文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

日時:
平成28年7月26日(火)
15:00~17:00
場所:
中央合同庁舎第4号館
1208特別会議室

議事次第

  1. 開会
  2. 委員及び出席者紹介
  3. 議事
    1. (1)主査の選任等について
    2. (2)国際小委員会審議予定について
    3. (3)世界知的所有権機関における最近の動向について
    4. (4)海外における著作権侵害等に関する実態調査報告書(ベトナム)について
    5. (5)インターネット上の著作権侵害の現状について
    6. (6)その他
  4. 閉会

配布資料一覧

第16期文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

平成28年7月26日

○ 今期の文化審議会著作権分科会国際小委員会委員を事務局より紹介した。

○ 本小委員会の主査の選任が行われ,道垣内委員が主査に決定した。

○ 主査代理について,道垣内主査より鈴木委員を主査代理に指名された。

○ 会議の公開について,運営規則等の確認が行われた。

以上については「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)における1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【道垣内主査】主査に選任されました道垣内と申します。お待たせして申し訳ございませんでした。

では,本日は今期最初の国際小委員会ですので,磯谷文化庁長官官房審議官より御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【磯谷審議官】失礼いたします。御紹介いただきました,文化庁長官官房審議官をしております磯谷と申します。よろしくお願いします。

平成28年度の第1回国際小委員会の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。皆様方におかれましては御多用の中,この国際小委員会の委員をお引き受けいただきましたこと,改めて御礼を申し上げたいと思います。

著作物が容易に国境を越えて世界に流通する,いわゆるデジタルネットワーク時代に入っており,当然ながら国際的に調和した著作権制度の整備,あるいは国際的な観点からの様々な議論,著作権関連施策の推進が必要になってくるわけであります。

現在WIPOにおいて,放送条約の早期採択を目指して精力的な議論が繰り広げられる等,様々な動きが見られますが,我が国としてもこれらに積極的に対応していきたいと考えております。

また,政府においては,今年の5月に知的財産推進計画2016が策定されました。この中で,インターネット上の著作権侵害行為への対応など,様々な課題が提起されているところでございます。

また,具体的に海賊版対策を進めるに当たり,様々な深刻化するインターネット上の海賊版に関して,権利者からのヒアリングなど,あるいは諸外国における対策の調査といったものを進めることが必要であり,それとともに引き続き二国間協議を通じた侵害発生国・地域への取締り強化の要請,あるいは普及啓発活動の支援を通じた各国における著作権制度に対する意識向上などに尽力してまいりたいと考えております。

こうした取組を進めるに当たり,専門家,実務家の皆様方の御意見を頂戴することが不可欠であると考えており,今年度も昨年度に引き続き,国際小委員会においては国際的な議論への対応の在り方,あるいは海賊版対策の在り方などについて,御検討を頂きたいと考えております。

委員の皆様方には,本当にお忙しい中大変恐縮ではございますが,一層の御協力をお願いいたしまして,私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いします。

【道垣内主査】丁寧なお言葉,ありがとうございます。

では,議事に入って進めていきたいと存じます。今日は最後のインターネットを介した著作権侵害の現状についてプレゼンテーションをお願いしていますので,そこまでのところそれほど時間を掛けないというか,効率的に審議を進めていきたいと思います。

2番目の議題,本小委員会の審議予定について,事務局より御説明をお願いします。

【小林国際著作権専門官】資料2を御用意いただけますでしょうか。こちらの資料は,著作権分科会で御決定いただいたものですが,そこの1の(3)に国際小委員会を設置することが決定されています。また,審議事項としましては2の(3)にございまして,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することを審議事項と決定しております。

また,具体的には参考資料3を御覧いただければと思います。参考資料3の3ポツですが,こちらに具体的な検討課題例というのが2つ記載されておりまして,1点目としましては,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方。2点目としましては,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方が挙げられております。

1点目については,WIPOの議論でございまして,主に放送条約,またIGCでフォークロア等について議論がなされる予定となっておりますので,そちらについて議論を頂きたいと考えております。

また,インターネット上の海賊行為ですが,こちらについては,本日第1回国際小委員会におきまして,国内の権利者等から侵害の現状についてヒアリングを行いたいと考えております。それを踏まえまして,第2回の国際小委員会において,諸外国における著作権侵害の対策の実情,法的整備であったり侵害対策の状況であったりというのを把握し,最後の第3回の国際小委員会でそちらの取りまとめを行っていく予定としております。

以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。

今の資料2の審議事項について,何か御意見等ございますか。

よろしければ,今後の我々の任期の間,特段の突発事項でも起きない限り,原則としてこれらの事項を扱っていくということにさせていただきます。

では,次の議題です。議事の3番目,世界知的所有権機関における最近の動向について,まず事務局より御説明いただき,その上で委員の皆様に御意見を伺いたいと思います。では,事務局からお願いします。

【小林国際著作権専門官】資料3-1を御用意いただけますでしょうか。本年の5月に開催されました第32回著作権等常設委員会(SCCR)の結果等について,御報告いたします。

今回の会合では,これまでと同様に,放送条約に関する議論,そして権利の制限と例外の議論が行われております。また,追及権をSCCRの新たな議題とするということについても議論が行われておりますので,これらについて御報告いたします。

まず,2ポツの(1)の放送条約について,こちらは1998年から20年近く議論がなされているわけですが,現在は2007年のWIPOの一般総会で決定されましたマンデートに基づいて議論が行われているところです。第31回,去年12月以降は,資料に書かれております3つの観点,定義,保護の対象,及び与えられる権利を中心として,議長テキストに基づいて議論が行われているという状況です。議長テキストの最新版については,資料3-2として御用意しておりますので,必要に応じて御参照ください。

では次に,(2)の具体的な議論の概要ですが,今回の会合は,有線放送とインターネット上の送信を保護対象とするか否かということについて,重点的な議論が行われております。また,放送前信号の扱いについても議論が行われています。

まずインターネット上の送信の保護について,こちらは重点的に議論が行われました。現在の議論は脚注1にありますように,インターネット上の送信については,1番目にサイマルキャスティング,2番目として放送番組の異時のウェブキャスティング,3番目としてオンデマンド,4番目としてインターネットオリジナル番組の送信と,この4つに分類をして,議論が継続されています。これまでこの4番目,インターネットオリジナル番組の送信については,条約の対象から除外するということでほぼ合意に至っておりますので,現在はこの1から3の項目について議論が継続されているという状況です。

我が国については,脚注1の最後にありますように,インターネット上の送信を任意的保護の適用対象とするという提案を2013年12月に行っているところです。しかし,最新の議長テキストには我が国の任意的保護とする提案が反映されていないという状況ですので,これについては,第31回会合において,日本の提案をこの最新の議長テキストに盛り込むべきということを,我が国としては主張してきたところです。今回会合においても,任意的保護とすべきということを改めて主張し,議長から我が国の提案についてのノンペーパー,我が国の提案を記載した議長ペーパーが議場に配布され,それに基づいて重点的に議論がなされております。

これに対する各国の反応ですが,まず好意的な反応として,ロシアから日本の任意的保護のアプローチというのを支持したいという意見がありました。一方でEUや中国等の多くの国からは,サイマルキャスティングについては既に広く実用化されているということで,これを義務的保護とすべきという意見がありました。特にEUについては,サイマルキャスティングだけではなく,異時再送信,オンデマンド送信,カテゴリーで言いますと2番目,3番目のものについても,義務的保護にすべきという主張がありました。

他方で,インターネット上の送信についてこれを保護の対象外とすべきという国は,2ページ目を御覧いただければと思いますが,そのような国というのは,今回の会合ではなかったという状況です。この点について,インドは従来インターネット上の送信については保護をすべきでないという主張を強くしていたわけですが,今回の会合に限って言えば,この点について具体的な意見表明がなかったという状況です。

これらの状況を受け,議長から,少なくともサイマルキャスティングについては,義務的保護とすることを支持する国が多数であったということから,サイマルキャスティングを含めたインターネット上の送信全てについて柔軟性を認める,つまり任意的保護のアプローチを適用するということは適切とは言えないという見解が示されました。柔軟性を認めるにしても,異時再送信等の一部のもの,インターネット上の送信の一部のものに限定すべきでないかというような見解が議長から示されています。

以上が,インターネット上の送信の議論です。

次に,有線放送の保護について,こちらは前回に引き続き,ブラジルから有線放送を任意的保護とするという提案が出され,この点に関して議論が行われております。

チリは,有線放送を任意的保護にすべきというブラジルと同様の主張をし,大多数の国,アメリカ,EU等の多くの国については,有線放送は義務的保護とすべきという主張をしております。

これを受け,議長からは,ブラジルの提案を踏まえて,2つの非公式の提案が出されております。1点目として,本条約の放送の定義が各国の放送の規制の枠組みに影響を与えないという合意声明案を出すという案が挙げられております。もう一点としては有線放送の保護に柔軟性を与える,任意的保護とするという条文案が提示されています。こちらについては,次回SCCRで引き続き議論が継続されるということになっています。

次に,放送前信号については,こちらはインフォーマルで議論が行われました。放送前信号については条約の保護対象とすることが改めて確認されています。放送前信号の定義や,その保護のレベルについては,引き続き検討するということになっています。

以上が放送条約の議論です。

次に,権利の制限と例外の議論について,2005年以降,図書館とアーカイブのための制限例外と,教育研究機関等のための制限例外が議論対象となっておりますが,今回は図書館とアーカイブのための制限例外についてのみ,実質的な議論が行われております。

議論の概要ですが,図書館とアーカイブのための制限例外については,11のトピックというのが挙げられていまして,脚注2にそちらが記載されています。今回はそれらの5番目から7番目,並行輸入,国境を越えた使用,孤児著作物について,各国の制度に関する情報の共有が行われました。

具体的には,並行輸入について,ブラジルから国際消尽等を認めていない国であったとしても,その制限・例外によって図書館への輸出入を可能にすべきという意見が出されました。アメリカ,EU等からはそれについて慎重な意見が出されたというところです。

孤児著作物についてはEUの孤児著作物指令について紹介があり,2年間で1,700余りの著作物が登録されているということでした。また,イタリアからは孤児著作物指令に基づく入念な調査に掛かるコストが問題になっているという指摘もありました。

以上が制限・例外に関する議論です。

それから,(3)のその他ですが,追及権をSCCRの新たな議題とすることについて議論が行われております。こちらについては,ほかの放送条約等の審議時間に影響があることを懸念する意見がアメリカ等から出されましたが,全体として追及権に関する法制度について,各国の経験の共有を行うことは有益であるということで概ね意見が一致しております。これを踏まえまして,次回会合で,専門家,メルボルン大学のサム・リケットソン教授から追及権に関するプレゼンテーションが行われるということで合意されております。

最後に放送条約と権利の制限・例外に関する今後の議論の進め方です。放送条約については追加会合の開催,権利の制限と例外については地域ワークショップの開催について,前回に引き続き議論が行われました。多くの国は両者の開催を支持はしましたが,EU,そして先進国グループがこれに難色を示し,前回に引き続きコンセンサスが得られなかったということで,追加会合等の開催は決定されませんでした。

また,今回の会合は一般総会の前の最後の会合ですので,一般総会への勧告,レコメンデーションについて議論が行われるのが通常ですが,今回の会合では特段一般総会への勧告について,プレナリーでは議論されることなく閉会となっています。

最後に,今後の予定ですが,次回SCCRは今年の11月に開催される予定となっております。

次にロについて,こちらは前回のSCCRの議論ではありませんが,マラケシュ条約について動きがありましたので,簡単に御報告します。マラケシュ条約については,20か国が締結することによって発効することになっていまして,本年の6月30日に20か国が締結しましたので,これの3か月後,9月30日に発効することとなっています。具体的な締結国については,記載のとおりです。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。

では,ただいまの御説明を踏まえまして,御意見等ございますか。

【梶原委員】すみません。

【道垣内主査】はい,どうぞ,梶原委員。

【梶原委員】放送条約について,サイマルキャスティングの義務的保護を支持する国が多数だったということです。日本政府は今まで任意的保護ということで進めてこられたわけですが,今後是非とも義務的保護の方向で議論を進めていただければと思います。相変わらず日本政府としては,任意的保護という立場でいかれるのかどうなのか,確認をしたいと思います。

【小林国際著作権専門官】現段階で,その方向性についてまだ決定はしておりませんので,検討中という段階ですが,前回会合の議論を踏まえまして,また今回,国際小委員会で頂いた御意見を踏まえまして検討させていただきたいと思います。また,放送事業者の方の御意見を伺うことも重要だと思っておりますので,今後ヒアリング等を行いまして,それらの意見を踏まえまして,関係省庁等と調整をしてまいりたいと考えております。

【道垣内主査】そのほかは,いかがですか。どうぞ。辻田委員。

【辻田委員】追及権についてお伺いします。追及権はフランスやドイツなどで古くからあり,ドイツでは1965年法で導入されて,何度か改正もされております。どちらかというと追及権はヨーロッパ中心の制度という印象を私は持っていますが,もし我が国がこれを導入するとか,議論をしていくのであれば,我が国にどういうメリットあるいはデメリットがあるのかということがまずもって重要だと思います。もしこういう議論を進めて行く上で,積極的に議論に参加していくのかどうか,どのようなスタンスで臨んでいくのか,今の時点でお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。

【小林国際著作権専門官】はい。追及権については,ここに記載されているとおり,各国の経験の共有を行うことは有益ということを我が国としても主張しておりまして,まずは各国どのような法制度があるのか,またはどのような問題があるのかということをSCCRの場で共有をしていくことが重要だと考えております。それを踏まえて,今後国内については必要に応じて検討していきたいという段階です。

【道垣内主査】ここは審議会ですので,辻田委員,もし方向性についてお考えがあれば御披露していただければと思います。

【辻田委員】ありがとうございます。ただ,私自身まだはっきりとしておりませんので,また次の機会にいたします。

【道垣内主査】そのほか,いかがでしょうか。上野委員。

【上野委員】やはり放送条約に関して意見を述べたいと思います。我が国は今回またしてもインターネット上の送信に関して任意的保護とすべきという主張を行ったということですが,本日の報告を見ましても,この提案に対しては他国からほとんど支持がなく,また議長も日本提案に消極的で,さらにインドでさえも今回は特に意見を述べなかったということです。この問題について,日本政府は,これまで「条約の早期採択」の観点から任意的保護を主張し続けてきたわけですが,今の段階で任意的保護とすべきという主張を維持することは,かえって早期採択に反することになりはしないでしょうか。そうだとすると,もはや日本が任意的保護にこだわる必要はなく,むしろこだわるべきではないのではないかと,私は以前から申し上げていますが,今後も日本がこれまでの主張を維持されることに理由があるのかどうか私には疑問です。先ほどの御回答では,今後の方向性は未決定であり,検討していかれるという話でしたが,放送事業者の意見を聞くことも重要だとおっしゃられました。これは確かにその通りだとは思いますが,国際条約の話ですので,任意的保護ではなく義務的保護になる方が,通常は,国内の放送事業者の外国における権利は強化されることになるはずです。それでもあえて今後も引き続き任意的保護を主張する理由が本当にあると言えるのかどうか,その点については適切にお考えいただければと思います。

以上です。

【道垣内主査】そのほか。どうぞ。

【鈴木主査代理】3ページの真ん中の2ポツの最後のところですが,議論の進め方について,これは前回のとおりということだったので以前に御説明があったのかもしれませんが,放送条約に関する追加会合についても,EU及び先進国グループが開催に難色を示したというふうに読めますが,その点はどういう理由によるのでしょうか。

【小林国際著作権専門官】反対した主な理由は,この放送条約に関する追加会合と権利の制限,例外の地域ワークショップについて,パッケージで開催をするということでございまして,特にEUについては権利の制限,例外が先に進んでしまうということを非常に懸念していました。放送条約に後ろ向きになっているというわけではなく,やはり制限と例外の議論を進めたくないという意向が強く反映されたのだと思います。

【道垣内主査】そのほか,いかがでしょうか。

私から一点だけ。マラケシュ条約について内容はかつて御説明があったのかもしれませんが,良いことではないかと思います。何か日本が入れない理由,あるいは積極的にならない理由があるのでしょうか。

【小林国際著作権専門官】マラケシュ条約については,法制・基本問題小委員会で2年前から議論がされています。マラケシュ条約に入るための最低限の法改正については,権利者団体と障害者団体とで調整ができているのではないかと思いますが,以前の法制・基本問題小委員会で障害者団体から,マラケシュ条約を締結するために必要最低限の法改正だけではなく,障害者の情報アクセスの充実の観点から所要の措置をしてほしいという要望がございました。そちらについて,現在権利者団体と障害者団体の間で調整が行われているという状況です。

【道垣内主査】ありがとうございました。よろしいでしょうか。

それでは,先を急ぐようで申し訳ございません。議題の4番目,海外における著作権侵害等に関する実態調査報告,ベトナムについてですが,事務局から簡単な御説明いただいた上で,詳しくは新日本有限責任監査法人の福井様,それから有限会社オープンフィールドの沢様から御説明いただき,その後,この小委員会で御見解を頂きたいと思います。では,事務局からまず御説明,お願いします。

【堀尾海賊版対策専門官】それでは,海外における著作権侵害に関する実態調査の報告をさせていただきます。本事業は,文化庁の海賊版対策事業の一環として,グローバルな著作権侵害への対応の強化ということで,平成24年度から中国,タイ,インドネシア,ベトナムを対象に行ってきて,昨年度の事業としてベトナムを対象に実施したところでございます。

結果については,概要を資料4にまとめており,具体的な報告書については机上配付として,こちらのピンクの冊子になりますが,報告書と資料編にまとめていますので,御覧ください。

結果概要については,本事業の委託先である新日本有限責任監査法人の方から御報告を頂きたいと思います。

それでは,お願いします。

【新日本有限責任監査法人(福井)】新日本有限責任監査法人の福井と申します。私の方から報告をさせていただきます。よろしくお願いします。

それでは,お手元の資料4を御用意ください。目次に沿って説明します。まず,調査の目的と方法ですが,海外における効果的な海賊版対策の企画立案のため,日本のオンライン型コンテンツ及びパッケージに係る著作権侵害の実態を調査分析すること,そしてコンテンツの類型別,流通経路別の侵害規模を推計するということです。

調査対象国・地域はベトナム,調査方法によっては都市に限定して実施しております。

調査対象コンテンツ類型は,映像としてアニメ・映画・テレビ放送番組,音楽,ゲームソフト,出版物としてコミック・雑誌・書籍を対象としております。

調査対象コンテンツの流通経路については,大きく3つに分けて,オンライン流通とパッケージ流通とテレビ放送・映画館等としております。オンライン流通については,特定事業者・運営者によるコンテンツ配信や動画投稿サイトによる流通等。パッケージ流通については,実店舗によるパッケージ販売や,雑誌やテレビ等によるパッケージの通信販売,またハードディスクドライブやUSBメモリ等へのコンテンツのコピーサービスなど,コンテンツ入りの外付けハードディスクドライブの販売等も対象にしております。テレビ放送・映画館等ということで,地上波テレビ,衛星テレビ,ケーブルテレビ放送,またラジオやカラオケ等の利用ということも対象にしております。

調査方法については,3ページの下段にありますが,まず文献資料調査を行い,次にヒアリング調査ということで,日本の著作権者の方にベトナムでの正規版の展開の状況や,エンフォースメントの実態についてお話をお伺いしました。その上で,グループインタビュー調査を日本とベトナムの両方で実施しております。日本においては,ベトナムからの留学生を中心にグループインタビューを実施しております。現地ベトナムでは店舗調査を実施した上で,メインの調査であるWEBアンケート調査というものを現地のインターネットユーザーを対象にして実施しております。その中で特に人気があったサイトについては,コンテンツ流通サイト調査ということで,31サイトを対象に詳しく調査をしております。

具体的な調査方法ですが,WEBアンケート調査については3ページ左下のオレンジ色の箱に記載しています。調査実施地域についてはベトナム全国を対象としておりますが,分析においては地域差を見るために,中央直轄市(ハノイ市,ホーチミン市,ハイフォン市,ダナン市,カントー市)と,その他地域に分けて分析をしております。

具体的な調査実施方法については2段階の調査をしております。まずアンケートaの日本コンテンツ入手経験率があるかどうかということについて,1,000のサンプルを性・年齢別の人口構成に合わせてサンプリングし,その上で,日本コンテンツ入手経験があると回答した方を対象に,アンケートbの「日本コンテンツ入手経験者の日本コンテンツ入手実態調査」ということで,同じく1,000件のサンプルで調査を実施しました。

次に,4ページに行きまして,実際の調査結果について御報告します。まず日本コンテンツの入手経験率について,各国地域別に比較をいたしました。その中で,特にこの図表で言いますと,①のアニメでは,ベトナムと並んで日本コンテンツの入手・視聴経験率が5割程度と最も高く,次に⑪のコミックで,ベトナムについて4割弱と2番目に高く,次に⑨のゲーム専用機用ゲームで,ベトナム,米国に次いで3番目に高くなっています。

他国と比較すると,韓国と比較した場合に,映画,テレビ番組,音楽,雑誌で韓国の割合の方が日本よりも高く,コンテンツの入手・視聴経験率のある国として,映画では米国のコンテンツの割合が最も高く,また,その他の全てのコンテンツについて,ベトナムコンテンツの割合が最も高くなっているという結果が出ております。

5ページの下の注に書いていますが,事前のグループインタビューでは,アニメやゲーム,コミックなどは日本のコンテンツの人気が高いということは確認されていました。しかし,WEBアンケート調査ではオリジナルが日本のコンテンツでもベトナム語に翻訳されて流通している場合に,ベトナムコンテンツと回答されている可能性が排除できないということで,ベトナムの数値が高く出ているものと考えられます。

次に,6ページ,3の全体傾向・コンテンツ類型ごとの傾向・特徴です。こちらについては,まず正規版の認識の有無を聞きまして,正規版ということを意識するという方を対象に,下の入手・視聴に与える影響ということを聞いております。

アニメ,映画,音楽,コミックでは「意識しない」の割合が最も高いということです。また,全てのコンテンツ類型で,「意識する」と「多少意識する」とを合わせた割合が5割を超えています。「意識する」人を対象に回答していただいた入手・視聴に与える影響については,いずれのコンテンツ類型でも,正規版があれば正規版を入手するようにするが,海賊版しかない場合には海賊版を入手・視聴するという割合が最も高くなっています。この傾向は特に地域差がなく,中央直轄市でもその他地域でも同様でした。特に正規版であることが入手・視聴に影響がないということの割合は,アニメ,雑誌,書籍を除く全てのコンテンツ類型で,その他地域の方が中央直轄市よりも高いという傾向がございます。

次に行きまして,8ページ,4,地域間比較による傾向・特徴については説明を割愛させていただきます。

9ページ,5の正規流通(オンライン)に対する要望ということで,日本の著作権者がオンラインで正規流通をした場合に,どういう配信条件を要望するかということについて調査した結果です。下のグラフは,特に日本のアニメを正規にインターネット上で入手・閲覧するようにした場合,望む配信条件ということで,オレンジの棒が中央直轄市,黄色がその他地域でございます。赤の点線で丸をしてあるところが特に地域差がないというもので,ベトナム語字幕付きであること,HD品質であること,ダウンロードできることという条件が挙げられます。また,音声がベトナム語に吹き替えされていることについては,その他地域が中央直轄市を上回って高いということでした。

次に,5の②です。正規流通に対する要望が満たされた場合に,一体幾らなら払ってもよいかということについて調査しております。これは無償も併せてこれらそれぞれの価格帯について,どれぐらい払っていいかということを調査したものでございます。無償の割合がもっとも高いのですが,コンテンツ1件当たりの価格,ベトナムドンで2万ドン,日本円で大体100円ぐらいであれば支払っても良いと考えている割合は,中央直轄市では4割を超え,その他地域でも3割を超えています。赤の点線で結んである部分です。

続きまして,11ページ,6,日本コンテンツ入手経験ありの方に,一般市民1人当たりどれぐらい日本コンテンツの入手・視聴件数があるかということを,コンテンツ類型別とコンテンツ流通経路別に分けて集計をしています。表で見ると,縦がコンテンツ類型別で,横がコンテンツ流通経路別になっています。

まず,コンテンツ類型別で見ますと,アニメの平均入手・視聴経験数が高くなっています。一番左の赤線で囲ってある部分は,総合計が236.8件ということで,全体合計685.2件のほぼ3分の1ぐらいを占めています。

次に,コンテンツ流通経路別で見ますと,オンライン流通が主流ということで,表の下から4段目,(A)合計が436.5件ありますが,パッケージ流通も57.2件ということで,依然として残っています。また,ベトナムではテレビ放送が正規に展開されているということで,アニメや映画,テレビ番組,音楽でテレビ放送等がパッケージ流通よりも多くなっています。

経路別では,特に黄色でセルに色を付けておりますが,動画投稿サイトが多いということと,映像,アニメ,映画,テレビ番組では動画投稿サイトに次いでケーブルテレビが多くなっています。

続きまして,12ページ,7,コンテンツ類型別の入手・視聴の侵害規模ということで,インターネットユーザーを対象にしたアンケートでの回答を基に侵害規模を推計しています。まず人口規模に換算して,件数ベースの侵害規模を算出し,それをネットユーザーに換算しています。この表の中で全国都市部と書いてある「都市」が誤植でして,上の段が全国で,下が全国ネットユーザーです。

表を見ていただきますと,侵害規模は全国のネットユーザーで年間約145億件です。特に件数ベースではアニメが多く,約47億件となっております。オンライン流通における入手・視聴件数が多くなっている理由として考えられるのが,ベトナムでは国策でインターネット環境が整備されているということ,Wifiが活用できるエリアが広がり,スマートフォンの普及度がかなり上がっていて,日常的にコンテンツを入手・視聴できる環境が実現できているということなどが考えられます。

あくまで参考として,金額ベースの侵害規模を表の右で出しています。左側の有料ダウンロード換算合計というものが,注にもございますが,全て有料配信と仮定した場合に,有料ダウンロード換算として推計をしております。右側の広告費換算は,全て無料配信で広告収入のみと仮定した場合,広告費換算として推計しており,有料ダウンロード換算合計が,全国ネットユーザーベースで約5,440億円,広告費換算が21億円と,大きな開きがあります。一部有料ダウンロードのサービスというものもベトナムにあります。ほとんどが広告費換算なので,現状はこの右側の広告費換算の方の金額が参考になると思いますが,今後インターネット環境がどんどん整備されてより利用が進むとなると,この有料ダウンロードというところの数値も参考にしていけるのではないかということです。表の下に侵害規模推計に当たって無許諾の流通とみなした範囲というものを示していますので,参考にしてください。

13ページ,8は,日本コンテンツの侵害規模の推計方法についてです。ベトナムのインターネットユーザーを対象としたアンケート調査結果から推計した,日本のコンテンツの流通経路別の平均入手・視聴件数に,権利者へのヒアリング調査結果等から推計した無許諾とみなすことができる流通経路,先ほどお示しした流通経路により入手・視聴した割合を乗じて,更に対象人口を乗じて侵害件数を算出しております。

続きまして,14ページ,9です。一般市民1人当たり1年間のコンテンツ類型別アップロードの件数を推計しています。まず,ベトナムにおけるアップロードの経験を,「経験無」「経験有」ということで,下の表で46.5%の方が「有」と回答され,その中で経験がある方に,コンテンツ類型別の経験を回答してもらい,経験割合を出しています。この中ではアニメが突出して大きいということが分かります。

続きまして,15ページ,10,まとめということで,今回の調査で分かったことをまとめております。まず,日本コンテンツの流通の現状について,グループインタビュー等を通じて把握されたことでもありますが,他のアジア諸国と同様に,アニメやコミック等を通じて子供の頃から日本の文化に親しんでいることから,日本コンテンツの認知度もあり,人気もあります。日本コンテンツが受け入れられる土壌は,確実にできているだろうと言えます。インターネット普及に伴って,日本のコンテンツに対する人気も高まっていますが,先ほども申し上げましたように,ベトナム語で流通している日本コンテンツについては,ベトナムコンテンツと認識されているケースも多いだろうと考えられます。

先ほどの日本コンテンツの侵害状況について,一定の仮説で推計した日本コンテンツの侵害規模は大きいものとなっているということで,記載の通り,侵害規模は件数ベースでは年間約145億件,繰り返しになりますが,金額ベースでは無料配信,広告収入ベースで約21億円,有料配信と仮定した場合は約5,400億円と推定できるということです。今後,インターネットの接続環境が更に整備されて,PCやスマートフォンの普及が更に拡大すると,流通が増加して侵害も大きくなっていくだろうということが想定されます。

また,著作権侵害の調査結果の中で,特に先ほどもありましたが,ベトナムのユーザーで日本の正規のコンテンツに対して,一定の対価を払ってよいと答えている方が一定数いるということと,ユーザーの多くは著作権に対する認識は高いが,それが著作権保護のアクションに必ずしもつながっていないということ。このことから,インターネット上で正規のコンテンツが入手・視聴できない中で,海賊版が容易に利用できる環境にあることが著作権侵害の大きな要因であると,この調査結果から読み取れると考えております。

続きまして,11,まとめということで,今回,過去(中国,タイ,インドネシア等々)行った調査との比較をしております。特に日本コンテンツの流通の現状についてはアニメ,映画,テレビなどの映像や音楽,コミックなどで平均入手・視聴件数が多いという結果が見られました。また,ここではアップロード件数を挙げていますが,侵害状況についても規模として大きいということが確認されました。

著作権の認知度,正規版の意識については,著作権の認知度がベトナムでは9割強ということで他国と比べても高いということと,インターネットで入手・視聴する際に正規版として意識するかどうかということについて,「意識する」という割合も,ベトナムが他国と同等かそれ以上だということ。

最後に,12のまとめ,日本コンテンツの不正流通対策の在り方ということで,まずはやはり不正流通対策と正規版展開を車輪の両輪として実施していくということが必要です。今回ヒアリングでお伺いした日本の権利者の方の不正流通対策は,いまだ十分とは言えないだろうということで,今後現地の政府当局や代理店等と協力して,不正流通対策を充実強化していくことが必要です。また,ユーザーの著作権の認知度は高いが,実際にその著作権保護の行動につながっていないということなので,著作権教育や著作権意識の啓発は効果が大きいだろうと想定されます。

ベトナムではまだ大容量のコンテンツが十分スムーズに入手・視聴できる環境にはなっていませんが,既にスマートフォンが一定程度普及しているということ,今後も更にネット環境の整備が進み,コンテンツの流通が増加して主流になっていくだろうということが想定されます。そのため,テレビやパッケージの正規流通に加えて,特にオンラインの正規流通を強化していくことが必要であろうと考えております。

一番下,我が国政府として必要な対策としては,今後現地政府に対して,著作権意識の啓発,不正流通対策を働き掛けていくということが必要であるということと,今回の調査のように,コンテンツ不正流通に係る実態把握のための調査等に基づいて権利者への情報提供を行うということ,日本の権利者の間で現地正規配信に成功した事例や,コンテンツ情報の提供によって認知度,人気が高まった事例等について共有する環境を整えることで,日本の権利者がより正規展開を行いやすくすることが重要であろうと考えております。

以上,簡単でございますが,報告させていただきます。

【道垣内主査】ありがとうございました。

では,ただいまの御発表について,御質問,御意見等ありましたらお願いします。はい,どうぞ。

【今村委員】詳細な調査研究,どうもありがとうございました。

ベトナムで日本のアニメ等のコンテンツが比較的視聴されているということで,非常に良いことだと思います。私の認識だと,ベトナムは我が国とは違う国の体制をとっていると思いますが,他国の文化の輸入などに関する何か特別な規制等はあるのかどうか。例えばフランスなど,映画だとクオーター制などを導入しています。ベトナムにそういう外国文化の流入に対する何か特殊な規制があるのかどうかということを少しお伺いしたい。

なぜかというと,海賊版がこのように流通して非常に良くない状況だと思いますが,海賊版だからこそ小回りが利いて,我が国の文化を隅々までベトナムに普及してくれていると,プロモート効果というものもあると思います。その点を前提としてお伺いしたいと思いまして,御存じでしたらお聞かせいただければと思います。

【新日本有限責任監査法人(福井)】外国のコンテンツの輸入に対する法的規制のようなものを今回の調査では調べてはいませんが,一般的にいろいろな国が導入している暴力や性などに対するセンサーシップの制度はあり,特に暴力的なものについては,アニメでも該当するシリーズのところは放送できないとか,そういうことはヒアリングの中で確認はしておりますが,それ以上はちょっと調べていません。

【道垣内主査】ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。詳しくはこの報告書,分厚いものが出ておりますので,御覧いただいて,更になにかあれば伺う機会をそれぞれ作っていただければと思います。

では,議題の5番目でございます。海賊版対策の在り方を検討する上では,まず現状の把握ということが大切で,今回第1回の国際小委員会では,CODAの墳﨑委員,それから日本民間放送連盟の松村様,それから日本レコード協会の楠本委員から,それぞれインターネット上の著作権侵害の現状について御発表いただきたいと存じます。この3つの御報告を頂いた後,まとめて小委員会としての質疑応答をするということにさせていただきます。

では,CODAの墳﨑委員から,よろしくお願いします。

【墳﨑委員】CODAの墳﨑です。今日はこのような機会を設けていただいてありがとうございます。時間もないので,早速発表に移らせていただきます。

まず,被害の現状をお話しし,その後でCODAで行っている対策を簡単に御紹介させていただきます。まず,スライド3枚目になります。被害の現状の1点目として,インターネット上の被害に対して,CODAとしては被害の多いサイトに対して違法コンテンツの削除通知を機械的に送付するということを行っております。これは2011年8月から始めておりまして,その削除件数を資料に記載しております。削除率としては各サイトとの交渉等もそれなりにうまくいっており,全体としては98.8%の割合でこれらのサイトに関しては削除していただけております。

資料に記載しているサイトですが,主としてほとんど中国のサイトになり,上から4つ目のPandoraは韓国,真ん中あたりのDailymotionはフランスで,fc2は皆さん御存じかもしれませんが,一応アメリカにあるサイトになっております。

次のページに削除件数の推移を載せております。表を見ていただければと思います。ここに載っている表の10サイトが継続して対応しているサイトでして,これらの推移を見ていただきますと,数的としてはそれほど大きくは変わっていないかなというところです。

劇的に変わっているのがfc2,一番下から4つ目の欄ですが,fc2については2013年1,189件,2014年が2,000件と。2015年は97件ということで劇的に減りました。これは皆様も御存じのとおり,日本国内においてアップローダーに対する一斉摘発や,運営会社と目されるところに対する家宅捜索などがあった関係で,アップローダーの方が自主的にかなり減らしたという経緯があります。

もっとも,後ほどお話しするように巧妙化が進んでいるということで,なかなか自動的に機械で侵害コンテンツを見付けるというのが難しくなっているということも一つの原因であると考えております。

続きまして,侵害行為がどのように行われているかというところですが,今やもう侵害コンテンツというのは即日上がってきます。侵害サイトの方には,放送された2時間後とか,それぐらいにはもうアップされているというのが現状です。

更に,先ほども申し上げましたとおり,次のページになりますが,そもそも違法コンテンツの発見も難しくなっております。CODAでは,先ほどもお話ししました削除通知を行っていますが,これはキーワード検索等でサイト上における侵害コンテンツを見付け,それをフィンガープリントと呼ばれる照合技術で,要は正規動画と侵害動画をマッチングさせて,ある程度マッチしたものについて削除通知を出すというようなことをやっています。しかし,資料に載せさせていただいているような動画ですと,そのマッチングが当たらなくなってしまいます。こういったマッチングを回避するというのが近年よく行われていることです。

また,キーワード検索を回避するものが出てきております。ここに1例で挙げていますが,題名のところにはもう番組名などは全然載っておらず,日付だけ書いてあるもの等が最近は出てきていて,これですとさすがにキーワード検索には引っ掛からず,なかなか機械では拾えないというような状況になっております

そうすると,一般ユーザーもたどり着けないじゃないかという話になりますが,必ずしもそうはなっておらず,リーチサイトと呼ばれているいわゆる違法動画へのリンクをまとめているサイトのようなものが多数あります。

このリーチサイトも,なかなか考えてというか,結構ひどい状況でして,たくさんあるというのもそうですが,先ほど申し上げたとおり,放送されてから2時間後ぐらいにもう侵害コンテンツが上がってきてしまうので,放送予定の動画までもう書いてあったりします。これは電気通信大学の研究結果ですが,リーチサイト経由の動画の方が,リーチサイトにリンクを張られていない動画に対して,62倍ほど見られているというような調査結果も出ております。

更に,アプリなども今では進んでおりまして,アプリケーションから違法動画に飛ぶというようなもの,そういったアプリもあって侵害動画への誘導が進んでおります。

皆様の資料には載せていませんが,更に問題なのが,いろいろな国にまたがって侵害行為が行われているということです。今,スクリーンに出させていただいたサイトは,一応DVDのeコマースサイトなのですが,商品を買うと中国から送られてきます。サーバーは中国国外のサーバーを使っていて,銀行口座は日本の銀行口座を使っているというサイトで,完全に日本人向けのeコマースサイトになっています。これは7月15日か何かに私の方で見つけた画像ですが,既に前クールのドラマのDVDなども売られていて,正規版であれば10月の頭とか半ばぐらいに発売のものが売られています。

これについては,実はこのサイト,従前からCODAとしても問題だなと思っていて,どうにか対策を考えており,中国の版権局の方にさすがにこれは問題だということで,行政闘争しておりますが,先ほど申し上げたとおり,サーバーが中国国外にあったり,銀行口座が日本にあるということで,情報が十分取得できないということなどを理由に,現在まで中国の政府からは対応等は取られていないという状況になっております。

更に動画サイトとしては,これまた皆さんの資料にはなくて申し訳ないのですが,様々な国にまたがって侵害行為を行っているサイトがあります。これは1例ですが,ブラジルにいる運営者がアメリカのサーバーを用いてサイトを立ち上げて,ドメイン自体はスウェーデンで登録すると。日本からはアプリなどを使って見られています。

そのほか,インターネットの動画サイトで各国にまたがっているという例をここで挙げさせていただいています。例えばサーバーはアメリカが多いのですけが,運営者は中国で,サーバーはアメリカ,ドメイン登録は中国でやっていますとか,運営者はニュージーランドにいて,サーバーはアメリカで,ドメイン登録はドイツとかでやっているというような形で,様々な国にまたがって侵害行為が行われています。ただ,もちろんこれらの情報は私の方で簡易に調査した程度のものなので,運営者所在国等は本当の情報かどうかというのはかなり怪しいところで,このあたりの特定というのが極めて難しいという状況になっております。

CODAにおいて,こういったインターネット上の侵害に対してどういう対策をしているのかということですが,先ほど申し上げたとおり,CODAでは自動コンテンツ監視・削除センターというのを立ち上げて,自動的に侵害コンテンツの多いサイトをクローリングして,権利者の削除通知を発出しております。ただ,先ほども言いましたとおり,キーワード検索の回避やフィンガープリントの回避というのが進んでおります。次のページに,今年度少し報道にも出ていましたように,目視による監視というのを少し取り入れるというようなことを始めております。

また先ほど申し上げましたとおり,放送直後,もう2時間とかそれぐらいで違法動画がアップロードされてしまうという状況に対応するために,放送された直後にその放送波からそのままフィンガープリントを作るというようなことも始めて,クローリングの監視時期を早めるというようなことも現在始めております。

更に,侵害態様の悪質なサイトに対しては,権利行使の申立てなどもしていますが,それは対象がある程度特定できている場合や,取っ掛かりのある場合にできることであって,インターネットの匿名性から,権利行使までできる場合というのはそれほど多くはありません。

ただ,手をこまねいているわけにもいきませんので,これに対しては何かしらできないかということで,間接的な対応というのを幾つか行っております。AからEまで書いておりますが,1つ目がセキュリティソフト会社さんと連携して,セキュリティソフト会社のブラックリストの中に違法サイトを載せていただく。それにより,ユーザーがそのサイトに行こうとしたときには,警告が出ることになっております。

Bになりますが,検索エンジンの会社,グーグル様などに御協力いただいて,違法動画の検索結果,URLが検索結果に表示されないようにしていただく。

Cの広告出稿の停止について,やはり現状,違法動画サイトは無料で配信している場合がほとんどですが,広告でも利益を得ているというビジネスモデルになっているものが多いです。よって,その広告の出稿を止めるというようなことはできないかということを現在検討しております。

また,先ほど申し上げたとおり,アプリが,今,ユーザーを誘導するツールとして用いられていますので,グーグル様やアップル様に御協力いただいて,マーケットからそういったアプリの削除ということを行っています。

また,余り多くはないですが,要は有料サイトとかに関して言えば銀行口座の凍結等についても試みているところです。

駆け足になりますが,最後,今後の課題としては,資料に列挙した5つぐらいのことがあると考えております。先ほども申し上げましたとおり,侵害行為がいろいろな国にまたがって行われています。なので,やはり各国捜査機関の連携を強化していただけないかというのを一つ考えているところです。

また,インターネット上の匿名性ということに対して何らかの対応が取れないのかと。やはり運営者の場所,所在地が分からないと,何もできないことが多いです。これは本当に根本的な問題かと思っています。

さらに,今まで我々の行ってきた削除センターの削除通知などを調べてみますと,結構同じ人が何度も違法動画をアップしている状況があります。消しても,消しても同じ人がアップしているというようなサイトもあり,これら同一人による繰り返しの侵害の対応というのをやはり今後も考えていかなくてはいけないと考えております。

加えて,リーチサイトがあることによってユーザーが誘導されているという事実がありますので,それに対する対策,更にはその収入源を断つための違法サイトへの広告出稿への対策というのが今後の検討課題であると現在では考えております。

非常に駆け足になってしまいましたが,私の発表はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

【道垣内主査】ありがとうございました。

では続きまして,日本民間放送連盟の松村様から,御発表をお願いします。

【日本民間放送連盟(松村)】こんにちは。日本テレビの松村と申します。よろしくお願いします。

タイトルは,「ネット上の違法動画の現状と放送事業者における対応」としました。せっかくなので,踏み込んでいろいろと参考になることをお話ししたいと思ったのですが,3点ばかりあらかじめ話させてください。

1つは,今,CODAの墳﨑さんは結構踏み込んで話していただいたのですが,皆さんが参考になるということは,アップローダーの人たちの参考にもなってしまいます。なので,実は余り細かく言うのは嫌だなと思っていまして,その点は御了承ください。

2つ目ですが,一応今回,タイトルの下のところに「投稿サイトを中心に」としました。ほかにもいろいろと違法動画はありますが,まずは放送番組が一番多く上がっていると思われる投稿動画サイトを中心に,今日は発表させていただきます。

3点目ですけれども,違法動画対策の立場からということですが,放送局の中には様々な意見があります。なので,なかなか意見を社内でも取りまとめることは難しいですし,各放送局間の意見もまとめづらいところがありますので,今回は違法動画対策の立場からちょっとまとめてみたいと思いました。

それでは,内容に入らせていただきます。「1.放送事業者の違法動画対策」について,今ほども触れましたが,放送局によっていろいろな対策のレベルがあります。在京局,大阪の局,名古屋の局,その他の局のレベルによっても変わります。また,アニメ,ドラマ,二次利用の取組み方によっても変わります。

また,次の四角ですが,特に在京局について,全てのコンテンツに対応することは不可能です。1日24時間のコンテンツが日々放送されます。それを全部対応することは不可能に近いです。コンテンツホルダーの方も,経済合理性の範囲内である程度判断せざるを得ないので,そこら辺も御承知おきいただければと思います。

最後の四角ですが,放送局固有の問題というのもあります。

次,「2.違法動画の監視削除」に移らせていただきます。違法動画の監視削除の実態についてですが,これはもう砂漠に水をまくような状況と考えていただければと思います。どういうことかと言いますと,削除を実行しても,違法動画がなくなることはまずありません。そして,以下のことが同時多発的に起こっています。まず,同じ人が同じサイトに上げることがあります。次に,上げた人ではない人が,同じサイトにアップすることがあります。次に,同じ人やそれ以外の人がほかのサイトにアップすることがあります。次に,それらの人がより見つからないようにアップすることがあります。しかも,違法動画の全体像は全く把握できていません。そして悪質化,巧妙化しています。こういう状況です。

ですので,よく違法動画対策の話を聞かれるときに,削除要請をして,削除されればそれで問題が解決するのではないかと考えられる方がいるのですが,例えば1,000個の削除をしても1,000個の違法動画が残っていたら,実際余り意味がないというか,効果が薄いということもあり得えます。なので,どれぐらいネット上に違法動画が残っているかというのが,効果を測る尺度になってきます。単に削除すれば良いというものではないということになります。

ここら辺を踏まえて,次のページに行きたいと思いますが,要は何に絞って削除をした方がより効率的なのかということと,削除以外にどのような対策をプラスアルファで行ったら良いのかということになります。

この「3.当社の違法動画対策」と次の4と5は,当社の対策を少し述べさせていただきます。まず,単純に違法動画を削除しても,問題は解決しないということです。次に,当社単独で行うことには限界があります。そこで,まずは啓蒙です。一般の方とか利用者の方とか,アップローダー向けに民放連による啓発スポットを行っています。これは遠藤憲一さんを起用しています。次に,A-PAB内に放送コンテンツ適正流通推進連絡会というのがあり,そこのホームページで啓蒙活動を行っております。

次の四角です。サイトとの交渉ですが,個別に交渉をしたり,局の有志などと一緒に交渉したり,先ほど発表がありましたCODAさんを通じても交渉しています。これは私の感覚ですが,サイトは基本的に非協力的です。通常,サイト側に協力するインセンティブはないのだと思います。どういうことかと言いますと,彼らは法律で定められた範囲内のことはやりますが,それ以上に,これも彼らの経済合理性だと思いますけれども,協力するインセンティブがなければ,頑張ってまで違法動画に取り組んでいるとはとても思えないような対応が多いです。

次に,アップローダーの刑事告訴について。これは逮捕されることにより,一定の抑止効果があります。ただ,これも様々な苦労をしています。

次は,監視と削除要請。当社は,当社の人力と,あとは別途外部に業務委託をしております。

また,特定のサイト側からのツールを利用しまして,視聴を不能にするとか,そういうことをやっております。

次,4番目「4.当社の監視削除」。これも当社のことですが,それでは,どのようなコンテンツに注力しているのかというところについて,私,違法動画担当者の考えとしては,このような考えで注力しております。

まず,監視削除するのは,正規配信の視聴習慣を付けるために行うことが良いのではないかと思います。どういうことかと言いますと,視聴習慣,放送もそうですが,非常に大事でして,せっかく正規の作品を見てくれる人がいるのであれば,まず非正規の方を妨害した方が良いのではないかと思っております。一番期待しておりますのが,無料広告付き見逃し配信ですね。これは無料で見られますので,それなりに違法動画にも対抗できるのではないかなと思っております。なので,これを入り口に正規を見る習慣付けをしながら,無料広告付きでない配信も含めて,配信事業というのが成り立っていけないのかということを考えております。この趣旨に賛同して,許諾とか一定の減額の協力をしてくれている権利者の方々もいらっしゃいます。協力してくれない方もいらっしゃいますが,これは今,話し合い中ということです。

2個目の四角について,上の四角が目的なので,監視削除の対象は,主に正規配信コンテンツにしております。もちろん,それ以外の監視削除も行ってはいます。

次,一番下の四角について,3番目の四角で,無料広告付き見逃し配信の位置付けということで,先ほども若干触れましたが,これは違法動画と録画視聴に対抗する唯一の手段と思っています。この2つは正規配信のライバルであることには間違いないと思っています。この見逃し配信を入口に,正規動画の視聴習慣を作りたいと考えております。現に正規配信の視聴習慣の兆候や,放送への回帰の兆候も一部資料では見られています。

これは個人的な見解ですが,この無料広告付き見逃し配信は結構赤字と聞いています。でも,これをちょっと耐えて続けてほしいと私は考えています。仮に将来黒字になるのであれば,まずは私が考える上の趣旨から言うと,その利益は,見逃し配信のラインナップをそろえる方に注力した方が良いのではないかと私は考えております。

次,5番目「5.当社コンテンツの違法動画の状況」。これも当社の例でサイトの状況をお話しします。先ほど申し上げましたように当社は外部に監視削除を業務委託しておりますが,どのようなサイトで違法動画の数が多いかというものです。

次の削除が遅いサイト。これは見逃し配信ともろにバッティングします。要は見逃し配信は主に放送後1週間視聴可能なのですが,1週間後に違法動画が削除されても効果が薄いのです。

参考までに,私どもが今やっている中での,放送されたコンテンツに関しての一定範囲の調査によりますと,圧倒的に違法動画の視聴は日本地域が多いです。

最後のページです。私がまとめることかというのはありますが,一応,私なりにちょっとまとめてみたものを最後に申し上げたいと思います。

違法動画対策で決定打はありません。監視削除とかその他の手段では問題は解決しないと思っています。もうどんどん悪質化していきますし,巧妙化していきます。悪質化の中には,先ほどCODAの墳﨑さんが発表されたようなお金,収益を稼ぐのがどんどん出てきます。なので,違法動画対策の権利者としては,リーチサイトの対応など,複数の対策が欲しいというのが率直な意見です。

次の四角です。途中でも言いましたが,サイト側は違法動画対策に取り組むインセンティブがないのではないかなと思っています。なので,プロバイダー責任法についてどのようにしたら良いのかという問題はありますが,適正な義務を増やさないと会話にならないことが多いと思っています。法的な責任が無い事柄に関しては,協議すら続けられないことが結構ありました。真摯に協議しない場合に,何らかのペナルティなどがないのかなと思っています。

3番目の四角です。これが一番言いたいことですが,どんどん手間が掛かってお金が掛かるにも関わらず,その費用負担は被害者である権利者という,すごくいびつな構造になっています。しかも悪質化・巧妙化しているので,更に手間と費用がかさむ傾向にあります。

その下の矢印2つは,私の個人的な意見ですが,この場で申し上げるのが適切かどうか分かりません。海外に販売して,日本のコンテンツを売っていくというのはとても重要なことだと思います。ただ,現状で言えますのは,今,日本の市場が危ないのではないかと私は思っています。現状,日本のコンテンツを海外から日本向けに違法配信しているということになっています。なので,コンテンツホルダーとともに,日本の市場,配信事業が被害に遭っていると私は考えています。

次の矢印ですけれども,国際的な協力体制が必要ということで,日本は加盟していませんが,衛星条約の類いの発想が必要なのではないかと思っています。自国においてとか,または自国から伝達することを阻止するために何らかの適切な措置を取ってもらわないと,なかなか違法動画というのはなくならないのかと思っています。

以上をもちまして,私の発表を終わらせていただきます。

【道垣内主査】ありがとうございました。

それでは,最後,日本レコード協会の楠本委員からの御発表をお願いします。

【楠本委員】それではお時間もあるかと思いますので,手短にいきたいと思います。この度はこのような機会を設けていただきまして,ありがとうございます。レコード協会楠本でございます。実は国際小委員会での発表は3回目でして,またお前かというお方もいらっしゃるかもしれませんが,その点はお許し願います。

お時間もありますので,2ページまで飛んでください。まず,インターネット上の音楽に関わる配信の違法配信の実態というところで,図で整理しております。真ん中辺に4つの薄い青い丸を書いていますが,結局違法アップロードからどんな利用がされているか,すこしつながりが悪いですが,いわゆる動画共有サイト,それからファイル共有ソフト,それから最近だとスマートフォンアプリ,それから海外を中心としたストレージサイトといったものがあります。そこからユーザーが,違法と知りながらでも利用している人がいるというのが,このインターネット上の違法の実態という整理です。

こちらもよく使わせていただく図ですが,今現在レコード協会では約30か国,200のサイトをクローリングしています。主な違法サイトという呼び方はできませんが,違法コンテンツがあるコンテンツというふうに御理解ください。特に中国サイトですと,分野によっては新しいサイトが生まれてきているという状況です。

今日は,私たちが行っている施策ということで発表させていただきます。

まず,一番上ですが,先ほどCODAさんからもあったとおり,削除要請の実態についてというのを最初に,それから資料が付いていない2番目,3番目,アプリ流通プラットフォーマーへの削除要請と,こちらもアイフォンですとアップル,それからアンドロイドですとグーグルさんのところへ,我々が有害だと捉えるアプリについては削除を要請しています。

それから3番目,大体月に2,000から3,000の非表示の要請を行っています。

それから4番目で,刑事事件等を御紹介します。

そして5番目で,今まで1から4までは,表現はよくないですが,いわゆるたたく方の施策ということですので,5番目で逆に普及啓発といった部分も御紹介したいと思います。

では,次のページ。まず1つ目ですが,削除要請についてのここ6年間の実態です。昨年2014年がピークになっていまして92万件,もう100万件に迫る勢いです。正直申し上げて,この半分がYoutubeです。それから,2015年に92万件から61万件に減っています。この30万件の減少は,Youtubeです。ここの部分を簡単に御紹介しますと,Youtubeとは様々なルート,方法にて交渉を行い,御協力をいただいております。例えば,いわゆるスリー・ストライクのようなスキームを利用することによって,同一のアップローダーによる大量の違法アップロードファイルを一気に削除してもらいます。そういったようなことで,Youtubeの対策は30万件の功を奏して,2014年から15年では総数が減ったと理解しています。

それから,一気に4番と飛んでおりますが,冒頭説明しましたとおり,刑事事件等では削除要請以外に何をやっているかというようなことを御紹介します。一番上に刑事事件の推移が出ておりますが,見ていただくとお分かりのとおり,昔はいわゆる海賊版と呼ばれるCDやDVDそのものが,道端で売られていました。それを刑事事件で取り締まっていたという歴史があります。しかしながら,2012年,13年あたりから,いわゆるインターネット上の,(我々からすると)犯罪者に対する取り締まりというのが主になってきているというのが見て取れるのかと思います。

それから,2つ目の黒丸で出ておりますが,発信者情報開示請求。インターネット上は名前を名乗ってアップロードする人はいませんので,IPアドレスまでしか特定ができません。これを,日本のプロバイダー責任制限法に基づいて情報開示請求を行い,発信者を特定するということを行っております。

しかしながら近年,プロバイダーさん側から自分のユーザーでもある人の名前をなかなか開示してもらえず,結局訴訟までやってやっと開示していただけるということになっています。これは,先程の松村さんの発表の中にもありましたとおり,結局被害を受けている権利者側ばかりの持ち出しコストが増加の一途を辿っているということにつながっている典型的な例だと考えております。当然訴訟するためには弁護士の先生をお願いしなくてはいけない。また勝訴したら勝訴したでいろいろなお金が掛かってくるわけです。

それから,警告といいますかCautionですが,3つ目の黒丸というのは,こういったファイル共有ソフトを使っているユーザーには,特にいきなり刑事,民事で責めるというよりは,Cautionを出しています。これが累計でもう1万件を超えています。この「累計」という表現が大事でして,多分同じユーザーに同じ警告メールが行っている可能性も否定できません。

それから,最後です。さんざんお金を掛けてどれぐらい回収できるのかというのが一番下です。一生懸命頑張って,最後,和解交渉等で得られる損害賠償の平均額というのは,70万円ぐらい。到底足が出るというよりは追い付かないというのが現状です。

次に普及啓発活動についても紹介させていただきます。私どもレコード協会は,レコード会社,産業団体の側面もありますので,いわゆるユーザーに音楽を購入していただくという一番の目的があります。そのためにも,単純に違法をしているユーザー側の人たちをたたくというだけではなくて,いろいろ知ってもらいたいというような活動をしています。先般,違法ダウンロード罰則化のときには映連さんに御協力を頂いて,全国3,300の映画スクリーンで,本編が始まる前にコマーシャルが流れると思いますが,そういったコマーシャルを作り,皆さんにPRをしているところです。

それから,リーフレット・チラシ・ノベルティ等というのをかなりいろいろな種類作っております。下の方に一例を写真付で挙げておりますが,主だったところではこの①から⑦といったところへ,タイミングを見計らって供給をさせていただき,特に若年層の皆さんに著作権の普及啓発といったところをアプローチしています。

それから,次の活動です。旅行会社等と連携をして中高生の職場訪問をセットし,そのタイミングでビデオによるアプローチですとか,15分,20分程度のレクチャーをすることによって,あとノベルティというほどではありませんが,先ほどのリーフレット等を活用することで,著作権の意識向上活動というのをさせていただいています。

残念ながら直近の人数,すごく少ないのですが,一昨年は8,500名を1年間で受け入れています。その減ってしまった理由の大きなところは,どうしても人気のあるレコード会社さんの訪問の希望が多くなってしまい,なかなか需要と供給のバランスを取るのが非常に苦しいというところが原因です。建屋の建替えがあったりしてその場所的な問題やいろいろなことが重なってしまいまして,希望になかなか応えられなかったということで一気に減ってしまいましたが,大体8,500名と,かなりの人数を受け入れているという状況です。

一方で,出張授業というのも数は少ないですがやらせていただいています。これは,タイミングがいろいろあるのですが,学校へこちらから職員が行って授業をさせていただいているというところです。

それから,右側,そして一番下にある例ですが,今回中学校を対象として,中学校の音楽の副教材となる音楽のDVDを新たに作るというタイミングがございました。私どもの方で作成をして,文科省さんの御協力の下,全国へこれを配布させていただいております。5年位がライセンスの期間だったと記憶しておりますので,皆様の御子息や関係者が見ていただける機会があるのかなと期待しています。

それから,次。やはりこういったことが一番興味を引くのではないかなというところで,このようなこともやっています。特に今まさに夏休みということで,一体どんなところでレコーディングというのは行われているのだろう。クリエイティブな部分を見ていただく,体験していただくということをやっています。これらについても,全て持ち出しで行っているということは否めません。非常に多くの申込みを頂いており,うれしい悲鳴があるということです。

それから,最後。普及啓発活動の最後ですが,大学の寄附講座について,過去の近年の歴史を少し紹介させてください。基本的には著作権法の講義をがりがりやるというよりは,クリエイティブ,いわゆるコンテンツを創っていく産業のいろいろなトップの皆さんにお話をしていただくことによって,結局それを無料で利用すると,来年はあるのか,明日はあるのかというところを大学生には少なくとも理解できるのではないかという視点から,この寄附講座というのを実施させていただいています。

これにも非常に多くの参加者がいらっしゃいまして,現在進行形が,明治学院大学さんで,1回の講座に500名聴講に来てくださいます。スピーカーに著名な方を選んでいるというのもありますが,興味を引かせるという,我々からするとそこを出してでも,興味を持っていただいて,来年あるいは将来,未来のクリエーションの部分に理解をしていただけたらいいなというところで進めています。

それから,デモをやらせていただく前に紹介ですが,今,知的財産推進事務局から文化庁さんに落ちてきていますリーチサイトの対策,それから次のページ,私どもは逆にアプリでもこういったリーチサイトと同様なものがあるのかなというところで,リーチサイトと有害アプリの2つ,デモンストレーションを今日は準備しております。そちらをお見せしながら少し解説をしたいと思います。

まず,音楽リーチサイトですが,正直申し上げて,今,音楽分野ではリーチサイトは主流ではありません。2010年ぐらいが一番困っていて,こちらの国際小委でも是非寄与侵害や間接侵害の御検討をとお願いした経緯がございます。ただ,まだ音楽でもリーチサイトはありますので,侵害サイトを御紹介します。

ここにはもう最新のシングル,もちろんアルバムもですが,全てダウンロードできるように紹介されています。当然このURLにあるファイル,コンテンツというのは全て違法アップロードです。もうジャケット写真から何から全てコピーで,いわゆる不正なものという状態です。

もう一つが有害アプリです。今,スマートフォンが主流ということになりましたので,もうスマートフォンからアプリというのを起動することによって,いろいろなコンテンツへアクセスができるかと思いますが,音楽も一緒でして,違法アップロードがあるところへ行けば,何でも音楽があると,無料で楽しめるという1例です。これは中国のサイトにリンクされているアプリです。アプリの名前は幾らでも変わっていきますので,名前というよりは,こういうアプリケーションがあるということです。

当然,この中国のサイトに対しては,我々は削除要請を行っていますが,ジオブロックといいましていわゆる地域ブロッキングをお願いして御対応いただいているケースもあります。このサイトについては日本からのアクセスはブロックされているはずですが,アプリによる技術的な迂回措置等により,この音源にアクセスしているということです。

こういったように,先ほど技術的な悪い方への努力,努力と言っていいのか分かりませんが,悪い方への進化というのはもう全然我々の対策を上回ってしまう,追い付かないというところが実態です。

最後にその課題という部分も,少しだけお話しさせていただきます。削除要請というのは,英語でNoticeandtakedownという言葉がよく使われますが,今はもうTakedownしただけじゃなだめで,Staydown,いわゆるもう二度と再生されない,削除されないといけません。これはレコード協会さんの要請によりブロックされました,削除されましたといっても,ファイル自体はサイトに残っているわけです。だから幾らでも復活,いわゆるいつの間にか戻っているという状態になっています。

それから,松村さんの御発表の中にもありましたが,ブロッキングという言葉に対して,まだ検討はなかなか政府では難しい。これはもう当然重々分かっています。基本的人権の部分等,総務省さんの管轄があります。ただし,違法なコンテンツにアプローチしているのは日本人ユーザーです。別に中国人が中国人サイトで日本コンテンツを楽しんでいるわけではなく,日本人ユーザーがわざわざ無料の違法コンテンツを楽しんでいる。この実態はもう紛れもない事実です。そういったところでブロッキングという手立ては,一つの大きな手段になるかと考えています。

また最後に,これも衝撃的な話ですが,今はストリーミングが主流だというのは皆さん御存じだと思います。ダウンロードなんか誰もしないよというふうな時代だと思っていらっしゃると思います。しかし,我々もなかなかショッキングだったのですが,日本のやはり若年層は,自分のアイフォンのいわゆるギガ,月々の通信量制限をすごく気にしています。だから,無料のwifiがあるところで平気でダウンロードして,それを保存している人がいまだにある一定パーセント以上いるという実態もあります。その割合というのが,当然,有料のストリーミングサイトを正規利用している2倍,3倍ではないといった若年層の調査結果が出ておりますので,今後この辺は深掘りして,こちらの委員会でも追って御報告させていただければと思っています。

ですから,インターネット上,先ほどどこからかプロモーションなのではないかという声も挙がっていたと思いますが,それは購買につながればプロモーションです。ただ人気が出るとか,あるいは何でしょうか,コンサートがどうのこうのという話があるかと思いますが,飽くまでもCDあるいは音楽を創っている人間はそれを売って生業にしています。それが売れなければ何のプロモーションでもない。それだけは最後,言わせていただいて,プレゼンを終わりにしたいと思います。

ありがとうございました。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。

今,3つの御報告,御発表いただきまして,中には本年度の法制基本問題小委員会での検討が予定されているテーマも含まれておりましたけれども,時間も限られていますので,何か御質問,御意見等。はい,どうぞ。

【奥邨委員】ありがとうございました。大変参考になりました。

それで1点,まず事務局にお願いです。今日の時点はこれでいいのかもしれないですが,こういう問題を深く話し合うということであれば,積極的に非公開にすべきだと思います。非公開で議論し,更に議事録にも出さないということで,より具体的にどういうことをお困りなのかとかいうことを把握しないといけなと思います。事の性質上,非公開にすることについて別段躊躇する必要は,私はないだろうと思っています。今日は入口,キックオフみたいなことであるということであれば全然問題ないと思いますが,今後については是非積極的に御検討いただければと思います。

それから2点目。これはもう時間がないかもしれないので,また将来的に伺いたいということにもつながると思います。今日のお話,私が伺う限りは,やはりモグラたたきについてはかなり難しい部分があるというのが皆様の御指摘だったと思いますし,それを私は重々理解しております。

特に問題が多くなる背景の一つは,アメリカのサイトについて,はっきり言ってDMCAがプロバイダー寄りということはもう変わらない事実としてあります。Youtube事件でかなり権利者寄りになったと思ったのですが,最近の判決でまたプロバイダー寄りに戻っております。したがって,先ほどから議論があったように,プロバイダーが積極的な行動をしてくれないというのは,実は,DMCAのスタンダードというのがかなり効いているという事実としてあるので,そうすると期待するのはかなり難しいということもあるのだろうと思います。

更に先ほど議論にあったようにブロッキング等々も難しいという話も踏まえますと,今回も実物を見せていただいてもうはっきりしたのですが,やはり広告対策,兵糧攻めですね。これをしないといけないと思います。すなわちモグラたたきが難しいということであれば,モグラが住めないような土壌にするという土地改良をしていかないといけないわけでありまして,兵糧攻めにして,モグラが出ていくということにしないといけない。

そうすると,やはり広告対策について,積極的に何らかの方法がないのか検討する,そのためにどういうことがお困りなのかとかいうようなことも勉強していく。広告の多くは日本発の広告であると思います。海外の広告よりも日本発が多いと思います。なかなか難しいサイトブロッキングとかよりも,広告対策についてやはり検討していく。またその点についても皆さんから御意見を伺うことができればいいなと思った次第であります。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますか。いかがですか。もうあと少ししか時間ございませんが,この小委員会,それほど頻繁に開けるものでもないですし,次のときには法的な対応策を考えるというのが本来ここの使命でございますので,でも実態が分かっていなければ――私が全然分かっていなかったですが――その点,今,ここにいらっしゃる方に聞くのが一番良いかと思います。

では,私から。今の広告主の方に何か有効な手立てを打つということはあり得るのでしょうか。その有効な方法は具体的にあるのでしょうか。どなたでも結構ですけど。

【楠本委員】数年前から,広告を取りまとめているところや,そういったところへ団体間での,何の法的拘束力もないわけですから,「お願い」ということはさせていただいています。なので,向こう側もコンプライアンス的な観点から,有害なもの,あるいはそういった我々から止めてくれというものについては協力する方向ではあるのですが,強制力がまず全くないというところです。それから,そういうまともな団体に属していない広告事業者というのは非常に多くいまして,最終的にはそこへ集まってしまうという実態があります。ですので,法がないというところが何とも太刀打ちできないといったところです。

【道垣内主査】ほかの方はいかがですか。その他の点でも結構ですが,よろしいですか。

そんなにぴったりに終わる必要も必ずしもないので,またございましたらそのときに頂くとして,最後の6番,特にこちらで予定したものはございませんが,何かこの際,委員の方々からございますか。

それもなければ,事務局から何か連絡事項がございましたらお願いします。

【小林国際著作権専門官】本日はどうもありがとうございました。次回の委員会につきましては,日程を調整しまして,また御連絡をさせていただきます。

【道垣内主査】本日の国際小委員会は,これで終了でございます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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