文化審議会著作権分科会
国際小委員会(第2回)議事録

日時:
平成26年11月14日(金)
10:00~12:00
場所:
都道府県会館402号室
  1. 開会
  2. 委員及び出席者紹介
  3. 議事
    1. (1)WIPOアジア太平洋地域ワークショップについて
    2. (2)著作隣接権分野の集中管理における今後の協力に向けて
      1. 1.実演家の権利の集中管理-国際的管理の仕組み-
        2.レコード製作者の権利の集中管理と違法対策について
    3. (3)マンガ・アニメ・ガーディアンズ・プロジェクトについて
    4. (4)WIPO等における最近の動向について
    5. (5)その他
  4. 閉会

配布資料

【道垣内主査】  10:00になりましたので,ただいまから文化審議会著作権分科会国際小委員会の第2回会合を開催させていただきます。本日は御多忙中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日の会議の公開につきましては,予定されている議事の内容を参照しますと,特段,非公開とする必要はないと思われますので,既に傍聴の方には入場いただいているところでございます。この点,御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】  ありがとうございます。
 それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴の方にはそのままお座りいただくということにしたいと思います。
 初めに,議事に入る前に,前回御欠席のため今回が本年度初めての小委員会御出席となる委員の方々を御紹介させていただきます。3人の方がいらっしゃいます。
 上野達弘委員。

【上野委員】  上野でございます。よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】  大楽光江委員。

【大楽委員】  大楽でございます。よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】  北澤安紀委員。

【北澤委員】  北澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【道垣内主査】  北澤先生は新規の委員でございます。
 続きまして,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【中島国際著作権専門官】  それでは,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第を御覧いただければと思います。まず,資料1といたしまして「著作権・著作隣接権に係るアジア・太平洋地域ハイレベル会合について(報告)」という資料がございます。それから,議題2として2つありまして,2-1,「実演家の権利の集中管理-国際的管理の仕組み-」,芸団協・CPRAの御発表資料になります。それから,「レコード製作者の権利の集中管理と違法対策について」,こちらは日本レコード協会の御発表資料となります。続いて,3-1としまして「マンガ・アニメ海賊版対策“Manga-Anime Guardians Project”概要」,経済産業省の御発表資料となります。それから,3-2といたしまして,「Manga-Anime Guardians Project中間報告」,こちらは一般社団法人コンテンツ海外流通促進(CODA)の御発表資料となっております。そして最後に,資料4といたしまして「世界知的所有権機関(WIPO)等における最近の動向について」となっております。あとは,参考資料といたしまして,国際小委員会の名簿,「小委員会の設置について」という資料,それから,机上配付ではございますが,第1回目の国際小委員会の議事録という形になっております。資料が足りないなどございましたら,事務局にお申し付けください。
 以上です。

【道垣内主査】  よろしゅうございますか。
 それでは,議事に入りたいと思います。
 本日の議事次第でございますが,これは配付されておりますように議題は5点ございます。
 まず,議事の第1のWIPOアジア・太平洋地域ワークショップにつきまして事務局より御説明いただき,その後,委員の皆様から御意見を頂きたいと存じます。それでは,よろしくお願いいたします。

【堀尾海賊版対策専門官】  それでは,資料1に基づき,著作権・著作隣接権に係るアジア・太平洋地域ハイレベル会合につきまして報告させていただきます。
 まず,この会議の開催目的でございますが,これは毎年,文化庁の方からWIPOに拠出金を出しておりまして,その拠出金をもってWIPOの協力を得て,アジア地域を中心に著作権制度整備等を目的とした地域会合を実施しております。今年度は少しハイレベルの方をお呼びして東京で本会合を開催いたしました。会議には24か国の著作権部局の代表に出席いただきまして,各国における著作権・著作隣接権に関する課題を含め,政策・戦略についての意見や情報交換を行い,各国における著作権保護の強化とアジア・太平洋地域におけるネットワークの促進を目指して開催をいたしました。本年10月27日から30日,新宿の京王プラザで行っております。
 参加国につきましては,3.に書いてございますアジア・太平洋諸国のほとんどの国の24か国から参加いただきました。
 プログラムにつきましては,3ページ目の別紙1にございますが,まず1日目は,国内の関係者にも公開という形で,一般的な報告というか,WIPOと文化庁から発表を行い,その後,トピック3として文化的所産への経済価値の付加,著作権の重要性を認識してもらうという観点から,海外の専門家2名の方に御発表いただいております。トピック4については,アジアと太平洋地域で頑張っている国の成功例ということで,サモアとマレーシアの方から報告をいただいております。
 2日目については,カントリーレポートということで参加国からそれぞれ発表いただきまして,最後に三つのグループに分かれて各国の状況についての議論を行いました。
 3日目は,全体で,WIPOと事前に打合せをした際にこの地域の主な課題として出た集中管理と普及啓発をテーマとして,日本側と,太平洋地域で活動を行われている海外の専門家から具体的事例を発表いただいております。その後,普及啓発としてもう1人の海外の専門家と,ASEAN知財計画で行っているアニメーションコンテストの担当であるタイの方から発表を頂きました。午後からは,文化庁からWIPOに出している信託基金のAPACE事業が本年で20年を迎えますので,これまでの活動について,文化庁とWIPOから少しこれまでの活動を振り返ってということで発表を行い,その後,全体でもう一度議論を行うとともに,グループディスカッションも入れながら,今後どういった支援が必要かという議論を行いました。
 4日目,最終日につきましては,ずっと会議室での議論が続いておりましたので,外に出て少しビジュアル的な要素を入れて,日本放送協会と東京国立博物館を視察し,凸版印刷のバーチャルシアターを見学させていただいております。また,今回は国内の関係団体の資料を提供いただきまして,コーヒーブレークなどの場所を活用して,日本の各団体が行っている著作権保護に関する取組についての紹介等を行いました。
 2ページ目の裏に戻りまして,会議における主な論点として少し結果をまとめております。まず,全体会合を通じて参加者から出された成果としましては,こういった地域での取組についての活動を情報共有することは非常に重要だということです。参加している方々はそれぞれ各国で著作権保護について取り組んでおられますが,なかなか国内,上の方や一般の方からの理解が得られない等,何らかの課題を抱えていらっしゃるということが発表された中で,こういった地域での取組や他国での取組を情報共有することで,もう少し自分たちも頑張らないといけないというような発言もありました。そういった意味でも,この地域会合というのはある一定の成果を出したのではないかと思います。
 また,各専門家や日本の発表から,著作権保護の重要性についての認識を改めて深めていただいたと思っております。各カントリーレポートでの発表におきましては,まだアジア・太平洋地域では著作権に関する条約についての未加盟の国が多いのですが,そういった未加盟の著作権関係の条約締結について前向きに考えているというような発表もございました。その状況につきましては,別紙2に現在の締結状況と,カントリーレポートから抜き出したものでございますが,今後,どういった条約への締結を考えているかを備考の欄に少しまとめてございます。
 カントリーレポートでの発表と,「著作権担当部局の役割について」というテーマでグループディスカッションを行い,各国・各グループいろんな課題が出てきましたが,その中でも共通した課題として出てきたものを[2] で挙げさせていただいております。法整備やその強化や,まだ執行機関である税関や警察との連携が取れていないという課題も結構多くの国から出されておりましたので,著作権・著作隣接権侵害への執行体制の強化や,あと集中管理団体の育成・強化・モニタリングと,関係機関・団体との連携などが挙げられました。次の著作権保護に関する人材の不足については,アジア諸国と太平洋諸国ではかなり状況が違っているということも,今回の議論の中で出てきており,特に太平洋諸国の方については人口が少ないということから,著作権を担当する部局の人が1人,2人しかおらず,どうしたらいいかというような課題も出されました。このような状況の違いもあるため,グループについては大平洋州とアジアを二つに分けて,合計三つのグループでディスカッションをしております。また,著作権保護に対する意識の低さ,理解不足というところが課題としてほとんどの国から出されております。この点については,一般の方の理解不足だけでなく,執行機関とか関係機関の職員に対する普及啓発ということも課題として出されました。
 こういった議論を受けて最終日に出された,今後のWIPOによる技術協力に対する要望は,[3] にまとめておりますが,研修を行う専門家や担当部局職員への研修,また,集中管理団体設立のための研修,執行管理機関(税関や警察等)との連携や執行体制の強化,そして普及啓発,あと今回のような地域会合に加えアジア・太平洋地域全体だけでなくサブリージョナルでのネットワーク会合というのも今後開催してほしいという意見も出されております。
 こういった要望を受けて,今後,WIPOと議論を行い事業を実施していきたいと思っております。なお,会議については,今回のプログラムの構成により大体この会議に対する期待というのは満たされたという意見が多かった中,もう少し日数を増やしてほしいというような要望が出ておりました。3年前にも東京で一度,地域会合を行っており,その時から少し参加国が増えていたので,前回は2日半だったところを今回は4日間に延ばしたのですが,参加国が増えるとそれだけカントリーレポートの時間も取られるので,やはり参加者からは時間が足りないという要望がありました。全部をカバーするのはかなり厳しいのですが,今後,今回出された課題や要望等を踏まえ,地域会合をどのように進めていくかということをWIPOとも相談したいと思っております。また,文化庁で国内の関係団体の方にも御協力いただいて,東京特別研修や集中管理団体の研修等のほか,二国間での協力というのを進めておりますので,それらをうまく活用しながら,引き続きアジア地域における著作権保護の促進を図ってまいりたいと思っております。
 また,今回,著作権保護については大分理解が進んでいる国が多かったのですが,まだ著作隣接権については少し整備が遅れているとか,まだ理解されていないという意見も出ておりましたので,その辺りも含めて今後取り組んでまいりたいと思っております。
 以上です。

【道垣内主査】  今の御説明を踏まえまして,何か御質問,御意見いただける点ございますでしょうか。制度構築,人材育成というなかなか目に見えないところに,長年,日本はお金を出しているという立派な国だと思いますが,この20年間を振り返って相当進展しているという感じですか。

【堀尾海賊版対策専門官】  そうですね,今回の会合における課長の佐藤からの発表においては,始めた1993年の当時はWIPOへの加盟というのがアジア・太平洋地域では19か国だったのが,現在では32か国に増えていると説明しています。また,ベルヌ条約についても,締結している国が当時は11か国だったのが,現在は25か国に増えているということでも,ある程度進んでいるものと考えております。

【道垣内主査】  分かりました。
 もう1点よろしいですか。別紙2のところで目立つのは,人口が多い国ですとカンボジアです。カンボジアはベルヌ条約に入ってなくて,かつ備考のところにも何も書いてないわけですが,余り熱心ではないということですか。

【堀尾海賊版対策専門官】  いえ,カンボジアの方も,カントリーレポートとして紙では出てきてはいないのですが,本年,WIPOと協力してナショナルセミナーというものを行った際には,先方でも今後きちんとやっていきたいというような要望は出ておりますので,決してやってないわけではなくて,一応努力はされていると考えております。

【道垣内主査】  分かりました。ほかにもあるでしょうけど,人口が多い国でしょうから重要かと思いました。
 何か補足していただくことがありましたら,どうぞ。

【佐藤国際課長】  私は1990年代の後半にもこの仕事を1回やったことがありますが,その時は,ある意味整備状況はどこの国も同じレベルかなと思いました。その後,経済的発展等で,中国,韓国というのは大分法制面も含め整備が進みました。その後にASEAN諸国のマレーシア,インドネシア,タイ,ベトナム等々も続き,各国とも権利保護のレベルや著作権の普及啓蒙をしていかなければいけないとか,海賊版も短期的にもしっかり対応しなければならないと考えて,そういう意識の段階に応じたグループ分けが少し出てきたので,それぞれのニーズや状況に応じてきめ細かく今後対応していかなければいけないのではないかと思いました。二国間あるいはWIPOとの協力事業の中で効果的なプログラムを考えていく必要があると思っております。

【道垣内主査】  ありがとうございました。
 ほかによろしゅうございますか。それでは,議題の1番はこれくらいにいたしまして,議題の2番,著作隣接権分野の集中管理における今後の協力に向けてという議題でございます。海外において著作権者・著作隣接権者の権利保護強化への取組をしていくに当たって,現状把握ということから,本日は,実演家及びレコード製作者の分野の権利の集中管理の現状について国際的な観点を中心に御発表いただきたいと思います。
 まずは,この議事次第にもあります2-1で,実演家の権利の集中管理について,芸団協の増山事務局長から御発表いただき,その後,議論をしていただきたいと思います。
 では,よろしくお願いいたします。

【増山事務局長】  芸団協の増山でございます。おはようございます。今日は,実務の観点から実演家の権利の集中管理,国際的にどのような仕組みの中で行われているのか簡単に説明をいたします。
 お手元に資料があるかと思いますが,その資料に沿って,まずこの仕組みの一番基本のところについてお話をいたします。
 2ページ,国際組織というところがございますけれども,御存じのように,実は実演家の権利は人格権,許諾権,そして報酬請求権という,基本的に三つのカテゴリーの権利があります。集中管理が行われているのが主に商業用レコードの放送二次使用料の報酬の部分でございます。世界各国でこのような制度を有する国と全くこのような制度を有しない国というのは分かれておりますけれども,現在,アメリカ・ヨーロッパ諸国を中心に,アジアでは日本,韓国,そしてフィリピン,マレーシア,間もなく多分インドネシアも入ってくると思いますけれども,こういった国々では,実演家の商業用レコードの報酬請求権について集中管理の制度を持っていると思います。
 その中で1986年,ここの資料に書かれているように,主に当時はヨーロッパ中心で集中管理団体の幾つかが集まってSCAPRという,日本語では実演家権利管理団体協議会という組織を立ち上げました。当時は,それぞれの国の実演家の報酬請求権の集中管理のやり方がばらばらという状態でありましたので,国際的に相互管理をどうするのか,そういった課題を中心に検討して立ち上げたのがこの組織でございます。日本は,芸団協は1996年,まず賛助会員として参加し,そして98年に正式に正会員となりました。現在は38か国52団体,その中では正会員44団体,賛助会員8団体という構成となっております。
 この賛助会員についての説明として,ページ下方に注1がございます。つまり,加入当初はまず賛助会員になると。これは実際,この集中管理の整備について,例えば東欧諸国は実態としてかなり遅れているので,まだ徴収・分配について準備する時間が必要だということで,最初はこの賛助会員という形で参加して,国内での楽曲使用データに基づく分配のシステムが整った段階で正会員になるという二段構えの運営となっております。年一度に総会がありまして,理事会の以下には事務局,そして現在は様々な法制度やリースの問題などを議論するワーキンググループも設置されまして,毎年いろんな会議を開いて検討しているところでございます。
 2ページ目に移っていきます。先ほど申し上げましたように,この国際組織の設立の目的は,基本的には実演家が経済的権利から生じる報酬などを公正かつ適正に受け取ることができること,また,実演家著作隣接権の集中管理団体間の連携の強化を目的としていると。その活動の内容はここに書かれているとおりでございます。特に近年の課題としては,その加盟団体が有する委任者情報並びに作品情報などを各国でばらばら持っていることが続いているので,共通のデータベースを作るための検討と準備が進められているところでございます。
 このデータベースは,ここの資料に書かれているように,一つはIPD(International Performer’s Database),要は,実演家一人一人に番号を付与したデータベースがあると,相互管理をするときには分配についてはいろんな無駄を省くことができると,そういった技術的な観点からも検討が進められております。ただし,いろいろ困難もあります。例えば日本人の実演家の名前は,私たちは通常,漢字か片仮名,平仮名を使っているんですけれども,そういったデータベースに参加するときには日本人の名前をアルファベットに置き換えて登録しなければなりません。そうすると,同姓同名の人がまず多いことと,あるいは,発音は全く同じですけれども,漢字で書かれたときの名前が全く違うという問題も抱えておりまして,まだ今,芸団協は正式には参加しておりません。例えばロシア,ギリシャあるいは韓国など,同じような問題を抱えている国もあります。そのほか,言葉の問題も今取り上げて,そのIPDの事務局では着々と解決策を検討しているところでございます。
 あともう一つ,VRDBという,これは作品データベースなんですけれども,実はこのSCAPRに参加している実演家の集中管理団体は音楽だけではなく映像の集中管理をしている団体もありますので,データベースの中には幅広く音楽・映像両方を扱おうということを今ちょうど検討しているところでございます。
 3ページ目へ移りたいと思います。では,海外団体との相互管理をするときにどういった実演家の権利を対象にしているのかというと,まず,ここに書かれているとおり,基本的には商業用レコードの放送二次使用料と,もう一つは,貸レコード使用料・報酬です。貸レコードに関しては,実は実演家が使用料とその報酬請求権を持っている国は日本だけですけれども,よその国は,まずレコードのレンタルというビジネスの実態がほとんどなくて,ほとんどの国では,実演家は一応許諾権を持つことになっております。したがって,後ほど分配の話をするときに分かるように,相互管理とはいいながらも,基本的には日本だけが徴収して海外の実演家へ分配をしていることになります。あともう一つは,私的録音録画補償金。基本的にはこの三つの権利を管理しているところです。
 契約締結の条件は,基本的には,これはSCAPRの共通のルールに従って,まず当事者の国内著作権法の整備,つまり,制度上,実演家にはこういう権利があるかどうか,きちっとそういう集中管理ができるかどうか。次に,やはり集中管理団体としての管理体制をしっかり持っているかどうか。団体は作られたんですが,なかなか徴収と分配はまだ実現していないということがよくあります。例えばアジアにおいては,フィリピンは実はもう10年ぐらい前からそういう団体ができていますが,実務の面では徴収・分配ができていないため,そういった国とは今のところ芸団協は相互管理の契約はしておりません。まず徴収・分配の実績,そしてもう一つは使用楽曲データに基づく個人分配の実施があるかどうか,基本的にはこの二つの大きな条件に基づき契約しています。現在のところ,芸団協と双務協定を締結している国でいいますと25か国,団体の数でいいますと33団体。なぜこの数字が合わないかといいますと,実は,日本の場合は芸団協が指定団体で我が国で唯一の集中管理を行っている団体なんですけれども,国によっては,一つの国の中で複数の管理団体が存在している場合もあるためです。例えばカナダは,御存じのように英語圏,フランス語圏があり,そういった国の事情によっては実演家の集中管理団体が二つ,あるいは三つあることがあります。アメリカもそうです。アメリカは,言葉ではないんですけれども,フィーチャード実演家,いわゆる主役級の実演家の団体,あるいはノンフィーチャードの実演家の団体があります。そういう形で複数の団体が存在する国もありますので,現在,対象国は25か国ですけれども,団体の数でいいますと33団体となっております。
 詳細は次のページを御覧いただければと思います。その※の付いているところが片務協定と書いておりますけれども,先ほど申し上げましたように複数の団体,例えば3団体が存在する場合は,基本的には日本から徴収をするときには,そのうちの一つと契約をして,その団体にお願いして,その国で日本人の権利者の二次使用料などをまとめて徴収して支払ってもらいます。日本からその国の実演家への分配をするときには,例えば三つの窓口に分かれて,それぞれ所属している実演家にその団体を経由して分配をする,そういう意味での片務協定となっております。
 それでは早速,徴収・分配の実務のお話に移っていきたいと思います。まず,海外からの徴収でございますけれども,各国別にどのぐらい芸団協が徴収しているのか,2013年度の実績について,一つ断っておきたいことがあります。ここに挙げている2013年度の実績の数字は必ずしも2013年度に発生した例えば二次使用料,報酬の額だということではございません。なぜかといいますと,その諸外国の団体と契約を締結するときには,時には遡って,例えば過去5年間の使用料を徴収して,そうすると次の年に一括して払ってもらうとか,そういうことがよくあります。あるいは遅れて来る場合もありますので,したがって,ここの数字はあくまでも2013年度において実際徴収した数字でございます。ここで御覧のとおり,中心となっているのはヨーロッパの国です。EU諸国のほとんどは基本的には実演家の放送二次使用料制度を持っております。御存じのように,この放送二次使用料制度は国際条約上では双務主義に基づいて管理されています。ほとんどのヨーロッパ諸国は基本的には日本のレコードを保護していますので,日本もこういった国々のレコードを保護しているということで,徴収の主な国は大体ヨーロッパだと考えていただいて結構でございます。徴収額でいいますと,この放送二次使用料,私的録音・録画合わせて日本円で年間3,000万程度でございます。額としては非常に少ないということが分かります。
 8ページ目は,海外団体からの徴収額の推移,こちらも同じように,基本的にはその年度に徴収した額を使ってグラフを作成しております。その中で2012年度の棒グラフのところが非常に目立っておりますけれども,これはなぜかといいますと,実は(2)のところに書かれているように,2011年度にアメリカのSound Exchangeとの双務契約を締結して,デジタル有料放送使用料の徴収が開始されました。2012年度にその精算が行われ,遡って2010年度からのその額を徴収したため,この額が一気に増えているように見えますが,実際はそうではありません。こちらが大体徴収の現状でございます。
 次に,分配の方を見てみたいと思います。海外団体への分配額でいいますと,ここの資料に示されているように,現在,貸レコード,放送二次使用料等を含めて大体6億円ぐらいの規模となっております。先ほどの徴収額に比べるとかなり額が違いますが,やはり対象国のほとんどがヨーロッパです。ここにアメリカも入ってくるのですが,実はアメリカの状況は少し特殊です。アメリカは地上波の放送に関してレコードを使用することについては実演家の報酬請求権はないため,例えば地上波放送に関して言えばアメリカ版は我が国も保護しないこととなっております。だから,徴収・分配はありません。ただし,アメリカもWPPTを批准して,デジタル有料放送のところについては報酬請求権がありますので,我が国もこれに対応して,芸団協がその徴収した使用料のうちデジタル有料放送の部分に限ってアメリカ版に出演している実演家に分配をしていると,そういうことでございます。
 分配額の推移は10ページ目を御覧ください。毎年大体このような規模で,上がったり下がったりしますが,先ほどの徴収と同じように,やはり時々まとめて遡って精算する年があり,そうすると額が増えたりしますので,あくまでもその年に実施した分配の金額に基づいてこの資料が作られています。
 最後に,実演家の集中管理を行う際の課題として,権利者,実演家の観点からすれば,先ほども申し上げましたように海外からの徴収額が今のところまだ少なく,海外に対する分配額がやはり大きいということです。今後,特に放送二次使用料制度を有する国で,日本の商業用レコードがどのように放送に使われているのかという実態をもう少し精査してしっかりした徴収を実施する必要があるかと思います。
 アジア諸国との連携にもやはり大きな課題があるかと思います。最近,我が国もアジア諸国に対して例えばコンテンツの輸出だとか,特に日本の音楽もアジア諸国で非常に盛んに利用されているんです。問題は,例えばレコードの放送二次使用料制度を持っていない国では,実演家あるいはレコード製作者のこういった放送二次使用料を徴収することはできないということです。アジアでレコードの放送二次使用料制度を持っている国は日本,韓国,フィリピン,マレーシア,この4か国だけなんですけれども,インドネシアでは10月16日に新しい大統領が改正著作権法案を署名したとのことです。その改正著作権法の中では正に商業用レコードの放送二次使用料制度をインドネシアでも導入することになっており,隣接権分野で言いますと,二次使用料についてはレコード製作者と実演家が一つの団体を作ると明確に書かれております。その団体の設立から運営まで,技術的なことも含めて日本の団体がどういったところで集中管理に貢献できるのかといった課題があると思います。
 その他の課題の中で,やはり海賊版対策が非常に大きな問題となっておりまして,アジア諸国ももちろんのこと,そして我々も,SCAPRの場では盛んに問題提起して,何らかの形で教育普及あるいは侵害対策について取り組んでいます。芸団協自身は,日本国内でウエブサイト等を通して広報活動,あるいはいろんなイベントがあるときには,そういった隣接権・著作権あるいは侵害対策について様々な活動を行ってきたところでございます。
 時間の関係で私の御報告は以上でございます。どうもありがとうございます。

【道垣内主査】  ありがとうございました。
 では,この増山事務局長からの御報告に基づきまして,御質問,御意見等ございますでしょうか。

【作花長官官房審議官】  では,よろしいでしょうか。

【道垣内主査】  どうぞ。

【作花長官官房審議官】  増山事務局長,どうもお忙しいところ,丁寧な御説明をいただきありがとうございました。
 それで,最後に言われましたけれども,入りと出という観点からすると,我が国は圧倒的に外国に分配していて,海外からもらっている額は圧倒的に少ない。つまり,完全な輸入超過というような状況が見受けられます。現在,政府を挙げてクールジャパンということで日本のコンテンツを海外に,とりわけアジアに発信していこうということで頑張ってはいるわけですけれども,その中でもやっぱり音楽コンテンツというのは主たる分野だろうと思っております。この数字だけ見ると我々政府の努力もかなり足りないなというのを痛感するのですが,ただ,ここの数字に出ているのはあくまでも放送の二次使用料ということでございます。今,音楽の利用でかなり主流になっているいわゆるオンデマンド送信,インターネット配信を加味すれば,日本のコンテンツというのはもう少し海外で使われているのかもしれないという期待もあるのですが,そのあたりはどのようにお考えになっておられますか。

【増山事務局長】  確かにおっしゃるように,アジア諸国で日本のコンテンツはかなり使われていると思います。この数字はあくまでもいわゆるパッケージ物です。商業用レコードに関する報酬請求権ですけれども,インドネシアで聞いた話では,現地ではカラオケの利用とか非常に盛んで,ビジネスの規模も大変大きい。商業用レコードの利用をどのように課題として取り上げて検討するかについては,非常に大きな法制度の問題がまずあると思います。外国の保護の体制の整備が遅れているとは言いませんけれども,やはり国際条約に見合った整備を,我々からも働き掛ける必要があるかなと思います。

【作花長官官房審議官】  ありがとうございました。

【道垣内主査】  そのほか何かございますか。それでは,また後で何かありましたら追加していただくことにいたしまして,議題2-2,レコード製作者の権利の集中管理と違法対策につきまして,一般社団法人日本レコード協会の楠本委員から御発表いただき,その後,御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【楠本委員】  御紹介いただきました日本レコード協会,楠本でございます。資料2-2に沿って御説明させていただきます。
 冒頭に少しお断りしておかなければならないことがございます。先ほど増山事務局長からプレゼンいただきました芸団協CPRA,それから本日は発表はございませんが,JASRACのように,我々も海外の同じようなレコード製作者の権利管理団体と相互協定を結んでいるケースもございますが,レコード製作者の場合は非常に特殊な事情があるというのを最初に御紹介しておきます。
 御存じのとおり,レコードの世界は,ユニバーサルミュージック,ソニーミュージック,ワーナーミュージックの三つのメジャーレコード会社が世界で相当なシェアを占めていることが,まず大きな特徴でございます。日本の場合は,それらの三つのメジャー社に加えて,国内大手のエイベックス,キングレコードといった多くのレコード会社がありますが,海外へ目を向けますと,先ほど挙げた三つのレコード会社がほとんどのシェアを持っています。国際的には,メジャー3社以外は全てインディーズと呼ばれています。一方で,私どもは今,62の会員社を持っておりますが,その会員社以外の,規模感としてはかなり小さなところを日本ではインディーズと呼んでおります。国際的な定義が日本国内とは大きく違うということについても御承知おきいただければと思います。
 まず,私どものプロフィール紹介のページでございますが,先ほど申し上げましたとおり,62のレコード会社が会員となっております。国内における会員社シェアはどれぐらいかと申しますと,95から98パーセントといつも御紹介させていただいています。主な事業としては,二次使用料や貸レコード使用料の徴収・分配事業のほかに,日本の音楽の商業的拡大を図るといった業界団体の役割も持っております。また,我々レコード協会は,今年で73年目を迎える団体です。
 続いて,マーケット市況も簡単に御紹介しながら集中管理の話へ進めてまいりたいと思います。2ページでございます。日本の音楽マーケットですが,御覧のとおり,濃い青のところがフィジカル,主には音楽CDやミュージックビデオといったパッケージ商品を示しています。2012年度はベスト盤等のヒット作品が多かったことを受けて,15年ぶりに右肩上がりとなりましたが,2013年は残念ながら減少に転じたというのが近年の状況でございます。また,有料音楽配信が棒グラフのオレンジ色部分ですが,決して日本は世界の潮流のように音楽配信のシェアが高いということではございません。見ていただいてお分かりのとおり,2009年の910億円を最大とし,そこから逆に下降傾向をたどっているというところです。国際的には伸びていた音楽配信につきましても,2013年度は微減となりました。一応,2009年以降の特徴としては,過去5年間でスマートフォンへの急速な切り換えがあり,レコード会社が従来のフィーチャーフォン,いわゆるガラケーの着うた,着うたフルからうまくビジネスを切り換えられなかったという反省点に加え,単価の低下,YouTubeを初めとする無料サイトで音楽を視聴されるユーザーも決して少なからずいることが,売上げ全体の減少につながっているものと考えております。
 また,右側の二つの円グラフは,日本の音楽マーケットの特徴を顕著に示す結果となっております。図らずも偶然,87対13と同じ数字になっていますが,上段はパッケージと音楽配信の比率,下段は邦楽と洋楽の比率を表すものです。以前より,パッケージ8割,デジタル2割とよく言っておりましたが,近年ではより差が開く結果となっています。邦洋比につきましても,日本のマーケットというのは,いわゆるJ-POPを中心とした邦楽に非常に多くの購入層があり,洋楽は年々小さくなってきています。これらは海外ではCDという形での販売が行われなくなってきていることと,何度も申し上げますが,インターネットを介して無料で音楽が楽しめることが非常に大きな影響を及ぼしていると考えております。
 有料音楽配信売上が3ページにございますが,こちらはサービス形態別の詳細でございますので,説明は割愛させていただきます。
 4ページには世界の音楽ソフト市場の御紹介を載せております。左側の棒グラフのとおり,世界的に見ても音楽市場が縮小傾向にあります。さらに,パッケージの減少を補うと言われていた音楽配信,いわゆるデジタルマーケットについても,2013年以降は苦戦を強いられています。
 また,右側に主要国シェアの資料がございますが,2013年,日本は,アメリカに次いで世界第2位のマーケットでした。CD等のパッケージの売上げでは世界1位でございますが,本日お示ししている資料はパッケージ売上,デジタル売上,演奏権(使用料)収入,シンクロ収入の合計金額となっており,アメリカが1位となっています。
 続いて,私どもレコード協会の集中管理について御説明申し上げます。
 まず5ページの徴収金額の推移にある通り,放送二次使用料が一番大きなボリュームを占めておりますが,これはNHK,民放各社,衛星放送,有線テレビといった放送事業者と契約を行い,レコード製作者分の使用料を徴収・分配するという事業です。この中には,当協会の会員社62社以外にも,日本国内でインディーズと言われているレコード製作者や海外のレコード権利管理団体への分配も含まれていることが,この図で表されております。
 それから,6ページは,貸レコードについてでございます。御存じのとおり,近年は黒いアナログ盤レコードを貸しているお店はございませんので,CDが主流ではございますが,いまだ貸レコードという表現になっています。下図でそれぞれ,新譜が発売されてからの禁止期間,お店でレンタルが開始されるタイミングを図で表しておりますが,最大・最長という表現をしておりますとおり,邦盤は事実上新譜発売からかなり近いタイミングでCDレンタルが行われているというのが現状でございます。一方で,洋盤につきましては,法律上の禁止期間である1年間をそのまま行使しているような図となっておりますが,権利者によっては,貸レコード使用料の収入が得られるのであれば1年間より短い禁止期間の後,CDレンタル店に出荷が行われるケースも一部ございます。また,貸レコードの特徴として,50年間の権利期間はございますけれども,後ろの49年間でお店の利益となる部分は相当少なく,新譜が出た最初のタイミングで多くの利益が回収されるビジネスモデルであることが挙げられます。例外としては,一部に,アーティストが亡くなられた後にカタログが調えられるケースもありますが,多くは新譜発売のタイミングでのビジネスといったところでございます。
 続いて,7ページは,貸レコードがどのような形でレコード製作者,私どもレコード協会,そしてCDレンタル店へ流れているかというのを模式化したものでございますが,この徴収は,最初にCDの定価代金にプラスして貸レコード使用料というのを上乗せして買い取っていただくスキームをとっております。すなわち,CDレンタル店で100回レンタルされようが,1回もレンタルされまいが,CDを購入されるタイミングで使用料の徴収も行われるという形でございます。
 8ページは,今は御説明するのに適した時期ではないかと思いますので,本日は省略させていただければと思います。
 次の9ページでは,教育・文化といった分野でレコード会社からの委任を受けて進めております。例として二つ挙げておりますが,例えばNHK杯全国放送コンテスト,これは中・高校生が放送番組を制作する際の音楽のBGM使用に係る集中管理事業です。また,バトントワリング・マーチングバンドにつきましては,御存じのとおり,楽曲を自分たちの踊りやすい長さやサビの部分の繰り返しのために市販CDを複製することに係るものです。これらの許諾についても,レコード協会が管理させていただいています。右側の許諾料に沿って,個々の申請ごとに許諾書を発行すると同時に,各団体間とは許諾書がないと大会に出場できないことを確認して運営を行っています。
 また,最近では結婚式を挙げない方もいらっしゃいますが,日本では伝統的に,結婚式及び披露宴での音楽利用が非常に多く存在しております。そのような状況において,音楽を利用する場合に1曲1曲レコード会社を調べて訪ねてライセンスを取るのは非現実的なので集中管理として行うというのが10ページで御紹介するスキームでございます。
 続いて,11ページは私どもの直近6年間の使用料徴収額の推移です。2013年は約105億円と今までで最も大きな徴収額となりました。棒グラフの青色が放送二次使用料,赤色が貸レコード使用料です。
 ここからが文化庁から御依頼がありました,世界の集中管理団体との話となります。絵を見ていただければお分かりのとおり,地図中で色を付けているところがレコード製作者の権利管理団体がある国を示しており,濃いオレンジが相互協定を結んでいる国です。冒頭で申し上げたとおり,レコード製作者の場合は3メジャーがかなり大きなシェアを占めていますが,例えば日本においてユニバーサル,ソニー,ワーナーの徴収が行われた場合,ユニバーサル分はユニバーサルグループの中で再分配が行われる仕組みとなっております。つまり,これらの3メジャーに関しては,グループ内での分配の循環が行われているため,私どもがそれぞれの国々の団体と相互協定を結ぶ必要がないと言い換えることができます。
 本日御用意した資料では,世界の集中管理について述べているのはこのページのみとなってしまうのですが,金額につきましても,先ほどの増山事務局長の御紹介と同様で,海外からの入金で合計は約1,000万円から2,000万円ぐらいです。これには海外の権利者団体との相互協定によって得られる金額が含まれます。日本から海外権利者への分配については,例えば相互協定を結んでいるオランダを例にとった場合,国際送金手数料とあまり差がないといった規模感でございます。
 本日は発表の機会を頂戴しましたので,違法対策についても触れさせていただきたく資料を用意してまいりました。アップロードではなくダウンロード,違法と知りながら行うこと等の条件はございますが,2012年に日本国内において刑事罰を法制化したことは,今,インターネット上のアップローダーあるいはダウンローダーに対する啓発・抑止につながっているのではないかというのが近年の我々の認識でございます。
 14ページでございますが,そういった時機を踏まえ,レコード協会の中に違法対策を専門に行う組織を設置し,違法にアップロードされているファイルを機械的・人的に探索し,サイトに対して削除を要請するといった違法対策業務を行っております。削除要請件数の推移で御紹介しておりますとおり,2012年の年間33.5万件から昨年は81万件まで,そして今年度の目標は月10万件の計120万件と,ここまでは機械あるいは人間のパフォーマンスでどうにか件数を伸ばせるのではないかと考え取組みを進めております。
 なお,国際レコード産業連盟(IFPI)の削除要請実績という記載がございます。私どもも加盟しておりますIFPIが全世界のインターネットサイトに対してローカルな楽曲も含めて違法対策,削除要請を行っている実績は年間1,000万件ですので,日本は大体その10分の1を自国内で行っているといったところでございます。
 今,一番我々が大きな課題と捉えているのがスマートフォン向けの違法音楽アプリへの対策でございます。自らのサイト上にはコンテンツを保存してはいないものの,違法サイトへのリンクを掲載するサイトをリーチサイトまたはリンクサイトと呼んでおり,これが非常に問題だということで2年前にもこの国際小委員会でお話をさせていただいたことがあったかと思います。今はスマートフォンが主流となっており,検索すると,無料で音楽が楽しめますという様々なアプリが表示されます。それらのアプリは有料・無料いろいろありますが,多くがストリーミングとダウンロードを兼ね備えているというのが,ここ数年の流れです。近年は違法ダウンロードの罰則規定ができ,ユーザーもダウンロードという言葉にかなり敏感に反応するようになって,違法ダウンロードができるようなアプリは減ってきてはおりますが,相変わらずユーザーを違法サイトあるいは違法にアップロードされたコンテンツへアプローチさせるアプリは,一向に減らないというのが実態でございます。
 今月の頭にIFPIの中央理事会が東京で開催されまして,16ページは,そこで行われた各国の情報交換の日本のプレゼン資料の一部分をお付けしたものになります。どのような刑事事件を行っているか,それからTakedown Noticesについてここで少し御紹介させていただきます。
 まず刑事事件のケースですが,いわゆる海賊版に関する刑事事件件数というのは大体20件前後でしょうか。また,最近増えているのがファイル共有ソフトを使った違法アップロードやP2Pファイル共有ソフトに関するものです。古くはWinnyが代表的な例でしたが,音楽の場合ですとCabosやGnutellaネットワークが簡易に音楽ソフトをやりとりできるファイル共有ソフトとしては著名なところです。そのようなソフト経由で,音楽ファイルを数千・数万の単位でパソコン内に持っているユーザーもいると認識しています。それらが正規に入手されたものであれば何ら問題ないのですが,無償で交換・共有されている実態は決してなくなっておらず,このような刑事事件もいまだあるというところでございます。
 それから,先ほど削除要請の件数をお話ししましたTakedown Noticesですが,ビデオUGCサイトといいますのが,YouTubeをはじめとするユーザーアップロード型と呼ばれているものです。レガシー・モバイルについては,ここ2年ほど,もう機械探索を行っておりませんが,いわゆるフィーチャーフォン向け違法な掲示板への違法アップロードを削除要請していた件数の推移です。それから,Megaupload等のサイバーロッカーは,今日本ではなくなっておりますが,中国サイトにはいまだに非常に多くあります。有害アプリケーションがユーザーをこういったサイバーロッカーへの違法アップロードへ導くことが,今の音楽にダメージを与えている違法の実態ではないかと考えております。
 それから最終ページです。アプリに特化した削除要請というのも行っております。具体的には,AppStore,GooglePlayストア等にあるユーザーを違法行為や著作権侵害行為に導く有害アプリについて,AppleやGoogle各社へ削除依頼を行っています。
 また,P2Pファイル共有ソフトに関して,先ほど刑事事件がまだ減りませんというお話をしておりますが,こちらはいろいろな権利者団体と共同で,年間約2,000から2,500通の警告Eメールをユーザーに送付しているものです。決していきなり警察に訴え出て捕まえてもらうのではなく,警告というステップを経ても違法行為をやめないユーザーに対しては警察と連携する,という取組の一例として,御紹介させていただくものです。
 違法対策としてこれらの活動を中心に行っておりますが,その一方で,間接侵害,寄与侵害,そのような法がない状況に音楽業界はかなり困っているということを最後申し添えさせていただきまして,プレゼンテーションは終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。

【道垣内主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,この御報告につきまして御意見等ございましたらお願いいたします。どうぞ,上野委員。

【上野委員】  今日のスライドの9ページ目と10ページ目で,レコード協会が集中管理としてライセンスされている例として「教育・文科系行事」と「ブライダル催事」の二つを御紹介いただきましたが,その両者で管理の仕方に違いはあるのかどうかについてお聞きします。一つ目に,9ページ目では許諾音源の範囲としてレコード協会に「管理委託」したレコード会社が発売するレコードと記載されているのに対して,スライド10ページ目では,レコード会社から「許諾を得た」曲と記載されております。この両者は,記述の仕方は異なるけれども,共にレコード協会がその管理事業として直接ライセンスを出しているという理解なのか,それともいずれかはレコード協会が行う管理事業とは異なるのかという点です。また,二つ目に,前者の点に関して「管理委託したレコード会社が発売するレコード」というのは,62ある会員社のレコード全体ではなくて,その中の特に管理委託されたものだけが対象になっているということでしょうか。この2点をお伺いできればと思います。

【楠本委員】  まず1点目のこの両者の差異の部分ですが,1つ目の教育・文化系行事については,許諾対象が子供や学生の行事という点を踏まえ,多くのレコード会社が原則として許諾を出しています。例外として,一部の洋盤では権利者が海外におり許諾が難しいケースもありますが,基本的には,右側の許諾料の範囲の中で許諾を行い,御利用いただいているとお考えいただければと思います。一方,ブライダル催事に係る集中管理は,始めたばかりの実験でございます。ブライダルではたくさんの楽曲数が使用される点を考慮し,ホワイトリストに基づいて管理しています。レコード会社あるいはアーティストから,許諾いただいた楽曲をホワイトリストに随時加え,我々が集中管理していると御理解いただくとスムーズではないかと思います。

【道垣内主査】  よろしいですか。

【上野委員】  前者の方は,62会員社全体ではなくて,ほぼ参加されている状態だということでよろしいでしょうか。

【楠本委員】  はい。

【上野委員】  また,前者と後者,両方とも管理事業としてレコード協会が直接ライセンスを出されているということでしょうか。

【楠本委員】  後者のブライダル催事の方は,今,実証実験中ですが,前者は管理事業として文化庁に届出を行い,運営しております。後者も将来的には管理事業を想定していますが,現時点では開始から間もなく,ホワイトリストの件数がまだ多くない状況を鑑み,準備段階と位置づけております。

【上野委員】  ありがとうございました。こうした管理事業も,本日のテーマである国際的な権利管理につながっていく可能性があり,意義があると思いましたので,お伺いした次第です。どうもありがとうございました。

【楠本委員】  ありがとうございます。

【道垣内主査】  そのほかいかがでしょうか。どうぞ,山本委員。

【山本委員】  資料の2ページ目で,日本の音楽市場推移というのを御紹介いただきましたが,2009年の段階で有料音楽配信の売上げが最高になって,そこから減っているという事実がかなりショッキングでした。今日のテーマであります集中管理の問題とつながるのかどうかというのは分かりませんが,ちょっとお伺いしたいと思います。有料音楽配信の売上げがかなり減ってきているというのは意外な気がしまして,ネットでの利用というのは確実に増えてきていると思います。それでありながらこれだけ減るというのは,何が問題なのかというのが第1点です。もう一つは,それを解消するためにはどうしたらいいというふうにお考えなのか。その点,お答えいただければと思います。

【楠本委員】  2009年は,着うた,着うたフルといったフィーチャーフォン向け音楽配信の売り上げがピークを迎えていたときです。一方で,スマートフォンが2008年半ばから登場しました。今はユーザーの5割以上がスマートフォン契約者になりましたが,音楽配信については,このフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行において,ビジネスモデルの転換がうまくいかなかったこと,音楽配信の曲あたり単価が低下したことが,配信売上全体が減少に転じた大きな要因であると分析しています。また,先ほど来申し上げているとおり,無料あるいは違法の音楽配信による影響もデジタルについては相当大きいものと考えております。
 今後,配信売上は更に小さくなるのではないか,あるいは維持することに注力しなければならないというのが,恐らく,業界における一般的な考え方だと思います。サブスクリプション(定額制)サービスの月額利用料が高いか安いかという議論もありますが,ただ,一方で,パッケージに頼っていたビジネスも厳しい状況に置かれています。パッケージをどうするかということと,デジタルを維持・拡大させていくことは,バーターのテーマというよりは個別に考えていくべき課題として捉えております。
 説明になっておりましたでしょうか。

【山本委員】  傾向ではなく対策として,業界としてこういうことをやるべきだと考えているとか,あるいは法制面でこういうふうな改善が必要であると考えていらっしゃるとか,対策からのお考えをお聞かせいただけますか。

【楠本委員】  やはり先ほど申し上げた有害アプリケーションの問題は非常に大きく,対策を強化していく必要があると考えています。同時に,音楽は無料じゃないということを学生に対して教育・啓発していくことも我々が対策を講じるべき課題であると認識しています。

【山本委員】  ありがとうございました。

【道垣内主査】  文化というお話について,資料の2ページでは,邦楽に対する言葉は洋楽と言っているんですよね。

【楠本委員】  はい。

【道垣内主査】  レコードはもう作ってないけど,レコード協会と言っていて,今回のテーマは日本のレコード製作者の権利を海外で確保するというものですが,少し言葉が古いかなと思います。この洋楽には韓国の音楽も入っているのですね。

【楠本委員】  そうですね,邦楽以外は全部入っています。外国曲というイメージだと思います。

【道垣内主査】  そうですよね。

【楠本委員】  ただ,韓国の音源につきましては日本国内で出している場合は邦楽に区分されるものもあり,線引きが難しいのが現状です。

【道垣内主査】  いずれにしても市場は非常にドメスティックであって,あんまり外国との関係というのは意識されないのでしょうか。先ほど月10万件のNoticesをしたいとおっしゃっていましたけれども,その中には外国のものも含まれているわけですよね。

【楠本委員】  外国のものというのは,基本的にはその国のレコード製作者側で違法対策もやっているというケースがほとんどです。日本国内で刑事や民事になるであろうものは当然日本側で引き取りますけれども,インターネットは国境がないものですから,各国それぞれ探索しています。我々が機械上あるいは人的に探索しているのはやっぱり邦楽が中心になろうかなと思います。

【道垣内主査】  そうですか。10万件やるというのはすごく大変だと思うんですが,これはプログラムに組んで自動的にどんどん出すようになっているのですか。

【楠本委員】  そうですね,大体7対3ぐらいで,7が機械,3が人間によるものです。人間がアーティスト名や新曲のタイトルで検索を行い,隅々まで見に行っているというものであります。

【道垣内主査】  分かりました。
 よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。お二人から御報告いただきました。
 それでは,3番目の議題に移ります。マンガ・アニメ・ガーディアンズ・プロジェクトにつきまして,これは経産省メディア・コンテンツ課の小松原課長補佐と,それからコンテンツ海外流通促進機構の永野常務理事にお越しいただいておりますので,お二人から御報告いただきまして,御議論いただければと思います。それでは,よろしくお願いいたします。

【小松原課長補佐】  経済産業省メディア・コンテンツ課の小松原でございます。よろしくお願いします。座って発表させていただきます。
 それでは,本日は,マンガ・アニメ海賊版対策ということで,私どもが進めておりますManga-Anime Guardians Projectについて御紹介させていただきたいと思います。海賊版対策に取り組んでおります背景とこの取組の,概要について私からお話しさせていただきまして,後半,CODAの永野常務理事から具体的な取組内容と成果についてお話をしていただこうと思っております。
 資料3-1を御覧ください。
 表紙をめくっていただきまして1ページ目ですけれども,この海賊版対策の取組の基盤となりますのがクールジャパン戦略ということになります。これについてここで御説明する必要はないかと思いますが,私どもメディア・コンテンツ課では,コンテンツを武器に日本ブームを創出するために,日本コンテンツの海外展開に取り組んでいます。
 次のページめくっていただきまして2ページ目になりますが,実際に日本ブームを創出するためのコンテンツの海外展開ということで取り組んでおりますのが,海外展開するためのローカライズですとか,現地でのプロモーションの支援,それから現地のバイヤーと呼んでいるような方たち,放送ですとか配信をしているような事業者の方々と日本の権利者とのビジネスマッチングを支援するなどの取組を行っております。これと並んで,コンテンツの海外展開を進めるための非常に重要な施策の一つとして海賊版対策に取り組んでおります。その中で特にマンガとアニメに注目いたしましたのは,御承知のとおり海外から日本のマンガとアニメ人気が非常に高いということもございますし,また,この海賊版も非常に横行しているという実態がございます。一方で,マンガを原作としたアニメーションというのも多数ございますので,マンガとアニメのファン層は重なっているわけです。ですので,マンガとアニメの業界の方々が一緒に集まっていただいて海賊版対策を行うことで,より効果的で効率的な対策が打てるのではないかと考えた次第でございます。
 資料の3ページ目になりますけれども,マンガとアニメにつきまして海賊版対策はどのようなことをやれば効果的なのかを検討するため,まず日米のマンガ・アニメファンを対象にアンケート調査を行いました。この結果をかいつまんで申し上げますと,例えばオンライン海賊版のユーザーというのはほとんどが正規版も視聴している,海賊版と正規版の併用ユーザーであるということが分かりました。また,アメリカに目を向けますと,条件を満たせば正規版に対してお金を払う意向がある人は大体8割ぐらいいるということも分かりました。海賊版が見られなくなることや,正規配信が増えること,こういうことが海賊版を見なくなるきっかけになっているということもアンケート結果から見てとれました。
 また,日本でも同じような傾向ですけれども,それに加えて,やはり海賊版利用はよくないというような罪悪感から海賊版をやめるとか見ないというような意見も,アメリカに比べると比較的多くあったという結果が出ております。こういったアンケート調査を踏まえまして,実際にマンガとアニメの海賊版対策を三つの柱で行うことに決めました。次のページを御覧ください。一つ目が,海賊版を大規模に削除していくということ。これによって海賊版が一時的にインターネット上から減りますので,そのタイミングでアニメ・マンガのファンを海賊版から正規版を配信しているサイトへ誘導するという施策を打つこと,これが二つ目。三つ目としまして,そういった活動を国内外の視聴者に対して広報・普及啓発をしていくと。この三つの柱を作りまして取組を実施していくことにいたしました。
 大規模削除につきましては,CODAから日本で利用できる削除ベンダーさんに委託しまして,海賊版は形,先ほど話題に出たP2Pですとかサイバーロッカーですとかいろんな形がありますけれども,そういったものをできる限り網羅的に対策をして,どのような方法が効果的なのかを考えていこうという取組を行いました。正規版サイトへの誘導に関しましては,これは先ほど海賊版のリーチサイトというお話も出ましたけれども,正規版のリーチサイトを作りました。正規版がどのようなところで配信されているのか照会できるように,正規配信ページにリンクできるようなサイトを作って,これを運営しています。三つ目の広報・普及啓発に関しましては,海賊版の視聴は違法であるということを直接的に訴えるのではなく,正規のコンテンツを視聴することが新しいコンテンツを生み出すことにつながるんだということ,それから,正規版を見てくれてみんなありがとう,これからも正規版を見てください,というようなメッセージをネットを使って伝播していくような,そういった手法の広報・普及活動を今回は行っております。
 次のページを御覧になっていただきますと,この体制が記載されております。このManga-Anime Guardians Projectに関しましては,平成25年度の補正予算事業としてCODAに委託をして,今年の3月から準備を行いまして,実際の具体的な活動は今年の8月から行っております。この取組で特筆すべき点は,この資料の右の方に書いてありますけれども,出版社とアニメの関連会社の主要企業の方々に集まっていただいて,マンガ・アニメ海賊版対策協議会を立ち上げていただきました。このマンガ・アニメ海賊版対策協議会がMAGプロジェクトの取組に深く関わっていただくという形で行っています。この右側を御覧になっていただきますと,社名と役職を書かせていただいておりますけれども,各社の経営層の方々に委員になっていただいて,我々のManga-Anime Guardians Projectの方向性を検討していただいて決定していただきます。その協議会メンバー会社の実務者の方々に,海賊版対策に関わるワーキング,正規版流通に関わるワーキング,それから広報・普及に関わるワーキングということで,三つのワーキングを組成していただいて,そこで実際にどういう施策を打っていくのかという具体的な取り組み方を検討していただく形で進めてまいりました。
 続きまして,具体的な実施内容ですとか成果につきましては,CODAの永野常務理事からお願いしたいと思います。

【永野常務理事】  コンテンツ海外流通促進機構,略称CODAと申しますが,永野でございます。
 今,経済産業省の小松原課長補佐からございましたManga-Anime Guardians Projectですが,事業としては8月から開始をしておりまして,補正予算ということもあり,来年の3月末まででございます。事業3本柱については,大規模削除は年内,8月から12月までの5か月間,あと正規流通の部分と広報・普及という部分は来年の3月までということで,事業に時間の差がございますが,それに沿った形で今中間報告をさせていただいております。私の方からは,一応8月,9月の2か月間に行った事業の具体的な部分についての御案内をさせていただければと思っております。
 資料3-2でページをめくっていただきますと,[1] として海賊版の大規模削除という部分でございます。マンガとアニメにつきましては,その侵害サイトが違いますので,マンガにつきましては,いわゆるサイバーロッカーと言われるオンラインストレージ,トレントのサイト,オンラインリーディングと言われるウエブベースでのサイトというもの,大きくこの三つのジャンルに対しまして,日本で実際にサービスを提供していただいている削除ベンダー2社の皆様に,今,御対応いただいております。一方,アニメーションにつきましては,動画投稿サイト,いわゆるUGCサイトと言われるものを中心にやらせていただくことと併せまして,今年,今回この事業の中ではリーチサイトにつきましても削除を求めるチャレンジをしようということで,アニメについては4事業者にお願いをし,今やっていただいている途中でございます。
 実際にではその結果が今どうなっているかということでございますが,ページめくっていただきまして2ページ目,実施状況のところに書いておりますが,マンガとアニメそれぞれ切り分けて,事業者の名前を入れて見ていただいております。アニメーションにつきましては,2008年ぐらいから各事業者,権利者の皆様でそれぞれに対応されていたということもあり,一時期よりは侵害の数が減ったということは正直ございますが,マンガについてはなかなか手が付けられてなかったということもあり,削除申請数というのもアニメに比べると結構多いのかなと思います。この2か月間では全体で25万件強の削除申請を出しておりまして,実際にそれに対して削除されたのが16万8,000件。率としては67%ということで,なかなか数字的には厳しいのですが,実際に今までマンガとアニメの事業者が固まってやるというケースはなかったということでございますので,それなりのインパクトは出しているかなと思います。また,マンガにつきましては作品数は330作品プラス120で450作品を削除対象としておりまして,アニメについては今90作品ぐらいまでは行っております。削除対象サイトについても,マンガについては131,アニメについてはUGCで21,あとリーチサイト等々については数はここに書いておりませんが,100を超える数の対応を今実施しているというところでございます。
 資料3ページ目が,2本目の柱,正規版のリンク集のサイトでございます。これは今,小松原さんからも御案内ありましたように,侵害サイトで結果的に海賊版が見られなくなったというユーザーに正規版があるということを知らしめるため,インデックスを作って,そこにつなぐようなサイトを作ろうということで,7月30日にオープンしました。現在,掲載の作品数は350点でございます。この中でManga-Anime Guardians Projectの考え方だとか捉え方,広報的なページも提供しておりますので,正規のサイトに行く部分と,あとManga-Anime hereの取組という2段階でユーザーに楽しんでいただけるようなサイトになっております。このサイト自体にはコンテンツ自体は一切蔵置しておりませんので,あくまでもユーザーを正規につなぐという機能だけに特化をしておりますが,Manga-Anime hereという広報・普及の部分については一つ動画を置いております。
 資料4ページが正規版の誘導サイトの現状でございます。7月30日から9月末でセッション数が30万8,000,ページビューとしては150万強,ユーザーとしては26万7,000で推移しているということでございます。この事業自体は3月末まで行いますので,その間で掲載作品数を増やしながらユーザーを正規版の方に誘導できるようにしていきたいと考えております。
 広報・普及が,ページめくっていただきまして5ページ目でございますが,サイト自体は,7月30日に立ち上げた段階におきまして「Thanks, Friends」というタイトルの映像をまず広報・普及のツールとして作りました。これは,アニメ・マンガのそれぞれのシーンの中に出てくる「ありがとう」というものをつなぎまして作りました。分数としては2分強の分数でございますが,これはまずYouTubeにアップをしまして,Manga-Anime hereの中でも見られるというようなことで,10月9日現在でYouTubeの再生回数が74万強ぐらいでございます。また,ここには表記しておりませんが,実は10月16日にコラボイラストということで,日本のキラーコンテンツと言われている5作品のうち20キャラを,ユーザーのジョインだとかシェアが100万を超えると20キャラが全部見られるというようなこともやりましたが,これは1週間で全てが見られるようになったということで,非常に関心高く見ていただけたのかなと思っております。
 最後に,「Thanks, Friends」の映像を今日お持ちしましたので,これを御覧いただければと思います。
(映像上映)

【永野常務理事】  今見ていただきました映像は,YouTubeでの上映だけでなく,国内外のイベント,マンガ・アニメのイベントの際にもユーザーに直接見ていただくことで認知を広げるということで進めております。
 本日はありがとうございました。

【道垣内主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,今の件につきまして御意見等ございますでしょうか。

【奥邨委員】  よろしいですか。

【道垣内主査】  どうぞ。

【奥邨委員】  ありがとうございました。大変重要な取組かと思います。
 それで,簡単に二つだけ教えていただきたいのですが,まず,CODAの資料で4ページのところでアクセスログが出ています。もちろん厳密な意味で日本なのか海外なのかって分からないと思いますが,日本ドメインからのアクセスと海外ドメインからのアクセスというのは,大きな傾向で何%と何%ぐらいとかいうのが分かれば有り難いなと思います。あともう一つ,正規版誘導サイトから誘導した先ですね,これ,今回のプロジェクトは海外も含めてということだと思いますが,行った先で日本語だけになっているのでしょうか。それとも,海外の方が海外のクレジットカードやPayPalで買えるというふうになっているのでしょうか。その辺を少し教えていただければと思いました。

【永野常務理事】  最初の質問でございますが,アクセスは日本が一番多くございます。その次に英語圏になりますが,割合が,日本からが50%ぐらいのアクセスになっております。正規の誘導先ですけれども,各権利者の皆様から実際にコンテンツ,作品ごとにつないでいただきたい先ということで,日本もあれば,海外のものもございます。その先については各サイトでの対応をお願いしておりますので,私たちはあくまでもそれをつなぐまでの御紹介という立ち位置で調整をしております。

【奥邨委員】  はい,分かりました。

【道垣内主査】  どうぞ。

【鈴木主査代理】  どうも御説明ありがとうございました。
 補正予算による措置で来年の3月までということですけれども,その先の事業の継続性について教えていただけますか。もちろん,国家予算でどこまでやるかというところは議論の余地があるとは思うのですけれども。

【小松原課長補佐】  はい,ありがとうございます。そうですね,今回この補正予算で組んだ事業といいますのはあくまでも実証事業ということで,実際どういう取組をしたら効果があるのか業界を挙げて調べていこうという取組ですので,この結果をまずは基本的にはこれに参加している方々,また参加していない業界の方々に情報を共有いたしまして,それぞれまずはノウハウといたしまして個社で取組をより促進していただきたいというのが一つでございます。継続性に関しましては,今,このマンガ・アニメ海賊版対策協議会の皆様で御検討いただいているところでなんですけれども,やはり皆様からの御意見としましては,こういった取組というのは非常に大事であり,マンガとアニメが集まってやったというのは初めてのことで,これは継続していきたいというお声がございますので,私どもとしても,何らかの支援は今後考えていかなければならないと思っております。
 以上です。

【道垣内主査】  はい,山本委員。

【山本委員】  今日お話しいただいた点で,対策として三つのポイントを挙げていただいていますが,2番目の正規版への誘導というのが一番やはり大事なんじゃないかなと私も思っております。先日もアメリカの議会の公聴会の記録を見ていますと,アメリカのレコード協会の海賊版に対する取組として,違法物のユーザーに対して警告を送るだけではなく,正規版への誘導を積極的に行うことは効果があるというようなことが書いてありました。といいますのは,正規版が相当な対価であれば利用したいと思っているユーザーが結構いる,つまり,無料であることを優先するよりも,適法なものであればそれを利用したいというユーザーがいるという認識であり,積極的に正規版への誘導をやっていると。それはそうだろうと私も思うのですが,他方,現状の世界を見ると,先ほど数字でも御指摘いただいているとおり,正規版の利用者は日本では多いと思いますが,海外では正規版を利用している人は少なく,違法物を使っている人の方が多いと。現に聞いているところによると,日本で正規版が出るとすぐに中国語の海賊版が出てしまうというような状況なのだと。そうしますと,そういう今逃しているマーケットを正規版の方に誘導するというためには,申し訳ないですが,先ほどのリンク集でも,英語とか外国語対応は各出版社任せというお話だったようですが,どちらかというと外国向けが主体でないといけないのではないかと思います。しかも,海外では半分以上のサイトで違法物が使われているとしたら,できる限り日本で出されたものは英語なり中国語なりに翻訳して,そういう海外で利用できるものであれば全てネットで配信するというような取組をやらない限り,正規版を正規の料金で使ってもらうことはなかなか難しいのではないかなと思います。ですから,極めてこの正規版のリンク集というのは有効だと思いますが,それを発展していただいて,外国語対応,全てのコンテンツについて外国語でアップするというような方向に各出版社等を誘導していただくというか,そういうプログラムを組んでいただくべきではないのかなと思います。その辺はどういうお考えでしょうか。

【小松原課長補佐】  ありがとうございます。正に今御指摘いただいたことはおっしゃるとおりだと思っております。アニメとマンガではそれぞれ状況が違うかと思っておりますけれども,アニメに関しては,今,テレビ放送とほぼ同時に海外でも見られるような取組が行われ始めております。例えば海外ですと,日本のアニメを専門に配信しているクランチロールというサイトがございまして,ここでは日本で放送してから数時間以内にもう放送できます。そのクランチロールは,米国だけではなくて,ほかにヨーロッパでもサービスを開始しており,そこに日本のアニメの権利者の方々もコンテンツを出すようになってきていますので,御指摘の点につきましては,アニメに関しては徐々に今,対応が進みつつあるんじゃないかなと思います。
 マンガに関しましては,アニメに比べますと若干遅れていると思いますけれども,サイマルでのコンテンツの配信も徐々に進んでおりますし,例えば私どももサイマルで日本と同時に海外でもコンテンツを見られる環境を作るために,マンガの出版社さんですとか,あとは印刷会社さん,それから配信事業者さんの方に集まっていただいて,制作工程や配信工程を見直していこうという取組を行っておりますので,そういった基礎的な取組を行いながら,マンガに関しましても海外でのコンテンツ展開を促進するという取組を今行っているところでございます。

【道垣内主査】  はい,ありがとうございました。
 どうぞ。

【今村委員】  どうもありがとうございました。
 2点御質問したいのですが,1点目は,この海賊版対策に関して,アニメの侵害サイトですと広告が出たり,あるいはお金を払って違法なものを見る場合には決済の仕組みも必要ですので,そのためにあとは決済をするクレジットカード会社だとか,そういうところとの関係で何か議論をしているのかということと,広告主に対する啓蒙などをしているのかという点です。2点目は,協議会の議論の中で,マンガについても,アニメのように私的なダウンロードを違法にするという議論が今まであったかどうかという点です。海賊版対策として「ありがとう」という非常に前向きなアピールで対応ができていけばすごくよいことだと思いますが,更に踏み込んで,マンガについても私的なダウンロードの違法化と違法ダウンロードを刑事罰化をすべきという議論があったかどうかと点をお伺いしたいと思います。

【永野常務理事】  御質問ありがとうございます。まず1点目でございますが,今回,このManga-Anime Guardians Projectの取組の中ではクレジット決済等々については実は検討しておりません。広告抑止については,別個でCODA自身が事業として受けているいわゆる周辺対策という流れの中で何らかの方法を考えるべきだということで,ちょうど今年の事業の中で今いろいろ調査をしている最中でございます。実は動画のサイトもほとんどが広告シェアが多く,実際にクレジットカードの決済というのは多分なかなかないのかなというところで,広告を抑えるのが,サイトを抑え込む一番近道なのかなということで,今,調整をしている最中でございます。
 2点目でございますが,確かに御指摘のとおりで,マンガについては権利構成もちょっと難しいというところも正直ある中で,今,協議会の中ではそこまで突っ込んだ話はまだ出ておりませんが,来年の1月1日で著作権法の一部改正により,デジタルの著作物についても権利関係がある程度明確になり得るだろうという意見があります。それをどう権利者がお使いになるのかということも,今回の事業結果を踏まえて御判断いただく一つの材料にしていただければということで進めているところでございます。

【道垣内主査】  はい,ありがとうございました。
 ちょっと時間の限りがございますので,最後の議題に移ります。4番目の議題,WIPO等における最近の動向につきまして事務局より手短に御説明いただいて,少し御議論いただければと思います。
 どうもありがとうございました。

【中島国際著作権専門官】  では,資料4に基づきまして御説明させていただきます。WIPOにおける最近の動向についてということで,9月の末に行われました第54回WIPO加盟国総会の結果概要を御報告します。
 経緯としましては,WIPO加盟国総会は,WIPOの最高意思決定機関ということで,今次総会ではSCCRの来年の議論の進め方,IGCの今後の作業計画等について議論が行われたほか,幹部の任命であるとか,意匠法条約採択のための外交会議の開催等についても協議がなされております。
 結果概要として3.に書かせていただいたのは著作権関連のところですけれども,まずSCCRにつきましては,来年の議論の進め方について協議を行いました。2点,放送と制限例外の話がありますけれども,放送については,インドを含めた全ての加盟国で外交会議の開催に向けて議論を進めるということで一致しております。ただ,放送の議論を優先的に進めたいとするEUを中心とした先進国と,放送だけではなくて制限例外も同時に同じスピードで進めるべきだという主張をするアフリカなどの国々が何度か協議をした結果,譲らない形になり,来年の議論の進め方については合意が得られておりません。SCCRは常設委員会ですので,基本的には年2回開催されるとは思いますけれども,来年の会合の日程等はまだ決まっていません。ただ,今年については12月にあと1回開催される予定になっております。
 それから,IGCについても,来年の作業計画について協議を行いましたが,アフリカが2016年に外交会議を開催するということが前提でないとだめという強硬な姿勢を貫いた結果,それを受け入れられない先進国と対立するという構造になりまして,累次の非公式協議を行いました。ただ,特にこのIGCの議題とは別に,EUが進めたいと思っている意匠法条約の外交会議の開催をアフリカに阻止されたということでEUが更に態度を硬化させたため,折り合いが付かないまま時間切れになりまして,作業計画については合意が得られないという形になっています。IGCにつきましては常設委員会ではございませんので,総会から何らかのインストラクションを受けない限り,会合は開催されないというのが基本となっております。その結果,来年度どうなるかということについては未定です。今後,ジュネーブベースで議論がなされるのかなという状況でございます。
 以上,簡単ではございますが,WIPOの状況の報告でした。

【道垣内主査】  ありがとうございました。
 何か御質問等ございますか。よろしゅうございますでしょうか。
 ないようでしたら,議題の(5)につきましては,こちらで用意したことは特にございませんので,本日の会議はここまでにいたしたいと思います。
 事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【中島国際著作権専門官】  本日はどうもありがとうございました。次回の委員会は,日程調整の上,改めて御連絡申し上げます。

【道垣内主査】  今日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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