文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)議事録

日時:
平成27年9月15日(火)
10:00~12:00
場所:
東海大学校友会館 望星の間

議事次第

  1. 開会
  2. 委員及び出席者紹介
  3. 議事
    1. (1)主査の選任等について
    2. (2)国際小委員会審議予定について
    3. (3)世界知的所有権機関における最近の動向について
    4. (4)日中著作権協議及び日中著作権セミナーについて
    5. (5)海外における著作権侵害等に関する実態調査報告書(インドネシア)について
    6. (6)家庭用ゲームソフトの技術的手段回避による著作権侵害の現状
    7. (7)その他
  4. 閉会

配布資料

○ 今期の文化審議会著作権分科会国際小委員会委員を事務局より紹介した。

○ 本小委員会の主査の選任が行われ,道垣内委員が主査に決定した。

○ 主査代理について,道垣内主査より鈴木委員を主査代理に指名された。

○ 会議の公開について,運営規則等の確認が行われた。

以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)における1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【道垣内主査】傍聴の方におかれましては,お待たせして申し訳ございませんでした。
 では,これから中身の議論に入りますが,その前に,今日は今期最初の国際小委員会ですので,有松文化庁次長より御挨拶を賜りたいと存じます。よろしくお願いします。

【有松文化庁次長】平成27年度の第1回国際小委員会の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。
 まず,皆様方におかれましては,御多用の中,この国際小委員会の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。
 文化芸術立国や知的財産立国の実現,そしてクールジャパン戦略の推進を行うに当たり,著作権制度が極めて重要な要素であるということは疑いのない事実であると思っております。そして,著作物等が容易に国境を越えて世界に流通するこの時代におきまして,著作権関連施策を着実に推進するためには,国際的な視点が欠かすことができないものであり,その意味で国際的な著作権等の保護制度の構築の議論,そして,その制度の実効性を高める取組に我が国が積極的に関与し続けていくということが必要であると思っております。このうち著作権等の保護制度の構築の観点では,WIPOにおきまして,放送条約の早期採択を目指して精力的な議論が繰り広げられるなど種々の動きが見られますが,こうした動きに引き続き能動的に対応していきたいと考えております。
 また,二国間の協議等を通じ,アジア諸国等との相互理解を深めるということにより,我が国の関心事項を実現するための環境の整備を進めることも重要であると考えております。
 他方,著作権等の保護制度の実効性を高めるという観点からは,知的財産推進計画2015において,模倣品や海賊版対策の推進がうたわれております。文化庁としましては,侵害発生国の政府当局,取締機関の能力の向上や集中管理団体の育成への協力のほか,普及啓発活動の支援を通じた各国における著作権制度に対する意識の向上等にも引き続き尽力をしていく所存でございます。
 今申し上げましたような取組を進めていくに当たりましては,専門家そして実務家の皆様方の御意見を頂戴していくことは大変重要なことであると考えております。
 この国際小委員会においては,本年度も昨年度に引き続き,国際的な議論への対応の在り方,海賊版対策の在り方等につきまして,御意見を頂きたいと考えております。
 委員の皆様方には,お忙しい中,大変恐縮ではございますが,一層の御協力をお願いいたしまして,簡単ですが挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【道垣内主査】ありがとうございました。
 先ほど,カメラをお使いの方もいらっしゃいましたが,この次長の御挨拶までは結構でございますが,これ以降は,録音・録画はお控えいただければと存じます。よろしくお願いします。
 では,議事の(2)について,事務局より御説明をお願いいたします。

【小林国際著作権専門官】それでは,国際小委員会の審議予定について御説明申し上げます。資料2を御覧ください。 資料2は小委員会の設置についてということで,本年の6月2日に開催されました文化審議会著作権分科会におきまして決定された事項となっています。1の「設置の趣旨」については,著作権分科会の運用規則第3条第1項に基づきまして,著作権分科会の下に三つの小委員会を設けるとなっており,その一つとして,この国際小委員会が設置されております。
 この国際小委員会の審議事項については2の(3)を御覧いただければと思いますが,「国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関すること」について審議することとされております。具体的には,例えば著作権の保護に向けた国際的対応の在り方や,インターネットによる国境を越えた海賊行為への対応の在り方などを扱うことを予定しております。以上です。

【道垣内主査】ありがとうございます。
 国際小委員会にはこのようなミッションを与えられているわけでございます。今日予定されている議題の3以降がこのミッションに関わる議題であり,これを順次議論していただきたいと存じます。第2回目以降の具体的な日時等は,テーマの出方,議論に熟する準備の在り方等とも関係しますので,その度ごとに御案内申し上げるということにさせていただきます。
 内容については,特にこの点を強調すべきであるとか,現在これが大問題になっているとか,何かございますか。よろしいですか。
 それでは,事務局とも相談しながら,審議の具体的な内容を詰め,また御案内申し上げたいと存じます。よろしくお願いします。
 では,議事の3番目,世界知的所有権機関における最近の動向について,まずは事務局から御説明いただき,その後,委員の皆様の御意見を伺いたいと存じます。では,よろしくお願いします。

【小林国際著作権専門官】WIPOにおける最近の動向について御説明を申し上げます。資料3-1を御覧いただけますでしょうか。
 まず概要ですが,平成27年6月29日から7月3日まで,WIPOにおいて,著作権等常設委員会(SCCR)の第30回の会合が開催されていますので,今回はこの会合の概要について御報告いたします。

 今回の会合は,前回までと同様,放送条約に関する議論と権利の制限と例外の議論に同等の時間が配分されています。また,今回は,10月にWIPOで最高意思決定機関である一般総会が予定されていますので一般総会に向けた勧告への議論も併せて行われています。
 では,2の各論に移ります。まず,放送条約について概要を報告します。
 まず(ア),簡単に経緯を申し上げますと,1998年以降,デジタル化等に対応した放送機関の権利保護に関する新たなルール,具体的には放送条約ですが,その策定を目指して議題化されており,議論が続けられています。まだ現在に至るまで合意には至っていませんが,現在,2007年の一般総会のマンデートに従って議論されています。
 現状ですが,資料3-2に添付している単一の作業文書が作成されるに至っており,これに基づいて議論が行われている状況です。放送条約については,日米欧だけでなく,WIPO全体の議論の停滞の一因となっているアフリカ諸国等も含め,途上国,先進国ともに条約策定には前向きという状況です。
 具体的に今回の第30回のSCCRの議論の概要について説明します。
 (イ)でございますが,今回のSCCR,放送条約の議論では,これまで非公式専門会合で集中的に議論されてきた5条の定義に関すること,6条の適用の範囲に関すること,そして9条の保護の範囲に関することについて,全体会合において議論が行われています。
 その結果ですが,次回の会合以降,これらの三つの論点については,概念的な議論はもう成熟したということで,テキストベースの具体的な議論に移行することとなっております。
 では,それぞれの三つの論点について,より具体的に御説明します。
 まず,(a)の定義に関する議論ですが,定義については,「放送機関」,「放送」及び「信号」という三つの文言の定義について議論が行われています。特に「放送機関」をどのように定義するかという点については,放送条約の受益者にも関連する事項ですので,放送機関の定義を適切に特定することが非常に重要であるということで,各国の共通理解が得られています。また,放送機関を定義するためには,既存の条約の文言等を参考に用いることが有効ではないかという我が国の指摘に関しましては,多くの国から支持が得られたという状況です。
 次に,(b)の適用の範囲,どのような送信媒体が保護されるかという点に関する議論について御説明します。
 この点については,技術的中立という観点から,送信媒体,伝統的放送ですとか有線放送,またはインターネット上の送信,そのような送信媒体にかかわらず保護を与えるべきと多くの国が主張しております。一方で,これは以前からずっと継続していることですが,国内の事情により,インドがインターネット上の送信の保護については依然として慎重な姿勢を維持しているという状況です。
 最後に,保護の範囲に関しては,脚注の4に記載されている議論の対象となっている行為のうち,同時あるいはほぼ同時の再送信について,本条約に規定することについて共通認識があることが確認されています。
 一方,固定物に基づく送信等の固定物に関する規定については,EUはこれを置くべきとしていた一方で,アメリカやインドは引き続き懸念を示しており,この点につきましては,第31回以降のSCCRにおいてテキストベースでの議論が継続されることとなっております。
 以上が放送条約に関する概要です。
 次に,権利の制限と例外についての概要を御説明します。
 まず経緯ですが,途上国から,著作権等の権利保護だけではなく,権利の制限と例外の措置についてもデジタル時代に対応した新たな国際的な枠組みを構築すべき,と指摘を受け,2005年以降,この議題について議論されております。
 現在,図書館とアーカイブのための制限と例外と教育研究機関等のための制限と例外の2種類について議論されています。二つの議題とも先進国と途上国の間で意見の相違が大きく,先進国については,既に,国ごとに多種多様な権利と制限に関する整理等があるので,既存の枠組みを超える新たな国際的な枠組み,特に法的拘束力のある枠組みは不要というスタンスであるのに対し,途上国は,新たな国際的な枠組みの必要性を主張しており,対立構造が依然として続いております。
 この制限と例外に関する今回のSCCRにおける議論の概要ですが,前回に引き続き,図書館とアーカイブのための制限例外のみ実質的な議論が行われています。議論については,アフリカ諸国やラテンアメリカ諸国では,条約形式のテキストベースの議論を望む意見が出される一方,アメリカからは法的拘束力のある文書を策定することは望まないが,国内で制限例外を定めるに当たって参考となるような高いレベルの目的と原理について合意を目指すべきという意見が出されており,それぞれ異なった立場が主張されております。その結果,こちらは第26回の作業文書(SCCR/26/3)に取り上げられている11のトピック,具体的には脚注の5に記載してございますが,この11のトピックについて,具体的な成果物を予断することなく,目的と原理について議論を継続するという合意が得られています。
 以上が権利の制限と例外に関する議論です。
 3ページを御覧ください。今回,総会前の最後のSCCRということで,総会への勧告についての議論も行われております。勧告の内容ですが,まず議長から,放送条約については,2017年の外交会議の開催の可能性を示唆するような勧告案が出されており,各国とも受入可能な姿勢を示しておりました。しかし,権利の制限例外に関する勧告で,法的文書の可能性を示唆する文言を入れるか否かという点で,先進国と途上国の対立,懸隔が埋められなかったため,結果的には放送条約を含めてパッケージとしての合意を得るには至りませんでした。したがって,今回のSCCRでは,一般総会に何ら勧告を採択することができずに閉会したという状況になっております。来年度の議論の方向性については,10月に行われる一般総会で改めて議論される予定です。
 最後に,今後の予定ですが,次回,第31回のSCCRは本年12月の日程での開催が予定されております。以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。
 では,ただいまの御説明を踏まえ,委員の方々から御意見等を賜りたいと存じます。放送機関の方々,図書館について詳しい方,あるいは理論的にでも結構ですが,せっかくの機会ですので,皆さん方の知見を御披露いただいて議論していただきたいと思います。いかがでしょうか。では,笹尾委員,どうぞ。

【笹尾委員】民放連,笹尾でございます。
 毎回という感じになってしまいますが,放送条約の成立に向けての御努力,御尽力,改めて感謝申し上げます。
 この資料にもあるように,世紀をまたいだ課題となってしまっているようですが,回を重ねるごとに一つ一つ中身的には着実な進歩があると現地に赴いたスタッフからも報告を受けています。混迷の度合いを増すというよりは,確実にその方向性が明確になってきているということですので,各国間のいろいろな勢力の綱引きがとても大変な問題として存在していますが,民放連としては,この放送条約の成立をとにかく是非企図しておりますので,引き続き御尽力をよろしく賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【道垣内主査】そのほかいかがでしょうか。上野委員,どうぞ。

【上野委員】ただいまもお話がありましたように,この放送条約というのは,もう20年近く議論しているわけであります。もちろん,条約の策定自体にはコンセンサスがあるというお話でしたから,権利の制限と例外条約よりは議論が煮詰まっていると言ってよいのかも知れません。ただ,2年前の国際小委員会(平成25年5月31日)でも,インドが「強硬にインターネット放送に反対して」いると御報告がありましたし,そこが今もネックになっているのかなと思いますので,インドが反対している理由について,もう少しお伺いします。
 もちろん,国際的な交渉ですから理屈だけではないと理解してはいるのですが,インターネット上の送信を保護対象に含めることにインドが反対している理由について,今日頂いた資料3-1の2ページ目の脚注3によりますと,インド国内のプラクティスとして,「伝統的放送を行う場合の放送機関と番組製作者等の間の契約と,インターネット上の送信を行う場合の送信機関と番組製作者等の間の契約とは,全く別個のもので独立しているため,両者を同列に扱うのは不適切と説明」しているようです。
 ただ,放送条約の保護対象にインターネット上の送信を含めるということは,当該送信について放送機関に排他権ないし禁止権を与えるということですから,例えば,放送機関が行ったインターネット放送が何者かによって無断利用された場合に,放送機関がこれをやめさせることができるようになることを意味するにすぎないのであって,インターネット上の送信を条約の保護対象にしたからといって,放送機関が番組製作者や著作権者の許諾なくインターネット放送できるようになるわけではありませんし,まして,放送機関がインターネット放送をやらなければならなくなるわけではありません。その意味では,ここでインドが挙げているプラクティスというのは,少なくとも伝統的放送機関が行うインターネット上のサイマルキャスティングを条約の保護対象とすることに反対する理由にはならないように思うのですが,この点についてどのようにお考えでしょうか。
 なお,2年前の国際小委員会における議論では,インドが「強硬」に反対しているとか,「明確に反対」していると紹介されていましたが,今日の資料では,「慎重な姿勢を維持した」と書いていらっしゃるのは,多少なりとも何か変化があったということでしょうか。これは,先ほど笹尾委員からも御指摘があったように,この議論が着実に進んでいるということの表れだと理解してもよろしいものでしょうか。
 こうした点について,もし何かお考えがありましたらお聞かせください。

【小林国際著作権専門官】会合の場では,この脚注の3に記載されている以上のことは説明がありませんでしたので,それ以上のことは分かりかねますが,議場では,インドが依然として反対する理由として,シグナルベースアプローチに基づく伝統的な意味での放送機関の保護に基づいて議論をするという2007年のマンデートに沿っていないと主張していました。

【道垣内主査】WIPOは,そういう有力な反対があるとなかなか前には進まないというプラクティスですか。

【小林国際著作権専門官】基本的にコンセンサスで進めていくということですので,反対があるとなかなか進まないという状況かと思いました。

【道垣内主査】そのほかはいかがですか。

【鈴木主査代理】では,一つ。

【道垣内主査】どうぞ。

【鈴木主査代理】御説明頂いた内容からは離れますが,WIPO関係の動きについての質問です。今日の配付資料の参考資料6の8ページから9ページに記載があるところですが,フォークロアの関係で,ほかにも伝統的知識とか,遺伝資源とかも合わさったIGCと呼ばれている政府間委員会について,昨年度のこの小委員会で御報告がありましたが,この動きについて,もし何か進捗がございましたら御紹介頂ければと思います。というのは,このIGCについては,昨年度の段階で,2015年の作業計画にすら合意できなかったということで,全く動きがないのか,それともまた一般総会に向けていろいろな調整が行われているのか,可能な範囲で教えていただければと思います。

【小林国際著作権専門官】御質問頂きましてありがとうございます。一般総会においては,SCCRだけではなく,御質問いただいたIGCについても議題となる予定となっており,現在,関係各国と調整をしている段階でございます。調整段階ですので具体的には申し上げづらいところもありますが,今議論を続けている段階とさせていただきたいと思います。

【鈴木主査代理】ありがとうございます。

【道垣内主査】そのほかはいかがでしょうか。権利の制限と例外につきましても議論されたようでございますが,よろしいでしょうか。それでは,引き続き,文化庁の御担当におかれましては,適切な対応をとっていただきたいと存じます。
 では,議題の4番目,日中著作権協議及び日中著作権セミナーについて,これも事務局から御説明を頂きます。

【堀尾海賊版専門官】それでは,第8回の日中著作権協議及び日中著作権セミナーについて御報告いたします。資料4を御覧ください。
 資料4に簡単にまとめていますが,文化庁においては,平成13年度より中国国家版権局との間で著作権に関する協議を毎年実施してきておりました。平成22年3月には著作権及び著作隣接権に係る戦略的協力に関する覚書を交換し,両国間における交流及び協力の強化を図っていたところです。一方,平成24年以降,しばらく開催が延期されていましたが,このたび,同覚書に基づき,中国国家版権局と文化庁との間で著作権協議及び関係者を交えた日中著作権セミナーを開催しました。
 Iにあるとおり,協議については平成27年7月27日月曜日に文化庁にて行いました。出席者は,日本側は磯谷文化庁長官官房審議官外6名。また,中国側においては,中国国家版権局版権管理司の段副司長外5名の参加がございました。詳細については,別添1を御覧ください。
 議題については,日本及び中国における著作権制度について,それぞれの国から関心事項について質問を行うという形で意見交換を行いました。日本側からは中国における著作権法改正の動き等について質問を行い,中国側からは,日本における最近の著作権法改正及び侵害対策の動きについて質問があり,意見交換を行ったところです。
 そのほか,今後の協力について,覚書に基づき,来年は中国において政府間協議とセミナーの開催をすることで合意をしました。時期及び場所については,今後,調整していく予定になっております。
 次に,II.の日中著作権セミナーについてです。版権局との覚書において,日中両国は著作権分野において政府間協議のみならず,人材交流や情報交換を実施することとされておりますので,日中両国においてともに関心のある課題について情報交換を行うために,覚書締結後,初めて文化庁と版権局との共催により,今回のセミナーを実施しました。日本での開催に当たり,一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)様に協力いただきました。
 日本側については,文化庁だけでなく関係省庁,また著作権関係団体等,約90名の方に御参加いただき,中国側は協議に参加した段副司長はじめ合計6名の方に参加頂き,5)にあるとおり,第1セッション,第2セッションに分けて,7月28日火曜日の午前中に実施しました。
 第1セッションにおいては,日本側の関係者も中国の最近の著作権法の改正の動きについて関心がありますので,段副司長から,「中国における著作権法改正の動向について」というテーマで,現在の状況を御発表いただきました。発表資料については,別添2に付けておりますので御参照ください。なお,別添2のオリジナルは中国語ですが,文化庁で仮訳をしております。
 次に,第2セッションにおいては,インターネット上における著作権侵害が両国にとって深刻になってきているため,それぞれの中国,日本における対策として,まずは,中国側から,「中国政府によるネットワーク上の海賊版撲滅の主な措置について」というテーマで,国家版権局版権管理司執法監督処の鄭副処長から御発表いただいております。別添3に付けていますが,具体的な剣網行動における取締りやどういった侵害対応をしているかということを具体的な数値とともに御発表いただいております。次に,日本側の取組として,「CODAの著作権侵害対応と正規流通促進への取組について」というテーマで,一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構の永野常務理事より御発表頂いております。別添4として,この発表資料を付けておりますので御参照ください。
 今回,3年ぶりに二国間での協議を行うとともに,著作権セミナーを開催しました。協議においては,日本と中国における著作権保護の取組や状況について活発な意見交換を行い,また,セミナーにおいては国内の関係者も交え,日中での最近の動き,また海賊版対策についての情報共有,意見交換を行うことができたのではないかと思っております。
 中国における著作権法改正については,現在は国務院法制弁公室にて審議がされており,今後どのようなスケジュールで国民から全国人民代表会議に上がって決定されていくかという,そういったスケジュール感は未定ということでしたが,中国国内での著作権に対する意識が高まっていること,また版権局においても侵害対策に取り組んでいるという情報が,今回の発表,意見交換を通じて共有されました。引き続き,中国の状況については情報収集をしつつ,定期的な意見交換の場が持てるように調整をしていきたいと思っております。以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。
 今の御報告,御説明を踏まえまして,御意見等ございますか。
 では,私から。日中著作権協議はもう10年以上続けられていて,その10年間,御担当がそれぞれ変わっていると思いますが,明らかな前進があるのでしょうか。中国のエンフォースメントについて,重点監督管理をした主な成果という御報告もあったようですが,そうしたことが目覚ましい進歩なのかどうかということを教えていただきたい。
 もう一つは,参加者の中に地方の方もいらっしゃるので,著作権についての国家法と地方の権限がどうなっているのかという点と,新聞出版広電局と版権局の関係を教えていただきたい。要するに,せっかくこういう協議をするのですから,キーパーソンに来てもらいたいわけですが,どういう経緯からこういう出席者になっているのかを御説明いただけますか。

【堀尾海賊版専門官】まず,進展ですが,協議・意見交換における中国側からの発言によると,中国では,中央の方ではかなり意識は高まってきており,また,侵害対策も取ってはきていますが,なかなか中国は広い国ですので,地方に行くと,裁判官の方の理解が違うため判決が違ってくるといったところもあり,まだ完全に対策がとれている状況ではないということでした。しかし,中国内の侵害について,権利者が侵害者を特定できれば,地方の版権局,若しくは広範囲にわたるようであれば国家版権局に相談くださいというようなことは言っていただいております。国家版権局では,今回来られた段副司長と,御発表いただいた鄭副処長が具体的な侵害対応をされています。
 国内の関係者と事前に話したときに,どの機関に言ったらいいのか分からないとか,どういった情報を提出したらいいか分からないという発言もありましたが,こうした問題も,全てではないにしろ,今回の中国側の発表の中に含めていただいています。一足飛びに進展ということではないですが,少しずつ情報共有を図りながら進展しているのではないかと思っています。
 また,これは多分,後藤委員に御説明いただいた方が適切ではないかと思いますが,CODA様においても,設立以来,非常に御努力いただき,この版権局と着実に人的な交流を積み重ねていただいており,この剣網行動についても,CODA様から国内の関係者の侵害について申立てを行って,いろいろと御尽力を頂いているところです。
 次の,地方の方が出席している理由についてですが,中国の場合,日本と違い,版権局の地方支所というか,事務所が各省各市にあるので,今回は,その各地において著作権を担当されている方の代表という形で2名出席されています。
 新聞出版広電総局との関係ですが,イメージとしては,文部科学省の外局として文化庁があるというような感じで,新聞出版広電総局の中というか,外局的に国家版権局が置かれております。新聞出版広電総局の方は印刷発行所という出版物の管理をされている部署の方ですので,出版物関係の著作権に関しての担当という形で,意見交換の際もかなり御意見や情報を頂いています。

【道垣内主査】ありがとうございます。
 確認ですが,そうすると,この別添1の出席者において,例えば一番下の方の所属は河南省版権局と書いていますが,これは国家版権局河南省支所みたいな感じなのでしょうか。

【堀尾海賊版専門官】そうです。

【道垣内主査】今直ちに御回答いただかなくても結構ですが,省の局ではなくて,国家の局の支所ということでしょうか。

【堀尾海賊版専門官】私も勉強不足で申し訳ありませんが,省の下に置かれているのか,版権局の下に置かれているのかは不明です。しかし,国家版権局と常にやりとりをして,地方において著作権に関する行政を担当している部署の方ということでございます。

【道垣内主査】はい,ありがとうございました。どうぞ,後藤委員。

【後藤委員】私から,10年の成果を簡単に御紹介すると,私はこの段さんと10年来お付き合いしています。国家版権局の皆様は異動がほとんどないので,大体同じ方が御担当です。10年前は,彼らが,私たちはこれを目指しています,これを目標にしていますと言うだけで,私たちも一応お話はしますが,私たちの話はほとんど理解しようとしないような,そういう雰囲気がありました。
 ただ,昨今は非常に関係が良くなりました。大体3か月に一遍お会いしていますが,運用実行はまだまだ伴っていないという問題点もありますが,私たちの言うことを非常に理解してくれています。
 協議を進める中で,やはり日中間の著作権協議という国レベルでの会合が再スタートしたことは非常にうれしく思います。いわゆる民がいくら言っても限界があるといつも感じますので,国レベルで私どもの意見も吸い上げながら協議を行うことが非常に肝要だと思っています。今後,日中間の大臣レベル,首脳レベルも予定されているようですので,是非とも一層の御尽力を賜れればということでございます。以上です。

【道垣内主査】ありがとうございます。そのほかよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 では,議題の5番目,海外における著作権侵害等に関する実態調査報告です。インドネシアについて,事務局から御説明頂いた後,新日本有限責任監査法人の福井健太郎様から御説明いただき,その後,皆様方の御議論としたいと思います。
 では,まずは事務局から簡単にお願いいたします。

【堀尾海賊版専門官】それでは,資料5-1と5-2を御覧ください。こちらに海外における著作権侵害等に関する実態調査報告書〈インドネシア〉で報告書をまとめています。まず,事務局から今回の調査の趣旨等を簡単に説明し,その後,今回の調査委託先である新日本有限責任監査法人からデータ等に基づき報告していただきます。
 まず,文化庁では,各種海賊版対策を行っていますが,その事業の一環として侵害国における実態調査を行い,海外における効果的な海賊版対策を企画・立案する上での基礎資料とするため,平成26年度はインドネシアにおける日本のパッケージ及びノンパッケージ型のコンテンツにかかる著作権侵害の実態を調査分析するとともに,コンテンツ類型別の流通・利用形態,侵害規模を推計するための調査を実施しました。この報告書については,文化庁のホームページでも公表しております。また,本日,委員の皆様には机上に配付しているこちらのオレンジの報告書に,具体的な報告及びデータを載せていますので,併せて御参照ください。
 調査結果については,資料5-1では簡単にまとめられていますので,資料5-2に基づいて,具体的なデータ等を含めて新日本有限責任監査法人から御発表いただきます。よろしくお願いします。

【新日本有限責任監査法人(福井)】新日本有限責任監査法人の福井と申します。発表を担当いたします。
 では,お手元の資料5-2のパワーポイントを御覧ください。今回は,インドネシアにおける著作権侵害等に関する実態調査ということで,2ページ目の目次に沿って御報告します。
 まず,1.調査の目的と方法でございます。今回の調査の目的につきましては,海外における効果的な海賊版対策の企画・立案のために日本のオンライン型コンテンツ及びパッケージに係る著作権侵害の実態を調査分析して,コンテンツの類型別・流通経路別の侵害規模を推計しています。調査対象国はインドネシアですが,調査方法によっては都市部に限定して実施しております。調査対象コンテンツの類型については,映像として,アニメ,映画,テレビ放送番組,そして,音楽,ゲームソフト,出版物としては,コミック,雑誌,書籍を対象としています。調査対象コンテンツの流通経路については,大きくオンライン流通とパッケージ流通,そしてテレビ放送・映画館等としています。
 オンライン流通については,特定事業者・運営者によるコンテンツ配信,動画投稿サイトによる流通,リンクサイト/リーチサイトによる流通等を対象としています。パッケージ流通については,実店舗によるパッケージ販売や,通信販売に加え,3ポツ目にあるように,ハードディスクドライブやUSBメモリ等へのコンテンツのコピーサービスや,コンテンツ入りの外付けハードディスクドライブの販売等も対象にしています。テレビ放送・映画館については,地上波テレビ放送,衛星テレビ放送,ケーブルテレビ放送,映画館での上映,ライブコンサートでの公演,ラジオの視聴と幅広く対象としています。
 中ほど一番下に今回の調査方法がありますが,まず文献調査を行いました。その上で日本の著作権者にヒアリング調査をしています。そして,日本国内とインドネシアの現地と両方でグループインタビュー調査をしております。国内ではインドネシアからの留学生を中心に日本コンテンツの利用状況であるとか,どのような流通経路を使ってコンテンツを入手しているのかということを聞いています。現地でも同じような形でグループインタビュー調査をしております。その上で,現地のインターネットユーザーを対象に今回の調査のメインであるWEBアンケート調査をしております。また,一番下に現地店舗調査とありますが,主にパッケージを対象として,現地でどのような店舗で,どのような価格でパッケージ等が売られているのか,インドネシアのジャカルタで調査をしました。その上のコンテンツ流通サイト調査は,WEBアンケート調査の中で特にユーザーによく利用されていたサイトを対象にしたインターネット上の調査で,28サイトの調査をしました。
 その左に調査方法がありますが,今回,ジャカルタとメダンという大都市を対象としてWEBアンケート調査を実施しています。この二都市を対象とした理由としては,グループインタビュー調査の結果から,インドネシアにおいては都市部と農村部における日本コンテンツの利用状況に大きな差があり,農村部では日本コンテンツの利用が余り進んでいないと考えられることから,比較的日本コンテンツの利用が進んでいると考えられる都市部を対象として,その都市部の中でも異なる島に位置してコンテンツの利用状況の傾向に違いがあると考えられるジャカルタとメダンを対象としています。
 WEB調査においては,二段階で調査しています。まず,a)として,日本コンテンツの入手経験率を,全体の中で,どれぐらい日本のコンテンツが利用されているのかという点について,性別年齢層別の人口構成に合わせてサンプリングをした600件のサンプルを対象にWEB調査をしています。その中で日本コンテンツの入手経験ありと御回答いただいた方に,b)の2段階目の調査,日本コンテンツ入手経験者の日本コンテンツの入手実態調査をしています。こちらも同じく600件のサンプルで調査しています。
 続いて,4ページ目の2.日本コンテンツの入手経験率は,第1段階目として,各国・地域別に日本コンテンツの入手経験率がどうなっているかを調査した結果です。その中で,日本コンテンツの入手経験率が特に高かったのは,[1]のアニメで,これは5割近くの入手経験率です。続いて,[9]のゲーム専用機用ゲームも2割弱と比較的高く,[11]のコミックについては,4割を超えて圧倒的に日本の入手・視聴経験率が高いということになっています。そのほかに米国に次いで2番目に高いものが,[7]のオンラインゲーム,[8]のスマホのゲームアプリ,[10]のPC用ゲームの中で非オンラインのもの,という結果になっています。なお,[4]バラエティや[5]ドキュメンタリー等のテレビ番組,[6]音楽,[12]雑誌,[13]書籍,については,地元のインドネシアのコンテンツの割合が最も高いという傾向が出ています。
 続いて6ページは,第1段階目の調査で日本コンテンツ入手経験ありと答えた方に対して調査をした結果です。まず,11ページの6.で全体傾向を簡単に御覧いただいた上で内訳を説明いたします。日本コンテンツ入手経験ありの方に,一般市民一人当たり,1年間どれぐらい日本コンテンツを入手・視聴件数があるか,コンテンツ類型別,また,コンテンツ流通経路別に集計したものがこの結果です。アニメ,映画,テレビ番組等のコンテンツ類型別に,列ごとにそれぞれどれぐらいの入手・視聴件数があったか集計しています。横の行については,コンテンツ流通経路別に集計しています。
 まず縦のコンテンツ類型別に見ますと,アニメ,コミックが多くなっております。アニメについては一番下の総合計で107.3件,コミックについては総合計で47.6件という高い数字になっています。次に,横のコンテンツ流通経路別で見ると,やはりオンライン流通が主流で,特にa-2,a-3と書いてある動画投稿サイトや,リンクサイト/リーチサイトが多くなっています。下の方にオンライン流通合計やパッケージ流通合計,テレビ放送・映画館等の合計が出ており,オンライン流通合計が175.3件と一番多いのですが,パッケージ流通も依然として残っているということが分かります。インドネシア都市部では,テレビ放送が正規に展開されており,アニメや映画,テレビ,音楽において,テレビ放送等がパッケージ流通より多くなっているという傾向が出ています。
 それでは,また6ページに戻り,3.の全体傾向・コンテンツ類型ごとの傾向・特徴について説明いたします。先ほどの全体集計で見たとおり,日本コンテンツの全コンテンツ類型合計の都市部の一般市民一人当たりの年間平均入手・視聴件数は,単純平均でオンラインが175件,パッケージが52件,テレビ放送等が47件となっており,オンラインが全体の6割弱を占めることが分かりました。その中で特に入手・視聴頻度が最も高い手段を聞いており,その中では,アニメ,映画,テレビ番組というような動画と,あと,音楽については「動画投稿サイトによる流通」が最も高い。オンラインゲーム以外のゲームについては,「P2Pサイト/P2Pソフトによる流通というところが多い。コミック,雑誌については,実店舗によるパッケージ販売が多く,コンテンツの特性に合った利用形態が主流になっていることが分かります。
 次に,入手・視聴頻度が最も高い手段を利用する理由としては,当たり前と言えば当たり前ですが,アニメ,テレビ番組,音楽,オンラインゲーム以外のゲームについては,「無償だから」が最も高く,コミックについては「容易に入手できるから」という理由が高くなっています。
 続いて7ページでは,正規版の認識有無について聞いており,オンラインの流通経路で入手・視聴した方に対してどれぐらい影響を与えるかということを聞いております。こちらはジャカルタとメダンで傾向の違いが出ており,ジャカルタでは,テレビ番組,音楽,オンラインゲーム,ゲーム,コミックについて,正規版の認識について聞いたところ,正規版かどうか「意識する」という方の割合が最も高いのに対し,メダンでは,正規版かどうか「意識しない」という割合が最も高いという結果が出ています。さらに,「意識する」という方を対象に,その下の入手・視聴に与える影響を聞いています。こちらについては,ジャカルタでもメダンでも特に傾向の差はなく,いずれのコンテンツ類型でも,「正規版があれば正規版を入手するようにするが,海賊版しか無い場合には海賊版を入手・視聴する」という割合が最も高いという傾向が出ています。
 8ページ目は,4.の都市間比較による傾向・特徴として,ジャカルタとメダンで特徴的なところを抜き出しています。かいつまんで申し上げますと,ジャカルタについては,一番上のポツにあるとおり,インターネットから入手・視聴する場合,「正規版の認識有無」については,コミックを除いて,いずれも,メダンと比較して「意識する」若しくは「多少意識する」の割合が高い。パッケージ入手についても同様の傾向が出ています。その下のメダンについては,一番上のポツにあるとおり,書籍を除く全てのコンテンツ類型で,日本コンテンツの入手・視聴経験の割合がジャカルタよりも高いという傾向が出ております。詳細については説明を割愛させていただきます。
 続いて,9ページの5.正規流通(オンライン)に対する要望として,インターネットユーザーに,正規で日本コンテンツを展開する場合に,どのような配信条件であれば利用したいかということを聞いています。コンテンツ類型別に見ますと,アニメ,テレビ番組では「HD品質であること」,オンライン以外のゲームでは「画像が高品質であること」,コミック,雑誌,書籍では「高画質であること」ということで,地域にかかわらずコンテンツの高い品質に対する配信条件を望む傾向が見られたことが特徴的です。
 音楽については,ジャカルタで「ダウンロードできること」や,「音声がオリジナルのままであること」,「HD品質であること」などを望む割合が高く,メダンでは,音楽については「ダウンロードできること」が最も高いという傾向が見られます。
 この下の図には,アニメについて配信条件として望むことを聞いたもので,「HD品質であること」が64.3%と最も高く,「インドネシア語字幕付きであること」と「ダウンロードできること」というのが57.6%と2番目に高いという結果になっています。
 続いて10ページ目では,同じ日本コンテンツをインターネット上で正規に利用できる場合の価格について聞いています。この図では,日本のアニメを正規にインターネット上で入手・閲覧できるようにした場合,コンテンツ1件当たりの価格ということで,無償から幾らまでなら出せるか質問しており,当然ながら「無償」という回答が一番多いですが,このグラフの中で「3万ルピア」,100ルピアが約1円なので300円ぐらいという回答が20%弱と,結構な割合の方が一定の価格を払ってもよいと考えているということです。
 続きまして,11ページは,先ほど御説明しましたので飛ばし,12ページに参ります。7.コンテンツ類型別入手・視聴の侵害規模として,インターネットユーザーを対象にしたアンケートでの回答を基に,侵害規模を推計し,表にまとめております。まず人口規模に換算して,全国都市部の件数ベースの侵害規模を出しています。その上で,全国都市部インターネットユーザーをベースに換算した件数を,コンテンツ類型別に載せています。特に侵害規模が大きいところでは,アニメで,全国都市部ネットユーザーで109万件を超え,また,コミックが58万6,000件を超えるという結果になっています。
 その右側に金額ベースということで,あくまで参考として推計しています。仮に有償配信とした場合に,有償ダウンロード換算をして推計をした数値を人口規模に換算した全国都市部とネットユーザーベースに換算した全国都市部ネットユーザーベースで出しています。こちらはインドネシアにおけるコンテンツ類型別のパッケージ料金単価の事例を件数に乗じて推計をしたものです。
 その更に右側の広告費換算とは,全て無料配信で広告収入のみで配信したとした場合に,インドネシアの特定のサイトを対象にした日本コンテンツのキーワードの推奨クリック単価例と,平均クリック率を乗じて推計した金額を出しておりますが,実際,インドネシアでは有償ダウンロードサービスを実施していませんので,右側の方,無料配信をベースに推計した金額の方がより近いものであると考えています。ただ,今後,有料ダウンロードというサービスが提供されていけば,今回,有料ダウンロード換算値を推計したことにも一定の意義が出てくると考えております。ただ,先ほども申し上げましたとおり,こちらは有料配信と仮定した場合と,無料配信と仮定した場合でかなりの金額の差が出ておりまして,これは単価をどう設定するかによっても大きな振れ幅がございますので,本当に参考として見ていただければと考えております。
 12ページ目の下方に,侵害規模推計に当たって無許諾の流通とみなした範囲を列挙しておりますので,参考にしてください。
 13ページに,8.として日本コンテンツの侵害規模の推計方法を書いています。簡単に申し上げますと,侵害件数については,インドネシアのインターネットユーザーを対象としたアンケート調査結果から推計した日本コンテンツの流通経路別の平均入手・視聴件数に,権利者へのヒアリング調査結果等,グループインタビューも含めて推計した「無許諾とみなすことができる流通経路」により入手・視聴した割合を乗じて,さらに「対象人口」を乗じて算出しています。
 続きまして,14ページに進みます。9.の都市部一般市民一人当たり1年間のコンテンツ類型別アップロードの件数を計算しています。まず,日本コンテンツの入手・視聴経験者のアップロード経験割合については,経験ありかなしかということで,経験ありについては,約3割の方が経験ありと答えています。その中で,特に右側の図でございますけれども,特にアニメと映画におけるアップロード経験の割合が高いという結果が出ています。
 続いて,15ページ目がまとめでございます。まず,日本コンテンツの流通の現状についてです。アニメやコミックは正規でインドネシアで展開されており,そういうこともあり,子どもの頃から日本の文化に現地の方が親しんでおり,日本のコンテンツが受け入れられる土壌ができていると今回の調査で把握しております。
 日本のコンテンツの侵害状況については,今回,一定の仮説の下に推計をしておりますけれども,日本コンテンツの侵害規模は大きなものになっています。現在は,インターネットの通信速度等がまだ余り速くないということもあり,オンラインでの侵害規模は,大きいと言っても,先ほどお示しさせていただいたくらいですが,今後,PCの普及やインターネットの接続環境が整備されてくると,オンライン流通が増加して,それに伴って侵害が増加していくと想定されます。
 今回の調査から読み取れるこれらの侵害の原因について,まず,インドネシアのユーザーは,日本の正規コンテンツに対して一定の対価を支払ってもよいと考えています。また,ユーザーの多くは,著作権に対して認識はしているけれども,それが著作権保護の具体的なアクションにはつながっていないという実態が把握できています。これらのことから,インターネット上で正規にコンテンツを入手・視聴できない中で,海賊版が容易に利用できる環境が実現していることが,侵害が大きくなってきている主な要因であろうと考えております。
 最後,16ページ目で,日本コンテンツの不正流通対策の在り方をまとめてございます。大きく結論を申しますと,不正流通対策と正規版展開を車輪の両輪として実施していくことがまずは必要だろうということです。今回,ヒアリングを通して日本の権利者によるインドネシアにおける不正流通対策は,まだまだ十分とはいえず,今後,インドネシアの政府当局や現地の代理店等,関係者と協力して,不正流通対策を充実強化していくことが必要であるという示唆が得られました。
 ユーザーの著作権の認知度が低いということですけれども,正規品を意識している割合が一定程度ございますので,著作権教育であるとか,著作権意識の啓発効果が大きいだろうと想定されます。先ほど申し上げましたとおり,現在はインターネットで大容量のコンテンツがスムーズに入手・視聴できる環境にはなっておりませんが,今後,環境が整備されることで,インターネット上のコンテンツの流通が増加し,主流になっていくと想定されますので,今のうちに,テレビ,ラジオ,パッケージでの正規流通に加えまして,特にオンラインの正規流通を強化していくことが必要であろうということです。
 正規展開については,アニメ,テレビ,音楽ということで,WAKUWAKU JAPANという衛星放送やJKT48などの取組などで一定の効果は上がってきていますが,このような海賊版と差別化できる正規展開を今後一層,充実させていくことが望まれると考えています。
 あとは,やはりテレビや雑誌等のメディアにおける露出とか,インドネシアでのコンサートやイベント等のプロモーション等を活発に行っていくことで,まずは日本コンテンツに興味を持ってもらうための取組を強化充実していくことが必要であろうと考えられます。
 コミックに関しては,多くのユーザーがスキャンデータ等によって動画投稿サイト,リンクサイト/リーチサイト,ストレージサービスを通じて入手・視聴できているので,これらの海賊版を提供しているサイトを対象に不正流通対策を行うことと,あとは,日本での出版公開時期とタイムラグなく現地で正規版の出版,公開をしていくことが重要であろうと思われます。
 我が国政府として必要な対策としては,先ほどの繰り返しになりますが,現地政府に対して,著作権意識の啓発,不正流通対策を働き掛けていくことが必要であるということと,あとは,権利者へ各国の実態把握のための調査等に基づいて情報提供を行っていくということと,日本の権利者が正規配信に成功した事例等の情報について共有することで,日本の権利者が正規展開を行いやすくすることが重要であろうと考えております。
 以上,発表を終わらせていただきます。

【道垣内主査】ありがとうございました。では,ただいま頂きました御説明を踏まえ,御意見,御質問等ございましたら,よろしくお願いいたします。どうぞ,今村委員。

【今村委員】インドネシアの実態調査に関しまして,この前提としてのインドネシアの著作権法の法制度について若干お伺いします。違法にアップロードされたコンテンツがある場合に,日本法ですと,一定の要件を満たせば,それをダウンロードすることは音楽や動画等の正規コンテンツの著作権の侵害等にあたりますが,インドネシアの著作権法ですと,許諾なしで,違法にアップロードされたものをダウンロードすることは,複製権の侵害等になるのでしょうか。啓蒙が重要ということですが,こうした行為が著作権侵害ではないとなると,啓蒙してもなかなか難しい部分があるかとは思うので,その辺,どのような法制度になっているのか,後ででも構いませんので教えていただけますか。

【堀尾海賊版専門官】インドネシアの著作権法が昨年改正されるなど,インドネシアの政府としても,そういった違法対策には力を入れてきておりますが,法整備と,その運用執行がきちんとなされるかというのはまた別問題ですので,仮に違法にアップロードされたものをダウンロードすることが日本のように明確に違法とはなっていないとしても,海賊版を購入しないよう,先方政府と協力しながら,きちんと普及啓発を行っていきたいと思っています。
 こちらの報告書に書いてありますが,アンケートの回答者が,海賊版は文化だというコメントをしているなど,海賊版を入手することが悪いという意識もまだ低いということが今回のアンケート結果からも見えてきております。そこを一気に変えていくというのは,インドネシアの経済状況を含めて考えると難しい部分もありますが,少しずつでも海賊版を買わずに,きちんと正規品を購入する,という意識を高めていけるような取組を進めていきたいと思っています。

【道垣内主査】法制度の整備も含めて,よろしくお願いします。

【堀尾海賊版専門官】そうですね,はい。法制度につきましては,また調べて回答します。

【道垣内主査】そのほかはいかがですか。どうぞ。

【奥邨委員】御報告ありがとうございました。1点質問と,なぜそういう質問をするかという理由というか,意見等を簡単に申し述べたいと思います。
 今頂いたパワーポイントの資料の10ページ目で,価格,要望価格ということで,無償の割合が最も高いという傾向が見られるというまとめがあったわけですが,それについて,アンケートにおいて具体的にどのような選択肢が設定されているのかというのが,私からの質問です。
 ここからは質問の理由と意見と同じことになりますが,仮に,インドネシアの人にとって日本コンテンツがかなり魅力的なものだとしても,無償ですか,1,000ルピアですか,3,000ルピアですかと,ただ並列的に払ってよい金額に関する選択肢を並べたら,どこで聞いても,やはり無償というのがまず一番高くなる可能性があります。むしろ,単に無償と聞くのではなくて,有償ならば入手しないという積極的な拒否のような形の選択肢にした方が良い。そうしないと,著作権の認識やコンテンツの魅力を反映した回答かどうか,それは安ければ安い方がいいという一般論を含んだ回答なのか,分かりづらいのではないかと思います。特に,今回おまとめのように1万ルピア以上払ってもよいという方がかなりいるという結果からすると,選択肢の設定次第ですが,若干この無償という選択肢の設定がミスリーディングではないかという意見を持ちましたので,どういう形で選択肢を設定されておられるのか伺いたいと思った次第です。

【新日本有限責任監査法人(福井)】お答えします。これについては,まず日本のコンテンツに対して正規にインターネット上で入手・視聴できるようにした場合,どんな条件による配信を望みますかということで,それぞれの選択肢を選んでいただいて,それが満たされた場合に,コンテンツ1件当たりどのような価格なら払ってもよいかということなので,ユーザーにとってどういう,例えば,インドネシア語に音声が吹き替えされていることであるとか,HD品質であることとか,望む配信条件を満たした上でお金を払っていいかどうか,幾らまでなら払えるかどうかという聞き方をしております。

【奥邨委員】そうすると,やはり,例えばHDコンテンツである日本のオリジナル音声が出ているコンテンツを希望した人に,ただ平坦に,無償,1,000ルピア,2,000ルピア,3,000ルピアという選択肢を並べて質問しているということですか。前提条件となる質問は何であっても,1,000ルピアと無償という選択肢が同じように並んでいるということですか。

【新日本有限責任監査法人(福井)】そうですね。

【奥邨委員】そこがポイントだと思っています。やはりそれでは,「HDコンテンツでさらにオリジナル音声で,翻訳もついたものが観たいけれども,でも無償が良い」という回答を誘導してしまう質問なのではないかという意見を持ったということを申し上げたいと思います。以上です。

【道垣内主査】はい,分かりました。これは例えば,有償で300円くらいなら払ってもいいということですが,物価を考慮すると,日本で言うとどれくらいに相当するのでしょうか。

【新日本有限責任監査法人(福井)】大体10倍ぐらいだと思います。

【道垣内主査】3,000円払ってもいいという日本の方と同じぐらいということでしょうか。

【新日本有限責任監査法人(福井)】はい。

【道垣内主査】分かりました。そのほか何かございますか。
 今回の調査をされた新日本有限責任監査法人としては,インドネシア以外にどこかほかでも調査されたことはあるのですか。インドネシアの特徴というのはどこにあるのかなというのを知りたいのですが。

【堀尾海賊版専門官】平成26年度がインドネシアで,平成25年度にタイ,その前に平成24年度は中国という形でこの調査を行い,昨年度もちょうどこの新日本有限責任監査法人が調査を行いました。

【道垣内主査】そうですか。インドネシア向け対策みたいなものがもしあれば教えていただきたいと思います。

【新日本有限責任監査法人(澤)】インドネシアでは仮に著作権のことを知っていると,やはり守らなければいけないという意識の回答が中国に比べると随分高いです。それでも全体としては低いのですけれども,守らなければいけないと思う人の割合は,中国よりもかなり高いという傾向は出ていますので,今から,何が違法コンテンツであるのかについて啓発していけば,効果があるのかもしれないなという印象を持っております。

【道垣内主査】教育啓発活動が有効な手段足り得るという素地があるということですね。分かりました。
 そのほか,どうぞ。

【久保田委員】今の質問に関連してですが,イスラム教徒というか,この間,ベトナムの方が来られたときも同じようなことを聞きました。イスラム教徒の中の教典では,人のものを盗んではいけないというのと,情報を盗んではいけないというのは同じだと言うのです。聞いたときには少し驚きましたが,インドネシアもイスラム教徒が多いので,こうした視点も何か関連するようでしたら教えていただきたい。

【新日本有限責任監査法人(澤)】法遵守の意識が高い背景までは分かりませんが,今,そのようなこともあるかもしれないと感じました。ありがとうございます。

【道垣内主査】どうぞ。

【松武委員】芸団協の松武と申します。
 12ページですが,音楽とあり,括弧に(着メロ等を含む)と書いてありますが,着メロというのは,ミリーという技術を使ってシンセサイザーが鳴るという,もう一世代前の技術ですが,インドネシアではまだそのような配信をされているのかという質問です。また,音楽というのは,これはPCからのアップロード,いわゆる日本でずっとある配信の違法行為をスマホで行った場合も全部含んでこの金額という提示をされているのか,ちょっとお伺いします。

【新日本有限責任監査法人(澤)】着メロについては,今現在でも着メロが使われているという状況ではなく,過去からの経緯で同じ質問をしている関係で,着メロという表現が残ってしまっています。また,音楽には,例えばスマホにダウンロードするものを全部含んでおります。PCのみではないです。

【松武委員】ありがとうございました。

【道垣内主査】よろしいでしょうか。
 では,ありがとうございました。まだ今後もほかの国も調査されるのかもしれませんが,よろしくお願いいたします。
 議事の6番目は,家庭用ゲームソフトの技術的手段回避による著作権侵害の現状です。コンピュータソフトウェア業界の近年の動向について,一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事で,かつ事務局長の久保田委員と,それから中川様もいらっしゃっていますので,御報告いただきたいと存じます。よろしくお願いします。

【ACCS(久保田)】家庭用ゲームソフトの技術的手段回避による著作権侵害の現状というお題を頂いていますが,著作権法の法改正によりコンピュータープログラムが明文化されて今年で30周年ですが,弊協会は,もともと企業内の違法コピーや,そのほかゲームソフトなどについて,侵害対策ということで,ソフトウェア法的保護監視機構という団体として生まれました。そういう意味では,侵害対策が基幹業務ということになっています。当時は,パソコンのソフトのビジネスソフトやゲームソフトが中心でしたが,最近はデジタルコミックや,そのほかアニメ,DVD等,たくさんの権利者に会員として参加していただいています。
 そういう中で,ますます重要になっているデジタルの著作権の問題に,積極的に取り組んでいる状況です。昨年は,権利保護活動を業務としている調査部を侵害対策機構と改称し,ビッグデータの観点などもあり,著作権だけではなく,不正競争防止法や商標法違反などへの対策もスタートさせています。
 刑事事件の支援業務については,今年の2月に行われたファイル共有ソフト等を利用した著作権侵害の集中一斉取締り等にも協力し,年間約60件,今回は58件でしたが,そういった事件の支援をしています。特筆すべきこととしては,ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会(CCIF)に参加し,2010年6月から,WinnyやShareユーザーに対し,また,2014年4月からは,BitTorrentユーザーに対し,プロバイダ事業者と協力して警告メールを送付して違法行為を抑止するという活動も行っており,今までに約3万通の警告書を出しています。
 今日は,PlayStation,Wii,XBOXなどの据置型のゲーム機や,PlayStation Vita,ニンテンドーの3DSなどの携帯型のゲーム機で遊ぶための,家庭用ゲームソフトに対する著作権侵害について報告します。技術的手段回避する機器としてはMODチップやマジコンが多く使われているわけですが,この辺について詳しく御報告したいと思います。
 詳細については,協会の法務マネジャーの中川から報告させます。よろしくお願いします。

【ACCS(中川)】コンピュータソフトウェア著作権協会の中川でございます。家庭用ゲームソフトの技術的手段回避による著作権侵害に関して,簡単に御報告いたします。
 今,弊協会の久保田から御説明しましたとおり,家庭用ゲームソフトは,今,据置型のゲームソフトと,携帯型のゲームソフトの2種類に大きく分かれます。家庭用ゲームソフトを遊ぶためのハード機器については,技術的手段が何らか施されていますので,単純に海賊版等でプレーすることはできません。そのため,何らかの形でその技術的手段を回避・解除する必要があるため,そういったツールが出ているわけでございます。今日は,マジコンと呼ばれる,携帯用ゲーム機,特にニンテンドー社の家庭用ゲーム機の回避ツールを中心に御説明させていただければと思います。
 どんなものかというと,こういうものです(マジコンの現物を委員に提示)。ニンテンドー3DS,ニンテンドーの携帯用ゲーム機用のカートリッジ,最近の形はこんな形をしています。少し前はもう少し大きかったのですが,最近,DSと呼ばれるようになってからはずっとこの形です。これと同じ形のゲームソフトが通常流通していますが,このソフトを差すスロットがあり,ここにこういったマジコンと呼ばれる機器を入れることによって技術的手段を回避するという手法になっています。これ自体はマジコンとしての機能があるだけのケースで,御覧になりにくいかもしれないですが,マジコンには小さいスロットがあり,このスロットにゲームソフトをコピーしたメモリカードを差し,ゲームを遊びます。
 では,マジコンはどこから来るのか,それから,マジコンにかかる著作権侵害がどんな形になっているかという簡単な図を6ページに記載します。特にニンテンドーのゲーム機に関しては,こういった特殊な形をしている関係で,例えばパソコンでそのままコピーをすることが,難しい。もちろん,プログラムを吸い出すためのツールも別途販売されています。そういった形で抜き出す必要があるので,普通の人は余りやりません。インターネット上で流れている海賊版ソフトをダウンロードして使うというのが一般的に行われていることです。一方,そのソフトで遊ぶためのマジコンを町の中で買うわけですが,マジコンは日本国内で作られているものではなく,ほとんどが海外から輸入されているものです。
 7ページに参りまして,では,家庭用ゲームソフトはどこにアップロードされているのかというと,大きく分けると二つの場所に置かれております。一つは,オンラインストレージ,サイバーロッカーと呼ばれているところに蔵置されています。日本のサイトではありませんが,下にサイトの例を示しています。こうした形でゲームソフトのデータがそのまま流通しています。
 もう一つは,P2Pファイル共有ソフトを通じてダウンロードするというものがあります。先ほどのインドネシアでの侵害の報告にもありましたとおり,P2Pでのゲームソフトの流通は結構多いです。P2Pファイル共通ソフトは一体どういうものか簡単に申し上げれば,インターネット上のサーバに物を置いてダウンロードするのではなくて,コンピューターとコンピューターを直接つないでデータのやりとりをするというものです。幾つか種類があり,実際に直接つないで単純にデータのやりとりをするものと,それから,ダウンロードするというよりは相手からもらってくるという方が近いのですが,ファイル等を検索するための機能が別途のサーバを用意して置いておいて,そこで検索したものをダウンロードする形で使うものがございます。後者の代表的なソフトであるBitTorrentと呼ばれるファイル共有ソフトでは,ユーザーはまず任意でインデックスサイトと呼ばれる検索サーバでコンテンツを探して,ぞれからBitTorrentにつながっているユーザーからコンテンツをダウンロードしてくるという機能になっています。
 これを9ページの上の図で簡単に図示しています。トラッカーだとか,インデックスだとか,いろいろな名前のサーバがありますけれども,サーバとして記載されているのは基本的にはインターネット上で公開されているもの。コンピューターとして記載されているのはBitTorrentネットワークにつながっている個別のコンピューターだと認識していただければ結構です。
 インターネット上にあるサイトから,どのコンピューターがどんなコンテンツを持っていますという情報が記載されているTorrentファイルをまずダウンロードしてきます。そのファイルを利用して今度はBitTorrentネットワークの中でユーザーとつながってコンテンツをダウンロードしていくというのがBitTorrentの機能でございます。
 実際に下にtorrentファイル検索サイトの一例を記述してございます。ここには実はコンテンツは置いていません。ここに置いてあるのは,先ほど申し上げましたtorrentファイルと呼ばれている,要は,誰がどんなコンテンツを持っているという情報が記載されているファイルが置いてあるに過ぎません。ですので,torrentファイル検索サイトに置いてあるファイルをダウンロードして,それから自分の持っているBitTorrentのアプリケーションを使ってユーザーと接続してダウンロードするという,少し手間が掛かります。
 先に申しましたとおり,実際にこういう形で違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードしてきても,直ちにゲーム機で遊ぶことはできないので,技術的手段を回避しないといけない。
 実は,日本国内では,このマジコンはほぼ消滅しており,日本国内の店舗ではほぼ売られていません。では,どこで売られているのかというと,インターネット上です。インターネット,特に2009年,2010年頃に関しましては,約250サイトでこういったマジコンの販売が行われておりましたが,今は多くのサイトが閉鎖または販売中止しています。現在まだ販売をしているのは,30サイト程度と報告を受けています。
 なお,販売継続サイトは,基本的には海外にサーバを蔵置している日本向けのサイトですが,商品は中国から直接送られてくる形になっています。実際にマジコン等が販売されているサイトの一例を11ページに記載しています。このように日本語で記載されています。日本人が作っているのかどうかよく分かりませんが,日本語で記載されていて日本語で購入できる状況になっています。
 最後,12ページですが,こちらは,任天堂社から頂いた情報で,アメリカにありますESA(The Entertainment Software Association)というゲーム関係の団体が前年度に対策をした際の実績のデータです。マーケットサイトとかオークションサイト等におけるマジコン等の出品削除,実際に売られているものを消した数としては2万5,000件,マジコン・MODチップの刑事摘発については6件,税関等での差し止め個数については4,300個,また海賊版ゲームプログラムの違法アップロード削除ファイル数としては,桁が結構大きいのですが1,700万ファイルと。ESAでは,全世界で1,000サイトくらい監視を行っており,7億8,200万ファイルぐらいあるだろうと予測を立てています。今回のデータは,基本的には日本を除いた海外で行っている対策の実績ですので,日本の分は入っていません。特にファイルに関しましては,削除した割合ですが,アジアが大体18%ぐらい,多いのはやはりアメリカで,南北アメリカ大陸で57%,半分以上を消しているという状況になっております。
 甚だ簡単ではございますが,以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。では,今の御報告に基づいて,また委員の方々から御質問,御意見等を頂ければと思います。いかがでしょうか。
 では,奥邨委員。

【奥邨委員】御報告ありがとうございました。1点だけ確認になりますが,スライドの6ページで,黄色いところが一つだけ不正競争防止法ということになっていますが,今回はニンテンドーさんのDSだから技術的な特徴ということでマジコンの譲渡などは著作権法の問題ではなくて不正競争防止法違反という位置付けなのでしょうか。理屈としてはマジコンのようなものの細かい仕組みは別として,こういう使われ方をするものであっても,著作権法での技術保護手段の回避に当たるという考え方,現実にあるかどうかは別として,理屈上はあり得ますし,その際には著作権法の120条の2の1号違反ということで刑事罰という可能性もあります。今回は飽くまでニンテンドーさんDSを前提にした図だから不正競争防止法で対応すると理解しましたが,それでよろしいでしょうか。

【ACCS(中川)】はい,そのとおりです。

【道垣内主査】はい,どうぞ,後藤委員。

【後藤委員】今,中川さんの方から家庭用ゲームソフトの現状を御報告頂きましたが,参考まで,映像ソフトの関係で2点御案内させていただきます。
 映像パッケージについては,DVD,BDから情報を抜き取るリッピングというソフトがあります。オンライン上で広く流布されているわけですが,これに関しまして,映像ソフト協会では,今まで16事件,不正競争防止法ということで鑑定等に協力しています。そして,本年8月においは,神奈川県警でリッピングソフトをアップロードしていた者を初めて著作権法に基づき検挙してくれた。さらに,その出版社がリンクサイトにリンクを張っていた従業員3名等を幇助犯ということで,これも初めて検挙してくれまして非常に画期的かなと思います。不競法と著作権法両方で,今このリッピングソフト等の対策が進められています。
 全国警察にここまで御尽力頂いていますので,民としての協力の例を挙げると,先ほども出ていました啓発として,映像ソフト協会においては,会員社32名の供給しているレンタル用ソフトの中に冒頭に,アンチリッピングキャンペーンという,20秒ぐらいの映像を入れて広く消費者にリッピング行為はいけませんよと呼びかけるということを今進めています。
 以上2点,参考まで。

【道垣内主査】ありがとうございます。今村委員,どうぞ。

【今村委員】2点質問させていただきます。1点目は,6ページ目の図ですが,例えば仮に私がマジコンを購入してゲームをダウンロードしたという場合,ゲームも一応映画の著作物であり,30条にいうデジタル方式の録音・録画,要するに映像・音楽と同様に考えて,違法にアップロードされたゲームをダウンロードすることは違法という理解で書かれているのでしょうか。ゲームもデジタル方式の録音・録画と同様に理解されているのかという点です。2点目は,仮に私が中国から購入するという場合,この絵ですと,船で大量にという感じですが,実際は,個別にパッキングされたものが郵送されてくるので,税関等で取り締まるのは難しいという気がするのですが,その辺はどのような対応が可能なのか,ネットで注文して購入したものを差し止める手段はあるのかどうか,その2点を確認のためにお伺いします。

【ACCS(中川)】1点目の違法ダウンロードの対象になるのかという点については,ゲームソフトは映画の著作物である側面もありますし,今のゲームソフトについてはほとんどが映画の著作物に相当する映像が一緒に付いていますので,私たちとしては,刑事罰の対象になると認識をしています。
 2点目ですが,船で送るようにしているのは,イメージでございます。さきに報告したとおり,日本国内での販売店舗はほぼございませんので,基本的には,大掛かりに船で運んで輸入するということはまずないです。国内で頒布,販売する場合は,ほとんどの場合,実際にはカバンに入れてたくさん持ってきます。中国から実際に送られてくるものについては,個別の包装をされて1個1個送られてくることがほとんどです。ただ,こちらについても,今,弊協会では各税関と協力関係はある程度結びつつ,こういった特にマジコン等をはじめとする技術的回避を行うようなツールについても差し止めていただきたいという話を進めております。

【道垣内主査】そのほかいかがでしょうか。マジコンは日本以外の国,特に中国では,もうどうしようもないぐらい普及しているということでしょうか。

【ACCS(中川)】実はこの新しい3DSに関しては,マジコンは存在しますが,技術的な方法もかなり強化されておりマジコンだけでは遊べないようになっており,もう一つ二つ手順が必要になります。しかし,この一つ前のDSというゲームソフトについては,かなり流通していますし,また,マジコンについても相当普及してしまっているので,これについてのネット上での著作権侵害は本当に大変な状況です。

【道垣内主査】法整備は日本と同じ程度にはなっているということでしょうか。

【ACCS(中川)】そうなっていると理解しています。

【道垣内主査】はい,分かりました。
 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 今日予定している議題の内,特定されている議題はここまでですが,7番目,その他ということで,何かございますか。
 それでしたら,事務局から最後の連絡事項をよろしくお願いいたします。

【小林国際著作権専門官】次回の委員会については,日程調整の上,改めて御連絡をさせていただきます。本日はありがとうございました。

【道垣内主査】では,本日の国際小委員会はこれで終了いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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