文化審議会著作権分科会国際小委員会(第3回)

日時:
平成31年1月28日(月)
13:00~15:00
場所:
霞山会館(牡丹の間)

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について
    2. (2)海賊版対策の取組状況等について
    3. (3)平成30年度国際小委員会の審議状況について
    4. (4)その他
  3. 閉会

配布資料一覧

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第3回)

平成31年1月28日

【道垣内主査】まだお見えになっていない方もいらっしゃいますけれども,ただいまから,文化審議会著作権分科会国際小委員会の第3回を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日の会議の公開につきましては,あらかじめ内容を拝見いたしましたところ,特に非公開にする必要はないと思われますので,既に傍聴者の方々には,御入場いただいているところでございます。この点,特に御異議ございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】では,今回の議事は公開とさせていただきます。

なお,本日もしカメラということがあれば,冒頭5分間だけにしていただければと思います。

では,議事の内容を御覧いただきたいと思いますが,今日は内容が書いてあるものが3つと,その他でございます。

では,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【早川国際著作権専門官】事務局から説明させていただきます。

お手元の議事次第の配布資料一覧を御覧ください。議事1に関する資料としまして,資料1-1から資料1-4がございます。また,議題2に関する資料としまして資料2がございます。議題の3に関する資料としまして資料3がございます。また,参考資料1としまして委員名簿,参考資料2としまして小委員会の設置についての資料がございます。また,机上配布資料ということで,海外における我が国権利者による著作権侵害対策事例調査という資料が配布されているかと思います。もし不足等あれば,事務局までお願いします。

【道垣内主査】ありがとうございました。

では議事の1番,WIPOにおける最近の動向につきまして,事務局より御説明いただきます。

SCCR,著作権等常設委員会での放送条約の議論において,アメリカから新しい提案がされているとのことでございます。次回のSCCRに向けて,主にこのアメリカ提案について,今日の小委員会では御意見を頂きたいと思っております。この点を含めて,事務局より御説明いただけますか。

【早川国際著作権専門官】それでは,事務局より御説明させていただきます。資料1-1を御覧ください。WIPOにおける最近の動向について御報告させていただきます。今回の報告に関しては,昨年の9月末に開催されましたWIPOの加盟国総会及び昨年の11月末に開催されました第37回SCCRについての結果概要の報告となります。

まず,WIPOの加盟国総会の結果の概要です。日程といたしましては9月の末に開催されております。2ポツの経緯等についてですが,WIPOの加盟国総会はWIPO全体に関わる事項についての最高意思決定機関となっております。この中で著作権に関する事項といたしましては,著作権等常設委員会とマラケシュ条約に関する加盟国会合等が行われていますので,3ポツ以降でこの2つについて御説明させていただきます。

3ポツが結果概要となります。まず(1)といたしまして,SCCRの活動報告についてとなります。SCCRについての活動について事務局から報告があり,その後,各国からステートメントが行われております。まず,制限と例外の議論につきまして,アフリカグループやイラン等から,法的拘束力のある国際文書の策定を求めたのに対し,我が国,EU,米国等は,各国が柔軟に制限・例外を定めるべきであると述べております。

また,放送期間の保護の議論につきまして,我が国,EU,アルゼンチン等より,外交会議の早期開催を望む旨が表明されております。また,アルゼンチンから,放送条約の早期策定を目的とするワークプランが提案されております。このワークプランの提案につきまして,インフォーマル形式により議論が行われました。その結果として,総会において以下のような決定がなされております。委員会は合意が得られていない事項について,SCCR37,38において合意が得られるよう最大限努力し,当該事項について合意が得られる場合には外交会議開催の勧告を行うこととするという決定がなされております。

続きまして,マラケシュ条約加盟国会合についてとなります。マラケシュ条約の加盟状況等に関する報告が事務局からなされております。また,加盟国の一部からはマラケシュ条約の加盟国増加を期待する旨の発言がなされております。我が国はマラケシュ条約の加盟書を寄託する旨の発言を行い,10月1日に加盟書をWIPOの事務局長に寄託しております。

以上がWIPOの総会の簡単な御報告となります。

続きまして,2ページ目を御覧ください。37回SCCRの結果の概要となります。日程としましては,昨年の11月末に開催されております。概要ですが,今次会合におきましてもこれまでと同様に,放送条約,権利の制限と例外及びその他の議題についての議論が行われております。

3ポツの各論です。放送条約につきまして,経緯等については省略させていただきます。また,イの議論の概要ですけれども,前回と同様,逐条での詳細な議論につきまして,インフォーマルでの形式について議論が行われております。各国からの修正提案が反映された統合テキスト案が議長によって取りまとめられております。今回の会合の結果としましては,条文案の整理がなされており,条文案がパートAとパートBに分かれていたのですが,1つに統合・整理されております。まだ,選択肢が複数列記される箇所やブラケットに囲まれている箇所は残っていますが,一定の前進が見られたということになっております。

テキスト案に関する主な議論内容は以下のとおりとなっています。まず,放送の定義についてです。放送の定義においてインターネット送信を除くことにつきまして,前回のSCCRで各国の立場の違いがあったのですが,今回の会合におきまして,放送からインターネット送信を除くことに関して,複数の国から支持が表明されて,それに関する異見もなかったことから,結果的に放送からインターネット送信というものは除かれるということになっております。

続きまして,インターネット上の送信の保護についてとなります。保護の対象としまして,異時送信の保護について議論があるところですが,これにつきましてアルゼンチンから提案があり,この提案について議論がなされております。アルゼンチン提案は,異時送信のうち放送と同等の異時送信,これは見逃し配信等を想定しておりますけれども,これにつきましては義務的な保護を求めるものです。本提案につきまして議論が行われましたが,最終的な合意は得られず,本提案につきましては,一応テキストに反映した上で,次回において引き続き議論することとなっております。

続きまして,与えられる権利についてです。これは米国から新しい提案があったものです。この提案は,放送機関に原則として再送信という権利が与えられることになっておりますが,その保護の方法につきましては各国に柔軟性を与えるという提案になっております。今回のSCCR37では本提案の趣旨や意図につきまして,各国からアメリカに対して積極的な質問がなされました。米国提案についても最終的な合意は得られず,議長テキストに反映した上で,次回会合において引き続き議論されることとなっております。

続きまして,放送前信号の保護についてです。今回の会合におきまして,放送前信号の無許可の再送信に対して,禁止権を与えるという代わりに,適当かつ効果的な保護を与えるという柔軟性を認めた案ということに対して合意が得られたという状況になっております。先ほど申し上げたアルゼンチン提案とアメリカ提案につきましては,後ほど詳しく説明させていただきたいと思います。

続きまして,権利の制限と例外となります。経緯等については省略させていただきます。議論の概要ですけれども,制限と例外につきましては前回,アクションプランというものが採択されており,本アクションプランに基づいて事務局が調査等を行っております。今回には,図書館,博物館,教育と研究機関等に関する整理作業の結果がそれぞれの研究者から報告されております。今後も引き続き,アクションプランに基づいた調査等が行われる予定となっています。

続きまして,その他の議題についてです。その他の議題として,現在3つの議題が提案されております。まず,デジタル環境に関連する著作権の分析として,今後の調査・研究については,デジタルミュージックサービスを対象とするとし,現状の権利関係やライセンシングの運用や収益の分配等について,今後調査を2年間実施し,随時この調査結果がSCCRに報告されることとなっております。

イの追及権ですが,前回,国際小委員会でも御説明させていただきましたが,事務局から事実調査を行うタスクフォースについての説明が行われております。このタスクフォースの調査結果につきましては,次回のSCCRで報告されることとなっております。

続きまして,舞台演出家の保護ですが,こちらも事務局から今後の研究の進め方についての説明がなされております。具体的には,世界各国における舞台演出家の保護の状況について調査を行い,次回SCCRについて途中報告が,次々回の39回の会合において最終報告がなされることとなっております。

以上がSCCRの説明となります。

引き続きまして,先ほど申し上げたアルゼンチン提案と,新しく提案されたアメリカの提案の両提案について御説明させていただきます。

資料1-1の5ページ目以降と,資料1-2の図に基づいて説明させていただきます。まず,資料1-2を御覧ください。この図は,現在提案されております放送機関の保護に関する条約案の基本的なところを,概念としてあらわした図になっております。条約において非常に重要な部分であります,受益者と保護の対象と与えられる権利について示しております。図で言いますと,左側から受益者,真ん中が保護の対象,3ポツとして一番右側に与えられる権利となっております。

まず左側から説明させていただきますと,誰がこの条約の権利者になるかということですが,これにつきましては,伝統的な放送機関に受益者を限定するということで各国の合意が取れております。したがいまして,伝統的な放送を行っていないウェブキャスターは,当条約の受益者の対象外となっております。

続きまして,真ん中の保護の対象ですが,これは受益者が行う何に対して保護を与えるかということになります。まず,保護の対象として,(1)は伝統的な放送になりますけれども,これに対して保護を与えるということで結論が得られております。したがって,伝統的な放送機関が行う伝統的な放送については保護の対象となります。それに加えて,インターネット上の送信をどこまで加えるかというところで,今のところ議論がなされております。

インターネット上の送信につきましては,今の条文案上,マル1からマル3の3つに分類されております。マル1のサイマルキャスティングですけれども,これは放送と同時にインターネットで送信を行うものでして,マル2のニアサイマルキャスティングは,時差とか技術的な遅延を伴って,放送から若干遅れてインターネット送信されるものとなっております。マル3の異時送信は,放送から遅れて,異なった時間においてインターネット等で送信されるものでして,例えば見逃し配信等があります。現在はマル1とマル2についてはコンセンサスが得られた状態になっており,下線を引いたマル3の異時送信について議論がされている状況となっております。

続きまして,3ポツの与えられる権利ですが,これは放送機関に対してどういう権利を与えるかということになっております。今のところの条文案といたしましては,再送信権,同時と異時の再送信権について権利が与えられるとことになっております。したがいまして,例えばですけれども,伝統的放送機関が行った放送について,第三者がそれを受信してそのまま同時に再送信を行ったり,伝統的放送機関が行った放送を受信して,それを異なる時間に第三者が再送信を行ったりすることに対して権利が働くということになるので,そういった第三者の行為を許諾する権利というものが放送機関に与えられるということになっております。

条約上の基本的な概念としましては,この1ポツ,2ポツ,3ポツになっており,アルゼンチン提案に関しては,この2ポツの保護対象における異時送信に関する提案となっており,今回新しく提案されたアメリカの提案というのは,3ポツの与えられる権利に関する提案となっております。

続きまして,資料1-1の5ページ,参考1のアルゼンチン提案というものを御覧ください。先ほど資料1-2を使って申し上げたとおり,アルゼンチン提案というのは異時送信についての提案となります。アルゼンチン提案はまず,異時送信というものを2つに分けており,まず1つ目といたしまして,equivalent deferred transmissionという同等の異時送信と,other deferred transmissionというその他の異時送信の2つに分けて,それぞれについて保護のレベルを変えるという提案になっております。

equivalent deferred transmission,同等の異時送信につきましての定義は,1ポツに書かれたように,リニア放送に相当するものであり,限られた週,あるいは月までの間のみ公衆に提供され,放送機関によって放送される異時送信のことを言うとされております。その他の異時送信につきましては,定義は提案されておりませんが,equivalent deferred transmission以外の異時送信となります。equivalent deferred transmissionにつきましては義務的保護とされ,その他の異時送信については任意的な保護とされております。

また,3ポツに書きましたが,何がequivalent deferred transmission,同等の異時送信に含まれて,その他の異時送信にどういう放送形態が含まれているのかということについて,合意声明の提案がなされております。その中では,同等の異時送信にはオンラインリピートやオンデマンドキャッチアップサービス,プレビューが含まれるとされており,その他の異時送信にはスポーツイベントの別映像,ニュースや番組の付加映像,追加のインタビュー,舞台裏の番組,オンデマンドだけのストーリミングチャンネルやオンデマンドカタログが含まれるとされております。

このように,アルゼンチン提案につきましては,保護の対象のうちの異時送信について,特に放送と同等の異時送信,主に念頭に置いているのは見逃し配信ですが,その見逃し配信等につきまして義務的な保護とするというものが提案の骨子となっていると思われます。

続きまして,資料1-1の6ページから8ページ,アメリカの提案についての説明となります。まず,資料1-1の7ページ,8ページが米国提案そのものとそれの仮訳になります。それを簡単にまとめたものが6ページ目の米国提案についてというものになっています。米国提案につきましては,資料1-2で説明させていただいた3の与えられる権利についての提案となっています。アメリカ提案では,与えられる権利について各国に柔軟性を与えるものという提案となっております。具体的には6ページに書かれたとおりになっております。

まず,パラグラフ(1)(i)で,これは7ページに対応するものですが,基本的には放送機関に再送信に対する排他的権利を与えるという,一つの権利のアプローチとするとしています。ただし,パラグラフ1(ii)に記載しましたように,基本的には放送機関について,再送信についての排他的権利を付与するということになっておりますが,各国における保護の方法に柔軟性を与えるという観点から,加盟国は再送信について排他的な権利の付与について一定の制限を加えることができるとしております。

ただし,その場合にはaといたしましてWIPOに通知する必要があるのと同時に,制限した部分,独占的,排他的権利の付与を制限した部分につきましては,何らかの適当かつ効果的な保護を与える必要があるとしております。したがいまして,基本的には放送機関に対して独占的,排他的な権利を与えるということが基本ですけれども,加盟国につきましては,制限できるのですが,制限した部分については何らかの適当な保護を与えるという提案になっております。

また,この提案に付随しまして,3つのパラグラフが提案されております。パラグラフ(x)は,隣接権の付与をしても既存の著作権に対して影響を与えないという規定になっております。また,パラグラフ(y)としまして,履行方法について柔軟性を保証する規定となっております。こちら,7ページの下に書かれているパラグラフですけれども,例えば,著作権やその他の権利や,不正競争や不正使用に関する保護や電気通信法による保護や行政措置による保護や刑法による保護のように,何らかの形で保護を与える際に,これらのような様々な方法で担保できるのということを保証する規定となっています。

また,パラグラフ(z)というものもございまして,これは放送機関に番組の著作権や隣接権に基づいた権利行使を保証する規定となっております。具体的には8ページに記載されておりますように,番組の著作権の権利者が放送機関にライセンスをしている際に,放送機関はそのライセンスの範囲で番組の著作権に関する再送信の権利を,放送機関が行使できるようにするというものとなっております。

以上が簡単な米国提案の説明ですが,本提案につきまして,米国からは次のような説明がなされております。6ページの真ん中の段落ですけれども,本提案につきまして,基本的には排他的な権利を放送機関に与えることとしております。そのような権利を与えない場合におきましても,何らかの適当かつ効果的な保護について放送機関に与えるとしております。

そして,その方法につきましては各国に柔軟性が,パラグラフ(y)に記載されているように,与えられるものとしており,例えば米国における事例といたしましては,米国では再送信について,電気通信法により再送信に放送機関の同意が必要となっており,このような電気通信法による保護を含むことができるとしております。また,アメリカでは放送機関が著作権者から独占的ライセンスを受けている場合には,書面を示すことによって放送機関が当該著作権の権利行使ができることとなっております。したがいまして,米国内につきましては,放送機関に仮に隣接権が付与されていないとしても,今申し上げました電気通信法や独占的ライセンスによる著作権の権利行使といった,別の手段によって放送機関に対して効果的な保護が与えられると説明しております。

このようにアメリカの提案内容につきまして,パラグラフが多く,複雑になっておりますが,基本的には再送信権を与えるものとしながらも一定の場合に制限できるものとしており,制限した場合には何らかの適当かつ効果的な保護を与えるとした提案となっております。アメリカの例におきましては,例えば電気通信法による保護や独占的ライセンスによる権利行使のような,権利のアプローチ以外の方法によって保護できるのだというような提案となっております。

事務局からの説明としては,以上となります。

【道垣内主査】ありがとうございました。御審議いただく前に,もう一つ御説明を伺ってからにしたいと思います。これは,文化庁からWIPジャパン株式会社,ワールドインテリジェンスパートナーズジャパン株式会社に委託して調査を,これはまだ最終報告書ではなくてまだ中間段階だと思いますけれども,調査項目は各国の放送機関がどういうインターネット配信を行っているのか,それについてどういう規制をしているのか,それから著作権法上の保護はどうなっているのかということの比較法的な調査,あるいは各国の放送機関の調査ということになります。この点,本日,ワールドインテリジェンスパートナーズジャパン株式会社の坂井様にいらっしゃっていただいておりますので,御説明いただけますでしょうか。約10分でお願いいたします。

【坂井様】ワールドインテリジェンスパートナーズジャパン株式会社の坂井と申します。インターネット配信の著作権等による保護に関する諸外国調査ということで,本日は中間報告をさせていただきます。この調査に関しましては,先ほど御説明がありましたように,文化庁からの委託を受けて調査を行うものでございます。WIPOでも放送条約の議論が行われているところですので,インターネット配信に関連して,諸外国の状況を調査することを目的としております。

なお,今回の報告は中間報告でございますので,まだ調査が行われていない部分については,今後詳細に調査を行う予定でございます。調査項目に関しましては主に3点ほどございます。放送機関が行うインターネット配信サービス,サイマルキャスティング,見逃し配信,それから各国の放送法等によるインターネット配信の規制,各国の著作権法における放送及びインターネット配信の保護状況というところになっております。調査対象国といたしましては,アメリカ,EUではイギリス,フランス,ドイツ,中国,韓国,アルゼンチン,ブラジルというところになっております。

最初の項目の,各国の主要放送機関が行うインターネット配信サービスの実態というところでございまして,おおむね各国,サイマルキャスティングについては何らかの形でサービス提供を行っているというところでございます。見逃し配信につきましては,配信する番組に限定がある場合がございますけれども,一定期間放送した番組を配信するサービスを行っているというところでございます。

例として幾つか挙げさせていただきます。アメリカでは,FOXでは放送された番組全て,ただし連続ドラマ等は新しい回が放送されると,古い回の番組がカタログから削除されるというケースがございます。配信期間は確認中でございます。イギリスに関しましてはBBCのiPlayerですけれども,こちらについては映画,スポーツ,輸入番組,海外コンテンツなどが見逃し配信される番組のジャンルとなっております。見逃し配信される期間は大体30日間となっております。

フランスについては現在確認中でございますので,ドイツを御説明いたします。ドイツにつきましては,ARDですね。こちらは独自制作番組,委託制作番組は対象を問わず見逃し配信対象となっているというところでございます。外部買い付け番組は見逃し配信対象外というところでございます。期間についてはスポーツが放送後24時間,ニュースが7日間,その他は大体1か月から制限がないと。特に歴史・文化関連番組は無制限というところでございます。ただ,青少年保護の観点から,年齢による配信の制限があるというところで,16歳以上向けの番組配信が夜の10以降からのこととなっているというところでございます。

それから,中国に関してはCCTVに関してですけれども,チャンネル選択画面は3日前まで選択可能ということでございます。事例として画面で共有できませんけれども,タイムテーブル形式になっておりまして,3日前まで選択可能というところで,自社番組については検索で2年前の番組まで可能です。それから,ニュースは2年前の番組まで視聴可能と。ドラマ,バラエティー等に関しては検索での視聴はできないというところでございます。

韓国に関しては,番組のジャンルに関してはドラマ,バラエティー,時事,教養,ラジオ番組等々となっております。配信される期間,ドラマを例に取りますけれども,PCとモバイル及びアプリでは若干異なっておりまして,PCでは放送日から1年間,VODで視聴が可能と。一部は3週間後からとなっております。それからモバイルとアプリに関しては放送日から約3週間目までは3分間のプレビューと。3週目以降は1年間のVODという形になっております。

アルゼンチンに関しては全てのジャンル,ただし一部配信されないものもあるというところでございます。ブラジルに関しても,こちらは配信期間確認中でございます。

2つ目といたしまして,各国の放送法等によるインターネット配信の規制というところでございますけれども,代表的なものとして資料を挙げさせていただきました。テレビだけではなくインターネット配信としても対象としているところでございます。こちらに関しては,リニアサービスとノンリニアサービスに分けて規制の枠組みが規定されているところでございます。

リニアサービスとは,メディアサービス提供者が番組のスケジュールに基づいてプログラムの同時視聴のために提供するサービス,放送や同時配信を示しております。ノンリニアサービスに関しては,メディアサービス提供者によるプログラムカタログに基づいて視聴者が希望する時刻,かつ視聴者の個別の希望によってプログラムを見ることができるようなサービスということで規定されております。

リニアサービスの規制といたしましては,テレビに準じる,同様の規制が適用されているというところでございます。例えば,放送時間の過半を欧州制作番組とすると,広告規制の時間帯の6時から18時,18時から24の時間帯の中で約20%以下という広告規制があります。それから未成年者の保護ですね。未成年者の発達を阻害する恐れのある番組,例えばポルノですとか暴力を含めないようにする措置を講じる。暗号化されない暗号を重ねない放送については冒頭の警告音や視覚的シンボルの提供等を行うと。加えて未成年者の許可ですね,アルコール類等の飲料の規制の強化というところになっております。

ノンリニアサービスにつきましては,こちらは欧州制作番組の提供を促進ということになっております。未成年者の保護を求めるという規定になっております。この違いにつきましては,先ほど御説明いたしましたように,ノンリニアに関して,自主的にプログラム,カタログに基づいて視聴者が希望する時刻かつ個別の希望によってということで能動的に視聴するということで,リニアサービスと分けているというところでございます。他国においても同様の記載があるかどうかを検討する予定でございます。

3つ目の各国の著作権法に関するインターネット配信の状況ですけれども,米国を除いて各国で放送機関に,放送に対して何らかの権利が与えられているというところでございます。例えば,イギリスに関しては第20条ですね。1988年「著作権,意匠及び特許法」に規定がございます。フランスについては「知的所有権法典」等の第2編,第6節,視聴覚伝達事業者の権利というところに規定がございます。

続きまして,各国の保護状況に関しましては,放送にインターネット配信が含まれるかについて定義している例としてはイギリスがございまして,こちらも1988年「著作権,意匠及び特許法」第1章の第6条,第1項及び第6条1A項に規定がございます。以上でございます。

【道垣内主査】どうもありがとうございました。今の御報告につきまして,まだ中間報告ということでございますので,もし委員の方々から何かこういう点も分かったら有り難いという点がございましたら,御指摘していただきたいと思いますが,いかがでしょうか。

私,個人的には日本のことはよく分かっていないので,日本と一緒に並べた表にしていただくと有り難いと思います。

よろしゅうございますか。それでは,ありがとうございました。どうぞ。

【田嶋委員】今の御説明は,各国の放送,あるいはインターネット配信という言葉を,日本で指す放送,あるいは日本で指すインターネット配信の意味でおっしゃったのだろうとお聞きしました。著作権制度上の放送事業者の保護についての調査の中で,コンテンツの規制の内容を調査する意味合いを,改めて補足して御説明していただければと思います。

ちなみに日本の放送制度は,関東大震災の経験からNHKのラジオが始まり,第二次世界大戦後の復興のインフラとして民放のラジオが始まりました。大きな公共放送と元気な民放が共存している国は,世界中を見渡しても実は他にはないのです。著作権の議論をするために各国のコンテンツ規制の比較をする必要があるのかについては,本日ではなくて結構ですが,取りまとめに向けて御整理していただければと思います。

【道垣内主査】今の提案はもしかすると委託元に対するものかもしれませんが,いずれにせよ,著作権とどうつながるかというという点を含めて,明確にしていただければと思います。

その他,よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

では,SSCRについての御説明していただきましたので,アメリカ提案について特に御議論していただきたいと思いますが,その前に,それ以外の点について何か御質問等ございますか。

私からお伺いいしたいことがございます。放送の定義については,インターネット送信は除かれることになったということですが,しかし,インターネットによる送信について義務的保護にするという提案だとすれば,結局は,放送の定義に入ってというか,規制の対象になってしまうように思います。何といいますか,条約の中に含めるか否かという点については,含める方向に動いているということでしょうか。日本は,もともとはそういうものは別の条約にして,とにかく放送だけにしようじゃないかという立場だったのではないかと思うのですが,そこはどうも通りそうにないということでしょうか。

【早川国際著作権専門官】放送の定義からインターネット送信を除くとした場合においても,おっしゃったように,保護の対象としてインターネット送信を含めるということはできます。インターネット上の送信をどう扱うかということについては,特にサイマルキャスティングとかについては以前御議論していただいていたというところかと思いますけれども,伝統的放送機関が行うサイマルキャスティングについては,基本的にはSCCRにおいてコンセンサスが得られている状況になります。今議論されているのは異時送信,見逃し配信等を含めた異時送信についてどうするかということが議論の対象になっているところでございます。

【道垣内主査】分かりました。少し私の質問のピントがずれていたかもしれません。

もう一点,これからアメリカの話を伺うにしても,アルゼンチン提案との違いですけれども,アルゼンチン提案は1個だけに絞って,そこについて義務化しようというものであるのに対して,アメリカ提案は,大きく網をかけた上で,しかし逃れる方法も認めましょうとものであるという違いがあるのでしょうか。

【早川国際著作権専門官】アルゼンチン提案とアメリカ提案の違いですけれども,対象としている提案が違うというか,対象としている項目が違っておりまして,アルゼンチン提案は保護の対象をどうするかに関する提案となっておりまして,異時送信のうち何を保護しなくてはならないかということを決めるのがアルゼンチン提案となっています。アメリカ提案につきましては,保護の対象とは別で,どういう権利を与えるかということに関する提案となっておりますので,その点が違うということになります。したがって,共存し得る,どちらを採用しなければならないということではなくて,例えばアルゼンチン提案を採用した上でアメリカ提案を採用するということもありますし,アルゼンチン提案はちょっと,という中でアメリカを採用するとか,そういう関係も可能ということになっております。

【道垣内主査】排他的ではないということですね。

【早川国際著作権専門官】排他的ではないです。

【道垣内主査】分かりました。

それと,つまらないことですけれども,6ページの本文の最初のところ,米国より与えられる権利というふうに読めてしまうので,この「米国より」という文言は「提案」の前に移した方がいいように思います。

【早川国際著作権専門官】そうですね。失礼しました。

【道垣内主査】では,このアメリカ提案について,いかがでしょうか。あらかじめ放送機関の方々には御意見を伺いたいとお願いしているように伺っています。インターネット配信についての権利侵害状況,あるいはその対策についてどうなのかと,それからこの条約でどうすると一番よいのかといった点について,放送機関の関係の方,もしよろしければ御意見を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。どうぞ,梶原委員。

【梶原委員】質問とか意見とか,いろいろ混じっているかと思いますけれども,今の主査の御発言にも若干関係しますけれども,アメリカ提案というものは与えられる権利についてのみの提案であって,保護の対象については特段述べられていないということだと思いますが,そこは逆にアメリカ提案の場合,保護の対象が今,一応放送あるいはサイマル,ニアサイマルまでは義務的保護ということは合意ができたということですので,米国提案というのは,そこは前提とした提案なのかどうかというところが一つあるのかなと思います。

この資料1-2を見てみますと,必ずしもどこについて排他的権利を付与するのか,それ以外の適当かつ効果的な保護を与えることができるのか,どこまで制限できるのかということはよく分からないので,2の保護の対象については,少なくともこれまで合意されていた無線の放送,サイマルキャスティング,ニアサイマルまでは義務的保護にした上で,それ以外の部分については各国で規制ができますよ,それ以外の方法で対応できますよというふうにならないといけないと思います。

それと,それ以外の項目で申し上げると,他の法律,(y)項ですかね,いろいろな法律で,組合せで対応ができますよということで,米国がこの条約に入るという視点からは仕方ない部分もあるのだと思いますけれども,例えば著作権侵害がどこかで,違法動画が上がっていますと言われたときに,この著作権以外の法律で,商標権なんかは多分できると思うのですけれども,行政措置等によって,例えばYouTubeとかいろいろなプロバイダがありますけれども,そういった法律ですぐに違法動画を削除してくれるのかどうなのかみたいなところが,私も詳細は分かりませんけれども,そういったことが実際にプロバイダでやっていただけるのかどうかというところの懸念があります。

それと,(z)項については,何を言おうとしているかよく分からない部分があって,著作権者や隣接権者が,権利行使を,保証した範囲でできるということになっていますけれども,もしそこまでライセンスを受けていない場合は,これはできないということなのか,例えば購入番組などでも,権利侵害をされた場合,ライセンスを受けているということは,必ずしも日本においてはない。そういった場合,放送機関は権利侵害については対応できないという話なのか,それとも適切で効果的な保護以上にライセンスはできますよということを言っているのか,その辺がよく分からない,不明なところかなと思います。

【道垣内主査】このアメリカ提案の趣旨について,文化庁が説明するお立場にあるのかどうか分かりませんが,もし分かる点がございましたらお願いします。

【早川国際著作権専門官】米国提案,確かにそのSCCRの場でも分かりにくいというか,どういう趣旨なのか,これでちゃんと保護できるのかという意見は各国から出ていますので,その点はクリアにしていかなくてはいけないなと思っていますので,先ほど梶原委員からおっしゃっていただいたところは,まさに事務局もその通り,不十分な点,あるいはこれではきちんと保護できないのではないかという点の懸念は持っていますので,御指摘していただければSCCR等で確認は可能だと思います。

【道垣内主査】今の,梶原委員の御指摘の中に,アメリカの事情というものもあるように伺いましたけれども,日本とは違う何らかの事情があるのですか。もし御説明していただければ幸いです。

【梶原委員】私も知りません。基本的にはアメリカでは放送事業者には隣接権はないということはあります。そういった部分は。

【道垣内主査】分かりました。

その他。田嶋委員,ありがとうございます。

【田嶋委員】資料1-3を御覧ください。3ページのⅡ. OBJECT OF PROTECTIONのAlternative2がアルゼンチン提案,4ページのⅢ. RIGHTS TO BE GRANTEDのAlternative2の(1)と(2)がアメリカ提案です。ですので,議長の取りまとめは両案,あるいはこれまでのSCCRの蓄積を並列的に整理しようと,あるいは意図的に整理しまいとしているのかもしれませんが,整理しつつあるところかと理解をしています。

アメリカは,国内の関係者と徹底的に国内議論をして,調整をしてから国際提案をいたしますので,今回のアメリカ案は恐らくアメリカ国内でも了解済み,これであればアメリカの国内は全くOKという内容であろうと思います。ですので,逆に言うと,これからアメリカ案を修正してもらうということは相当大変だろうと思います。

資料1-3の6ページのMeans of Implementation and Relation to Other Rightsの(1)の(ⅰ)で,アメリカ提案が反映されており,「信号により搬送されるプログラムにおける著作権又は関連権を,適用される制限と例外を含めて,拡大したり改めたりすることを締約国に要求するものではない」と書いてあります。信号の保護がプログラムに影響しないという隣接権の保護について当たり前のことを書いてある。続く(ⅱ)も,他の条約や法律との関係を言っていますが,これもアメリカ国内向けに当たり前のことをわざわざ規定している。国内法主義も含めて,国際条約上の常識あるいは著作権法上,著作権制度上の常識を言っている。この部分を見ても,提案を出すに当たって国内向けに慎重に対応したことがうかがえます。

資料4ページの中ほどの(2)アメリカ提案の(z)の部分は,北京条約の12条の権利の移転の規定を彷彿(ほうふつ)とさせるものです。放送機関がプログラム内の著作権又は関連権の所有者により,そうする権限が与えられている範囲内で,信号により搬送されたプログラムの無許諾使用に対する権利を行使することができるように定められるとある。つまり放送事業者が与えられる権限の範囲の前に,国内法の認めによりという文言が全体にかかりますので,例えば物権と債権の区別のある国では,逆に放送事業者がライセンスで一定の権利を権利者から取得をしてもなかなか行使できない。しかも行使するのが元の著作者の権利と書いてありますので,放送局の権利でもないと読めます。一方で,アメリカのように債権と物権の区別がなく,ライセンスで認められた場合は一定の行使ができるというアメリカ国内の秩序は変わらないということを,アメリカ向けのメッセージに言っていると読めます。

資料1-2について申し上げます。事務局の御説明ありましたが,あくまでも概念図ですので,先ほどの議長まとめを整理したことになろうかと思いますが,SCCRで現状一致している点とは限りません。「1.受益者」はこのとおりですが,「2.保護の対象」は放送とインターネット上の送信とありますが,後者は異時送信,見逃し配信等も含みますが,SCCRではまだ一致していないので,どうなるかが課題です。異時送信については(1)の放送についても,異時の問題が同様にあります。「3.与えられる権利」については,先ほど御説明がありましたように,放送前信号に適切かつ効果的な保護を与えるということがコンセンサスになっていますので,本資料にも反映していただければと思います。また,再送信権のところに,同時,異時と書いてありますが,アメリカ提案における異時の取扱いがどうなるのかというところは注意をしたいと思います。

そういう意味で言いますと,異時送信が含まれるかどうかについて,今回のSCCRではどこの国もあえて質(ただ)しませんでしたので,議長テキストの再送信の定義にも異時送信が括弧付きになっているという状況のまま残っています。次の4月のSCCR38では再送信から異時送信を外すのか,あるいは異時送信をオプションにするのかといったようなことも含めて,議論があるのかもしれません。

EUはもともと放送された番組をキャッチアップTVに送信をした場合に,元の放送ではなくて,キャッチアップTVから窃取されたときに対抗できるように,異時送信を保護の対象にすることを主張していますので,今回は議論がなかったところですが,異時の再送信,あるいは固定を介するmaking availableの取扱いなどについて,次回の議論について注目をしているというところです。

【道垣内主査】ありがとうございます。アメリカの事情とか,あるいは議長の気持ちとか立場とか,あるいは各国のいろいろな事情を推察され,あるいは洞察されて,評論家的には分かるような気がするのですが,日本の放送事業者としてアメリカ提案がこのまま通ると困るのか困らないのか,少しはよくなるのか,その辺を明確に御指摘していただければ有り難いのですけれども,いかがでしょうか。

【田嶋委員】アメリカにおいて権利者の権利を放送事業者が自身の権利として行使をすることができるのは,アメリカ提案にありますように多分,書面による契約によって独占的ライセンスを得ている場合かと思います。日本においてはそのような実態,実務は必ずしもありませんし,日本においてはアメリカ法の締約国適用のやり方では現実に効果を持たないということになりますので,何らかの対応では穴が開くと思っています。

ただし,現実に問題が起きるのは,異時送信であるオンデマンドの送信の場面であろうと思います。今のアメリカ提案では,異時送信に権利を与えるかどうか,あるいは保護の対象にするかどうかというのは明確に確認ができませんので,アメリカ提案の適切かつ効果的な保護の評価は,異時送信の取扱いの議論と合わせて詰めていただきたいと思います。これを詰めていくと先ほどの総会の御報告にありましたように,コンセンサスを得て外交会議に進むということになろうかと思います。繰り返しになりますが,適切かつ効果的な保護ぶりが日本ではどうなるかと,異時送信の権利あるいは保護の適用がどうなるかを,両にらみで御議論していただければいいと思います。

【道垣内主査】ありがとうございました。他の方,鈴木委員。

【鈴木委員】いや,進行していただいて。

【道垣内主査】今の点でも。

【鈴木委員】今の点ですか。

【道垣内主査】違う点でも結構です。どうぞ。

【鈴木委員】アメリカ提案について,今この場で詳しいことを知ったので,全く間違った理解かもしれないのですけれども,パラグラフの(z)というのは,日本でいえば独占的なライセンス契約があって,そのライセンシーが侵害者に対して権利行使をできるかという問題が学説でも実務でも議論されているところですが,そういうことが想定されているのかなと思いました。

【道垣内主査】資料1-1の8ページのところに,日本語も付いてあるものですね。

【鈴木委員】はい。それで,日本の実務は,釈迦に説法ですけれども,著作権の場合は独占的なライセンスというものはあくまで債権債務的な権利関係にすぎないので,ライセンシーは第三者に対して,損害賠償は不法行為に基づき請求できるけれども,差止めは自らの権利としては認められない,ただし,債権者代位権の行使という形で,著作権者あるいは隣接権者の差止請求権を代行使するということが可能性としてはあるというのが多数の理解かと思います。比較的最近の東京地裁の判決例では,差止請求権の代位行使を認めてはいますが非常に限定的で,ライセンス契約上,権利者側が侵害排除義務を負っていることが明確になっている場合のみ代位行使ができるとしています。いずれにしろ申し上げたいのは,日本ではライセンシーが侵害者に対して権利行使をするということは,非常に制限的にしか認められていないのが現状であるということです。

そこで,日本の放送局が放送した番組について,アメリカ人やアメリカの企業が,全く許諾なく再送信した場合に,日本の放送局は権利行使ができるかという仮想事例を考えると,仮にアメリカで訴訟を起こした場合にどちらの法が適用になるのかは,まさに道垣内先生の御専門の準拠法の話になると思うのですけれども,仮にそれで日本法が準拠法になるというと,非常に制限されてしまうのではないかという気がします。アメリカ提案については,そのような国境をまたがって放送番組が許諾なく勝手に送信された場合のことなども考えて,対応を考える必要があるのではないかということが,申し上げたい点でございます。

【道垣内主査】日本で権利行使しようとする人がどんな権利を持っているのかは,行使する場所じゃなくて,もともとどういう権利が与えられたのかということなので,日本法による債権者との間の契約で債権的なものしか取得していなければ,そういう者の立場としてアメリカで行使することになると思います。ただ,アメリカではそこの区別がないということになると,権利者が二人いるということをアメリカ的にどう考えるのかということで,それはアメリカの国際私法の話になってしまいそうです。日本では,債権的な権利しかなくても,権利者の物権的な権利を代行しているということでしょうか。

【鈴木委員】場合もある。

【道垣内主査】そうですか。分かりました。いずれにしても,アメリカではよくても日本では困るという点はあろうかと思いますし,これってアメリカからは事前の相談はなく,いきなり出てきたのですね。あるいは,会議に臨むに当たって,日本と似たような法制を持っている国はヨーロッパにはあると思うので,どうやっていらっしゃるのか分かりませんけれども,少し横々で話をされた方がいいかもしれないですね。

【石田国際著作権室長】今の御指摘については,外交上のやり取りもございますので,詳細は控えさせていただきたいと思いますけれども,今回いろいろな意見を頂いた中で,懸念がある部分とか明確化した方がいいという部分は,今の点も含めて様々頂きました。議場の平場でお尋ねさせていただくか,あるいは別枠でサイドラインでお話を個別に聞くかはともかく,それはやり方として考えさせていただければと思いますけれども,何らかの形で明確化し,日本の立場をきちんと決められるようにしたいと思っておりますし,日本の放送事業者の方が現に困っておられる侵害事案が止められるかという観点から,もう少し議論を進めたいと思っております。

【道垣内主査】こういう条約ができたからといって,今の放送事業者と権利者との間の契約プラクティスが変わるということはなさそうだということですよね。物権的な差止めもやってくださいという契約にすることは不可能ではないでしょうけれども,そうなる見込みはないということですね。そうすると,条約作りに当たっては日本にも問題なく適用できるようにしていただくといいと思います。

どうぞ。

【上野委員】米国提案につきましては,アメリカの影響力を考えましても,また従来から目指されてまいりました早期妥結の観点からしましても,真剣に検討する必要はあるだろうと考えております。

ただ,「適当かつ効果的な保護」(adequate and effective protection)というものにつきましては,この条約案でもほかのところでは「適当な法的保護及び効果的な法的救済」(adequate legal protection and effective legal remedies)という文言が用いられていることと比較いたしましても,例えば,業法によって保護することなども含めて,私権として民事的救済を裁判上求められるということには必ずしもならないことになるかと思います。そうすると,これは放送条約の議論をせっかく20年以上やってきた成果としてどうなのかということが問題とならざるを得ないようには思います。

とりわけ,先ほど梶原委員からも御指摘があり,あるいはほかの委員からも御指摘ありましたように,日本の放送事業者の放送が無断コピーされてアメリカで放送されるとかというのは余りないと思われる反面,外国のネットにアップされているというような場合に,どういった保護を受けられるのかということが問題になるところです。

もちろん,先ほどから話題のパラグラフ(z)によれば,著作権者からライセンス――ちなみに(z)には「排他的」とは書かれていませんけれども,合意声明において各加盟国が「条件」を定められることになっております――を受けていれば,その許諾の範囲で無許諾の「再送信」に権利行使できると規定されているわけですけれども,その「範囲」とある以上,放送機関が著作権者からネット配信までライセンスを受けていれば,第三者による無断ネット配信を止められるということは明らかと思いますけれども,著作権者から伝統的な放送についてはライセンスを受けているけれども,ネット配信については必ずしもライセンスを受けていないという場合に,第三者による無断ネット配信を止められるのかどうかという点については疑義があるように思います。

これは日本でも,独占的ライセンシーによる債権者代位の差止請求だとか,解釈論としても問題になるところで,また今,立法論としてもワーキングなどで議論しているところですので,その改正が実現すれば,独占的ライセンシーによる差止請求権が明示されることになりますけれども,そうなったとしても,著作権者からライセンスされている範囲の利用行為についてはライセンスを受けた者が差止請求できる反面,具体的にライセンスを受けていない利用行為については差止請求できないのではないかと思います。したがって,放送事業者についても,そのようなやり方で保護として十分と言えるのかどうかというのは問題になるかと思います。

また,スポーツイベントみたいに著作権のライセンスがない場合に,――もちろん,撮影によって著作権があるんだと言えれば余り問題はないのかもしれませんけれども――,そういったときにも,このパラグラフ(z)のようなやり方で,放送事業者の保護として十分かどうかというのは検討の余地があるかと思います。

その意味では,米国提案については,柔軟性という点は大変結構なのですけれども,たとえ柔軟性を認めるといたしましても,放送事業者の十分な保護を確保するためには,柔軟性の対象をできるだけ限定するといったことも必要になってくるのではないかと思います。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございます。今村委員もお詳しいところではないかと思うんですが,いかがでしょうか。何か御意見を頂ければ。

【今村委員】そんなに詳しくはないんですけれども,いろいろ議論を聞いておりまして,一番重要なのは条約を作る場合の妥協ということで,米国の提案は,米国法を恐らく余り変えなくても,この条約に米国が入れるという形のものだと思うんですけれども,米国において日本の放送が,例えばサイマルキャスティング等,再送信によって日本のコンテンツが侵害されている状況がどれぐらいあるのかという点に興味がございます。アメリカ以外の国にも興味はあるんですけれども,侵害の状況が非常に多いという場合に,米国の提案だと,米国で権利行使するときに,法的な側面で行政法の適用などの非常にいろいろな問題が出てきてハードルが高いということであれば困るわけです。他方で,それほど日本のコンテンツ,放送の被害というものが,再送信との関係で余り生じないんだということであれば,ある程度のところで妥協もできるというような気もいたします。諸外国における伝統的な放送も含めて,インターネット上の送信も含めて,伝統的放送機関の放送ないしインターネット上の送信が,どれぐらい再送信という形で被害を受けているのか,あるいは伝統的放送機関の権利以外の権利行使によって対応するのがなかなか難しい状況にあるのかという,その点も,どういう点で米国の提案について妥協するのかとか,あるいはほかの提案を受け入れるのかということと多少関わってくるのではないかと思います。

あと,もう1点あるんですけれども,そもそもアルゼンチンがなぜこれだけ頑張っているのかということにも関心はあるんですが,アルゼンチン提案では,異時送信について更に細分化して,義務的保護が与えられる放送と同等の異時送信と,その他の異時送信,任意的保護という形で区分けしているわけですけれども,仮にこういう提案で分類されずに条約ができた場合に,これはこういう解釈も成り立つのか,要するに,そういう解釈の下,この条約を解釈して構わないのか,それとも,この提案は入れられなかったので,このアルゼンチン提案の解釈で条約を解釈してはいけなくて,異時送信というと,この放送と同等の異時送信もその他の異時送信も,いずれも義務的保護ということになるということなのかという点も,いろいろ議論する中で確認しておくということが必要なのではないかと思いました。

あとは,そもそもこれは既に条約の議論の中で20年間以上も議論したということで決着済みなのかもしれませんけれども,なぜ伝統的放送機関にウェブキャスターとは別に保護の対象を広げてインターネット上の送信を保護するのかという保護の本質論みたいなものも必要になるのではないかと思います。条約の議論の進捗状況によりますけれども,保護を拡大したり,与える権利を検討する場合に,国内法の議論の中では,各国のそういう調和という点だけじゃなくて,保護の本質がどこにあるのかという点も改めて検討する必要が出てくると思います。その点は,実際に条約に関するWIPOの議論の中では必ずしもその点は議論しなくてもいい課題なのかもしれませんけれども,国内法の問題として検討するときには,必ず考えなければ国民の納得も得られない部分かと思います。あるいはウェブキャスター等,伝統的放送機関以外の団体等の理解も得られない部分かもしれませんので,その点も検討する必要があるのではないかと思いました。

【道垣内主査】ありがとうございました。今の点も含めて,今後対処方針を決めて臨んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

よろしゅうございますか。では,議事の2番目,「海賊版対策の取組状況等について」に移りたいと存じます。これにつきまして,事務局からまた御説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

【野田海賊版対策専門官】御説明申し上げます。今年度,主として海外において実施した事業を,かいつまんで説明させていただきます。資料の2を御覧ください。「海外における著作権保護の取組について」という表題でございます。

文化庁著作権課国際著作権室におきましては,海外における海賊版対策として,著作権制度の整備,権利執行の強化及び普及啓発を3本の柱として実施しております。今年度行いました事業の詳しい内容につきましては,次ページ以降に記載しております。

著作権制度の整備につきましては,法制度がないと法的に著作権侵害に対抗する術がない,このような状況から,まずはアジア・太平洋地域の開発途上国において法制度を整備する事業を世界知的所有権機関(WIPO)との連携・協力により著作権法の整備,国際条約の加盟を支援するとともに,関係の職員に対するキャパシティー・ビルディングを行っています。

具体的には,対象国におけるセミナーの開催,訪日研修を実施している他資料作成等を協力して行っております。現地セミナー,訪日研修の実施に当たりましては,国際小委の委員の先生方並びに所属機関等の御協力を賜っておりますところ,この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

次にその下の,ミャンマーにおける著作権制度整備支援ですが,WIPOとの協力以外にも,二国間で制度整備の支援を行っているところでございます。著作権を含む知的財産制度の整備をミャンマーに支援するため,現在,日本政府,JICAが中心になりまして,複数の省庁が関係して支援に取り組んでおります。

ミャンマーにおきましては,民政移管後の経済発展が著しく,また,日本のアニメですとかマンガ,キャラクターといったコンテンツが人気がある一方で,著作権法自体は百数年前にできたものが使われている状況でして,これらを現在に合った法律にアップデートしていくということが急務になっているところでございます。

今年度,同国で著作権制度を所管しておりますミャンマー教育省からの依頼により,JICAと連携して,著作権集中管理制度に関するセミナーをヤンゴンで共同開催させていただきました。成果としては,関係者間で,集中管理団体(CMO)をミャンマーに整備する,このための工程表が作られ,共有されております。現在,ミャンマーにおきましては,新たな著作権法を整備・改正するということで,その改正後,速やかに立ち上げられるように,鋭意準備中ということを聞いております。

なお,法改正の状況につきましては,既に国会での審議を終えていると聞いており,近くそれらが成立することを期待しているところでございます。

このほか,ミャンマーとの関係でございますが,JICAとミャンマー教育省が現地で開催するコンピュータープログラムの著作権管理に関するセミナーに,日本の専門家を講師として派遣をさせていただきました。

次に,同じスライドの下でございますが,権利執行の強化について説明します。最初に,二国間協議ですが,昨年12月に,日中著作権協議・セミナー及び日韓著作権協議・フォーラムを,それぞれ上海,ソウルで開催いたしました。これらは我が国と先方の政府による覚書に基づきまして毎年行われており,日中著作権セミナーにおいては,コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の後藤代表理事にお越しいただきまして御講義していただくほか,日韓著作権フォーラムにおいては,国際小委の上野委員に講師としてお越しいただき,平成30年度(2018年度)の著作権法改正について,御講義を賜ったところでございます。

それぞれの国との間では政府間協議を行っており,両国政府に対して,我が国コンテンツの保護の一層の強化,海賊版対策の一層の強化を,申し入れていおります。

日中の著作権セミナーにおきまして,最近の傾向として参加者から伺ったことを共有させていただきます。中国においては,いまだ多くの著作権侵害事例が報告されているところでございますが,大手の動画配信サイトを中心として,日本の正規の権利者からライセンスを得て,コンテンツの正規配信が増えているということも一方でございます。しかしながら,小規模な海賊版サイトであるとか,あるいは個人による海賊行為が頻発して行われており,中国国内で大手の動画配信業者等々が権利行使を行っているとのこと。

その際に,中国の裁判で必要になります,正規に日本の権利者からライセンスを受けているという証明,これを日本側から取得することは極めて困難であり,ほかの国のコンテンツと比べて権利行使が難しい状況であるということを,複数の参加者から拝聴しました。

例えば,アニメーションを作られた際のエンドロール等において製作者と著作者とが異なる表記であり,誰に証明書の発行をお願いして良いかが分からないといった状況や,あるいは製作委員会方式で製作されている場合には,全ての権利者から証明をもらう頃には海賊版が出回っている状況もあるということを,中国の企業が課題として伺いました。

このほか,例年行っておりますトレーニングセミナー,これは我が国コンテンツの侵害発生国等の執行機関職員を対象としましたセミナーでございますが,これらにつきまして今年度も実施しました。その下の段,調査研究としまして,我が国コンテンツ企業が海外で権利執行した際の事例集を作成しているところでございます。

この事例集の作成につきましては,本小委員会の委員でもある墳﨑委員の所属されておりますT&K法律事務所に調査委託をして進めているところでございます。私からの説明の後,墳﨑委員から,事業実施者,受託者のお立場,弁護士のお立場で,現在の進捗について御説明していただけるということになっております。

なお,念のために申し上げますが,委託に際しては,法令にのっとって公募を行った後,公募内容の説明会の開催した上で一般競争入札により受託者が選定されておりますことを申し添えさせていただきます。

次に,3ページ目でございますが,普及啓発について御紹介させていただきます。今年度よりマレーシア及びベトナムなどを対象にして開始しているものでございます。

マレーシアにおきましては,資料の作成,それを踏まえた,特に小学校,中学校,高校,大学に通っている若者を対象とした取組を行うこととしておりまして,資料を開発するほか,クアラルンプール及びセランゴール州の小学校に配布普及を図る,それを実際に使ってもらうために,今後,学校教育部署と連携・協力してパイロット事業を行うといったことが計画されているところでございます。

現在,作成・開発中でございまして,この場で共有させていただくことはできませんけれども,昨年度,この事業を開始するに当たり国際小委の御意見を賜った際に,例えば,何々してはいけない,これをやってはいけないといった禁止教育にならないような配慮が必要であるといった御意見ですとか,あるいはクリエーターの創意工夫・努力が尊重されるようなメッセージなどを御提案していただいたところでございます。さらには,権利処理されたものをきちんとお金を払って購入して,それを消費することがステータスになるような,かっこいいんだというような風潮・機運を醸成していくことが重要であるといった御指摘を踏まえまして,現在,マレーシア政府機関との間で連携・協力して進めているものでございます。来年度の国際小委におきましては,それら今年度の成果を具体的に御報告できるものと考えております。引き続き進めさせていただきたいと思います。

最後に,参考に,マレーシアにおける著作権意識調査というものを付けさせていただいております。これは,さきほど説明しました普及啓発事業の一部として行ったイベントにおけるアンケートの結果の抜粋でございます。

こちらは,昨年,マレーシアのクアラルンプールで開催されました,日本のコンテンツやポップカルチャーを紹介する「JAPAN EXPO IN MALAYSIA」というイベントにおいて,我々が行ったアンケート結果の一部です。イベントの参加者は,現地在住のマンガ・アニメファン,イベント参加者全体にしたアンケートを行ったほか,著作権に関連するクイズを出題して,回答と何故そういう答えなのかという理由を解説するステージイベントを開催しました。そのステージイベントに参加していただいた方々,回答数は320名でございますが,を対象にしたアンケートも併せて実施しました。

ステージイベントにおいては,例えば,インターネットの動画共有サイトなどで削除されずに残っているコンテンツは全て正規版である,マルかバツかといった問いに対して,イベントの参加者がマルバツを判断して,それに対する解説を付けるという内容でございました。

これらの,参加者が身近に,日々行っていることに関連した問いを設けまして,ふだんの行動で不適切であれば,それに気付いていただく,あるいは海賊版視聴による悪い影響等をそれぞれ考えていただく機会として実施しました。その結果をアンケートでまとめたものでございます。

結果は,多くの参加者は,きちんと権利処理された正規のコンテンツを利用したい,利用して自分の好きなクリエーターの創作に協力したいといった志向が表れていること,また,この場で気付いたことを身近な人たちと共有していきたいといった潜在的な応援団になりえるということが感じられる結果でございました。参考に報告させていただきます。

事務局からの説明は,以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。今,御報告の中で言及がございました,権利執行の強化の項目の中で,海外における著作権侵害対策事例というテーマについて,T&K法律事務所に委託で調査をお願いしているわけですが,その立場で墳﨑委員から少し御説明していただけますか。

【墳﨑委員】ありがとうございます。墳﨑でございます。お手元,机上配布資料を御覧いただければと思います。

本年度,当事務所で文化庁様より委託を受けて,日本の権利者による海外における著作権侵害事例の事例集の作成を現在進めております。内容としましては,基本的には名のとおりですけれども,権利者の皆様に対して海外におけるこれまでの権利行使の事例をヒアリングして,場合によっては,権利者様自身が余り把握していない,要は現地代理人にある程度任せている部分もありますので,案件によっては現地代理人に補足でヒアリングをかけて,それに基づいて,どういった事例でどういった権利行使がなされていて,その結果どうなっているのかという部分について,事例集としてまとめるということを行っております。

1ページ目の,今,1,2と説明しました,3.として,調査事項としては,おおむねこのような8個の点を聞いております。事案の概要や経緯,必要になった書類及びフローチャートや費用,あとは結果と,その他,やってみて考慮した点や改善点などで,その他,その他ということで,お伺いしております。

既に調査の最初に,CODAの会員者も含めて様々アンケートを取らせていただいたのですけれども,実際のところ,東アジアの権利行使というのはそれなりにあるんですけれども,それ以外の地域における権利行使事例が,特に著作権に基づくものというのが余りないという状況ではあります。それらも踏まえて,調査事例の候補としては,4.にあるような東アジア,少しだけあった東南アジアや欧米の事例なども入れて作成していきたいと考えております。今,まだ事例を収集中ではございますけれども,幾つか簡単に御紹介したいと思います。

まず1点目ですが,中国における権利行使,これは結構な皆様が行われておりますが,ただ,実際蓋を開けてみると,多くの皆様は行政権利行使が多くて,民事裁判までやっているという事例はそれほど見付かっておらず,そういった中で一つ,民事裁判をやられている会社様がいらっしゃったので,ヒアリングを実施して話を聞いております。

これは,アニメーションを基にして,キャラクターグッズ,おもちゃを作っている会社様の事例でして,もともとは商標権侵害があったという事例になります。商標権侵害が中国企業によってなされていたために,御存知のとおり,中国で商標権侵害での行政摘発というのは非常に早く一,二か月ぐらいでやってくれることですので,まずはそれを実施しました。にもかかわらず,その後に起きたこととしては,侵害者が行政摘発を商標権で受けたので,製造しているものから商標を外して販売を継続するということが行われていました。なので,この権利者としては著作権で対応せざるを得ないということで,著作権侵害に基づき対応をしました。アニメの原作のイラストの著作権と,それに基づき製作されたおもちゃ自身の著作権,別々の著作権として,それぞれの権利に基づいて権利行使をしております。

必要になった資料等ですけれども,これは簡単に書いていますけれども,模倣品の実物と真正品,あと,中国における著作権登録証を出しております。これは侵害が発覚後に登録したものを出しているとのことでした。この点に関しては現地代理人等とも話はしているんですけれども,もちろん侵害発覚前に登録しているのがベストではあるのですが,本件のケースは,登録後よりも前の段階で発表しているということに関しての資料を結構しっかりと有しているので,発覚後の登録で十分であろうと。かつ,相手方も争ってこなかったということもあって,発覚後の登録の著作権登録証と,プラスで,実際に著作権発表時の,これは日本における資料ですけれども,資料を併せて出すことによって,著作権を有していることの証明をしております。

さらに,これは損害論等のためですけれども,著作物が著名であることの資料を裁判所に出しております。これ自身は絶対に提出しなければならないというものではなかったようですが,裁判所の心証等を形成するために,中国においてどれだけの広告をしているとか,中国におけるアニメとかゲームショーとかのイベントへの参加の証拠,写真等,あとはアニメーション自体の動画再生に関する資料を動画共有サイト等からもらって,それらも出すということもやっております。

さらに,本件は商標権侵害で先に行政摘発をしておりますので,行政処罰決定書や行政手続における押収品目録といったものも,資料として出しております。

実際に要した期間ですけれども,まず,事前調査は結構かかっているんですが,実際の訴訟提起から判決までは9か月ぐらいで終わっております。上訴はされなくて一審だけですが,9か月で終わっており,一部権利者様がよく証人尋問とかあるのかというのを気にされますが,本件においては特に証人尋問などはなく確定しております。賠償金なども認められて,2018年3月,判決から約3か月後ぐらいに賠償金の回収などもできております。先に結果を言うと,損害賠償は結果としては350万円ほど認められていて,その他侵害品の廃棄や謝罪広告なども判決では認められております。

かかった費用ですけれども,合計すると500万円ぐらいかかっています。さっき言った損害賠償との関係で,そうすると費用倒れしてしまっているように見えますが,実はこの裁判自体は,この訴訟は製造業者等にやっているんですけれども,それとは別に,問屋にも損害賠償請求訴訟を提起していて,そちらは和解で終わっているようですが,和解金を得られているので,実際のところはトントンぐらいで済んでいると。赤字にはなっていませんという話でした。こういった形で,中国において民事訴訟でそれなりに効果が出ていると。この判決後は,先方は今のところはやめているとのことです。侵害行為の停止はできているということでした。

ポイントですが,本件は行政摘発を先にやっているという事例でして,これについては,行政摘発を先にやっていると,先方の事情,どれぐらいのものを作っているとか,どこにいるとか,そういった住所なども含めて情報が手に入るという点及び,行政摘発の資料を裁判所を通じて取得することができて証拠として利用できるので,行政摘発を前置したという点が良かったということでした。

また,注意点としては,最初に申し上げたとおり,行政摘発は非常に簡便ですね。手続も早いですし,もの自体を押収してくれるので,やめさせられるというところがあるんですけれども,再度の侵害行為がなされる可能性が高いので,行政摘発した後においても,そういったモニタリングをしておくということが非常に重要になるというコメントを頂いております。

早口になって申し訳ないですが,続きまして,東アジア以外の事例として出てきているインドネシアにおける事例です。これはゲームソフトの光ディスクのコピー商品が販売されているという事例で,インドネシアにおいて刑事告訴を実施したという事例です。

これは現地代理人とまだやり取りしている最中ですけれども,必要になった資料としては,模倣品の実物と,それを買った際のレシート。で,本物も当然出しています。著作権登録証も出したということですけれども,ない場合には,日本も含めて,その他の国での登録のものでも代替は可能であるという話はもらっています。

実際,刑事告訴した後は,通常であれば2週間以内に警察当局は摘発に動いてくれるということで,流れとしては,刑事告訴をした後,1週間ぐらいで大体事前ミーティングを警察とした上で摘発が入ります。

その後の状況ですけれども,なかなかインドネシアという国は対応が難しくて,多くのケースは和解で終わってしまうということのようです。理由は,裁判所がそこまでちゃんと機能していないというケースが多いということなので,ほとんどのケースを和解で終わらせるということのようです。なので,本件も和解で終わっていて,結果としては,侵害品の廃棄と謝罪広告というところで結果は終わっております。

賠償金についても和解に含めることは可能ですが,この事案においては賠償金の請求はしていません。これもまた面白い配慮があって,一度そのように刑事告訴して摘発をして賠償金を得る形での和解をしてしまうと,変な話ですが,警察官が権利者側をビジネスパートナーと思ってしまう。そうすると結局和解金の折半みたいな話とかも変に出てきてしまうので,そういったことはしない方がいいとのことです。一度でもそういうことをやるとそのように見られてしまうから,やらずに進めるのがいいということで,今回もそれに従って,賠償金は得ることなく本件は終わっていると伺っております。

こういった形で,もうちょっと肉付けをした上で,各国集められるだけ集めて,ハンドブックとして作成していきたいと思っております。簡単ですが,以上になります。

【道垣内主査】ありがとうございました。それでは,海賊版対策について,今の墳﨑委員の御説明も含めて,何かございますか。将来といいますか,来年度以降の小委員会,あるいは文化庁,あるいは日本国,あるいは各企業のいろいろな行動について,こういう点をこうしたらいいのではないかとか,あるいは何か参考になるようなことがそのほかにもありましたら,御指摘していただきたいと思います。いかがでしょうか。

【久保田委員】質問でもいいですか。

【道垣内主査】どうぞ。

【久保田委員】ミャンマーにおける著作権制度の支援のところで,コンピュータープログラムの著作権に関わるセミナーへの専門家の派遣ということですがどのような内容ですか。教育現場ではプログラミングの話なんか入ってきている中で,ミャンマーで,コンピュータープログラムの著作権のセミナーというと,パッケージソフトをコピーしてはいけないというようなレベルなのか,それとも創作性のあるプログラムなんかについても言及したり,プログラム言語との関係で,子供たち自身がプログラミングをするという視点も入っているのか,この辺の専門家が,どういう方が行って,どんなセミナーをやっているかというのは,教えていただければ幸いです。

【野田海賊版対策専門官】コンピュータープログラムの著作権に関すると申し上げたのは,著作権登録に関するセミナーの分野としてミャンマー教育省からのリクエストを,現地在住のJICA専門家から伺っており,そのため,SOFTICさんに専門家として行っていただき御講義いただきました。

また,参加者の対象は,現地における工科系の大学院生,あるいは実際に自分たちでプログラムを作る方々に対して,どういう権利があって,どのように保護されていくのが望ましいのか,近い将来,産業化が進むであろう分野において,それらを普及啓発したいということ,将来エンジニアやクリエーターになるであろう方々にそれを行うといった背景がございました。【久保田委員】ありがとうございます。

【道垣内主査】各国の状況に合わせていいと思います。

どうぞ。

【山本委員】墳﨑委員から興味深い報告を頂きましたので,ついでにもう少し詳しく聞きたい点がありますので教えてください。中国の事例の場合について,著作権登録証が必要だと。これは中国の制度だということですが,私,よく存じ上げませんで,これは日本であれば,著作権譲渡の場合に,初めて著作権の登録という制度があります。中国の場合は,著作物を作っただけで登録できるアメリカタイプの登録なのかどうか,それが1点です。もう1点は,3ページ目の真ん中ぐらいにある,費用のところで,証拠収集費用で公証購入費用とありますが,この公証というのは何なのか,その点について教えていただければと思います。

【墳﨑委員】ありがとうございます。まず,著作権登録に関してですけれども,山本委員の御指摘のとおり,創作したというだけで,著作権登録は中国では可能になっております。必要書類というわけではないので,その辺りは分けておきたいんですけれども,中国も当然,創作と同時に著作権自体は発生するんですけれども,なかなか著作権の証明というのが困難というか,難しいときが多いので,こういった事例においては,著作権登録証というのを用いて立証するというのが多くあります。中国の法令上も,この著作権登録証は著作権の存在の初歩的証明とするという明文規定があったと思いますので,それに基づいて利用するという形になっております。

御質問の二つ目の公証購入ですが,これは今後,もう少し詳細に書いていきたいと思いますけれども,実際に,要は模倣品というか,海賊版の販売店舗があったとして,そこでものを買ったというので,レシート等でも証明はするんですけれども,一番いい証明方法としては,公証人を連れてくるんですね。日本で言うところの公証人ですけれども,連れていって,その場で一緒に買うということをやることによって,公証人の目の前で買いましたという証明書を出してくれるので,公証購入というのはそれのことになります。

【山本委員】分かりました。ありがとうございました。

【道垣内主査】今のと同じような話ですみません。これは事案の説明の枠で囲ってあるところで,3行目で,Aの販売計画に影響すると書いてあるのですが,これは既に正規品は売っていたんですか。それとも,これから売ろうとしていたのでしょうか。

【墳﨑委員】なかなか説明が難しいんですけれども,Aの玩具というのは精巧さによって幾つかシリーズかあって,かつ,いろいろなキャラクターがいるんですね。なので模倣品はすごく精巧なシリーズのものとして売られちゃっていたんですけれども,そのシリーズについてはまだ出ていないものを売っていたんですね。それは順次発売していくという形で,ビジネス計画として,このタイミングで新しくこういうものを出すというのが決まっていたんですね。それを,こういう順番でやるというのを決めていたにもかかわらず,それを破壊するかのように同じぐらい精巧なものを出されてしまって,プランが狂ってしまうというところで,潰さざるを得ませんねという話だったんです。

【道垣内主査】新会社の方が,対応が早かったということですね。

【墳﨑委員】そうとも言えるかもしれません 【道垣内主査】分かりました。製品がなければ,なかなか損害の立証も難しいのかなと思います。売上げ350万円というのはどれぐらい正確なのか分かりませんが,売上げとかは立証できますが,全体で幾ら損害だったのかみたいな立証は,結構難しいんでしょうか。

【墳﨑委員】はい。今,詳細を確認中ですけれども,法定賠償を使われていると聞いておりますので,要は正確な数量での掛け算は行われていないという理解ですね。著作権法上,50万元まで裁判所が上限で賠償額を決められることになっておりますので,その範囲の中で決められた金額となっております。

【道垣内主査】分かりました。そのほか,いかがでしょうか。

どうぞ。

【久保田委員】細かいことで恐縮ですけれども,著作権登録証が発行される前提として,中国の制度の登録のときに,改ざんされないタイムスタンプの技術みたいなものが利用されているのですか。日本側から,これから中国でビジネスをするときには,日本でのタイムスタンプが改ざんされていないということを証明するのはなかなか難しいんですけれども,そういうものを使って中国で権利保護を行うために,もし何か示唆されるようなことがあれば教えてください。

【墳﨑委員】その辺りは,本件とは離れますけれども,余り中国の著作権登録局がそういうのを気にしているようには思っていなくて,私も自分の業務で著作権登録って結構やっていますけれども,出せば認められるみたいな,余り資料等で,久保田委員が言ったような話のところで問題になったりするようなケースはないですね。

そうなると,偽造とかそういったところも出てくることになるので,その辺りについては離れて,CODAで少し,そういうのはどうするんですかみたいな話はやっているところではありますけれども,いかんせん,全部の著作物について彼らが分かるわけでもないので,日本の著作物について,日本のCODAなり何なりがある程度見ていくというところも本当は検討していかなきゃいけないのかなと思っているところですね。

【久保田委員】具体的には,タイムスタンプの技術みたいな1点に特化してどうですか。

【墳﨑委員】いや,どうですか。現状で私として,余りこういう示唆というのを持っているわけではないので,その辺りはむしろ久保田委員が何か御意見をお持ちだろうなと思うんですけれども。

【久保田委員】いろいろコンテンツをお持ちの国内の人たちに,国際的な時代ですから,当然中国という大きな市場に出ていくときに,その証明するための前提として,せめてタイムスタンプの技術ぐらいを応用しておくべきかということで,CCDの研究会では,そういう技術を普及している人たちにお話を聞いたりしているんです。営業的には,中国で著作権ビジネスをするのであればそこは必須ですよと言われるんだけれども,今のお話だと,そうでもなさそうだという理解でいいですか。

【墳﨑委員】そうですね。少なくとも登録上で求められたりもしないですし,ビジネス上でも基本的にタイムスタンプまで求められていることは余りないんじゃないかなと思っています。それは皆さんの方が御存知の方も多いかと思いますけれども,権利証明みたいなものを出せと言われることはよくある話ですけれども,そこまでのものは今のところは求められていないので,今後そのようにしていくことで,違法なライセンスとかそういったところはなくしていくというのは,当然ある話だと思いますが。

【久保田委員】少なくとも著作権登録証の発行を受けるということが前提になっているということなので,それはやってくださいと。中国でビジネスをするなら,それはしないと守られませんよということは,もうはっきり言っていいわけですね。

【墳﨑委員】著作権登録は別に任意なので,登録しないと権利が発生するわけではありませんので,あくまでも権利証明を容易にしたい人が使っているだけの制度になります。

【久保田委員】そうすると,警察に持っていったり民事でやるときに,そういうものがなくても無方式だから大丈夫ですよという。

【墳﨑委員】理論上は大丈夫ですが,すごく大変です。

【久保田委員】ですよね。

【墳﨑委員】はい。もちろん私もいろいろなケースで,そういうのがなくてやっているケースもありますけれども,出さなきゃいけない資料が物すごく増えるので,あるとないとでは容易さが全然違いますね。

【久保田委員】なるほど。ありがとうございます。

【道垣内主査】海賊版対策はなかなか先が見えないというか,ずっとやっていかなきゃいけない話で,来年度も文化庁でも力を入れてやっていただきたいと思います。結局費用倒れでしたみたいな事例を集めたのではインセンティブにならないので,うまくいった事例をもし御存知の方がいらっしゃれば,今の墳﨑委員にお伝え願いたいと思います。また,中国以外でも,いろいろな国で訴訟をやってうまくいったことがあるという情報も重要でしょうし,あるいは,久保田委員のようなコンピューターの関係ですと,デッドコピーしたらすぐ分かっちゃうようなものを仕込んでおくとか,いろいろな方法は多分あるんだろうと思います。うまくいっている事例とか,そう事例を御存知の点,どなたかございますか。来年度以降に向けて,何か文化庁でもお考えの点はあるんでしょうか。

【野田海賊版対策専門官】文化庁におきましては,平成31年度の概算要求におきましても,日本のコンテンツの多くはまずは国内での使用,それを海外で配信していくといった流れかと思いますが,外国でマネタイズすることを前提に作られているようなコンテンツなども,アメリカなど諸外国ではあると思っているところ,例えば諸外国の状況,海外で権利執行しやすいような仕組みをとられている国があるのであれば,そういったところを調査できる予算は,国会でお認めていただければ確保できるのではないかと考えております。委員の先生の皆様方から,こういうことをやると権利者にとって有益である,権利執行に対して更に強力になるのではないかといった御意見等々頂ければ,来年度実施する方向で検討させていただきたいと考えております。

【久保田委員】もう一ついいですか。

【道垣内主査】どうぞ。

【久保田委員】今の野田さんの御意見に乗っかっちゃって,前回の国際小委員会での追及権の話において,横浜美術大学の先生がブロックチェーンの技術のことを言われて,後で教えてくださるということだったんですが,まだ連絡が取れていません。現在,とてもそこには興味がありまして,これもCCDの研究会なんかで,今,一生懸命やっているところです。著作権保護の技術として,現状のところを,可能性とか,それぞれデジタル化した著作物において,どういう著作物だったら有効かとか,何かその辺りでもし文化庁さんで御示していただければ,現場ではもっと研究して,各それぞれの著作権者の人たちにアプローチしてみたいと思います。何かブロックチェーンの技術と海賊版の侵害対策ということで,御存知のことがあれば教えていただきたいんですが。

【道垣内主査】いかがですか。むしろ今後,そういうことも含めて調査して,そういう業界の方々とコーディネーションをうまくして,効果的でニーズに合った調査をしていただきたいと思います。何かございますか。

【野田海賊版対策専門官】明示的に何か具体的にこういった事例がございますといったことは,私自身は把握していませんが,他方,政府の様々な会議でもって,ブロックチェーン技術を使った展開の検討は,伺ったことはあります。

【久保田委員】よろしくお願いします。

【道垣内主査】よろしくお願いいたします。

段取りが悪くて,まだ議事次第の3番目が残っておりまして,こちらに移らせていただくということでよろしゅうございますか。「平成30年度国際小委員会の審議状況について」でございます。資料の3です。これにつきまして,事務局から御説明していただけますか。

【早川国際著作権専門官】事務局から説明させていただきます。資料3を御覧ください。本資料は,今期,平成30年度本小委員会で議論されたことについてまとめたものとなっております。

まず,「はじめに」ということで,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方とインターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方がありますが,それぞれについての審議状況をまとめた資料となっております。

2ポツ以下に審議状況をまとめております。(1)といたしまして,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方として,主にSCCRにおける議論の動向等についての報告と,それに基づいた議論が行われたとしており,それをまとめたものとなっております。

1ページ目の以下のページと2ページ目につきましては,今回報告させていただいた内容と同じなので省略させていただきまして,3ページ目ですけれども,こちらが国際小委員会における委員からの意見概要ということで,第1回の国際小委員会で頂いた意見をまとめたものとなっております。また,今回の国際小委員会で頂いた意見についても,ここで補充したいと思っております。

続きまして,4ページ目の下の辺りですけれども,第2回の国際小委員会におきまして,追及権についての検討を行っており,関係者からヒアリングを行い,それに基づいて議論を行いましたので,関係者からの意見と委員からの意見をまとめております。関係者からの意見につきましては,追及権についての必要性や懸念についての観点の意見を主に頂いておりますし,委員の皆様からの御意見といたしましては,WIPOで事実調査に関するタスクフォースが開催されますので,それに向かってどのような観点で調査を行うべきかということについて,意見を頂いております。

【野田海賊版対策専門官】引き続き,「インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について」でございますけれども,第1回目の国際小委におきまして,墳﨑委員から,海外における著作権侵害の最新の状況について御報告していただいたとともに,それに基づきまして議論が行われました。

主な内容としましては,権利者様の努力によりまして,多くのサイトでは要請に基づく削除率も高くなっている一方で,全くそれらに応じないサイトも存在していること。また,最近の特徴として,極めて技術的に匿名性が高くなっており,運営者の特定が難しい,有効な対策が打てないといったような状況。さらには,新たに不正のストリーミング機器が諸外国では出回っており,機器それ自体に侵害コンテンツ等は入っていないものの,それがために取締りが難しい状況になっているといった事例。このほか,権利執行した結果として,権利執行が行われた国の中では見られないジオブロックを行いまして,その国における違法性を回避しているといった課題等々を御報告していただきました。

【早川国際著作権専門官】事務局からの説明は以上ですけれども,今回頂いた意見も加えて,資料をもう一度修正したいと思っております。以上です。

【道垣内主査】この段階で,何か御意見頂く点ございますか。委員からの意見について,事務局で取りまとめておりますが,いかがでしょうか。

この段階,特に御意見なければ,今後,本日の議論も含めた紙にして,修正等ございましたら,大きな修正は多分ないと思いますが,座長に御一任していただけますか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】ありがとうございます。その上で,著作権分科会に私から報告をさせていただきます。

では,議事の4番目でございますが,この点,何か事務局あるいは委員からございますか。事務局からは,特に予定はないようです。委員の方々も,よろしゅうございますか。

【田嶋委員】いつもお邪魔して申し訳ありません。主査に御一任するということであれば,先ほどのまとめの3ページの委員の意見の概要のところですが,放送条約の早期成立のためには,見逃し配信と異時送信がいろいろ書いてありますので,特段見逃し配信と書いていただかなくても,異時系のことを何かうまく書いていただければと御調整していただければと思います。以上です。すみませんでした。

【道垣内主査】いえ,そういう点,是非御指摘していただきたいと思います。もし可能でしたら,こうしたらどうかということを,メールで結構ですので,事務局にお寄せいただければと思います。そのほかの方につきましても,何かございましたら,ここはこうしてほしいなり,こうしたらどうかということがございましたら,原案を示して御提案していただくと有り難いと思いますので,よろしくお願いいたします。

では,これでこの国際小委員会は終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動