の考え方があると思っております。
 権利と言うと,どうしても排他権ととらえがちですけれども,私的複製が権利の対象だというとしても,その意味は,排他権ではないとしても報酬を受ける権利は与えられるべきだという理解もあるところでありまして,ドイツなどではそのように捉えられているのではないかと思います。
 日本でも旧法では,私的複製が許されるのは「器械的又ハ化学的方法ニ依ラスシテ複製スルコト」が要件となっていましたので,機械的複製は私的使用目的であっても許容されていなかったのですけれども,現行法に変わるとき,この手段要件を一律廃止して,それから長い時間がたつうちに,いつの間にか私的複製というのは無許諾かつ無償で行うことができるというのが何となく自明の出発点と捉えられることが多かったのかもしれないと思っております。
 ただ,それでも日本の補償金制度とヨーロッパの補償金制度が,どうしてこうも違うのかというのはあります。私もドイツにおりましたときに,補償金制度について議論する機会がありましたけど,ドイツでは,ブランクメディアのみならず,文献コピー機,携帯音楽プレイヤー,スキャナ,PC,USBメモリなども対象になっておりますので,日本の補償金制度についてお話をしますと,日本では私的複製一般ではなく,録音録画だけですからコピー機は対象になりませんよという話になる。また,録音録画といってもデジタルだけですからアナログ機器は入りませんと。更に,デジタルであっても汎用機は対象外ですからPCなどは含まれませんと。しかも,デジタル録音録画専用機であっても政令指定されていなければ対象になりませんので指定されていないiPod等も支払義務はありません,などと言うと,ドイツ人には非常に驚かれるわけです。
 もちろんその是非については議論のあるところですから,必ずしもドイツが理想だというわけではないのですけれども,そうした違いの根底に何があるのかということについては,先ほど審議官からもお話もございましたが,私自身もたしかに様々な要因があり得るだろうと思っております。ただ,ドイツの場合は,国民的コンセンサスというよりも,飽くまで憲法上の基本権として,私的複製から一定の報酬を受ける権利が著作者に保障されなければならないと考えられているのではないかと思います。実際のところ,ドイツにおけるプリンターとプロッターに関する事件も,今日の辻田先生の御報告では特段御紹介がありませんでしたが,もともと欧州司法裁判所に行く前に,連邦通常裁判所(BGH)が,これらの機器について補償金支払義務を否定する判決を下したのに対しまして,権利者側が憲法裁判所に憲法訴願を行った結果,憲法裁判所が,著作者の基本権としての財産権保障の観点からBGHの判決を破棄したというものです。我が国では一般に,私法関係において憲法が議論されること自体が少ないように思いますので,その点からして異なるのかもしれないと思っております。

【道垣内主査】 では,ここでは結論を出す場ではないと思います,また,時間の関係もございますのでこのあたりまでにしたいと思いますどうもありがとうございました。
 それでは,次の第4の議題ですが,本年度の国際小委員会の審議の経過についてでございます。著作権分科会への報告が必要ですので,その取りまとめの案を事務局で作ってくださっています。資料5です。これについてまずは御説明いただけますでしょうか。

【中島国際著作権専門官】 それでは,資料5に基づきまして,本年度の国際小委員会における審議状況について御報告させていただきます。
 まず初めに,今期の課題ですけれども,全部で4つありまして,1つ目がインターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方ということ,2つ目が著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,WIPOの関連です。3つ目が知財と開発問題,フォークロア問題への対応の在り方,こちらについてもWIPOの関連です。それから,4つ目の課題といたしまして主要諸外国の著作権法及び制度に対する課題や論点についてということになっております。この4点について今年度審議させていただきましたが,それぞれについて簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず1つ目,2ポツの審議の状況というところですけれども,1つ目としてインターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方ということで,これは2つのポイントでまとめさせていただいております。1つ目が国境を越えた海賊行為に対する対応ということで,先ほど佐藤の方から御報告申し上げましたが,侵害発生国における海賊行為への取組等を把握するために韓国と政府間協議を行いました。その中で,韓国の取組やスリーストライクの運用状況などについて報告させていただきました。
 また,昨年度の著作権分科会の報告書において,個別の権利者では正確な侵害の実態を把握するのが難しいということが言われましたので,それに基づきまして,中国で日本のコンテンツに係る著作権侵害の実態調査を実施しましたので,その結果を報告させていただいております。
 この調査ではいろんなことが報告されたのですけれども,その中で,我が国の著作権者が中国の動画投稿サイト上の違法コンテンツの削除要請や市場における海賊版の一斉取締りに取り組んでいて,この点が一定の成果を上げているということも報告されております。
 これを受けまして政府としては,この知見を踏まえて,より実効的な海賊版対策の実施を要請することが必要であり,特に動画投稿サイトに対する削除要請等においては,権利者がまとまって権利行使するということが一定の効果を上げているということから,この取組を引き続き支援していく必要があるというふうに考えております。
 また,不正流通対策の一つとして正規版のコンテンツの流通を進めていくということが大切になってくるのですけれども,この問題についても,中国で様々な阻害要因があって正規版コンテンツの流通がうまく行われていないという状況も報告されておりますので,今後どういう取組をしていけばいいのかというのを検討していくということとさせていただいております。
 2つ目のポイントとして,政府間協議の対象国拡大に向けた取組ということで,海賊行為への対応の在り方として,23年1月の分科会報告書あるいは平成24年度第4回小委員会において,政府間協議の対象国を拡大すべきであるということが報告されております。
 また,知的財産政策ビジョンという昨年の6月に策定されました資料におきましても,新興国における著作権のエンフォースメントを推進することが課題の一つとして挙げられております。
 これを背景としまして文化庁では,アジア著作権セミナーという複数国向けの取組と2国間協議の2つの事業を進めております。
 まず,アジア著作権セミナーについては昨年の3月に開催させていただいておりまして,そのとき同時に参加国との2国間協議も行わせていただいております。この中で,参加国に共通する課題としましては,デジタル環境における著作権保護や海賊版対策,著作権普及啓発の向上であるという報告があり,また,これに加えて,著作権集中管理の必要性に対する認識が高まっている一方で,その制度整備や管理事業者の育成において多くの問題が存在しているという報告がなされております。
 2国間取組につきましては,このほかにも,平成25年度の協力事業として,インドネシア知的財産総局長及び著作権担当局長の日本への招へい,ベトナム著作権局長の日本への招へいなどの取組を進めておりまして,先ほどもインドネシアとのトレーニングセミナーの開催についても報告させていただいております。これらを通して,総じて著作権の集中管理に係る協力のニーズが共通して高いという認識をしております。
 次のページに行っていただいて,これらを踏まえまして,今後の著作権分野における協力事業としましては,これまでの成果及び対象国の要請を踏まえて,海賊版の取締り,権利執行の支援,集中管理の強化,普及啓発の向上に対して継続的な支援を行っていきたいというふうに考えております。
 続きまして2つ目の大きな話題としまして,著作権保護に向けた国際的な対応,WIPOの関連ですけれども,まず1つ目が,マラケシュ条約の採択について書かせていただいております。背景としましては,著作権の制限と例外に関する規定は各国にあるわけですけれども,これらの規定についてはこれまで国際的な統一ルールは存在していなかったという背景を基に,途上国から,こういった国際的な著作権保護システムをもっと利用者を重視したものにすべきであるという主張がなされたということもあり,2005年から権利の制限と例外に関する議論が開始されております。
 いろいろ議論された後,視覚障害者等に関する権利制限と例外について議論が進みまして,次のページの頭にありますように,2003年の6月末にマラケシュにおいて,視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約が採択されております。内容としましては,そこに5つ挙げさせていただいておりますけれども,こちらについては,既に御説明させていただいておりますので省略します。
 この条約が採択されたことについての意義ですけれども,視覚障害者に関する権利制限について国際的規範が定められたということと,利用しやすい形式の複製物の国境を越えたやりとりが円滑化されることにより,我が国の視覚障害者等の皆さんもそうですけれども,世界中のこういった人たちの著作物へのアクセス環境が改善されることが期待されるという点にあると思います。
 政府の取組としましては,今後はAuthorized Entityをどうするかという点や,肢体不自由者のための複製についても権利の制限と例外とするような著作権法の改正などの点を含め必要な作業を進めて,条約を早期に締結することが望まれるとさせていただいております。
 それから2つ目のSCCRにおけるほかの議論ですが,まず1つ目は放送機関の保護で,こちらについては,先ほど報告させていただいておりましたので,細かい話は省略させていただきますが,7ページ目に移っていただいて,アンダーラインの引いてあるところですけれども,この議題につきましては,我が国や米国,EUだけではなく,南ア,メキシコなどの途上国側も前向きな姿勢でありまして,先ほどの議論の中にもありましたが,技術の発展に条約がついていけるかどうかという問題もありますので,早期の外交会議を目指して引き続き活発に議論が行われていくということが期待されているところ,我が国としても引き続きこれに積極的に関与していきたいというふうに考えているとさせていただいております。
 その次,その他の権利の制限と例外については,図書館とアーカイブ及び教育機関と研究機関についての権利制限と例外についてSCCRで扱われておりますが,こちらについては,先進国と途上国との文書に対するスタンスから大きく違っているということで,なかなかコンセンサスが得られないという状況が続いております。
 基本的にはこれらの議論については,我が国としましては,引き続き従来どおりスリーステップテストの考え方を踏まえて,適切な議論を行うことが必要であるという方針に基づいて,国際文書を作成する場合には柔軟な対応ができるようなものにしていくよう議論を進めていきたいというふうに考えております。
 (3),次,フォークロアに関する問題ですけれども,これも権利制限と例外と状況的にはほぼ同じでして,2つ目の段落から,第7回IGCで作成されたテキストに基づいて議論が行われているわけですけれども,目的,保護対象,受益者,保護の範囲,権利の制限と例外などについて議論が行われているのですが,議論をするたびに論点が増えていくという形になって,まとまらないという状況になっています。
 この中で,途上国側は受益者により強い権利を与えてほしいと言っているということと,早期に具体的な次期予算年度に外交会議を開催することなどを主張しておりますが,これについては,先進国側は,フォークロアはパブリックドメインに帰しているため,これらの利用との関係から権利を与えることには慎重であるべきということで,外交会議の開催についても慎重であるというスタンスを続けております。
 これについても我が国は,フォークロアの保護の取組については,それぞれの国が地域の文化や特性に合わせて柔軟な対応ができるようにするべきであると考えておりまして,この方針に基づいて引き続き行われていくことが見込まれるIGCを含めた国際的な議論の動向に留意して,これに参画していくことが必要であるというふうにさせていただいております。
 続きまして4つ目ですが,こちらについては主要諸外国の著作権法及び制度に関する課題や論点整理ということで,第1回目の国際小委員会では,潮海先生から権利者不明著作物の扱いについて御報告を頂いております。文化遺産としての書籍の保護だけでなく,それを電子図書館等の形で利用ができるようにしたいというふうな動きが出てきているということで,その中で孤児著作物の問題がクローズアップされるようになってきていますと。
 米国では,グーグルブックサーチプロジェクトについては,著作物の75%を占めると言われる権利者不明著作物の扱いについては,著作物権者が利用許諾しないことを告知しない限りは原則利用許諾されたとみなすことが果たして問題なのかどうか,そういう点が議論されているということが紹介されております。
 また,EUの方でも孤児著作物指令が出て,著作者を発見できないような場合には,一定の条件を満たせば,その著作物について,図書館等の公共機関による公衆送信と一定の目的の複製行為が許されるよう権利の制限又は例外を設けることが定められているといったことが紹介されております。
 続きまして書籍電子利用法,こちらについては井奈波先生から御報告いただいております。フランスにおける電子書籍関連の動きとして,2012年3月に公布された20世紀の入手不可能な書籍の電子利用に関する2012年3月1日法について報告されております。これについては,フランスの図書館で入手不可能な20世紀の書籍のデータベースを整備して,登録された書籍について,集中管理団体が利用者に対してデジタル方式による複製と配信に関する利用許諾を行って,利用者から利用料を徴収し,著作者と出版社にその徴収した利用料を分配するという制度であるといったようなことが報告されております。
 あと,本日御報告いただきました辻田先生のドイツにおける報酬請求権制度につきましては,この後,後ほど補充させていただくということで対応させていただきたいと思っています。報告書の内容は以上です。

【道垣内主査】 追加でしょうか。佐藤課長。

【佐藤国際課長】 一点補足をさせてください。3ページの海外協力の下から3つ目のパラグラフですが,今年度の後半,平成26年度に,マレーシアで,JASRAC,レコ協,CPRAの協力を得ましてクアラルンプールで集中管理に関するセミナーを実施するということと,また,3月末にベトナムの著作権局長の招へいも予定しております。この事業等につきましては,終了後改めてまた御報告させていただきます。以上でございます。

【道垣内主査】 ありがとうございました。
 この審議状況についてはこの小委員会の責任でまとめるべきものです。今御説明頂いていたのは案でございますので,委員の皆様の御意見に基づいて加筆修正その他させていただくことになります。丁寧に事実の経過を書いていただいているので相当長くなっておりますが,アンダーラインを引いていただいているところが意見の部分です。事実の記載の部分は間違いがなければそこはそのとおりにさせていただいくことにしまして,ここでは,意見としてこれで良いのかという点について御意見を頂けますでしょうか。
 最後のところ,比較法についての4番目のところですが,これも最終的には意見のようなものが付くということになりますでしょうか。

【中島国際著作権専門官】 こちらについては,基本的に外国の制度の紹介という形で書かせていただこうというふうに考えております。ですので,意見というかそういうものは。

【道垣内主査】 アンダーラインが付くようなことは予定していないということですね。

【中島国際著作権専門官】 はい。

【道垣内主査】 それで良いかということも含めて御検討いただければと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

【土肥分科会長】 いいですか。鈴木主査代理にお尋ねいただいた方がいいんだろうと思うんですけれども,9ページの上4行のところなんですけれども,我が国は従来,以下のような方針であるがというところなんですが,ここは文化財保護の取組で対応するというのが従来よく伺っていたところなんですが,不正競争防止法等というのは,我が国もそういう対応でいくという方針を言っているのでしょうか。だから,私は委員ではないので鈴木主査代理の方から聞いていただいた方がいいのかもしれませんが,そこを確認していただければと思うんですが。

【鈴木主査代理】 私もちょっとここで不競法が出てきたのは少しひっかかったのです。もう既にいろいろな政府の対処方針とかで出ているのであれば別にかまわないと思うんですけれども,推測としては,例えば原産地とかの2条1項13号ですか,あれとかの関係でその文化に関わるようなものを何かビジネスに使って誤認を招くとか,そういう関係というのはあり得るのかなとは思うのですけれども,では私からも確認をさせていただければと思います。

【中島国際著作権専門官】 基本的には今,鈴木先生がおっしゃっていただいたような観点で,不正競争防止法も若干関わるところがあるのかなということで今書かせていただいております。

【道垣内主査】 そのほかいかがでしょうか。細かい表現ぶりでも,どこでも結構でございますので。
 すごくつまらないことですけれども,5ページのアンダーラインのところの前は1行空くのですよね。もう一つ,アンダーラインは残るのですか。

【中島国際著作権専門官】 最終的には消した状態で提出させていただきます。

【道垣内主査】 そのほかいかがでしょうか。
ほかの小委員会のフォーマットに合わせるということだとそうなるのだと思いますが,アンダーラインがある方が読みやすいですよね。小項目もゴシックにしてくれた方が読みやすいですよね。内容について委員の方々から何かございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 もし必要な小さな修正があれば,それはお任せいただき,修正後のものを次回の著作権分科会にこの小委員会の審議結果として報告させていただきたいと思います。御了解いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】 ありがとうございます。
 それでは,5番目の議題が残っていまして,これは「その他」です。何かこの際委員から御発言,御提言があれば,いかがでございますか。よろしゅうございますか。
 特にございませんようでしたら,本日の会議はここまでにしたいと思います。

 本日は今期最後の小委員会ですので,事務局からできれば一言御挨拶いただければと思います。

【河村文化庁次長】 文化審議会の委員は毎年の選任という形になっていることから,毎年会議が変わっていくということになっております。今期の著作権分科会国際小委員会が本日が最終日でございますので,一言御礼申し上げたいと存じます。
 今期のこの小委員会,前回の期に引き続きまして,先ほど来御紹介がありますように,主要諸外国の著作権法制度に関する課題,論点の整理,それから2つ目にはWIPO等における最近の動向の報告とそれについての御審議,そして3つ目に国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方という問題についてお諮りをしたり御審議を頂いたりということをしてまいりました。
 最初の諸外国の著作権法に関して,きょうも辻田先生からの御発表ありがとうございました。これまでにも,潮海先生からは欧米諸国における孤児著作物関連の動向について,また,フランスにおける書籍電子利用法の導入については井奈波先生に大変詳しい御発表を頂きました。また,皆様から御意見,御示唆を頂きましたことにこの場をかりて御礼申し上げます。
 WIPOでの議論については,視覚障害者等のための権利制限と例外に関するマラケシュ条約が昨年6月に採択されたこと,また,放送条約についても,我が国の提案を契機に議論が活性化してきているところでございますけれども,これらについては引き続き政府全体として積極的に対処をしてまいりたいと存じます。
 それから,2012年に採択をされました視聴覚実演に関する北京条約がございました。これについては,現在外務省において,今国会,今開かれております通常国会に提出する方向で検討中であると存じております。文化庁においても,北京条約の実施のために必要となる著作権法上の整備がございますので,この改正の準備を進めております。
 更にまた,海賊版対策でございますけれども,中国における著作権侵害の実態やアジア諸国との2国間協議等についての御報告をさせていただきました。これらについても先生方からのまた御知見を頂きましたことに感謝申し上げます。
 著作権につきましては,ここにお集まりの皆様方共通の感覚であるかと存じますけれども,国際的に常に大きな動向がございます。これからも私どもとしても継続的に注視をしてまいりますし,また,先生方からの引き続きの御示唆を賜れればと思っている次第でございます。
 委員の皆様方におかれましては,この委員会の進行に御参画をくださり,また,様々な御協力を頂きましたこと,お忙しい中にもかかわらず足をお運びいただきましたことに改めて御礼を申し上げたいと存じます。
 これをもちまして今期の皆様方の御尽力,御協力への感謝の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【道垣内主査】 どうも御丁寧な御挨拶ありがとうございました。
 それでは,第3回国際小委員会はこれで終了いたします。本日はどうもありがとうございました。

○11:54閉会

―― 了 ――

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