文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

日時:
平成30年8月24日(金)
13:00~15:00
場所:
霞山会館(牡丹の間)

議事次第

  1. 開会
  2. 委員及び出席者紹介
  3. 議事
    1. (1)主査の選任等について
    2. (2)国際小委員会審議予定について
    3. (3)WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について
    4. (4)海外における著作権侵害の最近の状況について
    5. (5)自由討議
    6. (6)その他
  4. 閉会

配布資料一覧

第18期文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

平成30年8月24日

【道垣内主査】この小委員会の主査に選任されました道垣内でございます。よろしくお願いいたします。私の専門は国際私法という分野で,著作権の国際的な側面も対象ではありますけれども,ここにいらっしゃる方に比べますと,本当の専門家とは言いにくいかと思いますが,よろしくお願いいたします。

本日は今期最初の国際小委員会でございまして,中岡文化庁次長には御出席いただいておりますので,一言御挨拶いただければと思います。

【中岡文化庁次長】紹介いただきました中岡でございます。長く文化庁次長をやっておりますので,本当に先生方の戦友という形で助けていただいております。一言御挨拶を申し上げたいと思います。

最近の著作権制度に関わります動きといたしましては,御承知のとおり柔軟性のある権利制限規定や,教育の情報化の推進などを内容といたします著作権法の一部改正法が去る5月に成立をさせることができました。これはもうひとえに先生方のお力添えの賜物でございます。この改正によりまして,国際的な観点からは,視聴覚障害者等が著作物を利用する機会を促進することを目的としたマラケシュ条約を締結するための改正内容も含まれておりまして,同条約の締結につきましても,国会において並行して御承認いただいたところでございます。

また,本年6月にはTPP11,アメリカを除いておりますTPP11の締結に向けましたTPP12整備法の一部改正法,この改正法が成立いたしますとともに,TPP11協定の締結につきましても,国会におきまして御承認を頂き,7月には我が国の国内手続の完了につきまして,ニュージーランドに通報を行ったところでございます。さらに日EUの経済連携協定につきましても,7月に署名が行われました。これにつきましても,著作権法の著作権の関係の規定の整理が必要になる部分がございまして,こういったことにつきましても,現在準備をしているという状況でございます。

著作物が容易に国境を越えて世界に流通するデジタルネットワーク時代におきまして,このような国際的な課題への対応が不可欠であるということで,そのためにも今後も国際的ルール作りへのさらなる積極的な参画や,海外における海賊版対策が必要となるところでございます。

この国際的ルール作りへの参画の観点では,後ほど報告させていただきますけれども,WIPOにおきましてインターネット時代に対応した放送機関の権利保護に関する放送条約の議論が続いているところでございます。我が国といたしましても,早期採択に向けて対応したいと考えております。

また,マスコミ等でいろいろ報道がございました海賊版の影響の関係でございます。近年は通信技術の発展と,それに伴うサービスの多様化の中で,海賊版の影響はさらに深刻さを増しておりまして,国会でも幾度となく取り上げられておるところでございます。漫画村に代表されます,特に悪質なウエブサイトの多くは日本人を対象としたものでございまして,直接的にはこの国際小委員会のスコープとは異なるのかもしれませんが,御案内のとおり運営者とか,あるいはホスティング・サーバの所在,ドメインの取得地などは別々の国に分散しているということで,このためさらなる国際連携,協調といいますものが必要ですし,また海外で様々な対策が講じられているところではございますが,そういったものの事例の紹介とか,あるいは研究,ステークホルダーの方々による話し合いを促進することを通じて,この問題の解決に貢献したいというふうに考えております。

これらの取組を進めていくに当たりまして,専門家,実務家の皆様方からの御意見を頂戴いたしますことは,大変有用でございます。この委員会におきましては,こうした国際的な議論への対応の在り方,海賊版対策の在り方等について,忌憚のない御意見を頂戴したいと思っています。

先生方にはお忙しい中大変恐縮でございますが,一層の御協力をお願い申し上げまして,簡単でございますが,私の方からの御挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

では,議事の2番目に移りたいと思います。本小委員会の審議予定について事務局より,まずは御説明いただけますでしょうか。

【早川国際著作権専門官】それでは事務局より御説明させていただきます。資料の2-1を御覧いただけますでしょうか。

こちらの資料は著作権分科会で御決定いただいたものでございますけれども,その1の(3)に国際小委員会を設置することが決定されてございます。また,審議事項といたしましては2の(3)にございまして,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応の在り方に関することを審議事項として決定しております。

次に資料2-2を御覧ください。

資料2-2の3でございますが,こちらに具体的な検討課題例というのが2つ記載されております。1点目といたしましては,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,2点目といたしましては,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方というのが具体的な検討の例として挙げられております。

1点目につきましては,主にWIPOの議論でございまして,WIPOにおける著作権等常設委員会の最近の議論を御報告する予定となっておりますので,そちらについて御意見をいただきたいと考えております。また,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方でございますが,こちらにつきましては諸外国における著作権侵害の最近の状況についての御報告となりますので,そちらについても御議論いただきたいと考えております。

以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。この任務はこの上の会議体で決められたもので,この小委員会のミッションが書かれています。そして,この任務達成にふさわしい方に今日,委員として来ていただいているということでございます。何かこの点につきまして,御意見等ございますか。よろしいでしょうか。

では,次の議題の3番目,中身に入っていくわけでございますが,世界知的所有権機関における最近の動向につきまして,まずは事務局より御説明いただきまして,それを受けて委員の方々の御意見を伺いたいと思います。

ではよろしく,まずは御説明をお願いします。

【早川国際著作権専門官】それでは,事務局より御説明させていただきます。資料3-1を御覧ください。

世界知的所有権機関における最近の動向について御報告させていただきます。今回の御報告内容といたしましては,第36回著作権等常設委員会の結果の概要についてとなります。

日程について,5月28日から6月1日に開催されております。

2ポツの概要ですけれども,今次会合におきましても,これまでと同様に放送条約,権利の制限と例外,その他の議題について議論が行われております。

次に各論でございます。まず放送条約についての報告となります。経緯等につきましては,これまで御案内していますとおり,1998年に放送機関の権利保護に関する条約の策定を目指して議題化され,2007年以降につきましては,一般総会のマンデートとして,伝統的な意味での放送機関の保護を定めることが決められており,このマンデートに従って議論が行われている状況でございます。今次会合に関しましては,定義及び保護の対象及び与えられる権利に対する統合テキスト案が議長から提示され,これに基づいて議論が行われております。

イの議論の概要でございます。逐条での詳細の議論はインフォーマル形式によって行われております。各国からの修正提案が反映された統合テキスト案,これは資料3-2にございますが,これが議論の結果,議長によって取りまとめられております。また,今回のSCCRの会合におきましては,WIPOの一般総会への勧告を行うことも決定されております。

続きまして,テキスト案に関する主な議論の内容は,次のとおりとなっております。まず,放送の定義についての議論となります。放送の定義の議論につきましては,これまでいろいろな案が出されておりましたが,今次会合におきましては,これを統合しようとする議論がなされました。放送の定義につきまして,有線放送を放送の定義に含めるという案がございましたが,それに関しまして,国内法制との整合性の観点から,複数の国から懸念が表明されておりました。これらの国からは,本条約の定義に関しまして,国内における規制の枠組みに影響しないということを条文に加えることで受け入れ可能との表明がなされて,条文案が統合されております。したがいまして,放送の定義に有線放送が含まれることとなり,有線放送が本条約の対象となることが決まっております。また,放送の定義からインターネット送信を除くという文を削除する点につきまして,複数の国から懸念が表明されて,ブラケットを付して残されることとなっております。

続きまして2ページ目でございます。インターネット上の送信の保護についてという部分です。インターネット上の送信ですけれども,脚注1にありますとおり,現在の条文案では3つに分類されており,サイマルキャスティングとニアサイマルキャスティングと異時送信に分類されております。今回のSCCRにおきましては,異時送信の保護について議論がなされております。まずアルゼンチンから,異時送信を放送との関連に応じて3つに分類して,それぞれの分類に合わせて保護レベルを異なるとする案が新たに提案されております。今回,そのアルゼンチンの提案を含めて異時送信の保護について議論がなされたところ,異時送信のうち見逃し配信については義務的保護とすべきであるという国がある一方で,国ごとに異時送信の保護の必要性は異なることから,異時送信につきまして義務的保護に反対する国もありまして,引き続き議論が継続されることとなっております。こちらのインターネット上の送信の保護につきましては,後ほど詳しく御説明させていただきたいと思います。

続きまして,放送前信号の保護についてです。今次会合では,放送前信号の無許可の再送信に対して禁止権を与えるという規定のみが規定されておりましたが,今次会合の議論の結果,禁止権を与える代わりに適当かつ効果的な保護を与えるということも認めた,柔軟性ある案になっております。

続きまして,権利の制限と例外になります。こちらの経緯等につきましても,これまで申し上げたとおりですけれども,2005年以降,権利の制限と例外が議題化されて議論が続けられているところでございます。現在におきましては主に2つ,図書館とアーカイブのための制限例外と,教育研究機関等のための制限例外が議論の対象となっております。

イの議論の概要ですけれども,今次会合におきまして,具体的な議論はなされておらず,今後の本議題に関する進め方に関するアクションプランというのが議場で提示され,それについて話し合われました。結果といたしまして,制限と例外に関する研究を今後も継続していくこと,専門家会合及び地域セミナーを開催することが決定されております。

続きまして,その他の議題の中には3つ議題が挙がっております。まずアとしまして,デジタル環境に関連する著作権の分析という議題があります。この議題に関しては,提案国であるブラジルから,デジタル環境において著作者や実演家の正当な権利配分を著作権制度の中でどのように実現するかという点が重要であり,まずは音楽分野に絞って研究を行うべきという提案がなされております。これを受けまして,事務局からは次回会合において本議題に関して研究すべき内容を示すということとなっております。

続きまして追及権ですけれども,今後の進め方につきまして,EU,アフリカ等の国から,追及権に関する議題を常設議題にすべきであるとの意見が出されております。これに対してアメリカと我が方,南米諸国に関しましては,まずは既存の議題を優先して,追及権は引き続きその他の議論で検討していくことがよいというふうに表明しております。結果といたしまして,引き続きその他の議題で追及権が議論されることとなっております。また,追及権に関しまして,その各国でどのような実務を行っているかの事実に関する調査を行うタスクフォースを設置するということが決定されております。

続きまして,舞台演出家の保護という議題でございます。こちらは前回ロシアから提案されたものでございますが,提案国であるロシアからは,演出家は実演家と比べて適切な保護を与えられていないとして,国際的な権利の在り方について議論したいとの意見が述べられております。我が国やヨーロッパ諸国からは,提案内容のより詳細な説明が必要であるとの発言がありました。今後の進め方につきましては,この議題に関する研究を来年から開始することとなっております。

次回のSCCRにつきましては11月末に開催予定となっております。

引き続きまして,先ほど申し上げた放送条約のうちのインターネット上の送信,特に異時送信についてどういう提案があって,どういう議論がなされているかについて,4ページ目と5ページ目に付けました参考資料に基づいて御説明させていただきたいと思います。

まず,アルゼンチンからなされた異時送信の分類についての御説明をさせていただきたいと思います。アルゼンチンから提案されたのは,異時送信につきまして,放送との関連に応じて3つに分類して,それぞれに応じて義務のレベルを変えるという提案でございます。その3つの分類ですけれども,まず(1)といたしまして,同等の異時送信,equivalent deferred transmissionというものがありますが,放送と同等の異時送信という意味と思いますけれども,それにつきましては義務的保護とするという提案になっております。2つ目といたしまして密接に関連した異時送信ということで,こちらにつきましては適切かつ効果的な保護という保護レベルを与えるという提案になっております。3つ目は関連のない異時送信ということで,こちらは任意的保護でよいという提案になっております。

具体的にそれぞれの提案の定義について御説明いたしますと,まず(1)の同等の異時送信というものは,放送機関のリニア放送に相当するものであって,リニア放送以降限られた数の週,あるいは月までの間視聴できる異時送信という定義で提案されております。これに該当するものの例といたしまして,オンラインリピートや,オンデマンドキャッチアップサービスや,スポーツイベントのハイライトというのが例として挙げられております。

続きまして,(2)の密接に関連した異時送信というものでございますけれども,こちらについて定義では,オンラインでのみ送信され,放送機関のリニア放送の補助的なものであって,リニア放送以降限られた数の週あるいは月までの間視聴できる異時送信を言うとされております。ここで挙げられている例といたしまして,スポーツイベントでの別映像,ニュースや番組の附加映像,プレビューや追加のインタビュー,舞台裏の番組のようなものが例として挙げられております。

続きまして,関連のない異時送信でございますけれども,こちらの定義といたしまして,オンラインでのみ送信され,放送機関のリニア放送の補助的なものでない異時送信,又は時間の制限なく公衆によりアクセスできる異時送信をいうという提案になってございます。ここで挙げられている例といたしまして,1の例といたしましては,オンデマンドだけのストリーミングチャンネル,2の例といたしまして,オンラインリピートやオンデマンドキャッチアップサービスの期限経過後に視聴できるオンデマンドカタログなどが例として挙げられております。

こちらの提案は,アルゼンチンから今回のSCCRで提案されたもので,アルゼンチンから提案説明があり,加盟国から質疑応答がされております。アルゼンチン提案の内容を深く議論するということまではありませんでしたが,次回も引き続き,この提案を含めて異時送信をどうしていくかというのを検討することとなっております。

続きまして,5ページ目のポンチ絵ですが,こちらは放送に関連するインターネット配信の種類ということで,今,放送に関連したインターネット配信がWIPOでどういう議論がなされているかというものを説明する資料として作成したものでございます。本論点は,放送機関が行うネット送信を放送に加えてどこまで保護の対象とするかというのが論点となっております。その部分を整理したのがこの図となります。

まず,この図の見方ですが,左側,放送とネット送信に関連するものといたしまして,条約上サイマルキャスティングとニアサイマルキャスティングと異時送信に分けておりますので,1,2,3としております。真ん中の矢印等が書かれている図になりますが,こちらの図は放送との関連を示したものとなっております。一番上の矢印が放送を表していますが,一番右の縦の実線が,今実際放送されている,現在放送されているものを示しており,過去に放送されたものが,その四角の点線の棒になっております。一番右側の図は,提供されているサービスのイメージ図を示したものとなっております。

放送に関連するインターネット配信といたしまして,まずサイマルキャスティングがありますが,これは放送を同時にインターネット配信するものという定義がなされております。従いまして,その右の矢印の図でいきますと,放送と同時に同じものを矢印としてインターネット配信されているものということになります。

続きましてニアサイマルキャスティングですけれども,こちらは放送とほぼ同時にインターネット配信されるものとなり,具体的には時差等による遅延を伴って配信が行われるということになりますので,図といたしまして,若干,少し前に放送,時差として1時間や2時間とか,そういった少し前に放送されたものが送信されるということになります。

続きまして異時送信について,こちらは(ア)の見逃し配信と,(イ)の過去番組のオンデマンド配信というものに分けてございます。こちらの(ア)と(イ)の分類につきましては,現在のところ,条文上明確な定義に分けられているわけではありませんが,先ほどのアルゼンチン提案や今回の議論のうち,見逃し配信について保護を求めてほしいという声もあったことから,こちらの見逃し配信と過去番組のオンデマンド配信として分けて記載しております。まず見逃し配信ですが,こちらは放送を一定期間インターネット配信するものとなりますので,図といたしましては点線で分けていますが,過去に行った,例えば数週間,1週間とか2週間とか,そういった一定期間過去に放送された番組をさかのぼって視聴可能にできるものとなっております。それに対して(イ)の過去番組のオンデマンド配信ですけれども,こちらは一定期間経過後の一部のコンテンツをインターネット配信するものということになっていまして,こちらはより昔,数週間以降,1年とか2年とかも含めてですが,過去に放送されたコンテンツが視聴可能になるようなインターネット配信のことを指しております。

今回議論になったのが,見逃し配信をどうするかということですが,見逃し配信の中にもこの図では2つに分けておりますが,上の矢印ですね。見逃し配信のうちの矢印によって書かれているのは,ほぼ全ての番組が見逃し配信の対象となっていることを示す図になっております。従いまして,そのサービス提供の形といたしましては,右側のradikoのタイムフリーと書かれた図になりますけれども,過去の番組についてこのような番組表のような表示ができて,まさに過去放送されたものをそのまま番組表を見ながら選択して,自由に視聴できるというサービス提供になります。一方下の図なんですけれども,これは放送されたコンテンツの一部が一定期間視聴可能というサービス形態になっております。従いまして,サービス提供の仕方といたしましては,ドラマ第何話とか,コンテンツ単位でのカタログ表示するものとなっております。こちらの切り分けにつきましては,本質的な違いはないのですが,どれだけの番組を見逃し配信できるかということになっていますけれども,上の番組表で表示される方がより放送に近い形で提供されているのではないかということで,分けたということになっております。

欧州からはから,見逃し配信につきまして保護を求めてほしいという声が上がっているんですけれども,欧州各国のテレビのサービスの提供の仕方といたしまして,放送と,例えばサイマルキャスティング,あるいは見逃し配信でもかなり数多くの番組を見逃し配信サービスをしており,放送に付随するサービスとして提供していることから,放送が保護されるのであれば,それに付随して提供しているサービスであるサイマルキャスティングや見逃し配信についても,是非保護してほしいという考え方により欧州にからは保護の要求をしているのかと思います。

このようにインターネット配信につきまして,特に異時送信について,今議論がなされていることでございます。今後もWIPOにおいて異時送信の議論が続いていくと思いますが,現在WIPOで議論されているのは,大体このような状況になってございます。

以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。資料が3-1で3つに分けて紹介されておりますので,まずは放送条約につきまして,御意見等ありましたらよろしくお願いいたします。これは1998年から審議が始まっており,20年が既に経過しています。これについて何かセレモニーか何かあったのでしょうか。

【早川国際著作権専門官】特にないです。

【道垣内主査】そうですか。何か。梶原委員。

【梶原委員】では,今御説明いただいた異時配信について,ちょっと御意見を申し上げたいと思いますけれども,NHKはアジアの放送連合の一員として,放送条約の早期成立のために世界各地域の放送連合と連携をして活動していますが,異時配信について,少なくとも先ほど説明があった見逃し配信につきましては,前回のSCCRでも義務的保護に積極的に反対する国もなかったことから,異時配信については義務的保護とした方が,早期成立に資するのではないかと考えています。

もちろん異時配信の,どこまで保護するのかとか,定義についてはまだ次回詰めていく必要があるかと思いますけれども,異時配信を日本政府におかれましても,任意的保護ということで積極的に主張されるのではなくて,議論の推移を見ながら柔軟な対応をしていただいて,早期成立に資するように動いていただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】民放連の方はいかがでしょうか。

【田嶋委員】民放連の田嶋でございます。今回のSCCR36では,先ほど御報告がありましたように,限られた日程の中で議題が複数あり,放送条約の審議の時間をより多くとってほしいというのが私どもの,NHKさんも含めた,希望でしだが,大野課長,早川専門官には放送条約の議題を中心に全体の審議を組み立てていただく御努力を頂きました。大変ありがとうございました。

その中で,今日もアルゼンチンの提案について御説明がございました。私どもが現地でいろいろな方とも話をし,分析する中では,ここに来て議論をまとめようという大きな動きが出てきている。だから,これまで発言のなかったような国,あるいは当初発言をしていて,ここ数年発言がなかったような国,いろいろなスタンスの国が今のコンディションの中で自国のスタンスをもう一度みんなが言い始めている状況であろうと思います。いろいろな意見が出てきて拡散しているようでもあり,一方,みんながまとめようと思い始めたがゆえに,意見を言い始めているので収れんしているともとれ,恐らく後者なのだろうと思いますし,そのように強く希望いたします。こういう中での貴重な提案,議論の材料であったと思います。ですので,アルゼンチン提案そのものの議論が次回以降も続きますが,アルゼンチン提案で今後議論が収れんしていくのかどうかは,もう少し様子を見たいなというのが正直なところです。

具体的にいつまでが異時なのかとか,どういうサービスだと何がどうなるのかとか,あるいはインターネット上の送信は放送なのかどうかとか,その辺の議論がまだ,例えばEUとアメリカのなかでも多分対立軸として残っていると思います。EUの担当者,あるいはアメリカの担当者も,長年ずっと関わっておられた方が異動になったり,欠席だったりしていますし,アメリカは中間選挙の年ですし,そういう状況の中でインドも発言しませんでした。ですので,次回の秋のSCCRをもう1回見てみたいなと思っております。その中で,何度も申し上げてまいりましたように,民放として,条約がなるべく早く成立することが望ましいとの考えは変わっておりません。ここまで同時配信のところはもう一致しておりますので,あとは異時のところであります。異時のところをどういう形で,国内法に落とすのかということも,あるいは日本国内ではNHKさんの常時同時配信の議論などが,オリンピックを目指して進んでいて,放送の定義自体の議論も恐らくあるのでございましょうし,そういった状況の中で,異時の部分をどう扱ってどう整理をした方が,全体として条約が,しかもいい条約が早くできるのかというところを,もう少し見極めたいなと思います。異時のところが権利化されれば,こんなうれしいことはありませんが,秋もNHKさんと御一緒してジュネーブに参りますので,いろいろな協働の中で情報をとりながら,先ほどは次長からも早期成立に向けての力強いお言葉も頂いておりますので,そういう中で頑張っていきたいなと思います。

【道垣内主査】ありがとうございました。日本としてどうしてほしいかという点について,ずっと,とにかく早くしてほしいというとおっしゃっていますが,全然実現していないわけです。異時配信はなくてもいいということでよろしいでしょうか。

【田嶋委員】異時の中身について,もう少し現地で説明があればいいかなと思います。1回放送した結果,ネットの方に出てくれば,同時の方で保護が及んでいますし,異時なるものがどういうものかというのは,もうちょっと知りたいところです。もちろん異時が条約に入ることはウエルカムです。

【道垣内主査】分かりました。上野委員。

【上野委員】どうも御議論を伺っておりますと,サイマルキャスティングとニアサイマルについて義務的保護とすることについては異論がなく,そして異時配信につきましても,過去番組のオンデマンドについて義務的保護とすることについては賛成がそれほどないという状況で,やはり見逃しのところが一番の問題なのだろうと思います。

確かに,インターネット上のサイマルキャスティングについては放送事業者の権利が付与されるにもかかわらず,それと同じものを放送事業者が見逃し配信していたところ,それが無断コピーされてネットに出回っているときには,放送事業者が固有の権利を主張できないということになってしまってよいのかという問題は,確かにあるかと思います。

ただ,アルゼンチン提案における「密接に関連した異時送信」というものも,限られた数の週あるいは月(a limited number of weeks or months)までの間視聴できる異時送信ということで,月も複数形になっておりますので,――これがどこまでなのかということはもちろん問題になるわけですけれども――いわゆる「見逃し配信」というものが拡大していけばいくほど,本来の放送とは離れていくということになるのかと思います。

また,同じ見逃し配信というものを伝統的な放送事業者以外の者が行っても今回付与される権利の対象にならないわけですから,このこととバランスがとれているのかということも問題になるところかと思います。

そのような意味では,基本的には見逃し配信については条約上の義務的保護とする必要はないという考えも,確かに成り立ち得るところかと思います。ただ条約上の義務的保護にならなくても,別に国内で保護することは自由でありますし,また他方,もし早期に妥結するということに資するのであれば,義務的保護にするという選択肢もあり,それで放送事業者が困るということもないんだろうと思います。

したがいまして,実際にどれぐらい義務的保護に対する反対が強いのか,どちらの方が早期妥結に資するのかというところがポイントになるのではないかと思います。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。鈴木委員,お願いします。

【鈴木主査代理】事務局に単純な質問ですが,資料の1ページ目で言及があった,WIPO一般総会への勧告を行うことが決定されたということについて,内容を教えていただけますでしょうか。

【早川国際著作権専門官】失礼いたしました。SCCRの勧告の内容ですけれども,一般総会に対して本質的な事項,すなわち保護の目的や具体的な範囲や対象について,意見の一致を見た上で放送事業者の保護に関する条約の採択のための外交会議の開催に向けて,適当な措置を講ずるよう検討することを求めるとしておりますので,従いまして,放送条約の案のうち重要な部分に合意があった場合には外交会議を開催に向けて取り組むという勧告が,一般総会に出されたということです。

【道垣内主査】少しでも進めようということですね。次に,権利の制限と例外の部分について,山本委員,どうぞ。どちらでも。

【山本委員】一つ質問させていただきたいんですけれども,資料の3-2で見ますと,第1条に定義があります。その(d)以降のところですか,broadcasting organization,放送機関という定義があって,放送信号が保護されるような枠組みになっているようです。このbroadcasting organizationの定義からいうと,日本の放送機関の定義とちょっとずれがあるんじゃないのかなと。日本風であれば,放送機関というのは業として放送を行う者というような定義だと思うので,このbroadcasting organizationとの間には,ちょっと差があるように思います。それが,この定義がそのまま生きるのかどうか分かりませんが,この定義がもし生きたとしたら,現行法を変更する必要があるのか。あるとすればどういうふうに変更する必要があるという話になるのか,ちょっと疑問に思ったものですから教えてください。

【道垣内主査】事務局の方,いかがですか。

【早川国際著作権専門官】検討させていただきたいと思います。

【道垣内主査】はい,分かりました。何か山本委員からお考えがあればお願いします。審議会ですので。

【山本委員】特に意見があるというわけじゃないんですけれども,このbroadcasting organizationの定義からいうと,信号を出す側が自分の発意でもって,その送信に対して責任を持っているということなので,かなり広いように思いますので,少なくとも現行法の放送機関として予定されているところよりはかなり広くなるんじゃないのかなと。その場合に,この条約と現行法とどういうふうに整合性をとらせるおつもりなのかなというところを疑問に思っただけです。

【道垣内主査】注が付いていますけれども,この注があっても,何か変えなければならないということになりそうだということですか。資料3-2の2ページの下ですけれども。

【山本委員】ただし書きですか。

【道垣内主査】これをどういうふうに組み込むのかは,まだ決まっていないですよね。条文化はまだされていないようですが,一応こういうふうには了解はされているというのが現段階の状況かと思いますけれども。

【早川国際著作権専門官】そうです。今のところ議論中でございますので,まだこれで決定されたわけではないのですが,ご意見を頂いたということで今後検討したいと思います。

【山本委員】結構です。

【道垣内主査】よろしいですか。どうぞ,今村委員。

【今村委員】この異時送信という言葉なんですけれども,異時という場合には放送の後の異時送信ということを意味しているということでよいでしょうか。例えば今ですと放送の前に先行配信とかいうのをやると,すごく注目を浴びてアクセス数も増えたりすると思うんですが,そういうのを伝統的な放送機関がやるというものは,特に議論の俎上にないということになりますか。もちろん放送前信号になるというようなケースは別なんでしょうけれども,それは特殊な事例かと思います。ここでいう異時というのはあくまで放送後の異時というような扱いでしょうか。

【早川国際著作権専門官】今,現在検討されているのは遅れたというか,過去に放送されたものを対象として議論がなされております。

【道垣内主査】権利の制限と例外につきましては,ほかに特に御意見ありませんでしょうか。その他,追及権も議論の対象になりそうですが,よろしゅうございますか。

では,今日のところはそのような御報告を伺い,関係者の御意見を伺ったということにさせていただきたいと思います。

引き続きまして4番目の議題でございます。海外における著作権侵害の最近の状況についてでございます。この点,最近の状況を把握されているCODAの墳﨑委員より御報告いただき,その後皆様の御意見を伺いたいと思います。では,お願いいたします。

【墳﨑委員】CODAの墳﨑です。私が多分資料を用意するのが遅かったのでお手元になく,大変恐縮ですけれども,スクリーンを見ていただければと思います。

今日,この議題として海外における著作権侵害の最近の状況ということで,対策という観点ではなく,こういった海賊版がいまだにありますよ,最近はこういうのがありますよということを御紹介させていただければと思います。本日の内容は,基本的にはインターネットの話になっております。ただ,いまだにフィジカルパイレーツというものが,DVDとかCDというものがなくなっているというわけではないです。メインがインターネットに移っているので,その話をさせていただくということであって,CODAでもまだ,上海の日本人がいっぱい住んでいる長寧区というところがあるんですけれども,そこには大量のDVDを販売している販売店などもまだまだあって,フィジカルパイレーツというのはかなりまだある状況ではあります。ただ,以前に比べれば消費者がインターネットの方を見るようになったので,そういう意味では露店ですごい売っているとか,そういったものは,国や地域によっては当然ありますけれども,例えば昔あった中国とかでは,もうほとんど見当たらなくなっているというような状況にあります。

では,お話しさせていただきますが,違法動画配信というのはいまだに当然いっぱいあり,CODAではUDCサイトを中心に,いまだに削除要請というのは繰り返しております。2011年からずっと続けておりますけれども,昨年度の実績からすると19万ほど通知しております。やはり昔に比べてサイト数がどんどん増えていっております。昔はここに書いてあるようなyouku,dailymotion,tudou,pandoraとかyoutube,そのあたりだけ押さえておけばいいという話だったのですが,やはりそれらのサイトが,基本的には通知さえあれば消すというような状況になっておりますので,そうすると,海賊版というのは見えないわけですよね。ですので,小さいサイトがポンポン出てきていて,それらについて対応しなければいけないという状況になっております。CODAでは,今は機械と人の両方で監視をしておりまして,人が見ているものを含めますと40以上のサイトを日々目視と機械で見て削除通知を送るというようなことを行っております。

基本的に削除率というのは,累計ですと95%で,昨年度ですと90%になっております。これは,やはり大手サイトは,もう二極化しています,削除率は。100%応じるところか,ほぼ応じないところかです。応じないところがmiomioとanitubeとか,ちょっと後で話も出ますけれども,応じないところはほぼゼロですね。たまにこれ9%とか出ていますけれども,これは削除要請に応じて消したのかどうかもよく分からないので,単に時間がたって誰も見なくなったから消しちゃったとか,そういったことも含まれているので,ほぼ100かゼロというような状況になっております。

最近の傾向ですけれども,SNSで見られるものがかなり多くなってきております。今まではSNSで載っている動画,SNSでの利用のされ方というのは,自分のところに動画が1個2個載っているというようなものではあったんですけれども,最近はそうではなくて,ものすごい量の動画が載っています。普通に動画サイトと同じ作りで,何でも見られる状況になっております。そういったサイトに関しても,CODAとしては対応はしています。Facebookさんなんかは削除には応じてはくれております。が,なかなか探すのも大変で,根本的な解決がないかなというふうには考えているところです。

あともう一つの最近の特徴ですが,少し細かくなりますけれども,やはり匿名性というのが高くなっております。先ほどちょっと申し上げたとおり,以前はやはり大きなサイトがやっているので,どこに行けば消えるかとか,そういったことはある程度分かったんです。しかしながら,小さいサイトというか,その他のサイトというのがいろいろ出てきたことにより,誰がそのサイトを運営しているのかというのが分からないケースが非常に多くなっております。サイトブロッキングの議論の関係でいろいろ話が出ているところではあるので,詳細はそんなに話しませんが,例えば左側の緑の四角に書いてありますし,コンテンツデリバリーネットワークという,CDNと言われているもので一番多く取り上げられるのはCloudflareというアメリカの会社ですけれども,そこを経由して配信するという形をとることによって,直ちに侵害コンテンツのあるサーバにたどり着けなくなっています。さらにその実際のあるサーバの場所も,例えば著作権,データ関連で寛容な国,ここに書かせていただいていますけれども,ウクライナ,ポーランドなどいろいろな国があって,そのような国にサーバを置かれていると,その侵害コンテンツがそこにあったとしても情報開示などになかなか応じてもらえないというような形で,匿名性が極めて高くなっています。最近ではさらにそれが進んで,そもそもサーバを借りるときに名前も聞かないところも増えているというふうに聞いております。メールアドレスと仮想通貨のアカウントだけで全てが処理されていて,そうなるともうその開示請求をしたとしても,名前や所在地というのは一切分からない。そもそも持っていませんという回答が返ってきてしまうというような状況が生まれているということになります。

そういった状況でなかなか大変なんですけれども,さらにリーチサイト,今文化庁さんの方で御検討いただいているところではありますが,リーチサイトによる誘導というのはいまだに行われております。ウエブ検索とかでアニメ無料とか,そういうふうに今入れても,トップ,3つか4つぐらいはリーチサイトが出てくるというような状況はまだまだ続いていて,なかなかなくならないなと。ただ,最近の議論のおかげで,リーチサイト自体で対応してくれるところというのはなかなか増えてきておりますし,Googleさんの方も,検索結果においては,リーチサイトであっても検索結果の表示から除いてくれることはあるということになっておりますので,対策は徐々に進んできているなという状況ではあります。

あとはアプリです。やはり最近,特に若年層が見るものは,パソコンではなくて携帯を経由して見る,携帯で見る方も非常に増えております。電車に乗っていても,携帯でコンテンツを見ているというのは非常にあって,一時期よく言われたのは,もうなくなりましたけれども,漫画村のサイトなどは電車で結構学生が携帯をいじりながら読んでいたというのを見かけたという人はいっぱいいて,アプリというのはいまだにいろいろあるという状況ではあります。ただ,日本のアプリマーケットというのは,基本的にはGoogle PlayとApple Storeになるんですけれども,これら2つに関しては,基本的に侵害コンテンツを誘導するようなアプリに関しては消してもらえるという状況にはあります。申請さえすれば,基本的には消すという対応をしていただいている状況ですので,見つけさえすればマーケットからは消せます。ただ問題は,アプリの場合の問題というのは,マーケットから消せても,もうダウンロードされたものはその携帯に残ってしまいます。そうすると,そこを消す方法がなかなかないというところがあって,そこは1つまた対策を考えなくてはいけない。今,CODAとして多少考えているところは,アプリも結局広告,ここも載せていますけれども,広告で収入を得ているという部分が多いので,その侵害を誘導するようなアプリに関しては,その広告事業者さんたちとそれを共有して,そこに広告が載らないような対策というのを進めていけたらなということで,現在議論しているところではあります。

ここまではこれまで話していたこととほとんど一緒なので,ざっくりいきましたけれども,次から,これも1回話したことがあるような気がしますが,最近の,傾向の1つとして,侵害サイトがジオブロックというものをやるようになってきております。これは,皆さん御存じだとは思いますけれども,一部の地域で視聴ができなくなるというものです。これは実際に行われて,いろいろなところで御紹介もしている事例なのですが,中国のmiomioというサイトがあります。miomioというサイトがあって,日本の動画がいろいろ載っています。アニメも載っていますし,ドラマや映画などもあって,2016年か,もうちょっと前ぐらいからあるサイトなんですけれども,ひどいということでCODAの方で,中国の国家版権局という,日本でいうところの文化庁さんですが,そこに情報提供したわけです。このサイトはひど過ぎる,どうにかしてくれと。中国の国家版権局は,著作権に基づいてのある程度執行権限というのがあり,特に毎年6月から12月にかけて,啓蒙行動ということで公安局とか,広電総局などと連携して,インターネット上著作権侵害対策というキャンペーンを毎年やっています。それに合わせて2016年の6月にCODAの方で,このmiomioというのはいいかげんにしてくれということで情報提供をしました。そうしたところ中国の版権局の方から,正式に対応するから行政投訴,日本での告訴に近いですけれども,をしてくれということで,2016年11月に行政投訴をしました。その結果,このmiomioというのは上海に運営者がいたんですけれども,上海の文化市場行政執法総隊という,実際に執行をとり行う総隊が,そのmiomioに対して罰金を科すと。極めて微小でしたけれども,罰金を科すのと行政罰も与えて行政指導,もう二度とそういうことをするなという話もしたと。さらにかなり悪質だったので,ここには載せていないですけれども,ブラックリストというのが中国にもあるわけで,その中に載せられてサーバの利用などの制限なども始まりました。

そうしたら何が起きたかというと,2017年3月の行政指導が起きた後にジオブロックというのが開始されました。これは何なのかというと,中国においてはmiomioが見られなくなるというものです。その結果,捜査機関も見られませんし,中国においては見られません。ただ日本では,日本からアクセスするとmiomioは非常に普通に見られるという状況になりました。ですので,中国側から,いや,もうmiomioは閉じた,クローズしたから安心してくれという報告があって,私パソコンを開いて確認したら,「いや,まだ全然見られるじゃん」というので行き違いが起きて,何が起きているのかなと確認したところ,このジオブロックが行われていると。

ですのでまだまだ世界中には発信されていますよということで,中国の国家版権局の方に,いや,まだ続いているからもうちょっとどうにかしてくださいという話で,追加の依頼,対応を要請したんですけれども,中国の国家版権局からすれば,そのmiomioについては今の中国では見られていない。だから対応は難しいと。やはり中国での公衆送信権侵害でないよねという話をされてしまって,確かに日本ではその公衆送信権侵害というものはあるのかもしれないのだけれども,我々は日本の法律を所管する立場にはありませんという話で,最後に言われたのが,日本で見るのが問題だったら日本でブロッキングすればいいじゃないかということを言われて,いや,そんな法律ないという話をして,あなたたちにどうにかしてもらうしかないですという話を散々しましたけれども,いまだに応じてもらえていないという状況にあります。

これは完全に私見ですけれども,このmiomioの運営者が自分で複製などをしていたら,それは複製権侵害ということで中国国内でまださらに対応する余地はあるのでしょうけれども,多分そこまでの証拠が出てきていないんですね。一応miomioも形式上はUGCサイトのような形式をとっているので,アップローダーというのが別に一応いるという形になると,自分たちでやっているわけではないという言い訳は立ってしまうというような状況にはあります。

これはこのケースに限ったことではなくて,先ほどちょっと申し上げたanitubeについても同じことが起きました。CODAではanitubeは大体もう見られなくなっていますけれども,ブラジルのサイトに対して刑事告訴しておりますが,刑事告訴した後になって,ブラジルでは視聴ができない状況になり,ですけれども日本からは見られるというような状況が生じました。ですので,今後もこういったことが起きてくるのではないかと思っております。要は捕まらないために自分の国では見られないようにする。さらに言えばサーバの所在地でも見られないようにするというのは1つあるのだと思います。そうすると,そのサーバの所在国で見られていないのですから,そのサーバの方は対応しないというふうなことを一応言えてしまうような気がするので,そういったこともあり得るかなということで,こういった見える地域を限定することによって対策を逃れるということが,これから起きてくる,増えてくるのではないかと思っております。

続きまして,最近ある話として,この不正ストリーミング機器というのが,世界的にはとても問題になっております。これ何なのかというと,この機械を売っているんです。大体1万円とか2万円ぐらいで売っているんですけれども,この機械をボックス,セットトップボックスと我々は言っていますけれども,これをテレビに接続するだけで1,000チャンネルぐらいの番組が見られるようになるという,非常にすぐれたものです。こういった形で,本当にコードをディスプレーに差すだけで,あとはインターネットで接続するだけなんですけれども,それをすることによって日本のチャンネルはほぼ全部見られますし,私が実際調査,確認したものだと,中国の番組,韓国の番組,アメリカの番組,タイの番組などなど,1,000以上のチャンネルが大体4分遅れぐらいでどれも見られるというようなものになっております。さらに高精度なものになってくると,見逃し配信とか1週間分ぐらい見られるみたいなものも付いていて,見られてしまうというような機器になっていて,最近ではこれが非常に問題になっております。

どういう構造なのかというと,差すだけとちょっと申し上げたんですが,それはちょっとものによるんですけれども,販売業者がいます。この機器を普通にインターネットとかで売っているんですよね。1万円から2万円ぐらいで売りますと,ユーザーは,一番難しいケースですと,この機械自体には本当に何も入っていないんです。データも何も入っていないので,何か仕様マニュアルみたいなものがインターネットに落ちていたり,あとは説明書が付いているんですけれども,インターネット上から専用のアプリをダウンロードするんです。専用じゃないときもあるんですけれども,ダウンロードする。で,アクセスキーなどを入力すると,この視聴が,さっき言ったチャンネル数の視聴ができるようになると。4分遅れぐらいで,大体どの国のものも見られますよというところで見られています。結構日本人の,海外の日本人向けのフリーブックですね。駐在員向けのフリーブックとかですごく宣伝されています。こういったもの,全部見られます,日本の全チャンネル見られます,もうディスプレーに差すだけみたいなうたい文句で広告宣伝されていて,アップローダーは販売者とは別のところにいて,放送と同時にアップロードするというのを続けているんだと思います。

これについては,日本ですと,やっぱり地上波自体は無料なので,問題ではあると思いますが,世界のほかの国に比べれば,そこまで問題視されていないのですが,有料放送の皆さんからするとかなり問題でして,これ無料で全部見えちゃうという形は相当問題です。ですので,通信解析してどうにかしてこのアップローダーまで行かなければと。しかし販売業者というのは,これを運んでいるだけなので,この箱に何も入っていないんですよね,データとか。そうすると,こいつを捕まえるのもなかなか難しいなというところで,この通信,このアップロードした者をどうにか見つけられないかなと思って,この通信解析をしたんです。そうしたところ,P2P技術というのが正確なのかちょっと分かりませんが,要は回線1つでやっているのではなくて,いろいろなところから飛んできて,それが集まって見られるようになっているという形なので,特定の回線でやっているわけではないんです。そうすると,その通信先というのは分からなくて,このアップローダーまでたどり着けなかったです。なので,これもなかなかアップローダーにたどり着くのも非常に難しいなというようなものでして,非常に難解な状況にはあります。

これに対しては国ごとにいろいろな対策がとられていて,つい最近の話ですけれども,今年の6月に台湾でCODAの方から権利者の皆様に御協力いただいて,委任状など出して,実際逮捕した事例が出ております。これただできたのは,動画の違法アップロードもやって,販売機器の販売業者を摘発したという事例ですけれども,ただこれは,実際のところは違法にアップロードをしていた人たちなんです。両方をやっていたというので,男性4名,女性2名,合計6名の容疑者を逮捕したというところで,Qboxという機器だったんですけれども。こういったもので,これは日本で放送される全ての番組,42局をほぼ同時刻で台湾で無料視聴できるもので,約3,000台湾ドル,1万1,000円ぐらいで販売されていたものになります。ですので違法アップロードも一緒にやっているという事犯であれば当然できますし,あとは売られている,さっき一番難しい話をしましたけれども,売られている箱の中にコンテンツもデータとか入っていれば,当然こういう対策をとれるという形になるので,それはケース・バイ・ケースになってはきます。

さらに,海外,アメリカ,ヨーロッパの方では非常に問題視されていて,イギリスでは結構もう摘発等が行われています。販売業者の摘発というので,根拠としては著作権法や刑法上の詐欺罪を使っているという話もありますが,何をもって違法行為としているのかというのが,ちょっと私もちゃんと把握できていないんですけれども,基本的にはちゃんと正規にプレミアリーグとかの番組が見られるよとうたっているにもかかわらず,そうじゃないというところでやっているそうです。さらに犯罪収益法によって,売り上げた金額というのは全て回収していると。没収しているというようなことまでやっているという話がありました。アドオンというのは,さっき言った追加でユーザーにアプリケーションをインストールさせるアドオン開発者については対処も行っていて,これはまあ摘発というよりかは,大体その人の,開発者の自宅に訪問して和解などをする,みたいな対策をしているということは,向こうの権利者団体の人から教えてもらっています。

さらに税関対策みたいなこともやっていて,大体このセットトップボックスも,東アジア,中国とかから来ることがほとんどなので,税関での水際対策もやっていると。私の方で著作権侵害でできるのか,と聞いたところ,それは結構難しいという話をしていて,むしろ安全基準に違反していると。要は発火するとか,そういったところで結構何かこじつけみたいな感じのような気がしましたけれども,安全基準違反ということでやっていますと。さらに広報啓発活動ということもやって,摘発とかをするために大々的にプレスリリースなどをして,こういうのが違法なのだよということをやっているという話でした。

あとさらにほかの国でいうと,中国なんかでも摘発の事例があるというふうに聞いています。ただ,やはり結構,さっき言ったここの通信解析がかなり難しいらしくて,CODAの方でも1件中国の方に,中国で販売している,販売業者が中国企業だったのでやってくださいという話をしたときに,でも通信解析絶対やらなければいけないから,このお金誰が負担するのと言われて,まあまあのお金だったので,いや,ちょっとどうしようかな,みたいな感じで。しかも通信解析しても特定できるか分からないという話なので,なかなか対応は難しいなと。中国の政府機関の方でこういうのやったことあるよという話のときは,やはり通信解析がうまくいって,アップローダー含めて摘発することができたという話ではあったので,ここはちょっとばくちみたいなことをやらなきゃいけないということになっております。

あとは日本での対策ですけれども,日本にも当然輸入はされているんですね。大手のeコマースサイトでは販売されています。ですが,一応摘発とか,そういった事案はないんですけれども,そういったeコマースサイトさんの方とCODAの方で話もしておりまして,そういったものを見つけたときには通知すれば,通報すれば取り下げさせるというような取組は既に始まっていますので,そういった意味では拡散はある程度防げているのではないかと思っているところではあります。

はい。そんなところで,非常に簡単ですけれども,現状としては以上です。なので,そういう意味では,最近の新しいものというのは,この不正ストリーミング機器というのが1つ問題になっているということになります。簡単ですが,以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。日本のコンテンツが中国で,あるいはウクライナで,とにかくいろいろなところでアップロードされていて,そこを見に行く装置が販売されているということですね。

【墳﨑委員】そうですね。要は中国や海外でよく売られているものになっていて,当然日本コンテンツがどれも大体見られます。全局見られますし,見逃し配信的にも見られます。通信先はアメリカだったり,中国だったりするので,実際どこから来ているのかというのが最終的にはよく分からないですね,正直申し上げると。

【道垣内主査】そうですか。ほかの方の御質問の前で申し訳ないですけれども,お金はどうやってめぐっているのでしょうか。何か宣伝,広告が出るのですか。

【墳﨑委員】そうですね。お金は,これも私も不思議なところではあるんですけれども,最初の販売しかないんですね。要は1回買った人から,もう全然お金を吸い上げていないんです。ここの最初の方で1万円から2万円,高いやつだと4,5万するんですけれども,ここでお金を払っているだけですね。だからここの人は探そうと思えばちゃんと探せるんだと思いますし,1件調査した件では,中国の特定の企業がやっているというところまでは行けてはいます。

【道垣内主査】コマーシャルとかがどこかに出てくるわけではなくて,きれいな画面が出てくる。

【墳﨑委員】そうです。きれいな画面,テレビと全く同じなので,4分遅れでテレビチャンネルが流れているだけになりますので。

【道垣内主査】今御説明いただいた点について,何かさらに御意見等ございますか。はい,お願いします。

【奥邨委員】ちょっと確認なんですけれども,これ多分,この不正ストリーミング機器というのはEU司法裁判所でアウトになった機器と同じではないかなと思うんですが,EU司法裁判所の方で,こういう機器を通じて見えるようにするということについて,その機器の販売自体がコミュニケーション・トゥー・ザ・パブリックの侵害になるという先決判断が出ている。もっともそれが,オランダの裁判所に戻ってから具体的にどうなったかは,私,分からないんですけれども,EU司法裁の考えでいけば,販売自体が,日本でいえば公衆送信権侵害だという,直接侵害だということになるので,若干日本からすればびっくりするような結論ですけれども,そうなっている機械かなと思います。

あと1点だけお伺いしたいんですが,その仕組みは,結果的にはまねきTVと理屈は似たようなものであって,ただ誰か発信している人がいるんですけれども,日本の放送が4分遅れで発信されているということは,多分4分というのは地デジをインターネット変換するのに大体それぐらいかかるんじゃないかと。で,幾つかサーバを経由すると。そうすると,どう考えても日本にいるしかないと思うんですが,これCMも全部映るんですよね。

【墳﨑委員】はい,映ります。

【奥邨委員】とすると,ほぼ特定できるんじゃないですか。どこの地域かとか。

【墳﨑委員】そうですね。奥邨先生,ありがとうございます。おっしゃるとおりで,これEUで判決出ている,それも私存じていて,基本的には同じになります。御指摘のとおり,これは関西のテレビ局とかも全部見られるので,そういう意味では関西の方にいらっしゃるんじゃないかなと思ってはいるんですけれども,いかんせんその最後のところまでたどり着けていないので,特定まではできていないというところではあります,はい。御指摘のように,私も日本に必ず協力者はいるなとは思っております。

【道垣内主査】分かりました。そのほか,いかがでしょうか。鈴木委員,どうぞ。

【鈴木主査代理】大変興味深いお話,ありがとうございました。miomioの関係でジオブロックのお話がありましたが,私自身は技術に疎くてよく分からないのですけれども,中国ではGoogle系のサイトは本来見られないけれども,バーチャルにIPアドレスを外国に移す形にして,youtubeとかを見ている人が多いという話を聞きます。そういうことがあると,ジオブロックをかけていても,やっぱり中国の方は見ている可能性があると思いますけれども,その点は実際の摘発とかの関係で,議論は出たんでしょうか。

【墳﨑委員】そこまではしていないです。おっしゃるとおり中国の皆様はいろいろやって,Facebook禁止と言われながらやりますし,見ていますけれども,そういうのをやったら見られるよねというところまでの議論はしていないですね。結局その潜脱行為をやっている人たちが見ているという部分はどういうふうに議論すればいいのか,ちょっと分からないところではあるので。はい,すみません,そこまではやっていないです。

【道垣内主査】そのほか,いかがでしょうか。

【楠本委員】このジオブロックについては,私国際小委で何度か違法対策のプレゼンをさせていただいたときに,初期の頃は逆で,中国サイトは日本からのアクセスをジオブロックする,だけれども中国側に,先ほど鈴木先生おっしゃったように,FTPサーバ等を介して日本人は中国の中にいる体にして見に行くということを繰り返していたのが,これ逆のパターンだと思うのです。だから今文化庁の議論では,ブロッキングの話が出てきているのだと思うのですが,そういったところでなかなか技術で対応していこうとすると,こういったことがもう,結局いたちごっこというか,追いつかないというのがまさに現状なんだろうなというのを改めて思います。

ただ最近,先ほど墳﨑さんもおっしゃっていたとおり,版権局等の動きはかなりアグレッシブな部分があって,これはもうUSTRとか,あの辺からの指摘を受けての動きだとは思うのですけれども,やはり技術的にできるからいいじゃないかというのはなかなかもう現時点では苦しいのかな,なのでどこまで国内法でやれるところと,どこからはもう当該国にお願いする,そこを政府間で連携していただく,そういうようなところを全部合わせていかないと,1つ技術対策すればいいじゃないかとか,国内法を作ればいいじゃないかだけでは,もはや苦しいのかなという,いい例だと思います。

【道垣内主査】山本委員,どうぞ。

【山本委員】不正ストリーミング機器についてちょっと質問させていただきたいと思います。大変興味深いお話で,私の方から技術的な点でお聞きしたいと思います。

これ見ることができる番組というのは,例えば地上波のものだけではなしに,先ほどのお話であれば有料番組も含まれているということです。地上波にも暗号化されていると思いますし,さらにその有料番組であれば,その上にさらに暗号化されていると思います。それを全部解除した上で,この機器で見られるようにしているということなんでしょうか。どの段階でその処理をやっているのかというのは,お分かりなのでしょうか。

【墳﨑委員】すみません,そこまでは分からないですけれども,アップしているときに当然やっているんだとは思いますが,アップする前にですね。この機械でやっているというよりかは,どこかのサーバに上げている人が当然いて,そこから流れてきているので,その段階でやっているはずですね。最初に取るときにやるはずです。

【山本委員】ちょっとお聞きしたのが,生のコンテンツが流れてくるのを受けて,それで解除しているのか,あるいは正規の受信機器で視聴するためにはアナログ信号に変換しないといけないので,アナログ信号に変換されたものをそこから抽出する,何か技術を使っているのか,という質問なのですが。

【墳﨑委員】すみません,ちょっと分かりません。

【奥邨委員】多分余り難しいことはやっていなくて,普通にケーブル放送とか加入して,正規ユーザーとなって,で,普通に正規に販売している機器で解除して,それをディスプレーにつなぐ線がありますから,それを単にパソコンに入力して飛ばしているという可能性が一番高いと思います。特殊なものでやらなくても,じゃあその人は何でもうけているのかというのはちょっと?毎月放送業者にお金を払っている分はどこから出ているのかというのはちょっと分からないんですけれども,その可能性の方が高いのではないかというふうに言われていると思います。多分CODAさんからちょっと言いにくいかもしれないので。あくまで言われているというレベルでは,そういうことがよく言われています。

【山本委員】ありがとうございます。

【道垣内主査】お金の発生するケースは,販売業者とアップローダーがつながっていない限りは,なかなかうまくいかない感じがしますけれども。

【墳﨑委員】そうですね。つながってはいるとは思うんですけれども,さすがに。本当に更新とかそういうのもない,基本的にそれでお金を取られるとか,そういうこともないので,1回買ったら終わりなんですね。お金の流れは。

【道垣内主査】分かりました。どうしようもないという話ですね。

【墳﨑委員】いや,是非皆さんに議論していただければと思いますけれども。

【楠本委員】これも歴史的な部分があって,多分野田さんとかよく御存じだと思いますけれども,私も文化庁さんの支援事業で途上国の方へセミナー等で行かせていただくと,やはりタイですとか,インドネシアですとか,マレーシアの国々では,初期の頃はこれをセットトップボックスをリース/レンタルして,日本の無料放送・有料放送を多くの方が観ていらっしゃった。それが今は空の機器にインターネット上からソフトウェア/アプリケーションをDLするという形態に置き換わっただけだろうと考えています。

【道垣内主査】放送事業者の方々は困ったものだということでしょうけれども,いかはでしょうか。

【梶原委員】iHome TVについては,もう随分前から我々としても対策して,もう五,六年前になると思うんですけれども,NHKはワールドプレミアムなどで,在外の邦人のために有料で権利処理した番組を配信していますが,視聴者が増えないということがありました。なぜかというとiHome TVが売られて,特にオリンピックを見ることができるので,ワールドプレミアムはオリンピックを放送できませんので,オリンピック期間中なんかは相当販売攻勢されて,日本人向けの商店だとか,フリーペーパーで宣伝をして売っているというケースがありました。一度警察に相談したところ,サーバをたどっていってもらったのですけれども,中国にサーバがあるというところまでは分かったのですが,中国にあるということで,そこで捜査は止まりました。

今どういう対策をやっているかというと,現地の方でフリーペーパーの会社に行って広告を出さないでくれとか,あと引っ越し業者などがこれを契約勧奨していて,多分販売手数料などで幾らかもらうのだと思いますけれども,そういう引っ越し業者の方に,これは違法なものなのでそういう商売をしないでほしいといったような対応を行っているところでございます。

【道垣内主査】そのほか何かございますでしょうか。

きょうは第1回でもあり,次の5番目の議題は自由討議になっておりまして,この国際小委員会において,一応枠は分科会の方で設定されているので,その枠内ということではございますけれども,この枠内で何か審議すべき点等について御意見等ございましたら頂きたいと思います。条約がどれくらい役立つのか分かりませんけれども,こういうものをとっちめるような条約ができないかとか,あるいは国内法でもある程度まではできるんじゃないかとか,何か御意見がございましたら頂ければと思いますが,いかがでしょうか。

この最後のものは,サイトブロッキングの話とは違う話ですよね。

【墳﨑委員】そうですね。サイトブロッキングをしたらどうなるかというのはちょっと分からないですけれども,基本的に今議論されているサイトブロッキングってDNSブロックというものなので,それとは関係がないですね。

【道垣内主査】そうですね。分かりました。

【墳﨑委員】今何か,こういう条約みたいな話があったので,ついでにちょっと1つだけ話をしたいんですけれども,ジオブロックに対する対策の1つとして,日本で裁判をするというのが実は1個あるんです。日本では当然見えていて,日本における侵害行為はあるので。ただ,私何度かいろいろなところで言っていますけれども,日本の判決文って中国で執行できないんですよね。そこがやっぱり1つ問題で,そういう何か,執行共助ですけれども,門を広げていくというのはやっていただけると非常にいいかなと思うところではあります。まあ著作権の範囲を完全に超えますけれども。

【道垣内主査】そうですね。その点は私の専門分野ですが,民訴法118条4号の相互の保証という要件を欠くために,日本の判決を中国で執行しないのであれば,中国の判決は日本で執行しないというのが現状です。

このmiomioなんかですと,被告ははっきりしているということですか。もし訴訟を提起するとすれば,ということですが,いかがでしょうか。

【墳﨑委員】はい,そうですね。行政処罰を1回されていて,行政処罰決定書の写しはあるので,そういう意味では運営者が分かってはいるんですね。

【道垣内主査】それは法人ですか。

【墳﨑委員】一応法人,法人,個人,両方分かっている。

【道垣内主査】個人も分かっているんですか。

【墳﨑委員】はい。

【道垣内主査】法人ですと,もはや存在しないのかもしれませんけれども。分かりました。

そのほかいかがでしょうか。国際的な動きについて,事務局から少しお話のできることがあるようですので,お願いいたします。

【浦田専門官】事務局より3点ほど御報告をさせていただきたいと思います。

1点目は盲人,視覚障害者,その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約ということで,参考資料の5として資料をお配りさせていただいております。このマラケシュ条約につきましては,印刷物の判読に障害のある者の著作物等の利用機会を促進するために,WIPOにおきまして平成25年6月に採択をされまして,平成28年9月に発効しているというところでございますが,我が国におきましては,本条約の締結に必要な事項を含んだ著作権法の一部改正法が第196回の通常国会におきまして,本年5月に成立いたしました。また,本条約の締結につきましても,同国会において承認をされたところでございます。本条約の締結に必要な著作権法の改正事項につきましては,来年の1月1日に施行されるということになっておりますので,政府としましては,今後本条約の締結に向けまして,必要な手続を行っていくこととしております。

2点目になりますけれども,こちらは資料がなくて恐縮でございますが,TPPに関しましては,米国も含めたTPP12協定につきましては平成28年2月に署名がされまして,TPP12協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律,いわゆるTPP12整備法が平成28年12月に成立をしているところでございますけれども,本法律の施行日につきましては,TPP12協定の発効日ということとされておりましたため,米国の離脱によって未施行というふうになっておりましたところ,米国以外の11か国によるTPP11協定が平成30年3月に署名をされました。これを受けまして,第196回の通常国会におきましては,本年6月にTPP11協定の締結に向けた,さきのTPP12整備法の一部を改正する法律が成立するとともに,TPP11協定の締結につきましても国会で承認されたところでございます。これによりまして,TPP12整備法におきまして予定をされていました著作物等の保護期間の延長ですとか,アクセスコントロールの回避に関する措置等の著作権法の改正につきましては,TPP11協定が日本国について効力を生ずる日から施行されるということとなってございます。なお,我が国につきましては,本年7月に国内手続の完了について寄託者に通報を行っているところでございますが,TPP11協定は同協定の署名国のうち,少なくとも6か国が国内法上の手続を完了したことを寄託者に通報してから60日後に発効するということとされております。

それから3点目につきましては,こちらも資料がなくて恐縮ですが,日EUのEPAに関しまして,本年7月に署名が行われたところでございます。日EUのEPAにおきましては,著作物等の適切な保護と利用の推進を図るために,著作権に係る規定が盛り込まれております。特に著作物等の保護期間を著作者の死後70年等とする内容が含まれているところでございます。政府としましては,本協定の署名を受けまして,今後まずは本協定を国会に提出して審議いただくべく作業をしていくということとしております。なお,日EUのEPA交渉におきましては,著作物の保護期間を延長するということに伴いまして,戦時加算の問題の現実的な打開に向けて,鋭意交渉を行いました結果,イギリス,フランス,オランダ,ベルギー,ギリシャの5か国の政府との間で個別に文書を取り交わしまして,戦時加算の問題への対処のために権利管理団体と権利者との対話を奨励すること,それから必要に応じまして,これらの対話の状況及び他の適切な措置を検討するために政府間で協議を行うことを確認しているところでございます。同様の書簡につきましては,TPP11の署名の際にも,米国,オーストラリア,カナダ,ニュージーランドの政府との間で交換をしているというところでございますが,米国につきましては,TPP協定の離脱によりまして,その書簡の扱いが明確ではないという状況にございましたために,本年4月に改めて同様の内容の書簡を交換しております。

事務局の方から最近の条約及びEPAの関係の動きにつきまして,御報告は以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございます。もう既に実施済みのことについてですが,私はちゃんと新聞読んでいるつもりですけれども,TPP11で保護期間を延ばすのは相互主義でないのでしょうか。つまり,アメリカの著作物も含めて保護期間は延びるんですか,それともそこは条約の締結国との間だけで延びるんですか。

【浦田専門官】著作権法の改正自体は,日本における著作物の保護期間は70年に全て延びるということになりますが,条約上の相互主義につきましては引き続き残りますので,相手国が,例えば50年のままの場合には日本においても50年のみ保護するということになります。

【道垣内主査】ああ,分かりました。そうするとアメリカの著作物の日本における保護期間も延びてしまって,フリーライドするということですね。

【浦田専門官】アメリカは既に70年になってございますので,日本が70年に延ばした場合にはアメリカも70年保護するということになりますが,そういった意味で,先ほどの戦時加算のペーパーについて,改めて書簡を結び直したという状況でございます。

【道垣内主査】分かりました。ありがとうございました。

そのほかよろしいでしょうか。

では,本日の国際小委員会はこれで終了といたします。本日はどうもありがとうございました。

【早川国際著作権専門官】次回の委員会につきまして,日程調整の上,追って御連絡いたします。よろしくお願いいたします。

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