文化審議会著作権分科会国際小委員会(第3回)

日時:
平成29年3月8日(水)
10:00~12:00
場所:
東海大学校友会館阿蘇の間

議事次第

  1. 1.開会
  2. 2.議事
    1. (1)海賊版対策の取組状況等について
    2. (2)平成28年度国際小委員会の審議状況について
    3. (3)その他
  3. 3.閉会

配布資料一覧

第16期文化審議会著作権分科会国際小委員会(第3回)

平成29年3月8日

【道垣内主査】それでは,ただいまから文化審議会著作権分科会国際小委員会の第3回を開催いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段,非公開とする必要はないと思いますので,既に傍聴の方々には御入場いただいているところでございます。この点,よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】ありがとうございます。それでは,このまま議事は公開ということで,進めさせていただきます。

まず初めに,前回の開催以降,事務局の人事異動があったようですので,その点,御報告をお願いいたします。

【小林国際著作権専門官】事務局の人事異動を御報告申し上げます。

ただいま不在にしておりますが,1月13日付で,文化庁長官官房審議官として,永山裕二が着任しております。

また,同日付で,文化庁長官官房著作権課長として,水田功が着任しております。

【水田著作権課長】水田でございます。よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】よろしくお願いいたします。

ありがとうございます。それでは,議事に入りたいと思います。

本日の議事は,議事次第にありますように3点ございます。海賊版対策の取組状況等について。それから,平成28年度国際小委員会の審議状況について。その他でございます。

では,事務局より配付資料の御確認をお願いいたします。

【小林国際著作権専門官】配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第を御覧いただけますでしょうか。資料を2つ用意してございまして,まず資料1としまして,海賊版対策の取組状況等についてという資料。そして,資料2としまして,今年度の国際小委員会の審議状況をまとめた資料を用意しております。また,参考資料として,1,2を御用意しております。もし不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。

【道垣内主査】よろしゅうございますか。

では,議事の1番に入りたいと思います。海賊版対策の取組状況等について,まずこの点,事務局より御説明いただき,その後委員の方々の御意見を伺いたいと思います。

それでは,よろしくお願いします。

【野田海賊版対策専門官】ありがとうございます。事務局でございます。資料1をごらんください。

1枚めくっていただきまして,右上の方に平成29年度予定額が書いてございます。まずは予算額ですが,世界知的所有権機関,いわゆるWIPOへの拠出金を含めまして,約1億4,700万円を予定しています。このうち,文化庁が直接執行する部分での予算が9,500万円ほど予定しています。文化庁の直接執行部分は今年度に比べ,約600万円増加していますが,全体的にはWIPOへの拠出金部分,円高フラン安の為替の関係で若干減っています。事業自体は今年度の既存事業プラス拡充予算を確保しているものと御理解いただけるかと思います。

続きまして,文化庁におきます海賊版対策です。委員の先生方は既に御承知のとおり,海賊版に対し,権利者による権利行使の実効性を高めるための環境整備,これを国際分野では行っています。つまりは我が国の著作物が適切に扱われるように,侵害発生国や地域における著作権制度の整備,集中管理団体の育成を支援,あるいは関連する政府機関等の職員の資質向上の取組を行っております。

取組のメニューとしましては,(1)から(5)までは文化庁が直接に執行している取組です。資料の黄色い囲みですが,こちらはWIPOと協力した途上国向けの協力プログラムです。文化庁が国際機関であるWIPOに拠出している信託基金を活用した協力事業となっています。一番下の囲みには,予算事項ではありませんが,経産省等とともに官民合同の取組に文化庁としても参加しているというものでございます。

平成28年度のそれぞれの取組につきましては,次のページ以降で御説明させていただきます。3ページ目を御覧ください。平成28年度の取組状況(2-1)について,まずは(1)の二国間協議から説明させていただきます。この二国間協議のうち,日中,日韓著作権協議につきましては,政府間の覚書に基づきまして毎年定期的に開催しています。今年度は昨年8月に上海において,日中著作権協議並びに一般向けのセミナーを開催させていただきました。また,韓国との間では,昨年12月にソウルにおいて,政府間協議並びに一般向けのフォーラムを開催しています。

内容としましては,両国ともに著作権制度の技術的な質疑や,今後の方向性について政府が議論している進捗状況等,意見交換が行わるとともに,日韓著作権協議におきましては,日韓の機関が連携して第三国において著作権侵害対応等のイベントを行いたいという旨の提案もありました。このほか,定期的な開催ではありませんが,訪日の機会や,あるいは我々が出張した機会を捉まえて,インドネシア並びにベトナムとの間で今後の協力に向けた意見交換を行っています。

今,インドネシア,ベトナムについて申し上げましたが,この2か国にタイ,マレーシアを加えた4か国について,平成24年度にグローバルな著作権侵害に関するアジア地域セミナーというものを行っています。また,その後に行われました政府間のミーティングを踏まえて,協力支援の重点国として,私どもが特に重点的に対応させていただいている国々です。今年度におきましては,日程的に調整が付きましたインドネシア並びにベトナムと意見交換の機会を持つことができました。29年度におきましては,追って説明させていただきますが,より意識的・計画的にそういう機会を設けて調整を図ってまいりたいと考えております。

続きましてその下,(2)のトレーニングセミナーです。こちらは侵害発生国・地域における法執行機関,例えば税関や警察の職員の方々を対象としました資質向上のための真贋判定セミナーです。平成28年度はCODAに委託を行いまして,北京,香港,台北,高雄,マレーシアのペナン,ベトナムのホーチミン並びにインドネシアのジャカルタにおいて開催いたしました。昨年度よりも25名多い444名がこのセミナーに参加しています。

事例としまして特筆すべきことがありましたので,報告させていただきます。香港で行いましたセミナーにおいて,出張者が開催前日に視察した繁華街で,当時日本で劇場公開中だった映画の海賊版DVDが既に店頭で販売されていたということがありました。そのことをセミナーで取り上げたところ,翌日香港警察による摘発を行ったといった実例で,セミナー開催の一定の成果が上がっているものと考えております。

このほか,今年度においては,例えば台北と高雄のセミナーを一連の出張で開催し,あるいはペナンのセミナーと合わせまして,クアラルンプールで普及啓発イベントを行う,また,ホーチミンの開催に合わせてベトナム政府と意見交換を持つなど,意図的に意識的に出張に合わせて複数のミッションをこなし,合理化,効率化に努めたというところを特徴として挙げさせていただきます。

続きましてその下,(3)のグローバルな著作権侵害への対応です。内容としましては,政府職員の訪日研修,それと現地でのセミナー並びに侵害実態調査を行っています。平成28年度におきましてはエンフォースメント,いわゆる法執行の機能強化のためにベトナムの文化・スポーツ・観光省の訪日研修を行いました。著作権局の副局長,ベトナム文化・スポーツ・観光省の法整備担当局長並びに取締担当局長等,計5名の研修生を受け入れました。

次のミャンマーでのセミナーですが,これはWIPOによる訪日研修の参加者を介し,ミャンマー政府から集中管理団体の整備支援のためのセミナーを開きたいと,それについて協力をお願いしたいという依頼があり,それを踏まえて,再来週ヤンゴンにてセミナーを開催することになりました。このセミナーを踏まえて,現地の権利者と政府との間でワーキンググループを作り,1年ないしは2年の間に集中管理団体を作りたいといった企画提案を頂いているところです。近く我が国の例を範として,集中管理制度ができるということを期待しています。

このほか,マレーシアを対象として侵害実態調査を実施しております。調査結果はまだ届いていませんが,これにより,先ほど申し上げましたASEAN4か国におきまして,我が国のコンテンツがどれだけの侵害実態があるのかといったことがある程度把握できるとともに,これに基づいた対応を検討していきたいと考えています。

続きまして,(4)の侵害発生国・地域におけます著作権普及啓発です。こちらは一般向けの普及啓発イベント並びに普及啓発のための教材の提供を行っております。平成28年度はタイのバンコクとマレーシアのクアラルンプールにおきまして,普及啓発のイベントを行いました。

バンコクでは,昨年8月にはタイの知財局との共催によりイベントを行っています。その際には,文化庁からの出張者並びにCODAから講師派遣をさせていただくとともに,先月はアジア最大のわが国のポップカルチャーイベントであるJPANA EXPO THAILANDにおきまして,イベントを開催いたしました。後者のJAPAN EXPOですが,こちらは私どものイベントに参加いただいた方並びにアンケートに協力いただいた方を合計しますと,1,500名の方に直接私どもの対策についてお伝えする機会を設けることができました。

また,クアラルンプールにおいては,昨年11月に経産省が行っておりますCo Festaの一環としてマンガフェスティバルinマレーシアに協力をまして,マレーシア知的財産公社(MyIPO)と共催いたしまして,クイズ形式での一般向けセミナーを行いました。セミナーの参加者,アンケート回答者,合わせて582名に直接私どもの取組をお伝えすることができたと理解しております。

この場におきましては,私自身もクイズのプレゼンター並びに答えを解説する解説者として参加をさせていただきました。私の他,先ほど申し上げたマレーシア当局の担当課長も一緒に登壇して,クイズの出題,回答並びにクイズの答えに対する解説を行っております。終了後には日本の漫画の二次創作をしている若者が多々来ておりまして,自分たちの活動について,あるいは自分たちの権利について理解することができましたといった感想も頂いております。

このほか,ベトナムでは先ほど申し上げました意見交換,この機会に教材をベトナム語に訳して提供していただけないかという依頼があり,それに対応させていただく予定でございます。

次に,(5)の権利行使推進の支援です。こちらは2月28日に「インターネット上の著作権侵害対策ハンドブック」を活用した権利者向けのセミナーを開催させていただきました。ハンドブック自体は,昨年度,委員の先生方にも協力いただいて作成したものです。このハンドブックは,国際小委の委員の先生方並びに音楽,出版,映像,ソフトウェア等の権利者団体の方々に計500部配布し,今年度はそのハンドブックを活用してセミナーを開催させていただきました。

このセミナーにおきましては,ハンドブックの作成に御協力いただきました弁護士の前田哲男先生を初め,出版社,アニメの企画制作会社の侵害担当の方々に講師になっていただきまして,実例に即した説明とリーガルアプローチについて御講義を頂いたところでございます。

参加者は,放送,出版社,権利者の企業の方,行政機関の方など103名に参加いただきました。定員が100名でございましたけれども,それを超える応募がございまして,一部調整をお願いした経緯もございます。アンケートの結果,80%を超える方が満足できる内容であった,次回にも期待しているという御意見を頂いておりまして,成果のあったセミナーであったと理解しております。

こちらのセミナーについては,参加者の公募を開始したところわずか1週間でもって定員が充足してしまいました。参加者の方々並びに応募いただいた方の関心が非常に高かったものでございますが,裏を返せばそれだけ侵害が深刻であるということを我々としても痛感している次第です。

以上が,文化庁が直接行っている取組の報告でございます。

続きまして,次のページを御覧ください。こちらは,WIPOと協力した途上国向けの対象協力プログラムです。WIPOと連携して行っておりますアジア太平洋地域の取組について,御報告申し上げます。

まず,最初の枠囲みですが,こちらは権利執行,エンフォースメントを含む我が国の著作権制度全般を学ぶ2週間程度の訪日研修です。平成28年度は中国,パキスタン,フィリピン,ベトナムの4か国から計8名の研修生を受け入れました。開催期間は10月17日から28日までの2週間でございます。

続いて,2つ目の囲みですが,これも政府職員の訪日研修です。こちらは,テーマを集中管理制度に特化した内容で開催させていただいています。集中管理制度をこれから整備したい国々並びに関心があるといった国々5か国,カンボジア,クック諸島,ラオス,モルディブ,ミャンマーから8名の研修生を受け入れました。

こちら2つの研修については,WIPOとの協力事業ですので,研修生の選定並びに中身の企画に当たりましては,私ども文化庁と,WIPOとの調整の上,決められているものでございます。

以上の取組とともに,28年度対応させていただきましたその他2つの取組については,いずれも現地で行うセミナー,あるいは管理職を対象とした会議に文化庁が講師として,あるいは参加者,スピーカーとして出席し,会議に貢献したという事業でございます。

WIPOとの連携事業については,WIPOとの調整の中で参加国が決まっていると申し上げましたが,ある程度広範な対象国を対象としまして,どちらかというと全般的・包括的な内容を対応させていただく。それに対しまして,文化庁が直接行う事業については,先ほど申し上げた日中であるとか日韓であるとか,あるいはASEANの重点4か国など,ある程度制度が整備された国々を対象として,テーマをより絞った形で専門的な研修を行っているといったことが言えるかと思います。文化庁としましても,引き続きこのWIPOとの協力並びに私どもが直接行っているものを通じて,アジアにおける著作権制度の整備等に貢献していきたいと考えております。

このWIPOとの協力事業ですが,例えばさきに説明しましたミャンマーにおける集中管理団体のためのセミナーの開催に,WIPOの研修がつながった,あるいはベトナムからの研修生の御意見ではありますが,参加した研修の成果を生かして,現在ベトナムの方で検討されている管理事業法の草案の起草を行っているといった報告を頂くとともに,その後も日本の参考文献並びに参考となる資料の提供というものを求められています。研修の成果が次のアクションにつながった一例ではないかと考えているところでございます。

続きまして,平成29年度の取組について,ごく簡単に御説明させていただきます。1枚ページをおめくりください。平成29年度におきましては,昨年8月に日ASEAN文化大臣会合が行わ,その際,ASEAN各国への著作権分野の支援の充実を表明しております。これを踏まえ,平成29年度においては,真贋判定セミナーをASEAN地域で拡充したいということを考えております。

具体的には,これまでインドネシア,マレーシアで開催させていただき,今年度は規定予算の中で,ベトナムで試行しました。これに引き続いて,来年度,タイで開催するということを考えております。まずは私どもが先ほど申し上げた重点4か国においてこれらをカバーするとともに,ベトナムにおいても普及啓発活動を行いたいと考えております。併せてこういった私どもの職員が出張する機会を捉まえまして,各国との間,重点国との間で協議が持てるように,意識的に計画的にスケジュールを調整してまいりたいと考えているところでございます。

それとその下の(参考)ですが,簡単に触れさせていただきたいと思います。表がございますけれども,こちら黄色くハイライトさせていただいているところが,平成29年度に対応させていただきたいと考えているものでございます。相手国との調整がありますので,実現については私どものこれからの調整によるかと思いますがトレーニングセミナー並びに普及啓発については,これらの国々において対応させていただきたいと考えています。並びに,先ほど申し上げた侵害実態調査等につきましては,4か国の状況が充足されるということでございます。

こちら,表の一番右に推計被害件数とありますがこれは私どもが過去に行った実態調査による推計値でございます。インターネットユーザーの推計値でありまして,マレーシアについてはバーが引っ張ってあり,先ほど平成28年度の取組で申し上げました侵害実態調査を現在やっている最中ということでございます。こちら,マレーシアの侵害実態調査につきましては来年度の国際小委員会でもって御報告させていただきたいと考えています。

御報告内容は以上でございますけれども,本日これから御審議いただき,御意見を頂いて,御意見を踏まえまして,来年度の事業の実施並びに平成30年度の概算要求に向けて,私どもとしても検討・準備させていただきたいと考えております。御審議をお願いいたします。

【道垣内主査】ありがとうございました。

それでは,ただいまの御説明を踏まえまして,御意見,御質問ございますでしょうか。

冒頭私からちょっと伺いたいのですが,この委員会,次の議題にもありますように,インターネットを介した海賊行為について特に今期は検討するとなっています。今,御説明いただいたのは海賊版対策全般についてであり,それぞれの中で,インターネットに特に特化したような話というのはされているのかということとを伺いたいと思います。3ページの(5)は特にインターネットに特化したものですが,そういう観点から,インターネットというところを踏まえて少し補足していただけますでしょうか。

【野田海賊版対策専門官】御意見,御質問ありがとうございます。特にインターネットということにつきましては,主査も先ほどおっしゃったように,前回の国際小委でも中間報告させていただきました各国での取組,どの国もやはりインターネットによる侵害というものが非常に深刻,かつそれが拡大しているということもございます。調査の中でインターネットというものを取り扱う他,各研修の中のコマでも,インターネットにおける侵害というものは当然議論の中心,議論の中身になっているところです。明示的に各取組について,インターネットというふうに標榜はしていませんが,それぞれの中身におきまして,当然ながら現在の侵害の主流であるインターネットにおける著作権侵害への対応といったことは,扱わせていただいているところでございます。

ちょっと抽象的な説明で大変恐縮でございますが,以上です。

【道垣内主査】どうぞ。

【鈴木主査代理】今,主査もちょっと触れられた3ページの(5)の事業ですが,見出しの方はハンドブックの作成等となっており,その説明の方はセミナーの実施という単発的な事業の説明になっています。このハンドブック自体は,一般に簡単に入手できるものとして公表されているのでしょうか。

【野田海賊版対策専門官】お答え申し上げます。ハンドブックそのものは,これをいわゆる著作権を侵害する側の方が見てしまうと,その参考にもなってしまうということもあり,ホームページ上でアップする等の行為は行っていません。

一方で,先ほど申し上げた関係者の方々を中心に,いわゆるハンドアウト,郵送でもってハンドブック自体は送らせていただいております。大体500部程度,それと,先日行いましたセミナーにおきましても配布させていただいており,特定多数の方々に見ていただくようには配慮させていただいているものでございます。事情がございますので,御理解いただければと考えております。

以上です。

【道垣内主査】そのほかにどうでしょうか。特に権利者の団体の方,いかがでしょうか。こういう国の予算1億円が直接執行で,WIPO等を通じたものを合わせると1億5,000万円くらいの予算を使っているわけです。人材育成から始めてというと,なかなかすぐに目に見える効果にならないかと思います。でも長年実施しているので,何か最近良くなったなという実感があるのでしょうか。もう少し何か違うところに特化してもらうともっと良いのではないかとか,審議会ですので,是非御意見を伺って,来年度以降につなげていただきたいと思います,どうでしょうか。久保田委員とか,もちろん研究者の方でも,対象国についてなど御意見ありますでしょうか。

なかなか数値化できないと思いますが,効果の程どうなのでしょうか。でも,相当長くやっていますよね。もう最初の頃の人は偉くなってびしびしやる感じになっているのでしょうか。

【野田海賊版対策専門官】御意見,御質問,ありがとうございます。実は私ども行政の人間も,人事異動でもって替わってしまいますので,あくまで伝聞として私どもが聞いた限りということで答えさせていただきます。初期の頃にWIPOの研修を通じて知り合った方々と一部の権利者の方々は,今もなお情報交換しているということを拝聴させていただいております。その中には,やはり各国でまた異動の上,著作権当局のシニアな幹部になられている方もいらっしゃるということを具体的に聞いております。ただ,それが一般化されているかどうかというと,ちょっと私どもも把握していません。

ただ一方で,私どもの訪日研修に来ていただいた方々は,非常に強い思い入れと,我々並びに権利者の方々の危機感,問題意識というものを持って本国に帰っていただいていると承知しております。その後のメールのやり取りですとか,こういった参考資料をくれといったような反応が,それを裏付けているのではないかと考えております。

たびたびの抽象的な御回答で恐縮でございますが,以上でございます。

【道垣内主査】野口委員,お願いします。

【野口委員】1つ御質問です。5ページのところで,来年度取り組む国の対象として重点国を4つ挙げていただいていますが,フィリピンの位置づけについてお尋ねしたいと思います。フィリピンは,重点国でもなく,先進国でもなく,しかし,人口も多くて進出している日本の企業の数も多いという意味で,ある程度被害が予想されるようにも思うのですが,その位置づけについて教えていただければ幸いです。

【野田海賊版対策専門官】御質問ありがとうございます。フィリピンにつきましては,重点対象国と比べて,私どもの方に情報として入ってきているものが若干少ないという経緯がございます。併せて,そういったことも踏まえて,フィリピンにおきましては,今ちょっとWIPOの方と調整している最中ではありますが,ナショナルセミナーというものを開催してはどうかといったことを現在調整しているところでございます。それらWIPOの研修を通じまして,必要な情報であるとかネットワークであるとか,そういったものをまずは構築,その上で文化庁としても対応していきたいということを考えております。

以上でございます。

【道垣内主査】ASEANと中国,韓国を日本が担当しているということでしょうか。他の地域もそれぞれのどこかの国の予算で,こういう啓発活動とかを行っているのでしょうか。日本の被害額も,アジアだけで発生しているわけではないと思うので,ちょっと世界全体の様子を伺いたいと思います。

【野田海賊版対策専門官】ありがとうございます。まずアジア地域において,我が国のコンテンツが特に侵害されるケースが多々あったといったことを背景にしまして,最近の傾向でございますが,当然中国,韓国もだんだんと権利者としての意識が醸成されてきているかなと感じているところでございます。

とりわけ韓国におきましては,第三国において共同で侵害対策のイベント等をやってはどうかという御意見を頂くなど,過去と比較すると韓国におきましてもいわゆるコンテンツを消費する側から,コンテンツを作って輸出する,あるいはライセンスを買わせて,それを提供するというふうになってきていると私は理解しております。その上でもって,WIPOにおけますいわゆる信託基金におきましては韓国も拠出しているということを聞いております。ただ,韓国のファンドにつきましては,私どものようにアジア太平洋ということでその対象をある程度設定しているというものよりは,広く全世界を対象にしているということを聞いております。

ですので,主査がおっしゃったように,他国もお金を出してアジアで事業を展開しているということはありますが,我が国は特にアジア,ASEANを対象として,注力をしてやっているといったことからしますと,これまでの経緯もあり,日本がその地域を主導しているのではないかと考えております。

【北山国際課長】若干補足をさせていただきますと,WIPOに対する拠出金は,この4ページのところにありますようにアジア・太平洋地域の著作権制度普及促進事業ということでやっておりまして,ここに挙げられているような国々,アジア・太平洋地域の国々における事業の実施に使われているということでございます。また,文化庁が独自に実施している事業としては,中国,韓国及びASEAN諸国が対象になっているということでございまして,その他の国については,今のところ文化庁,あるいは文化庁の拠出金を受けたWIPOにおいてもカバーしているということではない。つまり日本の事業として,その他の地域における事業が実施されてはいないということでございます。

ただ,いずれにせよそれらの地域については,我が国でしっかりと取り組んでいきたいと考えておりますが,他方で例えば韓国もWIPOに対して拠出金を出しておりますし,あるいは韓国が独自にいろいろな地域における事業を実施しているということもございまして,そういう点については二国間協議等の場で連携して進めていきましょうということが,今話し合われているところでございます。

【道垣内主査】ありがとうございます。今の私の質問は,例えば南米とか,どこへ旅行しても,テレビをつけると日本の漫画をやっていたりするので,世界中で日本のコンテンツは使われているのだと思います。アジア以外の国々での海賊行為について,日本の海賊版対策の予算執行の対象にはしていないけれども,世界的に漏れなく,きちんとコンテンツ輸出国による海賊版対策はされているのでしょうか。つまり,それぞれの国がその近くのところを対象に,海賊版を押さえていきましょうという話で,日本はアジア方面担当ということになっているのか,そうではなく,たまたま歴史的経緯でこうなっているのか,いかがでしょうか。

予算にも限度がありますから,世界中の国における海賊版対策を同じようなにするというのは,多分お金の点ではできないと思います。でも侵害額といいますか,どれくらい日本のコンテンツが勝手に使われているのでしょうか。そこから全部お金が入ってくれば,次のコンテンツを作るのに資するわけですよね。そういうことに向けて,何か国際的に世界全体のことをちょっと伺いたいなと思います。

【北山国際課長】ありがとうございます。例えばですが,アジア各国における海賊版対策を行う際に,我が国の視点というのは我が国のコンテンツが保護されるようにということで取り組んでいて,アメリカで作られた作品の海賊版がどうなっているかというようなことについては,我々としてはカバーしていないというところになりますし,恐らく同じようなことが,御指摘があったような中南米といったようなところでも当てはまるのかなと思っております。

それに対する2つのやり方があって,それを国際的に協調して,例えば我が国がASEAN各国で事業を実施する時に,ハリウッド作品についてもカバーするというようなことを話し合うということが一つのやり方で,その代わり中南米でアメリカがやる時には,日本のものもカバーしてよということを言うということは,一つの考え方としてあるのかなと思います。

もう一つは,中南米でも日本が出掛けていって取組を進めるということがあるのかなと思っております。その2つ目のオプションというのは,恐らく相当財政的な出動が必要になり,また,それを行うためのエビデンスというものを集めることが必要になってくるだろうと考えておりますが,そういった両方の取組をどう進めていくのかということは,今後考えていきたいと思います。

【道垣内主査】これは審議会ですので,皆さん方,せっかく今日いらっしゃっていただいたので,今後,これまでのことを評価するのとともに,次にどうしていくのが良いかという観点で是非御意見を頂ければと存じます。

【今村委員】海賊版対策ということになりますと,どちらかというと我が国のコンテンツがそれぞれの国でどう保護されるかということになってくると思いますが,やはり対策する国にとっては,自国のコンテンツ産業を発展させるという目的のために,いろいろ政策面で努力していくということになると思います。日本はコンテンツに関しては,人口も多く,マーケットも大きいですから,自国のマーケットでうまくいけば,外国のマーケットで今のような状況でも,何とか発展して生きながらえる感じはします。

しかし,その各国の状況を今まで聞き及ぶ限り,今の話でも各国ともインターネットの侵害が深刻だと,そういう中で,今,挙がったような国の中で自国のコンテンツ産業がまともに発展して,クリエーターが生まれて,その文化が発展するという状況がなかなか難しくなっているのではないかということで,今回この取組状況で,(4)のところに侵害発生国・地域における著作権普及啓発というのがあり,やはり先ほどのお話でも,各国の国内の権利者がすごく危機意識を持って日本から帰っていったとか,何かいろいろ感想で自分たちの著作物がどう保護されるのかすごく関心を持ったとか,そういう話がありました。それぞれの国の権利者がまず強い権利意識を持って,現状だとその国で産業が発展しませんよと,文化も発展するのが難しくなって,日本のコンテンツに支配される可能性も出てきて,それは我が国にとっては良いことかもしれませんが,その国にとってはよくないことでしょうから,やはりそれぞれの国における著作権普及啓発活動で,各国の自国の権利者がすごく意識を高めていくような,このままじゃいけないのだと,コンテンツ産業が発展しないのだという,そこがあって,我が国の海賊版対策の取組も功を奏するような気がします。

そうなってくると,例えば漫画が全然発展していない国で,今からいろいろ我が国が頑張っていても,その国のコンテンツ産業を発展させていくのは大変でしょうから,それぞれの国で重点的に,今伸びているマーケットとか,そこでどういう作品がたくさん生まれてマーケットで流通しているのかとか,そういう何かコンテンツごとに特色が,各国ごとに人気のあるコンテンツとか,特色があると思います。音楽とか文芸とか映画とか,そういう分野ごとに重点的に取り組むという対策も必要になってくるのかなと思いました。これは意見として。

【道垣内主査】ありがとうございます。

どうぞ,山本委員。

【山本委員】先ほどお話がありました,例えば中南米での取組というのは,実際に行う上ではかなりの予算措置が必要で難しい話だとは思います。しかし,そこでどのような日本の著作物が海賊されているのか,そういう実態調査みたいなものはそれほど大きな予算を掛けずにできるかと思います。そういうことはされているのでしょうか。その結果によっては,アジアの地域の国よりも,ひょっとするともっと近々に対応を取らないといけない国があるかもしれないという実態が分かるかもしれないので,その点をお聞かせください。

【野田海賊版対策専門官】御質問ありがとうございます。私どものこれまでに業務上知った範囲で答えさせていただきますけれども,押しなべて中南米という形でもってどれだけの被害があるかといった数値自体は,把握はしていません。一部の国で,例えばJETROさんが出しているニューズレター等で,一部こういう被害があるといった情報は承知していますが,それぞれの国でもってどういった被害があるのかといったデータ,数値,侵害状況というものは,残念ながら現在の段階では持っていないところでございます。それらの情報並びにその地域に詳しい方の御意見を踏まえながら,必要に応じて調査を掛けるなり,実態の把握には努めてまいりたいと考えております。

【道垣内主査】よろしゅうございますか。どうぞ。

【久保田委員】外貨獲得という観点から権利保護活動を行うとすると,コンテンツにお金を払える国という意味では,発展途上国って相当厳しいわけですよね。そういう意味で,十年前になってしまいますけれども,協会がイタリアで侵害対策をやった経験があります。それまで私は,フランスやドイツやイタリアといった文化大国と言われる国は,日本のコンテンツがちゃんと守られていると思っていました。現場を調査すると,フィギュアからゲームソフトもアニメも,海賊版を堂々と正規の日本コンテンツとして売っていました。その後チェックもしていませんが,我々はそこで,侵害対策として刑事手続をやった結果は,無罪でした。要するに物理的な海賊版,誰が見てもこれは海賊版だというものすら,イタリアという国家で裁判をすると勝てなかった。

これはどういうことかというと,彼らにとっていろいろ故意の問題はあろうかと思いますが,イタリアでCDやDVDを流通させる際に貼付が義務づけられている著作権管理事業者のマークが張られていると,もうそれで故意を阻却するようなところがあります。結局7年近く刑事手続をやり,日本と異なり,年に1回とか2回ぐらいしか裁判も行われないような状況で,結局無罪と。

そういう意味では,先進国では知財に対する認識が高い国というイメージがありますが,一番経済的に獲得しなければいけないという意味では,ヨーロッパやアメリカ。いずれ発展途上国でも日本のコンテンツも売上げが上がると考えられていますが,今現在売上げを上げるべく,おそらく,一番のお客さんになっているところの対応が大切。ヨーロッパのJETROでは,コンテンツ産業の方の人たちが出ていっていないという,力として弱いということもあるのですけれども,ほとんどそういう日本のコンテンツがどのように経済的に流れているかということ自体,JETROの人たちも知らないことが多いです。

そういう意味では,もう少し視野を広げて一番私たちのお客さんであるヨーロッパの先進国で,どのようにコンテンツが守られているかというのも,情報だけでも収集してもらえるとかなり発想が変わるのではないかなと思います。我が国もそうですけれども,インターネットの侵害対策事情というのは,発展途上国も先進国も変わらないのではないかと。教育の普及度合いもあまり変わらないのではないかと個人的には思っています。ビジネスから攻めた時に一番日本の収益を上げるという意味では,ヨーロッパやアメリカというところの情報をきちんと我々が把握する必要はあるかなと思います。

【道垣内主査】ありがとうございました。かつてイタリアでの侵害状況をご説明になった時のパワーポイントスライドを思い出しました。おっしゃるように費用対効果で考えると,アジアに対してだけ事業を行うよりはもう少し視野を広げた方がいいかもしれませんし,少なくとも調査をしたほうがいいし,少し目先を変えてみることも考えられると思います。全てをアジアに集中するのではなくて,他の先進国も巻き込んで,世界中で対策が進むことが望ましいと思います。久保田さんに伺いますが,業界団体でも横に連絡して国際的なつながりで海賊版対策はされているのですか。

【久保田委員】なくはないですけれども,そんなに積極的にやっているとは,うちの業界に関しては思いません。

【道垣内主査】そうですか。映画とか,あるいはそのほかの業界ではそういうのはあるのですか。

【楠本委員】音楽は,基本的には国際組織と連携して対応しております。未だ日本ではフィジカル,パッケージの売上げがリッチなものですから,まだこういう海賊版というのが物をイメージしているかと思いますが,音楽業界ですと,インターネット上の違法アップロードに対しては,国際的な連携の下で取組を行っています。具体的には,フィンガープリント技術等を駆使して,世界中のインターネット上の違法コンテンツをクローリングして,削除要請を行っております。特に海外は裁判等でそのサイトごと,言葉は厳しいですけれども潰してしまうとか,そういったところまでが行使できております。

国内については,なかなか言いづらいですが,法律的に違法サイトを駆逐するまでの法律が整っているといえないところがありますので,そういったところを含めて,今後の課題になっていくのかなと思います。

また,ついでの話になってしまって恐縮ですが,現在ASEANで,特にインドネシア,マレーシア,ずっとここ四,五年,多分毎年やっていらっしゃると思います。インドネシアを始めたきっかけは,私,最初覚えていまして,ジャカルタ48ができた時に,我々音楽業界がAKBのメンバーとかと一緒にイベントをやった後に,そこの同じ会場で,文化庁さんがこれを始めたというのがきっかけだったと記憶しています。

当時,海賊版工場みたいな家内制手工場,小さな子どもたちや女性が,海賊版をその場で袋詰めしているところも映像を撮ってきたりした経緯がありますが,多分ここのインドネシアの工場が,ASEAN諸国への供給源になっているのも間違いないのです。それにも関わらず,多分,今これを続けて四,五年実施されていますが,そういった大本の一番手を打たなくてはいけないところには手が打てていなくて,限られた対象者に対するセミナー,教育啓発というところに限られてしまっている。ちょっともうそこはどうなのかなというのが,正直我々コンテンツの権利者団体としては感じているところです。

【道垣内主査】ありがとうございます。そういう御意見を伺うことは,この場としては大変良いのではないかと思います。

どうぞ。

【大楽委員】

ちょっと戻る形になるかもしれませんが,先ほど道垣内先生が,何らかのかたちで,これまでの海賊版対策の評価ができないだろうか,数値化は難しいであろうが,というご趣旨のことを言っておられました。

例えば,対策の一環としての東京特別研修は,人材育成や著作権思想の国際的普及・啓発を目的として,形を変えながら今日まで続いております。私は20年近くそこで各国報告セッションを担当させていただいておりまして,その経験を少しお話しさせていただきたいと思います。

特別研修の2週間の日本滞在の間,5,6か国から10名前後の方々が参加します。著作権当局の方,取締機関の職員の方,時には立法担当の法務省の方なども入ってこられます。委員の先生方の中にも,その講師を務められている方は多く,よくご存じと思いますが,研修生の皆さんは大変熱心です。

ここで特筆したいのは,長年にわたる東京特別研修という,この小さな試み,と申し上げては失礼かもしれませんが,それが普及啓発と人材育成のために果たしてきた役割は,非常に大きい,ということです。研修の2週間の間,研修参加者の方々は,税関とか放送局とかJASRACさんとか芸団協さんとか,警察,裁判所といったところを巡り,座学で日本の法制度を学び,さらに,参加同期生間で自国著作権制度の現状を発表し,日本及び参加各国の制度を比較検討し,熱心に議論することを通じて,相互に深く学び合い,日本に対する敬意と愛着をもって帰国していかれるわけです。そういう中で,最初ジュニアで来られ方が後にシニアになって参加され,さらには立法担当になって来られるという場合もあります。現に最近では,昨年10月,ベトナムの集中管理団体に関する立法の担当者が参加していました。そしてその方は,「講師の方々や訪問先団体の方々のご指導のおかげで,分からなかったことが次々と明確になった。非常に嬉しい。これを是非持ち帰って,国で実現したい。」という感謝のメッセージを残しました。法制度の輸出に勝る輸出はない,と言われますが,まさにその点でも,この研修の意義はきわめて大きいと思われます。

今後はさらに,文化庁を中心に研修参加者をつなぐ「同窓生ネットワーク」が作られ,維持されるようになることが望ましいと考えます。参加者の輪を通じて日本と関係各国の絆もまた強化され,それがやがて,さまざまな意味で日本の援軍になるであろうと思われるからです。ありがとうございました。

【道垣内主査】ありがとうございました。御意見として伺いたいと思います。

小島委員,どうぞ。

【小島委員】小島でございます。私が研究者として関心があるのは,この著作権の普及啓発になります。最近,著作権教育について論文を書き,この時には楠本委員にもお話を伺ったりしていろいろと教えていただいたりしましたし,また最近,特許庁の方でやっているデザイナーさん向けの教材作成のプロジェクトなどにも参加させていただいて,そういう時にどのように著作権,あるいは著作権制度を語ればよいのかということについて考えてきました。

従来の著作権教育などの教材を見ていますと,基本的には「禁止教育」というか,「べからず集」であって,どうしてもそれですと,やはり一般の人の中にはどうして著作権というものがあるのかとか,なぜ著作権を守らないといけないのかということについて納得感を得にくい部分というのは,これは実は先進国でも先ほどの久保田委員がおっしゃったようなことというのはあるような気がしています。これは日本でもそうだろうと思うわけです。

私が自分の本務校の大学院に在籍していたタイの裁判官の論文指導した時,これは特許の文脈で,また,今度TPPが入ってくるという時期だった時ですが,強い知的財産権の保護がなされると,彼女は医薬特許について書きたいということだったので,いろいろタイには困ったことになるのではないかということを言っていたわけです。よくある言説だろうと思います。

確かに彼女が心配する気持ちも分かりますが,ただ,そこで私が一方で言ったのは,知的財産権の保護水準が満たされることによって,特許の文脈でいくと,品質のよい薬が入ってくる可能性もあるはずであると。それによって患者さん,あるいはひいては広くタイの国民のクオリティ・オブ・ライフに資するという,そういう可能性もあるのではないかと。

確かに,先ほど今村委員がおっしゃったような,外国のコンテンツが入ってくることで文化の多様性が害されるのではないかとか,あるいは結局特許薬にお金を使うわけですから,国の医療費が増えてしまうのではないかとか,確かにこういう懸念も一方であるだろうと思いますが,それは単に特許のことだけを論じるのではなくて,医療政策をどう考えるかという広い視野でもっと論じるべきことだろうと思いますし,例えば,それを文化の領域に持ってきますと,単に著作権のことだけ論じるのではなくて,それは広く文化政策の問題として論じるべきではないかと思うわけです。

更には今村委員もおっしゃったように,結局は各国の産業にも知的財産権制度というものは資するものでなければならないということでいくと,例えば知的財産権制度の保護水準が上がることによって,各国のスタートアップであったり,クリエイティブ産業にもポジティブな影響があるのだというようなことを,そういうエビデンスをきちんと示しながら話をしていくと,こういう丁寧な作業というものが必要ではないかと思っています。私としては,著作権の普及啓発という時に,いろいろな活動を文化庁さんとしてなさっておられると思いますが,そういうことにも是非目配りをしていただきながら今後普及啓発活動を一緒にやっていっていただくと,より広い方々に知的財産権制度についての納得感というものを得ていただけるのではないかと思っています。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。

松武委員,どうぞ。

【松武委員】芸団協の松武でございます。私は実演家の一人でございます。2週間ほど前に香港でライブをやってきました。その時の感想と,それと御質問をちょっと一つだけしたいと思います。

まず御質問ですが,3ページ目の3,4についてです。この著作権侵害への対応ということで,水色で囲まれている中のセミナー等の実施とか,集中管理団体制度の整備を含むと書いてありますが,これはその各国に対して,日本の考え方を述べていらっしゃるのでしょうか。それとも相手方の考え方も一緒にしてやられているのでしょうか。まずそこを先にお願いいたします。

【野田海賊版対策専門官】御質問ありがとうございます。集中管理制度等の支援でございますが,例えば,再来週ミャンマーでもって,その集中管理制度,団体を立ち上げるためのセミナーを行います。これは一般的なセミナーと併せて政府並びに関係団体の方に集まっていただいて,小さなワーキンググループのような形で,日本から派遣させていただいた講師の方が先方の意見をくみ取りながら,こういうふうにしていくとよい,日本ではこのようにやっているといったことを,ある程度小規模な形でもって教える機会を設けるというプログラムをさせていただいております。実は,講師としてクプラさんの増山事務局長にも御対応いただく予定でございまして,先方政府の御意見を踏まえながら,日本の知見を生かした制度を一緒に考えていきましょうという趣旨のプログラムでございます。

【松武委員】ありがとうございます。私,先ほど申し上げたとおり,香港でライブを行ってきたのですが,何軒かレコード屋さんを回ってまいりました。詳細まではちゃんと調べられなかったのですが,私の見た限りでは,中古のレコードとCDを販売していたような気がいたします。あとDVDもそうでした。私の知識的に不十分なもので,違法なものなのか,本物なのかというのが区別できなかったのですが,僕は正当に売られていたような気がしました。

それで,いや,何を申し上げたいかと申しますと,私は演奏家でもありますので,私のレコードはユニバーサル香港から発売されていまして,そこの担当者もいらっしゃいましたし,それとそこにミュージシャンがたくさん集まりまして,お互いの国の話とか,もちろん音楽の談義になるのですが,やはりお互いに文化をたたえ合う話というのがそこにあり,つまりそこに信頼関係が生まれることで,問題になっているようなことが少しずつなくなっていくのではないかというのをすごく実感した次第です。

なので,お願いではありますが,この著作権普及啓発の中に,やはり販売店の方とか,それに携わっている業者の方がたくさんいらっしゃる,それはちょっと分からないのですが,やはりそういう方にもこのようなセミナーを少しずつ広めていくことで,その信頼関係が深まることで僕は解決する方向に少しは進んでいくのではないかなと。

つまり,取り締まるだけでは全員がまた地下へもぐっていってしまいますので,また違法行為が違う形で進んでしまうと。だから,言葉が変ですけれども,そこのアメとムチをどのように使っていくかということも是非御検討いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】ありがとうございました。

どうぞ。

【墳﨑委員】CODAの墳﨑です。2点ほどあって,一つは情報共有に近いです。先ほど,国際的な連携のお話がありましたが,CODAではハリウッド,メジャー6社をメンバーとするMPAとの連携を従前から行っておりまして,世界的なインターネットの海賊版対策の情報共有をはじめとして,各国における権利執行においてもお互い補完し合えるところはしていくということを行っております。

例えばですが,中国においては毎年啓蒙行動というのがあり,中国政府がインターネット上の著作権侵害対策のキャンペーンを行うのですが,そこで日本のCODAから情報提供するサイトについてはMPAに情報共有して,ハリウッドの関連作品もある場合には,当該サイトについてはMPAからも中国政府に働き掛けをしてくれというようなことをやっております。またMPAがASEAN地域等で権利行使する際には,日本のコンテンツがある場合には声を掛けてくるというようなことも行われております。なので,そういった国際的な連携というのは,引き続き深めていきたいとCODAとしては考えております。

あと,文化庁さんの事業に関して,私自身はもともと経済産業省模倣品対策室というところにいたこともあって,この真贋判定セミナーはやっておいて全く損はないですし,むしろこういった地道な活動こそが後々効果が出るのではないかと思っております。

たとえて言うと,商標の権利行使の分野においては,中国の工商局というところに日本政府の予算で真贋判定セミナーというのを多数回実施してきたところでして,その結果もあって,今は中国の商標権侵害に関して工商局は極めて迅速に動くようになってきています。なので,そういった地道な積み重ねというのは,やはり重要なのではないかなと思っております。

あとは,その地域の問題は確かにいろいろあるのかなと思っておりますが,やはり今ASEANにこうやって注力されているというのは,一つは予算の話もあるのでしょうが,成長してからやる,要は海賊版大国になってからやるよりかは,その前の段階である程度先に普及啓発等を実施しておくというのは大事なことであって,この段階でASEANに注力するというのは一つの選択肢ではないのかなと私は思っております。

他方で,やはりインターネットの現在の状況を見ると,確かに久保田委員が言うとおり,ほかの地域のサイトというのはいっぱいあります。日本で見られているサイト,ブラジルのサイトもありますし,ロシアのサイトもありますし,そういった観点からほかの地域というのを見ていくというのはあるのかなと考えております。

最後にもう一点,これはちょっと文化庁の事業ではないのかもしれませんが,やはりインターネット対策という観点から考えると,どうしても国境をまたがったことが行われている,要はサーバーが運営者の所在地とは別の国にある。これは例えばですけれども,中国のサイトだと思って権利行使をしようとしたら,サーバーが別の国にあるから中国の取締機関としては情報が取得できなくて,対応が難しいというようなことがよくあるというものなので,そのあたりの執行の協力的な部分について,もうちょっと具体的に何かできたらなというところは思っているところではあります。

簡単ですが,以上です。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。権利者団体の国際的な活動とももう既に連携されているのだと思いますが,今後も情報をよくやり取りして,効果的な方法を見出していただきたいと思います。

それでは,この点,今後来年度に向けて,先ほどの頂いた御意見も踏まえて,引き続き海賊版対策への取組を進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

それでは,議題の2番目でございます。本年度,平成28年度国際小委員会の審議状況について。これにつきまして,資料2ですが,これはドラフトを事務局に作っていただきました。私も目を通させていただきました。執筆名義はこの小委員会であって,委員の御意見がきちんと反映されているものであるべきでございますので,暫定版ということになっています。

これについて,まずは事務局から御説明いただきまして,その後,委員の方々から,こういう意見も盛り込むべき意見としてあったのではないかといった御議論を頂ければと思います。

では,よろしくお願いします。

【小林国際著作権専門官】はい。では,資料の2に基づきまして,本年度の国際小委員会における審議状況について御報告をさせていただきます。

まず「はじめに」ですけれども,今年度の国際小委員会の検討課題につきましては,著作権分科会の決定を受けまして,こちらに記載のとおり2つの議題です。1つ目としまして,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方。そして2つ目といたしまして,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方について検討を行うということとされております。

以下,それぞれにつきまして,今年度の審議状況を御説明させていただきます。

まず,1点目でございますが,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について,主に4点,報告・検討を行っております。

まず,1点目,我が国コンテンツの侵害発生国における侵害実態調査の結果についてでございます。こちらは第1回の国際小委員会で報告をさせていただいた内容であり,過去には中国,タイ,インドネシアに対して侵害実態調査を行っておりましたが,今年度につきましてはベトナムにおける著作権侵害の実態調査の報告をさせていただいております。

3段落目でございますが,そのベトナムにおける著作権侵害の要因としては,インターネット上に正規にコンテンツが入手・視聴できない中,海賊版が容易に利用できる環境にあるということが指摘されております。

これを受けて4段落目,1ページ目の一番下ですが,今後の対策といたしましては,不正流通対策と正規版展開の両者を実施することが必要であり,特に,2ページ目に記載のとおり,オンラインでの正規流通を強化することが必要とされてございます。また,ベトナムではユーザーの著作権の認知度が高いものの,実際にその著作権保護の行動につながっていないということが指摘されておりますので,著作権教育を具体的な行動に結び付ける方策の検討及び実施が必要であるということが報告されております。

次に,2点目の政府レベルでの取組ですが,こちらについては先ほど野田より御報告させていただいた内容ですので,詳細は省略させていただきます。

次に,3点目のインターネット上の著作権侵害の現状と諸外国における対応について。こちらにつきましては,第1回の国際小委員会におきまして,インターネット上の著作権侵害の現状について,楠本委員,墳崎委員,そして民放連の松村様よりその実態の御紹介をいただきました。

その内容については,2段落目にもありますとおり,違法アップロードの巧妙化が進んでいて,違法コンテンツの発見が困難になっているという御指摘や,3ページ目にありますが,本日も御意見いただいていたとおり,サーバーや運営者の存在する国が異なる場合のように,複数の国にまたがって侵害行為が行われているという場合には,対応が困難であるという指摘を頂いております。これらに対抗するために,国際的な協力体制の構築が必要という要望も出されているところです。

これらを受けまして,最後の段落でございますけれども,事務局において,諸外国における法制度ですとかその運用実態,こちらに記載させていただいたとおり7か国を対象にした調査を行っておりまして,第2回の国際小委員会において,その調査結果の中間報告をさせていただきました。

最後に4のところでございます。今後の海賊版関係の取組について,こちらも先ほど野田から御報告させていただいたとおり,2段落目にありますとおり,引き続きWIPOと連携した著作権制度整備に取り組むとともに,海賊版の取締,権利執行の支援等について継続的な支援を行い,環境整備を進めていく必要があるとしております。更に来年度については,トレーニングセミナー等の開催地域の拡充を図っていくということとしております。また,3ページ目の最後の段落になりますが,インターネットを介した著作権侵害については,引き続き関係省庁や権利者団体等の更なる連携を推進していく必要があるとまとめております。

以上,海賊版関係の審議概要でございます。

次に,2点目の審議事項である著作権保護に向けた国際的な対応の在り方についてですが,こちらは昨年度に引き続きまして,WIPOにおける放送条約の論点を中心に事務局より御報告させていただきまして,委員の皆様に御審議を頂いたところです。

内容としましては,4ページ目の下から2段落目に記載させていただいたとおり,2016年は2回,SCCR(著作権等常設委員会)が開催されておりまして,4ページ目から5ページ目に,SCCRでの議論の状況をまとめています。

こちらについては,既に前回,前々回の国際小委員会で御報告させていただいた内容ですので,詳細についての説明は省略させていただきますが,特に5ページ目のところを御覧いただければと思います。5ページ目の中ほどにあります「議論対象の」というところでございます。

こちらについて,サイマルキャスティングの保護について,SCCRの議論をまとめておりまして,本年のSCCRでの議論におきましては,サイマルキャスティングの保護についてEUをはじめとする多くの国からこれを義務的保護とすることが適切との意見が出されております。他方でこれに反対する国がなかったという状況です。

この点を踏まえまして,本国際小委員会では,第2回の委員会におきまして,サイマルキャスティングの保護の在り方について集中的に御議論を頂きました。委員等の皆様から頂いた御意見の概要につきましては,5ページ目の一番下から6ページ目にかけて記載させていただいておりますので,概要を御紹介させていただきたいと思います。

まず,6ページ目のところの1ポツでございますけれども,条約の本来の在り方という観点からすれば,今後サイマルキャスティング等のサービスが拡大していく国際情勢を踏まえれば,これを義務的保護とすべきであり,WIPOにおける対応においても,その方向で対応すべきであるというご意見を頂いております。

これに対して,WIPOにおける具体的な対応としては,早期の条約成立の観点から,義務的保護を現時点ですぐに主張することは避けるべきとの御意見も頂きました。また,義務的保護ということで国際的なコンセンサスが得られる状況になった場合には,これを妨げるべきではないとの意見もございました。更には最後のポツでございますけれども,条約における議論だけではなくて,国内法の改正等についても検討すべきではないかという意見も頂いております。

これらを踏まえまして,我が国としての今後の対応を記載させていただいております。日本としましては放送機関のための適切な国際的な保護の枠組みを,その内容を考慮しつつ,できるだけ早期に構築することが必要であり,各国における議論の動向等を踏まえながら,引き続き積極的に対応していくべきということで,まとめさせていただいております。

以上が,放送条約に関する議論でございます。

次に2の権利の制限と例外については,今年度WIPOにてその議論がされておりますが,大きな動きはなかったという状況です。7ページ目,日本としての今後の対応につきましては,昨年度と同様,スリーステップテストの考え方を踏まえまして,適切な議論を行うことが必要との方針の下で,仮にその国際的な文書を作成する場合には,各国がそれぞれの国内事情を踏まえて柔軟な対応ができるようにすべきとの方針を維持すべきという形で,まとめさせていただいております。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】ありがとうございました。

この報告書の案には,事実の記載の部分と,小委員会の意見の部分がありますので,まずは事実の記載について,これで適切なまとめになっているかという点について,いかがでしょうか。報告や議論の内容,国際会議での議論の様子等についてですが,よろしゅうございますか。

であれば,あるいは後で戻っていただいても結構ですが,意見に当たる部分に移ります。3ページの(4),これは,今御議論いただいた海賊版,特にインターネットに注目した海賊版についてのこの小委員会の意見の部分です。この点,きょうの御議論の前にドラフトしていただいているので,きょうの御意見はまだ入っていないわけですが,きょうの議論の中で特にこの点は是非という何か御指摘はございますか。

はい,どうぞ。

【鈴木主査代理】形式的なことですが,3ページの一番下の行,「全く別の国・地域に存在するなど,関係省庁や権利者団体」云々というところは,ちょっとつなぎが悪いように思うので,これ,何か言葉が抜けているのかなと。例えば,「存在するなどの事態が多くなっていることから」とか,「多く見られることから」とか,そういう形でつなげた方がよろしいのかなと思いました。

【道垣内主査】

ドラフティング,言葉遣いについての御注意ですが,そういうことも含めまして,いかがでしょうか。

今日,私が全て正確に覚えているわけではなく,正確に要約できるわけではございませんが,地域的に少し視野を広げて,国際的な協力の在り方を,費用をそんなに掛けず,予算の限度内で,より効果的な地域を考えてみてはどうかというご意見がありました。とか,あるいは松武さんの御意見でしたが,権利者・利用者だけではなくて,その間の流通業者の方々の実態も把握し相互理解を深め,捕まってしまうよりはまともな業者になってちゃんと利益を上げたほうが長い目で見れば良いということがわかっていただけるような取組みも考えるべきであるといったご意見もありました。民間レベルでの国際協力等の連携をちゃんともっと図っていってはどうかといったご意見その他幾つかあったと思います。そういうことも適宜盛り込むようにしてはどうかと思います。

私が申し上げた以外にも,こういう点があるのではないかという点,ございますか。

よろしゅうございますか。では,ここはそのようにと思います。

次に,5ページの下から4行目放送条約についての意見の概要は以下のとおりということで,次の6ページに意見が記載されております。2通りの意見があり,できることならばサイマルキャスティングも条約に取り込むべきだが,戦略的に,あるいは戦術的かもしれませんが,今はそこまで言うべきじゃないという意見と,できたらこの際頑張れという意見とあり,可能であれば頑張るべきでしょうというのが3番目の意見としてあったと思います。以上の点を含め,今後とも積極的に対応するということで,この点,いかがでしょうか。

この言葉遣いで,上から5行目の後ろから4文字目,「避けるべきとの意見」とあるのですが,私としては,ほかのところは全部「べき」は「べきである」に変えたと思うのですが,見落としていました。新聞でも最近は「べき」というので止めてしまうことが一般化しつつありますが,まだ私は抵抗勢力というか,それは「べき」ではなくて「べし」だろうと思っています。そのようなことから,「である」をできたら付け加えたいと思います。

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは,7ページ目の最後のこの権利の制限と例外についてですが,余り引っ掛かりがない文章になっていますが,これでよろしゅうございますか。

特に御意見なければ,そのようにと思います。

以上,それでは,海賊版対策のところについて多少修正をさせていただきたいと思います。そして,時間的な関係もございますので,修正につきましては主査に御一任いただきたいと思いますが,よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】ありがとうございます。

それでは,この審議経過の報告をまとめまして,私の方から著作権分科会に報告をさせていただきたいと存じます。

では,議事の3番目の「その他」でございますが,何かこれについて特に事務局からありますか。なければ委員の方々から,国際小委として従来こうだったけれども,今後もうちょっと何か検討する新しいことがあるのではないかといった観点でも結構です。野口委員,時代の最先端にいらっしゃるので,何かないですか。

特にないですか。わかりました。

それでは,特にないということでございますので,本日の会議はここまでにしたいと思います。本日は今期最後の小委員会でございますので,事務局から一言御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【永山長官官房審議官】会議に遅参して申し訳ございませんでした。1月13日付で文化庁の審議官に就任をいたしました永山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

今期最後の小委員会ということで,一言お礼を申し上げたいと思います。この小委員会では,もう国際的な著作権保護の枠組み,仕組みの在り方,また権利の執行,強化,実効性の確保という観点からの様々御意見を賜りました。今,今期の審議のまとめでもございましたが,放送条約については一定の若干の進展があったということで,これからの条約関係の議論についても,私ども積極的に対応していきたいと思っております。また引き続き御指導いただければと思っております。

今後のこの国際的な状況をめぐる変化ということで,私が感じていることを2点申し上げたいと思います。

今日,御意見の中にもありましたが,中国・韓国,特に中国ですが,あれだけの大国ですので,なかなか変わらないという面があったわけですが,政府の意識という面はかなり若干やはり変わってきたなと。というのも,やはり中国もコンテンツ,著作物でビジネスをしたいという感覚が非常に高まってきていると。

一例を申し上げると,映画関係で日本だと3,200ぐらいがスクリーンですが,中国はもう4万スクリーンということで,日本の10倍以上の規模でそういうコンテンツ産業は育っていると。当然,入館料が低いので産業規模としては10倍ということではありませんが,やはり日本を超える世界でも有数な著作物市場になってきているということで,しっかり彼らも守っていかなければいけないということに意識が変わりつつあると思っています。やはりそういう変化を捉まえて,日本もきちんと一緒になってということと,中国国内で取り組んでいくちょうど良い機会なのかなと考えております。

もう一点,これは国境を越えたネット上の侵害が,著作権だけではなく,産業財産権の問題にもこれから広がっていくのではないかということです。特に3Dプリンター,この技術が非常に急速に今発展し,プリンター自体の値段も安くなってきて,数十年前にいろいろな録画機が家庭内に安価に入ってきたように,3Dプリンターが安価になってくれば,家庭内にも入る得る状況がもう恐らく数年後には現れてくるはずです。

そうなった時には,今,著作権で起きていること,ネット上で情報が流通し,国境を越えてそれが発展途上国から日本に来て,それが日本で再生されるということが,商標とか意匠とか,産業デザインの関係でも外国の違法サイトから情報だけ仕入れて,家庭の3Dプリンターで何か商品を作るということも可能な時代になってきます。そうなった時には,やはりこれは著作権だけじゃなくて,これは知財全体の取組として,国境を越えた侵害対策というものに,当然著作権も含めて,取り組む状況が恐らく数年後にはなってくるのではないか。そういう今まで以上に強力に対策に取り組めるような,政府を挙げて取り組める体制になってくるのではないかと感じております。

そういう様々な動きがこれからまた出てくるかと思いますので,また先生方のいろいろ御指導・御意見を賜りながら,一歩一歩着実にこの国際著作権の仕組み作り,また権利の執行の強化ということに取り組んでいきたいと思いますので,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。今期もどうもありがとうございました。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。

それでは,本日はこれでお開きということにさせていただきます。ありがとうございました。

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